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1953-07-24 第16回国会 衆議院 文部委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十四日(金曜日)     午前十一時三十九分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 天野 公義君 理事 伊藤 郷一君    理事 原田  憲君 理事 田中 久雄君    理事 前田榮之助君       相川 勝六君    尾関 義一君       小西 寅松君    竹尾  弌君       今井  耕君    町村 金五君       高津 正道君    野原  覺君       山崎 始男君    大西 正道君       松平 忠久君    北 れい吉君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 七月二十四日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として辻  原弘市君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事坂田道太君の補欠として伊藤郷一君が理事  に当選した。     ————————————— 七月二十三日  理科教育振興に関する請願外一件(菊川忠雄君  外一名紹介)(第五二八八号)  学校給食法制定等に関する請願田中久雄君紹  介)(第五二八九号)  義務教育費国庫負担額確保に関する請願中村  梅吉紹介)(第五二九〇号)  義務教育費国庫負担法実施等に関する請願(  竹谷源太郎紹介)(第五二九一号)  義務教育費国庫負担法に関する特別措置撤廃に  関する請願大石ヨシエ紹介)(第五二九二  号)  義務教育費国庫負担法による政令等撤廃に関す  る請願中村高一君紹介)(第五二九三号)  同外一件(島上善五郎紹介)(第五二九四  号)  同外一件(中村梅吉紹介)(第五二九五号)  同外一件(花村四郎紹介)(第五二九六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事互選  青年学級振興法案内閣提出第一三〇号)     —————————————
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。坂田道太君より、一時理事辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認めます。よつて理事辞任申出を許可するに決しました。  これより理事補欠選挙を行います。理事選挙は、その手続を省略し、先例により委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認め、私より伊藤郷一君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 辻寛一

    辻委員長 これより青年学級振興法案を議題とし、前会に引続き残余の質疑を許します。山崎始男君。
  6. 山崎始男

    山崎(始)委員 大臣が来られませんので、大臣が見えてからひとつ……。
  7. 辻寛一

  8. 高津正道

    高津委員 地方における青年は、国家が三分の一の補助を与えて、そうして青年の自主的な、今までの研究サークルような自由な勉強を、教育委員会とか、あるいは村議会とか、あるいは中央の文部省の手で拘束するというようなこのやり方は、戦時中のいわゆる青年学校になるおそれが十分にあるというような見地から、日本青年団協議会は、昨年も本年の五月にも大会を開いて、青年学級振興法制定に強い反対を示しておるのであります。従つてこの法律が多数決によつて委員会、本会議通り実施を見た場合には、青年が非常にこれに反対するであろう、あるいはサボタージユをもつてこれに報いるであろう、このように私はその点をも非常に憂えておりますが、政府見解をこの際承つておきたいと存じます。
  9. 寺中作雄

    寺中政府委員 青年学級振興法施行に関しまして、日本青年団協議会において反対意見があるというようなことにつきましては、この前の委員会にも御説明したと思うのであります。自主的運営を阻害するというような点を非常に心配をして、その理由から反対をするのでありますが、これはまつたく誤解でありまして、本法をお読みになつてもわかりますように、青年の方から自主的にその開設を申し出で、またその運営勤労青年自主性を尊重するということを、法をもつて保障をいたしておるのでありますから、その心配はないと思うのであります。かりに法律が出ると出ないとにかかわらず、青年学級の実態は運営されておるのでありまして、これを何らの法的な措置をとらないでおきました場合に、むしろ町村当局その他町村の何と言いますか、ボスというよう人々によつて、これがいろいろ干渉的な運営になるというようなこともあり得るかと思うのでありますが、その際に法の第三条によりまして、青年学級運営勤労青年自主性を尊重してなされねばならないということがあるのであるから、この法の精神に基いて、むしろ青年学級運営に関し、青年学級運営委員会等をつくつて青年意見をこの中に反映さして、そうして自主的な運営にするようにということを、町村当局に向つてこれを指導するという道もあるのでありまして、そういう意味で法ができるということは、必ずしも官の方からこれを規制するとか、統制するとかいうようなことにはならないと考えるのであります。なお青年の意思に反してこの法律通つた場合に、青年の方からサボタージユがあるのではないかという御心配がありましたが、その点は日本青年団協議会の幹部の方の中に、反対理由を掲げて、今お述べになりましたような点で心配をしておる者が相当あるということでありますが、実際の地方実情というものを聞いてみますと、少くとも単位青年団において、実際に青年学級を熱心にやつておるところでは、この青年学級振興法通過を一日も早かれと待つている。この法律施行を翹望しておるという現実の事実がある。その点につきましては、私どももいろいろ方法を用いて調査をいたしました結果、相当その点に対する確信を持つておるのでありまして、青年学級法制化に関する賛否を、地方単位青年団に聞きました結果といたしましては、その回答数四千九百四十五に対しまして、賛成が四千三百九十三、すなわち八八・八%が賛成であり、五百十一、一〇・三%が反対であるというような結果を見ておりまするし、その他地方に行きまして、青年懇談会等に臨みました印象、あるいはまたかんじんの日本青年団協議会において、ある県の郡をとらえて、この青年学級法制化に関する賛否をとつた結果が、やはり賛成の方が多かつたということを、日青協のニユースの中にしるしておるという事実もあるのであります。それによりますと、賛成が百五十一、反対が八十三である。どちらでもよいが百二十一というような結果をこの新聞に登載しておるというような点を見ましても、青年層の大部分は、この青年学級振興法通過を心から翹望しておるという実情にあるということについては、私ども確信を持つております。
  10. 高津正道

    高津委員 次に、大臣の御出席があつたので、昨日の大臣の御答弁、すなわち憲法第九条に再軍備を禁止しておるけれども、現在憲法を改正して再軍備をやるべしという政党があるのであるから、そこは政策問題で、当面の重要な論争点になつておるから、その第九条について、日本軍備を持つべきではないと憲法規定してある、このことに先生が力を入れて講義をするならば、それは教育中立性というものに反する、という御答弁であつたのであります。教育中立性に反するものであれば、そのものを厳重に注意しておつて、そういうことのないようにせよという次官通牒が、一週間ばかり前に文部省から出された矢先でありまして、憲法第九条にはこういうふうに書いてありますという、軽く一応の話はしてもよいが、そこを熱をもつて教えるのは中立性違反になる。こういう御答弁であつたのであります。明らかにそういう答弁であつたことを私は信じております。繰返すようで恐縮でありますが、憲法の一番重要な点は、基本的人権——その中にあらゆる人権がありますが、基本的人権の尊重と、主権在民と、そうしてもう一つ第九条の、日本は平和、戦争反対で行くのだ、戦争はやらないのだ、武力は持たないのだ、再軍備はしないのだ、こういう点が重要なのでありますから、すべての憲法をみな子供に覚えさせようといつても、これは詰込み主義であつて、できることではございませんので、そのような大事な点に対しては、それぞれ基本的人権においても、主権在民においても、また軍備を持たないというこの第九条においても、熱心に教えて何らさしつかえはないものである、それは少しも教育中立性と背反するものではない、このように私は確信するのでありますが、大臣の責任ある答弁をいま一度承りたいと存じます。
  11. 大達茂雄

    大達国務大臣 昨日も申し上げましたように、現行憲法規定趣旨を、青年学級において説明をし、教えるということは、もちろんさしつかえはないと思うのであります。またその場合におきまして、その言い方がどうであつたか、こうであつたか、さようなこまかいことを申しておるわけではないのであります。昨日は、この法律が成立して、施行せられた場合における法律解釈論になりましたので、多少私の申し上げることを感じが違つておとりになつたかと思うのでありますが、この法律案の第十一条の二号に書いてありますことは、要するにその場合場合の実際について客観的に見て、これが特定政党道具になつては困る。一口に言うと、昨日も申し上げましたように、これが自由党政談演説会になつてしまう、あるいは共産党の政談演説会になるような実体になつては困る、こういう意味であります。むろん憲法趣旨説明をする場合の言葉言い方、さような点にとらわれておるわけではありません、ただその実際上、これがはたして政党道具になるよう意味において運営されておるかどうかにつきましては、これはそのときの客観的な実際について判定をして、そうして実施機関によつて市町村教育委員会においてそれをさしとめる、こういう仕組みになつておるのでありますから、実際におきまして、御心配ような点はないものと考えております。
  12. 高津正道

    高津委員 今、大臣の御答弁によれば、現行憲法の中の第九条を教えてもよろしい、それから言い方がどうこうというこまかいことを意味しておるのではない、それは熱心にそこを教えるとか、通り一ぺんに、書いてはありますよというように教えるとか、そういう度合いのようなこまかいことを言うのではないと、こう言われるのですね。(「そうだ」と呼ぶ者あり)首を縦に振られることは、速記には載らないのですがね。そこまでは大臣が首で肯定をされましたから……。ところで青年学級自由党や改進党や、あるいは社会党の政談演説会場になるような、そういう党派的なことになつたならば、それは地方教育委員会が監督して、禁止すべきものである、こういう意味を前会には申したにすぎない、本日の答弁はそのようになつておりますが、本日の御答弁の中で、客観的な判断において、その実情をどうきめるかということが実に大問題で、現在日本憲法の第九条は、これは軍備を禁止しておる条項であることはきわめて明瞭なのでありまして、戦車を持つておる、高射砲を持つておる。それを写真にとつて全国の小学生に見せれば、それはみんな戦車だと言うわけです。中学生も戦車だと言うわけです。それを特車という名前をつけて、戦車ではないと政府は言いくるめておるわけです。(「特車特車だ」と呼ぶ者あり)それで社会通念や、あるいは国民の常訳に反することを、言葉だけで、戦車ではないのだ、あれは特車だ、こう言つておるわけです。憲法の第九条でもその解釈を拡張して、軍備をしないというのを、どんどん自衛力漸増で、軍備をするというようにまで、憲法でもそのくらい幅広く解釈をするのでありますから、今の大臣の御答弁によれば、客観的な判断に基いて、そのときの実情を調査して、中立性を破つたものか、破らぬものかを地方教育委員会が決定すると言われるが、その地方教育委員会がどんなことをするか。中には非常に保守的な教育委員会がありまして、——田中久雄君は本会議の席上で、あれは日教組の教員政治活動をやらないように、それを監視するために、自由党が政略的につくつたものだ、こういうことを明らかに指摘されたくらいでありまして、この法案が成立すると、義務教育に携わつておる教員の四割も五割もが、今度青年学級に非常なる過労において携わらねばならぬことになるでありましようが、それをまた教育中立性違反した、今のは、あそこに力が入つてつたというようなことで首にする、赤のパージではない、桃色のパージということもあれば、まるで白のものでも、気にくわねば、あれは第九条を熱心に教えておつたということでひつかけられるようなおそれが十分あるのでありまして、私は大臣の御答弁では満足できないのであります。今の政府拡張解釈をするくせを、従来そういう伝統をつくり上げておりますが、この場合にはそういうよう拡張解釈はしないのだ、こういう断言をこの際してもらえれば安心ができるのでありますが、断言をしても拡張解釈ではないのだといつて、またひつかけて行く。私は全国の教職員の身分の安定のために、そうしてまた日本民主化を守るために、この質問をしておるのでありますが、大臣の御答弁では、まだわれわれはどうしても納得ができないのであります。いま少し納得の、できるような御答弁をお願いする次第であります。
  13. 大達茂雄

    大達国務大臣 地方教育委員会におきまして、この第十一条に掲げられた趣旨をはき違えて、そうでないものに対しても禁止あるいは停止の命令をするというようなことが、実際において全然あり得ないとは私も考えない。そういうことはあるかもしれぬとは私も考えます。しかしながら御承知通り市町村教育委員会というものは、単位教育行政の衝に当つておるのであります。でありますから、この教育委員会にやつてもらう以外に、現在の制度の上においては、これはやりようがないのであります。現在御承知通り市町村教育委員というものが、市町村における学校教育事務をとり、またその運営について責任を持つておるのでありますから、これがどうもボスがおつて、不都合な決定ばかりをする。この地方教育委員会というものは信用できないものである、こういうふうにお考えになつておる面もあるかと思うのでありますが、今日の制度を中心として考えますると、地方教育委員会にやつてもらうよりほかにないのであります。現行制度がそうなつておりますから、ほかにこれはどうも、せつかく教育制度の基本的な機構として法律上あるけれども、これは信用できぬ、こういう法律の立て方はできないのであります。
  14. 高津正道

    高津委員 私のおそれておるよう中立性違反拡張解釈ということがあるかもしれない、だが地方教育委員会によつてつてもらうよりしようがない、こういう御意見でありますし、また私が何か地方教育委員会委員全部をボスであり、あるいは間違つた解釈をやる人だと解釈しておるかのように、あるいはお受取りになつたかもしらぬが、私はそのよう考えはもちろん持つてはいないのであります。  それから大臣は、今法案の審議が青年学級振興法になつておりますから、青年学級振興法の問題だけについてお答えのようでありますが、教育中立性という問題は、義務教育のみならず、大学、大学院、一切の教育面全部わたることでありまして、文部委員会としては、教育中立性の限界と、政府のこれに対する理解ということは、実に重大問題でありまして、必ずこれは公聴会を開いて、さらに一般の認識や、実情をもここで調査せねばならないほどの重大な問題であるのであります。それで、一番末端の青年学級の問題であるが、自分は大きなことを言つているのだ、大きな質問がここに現われておるのだ、このよう考えて、青年学級に限らないで答弁をしていただきたいのであります。  それで、憲法を教えることはさしつかえないのだ。そこを他の重要なる二つ憲法の要目と並べて熱心に教えることもよいという答弁に本日はかわつてつたのであります。だが客観的に見て中立性違反しておれば、それはいけないのだ、そこへひつかかつておるのです。私は拡張解釈はこの内閣のいつもやる手であるから、ここで拡張解釈が行われないという保証を、あなたから何らか提示していただきたいと思う。それならばやや安心ができるのであります。
  15. 大達茂雄

    大達国務大臣 行政上の機構を構成しておる人が、それぞれ権限があるのでありますが、その権限故意に濫用し、もしくは間違えて、結果において濫用するようなことが——これは人間のすることでありますから、全然あり得ないということは申し上げられない、こう申し上げたのであります。しかしながら行政機構が定まつておれば、その機構を構成する人が法律上の権限を行使するのは当然でありまして、その権限の行使を誤つた場合における措置につきましては、別途にこれを是正する仕組みがあると思うのであります。さようなわけでありますから、地方教育委員会という機構がある限り、この機構にゆだねる以外には法律のこしらえようがないのであります。その点はひとつ御了承いただきたいと思うのであります。
  16. 高津正道

    高津委員 今大臣は、そういう誤りを犯す者があつた場合には、それを別途に罰する規定があろうかと思うのであります、というのか、あると思うのでありますというのか、明瞭でないのでありますが、文部省はその罰則をこの際明らかにお示しが願いたい。
  17. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は罰則云々と申し上げたのではありません。一般的に行政機構を構成しておる人が、故意権限を濫用し、もしくは誤つて権限を行使する結果、濫用したと同じ結果になる。これについてはそれぞれの場合について是正仕組みがあると思う、こいううことを申し上げたのであります。地方教育委員会につきましては、もちろん罰則とか、すぐ刑罰をもつてそれに臨むということは、その場合によつてあるかもしらぬ。しかしそれはそれぞれの場合の規定であると思います。地方教育委員会につきましては、やはりこれを指導し、助言し、監督して、そういうことのないようにさせる。はなはだなまぬるいことであるかもしらぬけれども、そういう是正の道はあるのであります。
  18. 高津正道

    高津委員 是正仕組みがあろう、是正の道がある、それは助言、指導を文部大臣が行うからというのでありますが、それもまた私は信じないので……。(「信じなかつたらしようがないよ」と呼ぶ者あり)ただ信ぜよと言えば、政治ではなくて宗教ですよ。それで私は、これはいくら議論しても不足でありますから、山崎委員が待つておられますから、山崎委員に、次いで質問をしていただきます。
  19. 辻寛一

  20. 山崎始男

    山崎(始)委員 昨日に引続きまして、私は教育中立性、この問題について少しお尋ね申し上げます。教育中立性の基本的なことに対して高津委員から、また実際の面からきのう松平委員からお話がありましたが、私はこの青年学級の実際の運営にあたつて文部大臣がお考えよう教育中立性解釈も、もとから考えますると、青年学級受講者が年齢的に見ても、義務教育の児童、生徒のごとき子供と相当違うので、教育中立性の紛争というものが私は絶えず起つて来るだろうと思う。これを私は一番おそれるのであります。特にこの青年学級法案の第十七条を見ますると、「一年以下の懲役若しくは禁こ又は三万円以下の罰金に処する。」という罰則規定がありまするが、おそらくこの罰則規定の内容なるものは、大部分教育中立性を侵したとか、侵さぬとかいう問題がほとんどになりやしないかと、私は今から杞憂を持つものであります。そういう観点から私は、教育中立性解釈範囲といいますか、この問題は特にたびたび起るであろうという懸念があるだけに、私はよほど明確に大臣の御見解をきめていただいておかないといけないのじやないか、かように私は思うのでございます。それでこの青年学級振興法案の十一条の二、三号あたりを見ますると、この青年学級振興法案においては、いわゆる学校ではないのだから、教育基本法の八条は適用しないのだという昨日の御答弁でありましたが、ただいま私が申し上げます青年学級振興法案の十一条の二号と三号のこの二つの項目は、ちようど教育基本法八条の二項をここへ移しかえたという印象を持つものでありますが、さようでありましようか、どうでありますか。
  21. 大達茂雄

    大達国務大臣 大体その通りであります。
  22. 山崎始男

    山崎(始)委員 私も、だろうという想像をいたしたのであります。そういたしますると、青年学級のこの規定が適用される場所というものは、あるいは公民館をさすのでありますか、それともその授業をやる学校建物の内部だけをさすのでありますか、どこをさすのでありましようか。
  23. 寺中作雄

    寺中政府委員 この条項によりますと、実施機関は、青年学級において、これこれの行為を行つてはならないということになつておりまして、この青年学級というのは、自治機関すなわち公民館あるいは学校の行う事業であります。この青年学級とは、そういう性質のものでありまして、別にそのための特有の建物を持つておるわけではありません。場合によつては、お寺を借りてやることもあり、またある場合には野原でやることも考えられるというわけであります。ただ青学年級として、公民館なら公民館事業主体となつてつておるこの事業の中において、そういうことが行われることはおもしろくない、こういう意味であります。
  24. 山崎始男

    山崎(始)委員 場所範囲はよくわかりました。ただ私たちのおそれますことは、青年学級という一つ社会教育の立場から見た場所というものが、実際問題とすると、非常にあいまいになることがたびたび起るだろうと思う。ただいまも局長から述べられましたが、お寺でも行われることがあるだろうということでありますが、これは当然でありまして、あるいは天気のいい日には、受講者を連れて山へ行つて、そこで講義といいますか、グループをつくつて話合いをするというような場合も起るでありましよう。あるいは川へ行つてやるような場合も起ると思うのでありますが、そういう点で、この十一条の場所という問題が、ほんとうに教育中立性を侵害したかしないか、どこでしたかという問題が起つた場合に、かなりあいまいな問題が相当含まれておるだろう。私はこのように思うのであります。まあ場所の点は、比較的はつきりいたしましたが、結局山であろうと、川であろうと、お寺であろうと、学校であろうと、教育中立性を侵害するよう危険性が、いわゆる学校教育とは違つて、起り得るおそれがあるということに、私も了解するわけであります。それで先ほども、たまたま憲法九条の問題が起りましたが、昨日の文部大臣の御答弁によりますると、憲法を数えるときに、憲法九条を、再軍備をやつてはならぬのだ。日本憲法というものは、いわゆる基本的人権と、平和と、そうして主権在民の三つが骨子なんだ、とこう言う場合に、再軍備をやつてはならぬのだ、と言うことはさしつかえがない。しかしながら、憲法講義をやるとき以外において、再軍備をやつてはならぬという言葉は、これは政治的な言葉だ、だからそれは教育中立性の侵害である。こういう御答弁であつたのでありますが、私は、教育中立性の問題が起つたときに、大臣ようなお考えであつたならば、あらゆる面において、時の政治問題あるいは経済問題を取上げて講義をする場合、その講師が話をすることが、実際問題としてできぬ、このように私は思うのであります。たとえて申しますれば、日本経済の話を何一ついたしましても、必ずそれは政治につながつております。アメリカのごとく、非常に経済力のゆたかな国であるならば、そういう政治経済の問題の接触点というものが遠い。しかし日本の国は、御承知ように非常に経済力というものが底が浅い。だから経済の話をいたしておりましても、必ずその底を割つて突き詰めて行くと、いわゆる学問の探究というものをやつているうちには、底が浅いだけに、政治の面と接触する部面が多いと思うのであります。ところが受講者の年齢というものは、先ほども申しあげましたように、義務教育の児童生徒のごときものではない。講師がこうなんだ、ああんだと言えば、そうですがで聞き流す年ごろの者ではありません。ホワイあるいはウオツトというような、疑問なり、質問というものが、たびたび出て来る。すなわち教える立場から言いますると、かなり手に負えない、教えにくい、ややもすると、教育中立性の侵害になりそうだという分野へ相当入つて行く危険性が、実際問題としてあると思う。ただ単に、再軍備の問題を話をするのでも、憲法九条の講義をするときだけに話をするのは、それは学問上教育中立性の侵害にはならぬと言われまするが、私がただいまも申しましたように、経済の問題を説いておつても、受講者の年齢などから申しまして、再軍備の問題へ入らざるを得ないよう講義内容になつて来るおそれがある。あるいはまた軍事基地の問題をとらえて、先生は一体軍事基地の問題をどう思うか、こういうような問題が常に課題となりたがるだろうと思うのであります。そういうときにも、軍事基地に対しいいのか悪いのか、とことんまで突き詰めて来る、質問をして来るおそれがあると思うのであります。従つて私は、先ほど文部大臣もおつしやつたように、教育中立性の限界。解釈の根本的な考え方というものを、大臣みずからがはつきりと持つていらつしやらないと、私は、義務教育の場合の教育中立性の紛争問題とは違つて、この青年学級をやつた場合には、多分にこれが出て来る、このように思います。同時にまた、大臣の昨日の御答弁よう憲法を教えるときにおいては、再軍備をしてはいかぬのだ、日本憲法はそうなつておるのだと言うことはかまわぬが、憲法を教えるとき以外で再軍備を論ずることは、これは政治問題だ。たまたま再軍備問題というものが、現在の政治の課題として大きく浮び上つておるから、それは政治問題だ。だからそれを教えることは教育中立性の侵害である、こういう妙な論理というものは、とうていわれわれには容認できないのであります。また同時に、そういう論理でもつて、この青年学級振興法の第十七条を適用されたならば、教える先生というものは、これはもう罰金だらけ、体刑だらけの問題が起つて来る。かように思うのであります。受講生の年齢その他から見て、実際問題として憂慮にたえぬから申し上げるのでありますが、そういう危険性があるかないか。大臣はさつき、それは地方教育委員会がやることなんだからと、こういう御答弁でありまするが、いわゆる文教政策の最高責任者であるところの大臣みずからのお考えというものが、確立されていない——確立されておるのでありますが、いわば非常に狭義のお考え方、一つも弾力性のない——弾力性のないどころではない。何だかあなた御自身が再軍備賛成をしていらつしやるかのごとき印象を与えるようなお考え方、これに対しては、私たちはとうてい満足することができないのであります。ただいまのよう危険性が、私は多分にあると思うのでありますが、大臣危険性があるとお思いになられますかどうか。あるとお思いになられますならば、第十七条の罰則規定は大いに考えなければならぬ。この点について、私はお伺いいたしたい。
  25. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育基本法の第八条の、いわゆる教育中立性に関する規定、これは必ずしも義務教育学校だけに限られておるのではない。大学などにおきましても、いやしくも学校教育においては、中立性というものが維持されなければならぬ。こういう規定でありまして、青年学級講義を受ける生徒と言いますか、受講生の年齢の関係については、同じことであろうと思います。教育基本法の第八条の規定は、大学以下すべての学校に通ずる原則となつております。  そこで、この十一条の解釈について、とかく疑問が起りがちである。従つて非常にこの規定があると間違いを起しやすい。こういう御趣旨ようでありますが、その点は、教育基本法の第八条につきましても、同様な問題であります。しかしながら、さればといつて、その規定がなくてよろしい、こういうものではないと思うのであります。ただ実際の適用にあたりまして、これが常識的に見て、あまり変なことにならぬようにするということは、これはもちろんであります。適用の場合におきましては、個々の具体的の場合について判定する以外にはないのでありますが、先ほど申し上げましたように、私は、憲法講義のときにでなければ、再軍備は許されないということを言うてはならぬ、そういう意味のことを申したつもりはないのであります。実際には、客観的に見て、その青年学級というものが、あたかも特定政党道具であるかのごとき観を呈する。あるいはある政党政談演説会ような観を呈する。こういうことはいけない。この判定は、地方教育委員会がその実際を見て、そうしてそれに対して注意を与える。あるいは禁止、停止をする。なお、それでもきかないものについては、罰則の適用がある。その罰則を適用するにあたつて地方教育委員会の判定が間違つておるということであれば、これは裁判官の判断にまかせるよりほかはないのであります。でありますから、すべて一定の権限あるいは一定の禁止、制限の規定というものは、これが全然間違いなく施行せられるということは、人間が施行する限り、間違いがあり得ないのだということは申し上げられません。しかしながら、やはりこれは教育中立性という意味から、なければならぬ規定であると思うのでありまして、その実際の適用につきましては、非常識なことのないようにいたしたい。趣旨は、ただいま申し上げましたような、これが政党道具になつたり、あるいは政談演説会場化するとかいうことをとめた趣旨であることを御了承願いたいと思います。  なお私は、この規定趣旨からして、せつかく例におあげになりましたつから、再軍備云々のことが中心になつたような話でありますが、しかし私自身は、自由党に所属するものでありまして、再軍備には賛成でないのでありますから、その点はよく御了承願いたいと思います。
  26. 山崎始男

    山崎(始)委員 今の御答弁ですが、私は、今の教育基本法の八条を移しかえたところのこの十一条の規定をなくせいと申し上げた意味ではございません。むしろ私は、それは適当な、こういう規定は必要であることは認めるのであります。しかしこの中立性に対する大臣解釈の仕方、いわゆるお気持というものが非常にへんぱだ、非常に狭い。これを私は申し上げておるのであります。従つて狭ければ狭いだけに、この第十七条の規定に該当するような、いわゆる一年以下の禁錮に処せられたり、あるいは三万円以下の罰金に処せられたりするようなおそれがたびたび起つて来る。問題が起りやすいということを申し上げておるのでありまして、むしろ規定を除外するのなら、私は十七条を除外してもらいたい。こういう意味でありまして、決して十一条を除外せよと私は申し上げておるのではありません。この点はひとつ誤解のないようにお願いいたします。いずれにいたしましても、この問題は、ただいまの大臣の御答弁では、私は満足しかねるのであります。先ほど高津委員から、教育中立性の問題で、公聴会云々の問題まで出ましたが、まことにもつともな要望だと思うのであります。しかしこの問題は他日に譲ります。  そこで一点お聞きいたしまするが、こういう青年学級に対してこういう法律案が出ましたが、婦人、母親学級と申しまするか、いわゆる日本民主化のための社会団体の中には、日本には婦人会というものがある。また母親学級というものもあるのでありまするが、なぜこの問題をお取上げにならなかつたのでありますか。この点についてお伺いいたします。
  27. 寺中作雄

    寺中政府委員 今日の勤労青年の実態から見まして、また勤労青年が教養に対する非常な熱意を持つておりまする実情から見まして、勤労青年学級の必要性が非常にある。この実態に即しまして、この青年学級振興法を提案しようということになつたわけであります。  婦人学級につきましてもその重要性はありまして、公民館等におきまして、婦人講座あるいは婦人学級というような形でやつておりまするし、このことにつきましては、社会教育法の中で、やはりその四十八条に、婦人を大体主体といたします社会学級に関する規定もあるのであります。青年学級と申しましても、これは男女両方ともありまして、婦人の青年の学級もあるのでありまして、そういう意味におきましては、この青年学級において、婦人の教育も大いに振興する必要があると考えております。
  28. 山崎始男

    山崎(始)委員 いま一点、青年学級振興法案というものをつくらなくとも、現在の公民館を通じて、大いにこの青年学級の持つておるところの目的というものは達成せられるのではないか。言いかえましたら、今日の公民館運動を活発にするために、政府の方から補助金なんかを出してやるならば、何も青年学級振興法案という、特定の新しいものをぎようようしく銘打つて法案化しなくとも、私は、今の公民館運動を通じてこそやるのが本筋ではないかというような気がいたすのでありますが、なぜ公民館を通しておやりにならなかつたか、この点についてお答え願いたい。
  29. 寺中作雄

    寺中政府委員 現在公民館に対しまして、運営費補助といたしまして、約二千百万円ばかりの金を補助いたしておりまして、その補助の対象事業といたしましては、公民館における定期講座の開設ということについての補助をいたしておるのであります。定期講座と申しますのは、これは一般的な名前でありまするから、社会学級、婦人学級あるいは成人学級、青年学級も含めまして、いろいろな意味で、公民館事業の定期講座式にやるものについての援助をするということにいたしておるのであります。でありまするから、この公民館に対する一般的補助を強化することによつて青年学級の振興になるということは、これはもちろんその通りでありまするけれども、ただ一般的に、この定期講座を振興するということで、補助金の要求をするということになりましても、大蔵省との交渉におきましても、なかなかその実際の折衝において聞いてもらえないのでありまして、やはり今日の実情に即して、青年学級の重要性というものが、公民館事業のうちでも特に重要である。その点について、国会においても、そのための法律を出して、そうしてこれに特に力を入れて、国がその助成政策をとるという方針がきまつて来るのでなければ、公民館の補助も、実際の措置としては、これは認めてもらえないという実情にあるわけでありまして、そういう意味からいたしまして、やはりこの際、こういう措置をすることが、青年学級の振興になり、同時にこれは公民館事業の振興になる。こういう関係でございます。
  30. 辻寛一

    辻委員長 小林信一君。
  31. 小林信一

    ○小林(信)委員 目的というものは、はつきりここに書いてあるのですが、とりようによつてはいろいろに考えられる。「勤労青年教育がわが国の産業の振興に寄与し、且つ、民主的で文化的な国家を建設するための基盤をなすものである」つまり勤労青年教育をやれば、国の産業が興り、国の文化というものが高まるのだ、こういう考えが主であるのか。それとも青年自体に、当然憲法の精神、教育基本法の内容からして、教養を積むところの機関を設置してやることが必然的なものである、というよう二つ考えが、この目的を考える場合にも、読んで感ずる場合にも、取上げられるのですが、この点まず最初に、はつきりしていただきたいと思います。
  32. 寺中作雄

    寺中政府委員 この法律施行いたします目的といたしまして、直接には、現在実情として行われておる青年の共同学習グループ、すなわち実体上の青年学級を大いに育成して、青年のためにいい施設をしてやるということでございます。しかしそれについて助成をする、補助政策をとるということになるには、やはり国家的見地において、そのことが結局国の産業の振興に寄与し、民主的な文化的な国家を建設する基盤になるというところの理由があつて、初めてこれを補助するということの理由づけができるのでありまして、そういう意味から、直接には青年のための育成方策をとる。その措置として補助をいたすのは、国家の立場から見て必要であるからだ。こういうわけでございます。
  33. 小林信一

    ○小林(信)委員 今の山崎さんとの応答のことからも考えられるのですが、何だか、青年学級という適切なものが所々に見えて来ている。そして青年自身にも、定時制学校というような、単位をとることに拘泥しないところの自由な学習をする機関が必要であるというような気運がある。これに対して何か対策を講じてやろう。予算をとるには、こういう法的な内容を持つて、そうして国家的な目的をうたわなければ予算がとれないのだというような御意見も承つたのでありまして、どこに実際文部省は重点を置いて、こういう法律制定ようとしておるのか。そこが私判然としなかつたわけですが、従つてこの法律の内容にも、自主的な青年の立場というものを考えることが薄いとか、あるいは何かそこに将来また青年学校化させるような意図も見えるというような疑問がたくさん出て来るわけであります。やはりそこを明確にして出発しなければならぬと思うのですが、もう一度、その点を明確にしていただきたい。
  34. 寺中作雄

    寺中政府委員 青年教育を振興するということの必要、そのことのためには、昨日もちよつと申し上げましたように、単に青年に対して、政府から激励をするというのでなくして、青年自主性からほとばしり出たその意欲を、側面から高揚して行くというような方策が必要であると思うのであります。そういう意味におきまして、この勤労青年教育のやり方には、青年自主性を尊重して、そうして現在ある青年学級を援助育成するという方策をとるわけでありますが、そういうことが、同時に国の立場から見ましても、国家の産業を盛んにし、文化的な国家を育成するために必要な措置である。そういう意味で補助金を出すのである。結論的に、青年自主性による教育をやることが、国の産業あるいは文化のために必要な政策である。そういう意味で補助金を出す。こういう関係に立つと考えております。
  35. 小林信一

    ○小林(信)委員 大臣に一般質問の場合に、私の希望するところをお伺いして、それが中途で終つてしまつたわけなのですが、今の日本で重大な問題にされておる点は、取上げれば二つある。経済自立の問題だとか、あるいは自衛をするとかしないとかいう問題。いずれもその裏には、教育という問題が重大な関心を持つて行かれなければならぬ点がある。科学技術の振興というようなことには、どうしても経済自立の裏づけがなければならぬ。そこで大事なことは、大学の研究室をどうするとかという問題もあるけれども、まず第一番に、農村の食糧の自給自足に携わつておる青年諸君に、新しい技術を考えてもらう。経営方法を考究してもらうということが必要ではないか。これに対して文部省としては、どういう対策を経済自立の問題と並行して考えて行くかということをお伺いして、中途で終つてしまつたわけですが、やはり今の局長さんの御説明ようななまはんかな態度でなくて、もつとこの際積極的に、青年教育の問題は国家的な目的を持つて、いわゆる経済の自立とか、あるいは青年の国民的な自覚、こういうふうなものを十分高揚するために積極的に出るべきである。しかもそれは民主的な青年諸君が、日本の将来を、文化国家に建設して行くわけでありますから、どこまでも青年諸君の自主的な運営というものを、強く強調して行かなければならぬ、それを大胆にやるべきだと思うのでございます。今の話のような、予算をとるために、そして青年学級というものがすでにぼつぼつ起きつつあるから、これに対して予算の獲得上こういう法律を持ち、そうして何か国家的な目的を持つておらなければ予算がとれないからやるのだというような、消極的なもので進もうとするならば、私は文部大臣の権威、抱負というようなものに対して、非常に悲観をするものでございます。これを実施する場合には、私はまた考えなければならぬ。今定時制高等学校というものがある。そうしてまた公民館という制度がある。山崎さんのおつしやつたように、その出発におきましては、青年教育のために一般成人の教育のために、これらが重大な目的をもつて出発しておるのですから、これを強化しなければならぬのでございますが、何ゆえにこれを考えずに、青年学級の問題に文部省は転向したか。こういうことはやつぱり質問しなくてはならぬのであります。いま一つ山崎さんの御質問等に対して伺つた中で非常に遺憾に思うことは、公民館制度というものの目的を明確にし、これが効力を発生するようにするためには、この中から青年というものを除外してしまつたら、私は公民館制度というものは骨抜きになるのではないかと思う。公民館制度というものは、ただ単に道義の高揚だけではなく、地方の産業、経済あるいは政治意識の高揚というふうなものも含めたところの大きな目的を持つておるものでございます。階層的に申しますと、成人の場合、あるいは母親というような立場の者もございますが、やはり主は青年であります。その青年教育される内容というものは、産業であり、経済であり、政治であり、道義であるというような点も考慮しますときに、これから除外するようなことになつたら、せつかくの公民館制度も私は無になつてしまうのではないかと思う。なぜこういうことをするのかを考えましたときに、公民館制度にはすでに行き詰つたものを持つており、あるいは、定時制高等学校という制度があつて、これが勤労青年のためにも十分考慮された制度であるはずなのに、それを考えずに、青年学級というものを考えるということは、定時制高等学校にもある点に行き詰つたものがあつて文部省当局としては、これらによつては、もうその目的を達することができないというような段階に立ち至つているのではないかという疑義さえ持つものであります。この点につきましての御説明をお願いいたします。
  36. 寺中作雄

    寺中政府委員 勤労青年教育のための主たる系統の教育方法といたしまして、定時制高校学校制度と実態上の青年学級というふうなものがあるわけであります。定時制高等学校教育が、教育という観点から見れば、青年学級よりも充実し、またクレジツトその他の点から整備もし、内容もよくあるという点についてはいいのでありまして、そういう意味から定時制を大いに奨励し、またこれを強化するということは、ぜひともやるべきであり、またその方向で文部省としても努力しておると思うのであります。ただその定時制に入り切らない、実態上入れたくても入れられない生活状態にある青年が相当ございまして、いかに定時制制度を強化しても、これらの勤労青年を全部救うゆえんにならないという点が問題であろうと思うのであります。それはどういう点かと申しますと、まず第一に時間的制約でありまして、勤労青年は勤労を持つております。農村で申しますれば、年間の農閑期の日数というものは、大体六十日か七十日である。その六十日か七十日に一日二時間の勉強をするとして、百二十時間か百五十時間、これだけが年間にかろうじて持ち得る教養の時間であるというような実態の生活をしておる青年が大部分であつて、これらの人に金もやる、学校もつくつてやるから、定時制高等学校に行けと言つても、やはり時間的制約で行けないということが第一の点であります。  それから第二の点は、やはり経済的な面でありまして、定時制高等学校は義務ではないのでありますから、どうしても授業料を取つて経営をするという形になります。しかしその授業料を払うだけの生活的余裕がない人が相当にある。それからさらに定時制高等学校町村の財政その他から見て、全国の一万余の市町村に全部普及したくても、財政上できない。またやつてみても、それに入つて来るだけの生徒がない。そこで三箇町村一つぐらいの組合の定時制高等学校がありましても、交通の関係、あるいはその他から、やはり利用しにくい。そこでその村において、とにかく勤労青年に対する教養施設を持つことが必要であるということが、実際の必要として起きているのであります。さらに教育内容の点から行きましても、いわゆる学校のコースとして、国語が何時間、数学が何時間という式の教育では、どうも直接自分らの生活に関係がないから、もつと実態の生活に即した、自分らの学びたい勉強をしたいという要望を青年は持つておる。そういうような実態から見まして、定時制では全部の青年を負い切れないということで、実質的必要から、すなわち自然発生的に、青年学級という一種の制度が生まれて来たわけであります。それが財政上の理由から、だんだん苦しい経営になつ来ておるので、これに対して国庫の補助をいたそうというのが、この法案の精神であります。  なお公民館との関係におきまして、公民館制度が行き詰つたから、青年学級に乗りかえたという御解釈でありますが、それはそうではないのでありまして、公民館事業のうちで、持に青年学級は、今日の実情において必要であるから、そういう事業公民館に奨励するために、青年学級の補助ということをやろう。その補助金は実際的に公民館に行くのであります。すなわち公民館事業の育成になるわけでありまして、そういう意味で、青年学級を奨励するということは、同時に公民館事業を盛んにするということと同じ結果になるわけであります。
  37. 小林信一

    ○小林(信)委員 定時制高等学校、あるいは公民館という制度があるにもかかわらず、これらにおいては十分な教育ができないから、青年学級を設けるという御説明がありました。しかし御説明の中に、私たちが実態を見て考えておりますのと、相当齟齬しておる問題がありますので申し上げます。定時制高等学校においては、万全な措置をして、勤労青年教育に対する施設を持ち、内容を持つて臨んでおるかのようなお考えでおるのですが、私はこれは絶対に文部省の思い過ぎだと思います。定時制高等学校の生徒たちに与えられているものは、教室と先生の二、三人でございます。ほんとうに勤労青年のために定時制高等学校がその目的を達成して行くためには、それが農村であれば、すぐに農業技術の振興になり、あるいはは農業経営の進展になるよう教育内容を持ち、教育施設を持つていなければならぬのでございます。単に四年間勤めれば上級学校に進めるから行くんだというような者のみに魅力があつて単位のことはどうでもいいんだ、あそこへ行き、村づくり運動を将来やるために、ほんとうに勉強しようじやないかというような人たちには少しも魅力がない。あなたが言われるようなことを定時制高等学校が持つておるならば、あえてこういうふうなものをつくらなくてもいいと言えるわけであります。高等学校ように、万全の措置がとられ、十分な施設があるんだけれども、残念ながら、その人たちは時間が許されないとか、財政的に許されないから行けないんだ、だからこういうふうなものをつくつてやるということは、理由にはならないと思う。  それから公民館の問題は、青年学級をつくつて行けば、それに補助金が行く。従つて公民館も今のような状態よりも、一歩前進することができるんだというよう説明なんですが、これはやはり私はこじつけだと思う。ほんとうに公民館を育成しようとするならば、公民館に対して二千万円や三千万円の補助でなくて、もつと大胆に経費を支出して、一般の方たちの資質を高める、教養を高める道を講ずべきだと思うのでございます。もしこういうようなことをやつておるとするならば、非常に姑息だ。やつぱり何か行き詰つておるとか、あるいは教育に対して不熱心だというようなことが考えられるわけでございます。先ほど山崎委員から婦人の問題が提供されたのですが、今度の日本の水害というふうな問題を考えた場合に、それはこわれた校舎を直せばいいとか、あるいは教科書に困つておる子供さんたちに教科書を少し何とか心配してやればいいんだというようなお考え文部大臣が持つてつたならば、いわゆる経済自立の、あるいは日本再建の裏づけとしての教育考えられておらないということになるわけでございます。今一番大事な問題は濫伐の問題である。山の木を育成するということが、この水害を未然に防止する大事な問題である。ところが今どんなことがこの問題で看過されておるかと申しますと、各家庭におけるかまどの改善が完備しなければ、濫伐は依然としてやまないのであります。今日のような森林の状態であるならば、四十年、五十年、五十年たてば、日本の山はまる裸になる。これを防止するためには、ただ濫伐を言うだけではだめです。森林だけ言うのではだめです。家庭生活の改善をやつて、高まつた教養のもとに、日本経済の自立の問題を考える主婦が生れなければだめなんです。そういう点まで文部大臣考えて行つたならば、ほんとうに経済自立、あるいは国家再建の教育ということが言えるわけであります。もしこういうことを考えて行くならば、公民館というものにもう少し積極的な経費を投じて、その内容を充実して行かなければならぬのでございます。それでなければ青年というものはこの中から抜け出してしまう。これに補助金を出すというが、その補助金も非常に軽微なもので、私に言わせれば、地方財政を犠牲に社会教育をやろうという考えであるのではないかというようなことまで考えられるわけであります。  時間がありませんので、次に経費の方の問題に移りたいと思うのですが、一体七千万円ぐらいで、このむずかしい法律をつくつて、ほんとうに青年教育に対して適切なものがつくられると考えておるのかどうか。まづ第一番に、指導に当る方たちの報酬なんというものは、どういうふうに考えておるのか。それから、この人たちが希望するものは、がらんとした教室でなくて、農村ならば農業技術とか農業経営、商業地あるいは工業地ならば科学技術、こういうものがすぐに振興できるような施設を希望しておる。そういうものはどの程度にできるのか。こういう問題をまずお聞きいたします。
  38. 寺中作雄

    寺中政府委員 最初にこの定時制高等学校との関係について、私の答弁が不完全であつたようなお話でありましたが、文部省も定時制高等学校の振興に関ましてはいろいろ研究もし、またできる限りの努力をしております。しかし今日、それが完全であるということはもちろん言えないと思うのであります。しかしかりに非常に完全なものが徹底的にできまして、定時制高等学校全国的に非常な普及をし、また内容が充実しましても、これに全部の勤労青年を収容し切れないものがあります。そこで定時制の制度の悪いところは改革もし、施設の貧弱なところは整備をいたしましても、定時制はやはり高等学校のユニツトをとるという一つの条件があるわけであります。まず時間的に見まして、定時制におきましては四年間に二千九百七十五時間、約三千時間を勉強することになります。その関係から見ましても、一年に百五十時間くらいしか勉強する余裕のない青年にとつては、二十年ぐらい通わなければ、それだけのコースを修められないというような事情から見まして、千三百万余に及ぶ勤労青年を全部定時制に収容して、勤労青年教育をはかるということは不可能である。時間の点だけから申し上げましてもそうでありますが、その他の点から言いましても、やはり定時制以外に、現在の勤労青年の実際生活に即した教養施設というものが、どうしても必要ではなかろうかと考えるのであります。  それから、公民館の補助を強化せよということでございますが、これもできる限り、補助の強化のために努力をいたしております。ただ公民館というものの本質上、やはりこれは地方の自治財政を主体にいたしまして、すなわちわれわれのためのわれわれの施設という実力と気持とでもつて、これらの設置、運営をはかることが本体であります。国からの公民館への補助というものは、いわば奨励的意味を持つておりますから、その運営の中で、特に国家的に見て重要と思われる青年学級事業に対しまして、本法案によつて補助をしようということなのであります。公民館全体の運営費を、ある程度全面的に国家でもつて見るというようなことは、必ずしも理想的なやり方であるかどうか、疑問があると考えるのであります。  それから、青年学級の補助金は七千二百万円でございます。これで一体どれだけのことができるかということでありますが、もちろん十分であるとは考えません。法案によりまして、大体運営経費の三分の一以内という予算の範囲内において補助するということになつておりまして、大体の実情といたしまして、一学級の運営費は平均六万五千円ばかりになつておるわけであります。現在持つております予算的措置によりますれば、一学級の運営費の基準経費を二万四千円と見まして、その三分の一の一学級当り八千円ということが基準になつております。大体六万五千円かかるところへ八千円の補助金が行くということでありますから、はなはだ貧弱とも言えますけれども、また一面、従来ほとんどなきにひとしかつた補助金が、まあとにかく一万円近くのものが行くのでありまして、相当に助かるという見方もできるわけであります。でありますから、それによりまして講師の報酬——これは予算の積算基礎によりますれば、大体講師の一日の報酬を三百円と見ておりまするが、その程度の基準でもつて運営する経費の三分の一を出すということでございます。  また施設の点におきましても、将来青年学級のための施設費も補助の内容としてとりたいという考えはありますが、一方青年学校学校または公民館においてやるというのが主体になつておりますから、学校または公民館の施設が充実すれば、その施設を使つて、それを青年学級に活用してやるということになるのであります、そういう意味で、施設については、現在ある施設をできるだけうまく活用する。学校または公民館においてその施設を強化する。こういうふうな考えで、この青年学級運営をはかりたいと考えているのであります。
  39. 小林信一

    ○小林(信)委員 予算の問題をお聞きしたのですが、結局これだけでも地方では非常にうれしがるんだというようなお話があつたのであります。それではたしてほんとうに国家として青年教育ようとする気持になつておるのかどうか。先ほどから私は言つておるのですが、一学級八千円や一万円くらいもらつて、これは先ほど講師については一体一日——結局夜間でしようが、三百円くらいやるとしまして、一日に二人ずつ出まして、結局百人の講師が必要なんです。延べ百人の講師に三百円ずつ払えば、三万円使うわけなんです。そうしてみれば、たとい六万円の経費を計上しましても、あとの三万円が施設とか運営費になるわけなんです。これでは今私が申しましたような、ほんとうに日本の中堅になり得る技術を高めた青年を持つことはできないと私は考えるわけであります。そういうようなやり方があらゆる教育行政の中に行われておる。これは枯れた井戸の水を吸い上げる呼び水的なものである。地方財政は苦しいのですが、苦しい中で、こういう制度を設けると、青年諸君は一応前よりはましだというところで、こういうものがつくられればそれに飛びつく。先ほど局長はいろいろの調査のパーセンテージをあげられたのですが、ほかに何もないし、施策の中で、定時制高等学校というものが不親切に取扱われておるから、こういうものをつくるといえばやはり飛びつくわけです。あらゆることを検討して、これが妥当である、これがいいという考え賛成するわけではない。ほかに何ら見るべき施策がなく、貧困だから、こういうものをつくるなら、それに飛びつこうというのです。しかしまたこういう内容を見まして、青年諸君がまたきつと不満を唱えて来ると思うのです。これはやはり地方財政をある程度こつちから呼び水的にやつて、出させてつくらせる。三分の一補助してやるぞというような形にしているからこそ、いつも龍頭蛇尾で、これは定時制高等学校と同じように、ほんとうに青年を救うものではないという形に終るのではないかと思うのでございます。たといこの予算の中には考えられておらなくとも、当局としては、将来青年学級というものにどんな施設をもつて、どんな内容を整えて青年教育をやろうとしておるのか、もう一度お伺いいたします。
  40. 寺中作雄

    寺中政府委員 大切な勤労青年教育のためには、予算からいいましても、制度の面からいいましても、非常に貧弱であるというような御趣旨のお話でございますが、私どもはこの今日の予算措置が決して完全であるとは思つていないのであります。ただ勤労青年教育ということにつきましては、全部が国家の責任であるというわけではないのでありまして、これはやはり地方と国家と両面で分担すべきものであつて、そのために地方財政が相当に使われるということがありましても、これは国から非常な圧迫を加えられて、無理やり使わされておるという意味のものではないのであります。やはり大切な青年のためには、国も地方も相協力して、この教育の振興のために努めるということで、三分の一の補助ということになつておるのでありまするから、今後この法律施行の際におきまして、できるだけ補助金の増額には努力をいたして行きたいと考えているのであります。  なお将来の青年学級の内容は、どういうことを目的としておるかということでございますが、一般的目的といたしましては、この法案の第二条にありますように、「実際生活に必要な職業又は家事に関する知識及び技能を習得させ、並びにその一般的教養を向上させること」でありまして、その教育内容、技能内容がどういうものであるかということは、これはその地方の事情によつていろいろに違うことであります。また勤労青年の希望する教育内容を与えるという方法で運営されるのでありまして、将来あるいは農村の工業化であるとか、あるいは電化であるとかいうような科学的な農業技術というものも取入れる必要がありまして、それに必要ないろいろな技能、知識を習得させるということも大いに必要になつて参るでありましよう。また一般的教養といたしましては、ただ義務教育を終えただけでは不満足でありますので、今日の時勢に処して、りつぱにやつて行けるだけの教養を与えるために、青年の気持のおもむくままに、教育内容を充実して行くということが青年学級の理想であります。この段階を理想としておるということは、私どもの方で別に一定の基準を設けておるわけではございません。
  41. 辻寛一

    辻委員長 小林君、その程度にしてください。時間も大分経過しておりまして、午後の他の委員会から催促を受けておりますので、その程度でごしんぼうを願いたいと思います。
  42. 小林信一

    ○小林(信)委員 もう一問……。
  43. 辻寛一

    辻委員長 きわめて簡単にお願いいたします。  それからちよつと申し上げておきまするが、先ほどの理事会の申合せによりまして、明日冒頭に採決の運びに持つて行きたいと思いますから、きよう一応の質疑を終りたいと思います。ただいま申し上げましたような情勢でございますので、同じ党派でもありますから、お二人のうちどなたが一人で、きわめて簡単に願います。そういうことにお打合せを願つておきます。
  44. 小林信一

    ○小林(信)委員 私はこの問題につきましては、よく私たちの考えておるところを申し上げたい。また文部省として考えておる点をお聞きしようと思つて、今日まで私は隠忍自重しておつたのです。私に与えられた時間は二十分か二十五分の範囲内なので、私まことに遺憾なのです。そういう点も考慮されて、今後の質問時間は、大体平等に御配意を願いたいと思うのです。私は青年教育というものは非常に重大な問題だと思うのです。委員長としても相当時間を与えてくれると思つてつたのですが、そういうことならば、簡単にもう一問だけお伺いして終ります。  今私は当局の勤労青年に対するところの御抱負を伺つたわけでございますが、まだまだ形式的な、抽象的なものしかお持ちになつておらない。だから定時制高等学校につきましても、何か事足りておるようなお考えでおるのじやないかと思うのでございますが、実際定時制高等学校あたりの要求するものは、農村におきましても一郡において一つくらいは共同の実習地とか、研究というようなものがほしい。実際耕作する面において実力を持ちたいというふうなことまで言つておる。図書もなければ、研究用具もなければ、ただがらんとした教室の中で、先生に教わるだけでは、決して実力はついて行かない。また青年学級の将来についてお伺いしたいのですが、先ほど女子の教育のことも言つたのですけれども、ミシンを一台持つたつて、今はすぐに二万、三万かかるわけです。こういうもが地方の若い女性には実際必要なのです。そしてこういうものを通して技術を習い、あるいは家庭生活の改善というふうなことを教わり、婦人として一つの特技を持ち、道義と教養を高めて行くわけですが、そういうような点についてはいささかも考えておらない。あるいは青年諸君が将来農村の工業化というようなものを考えて行くときに、ただがらんとした教室で、先生からいろいろなことを教わつて行くだけでは、とうていこれはできないわけです。先ほど青年教育につきましては、国家も地方もともに負担をして行かなければならぬものであるということをおつしやつたのですが、しかし青年教育はそれほどせつぱ詰つておるし、重大である。国家の将来を考えても実に重大である。しかし地方財政というものが今日のように苦しいときに、七千万や何ぼ出して、青年教育をやるということは、ほんとうに青年自体のことを考えてやるのじやなくて、ほかのことを考えているのじやないかと考えられても当然のことではないか。それならほかに国家の費用というものは、もうこれ以上出せないのかといいますと、幾らでも出せる予算があるのです。七千万円くらいで、一千何百万人という青年諸君の教育をやろうということは、無謀だと思います。今私が申しましたような点についても、あるいは御考慮なさつておるかと思いますので、もう一度御答弁をお願いいたします。
  45. 寺中作雄

    寺中政府委員 施設が貧弱であるということにつきましては、私どもも非常に考慮しまして、産業教育振興法等で施設の援助という点も考えております。そういう学校における青年学級の開設ということも考えられるわけでございまして、できるだけの努力をいたしまして、施設並びに運営の強化のためには、今後も務力して行きたいと考えております。
  46. 高津正道

    高津委員 時間も、もう一時をまわつておりますので、ただ一点、昨日の大臣の御答弁と本日の御答弁との間に相当大きい矛盾が現われておるので、伺いたいと思います。本日大臣は、憲法第九条を教える、その言い方がどうこうというのではないという表現でもつて主権在民基本的人権と同様、再軍備せずの第九条を熱心に教えてもよろしい、そういう意思表示をなさいました。それでは昨日の答弁をある程度緩和されているのではないかとも思われる。私は大臣の御意見は、いつも多くの不満と危惧の念で聞いておるのでありますが、ほんの少しばかり満足感のような気持にとらわれていることを、まあ白状いたします。しかしそれでは昨日教育中立性に関する大臣の御答弁は、憲法九条を熱心に教えるということは、実はそこが政党間の政策上の論争点になつている現状から見て、教育中立性の点から問題になる、このように申されておつたのであります。これは明らかに相違しているのであります。私たち文部委員はいずれを政府答弁と認めてよろしいか、どちらをとるべきか。これをまず聞きます。
  47. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、熱心に教えてはいけない、本日は熱心に教えてもいい、こういうふうに、昨日と本日とかえて申し上げたつもりはありません。昨日私は、熱心に教えてはいけないということを申し上げたつもりはありません。これは速記録をごらんいただけば、おのずから明らかであると思います。ただ昨日は、法律解釈といいますか、この法律案が成立した場合の解釈という点から申し上げましたので、そこに多少さようなお気持があるのじやないかと思います。要するに現在の憲法説明として、再軍備をすることは許されない。憲法を前提として言う限り、これは一向差支えない。いくら熱心に言つても、これは差支えないと思つております。ただ現在の政治問題としてこれを扱つて、この憲法を改正して再軍備をすると言うことはいけないんだ。つまり現在の憲法というものを前提にしないで、現在の政治問題をとらえて、現在の政治問題は、改正をして再軍備をすべきだ、絶対に改正すべきでない、あくまでもこの憲法を維持して、再軍備に進んではならぬ。こういう二つにわかれて論争しておるのでありますから、その論争の渦中に入つて、つまりこの憲法という前提を離れて、政治問題としてこの憲法を改正するなどということは、もつてのほかの議論であつて、これはいけないんだ。こういうことを言えば、これはいわゆる政治的な論争になる。そうしてそれが強調せられることが、一党一派の政府的主張に偏するということになる、こういう法律解釈を申し上げたのであります。そこで、今日申し上げましたのは、法律趣旨として、そういうことのないように、これが政党道具になつてみたり、客観的に見て実情がそういうことになつては、それでは困るというのがこの法律趣旨であるということを申し上げたのでありまして、私の申し上げた意味は、昨日とそうかわつておるとは思つておりません。高津さんは、初めから熱心に言うのはいけない、ちよつと言うのはいい、というふうに、昨日私がここへ来たときからそうおつしやつておられましたが、私はそういう意味じやありません。政治問題として取上げた場合は、これに抵触する場合がある。憲法を前提として再軍備するのは許されないのだ。こういうことを言うのは差支えないと申し上げたのであります。
  48. 辻寛一

    辻委員長 本日はこの程度にて散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時十五分散会