○山内
政府委員 私、調達庁の総務部長でございますが、
長官が他の
委員会に出席のためにこちらへ参れませんので、私から申し上げます。
お尋ねの眼目は、二十七年四月二十八日以降のようでありますけれ
ども、関連がありますので、その以前のことも少しく申し上げておきたいと思います。連合軍または駐留軍による不法行為による損害補償の問題あるいは見舞金の問題は、
二つの
考え方にわかれまして、講和条約発効前は見舞金の形式で支払い、講和条約発効後は行政協定十八条に基く民事特別法を制定しまして、それに基いて補償金として支払
つておるわけであります。見舞金の問題でありますが、これは占領早々からなかなか事故が多いのでありまして、これをほ
つておくわけにも参りません。そこで
政府としては、当時この補償の
責任は国際法上当然連合国軍側にある、連合国軍が負うべきものであるという見解のもとに、再三
交渉をいたしておりますが、なかなか解決がつきません。一方
交渉しながら、ほ
つておくわけにも行きませんので、昭和二十一年五月三十一日の閣議で初めて被害者に対して国費をも
つて見舞金を支給することにいたしたのであります。それからほとんど毎年のごとく、見舞金支給の閣議決定は改正されまして、漸次賃金基準の上昇とか、あるいは物価の騰貴とか、そういうことを
考えながら価格を引上げ、あるいは
範囲を広げるというようなことを、漸次や
つて参
つたのであります。GHQの方に賠償問題について
交渉をしておりましたところが、二十一年の九月、
本件について一切賠償
責任がないという回答があ
つたのであります。従いましてその後先ほど申しましたように、
日本政府の
責任において、見舞金支給の制度を漸次
内容を充実して今日に至
つたわけであります。しかし一方において継続して、この賠償
責任は連合国軍側にあるという見解のもとに
交渉はしておりましたが、いずれこれは講和条約の際にきめらるべきものとしておりましたところが、不幸にして二十六年九月八日調印された対日平和条約第十九条によりまして、一切連合国軍側に
責任がない、
日本政府は
請求権をすべて放棄するということに相なりましたので、いよいよこの見舞金というのは、完全に
日本政府の
責任においてやらざるを得ないことに
なつた次第であります。そこで見舞金として支給しました額は、支給件数が大体三千八百件くらい、四千件以内くらいに
考えております。金額としては三千三百万円、大体そういうようにな
つております。
そこで講和条約発効に伴いまして、行政協定十八条に基く民事特別法が施行せられ、これらの事故による被害については完全補償の建前がとられるようになりました
関係上、前に見舞金として差上げてあるものがあまりに少額であるという実情にありましたので、二十六年十二月四日の閣議で大幅な引上げをいたしまして、これは二十六年の九月八日以降の事故に適用することにいたしたのであります。さような
関係でありまして、その以前の不均衡に
なつたものに対しては、さらに二十七年の五月二十七日の閣議了解を得まして、二十二年の十月国家賠償法施行の日までにさかのぼ
つて、漏れたものはもちろんその額で支給しますが、すでに支給したものについても追給を認めることにな
つて、その事務を各府県に依頼し、府県の協力のもとに実施をいたしたわけであります。
それから見舞金の問題で、最後の措置としまして、以上のような状態で極力宣伝をし、漏れなく支給することに努めましたけれ
ども、今日の状態から見ますと、まだまだ相当漏れているものがあるように
考えられますことと、それから先ほど
法務大臣からの
お話もありましたが、国家賠償法の施行以前につきましては、この額が至
つてわずかでありましてその後増額をしてその国家賠償の施行までの追給を認めた
事情等から
考えますと、あまりに均衡を失しておりますので、これらについても何とかもう少し適正な額を支給しなければならぬという問題があるわけであります。何としても漏れたものがあるかどうかという調査をすることが先決問題でありますので、すでに数箇月前から地方府県知事あるいは調達局の末端の方にも書面を出し、あるいは
新聞広告といたしまして、この漏れたものを調査して今集めております。近く集まると思いますので、それに基きまして、しからばそういう国家賠償法地行以前のものに対してどの
程度の額を支給したらいいかというようなことを、現在すでに大蔵省方面ともいろいろ協議中でありますが、まだ決定を見るに至
つておりません。近く決定を願いまして早く実施をいたしたい、しかも漏れなく支給をするようにいたしたいと
考えて、せつかく努力をいたしておるような次第であります。以上、簡単であります、占領期間中の見舞金の状態として申し上げた次第でございます。
次に講和条約発効後の被害の補償でありますが、これは御
承知の
通り行政協定十八条に基きまして民事特別法を制定して、この
法律によ
つて実施をいたしておるわけであります。この
法律に基きます賠償金は、言うまでもなく
日本と駐留軍との両方で分担するわけでありまして、最近
日本の分担が二五%、米国側が七五%ときま
つて、これによ
つて精算するわけでありますが、現在支払いは、とりあえず
日本政府が全額立てかえておるようなわけであります。そこお尋ねになりましたいろいろの
手続関係、あるいは基準の問題でありますが、
手続としましては、行政協定の上では簡単に書いてありますが、実際の
やり方はなかなか複雑にな
つておりまして、この
手続はどういうふうにな
つているかと申しますると、最初事故が発生いたしますれば、
警察署及びMPの調査があるわけであります。それから補償申請となりまして、
本人から市町村に提出し、市町村が受理してこれを府県に送る。それからなお事故発生証明というものが必要でありまして、これは
警察署から市町村を経由して、各都道府県に送られるのであります。なおまた被害発生状況調書というものも必要でありまして、都道府県が作成して、以上申し上げた
書類とともに調達局に送る。それから地方の調達局では英文の一定の様式がきま
つておりまして、それにはめ込みまして全部
内容を英文に訳して、調達庁
内容を英文に訳して、調達庁本庁に送るとともに、一方被害の調査査定に着手するのであります。本庁ではそれを米軍の担当者の方に提出するわけでありますが、これは何のためかと申しますると、行政協定十八条の四項に基きまして損害を与えた駐留軍の要員が、当時公務執行に従事していたかどうかを米側と協議のために出すのでありまして、その
書類は米軍の陸軍、海軍、空軍、それぞれその所の加害者の所属によりましてそれぞれの当局に送付するわけであります。軍の当局はそれをいろいろ調査機関にかけまして調べまして、そうして調書をつく
つて日本側の
意見との照し合せをして、それから軍の
意見をきめて
日本側に回答する、両者の
意見が合致しまして公務上ということになりますれば、それによ
つて今度はまた地方の局に返りまして、いろいろ金額の査定をや
つて決定をして、支払いは府県でやる、こういうことにな
つております。それから合意が成立しない場合には、問題を日米合同
委員会にかけて、合同
委員会できめる、そういうことにな
つておるわけであります。そこで合同
委員会でやはり
責任ありということになりますれば、先ほど申しましたようなわけでまた地方の局に返りまして、局が決定して府県に通知して支払いをする、こういうわけでありますが、その場合に、公務上でなか
つた、公務外であると決定した場合にはこうなるかと申しますると、これもやはり行政協定の十八条に
規定してありまして、そういう場合には米軍の方で慰藉料を出すという根拠がありますので、それに基きまして
日本側で全部、米軍の
要求する
書類をつく
つて英訳して出しまして、そうして米軍が慰藉料の額をきめて、
日本側に通知する、こういうことに相な
つております。
補償の状況はどうか、昨年の四月二十八日以降、この行政協定によ
つて民事特別法を実施した状況はどうかというお尋ねでありますが、本年の四月末日現在で約四千百件あるわけであります。そのこまかな内訳は略しますが、一番多いのは何とい
つても交通事故であります。それから航空機の事故あるいは海上の船の事故その他暴行脅迫あるいは無銭飲食というようなものが、その四千百件の中に五百七十件を占めております。交通事故は三千四百件、そのうち示談解決を行
つたものとあるいは
請求権を放棄したものが約五百件ございます。以上述べましたほかにも、被害が軽微なために
請求をあえてしなか
つたものが相当あるものと想像されますけれ
ども、なかなか明確な数字はわか
つておりません。たとえば神奈川県の例でありますが、発生件数が約千百件のうち五百九十一件、すなわち半数以上は数回の照会をいたしたにもかかわらず、
請求するかどうかの態度が不明であるというようなわけでありまして、全国的に、以上申しました数字のほかに、相当たくさん事故があるものと
考えてさしつかえないのであります。それから都道府県調達局を経由して、公務外と決定のために調達庁に送られた件数は、五月末日現在――前に申し上げました数字は四月末の数字でありますが、そのうち五月末日現在で本庁に
手続をと
つたものが八百十八件、申請者の数にしまして九百七十九人、その九百七十九人のうち、駐留軍当局との間に公務上、外の決定を完了したものが五百七十二人、それからその中で公務上が四百三十人、公務外が百四十二人であります。合せて五百七十二人だけが、正式に米軍の方で公務上あるいは公務外と決定いたしたわけであります。しこうして五月末日現在において国が補償金の支払いをいたしたものは二百四十件、金額にいたしまして二千八百十一万一千七百九十一円、かように相な
つておる次第であります。それから駐留軍当局がさきに申しました慰藉料を支払
つたものは十件ございまして、金額として三百七万九千二百九円とな
つております。
なお今申しましたように、この処理が非常に遅れております。まことに遺憾なことでありまして、あえて弁明する
意味でありませんが、仕事の実情を御理解を願う
意味で、なぜそんなに遅れたかということを、ちよつと申し上げさしていただきたいと思います。この事務を開始をするために、先ほど
手続として申しましたように、初めての仕事でありますのでなかなか準備がむずかしか
つたことと、一々駐留軍と御相談をしてきめなければならぬというようなことで、すべての実施準備ができたのが非常に遅れた。それからこれも先ほど申しました中にございますが、占領中の見舞金の追給事務をおそくな
つてから始めまして、その仕事が相当たくさんな件数に上り、各都道府県の担当課は、それぞれその事務に忙殺されたというような
事情にあ
つたこと、それから
請求自体も非常におそいのであります。これは性質上おそくなるのもやむを得ない点もあるのでありますが、とにかく
請求もおそい。それから私
ども最も遺憾に思うのは、十八条四項に基いて、公務上あるいは公務外の決定を受けるために駐留軍当局の
手続を受けるわけですが、その日数が非常に長い。今までの実績をとりますと、一件平均私
どもの方で提出をして決定を受けるまで五十六日を要しておるような状態であります。それからなお
責任がどこにあるかということが大前提になるのでありますが、交通事故の中でも御
承知のような
事情でありますので、しかもまた軍は軍としてのお
考えがありまして、なかなかこれがむずかしい。どこに
責任があるということを決定するのが非常にむずかしいということも遅れる原因であります。
以上申しましたような事務の実情でありまして、できるだけこれの促進をはか
つて、この仕事が円滑に運ぶようにというので、米軍当局とも現在折衝中でありまして、今申し上げた遅れた
理由もかなり解決をいたしております。最近はだんだんと早くな
つて参
つているよう状態であります。今後もこの仕事につきましては、極力米軍当局と
交渉して早く進行するように、しかもまたその決定が私
どもの常識と合致するような決定をされるように、決定の仕方等についても十分
交渉して参りたい、かように存じております。
それから最後に基準でございますが、これはもしお許しを得られるならば、ここで数字を申し上げることを省略しまして、いずれ印刷をして差上げたいと思います。