運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-09-05 第16回国会 衆議院 農林委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月五日(土曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 佐竹 新市君 理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       佐藤善一郎君    福田 喜東君       松野 頼三君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       川俣 清音君    中澤 茂一君       久保田 豊君  委員外出席者         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      櫻井 志郎君         食糧庁長官   前谷 重夫君         農林事務官         (食糧庁業務第         一部長)    伊東 正義君         林野庁長官   柴田  栄君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 九月五日  委員大橋武夫君辞任につき、その補欠として佐  々木盛雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  治山治水に関する件  昭和二十八年産米の作況及び食糧事情に関する  説明聴取     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  治山治水に関する件について調査を進めます。  政府は本年の相次ぐ甚大な水害にかんがみ、治山治水に関する根本対策を検討されておるように承つておりますが、今年の大水害が風を伴わない豪雨によるものであつたこと等から考えまして、治山治水の根幹は水源地帯における造林あるいは砂防治水等にあるものと考えざるを得ないのではないかと思います。つきましては、まずこの点に関しまして農林当局の構想を承り、しかる後質疑を行うことにいたしたいと思います。  それではまず柴田林野庁長官に御説明を願います。柴田長官
  3. 柴田栄

    柴田説明員 かねて治山治水に関しまする根本対策に関しまして、私どもも最近の情勢から、何としてもこれを根本的に再検討を要するということで、実は本委員会林業小委員会におきまして、私ども考え方を申し上げまして、いろいろ御審議をいただいておりましたのですが、それを基礎といたしまして、治山治水基本対策要綱を検討いたしまして、先般農林省議において一応決定を願つた案をもつて、内閣に設置せられました治山治水協議会にこれを説明いたしまして、目下御審議願つておる次第でございまするので、一応農林省といたしまして対策を立てました要綱の概要を御説明申し上げまして、いろいろ御審議をお願い申し上げたい、かように考えておる次第であります。  お手元治山治水基本対策要綱というものを差上げておりまするが、第一の目的に関しましては一応御説明を省略させていただきまして、ここに考えておりまする内容を御説明させていただきたいと存じます。  この治山治水基本対策を立てまする場合に、特に考えなければならない、そして措置を講じなければならないという問題をまず取上げた次第でございますが、その一つ重要水源地域指定をいたしまして、これに総合的な治山治水事業の重点的な実施をいたすということなのでございます。この重要水源地域指定は、自然的な条件、並びにその流域に関連いたしまする経済的な諸要件を勘案いたしまして、全国の河川流域のうちから公益上重要な河川流域を選びまして、その上流水源地域指定し、この地域に対しまして河川改修その他のこれに関しまする事業と有機的な関連を保持して、重点的に事業を行つて行かなければならぬという考え方なのでございまするが、これにはでき得れば継続費制度を置いていただいて計画的に実施いたしたい、こういうふうに考えております。  それから第二の問題は、保安林整備強化拡充対策でございまするが、水源地帯森林荒廃を防止いたしまするとともに、保安機能の増進をはかるためには、この際緊急に保安林整備拡充をいたす必要があるということで、これが措置を講ずるということなのであります。  その次には、これらの措置をとりまするほか、指定地域につきましては、もちろんその他につきましても、治山治水上重要な地域につきましては、災害の発生を未然に防止する重要な方法といたしまして、造林事業拡大実施を総合的に行う、こういうことなのであります。さらに農林省といたしましては、食糧増産確保に対しまする治山治水上の見地からの恒久対策をもあわせて計画いたしておりまするが、農地局建設部長が参つておりまするので、後刻そちらから申し上げさせていただきたい、かように存じます。  この特に取上げまする重要な方針に対しまして、事業内容計画いたしたわけでありまして、これが具体的措置といたしまして、林野関係といたしましては、まず治山事業関係でありますが、現在のわが国におきまする国土保全上非常に大きな障害をなしておりまする山くずれ、はげ山、地すべり等荒廃林野、あるいは放置すればただちに荒廃林野に移行しようというような危険な地域が、現在国有林関係におきまして約五万町歩民有林関係におきまして約四十万町歩にわたつておりまするのが、年々の災害にあたりましての被害増大の大きな原因をなしておる。これを主たる対象として事業計画をする、こういう考え方を持つております。治山計画といたしましては、先に申し上げました指定地域に対しまして特に重点を注ぎ、当該地域につきましては、なるべく早く修復を完了いたしたいという考え方で、二十九年度以降七年間に一応治山事業の完了を見るという計画を進めております。特に水源林造成に関しましては、五箇年間にこれを完了する。その他の地域につきましては、十箇年間にこれを計画実施をいたしまして、国土保全産業振興の基盤を確立いたしたいという考えでおるのでありますが、なおそのほかに急峻な山地侵蝕防止に対しまして、あるいは農業振興等に密接な関係のありまする防災林につきましても、十箇年をもつてこの計画を完了いたしたいという計画でおるのであります。事業計画対象は次の表に示しているような内容でございますので、ごらんを願いたい、かように考えておりますが、この事業実行にあたりまして、指定地域につきましては、努めて国営事業を主体といたし、補助事業を並行して参りたい。特にこの地域は大部分奥地になりまして、非常に公益性の強いという反面、事業の経費のかかり増しを生ずる地域でございますので、この際補助率の引上げを計画いたしたい、かように考えております。なお民有林につきましては、内地については、水源林造成指定地域のみについて一応考えるという計画をいたしております。  次に保安林整備拡充内容でございますが、従来におきましても、保安林は二百四十万町歩程度にわたつておりますが、そのうち特に国土保全関係の深い水源涵養林土砂流出防備林土砂崩壊防備林につきましては、現在二百十七万町歩になつておりますが、これを昭和二十九年度以降指定地域関係がありますものは、三箇手をもつて整備事業を完了する。指定地域以外については四箇年にこれを整備するという計画をいたしております。整備の完了いたします際には、合計いたしまして三百一万町歩保安林を持つという計画をいたしている次第でございます。  なお次には保安林管理の問題でありますが、保安林整備拡充いたしましても、これが実施に当りまして管理の適正を期待し得ないということにたりますと、その効果は十分に期待し得ないということになりますので、これが実施の適正を期するために、整備と同時に指定地域内の保安林につきましては、同時に三箇年をもつて管理実行計画案を作成する。その他の地域に関しましては、四箇年間に保安林管理実行計画案を立てるということにいたしまして、さらにこれが実行に当りまして、一層指導監督強化するために監視員制度を設けたい、かように考えております。なおこれに対しましては、保安林管理の徹底を期して参りますと、私有林につきましては、あるいは森林所有者からの申入れ等によりまして国家に買い上げようという問題も起つて来ると思われますので、所有者の意思によつて国がこれを買上げるという措置を講じなければならぬと考えております。また保安林整備強化上、管理実行計画を立てまして、施用の制限を強化する場合が生ずるといたしますれば、民有保安林につきましては適正な補償を必要とするということで、これが補償措置を適正に行うということを考えております。  次には造林事業でございますが、今日林野荒廃は、過伐と植栽の手遅れという問題が大きく取上げられておりまして、一面におきましては、木材あるいは薪炭需給逼迫に伴います過伐の問題を防止しなければならないという考え方を持ちますこと、一面においては保安効果の増強、林産物自給可能な保続生産態勢を確立するために森林資源維持培養をはからなければならないという二つの問題から、計画的に造林事業拡大計画しなければならないということになるのでございますので、今後昭和三十六年度末におきます人工植栽地が約四百七十九万町歩でございますのを増強いたしまして、一つには毎年伐採いたしまする跡地の造林をただちに実施する、この対象は八年間に二百六十四万七千町歩計画いたしております。さらに戦争以来の切り過ぎの結果、植栽を要する土地でいまだ造林実施の見られておらない土地が、昭和二十八年度末におきまして七十二万一千町歩余がまだ残るという見込みでおりますので、これは昭和三十一年度までに植栽を完了いたしたいという考えでおります。また薪炭林あるいは粗悪林あるいは天然林の一部につきまして、人工植栽によります生長増大を期するために、その一部を人工植栽に切りかえるという対象を百四十二万三千町歩計画いたしまして、昭和二十八年度末の人工造林地国有林で百十一万町歩民有林で四百十七万町歩、会計いたしまして五百二十八万町歩ありますものを、昭和三十六年度末におきまして、この計画が完了いたしました際には、国有林で百四十三万町歩民有林で六百万町歩、合計七百四十三万町歩まで拡大いたしまして、国土保全林産物自給態勢への整備をはかるという計画をいたしております。現在の造林地人工植栽地の面積は、全林野に対しますと、現在では二一%程度しかございませんが、これがこの計画が完了いたしますと約三〇%余になるのでございますが、将来さらに本計画に続きまして、終局におきましては四〇%程度造林地を持つことによりまして、人口増加その他の需要の増加見込みましても、ほぼ自給態勢が完成するという計画をいたしております。  さらに人口欄密な里山地帯におきまして非常に掠奪利用をいたしました結果、生産力の極度に低下いたしております瘠悪林地帯につきましては、約十九万町歩を見込んでおりますが、肥料林寺植裁によりまして生長量の促進をはかりたい。また先に申し上げましたように、人工植裁地拡大をはかりますために、薪炭林用材林への切りかえという問題が起つて参りますので、薪炭自給建前からいたしまして薪炭林樹種の改良をはかつて需給調整に資するという方法を講じたいと考えております。  次は森林伐採合理性強化と書いてありますが、従来不合理伐採を続けました結果が、林相の悪化と林地破壊とを招来いたしておりますので、一方におきましては、森林計画によりまする伐採量、またその伐採方法等指定されておりまするものを厳守していただく方法をとると同時に、特に奥地につきましては、搬出方法の不合理を、この際適正なる方法に切りかえることによりまして、国土保全目的を達したい。たとえば土しゆらあるいは流送等の非常に乱暴な、しかし原始的な方法をもつて搬出いたしておりますのに対して、林道網整備する、あるいは鉄索その他の集材搬出方法を講じまして、林地破壊を防止するというような措置を講ずるという考えでございます。  その次に森林気象観測事業の問題を取上げておりますが、根本的な治山治水対策考えまする際に、最も科学性において困難を感じますのは、水源地帯におきまする気象条件、特に雨量観測がほとんど行われておらない結果、計画立案にあたりまして不都合を生じておりますので、少くとも雨量観測網を設置いたしまして、計画科学性の裏づけといたしたいという考えでございます。  さらにこれらの施策を行いまして、森林伐採規制を完全に確保いたしますためには、制度の上におきまして、一つには林業税制適正化をはからなければならない。さらに伐採調整いたしますためには、現在の制度においても行われております伐採調整資金拡大等考えなければならぬ。なお当面いたしまする木材薪炭等林産物需給の実情からいたしますると、いかに造林拡大、促進いたしましても、外材輸入等計画的に行つて調整をいたさなければ、不当な伐採を矯正することは困難だというような問題もありますので、外材輸入計画的な実施、さらに木材薪炭利用合理化によります節約等考えて、需給調整をはかりつ国土保全根本対策考えるという必要がある、かように考えまして目標を立案しております。これを実施いたします場合の法制的な処置といたしましては、保安林整備に関しまして、保安林整備臨時措置法等考えて参りたい、かように考えております。  これらの計画実施いたします場合に、国家財政の窮乏は私どもも十分了承しておりますが、何と申しましても国家投資によりまして、公益経済効果をいかに高めるかという問題を勘案しつ、国費相当計画的な投資をお願いしなければならない。かように考えておる次第でありますので、一応本要綱によりまして計画いたしました事業事業費、これに対応いたしまする国庫支出総額、一応私ども計画見込みを申し上げますると、最後に別表をつけておりますが、林野関係におきまして、事業費総額が七千二百億余ということになります。そうして一部国有林事業につきましては、全額国費をもつて実施いたしまするが、民有林に対しまする地元負担等を控除いたしまして、国庫支出金は概算四千六百八十五億余になります。そのほか造林事業林道事業等に対しまする融資額見込みが五百十七億程度というふうに見込んでおります。昭和二十九年度において、先刻申し上げましたような各事業に関しまする年次計画を積算いたしますると、総事業費におきまして、九百十一億六千六百万円余となります。この国庫支出金といたしましては、五百七十八億三千六百万円、融資額五十一億六千万円余というものを一応計画しておりますが、これらに関しまして、品下治山治水協議会におきまして、建設関係事業と総合いたしまして御審議願つて、その方向で極力本計画を進めさせていただきたいというふうに考えております。  以上をもつて一応御説明を終ります。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 次に農地局櫻井建設部長より説明を聴取いたします。
  5. 櫻井志郎

    櫻井説明員 全体の農林省関係治山治水計画につきましては、ただいま林野庁長官から御説明申し上げた通りでありますが、そのうち農地関係につきまして簡単に補足させていただきたいと思います。  治山治水の本質的なものは、これは農林省所管といたしましては治山事業でありまして、農地局所管事項はやや従的な立場に相なるわけでありますが、ただその範囲を広めまして、国土保全という見地からとりますと、国土の中の農地保全をどうして行くかということがどうしても一つの大きな問題かと思います。農地そのもの保全ということと、農地が侵蝕されることによる二次的な治水への障害という問題で、農地保全の問題を考えなければならない。  それから治水事業の中におきまして、特に灌漑用溜池保全という問題がやはり重要な問題になつて参ります。特に現在大小合せまして灌漑用ため池が約二十三万箇所程度ございます。古いものは数百年以上経過いたしておりまして、保全上はなはだ危険なものが多々あるわけであります。そうしたところに従来の記録にないようなああした不連続線による大豪雨が局部的に集中するということになりますと、時によつてこれは一たまりもなく全面的な溢水による決壊という問題が出て参りますので、どうしてもこうした老朽した溜池補給強化という問題を考えて行かなければならぬ。  それから大きな流域治水計画は、これは言うまでもなく建設省所管事項としてやつておりますが、小流域の、特に農地に限られた治水計画という問題になりますと、時によりましては灌漑を兼ねましての防災ため池という問題を考えて行かなければならない。  それからいま一つは、現在河川から引水いたしております灌漑面積は、おおむね約三百万町歩の水田のうち二百二十万町歩程度ございます。これらの中には改修が進んでおりまして、灌漑上かつ治水上も安全な井堰もありますし、治水見地からいいますと、まことにおもしろくない井堰等が多々ありますので、灌漑支障なからしめ、かつ治水見地からいたしましても支障なからしめるように井堰廃止統合という問題をやつて行かなければならない。  これらの四点を取上げまして、ただいま治山治水協議会の方に提案をいたしておるわけであります。そのためには、もちろん過般国会で可決になりました農地保全に関しましては、急傾斜に関する特殊法あるいは土壌保全に関する特殊法によりまして、予算的な措置をやつておりますけれども、こうした問題が大きく財政措置として現在ではまだ取上げられておらない。こういう見地からいたしまして、国土保全に十分なる寄与をいたしておらない現状でありますので、この際こうした問題をやはり一貫して取上げていただいて、可及的十分な財政的措置を講じてもらつて治山治水の一環としてこの問題を処理していただきたい、かような考え方で案をつくつておるわけでありまして、それに対しまする一応の農林省案といたしましては、きようお手元に差上げております資料の一番終りに別表の第二としてつけておりまして、二十九年度のこれに対しまする予算措置といたしましては、事業費で約九十七億、国の補助金として約五十六億程度対策を講じていただきたい、かような考え方でただいま治山治水協議会提案をいたしております。  以上簡単でありますが、御報告申し上げます。
  6. 井出一太郎

    井出委員長 これより質疑に入ります。川俣清音君。
  7. 川俣清音

    川俣委員 私、和歌山県を襲いました水害報告を聞いておりますと、森林相当整備されておつたにもかかわらず、かえつて森林相当障害になつて水害増大したというような報告も聞くのであります。これは今までわれわれの考えておりましたこととは相当異なるのでありまして、この点に関して林野庁はどういうふうにお考えになつておりますか、御説明願いたいと思います。
  8. 柴田栄

    柴田説明員 特に和歌山地方の今回の水害におきまして、従来の常識を逸したような被害が出ておるという点に関しましては、私どももその原因の探究に対しまして非常な関心を持つて調査を進めておりますが、和歌山地方の今回の水害におきまして現われました問題は、非常に大きな崩壊が起りまして、そのために場合によりますと、かえつて樹林地が生立木伴つて流下するというために被害拡大しておるという事実も承知いたしておりますが、この問題は少し事情が違つておると私ども考えております。他の地区においてもその事情はございますが、一番大きな原因は、二十一年にあの地方を襲いました地震によりまして、あの付近の地殻が非常にゆるんでおりまして、地隙が各地に起つておる。その地隙豪雨が一時停滞いたしまして、土石と一緒に大きな崩壊を生ずるということになりました際に、その上にあります立木がかえつて大きな過重になりまして災害を激化したというように考えられまするが、先般北海道へ参りまして十勝地方水害状況を拝見あるいは拝聴いたしました際にも、まつたく同一の状況が出ておるのでございまして、従来気づかずにおりました地隙が今回の水害によつて非常に拡大しておる、そうして崩壊いたしました場所等も、地隙一つの大きな原因として崩壊を生じておるという事実がたくさんございます。極端な例といたしまして、一つ流域で非常な豪雨にもかかわらず、豪雨最中にほとんど河川に出水を見ないということで、地元人たちが非常にふしぎな現象としてけげんの念にかられておつた、その後急激に土石流として押し寄せて災害を大きくしたというような事実も拝聴いたして参りました。このことは常識的に従来考えておりました森林防災という問題をさらに突き詰めまして、森林造成するにあたりまして地質の変動を徹底的に調査し、これに対します治山事業を並行いたしまして森林造成するという計画をいたさなければ、またかような災害を繰返すことになるということを私ども考えまして、それらの対策もあわせて考えておることを御了承願いたいと思います。
  9. 川俣清音

    川俣委員 私は大きな問題が二つあると思つておる、一つは今度のような水害が起きて参りますと、橋梁等破壊あるいは人家の破壊に伴いまして、非常に多くの木材を必要とする傾向が当然出て来る、従いましてその結果木材高騰となつて現われて来るわけです。この高騰を防ぐにはやはり相当量用材伐採が必要だ、こういうふうになつて参りまして、一方において急速に保安林整備するということになりますれば、伐採量を制限して来る、あるいは植林をこれに伴つてさらに増強しなければならない、これと急な伐採を必要とする大きな矛盾に出くわしておると思うのです。多くの国有林野を持つております林野庁といたしましては、この木材高騰をこのまま見のがしておくことも許されない事情にある。一方この治山計画を見ましても、保安林をさらに拡大強化しなければならない、これも私もつともだと思う、このもつともなことが二つ衝突しなければならないのでありますが、これをどういうように解決される方針でおられるか、この点を伺いたい。
  10. 柴田栄

    柴田説明員 二十六年度、第十国会におきます森林法根本的な改正に伴いまして、従来民有林国有林が、経営案の作成にあたりましては、実は完全な有機的な計画を持つておりませんでしたが、今回の改正によりまして、流域別に総合された基本計画に共いて経営案を編成するということになつて、その流域全体を通じまして国有林民有林の植伐の計画を立てるということになつておりますので、国有林のみ厚くて民有林だけ犠牲を背負うという方法は、今後急速に調整するということになつております。その点におきまして、流域別調整のために国有林がある程度増伐を必要とするという場合には、その態勢もとらなければならぬ。かように考えております。  いま一つは、国有林材総額で約三分の一程度生産を確保いたしておりますので、その売払いの方法等によつて木材高騰をある程度調整はできるという考えでおりますので、地方別の異常な特殊事情に関しましては、処分の方法を勘案いたしまして調整をいたすという考え方でおるのでありますが、のこ際非常に困難な問題は、一応の建前といたしまして、国有林材といえども自由取引をしなければならぬということのために公売を原則とされておるということで、必要の場合には、二十六年度において北海道のパルプ・ブームによります混乱を救うために、一時公売を停止いたしまして、価格の安定をはかつたこともございます、非常の際にはさような方法もまたとらなければならぬと思つておりますが、現在におきましてはまだそこまで行くという見通しも立てておらぬのでございます。今日非常に高騰をいたしておりますのは、必ずしも実需を伴わない業界の思惑ということが相当大きく反映いたしておりますので、実需面において非常な逼迫を生ずるという場合の対策を、できるだけ国有林材において調整させていただきたい、こう考えております。しかしながら根本の問題といたしましては、何といたしても植伐の均衡が破れておりますので、相対量において不足を生じておるということは否定できないのでございます。必要な最小有効需要に対しまする対策としては、何としてもこの際外材の計画的な輸入をお願いするということが、一つの最も必要な方法だ、こういうふうに考えております。現在南洋材あるいは米材、カナダ材等は相当量の輸入を見ておりまして、当初二十八年度に計画いたしました際には、南洋材二百三十万石、米材七十万石、合計いたしまして三百万石の輸入を計画いたしておりましたが、今日までの輸入の実績を見ますと、七月末におきまして南洋材は約百五十万石程度輸入の実績を見ております。米材につきましては約五十万石近いものが入つております。下半期におきまする輸入の見込旦を、一応通産省等とも協議いたしまして改訂をお願いいたしておりますが、それは南洋材において二十八年度においては三百万石、米材において百万石という程度までふやしていただくということを計画いたしておりますが、この程度でただいまお話のありましたような心配はとうてい解消しないのでございます。一方におきましては、最も大きな、まとまつた需要の対象でありまするパルプ材のごときものにつきましては、でき得ればソ連沿海州材の輸入を促進いたしたいということで、いろいろ困難な条件もございますが、これらの点について御相談を進めております。またアラスカの国有林の開放を願う問題も、先月アラスカパルプ会社の設立を見ましてこ近く実施の段階に入るようになつておりますので、それらとも連携をとつて、これらによつて当面の需給のバランスを極力計画的に進めなければならぬ、かように考えております。
  11. 川俣清音

    川俣委員 そこで木材の価格問題から見ますと、思惑が相当に影響しておるという御説明ですが、問題は保安林相当整備強化されると、国有林を初め民有林伐採が制限されて行く、そういうところにやはり思惑があるようにも見えるわけです。私はこれはゆゆしき問題だと思うのです。一面において木材価格を下げなければならぬ、思惑を阻止するために何らかの手を打たなければならぬ、こういう面に到達していながら、結果的にはただ思惑を助長するような保安林整備という問題が出て来るわけです。今日治山治水の上からどうしても保安林整備強化して行かなければならないという重大な要請がついているわけです。この要請にも従わなければならぬ、その思惑も阻止しなければならぬという点は大きな問題が出て来ているんじやないか。それじやこの思惑を解消するために、保安林整備拡充計画を阻止したらばいいじやないかという議論にはもちろんならないのでありますが、むしろ今日の水害を防ぐためには、このくらいな措置を講じて行かなければならない。五年計画、七年計画、むしろこれを短期にやつて行かなければならないという強い要請がついていると思う。そこでこれはやらなければならぬ。木材高騰は防がなければならぬというので、おそらく林野庁は手をあげているようなかつこうだと思う。そこで問題は、今外材を入れようということですが、外材ばかりでなく、一面において生産されましたパルプとして輸入してはどうかという問題も起きて来ます。これは時間がありませんから、極端な表現で言いますと、化繊の業者はパルプの輸入を非常に希望している。逆に、今日盛んになりましたパルプ業者は反対しておる、こういうことですが、私は別に化繊にもパルプにも直接関係はもちろんありませんが、公平に見ますと、こういう保安林整備拡充をどうしても要請に従つてつて行かなければならないとしますれば、相当伐採を制限して行く。また一面において木材価格が高騰して参りますと、林野庁の知らない間に相当伐採量がふえて来るわけです。これは何と言いましても阻止することはできないと思う。民有林ばかりでありません。国有林におきましても、林野庁の中央におきましては計画伐採をやるのだと申しましても、木材が高くなつて参りますと、現に売り渡された以上の数量がいつの間にか出て来るということは、柴田さん御存じないわけではない。そんなことはないと言わざるを得ない立場だから、ないとおつしやるでしようけれども、これは出て来る。ことに一つの加工をして売られる場合は別でありますけれども、こう木材が高くなつて参りますと、いつの間にか量がふえて来るということになると思う。それは説明によりますと、立木時代における材積計算が非常にずさんであつたということで逃げるか、あるいはずさんとは言わないけれども、計算間違いだということで逃げられるかもしれませんが、実際においてはかなり伐採量がふえて行つておるものと私は見るのですが、この論争は別にいたしまして、民有林がさらに植伐のバランスが破れて来るという結果を生ずると思う。そうなつて参りますれば、一面において急速に保安林整備を行わなければならぬ。一面において植伐のバランスを破らないように——今でさえ破れているのを、さらにこれを正常なものにするということになりますれば、もつと植林を画期的にやらなければならぬ。それにしても追いつかないという場合には、外貨の問題もあるだろうけれども、当分の間どうしても外材によらねばならぬ、あるいは輸入パルプによらなければならぬというふうにお考えにならなければならぬと思うのです。外材の話はありましたけれども、パルプの問題に触れておりませんが、これはどういうわけですか。
  12. 柴田栄

    柴田説明員 私どもといたしましては、パルプの輸入、あるいはさらに加工された新聞用紙の輸入等に関しましても、できるだけこの際国内の森林資源を過伐に陥らぬような方法は、何としても緊急な問題としてお取上げを願わなければならない、かように考えておる次第でございます。
  13. 川俣清音

    川俣委員 そういう手を打たれましても、そう永続性のあるものでないと思う。従つてもつと造林計画が徹底しなければならないと思う。一面において山の崩壊に伴うところの植林地の影響、損害というものも出て来るわけです。従いまして、山の崩壊等を阻止するために、植林をしなければならぬ。その植林をマイナスするような山くずれがまた出て来るということで、なかなかこれは追いつかないのであります。五箇年計画とか十箇年計画とかいうことでは、治山の目的が達成できない。むしろ減耗の方がはげしくなりまして、現在程度の減耗でありますれば、まだおつくかもしれませんけれども、これを放任しておきますと、減耗の度合いは急速に拡大して来るのであります。これは私のようなしろうとが言うよりも、あなたは専門だからよく御存じだと思うのだけれども、さらに増大して参りますと、もう手のつけようがなくなるのではないか。それにはただ予算がどうも少いのだからということであるならば、私は職責に忠実だとは思われないのでありまして、その意味で、もつと計画を短期に達成するというような方途を持つておられないかどうか、こういう点をちよつとお伺いしたい。
  14. 柴田栄

    柴田説明員 造林計画につきましても、内容によりましては、たとえば特に重要な指定地域におきまする水源林のようなものは、五箇年間に一応計画量を全部完了する、あるいは重点地域に対しましては、これを繰上げてやるというようなことを、年次計画であげまして、ただいまも御指摘がありましたが、一応私どもといたしましては、国費の実情が非常に窮迫しているとは申しながら、何としてもこの仕事は急ぐ仕事である。計画的に実施しなければ、なかなか保全目的を達し得ないという見地から、そういうことには全然拘束されないで、一応経費を算出いたしまして要求をいたしておりまするので、あくまでも決して過大なものではない。しかしこの程度は一応現状において最大実行し得る量であるという考え計画いたしておることを御了承願いたいと思つております。
  15. 川俣清音

    川俣委員 時間がありませんから、できるだけ問題を省略いたします。林野庁で林道計画をされておりまして、この林道は原材の伐採及び運搬の上から、地方の要望が非常に強いのでありますが、その問題は別におきまして、最近の水害状況を見ますると、この林道のつけ方が悪いために山くずれの原因になつておるというような状況が出て来ております。また林道の修理等も、林道はつけられたけれども、修理が十分伴わないために、かつてに山を削つて修理をするというようなところから、さらに山くずれを増大して行くというようなことで、林道が林政の上に必要でつくられておりながら、林政をかえつて破壊するような結果が出て来ておるわけです。だからといつて、私は林道反対ではもちろんありませんけれども、これらについてどういうふうにお考えになつておりますか。  さらにこれは農地局にお伺いします。農道は農地局の主管であると思うのですが、山村の農道も同様だと思うのです。山村の農道も非常に無計画にできております。無計画というのは、道路としての便利さでなくて、山を削つたり、とにかく相当森林があるにかかわらず、どんどん削つてつて山くずれを起すというような農道のつくり方が行われておる、あるいは改修が行われておる。こういう全体のことを考えない山村の農道というものは、これはよほど山林の保護を考えながら農道の役割を果して行かなければならない。御承知でありましようが、山村というものは、農作物もありますけれども、山林と非常に関係の深い生活をいたしておるものでありますから、この結果、山林が荒廃して参りますると、生活の上においても、その部落あるいは村の経営、村政の上からも大きい被害を持つて来るものでありますが、これらに対する指導と申しまするか、いろいろな処置をどういうふうにとられているかという点を、つけ加えて御説明願いたいと思います。
  16. 柴田栄

    柴田説明員 ただいまの林道の計画並びに実施の問題に対しまする御指摘は、私どもも非常にごもつともだと存じまして、今後の林道網整備に関しまして非常に苦慮いたしておりまするが、特に奥地林道に関しましては、従来単価が相当低かつたというような関係もありまして、安くつくるために設計を非常に無理したという点がありまするので、今後の計画におきましては、国土保全とこれに伴う計画実施を可能なら上めるような設計に力を注ぐということが一点と、さらに奥地におきまして急峻地に林道を開設するということは、何といいましても崩壊原因になりますので、これらは空中索道等の利用によりまして、林地を荒ざない集材、運材の方法を林道設定に対して同時に考えるということで計画をいたしておりますことを御了承願います。
  17. 櫻井志郎

    櫻井説明員 ただいま御指摘になりました点につきましては、実際そうした問題があることは私も承知いたしております。これは農地のためになりましても、御指摘の通り林野を荒し、そうして二次的に国土を荒すということになりますから、これは何ら意味がないということになりますので、これは当然できるだけ技術的にそういうことのないように改めて行かなければならない、できるだけそうしたいと思います。ただ、これは決して弁解で申し上げるのではございませんが、農道の実情を一応申し上げますと、現在国の補助がわずかに二割、こういうところに一つ問題があります。これはどうしても改善して行かなければならない問題だと思います。
  18. 川俣清音

    川俣委員 林野庁の林道を索道にかえて行くことももちろん一つだと思いますが、林道というものは木材の運搬ばかりでなく、山村の生活には切り離すことのできないいろいろな問題を持つておるわけです。ですから、林道をやめて索道にすることによつて崩壊を防ぐのだということになれば、私の質問の要点をはずれて来るわけです。もちろん索道の新設に反対ではありませんが、とにかく奥地における林道は、設計に対する監督が不行き届きばかりでなく、設計費用等をかなり削減いたしまして、距離を延ばすということを計画するために起つて来る問題がある。このことを指摘いたしたかつたのであります。それから農地局に対しましては、今までいろいろな補助が行われておりますけれども、農道に対する補助はわずか二割なんです。こんな補助というものは、補助をやつたのかやらぬのかわからぬ。ほかとの均衡の上からも、率が悪いばかりでなく、もう少し計画性を持たせるためには、補助率を高めて指導してやらなければ、ほんとうの指導にならない。補助がわずかでありますれば、指導権といいますか、計画権といいますか、弱まつて参りますので、単に補助がほしいという意味でなく、計画実施させる上に相当な発言権を持たれる上には、補助率を高めて行かないで、補助も出さないで計画性を持たせようといたしましてもなかなか困難だ、こういうことで農道の問題も取上げたのです。時間がありませんから、この程度で質問を打切りたいと思うのですが、もう一つ農地局にお尋ねしなければならぬのは、どうも自分の方のやつは直接の治山治水関係がないのだというふうなことで、従たるものだという御説明ですか、これは私計常に不満なんです。と言うのは、何と申しましても、水の利用というものは、工業用水もありまするけれども、農業用水が、日本の場合におきましては重大な使命を持つているわけです。この水源地が荒されたり、あるいはこれに防災ため池をつくるとかということになりますると、私別におせじを言うわけではないが、どうしても農地局関係が一枚関与して行かなければならぬ。川を取締るために川を取締るのでなくて、やはり下流の農地保全国土保全、あるいは農産物の、あるいは主食の増産の上から目的が立てられて行かなければならないわけです。下流のものが大きな被害をこうむる。その被害対象はおもに農地です。何といつて農地ですから、この農地を顧みないで、自分のところは従たるものだというような考え方で、治山治水考えたのでは、これは主客転倒だと思うのです。あなたはみずから主客を転倒しているように思うので、この点については十分お考えだと思うのですけれども、なお念を押しておきたいので、これに対して御答弁を願いたい。これで質問を終りたいと思います。
  19. 櫻井志郎

    櫻井説明員 私は、治山治水という言葉だけからいいますと、農地関係はやや従に属する、こう申し上げたのであります。但し国土保全という見地から見ますと、農地保全という問題とか、井堰の統合という問題は、非常に重要な問題ですということを申し上げましたので、少し言葉が足りませんでした点はお許しを願いたいと思います。おつしやる通りに考えております。
  20. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この問題については、いずれ機会を改めて伺いたいのですが、直接今度の災害で感じました点は、林道にいたしましても、農道、特に開拓道路の問題です。いたんだやつの補修に対する補助が何らないのです。ですから、どうせ林道だの開拓道路は、距離が長くて、今のところは、いい道をつくろうとしたつて、予算がなかなか出ない。また実際それはなかなか負担ができない。それをほつたらかしにしてあるわけです。それですから、今度のような水害が起きると、林道及び開拓道路のほとんど全部がだめになつて、基本的にやり直さなければならぬのと同様な状況になつている。ところが、実際はこれの補修に対する補助制度が全然ない。私はこれが非常に大きな問題だと思う。私はぜひこれは小さな問題のようですけれども、年々補修を少しずつやつておけば、今度のような災害があつても、あれだけひどくならぬでも済む場合が多々あるわけですから、ひとつ補修に対する補助制度をこの際立てる必要があると思うのです。もちろん今の状況からいえば、新しいところにどんどん林道や開拓道路をつくることは必要ですけれども、つくつた道路を全部補修しないでいて、雨でも降つてちよつと水でも出れば、全然処置なしというような今の制度はまずいと思いますが、これらについては林野庁当局でも、あるいは農林当局でもお考えのことと思う。ただお考えだけでは困るわけです。本年度あたりのこういう状況を参酌して、何らかこれを制度化し、予算化する措置を現におとりになつているかどうか、またそういうお考えがあるかどうかという点を、この際つけ加えてお聞きしておきたいと思います。
  21. 柴田栄

    柴田説明員 ただいまのお話は、私ども常々その必要を痛感いたしまして、従来の予算折衝にも繰返して要求をいたして参つたのでございますが、実は今日までまだ認められておりません。そこで先般も治山治水協議会におきまして、平生の補修にわずかの投資をしておけば、被害額をずつと減少することができるのじやないかという御議論も出ておりまして、何とか予算措置に関してでもお願いを申し上げたいということで、いろいろ御審議願つておりますが、大蔵省との折衝という範囲内においては、まだ見通しはなかなか困難だということを、率直に申し上げておかなければならぬ状況でありますから、御了承願いたいと思います。
  22. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今度国土保全というような基本的な問題の上に立つた治山治水計画が一応示されたわけですが、私は一点だけ申し上げたいことは、大災害が来れば、またその災害の復旧によつて資源が過伐の傾向に行くという、非常に悪循環が生ずるわけですけれども、こういう場合に考えられることは、資源を最高度に活用できないかということであります。たとえば製材事業等も、現在の段階においては、それほど近代化されておらぬような状況が多いわけです。最近廃材を高度に利用して非常に優秀な製品をつくるとか、あるいは切りくず等を中身にしていろいろなものができておりますが、私も専門的な言葉は知りませんけれども、そういうことが非常に研究か進められておるわけです。これはまだコストの面から、大衆需要にこたえるだけのコストになつておるかおらぬかわかりませんけれども、こういう面に着目して、森林資源を最高度に効率化して使うということによつて、今までの何割かはそれによつて補充ができるのではないかというふうにも、見通しとしては考えられるわけでありますが、これらのことに対しても、相当国の財政投資とか指導が必要であると思いますけれども、何とかそういう点に対しても重点的に配意をして、そうして限られた、一年々々過伐の傾向にある国有林を中心とした資源を、最高度に使うことに対するお考え等も聞きたいのであります。  もう一つ関連して、八月長官は、北海道の各所を御視察になつて森林関係災害等も認識されたと思いますが、一例を申し上げますと、これは旭川営林局の所管と思いますが、留萌支署管内に小平村というのがある。そこは大体一年十二、三万石の国有林の払下げによつて事業が行われておりますが、そこは駅までの搬出距離が非常に遠くて十二、三里もあるというようなことで、採算のとれる材だけを搬出して、あとは山の中に三割も放置してあるというようなことで、その実情を十六ミリフイルムに収めたものを村長が私に示したのでありますが、こういうことでは、せつかくの国有林の資源が、搬出の不便とか、林道とか、いろいろな関係で山に放置され、しかもその量が三割以上もあるということになると、ゆゆしい問題であると思うのです。それがまた若い木が伸びる上においても障害を来す。特に今度の水害の場合においては、そういう放置された木材がダムに流れ込んで、小平村の灌漑用のダムが決壊したというような事実もあつて、これらが一つ原因をなしておるわけであります。こういう点についても、今後の林野行政の面において、もう少し今までの業績を反省し、検討することによつても、改善される面があるのではないかというふうにも考えるわけでありますが、こういう点について長官の所見を伺つておきたいと思います。
  23. 柴田栄

    柴田説明員 非常に林産資源の足りない際に、非常に不集約に使つておるという点に関しましては、私どももこれが集約利用によりまして節約をはかるために、総合的な利用、合理化を推進しなければならぬということで、要綱には簡単に、利用の合理化と、こう触れておりますが、お話の通り、製材で出ますバタ材の利用等に関しましては、最近すでに合成材によつて利用できる。しかもほぼ採算点に乗る見通しがつきまして、それらの施設に対します融資等に関しましては、積極的に施策を進めておりますことを御了承願いたいのであります。  なお北海道は、特にただいま御指摘の通り、従来搬出設備が不備であると同時に、山が深いという関係で、林地そのものが非常に不集約に使われておりましたが、これを資本対象になりまする林木以外の地積の利用に関しましては、最近計画を立てまして高度に利用を進めておりまするが、いま一つ北海道の山につきましては、天然林に対しまして手入れを加えることによつて成長量を相当促進し得るということとあわせまして、天然林の手入れという面において残された廃材の利用処理というものをただいま計画いたしまして、毎年百二、三十万石はさようなものを利用いたしておりますが、今後積極的に進めて参るという計画が進んでおりますることを御了承願いたい。こう思います。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 私は内容は別としまして、この厖大な対策要綱というものが生れた経過、また今後のこれの取扱い等について、その見通し等を伺いたいと思います。政府が治山治水対策の特別委員会を内閣に設けておることは私ども聞いておりますが、それとこの農林省所管治山治水基本対策要綱というものはどういう関係になるのでありますか。まずその点から伺いたい。
  25. 柴田栄

    柴田説明員 先刻もちよつと申し上げました通り、内閣に設置せられました治山治水協議会におきまして、農林省といたしましては、この程度根本対策としてぜひ計画を進めさしていただきたいという意味において提出いたしておりまする案でございますることを、御了承願いたいのでございます。なお審議の現況はまだ進展はいたしておりませんが、当面すでに二十九年度の予算措置等に関して、それぞれ官房において準備をいたしておりまするので、建設の計画と一応突き合わせまして、総合性を検討して、これを治山治水協議会においてお取上げを願うということで、ただいま幹事会を中心として双方の案の総合的な照合をいたしております。現在のところでは双方の案が大体競合する点がなく、総合的にほぼ同じ重さを持つて計画されておるということなので、これを御検討願つて、総合的な計画として予算措置なり、法的措置その他を協議会において強力に御決定を願うように、今努力をいたしておるという段階であることを申し上げておきたいと思います。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 これはまだ新聞報道でございまして、真偽は私ども確かめておりませんが、伝えるところによれば、来年度予算を一兆億以内にとどめるという腹を大蔵当局は持つておる。従つて公共事業費の大幅削減が必然的に出て来る、こういうふうに伝えております。この治山治水対策の根幹をなすものは公共事業費にほかならない。とするならば、一方においては治山治水対策協議会をつくつて、ぼたもちのようなりつぱな計画を立てる。しかも一方においては公共事業費の大幅削減をも一国の財政当局がしばしば声明しておる。この矛盾は非常に私は重大だと思うのです。国家の年間予算をオーバーするような厖大な農林省案、またこれとは別に、建設省関係のものは存じておりませんが、これを加えるならば実に驚くべき巨額の費用を要する。しかも今問題になつておるような公共事業費すらも削ろうというけちくさい今の政府の予算編成方針等をわれわれ見て、きよう初めからこの御説明を聞いておつて、こういうことをやつて、国民にある程度絵に描いたぼたもちのようなものを与えて、しかもふたをあけて見れば、その内容たるや実に微々たるものだということになりますと、これは私どもこの案をどう審議してよいか、大まじめでこの案を審議しても始まらないのではないかというような気持すらいたしますが、その点について三箇年の年次計画でもつて国家投資あるいは融資等によつておやりになるようでありますが、ほんとうに農林当局としては、この案を治山治水対策協議会に持ち込んで、来年度の予算においてはどの程度実現を期する用意があるか。たとえばこの案は農林省の省議決定のものでありますか、それともあるいは各庁各局の一つの案として、省議へ行くまでの治山治水対策協議会の一つの資料的な、あるいは要望的なものとしておつくりになつたものでありますか。その辺をもう少しお聞かせを願いたい。
  27. 柴田栄

    柴田説明員 今先生の御指摘の点は、私どもは非常に心配いたしておりまして、協議会等の情勢を見ておりましても、さような危惧が相当に濃厚なので、これをどの程度まで実現というようなことは、実は私どもとしてはまことに残念な、心外な気持なんでございますが、このまま通るということはなかなかむずかしいのじやないかと最近考えております。しかし一応この案は農林省として、根本的にお考えいただくとすれば、最小限度これだけは計画しなければならぬという案だということを省議で御了承願つて、しかしながら素案として、参考として出すという説明で、実は協議会に出しておる次第でございます。そこで、まだこれが農林省としてぜひともというところまでは説明をいたしておらぬのでございます。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、この方針の冒頭に四項目の重点施策がございますが、この中には特に財政的な点等ともにらみ合されて、もつと緊急に、かつ量的にもすみやかに実施しなければならないという問題があろうと思います。どうせ財政的な問題とからみ合してだんだん絞り上げて来れば、そういう結果になろうと思うのでありますが、これは林野庁の長官の御答弁としてはなかなか困難な問題とは存じますが、しかし少くとも限られた時間に、しかも来年度予算の編成をもう目睫に控えて、私どもがこれを審議し、完璧を期するという点においても、重点的に取上げて、これだけはどんな困難があつてもやらなければならぬとか、これはそれに次いでやるべきものであるとかいうことは、おのずから出て来る。とても一兆億をオーバーするようなこの計画が、たとい三箇年計画であるといえども、今の自由党の政府では、私はこれはなかなか困難だと思う。私はあまり国民に大きな幻想を抱かせて、その結果を見て、常に裏切られるというようなことであつてはならないと思う。今年の災害の結果から見て……。その点は、国民に対していつもつも計画だけは示して、それが実行できない結果で、また来年度大きな災害が起きるというようなことでは、申訳がないと私は思うのです。そういう点からいつて、重点的にこの点とこの点とこの点というようなものについての、さらにしぼり上げた御用意があるでしようか、その点をお伺いをいたします。  それからいま一つ、時間がありませんから私はこれで質疑を打切りますが、こういうような一つ要綱が出て参りますと、建設省関係農林省関係とを総合した一つの総合立法で行かれるのか、あるいは農林省関係のものを一応立法化し、あるいは財政的な措置を講じた後、両省間でこれが実施上において何らかの方法を講ぜられるのか。どうもしみじみと感じますことは、地方へ帰りましても痛感するのですが、これは建設省だ、これは農林省だというようなことで、実際口では総合総合とおつしやいますが、現在の官庁機構の上からいつて、別にあなた方に他意あるわけではないと思いますけれども、官庁の機構自体が一つのセクシヨナリズムを余儀なくせしめておる。しかし問題は、このような大きな国家的な問題については、一体今後基本的な機構または立法措置、あるいは予算の運用というようなことについては、どういうふうに進んで行くのでありますか。これはまた別の機会にさらによく検討さしてもらいたいと思つておりますが、大体の御所見だけを承つておきたい。
  29. 柴田栄

    柴田説明員 お話の通り、もしこれが実情に沿わなくて、実現しないという見通しが濃厚になりました場合にも、御指摘の通りここに四つの項目をあげておりまするが、そのうちで比較的経費を要しないで、しかしぜひともやらなければならぬという問題は、第一には地域指定をいたすという問題、これは別に建設関係の面から見ました重点と農林の面から——私どもは実は農林の面からだけの重点という考え方ではなく、重要な河川流域を選定いたしておりまするが、この対象を御決定を願つて、その流域を、林野といたしまして重要な地域指定するというような問題は、ぜひこの際考えて、それに対しましてもし経費が不足でありましても、重点的に事業計画的な実施をいたして参りたいという問題が一つと、それに伴いまして保安林整備はぜひこの際やらしていただきたい、かように考えております。そしてその重要地域に対しまする保安林の——現在においても保安林におきましては施業の指定をいたしてわりまして、まずこれに強い施策を加える前に、この制限事項を的確に守らせるという措置だけでも、万全とは言えませんが効果をあげ得ると思つておりますので、それらの措置を第一番にとつて参りたい。そして治山事業造林事業等を、国全体のにらみ合せから、この程度ということは協議会等で御決定を願つて年次計画をやむを得ず引延ばすということで参るよりしかたがない、かように考えております。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 ちよつと今地域指定の問題がありますから伺つておきたいのしすが、二、三年前に、重要河川別に地域別開発計画ということがずいぶん論議され、当局もよく御存じでございますが、それがいつの間にか具体的に発展せずに終つておるように私は記憶しております。大体この河川別の地域別総合計画というものが出て来れば、従つて河川改修については建設省、農地保全等については農林省というようなことではなくして、そこに一つ流域別における発電計画であるとか、あるいはいろいろな各省関係の仕事がその河川を中心にまとまつて、そしてそれを所管する一つの機構と申しますか、そういうようなこともずいぶん論議をされまして、私どももかつて若干論議をした経験を持つておるのでありますが、やはりこの一つの方向としては、私はそういつた構想といいますか、ただ単に農林省と建設省とが相談をして地域指定をするということだけでは、ほんとうの効果を期待することができないのではないか、そういうふうに思うのです。現在農林省としては、地域別の一つの総合計画というようなことについては、御検討になつておるのでありますか、またはそういうお考えはないのでありましようか。そういつた点について、省議決定でなくて私見でもけつこうですが、参考にしたいと思いますのでお聞かせ願いたい。
  31. 柴田栄

    柴田説明員 外部からごらんをいただきますと建設省、通産省、農林省等等で、実は内容相当わかれておりますが、現地で競合するごとく見える場合が相当あると思つておりますので、さようなことでセクシヨナリズムによつて、せつかくできるものもできないというようなことになつて、御迷惑をかけておる面も皆無ではないということで、私どもはその点は非常に心配いたしております。私ども関係といたしまして、競合するということでしよつちゆう論議されまする問題は、主として建設省の砂防工事と私どもの方の治山事業ということになつておりますが、現状ではまことに遺憾な話でございまするが、とうてい競合するところまでは参つておらぬのでございます。経費が非常に不足なために、最も競合しやすいと思われまする利根川流域におきまして、先般も建設省と事業地域別の突き合せをいたしました場合に、治山事業において三%余の地域だけが競合いたしておりましたが、他の地域はなかなかそこまで接近して参つておらないというのが実情でございまして、非常に乏しい経費で、現場においては極力双方で話合いをして、できるだけ歩み寄つて実行するというようなことで実施をいたしております。それで今回基本的にお考えをいただくということで、私ども地域を選定する基準といたしましたのは、ただ単に森林を中心とする考え方だけでなく、一つにはその流域におきまする耕地面積と、それに対応する灌漑用水の必要量、あるいは電力の未開発を含めた包蔵量の関係、下流におきまする産業構造、経済の実力等、これは実は指数を何によつて現わすかということが困難でございましたので、結局人口密度と見合せて指数をとつておりますが、さような五つの指数、それから今とりました指数の中には、災害の瀕度等と荒廃地の面積割合等をとつておりますが、さようにして一応重要河川と思われるものの順位を点数できめて、とらわれずに選定いたしてみたわけであります。これが約七十七河川、現在私どもとしては、この段階においては重要であると考えて、具体的に選定をしてみた次第でございますから、これに対して建設関係で重要河川として、いわゆる直轄河川として指定して、今度の計画にも入れておられます対象が九十三河川ございますが、そのうち北海道に十四河川ございますので、北海道は私どもは別の考え方で進めたいと思つて、一応内地だけを比較いたしまして、ほぼこれをつけ合せまして維持いたしておるということで、これに対して建設あるいは通産等の計画を総合いたしまして、山としてやらなければならない仕事を私どもの方で計画するということで、ダブリはないかということを検討いたしておりますが、現状においてはダブつてないと申し上げられる段階におりますので、これを実施いたしましても、現状においてはセクシヨナリズムによつて仕事が総合的にできないということは、これに関する限りはないじやないかと思つております。ただしかしかような計画を、治山治水協議会が恒久的な施設としてこれが調整、企画、あるいはその裏づけ等まで進めていただけるということなら、これは問題は別でございますが、正常の機関として何らか統一的な機構あるいは調整の機構というものが考えられなければ、いつの日にかまた問題が起るであろう、これは実は私の考えでございますから、誤解のないようにお願いいたしたいというふうに考えております。     —————————————
  32. 井出一太郎

    井出委員長 昨日農林当局より本年度の昨況並びに食糧事情等について説明を聴取いたしましたが、これに関連して金子委員より発言を求められております。これを許します。
  33. 金子與重郎

    ○金子委員 食糧庁長官も米価の決定や何かで非常にお忙しいと思いますが、きようで農林委員会が一応終りになりますので、この際延び延びにしておけない問題がありますので、その点をひとつだけ、わずか十五分くらいしか時間がありませんから、簡潔にひとつ御説明願いまして、委員会の態度をきめたいと考えておるものであります。それは一昨年から政府が自由販売自由販売というかけ声のもとに、何とかそれに沿うような政策をとりたいという非常な苦心から、匿名供出の問題に出発して、昨年度私どもは非常に杞憂したのでありますが、にもかかわらず、特別集荷制度、いわゆる供出後の自由販売というものを設けて実施したのでありますが、その特集制度に対し、昨年度はどういう結果が出ておるか、その実績を簡単に御報告願いたいのであります。
  34. 前谷重夫

    ○前谷説明員 従来農家が政府に売却いたしまする場合におきまして、その農家と集荷人との間に一種の登録的な関係があつたのでございまするが、昨年度よりその登録関係を、府県が供出を完了いたしましたその後におきまして、府県の指定します日以後におきまして、登録されざる農家からも指定集荷業者が買いまして、政府に売り得るという制度、いわゆる特集制度というものを実施して参つた次第でございまするが、その実績は、二十七年産米におきましては、約九十万石でございまして、そのうち半分が農業協同組合でございまして、あと半分が商人系統になつておる次第であります。
  35. 金子與重郎

    ○金子委員 半分が農協であり、半分が商人だといいますと、その商人の中には、この特集制度によつて初めて集荷資格を得たものと、協同組合と同じ立場においておるものとの二色あるのですが、この制度そのものによつて特別指定を受けた業者から集めたものが、一体どれだけありますか。
  36. 前谷重夫

    ○前谷説明員 いわゆる農協以外の指定集荷業者が、ただいま申し上げましたように半分の四十五万石程度ですが、そのうち従来指定集荷人といたしまして集荷いたしておりますもののほかに、新しく特別集荷人といたしまして指定したものが、大体二十万石余となつておると記憶いたしております。
  37. 金子與重郎

    ○金子委員 そこで問題なのは、それらのものが買つたいわゆる政府米と称するものが、はたしてそのまま政府に売渡しになつておるか、あるいは横流れになつておるかということに対しては、どこにもつかむ方法はないと思うのですが、それを横流れにならないような保証が一体つくかどうか。またこの制度を置くときの説明には、こういうふうにしてやみに流れる米を、いろいろの形において買い上げることによつて、やみ米を吸収し得るのだということだつたのですが、むしろ逆に、運搬過程においては、許可証を持つておれば、やみ米を自由供出のものだと言いのがれもできる、あるいはその他の事情もありまして、やみ米の流通を楽にさせるというような悪い結果だけであつて、買つたものが必ず政府へ入るという保証はできないと思うのですが、その点の見解を伺いたいと思います。
  38. 前谷重夫

    ○前谷説明員 従来の指定集荷業者以外に新しく集荷を認められましたものにつきまして、その実績はただいまお答え申し上げた通りでございまするが、お話のように、現在のような状態におきまして、これが完全にやみがないかどうかということにつきましては、実はわれわれも的確な証拠を握つておるわけではないのでございまして、現に県によりますると、そういうものがやみを行つたために指定を取消したものもあります。われわれといたしましても、その事実がありましたたびに、その指定を取消しておるわけでございまして、その指定を取消したものも二、三あるわけでございます。従いまして、集荷されたものが絶対やみに流れないということは言い得ないかと存ぜられまするが、御承知のように、この特集の場合におきましては、その移動は県内を限つておるわけでございます。県外に出ます場合におきましては、従来と同様の厳重な取締りをいたしておるわけでございます。これは多少御質問の外にわたるかと存ぜられまするが、この特集制度につきましては、お話のようにいろいろな欠陥があるわけでございまして、私たちも、この欠陥を是正する方法がないだろうかというふうな点について、目下検討いたしておるわけでございます。今お話のございました、これがやみに流れないという何らかの措置がとり得るものかどうかという点についても、検討いたしておるわけでございます。これは大体におきまして、明年の二月から三月、早くて二月ごろから実施される場合が多いと考えられまするので、そういう点についても至急に検討いたしたい、かように考えております。
  39. 金子與重郎

    ○金子委員 今御答弁にあつたように、こういうような登録をやりまして、この制度のために全国一万以上の指定をした。その指定の過程におきましても、あなた方は法令を出すと、それでぱつとできたようなおつもりになろかもしれぬけれども、その間において、暗中摸索、あるいは商略的なものからなわ張り等、いろいろなことで農民をまどわしたり、有形無形の煩瑣が、末端の方へ行きますと非常に多いのでありますが、その上に、事務的にも特別な制度をなぜとらなければならぬか。一万人以上のこんなものをつくつて、それで扱つた米がたつた二十万石、全体の供出量の〇・何パーセントにしか当らぬ。こういうような制度を新しく大きく掲げて、これが供出後の自由販売だということで、一体たれに裨益しているかということを考えました場合に、ここの功罪論の問題ですが、私は功罪論から言うならば、この政策はまつたく弊害こそあれ、何らの裨益はないと極論してもいいと思つておるのです。それに対して今の長官の立場において、どういうふうな見解をとつておりますか。
  40. 前谷重夫

    ○前谷説明員 お答え申し上げます。ただいまの一万人という人数は、特集制度として農協等も指定しておりますから、必ずしも新しく指定いたしましたものが一万人というわけではないのであります。ただいまのお話のように、この特集制度につきましては、私もやみに流れるというおそれのあることは、事業として認めざるを得ないのであります。これは全部とは申しませんし、またその割合等もどの程度かということははつきりいたしませんが、一部にはそういうことがあり得るということは、考えざるを得ないかと存ずるのであります。そういうわけでございまするから、この制度の是正によつて、そういうことがはたしてできないものかどうか。あるいはこの制度自体の持つ根本的な欠点からいたしまして、この制度の改善なり是正によつて、その目的が達し得ないかどうかという点につきましては、根本的に再検討いたさなければならないと考えておるわけでございます。ただ昨年度の状況を見ましても、御承知のように、指定集荷人となつておりますのは大部分は農協でございまするが、この制度も、やはり一面におきましては、農協の団結を促し、また活動を活発にするというふうな、一面の利益はあり得るとも想像されまするけれども、これは結局におきまして利害の考量の問題になろうかと思います。つまり一部の利益はありましても、それ以上の弊害があれば、この制度というものは再検討されなければならない。これは昨年度におきまして、その効果が全然なかつたということは言えないかと思いますが、その効果と同時にその弊害というものの大きさは十分考えて見なければいけない。その比較考量によりまして、この制度根本的な検討をいたさなければならないかと存ずるのであります。本年度の供出状況等とも関連いたしますので、この制度が少くとも明年度において実施されるあかつきまでには、御意見をわれわれ従来から拝聴しておりますので、よくその点を研究いたしたいと考えております。
  41. 金子與重郎

    ○金子委員 とんでもない効果があるもので、農協がだらけているから、それを刺激する意味においては競争相手をこしらえたことはよかつた、こういうことを長官が効果だとするなら、それはもつてのほかです。それはどつちも自由販売の場合において、農協が安く買いたたく、あるいは農民のものを高くころがして強引にとつてつたというなら別といたしまして、これは一般の指定業者もそうでありますが、農協は国家の代行機関としてやつているのである。長官が効果というなら、まだ効果はありますよ。自由商人が百姓に対して、肥料その他の物々交換でぎゆつと押えるという効果もできたし、百姓が商人の前に奴隷化する方向へ大きく効果があつたのですから、そういう効果をやたらに並べたら、これは効果はたくさんありますよ。効果というのは見方から言うものであつて、われわれが言うのは国家的な見地からの効果である。特殊な業者の立場らら見て効果がありましたというなら、それは確かに効果があつたのですが、そういうことは効果の中に入らない。そこで私の言うのは、今の食糧事情というものの段階における米の重要性、国家が莫大な国費を使つてまで、しかも農民がいやがるものを特定の価格で強引に国家統制をしなければならぬという米の事情にかんがみて、その立場から一体効果があつたかどうかということをお聞きしておるのであつて、今おつしやるようなことを効果にあげることは、私は少し門違いだと思う。  それからもう一つこれに関連した大きな問題が出ている。と申しますのは、供出後の自由販売だというかけ声でこういう制度を置きましたけれども、供出後の自由販売ということは、ただ農家の米が政府へ行くルートを若干広げたというだけであつて、何ら自由販売でもなんでもないのでありますが、それが今の国民全体の思想には自由購入にまで及んでいるわけです。米というものは自由なんだということ——これは自由党が名前の通りに自由自由と言つてまことに言葉の通りがいいから、よけいそういう意味にわれわれを誤解させるのかもしれませんが、配給の面においても消費の面においても、少しも自由なところがないのであります。にもかかわらず、自由供出の米があるのだから自由購入の米もあるのだろうという見解から、現に東京都内等におきましても、登録された配給所が、一方には配給米、一方に不足分はやみの方を売つてくださいというので、並立あきないをしなければ配給所の登録を取消されるという心配から、ほとんど公然とやみ米を扱つておるというように、私どもは市内の実情を見ているのでありますが、一体食糧庁はこの配給所のやみ米の販売に対して調査したことがありますか。一体それに対してどういう見解をとつておりますか。
  42. 前谷重夫

    ○前谷説明員 お答え申し上げます。ただいま金子さんのお話のように、農家が政府に売却する場合のルートを緩和したということが、ひいて消費者の自由購入なりあるいは消費の増大というふうな事情をもたらしたことがあるということは、われわれも感じておるわけでございます。ただいまのお話のように、政府の正規の米を配給いたしておる店が、別に非配給のものを取扱つておる、こういう事実もあろうかと存ぜられます。実はわれわれといたしましても、そういう点につきまして、ある程度調査をいたそうかと考えたわけでございますが、その当時におきましては、政府が配給店の調査をすることによつて、逆にやみ価格がいるというふうな意見もありまするし、また当時の事情といたしまして、この点は慎重に対処しなければならないということで、その点を控えておつたのでございます。お話のように、配給業者のやみ米の販売ということは、全体の配給ル—トを乱すことでもありまするし、われわれといたしましても、端境期が過ぎまして、通常の流れに返りましたあかつきにおきましては、これにつきまして十分の調査をいたしたい、またこれの発生する原因といたしましての登録の問題等につきましても、今御指摘のように、登録を得るための一つの競争というふうなことも考えられまするので、そういう点についても、もう少しさかのぼつて検討いたしたい。つまり登録制度があつて毎年これを変更するということによりまして、そこに、一面消費者に対するサービスの向上ということもあろうかと思いまするが、同時に、今の御指摘のような非配給によつて競争するというふうな逆の弊害もありまするので、従来もやつておりましたように、毎年登録がえをするというような制度がはたしていいのかどうかというふうな点につきましても、十分検討いたしたい、かように考えております。
  43. 金子與重郎

    ○金子委員 政府も配給所が正式なルートの配給米とやみ米とを並立販売しなければならないような実情にかつてつた、また現在もあるということは、お認めのようであります。それをきつく調査し、あるいは取締ることが、かえつて食糧事情をきゆうくつにするという心配もあつて、これに対して相当手控えをしたというお話でございますが、その結果は、とりもなおさず今の食糧というものは正式なルートのものだけではどうにもならぬから、やみを半公認する。その線をしぼることはかえつて弊害が来るというようなことさえ考えなければならないような事情になつておることを、結論としてこれは認めたことになるのであります。今後統制を即時に撤廃するなら別として、おそらくことしの食糧事情といたしまして、そういうことに参らぬとするならば、この際この点については、ほんとうに真劍に施策を考えていただきたいと思います。  それから次に、昨日報告を聞いたのでありまするからして、こまかい数字のことは申し上げませんが、今年度の気候、ことに今日二百十日を過ぎて成熟期に入つて、この連日の雨で行きますと、稲の収穫もほとんど予想がつかなくなつたような事情でありますので、この際政府はよほど真剣な態度をとりませんと、新聞紙上にあるような、基本米価二百円上げたくらいのことで、はたして各県の知事が割当て会議で引受けて行くかどうか。ことにことしの制度考え方で、依然として超過供出に対する報償金、あれはだまかしの一つの策でありますが、あれを続けて行こうとする。そうするならば、一番りこうな策は、強引に供出割当を受けないということなので、その供出割当て数字をいかにして減すか、そうして超過供出分に持つて行くかということが農家個々の立場においても、村の立場においても、県の立場においても一番利益だ。そうすると、あなた方の方で立てた供出割当ては、知事会議から郡、町村、部落と、できるだけ数字を受けないということが一番の利益だというような政策でありますので、従つて本年度の割当て供出は非常に至難であると思いますが、あなたは至難であると思いますか、それともそうはないと、ある程度まで楽観的に考えておりますか、どつちに考えておりますか。
  44. 前谷重夫

    ○前谷説明員 金子さんのお話のように、昨年度におきます生産事情及びその供出の事情というものと比較いたしまして、本年度の作柄が悪いということ、これはもう現在までの統計調査部の御報告にもあつた通りでございますので、われわれとして並々ならぬ、非常に困難だということは十分承知しておるわけであります。しかしながら、一方におきまして、われわれといたしましても、一月のうちの全量ということにはなつておりませんけれども、一定量というものは消費者に配給することによりまして、消費者に安心感を与え、また同時に、それが他の食糧の価格安定の一つの基盤になつておるというふうに考えておるわけでございまして、この点はわれわれとしてもぜひ確保いたしたい。従いまして、ある部分におきましては、外米の輸入ということももちろん考えなければならないわけでございますが、一定量はぜひ内地米で確保いたしたい。これで御指摘のように非常に困難な点があろうと存じておりますし、またわれわれもその点は痛感いたしておるわけであります。それにつきましては、ぜひ皆さん方の御協力も得まして、何とか現在の配給量を維持したいと念願いたしております。
  45. 金子與重郎

    ○金子委員 そこで結論に入りますが、米の自由販売をやるのだということを、政党として国民に公約した建前上、政府といたしましてそれをいかにして守るかという努力、そのためにこのような煮え切らない制度、ないしはこの前に行われたところの匿名供出というようなことで、何かそういうようなにおいをさせておかないと申訳ないというような考え方を起すことは、公約を守るという良心的な立場からは一応納得がつくのでありますが、しかしながら日本の食糧事情は、消費の面から行きましても、生産の面から行きましても、小麦を除くほかの輸入食糧の面からいつても、少しもその本質的な状態がよりよい方向へ行つておらない。にもかかわらず、これが何か緩和できるじやないかというふうな考え方を持つことが、私は非常な聞違いだと思う。なぜならば、自由経済だ自由経済だと言つているが、政府も現にこの委員会において、前国会においても自由経済を謳歌していながら、一方には肥料の公定価格で頭を押えよう、ないしは内需の量をきめよう、輸入飼料に対しては国家管理にしよう、ないしは農産物の価格を安定するために、自由にまかすべき経済に国家が手を出して、価格を保持しようとすることは、単なるイデオロギーの問題ではなくして、実際に置かれている日本の経済なり、農村経済の実際に即した政策をとるということなのであつて、これら三つばかりの法律は、自由経済とみな逆行している。逆行しておることも、私どもはそれが日本の経済の現状にマッチすることであれば、正しいことだと思つております。しかるに米だけが、何ら根本事情がかわらないにもかかわらず、自由だ自由だという方向へ、一歩でも二歩でも、それをにおわせようとするところから、さいぜん申し上げましたように、国民全体の食糧に対する気持の上に非常な弛緩した結果が出ておる。私は、これは非常に大きな罪悪だと思うのであります。実質的によくなる可能性が将来に見えるなら別でありますけれども、今の段階として、ことし来年には決してそういうふうないい環境は出て来ないと思う。そこでこういうふうな制度は、おそらく党のある種の人たちはそういう主張をしておるか知らぬけれども、実際に私どもと同じ立場に立つておる、私どものような農村の実際の上に立つておる者と、同時に政府といたしましても、食糧庁のように実際にこの仕事に携わつておる方々から見れば、この制度というものに対して非常なる疑問を持つのが良心的だと思います。ただそういうような仕事に接しないで、観念的に、わが党の公約だというような浮いた考え方である人たちには、一つのとらわれがあるかもしれませんけれども、実際の農村の実情を考え、また実際食糧庁といたしましても、現業関係人たちは、こういうふうなことは矛盾だという良心は必ずあると私は思うのであります。そこでこの際この制度は、八月で一応この指定は切れておるわけでありますから、この次の指定をしないという方針をとれば、これも制度を廃止したということを——党の面子もありましようが、かりに面子をとうとぶがゆえに、廃止したということを言わなくても、次の指定をしないということにすれば、この問題は、私は解消すると思うのです。この点につきまして、食糧庁長官はどういうふうに今お考えでありますか。
  46. 前谷重夫

    ○前谷説明員 この問題につきましては、非常にいろいろの御指摘があつたわけでございますが、御承知のように現在におきましては、いろいろの制度がおおむね間接的な統制と申しますか、規制の形になつております。米のみが直接的な規制の形をとつております。これはそれぞれのものの置かれておりまする事情によつて、おのずから異なることは当然だろうと思います。しかし一方におきまして、全体の態勢がそうでない場合におきまして、これを運行して参ります場合において非常に苦心がいる。つまり一本の筋でもつてはなかなか行けないという点もあるわけでございまして、われわれとしましては、その点について実はいろいろ悩んでおるわけでございます。お話のように本年の八月をもつて特集制度は切れたのであります。これを明年度にどうやるかということは、実はわれわれももう少し研究する時間の余裕を与えていただきたい。ただお話のような欠陥のあるということは、われわれも虚心坦懐に認めなければならないのじやなかろうか。これが現実の制度のもとにおきまして是正されるものかどうか、制度自体として根本的に考えなければ、その是正が不可能かどうかというような問題もあろうかと思います。もうしばらくわれわれとしても研究いたしたい、かように考えておりますので、御了承を願いたいと思います。
  47. 金子與重郎

    ○金子委員 これは質問でなく、最後に御注意申し上げておきますが、農産物のうちの米のみが強権をもつて統制されておるということは、非常に不合理だという見解がありますけれども、全国の百姓は、私の知る範囲において、米を統制されておることがいやだと言う人はおそらくありません。統制されているのはいやではないが、あの価格強制されておるのがいやだ。引合うかどうか——どうせ食つてしまうのじやない、売るのですから、このくらい安心な売り方はないのです。ぜにのとりはぐれもない。できれば必ず持つてつてくれる。あの販売方法は農民の最も理想とする販売方法であります。こんないい方法はない。だから食糧庁長官が、全国の農民がいやがつておるという感じは間違いであります。売る方法としては、あれはきわめて簡潔でいい方法であります。ただ気に入らないのは、この値が気に入らないということだけです。この点をよく御注意をして、今後の政策をとつていただきたい。  そこで私は委員長にお願いがあるのでありますが、この問題は、ただいまお話のように、農林省といたしましても、率直に言えばこれは困つたことだということはわかるのでありますけれども、政府の役人であるがゆえに、そこまでははつきり言えないということで、私どもはそのお手助けをするために、本委員会において政府に対して、この制度に対しては、一応本年度の食糧事情の特殊性にかんがみて、延期なりあるいは廃止なりすべきだ、こういう趣旨の申合せをして、政府にこのわれわれの意図を実施させてもらいたいと考えるのでありますが、その点を本委員会にお諮り願いたいのであります。
  48. 中澤茂一

    ○中澤委員 食糧長官にお願いしておきますが、七千五百円で買い上げた米が、九千六百円だという三割のマージンがどうしても農民に納得できない。そこでこの次の委員会までに、要するに倉庫費用は幾ら、輸送料は幾ら、これに対する事務費は幾ら、こういうふうに明細に、具体的に、二千百円という中間経費はどう使われているか、これに対して削減する余地があるかないかということを検討してもらいたい。だから資料をこの次の委員会に出していただきたい。
  49. 前谷重夫

    ○前谷説明員 資料につきましてはお出し申し上げますが、大体七千五百円のほかに、御承知のように昨年度におきましては、完遂奨励金でありますとか、早場米奨励金あるいは超過供出の奨励金として、現実に農家に支払われたものがあるわけでございます。これが石当りに入りますために、それでそういう差ができている。大体におきまして政府の経費と卸小売のマージン、これは合せて大体一割四分程度になつております。
  50. 川俣清音

    川俣委員 この点を今ここで御答弁願いたいと思うのですが、去年は大体石当り総額においてどのくらいで買われたか、しかも食管特別経費の中で出されたのが幾ら、一般経費から幾らというようなことが、今わかればここで御答弁願いたいと思います。
  51. 前谷重夫

    ○前谷説明員 ただいま石当りとしては、正確な数字を持つておりませんが、全体として平均いたしますと、御承知のように、昨年度の全国平均といたしまして農家に支払われたものは、八千五百円であります。これは府県別に違いがございます。それからその石当りは、早場奨励金でございますとか、あるいは超過供出の奨励金とか、それぞれ別個になつておりますが、全体的に申し上げますと、昨年度は予算におきまして早場奨励金といたしまして八十一億の予算が計上されましたが、実施の面におきましては百十四億の支払いになつております。それからまたもう一つは、超過供出の支払いの場合におきましては、予算におきましては大体超過供出の石数を二百七十五万石と予定いたしておりましたところが、現実におきましては、これが五百万石になつたのであります。従いましてその間に相当の差があるわけでございます。これが昨年度におきましては、予算と実施上との差百五億というものを食糧会計の赤字として背負つているのであります。
  52. 川俣清音

    川俣委員 私のお尋ねしたのは、食管会計の中で操作された石当りがどのくらいで、一般会計から出された石当りがどのくらいか、この区別をつけてもらいたい、こういうことを言つたのであります。各府県別のものは別に聞きますから、総額でけつこうです。
  53. 前谷重夫

    ○前谷説明員 御承知のように一般会計といたしましては、完遂奨励金の二十三億が一般会計から繰入れいたしております。これは御承知のように消費者価格に転嫁いたしませんで、一般会計からの繰入れでございます。そのほかに一般会計からの繰入れといたしましては、本年度の予算におきましては、輸入補給金が三百億円繰入れとなつておるわけであります。あとは早場奨励金の八十一億でありますとか、あるいはまた超過供出の二百七十五万石分というものは実績は違つておりますけれども、一応消費者価格のコスト計算として織り込んでおるわけであります。大体昨年度におきましては、約八千二百円程度が、実際上政府が農家に支払うべきコスト計算になつておりましたものが、ただいま申し上げましたように早場米の数量の違い、超過供出数量の違いによりまして、実際の支払い額が全国平均におきまして八千五百円になつておる。約三百円の違いが出ておる。つまり平均いたしますと八千五百円を払つておりますから、そういうことになつておると思います。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昨日統計調査部の発表によりますと、八月十五日現在の作況の中間的な御報告によりますと、大体あの災害一つの予想からして、四百三十万石ぐらいの減収であろう。さらに最近の低温障害等によりまして減収が予想されておるが、そうなりますと当然需給計画の中に影響をもたらすということは、輸入計画根本的にかわつて来るど思うのですが、そういう点に対して、これに即応できるような具体的な計画がどういうふうになるかという点の資料を出していただきたい。  もう一つは、最近人造米の問題が非常に大きく喧伝されております。これは長官も非常に関心を持つて研究されておると思うが、結局四百二十五万石の減産を、ただ外米だけに依存するということは、これは非常に危険もあると思う。そういう場合に、今取上げておる人造米等の問題を、もう少し食糧庁で研究を進めて行く場合にはどういうことになるかということ、さらにこれには大きな問題があつて、たとえば特許権等の問題で、国がそれを接収するとかしないとかいう問題、もしこれをやるとすれば、大量生産をやる場合にコスト計算の問題、それを一般市場に出す場合、配給に加味して出すような場合においては、輸入がふえた場合の補給金の増額と国内人造米によるととろの内部調整に使う費用等、こういうものを比較して考えた場合には、どういうことになるかというような問題、これにからんで、いわゆる企業者がたくみに一もうけしようというふしもないとは言えないと思いますが、こういうものは食糧生産の上から、多分に公共性、公益性の上に立つてこれらの計画は進めらるべきものであると思うが、今申した全体の総合的な問題がよくわかるような資料を出していただきたい。また今お話ができる点があれは伺いたい。
  55. 前谷重夫

    ○前谷説明員 資料についてはお出しいたしますが、大体の概略の事情を御説明申し上げたいと思います。需給計画につきましては、先般統計調査部の方におきまして、作況の報告があつたわけでございます。しかしこれは作況の報告でありまして、現実に県別においてどういう作況になるかということがわかりませんが、現在そういう作況のもとにおきまして、どういうふうな需給計画を立てるべきかということを検討いたしておるわけであります。これが成案を得ますればお手元に差上げたいと存じておりますが、大体の考え方といたしましては、やはり国内の集荷を重点に置きまして、多少外米の増加もございます。と同時に、またさらに問題を送るような形になろうかと思いますが、二十九年度におきまする早食いというような問題等も考えてみまして、外米に多く依存するということは、同時に外米の価格を上げますし、また国家経済から見ましても、できろだけその点は避けたい。外米の輸入を最小限度に持つて行きたいということで検討いたしておりますので、成案を得ましたならば御説明をいたしたいと存ずるわけであります。  人造米の問題につきましては、お話のようにわれわれといたしましても、これが一つの日本の国内の食糧資源を、日本人の食習慣に合せた形において利用するということの、一つのおもしろい考え方ではないかというふうに考えているわけであります。ただお話のように、この問題につきましてコストの問題が一つと、それから品質の問題が一つあるわけであります。たとえば澱粉をこれに利用いたします場合に、現在のかんしよ澱粉の形におきましては、澱粉製造の立地条件及び製造設備の関係で、どうしても砂の混入ということが避け得られないわけであります。この砂の混入いたしました澱粉をもつて人造米の原料に使用するということになりますと、どうしても品質が悪化いたしまして、消費者にアツピールしないという点が多々あるのでありまして、現在少量に使つております場合におきましては、ばれいしよ澱粉を使つておりますが、日本の大きな資源といたしましてのかんしよ澱粉を利用いたします場合においては、どうしてもこの砂の問題を解決しなければならないわけであります。従いましてわれわれといたしましては、現在人造米につきましては、まず第一に農林規格法によつてひとつ規格を設けたい。そしてそれを検査することによつて、規格に合わないものの販売を停止するわけではございませんけれども、規格に合つたものはそれを公示いたしまして、これが品質の保証をする、それによつて消費者の選択にまかせたいということが第一点として考えているわけであります。  第二点は、お話のように特許権の問題があるわけであります。特許権の問題は、現在までの状態で見ますと、ある種の小麦でありますとか、砕米でありますとか、澱粉を混合して粒型にいたしますまでが特許権になりまして、食糧研究所におきまして、それをさらに完成いたしますにはそれにコーテイングする。つまりのり化してたいた場合においても全然中身が出ないで、べとべとにならない。また比重その他の関係におきましても米と同様にいたしまして、それによつて、たく場合においても一箇所に固まらないとかいうような、米と同じ性質を持たすように、混合して粒型にするということに、さらに加工をいたしまして、熱処理を加えることによつて、コーテイングすることによつて米と同じような性質を生み出そうという研究ができたわけであります。ただこの点につきましては特許の出願中でありまして、特許は御承知のように期間がかかるものでありますから、すぐには参らないかと思います。そういたしますと、どうしても特許の問題を解決いたしまして、そしてこれが最も品質のよいものについて大量生産ができるように持つて行かなければならない。そのために、今具体的には特許権者といろいろ話し合つております。考え方といたしましては、政府が補助をいたしますか、直接やりますか問題がありますが、特許権を解消いたしまして自由に使えるようにしたい。同時に機械の形も現在の状態におきましては、大量生産する場合には機数を多くしなければならないということになりまして、現実の意味での大量生産という段階にはないわけであります。それもやはり特許権の解消によりまして、単位当りの機械の大きさを大きくして、もつと流れ作業式に大規模にでき得るようにすることによつてコストも安くなろうか、かように考えて、その特許権の問題をぜひとも処理いたしたいというふうに考えております。  その次はただいま申しましたように、かんしよ澱粉を利用するために砂を取除く装置をやる、これにつきましては、現在の個々の澱粉工場におきましてそういう装置をするか、あるいは新しく設ける合成米工場において、特別の施設によつてその砂を取除く装置をするか、こういう点についても検討いたしているわけであります。ただ現在といたしましては、政府は、まだ合成米につきましては品質が向上の途中にあるわけでございまして、政府が買上げることによりまして、消費者とメーカーとの間に連繋が保てることによつて品質の関係がストツプするわそれが多分にあるわけでございます。品質が向上いたしまして大体りつぱなものになるまでの間は、むしろ政府が介入すると申しますか、買上げるということが、品質向上の面から考えまして不適当ではなかろうかというふうに考えております。
  56. 井出一太郎

    井出委員長 先ほど金子委員より委員長に対しての御要望がございました。これと関連して足鹿委員よりも発言を求められております。足鹿覺君。
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 皆さんの御了解をいただきまして委員長提案を申し上げ、御善処をお願いしたい点が二つございますので、申し上げたいと存じます。  まず第一の問題は、本年の食糧供出問題をめぐつて、価格の問題を中心にいろいろ重大な問題が横たわつておりますので、適当な機会に本問題について、肥料問題等ともあわせて、さらに十分なる検討の日時を御設定いただきまして、慎重に検討をするよう御善処いただきたいということでございます。これは皆様方にも御了解を得ておる点で、大体御異存がないようでございます。  次は、ただいま金子委員から提起されました、本年の食糧の供出の困難性、あるいは昨年度におけるいろいろな供出実績の検討から、一つの問題となりました特別集荷制度の問題でありますが、これについて委員会委員各位の皆さん方の御意向は、大体一致しておると思われますので、この際このわれわれの意向を代表して、委員長より政府に対して申出等適当なる御善処をお願い申し上げたい。その大体の要領をここでまとめてみますと、食糧の特別集荷制度廃止に関する件米穀の特別集荷制度はその実施状況を見るに、本制度による集荷量はきわめて少く、食糧事情の改善に役立たないのみならず、事務の煩雑化、経費の増高、やみ売買の温床となる等重大欠陥を示しておる事実にかんがみ、二十八年産米以降これを廃止すべきものと認める。こういうふうに大体要約いたしましたので、この意向を代表されましてひとつ皆様にもお諮りを願い、政府に委員長として申出等適切なる善処をお願い申し上げたいのであります。  ほかに私はまだたくさんこの食糧問題等については質疑もいたしたいし、意見も持つておりますが、本日は時間がないようでありますから、第一の問題に委員長が御考慮いただきました際に譲りたいと思います。
  58. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま金子、足鹿委員よりの御提案がございました。お聞き及びの通りであります。本委員会といたしましては、肥料問題の継続審査その他、休会中においても、およそ五つの項目にわたりまして審査を継続するということは、さきに第十六国会閉会の際に皆様方の御了承を得まして進んで参つたわけでございます。今回の二日間にわたる委員会もさような趣旨によつて開いたわけであります。ただいま御指摘のように、いよいよ出来秋を前にいたしまして、本年の頻発せる災害、あるいは昨今の低温等によりまして、食糧事情は著しく窮迫しておるように思うわけでございます。政府におきましても、目下集荷問題あるいは米価決定の問題等につきましてきわめて多端をきわめておるように存ぜられるわけであります。従いましてただいまの御要望の線に基いて、肥料の継続審査はもとより、食糧問題一般につきまして、さらに慎重に審査をいたす意味において、農林委員会の開催を、ただいまの心づもりでは十月早々というぐらいに委員長としては考えておりますが、これは後ほど理事各位とも御相談をいたしまして、その日時等については公報によつての御通達はもちろんのこと、速達その他の方法において皆様方に御伝達を申し上げたいと思います。  それから先ほど来金子委員と前谷食糧庁長官との間に応酬のございました論議については、皆様方すでに御承知の通りであります。ただいま足鹿委員からのお申出もございまして、本年のこの食糧事情のもとにおきまして、われわれ農林委員会といたしましても、いかに対処して参るかという点については、御同様きわめて切実な問題として、憂慮すべきこの食糧事情下に、国家の食糧政策に誤りなきことを期しておるわけであります。先ほど来問題になつておりまする食糧の特別集荷制度につきましては、従来の経験にかんがみまして、きわめてこれに対しては批判的である。再検討を当然要する問題である。こういう点につきましては、先ほどの長官の御答弁中にもそれを認められたように伺いました。また委員会の空気は、ごらんの通りこの制度に対しまして、むしろ廃止するにしかず、こういう空気でございまして、それを集約して、ただいま足鹿委員が述べられたような次第でございます。従いまして皆様にこの際お諮りをいたしますが、ただいま足鹿委員が述べられました、食糧の特別集荷制度廃止に関する件、これを委員長において取上げまして、その趣旨を、ただいまここに御列席の食糧庁長官はすでに状況をすつかりごらんであつて、十分御認識のことと存じますが、委員長からこの件を申入れをいたしたい。これについてお諮りをいたしますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めて、さようとりはからいます。長官にはこれをもつて申入れをいたしたいということにいたし、なお農林大臣には、私から口頭をもつてお伝えをいたす、かようにとりはからいたいと存じます。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私はこの機会にごく緊急を要する問題でありますから、幸い食糧庁長官も御出席であるので、一点お尋ねしたいと思います。それは澱粉の今年度の買上げの時期をいつ発表される御方針であるか。今年度はこれは農作物価格安定法に基いた政府の買上げが行われるのでありますが、従来の例を見ると、昨年度においてもそれから二十六年度の買上げの場合においても、非常に時期的に逸している点が多いわけです。これは当然直接ばれいしよあるいはかんしよを買い上げるのではなくして、製品化された澱粉を買上げるのであつて生産者の側から見ると間接的な買上げということになると思う。その場合においては、当然この原料であるところのかんしよ、ばれいしよの価格に対する影響というものは、この買上げの時期あるいは価格の発表等によつて非常に影響が多いと思う。それで適切な時期にこの価格を発表して、すでに澱粉の製造工程に入る以前にこの価格を周知さすということが非常に妥当ではないかと思うのですが、そういう点に対する今年度の買上げの価格をいつごろ発表するか。できれば価格決定方針等に対しても従来のように漠然とした、市価に対してあまり影響を与えないというような、根拠のない非科学的な価格の算定をされる御意思であるかどうか。そういう点についても明確に、買上げ発表の時期並びに価格決定の算出の基礎を、どこにおおむね求めるかという二点について、御表明を願いたい。
  61. 前谷重夫

    ○前谷説明員 前国会におきまして、当委員会のどなたかから提案されまして、農産物価格安定法が成立いたしたわけでありまして、すでに菜種につきまして価格を発表いたしたわけでございます。その際におきまして、澱粉等につきましても、大体出まわり期以前といたしまして、十月末までには原料価格を発表いたしたい。と申しますのは、価格の考え方といたしまして、一応前にも御説明申し上げましたが、パリテイ価格、需給条件等を考える。で、十月の上旬ごろには大体第一回のかんしよにつきましての作柄の見通しがつくだろうと思いますから、それを基礎にいたしまして、十月末までにできるだけ早期に原料価格を発表いたしたい。それに基きましてさらに加工賃を考えまして澱粉の価格も考えたい。まず第一には、原料かんしよの価格を十月末までには、できるだけ早く、大体の収穫の見込みがつきましたときにやりたい、かように考えているわけであります。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう少し具体的にしておきたい点は、この見通しとして、一般に澱粉の買上け価格が昨年度よりも、その程度かあるいは下るだろうというような空気が非常に流れておりますが、こういう点に対しては、まさか下るようなことはないだろうと思いますが、その基本的な線をどこに置くかということだけでも、はつきりしてもらいたいと思います。  もう一つは、買上げの時期等に対しても、これは地域における実情をよく勘案して、たとえば北海道のばれいしよ澱粉は九月の上旬から製造に入るわけです。それが十月の上旬とか中旬に発表するということになると、一応製造が終期になるころにおいて初めて価格がきまるということであつては、生産農民に安心感を与えるという度合いが非常に薄くなると思う。だからもしかんしよ、澱粉等の買上げ時期の発表が早くいかぬ場合には、これをかんしよとばれいしよ、澱粉の買上げの価格発表の時期を区分してでも、適切にやつてもらいたいと思うのですが、価格等に対しては、はたして去年よりも流布されているように下げる気持であるか。少くとも去年を最低の限界として考えているのか。その点を明確にしてもらいたいと思うのであります。
  63. 前谷重夫

    ○前谷説明員 お話のばれいしよ、かんしよの時期の点につきましては、われわれの趣旨といたしましては、できる限り出まわり期前に価格をきめたい気持でおりますので、資料のそろい次第できるだけ早急にやりたい、かような考えでおりますから、御了承願いたいと思います。  なお価格の点につきましては、御承知のように昨年度はごく暫定的に行つたものでありまして、本年度におきましては、価格安定法の定めるところによりまして価格を決定いたすわけでありますから、いまだデータ等もそろいません関係上、どの程度の値ごろになるかということは、われわれにもまだ見当がつかないわけでありまして、その点は価格安定法の定める方法により誠実にやつて行きたい、かように考えておりますから、その点で御了承を願いたいと思います。
  64. 井出一太郎

    井出委員長 以上をもつて質疑は終局いたしました。     —————————————
  65. 井出一太郎

    井出委員長 なおこの機会にお諮りいたします。閉会期間中逐次小委員会も開かれる予定になつていると思いますが、この間委員の異動等によつて委員に欠員を生ずることも予想されます。しかしながらこの間一々委員会を開いてこの補欠選任を行うことは事実上困難であると思いますので、この点につきましては委員長において指名するということに御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さようとりはからうことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十八分散会