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1953-09-04 第16回国会 衆議院 農林委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月四日(金曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 佐竹 新市君    理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐藤善一郎君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松野 頼三君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    井谷 正吉君       芳賀  貢君    山本 幸一君       川俣 清音君    中澤 茂一君       久保田 豊君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農林経済局肥         料課長)    林田悠紀夫君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  安田善一郎君         農 林 技 官         (農業改良局植         物防疫課長)  堀  正侃君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 九月四日  委員佐々木盛雄君辞任につき、その補欠として  大橋武夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長の選任  臨時硫安需給安定法案内閣提出第一六七号)  派遣委員より報告聴取  昭和二十八年産米の作況及び食糧事情に関する  説明聴取     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  かねてお打合せいたしてありました通り、閉会中の審査事項として肥料に関する件並びに治山治水に関する件を議題といたし、本日御参集を願つたわけでありますが、委員各位の御精励に敬意を表します。また政府関係各位におかれましても御苦労さまに存じます。  本日の日程に入ります前に閉会中の委員派遣報告を聴取いたしたいと存じます。足立篤郎君。
  3. 足立篤郎

    足立委員 かねて委員会においてお示しをいただきまして近畿、東海班は、他の三班に先立ちまして、小枝委員と私、それに藤井専門員が同行いたし、和歌山奈良京都及び静岡の一府三県につき、七月十八日及び八月十五日両度にわたる水害被害状況並びに土地改良事業等に関し調査をいたして参りましたので、ここにその概略を御報告いたしたいと存じます。  まず最初に和歌山奈良京都の一府二県の水害被害に関する調査について私から御報告申し上げ、静岡県下の土地改良事業等につきましては、小枝委員から御報告申し上げることといたしたいと思います。  和歌山県下を襲いました水害は、去る七月十七日夜から翌十八日早朝にかけて、山間部中心県下一帯にわたり四百ミリ以上に上る豪雨によつてもたらされたものでありまして、わずか数時間後には濁流奔倒いたし、山くずれ、山津波を起し、堤防決壊し、住宅を倒壊流失し、耕地を洗い流したのみならず、一千名を越える犠牲者を出す等、その惨状まことに目をおおわしむるものがございました。特に本県は重畳たる山岳海岸近くまで延びておりまして、河川氾濫はなはだしく、特に有田川、目高川、及び貴志川の三河川の川筋におきまする災害がはなはだしいのであります。県庁の調査によりますと、被害総額八百八億円余に上り、このうち農林関係総額三百四十二億四千万円に達するのであります。また死者六百二名、行方不明四百六十四名の多数に上り、さらに負傷者は、重軽傷合せて一万九百三十九名という多数に達し、その他罹災家屋全壊流失、浸水を合せて五万数千戸に及ぶのであります。私どもの今般の視察におきましては、時間の制約がございまして、奈良下全域調査することができませんでしたが、災害の激甚でありました貴志川をさかのぼり奈良県に達する全流域にわたり親しく調査をいたしました。災害の跡は今なお至るところになまなましく、一箇所で数百メートルに及ぶ大決壊を起し、数十箇町の水田土砂に埋め尽されている災害個所も多数見受けられたのであります。  なお県側説明によりますと、特に有田川の氾濫は未曽有の激烈さで、上流花園村には山津波による大規模な山くずれにより川がせきとめられ、自然にダムがつくられ、その堤塘の高さは七十メートルに達すると言われ、しかもこのほかにもこれに類似のものが数箇所できていると言われております。  次に奈良県について申し上げますと、本県においては特に吉野郡、南葛城郡を中心とした山間部が甚大な被害をこうむつたのであります。その原因は、近年数回にわたる南海地震吉野地震等地盤がゆるみ、加えて本年の梅雨期前からの長期にわたる降雨により、山地土壌保水飽和状態なつていたところへ七月十七日より未曽有豪雨が降り続いたためであります。この豪雨は最もはげしかつたところでは、九時間で六百四十ミリという驚異的記録を示しておりまして、六十年間絶えてかかる例を見なかつたほどであります。調査期日関係被害激甚なる野迫川、十津川方面へ足を延ばすことができなかつたのは残念でありますが、宇智川下流被害状況を見て参つたのでありますが、土砂流入いたしました部分はすでに農民必死の努力により復旧し、埋没流失いたしました部分は県の指導をまつて来年の植付期までには復旧すべく努力を傾けております。奈良県下の耕地災害はすべてが山間地帯に限られておりますので、ブルトーザ等のごとき機械力を利用して復旧することは困難と存じます。  次に八月十五日の豪雨災害について御報告申し上げます。被害地は、京都府、三重県との境を接した添上郡柳生大柳生月瀬等五箇村が中心でございますが、これも時間の関係上、柳生村、大柳生村のみ調査して参りました。被害地はいずれも山間地帯でありまして、ほとんどすべてが山津波によるものでありまして、耕地は深いところでニメートル、平均一メートルも埋没し、泥砂の下には多数の岩石、立木が埋もれているため、復旧相当莫大な経費を要し、特別なる国の助成を必要と認めました。またこの地帯土質はいわゆるバラスと称する花崗岩の砂礫でありまして、崩壊しやすい性質のものであります。このため人家埋没もございまして、相当犠牲者が出ておりますのみならず、崩壊寸前というところも見受けられまして、住民は戦々きようようたるありさまで、雨天には公民館その他にただちに避難する手はずを今なおとつている状態でありました。  最後京都府について申し上げます。八月十四日夜半から翌朝にかけて南山城一帯豪雨が襲来いたし、山間部の総雨量は七百ミリを越し、時間雨量百ミリに達するというこれまた驚異的記録を示すものであります。十五日未明から木津川水系の各河川決壊氾濫山林崩壊山津波等各所に続発し、死者、行方不明三百五十名、家の全壊流失七百戸に及び、また総被害額は、府の調査によれば百四十五億円に上り、このうち農林畜水産関係が約六十八億円という巨額に達しております。私ども奈良県から京都府に達する国道沿い木津川水系に属する諸河川災害状況を視察いたしましたが、相楽郡高麗村のごときは、川幅十メートルにも達しないと思われる木津川一支流の鳴子川堤防決壊によりまして、数十戸の家を流失し、約百町歩耕地荒廃せしめましたる上、百名に上る犠牲者を出し、しかも今なお三十数死体は土砂の下に埋没せられて、行方不明となつているのでありまして、その惨状まことに目をおおわしむるものがございました。このほか玉川、南谷川、禅定寺川等の小河川がいずれもこれに類似惨状を惹起いたしておりました。これらの小河川はいずれもいわゆる天井川と俗称せられているごとく、川底が高くなり、中には人家よりも高いところを水が流れておるものがあり、国道の上を横切つて木津川に注いでおるという川もございました。加うるに堤防土質砂礫をたくさん含みまして、決壊しやすい状態にありまして、これが災害を一段と大きくしているものと考えられます。  京都府を初め、奈良和歌山県とも水害発生後ただちに災害救助法を発動して、府県民一致自力救助対策を講ずるとともに、米軍飛行機による食糧投下保安隊の出動による連絡路啓開食糧の輸送、海上保安庁警備隊の協力による応急救助及び復旧に全力を傾注する等、緊急の救援措置を講ずることにより、山間奥地にも食糧、衣料及び医薬品等を急送することができ、人心の安定を得て、今や復旧機運大いに醸成せられるに至つておるのでありまして、私ども各所で目のあたりその涙ぐましい努力を見て参りました。  次に今般の水害地調査の結果、今後の対策として考慮すべき諸点を申し上げたいと思います。  一、降雨量が異常というべきほど大きかつたこともちろんでありますが、本年は梅雨期前からすでに長期にわたる降雨がありまして、山地土壌保水飽和状態なつていたのであり、しかも南海地震等により地盤がすでにゆるんでいた等が災害を大きくする結果となつておつたのであります。そこへかかる未曽有豪雨が襲来いたしましたので、山間部における山くずれ、山津波を起し、その土砂が加わつて水勢を一段と強化いたし、かかる惨状引起す至つたのであります。従いまして地盤のゆるい所、いわゆるバラス等地質がやわらかい所では、優秀な造林地といえども山くずれ、山津波を起しているのであります。和歌山県にもこの例がございますが、樹齢五十年に達する植林地で山くずれを起した事実があるのであります。しかしながら植林と同時に山林砂防あるいは地下水排除施設等のあります所は、災害がほとんどないか、あつても僅少なのでありまして、今後の対策といたしましては、造林強化とともに砂防施設地下水排除施設等を同時にあわせ行う必要があると存じます。  二、山地気象、特に雨量観測網拡充し、山地雨量観測を行うとともに、有線通信もさることながら、非常の際を考慮して無電設備も配置して、災害予測機構整備をはかるべきであります。  三、山林荒廃災害を大ならしむる大きな原因なつておりますので、これら荒廃山地造林を促進するとともに、保安林整備拡充並びに森林伐採に対する合理的計画性を持たせる必要があろうと存じます。  四、大正池の堤塘決壊に見るごとき事例がありますので、老朽ため池に対する補強事業施行が必要であります。またあわせて現在実施されております防災ため池施設事業計画的推進をはるかべきものと信じます。  五、災害復旧事業について過年度分災害が累積され、工事途中でまた災害をこうむる等の実情にかんがみ、これら過年度分災害復旧工事については、農業生産力向上災害防止の観点から十分に再検討を加え、繰上げ工事実施すべき分については、重点的にこれを行う必要があろうと存じます。  最後に、現地側から寄せられました要望事項について申し上げたいと存じます。今般国会において水害対策特別委員会を設置いたし、災害復旧に必要な立法措置を迅速に講じました点につきましては、災害地はいずれも深く感謝いたしておりましたが、これら諸法律実施につきましては、必要な予算の裏づけを十分に講じますとともに、対象となるべき地域指定については、罹災農民負担を軽減するよう万全の考慮を払つてほしいということを各地とむ異口同音に申しておりました。また京都府並びに奈良県は、八月十五日水害についても、九州における大水害及び七月における和歌山奈良両県の水害と同様に、災害復旧に関する諸法律適用を受けることができるよう改正を行つてほしいとの強い要望がございました。  今般成立を見た昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害地域内のたい積土砂排除に関する特別措置法第二条の適用については、水利施設農業用施設及び林業用施設農地及び農用公共施設について一箇所または反当の排除費三万円以上を要するものはこれを対象とするようにせられたい。また同じく今般改正行つた農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律については、農業協同組合連合会の所有する事務所、倉庫その他の施設等補助対象に加えられたいということ。同じく昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する特別措置法第二条の経営資金の中に、家畜飼料を初め、さらに裏作物流失による生活資金的な経費しいたけ原木木炭原木樹苗を加えること。また施設復旧資金には、農舎、作業場、しいたけ舎、サイロ、副業施設、大農具、畜舎、農村工業施設炭がま、苗圃、しいたけ乾燥施設わさび田、貯木場、木炭倉庫網小屋舟小屋等を加えること。さらにまた同条第四項第一号の政令で定める復旧資金については、補助、非補助にかかわらず農地牧場には、これに付属するものとして水路堤塘、溜池、頭首工、農道、橋梁、揚水機門樋等公共施設を含むものとすること。また昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡に関する特例法に関しまして、和歌山県のごとき全県水害をこうむつておりますので、全県を指定地域とするとともに、価格についてもさらに値下げをしてほしいということでありました。また昭和二十八年度産米の供出については、水稲被害の甚大なのにかんがみ、実情に適した適正なる割当をしてもらいたいということ等の陳情があつたのでございます。  また林道関係災害復旧箇所決定は、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律第二条第七項により実施せられている次第であるが、これを箇所決定は一路線一工区として施行できるよう法律改正をお願いしたいとの陳情もございました。  また造林関係については、全面的造林拡充、ことに重要河川上流地高額助成をして強制的に造林を行うこと。山地気象観測網整備強化をはかること。また今次の災害状況を見まするに、主として河川上流地域山林崩壊によるものであつて、これはかねてからの治山治水対策下流地方治水を先にし、奥地治山を軽く取扱つていた結果ではないか。今後の治山治水上流地域森林地質気象等状況を十分調査した完全なる対策を必要とし、またこれが実行にあたつては、農山村民経済向上をはかりつつ遂行するよう格段の措置をされたい等の陳情も受けました。  以上をもちましてごく概略でございますが、私の報告を終りますが、なお資料等専門員室に用意してございますので、詳細の点はそれについてごらんを願いたいと存じます。  以上をもちまして報告を終ります。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 次に小枝一雄君。
  5. 小枝一雄

    小枝委員 ただいま足立委員から水害地被害状況について御報告を申し上げましたので、私は土地改良干拓並びに治山事業について御報告申し上げます。  東海地区に入りました私どもは、静岡浜名北部畑地灌漑事業浜名湖干拓事業並びに由比町における東京営林局直轄治山事業を視察いたしたのであります。浜名北部畑地灌漑事業は、天龍川右岸に展開する浜名平野西北部に位する浜名郡北浜村、中瀬村、赤佐村及び引佐郡鹿玉村の一部にまたがり、受益面積千百余町歩対象とするものであります。地域はほぼ平坦な地形でありますが、天龍川の変遷によつて生じました小起伏も相当にあり、大部分畑地で、不規則な帯状に連なるくぼ地その他に水田が散在しておりますが、その面積は僅少であります。標高は最高七十三メートル、最低十四メートル内外で、一般西南方向上流部で二百七十分の一、下流部で五百分の一程度の勾配で傾斜しており、宅地及び平地林が畑の間に点在しております。地質は大部分が第三期層上に生成された天龍川沖積層で、淡暗色ないし淡褐色の砂質壌土からなり、部分的には砂利まじり砂土のところもありますが、西北部は第三期に属する黒色を帯びた植質壌土の所もあります。表土一般に深く三十センチないし五十センチで、心土はほとんど砂礫からなつております。地下水一般に高く、畑地においては深さ三十メートルないし六十メートルで、一般北部より南部にかけて高くなつております。気象状況北西部山岳を控え、南に太平洋を望み、海洋性温暖多雨気象状況を呈しておりますが、雨量の分布が不均等でありまして、ことに作物生育期間に当る七、八月に雨量が少く、畑作物生育に悪影響を与えております。また以上のごとく大部分が畑であり、心土砂礫でありますため、旱天が続きますと地下水が低下して毛管上昇を阻害し、夏作、冬作ともはなはだしい早害をこうむるのであります。これに加えて冬期旱魃に際しましては、当地方特有の強風により表土を吹き飛ばし、畑作にしばしば甚大な被害をもたらしているのであります。  以上のごとき自然条件でありますので、灌漑施設を完備いたしますれば、農業生産力の高揚を見ること明らかなのでありまして、昨昭和二十七年度から静岡県営事業として着手せられ、五箇年をもつて工事を完了する予定をもつて目下施行中でございます。その用水源天龍川に求めているのでありますが、昭和十二年着工、明二十九年に完了予定県営浜名用排水幹線改良事業導水線用水路を利用して引水することとし、工事費の軽減をはかることも同時に考慮しております。  次に、本事業完成あかつきにおきまする経済効果につきましては、大体次のように推定されております。(一)、地域内畑地千百十五町歩から年々米一万一千二百石、麦一万三千三十石、かんしよ六十二万八千八百貫、桑一万八百貫の増収を期待することができる。(二)、区画整理事業施行により、畜力機械力利用価値が増大し、耕作運搬が利便となりまして、反当一・五人程度労力節減をはかることができる。(三)、この節減された余剰労力をもつて農家副業として家畜、家禽の飼育に利用し、畜力有機質肥料利用増進をはかり、あるいは婦女子による家庭副業を取入れることができる。(四)、地方増進を見るのみならず、各種作物栽培可能となり、特に陸稲の栽培により自給自足が可能となり、農家経済に好影響をもたらす等、農業経営集約的高度化に資するところ多大なるものがございます。私どもが本事業を視察いたしました際、地元農民はいずれも本事業の一日も早く完成されることを熱望いたしており、その促進方を強く要望されたのであります。また本事業遂行に要する地元負担金は反当毎年二千円、合計一万円余に上ると推定されておりますが、この負担金につきましては農林漁業金融公庫からの融通を希望しておりました。  御承知のごとく、十六国会におきまして畑地農業改良促進法成立を見、今後畑地灌漑事業はますます増加するものと考えられますので、農林漁業金融公庫のこれらに対する貸付資金のわくの拡充をはかりまして、農民の熱望にこたえるべきであると思います。なお本地域上流部に当る天龍川には佐久間ダム秋葉ダム建設計画があり、これらが竣工いたしましたあかつきには、灌漑用水も一段と計画的に利用することができますのみならず、浜松市におきまする工業用水とも調整利用することによりまして、農工一体とした合理的な水の利用計画をはかることができるのではないかと存じ、その将来に多大の期待と関心とを寄せました次第であります。  次に浜名湖干拓事業について申し上げます。現在浜名湖干拓計画面積は千六百五十町歩で、そのうちすでに工事完了いたしましたものは村櫛地区の百二十町歩、現在工事中のものは伊佐見地区八十町歩入出地区五十町歩計百三十町歩で、残余の庄内地区六百町歩気賀地区二百町歩三ケ日地区五百町歩知波田地区町歩鷲津新所地区八十町歩計千四百町歩は今後の実施にまつものであります。浜名湖は全面積約八千町歩余と称せられ、水深は深いところで三メートル程度、普通一メートルないしニメートル程度でありまして、目下実施ないし計画中のものは、いずれも一メートルないしニメートル以内のものであります。これに要する工事費は反当十五万程度であります。工事費の点からのみ見ますれば、干拓事業としては中位にあるものと考えられますが、干拓後の生産力が非常に高く、反当三石内外と推定されております。現に私どもが見ました伊佐見地区におきまして、干拓工事が十分には完了しておらない、単に排水しただけのところで無肥料栽培でも二俵ないし三俵近い収量を上げている状況であります。本事業完成後には、年間五万五千六百石という大量の増産を期することができるのでありまして、経済効率が非常に高いものであると考えられます。  昨日の新聞によりますと、農林省は浜名湖千四百町歩干拓事業保進のため約三十億円程度外資導入計画しているとのことでありますが、土質、気候その他の自然条件上すこぶる有利であります上に、浜松のごとき工業都市を控えておりますので、国内食糧自給度向上はもちろんのこと、農工一体的発展の上からも、本事業のすみやかなる完成はまことに時宜に適したものと評すべきであります。  次に由比治山事業について申し上げます。本施業地は東海道線由比駅の背部一帯を占め、延長千五百メートル、幅六百メートルに及ぶ地すべり地帯であります。ここは東海道筋における屈指の平坦地少い所で、海岸から山地までわずか三百メートルの間に国道第一号線、東海道線が走り、さらに戸数二千三百余戸、人口一万五千を収容しているという状況であります。また山地稜線付近を除き大体みかん、びわの果樹栽培地及び若干の農耕地に利用され、稜線はすぎ、ひのきの造林地採草地に充てられております。この山地延長千五百メートルの間に約二〇ないし三〇%の溪床勾配を有する中ノ沢、寺沢等の六渓流がありまして、これらの沢に向つて活発な地すべり運動を起しております。元来ここはいにしえから有名な地すべり地でありまして、すでに三十年前に顕著な地すべりがあり、また昭和十六年の降雨の際には寺尾部落に大きな地すべりを起し、人家を倒壊し、死者六名、負傷者十数名を出すという惨事を惹起しております。次いで昭和二十三年七月のアイオン台風のときも、中の沢に土石の流出があり、東海道線を七時間不通にしたことがございます。  地すべり原因につきましては、なお未解決の点が多く、確定的ではありませんが、小出、荻原両博士の基礎的な調査研究に基きまして対策を立てているのであります。すなわち  一、当初は直接危害を及ぼすべき中の沢の崩壊地の崩落、流出土砂を処理するため、その脚部相当大きな堰堤を設け、かつ渓流下刻浸蝕防止及び土砂堆積防止のため、水路の改修を行うこと。  二、次いで暗渠排水工による地下水排除及び土層摩擦力の増加をはかること。  三、崩壊地復旧をはかり、土砂生産地帯を押え、かつ雨水の急激なる流下を防止すること。であります。この方針に基き昭和二十三年度に着工し、現在引続き工事を施工中でございます。今日までの工事によりまして、すでに当面地すべりの危険は一応去りましたので、町民は安堵いたし、人心の安定に非常に貢献いたしております。私どもが視察いたしました際、地元町民からその点は親しく聞いたのであります。なお地元といたしましては、一日も早く全工事の完了することを待望いたしているのであります。  この地すべり防止対策は、このほか徳島県下及び長野県下にも実施せられておりますが、いずれも好成績を上げているとのことでありますので、御承知のごとく地すべり危険地が全国に散在しておりますので、今後それら危険地にはあまねくかかる地すべり防止対策を講ずるとともに、今般私どもが視察いたしました近畿水害地におきまするような山くずれ、山津波防止対策といたしましても、この地すべり防止対策の成果を広く取入れることといたしましたならば、治山治水対策上非常に有効な手段となるのではないかと存ずるのであります。  以上をもつて私の御報告を終ります。     —————————————
  6. 井出一太郎

    井出委員長 それではこれより臨時硫安需給安定法案を議題といたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。川俣清音君。
  7. 川俣清音

    ○川俣委員 私は主として公取の委員長に質問いたしまして、あとで政府当局に質問を続行して参りたいと思うのであります。  公取の委員長にお尋ねいたしたいことは、前国会におきまして、硫安協会が、国内価格につきましても、また輸出価格にいたしましても、価格協定をやつておるのではないかという質問に対しまして、公取委員長はそういううわさを聞いておる、疑いを持つておるけれども、なお慎重に調査をいたして、適当な処置を講じたいという御答弁があつたのでありますが、お調べになりました今日までの経過を、ひとつ御報告願いたいと思うのであります。それが第一点。特に今般台湾へ硫安が二十五万トン契約せられたと新聞紙は報じております。しかも新聞紙は、各社ともに、硫安協会との間において契約が成り立つたというふうに報じております。また硫安協会の輸出委員長との間に契約が整つた、こういうふうにも報じております。またたびたび私がお尋ねいたしておりますように、今度の割当につきましては、新聞の発表もあります通り、大体生産額に見合つた割当をいたしております。硫安の協会の割当は左のことしというふうに、硫安協会が割当をいたしておる。この割当の数量から見ましても、またこういう割当が決定いたしましたにつきましても、価格協定が当然行われたものと思うのであります。日本のメーカー十四社の中におきましてコストの相違のあることは、公取委員長お認めになつておる通りであります。御報告のあつた通りであります。最低と最高では二割ないし三割の開きがあるのではないかという世間の評判と裏書きしているように御報告もあつたわけであります。こういう生産コストの違うところのものが、輸出に対しまして一定の価格協定を結んで輸出いたしますこと、並びに協会が輸出の代表機関として契約をすること等は、明らかに価格協定をいたし、あるいはカルテルを実行に移しておるものと私どもは認定いたすのであります。私どもは公取の委員長に対し多大の敬意を払つておるのであります。まことに厳正公平に公取委が独禁法について十分監察の目を光らせまして、日本の企業の上に一大威力を発揮しておられることにつきまして、常々敬意を表しておるのでありますけれど、とかく硫安問題につきましては、どうも鋭鋒がにぶつておるような非難を私どもはたびたび耳にいたすのであります。こういう点につきまして、公取委の権威の上からも、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  8. 横田正俊

    ○横田説明員 まず第一に、協会が昨年二月に建値を発表いたしました後の業界の動きにつきまして調査いたしました結果を御報告申し上げます。こまかい数字は、二月以降七月までの分につきましては、かなり詳細に調べて表になつておりますので、もし御必要がございますれば、その表によつてごらん願いたいと思いますが、概括的に申し上げますと、御承知のように、建値につきましては関東、東北、東海、関西、九州地区等によつて多少違いがありますが、そのうちの関東地区を例にとつて申し上げますと、この建値が二月に硫安協会の発表いたしましたものとは大分かわつておりまして、たとえば八百八十円というのがあるかと思いますれば、八百九十円あるいは八百九十五円、これは最高でございますが、そういうふうに建値そのものが大分かわつておりますし、あるいは五月をとりましても、建値は各社によりましてまちまちでございまして、八百八十五円、八百九十円あるいは八百九十五円というふうにいろいろかわつております。この点は相当上の方に建値がきまつていることは事実でございます。しかし協会が指示いたしましたような数字に必ずしもなつておらないということは御了解いただけると思います。  なおこれは建値でございますが、実際の販売価格がどういうふうになつているかという点を申し上げますと、メーカーから第一次の卸商社に渡します販売価格を例にとりますれば、やはり二月と五月を例にとつて申し上げますと、これも相当まちまちでございまして、八百八十円から八百九十五円の間でいろいろになつております。しかもこれは建値と同じものもあり、建値と違つたものもございますし、かなりまちまちでございます。五月を例にとりましても、やはり八百九十円、八百九十五円というふうに、いろいろになつております。八百八十五円というのもございます。これらはまた相手の商社によりまして、同じメーカーでも、実際に売ります価格が違つております。また同じ商社に渡します場合も、場合によりまして価格が違つているというふうに、かなりまちまちでございます。こういうような点から申しますると、いわゆる非常に厳格な意味のカルテルが、そのメーカーの間に必ずしもはつきり成立しておるというふうには言えないのではないかというふうに、ただいまのところでは見ておるわけであります。これは第一次卸商社に対する問題でございますが、全購連に対する関係は、御承知のように大分交渉が長引いておりました。四月に一月から三月までの分がさかのぼつて決定いたされました。それから八月になりまして、四月から七月までの分が決定いたされますとともに、八月、九月、十月の先物の価格も一応の決定を見たようでございます。この価格は御承知のように、かなり低いところできまつておりまして、この点はかなり全購連の努力の跡が見えるようでございます。この関係からいたしまして、商社に渡しまするものが非常に上まわつておる結果、やはりメーカーといたしましては、同じ顧客でございます全購連と商社との間の価格の違いが、あまりひどいという点は考慮を払う必要がございまして一現在におきましては、いろいろ商社側からメーカー側に値引の交渉が行われているようでございます。そのうちには、すでに全購連の線までに値引をするということの話がきまつて清算を終つたようなものもございますし、あるいは見舞金というような形で、リベートを行うということの約束をとりつけておるというような場合もあるようでございます。こういうような関係でございまして、なるほどある程度同じようなところに値がきまつてはおりまするが、最初に硫安協会の発表いたしました建値というものは、相当くずれておりますことはわれわれの調査によりまして判明いたしたわけでございます。もちろん、たびたび申し上げますように、非常に少い数のメーカーでございますので、こういう販売価格等につきまして、カルテル等の結成されるおそれの非常にあるものでございますので、この点は今後かりに、ただいま国会に提案になつておりますあの法律成立いたしましても、なおその中におきまして、カルテル的行為が行われるおそれが十分ございますので、われわれは今後もそういう点を十分に監視して参りたいと考えております。  次に台湾への硫安の輸出に関しまして、協会がいろいろ独禁法違反的な行為をしておるのではないかというお話でございました。この点は私どもも非常に注意をしてずつと見て参つたわけでございます。この台湾との取引が、成立いたしますまでの経過も相当調べたりいたしましたが、独禁法上問題となるべき点を、われわれとしまして見て感じますのは、まず第一に、各商社の交渉を硫安協会あるいは協会長においてまとめて一本で交渉せられたような経過があることは事実でございます。この点はある意味におきまして、台湾の方で日本の業者が打つて一丸となつて来てほしいということの申出があつたそうでございまして、事情としてはあるいはやむを得ない面があるかとも思いまするが、やはりこの点は独禁法上問題がないとはいえないのございます。  それから第二点は、これは御承知のように五十六ドル八十セントという、いわば出血輸出でございます。その結果損失をどういうふうに負担するかという問題が当然起つて参るわけでございます。なおこの二十六万トンを輸出するにつきましては、この輸出数量を各メーカーに配分するという問題が出て参りまして、このいずれもがやはり独禁法の問題になり得るのでございます。この出血販売の損失負担の問題につきましては、これは各メーカーにおいて損失を負担する、共同プール計算等はしないということに一応きまつたようでございます。この点は問題はただいまのところないように思われまするが、輸出数量の配分につきましては、もし協会におきまして各社の配分をいたすというようなことになりますると、これはもちろん問題があるわけでございまして、この点は注意しておりましたか、先ほどお示しのように、最近におきまして近く引渡されますものにつきまして一応の配分が行われたように聞いております。この点につきましては、実はわれわれといたしましては、輸出につきましては御承知のように輸出取引法がございまして、ある意味におきましてメーカーが一本になつて外国の業者に当る必要を認めまするし、ある場合におきましては、価格のカルテルあるいはそれを業者に配分するというような必要も出て来ることを認めるものでございまするが、しかしそういう輸出取引法等の線に乗らないで、かつてに業者がそういうことをするということになりますることは、われわれの立場からいたしますると、はなはだおもしろくない点でございまして、この点は硫安協会の方に向いまして、輸出取引法の線に沿うてやつてほしいということを申してあるわけでございまするが、その点はまだそういう動きがはつきり出ませんうちにそういうことになりまして、非常に残念に思つておるわけでございます。ただ成否はもちろんまだ未定でございまするが、当委員会の御審議の対象なつておりまするあの法案がもしかりに成立いたしますれば、こういう輸出方面につきましては、ある意味におきまして輸出取引法とはまた別途の方法によりまして、輸出を具体化いたす策が立つわけでございまするが、それまでの暫定措置といたしましても、法律に基かないこれらの行為につきましては、われわれはこれを是認いたすというわけには参らないのでございます。この点は今後なお協会の方とも折衝いたしまして、適法な手続によつて事柄が運ばれますように、その方へ問題を持つて行きたいというふうに考えております。
  9. 川俣清音

    ○川俣委員 公取の横田委員長なかなか苦心しての御答弁でございます。苦心の御答弁のことはよく了承できるのでございますが、しかしながら公取の権威の上から、やはりもう一度お考え直しを願つて、私は御審査を煩わしたいと思うのであります。横田委員長のお言葉の中にも、遺憾の意を表されたり、おもしろくないという表現があつたのでありまして、私どもはその表現をもつと強く表現されることが必要ではないか、ほかのカルテルの場合におきましては、しかとは申し上げませんけれども、割合に監視せられておるやに聞くのであります。従つてその監視が厳格であり過ぎるという非難まで、時折耳にするのでありますけれども、この大きな問題になつておりまする硫安に限りましては、とかくあらゆる事情を了承されて、暗黙の了解を与えておるのではないかというような疑惑さえ、今日生じておるわけであります。この疑惑を一掃することなくしては、公取委員会の権威というものは失墜するおそれがある。また農民にとりましても、こうしたことについての信頼が欠けて参りますことは、将来の米の供出についても、いろいろな欠陥を生じ、あるいは齟齬を来すような結果になるおそれも出て参りますので、あえてもう一度この点をお尋ねいたしたいと思うのでございます。  いわゆる内需の問題でございますが、公取委員長が、八百八十円から八百九十五円ぐらいのまちまちな建値が決定せられておつて、前よりも幾らか公取の警告に対して行動的に示されておるやに御説明があつたのでございますが、公取においてすでにお調べになつております通り、今日の各メーカーのコストというものは、百分の二程度の相違ではないわけであります。八百八十円から八百九十五円といいますと、わずか十五円です。八百円に対する十五円というものは、百分の二にも当らないわけです。小さな小間物類ですら二割、三割の開きがありますときに、今日の日本の化学工業の上から見まして、このくらいの差があることをもつて、価格協定が行われていないのだという断定は、やや粗雑じやないかという非難を受けるのではないかと思うのです。もちろんコストのことでありますので、二割五分とか二割七分という開きが必ずしも価格の上に出て来るものではないということは私も認めますけれども、少くとも取引の上におきまして、今日のような厖大な数量をかかえております硫安会社につきましては、相当の開きが出て来ることが予想せられるわけです。なぜかと申しますと、国外であえてダンピングをしなければならないほどに数量が角大しておるわけです。これが国内の価格の上に影響なしとは考えられないわけです。これが硫安協会というものでもつて一応まとまつておればこそ、これだけの開きでとどまつておるのでありまして、もしもこれがなければ、これだけの数量をかかえておりまして、しかも需要者が全国各地にまたがり、多くの農民を相手にいたしておりますときに、こんなわずかな開きをもつて、十分公取の意見を尊重せられて実行に移つておるのだというような認識でありますことにつきまして、私ははなはだ不満の意を表したいのであります。それでありますならば、公取の権威というものが、この硫安の面から失墜するおそれのあることを、私は警告いたしたい。わずか百分の二くらいの相違が協定ではないというようなお考えでありますならば、ほかの方の価格協定を、あるいはカルテルを、いかにしてあなたはお取締りになるのでありますか。百分の二くらいのものをもつて相当の開きがあるのだというような御見解でありますならば、たいていのものは独禁法に違反しないという結果になるであろうと思う。この点について、もう一度御見解を伺いたい。  さらに続いて、私は時間を省略する意味において、輸出の問題に触れますけれども、輸出も現に新聞にあります通り、台湾の事情から硫安協会が一手に協定せざるを得なかつたという事情については、私どもも了解できる。しかしながら、台湾からの要望であるために、日本の国内法を無視して契約してもよろしいということは、私はあり得ないと思う。なぜ硫安協会だけが国内法を無視して、台湾と協定を結ばなければならないか。これは大きな疑問です。横田委員長もみすからこの点については不満の敵を表わしておられるわけです。しかも数量の割当が、新聞にも報じられておる通り、明らかに輸出カルテルが行われておるということを表明しておる。このように価格も五十六ドル八十セントという協定を結び、しかも数量も生産数量で割当を行つておるのであります。たまたま東北肥料が脱落をしたということによつてこの協定がこわれたというふうに見るのは私は早計だと思う。そのかわりに今までと違つたほかの会社が一、二増量をいたしておるのであります。東北肥料の分だけほかの会社が増量をいたしております。これは平均増量をいたしておりません。あなたがごらんになり、あるいは通産省がごらんになりましても、どこがこれを背負つたかということは明瞭です。今までの割当からいいまして、今までの割当と違つておりますか。全然違つてないじやありませんか。ちやんと規格の上に乗せて割当がきまつておる。今度だけわずかに東北肥料が脱落したということが出ておりますが、この脱落はほかの会社が背負つておるたけです。一つまたは二つの会社が背負つておると思われる点だけです。特に今度は東北肥料のほかに日産化学が幾らか減つております。この分もおそらくほかの会社が背負つておるのではないかと思う。これが協定でないということはどこで証明できるのですか。こんなにうまく割当ができるものですか。協定なしに偶然にこんな結果が出て来るのですか。輸出のあるたびに、協定なしにこんな正確な数字がどこから生れて来ると思うのですか。この点についても伺いたいと思います。
  10. 横田正俊

    ○横田説明員 ただいまの初めの国内の取引の問題につきましては、値の開きが非常に少いので、多少異なつておつても、カルテルがあればこそそういう結果になつておるのだという御見解でございますが、ある意味におきましてそういう見方も確かにできるのではないかと思います。先ほど申しました見方は、あるいは多少甘いというふうにお考えになるのではないかと思います。この点につきましては、ただいまの調査は一応ここで済んだのでございますが、なおこの点につきましてはよく検討いたしたいと思います。  なお、台湾への輸出の問題につきましても、公正取引委員会は何も協会のいたしますことを暗黙に認めておるというふうなことはないのでございまして、この点も最近の事情をもう少し正確に調べまして、はつきりした公取としての態度をとりたいと思います。
  11. 川俣清音

    ○川俣委員 この点は、私は輸出会社法ができますことは、こうした法律によらないで違法行為が行われておるのを、どうして合法的な輸出に向けて行くかということが輸出会社法のできるゆえんだと思う。もしこれが横田委員長の言う通り、こういう点がある程度認められれば、輸出会社は必要ないのじやないかという議論にもなつて来ると思うのですが、この点はどうですか。
  12. 横田正俊

    ○横田説明員 私どもは、ただいまの段階においては、輸出取引法がございますので、それにはめてやつてもらいたいというふうに実は考えておるわけでございますけれども、今回の会社はさらにそれをもう少し推し進めたものというふうに考えております。なるほどわれわれが、この法律に規定いたしまする線によらないでやることを、暗黙に認めるというふうなことになりますれば、おつしやる通り別に特別な規定はいらなくなるというような結果にもあるいはなるかと思います。この点は私どもとしては、あくまでも法律の線に沿うた用意をしてもらいたいというふうに考えまするし、われわれも与えられました職権をそういうふうに向けるようにいたしたいと思います。
  13. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点お尋ねしたいのですが、横田さんの言わんとするところ、非常に苦心して御答弁になつておる点はわかるのですが、あるいは国内にいたしましても、特に現在の輸出行為の問題につきましては、明らかに独禁法に違反するのであるから、これを犯してもなお輸出が必要であるという見解から輸出会社をつくらなければならないのだというふうに、やはり割切つて考えて行かないと、私は問題の解決がなかなか困難ではないかというふうに考える。もちろん輸出会社ができるまでは厳重に監視して、あるいは警告を与え、あるいは解体を命ずるなり、処置は講じなければならなぬと思いますけれども、しかしそうしたことが全産業の上に、ことに日本の輸出の上に与える影響を顧慮して、非常にうまく御答弁になつているのだ、私はそう察するのです。しかし察するからといつて、すべてあいまいなうちにものを解決することは、非常に大きな誤謬を犯すことになると思うので、やはり独禁法に触れるのだ。そこでしかし触れるということで取締まつて行くことが、日本の産業の上に与える影響はどうであろうか。おそらくこういう考慮が払われておるのだと想像するのです。想像するのですからこの点は御答弁いらないのですけれども、苦心の御答弁でありますから、そう想像を申し上げて、そうしてやはり何らかの合法的な会社案なりができてもらはなければ公取としては困るんだ、そういうふうに割切つていただけますならば、われわれもあとを処理しやすい。どうも触れるような触れないような、確かに遺憾の意を表されたりしますところを見ますと、おもしろくないという表現によりまして、これは相当危険な道を歩んでおるのだということは想像できます。またちよつと厳格にやれば、明らかにこれは発動しなければならないのを、いろんな点から猶予せられておるというふうに私は好意的に見てもよろしいと思うのですけれども、それで行けるならばあえて輸出会社はいらないのじやないかという議論にもまたもどつて参りますので、この点もう少し割切つて御答弁願えないでしようか。これは無理でしようが、少し割切つて御答弁願うと、あとの審査の上に非常に便宜なんですが、ちよつとこの点御答弁願いたい。
  14. 横田正俊

    ○横田説明員 大体先ほど申し上げましたのは私の気持でございまして、今までも何らか特別の措置を設け、立法措置を講じまして、独占禁止法の除外をつくるという必要がありましても、なかなかその立法措置がとれない。一方におきまして違反かあるいは違反の疑いのある行為が行われておるこの際、公正取引委員会のとります態度といたしましては、いろいろ場合々々によりましてある程度の考慮を払つて行きます場合と、むしろそういう立法を促進する意味におきまして、はつきりした審判開始というようなことをやつた例もございますし、この点は非常に私どもとしましては苦心のいるところでございます。ただいまお話の御趣旨をよく委員の人たちにも伝えまして、この問題について慎重な、またはつきりした態度をとりたいと思います。
  15. 川俣清音

    ○川俣委員 先ほど来大分御苦心をされておる御答弁なので、私は横田氏に敬意を表する意味において実は非常に遠慮しながら質問をいたしておる。というよりも、横田氏に遠慮しておるのではなく、公取の権威のために遠慮しながら質問しておるということを御了承願つて、ひとつ十分法の適用の上に誤りないように、また審査請求等におきましても、十分こういう点を活用せられまして、一般に与える影響の大きい肥料問題について、やはり一定の方針が示されなければ権威の上から非常に遺憾と思うのであります。これ以上質問いたしますと、権威を高めろと言いながらだんだん失墜させるような質問になつて参りますので、この点遠慮申し上げます。たびたびこういうことで横田さんを引きずり出すことは、われわれも本意でありませんから、臨時国会におきましてまたあらためてお目にかかることがありますから、本日はこの程度で打切ります。ひとつ慎重に問題の御決定を煩わしたいと思うのであります。
  16. 井出一太郎

    井出委員長 吉川久衛君。
  17. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は硫安の問題について関係当局にお伺いする前に、ただいま横田委員長の同僚川俣委員に対するお答えの中に、五十六ドル八十セントでは出血輸出であるというお言葉がございました。そういたしますと、メーカーの適正な価格はいかほどと公取委ではごらんになつておいでになりますか。それをひとつ参考のために聞かせていただきたいと思います。
  18. 横田正俊

    ○横田説明員 これは別に公取で最近の原価計算等をいたしまして正確な意味で申し上げたのではないのでございます。御承知のように、先ほど川俣さんからもお話がございましたように、非常に原価の差があるようでございます。すべての会社が全部出血輸出になるかどうかは私ははつきり申し上げられませんが、相当出血をしなければならないものもあるのではないかという意味におきまして、出血輸出ということを申しました。
  19. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 これは非常に詳しく御調査なつておいでになる公取委のこれまた権威のために問題になると私思うのであります。横田委員長についてはこれはなおひとつこういう問題の影響するということをお考えいただきまして、十分慎重に今後御調査に際しては御検討を願いたいと思います。肥料が統制を解除される以前、経済安定本部にこの原価計算のできる方はおいでにならなかつたと私は当局の人たちから聞かされておるくらいであります。非常に計算がむずかしいのであります。つかまえるのに困難であつた。ことに統制が解除になりました今日は手のつけようがないのであります。だからどこまでが出血であり、どこまでが出血でないかという限界が非常にむずかしくて、その取扱いの困難な問題に対して、権威ある公取委が五十六ドル八十セントでは出血輸出だということになりますと、たいへんこれは問題になりますので、十分この点はひとつ今後御留意を願いたいと思います。横田委員長についてはこれ以上お伺いいたしませんが、通産省の柿手部長にこの点についての御見解を伺いたいと思います。
  20. 柿手操六

    柿手説明員 今の御質問は、台湾等への硫安の輸出値段五十六ドル八十セントとコストとの関係はどういうふうに思うかという御質問……。
  21. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 出血であるかどうかというのです。
  22. 柿手操六

    柿手説明員 その問題は、もう前国会以来から硫安の各社のコストが幾らであるかという問題についての御質問がたびたびあつたのであります。これは各委員会においてお答えしたのでありますが、二十五年の八月に肥料の統制を撤廃いたしました後、すなわち公定価格を廃し、割当をやめた、肥料公団の組織をなくしたということから以後は、法律をもつて各社の経理を監査し、生産費の調査をいたすということはいたしておらないのでありますので、そういう法的な制度をもつての各社のコストが今わかつておらぬということをお答えし、各社別のコストと輸出価格との関係はどうかという御質問に対しまして、お答えして参つたのでありますが、われわれが生産の指導をしております場合、いろいろな原料の割当をするとか、資材の割当をするとか、資金のあつせんをいたしますとか、いろいろな生産の指導をいたしておりますために、いろいろ会社の経理内容、コストの内容なんかも、法律的な有権的な関係でなく、行政指導、監督の立場から調べておるコストの、大体こういうもんだろうという見当からいたしますと、昨年の秋、いわゆる安定帯価格は八百七十円から九百三十円という価格をきめましたとき、大体九百円がらみに国内でとられておるときに、六百九十円ないし七百円くらいで輸出が相当ありました。これで各社何円の出血輸出になるかということにつきましては、先ほど申し上げますようにはつきりしたコストがわからぬけれども、これは少くとも各社とも出血になつておるだろうというふうに考えたのであります。今の五十六ドル八十セントというのは、一かますに直しますと七百七十円弱であります。これは二十五年の八月に統制撤廃をいたしましたときのいわゆる生産者の公定価格、これは二十五年の七月でありますが、物価庁が公定価格をきめました最後の機会でありますが、そのときに平均の生産者販売価格は、工場渡し七百三十何円だつたと思います。これに運賃まで考えますと三十円くらいで、七百六十何円というものが統制撤廃時の生産者の平均販売価格、こういうふうに考えますので、それ以来、それと今の五十六ドル八十セントというものが大体同じようなベースじやないかと思うのでありますが、その後におきますいろいろな物価の高騰その他からいたしまして、あの二十五年八月当時の平均販売価格では、これは私どもも当然平均的に考えれば採算が合わないというふうに考えます。
  23. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 どうも内需の肥料の価格の構成について、一般に納得のできないものがあるのでございます。これについてそもそも価格の構成は、生産費の計算という方式もありますが、需給の関係というものが価格決定の一番大きな要素になつているのです。これは通産省で出されたのか、農林省で出されたのか知りませんが、二十八肥料年度の硫安系肥料需給見込みという表がございますけれども、これが真であるとするならば、これだけ供給量が非常に上まわつておるのに、内需の価格がちつとも下らないのです。これはどういうことに原因するのでございますか。今まで電力の問題にしても石炭の問題にしても、相当国はめんどうを見ておるはずなのですが、一向に合理化が行われていない数字のように見受けるのでございますが、どういうところにその原因があるのでございますか。
  24. 柿手操六

    柿手説明員 昨年のこのころでしたか、二十七肥料年度の価格を、全購連と業者の間でとりきめたとき、八百七十円から九百三十円ということで発足したのでありまして、この春にさらに八百二十五円から八百九十五円、大体八百六、七十円見当ということで二月に改訂をいたしたのであります。また新年度に入りまして需給も緩和をして参り、一方コストの低下もあつたと思うので、それで八月、九月、十月というものは、この秋肥の取引価格として、全購連と各製造業者の間で話を進めておることを申しますと、八百四十五円から八百五十五円、八百六十五円程度、秋はそれ以上というところで話合いが進んでおるのであります。いずれ法案が提出されると思いますが、春肥からはコストの調査をいたして、それに基いて価格を改訂したいということになると思います。
  25. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 内需の肥料の価格というものは、これは一向に農村からの強い批判の声が起きて来ないから、何でもかんでも押しつけておいて、それで国内の需要で相当に採算がとれるということで合理化が一向に進んでいないのです。だからそのしわ寄せは全部日本の農民負担しておるのです。それのみならず、肥料工業の維持のために輸出をやつておる。その輸出が今までお話の通り出血輸出である。出血輸出によつて生じたところの赤字補填は、何によつて今日までまかなつて来たか。特殊会社をつくつて、今度はどうせそのしりぬぐいは一般会計からめんどうを見なければならないということになるでしよう。そうでなければしりぬぐいのしようがないのです。今まではこれを日本の農家に負担をさせて来たというよりほかにないのでありますが、その今までの出血輸出によるところの赤字の補填というものは、はつきり言つてどういうことによつて埋め合せをつげて来たのか、その辺を部長は明らかにしていただきたい。
  26. 柿手操六

    柿手説明員 肥料の輸出価格は、昨年のこのころまでは国内の価格より五ドルないし十ドル高く売れておつたのであります。出血輸出が行われましたのは十月ころからの契約で、インドに四十何ドルで売つたのが始まりだと思います。すなわち出血輸出、いわゆる国内の販売価格以下で輸出をしましたのは去年の暮以後の問題であります。そこで、それらに対する出血の経理をどうしたかと申しますと、これはそれぞれその損の繰延べ勘定を別にいたしまして、考課状面でそれがはつきり現われておるものもあります。それから考課状面では現われないけれども、それぞれ経理の際にはその内容を明らかにいたしまして、その損失をあとに繰延べるという勘定で、損失を一般と区分をいたして経理しておるようなわけであります。
  27. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 肥料工業の合理化なくしてこの問題の解決はないのです。大体外国のものと太刀打ちができないというところに問題があるのです。だから合理化を促進する方法としては、もつと内需価格を安くするということでなければならないのです。安くするには簡単なんです。これは外国への輸出を制限すればいい。輸出を制限するには、ただいまは通産省の発議によつて経済審議庁と農林省に会議されることになつておると思いますが、農林省はそのように取扱つておいででございますか。
  28. 小倉武一

    ○小倉説明員 輸出につきましては、これは通産大臣が認可するということになつておりまして、それにつきまして農林省が同意をするということはずつと今日までやつております。
  29. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は肥料の合理化や輸出会社をつくるという考え方よりは、日本の肥料工業の合理化をはかるためには、農林省が同意をしなければいいのです。農林省が同意しなければ需給のアンバランスのために、もう合理化をやらざるを得なくなつて来るのです。合理化意欲を高めるためには、ただいま提案されているような制度をつくるということよりは、もつと私は簡単にできると思うのですけれども、そういうことを農林省ではお考えになつたことがございませんか。
  30. 小倉武一

    ○小倉説明員 農林大臣の肥料に対する同意というものは、これは御指摘のように内需を確保するという点に主たる目的がございます。内需の確保と申しますれば、これは量的な問題と同時に価格の問題もあると思います。価格の問題はこれはまた量と不可分の関係にございまして、一応量的に国内に支障がないということであれば、そこに成立する価格というものも、妥当な価格であろうということは一応推察されます。但し非常に時期的に量の問題を離れて価格の騰落するということはもちろんございますので、量だけではもちろん参りませんが、同意の主たる事項は大体量的な関係をにらみ、しかもそれが年間をにらむばかりでなくて、時期的にあるいは量的な問題が相当逼迫しておるときには、ここにつかんで行くということで目的が達成せられるのではないかと思うのであります。御指摘のように供給過剰であり、内需がそれに必ずしもついて行かないという事情がありまして、内需に相当量とることによつて、おのずから国内価格が下り、それによつて合理化が推進されるということも、これは経済実情からして、あるいは論理上当然あり得ることかと思うのですが、ただいまの輸出貿易管理令に基きまする農林大臣の同意をそういうふうに運用するということは、なかなかいたしかねまするし、また法律の趣旨もそういうふうに運用することは必ずしも認めていないのではないかと考えておるのであります。従いまして合理化の促進ということは、別途の措置でもつて強力に推進して行くということが必要ではないかと考えます。
  31. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 小倉局長の言われるところの、合理化を別途の方法で考えて行くというのは、ただいま通産委員会へ提案されておりまするあの合理化の法案だろうと思うのです。その合理化の措置については、終戦後の硫安工業に対するところの政府の手厚い配慮、私はあの手で、特にそういう措置を講じなくても、やる気があればできると思うのです。ところがあまり内需に甘え過ぎて、合理化をやる気がないのですよ。同じ通産省でも通商局長あたりは、貿易関係の問題について、こういうことを言つておる。日本の輸出産業が年々振わない、ことに昨年下半期から今年の上半期にかけては非常に悪い。その原因は、国民が戦争に負けたことを忘れて非常に生活水準を高めたというか、不当な需要が出て来た。そのために輸出産業に関係するものが内需に温存をして合理化の意欲を失つておる。これが輸出振興に非常な悪影響を来しておるということをみずから指摘しておるのです。ですから同じ通産省の中にある化学肥料部あたりの思想の統一が一向にできておらないのです。こういう問題について、もう少し真剣に考えていただいたならば、私は特別な合理化の法律、制度をつくらなくてもできるのではないかと思う。ことに農林省の小倉局長のごときは、まことに弱腰で、何か通産省のごきげん取りをしておる。あなたそんなことで食糧の増産ができると思いますか。もう少しふんどしを締めて出直さなければなりませんよ。肥料の内需優先と言われますが、あなた方の言われる内需優先というのは、量の問題だけなんでしよう。量だけではなくて、価格の問題をあわせての内需優先でなければならない。そういう意味の実現をするのに、別途に考えるなんていうようなことを言つておりますと、大事な需給調整法案までもが巻添えをくらつて、これがたいへんうき目を見るような心配もございますので、これはあなたに聞くのは無理なんで、農林大臣に聞かなければ少し無理だと思いますが、一応その辺のことについて、担当官としての確固たる御所見を伺つておきたいと思います。
  32. 小倉武一

    ○小倉説明員 これは御指摘の通りです。企業の合理化を推進するには価格が何と申しますか、比較的に冷酷であつた方が有効に刺激になるということを否定することはできないと思います。また肥料につきましては、特に唯一のといつていいほどの消費者が農民でありますので、農民の利益またさらには国策の立場で、食糧の増産という立場からいつても、価格は今申しましたように、シビヤーであることが当然そうあつていいのではないかというふうに思います。ただそれをやるために量的の調節でもつてやるかということになりますと、必ずしもそれのみではないのであつて、コストの調査なり、あるいは御指摘のような需給の状況なりを考えました上での企業合理化を刺激するような価格形成もできる手段もございまするので、輸出の振興というようなことにつきましての要望なり、あるいはそういう目的に沿うためにも、量的な問題につきましてだけ、価格の問題を今申したようなふうに持つて行くということはいかがか、かように存ずるのであります。価格によりまして企業合理化を刺激するという、その根本的なお考えにつきましては、私どもも同感であるところであります。
  33. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 柿手部長にお願いしておきますが、戦後肥料工業の復興に要した資金、合理化のために要した資金、それの金融機関から融資を受けた額、その金利等に関する資料を、次の機会までにつくつて配付をしていただきたいと思います。それだけ要望をいたしまして私の質問を終ります。
  34. 柿手操六

    柿手説明員 それはこの前資料として差上げたんじやないかと思いますが、これは財政資金として硫安関係に六十何億だつたと思いますが、復金から開銀を通じまして六十八億ばかり、詳しい工場別の資料があつたのですが、今手元にありませんので後ほど……。
  35. 井出一太郎

    井出委員長 金子君。
  36. 金子與重郎

    ○金子委員 肥料部長にひとつお尋ねしておきますが、今継続審議になりました二法案が、提案者の皆様方の苦労から考えると、ことに硫安需給調整法のごときは最高価格をきめる、あるいは内需優先の数量をはつきりと獲得する、そういうような肥料の需給面に対する重要なポイントを、自由経済を謳歌しているような今の時代に、今の政府とすると相当逆方向であります。この点は自由経済が統制経済へ逆もどりをしよう、それだけの手段をとつたのでありますから、このくらいの法案がどうして通らないのだろうというお気持が多分にあつただろうと思う。国会末期においてのあなた方の態度は十分そう見えた。しかるに農林委員会がどうしてそれを継続審議に持ち込んだかということでありますが、これは私ども法案の内容にありますところの硫安価格の調査だとか、あるいはそれによつて最高価格の決定、あるいは内需優先の方策というものを、法的な根拠に基いてやるということについては賛成なのであります。でありますにもかかわらず、この法律が、どうして問題が落着しないで今日に至つたかといういろいろの理由がありますが、その理由の一つとして、しからばこの法案の通過いたしましたときに、今の安定帯価格に比較して、どれだけ農民の生産資材であるところの硫安の値を下げ得るか、一体どれだけ農民の生産コストを下げることができるかというようなことが見通しがつかないということになりますと、ほかの法律でもそうでありますが、ことにこういうふうな経済的な効果をねらつて法律でありますので、法文がいかにりつぱにできましても、やつてみたところが法的根拠によつて調査し、そうしてあなた方の説明によるところの内需に満つるまでの数量の算出平均というもので、かりに公定価格を出してみたところで、それが十円しか下らなかつた、五円しか下らなかつたということであるならば、何も今そんなややこしいことをしないでも、今でも輸出に対しては制限を農林大臣の同意によつてつているのだし、不安定ながらも安定帯価格というような形が今日守られて来ている。そこでこういうふうな法律を今きめることに多分に足踏みをしなければならぬ、自信がない。こういうことも一つの大きな原因なんです。そこであなたの方は、生産行政の立場から各会社ごとの機械だとか、あるいは製造方式の相違からいろいろコストが違うということは、もう幾度も繰返し繰返し申し述べられていることでありますが、硫安工業が今ここに、ことに通産委員会に出ております二つの問題のごときは、二百億以上の莫大な国費を投じて、国策商業として持つて行こうという性格がはつきり出ているわけであります。それから輸出振興としてそれをカルテルの外に出して、カルテルの取締りの外わくにしようという、そこまで制度的にも、資金的にも大きな国家のてこ入れによつて行こうという意図に出ているわけであります。それだけ重要な国策産業として行こうとするならば、今の硫安工業というのは、単なる一営利会社としての性格を越えようとしているわけであります。今の法律は、そうだとするならば、それだけの国策産業としての個人の営利工業でないという性格にまで持つて行こうとしているときに、法的な根拠を持つた機関で調査しなければ、ほんとうの生産費は出ないのだ、彼らが自発的に出した生産費は当てにならぬのだというところに非常な疑問があるのであります。会社にそれだけの自覚があるならば、法的な根拠を持つたものに強引に調査力を持たさなくても——法律上建前を立てるために、法的な根拠による機関がこれを調査したといたしましても、その実数においてそんな二割も三割も相違ができるはずがない。できるとすれば、硫安工業がそれだけの観念であるならば、国策産業としてそこまで国家の恩典というか、大きな庇護を受けて行く資格がない。そういうところに一番問題があると思うのであります。でありますから、この法律を審議して行きますについて、いろいろの問題のうち、一つはこの法律をやることによつてどれだけ差があるかということがつかめない。あなた方に聞くと、それだから法的な調査機関を設けて調査するのだと言われる。しかしさいぜんから申しますように、硫安が国策産業として莫大な国家資金をなおこの上に投じ、しかも輸出に対してはカルテルの外のわくにまでしようとしているのに、業者が今の段階において、どうしてわれわれの今の採算はこうなんだといつて、裸になつてその数字があなた方に出せないのだ。またあなた方が、どうしてそういうことをさせることができないのか。その結果が、逆に今の安定帯価格よりも高く出る数字であるならば、これは話にならぬし、またこれが大同小異であるならば、これを前提として法的な考え方をしなければならぬ。それが一つの問題であるのであります。でありますから、その点に対してどう考えられるか。結論的に言うならば、法的な根拠を持つた機関が調べるのと、今硫安工業の置かれている位置がこういう立場であるにもかかわらず、いまだ着物の前を幾重にも合せて、法律的な一つの権限がなければ、帯は解かぬというようなかつこうにあることは、非常に私は割切れないことだと思います。その点に対してどういうふうに考えますか。
  37. 柿手操六

    柿手説明員 肥料工業の経営からいいましても、昭和十一年の十一月十五日に重要肥料業統制法という法律ができた。それは、その法律によつて数量の取締りあるいは価格の決定をする。農林大臣と商工大臣が認可して適正な需給及び価格をきめて行くという制度でありますが、その当時別に肥料が足りないからやつたのではなくて、それは、やはり考えてみますと、ガス事業法、電気事業法に次いで、自由経済時代に肥料についてもそういうような統制をしいたという因縁から申し上げましても、やはり金子さんがおつしやるように、肥料工業というものは、一般産業に比べれば準公益的な性格を持つておる、また持たすべきものであるというふうに私は考えます。  そこで今、そういう性格であるが、その性格に、一体現在の硫安業者というものが適格性を持つておるかどうかというような趣旨の御質問であると思うのでありますが、硫安協会においてこの二月に出された原価の計数は、業者のまちまちな責任において出されておりますから、これを法的な一つの基準で、調査の前提をはつきりさせて報告させれば、御承知の通り二割、三割の差はむろんあろうとは思いませんが、相当の、あのとき出されたものよりは——そういうような方針に沿つて基準を明らかにして、そういう前提で実績を出させ、そしてさらにそれをチエツクするような制度をつくれば、もう少し適正な原価というものがはつきり出て来るのではないか、こういうふうに考えておるのであります。  それから、この法制をしけば今の安定帯価格からすぐ幾ら下るかという見通しの問題でありまするが、これはなかなかお答えしにくい御質問でありまするが、現に去年の八百七十円から九百三十円というのが、この二月には八百二十五円から八百九十五円、八百六十円見当というようなものに下り、また秋肥は八百四十五円に下り、八百六十五円最高というところまで行つておるようなわけでありまして、やはりこういう制度をぜひつくつていただいて、需給両者の双方の安定のため、結局日本経済全体の安定のために、業界としても非常にそれに期待をして自粛をいたしておる。さらにこの制度で、いろいろ政府の方でも合理化資金の注入等をいたしまして、価格の低下をはかつて行けば、相当に現在の安定価格よりも国内価格も下げ得るというふうに確信をいたしておるわけであります。
  38. 金子與重郎

    ○金子委員 今あなたの御答弁なさつたのでははつきりしないのです。公定価格をきめなくとも、今お話になつたように、三回安定帯価格をきめ、そのことに下つているのです。一体つているのはどこで下つているかということなんです。どういうわけで下つているか。その下つているということは、その間において、硫安工業の合理化に対して政府が金を出したのでもなし、別に物価や労銀が下つたのでもなければ、電気料が下つたのでも石炭が下つたのでもないが、実際は下つているのです。そういう点業者の自粛とあなたはおつしやるが、それでは以前はもうけ過ぎていたのだということになる。別に下る要因がほかにはないのですから、そういういい加減なことではいけない。問答はやめまして、ここであなたにこの次の国会までにお願いをしておきます。かりに硫安のコストを調査する基準ができましても——その基準は審議会というものができてやるというのでありますけれども、実際にそのコストを調査いたします場合にはいろいろな条件が出て来るのでしよう。その条件のあり方というものはかりにわれわれが審議会の委員なつたといたしましても、われわれは専門家ではありませんから、その条件に対して、米の生産費でも調べるというのならばわれわれも多分に意見があるが、硫安工業の生産費を調べるというような複雑な条項になると、われわれの力では及ばぬ。結局専門家であるあなた方が、審議会の意見でなく一つの試案でよろしいのですからその企画を事務的にお立てになつて、そして硫安工業の彼らに与えて、この次までに、これは法的な根拠を持つ、しかも硫安工業は今後の国策産業として大きな位置をなすので、そういう自覚のもとに立つて出してみろということで、もう一ぺんそれを出さしてみてください。どのくらい良心的なものが出て来るか。それがこの法案を通すか通さないかということの、全部ではありませんけれども、一つの要素でもありますから、それをひとつお願いしておきます。
  39. 柿手操六

    柿手説明員 この法案が通つて法律の条項によつて報告を徴する場合においては、これは物価統制令のあつたときにおいてもそうでありましたが、原価計算要綱というものを制定いたしまして、それに基いて報告をさせたのでございます。それによつて審査することになるのでありまして、私どももどういうふうな要綱によると最も適正な原価を把握し得るか、従来の方式もありますけれども、さらにそれを改善することが必要と思いますので、それの準備を今いたしておりますが、その要綱をつくつて、それに基いて法案のできる前に原価をとるということは、これはちよつと困難じやないかというふうに思います。  それから、先ほどちつとも下つていないというふうなことをおつしやつたのですが、去年の夏ころより相当増産をいたしておりまして、硫安でいいますと、当初の計画は百八十五万トンであつたものが、二百六万トン程度に増産をいたしております。その他カーバイト生産等にも幾分の値下りがありまして、原価は確かに去年の秋ごろより下つておるというふうに考えます。その原因は主として操業度の上昇による原価の低下というふうに考えます。
  40. 金子與重郎

    ○金子委員 そこがあなた方の方のこだわりでありますが、私は法的根拠に基くものをこの際やれというのではないのであります。あなたの方は硫安の生産なり監督なりの行政の立場にある。だからして、今度あなた方の方の役所として、将来こういうことがあり得るから、その参考資料として、国会の要求に対してあなた方が自発的に出してみてくれ。何もそれによつて公定価格をきめるのではないのだ。それは次の法案をきめる参考資料なのだ。そういうことでとれないことはないと思います。それは法律的な根拠によつて公定価格の基準にするということではない。しかしながら結果としては将来法的な根拠におけるこの調査要項と試案とはそんなに大きな幅があるわけではないのであります。だれの考え方も同じでありますから。だからそれを仮定して出さしてみて、硫安工業当事者が良心的なものをどのくらい出して来るか。これは強権で出すのではない。諮問するのですから、そういう意味においてその諮問した数字をほしい。それによつてわれわれは、なるほどこれは良心的な諮問の形で行つたのだ。しかしながらこれは権限を用いたからといつて、役所の人間が帳面を見ても、会社の当事者が帳面を見ても、五という数字は五だし、百という数字は百なのだ。架空なものを出そうというのではない。現実を調べるというのであつて、現実にそんな違いがあるようなことはない。ただ見方が違うだけなのです。見方の方はあなた方が指示すればできる。だから将来こうなることを予測した一つの調査要項として、試案として、あなた方は良心的に出してみてほしい。それも二百も三百も製造工場があるなら別として、十や二十、そのくらいのものではできないはずはない。しかも将来のことではない、現実にやつている。その帳簿の中から、その要項に当つてはめてみればできるはずでありまして、そんなことができないということは私は承服ができない。これだけはどうしてもやつていただくようにお願いいたします。
  41. 柿手操六

    柿手説明員 要項を今研究中でありまして、これからやるのでありますから、いつ次の臨時国会が開かれるか時間の問題もありますが、できるだけひとつ努力してみます。
  42. 金子與重郎

    ○金子委員 そこのところだけは部長失礼だが言いのがしさせませんぞ。それならばこの法律があのとき議会を通過しておつたらどうする、これから要項をおいおい考えてみます、そんなスロー・モーシヨンの形であなたはやろうとしたのか。かりに今すでに法案が通過したとすれば審議会が、今日でき上つているはずだ。しかるにこれからおいおいその要項を考えましよう、そンな言いのがれはできません。それだからあなた方は不謹慎なんだ。法案が通過した以上は、その通過したときにおける準備というものが七割なり八割なりあらかたできておらなければならぬ。それを法案が通らなかつたから、これからいよいよ考えますという、そんなばかなことはない。あの法律案は通つていたかもしれない。通つていたとすれば審議会ができて出発しているはずです。だからあなた方がこれからおいおいやりますというそんなことは了承できない。それはあなた方の準備があるはずだ。だからその準備を、法的な根拠に基かなくてよろしいから、それによつて紳士的に諮問してごらんなさい。そのときにどのくらい硫安会社がまじめに物を考えて、自分たちは自分の営利産業じやない。国家の産業として、国家からこれだけの加護を受けているのだから、ある程度まで営利というものを度外視して、一つの公的な立場に立つて行かなければならぬという態度に出るか、あるいは強権を用いなければわれわれは絶対にいかぬという今の態度でいるのか、それをどうしてもわれわれは見たいのだから、それだけはあなた方はどうしてものがれることはさせませんよ。今国会で約束しなければ次の国会には何もできませんよ。
  43. 柿手操六

    柿手説明員 それは怠慢でそういう言いのがれをしておるわけではありません。できるだけ努力すると誓つておるわけであります。
  44. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀貢君。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお伺いしたい点は当面の秋肥対策中心にして当局はどう考えておるか、あの両法案が現在継続審議ではあるけれども、それが通るか、通らぬかというようなことは、これはまつたく予言できないことであつて、そういうものは通らない場合においても、やはり政府当局は、真剣に肥料問題というものをさつき金子さんが指摘したように、あとでおもむろに考えてやるというようなことでなくて、やはり時々刻々の情勢の中において最大の努力が払われてしかるべきだと考えるわけですが、前の国会が終つた直後において、こういうような一つの情勢が現われて来ておる。その両法案を通さぬとすることによつて今後国内のいわゆる内需に対して一つの不安が出て来るだろうということを、これはどこからともなく流布されておる。それは台湾との間において二十五万トンの約束が成立して、今月から輸出が開始されるわけです。もう一つは化成肥料等においても相当の契約が成立しておるというようなことになると、外需がだんだん増加して、ああいうふうな法律を通さない場合においては、内需に対して外需がふえるということから来る不安が、何となくわき起るというような印象を与えておるわけでありますが、これは非常に警戒を要する問題であると思うわけです。現在国内における農民の素朴なる判断からして割切れない点は、肥料の生産が毎年々々ふえておるわけです。この見通しからいつても二百二十七万トン以上生産される。しかも内需も百七十万トンくらいはあるだろうというような見通しでありますが、そういうような生産がだんだん上昇しておりながら、どうして内需の値段が下らぬかということは一つの大きなふしぎなんです。それで外国にはやはり低廉な値段でどんどん出しておるというような大きな矛盾を、政府は何ら解決する意欲も持つておらぬということは、これは国内の農民としてはまつたく了承に苦しむ点だと思うわけですが、こういう点に対して農林、通産両当局の肥料を担当しておる関連の上に立つて、はたして一元性のあるような協力態勢によつて、今後の肥料問題を処理するというようなお考えがあるかどうかという点をまずお伺いしたいのと、当面する秋肥対策等に対しては、どういうふうな具体的な配慮を持つておられるか、そういう点をまずお伺いしたいと思うわけです。
  46. 小倉武一

    ○小倉説明員 秋肥の問題でございますが、硫安につきましては、先ほど価格の点に触れまして肥料部長の方から値段の点の御説明がございましたが、八百四十五円から八百六十五円というのが秋肥の価格ということで安定をさせたい、かように考えております。量的な問題につきましては、秋肥の期間にどのくらいの数量が出るかということについては、まつたく正確な数字を出すわけには参りませんけれども、年間といたしましてはほぼ百七十万トン程度を見込んだらどうかというように考えております。なおそのほかに、年間の需要としましては若干の変動もございますし、また、ただいま御審議いただいております法律案によりまする需給調整というようなこともございますので、それをどの程度見込むかということが、内需をどの程度見込むかということと相関連しますが、内需を百七十万と見込みます場合には、調整用保留というものを十四、五万トン程度見たらどうかというふうに考えております。法案が成立いたしますれば、正式の計画として御審議を願うわけでありますが、ただいまのところさような意味で発足をいたしておるのであります。従いまして以上のような量的な関係で秋肥を見ますと、台湾向けの二十五万トン、このうち秋の期間に出ますのが十二万トンでございますが、量的な関係は心配がないと存ずるのであります。これが硫安の関係でございます。  それから過燐酸、石灰窒素の点に若干触れまして御説明を加えますと、石灰窒素は前肥料年度からの繰越しが相当多量でございまして、一月半分くらいの生産量に相当するものが繰越しとなつております。生産につきましては、これはほぼ前年と同じように、五十万トン程度見込んでおりまするので、これも量的な関係についてはもちろん不安はないのであります。価格につきましては、ただいま不需要期ということもからみまして、相当低落をいたしております。この肥料の性質上、農林省といたしましては、むしろ消費の増進をはかりたいということも考えておりますので、この配給面、価格面についての安定的な措置が、行政上とれればむしろとりたいというふうな考え方をいたしております。それから過燐酸につきましては、これもほぼ前年度と同じような量的な計画をいたしております。化成肥料の問題もございまするが、ただいまのところ、過燐酸質肥料の輸出については、業界が入札に応じたといつたようなこともあるようでございまするが、ただちに輸出することは困難ではないかと私どもは考えております。正式な話ではございませんので、深く検討いたしておりません。なおカリ肥料につきましては、前肥料年度におきましては、水害その他天候の異常な状況のため、その他の事情も手伝いまして、需要が躍進的に増加いたしまして、約四十万トン程度のものが消費されたのではないかと考えております。政府といたしましても、外貨を追加的に計上いたしまして、輸入を促進したというような実情もございましたのですが、本肥料年度に繰越しました数量は、そのためにほとんどゼロといつたような状況でございます。しかしながら、前肥料年度中に手当いたしましたものが、八月以降だんだんと入荷して参りますし、それから十—三月間の外貨予算には、三十六万トンに相当する数量の外貨を組むように、ただいま話を進めております。従いまして、この点につきましても遺憾がないかと存じております。概略でございますが、秋肥を中心として化学肥料の御説明を終ります。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお伺いしている点は、どういうふうにしたならばもう少し内需価格を下げるかという努力を、通産、農林両当局が相談してやつておるかという、その具体的な問題をもつと明らかにしてもらいたいと思つておるわけなのです。御承知のように、ことしは全国的に災害が非常に多い。しかもその災害の過半は農業災害なのです。そういうことになると農家の経済は、この全国的な災害によつて、危険に瀕しているような場合が非常に多いわけです。そういう場合においてこそ、なお明年度は、こういうような経済上の大きな打撃とか出血を、何とかして挽回するための生産に対する努力が必要になつて来るわけです。そういう場合における一番の要素は、やはり肥料なのです。経済的に苦しんでいるときに、高い肥料をよけい使わして、増産をやれということよりも、こういうことに当面した場合において、どうしたならば輸出価格に比べてもう少し国内価格を積極的に引下げることが可能であるかということの努力を、やつておられるかどうかということを聞いておるわけです。
  48. 中村辰五郎

    ○中村説明員 硫安の国内販売価格の引下げの問問でございますが、今御指摘のように、一般農家経済の現状からいたしましても、できるだけこれに協力して参るということは、当然かと思います。先ほども肥料部長からお答えいたしましたように、秋肥につきましては、操業度の上昇あるいは石炭価格等の低下の状況を見まして、八百四十五円をスタートにいたしまして、それぞれ十円づつ上まわつた価格を限度といたしまして、秋肥の価格を安定させたいというような方向で参つておるのであります。もちろんこの安定帯価格の問題も、根本的に考えますれば、すでに御審議願つております肥料両法案の成立、あるいはこれを前提といたします準備的な意味におきましての作業をできるだけ迅速にやりまして、今後における態勢を整えて参りたいという気持でおります。先ほど金子委員から御質問のございました価格調査の問題につきましても、これは当然法案成立あかつきには、ただちに対応できる態勢をつくらねばならぬ関係もございます。そういう意味合いにおきましては、できるだけ敏速に整えまして、しかも秋肥にこれが具現し得る余地がございますならば善処して参りたいと考えております。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の言いたい点は、現在におけるところの肥料行政の一つの矛盾というものは、やはり通産省は肥料生産という面を把握して離さぬ、しかし国内における肥料問題とか何とかいうものは、これは農林省が持つ、そうして農業生産に寄与する努力をしておるわけです。こういう点にもう少し何か、一元性というか融和性といいますか、そういうことを考える気になるかならぬかということを聞いておるわけです。あなた方は真剣に、外国に安い硫安を出さすことに努力しておるけれども、国内の農民に対して安く与えなければならぬという心配は、全然ないように思うわけです。先ほどからの、あるいは一年前からの御発言を聞いておつてもわかるわけですが、この段階においてもう少し考え直して、肥料法案を出す場合においても、ああいう二つのものを別々の委員会に出して、そこに大きな障壁を設けて、輸出の方は何も迷惑はかけませんということで、一方においては国内価格に対しては高い安定帯、つまり肥料メーカーに対する最高の安定帯価格を設けて、そうして輸出の部門に対しては、出血を唱えて、その赤字は五箇年たな上げして、将来は国がしりぬぐいしてやるというような、温床の中に肥料産業を育てようとするような考え方が明白なわけだけれども、やはりそういう点から脱却して、ああいう二つの法案が通るか通らぬということよりも、今の段階において、もう少し努力をすれば、輸出価格に近寄つた国内価格をきめることは可能であるというふうに考えておるわけですが、これらの点は、通産当局ももう少し腹をきめてやれば、やれる点がずいぶん多いのじやないかというように思うわけです。そういうような何か急所があつて、こういうふうにやれば大体国内価格に対しても大幅に下げることが可能であるというようなことが考えられると思うのです。外国に安く売れるというのもこつがあるのだから、その点をひとつ聞かしてもらいたい。
  50. 中村辰五郎

    ○中村説明員 農林省の考え方と通産省の考え方との調整、具体化という問題につきましては、先ほど経済局長からも秋肥の需給等について御答弁がございましたが、これは通産省と完全に協議のまとまつた両省の結論でございます。もちろんこの結論に対しまして責任を持つておりますことは当然でございます。私としましては、肥料工業の生産増強という面で申し上げますれば、先ほど計画の達成にも増してさらに二十万トン程度の増産を敢行できた。これには電力の増配あるいはいわゆる行政的ないろいろな指導ということをいたして参つたわけであります。価格の引下げにおきましても、三省の行政指導によりまして逐次低下の方向に向つてつておるのであります。もちろん秋肥については、御指摘のようにこれが低下につきましては、できるだけの措置を講じて参りたいと存ずるのでございます。さしあたり需給の見通しにも関連いたしますが、この際さらに硫安の生産増強ということを電力面からもいたしたいというぐあいに考えております。十—十二月の電力割当が目下通産省内で審議中でございます。私といたしましても、この際国内の需要のことは、当然先ほど申しましたような需給の見通しのもとに立つておるのでありますが、さらに数量の安定を期する上からいたしましても、また価格上におきます低下ということをも考慮いたしまして、十—十二月の電力の割当につきまして、ここに御配付申し上げた資料の計画を、さらにこの機会に増強するような計画を考えております。
  51. 井出一太郎

    井出委員長 大分時間も経過いたしましたので、午前の会議はこの程度にいたし、午後は一時半より再開いたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時七分開議
  52. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川俣清音君。
  53. 川俣清音

    ○川俣委員 通産省の中村局長に午前に残しておりました点をお尋ねいたしたいと思います。局長御出席でありましたので、私から横田公取委員長に対して質問いたしましたことについて、すでに十分御了知のことだと思うのですが、今度の二十五万トンの台湾向け輸出に対しまして、メーカーが硫安協会という一つの私的団体をかなり公的に活用いたしまして、輸出の代表機関的立場をとつて、各社へ数量を割当てております。これは在来も大体こういう傾向をとつてつたのでありますが、このたびも同様なケースをとつております。これに対しまして横田公取委員長からは、価格及び数量のカルテルに当るおそれがあるし、おもしろくない傾向だ、こういうような表現があつたわけでございます。通産省はこれに対してどういう見解を持つておられますかということが第一点です。  第二点は、こういうことは独禁法に抵触するのであるが、日本の輸出産業として将来重大な影響を持つこの硫安に対して、何らか便法を講じてその目的を達成させたいというところに輸出会社法が生れたのではないか、すなわち提案理由によりますと、独禁法の規定を免除する規定を設けることが、この輸出会社法の目的であるように見るのでありますが、はたしてそうであるかどうかという二点について、伺いたいと思います。
  54. 中村辰五郎

    ○中村説明員 御質問の第一点にお答えいたします。従来輸出の問題につきましては、海外の買手は一元化された買取機関を持つておりまして、日本側としては、これに対応する強力な何らかの機関を必要とするという実態的な理由につきましては、過去においても、また現在におきましてもかわつておりません。このような実態から考えまして、肥料工業というものの輸出産業としての一面を、できるだけ合理的に確立して参りたいという観点に立ちまして、法案を前国会に提案した次第でございまして、この点の事由につきましては御指摘の通りであります。  今次の台湾の輸出二十五万トンの契約関係に伴いまして、現行の独禁法の禁止する条項に触れるような具体的な行動があつたかどうかという問題につきましては、先ほどの公取委員長の御答弁にもございましたが、私も従来から、とかくこういつた海外の必要からいたします対応策といたしまして、今日のこの機構のままで動かすということが、強力に推進する趣旨にも合いませんし、同時に現行の独禁法の趣旨から行きましても、相当問題を起す可能性があり得るのでありまして、川俣委員の具体的な御指摘の問題につきましても、権威ある公取委の調査に従うということが私としては当然でございまして、そのような現実の構成のもとにおいて、硫安の輸出を合理的に強力に進めるということが、実態的に見てどうかという点に実は私たちが検討を加えて参つたわけでございます。このような、問題をややともすれば紛糾させがちな事態をできるだけ解消さして行きたいという気持を持つておりまして、そういう意味合いにおきましては、御指摘の通り輸出会社機構を設けるという趣旨、並びにこれが運営につきまして、独禁法の規定からいたしますると、行動の上から行きまして不適当であると考えられる規定を、この会社機構について適用除外するという建前にいたしておる次第でございます。現実に行いました輸出契約と関連しての独禁法の違反の事実に対する認定問題につきましては、これは当然公取委と申します権威ある機関の決定に従いたいと存じます。
  55. 川俣清音

    ○川俣委員 私は通産行政の上から、公取委から批判を受け、あるいは審査にかけられたということによつて、そういう結果を得なければ通産省はこれを黙認しておくのだ、こういうような考え方であるようにも思うし、またはおそらくそういう取引をしなければならない実態であるからというバツクを通産省に求めて、公取委に向つて手かげんを要望しておるようにも見えないとは言えないのであります。現にこういう取引自体というものは、抽象的に言いまするならば明らかに独禁法違反だということは、学者何人も認めるところであります。ただ実態が、審査の対象として厳重にやつていいかどうかということになると、あるいは行政上問題はあるかと思いますけれども、学問的に言つてこれは明らかな独禁法違反だということは、何人も異論のない点だと思います。従いまして新聞等におきましても、輸出カルテルとかいう表現をあえて使つているわけです。これは各社とも同一の歩調をとつておりますから、これは新聞記者の任意な想像でもなければ何でもないと思う。常識的に、輸出カルテルをやつているのだ、こういうふうに一般が認められている表現がそのまま出て来ていると思う。こういうりつぱに世間的に通用している表現すら通産省はほおかむりで、どうも調べなければわからぬというふうにまだ逃げられるつもりかどうか、その点をお伺いしたい。
  56. 中村辰五郎

    ○中村説明員 輸出問題に関連いたしまして、義務輸出あるいは輸出量の割当というような問題につきましては、従来あるいは韓国に輸出いたしました当時にもいろいろ論議の的になつたことはございます。しかし通産省といたしましても、もちろん独占禁止法の趣旨につきましては、これが励行については公取委の見解と同様でございまして、今次の台湾の引合いにつきましても、その趣旨の徹底方を業者に対して進めて参つているのでございます。これは多少弁明的な答弁になりまして恐縮でございますが、今度の台湾の引合いの数量割当につきましては、むしろメーカーのあつせんをいたしております協会筋では、生産業者の輸出希望量というものを徴して、それに対応してまとめて行つた、こういうのが筋のように私は考えるのでありまして、その意味合いにおいて一、二輸出を希望しなかつたメーカーがございます。このような事態は、一応私たちといたしましては、こういつた独禁法の趣旨の徹底ということに努力いたして参つたのでございます。ただこういつたような事柄が常にいろいろの方面に悪影響を及ぼすというような事態につきましては、これは根本的に再検討もいたし、政府としての措置を講じなければならない、こういう意味合いにおきまして、先般国会に提案いたしました輸出会社機構の設立ということに参つた次第でございます。
  57. 川俣清音

    ○川俣委員 私は角度をかえてひとつお尋ねいたしますが、この二十五万トンの輸出は通産省の許可が必要であつたと思うのです。また前例によりまして、農林省とも一応お打合せの上で決定されたと思うのですが、農林省はこの輸出についていつごろ御相談を受けて、いつごろ承諾の決定を通産省に送られたかということが一点。さらに通産省にお尋ねいたしますが、こういう輸出を決定する場合に、だれを対象として一体決定をしたか。独禁法があるのでありますから、各メーカーに個別に輸出を許可したのであるかどうか、硫安協会に許可をしたのであるか。農林省はどういう内容で総額の許可を与えたのか、あるいはメーカーごとに内容を示されて承認を求められて来たのか、この点をお尋ねいたします。
  58. 小倉武一

    ○小倉説明員 台湾向けの三十万トンにつきましては、先月の初めに三十万トンの数量とその価格、それから三十万トンにつきまして、年内に十四万トン、春になりまして十六万トン、こういう内訳におきまして、価格につきましては、先ほど午前中話が出ました価格でもちまして通産省の方から御相談がございました。私どもといたしましては、その後通産省の生産計画、また国内の需要見込みといつたようなものを検討いたしまして、十四万トンということは、通産省の方でいろいろ生産上の努力も願つた上で、なお無理であるということで、十二万トンにしていただいて、残りの分を来年にまわすということで了解をいたしておるわけです。もちろんこれは、個々の輸出業者ないし生産業者から正式の申請があつての話ではございません。通産省を通しての全体のわくと、大体の年度内と年明けてからの数量と価格という話でございまして、私どもは、だから年間なり秋肥の需給状況をにらみまして、さしつかえない範囲において一応の内諾をいたしておるわけでございまして、法律上の同意という形式は、まだとつておりません。
  59. 柿手操六

    柿手説明員 今の御質問に答えるために、少し台湾の二十五万トン輸出について経緯をお話させていただきたいと思うのであります。台湾との向う一箇年問に二十五万トンの硫安の輸出がこういうように具体的になりましたそもそもの発端は、今年の五月の上旬でありますが、相当に硫安が生産されまして、輸出をやつて参りますのに、昨年の秋からことしの春にかけてのような、いわば非常に不利な輸出を、足元を見られてするというようなことでは、これは結局将来の硫安工業の発展のため、さらにはできるだけコストを安くして、農村に安い肥料を供給する上において、非常に困るからということで、五月の上旬に、有志が硫安の輸出に関する使節団を組織しまして、台湾に参りました。大体年間三十万トン見当の輸出余力はあると思うから、できるだけ有利に買つてもらいたいというような要請をいたしたのであります。それが発端でありまして、その当時には、関係各省と使節団と、行く前に打合せの会合もいたして参つたのでありますが、それがきつかけとなりまして、八月の十日でありますが、台湾側から回答がありまして、数量は二十五万トン、秋が十四万トン、春が十一万トン、価格は、国際相場等も相当低いので、ドルで払うのじやないけれども、まず五十六ドル八十セント以上はどうも困るというようなことを、台湾の側の代表である中央信託局の方面から、日本の硫安業者の代表として藤山愛一郎氏あてに回答して来たのであります。そこで私どもといたしまして、月別積み出す数量につきまして、先ほどお手元に差上げましたような需給状況を十分検討いたしまして、秋に十四万トンは無理だろう、二万トンは春にまわすことが適当であろうということを、農林省と相談いたしまして、台湾からの申出に対しまして、この程度の積立しであれば、そういう契約をして輸出を申請して来たときには許す用意があるということを、八月の十三日だつたか、十四日でしたか、協会の方に返答したのであります。
  60. 川俣清音

    ○川俣委員 私の質問に対して何も答弁しないで、経過だけ説明されたんじや答弁にならないですよ。私はそんなことを聞いてはいないのです。台湾から輸出に対する交渉があつた、通産省はだれに輸出の許可を与えたかということをお聞きしているのです。そんな経過をお聞きしたのじやないのです。あなたは行政上だれに一体輸出の許可を与えたのか、こういうことをお聞きしているのです。あなた方は、大体、硫安協会というものを初めから前提として認めておられるのでしようが、私どもは必ずしも認めての講じやない。硫安協会が輸出の対象になるということになると、独禁法に触れるのではないかということを言つておる。あなたは触れてもいいという考え方に立つておる。対象が硫安協会であるということは、答弁としては回避されるけれども、今の説明で見るというと、硫安協会から申出があつて、それに対して割当した、間接的にはそういう答弁になる。そうじやないかと言うと、いや、そうじやないというような答弁をする。別な言葉で言えば、間接的には認めていながら、正式な答弁だけは逃げるというようなお考えの答弁のようです。それならそれとして、また自分は質問を続けますけれども、ひとつ私の質問に対して答弁願いたい。
  61. 柿手操六

    柿手説明員 実はまだ正式の輸出許可申請はどこからも出ておらないのであります。特に二十五万トンの台湾輸出の内定の経緯を申し上げましたのは、そういうわけでありまして、台湾から日本側に申出のあつた硫安の輸出については、こういうような限月であれば、私の方も農林省も、業者から具体的な申請があれば許すであろうということを、硫安協会の代表者に申し上げたということを言つておるのであります。
  62. 川俣清音

    ○川俣委員 個々に申請があればということでありますが、大体あなたは、在来通り形式的には申請があつても、内部において割当てられておることは御存じでしよう。御存じないですか。御存じないで、一体硫安行政というものをやつて行けるものであるかどうか、その点をお尋ねしたい。
  63. 柿手操六

    柿手説明員 これは先ほど申し上げましたように、台湾側の意向として、向う一箇年間にこういうふうに荷物を積み出してくれ、価格もわれわれとしてもずいぶん奮発したが、これ以上は困る、それでどうかということを向うの中央信託局から日本側に申し入れて来たわけであります。それについてこちらは、こういう価格以上は出せぬがどうかということで代表者のところに手紙が来たのでありますから、メンバーが集まつて、希望をとりまとめて、輸出する数量をとりきめた、こういうように考えております。
  64. 川俣清音

    ○川俣委員 それではまた別の角度からお尋ねしますが、先ほどからの御説明によりますと、非常に不利な輸出も行われるので、できるだけ有利な輸出にしたいというようなお考えですが、不利な輸出というようなことは、通産省では、どこが不利で、どこが有利だというようなことをお考えになつておられるのですか。メーカーが不利だとか不利でないとか考えられることは当然だと思うのですが、通産省が不利だとか不利でないとか言うことは、やはり通産行政の方からおそらくそういう御意見が出たと思うのです。そこでさらに伺いたいのですが、先ほどもあなたはほかの委員に対して、これは出血であるというように御答弁になつております。なるほど十二万トンの内容を見ますと、会社別に見ると、出血輸出の会社もあると思いますが、およそ十二万トンの中の約九万七、川八千トンは、私から見るというと出血輸出じやない。会社別に見ると、半分くらい出血になるかもしれませんが、トン数から言うと、これはごくわずか、二割か二割三、三分程度のものが出血であつて、その他のものは出血でないというふうに算定できる。ということは、今日の硫安価格が物価指数から見て高いか安いかということは別にして、とにかく一流メーカーといわれて相当な数量を出しておる会社は、採算が合うから出ておるのだと見なければなりません。今日自由取引におきまして、採算が合わないものを、そんなに数量多く出すわけはないので、おそらく制限して行くはずなんです。だんだんコストを下げて行つておるからこそ増産になつておるのだと思うのです。コストの合わないところは、一割や二割の増産をいたしましても、やはりコストに押されまして、なかなか増産ができないでおる現状も、あなたがお認めの通りです。相当成績の上つております会社は、大体われわれの常識及び経済界の一般常識から見て、少くとも二割や二割五分の開きがあるのだ。こういうふうに見られておるわけです。これは常識です。こういう常識が一般的に認識せられておるところに、株の値段も出て来るわけです。常識をはずれたものというのは、時に投機によりまして、あるいは株式その他において変動はありますけれども、一年間を通じてみると、やはり常識的なところに株価というものは大体おちついておるわけでしよう。そう見て参りますと、約九万七、八千トンは、出血輸出じやない。二万トン余が出血輸出だというふうな大よそのものがつかみ得ると思うのです。そうして参りますと、これに快諾を与えて輸出する向きは、おそらく九万七、八千トンだと思うのです。あとの二万何千トンくらいが、強要されなければおそらく出さないところだと思うのです。これはおそらく硫安協会で義務をしいなければ出て来ないものだと思う。そこで長い間紛糾しておることは、あなたは十分御承知のはずです。紛糾の中に通産省が立ち会つておられますから。立ち会わないというのだつたら、具体的に日にちを示して、立ち会つたことを証明してもよろしいです。私はそんなけちなことを言うつもりはない。あなたは相談に乗つたじやないか。いつ何日であつたということを、私は言い出してもいいのです。しかし私はそんなことは言いたくない。紛糾しておるということをお認めになり、その間に立ち会つておられながら、立ち会つたことについては私は知らないということを言われるのだつたら、私は証明いたします。私はあなたとそんなことを議論しようとは思つておりません。しかし私が言おうとしておることは、十二万トン全部が出血輸出だということを言われるころに問題がある。そんな小さなことを言つてあなたをいじめてもちつとも得じやありません。硫安をどの程度に引下げるかということに問題があるので、あなたがそこに出たかどうかは、大した問題じやありません。問題にしません。しかし全部が出血輸出だということを言われるならば——今ちよつと言い過ぎたので、言い過ぎた点は取消してもよろしゆうございますが、とにかく九万七、八千トンぐらいは、私は喜んで応ずるのだと思うのです。あとの二万トンというところが、なかなか応じられないのだと思うのです。今度の東北肥料が脱落した問題でありますけれども、これは表面上の脱落であつて、おそらく損害を負担するということになるのだと思うのです。しないのだといいましても、これは下半期の会社の収支計算書を見たら、必ず出て来る。これは永久に隠せるものじやない。今は脱落したということになつておるかもしれないけれども、これは脱落でない結果が必ず出て来ると私は思うのです。そのときになつて勝負をしてもよろしゆうございます。話がほかにそれたから、元へもどりますが、私は 部出血だとは思わない。そこでやはり合法的に、独禁法に触れないでやられるのでありますならば、やはり可能な、出血でない部分だけに輸出をさせるということを考えられてしかるべきじやないかと思うのですが、この点について局長から御答弁願いたい。
  65. 中村辰五郎

    ○中村説明員 ただいまの御質問の中心問題でございます輸出の適正会社あるいは適正工場、こういうぐあいに申し上げた方がよろしいかと思いますが、こういう方面に輸出を集中して考えたらどうかということでございますが、お説の点につきましては、私は長い目で見ましては、そういつた方向をたどるということも非常にけつこうなことかと存じます。しかし現状の硫安工業全体の持つて行き方は、私としましては、とにかく今日十四社、十九工場ございますが、設立の過程におきまして、立地条件その他からやはり十分の根拠があつたのでございます。ただいま脱落の東北肥料のお話もございましたが、私はこの工場の持つて行き方というような点を考えますと、やはり従来の立地条件というような点につきまして、今御指摘の優良工場に輸出をもう少し集中してはどうかという最終的結論に持つて行く場合に、合理化というものを、工場の立地条件あるいは今後の持つて行き方と関連しまして、ここ二、三年やはり特色を生かして行くという意味においての合理化的な施設を講じて行きたい。今日の現状からいたしまして、価格あるいはコスト上におきます差額を前提として処理することはどうかという点でございます。と申しますのは、たとえば、ただいま考えております合理化計画の中でも、現状の技術的水準というものが適応していないために、不当にコストが高いという意味において、社会的評価が下まわつておる工場が相当多いのであります。たとえば常磐炭の悪い炭を使うということに、工場をつくる最初の動機がございまして、その線で今日まで参つた工場がございますが、その低品位炭を合理的に使うという技術が、設立いたしました当時には実現できなかつた事情がございます。やむを得ずコークス法に基きまして今日まで生産を続けて参つたという工場でございます。しかし先般この低品位炭の合理的な利用につきましての発明が西独で実現いたしまして、これが実施の段階になつておる状況でございます。このことを彼比勘案いたしますと、このような従来の行き方で行けば、確かにコスト上は不利な立場にある工場がございますが、この方式を取入れますことによつて、この工場は完全に立ち直る——と申しては言葉がおかしいのですが、コスト上から見て優良な工場に転化するのでございます。あるいは先ほど御指摘の東北肥料につきましても、合理化の方策、特にこの工場が合理化計画として採用しております硫安とか、あるいは他の関連産業との総合化という点に一段のくふうをいたしますと、これが優良な工場に相なるのでございまして、こういつた積極的な指導をいたすことによりまして、私は今後におきます、御指摘のような優良工場に集中してはどうかというようなことも、こういつた総合的な指導と相まつて考えることが、やはり現在の硫安工業をできるだけ生かして、しかも国際的にも相当ついて参れるような産業にするゆえんでもありまするし、同時に国内的にも、十分立地条件を生かし得る素地を与えたいという方法で進んで参りたいというのが、私の考えでございます。
  66. 川俣清音

    ○川俣委員 将来の合理化の計画説明せられて、将来硫安価格が下るのだということを強調されたと思うのですけれども、私はその十四社、十九工場を全部対象にして合理化しなければならないかどうかということについて一点の疑惑は持つております。しかしそれを今急激に企業合同をやる、その他無理な手を打つことが行政上うまく行くか行かぬかという点があると思いますので、この点には触れません。それから合理化を進めて行く上において、やはり条件を提示されることが必要だと思うのです。それを徐々に合理化するということになりまするならば、輸出の面におきまして、二万二、三千トン程度のものは割当てないということが考えられます。また急激に合理化を促進するために十四社十九工場全部、出血のものも出血でないものも同様に取込んで、共同歩調で合理化をやれ、それならそれでまた言えないことはないと思うのでありますけれども、そうでなくて、あなたの言われるように、十四社十九工場が同一の歩調で行くとすれば、採算の合わない会社もあるのでありますから、そういうものは輸出から除いてやるというようなこと、これこそが私はむしろ行政上の手かげんだと思うのです。それを同一に形式的な申請があるからこれを全部認めるのだというようなことは、やはり私はしろうとが考えたり、あるいはほかの人がやるなら別ですが、今日まで通産省と硫安工業というものとは、そんな他人のような形で育つて来たものではなくて、相当な援助を与え、補助を与え、いろいろ相談して今日まで来ておる、それほどまでに親切にやつて来られたならば、そんなことについてはもう一歩進んで考えられないものかということが一点です。さらに私が続けたいのは、最後の点なんですけれども、それと同じような考え方で——先ほど金子君から、一体今日硫安が下つたのは何かという点で、別に石炭が下つたわけではない、あるいは電力が下つたわけではない、方法が改善されたから下つたのじやないということを指摘されたわけですが、これは今日硫安が二百四十万トンというような能力を持つて参りました自然の結果として、ほかの物価指数とは違つた下落の傾向を持つて来つつあるわけです。これらについて、二百四十万トンとかいう実態生産能力を持つて参りますると、当然これは下るべきものなんです。それを出血輸出という形において、あるいは輸出という形において人為的に、行政的にむしろ引下げることを遠慮されておるわけなんです。これがいいか悪いかは別問題です。そういうことも一つ考えられると思いますけれども、遠慮されておる。自然な価格ではないのです。農民の望むところは、今日ここまで硫安を盛んならしめるためには、国として相当な犠牲を払つて来たのであるから、ほかの物価指数を考えて、あるいは高くはないかもしれぬけれども、もう一歩考えてもらえぬかというのが農民の率直な要望だと思うのです。だからそれに耐え得るような工場がないかといえば、現にあり得るのです。なければ別ですけれども、あり得ることがあまりにも常識的に考えられているわけです。その問題を解決されなければならぬと思うのです。そこで輸出というような問題が起つて来た場合には、もちろん国の輸出計画の上から、あるいは外貨獲得の上から輸出を考えることもよろしいけれども、やはり他面においては食糧を買うということが大きな外貨の損失になつているわけです。だから通産省から見れば外貨獲得、農林省から見れば外貨損失ということになるので、国の総合的な見解に立ちますと、硫安を出せば外貨獲得であつて、一方外米輸入は外貨に大きなマイナスが出て来るわけでありますから、そこで硫安問題が爼上に上るわけであります。この意味においてこのまま放任しておきますならば、あるいは農林省がもつと毅然として輸出等について制限を加えますならば、自然に下る。小倉局長はいろいろ苦心をして徹夜でこういうりつぱな法案をつくられたわけでありますけれども、それを今年は二十五万トンよりもちよつと制限すれば、法案以上に価格が下るのだと思いますが、小倉さん、そうお思いになりませんか。この点は小倉さんから、前の点は中村さんからお聞きしたい。
  67. 中村辰五郎

    ○中村説明員 御質問の第一点の問題につきましては、輸出の問題につきまして、各社それぞれの立場でいろいろの構想を持つておることは、当然しかあるべきことと思うのであります。ただ私たちの考えております。今の輸出問題についてできるだけ硫安メーカーが協力してもらいたいという意味の事情に関連いたしますことは、現在の硫安の生産計画というものは、内需に輸出のある量を加えました生産計画というものを前提といたしまして、その計画に基いて各硫安会社各工場がそれぞれ協力いたしておる状況でございまして、もとより生産コストの観点から行きまして、割高の工場がより多くの割損をいたすという事態もございましよう。しかし建前としては、量の多少という問題を離れまして、やはり硫安の輸出価格の低下に深い関連を持ちます操業度の上昇ということは、今日の生産計画の立て方、並びにその計画に基きまして各社に協力を願つております生産目標というものがございますので、私はこれを強制しようという考えは、ただいまの御指摘のように、むしろ避くべきことかとも考えるのでありますが、やはりできるだけ生産態勢の安定を望む建前から、輸出を含める生産計画というものを各社に割当ててお願いしておる状況でございますので、やはりこれらの情勢をある程度勘案いたしまして、硫安各社にできるだけ輸出に協力してもらうことがよろしいのではないかとも考えるのであります。そのこと自体が、やはりその会社の操業度上昇の結果コストの低下に役立つておる事実は否定し得られないのであります。その面から私は、御指摘のように、優良工場にのみ即時限定することが、この段階においてよいかどうかという問題については、慎重に検討いたすべき要素もあるのではないかというふうに考えております。
  68. 小倉武一

    ○小倉説明員 二十五万トンの台湾輸出の問題にからみまして、輸出をとめれば国内価格は下るであろうというお話でございますが、これはもちろん普通の経済事情のもとにおきましては、そういうことでもつて国内の供給を過剰にすれば価格が下落するということを推測するのは普通でございます。ただ私どもは、そういう手段でもつて価格を下げるという風にするのがよろしいか、あるいはまたさらに別な方法でもつて考えるがよろしいかということになりますと、おのずからまた別であると思います。午前中もその問題が出たのでございますが、これはやはり国内の農産物の価格といつたような点もございますが、なおまた硫安の原価というようなこともにらみ合せて、適当な適正価格で安定をさせる。量の調整でもつて価格を調整するということはまつたく自由経済を前提にいたしましてやむを得ず量の調整だけでもつて価格の安定をはかるということでございますれば、さようなことになると思うのでございますけれども、ただいま御審議願つている法案におきましては、量の調整とともに価格の調整ということも考えておりますので、農林省の方針といたしましては、量の調整によつて価格の調整をはかるということでなく行きたい。もちろん今法律が制定になつておりませんので、今はどうするかという問題はもちろんございます。その点につきましては、秋肥につきましては、八百四十五円から八百六十五円という価格を一応行政指導的な価格といたしまして決定いたしておりまして、輸出の量いかんにかかわらず、その価格をオーバーすることのないようにひとつ自粛を願つておるのであります。
  69. 川俣清音

    ○川俣委員 小倉局長の考え方は、私必ずしも否定はいたしません。数量によつて価格が左右されるということが、自由経済の原則ではありましようけれども肥料業にとりましては、これは非常に危険なやり方だと私は思います。そこで危険だということはどういうことを将来私は考えておるかというと、通産省の合理化計画をも批判しなければならない点で、私はその危険性を感じておるのです。今日の肥料の合理化ということは、硫安のコストを直接下げるという部面も決してないではありません。たとえば今の御説明にありましたような、常磐炭のような低カロリーのものを使う場合におけるコスト低下というようなものも、製法をかえて行つて価格を下げるということも、これは合理化の中に入つておりますけれども、大体今日考えておりまする合理化は、そういう直接硫安コストを下げる意味の合理化は二割もないと私は思います。その他の八割のものは、これは企業の内容の合理化なんです。これは最近考えられておりますのは、硫安という単肥生産をさらに複雑な過程をとつた方向に持つてつて、会社の経営を合理化しよう、こういうことにあると思う。その結果、たまたま全体の経営内容から言うと、硫安が下るかもしれないというところに期待があると思います。そのかわり数量というものはいつでも制限することができるということが合理化の究極の結果、常に硫安というものに対する生産制限ができるというのが、合理化の最終的な決定になると思うのです。従つて今から数量をもつて価格をたたくことは、非常に危険な道であるという点は、そういう点から言えるのでありますけれども、はたして合理化によつて硫安が下るのだという見方は、非常に私は危険な見方だと思います。ことに生産コストを算定するといたしますれば、これは硫安だけを単に抽出いたしましてコストを見る場合には、決して私は下らないと思う。他の副産物と申しますか、その他の同一過程から変化して参りますものとが合理的に生産されることによつて、総合的な経営コストが下るんだ、こういうことには見られますけれども、純粋の意味の原単位計算をする場合に、必ずしも下るんだということにはならないと思います。それはいわゆる二割程度のものは——今申しました二割というのは、総体の価格の二割でなくて、合理化の方途の中にいろいろ今までロスの多かつた分をこれを改善して行くというような意味での合理化というのはもちろん考えられますが、その他の大半の最近の申請を見ますると、硫安以外の生産にかなり重点を置いた申請だと思うのです。そうして参りますと、手放しで将来硫安が下るのだというようなことは、非常な危険な言い方だと思うのです。むしろ下げないというところに硫安の合理化があるのだと私は思うのです。常に会社の経営と見合いをして、適度に生産制限ができたり、生産増強ができるようにすることが合理化のおそらくねらいだと思うのです。そうして参りますと、硫安だけが特に下るというようなことになりますると、他の生産に主力を注いで参りますと、生産を減ずる結果が生れて来る、こういうことになりますので、手放しで合理化ができれば硫安が下るのだというような甘い考え方で期待をしておりますならば、とんだ結果になるのではないか。それだからといつて、今日それでは数量でもつて価格をたたいて価格を下げればいいということは、もちろんしなければならないと思いますが、こういう意味において合理化というものが一般に与えておる影響は、会社の合理化というものは、必ずしも世間で考えておるようなものでなしに、一般の消費者の面から申しますと、二百億くらい注ぎ込んで合理化するのであるから、相当な値下りができ得るのではないかという期待があるわけです。おそらくこれは期待はずれになるのではないかと思いますが、通産省はどういうようにお考えになりますか。
  70. 中村辰五郎

    ○中村説明員 御指摘の硫安工業の合理化といたしまして、先般来通産省が企画して、これが実現に努力しております計画の内容についての点でありますが、私はただいまの硫安それ自体のコスト引下げ、たとえば原料の切りかえ、たとえばコークスを低品位の石炭にかえる、あるいは重油にかえる、あるいはこれに類似した肥料の形態をかえるというような問題を取上げて考えますと、硫安合理化の二割程度ではないかという御指摘でありますが、これは多少見解を異にいたしております。ガスの合理的な利用あるいは捨てられておりました炭酸ガスというようなものを合理的に利用することにはつて、あるいは尿素をつくる、あるいは硫安のコスト計算の際に、現在では無価値の形で計算されたものが、それ相当の価格で計算されるという形におきましては、当然これは硫安のコストに面接影響するものと私は考えるのでございます。と同時に、私はこの合理化計画のコスト低下を硫安の低下に持つて行くといつたような意味においての保証と申しますか、制度的な問題ということを、また他面一応考えなければならないと思うことは当然でございまして、この点につきましては、制度といたしましては、価格公定制度ということをとりたい。このことは需給安定法にございます一つの大きな硫安価格決定の柱と相なつておるのでございます、なお日本の硫安コストの引下げ方式といたしまして、そういつた、御指摘の経営全般にわたるような意味においての合理化をやることが、私は非常に必要なことではないかと思います。それを行うことによります利益が、これは日本の化学工業が今日の発展の途上にありまして、原料を硫安部面に限定することから起りますコストの高いという点を解消する大きな原動力でありますので、これは通産省といたしましての合理化計画の一つの大きな柱にいたしておる、またいたすべきであると考えます。ただ、これがただいま御指摘のように、悪い意味においての企業の弾力性を増すことによつて、硫安価格を不当に調節する、安全弁という言葉が適当であるかどうか存じませんが、そういう意味合いにおきまして悪用されるおそれがあるのではないか、そういう見通しからすれば、この合理化計画は、期待するような結果に相ならぬのじやないかこういうのでございます。私はその点につきましては、日本の化学工業というものの全般にわたる指導方針にも関連がありまするが、これは肥料工業だけでございませんで、他のソーダ工業につきましても、そういつたいわゆる高度の化学工業化を行うことが、やはり化学工業の全般の基準、生産費コストの基準を切り下げる非常に大きな構想であるということが言い得るのでありまして、今御指摘のような、硫安工業の弾力性を持つことによる価格引下げを抑制する結果になりはしないかというような御懸念でございますが、これに対しましては、ただいま申しましたように、今日の化学工業は、肥料と言わず、全面的な意味におきまして、国際的競争下にさらされておりまするので、この競争にたえるという方式を、ただいま申しました化学工業の非合法的合理化という観点から推進して行きますことによりまして、全般的のコスト基準の低下ということを招来し得まするし、同時に硫安工業の基礎をより安定せしむるという意味におきまして、政府の今申しました価格公定制度というものを合理的に、厳正に実行することによりまして、硫安の価格を今後計画的に推進し得る基礎が確立するものと考えております。
  71. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ちよつと関連して、ただいまの川俣委員の御質疑でありますが、必ずしも合理化が硫安価格の引下げにならないのではないか、あるいは引下げになるとしても、きわめてわずかのものであり、そうして他の利益の上る副産物的生産の方へ努力を注ぐという結果に終るのじやないか、こういう御質問に対しまして、今るる当局からお答えがあつたのでありますが、それにつきまして私は、これは無理かもしれませんけれども一体当局は、この合理化が完成したあかつきにおいては、そのときの石炭その他の重要資源の原材料の値段にもよることでありましようけれども完成したあかつきにおいて、硫安において町制くらい価格を引下げることができる、あるいは引下げたいとの希望を持つておられるのであるか、そういうものは、もう全然今のところ見通しがつかないのであるかどうか、およそ何らかの目安は持つておられるのかどうか、ただいま六百円で外国輸出が行われておりますが、この六百円の価格が今出血価格になつておるのであるが、合理化完遂のあかつきにおいては、これが採算価格になるくらいの見込みがあるのかどうかということ。もう一つは一体その合理化を完成するのに、何年くらい後を目途としてやりたいというお気持を持つておられるのか、この二点について簡単でけつこうです。また簡単の方がわかりやすいのですが、どうかひとつ御答弁願いたい。
  72. 中村辰五郎

    ○中村説明員 輸出の合理化の目標でございますが、これは石炭あるいは電源開発の増強という問題を離れて、当委員会に資料として硫安工業合理化五箇年計画という資料を配付してございますが、これは五箇年計画と申しますが、実際は設備投資を大体二十八年から二十九年、三十年度に集中をいたしまして、四年目にはほぼこれが目標といたしますコスト低下を実現いたしたいと考えております。この数字的引下げ額は六ドルと予定をしております。この六ドルの計算でありますが、もちろん各会社それぞれのコストでそれぞれの生産量を出しておりますが、この数量的積数計算をいたしまして、平均的に全体として六ドル下るという目標を出しております。  それからやはり私は、副産物の処理という点についてちよつと一言申し述べさせていただきたいのですが、たとえば炭酸ガスが捨てられておりましたものを利用いたしまして、尿素を生産するということに相当大幅の計画を織り込んでおります。これは硫安それ自体のコストの引下げももちろん効果的に現われますが、同時に石灰窒素と申しますような、これと同種系統の肥料の価格低下にも、間接的ではございますが、順次波及をして参るものでございます。尿素について考えますと、今日の尿素の技術は、国際水準としてはおそらく英米等にも劣らぬ、むしろ一歩前進したような技術に到達しております。生産コストにつきましても、これは権威ある調査ということではございませんが、このような技術というものの進歩を勘案いたしますと、硫安自体のコストよりもさらに低目になつているように見受けるのであります。そういうような意味合いにおきまして、この肥料工業の合理化のコスト引下げということは、当然これを利用いたします農民に波及する制度を確立したいと考えておりまして、この六ドルの硫安工業自体の合理化ができますならば、今日出血と言われております、たとえば台湾に輸出する五十六ドル八十セント、あるいはかつて韓国に出しました相当低い価格に対しても、われわれは出血ではないという見通しを確立し得ると確信しております。
  73. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 その生産額がおわかりになれば、およそでけつこうですから、伺いたい。
  74. 柿手操六

    柿手説明員 合理化計画の五箇年後にどのくらいの生産規模に持つて行くかということにつきましては、電源開発計画ともにらみ合せまして、電気はどのくらい硫安方面に供給し得るかどうかということの計算を、経済審議庁で当時やつたのであります。大体二百万トンから二百十万トンのベースで出ておりますが、五箇年後には二百五、六十万トン程度つくることは、電気の供給力から可能であろうというふうに推算をいたしまして、計画を立てております。
  75. 川俣清音

    ○川俣委員 最後に一点お尋ねして終りたいと思うのです。今までの通産省の御答弁によりますと、輸出問題について相当犠牲を払い、赤字出血のものも、義務輸出することが、肥料企業合理化全体のために何か役立つのではないか。それを除外してやることは、必ずしも好ましいことではないというお考えで、私はそれはそれとして一つの見解だと思うのです。それを今日の段階においてはあえて批判しようとは思いませんが、問題はそこだと思うのです。そのような見解を持つておればこそ、今日硫安協会の中において、義務輸出をある程度強要されていることを通産省が黙認されている根拠がそこに出て来ているのだと思うのです。これは一応りくつがあると思うのです。無りくつだとは思いません。しかし義務輸出というものが今日の独禁法に明らかに違反する行為であるわけです。これは独禁法に違反するのではないかというと、これはどうも公取委員会の方へ聞かなければわからぬというけれども、あなたの方の指導目標をそこに置いておられる。私はそれが悪いと責めるのではありません。明らかに触れているのだけれども、日本の産業構造の上から、これを黙認しようという意思が通産省にあるから、その意思を体して公取でもまた遠慮して、眼の光らし方を遠慮しているのだというふうに見ざるを得ないわけなんです。それでは世間から問題が出るから、輸出会社というところへ持つて来て逃げなければならない。独禁法の除外規定を準用するような輸出会社に持つて行かなければならぬのだ、こういうふうに初めから割切つて今のような御説明があれば、まことによくわかるのですけれども、そちらの方に触れる場合には、いやどうもわからぬと言うし、政策はどうだと言うと、やはり義務輸出をさせることの方が今の時代には適当なのだ、こういうふうに言われる。明らかに大きな矛盾を露呈するわけなのです。そこでもうすつかり法案を出して通そうとされるのでありますから、割切つて、これは明らかに独禁法の違反だ、しかしながらもう少しこの法案が出るまで見のがしてくれ、いや、見のがさないでも、これは一ぺん取締つておいて、あらためて輸出会社というものによつて救済するからと、こういうふうに割切つてもらえば、私の方も非常に割切つて法案に対する態度もきめ得るのですが、どつちもあいまいだというと、私どもも割切れない。そういう行政措置で適当にやつて行ける輸出会社というものをつくる、世の中に珍しい赤字会社というものができるということは、画期的なことです。こういうことができるということになりますと、今日の米価の問題であろうと、農産物の問題であろうと、全部一挙に片づきます。米の赤字引取り会社というものをつくつて、それをあとで国家が補償すればいい、あるいはたな上げしておくというようなことで、こういう硫安会社をつくつて、これに右へならえするということになれば、今日の米価問題、農産物価格問題は一挙に片づきます。そういうことがはたしていいかどうかということは非常に議論になります。それですから、議論になつてもなおあなた方が主張されるのは、今日輸出を前にして、何とか合法的な輸出方法を考えなければならないというところから、おそらくこの会社をつくられたのだ、私はそう善意に想像しておるのですが、私の善意が間違いなのですか。その点もう一ぺんひとつ割切つて御答弁願いたいと思います。
  76. 中村辰五郎

    ○中村説明員 硫安の輸出を有利に、かつまた市場の確保を長期にわたつて実現するということ、それから硫安工業が、幸いにして原材料面において他の国の支配下にないということは、硫安工業の合理化を推進する場合におきまして、国際競争力を培養する際に、特に私は重要であると思うのでありまして、硫安工業の合理化の推進によりまして、国際価格上の不利を数年の後には回復し得るのだ、むしろ有利な態勢にあります消費市場に近い立地条件を利用して、硫安工業を育てて参ることができる、こういう見通しを立てておる次第であります。他の、原材料を海外の政治的あるいは経済的支配によつて左右されるという産業でございますると、こういつた政府の施策の実現をなかなか困難にするのでありますが、幸いにして硫安工業にこれらの制約がございませんので、合理化をあくまで推進することによつて経済的な安定を期し得るのであります。その見通しのもとに考えられました輸出会社機構でありまするので、私はこの輸出会社は、当初におきましては、いろいろ不備な環境のもとでは、赤字が起る可能性あるいは蓋然性が強いと思いますが、見通しといたしましては、輸出会社機構によつてこの問題を解決し得るのだというふうに考えております。従いまして、赤字を永年残して国家補償に持込むのだというような意味合いにおきましては、私は補給金制度をこの際要望しておる他産業と同一視することはできないと思つておるのであります。  なお輸出に関連いたしまして独禁法規定違反についての問題でございますが、私はこういつた硫安の輸出の市場確保、あるいは価格のできるだけ有利な態勢、そういつためどからいたしまして、同時は、最近は特に協定貿易の線におきます輸出入の調整というような事態が、より重要な意味合いで国際的な中心問題になつている関係もございまして、このような国際競争の激甚な肥料の輸出につきましては、今日の独禁法というような制度のもとにおきましては、その目的を達成するのに、どちらかと申せば不適当な点もございますので、御提案いたしました輸出会社機構におきまして、独禁法の規定を除外した、すつきりした形で機構を整備して参りたい、こう考えるのであります。
  77. 川俣清音

    ○川俣委員 私の最後の点を、すつきりした形でというのですが、現在の硫安協会の輸出の割当等はすつきりしていないわけです。すつきりしていないのにかかわらず、あなたの方は幾分関与されている。すつきりしないものに関与するということは好ましくない形だと思うのです。だから現在のやり方は非常に悪いのだということを明らかに示されて、その代案としてこうなんだ、こうやると私どももすつきりするのですが、どうもあなた方は、別なことですつきりした、すつきりしたと言うけれども、自分のやつておられることがすつきりしておられないで、すつきりしてくれと言うが、あなた方の方でもつとすつきりできませんか。これは独禁法に触れて、審査に当然上るべきものだけれども、輸出会社ができるまではかんべんしてもらいたいとか、あるいはできるまでは十分抵触しないようにあなた方が指導して行くとか、この点もつとはつきりしてほしいと思うのです。その前提として、こういう救済策はあとで考えてやるのだから、その前はひとつ、あやまるとかあやまらないというようなことをあなた方が言わないで、あいまいにしておいてそつちへ乗り切るということではすつきりしません。どうです。
  78. 中村辰五郎

    ○中村説明員 現在の輸出につきましての契約、あるいはこれに関連して各社どの程度輸出するかという問題の、独禁法の規定に抵触しないような方式というものにつきましては、もちろんできるだけわれわれとしましてはこれの指導をしておるわけであります。たとえば今度の台湾への輸出につきましても、もちろん希望輸出というような態勢によりまして、割当て制度で、各社にそれぞれ生産量あるいはその他の条件を前提として割当てせしめるというようなことは認めておりません。各社の希望を前提といたしまして、輸出数量をそれぞれ各社がきめておるような状況でございます。なお個々の業者のそれぞれの行動と申しますか、そういつた面につきましても、できるだけ今日の独禁法に抵触のないようにという意味合いでの注意なり、指導なりはいたしておるわけでございます。
  79. 川俣清音

    ○川俣委員 あなた方は、これは義務輸出じやない、とどこまでも強弁されるのですが、さつきあなたの説明に、義務輸出をさせることもやむを得ないのだ、現在の硫安業界の全体を見る上からこれはやむを得ない方法だ、しかし独禁法に触れるので好ましくない、大体前にそういう説明がありまして、さて独禁法に触れるではないかと言うと、これは任意輸出であつて強制輸出ではない、希望をとつているのだ、こう申しますけれども、そんなに希望でありますならば、出血だなんということはあなた方の口から言わぬ方がよいと思う。それほど希望でありまするならば、損して出せということは気の毒だと思うから、われわれ遠慮しておるので、出血してまでも出したい、そういう希望だということが明瞭になつて来るならば、これは農林省もよほど考えられた方がいいと思う。あなた方が、今まであまり価格を下げたくないという根拠は、犠牲を払うことは気の毒だ、こういうふうにおそらく農林省は見ておられたと思う。しかしながら、安く売ることが非常な希望だということになるならば、価格を引下げることを遠慮される必要ないじやないですか。今通産省が言うように、あの割当が非常な希望だというならば——ところが実際は希望じやないのです。希望じやないから新聞紙の報道を見ましても相当ごたついた。割当を受けるか受けないかでごたついて、最後には日本海側の分だけはほかの太平洋岸の方で引受けるとかなんとかいう協定ができたことは、通産省十分御存じなのです。それをただこの委員会だけで、答弁のために答弁として、そういう希望なのだと言われることは、私はちよつと怒りたくなるのですが、この委員会をあまりに愚弄されたということになるので、さつき私はもつと指摘しようとしたのですが、ちやんとこの紛争の中にあなた方が参加しておるのですよ。紛糾の中に参加しておるのですから希望じやないのですよ。ほんとうに希望だということになつたならば、硫安協会というものは壊れるのです。壊したくないというあなた方の考えがあるからこれを強弁しておられるのだと思うのです。これは一ぺん御破算になるのがほんとうなのです。硫安会社ができる前に、御破算になつて出直すべきなのがほんとうなのです。めんどうを見ることはもちろんのこと、そこまでやつてみるべきだ。しかし自分たちのやつていることがこういうことだということを指摘しないで、あいまいにして乗り移ることは、私は一番大きな欠陥だと思う。国の行政をあずかる以上、ここは明瞭にされて、しかる後に態度をとられたいと思う。あいまいなうちに乗り切るということははなはだもつて不愉快なことだと思うのです。もしあなた方がどうしても希望の輸出だというならば、私はもつと指摘します。あなた方が参加して相当な紛糾の中に入つておるのですから、何日に参加されたということを指摘しますよ。その点はもう言わないから、今までのことは悪かつたならばあやまつて、もう一度すつきりとした御答弁が願えませんか。これ以上聞かないから、すつきりした御答弁が願いたい。
  80. 中村辰五郎

    ○中村説明員 ただいまの御質問の独禁法違反の問題でございますが、なお私もよりよく調査いたしたいと思います。もちろん輸出のこの問題に関連いたしまして、できるだけ独禁法の趣旨にもとらぬようにという指導につきましては、努力して参つた事情もございますが、なお御指摘のように、重大な独禁法関係につきまして問題を残すような点がございましたならば、さらに公取とも十分連絡いたしまして調査いたしたいと思います。
  81. 井出一太郎

    井出委員長 久保田豊君。
  82. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 簡単にお伺いいたしますが、まず農林省の方に先にお伺いします。  さつき秋肥の問題が出たわけですが、特に本年度は至るところに災害があつた。特に凍霜害以降の風水害災害が非常に多い。ほとんど大部分水害を食つた所は、肥料は一応は流してしまつたといつていいと思うのであります。それでまた入れ直さなければならぬというような状況なつておる。この前の凍霜害のときには、御承知の通り三分の二でしたかを国が補助するというかつこうをとつたわけです。今度の九州もしくは全国各地の風水害に対しては、農林省はどういうふうな——おそらく今度の風水害は、そう言うと凍霜害地帯の方には非常にさしさわりがあるかもしれぬが、今度九州なり各地で起つた水害による肥料の損害あるいは農家の受けた損害というものは、凍霜害のものよりはるかに大きいと思う。これに対して、凍霜害でさえすでに地方庁まで入れるとたしか三分の二ですか、いずれにしましてもそれだけのあれをやつてある。今度はどうするつもりか、特にその点を今度の補正予算なり、あるいは次年度の予算なりに明確に盛つてあるのか、盛つてないのかという点、もし盛つてあるとしたら、それが十分でないとしたら、そういう水害地に対する肥料を格別に安く配給なり、あるいは売渡しをいたして、そうして凍霜害以上に大きな災害を受けた農家に対して、どのような肥料を安くさせる具体的な方策をとつておるかという点を、まず第一にお伺いいたしたいと思います。
  83. 小倉武一

    ○小倉説明員 凍霜害につきましては、お尋ねのように、特殊の作物につきまして国といたしまして三分の一の購入助成措置をとつたのであります。その後の水害につきましては、融資その他の措置は講じておりますが、肥料の購入につきましての助成措置はただいまのところとつておりません。この点につきましては、融資その他の措置でもつて対処したい、かように考えております。
  84. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 局長にお尋ねしますが、あなたは今度の水害による農家のこうむつ災害と、凍霜害によつて農家のこうむつ災害と、復旧上いずれが重いとお考えになるか。この前の凍霜害の場合においては国が三分の一、地方庁が三分の一、結局合計三分の二ということになつたんです。それをあれだけの——あれだけのというと語弊があるが、あの災害に対して少くとも国、地方庁が三分の二やつたのに対して、今回のような、少くとも災害の当時は、普通の常識を持つている人間ならば、農林省といえども私は、今度の災害の方が農家にとつてはるかに大きかつたということは、明らかにわかつていることだと思う。それをこの前の凍霜害の吐きには、三分の二は一応中央地方で補償はいたしたが、さらにそれよりもつと農家にとつては重大な災害をこうむつているときに、ただ単に資金を提供する、それで少くとも政治としても行政としても均衡がとれるとお考えになつているかどうか。またそういう措置によつて、今後農政のほんとうの正しい運用ができるとお考えになつておるかどうか、またその間にもしどうしても、農林省の事務当局としてそういう点は十分考えたが、あるいは政治的にあつちで圧迫をこうむつた、こつちで圧迫をこうむつたというならば、その圧迫なり、あるいはそういう何なりがどのようなところにあつたかということを、はつきりここで御説明をいただきたいと思います。
  85. 小倉武一

    ○小倉説明員 そういう圧迫といつたようなことは私は存じておりません。もつとも肥料の購入助成ということになりますと、凍霜害の場合にもそうでございますが、各作物の生産維持ないし改良といつたようなものと関連いたしまして、私どものような肥料の配給を担当しておる者の所管でございませんので、予算を計上する途中に、あるいは他の方面でそういう御議論があつたかもしれませんけれども、私の関知している範囲ではそういうことはございません。ただ私ども肥料として考えております点は、御承知の通り九州の水害におきまして、カリの手当につきまして緊急的な措置をいたしましたことがございます。それにつきましては相当無理な出荷をいたしております事情もございまして、輸送等が増高を実はいたしております。そういう点についての予算的な措置は講じたいということで、ただいまそういう方面の準備をいたしておるのであります。
  86. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもただいまのお話はおかしいので、ただ無理な輸送をしたから輸送費の補助だけは予算に載せる。しかし基本的な問題については、この前の凍霜害でも、麦とか、あるいは桑とか、そのほか果樹その他に相当重要な農作物があつたことは事実、しかし今度受けた特に水稲を中心とするものは、国家的に見ても、また農家の見地から見てもはるかに重大だと思う。それに対して何らか凍霜害でやつた措置を農林省として考えたのか、全然考えないのか、あるいは大蔵省にそういう立案をして交渉したのかしないのか。もししなかつたとすればその理由は何か。はたしてそれでもつて凍霜害との均衡がとれるかどうかということを、私はお伺いしておるわけです。もう一回この点をはつきり御答弁いただきたい。
  87. 小倉武一

    ○小倉説明員 その点は必ずしも肥料の配給を所管している私から御答弁していい適切な問題かどうか、多少問題が違うように思いますけれども、これは御指摘の通り、凍霜害とその後の水害との被害程度、農家に及ぼす影響、また作物の重要性といつた点から見ましても、凍霜害と別段甲乙なく、むしろ被害程度からいえば格段の相違がございまして、肥料の購入助成ということで考えますれば、これは購入助成があつてしかるべきものと私どもは考えます。ただ私のちよつと推察し、ここで御答弁申しにくい点は、肥料の購入助成につきましては、たとえば水稲なら水稲の生産維持とか、あるいは改植を願うとかといつたような点で、これは水稲の生産を所管する局で、そういう購入助成をいたすことになつておりまするので、私どもの責任あるお答えといたしまして、どういう事情でそれが成立しなかつたのか、あるいは初めから考えなかつたのかということについて、責任があるお答えがちよつとしにくいということを申し上げたのであります。ただカリの問題につきましては、九州全体についての化成メーカー等から、行政的な慫慂でもつて出荷して、輸送費がかさんだということでございますので、配給面の仕事として私どもの方で予算を組んでおる、こういう事情でカリのことを申し上げたのであります。
  88. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の質問はどうも小倉局長にはちよつと無理なようですから、あとでまた官房長なり次官なり大臣からお聞きしたいと思います。  さつきの肥料の問題に移りますけれども、中村さんにお伺いしたいと思うのであります。この前の説明では、今の説明でも、自己資金と国家資金を両方入れれば約二百八十億です。この前の資料をちようだいしたところでは、両方で二百八十億、そのうち百六十億が国家資本、そのうち八十億が財政投資である。全額にして二百八十億ということになる。これだけのものをして六ドル、日本の金にして約二千二、三百円になるわけであります。一俵当りにすると大体において二百円、しかもこれは五千五百円安くなるというこの前の資料また御説明をいただいた。その後私どもも検討してみると、どうも納得できない。六ドルだけが合理化によつて安くなる、そうするとまた二千二、三百円、そしてまたあと三千二、三百円というものは要するに石炭の値下りとそして電力の値下りにより、結局五千五、六百円安くなるという御説明があつたわけだが、石炭の値下りというものをさらに勘定してみますと、石炭の両方を総合した使用料の平均を見ると五割以上の値下りになる。どうしても計算上、今の石炭単価からいうと五割以上の値下りになる。これは電解法と、もう一つの方のやつを使つたものをずつと通算して、トン当りの石炭使用料というような点から換算をすると五割以上になる。そんなあれがこの三年間にできるか。片方では私ども雑誌等を通じて見たのですから、あまりはつきりした根拠がないが、それを見ると、外資まで入れて石炭の合理化をやつても、五箇年先に二割五分ないし三割程度しかどうしても石炭の価格が下りそうもないというのに、こつちだけでは三年後には炭価から計算すると五割以上も値下りになるという点が、どうしても私どもには解せない。それから電力にいたしましても、大体電力の供給力が非常にふえるが、同時に値上りは電源単価が高くなるから見なければならぬ。それは大体において二割五分だというお話、なるほど電源開発がどんどん進んで行けば、硫安工業に対する電力の供給は当然よけいになつて来ると思います。従つてフル操業ができるから、ある程度電力も有利に使えて来る。硫安単価について原価位にとつてみれば、単価は安くなつて来るということは当然だと思う。しかしその料金が大体において二割五分ということは解せない。単価にとつてみれば、大体において、今使つておるのが、資料によりますと、硫安ではキロ当り一円十八銭の電力を使つておる。電源単価を見てみると、現在の電源単価が大体においておそらく三万円見当だろうと思う。それで出したもので、火力その他を入れて大体そう安くなつておる。ところが今やつている電源開発は、少くとも五年後、三年後には、キロ当り十五万から二十万どうしてもかかる。おそらく私は三十万かかるだろうと思う。そうなると七倍も八倍もとにかくかかつて、電力の原価がそういうように高くなつたものが、どうして硫安だけには一円十八銭——二割五分となれば、一円四十銭で、今後におきましても豊富な電力の供給が維持できるか。それならばそのしりはだれが負うのか。電源単価が高くなつただけのしりはどこが負うのか。これらについての政府の方針がはつきりしておるならば、信用ができる。しかしはつきりしなければ信用ができない。この二点について、もつと具体的な御説明をいただかないと、われわれは五千五百円下るといつてもわからない。もう一つこれに連関して、なるほどこの前の御説明の資料では、利子等の引上げということもある。これを見ると二百八十億円かけたといたしましても、トン当りの電源単位は大体十二万円になる。五分の利子にいたしましても六千円以上になる。一俵当りにすれば大体二百円の利子になる。今まで借りておるものは大体において百七、八十億あるという。これらを含めると私は利子に対してこの点をはつきり、ちようど今度の船の方の利子補給でもやつたと同じような利子補給をやらなければ、やつと二百八十億を加えて六ドル下げただけでは、やはりまた利子に食われしてまうじやないか、ちつとも下りやしない。しかも石炭も電力もどうもあてにならぬ。こういうことでは、要するにこの合理化という点はどうも私どもには納得できない。何らかの形でこのしりぬぐいをせざるを得ない、こういうことで、この点をひとつ具体的に御説明をいただきたいのと、それらを総括して、今度の合理化案はとにかく私は温室育ちだと思う。まつたく現状に何ら業者のいわゆる努力を加えずに、業者の自力的な努力といいますか、こういつたものにほとんど期待することなく、国がある意味においてめんどうを見ようとする、いわゆるまつたくの温室育ちのところにあると思う。こういう合理化が、はたして今日のような情勢下で効果が上るかということになると、私どもは非常に疑問に思う。こういう点を含めて、こういう数字をつつ込んで行くと、どうも怪しいというか、そういう点が出て来るのは、企業の合理化が現状をそのまま維持しながら、そうしてその中で、あつちにもよかれ、こつちにもよかれということで、よかれよかれですから、結局どうもよくないことになるのじやないか、こういうように思われるが、これらの点についてはつきりひとつ御説明をいただきたい。
  89. 中村辰五郎

    ○中村説明員 硫安工業自体の合理化で、財政投資をやる対象工事が百六十億といたしておりますが、これらの計画を推定することによつて、六ドル程度下る、こういう考え方でございます。なお自己調達あるいは財政投資の目的といたしません対象工事というのは、別にございますが、これは各企業体が責任をもつていたす合理化でございます。それは私が六ドルと申し上げたものには加えてございません。それから石炭の合理化の響く影響でございますが、これは石炭の縦坑開発計画、あるいは機械化計画というものが別途通産省で考えられておりまして、これの炭価に対する影響で二割程度下るということにいたしております。これを硫安工業に移して計算したものでございます。それから電源開発に基きます利益でございますが、これは電源開発の単価が御指摘のように相当高まるという事態でございますが、関係局の一応の意見といたしまして、二五%アツプくらいで現在の大口需要に対するということになつておりますので、これの値上り予想を二五%程度で計算いたしたのでございます。もちろん石炭あるいは電源開発の進捗あるいは原単位の値上り状況等によりましては、その影響を受けることはあり得るのでございます。ただ私としましては、そのような関連企業の合理化だけでは問題の解決ということにはならぬと思う。むしろもう少し硫安工業自体で考慮すべき問題を重要視いたさなければならぬ関係がございまして、硫安工業の合理化計画というものを別途作案いたしまして、これの推進をはかつておる次第でございます。
  90. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点それについて大きな質問をいたしたいのですが、これは次の機会にいたします。ただ今お話の石炭は、われわれ雑誌で見たのですからよくわかりませんが、大体二割か二割五分というところです。あれは今の資料によると、片一方が三百何キロ、片一方が約一トンという計算ですが、これをならして計算しますと、あなたの方の計算のように千六百幾らということになります。これは勘定しますと実際には五割以上になる。そうすると二割ということと大分開きがあることになる。電力にいたしましても、当局の今のところこの程度だという話だというのでは、私はどうも納得ができない。今のお話では、当局の一応の話だということですが、片方で三万円の電源単価が二十万円にもなるというときに、わずか一円四十銭で硫安工業が必要とするフルの電力が来るということは、よほど政府が腹をきめて、基本方策をぴつたり立てて、これに対する何らかの穴埋めなり、あるいは補給策を講ずればあるいは行くかもしれませんが、そうでない限りは、私は行きつかないと思う。そう言つては失礼ですが、これはまつたく事務当局の一つのいわゆる図上の御計画ではないか。これは国の政策の基本に関する問題でありますから、これらの出て来た根拠を明確にここで御説明をいただかないと、私の方で図上計算で試算をしたらこういうふうになるというのでは、実際に実現するかどうかわからない。将来のそういう点について、大臣なりなんなりとしつかり打合せがついておるのかどうか。あるいは内閣としてこういつた基本点がきまり、会社その他にもそれがはつきり行つておるのかどうか。これらの点が一番問題である。あなたの方が事務的に試算をして、これだけになるというので五千五百円を出されたのでは、どうも話にならぬと思う。この点をもう少し御説明願いたい。
  91. 中村辰五郎

    ○中村説明員 石炭合理化並びに電源開発の将来の見通しから見ました電力料金の推移という点につきましては、御指摘のように目下事務当局の数字というものを前提として、一応目標を立てておるわけでございます。これの政府の施策として、あるいは通産省の統一した施策という点につきましては、なお審議の途中にある、こう申し上げた方が適当かと存じます。もちろん二つともに重大問題でございまして、政府全体として取上げて検討されておることでございますので、その責任ある答弁といたしましては、私個人としては資格がないように考えます。ただこれが合理化の目標ということの策定の段階といたしましては、今日の大体のめどを元にして立てて参つたということでございます。硫安工業自体の問題につきましては、これはできるだけ技術的あるいはその他の検討を加えまして、逐次融資等につきましても、具体的にすでに審議中に属することでございますので、この点につきましては、私自身として責任を持つて御答弁できるかと存じます。  なお御指摘の重大問題につきましては、適当な機会に適当な方から申し上げることにいたしたいと思います。
  92. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一つ。これもちよつと局長さんには無理かと思うのでありますが、今度の合理化案にしても何にしても、どこも穴だらけで、これは結局農家の方から言えば、ちつとも安い肥料が入らないことになりかねないと思う。これは漠然たる印象だけれども、そういうことになる。そしてその根本は、先ほどちよつと触れましたように、大体肥料に対する政府の態度が、まず現状がそのままそつくり行つて無理なくということだから、こういうことになると思う。これでは肥料資本自体がまつ裸になつて、自分自体の生死の問題として肥料工業の合理化をはかれません。これは結局ざつくばらんに言うと、そのしりを政府に持つて行くなり、あるいは百姓に持つて行くなり、そのおぜん立てば今度の法案でできている。これを具体的にここでは申し上げませんが、結局この二つになると思う。そこで私ども一番大事なことは、片方において肥料資本あるいは肥料工業家をまつ裸にして、自分の生命の問題として、ほんとうに合理化をやつてコストの引下げをはかるように持つて行くことが、やはり国策の根本だと思う。そうして、片方においては同時に、農家に安い肥料は三年先はこうだというような、絵に描いたもちでは話にならないから、それよりも手に届くような方策をとる。もう一つ直接には、この肥料の合理化計画が進めば、最後には三百万トン行くわけだ。そうすると国内の需要が多少増したといたしましても、三年後には百万トンの輸出を考えなければならぬという段階だと思う。それでなければ、また結局はフル操業ができないからというので、また内地の単価を上げるということに必ずなると思う。これは口に見えている。そこでこれらを総合してやるには、私はこういう点がやはり必要だと思う。第一はこの前河野さんも触れましたけれども、この際三十万トンなり五十万トンなりの外安を入れることだと思う。そうしてこれでもつていや応なしに肥料屋を裸にするよりほかはないと思う。こんな甘つたるい、何でもかんでも政府と農民におんぶした合理化案なんてものはないと思うから、やはりこれは外安を入れることが必要な第一の条件だと思う。そうなれば、いや応なしに肥料屋さんもまつ裸になつて、自分の問題としてやつて来ると思う。そうすれば、少くとも今の硫安工業の相当部分というものは、合理化が最も少い経費においてできると思う。これをその際においてこそ政府としてやるべきだと思う。それと同時に、アジアの市場確保という意味から言つても、また国内におけるフル操業という点から見ても、私はこの際中国へ出すことをもう少し積極的に考えるべきだと思う。今度のあれでもつて、アメリカさんの方からも、中国に対しての硫安の輸出ということは、許可が出たようであります。新聞で見たところですが、そうだと思う。中国の市場はどうかというと、私ども承知しておる事情では、最近においては硫安の需要は非常にふえているようです。しかも中国の硫安工業というのは、多少その後できたかと思いますが、少くとも終戦前においては、日本が大連でつくつておつた硫安工場が近代的硫安工場としてはたつた一つのものだつた。その後二つばかりできたように私どもは向うの文書その他で聞いておるが、一方においては水田その他を通じて硫安の需要が非常によけいになつて来ておる。ソビエトその他からも多少入つておると思いますが、日本としては、やはりこの市場に早く手をつけるということが一番根本だと思う。現在五十万トンや六十万トンの吸収ができないことはありません。それの見返りに石炭なり米なり安いものをどんどんとつて、硫安の損を少くして、国家や百姓の肩に持つて行くということをしないような方策をとる。この二本建で初めて硫安工業の統制なり需給調整なりというものを考えるべきだと思う。もちろんこれをやれば、やはり台湾とか朝鮮はいやな顔をすることはわかつています。またアメリカ等が必死になつてじやますることもわかつておりますが、これらについて、当局としてはどの程度調査をし、あるいは検計をしたか。通産大臣はいつでも議会の答弁では、中日貿易は一生懸命やると言つている。しかしこれは日本農業の基本に関する一つの大きな根本条件の問題でもあると考えるので、この点に対して事務当局から御答弁をいただくのは非常に恐れ入るわけですが、局長としての個人の考えでけつこうですから、そういつた点に対する調査なり準備なりを、どの程度通産省としてはやつておられるか、この点だけをはつきりお聞きいたしたいと思います。
  93. 中村辰五郎

    ○中村説明員 中共貿易の緩和と申しますか、その問題に関連しまして、特に中共に対する硫安、これは主として化学肥料の輸出と考えてよろしいかと思いますが、この問題につきましては、われわれとしましては、中共貿易の緩和の際に、硫安の輸出ということを常に交渉の対象にしていただきまして、交渉を重ねて来ております。しかし今日までこれが実現をいたしておりません。御指摘のように、中共の硫安の需要の推移に関しましての、これは非常に権威のない答弁とお考え置き願いたいと思うのでありますが、従来中共におきます硫安の需要というものは、あるいは十万トンあるいは二十万トンというようなぐあいに言われておるようでございます。しかし最近はやはりこういつた化学肥料の需要というものが逐次喚起されておるようでございます。そういうような状況を考慮いたしまして、私どもの方の事務的な考え方としては、できるだけこの中共輸出の一環としての硫安輸出というものを、重要視して推進して行きたいというように考えております。需要の調査等につきましては、他の東南亜の地域調査ほど正確なものではございませんと、御答弁申し上げます。
  94. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 大分時間も移つておりますから、きわめて簡単に二点だけお尋ねをいたしたいと存じます。  先ほど川俣委員から質問がありまして、それに関連して私からも一言お尋ねいたしたわけでありますが、その点について、さらに発展させてお尋ねしたいと思うのであります。川俣委員の御質問の中に、合理化の結果硫安のうまみがないということであれば、その副産物の方へ主力を注いで行つてしまうのではないか、その結果硫安の成績は案外なものになるのではないかというお尋ねがあつたのでありますが、これについて、合理化の完成されたあかつきでなくして、現在すでにその徴候を見ておる事実があるのではないかということが考えられるわけであります。それは、昨今におけるところの肥料商の、化成肥についてのあの神秘的な特効薬ででもあるかのごとき、あたかもごく初期に現われたペニシリンあるいはマイシンであるかのごとき宣伝であります。それでこの宣伝の結果、農家の需要欲をかなり高めておるようであります。一体この化成肥が単肥の自家配合に比してどれだけより大きなる効果を持つものであるかどうか、これに対して農林当局等においては、御研究もあろうかと存ぜられますが、この点農林当局から一応御答弁を願いたいと思います。またその販売状況等から見ますと、この化成肥の扱い業者におきましては、これを売りさばくことに非常に熱心であるかのごとくでありまして、そのことはけつこうでありますが、その販売方法においても、単肥では貸売りということはしませんが、化成肥については貸売りということを喜んでやつておる。その現実を見ますると、化成肥については、単肥に比較して二割ないし二割五分くらいのうまみがあるのではないかと思われるであります。そのあまりにも神秘的な特効薬のごとく宣伝して行くあかつきにおいて、農家は知らずらずに、しかも貸売りをしてくれるというところに引きずられて、これを多量需要するという結果になる。一面において、いろいろな努力をして農家の保護をいたしましても、一面においてかくのごとき巧みなる方法において搾取される結果と相なりますれば、何にもならないことになるのではないかと思うのでありますが、この点については、農林当局はどういうふうに考えておられるか。もし先ほど川俣君が心配されましたように、こういつた副産物の方向に多くの力を注いで行くということになりますれば、あの需給安定法の中にこの化成肥をも含めて行かなければならぬのじやないか。その点についてはどういうふうにお考えになつておられるのであるか。一体これを野放しにしておいて、需給安定法の中には単肥たる硫安だけを押えておつていいかどうかということであります。要すればその効果性、それから同時に、結局二割なり二割五分なり高い、これは配合する労力、機械力というものを勢い必要とするからでありましようけれども、これは一面においては農家労力は軽減するのでございますけれども、たとえて言えば、一家の主婦が家庭において仕出屋の料理をもつて毎日の惣菜を間に合せて行くということと同じ結果が農家に行われるのではないか。それでは知らず知らずの間に農家経済としてやはり詰めて行くことになりはしないかということであります。  それから第二は、全然種類が違つて参りますが、昨今しきりにカリ不足の声が強まつております。カリ不安、将来のカリ高というようなことが、農民の間に非常な不安を呼んでおります。一体このカリについては、どうしてこうしたカリ不足、あるいはカリ不安というような声が強まつて来ているのか。輸入において何らか非常な不安を呼んでおるのかどうか。もしそういう事実があるとすれば、その対策として何か御考慮になつているかどうか。この二点だけ簡単に御答弁願いたいと思います。
  95. 小倉武一

    ○小倉説明員 化成肥料につきましては、まず肥効の点でございます。化成肥料と申しましても、最近いろいろ種類がございまして、一概には申しにくいと思いますが、旧来の粉状のものは配合肥料と肥効がかわらないということであります。最近多くなつて参つた粒状のものは、旧来の粉状のものよりも肥効が高いのではないかという期待があります。これはもちろん大がかりの試験研究がまだ進んでおりませんので、農林省として正式に、粒状の化成肥料が肥効が高くてよろしいというわけには参りませんけれども、多少そういうことがありはしないかというのが、その方面の技術の権威者の話であります。なお本年あたりから相当研究を進めておりますから、技術的な肥効の点については、近く判明をするだろうと思います。ただいずれにいたしましても、御指摘のように価格が割高でございます。その点にかんがみまして、これは行政的な措置でございますが、通産省と打合せた上で、業界に自粛するようにという行政的な措置はいたしております。それによつてどの程度の効果があるかどうかは一今後の問題だと思います。  それからお話の需給安定法の中に化成肥料を追加したらどうか、こういう御意見のようでございますが、原案に入れなかつた趣旨は、主として輸出にからんでの問題でございますので、硫安系の肥料に限つているわけでございますが、これは国会の御意思によりまして御修正になるというのでございますれば、農林省としては特段の異論はございません。  それからカリにつきましては、本年の例外的な気候、それから九州等の水害によりまして、異常の需要が起りまして、七月ごろ極度の品不足になりまして、それに対しましての措置でございますが、緊急的な外貨の計上によりまして購入した分が、八月十二日を第一船といたしましてその後続々入る予定なつておりまして、大体二十六万トンばかり入る予定なつておりますし、それから十月から三月までの下期の外貨予算に約三十六万トン分の——これは五〇%に換算してでございますが、予算を組むように、ただいま折衝いたしております。ほぼそのようになるかと思いますので、本肥料年度のカリにつきましては、万々遺憾がないと思います。前肥料年度におきましては、先ほども申しましたような気候状況水害状況、それから一般的にカリの消費が非常に増進したということでございまして、農家に相当御迷惑をかけたわけでございますが、本年はさようなことがなかろう、かように存じておるのであります。
  96. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいまのカリの手当につきましては、もしさようなことがありますれば、これはすでに全国単位農協等にわたつて、何らかのお知らせをなさつておられるか、それともまたそういう御処置がないのか、もしなさつておるとしますればけつこうでありますが、そうでなかつたならば、緊急に何らかの安心するような処置をとつていただくことがよかろうかと思つております。それは単位農協あたりにおきましても、非常に買いあさりをしておる現状があります。無用な心配をさせ、無用な金を農家に支出させる結果になりますので、何らかの御処置を願いたいと存じます。
  97. 井出一太郎

    井出委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、次に治山治水に関する件について審査を進める予定でありましたが、政府の都合により、明日に延ばしてほしい旨の申出がありましたので、本件の審査は、明日午前これを行うことにいたします。     —————————————
  98. 井出一太郎

    井出委員長 この際政府より食糧問題に関し発言を求められておりますので、これを許します。安田統計調査部長
  99. 安田善一郎

    ○安田説明員 ただいま委員長から食糧問題というお話でありますが、私は役目上とりあえず統計調査部及び統計調査事務所が把握をいたしました本年産の麦類の推定実収高及び本年の八月十五日現在におきまする稲作の作柄概況を御報告申し上げたいと思うのであります。  簡明な数字を複雑に多少御説明申し上げるのもいかがかとも思いますので、お手元に資料を御配付申し上げたのでございますが、それによりまして、特殊の技術用語などもございますが、本年の特殊事情にかんがみまして、特殊の調査をなし、また特別の収穫ないしは作況を示しておりますることにつきまして、補足的に御説明を申し上げたいと思います。詳細は御判読願えれば、書きました分については御了察が願えるかと思います。  まず本年の麦類でありますが、私どもは御承知のように統計調査事務所を使いまして、特に推定実収高の段階におきましては、各県各調査圃におきます標本筆における調査中心にいたしまして、標本筆を坪刈りいたしまして、まず反収を出して、その坪刈り反収に、各県に約二百ばかり置いております農家の調査圃場をそのまま作況調査圃に置かれておりますものの試験圃の調査圃の結果から推定いたしました反当収量、その両者の反当収量と、作付面積は平板測量によつた面積でありまして、それから立毛皆無面積を控除いたしました結果の収穫面積、この両者をもちまして一応收取量を出しまして、これに照応いたします被害調査被害量を控除いたしまして照し合せて算定しておるのでありますが、種々この委員会でも御指摘がありましたように、また対策上御論議のありましたように、本年は成熟期、収穫期、乾燥調製期にあたりまして、また初期の凍霜害等もありまして、たかんずく長雨と豪雨による被害が発生いたしました。そこで従来の標本筆における調査ばかりでなしに、特に一般調査において一般農家につきまして調査をしました被害量も種々勘案いたしまして、一応決定をいたしました。また従来は圃場の生産力を示しました生産結果について統計を出すことになつておりましたが、これも刈取り後乾燥調製期について見ますのは、従来通りのほか、収納後についても、これは農林省として初めてでありますが、統計調査事務所の把握し得る限りにおきまして把握をいたしてみましたのが特徴であります。特に実収期までにおきましては、今年は五月下旬以降の長雨と豪雨との被害が非常にありまして、今申しましたようにさらに収納後の病害の発生蔓延、浸水、流失等の被害量が相当見込まれておる点が特徴でございます。私どもが従来農業統計上麦と申しておりますものは、食糧検査におきまする検査等級上の上表とは必ずしも一致しておりませんで、調査上客観的に把握し得るような精密唐箕により選別されたものでありまして、その選別によります基準は、おのおの各麦に応じて水分と選別基準において整粒歩合とを定めておるものであります。従いまして、実収推定高として計上いたしております麦の収量は、検査等級の組成上におきましては、本年は特に被害地においては下等級に偏するものが多いと思います。また調査の基準にいたしました麦の平年反収は従来通りでございますが、大正十三年以降昭和二十七年までの一十九年間の中で、終戦前後の昭和十八年から二十二年まで収量結果が多少異常と認められますものの五箇年を除きまして、二十四年間の一貫した作物統計上における数字から趨勢値を出したものでございます。その結果といたしまして、麦の方の三ページでございますが、北海道はまだ坪刈り反収を出しましたものの、最終の推定実収高ではございません。他の都府県はすべて最終の数字でございまして、全国合計二千七百三十四万三百石でございます。三菱中では裸麦が最もできが悪くて、小麦は平年に比しましては、ほぼ平年の反収をもちまして、大麦のできが立地の関係、時期の関係等からいたしまして比較的よかつたものと考えております。その三菱別の作付面積及び収穫面積またその反収を見ました推定高は、第三ページに計上をいたしておるものでございます。地区で申しますと、おのずから小麦、大麦、裸麦で違いますが、水害あるいは凍霜害等がございました事情等もありまして、小麦におきましては、近畿地方が最もできが悪く、九州がこれに次ぎまして、以下東山地方——東山地方と申しますのは長野、山梨、岐阜でございますが、その地方ができの悪かつた地方と存じております。大麦につきましては第五ページでございますが、産地であります関東を中心にした東日本は比較的よろしゆうございましたが、もう一つの大きい産地の九州はやや不良でございます。裸麦におきましては、他の二麦に比べましては総対的に平年以下でございまして、東日本は比較的よろしゆうございましたが、特に九州、近畿、四国、中国におきましては不良を示しております。この麦におきましては、本年は昨年に比しまして四万三千町歩の作付減少を示しまして、特に特異の被害状況を呈しましたのが特徴でございます。  一方従来麦の作に最も影響がありまする湿害——日本は比較的不適地でありますので、湿害が非常に多いのでありますが、七ページ以後におきまして、麦の被害減収量としまして、三麦別被害原因と全国及び各ブロックの地方別に被害状況を出しておきましたが、平年に比しまして、風水害、雨害、また雨害に伴いまする赤かび等によりまして、被害量が非常に大きくありました。反面湿害、雪害につきましては、比較的少かつた状況でございます。収穫量そのものは比較的維持されました。全般的に初期あるいは成育過程において、低温とはいいますものの、麦にはそう悪い気候でもありませんで、結実期までは比較的よかつたのでありますが、反面被害も非常に大きくありまして、全国では四百十二万石を算定いたされる状況にあります。特に本年国会等の要求もございまして調べました、六月以後の推定実収高には入れておりません別個の被害としての麦類収納後の被害減収量は、私どもは事務所を使いまして、総量でもつて三麦計六十八万石ばかりと把握をいたしております。これは坪刈り等をいたします筆に当ります農家についてお聞きをして算定をいたしたものであります。第八ページにそれを計上いたしておるのであります。県別の作付面積その他の収量被害状況は、表についてごらんくだされば非常に幸いかと思う次第であります。  次に、別紙の本年度米の状況でございますが、まず結論を申しますと、八月十五日現在におきまして、平年に対しまする指数で申し上げますると、全国では九五%と見積つております。水稲におきましては、全国で見ますと九五%、北海道、近畿、中正などが比較的悪くて、九州が特に悪いのは、水害等あるいは水害のあと植えの成育等が悪かつたことに関係しているわけであります。第一表に括弧を付しましたのは、作況指数は成育状況の収量的なるものと作付面積のウエートをかけました平均でございますが、まだ作付面積の確定数字が決定いたしておりませんので、本表は概略把握をいたしております面積、すなわち前年までの作付決定面積と本年の水害地等を考えました面積とでありますが、括弧内は水害地被害を加味したもの——水害地にも植えたが、収穫皆無や流失埋没等があつたと見た場合でありまして、従つて九州などにおいて指数が下るものであります。陸稲につきましては全国的に低温ぎみでありますが、一番先に影響いたします旱害がございませんので、普通のできぐあいであると存じております。ただ北海道は冷害を受けまして相当作が悪い、全国的には一〇一%と思つております。その県別の指数は第二表にあげましたもので、調査期日関係から見まして各地方にわたりまして水害が続出して発生いたしておりますので、念のために本調査はどの地方のどこまでの水害を含んでいるかいないかを特に備考において掲記をいたしたものであります。この作況指数は石数で表わしますとまだ必ずしも十分なときではありません、それは当然に稲作の成育状況に応じて調査をいたしておりますので、今回は草丈と茎数と病虫害あるいは水害等の被害を加味して勘案をいたしまして、作柄概況をつくつたものでありますが、長年事務所で調査をやらせていただいております経験からいたしまして、作況調査後の調査、職員の現地見まわりの作柄調査被害調査のほかに気象感応試験という試験地においての成育状況を約五日目ごとに調べておりますものを適用いたしまして、いささか大胆でありますが、収穫の石数を試算いたしてみたのであります。その試算は第五ページ及び六ページにあるわけでありますが、水稲におきましては、水稲の平年の一〇〇は、ただいまのところの作付概略面積におきましては、六千三百四十五万石弱として基準をおきまして、反収としては二石一斗を全国平均と見ております。陸稲におきましては第六ページに書いておきましたが、全国平均反収を一石五升と見まして八月一日現在の作付概略面積では全国平年収穫高を百四十五万九千石余と見込んでおります。これによりまする表の一ページ、二ページの本年の作況指数と申しますのは、水稲におきまして六千三十四万二千石でございまして、陸稲におきましては百四十七万二千八百十石でございます。これを合計いたしました水陸合計は六千百八十一万四千八百十石でございまして、昨年の実収高より減少すること四百三十三万七千石余と見込んでおります。  特に今年の特徴といたしましては、御配付申し上げました資料の九ページにあげておきましたが、被害に特に特徴があること御承知の通りでございます。水害の多くは、不連続線による豪雨によりまして、また一般的に低温の継続があり、梅雨も長くございまして、また九州その他においては、水害後一時好天候で持ち直したこともございますが、水害跡地の跡植えが、非常な努力にもかかわらず、やはり湾まきであつたり、老衰苗であつたり、遅れて今後うまく稔実するか、青米になるかというあたりの問題が相当問題でありますが、先月の十五、六日以降、長野より東及び北につきまして異常の低温が相当長期に継続いたしましたものの影響も、本調査の外でございますが、特にこれは二週間ぐらいたちませんと、稲の生育状況の結果としての把握が、あるいは生殖障害を来したのか、稔実障害を来したのか、出穂にどのぐらい障害を来したのか、程度別に、ついてなかなかわかりませんので、調査期日のあとでございますが、ある程度の影響はあることは当然かと思つております。他の特徴といたしましては、いもち病、二化めい虫が全国的に発生をいたしまして、特にいもちにおいては、北関東、北陸——新潟たけはいささか少いと思いますが、東山、近畿、中国地方の一部に目立つて多く出ております。二化めい虫も、ただいままでのところは一化期が多いのでありますが、今までのいもちにおきまする葉いもちの発生のほかに、穂首いもちの発生が心配されますと同様に、一化期の二化めい虫の被害の心配が相当濃厚でございまして、特に一化期の被害については、南関東、東海、近畿、山陽、四国、九州の発生が多くあります。その概況を九ページについてごらん願いますと、例年に比しまして異常なものがございまして、ここでは昨年の同期との比較を掲げておきましたが、昨年も相当水害の多い年でありまして約二十一万町歩でございましたものが、今年はすでに三十六万六千町歩、それに伴います減収の見積りは、昨年同期で六十万石余りでありましたものが、二倍半の百五十四万石と見積られております。病害の中で特に多いのは、先ほど御説明申し上げましたようにいもち病でありまして、その過半を占めますが、昨年ほぼ同期で十六万四千町歩調査結果を出しましたものが、本年はすでに五十六万町歩、三倍強出ておるのであります。従いまして非常に農家の方々、改良普及員、地方庁、農林省等において、農薬の手配その他防除の努力をされておることが調査においても明瞭に現われておりますが、やはり進行性葉いもちが非常に蔓延いたしまして、その中には苗しろから本田に移入をいたしましたものも本年度は特に顕著でありまして、従来山沿いの地帯に多いいもちが本年は平坦部に多く発生していることも特徴的でございまして、昨年同期において四十万石減収かと見積つておりましたものが、ただいまのところ八月十五日現在では百四十七万石と見積られております。虫害におきましても、特に二化めい虫が先ほど申しましたように多くございまして、三十五万六千町歩昨年の同期において見られましたものが、本年はすでに五十五万町歩弱、被害量といたしましては、被害面積よりも特に多くて、昨年五十八万石と見積つておりましたものが約その二倍でございます。他の被害、黒椿象、つと虫、その他いろいろございますが、総じまして被害面積において昨年同期の二倍強、減収量においてはさらにその割合を多く見ておるように思われます。  風水害につきましては、特に第二台風、あるいは山陰の水害和歌山、南九州の水害、北海道、秋田、山形等の水害を発生いたしました時期別のおのおの被害面積の見積り及び減収を出して掲記をいたしておきました。地方のブロック別あるいは生育過程における時期別の概況もここに記述をいたしておきました。  時間も相当過ぎておりますので、簡明に補足して御説明を申し上げた次第でございます。
  100. 井出一太郎

    井出委員長 この際質疑の通告があります。足鹿覺君。
  101. 足鹿覺

    足鹿委員 私はこの数字についての質疑は本日は保留いたしておきますが、問題は、われわれは八月十五日現在の稲作の状況から判断して、来るべき食糧の需給計画、またそれに関連する供出の対策、それらの問題はこの数字を根拠としていろいろと政府に質疑もいたしたいし、また意見も述べたいのでありますが、食糧問題についての質疑は、きようは関係当局がおいでになりませんから、これは保留いたしておきますが、ただ安田さんに二、三——これは御想像でもけつこうでありますが、ただいまの御説明に関連してお尋ねをしておきたい。  それはただいまの水陸稲が、平年作に比較して合計四百三十三万七千石という驚くべき減収を大体予想されておるということを言つておられます。従来統計調査部の調査は、非常に手がたくなされておるのでありまして、むしろ地方在住の者から見、実際の面から見ますると、あまりにも手がた過ぎるという感じを持つておるのであります。従つて、ただいまここに、その従来堅実な数字に基いた発表をされた当局が、この驚くべき数字を発表されておるのでありまするから、実際における減収は相当大きいものをわれわれは予想し、その結果を非常に心配をいたしております。はつきりした減収の要素としては、まだ長野以東における低温被害は、この数字に載つておらないということであります。これは明らかに今後一つのフアクターとして出て来るものでありまして、的確に出て参りますが、そのほかに実際問題として考えられることは、品質の低下であります。水害地あるいは病虫害の発生激甚の地方における米の品質上から来る悪影響というものは、統計調査部の数字にはあるいは載りかねるかもしれませんが、実際問題としては非常に大きいものがあると思います。そこで今お尋ねしたいのは、この長野以東における低温被害の大体の面積、またその被害程度というようなことについて、御推定でもけつこうでありますが承りたい。伝え聞くところによれば、長野県の高冷地帯あるいは北海道における状態は、憂うべき事態であるやに私どもは聞いておりまして、その概況なりとも、もし判明するならば、この際お聞かせを願いたい。本日が無理であるならば、いつごろになればこれらの低温被害の概貌がつかめるか、そういつた点についてお尋ねをいたしたいのであります。
  102. 安田善一郎

    ○安田説明員 まず最後の、いつごろになつたらということでございますが、私どもは事務所を督励いたしまして、事務所の現地を今月の十日において締めくくつて本省へ送るように、こういうことで指令を出しております。この次、統計法に基きまして従来通り公表いたしますものは、九月十五日現在を九月末に確定した作付面積被害量とともに、予想収穫高を決定公表することがきめられておりますが、その間におきまして、御希望に沿えるようになるべく努力をいたしたいと思つております。概況を申し上げますと、八月十五日以降の推移は、北海道の方から気温が低下いたして参りまして、だんだんと西に及びまして、最後は北九州、四国にまで、三十六日に至つて及びました。その間において、関東等でお身近にお感じになりましたように、関東では八月十五日以降二十二日まで異常の高温が続いた翌日から、低温多雨に逆転をいたしまして、東海では二十五日、その翌日は九州、四国、ほとんど日本全国にわたりましたが、作物調査及び見通しを立てます上において、気象感応試験及び気象台、測候所の調査を利用いたしておりますが、稲作は御承知の通り、二十度を過ぎた温度が相当の期間継続いたします場合、十五度、十六度程度のところでありますと、ごく短日でも、たとえばひどい場合は一日でも、成育度合いに応じまして——幼穂形成期、開花期、それから、さらには登熟期にある早場米のようなものでありましても、それぞれある種の障害を来します。その障害の結果は、程度ないしは影響の有無は、外形上現われませんと、各県で少数やつております気象感応試験の結果以外は、判定が困難でありますので、九月十日という日を切つて調査を命じておるわけでございますが、技術的に見まして、今年は最高気温の方は低かつたが、その割合には平均気温は、低いには低いがそれほどではない。最低気温は守られて来ましたので、北海道と東北の一部を除いては、昔から言います冷害という症状は比較的ありません。各県にわたりまして、高冷地におきましては起きておりますが、しかし一般的な低温障害というものは、先ほど申しましたのが八月十五日以降に起きまして、札幌におきましては、従つて北海道の相当広範囲の地域におきましては、十五度以下が五日間ございました。十五度以上二十度以下に行きますと、十二日間もございました。以下長野に至りますまで、多少程度は緩和されておりますが、青森、盛岡までは大体同じくらいでありますので、青森県、岩手県、太平洋岸が悪い特徴がございます。平年とちよつと違いまして、日本海の方がややよろしい状況でございます。この状況は栃木県まで続いておりまして、十五度以下を一日ないし三日示しました所は仙台、秋田、山形、福島、水戸、宇都宮でございまして、その原因気象関係でございますので、県内小地域というよりは、全般的にわたつておるかと思います。その他の関東、北陸、長野までは、十五度以下はございませんでした。但し二十度以下はかなり続きまして、大体十日以上ございます。すべて十二、三日であります。それ以外の地域はございません。ただ要因は違いますが、これと同じような作柄の結果を招来いたしますものは、北九州の災害地でございまして、この場合は、全国的に同様でございますが、特に北九州では、前作の麦が刈取りが遅れて、苗しろから本田への移植が遅れた。三、四口から五、六日は必ず遅れておりますが、水害のあと植えの関係からいたしまして、苗の移植をしたことなど相当努力がされましたが、中には直播をしたものもございまして、この場合かなりその後の好天候によります好影響がありまして、分葉等は相当多く、草たけのほどほどのものが出ておりますけれども、九月以降の気象台の見通しをかりに申しますと、九月以降は上旬末に低温に向い、中旬は全般に低く、一時かなりの低温が現われ、下旬も上下の変動がやや大きく、旬の初めは西日本を除き、旬末は全国的に、低温が現われるという予報を持つておりまして、特殊の不連続線に伴う、小地域だが非常にひどい水害は、ことしかなり観測誤りをいたしておりますが、その他の条件は、中央気象台の気象観測は、本年についてはかなりよく当つておりまので、それらを勘案いたしますと、西日本の低温から来る、出穂、開花、受精の障害も合せて、簡単に申しますと、青米ができるか稔実がないかというような状況相当不安に思つておる次第であります。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 残余の質疑は明日食糧当局が御出席になつたときに、関連がありますので、あわせてお尋ねをしたいと思いますから、明日便宜をはかつていただきたい。  ただ先刻から委員長に通告しておりますように、この際厚生省並びに農業改良局関係に、おそくなつて御迷惑でありますが、一、二お尋ねを申し上げておきたいのであります。それはホリドール等の新農薬の問題についてであります。本年の異常な病虫害の発生に伴いまして、多量の新農薬が使用され、その中でも、先年来最新薬として偉効を誇つて参りましたホリドールも、非常によく普及をいたしたようであります。ところがこのホリドールの普及の裏には、その犠牲が各地に頻発しておる状況を聞くのであります。私は先般休会中に相当農村を歩いてみたのでありますが、その際どこへ行きましても聞きますことは、ホリドールの中毒問題であります。表面的にはつきりホリドールに基く中毒、あるいは中毒が著しくて死亡に至つたというような点は、医師の診断等であまり表面化しておりませんが、明らかにホリドール中毒によつて不慮の災厄を受けた農民があり、また指導者が多数あるようであります。この点について、現在のホリドールの普及の状態を、まず最初に所管当局から御説明を願いたい。
  104. 堀正侃

    ○堀説明員 御質問の、ホリドールだけではありませんが、ホリドールを主体といたしますパラチオン剤は、本年は御承知のように全部輸入したのでありますが、輸入量は、数字がちよつと概数になるかもしれませんが、乳剤で約四百二十トン、それから粉剤として使用いたしますものが約七千トン近い量であると思います。われわれが最初このパラチオン剤によりまして防除計画を立てましたのは、二化めい虫の第一化期及び第二化期を通じまして約五十六万町歩という防除計画を立てたのでありますが、実際問題といたしまして、今年は二化めい虫の発生が非常に大きかつたので、大体において第一化期に大部分が使用し尽されたのであります。第一化期は第二化期よりも農薬の使用量が少くて済む結果、実際に使用されました面積は、二化めい虫で大体七十万町歩ぐらいというふうに見たらいいのではないかと思つております。なおそのほかに果樹で約八万町歩ぐらいの防除が行われたというふうに考えております。
  105. 足鹿覺

    足鹿委員 相当面積にホリドールが散布されたということを、今の御説明で知つたのでありますが、それで先刻もちよつと申しましたように、このホリドールを散布して行く場合に、根が猛毒性を有する薬剤であるだけに、当局としても、その取扱い上における指導は、完璧を期しておいでになるものだと私どもは信じておつた。ところが事実日本の農村の随所に現われておる事態から判断をいたしますと、数ある中でありますから、やむを得ない災難もあるといたしましても、猛毒性を持つ薬の取扱いの指導について、遺憾な点がありはしなかつたかと考えます。これについて各府県の指導も、またその指導員の指導の要領も、人によりあるいは時期によつて、必ずしも統一ある権威ある指導が行われていなかつたのではないか。そういう事実を私ども聞いておりますが、取扱い上における指導は、どういうふうな指導を厚生省当局と打合せをして樹立し、これを末端へ流して、遺憾のない措置をとられたか。それについて厚生省並びに改良局当局の御説明を求めたい。
  106. 楠本正康

    ○楠本説明員 御指摘のような薬剤の使い方の指導につきましては、厚生省といたしましては、一応農業関係の害虫防除用、特に森林並びに農作物に限つて使用することに規定してございます。なおこれらの使用にあたりましては、それぞれ地方におきまして必ず専門の技術員、たとえて申しますれば、農業改良普及員であるとか、あるいは森林関係の職員であるとか、かようなそれぞれの立場の専門職員によつて必ず指導を加えて、その後に使用するということにいたしておるのでありますが、なおこれらの指導方法につきましては、あるいは使用方法等につきましては、従来農林省と十分連絡をいたしまして、現場の指導は農林省が主として担当をしておつた、かようなことに相なつております。
  107. 足鹿覺

    足鹿委員 それはいいですけれども、技術的に、たとえば現地で聞く声でありますが、これは衛生部長もよく御存じだろうと思うのですが、その人の体質によつて相当吸収しても若干の目まいや吐きけ程度で済む者もある。また高熱を出して卒倒する者もある。それはその人の体質にもよることでしよう。ところが府県によつて、また同一の府県であつても、その指導員の指導の仕方によつて相当まちまちになつておると思う。たとえば、これは兵庫県の豊岡で聞いたことでございますが、これは去年のことでありますけれども、ある指導員が最初来たときには、こんなものは恐ろしくないのだ、誤つて飲んだつて大したことはないということを言つた。その直後に、中毒死と、あとで京大で診断をしたそうでありますが、中毒死があつて、新聞の論調やいろいろの点でやかましくなつた。その後はこれはとてもきびしいたいへんな薬だから、注意しなければならぬというように検討が始まつたと、被害者の近親者が涙ながらに私に訴えた。そういう点から推察いたしまして、どうもこの薬に対する取扱いの指導の要領というものが、相当不統一ではなかつたか、そこら辺から割合軽く考えておる者もあるし、また非常に慎重にやつておる者もあるという点で、統一性がなかつたのではないかということを私は考えまして、もちろん増産は国家の食糧情勢から見まして最大の要請でありますから、私はこの薬をこれで使用禁止しろというような考えはございませんが、人命はそれ以上に大事であると思う。普通の劇毒物の取扱いについても、厚生省は厳重なる取扱い上の許可制をとられて万全を期しておいでになつておつて、それでこの程度のものはよいのだと思つても、事実規則に縛られてずいぶん迷惑しておる。私ども末端でいろいろ不平を聞きますが、人命を保つ上においては万全を期さなければならぬというのでよく説得するのですが、この場合私は、そういう点で指導対策に非常にむらがあつて、そして運の悪い、軽率な指導を受けた者、体質の弱い者が中毒を受けて、往々死に至るというようなことがあるのではないかというふうに感じました。これは一つの話でありますが、お聞きおき願いたい。山本寿賀雄という豊岡の人間だそうですが、農協に勤めておつて購買主任をしており、そして自分の義兄の田圃を勤務以外の時間に——早朝に起きて、一反ばかり自分で散布をした。そして二十日ばかり後に肝臓障害を起して死んだ。体中が紫斑を呈して死んだのであります。あとで京大で、これは中毒死だという断定が下つたそうでありますが、これに対して兵庫県庁なりの態度というものが、中毒死であるということ自体を確認するに躊躇するという態度であつたようであります。私はこういうことは明らかにして、今後こういう不慮の災厄を受けることを最小限度にとどめ、また絶無ならしめて行くということのためには、その恐るべき中毒状態というようなものはこれを公にして、そうして世論を喚起して、農民の注意を呼び起して、将来のあやまちを防止して行かなければならないにもかかわらず、何かそのときのいきさつもあつたでしようが、何かこれは中毒死ではないのだというようにひた隠しに隠して行く。これはまた、遺族の者としてみれば非常に情けないことでありますから、つつかかつて行くというような感情上のもつれもあつて、事実京大での診断が中毒死であるということを確認しておるにもかかわらず、いまだにこの問題が中毒死としての取扱いを受けておらない。そこに私はあなた方の出先、また改良局の出先との間に、くさいものにふたをするのではなしに、むしろこれはほんとうにこの実態を明らかにして、そうして今後に備えなければならぬ。今後そういう被害を受ける者を一人でも少くして行かなければならぬという立場に立たねばならないにもかかわらず、役人の通有性として、何か指導上の責任が自分にかかつて来ることを恐れるか、あるいは後難を恐れるか知りませんが、こういう事態については、とにかく問題をなるべく圧縮して行くというような措置がとられておるように、私は二時間ばかりいろいろ聞きまして、非常に遺憾に存じておりますが、それにしましても、最近におきましては熊本県の方面にもありました。九十六人と申しておりますが、そのうち死亡が二名ないし三名だというふうに新聞紙上でも私知つております。また兵庫県の改良局の指導技師が、やはりこの中毒を受けておるという話も聞きました。そういうような的確に中毒であつたかどうかということは、今述べたようないきさつから、ややもすればふたをされるような形になりますが、新聞の「声」の投書欄を見ましても非常にやかましい。これは人命に関することでありますから、非常にやかましいのは当然であると思います。ただ私は、それに対する措置というものが、もつと公然と徹底して行われるかどうかということを申し上げておるのでありますが、そういつた点からホリドールの被害統計というものは、これが実用に供されてから今日までに、厚生省に届いておる中毒あるいは中毒とみなすべきものの被害者がどれだけあるか。その中で重症となり、あるいは死亡したというような統計がどういうふうになつておるか、それを御持参あればこの際お聞かせ願いたい。
  108. 楠本正康

    ○楠本説明員 まず死亡者について申し上げますと、昨年は散布のために直接死亡いたしました者が十三名、本年は今までに散布に従事したために死亡いたしました者が六名ございます。そのほか自殺の目的等で使つた者がさらに十三名出ておると思います。なお中毒だけで命をとりとめたような例は、後ほどなお調査を進めまして必ず御報告を申し上げますが、現在まで判明いたしておりますもので、手元に入つておるものは百例近く上つております。特に最近私ども非常に注目いたしておりますものは、単に散布に従事した者以外にへたとえば散布したあとで、そこでとれましたなす、トマト、いちご等を食べて、それによつてまつたく関係ない者が中毒したとか、あるいは河川が薬品のために汚染されて、そのためにそこで水泳しておつた子供が中毒をしたというような例もございます。これらは一々確認すべき状況調査をいたしておりますが、中にはいまだ必ずそうだと確認できないものもございますが、さような状況に相なつておりますので、私どもといたしましては非常に注意をいたしておるわけであります。ただこれはもちろん指導を徹底させなければなりませんけれども、一つにはこれは二十六年以来始まつた仕事であります。本格的にこの仕事が進みましたのは昨年であります。従いましてどうしても短期間のために指導が徹底しない。しかもこれくらい猛毒の薬はございません。さような点で、ただいま御指摘のような点があることはまことに遺憾と存じておりますが、なお私どもの立場から申し上げますれば、これらはむしろ禁止すべきものというふうにも考えられます。しかしながら行政というものは、必ずしも一方的に衛生的な観点からだけ判断することもできません。そこで総合的な見地から特に食糧増産に重要な関係がありますので、できるだけただいま御指摘のように、その害を絶無ならしめてこれを使つて行くという方法は何かないものかといろいろ苦心いたしておりますが、とにかくもう一つの難点は、これが現在はまだ研究が十分に実はできておりません。正直なところを申し上げますと、たとえていいまして、どれだけなら死ぬかという量ははつきりしておりますが、しからばどのくらいの量ならば死ななくて中毒だけで済むかということになりますと、その辺の浪界点は、はなはだいまだ不明瞭であります。しかも一方、たとえば食物についた場合に、これは滲透性があるといわれております。たとえばなすならなすの表面につきますと、中に滲透する性質があるといわれておりますが、これらにつきましても、しからば中で毒力がどのように変化するかということにつきましても、いまだ十分な結論を得ておりません。また実験的に見ましても、幾日くらい空気中に放置すれば大体毒力が減少するか、無毒になるかということもいまだ十分にわかつておりません。さような関係で実は根本的な対策を立てるに至つておらぬことをはなはだ申訳なく思つておりますが、今後さような点を十分に調査研究をいたしまし七、すみやかに結論を得まして、この問題のもつと根本的な対策を立てて進みたい、かように考えております。なおただいま御指摘の、現状はこれを伏せる傾向があるというようなお話がございましたが、これは若干かような傾向があるのじやなかろうかと存じます。これは私どもといたしましては、狭い衛生的な視野からすれば、これはごかんべん願いたいという点から、むしろ押えにかかる。それから農林当局の方にしてみれば、これは何としても食糧増産上必要なものであるというので、あえてこれを大いに普及して行くというようなところに、若干思想上のずれがあるというようなふうに考えております。そういうような点をもう少しくうまく両省が協力いたしまして調整いたしまして、あらゆる点で正しい行政の線で解決して行くということが必要であると存じます。これも何分にも昨年から本格的に取上げられました仕事だけに、その思想上のずれ等につきましても、今後十分に調整をはかりまして仕事を進めて参りたい、かように考えております。しかしながら人命にも触れることでありますので、今後一層的確な指導をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  109. 堀正侃

    ○堀説明員 すでに御存じかと思いますが、この薬は昭和二十七年に、実はわれわれといたしましては食糧増産の立場から、相当もうすでに実際的に多量使いたいという希望は持つていたのでありますが、何分にも今お話のあつたように毒性が強いというような点から、二十七年は御承知のように実験的使用というふうな方針で、最初約一万町歩につきまして、責任ある指導者によつて実験的に使用をされるというふうな方向をとつたのであります。これはその間に一面この薬に対する使用方法等を十分に普及したいという考え方と、はたしてこの薬によつてわれわれ期待するような優秀な効果が得られるかという二つの点から実験的使用をしたのであります。その結果に基きまして、昭和二十七年の秋、大体稲作の散布が終つてからでございますが、全国の技術者を集めまして、この薬の技術的使用方法あるいは被害防止につきまして、全国の専門家の講習を東京でやつたのであります。本年の使用にあたりましては、先ほど厚生省の方から御説明がございましたように、法規による取締りもやりまして、ある一定の責任ある、たとえば改良普及員とかあるいは病虫害防除員というような者の指導のもとに必ず使用するということとともに、一方改良局のいろいろ指導機関を通じましてこれが使用徹底に努めたのであります。その間先ほどお話のございましたように、かえつて指導の行き過ぎと申しますか、徹底したために一時使用が低調になるというくらいの、われわれといたしましては指導をいたしたつもりであります。しかし御指摘のように、あるいは府県によりましては、若干その指導のしぶりに個人差があり、また指導者の個人的な差もあつたことはおそらく事実であろうというふうに、私は考えるのでございます。現在私の方には、まだ厚生省のようなしつかりした統計は来ていないのでございますが、今まで大体口頭による、また一、二書類によつて報告を受けておりますところによりますと、いわゆる散布中における死亡等の大きな事故は、大体において注意の点において欠ける点があつた。たとえば手袋をし、あるいはマスクをはめるべきをはめずにやつたとか、裸でやつたとか、あるいははずれたホースの品をふいたとかというような不注意のものが大部分であつて、注意を守つたものには、そういつたふうな大きな事故が起きていないというふうな報告を受けておるのであります。何にいたしましても、これもやはり普及指導の不徹底ということに帰するのかと思うのでありまして、今後は御指摘の指導普及等につきましては、格別になお一層の努力をいたしたいというふうに考えておりますし、なおその他の事故の防止につきましても、厚生省方面とよく相談をいたしまして、できる限りこれが防止努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  110. 足鹿覺

    足鹿委員 非常に誠意のある御答弁をいただきまして、今後の点については、私は大いに厚生、農林当局の御措置を期待するものでありますが、さて問題は第二点に入りまして、昨年の被害が十三人ということはただいま厚生省からはつきりおつしやつた。本年も六人ある。はつきりしたものが両年合せて二十人近くある。自殺で死んだ人は別といたしまして——しかしそれらの薬が容易に手に入るから自殺用に供されるという点では、今後措置を講じなければならなぬ点があろうかと思いますが、とにもかくにもこれはいわば農薬による公傷死——いわゆる農業増産のために自分のたんぼで懸命に働いておる間、あるいは農民に対して指導中に倒れたその指導職員というようなものは、考え方によつては不注意であつたからしかたがないといつてしまえばそれまででありますが、ある意味において私は公傷的な性格を持つておると思う。それはいろいろりくつを言えばまたあなた方にもいろいろ御議論もあろうと思いますが、直接の被害を受けた者、あるいはその被害を受けた者の家族というようなものに対しまして、いわゆる救済的な責任があるかないかということなんです。これは直接救済の責任は私はないのではないかと思いますが、しかし憲法第十六条とかいろいろな点を勘案して考えてみます場合に、直接の責任はなくても、やはりこれを奨励しておつた政府にも道義上の責任は免れないと私は思う。またその地方の出先の人々の行政官庁の道義上における責任は、私はこれはある程度つて出て、そして同情と温情をもつて問題の処理に当らなければならぬ、私はそういうふうに考えておるのでありますが、たとえば私がこの間聞きましたのは、昨日嘆願書が来ておりますから、あとでごらんに入れますが、二十九才の当主が死んでしまつたために、老婆が妻とともに子供二人抱えて、まつたく生計にも困つておるというような実情なんです。それが農協の職員が、時間外に自分が激毒物の主任をしておつたために、親戚のたんぼをやつたのであるから、これは業務死でないという労働基準監督署は判定を下しておるそうであります。もつとも法律上からいえば、そうならざるを得ないと思いますが、遺族の人々がみんなそういうように窮乏しておるとは考えませんが、こういうきわめて同情すべき立場にある者も、この二十人近い者の中には私はあろうと思う。また直接表面に出ておらないが、これによつて余病を併発するとか、あるいは間接の原因なつて、病死するとかいう者が、私は相当あるのではないかと思う。今までの新聞紙上で声の欄を見ておりますと、相当ある。そういうものはみんなどうにもならぬというので泣寝入りであります。私も鳥取県でありますが、帰郷中に一つぶつかつた。それは非常に篤農家が、つれの話を聞いてみたところが、自分も散布直後に入つたけれども何ともなかつたというので、その篤農家は勇を鼓して入つた。ところが体質の相違でしようか、敏感なせいでしようか。そのまま死んでしまつた。そういう点で、この薬の取扱い方に対して、それをみな政府の責任だ、あるいは地方公共団体の責任だとは私は言いませんが、しかし、少くとも道義的な責任の一半を考えられるならば、地方庁から正式の文書が来れば、まあちよつと考えてやるとかいう今までの考え方ではなくて、たとえばそういう事態については、ただの一ぺんでも、現地においでになつてそれを慰問するとか、あるいは当時の実情を聴取して、そしてあなた方の今後の指導に資せられるとかいうようなことがあつたでしようか。そういう点で、私はまだ欠くるところがありはしないかと思う。少くともそういう事態が全国に頻発しておれば、農林省なり厚生省もただちに現場に御出張になつて、そしてよく実情を聴取され、そして調査をされて、今後の措置を誤りなく樹立実施して行かなければならないと私は思う。それと同時に少くとも、こういう一つの近代農業が前進して行くための途上における尊い犠牲者に対しては、わずかなことで足りるのでありますから、何らかの慰問の措置と申しますか、あるいは遺族に対する救済の措置といいますか、それは義務として国が行うのではなくて、国自体が日本農業の前進のために起る尊い犠牲者に対して、温情のある措置をお講じになることが必要ではないかと思う。これはあえて厚生省、農林省のみではございませんが、そういつた点について、少くとも何か具体的に御検討になつたことがあるでしようか、ないとすれば私はその点については、今後における被害を絶無ならしむると同時に、従来あつたものの、いわゆる被害者に対しましては、今述べましたようなお考え方に立たれて、あたたかい措置を御研究願いたいと私は思うのですが、その点について両当局の御所見をこの際承つておきたいと思います。
  111. 楠本正康

    ○楠本説明員 おつしやる通りまことに重大な問題でもありますし、また現在農民は危険なことを知りつつも、多少でも多く米をとりたいというようなところから、命を的にして、この危険な仕事をせざるを得ないような状況もございます。そこで私どもは、もちろんかようなことに関しましては十分な措置をとりたいということは当然でございますが、しかし、御指摘の点につきましては、今まで私どもといたしましては、何ら誠意ある対策あるいは事後措置をとつておらないのは、はなはだ遺憾でございます。もちろん日本農業を技術的に進歩させなければならないことは申すまでもございません。しかし、その危険の度にはおのずから限度がございます。従いまして注意だけでできるものかどうかという点につきましても、今後もう少しく研究をいたしまして、さらにその毒性の問題につきましても、もう少し持続性等を考慮いたしまして、もしこれがどうしても農民が命を的にしてまでやらなければならない仕事であるといたしますならば、これはいかに日本農業の技術的進歩のためとは申せ、厚生省としてはこれに対して禁止の措置に出なければならぬと存じます。しかし、かような点につきましては、いまだ資料も不備でございますし、研究も不備でございます。のみならずかような重大問題は、農林省ともよく相談をしなければなりませんので、今ここで結論的なことを申し上げるわけには行きませんが、少くともものの考え方としては、私どもはいやしくも人命に関することでありますから、かような措置で実は進みたいと思つて研究をいたしておるわけでございます。私どもも日本の農業の技術的の進歩を念願いたしますが、しかし、おのずからできることとできないこととがございます。この点につきましては、今後何分にも御協力をお願いいたしたいと思うのであります。
  112. 堀正侃

    ○堀説明員 事故の発生のたびに、われわれといたしましても、できる限りその原因追究のために係官等を派遣するような措置もいたしておつたのでありますが、先ほど御指摘のようなあらゆる場合について、これを御慰問したりするというような措置につきましては、いささか手ぬかりがあつたということは認めざるを得ないのでありまして、今後そういう問題につきましては、もちろんそういうふうにいたしたいと考えております。過去に発生した事故につきまして、何とかの措置をすべきではないかというお説でありますが、私自身としてはそういうふうには考えておりますが、私だけではいかんともいたしかねるところがありますので、これはよく研究をいたしまして、何らかの機会にお答えを申し上げたいと思います。なおこの薬につきましては、厚生省側のいろいろな所見もございますが、すでにこの薬は日本のみならず西独、英国、米国、ブラジル、エジプト、タイ、その他各国において相当使つておるのでありまして、今までの専門家の試験の結果から聞きましたところによりますと、そんなにむずかしい薬ではない。つまり農家が平常の農作業でもつてやり得る注意、つまりマスクをするとか、手袋をはめるとか、完全に衣類を着ておるとか、直接原液に手を触れないというような注意をすれば、被害は防ぎ得るものだというように私どもは承つております。一方これは私が言うまでもないのですが、この薬の出現によつて、日本の稲作が単なる二化めい虫の発生によつて生じておりまする百五十万石ないし二百万石の損害を防ぐのみならず、稲作の作付け形態に大きな変革を与え、結局は日本の稲作地帯の農業に一大革新をもたらす農薬であるというふうに確信をいたしておるのでありまして、今後御注意の点を守つて、不注意から生ずるようなことは絶無を期して、この優秀な薬の前途が、使用ができないというようなことのないように、ひとつ努力をいたしたい、さように考えております。
  113. 足鹿覺

    足鹿委員 非常によく私の質問に対して真摯な御答弁をいただきまして、私も了承いたしました。ただお願い申し上げたいことは、今お尋ねをしました点で、現地についても御調査なつたかどうかということについてお尋ねをしましたが、これには御答弁がなかつたようであります。おそらくこの問題だけに限つて、現地に責任のある人を派遣し、実情をつぶさに調べ、また地方の出先がそれに対してどういうふうな処置をしておるかというようなことについては、問題は小さいようでありますが、今も堀さんのお話によれば、少くとも日本農業に画期的な変革を来すというような大きな力のある農薬でありまして、それだけにその犠牲は尊いものだと私は思う。従つて最後にお願いしたいことは、現地について実情を御調査になり、政府としても今後の被害の絶無を期するとともに、慰問の措置等もあわせて具体的に速急に樹立していただきたい。現地をとにかくごらんになつて、そうして間接的な人の話ではなしに、実際にお聞きになり、実際にお調べになるということが、確信のある措置もできることであろうと思う。ですから、そういう点をおやりになつて、今後の対策に万全を期していただきたいということを強く要望申し上げて、今日は私の質疑はこれで終つておきます。
  114. 井出一太郎

    井出委員長 大分時間も経過いたしましたので、本日はこの程度にとどめたいと思います。     —————————————
  115. 井出一太郎

    井出委員長 この際お諮りいたします。川俣、福田両委員より、造林及び治山治水に関する小委員会を本委員会に設置されたいとの申出がございましたが、これを設置するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  なお小委員の員数、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決します。  明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十四分散会