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1953-06-30 第16回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月三十日(火曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 細迫 兼光君 理事 井伊 誠一君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    福田 喜東君       牧野 寛索君    中村三之丞君       猪俣 浩三君    木下  郁君       山本 正一君    岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         内閣官房長官 田中不破三君         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      山内 隆一君         保安庁人事局長 加藤 陽三君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 六月三十日  委員神近市子君辞任につき、その補欠として井  谷正吉君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月二十六日  判事補職権特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇九号)(予) 同日  英国エリザベス女王陛下戴冠式に伴う戦争犯罪  受刑者恩赦に関する請願松平忠久紹介)(  第一八〇一号)  戦争受刑者に関する請願庄司一郎紹介)(  第一八〇二号)  千歳町に区検察庁設置請願町村金五君紹  介)(第一八〇三号)  千歳町に簡易裁判所設置に関する請願町村金  五君紹介)(第一八〇四号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十七日  戦犯者山西信治の赦免に関する陳情書  (第  四九〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  判事補職権特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇九号)(予)  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  まず判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。本案趣旨について説明を求めます。犬養法務大臣。     ―――――――――――――
  3. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま議題となりました判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案についての提案理由を申し上げます。この法律は、御承知通り判事補職権特例裁判官任命資格特例とを定めたものでありますが、今回の改正案は、前国会提案しましたものとまつたく同じ内容のものでありまして、元の法務官公正取引委員会事務局審判官満州国律師等の職にあつた者のその在職年数を一定の条件のもとに裁判官任命されるに必要な職歴年数等に通算しようとするものであります。すなわちその要点は次の六点であります。  第一点は、旧裁判所構成法による判事または検事たる資格を有する者が、元の法務官の職にあつたときは、その在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第二条第二項の改正規定及び第五条の改正規定の前半の部分は、この趣旨から立案したものであります。  第二点は、旧裁判所構成法による司法官試補たる資格を有し、元の法務官在職年数が通算して三年以上になる者の、その三年に達したとき以後の在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、新たに第二条の二第二項として加えた規定は、この趣旨から立案したものであります。  第三点は、旧弁護士法による弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終え考試を経た者の、その考試を経たとき以後の元の法務官等在職年数裁判官任命資格に関する法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、新たに第二条の二第一項として加えた規定は、この趣旨から立案したものであります。  第四点は、旧裁判所構成法による判事または検事たる資格を有する者が、公正取引委員会事務局審判官等の職にあつたときは、その在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第二条第三項の改正規定及び第五条の改正規定の後半の部分は、この趣旨から立案したものであります。  第五点は、司法修習生修習を終えた者が、公正取引委員会事務局審判官等の職にあつたときは、その在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第三条の二の改正規定は、この趣旨から立案したものであります。  第六点は、弁護士たる資格を有する者が、満州国律師の職にあつたときは、その在職年数裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第三条の改正規定は、この趣旨から立案したものであります。  以上申し上げました各職については、その職務の性質上、その在職年数裁判官任命または職権制限を受けない判事補指名に必要な法定職歴年数に通算することができるようにすることがきわめて適切であると考えるのでありまして、これによりまして、裁判官任命できる者の範囲及び職権制限を受けない判事補として指名できる者の範囲を拡張し、もつて裁判官の充実に資するとともに、人事の交流を一層円滑ならしめようとするものであります。  以上簡単にこの法律案提案理由を申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終了いたしました。なお本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。さよう御了承を願います。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 人権擁護に関する件について調査を進めます。  前会に引続き質疑を行います。質疑の通告があります。順次これを許します。木下郁君。
  6. 木下郁

    木下委員 田中政府委員にお伺いしたいのですが、新聞の伝うるところによりますと、佐賀県選出の三池議員に対しまして、所轄裁判所から国会法に基く逮捕要求があつたということであります。かようなことがありましたかどうか。
  7. 田中不破三

    田中(不)政府委員 お答え申し上げます。ただいま木下委員からお尋ねのありました通りに、佐賀地方裁判所から、三池信代議士逮捕要求書が五月二十三日付で参つております。
  8. 木下郁

    木下委員 その要求書国会法に基いて、内閣の方にあつたものと思いますが、その五月二十三日付の要求書は、内閣にいつ提出されたでありましようか。またその内閣受取つた要求書を、内閣の方では国会に提出されたことと思いますが、その期日等を承りたい。
  9. 田中不破三

    田中(不)政府委員 五月二十三日付の要求書は私の方でこれを受取りましてから、実はできるだけすみやかに国会に提出すべきものとは存じたのでありまするが、ちようどたまたま三池信代議士現地の方に行かれて出頭されるということも聞き及びましたし、それからちようど休会直前国会におきましては、非常に御多忙なことと推察いたしました。暫定予算案あるいは参議院の緊急集会で議決されました案件の御処理を、ごく数日間で、衆議院においてなされなければならないので、私といたしましては国会休会直前の非常に御繁忙な時期であるということも一応考えまして、従つてしばらく模様を見たいと存じておりました。ところがそのうちに休会になりましたために、自然提出をいたします時期を失したわけでありまして、この点はまことに申訳ないと存じております。
  10. 木下郁

    木下委員 そのお取扱いのことは、当然官房長官にも御報告になつて、さようにお取扱いなつたことと思いますが、さようでございますか。
  11. 田中不破三

    田中(不)政府委員 この点ただいま申しましたような実情でありましたので、私一人の所存処置をいたしたのであります。
  12. 木下郁

    木下委員 今のお取扱いにつきまして、議員逮捕ということは、国会権威の上にまことに重大な関係を持つものである。またごくまれに起る事柄である。さようなものを一副長官が一人の所存で処理してよいというふうに、その当時はお考えになつてなさつたことでありますか。それとも多忙なために、長官にするようなひまがなくてそれができなかつたのであるか、さような事情をもう少し詳しく承りたいと思います。
  13. 田中不破三

    田中(不)政府委員 今木下委員お話通りに、あるいは長官なりその他の関係の向きにさつそく連絡をとるべきであつたと存じますが、ちようど先ほど申しました通り国会の非常に忙しいときであり、また従いまして政府も非常に多忙をきわめておりましたときでありますので、私一人の所存でこういう処置をとつたのでございます。この点はあるいは独断に流れ過ぎたといううらみがあるかとも思つておりまするが、まことに申訳ないと思つておりす。
  14. 木下郁

    木下委員 そのまま長い間国会に提出しないで、そういうお取扱いなつ理由として、今三池議員が自発的に山頭するからというようなことも一理由になつたようでありますが、逮捕するのは本人が出るからというのではなくして、調べた本人を外との連絡を絶つて証拠を隠滅したりするような策謀のできないようにする。言いかえれば捜査権を完全にやるための逮捕なんです。憲法で定められておる通り、会期中は、自発的に出て行くのはかまいませんが、つかまえて外との連絡を絶つことができない。そのために、憲法五十条で国会権威のために特に規定せられてあるあの規定の例外を、国会法では設けてある。従つて本人が出て調べられるのだからというようなことで、その逮捕をゆるめるという理由には相ならぬのでございます。さような意味において、今お話理由はまつた理由にならないし、見当違い理由であると思う。また国会暫定予算審議のために非常に多忙であつたと言うが、しかし国会権威を保つためには、この逮捕問題こそ国会に提出されなければならない。憲法の威信を保つ上からいつても、これは国会に提出されなければならぬ。私の見解によれは、そんなにひまのかかる事案でもないし、先議するという意見も当然あり得る問題だと思う。さような国会の内輪の事情というものを、普通に言う実員的な審査というようなものを、一官僚である副長官がするということが非常な間違いであり、非常な越権であると私は考えるのであります。それはあて名が間違いで、最高裁判所長官あるいは法務大臣とかいうことになつておるからというような意味で、形式審査権能はお持ちだと思います。しかしその実質審査権能を一副長官のごときがかれこれするということは、私としてこれは言語道断なやり方だと思うのでございます。その点について今いかようにお考えになつておるか伺いたいのであります。
  15. 田中不破三

    田中(不)政府委員 お答え申し上げます。木下議員のおつしやいますことにつきましては、私どもとしましても十分注意をいたしたいと存じます。なお本件は六月二十日に逮捕状請求者から、その請求の取下げの要求がありまして、従つて佐賀地方裁判所からも許諾要求撤回を通知して参つておりますので、その辺もあわせて御了承願いたいと思います。
  16. 木下郁

    木下委員 逮捕要求撤回があつたとかなかつたとかいう事後の結果については、毛頭私は問題にいたしているのではありません。またそういうことを問題にする必要を感じておりません。ただ今後注意をするつもりだとかいうようなお言葉がありましたが、私の伺いたいのは、一官僚が、国会権威に関するかような重大問題について――形式的審査権能は、それは私もあると思いますが、実質に入つて、ことに政治情勢いかん国会運営状況いかんというような問題まで立ち入つて司法捜査権独立に対する重大な規定運用について、さような取扱いをしたことについて、それを妥当と考えおいでになるか、それとも再建日本民主憲法運営の上において、まことに間違つた取扱いをしたというふうにお考えになつているのか、その点が伺いたいのであります。
  17. 田中不破三

    田中(不)政府委員 劈頭に申し上げました通りに、まことに申訳ないことであると、私の心境を申し上げておるのであります。なお、ただいま御注意のありましたことについては、今後十分気をつけて参りたい、このように考えております。
  18. 木下郁

    木下委員 副官房長官に対しましては、本件の事実と、そのおやりになつ取扱いの反省の点もわかりましたが、なお一点、これは関連して犬養法務大臣にお伺いしたいと思います。犬養法務大臣も、天皇権威のなくなつた今日、日本の綱紀は、司法独立がいかに尊重され、擁護されるかという一点にかかつていることは、お認めだと思います。さような意味で、国会権威司法権独立という意味からしまして、この問題はまことに重大問題だと私は思つておりますが、法務大臣は、この取扱い等についていかようにお考えになつておりますか。
  19. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。これは裁判所から内閣参つた通知に関してでございまして、直接私ども職権には関係のないようなものでありますが、事柄選挙違反でありますから、私も実際問題として無関心ではなかつたのであります。また無関心であつてはならなかつたのでありまして、実は内閣が故意に握りつぶしておられるような印象を与えることはまずいと思いまして、その点について私の、公の交渉というわけには参りませんが、考え方内閣に伝えたことはございます。さよう御承知願いたいと思います。
  20. 木下郁

    木下委員 その公の交渉考え方内閣にお伝えになつたというというのは、どういう内容でありましようか。この問題をかような取扱いにしておつたのではいけないから何とかしようということじやなかろうかと推察されるのでありますが、その点もう少し詳しく承りたい。
  21. 犬養健

    犬養国務大臣 ほつたらかしにしておくのはまずいので、何か急速な御処置が願いたい、こういうことでございます。
  22. 木下郁

    木下委員 それはいつでありますか。その時期を伺いますが、もう国会自然休会なつたころでありましようか、それとも田中長官のところでその書類がじつととめられておるときでありましようか。
  23. 犬養健

    犬養国務大臣 これは率直に申し上げまして、私もこの問題は直接私を経由した書類でないものですから忘れておりまして――忘れるのはけしからぬのでありますが、何か新聞にそういう話が出まして、びつくりして伝えたのがもう休会直前であつた新聞の書き方が、休会入ろうとするのにというぐあいで、まさに入ろうとする前日ぐらいでしたか、夕刊か何かに出まして私も大いに注意を喚起されたわけです。それで内閣に、休会になるのだがこれはどういうことになるのか、こう申し上げたことがあります。ですが、これは申し上げるまでもなく、直接私が経由させた書類でないものですから、ごくほんの意見の具申をする程度にいたしたわけであります。
  24. 木下郁

    木下委員 繰返して申しますけれども、この問題は、ただ裁判所判事不心得があつたとか、あるいは検察当局不心得があつたとかいうような問題なら、これもまた重大な問題ではありまするが、それよりももつと対国会、対司法という二つ関係があります。ことに私が強く感じて申し上げることは、主権者たる国民を代表しておる国会、その国会が、ややともすればまだ昔の姿のあの天皇主権時代国会の形において官僚群によつて取扱われる傾向があると思う。戦争に負けて占領軍によつて大幅の追放がされました。政界を初めとして、軍は解体され、実業界にも経済界にも大幅の追放がされて、日本の古い姿が大掃除をされたのでありまするが、その中で官僚群は比較的昔の姿が温存されておる。そうして、その温存のやり方についても、当時占領軍との折衝に当つた一連官僚群の中に私的な考えもあつたのじやないかと疑われる筋もたくさんあります。そのいきさつはとにかくとしまして、一番昔の日本天皇主権時代日本のかたまりとして温存されておるのがこの官僚群であると考えております。その官僚群のものの考え方、それがまだ日本のこの民主憲法運用の面において、日本民主化を推進する面において非常なじやまになつておるというふうに考えておるのであります。さような意味もありまするので――田中長官は、承るところによれば国会議員として民主化のためにもお骨折りになつた方であるということであります。しかしその前歴のいかんということだけでこれはできません。その事柄自体からいつて、私は重大な問題だと考えておる次第であります。さような意味において、どうか内閣においても十分この問題については検討されるように希望する次第であります。私の質問はこれで終ります。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して伺います。私も、これは明白にしておかなければならぬ問題だと思つておりましたが、憲法第五十条から見まして、議員国会開会中には逮捕されないということが原則であると私は心得えておりますが、この点司法部並びに裁判所側はどのようにお考えになつておりますか、まず伺います。
  26. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。御意見通りでありまして、従つて、今問題になつております逮捕要求というものは、この除外例で、よくよくの場合についての処置要求して来たものと思います。従つて、その要求の仕方から考えましても、原則は、憲法によつて保護せられておる権利を国会議員は持つている、さよう御承知を願います。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうなりますと、ただいま問題になりました三池君の逮捕要求は、この特別の規定を適用せなければならなかつたという特別の理由がなければならぬと思うのですが、この点御承知の方があるならば承りたい。
  28. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点私の直接の担当ではございませんが、この件に関しまして若干の事情を後日調査した報告が参つておりますので簡単に御紹介いたします。  御承知国会法第三十四条の二に基きまして、この手続をいたしますにつきましてはなかなかめんどうな条件があるわけでございますが、実質的には、逮捕状要求するに至る刑事訴訟法上の要請を全部満たさなければいかぬということに相なるだろうと思います。その点につきまして、現地からの報告によりますと、関係選挙違反を調べている間に三池信氏の選挙違反の事実が出て参つたというのであつて、それを調べるにあたりまして一証拠隠滅を防止するために逮捕を必要とするという理由一つと、それから逃亡のおそれありというので要求する、この二つがこの事情になつているようでございます。さらにこれを詳しく申し上げますと、被疑事実が幾つかあるのでございますが、その間の関係人供述本人供述と照し合せてその真相を明確にするためには、身柄不拘束のままで調べることはどうも困難であるというような認定をしたようでございます。それから弁解があつた場合に、その弁解に基いてある種の証拠隠滅が行われるのではないだろうかと、これはおそれでありますが、さようなことを現地捜査当局考えておつたようでございます。これを裏づける一つ事情といたしまして、共犯者の一人である古賀隆という人がおりますが、これが逃走中でございます。従つてそういう関係者供述の口裏を合せるようなことがあつては困るというふうなことを考え模様でございます。なお逃亡のおそれありという点につきましては、最初五月一日に、これはまだ国会開会前でございますが、逮捕状が発付されまして、翌二日佐賀市警の署員が上京して調べてみたところが、本人が所在不明であつた。この調子で行くと、今後も逃げるんじやないだろうかというふうな認定をした模様でございます。なおその他いろいろ佐賀市警で捜査しました結果、どうもこのままでは、本人の居どころを確定いたしまして、これに対してたとえば起訴する場合に、起訴状の送達をするようなことは不可能であろうというふうな諸般の情勢から、手続をした、かような報告が参つております。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 刑事局長報告を言われたのだから、私はあなたを相手に議論はいたしませんが、さようなことを、国会議員逮捕しなければならない特例とお信じになりますか。いやしくも国会議員国会に出ておるのに、居所不定だなんて、一体さようなことは通じますか。国会に出ておらぬのならばともかく、毎日出席しておりますから、逃亡のおそれありといつても、どこへ逃亡しますか。国会の中に逃亡するというのですか。報告をおつしやるだけならばよろしいが、あなたがそれが特例だと言われるならば、もう一ぺん聞かしていただきたい。
  30. 岡原昌男

    岡原政府委員 結局刑事訴訟法逮捕状要求の要件たる、さような逃亡のおそれあり、あるいは証拠隠滅のおそれありというふうな点についての現地認定が、ただいま私が報告要点を申し上げただけでは、あるいはまだ不十分だというふうな御感じを受けたかと思うのでございます。この点は、現地でさように信ずるに至つた十分な理由があつたのではないだろうか、かように私どもは想像いたしております。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはひとつ現地の人に来てもらうか、また裁判所がそのような要求を出された根拠を承りたいので、ぜひともこの点は明らかにしてもらいたいと思います。そこで私は刑事局長なり法務大臣にお伺いしたいのだが、現地はさようなことを思つたでございましようが、あなた方はそうお信じになりましたかどうか。国会議員国会内に毎日出ておるのに、逃亡のおそれありと言つて来たからといつて、なるほど逃亡のおそれありと思われたのか。ないにもかかわらず、言つて来た場合、監督の地位にあるあなた方としてはどうなさいますか。
  32. 岡原昌男

    岡原政府委員 具体的事件につきまして、法務大臣現地警察を指揮するわけにも参りませんし、現地の方に対しましては、検事総長を通さなければいかぬということになるわけでございますが、この事件につきましての報告は、実はいろいろ問題になりまして、そのあとでかような点についての詳細な報告を徴したような次第でございます。その当時といたしましては、私どもはただ、佐賀市警から裁判所に対して、逮捕状要求をしたそうだ、それに基いて内閣の方に書面が来たそうだという程度にしか、実は知らなかつたのであります。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は実は自警に対する責任というものをこの点から考えたい。これは佐賀市警がやつておるので、あなた方の方でそれは自警であるがゆえに監督することはないといつたら、自警というものはやりほうだいのことをやることになる。これは重大なことだから、この間も聞いたが、いずれまた聞かなければならぬ。これは国会としての重大な問題だと思いますので、この点今後いつの機会でもよろしゆうございますから、責任者が出て明白にしてもらいたい。  それと同時にもう一つ私は聞きたいのは、一体今言われたように、何でも逃亡のおそれあり、証拠隠滅のおそれあり、これはきまり文句である。さような文句をもつて逮捕しなければ調べられないという観念を、警察当局なり検察当局が持つておられるのですが、あなた方もさよう考えおいでになりますか。
  34. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは事件々々によりまして、実は私どもとして原則としてどちらということは申し上げかねるのでございますが、ただ訴訟法の建前から申し上げますと、われわれとしては、身柄を拘束しなくとも調べのできるものは、これはすべきものではない、さようなことを考え、またそのように下部にも伝達してある次第でございます。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今田中長官も言われたように、本人がわざわざ出て行つておる。出て行つて、調べてくれと言つておるのだから、調べればそれでよろしい。それを逮捕しなければ調べられない、この観念が一体どこから出て来るのか、われわれは了解に苦しむのです。この点をあなた方は御承知でしようか。
  36. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいまお尋ねの点は、その本人鍛冶さんと一緒に現地に参つて佐賀市警の調べを進んで受けるからということを申し出たとのことと存ずるのでございますが、なるほど六月九日に……(鍛冶委員「いや、その前……。」と呼ぶ)参りましたときに、その点について佐賀の地検において三日間ですか、実は調べをいたしております。なおその前に三池氏が現地に参つたことも、その当時たしか電報で報告を受けておりますが、その当時の佐賀現地の空気といたしましては、ちようど手続をした直後であつて、その手続がどのようになるか、今のところまつたく見当がつかないので、さてどうしたらいいか、わけがわからぬというふうな、現地限りの判断ができなかつたということを、これを後日佐賀の検察庁の報告を聴取したときに持つてつたよう考えております。
  37. 木下郁

    木下委員 今鍛冶君から逮捕要求をする理由があつたかなかつたかという点を明らかにするために、調査を求めた。私はこれに反対をするわけではありませんが、私の提起した問題は、これとは関係ないのであります。逮捕要求が妥当なりやいなやは、その要求国会に提出されたときに、われわれが判断すべき問題であります。私どもの問題にしておるのは、その要求書が出たときに、形式的な審査はよろしい、しかしながらその当時の政治情勢、その他三池君が自発的に出頭したから云々というようなことは、全然問題にならないのだという点であります。この区別ははつきりしておいていただかぬといかぬ。また私は先ほど申しましたときに、証拠隠滅の危険があるということで出たものであろうというふうに申しました。今鍛冶君のお話で、逃亡という問題が問題にされておるようであります。私は三池君の同僚議員の名誉の上から、その逃亡という言葉をことさら省いたのであります。しかし悲しいかな、私の記憶で確かでありますならば、日本国会史の中でも、森山という議員身柄の自由な国会開会中を利用して逃亡して、遂にわからなかつたというかつての不名誉な事例もあるのであります。さような意味で管轄裁判所が主観的に必要ありと判断したならば、その判断が妥当なりやいなやというようなことを内閣において要求書を単に取次げばよい。早く言うならば郵便局みたいなもので、郵便局はこのはがきはあまり急ぐはがきじやないから、持つてつても受取人は今忙しくてとてもこんなものをそんなに急いで返事を出すひまもなさそうだからというようなことで、これを二日、三日押えておくというようなことは考えられぬ話である。妙な例を引きましたが、それと似たようなかつこうになつている。私の問題として提起しているのはその問題であります。逮捕要求が妥当な根拠ありやいなやという問題を問題にしておるのではありません。それはその要求書国会に出たときにわれわれが判断すべき問題であります。その後その要求書撤回したというような事情があるなら、これはどういう事情撤回したのかわかりません。鍛冶君のいわゆる国会開会中の議員逮捕というようなものは、要求する相当の根拠と自信がなければすべきではありませんが、それを一たび出しながら再び撤回する、その後の捜査の内容いかんによつて不必要になつたかしれませんが、しかしそういう問題等についても、お調べになることにことさら反対するわけではありません。しかし私の提起した問題はそれとは関係がないのでありますから、その点を一言申し上げておきます。
  38. 細迫兼光

    細迫委員 法務大臣にちよつとお伺いします。田中官房副長官はあなたの直接の監督すべき系統の地位にはないと存じますが、しかし内閣の構成員の一員として、国務大臣として、この内閣の一公務員がとつた処置が妥当であると考えられるか、妥当でないと考えられるか。それについて責任ある答弁をなさる義務があると思いますが、いかがでありますか。
  39. 犬養健

    犬養国務大臣 これはあまり飾らずにお答えいたしたいと思います。私もこういうことは木下さんのおつしやるほどすぐに速達みたいにポケツトから筒抜けに飛んで行くような早い処置はいらないと思いますが、しかし遅いということはまずいと思います。私が初め聞きましたときは、共産党の渡部義通君の逮捕要求があり、やはり内閣で数日ですか、もつとですか、かかつたことがある。大体内閣というのは、従来そういうものを処理するのにどのくらい日にちがかかるかということをしろうとですから聞いたわけですが、渡部君のときも相当日にちがかかつてつたということで、やはり数日くらいかかるものだというような常識をもつてそのようにやつてつた。ごく率直に申し上げますと、新聞に出てこれが社会の注意を喚起するようなことになつて来てはおもしろくないので、内閣としては、どんな事情があるか知らないが、なるべく早く処置されるようにということを申したのであります。これがごく飾らない御報告であります。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は、木下君の言われる通り、別に木下君の質問と同じことを質問しておるのではありません。いずれ聞かなければならぬと思つた問題ですから聞いているのであつて、その点は十分区別をしておるつもりでございます。そこできようはほとんど間接の方々ばかりですから、この程度にしておきます。いずれ検事総長並びに逮捕状を出された裁判所、これは直接の人でなければ、最高裁判所から十分な御報告を得たい、それから要求せられた捜査官の責任ある答弁を承りたいと思ひますから、委員長においてしかるべくおとりはからいを願いたいと思います。
  41. 小林錡

    小林委員長 猪俣君。
  42. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちよつと速記をやめるように願います。
  43. 小林錡

    小林委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  44. 小林錡

    小林委員長 速記を始めて。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは憲法二十九条の私有財産保護の規定から、私はやはり一種の国民の権利の侵害の事件じやないかと思いまして質問をするのであります。今問題になつておりまする内灘村の砂丘地七百町歩、この土地は昭和十二年ごろ金沢市におきまする報国土地株式会社というものが持つてつた。それが昭和十九年に時の陸軍省から演習地として取上げられ、終戦後再び戦時補償特別措置法第六十条の規定によりまして、報国土地株式会社に返還せられた。これが昭和二十四年の六月八日であります。その返還に際しましては、代金を政府に払つておる。そうして六月二十二日には報国土地株式会社の私有なりとして登記を済ましてあるのであります。しかるに、この代金まで払い込ませて戦時補償特別措置法によりまして報国土地株式会社に返還しましたこの土地に対しまして、その代金を受取りました六月八日から一週間日の昭和二十四年六月十五日に石川県の農地委員会を開きました。そうしてその農地委員会にはアメリカの軍政部のレツチヤラーという将校が出て、この農地委員会に対して訓示を与えておる。その内容は、これは未墾地として解放されるべきものだ、内灘村は貧村で耕地面積は非常に少い、ゆえにこれは農地委員会で買収計画を立てて取上げて、内灘村の村民に均分に分配すべきものであるという説明をし、石川県農地委員会ではその趣旨に従いまして、未墾地買収計画を立てて、自作農創設特別措置法に基きまして買収した。しかるにそれに対しまして報国土地株式会社はこの農地委員会の裁決は無理であると称しまして、今金沢地方裁判所に行政処分取消しの訴えを起しておる、その公判記録を調査いたしますと、石川県の農地委員会の答弁及び石川県知事の答弁は、これは内灘村の貧農に均分にしなければならないから、どうしても未墾地買収計画によつて取上げる必要があるのだと極力主張し、裁判所もまたそれを是なりといたしまして、報国土地株式会社を敗訴せしめ、石川県知事並びに石川県農地委員会の裁決を有効なりとして第一審が終つた。今なお報国土地株式会社はその判決に不服なりとして控訴中で争つているのであります。さような意味においてアメリカの軍政部までが介在し、未墾土地なりとして解放せしめたものを、内灘村民にこれを分配するという原則のもとに裁判も進行しておる。しかるにこれを今度は大砲を撃つ演習地にするというようなことにしておるのであります。私はこれに対してはなはだ疑義がある、一体自作農創設特別措置法によつて解放せしめたものを、これをその趣旨従つて解放せずして、またアメリカの演習地にするというようなことが許さるべきことであるかどうか、農地法の八十条を見ますと、一旦取上げた土地に対しては政令の定めるところによつて別の目的に使つてもいいような規定がある。そうしてその政令の十六条四号を見ますと、「公用、公共用又は国民生活の安定上必要な施設の用に供する緊急の必要があり、且つその用に供されることが確実な土地等」はこの八十条によりまして必ずしも農地にしないでもいいという規定がありますが、しかしほしいままにこの規定を適用するということは、これは法律の精神ではなかろう。もしさようにこの農地法の八十条をむやみに解釈いたしまするならば、これは個人の財産権などというものは吹き飛んでしまう。現にこれに関連いたしまして訴えられておることについて――これは同じことになるかと存じますが、横浜市の磯子区にあります四百坪ばかりの国道に面した土地であり、しかも付近は全部商店街である、この土地は、元家のできておつたのが焼けまして、しばらく家ができておらなかつたのを戦時中例の食糧不足の際に、そこに神主さんが野菜物をつくつてつた、それによりましてこれは農地なりとして農地委員会において買収、解放せしめられ、使用者はそれに対して異議の申立てをしたのでありますが、県農地委員会もその異議を取上げない、これが農地委員会で決定しました農地として使用せられるならば、まだ取上げられた人間もがまんするのでありますが、国で取上げておいて、これを農地として耕しておる耕作者に解放しないで、ただいまは消防署か何かが建つておる。しかも四百坪の土地で、目抜きの土地で買収費が全部で千円、この金を受取りに来いと言つても、あまりにばかばかしくて接収せられた人は受取りに行かないで、現在は消防署かどんどん建つおる。かように農地法を運用いたしまして、そうして国が強制的に取上げ、最初の農地解放の趣百に従つての用途に使うならばいざ知らず、ほかの用途にどんどん使つておる。そして二足三文の値段を払つておる。かようなことでこの農地法の八十条を濫用いたしますならば、憲法二十九条に保障しておる私有財産の安定というものはできつこない。そこで一体これはいかなる解釈をすべきものであるか。内灘村の事件も横浜の磯子区の事件も同じ見地に立つのでありますが、農地法の濫用である。内灘村自身もさような意味において軍政部の説明もあり、県農地委員会では開拓地として国家で取上げた、それをいつの間にか今演習地にしてしまう、かようなことは、一体許さるべき道理がない。これに対しての法律的な見解を私は法制局長官にお伺いしたいのであります。かような解釈でどんどんやつてよろしいか。それと憲法二十九条はこれに調和するものであるか。これは他にも幾多あると私は考えるのでありますが、かような問題について内閣としてはいかなる意見を持つておるか。それについて法制局長官から内閣の代表としての責任ある答弁を承りたいのであります。私どもはこの処置は違法なりとして、しかもこれを演習地に使うことは憲法第二十九条の違反なりとして、この行政処分に対しては違憲訴訟を提起する用意をしているのであります。これに対して内閣の御意見を承りたい。これは問題だけを私は出して、とくと御相談の上御答弁を願いたい。農地法の八十条の解釈、それから農地法施行令の第十六条の解釈及び憲法二十九条の解釈、これをいかに理解すべきものであるか、答弁を願いたいと思うのであります。  それからもう一つは、この内灘村にはこの国有地と、今言つた別な目的によつて解放せしめた国有地と、それから権現森と称するところに登記面二町、実測十二町歩の私有地があります。この私有地に対してこれを強制収用するのはいかなる法律に基きやるのであるか、しかもその手続を今やつているのかどうか、さようなこと。これは住民がここで日夜寝起きをしておる場所でありますが、これに対して内閣としてはいかなる見解のもとにいかなる手段を講じようというのであるか、これに対しても御答弁を願いたいと思うのであります。私は法制局長官と木村保安庁長官と外務大臣と呼んでおつたのですが、木村さんも外務大臣も都合が悪いそうであります。そこで後日その答弁を促すことにして、法制局長官の答弁だけは本日承りたいと思いますが、委員会の都合によりまして次会でもよいです。私の質問の要旨をよくお考えになつて、これに対して法律上の解釈をしていただきたい。  それから委員長、別な問題について質問がありますが……。
  46. 小林錡

    小林委員長 保安庁から加藤人事局長が来ておられますから、関連があれば、どうぞ。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それも今お聞きになつて木村長官と相談して、長官から説明してください。これは重大問題ですから、事務当局の説明じやない、内閣としての責任ある人の説明じやないと承服できないのです。  それからなお法制局次長に申し上げておきますが、裁判問題なんかも御調査だと思うのでありますが、それも御検討願いたい。そうして私の質問書にありましたように、高等裁判所における判決が第一審におけるものとまつたく違つているのです。これは農地だ農地だ、農地にすることが妥当だということで勝つているのですから、今度、演習地だだということになつたら、勝つかどうかわかりません、負けるかもしれない。この行政処分が取消されたら、内灘問題は一体どうなるのか。そういうことに対しての見通しもお聞かせ願いたい。  それから今度は、法務大臣と調達庁長官、これも長官おいでにならぬようでありますが、法務大臣がお見えになつておりますから、これは調達庁長官の出席を要求いたしまして、そのかわり法務大臣からもお答えいただきたい。
  48. 小林錡

    小林委員長 調達庁は総務部長が来ております。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務大臣おいでになるから、それでいいと思います。  進駐軍、ただいまは駐留軍でありますが、この軍人軍属等によりまして、日本人の受けましたる損害、これが一体どういうふうに補償されておるか、これを実は承りたいのであります。本年の五月十六日の読売新聞の伝えるところによれば、事件は五千五百件も発生しているが、補償を受けたものは百十五件しかない。その補償もまるですずめの涙ほどのものであるということが詳細報告されております。一体この実情がどうなつておるか。われわれ人権擁護の立場から、これを明らかにしなければならぬと考えて、質問するものであります。  そこで私がお尋ねしたいことは、昭和二十七年四月二十八日以前、占領期間中においていかなる事故があり、それがいかに処置されておるか、それから日本独立後、それがいかなる法制のもとに、いかなる処置をとられておるか。これは日本弁護士連合会の大きな問題として建議されている問題でありますから、調査なされていることだと存じまするが、その点について詳細な報告をいただきたい。  なお新聞記事によれば、五千五百件もあるが、補償が百十五件しかない、なお公にわからぬところの事件がどのくらいあるかわかりませんが、大部分は泣寝入りをしてしまつておる。権利の上に眠るということは民主政治下においては許されざることであります。そこで私はいわゆる指導階級において正しい指導をしなければならぬと思うのでありますが、かような被害者に対してほつておくべきではない、救済手段をとるべきことを普及する必要があると思いまするが、法務省なり調達庁はこういう権利救済に対して一体いかなることをやられておりますか、それを承りたいと思うのであります。  質問書に書いておきました通り、今申しました賠償の実際をお聞かせ願うとともに、賠償に対して基準があるはずであるが、その基準はいかなるものであるか、内閣で申し合せた基準があるということを承つておりますが、賠償の基準の内容をお示し願いたい。そうしてその賠償をすることについての法的根拠、それから調達庁の査定いたしました賠償額に不服の場合、被害者にいかなる救済手段があるか。  さようなことについて法務大臣でも調達庁長官でもよろしゆうございますから、御答弁いただきたいと思います。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。こまかいことは調達庁の方からお答えをいたさせたいと思います。私は大局から申し上げたいと思います。猪俣さんすでに御承知通り、平和条約発効前には、占領軍から損害を受けた日本国民に対しては、行政措置による見舞金を上げることになつておりました。平和条約発効後は、米軍関係は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う民事特別法というものがありまして、御承知通り、この施行は昭和二十七年四月二十八日となつておりますが、この行政協定に伴う民事特別法は昭和二十二年十月に施行されました国家賠償法に準じてつくつたものでございます。もう一つ、平和条約発効後の英濠兵関係については、行政措置を今考慮して内々進めておるのでございます。そこで私の就任いたします前の内閣の閣議でもつて、この国家賠償法施行以前における損害に対しては、事実上処置をしないようなことになつてつたのであります。そこで私が本年四月でございましたか、広島県に参りまして、ことに外国軍隊から日本国民が受けた被害のはげしい呉に参りまして、その実情を聞きまして、これはほつておけないと考えまして、最近の閣議におきまして、行政措置による見舞金を英濠兵関係から損害を受けた日本人に対しても上げることにいたしたのであります。その窓口としての措置をこうするか、金額をどのくらいにするかということは、これは調達庁の決定にまつことでありますが、国務大臣として調達庁長官といろいろ話し合つております。ごく率直に申し上げますと、少くも遺族に対して国家が差上げておる五万円以上のものにはしたいものだ、あとは財政の事情によつてまたお互いに相談し直そうという話合いをしておりますが、この金額については閣議了解事項とか閣議決定にはなつておりません。私と調達庁長官との間の国務大臣同士の話合いということになつておるわけでございます。従つてこまかい規則上のことは、調達庁から後刻御説明があると思います。私はつまりひどい目にあつて泣寝入りになる日本人をつくりたくない、こういう趣旨で政治措置をしているわけでございます。
  51. 山内隆一

    ○山内政府委員 私、調達庁の総務部長でございますが、長官が他の委員会に出席のためにこちらへ参れませんので、私から申し上げます。  お尋ねの眼目は、二十七年四月二十八日以降のようでありますけれども、関連がありますので、その以前のことも少しく申し上げておきたいと思います。連合軍または駐留軍による不法行為による損害補償の問題あるいは見舞金の問題は、二つ考え方にわかれまして、講和条約発効前は見舞金の形式で支払い、講和条約発効後は行政協定十八条に基く民事特別法を制定しまして、それに基いて補償金として支払つておるわけであります。見舞金の問題でありますが、これは占領早々からなかなか事故が多いのでありまして、これをほつておくわけにも参りません。そこで政府としては、当時この補償の責任は国際法上当然連合国軍側にある、連合国軍が負うべきものであるという見解のもとに、再三交渉をいたしておりますが、なかなか解決がつきません。一方交渉しながら、ほつておくわけにも行きませんので、昭和二十一年五月三十一日の閣議で初めて被害者に対して国費をもつて見舞金を支給することにいたしたのであります。それからほとんど毎年のごとく、見舞金支給の閣議決定は改正されまして、漸次賃金基準の上昇とか、あるいは物価の騰貴とか、そういうことを考えながら価格を引上げ、あるいは範囲を広げるというようなことを、漸次やつてつたのであります。GHQの方に賠償問題について交渉をしておりましたところが、二十一年の九月、本件について一切賠償責任がないという回答があつたのであります。従いましてその後先ほど申しましたように、日本政府責任において、見舞金支給の制度を漸次内容を充実して今日に至つたわけであります。しかし一方において継続して、この賠償責任は連合国軍側にあるという見解のもとに交渉はしておりましたが、いずれこれは講和条約の際にきめらるべきものとしておりましたところが、不幸にして二十六年九月八日調印された対日平和条約第十九条によりまして、一切連合国軍側に責任がない、日本政府請求権をすべて放棄するということに相なりましたので、いよいよこの見舞金というのは、完全に日本政府責任においてやらざるを得ないことになつた次第であります。そこで見舞金として支給しました額は、支給件数が大体三千八百件くらい、四千件以内くらいに考えております。金額としては三千三百万円、大体そういうようになつております。  そこで講和条約発効に伴いまして、行政協定十八条に基く民事特別法が施行せられ、これらの事故による被害については完全補償の建前がとられるようになりました関係上、前に見舞金として差上げてあるものがあまりに少額であるという実情にありましたので、二十六年十二月四日の閣議で大幅な引上げをいたしまして、これは二十六年の九月八日以降の事故に適用することにいたしたのであります。さような関係でありまして、その以前の不均衡になつたものに対しては、さらに二十七年の五月二十七日の閣議了解を得まして、二十二年の十月国家賠償法施行の日までにさかのぼつて、漏れたものはもちろんその額で支給しますが、すでに支給したものについても追給を認めることになつて、その事務を各府県に依頼し、府県の協力のもとに実施をいたしたわけであります。  それから見舞金の問題で、最後の措置としまして、以上のような状態で極力宣伝をし、漏れなく支給することに努めましたけれども、今日の状態から見ますと、まだまだ相当漏れているものがあるように考えられますことと、それから先ほど法務大臣からのお話もありましたが、国家賠償法の施行以前につきましては、この額が至つてわずかでありましてその後増額をしてその国家賠償の施行までの追給を認めた事情等から考えますと、あまりに均衡を失しておりますので、これらについても何とかもう少し適正な額を支給しなければならぬという問題があるわけであります。何としても漏れたものがあるかどうかという調査をすることが先決問題でありますので、すでに数箇月前から地方府県知事あるいは調達局の末端の方にも書面を出し、あるいは新聞広告といたしまして、この漏れたものを調査して今集めております。近く集まると思いますので、それに基きまして、しからばそういう国家賠償法地行以前のものに対してどの程度の額を支給したらいいかというようなことを、現在すでに大蔵省方面ともいろいろ協議中でありますが、まだ決定を見るに至つておりません。近く決定を願いまして早く実施をいたしたい、しかも漏れなく支給をするようにいたしたいと考えて、せつかく努力をいたしておるような次第であります。以上、簡単であります、占領期間中の見舞金の状態として申し上げた次第でございます。  次に講和条約発効後の被害の補償でありますが、これは御承知通り行政協定十八条に基きまして民事特別法を制定して、この法律によつて実施をいたしておるわけであります。この法律に基きます賠償金は、言うまでもなく日本と駐留軍との両方で分担するわけでありまして、最近日本の分担が二五%、米国側が七五%ときまつて、これによつて精算するわけでありますが、現在支払いは、とりあえず日本政府が全額立てかえておるようなわけであります。そこお尋ねになりましたいろいろの手続関係、あるいは基準の問題でありますが、手続としましては、行政協定の上では簡単に書いてありますが、実際のやり方はなかなか複雑になつておりまして、この手続はどういうふうになつているかと申しますると、最初事故が発生いたしますれば、警察署及びMPの調査があるわけであります。それから補償申請となりまして、本人から市町村に提出し、市町村が受理してこれを府県に送る。それからなお事故発生証明というものが必要でありまして、これは警察署から市町村を経由して、各都道府県に送られるのであります。なおまた被害発生状況調書というものも必要でありまして、都道府県が作成して、以上申し上げた書類とともに調達局に送る。それから地方の調達局では英文の一定の様式がきまつておりまして、それにはめ込みまして全部内容を英文に訳して、調達庁内容を英文に訳して、調達庁本庁に送るとともに、一方被害の調査査定に着手するのであります。本庁ではそれを米軍の担当者の方に提出するわけでありますが、これは何のためかと申しますると、行政協定十八条の四項に基きまして損害を与えた駐留軍の要員が、当時公務執行に従事していたかどうかを米側と協議のために出すのでありまして、その書類は米軍の陸軍、海軍、空軍、それぞれその所の加害者の所属によりましてそれぞれの当局に送付するわけであります。軍の当局はそれをいろいろ調査機関にかけまして調べまして、そうして調書をつくつて日本側の意見との照し合せをして、それから軍の意見をきめて日本側に回答する、両者の意見が合致しまして公務上ということになりますれば、それによつて今度はまた地方の局に返りまして、いろいろ金額の査定をやつて決定をして、支払いは府県でやる、こういうことになつております。それから合意が成立しない場合には、問題を日米合同委員会にかけて、合同委員会できめる、そういうことになつておるわけであります。そこで合同委員会でやはり責任ありということになりますれば、先ほど申しましたようなわけでまた地方の局に返りまして、局が決定して府県に通知して支払いをする、こういうわけでありますが、その場合に、公務上でなかつた、公務外であると決定した場合にはこうなるかと申しますると、これもやはり行政協定の十八条に規定してありまして、そういう場合には米軍の方で慰藉料を出すという根拠がありますので、それに基きまして日本側で全部、米軍の要求する書類をつくつて英訳して出しまして、そうして米軍が慰藉料の額をきめて、日本側に通知する、こういうことに相なつております。  補償の状況はどうか、昨年の四月二十八日以降、この行政協定によつて民事特別法を実施した状況はどうかというお尋ねでありますが、本年の四月末日現在で約四千百件あるわけであります。そのこまかな内訳は略しますが、一番多いのは何といつても交通事故であります。それから航空機の事故あるいは海上の船の事故その他暴行脅迫あるいは無銭飲食というようなものが、その四千百件の中に五百七十件を占めております。交通事故は三千四百件、そのうち示談解決を行つたものとあるいは請求権を放棄したものが約五百件ございます。以上述べましたほかにも、被害が軽微なために請求をあえてしなかつたものが相当あるものと想像されますけれども、なかなか明確な数字はわかつておりません。たとえば神奈川県の例でありますが、発生件数が約千百件のうち五百九十一件、すなわち半数以上は数回の照会をいたしたにもかかわらず、請求するかどうかの態度が不明であるというようなわけでありまして、全国的に、以上申しました数字のほかに、相当たくさん事故があるものと考えてさしつかえないのであります。それから都道府県調達局を経由して、公務外と決定のために調達庁に送られた件数は、五月末日現在――前に申し上げました数字は四月末の数字でありますが、そのうち五月末日現在で本庁に手続をとつたものが八百十八件、申請者の数にしまして九百七十九人、その九百七十九人のうち、駐留軍当局との間に公務上、外の決定を完了したものが五百七十二人、それからその中で公務上が四百三十人、公務外が百四十二人であります。合せて五百七十二人だけが、正式に米軍の方で公務上あるいは公務外と決定いたしたわけであります。しこうして五月末日現在において国が補償金の支払いをいたしたものは二百四十件、金額にいたしまして二千八百十一万一千七百九十一円、かように相なつておる次第であります。それから駐留軍当局がさきに申しました慰藉料を支払つたものは十件ございまして、金額として三百七万九千二百九円となつております。  なお今申しましたように、この処理が非常に遅れております。まことに遺憾なことでありまして、あえて弁明する意味でありませんが、仕事の実情を御理解を願う意味で、なぜそんなに遅れたかということを、ちよつと申し上げさしていただきたいと思います。この事務を開始をするために、先ほど手続として申しましたように、初めての仕事でありますのでなかなか準備がむずかしかつたことと、一々駐留軍と御相談をしてきめなければならぬというようなことで、すべての実施準備ができたのが非常に遅れた。それからこれも先ほど申しました中にございますが、占領中の見舞金の追給事務をおそくなつてから始めまして、その仕事が相当たくさんな件数に上り、各都道府県の担当課は、それぞれその事務に忙殺されたというような事情にあつたこと、それから請求自体も非常におそいのであります。これは性質上おそくなるのもやむを得ない点もあるのでありますが、とにかく請求もおそい。それから私ども最も遺憾に思うのは、十八条四項に基いて、公務上あるいは公務外の決定を受けるために駐留軍当局の手続を受けるわけですが、その日数が非常に長い。今までの実績をとりますと、一件平均私どもの方で提出をして決定を受けるまで五十六日を要しておるような状態であります。それからなお責任がどこにあるかということが大前提になるのでありますが、交通事故の中でも御承知のような事情でありますので、しかもまた軍は軍としてのお考えがありまして、なかなかこれがむずかしい。どこに責任があるということを決定するのが非常にむずかしいということも遅れる原因であります。  以上申しましたような事務の実情でありまして、できるだけこれの促進をはかつて、この仕事が円滑に運ぶようにというので、米軍当局とも現在折衝中でありまして、今申し上げた遅れた理由もかなり解決をいたしております。最近はだんだんと早くなつてつているよう状態であります。今後もこの仕事につきましては、極力米軍当局と交渉して早く進行するように、しかもまたその決定が私どもの常識と合致するような決定をされるように、決定の仕方等についても十分交渉して参りたい、かように存じております。  それから最後に基準でございますが、これはもしお許しを得られるならば、ここで数字を申し上げることを省略しまして、いずれ印刷をして差上げたいと思います。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今のその基準につきましても、それから今あなたがお述べになりましたことも、一覧表にして当委員会に提出するように、委員長、おとりはからい願いたいと思います。
  53. 小林錡

    小林委員長 そういたしたいと思います。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから一、二点お尋ねいたしますが、「日本の刑法」という本を見ますると、相当極端なことが書いてあります。アメリカの兵隊が日本の婦女子を強姦したという場合、これはどうも公務とは言えないと思う。それからどうもそこに何か物的な損害という点も出て来ない。結局慰藉料になるのですが、こういうものは一体どういうことになつておりますか。  それからもう一つは、アメリカに対しましては行政協定があつて法的根拠がありますが、イギリスその他のいわゆる国連軍というものに対してはどういうことに相なつておりまするか、その点について御説明願いたい。
  55. 山内隆一

    ○山内政府委員 お答えいたします。今の御質問の最初の問題は、これは公務外でありますので、慰藉料の問題として処理するようにいたしたいと考えております。  それから次の連合国軍に対する関係でありますが、これは外交交渉がまだきまつておりませんので、調達庁としては、現実に問題が起つた場合に、この仕事を運ぶのに非常に困つております。現在は実際は示談というような形で行われる場合が非常に多いと思いますが、しかしそのような状態を調達庁としてほうつておくわけに参りませんので、駐留軍に対する関係は、今の法律なりあるいはその他の行政措置というものにならいまして、大体同じ取扱いをしたいという考え方で、現地軍の当局とは交渉いたしております。もつともこれは連合国軍が幾ら持つか、日本側が幾ら持つかという根本の問題には、調達庁としては触れませんで、ただ事態をほうつておけませんから、見舞金を出してもらうとか、慰藉料を出してもらうとか、そういうような話を進めておりまして外交交渉でどちらが持つかということにきまつた場合には、それによつて精算する、こういう前提のもとに外務省の了解の上で、主として調達庁が外務省にお手伝い願つて今折衝いたしております。いずれ近く大体同じような形で解決がつくのじやないかと思つております。それは不動産の取扱いについて長い間ほつておきましたために、地元なり所有者の万で困りまして、数箇月前にすでに今言うような趣旨によつて要綱をつくつて折衝して、先方の責任者と調達庁においてとりきめ、現在不動産については処理しつつあります。いずれこの負担がきまればそれによつて精算するわけで、とりあえず予算の上で立替金という項目を設けて処理いたしておる次第であります。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお今の強姦なんかの場合の慰藉料のことですが、実際にそういう慰藉料を払つておるようなことがあるかないか。これは第十五国会でも私は質問したのですが、都下のある小学校の女の先生が強姦された。ところがこの強姦したやつは全部無罪になつた。その理由は、その兵隊はピストルを持つていなかつた、だからあまり脅迫していない、それから強姦された婦人があまり泣き叫ばなかつた、そこで強姦じやないのだというのですが、どうも日本人と考え方が違うようです。そこで強姦せられたといつて訴えられた場合に、はたして彼らが慰藉料を出したような実例があるか。あるとすればどの程度あるのか、それをお尋ねいたします。
  57. 山内隆一

    ○山内政府委員 お答えいたします。強姦の事例は相当にあると思いますが、まだ一件も申請となつて現われて来たものはございませんで、従つて正式の問題として向うと話し合つたことはないわけであります。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 先ほどのお尋ねのうち、日本弁護士会のお話についてちよつとお答えいたしますが、御指摘の通り、呉で弁護士会の陳情を受けまして、それから帰つて参りまして、先月正式に書類を持つておいでになりました。その以前に実は閣議において、ただいま申し上げましたように、昭和二十二年十月以前のものでも、死んだ場合五百円以内ということはやめて、もつと適当な額にするというように閣議決定の変更をいたしまして、それを弁護士会に御通知いたしたわけであります。さつき申し上げました標準というものは、虐殺された場合の標準であります。あとはけがのぐあいとか、いろいろ暴行された事情によつてそこに変化がある、そういうふうに御解釈願いたいと思います。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務大臣の御答弁ありがとうございました。私も実はこの呉市の詳細な報告を受けておるのであります。これは相当ひどいと思うのであります。それに対してはどうぞ法務大臣は特別な御尽力を重ねられんことを私から要請いたします。
  60. 小林錡

    小林委員長 この際、先ほど保留されました猪俣委員法制局長官に対する質疑の答弁を求めることにいたします。
  61. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 たいへん遅れて参りましたことをおわび申し上げます。  お尋ねの点は、三点であろうかと思いますが、第一に、内灘を未墾地として買収しておきながら、これを演習地に転用したことについて、憲法上いかがであるかというお尋ねであると思います。先ほど政府委員からお答えしたかとも存じますけれども、その転用に関する規定は、農地法等の法律がございます。結局その法律運用の心構えの問題になると思います。翻つてこの転用される方の新しい目的というものと、農地の造成という農地法の目的というものとの関係は、結局公共の福祉上いずれを優先せしむべきかという観点の問題になるというようにもまた思うわけであります。申すまでもございませんけれども、結局駐留軍の存在というものは安保条約に基くものでありますし、安保条約そのものはまた日本の国の防衛という建前から結ばれておるわけでありますから、その関係と現在の土地の実情等を照し合して見て、国の防衛の見地からの安全保障条約に基く駐留軍の用に供するという結果に持つて行く方が、公共の福祉上より適切であるという観点に立つものと申し上げざるを得ないと存じます。  それから第二点において、民有地を演習地に接収する手続というお尋ね――手続といいますか、根拠法といいますか、それについてのお尋ねであつたかと存じますが、これは御承知の安保条約第三条に基く行政協定、それに伴つての土地等の収用についての特別法が御制定になつておりますので、それによつて駐留軍用の民有地の接収ということは認められておるわけでございます。その手続等はもとより法律に定める手続によらなければならないことと考えます。ただ現実にこの内灘においてそういう手続が行われておるかどうか、私は強制的の措置はとられておらないと思つておりますけれども、実際は存じません。ただ強制措置がとられるとすれば、その法律の定める手続によつて行うべきものであるというふうに思つております。  それから第三点に、内灘の今の土地の関係で、高等裁判所の訴訟事件になつておるものがある、それについてのお尋ねのようでございますが、これはまだ係属中のようで、最終の判決はないように存じますけれども、かりにその判決の結果、それがひつくり返つたということになれば、もとよりこれは元の関係者にもどさなけれぱならぬととは当然のことと思います。但しその後なおその土地について、どうしても用地に用いる必要があるということになれば、これはもちろん民有地になりますから、先ほど第二点で申し上げました民有地を接収するあの法律手続によらなければならないということに相なると思います。
  62. 林修三

    ○林政府委員 ただいま法制局長官からお答えがありましたが、ただこまかい点でございますが、先ほど猪俣委員から農地法の規定の適用につきまして、第八十条に基く施行令でやつたのじやないかというお話でございます。この点は、農地法の八十条はいわゆる売渡しの規定でございます。特別の場合に農地、未墾地なりを農民に売り渡さずに、別の方面に転用するために入れた規定でございます。今度の内灘の場合は、それを国にはつきり売り渡すという問題ではございませんので、七十八条によりまして――七十八条でございますと、その未墾地を本来の目的に使うまでの間、国がその土地を管理する権限を持つております。管理する間は国有財産法によつてそれを管理しておるわけであります。管理権の作用といたしまして、最終的な目的に使うまでの間、これを一時国がそういう演習地に使用する、そういう手続でやつておるように聞いております。一時使用はどうか、おかしいじやないか、永久使用じやないかというお尋ねがございますかわかりませんけれども、これは駐留軍がおるということ自体が実は日本の全体から考えれば一時的であります。そういうことから言えば、一時使用ということで、国有財産法の規定によつてつておるように思います。  もう一つ、これは農地法につきましても、昨年やはり安保条約に基く行政協定に基きまして御制定を願いました法律があるわけでございます。日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国有財産の管理に関する特別措置法という法律がございます。これによりますと、国有の財産を駐留軍に提供いたします場合は無償で提供する、従来貸し付けたりあるいは一時使用をやつてつた契約は当然そのときに解消できるという法律でございます。こういう法律も根拠としてやり得るわけであります。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすればあなたの説明は、第七十八条を適用したのである、こういうことになるわけですが、第八十条には「農林大臣は、第七十八条第一項の規定により管理する土地、立本、工作物又は権利について、政令で定めるところにより、自作農の創設又は土地の農業上の増進の目的に供しないことを相当と認めたときは、省令で定めるところにより、これを売り払い、又はその所管換若しくは所属替をすることができる。」こうあるので、私は八十条だと思つたのですが、七十八条ですね――そこで今長官意見に基けば、結局農地法の重要性と国の安全度というものを比較考慮して、国の安全度の方が重要であるから結局演習地にするのだというようなお話でありますが、しかしこれは土地を私有している者から言うと、何かペテンにかかつたような気がするのであります。駐留軍の将校までが、農地委員会に出て行つて、これは解放した方が適当だという発言をし、そうして私有地を取上げてしまう。取上げて、内灘の村民にこれをわけてやるんだ。村民もみんなその気になつてつた。それがそもそもこの大騒動になる原因なんだ。みんなお前たちにわけてやると信じ込ました。それで村民も非常に喜んで、期待をもつてその準備をしておつた。そうしたら一向払下げをせずして、今度大砲のたまを撃ち出した。こういう事案であります。一体あなた方はこういうことが適当だと思われるのか。そうすれば憲法二十九条の私有財産を保護する精神というものは一体どこに行つてしまうのか。私は先ほども質問しましたが、これについてあなたの意見を聞かしてもらいたい。それから横浜の土地で、四百坪ばかりの県道に沿うた、左右が全部商店街、そこが、たまたま戦時中管理者がひそかに野菜をつくつてつたというだけで、農地なりとしてこれを解放せしめてしまつて、四百坪千円という代償金です。そうして農地にするかと思えば、今消防署を建てた、こういうことをやりまして、それも言えばきつとこの七十八条を持ち込むだろうと思う。一体こういうことをやつて財産保護ができますか。憲法二十九条の趣旨を貫徹することができるのであるか。今あなたは国の安全という大きなことを持つて来た。しからば一体こんな消防署のごとき官庁をつくるということ、それでも私有財産を犠牲にしてもそういうことは大事だということになるのであるか。どう返答します。だから七十八条あるいは八十条、私は八十条だと思うが、一体時の政府がかつてにこれを適用してしまえば個人の財産なんていうものはみな吹つ飛びます。その点について一体どういう場合にこんな七十八条を発動するのか。出たとこ勝負で何も根拠がない。それを承りたい。
  64. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 一般的に農地法よりも国防の方が優先するということを例外なしに言うことは私は多少疑惑の点があると思います。農地法の関係でもその目的となつている土地の実際のあり方がどういうあり方であるか、どういう土地であつたかということ、それから今度は現実に国防のために使うという点から申しまして、どうしてもここでなければならぬという条件があるのかどうか、個々の具体的な事情に応じて今の関係を考慮しなければならない事柄だろうと思います。だからしてそういう意味において一般的な原則を先ほどお答えしたわけでございますが、たとえば今の横浜等のことにつきましては具体的なことは存じませんから一私の基準によつてそれがどうなるかということはお答えできません。しかし内灘に関する限りにおいては今まで世人の注目の的にもなつておりますから、今の具体的な措置としては私は憲法の精神に反するものではないということを申し上げたわけであります。要するにその処分々々は個々の具体的な事情に応じて判断せらるべきことであつて、それに対してはまた国会なりあるいは一般社会の批判という目があるわけでありますから、政府としてもそうむやみなことはできない、こういうことであろうと存じます。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務大臣に今の件についてお尋ねいたしたい。この内灘が非常に予想外に重大問題に発展いたしましたのには政府の態度が非常にあずかつているものであるというふうに私は考える。それはただいま申しましたように、どうも初めからこの土地は昭和十九年には陸軍用の演習場になつた。終戦後前の所有者に戦時補償措置法六十条によりまして返した。そうして補償金までとつた。それから一週間日に県農地委員会を開いて、アメリカの将校が臨席してこれは内灘村に返してやるのが至当だと言つて、返してやつたかというとこれは何も返すこともなんにもせずして今度は演習場だ。これは昭和二十四年その個人の私有地を取上げるときからもう、戦争中でも陸軍の演習場になつてつたんだから、これをアメリカの演習場にする、あるいは保安隊の演習場にするもくろみがあつたのじやないか。たまたま農地法規定、当時農地調整法でありましようが、この規定のあることを利用いたしまして、そうしてほんとうの目的は隠しておいて、そして村民にはぬか喜びさせておいてこれを国が取上げちやつた。そうして今になつて今度はほんとうの目的を明らかにして来た。そしてここにいたずらなる紛乱を起させる。この行政上の責任は重大だと思う。かように初めからあれは演習地にする予定であつたのじやないか。あなたは何かその点について調査なされたことがあるか、あるいはさようなことを耳にされたことがあるか。それに対しまして内閣として今日の紛乱に対して何らの責任がないというのであるか、その点を承りたい。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。私の就任前にわたる事実もあるかと思いますが、私の知る限りについては、どうも初めから内灘を唯一の候補地として、あるいは農地法を利用しあるいは突然今度演習地にしたというような意識的な措置はなかつたのじやないかと思いますのは、愛知県あるいは静岡県に候補地がありましてどこも非常に都合が悪く、内灘の人には相済まないことでありますが、あそこが一番国民に対する迷惑が少いという最後の決定があつて、そうしてあそこになつたというように私承知しているのであります。こんなふうから言つて、初めから終始一貫意識的にやつたとは思いませんけれども、しかしお話を承りますと地元の人にも大分政治というものがどうも終始一貫しないものだという印象を与えているだろうと思います。この今日のお話はとくと承りまして私どもも善処いたしたいと思つております。また農地をわけてもらおうと思つて取上げられた、ことに貧しい農民の気持もくみとりまして、あそこはなんでも将来灌漑をやる計画であつて、そういうときにはこの人たちの農地問題を今から考えて国務大臣として発言をしてみたいと思います。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお国務大臣たる法務大臣にお願いいたしますが、民は愚なるごとくにしてもまた怒るときは恐ろしいのであります。重ね重ね政府はこの内灘村民に対し欺瞞をして来た。今申しましたように農地として解放するぞ、するぞと言つておいてぬか喜びさしておいて、いつとはなしに鉄砲だまを撃ち出した。のみならず本年一月から四月まで四箇月借りればそれでいいんだと言つてだましておいて、期限が切れると今度は自分たちが使えると思つていたところが、またぞろ継続だ。重ね重ねの欺瞞して来ているのであります。これによつて内灘村民の心から怒りを買つているにかかわらず、外務大臣は何と言つた。外部から扇動するものがあつてつている。何を一体ほざいている。あなたに言うてもしかたがないけれども、実に憤激にたえない。事の実情を調査せざること実にきわまれり。そんな実情ではありません。そこであなたに要望することは、かようなるわれわれの欺きによりまして心からなる憤りを感じ、国会といういわゆる政治権力を持つているものに対して恨みを持つている。われわれまでもとんだとばつちりを食つて、お前も何だ、国会議員ではないか、何をぼやぼやしているじやないかということをねじ込まれる。内閣に対する不信であります。政治に対する不信が起つている際にその国の運命がどうなるか。これはゆゆしき問題だと私は考える。さようなことに対しまして、何ら責任を負うものがない。実に無責任きわまれりと私は考えるのであります。しかるにさような民の憤激に対しまして、四千人からの警察官を繰出し、そうして今二件告訴をしておりますが、何もしない青年の頭を警棒でたたき割る。三週間にわたる重傷を負わせる。さような人権蹂躙を断行する。実にお話にならぬのであります。そこで法務大臣に対しまして、どうかこの取締り官憲に対して、さような民が今腹を立てている際でありますので、その点につきましては非常に注意するように、いたずらに彼らの敵腐心を振い起させることのないように私は内閣としてもまた法務大臣としても十二分なる御注意を願いたい。事が誤りますれば、容易ならぬことに発展をいたしまして、私どもも実は苦慮しております。そこで現地の争いは国会闘争と法廷闘争に持つて来て、すわり込みなんというものはなるべくさせないというふうに私ども指導しておりますけれども内閣の方針、警察の無知なる人たちがいたずらなる弾圧をいたしますならば――これはそんな外部から扇動されて立ち上つたという事情ではありませんことを私はくれそれも申し上げ、善処せられんことを希望いたしておきます。
  68. 小林錡

    小林委員長 他に御発言はありませんか。――他に御発言がなければ、本日はこの程度にとどめておきます。次会の開会日時は公報をもつてお知らせすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時七分散会