○
足鹿委員 それでは農業共済
制度に関する小
委員会の
報告を申し上げます。
小
委員会は
政府提出、
農林委員会付託にかかる
農業災害補償法に基く
家畜共済の
臨時特例に関する
法律案を小
委員会において
制度の根本的検討と並行し、今日まで検討を加えて参つたのでありますが、ただいまの
家畜共済臨時特例に関する
法律案につきましては、その細部についてさらに検討いたしまして、小
委員会の議がようやくまとまりましたので、
本案の
審議の経過並びに結果の概要に関して、御
報告いたしたいと存じます。
本案の
趣旨並びに
内容は、すでに御存じのごとく、
農業災害補償法に基く
家畜共済の
合理化をはかりまするために、死亡廃用共済と疾病傷害共済とを一元化した死廃病傷共済を一部の組合に試験的に
実施しようというものであります。
本案に関しましては、去る七月七日、
農林省
農林経済局長等の
出席を求めて、その
法案の
内容並びにその運営上の諸問題について
説明を聴取したのでありますが、さらに九日には、全畜販連永松陽一君、全指連稲葉次郎、獣医師会小林国夫君、共済協会下山一二君及び埼玉県入間郡高麗川村家畜診療所運営
委員長長沢泉
一郎君らの
出席を求めまして、参考意見を聞くことといたしたのであります。これらの五名の参考人のうち、四名は
本案に
賛成、開業獣医師側の意見を代表される小林君はA種共済による特別賦課金
制度は特約
制度であ
つて、開業獣医師に対する畜主の自由選択権を事実上束縛をするものであること、本法が実験法の建前をとりながら、指定組合の予定
地域が広きに過ぎること等、二、三の
理由をあげられ、本
法案中の一部に対して、反対の意思を表明せられたのであります。小
委員会といたしましては、かような反対意見が出ました以上は、さらに
法案の
審議に慎重を期しまするために、現地について調査を行い、直接具体的な事柄について認識を深める必要を認めまして、
委員長を煩わし、所要の
手続を経て、埼玉県下におもむくこととした次第であります。
当日は日曜日であつたにもかかわらず、調査に参加せられました方は、足立
委員、吉川
委員、松山
委員、それに私と別に事務局より、岩隈、藤井両専門員、
農林省より久宗保険課長、平田技官、中沢技官を帯同いたし、また現地には、県、共済団体、獣医師会等より多数の方が立会われたのであります。
調査場所は入間郡高麗川村並びに所沢市内小手指の二箇所でありまして、共済組合の家畜診療所を中心に、現地の
農民、獣医師等の率直なる意見を聞くことといたしたのであります。
まず埼玉県下全般の
家畜共済の概況を簡単に申し述べますると、埼玉県は全国でも屈指の畜産県として最近急速に伸びており、家畜の頭数は漸次増加の趨勢を示し、現在大家畜では乳牛は約一万二千頭、役牛三万八千頭、馬一万六千頭を数え、
家畜共済への加入率は、死亡廃用において牛八割五分、馬八割一分、疾病傷害において牛二割五分、馬一割五分を示しておるのであります。しかしてこの
家畜共済事業の一環としまして、共済団体は家畜診療所を経営いたし、家畜の事故防止、治療、健康診断等の
事業を行
つているのでありまして、その
設置の状況は、二十三年以降、国庫及び県よりの補助金を受けて、毎年五箇所づつ
設置して参り、現在二十数箇所を持ち、なお今後引続いて増設の
計画が持たれておるのであります。しかして県下における開業獣医数は百二十五名であ
つて、このうち郡部にあ
つて、大家畜の診療に当る開業者の数は大体百名前後、年間診療頭数は一人当り概数百四、五十頭程度ということであります。
次にわれわれの視察しました高麗川並びに小手指の診療所の概況を見ますると、高麗川診療所は
昭和二十三年の
設置にかかり、現在専任獣医師二名を有し、その協力町村は十四箇町村にわたり、運営
委員会を
組織して、その運営に当
つておりまするが、その資源頭数に対して、たとえば牛の加入率を見ますると、死亡廃用は約九割、疾病傷害のそれは約四割五分という成績を示しており、一方管内において開業しておる獣医数は三名であります。また小手指の診療所は
昭和二十五年に
設置され、再任獣医数は一名、協力町村は十一、資源頭数に対して死亡廃用共済の加入率において、牛についてみますると、一〇〇%、疾病傷害共済は八三%の加入率で、非常に高率を示し、一方におきまして、管内の開業獣医数は一名であります。家畜診療所に対する
農民の声を聞きますると、一般に好評を得ているようでありまして、その
理由としましては、早期治療が可能と
なつたこと、並びに治療費が安く
なつたことの二点に集約できると思います。しかして他方におきましては、家畜診療所の
設置数増加と、その診療
事業の進展拡大に伴いまして、開業獣医師との間に対立的な空気を発生せしめているのであります。すなわち、最近特に診療所が家畜の多い
地帯に
設置され、さきに若干の数字を示して述べましたように、開業者の業権を圧迫する傾向を示しておるのでありますが、今回の
提案中、いわゆるA案を採用されまするならば、ますますその傾向に拍車をかけるおそれがあると言われているのであります。従来、県共済連は県の獣医師会の推薦に基いて、開業者を組合の嘱託医に採用する
制度をと
つておるところが多いように聞いていたのでありますが、実際においては、専任獣医師と開業獣医師間に業務上の協定ができていないことがあり、また協定はあ
つても、それが完全に履行されてないことがあり、また死亡の現認等重要な仕事を嘱託されないことがあり、また診療所の点数表にない去勢等の仕事をどんどん専任獣医師が行う等のことがあ
つて、両者の
関係にはいろいろ円滑を欠く点があるやに看取されたのであります。もとより開業獣医師にも老練なる技術者が多数おるのでありますから、診療所獣医と両々相ま
つて、家畜の診療に遺憾なきを期するよう、緊密なる協力
関係の樹立が望ましいのでありまして、今回の
提案を契機として、その間の
調整を慎重に検討すべきであります。
以上述べましたような
観点のもとに、各
委員におかれては慎重研究を行われたのでありますが、七月二十一日小
委員会を開き、
政府よりの
説明聴取、公聴会並びに現地調査によ
つて得られましたところに基き、本法の運営上、
政府に対し要求すべき問題点の整理、検討を行つたのであります。その際、足立
委員より、死廃病傷共済についてA種一本とすること、特別賦課金の
制度をやめて一般賦課金によることを中心とする附帯
決議案が
提出され、また私より、死廃病傷共済の種類は、A種、B2種に統合すること、開業獣医師の有給嘱託制をとらしめること、試験頭数をある程度圧縮すること等を骨子とする一案を提示しまして、その立案の
理由を
説明いたしましたが、各党間になお異論もあるようにうかがわれましたので、なお一層の御研究をお願いすることといたしたのであります。しこうして、会期も切迫いたし、至急に態度を決定する必要も生じましたので、さらに話合いを進めました結果、お手元に配付いたしましたごとき付帯
決議を付することに意見がようやくまとまり、ここにその案文を
提出することと相
なつたのであります。よろしく御採択あらんことをお願いする次第であります。
以下附帯
決議案を読み上げ、私の
報告を終ることといたします。
農業災害補償法に基く
家畜共済の
臨時特例に関する
法律案に対する附帯
決議(案)
政府は、
農業災害補償法に基く
家畜共済の
臨時特例に関する
法律制定後、左記の
方法に基き運用すること。
記
一、主務
大臣が死廃病傷共済掛金標準率を定める場合においては、無制限診療給付を
実施し、且つ共済の種類を
簡素化することを旨として、診療費のうち技術料等を除いた部分を共済の
目的とするもの、及び診療者の技術料等を含んだ診療費を共済の
目的とするもののうち掛金標準率を現行のものの八割とするものの二種類とすること。
二、
政府は本法を
実施する場合、必要に応じ、獣医師の専門科別職能又は技能に従い、診療所専任者及び現地開業者を相互に協力せしめるとともに畜主の自主的な判断に基いて両者を自由に選択しうるよう開業獣医師の有給嘱託
制度を広く採用せしめ、且つ専任獣医師偏重となるような特別の指導方針を執らしめざること。
三、特別賦課金
制度はこれを設けざることとし、農業共済団体が家畜診療所の運営に必要とする経費として、賦課金を賦課する場合の
方法、最高規準等については省令を以てこれを定めること。
尚、家畜診療所の経常費等に不足を生じたときは、農業共済再保険特別会計の運用により
政府において極力助成の
措置を講ずること。
四、本法が実験法たる
趣旨にかんがみ、二十八年度において実験の対象とする牛馬頭数は、これを五十とすること。
五、農業共済再保険
審査会及び都道府県農業共済保険
審査会に獣医師会の代表を参加せしめ、其の意見を尊重するよう運用せしめること。
六、繁殖障碍等畜産
振興上重大なる事故については、畜主の自己負担額を増大せしめないよう一事故の診療給付限度の引上に努めること。