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1953-07-14 第16回国会 衆議院 内閣委員会厚生委員会海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十四日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員   内閣委員    委員長 稻村 順三君    理事 大村 清一君 理事 高橋  等君  理事 八木 一郎君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 上林與市郎君 理事 鈴木 義男君    理事 松田竹千代君       永田 良吉君    長野 長廣君       平井 義一君    牧野 寛索君       高瀬  傳君    粟山  博君       神近 市子君    島上善五郎君       中村 高一君    冨吉 榮二君       辻  政信君  厚生委員    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君    理事 堤 ツルヨ君 理事 中川 俊思者       越智  茂君    加藤鐐五郎君       降旗 徳弥君    安井 大吉君       中野 四郎君    山下 春江君       萩元たけ子君    柳田 秀一君       杉山元治郎君    亘  四郎君       有田 八郎君  海外胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別 委員    委員長 山下 春江君    理事 青柳 一郎君 理事 庄司 一郎君    理事 臼井 莊一君 理事 柳田 秀一君    理事 亘  四郎君       逢澤  寛君    小平 久雄君       佐藤洋之助君    中川源一郎君       福田 喜東君    安井 大吉君       田中 稔男君    受田 新吉君       大石ヨシエ君    辻  文雄君       有田 八郎君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君  出席公述人         元恩給局長、恩         給法特別審議会         委員      高木 三郎君         経済学博士、大         阪市立大学商学         部長社会保障         制度審議会委員 近藤 文二君         旧軍人関係恩給         復活全国連絡会         副会長     土橋 勇逸君         日本傷痍軍人会         常任理事    黒田  明君         財団法人日本遺         族会嘱託    森田 俊介君         日本官公庁労働         組合協議会社会         保障制度対策委         員長      矢田 勝士君         全国身体障害者         団体連合会本部         総務部長    吉原 嘉一君         全戦傷病者要求         貫徹委員会   川原 和雄君  委員外出席者         内閣委員会専門         員       亀卦川 浩君         内閣委員会専門         員       小関 紹夫君         厚生委員会専門         員       川井 章知君         厚生委員会専門         員       引地亮太郎君         厚生委員会再門         員       山本 正世君     ————————————— 本日の会議に付した事件  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三三号)     —————————————
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより内閣委員会厚生委員会海外胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会公聴会を開きます。  私が連合審査委員会委員長の職務を行います。開会にあたりまして公述人各位にごあいさつを申し上げます。目下内閣委員会において審議中の恩給法の一部を改正する法律案国民的関心のきわめて深い法案である。内閣委員会といたしましては、この重要なる法案について公聴会を開き、広く国民各界の御意見を聞きまして、今後の審査参考に資したいと存ずる次第であります。なお本法案ときわめて密接な関係にあります厚生委員会及び海外胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会の御希望によりまして、連合審査会といたしました。公述人各位におかれましては御多忙中のところ貴重なる時間をおさきになり御出席をいただきまして、委員長として厚く御礼を申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は議事都合上失礼とは存じますが、大体二十分程度にお願いいたしまして、公述人の方々の御意見開陳が一通り済みましたら質疑を行いたいと存じます。  なお念のために申し上げますが、発言の内容意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。また委員公述人に対して質疑をすることができますが、公述人からは委員に対して質疑はできないことになつております。さよう御了承のほどお願いいたします。  それではまず社会保障制度審議会委員近藤文二君よりお願いいたします。
  3. 近藤文二

    近藤公述人 私近藤でございます。私は社会保障制度審議会委員をいたしましてその末席を汚しているものでございますが、本日は個人といたしまして、自由な立場から公述いたしたいと思います。  昭和二十七年十二月二十三日、社会保障制度審議会内閣総理大臣に対しまして、厚生年金保険公務員恩給軍人恩給等年金問題に関する意見書なるものを提出いたしましたのでございますが、これは同審議会が、さき昭和二十五年十月社会保障制度に関する勧告を行いました場合、わが国年金制度が、厚生年金保険公務員恩給共済組合における長期給付など、各種の制度にわかれ、明確な理念のもとに行われていない点を指摘いたしますとともに、これを近代的な社会保障理念に基きまして、総合的な均衡のとれた制度に整備する必要があることを強調しておいたのでございます。それにもかかわらず、最近この勧告をほとんど無視するかのような態度で、あるいは厚生年金保険法改正あるいは軍人恩給復活、さらにまた人事院では人事院独自の立場から新しい恩給制度の構想をお立てになりまして、これを政府勧告しようとされております。こうしたことははなはだ不可解でありまして、もしこのようにそれぞれ個々別々の立場から改正案が出、それが実現するということになりますと、それは結局わが国年金制度をしまして、一貫性のある公平な制度に導く道を妨げ、たとい一部の国民の満足を得ることができ得たといたしましても、広く国民全般生活安定には寄与しない結果を導くのではないか。よつて政府は十分この点を反省して善処されたいという趣旨のものであつたのでございます。ところでこの意見書の中におきまして、特に軍人恩給の問題に関しましては、恩給法特例審議会の旧軍人軍属及びその遺族恩給に関する建議をば取上げまして、これは軍人恩給復活という立場をとつている関係上、一部の軍人の方が優遇されるような結果を招来している単なる既得権に基く主張はその根拠が薄弱と言わねばならない。もちろん文官恩給の改革をも考えなければならないが、かかる結論は一般国民に対する社会保障費との均衡からいつても、また今次の戦争による犠牲が全国民的であつた点からいつても妥当ではない。すなわちむしろ本審議会さき行つた社会保障制度に関する勧告を実現することによつて、広く一般国民生活をこそまず安定せしむべきである、こういう意味のことを述べているのでございます。私考えますに、さき軍人等遺家族援護の問題が生じましたときに、多くの方は社会保障国家補償かとしてこれを問題にされたのでございます。ところが今回はこれを恩給復活社会保障かという形で問題にされているようでございます。ここでは国家は明らかに使用者としての立場から取り上げられております。広く国という立場では考えられていないのでございます。従いまして軍人の方は明らかに国家または公共団体使用人である、こういうふうに主張されているのであります。世の中には社会保障と申しますと、これは恩恵的なものである、いな慈善的なものである、こういうふうにお考えになる方があるのではないかと思います。しかしそれは少くとも近代的な社会保障制度がいかなるものであるかということを御存じないからではないかと思うのでございます。憲法第二十五条こそはまさに日本には近代的な社会保障制度がなければならないということを約束しているのではないかと思うのでございますが、われわれはこの二十五条によりまして、権利として健康で文化的な最低限度生活保障国家に要求することができるのではないかと思います。かの生活保護法におきます生活扶助、その他の扶助もこのような見地から権利としてこれを要請すべきものでございますが、しかしこのような社会保障使用人使用者との関係におきましては、社会保険として制度化されるのが普通でございます。その意味におきまして、恩給もまた一個の社会保険でなければならぬというのが社会保障制度審議会考え方でございます。従いましていわゆる軍人恩給復活社会保障の一環として取上ぐべきだということは恩給使用人としての軍人権利を無視した議論ということにはならないのであります。ところが世の中には軍人恩給復活社会保障として取上げることに対しまして、これは軍人権利を無視した議論である、権利を慈善に置きかえるものだというふうに誤解される方があるのでございますが、それは誤りもはなはだしいといわなければなりません。しかしながら現在の恩給というものを考えます場合、その恩給には生活保障的な面と退職金的な面とがあるのではないかと思います。私は将来この退職金的な面はこれと切り離しまして、別個の制度にすべきものであると考えるものでございますが、現在のところ恩給制度の中におきましてこのような退職金的な要素が残りますのは、これは当分はいたし方ないと思います。それは現在の恩給がそもそも最初から生活保障的なものとしてよりは退職金的なものとしてつくり上げられているからにあるのでございまして、こういつた恩給を将来生活保障的なものに改めて行くべきだというのが私の考えでございます。ところが今恩給退職金的なものであるといたしますれば、それは国が責任を持つて、その恩給支給を確保すべきものだという考え方には当てはまらないのではないかと思います。あくまでも国は事業主としての立場において考えられなければならないのでございます。従いまして、もし使用者としての国が事実上その姿を消すといたしますならば、これが民間事業の場合でございますと、その退職金の支払いはおそらくできなくなるのではないかと思います。世の中には文官の方も武官の方もひとしく国家使用人だから、平等に扱うべきであるという意見を持つ方が多いようでございますが、これはまさに一つのりくつでございましよう。しかしひとしく官吏だと申しましても、軍人文官との間には著しく異なつた面があるのでありまして、これをひとしく国の使用人として扱うことは私は賛成ができ得ないのであります。と申しますのは、同じ国の使用人であるといたしましても、軍政権のもとにあつた軍人の方と、政府を通じての使用人であつた文官の方とは、これを別個に考えてもさしつかえないのではないかと思うからでございます。すなわち、軍政権中心とするところの国家という使用主はすでにその姿を消しているのであります。しかし政府中心とする国は、依然としてその使用者としてその存在を示しているのでございます。こういうような見方がここにできるのではないかと思うのでございます。しかし、かりにかかる解釈が穏当でないといたしましても、現在存在する文官というその制度前提としてこの恩給考えます場合と、すでにその制度としての存在がない軍人という制度前提として考えます場合と、その退職金的恩給の取扱いはこれを区別してもさしつかえないのではないかと思います。従いまして、文官については退職金的性格恩給を認めるからと申しまして、まつたくこれと同様のものを旧軍人の方に対しても認めてよいかどうか、これは非常な問題であると思います。但し旧軍人の方もまた国の使用人であつたという意味におきましては、この際その生活保障的な意味におきます恩給復活は認めるべきではないかと思うのでございます。従いまして、私はこの改正案修正をしていただきたいと思うのでございます。  それは階級差を認めないところの恩給復活という形でこの改正を取上げていただきたいと思うのでございます現在。軍隊がなくなつて大将の方も一等兵の方もないのに、恩給だけがそのからを背負つているということは、どうしても国民感情が許さないことではないかと思うのでございます。もちろんこれに対しましては既得権を云々される方があるかもしれませんが、普通に既得権といわれているものの多くは、実は期待権であり、既得権ではないのでございます。しかし期待権であろうと既得権であろうと、これを尊重するといたします場合、その権利内容は、その権利が起りましたときの貨幣価値における既得権であり、期待権でなければならぬと思うのでございます。もしかりに、たといそういつたようなものにベース・アツプを認めるといたします場合におきましても、それはあくまでも生活保障的立場においてなさるべきでありまして、単に物価、賃金の変動に応じてなさるべき筋合いのものであるとは考えないのであります。この点につきましては、実は文官恩給ベース・アツプやり方そのものについても、私は疑義を持つているのでございまして、もし軍人恩給復活されるとするならば、この際十分にこの点をも考慮さるべきではないかと思います。しかるに今回の改正案では、恩給法特例審議会建議案大将以下十七階級に区別して恩給支給せんとしておるのに対しまして、これをそのまま是認しておられます。その点は何としても納得ができないのであります。もし恩給法特例審議会の主張するところの国家財政現状及び国民感情動向等を真剣にお考えになるのならば、この際思い切つて階級差を認めない恩給の形式をとるよう修正さるべきではないかと考えます。しかもこの場合には、国家財政現状を十分に考慮されるべきであり、さらにまた一般社会保障関係に国が支出しております金額をもあわせ考える必要があるのでございまして、年間五百七十七億四千百万円という厖大な金額は、社会保障に関する国の支出額と比較いたしまして、とうていこれを容認することができないのではないかと私は考えるのでございます。そのような考え方から、私は一つの案といたしまして、年間一人三万六千円程度で押えるべきではないかと思うのでございます。もちろんこの場合年数加算はこれを認めてさしつかえないと思います。右のように階級差を認めず、単に年数加算のみを認めるといたしますと、附則第二十条以下の一般公務員またはその遺族のうち、旧軍人軍属としての在職年の通算に関する規定も当然特別の措置を講ずる必要が起つて来るのでございます。  さらにまた若年停止の問題でございますが、現行恩給法では、普通恩給はこれを受ける者が四十才未満の場合はその全額、四十才以上四十五才未満の場合はその半額、四十五才以上五十才未満の者はその三割の額を停止されることになつておりますが、これをそれぞれ年齢を五才ずつ引上げようというのが今回の改正のようでございますが、私はこの際思い切つてこれを十才ずつ引上ぐべきではないかと思うのでございます。そしてこのことは、もちろん旧軍人の方の恩給についてのみではございません。一般公務員恩給についてもそうあるべきだと思います。さらにまた、一般公務員恩給につきましては、この際現在におけるような最後俸給基準にするやり方をやめまして、最後からさかのぼつて年間程度平均俸給によるやり方をやつて財政上の負担を軽減せしむべきではないかと思うのでございます。もちろん今回の改正案の中にあります加算廃止高額所得者普通恩給年額の一部停止公務傷病恩給、または公務扶助料についての特殊公務廃止等は当然の処置であると考えるのでございますが、さらに私は特に旧軍人につきましては、その支給額の点におきまして、公務扶助料普通扶助料の区別を廃止して、一切普通扶助料同一額として階級差を認めない金額においてこれを支給すべきではないかと考えるのであります。このようにいたしますならば、予算はおそらく予定の半額以下において足りるのではないかと考えます。  以上が恩給法の一部を改正する法律案に対します私の考えでございますが、これを要約いたしますと、まず階級差を撤廃するたと、若年停止年齢をさらに五歳ずつ引上げること、こういう修正をいたすことによりまして今回の案に賛成いたしたい、こういう考えでございます。このことは決していわゆる軍人恩給そのもの復活意味するのではございません。その内容は、恩給社会保障化をまず旧軍人恩給において試み、これを手がかりといたしまして、将来は一般公務員恩給をも社会保障制度化すべきである、こういう見解に立つているのでございます。もちろん現行厚生年金保険法改正して、これと均衡のとれるがごときものに改めなければなりません。これを要するに、社会保障制度審議会勧告を一日も早く実現することを条件といたしまして、今回の改正案に対し、さきに述べた修正をいたすことによつて賛成いたしたいという意味でございます。従いまして、このような方向に逆行するような内容恩給法改正は絶対に反対というのが私の考え方でございます。  以上きわめて簡単でございますが、私の率直なる意見を述べさせていただきまして皆さん方の御参考に資したいと思います。
  4. 稻村順三

    稻村委員長 それでは近藤君の御都合もあるそうでございますから、近藤君に対する御質疑をすることにいたします。
  5. 辻政信

    ○辻(政)委員 ちよつと近藤さんにひとつお伺いしたいのでありますが、あなたの御説明を承つておりますと、今度の軍人恩給の上に階級差を認めるのは適当でないというお話がありましたが、私はこの案を見まして感ずることは階級差が認めてない、元のいわゆる大将から二等兵までの俸給基礎にされて、それから案出されたものではなくて、この階級差というものは退職年における俸給というものを一応算定の基準にしたのであつて軍隊のない今日、大将とか二等兵とかいう名前使つて立案されたものではないのであります。しかも今度のこの改正案内容をごらんになつたと思いますが、いわゆる文官恩給に比較いたしますと、文官は、下の方においても、上の方においても、退職当時の俸給というものを基礎にされまして非常に高低の差がはなはだしい。今回の改正案におきましては、いわゆるあなたのおつしやる大将二等兵との間のこの恩給支給の額というものが、文官に比較しますと、非常に社会保障的な要素を取入れて考えられておる。元の大将から二等兵までの俸給に一律にあるものをかけたり、当時の厳格な俸給というものを基礎にはじき出されたものでは決してないというということは、あなたもお読みになつて十分御承知であろうと思う用のであります。階級々々という言葉をいられますと非常に社会的な誤解を招きます。私はむしろ退職当時の最終俸給基準にして、今度のこの案というものにはきめて進歩的な考えをもつて、上に薄く下に厚くやられたものと思いますが、その点についてのあなたの御意見を承りたいと思います。
  6. 近藤文二

    近藤公述人 階級という言葉を使いましたことに対して今おしかりを受けたのでございますが、附則別表第一に「階級」という字が使つてございましたので、階級という言葉使つたのでございます。
  7. 辻政信

    ○辻(政)委員 それは大将俸給を何万何千円、あるいは中佐が何万何千万ということをやることは非常に不便でありわかりにくい、そういう意味において最終俸給を代表する名称にして元の名前をお使いになつたものと考えておるのであります。
  8. 近藤文二

    近藤公述人 その点よくわかりました。ただ私のここで申し上げました階級差をなくするという意味は、今おつしやいました表によりますと、ずつと大将の方から二等兵の方まで別々に段階が設けてございます。この段階で参りますと、二等兵の方はきわめてわずかな金額になります。こういうことに対しまして私はむしろこれを金額的に申しますと、少尉というところにございますくらいの金額に、全体を均一の率で差上げるのがいいのではないか、こういう考え方でございますので、いろいろ言葉ずかいの中で誤りがありましたらお許しを願いたいと思います。
  9. 辻政信

    ○辻(政)委員 実は私は今回いわゆる軍人恩給という名において改正された案に、文官恩給を兼ねさしたものじやないかという感じさえ持つておるのであります。文官恩給における下の者と上の者との差があまりにもひどい、その差が著しく是正されたのが、今回の法律案であります、あなたの見地から申しますと、文官恩給も一律に廃止して社会保障でやるのがいいという考えもございます。おそらく今日のような状態を続けると恩給亡国というようなことを考える人もあると思います。私は遠い将来の問題としては文武平等にしまして、いわゆる恩給亡国にならないような新しい制度を根本的に考え直さなければならぬと思うのであります。それは非常な年月がかかることであります。またそこに差別をつけてはいけない。あなたの御意見では、軍隊というものはなくなつた、既得権益はないとおつしやいますが、軍人軍隊というものがあつたときに国家公務員として命を投げ出して働いたものである。これらの問題はほとんど軍隊のない今日においては、日本のその公務員の中の、しかも最も生命の危険に直面した人たちに対して、単に憲法軍隊がなくなつた、敗戦の結果どうということだけをもつて、その人たちを報わなくてもいいというような見方は、あまりにも私どもは無視された見方であると考えるのであります。
  10. 近藤文二

    近藤公述人 それ以上のことは意見の違いと思いますが、私は大将の方と二等兵の方とをなるべくならば同じように国家のためにお働きになつた方として同等にお扱い申し上げたい、一般公務員の方につきましては最終俸給で行つております、現在の若年停止停止年齢に非常に疑義があるのでございますから、改めてもないたいということを先ほども申し上げておりますし、この際旧軍人恩給をそういう形に置きかえることによりまして、逆に一般公務員の方の恩給をそういう方向に持つて行くことができるのじやないかというのが私の考えであります。これ以上は意見の相違だと思いますからどうぞ……。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ちよつとさつき聞き漏らしたので、たいへん恐縮なのでありますが、今先生のおつしやる公務扶助料普通扶助料との関係はどういう関係でございますか、これはどういうふうにお考えになつているか。
  12. 近藤文二

    近藤公述人 公務扶助料普通扶助料と同じように扱つていいじやないかという意味は、金額においては同じように扱つたらという意味なのであります。これは実は軍人の方はほとんどが公務扶助料ということになります。普通の文官の方は公務扶助料ということがほとんど出て来ない、そのときに普通文官の方が一般行政関係してお仕事をしておられますときは実は公務なのでございますが、その公務の扱いが文官武官の場合に非常に差等があつてはならないという点からいたしまして、条件公務扶助料普通扶助料とはもちろん違いますが、金額においては平等に考えていいじやないかというのが私の考え方であります。
  13. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 近藤公述人の御意見はすべて合理でまことにわれわれ賛成ところでおりますが、ただ生活保障の面だけを取上げたものとしてこの恩給法を見ましても、なおいろいろ批評の余地がありますが、実は私ども社会党として階級を撤廃することを条件にしているのでありますが、いきなり全部廃してしまうことは文官との対比から見て国民感情にも多少響くのではないかということで、行く行くは全廃することを前提にして五つくらいにわけることはどうかという考え方を今持つているわけです。実際的な解決の方法としてそういうことに対してどういう考えを持つておりますか。
  14. 近藤文二

    近藤公述人 私といたしましては、先刻申し上げましたような考えでございます。しかし国会で御審議なさいますときに、いろいろな現実の問題をお考えになつて階級差をきわめて少いものとしてお認めになるということは、これはある程度いたし方がないと存ずるのでありますが、私といたしましては、階級差のないのが一番すつきりしているんじやないかと、こういうふうに考える次第であります。
  15. 稻村順三

    稻村委員長 ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、次は高木三郎君。
  16. 高木三郎

    ○高木公述人 私は原案に賛成いたします一人であります。元来この恩給法中一部改正案につきましては、世上では往々軍人恩給復活であるとして、いろいろの批評を受けておるのでありますが、それは根本的において大きな誤解を招く原因となつておると思うのであります。  本案の重要な骨子となつております点は、死者遺族扶助料及び傷痍軍人恩給の増額でありまして、これに付随して軍人恩給の復元を目的とするものであると思う。  まず第一に、遺族扶助料につきましては、私が今日まで機会あるごとに主張したところでありますが、戦争による最大犠牲者である遺族の方々に対しまして国家としてまた国民として長く現在のごとき処遇をしてよいのであるかということであります。今回の戦争によりましてわが国民は大なり小なり犠牲を払わなかつた者はないのであります。しかしながら最愛の夫、敬愛する父兄、つえ柱とも頼む愛子を失つた遺族の方々の心情を考えますときに、いかなる方法をもつても尽し切れるものでないのであります。この精神的犠牲を償い得ないとしても、せめて遺族の方々の生活の不安をできる限り除去することは国家としても国民としても当然の責務であると考えるのであります。終戦直後の昭和二十年十一月、ポツダム宣言に基く勅令によりまして、軍人恩給並びに扶助廃止の措置をとらざるを得なかつたときにおいて、時の政府はその善後措置を講ずべく厚生省所管として臨時社会保険制度審議会を創定し、その審議に付したのであります。当時の記録は今もなお厚生省に保存せられておるはずでありますが、審議会は占領軍司令部としばしば折衝を重ねまして、恩給の形式をとることが不可能であるとするならば、他の形式をもつて何らかの救済を行うということになり、厚生年金法を改正し、その附則をもつて遺族扶助料並びに傷痍軍人恩給を給することに審議会意見は一致したのであります。その後不測の事故の出現によりまして、これが実行に移されることなく、わずかに傷痍軍人の増加恩給のみが辛うじて残されるに至つたことは、私の今もなお講義念に思つておるところであります。爾後遺族の処遇の問題はほとんど顧みらるることなく、終戦後満八年になんなんとする今日、なお全国百五十万にのぼる戦死者遺族は、わずかに先年会国を通過しました戦傷病者戦没者遺族援護法に基きまして、年額一万円というきわめて僅少な遺族年金によりまして、名実ともに露命をつなぐ実情であるのであります。私は今日月額一万円を越ゆる給与ベースに対し、なお不足なりとして給与ベースを引上げようとする公務員の給与、その他の現実を引合いに出すことをあえていたしません。しかしながらなお全国には年額わずかに一万円の遺族年金によつて市井に呻吟ずる戦死者遺族に対し、今回の政府原案に対し反対を唱うる者のおそらく皆無であることを確信いたします。今回の恩給法改正案により支出を要する年額約六百億円の歳出は、総額の八割五分が戦死者遺族扶助料であることを考えますれば、ことさらに軍人恩給復活であるとか、再軍備の前提であるとかいう所論は、何かためにするところの宣伝ではないかと考えるのであります。かように申しますと、もちろん戦死者遺族扶助料に反対するのではない、その支出の形式が恩給であることが問題であるという論者があることと存じます。また一部には社会保障が完全に行われれば、恩給制度などは不必要であるという議論を聞くのであります。  しかしながら私は恩給制度はこれと類似する社会保険制度、共済制度とは根本の理念が相違するものであることを確信いたしまして、従来しばしばこれに対する所見を公表いたしたのであります。社会保障制度審議会が年金という形式的概念をもつて、すべてこれらの制度を統一せんとするのは根本に誤りがあると思います。  恩給制度はその基本的条件として雇用主と使用人関係があることを前提としていることは、ただいま近藤さんの言われた通りであります。すなわち雇用主が長年にわたり使用人の労働力を利用する結果として、逐次失われる経済上の獲得能力喪失に対する補償であります。従つて公務員が一定年限忠実に国家に奉仕した場合において、退職後の生活保障することは、国家公務員との間の公法上の雇用契約の一約款をなすものであると考えるのであります。すなわち公務員及びその遺族が一定条件のもとに恩給または扶助料を受けることは、恩給法及び国家公務員法により認められた当然の権利であります。しかるに社会保障制度の根本理念は、英国流に申しますれば、ゆりかごから墓場までという、一生涯を通じて全国民生活保障するという理想論であります。この理想が実現されることはまことに望ましきことではありますが、英米の冨をもつてすらいまだ完全に行われておらぬ理想を、敗戦国であるわが国において現実化し得ざることもまた当然であると考えるのであります。その結果として今日わが国における社会保障制度として考えられているのは、いわゆる社会保険生活保護を出でないのであります。  保険は申すまでもなく不特定多数人の結合によつて危険を分散することが根本理念であり、生活保護は、生活保護法が定めておる通り、困窮の原因を問わざる一般国家扶助でありまして、恩給とはその本質においてまつた理念を異にするのであります。  しからば名誉ある国家の最大犠牲者たる戦死者の遺族が、ことさらに自己の権利を主張せずして一般困窮者と同列の生活保護に甘んずる理由はないと存じます。恩給法特例審議会に寄せられました全国約六十万人の恩給請願は、ほとんど全部恩給法制度による支給を望み、社会保障による給与を忌避するということは、これまた当然であると考えます。  次に傷痍軍人恩給でありますが、これは冒頭に申し述べました通り、占領軍司令部当局すらその継続支給を認めたのでありまして、恐らく何人も異論のないところと存ずるのであります。ただその支給額については実に僅少でありまして、まことに同情にたえません。ことに重症者に対しては、国家はでき得る限りの処遇を与えるべきであると考えます。恩給法特例審議会におきましても傷痍軍人恩給額については十分な検討をいたしたのであります。しかしながらいかにせん国家財政見地よりいたしまして、戦死者遺族扶助料平均年額二万五千円とすることすら非常な困難を感ぜられる今日でありますので、重点的に重症者に重く軽症者に比較的比率を低下するのやむを得ざることに意見が一致いたしたのであります。最も問題となりますのは旧軍人恩給復活の問題であります。これに対しては世上往々にして戦争責任者に恩給を与うることの不可を述ベ、また再軍備の前提をなす等の感情論が行われるやに聞くのでありますが、今回復活する軍人恩給受給者の大部分は、過般の大東亜戦争に関係なき老齢軍人でありまして、かりにそのきわめて一部分が戦争中の服役年ありといたしまするも、文官との対比上これに恩給を給することを拒否する理由がないものと思われるのであります。元来昭和二十年終戦前に恩給を受けた旧軍人は、大部分が大尉以下の下級軍人であり、戦争責任に直接関係なく、単に後輩軍人の敗戦責任に連座し、思わざる生活設計を乱された薄幸の方々と思われるのであります。しかもなお諸般の情勢を考慮いたしまして、増加する恩給総額のわずか七分程度の給与となるのでありまして、極力上級者の給付額を減少して支給停止年齢を引上ぐる等の社会政策的処置を講じました原案者の苦心を推察せられたいのであります。  最後に本法案論議の中心考えられる上述以外の二、三の点について簡単に所見を申し上げたいと思います。第一に階級差の問題でありますが、社会保障制度支持論者は、往々にして恩給制度上の階級差を非難するのであります。しかしながら生活保護でありますれば、階級差のないことが当然であり、またあつてはならぬと思うのでありますが、恩給制度はただいま申し上げましたごとく、各人の経済上の獲得能力を前提とするものであります以上、階級差のありますことの方が当然であると考えられます。国家公務員法案第百八条に「恩給制度は、本人及び本人がその退職又は死亡の当時直接扶養する者をして、退職又は死亡の時の条件に応じて、その後において適当な生活を維持するに必要な所得を与えることを目的とするものでなければならない。」と規定しておりますのは、この原則を表明いたしたものであります。  第二に加算年の問題であります。今回の法案中最も遺憾に思う一つは、加算年の切捨てであります。この点は恩給法特例審議会においても論議の中心なつた議題であります。理論的にも、また情においても、加算年を切ることは忍びざるところであります。しかしながら主として次の諸点により涙をのんで加算年切捨ての英断を下されたことと思うのであります。まず第一に、恩給理論から申しまして、恩給は永年国家公共団体に奉仕し、獲得能力を喪失した者に、徹底的に老後の生活保障する制度であります。従つて若年者に永久小づかい銭を与えるがごときは恩給の本質でないのであります。しかるに戦争中には戦地に三年在職すれば、加算年を加えて最低恩給年限に達し、二十余歳の若者が終身小ずかい銭的恩給を受けるのでありまして、かくのごときは制度として適当でないのであります。元来戦争末期においては戦地の観念が従前の戦争とは異なつて来たのであります。兵器、飛行機等の発達によりまして戦闘方法の変化に伴つて加算規定を改正すべきであつたと思われますが、そのいとまなくして終戦となつたという現状考えまして、また国家財政見地から、まず整理をするのは加算のほかはないと考えられるのであります。第二にかりに加算をつけるといたしましても、加算年計算上非常な困難がある。事務的にも技術的にも非常な困難がある。その結果といたしましてはなはだしい不公平を伴うことになる。第三に戦死者遺族、傷痍軍人等においてさえ満足な支給のできないわが国現状におきまして、一応ともかく満足に生還した若年の方々は、これを少しでも他の犠牲者に譲るべきではないだろうか。かような筋合いからいたしまして加算年を切捨てることに意見が一致したわけであります。  次に第七項症以下の軽症者の取扱いでありますが、これも既得権立場から申しますればまことに同情に値するものであると思うのであります。しかしながら若年者の加算切捨てと同一の理由で、理論的には軽症者に終身小づかい銭的年金を支給するということは不合理である。また事実問題としては、軽症者はむしろ進んで辞退して重症者の給与を少しでも重からしめるということが謙譲なことではなかろうか、こういうことを考えたのであります。  以上申しました通り、軍人恩給に関する規定を改めます結果といたしまして、その権衡上文官の規定を改めざるを得なかつた点は、これまたわが国の国情よりやむを得なかつたことと思われるのであります。  最後に一言つけ加えて希望いたしたいと存じますことは、本案成立後なるべく近い機会において恩給担保金融の道を開かれんことを望むのであります。先ほど申し上げましたように、今回の改正によりまして国家年間六百億の恩給の支出をいたさなければならぬ。しかるにその八割五分を占めておりますところの遺族の年金は、わずかに年額二万五千円になんなんとする程度であります。かような少額の扶助料をもつて遺族生活し得るやいなやということに私どもは非常に危惧を持つものであります。その結果といたしまして、大部分のものが背に腹はかえられない、こういう立場からいたしまして、疾病でありますとか、あるいは子女の結婚、教養等のためにこれを金融化せんとするものが非常に多くなつて来るのではなかろうかと思うのであります。現在いわゆるもぐり金融といたしまして、高利貸しその他が貸しております現状を見ますと、日歩十銭、年利にいたして三割六分以上の金利をとつておるのであります。このほかに調査料、生命保険料等を加えましたならば、受給者の手元に残るものはおそらく六割を出でないのではないか。現に先年遺族援護法によつて与えられましたところの五万円の国債は、ただいま市場において三万五千円という相場があることを聞いております。かような立場から考えますれば、このままに放任いたしますればせつかく巨額の国費を投じまして恩給改正いたして給与いたしましても、その大部分が金融業者の私腹を肥やすに終るのではなかろうか。この点につきましては今回の恩給法改正案におきましても、将来の担保金融の道について十一条の改正規定を入れておるのでありますが、なるべく近い将来において担保金融の問題について御考慮を願いたいと思うのであります。  以上きわめて簡単で十分意を尽し得ない点があつたのでありますが、要は一日もすみやかに本案の審議を終えられまして、国家の最大犠牲者に対する処遇の改善のために一歩を進まられんことを、強く強くお願いいたします。(拍手)
  17. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 委員長、質問があります。
  18. 稻村順三

    稻村委員長 午前中の公述を全部やつていただいて、そうしてまとめて質疑をお願いいたしたいと存じます。  次に黒田明君にお願いいたします。
  19. 黒田明

    ○黒田公述人 恩給法の一部改正法律案に対しまして公述いたしまする私は、日本傷痍軍人会代表の黒田明であります。  今回の改正法律案に対しまして、私は次の二つの問題を除くほかは、その立法の趣旨にかんがみまして賛成をするものであります。反対の二つの問題につきましては、その一つは、今回の立法の措置におきまして、七項症の過去の増加恩給受給者と、一款症から四款症までの傷病年金受給者に対する補償の打切りでございます。むずかしい法律論やいろいろな問題はそれぞれの専門の方々からるる公述がありましたので、私たち傷痍軍人会といたしまして、この問題について、今までに国会に対してその他代議士諸先生各位に対して陳情いたしましたその理由と要点は——この補償打切りの恩給特別審議会の結論といたしましては、その一つ国民感情、その二つは国家財政見地から、その三つは軽症のゆえをもつて、こういうふうに三つに要約されると思います。  その第一の国民感情におきましては、かつて恩給特例審議会の答申案なるものが発表されるに先だちまして、新聞、ラジオその他の雑誌におきましての国民的投書並びに輿論の容を集約いたしますると、まず第一に傷を負うた不具者である傷痍軍人に対しては可及的すみやかに補償やつてもらいたい、こういうことに帰結すると私は思います。ただ問題になりますのは、今次大東亜戦争の様相が、戦前戦後を問わず、国内においても戦場の一部と化した実例に徴しまして、ひとり傷痍軍人のみが戦争犠牲者でない、こういうような感情的な論が入るのでありますが、しかしここで私たち考えていただきたいことは、人間の社会におきまして、最もわれわれが安心をして会社人としての活動に参画できますところの要素は、その個人の生命が保障されることであると私は存じます。過去の徴兵法を読んでみますと、人間個人の自由意思というものは拘束されまして、至上命令の一片の紙片よりまして、本人が欲すると欲せざるとにかかわらず、行けば必ず死ぬか負傷するかというような激戦地に私たちはおもむかせられたのであります。しかも激戦の様相下においては一片の肉塊をもとどめずして、国を守り、日本民族を守るために飛散した幾多のわれわれの戦友があります。しかも内地に帰りました傷痍軍人は、人間の社会におきまして最も幸福なる存在は、五体が健全であり、しかも肉親家族が相寄りまして食事をともにし、歓談の一時を過す、こういうような状態が上と下とを問わず一番われわれ人間会社における幸福な状態であると思います。しかるにわれわれ傷痍軍人はそういう五体健全の人間の最も幸福なる現段階における味わいもなく、しかも激戦場におきましては、戦争責任とかむずかしいことはなく、ただ単に祖国の繁栄と日本民族の繁栄とのみを祈念いたしまして、一発一発の必中弾を敵中にぶち込んだわれわれであります。そういう者に対しまして、ただ一片の感情論や法律のりくつ論でこの不具者に対する恩給支給の問題を論議するがごときは——われわれ人間社会に対する政治は愛情がなければならぬが、この政治の問題においては私は最も遺憾に思うものであります。この恩給法改正並びに支給に対しましては、以上申し上げました点におきまして、もつと深き温情と、しかも社会通念上から来る言説に重きを置いて決定をしていただきたいと私は思います。  その第二の問題でありますところの国家財政見地でありますが、われわれ日本傷痍軍人会のこの問題に対する見解といたしましては、金額に対して幾ら補償していただきたいということは一度もお願いしたものではありません。少くとも現在の国家財政におきまして、われわれが陳情その他のことにつきまして国会に参りましても、国会内に高級自動車が何百台となく日に動いておる現状を見ましても、一たび都心に目を転じますならば、鉄筋コンクリートの高層なるビルが濫立しております現状を見ましても、ここに第七項症から第四款症までの復活を予想されまして、私たちがお願いしている十  一億ないし十二億の金額が、はたして昭和二十八年度におきまして、国家年間の予算として九千何百億になんなんとする財政上の見地から、国家財政を危殆に瀕せしめるような問題を加味するかどうかという点について、私しろうとでむずかしいことはわかりませんが、さようなことはないように思うのであります。  最後に軽症のゆえでございまするが、これは前回の公聴会においても、それ相当の当路者が指一本くらいの軽症の者に恩給支給することはいけない、こういう結論を出しておられたのでありまするが、現行恩給法にははつきりと傷病表をもちまして、七項から四款症までの症状等差が出ております。それをごらんになつていただきますればはつきりいたしますように、どの一項目を見ましても、親指一本ない者に恩給支給しないような症状等差はありません。少くとも昭和八年の恩給法改正当時は、日本国家といたしましては、医学的な見地からそれぞれの権威者を網羅して、あらゆる角度からこれに対して検討を加え、指一本なくした者が自己体内の生理的活動をするに対しましていかなる医学的支障を来すかという、高度な医学的見地からこれを検討いたしまして、しかも私たちの総意をもつて選挙いたしました代議士諸公によつて、国会の権威ある機関において慎重審議結論を出した結果、この傷害等差表といたしまして局給法の改正をして支給した。この問題をただ恩給法特例審議会がわずか限られたる短期間におきまして、医学的見地からも、また医学的高度の体験もなくして、ただ結論的に観念論で、指一本の軽症者として断定を下した、私はその無責任きわまる言動に対しまして抗議を申し出たいのであります。かようなる国家の既定法律をくつがえすがごとき重要なる問題を、しかもその法律をくつがえしたがために、激戦の後負傷いたしました十一万五千人の傷痍軍人がその補償を打切られるような重大なる問題を、ただ単なる感情論や主観論の一片によつて法律から打切る、しかも公式の席上で堂々と発表するごとき不見識に対して、私は実に遺憾にたえない次第であありす。少くとも政府におかたましては、恩給法特例審議会におきましても、かような重大なる問題に対しましては、あらゆる各界の意見を総合いたしまして、慎重審議して、そうして七項症以下四款症までの補償打切りの結論を出すべきが至当ではなかつたかと思うのでございます。この軽症の問題につきましては、恩給法改正案が国会に上程されまするや、日本傷痍軍人会はあげてこの是正に対してお願いをしたしておるのでありまするが、決して私たちは国家財政を危殆に陥れてもこの第七項症から四款症までに対する恩給復活をお願いするのではありません。金額の多寡にかかわらず法律制度に基いて、義務として戦地におもむいた彼らに対して、現行恩給法においてはつきり権利を認めている以上は、私たちは金額の多寡にかかわらず恩給復活をしていただきたい、かような陳情をいたしておりました。その結論的な意見を申し上げますならば、占領軍当局はいわゆる懲罰を科する意味で、われわれ傷痍軍人並びに遺族その他の軍人に対しまして、昭和二十一年二月一日に発せられましたポツダム宣言の受諾に伴う臨時特例、いわゆる勅令第六八号の処置によつてそれを打切られたのでありますが、今日日本の国が堂々と独立をいたしました現状におきましては、この恩給法は独立国家の権威ある法律として、一たびこの国会を通過してこれの施行を見ましたあかつきにおきましては、われわれ傷痍軍人は心からこれに対する遵奉の義務に従わなければなりません。しかしいやしくも法を遵奉するその精神は、その法律の内容においてわれわれ保護対象になる国民の納得できる条文でなければならぬと私は思います。その保護を受ける一部の人間が、たといその一部の人間でも、この保護を受ける対象の中において疑義があれば、これはゆゆしき問題だと私は思うのであります。従いまして七項症から四款症までのこの復活に対しまして、重症者の私たち——かく申し上げます私も左大腿部から足を切断いたしました、第三項症の重度傷痍軍人であります。もちろん今回の改正法によりまして三項症に対しましてはお金がいただけますので、何らもらえない人たちの運動あるいは意見を述べる必要はないのじやないか、かように存じますが、しかし国民の大多数に、今もなお激戦場におきまして戦友々々というこの言葉を思い出していただきたいと思います。これは決して兵隊のみが戦友という言葉使つている、こういうような意味ではなくて、人間というものは激戦のさなかにおいて自分の私利私欲もなく、自分の尊い生命するも保証されない、真空な状態におきましての魂と魂、心と心の触れ合いを持つ、この純粋なる友の交わりがいわる戦友の用語であります。泥棒ひざを没するような温地作戦におきましても、昼なお暗きジャングル作戦におきましても、疲労困憊の極度に達し、一本のタバコもわけて吸い、一つの乾パンも半分にしてかじる。この気持。しかもいつ何どき生命を失うか知らない。その場合においては親もなければ兄弟もない。その戦友が進んで死水をとつてやるという、こういう人間社会の最も悲惨な境遇における魂と魂の触れ合いが、いわゆる戦友という称呼であります。こういう見地からいたしますならば、六項症以上のわれわれが恩給をもらつてそれでいいんだ、こういうような無責任な傍観的な態度は私たちはとりたくないのであります。少くともこの機会におきまして七項症から四款症までの方々の復活こそわれわれ重度傷痍軍人がまつ先にひつさげてやるべきである。こういう見地からお願いいたしておりますのと、もう一つは少くとも権威ある国家の法律として施行されたあかつきにおきまして、私はその立法の精神においても立法の措置におきましても、堂々たる威厳のあるしかも公平である法律でなければならぬという見地から、七項症以下四款症までの復活の運動をお願いしているのであります。  そこでもう一つ不可解に思いますことは、この恩給法特例審議会におきまして、七項症以下四款症までを打切る問題の過程におきまして、少くとも現行恩給法にありますところの文官諸公に対するこの傷害恩給支給の条項が私は論議の問題になつたと思うのでありますが、その問題はそつとしておいて、同じ性質のもとに同じ一本の法律で恩給をもらう武官の第七項以下四款症までを打切つておいて、得々としているかのごときこの特例審議会の案に対しては、まつこうから私は反対をするものであります。少くとも現行恩給法のこの改正附則第五条の一条は、われわれ傷痍軍人第七項以下四款症までの断じて黙過できない重要な問題であります。それは文官恩給の七項から四款症に対しまするところの傷害別表によりましても、傷痍軍人と同じ傷病名をもちまして、現実に七項症から四款症まで恩給支給されております。今回の改正案では、この恩給法改正案が可決通過いたしましたならば、六箇月の猶予期間を設けておりますけれども、今までの既得権に対しては本人が一時金を希望する場合には一時金でもよろしい、また本人が傷病年金を希望する場合においては傷病恩給でもよろしいという寛大なる選択性を認めておきながら、同じ条件のもとに国家公務員として傷を負うた傷痍軍人の七項症から四款症までを断固としてここにおいてその保障を打切つたということに対して、私たちはそれが国家の法律なるがゆえに納得できないのであります。こういう意味から申し上げまして、私は七項症から一款症—四款症までの保障の即時復活をぜひともお願いする次第であります。  また、先ほどから軍隊のない今日恩給階級によつて設けるということはいけないという意見もありましたが、私は階級復活でなく少くともこの恩給基準額を算出する必要上階級を羅列したにすぎないと思います。その結論は、われわれ傷痍軍人の問題になる傷病恩給の項を見ますと、何らそこに私は階級制度というものを重要視したという点を見受けないのであります。少くとも将官、佐官、尉官、准士官、下士官、兵というように大体六つの階級にこれをわけている点から見ましても、私は今回の改正法案が何ら軍人階級を取上げて復活されたということはないという意味から、この問題に対して反対をいたします。  それからもう一つ憲法第十四条の項から行きましても、傷痍軍人の七項症から四款症に対する保障打切りということは私はゆゆしき問題だと思います。前会の公聴会におきましては、軍隊のない今日恩給を旧軍人の資格によつて給することは、憲法違反であるということが某大学教授の方から申されましたが、私はそんなことを論議する前に、むしろ現行憲法によつてこそわれわれ八千万国民の現実の問題を考えるべきだと思います。そういう見地から申しますならば、現行憲法第十四条には国民はすべて法のもとに平等であるということが明文されております。この明文から行きますならば同じ国家公務員としての文官恩給の七項症から四款症に現行恩給法恩給支給しておきながら、われわれ同じ国民である傷痍軍人に対して七項症から四款症までを打切つたことに対して、私は憲法第十四条の違反であると断言いたしたいのであります。しかしその場合問題になるのは、憲法第二十九条に個人の財産はこれを侵してはならない、しかし公共の福祉に適合するようにその内容は法律で定めると書いてありますが、少くとも恩給は、先ほどの公述人の方も申されましたが、はつきりと個人の権利であるということを私は断言いたします。それは喋々と論ずるまでもなく、現行恩給法、いわゆる基本法の第一条をごらんになればわかりますが、恩給ははつきり権利と明記されております。こういう見地から行きますれば恩給権利であります。従つてこの恩給は現金をもつて支給される場合、財産権であると断言してはばからないと思います。この個人の財産権を占領下のそういう特殊事情によつて一応われわれは支給されなかつたのでありますが、今回の措置によつて私たちの権利保障されるにあたりまして、政府国家財政見地からこれに対する検討を加えたと申しますが、国家財政ということで、われわれの基本権をここで保障を打切るという場合においては、公共の福祉を著しく阻害するかどうかという問題が私は論じられると思いますが、先ほども申し上げましたように、九千何百億になんなんとする国家財政見地から十一億、十二億の金額がはたして公共の福祉を著しく阻害するかどうかという点について、私は専門家ではございませんから疑義がありますが、この点についても私は一向にさしつかえないかと存じます。  以上申し上げまして、私は七項症から第一款症ー第四款症までの補償の打切りに対する第一にこの法案の反対を申し上げます。  その二つは、増加恩給受給者に対して現在人員につき家族加給を支給していただきたい、こういう問題であります。これは給与規則とかあるいはその他の問題におきましても、現在社会のいかなる事業所におきましても、会社、工場におきましても、また国家公務員におきましても、地方公共団体公務員にいたしましても、一人子供が扶養の中にふえれば家族加給が支給されております。しかし現在の恩給法におきましては、負傷当時の家族に対して一人月額四百円、年間四千八百円の家族加給を認めておりますが、それはどこまでも受傷当時と限定されております。日本の徴兵法の建前から行きまするならば、戦闘能力を持つて危険な戦地におもむいたその骨幹をなすものは、いわゆる二十歳代の青年であります。これは徴兵法によつて明らかでありまして、こういう若い人が戦地に行く場合には扶養家族というものはいないのが私たちの常識であります。あるいは非常に少いのでありまして、この恩給法の家族加給によつて現在補償をされておる範囲はまことに少く、しかもこの条文は古い昔につくつたもので、今日は軍人恩給復活に対しましては現在の社会情勢を主眼的に考えて論ぜられておりますのにかかわらず、この家族加給の問題のみは依然として昔に改正したままで、この問題が論議されないことについて私は疑義をはさむものであります。しかしもちろん恩給法は給与規則とかその他のものと同一視することはできませんので、私はただここで、今後の法案審議上におきましては、この問題について十分に御研究を願つて、可及的すみかやに現在時による家族の加給をしていただきたいと思うのであります。私たち傷痍軍人に対して家族加給を支給するということは、いろいろとむずかしい理論もございましようけれども、獲得能力を喪失したる、それをさらにかみ砕いて申しますならば労働の基本条件に欠けておる、従つてその欠けた者に対しては国家は法によつてこの足らない分をカバーしてやる、こういうような意味のもとに恩給支給されておるのであれば、そういう獲得能力のない人間が必ず扶養家族をかかえて苦しい現在の社会情勢下におきまして生活と闘つておることを思えば、少くとも現在社会の経済機構に合致したるこの法案改正によつて、現在時による家族加給を支給していただきたいと思います。
  20. 稻村順三

    稻村委員長 黒田公述人に御注意申し上げます。大分時間が超過しておりますので、あとは質疑の際に簡単にお述べくだされば幸いと思います。
  21. 黒田明

    ○黒田公述人 ただいま委員長さんから御注意をいただきましたので、私はもう一分ばかりで結論を出します。  この家族加給の問題につきましては現在の社会通念と申しますか、あるいは社会慣習から考えまして、少くとも現在の社会の経済情勢にマッチしたごとくこの法案の可及的すみやかなる御改正をいただきまして、不具者の傷痍軍人が家族をかかえて苦しい生活と闘つておる現状をお救いくださらんことを切にお願いするとともに、私たちこの重症者が声をからし、のどをはりさかして七項症から四款症までの補償打切りに対する御改正をお願いしておる点につきましては、どこまでも金銭上の問題ではなくして、少くとも独立国家の権威ある法律を改正されるにあたりましてはその内容においては公平無私、しかも憲法の原則にのつとつて、私たちは国民の一人でも多くその福祉を受けられるようこの法律によつてつていただきたいという意味からお願いしておるのであります。  以上で私の公述を終ります。
  22. 稻村順三

    稻村委員長 以上御意見を公述されましたお二方に対して質疑を行います。御質疑はありませんか。
  23. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 高木さんにお尋ねをいたしますが、解散前の国会にもあなたは公述人として御出席くださいまして、また重ねて御苦労願つたわけでございます。さすがに元恩給局長であられましただけに、われわれが傾聴すべき幾多の参考意見はあるのでございますけれども、二、三あなたに御質問申し上げたいと存じます。  あなたの論旨を承つておりますと、この法律の本旨は老齢軍人恩給復活するということはあくまでも付随したものであつて、戦死者遺族並びに傷痍軍人等、この戦死者等に対するところの償いの意味でもつてこの金をほとんど使われるのであつて、いわゆる大きな戦争犠牲者に対するところの国の補償としてやるのであるからよいではないかということをおつしやいました。さすればこの遺族並びに傷痍軍人、などを中心とするならば、何も恩給法の一部改正という形でもつて表現をしなくても、世間疑わしい形を持たないでも、戦傷病者戦死者遺族等年金法案とか補償法とかいつた形において政府が補償した方が適当であろうとお考えにならないか。なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますれば、戦争以前の恩給局長のあなたの立場から申しますれば、りくつはなるほどさようでございますけれども、社会情勢は転々として推移しておりますし、今日の国民生活状態は新しい憲法のもとに大きな変化をしておるのでありまして、あながちあなたの筋の通つた、かつての旧軍国時代のりくつが、今日の社会に受入れられないと私は存ずるのでございます。この点むしろ法律の形をかえた方が国民感情にも合致するのではないかという考えを持つのであなたに承りたいのであります。
  24. 高木三郎

    ○高木公述人 お答えいたします。この点につきましては特例審議会においても慎重に検討をせられたのであります。単独立法とするか、あるいは恩給法中の一部改正案とするかということにつきましては、いろいろ技術的の問題もあると思うのであります。ただ御承知の通り、恩給法の特例に関するこの法律が講和条約発効後六箇月内に何らの措置もなかつた場合においては当然元にかえる、復元するという立場にありますので、そうなりますと、結局そのままの状態で放置されるのでありますれば、元の恩給法にかえつて行くということになる。その元の恩給法にかえりました場合に、私どもこの点についていろいろ議論があると思うのであります。一体今度の軍人恩給というものが復活なのであるかあるいは新設なのであるか、こういうことの根本の法律上の問題はあると思うのでございます。しかしながら私どもの解釈いたしておりますところでは、恩給という形において復元するのだ、復元という、元にもどるという考え方、その字句に非常な深長な意味を持つている。復活と申しませんで、復元すると申しましたところに、深長なる意味があるのだと思うのであります。従いまして恩給局の立場といたしましては、恩給法という一つの入れ物、しかしその中に盛り込むものは内容は必ずしも従前のものでなくてもよろしいのだ、こういう考え方からいたしまして、単独立法の形式をとらずして恩給法中一部改正の形式をとつたものと思うのでございます。いま一つ考え方といたしましては、これは先ほども公述人の黒田さんからお話がございましたように、文官との権衡においてある程度軍人恩給法を修正したものを盛り込まねばならぬ、こういうことになりますが、しかし恩給法特例審議会に与えられました権限は、これは御承知の通り、軍人恩給の復元に関してとある、従いまして恩給法特例審議会としては文官恩給の問題までには権限が及んでおらない。しかしながらこれは非常に重大な関係もある問題でありますので、特例審議会といたしましては、これに付随して適当に文官恩給をも改正する必要がある、こういうことを勧告いたしております。その立場からいたしまして、おそらく恩給当局といたしましては、軍人の問題のみならず、文官の規定をも改正するという立場から、恩給法中一部改正という形式をとつたものと考えられます。
  25. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それではもう一つ承りますが、あなたがおつしやいますところによりますれば、この問題は重要だからよく考えた。しかし恩給というところの器は返すんだ。しかしその内容においては、これに復元する意味において何とかその内容を生かしたいのだという気持はわかるのでありますが、私は器を返してしまうんなら、恩給法という一つの法律に縛られることはない。むしろ私は恩給局長あたりの説明を前国会から聞いておりましても、恩給局自体が一つ恩給マニアになつている。大体恩給というものがなくなりましたら恩給局自体の生命もあぶなうございましようし、自己陶酔をいたしている。日本国民全体が——代議士は代議士病にかかつておりますし、新聞記者は新聞マニアにかかつておりますし、みなマニアにかかつている。でありますから、私はこの器を返してその意思を復元するというのならば、なおさらのこと恩給法の一部改正などという名目を打たない方が国民感情にマッチする。その点はあなたも元恩給局長でございますから、やはり自己陶酔の方じやないかと思いますが、その強い線で審議会の結論が出たんじやないかと思いますが、その審議をなさいますときに、その意見の比率はどれくらいであつたでありましようか。
  26. 高木三郎

    ○高木公述人 その点につきましては、正直に申し上げまして、恩給法特例審議会には恩給の専門家はあまりおらない。しかしこれにつきましては、法制局長官も出ておりましたし、それぞれの法律専門家の意見に従うということで、私ども別段これに対して恩給を主張したわけではないのであります。念のために申し上げておきますが、まず冒頭に恩給法特例審議会において取上げられました問題は、これは当然のことと思うのでございますけれども、特例審議会には軍人恩給の復元について調査審議をしろ、こういうことになつておりましたが、なおしかし社会情勢その他から考えまして、これを社会保障その他の制度でやるべきやいなやということをまず第一に審議した。その結果といたしまして、委員全部の意見が、やはりこれは恩給の復元をもつてやるべきだ。先ほど来私が申しましたように、社会保障制度恩給とは根本の理念において相違する。この理念が相違するということは、恩給マニアであるということじやなく、私どもといたしましては、これは国家公務員法も認めております。また外国の例においても、社会保障制度の十分行われているようなアメリカにおいても、なお恩給制度があるということは、結局社会保障が完全に行われたならば恩給はいらないという議論とは両立しないものだ。やはり社会保障がいかに完全になつても、恩給制度というものはあつてよろしいものだ、こういう考え方であります。
  27. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これ以上は意見になりますけども、あなたのおつしやるごとくにかつて恩給権というものを全然否定してしまつて、四百五十億の金が出たから、これを社会保障制度のまず第一歩に戦争犠牲者を相手としてやるんだということは間違いであるということを私どもも堅持しております。そこのところを誤解のないように願います。  次に移りますが、あなたは感情的な再軍備の伏線としてのものであるということの故意的な意見がしばしばあるということをおつしやいました。これを単に感情論として片づけてしまえる状態であるかどうか。今日の日本は、もちろん吉田内閣は議会でこれを軍隊と正式に肯定したことはございませんし、いつも保安隊であるということを申しておりますけれども、しかし御存じの通り、実際は警察予備隊の性格を失つて、野党の反対を押し切りました当時から、保安隊の性格に移行し、アメリカ政府並びに国会においては日本の保安隊をさすに軍隊として陸海空軍とはつきり言つている。こういう現実から見ましたときに、再軍備論というものが、あなたのおつしやるように単なる感情論であるかどうか。保安隊に対してあなたはどういうお考えをお持ちになりますか。
  28. 高木三郎

    ○高木公述人 私は政治家じやございませんし、恩給の研究の一学究に過ぎませんので、その議論に対してはお答えすべき限りではないように思います。ただしかし私ども立場といたしましては、ともかくも形が警察予備隊であろうが、保安隊であろうが、軍隊であろうが、国家が一旦約束しまして、戦場にでたならば、あるいは職務のために危険を冒してやつたならば、その者に対する扶養のことについては心配かけない、お前たち安心して出て行け、こういう約束をされたことに対しては、やはり国家として十分の責任を持つべきだ、これが恩給法の建前であります。それ以外にその内容が再軍備であるとか、あるいは保安隊であるとか、そういうことは私どもの関する限りではないと思います。
  29. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただ私がこういうことを申し上げるのは、単なる国会の政党間の意見にあらずして、国民全般の輿論として再軍備論の伏線であるというような意見があるのに対して、あなたは感情論という烙印を押しなさるから、こういう質問をするのであります。  次に移りますが、階級の問題でございます。十七階級につきましては、軍隊のない今日相当問題点であろうと思いますが、十七階級を打出したのは、いわゆる仮定俸給というものを打出すについての基準がないから、この十七階級を打出したのであつて、何らこれはこだわるべきではないということをおつしやいますが、十七階級というものを基本にして仮定俸給を打出さなければならないならば、それを出すまでのある段階として十七階級というものを参考資料としてお使いになるならばわかるけれども、それをこの中に生かすということについて私たちは異議がある。しかも先ほど黒田さんからおつしやいましたように、英霊や老齢軍人に対しては十七階級でもつて扱い、傷痍軍人だけを将官以下の六階級にわけているところに不平等があるということをおつしやつております。これらの二つについてお考えを伺いたい。
  30. 高木三郎

    ○高木公述人 これはかつて堤先生にお答えいたしたことがあると思うのでありますが、この階級というのは便宜論でありまして、実際は俸給基準とする。これは文官と同じ立場であります。ただ俸給の何円ということを示す便宜の手段とじて、元の階級を使つたに過ぎないのであります。もちろん今日においては大将とか中将とかいうようなものがありませんので、退職当時における階級を使いまして、これは先ほども申しましたように、恩給の根本の理念からいたしますと、退職当時における境遇に応じて適当な生活を維持するに必要なものでなければならない、こういう恩給の建前からいたしまして、もし大将階級にあつた人に対しては、その階級に応ずると申しますか、それを算出する一つの根拠として出したに過ぎない。それからなぜそれならば増加恩給についてそれをとらなかつたか、こういう問題もあるのです。この点につきましても、いろいろ審、議会の内部においても議論があつた普通恩給につきましては、等差があることは当然である。社会補償でない限りにおいては、等差があることは文官との関係上から当然である。しかしながら増加恩給については同じでもいいじやないか。たとえば一側の腕を失つた。これは大将でもあるいは兵卒でも同じじやないか、だから同一にしてもよろしいじやないかという議論も出たのでございますけれども、これは文官の方におきましては、やはり退職当時における俸給基準として算出している。その関係上旧軍人につきましても、増加恩給のみ等差を広めないということは、文官との比例から見ても不均衡になるじやないか。しかしながら諸般の情勢から見まして、でき得る限りその差を縮めるために六階段にわけたらよろしいんじやないかということで、便宜問題として六階段にわけたのであります。
  31. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それではそれは承つておきまして、次に経済上の獲得能力喪失を前提としたものであるという御議論、これは知るほど軍国時代の、戦争以前の経済機構におけるところの官吏武官に対してはなるほど利があるのでございますけれども、しかし軍隊のなくなつてしまつた敗戦後の今日の日本の社会情勢において、旧軍人だけが経済上の獲得能力を喪失しておるかといえば、私はそうでないと思う。組織外にあるところの農民のごときは、都会の方々よりも十年も十五年も早く老いて行くほど旱天のたんぼで四つんばいになつて草をとつておる。中小企業は融資もしてもらえないで、五人や十人自殺してもかまわぬといわれておるわけであります。残酷な政治のもとにおかれておる。また失業者にいたしましても、未亡人、母子世帯につきましても、経済上の獲得能力喪失ということは国民全般にいえることだと思う。従つてあなたが旧軍人にのみ理論をつけられるということは、はなはだ不可思議なことでありますが、国民全般との均衡をどういうふうに今日の社会情勢においてお考えになつておるか。
  32. 高木三郎

    ○高木公述人 獲得能力の喪失の問題につきましては、私は旧軍人のみについて言つているのではないのであります。もちろん恩給制度を理論づける法律上の根拠として、経済上の獲得能力喪失に対する損害填補である。これが恩給理論なんであります。従つて軍人のみにこのことを吉つているのじやない。しかも先ほど申し上げました通りに、恩給制度の根本は使用者使用人との関係であるということを申し上げたのであります。従いまして雇用関係なくして恩給というものは起り得ない。従いまして私はこの前、堤先生に申し上げたと思うのでありますが、恩給制度を官吏とか軍人とか、そういうもののみの制度であるとお考えになることは誤りだ。私どもはむしろ広い意味において犀川主と使用人との間における老廃救済のために、スーパー・アニユエーシヨン・スキームという立場から考えるべきである、こういう意味からして獲得能力ということを申し上げたのであつて軍人のみに獲得能力を認めたということではないのであります。
  33. 稻村順三

    稻村委員長 高瀬君より関連質問の申出があります。これを許します。高瀬傳君。
  34. 高瀬傳

    ○高瀬委員 二、三高木さんに伺いたいのですが、私はこの恩給法の問題について、昨月もあるいは前の内閣委員会においても、根本的に政府の所信をただしたのであります。それは、今回の軍人に対する恩給法の一部改正というものは、軍人に根本的に恩給権というものが文官と同じにあるという建前から起つていると私は解釈をしておりますが、その点はなはだ政府の答弁は私の主張と違いますが、不明確であります。それから高木さん、ただいま恩給という形によつて局限したというようなことを言われておりますが、恩給権が文官にある、武官にもある、これをはつきりと法律できめれば、ただ支給の形式が違つてもよかろうと私どもは思う。ただはつきりと恩給権があるということを政府も天下に声明して——社会党の諸君は多少間違つて誤解しているかどうか知りませんが、そういう特殊な観念で考えておるのは別でありますが、われわれは何でも公平に考えておる。これは文官と同じように、武官恩給権というものがあつて、これをある形において復活するのだという、その点をはつきりしていただきたい。一体高木さんはその点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  35. 高木三郎

    ○高木公述人 これは昭和二十七年の恩給法特例に関する件の措置に関する法律案、この提案の際に政府から答弁をいたしておる。そうしてその点について参議院の法制局長からも意見を開陳しております。その意見の開陳によりますと、恩給法の特例に関する件の第一条によりますと、軍人軍属恩給はこれを給せずとある。この給せずというのは支給停止するという意味であるか、あるいは権利がないというような意味であるかということについての疑問があるわけであります。私ども考え方といたしましては、他の恩給法の従来の用語例その他から考えまして、給せずとあります場合には、廃止される意味に解釈されることが多いのであります。従いましてこの恩給法の特例に関する件から見ますと、一応軍人恩給廃止されたものと考えられる。ところがそれに対して、その附則の第二条には、「従前の規定による公務員又は公務員に準ずべき者についてはなお従前の例による。」とある。この従前の例によるということと、恩給を給せずということとの関係をどう解釈するか、これが非常に解釈上の問題であろうと思うのでございます。しかしながら私ども考えておりますことは、ともかくも一時延ばしております特例に関する件という法律が現在ありますが、これの前提といたしておりますことは、やはり何らかの恩給に関する権利があるということを前提にしておる、もしないということならば、この期限延長の法律なんていらないということになる。しかしその期限を延長するという法律は必要である、講和発効後六箇月内に何らかの措置をとらなければ当然元にもどる、もどつた恩給権が発生するという危具があるから延期の法律が出ているわけですから、私は元の権限がそのまま生きかえるかどうかは別問題として、ある程度における恩給権というものはあるものである。それが先ほど申しましたように、恩給という入れものは残すのだ、その中に入れる品物はこれはまた別に考えてよろしいのだ、これをまた現に恩給法改正によつて、従来の既得権を幾らも侵害した場合はあります。またイギリスあたりでもアボリシヨン・アクトを出して全部切つた場合もあるのであります。従いまして法律をもつて法律を変更するのでございますから、内容をかえるということは、私は必ずしも憲法の違反でも何でもないと思うのでございます。しかしながら元の入れものを残したい、こういう観念だけは私は動かないものだと、こう解釈しております。
  36. 高瀬傳

    ○高瀬委員 大分高木さんのお話で私は明確になつて来ました、従つて大体文官武官恩給権は同等である、ただそのやり方、入れものが違つて来たというだけだと解釈いたします。私は大体そういうふうに考えて論議を進めて行きたいと思うのであります。
  37. 長谷川保

    長谷川(保)委員 高木さんにお伺いいたしたいのでありますが、この法案に御賛成のように先ほどお話がございましたが、戦争の犠牲が全国民的であるということは間違いのないことである。しかしその中で傷痍者やあるいは遺族の方々の物心両面の損害というものは甚大でありますから、これに対しまして特別な補償をするということは、私ども社会党といたしましても賛成であります。しかし同時にこの法律で私は非常に不満に思いますことは、たとえば国家総動員法によつて動員されました方々で、たとえば爆死をいたしました徴用工だとか、学徒挺身隊だとか、あるいは女子挺身隊の諸君、こういう方々には、御承知のように、ただ援護法によりまして、三万円の弔慰金が出されているだけであります。そのほか何にも出されておりません、あるいはまたさらに総動員法で徴用せられて動員せられたという諸君で、結核になつて帰りましたり、あるいは内地で動員せられました召集兵等で、結核にかかられましてなくなつたとか、あるいは家へ帰つてなくなつたとかいう方々に対しましても、ほとんど何もなされていない、そういうようなことであれば、この恩給法改正は片手落ちではないか。でありますからもつと全面的に全国的であるという観点を徹底的に考えて、少くとも国家が命令でもつて、あるいは無理に本人の意思にかかわらず微用いたしたものの損害は、戦死者の遺族あるいは傷痍軍人の方々と同様に見るべきで、それが落ちておるところに非常に片手落ちなところがあると思うのでありますが、あなたの御意見はどうでありますか。
  38. 高木三郎

    ○高木公述人 ごもつともなところでありまして、実は特例審議会におきましてもその点を取上げていろいろ審議をいたしたのであります。しかしこの点につきましては、先ほども申し上げました通り、特例審議会の権限が軍人恩給の復元ということに限られておりまして、その他の分に及ばないということと、いま一つは、それらの方々が適用受をけます根本の法規を異にしております。軍人軍属等につきましては恩給法の適用を受けますが、その他の方々は共済組合その他のそれぞれの法域が違うわけであります。そこでたとえば徴用船員のごときは、ほとんど軍人と同じあるいはそれ以上であると言つてもいいと思うのであります。船団に乗りまして戦地に行つた船員あたりは、たまたま民間人であつたというだけであつて、その危険の程度においてもその他のすべての点において、私どもやはり軍人と同一視すべきものだと思うのでございますけれども、たまたま身分が軍人でないこれらの人に対しては、まことに私ども同情にたえないと思うのであります。そこで特別審議会といたしましては、それらの方々、徴用工とかあるいは船員とは、応召者というようなものにつきましては、それぞれの法の法域において、恩給法と大体同一比率のものを給与さるべきである、こういう勧告をいたしております。従いまして厚生省所管においては厚生省所管、運輸省所管においては運輸省所管の法規を御改正になりまして、権衡をとられることが必要だろうと考えております。
  39. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまひとつ高木さんにお伺いしたいのでありますが、先ほどお話のように、国家財政が非常に貧弱であるというようなことから、しなければならないところをできないという実情にあるのでありまして、そこにある意味では不徹底な軍人恩給復活ということが行われて来るわけでありますけれども、同時に国家財政が非常に貧弱であるという観点からいたしまして、たとえば先ほどの恩給の理論でありまする経済獲得能力の填補、損害填補、あるいはまた保険の理論でありまする危険の多数者による分散、あるいは生活保護におきまする国家扶助の救済というような、いろいろな考え方のものが今日雑多にあり、その給与の基準その他も実に雑多である。先ほどこれは近藤先生もおつしやつたようでありますが、従つてこういうものを一本にいたしまして、進んで社会保障の理論でありまする、一口に申しますれば全国民の平等な防貧、という言葉ではちよつと無理かもしれませんが、いわば防貧というような言葉によつて表わされますような、そういうものを一本にして、貧弱な国家財政の持ち来しまするいろいろな不公平をやめて、そうして全国民平等な、そういうような生活の困窮というようなことを予防する、そういう態度に出るべきだと思うのでありますけれども、その点社会保障に対しまするあなたの考え方ちよつと私は同感しかねるのでありますが、そういうような一本にして行くという考えはどうでありますか、あなたの御意見を伺いたい。
  40. 高木三郎

    ○高木公述人 その点については、実は私もしばしば私の意見を発表いたしておりますが、私の考え方は、先ほどもちよつと申しましたように、社会保障制度審議会の、年金という形式的概念をもつてすべてのものを統一しよう、こういう考え方自体が誤りだと思う。これはむしろ不平等なる公平だ、こういうふうに考えるわけであります。それは先ほども申しました通り、保険には保険の理念があり、共済組合には共済組合理念があり、恩給恩給理念がある。それぞれの立場において違つた理念のもとに発達しました制度を、年金であるという考え方をもつて一つにまとめようとするところに非常に無理があると思うのであります。従いまして社会保障制度審議会の先般の答申を拝見いたしましても、私どもから申しますと、非常に矛盾があると思うのであります。と申しますのは、やはり根本における考え方自体が違うんじやないか、恩給立場においては、先ほど来申しておりますように、雇用者と被雇用者の関係、それから共済組合の場合におきましては、これは共済組合員という一つのグループ内におけるミユーチユアル・エード、保険の場合においては、これはまつたくそういう関係を無視されたところの不特定多数人の危険の分散である、こういう根本の理念の違つたものを持つて来て、たまたま結果的に出て来るのが年金という形で出るから一本にしろ、こういう考え方自身に私は誤りがあると思う。従いまして今後におきましても私は、恩給制度というものは十分取上げなければならない問題である、国家公務員法が明らかに規定しておりますように、今後におきましても公務員に対する恩給制度というものは、おそらく廃止できないものだと思う。もしこれを廃止するということになるのでありますれば、これも社会保障制度審議会が言つておるのでありますが、私どもの言つております理論の根底になります獲得能力に対する損害の填補と、さらにその前提としましては、その在職中における給与のことが問題になると思うのであります。在職中において、将来における消極的の獲得能力喪失という部面がまかなわれておるとすれば、その獲得能力喪失に対して損害を填補するという根拠がなくなる。そこで現在の給与がはたしてそういうものを含むのかどうか、これが前提だと思います。ところが社会保障制度審議会の答申によりますと、公務員の給与ベースは現在でも一般の給与ベースよりも低い、だからそれを上げるべきだということを言つております。もし上げて同じになるならば、私は御説の通り、全部が社会保障で行つてもいいものだと思います。従いまして極端な場合を言えば、恩給制度を今この場合から取り去つた場合においては、公務員はさらに世間並の給与をくれ、あるいは世間並以上の給与をくれということを要望されるのではないか、そういうことを考えますと、私ども恩給制度の美点というものはどこにあるかということからいつて、あとの百より今五十というような公務員の観念というものを捨てさせるべきだと思う。これは私ども明治時代の人間でありますから、そういうことを考えるのかもしれませんが、過去における公務員はもつと仁義というものを持つてつた。従いまして軍人でもそうでございます。軍人の待遇というものは文官よりもはるかに低かつた。低かつたために恩給というものをよけい出しておつた。また教職員にしても同様なんで、教職員は一生涯、小学校長として奉仕する。天職だとして奉仕する。従つて在職中の給与は薄いが、老後において十分待遇しなければならぬというので、教職員に対する特別加給の制度があつた。ところが現在はどうかというと、給与ベースが上つて一般公務員とあまりかわらない状態になつてしまつた。かわらない状態とすれば、それを根拠として加給する理由がなくなると思う。それでありますから、恩給制度を論議する前に、まず前提として給与制度というものを考えるべきじやないか、その上において初めて社会保障制度によるかどうかということを決定すべきではないか、こう考えます。
  41. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ありがとうございました。  それで今度黒田さんにちよつと伺ひたい。先ほど恩給は財産権だというお話がありましたが、これを軍人恩給の場合にお尋ねいたすのでありますが、御承知のように、今度の戦争で全国民が非常な打撃を受け、国内の都市もほとんど全部焼き尽された、全財産を失つた人々がほとんどだと思う。中には農地法等によりまして先祖伝来のものを無理やりに出させられた人々もある。いろいろな人々がございますが、そういう意味で今回の敗戦ということは、亡国とまでは行かないにしても、大革命であつたわけであります。過去の権利というものはほとんど失われた。もちろん文官恩給のように存続するものもございましようし、そういう意味で、財産権という立場から軍人恩給を主張なさる根拠は弱いのではないかと思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  42. 黒田明

    ○黒田公述人 お答えをする前に、先ほどの公述でちよつと申し忘れましたのですが、指一本だから軽傷だというその輿論に対しまして、それは決して軽傷でないというために、七項症から四款症までの実際傷を負うた方がここに来ておりますので、あとで先生方にごらんになつていただきたいと思います。  ただいまの財産権の問題につきましてお答えいたしたいと思います。私は傷痍軍人としての法律をやりまして、少くとも現行恩給法の第一条には、恩給権利である、こういう明文がありまして、少くとも私たちは戦地におもむく前には、現行恩給法によつて私たちの爾後の家族の生活とか、自分たちの生活に対する裏づけ保障をとつて私たちは戦地に行つたのであります。従つて今日私たちが傷病恩給でいただきますものは現金でありまして、私たちの生活保障するものであれば、私は個人的な意味から言いましても、これは私たちの財産権であると認めております。またそう信じております。そういう見地から私たち傷痍軍人のもらう恩給は、財産権であるというところの趣旨を申したのであります。
  43. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちよつと関連して……。財産権の侵害という問題についてでありますが、ちよつと黒田さんに御見解を承りますが、たとえば広島、長崎の原子爆弾で自己の責に帰すべからざる原因によつて国家のために原子爆弾でかたわになりました人、それから個人の財産権ということになつて来ると、在外資産を失つてしまつた人、それから空襲でからだはやられなかつたけれども財産を侵された人も、すべて国家のために財産権を侵害されたということに御解釈になりますか。
  44. 黒田明

    ○黒田公述人 ただいまの御質向は、空襲によりまして個人の家だとか財産あるいは尊い自分の生命をなくした、あるいは引揚者が在外資産を向うに置いて来たというその財産権のことを申されておるようでございますが、私はもちろんこれも財産権であるということを認めます。従いまして広島の戦災復興に対しましては、国家といたしましては過去七年間にわたりまして、また今後長い将来におきましても、私は重大なる決意を持つてこれが復興にあらゆる施策を講じておるものと考えます。それからまた広島、長崎におきましての多数の非戦闘員の生命財産に対するこの問題に対しては、全世界の輿論はこれに対して痛烈なる批判を加え、今その結論も出ようとしておる段階であると私は思います。少くとも非戦闘員に対して原子爆弾の一発によつて与えられたあの人道的なことを無視した行為に対しては、各世界の輿論がこれに対してはつきりとした結論を出すと思います。そういう見地から私は国家の戦闘行為によつて与えた個人の家とか屋敷とかあるいは生命その他財産に対しますところの損失は、当然個人の財産権の侵害であるということを確信して疑いません。
  45. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうするともう一つつ込んで伺いますが、今あなたのおつしやつたような財産権を侵された人々が、国家的施策によつて償われない私たちであるということを主張して、単独立法なり予算的裏づけなりでもつて政府にその戦争犠牲者の一人として迫るとしたならば、これはやはりお認めになりますか。
  46. 黒田明

    ○黒田公述人 私は本日最初にお断りをいたしましたように、日本傷痍軍人会の代表として公述いたしておりますので、私個人においては、傷痍軍人の代表でなしに自分個人の意見でございますが、そういう場合において私は当然その本人の財産権は認めていいと思います。
  47. 稻村順三

    稻村委員長 午前中はこの程度にいたし、午後一時半に再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  48. 稻村順三

    稻村委員長 これより再開いたします。いろいろな関係委員出席は非常によろしくないように感ぜられまして、お気の毒ですけれども、土橋勇逸君からお願いいたします。
  49. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 元軍人関係恩給は、先ほど高木さんからも詳しくお話がありました通り、戦死者の遺族と戦傷者とが主体であります。従つてこの軍人恩給法という言葉がいかにもふさわしくないのでありますが、従来からの関係上やむを得ず使われておると思います。だがそれに要する予算が、いかにも生き残りの軍人、すなわち普通恩給受給者のためであるかのごとき新聞記事などもありまして、非常に誤解を招き、また国民感情も芳ばしくございませんで、私ども立場を非常に不利にしておることが事実であります。たとえば恩給法のごとき、私どもは厳然としてなお効力を持つておると考えておりまするけれども、この点に関してはなはだあいまいな状態に置かれております。今日に及んでも効力があるかのごとくないかのごとき生殺しの状態にあるように思われるのであります。もともと軍人恩給停止ということが、国家の意思からではなく、まつたく勝者の権力の発動によつたものであるという事実を考えますれば、よしんばこれが死にかかつているにいたしましても、これを生かすくらいなことは何でもないことであると考えておるのであります。  その次は階級の問題、これも午前中いろいろ御議論があつたようでありますが、一般公務員のように、何級とかいうふうになつておりますれば、一向問題にならないものであると私どもは思うのであります。しかしながら昔から階級をもつて恩給法基礎にしております関係上、他に適当な表現もありませんので、やむを得ず使われておると思うものであります。でありますから、この階級退職時の所得を現わすところの一つの代名詞にすぎないというふうに、軽くとりさえすれば、そうやり玉に上げる必要もないかと考えておるのであります。もつとも退職時の所得ということを意味するのでありますから、恩給基礎をなすものでありまして、従つてどもとしてはこれに重要なる意義を認めるものであります。これに関連いたしまして、上に薄く下に厚くという議論が行われておるようであります。これはごもつとものことで、私どもも何ら異存はございません。だが今度の法令を見ましても、たとえば一般公務員の上の方と下の方との割合は、上が下の十三倍強になつておりまするのに、旧軍人関係におきましては九倍弱であります。でありまするから、この要望はすでに実現せられておるものと私どもは信じております。なおこの点に関しましては、お手元に表を差上げてあるはずでございますから、それでごらんを願いたいと思います。  その次は、社会保障制度の問題でありまするが、これについては午前にすでにお話が済んだようでございますから、私は省略いたします。但し私ども考えといたしましては、すべてのものが一率に社会保障制度で行けるような時代が来るならばともかく、さもないとすれば、ひとり軍人恩給だけを社会保障制度に持つて行くということには大いに反対したいのであります。  その次は、文武官均衡という問題でございますが、私どもがこれを強く叫びます結果が、一般公務員の方々に不利を来すというようなことがありましては、それは私どもの本意ではございません。しかしながら以下述べますように、いろいろ均衡上あまりにひどいではないかという点が数々ございまするので、この点をよく御考慮をお願いいたしまして、今すぐとは申しません、そのうちに許す時期が参りましたならば、逐次にこの均衡を保たせるようにお願いしたいのであります。  その次は、国家予算と申しますか、国家財政、私ども国家財政などはまるで眼中に置かずに、ただがむしやらに自分かつてなお願いをしておるつもりではないのでございます。またある程度の犠牲は忍ばなければならぬことを覚悟しております。その犠牲の一端をお話申し上げますと、恩給法特別審議会の答申においてすら、昔の恩給額を答申当時のベース・アップに換算いたしたその金額よりも半分以下であります。そうして政府の案ではさらにそれを一割強の減額となつておりますし、今度の法案では所要額の三分の一であります。二分の一どころではない、三分の一であります。言いかえるならば三分の二の犠牲を忍ばなければならないのであろうかという状態にあるのであります。従つてどもがいろいろ不満な点があろうということは皆様の御推察にかたくないと思うのでありますが、一々これを取上げていましてもきりがないことでございますし、さしあたり相当重要な問題で、しかも下級者に関係があり、またこのくらいの程度ならば何とか実現ができるのではなかろうかと思われるような事項に関しまして少し申し上げてみたいと思います。  第一は、戦死者の扶助料、すなわち今度の法案公務扶助料となつておる問題であります。冒頭に申し上げました通り、恩給遺族を主体とする以上、その経費の捻出ということになりますれば、勢いこの公務扶助料に手をつけざるを得ないものがありまして、今度の法案でもそれが相当に強く現われているように思うのであります。そうしてこの公務扶助料は、一般公務員と同様にするということにはなつておりますが、法律施行後六箇月間はそのままであるということになつておりますので、一般公務員の方の公務扶助料は昔同様上も下も一律に普通恩給の四倍、すなわち主人が生きておりましたときの恩給の二倍ということになつております。これに対して旧軍人側では上の者で恩給よりもやや下わまつており、下の者でも恩給の三割くらいの増加にとまつておるようであります。かような状態でありますから、この点も十分お考えつて、特に下級者の扶助料が月額二千円程度でありまして、はなはだかわいそうでございますから、この点この額をお上げ願いたいと思うのであります。それもなかなかできないということでございますれば、十億でも十五億でもよろしゆうございますから、増額をして下級者遺族に潤していただきますならば、それらの遺族の喜びはさだめし大きなものであろう、思うのであります。  第二は、傷病者の恩給の件であります。これは先ほど黒田さんから詳細にお述べになつておりますから、私がここで繰返す必要もございませんが、やはりこれも一般公務員の方は、昔と同様おもらいになり、軍人だけが年金ではなくして、一町恩給ということになるのでありますから、何とかこれをしていただきたいと思うのであります。特に第七項症の人のごときは増加恩給がなくなりますならば、自然に普通恩給までなくなりますので、この第七項症だけでもぜひ元の恩給復活していただきたいのであります。  第三は、加算の問題であります。加算一般公務員軍人もともになくなるとはきめてございますが、やはり一般公務員の方は過去にさかのぼりませんので加算が残つておりますその加算廃止の理由としては、たとえば内地の戦場化だとか、あるいは調査が困難とかというような事柄があげられておりますが、内地の戦場化のごとき、これはよくわかりますけれども、軍律によつて命をさらす位置に勤務をしておるという特異性を考えますれば、ある程度加算というものは認めるべきが至当ではございますまいか。ことに日清日露の役に関係した古い方々まで加算がないということは、これはどうしても私どもには理解ができないのであります。調査の困難、これもごもつともだと思います。しかしながら、加算廃止のために失格しようとする人たちは大部分若い人でありまして、当分恩給はいりません。でありますから、調査には十分年月がありますし、また生きておるものでありますから、調査もそれほどには困難ではなかろうと思うのであります。国家財政見地上そういうふうな金はないとおつしやることはよくわかります。しかしここで考えなければならぬのは、いかに国家財政と申しましても、百四十五万人という厖大なる人員が加算廃止のために権利をまつたく失うというゆゆしき事件が起るのであります。いかがなものでございましようか。国民に対して信義を重んずる国家として、いやしくも一旦約束したことをほごにするようなことは絶対にしないということをお示しいただきまして、たとえば既裁定考で加算がないために恩給資格を失うという人のためには、特別の算定法が規定せられております。その規定でも適用するようにして、何とかこの百四十五万人の人を救つていただきたいと思います。そのやり方についてはいろいろございましようけれどもやり方によつては若い人でありますから、当分予算はいりません。またその人たちのために一時年金が計算をされております。その一時年金は両三年いらなくなるのでありますから、当分は予算が浮くことになるのであります。そしていよいよ予算を実際いただく時期が参りましても、初めの五年は半額、次の五年は七割、そしていよいよ全額をもらうころになりますれば相当に老年者はなくなつておるのでありまして、予算全体から考えますれば、それほどふえるようなこともないではなかろうかと想像しておるのであります。どうかこの百四十五万人という失格者を何とか救つていただくようにお願いをいたしたいのであります。  その次は、加算がなくなるために恩給資格を失いまするので、それを救う手段として連続勤務七年以上の者には一時年金を与えてこれを兵まで及ぼすということであります。もつとも兵で七年間もおつたなんというような人はおそらくきわめてまれでありましよう。一般公務員の方にはやはり従来とかわりありませんので——かわりありませんと申しますことは、さかのぼりませんので、依然権利が残るのであります。そしてそれは三年以上となつております。でありまするから、どうかこの三年間、やむを得なければ五年くらいにしていただきたいと思うのであります。ところがこれがためには相当の予算を要するということでありますから、あるいは先ほど申し上げましたような方法で、加算を認めるというような処置の方が適当であるかもしれません。その次は連続七年以下の勤務の者は、恩給金額の算定上ではただ奉公ということになるのであります。たとえば七年間連続して勤務して一旦やめて、そしてさらに五年間連続して勤務をいたしました下士官は、合計十二年になるので、普通恩給の資格ができるのでありますけれども、あとの五年は帳消しになりまして、前の七年分だけの一時年金しかいただけないのであります。これも一般公務員の方には一年以上となつておりまして、あまりに権衡がはなはだしくございますから、せめて三年なり五年なりに下げていただきたいと思うのであります。  その次は戦犯者の問題でありますが、戦犯で拘禁中の者には恩給停止するという法案であります。その停止の理由については、以前は未帰還者にも一切恩給支給しないから、均衡上拘禁者だけにやるわけに行かないということでありましたので、一応納得しておつたのでありますが、本法案では未帰還者にも恩給がいただけるようになつておりますし、そのうちには、向うで拘禁中の人もあるはずでありまして、今度に逆に均衡がとれない結果になつております。またこの家族の人たちも非常にあわれな状態にある者が多いのでございますから、公平に恩給がいただけまするよう皆さんのお骨折りを願いたいのであります。またその刑死者及び獄死者はともに公的の理由がもとで命を捨てた人でありまするから、公務死亡者としての取扱いがかないますようぜひお骨折りを願いたいのであります。  以上が大体私どものお願いのおもなるものでございますが、ちよつとここでつけ加えておきたいと思いますことは、ソ連の恩給制度を調べた人が先般中国から帰つて参りました。それによりますと、ソ連でも軍人恩給並びに遺族扶助料は社会保障よりも優遇せられておりまして、軍人恩給のごときも、やはり退職時収入と勧続年数をもととして計算せられており、また従軍加算、航空加算あるいは潜水艦加算のようなものも認められております。その上皆さん御承知の通り、わが国においては退職時所得の五割以上はあげられないということになつておりますものも、八割まで支給することができるようになつておるようであります。ソ連のようなと言つたらおかしゆうございますが、ソ連でも恩給制度というものがあるということは、本問題の御審議上に御参考になろうかと思いましたので、ちよつとつけ加えておきます。  いずれにいたしましても私どもは毎日、遺族、未亡人あるいは先輩の方々にお目にかかりますと、必ず今度は恩給は大丈夫でしようかという質問を異口同音にされるのであります。それに対しましては、大丈夫ですからいましばらくお互いにがまんいたしましようと言うて、お答えはしておりますものの、八年間の苦闘に精も根も尽き果てて、恩給をいただく日を待ちこがれておる現状であります。またまことに申し上げにくいことではありますが、待ちくたびれてこの世を去つて行く幾多の人々、その中には、恩給はまだかと言つて息をひきとる人さえもあるというようなことを耳にいたしましては、私どもとしては居ても立つてもおられない深刻な問題であります。
  50. 稻村順三

    稻村委員長 公述人に申し上げますが、時間が迫つておりますので、簡略に願います。
  51. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 でありますから、これ以上恩給問題が延びましては一大事であります。やむを得なければ現法案のままでもいたしかたはございませんが、一日も早くこの恩給法を通していただきまするように、関係者一同にかわつて切にお願いする次第であります。  これで終ります。(拍手)
  52. 稻村順三

    稻村委員長 午前中の例にならいまして、特に重要な御用がおありでない限り、続けて一応予定の方々全部の公述をお願いし、あとで質疑することにいたします。次に森田俊介君にお願いいたします。
  53. 森田俊介

    ○森田公述人 私は日本遺族会の森田俊介であります。恩給法の一部を改正する法律案について公述いたします。私は日本遺族会を代表いたしております関係から、主として遺族扶助料及びこれに関連した事項につきまして、所見と希望を申し述べたいと存じます。  第一に、御配付いただいた参考書類中の、この法律案の提案理由の説明にもありますように、昭和二十年十一月二十四日連合国最高司令官からの恩給及び恵与の覚書に基く、昭和二十一年二月一日勅令第六十八号をもつて、旧軍人軍属及びその遺族恩給停止または制限されて今日に至つたのであります。そしてわが国の独立を見るに至りました今日は、旧軍人、軍属並びに遺族恩給停止制限はただちに解除復元せらるべきであり、政府さきに、恩給法の特例に関する件の措置に関する法律を制定公布いたしまして、昭和二十一年勅令第六十八号の効力をさらに昭和二十八年三月三十一日まで延期し、一面において、昭和二十七年六月には、総理府に恩給法特例審議会を設け、同審議会は調査審議の結果、国家財政現状及び国民感情動向等を勘案し、旧軍人軍属及びその遺族に対して相当の恩給を給すべきものと認め、昭和二十七年十一月二十二日政府に対し建議いたしておるのであります。これらの経緯にかんがみまして、今次の戦争に倒れました戦没者の遺族に対する公務扶助料は、これを復元支給せられるべきことは、すでにかたく国家的に約束せられておるものと考えられるのであります。  今回の法律案は、この建議の趣旨を尊重し、これら旧軍人、軍属及びその遺族に対し、かつてこれらの人々と同様に恩給を給されていた公務員と、恩給の取扱いの点において差別しないことを目途としつ、本年度予算の許す範囲内において恩給を給すべく、この法律案が提案せられておるのであります。今次の戦争におきまして、その親を、夫を、また最愛の子を戦野に失い、一家の支柱をなくした百五十万世帯に及ぶ遺族は、精神的にいやしがたき大なる打撃をこうむつたばかりでなく、終戦後八箇年の長い間、社会的冷遇と経済的な窮迫のために耐えがたき苦難の道をたどり、この法律の実施を鶴首、待望しながらも、この法律の実現を待たずして、遂に死没して行つた老人も数知れずあるのであります。また現に経済的困窮のために、一家四散して辛うじてその日の生活を過しておる気の毒なる人々も、少からずあるのでございます。これらの気の毒なる境遇にある遺族の人々が、この法律のすみやかなる制定公布を見て、これが実施されることを希望しておりますことは、前公述人の御公述になつた通りでございます。国会においても慎重御審議をいただきまするとともに、この法律の最もすみやかなる成立に御尽力くださいますよう、切に念願する次第でございます。  第二に、配付せられました提案理由説明の中にもございます通り、また先にも申し述べました通り、恩給の取扱いの点におきましては、旧軍人、軍属及びその家族と、一般公務員と差別しないことを目途としつ云々とうたわれておるのでございますが、法律案附則別表第一の仮定俸給年額は、昨年の十一月二十二日に恩給法特例審議会建議せられました仮定俸給年額よりも低くなつておるのでございます。この恩給法特例審議等が建議いたしておりまする仮定俸給年額そのものが、国家財政とにらみ合された結果でありましようか、すでに相当低いのでございます。さらに法律案として提案せられておりまするのは、その答申案よりも下まわつたものでございまして、公務員の旧文官の仮定俸給年額に比して、四号俸程度低くなつておるのでございます。元来仮定俸給年額は、旧軍人、軍属及びその遺族に対して給する恩給扶助料の算出の基準となるものでございます。この大切な基準において、文官の場合に比して非常に低くなつておりますことは、公務員の差別をしないことを目途とするという前述の御趣旨にも、まつこうから相反するものと思われるのでありまして、いかなる理由に基くか存じませんが、おそらくは国家財政現状を考慮せられてのことと察せられるのであります。根本において、かくのごとき差異を包蔵しておりますことは、この法律案提案の趣旨とも合致しないのでありますから、これは今回できないならば、最もすみやかなる機会に是正さるべきものと思う次第でございます。少くともさしあたり下級の元の兵の階層——兵長、上等兵、一等兵二等兵の四つにわけてございます兵の階層の仮定俸給年額は、兵長の線に統一して、下級者厚遇の実を示されたいものと切望する次第でございます。  第三に、遺族に給せられる扶助料、ことに公務に倒れました戦没者遺族に給せられる公務扶助料におきましては、普通扶助料に一定の倍率を乗じて算出し、公務に倒れた者の遺族に対し高率に補償することになつていたのでありまして、この倍率こそは公務扶助料の重要なる要素をなし、これあるがためにこそ公務扶助料の意義があつたのでございます。しこうしてこの倍率は、昭和十三年、十七年、二十一年と、数次にわたる改正を経たのでございますが、前述の勅令第六十八号による停止前においては、高級者は二十四割、下級者は五十一割であつたのでございます。今回のこの案によりますると、十七判ないし二十七割に引下げられておるのでございます。現行公務員特殊公務の場合の扶助料の倍率は、一律四十割になつておるのでございます。かれこれ比較いたしまして、かくのごとき倍率の著しい引下げは、公務扶助料の本義にも沿わないばかりでなく、今次の戦争のようなまことに大規模の戦争におきましては、社会の各階層の人が多数動員せられ、前途有為の若者が戦場で死亡いたしておる実情でございますので、この遺族の中には下級者の遺族として、いつまでも立ち直る機縁をさえ失わしむることになり、また普通恩給普通扶助料との均衡上からも、現行文官特殊公務の場合の扶助料とのつり合いからも、実情に合わないものと考えられるのでございます。今回改正されんとする法律案附則第二十四条の規定の読みかえによりまして、改正後の恩給法別表第二号表から第五号表までの規定を適用する場合において、二十七割の倍率を適用せられる者が、公務員の場合においては七万六千八百円以下の者であり、遺族の場合におきましては五万八千八百円以下の者になつておるのであります。かくのごとく、遺族扶助料は二十七割に引下げられたことそれ自体が、少しく考慮を要する点がありまするのみならず、読みかえ規定において再度不均衡を生ずることは、この公務扶助料において事実上再割引をされたような結果を招来するのでありまして、これは国家公務に殉じた者に対しましてこれを尊重し、道義の上からもこれを厚遇すべきであると信じますので、この倍率の問題は、この条項はまことにささいな点のようでございますが、上述の点にかんがみまして、すみやかに是正されるよう、御配慮を願いたいものと考える次第でございます。  第四に、恩給法第四十八条によりますれば、公務による疾病はマラリヤ外二十二種類の病気に限定せられておるのでございまして、その多くはいわゆる急性の伝染病または特殊地域の風土病に限られておるのでありますが、今次の戦争のようにその規模も大きく、かつ長期に及ぶ、しかも戦場は非常に広地域にまたがつております場合には、上述の二十三種の病気で死没した者でなければ戦病死として取扱わないということになりますと、実情に合わないことが数多く出てくるのではないかとおそれるものであります。長期にわたる軍務に服し、過労のため結核その他呼吸器系統の病気になつた者、戦地の状況によつて物資欠乏して長く困苦に耐えて栄養失調で倒れた者等で、上述の二十三種の病気で死亡したものと何ら選ぶところのない者、いな、むしろそれ以上に気の毒な状態において死亡した者さえ想像されるのであります。しかも公報には明らかに戦病死として通知を受けている遺族が、もし病気の種類が該当しないということで恩給法の適用が受けられないとすれば、何としても遺族としては納得のいかない疑念を持つことと思うのであります。また戦地で罹病し、後送され一旦は帰郷し、後に病気が悪化して死没したいわゆる在郷死の人、及び戦地と指定されていない内地にあり、または外地に駐屯していて罹病し死亡した者が、その地域が戦地に指定されていないため戦病死に該当しない等のことがあれば、これまた同様に関係遺族はとうてい合点の行かない疑念を持つと思うのであります、ことに現在までは、広く戦没者遺家族はすべて恩給法の適用を停止されていたので、不満足ながらあきらめている状態であつたのでありましようが、今回はこの恩給法の一部改正で、ある者はその適用を受け、ある者はその適用を受けられないというふうに、そのけじめがはつきり現われて来ることになると思います。そういたしますと、今まではあきらめておつた人々が、さらに強い疑念と不満を抱くようになると思うのであります。これらの点についてはすみやかに調査研究いたしまして、恩給法に従来なかつた新しいものを盛り込んで、今次戦争の実相に照し、常識上不合理の生ずることのないよう措置いたされたいと強く希望申し上げる次第でございます。  第五に、現行恩給法には、父母、祖父母が婚姻をした場合には、扶助料の受給権を喪失することになつております。従前は、父母がその家を去りたるときは失権することになつてつたと承つておりますが、戦後総司令部の勧告にもあり、民法戸籍法が改められ、家という御念が廃された、このことに関連して、父母が婚姻したときは失権するということに改められたやに承つておるのでありますが、現状におきましては一人息子が戦死し、その後その母も死没し、残された年老いた父が一軒の家を立てて行くためには、そうするよりほかに方法がないので、後添いをもらつた場合には失権するということは、まことにお気の毒であり、かつまた実情に沿わない点があると思われます。ことに同じ後添いをおもらいになつていても、一方は届出てなく、同居人その他の名義となつており、他方には届出ておるために、一方は失権しないが、他方は失権するというような結果が出るようなことがあれば、まことに不合理と思われるのでございます。この点にも全体からいたしますれば大きな問題とは言えないでございましようが、老い先短かい子供を失つた遺族である両親の心境を考えますならば、ぜひともこの機会に是正いたされるよう要望いたしたいと存ずる次第でございます。  第六には、終戦後八箇年の空白があり、その間に遺族は精神的な打撃と経済的な窮乏に耐えながら苦難の道をたどつたのでありますが、とうていしのいで行くことができないので、戦没者の妻であつた者が一旦は再婚して他家に縁組したがうまく行かず、いくばくもなくまた旧の状態に復帰しているという人も少くないのであります。また子の場合でも、父が戦没したので親戚その他に引取られたが、引取つた親戚にそれを養う力がなく、また旧の状態に復帰し、母とともに他家に縁組したが、母が田に復帰したのでまた一緒に旧に復帰しているということもあるのであります。このような場合に、一旦再婚または養子縁組したからといつて、ただちにこのこと自体をもつて恩給受給権がなくなるということは、八箇年の空白と考え合せて、酷な場合が相当あると思うのであります。すでに旧の状態に復帰している者については、受給権の喪失について十分慎重なる御考慮が望ましいと思うのであります。
  54. 稻村順三

    稻村委員長 森田公述人に申し上げますが、時間でありますので簡単にお願いいたします。
  55. 森田俊介

    ○森田公述人 第七に、この恩給法の一部改正にあたりましては、今次戦争の実相に照して、従来考えられなかつた新しい事項も取入れて、ことに現行の援護法との関連におきまして十分御審議いただきまして、戦争犠牲者でとり残される者が少くなるように十分御考慮願いたいと存じますことと、この法律案自体におきましても、遺族公務扶助が非常に大きな重点であることをお考えを願いまして、他の事項と十分つり合いのとれる法案になるようにお考えを願いたいと考える次第でございます。  最後に、生活保護法との関連でございますが、生活保護法による保護を受けておる遺族も少くないのでございますが、これは今回の恩給法によつて扶助料を支給されますと、生活保護法扶助停止される、そうして扶助料としていただいたお金がなくなれば、さらに再度また手続をしなければならぬということになり、下級の人々は煩雑な手数を増しただけで実益がないのでございますから、これらはあわせて抜本的に十分御考慮が願いたいと思うのであります。なおこの法が施行せられますあかつきにおきまして、少くとも遺族に非常にわかりやすい簡易な手続で事が運ばれて、しかも長年月を要せずすみやかに証書が交付せられますよう、十分な御配慮を願いたい。かように存ずる次第でございます。  以上をもつて私の公述を終ります。
  56. 稻村順三

    稻村委員長 矢田勝士君。
  57. 矢田勝士

    ○矢田公述人 御諮問になつております恩給法の一部を改正する法律案に対して、私の意見を申し述べさしていただきます。  大きくわけまして二つの問題があると考えております。その第一は旧軍人恩給復活するという問題であります。その理由といたしまして二十一年勅令第六十八号によつて、二十一年一月以降軍人軍属及びその遺族恩給の対象から除外されておる。これが今年三月末で切れるということが一点と、旧軍人軍属及び遺族生活に非常に困窮されて惨状にあるという点、また旧軍人の在職中の給与は、老齢、公務疾病、死亡等に対する補償たり得ない、従つて国家使用者として十分補償を行うべきであるというような点のように承ります。しかしながらこの問題は、非常に重要な問題を含んでおると思うのであります。ポツダム宣言を受諾し、軍隊を解消したことは無条件降伏したということと同時に、世界人類に惨害を及ぼした平和への大罪を国民全体としてきびしく反省し、日本国民がみずからの意思によつて戦争を放棄し、平和憲法を制定した国民感情とも相通ずるものであります。また旧軍人軍属の方々は、元軍人であつたから、あるいはそのような狭い考えで私がこのようなことを申し上げるのではなくて、戦争に対する反省、これへの憎悪感は全国民の問題でありますけれども、遺憾ながら政府の方針としてなしくずしの軍備が行われ、MSA援助を受けてこれを増強しようとする政府の再軍備政策に通ずる伏線ではないかという懸念はおおいがたいものがあります。解体された軍隊の旧軍人に対して、国家への功労とこれに対する報償が既得権であるかのごとく強調されたり、あるいは社会保障的給付を受けることをきらい、国民一般的水準より上げなければならないとする傾向のあることは、まことに注目を要する点であろうかと思います。今や一般国民としての旧軍人の方々は、その生活問題として年金保障の問題も国民的観点で解決をしなければならないと思います。私どもは全国民を対象とした年金問題であるという観点に立ちます社会保障制度で行くか、恩給の方式で行くかということが、まず基本的に大きなわかれ道になろうかと存じますけれども、私は米麦をつくるお百姓に対しても、あるいは産業労務者に対しても、そしていろいろな理由で生活保護を受けていられる気の毒な人々に対しても、これを対象とするためには、社会保障制度でなくてはならないと思います。社会保障制度としての年金の設定をまずこの際行うべきであつて、この中に旧軍人の方々も当然含むべきであると考えます。窮乏のゆえに苦しむ者は、軍人と家族のみではない、戦災孤児、老人、失業者、病人もある、このような病いと貧しさに日々命をすり減らしている人々を、すべて総合的に対象として、この中に旧軍人軍属の家族とともに含めてわれわれは会社保障を要求したいのでございます。国家国民生活権を保障する、これこそは真の行き届いた新しい理念に基いた社会保障制度といわなければなりません。私ども国民という立場からして、今日政府の中に設けられた恩給法特例審議会が、旧軍人恩給復活を称えれば、再軍備政策にさおさす政府はこれをまず取上げ、社会保障制度審議会昭和二十五年、二十七年と再度にわたつて統一的国民年金に対する勧告なり意見を出しておりますが、これが無視されておるということに対する不信感は、同時に政府の時代逆行と、金のかかるしかも戦争への危機をはらむ再軍備政策につながるものではないかという憂慮があるわけであります。そういう観点から、私は軍人恩給復活という方法でなく、社会保障制度で行くべきであると考えるものであります。この際こういう機会でありますればこそ、すみやかに国民年金制度の確立を急ぐ絶好のチャンスであるともまた言えるわけでありましよう。四百五十億はこれを社会保障制度全般にまわし、先ほど言いましたように、広く農漁民にも均等にわかつて行くということは、営々として働かれる認められざる産業功績を認めて、年金の道を開き、産業労務者にも厚生年金のすみやかなる改善を行う財源に向けるべきであると存じます。ここに初めて新憲法の精神が実現して、国民は法のもとに平等となると言えるでありましよう。  第二の問題は、軍人恩給復活によつて一般公務員に対する諸条件のしわ寄せということであります。  その一つは、私どもはもちろん基本的には、今申し上げましたように、国民年金という観点に立つて社会保障制度で行くべきであると申すのでありますから、単に既得権であるとか、あるいは公務員一般国民以上の水準に置けと申すのではないわけでありますけれども、まず加算制度の問題でございますが、これは現行恩給法の三十八条に一項から三項にわたつて書いてございますように、人里遠い山間僻地に公僕として勤めておる公務員、不健康地あるいは不健康業務、特にガスであるとか、薬品であるとか、細菌の研究、製造、あるいは機関手あるいは坑内現業、癩、結核の関係業務、これらの国民の下積みになつて非常な苦しい条件であるいはおの気な条件の中で仕事をされておる人々が公務のゆえに身体的にあるは精神的に多大の影響をこうむつておる点を、軍人恩給復活のゆえにこれをなくすべきではないと思うのでございます。  第二の点は、勤続加給の廃止の点でございますけれども、その一つに外務公務員に対する補償の道、あるいは教職員、警察、監獄職員の特殊性等によつて、ただちに廃止すべきものではないと思うのでございます。現在たとえば義務教育関係においては六四%の保障がされ、高等学校においては五六・三%の保障がされ、一般公務員あるいは国立学校においては四八・六%程度の最高保障であるといつたようなアンバランス、不合理というものは是正されなければならないとは思いますけれども、この加給の必要性というものを私は強調したいわけであります。  さらに第三の問題といたしましては、若年停止の問題でございますが、これは現在の統計上では大体五年ないし七年程度恩給受給年限になつておるわけでありますが、改正案をもし採用いたすとするならば、せいぜい三年足らずくらいになろうかと存じますので、年金という性格が一時金化してしまうのではないかと思います。若年停止も、国民年齢、いろいろな公費員の諸条件等を勘案して再考が願いたいわけであります。そのほかいろいろな改正点が示されておりますけれども、増加恩給の七項症と、傷病年金の傷病者を、昭和八年九月以前と同じように国家財政のゆえで、一時金にするということになつておりますけれども、これも現実問題といたしまして視力が落ち、あるいは聞えなくなつた、関節が不自由である、親指がないとかいつたような、現実の生活資料取得能力を欠くような事情のあることを考えますならば、非常に僅少な一時金というよりも、やはり年金のままに存置すべきであろうと存じます。  改正点については、以上要点について簡略に申し上げましたけれども、附帯いたしまして、私は恩給という、あるいは傷病賜金という、この名の示す概念に疑問を持つものでありまして、これがいかにも恩恵的であり、特権的であるという感じを持ちます。この法律の名前、この給付の事由を、やはり公務員年金という観点からすべきであろうと思いますし、これを拠点として総合的な国民年金制度への拡大の道をはかるべきであると存じます。そのほか、問題といたしまして、雇用員たる公務員、地方公務員にも年金の道を開くこと。奄美大島あるいは西南諸島等、旧国土に在勤しておる人々へのすみやかなる年金の支給開始をお願いしたい。  以上の点を申し上げます。
  58. 稻村順三

    稻村委員長 次は吉原嘉一君。
  59. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 私は傷病程度第六項症の元海軍軍人でありまして、昭和二十年八月十四日、飛行機に搭乗作戦中、顔面全身に戦傷をうけたものであります。目下全国身体障害者団体連合会本部事務局員として勤めております。  恩給法復活に対しましては、われわれ傷痍軍人として、終戦以来多年翹望していたところでありますが、この度の措置にまで到達しましたことは、まことに感謝にたえないところであります。われわれは終戦当時、総司令部の意向により団体組織を許されなかつたので、傷痍軍人のほか一般身体障害者を含めた全国身体障害者団体連合会を自由党の援助により組織し、爾来七年この恩給復活運動に挺身して来たものであります。  昨年平和条約締結とともに、旧軍人軍属遺家族に対する恩給法復活の議がもち上りましたが、わが国内外多事の際、ことに戦後ほうはいとしてみなぎつております反軍恩潮のさなかにありまして、恩給復活の正当なることを強調されまして、この度の措置にまで推進してくださいました政府並びにこれが審議諸機関の熱意と努力に対しましては、満腔の敬意を払うものであります。  さらに一歩を進めて該法案が順調に国会を通過いたし、幾百万に上る受給者の上に一日もすみやかに、あたたかい光が差込むように念願いたすものであります。  該法案内容の詳細につきましても、なお幾多論議の的となる点があると存じますが、わが国現下の財政状態から考えまして、この辺のところがまず妥当ではないかと一応われわれも満足とするところであります。但し次の諸項は、傷痍軍人立場として、是非御考慮を願いたいところでありまして、簡単にその要旨を申し述べます。  第一に申上げたいのは、増加恩給階級差撤廃に関する希望でございます。要点を先に申し上げますと、増加恩給は、負傷程度による等差一本にして、これに在役中の階級差をつけることを撤廃してほしいということであります。  以下その理由を申し上げます。恩給受給者を一個の人間として見た場合、その人の社会的地位、その他いろいろなデータから、これに等差的普通恩給支給するのは、現在の社会秩序及びその通念から考えて当然でありまして、一部に唱えられてみるごとく、ひとり旧軍人社会にのみ階級差を圧縮して、これを平均しようとするような思想は、今のところまだ通用しないと思われるのであります。もしそういう概念が通るとするならば、一般文官その他の俸給ども、これに準じなければならなくなる道理でありまして、おそらく共産主義社会においても、そういう通念は存在しないものと愚考いたします。右の様に恩給受給者に一個の人間としての等差的普通恩給支給されてみる以上、その身体の一部の損傷に対する増加恩給は、個々の手や足の損傷程度に応じてのみ、等差を付すべきでありまして、普通恩給と同様な考えのもとに、官等による階級差は必要がないのではないかと存じます。  普通の人間にとつては、身体の各部分の貴重度は、各人ほぼ同等でありまして、俳優や芸人が顔や足に特別の価値を認めて、これに数百万円の保険をかけたりする場合と異つてみるのであります。一個の人間の等差は、その人全体の能力差でありまして、医事的に言えば、主としてその人の頭脳の働きの差と見ることが出来まして、個々の手や足の総合したものと見ることはできないのであります。隻脚にして総理大臣、大政党の総裁たり得る者もあれば、五体揃つてもルンペンをしている者があるようなものであります。その頭脳の働きから生ずる人間としての能力差に対する補償は、普通恩給に織り込まれているのでありまして、個々の手や足の損傷に対してまで、階級差を付けるのは屋上屋を架するように思われるのであります。これら個々の手や足の損傷に対しては、むしろ逆説が成り立つくらいでありまして、片腕のない大将はなお三軍を叱咤することができますが、片腕のない兵は全く役に立たないのであります。また退役後におきましても、おおむね手足の労働をもつて生活のもととする兵の立場にあたる者の方が、頭脳の働きをもつてする大将に比べてはるかに大きく、実に腕一本の価値は両者逆であると言えませう。これらの点から考察いたしまして、身体の各部個々の損傷に対する補償は、下級の者ほど重くしなければならぬという理論も成り立つように思えるのであります。この逆説は別といたしましても、この度の増加恩給の官等差による差別は、ほとんど申訳的のものでありまして、三項症に例をとれば、将官と佐官で年額三千七百円、下士官と兵で三千八百円というほとんど申訳的な差でありますから、それを平均して一律に支給しても、上級者はほとんど痛痒を感じませんし、下級の者は、その増額は大したものでないとしても、その再びは非常に大きいことでありましよう。現状では上級者に大した恩恵を与えないのに、下級者が精神的に不愉快な思いをするだけであります。この点十分ごしんしやくいただきたいと存じます。  第二に申し上げたいのは、増加恩給第七項症を年金として存続することに対する希望であります。増加恩給第七項症を一時金をもつて打切るこのたびの改正案に対し、次の理由からこれを従来通り年金制度として復活していただきたいと希望するものであります。すなわち、従来恩給支給されていた者の中で、このたびの加算廃止に伴い実役定年が恩給年限に達しないものでも、恩給既得権として取得するという考え方を持つておりますが、これと同一考えのもとに、第七項症を従来通りの年金に復活することを望するものであります。  第三に申し上げたいのは、文官との差異を撤廃することに関する希望でございます。おそらく財政上の事情から、審議会案がこのように修正されたものと思われますが、われわれとしても国家多難の折から、今しいて、文官と同等に引上げてほしいとは望みませんが、同じ国家を憂うるという立場から、文官も旧軍人の線まで引下げて、国家の憂いをともにになつていただきたいと願うものであります。文官は公職をしりぞいた後においても、その社会性と関連し職を失うという公算は少いのでありますが、軍事以外に職業的社会と関連の少い軍人にあつては、退職後の職を求めることはきわめて困難でありまして、いまだに多くの旧軍人が確固たる職場を得られずに、ちまたに彷徨している現状は、皆さんのつとに御存じの通りであります。この点からも、少くとも文武官恩給は同等でなければならぬと思われるのであります。もし文官恩給をどうしても今より引下げることができないというはつきりした論拠がありますならば、われわれ旧軍人恩給も当然これと同一でなければならず、今は軍が解体されたからといつて、これのみに犠牲をしいるのは、弱者またはしかばねにむちうつものでございましよう。  最後恩給一般に関する一つ考え方として、左の事項を申し述べたいと存じます。一部の者の中に、旧軍人恩給を戦争犠牲者を救済するごとくみなし、戦争犠牲者は旧軍人のみでないのだからこれを廃止せよという御意見もありますが、われわれも国民の一人として多くの戦争犠牲者が生活苦にあえいでいるとき、旧軍人のみに特定の恩恵を与えることに反対するのにやぶさかでにありませんが、しからば同じ国家公務員である文官恩給に対しては、この際なぜ反対意見が少いのでございましようか。それは恩給制度存続の意義と必要を、国家社会が認めているからでありまして、この点に関しましては、高木前公述人の説明で、すでに御了察のことと存じます。恩給は戦争犠牲に対する補償ではなくして、戦争のあるなしにかかわらず、またその勝敗のいかんにかかわらず、軍人としてといわんよりも、公務員として過去の生活的犠牲に対する補償——コンペンセーシヨンなることは、文官と何ら違わないことを明らかにしたいと存じます。恩給と戦争犠牲者救済とはまつたく別個の性質の問題でございます。世界的社会保障精神の横溢して来た現在、恩給制度を廃して社会保障の線にまとむべきであるという論がありますが、恩給理論として自由世界に通用している、過去の犠牲に対する補償、コンペンセーシヨンとしての恩給と、爾後の生活の恩恵的保障、セキユリテイたる社会保障とは、またその根本理念を異にするものでありまして、両者を混合してはならないと思うのであります。  共産主義諸国のように、揺籃から墓場まで国家保障してくれるかわりに、一国一党の鉄の規則に縛られて、個人一切の自由を奪われている社会と異なり、他の多くの自由諸国のごとく、個人の経済的活動、意思の自由を認められている社会においては、国家公務員対しては、行動の一部に制限犠牲を要求し、その補償として恩給支給することは、国家機関活動の効率を期する上においてぜひ必要な制度でありまして、これを経済的活動に何らの制肘を受けない一般社会人と同等な社会保障の線に統一するということとは、これまたその根本理念において異なるものであります。  恩給が爾後の生活のセキュリティというよりは、過去の犠牲に対するコンペンセーシヨンである適例として、トルーマン前米大統領が在職中何ら生活に困らないのにもかかわらず、陸軍大佐としての恩給月額九十六ドル余をいただいていたという事実を見ましても、両者はその根本理念においてまつたく異なることがおわかりのことと存じます。  以上四項を希望条件として申し添えまして、本恩給法案に賛成するものであります。何とぞ本改正案が一日も早く成立いたしますよう、挙党一致御賛成いただきたいことをお願いして、私の公述を終ります。
  60. 稻村順三

    稻村委員長 次は川原和雄君。
  61. 川原和雄

    ○川原公述人 私は現在国立相模原病院に入院加療中の一患者であります。そうして私がこの席上に立たしていただくことにつきまして、各諸先生方の大いなる御尽力に対しまして、深く感謝いたすものであります。また私は全戦傷病者要求貫徹委員会並びに国立相模原病院患者自治会及び西日本傷痍者連合会の推薦によりまして、この席上に立たしていただきました。  現在ちまたには、つえとも柱とも頼むべき夫を失い、幼児を育てつも、生活の苦しさから、夜の女と化することも余儀なくされた一部の遺族、また不具の身を白衣に包み、生けるしかばねをさらしておる戦傷病者もある今日、これら最大の犠牲者の救済すらでき得ない国家におきまして、健康なる元軍人にこのような恩典を与えることは理解に苦しむものであります。  まして今次大戦は軍人だけが犠牲者ではなく、国民すべてが被害者であり、犠牲者であることを忘れてはならないのであります。そのような恩恵を軍人のみに与えることは、実に不平等かつ不健全なる措置であるといわざるを得ないのであります。日本軍隊は終戦とともに解体され、その影すらも残されていない事実は、憲法第九条において明白にされております。提案理由には既得権の回復のような解説がなされており、当然与えるべきもののように考えておられるようでありますが、これは大きな誤りというべきものではないでしようか。なぜなら職業軍人は統帥権を媒介といたしまして、旧国家との間に雇傭契約を結び、それから起るところの給与条件が生じたのでありまして、この例を会社にとるならば、就業先の会社が破産した状態と同一でありまして、当然この権利も失われたものであると思われるのであります。これをあえて復活することは再軍備への一環としたつながりを持つものであると考えられることも無理からぬことであります。警備五箇年計画が問題とされている昨今におきまして、なお一層国民に戦争を予想させ、再軍備によつて起る徴兵制度を連想させ、国民をして不安なる境地に追い込む原因ともなるものであります。また、対外的にも好ましからぬもととなるものと思われるのであります。  この法案におきましては、すでに消滅したはずの大将以下の階級制度が温存され、上級者には依然として高額な支給がなされており、しかも、支給の対象になるのは加算を認めない実役十二年以上のもので、一時金の対象者においてすらも実役七年という制限を加えております。これは明らかに職業軍人のみを優遇せんとする意図と思われます。その理由の一つは、一般兵士においては、実彼十二年以上の勤続者はほとんどあり得ないことでありまして、支那事変の勃発より起算いたしましても八年、かろうじて一町金の対象にはなりますが、実役十二年にはほど遠いものであります。前回の公聴会に、旧軍人恩給復活連絡会の永持源次氏は、薄給に甘んじて命を投げ出し御国に御奉公したる云々と言われておりますが、一般兵士が受けた給与待遇は、私があらためて論ずるまでもなく御存じの通りでありまして、しかも戦場において、一番生命を危険にさらした者は職業軍人にあらずして、一般兵士であるということは過言ではないと思います。(拍手)また、元恩給局長高木氏は明治時代の俗諺を引用いたしまして、貧乏少尉、やりくり中尉、やつとこ大尉と申しておりますが、私が服役中は「将校商売、下士道楽、兵隊ばかりが国のため」といわれておりました。恩給の本質が、国家と雇用契約中の、経済能力の喪失に対する補填ということでありますが、職業軍人一般兵士の、当時の俸給を比べてみるときに、職業軍人には、当時にあつて家族を養う生活の費用が与えられたにもかかわらず、一般兵士はどうであつたでしようか。当時の家族の生活費は言うに及ばず、将来の経済能力の喪失に対して、本法案が、はたしてそれを補填するということができると言い得る額でありましようか。一般兵士はおのれの生活を捨て、留守家族の生活すらも保障され得ず、戦場におもむいたものであります。一般兵士の受けた物質的、精神的犠牲は、職業軍人の比ではありません。結論として申しますならば、このような過去の封建的制度による階級制にとらわれて、一般兵士を無視した措置に対して根本的に反対するものであります。  次に増加恩給について申し述べます。私は基本的には、こうした恩給法によるものでなく、社会保障見地から単独立法によつて、戦争による犠牲者の援護をなすべきものと確信し、同法に対しまして反対の意思を持つものでありますが、この法案を一応やむを得ないものとして考えましても、次に述べるような不審な点が多々あるのであります。増加思給はその人が受けた傷病の程度に応じて支給されることが根本的条件であると解釈しております。さすれば、前段でも申しましたが、これに階級制を設けることは実に不合理でありまして、大将が片腕を失つて受ける苦痛も、一兵士の受ける苦痛も何らかわるむのではありません。むしろ妻子もない弱い兵士が青春の夢すらも見ることもできず、あの殺伐とした戦場で、歳月を送り、生れもつかぬ不具の身となつた者を思うとき、この者が背負う精神的苦痛は、大将のそれに比べて比較にならないものであります。またその苦痛を残された生命に比較してみるとき、弱年兵士が背負う不具者というかせは、大将の背負う負担に比べて数倍するものでありまして、まして大将が腕を一本喪失する戦闘状態においては、それにかわる兵の犠牲は相当大であつたといわれておる今日であります。  私はむしろ、弱年兵士にこそ、高額の支給がなされて当然だと考えるのであります。  しかるにこのたびの法案には六階級にわたる差別があることは不合理といわなければなりません。このようなことを申しますと、立法者におきましては、階級差は圧縮されていると申されましよう。なるほど軍人階級は十七階級にわかれておりますが、増加恩給にあたりましては、六階級に圧縮されております。しかしそれは一つの詭弁にしかすぎないのであります。六項症以上には附則第九条第一項第一号ハの規定により、増加恩給受給者は普通恩給を併給することになつており、これによつて、十七階級階級差は当然生じて来るものであります。しかもこの階級による差額は、普通恩給と、増加恩給の二重の差が重なり、その差は実に大きなものであります。もしこのような措置がなされたとするならば、まさに徳川時代の封建的世襲による階級制度と何らかわるものではないと思います。  次に症状等差額につきましては、支給額は、一項症より三項症までは、二三%ないし二五%の開きを持つております。しかしながら四項症に来ましては八三%、八割強という差を設けてあり、また五項症に及んでは七三%、六項症におきましては三五%というような順で、実に無軌道なる差を設けておることであります。これに対してはなはだ理解に苦しむものであります。大正十二年恩給法当時は二〇%ないし一三%、昭和八年の恩給法改正においてはやはり同等の開きを持つており、昭和十三年法律第五十六号の改正によりましても、二〇%程度を持つており、また二十一年度においても、現在施行されておる援護法においても、二〇%ないし一八%であります。また労働者災害補償法におきましても、二〇%ないし一二%であり、勅令六十八号による額におきましても、二〇%から一 ○の差であります。以上のように各法を見ましても、この法案のような話にもならない差を見出すことはできません。過去何十年間にわたる平均された差によつて実施されて来たものを、今ここで改悪することに対しては多分に不審を抱くものであります。  しかも五、六項症は、現行の援護浩において支給されている額は、五項症三万円、六項症二万四千円でありまして、このたびの改正案では兵の場合、五項症二万三千円、六項症一万七千円を支給することになつておりますが、物価は上り、公務員の給与もベース・アップされるとき、法の改正によつて前回に支給された額よりも減額されるということは理解できません。この場合に普通恩給との併給を論じられるでありましようが、普通恩給と増加恩給とは、おのずからその性質を異にするものであつて、これを同一視することはでき得ないのであります。  次に第七項症以下四款症に対して年金を支給すべきであり、旧法においても年金支給の必要性を認めております。恩給局長は以前にはなかつたが、昭和八年の法律改正当時、軍からの強い要望によつて支給したと解説されておりますが、私は不必要なものに支給するためにつくられたものでなく、大正十二年には傷病賜金として十款症まで支給され、次に昭和八年の改正において四款症まで年金制度となり、賜金は六日症まで支給されております。しかも昭和十三年の改正に七項症が新しく設けられ、四款症まで年金とされていたものが、勅令六十八号によつて、一時的に停止されたものであり、昭和十三年までの数回にわたる改正は、必要性を認めればこそなされたもので、決して軍人にのみ優遇するために改正されたものとは思われません。目症の範囲を縮小した点を見れば、明らかにこれる裏づけるものであります。まか事実七項症以下四款症までの傷病者がどのような障害を残しておるか、前回の公聴会においてもごらんになられたと思いますが、私も今日この席上に子の例を一、二準備いたしておきまして、見ていただくならば、一見してその必要性を認めざるを得なくなられることと思います。私は別に特権を云々するものではありませんが、このたびの改正案の提案理由中に特権を論じておられますが、特権を論じるならばなおさら七項症以下四款症までの年金を支給すべきであります。また次に一時金の支給を受けた者に対しては、このたびの改正による一時金は支給せずとありますが、普通恩給と比較してまことに差別的取扱いと言わざるを得ないのであります。しかもこれら障害者は、自己の責任によらざる公務障害者であつて国家の強制的動員によつて与えた障害であり、この障害者のその障害から来る生業能力の減退と、物心両面の苦痛と負担は、国家の責任において、終生償うべきものであると思います。  次に査定基準に対して言いますならば、その基準が大正十二年につくられたものであることに、大きな矛盾が起るのであります。当時は、戦闘形態も肉弾戦を主としたものであり、その障害も現在に比較して小範囲であつたと思います。また傷痍の程度も切断が主で、ゆえに査定基準は切断患者を主体に取扱われている傾向のように思われます。恩給局長も、七項症は拇指一本を失つたものと説明しておられることによつてもうなずけますが、ところがこのたびの戦争は長期戦であり、戦線も広範囲にわたつたため、以前にはあまり見受けられなかつた、内科的疾患者が多数に及び、また使用された兵器も化学兵器で、当時は夢にすら思わなかつた原子兵器まで出現しており、こうした中から起る疾病は多種多様であります。しかも支那事変当初までは、体力的にもすぐれていた甲種合格者である現役並びに予備役でありましたが、支那事変末期より太平洋戦争になつてからは、補充兵以下兵籍すらもない国民兵まで動員したことや、長期間にわたる疲労の蓄積及び酷使、加えて給与の粗悪から当然内科的諸病の累増をみる結果になりました。こうした点から起る障害を現行法ではきわめて軽視しており、また、神経並びに機能障害者においても同様なことが言えるのであります。その例といたしまして、両大腿切断者が一項症、ひざの下両足切断者が二項症となつております。現行法によりますと、片足は大腿切断、片足は下腿切断におきましても、両下腿切断と同等に扱つているのであります。あとの大腿切断はいわゆるおまけということになつているのであります。また肋骨七本程度を切除した者が項症に入らずに、款症として取扱われている例であります。以上申し上げましたように査定基準改正の必要は、常識的に判断しても当然なりと信ずるものであります。  次いで家族加給の点に触れますと、恩給査定当時の家族に対して支給され、その後の変動は認められておりませんが、現在妻子もない若年兵士といえども、将来においては必然的に妻帯するもので、扶養家族に対する扶助も当然考えなければならないものであります。これが有期者の場合は、再審査の都度現在員に支給されることになつておりますが、この矛盾は決して許し得ないものであります。家族の変動については、その申告によつて当然認めるべきが妥当であると思うのであります。また六項症までは現行法並びに改正案においても恩給の対象者となつており、障害によるあらゆる負担も大なるがゆえに、家族加給の必要を痛感するものであります。  いささか私情にわたるようでございますが、現在国立病院に入院中の患者につきまして、その実情の一端を申し上げますと、自己の責めによらない公務の疾病によつて入院しておりまして、恩給査定の基準を受けるために未復員給与すら適用されず、入院費を請求されておる現状であります。しかも内部的疾患者が必要とするその薬すらも、金がないために飲めないでいる患者は、現在多数いるのであります。またちまたにおきましては、その日の生活のかてすらも失い、路頭に迷つているわれわれ同胞の傷痍者が幾万人いることか、御想像願われることと存じます。  今まで述べて来ました通り、幾多の不審、不満を含む常軌を逸した恩給法等によるよりも、あらゆる差別を除く、障害の程度に応じて生業能力を考慮し、人間的な配慮によつて強制雇用、医療保障生活保障等を含んだ単独法による保障が与えられますことを強く訴えるものであります。  以上をもつて私の意見といたしますが、私がこの恩給法全般を通じまして感じましたことは、私のただ単なる憶測であり、ひがみであれば深くおわびいたしますが、まず第一に職業軍人を優遇する必要から、傷痍者並びに遺族をだしに使つているのではないかと思われる点であります。その一つとして一応重症者とする三項症までは、現行法に比較して相当高額に支給すべく取扱つておりますが、これは傷痍者全般を優遇したという欺瞞的手段だと思われるのであります。それは四項症以下の対象者は、数字的にも三項症以上より数倍に上り、これを冷遇することにおいて浮く予算の額を見まするときに、決して全般的な改善ではないということが断言できるのであります。その二には、実役十二年以上を対象とすること自体は、将校、特に上級者を目標としており、義務による服役者に対しての冷遇であります。その三には、遺族による国民感情を無視した取扱いであります。親を、夫を、兄を、子を失つた肉身の心にわけ入る親身の待遇が与えられることを、かつての戦友として切望してこの公述を終りたいと思います。
  62. 稻村順三

    稻村委員長 以上御意見を開陳していただきました五公述人に対しまして、御質疑がございませんか。
  63. 神近市子

    ○神近委員 土橋さんにお伺いいたします。今日の公述者の方々にいろいろな団体があるようでありますけれども軍人遺家族等そのほかの団体は今日幾つぐらいあるのでございましようか。
  64. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 それははつきり存じません。私は恩給会の者でございます。
  65. 森田俊介

    ○森田公述人 遺家族の団体が全国にどれくらいあるかということでございますか。
  66. 神近市子

    ○神近委員 いいえ、人数でなく、団体の種類あるいは数でございます。
  67. 森田俊介

    ○森田公述人 戦没者の遺族の会としましては、各県に支部がございまして、私どもの財団法人日本遺族会が全国の連合体となつて、大体一本になつておると思います。その他特殊の小さいものはあるかも存じません。たとえば近隣の人を集めてミシンを教えたりしておられるというような、特殊の催しの団体はあるかも存じませんが、組織的な遺族団体としては、財団法人日本遺族会が全国組織でありまして、その下に各県の遺族会が支部としてある、こういうことに御承知おきいただいてもよいのではなかろうかと思つております。
  68. 稻村順三

    稻村委員長 神近君、傷痍軍人団体の方もお聞きになりますか。
  69. 神近市子

    ○神近委員 私は傷痍軍人の遺家族と、吉原さんの所属と、川原さんの所属と幾つもあるのかと思つたわけです。吉原さんにお伺いいたしますが、あなたの身体障害者団体連合会は全国的な範囲の団体でございますか、それとも兵卒、職業軍人等とわかれている団体でございますか。
  70. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 ただいま身体障害者の団体といたしまして、宗教的に固まつている団体あるいは恩給問題を主とする傷痍軍人の団体、あるいはいろいろその目的が異なりまして数団体でございます。私の所属しております全国身体障害者団体連合会は、各県にあります福祉団体を組織団体といたしましてやつております。現在二十三府県ほど参加しております。
  71. 神近市子

    ○神近委員 今回原さんにいろいろ伺いましてよく事情はわかりましたけれども、一番冒頭にあなたを推薦した方々に対して感謝するということでございましたが、どういう方々があなたを御推薦になつたのでしようか。
  72. 川原和雄

    ○川原公述人 現在入院しております国立相模原病院の患者自治会、並びに西日本傷痍者団体連合会、それから全戦傷病者要求貫徹委員会、この三団体の推薦であります。
  73. 高橋等

    ○高橋(等)委員 先ほどの川原さんの御発言で、本公聴会出席するについていろいろお世話になつた先生方に感謝するということをおつしやいましたが、それは国会議員ですか、だれですか。
  74. 川原和雄

    ○川原公述人 公述人の選定は、新聞によりまして内閣委員会において選定されたのであります。その選定に当られた委員の方全般をさしているわけであります。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 まず一番先に土橋さんにお伺いいたします。あなたの御開陳の中で、命をさらす位置に立つた軍人という言葉がございました。これは先ほど私が黒田参考人に御質問申し上げたこととも関連いたしますが、あの第二次世界大戦中、ことに末期になりまして内地に爆撃がはげしくなりましたころのことですが、はたして軍人だけが命をさらす位置に立たされたかどうかということに対して、私は非常に疑問を持つのでございます。どんどん内地が空襲され、バケツを持つてたまの落ちたところを消しに行き、そのためにたまに当つて死ぬということは、私も当時一主婦でありましたが、繰返されておつたのでございますが、こういうことをどういうふうに御解釈になりますか。
  76. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 先ほど申し上げましたのは、軍律によつて命をさらす特異性があるということを申し上げましたので、そのほかの方を否認しておるわけではございません。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 軍律によるという言葉をお述べになつたことで一応了承いたします。  そこで旧軍人の方々は既得権があるという言葉をお使いになりますが、これは国会でも長年懸案の問題でございまして、昨年戦傷病者戦没者遺族等援護法を立法するにあたりまして、どの限界までを戦争犠牲者と認めるかということが非常に問題になつたのでございます。それで先ほど黒田さんに尋ねましたところが、たとえば原爆でかたわになつた、財産をやられた。在外資産をなくしてしまつたというのも、本人の責めに負わせることなくして、既得権を喪失したものの一つであるとおつしやいましたが、そのときに私はもう少しつ込んで尋ねたかつたのですが、戦争犠牲者として国が扱います場合に、戦争犠牲者の対象をどの辺まで持つて行くべきかという問題はなかなか大きな問題でございますが、これに対して土橋さんだけでなしに、各参考人の方々にずつと全部お聞きしたいのでございます。戦争犠牲者を補償するとか、援護するとか、救済するとかいう言葉をみなしきりに使いますが、どの線をもつて戦争犠牲者として国家はこれを扱うべきかということを聞かれたときに、どういうふうな判定をお下しになるか、土橋さんから順番に御意見を伺いたいと思います。
  78. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 実は私は恩給復活全国連絡会からの公述人として出ておる者でありまして、もつばら軍人恩給という立場から申し上げておるのであります。それ以外の問題になりますと、私の申し上げる範囲のものでないと私は解釈いたします。
  79. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 既得権云々ということをみな言われるでしよう。
  80. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 言いました。
  81. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 既得権ということになると、財産権もみな既得権ということになるでしよう。
  82. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 それは先ほどお聞きになつたか知りませんが、私どもが申しておりますのは、厳として軍人恩給法は効力を持つておると私どもは信じておるのに、はつきりしていないからこれが非常に困るということを申しました。その私どもの信じておることをもとにしてお話しているのであります。
  83. 降旗徳弥

    ○降旗委員 実は私遅れて参りまして、ただいまの川原さんの公述を拝聴したのでありますが、そのことにつきまして、私は議員として一言川原さんに申し上げたい。また川原さんから御回答があるならばそれを承るのもけつこうだ、かように思うのであります。  ただいま川原さんの御所論を承つておりますと、旧軍人恩給の復元と申しますか、復活と申しますか、これは傷病軍人あるいは軍人遺家族をえさにして、そして一部の高級軍人のためになつておるものである、かような御所論であつたのであります。私どもが常に考えておりますのは、先ほどどなたか公述人の方からもおつしやつたのでありますが、祖国の防衛のために戦つたこれら軍関係の人々が、終戦以来長い間、時世時節とは申せ、生活の苦しみにあえいでおられたことに対し、私ども国民の一人として何とも申訳なく思つてつたのであります。しかるに今や国は独立して、われわれ国会自体がこの問題を処理するという時運に際会いたしましたときに、私ども国民の赤誠の一端といたしまして、この法律案が国会に提出せられたことをまことに欣快に思つてつたのであります。すなわち、かくのごとき意味におきまして本法案が無事に国会を通過いたしまして、そうして長い間戦争の犠牲として苦しんで来られたこれら軍関係の方々に対して、われわれの赤心の一端を披瀝することができる喜びに満ちておつたものでありますが、ただいま川原さんのおつしやつた御所論は、このことについていささか食い違つておるようであります。申し上げるまでもなく軍人間におきましては、先ほど川原さんの申されましたごとくに、青春いまだ楽しまず、人生の苦難にあえいでおられるところの傷病軍人の方々を街頭に見ますときには、私どもの痛惜これにたえるものはございません。しかしながら軍人のみの間において甲乙丙の議論をすることよりも、むしろ私をして言わせるならば、文官恩給があるにもかかわらず軍人恩給がない、この大きな片手落ちをどうなさるか。眼はまさに大所高所より向けるべきでありまして、セクシヨナリズムによつて論ずべきものではない。ただいま同僚委員から川原氏の御所論に対して拍手した方がありますが、その方はどういうことで拍手をしたのか、その根本の理念をわきまえざれば国政の正しき道を求めることはできない、かように私は信ずるのであります。ただいま申しましたことについそ川原さんから御回答があればけつこうですが……。
  84. 稻村順三

    稻村委員長 ちよつと川原さん、御回答をお願いいたします。
  85. 川原和雄

    ○川原公述人 ただいまのお言葉に対して御回答申し上げます。職業軍人に対する恩給復活の伏線から来ておるものであると申したことに関しての御質問のようでありますが、私はかように理解するのであります。このたびの戦争において一番の犠牲をこうむつたものはだれであるか、それは遺族であり、またそれと同等に国内において爆死された方々の英霊であると思います。その次に起つて来るものは傷痍軍人であると思います。その次に来るものは軍人であります。応召兵士であります。その次に来るものは私は職業軍人ではなかろうか、かように解釈いたしております。この段階から行くならば、当然まず第一に考えられなければならないのは遺族の援護並びにこれと同等の気の毒な方々に対する援護でありまして、次に傷痍者を考えるべきだと思うのであります。しかも数学的には、はつきりは存じませんが、職業軍人に対して——職業というと語弊がありますが、二十九億という予算を許上し、われわれに対してはわずか二十二億足らずの予算を許上しております。また遺族に対しては三百五十億という数字を計上しておりますが、数字の比率から申しましてもこれは御理解できることと存じます。さすれば当然旧軍人に対する相当な優遇が考えられるのでありまして、この点から私はかように申したのであります。
  86. 降旗徳弥

    ○降旗委員 ただいまの川原さんの御所論に対して、不均衡のある点を私はしいて質問申し上げようとは思いません。しかしながら一方において文官恩給があるにもかかわらず、一方において軍人恩給がないというこの事実に対して、私どもがこの軍人恩給復活するということについては、川原さんは御同意でありますか、いかがですか。
  87. 川原和雄

    ○川原公述人 私は全般を通じて戦争による犠牲者と同じように救済すべきである。かように思つております。
  88. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が戦争犠牲者という言葉を使うと、恩給法とは関係がないというような錯覚をお持ちがちでありますけれども、この予算の四百五十億の九十何パーセントは戦争犠牲者に対する金である。従つて戦争犠牲者というものが中心でなければならないので、私は戦争犠牲者というものについて、ある程度のわくを出したい。それで今次の戦争においては内地も爆撃されてこのような状態になつたときにおいて、戦争の犠牲者というものが第一線にあつた兵士のみにとどまるかどうかということは、はなはだ疑問視されておる。従つて公述人各位は戦争犠牲者に法的処置を講ずるという場合には、その対象はどの辺まで持つて行くか。たとえば黒田さんの場合は内地で爆撃を受けて、何ら法的保護を受け得ない、財産を失つたり、からだをけがした者は当然単独立法をして、これに政府はこたえなければならないということをおつしやつておる。そういうように各参考人よりの御意見を伺いたいと言つておる私の質問を、答弁を中止してあとへおさしになつたから事がおかしくなつた。私は関連発言だと思つてつてつたら趣意が違つたのでありますから、そこのところの筋を立てていただきたい。
  89. 稻村順三

    稻村委員長 各公述人の方に結論だけ御答弁を願います。
  90. 森田俊介

    ○森田公述人 堤先生の戦争犠牲者の線はどこらあたりまでで線を引くべきかという御質向でありますが、これは遺族会全体の意見ではありませんで、私個人の意見でありますが、できるだけ戦争犠牲者は広く救済の道を立ててもらいたいと思います。それぞれ所要の恩給法に該当する者は恩給法、その他船員とか、国民義勇隊とか、国家総動員法によつて動員された人とか、それぞれ所要の法制を立法されて救われるよう、最大限度に救つていただきたいという考えであります。明瞭にどういう線ということは具体的に申し述べるほど研究いたしておりません。
  91. 矢田勝士

    ○矢田公述人 私は戦争自体に対する活動の問題から申しまして、いろいろの議論があろうと思いますけれども、近代戦の様相からいたしまして、前線であるとか、あるいは戦後であるとかあるいはまたそのところを問わず、戦争によると明らかに認定のできる犠牲者ということに解釈をし、この問題は恩恵的な角度でなくて、純粋に生活権の問題として解釈すべきであると考えます。従つて認定の問題にいろいろと問題は、御指摘のように、あろうかと思うのでありますが、やはり個人々々においては良心と良識があるとはいえ、いろいろ問題はあろうかと思いますので、国会等において、あるいは政府機関等において適切な認定の方途を講ずるようにされれば、その対象とすべきわくはおのずから明確にきまつて来て不合理な、あるいは不均衡というものがなくなるのではないかと思います。対象はすべてにすべきであると思います。
  92. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 ただいまの質問の範囲について身体障害者の気持から申しますと、恩給法に該当する考は恩給法でもつて傷痍軍人を扱う。それからそれに当てはまらない者は戦傷病者遺家族援護法の中に入れて解釈する、さらにそれに入らない者は身体障害者福祉法において処置する、さように私どもでは考えております。
  93. 川原和雄

    ○川原公述人 私は今度の戦争は戦線は本土にも及んでおりますので、軍人だけが犠牲者でないという点からやはり戦争による犠牲者は同じように取扱うべきであると考えます。  先ほど私は社会保障制度見地云々ということを申しましたが、これは何も自分の不摂生から受けた障害者も、公務によつて受けた者と同等に扱うという意味社会保障でなく、起つた原因によつてこれをきめるべきだと思う。こういう社会保障の解釈であります。こういう点から私は戦争による犠牲者はすべて同じような方法によつて救済すべきだと思います。
  94. 降旗徳弥

    ○降旗委員 私は議論をする必要はないと思いますが、一言申し上げておきます。私どもとしては遺族の方々、傷病軍人の方々に国民としてその至誠を披瀝するという道をこの恩給の一部改正法に見出したい、こういうつもりであることを一言強く申し述べておきます。
  95. 庄司一郎

    ○庄司委員 私は土橋公述人、川原公述人、吉原公述人等に簡単に一言でけつこうでありますからお伺いしておきたい、第七項症をオミツトしないでぜひ旧に復して復活せよとの根本的な御所論はどういう点にあるか。七項症をぜひという、七項症に非常に力を入れてお述べになつているが、その所論の御主張の根本はどういうものであるか、どういうわけで御主張なさるのであるかということを一言でいいから簡潔に御答弁願いたいと思います。
  96. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 私どもが申しておりますのは、戦場で負傷した者が、しかもただ指一本というように簡単に考えられるということは困る、もう一つは同じ七項症の人でも年金がもらえる人があるのでありますから、ひとつそれを公平にしていただきたいという二つのことであります。
  97. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 七項症の問題はすでに獲得している権利という解釈がございます。
  98. 川原和雄

    ○川原公述人 七項症以下四款の中には相当生業能力を喪失している者が多数にあるということからであります。
  99. 庄司一郎

    ○庄司委員 御三君の御説明によつて七項症はぜひ恩給法の中に復活してほしいという意味がよくわかりました。善処したいと考えます。  それから増加恩給の問題について増加恩給がもし認められない場合は百四十五万の方々が恩給対象よりオミットされる。まことにお気の毒でございますが、この対象になるところの百四十五万のうち、大部分は下士官以下の兵であると推察されるのでありますが、いかがでありますか。先ほど土橋君のお述べになつた中に、百四十五万という数字を御発表になつておりますので……。
  100. 土橋勇逸

    ○土橋公述人 それはもちろん下士官、兵が大部分であります。
  101. 神近市子

    ○神近委員 私さつき質問しかけておいたことが、どこかに流れてしまつたのですけれども、吉原さんにちよつとお尋ねいたします。吉原さんは何度もコンペンセーシヨンという言葉をお使いになりました。多分これは国家補償ということだろうと考えたのですが、その国家補償の条文は確かに恩給法にございます。けれどもそれから戦争を経過いたしまして、大分国家の構成も違つて来ておりますけれども、それを既得権として主張する場合、その国家の変化を認められないということに私には受取れるのですけれども、その点いかがでございますか。そのコンペンセーシヨンには大きな変化を来しているということをお考えになるかどうか、それを伺いたい。
  102. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 私の代表しております全国身体障害者団体連合会は、一般の者の求める身体障害者福祉法、それから傷痍軍人の求める現在の恩給法復活国家補償と両者を区別して解釈し、両者手に手をとつて現在までやつて来ておりますので、現在その解釈で進んでおります。
  103. 神近市子

    ○神近委員 私どもはこの恩給法というものは、ぜひ何とか実現して上げなければならないという観点のもとで、いろいろ考えていることは峯でございます。それでなるべくこれを今日以後の国家の状態と対象して、そしてできるだけ合理的なものにしなくてはならぬというのが、こういうごめんどうをかける一つの理由でございます。たいへん立入りまして恐縮でございますけれども、吉原さんの海軍軍人としての御身分は、どの程度のところであつたかというようなこと。それから今日いろいろ問題を起しております再軍備の問題、もつと端的に申しますと、保安隊の問題、これには吉原さん御自身でもよろしいし、またその団体でもよろしいのですが、賛否はどういう比率かということを一応伺つておきたいと思います。
  104. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 海軍の身分は海軍中尉でございます。それからただいまの第二の問題は、本日の公述の範囲を越えると思います。
  105. 稻村順三

    稻村委員長 ほかに質疑はございませんか。
  106. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 本日の参考人は内閣委員会で御決定になつたのでございますが、同じ戦争犠牲で負傷された方々が、三つのわかれた団体に所属して、三者三様の参考意見をお吐きになつている。ただいまの吉原さんは元中尉殿、それから川原さんは何でございますか知りませんけれども、それからもう一人の黒田さん、この三人の方々の御意見がみんな違うので、私たちはこちらから聞いておりまして、同じ戦争によつて傷痍軍人となられた方々にも、かくも意見の相違があるかということを感慨無量で承つておるのでございますが、なぜ同じ御不幸にあられる傷痍軍人の方々が、三つにおわかれになつたのでございましようか。私はこの三つの性格の違いをひとつ存じ上げたいと思いますのでお伺いするわけです。
  107. 吉原嘉一

    ○吉原公述人 なぜわかれたかということについてですが、最初結成したときは全部を網羅しておりましたが、だんだん目的の違う人たちがわかれた、さように考えております。
  108. 稻村順三

    稻村委員長 他に御質疑がなければこれにて公聴会を終りますが、この際御多忙中にもかかわらず、熱心に御意見をお述べくださつた公述人各位に、委員長より厚く御礼を申し上げます。御意見は今後十分にしんしやくし七参りたいと存じます。  これにて散会いたします。     午後四時十六分散会