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1953-07-14 第16回国会 衆議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十四日(火曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 天野 公義君 理事 坂田 道太君    理事 原田  憲君 理事 田中 久雄君    理事 辻原 弘市君 理事 前田榮之助君    理事 世耕 弘一君       相川 勝六君    尾関 義一君       岸田 正記君    小西 寅松君       竹尾  弌君    山中 貞則君       今井  耕君    町村 金五君       高津 正道君    野原  覺君       山崎 始男君    大西 正道君       松平 忠久君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君  委員外出席者         文 部 技 官         (管理局教育施         設部長)    田中 徳治君         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 七月十一日  委員尾関義一辞任につき、その補欠として田  中伊三次君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員伊藤郷一君、田中伊三次君及び荒木萬壽夫  君辞任につき、その補欠として山中貞則君、尾  関義一君及び町村金五君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 七月十一日  理科教育振興に関する請願外五件(淺沼稻次郎  君紹介)(第三三四二号)  同外五件(島村一郎紹介)(第三二四三号)  同(福田篤泰紹介)(第三三四四号)  同外四件(前田正男紹介)(第三三四五号)  同(山口シヅエ紹介)(第三三四六号)  同(三輪壽壯紹介)(第三六〇一号)  長崎大学薬学部戦災復旧に関する請願辻文  雄君紹介)(第三三四八号)  公立学校災害復旧国庫負担制度立法化等に関  する請願田中龍夫紹介)(第三六〇〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  文部行政に関する説明聴取  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一一一号)     —————————————
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  議事日程に入るに先だちまして、九州地方水害視察をされました田中教育施設部長より、視察報告を聴取することにいたします。田中教育施設部長
  3. 田中徳治

    田中説明員 これから西日本水害現地調査の御報告をいたします。  このたびの西日本水害の際におきまして、福岡対策本部が設置されまして、一日に現地に到着いたしまして、九日まで現地視察いたして参つた次第であります。視察箇所は、時間の都合あるいは交通等関係によりまして、主として主要都市だけを見て参りました。長崎、久留米熊本福岡八幡門司、別府でございますが、この水害につきましては、御承知のように、先月の二十五日より二十九日までの五日間にわたりまして、非常な降雨がありました。例年北九州におきましては、梅雨期におきまして相当降雨があるのでございますが、今年度は梅雨前線が停滞いたしまして、あの地方におきましては、平地におきまして五百以上六百前後、山間部におきましては七百あるいは千に近い降雨量があつたのではないかというふうに推量されます。そのうちでも阿蘇以北山間部に非常な降雨がありまして、熊本地方におきましては、二十五日、二十六日の二日間にわたりまして、山間部に約七百、平地部において五百ないし六百という、今までにない大きな降雨量のために、こういつた甚大な惨害を及ぼしたのではないかというふうに考えられます。  従来学校建築におきましては、こうした水害地におきましては、水害中の非常な悲な惨状態に比べまして、水が引きましたあとにおきましては、大した被害がないのが従来の例であります。ということは、比較的校舎が適地に立地されておるというようなこと、また二階建で、しかも校舎は堅牢である、こういつたことからいたしまして、水が引きましたあとは、土砂堆積程度で、大して大きな損害は受けないということが、普通の場合でございます。校舎は、地震あるいは台風等におきましては、大きな被害がありますが、水害に対しましては、大きな被害がない。これはわれわれの通常な観念でございましたが、今度現地を見ました際には、これがすつかり違つております。このことは、今度の災害が、従来の単なる水害とは、その趣を異にしておるということであります。  大体、水害内容を見ますと、平地地帯におきます水没地方中流地帯におきます堤防決壊上流におきます山くずれあるいは河川決壊、こういつた三つの被害の区域があります。下流におきます学校は、先ほど申し上げましたような事情でありますが、中流地帯におきます堤防決壊による被害、これは民家等が非常に大きな犠牲を受けております。しかし幸いなことに、校舎はそういつた地帯にあまりありません。従いまして、中流地帯堤防決壊においては、民家被害に比較いたしまして、校舎は比較的少いのでございます。しかし、久留米市におきます市立の医大、こういつたものは鉄筋の三階が、一階はほとんど水没いたしまして、二階までも水につかつておるという状況でございます。これもやはり上流決壊奔流の中間に校舎があつたというようなことでございまして、こういつた例もままあるのでございます。従いまして私が現に調査が不可能でありました山間部、これは単に臆測もありますが、あるいは情報をもとにいたしますと、相当被害があるのではないかと推量されます。そのことは八幡あるいは門司学校施設を見まして痛感したのでございますが、門司八幡は、ほとんど平地部がありません。丘陵地帯からずつと海岸地帯に連続しておりまして、門司におきましては、最後の日、二十八日でございますか、一晩のうちに降雨量が二百ミリ近く、しかもこれが驟雨的の非常に量の大きい降雨でございまして、そのために風師山に五百数十箇所崩壊箇所ができました。これが原因となりまして、学校施設が非常な被害を受けております。このことは、ちようど昭和十三年におきます神戸の風水害を、そのまま門司に現出したというようなことでございまして、要するに、こういつた山間部におきましては、校地が非常に得にくい。そのために山腹なりあるいは山のひだの間に、山をけずりとつて校地とし、さらにその土砂を積み立てまして、運動場なりをつくり、しかも簡単なものでこれを支えておるというようなところでございまして、こういつた部分に今の降雨による山津波が襲いまして、土砂堆積し、校地が破壊される。従つてそのために校舎が非常な被害を受ける。こういつた例が非常に多いのでございます。このことは要するに阿蘇山中、小国あるいは立野方面にも、あるいは日田の山中にも同じことが繰返されておるのではないかというふうに推察されるのであります。従いまして今度の学校校舎被害というものは、建物被害金額に比較いたしまして、校地被害が非常に多いのでございます。従来の水害は、そういつたことは非常に少かつたのでございますが、今度の水害はこれが一つの特殊の例ではないかというふうに考えられます。  それで大体の施設関係被害金額を申し上げますと、国立学校施設被害約四億余でございます。公立学校施設被害が二十五億余、私立学校施設被害が八千六百万円余でございまして、それから社会教育施設関係、公民館、図書館、こういつたものでございます。これが四億四千余、それから文化財関係損害が一億一千余、合計いたしまして三十五億六千五百万円、これが今次の災害のもたらしました施設関係損害でございます。先ほどここで申しましたように、校地被害というものは、現在公立学校二十二億のうち校舎が十五億ばかりで、校地が七億一千万円となつておりますが、そのほか設備が六千三百万円あります。校地被害の比率が非常に大きくなつております。従来は、校舎関係のみが大部分で、校地というものはほとんどありません。今度は大きな数字が出ておりますが、しかしこの数字も、従来は校地補助対象なつておりません。従いまして各学校から提出されました資料には、この校地復旧に対しましては、非常に小さい数字を上げております。実際といたしましては、この校地というものは、もつと大きな被害額になるのではないかというふうに考えられます。のみならず、この山間部におきましての校地損害をどういうふうに復旧するかという問題になりますと、これはわずかの石垣や土盛りでやつたのでは、またこの災害を繰返す。これが従来の災害復旧の欠点でございまして、校地につきましては、これをさらに復旧改良工事を行うことまでいたしますと、特殊のこの費用も少くとも五割以上の予算を要するのではないかというふうに考えられます。このように校地被害の大きいということ、これが今次の災害の非常な特殊性でございます。  これに対しまして、特に地方要望といたしましては、従来の災害復旧費関係予算、これは補助率は二分の一でございますが、これを少くとも三分の二にして欲しい、それから校舎も大破以上の災害のみを補助対象に取上げたのでありますが、これも少くとも金額十万以上のものを対象にしてほしい。なお校地も、ぜひ災害補助対象に取上げて欲しい。こういつた要望が非常に熾烈でございます。なお、こうした川の流域なり、あるいは山間部に立ちます校舎におきましては、今度の災害におきましても、鉄筋が非常に大きな役割を演じております。特に水没した地方におきまして、この鉄筋校舎が、従来におきましても多数の住民の救助をしたという例も多いのでございまして、この際ぜひ鉄筋校舎補助対象にしてほしいということも地方の強い要望でございます。特に、水害あとにおきましては、校舎のほとんど大部分避難救護施設に利用されておるような現状でございまして、今後山間部の非常に危険なる校地、あるいは川の流域はもちろんでございますが、また下流地帯におきましても、相当の大きな増水によりまして、ほとんど民家は軒までも水が達しておるというような例も多いのでございまして、こういつた地帯におきましても、やはり校舎というものが、そういつた万一の際に非常な役割を演ずるのでございます。こういつた地方におきましても、やはり校舎鉄筋化ということが望ましいのでございます。こういう点におきましても、やはり今の鉄筋校舎建築補助対象に取上げてほしい、こういう要望が非常に強いのでございます。  実際の例なり、あるいは写真をお目にかけることができませんのは、非常に残念でございますが、一応ここに門司の例を持つて来ておりますので、これをおまわしいたしますが、詳細はひとつこの写真でごらんいただきまして、現地の御要望に沿うようにお願いいたしたいというふうに考えております。施設関係の、従来の災害とかわりました点だけを概略申し上げまして、一応報告のかえる次第であります。
  4. 辻寛一

    辻委員長 ただいまの視察報告に対しまして、質疑があればこれを許します。
  5. 大西正道

    大西(正)委員 今の報告は、学校施設についての概略報告があつたのでありますが、そのほかに設備、備品ですね。こういうもの、あるいはまた学童、生徒その他に対するものも出ていると思うのです。この点について少し御報告願いたいと思います。
  6. 田中徳治

    田中説明員 この際、設備関係金額は比較的少くなつておりますが、これはやはり学校方面被害調書の不備によることと思います。先ほどこの公立学校関係の中にちよつと漏らしましたのですが、設備関係といたしまして、約四千九百万円の数字が計上されております。これもぜひやはり補助対象にしてほしい、こういう要望があります。  それから学校児童あるいは職員被害等学校水害地における状況でございますが、教職員死亡数は三名でございまして、それから負傷——これは重傷者でございますが、十七名、それから行方不明が一名でございます。これは山口県だけの報告は届いておりませんが、福岡佐賀、大分、熊本の集計でございます。それから生徒児童におきましては、死亡が九十名、負傷が三百七十四名、行方不明が百余名となつております。これは福岡県は除いておりますが、この生徒児童は、学校においてはほとんど犠牲者を出しておりませんで、自宅において犠牲者を出しております。それから学校開設でございますが、ほとんど全部が開設されたのではないかというふうに考えられますが、佐賀県、熊本周辺一部分あるいは久留米周辺一部分等におきましては、まだ三、四日、五日ころまでは水没地帯がありまして、特に佐賀県におきましては、二、三日前の情報でございますが、今もつてまだ水没地帯が三箇所も残つているというような所があるらしいのでありまして、そういう水没地帯におきましては、学校開設は非常に困難でございます。高等学校以上におきましては、十日までで大体授業を打切り、夏季繰上げをいたしまして、十日ごろでもつて学校を閉鎖しているかと思います。小学校におきましては、できるだけ早く学校開設するように指導をいたしまして、順次開設しているかと思いますが、しかし水害のひどい所におきましては、なかなかその開設が困難でありまして、そういう場合におきましては、分散授業なり、あるいは教師の家庭訪問、ごういつたことによりまして、授業を不完全ながら継続いたしまして、一応は学校開設をいたしまして、その後に休暇に入る。この際非常に心配しなくてはいかぬ点は、要するに学生、生徒の保健問題であります。こういつたことにつきましては、各県の教育長から地方事務所市町村教育長方面十分連絡をとりまして、保健の万全を期するようにということでもつて、漸次やはり小学校等開設しておるかと考えられます。大体以上であります。
  7. 大西正道

    大西(正)委員 この施設復旧等につきましては、また立法措置が必要かと思いますが、とりあえず学用品とか、あるいは教科書とか、これは緊急の処置をしなければならぬと思いますが、この点についての文部省対策をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  8. 田中徳治

    田中説明員 従来は学校生徒児童学用品は、災害救助関係給与物資といたしまして、小学校が二百七十五円、これは全壊の場合であります。半壊の場合におきましては、その五分の一となつておりますが、今度はこの額を上げまして、中学校におきましては千百円、小学校におきましては五百円というふうにいたしまして、一応その基準を上げておりますが、しかし何といたしましても、やはり学校開設が、災害地の民心安定なり、あるいは秩序の確保のため、地方からも要望されております。従いまして、それに対するまず第一といたしまして、やはり学用品支給要望が非常に強いのであります。この点につきましては、一応その数字現地から中央に流すと同時に、これに対しまして手持ちの古い教科書なりを集めまして、そして配給の手順を、今確保してやつております。この問題は、要するに学校開設されませんと、市町村なり、学校によりまして、教科書内容が最近非常に違つておる点が多いので困るのであります。これは現地におきまして、学校開設と同時に、学校長から教育長の方に連絡をとりまして、そうして教育長がこれを本省の方に連絡していただきまして、と同時に、また地方教科書配給会社図書店等連絡をとりながら、今徐々にこの本を配付することになつております。また鉛筆とかノート類は、もうすでに配つておることと考えられます。
  9. 大西正道

    大西(正)委員 これは私の聞いたところで、確かな資料に基くものではありませんが、せつかく文部省が意図したところのそういう救助の手配が、十分現地において実現されていないように聞いております。たとえば今度の応急の対策費のうち、文部省が当然教科書学用品等にまわされるべきものが、今のあなたの説明にもあつたように、別の面にこれをまわされておるやに聞いております。この点についてどういうふうになつておるか、お聞きしたいと思います。
  10. 田中徳治

    田中説明員 この点につきましては、災害救助関係経費に、この教科書支給基準単価経費が含まれて計上されるということが、多少地方において予算が十分その通りに使われぬということになつておるのではないかというふうに、われわれも考えるのでありますが、この点につきましては、まだ文部省の内部においても、はつきりした意見がございませんが、できますれば、これは文部省予算として取上げまして、別わくとしてこの金額地方に流すということになれば、最も適切ではないかというふうに考えますが、これは今、私個人の考えとして申し上げたわけでございます。やはり何らかそういつた措置を講ずる必要があるというふうにも考えております。
  11. 坂田道太

    坂田(道)委員 関連してお尋ねをいたしたいと思います。今の教科書の問題につきまして、一年生の教科書無償配付なつておるわけでありますが、この無償でもらつた一年生の教科書も流失をしておると思うのであります。この点について政府としては、再びなくなつた児童に対しては無償で配付するというお考えでありますかどうか、その点を伺いたい。
  12. 田中義男

    田中(義)政府委員 お話のように、今年小学校に入りました一年生につきましては、国語、算数の教科書をすでに無償配付いたしておるのでありますが、しかし今回のように、特別なこういう災害の場合でもありますので、文部当局としては、さらに重ねて、あるいは現在の予算を少し早めに差繰りましても無償配付を実現いたしたい、かように考えまして、さつそく大蔵当局折衝を始めておるのでございます。ただ大蔵当局におきましても、多少の意見もございまして、まだまとまるところには参つておりませんが、私どもとしては、何とかそのようにとりはからいたいと、せつかく努力中であります。
  13. 坂田道太

    坂田(道)委員 学用品災害でなくしたわけでございますから、この点については、できれば政府全額負担をする。ことに今度のような大災害におきましては、父兄並びに地元の負担能力は、全然皆無という状態になつておるであろうと思うのでありまして、学用品につきましては、憲法の教育無償の原則から申しましても、こういう災害の場合には、政府無償でやるというところまで行かなければならないのではないかと考えるのでありますが、これに対しまして、何か大臣としてお考えはございませんか。
  14. 大達茂雄

    大達国務大臣 先ほど政府委員から申し上げましたように、災害救助法に基く基準単価を引上げまして、ただいまのところでは、その引上げられた単価の範囲内におきまして、そういう学用品をまかなつておるところもあります。ところによりましては、不十分なところもあるようであります。その点、特に無償で行きわたるように、せつかく大蔵省とも折衝をしております。
  15. 坂田道太

    坂田(道)委員 もう一点、教育施設部長に御答弁を願いたいのでございますが、今回の災害は特に土砂堆積と申しますか、特に学校関係建築物の床上までも土砂堆積をしておることが非常に多いし、またそれが特徴になつておると聞き及んでおるのであります。この堆積いたしました土砂を搬出する費用、その他の問題につきまして何か……。
  16. 田中徳治

    田中説明員 土砂堆積の最もひどいのは、先ほど報告から漏れたのでありますが、熊本市であります。阿蘇人山灰がそのまま奔流なつて市中に流れ込んだのでありますが、熊本市の土砂の量だけでも二百四十万立米であります。これをいかに市外に排除するかということで、非常に市自体が困つておるような状況でございます。その中にありまして、学校はどんな状況であるかと言いますと、ほとんど学校みずからの手で、実は土砂排除をやつしおります。これはPTAなり、あるいは婦人会、あるいは児童職員の手で、みずからこの土砂排除しております。現地に参りますと、ほとんどどろまみれでこの土砂排除に懸命になつて働いておるのでございます。市の方からの急援の手も及ばないのであります。市自体といたしましては、河川、道路の土砂排除だけで精一ばいであります。さらに全市の土砂排除は何年かかるかわからぬという現状でございます。ところが、従来はこういつた土砂の搬出は、失業救済なり、あるいは学校みずからの手でやつておる場合が非常に多いのであります。この土砂排除という大きな仕事をしているPTAなり、あるいは児童労働力を金に換算いたしますれば、相当の被日額になるわけであります。もちろん今次の被害額の中には、多少そういうことも入つておるかと考えられますが、こういつた土砂排除と同時に、託地の整理というものを取上げまして、補助対象にしたいという考えでございます。
  17. 世耕弘一

    ○世耕委員 私は、少しかわつた観点から、大臣にお伺いしておきたいと思います。今度の水害は非常に広範囲に属しておるようであります。こういう災害の起つたときは、必ず美談善行が現われ、日本人のよさというものが現われるのであります。そういう考え方からして、社会教育の一端にもなるような、いわゆる美談善行というものが必ず各所にあるだろうと思うのであります。そういうものをまとめて、この機会に発表するということは、教育の画から見ても適当なことであると思うのであります。ことに教育者で、りつぱな行為をしたりした者が、かなりあるのではないかと思いますが、こういう方面の御調査をもし進めていただければ、進めていただきたいと思うのであります。
  18. 大達茂雄

    大達国務大臣 非常にけつこうなお考えだと思います。その点につきましては、現地について調べまして今お話になりましたような措置をとりたいと思います。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 ただいま九州地方の大害の、特に教育関係についての御報告を承つたわけでありますが、委員の各位も関心を非常に持つておられるのですから、御説明ばかりでなく、少し詳細な資料を提供されて、われわれがしさいに検討できるようにしていただきたいと思います。これでは罹災児童がどのくらいあるかとか、各府県の実情というものがはつきりわからなくて、せつかく各委員が、どうしたらこれら罹災児童あるいは学校を救うことがでさるかということに関心を持つておられても、熱意がわいて来ないわけですから、ぜひすみやかに調査報告をししいただきたい。こういうことを最初にお願いを申し上げます。  私も衆議院の決議によつて派遣されました調査団の中に加わつて、実情を見て参つたわけでございますが、そのときにも、いち早く文部省の方からも係の方が見えられまして、ことに飛行機で状況視察されて、ただちに新聞等にその実情報告され、これに対する文部省の今後とるべき態度というものにつきましても、一応述べてあつたわけです。それほどいち早く事の重大さを認識されて、対策を天下に声明されたわけなんです。従つてこれに対する善処が最も適切に行われるように私は特に要望するものです。  そこで、ただいまも御報告がありました災害補助の問題ですが、従来一般の災害に対しましては三分の二の補助があるけれども、学校関係におきましては二分の一である。これを普通と同じように三分の二にしてほしいという要望当局も聞かれて来たわけなんです。これは、いまさらこういう希望が出るのではなくて、昨年半額国庫負担法がこの委員会に上程されて検討されておるときにも、各委員からそれに付随しまして、学校関係災害補助については、三分の二にすべきであるということが強調されておつたわけです。これはよく文部省としましてもお聞きになつたことであるし、今までの災害において常に出た問題でございますから、今そういうことが要望されておるというようなことをここで御報告になることは、文部省としての怠慢である、あるいは手落ちであるというように聞えるわけです。一体文部省としましては、これに対して今後どういうような態度をおとりになるのか。確たる信念をこの際お伺いしなければならぬと思うのでございます。これは、特に大臣にお伺いいたします。
  20. 大達茂雄

    大達国務大臣 従来、長い間のしきたりといたしまして、御指摘の通り、学校災害復旧につきましては二分の一補助、こういうことになつて参つておるのであります。今回の国会に提出されました災害復旧に関する法律案におきましても、やはり二分の一補助としております。これは従来、長い間そういつたふうにして参つておることで、文部省といたしましては、これを他の災害復旧並に、三分の二に持つて行きたいというので、従来大蔵省と折衝しておるのであります。しかしこれはなかなか思うように話がまとまりませんので、現状二分の一ということになつておるのであります。今回の西日本の大災害につきましては、特にその災害の激甚であるという点にかんがみまして、三分の二の補助を支出してもらうように、せつかく大蔵省と今折衝を重ねておるのであります。この成否は別といたしましても、今後災害学校災害復旧は、他の災害並に、三分の二までに率を上げてもらいたいという方針で、関係省と折衝し、努力して参りたい。こういうように考えておる次第であります。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 最近の地方財政は、私が申し上げるまでもなく、非常に苦しいのであります。従来教育のことにつきましては、自分の子弟のことであるから、父兄もある程度の負担はがまんしておるわけであります。しかし今の教育に要するところの町村あるいは父兄の負担というものは、実に莫大なものである。ことに新制中学校が建設される、あるいは老朽校舎を修理するというようなことで苦しんでおる地方に、こういう災害が起きた場合には、従来のような観念で財政負担をすることは、私は不可能だと思うのです。ことに今回の九州地方のあの甚大な被害から推して三分の二を主張するのでなくて、災害の場合の補助というものは、一般並に、どうしても三分の二でなければならない。こういうことをこの際大臣に強く認識していただいて、今回は特に三分の二を強行されると同時に、今後一般の災害に対して、これが徹底するように御努力願いたい。これは今回生まれたことではなく、昨年あたりも、この委員会を通じ、委員から強調されたことなんです。残念ながら文部省の大蔵省に対する力の弱いことが第一の原因となつて、これが実施されなかつたわけです。幸いに、その点では非常に力を持つておられる今回の文部大臣は、大いにこの点を実現していただくよう御努力をお願いするわけであります。  さらに災害地教科書の問題についてお伺いしたいと思います。これは一般学用品と関連するわけですが、監理局長が災害地に行かれた。そこでいち早く新聞に、九州地方におけるこの問題はただちに解決いたしますという監理局長淡が見えたのであります。しかし今のお話を伺いますと、古い教科書を集めて、そうして万全の措置を講ずるというようなお話であるし、無償配付の分については、今から大蔵省と折衝して云々というふうな、まだ今からのようなお話だし、古い教科書がはたして集めるかどうかも、私たち非常に疑問に存じております。当時九州地方で、文部省として発表された言葉からすれば、その教科書対策というものは、こういう非常な場合に際会して文部省として手落ちなくできているようなふうにも伺つておつたのですが、今の御説明の程度であるかどうか。それから、そういうことで現行の制度における教科書対策というものがいいのかどうか。この点をお伺いいたします。
  22. 田中義男

    田中(義)政府委員 教科書無償配付については、一年生についての国語、算数の問題についてさつきお話申し上げたのでありますが、今から交渉するのではございません。この点は、ただちに私どもとして大蔵省にも折衝いたしておりますが、ただいま結論を得ておりませんということを申し上げたので、相当努力をいたしておるつもりでございます。それから、この無償配付は、御承知のように、一年生に入つた者に対する国語、算数だけの問題についてでございますが、そのほか一般の罹災者につきましての災害救助としては、先ほど来御説明申し上げておりますように、今回単価を五百円、また中学校について千百円というように引上げてもらいましたので、大部分のものが、やはり教科書についても、学用品と並んで無償配付を受ける、こういうことに相なるわけであります。それから教科書の残本の問題でありますが、大体一応前期分の配給を終りまして、なおそれぞれの業者の手持ちは、一割ないし二割の残本を持つておるはずでございます。また九州地区内におきましても、それぞれ供給業者において残本を持つておるところも相当あるようでございます。そこで至急に、その九州地区における残本の供給方をただちに手配いたしますとともに、なお全国的にも、東京あたりの出版業者は相当残本を持つておりますから、それをただちに現地に急送するというような緊急手配をいたしておるのであります。なお、昨日は九州地区の各教育長の人々が集まりまして、本省からも特に教科書課長が出向きまして、なお教科書配給の万全を期するように、協議を終つたことと想像いたしております。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 災害に対する御熱意は十分わかりますが、災害というものは予想しないときに起るのです。現在教科書が自由採択である以上は、こういう非常な事態に対処する策としては、困難をきわめる問題だと思います。従つて文部省としては、そういう点に対しては、いつでもただちに手配ができるような措置がされておらなければ、現行の教科書制度においては、これは無責任だということになるわけです。御熱意はわかりますけれども、ただちにそれが手配ができて、罹災児童に対して、全部とはいわなくても、その七割なり八割なりは、ただちに教科書が配付できるということでなければならない、これはもり半箇月以上もたつているわけですから、完了するような態勢でなければ、教育的な対策じやないと思う。今お話を聞けば、それに対する費用すらどうのこうのということですが、こういうふうなことは、早く措置ができるように、常々御用意なさらなければならぬと思うのです。現行法におけるところの教科書対策というものは、まことにむずかしいものであります。平常私たちがお伺いしておりましても、それに対する対策というものは、まことに文部省としてもずさんのような感がしてならないのであります。どうか万全の措置をとつていただきたい。私たちが参りましても、家は流れても、あるいは家財道具が流れてしまつても、それでも、あしたからの子供の教科書がないということについて、親たちは非常に心配しておられたのです。そうして昔の国定教科書のように——これは問題は別なんですが、すぐに商店へ行つて買えるものならいい、ところが教科書がいろいろであるから、買おうとしても、本がないという状態で、非常に困つておる。これはぜひとも国会で、あるいは文部省で手配をしてくださいということを、私たちは要望されて来たのです。文部省としましても、局長さんがただちにこれは発表をしておるのですが、いまもつてそういうふうな措置をすることができないのは、非常に遺憾と言わなければならないわけです。とにかく教科書の問題は、お父さんが官庁に勤めておつて転任すれば、もう教科書は手に入らぬということで、非常に困つておるのですが、こういうような問題は、当然措置されてなければならぬところなんです。ひとつよろしく御手配をお願いいたします。  それから、いつもながら災害が起きますと、ただちに学校というものが避難所になるわけですが、やはり今回におきましても、あの大被害でございますから、ただちに罹災者が校舎に収容されております。これに対しましては、もちろんあのお困りになつておる方たちに対しまして、ただちに使用できる校舎が提供されたことは、私は当然だと思います。しかし当局としましては、あの罹災者の方たちには、当然ほかの責任者があるわけですから、その人たちが手配をして、学校というものはすぐ勉強ができるように、なるべく早くやつていただきたい。学校関係が黙つておれば、ほかの責任者が、学校はあいているのだからいいわ、というのでもつて、校舎が長く使用されることになる。そうして今でも住宅を建てるということは簡単にできないのでございますから、もし学校当局あるいは文部当局が、他の官庁に対して責任を追究するというような措置がなされなければ、あの戦災後に現われたような問題が起きるのではないか。そうしてまた、学校当局が一人で困窮するようなことも起きないとも限らない。住宅問題等は、当然他の官庁において責任を持つものがあるわけでございますから、そういうところに、文部省当局は官庁同士として、積極的に働きかけなければならぬし、われわれ国会におきましても、住宅問題等は当面の責任者が打開すべきであるというふうに考えるわけであります。この点についての文部省対策を伺いたい。また、今これらに使用されておる学校数、避難着の数というものがおわかりでしたらこの際御説明願いたいと思います。
  24. 田中義男

    田中(義)政府委員 実はお話のように、ごういつた場合に学校校舎が避難場所に当てられるということは、これは考えられることでございまして、事情やむを得ないことと思つておるのであります。ただお話のように、これがいつまでもずるずる続いて、学校授業にさしつかえが起るということも教育の立場から申しますと、非常に因ることでございます。実はあの被害が起りましてから、ただちに本省から向うに参りました者も、特に学校再開を事情の許す限りなるべく早くすること、これが一般への影響も大きいので、ともかく何とか学校再開については早くするということで、現地においてできるだけ骨を折るということも、一つの大きい問題として持つて参つたのでございます。従いまして、それにつきましては、われわれとしても、他の官庁方面につきましても、できるだけさような心構えで、今後の努力をいたしたいと思つております。  それから、現在実情がどういうふうになつておるかということでございますが、その点については、施設部長からお答えいたします。
  25. 田中徳治

    田中説明員 避難所の箇所なり、あるいは人数でございますが、災害地方におきましては、通信等の関係で、その情報がなかなか集まりにくいために、実は集計が困難でございます。その後の情報を聞きますと、半分がもう出ておつて、半分は残つておるという現状でございます。特に熊本地方におきましては、避難者と学校当事者の間にお伴いて多少のいざこざがあつたということも聞いておりますが、久留米におきましては、徐々に避難者は退去いたしまして、半数以下になつております。こういつた実例を聞いておりま治す。その際、教育上支障のない限度において、学校長なり、あるいは教育長が十分相談の上でもつて、学校を使わせるようにしたらどうかというふうなことで、久留米市においては、順調にやはり避難所として使わせておりますが、そのために、学区の多少の変更等がありますと、教育上支障があるというようなことも、現地においては問いた次第であります。いろいろな点で、残念ながら、実はその数字の持合せがないのでございます。
  26. 小林信一

    小林(信)委員 この点については終りますが、とにかくもう少し詳細な資料を御提供なさることが、むしろ文部省としての責任だと思いますので、もう少し詳細なものをお願いいたします。  先ほど御説明の中にありました今後の特別な問題として、校地相当やられておる。ところがこの校地補助対象にならないだろうというところから、私も、校地復旧することについての補助をこの際考慮せられ、処置されたいということを、たくさんに聞いて来たわけなんです。今、要望事項として申し上げたのですが、そこを最も大事な点として、これがいち早く手配されるようにお願いするものです。そしてあくまでも一般災害と同じように、三分の二の補助ができるように願いたい。今のような教科書一つ取上げましても、なかなか困る問題が多いのでありますから、これらに対しまして早く手配をしてあげるように、ぜひともお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  27. 辻寛一

    辻委員長 他に御質疑はありませんか。
  28. 辻原弘市

    ○辻原委員 私も校舎災害に関して、詳細にわたつて現地を見られた施設部長にお伺いいたしたいと思います。おそらく施設部長は、ここに載せられでいるような全般的な災害状況視察されたばかりでなく、おそらく今後の恒久的な、詳細にわたつての問題を、専門的な立場から現地を見て来られただろうと思つております。従つてここで現地の模様についてちよつとお伺いいたしたいのは、最近の校舎状況を、いろいろと資料なり、実地にわたつて見ますと、戦後の荒廃から、非常に危険校舎が累増しておる。同時に戦時中から戦後にかけての校舎建築というものは、必ずしもいい建物がつくられておらない。きわめて粗雑なものが多い。こういう点から考えた場合に、その保全状況というものは、このような大きな災害にあつては、もちろん一たまりもありませんけれども、この種の災害以下の場合にでも耐えられない施設相当あるのじやないかと思います。こうした在来の建物と、それから最近つくつておる鉄筋との間に、その災害に対しての耐久度合いと申しますか、そういうものについて、何かお気づきになられた点が、あつたかどうか。この点、保全の状況は一体どうなつておるか。北九州地帯、主として都市の災害が、今回の場合には相当大きかつたように聞いております。都市の場合には比較的に鉄筋建築が多いが、それらの災害状況と、それから在来の木造建築被害状況について伺いたい。一般的に木造と鉄筋とでは、その耐久力がもちろん違いますけれども、その程度のものであつたか、それとも鉄筋の方が非常にいいのか、そのような点についてお気づきになられたかどうか。その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  29. 田中徳治

    田中説明員 鉄筋と木造の耐久命数でありますが、鉄筋では少くとも八十年あるいは百年以上、木造ならば三十年ないし四十年、こういつたのが一応建築の耐久命数であります。しかし現実には五十年以上の校舎相当にあります。特に水害に対しましては、先ほど申し上げましたように、相当な老朽校舎でも、台風を伴わない場合におきましては、水の引けたあとは、そのまま実は残つている場合が非常に多いのであります。しかし避難所ということに利用する場合においては、非常に鉄筋が大きな効果を上げておる。これはもちろん床が高いとか、あるいは水流に対して構造的に非常に強い、こういつたことが多いのでございます。特に山間部の山くずれ、あるいは丘陵地帯における崖の崩壊に対しましては、何としてもやはり鉄筋が非常に大きな効果を現わしております。山くずれなどに対しまして、木造校舎では非常にもろいのでありまして、校舎の耐久命数ということだけでなしに、基礎が非常に貧弱である、こういうことが一つの原因をなしておるのではないかと思います。
  30. 辻原弘市

    ○辻原委員 お話のように、災害の種類にも幾通りもございまするし、また大小もありまして、一概には言えないと思うのですが、私は、最近いろいろ起つております各地の災害状況から見まして、また私も震災を体験いたしましたが、その自分の体験からも、今後こうした災害がいろいろ形はかわつて参りましようとも、年々歳々あることを一応覚悟しなくてはならぬと思います。その都度今のような木造の建築、あるいは在来のような建築様式でやつておつては、やはり毎年々々同じことを繰返さなければならぬ。こういうことになつて来るのじやないかと思う。それでは国費の濫費もおびただしい。その都度交通にもさしつかえる。こういう問題も起つて参りましてその復旧も非常に遅れて参ります。そういう点からも、ただいま国でやつておりますような、いわゆる防火ということを主体にした鉄筋建築の奨励ばかりでなく、恒久的な、災害に対し得る校舎建築という立場から考える必要があると思います。鉄筋建築のよさは基礎にあると思いますので、そういうふうな面からも、この鉄筋建築を大幅に奨励して行く形をおとりになるお心組みがないか。ただいまは六・三建築にいたしましても、あるいは危険校舎改築の配分にいたしましても、大体一五%程度を鉄筋にされておるようでありますが、このわくでは、大体中都市以上のものにのみしか行き渡らないし、該当しない。最近小都市、あるいは場合によつてはいなかでも、私が申し上げたような意味合いから、やはりつくるなら——今ちようどそういう校舎の更新期になつておりまして、一つは老朽、一つは年々の災害の問題、この二つから校舎が逐次更新されておる。そのときに、やるならば思い切つて、多少一時的には金がかかつても鉄筋にして、将来安んじていられるものにしたい。こういうような意向が相当出て参つているように私は思う。そういう点から、このわくを拡大して行つて、要防火地域のみならず、年々歳々災害が起る可能性があると考えられる所には、鉄筋建築を奨励して行くようなお心組みを、将来にわたつてお持ちになる必要があるんじやないかと思いますが、この点について、大臣何か御意見ございませんでしようか。
  31. 大達茂雄

    大達国務大臣 まことにごもつともな御意見であります。でき得るならば将来の災害に備えるためにも、また校舎が長続きいたしますためにも、鉄筋にすることが一番いいことでありますが、しかしやはり単価相当違うものでありますから、かりに文部省の方で十分な予算を持つておりましても、地方財政の上でなかなかついて来られないという事情もあります。いわんや御承知の通り、文部省が老朽校舎について現在計上してある予算もきわめて少いのであります。従つて、なかなかて鉄筋コンクリート建だけということは実情が許しませんので、今後におきましては、できるだけそういうことにしたい、こう存じますけれども、ただちにコンクリ—ト建の普及ということにはなかなか実情が参らぬことと思います。
  32. 辻原弘市

    ○辻原委員 できるだけそういうことにしていただきたいと思います。方法はいろいろあると思いますので、もちろんこれは地方財政に及ぼす影響もありますし、単価の問題もあつて、小さな町村では耐えかねる点も出て来ると思いますが、要は国が積極的にそういう方法をとれば、地方の方でも考える点も私は出て来ると思います。あるいは、これは一挙に鉄筋に半分も乗りかわつてしまうということは不可能でありましても、ただいまの一割五分ではあまりにも少い。これを漸次ふやして行くというような方法で、二割にし、あるいは二割五分にするという漸進的な方法も一方法でありましよう。または木造と鉄筋に対する補助率の相違ということも、考えれば、これも奨励の方法になると思います。但し、これは都市中心主義にもなりますから、その辺のところは技術的に考究する必要があるわけであります。また起債の問題等についても、そういう弱小町村で負い切れないという場合には、これについても考慮するというふうなこともあわせ考えて行く。これは一時的なことを考えれば、木造であつてもいい、できるだけ薄く、広くやつて行く方法がとられやすいのですが、やはりこう年々歳々災害が起つて来たのでは、あまりにもつたいないと思います。その都度、教育を中断しなければならぬということは、ちよつとした災害にもひつくり返るようなものが相当あるのですから、今の時期に考え直す必要がある、かように思いますので、その点はひとつ御研究願いたいと思います。
  33. 原田憲

    ○原田委員 学校が避難民の宿舎に用いられたり、教科書がない。それから各人の家が災害をこうむつて土砂運びをしているというようなことをニユ—スで見たり、話で聞いておるのですが、その間にどのような方法で勉強しておるのか。ちようどこれから夏休みになるわけですけれども、中等学校高等学校では試験の時期に際会しておる。そういうときに際して、どういう方法をとつておるのか。ちよと見て来られたお話を願いたいと思います。
  34. 田中徳治

    田中説明員 ちようど授業中に私、参つたところがないのでございまして、残念ながら詳しく申し上げられませんが、高等学校等におきましては、ほとんど勤労動員的なことでもつて、正規の授業はほとんどできないというような状況であります。というのは、生徒が全部学校へ集まることができないので、周囲から集まつた高校生等は道路開通のための土砂排除、あるいは軌道の修理、こういつた面に相当に働いておりまして、非常に感謝の的となつております。従いまして、実際は罹災学校そのものにおきましては、正規の授業はできなかつたというふうに解釈するのでございますが、その間、やはり教員は十分指導の役目を果しまして、そしてこれらの学校生徒復旧の事業に使つて、側面的に援助をしておる。こういう例が非常に多いかと思います。なお小学校等におきましては、罹災しない学校は正規の授業開設しておる例が多いようでございます。罹災学校は、集まりまして、そのほとんど大部分が床の清掃なり、土砂の搬出、こういうことが私の見ました罹災学校現状であります。なおこれを分散授業をいたしましたところが、多少困る問題がある。というのは、一万は罹災した児童、一方は罹災しない児童、こういつたものが一つの学校に入る場合、両者をうまく教授するということが、非常に困難を伴うという事情は私聞いておりますが、残念ながら、実際の状況は私現実を見ませんために、御報告申し上げることができぬのは残念でございますが、御了承願います。
  35. 原田憲

    ○原田委員 学校が倒れたとか、つぶれたとかいうことはよく見て来られるのですけれども、どう勉強しておるかというようなことは忘れられがちであります。戦争中に勤労学徒動員で、勉強をほつぽらかしにして、工場でハンマーを振つておつた。戦争のためにやむを得なかつたということでありますけれども、そのために教育上のマイナスが非常に大きく後々の世に現われて来るのであります。今度の場合でも相当大きな被害でありまして、高等学校生徒なんか、次に大学へ進級する人も相当あると思いますので、一番大事な時期に災害があつて、そしてからだが大きいから土砂運びをやらせるということで、今度試験のときにはマイナスになることが多いと思います。また中等学校の子供でも、こういう大きな災害をこうむつて、二箇月、三箇月遅れると、あとに現われて来る影響が非常に多いと思うのであります。そういう点については、特に文部省あたりで気をつけて指導してもらわないと、学校を建てるという二と、本を持つて行くということも大事でありますけれども、教員がどういうことをするかということは、田中さんは施設部長で、その方が専門でないのでありますが、その方面に十分気を配つていただきたいということを、時間がございませんから、要望しておきます。
  36. 辻寛一

    辻委員長 他に御質疑はございませんか。
  37. 辻寛一

    辻委員長 それでは次に学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑があればこれを許します。野原委員
  38. 野原覺

    ○野原委員 二、三御質問申し上げたいと思います。  まず第一点は、教育委員会法の第一条には、御承知のように教育行政本来のあり方が述べられております。その教育行政本来のあり方として何と述べられておるかと申しますと、地方実情に即して教育行政が行われなければならないとうたわれておるのでございます。こういう点から、今この学校教育法の一部を改正する法律案を見てみますと、この法律案のねらいは、理由にも述べてありまするように、教科書の検定を文部大臣が行おうというところにあるのでございますが、教科書の検定を従来は教育委員会法その他で、都道府県の教育委員会に当然その権限があるとしておつたものを、文部大臣の手にその検定権を移すということは、ただいま私が申し上げました教育委員会法第一条の教育行政の本来のあり方としての、地方実情に即して教育行政は行われなければならないということと、一体どういうように関連されるとお考えであるか、承りたいと思います。
  39. 大達茂雄

    大達国務大臣 お言葉の通り、地方教育委員会で検定をするということになりますというと、その地域に関する限り、なるほど地方実情に沿うという上において有効であろうと存ずるのであります。しかしながら各地域地域の教育委員会教科書の検定をするということには、実情から見ましていろいろの困難もあり、またいろいろそれに伴つて困つた事態を生ずるおそれが非常に多いのであります。それで従来、当分のうちということでありましたが、文部大臣において教科書の検定をする、こういうことに今日までなつて参つております。そこで、この法律案は、当分のうちということを、恒久的に文部大臣において検定をするということに改めるというのが、その趣意でありますが、これは検定でありまして、多種多様な教科書ができます、その検定を文部大臣がいたすのでありまして、その検定された教科書の、どの教科書をそれぞれの地方々々において採択するかということになりますると、これはそれぞれの教育委員会の権限として採択されるのであります。さような意味におきまして、この教科書の現実の採択によりまして、それぞれの地方実情に即応するようなことができるはずだと思うのであります。のみならず、その他の教材、資料、そういうものの選択によりまして、地方実情に沿うことができると考えておるのであります。どうもその辺は実情によることでありますが、各教育委員会がそれぞれに決定をするということになりますると、これはまた非常にいろいろ混雑する困つた事態が起りまするので、検定を文部大臣がいたしましても、地方実情に即しない、これが画一的な教科書を与えるということにはならぬと思つて、この法律案を提出した次第であります。
  40. 野原覺

    ○野原委員 ただいまの大臣の御答弁を承つておりますと、結局教科書というものは地方実情に即したものがやはり望ましいのである。そこで地方実情に即した教科書というものは、大臣が検定をされるよりも、大臣がその検定の権能を持つよりも、むしろ今日都道府県に、教育地方分権の趣旨の上から、都道府県教育委員会というものが置かれておるのでございまするから、都道府県教育委員会というりつぱな、公正な、民意によつて打立てられた機関に検定権を与えることが、より地方実情に即した教科書の検定ができる、こういうお考えであると拝聴してよろしゆうございますか。
  41. 大達茂雄

    大達国務大臣 地方実情に即することが必要であることはもちろんであります。しかしながら、言うまでもなく教育は、国民として、また社会を構成する一員としての教養、知能、人格をつくることが大きな目的でありますので、これを地方教育委員会の検定だけにまかした方がよろしい、こういうことには私はならないと存ずるのであります。
  42. 野原覺

    ○野原委員 たいへん残念ながら、その点が私は見解を異にするのでございますが、教育委員会教科書の検定をやつた場合に、国民として都合の悪い教科書ができるとか、あるいは国家として困つた教科書ができるというようなことをお考えでありますか。お尋ねします。
  43. 大達茂雄

    大達国務大臣 必ずしも困つた教科書ができるとまでは考えておらぬのでありますが、一例を申し上げますと、この教科書の検定という仕事は、その事務の分量におきましても、手数におきましても、これは容易ならぬ問題であります。各地方教育委員会ごとに今日のごときいわゆる地教委と申しますか、市町村教育委員会に至るまで、全国のたくさんの出版会社からできて来る、あるいは検定の申請のあるものについて、これを検定するスタッフを持つということは、事実上不可能であります。これは市町村のみならず、県の教育委員会におきましても、この検定に必要なる人員をそろえて、検定の上に遺憾なきを期するということは、実際は容易ならぬ問題であります。また一面におきましては、地方だけで検定するということになりますとややもすると教科書地方版ができるそういう方向に進むということも考えられるのであります。教科書を出版する側におきましても、甲の委員会においては検定をパスする、隣の村へ行くしと検定が不合格になる、こういうことが起りましては、実際問題として、教科書全体の出版もなかなか困難であり、価格も高くなり、種々さまざまの混雑が想像されるのであります。そして、文部大臣が今日まで検定をして参つたのでありますが、教科書もその質において、あるいは価格の点においても、漸次改善を見ておると思うのであります。これが今の地方実情に即するという一点のみ考えて、各地ばらばらに検定するということの場合を考えまして、利弊がどつちが多いかということから、この法律案を提出しておるのであります。選択は各地方でするのでありますから、地方実情に即せしめるためには、やはりそれぞれに適した教材なり資料を、教育の実際のやり方において、十分地方実情に即応せしめる余地がある、かように考えておるのであります。
  44. 野原覺

    ○野原委員 そこで方向をかえてお尋ねいたしますが、教育の中央集権化とか地方分権ということが言われておるのでございますが、教育の中央集権化ということに対して、大臣はどういう御所見をお持ちでございますか。
  45. 大達茂雄

    大達国務大臣 お答えをする前に、間違つたことを申し上げましたので訂止しておきます、教科書の検定権と申しますか、これは都道府県の教育委員会なつておりますが、これは当分の間文部大臣がやつております。ただいま申し上げました市町村云々のことは間違つておりますから取消しておきます。御了承を願います。  教育の中央集権、これはもちろんわが新しい教育制度におきましては、これを避け、地方分権という建前でできておるのであります。いわゆる教育委員会の制度、これもこの見地において創設せられた制度であると思います。これはお言葉をまつまでもなく、中央集権的な教育は、今日の新しい教育制度においては採用せられないと考えておるのであります。
  46. 野原覺

    ○野原委員 そこで、教科書の検定を大臣の権能に移させるということは教育の中央集権化を来すことになり、教育委員会法が教育行政のあり方として書いておる地方分権、あるいは教育行政の民主化の精神に反することになる、あるいはその精神を無視するようなことになりはしないかと思うのですが、お考えいかがですか。
  47. 大達茂雄

    大達国務大臣 申し上げるまでもないことでありますが、すべて制度というものは、これに伴う利益の面と、弊害と申しますか、損になる面、これを考え合せまして具体的には制度が定められる、こういうものであろうと思うのであります。そこで、ただいま申し上げましたように、文部大臣教科書の検定を一元的にいたしましても、これで中央集権になるとか、あるいは地方分権の趣旨に反するとかいうことは、私は現状においてはないと思います。これが全部一律の国定教科書を用いるということになれば、よほど中央集権と申しますか、教育の画一といいますか、そういう色が濃くなつて来ると思いますが、今日の場合、検定ということだけで、すぐこれは中央集権化であるとかいうところまで考えなくていいのではないか、私はこう考えます。
  48. 野原覺

    ○野原委員 先ほどの私の質問に対して大臣は、国民としての教育とか、国家としての教育ということを述べられたのであります。なおまた、あなたの教育方針の中で、質疑の過程で、教育勅語に対する御見解が述べられておるのであります。そうしてここに学校教育法の一部改正法律案が出て来ております。こういう点を総合して考えてみました場合に、行く行くは教科書というものは検定制度をやめて、国定教科書に持つて行かれる御意図があるのではないかという疑念を持つのでございまするが、この点いかがでしようか。
  49. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、国定教科書にするその前提としてこの法律案を出した、こういうことではありません。
  50. 野原覺

    ○野原委員 そこで再度お尋ねいたしますが、教科書を国定教科書にせよという主張が今日ございますが、これに対する御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  51. 大達茂雄

    大達国務大臣 今日の教科書につきましては、世間でいろいろの批判があります。あるいは定価の高い点であるとか、あるいはまたこれに伴つて不正と思われる売込み競争があるとか、あるいはその競争に関連をしていろいろおもしろからざる事態があるとか、主として教科書の採択につきましていろいろの批判が行われておる。かようなことならば、各出版会社の競争にまかせておく制度より、むしろ国定教科書にした方がいいではないか、父兄の負担の点からもその方がいい、こういうような議論があります。これは私は、必ずしも教育内容の本筋の議論とは思いませんけれども、しかし重大な問題ではあろうと思うのであります。今日幸いにして世間の批判を受けておりますさような点は、業者の自粛の点もありまして、漸次いい方へ向いておると思うのでありまして、私は今日、これを国定教科書にする方がいいとか、あるいは将来そうするということは考えておりません。よくよくいかぬことがあれば、これはまた、そのときに応じて考えて行きたいと思います。
  52. 野原覺

    ○野原委員 大臣の答弁には、いつも私割切つて納得できないものがあるのです。ただいまの私に対する御答弁を聞いておりましても、国定教科書に対しては反対であるかのようなお口ぶりでございますが、最後によくよくのことがあれば考える、こういうようなことを申されますと、一体あなたは国定教科書に対しては、教科書のあり方としてそれが望ましいのかどうか率直な御見解を承りたい。反対か、賛成か。
  53. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、国定教科書に一律にするということは望ましいこととは思つておりません。ただ初めに申し上げましたように、具体的に制度が取上げられる場合には、そのときの情勢に考え合せて、その制度の施行に伴う利害得失というものが十分考慮されて制度が取上げられる、こう思うのであります。現在の検定教科書制度ではどうにもこうにもならぬようなことが起れば、これは別であるけれども、しかし国定教科書にする方が教育のあり方としては望ましい、かようには思つていない、こういう意味で申し上げたのであります。
  54. 野原覺

    ○野原委員 国定教科書が望ましくないと仰せられるのですが、なぜ国定教科書がいけないのでございましようか、お聞かせ願いたい。国定教科書にすると、どういう点があるから望ましくない、こういうお考えがあれば承りたいと思います。
  55. 大達茂雄

    大達国務大臣 それは、野原委員が先ほど仰せになりましたように、国定教科書にすることが、ややともすると教育の中央集権的な色彩が強くなり、また地方実情に即応するという趣旨にも反するようになる。これはあなたがおつしやつた通りの意味でございます。
  56. 辻寛一

    辻委員長 野原委員、よろしゆうございますか。——では、大西委員
  57. 大西正道

    大西(正)委員 教科書の検定の趣旨を貫徹するためには、採択の面においても十分徹底した考え方があると思うのですが、今大臣からお話がありましたが、採択の問題をめぐりまして買収、売込み等で、非常にわれわれとしては慨嘆にたえぬ問題が多く出て来ておるのであります。なぜそうなるかという原因はいろいろございましようが、その一つは、私は展示会が今のような規模で行われておるということに一つの原因があろうかと考えます。今のような場所の数と、あるいはその期間とでは、せつかく教科書の検定に力を尽したものが、ここではそれが十分生かされないというように考えるのであります。従つてこの点については、おそらく今の大臣お話にもありましたように、文部省としても私は同感であろうと思います。この展示会の規模が今のままでいいか、あるいはまた将来どのように改善しようとしておるか、これをこの際聞いておきたいと思います。
  58. 大達茂雄

    大達国務大臣 これはまつたお話の通りでありまして、現在のやり方では、各学校に採択する機会は与えられるようになつておるけれども、これはほとんど有名無実の感があると私は思うのであります。実はこの間ちよつとひまがありましたので、現場を見に参つたのでありますが、見渡す限りの教科書を一日やそこらでそれぞれの学校の先生が来て、どれがいいか悪いかということをきめることは、これはほとんど不可能であると思つたのであります。これは今のような臨時の展示会ということでなしに、あるいはこれを常時一定の場所をきめて展示する方法をとるか、何らかの方法によつて、学校の先生が教科書の採択をする場合に、十分選択上の検討をする機会が与えられるように、何とか研究をしてかえるつもりであります。
  59. 大西正道

    大西(正)委員 常設の展示会場を設けてやるとか、その他何らかの方法を考えて行きたい、こういうお話であります。その趣旨は私も賛成でありますけれども、この問題は、ここ一、二年の問題ではありません。かなり長い前から問題になつておることでありますので、もう少し具体化した考え方がおありじやなかろうかと思う。これは文部省として、あるいはまとまつた考えでなくても、関係の部局で何かの案がありましたら、ひとつ……。
  60. 田中義男

    田中(義)政府委員 展示会は何と申しましても検定制度の中核をなす重要な制度でございますので、それについては前々から文部省としてもいろいろ検討を続けて参つておるのでありますが、ただいまのところでは、やはり常設展示会をつくるということが当面の急のようでございまして、これについては業者の側からも非常に要望いたして参つておるのであります。そこで二十八年度においては相当努力はいたしましたが、実現を見ませんでした。来る年度においては、さらに強力に努力をして、実現をはかりたいと考えております。
  61. 小林信一

    小林(信)委員 出された法案は一応簡単なものでありますが、前の文部大臣におきましても、昨年の教育委員会法一部改正の法案を提出したときに、教科書に対する対策というものは実に重大であるということを述べておられる。また一般におきましても、教科書に対する行政はいろんな角度から要望し、批判をしておるわけなんです。今回出されました法案も、やはり文部省考えている教科書に対するところの対策の一部として私は伺うわけでありますが、表面に現われたものは氷山の一角にすぎぬのであつて、内部に含まれるものは相当いろんなものがあるのじやないかと思うのでございます。そういう意味で、一般の父兄が要望し、あるいは教育関係する人たちが考えておるような点もあげて、この際御質問いたします。  まず教科書が高過ぎて困るということ、これが一般父兄の意見でございます。それから、先ほどもちよつと触れたのですが、お父さんがどこかに勤めておつて、それが他に転任したというような場合には、その年度において新たに教科書をその土地で手に入れることができない。あるいは今度の災害の場合にも、教科書をなくしたら相当な努力をしなければ、その教科書の使用に、不自由しなければならぬという問題があるのであります。これに対して、何とか善処してほしいということが要望されております。それから先ほどの採択の問題につきましても、いろんな批判があることが大臣からも申されたわけですが、教科書そのものはそうでもないけれども、副読本を使わなければならぬというふうに業者が仕組んで来るということのために、これが非常に教科書代を高くしておる。二人か三人の子供を持つておつたら、いわゆる一万二、三千円ベースの家庭では、そのために一箇月は犠牲にしなければならぬということまで育つておるのですが、当局はこういう点について聞いておるか。聞いておつたらどういうふうなことを考えておられるか。一応お伺いいたします。
  62. 田中義男

    田中(義)政府委員 まず教科言の定価が高過ぎるというお話でございますが、これは私ども常に耳にいたしておるところでございまして、昨年実は最高価格を押えまして、その基準を示しました結果、二十八年度使用の分については、約二割方は低くなつたと私ども承知いたしておるのでございます。これにつきましては、なお将来とも一層の配慮をもつて、できるだけ低くいたしますように努力を重ねたいと考えております。  それから次に、転任等の場合には非常に困るというお話、特に先ほどもお話が出ましたように、今回の災害等につきましても、まことに教科書の補充について困るということは、私ども非常に遺憾な点に考えておるのでございますが、結局このことは、一応各学校の側なり、あるいは教育委員会の側なり、これを選択される方の側におきましても、やはり生徒児童の使用する立場に立つて、これの適当なきめ方をして行くというような配慮を特にわずらわしたい、かように考えまして、従来とも機会あるごとに、会議等の場合にも、それぞれ一応文部省としての意見を申し述べ、参考に供しておるようなわけでございます。この点につきましては、検定制度の本質にも触れる問題で、これを簡単に解決することは非常に困難でありますけれども、これは双方の自覚と理解によつて、できるだけ使用者の方々の意見を反映するような配慮が、従来より一層必要だと考えるのでございます。  それから最後に副読本の問題でございますが、教科書が一応その性質上、全国的な幅を持つております関係で、それぞれの実情に応ずるように、地方においてさらに別途の教材等を補充して、有益適切なものを使うということは現在許されており、使用されておるのでございますが、しかし確かにお話のようなことも耳にいたしておりますので、文部省の指導といたしましては、教材でございますから、従つてこれを教科書並に強制するような結果になることは、これは望ましいことではむろんございません。そこで全児童の経済的な負担をも考え、またその結果が強制になるというようなことのないように、それを持たなければ授業ができないというような結果になることのないように、十分注意してほしい、こういうふうなことで指導して参つておるのでございます。
  63. 小林信一

    小林(信)委員 業者に対する対策としましては、いろいろその都度法律等を改正して、業者の便もはかつて、安くするようにしておることも私覚えておりますし、そういう点では、ほんとうに政府も協力して来たよりに思います。それから、まあいろいろ御説明があつたのですが、今のような御説明文部当局がしておる間は、決して国民の要望するような教科書対策というものは私は生まれて来ないのじやないか、こう思うのでございます。私はもつと根本的な問題をお聞かせ願えると思つて聞いておつたのですが、非常に遺憾でございます。と申しますのは、一年の子供に教科書を二册ずつ渡しておりますが、ある法案が提出された時には、やがてこれは全児童無償教科書だけは配付するように努力したいのだ、こういうことを文部当局は言われたはずなんです。やはりこれを貫徹するような根本方針が文部省にあるならば、私は教科書がいかに高かろうが、どうであろうが、父兄がそのために生活に影響されて、子供の学用品に事欠くようなことはさせない、こういう教科書対策が生まれて来るのではないか。こういうことをなぜ考えてくれないのか。最初そういう方針を確立したはずなんだ。そういう点を、私はお聞きしたがつたわけです。  さらにこの副読本等の問題は、教科書は六十円、七十円でもつて買えますが、副読本に至つては二百円、三百円という額が必要なのであります。しかも、それがうまく業者の方策によつて、どうしても使わなければならないようにできておるのです。これを排除するには、それは万全な措置ではないかもしれぬけれども、学校図書館というものをもつと施策の中に取入れて、そういう副読本等は必要としない。学校図書館に行けば、そういうようなものは幾らも得られるのだというような、大局に立つて教科書対策というものが私はほしかつたのです。そういうようなものが、いささかも文部当局にないというようなことは、非常に遺憾でございます。  それから、この法案の中に入りますが、提案理由の補足説明の中で、この終りから一枚目のところですが、「第二号の規定にかかわらず用紙割当制の廃止されるまで、文部大臣が行うものと規定しているのであります。」こういうことが書いてありますが、この用紙割当制が廃止となつたのは、これは昨年でございます。そうすると、文部大臣には検定の権限がなかつたはずなんですが、それがどういうふうに昨年度措置されておつたか、この点をお伺いいたします。
  64. 田中義男

    田中(義)政府委員 ただいま御指摘をいただきました教科書無償配付の問題につきましても、これは実は当時法案を御審議いただきました際にも、はつきり申し上げておつたはずでございまするが、私どもとしては、全教科書無償配付いたすということを目標に、漸次その方に努力いたして参ると申し上げた通り、私どもはその線に沿つて努力はいたしておるのでございます。ただ、その実現はまだ見ておりませんけれども、これは教科書における大きい義務教育無償の原則に沿つた一つの重点として、われわれ努力を続けるつもりでございます。  それから学校図書館のお話がございましたが、これも文部省として、ぜひとも学校図書館の振興をはかる必要がございます。ただいまお話のよりに、図書の充実ということが当面の急務でございますとともに、それに従事いたしておりまする関係職員の方々の身分の安定というようなことをもあわせまして、この学校図書館の振興には一層熱意を持ち、また努力もいたしておるのでございます。  最後に用紙割当制が昨年の三月三十一日付で廃止になつたが、その後どうだという御質問でございますが、ちようど法律の規定から申しますと、また別途に学校教育法によりますと、御承知のように第二十一条において、監督庁が検定をすることになつていて、その監督庁とは第百六条におきまして、「当分の間、これを文部大臣」こういうことになつておりますので、学校教育法を主体として考えます場合には、やはり当分の間文部大臣も同時に検定権を持つ、こういうことが明文上もございますので、従つてその法をもとに、ただいままでの検定を続けて参つておるわけであります。
  65. 小林信一

    小林(信)委員 学校教育法の方が優先するのですか。教育委員会法が優先するのですか。そういう場合の見解を確立して、その問題は措置されたわけでございますか。
  66. 田中義男

    田中(義)政府委員 当局考え方といたしましては、学校教育法は学校教育に関する根本の本則でございますので、それにのつとつてこれを続行するということも違法ではない、かように考えております。
  67. 小林信一

    小林(信)委員 そういう御見解だつたら、あらためてこういう修正をしなくてもいいと思うのでありますが、それはどういう理由からでございますか。
  68. 田中義男

    田中(義)政府委員 ただ法律の文字面から申しますと、教育委員会法、あるいは私立学校法並びに学校教育法等関係において非常に混雑いたしておりまして、いろいろな疑問もあるわけでございます。そこでこの際それらの点をはつきりと筋を立てますために、かような改正案を提案いたしたのであります。
  69. 小林信一

    小林(信)委員 これは実は昨年の教育委員会法一部改正の場合にも、多少その論議に触れたことがあつたわけでございますが、今のような御説明は、当時政府から提案されたものの中には、これと同じような内容があつたわけなんであります。その場合の御説明は今のような考えでなく、教育委員会法全体を、占領下においてつくられた教育委員会法でなく、ほんとうに日本の独立した立場においての見解からこれは修正しなければならぬという建前から、この問題も政府から提案されたことを覚えておるわけなんでありますが、その当時は、根本的な問題としましては例の地教委を、日本の国情からすれば、この際設置することはどうかと思うから、一年延期したい。従つてこの用紙割当の制度が廃止された場合の措置としては、教科書の検定権が大臣になくなるわけだから、これもあわせて行おうというような方針で委員会に提案されたことを覚えております。そうすれば、もつと教育委員会法全体に対して、当局は根本的にこれを改正する意図があるはずなんですが、今はそれがなくなつて、ただ教科書だけの、検定権だけの問題で文部省教育委員会法を考えておるのか。その点をお伺いいたします。
  70. 田中義男

    田中(義)政府委員 昨年は確かにお話のように、教育委員会法改正の問題に含めて、この改正案の実現を企図いたしたのでございますが、御承知のように教育委員会法はその後遂に実施を見た現在でございますので、従つて教育委員会の問題と一応切り離しまして、とにかく実際問題として非常に複雑した現在のこの法制の系統をこの際はつきりさせますことが実情に即する、かように考えて、ずつと計画を進めたわけでございます。
  71. 小林信一

    小林(信)委員 そういうところに私たちは教育行政の一貫しない点があつて、そのための障害が至るところに続出して来る感がしてならないのでございます。一応文部省としましては、今の吉田内閣のもとにあつて、かつてそういう計画をし、今日また今度は一つ一つ取上げて、いろいろ意図を実現しようとしておる。そういうふうな考え教育委員会法というものをながめている以上、あの地教委が日本の教育を崩壊の一途をたどらしめるような形に置かれておる。それを黙つて見ておるような形になるわけでありますが、何ゆえにもつと一貫した方針を立ててこの教育委員会法の改正なり、もつと納得の行く教育委員会を確立しないか、こういう点を私は疑うものでございまして、こういうように出されて来る場合に、やはり私たちは、これはもう一方においては、地教委を否定しておつた文部省が今これを肯定して、またこれと同じように出されて来た問題だけを取上げて来る。これが非常に国民から教育行政を批判される点なのです。こういう点に対しては文部省は何ら考えておらないのかどうか。これでは私はやはり、先ほど御質問がありましたように、文部省教育行政はいよいよ中央集権的になるのだ、そして地教委というものは、その意図と反して、何らかの目的をもつて強行しておるのだというようなそしりを受けるのは当然だと思うのでございますが、この点に対しては、いかがでございましようか。
  72. 田中義男

    田中(義)政府委員 昨年文部省で提案いたしましたあの教育委員会法の施行一年延期の問題に触れたのでございますが、それは決して当時文部省地方教育委員会を否定していたのじやございませんで、いろいろ論議がございますので、その施行を一年延ばしたい、こういうことであつたのでございます、その後ともかく御承知のようないきさつで、昨年の十一月一日に施行を見ましたので、従つてそれ以来文部当局の方針としては、ともかく施行を見ました以上、その実績を十分よく翫味して、そうしてそれぞれの是正、あるいは改革等については、将来にこれを考えたいということで進んで参つたのでございます。従つてこの際、教科書の問題をもそれとあわせて将来にこれを延ばすということは、まことに実情から申しまして適当ではございませんので、一応切り離して、そうして単独にここに計画をいたしたのでございます。
  73. 小林信一

    小林(信)委員 昨年一年延期を要望したということは、否定したことではないというが、だからと言つて肯定したことでもないと思うのです。従つて文部省の態度というものは、まだ国民に肯定か否定か、はつきりしないのです。それを今のような答弁でもつて、文部省の態度をごまかしておる以上は、これは文部省教育行政に対して、ますます不信を買うばかりです。いかに教育の自主性を大臣要望されましても、確たる信念を持つて教育行政を樹立しない以上は、これはやはり日本の教育というものは、そこから確立したものは生れないわけです。もつと信念を持つて、こうだということをはつきり言うべきだと思うのです。昨年あたりの態度と、今の局長の御説明とをあわせて考えるならば、何を文部省考えておるかわからない。一年延期をしようとしたということは、決して否定したことではない、こういうようなことを言つているが、一体天野文部大臣辞任したのは何ですか。ああいう責任をとつた事実さえある。そういう教育制度がいろいろと批判を受けて、先日、本委員会におきましても、文部大臣のいろいろな話合いに出た教員等の行動に、いろいろな批判があつたのでございますが、これらは、こうしたふまじめな信念のない教育行政から生れて来ることなのです。私はそういう点も大臣がしつかり考えなければ、ただいたずらに生れて来た事態に対して、どうのこうのという論議をやつておつてはだめだということを申し上げたのです。今の局長さんの御答弁から考えても、そういう点はうなずかれるわけです。こういう不見識なことで、だんだん文部省の最初の意図と違つた傾向を持たせるような教育行政をやることは、非常に一般国民あるいは教職員に対して不信を招くもとだということを申し上げたいのです。当初に申したように、根本的な問題を考えての教科書対策とい、りことを質問したときに、今の学校図書館の問題、あるいは全額無償でもつて教科書は配付するというような基本方針を持つておりながら、それがただちに口に出て来ないというのは、幾らあなたが弁明されても、真剣に考えておるというのではなくして、ほんとうに彌縫的な対策を講ずる以外に道はないのだというようにしか受取れないのでございまして、まことに私は遺憾だと思うのであります。たいへん時間をとりますので、以上で私の質問を終ります。
  74. 大達茂雄

    大達国務大臣 別に御答弁をする必要もないことでございますが、一言申し上げておきたいと思いますことは、申し上げるまでもなく国の政治、制度は、これを決定するものは国会であります。昨年延期に関する法律案が出ました当時、文部当局としてはいろんな事情にかんがみ、あるいは準備の実際にかんがみて、一年延期した方がよるしい、こういう考えに基いて提出したものと思うのでありますが、国会の方におきましてこれを実施せられた。これは今日の国家制度におきまして、国会でそうきまつたことは、それに基いて国政が行われて行くのであろう。もちろん文部当局としては、現在の制度につきましても、これをどういうふうにかえた方がよろしいか、あるいはどうした方がよろしいかということは常に検討をして、一定の結論に達すれば、その考え方に基いて国会にそれを提案をして、そうして御審議を願うのであります。しかし現在におきまして、今定められたる制度に基いて行政を進めて行く、これは当然なことであると思うのであります。
  75. 小林信一

    小林(信)委員 別に私は大臣の御答弁を要求したわけじやないのですが、そういう御意見を承ると、非常にありがたいので、一言私も大臣意見を申し上げたいと思います。  私は今大臣が申されたようなことは、この国会の一つの常識として当然だと思うのです。しかし一応文部省が文部大臣の意図に基いて方針を定めて、国会に提案した。その提案したものがくつがえつた。それが、設置するかしないかというような大きな問題なんです。そういうふうな意図の上に、自分たちの意見の上に大きな差異があつた場合に、国会できめられましたから、それに従つて私たちは忠実に仕事をします。これはなるほどいいかもしれませんが、教育行政の上に多少でも見解の差があつたというような場合には、それでは私たちの教育行政は行えませんといつて、責任をとるような問題もまたあると思います。それは問題によるかもしれませんが、そういう場合にはただべんべんとして国会の意思に基いて行政官が行政をやつておるようなことをしますと、これは国民から批判を更けるわけです。ごとに教育の自主性とか、あるいは責任とかいうものが要望され、道義の高揚を掲げようとするところの当局である以上は、そういう点がはつきりしないと、国会できめられたから、その通り私たちは忠実に従つて、今回こういうふうな法案を提出したのでありますというようなことでは、教育に関する限り私は納得できないものが生れて来ると思います。そういう点を私は大臣に、あるいは文部当局要望しておつたのでございます。大臣のおつしやることは十分わかりますが、それは往々にして他の官庁の大臣においては可能なのかもしれぬけれども、文部大臣に限つては、そういう点を相当慎重にやつていただかないと困る。ことに文部大臣が今行われておる地方教育委員会に対しては問題がないかのような感を与えておるのでありますが、もつと実情を御賢察になつて、当局が対処しなければならぬ問題がたくさんあるのでございます。それに対して何ら措置されるごとなく、単にこの教科書の検定権だけの問題を取上げるということは、もつと御反省なさる必要があるのではないかと思います。
  76. 辻寛一

    辻委員長 高津君。
  77. 高津正道

    ○高津委員 先ほど野原委員教育委員会法第一条を引用して、実情に即して行われなければならぬとあるのに、この法案はこれと矛盾するものではないか、こういう立場から、なぜ文部大臣は検定権を奪い返すのかという御質問に対して、その理由として、大臣が本日ここで述べられた内容は、教科書の検定は、分類においても、手数においても非常に困難なものであつて、検定のスタッフを持つことは地方には実際上本可能だ、こういう説明を聞いたのでありますが、この間承つた政府の提案理由にはこうなつております。すなわち教科用図書は、学校教育における主たる材料として重要な使命をもつているものであります。そこで今後一層この教科用図書の内容を充実し、初等、中等教育の水準を維持し、さらにこれを向上させるためには、教科用図書の検定はこれを文部大臣において行う必要があると信ずる。われわれは理由を二つ承つたのでありますが、それが主たる理由に聞えるのでありますが、なぜあの場合には言わないで、ほかのことを言つておるのでありますか。この点をお尋ねしたいと思うのであります。
  78. 大達茂雄

    大達国務大臣 検定制度の主要な目的はただいま仰せになりましたように、教育水準を高めるために教科書内容をよくする、これがもちろん趣旨でなければならぬのであります。そして先ほど野原委員にお答えをしましたのは、その見地に立つてみて、都道府県の教育委員会がさような見地で教科書の検定をするには非常に困難が多い。なかなかその目的を達することができないので、文部大臣が検定をした方が、教科書内容を改善し、教育水準を高めるゆえんである、こういう意味で申し上げたのであります。
  79. 高津正道

    ○高津委員 七月二日の文部委員会のこの法案に対する政府説明の中で、現在の教科書内容は不十分である、その水準の維持と向上をはからねばならない、こう言われたのでありますが、その内容不十分な事実や水準の維持と向上とに欠くるところある事実を指摘してもらわないと、この法案の採決には入れないと思うのですが、それはどういう点ですか。
  80. 田中義男

    田中(義)政府委員 これは一々現物をごらんいただきませんと非常に御理解困難かと思うのですが……。
  81. 高津正道

    ○高津委員 もつともひどい点は……。
  82. 田中義男

    田中(義)政府委員 教科書は、大体において現在学習指導要領、さらには教科書検討基準によつて作成されておるのでありますけれども、しかし、中にはそれぞれの学年の進行等におきまして、その発達の程度に必ずしも合致しないような傾向もないではございません。またあまりに地方色を取入れ過ぎますということは、同時に全国的視野に立つた場合において非常に問題もあるのでございます。従いましてこの際、いわゆる都道府県版の教科書ができるというような傾向にこれを持つて行きますことは、それらの点から申しましても困る結果になるおそれもございますので、従つて全国的視野に立つ教育性を保持する、それが結局教育水準の維持向上というところに結びつくわけでもございますので、さらに一層完全にいたしますためにも、今回の措置が適当であろうと考えておるのでございます。
  83. 高津正道

    ○高津委員 今の田中政府委員の御説明を聞けば不十分な事実があるというお話でありますが、先に文部大臣は、定価の面でも、内容の面でも、次第に改善しつつあるという答弁をされたのですが、その答弁と矛盾はしないかどうか、それを文部大臣に聞いてみます。
  84. 大達茂雄

    大達国務大臣 漸次改善しつつあると私は考えております。これが完全であるとは申し上げません。
  85. 辻寛一

    辻委員長 他に御質疑はありませんか——なければ本案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認めます。それでは本案を討論に付します。これより討論に入ります……。
  87. 大西正道

    大西(正)委員 ちよつと議事進行について……。これは不在員長に質問いたしますが、これに反対の何かございますか。
  88. 辻寛一

    辻委員長 それはこれから討論に入ります。討論をお聞きいただけばわかると思います。
  89. 大西正道

    大西(正)委員 これら、教育委員会法とか、学校教育法とか、文部省設置法とか、この教科書の検定問題について矛盾をした規定をしておる。これを統一するということが一つの提案の趣旨であると考えるが、その統一の仕方が、政府提案では文部大臣の権限に置くということになつておる。賛成される方があるとすれば、私はこのような矛盾した三つの法律をそのままにしておいてよろしいという意味なのか。反対される方は、そうではなく、おそらく教育委員会法の規定に従つて、都道府県の教育委員会に検定権を持たせるということであると思うのですが、もしそうだとすれば、当然修正案として提案されまして、まずそれの賛否討論から入らなければ、単にこの原案に対し反対するのはまつたく無責任きわまることではないかと思う。この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  90. 辻寛一

    辻委員長 修正案は出ておりません。従いまして、討論の内容を聞かなければわかりませんから、討論に入ります。順次これを許します。野原君。
  91. 野原覺

    ○野原委員 ただいま大西委員からあのような議事進行に関する発言がありましたが、私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつております学校教育法の一部を改正する法律案に対し反対いたしたいと思うのであります。すなわちこの法律案なるものは、教育委員会法第五十条第二号及び第八十六条、学校教育法第二十一条、私立学校法第七条第二号の、教科用図書の検定に関し法規を統一し、検定権を文部大臣の権能とする趣旨のもとに提案されておるのでございますが、私どもはこれに対しましては、民主教育本来の精神より見て反対の意思を明確に表示したいと思うのであります。  理由を申し上げます。申し上げるまでもなく、敗戦後教育委員会制度がとられておるのでございますが、この教育委員会制度を設けた趣旨は、教育行政をして民主化せしむるということにあつたと思うのであります。先ほど私が質疑の際に指摘しましたように、教育委員会法の第一条には、公正なる民意によつて、教育行政というものは地方実情に即して行わなければならないということをうたつておるのでございますが、地方実情に即した教育行政を行う機関として最適のものが都道府県の教育委員会であるにもかかわらず、ここに文部大臣が日本全国の教科書の検定に関して権能を持つということは、何としても納得できないのでございます。すなわち大臣が検定権を持つということは、大臣がどのようにお答えになりましようとも、それは必然的に教育の中央集権化を来すものであり、明らかに教育委員会法制定の趣旨に反するばかりでなく、教育行政の官僚化を来すものであろうと思うのでございます。最近御承知のように教育の逆コースということが言われておるのでございます。すなわち道徳教育の振興という名のもとにおきまして、教育勅語が持ち出されてみたり、修身科がそのままの形で復活されようとしておるのでございますが、これと軌を一にいたしまして、教科書は国定でなければならないという考え方が最近抬頭しておるのでございます。この点につきましては、先ほど大臣は国定教科書は思想統一、画一教育を来すものと思うので、私は反対をすると申され参ておるのでございますが、はたして大臣が申されたことが真意とするならば、私どもはそのためにもこのような教科書の検定権能を大臣の一手に帰するというような法律案に対しては反対をしなければならないと考えるのであります。何となれば、このような法律案のたどるであろう必然的なコースというものは、教育行政の中央集権化でございます。しこうして国定教科用図書の復活の機運を濃くするということに私はなろうと思うのであります。断じて私どもはこのような法律案を容認することができません。ここに反対の意思を表明しておきます。
  92. 辻寛一

  93. 坂田道太

    坂田(道)委員 私は自由党を代表いたしまして、本法案につきまして賛成の意を表する次第でございます。現段階におきまして、もし検定権を地方教育委員会にそのまま置くといたしまするならば、おそらく教科書の供給というものができなくなるだろうと思うのでございます。そうしてその結果は教科書そのものの質の低下を招き、またひいては値段等におきましても、今よりもずつと高くなるということは疑いを入れないところでございます。また地方に検定権を置きました場合は、ややともいたしますると、一県一つの教科書というようなことが起る可能性が非常に多いのでございまして、これはいわば一種の画一教育をやる弊にもなるかと思うのであります。そういうような面からいたしましても、地方教育委員会にこの検定権を置くということには私は反対でございます。そういうわけで本法案にわれわれは賛成をいたすのでございます。
  94. 辻寛一

  95. 大西正道

    大西(正)委員 私はここで条件をつけまして原案に賛成をしたいと思います。  この改正の意義は、私は前にちよつと申しましたように、相矛盾する三つの法律の統一整理にあるのであります。現実にこの法案が成立いたしましても、現在の検定のやり方については何らの変更がないわけであります。問題は、今やつておりますこの検定が、はたして不合理なものであるか、あるいはまた不都合を来しておるかということをわれわれはまず考えなければならぬ。検定の面におきましては、私も検定の事務に参加したものでありますが、そのような点はないと私は結論を下しておるのであります。むしろ問題は、前申しました採択の面とか、その他の面にあると私は考えるのであります。もしこれを改正いたしまして、そうして各都道府県の教育委員会にこの検定権を移して、今よりはたしてよくなるかどうかということも、これまたわれわれはこの決定をするときに十分考えてみなければならぬことだと考えるのであります。むしろ私は、今の現状におきまして都道府県にこの検定権を移したときには、いろいろな面において障害が多く発生するのではないかこのように考えておるわけであります。しかしながら今の中央の検定の運営の機構、それがそのまま完全だとは私は思わないのであります。また将来に対しても一るの不安なきものもないではありません。従いまして私どもは、審議会の委員の人選について、いやしくも一方的な見解のもとに、委員の任命に片寄ることがないように、例をあげますれば、教育者の団体でありますところの日教組のごときを、ことさら毛ぎらいするというようなことのないように、現在はそういうことは行われておりませんが、私はこの点は了解をいたしておるのでありますが、将来そういうことのないように、ひとつ検定審議会あるいは教科用図書審議会の委員に、広汎なる各方面の学識経験者を網羅されて、この検定の民主化を徹底されるということの条件をつけまして、私は賛成をいたしたいのであります。
  96. 辻寛一

    辻委員長 世耕弘一君。
  97. 世耕弘一

    ○世耕委員 私は原案に賛成いたします。それにつきまして、いささか意見を加えて賛成したいと思います。  先ほど来中央集権がいかぬという。私は中央集権けつこうだと思う。なぜかというと、まず言葉の面から研究してみたらわかる。九州にはばつてんという言葉がある。名古屋にはなもという言葉がある。あるいは東北の方に行けば電話でもちよつとわかりにくいようなねすという言葉が出て来るのだが、言葉の統一から考えてみれば、中央集権けつこうだ。なおまたもう一つ別の点から考えてみたら、教科書が高過ぎるが、安くするのには製本、印刷に十分の設備が必要になつて来る、だから中央でやることこれまたけつこうだ。また検定するその検定審査の上においても、中央にはそれぞれエキスパ—トがいるということも想像できる。ことに日本のようなちつぽけな国で、至るところに教育委員会ができて、あつちこつちでいろいろなことをやつているということでは、教育本来の使命が達成できはしない。ことにこの間の山口のような雑記帳か日記帳かわからぬようなものを出すに至つては、まことにいかぬと思う。そういうことを考えてみますと、私は中央集権けつこうだと思う。ただ地方実情をよくのみ込んで、今大西君が言われたように、検定にあたつては権威ある認定をしてほしいというのが私の希望であります。その一例といたしまして、大達文部大臣関係なかつたかもしれませんが、私の手元に「民主主義」という本が一冊届いている。これは文部省が発行して全国に配つたが、何か猛烈な反対を受けて、また回収したというのですが、こういう不見識なことを文部省に実際やつてもらいたくない。こういうことならむしろ地方にまかせておいた方がいいけれども、権威ある検定の方法をおとりくださるならば、私は中央集権けつこうだと思う、かように考えて賛成するのであります。  また先ほど去年反対であつたのに、今度賛成するというような意見もあつたようですが、今日は日進月歩、テンポが早い。去年反対したから今年も反対しなければいけないということはない。法律は生活に従うという原理がある。この意味から、悪いのはどんどん改革しなければならないし、いいことがあればどんどん進めるのが、民主主義でないか、かように私は考える。この意味におきまして、非常にけつこうだと思う。ただ先ほども大西君から御意見もあつたように、どうぞ文部省はあき家にならぬように——文部省があき家になるから日教組の連中が入り込んでこの間のような実例が出て来る。しつかりしていれば入つて来る者はなかろうと思う。こういう意味から、私は時宜に適した案であると思う。ただ実行にあたつて万全を期してもらいたい。反対されたからといつてぐらぐらとして、すぐまたそれをやめるような信念のないことではいけない。少くとも大達文部大臣がいる限りは私は安心しておるのでありますが、どうぞこの点は文部行政本来の使命を達成することに御努力くださらんことをお願いして、私の賛成討論といたします。
  98. 辻寛一

    辻委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。学校教育法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  99. 辻寛一

    辻委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決されました。  なお委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。  次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五分散会