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1953-07-09 第16回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月九日(木曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 猪俣 浩三君 理事 井伊 誠一君    理事 花村 四郎君       押谷 富三君    星島 二郎君       中村三之丞君    三木 武夫君       古屋 貞雄君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         法務事務官         (入国管理局         長)      鈴木  一君  委員外出席者         大使官一等書記         官       平野 重一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月九日  委員江藤夏雄君辞任につき、その補欠として山  崎巖君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  逃亡犯罪人引渡法案内閣提出第一〇二号)  人権擁護委員法の一部を改正する法律案内閣  提出第八二号)(参議院送付)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  人権擁護委員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑に入ります。質疑の通告があります。これを許します。井伊誠一君。
  3. 井伊誠一

    井伊委員 人権擁護委員制度がしかれてから、その所期の目的を達しておるということは、これは相当のものであると考えるのでありますが、この条文の期待しておる人権擁護委員使命というものは、まず第一に人権侵犯されないように監視をするという予防の点と、侵犯をされたならば、これに対するところ救済の措置をとる、こういうことのかたわらに、自由人権思想普及高揚、こういう二つの目標が掲げられておるのでありますけれども、実際それにかかわらず、その職級の方に入つて参りますというと、この一番中心になるべきところの、侵犯をされたらこれをどういうふうにして処置をするかという点は、これは二の次になるようなことになつておると思うのです。人権思想啓蒙宣伝だとか、あるいは民間団体人権擁護の運動があれば、それに対して助長をするとかいうようなことが掲げられておる。それからいよいよ人権侵害の事実があるという場合になつて、これの救済のために調査をするとか情報を収集するとか、あるいは法務大臣へこれを報告するとか、関係官庁の方へ勧告するとかというようなことで、一番その中心になつておるはずの救済の問題に来ると、実は調査であるとか何か報告の材料をつくるとか、あるいは監察したところをもつて勧告するとかいうようなことが、その職務の内容となつておる。あとは第四のところへ来ると、貧困者に対するところ訴訟援助であるとか、あるいはその他の救済方法といつたようなことで、漠としておる。貧乏人に対する訴訟援助をするということは、まあ助けにはなりましようけれども、これけ特殊な、弁護士がその委員になつておるというような場合にはこれはでき得ることであるけれども、一般の委員としてはなかなかやり得ない。そうするというと、ここに定めてあるところの第二条の人権委員使命というところは、大分理想的な意気込みをもつてこれが発足したように見えても、もうそれが第十一条のところへ来るとこの委員が第一線に立つてやるというほんとう使命がすつかり失われて来工おるように見えるのです。それは現在の運用をされておるところから見ましても、どうもこの人権擁護委員というものは具体的に今問題を訴えられ、あるいは調査の結果それがはつきり着手しなければならぬというような事態になつて来ても、事実としては、こく熱心な人が若干あつて、踏み込んでその処理に当るという人もあろうけれども、大体において問題は困難な問題に相違ないのであるから、深入りはできなくて、事実の運用は法務省の方と連絡して、あるいは単にそこに申告してそちらの方から処理を願うといつたような形をとりつつあるものが大分あると思うのです。こういうことではこの法律の本来の目的というものがどういうところにあるんだか、どこかからいろいろ言われたからつくつた、だけれども中身は骨抜きにしたというような形が見えるのですけれども、実際上今の制度で一体いいと考えておられるか、それを伺いたい。
  4. 戸田正直

    戸田政府委員 お答えいたします。ただいまの御質問の点はたいへんごもつともでございますが、井伊先生もすでに御承知かと思いますけれども、この人権擁護制度というものは非常に新しい制度であるし、また人権擁護仕事自体性質からいつても非常に重大であるとともに非常に困難な仕事であります。この人権擁護委員というものは、今仰せのように人権侵犯が起きないように回避する。いわゆる予防的な仕事と、すでに侵犯事件が生じた場合にこれに対してすみやかに救済できるような適切な方法を講ずる。それから先ほどお話のように自由人権思想普及高揚ということが人権擁護委員の大きな使命です。そこで実際の仕事上、どうも人権擁護委員が一本立ちになつて仕事処理ができないようになつておるのじやないかという趣旨の御質問でございましたが、御承知のように人権擁護委員が全部弁護士であるとか、法律に非常に通暁されておる方々だけですと、さように心配はないのでございますが、人権擁護委員制度性質上、各地方においても市町村――村までも委員を置いて、この人権思想普及をはからなければならぬというような建前から、各市町村人権擁護委員を置いております。先ほど先生お話にあつたように、人権擁護会員として委嘱はされておりますけれども、この困難な人権擁護仕事を一体ただちにできるかどうかということと、どうもたいへん言葉が過ぎるようでございますが、まだそう安心して全部おまかせするということまても行かない場合も多々あるのじやなかろうか、また人権擁護委員の性格が公務員であるというような建前から、なるべく人権擁護委員としては自主的に処理していただくということが理想であるし、また人権擁護局としてもさよう考えておるのでございますが、どういう仕事をしておるかということを人権擁護委員としてもやはり知つておいてもらわなければならぬ。また仕事性質上、今の段階では協力して仕事をするのが最もいい方法ではないかということと、それから人権擁護委員事件を受理しました場合は法務局の方ヘ報告してもらう、また調査等についてもいろいろ方針を定めております。そうして一応相双をしていただいて、人権擁護委員がいろいろ調査し、また事件処理していただくということに相なつておるのでございまして、このやり方ではだして満足しておるかどうか、これでよろしいかどうかということになりますと、非常にりつぱな使命を持つていながら、実際の仕事はそれに沿わないということは、先ほど井伊委員お話の通りでありまして、人権擁護局としましてもこのままのやり方でよろしい、また万全であるとはもちろん考えておりません。ただこの制度は歴史が浅いことと、人権擁護仕事性質上、今の段階では一応やはり法務局協力してやつていただくのが、これが最もいいのではなかろうかと考えております。また実際のやり方としても、法務局は御承知のように人員等が不足しておりまして、正直に申しますとまだ役所の形態が整つておりませんので、どうしても人権擁護委員のお力を借りなければならぬということで、事件調査等については、人権擁護委員協力願つているような次第であります。そうして両々相まつて仕事をいたしておるのでありまして、今の人権擁護委員仕事の実際のあり方に関しては、決して満足だとは考えておりません。できるだけ委員協力を、また委員の方が自主的に事件処理できるようにお願いをいたし、またそういう場合が参りましたときは、執務規程等を改正して自主的な働き方のできるようにいたしたいと存じております。     〔委員長退席鍛冶委員長代理着席
  5. 井伊誠一

    井伊委員 人権擁護委員あり方満足なものでないということを言つておられるのでありますが、これは私の見るところでは、人権擁護費用が非常に少きに過ぎると考えられるのであります。その規定では二万名を越さない範囲において定めるといつているのに、実際の人員は、報告によれば三千七百四十九名となつてつて、非常に少い数である。この人員ちようどいいから、二万名というのは多きに過ぎるから、そういう意味でこの実数が出ているのでしようか。あるいはまたそうでなくて、やりたいのだけれども予算の都合上それはできないのだといつたようなところから出ているのでありますか。なおあわせてこれをお聞きしたいと思います。大体この人権擁護費というものは、年間予算どのくらいになつておりますか。それから擁護委員一人についてどのくらいの費用を支出しておるかお伺いいたします。
  6. 戸田正直

    戸田政府委員 お話のように人権擁護委員定数は、委員法によりまして二万名までを置くことができるということになつておりまして、これは最高の限度をきめたのでありまして、必ずしも二万名まで置かなければならぬという意味でつくつたのではございません。ただ人権擁護性質上から、できる限り人権擁護委員を多く、市町村のすみずみまで置かれることが適当であることは申すまでもございません。ただいまお尋ねの予算が少いから見てもらえないので、委員が多くふやせないのかどうかという御質問でありますが、これは私の方としては人権擁護委員をなるべく多く依嘱いたしたいというふうに考えております。今までのところでは先ほどお話のように三千七百四十九名、この程度しか依嘱できなかつたのですが、これはお話のように予算関係上多く見ていただけませんので、やむを得ずこの程度にいたしておつたのです。しかしもうすでに人権擁護局が発足いたしまして、人権擁護委員制度ができてからすでに五年以上たつております。いつまでもかような数でよろしいとは考えておりません。すでに私の方としても、この予算関係なく人権擁護委員の数を現在ふやそうという計画のもとに、各市町村委員の推薦をお願いいたしておりまして、各市町村定数規則通り置きますと、全国で一万一千名を越えるかと思いますが、できる限りすみやかに定数の一万一千以上の数にいたしたいという気持で逐次増加いたすことにいたしております。これに対する予算裏づけが事実ございませんが、しかしいつまでも予算をもらえないからといつてせつかく設けられた人権擁護委員制度をただこしらえつぱなしで、ほんとうに実の入つたものにしませんと、せつかくのこの制度意味をなしませんので、いろいろこの人権擁護委員の方が活動される上に御苦労のあることも承知いたしておるのですが、こういうことを申し上げてどうかと思うのですが、人権擁護委員の方が無報酬で働いておつて、中には自腹でいろいろ費用を負担する、なおその上に人権擁護委員協議会とか連合会とか、いろいろ活動されます予算がほとんど見られておりませんので、各市町村から寄付願つて、各自自主的に各協議会あるいは連合会がいろいろ活動しておられますことも十分承知いたしております。各地方人権擁護委員協議会あるいは連合会が非常に熱意を持つておられて、予算がなければないでよろしい、われわれの方で何とでもくふうをしてやるからというようなことで、非常に力強い御支援をいただいておるのです。私の方としてもこの際予算を当てにせずに、できる限りの委員をこの際増員して、そうしてその後に大蔵当局とも折衝いたしたいという考えで、委員をできる限り早い機会に増員いたしたい、かように考えておる次第であります。
  7. 井伊誠一

    井伊委員 今お尋ねしたところちよつと漏れておるのですが、この人権擁護費というものの総額、それから今の委員一人当りは大体幾らになりますか。
  8. 戸田正直

    戸田政府委員 予算につきまして御説明いたしたいと思います。人権擁護局の二十八年度の予算、これは人件費を引きまして三百三十八万四千円ということになつておりますが、これが御承知の先般の経費節減ということで、職員旅費等は一割五分減、それから人権侵犯事件調査旅費が一割減、調査費が一割五分減、人権擁護宣伝費が一割五分減というふうに、経費削減がされております。人権擁護局職員局長も給仕も全部入れまして十四名、この十四人で一課、二課、三課、一課で人権擁護委員の運営の仕事その他庶務の仕事をし、二課で侵犯事件調査処理、三課が人権思想啓蒙普及事務を担当しております。一課、二課、三課でわずか十四名でまかなつておるような状態であります。各法務局予算を申し上げますと、御承知のように法務局が八法務局地方法務局が四十一、合せて四十九局に相なつておりますが、これの全部の予算昭和二十八ヰ度においては千百四十六万六千円、これが先ほど申し上げたように一割ないし一割五分の減をされております。人体一割以上の削減がされておるわけでございます。人権擁護委員費用としましては一人年間千円で全部をまかはうということになつておりまして、これが人権擁護委員実費弁賞金という予算なのですが、これで一切合財をまかなつて行かなくちやならぬ。年間千円ですから月にしますと百円にも満たない金であります。きわめて僅少な額であります。これで一切をまかなうのでございますから、私の方としても一人千円の予算でこの重大な人権擁護仕事が一体できるかどうかというようなことは、これは申し上げるまでもなく十分よくわかつておるのですが、毎回人権擁護委員費用につきましてはその増加に努力をいたしておるのでございますが、非常にとりにくい予算でございます。そこで、人権擁護委員の方で実際に費用をこれだけ立てかえたからといつて弁償を求めて来る万がほとんどありません。委員の方にすると、自分は人権擁護委員になつておるので、こういう意義のある仕事をしておるのだからある程度の金は出し、もいいというような、非常に犠牲的なお気持を持たれる方が多いのでございまして、たとえば電車に乗つた、バスに乗つたというようなことに対しても、まさか法務局にこれだけの金を使つたといつて御請求される方がありはしない、また鉛筆を買つた、紙を買つたといつて一々請求される方もないということで、委員の方が実際に金を使つたという裏づけ資料法務局にいつもお願いしているのですが、どうしても集まつて来ないのです。そのために大蔵省としては人権擁護委員が実際に弁償したという裏づけになる資料がないじやないかというふうなことで、これは相当苦心してお願いしておるのですが、どうしても資料が集まらないというような関係でこの千円というものは一応きめられておるのであります。しかし決してこれが十分なものではございませんので、二十九年度においてはどうしてもこれの増額に努力いたしたいというふうに考えております。それから法務局及び地方法務局予定人員として大蔵省から認められております人員が四十九局におきましてたつた五十六人、一局に一人ちよつとというような数字大蔵省から人員として認められております。しかしこんなことでやれないことは当然でありますので、法務局の他の人員を借りて来て実際に使つておるのですが、実際の実人員は四十九法務局で百五十名か六十名くらいかと存じます。それにしましてもこれはきわめて少い数でありまして、とうていこの数でこの重大な仕事をやつて行くことは容易でないというふうに承知いたしております。このままの人員予算で、この憲法に規定された基本的人権の保障あるいは擁護をして行くというようなことは容易ならぬことだと考えております。いろいろ政府関係もございますが、私の考えとしては、この人権擁護局の機構を強化し、また予算等も十分とまでは行きませんでも、できるだけ仕事のできるような予算をとるように努力いたしたい、かように考えております。
  9. 井伊誠一

    井伊委員 大体わかりましたが、今度名称がかわりますが人権擁護委員都道府県協議会連合会費用、それから今度新たにできる全国人権擁護委員連合会、そういうものの費用等は、全部地方の何かの団体とかそういうものの寄付を仰いで運用するわけでしようか。それをひとつ承りたい。
  10. 戸田正直

    戸田政府委員 人権擁護委員協議会全国で二百九十三ございます。それから人権擁護委員連合会が四十六ございまして、この二百九十三の協議会と四十六の連合会のいわゆる会議費、これは会議のための食糧費と大体お考えになつてけつこうでありますが、この会議費が二十一万円、これで二百九十三の協議会と四十六の連合会をまかなうということになつております。これを割りましたらおそらく幾らにもならない、一人当りごくわずかな会議費にしかならぬと思います。それともう一つ委員旅費委員協議会とかあるいは連合会に出席するための旅費が、年間大体百万円とお考え願つてけつこうだと思います。そうしますと一人が大体三百円にならない、二百幾らという程度旅費しかございません。これでは協議会連合会を一年一回開くだけのものもないということになります。人権擁護委員法では協議会をつくる、連合会をつくるということになつておりますが、会はつくりましても、この費用では集まることが事実上できないことになります。これも私の方でできないことは十分承知しておるのですが、なかなか大蔵省がこの費用を認めてくれないというようなことで、では実際はどういうようにしておるかということになるのですが、昨年度におきまして協議会を開きましたのは三百二十五回、連合会を開きましたのが五十三回ということになつております。もちろん私の方から各協議会なり連合会費用として法務局にできるだけのものを送つておりませんから、おそらく各地方法務局における連合会なり協議会というものは、各委員の方の御努力によつて費用を捻出しておるのではなかろうか、聞くところによりますと各市町村からある程度寄付をいただいて、委員の方がこの寄付をもらうために非常に努力する、そしてこの協議会なり連合会を運営していただいておるというのが実情でございまして、たいへんおはずかしく、かようなことで一体政府として満足していていいものかどうかというようなことも、私から申し上げるまでもございません。かようなことは私どもとしてもよろしくないことだとは十分承知いたしておるのですが、今までの予算上やむを得ませんので、心に承知しながら委員の方に御無理をお願いし、御努力をしていただいておるような次第でありまして、これも二十九年度においては、でき得る限り政府予算でこの人権擁護委員会が運営されて行くようにいたしたいというふうに考えて、せつかく努力するつもりであります。
  11. 井伊誠一

    井伊委員 承りますと、非常に費用が少くて機能が発揮できないというより、どうも機能が停止しそうな状態に見えるのは、こういう実際上の予算関係からとしか思われない。事実はこの人権擁護委員中心となつて人権擁護の衝に当らなければならない。それに対するところ人権擁護局法務局それらの協力によつてこの制度が動かされておる。けれどもこういうことでは、人権擁護委員というものは人格識見あり、こういうことに理解のある人が選ばれて、費用をいとわず、ある場合は自腹切つて今日までやつておるとはいいながら、国の制度でこういうことであるならば、もう互いにもてあまして捨ててしまうというようなことに立ち至らないとも限らない。趣意は非常にいいものであるにかかわらず、こういうふうにほつたらかしておいて、地方団体だとかあるいは活動の主体となるところ人権擁護委員に、すべての活動とその経済的な負担や何かまで負わせるというような形で行くのでは、とうてい満足に進展すべきはずがないと思う。擁護局の立場はわかるのですけれども、政府としてはこの人権擁護委員制度というものを一体どういうふうにしようというつもりか、その点をひとつ戸田局長から伺つて見たいと思います。
  12. 戸田正直

    戸田政府委員 この人権擁護委員制度が実にりつぱなものであり、重要な使命を持つた制度であるということは申すまでもございません。政府としてもこの制度を重視しておることは間違いございませんが、先ほどもちよつと触れましたように、この人権擁護局予算が当初から非常に少かつた町所仕事というものはどうも最初が基準になると申しますか、初めに十分なことをしておりませんと、なかなかふやすということは、特別の事情のない限り容易なことではございません。聞くところによりますと、人権擁護委員法を通すときに、何か大蔵省と事前に話合いがなかつたというようなことで、どうも予算最初にうまくとれなかつたというような事情があつたようにもかげながら多少聞いておるのです。さようなことで少くなつたとは思いませんが、とにかく十分な予算ではございませんでした。そのために、非常に努力はいたしておるのですが、なかなか急速にこの予算をふやすということが困難なんです。それと、人権擁護仕事性質が、何といいますか、予算をとるのに非常にとりにくいような性質なんです。たとえば侵犯事件等が何件起きた、これに対して調査をどのくらいしなければならぬ、この費用がどのくらいというようなことになりますと、大蔵省は非常によくわかる。調査旅費につきましては、ほかの予算から見ると、まあ比較的よく見てくれておる。これは事件が現われておりますから、数字が現われておるのでそういう面に対しては大蔵省予算の面からある程度見てくれている。ところ自由人権思想普及高揚だとか、形のはつきりしないものになると、なかなか資料が思うように整いませんので、予算を要求しましてもなかなか思うよようにこれがとれない。また、今ただちにこれをやらなければ一体どうなんだろうか、もつと急を要する仕事があるのじやないだろうかということが、こうも人権擁護局予算をとる上に支障になつているんじやないかというふうに、私としては考えておるのです。大蔵省としても、人権擁護仕事の重大はことは十分承知しておりますが、どうも資料等関係から思うように予算がとれないというのが正直なところ実情なのであります。しかしまだこの程度ではとうてい十分ではございませんので、人権擁護局としてもできるだけ資料をそろえて、この人権擁護活動のできますような予算をとるように努力いたしたいと思うわけであります。
  13. 井伊誠一

    井伊委員 少し話をかえますが、今度の総選挙にあたりまして、その関係者取調べの途上において自殺者を出したということが、特に多かつたと思うのです。こういう場合におきまして、その地方人権擁護委員はそういう問題に対してはどういう活動をしたか。その状況を一通り承りたい。
  14. 戸田正直

    戸田政府委員 御承知のように、今度の選挙におきまして自殺者全国で五名出ております。浦和、前橋、長野、佐賀、鳥取において五名の自殺者不祥事件がありました。これは人権擁護上重大な問題だと考えておりまして、擁護局としてもこの自殺の原因、真相については十分調査し究明いたしております。そこで人権擁護委員がこれに対してどういうふうな態度をとつたかと申しますと、この五箇所の各自殺事件については、法務局人権擁護局とが協力いたしまして、ほとんど全部人権擁護委員の方も一緒になつて調査をして、協力願つておるわけでございます。話は多少違いますが、浦和等では前に人権擁護委員をなさつてつた方違反であがつているというようなこともありますし、また鳥取でございましたか、選挙違反事件の担当の弁護人となられた方が人権擁護委員であるという方もありましたりして、そういう面からも人権擁護委員協力していろいろ情報を提供し、また調査をしたということによりまして、先般配付いたしました報告書ができ上つた次第でございます。
  15. 井伊誠一

    井伊委員 さらにこの人権擁護委員の選任の基準についてお伺いをしたいのですが、これは実際は市町村長に一任してあるだけであつて、そのほかに推薦母体というものはないのですか。その点をひとつ伺つておきます。
  16. 戸田正直

    戸田政府委員 この人権擁護委員の選任につきまして、どういうような推薦委嘱手続がいいかというので、この人権擁護委員法をつくりますときに相当問題になつたのであります。人権擁護性質上できるだけ民主的な方法委員を選ぶべきであるというようなことから、それにはどういう方法がよかろうかということになりまして、一番民主的な方法というものは公選によることなのですが、しかし全国人権擁護委員を公選で選ぶということもなかなか実際問題としては容易でございませんので、これにかわる最も民主的な方法は何かといえば、結局人権擁護委員法第六条にありますような推薦手続に相なります。そこで各委員の方々が市町村の各地から出ていただくという関係上、市町村に居住しております人たちの実情を一番よく知つておるのは各市町村長ではないかというようなことから、それに推薦をお願いする。その市町村長は市町村議会の意見を聞き、また当該管轄内の弁護士会及び県知事の意見を聞き、その意見をつけていただいて、それに対して法務大臣が委嘱をするという手続をいたしております。そこでこの市町村長は定員規則にある定員の倍の人数を委員に推薦していただいて、そのうちから適当な人を法務大臣が選ぶという手続が民主的ではなかろうかというので、こういう手続をつくつたのであります。ところが実際にやつてみますと、市町村長は御承知のように公選で選ばれる、この方が市町村議会の意見を聞いて、推薦しようとする候補者の方に、人権擁護委員にぜひひとつお願いしたいということで、前もつて内諾を得る。またそれに対して履歴書等をつける。今はなくなりましたが、以前は資格審査のためのいろいろな資料つけるというようなことで、前もつて承認を得て候補者になつていただいて、それがまた法務大臣の方から半数の者は必ず削られて落されてしまうということが、運用の実際面から非常に困難を来すというようなことで、この倍数制度というものを今度改正いたしたい、かように考えた次第でございます。先ほど推薦母体でなく市町村だけにまかしていいかどうかという御質問で、ございましたが、先ほど申しましたような行きがかりからこの倍数推薦委嘱手続というものができましたので、まず人権擁護委員を各市町村からお選びする以上は、やはりその実情を最もよく知つておる市町村長が適当ではなかろうかというふうに考えまして、かような制度にいたした次第であります。
  17. 井伊誠一

    井伊委員 今度改正になろうとする場合には、その定員数だけの推薦を受ければよい、その中から欠格条項に当てはまる場合ができますれば、そういう人に対しては、法務大臣がみずからだれかを推薦する、こういうふうになるようですが、その推薦はどこから来るものですか。
  18. 戸田正直

    戸田政府委員 市村町長が推薦いたしました候補者に対しまして、法務大臣が適当でないとした場合には、さらに他の候補者を市町村長から推薦していただくということになつておるのであります。しかし、最初出した候補者が適当でないから、さらに他の候補者をと言つても、なかなか市町村として出さない場合も考えられるというようなことで、相当の期間内に候補者を出していただけない場合には、県知事、それから衆議士会長及び都道府県の人権擁護委員連合会の意見を聞いて法務大臣が委嘱するということに相なつております。
  19. 井伊誠一

    井伊委員 今の話ですが、私の質問が悪かつたのですが、その欠格条項に当てはまるような場合において、さらに適当な人を市町村長から推薦を受ける。しかし期間を限つてこれに回答を与えない場合においては、法務大臣が自主的にこれを委嘱をする。その委嘱をする際には今言う県知事であるとか、弁護士会であるとか、あるいは連合会、そういうものに意見を聞くということはあるようであるけれども、意見を聞くのは推薦ではなくして、予定の候補者があつて、それに対して委嘱してよいかどうかという意見を聞くものと解せられる。だからだれによつてその候補者をきめるのかということです。
  20. 戸田正直

    戸田政府委員 その場合は、法務大臣が候補者をきめるということになるのでありますが、実際問題としては、その地の法務局地方法務局長が推薦することに相なるかと考えております。
  21. 井伊誠一

    井伊委員 それから各地の弁護士会の中に、人権擁護委員会とでもいうものができておると思うのでありますが、この人権擁護委員と、弁護士会内部における人権擁護委員というものの、横の連絡はどういうことになつておりますか。連絡がないのか、事実上の協力関係はどうなるのですか。
  22. 戸田正直

    戸田政府委員 人権擁護仕事が、役所と民間が協力しなければなかなか人権擁護の実を上げることができないということは、この仕事性質上当然のことと考えます。そこで人権擁護局の所管の一つにも、民間における人権擁護運動の助長ということがございますのですが、民間における人権擁護団体協力して仕事をしなければならないというふうに考えておりますので、各地方法務局とその地における弁護士会の人権擁護委員会、これは絶えず連絡し、また協力して参つておりまして、たとえば五月の憲法記念日、あるいは十二月の世界人権週間というような特殊の場合、及びその特殊の場合ばかりでなくそうでない場合も、たとえば人権相談所を開設するというような場合にも弁護士会の協力を得る、あるいは共催等の形で一緒に仕事をお願いしているような実情でございます。
  23. 井伊誠一

    井伊委員 この人権擁護委員に対して法務大臣から何か指導をされるということはあるかどうか。人権擁護委員みずからは大いに修養しなければならぬということもあるのであるけれども、しかし他の法務局と提携ということはあるけれども、法務大臣が人権擁護委員に対して一つの指導をする何か方針を授ける、そういうふうなことはあるか、何か人権擁護に対する資料などを提供して人権擁護委員を教育するといつたような面はあるように見えるが、何か方針として授けるというようなことがあるのかどうか、そういう点を伺いたい。
  24. 戸田正直

    戸田政府委員 昨年の全国人権擁護委員連合会の会同の節は、大臣が出られまして――当時の木村法務大臣でありましたが、全国連合会長に訓示と申しますか、人権擁護の方針等についていろいろお話を願つたりしているのでありますが、大臣みずからが人権擁護委員の教育といいますか、そういうようなことには直接当つてはおりません。大臣としてもこの人権擁護という仏事に対しては気にされておりますし、先般も参議院の法務委員会でありましたか、将来栄典法ができたときにまず法務省として一番先にやるとすれば人権擁護委員と保護司であろうと言われておりますほどに、人権擁護委員に対しましては非常に重視しているのであります。人権擁護委員の教育と申しますか、研修と申しますか、教育という言葉はたいへん失礼に当りますが、研修等をしたらどうかという声も各地にございます。御承知人権擁護委員は各地方における人格、識見の高い方、りつぱな方で、むしろわれわれが教育を受けなければならぬというようなりつぱな先生方が相当おられますので、こういう方に研修というようなこともいかがかと存じますし、また委員のお仕事が公務あるいはその他職業を持つておられるかたわらに人権擁護仕事をしていただいておる関係上、相当期間をとつて研修というようなことも事実上できないのではないか。また予算等の面からもこの人権擁護委員の方々を集めて研修するということもできませんが、ぜひ研修をしてもらいたいという地方の声もございますので、なるべくその地方のブロックごとに研修をできたらしたいというふうに計画しております。現に地方協議会なり連合会において、研修とまでは申し上げませんが、研究的なことをいたすために会合をして、人権擁護委員のいろいろな仕事の便宜のために研修的なことをしておるところが何箇所かございます。ただ中央としてこれを全部集めて研修するということは、委員の方の立場と予算面等から、今の場合できないような状態でございます。もちろん人権擁護委員の方には、研修というような言葉はたいへん失礼ですが、集まつていただいて研修し、研究していただくということの必要は十分承知いたしておることでございますので、何らかの形で研修的なことをいたしたいというふうには考えておる次第であります。
  25. 井伊誠一

    井伊委員 政務次官にお尋ねしますが、人権擁護委員法という制度が始まつて以来、大きな仕事をしていることは、たいへん幸いなことだと思つておるのですが、実際におきましては、運営上政府の方が力を入れていないというふうに見えるのです。この活動の一番責任者であるところ人権擁護委員というものは、地方のこういう問題について理解のある人格者で、人権をどこまでも尊重し、自分の身を挺してひとつ闘つて行こうというような人が大体選ばれる。従つて難局にも身を挺さなければならないと思う。そういう占うにして、現に相当の成績をあげておるのであります。一面においては人権擁護局あり、あるいは法務庁あり、そういう行政的な仕事とタイアップしてこの仕事が持たれておる。しかしながら予算の面を見ますと、そういう官庁の方の人件費その他のものもまことに少いものである。そうして今年度の予算からいえば、一千五百万円くらいになりそうなものが相当削減せられて、一千百万円くらいになろうかというふうに見えるのであります。それも実際は官庁の方の関係で使われる部分が多いので、活動中心になつておる人権擁護委員というものは、これは言うまでもなく無報酬であります。ただ活動をしたいといつても、それは私業を持つており、その上にさらに手間を費してやつておりながら、なおまたその上に、便宜のため、あるいはこの人権擁護制度ほんとうに科学的基礎の上に確実なものを持ちたいという関係でありましよう、事務の連絡をはかるために、連合会が持たれ、また全国連合会が持たれる。そういつたような会合の会合費なんというものは、まことにお話にならぬように少いと思う。そしてそれらのものは、地方団体や個人、そういう人たちの寄付などによつてまかなわれておる。国の堂々たる、国民の基本的権利を擁護するという大旆を掲げてできておるこの制度が、そんなことでできるものではおそらくないと思う。しかしそれにもかかわらず、今年度は予算関係もありましようけれども、これを削減しなければならなくて、その機能を失しそうになりかかつているということは、政府人権擁護委員制度にあまり関心を持たないからで、こんなものはいずれやめちまえといつたような非常な無関心、ある場合には敵意を持つているようなものではないか、そういうようなことが察せられるのであります。それに対して政府ほんとうにどう考えておられるかということをひとつお聞きしたい。
  26. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 人権擁護の問題が重要であるということは、今さら申し上げるまでもございませんし、また御意見の通りでありまして、こういう大きな問題について、政府が熱意をもつて大いに努力しなければならないということも当然だと思うのであります。今の御説明のように、いろいろ予算面その他あらゆる点において制約されて、思うようにできないということは、まことに遺憾なことであります。今後こういう問題につきましては、十分に考えるのみならず、関係方面ともいろいろ折衝しまして、人権擁護の徹底を期するために努力しなければならないと考えるのであります。ことに御指摘の人権擁護委員という重要な職責のある方々が、十分にその職分を全うするように、十分に効果を上げるように努力していただかなければならぬのも当然でありまして、そのためには、やはりそれに対するある程度予算的な問題も、当然考えなければならない問題じやなかろうかと思うのであります。そういう問題につきましては、政府におきましても、今後できるだけ努力をいたしまして、その効果を上げるようにいたしたいと考えます。
  27. 井伊誠一

    井伊委員 これは具体的な問題として、この事実があるかどうか、これに対する見解はどうかということをお尋ねしたいのです。今年の三月二十七日に、埼玉県の加須という地区警察署の巡査で、関田庄一という三十歳になる者が、埼玉県北埼玉郡田ヶ谷村役場に参りまして、同役場の戸籍係の坂本という人に対して、同村出身の保安隊員の身元を調査に行つた。そうして同戸籍係から謄本を借り受けて調査をし、某――それは保安隊入隊を希望する者でありましよう。その者がいわゆる部落民の出身者であるということがわかると、戸籍係の坂本という人に対して、「この隊員は特殊部落民だな」こういうことを言つて、さらにそれからその隊員の生家に案内を求めた。その坂本という戸籍係がそこに案内をしましようと、その巡査を連れ立つてその隊員の生家に行く途中、百戸ばかりあるいわゆる部落に入ると、「ここは全部特殊部落だな」こういうことを言つた。こういうような事実がありまして、今非常に大きな問題を引起しておるのであります。これは国民融和完成全国連盟というところから来ておりますが、その地方におる連盟の人々は、このことを非常に重視して、その関係者並びに警察隊長に対して責任を求めるということであります。そういうことで非常な忌まわしい問題になつておるということなのでありまして、こういうことがもしありとするならば、これは今日においてはまつ先に擁護されなければならない問題だと思うのでありますが、これに関する何か人権擁護委員などの活動について承知をしておるかどうか。
  28. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいまお尋ねの事件については法務大臣の方にも陳情がございましたので、さつそく浦和地方法務局の方にも調査を依頼しておりまして、ただいま調査中でございます。もしかような事件が事実だといたしますと、憲法に規定された個人の尊厳、差別待遇というような観点から、そういう差別的な言辞を弄することは公務員としては好ましくないというふりに考えております。
  29. 井伊誠一

    井伊委員 その調査の結果そういう事実があるということになる場合のこれに対する政府の処置――これも地方人権擁護委員の方の一つの責任だと思うのですけれども、しかしこういう事実が公に現われて、中央にまで、大臣の手元まで来ておるということならば、これに対してどういうふうな処置をとられますか。
  30. 戸田正直

    戸田政府委員 仮定の問題になるのでございますけれども、もしさような事実があつたといたしました場合に、人権擁護局の処置といたしましては、これが刑事の問題になるということになりますれば、告発するということであります。それから告発まで参りませんでも、さようなことが公務員として適当でないということになりますと勧告処分あるいは将来さようなことのないようにという一般勧告、また事案によつては、事実そういうことはあつたのでありますが、諸般の事情から考えて処罰を追究するまででもなかろうというようなことになるといたしますれば、その場合は不問処理をするというようなことになり、事実さようなことが全然なかつた、かりにそういうことになつたとすれば、これは非該当として処理するというようなことに相なるかと思います。
  31. 井伊誠一

    井伊委員 それは取調べの結果でなければわからぬことでありますけれども、かりに当委員会がこの審議を終つてしまつても、なおそのことについては調査せられて、そのあとの始末をつけてもらいたい、こういう要望をいたします。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 古屋貞雄君。
  33. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 一体人権擁護の問題は憲法で保障されておるのであります。従つてこれがはつきり保障されなければ日本の民主主義が達成されぬことは御承知の通りであります。ただいま政府委員からの御答弁を承りますと、本年度の予算が一千百万円、すずめの涙みたいなもので、これで一体日本の人権擁護が確立されるかどうか、これを責任ある政務次官からお答えいただきたい。
  34. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいまの御質問人権擁護局予算が千百万程度とおつしやいましたが、これは法務局地方法務局予算全部が千百四十六万六千円、それが経費節約ということで一割ないし一割五分減になるというようなわけであります。人権擁護局予算としては、先ほど申し上げたように、人件費を除いた分が三百三十八万四千円、これがまた一割ないし一割五分の減がありますので、もう少し減ると思います。
  35. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それならばさような少い金額でやれるかどうかということの御答弁をいただきたい。
  36. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 人権擁護を徹底しなければいけないという御趣旨はまことにその通りですが、ただ国家的な財政その他の関係上、予算が非常に少いことになつたのだろうと思います。この金額で人権擁護が完全にできるかということになりますと、非常にむずかしい問題でありまして、これは重大問題であるのみならず、その限界等についても非常にむずかしいのであります。その範囲、限度についてもここで断定することはできないと思うのですが、要は予算の範囲あるいは関係団体、行政面等いろいろあると思うのでありまして、そういう方面とも十分連絡をとつて、でき得るだけ人権擁護の実をあげるように努力するということで御了解願いたいと思います。
  37. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうも了解がつかないわけです。ただ一つ承りたいのは、ただいま政府委員の御説明を承りますと、人権擁護委員に対してはほとんど実費も差上げてない、一年に一千円しか差上げてない、現代のような社会において、さような手当で一体人権擁護活動ができるかどうか。ただいまの御説明では十分に出ないということであります。従いましてこの制度を確立いたしました趣旨から申しましても、これは少くとも日本の民主化のためには基本的な一つの制度であります。この制度をさらに拡充強化するような政府の御方針であるかどうか。今の予算ではできないという人もありましようが、できるという人もありましよう。これは意見の相違でありましようが、質問の趣旨をかえまして、現在の人権擁護制度を強化する御意図があるかどうか。あるとすれば具体的にどのようにするか。これを承りたい。
  38. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 人権擁護制度を具体的にどう徹底するかということになりますと、今ただちにここで具体的なお答えをするのはちよつと私にはむずかしいのでありますが、しかしながら人権擁護をしなければならないし、またこのためにできるだけ努力しなければならないことは当然なのであります。そういう方面においてこの人権擁護制度につきましても、いろいろこの問題を考え、あるいは予算的方面においてもできるだけ今後努力するということに御了解願いたいと思うのであります。ついでですから私の考えもこの際申し上げさせていただくならば、人権擁護委員だけではないのです。実際を言うとさらに、御承知の通り囚人、ああいう司法保護制度、ことに刑務所より以上の効果を上げるような仮釈放の方々に対する保護政策だとか、またこういう一度犯罪を犯した人々の家族に対する問題、あるいは兄弟、親戚等においても世間から受け入れられないで就職もできない、嫁にも行けない、結婚もできないというような、罪を犯した者はある程度責任を負つても、むしろ罪のない家族まで非常な苦しい立場になる、あるいは直接間接に、人権擁護の立場から考えなければならない大きな問題がまだ私はあると思う。ところが司法保護委員というような制度の問題から行きましても、人権擁護委員ばかりではありません、更生保護委員等においてもやはり予算が少い、手当もほとんどないというような実情であるわけであります。私は、人権擁護という立場から言うならば、やはりそういう方面においても十分に考えなければならない大きな問題があると思うのであります。そういうような人権擁護の徹底、ことに司法保護の問題、あるいは更生者の問題、その家族の問題等をほんとうにできるだけやつて、そうすることによつて初めて法律というものが、国民から何となく冷やかなものであり近寄りがたいものであると思われている観念を一掃して、ほんとうに信頼され理解されるようなところにまで行くべきではなかろうかというように、私自身も考えておるのであります。法務行政等におきましても、そういう方面に実績を上げるようにできるだけの努力をして行くべきではなかろうかと考えるのであります。しかしながらこれは法務省だけでできる問題ではありません。国家全体の立場からいろいろな関係があるのでありまして、容易なことではなかろうと思うのでありますが、役所はもちろん民間その他有志の協力を得て、こういう問題について十分に研究考慮いたしまして、できるだけの努力をいたしたいと思いますから、この程度で御了解願えればけつこうだと思うのであります。
  39. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうもえらい御説明で私にはよくわからないのです。さようなことを申されますともつと大きな問題が出て来るのですが、むしろ私は、憲法で保障された基本人権が保護されなければならないというのが、日本の一番大きな問題だと思うのであります。ただいま政務次官から社会上、経済上の問題をいろいろ承りましたが、私が今お尋ねしておりますのは、本日の問題になつておる基本人権をどうして守るか、現在の制度で守れるかどうかということを質問しておるのでありまして、どうもただいまの御答弁は見当違いで私にはよくわかりません。問題は、現在のような制度とそれから予算とで、はたして憲法が国民に対して保障しておるところの基本人権が守れるか守れぬか、こういう質問を私は申し上げておるのですから、その御答弁を願います。
  40. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 憲法に保障されておる基本的人権擁護されるかということになると非常に大きな問題でありますが、そうなると、やはり基本的人権というものの限界まで考えて来なければならぬ問題だろうと思うのでありまして、基本的人権というものの根本的な解釈、根本的な問題から解決しなければ、今の御質問に対しては私は答弁しかねると思うのであります。ただ法務省の立場から言うならば、憲法の趣旨に沿う基本的人権擁護のためにできるだけの努力をする、そのために現在り制度上において足らない点はもちろんありましようし、また現在の程度にわいて基本的人権が各自守られるということも、これはもちろん簡単には考えられないのでありますが、ただ私はまず基本的人権という根本的な問題から解決しなければならぬと思うのであります。どうかその意味において、今後全力をあげてこの制度の改革なり予算的措置なりに対して努力するということで御了解願いたいと思います。
  41. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうも言葉の上で了解を得るわけには参りけせん。現在の制度ははたしてこれでいいのかどうか、どうこれを改めるかということを私質問したのですが、さようなことについての御答弁がありませんので、これは大臣から面接承ることに譲りましよう。というのは、本日の問題がこの結論になるのです。一体こんな予算で、法律ばかりかえたところが実行できなければ法律の必要はない。それから字句の訂正や、選挙方法についての問題も今議題になつておりますけれども、これにも私は相当質問がありますので、ただいまその基本的な問題をお尋ねしたのですが、これはあらためて法務大臣から承ることにいたしまして、本件の問題に移ります。  先ほど井伊委員質問に対して政府委員は、できるだけ人権擁護委員は民主的に選びたいとおつしやつておるのに、本件の改正要旨を承りますと、かえつてそれに逆行して民主主義をやらないようにするという結論になりはしないか。と申しますのは、倍数の推薦をしたものを定員数に限るという理由が私にはわからない。それからもう一つ第六条の問題について承りたいのですが、最も人権擁護委員としておそるべきことは、政党的、思想的にはつきりと認識された札つきの者は困るというのが要望らしいのです。しからば現在のような自治体において、町村長は大体選挙により政党を基盤として選ばれる、従いまして町村長だけの推薦制度でいいかどうか。町村長もまたその選ばれておりますところの町村議会の承認を得る、こういうことでございますが、この点に私は非常な疑義がある。そこで私は二つ御質問申し上げたい。第一は、倍数の推薦をなぜ半数の定員数にしなければならぬかという理由が一つ。もう一つは、もつと輿論を喚起して、公選とまでは行きませんでも公選と同じような姿に行けるような推薦方法考えたらどうか。ことに基本人権の問題については一番問題になりますから、その関係を持つた労働組合の人たちの意見、あるいは農民組合、農業団体の意見、あるいは青年団、婦人会などの意見を必ず聞いて選定をするというように規定の変更をする御意思があるかどうか。この二点についてお伺いいたします。
  42. 戸田正直

    戸田政府委員 倍数をかえることが民主的ではない、逆コースではないかという御質疑でありますが、この倍数を今回のような改正にいたしました理由は先ほども申し上げましたが、実際問題として、委員の候補者をお願いする場合に、前もつて承諾を得ておきながら、あとで半数は必ず落されるということが運営上非常に支障を来しておるのでございます。そこでこれは全国の各法務局、各市町村からかなり強い要望がございまして、現にやつておりまする倍数制度がどうかという実情を申し上げますと、最近では全部とは申し上げませんが、半分は必ず落されるのだということがもうわかつておりますので、半数の者を、たとえば市町村の助役であるとかいうものを出して来て、いわゆる当て馬といいますか、必ず落されるものを前もつて用意して、ただ形の上で倍数に合せておるというのが実情でございます。それではせつかくのこの制度というものが意味をなさなくなります。ただ形の上だけで倍数をやりましても、実際の今日の傾向というものが、もうすでに事実上倍数ではなくなつておりますので、そうした効果のない制度を置き、また非難のある制度をそのままにしておくことはかえつてよろしくないのじやないかというようなことが、改正いたします大きな理由になつたのでございます。そういたしますと、じや、市町村がかつてにきめてしまうのじやないかということになりますので、その場合を救済するために、先ほど申し上げました二項、三項でこれを救済するということにいたしたのでありまして、いろいろ民主的な方法としては他にも考えられましようが、私の方としては、大体市町村から選ばれまする人権擁護委員は、まず市町村に最も関係を持たなければならぬというような立場から、また同時に市町村自体が人権擁護というものに深い認識を持つてもらわねばならぬ、また関係をつけてもらわねばならぬというようなことから、市町村長に推薦をお願いするということに相なつたのであります。日本の新しいこの制度としてはその辺が最も適当なんじやないか、そこでなおそれだけでなく、できるだけ広い範囲でかつ広い意見を聞くというのが人権擁護委員性質上、まず弁護士会、それから市町村とのつながり上県知事、それから人権擁護委員協議会連合会の意見というようなもの、この程度の意見を聞けばまずよろしいじやないか。もちろん理想を申し上げれば、先ほど御質問のように青年団であるとかあるいは労働組合であるとかあるいは婦人団体であるとか、各種の非常にたくさんの団体がございますし、この意見を聞くことは、それは最も理想ではありましようが、事実問題としては、そこまで広く意見を聞くということが困難ではなかろうか、まずこの程度の範囲でよいのではなかろうかというのが私の方の考えでございます。
  43. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ただいまの御答弁の中に、承諾を得ておるけれども落されるということがきまつておるので、どうも気の毒でやりずらいというのですが、私は人権擁護などをいたしまする人は少くとも社会的な公共的観念において認識がなければいかぬと思う。これは問題であります。ただいま御説明のような、現在の制度をかえてさらに少くするということは、むしろ独断専行に陥る弊害がありはしないかと思う。ことにただいま弁護士会などの意見を聞くと申しますけれども、むしろ弁護士会などは、推薦母体に加えた方がもつと私は効果的だと思います。それからもう一つは、現在の人権擁護委員人権擁護委員として任命されて、どういう活動をしておるか、ただいま井伊委員から申されましたように、警察が昔の警察のようなつもりで、堂々と人のうちに入り込んで、かつて調査したり、酒を飲んで黙つてつてしまうというようなことが相当ございますが、こういうような人権が尊重されていない現状において、一体今までの人権擁護委員が何をしていたのか、私は弁護士としまして第一線の実情を存じておりますが、ほとんどちんぷんかんぷんである。これはもちろん御承知の通り、ただいまのような実費すらもこれに使つていただけないような状況では、現在のような社会情勢では実際はとてもできません。従いまして経済的に相当な優遇を与える。ことに困るへ々については相当な社会的な、何と申しましようか、確信を与えて差上げなければならぬのでございますから、今言つたように人権を尊重する問題につきましては、特に農村に参りますると日本ではまだ非常に封建性が強いのでありますから、政府は相当の努力と相当の経費をこれに投じましても――将来の民主的な平和日本建設のためには非常に大事な問題である。従いまして、本日は政務次官もいらつしやらない、大臣もいらつしやらない、しかもこの議案を審議しろということでは私はきわめて不満である。政府自身まことに基本的人権の尊重に無関心である。現在の制度関係予算関係、ただいま御答弁を承りますと、大蔵省かこの問題についてははつきりと認識していないというようなことを申しておりますけれども、私は少くともこの基本的人権が保障されるというところにあらゆる社会の大きな問題がだんだん片づけられて行くのじやないかというふうに考える。ことに労働基準法の第一条なんかにしても、はつきりと憲法を受けて基本的人権の尊重を明確にしておる。従いまして私どもは、貧困の者に対して訴訟費用援助してやるということはけつこうなことでございましようけれども、まずその前に、憲法の保障しておるところ基本的人権擁護するために、第一線には相当りつぱな人権擁護委員を選ばなければならなぬと思う。それには、今のようなおざなり的な選定の方法ではなく、これを公選に持つて行くような考え方にまで、進めて行かなければならぬ。その前提といたしましては、私が申し上げたような、市町村内におけるあらゆる公的な団体の長などの意見を聞き、これを推薦母体の参考意見とすることが必要であつて、私はそういう改正を望みたい。それからこの委員になることは、ある問題におきましては公的な職務でありまして、従つて推薦をする前に一応承諾をしなければならぬというような問題ではないと思います。むしろ、どう申しましようか、人権擁護委員というものは制度上社会的に尊敬さるべきものでなければならぬ。社会人がこれに対して尊敬を持つような待遇と処置をしてやることも大事である。従いましてこの問題につきましては、やはりなるべく多くの人を候補者にあげて、その中から選定していただくという制度にして行くことが民主主義ではないか、かように思う。ただ半分が必ず欠格者になるので気の毒であるからこれを減らすというようなことは、むしろ逆じやないか、私どもはさように考えるのでありますが、政府では擁護委員を選ぶ上において何かもう少し考えを持つておらぬかどうか、要するに、ただいまの御答弁のような民主的な選定方法を講ずるようにいたしまする御意思があるかどうか、ただいま申し上げたような公的団体の意見を聞くというような制度にかえる意思があるかどうか、この点も承りたい。     〔鍛冶委員長代理退席、田嶋委員長代理着席〕
  44. 戸田正直

    戸田政府委員 古屋先生人権擁護の重要性に対する考え方に対しましては、私の方といたしましても御趣旨の通りでございます。ただいま倍数をやめることは民主的じやないじやないかという御質問でございますが、私は民主的に逆コースというふうには考えておりませんので、ただ便宜上さような改正をするのはよろしくないじやないかという御質問のようにも聞えるのでございますが、決して便宜だけでやつているのではございません。先ほど申し上げたように、現在の実情が半分のものはもうすでに当て馬であつて最初から落されるものを承知で出しておるというような実情と、それから中にはもう最初から、たとえば定員一人なら一人しか候補者を送つて来ない、倍数の者をどうしても送つて来ないというようなことで、この制度自体が、倍数ということがすでに実際に行われがたくなつておるというので、これをこのままにしておくことは適当でないというので改正いたすのでございまして、決して民主的に逆行するという意味などは毛頭持つておりませんし、先ほど申し上げたように人権擁護委員性質上からも、最も民主的な選び方をしなければならぬというので、非常に考えたあげくの制度がこの人権擁護委員の委嘱手続でございまして、他の各種の委員の選任方法に比べますと、人権擁護委員の選任方式はかなり民主的に行われておるのじやないかというふうに考えております。先ほど申し上げたように、公選であれば最も民主的なのでございますが、これは予算等関係から、人権擁護委員までも公選にするというようなことはいかがかと存じますので、それにかわる制度として非常に考えましたあげくの制度が、今申し上げたような人権擁護委員の委嘱手続であります。その委嘱手続が実際上に支障を来しておるというような面から、この弊害を除去したいというのが今度の改正の趣旨でございますので、その点をひとつ御了承願いたいと存じます。各種のいろいろな団体の意見も広く聞けばいいじやないかということでございますが、これもごもつともではございますが、各種のいろいろな団体の意見、先ほど先生もおつしやつた労働組合の意見であるとか、婦人会の意見であるとか、青年団体の意見であるとか、その他いろいろの団体があるじやないか、その意見を全部聞けばいいじやないかということでございますが、もちろんそういうふうにできればたいへんけつこうなのでございますけれども、実際問題としてはなかなかそう行かないのじやないだろうかというようなことで、従来ございます程度の範囲の意見を聞くということでひとつお許しを願いたい、かように考えておりまして、また実際といたしましても人権擁護委員に選ばれました方は、これは決して我田引水でなく非常にりつぱな委員の方を選んでもらつております。市町村にお願いしたから、あるいはへんぱなものの感情とか、あるいは情実によつてへんぱな推薦がありはせぬかということも事実われわれも心配しておつたのですが、実際にあげられております人権擁護委員は、これは詳細にお調べ願つても決して間違いないと存じますが、非常に公正な人たちだけを実際に選んでもらつております。これは市町村長が、いろいろの立場もありましようが、人権擁護というものの性質ほんとうに理解していただいて、そうしてりつぱな公正な委員を選んで推薦していただいておる結果だと考えておりまして、今のところは御心配されるような傾向はございません。しかしこの制度からもし将来委員の候補者で、市町村において適当でない者を選ぶような弊害ができるといたしますれば、これはその折また改正もいたさなければならぬと考えておりますが、今実際の仕事をいたしておりまする私の経験といいますか、見るところでは決して弊害はございませんので、きわめて民主的な委員が選ばれておるというように私は信じております。
  45. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ただいまの御説は何もやらぬということですよ。だから実際は弊害がない。これが実情です。私どもはそういうような答弁を承つて非常に心外に思うのです。何もやつていない。人権擁護委員というのはただ形式的にやつているだけです。私どもも以前頼まれて擁護委員に出ておりましたが、弁護士でもあまり熱意がない。結局問題はこの制度の趣旨が徹底されていない。この点が第一の問題です。今の御答弁では弊害がないと申しますけれども、何もやらぬから弊害がない。むしろ弊害のあるほど働くくらいに趣旨が徹底されておればけつこうですが、この制度は徹底されておりません。私どもは実情を知つておりますが、大体助役と村長とが二人でこそこそきめておるのが多い。だから私の申し上げますのは、少くとも民主団体である婦人会とか労働組合、農民組合あるいは青年団などの人たちの意見も法的に聞かなければ推薦ができないようにしてしまつたらどうか、私はこういう意見を申し上げたい。そういうことをやつていただけるのでありますか。私はそういう推薦の方法が民主的であれば、もう数の問題は御説の通りの数でけつこうだと思う。ところが初めから当て馬であつてということは、ただいま申し上げたような実情が当て馬なのであつて、大体村長と助役くらいできめて、全然村民の意思にも関係なく、ことに議会などにこれを諮つておりますけれども、これもほとんど形式上の問題であつて人権擁護委員とはどういうことをやるかということが議員には徹底されておりません。問題はこの点であります。ここに幾多の問題があると思う。たとえばまま子扱いをする、あるいは労働組合と経営者との間に労働基準法に反する問題を平気でやつてつて、さようなことは当然だとしておる。あらゆる社会の紛争というものが私はここから起つておると思うのです。だからこの問題は、当局の方でももつと本腰を入れて、もつと予算もとり、相当な人材を集めて、そうして人権の尊重が確立されて参りますならば、いろいろな犯罪あるいはいろいろな争議というものがここにおいて相当矯正され、あるいは未然に防ぐことができると思うのです。かような考えからどうかこの制度の趣旨の徹底をはかつていただきたい。そうしてただいま申し上げたようなあらゆを市町村における民主団体の代表者の意見を聞いて推薦をするというような方法をとつていただきたい。これには予算もほとんどいりません。もしもかような改正をしていただきますれば町村長は喜ぶでしよう。むしろ自分の責任が非常に軽くなる、こういう関係から考えまして、私どもは推薦をするときにそういう民主団体の代表者の意見を法的に聞いてやるのだ、こういうような制度の改正をお願いしたいと思う。これには予算もいりません。なおそれによつて各種団体あるいは第一線に人権擁護制度の趣旨が徹底されるのではない か、かように思いますが、政府におかれてはいかがお考えですか。
  46. 戸田正直

    戸田政府委員 人権擁護委員制度の趣旨をもつと徹底させなくちやならぬということは御説の通りでありまして、もちろん努力いたしますが、今後もさよう努力をいたしたいと考えます。先ほども申し上げたように今の人権擁護局予算または人権擁護委員に対する費用等が十分でないのでございます。またこの機構がこれで万全かどうかというと、決して万全だとは考えておりませんことも先ほど申し上げた通りでございまして、この人権擁護仕事の重要性からさらに検討をして、そして機構の強化拡充をはかるということは必要であると私は考えておりまして、予算その他の人権擁護委員活動のしやすいような処置をいたしたい、かように考えておる次第でございます。ただ先ほど御質問の各種民主団体の意見を聞く意思があるかどうかということでございますが、これにつきましては、もちろん各種の広い範囲の民主的な団体の意見を聞くということが最も好ましいということは、これはもう間違いないところでございますが、ただ私の方の改正の要点は、最小限度の改正にとどめておつたのでございます。また実際の案としましては、法務局長が、委員の推薦はいたしませんけれども、相談にあずかり、また広い範囲の最も民主的な人たちの助言と申しますか、実際には推薦に携わつておりまして、法律の上には出ておりませんし、またさようなことを推薦するようなことはできませんが、実際問題としては相談にあずかつて、そして非常に広い範囲の民主的な人たちが選ばれるように努力しておつて先生の御心配のような民主的でない者が選ばれることのないように実はいたして参つておりますので、一番問題になつております倍数の弊害を除くという最小限度の手当をいたしましたのが、今度改正いたしました点でございます。その点を御了解願いたいと考えております。
  47. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 法務局長が介在するからかえつて弊害がうんと多くなつております。これは実際問題であります。手紙を出して呼びつけたり、ほとんど問題にならぬようなことをやつておることを私知つております。それがいけないのです。私どもはそういう見方なら反対であります。法務局長は、局長という名義で、だれかが問題を持つて参りますと、すぐ早のみ込みをして呼びつけたり何かやつております。こういうことはあまりよくないことだと思います。今ここで議論をいたしましても結論がつきませんが、推薦するときに民主的な方法を講じて、民主的に行われておれば、数の問題は、厳選されますからあまり問題ではない。従つて推薦する面について御当局ではもう少し民主的にやる意思があるかないかを私は承つておるので、ただいま私が申し上げたのは、そういうような民主的な団体の意見をも聞いて推薦する方法を講ずることを拒否するのか、それとも賛同するのか、するとすれば、しからばどういうふうにするのかを私は承つておるので、法務局長あたりがいろいろ関係することは今非常な問題になつております。これは私どもさようなことは申したくないけれども、御答弁がありましたから申し上げますが、結局法務局長などは、割合に世間を知らない方が多いのです。長い間裁判所にとじ二もつて、社会の二とについては比較的うといのです。でありますから、現在のような目まぐるしい、非常に急テンポに発展する社会事情には、私どもはむしろ一線に生活しております人の方がもつと社会に明るいと思う。そこで私ども申し上げておりますのは、推薦をする場合に、もう少し民主的な方法の処置を講ずるような御意思があるかどうか、これを承つておきたい。
  48. 戸田正直

    戸田政府委員 推薦いたします前に民主的の団体の意見を聞くごとに反対をいたしておるのじやありませんので、先ほど申し上げたように、今度改正いたしましたのは、最小限度の手当をするという意味からこの程度にいたしたのでありまして、でき得ればさようなことは好ましいことと考えておりますので、もし御修正なりで、その点の御趣旨がございますれば、決して反対でなく喜んでお受けいたしたいと存じます。ただあまり広く一般のいろいろな方面の団体を入れることは、実際問題として、今度は委員をきめます上に、非常に手続上また時間上からもかえつて障害になりはしないかということを実は心配いたしておりますので、ある程度の民主的な団体の御意見を聞くごとに対しては、決して趣旨としては反対じやございませんことをお答え申し上げます。
  49. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 結局二人だけではきまりませんから、実は修正意見も出したいと思つておりますので、この点については留保いたしまして、一応これで終ります。
  50. 田嶋好文

    ○田嶋委員長代理 他に質疑はございませんか。――なければ午前の会議はこの程度にとどめ、二時まで休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十八分開議
  51. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  逃亡犯罪人引渡法案を議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 逃亡犯罪人の引渡しに関しまして伺いたい。外国で犯罪を行つたような者が入国をいたしまするから引渡し問題が起つて来るのでありますが、外国人の入国につきまして、近来いろいろの批評がわれわれの耳に入つておるのであります。そこで入国管理の責任者に対しまして一通りの御説明を願いたいと思いますが、外国人が入国するについてはいかなるところの手続を必要とするのでありますか、その御説明をいただきたいと思います。
  53. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまお尋ねがございました外国人がわが国に入国いたします手続はどうかということでありますが、もちろん成規に入る手続でございますが、たとえばアメリカから日本に入るという場合におきましては、まずアメリカの在外公館、すなわち領事館に参りましてパス・ポートを提示いたしまして、そうして日本に入りたい旨を申し出すのでございます。そこで正当のパス・ポートがあり、領事館におきまして日本に入国してもさしつかえない人であるということを大体認定をいたしますれば、それに査証を与えるわけでございます。入国査証と申します。入国査証をパス・ポートに与えられました外国へは、わが国の港におきまして上陸しますにあたりまして、入国管理局の出先でございます入国審査官にそれを提示いたしまして、正当なる発行によつたパス・ポート並びにそこに在外公館の査証がございますれば、それを正当な入国資格ありというふうに見るのでございますか、出入国管理令によりまして数々の条項がございまして、それに該当します場合には正当なパス・ポート並びに査証はございましても、入国を拒否することができるという規定がございます。たとえば精神病者であるとか、肉体的に非常に欠陥がある者であるとか、あるいは特に日本に対しまして治安を害するような者であるということがはつきりわが方にわかつております者につきましては、それらの入国者に灯しまして入国を拒否することができるのであります。入国審査官は、たとえば横浜のごとき、一つの船で三百ないし四百の八が一度に上陸をいたして参りますので、これをさばきますのには相当苦労をいたしておりますが、入国管理局におきましてはできるだけの人員を配置しまして、公正なる入国につきまして万々遺漏のないように努力はいたしておりますが、現在におきましては人数におきまして、われわれの方の手不足という点におきまして、はなはだ残念でありますが、十分であるとは申しかねる次第でございます。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとパス・ポートや査証があつても、日本の審査官が治安を乱す者なりと認定するならば、入国せしめないことができるというわけでありますが、ただ人数が少いために十分なる調査ができないという御答弁のようですが、さようなことで治安を乱すような者がどんどん入るようなことでは、どうも保安隊なんかつくるよりも、その方が大事なのじやないかというふうに私ども考えるわけです。保安隊に二千億円も金を使う、これは治安のためだそうでありますが、しかし外国から治安を乱す者が入つて来ることに対しては、どうも予算がなくて十分吟味できないというようなことは、はなはだ矛盾だと思う。これはあなたに議論を吹きかけてもしようがないと思いますが、そこでなおお尋ねいたしますることは、これは読売新聞に長い間連載されました「東京租界」という題の記事がありました。おそらくこれはあなた方関係者としてごらんになつておると思う。これはこの通りだとしますると、実に容易ならざることだと思う。そこでこれが一つの現われといたしまして、警視庁の問題にも相なりましたマンダリン・クラブの国際賭博の件につきまして、それに登場いたしましたる人物、この人物はことごとくが著名なる札つきの博徒である、たとえばジエイソン・リーというような人物は、これはシカゴにおきまする博徒の有名なもので、「ワシントン祕密情報」という著書の中にもその勇名をうたわれている人物だ。たとえばこのジエイソン・リーというのは「ワシントン祕密情報」という書物に書いてあるところを見ると、シカゴの東洋人地区の賭博の元締であるアル・カポネ一味に一定の貢物を納めて、賭博場開設のため各地を歩いておる男というふうに書かれております。こういう人物が堂々と日本に入つて来ておる。そこでこのジエイソン・リーというような人物が日本に入つて来たのであるかどうか、入つて来たとすれば、一体どういう手続で入つて来たのであるか。なおこのクラブ・マンダリン事件について、その経営者であるところのフイリピンのルーイン、これも有名な賭博師、これを知らぬはずはない。知らぬとすれば入国管理局つて外務省だつて盲、資格がない。こういう人物が堂々と三回も四回も入つて来ておる。これはいかなる手続で入つて参りましたか。案の定日本に入つて来ますと国際賭博場を経営し、クラブ・マンダリンを経営するのみならず、今なお山王下の近くにやはりナイトクラブ・ラテン・クオーターの真の経営者だそうであります。こういう人物がどういう経路で入つて来たか。なおこれに負けずに上海の有名な賭博師王という人物が入つて来た。そうして東京が上海に数倍するところの東洋の一大賭博場化せんとしておる。入国管理局は一体何をしておるのか。これに対して一体いかなる調査をやつておるか、いかなる入国許可をやつておるのか。これに対して詳細な説明を承りたい。
  55. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまお示しがございましたマンダリン・クラブの事件につきまして、入国管理局といたしましては新聞に出ましたことを承知いたしております。そこに上つて参ります人物について、最初に申されましたジエイソン・リー、それからルーイン、この二人の外国人につきましてはGHQ時代に数回入つて来ておるのでございます。平和条約発効後わが方に入国管理の実権が生じましてからは、これまた数回入つて来ておるのでございます。私の方としましてはその二人の人があまりよくないうわさがあるということはうすうす承知いたしておりましたので、新聞にああいうような報道が出ました際に、さらにその資料を得まするために――これは日本側におきましての資料はないのでございます。従いまして二人ともアメリカの国籍を持つておりますので、外務省を通じましてアメリカの方にどういう人物であるかということにつきましての資料を求めておるわけでございます。入国管理局といたしましては、そういう人たちが日本におきまして懲役の刑を科せられたというようなことがはつきりいたしておりますれば、これを港におきまして上陸拒否することも可能でありますが、現在まで得ましたわれわれの方の調査資料によりますれば、今御指摘のシカゴにおきましての札つきであるというようなお話もあつたのでありますが、確たる証拠としてこれをもつてあなたは入れないのだということを言うだけの資料がわれわれの方にございませんので、多少注意を要する人物であるということは承知はいたしておりましたが、それ以上つつ込んで拒否をすべき材料はないというところで入国を認めておるのでございます。  なおもう一人の王という人につきましては、これは本人は中国人であるということを申しておりまして、先般十月の二十八日に外国人登録証明書の切りかえということがございまして、その際に登録を先生が持つておらなかつたということによりまして、現在取調べを行つておるわけでございまして、まだ第三人目の人物につきましては司法処分がきまつておらないのでございます。私の方の関係といたしましては、外国人の入国を管理し、また出国も管理し、在留しております外国人につきましては登録をさせまして、公正な扱いをしようということをやつておるのでありまして、もし管理令に違反をします場合におきましては、強制退去を断固として行うということでやつておるわけでございまして、入国をいたしましてからいろいろな日本に好ましくない事件が起きました際には、入国管理局活動はいたしますが、主として司法当局におかれまして検察庁方面において十分なる追究をしていただき、その判定を待ちまして、退去すべき事由がありとわれわれの方で認めました場合には、行政処分として退去せしむることになるということで、入国管理局建前は行政処分ということで扱つておる次第であります。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 たとえばこのマンダリン・クラブの主宰者ルーインのごときは三、四回も出たり入つたりしておる。こういう人間が日本へ来ていかなる行動をしておるかは入国管理官は調査しておらぬのかどうか、あるいはこれを調査する機関はどこでやつておるのか。そうしてその調査する機関が、もし入国管理官のほかにあるならば、入国管理官とそういうものとが常に打合せをしておるのであるかどうか。外国から何も言つて来ないからといつて野放しになつておる。アメリカは何をやつておるか。徳川夢声や山口淑子の入国まで拒否されておる。日本は札つきの人名辞典にまで載つておる有名な人間が続々として入つて来ておる。国辱じやありませんか。私はそれを言うておるのです。アメリカから何も証拠がない、向うから証拠がなければどんな人間でも入れることになつておるのですか。日本における証拠というものは、彼らが入つて来てから何をしたかを調査すればわかることだ。それが何べんも変なやつが出入しておるというのはどういうわけだ。そこでこのルーインなる岩が最初いつ入つて来て、いつ出て、また二度目にはいつ入つて来たか、それを詳細に報告してもらいたい。そしてその都度いかなる領事館の査証を持つて日本へ入つて来たか。というのはいろいろこれについて私どもは妙なことを聞いておるのであります。当時の入国管理庁の審査課長の平野さん、私はきようおいでを願つていたのですが、おいでいただいておりますか。
  57. 小林錡

    小林委員長 来ております。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 では平野さんにちよつと私、お尋ねしたいと思うのです。聞くところによればあなたはこのルーインとかリーという者の入国については反対の意見、拒否すべきだということを主張された。しかるに上層部の方からの入れちまえという命令によつて入れたということを私どもは聞いておる。さような事実がありますか、ありませんか、お尋ねいたします。
  59. 平野重一

    ○平野説明員 お答えいたします。テツド・ルーイン並びにジエイソン・リーの二人につきましては、去年アメリカ側から私の方へ移つたときから、あまり好ましくない人物だということはほのかに承つておりました。しかし今鈴木局長が仰せられたように、確たる証拠はない、何となく好ましからざる人物であるという印象を受けておりました。それでこの人の入国について私はできるだけ来ていただかない方がよろしいのじやないかというような経緯もございまして、あれはフイリピンから入つて来るときだと思いますが、外務省の倭島局長からその者を入れてくれ、特に入れてやつてくれというお話がございまして、入れてやつてくれと仰せられる意味は、査証を向うでお出しになることは外務省の権限であつて、これは入国管理庁の関係したことではございませんが、港におきまして審査の際、あるいは拒絶するかもしれないという意味合いがありましたので、そういう意味のことを申したのだろうと思いますが、結局入れてやつてくれというお話がございました。それで入国管理庁としましては会議を開きまして、大体入れるという結論に到達したのであります。
  60. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、それはルーインでありますか。
  61. 平野重一

    ○平野説明員 ルーインであります。
  62. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ルーインについてはあなたとしては芳ばしくない人物であるということを聞いておつたので、入れたくないと思つてつたところが、アジヤ局長である倭島氏から入れてやつてくとれと頼まれた。そこでお尋ねいたしますが、一体外務省の局長が入国管理庁の課長にさようなある人の名前を指して、これは入れてくれ、これは入れないでくれというようはさしずがましいことをすることが前にありましたか。
  63. 平野重一

    ○平野説明員 そういうことはございません。それは結局今申し上げた通り、港で入国審査官が好ましくない人物であるということになれば拒否できます。そして拒否する場合等は管理令の第五条に列記されてあるもの全部でございます。しかしその管理令の第五条に列記されてあるものにはそれは該当しないのであります。ただ何となく好ましくない人物であるというような印象を受けておつただけであります。ただ入れてやつてくれとか何とかいう意味は、ほんとうは内部の拒否されるかもしれぬというあれがありまして、そういう話がありましたので、命令でも何でもございません。これは入国管理庁全体といたしまして御相談した結果こういうことになつたので、私自身に言つて来たのではございません。
  64. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、ルーインという男と倭島さんは個人的に何か関係があつてそういう発言があつたのか。あるいは外務省の局長としての地位から、ルーインという男を入れることが好ましいと考えて、特にあなた方にそういうお頼みがあつたのか、どうごらんになりますか。
  65. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、私の方の受取り方といたしましては、やはり外務省として入れた方がいいという結論のもとに、内部的に連絡をいたしました平野課長に対して、入れるようにという連絡があつたものと解釈いたします。従いまして、外務省がどういう認定でこれを入れるべしという意見になつたかということにつきましては、外務省の当局の方から聞いていただきたいと思います。
  66. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、倭島局長が特にそういう個人の名前をさして、これだけは入れてやつてくれと頼んだことは、外務省の局長としての立場から、外交関係上そういう要請があつたものと思われるという御答弁ですが、その事情については御存じありませんか。どういう事情があるということは御存じでありますか。
  67. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 私のほうとしましては存じません。外務省の方からそういうことに対するお答えをお聞き願いたいと思います。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは知つておるだろうと思うけれども、しかしあなたの品からは出せないだろうと思いますから、これ以上追究はいたしません。きようは外務大臣にもおいでを願つてつたのだけれども、お見えにならぬようであります。私どもははなはだけしからぬことを聞いておるのであります。そこで、外交関係も大切でありますけれども、入国をせしむべき人物であるかどうかというようなことは、日本の治安にもたいへん関係のあることでありますので、私どもは入国管理局は、やはりその独自の見解のもとに行動してもらいたいと思います。今の外務省なんて私は信用できません。あの連中というものは、ある程度日本人の魂を失つておるのが相当いるのです。そういう連中のサゼスチヨンによつて行動せられるというと、アル・カポネの子分みたいな者が入つて来る。それで日本はどうなりますか。ですからその点は非常に御注意を願いたいと思うのであります。  そこで、先ほども申しましたが、このルーインは三、四回日本に入つて来たということはお認めになりますか。
  69. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 入国管理をいたします以上、外国人が成規に入ります場合には、必ず入国審査をいたしますので、その審査のつづりがございましてそれを見ますればただちに何日どこから入つて来たということは明確になります。従いまして今のルーインの件につきましても、数回日本に入り、かつ日本から出ておるということは、その通りであります。
  70. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお今のルーインがいつ入つて、いつ出たかということ、及びリーがいつ入つて、いつ出たか、及びもう一人モーリス・リプトン、紅茶のような名前の男ですが、これも札つきの男です。この男はいつ入つて、いつ出たか出ないのか。それからさつき言つた王、これは今検察庁で調べておるようでありますからいいといたしまして、これらの人物の出入国についての詳細なる御報告を当法務委員会にお願いいたしたいと思います。  それから、この人物は入国せしむべきものであるかどうかということは、横浜なら横浜の審査官独自の見解であるのでありますか。何か局長傘下の会議でもあつて会議制でおきめになるのでありますか。そのきめ方はどういうふうになつておりますか。
  71. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 入国審査官の権限は非常に重大なものでございますが、その現場々々で判断をいたします重大なる審査権を、法律は入国審査官にまかしておるのであります。ただわれわれの方といたしましては、全般的に、たとえば密入国をいたしまして、強制退去を命令されたというような者は、一年以内には日本に入れないという法律の条文があります。従いまして、強制退去を命じた人名はこれこれであるということは、本局といたしまして、各入国審査官に伝達をしておるのでございます。それに関連いたしまして、好ましくない人物というようなものにつきましては、一応の参考として、あらかじめリストを配つておるわけでございますが、このリストにつきましては、だれがその中に入つておるか、あるいは具体的にこういう人はどうかというようなことにつきましては、これはその御本人の人権を尊重するという意味から申しましても、絶対に外には発表しないという扱いをいたしておりますので、御了承を願います。
  72. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 さつき言い落しましたが、今言つたような出入国の月日、度数、それからできたならばその査証をした査証官の名前、というのは、リーという男のごときは、アメリカ本国のリポートか何かを香港領事が偽造したものを持つて来てそれがわかりながら入れたというようにわれわれは聞いてる。かようなことは実に国際的な犯罪者だと思います。そうして実にだらしのない感じをわれわれは受ける。さようなことがあるのかないのか、さようなことも詳細に報告していただきたい。なおもう一人、マンダリン・クラブに関係しましたポプロフという人、これは白系露人だという者がありますけれども、国籍がないということになつているらしいのでありますが、これは一箇月以内に国外へ退去するということを条件に釈放されたというのに、まだ内地におるらしい。これが一体どこにおるのであるか、どういう理由でそのままうやむやになつておるのであるか。そういうことは入国管理局としておやりになつているのか、おやりになつていないのか。先ほど申しました入国者の怪しいやつに対して、一体調査なさつておるのか、おらぬのか。この御答弁はまだいただいておらぬようですが、あなた方の方でなくて、どこでやるのですか。何回も日本に来て変なことをやりながら、何回も入つて来る。そうすると審査官は、お前はこの前入つて来たときにこういうことをやつているから、今度は入れないと言うことができないわけですか。アメリカの裁量がなければ拒めないというようなことになつてしまつているのですか、外国にもインチキなのが相当いますから、査証でも何でもごまかしたものを持つて来るやつがいるらしい。ですから一体入つて来た者はどこで監視し、その行状を見ているのか、それをひとつ御説明ください。
  73. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまの点につきましては先ほど御答弁を忘れておりましたが、なるほど御指摘の通りでありまして、ただ入りましたあとをほうりつぱなしにしておくということは絶対に許されない、特に好ましくない人物が入りました際にはそのあとを十分調査しておくということが必要でございまして、当然入国管理局職員を使いましてできる限りの調査をいたしております。主としてこれに当りますのは入国警備官と申しまして特殊の任務を与えておるわけでありますが、非常に新しい役所でございますので、その入国警備官の数が少い関係で十分な調査ができないのでございますが、それと並びまして、やはり特にそういう要注意人物につきましては国内においていろいろな犯罪関係がありはしないかという観点から、警察方面におきましてわれわれと連絡をとりながら――そちらの方は手がございますので特に十分なる御調査ができておると私は思うのであります。入国管理局は事外国人に関する限り全部やりたいのでございますが、実際といたしましては、たとえば密入国をして参る船をつかまえるといつたようなことは海上においては海上保安庁、陸上におきましては国警、自治警、そして入国管理局の警備官というようなことで、日本の治安機関が相協力しまして一つの目的に向つて万全を期すという現在の機構でございますので、われわれといたしましては決して大きなことを申し上げることはできない、ほかの機関にも十分な御協力願つて、ともに手をとつて目的を達成するように十分な入国管理をする、特に要注意人物につきましての措置を誤らないようにいたしております。治安関係機関とは毎月数回にわたりまして連絡会を持ちまして十分にやつておるつもりでございます。  それから先ほどの具体的にいつ入つたかという御質問につきましては、前のルーイン、リーの二人につきましては現存ここに資料を持つておりますが、リプトンの方は今ございませんので、一緒に書いたものとして御提出してよろしければあとから……。
  74. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお最後にこれら不良博徒の外国人が日本に入つて来まして、やはり日本の博徒連、暴力団体等と緊密なる連携をとつておる、そういうことに対して、ここに三浦政務次官がおいでになりますからこれは要望しておきます。こういうクラブ・マンダリン関係者及び今赤坂の山王下にありますラテン・クオーター関係者、こういうものと右翼暴力団体とのつながり、これは調査なさらぬと容易ならぬことが現われます。それからなお名前は私わかつておりますが申し上げませんが、自由党の某代議士がこのクラブ・マンダリンのルーインに関係があり、警視庁の動きを内報しておつた者がある、これも御調査なさい。あなた方が調査できなければ私の方から資料を出します。そうして警視庁が的確な現場を押えることはなかなか困難である、こういう情報があります。かようなことはこれは粛正すべきものは粛正しなければならない。入国管理に関係しましてその影響の及ぼすところなかなか相当なところまで及んでいるのであります。お互いにむちやくちやなルーズのやり方をやつておりますると、日本を第二の上海にし、われわれが安全に夜東京を歩けないような、魔の都にせぬとも限らぬ。この不良外人どもと右翼団体のつながり、この団体の名前もある程度わかつております。そういうものと政党人のある人間、われわれ同僚として言いにくいのでありまするけれども、そういう関係、これは警視庁とも連絡をとつてお調べになつていただきたい、調査すればわかると思う。かようにして警視庁も法務省も、それから入国管理局におきましても、どうか治安治安といつてとんでもない方向ばかり治安のことを考えていて、こういう市民生活を脅かすようなことについてはどうもこの吉田内閣は怠慢だと思う。こうゆうことにつきましてもつと緊張してやつていただきたい。私は入国管理局に対しましての質問はこの程度で終ります。
  75. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ちよつとお尋ねいたします。旅行の目的で日本に上陸して、そうしてその期限が切れてもそのまま居すわつて永久にいるというようなものが私の知つているのでも大分ある、これはただいまの質問の関連になると思いますが、それには相当の運動をすればそうなるのだということになつているのですが、一体これの審査の方法並びに処置についてどんなふうにおやりになつているか。
  76. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまの外国人が日本に旅行という資格で入つて参りました際に、旅行者は二月間日本にいることができるということが法律の条文にあるわけでありますが、二月間を越えまして日本に滞在する場合に期限の更新をすることが認められております。従いまして更新をすることによりまして、二月か四月、あるいは半年ということも可能でございます。ただお話のように運動さえすればいつまでもおれるということは絶対ないのでございまして、御指摘のことはおそらく台湾であるとかそういう方面から、特に旅行ということに名をかりて日本に来ますことが一番パス・ポートをもらいますのにやりやすいというような意味もございまして、一応旅行者という名前で日本に入つて、入つて来てからはこんりんざい動かないというような、われわれから申し上げますと不心得な人がかなりあるように思われます。こういう人たちに対しましては必ず帰つてもらう。ただわれわれの方といたしまして、二月間の期限が切れたからもうすぐにでも送り返すというような情味のないやり方はいたしませんが、やはり帰るものは帰る、新しく日本に長く滞在できる資格をとつてつて来るようにということで指導をいたしております。これはどこの国にもあることでございますが、やはりパス・ポートの資格をとりますのにいろいろ了解しがたいその他の点もあるように思いますので、われわれの方としましては善意をもつてよく説明をし、納得の上で帰すという方法をとつております。従つて旅行者で十年も二十年もおるということは、これは考えられないことであります。
  77. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今の切りかえをして更新するというのは何回まででございましようか。そういう場合は何か特殊な事情でもあれば切りかえるのか、その基準はどこにあるのでありますか。
  78. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 旅行目的ということになりますので、常識的に考えて一年以上の旅行ということはまあ考えられませんので、われわれの方としましては大体一回か二回切りかえをするということを一応の標準にいたしております。
  79. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 こういう場合が現実にあるのですが、この法律の盲点であるかどうか、これに対する御意見を承りたいのです。こちらに滞在することを正当づけるために一つの処置を講ずる、そういう場合には無条件で審査が通るのか通らないのか。たとえばこちらに来てなれ合いの訴訟をやる、訴訟中であるから帰れないということで、裁判所の呼出状か何かを持つて行けば、そういう場合には無条件で継続することになるのかどうか。またその他病院に入院しておるとか、こちらに来ておる医者の診断書を持つて参ればそのまま更新するのかどうか。その場合に実際に病人であるやいなや、さような調査をしておるかどうか。こういう点について今まで御処理なつた事実があれば、その経過等を承りたいと思います。
  80. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまのなれ合い訴訟で長く滞在するような方法考えるという点につきましては、あまりぶつかつておらないと思いますが、そういう場合を仮定いたしましても、これは身柄が何も日本になくても訴訟はできると思われますので、よくその事情を調べまして、悪意であるか善意であるか、もうあと一月くらいで大体結論に至るというようなことでありますならば、特に重要な訴訟であれば見てやるということもあるわけでございまして、要はわれわれの方では悪意であるかどうかということを十分突きとめてやつておるわけでございます。  それから病気などにつきましては、入国管理局のもとにおいて、厚生省と相談いたしまして、各府県に指定医――医師の指定をいたしまして、その指定された医師の診断書でなければ入国管理局としては権威あるものとは思わないという態度で、病気になつた者につきましては毎月必ず連絡をとりまして、実際に調べております。
  81. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ただいまの御答弁、まことにその通りだと思うのですが、私ども実は承知しておりますのは、永久滞在の許可を受けた者、それから日本の国内において相当重い罪を犯して一度外国へ逃げて行つてまた日本ヘ来ている、ただいま猪俣委員からも質問があつたのですが、そういう者が相当おる。私も知つた者がおるのです。そういう者について、どうも私ども納得のいかない点が大分あるので、一体監理局では、更新するような場合に、その人の生活状態あるいは実際どういう行動をして生活を維持しておるか、さような具体的な調査をなされるような順序を経て審査されるかどうか、その点はいかがでしよう。
  82. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 必要がある場合には、こちらから警備官を派遣して、当人について生活状態まで調べるということをやつておるのです。
  83. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 これ以上御質問申し上げてもむだだと思いますが、悪党でも相当の運動をすればおられる、まじめにやつておる者は追い帰されるというようなことがしばしば私の耳に入るわけです。現に台湾の人で、私台湾に大分長くおりましたから知つているのですが、相当な有力者の運動で永住するようになつたのもある。こういうことをしばしば現実にわれわれ見せつけられているのですが、この点はあちらの人々に対する日本の権威の問題ですから、十分厳重にやつていただきたい。これは希望を申し上げて打切ります。
  84. 小林錡

    小林委員長 ほかに御質疑はありませんか。――なければ本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  85. 小林錡

    小林委員長 人権擁護委員法の一部を改正する法律案を議題といたします。この際本案について発言を求められております。これを許します。古屋貞雄君。
  86. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ここに改正をいたしまする根本になりまする委員の推薦方法について政府にお尋ねしたいと同時に、私どもの希望を申し上げたいのであります。従来の選任の方法を現実に知つておりまするが、村長さんが大体一部の者と相談して推薦するような場合が多いのであります。この人権委員の選任の民主的な実際に運営する方法を講じてやつていただきたい。特に町村におけるあらゆる階層の者と御相談をして、村長さんは候補者を選定し推薦するような処置を講ずることを希望を申し上げておるのでありますが、当局といたしましては、それに対する御意見はいかがでございましようか。
  87. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいま古屋委員の御質問ははなはだもつともでございまして、人権擁護委員は民主的な方法によつて選ばなければならぬと思いますので、民主的な団体たとえば労働組合であるとか、婦人会であるとか、青年団であるとか、農民組合であるとかいうような、そういう広い方面の意見も、この委員を委嘱いたします場合に反映させることが必要だと存じますので、各法務局及び地方法務局等において通達なりの方法をいたしまして、市町村長が人権擁護委員を選びます場合に、そういう方面の意向を反映させるような方法をとつて、民主的な委員を選びたい、かように考えます。
  88. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ただいまの御答弁を私は信じまして、事実さような御処置をとつていただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  89. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど来の応答を聞いておりますると、まことにどうも人権擁護仕事が情ないものであることがわかると同時に、その権威のないことを私は一番惜しいと思うのです。そこで私は具体的なことを要求するのですが、これはさような弱いものであるからそういうことになるのかしらぬが、よく地方人権擁護についてのいろいろな手段をおとりになつて、当事者間で和解をさしたり、またいろいろとりきめたりする。ところがそれが実行できないで、単に形式的に終ることも多多ある。これではせつかくつても、何にもならぬじやないか。先ほど来のお話では、最後は告発だということになりますが、告発をしないで終つても、それが完全に行われる、こういうものでなかつたら、まことに権威のないものになりますが、これに対してどういうお考えをお持ちになつておるか、伺いたい。
  90. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいまの御質問は、示談あるいは和解を人権擁護委員かさしておるというお話でありますが、どういう事案かよく私どもの方では存じませんが、たとえば民事的な事件人権擁護委員が介在して、和解をし調停するということは、人権擁護委員仕事としてはあまり好ましくないのではないかと私どもの方では考えております。もちろんこれが人権侵害事件当ります場合ならばさしつかえないと思いますが、単なる民事上の法律問題等について和解をさせ、調停をさせるということは、弁護士の職域を侵すことにもなりますし、また裁判所の関係等からいつても、人権擁護委員がいたすのにはふさわしくないというふうに私の方では考え、またなるべくそういう問題は、指示することはよろしいが、直接介入することは避けるようにというふうに従来指導いたして参つております。そこでその事件は別といたしまして、人権擁護局あるいは人権擁護委員仕事をしても、その結末がはつきり保証されないじやないかというお説でございますが、これもごもつともなんであります。人権擁護委員あるいは人権擁護局仕事といたしましても、この仕事が重大なるにもかかわらず、日本におきましては日が浅いために、この重要である人権擁護仕事というものを処理するのに、はたして強制的な権限を持つことがいいかどうかということに相なるかと思うのであります。これは人権擁護局としても従来考えて参つたことでございますし、権限を持たないと結末の保証ができない、仕事もやりにくいのではなかろうかということも、十分承知はいたしておるのでありますが、この国民の基本的人権擁護するというきわめて重要であり、また非常に微妙な問題を各市町村に配置されました――もちろんりつぱな委員の方も大勢おられますが、こういう人たちの中のまだほんとう人権擁護というものの性質のわからぬ者に権限を持たして処理させることがいいかどうかということにつきましては、まだ相当研究しなければならぬものだと考えております。従つて強制的な権限はございませんので、最後の保証までということで遺憾ながらまだできておらないような状態であります。
  91. 鍛冶良作

    鍛冶委員 具体的の例を言うと、村八分のことで相談を受けて、私がやつたことがあるのですが、その村八分のことについて、人権擁護局で取消しをきめて来る。きめて来るだけで一向取消さない。そういう例を私は知つておるのですが、要するにこれは人権擁護局が権威がないからだと思う。もつと権威をあらしめることを希望しておきます。
  92. 小林錡

    小林委員長 他に御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれにて終局いたします。  この際お諮りいたします。本案は討論に付すべきでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 小林錡

    小林委員長 御異議はないものと認め、討論はこれを省略しただちに採決を行います。  人権擁護委員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  94. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 小林錡

    小林委員長 御異議はないものと認め、さようとりはからいます。  それでは本日はこの程度にとどめ、次会の日時は追つて公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十二分散会      ――――◇―――――