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1953-07-11 第16回国会 衆議院 文部委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十一日(土曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 天野 公義君 理事 坂田 道太君    理事 原田  憲君 理事 田中 久雄君    理事 辻原 弘市君 理事 前田榮之助君    理事 世耕 弘一君       相川 勝六君    尾関 義一君       小西 寅松君    竹尾  弌君       今井  耕君    中嶋 太郎君       高津 正道君    野原  覺君       山崎 始男君    大西 正道君       松平 忠久君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部政務次官  福井  勇君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     福田  繁君         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 七月九日  理科教育振興に関する請願山崎巖紹介)(  第三二〇一号)  同(熊本虎三紹介)(第三二〇二号)  奨学金増額に関する請願辻寛一紹介)(第  三二〇三号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  理科教育振興に関する陳情書  (第七五  二号)  義務教育費国庫負担に関する陳情書外一件  (第七五三号)  同(第七五四号)  危険校舎改築費補助増額等に関する陳情書外一  件  (第七五五号)  小学校々舎整備建築費に対する国庫補助等に関  する陳情書  (第七五六号)  北海道大学工学部衛生工学科設置に関する陳  情書(第七五七号)  義務教育費国庫負担に関する陳情書  (第八〇一号)  老朽校舎改築費国庫補助並びに起債わく拡大に  関する陳情書  (第八〇二号)  地方教育委員会廃止に関する陳情書  (第八〇三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  教育職員免許法及び教育職員免許法施行法の一  部を改正する法律案内閣提出第一六号)  文部行政に関する説明聴取の件     ―――――――――――――
  2. 辻寛一

    辻委員長 開会いたします。  教育職員免許法及び教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案を議題とし質疑に入ります。御質疑がありましたらこれを許します。辻原君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 大体提案されておる改正案内容に触れる問題なのでありますが、それ以前に、免許法自体の問題につきまして少し根本的な問題をただしておきたいと思います。  第一は、ただいま実施されておる免許制度は、占領治下きわめて複雑な形で、直接アメリカの占領当局から指導を受けてでき上つたものである、こういうように私は考えおりますが、その点どう考えられておるか。
  4. 稲田清助

    稻田政委員 新しい免許法制度は、新しい大学教育を初め新制教育制度に即応して考えられたものでありますが、御指摘通りその制定いたしました時期が占領治下でありましたので、いろいろ占領当局の意向をくみ入れてつくつたことは事実でございます。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまの答弁にもありましたように、私もこの法案こそは一つ占領行政の中に生まれた、日本国情に合致しない、きわめて行き過ぎた内容を持つておる、そういう法案であると考えております。従つてこの法案については、現在施行中に起つているいろいろな矛盾を是正すると同時に、これを根本的に改正する必要がある、かように考えますが、そういう心組みを現在お持ちになつておるかどうか。この点は重大な問題でありますので、後刻大臣からこの点について御答弁をいただきたいと思いますが、まず担当事務当局の方から、そういう考え方を持つておるかどうか伺いたい。なお持つておるとするならば、現在どのような形でこれを検討しておるか、この点についてお伺いしておきたい。
  6. 稲田清助

    稻田政委員 御指摘のように、実情に即さない点につきましては、過去二回の免許法改正におきましても部分的に改正して参つたのであります。今日ここに御審議いただきます免許法改正法案につきましても、たとえば検定制度を取入れるというようなことは、これは可令部の意図と反するような新しい考えを入れておるわけでございます。  さらにお尋ねは、これ以上もつと根本的に改正する用意があるか、こういう点でございます。この点につきましては教員養成審議会諮問をいたしまして御検討を願つておるわけでございます。教員養成審議会としても、現在の免許法制度をさらに簡素化するなり、実情に即するように改正する点について、今審議中であります。ただこの全面的の改正を実施いたしますのは、何と申しましても教員養成制度であつて、対象が高等学校以下の教育でございます。従いまして高等学校以下の教育内容それ自身について、今教育課程審議会において高等学校教育全般について検討しつつあり、また中学校以下の社会科等について検討しつつある際でございますので、それのでき上る時期と見合いまして、免許制度も全面的に手を入れる時期が到来することと考えておるのでございます。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 教員養成審議会の方に一応諮問されてその答申を待つという心組みらしいのでありますが、その場合にやはりある程度簡素化をして行く、こういう方針をお考えの中にお持ちになつておるようでありますが、もちろん具体的な案は審議会の中においてつくられて行くものだと思いますけれども、その審議会に対して諮問をする場合、どの程度の簡素化を将来やりたいとお考えになつておるのか伺いたい。
  8. 稲田清助

    稻田政委員 問題は二つにわけて考えられると思います。現在この免許法の適用が非常に複雑であるというのは、免許法施行法の問題が大部分であろうと思います。これは従来の規定によりまして、現に教職にある方々がいろいろ複雑状態において資格を有しておられる。それを新しい免許法に切りかえるためにはたいへん複雑規定も必要であり、また手続も必要である。ここに複雑の大部分があると思います。これらは時の経過とともに、たとえば認定講習十箇年計画ももう半ばを過ぎておりますので、時の経過とともに収まるべき性質のものだと思つております。  それからいま一つは、免許法本法それ自身簡素化の問題であります。ここにもやはり時の経過を待たなければならぬもの、たとえば仮免許状制度等はそれであろうかと思います。理想的には本免許状だけでよろしい。しかしながら助教と本免許状所有者の間に、当分の間はやはり仮免許状を設けて奨励する必要があるのだというような問題があろうと思います。そういうように本法それ自身にも時の経過を待つて簡素化し得る部分が非常に多いと思うのでありますが、さらに突き詰めて考えます場合に、この教育職の職種、たとえば教育長であるとか、校長であるとか、指導主事であるとか、そういうものまで免許状がいるかどうかというような問題、こういう点について教員養成審議会研究されておるのでございます。ただ教員養成審議会としては、まだそれらの根本問題については結論を得ていない状態でございます。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 大臣がお見えになりましたので、再度その点に対する大臣のお考えを承りたいと思います。ただいま私はこういう質問をいたしました。それは現在施行されている教育職員免許法というのは、占領治下直接占領当局指導を受けた教育法規の中では、これは第一にあげなければならぬ、日本国情にマッチしない、非常に複雑な形態を持つておる、そういう法律である、こういうふうに考えておるが、その点について絶えず政府が申しておりますように、今日の段階においてはそうした行き過ぎのあつた点については是正するという、この立場をこの免許法に対しておとりになる心組みはないかどうか。このことを大臣から第一にお答えを願いたいと思います。
  10. 大達茂雄

    大達国務大臣 免許制度につきましては、御指摘になりました通り非常に複雑でありまして、免許法並び施行規則のごときものは実際ちよつと読んでも頭に入らないくらい、非常に複雑をきわめておりまして、それにつきましてはただいまお話になりましたように、できるだけ簡素にして明快なものにいたしたい、かように考えまして、審議会等にも諮問をいたしまして、研究をしてもらつておる、こういうことであります。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 お聞きいたしましたところ、教員養成審議会の方に諮問をされてその結論をお待ちになつている、こういうことでありますが、私はこの法改正については、根本的な問題はやはりできるだけ急いでやる必要がある、かように考えておりますが、その審議会答申の時期をいつまでにお考えになつておるのか、この点を大臣からお伺いいたしたい。
  12. 大達茂雄

    大達国務大臣 これはなるべく急いで答申の出ることを期待しておるのでありますが、高等学校以下の教育内容改善に関する教育課程審議会答申とにらみ合せまして、それに関連して改正いたしたい、かように考えますので、その教育課程審議会答申と関連して、それに引続いて答申のあることを期待しておる、できるだけ早くしてもらいたい、こう思つております。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 今の点ちよつとわかりにくかつたのですが、いま一度おつしやつていただけませんか。
  14. 大達茂雄

    大達国務大臣 この免許法改正は、やはり教育課程内容のきまりますことと関連する点がありまするので、教育課程内容改正と申しますか、改善と関連して免許法簡素化ということをいたしたい、かように存じておりますので、その意味におきまして遠からぬうちに教育課程審議会答申は出ると思いますので、それと関連する点がありますので、遠からぬうちに免許法に関する審議会答申が出ることと、かように考えておる次第でございます。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 最初承つたところによりますと、教育課程内容に対する審議会検討の方も相当進んでおるようであります。そういたしますと、この答申がほぼ近いというふうに考えますが、それに引続いてこの根本的な改正審議会に御諮問なさるとするならば、すでに文部当局においても一応本法並びに施行法改正に対するある程度の根本方針というものをお持ちなすつておられる時期ではないか、かように考えまするが、その点については現在ここに方針をお示しになる心組みがないか、これをお伺いいたしたいと思います。
  16. 大達茂雄

    大達国務大臣 なるべく早い機会に改正をいたしたいと存じております。ただいま方針としてここに申し上げるまでの段階に至つておりません。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 これは事務当局でもけつこうなんでございますが、先ほど局長お話によりますと、この法改正については二つにわけて考えておる。一つ本法それ自体一つ施行法の問題、こうお話になりましたが、相当量検討を進めておるのかどうか。今のように近い将来提示される、その提示される場合にあわててこれをおつくりになる、そうした態度でこれに臨んでおるのか。現在においても相当簡素化という問題について検討を進めて、ある程度事務当局案といつたものでも成案を持ちつつあるのかどうか。この点をお伺いしておきたいと思います。
  18. 稲田清助

    稻田政委員 教育課程審議会が、今まで審議せられました結果が、今回提出いたしました改正の大部分でございます。さらに根本的の問題は、ただいま大臣から答弁せられましたように、高等学校以下の教育内容あるいはその教科のわけ方、それらを見まして教育課程審議会において立てていただくようにいたしております。今教育課程審議会検討いたしておりますおもな部面は、職業教員養成というような点について御研究願つております。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 この養成審議会は、今もお話のありましたように、諮問される事項がいろいろ多岐にわたつております。しかも考えによれば、それは全般教育体系内容の中においてある部分をとらえて、諮問という形をとられておるように私は考えます。そういたしますと、免許法改正と申しましても、そこに都度々々そういう部分的な問題を諮問されるということになれば、この答申はごらんのようにこういうものになつて現われることは当然でありますから、先ほどから私が申し上げておりますように、その問題は、これは一つ補備、主として施行に関する補備工作というのが重点ではないか、こういうふうに私は考えております。そういたしますと、なかなかもつて本法を通ずる全体の改正に対して根本的に審議会に御諮問なさるということは、大臣がなるべく早くやりたいと今お答えになりましたけれども、私はどうもそう簡単におやりになるような心組みをほんとうにお持ちになつておるかどうかについては、多少疑問に照つておるわけなんであります。  そこで少しつつ込んでお聞きしたいのでありますが、まず本法の問題については、先ほどお話のありましたように、教科課程全般の問題とのにらみ合せ、あるいはいろいろな教育長その他校長といつた職員に対する免許等考え方もありますが、まず第一点に問題になるのは、現在の免許状種類であります。種類について少くとも私の記憶する範囲でも教育免許状仮免許状臨時免許状、それから教育免許状の一級、二級という種類があつて、これがまず非常に複雑さを持つておる。同時に御指摘になりました教育長免許状校長免許状、しかもその一級、仮というような種類、こういうものは非常に複雑であり、それをとるためにかつて文検制度であるとかいうようなものとまま取違えて、それに狂奔するような向きもなきにしもあらず、そのことが実際の教育実践の上から申しましてある種の弊害をもたらしておることは御存じの通りだと思いますが、そうしたいろいろの免許状種類について、これを根本的に簡素化をするという心組みがないかどうか。また簡素化できないとするならば、この点に関する理由はどういうことであるのか。これを承りたい。
  20. 稲田清助

    稻田政委員 先ほどちよつと申し上げましたけれども、教員養成審議会において、免許状の縦の級別簡素化の問題がもちろん検討されつつあるわけでございます。多数の者は、仮免許状のようなものはなるべく廃止したいという気持で研究しておるのでございますけれども、何と申しましても現在助教が二一%ある現状を見ました場合に、それをただちに二級普通免許状段階に上げるということは非常に困難でもあるので、一年養成ということで相当特殊の地域では奨励いたしておりますから、一年の養成でありました場合には、一年で出て来た人に対して当分の間仮免許状を与えることは残さなければならないのではないか。ですからねらいどころは簡素化でありますけれども、経過的に多少残さなければならないのではないかというようなことが、現在まで支配的な考え方であります。
  21. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまの問題が、大臣施政方針にもありましたように、学制の体系については少くとも現在の六・三制度というものを堅持して行く、こういうお考えに終始されていることを私は承つたのでありますが、そういたしますと、この免許制度につきましても、やはり教員資質向上内容の充実といつた点から、大学四年の現在のシステムを堅持されて行く方針であると考えます。そうするならば今局長からお話のありましたように、仮あるいは教員の二級といつたものについては、現状からある程度置かなければならぬということで、従来それを置いて来たものと思いますけれども、将来にわたつた問題でありますから、できれば教員資質向上という立場から、大学四年のいわゆる新制大学教科と相まつて、それを一本にして行くという考え方が私は少くとも文部省方針でなければならぬと思うのであります。従つて本法の場合は、大学四年のシステムでもつて教員とする。その間に二級が存在する限りにおいては、やはり将来教員養成の機関を、大学四年ということのみならず、短期大学においても可能なのだというふうにシステムを固定化さしてしまうようなことに現状からなつて行くことを、私は非常に心配するわけでありますが、そういう弊をなくするためにここで思い切つて教員免許状を一元化して、少くとも教員たる資格はそれだけの資質内容を今後にわたつても必要とするのだという大原則を免許制度の上に考えることが必要ではないかと思いますが、そういう措置をお考えなさらないかどうか、この点をお伺いいたしておきます。
  22. 稲田清助

    稻田政委員 ねらいどころはまつたくお言葉の通りでございまして、教育課程審議会も、またわれわれといたしましても、大学四年を基準としてそれをねらつていることは確かにその通りであります。しかしながら今日国立の養成学校における二万三千の養成数の約半数は、二年課程に依存しなければならない状況でございます。われわれといたしましては、大都会その他に対しまして、漸次二年課程を四年課程に置きかえて参りたいという考えを持つております。  なお一方北海道のごときにおきましては、本年の予算において二年課程相当大幅にふやさなければならぬほど需要供給の緊迫を告げております。そういう現実を真視いたしました場合に、ただちに二年課程養成資格である二級を廃止するとか、あるいは一年養成の仮を廃止するとかいうのはやはり現実から飛躍することにわれわれは考えますので、ねらいはあくまでねらいであり、努力はもちろん努力いたしますけれども、制度からただちにこれを抹消するという結論にはまだ到達していないのでございます。
  23. 辻原弘市

    辻原委員 免許状簡素化については、根本的な方針としては考えておるが、現実問題をどうするかという点についての解決策を見出せないので、この点についてはなお研究をする、こういうふうに私は承りました。そういたしますと、問題は主として施行法の問題にかかつて来ると思うのでありますが、ここで施行法によつて取扱われている在来の学歴なり在来免許資格というものについては、これはおそらく人間の能力をもつてしては不可能に近いほどの複雑さを持つていると思うのでありますが、これを変更することは、現状に照して非常に必要であると同時に、何とかこういうものを施行法においても一元化して行く。従つてその問題の中で一番重要な問題は、これはいわゆる現行法からいいますと旧免許資格でありますが、旧免許資格においてそれぞれ学校種別によつて、その当時最高であつた資格をそのまま新しい現行免許制度、または今後根本的に改正しようとする場合の免許資格に、そのまま移行さすという考え方は、これは私は一応妥当ではないか。もちろんそれにはそれ相当の現在の免許資格が要求しているものに対する、いわゆる研修制度というものは、別個に考えなくてはならぬと思うのでありますが、この点について、そういうふうに施行法においてこれを認めて行くという考え方を、今後採用される心組みはないかどうか、この点について承つておきたい。
  24. 稲田清助

    稻田政委員 旧資格と新資格の移行と再教育とをわけるというお考えにつきましては、それも一つのお考え下あろうと思うのでございますけれども、すでに免許状切りかえと再教育とを結びました教員教育十箇年計画を実施中でありまして、すでに十年計画のうち五年を経過いたしました。その成績等は、もうすでに五五%の成績をあげておるような途中でございます。従いまして途中でこれを一弾いたしまして新しい方法をとりますことは、また新しい混乱を招くことだと思つております。ただわれわれといたしましては、そこにむずかしさを去り、容易に新しい単位修得できる道を、今御審議中の改正案におきましては、教員検定という方法を見出すことによつて解決したいということで、御検討願つているようなわけでありまして、こういうように認定講習を受け、あるいは通信教育を受け、さらにまた教員検定を受けるということによつて残り計画を容易に、なるべくすみやかに実現したい、こういう考えでございます。
  25. 辻原弘市

    辻原委員 十箇年計画の途中これを打切るといつたような場合には、非常な混乱を生ずる、こういうお話でありますが、確かに現実の問題としては、これは正直者がばかを見たという一つのそしりが生れて来る。その反響を文部省が、ざつくばらんに言うと恐れていることは、これも一応わかるのでありますが、しかし研修というものと、それから免許をとるための単位修得というものを、あまりにも結びつけて考えている考え方は、むしろ文部省指導して、私はこれを改めさせて行くベきではないかと思う。何も免許状をもらうために研修をやるのではないと私は思うのです。やはりそのときそれに要請されている新しいそういう一つ内容を、みずからが研鑚して行くという、そういう形の研修でなくてはならぬ。そういたしますと、かりに従来一級をとるために、いわばいろいろ点数をかせいでおつた、その点数は中途にしてむだになつたらこれはけしからぬ、こういう考え方は私はいささかおかしいと思うのです。それが直接給与その他についての関連を持つているならば、やはり一つ既得権を剥奪することになるわけでありますけれども、問題は、それを約束しているのではなくして、やはり資質向上というために研究をやらせているわけでありますから、そのやつた一つの結果として、上級の免許状を与えて行くということになつているわけでありますから、その点は大勇気を奮い起して、そして研修というものと、それから与える単位修得というものとは、別なものだという前提に立つて、そして根本的な改正をし、同時に施行法改正に着手される。こういうふうな決断力を持つて、この法案に対して対処していただかなければ、五箇年経過していると言いますけれども、やはり今後五箇年の間にはいろいろ問題が起きて来ますし、なお現在の制度が存続する以上、仮に行く、次に教諭の二級に行く、次に一級に行く、次には校長免許状に行くのだというような長い過程を、ただ免許状を獲得するという、その形式的なことのみに追われて、実質的な研修を忘れて行く、こういうことが私は非常に懸念されると思います。御承知のように、各地でやつている認定講習がどれほどの成果をおさめているか、それよりもむしろ個々のサークル活動あるいは現職教育というような、日常研鑚の方がむしろ成績をあげていることにかんがみ、こういうような形式的研修制度というものを是正することが、私は非常に重要ではないかと思う。そのためにも何とか現行免許法並び施行法改正を、早急に抜本的に手を着ける、こういうふうに考えて行かなければならぬ、かように思いますが、そういう勇気がおありかどうか、ひとつ伺つておきたい。
  26. 稲田清助

    稻田政委員 御意見を承つたのでありますが、確かに免許法切りかえの最初におきましては、この切りかえの期間が三年あるいは五年というような短かさでありましたために、非常に受講者にもあせりがありまして、御指摘のような混乱が所々にあうたわけであります。免許法改正して、これを十年にいたしまして、もうすでに五年を経過いたしまして、五五%の実績をあげました今月といたしましては、受講者にも非常にゆとりを生じております。また受講させる方もなれて参りましたので、お話のような混乱は、昨年あたり以来はほとんどあちらこちらに見えないのでございます。われわれといたしましては、今までこうして都道府県教育委員会が御努力になつて来られたその実績から考えまして、やはり残り年月は従来の計画をとりながら、さらに新たにここに試験検定というような容易な道も加味することによつて、さらに容易にこれを実現することができるのではないかと考えるのであります。
  27. 辻原弘市

    辻原委員 確かに提案理由にもそういうことが述べられておりますが、私はだんだん年月がたつて来て、現在の方法がよいから問題が起つておらないのではなくして、初めはあまりにもこの問題が複雑であり、それに伴う一つ認定講習が形式的あるいは過重であるというために、大々的なこれに対する混乱が起つたわけであります。その後起つて来ないというのは、起らないのじやなくして、これはもうしかたがない、何とかとつて行かなくてはどうにもこうにもならぬのじやないかという、そういうあきらめに似た感じで、今向つているというふうに私は考えているわけであります。だから問題がないのではなくして、問題があつても、もうやむを得ないのだ、ただ目をつむつて機械的にこの単位修得して行くよりほか方法がない、こういうふうな事柄が実際この問題には隠されているのじやないか、こういうふうに考えております。同時に、実際この免許状を取扱う人々はなれて来たには違いありませんが、なお依然として各府県の事務当局を見てみますと、この免許事務を取扱われるためにとられる事務ヴオリユームというものは、他に比して非常に大きいということを、私はかねかね感ずるわけであります。これは小さな各郡市にある教育委員会の出張所をのぞきましてもこの事務が大半を占めている。こういうことは、どうも行政上から見てもあまり適当でない。だからその根源であるところの施行法改正というものをなるべくすみやかにして、そういう面からも行政のヴオリユームを減らして行くということを、もつと切実にお考えなさる方が私はいいじやないか。この計画をそのまま推進して行くよりも、そのことの方が冗費の節約でもありますし、また実際それによつてみな喜ぶのでありますから、何も私は固守する必要はないと思う。おそらくどこへ参りましても何とかこれを簡素化してくれという声は、これはもうだれの口からも、実際行政にあずかつておる人もまたこれをとろうとしておる現職者も、また将来これをとらんとしておる者も、全部そのことは希望を持つておる。簡素化することによつて何も教員資格が落ちて来るわけではないむしろ実質的の研修制度に切りかえたならばより有効な研修の機会が持てるというふうに私も考えますので、そういうような考え方はひとつ是正をしていただきたいと思います。いろいろ申し上げたいことはありますが、時間もございませんので、結論として、ともかく文部省は早急にこれに対して根本的な問題の検訂を審議会諮問する、こういうふうに承りましたので、できる限りすみやかに当局としてもその案をお持ちになるように要望したしまして、根本的な問題についての私の質問は終りたいと思います。  そこでこの法案審議するにあたつて二、三承つておきたいと思うのでありますが、第一条においては、新しい検定制度を設ける場合、その検定を行う対象として三つあげられております。いわゆる普通免許状を授与する場合には実務経験等について一つの参酌になつておると記憶しておりますが、ここでは実務経験が省かれて、人物、学力、身体の三つになつております。ところがこの場合の検定制度というのは、そこに載つておりますように、一つ免許状を持つてつて他の教科検定制度によつてとる場合でありますから、一つ免許状を取得する場合にすでにその人物であるとか、身体の条件とかいつたものは、審査の上で免許状が交付されておるものであります。とすればここで三つの事柄をダブつてやる必要はないのではないか。むしろこの場合に必要とするものは、直接学力に関する検定であつていいのではないか、思うのであります。この点は重複する感じを持つのでありますが、どうでありますか。実務を省かれたのもおそらく重複するから省かれたのだろうと思うのであります。それなら実務を省かれたと同じように——身体についてはそのときどきの条件がありますから、これは場合によつたら必要とするかもしれませんけれども、人物については一応適当であるということで、その免許状を与えて教壇に立たしておるわけでありますから、特にそれをダブつてやる必要は何らないのではないかと思いますが、その点についてはいかがでございますか。
  28. 稲田清助

    稻田政委員 一枚の免許状を持つておれば、ただいまのお言葉のように、実務成績というものをここで重複して検定する必要はない。ただその人物、学力というものはやはり免許状を与えますその時期において一応判定しなければならぬ。そういう意味で人物、学力及び身体ということをここに掲げたわけでございます。形式といえば形式でございますが、要するに実務成績を省くということでこういう表現をもつていたしたわけであります。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 次に若干こまかくなりますが、やはり重要な点であります。七ページの別表第四の二の第三欄に「大学における最低修得単位数」というのがあります。この場合の一級普通免許状取得するときの専門科目の単位条件ですが、この項を見てみますと教科、教職に関する二つを合せて三十三単位になつておりますが、参考に大学課程単位を見てみますと、一箇年の所要単位は三十一単位となつております。この点の関係はどういうことになりますか。大学において履修する場合は三十一単位、ところがここで要求しておるものは両方合せて三十三単位、しかもこの教職に関するもの三単位を調べてみますと、単なる教職に関するものではなくて、教科指導等も入つてつて大学において当然必要とするものです。そうするとこの間二単位の差があるのですが、過度な要求をしておるように感じられるのですけれども、その点どうですか。
  30. 稲田清助

    稻田政委員 第三欄の上欄の三〇、一八は、別表第一に対応して、主免許状、副免許状でございますが、メージャー、マイナーの感じをそのまま映したわけでございます。それから教職に関するもの、教科教育に関するものとして三単位考えたのであります。新しい教科に移りますから教科教育法という科目がどうしても必要である。それを教科教育法として三単位に見ておるので、三単位にした、こういうわけであります。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると大学の場合の単位との関係はそこに差異はありませんか。
  32. 稲田清助

    稻田政委員 別表第一の一級免許状と同様な精神、内容考えております。
  33. 世耕弘一

    世耕委員 関連したお尋ねになるかもしれませんが、教員の再教育ということが問題になりました。これが相当進行されていて、五五%まで成功されているということは教育界のために非常にけつこうだと思いますが、学問ばかりでなしに、人物の再教育はどういうふうにやつておりますか。近ごろ日本人ということすら認識しないような教育が行われている。それは皮肉のようにも考えられますか、大体学校教育というのは、先般来われわれが主張して来たごとく人格教育です。まず日本人であることが前提条件でなければならぬ。ところがインターナシヨナルの歌を平気で歌う、祖国を忘れたような教員はいくら学問がよくできたからといつても何にもならぬ。赤い旗を振りまわす、文部省にむしろを持つてすわり込むような教員がかりにあつたとすれば、再教育はどうなのです。これは五五%の中に入りますか。皮肉な話ですが実際問題です。国民の声が当然ここに起つて来ている。ですから私は学問的でなしに、全般的に再教育の根本対策を立てて、それが五五%成功なさつておるというならけつこうです。  もう一つこれに関連して申し上げたいことは、教育者の停年というのは逆だと思う。むしろ社会的に、あるいは教育面から見ても、技術的に見ても、非常に常識が発達し、知識の向上した年齢というのは大体五十以上です。生理学的に申しましても五十五才をもつて常識と知性の最高潮に達しておる、これは医学上からも証明されていることなんです。ところがりつぱに教育者らしく完成される時代に停年で追いやられてしまう。子供を持つた経験のない人間、日本の歴史すら満足に読んだことのない人間が、これから新しく日本国民として発達して行かなければならぬ人間の教育の衝に当るということは危険きわまることだと私は思う。戦争の結果やむを得ないとしてあきらめれば別です。将来の問題として相当これは考えなくちやならぬが、大臣はこの点相当考えがおありになると思いますので、全部を言うていただかなくても、当りさわりのないところでけつこうであります。これは国民の要望するところだろうと私は思う。
  34. 大達茂雄

    大達国務大臣 ごもつともな御意見と存じますが、現職教育と申しますか、教職員の再教育におきましては、やはり新憲法あるいは教育本法に基いての再教育でありまして、これがどの程度に再教育の効果を上げるかは別といたしまして、一応考え方といたしましてはそういう考えで進んでおるわけであります。また御承知の通り検定制度は教職員になる最小限の資格を与えるということでありまして、これを現実教員として採用するしないの問題は、おのずから別個の問題であると思います。もちろん今日は御承知の通り職員の需給の関係が、非常に逼迫をしておりますから、資格のある人はそれぞれ採用されるということでありますが、これは人事を扱う教育委員会等において、その人物等につきましては、検討を加えて適当の人を採用する、こういうことを期待しておるわけであります。文部省といたしましてむ、教職員の服務上の問題につきましては、地方教育委員の方にできるだけ指導助言をいたしまして、りつぱな教職員が国民教育の衝に当るというようにしてもらいたいと存じます。
  35. 世耕弘一

    世耕委員 私も一応承つておきますが、この検定制度によつて従来の教員の行き過ぎが是正され、新しい意味が織り込まれて、同時に日本教育界に新鮮味が加わることを希望してやまない、そういう方面に進んでいただきたい。  さらにその検定制度の中には、必らず教育者らしい人物ということを中に組入れることを忘れないようにしていただきたい。近ごろどうかすると、昔は先生というたら顔つきでわかつた、一目見てこの人は先生だ、近ごろは労働者とちつともかわらぬ、どうかすると自由労働者と区別のつかぬような先生もあるやに私どもの目には映ずる、これははなはだ教育の面から見てもおもしろくないと思う、私はそういう点に関して、上品な先生をつくつてもらいたいと思う、国民から尊敬されるほんとうの先生、こういうものを検定試験の中にでも織り込んで出していただけば、日本教育一つの新鮮味が加わるであろうというように考えられるので、この点を要望しておきます。この問題については他の機会にお尋ねすることがありますから、この程度にしておきます。  もう一点、簡単に伺つておきたいのは、医学生の中にインターンの廃止問題がやかましく論議されております。これは稻田局長から御返答願つた方が、専門的に御回答願えると思いますが、われわれの手元で調査した範囲によりますと、インターン制度それ自体に反対するものはない、インターンを実施するなら、実施のできるような設備を完成して行かなくてはならぬ、設備なくしてただインターンの形式をとるところに弊害があるのだと思う、それともう一つは、各大学はむしろインターン教育だげにとどまつて、ほんとうの医学の使命を忘れてしまつた感がある、だからむしろこういう意味からいえば、大学にうんと責任を持たせて、インターン制度が現在のような状況ならやめた方がいいじやないかという議論が出て来るわけであります。またインターン制度をやるものについては、今のままでは十分な研修ができないから、むしろ国家が経済的援助をして、完成の域に達成させるのがいいじやないかという観点から論議されておる、もつともな話だと思うのであります。局長さんから御意見も一応出たのかと思いますが、あらためてこの機会にお聞きしたい、またこれはひとり文部省ばかりでなしに、厚生省の問題にもなろうと思いますが、一応文部当局の御意見を承つておきます。
  36. 稲田清助

    稻田政委員 お話のように、インターンは直接は厚生省の所管でございます。現在まで、ことに新しい制度がしかれましてから、専門学校の卒業生等が非常に多くなつたために、十分充実してない病院において、インターンを受けなければならぬというような実情がありまして、御指摘のように、設備の不十分、その他の実情があつたようでございます。ただだんだん卒業生が、大学の卒業生に限定せられまして、十分実力のある大病院のみを指定するというのが、昨年、ことしあたりの実情でございますので、漸次そうした不十分な設備でインターンを受けるということはなくなるのじやないかと思います。さらに厚生省におきましても、インターン指定病院に対する助成という問題につきましては、この上とも経費を増額したいという意図を持つておるように聞いております。  それからさらにインターンの関係において、場国家試験を受けるために、勉強を事としてインターンの実習がおろそかになるというような実情にかんがみまして、将来は国家試験のやり方をかえて、学術試験をインターンの前にやつて、インターンの実習実績を国家試験に加味するということによつて、インターンの実績を上げたいという方角で、厚生省では今考えておるようでございます。文部省立場といたしましては、もとより大学医学部四年の教育において、実習も十分いたして参りたいつもりでございます。もし医師法が現在のように実地の経験一年ということを要求するのではなくて、大学の実習でよろしいということになりますれば、もちろん大学を卒業して、そのまま医師試験を受けられるということになるのでございますが、その辺の考え方につきまして、目下国家試験委員あるいは医師会に設けられました医学制度審議会その他において研究中であると聞いております。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 関連して……。ただいまのインターンの問題で、今インターンをやる場合の施設あるいは適切な指導機関が従来不足しておつたので、今度はそれが充実されて行けば、インターンの制度というものが相当能率を上げて行ける、こういうお話を承つたのでありますが、私は指導機関の指導という問題と、それと同時にやはりこのインターン学生の取扱いという問題を、もう少しはつきりしなければならぬ、いま一つの問題として、厚生省が事前に試験を取扱うような方法を考慮されておるということは、私は一案であろうと思いますが、これを私は司法修習生などの場合を考えてみますと、非常に取扱い上の差があるということは、どうも私はおかしい、疑問に思つておる。この点を是正することはできないのか、たとえば司法修習生の場合には、試験に合格した後において、一定の実習期間というものを経て実務に達する、こういう形態をとる。インターンの場合は今お話のように事前に試験をやれば、その点については同じことになるわけです。ところがその間の実習期間の取扱い、待遇についでは、司法修習生の場合などは非常に保護されておる、極端にいえば非常に大事に、何か一つの伝統をなしておるような感じを私は持つておるのですが、インターンの場合には、ともかく飲まず食わずでそうしてろくすつぽ本も買えないというような状態に置かれでおるのじやないか、それで勉強の能率も上らない、たとえば適切な指導か行われても、なかなか指導を受けるということに頭が向いて行かない、こういう欠点がある、司法修習生の場合は大体月額一万円を支給されて、同時に一日大体百五十円、東京で二百五十名ばかり集めてやつております。それを調べてみますと二百五十名の修習生に対して滞在費日額百五十円を支給しておる、こういうように、片方には非常に厚い待遇をされておるにかかわらず、同じような国家的見地に立つて養成をしようとしておる医者こ対しては、その取扱いが現在不満の状態におかれておる。ここにやはりこのインタ—ン制度というものが、実際効果がない、とてもその間耐えて行けないというその二つ理由から、強烈な廃止論が全国的に起つて来ておる。だからそういう点について、現在同じような状態のものがりつぱに是正されておるのですから、これらに対してはいま少し文部省もこの問題を取上げてやる必要があるのではないか。それについては多少の折衝でもしているのですか、どうですか。
  38. 稲田清助

    稻田政委員 これは問題として厚生省において今鋭意研究中の問題だと考えております。司法修習生との御比較の問題、これはもとより私どもも十分理由のあることだと思つております。ただものの考え方で、いわゆる国家要請として裁判官その他を養成するものと、それから医師につきましては自由開業の前提資格として国家試験を受けさせる、こういう考え方の相違だと思うのでございます。この点について文部省の関与いたしております点は、育英会の奨学金をインターンの練習生に対して支給する、こういう観点に立つております。われわれといたしましては、この点についてなお財政的の裏ずけがあり得ますれば、さらに十分のことをしたい、こういう立場におるわけでございます。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 今司法修習生との相違は、片方は国家的見地に立つて裁判官を養成する、インターンは一般医師開業をして行くという立場でこれを養成するとおつしやいましたが、私が司法修習生で今例をあげましたのは、一般に民間で開業する弁護士なんです。ですから医者、弁護士という職業の差こそあれ、国家的見地の違いがあつてはならないと私は思つておる。それにそういう差があるというのはおかしいと申し上げておるわけで、やはりお考えは是正していただいて、同じ立場じやないかということで、文部省は強力に推進していただいて、多年懸案になつておるインターン制度を根本的に考え有していただきたいと思います。
  40. 竹尾弌

    ○竹尾委員 ただいま辻原委員はインターンのことでお尋ねになりまして、インターンは存続させるという議論のようですけれども、私はもうそういう必要はないと思うのです。さらに進みまして医者の国家試験というものは、従来はやめていたのだからやめてよろしいと思うのです。これはとにかく大学二年やつて、しかも専門に四年やつて六年、それからインターンを一年か一年半やつて、それから国家試験をやらなければ医者になれぬ。そんなべらぼうな話はないと思う。六年間で十分教育ができる。それで国家試験を廃止する意思があるかどうか伺いたい。また廃止する線にひとつ御努力を願いたい、こう私は考えております。それで大学局長御承知のように、医者の方は国家試験前にインターンをやつておるのですよ。そしてあと国家試験をやる場合には学科だけである。インターンの試験なんか一つもない。歯科の方は臨床をやらせる。歯科は臨床をやつて医科の方は臨床をやらない。インターンをやつておるうちに学科を忘れてしまう。とても覚えていられるものじやない。こういう不合理なことをやらずに、六年もやるのですから、卒業した者にはみんな免状をくれてやればいい。そういうことを私は強く要望して機会あるごとに局長にお尋ねしておつたのだが、これを廃止する意思があるか。廃止にひとつ努力してもらいたい。
  41. 稲田清助

    稻田政委員 ごもつともなお話でございます。文部省立場あるいは大学立場からいえば、大学を卒業すれば十分医師開業の資格のある人が養成できる、それに努むべき立場にあるわけであります。今の点につきましては、厚生省において国民医療という見地において、医師の資格を与えるにはとにかく一年の実地の経験が必要なんだ、こういう考えに立つておるので、今の制度にあるわけなんですが、御意見の点につきましては私どもとくと研究いたしまして、厚生省にも十分相談いたしたいと思つております。
  42. 竹尾弌

    ○竹尾委員 今局長は実習の必要があるとおつしやいますが、在学中の六年の間にあの程度の実習はしておるのです。これは御承知の通り四年の最高学年になると国立大学の附属病院に六つて、学科なんかほとんどやらない。そこで十分できるのだ。それをさらに学科をやり直しをして試験を受けても、結局忘れてしまうから試験は通りはしない。在学中の方が通る。そういう不合理な点を直して、厚生省に十分ひとつ要求されて、できるだけ早く廃止の方向に進むように努力してもらいたいということを要望しておきます。
  43. 田中久雄

    田中(久)委員 これは本論からそれておりますが、医者という重大なものを養成するのにインターンをやめよ、あるいは国家試験をやめよというきわめて七民主的かどうか知らぬが、そういう暴論には私は反対であります。私は実に危険なことを二つつておる。私は若い時分に耳を痛めて医者に見てもらつた。そうしたら鼓膜が破れておるから張りかえなければいかぬ、そこで私は張りかえるならばこんなやぶ医者ではいけないと思つて京都の稲田博士に見てもらつたら、世界の医学は進んでおるが、まだ鼓膜を張りかえるところまで行つておらぬと言つた。学校を出て一年くらいの医者はそういうことを言うのです。もう一つは、私どもの近所の娘が、蓄膿を手術してどこかの神経を切られてしまつて半身不随になつた。そういう人の生命に関したり、生涯を左右するような非常に重大な責任を持つておるのでありますが、医者は誤つて人を殺しても処罰をせられません。裁判官といえども今日は弾劾裁判法ができて、その裁判に誤りがあれば国会はこれを監督するという時代が来ておるのに、医者だけが切り捨てごめんということは私は許すべきでははいと思う。だから国家がやはり十分に注意をしてやることは当然であつて、あまり民主化過ぎる考え方は——これは本論と少し違いますけれども、私は重要なことだと思いますから申し上げます。
  44. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私はこれ以上申し上げませんが、ただいま田中委員からたまたま耳と蓄膿の話が出ましたが、私はのどから上の病気はずいぶんたくさんやつておるので、蓄膿のこともよくわかつておる。これは一例ですが、専門の同じ耳鼻科の医者でも蓄膿の手術が非常にすきな人もいる。蓄膿症にも、目の下は何という蓄膿症でしたか、まゆ毛のところの蓄膿症、それから目がしらに来るのもある。それから耳の方も欧氏管の中耳炎とかいろいろある。のどもその通り。同じ耳鼻科の医者でも蓄膿を専門にやつて、ほかのものをやらない医者がある。同じ耳鼻科の専門の医者でありながら、のどの専門家もあるし、耳の専門家もあるし、鼻の専門家もある。鼻の中でも蓄膿の専門家もあるし、そのほかの専門家もあるというわけで、こういうふうになると切りがない。一年や一年半のインターンでそんなことがわかるはずがない。今のインターンでやられる程度のことであれば、在学中にすでにやつておるのです。だから私はその意味で、従来それで免状をもらつてりつぱにやつておるのだから、専門は専門でその処置を講ずればいいのですから、やはり国家試験を廃止しても何らさしつかえない、私はこう思うのです。これは意見なんです。
  45. 高津正道

    ○高津委員 議事進行について……。今の世耕君の質問は二つにわかれておりましたが、後の方は、インターンの問題、前の方は教員の中には労働者と見違えられるばかりか、自由労働者と見違えられる者がある、こういう言葉があり、昔は教師は人相を見てすぐ教師とわかるほどであつた教員らしさのある教員を試験してとるように、それを受験資格の中に加えるようにという発言があつたのでありますが、稻田政委員はそのことには答えられなかつた。文部大臣もその質問の部分にはお答えがなかつた。答えがない場合は、世耕発言に対して反対の意思表示を文部大臣はやつたのであるか、文部当局は反対の意思表示をやつたものと解釈していいか。あの質問に答えがなしに議事がどんどん進んでおりますから、議事進行について発言を求める次第であります。あの世耕発言に対しては、私から考えれば教員らしさといわれるものの中には、消極性というか、単なる教育技術者というか、——現代に見るような発溂たる教育者のいい面は、私は民主化のもとで生れておると思うのでありますが、昔に返せと言う、あの道学者先生のような——全国五十万の昔の教員の悪口は私は言葉を慎みますけれども、連日にわたつて世耕委員から昔に返せという発言があるのでありますが、きよう現われたあの発言に対する文部省の態度は、賛成なのか、反対なのか、質問があつた場合はそれを無視して反対の意思表示をされておるのか、その点をはつきりさして、そうして次の質疑応答に進まれんことを委員長に望みます。政府答弁を要求します。
  46. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま世耕さんの御質問のうちに、今お話になりましたような言葉があつたことは私も知つております。ただこれは世耕さんがその結論と申しますか、質問の要点を申し述べる途中でみな申された言葉であります。たとえば近ごろの学校の先生が自由労働者のような顔をしておるとかいうようなことはありましたが、これは質問それ自身ではありませんので、これは世耕さんの御観察であり、これは私の答弁する範囲ではありませんから、この点については、私は賛成も反対もないのでありまして、私は学校の先生の顔を一々見たこともございませんし、これはただ世耕さんが自分の論旨を進められる上におつしやつたことである。これは私の方からそれに反対とか賛成とかいう答弁をする必要のないものだと思つて私は答弁をしませんでした。
  47. 高津正道

    ○高津委員 私は世耕委員はそれを質問の形で表現されたと思いますが、途中のまくら言葉か、修飾の言葉にすぎなかつたのであるか、これを本人の世耕委員に質問します。
  48. 世耕弘一

    世耕委員 私は先ほど申し上げたように、大臣には政府側としてさしさわりがない範囲でお答えを願いたいということをつけ加えております。私の発言はときどき問題を発生して御迷惑をかけるようだから、政府側にもしそういうようなことがあつてはいかぬから、私は率直な自分の感情を国民の一人の声として今申し上げただけで、なおこれについては補足の必要があるということも申し上げておいたはずだが、今は法案審議の途中でもあるから、一応この程度にとどめるということも前提として申し上げたから、これは委員長御了解いただけると思つておる。必要があればあらためて御返答申し上げます。
  49. 小林信一

    ○小林(信)委員 関連して……。法案内容についてお伺いするわけですが、附則の2と書いてあるところでございます。提案理由の説明の中には、この項を設ける理由は、必要な課目を担当する教員を採用することができない場合がある。従つてこういう処置をしなければならぬというふうに御説明があつたのですが、その採用することができない場合をなるべく詳しく御説明を願いたいと思います。事実これは私たちも所々からその実情を承つてつておるわけでございます。しかしその原因というものをはつきり当局がつかんでおらないと、かえつてこれは弊害を起すおそれもあるのでございますから、ひとつその点文部省のつかんでおられる詳細を御説明願いたい。
  50. 稲田清助

    稻田政委員 ただいま御質問の点でございますが、現在地方財政の関係その他によりまして、定員が十分でない小さい学校があるわけでございます。そういう場合に先生が三つくらいの教科をどうしても持たなければならない状態があるわけでございます。そういうときに、先生が免許法の手数料等を払つて、非常な手数をかけて、免許状を得るというのが今までの道であつたのでございまするけれども、教育委員会においてそれを認め、了解が得られるならば、そういう手数なしに当分の問やむを得ない期間に限つて教えることができる、こういう道を開いた趣旨でございます。
  51. 小林信一

    ○小林(信)委員 私はそういう事態が出て来る原因をお聞きしたいのです。今はただ一つの事例としてお話し願つたのですが、もつと教育行政面で多々問題があると思うのですが、そういう点につきましては、文部省はお考にえなつておらないのかどうか、もう一度お伺いいたします。
  52. 稲田清助

    稻田政委員 教育行政面で多々問題があると思われるという点を、ちよつとお言葉を返すようで失礼でありますが、了解しがたいのでございますけれども、ただいま申し上げましたような実例につきましては、とにかく三教科以上を実際持つておるものを調べますと、中学校においては二四%あるわけなのでございます。四教科以上を持つておるものが二四%以上ある、こういう実情でございますので、とにかく現在の定員制に制約されたこういう状況を、なるべく問題なく解決したいという意味において、教育委員会においていけないと言えば、これはできないのでございますけれども、教育委員会で認める場合はやむを得ずそれを認定してもらう、こういう道を開くことが問題をスムーズに運ぶゆえんではないかと思つて、この道を開いたわけであります。
  53. 小林信一

    ○小林(信)委員 私が目撃しているものはわずかでしようが、その中にも、先生は多いんですが、ある特別な科目については免許状を持つている先生が少い。こういうことは志望する人の自由意思かもしれませんけれども、特技を修得するような施設、あるいは学校、こういうふうなものが完備しておるかどうかというようなこと、これもやはり文教政策上の問題だと思うのです。そういう点から、特殊な科目の先生が不足するというふうなことでこういう特別な措置をして、これを充足しなければならぬとするならば、これは当分の間ということでなくて、根本的に問題を解決して行かなければならぬ。それから地理的な条件から、山間僻地の学校で、ほんとうに定められた定員というものがわずかのために、あらゆる科目に先生を配置することができないというふうな点で、一人の先生によけいな科目を担当してもらうというようなことになるとするならば、これはやはり教育の機会均等という意味からしまして、僻地に生れた子供の不幸である。こういう点も何らか特別な措置によつて、こういう措置によらずに、こういうところの子供を救つてやらなければならぬ。これも文教政策の上の問題だと思う。  それからもう一つ重大な問題は、地教委の生れたことに原因することが多い。これは今の山間僻地だとか、あるいは科目の修得の問題だとかいうことでなくして、人事権が地教委に移つているために、非常に狭い範囲でもつて人事の交流をやらなければならない。そういう場合に起るところの問題が、やはりこれに影響して来ておるのではないか、こう思うのでございます。その地教委の問題につきましては、いろいろ大臣にお伺いしなければならぬのでございますが、先日世耕委員の方から、地教委について文部大臣にお伺いされたときの大臣お答えによりますと、こういう点がはたして考慮されておるかどうか非常に疑わしいのでございまして、こういう点も当局がしつかり把握しておらないというと、いたずらにこういう臨時措置によつて、根本的な問題を解決することができないようになつてしまう。先日の大臣の御答弁が、今議事進行で出た問題に非常に関連しておるのですが、世耕委員がこういうことを言われた。大臣室ですわり込むような、あぐらをかくような先生だから、おそらく教壇の上であぐらをかいて教えているだろう、こういう教員をあなたはどういうふうに責任を持つて指導するかという質問のお答えの中で、地教委をますます強化して、これらに監視させて、そういう教員をなくするのだという御答弁をされておるのですが、今はそうでないような御答弁があつたと思うのです。そのときのお話をずつと私お伺いしておりますと、今の御答弁大臣の心中ではなくて、やはり先ほど技術の振興の御質問でなされたような点を考えられているわけなんですが、こういう地教委に対するお考えを持つておれば、こういう法律を出すことはかえつて問題を今後に残すことが多いのじやないか、こういうように考えるのでございますが、この地教委に対する問題、あるいは科目、あるいは地理的な問題、この三つは私のつかんだ問題でありますが、やはり教育行政の上で根本的に問題だと思うのです。こういう点に対しては御考慮なさつておらない。もし御考慮なすつておるとすれば、この法律施行する際に、文部省としては相当これを避けるような方途が講ぜられなければならないのでありますが、その点を詳しく御説明願いたい。
  54. 稲田清助

    稻田政委員 先ほどのお言葉を伺いそこねましたので、私申さないでたいへん失礼いたしましたけれども、大体こういう問題を直接正面から解決いたします方法といたしましては、先般来、たとえば音楽、図画、体育というような先生になり手が少い科目について、特別養成課程教員養成学部に設けております。今御審議中の予算におきましても、これを増設いたしております。それから職業方面の少い先生の養成につきましても、工学部、農学部その他においてやはり方法を講じております。  さらに僻地における教員養成につきましては、新しく今御審議を願つております予算に多少の金額を計上いたしまして、助成の方法を講じております。  さらに僻地において正式な免許状を得やすい方法といたしましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、新しく試験検定の道を開いたり、通信教育を拡充したり、そういう方法はとつております。とつておりますけれども、なおこれは当分の間不便がありますので、その便法を先ほど指摘のありました条文において講じたような次第であります。
  55. 小林信一

    ○小林(信)委員 私の心配するような点については、十分措置されてこの法案を実施するというような御説明があつて、たいへんよかつたのですが、一番最後の、私の最も関心を持つております地教委が持つておる人事権によつて起る障害に対しては、どういうふうなお考えを持つておるのですか。
  56. 田中義男

    田中(義)政府委員 地教委の人事権の問題でございますが、一部分お答え申し上げます。御承知のように地教委を設置いたしまして以来、一番問題として私どもの関心を持つておりますのは、人事交流が円滑に行くか行かないかという点でございまして、従つて人事の円滑を期するために、特に文部省としては地教委間の協議、さらにそれに府県の協議をも加えまして、その間お互いの連絡、協調をはかるための協議会を設置するというようなことで、その間スムーズな人事が行われますように指導して参つておるのでございまして、それらの点につきましては、地方におきまして相当考えの上に、特に去る三、四月にわたる人事異動をやられておつたようでございます。一応私どもの心配するほどのこともなく経過したのではないかと思つておりますが、さらに人事の円滑な運営をはかりますためには、一層それらの点について指導、助言をいたしたい、かように現在は考えておるのでございます。
  57. 小林信一

    ○小林(信)委員 今の局長さんの御答弁では、うまく行つているようなお話なんですが、それは非常に表面的に数をそらすというだけの問題なんで、こういう法律をつくらなければならない原因は決して一層されていないのです。こういう法律によつて一人の先生に過重の負担をさせるとか、あるいは資格のない、実際そういう単位をとつていない先生を採用するというような形になつて、決して今の御答弁ではこの問題を解決しておらないことであつて、いよいよそのために法律が便宜的な措置をするというような役目を果して行くようになつて行くと思う。そして今局長さんの御説明は、年度末に一斉に行われる人事移動の場合の問題なんですが、こういう法律の必要な事態というものが、先生が一人なくなつた、そうするとその先生の担当している科目に該当する先生をほかから探して来なければならぬ。先生はたくさんおられますが、その学校で必要な先生というのは科目で限定されておる先生なんでするこの先生を一地教委が探し歩くといつたら、これは非常にたいへんなんです。しかもこういう形になりますと、山間僻地では先生を一人失うと途中においてはなかなか見つけることができない。従つてこういう法律があれば、この法律で間に合せればいいということになつて、かえつてこれによる悪影響が多くなるものと思う。私はこう考えるのでありますが、この地教委の問題につきましては今ここでその全部を申し上げて、いろいろ御意見を伺う必要はないように思うので、いずれ他の機会にお伺いしますが、とにかく今稲田局長の方はこれを御答弁なさらなかつたのでありますが、これがこの法律に対する一番大きな影響をもたらすものであります。これを根本的に解決せず、この法律をもつて行こうとするところに非常な危険がある。これらに対して、私の質問したのは、今後実施にあたつてどういう心構えを持つて行くかということをお伺いしておるのであります。
  58. 稲田清助

    稻田政委員 先ほど田中政府委員から後説明申し上げましたように、府県教育委員会の調節にさらに期待いたしまするとともに、後指摘になりましたように、正式な養成の充実あるいけ僻地教員養成ということに努めまして、こうした点についての弊害を除去いたしたいと考えております。
  59. 小林信一

    ○小林(信)委員 地教委の対策というものに対してどうしても考えていただかなければならぬと思いますが、答弁がいただけなければやむを得ません。それでは具体的にお伺いをいたしますが、一年以内の期限を限るとあります。こうは出ておりますが、それは更新することは可能だと思いますが、その点はいかがであるか。  それから担当科目は一人について一科目以上は持たせないとしているのか、何科目でも担当させるのか。  それからそういう資格があろうがなかろうが、教員であれば許可する方針であるか、あるいは先ほど局長さんからお話がありましたように、授与権者が判断をしての結果であるから、そういうようなむちやなことはしないとおつしやいますが、人がない。これが現状で、こういうことが要望されているんです。そういう点を非常に憂慮することがあるということでありますが、こういう点に対しても何か規制するお考えはないか。  それからこの免許を許可いたします場合の手数料の百円ですが、これは全然考えておらないか。以上四点、これは非常に簡単なものでありますが、こういう点に対してどういう内意を持つているか、お聞きすることは非常に必要だと思うのでお伺いいたします。
  60. 稲田清助

    稻田政委員 この点の適用につきましては、省令をもつて一々規定をいたしまして、誤解のないようにいたしたいと思つております。もちろんこの規定を濫用いたすことは非常に危険があるのでございますけれども、運用につきまましては関係教育委員会の良識ある運用に期待いたしたいと思つております。  御質問の期限の問題でありますが、臨時免許状と同じように、適当な教員が得られない場合に限るわけでございますので、一年を限つておりますが、もちろん一年たちましても、やはり同様な状況が不幸にして継続いたすことでありますれば、更新は可能でございます。  それから一科目以上は与えないように、こういう点は明らかにして参りたいと思つております。  それから手数料等は、この場合かからないようにいたしたいと思つております。
  61. 小林信一

    ○小林(信)委員 もう一つあるんですが、その該当する先生の資格というようなものは全然考えなくて、先生でありさえすればそういう資格を与えるのかということも御質問をいたしておりますので、お答えを願いたいと思います。  今お聞きしたところは非常に重大な問題だと私は考えているのですが省令のようなものでそういう点は考慮する、局長さんがいろいろ処置されると申されるのですが、何かやはりその法律の中にはつきりうたつておかなければ、われわれの満足するまうな、今申しました根本問題が解決するような措置はなかなか一朝一夕にとられない問題でございまして、かえつてその方が遅延するような傾向にもなるので、この法律の中に盛り込む意思はないのでありますか、省令でやる以外にないのでありますか、その点をお伺いいたします。
  62. 稲田清助

    稻田政委員 前段のお尋ねにつきましては、教員臨時免許状のみを持つている教員でありました場合には、もちろんほかの科目を持たせるようなことは不適当だと考えております。やはり正式の免許状を持つている者に他の科目を便宜の措置として認定する、こういうことになろと思つております。  ただそういう細部の点を法律に書きますにつきましては、この免許状全体との対比から見まして、ことによく似ております臨時免許状も大体こういう書き方をしておりますので、法律の書き方はこの程度といたしまして、省令において十分明らかにいたして参りたいと考えております。
  63. 小林信一

    ○小林(信)委員 大体政府の御意向も承りましたが、もしそれがもしそれが実施されるならば、——まつたく今地方の実情を見ますと、先生を得るのに困つているのです。そして一方免許法によつて規定されているものがありますので、担当することができなくて、一つの科目については生徒が勉強することができずに相当長い期間放置されるようなことが多いのでございます。しかも一番問題になるのは、特に文部大臣に聞いていただきたいのですが、地教委という一町村に限定された人事権を持つものがありまして、この教育委員会が人事権を持つておりますために、ほかとの融通がきかず、一人の先生の欠員があつても、人を連れて来ればいいのじやなくて、ある科目に限定されているのですから、これを補充するということは非常に困難です。今山間僻地においてというような提案理由の説明でございますが、それが至るところの地域に起きている問題なんです。それで三箇月とか四箇月とかいうふうな期間において生徒が放置されているのですが、こういう問題を根本的に解決される御意図がなければ、かえつてこの法律は悪用されるおそれがあるわけです。だから今稲田局長の御丁寧な御説明があつたのですが、この法律をもし施行される場合には、どうしてもこれを厳守していただくような内容をもつて施行していただきたい、こういうふうにお願い申し上げまして、質問を終ります。
  64. 辻寛一

    辻委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ本案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認めます。  それでは本案を討論に付します。討論の通り通告がありますので、順次これを許します。辻原君。
  66. 辻原弘市

    辻原委員 私は教育職員免許法及び教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案につきまして、希望条件を付して賛成するものであります。  教育職員免許法及び教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案は、五点にわたる改正であり、実情から見てこれはやむを得ないと考え、賛成するものでありますが、こうした提案、こうした改正を絶えず行わなければならないということは、法それ自体体系それ自体に根本的問題が伏在しておる証拠であります。今日こうした問題に対する解明を行つて、抜本的改正をする域に達していないことを私はきわめて遺憾とするものであります。  御承知のようにこの教育職員免許法、同施行法は、占領治下直接占領当局指導のもとに生れたものであり、きわめて複雑多岐をきわめております。従つて当局はすみやかにこれが根本的検討を進められ、最も近い将来においてその改正を行うよう私は強く希望いたすものでありまして、これを希望条件として本改正案につきましては賛成をいたします。
  67. 辻寛一

    辻委員長 前田榮之助君。
  68. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつておる法律案について賛成の意を表するのであります。  ただこの案の実施にあたりまして、今まで論議されたように、現代の実情に即して行わなければならない状態になつておるそのことを、当局は十分検討されて、たとえば地教委の問題から来るいろいろ教員を臨時補給しなければならぬというようなこと等の欠陥を急速に是正し、この免許法等も根本的に簡素化する等のことを急速に実施されんことを希望して賛成するのであります。
  69. 辻寛一

    辻委員長 他に御発言はございませんか。——これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。教育職員免許法及び教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  70. 辻寛一

    辻委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決せられました。  なお報告書の提出等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 辻寛一

    辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。     —————————————
  72. 辻寛一

    辻委員長 なお野原君から緊急質問の申入れがありますので、これを許すに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 辻寛一

    辻委員長 野原君。
  74. 野原覺

    ○野原委員 時間も十二時を過ぎておりますので、私はできるだけ簡潔に文部当局に対して御質問をいたしたいと思うのであります。それはただいま委員長が申されましたように、私どもは緊急に属するものと判断いたしておりまするので、そういう点を十分お考えの上に率直簡明に御答弁をお願いいたすのであります。  一昨々日の七月八日付をもつて文部省第四〇五号、こういうことで、文部事務次官の西崎恵の名前で、都道府県の教育委員会並びに都道府県知事あてに通達を出しておるのであります。その通達の見出しは、教育の中立性の維持についてということでございますが、この点、本日はここに西崎次官はいらつしやらないのでございますけれども、しかしながら事は文部省の通達であり、しかも都道府県の教育委員会、都道府県知事という、地方における教育の責任者に対する重大な通達であり、なおまた通達の内容には命により通達するとございまするので、私の質問に対しましては当然大臣から御答弁があるものと私は考えまするから、この点ひとつ大臣からお願い申し上げたいと思うのであります。  その第一は、教育の中立性の維持につきまして、「教育制度の基本として、教育の中立性は最も厳重に保持せられなければならない。しかるに最近山口県における小学生日記、中学生日記の例に見るごとく、ややもすれば特定政党の政治的主張を移して」云々と前文にうたつておるのでございます。県教組が編集いたしまして、子供に読ましめたといわれているこの日記については、この文部委員会でも過日簡単な質疑応答が繰返されておるのでございますけれども、この問題は地方において相当大きく取上げられておることでもあり、なお大臣から簡単な御見解も述べられておりますので、この席において明確な御答弁を私は要求いたしたいのであります。それは一体山口県教組の小学生日記並びに中学生日記は、どこが教育の中立性を侵害しておるのか、一体その日記の中のどこが侵害しておるかということを具体的にひとつ御指摘願います。
  75. 大達茂雄

    大達国務大臣 野原委員の御質問に対してお答えをする前に、先ほど御決議になりました検定制度に関する法律、これにつきまして御討論中御希望の点がありました免許制度体系をすみやかに整備して、簡素明快なものにする、それからまた今回の改正法律案の実施につきまして、適正な実施を行い、濫用のないようにという意味の御意向と承つたのであります。この点につきましては、今後とも十分に検討いたしまして、御希望に沿うように努めたいと存じております。  次にただいまの御質疑でありますが、この次官名をもつて出されました通牒につきましては、もちろん次官名でありますけれども、文部省から出た比較的重要な通牒でございまして、文部大臣としての私が責任を持つておる事柄であります。今具体的の問題として、この日記のうちのどこがいわゆる特定政党の政治的主張を移して、児童生徒の脳裏に印しようとするいわゆる教育の中立性を少くとも害するおそれがある、どこをもつてそう言うか、こういつた御質問であります。これはいろいろ御論議になる点があろうと思うのでありますが、一例を申し上げますと、たとえばこういう意味のことがその欄外に書いてあるのであります。日本人のうちには、どろぼうが家に入るのを防ぐためには、戸締りをして錠前をかけねばならぬ、こういつてソ連をどろぼうにたとえ、戸締りは再軍備と同じであるということをいう人がある。しかるにどうもどろぼうはいつまでたつても来ない。これは錠前が大きくなつたからどろぼうが恐れて来ないというのかもしれぬ。ところがどうでしよう。表の錠前を大きくしてばかりいて、裏の戸を開けつぱなしにしているので、りつぱな紳士が泥靴で上つて、家の中の大事な品物を八百六箇もとつてしまいました。それでも日本人は気がつきません。取られた品物は何かとよく見ると、それが日本の軍事基地だつたのです。一例を申し上げるとそういう一節があります。これは御判断によることでありますが、特定政党の、今日現前の政治問題をとらえた特定政党が主張しておるその政治的主張を、そのまま児童に移さんとしておる、かように私は判断をいたすものであります。
  76. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、戸締り再軍備を批判しておるという点がいけない、同時に裏口からどろぼうが院つて、品物を八百六箇も取つたということが、これはどうも何らかのことを諷刺しておる、こういうような意味に私は受取つたのでございますが、もつと端的に、一体この日記の文は親ソであり反米である、こういうように大臣はお考えなのかどうか承りたいと思う。
  77. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はこの日記に表われた文句が反米であるとか、あるいは親ソであるとか、さような判断をしておるのではありません。ただ御承知のように、たとえば共産党におきましては再軍備反対、あるいはすべての軍事基地を取返せ、あるいはまたアメリカ人を日本から追い返せ、こういうようなはつきりした政綱、政策、主張を掲げておるのであります。この主張が私はいいとか悪いとか、反ソであるとか親米であるとか、親ソであるとか反米であるとか、こういうことを言つておるのではない。ただ今日特定の政党がかような政治的主張をしておる、それとにらみ合して、再軍備反対、基地回収、こういう主張を児童の頭に印せんとするおそれのあるものである、これが教育の中立性を害するおそれがある、かように考えております。
  78. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、親ソ反米とか、再軍備反対とか、あるいは平和憲法を守れとかいうような、実態的な本質的なものに問題があるのではなくて、特定政党の政治的主張に関連があると思われるから問題がある、このような御答弁に私は聞いたのでございますが、その通りですね。
  79. 大達茂雄

    大達国務大臣 私がこの点についての私の政治的主張、あるいはこれに対していいとか悪いとか、この考え方がもとになつてこの通牒が出たといたしますれば、これは私自身教育の中立性に対して危険な行動をとつた、こうお考えになつてよろしいのであります。私はこの内容のいい、悪いを言つておるのではない。これが特定の政党の現前の政治的問題を取上げた政治的主張である、それが教材として用いられることがよくない、こういうことを言つておるのであります。
  80. 野原覺

    ○野原委員 ただいま御答弁の中に、特定の政党とは共産党ということが申されたように思うのでございますが、この点は重大でございますから、私は再度御質問をいたしますが、特定政党の政治的主張を移してというこの通達の中の特定政党とは同党をさすのか、明確に御答弁願います。
  81. 大達茂雄

    大達国務大臣 この次官通牒は、小学生の日記だけについて出された通牒ではありません。小学生日記の例に見るがごとく、こういうことでありまして、最近の一例をあげて中立性の維持を通達したのであります。従つてこれは特定政党の政治的主張を移して、教育の材料にしてはいけない。これは共産党であろうと、自由党であろうと、改進党であろうと、社会党であろうと、これはすべて通用する意味の文句であると御承知を願いたい。ただ小学生日記に表われた例にあるがごとくということであれば、これは共産党の主張と一致するものである、かように考えております。
  82. 野原覺

    ○野原委員 なかなか名答弁をなさるようでございますが、しかしこれははつきり、私はお聞きしたい。あなたはそうおつしやいますけれども、この日記は一体何党の政治的主張にこれが該当すると御判断になるか、これを承りたい。
  83. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは先ほども申し上げたと思うのでありますが、ただいま例にあげて私が読み上げました日記の部分は、これは少くとも共産党が現在はつきり言つておるその主張と同じ線にあるものと思います。
  84. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、実はこのような日記に問題があるのではなくて、特定政党の政治的主張というのは、このような日記の例に見られるようなところに問題があるということでございましたから、重ねて御質問をいたしますが、特定政党の政治的主張を映して児童生徒の脳裏に印しようとするごとき事例なしとしないのははなはだ遺憾とするところであつて、とある。この一つの事例として山口県の日記帳を文部省は出しておるのでございますが、事例なしとしない、ということになりますと、ほかにもつとたくさんの事例があると私どもはこの文章から受取れるのでございますが、どういう事例でございますか、御答弁願いたい。
  85. 大達茂雄

    大達国務大臣 この小学生日記はその事例でございます。かような事例がある。今後といえどもなしとしない。現在至るところにそういう事例がはびこつておりますから、この通牒を出したのであります。かくのごときおそれあることを未前に防止したいから通牒を出したのであります。
  86. 野原覺

    ○野原委員 そこで方向をかえて、事態を明らかにするために私はもう一つ質問をいたしますが、過日この委員会で山口大学の経済学部長が山口大学教授の思想調査をやつた事実が指摘せられまして、大臣の御見解を伺つたのでございます。そのとき大臣は、このことはまだ自分は知らない、こういうことでございましたが、この大学の学部長がその学部に所属するところの教授の思想調査をやるということは、これは明らかに憲法第十九条に抵触する行動であると私は判断いたします。すなわち憲法の第十九条は「思想及び良、心の自由は、これを侵してはならない。」こううたつてある。しかも大学というところで終戦後特に問題になつております点は、学問の自由であり、思想の自由でございます。この自由なしには真理の探究はできない。これは明らかに教育本法がこのことをうたつておるのでありますが、その後この問題は文部委員会で問題になつたのでございますから、私は大臣はこの点を至急に調査せられたはずだと思いますが、その点をひとつ御答弁願います。
  87. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はまだ実情は存じません。あるいは過日御質問がありましたから、関係局の方で調査をいたしたかもしれません。もし調査して申し上げる資料がありますれば局長から申し上げます。ただ、今お話になりました点だけについて考えまして、学問研究の自由、思想の自由、これはもちろん尊重されなければならない根本的な問題である。これは申し上げるまでもない。ことに大学においてこれを特に感ずる。こう思うのであります。もしお話のごとく大学の当局がその教授の思想の調査をした——これが事実かどうかは私は知らないのでありますが、これが大学教授の思想に干渉をし、もしくは学長の考える方向に教授の思想を持つて行くためにやつたということであれば、これは明らかによろしくない、かように考えております。
  88. 野原覺

    ○野原委員 それでは大学の担当者にお伺いしますが、御調査になつておるならばその真相を御発表願います。——それではこの点は大学局長の責任ではございません。大臣はもしそういうことが事実であるとするならば非であるということの御見解が明らかに披瀕せられましたので、これは他日すみやかにこの真相を御調査の上御発表願います。  そこで私、山口大学の問題と同じく山口県に起つたこの日記帳の問題を比較して考えます場合に、実はこの教育というか、学問の自由というか、そういうものについて大臣の頭の中に何らかの先入的な考え方があるように思うのでございます。というのは、山口県の日記帳は、これは明らかに問題があるというので、このような次官通牒で都道府県知事、教育委員会に出されたけれども、文部委員会が正式に質問をしたところの山口大学の学部長の点については、いまだに調査をされようとしない。実はここに大きな問題があるように思うのでございますが、いかがでございますか、御所見を伺いたい。
  89. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は野原委員の御質問に対しまして、ただいまの大学の問題につきましても、それから日記の問題につきましても、日記に関連する通牒の問題につきましても、私の考えお答えしたのでありまして、お答えした通りに受取つていただければけつこうであります。また私の答えたことと腹の中が違うのじやないか、こういうお言葉でありますが、これは私の不徳のいたすところかもしれませんが、御返事のしようはないのであります。
  90. 野原覺

    ○野原委員 巷間、学問の自由と申しますか、真理の探究と申しますか、こういうようなことに最も関心を持つておる大学の教授、あるいは文化人の人たちが、今日の文部行政に対して実は非常な不安を抱いておることは事実下ございます。というのは、たとえば中共とかソ連とかいうものの実態を究明して参りますと、これが親ソと受取られる。またたとえば、これは占領治下にあつたことでございましたけれども、この特定政党に所属するということを理由にしてレッド・パージが起つたことは御承知の通りであります。ところが、私がここではつきりものを申したいのでありますが、アメリカのことを礼讃し、そうして今日吉田内閣がとつておるところの政策を謳歌する、これはやはり特定の政党の政治的主張でございますが、そのようなものに対しては何ら問題にされない。また吉田内閣が、この保安隊の増強とかあるいは自衛軍の漸増と申しますか、こういうようなことを批判いたしますと、どういうものか思想調査がどこからか行われて、そうしてどこからか何かしらん申されるというな動向にあることを大臣は御存じでございますか、お伺いいたします。
  91. 大達茂雄

    大達国務大臣 思想研究の自由と申しますか、意見の発表その他の論議はずいぶん活発に行われておりまして、これが不当な力によつて干渉されておるというふうには考えておりません。しかしながら少くとも学校教育に関する限り、このたび出しました通牒は何も親ソとかそういう方面を目標としておるのではないのでありまして、これは先ほど申し上げましたように、特定政党の政治的主張というものをそのまま教育の面に映して、もつと政治の中立性を脅かすようなことがあつてはならぬ、だから気をつけてもらいたいということを言つておるのでありまして、何も共産党とかそういう方面を目標にして出した通牒ではありません。
  92. 辻原弘市

    辻原委員 いろいろあると思いますが、大臣ちよつとお伺いしたいのです。この通牒は、きわめて常識的でございますが、現在の法律、もちろん基本的な問題は憲法の精神に立脚して出されたものである、かように考えますが、その通りでございますか。
  93. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育において中立性が堅持せられなければならぬということは、今日の教育の基本的なことであり、これは法律の上にも明らかに書いてあることであります。そうしてこの通牒を出しましたのは、文部省指導、助言をする責任のある面につきまして、中立性の堅持をしてもらいたい、こういう指導と申しますか、助言と申しますか、それによつてこの通牒を出した次第であります。
  94. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますると、思想教育と申しますか、政治教育と申しますか、この種の問題に対する法的根拠というのは、これは基本法の第八条だと思いますが、これについてそれに立脚して出されたものであるかどうかお伺いしたいと思います。
  95. 大達茂雄

    大達国務大臣 基本法の八条は、これは良識ある公民たるに必要なる政治的教育、これは教育の面において大切な事柄でありまして、政治的教養をするということは、これはむろん教育の面から言つても大切な事柄であります。次に法律に定める学校は特定の政党を支持し、またはこれに対して反対するための政治教育その他の政治活動をなしてはならぬということがあるのでありまして、一般的な政治教育と特定政党を支持する、あるいはその政治的主張を子供に移す、こういうこととは別個の観念であります。そこでこの通牒を出しました一つの基礎は、この第二項に基いたものと御承知を願いたい。
  96. 辻原弘市

    辻原委員 一つの基礎は第二項にあるというお話でありますが、他に求められた根拠は何でありますか。
  97. 大達茂雄

    大達国務大臣 基本法の八条第二項によるものと御承知を願いたい。
  98. 辻原弘市

    辻原委員 これを他に求められたというのは誤りですね。基本法第八条第二項だけに基いて出されたということですね。
  99. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はこの教育の中立性維持に関連する規定が他の教育法令のうちにもあつたかと実は思つたのであります。あるいはないかもしれません。ないとすれば八条。しかし根本はこの八条の規定であります。教育の中立性をうたつてあるものが、同じ趣旨のことが他の教育法令の中にあつたかと実は私思つたのであります。この点はあるいは間違いかもしれません。調べた上で申し上げることがあれば申し上げます。
  100. 辻原弘市

    辻原委員 ただ私はこの種の問題の取扱いはきわめて重要な問題であると思います。これは確かに学校教育の中において、特定の政治活動ということについては教育本法の八条二項に示れさております。しかし軽々にこの種のものを濫用した場合においては、これは重大な誤謬を犯すということは、おそらく大臣もお考えになつていると思います。従つて今日この種の問題の取扱いをする場合には、私が第一番にお伺いいたしましたのは、憲法並びに現存の法規のわ(内において、その法規に照しておやりになつたかということをお尋ねいたしましたら、その通りあると、こう答えられました。ならば、どの根本法規に基いてやつたのかとお尋ねいたしたのでありますが、それについては大臣も、私の受取り方では、どうも若干あいまいであると考えます。と申しますのは、そういうものがあるのじやなかろうかといつたような見解に基いて、いわゆる通牒によつて何かそういつたものを規制して行こうとするならば、これは私は誤謬を犯すおそれがあると思う。そういうことを新しく、適当に、文部当局大臣の御意思に基いて法律のらち外を越えてやられるということがあるならば、これはきわめて重要な問題でありまするから、その点を確めておるのでありますが、私の受取つた範囲においては、これは基本法の八条二項の規定に基いて出されたものである、こう把握したのでありますが、大臣はいろいろ御多忙でもありまするので、これはあるいはぬかつておるかもしれませんが、これを担当された事務当局等においてはそういうことでは許されないと思います。そういうあいまいな、ほかにもあるだろうからこれを出してさしつかえなかろうというような見解でこの種の通牒をされるということは、もつてのほかのことでありますから、その点を事務当局から伺いたい。
  101. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は教育本法の第八条第二項の規定で十分その根拠があると思うのであります。ただ先ほど申し上げましたように、これに関連した規定教育法令の中にあつたかという私は記憶があつたから申し上げたので、これは二つ、三つそろわなければいけないというものではない。教育本法八条二項の規定において、教育の中立性ということが教育の根本として明らかにうたわれておる。それを維持するための通牒であります。そうしてその通牒を出す権限の根拠は、府県教育委員会あるいは地方教育委員会、これらに対する文部大臣指導、助言の権限に基いてこの通牒を出したのであります。もちろんかような重要な点につきまして、法律の範囲を越えてこれを濫用するというようなことは考えておりません。その点は十分気をつけておるつもりであります。
  102. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 この山口県の小学生日記の六月二十五日の欄外に、朝鮮戦争はどうして始まつたかということ豆ありまして、やがてソ連が北鮮から兵を引揚げ、次に南鮮からアメリカが兵を引揚げましたので、北鮮と南鮮は一つの朝鮮をつくろうとしましたが、どちらの政府も自分が頭になろうとしましたので話がつかず、争いを続けました。人民は働く者の国、括弧して北鮮とありますが、がよいと考えていたのですが、南鮮の李承晩はこれに反対し、アメリカの助けを受けて何度も北鮮を攻めましたが、いつも打破られていました。一九五〇年六月二十五日北鮮は、攻めて来た南鮮を追つて、南鮮深く攻め込みました。これが朝鮮戦争の始まりです。これがもととなつて、アメリカを中心とする国連軍は南鮮を助け、中共は北鮮を助けて、大がかりな戦争となつてしまいました。こういうようなことがこの日記にあるのでございますが、これもやはり今大臣が通牒に示されましたような教育の中立性というものを逸脱しておるというふうにお考えになつておるかどうか、まず承つておきいと思います。
  103. 大達茂雄

    大達国務大臣 これも少くとも該当するおそれがあると思います。
  104. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 こういうような日記を生徒に配つて、そうして日記帳をつけさせるということは、これはきわめて重大なことであると私は思うのでございまするが、先ほどからここで皆さん方の御意見を聞いておると、いかにもこれはいいかのような印象をわれわれは受けるのでございます。しかも当時山口県の教組はこの問題につきまして、岩国の労働組合と協力して、市教育委員会並びにPTAに抗議をしておるようでございますし、また過日山田で開かれました日教組の大会におきましてもこめ問題が取上げられましたところが、満場一致でこれに対して警告を発するというような処置がとられたように思うのでございまして、学校の先生方が、こういうようなことはいいのだと、それが社会党であれ、あるいは共産党であれへそういうことではございませんけれども、いやしくも児童のまだがんぜない頭に影響を与えるような、こういうようなきわあて露骨な政治的な考え方を一方的に押し進めるということは、私はこれはきわめて重要だと思うのでございまして、これを先生方の組合であるところの日教組が取上げて、そうしてこれに同調をするかのごとき態度、これは私はまことに遺憾な問題であると考える次第でございます。この点から私はこの通牒が出されたと思うのでございまするが、大臣はそのつもりでやはりこの通牒を出されたのであるかを承つておきたいのであります。
  105. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま坂田委員お話なつ通りであります。
  106. 野原覺

    ○野原委員 実はこの通牒を私が問題にして質問をいたしましたのは、特定政党の政治的主張というところが実は非常に重大なものがあると考えるからであります。何となれば、たとえば日本の憲法は御承知のように第九条によつて一切の戦力を否定しておる、憲法前文によつて日本は平和国家で行くということをうたつておる。この日本を平和な国家にしなければならない、日本を平和な国家にすることがとりもなおさず国民大衆を仕合せにすることであり、幸福にすることである、国民大衆を仕合せにし幸福にすることが、大臣が言うところのいわゆる国を愛することである。あなたは一番最初にこの委員会で示されました文教施政方針の中に、愛国心を養う元と道徳教育はならなければならない、道徳教育という場合には、愛国心を養う元でなければならない、こういうことを述べられた。私はこのことは言葉自体としては正しいと考えるのであります。しかしながらあなたがその間に質疑応答で明らかにされた愛国心ということが、なお私には十分くみとられておりません。受取られていないのです。何となれば愛国心ということは国を愛する心である、国とは国民大衆であると私は考える、従つて国民大衆を仕合せにする、幸福にするというにとが実は愛国心の元となる、道徳教育の根底であると考える。そうなれば何が一体国民大衆の幸福なのか、何が仕合ぜなのかというと、これはやはり日本の憲法が示しておるように、日本を平和な国家にすること以外にない、こういうところで純粋な教師、最もまじめな教師は、平和教育ということに対しては非常な力を入れておるのであります。ところがこの平和教育にまじめに力を入れている場合に、平和ということは、たとえばこれが日本社会党が唱えておるから、特定政党の政治的主張であるというような判断を下されるおそれがあるのであります。よろしゆうございますか。これはそういうことをやるのです。非常に反動的な人々は何でもかんでもりくつはどこにでもつきまするから、やるのですが、これはそういうおそれがありまするので、実はこの通牒に非常に問題がある。私はこの点を指摘いたしましてお伺いしたいことは、特定政党の政治的主張だという判定を下す場合に、どういうような考え方の上に立つて、何を基準としてこういうような判断を下されるのか、御所見を承りたい。
  107. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は繰返して申し上げますように、小学生日記、その中に現われておりますことで、先ほど私が読上げました点、また坂田委員が御指摘になりました点、かようなことは特定政党の政治的主張を子供に移す、こういう事例であると思つておるのであります。そこでそれはどういうわけかという先ほどお話でありました。共産党は日本の再軍備反対、それから軍事基地を返せ、アメリカ人を追い返せこういうことをはつきり主張して政治的主張の中に掲げておるのであります。これとマッチした内容が小学生日記にあるから、かくのごときことは特定政党の政治的主張を教育に移そう、こういうものであるとこう言つておるのであります。これはたまたま小学生日記に現われた一例であります。今後におきましても、私は先ほど申し上げたように、何も平和憲法に反対するとか、そういう気持を一つも持つておるわけではないのであります。特定政党ということは、何も共産政党という意味ではありません。いかなる政党であろうとも、その特定の政党の現在切政治的主張を教育に取上げて子供に教えるということがよくない、これが教育本法にいうところの学林教育の中立性を害するものである、かような見地から地方教育委員会指導した、こういうだけのことであります。
  108. 野原覺

    ○野原委員 それではお尋ねしますが、サンフランシスコ講和条約を肯定しそれから安全保障条約がけつこうな条約である、これに基いて締結されました日米行政協定はまことにけつこうだ、こう言つて教師がこれを肯定して生徒に話した場合には、これは特定政党の政治的主張をやつた教師とあなたは断定されると思いますか、いかがですか。
  109. 大達茂雄

    大達国務大臣 仮定のお話でありますから……。
  110. 野原覺

    ○野原委員 仮空ではありませんよ。
  111. 大達茂雄

    大達国務大臣 仮定のお話であります。ですから、これはそのときの教材として現われた言い方、内容、それと当時の社会情勢、政治的な主張、こういうものと関連して判断をしなければなりません。そこでただいまお話になりました現在行政協定ができておる、現在は新憲法もできておる、これは国会によつて、いわゆる国民の意思によつてそれが成立しておる。それを基礎にして子供に教えることは、これは何もさしつかえがない。あたかも新憲法を中心にして子供の教育に臨むということと同じことであります。しかしながら現在政党の中に行政協定は廃棄すべきとかあるいは存続すべきとか、こういう政治的な主張が行われておる場合に、学校でどうしても行政協定は廃棄しなければならぬものであるとか、あるいはどんなことがあつても、これは存続すべきものであるとか、こういう現在の政党の主張というものを子供に教えるということは、これはいけない。ただ教育が現在の国の制度というものを基礎にして行われる、制度に一切触れてはならぬということであれば、教育はできません。いわんや政治的教育というようなものは不可能であります。お話のように憲法というものが成立しておれば、これを基礎にして教育が行われる、これは当然であります。そこで憲法をかえた方がよいとか憲法はそのまま置いた方がよいとか、これは政治的な主張であります。
  112. 野原覺

    ○野原委員 なかなかたいしたことに発展して参りまして、いずれ私はあなたの御答弁の速記録を調査いたしまして、それから問題にしたいと思いますが、最後に申し上げたいことは、講和条約とか安全保障条約は、大臣も御承知のように賛成しておる政党もあれば、これに初めから反対して来た政党もあるのであります。今あなたの御説を聞きますと、これは国会の意思であるから、こういうものを肯定する場合には特定政党の政治的主張をやつたとは思わないかのような御発言でございますけれども、明らかに講和条約、安保条約を肯定するということは、これを肯定する政党の政治的主張ではございませんか。それをあなたはどういう勘違いからか、そういうことを言われておるのであります。しかもここで私は、この協定批判をやろうとは思いませんけれども、日米行政協定というものは、実は国会にかかつていないのです。ここに国民多数の意思を踏みにじつたという、民主的なあり方に対するわれわれの党の批判が出ておることは、御承知の通りであります。ところがこれまでも肯定して何らさしつかえないごとく言うところに、あなたの政党大臣としての問題があるのでございます。何といつてもそういう考え方の上に立つて、こういう通達を出されたというところに実は問題があるのです。だからこの点に対する御所見を最後に一点質問して打切ります。
  113. 大達茂雄

    大達国務大臣 私の申し上げたことを、多少聞き違えておられるのではないかと思うのでありますが、これは速記録をごらんになればわかります。また私の言い方が不十分であつたかもしれません。私は現在の行政協定が、非常にいいことであるとび、これは悪いことであるとか、そういうことを子供に言うことはいけない、こう思つております。安全保障条約が非常にけつこうなものであるというので、そういう批評を子供に映すのはよくない。ただ現在の国家の定められた制度というものを基礎として教育が行われることは、これはあたりまえのことだろうと思います。これがいいとか悪いとかいうことの論議を子供に聞かせるのは、これはよくない。そして現在できている憲法は、改正すべきものであるとか、この憲法はこのまま長く続けなければならぬものであるとか、こういう政治的な意見というものが、子供に入ることは思わしくない。ただ現在の憲法を基礎としたその状態において、それを前提とした教育が行われることは当然のことであります。それを申し上げたのであります。決して安全保障条約がいいとか、そういうことはさしつかえないとか、そういう意味のことを申し上げたつもりではありません。
  114. 野原覺

    ○野原委員 最後に御質問しますが、今の大臣の御答弁をお聞きしますと、子供におとなのイデオロギーを押売りすればいけない、こう言われたわけです。このことはある程度了解されないでもないのでございますが、過日原田委員が、歴史教育について質問をいたしまして、そして歴史に関しては、これは十分今後考えて行かなければならぬというようなことになつておるのでございますが、一体私どもがこの歴史教育をいたします場合には、単なる史実を羅列してこれを子供に持つてつてもつかむことができないのです。何といつて教員のその史実に対する史観、歴史をどう見るかという歴史観が、やはり問題になるのです。そこで、こういうような場合に、これは簡単におとなである教師がイデオロギーを子供に押しつけたというような判断をされて、都道府県の教育委員会なり、都道府県の知事が間違つた方策をとらないとも実は限らないのです。ここのところは非常に問題があるわけでございます。こういう点については、なお大臣としても御検討されんことを私は要望し、なおこの問題は、この通牒に対する問題並びに私の質疑に対するあなたの御答弁については、いずれ速記録を調査いたしまして、後日御質問したいと思います。終ります。
  115. 辻寛一

    辻委員長 本日はこの程度で散会し、次回は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時六分散会      ————◇—————     〔参照〕