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1953-07-16 第16回国会 衆議院 農林委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十六日(木曜日)     午後二時二十七分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 佐竹 新市君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       佐藤善一郎君    佐藤洋之助君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松野 頼三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       山本 幸一君    稲富 稜人君       川俣 清音君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農林経済局         農業協同組合部         長)      谷垣 專一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         食糧庁長官   前谷 重夫君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 七月十四日  除虫菊の水害対策確立に関する請願岡本忠雄  君紹介)(第三六三六号)  淡路島の農作物水害対策確立に関する請願(永  田亮一紹介)(第三六三七号)  朝倉郡の農作物水害対策確立に関する請願(熊  谷憲一紹介)(第三六三八号) 同月十五日  広島東部農業対策確立に関する請願高津  正道紹介)(第三九七四号)  広島東部農業災害対策確立に関する請願(  高津道紹介)(第三九七五号)  土地改良事業制限範囲拡大並びに補助率引上  げの請願高津正道紹介)(第三九七六号)  地方競馬民営移管反対に関する請願鈴木茂  三郎紹介)(第三九九四号)  八街町外三箇村の凍霜害対策確立に関する請願  (小川豊明紹介)(第四〇一七号)  農産物価格安定法制定に関する請願山中貞則  君紹介)(第四〇一八号)  生活改良普及員定員増加に関する請願山中  貞則紹介)(第四〇二一号)  米崎村の凍霜害対策確立に関する請願柴田義  男君紹介)(第四〇二二号)  山梨県営土地改良事業施行に関する請願平野  力三君外三名紹介)(第四〇二三号)  広島東部農業災害対策確立に関する請願(  高津正道紹介)(第四〇九七号)  野鼠の被害山林に対する復元費並び駆除費助  成に関する請願岡村利右衞門紹介)(第四  〇九八号) の審査を本委員会に付託された。 同日  自作農維持制度の強化に関する陳情書  (第八二七号)  集約酪農地区設定に関する陳情書  (第八二八号)  北海道空知郡下の果樹凍霜害対策に関する陳情  書  (第八二九号)  農事用電力料金引下げに関する陳情書  (第八五九  号)  電力会社所管電柱敷地補償料引上げに関する陳  情書  (第八六〇号)  農山漁村並びに中小商工業振興対策に関する  陳情書  (第八六一号)  積雪寒冷単作地帯及び急傾斜地帯に対する国庫  補助対象事業制限緩和等に関する陳情書  (第八  六二号)  同  (第八六三号)  台風第二号による農村災害経済対策に関する陳  情書  (第八九八号)  同  (第八九九  号)  大分県下の豪雨による被害対策に関する陳情書  (第九〇〇号)  大中之湖干拓工事実施に関する陳情書  (第九  〇一号)  電力会社所管電柱敷地補償料引上げに関する陳  情書  (第九一  三号)  台風第二号による農作物被害に関する陳情書  (第九一四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  連合審査会開会申入れに関する件  農政の基本施策に関する件  こんにやく芋の関税改正に関し、大蔵委員会に  意見申入れの件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  この際連合審査会開会の件についてお諮りいたします。目下通商産業委員会において審査中の、内閣提出中小企業金融公庫法案は、この金融公庫を設立することに上つて特定事業を行う農林漁業組合及び同連合会に対し、その事業振興に必要な設備資金及び長期運転資金の融通を行わせることが主要目的一つになつております。つきましては、通商産業委員会に対し、本案に関する連合審査申入れをいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお連合審査会開会の日時は、関係委員長と協議の上決定いたしたいと思いますので、委員長に御一任願います。     ―――――――――――――
  4. 井出一太郎

    井出委員長 引続き、これより先般来延期いたしておりました豊政基本施策に関する質疑を続行いたします。足鹿覺君。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣がおいでになつたようでありますので、二、三当面の問題についてお伺いしたいと思います。  最初に、台風二号以来、今月の初旬にわたつた豪雨被害についてでありますが、これは水害地緊急対策特別委員会が設置されまして、また政府にも本部をおつくりになつて鋭意対策を御検討になつておることと存じますので、私はその被害対策のうち、農作物被害対策についてお伺いをいたしたいと思います。特に今度の豪雨被害におきましては、水稲につきましては、御存じ作物共済対象になるわけでありまして、若干なりとも農家はこれによつて救済を受けることができるのでありますが、その共済対象にならない部門におきましては、畑作物について特に顕著なものがあると存ずるのであります。畑作物御存じのように、蔬菜であるとかあるいは特殊農作物であるとか、あるいは工芸作物というようなものが主でありまして、これらのものは任意共済救済対象にもなりませず、その被害に対する救済の手が全然差延べられておらないのであります。先月の凍霜害の際におきましては、主として畑作物ではありましたが、被害種類なりまたは桑、その他の作物の性質によつて相当なる対策が講ぜられたにもかかわらず、今回の被害は凍霜害に幾倍する壊滅的な打撃 与えておるにもかかわらず、これに準ずる救済措置すら講ぜられないということは――その災害時点あるいは種類によつて国救済措置に変化があるというようなことは、私は非常に遺憾なことだと思います。またそのと誉の政情によつて、たまたま関東の凍霜害は帝都に近く、まだ政府の眼の届く範囲内にあり、陳情にもきわめて便利であり、そういう点から、いろいろその窮状が相当正確に政府なり国会にも反映をし、近来まれに見る救済措置が講じられたのであります。しかるに今回の西日本災害においては、東京より遠く離れ、またそのために陳情等関東のように十分徹底せず、そういつた点で、事実非常に悲惨な実情であるにもかかわらず、いまだこれの具体的な対策を見ないことを指摘したいのでありまして、そういう点については、災害時点やあるいは政情等にかかわらず、その被害を受けた農家に対しては、少くとも同様の救済措置を講ずベきであると考えておりますが、大臣におかれては、こまかいことはあるいは御存じないかもしれませんが、ただいま申し上げましたようなことについて――たとえば一例を申し上げますと、畑作物であつて、今回の豪雨によつてつたく収穫皆無になつて、これに対して転作をするにもその転作の苗しろがない。たとえば蔬菜畑作物が全減をした、今政府の適切な措置があつて、かんしよを転作しようとするならば、一本のかんしよは五十銭程度を要する。一反には四千本から五千本の栽植を必要とするから、少くとも二千円から二千五百円を要する。その金が農家にない。転作をすれば次の収入があるにもかかわらず、みすみすそれができない。こういうようなものに対しては、少くともそのかんしよ苗の二分の一とかあるいは適当額助成措置を講ずるならば、農家はそれに力を得て、秋の若干の収穫を得て、一時のしのぎもできようと思います。こういう点については、被害程度が激甚であつたにもかかわらず、案外救済具体的措置が欠くるところがありはしないかと思うのでありますが、特に私は農作物被害におきまして、畑地における転作について政府はいかような措置を講ぜんとされますか、その大体の方針について大臣の御所見を承りたいと存じます。
  6. 保利茂

    保利国務大臣 東京に近い所に災害が起きたと音には陳情等も手早くでき、また調査視察等も手早くできて、比較的政府施策の上に浸透しやすいけれども、遠い所はともすればおろそかになりがちであるということは、私どもも遠い所に関係を持つている者として、そういう感じは確かにいたします。しかしその感じがするということは非常に大事だと思いますので、今度の北九州水害が非常に激甚をきわめておるという情報を聞きましたので、これは少くとも普通の災害措置ではいかぬのではないか。今折柄非常に農繁期に際会して、東京陳情に出たくとも出るわけにも行かぬという実情等を考慮しまして、十分現地の事情を的確に捕捉し、かつ非常災害応急措置現地において講じ得るような措置を講ずべきであるということで、大野国務相本部長として西日本水害対策本部現地に設けたわけでございます。その趣旨で先般の大水害応急措置を今日とつておるわけであります。  二号台風以来問題になつております農作物のうち、共済対象外作物被害が非常に大きい。二号台風対策に対しても、凍霜害においてとつた対策より手ぬるい、不公平であるというようなお感じのようでございますけれども、私ども農林当局としましては、二号台風災害は、むろん程度の差はございますけれども、大体凍霜害のとつた対策に準じて行うべきであるという建前で、対策を講じて、今大蔵省と折衝いたしておりますが、まだこれも最後の目鼻がついていない、非常に残念に思つております。今回の北九州一帯水害というものは、二号台風とはよほど趣きを異にして来て、推定せられます大ざつぱな検討でも、二万町歩からの埋没、流失田を出しておる。しかもその二万町歩のうち七、八千町歩ぐらいは、どうしても今期の作物は犠牲にしなければならぬような状態であります。三、四千町歩水路破壊等によつてせつかく水田が稲を植えることは困難であろうが、そういうところをどうするか。ただいまお話転換作物等を入れたいにも、苗も種もない、全然処置もできないということではいかぬと思いますので、これに対しましては、種子苗等につきまして特別の措置を講じなければならぬと思つて研究いたしております。お話趣意はごもつともでありますが、同時にまた考えますのは、二号台風農作物被害が大体主でございますけれども、今度の水害は、ひとり農作物のみならず、農業施設、あるいは一般公共土木、あるいは市街地の中小企業者、これら全体が非常に激甚な被害を受けておるわけでありますから、これらの対策とあわせて転換作物種子苗等につきましても、そういう考え対策を講じて偽ります。現実としては転換作物種子等手配をただちにとつておりますから、これの事後処置としてどういうふうにいたすか。大体私どもとしては、足鹿委員お話のようなことで対策を講じて参りたい、こういうふうに考えております。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣の御答弁である程度わかりましたが、一例を申し上げますと、北九州及び山口が、当初今度の災害対象県になつてつた。ところが御存じのように、衆議院の議院運営委員会等におきまして、その後の情勢とにらみ合わされ、鳥取島根兵庫京都福井方面の、今月の二日からハ日にわたる三百ミリを越す豪雨の問題が新しく発生をし、これを対象県にするかどうかという点につきまして、当初議運では九州と同一に対象県とすることになつてつた。ところが九州災害が起きてから、中国、四国その他全国二十府県襲つた台風二号の対策の影が、どちらかといえば、九州被害が激甚であつたために、やや薄くなつたというやさきでありましたので、大臣御存じのように、九州並び山口県、その他鳥取島根兵庫京都福井を含む二十九府県を、新しく災害県として対象考えることになつたことは、すでにお聞き済みのことであろうと思うのであります。従つて私は、施設災害とかその他についてはき上うは触れませんが、ただそういつた点で何が一番急ぐかというと、九州並びに二十府県豪雨被害による農作物被害対策が、最も緊急を要する問題であります。これは時期があることでありまして、たとえば畑作物が全部枯死したとしても、今ならばかんしよヘの転作がきくのであります。しかしその時期を逸すれば――もうすでに時期を逸しておると思いますが、今からでもおそくない。かんしよ苗に対して半額なら半額助成をやるという方向が出ますならば、被害農家は喜んでその対策に努力するでありましよう。種もみのあつせん、その他そば種のあつせんとかいうしようなことは進んでおるようでありますが、農家転作による収入はきわめてわずかでありまして、畑地の場合に一番効果をあげるのは、かんしよ転作の問題であろうと思う。かんしよの苗はまだ随所にたくさん残つております。これを早く活用して行きますならば、非常に大きく食糧問題にも貢献もできるし、農家経済もある程度秋の収入によつて救われると思うのであります。特に畑作の問題に対しては、時期を逸せず、至急にかんしよの転作対策等をすぐおやりになりまして、あと祭りでは困りますので、その点を特に大臣から、農林省所管関係部局をお督励になりまして、至急にその案を御樹立になり、予算的な点をあわせ講じていただきたい。今聞きますと、農作物被害に対しては凍霜害に準じてやるつもりであるという御言明がありましたので、私もある程度了解いたしますが、関東の凍霜害のときには、桑はそのまま残つておるので、これに樹勢復活のための硫安を付加する、あるいは貝がら虫の予防をやるというだけで、別に代作を必要としない。しかし今度の場合は代作転作を必要とするのでありまして、そこにおのずから対策の相違があるのでありますから、その点を早急におやり願わぬと、少くとも今月の二十日前後までに転作が可能でない場合は、あと祭りになろうと思います。その点を促進していただきたいと思うのでありますが、御了解を願えて、ただちに御手配が願えますかどうか、その点を、災害問題についていま一点お伺い申し上げたいと思います。
  8. 保利茂

    保利国務大臣 御趣意の点は十分努力をいたします。そこで作物を失い、あるいは作物成長期作物がなくなつた場合、これからの営農をどうやるか。これはむろん政府が適期にどこにも間に合うような種も持ち、苗も持つておれば、文句はございませんけれども、同じ災害地と申しましても、適地一件の関係地元の方が一番詳しいし、同時にまた、県当局においてもむろん心配をしておるわけであります。私どもとしては、ただいまお話のような線に沿うて、大局的な配慮をして行かなければならぬことは申すまでもないわけであります。従いまして、あの辺にはああいう作物がいいのではないかというようなことについて、手配をいたしておると存じますが、中心はやはり県当局及び被害農村の方々の、どうしてもこの土地を遊ばしておつてはならぬという気持――またそうでない気持農家の方には微塵もないわけでありますから、その農家の方の気持に即応して、県庁なり中央政府において、力をつけるように持つて行くということが必要だろう。そこでたとえば二号災害農作物被害があつた。なるほど凍霜害のときは、桑は残つておる。桑の葉は枯れたけれども、桑は残つて、また芽を出して来れば、それが生きて来るから、今度の場合とは違う、その通りでございます。しかしさればとて、それでは直接きうりが何反流れた、その分をどうするかという、これはなかなかそこまでは行かないわけでございますから、従つてこれからの農業をやつて行きますのに、少くとも何とかしのぎのついて行く方仏を講じて行く。それは第一は、資金の面から営農資金を早く農家の手元にまわすようにする。そうして今お話のように、転換作物等種子については、適地適作でその緊急手配をするというようなことでやつて行くべきであろうということで、ただいまのお話の点は、各部局に対してもそういう趣意十分努力するように督励をいたすつもりでおります。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 どうもその御答弁では少し中心点をそれておると思いますが、大体わかりました。しかし営農資金をお流しになつても、これにはやはり利子がつくのでありまして、たとえば凍霜害の場合には、反当硫安七貫五百というものが現実に渡つておる。また薬剤代半額というものが、現実補助されておるというのであります。なおその上に、いわゆる営農融資が行われておるのでありまして、今の大臣お話では、それは各府県当局なり、またそれぞれの地点において対策を立てる、政府は大局の上に立つてそれを指導するという、ごもつともでありますが、県が対策を立てるにしましても、また出先機関対策を立てるにしましても、こういうものについては、種代について半額助成してやろ、こういうものについて苗を必要とするものに対しては、その苗代の何割を補助してやろというふうな一つの目安をすみやかに御決定になつて、それを地方自治体なり、また出先機関を通じて一般に御徹底になれば、急速に進むのであります。ですから金はあとでもよろしい、大体の方向をまずすみやかに御決定になつて、下へお流しにならなければ、所期の効果が期待できないのではないか。もちろん営農融資は必要でありますが、それに加えて、私はそういつた措置至急にお講じにならなければならぬのではないかということを申し上げておるつもりであります。その点大臣の御答弁は、少しまだ私の言つておるところが御了解されておらないように思いますが、いかがでしようか。
  10. 保利茂

    保利国務大臣 今度の水害の一、二の例を聞きましても、ある県のごときは山陵地帯に、緊急に県の責任をもつて苗しろの再仕立てをやる。これはむろんその出しろ仕立てに対して国が幾ら補助するとか、助成するということは何もきまつていない。しかしとにかく一坪でも一反歩でも植付可能な限りは植えなければならぬ。一日を争うということで、県当局が英断をもつて、とにかく緊急に委託苗しろの再仕立てをやつておる。それを七百町歩か八百町歩という上5に聞いておりますが、そういうものは当然やらなければならぬことだろう。やはりこういう非常災害の場合に処しては、そういう地元当局の熱意も必要だ。こつちからこういうようにやるから、さあやれということでなく、こうやつたからこうやれというような意気込みが実際私はあると思います。従つてそういうことに対しては、やはり特段の考えを持つて行かなければならぬというように考えておるのであります。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 もちろん現地におきましては、農家はやらなければ自分たちが困るのでありまして、補助があろうとなかろうと、これは農家としては一生懸命、自力によつてやるでありましよう。しかし実際において、あまり問題を広げると焦点がぼけますから、畑地対策ということから事例を引いて申し上げておるのでありまして、とにかく水稲の場合は、反当四千円ないし四千六百円程度の収穫皆無の場合には共済対象になつておる。ところが畑地作物の場合には、大臣も御承知のように、任意共済もやつておらなければ、まつたく無防備状態です。     〔委員長退席佐竹委員長代理着席〕 そこに営農の特殊な形態であるところの開拓地とか、あるいは水田を持たない畑作専業地帯とかいうものに対する措置は、特に重視をしておやりにならないと、対策が上つらに走つてしまうのではないかということを申し上げておるのであります。その点特にすみやかなる措置を講ぜられ、末端の農家がみずから立ち上る意欲にさらに火をつけるように、当局でも速急なる転作指導に対する助成措置等方針をきめられて、遺憾なき措置を講じていただきたいということを申し上げておきます。  災害問題で最後一つお伺いしておきたいことは、これは悪い想像でございますが、今年は春作から超異常災害が各地を襲つて甚大な被害を与えた。そうしてまた台風シーズンを迎える作今においては、不吉な予感をわれわれは持たざるを得ない。こういうときに関東中心に凍霜害が出たから、ここに四月、五月の凍霜害に対する臨時措置特例をつくる、今度は九州に起きたから九州に対する特例法をつくる、今度はここにできたからというので、一々その時々に立法措置を講じなければ災害対策が進まない。またそのときの地点なり政治情勢なりによつて、若干の厚薄がつくということは、非常によろしくないと思うのであります。あつてはならないことでございますが、近い将来にないとも保証できませんので、この際政府はすみやかに災害に対する国庫補助特例というようなものをおつくりになつて、それに対する金融措置とかいろいろな応急措置等がただちに発動できるような、基本的な立法をされることが必要であると私は考えます。次から次と災害あとを追つて立法措置を講ずることは、非常に煩にたえないし、また機宜を失する。従つてこの際かつて例を見ない災害が、災害シーズンでない今までに二度も三度も来て奉る。その被害全国にあまねく惨害を及ぼしておる。こういう事態から考えてみましても、災害が発生すれば、大体において軌を一にして、一つ法律に基いて適宜の措置が講せられるような立法措置が私は必要と考えますが、政府においては、そのような点についてどのようにお考えになつておりますか、また御準備になつておりますか、これを最後にお伺いしておきます。
  12. 保利茂

    保利国務大臣 先ほどの畑作物あとに対する種子等につきましては、二号台風あるいは今回の水害に対して、農林当局準備を進めております点につきましては、後ほど官房長から御説明申し上げたいと思います。今年に限らず、わが国がいわゆる台風地帯にあつて、年々災害を繰返しておる。近来は特にこの災害が広汎に及んで、そこで災害たびごとに、一定基準を持たないために、その都度一々災害対策のいろいろな立法措置を講じたり何かしなければならない。やはり天然の置かれておるところの状態にかんがみて、こういう災害が起きたらこういうふうにやる、こういう災害が起きたらこういうふうにやるという一定基準がきまつて、そしてそれに対してただちに災害対策が発動できるというような線において研究をしなければならぬということは、私も全然同感でございますが、同時にこれはそうやりました場合に、法律で強制するにいたしましても、あるいは行政措置でやるにいたしましても、どちらにいたしましても、災害対策というものは、結局ある程度国民の全体負担にかかつて来るわけでございますから、従つて財政関係と離れて法律をつくつてみましても、実行不可能な面については、元も子もなくして行くというようなことにもなりますから、そこらが非常にむずかしいところだろうと思うのでございます。しかし災害恒久措置といいますか、一定基準措置について国としての特別の制度考えるということにつきましては、私は個人としては同感でございます。従つてそういう線で研究を進めたいと思つております。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 せつかく研究になりまして、個人としてではなしに、すみやかに政府として、ただいまの保利農林大臣の御所見を具体化していただきまして、台風シーズンにもなりますから、御対処願うことにいたしまして、この災害問題は一応これで打切りますが、官房長から御答弁を闘いでからまた……。
  14. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 代作用の種子の点でありますが、これは水田及び蔬菜被害に対する代作という問題が起つて来るのであります。これは凍霜害の場合にも代作用の種子考えておりましたが、当然二号台風及び今度の六月末の水害についても考えております。特に六月末の場合には、今までの調査では、数千町歩が植付不能になり、また数千町歩が、稲は植付不能であるけれども、ほかの作物であわとか、ひえとか、そういうものの代作が可能であるというふうな現地からの報告が来ておりますので、これらにつきましても当然代作用の種子を補給する、こういうふうに考えております。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは不満ですが、官房長は遅れて参りましたので、よく私の質問の趣旨がおわかりになつていないと思いますから、あとでまた伺います。  大きな問題であと二点大臣にお伺いしたいのであります。今朝の新聞によりますと、政府は今国会に肥料対策を法制化して提案をすることになつた、こういつておりますが、昨日もこれは肥料小委員会で、いろいろと事務当局を交えて懇談的に意見の交換をし、検討を加えたのでありますが、今国会中に政府の肥料対策を法案化して御提出になる御用意がありますかどうか、これをお伺いいたします。
  16. 保利茂

    保利国務大臣 御承知のように、数箇月前から肥料対策委員会という政府の諮問機関において、肥料対策について御審議を願つて、その答申をまちまして政府としては措置講じて参りたいということを申して来ておりました。去る五日にその答申をいただきましたが、答申は、足鹿さん御承知のように、ある程度焦点のぼけているところもあるし、どういう経過をたどつてこういう答申がいたされたのであるかということも研究をいたして、そうして事務当局に立案を願つておるわけであります。とにかく肥料問題は生産農民にとりましても重大な関心を持つており、また利害を持つておる問題でございますから、問題はきわめて重大でございますけれども、できるだけ今国会中に立案を終りまして御審議を煩わしたいというつもりで、今事務当局督励いたしている次第であります。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 今国会中に立法化して審議を願いたいということでありますが、肥料問題につきましては、私どももあの肥料対策委員会の答申案は、いろいろな機会によく検討しております。結局昨日も肥料小委員会で問題になつた点は、せんじ詰めて行きますと、結局コストの正確な把握、それから第二点は国内の需要量をオーバーして生産されるものを、輸出によつて調整しなければならない段階になつておるが、その輸出機構をどうするかということ、この二点に集約されるようであります。業者が幾らで輸出になりまして、損をされようが、得をされようが、私どもは別に異議はないのであります。ただこれがたまたま問題になつたのは、大臣御存じのように業者が輸出ダンピングをやる。そのはね返りを――いわゆる協定行為によつて内地の価格を協定し、相当高値で農民に押しつけた事実から、この問題は重大化して来ておるのでありまして、農民の犠牲によらずして、メーカーが独自の臨場において海外市場を開拓し、日本の化学工業の発展にみずから御努力になることについては、私どもは何ら異存はないのであります。ところが従来の傾向を見ておりますと、肥料対策委員会の答申によつても、非常にあいまいに、この輸出問題については逃げておる。輸出については随時随量を適宜業者が自主性によつてやれということをうたつておるかと思うと、必要な措置はおのおののかつての解釈によつていいというふうに、また一方で逃げておるという点で、政府がこれに対してどういう態度で臨んで来るかということが、今国民の注視の的であり、また業界としても非常に関心を持つておると思うのであります。そこでこの際聞いておきたいことは、肥料の需給調整の措置と輸出に対する措置というものを、二つの法案にわけて当局検討を進めておるやに私ども聞いておるのでありますが、さような御構想でありますかどうか。
  18. 松岡俊三

    ○松岡委員 議事進行について……。私議会のことはあまりよくわからぬのですが、発言に制限はないのですか。私は大臣に対する質問を前から保留しておるのですが、いつになつたら順番が来るのだかわからない。同じ人がいつでも発言しておるようなぐあいになつてもどうかと思うのです。これは時間に制限はないのですか。これは私は知らないからお聞きするのです。
  19. 佐竹新市

    佐竹委員長代理 これは大臣の時間の都合もありますし、理事会において、きようはこれこれの質問があつて一人どのくらいの時間をとろうという予定があれば、委員長はその通りやつて行ける。そういうことがきようはないものですから、大臣の時間の都合もあるし、また質問される方の都合もあるのですから、その点はしかるべく考慮していただきたいと思います。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 松岡さんに御了解願いたいのですが、大臣の施政演説に対する一般質問は、私は初めてです。ただ大臣がお越しになりませんので、今日まで保留して打つたのであります。あともう一点で私は打切りますから……。  ただいまの私の質問に対する御答弁を願います。
  21. 保利茂

    保利国務大臣 私の方が考えておりますのは、答申案の御指摘のようなところは、ぼやけておることを言つておるのでございますが、私は肥料問題の焦点は、現在は国際価格から見て、日本の内需の余力を輸出しようとすれば、出血といいますか、損失を予想して輸出をしなければならぬ。そういう条件に置かれておる。そのいわゆる出血輸出をしたしりが、内地生産農民に転嫁せられて来るという不安があるのじやないか。そこが問題の焦点だと思うわけであります。従つて足鹿さんが言われますように、現在の安定帯価格で運営をやつております肥料価格の問題は、必ずしもあなたのお話のように、メーカーの方が一方的に協定価格を押しつけたというようなものではないと思います。これは全講連等大口消費者とメーカーとの話合いを政府はあつせんして、そうして大体適正な価格だというところで安定帯価格をつくつて、今日動いておるわけですけれども、しかしそれだからと申しまして、これは出血が転嫁せられていないのだということは、だれしも断言できない。断言できないゆえんのものは、お話のように、コストの調査がだれも的確につかめないというところにあるわけでございます。従つて、的確なコストを把握するといつても、なかなか困難だろうと思いますけれども、一応だれしも考え得る妥当なコストをつかんで、それによつて内地価格をきめて行く。内地価格を政府が誉めて、一方需給の面においては、最近のわが国農村の硫安消費の面から見て、そこに一定量を確保して、生産農民に数量の上からも不安なき処置を講ずるというところに私は問題の焦点があると存じます。従つてそういうことをできるだけ解決を願えるように立案をいたしたいということでやつておりますが、まだお話のように二本建になるか三本建になるかということにつきましては、私は今そういうことから具体的にひとつ立案をしてもらいたいということを、事務当局に言いつけておる段階でございますから、さよう御了承を願いたいと思います。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 肥料の問題につきましては、私も現在の安定帯価格というものは、全購とメーカーとの間に、政府の仲介によつて成立したものであるということは存じておりますが、去年の十月の中ごろに、最高最低の間に六十円の値幅をつけて安定帯価格ができた。これは全購も同意し、メーカーも同意して成立したものでありますから、そのこと自体においては、メーカーが一方的に安定帯価格をつくつて押しつけたとは申しませぬ。しかしその直後に――大臣はその当時は御関係がなかつたので、お聞きになつていなかつたかもしれませんが、インドに向けて六百十二円というべら棒な価格でもつて契約をやり、引続き輸出をやつておるから、そこで問題が起きたのであります。外国には六百十二円で出して、国内には最高九百三十円、最低八百七十円、その間六十円の値幅で安定帯価格を妥結せしめた。その直後にインド向け六百十二円で契約をしておるところに、私どもは内地の農民を犠牲にしたダンピングである、こういうふうな解釈を持つたわけでありまして、安定帯価格自体については、全購も納得したのでありますから――私どもは高いとは思つておりますが、そのこと自体をつかまえて、いまさら問題にしようとしておるのではありませんが、過去においてもそういう事例がありますから、問題は出血輸出であるか、ダンピングであるかということに帰着して来る。大臣の今仰せられたように、コストの調査問題になつて来る。ところが昨日肥料小委員会当局から資料として御配付になつたものを見ますと、十四の硫安メーカーの平均生産コストは九百三十四円になつておる。そうしますとこの前の安定帯価格よりか平均生産コストは上つておるのであります。そういういわば信憑性の少いものを出して、内地の農民を愚弄するような、従来メーカーのとつておる態度から推して、私は今度は政府はよほど腰をすえた強い決意のもとに肥料対策をお考えにならなければ、とてもこの問題は解決はつかぬと私どもは見ておるわけであります。どのような案を御検討になつておるかはまだ存じませんが、いずれ今国会に出すということでありますから、それを待つた上でさらに検討をしたいと思います。  次に、これと関連をしまして、政府は今国会に独禁法の緩和の法律案を出され、先日は本委員会から連合審査申入れて、経済定委員会及び通産委員会との連合審査をいたしました。その席上においては、残念ながら農林当局が一人も御出席にならなかつたので、私は質問を留保しておりますので、きようはこの問題を一点だけ伺つておきたいと思う。肥料の問題もありますが、あまり私だけで時間を費しても恐縮に存じますから、一点蚕糸業法第十五条を今度の独禁法の緩和によつて改正を試みられておる。元来蚕糸業法の第十五条を改正せられようとするならば、蚕糸業法という独立の法律があるわけであるから、当然農林委員会に御提出になつて農林委員会の審議にまたるべきが至当だと思うが、蚕糸業法第十五条の改正を独禁法の緩和によつて一気にやることは不当である。それとともに、どうしてこの間の連合審査のときに、このような不都合きわまる蚕糸業法の改正を含む独禁法の緩和について、農林省はどういう態度であつたかということを、通産並びに公正取引委員会政府委員に質問しましたところが、農林省は賛成であつた、こういう答弁でありますが、はたしてそうでありますか。
  23. 小倉武一

    ○小倉政府委員 御趣旨のような独禁法の改正に伴います附則に農業協同組合関係と製糸業者の繭価の協定に関する条項があります。これは一方協同組合におきましても、繭に限りませんけれども、こういう関係の業者と農産物その他のものにつきましての協定をなし得る団体交渉的な条項がございまして、それによりまして、従来養蚕関係の協同組合と製糸業者とが繭価の協定をやつてつたことは御承知の通りと思いますが、それを法律的に確認する、こういう趣旨に出たものでございます。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 経済局長はそう簡単におつしやいますが、あの蚕糸業法十五条の趣旨を独禁法によつて改正になつたといたしますと、これは経済局長の分野かどうかしりません。これは蚕糸局長の分野かとも思いますが、繭価問題については蚕糸局長のおいでを願つてあらためて質疑をいたしますが、ただ一点だけ申し上げておきたいことは、事業者に対して繭生産者が申入れた場合には、その協定行為がよろしい、こういうことになつておる。ところが公正取引委員長は、申入れた場合に、それができるのであるから、別に問題はないではないかというような公式的な御見解であるのであります。しかし申入れざるを得ぬのです。なぜなれば、現在の養蚕組合なりあるいはこれに似たような養蚕農民の組織は、製糸業者から経常費を補助される、人件費ももらつて、そしてようやく組合の経営をやつておることは御存じの通りであります。いわゆる弱者と強者との立場にあつて、ハンディがかなりついておる。従つてあの法律が改正になると、勢いもう有無を言わせず申入れをしなければならぬ、こういう立場になることは明らかだと私は思います。しかもそこにおいて、価格協定が業者間にも可能であり、輸送の運賃協定、諸掛り協定、あらゆる協定が可能となつて参りますと、これは純然たる製糸カルテルであります。そうして繭の価格をそこできめ、その価格によつて押しつけて行く。そうすると現在の養蚕組合は、さなきだに製糸業者の御用組合であると実は批判される点も多々あるように聞いておりますが、そういうことになりますと、養費組合のごときは、これはもう明らかに集荷業者になつてしまう。いわゆる養蚕家の団結体であり、共同の利益を守るために組織されたはずの養蚕組合月は、製糸業者のために資金をもらい、人件費の補助を受け、経常費の補助を受けて、ただ単にその命令に従つて、指示によつて、繭を集荷して会社に納めるだけの機能しか発揮できない。今独禁法という一つの制約があつてすらも実情がそうである。いわんやこの独禁法のかんぬきがはずされた後の製糸資本の動きというものは、おのずから明らかであります。なぜそういうべらぼうなことに対して、簡単に農林省としては同意を与えられたのでありますか。小倉さんのただいまの御答弁は、私は承服できません。この点について画然たる根拠をお示し願いたいと思います。もし御答弁ができなかつたならば、委員長においては蚕糸局長の御出席を願つて、あらためてこの問題について追究をいたしたいと思う。まことに不都合千万な話であります。養蚕農民を痛めつけるだけ痛めつけ、さらにこれを痛めつけようというのはもつてのほかであります。これは私ども養蚕農民の名においても了承することはできません。これは私は行き過ぎだと思う。要するに力が平等の場合、対等の立場にあるときには、製糸業者が協定しても養蚕業もこれに対抗して行くことができますが、現在は繭の乾繭設備といつてもほとんどございません。今売れば安いと思つても、これを乾繭して貯蔵して値上りを待つような設備もありませんし、組合の団結力もない。一応養蚕協同組合は組織されておるが、その経費は、先刻も申しましたように製糸業者から仰ぎ、人件費の補助まで受けておる。こういういわゆる支配と被支配との関係に立つものが、そこに一つの協定を結んだ場合にどういう事態が起きるか、これはおのずから弱い者の負けであります。こういう実情を無視して、簡単に蚕糸業法の第十五条の改正を独禁法の中に含めておやりになつた農林省の態度というものは、おそらく近き将来において、養蚕農民から糾弾を受けることは必至であろうと思う。この点については、とくと御再考願いたいと私は考えております。もし、この点について大臣の御所見があれば承りまして、あまり長くなりますから、私の質疑はこの程度で打切つておきたいと思います。
  25. 保利茂

    保利国務大臣 足鹿さんの御懸念と御意見は十分拝聴いたしましたが、養蚕農民の利益を著しく侵害するというようなおそれはないどころか、今日の実際の取引の実情からして、この改正をとつた方が取引をスムーズにして行くゆえんではないかというように私は承知いたしておりますが、なおこの点につきましては、お話のように、必ず蚕糸局長の出席をさせまして十分御説明申し上げるようにいたしたいと思います。     〔佐竹委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 井出一太郎

    井出委員長 川俣清音君。
  27. 川俣清音

    ○川俣委員 私はできるだけ意見を省略いたしまして、大臣に五点ほど御質疑をいたしたいと思うのであります。第一点は、大臣も愛されてしかるべき、しかも精励恪勤な職員の待遇問題でございます。しかもそれは林野庁の職員の給与についてでありますが、その多くは業務内容、職務の性質、職員の厚生、労働条件等にわたりまして、一般の国家公務員とは著しく事情を異にすることは、大臣つとに認められておるところであろうと思います。しかるに国家公務員としての画一的な給与体制がそのまま通用されておりますので、林野行政の上に弛緩を来し、精励を欠くようなおそれのある事態が発生して参つておるのでありますから、これに対して大臣の善処方を要望いたしておつたのでありますが、いかように処理されましたか、この点について御説明願いたいと存じます。
  28. 保利茂

    保利国務大臣 林野業務に携つておられるいわゆる現業公務員は、お話のように公労法の適用を受ける。その公労法適用下の第一回の団体交渉が持たれまして、結局調停委員会にこれが付されて、御承知のように、先月の二十六日に調停案が示されたわけでございます。その調停案は大体二つの性質を持つておるように了解をいたしております。その一つは、昨年十一月の公務員のペース・アップの際に、林野職員に対するベース・アップは合理的に行われていなかつた。実際一般に比しまして著しく低位に置かれておる不合理がある、これは是正されなければならないというのが第一であります。第三は、いわゆる待遇改善と申しますか、ベース・アツプをやるべしというのであります。そこで公労法の適用があつたから、もう一切合財すべての関係を抜きにして、それで動かして行くということは、実際の事情からいいますと、国鉄公社ができましてからも、長い間いきさつがありますように、全般公務員との関連に多年の沿革もあるし、一挙に公労法そのままを用いて行くということは、実際の事情から必ずしも――ということは大いに考えなければならぬところである。そこで私としましては、ベース・アップの問題につきましては、近く人事院の一般公務員に対する給与の勧告があるというような情勢にあるようでございますので、それとこれは全体の関係において検討をいたして参りたい。ただこの不合理の是正につきましては、何とかひとつ実施ができるようにということで、今日まで努力をして参りました。ですが、申し上げてよいかどうかわかりませんけれども、大体、調停のあつた翌月からこれを実施して参りたいというので、一応政府の内意をきめておわるけでございます。ひとつそう御了承を願いたい。
  29. 川俣清音

    ○川俣委員 大体了承いたしましたが、さらに善処を願いたいのは、林野行政は、職員を最も活用いたしまして相当の成績を困難な中において収めながら、さらに一般会計へ二十二億というような繰入れをいたしておるわけであります。従いまして、それらの点を十分勘案いたしまして、今後における常用人夫並びに日雇い等につきましても、最善の努力を払われて、その能率を上るげように善処方お願いいしたいと思うのであります。  次にお尋ねいたしたいのは肥料の問題であります。大臣はただいま同僚足鹿委員の質問に対して、大方日本の硫安メーカーは出血輸出をいたしておるようであるという見解に立つておられたようでありますが、私は、この見解は非常に誤解があるのではないか、あるいは検討が足りないのではないか、こういうふうに思うのです。なぜかといいますと、経済界の雑誌等に出ておりまするものを総合してみますると、ある硫安メーカーのごときは、赤字として確かにたな上げしている会社もある。ところが完全に償却をいたしまして、何らの苦痛を感じていないメーカーもあるわけです。そういたしますと、これは出血輸出ではないわけです。完全に償却いたしまして利益を上げている会社もあり、また「エコノミスト」によりますと、某会社のものをあげておりますが、今年はえらく赤字が出たけれども、二十八年度の下期においては相当量の硫安の輸出が見込まれるから、一億円内外の利益が上がるであろうというような記事も出ております。これは会社の企業批判でございますが、そのように、輸出があるためにかえつて利益が上るというような企業批判をいたしております。そういたしますと、出血輸出というような考え方は、どこから大臣は持つて来られて御答弁なすつたのでありますか、この点をお伺いいたしたい。
  30. 保利茂

    保利国務大臣 そう申しております点は、つまり農民の感情からして、私が申しておりますのは、出血輸出だ、出血輸出損失だという掛声でこの問題がわつと上つて来ているわけでありますから、そういう感じを持たれておることを考え、今回とるべき肥料対策にはそういう感じが持たれないような措置を講じなければならないではないか。従つて、これは申し上げるまでもなく、私どもに正確なコストがどうなつておるかという資料が何にもございませんわけですから、出血であるか出血でないか、出血といい、出血でないといい、しかしそういう感じを確かに与えているということは間違いない。その分を生産農民にぶつかぶせておるというような感じを強く抱かしておることが、肥料問題をまた大きくしているゆえんであろうとも思いますので、そこのところは、ひとつ納得の行く国内価格を持つようにしなければならぬ。私は出血だとも出血でないともこれは証拠立てる何も資料を持つておりませんから、その点は言明を避けます。
  31. 川俣清音

    ○川俣委員 大臣は肥料問題に対して、たいへん関心を持たれて努力しておられるということを、前委員会において御発言になつたのであります。従つてどのような会社がどの程度のコストということまで、大臣からお聞きしようとは思いませんけれども一般の財界において、この会社は出血をしておるかいないかということぐらいは、これは毎日の経済欄に大体出ておることであります。これをもしお認めにならないとすれば、あまりに勉強が不足でないか、いくらか御勉強になつておられるのでありますから、どの会社がどのくらいな出血である、そんな正確なことはつかめないにいたしましても、大よそのことはおつかみになつているはずだと思う。従いまして、多くのメーカーの中には、確かにこの輸出額が非常に大きな痛手を与えておることも事実でありましよう。それは赤字としてたな上げしておいて、四苦八苦で悩んでおる会社のあることも認めますと同時に、何らの痛痒も感じないばかりでなく、さらに輸出を期待いたして、この輸出の期待から利益の上ることをも想定して、株の配当を行う等の会社もあるわけであります。これらが、農林省は認めなくても、一般の株式市場において、これは認められておる。もし認められなければ、もつと株が低落しなければならぬ。これは一般の市場において認められておることである。この一般が認めておることを、農林軒で認めないというのはおかしいのじやないかと思うのですが、この点いかがですか。
  32. 保利茂

    保利国務大臣 これも私勉強が足りないといわれればいたし方ありませんけれども、どの会社が一体今の輸出価格で引合つて、どの会社が引合つていないかということは、実は私承知しておりません。これは承知しなければならぬことだ。承知するために、承知し得るような措置をひとつ講じさしていただかなければならぬ、こういうふうに思つておりますが、ただこの一般的に申さておるのは、今日は生産能力からすれば二百九十万トンからの生産能力を持つておる。従つてその施設が非常に高度に操業せられる場合には、価格の上においても、生産費の上においても、相当かわつて来るだろうと思う。そういう関係もありましようから、輸出の分が内地の農民に転嫁されておるということは一概には断じがたいと存じますけれども、これはどちらにしても川俣さんの御質問に対して、私は真正面から十分お答えはで誉ません。
  33. 山本幸一

    ○山本(幸)委員 あのねえ大臣、問題はここなんですよ。要するに廣川農林大臣時代から何人かわるかしらぬが、記憶はないほどかわられているのだが、そこで各大臣は、肥料問題が出ますと、声をからして重大な関心を持つているということを常に言つて見えるのですよ。そこでわれわれは、しからば国内対策を立てるに必要な要素をつくり上げるために、コストはどうかといつてお尋ねすると、コスト調べについては、自由販売の今日ではもはや政府がそれを調べ得る権限はございません、従つて非常に困難でございますという、きわめてありふれた不親切な答弁で、今日まで終始されて来たわけなんです。ところが今川俣さんのおつしやつたように、実際問題にあらゆる文書文献に相当批判をせられ、あるいはその利益損失等も出ておるという現実と、それからもう一つは、私どもしろうと考え考えてみても、他の生産を兼業している肥料会社なら別でありますが、聞くところによると、何でも硫安専門工場が三社あるといわれているのですね。そうだとするならば、少くとも政府がその専門硫安工場に対して、コスト調べをするくらいの用意と努力がなければならぬと思うのですよ。そこで保利さんは、それは私はまだしておらぬし、勉強不足かもしれぬけれども、今後するために、承知をするために、承知に必要ないろいろな要件をつくりたい、こういうような御答弁であつて、わかりましたが、私どもはてこでもう一つつ込んでお尋ねしたいのは、一体政府は調べるような努力を具体的にどうなされて見えるか、ということをひとつお聞きしたい。コスト調べをなさる努力は、今日までどういうふうにして見えるのか、それをまずお聞きしたいと思う。
  34. 小倉武一

    ○小倉政府委員 生産費調査の努力でございまするが、私ども関係の役所といたしましては、電力の割当というような行政面を通じて、指導的にコストを調べるといつた手段も持ち合せません。あるいは外貨の資金の融資をあつせんするといつたような手段でもつてそういうふうに生産費を出せ、こういう手段も実は持ち合せておらないのであります。従いまして農林省といたしましては、メーカーから生産費を出させるという権限は、もちろん行政的に指導的に出してもらいたいといつたことをいいましても、なかなか押えがきく手段がないわけであります。通産省になりますと、そこは電力の割当、資金のあつせんというようなことを通じまして、権限に基かないでも、ある程度の資料はつかみ得る立場にございまするが、ただいま農林省といたしましては、そういう手段がないのでございまして、対策委員会等に提出された資料に基いて、若干の検討を加えておる、こういう実情であります。
  35. 川俣清音

    ○川俣委員 さらに進んで、ついては、大臣は勉強していないからといつて答弁を拒否されておる、拒否でもないのでしようが、渋つておられるわけですけれども、七月十八日のエコノミストを見ましても、これはある会社と私は指定いたしますが、「硫安市場は相かわらず冴えないが、あたかも需要期であり、輸出引合いも活発だから、今期は一億円程度の利益は見込めよう。当社のガス炉の合理化工事は戦後引続いて行われ、目下最後の一基の大改修を行つている。これも来期から実効をあげよう。」そこでさらに「他の部門が悪くても、十分二割配当はやつて行ける。資産株としては適格である……。二割配当としては割安である。」こういうような説明を加えて、大いに株がもつと高騰する内容の説明をいたしております。こうして参りますると、むしろ輸出引合いも相当活発化するから、会社の利益が上つて来るのだという説明を、堂々と企業批判をいたしております。これによつて株式投資家は投資されているわけです。公開の株がこう投資されているということは、世間では一般にこれを認めておるということだと思うのですが、大臣それはこれを認める方が悪いと思いますか、あるいは農林省の検討の足りがい方が悪いと思いますか、これはどうですか。
  36. 保利茂

    保利国務大臣 優秀な事務当局をもつてしましても、ただいま御答弁申し上げましたような状態でありまして、私はそれを伺つておりまして、どう思うかと言われる。この肥料製造の過程における副産物と申しますか、兼業と申しますか、それらの点が相当影響して来るのじやございませんでしようか。生産がふえて参りますと……。そういう関係も大いに働いているのじやないかというように、私はちよつと伺いまして、そういうふうに思うわけであります。
  37. 川俣清音

    ○川俣委員 それは大臣ちよつと違うのですが、それを議論していると私はもう時間がなくなりますから、他に転じますけれども、事務当局のコスト調べが困難だというのは、限界をそう規定して、いわゆる厳格なコストを、原価計算をすることは困難だという御答弁であるので、私は了承しているのです。しかし常識的に、この会社がどの程度の利益をあげておるか、どの程度の赤字であるかというようなことは、およそ世間的に認められていることであるから、このくらいな認識は持つてしかるべきじやないかと、こういうふうに申し上げておるので、この会社は原価計算をして幾らでなければならぬというような検討は、今小倉局長から、困難だというふうに私は聞き及んでいるので、その点については私も了承する。けれども世間に一般的に投資されているのは、原価計算が幾らかなんということではなくして、大体この会社は硫安をやつてつて、赤字であるか赤字でないかというような常識がある。この常識の認識くらいは持つてほしいということを申し上げておるのです。  そこで問題はさらに転じますが、今肥料小委員会で、輸出会社をつくるというような考え方が一方出ておりますが、この輸出会社をつくるということの裏には、これは現在の輸出方法は独禁法に触れるということを公取がやかましく言われるものでありまするから、例外規定を設けて、輸出会社をつくりたいというのが大体本音のようであります。これは硫安協会あたりが出しておりまするものを見ましても、独禁法の例外規定としてこの会社をつくりたいということを打出しておりまするから、おのずから今までのやり方は独禁法に触れるおそれがあつて、制約を受けるおそれがあるから、制約を受けない会社をつくりたい、こういうことだと思うのです。この裏をもう一ぺん返して見ると、今の輸出貿易というものは独禁法に触れるのだということをみずから暴露いたし、告白いたしておるものだと思うのですが、この点についての大臣の御見解はどうでありましようか。
  38. 保利茂

    保利国務大臣 輸出会社と言われますけれども、まあどういう案が出て参りますか、裏をひつくり返し、ひつくり返しして行けばいろいろな議論が出て来ると思いますけれども、それは現在やつている輸出のあり方がそういうおそれがあるのではないかということは、一応の疑問点だろうと私も感じております。しかしいずれにいたしましても、この肥料輸出と内需との関係を、生産農家の納得の行く形において割切つて行く措置を講ずることが第一であろということで、立案を願つておるわけでございます。いずれ出ましてから、ひとつ十分御意見を伺わしていただきたいと思います。
  39. 川俣清音

    ○川俣委員 私は今輸出会社がいいとか悪いとかいう議論をしているのではなく、大臣にお尋ねいたしておるのです。現在のやり方が独禁法に触れるために、それに触れないような会社をつくりたいというのが、メーカー側の希望のように見える。そうすれば、現在の取引状態というものは独禁法に触れるのだということになる、そこで大臣はどういうふうにお考えになつておるか、こういうことをお尋ねしたのです。しかし時間がないから私の意見をちよつと申し上げますが、現在御承知のように、輸出数量につきましては、硫安協会が各メーカーに割当をいたしまして、コストが合おうと合うまいと、強要いたしておるわけです。そのために、強要の結果、会社に赤字を生じておるところもありますし、今申し上げましたように、輸出に多いに期待をいたしておる会社も出て来るというような状態です。それを無理に一本価格で輸出しておるところに、国内にこの赤字を負わせる形態が出て来る、こういうことになると思うのでありますが、これは私意見として申し上げて、いずれかの機会にまた申し上げることにいたします。  もう一つは、昨年の暮に委員会でいろいろ問題になりました結果、公取から今の国内向けの取引状態がこれまた独禁法に触れるという警告を発せられております。横田公取委員長は、この警告の結果いくらか改善されたようだというふうに一言証言せられ、さらに追究に合いましたところ、その後成績が上つたかどうかということは調査する、こういうことでございましたが、いずれにいたしましても、硫安協会は、国内取引におきましては一応建値を一度発表いたしましたのを取消して、自由の価格で取引してもいいのだという新聞発表は確かにあつたようであります。ところが、それでは比較的生産費の安い会社がそれに即応するような割引と申しますか、そういう生産費に利益を加えたような価格で売り出す、ある会社は赤字で大分苦しんでおるのであるから、それでは割合高く取引が行われたかと申しますと、やはり硫安協会の建値に即応した取引が行われております。五円とか十円くらい安い場合もあつたようでありますけれども、およそ建値、大体協定値段というものがかなり実行されておるようであります。そういたしますと、依然として公取から警告を受けたことを実施していないという状態が生まれて来る。そこで公取から批判を受け、警告を発せられたその代表を、依然としてやはり硫安協会の代表として、メーカー全体の代表として、その意見を尊重されるかどうか。警告を受けて実行できないようなものは、代表の資格はないと私は見たいのですが、警告を受けてもなお硫安協会として依然として自説を堅固に守つて、曲げない硫安協会をお認めになるのでありますかどうか、この点を伺いたい。
  40. 保利茂

    保利国務大臣 公取から警告を受けて、その後改善せられているかどうかというそのいきさつについては、経済局長から申し上げるようにいたします。ただ硫安協会の有力メンバーの意見を尊重するかどうかという点ですが、私は肥料対策委員会の意見として出て参つております点については、これは政府として委員会を設けました趣意からいたしまして、尊重するだけ尊重したいという考えでいるわけであります。
  41. 川俣清音

    ○川俣委員 私がお尋ねしたのと今の御答弁とはちよつと食い違つている。私の申したのは、警告を受けた硫安協会です。私は硫安製造会社の意見を聞いてはならぬとは申しておりません。有力な硫安工業会社の意見を聞くなとは申してはおりません。しかしながら団体を組んで、その団体が警告をされた、その団体の代表を硫安協会の代表と認めて審議されたことについて、私は問題を提起いたしているのであります。硫安協会が警告を受けた、その警告を実施されるならば、そういうものの代表としてお認めになることも妥当だと私は思いますが、警告を受けておりながら、その警告を無視したような硫安協会の代表を、しかもなお代表と認あられているところに行政上の大きな欠陥があるのではないかというふうに考えますので、この点をお尋ねいたしているのであります。
  42. 保利茂

    保利国務大臣 私は硫安協会の代表者とお会いして意見を聞いたことはまだございません。肥料問題に関する限りは、肥料対策委員会の答申を受けまして、その答申して来たところを事務当局研究していただいている。従いまして、政府がこれを設けました以上、その答申の趣意は尊重して参ります。  なおこれは私がうそでも言つているように思われると迷惑しますから、はつきり申し上げますが、硫安協会の代表と私はお会いしておりません。
  43. 川俣清音

    ○川俣委員 私は硫安協会の会長と保利農林大臣が懇意であるか懇意でないかとかいう私的のことを聞いているのじやない。一つの大きな経済犯罪というりようなものを指摘された、それを国が代表としていつまでも認めているところに問題があるじやないかということを申し上げている。もし肥料の小委員の中で刑罰を受けたような者があつても、なお小委員として認めておくかどうかということなんです。しかもこれにからまる経済事犯として摘発され、あるいは警告を受けているから、それを代表として認めるようなことはおかしいじやないか。しかも答申の中にはそれらの人片が意見も吐いているから、それならばむしろ早く代表を取消して、別の人を選ぶということが妥当でなかつたか。――ここまで言わなくても、大臣はお察しして、御答弁があるだろうと思つたんですが……。
  44. 小倉武一

    ○小倉政府委員 先ほど、メーカーの建値が独禁法違反の疑いがあるということで警告を発せられたが、その後改善された事実があるかないかという点につきまして、蛇足でございますが、ちよつと御説明いたします。もつともこの点につきましては、公取が警告を発して、その後監察をいたしているはずでございますので、その後警告の趣旨にかんがみまして改善したかどうかということは、有権的には公取が御答弁するのが適当だろうと思いますけれども、私どもからちよつとその点を申し上げますと、建値が発表になりました以後、硫安の安定帯価格におきましては、安定帯価格の上値から一円ないし十円下つたところで各社別に契約ができたようであります。その後これはメーカーの自主的な自粛によるのか、あるいは需給の関係によるのかわかりませんけれども一定帯価格の上値とは相当違つてつております。そういうような経過から見ますると、多少とも自粛の措置は見えたのではないかというふうに観察されると思います。
  45. 保利茂

    保利国務大臣 肥料委員会のメンバーに、警告を受けた硫安協会の代表者が入つておるのはおかしいじやないか、その構成員によつてできている肥料対策委員会の答申を尊重して行くというのはおかしいじやないかという御趣意であろうと思います。肥料対策委員会硫安協会の代表者として代表者を入れておるのか、あるいは肥料関係の有力者として入れておるのか、いずれにしても政府としては、意見を徴すべき人であるということで入れておる、すでにその委員会の使命も終つておることでございますから、私はこの処置をいたして参りました政府としては、委員会の答申ができて実を結んでおりまする以上は、尊重して参らなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  46. 川俣清音

    ○川俣委員 私は硫安協会の会長の個人攻撃をあえて行うなどという考え方はしていないのです。ただこれが警告がありましたけれども、小委員会が終れば善処するから、小委員会が終るまで待つてくれというような態度に出ておりますために、あえて問題にいたしておるということを御了承願いたい。私も大した関係はないから、決して個人的なうらみで言つているのではない。ただ問題は、今小委員会が開かれておるから、その後において適当な処置がとられるから、もうかんべんしておいてくれということで日を延ばしておるようであります。問題はそこに存するということで今質問を申し上げたのであります。  これはこの程度にいたしまして、さらに大臣にもう一点この肥料問題についてお尋ねいたします。これは公取の考え方及び通産省の考え方は――小倉局長も同様だと思うのですけれども、物統令の時代には最低と最高とは二割五分ぐらいの開きがあつた。現在ではそれがある程度縮まつておるとはいいながら、二割程度の開きがあるであろうということは、公取でもこの委員会において明らかにいたしたところであります。二割の開きというと相当大きな開きであります。現在小倉局長の説明によれば、五円か十円の開きだというのですけれども、九百円に対して五円や十円の開きでは、公取が指摘したほどの開きじやありません。二割の開きというと九百円に対して少くとも百八十円開かなければならぬ、また百八十円開かないでも、百円内外でも開けば、あるいは八、九十円でも開けば、いくらか自粛というか警告を尊重したということも言われますけれども、五円や十円の開きで、はたして自粛だとあなたは認めらられるか、これは他の事情によるものであつて、むしろ農林委員会からの圧力で、総体的に硫安メーカーが、頭を打たれたために幾分首を縮めたという程度でありまして、自粛じやありません。自粛であつて公取の意見を尊重されるならば、もう少し開きがなければならぬはずだと思います。この点について大臣の御見解をお尋ねいたします。
  47. 保利茂

    保利国務大臣 小倉局長から御説明申し上げます。
  48. 小倉武一

    ○小倉政府委員 コストの開きは二割あるのか、これは必ずしもはつきりしませんが、相当あるだろうと思います。最優秀工場と最劣悪工場と比べれば、相当の開きがあるものと鑑定はされますけれども硫安につきましては、農林省は検査もいたしておりますし、メーカーによつて商標が違つて若干の違いということもございましようが、まつたく資本主義的な単一の商品でございますから、生産費の開きがそのまま、あるいはそれに似たような開きを示すということを期待することは、なかなかむずかしいことだと思います。もちろんこれは硫安の各会社の生産を保障するという意味において、買取りの特別会社でもできてやる場合には、そういう開きをもつて買うということも考えられますけれども硫安界の実情においては、その硫安界の価格、かほぼ同じ水準になるということは――これは独占とかなんとかいうことを別にしましても、そういうことになるのはやむを得ないのではないかというふうに思うのであります。
  49. 川俣清音

    ○川俣委員 これはもうここで議論をすることはやめます。しかしながら独禁法の関係から見て、相当な開きがなければ独禁法違反であるということは横田公取委員長が認めたところでありまして、従つてそういう観点に立つて農林省も肥料行政に当られることが望ましいと思いますけれども、これ以上の質問はやめておきます。  ただもう一点申し上げておきたいのは、今後肥料に対する法案を出される場合における大臣の心構えとして、私一点見解を述べておきたいのであります。それは今日肥料が二百万トンあるいは二百四、五十万トンまで生産能率を上げて参りましたのは、これは会社の経営がよろしきを得て、そこまで行つたということも半面考えられますけれども、あの戦後における非常に資材難のときに、日本の食糧増産のために、どうしても鉄鋼その他の資材を流して会社の復興をはからなければならないということで、国家の負担、助成等によりましていち早く復興のできた会社であります。これらの多くの国家投資、財政投資が行われて今日の隆盛が基礎、つけられたものだという観念を、大臣は持たれなければならない点です。そうでなければ、これだけの財政窮迫したときにおいて、国費をつぎ込んだものが日本の食糧増産の上に寄与しないようなことがありますならば、あれだけの投資を行う必要はなかつた。間接には会社の利益になるのでありましようけれども、要は国内食糧増産のために喫緊であるというところから、非常な困難を排してあれだけの復興をはかつたのでありますから、これは会社の企業者の腕が非常によくてできたのだというようなうぬぼれを持たすことについては、非常な痛棒を加えなければならぬ。反省して肥料対策を講じなければならぬと思います。今後におきましても、肥料会社に対して国家投資、財政投資また補助の行われる場合におきましては、会社経営の合理化といいながら、やはり食糧増産のために寄与する面から行われなければならぬという考えを、大臣は持つておられるだろうと私は思いますので、肥料の問題についてはこれ以上の質問はやめますが、その観点を十分尊重されるように望みたいのであります。  次に米価の問題でありますが、新聞紙上によりますと、今度の自由党と改進党との協定は憲法違反のおそれがあるというような意見が自由党の内部から出ておるようであります。これはおそらく独立会計の中に一般会計から繰入れるようなことは、政府が議会に対する提案権を持つておるのを、修正の限度を越えたのであるから、憲法違反だとこういうふうに主張されておるのじやないかと私は思いますが、これは農林大臣というよりも国務大臣といたしまして、どのような見解をとつておられますか、この点をお尋ねいたします。
  50. 保利茂

    保利国務大臣 予算案に対して自由党、改進党の幹部の方々が折衝せられておるということは承知をいたしております。おそらく憲法違反とか憲法上の論議になつておるのは、予算の編成権と申しますか、提案権というものは政府に権限がある。従つて款項等の項目を起す場合に、予算修正ということではできないのじやないか、それは憲法の認めておるところじやないのじやないかというような問題であろうと思います。私はまだ詳しく結論を伺つておりませんから、よく承知いたしておりません。
  51. 川俣清音

    ○川俣委員 私はこの点について意見を述べると、時間がなくなりますので、省略いたしたいのですが、政府は食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案といたしまして、「麦ノ売渡ニ因リ生ズル損失ヲ補填スル為予算ニ定ムル金額ノ範囲内ニ於テ一般会計ヨリ本会計ニ繰入金ヲ為スコトヲ得」というような改正案をみずから出されております。もしもそういう疑義があるならば、こういう法律に上つてできないこともないので、ただ圧縮したいというような考え方から憲法違反を持ち出されて、内閣がそういうことで動揺するというか、動揺されたつて一向さしつかえがないのでありますけれども、食糧事情というものについては、やはり農林大臣が毅然たる態度をもつてお臨みにならないと、多くの食糧を所管いたしております農林大臣としては、影響するところ非常に大きいのです。ことに大臣にお尋ねしておかなければならぬのは、この米価のきめ方いかんによりましては、ことしの秋の供米に影響するところ非常に大きいと思う。私は別に改進党と自由党とが妥協されたからといつて、それをねたむものでもなければ、そのことが悪いとかいいとかいう批評は今はいたしません。しかしながら、そのやり方いかんによりましては、去年ですら非常に供出の割当に困難を来したのであります。去年はたしか十七県かの知事に拒否された。最後には二県の知事が残つて、遂に妥協がつかなかつたということを聞き及んでおります。ことしもその米価のきめ方いかんによりましては、割当供出というものは非常に困難になるのではないか。これは時代がだんだんかわつて来ております。いわゆる占領政治下におけるように背景を持つた場合とは、今日においては、かなり違つた豊民の気分がある。そういうときにおいて、割当てたから必ずとれるというようなことも考えられないでありましようし、またあれだけ国会にデモをかけるような知事が、そう簡単に農林省の御意見を、御無理ごもつともとして拝聴して、割当を引受けるようなことも、だんだん少くなつて来るのではないかと思います。というのは、知事の選挙がだんだん差迫つて来ておりますから、そうは簡単に引受けて帰らぬ事情が起つてつております。また一面には、今日のようなやみ米価が出て来ると、これも非常に困難な情勢が生れて、問題が累積されている。その上に米価の決定の仕方が悪ければ、さらに問題が累積されまして、非常に困難な事態に陥るおそれがありますので、慎重に、食糧会計の上から、また食糧行政の上から御検討願わなければならないと思う点を申し上げておきます。これは議論をすると大臣もお困りでありましようから、意見だけにいたしておきますが、十分に注意だけをしておきたいと思います。
  52. 井出一太郎

    井出委員長 川俣君に申し上げますが、大分あと質問者がおられますから簡潔に願います。
  53. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点です。農業団体についてですが、これは局長が御答弁にならないので、大臣から御答弁願いたい。大臣に御答弁のできないことは、もう御答弁にならぬでけつこうです。今まで政府が非常な財政支出または国庫負担をもちまして、農協の育成に努めて来られたのでありますが、大体政府は、こういうものが国家の援助やまたは助成をまたねばならないという考え方を、いつまでも続けられるおつもりなのか、または農協本来の建前に立つて、自主的経済、自主的運営をすべきだというお考えであるかどうか。一般からいうならば、農協というものは、自主的に運営をなすべきものであるのが理想だ、こういわれておりますけれども大臣はその説をおとりになるのでありますか、またはやはり補助助成をして行つて、自分の子飼いにしなければ納まらないというようなお考えでありますか、この点をお尋ねをいたします。
  54. 保利茂

    保利国務大臣 農村の経済的地位を向上して参ります上から行きましても、農家経済を発展させて行く上から行きましても、農村の協同経済体というものが、産業組合運動以来今日まで非常に大きい貢献をなして来ておる。それが戦争及び終戦後の混乱時に、かなりがたがたになつたということはいなめない事実だろうと思います。そうかと申しまして、今日の農業協同組合に私は大きな期待をかけるものでございます。どこまでもこれは農村の自主協同体でなければならぬ。しかし何と申しましても、これは釈迦に説法、いらぬことでございますけれども、零細な生産農民の団体でありますから、ちよつと目先のかわつたことをやろうとしても、新しい負担力はない。必要やむを得ざる、自主的活動を阻害せざる限り、私は国としてもこれを育成して行くという方法が正しいのではないか、こういうふうに考えております。
  55. 川俣清音

    ○川俣委員 私はどつちかに割切つてほしいということを御質問したのでありますけれども大臣は割切らないで、自主的な運営、自主的な発展が望ましいが、ときにはやはり補助もしなければならないというような、割切ることができないような御答弁でした。私はやはり今日においては、むしろほんとうに割切つて行くことが必要じやないかというふうに思つておるのです。というのは、国の経済から申しまして、協同組合は農業協同組合のほかに、中小企業協同組合があり、その他の協同組合があるわけでありまして、他にやはり同類の自主的な経済団体があるのでありますから、国として見ますれば、おのおの自主的な発展を遂げさせるということが望ましいと思うのです。大臣はそれも希望はする、けれども、ということで濁しておられますが、私は自主的な発展をこいねがうものであります。それにはこれを援助してやるのだというようなことは邪道だと思う。なぐつておいて薬を塗つてやる、それで助けたいというようなかつこうで、農産物の価格あるいは米麦の価格その他農業所得というものが適正に所得されまするならば、国の援助をまつことはいらないであろうと思うのです。それを無理に米麦等を押え、あるいは農産物価格の低落を放任しておられまするために、その弁護といいますか、そのそしりを何かの形で補つてやろうというような考え方から補助せられるのでありますが、この点お尋ねしたいと思います。今まで農業協同組合に対する補助の仕方が、本来でありまするならば、独立の運営をはかるように取扱うベきであろう。ところがそれには農家経済がなかなか成り立たないのであるけれども、これは農産物の価格、米麦の価格等について、適正な価格でありまするならば、農家経済が自立でき、その自立できた農家の団体である農協というものが自立できるのである。ところがそれについて、その施策が十分でないために、その弁解のために、わずかの救済をしてお茶を濁そうとするのであるかどうか、こういうことを尋ねたい。
  56. 保利茂

    保利国務大臣 私はちよつとまつとうにはお答えいたしかねますが、補助をするから、農産物価格が適正でない、こういうふうな議論で進んで行きそうなけはいがあるのであります。しかし農産物はやはり一面は需給関係からも参りましようし、あるいは生産費関係からも参りましよう。どこまでも一面において農産物の適正価格を保持して参る、その適正価格の上に立つて増産が営まれる、そうして農家経済がゆたかになつて行くようにという方向をとるべきであろうことは、これは申すまでもないことであろうと思います。さらばと申しまして、それだから協同組合があらゆる活動に十分な原資を持ち得るか、ゆたかになり得るかということを即断はいたしかねる。やはりそこは兼ね合いの問題だろうと思いまして、今日はやはり私は、必要な最少限度のものは国でめんどうを見て行く段階にあるのじやないか、決してそれによつて協同組合を御用化するとか、あるいは自分の思うように使うとかいうような考えを持つていたすべきものではない、こういうふうに考えます。
  57. 川俣清音

    ○川俣委員 質問を私一人でとるのはぐあいが悪いから、もう一点だけお尋ねをしておきます。これは農業協同組合にいたしましても、農業委員会にいたしましても、政府の行政末端機構として、ことに農林省はこの機構の運用の上に乗りまして、末端機構の役割を果させて来たわけであります。従いましておそらく農業委員会の改正法案が出され、農協改正法が出されたのでありますけれども、お互いにこれは不十分な妥協案をもつてつくられたのでありまして、これらの妥協案につきまして、私どもは不十分であるという考え方をいたしておるりでありますが、大臣はどうしても、この両法案とも切り離すことができないというお考えに立つておられたと思いまするし、なお不十分だという点もお認めだと思いまするが、この点はどうですか。
  58. 保利茂

    保利国務大臣 ごもつともな御意見でございまして、農業委員会のひいきの方からいえばもの足らぬ、農業協同組合のひいきの方からいえばいらぬことをするというような、両方からの不満がある。確かにあると思います。しかしまた実際の今日の農村団体の実情からいたしまして、一歩前進的にも団体を強化して参ることが、すなわち農村を強化して参ることにつながつて行くことでございますから、もちろんこれでもつて理想的な農村団体が編成されたというようなことは私は考えておりませんけれども、現状においては、ぜひひとつ両案ともに成立いたしまするように御協力いただくことが――御協力いただくということは語弊がございますけれども、そういう御審議をいただくことが、実際の実情に適合しておるのじやないか、こういうふうに考えております。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 残余を留保いたしまして、次に譲りたいと思います。
  60. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 同僚先輩の足鹿さんと川俣さんから、非常に具体的な御質問が出ましたので、私は少し角度をかえまして、ぼやつとしたところで、農政の基本の問題について二、三お伺いをいたしたいと思うのであります。  その一つは、今日の農政の基本であり、国民経済の基本である食糧輸入の見通しであります。これはもちろん政府は、今日までうまくやつて、どうやら切り抜けて参つたのであります。この点については片方において非常な財政負担等もありますけれども、国民全体がまずまずよかつたというところだと思います。しかし御承知の通り、最近の世界情勢は相当大きな変転期に立つておる。特にその変転期が日本へしわ寄せされまして、とりあえず日本としては非常な輸出の不振といふこと、従つて輸出物資に対する受取代金が非常に減るという見通しは、これはもう一般だと思うのであります。どの程度減るがということは、これは政府の今後の努力、施策その他によつても相当程度はかわつて来ようと思う。しかし全体として、今政府がやつておるいろいろの努力が簡単に実を結んで、現実効果が現われて来るのは相当先の語じやないかということも強く考えられる。そういう際に、片方においてはなるほどMSAを中心とするアメリカ側の域外買付等もいろいろと期待されておる。しかしMSAに対する期待はそう大きくなくなりました。また域外買付も、アメリカの言うように七億ドルあるのかどうかわからない。こういう段階になつて、しかも最近のいろいろの状況によれば、国内における重工業ないしは軍需工業の増強ということは、これは必至の状況になつて来ておるように思う。その際にあたりまして、国内資源はなく、機械は非常に古ぼけておつて、日本としてはどうしても重工業や、そういうものをやるためには、輸入資金が足らなくなつて、いわゆる輸入資金をもつて何を買うかということになれば、どうしても先決問題は、そういつた重工業ないしは軍需産業にその足りない資金をまわすということになつて来る。これは当然の行き方であると思うのであります。その際においては、政府が輸入の問題を無視するというようなことについてはとうてい考えられない。しかし片一方においては、輸入が不振で受取代金が少くなる。片一方においては国内において軍需産業、重要物資に対する需要が多くなつて来る。従つてそれに対する金がよけいになつて来るということで、どうしても立場の相違でありましようけれども、一面においては食糧輸入に対するいわゆる外貨割当等がだんだん圧迫されて来るということは、これは必然の勢いだと、こう考えるのであります。これらに対して農林当局としては、こういう情勢を前にして、片一方においては国内の増産計画もあるには違いない。しかしこれとても国内において、軍需産業もしくはその方面に対する予算なり、資金がよけいとられる場合においては、今年の五箇年計画においても、すでに農林省が当初予定した土地改良等の資金は相当削られざるを得なくなつた。これでどれだけ効果があがるかということは疑問であります。もう少し総合的に、長い目で見た食糧の輸入計画と全体の計画、これは単に輸入あるいは外貨資金との関係のみならず、全般的に真剣に検討しておるかという点であります。さしあたりは七億円、考えようによつては、決してこれは皮肉ではありませんが、半年間の間に五人も農林大臣がおかわりになり、あるいは政局不安でいつまで内閣が続くかわかりませんから、そういうことを先々まで研究してもしようがないということもあり得るかもしれませんが、しかし国民の立場から見れば、この点が非常に大きな不安だと思うのであります。従つてまたこの点から出て来るいろいろな価格の問題、米価、麦価の問題、統制等の問題も、つづまるところは、政府がどれだけこの見通しを真剣に立てて、今後少くとも政府の責任においてどの程度この点を具体化するかという点のやはり基本が確立しなければ、価格政策も統制政策も、ざつくばらんにいつて根本的には立ち得ないと思うのであります。そういう意味において、保利農林大臣は今次内閣の大黒柱であらせられるわけでありますので、従つて私はこういう点、総合的な今の国の五箇年計画ということが片一方においで盛んに言われておる、これらをどの程度具体的に真剣に取り上げて御検討になつておるか、具体的に検討の事実等がございますれば、まず第一点としてお伺いしたい。
  61. 保利茂

    保利国務大臣 問題はきわめて重大な問題でございますが、たとい短期間の在任でございましても、責任の焦点はここにあると私も考えておるわけでありますから、この点については特段の努力を払つて行くつもりであります。食糧増産が強く要請せられますゆえんのものも、先ほどの久保田さんの御懸念の点から、国民的要請になつておる。すなわち輸入食糧の面において相当莫大な外貨を使つて行かなければならぬ。この現状から脱却して行くためにどうするかということが、この食糧増産の声となつて来ているわけであります。従いまして今日までもう相当大がかりな――これは戦前と戦後と一変したわが国の国土、人口の構成から、従つて食糧増産に対しても、日本の財政の投融資が今日まで行われて来ているわけであります。その効果が見るべきものがないという見方もありましようし、あるいは年々増加して行くところの消費の増大等をカバーしつつ、ともかくもここまで来ているということは、やはり食糧増産の効果がそれだけ出ているという見方も、これは見方はいろいろあると思います。しかし同時にまた私どもはどんなに尽力いたしましてもまぬがれ得ない、大きな災害国であるという宿命の上に立つているわけでございますから、この点もあわせて考えて行かなければならぬ。どちらにしましても、当面はまず国内で一体どれだけの増産余力があるか、ここに問題を集中せしめて行くべきである。従つて土地改良あるいは農地の拡張、干拓というようなことに、一体どれだけの余力があるのか、これをしさいに検討して、余力のある限りこれを開発する。そうして一面からいたしますれば、とにかくこれは歴史的に長い伝統の上に立つておるわけですから、なかなか一朝一夕に抜け切れませんけれども、米食に偏重しておつては日本の食糧問題は永久に解決することがないのではないか。自給をやつて行くということは、米食にのみたよつてつたんでは不可能ではないかということも考えつつ、そこで食生活の改善――食糧増産の余力はむろん米につきましても重点を置いて行かなければなりませんけれども、今日までの経過、経験から見ますれば、麦も増産余力というものはなお相当大きく残されておる。そこで麦の、たとえば東北地方の二毛作を開発することによつても、麦の生産余力というものは、現状においても相当残されておる。でございますから、たとえば内閣栄養審議会等で結論して発表しておりました、いわゆるわれわれが生活活動を営んで行く上において理想的な食生活をとり得るようなことになりますならば、八千『百万の人口で六千万石足らずの米で十分まかない得るという貴重な発表もあるわけでございます。それにはまた一面からいたしますれば、畜産の振興、特に酪農の発達ということが強く要請せられて来るわけでございます。どちらにしましても、とにかく外貨の面に依存するところを幾らかでも減らして行くという方向に、今日は全力をあげて行かなければいかぬ。それにはそういう着実な計画を政府が持たなければならぬ。単に数字や紙の上で、これだけの土地改良をやればこれだけだというようなことで済まして行くべき問題ではない。現地々々において計画を立てて、たとい小さいところでも、そこに適切に増産計画が成り立つとい   うようなところは取上げて、それを総合して着実な増産計画を持たなければならぬ。そういう意味から、すでに皆様御承知のような五箇年計画に対しましても、私は再検討を加えたいという気持でおるわけでございます。
  62. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいま国内の増産政策の方へ話がそれたのでありますが、それについても二、三お聞きいたしたいのでありますが、それはあとまわしにしまして、もちろん食糧の国内における増産計画を基本にして輸入計画を立てるというお話はけつこうな話であります。しかしはたしてそれが具体的に検討されて立てておるかということが問題であります。片一方において確かに増産計画があるでしようが、しかしその効果がはたしてどれだけあるかということになると、まだまだとても輸入削減というようなころには行きかねる状況であると思うのであり出す。今年あたりにいたしましても、政府の方としては二十万石の米の輸入を削減をした、しかし昨年は非常に調子がよかつたが、今年の九州災害その他を見ると、あまり米がとれそうもない予感がいたします。またすでにそういう観測が行われている。従つてすでにそういつたところから何らかの形で解決をしなければならぬというようなことでありまして、その点についての国民の大きな不安があるわけであります。そこでその点に関連して、具体的には、麦についてはこの前すでに米国からの小麦の協定によつて入れる。これは主として大量の物を安全に入れるという立場からこの方策を守つているというような御答弁つた。これには私どもいろいろ意見がありますが、時間の関係上省きます。それでとにかく米の輸入の問題であります。なるほど農林大臣の言われるように、米食一本ではとても日本は争つていけないから、粉食なり、代用食を盛んにさせる。非常に方針としてはけつこうでありますが、これがうまく行くかどうかはなかなか疑問であります。従つて米の輸入に対して具体的にどういうような方策を実際にとられているか、特に国民全般が疑問とするところは、昨年度末出て参りました例の黄変米の問題であります。相当数量の黄変米が出たということを聞いている。また私ども静岡県等におきましても、現実に相当量の黄変米が貯蔵されている。この黄変米については問題が幾つかあると思います。その一つはどういう点かというと、なぜ黄変米が出たか。黄変米の出るような仕入れの仕方なり、買い方を一体だれがしたのか。これに対して責任をどういうふうにし、現実にどうなつているかということが、一向にはつきりしない。そうして今日まだそのままになつている。さらにその中において、一部のものはすでに米屋、酒屋その他に拡い下げている。この払下げの条件がどういうふうになつて払い下げられたものか、どこへどうなつて払い下げられたものか、これが一向明らかにならない。しかも聞くところに上りますと、黄変米の名義で払い下げられた米が、実際においては払い下げられた業者によつてやみに流れたといううわささえ相当出ている。こういう点にも大きな問題があります。今年も黄変米が出るらしいというので、係官をビルマに派遣されたということでありますが、こういうことについては、何らかの恒久的な対策なり何なりを具体的に講じているのかどうかという点が、われわれには一向明らかにならない。具体的にとつておられる対策があるならば、これをはつきり示していただきたい。そうしてこれに対して私どもの意見を申し上げたいと思います。  もう一つの点は、こういう点がわれわれ国民には納得が行かない。たとえばビルマにいたしましても、あるいは台湾等から相当数量を入れておりますけれども現地の農民のいわゆる庭先相場はずつと安い。所によりますと、二百ドル見当で入れた米が七、八十ドル程度、あるいは六、七十ドル程度の米を買つているようであります。その米がなぜ日本に入つて来るときに二百ドルないし二百十ドルを越すのか、なぜそうなつているか、こういう点について、国民は一向にはつきりしたことを知らされておらない。しかも今年だけの問題とか、来年だけの問題ならいざ知らず、おそらく相当期間米を輸入しなければならぬのであります。これらに対して政府としては、今申しましたような黄変米その他の変質米がよけいに来るのを防止するために、どのような具体的な方策を立てているか。  それからもう一つは、今申しましたしように、現地で六十ドルないし七十ドルの米が、なぜ二百ドルから先になつて日本に来て、それだけよけいに補給金を税金から払わなければならぬのか、これが納得が行かない。この点も対策とともにひとつはつきり御説明をいただきたいと思うのであります。
  63. 保利茂

    保利国務大臣 食糧の輸入面に関しまして、特に外米の輸入面に関しましては、今日の米の配給管理制度のもとにおきまして、政府はとにかく食糧配給の基準においてその配給をいたさなければならぬ責任を持つて貼るわけでございます。従つてこれは内地の作況にもよりますけれども、たとい他の経済事情がいかようであろうとも、配給を確保するために必要な米は、どうしても確保しなければならぬ、そういう上から外米の輸入ということも考えて行かなければなりません。そういう意味で、これは国と国との、あるいは産地と消費地との売買上の微妙な点も出て参りますから、その点も十分考慮して行かなければならないと思います。今日の事情からいたしますれば、昨年来とつてつておりまする輸入計画によつて、寸毫の御心配もかけなくてもよろしいという状態にあることは、これは責任をもつて申し上げるわけであります。ただ黄変米の問題は私も聞き及んでおります。もし私ども政府の、あるいは取扱者の責任を追究しなければならないようなことから黄変米を持つて来ておるということであれば、それは責任を明らかにいたさなければならぬ。ただ輸送途上においてのむれとかなんとかで、不可抗力で出て来ておるのじやないかということで、その辺は食糧庁長官から詳しく御説明をしていただきたいと思います。  それから輸入先の現地の農民からは非常に安く買い上げておるにかかわらず、内地へ持つて来て非常に商い。そのために補給金を税金から大きく負担しなければなぬということは、これはもう多数の方が同様な感じを持つておられることと思います。一言にしでいいますれば、この輸入先の、いわゆる外米輸出地の国々は、いわゆる財政収入を大きくここに依存しているということを現わしているものと私は了解しておりますけれども、詳しくは食糧庁長官から御説明を申し上げます。
  64. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 まず黄変米について申し上げます。二十六年の秋から二十七年の初頭にかけましてビルマから約九千トンの黄変米が人つたわけであります。これは到着いたしまして、衛生検査の面におきまして疑わしいということで、配給を停止いたしまして、その後菌の培養その他で検査をいたしましたところ、やはり黄変菌がついておつたわけでございますので、この九千トンに一つきましては昨年アルコール及び醸造用に払い下げたわけであります。それから昨年の秋に一万二千トンの黄変米が入つたわけでありますが、この点につきましても、現在これを仕わけいたしまして、醸造用、アルコール用に売却することが適当であるということに厚生省とも打合せができましたので、そういう方向検討いたしておるわけでございますが、黄変米の原因につきましては、御承知のようにビルマにおきましては、雨季におきまして倉庫の関係あるいは輸送等の関係におきまして、雨にぬれたものにつきましての設備が完全でない。従いましてそれが積出しの場合におきましては、菌が付着しておりましてもそれが表面に出て来ない。輸送の途中におきまして、あるいは到着後におきまして、その菌が繁殖いたしまして黄変になる、こういうふうな実情でございますので、まず第一には黄変粒の混入につきまして、ビルマ政府におきまする規格には黄変粒の混入という問題は全然扱われてないわけでございます。そこで外務省を通じまして、この点について黄変粒の混入を規格上明確にしてもらいたいということを交渉いたしておるのでありますが、ビルマ政府としては、そういうことは現在自国においても、また他の国においてもそういうことをやつておらないから、これはできないということで交渉が行き悩みになつておるわけでございます。ビルマ米の取引といたしましては、わが国の場合におきましても同様でございますが、わが国の場合におきましては、取引の場合たとえば麦を朝鮮に出す場合を考えましても、国の国営検査の規格に遜つたものということで取引するのが常態でございまして、米の揚合におきましても、先方の規格に含格したるものということで取引がきまるわけでございまして、根本的には、この規格が黄変粒が入らないように規格を改正することを交渉するということが第一段かと思います。しかしこれは先ほども申し上げましたように、まだその点がビルマ政府の承認を得られないということでございますので、第二段といたしまして、今のお話のございますように調査員を派遣しまして、倉庫別に、どの倉庫のものは黄変粒が入りにくい、また入り方が少い、どの産地のものが倉庫状態に対しては入りにくいというふうな点を調査いたさせますし、同時に船積の場合におきまして、フアー・イースト・スーパー・インテンデンスとか、あるいはデルパンというような世界的な検査の機関があるわけでございまして、これは現実にはビルマ政府は認めておりませんけれども、こういう世界的な検定機関の協力を得まして、タイその他の諸外国におります方を、向うの方に一応駐在員の形で行つてもらいまして、そういう人とわれわれの検査員とが積出しの場合にできるだけ検査する、こういうことに自主的にやつておるわけでございますが、しかし最も根本的な考え方といたしましては、雨季を過ぎました米で水のかかつたものについて発生いたしますから、こういう雨季明け以後の米は買わないということが最も的確な方法であるわけでございます。現在はビルマにつきましては、今まで十万トン輸入をいたしておりまして、今後十万トンないし八万トンくらいビルマ政府としては割当をいたしたいという話でございますが、品質等の関係考えますと、五万トン程度がよかろうということで、現在考えておるわけでございます。  なお輸出価格の点を御質問ございましたが、御承知のようにビルマにおきましても、タイにおきましても、輸出は全部国家の統制という形になつておるのでございます。ビルマにつきましては、政府間の取引につきましては価格が決定されるわけであります。それからそのほかのものにつきましては、国際入札という形でフリー・クォータの分を国際入札によつて売却する、こういう形をとつておるのでございますが、タイにつきましても、一般的な政府の割当のものとフリーなドルによる割当のものと二通りあるわけでございますが、先ほど大臣からもお話がございましたように、フリー・クオータの分につきましても、あるいはまたGGベースのものにつきましても、財政上の問題で、GGベースのものにつきましては輸出価格を決定しておるわけでございます。それから民間の場合におきましても、昨年度もあつたわけでございますが、従来から財政上の収入をあげまするために、政府貿易の方が安いわけでございます。国際入札によりますフリー・クオータの方が高い。タイ国、ビルマともに従来からだんだん政府間の割当のものを少くいたしまして、そうして高い米を多くして、それにょつて外貨収入及び国内の財政収入を上げるということに努力いたしておる傾向が見られるわけであります。この価格も、政府が予定価格としてきめまして、それで落さないものは割当がもらえない。従つてほとんど一方的な価格の決定のような形になつておるわけです。ただ昨年度以来、全体の米の需給がだんだん緩和して参りまして、タイ、ビルマともに、フリー・クオーターの分の方につきまして、あまりに高い価格を要求するために、各国ともにだんだんそれを手控えて参るという傾向が現われて参りまして、タイ国、ビルマともに幾分過剰ぎみを来しておるという状態でございまして、現にこのフリー・クオーターの分をよけいに買わないということで、われわれの方にも文句が来ておる、こういうふうな実態になつておるわけでございます。
  65. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう少し詳しくお聞きしたいのですが、時間もないようですからやめまして、当面の問題だけひとつお聞きいたしたいと思う。御承知の通り内灘が非常に問題になつております。いろいろ政府の立場、またそれぞれの立場によつていろいろ問題になつておるが、あすこの権現森という部落に約十三町歩ばかりの民有地がある。現地の方では、つい最近来た話でも、政府がこれを強制接収をする、こういうお話でありますが、農林省としては、この私有地に対する強制接収をする腹かどうか、これをはつきりひとつお答えいただきだい。
  66. 平川守

    ○平川政府委員 農林省といたしましては、あの地区を試射場にするということについても、演習場あるいは試射場に農地を接収されるということは極力避けたいということが、当然農林省の態度であります。しかしながら政府全体といたしまして、最小限度の試射場、演習場等を提供せざるを得ないという大前提のもとにおきましては、農林省としては若干の農地を提供せざるを得ない。しかしその場合においては、その地の農民に対する補償なり、あるいはあとの生活の安定をはかるということに尽力いたしたい、かように考えておるわけであります。従つてただいまの内灘の問題に対しましても、これを試射場として提供する必要が、国全体の立場からぜひ必要であるという政府決定でありますならば、その線に沿つて、農林省としても最小限度の農地は提供せざるを得ないと考えております。しかし強制接収の方式をとるかどうかというととについては、農林省は直接にはタッチしないわけでありまして、これは特別調達庁なりの方で、いかなる形でこれを試射の使用に供するかということについては、決定をいたすわけであります。
  67. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のに関連して。しからば調達庁なり何なりから話のあつた場含には、農林省としてはどういう態度をとるか、強制接収をするのかどうなのか。
  68. 平川守

    ○平川政府委員 現在は極力話合いによつてそれの使用をいたしたいという調達庁の態度のようであります。しかし最後的にどうしても強制接収をせざるを得ないという調達庁の決定でありまするならば、農林省としてもそれはやむを得ない、かように考えます。
  69. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 内灘の問題はそのくらいにいたしまして、軍用地全般、軍事基地全般についての補償の問題ですが、御承知の通り、補償法が今や成立しようとしておるわけです。現にすでに法案が水産委員会をきようあたり通つたと思うのですが、近く出ると思う。しかしあの補償法自体は実にぼやつとしたもので、内容のほとんど大部分、具体的なものは政令に譲るということになつておるが、これらの補償について、農林省としては農業全体の立場から、調達庁もしくは大蔵省と、具体的にどういう項目について、どのような態度、方針で現に交渉を進めておられるか、この点をはつきり説明していただきたい.
  70. 平川守

    ○平川政府委員 接収せられました場合の補償として一番大きな問題は、その接収の地区内にある農地なり、あるいは放牧採草地なり林地なりというものが一番大きな問題でありますが、その問題はすでに一応片がついておるわけであります。つまり農地を接収したろ場合においては、一般の地価というもののほかに、四年ないし六年分の農業所得を作離料として出し、そのほか、いろいろな物件についての代価とか移転の経費でありますとか、いろいろなものが上つておるわけでありますが、これが補償の問題としては一番大きな問題でありますが、その問題は一応片がついておるのでありまして、今回提案いたしておりますのは、その地区内の問題で片のつかないもの、つまり地区内で演習をやつておるそのことが、他の地区内に影響を及ぼした場合のことであります。これについては、今まで農地関係では、芦屋の飛行場の使用のために防風林を切つたとか、そのために飛行場の地域外の農地が損害を受けた、こういう例が具体的にあがつて参りましたので、これをあの法律においても例としてあげてあるわけであります。そのほか地区外に対して不法な行為で損害を与えました場合も入つております。ただいま提案されておりますあの法律について、具体的に問題になっておりましたのは、防風林を切つたことによつて一つの影響がある、あるいはこれに類似の場合でありましたが、具体的の例が出て参りますれぱ、演習場の地区内で行われる演習のためにその地区外に影響がある、それによつて農業経営上損害をこうむつたということについては、すべて賠償しよう、こういう考え方で折衝しております。
  71. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これに関連した具体的な問題を伺いたい。
  72. 井出一太郎

    井出委員長 一問に限定します。
  73. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 一問に限定されましたので、具体的に問題を伺いたいと思います。  今の補償法でも実は非常に不合理な点が多いのであります。たとえば具体的に、私の方の東富士の例をとつて申し上げますと、山林の場合は立木に対して樹齢数によつての補償を受けたあとは、ざつくばらんに言うと坪当り月に七銭、一反歩年間二百五十二円であります。ところが三年なり五年なりの樹齢に応じて木を買つてもらつても、あと年間二百五十二円では農家の生活が立たないのであります。二百五十二円もらうだけで、植付をするなり何なりして利用すろこともできぬ、全部とられてしまうというケースが現実に出ている。もう一つは林地とか草地で借りられた場合、これもわずかに二百五十二円です。そうして被弾木等がたくさん出て非常に損害が多い。ところが被弾木等には中間賠償は多少やるが、結局は接収が解除になつた場合に被害を見るということになつておるようでありますから、それが何年先になるかわからぬ。そしてまた実際どれがそのときの被弾木か、どれだけの被害があつたかということは、現実にわからない。たまが入つてしまえぱ、実際には皮をかぶつてしまうから、どうにもならない。まだ普通の採草地についても、たとえば芝を刈るとか非常な収入があるにもかかわらず、それが全部二百五十二円でおつぱらわれておる。こういう事態では、ざつくばらんに言うと困る。そこで今の補償基準もつ実情に合つた、合理的なものにする必要があると思う。それに対して政府としては、今どういうふうに解決つけるべく準備をされておるかという点が一つ。  もう一つは、農地についても、例の補償基準が税務署の課税所得が標準になっておる。これは実際に食い違いが非常に多い。これの修正が非常に困難です。たとえば東冨士では、大体において七千円から八干円の所得査定しか受けていない。実際は一万五千円から二万円なければ農家は立つて行けない。そういう場合に、現在の規定にも多少あるにはあるが、あれでは実際は、調達庁の方としてはなかなか金をさいて出すということにはならないので、これもはつきり現地土地生産力というか、土地の収穫に応じた補償のできるように、もつと合理的にする必要があると思うが、これに対してはどのような用意でもつて進んでおられかということ。  もう一つは、これは全国的にあると思うが、国有地を小作しておつた場合、あるいは国有林を借りておつた場合には、作離れ料という形で一応の補償をもらう。それきりで何ももらえない。政府としてはそれによつて取上げたというお考えかと思うが、実際今の農地法の精神からいえば、そういうことはないと思います。そういう国有地ないしは公有地の離作に際して、今のような制度をそのまま押し通すつもりか。これは現在の私有地に対してやつておるところ、もしくは農地法の精神に基いて年々の補償が当然必要だと思うが、これに対するお考えはどうかという点。  もう一つは、国有地は問題はないのですが、民有地の場合、小作と地主とのあつた場合、これに対して補償金が出た場合において、そのわけ前をはつきりいたすことが必要だ。これもわけ前がはつきりしないためにいろいろ各地で紛争が起っておる。その場合には、多くは実際の耕作者が非常に不利な立場になることが多い。これに対して、これだけの点をはつきり考えて、なお全般を考えてみると、今の補償要領だけではいかぬので、これを根本的にある程度かえる必要があると思う。  以上の諸点について、具体的な点を含めてどのように今考えておるか、またどのように進めるつもりか、この点は農地局長のお考えと同時に、全般的な問題については大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  74. 平川守

    ○平川政府委員 現在の補償基準につきましても、一応は従来の程度から見ますと、かなり飛躍的に改善されておりますけれども、しかしこれで決して十分とは思つておりません。お話のように、山林の補償あるいは牧野その他に対する損害の補償の方法につきまして、実際上受けた損害を正しく補償するという――抽象的でありますけれども考え方といたしましては、そういう考え方で算出しますようにやつて行かなければならぬと思つております。ただそれをとられたために、あと長年にわたつて農家の経営が困る、あるいは山林の業務に従事しておつた者が経営に困る、職を失うような形になるという問題につきましては、これはどうしてもその場所において金額で年々永久的に補償して行くということは困難じやないか。但しこれは二通りありまして、その地域を一時使用という形で使う場合と、これを半永久的にすつかり買収してしまうという場合と二通りあると思います。すつかり買収してしまう場合におきましては、それ相当の、つまり数年分というようなものをすつかり補償いたしまして、そのほかにそこにおる人々に対しての生活安定の方法を、すみやかにあわせて考えなければならぬ。これはなかなかその場所場所によつてむずかしい問題になりますけれども、しかしたとえば他の開拓地に移転する必要のある者もありましようし、あるいは他の地帯において従来と同じような条件の所で山林業務に従事できるようなことを考えてやる、こういうことをあわせて考えなければならぬと思います。使用の場合においても、年々の所得に当るものの八掛ということにいたしておりますが、これを年々補償することにいたしております。  それから国有地の小作の場合でありますが、これについてはただいまわれわれわれとしては、民有地の場合と同様に扱つてもらいたい。従つてこれが使用であります場合には、年々所得の八掛なら八掛というものを補償してやる、それから収用であれば四年なり三年分の所得を補償する、こういう形で国有地といえども民有地を小作しておる場合と同様に扱つてもらいたいということを、調達庁の方へ申入れをいたしておりますので、そういうことに解決いたしたいと思います。  それから接収された場合の小作と地主とのわけ前の問題であります。これは先ほど申しましたように、補償の中で一番大きな部分を占めますものは、いわゆる地価ではないのでありまして、作離れ料が大きいわけであります。この作離れ料は当然小作者が受けるべきものであります。従つてわれわれといたしましては、調達庁に対しましても、地価は地主のものであるけれども、作離れ料は完全に小作に行くべきものである。従つてこれが実際問題としては、年所得の四年ないし六年分というものが行くわけになります。地価よりこれの方が大きい。それが小作者に行くように調達庁に申入れをいたしております。
  75. 保利茂

    保利国務大臣 日米安全保障条約のもとに、濱習場や基地を提供するという義務を持つておる。それで基地問題が非常にやかましくなつております。私の方としては、一面において食糧増産という目標のもとに莫大な財政投融資をいたしておる。片方でそういうことでつぶれて行くということは、もうできるだけこれは避けなければならぬ。でございますから、そういう場合といえども必要最小限度に提供するという建前をもつて、農林省としては強く推進をいたしております。その必要最小限度にいたしましても、耕作地から離れなければならぬというととは、これは個人としてはたいへんな犠牲でございますから、従つて耕作農家の方方の補償と生活の安定ということは、もしそういうことから両国間の感情と申しますか、摩擦を誘発することのないようにという考えを持つて、離作される耕作農家の方々に対しては、あとうだけの保護措置を講じて参らなければならぬ、こういうように考えておるのであります。
  76. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿君より関連発言を求められております。これを許します。
  77. 足鹿覺

    足鹿委員 農地局長に資料をいただきたいのですが、現在の日米合同委員会の運営上各分科会ができておるように聞いております。その分科会は何と何と何であるか、その分科会の構成メンバーはどういうメンバーであるか。特に農林、漁業、水産関係を分担しておる分科会の構成、過去において処理した案件、その結論を、詳細に明日の委員会までに御提示を願いたい。伝え聞くところによりますと、分科会で大体仕事をして、合同委員会は形式的だという話を聞いておる。従つて分科会というものの構成なり運用というものは、非常に重大な使命を持つており、今後もこういう事態がたくさん出て参りますと、非常に大事であろうと思いますので、でき得る限り詳細に明日資料を御提示を願いたい。
  78. 井出一太郎

    井出委員長 松岡俊三君。
  79. 松岡俊三

    ○松岡委員 私は東北の国有林についてお尋ねいたしたいと思います。  先年私が、どうしてこう東北が貧乏だか警視庁に行つて調べてみると、ほとんど今日ありませんけれども、吉原、洲崎の遊廓に来る者はほとんど東北の者である。また青森県に行つてみると、乳幼児の死亡率がすこぶる高くて、かつトラホームがほとんど全県に瀰漫しているというありさまであつたのであります。そういうところを私が痛感しまして調べた結果、かようなぐあいに東北が悲惨な目にあつておるのは、一つは雪というものを何ら考慮に置かない日本の画一政治である、第二番目には国有林の分布の状態がはなはだ当を得ておらない、この二つの問題が東北を窮乏に陥れたものであるという結論に到達したのであります。これによつて雪害問題を九年間かかつて、遂に日本の法律に初めて雪害の二字が入れられるようになつたのであります。往年この雪害問題が問題となつたときに、最も関係の深い農林省が一顧、半顧の値なしとしておつたのであります。言葉をかえて言いますれば、鼻にもひつかけなかつたのであります。それが二、三年前には積雪寒冷単作地帯として、官房長みずから陣頭に立つて大蔵省に交渉して、百億円をとらなければならぬというところまで来たのでございます。今月は単に東北六県ばかりじやない、新潟県ばかりじやない、呼べど叫べどちつとも来なかつたところの北陸三県及び鳥取島根方面などにまで積雪寒冷単作地帯の問題が遷延するようになつたのであります。こういうぐあいに日本の画一政治がいかに間違つてつたかということを、私は少しく数字によつて――自分の私見ではありません、すべてが農林省の示しておる統計によつて申し上げます。委員諸君にたいへん申訳ありませんけれども、証拠をあげるのですから御容赦を願いたい。  全国の国土の面積は三千七百万町歩あります。そのうち民有林が千四百九十万町歩あり、国有林が七百六十万町歩あります。この内訳を見ますると、青森県が九十七万町歩の面積で、そのうち国有林が四十二万一千町歩、民有林が十七万町歩しかありません。岩手県は百五十四万町歩のうち国有林が四十二万五千町歩で、民有林が五十八万一千町歩あります。宮城県は七十三万町歩のうち国有林が十三万二千町歩、民有林が二十五万一千町歩。秋田県は百十七万町歩で、そのうち国有林が三十九万五千町歩、民有林が三十万九千町歩。山形県は九十四万町歩のうち三十五万町歩が国有林で、二十六万町歩が民有林であります。福島県は百三十九万町歩、そのうち国有林が四十三万五千町歩、民有林が四十八万八千町歩。茨城県は六十一万町歩で国有林が五万一千町歩、民有林が十七万七千町歩。栃木県が六十五万町歩で民有林が二十三万七千町歩、国有林が十二万八千町歩。群馬県は六十四万町歩のうち民有林が二十万一千町歩、国有林が二十万町歩。埼玉県は三十八万町歩のうち民有林が十一万二千町歩、国有林が一万二千町歩。千葉県は五十一万町歩のうち民有林が十六万六千町歩、国有林がわずかに八千町歩東京は二十万町歩のうち七万六千町歩が民有林で、国有林が二千町歩。神奈川県は二十四万町歩のうち民有林が八万六千町歩、国有林が七千町歩。新潟県は百二十六万七千町歩で、そのうち民有林が五十万一千町歩、国有林が二十五万六千町歩。富山県は四十三万町歩のうち民有林が十七万三千町歩、国有林が七万八千町歩。石川県は四十二万町歩で、そのう二十五万七千町歩が民有林で、一万九千町歩が国有林。福井県は四十三万町歩のうち二十六万二千町歩が民有林、国有林はわずかに四千町歩。山梨県は四十五万町歩のうち三十二万五千町歩が民有林で、国有林がわずか三千町歩。長野県は百三十七万町歩のうち六十一万九千町歩が民有林で、三十五万七千町歩が国有林。岐阜県は百六万町歩で、そのうち民有林が六十二万四千町歩、国有林が十五万八千町歩。静岡県は七十八万町歩で四十万一千町歩が民有林、八万六千町歩が国有林。愛知県は五十一万町歩で二十一万二千町歩が民有林、国有林が一万三千町歩。三重県は五十八万町歩で三十一万五千町歩が民有林、国有林が一万四千町歩。滋賀県が四十一万町歩で民有林が十九万九千町歩、国有林が六千五百町歩京都が四十七万町歩で三十二万一千町歩が民有林、国有林がわずかに三千町歩。大阪が十八万町歩つて、そのうち六万一千町歩が民有林、八百町歩が国有林。兵庫県が八十四万町歩で四十九万八千町歩が民有林、二万三千町歩が国有林。奈良県は三十七万町歩で二十七万町歩が民有林、二千五百町歩が国有林。和歌山県は四十八万町歩で三十三万四千町歩が民有林、一万町歩が国有林。鳥取県は三十五万町歩で、十八万一千町歩が民有林、二万五千町歩が国有林。島根県は六十七万町歩で四十四万九千町歩が民有林、一万六千町歩が国有林。岡山県は七十一万町歩で、二十七万町歩が民有林、国有林が二万五千町歩広島県が八十五万町歩で、五十五万五千町歩が民有林、三万六千町歩が国有林。山口県が六十一万町歩で、三十三万六千町歩が民有林、四千五百町歩が国有林。四国全土は百ハ十九万町歩ありまして、民有林が百十一万町歩、国有林が十七万五千町歩あります。福岡県は四十九万町歩で、十六万七千町歩が民有林、二万五千町歩が国有林。佐賀県が二十四万町歩で、八万七千町歩が民有林、一万七千町歩が国有林。長崎県が四十一万町歩で、二十一万三千町歩が民有林、二万四千町歩が国有林。熊本県が七十四万町歩で、三十万六千町歩が民有林、六万二千町歩が国有林。大分県が六十四万町歩で、三十万八千町歩が民有林、四万二千町歩が国有林。宮崎県が七十八町歩で三十三万三千町歩が民有林、十七万町歩が国有林。鹿児島県が七十九万町歩で、二十五万七千町歩が民有林、十五万六千町歩が国有林であります。  このようなぐあいに表をあげますと、いかに東北が国有林が多くて民有林が少いかということがわかります。私は農林大臣にお尋ねしたいのは、このようなぐあいに国有林が東北にのみ偏在しておる。これです。そうして営林署がどのくらいあるかと申しますと、北海道が六十八、東北には百十八、そうして全国には三百二十六の営林署があります。こういうようなぐあいに、林野庁というものはほんとうにどこのための林野庁だかわからない。ほとんど東北のための林野庁であるかのごとき数字になつております。北海道を除いて全国の数字をあげますと、全国の四割九分六厘を東北六県で占めておる。どうしてそういうぐあいになつたかということを申し上げますと、農林大臣はかつて新聞記者をやつていらつしやつてよくおわかりだと思うが、私はたまたま伊藤博文の建白書なるものを、徳富蘇峰先生の著わした本で見ました。その第一ページに何と書いてあるかと申しますと、当時東北の賊軍を征伐し、まさに凱旋せんとする官軍の将兵は云々と書いております。内において治安を治め、そうして地方の動乱を未然に防ぐところの一挙三得のために近衛師団をつくるようになったことは、伊藤博文公の右の建白書の冒頭にあります。かようなわけで、どのようなぐあいで国有林ができたかと申しますと、その後において九州の宮崎県には林野局の訓令一つでもつて三千町歩のうち九百町歩が返つております。また鹿児島県にも訓令一つで四百町歩ばかりのものが返つております。なぜこのようなぐあいになつたかというと、明治御一新後にいろいろ地租関係その他を調べたところが、どうしても宮崎県、鹿児島県においては調べることができない。暴動が起つて反抗されて調査ができなかつた。維新当時暴動のために調査することができなくて中止して、ごたごたしていた宮崎県と鹿児島県の大部分のものは、明治三十三年と明治四十二年に、法律ではなく、訓令一つでできた。いかにその当時の政治を権力者が左右したかということをわれわれは思うのである。これに反して東北は、ただいま申し上げたようなぐあいに、維新早々の際に、伊藤博文が建白書に言うているようなぐあいになつたのであります。文句一つ言うことはできない。ついこの間アメリカに占領されておつた当時、何をされても文句を言うことができなかつたと同じような種類であります。その証拠にはこういうことを書いてある。これは農林省で出しているのですから、よくわかるわけです。かように林野の官民有区分の仕事は本来困難な仕事であつた上に、その衝に当つたものの考え方の違いや、村の証拠をあげる方法の巧拙などで不公平の処置があつたことは想像されるところである。これがため不当に民有地と定められたところは不問に付され、不当に官林に編入されたところについては処分の是正方を政府に迫るものが続出し、年月の経過とともにその申請はますます輻湊した云々、こう書いてあります。明治維新当時の歴史がこのように間違つていたということは、東北の国有林の、前申し上げた数字が物語つておる。農林省が昭和二十六年に国有林野整備法を出したときにどうしてこれが問題にならなかつたかと私は思うのである。雪害運動をやつた私がいなかつたからだとは申しませんけれども、こんな間違つたことをやつた。幸い整備法は明年で期限が来るのです。この期限が来るときに東北の国有林の不公平な間違いをどのようになさるお考えかということを、私はお聞きしたいのであります。私のこの発言は、東北民衆が自覚しまして、どんなことをしてでも明治維新当時の誤つた政治――日本の法律に今までなかつた雪害が入つたごとく、国有林の問題も、何としてでも東北の手に返さなければならないと言つて、東北民衆こぞつてつて、松岡のうしろについている次第でありまして、期成同盟会ができている次第でございます。私は二十数年間議会に席を置いていますけれども、自分が発言して真剣になつたのは、雪害問題ととの問題と二つだけでございます。この問題がほんとうに解決されなければ、日本の政治は正しいとは言えない。私はここに林野庁が必要であるとか必要でないとかいう問題ではありません。林野庁が治めれば、日本の国有林がりつぱに治められる。だから明治御一新以来、八十年東北を守つて来てくれて、このようにりつばになつたのだというようにお考えになつていらつしやるかもしれない。川俣君も秋田県ですから、私と同感だろうと思う。お前らもばか者だろうが、しかたがなかつた。しかし賊軍という名前のために、政府が領有して守つてくれたから、今日のような美林がある、こう言うかもしれぬけれども、一二つの赤子も年がたつとりつぱになります。もはや今日、明治以来八十年たつておる。東北の人間も少しわかつて来た。だから雪害問題も出た。その雪害問題もようやくほんものになろうとすると、鳥取島根に及んで、日本海のかなたの沿岸にまで延長されるようなことになつております。私は廣川君が来たとき、君は福島県の出身だ、あの福島県の国有林をどうした、これを君やらなければ大臣なつた資格ないぞと言つたら、必ず松岡さんやる、先輩の松岡さんの言うことだから、必ずやると言う。やるのかしらんと思つてつたら、何ぞはからん、国有林野整備臨時措置法をやつて、実力のない東北人に売つて、どうして金がとれますか。ひとつ大臣お調べになるといい。あまり言いませんけれども、東北の者は、せつかくつてくれたところで、買えないじやありませんか。買つたのはほんど関東以西の人々です。みんな金を出して国有林をこの整備臨時措置法ですつかり買つておる。川俣君、よく調べてみればよくわかろ。東北は買えないです。そうでしよう。その前に帝室林野が開放されるときに、東北の方に何とかやろうと思つたととろが、東北でもつてこれを買うととができないものですから――ちやんとこれに書いてある。明治二十三年御料地に編入した策北地方所在御料地については、その縁故者資力乏しくして払下げ処分不可能なるものがあつたから、昭和四年特別処理案を定めて一部を直営地に回収し、一部一万二百三十町歩を民間に無償払い下げた。ただでくれた、こう書いてある。いかに東北が貧弱であるかということがわかる。これは農林省が出しておる本で、松岡の私見じやありません。林野庁で出しておる本です。この林野庁の本を初めから見たならば、私は農林省のほんとうの役人であつたならば、涙なくしてこれを見るととはできなかつたと思う。こんな間違つた政治をどうして捨ておけるか。廣川農林大臣は何をしていたかと思う。三年間で売つてたいへん回収したかというと、回収はほとんどされない。延納の処分もあつて、日歩十銭、それを町村だというと六分五厘、その他のものだというと八分に延納されるようなぐあいになつておりますけれども、町村に売つてどうなる。これすなわち河合彌八君や農林省の林業についての大先輩である村上龍太郎君から、ちやんとわれわれに要請して来ておる。とういうような臨時措置法をやつたということは東北人にけんかさせようという気持じやないかと臆測せざるを得ない。縁故のあるところの村に、みんな払い下げる。ない方にはどうするか。国有林のないところは、みなそつぽ向いています。こういうようなぐあいに、ただ明治維新当時の歴史にさかのぼつて処分しようとしても、縁故者はわからない。町村にあるからして町村に払下げをするという臨時措置法でありますけれども、この町村が払えない。金がない。貧乏である。そればかりでなく、さらに国有林のないものがこれをうらやんで、ばからしい、こんなもの聞くもんかというぐあいに、反間苦肉の策が農林省にあつたであろうかとさえも私は臆測せざるを得ない。ここのところはちよつとわからないかもしれません。けれども国有林の所在地の村にこれをやれば、そこは喜ぶですよ。ところがその国有林のまつたくないところのものは、一向平気です。けれどもどうしてこんなふうに東北に国有林があつたかというと明治維新当時の賊軍であるがゆえに、一言半句文句が言えなくて来たために残つておる。これに反して、政治力の強いところの九州の方では――大臣はやはり九州ですけれども九州の場合には、たつた訓令一つで三千町歩のうち九百町歩が帰つてつておる。宮崎県及び鹿児島県もそうである。こういうぐあいに、力のあるととろのものは、文句が言える。ちようど内灘のように何とか文句がつけられる。けれども占領された当時に賊軍とせられたるがために、一言半句も言うことができず、唯々諾々として来たところの東北の国有林というものは、だれがこれを解決してくれるか。どんなごとしても、こんな間違いは許されない。雪害問題もそれである。しかしながら、幸いにも雪害は十年かかつて法律にこれが入つたからして、今日いろいろな問題が解決されておる。これと同じです。この国有林こそはほんとうに考えなければならない。いわんや特別会計になつてからの、ずつと予算の状態を調べてみますというと、二十五年から急増して行つております。初めにはわずか五、六十億のものが、今日三百億にもなつておる。とういうぐあいに上つておる。そうしてその国有林の中には、むろん一般会計から若干の金は来てるにせよ、全国で三百二十六の営林局と営林署の中に、どこからこの金が行つてるかといえば、大部分は東北の国有林から上つたところの収入でやつておる。昭和二十六年の決算を見るというと、東北地方の収支、いわゆる総ての経費を払つて十九億だけは、ほかの方にお手伝いしてる。貧弱なる東北の国有林の中から、昭和二十六年は十九億だけそれが行つておる。これは事実です。特別会計の上にちやんと現われておる。一般会計から若干は来てるけれども。そうすると、結局、林野庁によるところの国有林特別会計というものは、ほとんど東北の大部分の森林からあがるところの収入でまかなつて、その前にはどうしたこうしたはありましょうけれども、二十六年の決算を見るというと、十九億だけはちやんとほかの方にお手伝いしてる……。
  80. 井出一太郎

    井出委員長 御意見は委員一同敬聴しておりますから、どうぞ質問にお入りを願います。
  81. 松岡俊三

    ○松岡委員 しかし根拠がなければだめな質問ですから。私のは事実に基くんです。こういうぐあいにして、どうして国有林の林政が正しく行つてると思いますか。なぜ東北にこれをおまかせすることができないのか。全国の国有林並に東北も、ある程度ちゃんと東北の各県にこれを、明治維新当時にさかのぼつて、民有林になつても不問に付された。文句言うことができなかつたところの東北――ちやんとこの本に出てるんです。林野庁から出した本に出てるんです、こういう不問に付されたやつが東北の国有林の大部分です。これを県有財産として返してもらいたい。その国有林のある村などに有償で払い下げようとしたところで、金がなくて買えないのですから、東北の国有林は、明治維新当時のごたごたの歴史にかんがみて、東北六県に県有財産として返してくださるところの御意思があるやいなや。明年は国有林の臨時措置法の更正のときですから、この際に農林大臣はいかようにこの間違つたでこぼこを、正しい軌道に乗せる御意思があるかどうか。これが私の質問の第一であります。  それから、今の林野庁の行政整理だなどといつて、往年問題を起したのですけれども、こういうような実績を見て、これをどうしたらよろしいか。国有林のないところに営林署がたくさんある。これは民有林もあり、あるいは保安林もあるでしようけれども、ほとんど国有林のないところに営林局があり、営林署があるというようなことは、私は不自然ではないかと思う。農林大臣はかつて官房長官もやられたのですから、政治の機微についてはよくおわかりの方でありますから、こういう点についてどうお考えになるか。これが第二の質問でございます。  実は私は雪害の問題以来この問題に命をかけて、この問題だけで国会に出て来たのです。この問題を提唱する前には、東北一番の十メートルの雪の中にまる五年、自分でご飯をたき、自分で便所の掃除もした。そうして一人で五十家族を引連れて、松岡は開拓団を組織して、東北一番の雪の中で百姓をした。かつて加藤完治君がやるといつてついにできなかつたあの七百五十町歩をりつぱに開墾して、天下に、これほどのたくさんの雪の中でも、定着営農の可能なることを私は立証した。それで国有林を明治維新当時にさかのぼつて東北の者によこしてくれても、東北人は、林野庁の役人方がやると同様な成績を収めるだけの人間に、八十年後の今日すでになつたから、あまり東北をなめてくれるなということを立証せんがために、私はみずから百姓をやつて来た。ほんとうに六百メートルの山の中で私は雪の中にみずからやつて来た。政治家としてこんなばかなことをした者はないかもしれませんけれども、私は自分が主張するには、一々根底をすつかり踏んで来ておるのであります。こういう見地に立つて申し上げるのでありますから、農林大臣としては、私は二十数年間、かつて議会において発言したのば雪害の問題とこの問題の二つです。あとは黙して語らず。たまに問題があるときにはしやべりますけれども、ほとんど言わないで、何事も犠牲にして来た一種かわつた政治家であります。これを提唱するにはさような根拠を持つておるからです。また東北の民衆は、往年雪害問題によつて松岡にみんな共鳴して立つたと同様に、今日もまた立つておるのでございます。かるがゆえに、この質問に対する御答弁はそのお含みで――私の立論は、これを申し上げると長くなつて委員長から小言を言われろといけませんから申し上げませんけれども、すべての調査は私は根拠を持つております。東北の国有林の問題に関する限りは、往年の雪害問題と同じで、天下に決して負けないつもりの根拠を持つております。この上に立つての問題でありますから、どうか農林大臣におかれ蚕しては、こういうでこぼこの政治がはたして今日の世に許されるかどうかということについて、とくと御親切な、政治のあり方について御勘考いただいて、御援助賜わるよう切望する次第であります。
  82. 保利茂

    保利国務大臣 松岡委員が長い間東北の雪害、積雪地帯の振興のため率先提唱されて、それがかつて積雪調査所を生み、今日の農林工業指導所、農業総合研究所の設置運営となつて、東北地帯の農村経済の上に非常に大きな役割を果して来ておることは、私も承知をいたして来ておるところでございます。爾来東北地帯の経済の開発は着々効果をあげておると存じますが、終戦後の特に国情のしからしむるところもございまして、東北の開発、また雪害対策ということは、国としても重要な意義を持つて参りました。従いまして積雪地帯の農村振興につきまして、あるいは土地改良等におきましても、今日国力を差向けておる面は非常に大きい点も御理解をいただき、かつまたそれはかつての松岡委員の御活動の成果の一端の現われでもあると、私は存ずるのであります。それで現在の国有林の配備の状況が東北とその他の地方ときわめて平均のとれないアンバランスの状態になつておることは、確かにその通りでございます。それのよつて来たる沿革等は私どもつまびらかにいたしませんが、ただいま沿革等につきましてるるお話をいただきましたが、そういう点もあろうかと存じます。承知いたしておりますところでは、明治四年の地租改正によつてこの区分が行われ、それが著しく不当な面につきましては、明治三十こ年に官民区分の是正のため、国有土地森林原野下戻法で処理せられ、それでもなおかつ今日のアンバランスを呈しておる。これはまさに御指摘の通りでございますが、翻つてこの問題を考えてみまするに、私は今後の日本国を立てて参りまする大きな国土計画と申しますか、今日でも年年相当災害をかもし出しておりますととろにも着眼しなければならないと存じますが、一体日本の国土に占めるべき山林の計画はどのくらいあればよろしいか。放牧採草地としての地帯はどれくらいあればいいか、耕地としてどのくらいを活用して行くかという総合的な国土計画が打立てられなければならない。御承知のように、先ほど来お話のように、今日国有林の整備臨時措置によりまして、そういう意味も盛り込んで整備を行つて参っておりますけれども、これは松岡委員の御指摘になりました根本的の解決にはほど遠いのでございます。決してこれで終るものではない。私はやはり国土の総合計画の上に立つて、そして山林面積をどうし、その山林面積の上に国有林として運営すべき面をどうして行くかという、この山林再配備の問題を、御指摘の沿革の問題と離れて、当面した問題として、根本的に考え直して行かなければならぬ段階にある、こういうふうに考えておるわけでございます。むろん沿革はもとより尊童しなければならないのでございますが、そういう意味におきまして、中央森林審議会でもそういう点から御審議を願つており、同時に林野庁におきましても、そういう見地から検討をいたしておる次第でございますが、事きわめて重大でございますから、同時にこれは慎重に研究をいたして、国の百年の計を誤らざるようにいたさなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  83. 松岡俊三

    ○松岡委員 沿革のことは別個の問題としてという点は、私は承服できない。何がゆえに東北に対してこんなへんぱなことが八十年間やられ来たか。これは政府の怠慢です。私は一面からいえばそう言いたいのですけれども、東北人の自覚がなかつた結果でもあろから、私はわれわれ自身が大いに反省すべきだと思います。これがもし関西であつたら問題ない。その一例として、すなわち三十年と四十年に、たつた一個の訓令で、宮崎県の三千町歩の国有林野のうち九百町歩も下げもどしている。そのままやつてしまつた。また鹿児島県では三百五十町歩がやは訓令一つでやつておる。文句を言う者、また文旬を言うて力のある者、藩閥政府時代かどうかわかりませんけれども、こういうように力のある者が主張すると、法律にも何にもよらないで、訓令一つでもつてつておるのです。ついこの間までアメリカさんに占領されていた時代に文句が言えなかつたのと同様に――伊藤博文の近衛師団建設の必要を論じた建白書の冒頭に、「東北の賊軍を征伐し、まさに凱旋せんとする官軍の将兵は」云々と書いてあるのを見ますると、東北人が交句を言えないのはあたりまえです。こういうことで別個の問題として考えられてはたまつたものじやないと私は思うのです。また同時に、何がゆえに林野庁がこれを管理すればりつぱなものになる、これをやるとみんな山を坊主にする。東北人は不明だ、ばかものだと言われても、今まではやらなかつたかもしらぬけれども、自覚したる今日の東北人に向つては、この臨時措置法で渡したところを見るとわかるのです。長い間そのまま温存しておいて、政府の国有林とし、臨時措置法によつて、力のないところに払下げをする。これを受取る資格のないところにやつたというのはどういうわけなんです。何のためにこれをやつたのであるか。東北人にこれを売つたならばまる坊主にするということを承知して払い下げたとすれば、不親切きわまるものであろ。経営する能力あるものとして渡したというのならば、これに右へならえして、東北の国有林を全国の国有林並なくらいの民有林となさしめるようなぐあいにする。しかし私は民有林にしようというのじやない。県有財産として営林署、農林省が経営しているものを、各県がこれを経営しようというのですから、移管です。移管させるだけの力がないから、私はここでこういうことを質問せんきやならぬ。どういうぐあいで、ついこの間、臨時推置法であれだけの尨大な面積を実力のない者に払い下げたのか。これを坊主にする、だめなものだといつて払い下げたとしたら不親切です。この点明らかにお尋ねせんきやならぬです。すなわち二つです。大臣がおつしやつた、来歴の問題は別個としてということは、これはどうしても許さない。私は全国の国有林の問題を論議しているのじやない。東北の国有林の問題は一個独得な性質のもとにできたのだから、この問題を考えてもらいたいというのでありますから、この来歴を別個にしては東北の国有林を論ずる資格がないと私は思う。さらに大臣の御一考を願いたいと思うのです。  第二番目は、どうして臨時措置法で東北に払い下げたか、その払い下げた意図をお尋ねしたい。
  84. 保利茂

    保利国務大臣 あるいは申し方が悪かつたかと存じますが、山林再配備を行う場合には、もとよりこの沿革を尊重しつつ検討を加えなければならぬ、そう申し上げたつもりだつたのですけれども、あるいは誤解があつたかもしれません。なお臨時措置の処分の方途につきましては、私よりも林野庁長官から申し上げた方が適切かと思います。
  85. 柴田栄

    柴田政府委員 しからばなぜ東北に払い下げたかというお話でございますがう私どもば現状において必ずしも力がないとは考えておりませんし、根本問題はただいま大臣のお答えになりましたような方向で、私ども考えております。しかし国有林野整備臨時措置におきましては、基準が示されておりますが、とうていこれをもつては解決できないと存じておりまするので、一応でもその方向に近づけたいということで努力をいたしておる次第でございます。従つてそれぼど東北においても現在においては差別的にはなつておりません。整備につきましても、払下げ代金の納付等に関しまして非常に困難を生ずることも考えまして、延納十箇年の措置が認められておりまするが、実情を申し上げますと、東北地方で現在も相当進行いたしておりまするが、延納制度を利用せられる前に、現金即納が予想以上に多いというのが現状で、かえつて力のあるのに私どもは驚いておるような状況にございます。
  86. 松岡俊三

    ○松岡委員 どうも林野庁長官は少し事実を歪曲しているように思う。私の調査書類によりますると、東北は意外な力があるなんというのはとんでもないことだ。意外な力ではない。これは証拠がある。あなたのお出しになつている二十六年の決算書にちやんと出ておる。二十七年にも出ておる。関東以外の方には払下げ代金を払う資格はあるけれども、東北の方はきわめて少い。どうもその点はもう少しお調べを願いたいと思うのであります。委員長、私は大臣の御説明も承りました。林野庁長官答弁も承りましたが、これは明年臨時措置法が廃案になる。つまり更正期である。かるがゆえに委員長において、東北の国有林問題をいかにすべきかということについて、林業小委員会においてお取上げをいただくことをお願いいたしたいと思います。これ以上お尋ねしても、この問題についてはただちに政府においても御答弁がむずかしかろうと思いますので、私はこれでもつて質問を終ります。
  87. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの松岡委員の委員長に対すろ御要望に対しましては、林業小委員会におきまして、川俣小委員長とも十分討議の上善処いたします。  残余の質問は明日午前中に大臣の御出席を得まして継続することにいたします。    ――――――――――
  88. 井出一太郎

    井出委員長 次に、農林特産物の関税改正の問題について金子君より発言を求められております。これを許します。
  89. 金子與重郎

    ○金子委員 時間が大分たつているようでありますので、五分間くらいで、長い御説明は省略させていただきますが、農林特産物としてのこんにやくいもの問題であります。これは年々こんにやくの輸入をめぐつて、一部輸入業者と一部生産業者との間では、年中行事のように対立しておりますが、今度この解決の一助として、大蔵委員会にこんにやくの輸入関税の引上げの法案が出ておるのでありますが、しかし、大蔵委員会の事情を仄聞いたしますと、この原案をもつと低くするという意見もあるやに聞かれますので、この際皆さんの御同意を得まして、原案を支持していただくように、大蔵委員長申入れをしたい。こういうととを動議として申し上げたいのであります。その案文を読みますと、     こんにゃく芋の関税改正に関する件    昭和二十八年七月十六日      農林委員長 井出一太郎   大蔵委員長 千葉 三郎殿   こんにやく芋は、山間傾斜地等他作物の栽培困難な地帯にその栽培が多く、かかる地帯の農家経済と不可分の関係にある重要農産物である。而してその生産は逐年増加し、昭和二十七年には、生産農家十六万戸、生産額四十億円以上に達するが、最近安価にして粗悪な外国産こんにやく芋が相当大量に輸入される情勢にあり、これがため国内産価格の暴落を見るときは、生産地農家の経済に重大な影響を与えることとなる。よつて外国産こんにゃく芋の輸入については関税を引上げ、山村農家経済の保護安定をはかる必要があり、今回内閣提出「関税定率法等の一部を改正する法律案」中において、その税率を一五%より四五%に引上げようとする改正案は最低限度のものと認められるから、貴委員会において右原案の如く改正せられるよう申入れる。 以上であります。どうぞ以上の趣旨を御了解願いまして、本委員会から全会一致で委員長の名において、大蔵委員長申入れをしていただけるよう御賛成願いたいと思います。
  90. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの金子君の提案に対して御意見があれば発言を許します。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体今の御提案の趣旨は了承しましたけれども、一、二点お伺いしたいと思います。この問題について、昨日か一昨日の新聞の経済欄に、こんにやくの密輸入を政府が発見をして押えたということが因をなして、国内におけるこんにやく粉の価格が日に日に急騰しておるということが報じられております。国内で生産されたこんにやくの価格に不安を与えることを防止するため、関税を引上げようというわけでありますが、そういう措置をとることによつて、一層合法的でない密輸入が行われるような懸念も一方においては感ぜられるのでありますが、関税を引上げるだけで今のような不安が完全に一掃されて、国内におけるこんにやくの生産と価格の安定が、はたしてほんとうに期待することができるかどうか、ひとつ根拠のある御説明を願いたいと思うのであります。
  92. 金子與重郎

    ○金子委員 今の芳賀君の御質問の第一点、最近こんにやくの価格が暴騰しておるじやないかということですが、これにはこういう原因があるのであります。と申しますのは、こんにやくの端境期は五、六、七月でありますが、との七月分として百六十六トンのこんにやくを輸入する計画になつでおったのであります。ところがこの計画実施前において、密輸入といいますか、名義詐称によつて輸入して、分散したものが百数十トン、それから押えてあるものが約百トンあるわけであります。そこで私はとの農林委員会で、農林省と通産省とに申したのでありますが、その押えであるこんにやくを政府は早く処分しなさい、その方法はどういう方法でもいい、ぼくらはそれに対して干渉しないから、国内に放出すればいいじやないか、そういう処理をしないと、百六十六トンの七月分の輸入をしなければならない、処理をすれば百六十六トンの輸入をしなくても間に合うじやないか、と申したのであります。今値段が上つてつておるのは、政府自体がそういう処理をしないためであるのですから、このこんにやくが今上つたということと関税の問題とは、別個の問題としてお考え願いたいのであります。  それならば将来四五%程度に上げることによつて、はたして密輸入あるいは名義詐称等が防げるかという問題でありますが、この名義詐称で輸入するということに対しては、これはもちろん不正問題でありますから、この不正を防ぐということに対して、この法律がどこまで効果があるかということは別問題といたしまして、こんにやくは将来とも一面には生産者を保護し、一面には消費大衆の立場を考えて、端境期における若干の輸入は当分する計画になつております。そのとき内地へ向うの野生のこんにやくの乾燥したのを持つて来ると非常にもうかるから、どうしても輸入業者は非常におどつておるのであります。従つてこれに対してあす程度の保護関税をかけることによつてある程度の制約を加えることができる。もちろん四五%くらいで無制限輸入すれば、内地の生産はめちやくちやにたたかれるととはわかつておる。従つてこれによつて完全に防げることは申しませんけれども、少くとも今までの輸入業者と生産者との軋轢が若干緩和できるということは考えられるわけであります。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もちろん国内における農産物の生産価格の安定のために、不当なる輸入品に対する調節の手段というものは、たとえば関税障壁というような形で行われるべきであろと思うのであります。なおこれに関連して、農林大臣にお尋ねいたしますが、この問題は非常に小さな問題でありますが、これを拡大して類似した問題があるわけであります。たとえば現在国内における澱粉の生産が非常に高まつて、そうしてこの価格維持をするためには、今国会においては、おそらく価格安定法案が提案される運びになると考えられるわけであります。この国内の澱粉の消費、それから価格の低廉に対する一番大きな脅威となっているのは、外国からの砂糖の無計画の輸入であります。あるいは砂糖の形において、あるいは糖密の形においてどんく輸入が行われておる、こういうものが原因となつて澱粉の価格あるいは正常なるものに対して非常なる脅威を与えておるということは、すでに御承知と考えるのであります。こんにやくいものごときもこのような保護政策にょつて守るということが当然であるとするならば、今後における澱粉の価格の維持あるいはこれらに類似するような農産物の価格維持に対しては、これ以上重大なる判断の上に立つて、このような措置を講ぜられるお考えを当然持つておられると思いますが、この機会に所信を承つておきたいのであります。
  94. 保利茂

    保利国務大臣 砂糖の問題につきましては、一面から今芳賀委員のお話のような御意見も出ます。また一面から、どの委員会ですか、昨日は大分おしかりを受けまして、なぜ砂糖の輸入を抑制するかというおしかりも受けておるわけであります。いずれにいたしましても、この砂糖も国民食糧の重要な部分でございますから、これの価格が安定をし、かつ需給が安定をして参りまする見地からと、そして今日は何と申しましても、輸入いたしますにしても外貨の割当がいりますから、外貨割当の面から、むろん国内農産物との関係も勘案して、それらをあんばいして需給価格の安定をはかつて行くようにいたして参りたい、こういうふうに考えております。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣にお尋ねいたしますが、今よその所管の省から、どうして砂糖の輸入を抑圧するかという問が出たということを言われましたが、農林大臣の場合は、どのような立場に立ってものを考えるかということを確認しておきたいのであります。あなたの場合は、農林大臣という場合においては、日本の農業者の立場を守り、これが安定した生活を確保し、生産が高まることによつて国民大衆の生活もまた安定度を増すというような、そういう大きな責任と立場の上におるということを自覚された場合においては、そういう反対論が出た場合においても、明快なる回答を与える用意が常にあるべきだと私は考えております。この問題はこんにやくから発展したのでありますけれども、非常に大きな問題であります。何のために国が安定法を設けて、そうして乏しい国家財政の中から価格維持をしなければならぬかという問題にも到達するのであつて、もう一つ砂糖に関連して申し上げますと、前国会においていわゆる国内におけるてん菜糖の生産を高めるためにビート生産に関する措置法を各党一致で通過さしておるわけであります。これらのことも、国内における糖業を振興させなければならぬ――もちろん外国から砂糖を輸入した場合には、国内で生産された砂糖よりも低廉な価格で供給することができるけれども、しかしながら日本の農業の持つ脆弱性というものを、やはりまず守らなければならぬという社会的な立場から判断した場合においては、こういうような法律的な処置も必要になつて来るのであります。もちろんこの問題は、この価格安定法等が上程された場合においては論議の中心になると思うので、本日ここで掘り下げた質問をしようとは思いませんけれども、国内における農産物価格が輸入農産物によつて影響を受ける場合においては、どういうようにして国内の農産物価格を守る立場に立つかという責任だけを、お伺いしたいのであります。
  96. 保利茂

    保利国務大臣 なるほど農林省でございますから、農村の経済を主として考えて行かねばならぬことは申すまでもございませんけれども、同時に農村だけよければあとはどうでもよいというわけには参りません。従つて全体のやはり消費大衆の安定ということを、食糧の面からも考えて行かなければなりません。砂糖の問題はそういうふうな考えでやつて行きますということを他の委員会でも申し上げたのであります。  それから国内農産物の保護の問題につきましては、これはもう申し上げるまでもなく、やはり日本の農村を守つて行くという考え方の上に立つて行かなければなりません、これはそういうふうに考えております。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 基本的な考え方の食い違いがあると思いますが、この点はあすの質問に保留します。ただ問題は、農民だけが仕合せになればいいんだというような思想の背景を私は全然持っておりません。過去何百年の間、はたして農民だけが仕合せであるということが、日本の国内において、そういう社会が現出されたことが一時間でもあつたかということを考えれば、これはわかるのであります。むしろ現在の政府が行つている農業政策というものは、ただ農民を農産物を生産する機械であるというような定義のもとに、ことごとく進められているということは、否定することのできない事実であるということだけを指摘して、残余の質問は明日に譲りたいと思います。
  98. 川俣清音

    ○川俣委員 ちょつと関連して当局の意見を聞いておきたいのですが、とういう特産物は何らかの保護を加えなければならないということは、金子委員の指摘した通りであります。必ずしもこれは重要農産物かどうかという議論はありますが、こういう日本の特産物については何らかの保護を加えて行かなければならぬと思うめですが、その保護の加え方について、関税保護がいいのか、その他の保護がいいのかという点について、政府はどういう方針を将来とるつもりであるか。この点を聞いてこの案についての私どもの態度をきめたいと思うのです。
  99. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 物と所によつていろいろわかつて来ますが、一番簡明直截な方法は関税であります。しかし関税だけでそういうことができないのは当然でありますから、関税ででき得ない場合は輸入の割当とかいうところまで行かなければならぬと思いますが、現在はともかく外貨割当でやつておりますから、一種の輸入統制をやつていることになつております。
  100. 川俣清音

    ○川俣委員 私の質問をちよつと取違えている。関税保護主義をとるのか、そうでない方法をとつてやろのかということを聞きたい。あなたの答弁によつても関税保護を第一にして、それの不足を補うという考え方のようですが、私はそうではないようにも聞いているのでお尋ねするのです。第一に関税保護政策をとつて足りないところを補うのか、それとも関税保護政策を第二義的に考えておるのかどうか、こういうことです。
  101. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 一番原則的に言えば、簡単で手取り早くやれるのは、関税による保護策であります。これはどこの国でも同じであります。それで輸入制限の実があがらぬ場合に次の手段をとる、こういうのでありまして、わが国でも大体そういうふうになつておるのではないかと思います。
  102. 井出一太郎

    井出委員長 他に御発言もなければ採決いたします。金子君の提案の通り大蔵委員会申入れるととに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めさよう決しました。    ――――――――――
  104. 井出一太郎

    井出委員長 なおこの際お諮りいたします。目下本委員会に付託になつております農林漁業組合連合会整備促進法案に対しまして、先ほど水産委員会より連合審査の申出がありました。つきましては、この連合審査会を開くに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めさよう決しました。なお先ほど来関係委員長と協議の結果、通産委員会との連合審査会は明日午後一時より、また水産委員会との連合審査会は明後土曜日午前十時より開会する予定でありますから、御了承ください。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会