運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-20 第16回国会 衆議院 文部委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十日(月曜日)     午後二時六分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 天野 公義君 理事 坂田 道太君    理事 原田  憲君 理事 前田榮之助君       相川 勝六君    伊藤 郷一君       尾関 義一君    岸田 正記君       竹尾  弌君    今井  耕君       中嶋 太郎君    町村 金五君       野原  覺君    大西 正道君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部政務次官  福井  勇君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 七月二十日  委員大久保武雄君辞任につき、その補欠として  伊藤郷一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十八日  高等学校定時制教育及び通信教育振興法案(  中川源一郎君外十八名提出衆法第三九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  義務教育費国庫負担に関する陳情書  (第九三三号)  学校給食法即時制定に関する陳情書  (第九三四号)  教科書の国定制度反対に関する陳情書  (第九三五号)  私立学校教職員共済組合法制定促進に関する  陳情書  (第九三六  号)  同  (第九三七号)  同  (第九三八号)  同  (第九三九号)  同  (第九四〇号)  同  (第九四一  号)  同(第  九四二号)  義務教育制度に関する陳情書  (第九七七号)  私立学校教職員共済組合法制定促進に関する  陳情書  (第  九七八号)  同  (第九七九号)  教職員給与三本建案反対に関する陳情書  (第九八〇号)  義務教育費国庫負担に関する陳情書  (第一〇一一  号)  へき地教育振興に関する陳情書  (第一〇一二号)  積雪寒冷地帯における屋内体操場建設費国庫補  助金増額に関する陳情書  (第一〇一三号)  私立学校教職員共済組合法制定促進に関する  陳情書(第一〇  一四号)  同  (第一〇一五号)  同  (第一〇一六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  危険校舎改築促進臨時措置法案内閣提出第一  四七号)  公立学校施設費国庫負担法案内閣提出第一四  九号)  青年学級振興法案内閣提出第一三〇号)     ―――――――――――――
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  危険校舎改築促進臨時措置法案公立学校施設費国庫負担法案の両案を一括議題として、前会に引続き質疑を続行いたします。前田榮之助君。
  3. 前田榮之助

    前田(榮)委員 危険校舎の問題について同僚議象らいろいろ質疑が行われましたが、その中の、四十八万坪の危険校舎は大体五十箇年以上たつた建物及び十五箇年以下の弱朽の建物であつて、しかも当時それをどういう基準に決定したかという質問に対する局長お答えによりますと、建築基準法等使用禁止もしくは制限を受けておるもののように御説明になつたのであります。またたとえば白あり等の被害によるところの問題はなおその中に入る、あるいは四十八箇年、九箇年という、五十箇年に満たないものでも、五十箇年に非常に近いものであつて危険といわれるものがあるというようなことを言われたのでありますが、それではどうも五十箇年という線を確立されておるのかどうかというような点がきわめてあいまいなのでありますが、大体五十箇年以上の古い建物と十五箇年以下の弱朽の建物がすでに四十八万坪あるということは、御調査によつて確実なわけだろうと思うのでありまして、そういたしますると、他の被害等やあるいは五十箇年に近いものでそれと同等以上の老朽危険校舎というものがあるといたしまするならば、そう明確に四十八万坪というような線を引くということがはつきりしないのでありますが、この点をもう少し明確に御答弁を願いたいと思うのであります。
  4. 近藤直人

    近藤政府委員 お答えいたします。四十八万坪と申しますのは、これは府県の報告によりまして、建築基準法規定に照しましてきわめて危険であるからその使用を禁止するというもの並びにその使用制限するというものが集まりまして四十八万坪ということになつておるわけであります。しかしながらさような県の建築基準法による命令以外のものにつきましても、もとより危険なものがあるわけであります。その総坪数は、前回申し上げましたように百六十五万坪というものがあるわけでございますので、この百六十五万坪につきましては、ぜひ国から補助金を得まして急速に改築を進めたいというわけでございます。同時に四十八万坪は先ほど申し上げましたように、県が使用禁止もしくは使用制限をしておるものでございますが、これは五十年以上の老朽校舎並びに十五年以下の弱朽校舎の総坪数にも該当するわけでございます。従いましてわれわれの事務的な話合いにおきましては、五十年以上の老朽、十五年以下の弱朽が四十八万坪であると申しまして、それを四箇年計画で毎年十二万坪をやつて行くんだ、こういうことに話を進めて参つたのでありますが、御指摘のように五十年以上と申しますと四十九年は入らない、四十八年も入らないということでは、はなはだ困るではないかというごもつともな御意見もございましたので、この点につきましていろいろ大蔵当局とも折衝をいたしまして、事務的にはほぼそのわくをはずすということについて了承を得たのでありますが、なおこの点につきましては、大臣におきましても、聞くところによりますと閣議の際に発言をされまして、この五十年のわくを必ずしも確守する要はない、場合によつては四十八年のものも対象としてさしつかえないというやに伺つておりますので、一応この点は必ずしも年齢制限にとらわれないというように了解しております。しかしながら一方予算配分の場合におきましては、一応この五十年以上とか十五年以下の線がありますと、事務的には非常に機械的に行きまして、楽な面もございますが、必ずしも全面的にこの年齢制限を撤廃するということもいかがかと思われますので、先ほど申し上げました考え方も取入れまして、そこは慎重に考慮いたしまして、適当な配分をいたしたいと、目下その配分案につきまして検討中でございます。
  5. 前田榮之助

    前田(榮)委員 そういたしますと、五十年以上の老朽校舎、あるいは十五箇年以下の弱朽の建物が大体四十八万坪ある。また一面建築基準法等による使用禁止もしくは使用制限を受けておるものも四十八万坪程度ある。しかしながらこれは同一ではない。従つて部分は重複するということであるが、同一でないという関係から、この五十年以上の老朽校舎と十五箇年以下の弱朽校舎と、それから使用制限を受けておるものとを全部含めて、重複する分は一つにいたしまして、それで四十八万坪を越える数字が必ず出ると思うのでありますが、総坪数というものが明確にわかつておればお知らせを願いたいと思います。
  6. 近藤直人

    近藤政府委員 御指摘通りでございまして、四十八万坪を越えるものが出ると思います。しかしながら予算上におきましては四十八万坪の四分の一、十二万坪ということに相なつております。もつともこの十二万坪は、近く国会で御審議を願う坪数では約十万坪ふえまして、二十二万坪になるのではないかと思つております。もちろん御指摘のように坪数はふえるわけでございます。それは何坪かと申しますと、前回申し上げましたように百六十五万坪というものが一応私ども計算しております坪数でございます。ただ予算の査定の経過におきましては、一応四十八万坪の四分の一ということで計算して参つております。
  7. 前田榮之助

    前田(榮)委員 総数において老朽危険校舎と称されるものが百六十五万坪、しかし先般御答弁の中に、年々老朽校舎として増加されるものが一年に三十五万坪と御答弁になつたのであります。そうすると改進自由党共同修正予算案が十億円増加されて十二億円が二十二億円になりましても、二十二万坪だけになると思う。これがかりに四箇年継続いたしましても八十八万坪であります。年々三十五万坪の老朽校舎が増加いたしますと、年々三十五万坪の改築を行いましても、現状維持ということであります。そうすると二十二万坪だけやつたのでは、年々十三万坪の老朽校舎が増加するという計算になるのでありますが、そういうことで文部省が承諾され、そういう計画を立てられて、この文部委員会法律案を提案されることは、私は非常に心臓が強いと思いますが、老朽校舎解消についてどういう計画、どういう自信を持つておられるのか、この点を明らかに御答弁願いたいと思うのであります。
  8. 近藤直人

    近藤政府委員 御指摘のように、老朽校舎補助金予算が少いことは、まことに申訳ございませんが、ただ三十五万坪年々老朽になつて行くという数字につきましては、これはいろいろ見方があろうかと思います。一応計策上そういうことになるかもしれませんが、しかしてまたこれは全部国の補助によつてやるわけのものではありません。御承知のように単独起債によりまして、市町村が独自にこれを改築している、あるいは市町村自己財源によりましてこれを改築しておるという面もあるわけであります。三十五万坪全部ということになりますと、これはまことに厖大なものになりまして、国の補助がいくらあつても足らぬということに相なるわけであります。しかしながら相当部分は、やはり市町村財政の困難な現状におきまして、年々残つて行くことも事実であります。  これらの問題を将来どうすればいいかということにつきましては、実はわれわれの方でいろいろ研究を進めておりまして、その一案として公立学校施設金庫あるいは公庫というようなものをつくり、これに対して政府出資する。市町村もこれに応分出資をするということにいたしまして、一つのフアンドをつくり、これによつて年々資金を貸し付ける。あるいは場合によつて公庫起債発行権を持ちまして、公募債を発行するようなことにいたしまして、将来この問題を根本的に解決して行くということを実は考えているのですが、まだ成案に至つておりません。かりに年々三十五万坪の老朽が出るといたしますれば、これはまことにたいへんな問題でありますので、ただいま申し上げましたような案、あるいは他の案につきまして今後十分検討を進めたいと考えております。
  9. 前田榮之助

    前田(榮)委員 今の御答弁では、三十五万坪かりに出るといたしますならばというお言葉がありましたが、私は先般来聞いておりましたのは、三十五万坪程度出るということを、当局の方からお話があつたと思うのでありますが、それは当局ではなくて、当局はそんなに思つておらないのだとお思いになるのかどうか。この点をもう少し明確にしていただきたいと思うのであります。  それから今いろいろな、国庫補助によるいわゆる文部省の四箇年計画以外の資金の運営によつて、融資その他によつて行うということが考えられておるということでありますが、そういう計画は実際いつごろできる予定なのか。そういう計画はほんとうに具体的なところまで腹をきめてやるという強い意思があるのかどうか、この点ひとつ明確な御答弁を願いたいと思う。
  10. 近藤直人

    近藤政府委員 三十五万坪の話でございますが、ただいま義務制学校保有坪数が約千七百万坪ございますので、それが五十年で老朽になると仮定いたしますと、一年当り三十五万坪という数字計算上出るわけであります。しかしながらこれにつきましては、先ほど申し上げましたように、市町村財政自体において解決する面もありましようし、あるいは起債によつて解決する面もありましようし、また国の補助によつて解決する面もありますので、三十五万坪がまるまる国の補助に依存しなければならないということになりますと、これは厖大資金になりますが、先ほど申しましたように、市町村財政自体にこれをまかなう分がありますので、必ずしも三十五万坪というものを補助対象に考える必要はないのではないか、かような意味で申し上げたのであります。  ただいまの公立学校施設公庫考え方でありますが、これは私どもの方におきまして、実は一、二年前からこの案を研究いたしております。この案は、要するに政府出資をし、市町村もその保有坪数に応じて応分出資をするという案でありますので、これはどうしても市町村の全面的な協力なくしてはなかなか実行不可能であります。実はこれはかつてわれわれの研究過程におきまして、市長会、あるいは町村会の方にいろいろ話合いをしまして、この案を披露したこともあるのでありますが、まだその段階には達しませんので、実はそのままになつておるわけであります。しかしながらこの案につきましては、将来ぜひともさらに検討いたしまして、一層よい案をつくつて、将来公立学校施設の方面につきましては、すべてこの公庫貸付金をもつてまかなうというような方向にぜひ考えたいと強い考えを持つております。
  11. 前田榮之助

    前田(榮)委員 次にお尋ねを申し上げておきたいのは、公立学校施設費国庫負担法についてでありますが、この第三条に、その対象となるべきものの補助率の中で、公立学校施設災害復旧について二分の一を規定されておるのでありますが、大体災害復旧については、河川道路等災害復旧は、二分の一よりも多い率でやつている場合が多いのですが、なぜこの二分の一という基準を設けられたか。ことにこの二の、「高等学校及び大学については三分の一」と規定されておるのでありますが、これはいかなる基準に基いてこいう補助率規定されたか、この点お答えを願いたいと思います。
  12. 近藤直人

    近藤政府委員 公立学校施設災害復旧補助率でございますが、これは現在予算上の補助率が二分の一になつておりますので、予算に認められた範囲におきまして立法いたしました関係上、二分の一の補助率規定したわけでございます。もちろん予算折衝過程におきましては、絶えず私どもは他の公共土木災害補助率の例にならいまして、ぜひともこの補助率を上げることにつきまして要望して参つておりますが、ただいままでのところはそれが実現いたしませんので、二分の一にとどまつておる現状でございます。この点につきまして、なお私といたしましては、これはぜひとも補助率を上げて、もつと有利な国の補助を与えたいということを考えております。他の公共土木災害の例によりましても、ほとんど三分の二ないしは五分の四あるいは一〇〇%の補助率が出ておる例もございますので、この点につきましてはまことに遺憾だと思つております。しかしながら立法過程におきましては、やはり現在予算上認められておる補助率を基礎にせざるを得ないので、従いまして、ここに二分の一ということを規定したわけでございます。  それから戦災学校復旧補助率でございますが、これは小中学校は二分の一、大学高等学校は三分の一とございますものも、これも現状に即しましてそのまま規定したわけでございます。なぜその差等を設けるかと申しますと、やはり小中学校義務制であるから、大学高等学校は非義務制であるからという点で一応の区別を設けたのでございますが、これとても高額の補助率を認めるということはきわめて望ましいのでございますが、現状におきましては、さような区分になつております。
  13. 前田榮之助

    前田(榮)委員 高等学校大学義務制でないということも一応理由にはなると思うのでありますが、今日の地方財政立場からいたしますると、かかる戦災等復旧については非常に困難をしておる現状から見まして、はなはだ私は不当だと思うのであります。しかしこの点は後の問題といたしまして、その次の第三条の2に「前項各号の施設範囲は、政令で定める。」とありまして、どうもこういう場合に、政令で定める部面がこの法律の中にも相当出ておるのでありますが、政令でかつて文部省できめられた場合においては、われわれ立法者の方からいたしますと、せつかくわれわれが慎重審議をいたしました法律が、政令のために、いわゆる仏をつくつて魂を入れないようなことになつては、われわれ立法者といたしましては非常に遺憾に存ずるのでございまして、政令ではいかなることを定めようとされておるか、その政令に対して何か腹案があるならば、今のうちに明確に示しておいていただきたいと思うのであります。
  14. 近藤直人

    近藤政府委員 第三条の第二項の点でございますが、これは施設範囲につきまして政令規定する予定でございます。その施設範囲と申しますのは、災害復旧につきましては、建物及び設備工作物土地等を考慮においております。しかしながら現状におきましては、予算上は建物のみでございまして、その点はわれわれは非常に不便を感じております。現実には学校校地工作物あるいは設備というものについても、ぜひ災害復旧対象に取上げたいというのがわれわれの希望でございますが、遺憾ながら現状においては建物のみが災害復旧対象になつておる次第でございます。従つてこれを政令に表わす場合においては、やはり現状通り建物のみを政令に書かざるを得ないのではないかというふうに考えられますが、この点については今後ともわれわれは努力いたしまして、この政令にぜひ工作物設備あるいは土地等を含めたいと考えております。しかしながら、もしかりに法律にその施設範囲を明記することにいたしますれば、これは方法としては一番はつきりした方法じやないかと考えております。
  15. 前田榮之助

    前田(榮)委員 戦災復旧につきましては、これはすでに実情が動かすことのできないことになつておるから、従つていろいろな関係が、現在まで行われた関連性があるというような理由もあると思うのでありますが、災害復旧については、今日の九州並び南海地方災害を見ましても、きわめて深刻なものがあるのであります。従つてこの予算関係についても、災害復旧予算通常一般会計予算とは別な角度で考えてよろしい性格を持つておるのでありまして、こういう場合において、従来通り建物だけなどということで、今こういう案を文部省が提案するということは、私らとしてはどうも不可解千万に感ずるのであります。文部省自体現状災害復旧程度を十分認識されて、みずから進んで土地設備その他工作物等について、全面的に災害復旧補助対象にすべきであるということは、だれしもうなずくことだと思うのであります。こういうことについてどうも文部省予算をとるのが下手なように感じておるのであります。ただ大蔵省との折衝関係でやつたにいたしましても、この災害は今から後の問題でありまして、今までの予算関係ではないのでありますから、なぜここを明確にしなかつたかということについては、私らは何としてもうなずけないのであります。予算をすでに計上されておつて、その範囲内でまかなわなければならぬ関係上、やむを得ずいやいやながらやつたというならば、われわれもあなた方の立場を了とする点があるのでありますが、災害の実際から見まして、こういうことではたして中、小学校並びに各県の種々なる学校復旧ができるか、こういう点いかなる見通しを持つておるか、はつきりしていただきたいと思うのであります。
  16. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま災害復旧対象の問題についてお話がありましたが、まことにごもつともな御意見でございます。実はこの法律案を提案した日の直後ごろ西日本の水害が起つたわけでございまして、この水害被害から考えて、御指摘のように、災害復旧対象建物のみならず、土地にまでも拡張しなければならぬということを痛切に感じておるわけでございます。今回さらに土地にまでも拡張いたしまして、被害学校を救済いたしたいと考えております。それから補助率でございますが、この点についても、今度のような大災害においてはぜひとも三分の二の補助率を適用いたしたいと考えております。
  17. 前田榮之助

    前田(榮)委員 政令で定める云々はほかにもありますが、大体同様でありまして、われわれはこういう法律はできるだけ避けたいと思うのでありますけれども、この点はなお後に譲るといたしまして、最後にお尋ね申し上げたいのは、この法律の中で第十一条の問題であります。「災害による被害大破程度に達しないもの」は適用しない範囲に入れられておるのであります。しかして、「著しく維持管理義務を怠つたことに基因して生じたものと認められる災害に係るもの」ということもあるのであります。それから十三条に「この法律に定めるものの外、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。」ということで、これも今の政令の問題が出て来るのでありますが、問題は大破に達しないというその大破という基準はどこにおかれておるか、私は大破とか小破とかいう言葉自体法律の体裁からいつても適当な言葉ではないと思うのでありまして、建設省関係道路河川等の場合におけるこういう災害対象には、一箇所十万円を越えたるものとかいうように規定されておるのでありますが、大破とか小破とかいわないで、あるいは十万円にするか、二十万円、三十万円にするか、あるいは五万円にするか、やはり工事量というか金額によらないと非常にここはあいまいになつて来るおそれがある。そのときの感じでやられることは、結局地方行政庁としても大破に入れてもらうためにいろいろな運動をしなければならぬということから、余分な費用を使い、中にはこういうことから忌まわしい結果が生れるおそれが多分にあると思う。こういうあいまいな文句を使うべきものではないのでありまして、大破という言葉自体はどうも賛成できませんが、大破基準はどこにおくか、こういう点を明確にしていただきたいと思います。
  18. 近藤直人

    近藤政府委員 大破基準と申しますと、建築基準法規定によりまして、建造物主要構造部分が破損した場合をいうわけであります。しかしながら御指摘のように、これは確かに必ずしも明確でないということは申されます。と申しますのは、ただいま予算補助対象にいたしておりますのは、全壊半壊大破——中破以下はいかぬということで、全壊半壊大破補助対象予算上坂上げておりますので、その関係上、大破までとするという趣旨でございますが、これは現実会計検査に参りまして、これは大破であるか、半壊であるか、中破であるかというような判定は非常に困難でございます。これは、会計検査の方から、絶えず、そういう苦情と申しますか、批難がなされるわけで、この点は、われわれもそういうことを痛感しておるわけでありますが、一応現状におきましては、全壊半壊大破というようなもので補助対象を考えております関係上、ここに規定いたしました。たとえば、これを公共土木災害にとつて考えますと、公共土木災害におきましては、市町村工事につきましては、一件十万円に達しないものは対象にしない。それから、府県工事につきましては、一件十五万円に達しないものは対象としないということで、金額制限してございますので、割にすつきりしておることは事実でございます。しからば学校につきましても、その金額でもつて制限したらどうかという御意見は、これはごもつともな御意見だと思います。ただ根本的に公共土木と申しますると、道路とか、堤防とか、河川とか、そういつたものが代表的だろうと思いますが、それと学校施設とは、ちよつと趣が違うのではないかという主張が、実はあるわけでございます。と申しますのは、たとえば道路につきましては、これは不特定多数の者がこれを利用する、しかしながら、その道路を修築するということは、非常な経費がかかるし、これは市町村負担ではとうてい耐えられないというわけでございます。これに対して学校につきましては、義務制学校は大体学区がきまつてつて、その周辺の子弟がこの学校に通学する。大体そのまわりの者がこれをおもに利用することになるという点は、道路とやや性質を異にするというような見解から、公共土木災害の例と、必ずしも同じには行かないという主張が、一部にあるわけでございます。従いまして、実はこの立法を今日お願いしておるわけでありますが、その前に公共土木災害国庫負担法の中に、学校施設ということを入れたかつたのでございます。かつて、それを主張したこともございましたが、ただいま申し上げましたように、本質的に性質が違うのではないかというようなこともございまして、実はそのままになつたわけでございます。今日この法律を提案いたしまして、単独に学校施設につきまして、国庫負担法を設けますことは、私は非常な進歩であろうと思うのであります。また一面そういうふうにせざるを得ないのではないかと思うのでございますが、その際に、ただいま申しましたような意味におきまして、必ずしも公共土木災害の場合には同じように行かないということがございますので、実は、かような規定を設けたのでございます。もつともこの説につきましては、いろいろ御批判もあろうかと思いますが、一応われわれの方で立案いたしました趣旨はさような意味でございます。御了承願います。
  19. 前田榮之助

    前田(榮)委員 どうも今のお話を聞いても納得が行かないのでありますが、大破、中破、小破というようなことの限界等につきましても、いろいろ問題があると思うのであります。すでに御承知だろうと思うのでありますが、公共土木につきましては、議員同僚の仲間にも、いろいろ問題を持つておるのであります。たとえば有名な天狗橋事件等のようなものがあつて、橋が全部こわれておらないものを、全部こわさないと改築対象にならないというので、無理に人為をもつてこわした違反行為が行われておるのであります。従つて大破、中破というようなことを言いますと、もう一つここがこわれてくれれば大破になるのだということ等が行われたときには、たいへんな問題になるのであつて、そういう犯罪等を起すすきを新しい立法の中に与えることは、これは立法者の非常に考えなければならぬ問題なのであります。従つてそういうすきがなくても済むように、大破、中破、小破というようなことを言わないで、十万円の被害であるとか、二十万円の被害であるとか、その被害についてはこうするのだということが、この法律の条文に明確にされておりますならば、犯罪等を起すすきが漸次解消されることになると思うのであります。従つて、この問題の、かような大破というようなことは、公共土木の際において、学校を加えるべきであつたが、加えられなかつたという実情等を考えてやつたとおつしやるのでありますが、文部省としては、これを金額に出したいという気があるのかどうかという点が一点と、この法律を提案する前に、文部省金額ということでつつぱつたけれども、大蔵省はがんとして聞かなかつたというような事情があるのか。今あなたは明確にした方がいいということを申されておるのですが、その申されておることが実現を見なかつた。それは大蔵省が頑迷にしてこういうことになつたのか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思う。
  20. 近藤直人

    近藤政府委員 大蔵省が頑迷でこうなつたのではございません。私どもは従来この点につきまして、金額で片づけられるということにつきましては、要求して参つておりませんので、大体先ほど申し上げました通りに、全壊半壊大破というような考え方で来ております。ただ要求いたしました点は、大破のみならず中破という点までも考慮してもらいたいということは要求して参つております。ただ金額でもつて適用しないものを押えるという点につきましては、今日、実は考えておりません。と申しますことは、先ほど申し上げましたような見解もございますし、一応学校の点につきましては、全壊半壊大破、中破というような考え方が妥当であろうということから参つております。
  21. 前田榮之助

    前田(榮)委員 最後に、今の答弁の中の、学校公共土木とは性格が違う、道路は一般国民が利用する、あるいは河川はその影響が一般国民あるいは産業その他の関係に影響するという点は、影響の範囲が広いと狭いとの相違なのであります。ただ学校は、学校を利用するのは生徒児童で、利用する者の数という点から言いますと、少いかもわかりませんが、それはやはりその家庭に影響し、その村落に影響するのであつて、ただ児童や生徒だけというような物の考え方、見方というものは、今日の教育を何と考えておられるのか。公共土木学校とは違う性格を持つているなどというような考え方自体は、私は納得行かないのであります。古い言葉で言いますならば、百年の計を立てるは人を得るにありといつて、人間こそが基準であつて、人間こそが一番大事であるという教育の問題を、文部省がむしろ軽視するような考え方で取扱うという観念は、私はどうも納得が行かない。公共土木等よりも一層これは重大である。こういう観点からすべて予算折衝に当り、計画に当るべき立場にあられる文部省でなければならぬ。そういうようなことに、もう少し根本的な理念の上においてはつきりした答弁ができるかどうか、この点を明確にしていただきたいと思う。
  22. 福井勇

    ○福井政府委員 前田委員お答えします。このお尋ねにつきましては、文部行政に対する明治、大正、昭和を通じての一つの問題でありまして、これは文部当局自体といたしましては、決してお申しつけのような弱腰であり、かつ文部行政が一般公共土木よりも下にあるかのごとき印象を自体が認め、そうして手控えをしておるというようなことは断じてございません。これは国会におきましても、また一般外部においても、文部行政といえばやはり通産だとか、農林というものを先に置いて、大臣にいたしましても、ややもすれば国会内においても、この委員会において伴食だという発言があるくらいでありまして、従つて文部当局といたしましては、誠心誠意この公共土木などと学校教育の問題を同列に、一生懸命考えておるのでございます。どうか委員各位におかれましても、格段の御協力と御指導をお願いしたいと考えるのでございます。私たちの心がまえはそういうふうにあるのでございます。
  23. 前田榮之助

    前田(榮)委員 政務次官の気持はよく了解することができる。ただ、今私が質問申し上げたのは、公共土木学校とは、いわゆる災害復旧について補助対象が同率でいいじやないかというわれわれの気持から申し上げておるのであります。それがいかにも違つて学校は一部の国民が利用するのであるからやむを得ないのだという答弁があつたから、それはもつてのほかだ、こういうことなのであつて、ほんとうに学校は他の公共土木とは比重において非常に軽いところがあつて、やむを得ない事情があるとお考えなのかどうか、その点を明確にしていただいておいて、われわれがこの法律案をいかにすべきかということについて、一つの重大な参考にすべき重点が置かれておるということから答弁を求めておるので、この点を明確にしていただきたいと思うのであります。
  24. 近藤直人

    近藤政府委員 私の言葉が足りませんので、たいへん御迷惑をおかけしていると思います。私は決して文教が他の行政に劣るというようなことには考えておりません。文教は他の行政施策よりもむしろ上位にあるというふうに考えておりますので、その点御了解いただきたいと思います。
  25. 辻寛一

    辻委員長 相川勝六君。
  26. 相川勝六

    ○相川委員 今の前田委員の御質問に関連して一言だけお伺いいたします。この前のときにも私ちよつと御質問をいたしまして、政府委員の御意向はほぼわかつたような気もいたしますけれども、まだはつきりとわからないので、くどいようでありますが御質問をいたします。と申しますのは、危険校舎の問題でございますが、今政府委員の方では、予算編成の上からも、事務執行の上からも、大体五十年以上の危険校舎、十五年未満のバラック校舎を対象に考えておられる。しかもそれ以下でも、四十八年とか、四十九年とか、とにかく五十年に満たぬものでも現実に危険であれば、それらも入れていいのじやないかというような話もあつた。こういうお話で、ほぼ文部省の御意見はわかつたような気がいたします。要するに大体の準則をおきめになるのにはこれでいいだろうと思うが、本質的に言えば、危険で放任できないという校舎を中心に考えるべきだと思う。それがやはり五十年以上、十五年未満のところに最も多い。こういう筋合いだろうと思う。そこでこの前、白ありの害についてお話を申しました。これは現地で御調査もできておることと思いまするが、同じ町で五十年以上の校舎は老朽のために倒れないが、白ありのために五十年未満のものが何箇所も倒れてしまつておる。これは単に年限だけで言つてつたのではだめで、危険なところは、五十年未満のところでも幾つでもある。そういうことで実際放任できないのがあるのです。この白ありの害を受けているところは全国で局部的なものでありまして、その数はごく少数と思いますけれども、実際関係者から言えば非常に重大問題であります。それで白ありにかかつたらすぐ危険校舎とは言えませんけれども、白ありの害が著しくして危険の状態に立ち至つたものについては、五十年未満であつてもこれを補助対象にする、こういうふうに御方針をおとり願いたいと思うのですが、明らかに御答弁を願いたいと思う。
  27. 近藤直人

    近藤政府委員 お話の、白ありの害によりまして校舎が危険になつているというものを補助対象にするかしないかということでございますが、ただいまお話のような例でございますれば、これは危険校舎対象にしてさしつかえない、かように考えております。
  28. 辻寛一

    辻委員長 小林委員
  29. 小林信一

    ○小林(信)委員 大分いろいろな角度から御質問申し上げて明らかになつておるわけでございますが、なお私の了解できない点を二、三御質問申し上げます。  第一番に老朽校舎の方の問題ですが、法案の目的であり、第一条に害いてあることを考えますと、地方財政が今非常に苦しいから、地方財政の実体を考え、それから危険校舎現状をながめて、どうしてもただちに何らか対策を講じなければならぬ。だからここにこういう法律をつくつて、そういう校舎を解消するのだという目的が書いてあるのでございますが、しかし現実の問題としまして、地方財政というものは、小学校の校舎を新しく建てたり、中学校の校舎を建て直すということはなかなかできない状態にある。そうして実際校舎を建てかえようとする場合には、それが老朽であるとか、あるいは危険であるとかいう状態に入らなければ、校舎の改築というものはめつたにないわけであります。してみますと、これは臨時的な一つの措置法でなくて、もうすでに恒久的なものとして今後当然考えられなければならないものだ、こう考えるのでございますが、文部省として何ゆえ臨時措置としての法をとられたか、この点をお伺いいたします。
  30. 近藤直人

    近藤政府委員 危険校舎に対する国の助成の方法でございますが、これは御承知のように、起債をもつて今日まで参つたのでございます。と申しますのは、これは義務制学校の設置は市町村義務であるという建前から、市町村がこれを設置する。その場合に市町村財政が困難しておりますから国が援助する、援助の形式は起債をもつてするということで今日まで参つております。しかしながらその援助は、起債の援助ではとうていこの老朽校舎改築はできない。百六十五万坪もありますると、とうてい起債だけの援助では、市町村財政の困難な現状におきましては十分でないということから、二十八年度から特に国がこれに補助金を与えて、改築を促進するということにしたわけでございます。国が補助金を与えて改築を促進するという坪数は百六十五万坪でございます。この百六十五万坪は、御承知のように戦争中非常に市町村財政につきまして国が迷惑をかけた。たとえて申しますれば、資金調整とかあるいは資材の統制とか、いろいろ市町村が自由にできる市町村の権限を束縛し、市町村が非常に苦しい立場にあるために、老朽校舎改築も一時はばまれておつたというような事情、あるいは戦争中に軍隊がこの校舎を使用したというようなこと、あるいは学校林の供出を命じたというようなこと、こういつたことによりまして、国も相当これに対して責任を負わなければならぬ建前から、この危険校舎改築に対して、国が補助金を出して改築を促進するということになつたのでございます。従いましてこの法律案におきましては、その分に対して国が特に補助をして改築を促進するという趣旨が現われておるのでございます。
  31. 小林信一

    ○小林(信)委員 御説明よくわかりますが、しかしあくまでも小学校の校舎、あるいは中学校の校舎もそうでございますが、その責任というものは地方の町村にあるのだ、こういうことは、これはただ慣習からの問題でございまして、今憲法に明示されてあります義務教育の無償という精神から考えて参りますと、そうした慣習にとらわれることなく、そうして教育の機会均等が行われるようにするということが、これが文教政策の根本問題でございますから、今のような御趣旨よくわかりますが、その方針をいつまでも持つておいでになれば、憲法の精神、そうしてほんとうに要望いたしております、地方財政に支配されることのない教育の機会均等というものを実現できぬわけでございまして、今のような考えでおいでになる以上はそれが促進されない、こういうことを私は憂えるのでございまして、そこに文部省としては考えていただく点がないかどうか、もう一度お伺いいたします。
  32. 近藤直人

    近藤政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、これは義務制学校の設置の義務市町村にありますということを申し上げたのでございます。その根拠といたしましては、学校教育法に規定しておる通りでございまして、国はこれに対して補助をする、援助をするということを申し上げたのでございます。しかしながら御指摘のように教育基本法あるいは憲法の精神から申しまして、御指摘のような御趣旨よくわかりますので、この点につきましては将来とも検討を進めたい、かように考えております。
  33. 小林信一

    ○小林(信)委員 校舎が改築される場合は決して常時の形で改築されることはめつたにない、もう危険であるとか、老朽であるというときでなければ地方の財政をもつてしては改築するということはできないわけであります。そうするとどうしても今後の中、小学校改築というものは、こういう法律の建前によつて補助されなければ改築できないと思うのでありますが、今三年間とか四年間とかの計画でもつて、何百万坪かの予定のものを改築して行くという御方針でおられるけれども、私は、文部省に今後この法律が恒久的なものになつて行くことを希望するものでございまして、やはり地方財政で責任を負つて行くという以上は、財政の窮乏する町村では、もし改築を余儀なくされましても、十分な校舎を建てることができない、十分な施設をすることができないということになれば、貧しい村に生れた子供、貧弱な県に生れた子供というものは、これはもう不幸な目にあわなければならない。従いまして学校教育法にいかにそれが規定されておりましても、こういう法律をなるべくもつと恒久的なものにして、順次全額国庫負担によつてこれらの施設までも国家で保障されるようにするべく努力していただきたい。今の局長のお考えは、あくまでも法律にのつとつた御説明でございますが、もつと日本の現状をながめますと、国家として大きな関心を払つてこういう問題を解決しなければならぬことは十分お考えのことと思いますが、こういう法律はほんとうに国民の期待するところではない。やつてもらいたいことはやつてもらいたいが、もつと根本的に一日も早く教育の機会均等の建前からして町村無償の形がとられなければならぬというようなことが、一般国民の要望であることを十分御承知願いたいと思うのでございます。そういう意味から、たといこれは臨時的な措置法であつても、将来これがもつと内容が整い、そうして力強くこの施設の問題に対して国が手を差延べるようにして行くべき法律の精神でなければならぬということを考えまして、この目的にうたつてあるものは、ほんとうに形式的なものだ、表面的なものだとして私は考えて行きたいのでございます。十分当局においてもお考えのことと思いますので、あえてこれ以上御質問申し上げません。  さらに政令につきましていろいろ各委員から疑義があつたのでございます。私も、ここで政令としてわれわれが意見を述べることのできない範囲でございますので、今いろいろ当事者が困窮している点につきまして、今後この法律を施行する際にどういうふうに対処するかを少しお伺いしたいのでございます。坪単価の問題でございますが、おそらくこれも政令にも定められると思います。先ほど申しましたように、全国の町村財政は一様ではない。また物価というようなものも諸所において非常に異なつておるわけでございますが、今回も一様に坪単価というものを取扱つて行くのかどうか。地方の実情が相当勘案せられるかどうか。木材は、昨今におきましては、日本の各地における単価は非常に差異があるのでございます。こういう点が相当考慮なされなければ、きわめて形式的なもので終るのではないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  34. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま政令で考えておりますのは、この危険校舎法律につきましては補助率の点でございます。補助率の点と、その他実際これを実施する場合にいろいろ問題が起りますので、その実施を円滑にするために、必要な事項は政令できめるというふうに考えておりまして、単価の点は考慮の外に置いておりましたが、ただいま御指摘のようなお話もございますので、その点を十分考えまして、もし政令にする必要がありますれば、政令に入れる。そうして御指摘のような点を十分考慮いたしまして政令規定する、さように考えております。
  35. 小林信一

    ○小林(信)委員 私は、政令というのは非常にわれわれがくちばしを入れることのできないものについての意味でもつてお伺いしたのですが、別にその政令に入れろとか入れるなというような問題ではないのでありまして、個々の単価の問題が往々にして地方に参りますと引伸しをされる。二万何千円という単価でもつて補助が参りますと、これをなるべく潤いを多くさせるために、その単価を少くして配分するということが行われて、町村負担が非常に過重になるということが、その地方の物価とか、府県の財政事情から行われるのであります。やはりこれが実態に即して配分できることを希望する意味で申し上げたのでございます。  それから先日来〇・七坪の問題がたいへんに取上げられ、当局としての御意向等も漏らしていただいたわけでありますが、この〇・七坪は財政的な面からしてやむを得ないものと思いますが、これもできるならば文部当局がお考えになつておられるようなものにしていただきたい。そうすると財政的な制限がありますから、結局今度は恩恵を受けるところが縮小されるので、痛しかゆしでございますが、しかしできるならばやはりりつぱな完備したものをつくつて行くことが必要でございまして、文部当局がモデル校舎というものを指示し、これを督励して今りつぱな校舎ができつつありますが、一方にそういう要望をしながら、財政的には〇・七坪という、きわめて不自由なもので押しつけて行く。財政がゆたかなところでは〇・七坪の割当でもらつても、自力でもつてりつぱなモデル・スクールをつくつて行くことができるわけでありますが、こういう点についても相当御考慮を願いたいと思うわけでございます。そこでもしこういう問題が出た場合にはどういうふうに取扱つて行くかという問題を申し上げるのでございますが、ほんとうに老朽という状態ではないけれども、どうしてもこの際校舎の向きをかえたいとか、あるいは校舎の配列をかえたい。そうしてもう古い形式であるから、もつと新しい近代的な設備を持ちたいというわけで、校舎の改築計画するところがございます。ある程度もう老朽の状態に入つておるけれども、さりとて危険な状態ではないというものがございます。しかし地方の財政ではできないから、こういうものも今回のこの法律に該当させていただいて、町村負担を軽減して、改築あるいは新築を企画したいというものがあるのであります。これらは一切無視せられるのであるか、あるいはその状況によつては考慮されるのか、ここら辺は実際問題として相当出て来る問題だと思いますが、いかがですか。
  36. 近藤直人

    近藤政府委員 御指摘のような例になると、これは具体的に坪数その他について詳しくお話を伺いませんとはつきり申し上げられないのでございます。ただ御指摘のような例でありますと、危険校舎にも該当しない。危険校舎補助対象にも該当しないように思われるのであります。さればとて〇・七坪に不足分がありますかどうか、その点も調べてみませんと、はつきりしたことは申し上げられませんので、今ここではつきりした御返事は申し上げかねますが、なおそういう例がございますれば、後ほど伺いまして、十分御検討申し上げたいと思つております。
  37. 小林信一

    ○小林(信)委員 やはり坪数の問題で悩まされる問題なんですが、小、中学校の校舎の形態が、最近の新しいものは多少顧慮されておりますが、ほんとうに教育的に考えられた校舎というものは少くて、何十年来の形式がそのまま踏襲されておるのでございます。やはりこれも財政にからんで参りまして思うようには参らぬところもありますが、今回こういうようにいろいろな面で校舎の施設に対しますところの補助費が出るのであります。文部当局といたしましては、校舎の様式というようなものについてお考えにはなつていると思いますが、そういう点で御苦労なさつているような御意向等がありましたならばお伺いしたいのであります。
  38. 近藤直人

    近藤政府委員 お話の点はモデル・スクールの面かと思いますが、このモデル・スクールにつきましては私どもにおきましてこれを技術的に指導いたしておりまして、よりよき学校施設という見地からこれを検討いたし、その理想型を各市町村にお示しいたしまして、モデル・スクールを指導して参つていることは事実であります。ただその場合に、しからばモデル・スクールに対して国の補助が特別にあるかと申しますと、これは御承知のようにございません。ただその場合には例の六・三のいわゆる〇・七坪の不足分の補助金をもちまして、あわせてこのモデル・スクールを考慮するというような方針で指導して参つておりますので、技術的に指導しているかどうかという点につきましては、現に技術的指導をしておりますが、ただ予算の面につきましては格別予算を計上しているわけではありません。
  39. 小林信一

    ○小林(信)委員 こういう新しい財源等が出る場合等におきまして、何でも建物さえつくればいいということは、財政的に窮乏しております町村のやむを得ないところでありますが、しかし建てられれば二十年、三十年はそこに長い間制約せられるわけであります。そういう将来のことを考えて参りますときに、この建築ということは教育の環境として、非常に重大な問題であると思うのであります。それが何十年来一律の形でもつてとにかく勉強するところがあればいいというのでやつて参りましたし、それがやはり依然として踏襲されていることを考えますときに、財源を多分によけいにほしいことはもちろんでありますが、その苦しい財源の中からこれが順次改良、改善されるようにして行く御配慮が当局にぜひとも必要である。モデル・スクールという一つの様式を示して、あなたの自力でやれるならばおやりなさいという形式でなくて、御指導あるいはこれに対する御処置ががほしいと思うので、私はこういう点についても十分御考慮願いたいと思つております。  さらに公立学校施設費の問題でありますが、第十二条の第二号、三号の問題です。これを考えます前に第二条の二項を考えますと、災害とはこういうものである。これに該当しているものであつたならばというので、補助金対象が掲げられているのでありますが、その場合に「明らかに設計の不備又は工事施行の粗漏に基因して生じたものと認められる災害に係るもの」あるいは「著しく維持管理義務を怠つたことに基因して生じたものと認められる災害に係るもの」、こういうものは一つの管理とかあるいは設計する場合の不備とかいうような一部の人たちの行つたことに対するところの罰則のように考えるのでありますが、実際問題としては、校舎を失つたりあるいは校舎が大破した、そのために被害を受ける人の側には何ら問題がないのでありまして、こういう罰則的なものが存在してほんとうに罪のない学童あるいは町村の人たちを犠牲にするということは非常に忍びないわけであります。そういうふうに二号、三号を解釈して行つたのでありますが、何かはかに理由があつてこういう項目を持たすのか、この点の御説明をお願いいたします。
  40. 近藤直人

    近藤政府委員 第十二条の二号、三号でございますが、これは他の立法例にならいまして、たとえて申し上げますれば、公共土木災害国庫負担法にならいまして規定いたしたものでありまして、格別な理由はございませんが、実際問題といたしましては、この二号、三号の例によつて、たとえば災害復旧についてはこれを適用しない、復旧災害対象にしないというようなことはほとんどないように伺つておりますが、格別特にこの規定を設けて学校関係者を苦しめると申しますか、特に苦痛を与えるというような趣旨は毛頭ございませんので、ただ他の立法例にならいまして規定いたしただけでございます。
  41. 小林信一

    ○小林(信)委員 そういうお考えであるならば、なくなしたらどうかと私は思うのでございまして、今回の九州あたりの災害を見ましても、たといそれが設計の不備であるというようなことで追究されるならば、ほんとうに一部の人に対しては当然かもしれませんけれども、それを使つておる人たち、それの恩恵を受ける人たち全体に対しては非常に迷惑になるわけでございます。それからもう一つは、設計の不備あるいは工事施行の粗漏というようなことは、終戦後の資材の少い、そしてしかも急を要するというふうなときに行つたところの建築には、これが非常に多いと私は考えるのでございます。今の局長のお考えはそれ以外のものかもしれませんが、私はこの点が相当にあるんじやないかと思つております。現に二、三年たつて、ガラス窓のあけたてができないというような校舎を、私は非常に多く見受けておるわけです。そして床の板が盛り上つたり、天井の板がはね返つておるようなものをたくさんに私は見ております。そういうときにこれが適用されるならば、これは非常に受益者というものは迷惑をするわけです。今後建築をして行く場合には、こういうふうなものが設けられれば、非常にその人たちに警告になつて、りつぱな校舎をつくる原因にはなるかもしれませんけれども、これがほんとうに適用されるという形をとるならば、私は非常に遺憾なものがある。それからおそらく三号のような問題は、その校舎が火の不始末でもつてそれだけが焼けたというような場合には、こういうものがあるかもしれまけんけれども、第二条の二項に示されておるような、こういう条件のもとに行われるところの災害というふうなものは、ほんとうにその校舎をいかにして救うかというようなことで努力はしても、それが維持、管理の義務を怠つたというような問題は、私は絶対にあるものではないと思うのでございまして、こういうものをつくることが、他の法令に従つたと申しますが、何か古くさい感じを受けて、文教政策を行うための法律としては、非常に私は体面上からしてもうまくないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。戦後における建築等には非常にこういう問題が多い例から見まして、もう一応その点のお考えをお聞きいたします。
  42. 近藤直人

    近藤政府委員 先ほど申し上げましたように、この二号、三号は、他の例にならいまして規定いたしたものでございまして、格別学校災害のみについての規定ではございません。なおこの言葉の中にも「明らかに設計の不備又は工事施行の粗漏」、また「著しく維持管理義務を怠つた」ということもございますし、実際問題として、これはあまり問題にならないのではないかというふうに考えます。またこの規定はやはり予防的な意味がございます。かたがたこういつた例はごくまれであるというふうに考えまして、格別御心配のような意味合いの事態は起らないのではないかというふうに考えておりますので、さよう御了承願います。
  43. 小林信一

    ○小林(信)委員 心配することがなかつたならば、他の法令に準じてつくるというふうなことを廃されたらどうかというのが私のお聞きしたいところなんです。しかも「明らかに」という言葉がある以上は、これは問題でないと言いますが、それこそほんとうにおかしいのでございまして、国庫が補助をするような場合に、明らかに設計の不備あるいは工事施行の粗漏があつたというようなことならば、これはその当事者の責任だけではなくして、監督官庁の責任にもなるわけでございますが、そういう点はいかがでございましようか。
  44. 近藤直人

    近藤政府委員 他に規定がございますので、それをそのままとつたということは、理由にならないとおつしやるかもしれませんが、これは先ほど申し上げましたように、警告的な規定でもございます。また実際問題として、この規定があるために、学校災害復旧について、他と比較しまして著しく不利益を与えるという向きは考えられませんので、その点は御了承願いたいと思います。これは学校災害復旧に対して、国が他の公共土木と同様に補助を与えて復旧に資する意味合いのものでございますので、やはりこの種の規定はどうしても置く必要があるのではないか、かように考えております。
  45. 小林信一

    ○小林(信)委員 これには直接関係ないのですが、これと関連したような問題がありますので、この際お伺いします。単独に一つ学校が火災にあつたというふうな場合には、これが何らか国庫でもつて補助する内容があつた場合であつても、その学校だけの失火という場合には、たとい補助の仕組があつても、二年、三年補助することを延期するという何か内規的なものがあるやに承つておりますが、そういうことはありますか。
  46. 近藤直人

    近藤政府委員 御指摘の点は、たとえば六三の〇・七坪の補助を現に受けておるという学校が、学校の責任において火災を生じて焼失した、その場合に国の方の補助といたしましては、火災復旧単独起債だと思います。その場合に、単独起債によつて復旧するけれども、前の〇・七坪の補助が残つているから、それはしばらく置いておいて、後にまたその補助をもらいに来た、こういう御質問と思いますが、よろしゆうございますか。——その点は非常に複雑でございまして、今ここではつきり申し上げられませんが、後ほどよくお話を伺いまして、さらに御返答申し上げたいと思います。
  47. 小林信一

    ○小林(信)委員 この法律の第十二条二号、三号は、めつたにないから心配ない、あつても、そんなことは適用しないというふうなお話なんですが、宿直をしておつた先生とかあるいは責任者の校長であるとか、あるいは管理の責任者である町村長とかいう者は、確かにそのために何らかの措置はあつてもいいのですが、そのために子供たちが犠牲になるという点を考えますときに、そういうふうなものは絶対に今後なくしていただきたい、従つてこういう法律も適用されることは絶対にあつてはならぬということを、私はよくその事例を見て感じておりますので、今お伺いしたわけであります。  以上で私の質問を終ります。
  48. 辻寛一

    辻委員長 原田君。
  49. 原田憲

    ○原田委員 四時までですし、野原君の質問が残つておりますので、簡単に質問したいと思います。公立学校施設費の国庫負担法について先般同僚の野原さんから御質問のあつた第三条の第二項でございます。これを政令で定めるという項がございます。それについての御答弁は、たしか政令範囲建物工作物設備土地ということであつたと思いますが、間違いございませんか。
  50. 近藤直人

    近藤政府委員 政令を書く場合にはぜひ建物設備工作物及び土地といたしたいと考えております。ただいま予算上では建物のみ認められておりますので、このほかに土地設備工作物を入れますことにつきましては、相当折衝いたさねばならないかと考えております。しかしながら希望といたしましては土地設備工作物予定いたしております。
  51. 原田憲

    ○原田委員 希望されておつて相当交渉しなければむずかしいということでございますが、先ほど前田さんが言われたのも、今小林さんが言われておるのも、むずかしいということはおかしいということなんでございまして、これはやはり建物工作物設備土地というものを、希望じやなしにはつきりそれだけのものをとるということでなければ意味をなさないと思うのであります。  それから第四条の「当該災害復旧又は戦災復旧の本工事費及び附帯工事費の合計額」これであります。これも本工事費及び附帯工事費の合計額だけで、ちよつとその内容がはつきりしないのでありますが、こういうことが起きて来ると思うのです。災害なんかにあつて土地が流れてしまう、移転しなければならないというようなことになつて、移転費あるいは補償費というようなものが必要になつて来る場合があると思います。これもやはりこれに含まれているのですか。
  52. 近藤直人

    近藤政府委員 公立学校災害復旧の場合におきましては、ここにあげております本工事費及び附帯工事費の合計額のほかに、さらに災害復旧につきまして設備費、用地費、あるいは土地の補償費というような面も考えなければならぬと思うのでございますが、ただいまの移転費の問題につきましては、なお研究中でございます。
  53. 原田憲

    ○原田委員 それから第五条でございますが、ここにも「政令で定める基準により」という文句が入つております。これについても野原委員から先般御質問がございましたが、政令で定めるということになりますと、その率がわからぬ、ともすると低い方で押えられるという懸念があるという質問でございましたが、私も同じように思うのでございます。この政令で定める基準というこの基準はどういうぐあいになされておるのですか。
  54. 近藤直人

    近藤政府委員 たとえて申しますれば、戦災復旧の場合でございますが、大学につきましては大体完全なる原形復旧ではございませんで、予算上は六割まで認められております。また高等学校につきましては、予算上四割まででございます。今大学高等学校の例を申し上げましたが、ただいま予算上におきましては原形復旧の原則は了解しておりますが、具体的に予算に現わします場合におきましては、先ほど申し上げましたようなことできめられておりますので、この政令で定める基準と申しますと、結局何割というような規定を設けるようになろうかと思つておりますが、われわれの希望といたしましては、これは百パーセントの原形復旧を希望するわけでございます。これも政令規定いたしまする際に問題になろうかと考えられます。
  55. 原田憲

    ○原田委員 それから先ほど前田委員が御質問になりましたが、第十二条の災害による被害大破程度に達しないものというのですが、大破というのはあいまいである、だから金額でやる方がいいじやないかという御質問があつたのでございます。私もさように考えます。大体大破、中破、小破というのは、私らが知る範囲においては)戦争中に軍艦が沈んだときに豪沈だとか撃沈だとか、それが大破だとか中破だとかいうことをいわれて、どの程度大破であるか、どの程度が中破であるとかいうように、あのときに説明が書いてありました。そういうことを覚えておりますが、なかなか判定がむつかしいと思います。家が焼けても、保険屋さんが、どの程度の保険の補償をするかという判定というものは、なかなかむずかしいと思います。ほんとうは大破、中破、小破というようなことで、大づかみに常識で間違いなく行われたらこれは理想なのですが、現在の社会情勢というものは、常識が常識で通らない社会情勢でございますから、私ははつきりとこれは金額による方がいいと思いますが、この点どう考えられますか。
  56. 近藤直人

    近藤政府委員 お話もつともでございますので、私どもの原案にございまする大破ということは、場合によりましては金額ということに御修正いただくのもやむを得ないと思います。
  57. 原田憲

    ○原田委員 この法律は公布の日から施行するとありますが、公布の日から施行すれば、この間の九州の災害、それから今起きている和歌山の災害というようなものに適用されないのですかどうですか。
  58. 近藤直人

    近藤政府委員 これは私どもは二十八年度の災害の分からこの法律を施行するというふうに考えております。もちろん西日本の水害も、和歌山の水害も、これを適用するというふうに考えておりますが、御指摘によりまして疑義がございますれば、その点をさらに検討いたしたいと思つております。
  59. 原田憲

    ○原田委員 いたしたいと思つておられますが、研究してみるということであると、これは今度の災害にはだめだということですか。
  60. 近藤直人

    近藤政府委員 この点は内閣法制局と打合せまして、法制局の見解といたしまして、これで適用できるという御意見がございましたので、かようにそのままにしておりますが、なお御意見によりましてさらに検討を続けたいと思います。
  61. 原田憲

    ○原田委員 そうしますと、内閣の法制局でそれでいいと言つておるなら適用されると私は思います。前にも災害があつたのですが、これはどうなのですか。
  62. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま予算に計上しておりますのは、前年度の十勝沖の震災、あるいは鳥取の大火というようなものが、災害予算として計上されておりますが、その分につきましては、前の補助率そのままで行く予定であります。
  63. 原田憲

    ○原田委員 大体私の質問はこれでおしまいでございますが、聞いておりますと、今近藤政府委員の答えの中にも、実はこれを希望しておるのだ、こうしたいのだということが、たくさん言われております。希望しておることなら、そのままはつきりと政府でもつて出された方がいいじやないか。われわれはここに、先ほどから各同僚議員が言つておられますように、文部省が伴食である、遠慮しておるということが言われる原因があると思うのであります。先般文部大臣に、大臣としての御所見、決意をお聞きしたときに、私は、しつかりやるということでありました。私たち委員といたしまして、やはり大臣を中心として、この教育の充実のために金力をあげてやりたい考えで委員を勤めておるわけであります。幸いにこの間から、吉田総理は文部大臣に、歴史教育、地理教育をしつかりやつてくれということをおつしやつておるということが、新聞に出ておるわけであります。私先般歴史教育について大臣に質問をいたしました際に、正確なる歴史教育をやつてもらいたいということに対して、大臣からまことにけつこうな答弁をいただいたのでございます。総理大臣が文部大臣にいろいろ要望するならば、その要望することを行うために、文部省に対して、国がその相当な裏づけをしなければならないということを、はつきりと大臣が申されて、少くとも希望することが法律となつてはつきりと明示されて、現われて来るような法律を出していただきたい。国民の税金でもつて予算が組まれるのであります。だからわれわれ議員としては、これを減らす方がほんとうはいいのかと思いますけれども義務教育とか教育に関する予算というものは、私はもつもつとふえていいものであると考えております。今のところ、少しも遠慮のいるものでないと考えております。その点におきまして、今後も文部当局が、教育の充実のために、ほんとうに真剣にがんばられんことを希望して、私の質問を終ります。
  64. 辻寛一

    辻委員長 両案に対する質疑は、一応この程度にいたします。     —————————————
  65. 辻寛一

    辻委員長 次に、青年学級振興法案を議題とし、その審査を進めます。質疑を許します。野原君。
  66. 野原覺

    ○野原委員 本日の文部委員会はまつたく蓼々たるもので、私は質疑をする勇気もないくらいな状態にあるのでございますけれども青年学級振興法案の問題で大臣の出席を要求した私としては、せつかく大臣がここに出られましたので、質問をいたしたいと思うのであります。この問題は、日本の教育制度をあるいは変革するかもしれないくらいの内容を持つた、非常に重大な問題でございますので、大臣はひとつ率直に、言葉の修飾をできるだけお避けになられて、私の質問の核心について御答弁をお願いしたいと思うのであります。  まず第一は、先日私どもは、勤労青年教育振興法についての御提案の説明を承つたのでございまするが、その説明の第一点に、青年学級を設ける趣旨の最も大きな理由といたしましては、勤労青年諸君にひとしく教育の機会を与えるためである、このように述べられておるのでございます。そこで一体今日は労働青年諸君が、教育の機会を十分に受けていないとするならば、教育の機会を十分に受けていないその原因は、どこにあると大臣はお考えでございますか、承りたいと思います。
  67. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 御承知の通り、今日は非常に窮乏の時代でありますので、義務教育はとにかく終了いたしましても、家庭の事情、経済的な理由から、高等学校大学と進学するということは、実情なかなか困難である。その結果として、大部分の青少年は、義務教育を終えるとただちに勤労に従事する。こういうのが実情であろうと思います。従つて、上級の学校に進んで、さらに勉学の意欲を満足させるということができない。結局経済的な理由、こういうことが主になつて、大部分の青少年が、義務教育終了後において、そのまま放置せられてある。大体において、さような事情であると思います。
  68. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、経済的理由によつて、勤労青年には教育の機会が十分に与えられていないのだという御答弁でございますが、敗戦後の勤労青年の不就学の原因というものは、ただいま大臣が申されました経済的理由、つまり勤労大衆の生活が不安定であるという経済的理由のほかに、五次にわたる吉田内閣の軍事予算のしわ寄せに基く教育予算の貧困ということも、大きな原因の一つであると私は考えるのでございますが、この私の考えは、間違つておるのでございましようか。御所見を承りたいと思います。
  69. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 義務教育については、父兄はどうしてもその保護する児童に義務教育を受けさせなければならぬ。また国としては、これを教育しなければならぬ義務があるのでありますから、これは問題でありません。なるほどお話通り、今日の文教施設というものは、もちろん十分であるということは考えられません。義務教育以外、高等学校その他の教育施設におきましても、きわめて不十分であるというのが実情であろうと思います。しかしながら、何しろ千六百万人を数えるといわれておる青少年のうちで、ほとんどその二割程度の者が就学するだけであります。他の大部分の青少年は、学校設備が足りないからということもあるかもしれませんが、やはり主たる事情は、一定の年齢に達すれば、外で働いて家計を助けなければならぬ、さような事情に迫られて、入学することができない、これが実情であろうと存じます。
  70. 野原覺

    ○野原委員 私の質問に対しては、お答えになられたのかなられないのか、実は私はつかみにくいのでございますが、経済的理由によつて教育の機会が十分に与えられていないということと、それから教育予算の貧困ということは私は関連があると思うのであります。教育予算の問題は、単に施設それから設備の問題だけでなく、たとえば経済的理由による貧困な勤労大衆の子弟が、これらの中等教育ないしは高等教育を受けるにあたつては、育英資金の問題であるとか、その他いろいろな問題ということも教育予算の申に入るのでございますから、率直に大臣は経済的理由のほかに、今日の政府の教育予算の貧困ということをお認めいただきたい。これは日本の文部大臣でございますから、何も政党、内閣にこだわつて、そういうことを言つたからどうのこうのでなしに、日本の文部大臣、国民の文部大臣は、今日の日本の政府の教育予算の貧困、これらの教育の機会均等の問題についても原因があるのだということをお認め願いたいと思つのですが、重ねて御所見を承ります。
  71. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私はただいま申し上げましたように、わが国の文教施設と申しますか、教育予算と申しますか、そういうものが決してこれで十分でないという事実ははつきり認めておるのであります。これにつきましては、今後これを充実するために努力して参りたいということもしばしば申し上げておるのであります。なるほど育英資金をさらに拡充することによつて、さらに幾分かのいわゆる勉学の意欲に燃えておる青少年を上級学校に進学させる道を開くことができるかもしれません。しかしながら私が申し上げておるのは、今日青少年の大部分というものは——上の学校に進むのにはむろん学資金がいるのでありますが、かりにその学資金をどつかで補給をされても、なおかつ上の学校に進む事情にない、これが大部分であろうと思います。要するにそれは何か働いて家計の手助けをしなければならぬ、こういう実情にあるのであつて、学資さえあれば上の学校に進む、時間的にはそれだけの余裕はある、こういう人すらもきわめて少いのではないかと思うのであります。御承知の通りわが国の育英事業は世界のいずれの国に比べましても、ほかにとりえはないわが国の教育施設でありますが、育英事業に関する限りこれは非常に健全な足取りで発展をして参つておるのであります。これはどこの国と比べてもそう見劣りのするものではないと私は承知しております。ただ今日はただいま申し上げますように、学資がないということだけでなしに、それだけの時間的余裕がない。わずかに定時制等によつて何とか時間を生み出して勉強しておる青年もあります。しかしこれとてもきわめてわずかの者です。大部分の勤労青少年はせつかく勉強したいという気持を持ちながら、学資もなければまたその時間もない、こういうのがはなはだ遺憾ながら現状であろうと思うのであります。この青年学級振興法が出ましたのも、そういうきわめて時間的余裕の少い、しかも勉学の意欲に燃える青年に対してできるだけの教育の機会を与えたい、こういう趣旨でできておると思うのであります。
  72. 野原覺

    ○野原委員 私は大臣の御答弁になられましたことを否定申し上げておるのではないのです。あなたが、時間がない、金がないという経済的理由は、私も同感でございますが、そのほかに日本の今日の教育政策、教育予算というものはきわめて貧困だということを文部大臣としてお認めになられますかどうかということをお聞きしておるのです。いかがですか。
  73. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 その点はただいまも申し上げますように不十分である、かように存じております。
  74. 野原覺

    ○野原委員 そこで次に発展いたしましてお伺いを申し上げますが、御承知のように戦争前には青年学校というものがあつたのでございますが、この青年学校というものが日本の当時の学校教育制度の複線化と申しましようか、袋小路的な教育であつたのです。青年学校に入つたが最後、もう上級学校に進むことはできなかつた。袋小路的な教育であつたと私どもは考えておるのでございますが、この複線的な教育、袋小路的な青年学校というものが、形式的ではございません。実は実質的な教育の機会均等を踏みにじつたものではなかつたかどうか。そうして御承知のように青年学校の教育というものがだんだん進展いたしまして、支那事変に入るころから軍隊の実質的な予備教育にこれがかわつております。そうして職業的な徒弟教育ということになつておるのでございまするが、過去の青年学校に対する私のこういつた把握の仕方に対して、大臣はどのようなお考えをお持ちでございましよう。
  75. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 この青年学級はむろん前にありました青年学校というようなものを復活させるとか、あるいはそれと似た構想のもとにこの法案が立案せられたのではありません。この法律案にもはつきり書いてありますように、青年の自主的なかような学習の企てに対して、それを援助し、助成して行きたいという意味であります。御承知の通り青年学級は時間の余裕もない、経済的な余裕もない、しかも勉学の意欲に燃える青少年の間にきわめて自然発生的に今日至るところにこれができておるのであります。それに対してこれを少しでも助成し、援助をして育てて行きたい、これだけの意味で出したのでありましてむろん学校教育てではありません。社会教育の一面として取上げたものでありまして、従前ありました青年学校を復活する、あるいはそこに持つて行く、こういう意味はちつともないのであります。
  76. 野原覺

    ○野原委員 学校教育ではなくて、社会教育の面として考えたのだと申されますが、なるほど社会教育の面として考えたことは私もそのように受取つておるのでございますけれども、しかしこの青年学級は実は青年の自主的な研究団体、こういうような考え方であるようで実はそうでない箇所がこの法案自体の中に多分にあるのでございます。なおこの点については後ほど法案の各箇条についての質疑をする際に、私は御指摘申し上げたいと思うのでございます。  そこでこの青年の自主的研究団体としての青年学級に、今日金日本の青年団協議会という民主的な青年団体があるのでございますが、この青年団協議会が昨年と本年の二回にわたつて大会においてこれを徹底的に討論いたしました結果、反対の決議をあげておりますが、一体青年団協議会はなぜ反対をしておられるのでございましようか。文部省はその辺をどのようにおつかみになつておるか承りたいと思います。
  77. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 青年団協議会が今度のこの法律案に盛られております内容に対して反対的な意見を持つておることは私も承知をしております。ただどういう点で反対をしておるかということを、決議といいますか、私の手元に届いております書面等によつて見ますと、これが自主的な勤労青年の自主性をそこなうことになりはしないかという点を心配しておるやに見受けられるのでありますが、それ以外におきましては反対の理由は私どもとしても考えられませんし、また私どもの手元についておる書面等につきましても、これ以外には理由らしいものは認められません。その点につきましては、ただいま申し上げました通り、これま自主性を尊重してその基礎の上にできておる考え方であります。従つてその講習教科の内容につきましても、これは学ばんとする勤労青年の側でこれを企画してきめて行く。上からこういうふうなことをやれ、ああいうふうなことをやれということはさし示さない。まつたく従来ある自主的に発達した、自然発生的な青年学級の経費を援助して、そうしてこれを促進して行きたい、これだけの考えでありまして、その点から見て、いわゆるこの種の反対は、この法案の出ることによつて、その内容を検討することによつて、自然解消するものと信じております。
  78. 野原覺

    ○野原委員 今この青年学級の自主性ということから、青年団協議会の反対についての御見解の御表示が大臣からあつたわけでありますが、なお私はその点について、法案自体の中に問題がありますので、それを指摘して御見解を伺わしていただきたいと思います。すなわち第三条の基本方針におきまして「勤労青年の自主性を尊重し」とうたつておるのであります。しかるにもかかわらず第十二条を読んでみますと財政的援助を理由として地方教育委員会が廃止権を持ち、第七条では開設の許可権を持つておる。しかも地方自治体が議会の議決を条件として開設権を持つように規定づけておるのでございます。これは第五条にございます。このように第五条なり第七条なり第十三条というものは、第三条の基本方針である「勤労青年の自主性を尊重し」という、いわゆる青年団協議会の諸君が今日までやつて参りました青年学級の研究サークルとしての自主性を踏みにじることになりはしないかと私は考えますが、御所見いかがですか。
  79. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 御指摘のように第三条におきまして青年学級の運営につきましては、勤労青年の自主性を尊重するということを根本的に考えておるのでありますが、それが町村の開設権あるいは廃止権との関係においてどうかというお話でございます。私はこの法案を立案する背景にある考え方といたしまして、青年学級というものは、実際におきましていろいろな形でいろいろな場所で開設せらるのでありますから、青年自体が青年だけで、あるいは青年団というものを母体としまして青年学級を開設するということはまことにけつこうでありまして、それは自主的にどんどんやつていただいてけつこうであると思うのでありますが、その点につきましては、法律においては別にこれをとめる、あるいは干渉するということをいやしてないのであります。ただこの法案の中に盛られておるのは、この法律規定する青年学級は市町村が開設するものである。市町村が開設するものに関しましては、国庫助成の道を開くという関係になつているわけでありますから、そういう意味で町村が開設する、すなわち町村が開設権を持つている青年学級に関する規定であります。従つて十三条のような理由があればこれを廃止することもできるという関係になるのでありまして、国が助成をいたします対象としては、やはり公機関がその経営主体になつているものを対象にするということは当然であると考えているのであります。
  80. 野原覺

    ○野原委員 それでは百歩譲りまして、今日の青年学級というものは第三条の基本方針に従つて青年の自主性が十分に考えられていると仮定いたしましても、この青年学級が一年たち、五年たち、十年たつて行くにつれて教育委員会あるいは地方議会が外部から拘束を加えることになつて、そういうことによつて地方権力の青年運動に対する統制あるいは一部の地方ボスなどによる不当な介入弾圧の危険性が生じて来るおそれなしとしないのでありますが、その点いかがお考えでありますか。
  81. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 私はこの青年学級が自主的に現在運営されている実態、この実態のままの青年学級を助成し、これを振興させるという考えのもとにこの青年学級振興法案ができていると考えているのでありまして、そういう意味でむしろ法制化することによつて青年学級が統制を受ける、あるいは抑圧を受けるというふうにお考えになるかもしれませんが、そういう自主的なやり方の青年学級の行き方、これを保障するというような意味、すなわち青年学級の自主性を保障するという意味の法制化であります。すなわちもし法律がなくして、その保障がなければ、御心配のように青年学級があるはい市町村のボスというような勢力に非常に押し流されるという危険性があるのでありますが、そこを第三条におきまして、町村が青年学級を開設する場合にも、勤労青年の自主性を十分尊重しなければいけない、いろいろな形で抑圧的なあるいは統制的な勢力がある場合には、第三条によりましてそういうことをやるべきでないということを、この法律を根拠にある意味の指導助言を加えることができるのでありまして、今御指摘のようなことがないように、この法の運用において十分警戒し、注意する必要があると考えております。
  82. 野原覺

    ○野原委員 なかなかたくみな御答弁をなさるのですが、第十八条を読んでみますとここにもなお問題があるように思います。第十八条は一号から六号まで規定をしているのでありますけれども、これは実質的には自主的な小研究サークルの開催ないしはそれに対する国庫補助を不可能ならしめております。すなわち第一号以下において「学級生が三十人以上であること。」とか、「開設期間が一年以上であること。」とかいうような条件によつていなかの小さい山間の部落の小研究サークルの開催ないしはそれに対する国庫補助はできないのであります。しかも第二十二条を見てみますと、補助金の返還規定がうたわれているのであります。こういうようなせつかく国庫が補助したところの金の返還規定をうたうことによつて、あなたは青年学級の自主性ということを強調されますけれども、しかしながらこういう規定があることによつて青年学級の内容及び運営自体にも制約が加わつて来ることは必至なのであります。この辺のところを一体どうお考えなのか承りたい。
  83. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 青年学級を統制する、あるいは抑圧するということの意味は、主として青年学級の教科内容、その他教科内容に関係する経営の問題についての統制の問題でありまして、そういう意味では、この法案には何らその経営を統制するような意味のことはないのであります。ただ十八条にあります国庫助成の要件といたしまして、数箇条の条件がございまするが、これは青年学級といいましても、実態はいろいろなものがいろいろな形において、また中にはただ名前だけを掲げて青年学級と称しており、中味は実際ははなはだおそまつなものであつて、全然青年学級の実態を備えていないというようなものまでも、この法案が出ることによつてすべて国庫助成を受けるのだということになるのでは、これは大切な国庫の金を出すのでありまするから、やはりある程度の規模のものに助成をする、すなわちその青年学級の運営が、政府あるいは国庫から見まして、相当信用の置ける運営をなしているものについて助成をすることになるのは当然であると思うのでありまして、すなわち学級生が三十人以上、開設期間が一年以上継続的に行われていること、こういうことが青年学級の健全性をはかる尺度とされておるつもりであります。今非常に小さいところでもつて、三十人いないところについてはどうかというお話がありましたが、大体各市町村の実情を見まして、中学校卒業後二十五才くらいまでの青年の数を町村単位に見ますれば、三十人に満たないというような村はないと思うのであります。これを部落とか、あるいは本町村の小さい区域を単位として見た場合には、あるいはそれに足らないところもあるかもしれませんが、村全体として考えた場合には、三十人以上になり得るのでありまして、そういう意味で一応三十人ということを基準に考えておるわけでありますから、この一種の制約を設けることが決して青年学級を統制するとか、抑圧するとか、自主性をそこなうというような意味にはならないと考えておるのであります。また二十二条の補助金の返還ということも、政府が責任を持つて補助金の支出をやつた場合に、その補助金支出の意図に反するような行為があつた場合には、すなわちその補助金の目的を達成しないような使われ方をするような場合には、これを返還させるということは政府の責任として当然であると考えております。
  84. 野原覺

    ○野原委員 それではお尋ねしますが、青年学級の組織、それから教科内容、それから講師、こういうものについてあなたは法的に束縛しようとする意図は毛頭ないとはつきり断言されるのでございますか、この点をお尋ねいたします。
  85. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 申し上げましたように、青年学級の教育内容というようなことにつきましては、第二条におきましては、青年学級は、「実際生活に必要な職業又は家事に関する知識及び技能を修得させ、並びにその一般的教養を向上させることを目的として、」開設されるという意味の漠然たる内容規定がございますが、それ以外には何らこれを規制するものは持つていない。青年といたしまして、ほんとうに得たいと思う教養、学びたいと思う知識を、すなわち明日の生活に必要な知識をみんなの相談の上で、すなわち青年学級運営委員会というふうなものに学級生自身が加わつて、そして適当な教科内容をつくり、そして必要な講師を招聘して学ぶというような形で運営されるということを考えておるのであります。
  86. 野原覺

    ○野原委員 非常に重大なんです。私が質問しておりますのは、青年学級の組織の問題、教科内容の問題、講師の選定指導などの問題について、この法案が青年学級の自主性を法的に束縛しようとしているのではないかということを、私は言外ににおわせてあなたに聞いておる。ところがそういうことは毛頭ないというように仰せになられましたので、私は次のことを申し上げたいと思うのであります。まず組織の問題につきましては、ただいま申し上げました三十人とか、一年以上というような、このことが実はやはり明らかに法的に束縛しておるではないか。それから教科内容につきましても、あなた自身今読み上げた点でちやんとお認めになつておられる。そういうような、いわゆる徒弟的な、職業的な教科内容というようなものが、あなた方の頭の中に考えられておる。これはやはり法的に束縛しておるのです。  もう一つは講師の選定でございますが、第九条をひとつ読んでいただきたい。これは「実施機関に青年学級主事を置く。」とうたつてあるのです。ちやんと法的に束縛しているのですよ。しかも第十条は、組織をうたいまして、「実施機関に青年学級講師を置く。」「講師補佐を置くことができる。」「講師は、学級生の教育をつかさどる。」「講師補佐は、青年学級講師の職務を助ける。」講師の選定指導についても法で束縛しておる。これ以外のことを自主的にやろうとしたら国家は補助金を出さない。こういうようなところが問題であるとして、その点をついておるのです。しかしながら、この点はあなたの御答弁を要求しても、結局同じことを繰返すであろうから、私はこの質問は続けません。  次に文部大臣にお尋ねをいたしますが、聞くところによりますと、政府は産業開発青年隊というものを考えておるといわれておるのでございますが、事実でございますか、もし事実であるとするならば、どういうような構想でございましようか承りたい。
  87. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 文部省といたしましては、さような計画は持つておらぬのであります。農林省の方の関係じやないかと思います。
  88. 野原覺

    ○野原委員 農林省の所管として産業開発青年隊というものが考えられておるということでございますが、農林省の責任者をここに来てもらつたらいいのでございますけれども文部省として、これは青年教育に重大な関係がございまするので、おそらく無関心ではないだろう、関知していないとは思いませんので、知られる限りのことを御発表願いたいと思います。
  89. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 農林省並びに建設省の関係におきまして、農村の開発事業あるいは、通路、河川、治山、治水というような建設事業をやるについて、青年隊を組織いたしまして、教育をやりながら、この仕事に協力させるということに対しまして予算を組んでおるということを聞いております。これにつきましては、私どもも農林省並びに建設省と連絡をとりまして、その仕事の内容、計画等についても、多少連絡を受けておるのであります。これは特定のそういう事業を持つた特定府県の問題でありまして、主として県の段階におきまして、県の土木課あるいは農林課というようなところでやる仕事でありますので、県の教育委員会の社会教育課等もこの仕事に協力をいたしまして、青年教育の関係があるのでございますから、教育をやる以上は青年の生活に対して、適切な方法でもつてその運営が行われるように話合いをいたし、教育の方針あるいは組織というようなことにつきましても、社会教育課の意見が通るようにいたしまして、協力的にこの仕事を進めるようにいたしておるのであります。
  90. 野原覺

    ○野原委員 産業開発青年隊の実体、その内容につきましては、他日農林省の責任者に本委員会に出てもらつて、私は十分質問したいと思います。  そこで本日私が申し上げたいことは、この産業開発青年隊については、実は非常な検討しなければならない問題がございます。今農林省が、農林大臣がこういうようなものをつくつて——つまり政府として考えておると時を同じくして、青年学級振興法というものが出て来ている。そうして戦争前の青年学校を思わせるかのような、自主性はうたいながら、実はこれを官制的に、画一的に統制して行こうというようなにおいの青年学級というものが今日出て来ている。こういうところから、私は産業開発青年隊の母体に青年学級というものが考えられておるのではないか、こういう疑念を持つのでございますが、いかがですか、そういうことはございませんか。
  91. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 農林省の農村建設青年隊並びに建設省の産業開発青年隊、これはただいま申しましたように、非常に特殊の府県におきまする非常に制限された青年の教育の問題でございまして、両方の計画を合せまして、全部で一千人余りの青年隊を運営するというものでございますが、青年学級の問題は、現在大体学級生百万人に行われておつて、規模の面から申しまして、まず第一に非常に違うのでありまして、青年学級を振興することを基礎にいたしまして、農林省のこの青年隊を考えるというようなことは別に考えていないと思うのであります。ただこの農林省の青年隊あるいは建設省の青年隊をやる上につきましても、やはり青年教育の本質から見まして、青年の自主性を尊重して、青年が自発的に教育し合うようなグループの活動、そういうやり方そういう行き方をこの中に取入れて、いわゆる国あるいは公共機関の命令によつて、その自主性を全然認めないやり方をしないようにということを十分注意をいたしておるような次第であります。
  92. 野原覺

    ○野原委員 そこでもう一点お尋ねいたします。まず教師の問題です。青年学級ができた場合に、一体教師の問題をどう考えておるのか、つまり今日の学校教師の何割ぐらいをこの青年学級の教師として動員するお考えでございますか承りたい。
  93. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 青年学級の教師でありますが、この法案の中にもありますように、現在青年学級のいわゆる講師として仕事をしておる人は、いろいろ種種雑多でありまして、小、中学校あるいは高等学校の先生がやるということも多いと思いますが、それ以外にあるいは社会教育委員であるとか、あるいは公民館、図書館等の館長であるとか、あるいはまた場合によつて町村の職員であるとか、またその教育の内容によりましては、たとえば農事指導に関しまして非常に業績を上げておるいわゆる篤農家というような人を呼んで来て、それを講師にするとかいうふうにいたしておるのでありまして、いろいろの形の講師があるのであります。しかし現在行われておりますところを見ますと、青年学級の講師の仕事をいたします者は教職員が大体半分くらいを占めておるように思います。ここに約三千八百ばかりの調査をいたしましたところで見ますと、男の講師につきましてはその総数が——いわゆる専任とか兼任の形で必要に応じて呼んで来る講師でありますから、人数は五万人余りになつておりますし、女は九千二百人ばかりになつておりますが、男につきましては教職員が五二・二%、公務員が三一・七%、学識経験者が一八・一%、女子につきましては教職員が六四・四%公務員が一六・八%、学識経験者が一八・八%ということになつております。
  94. 野原覺

    ○野原委員 どうもそういうような数字を断片的に口頭でもつて言われただけでは、頭が悪いせいか、私はこの法案を審議する上に非常に困る。従つていやしくも青年学級振興法案を出す以上は、人的対策をどう考えておるのか、今月の学校教師はどのくらい動員されてその時間的負担はどうなのか。あなた方が御承知のように、定員を非常に押えつけられておる関係上、今日の教員は実は学校で生徒の授業をやるだけでせい一ぱいです。労働過重です、この人的対策をどういうように考えておられるのか、詳細なものをお出し願いたい、これは要望しておきます。時間的負担の問題及び報酬の問題、こういう点についても文部省の考えておられることをすみやかに出されんことを私は要望して、本日の私のこの問題に対する質問を終ります。  なお委員長にお願いしておきますが、この問題は重大でございます。ので、私は他日の機会に質問することにして、保留しておきます。     —————————————
  95. 辻寛一

    辻委員長 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめまして、次に文部行政に関する件を議題とし、前会の質疑通告の残りについてこれを許します。野原君。     〔「もうやめよ」と呼ぶ者あり〕
  96. 野原覺

    ○野原委員 議事進行について……。非常に蓼々たる文部委員会でやめよという声も多うございますので、本日はこれをもつて会を閉じてはいかがかと思いますが、委員長からお諮りを願いたい。
  97. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 一般教育行政につきましては、もう数回御質問をしておるわけでございますので、野原君の質問を簡潔にやつていただいて、そして一応これを打切つていただきたいと思うのですが、いかがでしようか。
  98. 野原覺

    ○野原委員 きようは社会党の右派の諸君はいないのです。坂田委員の発言がございましたけれども、こういう点は理事会で——やはり文部行政は重大だから、今日まで質問を尽して来て、そうして大臣もこれに対しては親切な御答弁をしておられる、こういう質疑によつて大達さんのものの考え方が漸次明らかにされつつあるわけです。だから、この会合でもつて打切るという動議は私賛成しかねる。だから打切るということは理事会で後ほど御相談をして、私に質問を許していただけるならば、これから私はやるにやぶさかでないのですけれども、しかしこれでやめてもらいたいという意向があれば、本日は閉じたらどうかということを申し上げる。
  99. 辻寛一

    辻委員長 本日はこれにて散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後四時三十三分散会