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1953-08-05 第16回国会 衆議院 文部委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月五日(水曜日)     午後三時六分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 天野 公義君 理事 伊藤 郷一君    理事 原田  憲君 理事 田中 久雄君    理事 辻原 弘市君 理事 前田榮之助君       尾関 義一君    坂田 道太君       竹尾  弌君    安井 大吉君       中嶋 太郎君    町村 金五君       野原  覺君    山崎 始男君       杉山元治郎君    松平 忠久君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部政務次官  福井  勇君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君         厚生事務官         (児童局長)  太宰 博邦君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政部         理財課長)   細郷 道一君         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 八月三日  委員下川儀太郎辞任につき、その補欠として  辻原弘市君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員大西正道辞任につき、その補欠として杉  山元治郎君が議長指名委員に選任された。 同月五日  辻原弘市君及び前田榮之助君が理事補欠当選  した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事互選  学校給食法案田中久雄君外十三名提出衆法  第五四号)  文部行政に関する件     —————————————
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選挙を行います。委員辻原弘市君、前田榮之助君は一時辞任をせられ、再び委員に選任せられましたので、この際先例により選挙の手続を省略し、私より両君理事指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認めます。よつて両君理事指名するに決しました。     —————————————
  4. 辻寛一

    辻委員長 次に学校給食法案議題といたし、提出者より提案理由説明を聴取いたします。田中久雄君。
  5. 田中久雄

    田中(久)委員 ただいま議題となりました学校給食法案につきまして、提案理由を御説明いたします。  学校給食は、児童及び生徒の心身の健全な発達に資するものであり、かつ、国民食生活改善に寄与するものでありまして、昭和二十一年十二月義務教育小学校にこれが始められて以来、年々全国に普及されこの必要性はもはや何人といえども議論の余地なきまでに相なりました。昭和二十四年ガリオア資金により無償となり昭和二十五年七月より八大都市に完全給食を開始し、二十六年二月から全国都市完全給食が実施せられたのであります。同年十月ガリオア資金の打切りとなり、政府補正予算約三十億円をもつてこれを継続、昭和二十七年四月より原麦代半額補助し、他は父兄負担となつたのであります、もつとも給食関係者においては、脱脂粉乳の食い延ばしに種々腐心して参りましたが、本年の一学期中に各地共残品皆無となり、ミルクに関しては、九月よりは全額父兄負担と相なるのであります。かくては、父兄負担の加重のため、せつかく給食も放棄のやむなきに至ることをおそれ、かつ、給食法が制定せられることにより、明年四月一日よりミルク代半額が国の補助によつて続けられることに確定すれば、父兄並びに学校関係者に非常な希望を持たせ、九月より来年三月までを乗切ることと存じます。  本法案は、学校給食用原麦代と、ミルク代半額以内において、国の補助をすることに相なつております。さらにまた、要保護家庭、準要保護家庭学童よりは、給食に要する経費の取立てが事実上困難な現状にかんがみ、これらの保護者に対し、当該経費の全部または一部を学校設置者が免除したときは、その免除した経費に相当する額の全部または一部を、当該設置者に対し、予算範囲内にて国が補助することかできるように規定いたしておるのであります。幸いに本法が成立しますならば、多年にわたる給食関係者のこの悩みは、解消することとなるのであります。また、学校給食の施設、設備及び職員並びに給食に用いる食物の栄養成分等についての基準は政令で定めることとしておりますが、本法案成立施行の際、現に給食を実施しているものは、当分の間基準に適合しているものとみなすことといたしております。  わが国敗戦以来国土は狭く、かつ荒廃し、人口は急激な増加の一途をたどり、米食生活を続けることは外米輸入なくしては不可能な状態であります。しかも外米輸入のために支払う莫大な金額は、必然的に貿易上入超となり、貿易上の貸借改善を不能ならしめている現状であり、このままでは経済自立もいたずらに掛声のみに終り、わが国経済上光明を見出し得ないのであります。この点からも今や米食パン食に切りかえることは、日本国民食生活上進んで断行すべき重要な事柄と相なつておるのでありますが、これは多年にわたる食習慣がありますので、なれるほかはありません。  さらに冒頭に申しました通り学校給食学童体位向上偏食防止、衛生並びに自立の精神の涵養、及び童心に貧富の差別を及ぼさないという配慮等、純教育目的より見ましても、教育の一環として重要な役割を演じておるのであります。パンと共に将来国内産の牛乳やマ—ガリンをより多く併用することとなりますならば、国民体位向上を期することと相まつて学校給食の意義はまことに重大と申さねばなりません。  本法提案委員各位全員が御賛成せられていることを深く信じておりますので、何とぞ慎重御審議の上すみやかに本案を通過せしめられるよう、切にお願い申し上げ、提案理由説明といたします。
  6. 辻寛一

    辻委員長 これより質疑に入ります。山崎始男君。
  7. 山崎始男

    山崎(始)委員 政務次官がいらつしやいますから、学校給食に関しますお尋ねをしてみたいと思います。  学校給食が実施されまして、もうすでに五、六年の歴史を持つておることは、今田中委員から提案理由説明の中であつた通りでございまするが、純教育的に考えてみましても、この問題は非常に大切な問題であると常に言われながら、今日まで数箇年を経過して参つたのであります。教育的に考えて大切だ、すなわちこの学校給食を通して教育的な意味というものが多々あることは、これは私が申し上げるまでもないと思いまするが、そのくらい重大なものでありながら、いつもこの立法に関しましては、今にも立法化されるのではないかという印象を国民に与えておりながら、実は今日に及んでおると私は思うのであります。もしかりに法案をつくるといたしますれば、この学校給食性質自体から見ますると、御承知のような、何ら政治的な内容を持つたものでも何でもございませんが、どういうわけで今日まで学校給食立法化されなかつたか。前国会におきましても、わが党の辻原委員からもまた私からも、この学校給食に関しては御質問をいたしたのでありまするが、近藤局長の御答弁にもございましたが、自分らとしても学校給食は必ず立法化したいという含みのあるお言葉が、たびたび実はあつたのであります。この国会におきましても、私は当然これは政府提案としてお出しになるものだと実は思つてつたのであります。またこれは私一人だけの気持ではございますまい。おそらく全国六百万になんなんとするところの、倉学校更給食をやつておりまする児童はもとより、父兄、その仕事を担当しておるところの学校先生方も、すべてがこの国会こそ法案化されるだろうという期待を持つてつたと私は思う。請願書の数を調べてごらんになるとわかると思いますが、おそらく私はこの学校給食に関する請願、陳情が地域給の次に位するくらい多いものだ、かように思つておるのであります。それにもかかわらず、この国会で遂にお出しにならなかつた国民は非常に期待を裏切られたという感じを、私は持つておると思います。前国会において近藤局長も御答弁になりましたそのときのお気持が、私にはよくわかるのでありますが、どうしてこれをこの国会にお出しにならなかつたのか。その点につきまして国民期待が大きければ大きいだけ、皆さん方の御苦心のあることも私はわかりますが、ひとつ御説明願いたい。
  8. 福井勇

    福井政府委員 山崎委員にお答えいたします。学童給食の重要な点につきましては、まことにお説の通りでありまして、文部当局といたしましても、日ごろこの検討を怠つておらないつもりでおります。ところが今日まで、御指摘のようにこの提案が遅れたというようなことにつきましては、いろいろ事情もありますが、大体予算的裏づけ、これの見通しというものがはつきりと立つてから提案しなければ、軽卒のそしりを免れないというようなことから、遅れたというのが事実でございまして、今後各位の御熱意を体しまして、でき得る限り御趣旨に沿うよう検討努力したい、こう考えております。
  9. 山崎始男

    山崎(始)委員 それではお尋ねいたしますが、この十六特別国会を迎えるにあたりまして、文部省皆さん方としては、あるいは農林省関係、あるいは大蔵省関係、あるいは政府与党その他に対して、学校給食法案立法に関する打合せなんかを十分におやりになつたか。すなわち、努力をされたことがあるのかどうか。ただ言葉の上で善処すると言われましただけでは、前国会からの事情を知つております者にとつては、非常に不服であります。どういうふうな具体的な御努力をなさつたお尋ねいたします。
  10. 福井勇

    福井政府委員 前国会以来のいきさつについては、担当局長から説明させたいと思います。
  11. 近藤直人

    近藤政府委員 お答えいたします。学校給食法案提出につきまして、前国会におきましてもぜひ実現いたしたいと考えまして、研究を続けて参つたのでございます。それから今度の国会におきましても、何とか考慮したいと思いまして、それぞれ関係方面に対しましては交渉を進めて参つたのでございます。関係方面と申しますると、農林省厚生省という方面でございますが、それぞれ話は進めて参つたのでございます。文部省といたしましては、実は案を持つておりまして、その案をもつてぜひこれを実現いたしたい、かように考えておつたのでございますが、何分にもこの問題は非常に微妙な問題が伏在しております。たとえて申しますれば、給食対象人員の問題、これはただいま小学校を主として対象にしておりますので、全部で約手百万の児童がございますが、ただいまのところは約六百万という数にとどまつておりますから、われわれの将来の理想といたしましては、千百万まで拡張したい、あるいはこれを義務制に全部及ぼしたい、従つて中学もこの中に含めたいという考え方、要するに対象の問題のとり方。  もう一点は、物資に対する補助のあり方、これにつきまして、実は私ども農林省と折衝いたしました経緯におきましては、予算的には、小麦につきましては二分の一の補助がきまつておりますが、ミルクにつきましては、ただいままでは補助はいたしません。しかしながらミルクに対しましては、政府が何らか補助の方法を講じることが、学校給食を進める上においてきわめて重要であるという観点に立ちまして、ミルク補助についても折衝したのであります。これは食管特別会計におきまして操作いたしまして、食管特別会計においてミルクを買い付けてもらい、それを配給することについていろいろ折衝をいたしてございます。ところがミルク操作につきましては、御承知のように従来食管特別会計主食を主として扱つておりますので、それ以外に、ミルクとか、くじらの油だとか、その他の物資食管特別会計で扱うことにつきまして、ある方面におきまして相当異論があるのでございま正す。つまり食管特別会計は、大体主食を中心にしたいという考え方がございまして、ミルクにつきまして、これを食管操作するということについては、なかなか了解を得られなかつたという経緯がございます。そういつた問題もございまして、いろいろ悩んだのでございますが、ともかくどもといたしましては、ミルク小麦も全部食管特別会計操作することが一番いいという結論に達しておつたのでございます。ところが先ほど申し上げましたように、いろいろ難関がございまして、現実にはミルク食管操作でなしに、府県の負担学校給食会が全部買付をやつて、その配給をやつておるというのが現状でございます。そういつた問題がございます。  それからもう一点は、例の準要保護児童の問題、ただいま生活保護法適用を受けておる児童につきましては、厚生省所管におきまして、十数億の予算を計上いたしまして、この保護児童につきましては、学校給食費を国が負担しております。ところがこういう生活保護法適用を受けない準要保護児童は、今日まで放置されておつたのであります。しかしながら、これは実際におきましては、PTAとかあるいは地方自治団体におきまして負担しておるのが現状でございますが、これに対しましても、国が何らか補助の手を延べて、学校給食をぜひ普及したいというような考えがございます。そういつた問題がいろいろございまして、今日までわれわれが立案をしておりましたが、これを正式に御提案いたしまして、御審議を願うというところまで自信も持てませんし、完全な了解もつかない。ことに予算の面におきまして、これはなかなかはつきりした見通しも立ちませんので、今日までそのままにとどまつたような次第でございます。幸いにしてこのたび田中先生ほか皆様の御提案によりまして、学校給食法案が御審議いただきますことは、私といたしましては非常にけつこうなことと思います。なお今後ともこの給食法案につきましては、われわれ当局の者といたしまして、これをますます推進して行く方向に努力をいたしたい、かように考えます。
  12. 山崎始男

    山崎(始)委員 大臣がいらつしやらないので私のお尋ねも非常に限定されるのでありますが、事務当局もこの学校給食法案に対しては、かなり御熱意があるように前国会にも承つたのでありますが、ただいまの御答弁を聞きましても、そのように伺いまして、いささか私たちも不満足ながら満足するという気持なのであります。申し上げるまでもございませんが、この問題は事務当局だけでできる問題じやないと思う。皆さん方の御熱意もわかりますが、要は学校給食法案自体の持つておる性格、内容というものを検討いたしましたならば、何がゆえにこういう問題が今まで立法化されずにおるか、実は私たちはふしぎに思うのであります。なぜならば、この学校給食という事柄は、単なる教育的な観点からだけこれを論議するというのでなしに、この法律案自体には、ただいまの田中委員提案理由説明にもございますが、非常に重要なる国策的なものを含んでおり、純教育的ないろいろな長所、ぜひやらなければならない理由がたくさん含まれておりますと同時に、一言で申しますと、日本の国のいわゆる自立経済といいますか、国民経済といいますか、そういうようなものに対して、この学校給食くらい大きな意味を持つたものはないと私は思うのであります。一箇年におそらく千七百五十億円くらいの食糧費をわれわれの苦しい税金の中から出しておるということは、申し上げるまでもございません。そうして一箇年に百二十万人くらいの人口がふえております日本現状を静かに考えてみると、私たち子供のときには、日本の国は瑞穂の国だといつて、一時は大阪湾へ米を捨てた時代もありますが、今日敗戦後の日本現状をつらつら考えてみたときに、考えれば考えるだけ、現在の米食依存のこの国民経済というものがいかに恐ろしいことか、これは私は申し上げるまでもないと思うのであります。農林省のごときは、やれ土地改良であるとか、あるいは米麦の増産に対して莫大な金を計上しております。ところが驚くなかれ、日本の水田というものはすでに行き詰まつてしまつております。むしろ裏作としての小麦とか大麦を増産するという面は、まだまだ相当余地が残つております。相かわらず日本政治の上には、これだけ食糧が足らぬのにもかかわらず、今まで通り腹一ぱい米を食うところの国民経済習慣というものが現在残つておる。一方では、先ほども申しますように、一箇年に百二十万人くらいずつふえて行つておる。しかも吉田首相は、この間の予算委員会答弁ではございませんが、人口問題においても、人口制限をやるような政策はとりたくない、こういう御答弁である。おそらく昭和三十二年に至りますと一億万人以上の日本人口があることになりますが、一体どうやつてこれを養つて行くのか、考えれば考えるほど、私たちは非常に恐しいような気がするのであります。ところが一方政治貧困と申しますか、農林省農林省だけで一つのセクト的な割拠主義になつておるのじやないか。文部省文部省だけでそういう考え方があるのじやないか。これは日本官僚組織における、ただ農林省文部省だけの問題じやございませんが、こういうような重大な日本自立経済国民経済あるいは国民保健学校教育の点はもとよりでありますが、非常に有力な意味を含んでおるところの学校給食法律案というものが、何がゆえに今までほおつておかれたか。一言で申し上げますると、私はこれは政治貧困だ。なるほど今局長もお話のごとく、あるいは福井政務次官の御答弁のごとく、予算の面において、どうも確固たる自信がなかつたからだ、こういうことを申されましたが、目先の金を惜しんでおられるような御答弁でありまするが、そういうような大きな食糧対策あるいは教育対策国民健康対策という問題が含まれておるような事柄なら、目先五十億であろうと、百億であろうと、一時出しておいても、そのおうつりは二年先、三年先には必ず返つて来る。過日田中委員から学校給食に対して代表質問があつたときにも、大蔵大臣の御答弁は、今ここで学校給食多額の金を積んでも、すぐおうつりが来ないからというような意味の御答弁であつたのでありますが、こういう言葉を聞くと、なるほど大蔵大臣自体の職域というものから見れば、ただ本年度だけの財政をいかにするか、ない金の中から多額財政計画をなさるのでありますから、当然であるかもしれませんが、そこが私は政治貧困だといいたいのであります。本年度においておうつりが来なくても、この学校給食というもので、一千七百万に及ぶところの児童生徒に粒食から粉食の習慣をつけさせ、ひいてはその地域社会の者の米食依存食生活改善をして行く努力が、政治の上になぜ行われないか。義務教育学校生徒が一日に一食のパンをやりますれば、おそらく三百二十万石以上のお米の節約ができるのじやないか、私はかように思うのであります。しかも日本の米というものは、驚くなかれ、一石が一万一千七戸円でありましたか、外米をこういう高い価格で買つておるのであります。これは申し上げるまでもございません。それがいわゆる小麦になりますれば、おそらく半額以下で済みましよう。金銭的に見ても、目先予算がないから、予算がないからと言われますが、非常に多額のおうつりが数年後には必ずやつて来る。こういうような事柄は、農林省もなければ文部省もない、厚生省もなければ大蔵省もない、いわゆる政府全体が一体となられて、思い切つた大胆な法律案を、私はぜひつくる必要があるのじやないか、かように思います。文部大臣がいらつしやらないのでありますが、福井政務次官の御見解はいかがでありますか。
  13. 福井勇

    福井政府委員 山崎委員学童給食、ひいては日本食糧問題に対する御見解はきわめてごもつともな次第でございまして、先刻私たちの方からも御答弁申し上げましたように、この趣旨をできるだけ徹底させるために、予算的の裏づけ等をよく見きわめて、そうして十分な検討を加えて御趣旨に沿うように努力したいと当局は考えております。
  14. 山崎始男

    山崎(始)委員 学校給食のことであともう一、二点申し上げたいのでありますが、大臣がおいでになつてからにいたしたいと思います。一応事務当局の御熱意のほどはわかりましたから、あとは大臣がお見えになつてからにして、一時保留いたしておきます。
  15. 辻寛一

    辻委員長 大臣はすぐ参るそうですが、大臣が参りますまで本案に対する質問は留保いたしまして、次に移ります。     —————————————
  16. 辻寛一

    辻委員長 文部行政に関する件を議題として、一般質疑を許します。辻原君。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 私は大臣が出られてから、大臣の所論をただしたいと思つたのでありますが、若干細部にわたる点もありまするので、事務当局取扱い並びに政務次官のこれに対する所存のほどを、具体的にお伺いをいたしておきたいと思います。と申しまするのは、北九州に次いで起りました和歌山地方災害に関する復旧措置の問題でございますが、すでに本院の調査班あるいは参議院並びに政府大臣調査に基きましても、規模においてこそこれは北九州に若干劣つておりますものの、実際の被害程度につきましての深刻度合というものは、北九州にまさるとも劣らないという、まことに惨状をきわめておる災害でございます。私も約十日間にわたりまして現地を経めぐりましたが、おそらく私たち人間の常識をもつて見ましても、かかる災害が今日の時代に起るということ自体すらふかしぎなほど、この災害についてはわれわれの思考力限界を越えておる問題でございます。従つてその復旧にあたりましては、個人の力あるいは市町村あるいは都道府県、こういつた力でもつてしてはどうしても不可能な問題がたくさんございます。本院におきましても、災害特別委員会におきまして、すでに十六法案参議院を入れまして十七法案が可決の寸前に参つておりますけれども、なおこの災害特別委員会における審議におきましては、時間的な問題もありまして、特に文教関係措置につきましては、これは相当量漏れておる問題があることを私も発見をいたしております。従つてそれらの点について、本会期中に間に合わないとするならば、来るべき臨時国会等におきましても、これはわれわれ国会議員といたしまして、議員立法措置等も考慮したいということを考えておりまするが一とりあえず災害復旧は急を要しますので、その間の行政的な取扱いについて、限界まで——これは特に文教の問題につきましては、文部省に重大な責任がございまするので、その点をとつてもらうために、私は相当量の問題につきまして、関係事務担当者の方々に御質問をいたしたいと思います。特に全般的な災害については、本委員会において申し上ぐべき筋合いではございませんが、児童生徒災害人員を見ましても、和歌山県の方が約二十万の総数に対して三万四千という罹災者の数を出しておりまするし、また校舎だけの面をとらえてみましても、約四万二千坪を突破するという莫大な被害でございます。さらにこれは従来の災害とは違つたケースといたしまして、いわゆる範囲が広いというのではなくてその地域に与えられた損害が致命的であります。校舎をとりますと、まるきり姿も何もなくなつてしまつて、その跡に、ここに何々学校校舎があつたということを標識を立て安ければわからないような地域が、すでに私のまわりましたところにおきましても七箇所を数えております。こういつた点についての災害復旧は、今後の和歌山県における教育遂行上におきまして、きわめて重要な喫緊の問題になつておりますので、第一番といたしまして、私はこの校舎復旧について、すでに特別委員会において一応特例法措置がとられまして、復旧には四分の三の措置がとられ、なお、従来の対象からわくが拡大せられておりますけれども、しかしながら問題は、たとい残る四分の一にいたしましても、この点に対する地方負担が現在の状態におきましてはおよそ不可能であるということを、私ははつきり申し上げたいのであります。従つて、その残り四分の一の取扱いにつきましても、法律が可決を見たあかつきにおきましては、当然これは、文部省、自治庁、大蔵省の三者の間において協議があつて起債の問題と相なるかと思いますので、これについては、従来もそういう方針をとられて参つておることを私も承知いたしておりますが、これは特に完全に——従来あるいは八〇%、あるいは七〇%ということで、完全にその起債を認めるという方針はあまり認められなかつたように私も記憶をいたしておりますので、四分の一を一〇〇%これを補償するという線を、文部省においてもぜひこれは——幸に大臣も見えられておりますので、大臣の御所存も伺いたいのでありますが、確保して、ともかく一日も早くこの授業の再開、教育の振興に支障のないようにしていただきたいということを考えますので、どういうふうに現在事務的に折衝を進めておるのか、また今後二十九年度予算、ないしは予想されているところの臨時国会における予算折衝において、あるいは、まだ始められておらないかもしれませんけれども、これを完全に見るという、そういう決意でもつて文部省は当つておるかどうか、これを第一点にお伺いをしておきたいと思います。  ついでに第二点といたしまして、私は災害特別委員の一員でありますが、この特別立法において、対象範囲を拡大いたしまして、校舎のみならず、校地、設備の面にまで及ぼしておりますが、特に今回の和歌山災害におきましては、山間僻地の被害が、いまだ十分天下に熟知せられておりませんけれども、きわめて深刻なものがあります。特に、校舎付近に建てられました学校教員住宅等においても、その流失あるいは全壊、半壊といつた被害が非常に顕著でありまして、この点この特別法に伴う予算の交付にあたつて、これらの学校に付設する教員住宅の面まで、当然範囲に入れて考慮すべきものであると私は考えるが、その点ほついての文部省見解はどうであるのか、これもあわせてお伺いをいたしておきたいと思います。  あと、校舎建築その他の問題についての若干の問題がありますが、一まずその二つの問題につきまして、事務当局取扱いの方針と、なお今後予算折衝その他において、当然大臣の責任とも相なりまするので、大臣の御所存を承りたいと存じます。
  18. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま和歌山の水害に対する対策の御質問でございますが、和歌山の水害につきましては、まことに御同情にたえないところでございます。私どもといたしましては、西日本の水害に対するとほぼ同様な措置を考究いたしておりますが、ただいままで私の手元で実施いたしましたことにつきまして御報告申し上げます。  まず第一に七月二十一日に文部省の課長以下四名が現地に参りまして、つぶさに現情を調査いたしたのでございますが、しかしながらまだ交通が完全に回復しておりませんので、報告といたしましては、まとまつたようなものはとれませんでございましたが、しかしながら今後の対策樹立上非常に参考になつた次第でございます。  それから第二点といたしまして、七月二十一日に、現地で教科書の主管課並びに教科書の供給業者と会合いたしまして、この教科書の配給の問題につきまして、迅速な供給方策につきまして協議をいたし、これは即日着手したような次第でございます。  それから第三点といたしましては、学用品の供給でございますが、この点につきましては、現地調達を原則といたしまして、教科書と並行いたしまして、休暇中にでも児童生徒にこれを受渡しして、人心の安定に資するように準備をいたしております。それからその際、もし学用品の現地調達が不可能な場合には、文部省においてこれを低価あつせんするという方針を立てまして、これは通牒いたしました。そうして応急に、とりあえず和歌山には三千万円、奈良の方面には百万円というものを送つたのでございます。  それからさらに緊急用といたしまして、文部省で寄贈を受けました学用品を罹災児童生徒に発送いたしております。これは鉛筆が一万八千本、ノートが二千六百五十六冊、消しゴム二千個、絵の具、クレヨン四百三十二箱、日本地図帳三万五千部、学習用白地図一万五千部というようなものが、すでに現地に発送いたしております。  それから公立学校の共済組合施設に対しましては、管内組合員の——これは義務制学校の教職員の罹災者でございますが、その組合員に対する報告をまず求めまして、罹災組合員に対しましては、すみやかに一万円から一万五千円の特別貸付をいたしたいというように、これは通牒いたしております。  なお国家公務員の罹災者に対しましては、国家公務員共済組合法に定められました災害見舞金あるいは弔慰金等の法定給付をすみやかに行うよう勧告をいたしております。  さらに罹災児童学校給食補助につきましては、一応九月から十二月までを目途といたしまして、予算措置を私どもにおいて講ずることにいたしましたが、夏期休暇中におきましても、とりあえず県の在庫の脱脂粉乳につきましては、これを無償に配付するように、これは指示をいたしております。  それから罹災学生の生活援護の問題、あるいは罹災学生の授業料減免の問題につきましては、それぞれ調査を進めまして取扱いをいたすように、措置いたしております。  以上、応急にいたさなければならないような措置につきましては、ただいま申し上げたような措置でございますが、さらに恒久策といたしまして、学校施設の損害に対しましては、これは別途予算の要求をいたしたい、かように考えております。なお社会教育施設あるいは文化財関係の施設につきましても、同様予算要求をいたしまして、迅速な復旧をはかりたい、かように考えております。とりあえず私どもが処置いたしました点について御報告申し上げます。  それから第二の問題は、御承知特例法によりまして、水害地におきます公立学校施設の補助は四分の三に引上げられる予定でございます。また社会教育施設につきましては、これは三分の二になる予定でございますので、そこで残りの四分の一につきまして起債の措置がどうであるかという御質問かと思いますが、その起債の措置につきましては、御指摘にもございましたように、従来起債につきましては八〇%が限度でございますが、御意見の通り、これはぜひ一〇〇%ということで、私ども自治庁の方に話合いを進めたい、かように考えております。  それから和歌山の水害の特色といたしまして、日高川とか、あるいは有田川の下流の地点のみならず、上流におきましても相当被害があつたということも私も承知いたしております。私のところへ和歌山の方がおいでになりまして、つぶさにお話を伺つておりますし、その際の御意見といたしまして、山間部の学校の付近に建てられた教員住宅が破壊されて流されているということにつきまして、これは何らか国の方で補助の処置を講じてもらいたいという御要求でございます。これはまことにごもつともな御要求でございますが、ただいまの法律の建前といたしましては、学校の建物、工作物、設備ということに限定しておりますので、この点はなかなか私は困難じやないかと考えております。しかしながらこれは教員住宅のことでもございまするので、何とかこれを救い得る道はないかと実は考究しておるのでございます。補助の道がなければ、あるいは起債の認可で何かこれを救う道はないかということを考究中であります。以上御質問に対してお答えいたします。
  19. 辻寛一

    辻委員長 御質疑なさる委員各位にお願いいたしておきますが、実は今参議院の本会議が開かれておりまして、非常に重要な案件が上程されておりますので、その間抜けて大臣に今来てもらいましたので、三十分ぐらいしか余裕がございませんから、特に大臣答弁を御要求の方々に、交互に大臣に対する質疑をやつていただきたいと思います。
  20. 辻原弘市

    辻原委員 先ほど大臣が途中でお見えになりましたのであらためて申し上げるのでありますが、御承知和歌山地方災害は、先ほど私がこの席上におきましても申したのでありますが、規模においては西日本、九州地方災害にあるいは劣つているかもわからないが、その深刻さ、あるいは教育施設あるいは学童生徒に与えた教育上の支障というものは、まことに甚大なものがある。特に財政貧困和歌山県、あるいは地域におきましても交通不便、比較的文化の遅れた山間僻地を持つております和歌山地方を原状に復帰する、教育施設あるいは教育水準の維持ということにおきましても、ただいまで県のあらゆる機関をあげましても非常に困難な事態に逢着しておりますから、これに対してあらゆる角度からこの復旧を地元、県ともに全力をあげてやつておりますが、特に国家の予算措置と相まつて文部大臣の御決意がかかつてこれに対して大きな推進力とも相なりまするので、特にそれに対する大臣の御所見を承りたい。  第一に私が提起いたしました問題といたしましては、何といたしましてもこの校舎の荒廃は四万坪を突破いたしておりますので、こうした点につきましては、すでに法律におきましては今説明がありましたように、四分の三ということでありましたが、残る起債等につきましても従来の例を打ち破つて、完全に百パーセント国において保障するという線を、これは大臣の責任にかけて保障していただきたいということを私が申し上げたのであります。それに対する大臣の御決意のほどを承つておきますれば、被害を受けました地元民にとりましては非常に幸いのことであると考えますので、この席上で特に大臣の御所見を承りたいと思います。
  21. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 和歌山地方における今回の大水害は、ほとんど前例にない、局地的に申し上げますと非常に深刻な被害がある。これはまことに同情にたえないことでありますし、ことに教育施設等において非常に甚大な損害を受けたということは文部省としても非常な関心を持つておるところでございます。またこの国会におきまして、特にこの西日本災害とあわせて特別な関心を持たれ、これがためにその措置に関係しての特別立法もなされた、こういうことはまことにけつこうなことであると存じております。文部省といたしまして措置いたしました応急的措置につきましては、先ほど監理局長から申し上げたのでありますが、今後の恒久対策と申しますか、それにつきまして今辻原委員から御要望もあつたのであります。私としては、全力をあげてこの問題の解決に当りたい、そうしてこの国会の強い御関心にこたえることにいたしたい、かように存じております。
  22. 辻寛一

    辻委員長 学校給食法案もあわせて議題といたしまして、山崎始男君。
  23. 山崎始男

    山崎(始)委員 大臣がお見えになりましたので、学校給食法案に関しまして大臣のお気持を一、二点聞きたいと思います。  先ほど事務当局並びに政務次官のお気持は聞いたのでありますが、一言で申しますると、学校給食法案の持つ法案自体の、学校給食自体の重大性というものは、私がかれこれ申し上げるまでもありません。おそらく大臣も十分御承知のことと思うのであります。ところが学校給食が今まで法律化されずに、重大事であるのにもかかわらず、荏苒として今日まで何ら立法措置がなしに参つたのであります。御承知ないかもしれませんが、前国会におきまして、文部当局のこの学校給食に対する御熱意を、どうかして次の国会には法律化したい。そうして政府提案でもつて出したいということは、御答弁の中に、その言葉その通りではございませんが、含みのある、熱意のあるお言葉をわれわれはたびたび聞いておるのであります。しかも岡野文部大臣も、あなたと引継ぎをなさる直前だと私は記憶いたすのでありますが、車中談でありましたか、この十六国会においては学校給食法案を出すのだということを言明しておられるのです。従つて国民の大多数は、この国会こそ待望の学校給食法案政府提案で出るものなりということを楽しみ、かつ期待をして参つたと思うのであります。かく申す私たちも、十中八、九出るものなりという期待を持つて今日まで来たのであります。ところがあにはからんや出ないのであります。従つてこのたび御承知のように野党のわれわれにおきまして、学校給食法案というものを出したことは大臣も御承知だと思うのでありますが、この学校給食というものを立法化することに対する大臣の御熱意がおありになるかどうかということを、私は非常に聞きたいのであります。聞くところによりますと、天野文部大臣は非常にこの学校給食には御熱心であつた。あの方がおやめになりまする直接の原因をなしたのも、この学校給食が原因をしておるということは、昨年の七月だつたと記憶いたしまするが、文芸春秋に文部大臣御自身が自分の退任の弁という、文部大臣をやめられた理由を書いていらつしやいます。その中に明らかに学校給食の問題が出ておるのであります。非常に御熱心であつたということが私たちにはうかがわれまするが、大運文部大臣、あなた御自身はこの学校給食に対してどういうふうなお考え方を持つていらつしやるか、この点をお聞きしたいのであります。
  24. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 学校給食が非常に大事であるということは、これは私から申し上げるまでもないことであります。文部省といたしましても、学校給食が一定の法律的な基礎を持つて行われるということは最も望ましいことであると考えておるのであります。ただ今国会提案するに至らなかつた実情を申しますると、学校給食が実際その所期する効果をあげまするためには、相当多額予算措置の裏づけを必要とするのであります。その点が関係省との折衝におきまして、容易に解決する見通しも実は立ちにくいのであります。その関係で、政府提案といたしまして国会提出する運びに至らなかつたのが実情であります。今後十分努力いたしまして、この予算措置と申しますか、その辺の見通しが立つようになりますれば政府としても提案をいたしたい、かように考えておつたのであります。
  25. 山崎始男

    山崎(始)委員 時間があまりございませんので、早速結論に入りたいと思うのであります。大臣努力すると言われるのでありまするが、国民努力をするのだ善処をするのだという政治家の言葉には、実を申しますとあまり期待しないのであります。このたび学校給食法案を野党四派で出しました。率直に申し上げますると、委員長以下自由党の皆様方も、個人的にはこの学校給食法案に対しては非常に御熱心だというふうに私はそんたくをするのであります。ところがこうやつて会期も切迫いたしましたが、本日の理事会におきまして、委員長以下自由党の皆さん方のお骨折りによつて、来国会においては必ず共同提案をするから、こういうような自由党の政調会長の言葉があつたのであります。私たち野党の者といたしましても、この法律案の持つておるところの性格から見まして、決してこれは一党一派の問題じやございません、一千数百万の児童生徒の幸福と、また日本の国の自立経済国民経済国民保健、そういうような非常に大きな意味を持つた法律案は、これはぜひ超党派的に一刻も早く法律化しなければいけない、こういう気持以外私たちはないのであります。でありますので、本日の理事会で、来国会においては必ず自由党の皆さんも同調して、共同提案をなさるという御熱意のある言葉を聞いたのであります。党人であられる大臣が率先をしてこの法律案に対して御努力をいただかなければ、今度は予算の面において、ややもするとせつかくまた法律案ができましても、予算の面においてまずいことになる。大臣なり、政務次官なりはぜひこの点はがんばつていただかなければいけないのじやないかと思うのであります。従つて私は率直に結論をお聞きしたいと思うのであります。来国会において、大臣なり政務次官はこのの学校給食法案の実現に対して、必ず実現してみせるぞというお気持があるかどうか、私は大担率直な御答弁が願いたいのであります。でないと、国民期待というものが非常に裏切られる、かように思うわけでございます。どうぞひとつ大臣のお気持、御決意のほどをお願いいたします。
  26. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、学校給食に関する法律を制定するということは、ただ文部省の立場からだけでなく、いろいろな意味から最も望ましいことであると存じております。従つてでき得る限り来るべき国会においてこの法律が成立することに努力することを決して惜しむものでありません。ただ申すまでもないことでありますが、予算措置を伴うものにつきましては、必ず出すことにするということを私はこの席上でお約束を申し上げる立場でないのでありますから、努力するということで御了承いただきたいと思うのであります。努力するというだけではまことに心もとない、国民は安心はしないのだというお言葉は、私は率直に申してごもつともであると思いますけれども、また私どもとしては、これは政府全体としての関係がありますから、単独でこの席で必ずそういうふうにするということははつきり申し上げられないということも御了承をいただきたいと思うのであります。努力する点については真剣に努力するつもりでありますから、その点御信用いただくほかはございません。
  27. 山崎始男

    山崎(始)委員 ただいまの大臣の御答弁は、党人としての大連氏と、いま一つは文部大臣としての大連氏とのチヤンポンの御答弁だと私は思うのであります。文部大臣としての御答弁を私はお聞きしたい。いかに党が少々文句を言うても、自分としてはそれだけの予算の獲得においても、法案自体の来年度の実現においても、文部大臣としての立場において私は努力をぜひやつてみたい、こういう御答弁が私は望ましいのであります。どうでございましよう。
  28. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私がただいま申し上げました答弁文部大臣としてお答えをしたのでありまして、自由党員としての意味はちつとも入つておりません。繰返すようでありますが、文部大臣といたしましても他の省に関係する、つまり相当多額予算措置を伴う問題につきましては、ここではつきりお約束するということはできない、もうこれは当然のことであろうと思います。その点御了承いただきたいと思います。
  29. 辻寛一

    辻委員長 町村金五君。
  30. 町村金五

    ○町村委員 先日私は文部行政一般のことについて、多少大臣お尋ねを申し上げたのでありましたが、当日時間がはなはだ不十分で、なお多少お尋ねしたい点が残りましたので、本日重ねて当日お尋ねしなかつた点について御意見を伺つてみたいと思います。私は議員としても新しく、また文部委員としてもきわめて日が浅いのであります。あるいはただいま私がお尋ねいたしますことは、すでに本委員会において論議されたことをむし返すようなことが多少あるかとも思うのでありますが、その点は御了承いただきたいのであります。  私は最近西ドイツにおきますいわゆる占領軍の教育に関する報告書というものをちよつと読む機会を持つたのであります。これを見まして、同じ占領軍でありながら、日本に対する場合とまたドイツに対する場合とでは非常な違いがあるということについて、実は一驚を喫した次第なのであります。すなわち今日までわが国教育制度なりその内容というものは、ほとんど連合軍が米国の教育使節団の報告書に基いて政府にその変革を強制して実施されたものであることはいまさら申し上げるまでもないのであります。私はすでに独立国になりました今日、この事実をわれわれとしてはあらためて回顧し、そしてこれに検討を加える必要があるのではないかということを痛感いたしておる一人なのでございます。教育というようなきわめて重大な問題が、国情を異にいたしておりますところの少数の外国人が、わずかに一箇月余りの視察によつて結論づけられたことから、また教育にきわめて無理解な外国軍人によつて実施が強要されたということは、私自身すこぶる遺憾であると考えます。この結果、かつて日本教育の美点なり成果なりというものに対して、ほとんど何らの顧慮が加えられていない、そして今日フイリピンなどに行われておりますようなアメリカ流の植民地教育政策が、ほとんどそのままの姿で日本にも実施されておるという事実であります。すなわちこういつた同じような方法が西ドイツに対しましても強制をされたのでありますけれども、当時の西ドイツの政府は、これに対しまして敢然として抵抗をいたしておるのであります。従いまして、ドイツにおきましては、使節団の勧告は結局一片の勧告に終つてしまつておるのであります。六・三制というようなもの、あるいは教育委員会というものも勧告をされましたけれども、実施に至つていないのであります。あるいはまた教育内容というようなものにおきましても、西ドイツにおきましては、ほとんど従来の教育制度は踏襲されてかわるところがない。少くともドイツにおきましては、ドイツ自体の精神文化の伝統を守り抜くということが非常に強く維持せられておりますにかかわらず、わが国におきましては、勧告通り実施いたさなかつたものは、わずかに国字をローマ字に直すということを拒否しただけであつて、それ以外には全部彼らの主張をそのままに認めざるを得ないという、まことに哀れな結果に陥つておるという事実を私どもは深く考えさせられた次第であります。もちろんこの使節団の勧告によりまして、私ども教育の民主化というまことに大きな収穫を得たことは、これを喜びもし、また深く多としなければならないのでありますけれども、今日のわが国の識者は、この民主主義という美しいヴエールをかふせられたところのアメリカの教育政策、すなわちこの天くだり式の制度に対しまして、もう一度虚心坦懐に再検討を加えるべきでありますにかかわらず、今日に至るまであるいはいろいろと既成事実が累積をしておるということによつて、改革が非常に困難である、あるいは反動呼ばわりをされるということを恐れるところの非常な卑怯な心持から、この重大な問題に対して真剣な厳粛な反省と批判が行われていないということを私は心から悲しむ次第でございます。私はこの批判と反省というものがなければ、青少年が、あるいは知的にも精神的にも自主性のないアメリカ的思考、気風に同化されるという重大な傾向が生れて参るということは当然である。またその反動といたしまして、これが逆に親ソ反米的な風潮の温床となり、現に容共的思想を強くかもしつつあるということもまた見のがすことができない事実であると考えます。私は今やわが民族の百年の発展をはかり、今日の教育制度について根本的の改革を加えるために、朝野の達識と勇断が強く要望されると考えるのであります。まずこの点につきまして、文部大臣の御所見を伺いたいのであります。
  31. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お述べになりました点につきましては、私は大体同感であります。戦後わが国教育制度というものが、きわめて急激に改革をせられた。それがアメリカから押しつけられたようなふうにも見え、わが国の実情に合してはたして適当であるかどうかということについての検討もおろそかにされた点もあつたのではないか、私はこの点は同様に考えるのであります。これは包括的に申し上げて、はなはだ漠然としたことでありますが、私は必ずしもアメリカが悪気でやつたとも思われぬのであります。日本の実情に合わない点につきましては、これをよく消化して、日本の実情に合うようにする。またどうしても国情に適しないというものについては、あらためてこういうことをしなければならぬ。かりに今日すでに発足数年に及んでおる新しいわが国教育制度、これを育てて行くといたしましても、アメリカ人が着ておつた大きな着物を、からだの小さい日本人に着せようとすれば、ゆきの合わぬところ、たけの長いところはからだに合うようにして行く、これだけのことは少くともなさるべきものであると思うのであります。ただ私が現状を憂えておりますことは、わが国民のうち、一も二もなくこれを理想なものである、こううのみにして、そうして教育のごとき問題は一朝一夕のものじやなくて、民族の深く根ざしておる伝統というものを考慮しつつ制度が考られなければならぬ。この点がおろそかにされて、今日では伝統ということに返ることが、ただちに反動呼ばわりにされる、あるいはまた非民主的であるという一口で片づけられる。国民はまるで祖国に対する、あるいは民族に対する誇りというものを失つてしまつて、そういうことを申しては過激でありますが、日本的でないようなことを言うのが気がきいておる、いいんだというふうな風潮さえも見えるということは、私ははなはだ慨嘆にたえないことであると思うのであります。ただわが国は未曽有の——これはドイツも同じであるかもしれませんが、とにかく民族の歴史が始まつて以来のさんたんたる敗戦を経験いたしました。そうしてこれが初めての経験であつて、非常な窮乏と非常な社会的混乱に陥つておるのであります。現に私はそうであると思うのであります。私が希望いたしますことは、漸次日を重ねるに従つて国民の健全なる良識が回復せられて、ひとり教育の制度に限らぬけれども国民の自覚と良識によつて、必ずしも与えられた制度を昔の制度に返すという必要はないと思うのでありますが、ただそのわくの中においても、十分にわが国の国情に合うような制度に実質的に持つて行くのは不可能でないと私は考えておる。ただそれの基礎になるものは、国民の良識が回復せられて行くということであると思うのであります。今日何一つやつてもすぐ反動呼ばわりをされ、すぐ非民主的なりとして片づける。これは一種のフアツシヨであります。こういうときにおいてはなかなかできない。ただ国民経済が徐々に安定し、社会の秩序も取返され、思想の混乱も徐々に回復するに及んで、私は国民の良識が一日も早く立ちもどり、回復せられるということに満腔の期待を持つておるのであります。
  32. 町村金五

    ○町村委員 大臣の御答弁を伺つたのでありますが、私はさらにもう少し今の点について立ち入つて伺いたいのであります。戦後の教育行政というものの特色は、中央集権的な色彩を払拭して、地方分権主義をとつたということにあると考えるのであります。もとより戦前のような中央統制の弊というものは避けなければならないといたしましても、その弊害を是正するということにあまり急なために、むしろ今日私は地方分権の行き過ぎが起つて、その欠陥が随所に現われているように感ぜられるのであります。すなわち高等学校以下の教育行政につきましては、その権限と責任をあげて地方教育委員会に委譲をいたしておるのであります。それがために、わが国文部行政の最高責任者であるべき文部大臣は、法令の制定とかあるいは予算措置の権限を有するというのにとどまりまして、その本来の文教政策については、わずかに教育委員会に対して指導、助言並びに勧告を与えることができるにすぎないというような現状に相なつておるのであります。指導、助言、勧告と申しましても、結局は監督をする権限がないのでありまするから、まことに権威のない文部大臣の存在と申さなければならないのであります。従いまして、この文部大臣の監督力の減退に伴う間隙をぬいまして、日本教職員組合がこの間に進出をいたし、今日わが国の高等学校以下の教育行政の実体は、文部省の手を離れて日教組に掌握されておると申しましても、私は過言でないように感ずる次第であります。すなわち多くの府県教育委員会は、漸次日教組の出先機関たるような傾向に相なつておるのでございまして、大臣のお膝元の文部省も更迭常なき大臣の識見よりも、むしろ日教組の指導力の方がはるかに強く浸透しておるという事案を、大臣もあるいはお気づきになつておることと思うのでありまするが、私は念のためこの点も大臣に指摘をいたしておきたいと考えるのであります。従いまして府県の教育委員会は、今日文部省の助言よりも日教組の指令を重視せざるを得ないような立場に立つておると私は考えるのであります。現に教育委員会教育行政上の事件が起りましても、文部省の問合せがあつて初めて事務的に応ずるというような状態であり、文部省に対して何ら自発的の協力を行わないところも相当にあるというふうに聞き及んでおるのであります。またはなはだしきに至りましては、その調査報告にも応じないというような教育委員会も今日すでに相当あるやに伝えられておるのであります。これらは明らかに地方分権の行き過ぎでありまして、教育という国家民族の将来を左右する重大な問題に対しまして、少くともその根本方針につきまして、文部省の意思を地方に浸透させることができないということは、私はまことにゆゆしい事態であると考えるのであります。これを今日まで放任されて来たことは、まことに遺憾であると考えるのでありまするが、文部大臣御在職二箇月でこの現状を十分に御把握になつておるかどうかわかりませんけれども、私はかような点につきましても大臣の御所見を承りたいのであります。  今日のような徹底した教育地方分権というものは、先ほども申し上げました通り、占領政策に基くものではございますけれども地方分権というものが強硬に行われる場合におきましては、いやしくも一国家内におきましては、当然に中央集権の筋金というものが同時に通されなければならないものであることは、申すまでもないと思います。もしこの筋金を通さないで、ただ地方分権の徹底にのみ急ぎまする場合におきましては、国内に混乱と紊乱を助長するのみであるということは、他の例をまつまでもなく、今日教育行政の例によつても明瞭であると考えます。この今日の地方教育行政機関の改革について、あるいはこういつたいわゆる教育地方分権について、今どういうふうに改めて行くことが最も適切な措置であるかということについて、大臣はどういうふうにお考えになつておるか。文部大臣というものは、今日見様によりますると、ただ虚位を擁しておるにすぎないような存在であるという感じがいたします。私は少くとも教育行政につきましては、文部大臣の権限並びに責任というものを明確にする必要があると考えるのであります。その点の御所見を伺いたいと思います。
  33. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 これはひとり教育の問題だけではないようでありますが、今日ほどわが国においていわゆる地方分権というものが盛んに唱導せられておるときはない。こういうことは少くとも明治以後初めてのことであると思うのであります。町村君の言われる中央集権の筋金が同時に通されたその基礎の上に地方分権というものが活発に行われなければならぬ、こういうお説に対してはまつたく同感であります。もし中央の統制、統一というものを離れての地方分権、これが極端になればこれは率直に申し上げると、封建というものが一番いけないことのようにいわれておる、これもそうでありましよう。しかしながら封建制度ということは地方分権が極端のところまで行つたのがいわゆる封建制度だと私は思うのです。これが封建といえば非常にいけないこと、これくらい悪いことはない、地方分権といえばこれくらいけつこうなことはない、こういうふうにただ思われ、ただ信ぜられておるのが今日の現状であると思うのであります。私は封建制度にあらざる地方分権こそわれわれが喜ぶべきものである、こういうふうに思つておるのであります。  ところで御質問内容になるのでありますが、今日教育制度というものは、義務教育から高等学校教育まで徹底した地方分権制度であります。そうしてその衝に当るものがいわゆる教育委員会であります、これはわが国としてはまつたく初めてできた制度であります。制度として何も習熟した点はないのでありますが、これが非常な大きな責任をしよつておる。文部大臣は、なるほど御指摘になりましたように、これに対しては指導助言をする以上の実質的な力は持つておらぬ、権限は持つておらぬということになつておる。でありますから筋合いとしては、この教育委員会が最も健全な発達をするということが現状において一番望ましいことである、かように考えておるのであります。文部大臣は少くとも政党内閣といいますか、議会制度に基く組織におきましては、一党の文教政策を代表する地位にあります、政策はそれでいいと私は思うのでありますが、もし教育内容にわたつて干渉するようなおそれがあるとするならば、文部大臣としては制度の上においても実際の上においても、そういうことのないように慎重に考慮せられなければならぬ。私は必ずしも文部大臣の権力を非常に強化して、場合によつて教育内容あるいは教育の運営その他において文部大臣の思い通りになるということが望ましいこととは考えておりません。しかしながらそれでは今日教育委員会による地方教育の運営というものがうまく行つておるかというと、私は絶対にうまく行つておらぬと思うのであります。これは教育委員会の人を責めるというわけにも参らぬ。日本人が全然知らなかつたこういう新しい制度を持ち込んで来て、これも実際は整備されておらず、完全にふなれなことをやれといつてもこれは注文する方が無理でありますから、教育委員会というものが今後できる限り健全な発達をして、それがためには教育委員会制度そのものについてもはたして現在のやり方でいいのか悪いのか、たとえばこれを一般の公選にしておるということがいいのか悪いのか、それに伴う利害得失はどうであるか。あるいはよく問題になります府県教育委員会と市教育委員会との関係がどういうことになるか、それらの点をつぶさに検討をせらるべきものと思います。私は今日これをすぐ廃止した方がいいとかなんとかいうような結論には達しておりません。また徹底的に現在のままで押し通さなければならぬという結論にも達しておらぬのであります。私はこの問題は真剣に検討して、一日も早くわが国教育制度が、あるべきところにおちつくということが一番大事でありまして、私は必ずしも戦争前のように——私は戦争前において、わが国学校教育の運営が一時軍人によつて汚されたことはあると思いますが、明治、大正、昭和の初期までを通じて、文部大臣の権力が強過ぎるために、わが国教育が毒されたという事実はないと思うのであります。しかしながら、それでは今日昔にもどつた方がいいか悪いか。これもやはり一応慎重に検討しなければならぬどいうふうに考えておるのであります。要は現在の制度のような教育委員会の、ひとえに健全なる運営が行われ、その内容においても公平なものができるように念願しながら、この制度の検討に当つて行きたいと思つております。
  34. 山崎始男

    山崎(始)委員 大臣がいらつしやいますからちよつとお尋ねいたしますが、理科教育振興法案が通過いたしましたことは、御同慶の至りでございます。実はこの理科教育振興法案通過以前にお聞きしたいと思つたのでありますが、何か誤解を招いてもいかぬと思つたのお尋ねしなかつたのであります。御承知のように理科教育振興法案の推進団体である一つの団体がございますが、この団体がこの法案通過に際しまして、小学校生徒が一人一円、中学校生徒が一人二円、高等学校が三円の募金をやつておるのであります。かつて世耕委員は、日本教職員組合が北九州の水害に対しまして、小学校の全学童に対して一円の寄付をさしたということすら、かなり非難めいたお言葉があつたのであります。ところがこの推進団体も、名前こそ推進団体でありますが、個人々々は日教組のメンバ—がほとんどだろうと思うのであります。こういう団体がちよつと名前がかわつてそういう募金をやりますと、一つも非難が出て来ない。私は実におかしいという気がいたすのでありますが、そのことは別といたしましても、一つの法律案を通過させるのに——それはお金もいるでありましよう、それはよくわかりますが、日本全国小学校、中学校、高等学校学童生徒に向つて募金をいたしましたならば、おそらく三千万円に近い金が集まるのではないかと思うのであります。こういう点につきまして大臣はお聞きになつたことがあるかどうか。またそういうことがいいことか悪いことか、ひとつ大臣の御見解を聞きたいのであります。
  35. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 実は私はなはだうかつでありまして、さようなことをちつとも知らなかつたのでありますが、本日の午前中に参議院の文部委員会で同様なお尋ねがありまして、その話を聞いたのであります。従つて私はこれはほんとうであるのかうそであるのか、ただうわさであるのか、その辺は実は確かめてもおりませんし、承知もしておりませんが、参議院で私がお答え申しましたのは、もしさようなことが、少くとも強制して児童なり、あるいは児童を通じて父兄を強制して、募金をやるということであれば、これはだれが見てもはなはだ不穏当なことであると思います。そこで問題点は、一体そういう事実があるとすればどうするかというお尋ねでありましたが、これは先ほど町村君も御指摘になりましたように、教職員はそういうことをしてはいかぬとさしとめる権限は、遺憾ながら文部大臣にはないのであります。ただ実情がはなはだ不穏当であるということであれば、そういうことはよほど慎重にするようにされたいとか、あるいはそういうことのないようにしてほしいとか、これは実情をつまびらかにしなければ言えないことでありますが、地方教育委員会へ苦言といいますか、そういうことを言つてやることはできると思うのであります。それ以上さしとめるとかいうことは、私としてはさよう力がないのであります。それをどう思うかというお尋ねであれば、少くとも形式的に強制せられ、もしくは形式的に強制せられなくても、実質的にどうしても出さなければぐあいが悪いような強制的な空気のもとに、そういう募金がせられるということであれば、これは私は不穏当なことであると思います。
  36. 小林信一

    ○小林(信)委員 この前産業教育振興法という法律をつくつたのですが、その法律をつくるときに、高等学校生徒から三十円ずつ集めた。私はそのときはやはり文部委員をやつておりました。これはいい法案なんですが、そのために共同提案の中に入らなかつたのです。そうして私一人が天野文部大臣にそのことについて、慎重に御考慮願いたい、日本の国は、法律をつくるのに金を出さなければならない、こういうような印象を子供に与えたら、私たちのつくる法律がいくらよくても、それは教育的にもゼロなんだ。これに対して大臣はいかなるお考えを持ちますか、という質問をしたのです。そうしたら天野文部大臣のいわくは、今の大連文部大臣の言とは多少違つておるのです。その法律をつくるために啓蒙運動をやることは必要かもしれぬ。そのために費用はおそらくかかるだろう。そういう所要の経費を集めることはさしつかえないと私は考える。こういうことを大臣はその席で言明したのです。おそらく産業教育振興法案を率先してつくつたたちは、全国生徒から三十円ずつ集めたことによりまして、そういう一事によつて是認さるべきものであるというような考えを持つておそらくやつたのです。私はそれを知つております。こういうことが今後繰返されるならば、いかに文部大臣日本の将来を考えても、大いに抱負を述べられましても、私たちが真剣に討議いたしましても、子供や生徒に与える影響は実に重大なんです。ただいま他の委員から御質問があつて大臣はそれに対して、御調査になつていない、善処するというふうなお言葉があつたのですが、今後こういうことは絶対にないように私は大臣に要望して、適当に御処置を願いたいと思うのであります。前回にそういう問題がありまして、それがはからずもこういうようなことを繰返すのではないかと私は憂うるがゆえに、私は大臣にとくとお願いしておきます。
  37. 原田憲

    ○原田委員 政務次官にちよつと質問いたします。先般朝日新聞に、文部省は原子核研究所を東大に付設するということを見たのでありますが、これはほんとうですか、どうですか。
  38. 福井勇

    福井政府委員 先般朝日新聞に原子物理学研究所というような名前をもちまして、文部省が設置を確定したような印象を受ける記事が載つていたことは確かに私も拝見しました。しかし現段階におきましてはまだその域に達しておりません。しかし原子核分裂による平和産業に及ぼす種々なる影響、たとえば医学の方面、あるいは農業科学の方面、あるいは電気動力方面の原子核の応用範囲、すなわちUの二三五をアプライしたところの、その動力についての問題、これは戦力に影響するものでなくて、今日イタリアにいたしましても、西独にいたしましても、あるいはまたフランスにいたしましても、またアルゼンチンなどにおきましても、すでにその着手が実現されておることも報道しております。従つて今日日本の原子物理学がややもすると戦力につながつておるやに印象づけられる言動がありまするので、学術会議などにおきましても、今日非常に遠慮しつつ、その促進が鈍つておるやに私たちは受けております。しかし現在ではそうすべきではない。たとえば先般湯川博士が帰つて参りまして、これらのことはそれぞれ打合せたのでありますが、新聞紙にある通り、場所、要領、予算等の確定的な見通しというものは決定ではありませんが、その方針に持つて行きたいということが、現在文部省の腹の中であります。
  39. 原田憲

    ○原田委員 この問題について私もう少し質問いたしたいのでございますが、辻原君が待つておりますので、今度またお聞きいたします。  それから別問題で政務次官にちよつと聞いておきたいのですが、スポーツの問題で、今フィリピンから日本ヘテニスの選手と水泳の選手が来ております。またアメリカ、濠州の水上選手が来ております。来年度には極東大会がマニラで開かれるということを聞いております。また今度オリンピックは濠州で開かれるということも聞いております。特に極東大会については、今度フィリピンの大統領の厚意によつて戦犯が解放されたこの陰には、スポーツというものが非常に力になつております。これはあまり広く知られておらないかと思いますけれども、事実は非常にあずかつて力があるのでございます。去年も特に大統領の息子さんのところへ日本の十五、六歳の少年を招待して、テニスをやらせた。この答礼として今度向うから四人の選手が来ておるというように、非常に大きな力を発揮しておるのであります。これらのスポーツ関係について文部省はどういう態度をとろうとしておるか、デヴイス・カップの選手が今アメリカに行つておりますが、実は戦後今まで三回行きましたが、三回ともアメリカヘばかり行つておるのであります。フランスの西村大使ですか、この前も関係者が行きましたときに、ぜひともヨーロツパへ来てほしい。——昔佐藤次郎という選手がありましたが、スポーツだけでなしに、佐藤次郎の活躍が国際的な友好関係に非常に大きな力を発揮した。今いろいろたくさんの人が、日本から大事なお金を持つて外へ出て行く。テニスの選手に来てもらうことが大きなプラスになるのでありますから、ぜひともそういうことに力を入れてほしいということを大使が言つております。これらについて文部省はかねがね予算も割いておられるようですけれども、はつきりした態度をお聞かせ願えたらけつこうだと思います。
  40. 福井勇

    福井政府委員 お答えいたします。庭球協会の役員をしておいでになります原田委員としてはごもつともな御発言と存じます。  まず第一に極東大会の問題でありますが、これはすでに大正九年ごろから回を重ねてすでに相当になりますが、御存じの通りの戦争によつて一時中絶いたしました。しかしこの極東大会、今日においてはアジア大会とも申しておりますが、とにかく近東並びにアジア諸国の親善を増すということは、体育の面からも非常に奨励すべきことであり、また国民外交の上からも非常に私はためになつているとしみそれ思つております。御指摘の通り昨年日本の選手が、特に少年選手がマニラに参りまして、非常な効果を上げた。技術の効果でなくて、国民外交の効果を非常に高からしめて、日比親善を一段と飛躍させたことは、国民全般も信じているところでありますし、またキリノ大統領もそのことをはつきりとうたつております。そこで今回庭球協会の招きに応じてフィリピンから参りました選手などもすでに日本のゲームなどに出ておりまして、非常な成績を上げておりますので、これらの日比交歓の競技というものは、今後も極力推奨すべきものだと存じております。それに関連しまして文部省としては、しからばどういうことを企画しているかというお尋ねでありますが、文部省といたしましては、来年の極東大会は、多数の陸上を主体とし、水上、それからエキジビシヨソ・ゲームその他もたくさんありますが、庭球等を含む相当数のオリンピック・デリゲーシヨンを派遣する次第でありますが、あくまでスポーツは官僚統制であつてはならないという建前におきまして、戦争前の統制を極力解消し、国民的な盛り上る支援のもとにこの極東大会を推進して行きたい。従つて予算の面におきましても、全部を国庫の負担にするというようなことは、どうも統制に官僚が加わりそうなきらいがありますので、そういう働きかけ、予算措置はいたしません。大体その経費の三分の一くらいを補助することになつております。たとえば今回ドルトムントへ派遣いたしました学生の競技大会というものに、現在すでに選手が出発しておりますが、大体一千七、八百万円を要するうち、五百万円をすでに支出した実績がございます。そういうふうに文部省としては知育、体育、徳育という三つの重大な並行線を堅持して行くという建前から、体育の方面にも相当力を尽して行きたいと存じております。なおデヴイス・カップのことに言及なさいましたが、この点につきましては、戦争後ごらんの通り非常に成績も悪うございますが、日本の一般国民がやつておる軟式の庭球というようなものは世界に一つもございません。現在デヴイス・力ツプは御承知通り硬球ばかりであります。硬球のプレーヤーというものは日本としてはごくわずかであります。このわずかばかりのメンバーから御指摘の佐藤、山岸両選手だとか、熊谷、清水、こういう人が出たということはむしろ不思議なくらいでありまして、現在一流庭球国であるオーストラリアだとかアメリカだとか、あるいは若干落ちますけれどもフランス、ドイツ、ス工ーデン、イギリス、またエジプトあたりから見ても日本ははるかに落ちております。そこで御指摘のようにアメリカばかりへ行つて、一回戦で敗けてさよならして来るというようなことをせずに、やはりヨーロッパにも隔年に派遣したらいいではないかというような考えを持つております。その点については、フランスの庭球協会あたりからも、費用の点なども相当考慮して節約できるようにしてやるとかいうような示唆もすでに与えて来ております、さような実情になつております。  なおついでに申し上げておきたいのは、ドルトムントの国際競技とルーマニアのブカレストの競技とが若干批判されているようでありますが、文部省としましては、すでに派遣しましたドルトムントの方を主体として、ルーマニアの方は一応考えないことに確定しております。
  41. 原田憲

    ○原田委員 私政務次官に、御丁寧な御答弁でございましたが、これらの体育を通じての外交的なスポーツ団体の海外派遣に際して、今後より以上文部省としては、力をさいていただくことを要望しておきます。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 政務次官は非常にお忙しいということでありましたので、政務次官に対する質問を留保しようと思つたのでありますが、まことにおちついてお答えを長々とやつておられましたので、私も先ほどからお待ちになつておられる自治庁の御見解を承つた後に、政務次官災害に対する相当細部にわたつた見解を承りたいと思います。  先ほど私は、災害校舎復旧の問題につきまして文部当局の御答弁を承つたのでありますが、特に補助関係を除きました起債の問題につきましては、従来文部省と自治庁との間に種々協議もあり、また多少の見解の相違もあつたことを知つております。この点今回の災害の特別措置におきまして、災害対象地域について一応四分の三の補助をし、残り四分の一については従来の慣習に従つて起債を認めて行く、また起債を全額認めて行くような方針で行きたいという文部省の方針を承つたのでありますが、この点先ほどの御答弁の中で、特にこういう異常な災害でありますので、市町村等においては、残り地方負担分についてもとうてい負担に耐えるだけの財力を持つておらないという実情にかんがみて、残り四分の一の起債については百パーセント認めて行く方針で予算折衝に当りたいということを言つておりましたが、自治庁においてはやはりそういう見解のもとに、従来の、あるいは六、三校舎の建築なり老朽校舎——これも緊急欠くべからざるものでありますが、こういう異常の災害の場合でありますので、特にその点文部当局と同じように考慮しているかどうか、何とかこれをまるまる四分の一確保するという方針を堅持されているか、あるいは将来にわたつてその努力をやつた場合に、見通しがあるかどうか。これは大蔵当局を呼ばなくてはわかりませんし、もちろん今後の予算上の問題でありますから、確定的なことをお答え願うことは無理であると思いますけれども、自治庁としてのただいまにおけるこれらに対する見解、方針というものがなければならぬし、もうこの点の法案もあと一両日中にはほぼ可決することが見通されている今日でありますから、その点に対する検討が一応されていると思いますので、ただ、努力いたしますといつたような紋切り型の答弁ではなくして、具体的にひとつお聞かせ願いたい。  それから第二の問題といたしましては、これは先般の委員会におきましてやはり自治庁にお伺いいたしましたが、二十八年度の老朽校舎に対する起債の裏づけは七十億、それに対する第一次配分はすでに行われており、第二次配分もおそらく近く行われるであろうと思いますが、これらのすでに予定されている公立学校施設に対する起債と、それから今後陸続と起つて参ります災害施設の復旧の起債と明確に区分をされて、在来から一応認められている点については、災害が起つたからということでその分に支障を与えることはないということをこの席において言えるかどうか、これを伺いたいのであります。これまた今後の見通しでありますから、むずかしい点があろうと思いますが、災害が起つたために従来の計画に支障を来すことはこれまた問題でありますので、新しい災害については別途の起債わくを設けるという方針を堅持してもらいたい、かように考えておりますが、自治庁の御見解はどうであろうか。まずこの二点を自治庁にお伺いいたしたいと思います。
  43. 細郷道一

    細郷説明員 災害に対します起債につきましては、従来からその災害年度途中に起るとか、それから災害を受けました施設の維持者がどういう団体であるか、すなわち小さな団体であるか相当財政の大きい団体であるか、そういつたような団体の大きさと災害の起ります時期等を考えまして、できるだけ起債をよけい認めるように従来からやつてつたのであります。昨年から特に当年度に発生いたしました災害につきましては、地方財政窮乏の問題もございますし、また後年度にその復旧事業を残さないようにしたいために、できるだけ高率の起債を承認するように努めて参つたのであります。そうして昨年度に関しましては、現実に国の補助金を受けて実施いたしました災害復旧事業については、その地方負担額のほぼ百パーセントを配当するようにやつたのであります。本年度に関しましても、ただいまのところ国の予算に現年度災害分として百億の予備費が計上されてございますが、それに見合います地方負担というものは、従来の例から考えましておおむね二十五億程度あると思うのでございますが、その二十五億に見合うものといたしまして、一応当年度発生災害に二十五億の起債のわくを用意してございます。従いまして、こまかい出入りはございましようが、おおむね当年度災害に対しては百パーセントの起債を認めることができるようにいたしてございます。ただ問題は、今回のような非常に大きな災害が起りました場合に、はたして今国が用意しております百億の災害予備費で足りるかどうかという問題にかかつて来るわけでございますが、百億の災害予備費が不足であるから、今後なお国としてそれに対して何らかの措置をするということでございますれば、その地方負担に対しましては、その経費の性質もございますが、性質に応ずるものに対しましては、できるだけ一ぱいの起債を認められるように資金の要求をいたす考えでおります。  第二の、老朽学校の起債とこの災害の起債との関係がどうかという問題でございますが、御指摘のように、老朽学校は、先般もお話し申し上げましたように、おおむね五箇年くらいで解消するように、私どもの起債を用意しておりますので、その点に関しましては、できるだけ現在老朽学校のためにとつてございます起債をくずさずに、その計画を遂行いたしたいと、こういうふうに考えております。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 従来の起債の計画と災害の起債の計画とは、ただいま承りますれば、できるだけそれが齟齬を来さないような方法をとりたいという御答弁でありましたが、それを承りますると、できるだけやりたいということは、一つの努力の目標である。しかしながらやはり災害の度合いにおいて、この分に浸蝕して来るということはあり得るということをおつしやるのか。そうとなれば、これはやはり従来持つておりました計画の上に、災害をかぶつた場合においては、たえずその計画に大きな変更を来さなければならぬということになつて参ると思いまするが、その点が全然別わくだというふう六はお考えになつておられないのかどうか。その点をひとつはつきりお答えを願いたいと思います。多少の関連があるということなれば、われわれもまた努力の目標をやはり相当検討しなくちやなりませんし、これは全然別個に取扱うということになれば、それはよろしゆうございまするが、多少ともそうした分についても手をつけざるを得ないということになれば、これはわれわれとしては、さきに申しましたように、相当考え直さなくちやならぬ点もございまするので、その点をひとつもう一回はつきりおつしやつていただきたい。
  45. 細郷道一

    細郷説明員 御承知のように、義務教育老朽校舎の改築のための起債の計画におきまして一つの新しい柱をことしから立てたということを申し上げたのであります。そのことによりましても、義務教育の老朽校舎の施設の改造をして行くということについて、私ども起債を扱う面で最大の努力をいたしておるということは御了承願えると思います。災害の方のものにそれを転用するかどうかという御質問でございますが、その点に関しましては、先般配分をいたしましたときも、義務教育の施設と老朽の施設と災害の施設と、それぞれその災害を受けた度合いによりまして、緊急の度合いがいろいろあるかと思います。その点に関しましては、地方団体の意思を尊重することはさしつかえない、こういうことをいつております。私の方の考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ老朽校舎の改築は予定通り進めるようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  46. 辻原弘市

    辻原委員 次にお伺いいたしたいのは、御承知のように、災害なんかが起りました場合には、普通の工事の進捗の程度では、なかなか授業再開、あるいはその他設備あるいは校地を確保するということは非常に困難でありまするので、時間的に急がなければならぬということと、いま一つは、工事を請負わす請負師にいたしましても、あるいは人夫にいたしましても、これらは他の道路、橋梁その他一般の公共事業関係あるいは農地関係等の、そうした方面にも多数とられて、勢いこの校舎施設等については後まわしにされるという状態も生れて来るわけです。それからそういうふうに競つて人手をそれぞれの立場において集めて参りまするから、できる限り金払いのいいといいますか、そういうものには早く工事が進捗して行く、こういう金のまわつて来ないようなところには、なかなか工事が始まらない、こういう現実の問題も起りますので、もしかりに従来のようなやり方で、一応計画を立てて、工事に着手したが、なかなか補助金が来ない、起債もなかなか来ないということでは、こういう緊急な災害の場合には、勢い工事が遅れて来るということに結果的には相なると思いますから、その間何としても、これは一般災害の場合につなぎ資金として、災害救助法その他に対してもあてがうように、この校舎建築等に対しても、つなぎ資金がぜひとも必要である。そうでなければ時間的にも間に合いかねる点が多々出て参りますので、この点は十分配慮する必要があると思うのでありまするが、これを自治庁においてもまた文部省においても考慮せられておるのか、あるいはさようなものは全然不必要であるというふうに考えられておるのか。この点を政務次官、自治庁の両方から承りたいと思います。  次にいま一つ、先ほど文部省から伺いましたところ、校舎に付設した教員住宅等については、今回すでに立法化されつつある四分の三の公立学校施設災害復旧の臨時特例においては、設備の面としては入つておるけれども、その中に教員住宅等を包括することは、法解釈上困難である、別途の方法を考究中である、その別途の方法としては、起債等を仰ぐというようなやり方も一方法であるというふうに考えておるという答弁があつたのでありますが、私は確かにそういう方法がとられ得れば、これは補助金にかわる一つの措置として、まことに適切ではないかと思いますが、その点自治庁においてもそういう考慮を払つておられるか、また今後そういう点について考慮されるか、この点を承りたいと思います。
  47. 近藤直人

    近藤政府委員 お話の点はつなぎ資金の問題であろうと思いますが、これにつきましては御承知のように西日本に対してはすでにつなぎ資金が参つております。また和歌山に対しましてもつなぎ資金が参つておるのでございます。従いまして、学校関係の施設といたしまして、補助金が来るまでのつなぎといたしまして、これで校舎を建てるということができるわけでございます。但しその場合に、文部省の方から、現地の教育委員会並びに府県知事あてに学校施設関係のつなぎ資金が行つておるという通知があつた方がよろしいという御意見があるのでございますが、その点につきましては、今後私といたしましては、自治庁と打合せまして、さような方法ができればとりはからいたい、かように考えております。  それから先ほど御質問のございました教員住宅の点でございますが、これは先ほどもお答え申し上げましたように、ただいまの公立学校施設費国庫負担法におきましては、学校建物、校地、工作物、設備というふうになつておりまして、この教員住宅につきましては、どうもこの範疇に入らないというふうに、ただいまは考えられるのでございますが、事情まことに御同情に値いいたしますので、何とかこれを救うことについて目下研究を進めております。その一例といたしまして、先ほど私は起債の面ではどうかということを申し上げたのでございますが、なおそれらの点につきましては、今後自治庁ともお打合せいたしたい、かように考えております。
  48. 細郷道一

    細郷説明員 つなぎ融資の問題を近藤局長がお話になりましたが、従来つなぎ資金を出します場合に、主として土木並びに農林の事業の大きさによつて配分をいたしておるのでございますが、このこと自体は、御承知のように、災害復旧事業の六割は土木事業というのが従来の実績でございます。また農林も加えますと、おおむね八割程度がその実績になるのでございます。従いまして災害の規模を見ます上に、土木と農林の公共施設の被害の大きさを見ることが一番妥当であろうという考えから、おおむねその数字を基礎にいたして配分をいたしております。しかしながら現実に市町村等で非常に緊急の災害復旧事業をしなければならないというときにはその中から随時資金を流用してもさしつかえないというふうに話合いがなつております。
  49. 辻原弘市

    辻原委員 住宅建設の問題につきまして、まだ自治庁の方の御見解を承つておりませんが、その点を自治庁の方から承りたいと思います。
  50. 細郷道一

    細郷説明員 教員住宅の起債を認めろということでありますが、この問題は、教員住宅だけではなくして、一般の県の職員の公舎、あるいは共済組合の庁舎、保健所の医師の住宅、そういつた問題とも関連がありましで、ただいまのところはつきりした具体案を持つておりません。
  51. 辻原弘市

    辻原委員 政務次官お尋ねと申しますよりも、方法をお考え願いたいと思うのでありますが、実はこの校舎の壊滅という問題からこういう事態が発生しておるのであります。それは御承知のように、今回の紀南の災害で最も致命的な打撃を受けましたのは、有田川水系、日高川水系、紀ノ川の上流、高野山に近い花園という村でございますが、この水系の最も被害の大きな箇所に至りましては、一部落が全滅に瀕している。従つてそこには校舎もなければ、公共施設の建物みんな一切のものがなくなつてしまつている。最も極端なところは、その部落における住民の大半が死んでしまつた。残つた住民が幸い助かつておるところでも、そうした施設がほとんど壊滅に瀕しておりますので、ここである程度の事態が収まりましていよいよ復興という段階なりましても、業務を続けて行く、学習を続けて行くということは、このままの状態では不可能であります。ここに一つは、応急に仮設工事をやつて校舎の建築をはからなければならぬという問題があるが、もう一つの問題といたしましては、とても大勢の人が死に、また荒廃に帰してしまつたようなところでは、とても勉学力も起らない。そこでこれらの地域から別の適当なところに学童の疎開をやつて勉学を続けなければならないということは、今県の教育委員会あるいは地元町村から、その声が起つてつておるのであります。そうした場合にいわゆる仮設工事を行うという問題について、これを災害復旧と同じようにほとんど国庫において負担するというような措置、方法——これは法律的措置はとられておりませんけれども、行政措置として何らかの方法を研究せられる御意思があるか。もしくはそういう仮設工事にかわるところの、たとえば駐留軍なり保安隊が所有しておりますところの相当大きな天幕等をこれにかえて、一時これを国が所有するという方法をとられるか、何らかの方法をこの際国としてとらなければ、今後三月、半年かかりましても学習を再開することは不可能の状態になつておりますので、そうした点についての御措置と御所見を承りたいというのが第一であります。  第二は、先ほど申しました集団疎開等、現在はそれに該当する地域が大体七箇所ございますが、その七箇所の学童を疎開するのには相当の経費を伴いますので、これもやはり災害のためということで、これらの点について予算措置、あるいは場合によれば法律的な措置もとらなければならぬと思いまするが、それらについて何らか善処する御意思があるかどうか、この点を政務次官からひとつ承りたいと思います。
  52. 福井勇

    福井政府委員 御指摘の和歌山の今回の災害が、ことに紀ノ川、日高川、有田川、花園の区域におきまして、九州の災害から見るとずつとひどい地域が多いということは、報告にもひんぴんとして載せられておることを私たちは拝見しております。この点につきましては、九州の災害に対策本部を設けてやつておりますと同様に、政府においてもそれぞれ対処しておることは御存じの通りでありますが、特に教育方面において学童がまつたく学ぶところがなくなつてしまつたということにつきましては、御指摘の何らかの仮設工事をし、あるいはこのことと内容はまつたく違いまするが、戦争当時のような学童の集団疎開というようなことも当然考えて参らなければならないのでございますが、これらの点については、予算措置あるいはまた方法を相当詳しく数字をもつて御明示しなければならないと存じております。なお詳細の点につきましては関係局長から説明をさせます。
  53. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいまのお話は、緊急の対策といたしまして仮設校舎を設けてはどうかという御質問だと考えます。従来その点につきましては、文部省の技術官と申しますか、災害にたびたび出向きましていろいろ対策を研究しております専門家の意見によりますと、この仮設物を設けるということは必ずしも賛成しておらないのであります。これはどういうわけで賛成しておらないのか、結局こういう施設をしますと、どうしてもそこに中心が行つて、将来あるべき場所に学校を再建するという場合に、かえつてそれが障害になるという意見だろうと私は思うのでございますが、当面専門家の意見によりますと、どうもこれは賛成しておりません。特に北海道の十勝沖の災害の場合にも、現に実地においてそういう意見を述べて来たそうであります。そこでできますれば、これは仮設物を県の負担あるいは市町村の負担でおやりになる場合はともかくといたしまして、国の補助を得ておやりになる場合におきましては、そういうことでなしに、できますれば学校校舎のあるべき場所にできるだけ早く整地をさせて、つなぎ資金を当局の方でやるということが好ましいという結論でございますが、その点につきまして、どうしてもそういう施設もない、ことに児童を一時収容して置く寺院とか、あるいは他に適当な建物がないという場合におきましては別でありますが、やはりこういう仮設物をやるということは好ましくないから、できるだけあるべき場所に学校を建てて参りたいという御意向が強いのでございます。  それからテントの場合でございますが、これも御質問はテントをつくるということでございます。これは場合によつてはテントをつくることもやむを得ないと考えますが、しからばそのあとこれに対して国から補助をするかどうかという問題につきましては、これは今後私ども大蔵省と話合わなければなりませんので、一応予算の面におきましては、こうしたテントとか仮設物につきましては要求しておりませんので、それらの点につきましてはまた研究をいたします。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 ただいま承りまして、専門家の御意見あるいは予算措置に仰がなければならぬということは、万般承知をいたしておりまするが、問題は、かりにそういう仮設工事が好ましくないといつたところで、ほつておいては、これは授業をしなくてもいいというような結論になつて参りますので、市町村あるいは県で適当にやつたらよいといつても、現在これはできぬ事態でございますから、ただいまお答えのありましたように仮設工事がどうしても不可能の場合においては、何らかの方法によつて、国においてそうした臨時的な天幕等のあつせんをするとか、あるいは都道府県あるいは市町村で借りた場合においては国において補償するとかいうような予算折衝を必ず行つてもらいたい。この点についてなお法律的な措置が必要とあれば、これはわれわれとしても考慮しておる段階でありますから、その点は、政務次官もおられますので、特に強くお願いして、一日もそうした地域教育がとだえたということのなからしめるように、文部省の特段の御配慮をいただきたいと思います。  最後に一点、これは北九州災害においても御配慮を願いましたし、また先ほど御報告になりましたが、教科書の問題であります。この教科書の問題で、実は補助金を全壊流失等に与えられておりますが、与えられるのはその全壊流失だけであつて、半壊ないしは土砂が混入したという程度のものについては与えられない。しかも全壊流失でも額はきわめて僅少であつて小学校は五百円あるいは中学校については千百円程度しか与えられておらない。御承知のように、昨今の教科書の価格からいつて、また学用品はそのうちのきわめて少部分でありますが、これではただほんとのあちこちから救援物質が参つた程度の恩恵にしかあずからないということでありますので、この点の増額についても、予算折衝については特に考慮していただきたいということ、いま一つは、配分はさつき申し上げましたように、全壊流失のみにおいて主として恩恵にあずかるのであつて、その他の被害はあずからない。ところが実際の実情を私も現地において見ましたが、流されなくても、土砂が混入し、ひどい浸水の状態になりますと、教科書等は、あるいは学用品などに至つては、全然価値がないのでありまして、これは全壊流失と同じ被害でございます。従つてこの点の取扱いにつきましては、資料を十分ごらんになつて、土砂混入あるいは浸水等によつて、いわゆる家は流失されないけれども、教科書等を流失されたと見られるところにおいては、全壊もしくは流失と同一の取扱いをされるように、この点についての措置を希望いたしておきます。この点について文部省としてはそのように取扱いできるかどうかをひとつお伺いしておきたいと思います。
  55. 近藤直人

    近藤政府委員 お話よくわかりますので、その点大体九州と同じような扱いができるように、予算措置等で十分考慮いたします。
  56. 辻寛一

    辻委員長 辻原君、そのくらいでいかがですか。
  57. 辻原弘市

    辻原委員 たくさん質問があるのでありますが、私は時間も切迫しておることも存じておりますし、他に委員の方々の御質問もあることも承知いたしております。あらかじめ時間が若干かかると思いましたので、他の方々の質問によつてできるだけ留保いたして、遅らしておりますので、その点御了解願いたいと思います。それで他にたくさん問題がありまして、これも非常に緊要な問題でありますが、時間もないようでありますから、その点は後刻に譲りたいと思いますし、ここで私がこれらの点を申し上げなくても、実はいいのではないかという考えも私自身持つておるのです。しかしながらこうした災害については、私が冒頭に申し上げましたように、直接的な農林関係、公共事業関係等の一般被害については声を大にして、その措置はただもに行われますけれども児童災害、あるいは文教施設について教育上の支障を排除するといつたような災害対策については、どうしても看過されやすいので、あえて私は具体的なこまかい問題を申し上げまして、その点に対する文部当局の特段の努力をお願いいたしておりますので、他の問題はそれぞれ資料も提出されていると思いますから、どうかその資料によつてこうした問題をこの際解決してもらいたい。こういう災害は今後ないことを願いますけれども、まだたびたび起つて来るのではないかと私は思います。そうした場合において同じごとが繰返されないようにあらかじめ手を——これは九州災害において一つの突破口を開いたわけですから、かような意味におきまして、はなはだ暑い折でありますけれども予算折衝等においては特別の御努力を要請したいと思います。これで終ります。
  58. 辻寛一

    辻委員長 伊藤郷一君。
  59. 伊藤郷一

    ○伊藤(郷)委員 私は文部当局に対しまして、僻地教育の振興についての御意見並びに決意をお尋ねしたいと思います。  最近、特に今度の国会におきましては、理科教育振興に関し、あるいはまた学校図書館の設置、整備、あるいは定時制教育の振興、青年学級の振興等に関しまして法律ができ上りまして、文教政策の振興のためにわれわれはまことに慶賀する次第で、喜んでいるのでございますが、ただその間にありましてなお残された問題であつて、顧みられず、無視されて来た問題について、十分これを守り育て、盛んにして行かなければならないものは、すなわち農山漁村の奥地あるいはまた僻地とか離高等におけるところの単級あるいは複式の学校の整備、振興にあると思うのでございます。私事を加えましてまことにどうかと思いますが、私は義務教育全期間を通じまして、北海道において単級あるいは複式の学級におつたのでございますが、それらの教員の労苦というものはまことに筆紙に尽しがたいものがございます。たとえば片方に算術をやらせて、片方に書き方をやらせ、また片方で歴史をやり、片方で読み方を教えるというようなくあいであつて、教師の労苦は非常に重いのでございます。また教育を受ける生徒も、片方の読み方の声がじやまになつて、算術もよくできない。地歴の教育について申し上げますと、地理はいいとして、歴史などは、鎌倉時代を五年生のときに習つて、それから神代のことをまた六年生から習うというようなぐあいで、お互いに困るのでございます。しかしこれは人口の稀薄から来るところの児童の僅少のためにしかたないといたしましても、それならそれで、僻地に教鞭をとる教員には優秀な者を集めるように努力しなければならぬ。この僻地の教育を振興することによつて、あの荒い自然の中において立つて来た健全にして清新な魂を深くつちかつて、そして祖国民族の再建復興に寄与させて行かなければならぬのであつて、いよいよこの僻地教育の重要さを加えている段階に来ていると私はかたく信ずるのでございます。ところが、今日北海道のはずれから九州のはずれまでそうだと思いますが、僻地には無能力——中には意気に感じて、そういう荒地の恵まれないところへ入つているりつぱな人もありますが、一般にそういう人は少いので、たいていは老朽教員か、無資格の教員、あるいはまたはななだしいのは十八歳くらいの子供という、教養もなければ、学力もなく、また資格もない人々でございます。そればかりでなく、なお欠員を来している学校が多い現状でございます。これはひつきようするに大きな原因は、給与、待遇において非常に欠けており、報いられていないというところから来ていると思います。統制経済のときならば、農山漁村の地域給というものは低くてもよかつたのでございましようが、今日自由経済になりまして、北海道のさけが東京ではかえつて安い。一例をあげますとそういう状態でございますので、鉄道沿線からバスなどで入つてつたり、船で入つてつたりするその僻地における物価は非常に高いのでございますが、今日なお無級地になつておるところかずいぶんある。そういう意味において、僻地手当というものは現在ありますけれども、これをもつと画期的に増大しなければならぬ。これによつていくらかでも優秀な資格のある清新な教師を農山漁村僻地に獲得できると思うのであります。昔ならば、たとえば千島で申しますと、相当いい先生がおつた。それというのは、現在のような地域給というものがなくて、若いとき十年くらいしんぼうして千島に行つて金をためて、それから勉強しようというわけで、小学校の先生になると非常にもかる。魚をとつたり、それから給与も二倍、三倍、年功加俸が早くつくというようなわけで、一種の野望に燃えて行つたのですが、現在そういう魅力をつなぐものが一つもない。こういうことが大きな原因だと思いますので、学校職員の給与の改善向上について、特に僻地の教師に文部当局は思いやりの情をかけられてほしいと思います。  それから施設の面でございますが、これはただ一人当り〇・七坪というようなことを言うのではなくして、僻地の義務教育小学校には特に考えなければならぬ面がある。それは町村役場の所在地であれば、そのほかに公民館もあり、あるいは役場にも会議室があり、いろいろ公共的の施設があるけれども、北海道やその他の奥地へ入りますと、小学校そのものが博物館であり、公民館であり、図書館であり、また結婚式場にも使う、こういうことになるので、全村、全部落の人々の心を結集し、楽しみ、喜びをわかち合う一つの殿堂であるのでございますから、そこにはどうしても校舎の施設上に特別のゆとりを考えていただきたいと思うのでございます。それから文部当局の英断としまして、今年の二十八年度予算に千何百万円だと思いましたが、僻村における教職員の住宅の予算を計上して、十年計画を立てたのでございますが、これはまことに額が少いのでございまして、これから予算の編成期に入りますので、これを相当増加する決意を持つてもらいたい。われわれも十分努力するつもりでございます。あの恵まれない環境にあつて、若い先生方はどういうところに下宿しておるかというと、暗い草ぶきやその他の農家に下宿し、一年生から六年生まで、あるいはまた一年生から三年生まで一人で教えて、疲れ切つたその教員が下宿先へ帰つて疲れをいやそうとしても、その環境があまりに暗い。こういうことではあしたまた強く立ち上るという力がわいて来ないのでございます。少くとも自分の宿、自分の家へ帰つたときだけでも、清潔な文化的な環境の中に夜を送らして読書に親しませたい、こういうのがわれわれの熱望であります。七月の二十何日かに、全国の僻地教育振興の大会が永田町小学校にありまして、非常に高い声を上げてやつた参議院は振興の決議案も通つたのでございますが、衆議院の方はもう忙しいし、教員給与で与野党がもめておるからお帰りなさい、僻地教育は必ず振興させるからと言つても、僻地教育を真に盛んにしようという熱情を持つておられる全国の方がいまだに帰らずにおられますので、われわれもこの熱情にこたえまして、私今日まことに調弁でございましたが、文部委員会で初めて立ちまして、文部当局の僻地教育振興に対する熱意を要求いたす次第であります。これらの僻地に恵まれずして教鞭をとつておる人々に報いて、日本再建に寄与したいと思うのでございます。  終りに、文部委員会委員各位が名を連ねて出しておるところの僻地教育振興の決議案が、衆議院を堂々と通過することを心から期待するものであります。(拍手)
  60. 福井勇

    福井政府委員 お答えいたします。御趣旨まことにごもつともなことばかりでありまして、今後文部当局といたしましては、施設、設備、待遇等につきまして、極力御期待に沿うよう格段の努力をいたしたいと存じます。
  61. 辻寛一

    辻委員長 次に杉山元治郎君。
  62. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私は教育一般の行政の問題につきましては、後日お伺いするといたしまして、本日は時間もございませんようですから、学校給食の問題だけについて、一、二点お伺いいたしたいと存じます。学校給食が一時打切られようといたしましたときに、全国からほうはいとしてこれを継続するようにという要望のあつたことからいたしましても、給食の必要なことはわかり切つておるのであります。この意味からいたしまして、今回超党派的に各党の同僚諸君がこの法案を提出してくださつたことだと存じております。私はこの法案のまず第一に目的としておりまする児童生徒の心身の健全な発達に資するためにということは当然のことだと思いまするが、そのためにはこの法案通りましたときに、文部当局はこの目的にかなうようにどれだけの栄養量を与えようと考えておるのか、その点をまずお伺いしたいのであります。
  63. 近藤直人

    近藤政府委員 学校給食におきまして、給食の量といたしましては、大体カロリーは六百カロリー予定いたしております。パンは一食百グラム、ミルクは二十二グラム、それによつて六百カロリーが確保される。御承知と思いますが、ミルクは動物性蛋白質を多分に含んでおりまして、これがきわめて低廉に入手できる。しかも量が相当多量に入るということから、このミルクを取上げておるのでございます。このミルクにつきましては、何も外国から輸入してやる心要はないじやないか、外貨の支出になりますので、国内産のミルクをもつてこれに代替したらどうかという御意見も実はございます。それにつきまして、われわれは決してそれを否定するものではございませんで、国内産のミルクが多量に得られますれば、それもけつこうでございます。将来は、これは農林省所管になりますが、畜産局あたりで、大いに酪農を奨励していただきまして、すべてこのミルクは国内産をもつて充当するということになりますれば、はなはだけつこうなことでございます。しかしながらただいまのところは相当量がよけいいります。本年度は約九千トンを輸入計画いたしております。実際にはほぼその量は入ると思いますが、大体九千トン前後いるわけでありますので、このような多量のミルクはどうしても今日のところは国外から輸入しなければなりません。国内産といたしましては、約千トン程度しかたしか生産できないと考えております。それで動物性蛋白にはミルクが一番いいと思いますし、ハンは熱量の補給源といたしまして、どうしてもとらなければいかぬというところから、ハン百グラムとミルク二十二グラム、大体これが一食、それにさらに脂肪分として多少の副食物をこれに加えまして、このパンミルクと多少の副食——副食と申しますといろいろでございますが、たとえばかぼちやを煮るとか豚肉を煮るとか、多少脂肪分を加えまして、この三つの種類をもつて六百カロリーを確保する、かようになつておるわけであります。将来こういう方式をずつと継続して行くわけでございますが、先ほど申し上げましたように、もし国内産のミルクでもつて代替できるようになりますれば、経費の点から申しましても相当安くなり得るのではなかろうか、ただいまのところは相当遠い先じやないかと思つておりますが、これは農林省せつかく話合いまして、できるだけ国内産をもつてこれを代替したい、かような考えを持つております。
  64. 杉山元治郎

    ○杉山委員 量はそれで大体わかりました。この法案学校給食という名前のように、内容を見ますと義務教育だけに限られておるようであります。私どもは心身の健全な発達を期するのには、どうしてみてももつと小さい時代から十分の給食を与えて行かなければならない、こういう考え方を持つております。これは普通の農作物の栽培にいたしましても、あるいは動物を飼育いたすにいたしましても、やはりごく幼年のときに十分な飼料を与えて行かなければ健全な発達はいたしません。こういうことを感ずるのであります。幸いに厚生省児童局長がお見えになつておると伺つておりますので、この点について小学校及び中学校時代だけやつたらば、その目的が達するのか、いな、それよりもつと重要な、それ以下の子供たちに栄養を与えて行くということの方が、より一層必要でないか、この点について児童局長にお伺いいたしたいと思います。
  65. 近藤直人

    近藤政府委員 厚生省児童局長さんからお答えがございます前に、私から一言お答え申し上げます。  ただいまこの法律案で予定いたしておりますのは、小学校、中学校だけでございまして、いわゆる義務制学校児童生徒対象にいたしております。御指摘のように幼稚園につきましても、私は考えるべき問題じやないかと思つておりますが、いろいろな関係がございまして、ただいまのところは幼稚園あるいは上の高等学校あるいは夜間のもの、そういつたものにつきましては、一応はずしておりますが、理想の形としてはやはり考えるべきものだと考えております。従いまして、幼稚園と並んで考えられますのは保育所であります。これは厚生省の所管でございますが、現実においては、ただいま予算上の措置といたしましては、実は保育所についても、文部省におきまして一括してミルクを配給いたしております。また小麦も配給いたしておりまして、現実には保育所の方も一緒にやつております。ところで今度立法化されて、法律にはつきり規定いたしましたところを見ますと、これは義務制だけになつております。従つて御指摘のような幼稚園とか保育所についてはどうなるかという御疑問が起るわけでございますが、これにつきまして、私どもは保育所については一応従来考えておりますので、これは厚生省の方に対しましても、ぜひ予算措置において御援助申し上げたい、かように考えております。あるいはそれが立法の関係で現実に不可能だということになりますれば、また法律案についてさらに検討を要するのではないか、ただいま私はかように考えております。
  66. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 保育所の給食でございますが、御指摘の通り給食の目的は子供たちの心身の健やかなる発達をはかるために必要とする養分、特にカルシウム分とかあるいは動物性蛋白質が必要でございまして、同時に食生活改善し、あるいは偏食を防止するという大きな使命を持つておることは、学校給食におきましても保育所給食におきますと同じであります。特にかような点は、御指摘のように子供が小さいうちからこれをやることが望ましいことは申すまでもないのであります。保育所の給食につきましては、昭和の初めからやつておるのでございます。そういう遠い話はさておきまして、終戦後におきましては、これはララ物資、ユニセフ物資あるいはGHQの特別の配給によりまして今日に至つております。すでに昨年度からこれが切られまして、今日は脱脂粉乳などはすべて学校給食同様自前でもつてやるという立場に追い込まれて参つております。今日の実際のやり方は先ほど近藤局長から御答弁がありましたように、万事学校給食と同一歩調で取扱つていただいております。ミルクでございますと、同じように二十二グラムを配給いたしております。ただ小麦の方は学校の方はパンにして配給いたしておりますが、私どもの方はミルクを子供に飲ませますにいろいろな難をいたします材料に使うのであります。量は十五グラムという少い量にはなつております。その辺は違いますが、しかしそれの購入に対します諸般の手続及び国庫の補助負担は万事同じようでございます。額の点から申しますと、文部省の額の方が非常に多いので、万事学校給食のやり方を標準にしてそれにおぶさつてつた、そういうような状態になつております。先ほど幼稚園の方がこの学校給食法に欠けておるということでございましたが、保育所は同じ学齢前の子供でございますが、御承知通り、保育所に通つております子供の家庭を調べてみますと、両親共かせぎか母子世帯の母親が勤労いたしますために、子供を家に置いておきますと、たれも預り手がない、そういう子供を預かつておるのが約六五%を占めております。従いまして保育所は下層の勤労家庭に対する援護施設というような経済的な使命を帯びておるのでございます。私どもは、もちろん義務制ではございませんけれども、特に下層のしかも勤労者の勤労能率を上げるための援護施設と申してもいいと思いまするので、この点につきましては私ども非常に重要視しておる次第であります。それでこのたび議員提出学校給食法が提案されたのでございまするが、実は私どもは、もし文部省の方で政府立法でなさるのでございましたならば、私どもの方も一緒にお願いしようという気持で御連絡申し上げておつたのでありますが、議員立法という形になりました。なお私どもが耳にいたしたときは、私の記憶では、先月の二十九日の午後であつたと存じます。そういたしますると、そのときの情勢といたしましては、三十一日で国会がもう閉会になるという、非常にきわどいときであつたのでありますが、私どもは文部委員会提出されました議案につきましてさらに私どもが御迷惑をかけることは実はしたくないと思つたのでございまするが、私どもがこれにならいまして新たに立法措置手続をいたすといたしますると、いろいろ国会事務当局に聞きますると、もうすでに間に合わないということになりました。そこで私どもの方からこの議員立法提案の先生に、かような事情でありまするので、もし一緒に含めてお考えいただけましたならば、ひとつお考え願いたいということをお願いいたしました。と同時に、これは厚生委員会へも当然私どもは御連絡をいたさねばならない義理がございまするので、厚生委員会に連絡いたしましたところが、厚生委員長から、やはりこれは厚生委員会としてもお願いいたすべき筋合いであるというので、お願いいたしたように存じておる次第でございます。かようなことで、私どもといたしましては、この当時の立案をなさいました方々に対してはまことに恐縮に存じておる次第でありまするが、さような重要性を持つ保育所給食でございまするので、もしできましたならば、同様にお取扱いくださいまするようにお願いいたしたいと存じておる次第であります。
  67. 杉山元治郎

    ○杉山委員 たいへん詳しく、聞かないことまで、御答弁いただいて恐縮するのでありますが、実は私のお伺いしたい点は、今お話の早期に習慣をつけるという意味で、いわゆる食生活の部分をもつと小さい時代からやる方がいいという話はよくわかるのでありますが、なおもう一つ私の厚生省に特に伺いたかつた点は、小中学校義務教育の子供にも給食する必要があるが、特にそれより以下の幼稚園なり保育所の子供の方になお一層必要じやないか、これを栄養学的に伺いたい、こういうのが私のお願しておる点であります。どうぞその点についてひとつ御説明願いたいと思います。
  68. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは専門的な話になりますし、実は私データを持つておらないので、きわめて常識的なお答えしかできないのははなはだ恐縮に存じまするが、やはり私どもの方の専門家に聞きましても、特に子供というものは十八、九歳ぐらいまでずんずん伸びて行くといたしますれば、幼少時からずつとフルにからだが発達して行く、特にカルシューム分というものは、幼少時骨格の形式などに非常に大きな影響をもたらすものであるから、早くからやつた方が最も望ましいことである、こういうことを聞いておるのでございます。どうもしろうとのお答えになりましてまことに恐縮でございますが、あとで栄養の専門家の方からお答えいたすことにいたして御了承願いたいと思います。
  69. 杉山元治郎

    ○杉山委員 たいへん不確かで、専門家でないので御無理だと思いますが、どうかその点については、厚生省の専門の方から十分なデータをこの委員会にお出しいただくことをお願いしておきます。  なお同僚諸君がこの法案を特に義務教育に限られた点は、おそらく予算措置の点からであつたろうと存ずるのであります。もし予算が許されるならば、今われわれの希望しておるような幼稚園なり保育所にまでこれを拡大されるだろうと思うのですが、そこでもしこの法案が通つた後においても、政府は多くのものが希望いたしております。またこれは必要だと思つております幼稚園あるいは保育所の方にまで延ばすお心持があるかどうか、その点を一点伺つておきたいと思うのでございます。
  70. 近藤直人

    近藤政府委員 この法律案におきましては、一応義務教育学校となつております。実は私どもいろいろ研究いたしました過程におきましては、これはやはり教育過程の一環として考えたいという意味合いから、従来義務教育学校を中心といたしまして検討を続けて参つたのでございます。その際詳細に保育所の問題もございましたので、便宜お取扱い申し上げまして、保育所の分も御考慮申し上げておつたような次第でございまして、どこまでも文部省といたしましては、教育上必要であるという見地から、義務制に考えております。しかしながら、これを幼稚園あるいは託児所、あるいは学校の夜学に通つているものまで及ぼすということは、これは理想でけつこうなことでないか、決して否定すべきものでないと考えます。ただ先ほど申し上げましたように、これを義務制にするかどうかという問題すらあつたわけでありまして、そういつた意味合いからいろいろ考えまして、教育の一環として考えるということになりますと、どうしても小中学校対象にすることが適当であるという判断から、大体私どもそういう考えを持つておりますが、ただいま御提案になりました法律案におきましても、小中学校に限定されておりますが、それはおそらくさような意味合いから立案されたのであろう、かように考えます。
  71. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私はその点を伺つているんじやなしに、今同僚諸君が提案なつたこの法案が通過いたしました後に、いわゆる文部省の管轄にある幼稚園までになおこれを拡大して行く。拡大するときには、今お話のように保育所などもともどもに拡大していただく、こういうお気持、お考えがあるかどうか、こういうことを伺つたわけであります。
  72. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま御提案になりました法律案が成立いたしまして、将来さらに対象を拡大するかという問題につきましては、できるだけ広範囲に広げまして、この法の目的を十分発揮するようにいたしたい。但しこの法の目的は、やはり教育という面が重視されておりますので——もちろん食生活改善という面もございますが、何と申しましても教育の面から考えておりますので、その拡大する範囲もおのずから限定されて来るんじやないか。しかしながら理想といたしましては、これを拡げて、幼少の時分から粉食の奨励をする、また栄養的なものを与えて体質の改善に資するということは必要だろう、かように考えます。
  73. 杉山元治郎

    ○杉山委員 教育の面からと仰せになるのですが、それならばほんとう言うと、給食教育上に、いわゆるしつけとか何とかいう点がありますが、どれだけ効果があるか。給食はそういう教育の面もあるけれども、むしろ栄養上の問題にかかわつて来る、そういう心身の発達をせしむるという方に重点があるのではないかと考えているのであります。もし給食教育上非常に必要だという点がございますなら、私はそういう点についてしろうとでございますから、一応御教示をいただきたいと思います。
  74. 近藤直人

    近藤政府委員 給食の効果について御質問でございますが、これはもちろん御指摘のように、栄養という効果もございます。それは否定いたしませんが、さらに学校の教室におきまして、児童がそろつて同じものを食事するということは、これは非常に大切で、社会性を植えつけるということが一番大きな効果ではないか、それからそれに副次的に、偏食を矯正する、あるいは食事の作法を覚える、あるいはまた栄養的な知識をこの機会に植えつける、そういう面におきまして教育的効果がある、かように考えております。
  75. 杉山元治郎

    ○杉山委員 それでは最後に一点伺つておきたいと思います点は、これを行います場所は学校ですから、もちろんこれは文部省の所管であると思うのですが、やることは栄養に関する問題でありますので、これはやはり厚生省と関係がなければならぬと思うのであります。農林省の方は、材料をもらうということで農林大臣と交渉するということは、この法案にも載つておりますが、それももちろん大切ですが、しかしもつと大切なことは、栄養の問題が一番大切だと思いますので、それに対してはやはり、厚生省との何らかのかかわり合いがなければならぬと思うのであります。そこでこの法案にはその点が欠けておるように思われるのですが、通過になりましても、厚生省と何か関係を持つのか、持たないのか、また厚生省と共管関係のような問題があるのか。今日までなわ張り的に、いわゆる学校衛生の問題でも、文部省文部省厚生省厚生省というので、ずいぶん争つて来たと思うのですが、私はそういうなわ張り的のことでなしに、ほんとうに生徒諸君のよりよい教育のために、ともに協力して行かなければならぬと思いますが、この点について厚生省関係とどういう関係があるのか、この点をひとつ。
  76. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま官僚のセクシヨナリズムのお話がございましたが、給食に関する限り、ただいままで実に円満に協調して参つております。これは農林省とも厚生省とも三者緊密にいたしておりますので、現に児童局長もおいでになつておりますが、その他また厚生省の課長さん方とは絶えず連絡しておりまして、そういう御心配のような点は決してございませんから、その点御安心をいただきたいと思います。なお今後とも私どもといたしましては、農林省並びに厚生省と緊密な連絡をとつてやるつもりでございますからどうぞ。
  77. 野原覺

    ○野原委員 時間をとつて恐れ入りますが、厚生省政府委員さんがお見えですから、一言お尋ねしたい、御承知のように保育所は、ただいまもお話がありましたように、厚生省の管轄です。ところがたしか補助金が出されております。補助金を出されておるという趣旨は、私どもよくわかりますし、大いに出して保育所を奨励してやらなければならぬと思うのでございますが、一方幼稚園には補助金が出されていない。従つて実質的には幼稚園でありながら、保育所の看板を掲げて、厚生省の方から金をもらつておるところがあるやに聞くのでございますが、それは事実でございますか、お尋ねします。
  78. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 員実体が幼稚園でありながら、保育所の看板を掲げれば補助金がもらえるということで、保育所の体をなしておるところが実際にあるか、こういうお尋ねかと存じます。これは現在保育所が全国で五千六百箇所ございます。数多くの保育所の中には、もちろんこの中に公立と私立がございますが、特に個人経営の施設におきましては、さような経済的援助が受けやすいというようなことを利用するものがないとは申せないと思うのであります。この点があいまいになつておりますことは、幼稚園のためにも悪いことであると同時に、私ども保育所のためにも将来のために、これははなはだ困つたことだと思います。幼稚園には幼稚園の使命がございます。また保育所には保育所の使命がございます。そこで私どもは、従来からですが、特に昨年からその点につきましての監査を強化するとともに、地方にも厳命を下しまして、保育所でありながら、実体が保育所の体をなしていないものは十分調べて、もしそれが幼稚園であるならば、それは幼稚園として、これはおそらく教育委員会の方の所管になると思いますが、そちらの方に切りかえるべきである、ほんとうに保育所としての内容を伴つたものに、これを整備すべきである、こういう方針で現在やつております。しかし今後保育所の要望が非常に全国的に強いのであります。強いだけに、これはよほどがつちりと監督いたしませんと、これが運営を誤まらすことになりますので、今後は一層さらに力を入れて監督して参りたいと存じます。
  79. 山崎始男

    山崎(始)委員 過日大学局長お尋ねしました全国の医学部の大学生の授業料の問題でございますか、そのとき局長は、局長の立場としては非常にむずかしいということでありました。この点はその通りでありますが、その当時自由党の坂田委員にしても、竹尾委員にしましても、私の申し上げた趣旨に御賛成のようなことで、何らか政治的に、この問題はわずか全国で二百人かの学生だから、差別待遇をするのはかわいそうだから、政治的に解決したらどうかというような、自由党の皆さんからの、まことに御同情のある御声援があつて政務次官には善処するというお約束をしていただきました。たいへん私たちとしては期待をいたしておるのでありまするが、もう国会もあと数日になりましたので、その後善処の内容といいますか、どういうふうに御努力なさつていただいたでしようか、お聞かせ願いたい。
  80. 稻田清助

    ○稻田政府委員 先般御質疑がございまして、またその点について非常に御熱心な御意見もございました。私どもといたしましても、この点について十分研究しなければならぬと考えます。文部省としては所管課であります会計課を中心といたしまして、いろいろ研究いたしました。また政府部内の財務当局である大蔵省とも往復いたしまして、この問題を中心に研究して参つております。ただまだ結論が出ないのでございます。と申しますのは、今までのところやはり長い年月とつて参りましたこうした授業料収入に対しまする政府の方針、これは先般申し上げましたように、授業料値上げ決定以前に国立学校の学生となつております者につきましては、その入学当時約束いたしました額で卒業せしめるまでは継続する。値上げということをきめました後に入学あるいは編入する者については、新しい授業料ということを入学の前に掲げまして、本人了解の上に入つて来るという行き方をこの際改めるという点につきまして、なお関係当局の間において躊躇がありますので、まだ御趣旨に沿うような結論が出ておりませんのをたいへん遺憾と存じておりますが、なお十分この点につきましては、いろいろの角度から検討いたしたいと思つております。
  81. 山崎始男

    山崎(始)委員 ただいま稻田局長の御努力のあとはわかるのでありますが、公私立学校からやつて来た学生は、六千円の授業科であることは、その大学に入るときにすでに承知のはずなんだと、今局長の御答弁の中には、そういう意味がうかがわれるのでありますが、この点は国立の大学から医学部へ来た学生もやはり新しく入学試験を受けて入つておるのでありますから、六千円であるということは同様に十分承知して入つておるはずです。公私立学校の学生ばかりでなしに、国立から国立の医学部へ来た学生自体も、六千円の授業科だということは承知しておるのでありますから、その点は私は同一だと思いますし、同時に昨年度国立の学生も一応六千円になつたものが、本年度におきまして三千六百円に国立の学生だけ下つたということは、結局医学部という学部の特殊性を認められたからこそ、国立から来た学生だけは下げられたのだろう、このように私は思うのであります。政治的に何とかこの問題は解決したいというお気持はわかりますので、私もともかくりくつを申し上げたくはありませんが、どうぞぜひこの問題は——全国でわずか二百人の医学部の学生が差別待遇を受けておるということは、私はまつたくかわいそうだと思う。特にこの学生たちは、思想的な背景は絶対にございません。私もいろいろ調査しました。社会党の左派がこう申し上げるからといつて、決して思想的背景も何もございませんから、どうぞひとつ善意をもつてこの問題は解決していただきたい。政務次官からもひとつお気持を聞かしていただきたいと思います。
  82. 福井勇

    福井政府委員 御質問の要旨につきましては、この前詳しくやはり同様に御熱意のあるところを承りまして、その当時お答えいたしましたと同様な考えでございますので、今局長の申しましたような線に沿いまして、善処することにいたします。
  83. 辻寛一

    辻委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時十三分散会