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1953-07-17 第16回国会 衆議院 農林委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十七日(金曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 平野 三郎君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 佐竹 新市君 理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       佐藤善一郎君    福田 喜東君       松岡 俊三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       山本 幸一君    稲富 稜人君       川俣 清音君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局農         業同組合部長) 谷垣 專一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 七月十七日  農産物価格安定法案足立篤郎君外二十三名提  出、衆法第二十三号) 同月十六日  宮崎県の農作物風水害対策確立に関する請願(  相川勝六君外五名紹介)(第四二五三号)  鳥海山ろく農業開発地域開発に関する請願(  齋藤憲三紹介)(第四二五四号)  広島県東部の農業災害対策確立に関する請願(  船越弘紹介)(第四二五五号)  同(岡本忠雄紹介)(第四二五六号)  果樹の凍霜害対策確立に関する請願原茂君紹  介)(第四三二九号)  朝倉郡の農作物水害対策確立に関する請願外一  件(熊谷憲一紹介)(第四三三〇号)  農村の電柱敷地補償に関する請願熊谷憲一君  紹介)(第四四四二号)  農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関  する請願笹本一雄紹介)(第四四四三号)  農産物価格安定制度確立に関する請願(八木一  郎君外五名紹介)(第四四四四号)  急傾斜地帯農業振興事業対策に関する請願(小  枝一雄紹介)(第四四四五号)  八平搦及び福富搦干拓工事施行に関する請願(  江藤夏雄紹介)(第四四四六号)  双三郡の農作物水害対策確立に関する請願(岡  本忠雄紹介)(第四四四七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農業機械化促進法案平野三郎君外十六名提出、  衆法第一四号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六〇号)  農産物価格安定法案足立篤郎君外二十三名提  出、衆法第三四号)  農政基本施策に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  まず平野三郎君外十六名提出農業機械化促進法案提案理由を聴取したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井出一太郎

    井出委員長 異議なしと認め、さよう決定いたします。平野三郎君。
  4. 平野三郎

    平野(三)委員 ただいま議題になりました農業機械化促進法案提案理由を御説明申し上げます。  戦後、農地改革によりまして、わが国農業は、独立自営農民主体とする民主的な体制に進んでおりますが、この基盤の上に合理的かつ近代的な農耕技術によつて食糧生産の増強を強力に推進いたしますことは、当面する最も重大な課題であります。わが国農耕技術は、明治以来主として品種の改良施肥技術改善の面において著しい発達を示したのでありますが、生産手段高度化はやや進歩が遅く、今なお多くの農民は苛酷な労働のもとに耕作を続け、そのため生産増加の限界は低く、経営並びに生活の改善もまた期待し得ない状況にあります。しかしながら最近におきましては、農機具に関する改良相当程度進展し、なかんずく農民の側における農業機械化に対する意欲も急速に高まつて参りましたので、このときにおきまして自動耕耘機、カルチベーター、二度耕犂その他の動力または畜力を利用する曲機具を急速に改良普及し、わが国農業経営の現状に即応しつ農業機械化の適正な進展を助長し、もつてわが国農業の発展と、食糧自給度の向上をすみやかに達成しようといたしまして、この法案提案いたす次第であります。  この法案主要内容は次の通りであります。第一は、国は、農民が効率的な農機具共同で利用しようとするときに必要とする農機具購入資金に対して、長期かつ低利の資金を確保するよう必要な措置をとらなければならない旨を規定したことであります  第二は、国は農機具試験研究を盛んに行つて農機具改良発進促進するため、農業改良助長法律に基き地域農業試験場及び都道府県農業試験場設備人員強化充実をはかり、あるいは大学または民間の試験研究機関における長機具に関する試験研究を積極的に助長しようとすることであります。  第三は、都辻府県農業機械化を適正に促進するために行う事業、すなわち農機具教習展示施設の設置及び運営農機具共同利用組織育成整備指導並びに農機具共同利用を効果的に推進するために必要な農民技能者養成等を行うのに必要な経費の一部を補助することができる旨を規定したことであります。  第四は、農機具改良発産並びに優良農機具普及奨励に資するため、従来異施して参りました農機具国営依頼横査を法制化するものであります。すなわち、農林大臣農機具検査を依頼されたときは、検査基準に照して合格または不合格を決定し、またそれが検査基準に適合しているかどうかを随時検査して、適合しないときは合格の決定を取消すことができるようにし、他方検査成績あるいは合格の取消しに対しては異議の申立の道を開いておるのであります。  第五は、農業機械化に関する重要事項調査審議するため、農林省に農業機械化審議会を設置し、その組織、議事及び運営等は政令で規定することであります。  第六は、以上のほか、国または都道府県農業機械化促進するのに有効な事項、たとえば研修会共進会等を積極的に行うよう努めなければならない旨を規定したことであります。  以上がこの法案の主要な内容でありまして、御説明いたしました通り、この法案は国または都道府県のとるべき措置施策に多大のものを期得してありますので、これが施行に際しましては、逐次それ等の措置施策拡充強化をはかりまして、これが立法の趣旨の実現に万全を期したいと存ずる次第であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。     —————————————
  5. 井出一太郎

    井出委員長 次に土地改良法の一部を改正する法律案議題といたし、質疑を行います。足鹿覺君。
  6. 足鹿覺

    足鹿委員 私は直接この改良法の一部改正条文等についてはあまり意見もございませんが、二、三この機会に承つておきたいと思います。  それは提案理由にもございますが、この土地改良法対象事業として、灌漑、排水施設農業用近路の整備農地区画整理農地集団化農地の造成及び保全、その他災害復旧等土地改良が載つておるのでありますが、この中で農地集団化対策の問題については、なるべく継続年度を避けて、すみやかに集団化促進して行くような御意思はないのでありますか。農地集団化のためにつくられた民主的な協議会等においても、しばしばそういう要請が行われており、農地局長御存じのことだろうと存じますが、その点については当局はいかように御処置になつておるのでありますか。  またいま一つは、農業用道路整備とこの集団化の問題は関連をして参ります。農業用道路整備改修促進をすれば、勢いそれにつれて集団化が進み、また集団化をときによつては必要としない事態も、農道整備によつて出て来ると患われます。しかるに農業用道路補助等については、積雪寒冷単作地の場合でも同様でありますが、補助率がきわめて少い。この点非常に遺憾であります。元来占領前の農業用道路については相当額補助金もあつたのでありますが、それが終戦後において、著しく他の施設に比べますと農道に対する補助率が低下しております。これは積雪寒冷単作地の場合において最も顕著であります。ところがこの農業用道路は、普通の平坦地よりもむしろ山間地帯で、それでなくても過重労働をしておる農民が最も熱望しておる問題でありますが、この点は当局としては今後補助率改訂等集団化の問題とあわせていかように御処置なさろうとしておりますか。その点もこの際にお伺いいたします。
  7. 平川守

    平川政府委員 耕地集団化につきましては、御承知のように大体百七十万町歩くらいを目途といたしまして、年次計画をもつて二十数万町歩ずつ毎年集団化すべき計画予算を計上しておるわけであります。ただお話のように、この集団化を実施いたします場合におきまして、農道その他の耕地と密接な関係があるわけであります。計画の方は年次計画が立ちましても、これを実施する場合にこれらの事業費が伴わないと、非常にやりにくいという問題があるわけであります。現在の建前といたしましては、いわゆる小規模の土地改良の中の農道費用、あるいは水利の費用区画整理経費というよとなものを、これと結びつけて使うように運用上やつて参りたいということで、そういうような指導をいたしておりますけれども、なか、てこれが実際上うまくマッチしないといううらみがある。実はそういうことのために、交換分合に伴う農道、その他小規模の工事に対する助成という特別な柱を建てて、要求いたしたのでありますが、これがなかなか認められない。一般の小規模の土地改良工事費まであるのだから、それと結びつけてやつたらいいのではないか、りくつはその通りでありますが、実際問題としてなかなかそこが結びつかぬという点もありますので、なおこの点については、明年度もよく理解を求めるように折衝いたしたいと思つております。さしあたりはやむを得ませんが、できる限り両者を結びつけて運用したいということで指導をいたしておるわけであります。それから特に農道助成についての御質問でございますが、実は大蔵省といたしましては、村道等に対しても助成をしておらない。特別に農道だけに非常に高率助成をするということは、そういう関係からいたしても非常に困るということをしきりに申すわけであります。しかし農業上の観点から申しますと、お話通り農道というものは生産上非常に重要でありますので、ようやく積雪寒冷単作地帯予算を契機といたしまして、あのとき初めて項目が認められた。さらに急傾斜地帯の場合においては、土地の性質で農道費用が非常にかかる関係上、これに対しては高率助成をようやく認められた。場所によつて三割ないし五割の間において高率助成をする。一般農道は二割、急傾斜地帯においては三割ないし五割の助成をする。こういうことにようやくとなつて参つたのであります。これについては、なお今後とも折衝をいたして参りたいと思いますが、なかなか一挙に認められない。その主たる原因は、大蔵省の議論としては、先ほど申しましたような、町村道との関係があるという失情になつております。農道重要性についての御意見はまつたくその通りでございます。われわれといたしましては、今後とも大蔵省等理解を求めて参りたい、かように考えております。
  8. 足鹿覺

    足鹿委員 この農道の問題でありますが、今御指摘なつた急傾斜積雪寒冷単作地とがあわせて適用できる地帯についての場合は、両者の園の助成等一つ農道に集中して行くということも便法として現地では考えられておるようでありますが、そうした場合はどうなりますか。
  9. 平川守

    平川政府委員 あの運用は、実際問題として各地区をそのいずれかに指定するという式に考えて、今の助成適用する場合に、つまり急傾斜地帯の場合におきましては、その事業の特質上、おのずから急傾斜としての仕事、すなわち農道とかあるいは農地保全とかいつたような面が重点になります。そういう地帯については急傾斜地帯としての助成をするということに考えております。
  10. 足鹿覺

    足鹿委員 それはあとでまたいろいろ打合せをすることといたしまして、要するに私の言いたいことは、実際において農道整備拡張というようなことが、日本農業近代化の具体的な面における大事な点であろうと思う。その点について柱が立たんというようなことでは、私はいかにも農政が貧困だと思う。実際において私の郷里でありますが、水田の所要労力二十一人役から二十四人役が大体通常でありますが、山間地帯におきましては二十九人から三十人を要しております。しかもそれは、農道の不完備のために非常な労力を費しておる。全体の労力の二十九人ないし三十人のうちの二割七分ぐらいを占めておる。七人役から八人役程度を運搬その他のものに費しておるという事例もたくさんあります。で私は、特にこの機会に強く要望申し上げたいことは、すみやかに農地局としては、この農道整備拡充等に対し、特に山間地帯等における事例をよく御調査になつて、そういう資料を整備した上、すみやかに来年度の予算においては、積雪寒冷単作地帯における農道補助率拡充拡張または別途農地集団化とあわせての農道補助予算的措置を講ぜられるよう、もう全国至るところの山村あるいはそれに準ずる地帯のこれは切実な要望でありますので、ぜひ適切妥当な措置を急速に講じていただきたい。この機会に特に私は要望申し上げておきます。  それから、これは本法でありますが、農地法の規定に基いて買収した土地等について、国または、都道府県開田あるいは干拓をした場合に、その事業とあわせて近傍の民有地にも開田事業その他の事業を行うような法案改正でありますが、これによつて、ただちに適用がされ、相当効率の上るような現在御調査になつておる地帯とか、大体そういう関係面積は、どの程度ありますか。それといま一つは、改正案の最終にあります、従来国都道府県土地改良区、農業協同組合の行う土地改良事業のほかに、今度は市町村も一定の手続きを経て、土地改良事業を行うということになつておりますが、土地改良区もやり、農業組合もやつておるところへ、また市町村を入れて行くという場合に、非常に事業単位が複雑錯綜して来わしないかというような印象を持つわけでありますが、特に市町村を加えられた理由はどういう点にありますか、この二点をお伺いしておきたい。
  11. 平川守

    平川政府委員 第一の問題につきましては、現在まだ全体の数字をつかむという段階に至つておりません。ただ実際問題といたしまして、国の開拓用地に、たとえば開拓のための灌漑設備をする、そうすると同時に、その付近既成農地についても改良工事を一緒に行つた方既成農地に対しても便益を与える。あるいは干拓事業については特にそういう影響もございます。干拓をすることによつて付近排水不良田が緩和されるので、そういうことをあわせてやるという趣旨でありまして、そういうものについて、今その面積がどのくらいあるかということは、ちよつと全国的にはつきり申し上げかねるのでありますが、できる限り調べまして、もし数字が必要であれば、現在わかる程度のものを後ほど提出いたしたいと思います。  それから市町村事業主体にしましたのは、やはり土地改良区、協同組合等でできにくい場合、市町村がやつた方がよろしいという場合、それから市町村市町村として、土地改良事業等に熱心に相当の金をつぎ込んでやりたいという場合に、これを特に拒否する必要もないと思いますが、今までの法制ですと、市町村は全然事業主体になれなかつたのであります。これはあまりにかた過ぎるのじやないかというので、この改正では、土地改良区が市町村にやつてもらいたいというふうに同意をする、また協同組合市町村にやつてもらうに異議がない、こういう場合に市町村が参加することを認めたというわけであります。今までの法律は、市町村がやりたいし、またそれが便利であることを全部が認めておるのに、なおかつ市町村事業主体になれなかつた。これが実際上あまりきゆうくつでありましたために、第一段階はもちろん土地改良区がやる。しかし土地改良区が市町村にやつてもらいたいということに同意をする。また農業協同組合の方でも、知事が諮問をいたしまして、知事にこれを市町村にやつてもらつてよろしいという同意がありました場合に、市町村が乗り出し得るということにいたしたわけであります。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 この市町村農業協同組合土地改良区というものは、大体同じ行政区画の中にあるわけなんであります。協同組合がやる場合も、土地改良区がやる場合も、市町村は無関心たり得ない。実情はほとんど一体的にやつておる。市町村も事務的な世話をし、融資の方では協同組合がやり、事業の実施については土地改良区が担当するというふうに、大体調和をとつて、必要に応じてしかるべくやつておると私は考えておりますが、これにことさらに市町村を加えて行くということになりますと、この改正案の御提案趣旨は、なるべく手続等を簡素にして実情に適合させたいという御意向のようでありまして、私どもまことにけつこうだと思いますが、この点については、事業主体が非常に分立をして、かえつて錯綜しはしないかという杞憂を私は持つておるわけでありまして、そういう点については、あまり対立的なことになつたりして、その結果事業上に悪影響を及ぼさないように御指導を願いたいと思います。大体市町村というものは、事業団体ではなく行政団体でありまして、何もかにも市町村事業に手を出して行くという行き方は、自治行政の面から言つても問題が多分に出て来る。いわんやこういう土木事業市町村が直接乗り出すという道をお開きになることは、地方行政の上にも一つの転機を画すようなことにもなろうと思います。問題は小さいようでありますけれども、自治行政の面から行きますと、これは相当新しい方途を打出すことになると思いますので、そういう点については、事業団体行政機関が対立したりいろいろ錯綜しないように、でき得る限りその調整をはかられて、事業促進に役立つように御配慮を願いたい。別に反対するほどのこともありませんが、私はこの点については若干の疑義を持つわけであります。  最後に、これは本法関係がございませんが、農地局長はめつたにお見えになりませんから、一点だけ伺つておきたいのであります。それは現在自作農創設特別措置法農地調整法が一本になつて農地法になつている。その自作農創設特別措置法農地調整法が発布になつた当時、文書による小作契約が法によつて示され、それがことしで満期になることは御存じ通りだろうと思います。ところが最近全国からのいろいろな事情を聴取しまするところによると、非常に土地の取上げが頻発しております。せがれが大きくなつたから、おらがところでつくるのだとか、いろいろな口実をかまえて、土地所有者契約の更新を妨げるような傾向が最近非常に強く出て来ております。また文書によつて貸借契約を事実上拒否して行くような事態もたくさん出ております。そういう点は農地局は御注目になつておると思いますが、そういう法にはつきり示されたものを無視して行くような、農地法の精神を逸脱するようなことに対しては、断固たる措置をお講じになる必要があると思う。全国には頻発しております。よく実情を御調査になつて、しかるべき措置をお講じになることを私は要望したいのであります。その点について農地局長の御所見を承つておきたい。
  13. 平川守

    平川政府委員 御指摘のようなことがちよいちよい耳に入つおります。これはもとよういうまでもないことでありまして、農地法の明文がはつきり申しておることであります。ただお話のごとく、いろいろな事情を構えると申しますか、いろいろ具体的な事情もございます。これがほんとうにその通りのことであるのか、あるいはそういう口実を構えて、実際は土地取上げということをやつておるのか、その辺は具体的の事柄についてよく検討しなければならぬと思いますが、考え方といたしまして、いわゆる土地取上げということがいろいろなりくつをつけて行われるということについては、これは極力押えて参るという方針であることは当然であります。係官等会合等におきましても、その点は特に強調しておるわけであります。今後ともその点については、全国関係機関趣旨を徹底いたしまして、この際特に注意をするような手段をとりたいと考えております。
  14. 足立篤郎

    足立委員 私は、ただいま足鹿君が質問されました市町村土地改良事業を行う問題につきまして、関連して質問をいたしたいと思います。  具体的な質問を申し上げます前に、この問題について私の見解を申し上げたいと思います。ただいま足鹿君の言われた見解とは若干食い違うのでございますが、ただいま足鹿自身もおつしやつております通り、従来土地改良区あるいは農業協組合等土地改良事業を行います場合に、地方自治体たる市町村はこれに知らぬ顔はできない。知らぬ顔ができないどころじやなくて、実際は中心になつて諸般の問題を取上げてやつておりますことは、足鹿自身も今言われた通りでありまして、むしろ今までの土地改良区等でいろいろ悶着の起る原因を探究してみますると、地方行政、自治体との遊離によつて起る問題が多いように思うのでありまして、今回この改正案において、土地改良区あるいは農業協同組合以外に、事業主体として市町村を取上げようという御趣旨には、双手をあげて賛成するものでありますが、ただ地方自治との関連等もございますので、慎重を要する点のあることは、足鹿君もおつしやる通りでございますが、現在の実状が、すでに今申し上げました通りになつておりますので、むしろ私の考えをもつてすれば、この土地改良事業につきましては、地方の実体に触れておる市町村自体がやるのが原則であるとさえ考えるような次第であります。つきましては、これについて一、二伺つてみたいと思うのでありますが、市町村土地改良事業を行いまする場合に、その区域内に土地改良区があります場合には、その土地改良区の承認を得なければならないことは、今回の改正法律はつきりしておりますが、これが他の町村にまたがる場合も、ごく一部またがる場合と数箇町村にまたがる場合とが起つて来ると思うのでありますが、他の町村連合をして市町村土地改良を行うことができるかどうか、その場合には土地改良区をあらためてつくつてやらなければならないかどうか、あるいはある一つ町村が大部分である、ほんの一部分が他の町村にまたがつて、実際的には大した影響はないけれども、一応関連した隣の町村の了解を得なければその事業ができないというような場合に、他の町村の議会の承認を得て、またその範囲に入る区域関係者の三分の二以上の同意を得ることができれば、連合という形をとらなくてもできるかどうか、この具体的な問題につきましてお伺いいたしたいと思います。
  15. 平川守

    平川政府委員 ただいまの場合は非常に例外的の場合であると思つておりますが、今回の改正案ではまだそこまでは考えておりません。市町村組合を両町村がつくつているという場合はもとよりできるのでありますが、市町村が他の市町村区域にまで手を伸ばして事業をする、あるいは両者共同のような形でするというところまでは、この法律では考えておりません。そういう場合には、やはり土地改良区で仕事をやつてもらうというふうに考えております。
  16. 足立篤郎

    足立委員 ただいまの組合という問題ですが、土地改良を行うために、その問題についてのみ組合の形式をとつて、両村会あるいは町会で議決をして、この法律に定められた通りの三分の二以上の同意を経て組合をつくる場合には、やはりできませんか。
  17. 平川守

    平川政府委員 一部づつの組合は、これの適用にならぬように今のところ考えております。一応現在の改正では、一般市町村単位だけでできる場合だけを考えました。その問題はなお研究いたしたいと思つております。
  18. 足立篤郎

    足立委員 そういたしますと、せつかく市町村というものをここに取上げて法律改正をいたしましても——土地改良事業というものは、この日本の市町村のごく地域の狭い実態から見まして、その範囲内だけで片づくという問題は、めつたにないといつていいくらいであります。ことに補助金対象になる場合は、相当な制限がございますので、実情かういうと、多少なりとも他の町村にはみ出るという場合には、常に土地改良区をつくらなければならないことになるのでありまして、私は先ほど申し上げた現在の日本の社会の実態から申しますと、市町村主体になつてやらせることの方が、むしろ実態に合つているのではないかという考えを持つているのであります。せつかくここに改正をおやりになるなら、そこに何らかの便法を設けて、今私が申し上げたように、ごく一部他の町村にはみ出る場合、その同じ手続を経て同意を得れば、これか一体として実行できるというふうにおとりはからいを願いたいと思います。この点にりきまして御所見を伺いたいと思います。
  19. 平川守

    平川政府委員 先ほど申し上げましたように、現在のところそういう場合は適用されないということになつております。大体市町村主体にしようと考えましたのも、従来市町村の範囲だけで行われる災害復旧とか、いろいろな仕事相当あるわけでありまして、これだけの改正によつても、市町村の行い得る仕事の範囲というものは相当あるだろうと思います。さらに一歩進んで数町村にまたがる場合についてもという御意見かと思いますけれども、一応その程度になりますれば、土地改良区というものがあるわけでございますから、大体それでやつて参りたいという考えでおつたわけでありますが、なおその点については、引続いて研究さしていただきたいと思います。
  20. 井出一太郎

  21. 小枝一雄

    ○小枝委員 ちよつと質問に入る前に、日本の畑と水田との反別ですね、これは区別してどのくらいになりますか、正確なところで……。
  22. 平川守

    平川政府委員 正確なところは、ちよつとわかりません、大体はわかりますが……。
  23. 小枝一雄

    ○小枝委員 私は日本の食糧対策の上から考えまして、あるいはまた農村対策の上から考えまして、畑作によるものが相当多いと考えております。現在の日本の農政の上からいいますと、いろいろな単行法がありまして、御承知の急傾斜の単行法あるいは砂丘地の単行法あるいは湿田単作、積雪寒冷地帯等、いろいろなたくさんの単行法が出ております。けれども畑地に対する施策というものは、ほとんど考えられていなかつたの荷ないかと思います。すなわち運搬とか通行とかいう面に対しては、農業を通じて畑作に対しても考慮がされておりますが、畑作に必ずしも水がいらぬというわけではありませず、土砂の流失の防止その他灌漑の方法等について、増産上必要な問題が多いのであります。これに対して当局はお考えになつたことがあるかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  24. 平川守

    平川政府委員 畑作地帯に対する施策が、従来水田に比べまして著しく劣つておるということは、御指摘通りと思います。従いまして食糧増産の自給強化施策におきましても、畑作地帯に対する期待というものは非常に大きくかけておるわけであります。開拓による約八、九百万石というものは主として畑によるものであります。また畑地灌漑による増産量も四、五百万石は期待をしておる、およそ六十万町歩くらいの畑に対しては、畑灌漑設備を施すことができるだろうというふうに考えておるのでありまして、この部分が、比較的閑却されておりましたために、畑地灌漑の問題のごときは、最近特に非常な勢いで——この効果が認められまして、各地において非常に急速に普及しつつあるということは御承知の通りであります。従つてわれわれの増産計画対象事業としても、今後急速にこの面が発展して行くことと考えております。現在までのところは、御承知のように非常に貧弱でございます。
  25. 小枝一雄

    ○小枝委員 大体当局の御意向は了承いたしましたが、御承知のように、世の中が次第に文明になつて来るに従つて、畑の作物というものは収量の上から申しましても水田に劣らない効果を生じつある、ことに特用作物等に至りましては、水田にまさる収獲がこの畑地で上げられる。今後当局におかれましては、この畑地の問題について十分積極的な施策を講ぜられんことを私は希望しておるわけであります。  次に、土地改良予算関係についてでありますが、政府は年々相当の金を土地改良の上に注いでおる、しかるに効果が上つてないではないかということを、新聞や識者の間でいろいろ叫ばれておるのを私は聞くのであります。これは私は非常に意外に考えます。ただいまお話になりますように、全国には畑地だけでも二百万町歩に近い反別がある。そこへ持つて行きまして、全国土地のほとんど三分の一にも匹敵しようという水田がありまして、これらの開発、これらの維持管理については相当経費がかかるわけであります。この厖大な日本の農地改良し、生産力を高めて行く上において、年々二百億前後の金をもつて日本の土地改良をやつて、しかも増産をはかろうというような考え方はもつてのほかであります。わずかな金をもつて生産の現状を維持することが困難だろうと私は思う。そこで当局におかれましては、土地改良についてもう少し積極的に予算を要求になつてやられませんと、国が計画をされております五箇年間に一千数百万石の増産ということは思いもよらぬと考えます。このままほつておけば、年々生産は減退するのでありまして、これを維持することに相当の金がかかるはずであります。しかも今日の米価の状態、農民の収入の実態から考えまして、とうていこれを自分の力でこの施策を行つて行くということは困難であります。この点特に格段の御検討をお願いたしたいと考えております。  次に御承知のように、今まで田は土地改良に関するため池、水路等の維持管理に対して予算を出しておられません。本年は聞くところによりますと、わずか数千万円かの予算を計上せられておるということでありますが、新しいため池、水路等をつくることも必要でありますが、まさに決壊前夜にあるところの老朽ため池を修理し、あるいは水がほとんど七、八割も逃げてしまう古い水路を修築するということについて努力することが、増産の効果からいつて私は効果が多いと思います。これに対しましてもう少し積極的な努力をせられる御意思があるかないか。御承知のように今回の風水害に際しまして、ちようど岡山におきましては水稲関係のため池が決壊して、何十町歩かの水田が全部流失した。また家屋が流失して死傷者があつたという惨害などありまして、これらも一つにはため池に欠陥があつたということを見のがすわけには行かないと思うのであります。そういう点から考えまして、新しいものをつくるのも必要でありますが、老朽のため池、水路等に対しまして積極的な施策を講じて、経済的に、しかも危険を避けて、これらの問題に対して十分留意する必要があると思います。当局の御所見を伺いたい。
  26. 平川守

    平川政府委員 御指摘のごとく、現在六千数百万石の米を生産いたしております水田でありますから、この施設は厖大なものでございます。これが年々老朽化して参るということは当然のことでございます。ただなかなかいざこわれますと、復旧々々といつて騒ぎますけれども、事前において診断し、補強するということについてはなかなか同情が少いのでありまして、大蔵当局等においても、なかなかこれを採択してくれなかつたのであります。最近に至りまして、現にそういう補強を怠つて決壊するという事例も出て来ております。これは決壊するのを待つよりも、事前に若干の資金を注ぎ込むことによつて非常に大きな利益になるということをやつと認識されまして、今年はわずかでありますけれどもも、七千数百万の予算の計上を見たよう血わけであります。水路等におきましては、だんだん現実に水が足らなくなりますから、従つてこれは新しい事業の形において、実際はやり直し、補修に属するものがずいぶん採択されております。ため池の方はなかなかそういう状態でありまして、この問題につきましては、今後とも相当——農地局の力の半分近くをさいてもよいのではないかと思うくらいに重要に考えております。たとえば職員にいたしましても、新しい事業には職員も配置されます。あるいは災害でこわれたその復旧には職員が入つておりますけれども、平素管理について注意するというようなものについては全然ないわけであります。この点については、相当力をさいて行く必要があるのではないかと考えております。
  27. 小枝一雄

    ○小枝委員 局長の御答弁によつて了承いたしましたが、最後にもう一つ伺いたい。現在民営事業で国が助長せられるのについては、ため池の新設に対する積極的な熱意と、水路に対する熱意とにおいては、水路の方は二次的に考えておるということを伺うのであります。しかしいかにため池をつくりましても、この水路が漏りましたり、あるいは水路が十分でなかつたら、水源の十分な効果を発揮することはできないのであります。そういうことを事実お考えになつておるかどうか。これをひとつ伺いたい。
  28. 平川守

    平川政府委員 水路を第二に考えるということは決してございません。両両相まつて初めて増産になるわけでございます。ただ非常に注意をいたしておりますのは、われわれのところで新規事業を採択いたします場合に、一定の資金の投下によつてどれだけの増産効果を発揮するか、この点を非常にやかましく申しておるわけであります。その関係から申しますと、水路の関係はかなりあいまいな面が多く出て参りまして、計算が非常に困難になるのであります。従来水が通つておる水路があつて、特に新設でなくて改修の場合に、増産数量というものを判定することが非常に困難でありまして、これをいいかげんにふくらまして出されますと、ほかの事業とのバランスが非常にとりにくいという意味で、水路の改修の場合の増産効果を調べるのについて、かなりいろいろと厳密に検査をいたしておりますが、水路を軽視するというようなことはありません。
  29. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 平川局長にお伺いいたしますが、過般来この法案関連いたしてと思いますが、大臣もしばしば小規模の土地改良を実行するということを言明されておる。なお今度の改進党等の予算の組みかえを見ますると、土地改良費の増額十億のうち四億がそれに充てられておるようであります。そこで予算がそういうふうにできて来る以上、農林当局としてもこれに対する自信と用意ができておると考える。そこで私お伺いいたしたいのは、小規模の土地改良、これは主として山村地帯が多いと思うが、これはどのくらいの単位以上のものを小規模の土地改良として認めて行くのか。それから、その場合におきまするいわゆる政府の補助孝は、どの程度のものをお考えになつておるのかということであります。といいますのは、山村とかそういつた近くの場合は、実際に非常に土地改良費を食うわけであります。そこでこれらに対して大体どの程度工事費を考え、またいろいろ内容がありましようが、どの程度補助率をお考になつておるかということと、それからこれに連関いたして、いわばその実施地帯はどういうふうに考えておられるか。これに書いてあるような土地改良区というものはなかなかできかねると思いますが、そういう手続をやつていれば、その方で非常に困難になりはせぬかという場合が非常に多く予想されるので、そういう場合に実施地帯をどういうふうに考えられるか。この法律で全部実施されるつもりかどうかという点。それからもう一つは手続の点であります。これは設計を含めての手続であつて、小規模の土地改良の場合においては、今のようなむずかしい設計ももちろんいりますけれども、むずかしい設計をしてとうていその実施をするまでの負担にたえかねるのではないかと考える。そこで、これらに対する具体策はどのようにお考えになつておるか。要するに小規模の土地改良についての問題点をお伺いいたすわけですが、ひとつこの点だけお伺いいたしたい。
  30. 平川守

    平川政府委員 小規模土地改良と申す言葉でありますが、これについてはいろいろ種類がございます。大体おもなものとして灌漑排水事業で申しますと、一応三百町歩以上のものが県営事業になつております。それ以下大体補助対象といたすものは、原則として五十町歩程度のもの、但し山間地帯等で特に面積のまとまらない場合には二十町歩くらいまでという式にいたしておる、大体二十町歩くらいの程度を考えておるわけであります。いろいろ一つ一つ事業についてのこまかい何はございますけれども、大体二十町歩程度まとまつたものについては、補助対象にするというふうに考えておるわけであります。  それから今の主体の問題でございますが、事業主体につきましては、この法律に基いて従来やつておりました土地改良区なり、あるいは協同組合がある場合も、簡単なものではございましよう。またこれで新たに市町村もできることになります。この法律が通過いたしますれば、その三者のいずれかが事業主体となつて事業を行う、こういうことに考えております。  それから手続の問題でございますが、これは極力簡単にいたしたいと考えております。以前は非常にやかましい手続を要求しましたが、この法律改正も、実は、一つはそこを大きなねらいにしておるわけであります。予備審査といつたようなやかましい手続をやめまして、できるだけ簡素にする。ただ簡素にすると申しましても、仕事目体がいいかげんになつてはとんでもないことになりますので、技術的な面について、県庁が十分に援助をするということはどうしてもいたさなければならぬかと思います。それ以上のことについては、小規模のものにつきましては、農林省としては、全部地方農地事務局にまかせまして、こちらとしては、大体地方別のわくを示すだけにいたしまして、具体的の仕事の採否については、全都事務局長に委任いたしております。大体実際の計画は県庁の技師が手伝つて立ててやる、それで農地事務局と相談をしてきめて行くという形になつております。できるだけ簡素にいたしたいと思います。
  31. 井出一太郎

    井出委員長 大臣がお見えになりましたから、本案の質疑はしばらく留保いたします。     —————————————
  32. 井出一太郎

    井出委員長 次に、昨日に引続き農政に関する質疑を行います。  なお大臣は他の委員会にも出席を求められておりますので、一応本日の大臣に対する質疑は三十分程度にいたしたいと思いますから、御了承願います。芳賀貢君。
  33. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間の制約がございますので、簡単に大臣に御質問申し上げますが、問題はただ一点であります。  それは、本日多分二十八年度の予算が、与党並びに改進党、分自党の共同の修正によつて会議を通過するのであろうという見通しが持てるわけでありますが、この中において結局大きくうかがえる点は、行政費の百億の節減と保安庁費を六十五億節減した点、それによつて米価を中心とする諸般の施策に向けるというようなことが修正案の骨子であると思います。私はその中において、米価問題についてこの際大臣の所見をお伺いしたいと思うのであります。過般の委員会において、大臣と改進党の吉川委員との間において、いわゆる二重米価の論議が展開されたわけでありますが、今度の修正予算が通過する場合において、あの二重米価論議というものを適用した場合に、どのような結論がそこからできるかということについて、具体的にお伺いしたいのであります。発言を簡単に制約する意味において、私は委員会における議事速記録をここで読み上げまして、質問内容に入りたいと思いますが、吉川委員から大臣に対してこういうような質問が行われたわけであります。「二重価格制とは一体どういうことかということについて、国民はよくわかつていないようでございます。農林大臣といたしまして、食糧の二重価格制というものを理論的に、また実際的と申しますか、通俗的と申しますか、どういうようにお考えでございますか、御説明を承りたいと思います。」この点に対して農林大臣は「これはとり方もあると存じますけれども、端的に二重価格というのはどういうのだと言えば、買つた米よりも売る場合に安くする、消費者に売る場合に安く売るというのが二重米価だと私は常識的に考えております。」、これに対して吉川委員は、これは通俗的な解釈であるから、もう少し理論的に解明を行つてもらいたいということを重ねて質問をされたわけであります。これに対して農林大臣は「私は、二重米価の主張をとつておりませんから、従つて自分の主張としてゴ重米価に対する根拠というものは持たない。あなたの方では二重米価政策を持つていらつしやるから、その根拠を十分打つておられると思いますが、ただ概念的に二重米価は何だと言。われれば、農家の生産費あるいは再生産を確保するその価格では消費者が負担に耐えかねる、買い切れない、そういう場合に、消費者に対して農家が売り渡す価格以下で売り渡すということが二重米価だと私は考えておる」というふうに、一つの理論的な概念を敷衍されているわけであります。これに対してさらに吉川委員は、大臣の二重価格制というものに対しては、非常に考え方が不勉強であるということを前提として、さらに吉川委員の持つておるところの二重価格の主張というものをここで解明しているわけであります。それは「一本価格に対して二本建の価格を二重価格と言うので、その一本価格というのは、生産者価格に対して政府がただいま管理をいたしておりますから、管理諸費用に配給者のマージンといいますか、というようなものをプラスしたものを消費者価格に対するのが一本価格なんです。それを少しでも割れば二重価格ということになるわけであります。」ということを言つているわけでありますが、ここで非常に興味のある問題は、大臣が二重価格の主張の上に立つておらぬと言いながら、概念的な説明をしたその二重価格の考え方というものを、私たちが客観的にこれを批判した場合には、吉川委員の、大臣が不勉強であると言いながら説明した一本価格と二本価格の違いによつて二重価格制の理論の根拠が形成されるという、この二つの論議を比較した場合において、むしろ農林大臣のお考えの二重米価に対する考え方というものが妥当性を多分に持つているということを、私はあとで感じたのであります。大臣の言われる点は、生産者に対する米価の価格算定というものは、でき得ればその生産費を補償し、再生産を償うことのできる価格にするというのが当然であるというような一つの考え方から出発して、それをもつてしては現在の社会情勢の中において、国民生活の中において占めるところの、いわゆる主食品エンゲル係数といいますか、それらが非常に負担に耐え切れないからして、これを消費者の負担が過重にならないように調節する考え方で国が補償をするという考え方が二重米価制であろうという、この概念は正しいと考え、またこれを支持しようとするものであります。しかしこういうような考え方を持つておられながら、なおかつ二重米価というものは、自由党の立場の上に立つてこの主張を支持できないとお考えになつたことは一応了解できるのであります。ただ問題は、今度の修正予算を通じて、いわゆる奨励金は一石八百円でありますが、大体二千五百万石に対して二百億円の財源が必要となつて来るわけでありますが、これは改進党の諸君に言わせればいわゆる二重価格である。供出完遂後に奨励金を支出するのではなくて、供出された米の数量に対して八百円の奨励金が付加されるのであるから、当然基本価格として考えるべきものであつて、このような八百円の奨励金の形ではあるけれども、実質的に基本価格の上に加算されたこの生産者に対する米価を、そのまま消費者に転嫁しない、今年度の消費価格の上に転嫁しないという建前の上に立つた場合には、これは明らかに二重価格制であるということを主張されておるわけでございますが、これらの修正案をそのまま政府は応諾する用意がある場合において、はたして大臣はこのような現象の上に立つて、なおかつ二重米価を否定して、従来の基本を曲げないというお考えであるかどうかという点について、お伺いしたいのであります。
  34. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいま御審議中の予算が、最終的にどういうふうな衆議院の決定になりますか、特に米価の関係における問題は、私はまだ詳しくお話合いがどういうふうになつているかということを承る機会を持つていないわけでございますが、いずれにいたしましても、完遂奨励金と申しますか、石八百円の奨励金を出すという話合いの御意図は、それは率直に申しまして、生産者に対してできるだけ高い値段で買うんだ、そうしてそのことがまた今日の食糧事情からいつて必要供出量を確保して行くためにとらなければならぬという政治的配慮から出て来ておるものだと思つております。従いまして、予算が最終的に成立いたしますれば、その成立いたしました精神に従つて運用をして行かなければならぬと存じておるわけであります。問題は要しまするのに、必要供出量を確保して行く上からの政治的配慮によつて予算の修正が行われるとすれば行われる、従つてそういう配慮を私どもとしても十分尊重して参らなければならぬ、従つて行かなければならぬ、こういうふうに考えております。
  35. 川俣清音

    ○川俣委員 ちよつと今大臣の答弁の中で重大なことがあるように思うのです。それは今度の予算共同修正案になるか、あるいはどういう形になるかは別にいたしまして、予算上において一つの大きな変化があるわけです。この点を関係大臣が了解を与えるか、あるいは検討を加えないうちに、こういう案ができて来るということはこれは考えられない。精密な作業は別にいたしまして、およそこれによつて食管会計がまかなえるのか、あるいは食糧証券の発行がどの程度に行くのか、これがどういう結果を生むかということの、やはり行政長官を兼ねておる、国務大臣を兼ねておる人が、大体この修正案が農林省としてやつて行けるか、やつて行けないかというようなことくらいは、検討されておるはずだと思うのです。要するに二重米価であるかないかという議論は別問題です。予算上の措置としては、御検討になつておるはずだと思う。そうでなければこれはたいへんなことです。検討なしにしよい込曲れて、あなた農林大臣が勤まりますか。おそらく勤まらないと思いますが、ひとつこの点御答弁願いたいと思います。
  36. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはしかしありていに申しまして、勤まるか勤まらぬかは私わかりませんけれども、予算修正をめぐつての折衝には、政府側はだれ一人関与している者はいない。それで両党の間において修正協議が行われておる。それで私どもとしては、できるだけどういう方向で修正協議が行われておるかということは知ることに努めてはおりますれども、従つてむろんこれが最終にきまつた場合に、農林省として、あるいは食管として、運営上支障なからしめるようにいたさなければならぬことは当然の職責でございますから、いたさなければならぬと思いますけれども、私ども、今の実際の両党の話合いの実態は、そういうふうな形において行われておるということは御承知を願いたいと思います。
  37. 川俣清音

    ○川俣委員 これは私、大臣をあえて追究する意味であれしておるのじやないのです。これは大蔵省の作業あるいは食管の作業をある程度待たなければ、政治的解決はいたしたにいたしましても、こういう作業が伴わなければ最終決定はできないものだと思う。大きな線は片づきましても、こういう作業が整わないで修正案ができるとは考えられない。従つて新聞の報道を見ましても、大蔵省で目下作業させておる。大蔵省が作業するということは、これは政府の行政機関の作業です。だから政府が関知しないということはあり得ないことだと思う。これは両党が作業しておるわけでなくて、両党においてあるいは三党において大まかな点が片づき、それを作業させておるはずですが、この作業の結果、いろいろ組みかえ等の技術面がまた検討されておるはずです。これは政府が全然関知しないんだというようなことはおかしいと思うのですが、やはりあくまで関知しないと、こういうふうに見てもいいのですか。ある程度作業については、意見は別ですけれども、それに対する政府の最終態度は別ですけれども、ある程度やはり作業に関与し、それが実施された面においての困難性や何かの発言があつてしかるべきじやないか、あるいは妥当性についての意見があつてしかるべきじやないか、最終的に閣議でこれを承認するかどうかというような点は別問題でありますけれども、ある程度作業に参加され、ある程度これに検討を加えられておらなければならぬじやないか、こういう点を私はお尋ねしておる。全然検討もないということになると非常におかしいじやないかという質問なんで、最終責任を内閣が負つているかどうか、こう聞いておるのじやないのです。どうぞその点について、そうあくまでこだわらぬと申しますか、責任を追究する意味じやないですから、その点どうですか。
  38. 保利茂

    ○保利国務大臣 川俣さんのお考えをもつてすれば、常識をもつてすればそうあるべきだということだと思います。それも一つの方法だと思うわけでありますけれども、実際は今私が申し上げた通り、これはひとり私のみならず、この予算の修正には——伝え聞くところによりますれば、相当各省広汎な面にわたつておるようでございます。これは私だけがつんぼさじきに置かれているという形ではないようでございまして、特に問題になつております保安庁あたりにしましても、あまりそうタツチしている様子も私見受けていないわけであります。しかしどういうことでありましても、国会で議決が行われますれば、その議決に従いまして、万全の措置を講じて行かなければならない、私どもが承知しておりますところでも、たとえばこれによつて食糧証券の発行限度を引上げるというような措置はただちについて行かなければならぬ。これは国会でおとりいただくか、私どもの方でとるかは別といたしましても、そういう点については承知し得る限りにおいては、準備を、予算執行上支障を起させしめないような処置をとらなければならぬと、研究いたしておるわけであります。
  39. 川俣清音

    ○川俣委員 大臣の時間も短かいようですから、あらためてまた……。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 さらに具体的にお伺いしますが、ただいまの大臣の御答弁によつて、八百円というものは結局基本価格ではない。ただこれは一定量の供出を確保するための、政治的な配慮とし行われる二百億の金であるというふうに言われておるわけです。そうするとこれは従来のお考え通り、基本価格ではない。もちろん基本価格を決定する場合には、食管法にもうたわれておる通り、米価審議会に諮つて、しかる後政府は決定しなければならぬということになつておるので、おそらく政府は今年の秋においては、米価審議会に対して二十八年度産米の価格をいかにすべきであるかということを諮問すると思うわけでありますが、そういう場合においては、二十八年度産米の基本価格の決定は、この八百円と何ら関係がなくて、あるいは従来採用したところのパリテイ方式によるところの算出、さらに特別加算をそれに加えるというようないろいろな複雑な方式が次第に採用されて来ておるわけでありますが、これらの問題について大臣はどういうようにお考えになつておるかという一点と、もう一つは、政府の予算の中においても、今年度においては、依然として昨年度と同様に早期供出の奨励金に対しては八十一億の予算が計上されておるわけであります。さらに供出完遂奨励金は、昨年度においては補正予算等を行つたので、これは七十五億でありますけれども、本年度の予算の中においても、超過供出奨励金の単価は、やはり前年度と同じようなことにして、十四億何がし計上されておるわけであります。そういうようにいたしますと、この八百円の供出奨励金が決定されても、依然として早場米に対する奨励金、それから超過供出に対する石二千五百円の奨励金等は、依然として生きておる。なおさらに二十八年度の基本米価は、今年度の秋において、諸般の情勢を検討し、しかも農民に対しては、生産費を補償することのできるような基本価格が決定されるであろうということが予測されるわけでありますが、これらの米価政策を一貫しての大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
  41. 保利茂

    ○保利国務大臣 二十八年産米価の決定は、ただいまお話のような手順をふんで決定をして行かなければならぬと思つております。早期供出奨励金でありますとか、あるいは超過供出奨励金でありますとか、要するに必要量を確保して参ります手段として今日まで続けて来ておりますことは、私の承知しておりますところでは、今回の両党の話合いでも別に問題は出ていないように存じております。従いまして、早期供出奨励金及び超過供出奨励金は、予算にお願いをしております方針をこの二十八年産米についてもとつて行く所存であります。  それから米価の問題は、ただいま申し上げました通り、米価審議会に諮問をして所要の手続をふんで決定をして参りたい。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国内の米作農民はこの修正案が通ることによつて、政府原案よりも非常によくなつたということで、喜ぶということは否定できないのであります。問題はこのような影響が消費者に対してどういうように及ぶかということに対して、国民大衆は、しかも消費者の立場に立つての不安が非常に高まつておるわけであります。こう、う場合における政府の態度というものは、最も端的に国民に対して納得のできるような表現を使つて、しかもこれらの修正された諸点が受入れられるような解説を加えることが当然であると思うのであります。それで結局今年度の消費者米価というものは、この予算修正をめぐつて、将来どういうようにするんだということまで、あわせてこの修正予算を行う各党の間において、基本的な了承事項になつておらなければならないと私は考えておるわけであります。聞くところによると、この八百円というものはたな上げして、消費者に負担をさせない、二百億円のうち、百億円だけは食管特別会計の方からまわして、あとの百億はさつき大臣も触れられましたが、何かの方法でそれは生み出すかもしれませんけれども、問題は、ことしの秋の基本価格の決定が遅くなり、おそらくこれは前年度同様すえ置きとか、それを引下げることにはならぬと思います。そういう場合の基本米価の値上り、あるいは昨年度の政府の供出に対する超過供出の奨励金であるとか、あるいは供出後の特別集荷制度の問題等にからんで、予測した以上の相当の支出が行われておると思うのであります。大体百五億円くらい、二十七年度の買入れ上の赤字が繰越されておるというふうにも推定できるわけでありますが、問題はこれらの基本価格の値上り、あるいは昨年度の買上げ面における赤字、そういうようなものを消費者の上に転嫁させるようなことになるかどうか、これはまつたく八百日というものは消費者に負担させないという前提の上に立つて質問であるということを考慮に入れてお答えを願いたいのであります。
  43. 保利茂

    ○保利国務大臣 芳賀委員お話のように、両党でお話合いになつておる奨励金の八日円は、今年の消費者米価には加算しないという了解があるということは私も聞き及んでおります。その他のことについてどういう話合いがありますか、詳しくまだ承知いたしておりません。消費者米価の決定にあたりましては、たくさん考えなければならぬ要素があると存じます。消費者米価を決定いたします際に、かつまた両党の話合いの的確なところも承り、それらを勘案して、消費者の負担、家計負担に及ぼす影響あるいは財政に及ぼす影響等をしさいに検討して、これは決定して行かなければならぬ。ただいまは何も方針としてきめておることはございません。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまのお答えによつて、この一石八百円の奨励金だけは消費者に転嫁しないということがここで明確になつたわけであります。問題はもう一点あるわけです。この奨励金二百億を出すことは、一定量の供出を確保するための最良の手段であるというふうに言つておるわけですが、従来とられた奨励金制度、たとえば供出完遂奨励金というようなものは、供出を完遂した後に、その完遂された供出量に対して奨励金が出た。さらに今年度供出が完遂された後に八百円を出すという場合において、一定量の供出の確保ということは可能であるかもしれないけれども、そうでなくて、供出を完遂しなくても、出た分だけに対しても八百円の奨励金を出すというような思いやりのある方法をとることが、はたして一定量の供出を確保することになるかならないかというその問題。さらにもう一点は、昨年度の超過供出の奨励金を一石二千五百円にして、さらに政府は供出後の自由販売への移行の一つの前提として特別集荷制度を採用した。そういうようなことが、結果的においてあるいは各府県に対する供出の割当の場合においても、遂に全府県の中の数県は政府との間に完全なる供出数量の確定が了承できなくて、うやむやに終つたというような状態もあるのであります。これらのことは、一つの既定事実として各府県においては了承しておるところであります。そういう場合において、依然として今度もこのような一定量確保の方法をとり、超過供出奨励金も出すし、また奨励金に対しはて、完遂後でなくて、出ただけの分に対して八百円の奨励金を出すというような形の中において、さらに政府はだんだんこの供出の数字を減らして自由販売に持つて行くために、無理な供出をさせないという考えの上に立つた場合において、お考えになつておるようなことが、結果において供出の一定量の確保、しかも食糧行政を遂行する上において、不可欠な一定量の確保というものについて、実効が上るかどうかということを、われわれは憂えざるを得ないのであります。  もう一点お伺いしたい点は、二十七年度のいろいろな奨励金等を平均化して実質米価に算定した場合においては、大体八千六百三十五円くらいになるわけであります。さらにことしはこの八百円だけをそれに加算した場合においても、一石約九千五百円くらいの平均米価ということになるわけであります。そういたしますと、生産農民やあるいは農業団体が望んでやまないところの米価、少くとも一万円を上まわる生産者価格にしてもらいたいという、その数字にだんだん接近て行くわけでありますが、これらの実際の問題をとらえて、なぜ政府は米価の体系というものを非常に複雑怪奇なものにして、しかも今年度は野党の修正案等をのんで、一石八百円も出ず、しかもそれは何ら筋の通らない金であるというような使い方をするよりも、むしろ基本米価というものに一貫した体系を与えて、それによつて米作農民に対しても納得してもらえるように政策を飛躍する必要があるのではないか、この点も考えられるわけでありますが、この二点に対して大臣のお答えを願いたいのであります。
  45. 保利茂

    ○保利国務大臣 供出を確保して参ります上に両党で話合いになつてつた石当り八百円の奨励金、これの扱い方につきましては、ただいまの段階において私の承知いたしております限りにおいては、相互に多少理解の食い違いもあるのではないか、行き違いもあるのではないかというように考えております。従いまして、これは予算が決定いたしましたならば、十分その理解の一致点を見出していただき、その上に立つて取扱いを支障のないようにいたしたいと考えております。  第二点の合理的な単一米価政策をとるべきである、こういうような何奨励金、何奨励金というようなわけのわからぬようなことをやらぬで、やつたらどうかということは、たいへんごもつともだと思いますけれども、百要点は、どうしたならば、今日国が義務を負つておりまする配給をいたして行くのに支障のない供出を確保できるか、この苦しみがいろいろの形になつて現われて来ている、そしてできるだけ実際の実情に沿うて、できるだけ無理のない方法で供出を願うという配慮から、こういうもろもろの処置がとられておるわけであります。これは実際問題として無視することのできない問題だと思います。考え方としては芳賀委員のお考えもごもつともだと思います。私はそういう意味におきまして、今回両党で話合われて政治的配慮をせられましたのも、一に生産農民にできるだけ今日の食糧事情を御理解いただいて、供出をやつていただくようにという配慮からであると思いますから、この点については、生産農民の側においてもぜひ御協力をいただいて、必要の供出をお願いするように努力をして行かなければならぬ、こういうふうに考えております。
  46. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀君、あと一問だけに限定いたします。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで大体わかりましたけれども、結局今の政府のやられることに不可解なのは、たとえば再軍備の問題にしても、再軍備はしないないと言いながら、実質的には再軍備をやる。米価問題に対しても、大臣はこの改進党が中心になつた、いわゆる実質的には生産者に対しては石八百円の実質米価を与える、それを消費者に転嫁しない、その転嫁しない方法としては、国がこれを補償するという明確なる行為を了承しながら、なおかつこれは二重価格制でない、社会保障制度の一環としてこれを取上げるということを否定しながら、基本的な政策をやつている。むしろこれなんかは、自由党政府はこういうふうにして社会保障制度を躍進しつつあるのだということを、もつと大胆率直に打出された方がためになるのではないかと、私は老婆心ながら考えておりますが、大臣は今度の米価決定に当つては、前内田農林大臣とは違つて——内田農林大臣は米価審議会の麦価の決定に対する答申を、できるだけ可能な限界に近づけるために闘つて憤死されたわけでありますが、大臣はあまり内容に関知しておらないために、米価政策に対する責任の帰趨に累が及んで来ないというふうに考えて、私はその点安心しておるのでありますが、たた考えてもらいたいことは、前会の委員会における二重価格制の問題を、あなたは概念的に論及しておるのでありますが、あの概念と今度の米価の修正問題をよく静かに対照されまして、そののちに対策を出していただきたいということを希望いたしまして、これで終ります。
  48. 井出一太郎

    井出委員長 福田君。
  49. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私は大臣に、今回の西日本の水害に対します災害復旧の根本対策につきまして、お尋ねいたしたいと思います。私は過般の水害につきまして、現地の状況を、代表して見て参つたわけであります。今回の水害につきましては、河川の氾濫がその原因でございまするが、現地について見ますると、私が痛切に感じましたことは、河川の氾濫ということにつきまして、今までの災害対策は、ただ護岸であります、ただ河川の改修であるとか、こういうことにばかり重点を置いた。私は水害対策につきまして、平だく言つて二つあると思う。一つは護岸を高めるということ、それはもちろん必要でございましようが、いま一つの問題は、川床をいかにして下げるかであります。私はこの二つがあると思います。護岸とか河川改修の仕事は、言うまでもなく建設省の仕事であります。川床を下げるということは、これは林野庁、つまり大臣の御所管の仕事であると思うのであります。前者の仕事は政治のスローガンになるのであつて、従つて世間の耳目を引く。川床を下げる仕事は、きわめて地味である。たとえて言うならば、うさぎとかめの競走であつて、護岸の方ははでにやられておるが、川床を下げる農林省の砂防の仕事はきわめて遅々たるものである。この現状について見まして、私どもが痛切に感じることは、災害対策の根本的の国の方針を切りかえる必要があるのではないか。今までのようなやり方を改めまして、治山事業予算というものを画期的に増強いたしまして、治山対策と申しますか、災害予防工事の対策といいますか、根本的な考え方の是正を行うべきであるのではないかと思うのでありまするが、この点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  50. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回の北九州の水害の特異な現象は、梅雨前線で割合に風を伴つていなかつた。端的に現われておりますのは、風が伴つております場合は、必ずしもそうも行かないそうでございますけれども、樹木がある程度植栽せられておるところは非常に被害が少い。もう一つは砂防工事が行われておつたところは災害が非常に少かつた。これは実証的に顕著な事実になつておるようでございます。従いまして、いかに水害対策として治山の必要性が高いかということは、実証的に今回の水害が明らかに示しておるところでありますから、従つて福田さんのお話のように、かりに下流の護岸を高めても、上が荒廃しておつて大雨のために土砂を流して来るというのではいたちごつこです。どうしても元をただすというところに重点をおかなければならない。そうかといつて、それではすその方は放置しておいていいかというと、そういうわけにも参らぬでしようけれども、私は今日の荒廃している日本の山林状態から見ましても、元をただす方に力を入れなければならということに、まつたく同感でございます。
  51. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 今の大臣の御答弁まつたく同感であります。例を大分県にとりますと、日田市はまつたく壊滅的打撃を受けまして、今日におきましても、北からの連絡は途絶しておる。そして保安隊が行つて道路の啓開に従事しそおるというような状況である。日田市は日本でも有名な林業地帯でありますが、その森林地帯がまつたく壊滅的打撃を受けております。従いまして、これは単に大分の一つのことをいうのではありませんが、私は今回の災害を契機といたしまして、大臣にお願いいたしたいことは、今大臣の御答弁の中にもありました通り、荒廃地復旧につきましては、急速に復旧をはかられるようにお願いしたい。荒廃地の復旧は、現在のところは、例年の復旧査定は二〇%程度で、残り八〇%程度は、一般荒廃地と同一の扱いをされておる。こういうことでは荒廃地は年々拡大する一方で、再び災害の原因となる。今回の場合は、災害復旧の査定をしたものは少くとも三年以内に完了するように、特例の御考慮をいただきたい。私は今回の災害は、大臣のおつしやられたように、風を伴わない雨だけのものであります。わが国におきましては、再び台風シーズンを迎へておる今日におきまして、私は、この仕事がいかに重大かということを大臣に特に御認識いただきたいのであります。そのほか水源林の造成事業というものも、もちろんこれは重要でありまして、この点につきましても、特に御考慮を煩わしたいと思います。それから同じく最も重要なる仕事は、民有林造成のための補助政策の拡大強化をされたいという点でございます。これはきわめて迂遠のようでありますが、災害防止の根本はこれであると存じておる次第であります。民有林造成のための補助政策の内訳を見ますと、融資造林と補助造林とがあるわけでありまして、これらに対しましては、面積に対する国の補助は例年七割から八割でありますから、災害については満額の補助を特にお願いしたい。それと同時に現在の一町歩当り五割の補助率を、植林事業の公共性、ことに災害防除対策の必要性から見まして、七割程度に引上げ、さらに五箇年の撫育維持費に対しても適当な補助の道を講じていたたきたいと思うのですが、この点について大臣のお考えを伺いたい。
  52. 保利茂

    ○保利国務大臣 御承知のように、戦争中の濫伐及び戦後の混乱による濫伐等が行われまして、民有林にしても至急造林をしなければならないのは百五十万町歩ほどあつて、今日までかなり力を入れていただいて参つておりますけれども、まだ八十八万町歩という厖大な面積を残しておる。しかもそれがほとんど民有林であるということで、民有林の造成助成については、そういうことからいつて、格段の力を入れなければならぬと思い、できるだけ計画を繰上げていたさなければならぬということで、ただいま検討を願つて、私どもとしては、できるだけ御趣意に沿うよう努力いたすつもりであります。
  53. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 次に、林道の災害復旧でございますが、この点につきましても、ぜひとも補助政策を拡大していただきたいのであります。その点につきましてお願い申し上げたいのは、職長林水布業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の第二条五項によりますと、一箇所というようになつておりますが、これを一路線というふうに改めていただきたい。それから補助率につきましても、同法三条の規定にかかわらず、災害地につきましては、増額の方法を別途講じていただきたい。それから緊急復旧を要するものにつきましては、融資の道にも格別なる御考慮をいただきたいと思うのでありますが、この点について御意見を承りたい。
  54. 保利茂

    ○保利国務大臣 林道の復旧につきましては、今回の災害の非常な深刻性、広汎性にかんがみまして、これは最高率で行かなければならぬと考えております。それから今法文を御引用になりました点につきましては、現行法をもつていたしましても、大体御趣旨の点が満たされるように考えておりますので、運用に誤りなきよう期して参りたいと思つております。
  55. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それから金融国係のことでございますが、このたびの災害に対しまする復旧用の用材であります。今回の水害は、林業地帯に非常に多かつたので、九州の製材能力は、ほとんど半減したような状態てあります。従いまして、最も刻下の急務といたしましては、製材工場の復旧ということが問題になつて来るわけであります。現在国の予定しております興材工場の復旧に対しましては、一日も早くその製材工場を復活して、復旧用材の生産に拍車をかけ得る目的のために、復旧用資金として、相当額の融資の方途を、特にこの際講じていただきたいのであります。最後に私は、九州の特例であるかとけ用いますが、伐採調整資金のわくを拡大して、応急の措置を講じていただきたい。しからざれは、現地の水害地におきましては、やむを得ず幼齢樹林の伐採が法を犯してまで行われる状態にある。伐調資金についても、この災害対策とからみまして、ぜひ根本的な改革を施していただきたい、こうお願いして質問を終ります。
  56. 保利茂

    ○保利国務大臣 御趣価は私は十分了解できます。今考えておりますことにつきましては、林野庁長官から御説明申し上げます。
  57. 柴田栄

    ○柴田政府委員 前段の今回の災害におきまして、特に大きな被害を受けました日田地区の製材のことに関しましては、私ども非常に苦慮いたしておりまするが、これに対しましては、何と申しましても復旧を急がなければならぬという関係もありまして、金融の措置を極力早めるという考え方で、現在開発銀行に対しまして設備資金の融資の問題を交渉いたしまして、大体了承を得ております。さらに運転資金につきましては、中小企業金公庫と現在折衝を進めておりまするが、ぜひともこれが融質によつて復興を促進いたしたい、かような考えによつておりますのを御了承願いたいと思います。  さらに伐調資金の問題に関しましては、恥急伐採等のために非常に幼齢林が伐採せられるという必要に迫られておりますので、災害地区に対しましては、これが許可の理由につきまして、速急かつ相当十分な処置を講じたいということで、公庫の方と連絡をいたしておりますことを御了承願いたいと思  います。
  58. 井出一太郎

    井出委員長 安藤覺君。
  59. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 私はここに広量かつ友愛に富まれる委員長並びに同僚委員諸君の御理解とお許しをいただいて、かつて私の親しく尊敬してやまなかつた故人山崎達之輔先生の最愛の弟子ともいうべき保利農林大臣、そうしてまことに私のかけがえのない親友として多くの恩義を重ねておつたあなたに対して、今ここに野党対与党の立場において、あなたの農政問題に取組まれる根本的な信念と、そうして基本的な政策についてお尋ねする機会を得たことを非常に喜びといたしまするとともに、あなたのために心からなる祝福をいたすものであります。  しこうしてこのたびあなたの師ともいうべき山崎先生の朋友であつたところの内田信也さんが、久方ぶりに政界に返り咲かれまして、喜び絶頂にありましたその瞬間、麦価の一服でもろくも頓死されたのでありますが、ところがその後任としてさつそうとそのいすにつかれたのであります。先般来あなたの予算総会において、あるいは当委員会において応答せられるところの姿を拝見いたしますると、まことにいんぎん丁重に、かつ注意深く、親切と正義、そうして適当なずるさをもつて逃げられるあたりは、まさに故人山崎先生をほうふつせしめるものがあるのであります。けだし山崎未亡人が、せめてあなたの答弁ぶりを一目なりとも見られることを念願されるのもむべなるかなと思うのであります。以上の私の言葉は単に私の感傷と渦虫への郷愁から述べたのではございません。私は私の山崎観において、山崎先生が偉大なる農政政治家であり、わが国農業経営、食糧問題についての識見と見通しとを持つておられたことについて第一人君であると信ずるがゆえであります。往年と今日とは革命的にその事情を異にいたしておるとはいいながら、その根本においては、今日多くの他山の石となすべきものがあると考えるのであります。しこうしてあなたは、その衣鉢を継いで今農相のいすにつかれた以上、ただ単に質問応答の外形的なものにおいてのみ山崎氏に酷似するのでなくして、真実なる衣鉢をも継がるべきものであることを私は熱望してやまないのであります。青は藍より出でて藍よりも青しという言葉もあります。いわゆる出藍の誉、誇りをこそ持たれたいと念ずるのであります。あなたは現下最大の日本の直面しておる問題である農林行政の長として、はた国務大臣としてこれら諸問題と取組まれるのでありますが、真実ここに政治生命を捧げて、あなたはこの職を全うし、政治家の将来を全うせられる御決心、御決意、御信念はたしておありになるのかどうか、切にこれを私はあなたにこいねがいつあなたの御所信を承りたいのであります。
  60. 保利茂

    ○保利国務大臣 安藤委員から人間的感傷を呼び起す、そうして私の農政に対する所信を激励的にお伺いをいたされましたことにつきましては、私もただいまお話のような筋合いに相なつております上から行きましても、その仕事の大きさと、私自身の無力さに責任を、痛感いたしておるわけでございます。私は今日四四%の人口をかかえている農村が、堅実に発展をいたして行くということが、何と申しましてもこの国を守つて行く最大のねらいでなければならぬと思います。翻つて戦争末期から終戦当時のことを回想いたしましても、とにもかくにもあの困難にわれわれ国民が耐え得て今日に至りましたゆえんというものは、農村がとにもかくにもあの混乱の中にあつても、どつしり構えて日本の経済の支柱となつて来ておつたということを見のがしてはならぬと思うわけであります。従いまして農村だけがいいというわけにはむろん参りませんけれども、何と申しましても農村経済が堅実に営まれて行くという形にならなければ、私は日本のほんとうの基礎が固まつたとは申し上げられぬと思います。そういう上からいたしまして、諸般の農政施策を推進して参りたいというような考えを持つておるわけでございます。
  61. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 よき御答弁をいただまして私は満足いたします。あなたの行われんとする施策はしばらくおくとして、ただいまお述べになられました農政観ということについては、私は心から共鳴をいたすものであります。ただあなたが微力であると御謙遜なさいましたが、私の案ずるところ、決してあなたが微力なのでなくして、あなたがほんとうにただいまお述べになりましたところの問題と自己の政治生命とを取組まして、これを開拓し、これを導いて行くところの御決意があるかどうかにかかつておると思うのであります。どうかこの御決意をこそさらにさらに固められまして、御邁進願いたいのであります。  ついては、ただいまの御決意に基いて私は次の問題を提起してお尋ねいたしたいと思うのであります。このことは、先般私の党の同僚である河野議員が、予算総会におきまして農林大臣、通産大臣あるいはその他の諸大臣にこもこもお手ねいたした問題であります。すなわち食糧確保ということを基本といたしまして、農民への保護、そして日本が今後一方においてますます振興して行かねばならぬ産業の問題、あるいは貿易輸出の問題等々を見まするときに、そこにはまことに多くの矛盾を持つておるのでありまして、その矛盾を明快に指摘いたしまして、河野議員は各閣僚の所見を求めたのであります。しかしてこれに対する閣僚各位の御答弁も、それぞれの立場において明快に答弁をいたしておられるのでありますが、これらの閣僚各位の答弁を一段高いところから総合してみまするときには、そこにまつたく閣内の政策の不統一と前言うべき大きな矛盾を暴露いたしておるのであります。しかしてこの大きな矛盾の上からながめますると、各閣僚各位の御答弁は、現下の日本の最大問題であるところの食糧問題の解決には、何ら資するところがないのであります。そのよつて来る原因は何かと申しますれば、おのおの各閣僚がその所管について忠実ではあられまするが、そのかきの中から一歩も外へ出ようとしないからであります。すなわち各閣僚は、それぞれの省の所管大臣であられるとともに、一面においては国務大臣としての大きなる職責もあるのでありまして、ときに一国あるいは一内閣の総合的施策にも考えをめぐらさなければならないと思うのであります。この意味において、保利農相、あなたは今日本の当面しておるこの大きな矛盾、がんを、思い切つて剔決すべく食糧政策を中心として、イデオロギーを越えて、江湖朝野の意見を集められて、一大総合的審議機関を設けられるお考えはないであろうか。承るところによれば、また私の信ずるところによれば、あなたはあのかたくなな吉田総理大臣の最も信を厚うしておられるということであり、あなたのお言葉にはさすがの吉田総理大臣も耳を傾けられるということである、この意味において、私はあなたが先ほど御答弁くださつた信念をお生かしになる意味において、まずこの第一歩よりお始めを願いたい。今や行政費の節約というような声も起きて来、また内閣の当面しておられるところの問題でありますが、無用なものは廃すべし、必要なるものは  一刻の猶予逡巡なくこれを提起すべし、この点についてあなたの御見解を承りたいと思います。
  62. 保利茂

    ○保利国務大臣 内閣の施策が支離滅裂であるというようには私は考えておりません。食糧増産の問題に一例をとりますれば、ともかくも自立経済達成の大きな障害と申しますか、外国食糧に依存しなければならぬ度合いがかなり高い。これをできるだけ自給度を高めて外国食糧への依存度を少からしめて、外貨の節約をはかり、そして他産業の発達を期して行くという基本的なその政策の上に立つて食糧増産問題は考えて行かなければならぬ。そういう上から、すでに御承知のように、まだまとまつたことは申し上げ得ませんけれども、中間目標として、農林省では五箇年計画というような計画も考えて、その関連において今回の予算にもお願いをいたしているわけであります。しかしこれは私まだしさいにその検討をいたしておりませんが、必ずしも机上計画でただちに増産を呼び起すというわけにも行かないのみならず、同じ国費を投ずるにいたしましても、それがただちに有効に、最も効率的に増産の実を上げ得る自信を持ち得るかどうか。持ち得る着実な計画にしなければならぬ、おそらくそういうふうになつていると私は思いますけれども、さらに検討を加えまして、私どもとしては、責任をとり得る限りにおきまして増産計画を進めて参りたい。また増産計画と相並んできわめて大事なことは、国民の消費生活の一面において、食糧の自給態勢への貢献を願わなければならぬ。すなわち食生活の改善と品ではたやすくできるように長い間朝野唱道せられて来ておりますけれども、現状を見ますれば、米食に対するわれわれ国民の執着というものは驚くべき根深いものがあることをよく承知いたすわけでありますけれども、しかし全体が米食のみに依存し得ない今日の状態、あるいは日本の置かれている事情も、国民各位がよく御了解いただいて、一面畜産振興等による乳製品等の供給と需要を増しますことによつて——それが伴つて行かなければ、食生活の改善と言いましても、これはから念仏に終るわけでありますから、それらをあわせまして、増産の面、食生活改善の面から日給態勢への歩を推進して行かなければならぬというように考えております。そのために食糧審議機関とも言うべき機関を持つことがいいではないかという御意見は、私は非常に傾聴いたすのでございますが、今日国会におきまして、当農林委員会等すでに国民の最も権威ある農政関係のこの委員会がございますので、私は国会の御意見も十分に承つて、そうして政府の施策に反映せしめて行くように持つて行きたいと存じますけれども、御提唱の食糧審議機関につきましては、十分検討研究をさせていただきたい。必要あればそういうふうにお願いをいたすようにしたいと考えております。
  63. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいまの御答弁は、私の表現のまずさから、農林大臣に正しく受けていただけておらないようでありますから、若干その点修正いたしますが、私の申し上げるのは、あなたが食糧問題について熱心に研鑽を加えられ、かつ国会に反映されたところの意見、ことに権威を集めた農林委員会意見をしんしやくせられて対処せられんとすることは、まことにけつこうなことでありまして、そうなくてはならぬことと存じます。私の申し上げたいことは、こうして熱心にあなたが、農林委員会意見に耳を傾けられ、その他の国会の諸君の意見に耳を傾けて立案せられるにもかかわらず、そのことが事実行われようとするときは、牛歩遅々として進まない。あるいは数々の障害にぶつかつて破砕されてしまう。それはあなたの無力ゆえではなくして、そのことが他の面と大きな矛盾衝突をするからである。すなわち農村を保護しようとするならば、農産物価の高きを欲しなければならない。その高き農産物価によつて、食生活を営む一般国民、産業人、これらには従つて高き俸給を支払わなければならぬ。高き俸給を支払うことによつて、もろもろの生産コストが上つて行く。その高い生産コストにおいて外国へ輸出しようとしても、外国の市場において競争にならない。そこにおいて、産業諸方面においてはできるだけコストを下げようとする。ひいては元へもどつて来て、食糧の低物価をはからなければならない。ここに大きな矛盾が来る。この点について、私は単に権威の意見を聞くというだけでなしは、その矛盾を調節する意味の審議機関を設けられる御覚悟はないかということをお尋ねしたのであります。これは時間も制限されていることでありますから、以下は省略いたします。  次に、私は農林省から今国会に提案されております農業団体再編成の法案についてお尋ねいたしたいのでありますが、農業団体再編成を目途として、農業協同組合法あるいは農業委員会法等を改正すべく提案に相なりたのでありますが、この法案に対する各種の農業団体あるいはその基幹的存在の動きを見ておりますときに、この改正法案によつてはたして団体が再編成、再整備されるであろうかを疑わずにおられないのであります。いな逆に再混乱をさえ招くのではないかという不安に襲われているのであります。その一、二点をかりにあげてみますれば、農業指導系統の混乱、あるいは共済と農協との二団体間の保険事業の競合等があげられますが、かくのごとく混乱を了想されます以上、むしろこの法案はこの場合しばらく提案を見合されて、次期国会においてほんとうに根本的な改廃の法案提案せられるお考えはないのであるかどうか。本来この諸法案の多くが占領下において立法されたものでおり、そこには多分に農民の真実な、良主的かつ——タバコはバツト、酒は合成酒、まつ黒になつて、ストもサボタージユも行うことを知らず、行おうとしても行い得ない運命にある、これら農民のほんとうの生活感情に沿わないものがあるのではないか。しかもかてて加えて、その後において幾たびかの修正改廃が行われて、つぎはぎだらけになつて、まことにぶかつこうなものになり、そうしてそれゆえに、質問の大前提において述べましたところの、あなたの真面目なる、この農政問題と取組まれんとするところの御覚悟にもかかわらず、あなたの意図が、まつ黒になつて働いている農民に十分に反映して行かない現実、こういうことを見るときに、私はむしろ根本的な改廃整備をされることこそがよろしいのではないかと考えるのであります。  もう一つ、これら各法案のすべてが、今国会において頭をそろえて成立通過しなければならぬのか。あるいはそのうちの一法案あるいは二法案だけが通過しても、それでもよろしいのか。これらについてあなたの見解を承りたいと存じます。
  64. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回提案をいたしております農業委員会法一部改正農業協同組合法一部改正、人あるいは目して団体再編成に関する法というように言われているようでございます。これは見方はいろいろあろうと存じますが、一番大事なことは、農村の生産を中心とする農業指導の面、同時にまた長い間の産業組合運動が実証しておりますように、農村の協同体としての経済行為、これを堅実に強化して参ることが、農村経済を堅実に進歩せしめるゆえんであるということは、議論の余地のないところだろうと存じます。そこで、これは戦時中あるいは占領中の制度改変であるから、根本的にやり直したらどうか、きわめてごもつともな御意見だと存じますが、同時に今日の実際生産指導なり、あるいは団体的経済行為が営まれている現状を重視しなければならぬかと存ずるのであります。そういう上から行きまして、一方根本的な改革を行うべしという御意見からは、きわめて隔靴掻痒と申しますか、そういうお感じがあろうかと存じますけれども、実際の上に立つて、それぞれにまた現実にいろいろの事情もあると存じます。そこで改革前進はできるだけ摩擦を少くして、そうしてねらいは農村のためでありますから、農村全体がこれによつて幾らかでもよくなつて行くという見通しを持ち得ます限りにおいては、今日提案いたしておりますことが、今日の状態においてやむを得ない改正だと私は思つておるわけでございます。それでは関連法をどれか一つあるいは決定をされず、ばらばらでいいかということになりますと、相連関して法案を作定いたしておりますから、私どのも考えといたしましては、願わくはひとつ関連法案をばらばらでなしに御審議を願うようにお願いをいたしたい、こういうふうに考えております。
  65. 井出一太郎

    井出委員長 安藤君、申合せの時間を超過しておりますから、簡潔に願います。
  66. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 足鹿委員からも緊急質問の御要請があるようでございので、なお一、二の質問を持ち合せておりますけれども、私は御注意に従つてこれで打切ります。  ただ一つ最後に、肥料問題と重要な関係がありますので簡単にお答え願いたいと存じますのは、米の自由販売に対する時期のお見通しについて、はたしてどの辺を目途としておられるかということと、これがまだ時間が長くかかつて、自由販死に至らないのであるということであるならば、肥料についていま少しくこれにマッチしたところの、きりつとした態度を政府はおとりになる必要はないか、このことだけ簡単にお答え願いたいと思います。
  67. 保利茂

    ○保利国務大臣 私どもは、食糧の統制はできるだけ撤廃するという方向へ今日努力をいたして参つております。その方向においてはかわりはございませんけれども、今日はそれを自由販売に解放するという食糧事情にはない。それではいつやるか、私はここ当分は困難である、こういうふうに見ております。それならばそれと相応じた肥料政策を講ずべきである、ごもつともであろうと思いますが、肥料問題に対しましては、近く法案を御審議お願いいたしたいと思つておりますから、私どもとしては、でき得べくんばこれによつて合理的解決を得たいと存じて、ただいま立案中でございますから、いずれ提出いたしました際に十分御審議願いたいと存じます。
  68. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿覧君から緊急質問の申出があります。これを許します。足鹿覺君。
  69. 足鹿覺

    足鹿委員 保利農林大臣に緊急にお尋ね申し上げたいと存じます。それはやみ米騰貴対策についてであります。御就任早々の六月二十五日、当農林委員会で各委員からこの騰貴対策について処置いかんという切実な熱心な御質問があつたことは、大臣も御存じ通りであろうと思います。しかしその当時は御就任早々でもあり、御事情もよく判明しておらない点もあろうというので、研究調査を進めたいという御答弁の趣旨であつたように記憶いたしておりますが、その後当局においてはいかなる調査をされ、それに基いて対策を講ぜられましたか。この点についてお伺いをいたしたいと存じます。
  70. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはその通りでございますが、私がかけまわつて調査しておるわけでございませんで、食糧庁長官からまだ報告を聞いておりませんけれども、大体の推移を見ますれば、東京でありますと二百円前後のところで横ばいをしておるように承知をいたしております。ただこの騰貴の原因は、農繁期において、いわゆる中間端境期に直面しておつて、近県の供給源が相当品薄くなつて来ておるというような状態であることは、間違いないことでございます。やみ米の値段が上つたからやみ米対策をどうするか。これは私どもは、今日の日本の食糧管理の政策がどういうふうに行われておるかということをやはり国民の皆様によく御理解願わなければならぬ。やみに依存して行くことに消費生活の支柱を置かれるということは、実際問題としては成り立たない状態に置かれておる今日の制度を理解していただきたい。私どもとしましては、米の配給量については何ら不安のない状態でありますし、一面またその米にかわるべき代替物におきましても、少しもきゆうくつのことになつて来ていないという事情をよく御理解願いたいと思いますが、そこはもうしばらく模様を見てもらいたい。これが私の率直な気持でございます。
  71. 足鹿覺

    足鹿委員 きわめて慎重な御答弁でありますが、六月二十五日にあの問題が取上げられて論議されて、本日まで二句を越えております。しかもその間のやみ米の傾向を見まするに、大臣も横ばい的な状態であると仰せられますが、あまりそうとつぴには上つておらない。しかし下つてもおらない。本日京浜地区方面の主婦の皆様方のお話を聞いてみますと、二百三十円から二百四十円程度を大体上下しておるというお話であります。従つて当時の状況よりも極端に上つておらず、また下つてもおらない。いわばそういう意味における横ばいだと言えると思うのであります。そこで当局としては、実情調査の上その対策を講ずるということをこの前仰せになつたが、二十日を過ぎた今日何らこれに対して具体的な措置がないということは、はなはだ遺憾だと思います。聞いてみますと、食糧庁の御調査にもあつたと思いますが、都内及び京浜地区における倉庫の在庫量の調査の結果は、必ずしも不良ではない。在庫量は相当あるやに聞いております。また何ら政府の手持ち米の現況から見て、若干の繰上げ配給の操作をおやりになつても今後において政府が処置しお困りになるような事態も考えられないとするならば、まず切実な声を尊重されまして、少くとも三日間、できれば五日間程度の繰上げ配給をなさることは、そう大した経費を要することでもありませず、また将来の食糧需給を著しく逼迫せしめるという事態でもないと私は考えます。問題はそれだけの措置をおとりになるかならぬかによつて少くとも民意をやわらげ、実情に即した——そこが政治の要諦ではないかと考えられるのでございます。その点については、大臣としてはそう大した御決意ということではなしに、これは事務的な処理で事は片づくのではないか。そうしてその結果やみ米の状態を見、さらに効果があるなしを見て、そうして根本的の対策をお講じになるかならぬかは、その上で御検討になるべきではないかと私は思うのであますが、その点について御所見はいかがでありましようか。
  72. 保利茂

    ○保利国務大臣 十分御意見に基いて研究はいたしますけれども、やみ米に対してこれと対抗的な措置をとつて参るということは、私は食糧政策の根本からいつて相当問題だと思つております。これはずんぶん困難だと存じますけれども、やはり消費家庭におかれても、やみ米をお互い消費者の立場からつり上げて行くというような結果にならないように、特段の御配慮を願わないと、かりに三日、五日の繰上げをしたからというて、それでやみ米に対する旺盛なる消費があつたんでは、これはとても成り立つものではなかろう。しかし御意見につきましては、十分私は事務当局とも研究いたします。
  73. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿君に申し上げます。本委員室は午後一時から水産委員会で使用されるはずになつておりますので、結論をお急ぎください。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 十分検討するということでございますが、この前もそういう御答弁であつたのであります。これは消費者がやみ米を買わなければいいではないか、簡略に言うならばそういうようにもとれます。またこれは見方によつて——政治論議を私はここで繰返したくございませんから控えますが、やはり統制の緩和、麦の統制の解除というようなものがだんだんと積み重なつて来たところに、たまたま西日本の風水害あるいは東北地方における冷害的な傾向、農繁期、こういうようなものが積み重なつて、こういうやみ米の不自然な騰貴率を示しているのだと思うのであります。これの政治的責任を追究しようということは、この際私は申し上げません。別の機会に申し上げますが、少くとも消費者は十五日分の配給しか受けておらない。しかもその十五日分の規定による配給も、最近の実情を聞いてみますと、配給所へ行けばその配給米の割当は届いておらない、別な特別米ならある、こういうことを大ぴらで言うそうであります。すべての配給所がそうだとは私は存じませんが、少くともそういう悪徳の配給業者もあるような事実でありますから、そういう実情から推してみますならば、月のうち十五日の配給量で、どうしてやみ米に依存せずして生活が成り立つでしようか。あらゆる手段とくふうをこちしても、なお最小限度のやみ米に依存しなければならないということは、今に始まつたことではございません。従つてもちろん二百三十円も四十円もするものを一般の勤労大衆が買うことはできませんが、少くとも絶対量が不足しておる限りは、幾分をやみ米に依存しなければならないということも事実だと思います。従つてそういう実情をよく御勘案になりまして、すみやかなる打開策、応急策を講じていただきたい。これはまた食糧庁長官にも別の機会に申し上げてみたいと思いますが、特に要請をいたしておきます。  最後に日本の米を朝鮮等に輸出をしておるという風説が新聞にも飛んでおりますし、また配給を受けておる消費者の中にもそういう声が相当強いようでございます。私どもはさようなことはないと信じておりますが、農相はこの点についていかようにお考えになつておりますか。話に聞けば、韓国で発行されておる新聞雑誌等に、日本米を食して非常に満足だというような事態を写真入りで報道しておるという話もございます。私は現行の食糧管理制度のもとにおいて、さようなことはあり得ないと信じてはおりますものの、そういう風説が逆にまたやみ米騰貴の一つの拍車となつて、中間ブローカー、悪徳業者の好餌にもなつておるのではないかと思います。こういう点等について、政府はその事実を明らかにされて、そうしてそのようなデマによるやみ価格の引上げ、つり上げ、あるいは食糧不安を一掃されなければならない責任があると存じますが、その点について大臣の御所見はいかがでしようか。その御所見を承つて私の質問を打切りたいと思います。
  75. 保利茂

    ○保利国務大臣 私が前に、この東京を中心とするやみ米の騰貴の原因が那辺にあるかということで、ただいまお話のようなことが万一ありはしないか。万一不徳な人々によつてやみ米の買いあさりが行われ、それが密貿易等によつて動いて行くような気配が万一にもありはしないかということで、取締り当局とも連絡をとつてその原因調査したい、私が申し上げておつた気持はそこにあつたわけでございます。しかしお話のようなことが事実今日まで的確に上つて来ないのであります。それで一部においては、もう通例申しますかつぎ屋等を徹底的に押えてみるというような意見も出ておりましたけれども、そうやられますとまた不必要なやみ米の騰貴を促しますから、これは決して脱法を認めるわけじやございませんけれども、社会政策の実際から言いまして、そういう極端なことをやつてまた不当にやみ値を上げるようなことになつてはいかぬからということで、それはやめたというわけでございますが、そういう今御指摘のような朝鮮云々というような事態がもしあれば、これは許しがたいことでございます。これこそまさに私は国民的に放置することができないので、取締り当局ともさらに連絡をいたしまして、十分調査を急ぎたい、こう考えておるのであります。     —————————————
  76. 井出一太郎

    井出委員長 お諮りしたします。ただいま本委員会に付託になりました足立篤郎君外二十三名提出農産物価格安定法案議題といたし、審査に入りたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。それでは本案の趣旨について提出者の説明を求めます。足立篤郎君。
  78. 足立篤郎

    足立委員 農産物価格安定法案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  御承知のように農産物の生産は、終戦以来逐年増大いたし、今日米麦を除いては農産物の需給は著しく緩和するに至りまして、逐次完全な自由市場を回復いたして参つたのであります。これら農産物の価格の推移を見て参りますと、生産者が零細多数の農家であり、かつ、農産物の特性上、出まわり期が一時期に集中し、また需要の変化に即応して生産を調節することが困難であること等の事情によりまして、季節によりまた年により相当な価格の変動を示して、正常な価格水準からも低落する傾向を示すに至るものも生じているのであります。  かかる事態を自然の推移に放置しておきますならば、農業生産を不安定にするとともに、農家経済にも深刻な影響を及ぼすことになり、ひいては、これら農産物の需要者及び関連産業に対しても悪影響を与えることをおそれるのであります。従いまして農業生産上も農家経済上も、米麦についで重要な農産物につきまして今日価格の安定措置をとることは、きわめて緊要なことと考える次第であります。政府においてもかかる対策として、これまで、澱粉を買い上げる等の臨時応急の措置が講じられておりますが、かかる応急措置をもつてしてはとうてい万全の効果を期することはできないと考えられます。従いましてこの際いも類の如き重要な農産物の生産を安定した基盤の上に置くとともに、これら生産農家の経済の安定をはかるための農産物価格安定制度を確立することが、現下の農業政策上きわめて重要なことと思うのであります。  右のような趣旨に基きまして、ここにこの法案提案することとした次第であります。  以下この法案内容につきまして概略御説明を申し上げます。まず第一に、この法案は、米麦についで重要な食糧農産物であるいも類と、国内油脂資源の大宗である菜種を対象として、その価格が正常な水準から低落することを防止するため、生産者団体の自主的販売の調整促進するとともに、他面国もまたこれら農産物の買入れを行い、両々相まつて農産物価格の安定をはかることにいたしております。ただ、いも類は、管理技術上政府の買上げが困難でありますので、この法案ではその加工品である澱粉、生切干を買い上げることにいたしております。  第二に、買入の方法でありますが、政府は、毎年出まわり期に、生産者団体の意見を聞き、需給事情、時価等の状況を勘案して、価格保持のため買上げを必要とする数量を定めまして、その数量の範囲内において生産者または生産者団体の申込みに応じて国が買い上げることにしているのであります。ただこの場合政府の買入れについては、ただいま申し述べましたように、まずもつて価格安定のための生産者団体の自主的販売調整に大いに期待し、これを促進することを建前といたしまして、販売調整を行う団体から優先的に買い入れるとともに、生産者団体に対しては、必要に応じ価格の低落を防止するため政府が必要な勧告を行い、また資金のあつせんを行うことといたしております。  第三に、買入価格につきましては、この法案趣旨からみて、米麦の価格形成の方法とはおのずから事情が異なり、いわゆる支持価格の性格を有するものでありますので、農業パリテイ指数に基いて算定される価格に需給事情の変化を織り込み、これに生産費その他の経済事情を参酌して定めることとし、加工品につきましては、これら加工に要する費用等を加えて定めることとしているのであります。なお、これらの価格を決定するに当つては、農林大臣生産者団体にはかりその意見を尊重してきめることといたしております。  最後に、農産物等の売渡しにつきましては、この法律の目的からみて時価に悪影響を及ぼさないように行うこととし、特定の場合を除くほかは、原則として政府の買入基準価格を下らないように時価により売り渡すことといたしています。  なお、この法案による農産物等の買入れは食糧管理特別会計によつて経理することとし、このため附則において同会計法に所要の改正を行うことといたしました。  以上がこの法案の大要でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いする次第であります。
  79. 井出一太郎

    井出委員長 本案に対する質疑は次会より行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十四分散会