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1953-07-29 第16回国会 衆議院 農林委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十九日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 平野 三郎君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 佐竹 新市君 理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       佐藤善一郎君    佐藤洋之助君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松野 頼三君    加藤 高藏君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       川俣 清音君    中澤 茂一君       河野 一郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官          (農地局長) 平川  守君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君  委員外出席者         農 林 技 官         (農地局かんが         い排水課長)  小川  孝君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 七月二十五日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  池田勇人君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員池田勇人君、杉村沖治郎君及び根本龍太郎  君辞任につき、その補欠として佐々木盛雄君、  中澤茂一君及び河野一郎君が議長指名委員  に選任された。     ――――――――――――― 七月二十五日  臨時硫安需給安定法案内閣提出第一六七号) 同月二十七日  畑地農業改良促進法案金子與重郎君外二十四  名提出衆法第四六号)  凍霜害全額国庫補償に関する決議案古屋貞雄  君外七十名提出決議第四号) 同月二十五日  統計調査部職員の旅費及び庁費増額に関する請  願外一件(大石ヨシエ紹介)(第五四六六  号)  家畜飼料自給に関する請願山本正一紹介)  (第五五一一号)  農地交換分合指定市町村国庫補助制度確立に  関する請願中村英男紹介)(第五五一二  号)  狩猟期間延長に関する請願中村英男紹介)  (第五五一三号)  霞浦北浦干拓事業禁止に関する法律制定の請  願(山村新治郎紹介)(第五五一四号)  農業改良普及事業強化に関する請願小澤佐重  喜君紹介)(第五五一五号)  震災害復旧耕地事業用排水機維持費国庫補助に  関する請願中村英男紹介)(第五五二六  号)  新城村地内国有林野払下げに関する請願永田  良吉紹介)(第五五四九号)  開拓道路花岡線改修工事施行請願永田良吉  君紹介)(第五五五〇号)  甘しよ切干を含む農産物価格安定法制定に関す  る請願馬場元治紹介)(第五五五一号)  花岡ダム建設に関する請願永田良吉紹介)  (第五五五二号)  鹿屋市に国立農林試験場設置請願永田良吉  君紹介)(第五五五三号)  佐多町地内国有林野払下げに関する請願永田  良吉紹介)(第五五五四号)  高隈ダム建設に関する請願永田良吉紹介)  (第五五六二号)  千葉県の水害対策確立に関する請願森清君紹  介)(第五七六四号) の審査を本委員会付託された。 同月二十四日  食糧対策に関する陳情書  (第一二一二号)  昭和二十八年産米基本価格設定並びに早場米奨  励金に関する陳情書  (第一二一三号)  台風等ひん襲地帯に対する農業災害防除措置の  立法化に関する陳情書  (第一二一四号)  食糧自給促進法並びに農産物価格安定法等の実  施促進に関する陳情書  (第一二一五号)  同(第一一二六  号)  土地改良法に基く換地処分に関する陳情書  (第一二一七号)  小清水村東野、萱野地区開拓に関する陳情書  (第一二三二  号)  西日本水害による蚕糸復旧対策に関する陳情書  (第一二五三号)  食糧自給促進法制定等に関する陳情書  (第一二七六号)  食糧自給対策に関する陳情書  (第一三〇四号)  家畜保健衛生所増設に関する陳情書  (第一三〇五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関  する法律案内閣提出第一〇〇号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六〇号)  臨時硫安需給安定法案内閣提出第一六七号)  畑地農業改良促進法案金子與重郎君外二十四  名提出衆法第四六号)     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  去る七月二十七日に付託になりました金子与重郎君外二十四名提出畑地農業改良促進法案議題といたし、審査を進めます。  まず本案趣旨について、提出者説明を求めます。
  3. 安藤覺

    安藤(覺)委員 議事進行について。たいへん時間も切迫しております折柄でもありますし、この畑地農業改良促進法というものは、たいへん農民に直接影響のある問題でもありますので、提案理由については、印刷配付になつておられまする以上にわたつて、詳細にお述べ願いまするというと、われわれもまたそれについて質問を省略することによつて時同の節約もできようかと思いますので、この暑い折柄でもありますので、御苦労様ではありますが、少しく詳細に御説明願いたいと思います。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 提案者に申し上げますが、ただいまの安藤君の御趣旨をくんで御説明を願います。提案者代表金子与重郎君。     —————————————
  5. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま議題と相なりました畑地農業改良促進法案提案理由を御説明申し上げます。  御承知のごとく、わが国耕地面積約五百万町歩のうち畑地面積は、二百万余町歩にも及び水田面積にも匹敵する面積として広く全国に分布していうのであります。しかるに従来は、畑地農業につきましては、一般的に灌漑施設がなく、自然の降雨によつて灌漑を行つている状態でありまして、栽培技術及び栽培品種も固定化し、またその豊凶は、もつぱら自然的な降雨条件によつて左右せられる結果ともなり、農業生産力は一般的に低いといえるのであります。そこでこれらの畑地のうち河川もしくはため池または地下水により灌漑し得る可能な畑地に対し、農業改良計画によつて灌漑施設設置その他の土地改良及び農業技術普及改善を行うことにより、土地利用高度化をはかるならば、比較的短期間のうちに飛躍的な増産効果を発揮し得ることは、まつたく疑う余地がないのであります。またこれらの地域における農民は、今まで食糧生産に貢献して参りましたが、今後強力な施策によつて米穀その他の農産物生産の増強に精進するのはもちろん、農業経営の安定を得て健実なる農村の創成を見ることは、明らかであると申さなければなりません。この問題の解決に資しますために、ここに本法律案提出いたした次第でありままが、以下その内容の主なる点について申し述べることといたします。  第一条は、本法律案目的を規定いたしております。即ち畑地地域に対しまして総合的な計画に基き事業実施して、かんがい施設設置するとともに区画整理客土等土地改良事業施行し、耕種改善等農業技術高度化をはかることによりまして、急速に生産効果をあげ、食糧その他農産物増産に寄与することを目的といたしております。  第二条は、この法律でいう畑地地域内容をうたつたものでありまして、畑地の土壌即ち砂土砂壊及び火山灰土、それから地下水位その他の事項は、政令で基準を示し且つ、これらの畑地が集団的に存在しなければならないこととしました。  第三条から第十二条までの各条は、湿田単作地域農業改良促進法に準拠し、第三条に農林大臣地域指定を、第四条に都道府県知事区域指定を、第五条、第六条、第七条、それぞれ市町村長都道府県知事農林大臣の定める農業改良計画を一第八条に事業実施に必要な経費を、第九条に農業改良計画内容を、第十条に農業改良計画実施を掲げております。  それから第十一条及び第十二条に畑地農業改良促進対策審議会設置及び権限並びに審議会組織を規定した次第であります。  以上簡単に御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを切望いたします。  なおただいま安藤委員から、詳細にこの法律提案に対する考え方、あるいは今後の行き方について、提案者考えるところを述べろというふうなお話がありましたので、その点について申し上げたいと存じます。  まず第一に、この種の法律がたくさん出ておるのに、なぜ畑地振興に対する独立した法律を出さなければならないか、こういうことがまず第一に疑問になる点であろうと存じますが、これは今までの土地改良法によつて実施し得る事業のうち、その土地特殊性ごと一つ立法をいたしたのでありますが、煩瑣であつて、こういう必要はないというような考え方も、一応私どもわかるのでありまするけれども、今までの総合的な土地改良のわくで行きますると、いつもその予算獲得というものに非常に至難を来しておりました。ところが今度の場合は、どうしても今後の日本農業の革新的な一つの行き方として、畑地と水の連繋というものをもつと強度に持ちたい、いわゆる畑地かんがいというものは、いろいろの形において、今後の畑作農業に確信を持たしたいという点から、今年度修正予算におきまして、十億の食糧増産費を増加いたしまして、そのうち二億三千万円を既定予算に加えまして、約三億円の金をこの畑地かんがいに使えるように仕組んだのであります。そこでその三億円を組みましたが、今までのような考え方で参りまするというと、ただいま説明にも申し上げましたが、一単位経営規模が大きいということでありますので、一般土地改良基準によりますと、畑地かんがい特殊性を殺してしまう気づかいがありますので、特に今までの法律がありまするけれども予算関係からして、この法律を出さなければならなかつたことが一つと。もう一つには、事業施行上ほかの土地改良とまた特殊な立場にあるということ、いわゆる経営面積が、たとえば地下水のごときものを使う場合には、相当小さい面積でもこれを対象にし得るということでないと、この法律が生きて参りませんので、そういう点からこの法律を特殊な一つの一本法律として出したわけであります。  そこで、それならば今後どのくらいを提案者希望しておるかというと、この問題につきましては、大蔵省考え方も、今まで相当強く出ておるらしいのでありまして、農林省一存では行かぬと思いますが、少くとも一単位工町歩程度のものを生かして行かなければならない。ことにこの土地改良事業に総じて言われることでありますが、国営ないしは県営というような大規模のものほど農民自体積極性は欠けるのであります。いわゆる上の方でそういうことをきめてくれたというような感じが強くて、おれたちがこれをやつて、そうして増産を上げるんだという観念が乏しくなるのであります。従つて同じ予算をとりまして、その予算が、その事業遂行上に相当きゆうくつな場合がありましても、小規模土地改良の場合は、農民個々の自覚によつて労力奉仕あるいはその他の方法によつて、これをやりとげるということができ得るのでありますけれども、大規模事業になりますると、一つ制度がやる仕事かのような形がありますので、みずから積極的に犠牲を払うという関心が薄くなるのであります。これは実例に照し合せまして、各所に見られる点でありますので、この点を、この国費の少い中で、その国費最高度に使おうとするならば、むしろこの小規模のものから手をつけて行く方が、はるかに国費を有効に使えるゆえんである。こういうことを提案者といたしましては強く考え、それには、畑地かんがいに対してましては、別の考え方を持つてもらうという考え方をしたわけであります。  それから畑地かんがいということに対して、もう一つ提案者が非常に希望しておりますることは、日本の今までの農業経営が、水田と畑というものを極端にわけまして、水田四六時中水に没つておる。畑は人工的に水をかけるということは、ほとんど特例にしか、行われなかつたというのが、最近畑地かんがいの実績を見ますと、ある地帯においては、まきつけの当時は、畑の管理をしているが、非常に土地の環境がよろしい場合には、第一回の除草以後は、ほとんど水田としての特徴を持つた管理をしているようなりつぱなところもありますし、また不幸にして旱魃で一気にやられるものを、それを貯水しました水によつて旱魃を未法に防ぐといういうような、旱魃除けの形において畑地沖渡がなされているものもあり、そのやり方は非常に区々まちまちでありますが、その土地土性と、水利の状況によつて、非常に有機的な弾力のある農業経営農家生産技術というものが、今後発展して参るのじやないか。そういうことによつて食糧の絶対数というものを多く確保できることが一つと。もう一つは、全国的に見まして、畑地専門農家経営というものは非常に脆弱性があるのであります。何と申しましても、日本農家といものは、食糧——ことに米という基礎食糧をとること、現金収入の前にまず基礎食糧を確保するということが、農業経営、農家生活安定の基礎であります。しかるに畑地地帯におきましては、あるいは養蚕、あるいは蔬菜栽培のごとく、その生産物が、景気のよろしいときには非常に有利になり、有頂天になるのでありますけれども、その波が非常にはげしいために、常に生活の安定がはかれないというのが、畑地農業の通念であります。そこでその畑地農業地帯に対して、陸稲その他の主食というものを、安全な形においてつくるということは、国の絶対食糧をふやすと同時に、その畑地農業地帯農家経営基礎をかたくして行くという、こういうふうな大きな役割をねらつておるわけであります。そういう大きな観点からいたしますと、むしろ、この畑地灌漑の問題は、今日まで大きく取上げられなかつたこと自体が非常にふしぎなのでありまして、この取上げられなかつた理由というものは、さいぜん申し上げたように、日本習慣といたしまして、水田という特殊なものを持つておる。そうして畑というものは水をかけるものではないというような長い習慣が、そうさせたのでありまして、今後、この狭い農地から、いかにして絶対生産の量をあげるかという観点から見ますと、この畑地農業を水によつて高度化して行くというところに、私どもは非常な期待を持つておるわけであります。  二、三つけ加えて町説明申し上げたわけでありますが、なお、この問題につきましては、法律そのものよりも、この法律実施する方法について、たくさんの疑問があろうかと存じますので、その点等につきましては、幸い本日は大蔵省関係、あるいは農地局関係も来ておりますので、十分御検討くださらんことをお願いする次第であります。
  6. 井出一太郎

    井出委員長 本案に関する質疑は暫時留保いたします。     —————————————
  7. 井出一太郎

    井出委員長 引続きこれより、去る七月二十五自付託となりました、内閣提出臨時硫安需給安定法案議題といたします。まず本案趣旨について政府説明を求めます。保利農林大臣
  8. 保利茂

    保利国務大臣 ただいま上程せられました臨時硫安需給安定法案提案理由を御説明いたしたいと存じます。  硫安化学肥料の大宗として、わが国農業の最も主要な生産資材でありますことは言うまでもないところでありまして、その需給調整価格の安定をはかりますことは、農業経営の安定と農業生産力の発展にとつて欠くことのできない事柄であることは、私が申し上げるまでもございません。ここにおいて政府は、御承知のように肥料対策委員会を設けまして、その対策審議していただいたのでございますが、その答申に基きまして、別途本国会に提案せられまする硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案による合理化促進による生産費の引下げ及び輸出振興措置に対応いたしまして、国内需要量の確保と、国内価格の適正な水準による安定をはかりますための措置を講じたいと考え、この法案提出いたした次第でございます。  本法案内容概略を申し上げますれば、まず政府は、硫安生産業者生産費を、権限をもつて調査いたし、生産費基準として農産物価格その他の経済事情を考慮して、適正な水準でその販売価格を公定することにより、いわゆる出血輸出による国内消費者への転嫁を防止しようとするものであります。  次に輸出にあたりましては、国内需要を十分に確保することを前提といたしまして、国内消費見込量の、おおむね一割を調整用として保留することとし、これを適当な団体に買上げ保管させるとともに、なお輸出に向けられる硫安の数量を、政府の承認にかけて内需の増加に備えるとともに、季節的調整輸出円滑化に資することにいたしたのでございます。  第三にこれらの措置の適正かつ円滑な運用を期しまするため、硫安審議会設置いたしまして、硫安需給調整並びに価格の安定に関する重要事項につきましては、関係大臣の諮問に応じて調査審議していただくことといたしております。  以上この法案提出理由並びに内容概略でございます。会期切迫の折からではございますが、何とぞ慎重御審議をたまわらんことをお願いいたす次第でございます。
  9. 井出一太郎

    井出委員長 この際、本案審査方針等についてお諮りいたします。  昨日の理事会で協議いたしたところでありますが、第一点は、本案審査については、本委員会設置いたしております。肥料に関する小委員会審査せしめることなく、もつぱら本委員会審査することに申し合わせましたので、この点御了承願います。     —————————————
  10. 井出一太郎

    井出委員長 次に、この臨時硫安需給安定法案は、同じ七月二十五日、内閣から提出いたされ、通商産業委員会付託になつております硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案と密接な関連がありますので、この両案につきまして、農林、通産両委員会連合審査算会を行うことにつきましても、御了解を得た次第であります。つきましては、あらためてお諮りいたしますが、この連合審査会開会の件につきまして御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお連合審査日取り等につきましては、両委員長において協議の上、決定いたしたいと思いますから、御了承を願います。     —————————————
  12. 井出一太郎

    井出委員長 この際お詐りいたします。土地改良法の一を改正する法律案と、畑地農業改良促進法案とは、提案者が別個になつておりますが、特に便宜一括して審査いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。それでは両案を一括して質疑を行います。まず川俣清音君。
  14. 川俣清音

    川俣委員 私は前委員会において、土地改良法の一部を改正する法律案についての、大蔵省見解を求めておつたのでありますが、前の委員会には柏木事務官が見えられて答弁なされたのでありますが、非常に不満足な御答弁であつたので、あらためて大蔵省責任者の御出席願つて質問を続けて参りたいと考えます。今御出席になつておる政府委員は、前の委員会において、私が質疑をいたしましたことについて、何か報告を受けておられますかどうか。その点を私、お尋ねいたします。並びに土地改良法の一部を改正する法律案について、大蔵省はどんなような見解をとつておられまするか。この二点についてあらためてお尋ねいたしたいと思います。
  15. 石原周夫

    石原(周)政府委員 前回委員会におきまして、担当主計官が、この委員会出席をいたしまして申し上げました点、川俣委員から御質問のあました点、概略のことは開いております。  それから今議題になつております法案についての、主計局の意見でありますが、これは本法案賛成をいたしまして、閣議において決定いたしまして提案をいたしたのであります。
  16. 川俣清音

    川俣委員 本改正案について、大蔵省同意を与えられ——もちろん閣議で決定したのでありまするから、同意したものと見なければなりませんが、特に事務当局といたしまして、この法案改正の要点は御存じだと思いまするけれども、念のために申上げますと、土地改良法は、昭和二十四年八月施行以来、すでに三年有余の期間を経過いたしまして、その間における普通水利組合耕地整理組合及び北海道土功組合は、それぞれ土地改良法に基く土地改良区に組織がえを行いまして、新しき組織のもとに、灌漑排水施設農業用道路の整備、農地区画整理農地集団化農地の造成及び保全並びにその災害復旧等土地改良事業を行つて来たのでありますが、これらの事業を行う上に、今までの手続きは、やや煩瑣に過ぎまして、法律実施上不備であつた点が出て参りましたので、土地改良事業目的達成のために、手続簡素化をねらつておりまするのが、本法案趣旨であります。この簡素化をねらうということは、手続上の簡素化でありまするからして、手続上の簡素化が行われなければならない理由を、大蔵省はどういうふうにお考えになつておられますか。前には非常に複雑であつた、今度は簡素化をはかるのだ、こういう点について、やはり同意をしておられますか。簡素化をして参りますと、申請件数が非常にふえることになると思うのであります。申請件数がふえることについて、大蔵省はどのようにお考えになつておられますか。
  17. 石原周夫

    石原(周)政府委員 お話のございましたように、手続簡素化いたしまする結果といたしまして、従来よりも、案件の処理が円滑になるだろうという点は、お説の通り当然想像されるかと思います。その結果といたしまして、どういうふうなことに相なるかということは、あるいは私、先走つてのお答えになるかもしれませんが、前回担当主計官の方から受けております報告では、それが予算関係金額の問題に影響しやせんかというお話かと思いますが、あるいは先走つてお答え申し上げて恐縮でございまするが、そういうような結果まで見通しての賛成であるかどうかということに相なるならば、私どもは、あえて本件に限りませず、行政手続というものにつきまして、できるだけ簡素な方法をとりまして、かかりますよけいな時間、あるいは手間等を省くというような、一般的な意味において賛成をいたしました。それがただちに金額におきまして、相当な規模増額になるということにつきましての話は、これまた先走つたお答えかもしれませんが、また別途の方から考えて行くべきかと思います。
  18. 川俣清音

    川俣委員 なかなか先走つての御答弁があつたのでありますが、問題は、農民希望からいうと、簡素化というものは、手続簡素化ということのねらいはどこにあるかというと、なかなか手続をいたしましても困難な問題を、単に手続上の簡素化にとどまらないで、事業をねらつて申請であります。目的土地改良事業であります。事業の速成できることでありまするならば、どんな手続でも、少しくらいむずかしくても、一日や二日くらいの手数は省かないで、困難な手続をもあえて辞さないのでありますが、問題は、簡素化をねらつておる農民希望は、それではなくして、土地改良事業が実際できるかできないかということが問題であります。従いまして土地改良事業達成を妨げるようなものでありまするならば、これは簡素化されましても、何にも期待に沿うことではないのでありまして、問題は、手続簡素化という、いわゆる行政上あるいは書類上の簡素化ではなくして、すみやかにこれらの事業達成できるような予算的措置が講じられるかどうかということが、農民希望だと私は見ておるのでありますが、大蔵省はそういうふうにお考えにならないのですかどうですか。
  19. 石原周夫

    石原(周)政府委員 農民の立場と申されましたが、おつしやいましたごとくに、仕事ができることが主眼であつて、仕事ができるならば、手続に少々時間がかかろうと、畑地であろうといとわないのだというお話は、きわめてごもつともに拝聴いたしました。従いまして、希望せられる側といたしましては、本手続簡素化というものは、その半面におきましての金額の増加と申しまするか、事業がよけいに行われるようにしたいのだというお話も、きわめてごもつともであります。ただ政府の側といたしまして、この改正をいたしております点は、相手側の御事情は先ほどおつしやつたようなことでありますが、政府といたしましては、先ほど申し上げましたように、でき得るだけ手続を簡略にいたすということは、あらゆる場合におきまして、政府が十分考えなければならぬ点である。その意味において、でき得る限りの簡素化をはかつて参りたい。その意味におきましての賛成を申し上げたということに御承知を願いたい。     〔委員長退席、佐竹委員長代理着席〕  なお、後段のお尋ねでありまする、それでは予算をふやす気があるかないかという点につきましては、先ほど申し上げましたように、この簡素化をいたします話とは、別な問題といたしまして考えたいと思います。
  20. 川俣清音

    川俣委員 それでは観点をかえまして、土地改良法実施されてから、政府の財政支出が相当行われておりますが、これによつて相当な成績が上つたとお考えになつておりまするか。また、期付したほどあまり成績が上らないというふうにお考えになつておりますか、伺いたと思います。
  21. 石原周夫

    石原(周)政府委員 従来やつて参りました土地改良事業というものの効果の判定ということにつきましては、これは農地局の方から、もつと専門的にお答えを願つてしかるべきかと思います。私ども予算の要求なり、編成のときにあたりまして、いろいろな資料をいただいておるわけであります。ただ何分にも豊凶の関係でありまするとか、あるいは壊廃地があるというような関係からいたしまして、的確に、この分が土地改良に伴いまする分であるというような数字は、私ども承知いたしまする限りにおきましては、なかなかむずかしい問題であろうと考えております。しかしながら、それでは従来やつて参つた土地改良効果がなかつたかということになりますれば、そうは考えておらないのでありまして、これは食糧増産に実質的に貢献をいたしておるというふうに判断をし、考えております。
  22. 川俣清音

    川俣委員 今の御答弁は、抽象的でありますので、さらに突つ込んでお尋ねいたしますが、この土地改良で行われまする灌漑排水施設農地区画整理農地集団化、あるいは農地の造成、保全等につきまして、政府の財政支出が行われましてこれによつて上る収益は、いわゆる水害等に対する単なる復旧事業と異なりまして、直接これらの整理を行いました結果、あるいは農地集団化農地の造成を行いました結果、あるいは今出ておりまする灌漑排水の施設等におきましては、即時増産になつて具体的に現れて来るものであります。従いまして、これらの支出は、決していわゆる大蔵当局が心配しておるような、悪性インフレになるのではなくして、これは直接生産の上に役立ち、すぐ生産が上昇する支出であるのであります。この点はすでに大蔵省もお認めになつていると思います。いわゆる今の政府の財政支出の中には、非常な危険をはらんだ、悪性インフレになるような支出があえて行われておるときに、こうした生産上昇に直接すぐ影響するようなことについて、非常に出し渋つておられるような大蔵省考え方は、ちようど銀行家の考えるような考え方で、これらの土地改良に対する財政支出についても、銀行家の考えるような、安全投資というようなことを主眼としておられますか、またはほんとうに食糧増産の上に、これらの財政支出が生きておるとお考えになつておるのでありますか、この点をお尋ねいたしたい。
  23. 石原周夫

    石原(周)政府委員 食糧増産土地改良、あるいは農林漁業への公庫を通じての出資も入るわけでありますが、そういうようなものが、それ自身として悪性インフレ的である、あるいは増産の上に効果がないとは決して考えておりません。大蔵当局の考え方は、経費が増産役に立つかどうかということをもちろん第一の観点としております。その意味におきまして土地改良事業への経費は、そういう点に役立つというふうに考えております。ただお話の悪性インフレ云々ということを、主計局あるいは大蔵省は心配いたすのでありますが、それは申すまでもなく財政収支全体の問題でございまして、細承知のように収入にはおのずから限度がございます。ての限度のあるわくの中で、どういうふうに経費を配分いたすかという問題であります。従つて、おつしおるように、経費自身としては生産効果を生むが、その資金の調達方法というものによりましては、大分悪性インフレというものが生ずるのじやないか、その点を私どもは心配しておるのでありまして、経費自身が増産に貢献をいたすという点につきまして、それを否定するような考えはいささかも持つておりません。
  24. 川俣清音

    川俣委員 それはこの間の柏木さんの御意見によりますと、小さな面積土地改良事業等につきましては、監督がなかなかやりにくいので、どうしても国営であるとか県営であるとかいうような大きなところに財政支出が行われる方が監督しやすいのだ、こういうような御意見であつたように思うのでありますが、やはり次長はそのようにお考えになつておられるのであるか、それを承りたい。
  25. 石原周夫

    石原(周)政府委員 先ほど来申し上げておりまするのは、一般的に土地改良というものへの経費が生産に貢献するかしないかという一般論であります。ただいまの川俣委員のお尋ねは、そのうちで小規模なるもの、大規模なるもの、そういうことについて国の役割はどう考えるかというお話と思いますが、これにつきましては、食糧増産の経費にいたしましても、あるいは災害復旧——これは今いろいろな議論の対象になつておりますので、あるいはこれにあまり言及することは、はばかりがあるかもしれませんが、一般に公共事業そのものにつきまして考えておりますることは、目が責任をとり得る技術的な限界というものがある。これは国が国民の税金で経費を出すのでございますから、その経費がどういうふうに支出をせられ、どういうようなことに使われておるかということにつきまして、やはり責任がとれるところの監督、監査、そういつた技術的な問題が付随いたすわけであります。従いまして、そういうような国が技術的に責任をとり得るような仕事に限界を置いて行きませんと、金は出たが、いろいろあとでふりかえるというと、そういう運営についていろいろな問題を起こすということがございますので、国としては当然その立場上、責任をとり得る限界というものを考えざるを得ないというのが一点であります。  それから公共事業全体についてでございまするが、国のやりまする仕事というものは、必ずしも公共業の全体ではございません。従つて国が自分で責任をとる、あるいは補助というものを通じまして、部分的にも責任をとるというような分野をどこに置くか。それ以外の県あるいはその他の団体が責任をとる限界はどこに置くか。それでは、そのような国以外の団体の財源というものは、どういうふうにして確保するか。これは金融であるとか起債であるとかいうような財源の調達の方法は、また考え方があるのではないか。その両方を合せて考えてみまして、国がどういうようなことをするのが全体の仕事の推進の上に役立つかということが、考え方の中心であると思います。
  26. 川俣清音

    川俣委員 私のお尋ねしておるのは土地改良に関する問題でありまして、一般的な公共事業についてお尋ねいたしておるのではないのであります。従いまして、今の御答弁は一般の公共事業についての御答弁でありまして、灌漑排水事業等は公共事業のうちにお入れになつて大蔵省はお考えなつおるかもしれませんが、これらのものは直接生産関係あるところの事業でありまして、すなわち土地改良事業に伴うところの一つの便法としての灌漑排水施設であります。従つてこういう灌漑排水施設にいたしましても、土地集団化あるいは農地の造成等につきましては、大規模でなければ監督ができないのだというようなお考え方が今なおおありになるのですか。今日私どもがもつと積極的に見ますというと、土地改良が今行われておりますが、政府の直接の援助で行われておるのは私半分だと思う。土地改良の行われておる面積から申しますると、約半分くらいが国の財政援助によつて行われておるのでありまして、他の半分ぐらいは農家の自家労力、あるいは付近の労力奉仕によりまして、ここに小規模ながら土地改良が行われておるのであります。これらのものは監督がなくとも、自分の金で土地改良が行われております。このことは、いかに土地改良というものが農民にとつて重大な収量の上に影響するかということを示すものだと思います。これらのものは、みずからの財政の上において計画されておるところのものであります。これをすみやかに大規模にするようなことが、不可能でなくて可能なのです。ところがそうした小規模のものについては、監督ができないからということで放任し、請負師が介在するような大きな事業については大蔵省が無心だというような結果になるのではないか。監督ができるということは、請負師を監督することであつて農地を監督するというような考え方ではないように思う。従つて実際請負帥を使つて大きなことをやつておるのでありますから、この間いろいろ指摘されたような、いわゆる新劇県の上蒲原郷のような問題も、これは大規模なところに計画をされるから、それに伴うところの適任あるいは農法等が十分研究されないにかかわらず、大規模であるから金が出るというような、監督がしやすいというような考え方で行うために、みずから起つて来るところの欠陥であると思うが、これについていかようにお考えでありますか。
  27. 石原周夫

    石原(周)政府委員 先ほど私、監督の技術的な点につきまして比較的長く申し上げましたので、監督の点が問題の唯一の点であるかのようにお考えを願つておりますれば、これは私のウエイトの置き方が間違つておつたと思うのでありますが、監督の点も、一つの技術的な点といたしまして、小規模なものを多数やるということに相なりますると、監督の点でも技術的に責任のとれぬものが出て参るのでないかと思います。もう一つの、といいますか、本来の問題点は、私は後段に多少抽象的に、公共事業の全体について申し上げたのでありますが、土地改良も同じような考え方であるという意味で申し上げたのでありまして、大規模なものは国がいたさなければならぬ、あるいは国が府県というものに対して、助成をいたさなければ手のつけようがないじやないかという点、それがまた末端の方に参りまして、またいろいろ小規模なる単位土地改良事業の、いわば根元になるようなものをある程度進めて参りまして、お話にございますような、農村で、あるいは自己財源で、あるいは今どの程度がお話の主体としてまわつているか、ちよつとわかりませんが、農林漁業金融公庫で金融をいたしております土地改良の項目は、二十八年度において百十五億になつております。百億を相当越しまする金が、農林漁業金融公庫でまわつておりますので、お話のように相当に効果は顕著であります。そういうような点から申しますると、国が直接助成の方法をとるという行き方よりは、そういうような金融の方法でやる方が、より全体のバランスの上から見てよろしいのだという気持も私どもにはある。そういうような国あるいは国以外の団体との間に、どういうような仕事の分野の割付をいたして——そうかといつて、お前らかつてにやれと申しても、できない点がもちろんあるわけでございまするので、それは先ほど申し上げましたように、農林漁業金融公庫の土地改良に関しまする金融面、あるいは私今正確に記憶しておりませんが、県でやつておりまする仕事に対する起債、そういうような方面におきましての金のつけ方を考える、こういうことに相なると思います。
  28. 川俣清音

    川俣委員 そこで伺いたいのは、一昨年以来いろいろと土地改良に関する農地改定事業に関する法案が出ております。たとえば湿田単作地帯法あるいは積寒法あるいは傾斜地であるとかアカホヤ地帯であるとか海岸砂丘地帯というような法律が出ている。この土地改良法に基いて十分施行できる事業を、なぜ一体議員立法でこういうようなあらゆる角度からの土地改良事業に関する立法が出るとお考えになつておられますか、この点、どういうような見解でおられますか。
  29. 石原周夫

    石原(周)政府委員 最近二年くらいの間に、川俣委員お話のように、四つか五つかの特殊地域につきましての立法が出ておるわけであります。この立法がなぜ出るに至つたのであるかというお尋ねでありまするが、これは政府提案を申し上げたのでございませんので、どういうふうに推測しておるかというお尋ねだと思いますが、これはいずれも特殊なる地域でございまするので、それらの特殊の地域はやはり特殊なる地域としての扱いをしてもらいたい、全体が一存の見方でやつてもらつたのでは、そういう特殊なる地域特殊性がよく映らないという点に、立法せられた趣旨があるというふうに考えております。
  30. 川俣清音

    川俣委員 一般的な土地改良のほかに、特殊地帯についての特殊的な改良が必要だというが、予算面からいうと、こういうふうになつて参りますと、一般的な部分が減つてしまつて、特殊地帯土地改良事業予算的な措置が講ぜられる結果になりつつあると思いますが、大蔵省はどういうふうに考えておられますか。
  31. 石原周夫

    石原(周)政府委員 先ほど申し上げましたように、ああいうような立法の講ぜられましたる理由は、特殊なる地域における特殊性の強調が足りないのじやないかというお考え方であろうと推測いたすのでありますが、それは裏を返して申し上げますれば、その強調が足りないという点でございまして、従来もそういう特殊の地域に対しましては、それぞれ経費が入つておるわけであります。ただ特殊性の強調が足りぬじやないかという点であると思いますので、今各個の、たとえば急傾斜地へ幾ら、何で幾らということを頭に持つておりませんが、そういうようなことのために特殊に追加をせられた金額というものは比較的小さい。これはパーセンテージで申しますれば、そのために追加をせられた部分というものは、一割にも達してない金額じやないかというふうに思つております。
  32. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、この土地改良法によつて、いずれもそれらの法律が解消になる関係にある。わざわざ特殊立法が出て参るということは、これは大蔵省の認識並びに農地局の認識が足りないために、認識喚起のために出て来るものだということが一つ。もう一つは、土地改良法の本則がありましても、そういう特殊事情に対するいわゆる予算的措置が十分でないために、やはり予算の裏づけを必要とするということで、議員立法で出て来るのであろうと思います。その考え方からいたしますると、大蔵省から予算をとるために、みんな単独立法をもつて大蔵省を責め上げなければ承知できないというふうにあなた方はお考えになつておるのですか。それでありますれば、われわれもそのように考え直さなければならないのですが、いかがですか。
  33. 石原周夫

    石原(周)政府委員 政府の立場と申しまするか、閣議をもつて決定をいたしておりまする内閣の立場というものは、これは予算案に明らかであります。それにもかかわらず、と申しまするか、特殊なる地域に対する特殊なる配慮が足りぬじやないかという意味におきまする議員立法がございまして、その議員立法に基きまして、若干経費が、何と申しまするか、強調をせられた結果、増加をいたしておるということであります。これは御参考に申し上げておきまするが、予算説明書の中に急傾斜に幾ら、それから積寒地帯に幾らというような金が入つておりまするが、これは私の申し上げました意味におきましては、その根もとを一般的ににらみました部分も入つておりますので、その金額を全部おつかまえになつて、先ほどのお話のように、これが特殊立法の結果であるとお考えになつては、これは根もとの部分も入つておるのでありますから……。それでは一々特殊の何らかの立法をして参れば、そのたびごとにふえて参るかという点でありますが、これは財務当局の立場を申し上げますれば、先ほど冒頭に申し上げましたように、国の経費の配分というものは、全体として越しがたい一つのわくを持つておる。そのわくを越しますると、経費そのものは先ほどお話のように健全なる姿であるといつても、いわゆる悪性インフレーシヨンというようなことを心配しなければならぬことが出て参るということは、先ほど申し上げた通りであります。従いまして私どもといたしましては、そういうような特殊の立法をせられましたときに、立法せられた趣旨、そういう点につきましては私どもとして十分反省をいたすのでありまするが、与えられたるわくの範囲内におきまする経費の割振りというものは、一々今のお話の特殊の立法をもつて注意を喚起すると申しますか、そういうような強調をもつて特に御注意をしていただかぬでも、適正なる経費の配分をいたすようにいたすのが、財務当局あるいは内閣側の責任じやないかというふうに考えております。
  34. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、どうも大蔵当局の意見だというと、注意を喚起されたというぐあいにして、若干予算を盛ることによつて、注意を喚起された分を埋め合わしておるという考えであります。ところが特殊立法をいたしました議員及び国会の意思は、若干の経費をもつて満足するものでありまするならば、あえて単独立法などをもつて大蔵当局に対抗するということは出て来ないだろうと思うのであります。それであれば、ここで土地改良委員会等において十分そのくらいなことはなし得るはずであります。また運用の面でありまするならば、これは行政運用の面について注意を喚起すれば足るのだと思いますが、あえて単独立法が出来ますのは、若干の経費を望んで注意を喚起するということだけで単独立法が出て来るというふうにあなたはお考えのようですが、やはりそういうふうにお考えですか。もう一度これは御答弁を願いたい。
  35. 石原周夫

    石原(周)政府委員 若干の経費の増加を望んで単独立法をするように考えるかというむずかしいお尋ねであります。注意を喚起する——と言うと語弊があるかもしれませんが、私どもの見まするところでは、内閣としてある与えられたわくの中における経費の配分をいたしまして、予算案を御審議つておるわけであります。それに対しまして、どうも特殊なる部分に対する強調が足りないじやないかという意味で、いわゆる議員立法ができているというのは、それは全部の議員立法を申し上げるのじやなくて、先ほど来お尋ねの若干の特殊地域に関する立法がありますが、それにつきましては、そういう考えであります
  36. 川俣清音

    川俣委員 私この際ちよつと大蔵当局の御答弁について、今度畑地灌漑についての特殊立法が出て来ましたが、提案者にお尋ねするのですが、注意を喚起するために出されて、若干の経費がつけばいいということで立法されたのでありますか、その点提案者にお尋ねいたしたいと思います。
  37. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいまの、提案者畑地農業改良促進法提案するにあたつて大蔵省に対して若干の注意を与えるとか、あるいは若干の経費予算を増加せしめる、こういう意図かどうかというお尋ねでありまするが、これは全体より見まして、今の日本の現実に置かれた立場というものが、御承知のように輸出貿易の促進ということも言葉としては大きく取上げてあるけれども、実際にはそう行われておらない。一面食糧のために多額の国費を使つておる。こういう点から行けば、決して一つの職業に対する財政投資というような考え方でなく、国家自立の上において、食糧増産の必然性ということは当然であると思います。そういうふうな基本国策の面からいつても、絶対食糧をふやすという点から一番効果的に考えられるものは土地改良事業でありますので、若干じやなしに、大きくこの点飛躍しなくてはいけない。しかしながら、今までの土地改良のような漫然とした形で行きますと、いつも頭を切つてしまつて、中の割振りを若干ふやす程度に終つてしまうからして、この際一つ一つを躍進に前進したいと、こういうことが提案者考え方であります。     〔佐竹委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 川俣清音

    川俣委員 大蔵当局にお尋ねするのですが、今これと関連して、また新しい特殊立法提案されておる。今提案者説明をお聞きになつた通りでありまして、いずれもこれは大蔵当局の今の御答弁と国会の意思とは、非常な食い違いがあると思うのです。この際お尋ねしておかなければならないのは、これはどうもインフレを恐れたり、財政上の支出を予算の範囲内において行わなければならないという、非常に狭い見解で処理されておるのではないかというおそれを、われわれは痛感いたします。なぜかと申しますると、今日やみ米が二百何円もするということが、いかに政治の貧窮であるかということを示すばかりでなく、これは国の財政の上に非常に大きな弊害をもたちすものであることは、私が申し上げるまでもないと思う。このように消費の面に動くやみ米の金額というものは、そんなに小さいものだとは思われないのです。しかもこれが直接生活のために使われる面もありましようし、やみ米が動いておりますのは、いわゆる飲食店あるいは高級飲食店に動いてる点も見のがせない。そういう方面に大きく金が動いていることについては割合に寛大な考え方を持つておられて、このような食糧増産のために農民が真剣に働いておる問題につきましては比較的冷淡であつて、そうして国家財政がまかなえればよろしいんだというような考え方には、私はどうも納得ができないのであります。また外国から外米を入れて来ており、するが、このために支払われるところの外貨、並びにこれが安い値段で、原価を切つて消費者に配給いたしておりますが、これらの金の行方等につきましても、私は国家財政の上から見て杞憂せざるを得ない状態であるわけです。それと比較いたしまするならば、この土地改良事業にもつと真剣に大蔵当局が打込んでよろしいんじやないかという見解を持つておりますが、これは私の見解が誤りでありますか。大蔵当局はどういうふうにお考えになりますか。
  39. 石原周夫

    石原(周)政府委員 やみ米の騰貴をいたしておりまする点につきましては、私お答えをいたす立場にございませんので、その点はしばらく別といたしまして、財務当局として食糧増産の経費、たとえば輸入食糧の補給金、そういうようなものとの関連においてどう考えるかという点についてお答えいたします。私ども考えておりまするところは、先ほど申し上げましたように、御指摘のようないろいろな、何と申しまするか、所得というものをできるだけつかまえまして、これを税収として確保するという点、これは久しく大蔵当局のやつてつておるところであります。今後も引続きやらなければならぬところであります。従いましてそういうような所得の捕捉ということにつきまして全力を注ぎまするが、その上で考えられまする税収、あるいは雑収入、専売益金も加えてみまして、そういうような収入をある見当に押えまして、それの範囲のうちにおきまする経費の配分の点につきましては、これはいろといろと先ほど来お話のような重点の置き方についてのお考えも十分承り、われわれとしても反省して参らなければならぬ点があると思います。ただ繰返して申し上げておきまするのは、そういうような金であつて、将来輸入補給金もそういうために減るのであるから、従つて糸目をつけないで——と言うと語弊がありまするが、金の限度というものをもし軽視して金を出せということでありますれば、財務当局としてはそうは参らないということを申し上げざるを得ません。これはやはり全体の通貨政策というものは、おのずから財政の限界というものがあるのであります。その範囲内における経費の軽重の点、そういう点につきましては先ほど来お話のように、現在相当巨額の輸入補給金を出しまして、あれだけの外米あるいは食糧を買つておるわけでありまするから、そういう点につきましての増産のためにできるだけの努力をいたすということにつきましては、私どもも十分考えております。
  40. 川俣清音

    川俣委員 土地改良については、その投資が効果的に行われておるかどうかということを、財政当局は非常に重大関心を持つて見ておられるということは、これは私ある程度認めます。しかるべきであると思うのです。ところが、これらの処置がよろしきを得ないために、去年あわててシャム米、タイ米を買つたために、いわゆる二十一万トンの割当の中において買うべきものを、これをいわゆる政府買付の準用米として、わざわざ高く買つたようなあわて方をしておりますが、大蔵当局はこれに対して、何らか財政支出についての効果ということについては検討されなかつたのですか。非常にあわてて買つたために高く買つたというような結果については、あまり御検討にならなかつたのですか、どうですか。
  41. 石原周夫

    石原(周)政府委員 ただいま御指摘の点は二点かと思うのであります。一つは一昨年でございますが、あの一昨年の凶作、どうも農林省の発表のたびごとに数字が下るということで、割当二千二百五十万石というものは非常に無理であるというような食糧需給の数字が、大体年末に近づきまして明らかになりまして、急遽、三十万トンであつたかと記憶しておりまするが、緊急の輸入をいたすことに相なつたわけであります。この問題は主計局だけの問題ではございませんで、そのために買い急ぎまして、向うの収穫時期の関係、出廻りというような関係を、何と申しますか恵まれない条件のもとにやりました関係上、相当それ以前に比べまして高値になつたという事実は、私どもも認めております。大体金額の限度と申しますか、トン当りをどの程度に押えるかにつきまして、これは私ども大蔵部内で申しますれば、主計局のほかに為替局がございまして、外貨の割当をいたしております。そこら辺と連絡をとりまして、海外の実情もにらみながら、大体どの程度までのところで買うべきであるかというようなことについての相談は、そういうような早急買付は、なかなかむずかしいようでありますが、相談を受けてやつております。  お尋ねの第二点は、そのうちの二十一万トンのものがタイからのGGべース、政府貿易数字であつたというお話でありまして、何か今日の新聞に出たということでございます。その点につきましては、その三十万トンの内訳がどういうふうになつておるかという点は、何分にもおととしのことでありますので、私はけさ新聞記事を見て、そういうふうなことがあつたということを記憶はしておりますが、どういうような話合いになつておつたか、その責任の当局でございませんので、承知いたしておりません。
  42. 川俣清音

    川俣委員 私は今所管関係内容をここで暴露いたしまして、追究しようというような考え方はないのです。一方においてそういうことが行われておるのは、これは国の食糧対策が十分でなかつたために起つて来る一つの欠陥の現われであるというふうに指摘いたしたのでございます。問題をさらに飛躍いたしますと、大蔵当局に、これはよほどお考えを願わなければならぬと思うのですが、日本の農作上の歴史を見ますと、四、五年に一回くらいの凶作がかつてはあつたのであります。ところが最近ほとんど大きな凶作の事態が起つて来ませんのは、これは天候のためばかりではなくして、日本の農法が進歩いたしましたのと同時に、一つ土地改良事業が行われました結果、天然に対抗する条件をみずから克服して行つたところに凶作の現われ方が少かつたので、これが現状であるというふうに見なければならないと思うのであります。また反面において、九州災害等を見ましても、それは天然資源に対しますところの治山治水に対する根本的な対策を誤つておりましたがために、今急激な財政支出をしなければならないような天罰が来ておるのでありまして、これは大蔵当局に来た天罰というふうにお考えにならなければ、今後処理できないような天文学的な数字を要求される結果に相なると思うのです。そのゆえをもちまして、土地改良事業等に対しましては、すぐ目先の生産が上つて来ないから、効果が少いのだというようなお考え方でありますならば、これは非常に大きな障害を将来に与えることになると思うのです。またおかしいと思うのは、大蔵当局は、財政支出をいたしましても、あまり効果はないのじやないかというふうな考え方がちよいちよい出て参りまして、農地局がだらしがないので、大蔵省に百万べん頭を下げて交渉しなければ、応じてもらえないというような醜態が出ております。これは私はとんでもない考え方だと思うのです。なぜかと申しますと、大蔵省は大体税金をとるところで、これはあなたの所管でないでしようが、普通の利益でありますならば、大体一割か二割で、商人である場合、あるいは農業以外の場合でありますと、中小工業者のような場合、あるいは大資本家の場合でありましても、会社の経営から見て、一割か二割の利益、あるいは三割程度の利益より上らないと見ておられましようが、あなたは農民から税金をとる場合に、農民の利益は幾らと見ておるか。大蔵省は、大体六割が利益であり、必要経費は大体四割というのが、大体日本全土を通じての大蔵省のとつております基準でしよう。農民だけは、米作の場合におきましては、収穫の六割が利益と見ておられますよ。必要経費は四割より見ておられません。こんなに利益の上る農業に対して——われわれは利益がないと思つておりましたが、徴税の方からいうと、四割の経費で六割の所得があると見ておられる。莫大な利益を見込まれておりますのに、わずかな土地改良で、こんなにけちけちとお考えになつておりますのか、その点がどうもわからないのですが、ひとつ説明願いたい。
  43. 石原周夫

    石原(周)政府委員 農家に対しまする課税の際の必要経費の点は、この予算の方を担当しております主税の方の当局者をお呼び願いまして、一応御説明願いたいと思います。ただわれわれの、経費の歳出面の方について申し上げますれば、私ども食糧増産の金の見方は、六割利益が上るとか、あるいは必要経費が何割であるという見地を一応離れまして、食糧増産をどういうふうにして、全体の経費との配分のうちで、こういう重大なことをやつて参るかというような観点から見ております。
  44. 川俣清音

    川俣委員 主税局が一体どういう徴税の方法をしておるか知らぬというふうにおつしやいますけれども、これは税率であるとか、どのような手続、どのような徴税方法をしておるかというような具体的なことはおわかりにならないでしようが、予算を受持つておられる主計局が、大体農民の所得の中から、どれくらいをとつておるかという大づかみなものを持つておられないで計算をされるということは、大きな誤りだと思うのです。やはりそれも誤つてないというふうにお考えでしようか。
  45. 石原周夫

    石原(周)政府委員 農家の必要経費の見方というものは、これは主税局の方で、税の徴収あるいは税のかけ方という問題として考えております。私の方で今どういうような必要経費になつておるか、これは私不勉強のせいかと思いますが、責任ある答えをいたすことはできかねます。
  46. 川俣清音

    川俣委員 私は税のことを勉強してほしいと言つたのではない。これだけ国が土地改良事業のために支出したことが、効果が上つておるか上つてないかということに対して、重要な関心を持つておる。こういう前の御説明であります。しからば一体どのくらいの税金を納めておるか、あるいはどのくらいの経費を必要経費と見て、どのくらいの徴税対象になつておるのだということをお考えにならないで、この財政支出の効果が上つておるかおらぬかという見当のめどはどこに持つておるのか。それくらいのことは持つておらなければならぬはずだ。効果が上るか上らぬかというその判定は、やはりそこが基礎にならなければならないと思うのです。そこを基礎にしないで、土地改良に対する財政支出の効果が上つておるか上つておらぬかという限界は、どこにめどを置いて、どこを目途としてお考えになつておられますか。
  47. 石原周夫

    石原(周)政府委員 現在増産効果ということにつきまして、農地局と私の方でいろいろ相談をいたしておりますのは、大体におきまして、反当にどのくらいの金がかかつて、それがどの程度の収益を上げているか、これは米に換算してのことでありますが、それにそれぞれの事業がある。開拓がある、干拓がある、あるいは土地改良がある。暗渠排水がある、こういうようないろいろな費目につきまして、反当りあるいは一万円当りというような計算での調べをいたしております。それは各個の事業効果であります。全体として、たとえば本年度の計画では、どういうような増産効果が出て参るか、これと経費との関係において見て行くわけであります。それがとりあえず現在農地局との間において相談しておりまする増産効果というものの一つの面であります。
  48. 川俣清音

    川俣委員 もちろんこれは収量が基礎になりましようが、収量の中でも、収量が上つた結果、税としてどれくらいはね返つて来るかということも、当然考慮の中に入れるべきだというふうに思う。そういう点から見ますと、相当過大な徴税対象になつておるのでありますが、これは国税ばかりではございません。地方税等も含めまして、相当なはね返りを見ておられなければならないと思うのです。従つて増産の結果、相当の税収が上るということも、これは考慮の中に入つていなければなりないはずだと思う。詳しいことを別にお聞きしようと思わないのですが、幾ら上つているかというような意味の——これは大蔵委員会と違うのでありまして、問題は土地改良の上にどの程度の理解を持つておるかということをあなたにお尋ねしておるのでありますが、私は今までの説明では、やはりどうも土地改良に対する理解が不足ではないかと思うのです。特に土地改良が行われるにつきましては、先ほど来、大規模なものについてどうしても大蔵省は進みやすく、比較的一番能率が上る、効果が上る小規模土地改良に対しては非常に理解がない。最も効果的な小規模土地改良に対して理解がないということは、ほんとうに財政の効果を真に願つてのものであるかどうかという点について、非常な疑問を持つたのであります。この点について御見解をお伺いしたいと思います。
  49. 石原周夫

    石原(周)政府委員 ただいま全体の何と申しまするか、国とそれ以外の団体の間の仕事の配分と、財源をどういうふうにしてその方の団体が確保するか、その点の力の入れ方が足りないというようなおしかりであります。私先ほど申し上げましたように、農林漁業の金融公庫を通じまして出しておりまする土地改良の金でございますけれども、これは全部が土地改良になつていないと思います。補助の裏側の分がございますから、それを含めまして、百十五億という金でございますが、去年に比べまして、今年は約四割増加をいたしまして、百六十億になつております。それに対しまする百十五億という金が出ておるのであります。これ以外に、先ほどおことわり申し上げましたように、起債で出ております。地方団体がとります金は、私ども今、記憶いたしておりませんが、全体の仕事の配分から見まして、金額の配分というものを、お話のように考えなくちやならぬと思います。今申し上げた数字は、やはりそういうような全体の仕事がどう進んでいるか、それによつて金融という面でどういうふうにまわして行くか、そういうことで百億という金を出している。そこら辺のバランスということを今後とも考えて参りたい。現在のところは、そういうふうな筋道で全体の進み方をして行きたいと考えております。
  50. 川俣清音

    川俣委員 もう一つお尋ねするが、大蔵当局では、それじや農林省の農地局で、地方の要望、農民の要望、府県の要望、団体の要望等をある程度制約をいたしまして、農地局が大蔵省に要求をいたしておりますが、この要求が非常に不当な要求だというふうにお考えになつておりますか、どういうふうにお考えになつておりますか。
  51. 石原周夫

    石原(周)政府委員 食糧増産対策費全体の要求につきましての査定のお話でございますれば、今年度予算の編成におきまして、相当大幅の削減をいたしたことは事実であります。しかしそれでは、農林省が非常にかけ離れた、実情を無視した要求をしておるかということに相なりますると、農林省は一応五箇年計画というものを持つておりまして、その規模で、第一年度としての要求を持つて参つたのでございますから、必ずしも不当な要求をしたということは考えません。ただ最前から申し上げました全体の予算の割振りの点からいたしまして、そういう金額はちよつと入りかねるということであります。
  52. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますれば、要求が不当なんでもないし、ただ財政面からだけということになりますと、ほかとの均衡から考えてみて、予算を編成せられておりまするあなたのところの理解が足りないために、そういう結果になつておるというふうに見てよろしいのですか、また理解があるけれども、努力が足りないために、こうなつておるというふうに見てよろしいのですか、その点について……。
  53. 石原周夫

    石原(周)政府委員 理解があるかないかということでありますると、財務当局の考えておりますことに対しまする第三者の判断でございまするので、私の方で理解があると考えられるか考えられないかということは、ちよつとお答えをいたしかねます。ただ繰返して申し上げておりますことは、予算のわくがございまするので、農林省の要求せられるような金額は、これはそのままには入り得ない実情にあるということを申し上げます。
  54. 川俣清音

    川俣委員 最後の質問をいたしますが、どうも今までの御答弁によりますと、国会の意思がありましても、それは注意を喚起された程度で、予算的措置はできないのが現状だ、こういうふうな御答弁であります。私ども委員会といたしましても、それでは満足できませんので、あらためてこれは委員長において御考慮になりまして、何らかの意思表示をしなければならないと思いますので、私はその意思表示をする機会をあとに求めまして、大蔵当局に対する質問を打切ります。
  55. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿覺君。
  56. 足鹿覺

    足鹿委員 私は畑地農業改良促進法案について、二、三確めておきたいと思います。  大体は先刻の金子委員提案理由説明でわかつたのであります。ただ明らかにしておいてもらいたいことは、先国会を通過いたしました海岸砂地地帯農業振興法との関係をどういうふうに考えておられるか、提案者なりまた政府は、その行政的な運営の責任をおとりになるのであるか、いつまでも提案者がこれを実施するというわけには参りませんから、その執行の衝に当つておる政府の方から、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  57. 金子與重郎

    ○金子委員 畑地灌漑実施面に当りますと、ただいま御質問のように、昨年度の砂丘地帯の問題も、結局一つ方法として、灌漑というものが大きな問題になつて来る。この畑地改良の問題も、灌漑ということが大きな、事業分量としての主軸になつているという立場から、実際に今度は予算を振りわけるときに、この灌漑の予算を、畑地灌漑計画の中に出た面積と、それからもう一方、前年度にきめました砂丘地帯立法の中で計画された面積と、二色のものがいわゆる灌漑の対象になる。それに対して予算をどういうふうに使うかというような御質問の要旨でありますか。もう一ぺんお伺いします。
  58. 足鹿覺

    足鹿委員 法律の面で申し上げますならば、改良促進法第二条の問題で、ここに資料としていただいております中で、政令で定める基準というものの内容を見ますると、約二十四万五千町歩の灌漑可能地から、海洋砂地地帯振興法のあれを除いたものを、このたびの立法による法の対象、並びに予算のわくに組んでおると私は理解しておるわけなんですが、提案者の御意味思もそういう御意思であるかどうか。
  59. 金子與重郎

    ○金子委員 これは事務的に予算の使いわけをするときと、立法の精神と合い違つては困る問題なんであります。この法律を一応提出いたしますときには、この前の法律によつて計画された面積に対しては、その予算をとり、今度はこの精神によつて、砂丘地帯以外の、計画に入らなかつたものを建前として考えたのであります。ただここ下申し上げておきたいのは、今年度の予算内容を見ますると、八千万円ばかりのうち、約六千何百万円かが純畑地灌漑で、二千何百万円ばかりが砂丘地帯の灌漑、こういうふうな数字になつておるようであります。
  60. 足鹿覺

    足鹿委員 要するに、資料の畑地灌漑計画の中で、二十三万五千町歩の畑の土地改良面積中、灌漑可能地なるものがそういうことになつておる。これから海岸砂地地帯畑地灌漑四万五千町歩を除いた十九万町歩について実施をする。反当単価を二万三千円、平均補助率を四割五分——県営事業を五割、団体事業を四割、平均をとつて四割五分というふうにこの資料にあるのですが、この資料ではどうもはつきりしないので、その点を提案者なり、農地局長にはつきりしておいていただきたい。ただこれは金子君も御存じでしようが、本年の海岸砂地地帯振興法に基く予算措置は、大体二億三千万円程度で、そのものの半分、五〇%ちよつと上まわつた程度のものが、海岸砂防林の予算に使われるようになつております。あとは今度の畑地農業促進法の対象としておるものと何ら相違はない。実際的には、予算上における基準が同じで、同じような性質の仕事をやる場合に、はつきりさしておきたいと思うのです。ただその二億二千万円に約八千万円を加えて、三億円程度のものでこのたびの予算的裏づけをやつたという提案者説明でありますが、この約三億円というものの中には、この前の砂地地帯のものは除外して、新しく設けた費目であるかどうかということなのです。
  61. 金子與重郎

    ○金子委員 二つの点を御説明申し上げますが、ここに出しました資料は、今度の計画に対して集めた資料ではなくて、これはずつと前につくつた資料でありますので、その資料の数字については政府委員から説明させますが、既定予算の八千万円というのは、ただいま申し上げたように、その約七割くらいのものは砂丘地の分が入つておるわけであります。砂丘地の分が六千何百万円かあると思います。ですから畑地灌漑として砂丘地を除いたものは二千万円ばかりしかない、こういう実情であります。
  62. 足鹿覺

    足鹿委員 もう少し事務当局からはつきりさしてください。
  63. 平川守

    ○平川政府委員 この畑地灌漑の可能地というものを一応調査いたしましたところでは、約二十三万五千町歩という数字が各県から集まつておるわけであります。このうち四万ほどが海岸砂丘地に該当するわけです。海岸砂地については先般の特別立法で、大体これと同じようなやり方でやり、畑地灌漑施設を特別に行うことができるようになつております。今回の、その他の一般の畑地については、そういう措置がとられておりませんので、一応海岸砂地地帯と、その他の畑地灌漑適地とを仕訳をいたしまして、海岸砂地についてはその方の特別立法をもつていたしたい。その他の一般の畑地についてはこの法律によるということで、予算もそれぞれの面積、その他に応じて仕訳をするというふうにいたしたらば、いかがかと考えております。しかしこれはもちろん今後の問題でございまして、さしあたりこの法案提案されましたについて、一応の資料といたしましては、そういう考えに基いて仕訳をいたしたのでございます。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 仕訳をしていただくことはけつこうなのですが、私の言うのは、海岸砂防林というものを除いたあとの仕事というものは、このたびの農業改良促進法案内容一つもかわつてはいないのです。砂地地帯振興法と同様なのです。従つて一応この前私ども承知したところによると、海岸砂地地帯には砂防林を含んで、約二億三千万円の予算が本年度予算に計上されておつた。そのほかに畑地農業改良促進法案の対象となる裏づけの予算の、今金子君の言われた二億二千万円というものは、このたびの予算修正によつて新しく取上げられたものである。それにプラス八千万円というものがさつきの御説明にあつたが、この八千万円はどこから出たもので、今後どういうふうになるかということなのです。それが砂地とダブれば困るということです。それでは意味をなさぬというのです。
  65. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまお話のありました八千万円の畑地灌漑予算というのは、これは一般的に畑地灌漑の全体を含めての畑地灌漑の可能地に対する当初の認められた予算で、これをどういうところに使うかということについては、今後具体的な地区をきめまして、これに入れて参るということです。当初出しました予算に追加いたした部分は、海岸砂地の法律に基いて、それに対する施設としての畑地灌漑の施設が六千万円ほど含まれております。六千数百万円というものが、新しくプラスになつて計上されております。御指摘の八千万円という当初から載つております分は、これは全国全体を考えておるわけなのです。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 大体わかつたようですが、そうしますと、その八千万円というものは、砂地地帯という特定な予算のものではなくて、政府の一般の畑地灌漑等を中心とする一般予算である。それにプラス二億二千万円というものが、このたびの予算修正で加わつて、計三億円でもつて、この畑地農業改良促進法案予算的裏づけと見なす。こういうふうに理解していいわけですね。ダブつておりませんな。その点さえ明らかになれば私はいいのです。
  67. 平川守

    ○平川政府委員 そういうふうな考え方であります。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 それで第一問は大体わかりましたが、第二条の「これらの畑地が集団的に存在する地域をいう」というので、定義が一応なされておりますが、これは一応明らかにしておかないと、あとで問題が起きても困りますので伺います。先刻の金子君のお話では、一単位町歩というふうなお言葉があつたように思いますが、これはもちろん審議会ができれば御諮問になつて一つの指定単位を御決定になると思います。そうしますと、まず府県の全部を指定し、あるいは府県の部分を指定するというふうに法律はなつておりますが、府県を指定しない場合といえども、大体一単位町歩というものは、この法律の対象として取扱つて行くお考えでありますか、先刻の金子さんのお話、私も同感なので、なるべく単位を狭めて、そうして末端の営農者に国の施策の手が延びて行くことを私も年来希望しておるのでありますが、要するに県の指定があつた場合に、初めて五町歩という団地、あるいは一町村、あるいはある一定地域というものが指定になるのでありますから、県の指定の有無を問わず、やはり五町歩以上のものは一つの団地として、指定条件を備えたものとして指定になりますかどうか、その辺はどういうふうになりますか。
  69. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま御指摘になりました点は、この法律施行上、一番重要な点でありまして、本来ならば、こういうことは最初から明らかに法律に書きたいのでありますが、しかしこれは従前の例から申しまして、大蔵省が、非情に大きい単位のものでなければ監督できぬとかなんとかいうふうな、いろいろの問題がありまして、年々国会の各農林委員が、この経営規模の問題でやかましく言われるにもかかわらず、相当大きな面積でなければ助成の対象にしないということで、今日までやつておりますので、今後お話のように、審議会の意見も十分尊重しなければなりませんし、またそれによつて大蔵省との折衝も十分遂げなければなりません。私が提案者として、大体五町歩を目途としてやりたいということは、提案者たる私の考え方でありますが、今後の折再上、この点に相当努力しなければならないことと思つておるのであります。  それから県を指定するという場合でありますが、かりに五町歩以上のものを対象とするというようなことになりますと、そこに五町歩以上の対象になる村が出て参りますれば、それが県に上る。そうすると、その県は当然その指定の要素を持つという見解を私はとつております。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 政府の御見解はどうですか。私は、この点が一番中心だろうと思うのです。従来積雪寒冷半作地の場合におきましても、まず府県なり、あるいはある地帯を指定したあとでないと、該当町村があつても指定から漏れる。いわゆる二段がまえになつておつたために、事実必要な地帯が、指定から漏れておるという事態がある。ところがこのたびの畑地農業改良促進法なるものは、これはあとでもう少し指摘して尋ねたい点がありますが、特定の条件というものは別にないはずなんです。ある畑地というものがあれば、それでよろしい。それが気象条件とか、あるいはその他の特定な条件によつて制約を受ける性質のものではないと思う。従つて積雪寒冷単作地であるとか、あるいは急傾斜の場合であるとかいうものとは趣きを異にしておると私は思う。従つて提案者の御趣旨のように、農地局は、政府は、審議会の意見を聞いて、いわゆる府県の指定を経ずして、あるいは府県の指定基準面積等によつて拘束することなく、下から上つたものを指定して行く用意があるかどうか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  71. 平川守

    ○平川政府委員 これはやはり二段がまえの指定の法律構成になつておりますので、そういう方法はとらなければいかぬと思います。ただ、今の対象となるべき一団地の面積の問題につきましては、ただいまただちにいわゆる補助対象として、五町歩程度まで下げることができるかどうかということになりますと、今後の大蔵省との折衝の問題になると思うのであります。われわれといたしましては、特に畑地灌漑の問題につきましては、かなり小規模のものを対象に考える必要があるのじやないか、事業の種類の性質からいたしまして、かなり小さいものまでも取扱う必要があるのじやないか、こういうふうに考えますが、これについては、一応やはり助成の問題になりますので、補助金を出すということになりますと、やはり今後大蔵省と折衝した上できめて参らなければならぬというふうに考えております。
  72. 足鹿覺

    足鹿委員 いや、その折衝をなさることはいいんですよ。それはいいんですが、要するに府県にある一定面積以上なけらねば指定をするとかしないとかいう問題を、どの程度にお考えになつておるかということなんです。たとえば湿田の場合は、一千町歩というところで線が引かれたために、いわゆる一千町歩未満のものはその指定から漏れておる。それではこの立法趣旨に沿わないと思う。だから五町歩ということが、かりに無理であるならば、ある程度増産効果期待できるもの、ここに資料をいただいてありますがこれを見ますると、全国で、長崎の百七十五町歩とか、奈良の百四十五町歩というようなところが最低になつておるのですが、そういう地帯も、やはりある一定の条件に満つるとか満たないとかいつて除外をされるのかどうかということです。これを明らかにしなければ困るというのです。
  73. 平川守

    ○平川政府委員 そういう点につきまして、まだ最後的な結論を得るまでに至つておりませんが、気持といたしましては、やはりこの畑地灌漑の設備については、全体として比較的小面積でありましても、除外しない方がいいんじやないか、県として除外するということのない方がいいんじやないかというふうに考えております。ただ具体的な、ただいまお話のような最低線のものもございますので、これについてどう扱うかについては、今後実際に審議会等の議を経てきめて参らなければならぬ。われわれの気持といたしましては、県単位における面積が比較的少いために、県全体をオミツトしてしまうということについては、この畑地灌漑の設備の問題としては、そういう考え方をとらない方がいいんじやないか。県としては全部対象に扱うということの方がよくはないかと思つております。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 大体御気持はわかりましたが、明らかにしていただきたいことは、少くとも二十七年の三月にお調べになつたものであつて、これは砂地地帯のものを含んでおりますが、これから四万五千町歩を引いたものということになりますと、面積がいろいろかわつて来る府県が、その条件において出て来ますがそれがあつても、とにかく提案者趣旨説明をされたように、五町歩以上のものが積み上つて、その府県が五十町歩になろうが、あるいは百町歩になろうが、とにかくその面積にこだわらずに、その該当した町村というものがあれば、その府県を指定する。その府県知事は、さらにその市町村を指定するというふうに、はつきりなさるという御用意がなけらねば、大蔵省と相談をしてきめるというようなことじや困る。毅然たる態度をこの際おきめ願わないと、この問題については、先でまた問題が起きて参ります。その性質上、そういうことに線を引くべきものではないということは、お気持はわかりましたが、その点をもう少しはつきりしていただきたい。と申しますのは、ここに畑地農業改良促進法第二条の規定による畑地地域指定基準といものがある。この指定基準を見ると、今私が心配しておつたような点が、また出て来るんじやないかと思う。水源の取得が経済的に可能であるという、きわめて抽象的な言葉が、まず冒頭にうたつてある。そうして「土壌は砂土、砂壌土又は火山灰土等であること。」となつておる。「等」という字がありますから、これは融通性があると見ますが、ここにたとえば粘土を交えた、いわゆる重粘土地帯ではないが、粘土を主とした土壌地帯もあるし、いろいろ土壞には、千変万化で変化があると思う。ですからこれらの点について、しやくし定規でなされて行くというと、だんだんまた適用除外に追い込まれて行く可能性がある。また(二)の「作物の成育期間に連続早天日数十日以上が三年に一回以上あること。」ということになると、これまた気象的条件によつて制約が出て来る。積雪寒冷単作のときも、いわゆる過去の測候所の天候等に基く資料の不備等があつて悶着を起した先例があります。でありますから、なるべくこういうことは、私はきめない方がいいのではないかと思うのです。  それから「地下水位が一米以下であること。」というようなことを、もうきちんときめてしまいますと、またそこに運用上において疑義が出て来る。「砂土とは一粘土の含有量が一二・五%以下のものをいう。」「砂壌土とは、粘土の含有量が一二・五%から二五%までのものをいう。」というふうに、ここにいろいろな制約が出て書するというと、これはなかなか判定上問題が起きて来やしないかということを杞憂するのです。ですから、その点を運用上において、審議会ができることでもありましようが、特に従来問題を起したようなことがないように、少くとも、提案者が今提案理由を述べられたように、五町歩一つ単位として、その五町歩が接続してあるかないか、あるいは点在しておつても、その町村に五町歩あるならば、農民がやりたいという気持があるならば、でき得る限り広汎に適用させて、そうして立法の精神を生かして増産期待する、こういうことにならなければならぬのではないかと思うわけなのです。この政令案の内容というものについては、運用上においてどういうふうにお考えになつておりますか。
  75. 平川守

    ○平川政府委員 これは、畑作地について灌漑の備設をするということが、非常に増産効果が大きいというものに対して、灌漑設備を普及して行きたいということが立法趣旨でもあろうと思いするし、またわれわれの土地改良一つの題目として、従来考えておりますところもそこにあるわけでありますから、いたずらにむずかしい条件を課して排除して行くということは、毛頭考えるべきじやないと思います。従いまして、現在一応の材料といたしまして、もし基準でも設けるとすれば、こういうようなこともどうだろうかというものが、資料として出ております。しかしこれも、きわめて技術的に見ますると、灌漑を必要とするような畑は、大体この条件に当てはまつておるもののようであります。しかし、なお審議会の意見を聞くということになつておりますので、そういう御意見も伺いまして、われわれとしては、実際において灌漑の施設が効果のあるという地帯については、できるだけこれを包容するような考え方で参る。いたずらにこの条件のために除外されることのないような考え方で参るということについては、毛頭異議がありません。そういう考え方で運用して参りたい。従つてただいま参考としてお示しいたしておりますようなものも、具体的にこれではまずいということがございますれば、これは直すことには決してやぶさかではございません。
  76. 足鹿覺

    足鹿委員 これは金子さんにお尋ねしておきたいのですが、第二条の「これらの畑地が集団的に存在する」この「集団的に」という意味の解釈はどういうふうになりますか。
  77. 金子與重郎

    ○金子委員 集団的に存在するということが、一つ水利あるいは一つの井戸というものから水路を設けて、それが一つの区切りの中で行けるという狭い意味の集団と、それからその地帯に、かりに百町歩の団地がある。その中で三箇所にわたつて、かりにここに三町歩ある、ここに二町歩ある、ここに一町五反あるというふうに、三箇所で井戸を掘つて灌漑すると、採算的に有利だ。それ以外のところは、区画整理なり、土地の客土なり、あるいは心土を抜いて行かなければ、不可能だから、それは採算的にならないというふうなものが実際ありましたときには、そういうふうに三箇所にまたがつておりましても、その団地を一つ事業地帯として施業する。実際に手を加えるのは、あるいは三つにわかれるかもしれぬ。しかしながらそれはやはり一つの対象とすべきだということをやりませんと、畑地灌漑特殊性というものは生きて来ないというのが提案者考え方であります。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に大蔵省と折衝するというお話でありますが、農地局長は、大蔵省と何をどういうふうに御折衝になるのですか。何かまだ大蔵省との間に折衝未済の点があるのですか。あればそれは何ですか。
  79. 平川守

    ○平川政府委員 この法律そのものから申しますと、政府予算の範囲内において助成をするということになつております。  この助成を具体的にいたします場合においては、どういう対象に対して助成するかということについて、大蔵省の了承を得なければならぬわけです。そこで具体的には、先ほどから問題になつておりますような、五町歩という単位を補助の対象にするかどうかということについて、現在は御承知のように、二十町歩というものが一応補助の限界になつておりまして、それ以下のものは農林漁業金融公庫の行う資金融資で行くという考え方になつておりますので、この点について話合いをいたしませんと、ただいまお話のような五町歩までを補助対象にするということが、ただちには申し上げかねる、こういうことであります。
  80. 足鹿覺

    足鹿委員 第八条の第三項の問題が、今私の言つておる点なのですが、必要な資金の融通またはそのあつせんにつき、計画を定めなければならないということになつておるわけなのです。この必要な資金の融通またはそのあつせんということになると、今局長のお話では、農林漁業金融公庫というお話がありましたが、農林漁業金融公庫とは、大体この点については、すでに対象として、利率はどういう程度進めて行くかということについて、話合いはついておりますか。
  81. 平川守

    ○平川政府委員 現在、農林漁業金融公庫の土地改良に対する貸出し費目の中に、こういう種類の補助を受けない土地改良事業に対する融資という項目があるわけです。もとより総わくが足る足らぬという問題は別といたしまして、これらの小規模畑地灌漑事業は、融資対象になつております。こういうものにつきましては、五分の利子で貸し付けるということに規則ができております。
  82. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に、これは大体時限法になつておりまして、昭和三十四年三月三十一日限りその効力を失うということになつておりますが、この中で、年次計画として、現在農林省がお考えになつておる大体の構想はどの程度のものでありますか。昭和三十四年までに、本年度からこれを実施して、その年次別には、どういうものを御構想になつておりますか。これは考えようによつては、この法律の運用いかんによつては、日本畑地農業に及ぼす画期的な法律になると思うのです。これを本気に取上げて、予算的な裏づけをやれば、増産期待する画期的な立法になると私は思うのです。この点については、当局もしつかり腹をきめて、少くとも昭和三十四年三月三十一日までには、腰を入れた計画を立てて、そうしてこの法案の有終の美をあげていただかなければならぬと、私ども考えるのですが、そういう意味において、どういう御構想を持つておいでになりますか。第一年度からずつとにおける計画の概要について……。
  83. 平川守

    ○平川政府委員 具体的な計画につきまして、今はつきりとしたものを立てておるわけではございませんけれども、大体の考え方といたしましては、この全事業量を十箇年間では完成いたしたい。これが全体としての土地改良計画の、現在散らばつております全体の、いわゆる需給計画におきましては、十箇年で完成する。その約半分を当初の五箇年で完成したいというのが大体の構想でございます。二十九年度に、どのくらい盛り込むかということについては、今いろいろ案を作成中でございますけれども、大体の構想といたしましては、従つてこの全事業量の約一割程度づつを毎年やつて参りたいと、こう考えております。
  84. 井出一太郎

    井出委員長 小枝一雄君。
  85. 小枝一雄

    ○小枝委員 私は簡単でいいのですが、御質疑を申し上げたいと思います。  皆さんから詳細にわたつた御質疑がありましたので、この機会に一点だけ、ひとつ明確にしておきたいと思う問題がある。それは平川局長も御承知のことと思うのですが、全国の畑地の中に、陸田と称するものがあるのです。それは陸稲を植えるときだけ、水を注いで植えつけるのであります。旱魃にあうようでありますと、またこれに水を注ぐ陸田と称するものがある。この陸田は、畑地改良の中に含むものであると私は考えておるのでありますが、当局はどうお考えになつておりますか、この点をひとつ明確にしておきたいと思います。御答弁をお願いいたします。
  86. 平川守

    ○平川政府委員 陸稲を植えておりますようなところで、そういう水不足のために施設を要するようなものは、もちろんこの中に入ると思います。
  87. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀貢君。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今までの積寒法、急傾斜あるいは海岸砂地だとかの特殊立法は、条件が非常に劣悪であるということが、一つの大前提になつたわけでありますが、今度の場合には、そういうような劣悪な条件というのではなく、むしろ畑地農業を最高の限界まで引上げようという意図が、この法律案の中に盛り込まれておるということが、今までの特殊立法と非常に性格的に違つた点であるというふうに考えるのでありますが、この点については、足鹿委員も言及されましたけれども、そういつた場合においては、第二条の規定というような、こういう極端に制約したような条件の中のみにおいて——これらの条件の地帯は、むしろ現在の畑地地帯においては、優秀な条件の地帯であるというふうにも考えられるわけであります。それでこの点については、やはり地方の特殊性と言いますか、可能の限度で、この畑地灌漑をやり得る可能の限界というものを、経済的に十分勘案することのできるような、一つの融通性というものを、当初から与えるというお考えがあるかどうかという点について……。
  89. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま芳賀委員の御指摘になりました点は、まつたく同感でありまして、この畑地の農業改良というものは、いわゆる畑地生産に対して、水利を主体にして大きな農業改良に前進しようというところにねらいを持つておりますので、特殊立法とは言いますけれども、今までの特殊立法とは、性格を若干異にしておりますので、従つて極端に申しますと、地域指定というものを最初から、頭からきめてかかることにも、若干の今までの関係と同じように見られない点があるのであります。ただ地域指定をするという考え方は、国家全体の計画を立てる上に、一つ計画基礎を立てるという意味において重要性があるのでありまして、その地域からはずれておつたからだめだとか、はずれておらないからとかいうことよりも、一つ計画基礎を立てるという意味において必要だと、こういうふうに提案者考えておるわけであります。従つて、これを今後実施する場合になりますと、比較的大きい範囲のものを、できるだけ全体を包含してその対象にはする。ただ、実施する場合、規模が大きいとか小さいとかいうことよりも、むしろ一反歩当りの施業費が比較的安くて、それによつて採算的に有利であるか不利であるかということの方を、事業を先に着手するか、あとまわしにするかという順位の主体に置くべきだ、こういうふうに提案者考えておるわけであります。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に単価の問題です。経済的の面が必ず伴いますが、二万五千円という算出の基礎は、どこから出ておるかということの内容的な説明をお願いいたしたい。
  91. 小川孝

    ○小川説明員 二万五千円につきましては、一つ基準の設計をつくりまして、基準の設計から得たものと、現在数地区、計画書をつくつてつておるのがございますが、その設計によりますと、反当二万二千円から二万七、八千円くらいの笠岡で、事失費が計画されておるのであります。それで一応全体のものを計画します費用といたしまして、やや平均に近い二万五千円というものを考えたわけでございます。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なお承知しておきたいことは、畑地灌漑というものが、概念的といいますか、具体的というか、どういうような施設をして、どうなるのだという、それがどうも明確でない。たとえば本委員会で、かつて埼玉地方の陸田の状況などを視察したわけでありますが、ああいうものの形態から連想して、ややそうであろうというような想像もひとつはつくわけですが、不勉強でまことに申しわけありませんが、こういう点についての輪郭を明らかにしてもらいたい。
  93. 金子與重郎

    ○金子委員 畑地灌漑の具体的な輪郭というものは、どういうことかというのでありますが、私、提案者といたしまして考えておりますることは、畑地灌漑をやりましたその結果は、どういうものを指すかということについては、非常に区々まちまちだと思います。その区々まちまちの土地の立地条件、土質、水の量、そういうものに関係いたしまして、同じ畑地水利を用いた場合に、その場所によつて非常な差ができて、形が違つて来ると思います。たとえば陸田というものに一つの直播をいたしまして、麦なら麦の間作に陸稲の直播をして、そうしてそこに一旦水を入れまして、一番除草した後は、まつたく水田として管理できるような、りつぱな土質と、同時に水の供給状況を持つておるという所は、ほとんど水田に近い形において肥培管理がなされる所もありましようし、また水利もそれほどよろしくないし、水の量も自由にまかせない。しかしながら、乾燥地であるために旱魃の被害をほとんど年ごとに受けるというような地帯におきまして、そこに適当な水利なり、あるいは貯水の施設を設けますことによつて旱魃時に旱魃予防の灌水をする。これも一つ畑地灌漑だ、こういうふうに考えております。ただいま御指摘になりました畑地灌漑というのはどういう形のものができるかということについては、その土地の状況と土質、水利その他によつて、おのおのその土地の環境を百パーセント生かし得るような形になりますので、その結果は一津でなく現われて来る、このように考えております。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なお小規模のダムの建設ということは、これには全然付随しないわけですか。そうすると非常に費用がかさむというので、二方五千のわくからはみ出るということになると思いますが、そういう点はいかがでしようか。
  95. 金子與重郎

    ○金子委員 ダムの問題になりますると、一般のこれ以外の土地改良、あるいは総合計画等から来ますところの水利というものが、別なわくから出て参ることがありますが、その末端をこれによつて処理するということを考えておりまして、畑地灌漑のために相当大きなダムをやるというようなことは、相当規模が大きくなりますので、当初の予算ではそういうものを数少く計画することよりも、最も採算的なものから、直接経済的にも生産が上り、しかも時間的にも経済的にも端的に生産が上る折から着手すべきじやないか、こういうふうに考いえております。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これに関連して農地局長にお伺いしたいのですが、非常に経済的に単価が安い、しかも生産効率が上る、一反から七斗四升もとれるという、こういう着想から発展して行くと、国が考えておるような食糧増産計画に対しては非常に具体性が出て来ると思うわけですが、こういうものはむしろ政府当局としては、当初から考えて立案すべきものじやないかと私は考えるわけでありますが、こういう点には全然お気づきはなかつたのですか。
  97. 平川守

    ○平川政府委員 政府としましては、この畑地灌漑の施設というものは食糧増産計画の中には盛り込んでおりました。ただこういう立法を伴つて各村から計画が出て来るという形を考えておりませんでした。畑地灌漑計画は、現在もいろいろ各県から出おるわけでありますが、これに対する助成ということについては、大蔵省ともやかましく交渉をいたして参りました。ただ比較的耕しい仕事でありますために、大蔵省の理解がなかなか得られませんで、ようやくここ一、二年前から予算として新しい項目になつて来たというような状況でありますので、われわれの五箇年計画、あるいは食糧需給計画におきましては、相当大きな項目として掲げておるわけでございます。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお伺いしたいのですが、敗戦直後、食糧の緊急性からいろいろ無理な開拓とか干拓を行つて来ておるわけです。現在、やや安定化され、正常化されようとする情勢の中において判断した場合におきまして、相当無理な事業が現在継続されておるという面が非常に多いと思うのであります。たとえば一例を千葉の印旛沼とか手賀沼の干拓にとつてみても、両湖の湖面が大体三千町歩、湛水面積がそれに連なつて七千町歩ある。これを完全に干拓して農地を造成するためには、百三十億くらいの金がかかるというようなことを考えた場合に、これは一反歩大体十三万くらいの金がかかるということです。現在のような状態で行くと、三十年も四十年も後でなければ一つ事業が完成しない。しかもそれが継続予算でないということで、毎年毎年やつてはおるけれども、実際今行つてみても、いつになつたらそれが一つの雄大なる夢が実現するかわからないというような状態に放置されておるわけであります。そういうようなものと関連して考えた場合において、すでに再検討を要するような、しかも大きな国家財政の投入を行つておるという面については、従来の計画をこの辺で再検討を加えて、もう少し効率的な農業の近代化、あるいは食糧増産の方に転換させるような部面も出ておるかどうかということについてのお考えがあれば表明願いたいと思います。
  99. 平川守

    ○平川政府委員 お話のような点が絶無とは言えないと思うのであります。こまかい点についていろいろ問題があろうかと思いますが、特に御指摘のような大きな事業で、実際問題として何十年もかかるというようなものは、それについて何らか現在の技術なり、あるいは資材の点なりというものを前提にいたしまして、計画自体をある程度修正した方がいいと思われるものについては、できるだけ修正したい。御承知のように終戦直後の状態におきまして着手しましたものにつきましては、やはりある程度当時の資材事情なり、当時の電力事情なりといつたようなほかの条件が、相当計画を制約しておる面もあるわけであります。現在の状態に直して考えてみれば、計画自体がそのコストから見まして、また事業のスピードから見ましても、改訂の必要があるのじやないかというようなものにつきましては、思いきつて改訂を加えて参りたいということを考えております。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど一例として取上げた千葉の干拓工事は、第一期の仕事として疏水路だけを抜くということだけでも非常に難事業であるというように私たちは見ておるわけであります。農地局長としては、はたしてあの疏水路を抜くことは何年後に完全に自信を持つて行われるか、こういう見通しがあればこの際お伺いしたいと思います。
  101. 平川守

    ○平川政府委員 印旛沼の問題につきましては、今相当手を入れまして、具体計画について検討をいたしておりますが、第一期計画の疏水路を抜くだけでも、数十億の金がいる計画になつております。現在のような年に二億数千万円というような予算でありますと、これだけでも十年以上かかるというような状態でありますので、この疏水路の抜き方そのものについても、今検討いたしまして、少くとも十年以内に、なるべく短かい期間において、ある程度の効果を発揮するような計画に直して参りたい、かように考えております。
  102. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がありませんので、この程度にしておきたいと思いますが、特に委員長にお願したい点は、ただいま一例をあげたのですが、印旛沼の干拓事業等について、委員長の御配慮によつて適当な機会に調査を進められんことを希望する次第であります。
  103. 井出一太郎

    井出委員長 承知いたしました。
  104. 川俣清音

    川俣委員 私は農地局にひとつお尋ねして、決意をお伺いしておきたいのですが、こういうふうに畑地灌漑なり、いろいろ特殊立法が出て参りますると、それに属する技術陣営がやはり強化されて行かなければならないと思うのです。現在持つておりまする出外でありまする農地局の中には、十分これらの技術について——農業土木というものが非常に日本で遅れておりますために、これに対する認識あるいは技術の面について、十分な処置がとれてない面が多々あると思うのです。これは農地局が専門技術を持てという意味ではないのです。幾分なりとも技術についての理解なり、一つ見解を持つていなければ、行政部門を遂行できない、そういう意味で出先機関の研修というようなことがこれは真剣に考えられたければならぬと思うのですけれども、これがいつも投げやりになつておるのです。こういうことが、非常に実際上の能率を上げる上に大きな影響を与えるのでありますが、これに対する見解を衣つて、ぜひともその実現を望みたいと思います。
  105. 平川守

    ○平川政府委員 この点につきましては、私どもも非常に痛感をしておるところでございまして、ことに戦時中に学校を出ました人々においては、相当技術的に落ちておる点もあります。実は昨年度におきましては、特に大蔵省の了解を得まして、予算の中から流用を認めてもらいまして、臨時に研修を実施いたしました。ただ何分にも技術の研修でありますから、大量に、一ぺんにはできない。本年度はようやく大蔵省の理解を得まして、ある程度の予算を計上いたし、すでに実施をいたしております。まず各県、あるいは農地事務局あたりでも、あるいは事業所の中堅の職員について、技術力の向上をはかりたいのですが、人手が足りなくて非常にやりにくいのであります。しかし、この点は特に重点でありますので、ぜひ行いたいと思つております。
  106. 井出一太郎

    井出委員長 他に御発言はありませんか。——なければこれより両案を一括して討論に付します。足立篤郎君。
  107. 足立篤郎

    ○足立委員 畑地農業改良促進法案につきましては、従来わが国の農業が地理的条件からいたしまして、きわめて危険の多い企業であつた事実にかんがみまして、この際、畑地灌漑施設を重点として改良の促進を行い、畑地農業地帯の経営の安定をはかるとともに、増産効果を増大せしめるという意味におきまして、本案につきましては全面的に賛成するものであります。特に今後の対策としては、この畑地農業の改良につきましては、国の政策として最も重点を置くべきであると存ずるのでありますが、要は予算の問題でございまして、予算を十分に確保、計上して、この改良事業の促進をはかることが肝要であると存ずる次第でございます。  なおまた先ほど来、各委員の御発言を承つておりましても、この畑地農業特殊性からいたしまして、従来の改良事業の対象としての基準面積では、いかにも実情に合わない点もございますので、これはこの際附帯決議を付しまして、政府においてこの法案の通過後に、その運用にあたりまして善処をしてもらうのが最も実情に適しておるのではないか、かように考えますので、この際附帯決議を付したいと存じますから、委員長よりおとりはからいを願いたいと思います。それでは附帯決議の案文を朗読いたします。    畑地農業改良促進法案の附帯決議(案)   本法による政府の助成対象面積は、一事業主体につき五町歩以上とすること。 以上であります。
  108. 井出一太郎

    井出委員長 他に討論はございませんか。——なければこれより採決いたします。まず土地改良法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  109. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に畑地農業改良促進法案について採決いたします。本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  110. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に足立委員提出畑地農業改良促進法案に対する附帯決議について採決いたします。本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  111. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつてこの附帯決議を付することに決しました。
  112. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は千葉県におきまする農地の転用許可処分に関する点につきまして、政府見解を承りたいのでありまするが、何分にも関係政府委員がお見えになつておりませんので、私の質問は次会の適当なときにできるように、委員長におきまして、関係者の出席をおとりはからい願いたいと思います。
  113. 井出一太郎

    井出委員長 承知いたしました。この際暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後一時二十一分開議
  114. 井出一太郎

    井出委員長 会議を再開いたします。  土地改良法の一部を改正する法律宙について、附帯決議提出がございました。足鹿覺君の発言を許します。足鹿君。
  115. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの土地改良法の一部を改正する法律案の附帯決議案提出いたします。  本法により政府の助成対象面積は、一事業主体につき五町歩以上とするとであります。これは申し上げるまでなく、現在の政府が助成の対象としております基準面積は、土地改良法においても二十町歩、また積雪集冷単作地存振興法の場合におきましても二十町歩あるいはその他の関連ある特殊立法の場合にも、ことごとく実情とかけ離れた基準面積を規定いたしまして、これに合致しない場合は、国の助成対象にしないという進み方を現在までとつておるのであります。しかしながら日本農地の状態あるいは土地改良事業その他これに関連する特殊立法の運営の実情から見ましても、その基準面積が広きに失して、必ずしも過小農、零細経営の日本農地の実情に適合しておらないという悲痛な農民からの声が今日まで上つておるのでありまして、この声を無視して、今後の食糧増産目的達成するための土地改良並びにその他関連の特殊立法目的達成することは困難であろうと存ずるのであります。従いましてこの際、従来のこの実情に合致しない助成対象の基準面積単位を五町歩以上に改めることが、非常に大切なことであろうと存じます。よつてこの附帯決議提案をいたしまして、ただ単に土地改良法の対象のみならず、積雪寒冷単作地帯の場合におきましても、またその他の特殊立法実施にあたりましても、この附帯決議趣旨を貫くことによつて、個個の零細な農民にまで国の助成の手が延びて行きまして、実情に即した運営ができ、従つて土地改良の実績を上げ、ひいては食糧増産目的をすみやかに達成するように、政府をして適当な措置をとらしめることが必要であると考えるわけであります。よつてこの附帯決議案提案をいたした次第であります。
  116. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの足鹿委員提出の附帯決議について採決いたします。本決議賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  117. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつてただいまの附帯決議を付することに決しました。なお、お諮りいたします。本日の議案に関する衆議院規則第八十六条の規定による報告書の作成については会員長に御一任願いたい思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  118. 井出一太郎

    井出委員長 異議なしと認め左様決しました。ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  119. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めて。     —————————————
  120. 井出一太郎

    井出委員長 これより農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案議題として、その審議を進めます。  本案は農業共済制度に関する小委員会審査に付しておりましたが、小委員会より審査を終了した旨の報告書がも出いたされました。これより足鹿委員長報告を求めます。足鹿覺君。     —————————————
  121. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは農業共済制度に関する小委員会報告を申し上げます。  小委員会政府提出農林委員会付託にかかる農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案を小委員会において制度の根本的検討と並行し、今日まで検討を加えて参つたのでありますが、ただいまの家畜共済臨時特例に関する法律案につきましては、その細部についてさらに検討いたしまして、小委員会の議がようやくまとまりましたので、本案審議の経過並びに結果の概要に関して、御報告いたしたいと存じます。  本案趣旨並びに内容は、すでに御存じのごとく、農業災害補償法に基く家畜共済合理化をはかりまするために、死亡廃用共済と疾病傷害共済とを一元化した死廃病傷共済を一部の組合に試験的に実施しようというものであります。本案に関しましては、去る七月七日、農林農林経済局長等の出席を求めて、その法案内容並びにその運営上の諸問題について説明を聴取したのでありますが、さらに九日には、全畜販連永松陽一君、全指連稲葉次郎、獣医師会小林国夫君、共済協会下山一二君及び埼玉県入間郡高麗川村家畜診療所運営委員長長沢泉一郎君らの出席を求めまして、参考意見を聞くことといたしたのであります。これらの五名の参考人のうち、四名は本案賛成、開業獣医師側の意見を代表される小林君はA種共済による特別賦課金制度は特約制度であつて、開業獣医師に対する畜主の自由選択権を事実上束縛をするものであること、本法が実験法の建前をとりながら、指定組合の予定地域が広きに過ぎること等、二、三の理由をあげられ、本法案中の一部に対して、反対の意思を表明せられたのであります。小委員会といたしましては、かような反対意見が出ました以上は、さらに法案審議に慎重を期しまするために、現地について調査を行い、直接具体的な事柄について認識を深める必要を認めまして、委員長を煩わし、所要の手続を経て、埼玉県下におもむくこととした次第であります。  当日は日曜日であつたにもかかわらず、調査に参加せられました方は、足立委員、吉川委員、松山委員、それに私と別に事務局より、岩隈、藤井両専門員、農林省より久宗保険課長、平田技官、中沢技官を帯同いたし、また現地には、県、共済団体、獣医師会等より多数の方が立会われたのであります。  調査場所は入間郡高麗川村並びに所沢市内小手指の二箇所でありまして、共済組合の家畜診療所を中心に、現地の農民、獣医師等の率直なる意見を聞くことといたしたのであります。  まず埼玉県下全般の家畜共済の概況を簡単に申し述べますると、埼玉県は全国でも屈指の畜産県として最近急速に伸びており、家畜の頭数は漸次増加の趨勢を示し、現在大家畜では乳牛は約一万二千頭、役牛三万八千頭、馬一万六千頭を数え、家畜共済への加入率は、死亡廃用において牛八割五分、馬八割一分、疾病傷害において牛二割五分、馬一割五分を示しておるのであります。しかしてこの家畜共済事業の一環としまして、共済団体は家畜診療所を経営いたし、家畜の事故防止、治療、健康診断等の事業を行つているのでありまして、その設置の状況は、二十三年以降、国庫及び県よりの補助金を受けて、毎年五箇所づつ設置して参り、現在二十数箇所を持ち、なお今後引続いて増設の計画が持たれておるのであります。しかして県下における開業獣医数は百二十五名であつて、このうち郡部にあつて、大家畜の診療に当る開業者の数は大体百名前後、年間診療頭数は一人当り概数百四、五十頭程度ということであります。  次にわれわれの視察しました高麗川並びに小手指の診療所の概況を見ますると、高麗川診療所は昭和二十三年の設置にかかり、現在専任獣医師二名を有し、その協力町村は十四箇町村にわたり、運営委員会組織して、その運営に当つておりまするが、その資源頭数に対して、たとえば牛の加入率を見ますると、死亡廃用は約九割、疾病傷害のそれは約四割五分という成績を示しており、一方管内において開業しておる獣医数は三名であります。また小手指の診療所は昭和二十五年に設置され、再任獣医数は一名、協力町村は十一、資源頭数に対して死亡廃用共済の加入率において、牛についてみますると、一〇〇%、疾病傷害共済は八三%の加入率で、非常に高率を示し、一方におきまして、管内の開業獣医数は一名であります。家畜診療所に対する農民の声を聞きますると、一般に好評を得ているようでありまして、その理由としましては、早期治療が可能となつたこと、並びに治療費が安くなつたことの二点に集約できると思います。しかして他方におきましては、家畜診療所の設置数増加と、その診療事業の進展拡大に伴いまして、開業獣医師との間に対立的な空気を発生せしめているのであります。すなわち、最近特に診療所が家畜の多い地帯設置され、さきに若干の数字を示して述べましたように、開業者の業権を圧迫する傾向を示しておるのでありますが、今回の提案中、いわゆるA案を採用されまするならば、ますますその傾向に拍車をかけるおそれがあると言われているのであります。従来、県共済連は県の獣医師会の推薦に基いて、開業者を組合の嘱託医に採用する制度をとつておるところが多いように聞いていたのでありますが、実際においては、専任獣医師と開業獣医師間に業務上の協定ができていないことがあり、また協定はあつても、それが完全に履行されてないことがあり、また死亡の現認等重要な仕事を嘱託されないことがあり、また診療所の点数表にない去勢等の仕事をどんどん専任獣医師が行う等のことがあつて、両者の関係にはいろいろ円滑を欠く点があるやに看取されたのであります。もとより開業獣医師にも老練なる技術者が多数おるのでありますから、診療所獣医と両々相まつて、家畜の診療に遺憾なきを期するよう、緊密なる協力関係の樹立が望ましいのでありまして、今回の提案を契機として、その間の調整を慎重に検討すべきであります。  以上述べましたような観点のもとに、各委員におかれては慎重研究を行われたのでありますが、七月二十一日小委員会を開き、政府よりの説明聴取、公聴会並びに現地調査によつて得られましたところに基き、本法の運営上、政府に対し要求すべき問題点の整理、検討を行つたのであります。その際、足立委員より、死廃病傷共済についてA種一本とすること、特別賦課金の制度をやめて一般賦課金によることを中心とする附帯決議案提出され、また私より、死廃病傷共済の種類は、A種、B2種に統合すること、開業獣医師の有給嘱託制をとらしめること、試験頭数をある程度圧縮すること等を骨子とする一案を提示しまして、その立案の理由説明いたしましたが、各党間になお異論もあるようにうかがわれましたので、なお一層の御研究をお願いすることといたしたのであります。しこうして、会期も切迫いたし、至急に態度を決定する必要も生じましたので、さらに話合いを進めました結果、お手元に配付いたしましたごとき付帯決議を付することに意見がようやくまとまり、ここにその案文を提出することと相なつたのであります。よろしく御採択あらんことをお願いする次第であります。  以下附帯決議案を読み上げ、私の報告を終ることといたします。    農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律制定後、左記の方法に基き運用すること。      記  一、主務大臣が死廃病傷共済掛金標準率を定める場合においては、無制限診療給付を実施し、且つ共済の種類を簡素化することを旨として、診療費のうち技術料等を除いた部分を共済の目的とするもの、及び診療者の技術料等を含んだ診療費を共済の目的とするもののうち掛金標準率を現行のものの八割とするものの二種類とすること。  二、政府は本法を実施する場合、必要に応じ、獣医師の専門科別職能又は技能に従い、診療所専任者及び現地開業者を相互に協力せしめるとともに畜主の自主的な判断に基いて両者を自由に選択しうるよう開業獣医師の有給嘱託制度を広く採用せしめ、且つ専任獣医師偏重となるような特別の指導方針を執らしめざること。  三、特別賦課金制度はこれを設けざることとし、農業共済団体が家畜診療所の運営に必要とする経費として、賦課金を賦課する場合の方法、最高規準等については省令を以てこれを定めること。    尚、家畜診療所の経常費等に不足を生じたときは、農業共済再保険特別会計の運用により政府において極力助成の措置を講ずること。  四、本法が実験法たる趣旨にかんがみ、二十八年度において実験の対象とする牛馬頭数は、これを五十とすること。  五、農業共済再保険審査会及び都道府県農業共済保険審査会に獣医師会の代表を参加せしめ、其の意見を尊重するよう運用せしめること。  六、繁殖障碍等畜産振興上重大なる事故については、畜主の自己負担額を増大せしめないよう一事故の診療給付限度の引上に努めること。
  122. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの附帯決議案につきまして、政府見解を求めます。小分経済局長。
  123. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ただいま足鹿委員から御説明がございました附帯決議につきましては、小委員会等におかれまして慎重御審議の点でございまして、私どももまつたく同感の意を表するのであります。特にこの附帯決議内容は、法準制定後の運用に関するものでございまして、政令、省令等に関係するものが多いのでございまするので、そういう点につきましては、十分本趣旨によりまして、一定をいたしたいと思います。  なお一、二の項につきましては、特別会計の運用ないし予算関係する事項もございまするが、この点につきましては、本附帯決議趣旨にかんがみまして、特別会計の運用ないし予算の獲得ということについても、万全の努力を払いたい、かように考えております。
  124. 井出一太郎

    井出委員長 この際討論を省略して採決をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 井出一太郎

    井出委員長 異議なしと認め、これより採決いたします。本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  126. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に附帯決議について採決いたします。この附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決しました。  なお本案に関する衆議院規則第八十六条の規定による報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。に     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決します。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十二分散会