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1953-07-07 第16回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月七日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 井伊 誠一君 理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    押谷 富三君       星島 二郎君    本多 市郎君       三木 武夫君    古屋 貞雄君       佐竹 晴記君    岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君         検     事         (矯正局長)  中尾 文策君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月三日  委員福田喜東君及び木下郁辞任につき、木村  文男君及び三宅正一君が議長指名委員に選  任された。 同月四日  委員三宅正一辞任につき、木下郁君が議長の  指名委員に選任された。 同月七日  委員山崎巖辞任につき、その補欠として押谷  富三君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月三日  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四六号) 同月四日  人権擁護委員法の一部を改正する法律案内閣  提出第八二号)(参議院送付)  判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇九号)(参議院  送付) 同日  滝川町に札幌地方裁判所及び検察庁滝川支部設  置の請願(南條徳男君紹介)(第二五八一号) の審査を本委員会に付託された。 同日  戦犯釈放特使団派遣に関する陳情書  (第六六六号) を本委員会送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  司法試験法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)  少年法及び少年院法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五八号)  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四六号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。お諮りいたします。猪俣浩三君より接収不動産に関する小委員辞任の申出かありましたので、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なければさようにとりはからいます。  つきましては猪俣浩三君の補欠を選任いたさなければなりませんが、これは委員長より御指名いたすに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議なければ、接収不動産に関する小委員古屋貞雄君を御指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 次に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案議題といたします。まず本案趣旨説明を聴取いたします。犬養法務大臣。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  6. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま議題にのぼりました刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、御説明いたします。まず、立案趣旨について申し上げます。現行刑事訴訟法は、実施以来四年半を経過いたしました。この法律は、御承知通り、旧刑事訴訟法に対し根本的な改正を加えたものであり、しかも、制定当時の特殊な事情から、比較的短時日の間に立案せられ、かつ、実施せられたものでありましたため、当初は相当の混乱も見られたのでありますが、四年半にわたる朝野法曹の努力により、今日ではその運用もほぼ軌道に乗つて参つたと申すことができると思うのであります。しかしながら、他面、時の経過とともに、当初から法律自体に内在していた問題のうち、運用によつては解決することのできない点が次第に明瞭となつて参りますとともに、社会情勢の変化に伴い、当初予想しなかつたような問題も現われて参りまして、これを改正すべしとする意見がようやく各方面に高くなつて参りました。  しかし、刑事訴訟法は、刑事手続基本法でありますので、その改正には慎重な考慮を払わなければなりません。そこで、政府は、一昨年法制審議会に対し、刑事訴訟法運用実情にかんがみ早急に改正を加えるべき点の有無について諮問いたし、各方面の有識者をもつて構成される同審議会の慎重な審議に基く答申を待つて改正案を作成することといたしました。同審議会は、現行法の基本的な諸規定についての検討はとりわけ慎重を要するというので、これを後日に譲り、現行法の基本的な性格を維持しながら、運用現実に障害のある点を、さしあたり除去するのに必要な改正を行うという根本方針のもとに、今日まで三回にわたつて答申をいたして参つたのであります。  そこで、政府といたしては、答申のありました部分について逐次改正案を作成し、これを国会提出したのでありますが、国会の解散その他の事情により、今日まで成立を見なかつたのであります。そこで、今回、従来の案に最近の答申に基く改正を加え、ここにあらためて御審議を煩わすことといたした次第であります。  改正内容は、六十数箇条の多岐にわたつておりますが、その多くは、現行法規定の部分的な修正にとどまるのでありまして、基本的な制度自体改正を加えるものはなく、また各改正規定の間に特に一貫した関連はないのであります。次に、改正案内容について、申し上げます。  第一は、被疑者及び被告人に対する身体の拘束に関する規定改正であります。  現行法は、起訴前の勾留期間を一応十日以内とし、やむを得ない事由のある場合に限り、裁判官裁量により最大限十日の延長を認めているのでありますが、終戦以来現在までの犯罪の動向について考えますと、事件の規模はいよいよ大きくかつ複雑となつて参り、捜査機関がいかに努力いたしましても、現行法の認める勾留期間をもつてしては、起訴起訴決定するため必要な資料を集めることすら至難な場合が少くないのであります。そこで、これに対処するため、特別の事情のある場合に限つて、厳重な要件の制約のもとに、さらに五日だけ延長し得ることといたしたのであります。  起訴後の勾留期間につきましても、現行法はその更新原則として一回に限つておりますため、起訴から上訴を経て判決の確定に至るまでの勾留期間原則として三ケ月に限られる結果となり、いろいろ支障を来しているのであります。そこで、このような実情を考慮し、本案においては、禁錮以上の実刑の宣告があつた後の勾留期間更新は、これを形式的に制限せず、裁判所裁量にゆだねることといたしました。  次に、いわゆる権利保釈につきましては、その除外事由が狭きに失し、訴訟進行支障を来しておりますばかりでなく、世の一部に非難の声も聞かれるのであります。よつて、今回この除外事由を一部拡張することといたしたのであります。その一は、従来除外事由として被告人死刑または無期の懲役もしくは禁錮に当る罪を犯した場合をあげていたのを、いわゆる重罪、すなわち短期一年以上の刑に当る罪を犯した場合にまで拡張したこと、その二は、被告人が多衆共同して罪を犯した場合及び保釈されると、いわゆるお礼まわりなどをして脅迫がましい態度をとる危険が多分にある場合を加えたことであります。なお、このお礼まわりにつきましては、これを保釈取消事由にも加えることといたしました。さらに、いわゆる勾留理由開示手続が、実際においてはほとんど例外なくと申してもよいくらい運用され、その適正な運用を妨げられている実情にかんがみ、これを匡正するために関係人意見陳述は、書面によつて行うべきことといたしましたが、これは、もちろん裁判所が適当と認める場合に、口頭の陳述を許すことを禁ずるものではありません。  第二は、犯罪捜査に関する検察官司法警察職員との関係に関する規定改正であります。これは、二点にわかれ、  その一は、検察官のいわゆる一般的指示権の及ぶ範囲を明確にした点であり、  その二は、司法警察員逮捕状の請求につき、原則としてこれを検察官の同意にかからしめた点であります。  前の点は、現行法公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定める場合にのみ、一般的指示をなし得ることとしているため、捜査自体の適正を期するためには一般的指示をなし得ないものでないかとの疑いを持つ向きもあり、解釈上明確を欠いているのであります。しかし、捜査が適正に行われて初めて公訴の実行が可能になるのでありますから、検察官一般的指示は、捜査の適正をはかるためにも行われなければならないと存ずるのであります。そこで、この点の明確を期したのであります。  後の点は、最近逮捕状濫用非難が高く、有力な法曹の間にも本案のような規定の創設を希望する声が高いので、これを改正案に取入れたのであります。  第三は、被告人公判廷において有罪である旨を自認した場合には、簡易な公判手続による審理を進めることができることとした点であります。  公判において審理を受ける被告事件の約八割までが、犯罪事実について争わない場合であるという実情にかんがみ、この簡易公判手続により審理促進事件重点的処理を期することといたしたのであります。  英米法では、被告人公判廷有罪答弁をした場合には、それのみでたたちに被告人有罪とすることができることとなつておりますが、かような制度は、わが国の憲法上その採用に疑義のある向きもありますので、本案では有罪答弁があつても、なお従来通り補強証拠を要することとしつつ、その証拠能力に関する制限を多少緩和し、かつ、証拠調べについてもその方法裁判所の適当と認めるところによることといたしたのであります。さらに、漸進的にこれを実施する意味におきまして、この手続は、さしあたり、いわゆる重罪以外の比較的軽い罪の事件につき当事者の意見を聞いて行うべきものとするとともに、裁判所は、一旦簡易公判手続による旨の決定をした後でも、この手続によることが相当でないと認めるときは、いつでもその決定を取消し、通常の手続により審判をすることができるごとといたしました。  第四は、控訴審における事実の取調べの範囲を拡張いたした点であります。御承知のごとく、現行法は、旧法のような覆審の制度を廃し、控訴審を第一審の判決の当否を批判するいわゆる事後審とし、第一審判決後に生じた新たな事実は控訴審においてはこれを考慮することができない建前をとつているのであります。しかしながら、運用の実際は、規定不備もあつて、必ずしもこの建前通りではなく、裁判所によつてその取扱いが区々になつているのみならず、少くとも刑の量定に関する事実については、この建前を緩和すべきであるという意見が各方面に強いのであります。よつて、この要望にこたえるべく、第一審判決後の被害の弁償その他の情状に関する事実については控訴審においてもこれを考慮することができることとするとともに、第一審の当時から存在しながらやむを得ない事由によつて公判審理の過程において法廷に顕出されなかつた事実も、控訴趣意書に記載して控訴申立て理由を裏づける資料とすることを認め、裁判所調査義務範囲を拡張することといたしたのであります。  以上でおもな改正点説明を終りますが、なお、現行法不備を補うため改正案に取入れました点として、捜査機関のいわゆる供述拒否権告知について、運用実情にかんがみ、その内容修正を加えたこと、勾留中の被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、監獄官吏による引致を著しく困難にした場合に、被告人出頭なくしてその期日公判手続を行うことができることといたしたこと、訴訟促進の要請にこたえるため、死刑以外の判決に対しては、書面によつて上訴権の放棄をすることができるものとしたこと、起訴状謄本の送達不能の場合には、その法律関係を明確にするため、公訴棄却の裁判によつて訴訟を終結すべきものとしたこと、さらに、略式手続に関する規定を一部改正して、その適正迅速進行をはかつたことなどがあるのであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願申し上げます。
  7. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。  なお、本案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     ―――――――――――――
  8. 小林錡

    小林委員長 次に、司法試験法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はこの改正案そのものに対しては反対ではないのでありますが、ここに至つた経過を明確にしておきたいと思いまするので伺いたい。われわれが試験を受けましたときには、商法はもちろん行政法国際私法、そのほか何かまだあつたと思うが、そういうものはすべて必須科目であつたのでありますが、司法試験法制定せられまするときに、現行法のように必須科目をたいへん減らして、選択科目を多くつくられたのでありますが、このように改正せられたときの考え方をまず承つておきたいと思います。
  10. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、これは司法試験科目において必須科目を多くするか、選択科目を比較的多くするかという問題であります。  これは御承知のように歴史的に非常に変遷があります。古くは、今鍛冶委員が御指摘になりましたように、全部必須科目であつた時代もあつたように記憶しております。それがだんだん実施の結果やはりぐあいが悪いということから、もう少し融通性を持たした方がいいじやないかという考え方からだろうと思いますが、必須科目が少くなりまして、選択科目が多くなるという傾向になつたのであります。それが司法試験制定される前の時代におきましては、その傾向が相当強くなつておりまして、選択科目が非常に多かつたのであります。昭和二十一年の改正におきましては、憲法民法固有必須科目でありまして、そのほか民事訴訟法刑事訴訟法商法のうち二科目必須科目、あとは選択科目で、その選択科目固有法律の分野以外に倫理学というふうなほかの学問も入つてつたのであります。それで司法試験制定当時には必須科目をどういうふうにすべきか、あるいは選択科目をどういうふうにすべきかという問題がもちろん検討されたのでありまして、学界の方々にも集まつていただきましていろいろ検討した結果、現在のようこなつたのであります。むしろ選択科目を整理いたしまして、ごく少く、固有法律的なものに限定するとともに、必須科目を比較的多くして、現行法のような建前になつたのであります。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 必須科目が多くては都合が悪いと言われたが、受験生にとつて都合が悪いかもしれませんが、あなた方の方では都合の悪いことはないと私は思う。むしろそういうものが必要でないという考え方があつたのでないか、その点をお聞きしたがつたのであります。必要であるが都合が悪いからやめたのか、それとも必要でないのでおやめになつたのか、その点を承りたいと思います。
  12. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 もちろん必要がないからやめたというものではないと考えます。必要のない科目試験科目にするということは考えられないのでありまして、特に今まで必須科目に入れられたことのある科目は、これは非常に必要であるということが考えられたからごそ必須科目になつたのであると信じます。しかしながらやはり受験者負担ということも十分考慮してやらなければならないことであると思います。それで最小限度という考え方が、その時代によつていろいろ変遷をした結果、今までのような経過になつたのであるというふうに考えます。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはその程度にしておきましよう。  そこでこのたび商法を入れなければならないことになつたその根本理由をお尋ねいたします。
  14. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 昭和二十四年に現在の司法試験法ができたのでありますが、昭和二十四年度におきましては、商法行政法のいずれか一科目は必ず受けなければならないということになつているのでありますが、それの受験者の数は比較的接近しておつたのであります。ところが、昭和二十五年度以降は商法を受験する者が非常に減つて参りまして、行政法受験者に比較いたしまして大体半数程度となつて来たのであります。これは現在に至るまでその傾向が続いて来ているのであります。ところが御承知のように、司法試験に合格し、修習生を経て、裁判官弁護士検察官というふうな一人前の法律家なつた場合に、商法知識が欠けているため非常に不便をすることが多い。ことに特に弁護士として一人前の法律事務をとられる場合に非常な不便を来している。一緒に仕事をしておられるほかの弁護士さん方からも、このごろの修習を終えた方々商法知識が非常に乏しい、これは何とかできないものかと言われるようになりまして、遂に昨年十二月に日本弁護士連合会から商法司法試験必須科目にするというふうな建議がなされたのであります。法務省におきましても司法試験管理委員会というものがありまして、ここでこの問題を取上げて研究したのであります。最高裁判所にもその意見をただしましたところ、これも非常に積極的に希望いたしまして、ぜひ商法必須科目にしてもらいたいというふうな意見もありましたので、今度のような立案を、いたして御審議を願うことになつた次第であります。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこで民事事件のうちで、純然たる民法上の事件商法上の事件との比較数ぐらいは、大体のところでいいのですがおわかりになりませんか。
  16. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 お手元にお配りいたしました参考資料の七ページに、全国地方裁判所商事事件受件数調というものがあります。これは訴訟の件名から選別したものでありますが、昭和二十五年度におきましては、全国地方裁判所民事訴訟事件のうち一七・四%が商事事件といつたようなことになつております。昭和二十六年度には一五%、これは注にも書いてありますように、少額事件簡易裁判所移つた影響もあるだろうと思いますが、大体一五%ないし一七一八%程度商事事件があつたことがわかると思います。なおこれは事件名による区別でありますが、もちろんその他の事件におきましても、商法ないし商事法の問題が含まれておる事件は相当多数あると思います。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 商法の必要なことはわれわれも十分わかつておりますが、それと同時に、行政法は必要でないかという問題になるのです。ことに行政法改正後、前は行政事件行政裁判所で特別にやつてつたものを、司法裁判所に持つて来ました。これにも深い意義があると思います。従つて、かつて行政官上りでなかつた行政事件をやれないんだという思想があつたものを、司法官でも十分やれるんだ、こういうことで改正されたのだと思います。そうして見るならば、司法試験にはどうあつて行政法というものが必要ではないかと思うのですが、この点に関していかなる御見解をお持ちでございましようか。
  18. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御意見はごもつともでありまして、憲法制定後は行政事件一般司法裁判所で扱うことになつたのであります。その意味から申しましても、行政法は非常に必要であるということが言えると思うのであります。そういうところが現在の司法試験で、商法と択一的なことにはなつておりますけれども、行政法を他の選択科目と区別して取扱つておるゆえんであると考えるのであります。しかしながら今申し上げましたように、商法は非常に必要であるにかかわらず選択されないという事実的な結果になつておるこいうことから、商法について何とか措置をしなければならないとうことを考えますときに、なかなか適当な方法を考えることが容易ではなかつたのであります。しかしながら商法はどうしても必修科目にする方がいいだろうということから、これを必修科目に加えますと、行政法も同時に必修科目にするかということになるわけでありますが、受験者負担を考えますと、現在でも憲法民法、刑法、民事訴訟法刑事訴訟法、これはいずれも大法典を持つておるものでありまして、非常な負担がかかつておる。そこで商法必修にし、さらに行政法必修にするということになりますと、いかにも負担が過重になりはしないかということを考えた結果、やむを得ずこれを選択科目に加えたわけであります。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 なかなか受験生に対して思いやりの深いことは私もたいへんけつこうだとは思いますが、われわれが受けたときは、みなこれは必修つたのです。われわれの時代だけはさしつかえないが、今日はそれはかわいそうだということになると、われわれが聞くと、はなはだ片手落ちのように思うが、これはよほど考えてもらわなければならぬと思います。  しかし、それはその程度にしておきまして、この選択科目にしておられるのは、やはりこれも選択にしておけば勉強してくれるものだと思つておやりになつておられると思いますが、これはどうですか。
  20. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 もちろん行政法が非常に必要であるということは御同感でございますので、受験者が進んで行政法選択してくれることを非常に希望している次第でございますが、ただ現実の問題といたしまして、ほかの選択科目に比較いたしましてやや分量が多いということもございますので、その結果について非常に心配しているのであります。ただ現在大学の法学部の課程におきましても、公法コースとか私法コースとか、わかれているようでありますが、公法コースの場合には学校でも行政法を中心に非常に勉強をする機会が、そのコースの人にとつては多いと思います。ですからそういうコースの人が受けるという場合は比較的行政法選択される機会が多いのじやないかと思います。しかしながら、いずれにいたしましても実施の結果を見まして、不適当であればなお改正について、取扱いを十分考慮いたしたいと考えております。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 われわれは行政法はどうあつても必要なものだと思いますが、りくつと実際とはなかなか一致いたしませんから、一ぺんふやすことが酷であるというならば、漸次それに持つて行かれることを希望いたしまして、その点に関する質問はやめますが、ただここに書いてあります第七号の選択科目の五つですが、これはいずれも勉強してもらわなければならぬ科目だと思うのです。ところがこの中の一つということになりますと、これを受けようと思うものだけは勉強するが、ほかのものは実際問題として勉強しない。そうしてみると、なるべく勉強させるというのなら、選択試験委員の方で選択することにして、受験者の方で選択させないことにした方が、よほど勉強することになると思いますがこの点、こう思いますか。
  22. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御意見のようなことも非常に理由があると思いますが、受験者負担とか、その他考慮すべき面もございますので、その点はひとつ意見参考といたしまして十分将来研究いたしたいと思います。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは研究題目として、私は提案しておくことにいたしまして、その次は行政試験を受けた者の点ですが、私は現行行政国家試験は何科目が必須であるのか知らないのですが、今どういうものとどういうものが必須科目になつておりますか。
  24. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御承知通り国家公務員法が施行せられましてからは、昔のいわゆる行政科試験というものは廃止になつたわけであります。そこで公務員法に基く採用試験あるいは昇任試験というものにかわつておるわけであります。これは試験方法が今までの行政科試験とまつたくかわつておりまして、いわゆるシヨート・アンサー式と申しますか、ああいうふうなやり方をとつておるのであります。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうしますと、附則の第四項に出ております高等試験行政科試験に合格した者というのはどういうことなんですか。
  26. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは昔の高等試験行政科に合格した者についてのことであります。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 昔のいわゆる高文を通つた者だけの救済規定なんですね。そうするとそのときはどういうような必須科目であつたか、それを承りたい。
  28. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これもお手元の参考資料の八ページにございますように、憲法民法行政法等が必須科目になつております。選択科目といたしましては、刑法、民事訴訟法刑事訴訟法商法等が選択科目になつております。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一ぺん。必須科目憲法民法行政法ですね。
  30. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 変遷はございますが、大体においてそういうものは必須科目になつております。
  31. 鍛冶良作

  32. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 選択科目は非常にたくさんございますが、今申し上げましたのは、刑法、民訴、刑訴、商法等も選択科目に入つておるということを申し上げたのであります。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうしますと、憲法民法行政法は必須でやつたのだからよろしいということにいたしまして、その次刑法は必須として入つておるからよろしいが、商法選択にせられた理由がわからぬのです。司法試験のところでは必須科目として入れておるのだが、この場合に選択にせられるという理由がわからない。これが一つ。  それからいやしくも司法官もしくは弁護士になろうとするには、民事訴訟法並びに刑事訴訟法の両訴訟法は、どうあつてもやらねばならぬものだと思うが、これを選択科目にせられました理由が私にはわからぬ。この点はどういうお考えのもとにさようにされたのか。
  34. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御承知のように、高等試験のありました時代にも、行政科に合格した人が、司法科の試験を受ける場合には、ある程度の特典、すなわちすでに受験しておつた科目については免除されるというふうな特典があつたのであります。司法試験をつくる場合に、そういうふうな特典をどういうふうにするかということが問題になつたのでありますが、法律もかわつておることでもありますので、特に特典を設けなくてもいいだろうというので、政府の原案におきましては、実はその附則の四項は入つていなかつたのであります。ところが国会におきまして、行政科に合格した者についてはやはりある程度の特典を認めるべきではないかということで、現在の附則の第四項の規定が入つたのであります。これによりますと、御指摘のように相当負担が軽くなつておるのであります。今度商法を加えるにつきまして、この負担をどの程度にするかということが問題になつたのでありますが、現在の建前から、あまりに負担を加重することは適当でないというので、今度のような案になつた次第であります。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 前に試験を受けた者は、今度はやらぬでもよかろうという特典は、これは私もいいと思いますが、特典特典というて、試験をやさしいものにしてやろうというのは、それは特典を通り越して甘やかし過ぎることになりはせぬかと思うのです。この点は私は相当考慮せらるべき余地があると思いますが、当局はいかにお考えになりますか。
  36. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御見解のような考え方もできるかと思うのでありますが、現在の法律建前は、憲法民法、刑法、民事訴訟法または刑事訴訟法、このうち憲法の外二科目だけは最小限度にあらためて受けなければならぬが、その程度ができれば合格としていいのではないかという建前になつておるのであります。これについては今言われるような、もう少し負担を重くしなければ均衡がとれないじやないかというふうな考え方も出て来るわけでありますが、なお将来の研究問題として研究して行きたいと考えております。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今一ぺんにここでやろうとしても無理でしようから、将来研究していただいて、徐々に必要なものに改めてもらうことを希望してこの程度にしますが、最後に私は、直接この法案に対する問題ではありませんが、先ほど来の議論から割出しまして、いやしくも判検事、弁護士たらんとするには、先ほど来議論したような法律知識はぜひ必要である。こういうことは自他ともに許すことだと思うのであります。ところが現在司法試験を受けないで判検事の仕事をしておる者がだんだんふえて来ておることは、はなはだ遺憾なことだと思うが、当局においてはどうお考えであるか。年々法律改正のたびに、この点を拡張せられるのでありますが、これらの正規の試験を受けない人々が、今言われたような必須の学問に対して知識を持つておるという確信がありますか、いかがですか。
  38. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 司法試験を受けないで判検事の職務を行つておるというのは、どういう具体的な例がございますか。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 特例で判事にしたり、副検事にしたり……。
  40. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 特任の簡易裁判所の判事及び副検事でございますね。その点は、これは好ましい事態とはいえないと考えるのでありまして、戦後の異常な事態、ことに新憲法施行後に司法の分野が非常に拡大された、手続も複雑化したというような必要に応じて、やむを得ない措置としてとられた部面もかなりあるように考えるのであります。しかしながらだんだん世の中がおちついて来るに従いまして、そういうような点についてもなお十分再検討を必要とするものだというふうに考えております。
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員 判事補の職権の特例等に関する法律というのが今までにありますが、私は検事より裁判官の方が特に高い地位にあるものだと思う。そして待遇もよくすべきだということも人一倍主張するものですが、しかし、それにはそれだけの資格がなくては、そういうことがいえないはずだと思います。高い地位におるということは、学識及び人格を備えておればこそ高い地位におられるので、学識、人格も備えないでただ裁判官なつたがゆえに、地位だけを高くせよといわれたのでは世間が許さない。私はそれをいつも言うのです。しかるにああいう特例をだんだんあなた方のたれかしらぬが、つくるということは非常にお考えにならなければいかぬことだと思います。この機会に私はその点だけを御注意申し上げて、私のこの点に対する質疑を終ります。
  42. 小林錡

    小林委員長 私一つだけ伺いたいのですが、選択科目を受ける人の数ですが、今までの選択科目商法行政法破産法、労働法、国際私法、刑事政策、これらのパーセンテージでけつこうですが、どんな割合ですか。
  43. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 たとえば昭和二十七年度について申しますと、行政法が一番多うございまして三千七百八十一人、商法がその次で千八百六十人、その次が破産法で千八百二十四人、その次が労働法で千六百二人、その次が刑事政策で千三十一人、その次が国際私法で五百八十六人ということになつております。大体毎年傾向は同じのようでございます。
  44. 小林錡

    小林委員長 試験委員をきめるのは、どういう標準でおきめになるのですか。
  45. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御承知のように司法試験考査委員は、司法試験管理委員会の推薦で人選がなされるわけであります。一科目について四人以内ということになつております。それを具体的に申しますと、学者がおもです。その学者に裁判官検察官等の実務が加わる建前になつております。学者はできるだけ官立に片寄らないで、私立の大学の先生も加える私立大学の先生は、大体在野法曹をかねておられますから、そういう意味をもつて両方から選択することになつております。
  46. 小林錡

    小林委員長 官立、私立の割合はどのくらいになつておりますか。
  47. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 大体半々に近い割合でありますが、やはり人選の関係で、官立の方がやや多い場合があるわけであります。
  48. 小林錡

    小林委員長 現在の数はわかりませんか。
  49. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今ちよつと手元に持つておりませんので、必要ならば後刻お届けいたします。
  50. 小林錡

    小林委員長 その試験官は年々新しく選ばれるのか、あるいは何年か続けておるのか、それから長い間続けて同じ人がやつておられましたら、どのくらい長くやつておられるか、またこれはできるだけかえた方がいいか、あるいはかえない方がいいか、こういうことについてお伺いいたします。
  51. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 その点は司法試験法の十五条の一項に「司法試験は、法務大臣が、司法試験管理委員会の推薦に基き、試験ごとに任命する司法試験考査委員が行う。」ということになつております。ただ再任を妨げない、前の人をもう一ぺん任命することもさしつかえないのでありまして、現実には二年、三年というふうに重任される、があります。これは適当な方が少いという事情からそういうふうになるのでありますが、四年、五年とあまり長い場合にはできるだけかわつていただくというふうに配慮しております。
  52. 小林錡

    小林委員長 それから試験委員に与える手当はどんな標準でやつておりますか。答案一枚幾らというのですか。何か先生によつて標準が違つているのですか。
  53. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは非常に乏しいのでありまして、大体第二次試験の筆記試験で申しますと、答案は一通二十枚という計算の方法になつておりますが、それについて三十円ということになつております。ところが御承知のように司法試験は非常に丁重な試験のやり方をやつておるという関係上、司法試験につきましては、筆記科目の場合なんかは五千通ないし六千通の答案を見なければならぬ。一日に三百通見るにいたしましても二十日間かかるというような非常な重労働であります、口述試験も十日間くらいはかかるということでありまして、非常に負担が重いのであります。ところが一番多い試験考査委員に対する報酬が去年でありますと五万円ということになつております。非常にお気の毒な状態であります。
  54. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  55. 小林錡

    小林委員長 それでは速記を始めて。  私から一言政府に要望しておきます。何といつても六、七千人の学生が登竜門として一生懸命に勉強して試験を受けておるのでありますから、試験官に対する報酬はできるだけよけいにして、そうしてほんとうに公平な考査ができるような状態をつくつていただきたいと思います。  また試験委員も長い間同じ人を置いておくと、ややもすると学説が固定しやすいと思います。りつぱな人が他にないならしかたがありませんけれども、できるだけ試験委員をときどきかえて、そうして今言われたような、自分の学説を固持して、それによつた答案を書かなければいい点数をやらないとか、あるいは学校で特別な課外講義みたいなものをやつておいて、それをいきなり試験問題として出すというよう非難がときどきわれわれの耳に入りますが、そういうことのないように十分ひとつ御注意を願いたいと思うわけであります。  他に御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  この際お諮りいたします。本案は討論に付すべきでございますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、討論はこれを省略し、ただちに採決を行います。司法試験法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  57. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて本案は可決すベものと決しました。なおお諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  59. 小林錡

    小林委員長 少年法及び少年院法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。鍛冶良作君。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この鑑別所というのが私よくわからないのですが、どういうことをやるのか、お聞きしたい。
  61. 中尾文策

    ○中尾政府委員 鑑別という言葉はちよつと耳なれない言葉でございますが、私たちの方では三十年来使つておる言葉であります。つまり家庭裁判所が裁判いたしまする場合に、まず少年の身柄を拘束いたしまして、そうしてその間に本人の家庭調査をやるとか、あるいは社会調査をやるとか、あるいは本人の人格調査と申しておりますが、診断ということをやりまして、そうして今後どういうことをやつたらいいかというようなことにつきまして、案を付しまして家庭裁判所の方に出すわけでございますが、そういうことをやつておりますのが少年鑑別所であります。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、性格とか知能とか、そういうようなものを調べて、そうして今後矯正するにはどういう方法をやればいいかということを決定する、こういうことでございますか。
  63. 中尾文策

    ○中尾政府委員 そればかりと限りませんで、つまり少年院のようなところに入れなければならぬ者につきましては、特にそういうことを調査いたしますが、しかし世の中に出してもいい者もおりますので、必ずしも鑑別所に入つた者は全部あと身柄の拘束を受けるとは限つておらないのであります。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほどからもその話があつたのですが、鑑別所というといかにも変だ、何か適当な名前がないかという議論が多いので、これはひとつ御考慮願つておきます。  その次に私がここで聞きたいのは、少年院は今まで男女の区別をして設けておられたようですが、それが従来の経験に徴すると、独立の施設を別々に設ける必要性がなくなつたと書いてあるのですが、これは私にはふに落ちない。やはり女の子と男の子とは、ことに少年院へ入れるような者はなおさら厳格にやることが必要のように思うのですが、まつたく必要性がなくなつたのですか。
  65. 中尾文策

    ○中尾政府委員 それは医療少年院だけについてであります。そして必要がなくなつたということは、私どもの方の文章の書き方が少し不十分でありましたが、必ずしも別々にしなくてもいいということと、それからいま一つは費用の点もございます。つまり医療少年院に入るような女と男とを全部完全にわけてしまうようなことにいたしますと、今全国で少年院に入つております数は千人から二千人くらいあるじやないかと思いますが、それだけの数のものを女は女、男は男というふうに全国を通じてつくることになりますと、たとえば北海道の者も東京方面へ連れて来なければならぬようなことにもなるのであります。それから医療少年院としましてはいろいろな設備が必要なのでございまして、たとえば府中の町に関東医療少年院というのがございますが、これは男も女も入れております。この存いろいろ医療設備を完全にしようと思いますと、人も集めなければなりませんし、それからいろいろ金もかけて器具もたくさん買わなければなりませんが、そういう場合に、同じような種類の病人に対しては、同じような技術とか設備とかを使うわけで、両方同じようなものを完全にいたしておきませんと、――その設備を、ある場合には女に使える、ある場合には男に使えるということにしてあるわけでありますから、そうしておかないと不経済になる、手数がかかるというようなところから来ているわけです。
  66. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の考えたのは、いろいろ定義もありましようが、別にしておくほどいいことはないだろう。しかし別にせぬでもいいのだ、必要はないのだ、こう書いてあるのは、私の考えるのは、あなた方の方は経費とか何とかで便利な方法をとりたい、こういうことだろうと思うのです。それならば、あるにまさることはない。完全にさえ、やれば、なくてもいいというならいいのですが、別にする必要はないのだと言われると、いかにもふに落ちない。この場合はあなた方はどういうやり方でやるか。同じ施設といいましても、おそらく全然接触のないようにしなければいかぬと思うのですが、それより私が聞きたいのは、経費の点もありますし、予算の点もあるからでありましようが、何でも便利な方法でやれ、便利な方法でやれという習慣が非常に強い。この改正でも、やむを得ないと思いますけれども、代用を使つてよろしい、何でも代用にする、代用にすると言つておると思うのです。こういう傾向はぜひとも改めて、あなた方の方でどうあつてもやらなければならぬ、何としてもやらなければいかぬからと言われるならですが、あなたの方から代用にすればいいのだ、男女一緒にしておいていいのだと言われることが非常にふに落ちないのですが、この点いかがでございましようか。
  67. 中尾文策

    ○中尾政府委員 医療少年院だけにつきまして、今おつしやるように、やむを得ずそういうふうにいたしておりますので、どうせそういうふうになるからには、最大限度そういう弊害が起らないようにということは十分気をつけるつもりであります。医療少年院は、今正確な数は覚えておりませんが、全国に六箇所ございますが、この中で男と女と一緒にして使つているというのは三箇所でございます。これもだんだん将来少年院が整備いたしまして、あるいは将来数が不足いたしますれば、やはり理想のようにできるならば、別別にやりたいということは考えております。
  68. 小林錡

    小林委員長 他に御質疑はありませんか。
  69. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 先ほど鑑別所の話が出ておりましたが、鑑別所に入れる条件と申しますか、どういう者を入れることにしておりますか。
  70. 中尾文策

    ○中尾政府委員 これは家庭裁判所が観護処分にするわけでございますが、身柄を確保しておいて、そしてその間に調査することが必要である、調査するためには身柄を確保するよりほかないというところから、この調査をするわけでございます。
  71. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 少年であるために、特にごく微罪であつても、一度どうしても鑑別所に行かなければならぬという傾向を生じております。家庭裁判所に持つて参りますと、ただいま中尾政府委員のおつしやつている通り、身柄を確保し、かつ調査するために鑑別所に持つて行く。ところが鑑別所に参りますと、私の経験によりますと、たいがい一箇月以上いるのであります。そうすると、ほとんどこれには微罪で問題にならぬような人についても、少年であるがゆえに必ず一箇月ぐらい実刑を食つたと同一の結果になるような状態を呈しておりますが、そういうきらいはないでしようか。
  72. 中尾文策

    ○中尾政府委員 実はその点につきまして鑑別所側と裁判所側とに多少意見の相違がございまして、私たち、今その調整を始終研究しているわけでございます。鑑別所側に立つてみますと、せつかく少年を鑑別所に入れたというなら、将来のために一番少年にいい方法を考えなければならぬ。一番いい方法を考えるためには少年のことについて一番いい方法を研究して、少年というものはこういうものだ、また、社会的にはこういう環境に置かれている。従つてこれのためにはこういう方法が一番いいだろうというような、一番良心的に納得できるような処置を研究したい。そのためには今の四週間では短かすぎるから、もう少し延ばしてもらつたらどうだろうというような意見が鑑別所側にあります。この方は、むしろ鑑別所側といたしましては今のような熱心な動機からのものでありますので、これは一面理由があると思います。しかし家庭判所側からいたしますと、今おつしやいましたように、相当これは人権の問題といたしまして慎重に取扱わなければならないことでございますので、裁判所側は始終それに反対いたしております。それで問題は、そういうふうないい意図をもつて運営されており、またつくられているところのその鑑別所が、おつしやいましたような、事実としては身柄を拘束して監獄的な処分に従事するということになりましてはたいへんでございますので、その点につきましては、できるだけ観護処分の本来的なものに沿うようにいたしたいというので努力いたしている次第でございます。
  73. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 法務省の調べでは、四週間はほとんど満期になるまですべてやつておるようですが、どうでございますか。それよりずつと以前に出すようなことがありますか。
  74. 中尾文策

    ○中尾政府委員 正確には覚えておりませんか、平均いたしますと、十八日くらいが鑑別所に拘束されておる期間であります。
  75. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私どもの経験によると、ただいま政府委員のおつしやつておる通り、少年のために最もいい方法を講じてやるには詳細調べなければならぬというので、まず知能、性格、習性などを調査いたします。それがために専門家にかけまして、たいがい鑑定書をつくつております。ところがその鑑定書がなかなか間に合わないのです。私どもの経験するところによると、ほとんど四週間で、ようやくのことで出してくれるので、それ以前に出すなどということはむしろ少いのです。だからまず少年が何かやると、それが今度家庭裁判所に送られて、鑑別の結果によると大したものではないということで、自宅に帰すことを許してくれる。ところが、それ以前にすでに約一箇月間は実刑を食つたと同じです。少年なるがゆえに非常に大きな負担を背負わされるといつたような観を呈しております。ことにこれは地方にもよりましようが、鑑別所といわゆる刑務所を区別することができないという点であります。私どもの経験いたしております範囲内においては、鑑別所に行つて参りますと、刑務所に行つて来たというのとそんなに区別がございません。なるほど送り迎えの自動車なども、普通のいわゆる勾留状を受けております人々のより幾らかいい車に乗せられて送り迎えされておるようでありますが、ちやんとこれに少年調査官がついて参りまして、その少年調査官は学校の先生をやつていたような人などで、いわゆる警察官や検察官のようなにおいのしない者といつたような感じでありましようが、実際においては警察官あるいは検察官がくつついていると同様の結果を呈し、裁判所へ送られて参りましてもこれらの人々がついて来ておる。結局先生たちの考えからすれば刑務所へほうり込まれておつたのとほとんどかわりはない。そこで彼らが出て参りますと、お前どこへ行つてつた、鑑別所へ行つてつた、ああ鑑別所か――こうなると、もう刑務所へ行つてつたという観念とちつとも違いはない。だから、この鑑別所については何かもつといい方法がないものか。そういう点は、少年だけを入れるところの刑務所の別館であるというような感じを起させない特別の施設のもとに、知能、性格、習性などの調査をせしむるようにしなければならぬ。少年なるがゆえにほんのちよつとしたことでも、しかも鑑別が済むとすぐに家庭へ帰されて問題にならぬような案件についても、ほとんど一箇月送つたと同一の結果を呈するようなことがございまして、この点についてはよほど考えてやらなければならぬという気持を濃厚にいたすのでありますが、何か改善の方法はないものでございましようか。
  76. 中尾文策

    ○中尾政府委員 まことにどうもごもつともなことでございまして、私たちもその点について相当苦慮していることもあるのでありますが、何しろ鑑別所というものは、できましてからまだほんの数年にしかなりませんし、ちようどできましたころがああいう青少年の非常に鼻息の荒い、相当乱暴者がたくさんおつたころでありまして、相当あちらこちらで放火事件があつたとか、脱走事件があつたとか、あるいは破壊事件があつたとかで、職員は非常に神経過敏になり、なおまた新たにできたところでございますので、職員自身がふなれである。またなれた者といたしましては、とりあえず便宜上、前に警務官、警察官か何かをやつてつたというふうな者を採用しがちになつた点もございまして、本来あるべき永遠の姿においての鑑別所をつくり上げるまでには実はなつておらない。現状もそうでございますが、そういうわけでございまして人的にまずい。それからまた全国に一時に四十何箇所の鑑別所をつくりました関係上予算が伴いませんので、実は場所によりましてはインチキな、単にいれもの程度にしかでき上つておらないというようなところも便つたりしておりますので、そういう点で非常に不備が多かつた。なおまた中の鑑別をいたしますための器具、設備の点につきましても充実はできておりませんので、そういう点につきましていろいろな欠陥を生んだわけでございます。しかし職員の方もだんだんとなれて参りましたし、場所の方もだんだん整備できましたし、また中の設備につきましてもいろいろ整つて参りました。職員の方の心がけもだんだんと本式になつて来ておりますので、私はここ数年の間に、少くともこの出発した数年間のようなああいう不体裁なことは、全部なくすると申し上げる勇気はございませんが、相当面目を一新することはできるという心構えで、そういう自信を持つておりますので、さよう御了承願いたいと思います。
  77. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 鑑別所に参りますと、深く門をとざしておつて、番人がおる。入つて参りますと、面会にしてもいろいろ厳重な受付その他を経て、本人に会いましてもこれに付添人がついておる。その付添いをしておる職員などは、刑務所へ行つて刑務所の職員がついておると何らかわりがありません。それと同一の気持であります。また彼らを囲つておるところもまるきり何か留置場か何かのような感じ以外の何ものでもありません。それからたれかを引出して参りますと、他の窓から指さしてあれはどうやらしよるというようなことで盛んにやつておるのであります。先生たちの間ではこの二十八日間、何と申しますか、身柄を確保しております間に少年らの間でずいぶん悪いことをやりとりします。相当悪い感化を受けております。青年というものは非常に感受性の強いものでありまして、悪い者がたくさんおるところへもつてつて二、三人のあまりひどくない者が参りますと、悪い多数の者に感化されまして、一月くらいの間に別な悪い者に相当感染されて、悪いことを覚えて帰つて来る者が多いのであります。従つてこれらについてはよほどお考えいただきませんと、かえつて悪い結果を生ずるおそれがあるのであります。  それからいま一つは一少年法の適用でありますが、どの被告も少年法の適用を非常にきらいます。そこでたとえば、もう二月か三月すれば成年になるということになりますと、その被告は弁護人に向つて何とか引延ばしてください、私が成年になつて判決を受けることのできるようにしてください。特に一年ないし三年などという判決を受けるというと、たいがい三年やられるといつたような気持が先生たちはするのでしよう。成年であつたならばたいがい一年で済んで来るところを、少年なるがゆえに一年以上三年になつておる。むしろ今日の実際の実例は成年に科する一年に値するところの犯罪事実があつた場合においては、少年についてはそれに対して一年以上三年、少年の方が負担が非常に重いという結果を呈しております。従いまして少年というものは非常に少年法の適用を受けることをきらつておるのが実情でありますので、こういつたことなどの少年に及ぼします影響などもたいへんあろうと思います。鑑別所の関係少年法の適用などについて十分ひとつ御考慮願いたいということを希望いたしまして、私はこの程度でやめておきます。
  78. 鍛冶良作

    鍛冶委員 鑑別所に入れる人間はどういうことで決定になりますか。
  79. 中尾文策

    ○中尾政府委員 これは家庭裁判所の判事が考えてやつておるわけであります。別に具体的に刑事訴訟法のように、逃亡のおそれがあるとか何とか、そういう規定は何もございません。ただ必要があるというときには入れるということになつております。ただその必要というのはまつたく本人の保護処分を決定するのに必要だ、そのために本人をよく調査しなければならぬ。そういう必要のためにやるという建前になつております。
  80. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると収容しなければならぬということが前提なのでしようね。それから収容するか、せぬでもいいかわからぬが、とにかく鑑別所へやれ、こういうことになつておる。それが先ほど出て来たように、何でもない者まで入れてきらわれるということになる根本だと思うのです。
  81. 中尾文策

    ○中尾政府委員 それは在宅して、在宅のまま調査してもさしつかえないと思われるようなものにつきましては鑑別所に送らない。たしか鑑別所に送られる者のパーセンテージは、刑事裁判所取扱いました全部の事件の約一五%から二〇%くらいでございまして、それ以外のものは全部裁判所でやつております。
  82. 小林錡

    小林委員長 ちよつと私からお伺いいたしますが、十七条の二の但書「その期間は、収容したときから七十二時間を超えることはできない。」これは一箇所七十二時間でしような。――そこでそれは全然ないとしてみましても、天変地異みたいなことで三箇所くらい置かなければならぬ場合が生ずるのじやないかというふうに考えますが、その場合はどうですか。
  83. 中尾文策

    ○中尾政府委員 仮収容所というのす七十二時間でございます。たとえてみますると、どこかのいなかの裁判所でそういうことがありまして、もよりの拘置監に七十二時間置きまして、七十二時間が切れますと、鑑別所の本所に送つて参らなければならないのですが、その送つて参ります途中で、今度のような大水でもございますと、もよりの鑑別所または拘置監の一部隔離した場所にとめなければならないのですが、これは七十二時間とは関係なくあとの鑑別所収容の期間の中に入るわけであります。
  84. 小林錡

    小林委員長 もよりの場所が二箇所くらい続くことはありませんか。
  85. 中尾文策

    ○中尾政府委員 それはあります。腹痛を起すとか、そういうことはあります。そういうときにはやむを得ずどうか途中下車させまして、もよりの施設があればそこへ入れるわけです。これは七十二時間とは関係ないわけです。
  86. 鍛冶良作

    鍛冶委員 通算するのですか。
  87. 中尾文策

    ○中尾政府委員 もちろんその期間の中に入るわけです。
  88. 小林錡

    小林委員長 おかしいですね。仮収容一ぺんの場合は七十二時間、その次にまた仮収容するような場合には…………。
  89. 中尾文策

    ○中尾政府委員 これは仮収容ではないのです。
  90. 小林錡

    小林委員長 ほかに御質疑ありませんか。――他に御質疑がなければ本案に対する質疑はこれにて終局いたします。  お諮りいたします。本案は討論に付すべきでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、討論はこれを省略し、ただちに採決を行います。  少年法及び少年院法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  92. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて本案は可決すべきものと決しました。お諮りいたします。ただいま可決いたしました各法律案関する報告書の作成のつきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  93. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、さようにとりはからいます。  他に御発言はありませんか。――御発言がなければ、本日はこれにて散会いたし、次会の日時は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時四十四分散会