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1953-06-26 第16回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十六日(金曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 細迫 兼光君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       本多 市郎君    牧野 寛索君       中村三之丞君    三木 武夫君       猪俣 浩三君    木下  郁君       佐竹 晴記君    山本 正一君       岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家警察本部長         官       斎藤  昇君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 六月二十四日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として井  伊誠一君が議長指名委員選任された。 同月二十五日  委員井谷正吉辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  井伊誠二君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 六日二十三日  刑法等の一部を改正する法律案内閣提出第九  〇号)  人権擁護委員法の一部を改正する法律案内閣  提出第八二号)(予) 同月二十四日  逃亡犯罪人引渡法案内閣提出第一〇二号) 同月二十三日  英国エリザベス女王陛下戴冠式に伴う戦争犯罪  受刑者恩赦に関する請願(萩元たけ子君紹介)  (第一四二二号) 同月二十五日  富家村に岡山地方法務局高梁支局富家出張所設  置の請願犬養健紹介)(第一六八八号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事互選  小委員長選任  小委員補欠選任  人権擁護委員法の一部を改正する法律案内閣  提出第八二号)(予)  刑法等の一部を改正する法律案内閣提出第九  〇号)  逃亡犯罪人引渡法案内閣提出第一〇二号)  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入る前に理事補欠選任についてお諮りいたします。すなわち井伊誠一君が去る二十三日委員辞任せられたのでありますが、一昨二十四日再び議長指名によつて委員選任せられました。井伊君は御承知のごとく理事でありましたので、理事が欠員となつているのであります。従つて理事補欠選任を行わねばならないのでありますが、理事補欠選任先例に従いまして選挙手続を省略し、委員長において指名いたすに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、理事従前通り井伊誠一君を御指名いたします。  それでは本日の日程に入ります。まず小委員長選任に関する件についてお諮りいたします。すなわち去る二十三日設置いたしました接収不動産に関する小委員会並びに鉄道犯罪に関する小委員会の各小委員長選任いたしたいと存じます。小委員長選任先例に従いまして委員長において御指名いたすに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。接収不動産に関する小委員長には田嶋好文君を、鉄道犯罪に関する小委員長には佐瀬昌三君をそれぞれ御指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 次に人権擁護委員法の一部を改正する法律案刑法等の一部を改正する法律案及び逃亡犯罪人引渡法案一括議題といたします。順次その趣旨説明を求めます。犬養法務大臣。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  6. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま議題となりました人権擁護委員法の一部を改正する法律案提案理由説明を申し上げます。  憲法に保障された国民基本的人権擁護重要性にかんがみ、人権擁護委員法は、全国市町村区域人権擁護委員を設け、人権侵犯予防とその救済並びに基本的人権思想普及高揚に当らしめて参りましたことはすでに御承知通りでありますが、同法の施行後今日までの実績にかんがみまして、この法律の本来の目的を達成するため必要な改正をなすことが本法律案趣旨であります、次にその主たる要点を御説明申し上げます。  まず第一点は、人権擁護委員推薦手続におきまして、現行法第六条において市町村長が定員の倍数の人権擁護委員候補者推薦しなければならないとなつておりますが、市町村長において、その市町村の議会の意見を聞いて推薦したものが法務大臣委嘱に際し常にその半数が委嘱より落されるということは、運用上支障が多いので、この欠点を取除きまして、市町村長は単に人権擁護委員候補者推薦すればよいという規定に改めたわけであります。従いまして市町村長推薦がほとんど人権擁護委員決定することになりますので、もし市町村長推薦が誤つた場合、たとえば法第七条の欠格条項に該当するものとか、法第十五条に規定する解嘱条項に当てはまるものが推薦された場合には再推薦をさせる救済規定を設けたのであります。  第二点は、市町村人権擁護委員との関係繋密化をはかつた点であります。人権擁護委員は、その推薦せられた市町村区域において、その職務を行うのでありまして、その市町村の協力なくしては、その目的を達成することが容易でないのであります。従いまして本案におきましては、第六条におきまして人権擁護委員委嘱があつた場合は市町村長は、法務大臣人権擁護委員の氏名、職務等関係住民に周知せしめるため適当な措置をとることに協力しなければならないという規定を設けることといたしております。  第三点は、人権擁護委員任期の延長であります。従来二年の任期でありましたが、人権擁護委員が、この仕事を習熟したころは任期が到来して十分に人権擁護委員としての活動を期待し得ない実情にありますので、その任期を一年延期いたしまして、人権擁護委員能力発揮を十分ならしめようとするものであります。  第四点は、全国人権擁護委員連合会規定を設けて人権擁護委員全国的団結の基礎を置こうとするものであります。現行規定におきましては、都道府県ごと人権擁護委員連合会を組織いたしまして、人権擁護委員職務の自治的な連絡調整及び研究をいたしているのでありますが、人権擁護活動普及化に伴い人権擁護委員自主的全国的統一がぜひとも必要となりましたので、第十八条の二として全国人権擁護委員連合会の組織及び任務に関する規定を設けたのであります。以上が本法律案提案する理由であります。何とぞ慎重御審議くださいますよう願います。  ただいま上程に相なりました刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、刑法刑事訴訟法犯罪者予防更生法及び更生緊急保護法の一部を改正し、犯罪対策に寄与せんとするものであります。終戦後犯罪の激増に伴い受刑者の増加とともに、執行猶予の言渡しを受ける者も激増し、同時に執行猶予取消しも激増しましたが、現行執行猶予制度においては、何ら本人心要保護と指導を加えることができないし、一方執行猶予要件が厳格で、前科のない者か、前科のあるものは執行終了後七年を経なければ執行猶予をつけることができないこととなつているのであります。従つて執行猶予中の者は、例えば軽微な窃盗を犯しその事情酌量すべきものであつても、必ず実刑を科し、前の執行猶予を取消さなければならないこととなつているのであります。以上のような点にかんがみ、本法案は執行猶予要件を適当に緩和すると同時に、執行猶予中必要のある者に対しては裁判の言渡しにより保護観察に付することといたしまして、これに必要な手続を定めるものであります。  すなわち、刑法改正案におきましては、まず刑法第二十五条で執行猶予に付し得る条件として規定された「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても其執行を終り又は執行の免除を得た日より七年以内に禁錮以上の刑に処せられたることなき者」という制限を「五年以内」に短縮し、また執行猶予中の者であつても、軽微な犯罪により刑期「一年以下の懲役又は禁錮」に処すべき場合であつて「情状特に憫諒すべきものあるとき」は再度の執行猶予を与え得を視定を設けて、執行猶予に付し得る場合の幅を拡張緩和し、同時にその裏づけとして、再度の執行猶予に付された者はその猶予期間中は必ず保護観察に付することにいたし、その他の執行猶予者については、必要ありと認める場合、保護観察に付し得ることにしているのであります。  刑事訴訟法改正案は、右の刑法改正に伴いまして、刑の執行猶予に加えて保護観察に付することにする場合は、刑の言渡しと、同時に判決で言渡すことにいたしまするとともに、保護観察中の遵守事項違反理由として執行猶予の言渡しを取消すことができることとし、その手続として、検察官はその者の保護観察を担当した保護観察所の長の申出に基き裁判所請求することにいたし、なお、裁判所の審理についても本人請求があれば口頭弁論を経ることにし、かつ、その場合は弁護人選任を許すことにし、また執行猶予取消決定に対しては即時抗告を許して、その者に不測の不利益を帰せしめないようにするものであります。  犯罪者予防更生法改正案は、以上の改正により執行猶予保護観察に付された者をこの法律によつて保護観察に付することを明らかにいたし、次に保護観察に付された者が、保護観察中守らなければならない遵守事項に違背した場合には、他の種類の保護観察対象者と同じように、裁判官のあらかじめ発する引致状により引致し得ることにし、さらに、現行法の仮退院少年の再収容を審理するときと同じように、執行猶予取消しの要否を審理するため引致後十日以内これを留置の得ることにし、検察官から執行猶予取消し請求があつたときは、裁判所は、その請求について決定をするまで留置を継続することができるものとし、但し、その留置期間は、引致後通じて二十日を越えることができないものといたし、また、本人請求により口頭弁論を経て決定すべき場合には、裁判所は、決定でさらに十日間に限り、留置期間を延長することができるものとし、なお、右の期間内に刑の執行猶予取消し決定があつたときは、その決定が確定するまで留置を継続することができるものとし、これらの留置期間は、すべてこれを刑期に算入するものとするものであります。  更生緊急保護法改正案は、執行猶予者保護観察に付されない者が身体の拘束を解かれた後、あるいは帰住先がなくあるいは就職口がなく再犯に陥る危険がある場合に、本人の申出に基き、一定期間に限り、これを保護し得ることにするものであります。  なお、附則においては、この法律施行する日を規定するほか、この法律施行前に罪を犯した者及びすでに少年で刑の執行猶予に付せられ現行法保護観察に付されている者に対しては、この法律施行により不利益を帰せしめないようにする経過規定を設けているのであります。  以上申し述べましたように、犯罪をした者の改善更生には、できる限り刑の執行を避けてこれを保護観察に付し、その成績に応じて刑の執行を考慮することが最も必要であると考慮して、この法律案提出いたした次第であります。何とぞ、慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。  次にただいま議題となりました逃亡犯罪人引渡法案につきまして提案理由を御説明申し上げます。  日本国との平和条約第七条(a)に基き、アメリカ合衆国は本年四月二十二日わが国に対しまして、日米犯罪人引渡条約を同日より三箇月後であります本年七月二十二日から引続いて有効とする旨を通知して参つたのであります。御承知通り犯罪人引渡しとは、外国政府請求により、その外国の法令にかかる罪を犯した犯罪人の現在する国の政府が、当該犯罪人を、審判または刑の執行のために当該外国政府に引渡すことを申すのでありまして、諸外国におきましても、おおむね、犯罪人引渡しに関する条約に基き他国より犯罪人引渡し請求があつた場合についての国内手続を定めた立法を有しているのでありますが、わが国におきましても、明治二十年八月十日に制定された逃亡犯罪人引渡条例が現存いたしているのであります。しかしながら同条例は制定以来今日に至るまでほとんどその改正が行われず、従つてその規定のうちには現在の事情に適合しないものが多々あるのであります。そこで、今回日米犯罪人引渡条約が引続いて効力を有することとなるのを機会といたしまして、最近の諸外国立法例を参酌し、逃亡犯罪人引渡しに関する国内手続を整備するため右条例を廃止し、新たに逃亡犯罪人引渡法を制定すべく、この法律案提出することといたしたのであります。  この法律案は、三十三箇条と附則からなつておるのでありましてここにこの法律案の主要点を申し上げます。  まず、第一条におきまして締約国引渡し犯罪及び逃亡犯罪人についての定義規定を設けまして、この法律案適用範囲を一応明らかにし、第二条におきまして引渡しに関する制限として、引渡しをしない場合を列挙し、第三条ないし第二十二条におきまして、締約国から逃亡犯罪人引渡し請求があつた場合におけるその請求の受理から当該逃亡犯罪人引渡しまでの手続及び逃亡犯罪人拘禁について規定をいたし、第二十三条ないし第三十条におきまして引渡し請求前における仮拘禁手続について規定し、第三十一条ないし第三十三条におきまして、最高裁判所の規則への委任に関する規定東京高等裁判所管轄区域に関する特別及び引渡し条約発効前に犯された引渡し犯罪に関して、引渡し請求があつた場合の特例について規定したのであります。附則におきましては、この法律施行期日現行逃亡犯罪人引渡条例の廃止及びこの法律を遡及適用する場合について規定し、さらに逃亡犯罪人拘禁するについて必要な監獄法の一部の改正及び日本国締約国に対し、逃亡犯罪人引渡し請求した場合において締約国がした当該逃亡犯罪人の抑留または拘禁について刑事補償法を適用するための同法の一部の改正を定めたのであります。  次に、現行逃亡犯罪人引渡条例と異なる重要点につきまして御説明申し上げます。  第一は、同条例によりますと、逃亡犯罪人身柄拘束するには、検察官の発する逮捕状によることになつているのでありますが、この法律案におきましては、裁判官の発する令状によるものとした点であります。  第二は、同条例では、検察官が、逃亡犯罪人取調べをいたしましてその結果を法務大臣に報告し、この報告を受けた法務大臣当該逃亡犯罪人を引渡すべきかいなかについて決定することとなつておるのでありますが、この法律案におきましては、東京高等裁判所審査により同裁判所当該逃亡犯罪人引渡しを行うことができる旨の決定をした場合に限り、法務大臣がその逃亡犯罪人引渡しをなし得ることといたした点であります。  第三は、現行条例におきましては、逃亡犯罪人身柄拘束は、必要的なものとなつておるのでありますが、この法律案におきましては、逃亡犯罪人が定まつた住居を有し、かつ、逃亡のおそれがないことが認められる場合には、当該逃亡犯罪人身柄拘束しないものとした点であります。  以上この法律案におきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議のほどをお願いいたす次第であります。
  7. 小林錡

    小林委員長 これにて各案の趣旨説明は終りました。なおこれら各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  8. 小林錡

    小林委員長 人権擁護に関する件について調査を進めます。前回に引続き質疑を行います。  お諮りをいたします。本件につきましては裁判所当局より説明したいとの申出があります。この場合には、国会法第七十二条第二項の規定に従いまして、これを承認するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。承認するに決します。  それでは質疑を行います。質疑の通告があります。その順序によりまして順次これを許します。山本正一君。――山本君にちよつと申し上げますが、緒方国務大臣はすぐ参議院の本会議の方へ行かなければならぬそうですから、なるべく冒頭の方で御質問願います。
  10. 山本正一

    山本(正)委員 法務大臣に伺いますが、本年の五日三十一日に、選挙違反容疑者でありました川上長蔵なる者が、浦和警察署から釈放せられました直後自殺いたした事件があります。この自殺原因につきまして、これは警察当局の苛酷なる拷問によるものであるという有力なる意見があります。また反対に、そのような事実がなかつたというところの意見もあるのであります。これについて法務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  11. 犬養健

    犬養国務大臣 今お話川上という人が、選挙違反事件に関しまして自殺をするに至つたことは、国民に対してもまことに遺憾であり、深く哀悼の意を表している次第であります。お尋ねの拷問があつたかどうかという点につきましては、いわゆるわれわれの概念における拷問というものは、なかつたという調査の結果になつております。
  12. 山本正一

    山本(正)委員 緒方総理にお尋ねいたします。あなたは六月二日の毎日新聞をごらんになつたろうと存じますが、この新聞にとりますると、今法務大臣に伺いました川上長蔵自殺原因は、警察拷問に耐えかねて川上自殺したのである。よつてこの選挙の応援によつて当選いたした福永官房長官の辞職を求める必要の意思もない。これはあなたの談話としてこの新聞に報道されておるのでありますが、あなたはそういう意見新聞に語られた事実はございませんが。
  13. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいま御指摘の新聞記事は、日付を覚えておりませんが、福永官房長官が、その選挙違反事件に関連してやめるというような話があつて、そのとき新聞記者から質問を受けたのに対して答えた話だと思いますが、私はその話の中に、拷問という言葉使つた記憶はございません。
  14. 山本正一

    山本(正)委員 拷問という言葉使つた事実はないということでありますが、しからばその場合、新聞記者にどういう趣旨お話をなされたのか、それを伺つておきたい。
  15. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その川上という人の自殺は、何か取調べられたことに関して、その人が責任を感ずるか、あるいはその取調べについて、ある感じを持つて自殺をしたと思われるが、それが福永官房長官の進退の問題に関係がないと思うということを言つたのであります。
  16. 山本正一

    山本(正)委員 今伺うところの趣旨と、それから新聞に報道されているところの趣旨というものは、非常に本質的に違うのであります。そこで副総理は、かつて操觚界に長らく身を置いたことでございますから、自分語つた趣旨新聞に報道された趣旨と相違する場合に、どのような処置をとればよろしいかということは、御承知のことと思いますが、念のため伺つておきます。
  17. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私も新聞記者に長い経験がありますが、私自分で書いておつた記事間違つておるとは申しませんが、新聞記事は往々にして間違つている場合があります。しかし私は新聞記事はとつさの間に書くものであつて、それに一々神経質にやつておれませんので、私は、今までもずいぶん間違つた記事がありましたけれども、これを取消そうとしたことは一ぺんもありません。
  18. 山本正一

    山本(正)委員 とにかくこの川上長蔵自殺というものは、単なる自殺事件ではなくして、実に政治的な重大な当面の問題になつております。これは緒方総理はもちろんのこと、国民全部がこの問題の真相というものには、当然重大な関心を持つているはずであります。そこで、語つた人内閣の副総理であるあなたの談話として扱われている。報道いたしました新聞は、天下の大新聞である毎日新聞なんです。もしあなたが語られた趣旨と、新聞報道趣旨が違うということであれば、それはあなたは聞捨て、見捨てにしておくことはなかろう、政治的に内閣として重大な責任を負わなければならぬと思う。あなたの御見解を伺つておきたいと思います。
  19. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は先ほども申しましたように、新聞記事につきましては任々にして間違がありますけれども、これを一々取消しておりません。
  20. 山本正一

    山本(正)委員 あなたは新聞公器性新聞国民生活に及ぼす影響というものをどういうふうにお考えでありますか。いやしくも天下の大新聞が、緒方総理談話としてこの自殺拷問に耐えかねてやつたものであるということを報道しておりまする以上は、四民はこれを信用することは私は当然だろうと思う。これは今も申す通り、手柄が非常に重大な問題であります。ありまするから、少々の表現の違いということではない。拷問の結果耐えかねて自殺したものであるということは趣旨において重大なものである。決して今の御説明によつて国民だれ一人納得するものはなかろうと思う。重ねて私は見解をただしておきたいと思います。
  21. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 新聞記事影響は、今のは選挙違反の一つのケースでありますが、いろいろな場合に非常に大きな影響を与えるものであろうと思います。しかし新聞記事には私の方からそれをかれこれすることもやつておりませんし、またその責任を私が負うわけに行きません。
  22. 山本正一

    山本(正)委員 新聞公器性というものをあなたは非常に軽視しておる、言いは無視するに近い御見解を持つておる。先日の予算委員会における木村保安庁長官と申し、あなたと申し、新聞記事に現われた事柄についてほとんど責任を感じておらないかのふう見受けられるのであります。私はこれははなはだ遺憾なることであると思う。ましてあなたの場合は、木村保安庁長官の場合と違うのです。あなたみずからが親しく新聞界生活をされておる方なんです。そのあなたが、こういうふうに新聞信憑性をあなたみずからが軽蔑するような態度でよろしいのですか。御見解を承つておきたい。
  23. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは新聞記事を書く人の方、あるいは新聞の方にさらによく検討を求めるという以外にいたし方ない。その記事によつて生じた責任は私が負うわけには参りません。
  24. 山本正一

    山本(正)委員 責任を負うとか負わぬとかいうことは、あなたの主観的な判断であつて、とにかく日本の八千五百万の国民のうちで、新聞に現われた記事自分の発表した趣旨と違う、それをそのまま放任しておいて、それに対する自分の道義上の責任も感じないという者は、この国民の中でおそらくあなたと木村さんのお二人くらいのものであろうと思う。吉田内閣は非常に評判がよろしくない、よろしくはないかともかくもあなたはその副総理である。その副総理としてのあなたが新聞に正式に語られたとして記事は報道されておる。国民の八千五百万分の二の常識しかあなたはお持ち合せでないのである。これは国民は断じて承服はしない。そういうふうな不徳義なお答えをして、この委員会は通るかもしれないが、通らないものは社会大衆の中にある。ぜひこれはあなたの御再考を求めたい。  緒方総理に対する点は、その程度にいたしまして、いずれまた別の機会にいたします。
  25. 小林錡

  26. 木下郁

    木下委員 緒方総理にお伺いしたいのですが、佐賀県選出の三池衆議院議員選挙違反事件の被疑のために、佐賀検察当局から、衆議院に対して逮捕についての同意を求める請求内閣の方に来た。それを田中とかいう副官房長が、じつと二週間ばかりそのまとが新聞に出ておりました。その事実を御承知でありますか。
  27. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまお話の事実は、私存じておりません。
  28. 木下郁

    木下委員 これは相当国会の問題として重大なことでもありまするし、またさようなことを内閣の副総理の地位にある方が御承知ないということ、まことに意外千万であります。しかしながら、われわれの常識から見て、それほどほんやりして、国会の威信の上に大事な問題について御承知ないと、いうならば、今ここでお聞きしてもせんないことであります。しかしあれだけの問題、その本質は、一官僚が――ことに日本の終戦後は、政治界、実業界、軍部等におきましては、大幅な追放によつて再編成がされたのでありまするが、官僚の方面においては比較的戦前の態勢が温存されておるということは顕著な事実であります。その官僚群の温存された弊害が残つておる。それが日本の民主主義の進展を阻害しておる。これもまた国民全体の知つておることであります。そのあらわれがあの事件として現われておると私は感じておりまするが、その問題をあなたが全然御承知ないということは、私とし価しても、これは国民全体としましても、まことに意外千万なことだと申し上げる以外に方法はありませんが、いずれ日を改めましてこの点はお聞きいたします。今からでもおそくはありません。どうかお調べを願いたいと思います。緒方国務大臣に対する質疑は終ります。
  29. 小林錡

  30. 田嶋好文

    田嶋委員 ただいま山本君から、自由党候補福永健司君の運動員の川上長蔵君の自殺事件に対して、拷問の事実があつたかどうかをお聞きになられたのでございますが、これに関連をいたしまして、私は法務大臣その他関係当局にいろいろお承りをいたしておきたいと思います。  私たちは今日の日本が民主国家である、文明国家であるというように呼ばれておるとき、基本的人権の尊重というものは民主国家、文明国家における国の象徴でなければならないとまで考えておるわけであります。この人権尊重がなくしてその国家の存在はないものと考えるのであります。あながち人権は積極的な侵害のみをもつて人権の侵害とばかりは言えない問題ではないかと思うのです、またそれと同様に、拷問だけをもつて警察取調べが人権蹂躙であつたとかなかつたとか、こういり断定を下すことも私はちよつと考えものではないかと思うのであります。たとえの話でございますが、この川上長蔵君の自殺でございます。この人の自殺に対して当時の新聞記事に載つた警察談話といたしましては、川上長蔵氏は神経衰弱に陥つておる、非常にそれが心配であつたというようなことか書かれておるわけです。警察官が被疑者を神経衰弱なりと認定し、その認定した被疑者を勾留しておくということ、これが一体人権尊重、人権擁護の上から認められていいものであろうかどうか。なお川上長蔵君は神経衰弱に陥つたと認定せらるる当時におきましては、取調べに対して自白をいたして何ら証拠隠滅のおそれはない、証拠隠減のおそれのない被疑者を神経衰弱なりと認定した警察官がなお勾留をし続けるということを、一体人権を尊重しなはければならぬ今日の世の中においてそのまま放置しておいていいことであるかどうか、私たちはこの点に対しても疑いを持たざるを得ないのです。  なお具体的に参りますと、この人権擁護局取調べの記載事実の中での陳述を見ましても、かみそりを与える場合に、警察官がかみそりを与えることに同意をして、そして本人が持つておることを確認してそのままおる、神経衰弱であり、非常に心配があるという人間に対してみずから死んでもよろしいというところの危険な残物を与え、そして放置しておる。なおこれに加えるのに、その当時看視をいたしておりました警察官が二人おるのでございますが、この二人の警察官というものは、死んだ川上君と五間余りのところで看視しておりますのに、そのかみそりを持つてみずから頸動脈を切り、九箇所の傷をつけて命が絶えるという状態が来て、人から注意をせられてようやく発見した、こういうような事実になつておりますが、はたしてこういう実を総合してもこれで人権に対する尊重は成つたのか、人権蹂躙はないのだ、積極的にけつたりなぐつたりはしないかもしれませんが、けつたりなぐつたりがないといたしましても、これだけの事実をもつて、官憲は十分に人権を尊重して被疑者の人権を尊重しながら勾留を続けておつた、そしてその自殺に対しては何ら責任を国家は負わないのだということがはたして言えるかどうか、私はこの点も疑いなきを得ないのでございます。拷問という事実からいたしますれば、それはなかつたかもしれない、しかし人権尊重であり、人権を尊重することにおいてわれわれの国を守らなければならぬという意味から言つて、はたしてこれが許されることであるかどうか、私はこの点を法務大臣にひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御質疑のうち、まず看守が、異常心理になつている被疑者たる川上氏に対してかみそりを与えて、そのまますぐとりもどしておかなかつということは、十分職務を尽したとは遺憾ながら言えないと存じております。また川上氏がそのかみそりで自殺をいたしますときに、すぐそばにおりましたがそれを発見できなかつたということも、職務怠慢のそしりを率直に申して免れないと思います。そこでなぜそういうように刄物というような危険なものをそのまま渡したかということについて、ちよつと私も頭を脳ましまして、あるいは刑事局あるいは人権擁護局よりわれわれの角度から調査いたしたのでありますが、結局ただいま判明いたし、私の常識で判断した結果としましては、川上君という人は前に警察署で巡査部長をしており退職のときに警部補になつた、いわば警察署の先輩でありますので、身分も医師会の事務長か何かしている、その町としては相当の名士の部類に入りますので、普通の人に対してはかみそりを使うときにはそばについてそらせる、済んだらすぐ取上げるというのでありますが、先輩でもあるし、その町では名士であり、川上さんのことであるがら十分お使い願いましようということで金だらいごと渡したというのが真相のようであります。従つて積極的な悪意はないかもしれませんが、今申し上げましたように、異常心理の人に対する心づかいというものが欠けておつたということは言えるのでありまして、今後とも、今から言つてもおつつかないのでありますが、せめて川上氏の霊に対しても今後こういうことのないように厳重な戒めを発している次第でございます。  それから、何と言いましても選挙違反は、これは田嶋委員の方がお詳しいと思いますが、自分だけで済むわけのことでありませんので、本人の供述はすぐいろいろな人に響く、それに対して非常に良心がとがめるというようなわけで神経衰弱みたいなことになるのでありますが、それがなぜなおかつ最後の尋問のあとにとめ置いたかというと、実は川上氏の奥さんを調べる、自宅でしたか、自宅において拘禁しないまま調べる必要がありまして、その間二、三日たつている。その間に私の推測では、どうも奥さんが調べられたということを感づかれて、なお煩悶されたように聞いております。かれこれいたして思い余つて自殺をされたことはまことに残念に存じておるのであります。  それから拷問がなくてもそれで済むものでなくて、人権蹂躪ということを十分注意しなければならないということでありましたが、これは田嶋委員御出席のこの前の法務委員会で私が申し上げたと思いますが、実は私はその点で本月十一日、十二日に行われました全国次席検事会同で訓示をいたしたのであります。今度の総選挙においておおむね拷問というものがなかつたことは非常に私も安心し喜んでいる次第でありますが、拷問がなかつたからそれで済むという考えになつてはいけないので、留置場がつらいところであり、あるいは拘置所がつらいところであつて、自宅へ帰れば楽なところに帰れると思うその考え方が間違いであつてわが国の現状の農村及び地方の小さい都会においては、義理人情にからんでいるいろんな人情風習が思つたよりも厳格であつて、あの人がしやべつたために親類がたくさん呼ばれたとか、友人がたくさん縛られたとかいつて、家に帰つて来た被疑者を白眼視する風習というものは、私どもの想像よりずつときびしい。だから被疑者を、留置場という一つのつらい世界から、自宅という他のもう一つのつらい世界に帰つて行く人であると思つて、そしてその際に拷問ではないが寸鉄人を刺すような、それが最後のきつかけとなつて自殺を思い立つというようなことが絶対にないように気をつけてもらいたいということを言つたわけでありますが、この点についても、この川上氏のような事件を契機といたしまして、全国の検察庁は被疑者を調べる場合に、この人が特殊な風習、人情を持つた農村、地方の小都会をバツクとする一種の異常心理の持ち主であるということを十分念頭に置いて、はなはだこれは遅ればせで、死んだ人に対して相済まないことでありますが、しかしなおかつ今でも、今後のことを思えばおそくない、こういうふうに思いまして、謙虚な気持でそういう方針を立てております。
  32. 田嶋好文

    田嶋委員 大臣のお説を聞きまして、私もその点に対して非常に感謝するとともた、満足の意を表します。と申しますのは、今の川上君の死亡等に対しまして、拷問という事実ばかりが強く取上げられて、拷問の事実がない以上、死んだのは国家に責任がないのだ、取調官にも何ら責任がないのだという印象を非常に強く世の中に与えているわけであります。これは大きな間違いであつて、とにかく犯罪があつたといたしましても、それを検挙し、しかも留置して、しかもいろいろな遺憾な点があつて死亡したといたしますれば、拷問がないからといつてこれを見のがしておるべきものではないのであります。国家は十分にこれらの点を反省すると同時に、来るべき問題に対して十分なる対策をとらなければ、これは意味のないことでございます。本日の大臣のお言葉を承りますと、死人のみの責任でなく、国家に十分な責任があるということをお答え願つたわけでありまして、私も川上氏の自殺の問題に対しては満足すると同時に、本人もおそらく満足でありましようし、これらの関係者も私は満足するであろうと思う。やはり国家はこうした点に対して最善の注意を払い、今後の防止策に最善の努力を尽すべきものであると私は考える。ただ拷問があつたかないかというようなことで――私は政府当局のその言葉に対して反問すべき問題ではないが、事国家の人権擁護、民主主義国家の象徴たる人権の尊重に対して、私はここに大きな問題を含んでいるものだ、こう考えているわけでございます。  そこで私は、次の質問に参りますが、実はこの間から、いろいろと人権擁護局から選挙違反自殺者に対する調査の結果等が報告されております。この報告を見ますと、すべてが拷問があつたかないかということを中心にされて、そしてそれがなかつた、そこで人権蹂躪がないのだというような結論になつております。この中には長期勾留とか、不当勾留というようなことが何ら記載されてない記載されてないから調査しなかつたかどうか、これはわかりませんが、記載されてない。してみると、私たちは勾留ということに対して不当であつたか、長期であつたか、そこに違法はなかつたかというような点が調査されていないのじやないかとも考えられるわけでございまして、人権擁護局長おいででございましたら、一体これらの点に対しても十分調査をしたのか、そうしてその自殺には不当勾留、違法勾留、長期勾留によるところの遺憾な点等はなかつたかどうか、ひとつこの点をお聞きしておきたい。
  33. 戸田正直

    ○戸田政府委員 今度川上氏の自殺事件を初め全国に約五件の自殺事件があつたのであります。自殺をすることが非常に重大なことであることは言うまでもありません。そこで人権擁護上この自殺事件調査しなければなりません。また大臣からの御指示がございまして調査いたしました。人間が死ぬということはよくよくのことじやないか、よくよくの理由がなければ死なない。そこで今後の選挙違反で死んだというのは、まずわれわれが常識で考えて、死ぬについてはあるいは死ななければならぬような拷問等の人権侵害の事実があつたかどうかということを第一に考えなければならない、かように考えた。そこでもし拷問あるいは人権侵害等の事実がないとしたならば、一体何がゆえに死んだだろうか、何がゆえに死ななければならなかつたのだろりかというところまで、ひとつ死の原因を究明いたしたい、かような考え方から、各五箇所の調査をいたしたのでございます。従つていずれも、取調べ中における暴行とか自白の強要とかいうような、いわゆる人権蹂躪のみでなく、勾留が長期にわたつておつたかどうかというような点までも調べてございます。その結果、五件でございまして多少の期間の短い長いもございまするし、一まとめに御説明しにくいのでございますが、中にはただ参考人として数時間調べられただけの事件もございますし、あるいは十日の勾留満期前に釈放されておるのもございます。勾留の延期をされたのはただ一件でございます。これは長野県の降旗徳弥候補者関係の上垣外悦三氏の事件で、四月二十三日に逮捕されて五月十二日に釈放されております。これは延期になつておりますが、他は大体勾留満期前に釈放になつております。大体さようなことになつておりまして、ひどく不当に勾留したと思われるものは、人権擁護局で調べましたところでは、今のところ見当らないように考えております。
  34. 田嶋好文

    田嶋委員 実はその擁護局長の調査がどうも足らない。まことに申訳ないのですが、これは遺憾ながら申し上げなくちやならぬ。あなたが例を引いたから言うのですが、この長野県の降旗徳弥候補者関係自殺者上垣外悦三という方はお年が六十七歳です。あなたの方の調査でもそうである。いなかのおじいさんで腰が曲つておる。この人は何でひつぱられたかと申しますと、御承知のように結局戸別訪問の嫌疑で取調べを受けて、戸別訪問の事実が明らかになつたので、そこで自白をしたのに逮捕状を発行して逮捕しておる。調べてすぐ自白をしたのに、それに逮捕状を発行して逮捕した。そして二日間とめて、今度は釈放して、帰るところを玄関でまた逮捕状逮捕した。今度は買収で再検挙する。警察の玄関から再検挙した。調べてすぐ買収を自白しておる。買収を自白しながら、今言つたように勾留の再延長までしてこの人をとめる何らの理由はない。家もあり、家族もしつかりしておる、犯罪事実も明らかに自供しておる、逃亡のおそれも、証拠隠滅のおそれも何もないものを、初日から無意味な勾留が二十二日間続いておる。これをもつて人権擁護の立場から不当勾留ではない、しかも十分人権を尊重しておるということが言えるかどうか、私たちは疑わざるを得ないのであります。それと同時にもう一つこの不当勾留の裏づけのできると思いますことは、妻をひつぱつておる、奥さんをひつぱつたのですが、夕方の七時に刑事が連れに来て、七時から十二時半まで調べて、そして夜食は、これは与えたが食べなかつたということですが、とにかく調べて、一時四十五分ごろ帰宅を許しておる。逃亡するおそれはないのですし、婦人を晩にひつぱつて夜中まで調べる必要はないのですが、わざわざ日の暮れになつてひつぱつて、一夜中調べてあくる朝の七時に帰宅を許した。その人は妻なんです。こういうような裏づけから見ますと、いかにもこれは不当な勾留であり、無意味な勾留であると同時に、この人に対しては、証人を呼んでみないとわかりませんが、私たちの調べによると、手を下したり器物でなぐつたりはしていないが、言葉で非常はおどしつけた事実は、ある程度調べによつて明らかになつておるのであります。これをお取調べになつたのか、なつたとすれば、これを不当勾留でない、勾留上達法はないのだとおつしやるのか、この点をひとつ伺いたい。
  35. 戸田正直

    ○戸田政府委員 この上垣外悦三が検挙せられましたのは四月二十三日だつたと思います。これは最初は戸別訪問の疑いで逮捕せられたのであります。大体戸別訪問に対する容疑事実に対しては自供がありましたので、四月二十四日に釈放いたすことになつた。ところがたまたま別の事件で、降旗徳弥より同村の狩戸喜右エ門、征矢一衛という者と一緒に金一万円を受領したという事実が、狩戸の自供によつて現われて参りましたので、これを今度は買収容疑で再逮捕したというふうに聞いております。そこで、確かにお年も相当のお年なのであります。そんなに長く勾留する必要はないかということになるのでありますが、最初はこの買収の点については、すぐ自供はされなかつたように私の方は聞いておるのですが、長くなりました原因としては、私の方の調査ではこういうふうになつております。長野県の松本の平井という男から黄色い封筒の中に五千円入れて受取つたということであります。この平井の自供によると、当日上垣外悦三に会いに行つて渡そうと思つたが、留守で本人はいなかつた。そこで家族の若い人に渡して来たということになつております。その後今度上垣外悦三の自供によると、自分は黄色い封筒の中に五千円入つていたものを妻から受取つたという自供をしておる。ところが片方は若い娘さんにやつたということで、この点の平井と上垣外との自供が一致しませんから、この裏づけをしなければならぬというので非常に苦心したように思われます。この事実を明らかにするためにいろいろ追究はあつたろうと考えられます。そこで、この娘と妻を任意出頭で参考程度で調べておるのですが、これが出て来たり出なかつたり、一緒に来てくれといつても一緒に来なかつたりして多少時日も遅れております。また呼びましても娘は娘で自分はさようなことは全然知らない、また妻を呼べば全然知らないということで、数回調べたようですがこの事実がどうしてもはつきりしません。最後までこの点が明瞭になりませんので、捜査当局としては起訴する上に非常に難があつたのではなかろうか、これが非常に遅れた事由になつたのではないかというふうに、私の方の調査ではなつております。
  36. 田嶋好文

    田嶋委員 あなたは人権擁護局長でございますから、どういう取調べがあつたかというようなことをお聞きする意思もありませんし、あまり追究しようとすることも無理かもしれませんが、人権擁護局長として少しお考え願う必要があるのじやないかという点からお聞きしているわけなんです。  そこでもう一つそれをつつ込みますが、とにかくそういう場合には、もらつたという人があり、渡したという人も自白している。その中間の問題なんかは、そうとめてまで裏づけしなくても済む問題じやないかと思うわけです。そこで私の考えは、今日は勾留するということが取調べの常識的なことになつていて勾留しなければ取調べをしない、不勾留で取調べをすることが変則になつておる。こういうことが長・期勾留になり、人権蹂躙のような形になつて、結局人権尊重という思想が薄らいで、非常に迷惑を感じている。これが自殺者の原因をなしているのじやないか、こう考えざるを得なくなつているわけです。そこで人権擁護局のお取調ベの際に、そういう面までつつ込んで調べてやつて、ここに違法性があるかどうか、ここに自殺原因があるかどうかということを研究して、公にしていただくことが私たちは望ましいことだと考える。この点に対しての御意見を伺いたい。
  37. 戸田正直

    ○戸田政府委員 ただいま御説のように、逮捕して身体を拘束するということは例外でございます。逃亡のおそれがあるとか、住所が不定であるとか、あるいは証拠隠滅のおそれがあるということ以外には、逮捕拘束することは例外であるというふうに人権擁護局としても考えております。そこで、この問題が非常に長くなつておるのじやないかということも一応人権擁護局としては考えまして、十分注意はいたしておるのでございますが、ただ、今の田嶋委員の御説によりますと、やつた者ともらつた者があるからもうそれで十分じやないかということでございます。私は捜査当局でありませんので確たることは申し上げられないのですが、どういう径路を通つてどうして来たかという関係がはつきりしませんと、ただやつた者がある、もらつた者があるというだけでただちにもしこれを信じて起訴した場合に、あるいは間違いが起ることもあり得るのではなかろうかと思われますので、やはりこの径路を一応捜査し調べるということも、私はやむを得なかつたのではなかろうかと思います。また延期して長期にわたつたことに対しては、私どもいろいろ案えておるのですが、やはり諸般の事情からこれもやむを得なかつた事情があつたのではなかろうかというふうに一応考えております。そして勾留中においてもいろいろ荒つぽい言葉等で追究されたのではなかろうかというようなことも、私の方としても一応考えております。それは上垣外悦三が出て来てからも、盛んに百万円罰金をとられる、今度は年をとつておるから帰れないかもしれない、あるいは警察から出されたが、またひつぱられるのではないか、あるいは家族等も共謀でやはりあげられるんじやないかというようなことを繰り返し返し述べておつたというような事実もございますので、これが警察から言われたというようなことを聞いておりませんので、その事実はわかりませんけれども、あるいはさようなことを言われて、それを気にしたのではなかろうか。警察としてはどういう径路を通つてこの金が入つて来たかという事実を明らかにしたという気持でやつておりますと、本人の方とすれば、これは家族を共謀関係に結びつけるために家族たちを調べているんじやないか、これを追究しているんじやないかというようなことを、いろいろ疑心暗鬼になつたりして、相当精神的に苦痛があつたのではなかろうかというようなことは大体想像されるのでございますが、何せこれが警察からこういうふうに言われてこうなつたということがはつきりしたものがございません。ただ私の方としては臆測の程度でかようなことがあつたのではなかろうかという、現在の段階ではまだその程度しか調査ができておりません。
  38. 田嶋好文

    田嶋委員 そこで関連しますので、これは法務大臣にお答えを願いたいのでありますが、実は具体的な例として、もう一つ、三池現代議士の問題があるのであります。これは新聞紙上の発表でございますので、その真偽を私は相手方から聞いたわけではないのでございますが、三池代議士が国会が開会になつたために国会に出て来て、その足で検察庁に取調べてもらうべく佐賀の検察庁に参つたところが、国会から逮捕に対する同意が出て、三池代議士を逮捕状によつて逮捕して勾留しない限り、絶対取調べを進めることはできないと言つて、向うでは三池代議士がみずから進んで取調べをしてくれと言つたにもかかわらず、その取調べに応じようとしなかつた。勾留をしなければ取調べない、こう言つて向うはがんばつて、どこまでも国会逮捕に関する同意を得るんだという強気で豪語しておつたということが、新聞記事に明らかに載つておつたわけなんですが、これから考えますと、やはりやつた以上はとめる、そしてひつぱる、これが前提になるんだということを世間に対して検察庁が公表している。これが取調べの常道だということを示しておるという感じを受けまして、まことに変な感じになつておるのでございますが、この点に対して佐賀検察庁のとつた態度をお取調べなつたことがありましようか。お取調べなつた結果がありましたら、どのようでございましたでしようか。そしてこれが間違つておるかどうかという点に対する疑問をはさんで、御注意をなさつたことがあるかどうか。その点をひとつお伺いいたします。
  39. 犬養健

    犬養国務大臣 一般論として、何でもかんでも拘束しなければならないという考え方については、私も深く感ずるところがありますので、三池代議士の問題については、ここに事務当局がおりますから、事務当局から詳しく事件のいきさつを申し上げ、なお私に根本論として御質疑があれば、喜んでお答えをいたしたいと思います。
  40. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 私どもの方に入りました報告によりますと、御承知の三池氏の事件は、国会開会前にかなり事件が進展いたしまして、最後の段階になつて三池氏に逮捕状が出されたのでございます。ところがそのまま所在がわかりませんので、時日が経過している間に国会の開会がございました。それで逮捕状の発付、執行等につきましては、国会法手続によらなければならぬ、かようなことに相なつたわけであります。そこでその当時までの取調べの状況に応じ、佐賀の市署におきまして、これはやはり逮捕状執行して身柄拘束の上取調べるべき案件であろうということを佐賀の検察庁に相談がありましたそうでございますが、その結果、日付は五月二十二日と相まつておりますが、佐賀の市警から逮捕状請求佐賀の地裁に出した。そこで佐賀の地裁から五月二十三日に内閣あてに国会の許諾を求める旨の書面を提出した。かような事情に相なります。その後国会が一応開かれましたが、五月の二十六日に三池氏が佐賀に出頭しております。その当時お話佐賀市署にまつまぐ行かれたか、あるいは検察庁にまつすぐ行かれたか、その辺の事情は実は私の方でわかりませんのですが、結局検察庁におきまして一応の事情を聴取した上、現在手続してある逮捕状許諾の請求という手続といかようにからみ合せて取調ぶべきかという点について、現地の判断がいたしかねたわけでございます。そこでその旨をたしか検事長を通じて中央の方に相談といつたような形で参つたわけでございます。その後二、三書面のやりとり並びに現地からの係官の出頭等がございまして、事件の内容がだんだん私どもの方にもかなり詳細にわかつて参りました。その結果、この事件についてさらに三池氏本人が任意に国会自然休会中に出頭されて、三、四日でも向うに滞在をせられていつでも取調べに応ずる、さような申出もありました関係上、現地ではそれじや一応事情をさらに詳細に承りましよう、さようなことになりまして、六月のたしか九日から十三日と記憶しておりますが、その間任意出頭の形で御本人から詳細の事情を聴取したわけでございます。それで今までわかりました証拠の関係と、本人の供述とを照し合せまして、その結果検察庁といたしましては証拠的に心証がとれた――内容的には否認でございますが、これはここだけのことで……。心証がとれたということで、たしか六月の二十日の日に公判請求手続をとつた次第でございます。すでに公判請求手続をいたしました以上は、逮捕状手続はもとより不要となる性質のものでございますので、たしか同日佐賀の市警から裁判所あてに逮捕状の不要になつたという旨の申出がありました。それに基いて裁判所から内閣あてに撤回の申出があつた、かような経過に相なつております。
  41. 田嶋好文

    田嶋委員 三池君の事情はわかりましたが、とにかくああいう、談話があつたので、私たちはやはり国民に与える印象としては、とめることが常識だというような印象を与えたんじやないかと思う。それを裏づけするようなことになるかもしれませんが、佐藤検事総長が、選挙直後旅をいたしまして、奈良で談話を発表して、その談話が世の中に大々的に公表されました。その談話というのは、逃亡しておるところの選挙違反人、主として候補者、しかも当選代議士ですが、その代議士に対しても国会が始まつても、逮捕の手をゆるめない、国会が始まつても必ず逮捕するということを談話で発表しております。私たちはこれを見て非常に奇異に感じたのであります。逃亡するということは、別に被疑者として権利、私は義務とは言えないが、権利という部類に入るのじやないか。別にこれが逃げていかぬということはないのでありまして、悪いことをして逃げるのはあたりまえなので、それをいかにも逃げたことが悪いような印象を与えて、しかもそれを国会の同意がなければ逮捕できないにもかかわらず、同意もなしにとにかく逮捕して入れるんだ。こういうように何でもかんでもぶち込むというような印象を強く与えるようなきらいがありまして、それは出た方がいいかもしれませんが、何だかそこに割切れぬ問題を残すわけなんです。やはり勾留ということは、今度の刑事訴訟法でも問題になるわけでございまして、相当重大視して考えなくちやならぬと思つているわけなんですが、一体現在の検察当局、これは法務大臣から伺いたいのですが、警察というものは口では勾留は証拠隠滅、逃走のおそれのあるとき、こう言つておるのですが、品で言うのと、心の中は違うと思う。現在のやり方、そして考えというものは、これは何でもかんでも容疑事実があつたらとめるのだ、こういう考えで処理され、進んでいるんじやないか、この点をいかようにお考えになつておりましようか。法務大臣並びに国警長官からひとつお答えを願いたいと思います。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御注意は、つつしんで傾聴したのでございます。しかし一方から考えまして、三池代議士の場合も、中央におきましては法務省、並びに最高検におきましては、できるだけ勾留しないで済むならば勾留しないで尋問した方がいいじやないかという空気もありまして、あながちおしかりのようなことばかりでもなかつたように私拝見しております。検事総長の談話は私も読みましたが、これは先ほどの新聞問答ではありませんが、問う人と問われる人とやはり関連性がありまして、まさか一国の検事総長が、国会が始まれば万事休すだから、それまでしばらく元気よく逃げまわれという指示もできませんので、結局ああいう談話に二、三行で書くとなるんじやないか、しかしこれは十分気をつけます。あと詳しいことは国警長官から申し上げます。
  43. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 逮捕、勾留のことは、ただいま田嶋委員もお述べになりましたように、被疑者を調べ上げて、証拠隠滅がある、あるいは逃走のおそれがあるというときに限られておるのであります。従つて私ども警察官を指導いたします際におきましても、その点を非常にやかましく言つておるのであります。具体的に地方の方で判断のつかない場合に、意見を上申して来る場合もあるのでありますから、いつも私はその際に、これはほんとうに逮捕をしなければ逃亡のおそれがある、あるいは証拠隠滅のおそたがどこどこにあるんだ。選挙違反について申しますならば、相被疑者と思われるものは、もうすでに釈放されている。これから逮捕しようというものについては、これはまだ調べていないけれども、通謀ということを考えるならば、通謀はすでに十分できている、ほかの物的証拠などはありはしない。それを今から逮捕することは、これは自白を強要するために逮捕したといわれてもしかたがないし、そういう逮捕はいけないということを私は強く言つているのであります。しかしただいまの点は、なお現場におきましては、十分徹底しない向きもあろうかと私は率直に思います。これはわれわれの方も、検察当局の方も両々この点をよほど注意をして行かなければ、知らず知らずの間に人権を侵しているということになることを私はおそれております。この点は今後も十分注意をいたして参りたいと思つております。
  44. 田嶋好文

    田嶋委員 それでは国警長官に具体的な事案についてお尋ねいたします。今のお言葉を承つて私非常に安心したのでありますが、実は最後のお言葉にございましたように、先の先まではちよつと監督ができないというところから起つているのではないかと思うのですが、実はこういう事案があるのです。鹿児島の選挙違反、これは自由党の代議士で岩川與助の関係の問題なんですが、昨年も種子島で岩川候補の選挙違反が大々的に取上げられまして、これは今日起訴されて事案になつております。起訴の内容としては、岩川君がひさしぶりに国会が終つて、休会になつたので帰りました。帰りましたところが、裁判所、検察庁、警察、それから民間団体すべてが歓迎会を開いた、その観迎会の席上へ岩川君が出まして、金一封、一万円ですかを出しましてお礼をした。これが選挙違反に昨年問われまして、全部が検挙された。検挙されないものは、そこに出た警察官と検察庁の検事、副検事、裁判官だけは取調べもされませんし、起訴もされておりません。これは違反じやないという、それ以外の人間は全部違反だということで検挙されまして、今年公判、今度の選挙でまたまた国警が動きまして、たくさん検挙したのでございます。一々申し上げませんが、六十歳になる婦人で鎌田けい、大木田すえというのを留置しております。この留置原因は何かと申しますと、これも東京の目黒区の区会議員に榎本純一というのがおりまして、これが岩川與助君と非常に懇意なのです。これが成功者としてたまたま帰り、岩川君と懇意なものですから、選挙のトラツクに乗つてお手伝いをした。ところが区会議員でございますから、種子島あたりでは大成功者なのです。この人が帰つたからというので、当時の同窓生を集めて、会費二百円で同窓会を開いた。ところがこれも成功者でございますから、四千円の金――全部で何万円かかかつていたのでしようが、四千円を寄付して帰つた。これが選挙のために出されたのだろうということで、当時の同窓生全部を検挙しました。その中にたまたま女の鎌田けい、大木田すえというのが二人まじつておつたわけなんですが、これを十何日間種子島の国警に留置いたしまして聞いたが、それ以上の事実はないので今度は種子島ではいけないというので、国警の鹿児島本土の県庁の中にある本部に送ることになりまして、種子島から鹿児島まで七、八時間船で時間がかかるそうですが、その船に女に手錠をかけて乗せて、また本土の警察に連れて行つて一週間くらいとめておいた。そうして満期の日に釈放して、容疑事実なしということで、不起訴になつておる、まことにこれは遺憾なことだと思うのです。  それから榎本純一という人は選挙を済まして東京に帰つて来ましたところが、この人に対しても逮捕状を出して――これはどういう経過になるか、逮捕状が五月の十五日に出て、警視庁が逮捕状執行したのが今月の八日なのです。警規庁が二十日間逮捕状を押えておつた、何のために警視庁が押えたかわかりませんが、聞くところによりますと、ばかばかしいじやないか、こんな人にまで逮捕状を出してとめる必要はないじやないか、こんな気持じやなかつたかという気もします。しかし警視庁がどうしてとめておつたかわかりませんが、向うで送つて来たのを、二十日間警視庁で押えて執行できなかつた、そこで請求の結果、とうとう警視庁も執行して、榎本を鹿児島に連れて行つたのであります。鹿児島へ行く途中は手錠はかけなかつたのでありますが、しかし常に監視がついて、三等の汽車で鹿児島へ区会議員さんを連れて行つておる、そうして朝昼晩ラジオ放送をして、あくる日もやつた、要するに買収事件で東京区会議員を検挙した、悪質なものであるということで、四回にわたつてラジオで放送を行いました。そして一週間取調べをして、容疑事実なしとして釈放しておるのでございます。これについては、口をぬぐつておるのであります。こういう事実があるが、この事実を国警長官はお聞きでありましようか。お聞きでないとすれば、この事実について十分なる証拠資料を本国会にお出し願いたい、こう思うのでございます。
  45. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまお述べの事実は、私ども全然承知をいたしておりません。詳細取調べまして、御報告を申し上げたいと思います。ただいまお述べの通りであるといたしまするならば、私どもは適当でない部面が多々あると思います。取調べの上、十分処置をいたしたいと思います。
  46. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今の問題に関連して……。質問者の田嶋君はたいへん満足されたようで、それを私がむし返すことははなはだ恐縮ですが、少し私は物足らぬところがあるのです。先ほどの川上のことで、勾留中に極度の神経衰弱であるということがわかつた。それをも勾留しておくことは、肉体上の拷問はないけれども、人権擁護の点から、人権蹂躪にならぬかという点に対するお答えがなかつた。これは重大なことだと思いますから、もう一応お伺いいたします。
  47. 犬養健

    犬養国務大臣 もしもわれわれ共通の常識あるいは良識において、神経衰弱だと明らかにわかつておる者について、かりに何らの処置がとられていなかつたとするならば、これはゆゆしい問題だと思います。
  48. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで次に、先ほども出たのですが、佐賀県の有馬惣助の問題です。これは追補並びに人権擁護局から来たものだと思いますが、私が聞いておるのとたいへん違つておりますので、もう一ぺん局長に聞いておきたいのです。この中には、一度ふんどしで首つりをやつて自殺未遂に終つた、その次はよろめいて倒れて、額に傷を負つておつた、それだけのことしか書いておりませんが、私が聞いておるのでは、中で三回自殺未遂をやつた。最初は舌をかんで死のうと思つてやつたが、かんで傷はついたけれども、遂に死ねなくて、それで押えられた。こういう事実を聞いております。それからよろめいて倒れたというのは、そうではなくて、死のうと思つて、みずから頭をコンクリートにぶつつけた。こういうことを聞いておるのですが、この点は、あなたの方にどういう報告があつたか、このことを承りたいと思います。
  49. 戸田正直

    ○戸田政府委員 私の方の調査によりますと、便所で一度ふんどしをかけて自殺をはかつた。この事実には間違いない。そこで本人自殺しましたあとで、いろいろ考えたところが、前に本人は便所でころんで、便所の上り口のコンクリートの石にぶつつけてつくつた傷だということを言つておるが、どうも縊死を企てて、またその後自殺を実際してしまつたというようなところから、その前に石に顔をぶつつけてけがをしたというようなことも、これは自殺をはかつたのではなかろうかという想像を、あとからいたしまして、これは自殺をはかつたのだろうということに、新聞記事等もなつておるようでございます。しかし私の方で調べましたところでは、これは本人が言う通り、哀弱しておつて、ふらふらして倒れて、傷をしたのではないかというふうに承知いたしております。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いま一つ重大なことは、勾留場で三度も自殺を企てたので、非常にからだが弱つて、医師に見せたら、医者は極度の神経衰弱だから、ここにとめておいてもらつては困る、こう言つたのにもかかわらず、なおとめておかれた。こういう事実を聞いておるのですが、これらの事実についてはいかがですか。
  51. 戸田正直

    ○戸田政府委員 本件は勾留しましたけれども、九日間勾留しまして、満期日前に出しております。確かにからだも衰弱しておるので、むしろ看守等は弁護人である原弁護士に対して、どうも本人もからだが非常に弱つておるようだから、早く出してあげるようにしてもらいたい、また自殺をはかつたりしておるので困るから、早く釈放してもらうように弁護士も骨折つてもらいたいというようなことを、むしろ警察の方から申しておるようなわけであります。そこでこの原という弁護人は、同時に法務省の人権擁護委員をいたしておりまして、はたして警察においていろいろ人権侵害的なものがあつたかどうかというようなことは、人権擁護委員である立場から、また弁護人としての立場から、非常に注意をして調べられたように見受けられます。この原弁護士のいろいろ話すところによりましても、最初の顔の傷も、本人はあまり言いたがらなかつたようであるから、深く追究はしなかつたが、また自分自殺したかというようなことは聞きもしなければ、考えてもいなかつた、また拷問等の人権蹂躪の事実も、自分が見たところではほとんどないように思うというようなことで、自殺未遂をはかつておりますから、表から見ると、何か警察で相当の拷問があつたのではなかろうかというような疑いを形の上では持たれるのでございますが、私ども各方面を調べましたところでは、警察における人権蹂躙、また不当に長く拘束したというようなことも、今のところ見当らないように存じます。
  52. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも私の質問の趣意がおわかりにならぬようです。あなた方拷問々々と言うておられますが、肉体的になぐつたりぶつたりしなければ拷問でないようにあなたは思つておるか、こういう点を聞いておる。大事なところは、からだが非常に弱つておる。医者に見せた。医者が極度の神経衰弱だから、これはとめておいては困ると言うたにかかわらず、とめておいたという事実を聞いておる。そういうことがあつたかなかつたか、調べられなかつたかこれを聞いておる。そんな肉体的なことをやつたかやらぬかの問題ではない。
  53. 戸田正直

    ○戸田政府委員 そういう点もみんな詳細に調べておるようであります。警察に勾留されますと、どなたも異常心理にもなりますし、またどうしてもからだが多少弱くなることは、これはやむを得ない。ある程度身体を拘束されておりますので、どうしても正常とは違つて来ることは当然と思われるのです。この期間の勾留は私どもの調査によつても、そう不当に長くかかつたとは思われないし、私ども身体だけの暴行を受けたかどうかというような点だけを決して聞いたのではなく、その点のみを調査をいたしたのではありませんで、各方面の処分の事情を一体調べたつもりでございます。その結果が、大体先ほど申し上げたようなことに相なつておるのでございます。
  54. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ではもう一つこうお聞きしましよう。肉体的に暴力を用いなくとも、極度の神経衰弱で勾留不能である、勾留しておくことは不当であるという医者の診断があつて、それでもなおかつとめ置いたか、それは人権蹂躪と認められないかどうか、この点はいかがですか。
  55. 戸田正直

    ○戸田政府委員 だれが見ましても、極度の神経衰弱で勾留には無理だというような者を、しいてとめておくというようなことは、これはよろしくないと存じます。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それならばいま一度私が申した観点から取調べて、事実をいずれこの次の機会に報告していただきたい。  もう一つ私は承りたいのは、このたびの選挙違反で非常に大きな問題になつておりまするが、その問題になりました大きな事件は、主として自治警察であつたようにわれわれは聞いておる。そこで問題は、自治警察にかりにこういう不当なことがあつたといたしまして、その責任の所在はどこにあるのか。ことにわれわれとして聞きたいのは、もしそういうことがあるならば、国会に対してだれが責任を負うのか。この点明瞭にしておかぬとたいへんだ、こう思います。これをひとつ承りたいと思います。
  57. 犬養健

    犬養国務大臣 これは各市町村の公安委員会責任を負います。
  58. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、最終責任者は市町村の公安委員会である、こういうことになる。ところが、これに人権蹂躙があつた場合に、警察当局に何も責任がないのか。これらに関してわれわれとしてはだれに聞いたらよろしいのか。各市町村の公安委員だけをつかまえるほかないのか。検事は、ある程度の捜査に対して責任があるのですから、私はないということはないと思います。この関係を私、前から聞きたいと思つておつた。これは明瞭にしておかぬと、まつたくこの責任の所在というものが明らかになつておらぬ。そこで、追究することができぬことになつたら、いろいろな問題が起つて来ると思います。これはもし今ただちに御返答ができないならば、重大な問題ですから、御研究の上で御返答をされてもよろしいと思います。
  59. 犬養健

    犬養国務大臣 私も非常に重要なことだと思つておりますが、自治警察だけの行き過ぎ行為であるか、市町村の公安委員会の行為であるか、そこに事務がからみ合つて、検事が多少でも関係しておることになりますと、私の政治責任になると思います。そこは事件の内容で違つて来ると思います。
  60. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もしかりに市町村の公安委員会だけが責任を負うということになると、国会においては、政府委員でもないのですから、参考人として呼んで聞くよりほかない。はたしてそれでいいのか、悪いのか、これは重大な問題ですから、ひとつ御研究願つておきたいと思います。  それからこれは世上言われることですが、どうも自治警察はこのたびは張り切つて選挙違反を大いにあげておる。その意味は、昨年国会警察法の改正案が出て、各地の自治警察が一斉に反対運動をした。そこで今度は、もう一ぺんああいうものを出すようなら、ひとつわれわれの腕を見せてやろうじやないか、こういうことで大いにやつておるといううわさがございまするが、さろうなことはあなたの耳に入りませんか。また思い当る節はございますんか。
  61. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さようなうわさがあるじやないかということを言う人もございましたが、実際は私は、そういつた意図で特にやつたというようには考えられません。比較的大きな事件が自治警に前よりも多かつたという程度であつて、それは少し思い過しの観測ではなかろうか、かように考えております。今大臣もおつしやいましたように、検事でなければ勾留がつけられませんので、当然検事によつて勾留がつけられておると思つておりますから、今の点は、自治警のために、私は弁明をいたしておきたいと思います。
  62. 押谷富三

    ○押谷委員 関連して。田嶋君その他の方からお尋ねになりました自殺者の関係につきまして、関連して一、二点お尋ねをいたしたいと思います。  実は私は、川上長蔵君が自殺せられた五月三十一日の朝、まつたく偶然の機会で浦和に参つておりまして、いち早く警察にも行き、川上君の宅にもお悔みに上つたのでありまして、当時のなまなましい現場における私の調査、あるいは受けました感じ等からいろいろ意見もありますが、これを申し上げようと思つておるのではございません。ただこの事件にかんがみまして逮捕状あるいは勾留状の執行に対して、警察あるいは検察庁における取扱いの一般方針等に一、二点疑義がありますから、この点をお尋ねいたしたいと思うのであります。  まづ先般配付を受けました法務省人権擁護局調査報告の川上君の関係におきます報告の第五項に「留置人の保護について注意が十分でなかつた。」という項目がございますが、その項目のイに「二階の代用留置場は既に取調を終り、あとは検察庁の処置をまつて数日中に釈放される予定の市会議員のみ収容しているので、証拠湮滅の虞れも逃走の憂もないため、留置人の取扱は寛大であつた。」こう書かれてあります。取扱いの寛大の理由にはなるのでありますが、留置をするという場合におきましては、もちろん法律に定められたいろいろな要件があります。そのほかに実体上の要件、実質上の要件としては、事件を調べなければならない。逃走のおそれがある、証拠隠滅のおそれがあるという場合に留置が許されるのであつて取調べが済んでしまつて本人はもう逃げない、証拠隠滅のおそれもないという場合に、権察庁の処置のために数日間留置を継続されたということがここに書かれてあるのでありますが、こういうような留置の事実というものがはたして許されるかどうか、この点について法務省の御意見を伺つてみたいと思います。
  63. 戸田正直

    ○戸田政府委員 お尋ねごもつともでありますが、この川上氏の事件の場合は、警察取調べは終りましたが、検察庁の取調べは終らないということで、さような意味から勾留が少し延びておつたのではないかと考えております。
  64. 押谷富三

    ○押谷委員 警察取調べにつきましては、検察庁も無関係に相なつてつたのであります。そうしてこの報告によると、すでに取調べが済んでおるのであるとはつきり書かれてあります。証拠隠滅のおそれもない、逃走のおそれもないとはつきり書かれてあるのであるが、かような場合において、検察庁の処置だけで数日留置をするということは、これは仮定でけつこうですが、許されないものだと私は考えるのですが、政府のお考えはどうでありますか。
  65. 戸田正直

    ○戸田政府委員 先ほど申し上げたように、すでに取調べも終つて、証拠隠滅のおそれもなし、また逃走のおそれもないという場合には、すみやかに身柄を釈放しなければならないと思います。
  66. 押谷富三

    ○押谷委員 浦和における留置場の被疑者の勾留状況がそういう状況であつたということは一応報告書からうかがわれますから、この点につきまして、特に今後勾留状の執行にあたつての一般の御注意を喚起していただきたいと思います。  さらにもう一点、この報告書に代用留置場というのがあるのです。私は現場を見て来たのでありますが、代用留置場は、もちろんたくさんの人を逮捕しあるいは勾留状を執行する場合に、留置場の設備がないときはやむを得ません。代用留置場を使わなければならないことはわかりますが、留置場は人を留置する場所ですから、その設備もあり、あるいはそこで適当に監督されておるでありましよう。実際代用留置場という言葉が現われておりますが、浦和の場合における代用留置場はお調べに相なつたのでありましようか。また代用留置場における留置の実際の状況をお調べになつたならば、それの御報告を願いたい。
  67. 戸田正直

    ○戸田政府委員 留置場は、従来会議室に使つておつたところでありますが、下の留置場がそういうふうに選挙違反関係で一ぱいになつておりましたので、やむを得ず二階の会議場を代用留置場として使つたというふうに聞いております。この写真はあるのですか……。     〔戸田政府委員写真を委員に示す〕
  68. 戸田正直

    ○戸田政府委員 この写真ですが、言葉の上ではちよつと説明がいたしにくいのです。
  69. 押谷富三

    ○押谷委員 私は代用留置場の現場を見たのでありますが、会議場の一部に木の長いいすを並べて、そこにむしろを敷いて、毛布を敷いて寝かす。これは四人を一緒に寝かしておるのですが、こういうような場所は市会議員等の相当地位もある人たちを留置する場所として、設備として私は非常に欠陥があると思うのですが、これからも一般に代用留置場というものが行われるのでありますから、これについて当否、この状況における代用留置場はよいとお認めになつておるか、大きな間違いがあつたのだとお認めになつておるか、この点をお伺いしておきます。
  70. 戸田正直

    ○戸田政府委員 たいへん申訳ないのですが、私は他の各警察の方の留置場を十分に見ておりませんので、比較対照は私からは無理かと思うのですが、ただ一般の留置場は御承知のように外部からかぎをかけまして、むろんこれは代用もそうですが、鉄格子あるいは木の格子の中に入れられておられる。その中にむしろを敷くというのが、大体一般の例だと思います。本件の代用留置場と比較してどうかということなんですが、比較は困難でございます。ただ気分的に、普通の狭い格子の中に入つておらない。そうしてその会議場の仮留置所に入つておる者が、お互いに自由な姿勢で自由に話し合つたり何でもできて、非常にゆるやかであるので、気持の上では一般の留置よりは楽であつたのではなかろうかというふうに考えておりまして、その設備がこの程度でいいかどうか。ただ比べてどうということは、今まだ調査が十分でございませんし、他を見ておりませんから、ちよつと申し上げにくいと思います。
  71. 押谷富三

    ○押谷委員 私は現場を見て来たのですから、かような形における勾留状の執行による留置というものはいけないとかたく信じております。従いまして私が希望するところは、今後勾留状の執行等について、留置場が手狭のために代用留置場を用いられる、かような場合における一つの基準あるいは注意等を全国的に指示するとか、注意を喚起されまして、かような間違いのないようにしていただきたい。犯罪の挿査の上からの留置もこれではいけません。また人権の擁護という立場から見ましても、かような場所において留置を継続することは許されない。特に御調査をいただきまして一般の代用留置場というものに対する適当な指導あるいは注意を喚起しておきたいのであります。
  72. 山本正一

    山本(正)委員 これは委員長を通して委員会にお諮り願いたいと思うのであります。人権擁護の点についでただいま会が運ばれておるのでありますが、聞いておりますと選挙違反関係が中心にあげられているようであります。その中で川上長蔵氏の自殺事件は、人権蹂躙の事実があるという疑いは現在までの実情においてはまだ釈然とするところに至つておりません。また一方にそういう事実なしという意見及び報告がありますことは御承知通りであります。いずれにいたしましても今日の緒方総理新聞談話の実質的の否定は、国民は釈然といたさない。なお福永官房長官の同趣旨新聞談話というものも、国民には周知されている。拷問もしくは人権蹂躙の事実が関連したという国民の印象はまだ抜け切つてはおらないのでありまして、現在までの当委員会調査はまつたく間接的な調査でありますが、この結果が国民に及ぼす影響は相当重大なものであろうと思います。従つてこの問題については当委員会が直接に具体的に調査を進めたいと思いますので、ここに調査事項を正規にお諮りいたしたいと思います。それは今申しましたような趣旨において、委員会は直接に最も迅速に真相を責任をもつて調査するという趣旨から、今押谷委員からも御指摘になりました自殺が行われた当時の代用留置場というもの、その前に自殺川上が健康を害して数回警察医の診療を受けていることも事実のように聞いております。当委員会がこの代用留置場を検証する。そしてこの検証の現場において以下申し上げるところの直接の関係者をそれぞれ証人あるいは参考人として喚問をいたしたいと思うのであります。  現場の検証というのは代用留置場そのもの、それからなお世上伝えるところによりますと、人権蹂躙の内容として、川上長蔵の自宅から浦和警察署に至る道筋、それから浦和警察署から浦和地検に至る道筋この間を手錠をはめて小学校のある付近を必要以上に苦痛を与えて連行したということが伝えられておるのであります。はたして現場のそのようなものであるかどうかの問題。  それから証人の喚問は、五月二十五日に川上長蔵に、安全かみそりを差入れたところの関係者これが自殺の直接の動機になつておるのであります。それは川上長藏の長男某、それからこれに同行した浦和医師会の事務員の某であります。それから差入れを受付けた婦人警察官の某であります。それからその差入れを成規に許可いたしました主任警察官の某であります。それから二は川上長蔵を直接に取調べをいたしました警察官、すなわち浦和警察署の宮寺刑事課長、清水部長刑事、それから刑事の野中某、この三名であります。これらはいずれも直接の重要なる資料を提供する立場にある者でありますから、証言の責任を明らかにするために、証人として喚問いたしたいと思うのであります。それから参考人として喚問すべき者は川上長蔵自殺した当日、代用留置場に同房しておつた留置人であります。これは必ずしもつまびらかでありませんで、ここに明瞭なる者だけを申し上げますが、星野マス、当時の市会議員、加藤有志美、これも当時の市会議員であります。高野弥寿次、これも当時の市会議員、岡田介三郎、それから五月三十日午後十時以降、三十一日午前五時までの代用留置場を看守しておりました担当の巡査数人氏名はつまびらかではありません。それから川上長蔵自殺いたしました直後立ち会つた医師二名、一名は高梨某、一名は警察医岩崎某であります。警察医の岩崎某は先ほども申しましたように、自殺の前に、勾留中に川上長蔵の健康がすぐれないというので、一、二回診療いたしたという事実も、この岩崎にかかつております。当時の本人の健康状態、それから四は浦和警察署で安全かみそりの差入れを拒否された容疑者があります。それは野崎忠雄、当時の浦和市会議員であります。これを参考人として喚問いたします趣旨は、浦和警察署は当時の留置せられた容疑者の中で、ある者には差入れを拒否しておるのであります。ある者はこれを許容しておる。この拒否された者も当時の浦和市会議員、許された川上長蔵も当時の浦和市会議員、社会的地位も、犯罪事実も同様なのであります。以上は選挙違反関係の代表的なケースとして、直接的に調査いたしたい事項でありますが、選挙違反以外の問題で、特に人権蹂躙の事実を顕著に感ずるところのものが、別件に一つあるのであります。これは当委員会の事務当局が調査した資料に基くものでありますが、栃木県佐野市相生町六百八十四番地の柿沼善一及びそれの妻にかかる問題でありますが、この詳細は資料をお読みいただくことに譲りまして、要するに単なる風説によつて勾留をいたし、それで押収、捜索の令状、逮捕の令状の発付も受けているのでありまして、そして結果はなかつた、別のことで逮捕を無理に続行したためにその妻が縊死したというようなことでありますから、これも当の柿沼善一をお扱いになりました国警群馬県邑楽地区署長、同署の巡査下川文雄、清水幾太郎、辻岡政敏、武肇、これらの者を当委員会において、直接に証人として御喚問を願つて調査をいたしたいと思います。以上であります。
  73. 田嶋好文

    田嶋委員 ただいまいろいろ証拠申請のような詳しい陳述がありましたが、選挙違反事件の人権蹂躙について国政調査をなすべしという動議が提出せられたものと私は考えます。この動議に対しましては今各委員からも発問がありますので、その発問の終了後委員長において適当に諮られんことをお諮りいたします。
  74. 小林錡

    小林委員長 田嶋君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 小林錡

    小林委員長 それではそういうふうにいたします。
  76. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今これを読みますと川上自殺事件については浦和市警察署及び浦和地方検察庁の捜査取調べの過程において何らの人権蹂躙の事実は認められない。これが大前提だ、そうしてここにこの通り書いてあるのです。しかし私は勾留の理由がないのにもかかわらず勾留しておくほどの大きな人権蹂躙はないと思いますが、この点あなたはどうお考えになりますか。
  77. 戸田正直

    ○戸田政府委員 勾留の理由がないのに勾留した事実はありません。
  78. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 押谷君の先ほどの質問を聞いておりますと、証拠隠滅の事実もない、逃亡のおそれもない、これは勾留の必要はない、それにもかかわらず勾留しておつたということが明瞭になつたのですが、私はこれほど大きな人権蹂躪はないと思うのに大前提として人権蹂躪の事実なしと書いてある。この点ふしぎだと思うので伺いますが、いかがでしようか。
  79. 戸田正直

    ○戸田政府委員 この川上氏の事件につきましては先ほど申し上げたように警察では大体終つたと思われるのでありますが、まだ検察庁の関係が残つておりますので、今詳しい事情は申し上げられないのですが、川上氏としては一万円の金を受取つたということなんです。その金を奥さんに預けて来た、そこで川上さんの想像では、家に金は置いて来たが、おそらく自分の奥さんが半分くらいは使つたのではなかろうかというようなことを相当心配しておつたように考えられます。その後一万円は警察へ奥さんから持つて来ておりますが、その間のいろいろないきさつについて、検察庁あたりではまだ全部調べ切れないような点があつて、検察庁で調べておつたように承つておりますので、さようなことから多少延びておつたのではないか、また聞きますともう間もなくすぐ出すようなことになつておつたようにも聞いておりますので、私の方の調べたところでは大体さように承知いたしております。
  80. 田嶋好文

    田嶋委員 関連質問がありましてとだえておつたのですが、私もやはり鍛冶君、押谷君の関連質問に出ました趣旨と同様の趣旨で先ほどから承つているのであります。要するに御報告の中にはほとんど勾留の点しに対ては触れてない。勾留を判断の対象にした記載がないということ自体、これはその点に対して疑問をさしはさまなければならないのでありまして、やはり勾留の当不当もこの人権蹂躙になるかどうかという点について今後つつ込んでお取調ベを願わないことには、人権蹂躪があつたかどうかということに対する結論が出ないと考えております。これは質問につけ加えたわけなんです。  そこで私続いてお聞きしたいと思いますことは、戦前において選挙違反は世の中から相当に重要視されたものでありますし、戦前におきましては自殺者が出たというような例はあまりなかつた。出たときはどうなつたかといいますと、社会問題となり、たいへんな政治問題となつて騒ぎましたことは、犬養法務大臣非常にお古い政治家として体験されておることと考えます。ところが最近、戦後における選挙において顕著に見られますのは、特に今度の選挙、昨年の選挙を通じてたいへんな自殺者、自殺未遂者が出た、数にしたらたいへんじやないかもしれませんが、一人という人間に比べればたんへんな数字になると思う。これはほつておけないことじやないか。しかも戦後は特に民主主義が叫ばれ、文化国家が強調されておるときでありますから、私はこれはほつておけないことだと思う。その点に対し政府の御意見を承る資料といたしまして、ここにあるかないか知りませんが、岡原さん、なかつたら御調査の上でけつこうですが、終戦後今日まで五回の選挙が行われておるのでありますが、今まで発表された分はよろしいのでありますが、発表されない一、二、三の選挙でどれだけの自殺者並びに未遂者があるか、きようおわかりになりませんでしたらこの次でよろしゆうございますが、教えていただきとうございます。
  81. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 お尋ねの自殺者の調べは、昨年の分だけをまとめましたのをお手元にお配りいたしましたが、その以前の分は、実は私の方に報告が参つておりませんので、その都度どこか具体的な聞き込み、その他で私の方で材料を得まして、実地に問い合せてまとめたというような事情でありますので、古くなるほどその事実がつかみにくくなるわけでありますが、御要望によりましてさつそく手配をいたしまして古い分もまとめてみたいと思います。  なお先ほどの鍛冶委員からの御質問は、私に対してお名ざしがありませんので遠慮しておつたのでございますが、浦和の川上長蔵氏の関係事件は、調査いたしましたところ、一応警察官が調べましたあとで検事が調べておりますが、その後に川上氏の奥さんを調べて内容が若干違う面が出て参りましたので、被疑者に対してもう一度調べをしたいということで、すぐその翌日被疑者を調べようとしましたところが、これは二十七日ですが、被疑者が頭痛がするからあしたにしていただきたいというので、さらに二十八日に調べがあつたようでございます。二十八日に一応の調べをいたしまして、金銭の授受を認め、その趣旨を半ば否認したようなことで調べが済んだのでございますが、さらに細君の方から上申書の追送がございました。その上申書によつて、被疑者から四月末ごろになるべく使わないようにしておいてくれ、使つたら元通りにしておくこと、一万円のうち生活費に五千円ほど使つたので、証拠として警察に差出すときには、他の金を加えて一万円として出しましたというようなことを言つて来ましたので、さらにそれでは細君に自宅で事情を聞こうというので、その二十九日の日に連絡をとりました上、三十日に調べをいたしました結果、そういうふうな事実がわかつたのでございますが、これに基いて今度は被疑者に当ろうかと思つておるその晩に自殺をした、かような事情になるわけでございまして、結局もう最終の確める段階に至つて自殺した、かような事情でございます。従いまして、全然不要なのにというわけではないようでございます。
  82. 田嶋好文

    田嶋委員 それでは一、二、三回はなるたけ早く御調査の上お知らせを願いたいと思います。  そこで、不当勾留が結局人権蹂躙になる、これはいけないということは擁護局長からお答えがありましてわかつたのでございますが、私はこの場合はどうだろうと考えております。基本的人権が先ほど申し上げましたように文化国家、民主国家の象徴であるということから考えますと、基本的人権の尊重ということが大切である。その尊重という場合に、尊重に対して故意があつた場合、これは要するに積極的な拷問になりましよう。故意があつた場合は、当然人権蹂躙になるのでございますが、基本的人権を尊重するという建前から参りますと、基本的人権に対して、今の川上君の場合のようにはつきりしておるのは、これは過失がある。基本的人権に対しての過失、これは一体人権蹂躙にならないのか、これはどういう解釈になりますか。
  83. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 いわゆる人権蹂躙という言葉は、いろいろな強さをもつて使われておる言葉でございまして、先ほどの人権擁護局から出されました資料の、人権の蹂躙、拷問の事実はないというのは、おそらく例の特別公務員の職権濫用といつたような事実はないという趣旨で書かれたんじやないかと私想像いたします。ただ先ほどから御論議になつております通り、それでいいということでないことは、すでに大臣からのお答えにありました通りで、基本的人権はどこまでも確保すべきであり、そのためには、単に法律の条章に真正面から何も当るものがないということで満足してはいかない。憲法の精神を体し、刑事訴訟法の精神を十分かみしめまして、その上で取調べはしなければならない、かように存ずる次第でございます。ただいまお話の過失による場合はどうであろかということでございますが、過失の場合に人権蹂躙になるかならぬかという問題は、刑事法的な意味で申し上げますと、これは例の公務員の職権濫用について過失の処罰規定がございませんから、一応これは犯罪にはならない、さようなことになるのでありましようけれども、その行政的な責任というものは、これは依然としてあるわけでございます。なお民事的な責任もこれに付随する、さような意味におきまして、過失でありましても人権蹂躪というものはよくないというようなことになろうかと思います。
  84. 田嶋好文

    田嶋委員 最後に法務大臣にお伺いいたしますが、だんだん明らかになりましたように、大分自殺者が多いのでございまして、まあ積極的な人権蹂躙と申しますか、さつき私変な言葉でお聞きいたしましたが、はつきりした故意の事案はないと申しましても、過失という言葉は適当でないかもしれませんが、そうした言葉で言えるようなことは、今度の選挙違反を通じすべての自殺者に見られる点だと思うわけです。そうすると、今日の文化国家といい、民主国家という名前にはふさわしくない悪現象じやないかということを考えたときに、これは国家としてぜひ何か対策を講じなきやならないものだと思うわけでございますが、政府として、これらの事実と照し合せて、何か防止策に対して適正なお考えをお持ちでございましようか。立てる御意思でもございましようか。この点をお伺いしておきたい。
  85. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまのお話は、私も実は深く心にとめておりまして、今度の自殺者の出ました選挙違反事件でも、拷問はないのはわかつたけれども、こういう言葉使つたといううわさがあるがほんとうかどうかと、ここにおります人権擁護局長に相当しつこく言つて、私は繰返し調査を重ねてもらつたようなわけであります。その意図するところは、まつたく田嶋委員お話通り人権擁護拷問でなければ、あとは責任はないという気持で検察官が働いてもらつてはまことに遺憾だ、被疑者といえども日本国民であり、一個の人間である。人間性を尊重するというような空気を何とかしてつくりたいと思つております。これは広く言えば、社会の文化運動にも関係があると思いますが、法務省に関しましては、そういうことをのみ込んでいない人、あるいはのみ込めない天性を有しておる人は重要な役につけたくないと思つております。
  86. 田嶋好文

    田嶋委員 できましたなれば、最後のお言葉によりまして、具体的な事例をひとつ現わしていただきますならば、幸いであると思います。場合によりましては、今日取扱いました具体的な地区の検事あたりでも、われわれは調査して、法務大臣のもとにこういうような芳ばしくない検事があるということをお知らせしてもいいくらいに思つております。どうかやはり適当な実例をもつてこうしたことの防止策にされんことも、お言葉に甘えることになりますが、お願いをいたしておきます。  それからもう一つ最後に今回刑事訴訟法改正が出るということはもう公知の事実となつて参りました。この刑事訴訟法改正の中に、勾留期間の延長ということが盛られておることも公知の事実となつてつたのでございますが、どうも今日われわれがこうして質問を重ねております言葉をお聞取り願いますと、また事実をこうして調べていただきますと、どうも刑事訴訟法改正にあたつて勾留期間の延長をするということは、輿論からしても非常な反撃を受けるのじやないか、それから事実からしてもやはり人権蹂躙を助長するような形になるのじやないかという考えが生れるのでございますが、この点についてはいかようなお考えをもつてお臨みでございましようか。いずれ具体的な法案の審議にあたりましては、またお聞きするのでございますが、せつかくいい今日の機会におきまして承れれば幸いであります。
  87. 犬養健

    犬養国務大臣 この勾留期間の延長ということは、できればしない方がいいのであります。ただ御承知のように、特殊な事情のもとにおいて発生いたします、主として公安事件でありますが、多衆犯罪、こういうものに対処するのでありまして、われわれはこれを普通の犯罪事件に利用するというような考えは毛頭持つておりません。これも田嶋委員の方がお詳しいのでありますが、勾留期間の延長には十日説あり、五日説あり、その中間の七日説あり、あなたの委員長のときにこの問題が出たのじやないかと思いますが、私は諸般の実情を実際第一線に当つております検察官にもいろいろ聞きまして、五日でよろしいという政治判断をいたしまして、たまたまこれは民間法曹の付表であります日本弁護士連合会の考え方とも一致いたした。このくらいはやむを得ないのじやないか、決して自慢すべきことではないが、社会の現状から見てやむを得ないことではないか、こういうふうに考える次第であります。
  88. 田嶋好文

    田嶋委員 調査要求の動議がございますから、これをお諮り願いたいと思います。
  89. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  90. 小林錡

    小林委員長 それでは速記を始めて。先ほど山本正一君より本件の調査に関する具体的な方法につきまして御意見、御要望の開陳がございましたが、委員長といたしましても、きわめて重要な問題であると考えますので、あらためて理事委員諸君とも協議の上御意見、御要望に沿うよう善処いたしたいと存じます。  他に御発言もありませんか。――他に御発言がなければ、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  91. 小林錡

    小林委員長 この際お諮りいたします。鉄道犯罪委員である木上郁君より辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、辞任を許可するに決します。  木上君の辞任に伴う鉄道犯罪委員補欠選任については、先例に従いまして委員長において指名いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。木上郁君の補欠には井伊誠一君を御指名いたします。  次会は公報を以てお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会