○斎藤(昇)
政府委員 率直に私お答えを申し上げますが、吉田委員のおつしやいますることは、私の胸にひしひしと思い当るものがございます。もちろん
令状の濫用があるという声は、ただいま吉田委員からもお話がございましたように前から問題にな
つておりました。昨年の十月選挙の結果、当時朝野をあげての声だ
つたと私は感じております。さもあ
つたであろうと思うのであります。選挙は占領中ま
つたく放任状態であ
つた、しかし独立したが最後、非常にひどいやり方をしたというお話でございましたが、外部からごらんになれば、さもあ
つたであろうと思うのであります。私現在の職を拝しまして以来、選挙取締りのたびに非常に心を砕いております。選挙の取締りの公正、それから民主政治、ことに議会政治を維持するためには、選挙がきれいでなければならない。これを放置しておけば、議会制度の否認の声があるいは他から起
つて来るという
考えのもとに、私は相当意を用いてお
つたのであります。しかしただいまお述べになるような状況が、前から若干あ
つたと私は思います。十月選挙の前、昨年の一月ごろからでございましたろうか、事前運動が非常にはげしい、これを何とかせいという声が議会の中でも非常に強くな
つてお
つた。また野の方におきましても、公明選挙運動が強く起
つて参りました。議会の内部でも、世論も公明選挙がここまで言われるように
なつた。
警察もこれにおこたえすべく格段の努力をしなければならないということで、私は十月選挙には今までにない
考えを持
つて、公明に、良心に恥じない選挙の取締りをや
つて行こう、そして
警察法が施行されてもはや四年余りにもなりまするし、
警察官も相当教養を積んで来た、一党一派に偏したりあるいは不当な取締りをするということはおそらくないであろう。ここまで来たら、この国民の声に応じて選挙の取締りを厳正にや
つても、非難をされるような事柄はまずなくてやれるのではないか。実際私の腹の中を申しますとそういう決心で、良心的な、心に恥じない
警察官として何者をも恐れない、何者をも憎まない、何者にもとらわれない、そして取締りを受ける者にも納得されるような良心的な取締りをせいということを強く申したのであります。結果は非常にたくさん被疑者を出しまして、私の予想してお
つた以上の数になりました。しかし私はまだ
警察官の教養が不十分な点があ
つたことは当時認めましたが、故意に
令状を濫用したり、あるいは一党一派のためにや
つた者は比較的少か
つたと思うのであります。今般の選挙に際しましては、前回の選挙にかんがみさらに捜査の段階において反省すべき点は反省し、行く、これは大臣の御指示もありました。各省、県、管区あるいは本部においても、前のやり方についてさらに一段とその結果を反省して、納得の行、取締りということに重点を置いてこのたびの選挙に当らしたわけであります。ことに
令状の濫用という点が最も注意されるべきでありまするので、今回の選挙におきましては――これは一般の
令状請求の際にも、原則として事前に検事と連絡、打合せをしてからとるようにという指導はいたしておりましたが、今回の選挙におきましては、
令状の請求は原則として必ず警部補以上にして、それから検事に連絡をし、協議の上でとるように、これを全部帳面をつく
つてそこにつけておいて、そうして捜査規範にある
通り、隊長の指示を仰いで、隊長の判断によ
つて、さらに検事と連絡して、そして
令状を請求するように、いつわれわれが
行つても、いつ幾日何検事とどういうことをしたということを帳面に書いておくようにということを指示いたしまして、これを実行させたのであります。自警におかれても、私の方の方針とほとんど同じ方針で臨んでくれたと
考えております。自警、国警を通じまして六千八百人ほど
令状の請求をいたしましたが、私のただいままでの調査の結果では、その六千八百余りの
令状の中で、特に緊急を要するとかいう件と思いますが、
令状をとるについて
検察官と事前に連絡をしないで
令状をと
つて逮捕したというのが、国警、自警を通じて三件ということにな
つております。この三件につきましては、国警の管内のものにつきましては、私はその責任を追究するつもりでおるのであります。
令状を請求いたします際に検事側と意見が違
つたけれども、
令状を執行したというのが、私は一、二件はあろうかと思いますが、ほかにはないと
考えております。また
警察側では、御承知のように選挙違反においては、たとえば、捜査が進んで参りまして
令状を請求し逮捕いたしますと、四十八時間たてば検事の手に渡りますから、あとの
事件は実際検事と相談の上でやるということにな
つておりますが、検事側からこれを逮捕してはどうかと言われた場合に、
警察においてそれはすべきではないじやないか、任意取調べがよろしい、そうかというわけでそう
なつたものもありますし、あるいは検事側だけでとられた例もないとは申せないと私は思
つております。しかし今申しました数字は、あるいは検察側からそうではなか
つた 国警においては連絡なしにこういうことがあ
つたということがまたわか
つて参りましたら、私はその責任を追究して、そして何らかの懲戒をいたすつもりでおります。
令状の濫用について他によい
方法はなか
つたかというお話でありますが、われわれの側といたしましては、先般も
ちよつと申しましたように、
令状の請求権者を、司法
警察吏員の中から特に警部あるいは警部以上というふうに制限のできるような
規定をこの
刑事訴訟法に置いていただいたらもつといいのではないかということと、それからどうせ
事件はすぐ検事の手に渡るわけでありまして、原則として検事と意見が合
つて、そして調べに進むというのが普通でありますから、検察側と事前に連絡をし、お互いに意見を交換する機会をなるべく設けることを遵守する必要があるので、
刑事訴訟法においてこのことを明記しておくことが必要ではなかろうか、しかし検察側がいかぬと言
つた場合に、検事が
同意をしなければ絶対に逮捕ができないのだという制度になることはよくないだろう、今の
法律上はその場合は
判事が
令状を出し得るごとにな
つておりますが、そこまでする必要はないのじやないか、かように
考えておりますが、なおこの
同意ということによ
つて起る弊害の点はまだありますけれども、それはお尋ねの点ではございませんから、申し上げません。
なお
判事が
令状を出される際に、いま少し疎明の事項等をよく見ていただく、そうして単に請求者のみならず、その監督者が責任をも
つて承認を与えたものについても、
判事側におかれまして、ただ形式だけというのではなしに、疎明事項が完全であるかどうかということについても、もつとよく判断していただくように、あるいは道徳的
規定でも置いてもらえばもう少しよくなるのじやないかと思います。民事
事件というようなものを、
警察官が自己の悪意のためにだれかから頼まれて、あるいは恩怨のためにこれを用いるというような場合の防止に至りましては、
警察官そのものの監督によるよりほかないのでありまして、かくかくの
事件でございますとい
つて書面にその犯罪事実を明記し、検事に相談いたした場合は、検事でもこれを拒否することは困難じやないか、むしろ本人の日ごろの性格なり交友
関係なり、そういうものから判断し、
事件の全貌を
警察の監督上司が聞いて、その
令状の請求の当否を決定することの方がなお効果的ではないか。検事の
同意を得るというということであれば、
警察の監督者はまず検事の意見を聞いてみ、検事が
同意して初めてそれではよかろうということになるので、かえ
つて令状の濫用の防止はできないのじやないか。検事側は検事側で、
警察から持
つて来た、そんなものを逮捕したら、これはけしからぬと言
つて、あとでしかられるというようなことで、すぐ釈放されるということであれば、
警察にと
つては最も痛いのであります。やはり検事は検事の
立場から監督して行くと申しますか、検事の手に入ると同時にゆだんなくや
つて行く、
警察は
警察の責任において努めて行くということが望ましいのじやないか、私らはそういうふうな見解を持
つております。