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1953-06-23 第16回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十三日(火曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 細迫 兼光君 理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    福田 喜東君       牧野 寛索君    中村三之丞君       井谷 正吉君    中村 高一君       木下  郁君    佐竹 晴記君       山本 正一君    岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 六月二十三日  委員井伊誠一君辞任につき、その補欠として中  村高一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月十九日  司法試験法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号) 同月二十日  少年法及び少年院法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五八号) 同月八日  旭川地方裁判所名寄支部庁舎新築に関する請願  (松浦周太郎紹介)(第四六〇号) 同月十三日  戦犯釈放に関する請願青柳一郎紹介)(第  七一三号) 同月十五日  傷害被告事件調査に関する請願大石ヨシエ君  紹介)(第八三六号) 同月十七日  本別簡易裁判所及び検察庁昇格に関する請願(  伊藤郷一君紹介)(第一〇八七号) 同月二十日  戸籍及び除かれた戸籍副本再製費国庫補助に  関する請願西村直己紹介)(第一一八三  号) の審査を本委員会に付託された。 六月二日  戦犯者釈放に関する陳情書  (第二九号)  同  (  第三〇号)  司法保護事業費国庫負担増額に関する陳情書  (第三  一号) 同月八日  戦犯者釈放に関する陳情書  (  第一四〇号)  戸籍事務取扱に関する陳情書  (第一九六号) 同月十日  地方法務局登記課並びに各支局出張所経費の  増額配当に関する陳情書  (第二四六号)  旭川地方裁判所名寄支部庁舎改築に関する陳情  書  (第二四七  号)  同  (第二四八号)  同(  第二四九号)  同(  第二五〇号)  同  (第二五一号)  同(  第二五二号)  同  (第二五三号)  同(  第二五四号)  同(  第二五五号)  同(  第二五六号)  同  (第二五七号)  同  (第二五八号)  同  (第二五九号)  同  (第二六〇号) 同月二十二日  弟子屈町に区検察庁並びに簡易裁判所等設置の  陳情書  (第三五〇号)  戸籍副本等再製費全額国庫負担に関する陳情  書(第四〇〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員会設置に関する件  司法試験法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)  少年法及び少年院法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五八号)  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  司法試験法の一部を改正する法律案及び少年法及び少年院法の一部を改正する法律案、以上二案を一括議題といたします。順次政府より趣旨説明を聴取いたします。犬養法務大臣
  3. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま上程に相なりました司法試験法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  本案は前国会提案したものとまつたく同じ内容のものでありまして、大別して三つ事項をその内容といたしておるのでありまして、その第一は、司法試験第二次試験試験科目調整、第二は、受験手数料増額、第三は、弁護士法との関係の法文の整理であります。  まず第一の点から御説明いたします。御承知のように、昭和二十四年五月第五回国会において、旧高等試験令にかえて司法試験法が制定施行せられまして以来、逐年受験者の増加を見まして、昭和二十七年度第二次試験においては約五千五百人が受験し、本年度においては、受験願書提出者数六千人に達するような状況と相なつているのでありまして、かように多数の法律学徒がこの試験を目標に研鑽に努めておりますことは、国家のため喜びにたえないところであります。しかしながらこれら受験者のうち第二次試験選択科目として商法を選択する者の数はその半数に満たないありさまでありまして、司法試験に合格して司法修習生を経て裁判官検察官弁護士なつた場合に、刑法民法訴訟法とともにその必要性を認められる商法の学識において著しく欠ける者が多く、過去四年間の実績を検討した結果、第二次試験試験科目調整をはかるため、第六条第一項及び第二項を改正して、従来の必須科目に現在選択科目とされておりまする商法を加えることといたしたのであります。従いまして試験科目の数は現行通り科目でありますけれども、そのうち六科目必須科目となり、一科目選択科目ということになりますので、受験者にとりまして若干の負担が加重せられることになりますが、裁判官検察官弁護士取扱い事件のうち、商事関係事件の占める割合等を考えますと、この措置は必要やむを得ないものがあると考えるのでございます。  また第六条第一項及び第二項の改正に関連いたしまして、附則第四項を改正して高等試験行政科試験に合格している者に対しても、試験科目整理し、憲法、刑法並びに民法及び商法のうち、受験者のあらかじめ選択する一科目民事訴訟法及び刑事訴訟法のうち、受験者のあらかじめ選択する一科目、合計四科目を受験せしむることといたしました。  次に第二の点でございますが、司法試験受験手数料は現在第一次試験が二百円、第二次試験が五百円となつております。昭和二十四年司法試験法制定当時の物価事情と今日のそれとを比較いたしますと、各位十分御承知通り物価は著しく上昇いたしておりまして、各種国家試験たとえば公認会計士試験弁理士試験及び税理士試験医師国家試験及び薬剤師国家試験等においても物価事情に対応して受験手数料を五百円ないし千円といたしておりますので、第十一条第一項を改正して第一次試験を五百円に、第二次試験を千円に改めることといたしておるのであります。  第三は、第十三条第二項中「弁護士会」を「日本弁護士連合会」に改めたことでありますが、これは司法試験法が制定せられました後に弁護士法改正せられましたので、この際両法の関係整理することといたしたものでございます。  なおこの改正案は、本年度試験がすでに第一次試験を終り、第二次試験実施段階に至つております関係上、明年度施行試験から適用することといたしております。  以上大略でございますが、提案理由説明いたした次第であります。何とぞ慎重御審議のほどをお願いいたします。  次にただいま上程になりました少年法及び少年院法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  この法律案は、少年院法第二十一条の規定による代用少年鑑別所代用特別少年院等特例的措置が、本年七月三十一日までで廃止されることになつておりますので、これに伴う立法上必要な措置をとろうといたすものでありまして、その趣旨及び内容におきまして、さきに第十五回特別国会に提出され審議未了になりましたものと同じものでございます。  まず、少年法の一部改正について申し上げますと、この八月一日から家庭裁判所が観護の措置とつ少年収容する所は、本来の少年鑑別所だけとなるのでありますが、少年鑑別所所在地からかなり離れた所にある多くの家庭裁判所支部事件について、家庭裁判所少年鑑別所送致観護措置とつた場合において、交通事情等理由から、ただちに少年鑑別所収容することが不可能であるか、または著しく困難である場合が少なからず生ずるものと考えられるのでありまして、かような場合に、家庭裁判所決定をもつて少年もより少年院または拘置監の特に区別した場所に一時、かりに収容する措置をとることができるものといたしたのであります。しかしながらその仮収容期間につきましては、鑑別少年の性格にかんがみまして、少年院または拘置所収容したときから七十二時間を越えてはならないものとして制限し、かつ本人の利益のために、この期間を観護の措置によつて少年鑑別所収容した期間として計算するものとしておるのであります。  なおこれに関連して、第二十六条を改めて、この仮収容決定の執行に関する規定を置くことといたした次第であります。その他附則中に、この改正に伴う経過措置として、この一部改正法律施行前に観護の措置を受けて少年院または拘置監収容されている少年であつて少年鑑別所移送するいとまのない者をこの仮収容措置をとられた者とみなす旨の規定を置いておるのであります。  次に、少年院法の一部改正について申し上げたいと思います。この改正の要旨は、医療少年院について、男女を分隔する施設がある場合には、必ずしも男女の別に従つて設ける必要がないものとすること、及び少年院収容中の者を移送等のため同行し、または少年鑑別所収容中の者を審判等のため同行する場合口において、やむを得ない事由があるときは、これをもより少年鑑別所もしくは少年院または拘置監の特に区別した場所にそれぞれかりに収容することができるものとすることの二点であります。  その第一点の医療少年院施設のことにつきましては、御承知通り現在少年院は、少年院法第二条第六項の規定によりまして、男女の別に従つて設けることになつておりますが、医療少年院につきましては、その施設が十分でないため、同法第二十一条第三項の規定により、この七月三十一日までの特例的措置として、男子の医療少年院の一部を特に区別して女子をあわせて収容することができるものとされているのでありますが、医療少年院につきましては、従来の経験に徴しますると、男女別にそれぞれ独立の施設を設ける必要性も少く、かつ同一施設内であつて男女を分隔することができれば十分であると考えられるのであります。従つてこの際、医療少年院については、男女を分隔して収容する施設がある場合は、必ずしも男女の別に従つて別々に設置する必要がないものといたしたのであります。  第二点の少年院または少年鑑別所収容中の者の仮収容のことにつきましては、この八月一日から、家庭裁判所支部係属事件少年で現在代用少年鑑別所収容されているような者も、すべて本来の少年鑑別所収容されることとなるのでありますが、家庭裁判所支部は、おおむね少年鑑別所所在地からは遠隔の地にありますので、審判等のため少年家庭裁判所支部に同行した際、交通事情その他のため、その日のうちに帰つて来ることができない等のやむを得ない事情が生ずることもあるものと考えられるのでありまして、これらの場合に、これをもより少年院または拘置監の特に区別した場合に一時かりに宿泊させることができるようにするとともに、また少年院収容中の者の移送の場合につきましても、やはり同様のことが考えられますので、この際少年鑑別所収容中の者についてと同様な措置をとり得るようにする旨の規定を置いたのであります。その他八月一日からその効力がなくなります経過規定整理をいたしておる次第であります。  以上がこの法律案提案理由でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望申し上げる次第であります。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。  なおこれら一案に関する質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 小委員会設置に関する件についてお諮りをいたします。  すなわち本委員会におきまして、かねてより調査検討を続けて参りました接収不動産賃借権に関する事項、並びに交通輸送犯罪に関する事項につきまして小委員会を設置し、その調査立法化に当りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。各事項につきまして、それぞれ接収不動産に関する小委員会、並びに鉄道犯罪に関する小委員会を設置することに決定いたします。  次にただいま設置するに決定いたしました各小委員会の小委員の選任についてお諮りいたします。先例に従いまして、各小委員はこれを委員長において御指名いたすことに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。委員長において御指名いたします。接収不動産に関する小委員には    大橋 武夫君  田嶋 好文君    星島 二郎君  三木 武夫君    吉田  安君  猪俣 浩三君    木下  郁君  花村 四郎君それに私を加えまして以上九名を、また鉄道犯罪に関する小委員には    鍛冶良作君  佐瀬 昌三君    林  信雄君  中村三之丞君    吉田  安君  猪俣 浩三君    木下  郁君  花村 四郎君それに私を加えまして、以上九名をそれぞれ御指名いたします。     ―――――――――――――
  8. 小林錡

    小林委員長 人権擁護に関する件について調査を進めます。発言の通告があります。これより順次これを許します。佐瀬昌三君。
  9. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 最近選挙違反その他諸種の刑事事件捜査の過程におきまして、当局者人権蹂躪行為があるのではないかといううわさが社会に相当瀰漫しておるのであります。のみならず最近はそれが国会の窓をたたいて、国会としてもこれに重大な関心を示すように相なつておるのであります。もちろん当局者におきましても十分この点に留意されて、それぞれ善処されておることと思うのでありますが、今回特に当法務委員会においてこの問題を取上げられた理由は、大体三つにあると思うのであります。  現在日本において、正規の軍隊のないこの国の安全と治安を確保する上におきましては、その権力機関の拡充なり整備なりの国家的要望の強いのは当然であります。従いましてあるいは警察検察当局機構において、あるいは権限において、あるいは人員においても、治安確保の立場から、改正その他整備のためには国会としても相当真剣に考えなければならぬのであります。しかしながらそれにはまずもつて、その権力機関が国を害するものあるいは治安を害するものに備えるものでなければならない。その本質的な使命、機能に反して無事の国民に向けられるということになりますると、おのずからこれらに対する考え方もまたかわらざるを得ないのであります。  また次に、人権蹂躙ということそれ自体は、いわば民主主義政治の確立の上から見ましても断固排撃すべきものであり、国民の生命と自由ということは、民主主義精神の根本に照しましてその基本的人権を尊重し、これを保全しなければならぬのであります。またこれらの点から考えまして、最近刑事訴訟法あるいは警察法改正という問題があるのでありますが、これに備えるためにも、国会としては以上申し上げました点がいかに当局1によつて取扱われておるかということが、これらの法案に対する審議上きわめて重要な参考資料となると考えるのであります。  以上申し述べましたような理由のもとに、今日人権蹂躙問題がいかように相なつておるか、以下私はごく概括的に当局にお伺いをしておきたい、かように考えるのであります。  まず第一に、人権擁護のために特に画期的な機構として法務省に設置せられておりまする人権擁護局戸田政府委員にただしておきたいのでありますが、この擁護局が設置されて以来、一体人権擁護のためにいかような実際活動をされて今日に及んでおるかということに対する一般的な説明を簡明にしていただきたいと考えます。
  10. 戸田正直

    戸田政府委員 お答えいたします。御承知のように人権擁護局がただいまの法務省に設置されましたのは昭和二十七年二月十五日でありまして、爾後五年有余を経過いたしました。人権擁護局の今までの活動状況を簡単に申しますと、一つ人権侵犯事件調査処理、いま一つ人権擁護思想啓蒙活動、この二つに重点を置いております。それからいま一つは、人権擁護委員制度の運営でございます。以上が人権擁護局がいたしておりまする活動状況のおもなものでございます。  人権擁護局が設置されました当初は、全国人権擁護人権侵犯事件受理いたしましたのは四十八件でありました。それが逐年増加いたしまして、昭和二十七年つまり昨年度におきましては二万件を少し越えたと思います。後ほどまた詳細な数字を申し上げますが、大体二万件を越えておりますまでに侵犯事件が屡次ふえております。これは人権侵害の事実が実質的に多くなつたのかどうか、これはいろいろの見方によりまして考えられるのでありますが、私どもの考え方としては、人権思想というものが相当普及せられ、そのために従来泣寝入りにしておつた人たちが、自分たち人権を擁護してもらうというようなことで、委員会あるいはその下部組織である地方法務局あるいは人権擁護委員に申し出るというようなことが、数の上で非常に多くなつた原因であろうというふうに思います。  それから啓蒙活動といたしましては、人権擁護委員と緊密な連絡をとつて活動いたしております。啓蒙活動方法としては、主として一般講演会学校講演会、それから座談会人権相談所の開設、あるいはパンフレット、リーフレット等資料の配布というようなことをいたして参りました。一例を申し上げますと、昨年の十二月十日の、御承知世界人権宣言の一週間の週間行事だけを取上げましても、全国で一千四百回という数に及んでおります。従つて年間における啓蒙活動は、全国ではかなりの数に上つておる。かような活動をいたしまして、全国的な啓蒙活動をいたしております。しかしながらこの啓蒙活動は非常に困難な仕事でありまして、たとえば講演会に聞きに来るというような人たちは、もう大体人権に興味を持つておられるというか、ある程度承知された方が来られる。いろいろ啓蒙活動をいまたしましても、ぜひ聞いてもらいたいというような人は、農村等においては、朝暗いうちから夜暗くまで働いておつて新聞もろくろく見ない。またラジオを聞いているひまもない。従つて講演会にも来られない、座談会にも出て来ないというようなことで、全国津々浦々にまで徹底させることは容易なことではありません。今後やはり相当期間を要すると思いますが、とにかくさようなことで相当活動をいたしております。それから人権擁護委員も、当初は百五十名でございましたが、ただいまでは大体三千七百名を越えておるというような状況になつております。その人権擁護委員は、各県に連合会を組織して、法務局支局ことに二百九十四の人権擁護委員協議会というものを組織し、さらに全国的な全国連合会というものを中央に置きまして、人権擁護委員各自の連絡調整をはかつて活動をいたしておる状態でございます。以上簡単でありますが、大体御説明申し上げました。
  11. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 人権擁護局で最近二万数千件も受理をしたというお話のようでございますが、そのうちで、調査された結果、事実として人権蹂躙の確認されたという件数が大よそどのくらいあるか、その点を伺つておきたいと思います。
  12. 戸田正直

    戸田政府委員 ちよつとその前に簡単に受理並びに処理についての御説明をいたしておきたいと思います。人権擁護局事件受理いたします方法といたしましては、本人あるいは関係者からの申告によつて受理する場合、それから情報の認知、これは新聞ラジオ等その他情報によつて認知して事件を実検するというような場合、それから人権擁護委員からの通報による場合、関係官庁からの通報、あるいは移送されて来るというような場合が、事件を受けます大体の方法であります。これに対しまして、事件調査し、処理いたすというような方法をとつております。  そこで昨年度の一月から十二月までの総受理件数を申し上げますと、二万一千七百余件でございます。このうちで、御承知と存じますが、どうも一般の方から人権侵害されたといつて申告して参りまする大部分というものは、現在の日本段階では、大体法律相談程度のものが非常に多うございます。本人としては人権侵害されたと思つているのですが、たとえば家屋の明渡しであるとか、あるいは妻との離婚問題というような法律相談的なものが非常に多数を占めております。そこで処理しました大体の数を申し上げますと、ちよつと表がこまかくなつておりますので、多少こまかい報告になりますが、お許し願いたいと思います。特別公務員、これが人権擁護のうちで一番問題の事件ですが、特別公務員、主として警察官職権濫用等事件が、新受が五百九十七件、旧受が二百四十六件であります。これらの処理内訳は、勧告五十五件、示談十四件、非該当百九十四件、不問百五十三件、この不問について申し上げますと、私の方で申しますと、不問と非該当を混同いたしやすくて困つておりますが、不問というのは、検察庁で申しますれば、起訴猶予程度のものと御了解願えればけつこうだと思います。大体ある程度の事実は認めるが、あえて勧告までしなくともいいのじやなかろうかというような事件不問処理でございます。それから中止九十一件、移送三十八件、その他百六件、未済百九十二件となつております。  それから一般公務員事件は全部で二百五十五件、処理内訳は、勧告二十四件、指示三十件、示談十一件、非該当四十七件、不問六十件、中止十八件、この中止につきましても、ちよつと申し上げたいと思いますが、この中止は、検察庁等事件捜査を始め、また処理したというようなことで、あえて私の方からこれ以上する必要がないというので中止するというなものであります。その一般公務員中止が十八件、移送十一件、その他四、未済五十、大体さようになつております。  その他人権擁護局としていたしておりますものは、集団暴力行為単独暴力行為不法監禁、リンチ・人身売買強制圧迫・村八分あるいは差別待遇生活権侵害居住権侵害参政権侵害、名誉、信用業務等侵害不当解雇業務過失による侵害というようなものがその後の大半を占めております。
  13. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 それらの受理調査件数のうちで、最も悪質な人権蹂躙といわれるものについて、勧告あるいは検察当局捜査に移譲して中止されたという、中止処分に付したものが結果的にどう処理されたか、いずれこれは検察当局捜査活動が開始されたと思うのでありますが、そういうものについての結果がもしわかつておれば、簡単にここで報告していただきたいと思います。
  14. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいま少し言葉が足りませんでしたが、中止の中にはいろいろの事情から調査不能というような場合もまじつておりますので御了承願います。今の中止いたしました、たとえば検察庁捜査を開始したというようなことで中止したような事件相当ありますが、その結果がどうなつたかはただいま資料を持ち合せておりませんので、後ほどまた調べて御報告申し上げます。
  15. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 国警長官にお伺いしておきたいと思うのでありますが、ただいま人権擁護局の方で調査の対象となつ件数相当あるのであります。しかも五百九十七件は警察官に関する問題だということでありますが、国家警察の面において、かような人権蹂躙の事実がどのくらいこれまでに事実として取上げられたか、現在もし調査された統計でもあれば、概数だけここに御説明願いたいと思います。
  16. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の方といたしましては、警察官はむしろ人権を保護すべき一つ機関でありまするから、人権を蹂躙するというようなことがあつてはまつたくその職責にも反するわけであります。また人権尊重の趣旨からも警察官として最も心得なければならない事柄としてふだんから教養なり監督をいたしておるのであります。時たまさようなものが起りますることは、まことに申訳のない次第でありますが、さような事柄を聞きました際には、十分調査をいたしましてそれぞれ処分をいたしておりまするが、ただいまその統計は持ち合せておりませんので、後刻調ベまして御報告を申し上げたいと思います。  先ほど戸田政府委員の申されました五百九十七件は、特別公務員全体の数字と了承いたしました。この中に警察官が取上げられたものが相当あろうと思いまするが、これらの警察官の数字等も調べまして、その内容を統計にいたしましてお知らせ申し上げたいと思います。
  17. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 警察官の中には国家警察及び自治警察があるわけでありますが、そのいずれに人件蹂躙の問題が比較的多く出ているかということを、国警長官の立場から、これはごく大量観察でけつこうでありますが、一言御報告を願いたいと思います。
  18. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これはむしろ第三者の政府委員からの大量観察が適当ではないかと思います。ただ国家地方警察の方が人権蹂躙が多いであろうという感じは私はいたしておりません。
  19. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 これは警察署あるいは警察職員の絶対数がそれぞれ違うのでありますから、人権躁欄の案件を比例的に見なければ正確な観察はできないわけであります。ただ私どものここで一番問題としなければならない点は、国警と自治警の機構、権限なり運営の相違に基いて、それが人権蹂躙の事実にいかなる影響があるかということを探索いたしたいために、今申し上げたような点がきわめて重要でないかと考えるので、これは後刻でもけつこうでありますから、国家警察の立場から一応調査された資料を御提出願いたいと考えます。  次に、これはあるいは岡原刑事局長なり戸田人権擁護局長からお伺いした方がいいかと思いますが、特に昨年度と本年度においては選挙事犯の捜査を中心に、その他の刑事事件に関連しまして、いわゆる被疑者あるいは被告人、中には参考人というような立場にある者に、人権蹂躙の結果と疑われるような自殺行為相当あつた、こう新聞その他には伝えられておるのでありますが、この点について当局者として調査された関係があるならば、それをここで伺つておきたいと思います。
  20. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 昨年の十月の選挙並びに今回の選挙に関連いたしまして、若干の自殺者を出しましたことは、私どもたいへん遺憾に存じておる次第でございます。実はその点を、私どもも浦和の事件を契機といたしまして非常に慎重に調査いたしました。その結果判明いたしましたところによりますと、目下詳細な事情がわかつておりますものが今回の選挙において五名のものでございます。この点につきましては、別に各委員のお手元に一覧表的に事実を要約したものをお配りいたしておきました。その原因につきましては、大体調査した結果によりますと各事案々々によつて若干は色合いが違うようでございます。ただ一般的に申しますれば、比較的に淳朴な農山村あるいは地方の中小都市、そういうふうな一つの雰囲気に育つた人たちが初めて警察の取調ベを受けたということで、元来割合に小心であつた人が一つの強い打撃を受けた、シヨックを受けたということから精神的な異常状態に陥つたというのが一つの原因であろうかと存じます。なおそれに加えまして選挙違反の性質上、一人の自供が他の関係者に及びまして、結局自分がしやべつたためにほかに検挙者を見るということになります関係上、自分のやつた犯罪行為といつたようなことだけのみならず、そのために人までこの事件の中に巻き込んだ、迷惑を及ぼしたというふうな自責の念にかられる場合も非常に多いようでございます。さらに考えられますのは、さような一つの伝統的な古くからの慣習、中小都市におけるかような違反者に対する冷たい目、あるいは検挙された者に対してつまはじきをするといつたようなことが、本人に非常に大きな心の圧迫となりまして、それらこれらで結局平素では考えられないような一つの心理状態に陥つて、不測の事態に立ち至つたというようなことに、概括いたしますれば申し上げ得ると思うのでございます。私どもといたしまして、最も懸念いたしましたのは、捜査当局におけるただいま御質問のような人権蹂躪的な、調べの非常に苛酷な点がないだろうかということを心配いたしました。この点に関連いたしましても、各地検に詳細な照会をいたしまして、今回の選挙に際し、何らかどこからでもいいが、人権蹂躪とかいつたような批難の声を聞かないかということをくまなく調査したのでございますが、ただいま申し上げました自殺の事件についでも、おおむね調べの点については人権蹂躪的なものはない。それからそのほかの事件につきましても弁護人との接見の指定、接見の場所、時間の指定でございますが、刑事訴訟法第三十九条三項の関係で、若干の問題のあつた地方はございますが、その他一般的に取調べの内容についての一般からの訴えというものはなかつたというふうな調査が参つておるのでございます。それはともかくといたしまして、これらの事件捜査機関の取調べが契機となつて発生したことには間違いはございません。さようなことにつきましては、私ども捜査に関与する者といたしましては、こといやしくも選挙事犯のような犯罪に関連してさような数多くの被害者と申しますか、自殺者を出すということは国民に対してまことに申訳ない次第でございまして、さような点につきましては、取調べの際に、また身柄の拘束の前後、釈放のときの心構え等についても検察庁の職員に対して指示、訓示いたしたような次第でございます。詳細は先ほどお手元に配りました資料によつて承知願いたいのでございます。
  21. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 自殺の原因またそれに対する捜査当局の職権濫用の有無というような具体的な問題は、私ここで今は別に取上げないのであります。自殺行為のあるいは直接の動機かあるいは誘因的な作用をなしたか、そういつたような意味において私どもが刑事訴訟法の上において顧慮しなければならない問題がさしあたり二つあるのであります。それは逮捕状の濫発問題、それから証拠に関する自白尊重主義とこの二点がこの問題にきわめて重大な関連性かある、かように私は断ぜざるを得ないのであります。まず逮捕状の濫発問題でありますが、これについては特に選挙違反のような捜査の対象になる者か相当な社会的地位をもつておられるとか、名誉あるものであるとかいうものに対しては、いわば逃亡とか住所不定とかいうような理由に基く逮捕はでさないわけであります。ところが何もかも逮捕するというような一つの習性と申しましようかそういうことが捜査当局にあるのではなかろうか、かように想像される節が多々あるのであります。同時に改正訴訟法で、逮捕状は警察職員もこれを請求することができる。従つて検事とは別個の立場から警察官もその固有の権限に基いて逮捕状を請求し、それに基いて捜査ができるということで、旧刑事訴訟法のごとく、その間に検事がそれに対して指揮をするとか、あるいは責任を持つという制度になつていない。そこにまた逮捕状の濫発という弊害が起るのではないか、これは警察法刑事訴訟法との相関関係において私どもは相当重視しなければならぬ問題でありますが、この点についてあるいは国警長官または岡原刑事局長あたりのいわば一つの御意見をこの際明らかにしておきたいと考えるのであります。
  22. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいま御質問の逮捕状の発付の問題につきましては、実は私どももいろいろ心配をしておる点でございます。たしか前々国会におきまして、刑事訴訟法改正の問題を取上げまして、御審議を仰ごうといたしました際にも、この逮捕状の発付の問題を何がゆえに今回の改正に取入れなかつたかという、きついおしかりがございました。その線に沿いまして、先般法制審議会においてこの問題を御審議願いましたところが、大部分の委員の御意見は、やはりこの逮捕状の発付について、検事が責任をもつて見てやるというふうな形をとらなければ、人権の尊重を全うするゆえんではないというふうな結論が出ました。そこで前国会に、その趣旨を取入れました改正案をお願いしたような次第でございます。この問題の所在は、ただいま御指摘のように、旧刑事訴訟法におきましては、例の百二十三条の勾引状から百二十九条の勾留状、さような検事の手元による一つの令状の発付、また二百五十五条によるいわゆる強制処分といつたようなことから、捜査が始まつておつたのでございますが、今回の訴訟法の建前は、いわゆる緊急逮捕、現行犯逮捕を別にいたしましては、通常逮捕というものが警察官もできるようになつて参つたのでございます。これは訴訟法の全体の建前が、御承知通り警察に第一次的な捜査権があるという建前にいたしましたので、その関係上さようなことになつて参つたのでございますが、その運用につきまして、ただいまも御質問にありましたような点が懸念されるに至りましたので、私どもといたしましても、慎重にこの点を目下研究しておる次第でございます。もし諸般の事情が許せば、今国会にさらに、ただいま御指摘のような、法制審議会の意見を取入れた法案をお願いしようかと思つておる次第でございます。
  23. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま逮捕状の濫発によつて人権が侵されていはしないか、またそれが現在の刑事訴訟法との関連においてどうかという御質問であります。警察側といたしましても、逮捕状の請求ということは、人権の保護上非常に大事なことでありますので、どうしても逮捕しなければ捜査が支障を来すというものでなければ、逮捕をしないということを強く教育をいたしておるのであります。原則といたしましては、まだその事件が起訴にならないものを逮捕するというようなことになつても相なりませんので、事件の概要を事前に検事と連絡をしてやるという習慣をつけておるのであります。ことに選挙犯罪につきましては、ただいま佐瀬委員から御指摘になりました通り、よほど取扱を慎重にする必要がありますので、私どもの方といたしましては、かねがね逮捕令状の請求は、署にあつては署長、県本部にあつてはその課長または隊長の承認を得なくては、令状の請求をしてはいけないということを捜査規範にも示しまして、励行をはからしておるのであります。ことに選挙にあたりましては、令状を請求し得る警察官を警部補以上に限りまして、警部補以上がみづからの名において、しかも課、署長の承認を受けて令状を請求し得るように、選挙違反全体は隊長みずからこれを内容を知り、そして隊長の判断のもとに、こまかい点まで指示をなして、あやまちなきを期するようにということを、強く指示をいたしたのであります。従いまして私どもといたしましては、令状の請求は相当慎重に行われたものと考えておるのでございます。  ただ問題になりました五名の自殺者を出しましたことは、非常に遺憾のきわみであります。しかもその中の四件は釈放後でありましたが、国警の地域内のものでございます。これについて令状が発せられて、逮捕によつて調べたものが四件、一人は任意捜査であつたわけですが、その四人の令状の執行が非常に無理な令状のとり方であつたかどうかという点についても、検討をいたしておるのであります。しかしこれらもすべてさらに警察の四十八時間以後、引続いて検事勾留を受けておるのであります。事前にわれわれが検察とよく連絡をとつてやるようにという点が、私は守られておつたものと考えでおるのであります。選挙犯罪につきまして、警察の令状のとり方が乱暴であつたというので、検事からその理由をもつて検事勾留相ならぬというようになつたものは、私はただいまほとんど聞いておりません。二十六年度の十月を限つて調べたものがあるのであります。これは一箇月間において、全部の事件について令状をもつて調べたものを調査をいたしたのでありますが、そのうち、検事の方において引続いて勾留状を発して、なお調べる要があると認めて調べられたものが、七五%を越えておるのであります。従つてこれは警察で扱いました全事件でありますから、警察の持ち時間だけで分明になつたというので、釈放いたした者も相当あるわけであります。それらのものを入れましても、一五%に足りないものが警察の持ち時間だけであつて、あとの七五%以上は検事もその必要を認めて、勾留をせられたのであります。従いまして私は警察官の令状の請求権が独自に認められたことによつて人権蹂躙が多くなつておるということは、むしろ言えないのではなかろうか、かように考えております。私の個人の見解といたしまして、一番問題になりますのは、ただいまおつしやいました、いわゆる逃亡のおそれのない者を、令状を執行して逮捕するという場合であります。これはおそらく証拠隠滅ということ以外には正当な理由はなかろうと思うのであります。われわれといたしましては、逮捕によつて自白をしいる、逮捕ということによつて、そういう環境に置くことによつてある一種の心理的な圧迫によつて自白をしいるということは人権蹂躙であるから、さような令状の執行は絶無を期したいと考えておるのでありますが、そこに証拠隠滅すなわち私は端的に申しまして通謀が一番の問題であろうと思うのでありますが、調べに応じて自分の持つておつた証拠が形の上であるいは焼却されたりあるいは隠匿されたりするということもありましようが、それよりも調べの内容が相手の被疑者に通じられて、証拠が隠滅されるという点をおそれる分野がまだ相当あるのではないかと私は考えております。こういうような点は、私は検察庁ともよく御相談をして逃亡のおそれのない者はできるだけ身柄の拘束をすることなしにやるということの研究を、もつと進めて行く必要がある。多くの令状の濫発といわれる事件は、私はここに基因をいたしておる、かように考えておるのであります。
  24. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 逃亡、住所不定とかいう以外の証拠隠滅の理由に基く逮捕及びそれに基く長期の勾留ということがすでに問題なんでありますが、それは要するに自白を証拠の中心にして行こうという古い考えのもとに捜査がされる結果、そういう人権蹂躙等の弊害がややもすると起きるのではないか、こう考えるのであります。われわれは決して公明選挙の徹底のために悪質な犯罪の捜査の手をゆるめようとか、あるいは一般犯罪の検挙にブレーキをかけようとかいう意味ではないのでありまして、警察、検察はそれぞれ国家公共の福祉のためにはしつかりした活動を期待するのでありますが、ただその方法、程度がややもすると人権尊重の域を脱したり、いわば権力主義的な方法をとるということに対しては、断固これを排撃しなければならぬ。場合によれば法律もそのためには改正しなければならぬ。こういう考えのもとに今いろいろと質問申し上げておるのですが、これは裁判所にも関連することであつて捜査当局がむしろ裁判の実体からさようになるのではないかとすら私は危惧しておるのでありますが、今後は捜査の上において、あまり自白尊重というか、自白偏重主義に陥るようなことがなく、証拠法の精神にのつとつて大いに傍証の捜査に邁進していただきたい。私は、そういうことであるいは人員をふやす、人件費をふやす、あるいはまた権限を拡張するということであるならば、これは欣然として国会も了承するのではないかと思うのでありますが、そういう方向に捜査当局の責任者は指導されることが、この際特に要望されるのであります。  次に私は警察と検事の関連においていま一点明らかにしておきたいと思いますが、それは刑事訴訟法百九十三条で、検事は捜査にあたつて警察官に対して一般的な指示また場合によつて一般的な指揮をすることができるとあつて、これは警察官と検事の捜査の上において連絡のできる唯一の根拠であります。これがもし善用されれば捜査の上においてそういつた弊害も予防ができ、また捜査の成績も適正にあげることができると私は考えるのでありますが、この点について実際はいかように運営されておるか、この点を政府委員に伺つてみたいと思います。
  25. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 刑事訴訟法第百九十三条の運用につきましては、率直に申しまして国警側と若干法律の解釈について意見を異にしております。ただこの百九十三条と申しますのは、ただいま御指摘のように検察庁警察側とがいかに捜査目的を達成し捜査を適正にするか、その公訴が完全に遂行し得るようにするかという点を中心に立案されておるものでございます。従つて私どもはただこの条文を捜査から公判に行く一つの過程において、それが多岐にわたらないように、つまり検事の目で事件を見れば、この種の事件はかような公判の結果を見なければいかぬ、この種の事件の法律的な見解はこういうことであるから、これはこういうふうに捜査をしなければいかぬ、また捜査が各地にわたる場合にはその間に統一的なつながりがなければいかぬといつたようなことについで、検察官の立場から一つの規制を与える、それだけの意味であろうと存じております。国警側の御意見によりますと、捜査ということが独自のものであるかのように述べられたこともあつたやに聞いておるのでありますが、公訴を前提とせず、つまりこの事件の起訴不起訴を決することを前提としない捜査というものはあり得ないことであります。この百九十三条につきましては、ただそれだけの趣旨である、かように理解しておるのでございます。これの実際の問題につきましては、最初検察官の書式例というものが出まして、全国警察官がそれにのつとつてつておるのでございます。その根拠がこの百九十三条であつたのでありますが、その他各地検ごとにそれぞれの各地検の実情に応じまして、いわゆる微罪不起訴と申しますか、これから下のこまかい事件は微罪として取扱つてよろしいということの一般的な指示をしておるところがございます。なお先般御承知の破壊活動防止法の国会審議状況にかんがみまして、この法律の取扱いがいやが上にも慎重であることを必要とするという立場からいたしまして、これを着手稟請事件といたしました。その関係上、その着手にあたつて検察庁の指揮を仰いでやるようにという手続をとりましたのも、この百九十三条にのつとつたわけでございます。理論的な問題といたしましては、さように若干の意見の食い違いはありますが、具体的な問題としてはそう大して問題はないのでございます。
  26. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま岡原政府委員から大体のお答えがありました通りでありますが、この百九十三条につきまして解釈上は私は大した違いはないと考えております。いわゆる公訴を実行するために捜査がこういうように適正でなければならないという指示は、この百九十三条において準則としての指示は示さるべきものであり、また公訴の上から搜査はかくかくでなければならないということをいろいろ指示してもらうと私は非常にけつこうだ、かように考えております。ただ問題は一般的指示だと称して、個々の事件捜査について検事がその捜査の主導権をとつて警察捜査を、あるいは押えたり、あるいは特にあることを命じたり、これはこの百九十三条の二項、三項等においてさようなことをなし得る場合がありますが、その場合でないにもかかわらずやるということは、これはこの新刑訴の精神でありまする、警察警察独自の立場から捜査をする、検察はまた検察の立場から捜査をすべきときには捜査をする。警察捜査で足りないところを検察がやるということはよろしいが、検事の指揮下に個々の捜査が行われるということは、新刑訴の精神ではなかろ、うと思う。このことは捜査の公正、それからまた人権の保障ということがかえつてあぶなくされるおそれがあるというので、その点は運用において若干問題を起したこともあるのであります。ただいま説明がありました破防法の施行につきましても、慎重にやらなければならぬことはもちろんであります。しかもこれは全国的に関連をいたしますので、警察と検事はこの百九十三条によつて事前に話し合つて密接に協力をしてやる。また全国的な面も警察警察として全国的に連絡をとり、検察は検察として全国的に連絡をとられて、両者がお互いに協力してやるということにはむろん何の異存もありませんし、現実にさようにしておるのでありますが、個々の事件に着手をするときに令状を請求するときには一々検事の承認を受けるということになりますと、警察の監督者の責任ということを抜きにして、検事が警察官個々の者を自分の指揮下に入れて、検事の意図のままに捜査が行われるということは、これは場合によれば捜査が検事の専恣と申しますか、思うままの――いい意味の思うままの捜査はけつこうでありますが、もし間違つた場合には捜査の不公平ということにもなりましようし、また人権尊重にも欠ける。警察と検察は捜査段階では原則的には互いにチエク・アンド・バランスであり、そうでなくても警察捜査は結局検事の手において起訴をされなければ用をなさないのであります。警察捜査が不起訴に終つたということは警察にとつて不名誉なことでありますから、現在のままにおいて、さような意味においては十分連絡がとられ、また現にとつておる、それでよろしいのではないか。それを個々の事件にまで、警察が調べなければならぬと思うものを検事がチエツクをする、あるいは警察がこれは犯罪にはならぬと思うのを検事みずからお調べになるのはよろしいが、しいて警察に指示権を発動して捜査をさせられるということは、これは先ほど申しまする原則を破るのみならず、警察の監督者の責任を全うできない、かように考えます。その点は若干意見を異にしております。
  27. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 刑事訴訟法百九十三条は、実に新しい警察及び検察のそれぞれ(性格とあり方の相違に基いたしかもそれを調整しようとする努力の規定であります。検事総長と国警長官の間にもこの条文を中心に意見の相違が展開されたこともかねて承知しておりますが、要は捜査の機能を十分に達成し、また一方においては人権保障の実をあげるためにも、私は今後両当局者において十分この法の精神を生かして運営にあやまちのないようなことを期待する次第であります。  そこでひとつ考えてみたいのは、かつては司法警察職務規範といつたようなものが制定されましで、今申し上げましたような点を顧慮された時代があるのでありますが、私は司法警察の独立と申しましようか、あるいは検察官にこれを従属させるとか、そういう司法官警察制度に関する問題と同時に、そういう職務規範というようなものの制定ということが、この際一応問題として取上げられてもいいのではないかと考えるのでありますが、これに対する警察法改正、これは首都警察とか、自治警をいかにするかとかいろいろ問題もあるようでありますが、警察制度の改革という問題の一環として、これに対する犬養法務大臣の御意見を承つておきたいと考えます。
  28. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま刑事局長国警長官が御説明いたした中に、御推察がありましたように、実際は第一線の警察官と検事の間では、警察官がいくら事件を摘発して逮捕いたしましても、これが公訴の実効が全うできないときには何にもなりませんので、第一線はおおむね協調してやつているように思いますが、ただイデオロギーとしてどう解釈するかということになりますと、ただいま両者より説明いたしましたように、若干の解釈の食い違いがございます。この調整を私どもは今やつておりまして、大体円満な妥結に至ると思つております。この問題を解決しましたら、今仰せの問題を検討してみたいと思います。この問題が円満に解決しない前に、司法警察官の職務規範の問題で、私が率直な意見をまだ申し上げにくい段階でありますので、いましばらく御猶予願いたいと思います。しかし御趣旨は十分に私心中でわかつております。
  29. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 時間もあまりありませんので、私は最後に一、二点犬養法務大臣にお伺いしておきたいのであります。警察の所管大臣としての御資格においてもぜひ御答弁賜りたいと思いますが、以上のような点を含めて、警察法改正ということをいかようにお考えになつておられるかということをまず承つておきたいと思います。
  30. 犬養健

    犬養国務大臣 御承知のように、前国会において警察法改正案を提出いたしまして御審議願つたのでありますが、事柄の重大にかんがみまして、もう一度再検討をいたしております。かたがたごく率直に申し上げますならば、現在の政界の情勢もあれ以後変動を来しておりまして、さらに率直に申せば、与党自由党以外の人々の考え方も、従来よりももつと虚心坦懐、謙虚な気持で検討し、ある部分は取入れる必要のある情勢にありますから、従来のことにこだわらず、謙虚な気持で再検討いたしておるという時期になつておる次第であります。しかし長くほつて置けない問題でありますし、国内の治安情勢も前よりゆるんでいるとは申し上げにくいのでありまして、できる限り早くこの結論を得たいと思つている次第でございます。
  31. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 次に、人権蹂躙問題に対する所管大臣としていかようにこれをお考えになつておるか、また捜査当局に対してこの人権尊重のためにいかような指示、指導をなさつておるか、この点を承つておきたいと思います。
  32. 犬養健

    犬養国務大臣 冒頭に申し上げたいと思いますが、このたびの総選挙に際しまして、五名もの人が直接間接関連した事情によつて自殺をしたということは重大なことでありまして、国民に対しても相済まぬことと思つております。自殺者まで出た問題について、はたして人権の蹂躙があつたかどうか、さつそく人権擁護局にも命じまして、詳細な、かつ度なかなか、繰返し返し調査を同じ事件についてもさせたような次第であります。それより前にさかのぼるお話になりますが、総選挙に際しまして、私は検察当局にも国警当局にも、従来そういうことはないが、世人はともすると、この両当局件数の多いのが成績がいいというふうにやつていると思われやすいので、今度は特に件数主義ということは一切放擲してもらいたいという訓示をしばしばしたようなわけでございます。選挙後、今のような次第で自殺者まで出ましたので、人権擁護局に十分の迅速な調査を命じますと同時に、いろいろの資料を喜んで外の社会からもいただいて、それをただちに手渡しているというようなことをやつておるわけでございます。また先ほどお話がありましたように、自白尊重の偏重ということを避けまして、私は一々の選挙違反事犯に品を入れる権能を持つておりませんが、一般的指示として、そういう場合は傍証を固めるということも再三ならず私の意見として通達しております。拷問という事実はありませんでしたが、拷問はないから、検察当局はそれで安心していいんだという態度はとつてならないということも申したのであります。それは何ゆえかと申しますと、ただいま岡原政府委員も触れたのでありますが、大体地方の農村や小都会の人情にからんだ風習というものが、なかなかこまやかといいますか、伝統的なものでありまして、かてて加えて、選挙違反というものは、本人だけで済まない。本人の供述いかんでは、いろいろな友人知己が連累するというところに人情がからんで来るのでありまして、常識でいえば、留置されている間がつらくて、うちへ帰るときは、つらい世界から楽な世界へ帰ると思いやすいのでありますが、選挙違反事件に関しては、つらいところから別個の種類のつらいところへもどるのでありまして、そのために思い余つて自殺したとか、従つて検察当局でも、つらいところへ帰つて行くんだという気持になつて気をつけなければいけない、それが拷問でなくても、ちよつとした片言隻語が寸鉄人を刺して、なお思い詰めて自殺の縁になるということがあつてはならないということで、このたび、今月の十一、十二日に行われました全国次席検事会同でも、この点に触れたような次第でございます。多くの事件の中には、あるいは行き過ぎや何かがあるんではないかと非常に配慮しておりまして、極力各事件の真相を集めている次第でございます。
  33. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 最後に一点だけお尋ねいたしだいのですが、国家治安の確保もとより重要であり、また同時に民主主義制度の確立の上において、個人の基本的人権の尊重もとより重要であります。われわれは国家の最高の権力機関として、この二つの要請の上に立つて、あらゆる法案の審議あるいは制度の運用についで厳粛な批判を持つて臨まなきやならぬのであります。さような意味において、今回超党派的にこの問題を取上げたわけであります。最後に犬養法務大臣に伺つておきたいのは、以上のような顧慮の上に立つて、私どもは刑事訴訟法改正も考えなければならぬと考えておるのでありますが、刑事訴訟法改正に対する法務当局の御方針をこの際伺いたい、かように考えます。
  34. 犬養健

    犬養国務大臣 刑事訴訟法は、でき得る限り早い時期に提出いたしまして御審議を願いたいと今法案の最終の整理中でございます。その目途とするところは、今日本委員会でいろいろ御論議になり御注意のあつた点を、ほとんどことごとく頭において考えておるような次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  35. 吉田安

    吉田(安)委員 関連して斎藤さんにお尋ねしたいのですが、お考えだけでけつこうです。やはり人権蹂躙に関連することですが、先ほどの佐瀬委員の百九十三条の質問に関する斎藤さんの御答弁を聞いておると、検事の権限を少し回避されるようにも受取れるし、それから聞き苦しかつたことは、どうせ警察捜査をやつても、起訴不起訴は検察庁でやるのであるから、従つて警察の方では一生懸命にやるんだ、面目上も一生懸命やらなければならぬ、こういうことをおつしやつておつたようです。そこに私は非常な心配を感ずる。一体人権蹂躙という問題は、旧刑事訴訟法時代でもどこに人権蹂躙がいつも行われるかというと、それは検事の捜査でなくして、やはり警察捜査なんです。そこが今までは私は比較すると非常に多いことだ、こう思うております。ところが斎藤さんのおしつやることを聞くと、やはり面目上でも一生懸命やる、捜査を一生懸命やることはまことにけつこうですが、そのために行き過ぎがある。そのために人権蹂躙が起つて来るということを私は非常に懸念をするのです。なお犬養法務大臣のお言葉にも出ておつたようですが、結局起訴権は検察官にあるのだ、こういうことをおつしやつておつた。でありまするから、これはどうせ刑事訴訟法改正問題が提案されるときに問題になると思いますが、結局逮捕状にも関係することですけれども、一応被疑者をつかまえ、ぶち込む、法務大臣の言葉をかりれば、結局寸鉄人を刺すようなこと、これはどこに行われるかというと、冷たいところにぶち込んだ瞬間から、いわゆる警察官の動作、言語、これがもういなかの正直なる人たちには一言にして実際胸を刺すようなことが行われつつある、こう思うのです。でありまするから、私はやはり百九十三条の問題にもからまりまするが、国家警察の総元締めである斎藤さんがおつしやつたその面目に関するから一生懸命やるのだ、やることまではいいが、それから先に対して長官は御考慮をどういうふうにお持ちでおられるのか、その点をひとつつてみたい。
  36. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の先ほどの答弁が不十分でありましたので誤解をお与えしたのじやないかと思いますが、私の申しましたのは、検事が起訴、不起訴の権限を持つておられる。従つて警察として初めから法律上問題にならぬ、これは起訴のできないような法律的な内容のものだというものを一生懸命捜査をして、そうして不起訴になるというようなことは、これは申訳のない次第でありまするから、そういうことのないように、そういう心配のある際は、検事とできるだけ連絡をとつて、この事件が刑に触れる、そういう法律内容を持つたものだということをよく連絡をして、確かめた上でやるということを申し上げたのであります。われわれの方といたしまして、絶えず言つておりますのは、一たび犯罪ありと思料して捜査を始めた、ことに強制逮捕に至つたという場合に、まだ証拠が不十分だからどこまでもあれもこれもと苛察に調べをするということは最もいかぬことであり、また最もやりやすいことである、このことは絶えず私は戒めておるのであります。捜査には見込み違いというのがありますから、当初手をつけて見たけれども、これはどうも確実な証拠がないという見通しがつくならば、早くその捜査を打切るべしということを私は強く申しておるのであります。幸い検事と警察と別建になつておりますから、そこはまた検事の方でも十分判断をしてもらえる。警察の持時間で調べて十分あがらぬという際に、検事の持時間になつて、検事はこの事件はもう証拠が十分あがらないから打切るというまた独自の判断をそこに与えてありますので、この立て方は非常によろしいと私は考えておるのであります。たとえば令状請求の際に検事の承認を得る、あるいは同意を得る当初から、検事がその事件に入つておりますと、かえつて――一たび自分が、たとえば令状の発付について承認を与えたということになりますると、途中でこの事件を打切るということは非常に言いにくいだろうと思うのであります。さような面からも、私は今の法の立て方が、事件の途中でこれは事件にならぬというものわ早く打切るのに都合がいい。人権の保障もそれによつて得られる、かように私は思うのであります。先ほどの申し上げようは不十分でありましたから、ここに補足して申し上げておきます。
  37. 吉田安

    吉田(安)委員 私が平素障害に関して一番心配することは、やはりそのことです。人権蹂躙が起るのは何としても警察である。しかし幸いに国警長官がさような御意見であることは私も当然わかつておるのでありますが、その点はなお一層御注意を願いたいと思います。ことに少年犯罪なんかについても、地方ではやはり刑事部長のごときものがいたずらにこれをいつまでもぶち込んで調べておる。そのために、取返しのつかないような結果を招来する。現になまなましい事件もあるわけであります。これは非常に注意を要する点ではないかと思いますから、先ほどの質疑応答の際にちよつと私気になりましたからお尋ねしたような次第であります。
  38. 小林錡

    小林委員長 中村高一君。
  39. 中村高一

    中村(高)委員 選挙違反関係しまして、人権蹂躙の問題についていろいろ調査をせられた資料が手元に来ておりますが、その中で福永官房長官の関係をいたしておりまする浦和警察人権問題につきまして、この報告書によりますと、何ら人権蹂躙の違反の事実はないというような回答でありました。私も先日社会党の方から調査に行けというので浦和に参り相当詳細に調査をいたして参りまして、私自身としての調査もいろいろいたして参りましたので、いずれまた近いうちにこの委員会で福永官房長官を呼んでいただいて開きたいと思うのでありますが、福永官房長官は、その当時人権蹂躙であるということで、特に手錠をはめて往来を歩かせたということ、それから小学校の前をそういう状況で歩かせるというようなことは、はなはだ不都合だということで憤慨をいたしました新聞記事が当時出ておりましたので、事重大だと思いまして、われわれも調査をいたしたのでありまするが、この人権擁護局あるいは国警でありますかの報告によると、そういう事実はないということでありますが、法務大臣はこの人権擁護局調査あるいは国家警察調査というものを正しいものであるとお考えになりまするかどうか。まずその点をお答え願いたいと思うのであります。
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 浦和の福永君の関係選挙違反事件につきまして、国警、人権擁護局それぞれから詳細な報告をとり、なお私自身ももう少し不十分と思うところはさらに詳細な報告を求めて参りましたが、大体拷問というようなものはなかつたというふうに私は認めております。また人権蹂躙という言葉に当てはまるものはない、こういうふうに考えております。手錠をはめて歩かせたということは、人権擁護局の報告にも、ございません。たまたま小学校の前を通らせたことがあるかどうかは、いま一応念のために調査をさらにしております。
  41. 中村高一

    中村(高)委員 警察あるいは検察庁では手錠をはめたというような事実もないといつてをりまするし、それからこの報告書にありまするように、警察から検察庁の間には学校も事実ないのであります。ですから学校の前を通るということがありようはずはないのであります。これはわれわれが調べたのとほとんど違いがないようでありまするが、事官房長官の選挙違反の問題であります。しかも官房長官からああいう人権蹂躙だというようなことで新聞にでかでか出ておりましたので、われわれが警察署長その他取調べに当つた者やあるいは検察官に聞いてみますると非常に憤慨しておるのでありまして、まつたく事実相違のことを官房長官たる者が天下に発表するというようなことはどうも不都合だというような意味のことを漏らしておりました。もしそういう事実がなくて官房長官がああいうことを言うたとしまするならば、官房長官のうそだということになるのであります。ほかの人ならば別でありまするが、いやしくも官房長官たる地位にある人が、警察あるいは検察庁人権蹂躙を犯したというようなことに対し事実相違でありましたならば、法務大臣としてどんな方法をおとりになりますか、あらかじめお聞きをいたしたいと思うのであります。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 福永官房長官がどういうことから人権蹂躪の事実があると言われたか詳細には存じませんが、大体法務大臣をやつておりますと選挙違反でいろいろ陳情があります。これはざつくばらんなお話ですが、やつて来る人が非常に興奮しまして、いろいろひどい目にあつたというので、それはお気の毒であるからよく調べるというと、本人はそう思い込んでおるが事実はそうでない場合がずいぶんある。けれども本人がまさかうそを言うつもりで来ておるわけでもない。結局当事者の興奮しておるときの考え方というものは、十分尊重はしますが、再調査の必要があるという体験をいたしたわけであります。おそらく福永官房長官も、ふだんから自分と政治行動をともにしておる人が、非常に顔色も悪くなつてつて来てこういう目にあつたといえば、人情ゆたかな人ならば、一応興奮するのもわかることはわかる。しかし法務大臣としましては、その気持はわかつても、その事実があるかないかは厳正に調べる。調べた結果がどうも人権蹂躙もなかつた、これは検察当局や国警当局の責任者としてまことにほつとした気持になつておるのであります。この福永官房長官をどうするかというふうに詰め寄られるとちよつと私も困るのでありますが、私の役目としては、そういうことがなかつたということを冷静にえこひいきなしに調べて発表する、こういう役目で今までやつて来たわけであります。
  43. 中村高一

    中村(高)委員 もう相当人権擁護局でも国警でも調べているのですから、これ以上あなたの方で調べる方法もないと思うのでありますが、こういうことはいつまででも長く未調査だというようなことをしないで、事実がないならばないといつて、あなたはあなたの立場から明確にいたした方が、直接調べに当つた警察官やあるいは検察庁としてははつきりすることだと思うのであります。もう少し調べるというようなことをせずに、現在の状況においてもうそういう事実がないならばないとはつきりした方がよいと思いますが、いかがでしよう。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 この先だらだら調べる気は毛頭ございません。あれで一応調査は終了したと思つております。ただ、ときたまこういうことがあつたはずだというようなことを言つて来ますと、いやしくも事人権に関しまするので、大体調査が済んでも念のためにもう一度調べておいてくれということは言つております。ただいまのところ人権擁護局検察庁、国警の報告が私に偽りを言つているという印象を受けたことは一度もございません。
  45. 中村高一

    中村(高)委員 これはいずれまた福永官房長官にも適当な機会に聞いた方がよいと思つておりますから一応別として、もう一つ法務大臣にお尋ねをいたしておきたいのでありますが、これも私の方の党から調査を命ぜられて数回調査をいたしておるのでありますけれども、岡崎外務大臣の選挙違反の問題が、この前の選挙違反が出ましたときに国会でも非常に問題になつたのであります。あのときの支出の責任者であります藤沢の市会議員でありました金子という人が、昨年十月の選挙以来今日までいまだに検挙せられておらないのでありまして、県の警察部にもわれわれの方からも調査に参つたのでありますが、あの金子さんという人は藤沢でも有名で、市会議員であり、その兄さんは藤沢の市長までやつておる人でありますが、どうも今日でもいまだに行方不明だということが皆納得がいかぬのであります。一体国警などではこの捜査に万全を期しておるかどうか、この点をひとつはつきりお答えを願いたいと思うのであります。
  46. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 昨年の十月選挙の際の選挙違反関係で、逮捕令状は出ましてもまだ逮捕に至らない人がほかにも相当ございます。これはまことに申訳ない次第だと存じておりますが、われわれ警察といたしましては、国警、自警十分な連絡のもとに、それらの人たちが大体どこへ立ちまわられるであろうかというその先でありますとか、できるだけの方法をとつて調査をいたしておるのであります。決してなおざりにいたしておる次第ではございません。先ほども申しますように、まだ若干そういう未逮捕の方がおりますことを非常に遺憾に思つております。この上とも捜査は続けて参りたいと思つております。
  47. 中村高一

    中村(高)委員 十分な調査をしてと今長官は言われたのでありますが、私は県の警察部にも行つて調べてみたのでありますけれども、今年一月一日に、元日だから多分帰るのだろうというので大勢でやつてみた、それきりあとやつたという事実はないのです。昨年の十月、その当時に調べたかもしれませんが、それから今日まで元日の朝一ぺんしか調べていないので、どうしてそれが万全を期したといえましようか。もう少し明確にお答えを願いたいと思います。
  48. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 どこにおられるであろうかということで、たとえば親戚関係あるいは従来からよく行かれるところ、そういうところの署にはそれぞれ手配を――われわれ全国手配と申しますが手配をいたしまして、それぞれ受持の署で注意をしてもらう、そしてその気配があればすぐ連絡をし、また逮捕に向う、かようにいたしておるのであります。元日の朝云々は、おそらく十中八、九そこに帰つておられるであろうというのでいたしたと思います。ここに確実に帰つておられるという聞込みは、まだどこからも参りません。全国の国警、たとえば神奈川の国警が刑事を派して絶えず見張つておるというわけには参りませんので、やむなく関係の署の協力を得るという態勢でいたしておるのであります。なお全国警察の協力を求めるようにいたしたいと思います。
  49. 中村高一

    中村(高)委員 次会までにもう少し詳細に、どういう方法で調べておるかという報告を願いたいと思います。  これは別の問題で、一般的なことでありますが、選挙違反事件は百日以内に審理するように一応規定されておるのでありまするが、ほとんど実行されておらぬのでありまして、何のためにあんな規定があるのか国民は疑つておるのであります。百日以内に審理の終つておる事件はほとんどないのであります。これは死文でありまして、こういうようなどこにも実行できないような規定を置いておいて、百日以内に終れということは、今では何の意味かわからぬのでありますけれども、この規定政府はどういうふうにお考えになり、またこれに対して改正でもしようというようなお考えがあるかどうか伺つておきたいと思うのであります。
  50. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまお話のように、公職選挙法が昨年改正になりました際に、二百五十三条の二というのが追加になりまして、御指摘のような、百日以内に裁判をするよう窮めなければいかぬという条文が入つたわけでございます。ただこの事件の種類といたしましては、当選人に係る本章に掲げる罪、それから詳しく幾つかの条文が引いてございますが、その次は、選挙運動を総括主宰した者に係る第二百二十一条その他の罪、または出納責任者に係る第二百四十七条の罪ということに限定してありまして、その候補者本人、ぞれから総括主宰者、出納責任者というような選挙のおもだつた人たち、そしてそれらが候補者の選挙の地位、議員の地位に影響を及ぼすような犯罪事実、さようなものにつきましてはすみやかに訴訟関係を確定いたさせまして、もつてその地位のすみやかなる確定をはかる、つまりいつまでも選挙の違反が刑事事件として残つておるために、それに基く地位の喪失あるいは連座規定の適用というものがされるのかされないのかわからないような状態で長いこと続くというのは非常に不安定な状況であるから、これをすみやかに確定するというような趣旨に出たものと解釈しておるのであります。これは例の行政訴訟についての規定にも対応し、なるべく早く事を確定したいという趣旨に間違いないのでございますが、さて具体的に裁判所にこの刑事事件がかかりました場合に、裁判所としてもこの精神にのつとつてやることは事実やつております。ただこの規定自体に「訴訟の判決は、事件受理した日から百日以内にこれをするように努めなければならない。」というような、ややゆとりのある言葉を使つてございますのは、事がその候補者の重大な身分に影響する訴訟事件でございますので、さような百日といつたような制限からして、重大な事件をあまり慎重に審理せずして判決を下すというようなことがあつてはならぬという配慮から、かようなややゆとりのある言葉が使われておるのではないかと存ずるわけであります。先般裁判所におきましても、刑事裁判官の実務会同がございました際に、この二百五十三条の二の点についていろいろ論議がござました。この精神にのつとつてなるべく乾くやるようにという指示もな直川協議もあつたように聞いておる次第でございます。  なお、この二百五十三条の二の2には「前項の訴訟については、裁判所は、特別の事情がある場合の外は、他の訴訟の順序にかかわらず速かにその裁判をしなければならない。」とあつて、他の裁判に優先してこれを入れる、期日の指定も早くやるというようなことを事実やつておるのでございます。ただその運用の面におきまして、御指摘のように、具体的にこの精神に合致しないような結果になつておるのがあることは事実でございまして、この点は私どもとしても、その立法趣旨から考えてまことに遺憾に存ずるところでございまして、裁判所にもただいまの御質疑の趣は十分お伝えしたいと思つておる次第でございます。
  51. 中村高一

    中村(高)委員 この程度で一応私の質問は終ります。
  52. 小林錡

    小林委員長 ほかに御発言はありませんか。――御発言がなければ、本日はこの程度にとどめておきます。  次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十七分散会