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1953-07-02 第16回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二日(木曜日)     午後一時五十五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 猪俣 浩三君 理事 花村 四郎君       福田 喜東君    星島 二郎君       本多 市郎君    中村三之丞君       三木 武夫君    木下  郁君       佐竹 晴記君    岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         保安庁人事局長 加藤 陽三君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月一日  委員井谷正吉辞任につき、その補欠として古  屋貞雄君が議長の指名で委員に選任された。 同月二日  委員押谷富三君及び牧野寛索辞任につきその  補欠として山崎巖君及び江藤夏雄君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 同日  理事迫兼光君の補欠として猪俣浩三君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 七月一日  戦犯者の釈放に関する陳情書  (第五九四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国内治安に関する件  法務行政に関する件
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。理事である細迫兼光君より理事辞任したいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、これを許可するに決しました。  細迫君の理事辞任に伴う理事補欠選任についてお諮りいたします。すなわち選挙の手続を省略し、委員長において指名いたすに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。理事には猪俣浩三君を御指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 なお本日の日程につきましては、警視総監田中榮一君に参考人として発言を願うことにいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  国内治安に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めることにいたします。発言通告があります。これを許します。猪俣浩三君、なお猪俣君に申し上げます。木村保安庁長官は、本日内閣委員会出席のため、本委員会には出席ができかねるかもしれぬとのことであります。保安庁加藤人事局長出席しておりますので、長官出席できるまでこの政府委員で答弁できる範囲内で御質疑を進めていただきたいと存じます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣にお尋ねいたしておきます。行政協定実施に伴う刑事特別法によりまして、アメリカ側治外法権がある。政府治外法権という言葉をいやがつて使いませんが、治外法権に違いありません。そこで実際問題といたしまして、日本側で、日本人に加えられましたアメリカ軍人軍属その他の家族犯罪につきまして、アメリカ側に引渡すことに相なつておりますが、その処罰状況につきまして、日本政府に何らかの連絡があるものであるか。また何の連絡もなしにかつてに処断しておるものであるか、これが第一点であります。  それからアメリカ軍人軍属及びその家族と別な立場にありますその他の国連軍の将兵、かようなものが日本人に加えました犯罪については、どういうふうに相なつておりますか。第十五国会で問題になりました内閣総理大臣吉田茂通牒検察庁に出ておるのでありますが、ああいう通牒は違法だと私どもは思うのでありますけれども、実際問題といたしまして、やはりあの通牒従つて国連側にその犯罪者を引渡しているようであります。この処罰につきまして、これまた日本政府といかなる連絡をしておるか。報告なりその他のことをやつておるのであるか。あるいは引渡されるとそのまま彼らはかつて処分しているのであるか、その点について御説明願いたいと思います。
  8. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。詳しいことについては政府委員より答弁いたさせます。  まず正式には、日米合同委員会を通じまして、重大犯罪についての処分の結果を、大体三箇月ごとにとりまとめて通告されております。現在までに合同委員会を通じて通告された処分を申し上げますと、これは国警の調べでございますが、昭和二十七年の四月から六月まで有罪が二十二件、無罪が一件、計二十三件、同年の七月から九月まで有罪が三十五件、無罪が六件、計四十一件、同年の十月から十二月までは有罪が三十四件、無罪が三件、計三十七件、昭和二十八年の一月から三月までは有罪が十一件、無罪が四件、計十五件でございます。  それから御参考までに刑の重さについて申し上げたいと思いますが、一例を申し上げますと、本年の五月十七日に御承知の熊本県に発生しました、アメリカ軍人による自動車運転手傷害致死事件でございますが、これは本年六月十八日、すなわち一箇月後に判決がございまして、重労働二十年、不名誉除隊、というのは公民権剥奪をも意味するのでございますが、それと給与支給停止処分がなされております。それからまた、これは御質問のあつたことを覚えておりますが、本年の二月八日に静岡県の沼津市で発生いたしました、アメリカ軍人による接客婦警察吏員に対する傷害公務執行妨害事件でございますが、これは約二箇月後の本年四月六日に、英国人工名に対して重労働三箇月、罰金五万七千二日四十円という判決をしております。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 今お述べになりました有罪無罪の件、たとえば昭和二十七年四月から六月までに有罪が二十二件で無罪が一件だという報告がなされておるようでありますが、この各件につきまして、懲役何年とか、いわゆる量刑報告があるのでありますか。ただ有罪無罪という報告だけなのでありますか。今例としておあげになつたところによると、重労働二十年というように聞いておりますから、そういう量刑まで報告されたように思われるのでありますが、全部にわたりましてその量刑報告されておるものであるか。ただ有罪無罪という大ざつぱな報告だけでありますか。そこをお聞かせ願いたい。
  10. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。私の存じておる限りにおきましては、量刑報告されておると存じております。今政府委員の手元にありましたら、さつそく御報告をいたさせます。
  11. 岡原昌男

    岡原政府委員 アメリカ兵隊処分の結果通報につきましては、安全保障条約第三条に基く行政協定の協議のための合同委員会公式議事録がございまして、かような事件の発生した際には、どの程度報告をするかという折合せをしておるのでございます。それによりますと、十七条の関係、つまり刑事裁判権関係につきまして、ちよつと読んでみますと、「本条4に関し、合衆国は、この項に基いて生ずる事件について合衆国軍事裁判所行つた処分日本国当局通告することに同意した。その場合、通告手続はなるべく簡易でなければならないこと、且つ、合同委員会貴国政府の利益を完全に満足させ、同時に不必要な行政上の負担又は手続を避けるような取極を、経験を基礎として作成することについて、貴方及び当方が同意見であると信ずる。」これに対して外務大臣から「完全に了承する。」というふうな了承を与えておるのでございまして、これに基いて、簡単な報告というのは、その当時は一応有罪無罪という二つの項目だけでやつて参つたのでございますが、当方といたしましては、個別の事件についてかなりわれわれの関心を持つておる重大な事件がございますので、これに対しては、結果を一つ一つ具体的の事件について問合せをしております。そういう事件についてただいま報告にあつたようなことになつたのでございますが、私どもはときどきそういうふうな重い事件だけの報告を受けておるというのでは満足できないので、さらに従来のやり方を改めるために、本年の三月十七日に、裁判権分科委員会――これは合同委員会分科委員会でございますが、この刑事部会の方から、合衆国分科委員会の方に書面を出しまして、次のような事件について早くその要点を全部調べて報告してくれということで約二百件にわたつて書面で要求いたしました。その結果先方から正式な書面参つたのでありますが、それによりますと、こちらからの問合せが、かなをあて字にしてやりましたためか、中には探すのに相当骨が折れたというのもございますし、それから探したけれども見つからなかつたというのもあつた。というのは当該の軍事裁判所の記録が、軍の移動とともに朝鮮あるいは本国に返されたために今すぐにはわからないというふうなことでございました。いずれにせよ近く全部まとめて、わからないものはわからないなりに御返事をするというような報告がされておりますが、現在まで、に事件について具体的に一つ一つ様子報告されております。今後とても身柄をあちら側に渡した重要な事件につきましては、その都度もよりの警察署検察庁等報告するようにし、なお合同委員会合同委員会としてさらに報告を徴する、さような手配にいたしたいと思つて協議しておるわけであります。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただいまのは行政協定に伴う刑事特別法関係でありますが、かような協定のないところの国連軍犯罪行為はどういうふうに相なつておりますか。今の御説明は国連軍と合併のものじやないでしよう。それならば国連軍はどういうことに相なつておりますか、御説明願いたいと思います。ことにあの明治神宮外苑か何かでつかまつた事件については、日本裁判をするというのを、彼らの切なる要求に基いて引渡した、そのかわりに裁判日本人立ち会うという条件で引渡したのだというふうに政府からわれわれは聞いております。かような条約の根底がないにかかわらず、独立国である日本裁判権を行使できないということに対してはわれわれは不服であります。しかし政府がさようなやり方をしておるのはいたし方がないのでありまして、一体それがどういうふうな結果になるかということに関して一どういう連絡があるかを御説明願いたいと思います。
  13. 岡原昌男

    岡原政府委員 御指摘通り国連軍関係につきましては、日米行政協定のようなものがございませんので、国際慣行の線に沿うてやつておるわけでございますが、大体今までのところ、たとえば佐世保、呉、東京等大きなところはもちろん小さいところにおきましても、事件の処理があつた都度あちら側から報告が参つております。そのうち、ただいま御指摘のように、自動車強盗といつたような事件につきましては、こちら側から係官が立ち会つておりますので、もちろん報告を待たずして結果はわかつておりますけれども、これもなおかつ向うから正式に書面報告が参つております。大体国連軍関係はほとんど全部報告が参つておりまして、大体現地でそれが処理されておる、かような関係に相なつております。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 日本刑法処罰規定あるいは日本裁判所における量刑の状態と比較いたしまして、先方から報告されましたるある事案に対する処罰の軽重につきまして、日本裁判所よりは一体重い傾向であるか、大体において軽い傾向なつておりますか。報告を受けられました実情をごらんになりまして、どういうふうにお感じになりますか。私一々、どういう事件についてどういう量刑があつたか、今ここで報告を受けることは容易じやないと思いまするので、抽象的になりますが、大体の感じはどういうふうに相なつておりますか。お聞かせ願いたいと思います。
  15. 岡原昌男

    岡原政府委員 あちら側から参つております報告を通覧いたしますと、中にはただいまお話のありましたように、懲役十年、禁固二十年というふうなものがあるかと思いますと、中には禁固何十日といつたような妙な刑があるように思います。これを全体的に見ますと、やはり私ども考えますのは、この刑罰法規そのものが根本的に違うということと、それから刑事訴訟手続大分違うためか、たとえばわれわれとしては当然証明があつたと思つたものでも、嫌疑なし、証明不十分といつたようなことで無罪を食つている事件もありますし、中にはこれはどうかなあという事件に案外重い刑が言い渡される場合もあるようでございます。全体を見てみますと、人命犯あるいは家庭の平和または人身に対する犯罪については刑が割合に重いのではないか、それから財産犯罪については何か刑が軽いような気がするといつたようなところが感じでございまして、たとえばよく自動車の乗逃げあるいは寸借名義みたいな、詐欺みたいなものがございますが、こういうものはたいてい弁償したという事実だけで、いわば起訴猶予または不問というのが大分多いようでございます。その他強盗といつたような事件につきましても、強盗程度といものの認定が若干違うかどうか知りませんが、恐喝的な認定になつて刑が軽くなる場合もある。しかし日本裁判所も最近強盗ども大分軽くなつておりますから、これから見ますと、必ずしもどうかなあと思いますけれども感じはそういうようなところでございます。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお一点お尋ねいたしたいことは、日本刑法相当重く処罰しておりまする強姦罪であります。近時「日本の貞操」なんという書物が出七おりまして、基地におきまする風紀問題がやかましくなつております。さようなところでわれわれの承知しておつたところによりますれば、東京都下における小学校の先生が、アメリカ兵強姦せられたというような事件がみな無罪なつておる。この無罪の理由としては、強姦した人がピストルを持つておらなかつた強姦された女があまり悲鳴をあげなかつたというような事情で、無罪ということになつておるというふうに聞いておるのであります。それはたまたまその裁判に通訳をしておつた日本婦人がその点を明らかにしましたから、われわれそれがわかつたのでありますが、さようじやない場合におきましては、一体強姦罪というものを彼らがどういうふうに見、処罰しておるか、何か非常に軽く、問題にしないような傾向があるのじやないのだろうかというふうに私は感じられるのでありますが、今法務省で報告を受けられましたうちに、アメリカ関係あるいはその他の国連関係におきまして、強姦罪に対しまする有罪あるいは無罪報告がありますかどうか、あつたとすれば、いかなる刑に処せられておるのであるか、日本刑法では五年以上の懲役になろうかと思うのでありますが、それと比較してどういう実情でありますか、お知らせ願いたいと思うのであります。
  17. 岡原昌男

    岡原政府委員 大分たくさん、こういうふうに報告が参つておりますので、ちよつと拾い読んだ感じでございますが特に強姦の点だけを取上げてみますると、強姦についてのいわゆる証拠法というものが、どうも日本刑事訴訟法と若干違うのではないか、ただいま猪俣さんもお話のように、強姦の事実についての証拠認定が、ほかに証人でもあれば格別、ない場合には、被害者の供述がどの程度まで行つた場合にこれを信用できるかという点の証拠認定の問題で、訴訟法の建前が違つておるように感ぜられるのでございます。その結果、先ほどお話の奥多摩の事件のような無罪事件が出て来るのではないか。しかし中には、十分の証拠があつたと見えまして、これはアメリカ兵隊事件でございますが、ジエームス・E・デヴイスというのが強姦猥褻行為というので起訴せられまして、昨年暮れ、軍事裁判で軍籍その他の権利の剥奪及び重労働六年というような判決があり、あるいは、これは広島ですから呉ですが、呉の裁判所において、罪名不自然性交罪というのですが――これはどういうことですか、懲役十八箇月、兵役免除というふうに、有罪判決が下るのもあるようでございます。この強姦としての認定がない場合におきましても、婦人に対する暴行、アソールトといつたような罪名で、軽い刑を受けるような場合もあるようでございます。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 本問題につきましては、これで質問を終りたいと存じますが、政府当局にお願いいたしたいことは、犯罪一覧表と申しますか、彼らに引渡し、彼らが処罰いたしましたその報告、先ほど法務大臣報告なさいました二十七年四月から六月までに有罪が何件あるというような、そういう一覧表的なものを当法務委員会へ御提出願いたい。それから犯罪の事実及びそれに対する処罰状況がわかるものは、参考までにつけ加えて報告いただきたい。それからなおこれは最高検あたりでも統計しているはずでありますが、アメリカ軍並び国連軍日本における犯罪件数及びその罪名等につきまして、日本独立後の状況でよろしゆうございますが、昭和二十七年四月二十八日以後のその犯罪統計につきまして、一覧表的なものを提出願いたい。お願いいたしておきます。  それからここに警視総監がおいでになつておられますので、警視総監について実際の事実関係を、法律関係につきましては法務大臣にお尋ねしたいと思うのであります。それは本年の五月八日読売新聞に発表せられましたる国際賭博事件であります。中共視察をして来た人の話によりますれば、中国における悪いことはみな外国に輸出されてしまつて、その当の輸出先日本である。賭博類似のこと、あるいはハイアライだのドツグ・レースだの、中国には何もない。みな日本に輸出されてしまつている。上海が粛正されて、この上海から日本に輸出せられ、東京が今昔の支那の上海以上になつてしまつた、淫売と賭博、スパイの巣窟に相なつたというふうに言われるのであります。われわれはわが国の首都がかような状況になることに対しましては痛嘆久しゆうするものでありますが、かような昔上海に見られたような国際賭博場東京がなるということは、わが民族の現在及び将来におきましても公認できざる問題だと考えられる。さような際に読売新聞の報道を見ますと、検挙はしたのであるがさつぱりあとうやむやになつてしまつた。そうして何かえらいむずかしいことでどうにもならないようなことになつているというのであります。そこでもしこの検挙が徹底的にやれない事情がありますならば、お互いに研究してそれを打開しなければならない。とにかくこのまま相手外国人なるがゆえに日本刑法で禁じておりますことを公然とやつてつて、手がつけられないということでは独立国ではありません。そこで一体いかなる実情であるか。この検挙に当られましたる警視総監からその実情をお聞きいたしまして、それが今どういうふうな処分に相なつておりますか。その点についての赤裸々なる御報告を願いたい。
  19. 田中榮一

    田中参考人 ただいま東京におきまする賭博並びに売淫の問題につきまして、東京がかつて上海のような様相を呈している、まことに遺憾であるというお話でございまして、私どももしさような点がありといたしますればゆゆしき問題であります。もちろん警視庁といたしましても従来かかる点には相当力を注ぎまして、さような社会的なる非難を受けることのないようにできるだけの努力をして参つているのでございます。お話国際賭博の問題でございますが、この点も終戦後相当東京都内、ことに中央におきましてさような風評がございますので、警視庁としましても相当な人員を使いまして視察内偵をいたしまして、ただいままで検挙いたしました事件の概要を御参考までひとつ御報告申し上げたいと思います。  第一に昭和二十七年、昨年の七月十七日にマンダリンクラブというのを手入れをいたしまして、この際にはちようど昨年の六月下旬ころからこのマンダリンの二階の一室約三十坪くらいを借り受けて、日本外人旅行者クラブの名称を用いまして、表面社交クラブとして使用するごとく装つて、実際には会員組織による外人専門賭博場を開設していたようであります。事件はちようど内偵中でありましたが、新聞に一部報道されたため捜索を実施いたしましたときは、すでにクラブを閉鎖した直後で、現行犯として検挙できなかつたことはまことに遺憾であります。しかしいろいろな証拠物件等を押収いたしまして、非現行犯としてこれを立件いたしました。関係者二十数名につきまして取調べを行いました結果、賭博を開設した事実は判明いたしましたが、客及び勝敗についての具体的な証拠を得るに至らず立件することができなかつたのであります。そこで七月二十八日責任者クラブの閉鎖を命じるとともに、賭博用に供しました一切の道具を国外に搬出するように命じまして、これが誓約書を提出せしめたのであります。一応これでマンダリンクラブの第一回の手入れであるその事件を打切りまして、さらにその後様子視察内偵をいたしておつたのでありますが、さらに本年の三月十六日に第二回の手入れを実施いたしたのであります。その状況は三月十六日午後八時ころから午後十一時五十五分に至る間にマンダリンクラブの二階のサロンにおきまして、聖母病院慈善パーテイの名目のもとに賭博を開設いたしまして、ウラジミール・エヌ・ボフロフがハウスマン、胴元となりまして、二世及びマンダリン責任者、その他数名の者を幇助者といたしまして、一般外国人米軍人軍属オーストラリア軍人及び日本人等相手といたしまして、ダイスと称しまする賭博を実施いたしまして利をはかつてつたのであります。これは現行犯として乗り込んで、ちようどつているところを押えたものでありますので、事件措置といたしましては、一般外国人及び日本人は三月十八日午後八時身柄とともに東京地検送致しました結果、ボフロフ及び責任者勾留処分に相なつております。次に米軍人軍属外七名は三月十七日午前五時第七二OMP大隊身柄を引渡しまして、事件東京地検送致をいたしました。オーストラリア軍人数名は三月十七日午前六時在宅処分として事件東京地検送致をいたしたのであります。その証拠品関係といたしましては、押収いたしました現金百十九万五千四百円ほかダイス台その他賭博用に供しました道具の十五品目は、三月二十五日東京地検証拠品係保管転換をいたしたのであります。東京地検におきましては関係者につき引続き取調べ中であります。  次に東京ユダヤ人団体事件。これは本年の三月二十二日午前二時四十五分、これは真夜中でございますが、渋谷の羽沢町にございますジユイシユ・カムニチー・センター、これはユダヤ人一つの会でありますが、ジユイシユ・カムニチー・センターと称するものがございましてそこで富くじ刑法に言うところの富くじ犯罪を敢行しておつたのであります。すなわち三月二十一日午後八時ごろから午後十二時ごろまでの間に前述の場所におきまして、東京ユダヤ人団体員及び関係者を招待してモンテカルロ・ナイトを開催した際、参集者百数十名に対しまして一枚二百円の富くじ、これはうラツフルまたはロツタリーと称しているそうでありますが、これを約三千枚発売したのであります。それと同時に居合せた数名は、引続き同夜午前一時三十分ごろから二時四十五分ごろまでの間に同場所上階客室におきまして、トランプカードを用い、通称ポーカーと称する賭博を金銭をかけてやつてつたのであります。事件措置といたしましては、現行犯事件として逮捕、身柄警視庁連行取調べの上、在宅処分として三月二十八日東京地検に一件書類を送致いたしました。証拠品関係としましては、現金五十万九千円ほかトランプカードその他証拠品一切を五月四日東京地検証拠品係保管転換をいたしたのであります。事件は目下審理中であります。  それから本年二月七日午前一時十三分ごろ、場所は港区赤坂檜町アルホンス、トリツジン借用建物内におきまして米軍人軍属十名、日本人二名、これが午前一時十三分ごろこの場所におきましてダイスを使用いたしまして賭博を開始した現行犯検挙いたしたのであります。現行犯事件として逮捕いたしまして、身柄警視庁に引致、取調べの上、米軍人軍属関係者は同日憲兵隊に引渡し、日本人二名は三月八日身柄とともに東京地検送致をいたしました。証拠品である軍票及び日本の金、賭博用具等も身柄とともに検察庁保管転換をいたしました。事件は目下審理中でございます。  さらに本年の一月二十九日午前零時十五分、千代田区永田町のキヤバレーラテン・クオーターというのがございまして、ここで国際賭博が行われているとの風評がございましたので、かねて視察内偵いたしまして、その結果一斉臨検を実施いたしましたところ、約百名の入場者がありまして、時間外営業の事実は現認したのでありますが、そこにおいて国際賭博を実施したというような特別な容疑はほとんどなかつたのであります。この点につきましては、風俗営業取締法違反として、時間外営業といたしましてこれを処置いたした次第であります。  なおクラブマンダリンは現在すでに廃業いたしておりまして、これはもう実体はないのでございます。そのほか今申し上げたこと以外に、警視庁といたしましては、あるいは国際賭博が他の場所において開催されているような疑いがあるのではないかというような点から、あらゆる方面に視察内偵をいたしまして、こうした国際賭博が隠密裡に敢行されることを未然に防止すべく、ただいまいろいろ努力をいたしておるような次第でございます。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 本件につきまして警視総監が今お述べになりましたその努力は多といたしますが、これを受取られました検察庁は、これに対していかなる処置をなされたか、御報告を願いたいと思います。
  21. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま警視総監からお話のありましたうち最初の三件、これは事件として受理いたしましたが、東京地方検察庁においては外事関係の検事が中心になりまして、何分にも数がたくさんございますので、手わけをして調べております。大体ほとんど全貌が明らかになりまして、処分する寸前まで来たのではないかと思いますが、おととい聞きましたところによりますと、なお若干問題の点があるので、今もう少し調べを継続しているということでございました。いずれにいたしましてもかような事件は、ことに賭博でもございますし、早急に取調べをいたしまして処分するのが当然でございますので、ただいまの御趣旨を十分地検に伝えまして、妥当なる解決を見るように推進いたすつもりでございます。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで検察庁に対しまして数点の御質問を申し上げたいと思います。第一点は、今の警視総監報告によると、関係者を留置したというふうな御報告がありましたが、この留置された関係者はどういうふうなことになつておるか。  第二点は、これも警視総監報告によると、百十九万何ぼの金が賭場にあつた。ところが新聞記事の伝うるところによれば、これがことごとく賭場開帳者の関係者に返されてしまつた。かようなことが真実であるかどうか。もし返したとするならば、いかなる法律上の根拠に基いて返されたのであるか。
  23. 岡原昌男

    岡原政府委員 身柄つきで事件を送られましたものにつきましては、当時勾留をいたしまして、その調べを続けましたが、期間満了とともに釈放いたしております。なおその他の身柄を一応在宅にいたしました分につきましても、逐次呼出しをして取調べをしたわけでございますが、証拠品の点につきましては、金額は今ちよつと手元に資料がございませんけれども米軍人関係、つまり行政協定によりまして、向うに裁判権のあるそういう身柄関係の金額は、すべてMPの方に引渡してあるわけでございます。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 マンダリンの主催者はソ連人のポフロフなる人物であると聞いておりましたが、この人間を警視庁で一晩か二晩留置しただけですぐ釈放されたとわれわれは聞いているんです。今お聞きいたしますと、まだ犯罪の全貌がわからぬという御答弁でありますが、どういう理由でこれは釈放されたのであるか。何か本国へ帰るからというようなことから釈放したそうでありますが、全然帰つておらぬ。野放しになつて今やつている。これは一体どういうわけであるか。
  25. 田中榮一

    田中参考人 お尋ねの者は、当時クラブマンダリンの賭場を開いておつた開帳者となつておりますが、これがウラジミール、エヌ、ポフロフと申しまして、約二十才の若い者でございます。これは表面は一応貿易商となつておりまして、どこの国籍であるか判明しないので、一応無国籍になつております。これは検挙と同時に勾留処分をいたしまして、一応開帳者でございまするので、調書をすつかりとりまして、それですべての調べが終りましたものですから、一応これを釈放したような次第であります。本人からの聞取書は全部完全にとつております。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 幾日勾留されておつたわけでありますか。
  27. 田中榮一

    田中参考人 その点は私今ちよつとここではつきりお答えできないのでありまするが、いずれよく調べました上でお答え申し上げたいと思います。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから新聞記事を見ますると、この賭博にかけられた金は全部返した。それはどうも日本のようにてら銭というものがないのでとることができなかつたのだというふうな見解だというふうに伝えられていますが、今御説明を承ると、アメリカ軍に関する場合においてはアメリカ軍に返したのだ、こういう御説明のようでありますが、百十何方のうち一体アメリカのMPに引渡した金は何方だというふうなことはわかりませんか。
  29. 田中榮一

    田中参考人 その点もちよつと今ここで計数的なはつきりしたことを申し上げかねますので、さらに詳細に取調の上お知らせ申し上げたいと思います。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 このマンダリンは、ニツポン・タイムスにときどき営業案内みたいな広告を出して、その広告には、これは慈善事業であるというふうな広告をしておつた、そうしてその入口には聖母病院慈善バザーという看板をかけてやつてつたというのでありますが、一体さような事実があるかないか。
  31. 田中榮一

    田中参考人 先ほど私が御説明申し上げましたごとくに、第二回の検挙におきましては、お説のように、マンダリンクラブにおきまして聖母病院慈善パーテイをするというように相当事前に広告もいたしておりましたので、われわれとしましてはこの点がすこぶる怪しいというようににらみまして、実はそれが検挙一つの原因になつた次第であります。お説のように、慈善事業というものを看板にいたしまして、その内実は国際賭博をやつてつたということがここに判明したわけなのでありまして、慈善事業ということを相当宣伝的に広告的に使つてつたことは事実でございます。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、取締り官憲の方でも慈善バザーではないということはお認めになつておるわけなんですね。
  33. 田中榮一

    田中参考人 さようでございます。さような容疑から検挙いたした次第でございます。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 巷間、どうも日本の政界の上層部から相当な圧力を検察庁にかけて、そうしてこの問題をうやむやにせんとした。不起訴処分にすると検察審議会が開かれてうるさいことになるから、取調べ取調べで荏苒日を先に繰延ばしておいて、人のうわさも七十五日で七十五日以後になつて不起訴にしてしまうというようなたくらみだというような説をなす者がある。私のところへ相当詳しい事情報告して来ている者もあるのであります。私どもはさようなことは信じませんが、事をうやむやにしないように――どうも日本の官憲は事が国際的になると非常に怯懦である、国内的な一般的なことに対しては非常な威厳を保つているのでありますが、事が外国人ということになるとどうもはなはだ卑屈な態度をとる傾向があると思われるのでありますが、是は是、非は非であります。国の内外を問わぬ、わが国は独立国家であります。これはやはり世人の疑惑をなくすよう徹底的な調べをしていただきたいと存じます。  まだお聞きしたいことは多々あるのでありますけれども、なお十二分なる御調査の上再び御答弁願うことにいたしますが、ただ一点お尋ねいたしますことは、何かこのマンダリン関係の被疑者のうちで――これは被疑者になつておるかどうか知りませんがそのマンダリンのバンドマンとして雇われてしよつちゆう彼らと一緒に事をしておつた者のうちに検察庁関係家族の者が含まれておるというようなことはありますかありませんか、それをお尋ねいたします。
  35. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいまの点でございますが、私初耳でございまして、今警視総監にも横で伺つたわけでございますが、さようなことははつきりいたしませんのでなお捜査の根拠その他も突きとめまして、はつきり御返答いたしたいと存じます。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 実は私のところへはその検察庁関係の人の職名も名前も全部知らされてあるのでありますが、私はこの委員会ではその名前は出したくないと思つておりますから、なおこれは検察庁自身においてよく御調べいただきたい。さようなことがありますとますます世人の疑いを増すことになりますので、十二分なる御調査を願いたいと思います。  なお、私のところに参りました報告によれば、押収いたしました七十万円の金のうち、三十九万円だけは確かにこれはダイス賭博にかけた金であることを関係者が全部認めておるにかかわらず、これを全部彼らに返還してしまつたという事実を指摘しておるのでありますが、かようなことがはたしてあるのかどうか、これも御調査の上御報告願いたいと思うのであります。これは後日でよろしゆうございます。国際賭博問題に関する質問は、これをいかに処分したか後日当委員会に詳細に御報告いただくことにいたしまして、この程度で打切りたいと思います。  なお引続きまして、法務大臣保安庁長官国警長官警視総監等にお尋ねいたしたいのでありますが、保安庁長官がおいでにならぬようでありますから、かわりの方から責任ある御答弁をいただきたいと思います。  それは、保安隊は軍隊ではないということを政府は終始一貫説明なさつておりますが一われわれはこれは軍隊であるという考えを持つておるのであります。近時、この保安隊の中に警務隊という名前のものができた。これは名前は警務隊でありますが、その職能は昔の憲兵である。保安隊が軍隊であるならば、警務隊は憲兵である。そこでますますもつてつて軍隊の形式を整え棄ておられるのであります。もちろんこの警務隊のことにつきましては、保安庁法の七十七条ですか、それに基礎があるのでありまするから、もうすでに法律ができている以上は設けてはいけないという議論はできないと存じますけれども、この性格、職能につきましては十二分に明らかにしておいていただきませんと、これは将来大いなる災いを残す。申し上げるまでもなく、終戦前における日本の軍閥政治の一番の手先となり、この軍閥政治を強行いたしました張本人は、日本の憲兵制度であることは申し上げるまでもない。世の中が逆コースに相なりましてだんだん昔にもどつて来る。そうしてこういう憲兵まがいのものが出て来ました。これをよほど監視いたしませんと、世の中の反動的な、軍閥がまた実現せんとするような情勢に便乗いたしまして、かような憲兵制度が復活せぬとも限らぬ。そこで私はこの点につきまして保安隊の警務隊なるものは実数が幾らであるか、またその性格はどういう性格を持つておるか、その職権はいかなる職権であるか、これが旧憲兵制度と違うところはどこであるか、もちろん憲兵制度は軍隊があり、軍隊の憲兵でありましよう。それだけの違いじや違いにならぬ。事実問題として憲兵制度とどこが違うのであるか、その点をまず伺いたいと思います。これは保安庁関係から伺うことになると存じますが、御説明願いたい。
  37. 加藤陽三

    加藤政府委員 お答えいたします。ただいま保安庁法の第七十七条をおあげになりましたが、警務官と申しますものは保安庁法の第七十七条に基いてできたものであります。私どもの考え方といたしましては、この七十七条の規定というものは国の機関におきましても、たとえば郵政関係の郵政監察官、あるいは国税庁関係の国税庁監察官というものがありまして、それぞれ国税庁察監官は国税庁の職員の犯しました犯罪、あるいは国税庁の職員に対しまして行いましたところの犯罪というものを捜査する。郵政監察官は郵政業務に関するところの犯罪を捜査するというような権限を与えられておるのであります。そういうふうな類似した性格のものを保安隊の規模、性格というふうなものから考えまして、必要とするのではないかというようなことからいたしまして、保安庁法第七十七条にこういう規定を設けたのであります。憲兵とどう違うかというふうなお尋ねでございますが、憲兵というものをどういうふうに解するかということについていろいろな問題があると思います。ただ私どもの持つております警務隊というものは、そういうふうな趣旨から出たものであるということを御了承を願いたいと思うのであります。  次に、警務隊のことをお話になりましたが、警務隊というものは全国で約八百名の人数を持つております。この警務隊は保安隊の方におきまして二十七の駐屯地にそれぞれ配属をされておりまして、これがその駐屯地のまわりの見まわりでありますとか、あるいは重要物件の警護でありますとか、あるいは犯罪の捜査というようなことを担当いたしておるのでございます。この警務関係の部隊の八百名が全部保安庁法の第七十七条によりまして司法警察権を行うのかというと、そうではないのでありまして、これらの警務部隊に所属しておりますもののうちで一定の資格要件を備えた者、ただいまのところではこれは従前司法警察職員の経歴のあつた者でありますとか、あるいは保安隊の業務学校におきましてこのための特別の教育を受けたというふうな者を特に警務官及び警務官補として指定することにいたしておるのであります。これは保安隊について申しますと百二十二名であります。この警務隊のうちで百二十二名のものを司法警察職員としての職権を行えるところの警務官及び警務官補として指定いたしておるのであります。同様のことが警備隊の方にもあるのでございまして、警備隊の方は特に警務隊というふうな編成はいたしておりませんけれども、警備隊の職員のうち十八名の者を警務官及び警務官補に指定いたしておるのであります。  この権限は保安庁法の第七十七条にありまする通り、第一に「保安官、警備官並びに第一幕僚監部、第二幕僚監部及び部隊等に所属する保安官及び警備官以外の職員並びに学生の犯した犯罪又は職務に従事中の職員に対する犯罪その他職員の職務に関し職員以外の者の犯した犯罪」その次に「保安庁(海上公安局を除く。)の使用する船舶、庁舎、営舎その他の施設内における犯罪」その次に「保安庁の所有し、又は使用する物件に対する犯罪」この以上申し述べました者の犯罪についてのみ司法警察職員としての権限を行うのであります。もつともこのことは決して一般警察の権限を排除したものでも何でもないのでありまして、この点私どもは係の者によく徹底するように申しておりますが、一般警察の権限と相並んで、特に保安隊、警備隊の中にこういうような職員を置きまして内部規律を維持させるということに主眼を置いていたしておるような次第でございます。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 保安庁法の第七十七条を見ますと、「職員の職務に関し職員以外の者の犯した犯罪」こういうことがありますので、一般市民を逮捕することもあり得ると思う。この「職員の職務に関し職員以外の者の犯した犯罪」ということの解釈の仕方によつては、一般人をみな逮捕できる。そこで一体この七十七条の職員の職務に関する犯罪とは何のことであるか。これをはつきりさせませんと、警務隊なるものがやはり昔の憲兵のように市民に干渉をして来る。あるいは思想の弾圧なんていうことも考えられる。思想の善導などが職務だということになりますと――たとえば今文部大臣が言つておりますが、保安隊は教育勅語を頭に張りつけていてやらなければならぬというような善導をやられた際に、あんなものは封建道徳じやないかというと、職務に関して反対行動をするようなことになる。そうするとこの七十七条で逮捕しろというようなことが起らないとも限らない。そこで一体職務に関する犯罪というのはどういう意味であるか。その意味を明らかにしてもらわないとあぶなくてしようがない。
  39. 加藤陽三

    加藤政府委員 これはたとえば保安隊の内部で物資の調達等を担当しております職員に対しまして贈賄するというふうな行為を考えております。それからただいま御指摘になりました点は、私どももまことに重大に考えておる点でありまして、先般国家地方警察の方と警務官制度の運用につきまして協定をいたしたのでございます。その協定をいたしました趣旨は、御質問にありましたごとく、これらのものが昔の憲兵のごとく直接市民に対しまして司法警察権を発動するというようなことは極力避けなければならないというところに一つの重点を置きまして、その協定によりましてこれらの七十七条の各号に該当する犯罪につきましても、保安庁の施設の中で行われる犯罪と、施設の外で行われる犯罪とにこれをわけまして、保安庁の施設の中で行われるこれらの犯罪につきましては、建前といたしまして保安庁の警務官等がこの捜査に当る。もつともこの場合におきましても、一般市民同士が暴行傷害したというふうなものは、これを一般警察の方に扱つてもらうというようなことに考えております。  保安庁の施設外におきまする犯罪は、たといそれが保安庁の職員の犯罪でありましても、これは建前といたしまして一般警察の方に扱つてもらう、特別の必要がある場合についてのみこれらの保安隊、警備隊の警務官等が捜査を行うというふうに協定いたしました。この協定に従いまして、お示しの点は十分に気をつけまして履行して参りたい、かように考えております。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の質問の中には警務隊と国家警察、自治体警察の関係の問題があるのでありますが、今あなたはそれにお答えになつたようでありますが、そうすると協定というのはいかなる機関で協定されたのか、ひとつお伺いいたしたい。
  41. 加藤陽三

    加藤政府委員 この協定は、保安庁国家地方警察本部との間の協定なつております。自治体警察の方につきましては、ただいま東京警視庁にお願いをいたしまして、全国の自治体警察とり間に同様の趣旨の協定を結ぶように進めておるのでありまして、先日聞きました話によりますと、全国の自治体警察のうちで約半数のものはすでにこの協定を締結することに賛同を得ております。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、結局国家警察と保安隊で協定をやつた、そうしてその大体の標準は保安隊の構内においての犯罪は警務隊がやり、構外で行われたものは、保安隊員のやつた犯罪でも、いわんや一般市民の犯罪は一般警察がやるというふうに協定できた、この協定を自治体警察にも及ぼすつもりで今話を進めておる、こういうふうに承つてよろしいですか。
  43. 加藤陽三

    加藤政府委員 協定の文句を読んでみますると、「保安庁の施設内で行われた犯罪の捜査は、原則として保安庁が行うものとする。但し当該犯罪のうち国家地方警察が行うことが適当と認められるものについては、国家地方警察にその捜査を依頼するものとする。」施設外の犯罪につきましては、「保安庁の施設外で行われた犯罪の捜査については、原則として国家地方警察が行うものとする。但し当該犯罪のうち、保安庁の規律維持及び機密保持等のため特に必要なもの並びに保安庁が逮捕した現行犯人の犯罪については、保安庁がその捜査を行うものとする。」こういう協定なつております。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 警務隊なるものは員数をお聞きいたしますると非常に僅少なようでありますから、さような問題はないかと思いますが、一般警察が保安隊に協力を求め、あるいは保安隊の警務隊が一般警察に協力を求め、協同して犯罪を捜査するということは想定されておりますか、されておりませんか。
  45. 加藤陽三

    加藤政府委員 事柄によりまして協同して捜査を行うことも考えております。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、その場合においてはだれが一体指揮をとることになるのですか。
  47. 加藤陽三

    加藤政府委員 これはおのおのの責任において協同して協力してやり、事件をどちらが処理するかということは、その際に話合してきめるという考えでございます。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 今般の九州地方におきまする水害につきまして、保安隊が出動されてこの救助に当られた。これはわれわれ感謝いたすのでありますが、大規模の出動は今回が初めてじやないかと考えられますので、将来のために、その出動径路を詳細に承りたいと存じます。いかなる人の命令によつて、それがどういう機関によつて出動することになるのであるか、その命令系統を一応御説明願いたいと思います。
  49. 加藤陽三

    加藤政府委員 御承知かと思いますが、保安隊、警備隊の行動につきましては、保安庁法にそれぞれ規定があるのでございます。保安庁法の規定するところによりますと、保安隊の出動につきましては、第一に命令出動というのがございます。これは、内閣総理大臣が非常事態に際しまして、治安維持のため特に必要があると認めた場合に命令が出まして出動するのでございます。その次には要請出動というのがございまして、これは第六十四条でございますが、「都道府県知事は、治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、当該都道府県公安委員会と協議の上、内閣総理大臣に対し保安隊又は警備隊の部隊の出動を要請することができる。」この要請に基きまして、保安隊、警備隊を出動させるというのであります。その次に災害派遣というのがありまして「都道府県知事その他政令で定める者は、天災、地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊の派遣を長官又はその指定する者に要請することができる。」この要請に基きまして部隊を派遣するというのであります。今回の九州の災害におきまする保安隊の出動はこの第六十六条の災害派遣の規定に基いて行つているのでございます。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は保安隊と自治体警察、国家警察及び場合によつては駐留軍、そういう関係におきまする指揮命令系統、協力関係、こういうものにつきましてお尋ねしたいと思つてつたのでありますが、これは保安大臣にお尋ねしたいと思うのであります。これは十三国会当時も私質問したのでありますが、当時は警察予備隊の当時で、まだ整備しておらぬ時分で、よく答弁なさらなかつたのであります。それ以来この質問がなかつたのでありますが、常時の場合及び国家非常時の場合、内閣総理大臣とこれらの警察隊、保安隊、こういうものがどういう指揮命令系統に立つものであるか、それから保安隊と普通一般警察がどういう協力の態勢になるのであるか。また行政協定にありまする騒擾の起りましたような場合に駐留軍が出かける場合に、この三者が一体どういう指揮命令系統で動くのであるか、さような点につきましてお尋ねしたいと思うのでありますが、これは保安大臣にお伝えいただきまして、この次の機会に質問申し上げたいと思いますから、あなたからお伝え願つておきたいと思います。私の質問はこれで終りました。
  51. 犬養健

    犬養国務大臣 猪俣委員に先ほどの御質問につきまして一言申し上げます。国際賭博日本で人もなげに、日本国を眼中に置かないように行われているということは、御同様実に苦々しく思います。つい先ごろでございましたが、入管局長に、一体こういうものが入つて来ることは第一自分としては非常に不本意である。あくまで法務省に入管局が属する限り、独自の権威を持つて相当厳格にやつてくれということを伝えました。それから猪俣委員の御指摘のように、詳しいことは存じませんが、何となく賭博について私の方で手ぬるいのじやないかといううわさを聞いたことがございますが、数日前に厳重にこの問題を処置するように命じてござまいす。御指摘の点をさつそく調べて、誠意を持つてお答えいたしたいと思います。
  52. 小林錡

    小林委員長 他に御発言はありませんか。――他に御発言がなければ本日はこの程度にとどめておきます。  次会の開会日時は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時九分散会