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1953-07-23 第16回国会 衆議院 文部委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十三日(木曜日)     午後四時一分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 天野 公義君 理事 坂田 道太君    理事 原田  憲君 理事 田中 久雄君    理事 前田榮之助君 理事 中村 梅吉君       伊藤 郷一君    尾関 義一君       小西 寅松君    竹尾  弌君       安井 大吉君    町村 金五君       高津 正道君    野原  覺君       山崎 始男君    大西 正道君       松平 忠久君    北 れい吉君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 七月二十二日  委員町村金五君辞任につき、その補欠として芦  田均君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員芦田均君、石村英雄君及び下川儀太郎君辞  任につき、その補欠として町村金五君、辻原弘  市君及び山崎始男君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員辻原弘市君辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月二十二日  高田中学校屋内体操場建築費国庫補助に関する  請願田中好紹介)(第五〇二四号)  小学校危険校舎改築費等国庫補助に関する請願  (田中好紹介)(第五〇二五号)  私立学校教職員共済組合法制定に関する請願(  塩原時三郎紹介)(第五〇二六号)  同(大石ヨシエ紹介)(第五〇二七号)  三ノ宮小学校改築費国庫補助に関する請願(田  中好紹介)(第五〇二八号)  建国記念日復活に関する請願永田良吉君紹  介)(第五〇四五号)  理科教育振興に関する請願灘尾弘吉紹介)  (第五一三〇号)  学校給食法制定等に関する請願小林信一君紹  介)(第五一六四号)  義務教育費国庫負担法による政令等撤廃に関す  る請願大石ヨシエ紹介)(第五一六五号)  義務教育費国庫負担額確保に関する請願鈴木  茂三郎君紹介)(第五一六六号)  同(福田篤泰紹介)(第五一六七号)  同(鈴木仙八君外三名紹介)(第五一六八号)  木津小学校梅谷分教場改築費国庫補助に関する  請願田中好紹介)(第五一六九号)  小中学校屋内体操場建築費国庫補助に関する請  願(田中好紹介)(第五一七〇号)  別院中学校屋内体操場建築費国庫補助に関する  請願田中好紹介)(第五一七二号)  危険校舎改築促進臨時措置法制定に関する請願  (田中好紹介)(第五一七三号)  公立学校施設整備に関する請願星島二郎君紹  介)(第五一七四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  青年学級振興法案内閣提出第一三〇号)     —————————————
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  青年学級振興法案を議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 私の質疑法案第一条並びに第三条に関してでありますが、第三条に、「青年学級は、勤労青年自主性を尊重し、」ということが一番初めに書かれてありますが、その言葉の意味する内容を具体的に事例をあげてもう少し御説明願いたいと思います。
  4. 寺中作雄

    寺中政府委員 青年学級を適正に運営いたしますには、どうしてもそれを受講する側に立ちます勤労青年の熱意あるいは希望というものに沿つて、その希望にこたえる運営をする必要があると考えるのでありまして、たとえば、この学級におきます学科内容教育内容にいたしましても、青年の方では実際生活に必要いろいろの職業的課程、あるいは一般的課程というふうなものを希望しておると思うのでありますが、なるべくそれに沿つたものを与える。また時間の関係にいたしましても、あるいは場所の関係にいたしましても、講師関係にいたしましても、できるだけ青年希望に沿い、青年が自主的に決定するところの希望に合うようにやつて行くことが適正な運営になると思うのでありまして、そのやり方といたしましては、その青年学級開設そのものにおきまして、まず希望のための申請を出さしめて、その申請を審査した上で、大体それに合うものを開設するという方法をとつておりますし、また運営上にいたしましても、たとえば青年学級運営委員会というようなものをつくりまして、そこに青年の者も参加させて、講師あるいは主事というような人との話合いでその内容を決定して行くというようにいたすのが、最もうまくこの青年学級運営する方法であろうと考えておるのであります。
  5. 高津正道

    高津委員 同じく第三条の、「勤労青年生活実態及び地方実情に即応して、」ということ、これも具体的に内容を承つておけばけつこうであると思います。
  6. 寺中作雄

    寺中政府委員 青年学級の対象になります勤労青年生活というものは、いろいろ諸種万般でありますので、たとえば漁村の生活農村生活、あるいは工場地帯生活では非常に違つております。そういう生活実態に合うように教科内容運営方法考えて行く。また地方実情という意味からいたしましても、都会地農村地等によりましてあるいは土地の風習というようなものもあると思うのでありますが、そういうような点をしんしやくいたしまして、その点についての青年希望も聞き入れまして、なるべくそれに合わした運営をいたして行くということが理想であると考えておるのであります。
  7. 高津正道

    高津委員 第四条の、「青年学級による教育を受けようとする勤労青年に対しては、できる限り、その機会が与えられなければならない。」という原案でありますが、「できる限り、」という意味は、義務的ではないのだという意味にもとれるし、根限りというような強い意味にもとれるのですが、政府のお考えはどうでしようか。
  8. 寺中作雄

    寺中政府委員 勤労青年青年学級において教育を受けたいという熱望を持つております際に、その青年の父兄であるとかあるいは使用者であるとかいうような者が、その勤労青年青年学級出席することをじやまする、あるいはじやまするということでなくても、それに対する適当なる機会を与えないようなことにするようなことのないように、なるべく勤労青年青年学級出席する機会を与えるための便宜をはかつてやることが望ましい。しかし、その青年勤労を持つているのでありまするから、青年学級出席することがむずかしいような生活上の事情も多々あると思うのであります。いろいろ仕事が忙しいとか商売が忙しいとかいうことがあると思うのでありまして、必ず出席しろといつても無理でありましようから、できる限りはその機会を与えるようにしてもらいたいという二と、そのことを法律的に訓示規定として保障するという意味でこの第四条を響いてあるのであります。
  9. 高津正道

    高津委員 第十一条に、「実施機関は、青年学級において、左の各号に掲げる行為を行つてはならない。」とあり、その一に、「もつぱら営利目的として事業を行い、又は特定営利事業を援助すること。」と、それを禁止してあるのでありますが、「もつぱら営利目的として事業を行い、」という意味は、多少は営利目的として事業行つてもよいという意味にもとれますが、その限界というか、基準と申しますか、もつぱらでない事例、事実を聞いておけばよくわかると思います。
  10. 寺中作雄

    寺中政府委員 第十一条第一号の場合の例といたしましては、たとえば女子をもつて構成された青年学級におきまして、被服の裁縫等教育を行う場合に、これが営利的になりまして、針仕事をやらしてそれでもつて金をもうける、実施機関において金をもうけるという目的が非常に歴然としておるというような経営になることはよくないということで、禁止しておる次第であります。もつぱらということであるから、少しぐらいはいいかということでございますが、できた作業の結果を、たとえばこれは営業的でなく、個人的な関係等で、実費でもつてその裁縫代をとつて渡すというようなことが多少ありましても、これを禁止するという考えは持つておらないのでありますが、第三者から見まして、客観的に見まして、営利的にやつておるということが非常に顕著に現われておるような、目に余るような運営に陥つておる場合には、厳に禁止するという立場をとつておるのであります。
  11. 高津正道

    高津委員 学校において教師憲法規定通りに、日本においては再軍備をやつてはならないということを教えることは、私は憲法に従うのであるから正しいと思いますが、それは教育中立性に反すると文部当局はお認めになりますかどうか。
  12. 寺中作雄

    寺中政府委員 憲法規定内容説明いたしまして、その内容を解説するという意味におきまして、戦力を保持しないということの意味説明するということであれば、これは憲法に基く一種の政治教育ということでありますので、これを禁止するという理由はないと思うのでありますが、政治的立場を明確にいたしまして、すなわち一つ政策といたしまして、少くとも現状法律制度というようなものをかえる意味意見、すなわち政策を、政治的立場から教えるということになれば、問題ではなかろうかと考えます。
  13. 高津正道

    高津委員 憲法の条文の解釈をするのはいいけれども制度をかえるような、政策を推進するような説明をしてはいけない、こういう意味に今の御答弁は了解してようございますか。
  14. 寺中作雄

    寺中政府委員 ただいまの説明で少し不十分であつたかと思いますが、現実に存する政党がありまして、その政党政策綱領というものがきまつておるわけでありまして、その政党政策綱領従つて、その政策をいわば普及宣伝するというような意味における教え方ということになれば、これは特定政党その他の政治団体の利害に関する授業を行つておるものと解せられると思うのであります。
  15. 高津正道

    高津委員 特定政党立場に立つたり、あるいはその政策を推進するような意図でやれば悪い。しかし憲法説明ならば、政党立場に別に立つわけでもないし、いかに熱心に、憲法は守るべきものであるから、再軍備をしてはならぬ、これが日本の建前であつて憲法は何ものにも優先するんだ、憲法というものは大事なもんだぞよ、これを守るものは国民であり、大臣であり、国会である、その憲法にはこう書いてある、これはこういう意味である、こういう話をしても、何も特定政党立場に立つわけではありませんから、どの条項をも説明するように、熱心に熱を入れてそこを説いても、それはあなたの御答弁通り、決して教育中立性を侵すものではないと考えますが、局長はどのようにお考えになつておりますか。
  16. 寺中作雄

    寺中政府委員 ただいまも申し上げましたように、憲法教育という意味において、憲法条項を十分わかりやすく説き聞かせるという意味内容であれば、それだけで禁止する意図はないのであります。
  17. 高津正道

    高津委員 非常にフアツシヨ的でない御答弁をいただいて私は満足しておるのでありますが、この点をさらに大臣出席されてからあらためてただしてみようと思います。
  18. 辻寛一

    辻委員長 町村金五君。
  19. 町村金五

    町村委員 一つ、二つ伺いたいのですが、青年学級とうらはらの関係にたるような状態にあるわが国青年団状況がどんなものであるか、青年団というものに対して文部省は今日どういう態度をもつてこれに臨んでおるか、まずお尋ねいたします。
  20. 寺中作雄

    寺中政府委員 青年団状況でございますが、戦前の日本青年団というものはなくなつたのでありますが、戦後に各市町村地域といたしまして、その地域内に住む青年が、お互いの修養のため、あるいは社交あるいは共同奉仕というような目的をもちまして集まつて、おのずからそこに自主的な形の青年団が各地域に生れております。それが各部で連合青年団を組織する、各県で県の連合青年団を組織するという形におきまして、全国において相当数の、ほとんど各市町村とも、青年団を持つような事情になつたのでありまして、大体その団員の数は、現在四百万くらいになるのではないかと考えるのであります。そういう事情になりましたので、そこで各県の連合青年団のまた相互連絡協調機関という意味におきまして、日本青年団連絡協議会というものが数年前から生れたのでございます。略して日青協と呼んでおりますが、この日青協目的といたしますところは、青年団相互連絡協調をはかり、青年団育成、助成をはかるという目的でできておる相互連絡機関でございます。その組織は理事あるいは常務理事会長、副会長というようなものを持つておりまして、できるだけ民主的な形で選挙を行い、会長、副会長をきめるという形で、毎年総会を開いておるのでございます。文部省といたしましては、そのような形で自主的に、民主的に運営される青年団育成ということに対しましては、これをできるだけ健全なる方向育成する必至があるという意味においていろいろ間接あるいは直接的な指導助言を行うような立場に立つておるのでありまして、青年に対しまして、たとえば青年指導者講習会というようなものをやりますとか、またこの前の委員会お話が出ました青少年指導員というような者を、各府県に五名ずつ配置いたしまして、その者が青年団いろいろお世話をするというようにいたしまして、たとえば青少年団体と十分連緊をとつて、教養あるいは社会教育指導というような分野における事業計画の調整に協力するとか、あるいは講習会研究会講演会等指導者として出席するとかいうような仕事をいたしておるのでございます。
  21. 町村金五

    町村委員 今の青年団状況につきましての御説明を拝承いたしたのでありますが、私どもの見るところでは、近ごろの青年は、ことに青年団事業などを多少聞いてみますと、今もお話の出ました通り社交とかあるいは親睦の団体になつてしまつておるようであります。従つてレクリエーシヨンをやるだけの機関にすぎないというような状態になつておるように見受けられるのであります。従つて青年団集まりに出てみても、どうもあまり意義がない、芝居でも好きなものは出てやるけれども青年団に出て、ほんとう自分修養にでもしようというような連中は、今日の青年団にはどうもあきたらないで、あまりこういうところに出たがらないというような状態があるように私どもは聞いておるのであります。これではまことにせつかく地方青年団としては、情ないような状態であると私どもには感じとれるのであります。何とかして青年が、こういつたその日暮し的な享楽主義的な状態から一歩脱却いたしまして、そうして今日の日本現状にかんがみて、青年の力で日本再建する、日本を復興させる、そういつた意気込み、そういつた精神力が、青年の間に強く出て来なければならないと私ども考えるのでありますけれども、伺いますと文部省は多少そういつた方面について、指導員などをお置きになつてお世話をなさつておるというふうに伺つたのでありますけれども、どうも私どもの見るところでは、必ずしもそういつた点について、十分な適切な指導が行われてないような感じがいたすのであります。従つてかような点については、私どもはもう少し文部省として積極的に、青年は今日の日本現状というものをよく見つめて、そうして民族の真の復興再建のために、青年がその持つておるところの力をこれに注ぐというような熱情が、青年の間にわき起るような意味におきまして、文部省がさらに一段と御努力に相なつてしかるべきだと思うのであります。そういうような点について何か特別の措置を講ずるというようなお考えはないか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  22. 寺中作雄

    寺中政府委員 お話の点は私どもも一々もつともと思うのでありまして、書年ほんとうに現在の国情を見つめて、日本再建中心になるという気持で立上つてもらうということは、今日の実情といたしまして、ぜひそうあるべきであると思うのでありますが、ただ文部省青年を集めて、たとえば青年よ立てというような意味講演をする、青年にただはつぱをかけるというような指導法では、私は今日の青年にはあまり響かないのではないかと思うのでありまして、やはり青年自身の持つておるところの憂国の熱情というものが、自発的な形でおのずから発露して来るように仕向けて行くということが大切であると思うのであります。そういう意味におきましては、やはり青年団等集まりにおきましても、そのことを自主的に考え自分判断力でものを処理して行くというか一つの民主的な精神な養うような、いろいろの会議の持ち方であるとか、あるいはそういう内容講習であるとかいうものを持つて行くような方法を続けて行くうちに、漸次このままではいけないのだ、われわれが日本再建中心になるのだという気持が動いて行く、その気持を盛り立ててやる、でありますから青年指導講習会の持ち方にいたしましても、あるいは青年指導員に対する指導方法にいたしましても、やはり自主性の涵養あるいは民主的の団体運営の仕方というものを、いろいろ研究させまして、その中から自発的に生れて来る精神を取上げて行く、こういうような指導法で行くことが、今日の時世として最も必要なのではないかと考えておるのであります。
  23. 町村金五

    町村委員 今回提案されておる青年学級というものと、今存在しております青年団が、大体どういうような関連性を持つようなことになるのでありますか、その点をちよつと……。
  24. 寺中作雄

    寺中政府委員 この青年学級運営は、勤労青年自主性を尊重して運営するということを、一つの大きな方針といたしておるのでございますが、その実施方法あるいは実施機関というものは、町村に対して補助金を出しまして、町村学校あるいは公民館を実施機関として開設するという形になる、すなわち経理の関係におきましては、町村がその責任者となるということでありますが、その実際の運営の面におきましては、できるだけその学習生が自主的に活動できるように、その学習生希望に沿うように運営する、そういうことになりますと、学習生はまだ年齢の若いものもありますから、その学習生連緊を持つておるところの青年団というものが、側面からこの経営を助けるということがぜひ必要であると考えるのでありまして、青年団としましては、学習生のいわば兄貴分といたしまして、これに対する出席の督励であるとか、あるいは講師世話であるとか、その他経営万端について、いろいろ世話をするという関係におきまして、青年団青年学級とは相互緊密なる協力関係においてこれが運営されるということが、最も理想的であると思うのであります。そういう意味で、青年学級ができるために、青年団活動がにぶるとか、その運営をだんだん衰退に導くとかいうようなことはないと思うのでありまして、青年学級が盛んになれば、青年団活動も盛んになる、青年団活動が盛んになれば、青年学級も盛んになるというような、相互協力関係においてこれは発展進歩して行くべきものであると考えております。
  25. 町村金五

    町村委員 もう一つ伺いたいのですが、今度の青年学級につきましても、青年自主性を尊重して開設なり運営が行わなければならないということをこの法文のうちにうたつておるのであります。私ども青年がそういうようなやり方で、しかも誤りなく青年学級の存在の使命が十分に果されるようになるということになれば、まことにこれは喜ばしいことと考えますけれども、先ほども申し上げた通り、今日のわが国青年状態から判断をしてみますと、青年だけで計画をいたし、そうして運営をするということになりますると、青年学級自体運営というものも、ややもいたしますと計画が非常に粗漏になつて来たり、あるいは娯楽中心といつたようなことになつてしまつてせつかく政府が非常な多額な国帑をこれに投ぜられても、十二分に目的を達成できるようなことになるかどうかということについて、実は多少の懸念を持たざるを得ないような感じがいたすのであります。従いまして私どもは、この青年学級に対して、文部省の方からかくあるべしといつて押しつけて、いろいろなこと美くだり的に官制的にやるということは、もとよりわれわれも弊害が起ることを認めますので、これに必ずしも賛成をするものではありませんけれども、何といつて青年はまだ若いのでありまして、未熟な連中のことでありますから、適切な指導というものは私は青年教育についてはきわめて肝要なことであると思うのであります。従つてそういつた点について一切を青年自身運営というようなことにのみまかせておいて、はたして青年学級の創設の目的が十分に達成し得るかいなかということについて、多少の疑問を持たざるを得ないのであります。さような点について、私どもは今後文部省としては十分にその辺のことを御勘案になつてせつかくのこの青年学級が十分に目的が達成できるように、将来の運営について指導上ひとつ万全を期していただきたいと考えるのであります。何かそういう点についての御腹案があれば伺いたい。
  26. 寺中作雄

    寺中政府委員 その点も私ども同感でございまして、青年自主性を尊重するのでありますが、すべて青年運営にまかしつきりにするということではないのでありまして、この青年自主性ということについてはおのずから限度があると考えておるのであります。そういう意味青年学級運営のために青年学級運営委員会をつくりますにつきましても、青年団代表、あるいは学級生代表のほかに、市町村当局を代表する者、あるいは実施機関を代表する者、その他学識経験者を交えまして、そうして青年意見で、あまりにも非常識、とつぴにわたるようなことになりますれば、これを押えて、そうして適正なる運営に導いて行くというような考慮が必要であると思うのでありまして、ただ純真な青年希望であつて当然達してやれることであれば、これはできるだけ青年希望沿つてやるという心構えを持つてこの運営委員会運営し、実施機関においてその方向沿つて青年学級を進めて行くというふうにいたしますことが必要であると考えているのであります。
  27. 高津正道

    高津委員 文部大臣が御出席になりましたのでお尋ねいたしますが、ただいま寺中政府委員からこの青年学級教師たる者憲法説明する場合に、第九条——委員諸君にもこれを読むことははなはだ失礼でありますが、あらためて印象を深くするために読みますと、憲法第九条「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」二、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」これは第二章の戦争の放棄の全文でございますが、こういう話を生徒に教えることは何ら教育中立性の定めに違反するものではない、特定政党政策を推進する意味でどんどん教えるということは困る、こういう意味答弁があつたのでありますが、これならば特にフアツシヨ的な答弁とは私は認めないのでありますが、大臣は今私が申し述べた答弁を、私が了解しておる意味と同様なお考えをお持ちであるかどうか、これをお伺いいたします。
  28. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいまお述べになりましたように、第九条の憲法説明といいますか、わが国の現在の制度がこうなつておるんだということを説明するということは、これは何も特定政党の云々という関係は起らないと思うのであります。ただこれを非常に強調して、一党一派片寄つた主張を教え込むという点でありますが、これは特に強調してという意味ちよつと私わかりかねるのでありますが、これはわが国憲法はこういう制度になつておるというところを何べん話してみたところで、これはさしつかえないと思うのであります。ただこの憲法から、わが国軍備を持つてはいけないのだ、再軍備をしてはいけないのだと、ここまで来るというと、これはやはり政党の主張に片寄つた教育になる、かように思つております。
  29. 高津正道

    高津委員 この憲法には再軍備を禁止しておるのであり、それで再軍備をしてはならないのだということを言えば、それは教育中立性に矛盾する——再軍備をしてはならないということが憲法に書いてあるのだから、これをいくら説いてもそれは何らさしつかえないでしよう。
  30. 大達茂雄

    大達国務大臣 私の言うのが言葉が少し足りなかつたと思いますが、私が申し上げたのは、今日御承知の通りわが国においては憲法を改正しても再軍備をする必要がある、こういうことを主張しておる議論がございます。同時にまた、この憲法をあくまで維持して再軍備というものは絶対にすべきではない、こういうことを主張しておる政党があります。そこでこれは現在の政治問題でありまして、この政治の論争をめぐつて各党各派がその主張を異にしておる。現在の憲法においては戦争は放棄しておる、従つて軍備は持たないのだ、こういう制度になつておる。だからこの憲法が継続する限りはそういうものである。これについてはだれも文句はないと思うのであります。いずれの政党においても、この憲法を維持しつつ大いに軍備を拡張するなんということを言つているものはない。でありますからして、この制度説明として、そういうことになつておるということを言うのは一向さしつかえない。ただ、この制度を改めて軍備をなすべきものである、いや憲法はあくまで維持して軍備をしてはならぬのだ、こういうことは政治的な問題であります。これが現在の政治問題となつている場合に、そのいずれかの言い分を教育の上に持ち込むということは片寄つたことになる。御承知の通り、政治上の一つの主張が通るならば、それは多くの場合同時に制度を改廃するということがついて来るのであります。でありますからして、現在の法律あるいは現在の憲法制度というものがこうなつておるから、ああなつておるからということは、政治問題の政治の論争ということと私は直接関係がないことである、こう思つております。
  31. 高津正道

    高津委員 憲法を維持して軍備をしてはならない、そう教えてはならぬ、なぜならば憲法を改正して再軍備しようという党派もあるのだから、憲法をこのまま維持して軍備をしてはならぬのだ、こう教えることはいけぬと言われるのでありますが、憲法第九十九条には、これもまた失礼でありますけれども、短かい条文ですから読ませていただけば、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」わざわざ国務大臣をその中に特別にしるしてあり、そうしてこの憲法は最高法規であつて、いかなる法律にも政令にも優先するものであるというのが第九十八条の定めになつております。そうしてこの法規をかえる場合には、特に単なる多数決ではなしに、やかましい制限が設けられておるほどのものであります。だからこの憲法を教える場合、憲法の柱は三本であります。基本的人権の尊重と戦争の放棄と主権在民と、この三つでありますから、その他の部分を省略しても、この部分には熱を持つて憲法精神はここにあるのだ。他の条項、主権在民を熱を持つて教えると同じように、他の部分は忘れてもここは忘れてはならぬぞ、こう教えても、文部大臣やいかなる方面からも、それをやつてはならぬなんと言われぬ、それを言つたら、それはたいへんなことだと思うのであります。文部大臣は、憲法を擁護して再軍備をしてはならない、そういうような、主張をすれば、特定政党の議論に味方するものであつて教育中立性に反する、こういう意見を持つておられるのであるが、それはわれわれは了承することができません。今の言葉をそのままで押し切られる考えでありますか。
  32. 大達茂雄

    大達国務大臣 第九十九条はまさにその通りでありまして、「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」これはきわめて当然のことであります。かりにこの憲法が改正になりましても、やはりこの規定は残らなければならぬものである。これは現在の憲法が続く限り、この憲法に従い、尊重し、擁護する、こういうことは当然のことであります。私が申し上げますのは、この憲法をかえた方がいいか悪いか、憲法には限らぬ、すべての法律にしましても、その制度をかえた方がいいか悪いかということは、一つの政治上の問題であります。憲法がある限りこれを尊重し擁護しなければならぬ、これは言をまたぬことであります。問題は、憲法をかえた方がいいか悪いかということが、そのときの政治問題として取上げられ、それをめぐつて各党各派が主張を異にして相争つている、論争している場合に、そのいずれかの主張をこの青年学級において教え込むことはいけない、こういうことを言うのであります。
  33. 高津正道

    高津委員 憲法は現在再軍備を禁止しているわけなんですよ。それで今ある憲法に対して異を唱えて、これを改正してまで再軍備をやろうという異端者が今現われているわけです。あらゆる学校において、青年学級においても、憲法の原典通りそれを教えるということは何らさしつかえはないのである。三本の柱のどの部分も一番わかりやすい一番大事な部分でありますから、勤労青年に対してそれを熱を持つて教えることは、何ら文部大臣がかれこれ言うべきものではなくて、正しいことを正しく教育者が教えているのだ、こういう御理解を持たれることはできませんか。言いかえるならば、私の意見に同意することはできませんか。
  34. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はこの憲法規定説明することはさしつかえない、これは申し上げてあるのであります。しかしながら政治というものは制度について絶えず検討を加えて、制度はこれでよろしいか、時勢も日々変遷するのであります。その状態に備えて、制度をこのままにしておいてよろしいか、改正すべきものであるか、これは当然政治上の中心の問題でありまして、もし今の憲法はこうあるのだから改正しなりればならぬという意見があつた場合に、それは異端者の言であるとして言えないということであるならば、政治的な自由はなくなるのであります。私は常に現在の制度をその時勢に応じてこのまま置くか、改正するか、これを検討して行くところに国の政治の進歩があると思うのであります。私の申し上げるのは、憲法説明することはよろしい、現在の憲法はこうなつているということを言うのはよろしいのであります。ただこうなつているから絶対にこれをかえてはならぬというところまで来ると、その問題が、そのときに政治上の問題となつて、各派論争の的である場合においてはこれはいけない、こう言つたのであります。
  35. 高津正道

    高津委員 憲法のどの条項に対しても、どんな小さい政党一つの異議を申し立てても、それは政治上の論争になつているところであるから、そこを教えれば、教育中立性に反する。憲法は改正する必要がある場合には改正をせねばならぬのであつて、民主主義の国では、改正をいくら主張してもいいのであるから、改正論は異端ではない。だから改正論が起つておる以上は、そこのところは政策にわたり中立性を犯すから、そこは問題の意味だけはこうだということ以外は言えないとおつしやるのですか。
  36. 大達茂雄

    大達国務大臣 法律制度というものはさまつてつて、そのきまつた制度のもとにおいて、それと違反することをやつてもさしつかえないと言うことは異端者でありましよう。しかしながら法律制度はこのままでは国の実情に合わぬ、また不利益である、だからこういうふうに改正しなければならぬと主張することは、これは政治上常に見ることであつて、これが異端者であるとかなんとか言われるのは、私は了解に苦しむものであります。
  37. 高津正道

    高津委員 現在の憲法第九条の規定は、アメリカという国とソ連という国との間にもまれておる立場にある日本の現在の情勢から見る場合には、憲法の第九条の規定はきわめて日本にとつて都合のいいものである。だから国民の大多数の利益を守るためには、この憲法規定が正しいと私は思つておるからこそ、私からは改正論を唱える者は異端者だと言つたので、私は改正論を唱えることはいけないと言つたのではないのでありますから、その点は御了解願いたい。だがものを教えるのに、私は重点を尊重する主義でありますから、再軍備は禁止されておる、基本的人権は侵してはならないんだ、主権在民はとても大事な点だ、他を忘れてもこの三つは忘れてはならぬのだ、これが現在の規定である、そのように教えることは何らさしつかえないと思いますが、大臣はこれに同意されますか。
  38. 大達茂雄

    大達国務大臣 私が申し上げているのは、この問題が現在政治問題として、政治の論争になつておる場合、そしてそれをめぐつて政党が異なつた主張を持つて論争しておる場合に、そのいずれか一方を教えるということはよろしくないということを申し上げたのであつて、だれも文句のない、たとえば主権在民、あるいは今日国民生活を安定しなければならぬ、あるいは日本の経済を早く自立に導かなければならぬ、かようなことはそれぞれの政党に掲げられた政策、主張であります。しかしながらこれはだれも異論を唱える者はない。何も政治的論争の中心になつておらぬ。でありますから、国民生活を安定しなければならぬということをかりに青年学級において講釈しましても、これはさしつかえない。何にも一党一派に偏した教育ではない、私はこう思うのであります。主権在民という点についても同様でありまして、主権在民ということは今日の憲法規定してある。これが政治上の論争の的になつておる思想でもなければ、各党各派これで主張を異にして議論をしておるわけでもない。だれも異論のないことなのであつて、これを教えてみたところで、これがある政党に片寄つた教え方だということはあり得ない。でありますから、私は、憲法規定を改正した方がいいとか悪いとかいうことだけで、片寄つたものだと申し上げるのじやない。これは具体的に実際について判断をしなければならぬのでありますが、たまたま再軍備云々の例をお出しになりましたから、再軍備云々ということになれば、現在の政治問題であり、現在各党各派が主張を異にして論争しておる問題であります。その場合にいずれかの党派の主張をそのまま教え込むことが片寄つた教育になる、かように申し上げておるのであります。
  39. 高津正道

    高津委員 私が言うのは、教育基本法であろうとあるいは憲法であろうと、いやしくも政党であるならば大小を問わず、その第何条かの条項について改正を主張しておる。その場合にそこのところだけを熱心に教えるということは、それは政策論にわたるから教育中立性を侵すことだと、こういう見解に承つておるから、他の憲法条項あるいは教育基本法の条項について、一党一派が何か言つたら、もうあなたの議論の方に当てはまることになるのですか、そこの答弁がないからそこを聞いておきたいのです。
  40. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは実際問題として具体的な場合に、この法律案の第十一条の適用がどうなるかということをきめなければならぬと思うのでありまして、きわめて抽象的なお尋ねでありまして、明瞭でない点があるのでありますが、私は再軍備ということを例にとつてお話でありますから、その問題に限定をして、さような場合にはこれは片寄つたことになるだろう。そこでどういう問題か仮定して、それをどんな小さい政党ちよつと言うても、それはいかぬのか、こういうようなお尋ねでありまして、どうも非常に漠然としてよくわかりませんが、しかしそれが相当に世の中に大きな政治問題として浮び上つて来た問題であれば、それは政党が小さいから、大きいからということは私はないと思う。共産党は今政党としては非常に小さい。小さいから共産党の言う分には看過してもよろしい、そういうことは私は考えないのであります。
  41. 野原覺

    ○野原委員 関連して。ただいまの高津委員の質問に対する大臣の御答弁はきわめて重大であります。なぜ重大かと申しますると、一体今日日本教育者は何によつて教育をするんですか、憲法によつて教育をするわけであります。ところが憲法規定する通り教育をやつた場合に、たまたまこれは政治的論争の中心であるからというようなことで、教育中立性を侵したというような見解を大臣が持たれるということは、安んじて教育者は日本憲法の上に立つた教育ができないということになる。従つて私は次の御質問をいたします。憲法第九十九条は、公務員はこの憲法を尊重し、擁護する義務を負うと明確に規定してある、一体尊重し擁護するとはどういうことでございますか。単に憲法に書かれてあることを、これはこういう事実でございますと生徒に話すことであるのか。尊重し擁護する義務を負うのでございますよ。尊重擁護ということは一体どういうことだとお考えか、承りたい。
  42. 大達茂雄

    大達国務大臣 この憲法が続く限り、第九十九条によつて尊重、擁護する義務があることは問題ないと思うのであります。
  43. 野原覺

    ○野原委員 尊重するということは、これは国語学的に申し上げましても、この憲法を尊び、重んずるということでございます。擁護するということは、この憲法を肯定し、この憲法を支持し、この憲法を守り抜くということでございましよう。憲法第九条のこの一切の戦力否定、再軍備反対の規定、これがこの憲法でございます。従つて第九条を尊重し、第九条を擁護するならば、教師が再軍備反対の教育をやつて何がいけないのか、このことに対する大臣の御所見を重ねて承りたい。どこがいけないのか、何がいけないのか、ひとつ明確にお願いしたい。
  44. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は前にも申し上げたのでありますが、第九十九条の規定憲法を尊重擁護すべしということを規定してあるのであります。これはこの憲法規定の続く限りこれを尊重し擁護しなければならぬ、この憲法をそのまま置いて、そうしてこれを軽んじこれに違背する、さようなことの許されないことは申すまでもないことであります。しかしながら第九十九条の規定がいやしくもこの憲法をさらによりよくするために、あるいは国家の実情に沿うだめに、これをかえた方がよろしい、どこをかえた方がよろしい、こういう政治的な議論を一切抑圧する性質のものではないと思つております。
  45. 野原覺

    ○野原委員 そこで重ねてお尋ねしますが、第九条はこの憲法という言葉の中に入りませんか。第九条は、改正されない以上は、尊重し義務を負うというこの憲法の中に入ると思うのですが、いかがですか。
  46. 大達茂雄

    大達国務大臣 むろん入るものであります。
  47. 野原覺

    ○野原委員 そうなれば第九条の規定するところの精神である再軍備反対の教育教師行つて何がいけないか。
  48. 大達茂雄

    大達国務大臣 再軍備をしないことになつているんだ、わが国の建前が。それを教えることは当然であります。これが何も悪いとは言わない。再軍備反対ということばですよ。再軍備をしよう、こういう主張に対してそれは反対だ、こういうことは主張でありまして、それは憲法改正をめぐる政治的な論争であります。私は、わが国憲法規定はこういうふうになつているということを教えるということは初めから何もさしつかえない、かように考えている。
  49. 野原覺

    ○野原委員 再軍備をしないことになつているんだ、ということを教えることはよいと申されますが、実は御承知のように再軍備反対を唱えている政党が今日あるわけなんです。この九十九条の趣旨に従つてあくまでも憲法を擁護しなければならぬという政党があるわけです。従つて第九条の憲法を、つまり再軍備反対ということを先生が子供たちに話した場合に、たまたまそういう政党があるために、この教師はいわゆる特定政党の政治的主張をしたのであるというようなことに断定をされるならば、憲法規定というものを教師は教えるごとすらもできないということになるわけなんです。大臣はこの憲法規定を教えることだけならばよいと申しますけれども、あなたの頭の中のその考え方によりますと、たまたま特定政党がそういう政治的主張をしている、従つて実は教えることすらも許さないのだ。憲法に関してとにかくある政党が、共産党でも何でもよろしい、自由党でも、とにかく憲法に関してある何らかの主張をした場合には、一体公務員というものは、この憲法を尊重し擁護することの義務を負うというこの規定に反した行動をしなければならぬ、ということにあなたの御意見はなるわけですが、よろしゆうございますか。その通りでよろしいですか。
  50. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、憲法を改正しなければならぬという意見がかりにあつたとして、その意見を述べるということは、第九十九条に違背するものとは思わないのであります。先ほど申し上げましたように、憲法をそのまま規定を残しておいて、そうしてそれに違反することでも何でもいいからやつちまえ、こういうことを言う者があれば、これは明らかに第九十九条に違反する。しかしながら、憲法を改正した方がよろしい、こういう主張をするということが第九十九条に違反するとは私は思わないのであります。もし第九十九条がそういう主張をすることまでも押えつけてしまうということであれば、これは野原君がもしさような解釈をおとりになるとすれば、第九十九条というのは、いわゆるこの憲法を千古不磨の宝典にして動きのとれないものにして、わが国の政治家の政治的な意見の発表をそれで押える、そうしてわが国の政治の進歩をとどめるもとになる。こういうふうに私は思う。
  51. 野原覺

    ○野原委員 たいへん大臣は私の質問を誤解されている。私は教師憲法の改正の主張をすることができないというようなばかなことは言つた覚えがない。ただ憲法に書かれてあることを忠実に守る教師があつた場合に、たまたま特定政党がそういう主張をしているからといつて、それにひつかけて教育中立性を阻害したというような考え方でその教師に臨むことがいけない、ということを言つているんです。よろしゆうございますか。憲法の改正を主張することはあなたは何らさしつかえないじやないか、こう言う。それがさしつかえないごとく、憲法規定されてあることを尊重し擁護して、あくまでもこれに信念をもつて教育する教師が一体何がさしつかえがあるでございましよう。何にもさしつかえないのです。ところがあなたの先ほどの高津委員に対する御答弁を聞いておりますと、あたかもさしつかえがあるかのような、はつきりあなたはそういう政治的主張をある特定政党がやつている場合には困るのだ、そういうことがあつた場合には憲法に書いておつてもこれはできないのだ、こう言われるので私は質問をしているわけであります。重ねてもう一度元にかえつてお尋ねをいたします。再軍備反対という教育は先生はできないのかどうか。明確な御答弁を願います。
  52. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知の通り軍備をすべきかあるいはすべからざるか、これはわが国の近年の上下を通じての一番大きな問題として扱われている政治的な問題であります。そこで、たまたまその政治的な問題をとらえて、そうしてこれはわが国の朝野にわたり、あるいは各政党政派を通じて非常な関心をもつて論争されている、近年における一番大きな政治問題になつている。これは憲法軍備をしないのだということにきめてある点は明白であります。これは現状がそうであります。ただ現状はこうなつている、ということを説明することはむろんさしつかえない。ただ再軍備をするということはいけないのだ、こうせねばならぬとか、つまり将来の問題について政治的な論争になつていることを取上げることはよろしくない。こういう意味を申し上げているのでありまして、その辺の言い方が多少不十分なために誤解を招いているのじやないかと思うのであります。この憲法はむろん尊重して、軽々しく変更すべきものでないことは常識であります。しかしながら憲法自体がその改正というものを予想している。憲法自身の中に改正の場合の手続を規定している。でありますからして、これは改正すべきものであるか改正すべからざるものであるか、これが政治的な論争になることは当然であります。それを改正しなければいかぬと言うのはよろしくない、こういうことにはどうしたつて私はならぬと思うのであります。ごく早い言葉で申しますと、青年学級を開いて、地方青年を集め七、そうしてどうしてもわが国は再軍備をしなければならぬのだ、こういうことを教えることはよろしくない。同時にまた絶対に再軍備をしてはならぬ、こういうことを教えることもよろしくない。それは青年学級をして一種の政壇演説会にしてしまうのであります。私はさようなことは困る、少くともこの法律においては期待しておらぬ、こういうことを申し上げているのであります。
  53. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、私汁これ以上質問はいたしませんが、はつきりここで確認しておきたいのであります。再軍備に関する問題は今日政治的論争の中心になつているから、教師が再軍備反対の教育をすることはいけない、こういう御見解であると承つてよろしゆうございますか。これは確認でございますから、よろしいならよろしいでいいです。
  54. 大達茂雄

    大達国務大臣 わが国の現在の情勢におきましては、再軍備反対という主張を青年に教え込むことはよろしくない。同時にまた再軍備をしなければいけないのだ、この主張を教え込むこともよろしくない。(「これは大問題だぞ」と呼ぶ者あり)
  55. 松平忠久

    ○松平委員 非常に重大であり、かつこの問題は現実の問題として教師が非常に困る場合があると思うのです。従つてもう少し、確かめておきたいと思うのでありますが、現行の憲法において再軍備を否定している。従つて教師が九十九条の公務員の憲法遵守の義務に従つて軍備はいけないのだ、こういうふうに教えることは憲法違反にはならない、また教育中立性の違反にもならない、こういうふうに思いますが、その点はさしつかえありませんか。——そうでありますならば、代議士も公務員でありますが、たまたまその代議士が青年学級に頼まれて行つた場合において、それと同様のことを講義した場合には、かりに代議士の所属の政党憲法擁護、再軍備反対ということでありましても、公務員たる代議士の資格として行つた場合にはさしつかえないと思うのですが、その点はいかがですか。
  56. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほど申し上げましたように、わが国憲法はかようなことになつておるということを説明することは何もさしつかえない。
  57. 松平忠久

    ○松平委員 青年学級の学習内容は、政治教育を含んでおりますかどうですか。
  58. 大達茂雄

    大達国務大臣 含んでおると思います。
  59. 松平忠久

    ○松平委員 政治教育を含んでおるとするならば、青年に対して、青年学級において政治に対する批判力を与える教授はさしつかえないと思いますが、その点はいかがですか。
  60. 大達茂雄

    大達国務大臣 抽象的に政治に関する一般的な知識を与えて、青年をして政治を批判する力を養わせる、これはさしつかえないと思います。政治教育とはさようなものであると思います。
  61. 松平忠久

    ○松平委員 政治教育とはさようなことであるとするならば、その政治教育一つとして、再軍備とか——軍備の問題も私は政治問題の一つであると思うのですが、そういう再軍備等を含む政治問題について批判力を与えるために、むしろ青年に対して正しい知識を与えるためにいろいろな意見を教えるということの方が、青年学級目的に合致しておるというふうに思うわけですが、その点はいかがですか。
  62. 大達茂雄

    大達国務大臣 それはさしつかえないと思います。
  63. 松平忠久

    ○松平委員 そうであるならば、特定政党の主張する再軍備反対であろうが、あるいは再軍備賛成であろうが、そういうものを禁止する必要はないと思いますが、その点はいかがですか。
  64. 大達茂雄

    大達国務大臣 私が申し上げるのは、教育がある一派に偏することになるかならぬか、これは具体的な場合の判断でありますが、一党一派の主張に偏する結果を来してはならぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  65. 松平忠久

    ○松平委員 そういうことであるならば、偏しない程度において特定政党の主張を教え込むということは何らさしつかえない、そういうことになりますが、それでいいですか。
  66. 大達茂雄

    大達国務大臣 偏しない程度と言われるけれども。偏しない程度において特定政党の主張を教え込むということは、すなわち偏するということであります。
  67. 山崎始男

    山崎(始)委員 この問題は重要でありますから、私別な角度からお尋ねしてみたいと思うのでありますが、教育基本法の八条の、教育中立性というこの規則が、青年学級を実際に運営するにあたつて適用されるのでありますか、されないのでありますか。
  68. 大達茂雄

    大達国務大臣 あれは「学校は」とありまして、学校教育についての規定であります。これは毎々説明申し上げたように、いわゆる学校教育の範疇には一応入らないものでありまして、社会教育として扱われておるのであります。従つて教育基本法第八条の適用がない。それに対応してこの十一条の規定が法律案に盛られておるわけであります。
  69. 山崎始男

    山崎(始)委員 教育基本法の第八条の第二項の教育中立性の問題は、ただいまの文部大臣の御答弁では、これは学校じやないんだから適用されない、こうおつしやつたのではありますが、そうすると、青年学級という一つ教育の場というものは、教育基本法の八条二項の、いわゆる中立性規定に関する教育の場ではないという御解釈ですか、そのように今の御答弁は聞かれるのであります。
  70. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育基本法の八条第二項は、「法律に定める学校は」とあります。でありますから、青年学級というものが、社会的の普通の観念からいつて学校と認むべきものであるかどうであるか、これは議論がありましよう。学校というものを、ただ教育を教える場所である、こういうふうに簡単に解釈すれば、一般的な学校という観念に入るかもしれません。ただ第八条の規定は、「法律に定める学校は」という一定のわくをはめておりますから、青年学級というものは入らぬ、こういう意味であります。
  71. 山崎始男

    山崎(始)委員 実は私がこういう問題をお聞きしていますことは、青年学級運営されますると、初期の講師は、おそらく大部分が現在の義務教育学校に従事しておる先生である、あるいは高等学校の先生方が実際に教えられる衝に当られると私は解釈するのであります。そうすると、ただいまたまたま話が再軍備の問題になりましたが、再軍備あるいは再軍備でないとかいう問題にかかわらず、教育基本法の八条の教育中立性の問題に関連いたしまして、この青年に教える先生の身分は、あくまで公務員でありますが、この人が、今言つた教育基本法の八条の教育中立性云々の教育の場ではないという解釈に基いて、もし政治的な発言があつた場合は、この教育基本法の八条の適用は受けないということに解釈してよろしゆうございますか。
  72. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは、ただいま申し上げましたように、八条の規定には、「法律に定める学校は、」とある。それで「法律で定める学校」とは何であるかというと、学校教育法第一条に、「この法律で、学校とは、小学校、中学校、高等学校、大学、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする。」こういうふうに形式的にこの法律に定める学校というものを限定してあるのであります。従つて青年学級というものは、少くともわが国の法律の上においての学校ではない。従つて教育基本法の第八条の規定は、青年学級には適用がない、従つてそれに照応する規定をこの十一条に設けてある、こういうふうに御了解をいただきたい。
  73. 山崎始男

    山崎(始)委員 そういたしますると、学校の先生が、かりに講師に頼まれて教える場合に、政治的な言があつた場合は、もとより取締られることだろう。文部大臣の今日までの御答弁の中から推察いたしまして、あなたのお考えならば、お前は不都合じやないか、こういうことを教えているじやないか、政治問題に論及しておるじなやいか、こういう問題が必ず起つて来ると思うのでありますが、その場合は何によつて取締られますか。
  74. 大達茂雄

    大達国務大臣 青年学級で、学校の教員がいわゆる特定政党の利害に関係するようなことを教える、こういう場合には、第八条の違反にはなりません。教育基本法の第八条の規定に違反したというわけではないのでありまして、それはこの青年学級の法律によつて是正せられる、こういうわけであります。
  75. 山崎始男

    山崎(始)委員 そういたしますと、あくまで教育基本法の八条の適用は、もしそういう場合が起つても受けないということになるわけですね。
  76. 大達茂雄

    大達国務大臣 その通りです。
  77. 山崎始男

    山崎(始)委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、私がこういう問題を出しますことは、実はこの危険性は実際の運営にあたつて非常に起ると私は思う。なぜならば、青年学級の対象となるところの生徒と申しますか、年齢層を考えてみましても、これは御承知のように義務教育を出た者でありまして、おそらく年齢も相当高い者がいるだろう。そうなりますと一つの科目を教えましても必ず現実の問題が出て来る、時の政治の問題が出て来る、こういうことになりたがるのであります。たとえて言いますと、その青年学級をやつております付近にかりに軍事基地なら軍事基地という問題が現実にあるといたしまれば、先生はこの問題に対してどういう考え方をしているか、これはどういうふうな考え方になるのが正しいりか、こういうような問題が出て来ることは私は避けることはできないと思うのであります。そしてそういう問題か出ましたときに、ただいまの大臣の御答弁のように、たまたま再軍備の問題で憲法九条の問題が引合いに出ましたが、今あなたが御答弁になつておるようないわゆる紙一重だという、こういう問題は義務教育の学生ならば紙一重でもつて学校の先生も防ぐ二とはできる、教えることはできると思いますが、年齢の点から考えますと、ちようど大臣の御答弁のように、まことに曖昧模糊として善処するとか、あるいは考慮するとかいうふうな態度をかりにその先生がとるならば、おそらくこういう青年学級はあおくさいからもうやめようじやないか、必ずこうなるのが現実なのです。私たちもよく青年学級をのぞいて現実に見たことがありますが、そういうなまやさしい答弁でもつて、もしその学校の先生がかりに軍事基地の問題、あるいは再軍備の問題を教え、あるいは子供の質問に対して答弁をしておつたならば、現実の問題はそんなことで満足するような年齢じやございません。私はそう思うのであります。ただいま大臣の御答弁を聞いておりますと、憲法九条の問題あるいは九十九条の問題にいたしましても、非常に重大であるのにかかわらず、非常に曖昧模糊としております。そうしてあなたのそういうことは悪いことだ、よいことだという判断が非常に境目であります。しかしながらただいまも言いますように、その年齢の層から見てみましても、そういう境目の問題でもつてその運営ができる。すなわち教えることができると思つたら青年学級は大間違いであると思う。そうしてまた同時にあなたが山口県の小学生日記じやありませんが、これは義務教育の生徒でありますから、私はここでかれこれ申すのではございませんが、少くとも相手が二十過ぎている実際の社会人をとらえて教える場合には、こういう問題はたびたび私は起つて来るだろう、そのときにもし大臣が今御答弁のようなものの考え方でもつて、この中立性云々の御判断の基礎にされるようなことでありましたならば、おそらくもう教えに行く学校の先生は恐ろしくつてこわくつて、いつ大臣からしかられるかわからない、いつ教育委員会からブラツク・リストに載せられるかわからないという現実の問題が必ず起つて来ると思う。それで私はただいま第一に教育基本法八条の解釈をお尋ねしたのでありますが、この点は非常に私は重要であろう、かように解釈いたします。それでありますから、きようは大分遅うございますので、この問題は非常に重大であるだけに、私は次の委員会にもう一度この問題を取上げて審議なさるように委員長にお願いをしておきます。これで私の質問をやめますが、これを取上げていただけますかどうか。
  78. 辻寛一

    辻委員長 理事会に諮りまして善処をいたします。
  79. 小林信一

    小林(信)委員 今の問題は青年学級関係からはずれて行くような形ですが、しかし青年学級の問題はやはり重大なる問題だと思う。大臣としましても御自分が一半の答弁をなさつているようでありますが、私たちにぴたつと納得できないところがあるのであります。どうかこの問題はあらためて真剣にやつていただくことをお願いして、きようはこれで打切つておきます。
  80. 辻寛一

    辻委員長 本日はこの程度で散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後五時二十六分散会