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1953-07-15 第16回国会 衆議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十五日(水曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 大村 清一君 理事 高橋  等君    理事 八木 一郎君 理事 上林與市郎君    理事 鈴木 義男君 理事 松田竹千代君       江藤 夏雄君    津雲 國利君       永田 良吉君    長野 長廣君       平井 義一君    高瀬  傳君       粟山  博君    神近 市子君       長谷川 保君    冨吉 榮二君       中村 高一君    辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         引揚援護庁次長 田邊 繁雄君  委員外出席者         人事院事務官         (人事院給与局         次長)     慶徳 庄意君         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ————————————— 七月十三日  委員中助松君辞任につき、その補欠として田中  彰治君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員島上善五郎辞任につき、その補欠として  長谷川保君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月十一日  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  外一件)(佐瀬昌三紹介)(第三三二六号)  軍人恩給復活に関する請願外一件(坊秀男君紹  介)(第三三二七号)  同(橋本登美三郎君外一名紹介)(第三三二八  号)  同(今澄勇紹介)(第三三二九号)  同外一件(田渕光一紹介)(第三四三五号)  桂高等学校隣接地保安隊使用反対に関する請  願(大石ヨシエ紹介)(第三三四七号)  増加恩給並びに傷病年金復活等に関する請願(  古井喜實紹介)(第三三五六号)  元南西諸島特定郵便局長恩給法適用請願(  園田直紹介)(第三四三四号)  元樺太特定郵便局長恩給法適用請願園田  直君紹介)(第三四三六号) 同月十四日  軍人恩給復活に関する請願高橋禎一紹介)  (第三六二一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三三号)  昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生  じた恩給等年額改定に関する法律案内閣  提出第一三五号)     —————————————
  2. 稻村順三

    ○稻村委員長 これより会議を開きます。  恩給法の一部を改正する法律案及び昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案一括議題とし、質疑を続けます。質疑通告順にこれを許します。鈴木義男君。
  3. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は国務大臣にこまかい数計に基いて基本的な御質問をしたいと思つたのでありますが、なかなかそううまく行かないのでやむを得ませんから恩給局長にお尋ねをいたしまして、国務大臣のかわりをやるわけには行かないでありましようが、政府方針恩給局長も御存じなので、できる範囲においてお答えを願いたいと思います。  いろいろなパーセンテージを了解しておきたいと思うのでありますが、四百五十億、一年を通算して五百七十七億のことは前回承つたのであります。いわゆる軍人というと言葉が狭くなるかもしれませんが、今度の改正によつて恩給を受ける人の総数を承りたい。
  4. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今度の新しい措置によりまして給せられる受給者の数は、年金受給者といたしましては百九十二万四千人とこの間申し上げましたが、大ざつぱに申し上げますれば百九十三万人ぐらいと推定されております。その中におきまして、たとえば増加恩給受給者は大体四万五千人と推定いたしておるのでありますが、お手元に差上げてあります統計によつても毎承知のごとくに、四万三千人前後が最近の統計から推した来年度予算推計人員とも考えておるのであります。しかし病院に入つていて出て来る人もあるかと思われますし、そういうことを考えまして少しまとめたようなかつこうになりますが、四万五千というふうにいたしております。
  5. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 文官の現在受けておる受給者総数幾らになりますか。大略でいいです。
  6. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 お手元恩給統計という統計表を差上げてありますが、その統計表の二十七年三月末までは大体統計局統計を委託いたしまして、正確な統計をとりました。その数によりますと、二十五万六千五百六十六、大まかに申しまして二十六万人というふうに御推定願いたいと思います。もちろんこれは恩給局長の裁定いたします恩給受給者の数でございまして、そのほかに都道府県知事の裁定している恩給受給者というのがございます。この数は大体大まかに申しまして、全国を通じましてこの数と相匹敵するぐらいの数と御承知願つて大差はないのじやないかと思つております。
  7. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そうすると文官のための本年度における恩給予算幾らでありますか。
  8. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 二十八年度恩給費として組みました金は、文官恩給は百十五億円です。こまごましく申しますと百十四億八千五百五十四万六千円となつております。
  9. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 都道府県金額は大分違いましようか。似たところになるわけですね。
  10. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 大体さようでございます。
  11. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 その今度組んだ予算総計文武官を通じた恩給総計、こう了解してよろしうございますか。
  12. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 さようでございます。今申し上げました金額に四百五十億円をプラスいたしましたものが恩給の総額、それからただ予算に掲げてありますのは恩給等と書いてありまして、若干こまごましいこととしては勲章年金等がほんの小さい金額ですが入つておりますから、若干金額のずれはございますが、大まかに申しまして今先生のおつしやる通りに御承知願つてけつこうだと思います。
  13. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 これは日本財政全体からそろばんをすれば出て来ますけれども、念のため、質問を展開する順序として申し上げるわけでありますが、国家予算全額パーセンテージちよつと承りたい。
  14. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 本年度一般会計歳出予算は九千七百億円ばかりになつております。それから公社なんか入れました場合におきましては二兆八千六百七十六億円になつておると承知いたしています。そこで前段申し上げましたところの九千六百八十二億円という数に比較いたしますと、今の恩給予算金額が大体五・八%ぐらいになるのではないかと思つております。それから特別会計を加えました金額に比較いたしますと一・九何パーセントになるのじやないかと思つております。
  15. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 これは無理な御質問かもしれない、無理ならばそうおつしやつていただいてよろしいのですが、英米独仏等の各国における。八一センテージをおわかりになつておりますか。
  16. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 実は私もことに独伊なんかの例を調べようと思いまして調べかかつたのでございますが、はつきりしたものをまだつかめないでおります。
  17. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 ほかの国の例はしばらくおきまして、わが国のこのパーセンテージとしても相当大きなものであると思います。他の国と比べて相当の重さを持つておる。それでこれは恩給局長にお尋ねするのは無理でありますが、わが国財政規模から見て今これを倍にし、三倍にするということは不可能であることはだれでもわかることだと思います。昨日の公述人公述等を承つておりますと、一方では社会保障制度で行けと言う者があり、他方では恩給は純然たる恩給法理で行くべきものであると言う者がある。りくつとしてはりつぱにそれも成り立つのでありますが、しかし結論的にどちらも結局条件付で賛成しておる。それは突き詰めてみれば国家財政というところに帰着する。社会保障制度としても完全なものはできないからこの程度でひとつ社会保障制度の一環としてやつて行こう、一方は恩給権理論から行けばはなはだ不徹底きわまるものであるが、国家財政からやむを得ない、がまんする、こういうことであつて理論は別として実際問題としては結局この辺で妥協するほかはないというのがこの原案であろうと思うのであります。恩給局長にそれをお尋ねするのは無理であるが、たくさんの陳情書嘆願書がわれわれの手元にも出ております。いわゆる下に厚くして上に薄くするほかはない、こう見られる。下に厚くするためには、実はこの原案にもないところの国家総動員法による徴用者であるとか、そのほかやはり同じよう国家のために犠牲を払つた人たち——それは職業でないのだからというのが恩給論者の主張するところでありましようが、しかし実質は、二年なり三年なり国家の求めに応じて一種の公務についたことにおいては正常な公務員と同じものであると私らは見ておる。ゆえに恩給理論をそこまで拡張してもさしつかえない。社会保障制度で論ずれば簡単に割切れるわけであります。私は理論をお尋ねするわけではありません。イデオロギーをどちらにするかということをお尋ねするのでありますが、この点について政府としては、もしできるならばこの予算範囲内でそういうふうにやりくりすることが妥当であるというふうにお考えになりませんか。
  18. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の鈴木先生の御質問の点は、基本的な問題になるのでございまして、私がここでお答えすることはたいへん僭越がましいことかと存じますが、答えさせていただきます。私は恩給という範囲内においての処理をするように命ぜられて来ております関係上、自然限定された範囲内において考えて来たのであります。従いましてその範囲内に今のお話ような、かつて恩給法上の公務員でなかつた者をも入れるということにつきましては、根本的には法律体系考え直してかからなければならない、すなわち基本的なものの考え方をかえてかからなければならないのではないかと思つておるのでございまして、今のお話ように、四百五十億円の予算範囲内においてただちに全部をかかえこんでしまうということは、ちよつと即答いたしかねるところであります。
  19. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 恩給局長立場としては無理もないことでありますから、そこは了承しておきます。昨日も大分議論が出ておつたようでありますが、何か社会党は軍人恩給反対をしておるというふうな印象を与えておるようであります。しかしわれわれは決して軍人差別待遇をしようとは考えておらない。ただ、軍というものはなくなつたのであるから、制度の上において考え直さなければならぬということを考えておりまして、過去の功績に対し報いるところなくてはならぬということに対しては、決して自由党の諸君と違う考え方をしているわけではないのであります。ただ、結局財政上まかなえないので恩給を文字通りやれなくなつたのであるから、社会保障制度で行くべきではないか、社会保障制度行つてもさしつかえないのではないか、もちろん文官についてもわが国財政がだんだん許さなくなりつつあるのですから、これと歩調を合せるように修正するということはわれわれの主張なのでありまして、決して文官だけこのままにしておいてよいというのではない。あるいは傷痍軍人に対する恩給等についてはわれわれは原案よりももつと優遇すべしということを主張しているので、普通恩給のほかに傷痍年金を与えるということ、またいわゆる七項症まですべて年金を与えるべきである。目症に対しては一時金を与えるべきである。それから遺家族に対しては原案以上の優遇を与えるというよう考え方を持つておるわけであります。そういう点についてはいずれ修正案において申し上げたいと思います。今は質問でありますから意見は省略いたしまして、その立案の便宜上、戦死者の数と病死者の数とを承つておきたい。
  20. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 戦死者の数と戦病死者の数とを区別するということは実際困難なことでございまして、実は私もそういうことをはつきりしたいと思つたところでございまするが、何と申しましても終戦軍人遺族の方には恩給も給せられない状態になり、そして講和条約効力発生後におきましてやつと援護の措置が講ぜられるようになつて死没者実情調査などが始つたよう状態であります。従いまして今先生の仰せられることも、私たち法案をつくるときに考えて、求めたのでありましたが、戦死者戦傷病者をはつきり区別した数はわかつておりません。大体戦傷病死亡者をひつくるめて推計されるものはこの予算に見込み、恩給の対象になるものとして百五十万四千人を予定いたしております。
  21. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 これが一つ重大な問題でありますからお尋ねするのでありますが、それでは戦死者というものを政府はどういうふうに考えておられるか。たまに当つて死んだ者だけが戦死者であるかということをお尋ねいたしたい。
  22. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給局の従来の考え方といたしまして、戦闘行為によつてけがをして、また戦闘行為に基因いたしましてその結果病気となつてなくなられた方は全部戦死者と同じよう取扱いをしています。すなわち戦闘行為によつて直接死んだ方のほかあるいは戦闘行為に基因する疾病によつてなくなられた方も戦死者と同様な取扱いにする、こういうふうにいたしております。そこで今度は戦傷に基因する傷痍疾病とはどういうものか、その範囲が問題になつて来ると思うのであります。その範囲につきましては、終戦のときまでは陸海軍当局と緊密なる連絡をとつて、内規的なものもつくりまして事務を簡易に整理したのであります。今度は御承知よう終戦によりまして今までにない非常に複雑な事情戦病死者の間に介在するということが察せられます。従つて戦死者範囲を一体どういうふうに取扱うかにつきましては、今までとは相当つた常識的なものの考え方で行かなければいけないのではないか、こういう考え方を私はいたしております。場合によつては、やかましく言いますならば、はたして公務によつてなくなられたかどうか疑わしいような場合があるかと思います。しかしその疑わしい場合におきまして、あるいは法定してしまつて全部戦闘でなくなつた者とみなすそういう法律的な措置をする必要があるかどうか、あるいは恩給局長だけの裁定でもつてそういう措置ができるかどうか、こういう問題が具体的な問題として起つて来やしないかと考えております。そういう問題が起つて来ましたら法律改正をお願いいたしまして、そして法定するよう措置を講じたいと思つておるのでございます。
  23. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そうすると政府方針としては、もちろん外地たると内地たるとを問わないのでしようね。戦死者範囲をできるだけ広く考えたいという気持を持つておられるものと了解してよろしいですか。
  24. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今月理的な範囲におきましては、でき得る限り今の御意見に沿うようにいたしたいと思つております。
  25. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それから話が飛び飛びになりますが、急ぎますために断片的な質問をいたしますことをお許し願いたい。われわれ実は老齢軍人だけには優待しなければならぬと考えております。若くして働いておる者には、これは国をあげてみんなが苦しんでおるときだからがまんしてもらう。そして遺家族傷痍者に主力を注ぐべきであるという考え方から、そういうことを厚生当局等でお調べになつておれば知りたいのであります。無理かもしれませんが、つまり軍人の比較的老齢になつておらない方がどういう就職をしておるか、あるいはどういう失業状態にあるか、そういう統計等はおわかりにならないでしようか。
  26. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 就職状況等については実は調べたものは持ち合せておりません。厚生省の局長がおられますから、あるいはその方から答弁があるかと思います。
  27. 田邊繁雄

    田邊政府委員 調査したものはございません。
  28. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それは非常にむずかしいことかもしれませんが、恩給受給に関連してやはりこういう統計は、行く行くは調べていただきたいものだと思います。  それから人間の平均寿命、これはわが国けが最近延長になつて、ほかの国は前々から延長されていたのかもしれませんが、これに伴つて恩給受給年齢若年停止等年限が世界的にどう動いておるか、これはごく大略でもいいのですが、今わかつておれば承りたいと思います。
  29. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 受給者の世界的な年齢につきましては私寡聞にしましてよく存じませんが、いわゆる恩給受給者若年停止という制度につきましては、日本の現在の制度をつくるときにはアメリカ制度をも参考にいたしたのでございます。アメリカ制度は全然違つております。人事院で勧告の草案として発表されましたような、あの考え方がすなわちアメリカのやり方でございます。それからドイツ、イタリアの場合を調べましたが、日本ようにこまごまそれとなつておりません。そこで世界のことはよく存じませんが、日本における恩給受給者年齢につきましては、まだお手元に配付しておりませんが、私の方で毎年々々裁定いたしましたものの初給年齢調べがございますので、それを後刻先生にお目にかけることにさせていただきたいと思いますが、よろしゆうございますか。
  30. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 よろしゆうございます。文書でお願いいたします。  それから今度は七箇年以上在職ということにしたわけでありますが、これは何か特別な根拠があるのでありますか。財政上の理由といえば一言で片づきますけれども、何かはかに根拠があるのでございますか。
  31. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 最初法案考えますときに、先ほど鈴木先生も仰せられましたように、何としてもまず遺族、その次には重傷病者、それから老齢軍人、それから一般の人、こういう順に考えて、そうしてしかも国家財政の許す範囲内において恩給措置を講じよう、こういうような基本的な前提を立てたわけであります。そうしまして考えてみますと、この傷病者とかあるいは戦死者方々在職年数は大体二年・三年でなくなられた方や、けがをされた方が非常に多いのであります。そういうような方につきましては、実際は在職年限普通恩給年限に達していなくても、普通恩給年限に達せられたと同様の取扱い方をして、恩給を給するようになつておるのであります。七年の制限を設けなくて、短い在職の万につきましても恩給を給するとか、あるいはまた恩給基礎在職年にそういう在職年を入れるとかいうようなこともできるなら、したいところでございます。しかしそういうことをしますと、生存者恩給がふえ、ひいては必然的にこの恩給金額増大を来すばかりでなく、今後相当長い期間にわたつて恩給金額増大を来すことになりはしないだろうか、また遺族傷病者方々に対する処遇も現在のところ十分な処遇ができないにもかかわらず、そういうようなことをすることはいかなるものであろうか、こういうようなことを第一に考えたわけであります。それからもう一つ在職七年ということをきめましたのは、たいへん申しにくいことでありまするが、終戦の際におきましては、御承知通り、非常な混乱の状態に陥りましたために、人事に関しまする記録というのは必ずしも全体としてはまつたき整備はされておりません。従いまして従来のごとく、こまごましい記録というものは完全ではございませんので、従つて従来のような短かい在職年をも調べまして恩給基礎にいたしますことは、事実公平なる給与をする上からいかがなものかという考えをいたしたのであります。そういうようなことを考えまして、生還された方々に対しまして、非常に言いにくいことではございますけれども、一番劈頭に申し上げましたごとく遺族傷病者方々のこともお考え願つて、ひとつごしんぼう願うことにしていただきたい、こういうふうに考えたのでございます。
  32. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 先ほど質問したつもりでありましたけれども、お答えをいただくことができなかつたので、重ねてお尋ねいたしますが、若年停止の点でわれわれは厚生年金が五十五歳になる、これと歩調を合せることが必要ではないかという考え方から、われわれの立場では実は五十五歳を主張しているので、その点は御考慮になつたことがありますか、どういうお考えでありますか。
  33. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今度の案におきましては、五十五歳までに一応年齢を引上げまして五十五歳から全額の支給をすることにいたしたのでございます。ところで問題は五十五歳にちよつと欠けても恩給をやらないようにするか、あるいはまた恩給を全然給せられない者と給せられる者との間の、いわゆる段階といいますか、断層といいますか、それをなめらかにするかということが一つの問題になつて来ると思うのであります。  実際の人事行政の円滑なる運営ということを考えますと、現行法のごとくに、四十五歳から五十五歳の間におきましては、若干その間をなめらかにするよう措置を講ずることが妥当ではなかろうかと考えました。これは実際の人事行政運営の面から考えて来たわけでございます。そういうような見地に立つてしたわけでございまして、ほかの制度におきまして、たとえば厚生年金保険法制度におきまして、五十五歳ということになつておるというようなことを全然考えなかつたというわけではございません。
  34. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 次に文官と武官を通算して考えるということについては、どういう政府のお考えですか。
  35. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 でき得れば全部通算するようにしたいと思つているところでございますが、先ほど御説明申し上げましたよう事情からいたしまして、文武官通算につきまして若干の制限を設けた次第でございます。これは過去におきましても、たとえば大正十二年前におきましても、一般文官の中の警察職員とか、学校先生とかは、軍人との間には通算は全然ございませんでした。それからまた昭和八年でございましたか、それまでは学校先生軍人との間における通算はなかつたのでございます。従つて終戦の際の恩給受給者の中におきましても、大正十二年前に退職または死亡された教育職員あるいは警察監獄職員と、それから大正十二年から昭和八年の間に退職され、または死亡された学校先生方及びその遺族の方、それからそのほかの公務員及びその遺族の方との間におきましては、通算において差別されておつたよう事情であります。これはそのときどきの国家財政その他やむを得ない事情からそうなつて来たのじやなかろうかと思つておるところでございます。従いまして今回の法案におきますごとく措置をいたしましたのは、こういうことをすることそのことが当然の問題としてしたのではなくて、やむを得ない現下の情勢に基いてとらざるを得なくしてやつたところでございます。
  36. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 次にけがの問題でありますが、これも恩給理論社会保障みたいなものとの争いになつておりまして、われわれの考え方としては十分な慰藉をすることができないならば、せめて昨日の公述人のうちにそういうことを申しておつた者がありますが、大将が腕一本なくした場合でも、兵が腕一本なくした場合でもその不自由さは同じことである。ゆえに階級によつて区別して傷病年金を与えるという考え方よりは、むしろ傷の重さによつて与えるのであつて階級差をそれにつけるということは理論的にはとにかく、実際問題としてはそういうことは差控えようじやないかという考え方を持つておるのであります。その点について政府の所見はどうでありますか。
  37. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 これはなかなかむずかしい問題だと思つております。これは結局こういうよう補償制度の根本の問題ではないかと思うのでございまして、かえつて鈴木先生などにお教えを請わなければいけないことかと思うのであります。実は補償制度におきましては、御承知通り、何をどういうものさしをもつて補償するかということが、根本問題じやないかと思います。労働基準法におきましても、国家公務員災害補償法におきましても、あるいは厚生年金保険法におきましても、そのものさしとして考えられておるところは、退職当時の条件でございます。退職当時の条件というものは退職当時の俸給ということになつております。退職当時の俸給の多い者は、多いだけ同じけがをしてもその損害の多かつた者という一つの前提が立てられればこそ、労働基準法におきましても、あるいは厚生年金保険法におきましても、国家公務員災害補償法におきましても、ああいうよう制度ができるのじやなかろうかと思つておるところでございます。また従来の恩給制度においてもそういうことでございました。  古い昔のことを申し上げてたいへん恐縮でございますけれども、大正十二年前におきましては、やはり文官なんかにおきましては、たしか一定の率で出しておつたと思うのでございます。そういうような率で出しますと、結局俸給の多い者ほどたくさんの恩給増加恩給金額を給せられることになるわけであります。そこで今先生の仰せられましたような、上薄下厚の精神を織り込んで参りまして、定額制にして退職時の俸給に比較いたしまして、上になるほど恩給金額は絶対額は多いが、相対的には少くなるよう措置をしました。すなわち言いかえますと、今の厚生年金保険法とか、あるいは労働基準法とか、国家公務員災害補償法の給付の精神を生かしながら今先生の指摘をせられました上薄下厚の精神を盛り込んで来たのが、この制度であると考えておるところでございます。
  38. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 誤解を避けるためにわれわれの立場を明らかにしおきますが、まるでこの階級差を認めないというわけじやないのです。すでに軍隊制度がなくなつたのであるから大将以下兵まで十七階級もわける必要はなかろう。もつと圧縮して、たとえば五階級とか四階級ぐらいにわけて普通恩給をやる。それからけがにつきましては、けがの重さに応じた平等の年金をそれにプラスしたものを与えて行く。若干の階級差が残りつ平等の扱いをするということがあり得る。そういう見地から質問をいたしておるわけであります。これは誤解を避けるために申しておきます。  そこで戦犯の処刑の問題でありますが、これは非常にデリケートな問題で、お答えがむずかしいかもしれませんが、その点については政府はどうお考えになつておるか、総括的に承りたい。
  39. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給法上の取扱いといたしましては、この法案に示されておりますごとく、今拘禁中の方に対しましてはその間支給を停止する。すなわち恩給権そのものは否定しないという考え方に立つております。すなわちこの法律によつて恩給を給される条件を満たされる方につきましては、恩給を給する建前はとりますけれども、拘禁中だけは一時恩給の支給を差控える、こういう考えに立つております。そのほか拘禁中死亡した人の遺族方々にもそれ相当恩給の給せられる方に対しては、恩給を給するという考え方をいたしておるわけでございます。
  40. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 いろいろ聞きたいことがありますが、私一人でやつてつては恐縮でありますから、あとで国務大臣質問することを保留してこれでやめておきます。
  41. 稻村順三

    ○稻村委員長 高橋等君より関連して質問したい旨の申入れがありますのでこれを許します。高橋等君。
  42. 高橋等

    高橋(等)委員 ただいま戦傷病死の問題につきましていろいろ御質問があつたのでありますが、これは今後恩給法を適用いたして行く上において問題が多いと考えます。現在援護法の裁定過程におきましても、非常に問題が多い関係で、戦病死者に対しまする年金あるいは弔慰金の支払い態度が未決定のものが非常に多いということは、先ほど来厚生当局からもお話があつたところでありますので、私は恩給法第四十八条のいわゆる「公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルモノト看做ス」この点を恩給局長から一応御説明を承りたい。  それから第四十九条の特殊公務と普通公務を今度なくされております。従つて公務のため傷痍を受け、疾病にかかりたるものとみなされるものは、結局四十八条の規定がおもな規定になつておると思うのであります。従つて四十八条の条文及びこれに関連いたしました「公務旅行中別表第一号表ノ二二掲クル流行病ニ罹リタルトキ」及び三項の点について一応御説明を承つて、なお明らかにいたしたいところをいたしたいと考えます。
  43. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今お尋ねの四十八条の規定でございますが、四十八条は実際の場合において公務のために傷痍、疾病にかかつたものであるか、あるいはまた公務のために傷痍、疾病にかかつたものでないのか、その判定に苦しむ場合があるわけでございます。その判定に苦しむ場合としてあげられた一つの場合の規定でございまして、そういうような場合におきましては、これを常識上公務によると判定してしかるべきではないかと思はれるものを公務によるとする、こういう見地に立ちましてこの法律の条文はつくられていると承知いたしております。そこで四十八条の二項に、「公務旅行中別表第一号表ノ二ニ掲クル流行病ニ罹リタルトキ」こう書いてございますので、この別表第一号表に掲ぐる流行病にかかつた人でありまして、そのかかつたの公務旅行中でありますならば、その流行病にかかつたのが、公務でかかつたという証明を要しないで、公務傷病にかかつたものとしての取扱いを受けるのでございまして、それから三号のところの「公務員タル特別ノ事情ニ関聯シテ生シタル不慮ノ災厄ニ因リ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ恩給審議会ニ於テ公務ニ起因シタルト同視スヘキモノト議決セラレタルトキ」こういいますのは、たとえばずつと昔、浜口総理大臣が凶刃に倒れましたが、ああいうような場合がこれに該当するのでありまして、その場合はほんとうに「公務員タル特別ノ事情ニ関聯シテ生シタル不慮ノ災厄」と申すべきものだと思います。そういうような場合におきましては、その認定は恩給審査会に付して恩給審査会において公務とみなす、こういうよう取扱いをすることになつております。
  44. 高橋等

    高橋(等)委員 そこでお伺いいた六ますが、いわゆる過去において戦闘行為に従事するために外地へ行つてつた軍隊、これは四十八条の第二号のいわゆる公務旅行中と解釈されておりますかどうですか。
  45. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 旅行中とは限つておりません。
  46. 高橋等

    高橋(等)委員 そうすると戦地におもむきましたところの人々は、どの条文によつて問題を解決されるつもりですか。それはこの恩給法一部改正案のどの条文ですか。
  47. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 お答えいたします。お手元に配付してありまする、昭和二十一年四月一日現在の恩給法関係法令集というのがございます。その法令集の四十八条のところに、「勅令ヲ以テ指定スル地域二在勤中其ノ地ニ於テ流行病ニ罹リタルトキ」こういう条文があつたのであります。これは旅行ということではないのであります。先ほどの高橋先生の御質問は、戦地におる軍隊、これを旅行中と同じに取扱うかという御質問でございましたので、私はそうではないとこう申し上げたのでありますが、昔この一号が入つておりました。戦後におきましてはこれを省きました。その一号の、「勅令ヲ以テ指定スル地域」というのは、昭和三十一年の法令集の後の方にずつとございますが、それによつてあるいは千島列島とか、仏印とか、太平洋とか、そういう地域において、大体流行病と同じような病気にかかつた者につきましては、すべて公務傷痍疾病としての取扱いをすることになつてつたのであります。その規定は現行法から落ちておりますけれども、今度の恩給法の規定におきましては、その当時の恩給法の規定が動くような構想をもつて規定いたしておるのでございます。
  48. 高橋等

    高橋(等)委員 どうもただいまの御説明は私納得いたしません。恩給法一部改正法律案の中のどこにそういうことが読めるように規定してありますか。
  49. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 附則第二十五条であります。
  50. 高橋等

    高橋(等)委員 附則第二十五条にはそんなことは出ていないように思うのですが、これからどういう解釈をされますか。
  51. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 この旧軍人やそれから準軍人及びその遺族方々に給しまする規定は、この附則にいろいろ規定がございます。その附則に書いてあります規定だけでは、旧軍人及びその遺族方々恩給を給する規定としては全きを得ておりません。そこで、ずつと昔から今日まで続いて来ておりますところの恩給法の規定を、今度は規定していない事項につきまして働かして行こう、こういうよう考え方に立つたわけです。そのためにこの「恩給法の規定を適用する。」こういう表現にしたわけであります。
  52. 高橋等

    高橋(等)委員 少し長くなりますが、ちよつとはつきりさせたいと思いますから、皆さんにお許しを願いたいと思います。この恩給法の規定を適用するというのは、恩給法というのは現行の恩給法ではないのですか。削除された過去の、昭和二十一年四月一日の恩給法をいうのか、あるいは現行の恩給法というのか、その点なんです。法が不備なら不備で直せばいいのですが、それは固くお考え願わぬでもいいのです。
  53. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 お話よう昭和二十一年法律第三十一号が出されまして、そして恩給法の中から軍人、準軍人その他の規定が削除されたのでございます。その際にその法律の附則の第二条に……。
  54. 高橋等

    高橋(等)委員 どの附則ですか。
  55. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 昭和二十一年法律第三十一号の附則第二条……。
  56. 高橋等

    高橋(等)委員 何ページですか。
  57. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 この法令集の二十六ページの下の段に附則として、昭和二十一年法律第三十一号、これは恩給法の一部を改正する法律でありますが、その第二条のところに、「従前の規定による公務員又は公務員に準ずべき者についてはなほ従前の例による。」という規定があるのでございます。昭和二十一年の法律第三十一号によりまして、軍人、準軍人に関する規定は恩給法の中からは削除いたしました。しかし削除はいたしたものの、その経過的な規定がここにあるのでございます。その経過的な規定が今日まで恩給法の中にずつとあるにかかわらず、恩給法の特例によつてずつと発動を押えられておるとかよう考えておるわけであります。そういう特例を今度はずすことによつて発動させよう、こういうのがこの法律の趣旨であります。
  58. 高橋等

    高橋(等)委員 そうしますと、もう一つ伺いますが、二十一年四月一日というものの四十八条、第一項、第一号に「勅令ヲ以テ指定スル地域二在勤中其ノ地二於テ流行病ニ罹リタルトキ」というのは、今度の法律では生きるのですか生きないのですか。
  59. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 生きております。
  60. 高橋等

    高橋(等)委員 そうしますと、軍人、軍属が外地あるいは艦船の中におきまして、いわゆる公務傷病にかかつたというのを規定するところの条文というものは、どれとどれですか。
  61. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今お話ような、艦船に乗組んでおつた者が、公務のため傷痍疾病にかかつた場合に、それを公務と認めるかどうかという具体的の問題につきましては、恩給局長の裁定に関するわけです。
  62. 高橋等

    高橋(等)委員 艦艇ばかりでなしにいわゆる戦傷病については、その条文が適用されるのですか。
  63. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 昭和二十七年五月一日の法令集の左ページのところに、第四十六条というのがございまして、それに「公務員公務ノ為傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ不具不具癈疾ト為り失格原因ナクシテ退職シタルトキハ之ニ普通恩給増加恩給ヲ給ス」ということになつておるわけです。そこで今お話ように、不具癈疾になつたものであるかどうかということが裁定の問題になる、こう思つておるのでございます。
  64. 高橋等

    高橋(等)委員 外地におきまして戦闘その他をやりますために、外地へ軍属軍人として応召して行つておる、それらについては公務のために行つておるものと従来お考えになつておりますか、どうですか。
  65. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 行つておられるそのことは、公務のために行つておられることと思つております。
  66. 高橋等

    高橋(等)委員 この勅令で見まして、いわゆる流行病にかかりたるときなんということでやられておりますが、実際外地で、これは具体的例ですが、結核にかかつた、外地へ行つてつてあるいは栄養失調によつて死んだ、こんな例は今度の戦争で多いのであります。これらについてはどういうふうになさるお考えであるか、それを承りたい。
  67. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 終戦の際までに裁定いたしました実例といたしましては、栄養失調はニユーギネアその他のところでいろいろありますが、全部戦闘によつて死んだものと同じよう取扱いをいたしております。
  68. 稻村順三

    ○稻村委員長 これにて暫時休憩し、一時半より再開いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  69. 稻村順三

    ○稻村委員長 これより開会いたします。  休憩前に引続き質疑を続行いたします。長谷川保君。
  70. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先日来しばしば聞かれたことでありますが、どうも緒方副総理に伺いましても、今回の軍人恩給の復活についての考え方がはつきりいたさないようであります。軍人恩給を打切られたと言うかと思うと、潜在的な特権だと言うし、あるいはまた新制だとも言うし、どうもはつきりいたさないのであります。たいへん恐縮でありますけれども、もう一度私は恩給局長に、今回の軍人恩給を復活するについて関連してではありますが、恩給ということについての基本的な観念というか、理念というか、原理を伺いたい。
  71. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給の理念についてのお尋ねがございますが、恩給の理念につきましては、御承知通り、いろいろな説があるようでございます。現行の日本恩給制度ができる際にもいろいろ論議があつたようでございますが、今日まで政府の方においてとつておる説は、公務員公務に従事したことによつてなくなつた経済的な獲得能力を補填する、そういうようなところにその理念を置いておるようでございます。もう少し平たく申し上げますと、公務のために傷病にかかつて腕をなくしたところで、死んだら死んだところで、あるいは長く勤務して老朽になれば老朽になつたところで、そこで失われた経済的な獲得能力を補填する、こういう意味で恩給というものは使用者たる国家が被使用者である公務員に対して給するものであるという考え方に立つておるようでございます。
  72. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の経済能力の喪失に対する補填という意味の補償という考え方だというお話でありますが、退職金というよう考え方は全然入つていないのでありますか。
  73. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 退職金の性格については、御承知通り、いろいろな議論があるようでございます。ここにはちよつとはつきりした資料を持つておりませんので、私の記憶で申し上げますから、少し違つたことがあるかもしれませんが、御承知ように、終戦後労働争議のやかましかつたときに、日経連との間において退職金の性格についていろいろ論議があつたようでございます。従つてまず退職金の性格をどうきめるかということから問題が起つて来るかと思います。今私が申し上げた恩給と同じような性格の退職金ということでございますならば、これはほかの民間においても、あるいはそういう性格の退職金が出されたことがあるかとも思つております。
  74. 長谷川保

    長谷川(保)委員 功労金というような意味は全然含みませんか。
  75. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 功労金ということとは全然別な考え方でございます。恩給の中にはそれは含まれていないという考え方でございます。従来行賞ということがありましたが、これは別な考え方に立つてものを考えておるようでございます。もちろん恩給の全体を考えてみますと、私が今申し上げましたような理念そのものだけで押し通されているかと申しますと、そうでない点も若干ないでもございません。それは恩給というものが公務員に給されるという観点に立ちまして考えますと、公務員に給される以上は、やはり官紀ということも考えなければいかぬ。こういうことからいたしまして、官紀維持という点から見て、若干今の理念が少し修正されている点もあります。またほかのいろいろなポリシーといいますか、政策という点も入つて来ているのではなかろうかというようなこともないではございません。
  76. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうも今度の軍人恩給の復活という意味には、少し無理があると私には考えられるのでありますが、一応種々論議せられましたように、軍人という職業身分は憲法でなくなつておる。そこで旧所得を土台といたしまして、これによつて恩給を与えるということは、どうしても無理がある。国敗れた今日、別途の方法で傷痍者やあるいは戦死者遺族という、物心ともに非常な損害を受けて、ことに今日の生活にもずいぶんと困難をされておる、そういう方々に対しまして、今日の財政の許す限り十分なる補償をするということはよくわかります。そういう意味では、この国家補償という考え方はよくわかるのでありますけれども、どうしても旧軍人なるがゆえにという考え方が理解できないのであります。昨日も質問応答があつたかと思いますが、総動員法その他によつて徴用いたしまして爆死した、あるいはその他の人々は、あくまでやはり正式に政府が雇入れた者でない、そういう立場でこの恩給の方から除外する、そういうことになるのでありますか。
  77. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私がお答えすることがはずれておりましたら、言つていただけばまたあらためてお答えしますが、今の御質問は、大体二つにわけてお答えしたらいいのじやないかと思います。その一つは、一体法理論的にはどういうような見地に立つて、旧軍人恩給を給するという考えをとつて来たのか、こういうことについての御質問と、その次は総動員法によつて徴用された人々に対しても、旧軍人と同じよう恩給を給するよう措置考えられないのか、結局今御質問の趣旨は、こういうようなことに相なるのではないかと思うのであります。それでそういうようなことといたしまして一応お答えいたしますが、少しくどくなるかもわかりませんが、御承知のごとくに、旧軍人に対しましては連合国からの指令がありますまでは、恩給が給されておつたのでありますが、連合国からの指令によりましてできました昭和二十一年勅令第六十八号によりまして、恩給は給せられなくなつて、既発の恩給証書までも無効にされてしまつたのでありますから、一応恩給の既得権そのものはなくなつてしまつておると考えられます。これはもちろん傷病者に給される恩給については別であります。しかしてそのときの法制的措置ではどうなつているかと申しますと、恩給法の規定の中におきましては、旧軍人の方にも恩給が給されるという規定がそのままあるということを前提といたしまして、そして恩給法特例第六十八号が制定されておるのであります。いわば恩給法の中において、旧軍人恩給を給するという規定は、六十八号によつてその発動を押えられて来ているというのが今日までの実情でございます。ところでこの恩給法の特例は恩給法に対して特別法になつておるわけであります。この特別法がなくなれば、恩給法そのものが発動する、こういうようなことになつております。これについては問題としていろいろの論もあります。恩給法の特例が、講和条約の効力の発生後もずつと今日までありますが、効力が今度なくなるということになつて参りますと、恩給法の規定によつて、旧軍人には恩給を給されるよう一つの法律上の既得の地位があるのじやなかろうか、こういうことが考えられるのでございます。そこでその既得の地位を考えまして、そうして旧軍人に対しましては、恩給を給するよう措置をすることが、法理論的にも当然なことではなかろうか、こういうふうに考えて来たところでございます。もちろん、先ほど申し上げましたように、昔のような厳格な意味における既得権そのものがあることは言えないにいたしましても、今申し上げますような既得の地位というものは、やはり尊重すべきであろうと思います。これを尊重いたしまして、そうして恩給を給する措置考えて来たのでございます。  次に総動員法によつて徴用された人人に対しまして、恩給法によつて恩給を給するよう措置ができるかどうか、こういう問題でございますが、恩給法ではずつと昔からあつた規定ですが、在職中の国家公務員の中で、これこれの公務員に対しては、これこれの条件に該当して、退職または死亡した場合には恩給を給すということを規定しておつたのでございます。そして国家総動員法によつて徴用された人々については、何らの規定がなかつたのでございます。従いまして国家総動員法によつて徴用された人々につきましても、遡及してそういうような規定の適用を受けるよう措置を講ずるかどうか、こういうことが問題となるわけでございます。遡及して恩給を適用するよう措置をしますことが、実際にも法律的にもいいかどうかにつきまして、いろいろ議論があることでございましようし、なかなか困難ないろいろな問題がございます。そこで今のところ私どもは、恩給法を遡及適用するということは非常に困難なことである、こういうよう考えておるのでございます。
  78. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは次の問題に入りまして、ちよつとめんどうな数字かもしれませんが、今おわかりにならなければ、あとでよろしいのでありますが、普通恩給を支給される予定の旧職業軍人というものの数はどれくらいございますか。
  79. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 実は率直に申し上げますと、旧職業軍人ということをよくいわれるものですから、職業軍人というものの範疇がどういうものかということも一応検討してみたこともございますが、なかなかむずかしい問題になります。今お話ように、旧職業軍人が何人ということを調べたものはございません。ただ御希望に沿うかどうかはわかりませんが、普通恩給を受けるもの、大体将校以上であるのが何人か、こういうようなことは私の方で調べればすぐわかることでございますから、よろしければ後刻お手元に差上げます。
  80. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは後刻教えていただきたいと思います。  それからいま一つ、普通扶助料を受ける者は十七万三千人あるということになつておりますが、この妻と子の数と受けまする予定の額、同様に父母の数と受けまする予定の額、こういうものがわかりましようか。
  81. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 実はこれから給しようとするところでございますので、給する者の大体の内容がどういうようになつているかというような、今お話になりましたような調査は、実はできておりません。
  82. 長谷川保

    長谷川(保)委員 次に加算廃止の問題でございますが、まず私は人事院給与局の慶徳次長に伺いたいのであります。御承知ように今回の恩給法改正によりまして、三十八条の廃止というところから僻敵地あるいは危険業務等で働いております方々の加算が打切られ、あるいは恩給加給が打切られることになつたわけでありますが、今日たとえば僻陬地に働いております小学校先生は、どれくらいの手当がついておるか、それから灯台守の諸君はどのくらいついておるか、さらに現行の三十八条の四にあります「有毒ノ瓦斯若ハ蒸気、爆薬類又ハ危険ナル細菌ノ研究又ハ製造ニ直接ニ従事スル勤務ニシテ内閣総理大臣ノ指定スルモノ」「鉄道事業ニ於ケル蒸気機関車乗員トシテノ現業勤務」「炭坑内切羽ニ於ケル連続的現業勤務」「鉄道ノ遂道工事又ハ橋梁工事の搾空気内ニ於ケル連続的勤務」「肺結核、喉頭結核又ハ癩ノ患者ヲ収容スル病室ニ於テ直接看護ニ従事スル勤務」「保安庁及海上保安庁の木船ニシテ排水量百五十噸以下ノ巡視船又ハ排水量二百五十噸以下ノ掃海船タルモノノ乗員トシテノ勤務」こういうよう方々はどれくらいの手当がついておりますか、概略でよろしゆうございますが、金額で教えていただきたい。
  83. 慶徳庄意

    ○慶徳説明員 お答え申し上げます。第一点の教職員に対する僻陬地手当の点でございますが、私ども人事院として所管いたしておりますのは、大体国家公務員でありますので、国家公務員といたしましては、教職員としまして僻陬地に在勤しておる者はほとんどございませんので、教職員以外の分についてはございますけれども、教職員については、ほとんどございません。しかしおそらく私どもの方でやつております僻陬地手当の支給規準によりまして、地方の方が実行されて、いるのじやなかろうかと想像いたします。従いまして具体的なデータは主として地方教職員というようなことになろうかと思いますので、遺憾でありますが、私どもは現在手元に持ち合せてございません。  それから第二の灯台守でございますが、これは大部分が国家公務員でございまして、もちろん灯台守勤務でありましても、その全部につきまして僻地手当を出しておるのではございませんけれども、ことに僻遠の島嶼につきましては大部分僻陬地手当を出しております。のみならず従来の給与体系におきましては、官吏俸給令という一本の給与体系であつたのでありますが、終戦後における新しい給与体系におきましては、その職種ごとに俸給表を異にいたしております。つまり一般の場合には一般俸給表であり、あるいは税務俸給表とか警察警務俸給表であるとか、幾つかの俸給表があるわけでありますが、その特殊の俸給表につきましては、一般よりも若干高い水準の給与を与える体系をとつております。今具体的に御指摘になりました灯台守につきましては、警察警務職員並の俸給表を与える仕組みをとつております。平均いたしますと一般俸給表に比較いたしまして四号の水準差、つまり四号俸高い俸給を支給するという体系をとつております。
  84. 長谷川保

    長谷川(保)委員 四号俸というのはどのくらいかわれわれわからないのですが、金額でどれくらいになりますか。
  85. 慶徳庄意

    ○慶徳説明員 これは職務の級によつて非常に違いますので、もし必要でございましたら職務級ごとに種別に資料をつくりまして差上げてもけつこうであります。  それから次の癩、結核病棟に勤務している職員でございますが、これも従来の制度におきましては、特別の給与措置考えられておらなかつたのでありますが、その職務の特殊性に応じまして、現在の給与法でいいますと俸給の調整額という形式をとつておるのでございますが、その職務の級によりましてたしか二号ないし六号だつたかと思いますが、あるいはちよつと記憶に違いがあるかもしれませんが、その程度の高い給与を与えるという仕組みをとつております。  それからその次の有毒ガスあるいは爆薬類というような点でございますが、これも今具体的なデータを持ち合わせておらぬので、あるいは誤つておる点があろうかと思いますが、そのうち一部につきまして特殊勤務手当制度を設けておるのがあるように記憶いたしております。しかし必ずしもこれは全部には行つていないと記憶いたしております。  それからその次の問題の海上保安庁等でありまするが、これは先ほど申し上げましたように、現在船員俸給表という俸給衣でやつておりますので、これは平均いたしまして五号ほど水準の高いところの給与を与えております。それから最後に国鉄の機関車乗務員という御質問があつたようでありますが、これは遺憾ながら公共企業体でございまして、私の所管外でございますので、お許し願いたいと思います。
  86. 稻村順三

    ○稻村委員長 長谷川委員に申し上げます。緒方副総理がお見えになりましたので、審議の都合上緒方副総理に対する質疑を先に行いますから御了承願います。
  87. 長谷川保

    長谷川(保)委員 まだございますが、留保しておきます。
  88. 稻村順三

    ○稻村委員長 辻政信君。
  89. 辻政信

    ○辻(政)委員 緒方副総理に、総理大臣の代理としてお答えを願いたいと思うのであります。第一は、本法案取扱いにおきまして、私ども生き残つておる軍人立場から申し上げますと、まだ動ける者は若年停止をさらに繰上げられてもかまわない、われわれのものは辞退しても、われわれは、かつての戦場において殺した部下の遺族傷ついた傷病兵を少しでも厚く取扱つていただきたい、こういう気持であります。しかるに本法案に現われたところを見ますと、その遺族取扱いにおいても、傷病兵の取扱いにおいても、文官との間にかなりの開きがあるのであります。この点もまた国家財政の現状において忍ぶものは忍んでおるわけでありますが、ただひとつお願いしだいと思いますことは、傷病兵の年金におきまして、文官は、いわゆる第七項症と第一—第四款症まで既得権益のものは、この法令の改正いかんにかかわらず依然として年金をもらつておるのであります、にもかかわらずこの傷痍軍人に限りまして第六項症にとどめておいて、第七項症と第一、第四款症は年金を削られる、そこに非常な不合事理があるのであります。財政上少いというのではなくして、一方文官はもらつておるにかかわらず、武官の方は六項症で切られておる。この金額は総額にしまして十九億と大体見当つけておりますが、財政上支出ができないという政府の答弁でありましようけれども、現に国会予算は昨年に比しまして七億四千万円、一部削られたにしましても四億何千万円かの増額を認められて、それが議員の滞在費の値上げになり、立法事務費の値上げになつておるのであります。行政事務費は四千億節約の原案を、さらに大幅に節約されようとしておる。真に総理大臣としてこの傷ついた人を救おうという政治的良心をお持ちであるならば、私はそのくらいの予算が引出し得ないことはなかろうと考えるのであります。その点について総理大臣の代理として緒方さんの御答弁をお伺いします。
  90. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 辻委員の旧軍人としてただいまのもろもろの点を御主張になる気持はよくわかります。でありまするが、七項症以下を今回の恩給法案で取上げなかつた理由は、先般も申し上げた通りでありまして、それでは文官との均衡がとれないではないか、これも一応ごもつともでありますが、現在文官で七項症に当る者が増加恩給を受けておるのを剥奪するわけにも参らない、今後はそれを停止することになつておりまして、その点におきまして均衡をとつて参りたい、かよう考えておりますので、政府としては今の底の浅い財政におきましてできるだけの、旧軍人と申しましても、ほとんどその大部分は遺族の扶助でいて待遇を考えたつもりでございます。今の事情におきましては、これ以上の恩給は困難かと考えております。
  91. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまの御答弁でありますが、今の事情においては困難であるということは、将来財政が許すならばそれを認めるということを確約なさるのでありますか。
  92. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 確約ということは申しかねます。将来財政事情がどういうことになるかまだなかなか見通しがつきませんが、財政事情が今われわれが目の前に想像している以上に、非常によくなつた場合にはそういうこともできるかと思いますが、今のところではそういう予想を持つておりません。
  93. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまのは、先ほどの御答弁にはなはだ矛盾したところがあります。それは文官ですでにもらつておるものは認めるが、将来は六項症で打切るという御答弁でありますが、今傷痍軍人の諸君というものは、いわゆる過去において傷を受けたのであります。将来受ける者に対して文官同様六項症で切るというならばわかるのであります、この人たちはすでに過去において受けた人であります。これから傷を受けるのでないのでありますから、そこに私は非常な矛盾があると思います。
  94. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私はちよつと御質問を聞きそこないましたが、軍人恩給全般に対して文官と均衡をとれていないものがあるが、これに対して将来改善するつもりがあるかという御質問と思つてお答えをしたのでありまして、今の七項症につきましては御指摘の通りであります。
  95. 辻政信

    ○辻(政)委員 七項症に対しては御指摘の通りとおつしやいましたが、そのような不合理ということを自覚しながらそれを是正しようとなさらないのかどうかということをお聞きしたい。
  96. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 将来につきましては、文官の方も七項症の者は増加恩給をいたしませんので、その点においては均衡がとれておると考えております。
  97. 辻政信

    ○辻(政)委員 私将来の問題を論じているのではないのであります。今日傷痍軍人が訴えておるのは過去の事績に対して訴えておるのであります。これから保安隊が軍隊になつて、その人たちがけがをしたときの取扱いを言つているのではないのであります。はき違えないようにしてお答弁を願いたい。
  98. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 七項症の問題につきましては、恩給特例審議会におきましても、いろいろな観点から審議を尽されたのでありますが、過去におきまして、昭和八年までですか、それは一時金でやつてつたということもありまするし、今日の国家公務員共済組合あるいは厚生年金保険法等におきましても、七項症に当る者は一時金で済ましておりまするので、それに準じまして、また国家財政の点もありまして、そのような決定になつたのであります。
  99. 辻政信

    ○辻(政)委員 昭和八年に改正されたということは、これは文官も同様に改正されたのでありまして、七項症以下は武官だけを優遇して改正されたのではないと思います。その点はどうですか。
  100. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の辻委員の御質問でございますが、昭和八年の改正のときは——それまでは下士官以下だつたと思つております。そのときになつて初めて将校にも年金が給せられるようなつたと思います。ところで先ほどからの緒方副総理に対する御質問にもございましたので、これを私が補足して弁答させていただきたいと思いますが、辻委員の御質問は、かつて傷痍者に対してはかつて恩給法の規定通りにやつたらいいじやないか、こういう御質問だろうと思うのであります。そこでそのかつて恩給法の規定通りに支給するか、あるいはまた今日一般のいわゆる非軍事的な原因によつて傷痍疾病にかかつた者に対して国家が補償しておるところのその補償と大体にらみ合せ、そうして規定をつくつて行くか、こういうことが問題のわかれ目だと思います。政府においてはその点をいろいろ考えたのであります。もちろん辻委員の仰せられますごとくに、でき得るならば軍事的な原因によつて傷痍疾病にかかられた人に対しましては、特に手厚いところの処遇をするということも考えなければならないことではないかと思います。しかし他面において今申し上げますような非軍事的な原因によつて傷痍疾病を受けた一般の人また雇傭人等の国家公務員に対する処遇等のことも考えて、しかも今度の予算の許す範囲内においてどうしても困難な事情がございましたために、やむなくしたのでありまして、先ほどからの御質問の過去の傷痍者だけを特に軽くするというような気持は全然持つていないのであります。ただ今申し上げますようないろいろな事情から、結論としては辻委員の御満足にならないような結果になつて来ておるよう事情でございます。
  101. 辻政信

    ○辻(政)委員 あくまで満足いたしません。これはそこに非常な不合理がある。  次にあらためてお伺いしたいことは、現在戦犯で監獄に抑留されておる人たちの恩給年限に達したごくわずかな数ですが、その人たちに対して恩給法の権利は認めるが、支給を停止する、その理由は、諸般の情勢にかんがみとありまして、諸般の情勢とは何かということを恩給局長に聞いたが、御答弁がありません。この点について副総理からいかなる情勢によつてそれを停止されたか、承りたいのであります。
  102. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 戦犯というものにつきまして、私も個人としてはいろいろな意見がありますが、今日戦犯というものがきめられまして、国際的にやはり一つの犯罪としてわれわれとは違つた尺度で見ておるのでありまして、そういう微妙な情勢がありますので、一口に申しますれば、局長から申し上げましたような、諸種の事情によつて拘禁中の人には渡してないということを申し上げるよりしようがございません。
  103. 辻政信

    ○辻(政)委員 諸種の事情というのを局長が説明しないからお伺いするのでありますが、戦犯の裁判は、御承知のごとく一方的な裁判である。あの中には無実の罪がたくさんあるのであります。ことに恩給法の権利を持つておる人はおおむね古い方で、部下の責任さえも問われておる人が大部分である。今日フィリピンが戦犯を釈放し、またマヌス島から帰つて来る、対外関係は確かにそこに変化の徴候を示しておる。国内の輿論もまた同情的になつておる。インドのパール判事は戦犯無罪論をとなえておる。現在在監中の人たちには国内法を適用しないと政府はたびたび声明しておられるし、この前の選挙において現にその人たちの清き一票がみな行使されておるのであります。そうしておいて、私の見る限りにおいては戦犯の留守宅ほど哀れなものはないのであります。実にひどい状態になつております。しかもわずかである。予算に大なる関係はないのであります。真に政府がその点を御同情くださいましておやりになつたならば、私はこのわずかなものに対しての例外を認められないということはないと思うのであります。予算の大なる組みかえを要しないではないか。はつきり所見を承りたい。
  104. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 戦犯というものに対しましてわれわれ日本人としての見方と、それから勝つた国が負けた国に対して、かつ個人的にその責任を追究して、戦犯というものをこしらえました動機、その間には私は非常に差があると思います。また今御指摘になつたように、国際的にも戦犯というものに対する見方がかわつて来つつある兆候は私どもも感じます。それからいろんな扱いも緩和されつつあることも感じます。しかし何と申しましても、戦犯というのは公式に扱われておりまして、その取扱いについては、将来釈放問題とも関連いたしましていろいろな微妙なものがありますので、今のところは戦犯の拘禁中の者には恩給を差上げることができない事情があります。ただその人たちの留守宅の生活の非常に気の毒なことは重々政府においても承知いたしておりますので、それは家族の援護法によりまして、十分とはむろん申されませんが、ある程度のお助けをしておるような次第であります。
  105. 辻政信

    ○辻(政)委員 今度の改正法案でまだシベリヤから帰つて来ない人は、従来はいわゆる援護法の適用を受けておつたのですが、今度のは未帰還者に対しても恩給法の適用を許されておるのであります。その中には少くとも千二百名のソ連抑留の戦犯が含まれております。ソ連とは外交関係は結んでおらなくても、ソ連の監獄に入つておる人が、その解釈のもとに恩給法を適用されておるにかかわらず、巣鴨におる人たちが受けられないことは不合理だと私は考えますが、いかがですか。
  106. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 不合理という見方も立つかもしれませんが、ソ連との間は国交がありませんし、ソ連で一方的に戦犯として扱つておるものは東京の軍事法廷の結果とまた違うと思います。その点におきまして、結果も違いが現われておることはやむを得ないのではないかと考えております。
  107. 辻政信

    ○辻(政)委員 それでは先ほどの御答弁で、もし在監者に恩給を支給するような優遇法を講ずると、諸外国の輿論を刺激して、アメリカ以下の国が釈放をしぶるようになるというようなお考えはあるのですか。
  108. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 釈放をしぶるとまでは申しませんが、たとえば在監者の生活につきまして寛大に、非常に親切に取扱つたことが、かえつて逆な刺激を与えるという事実はございます。そういうことからこれらの扱いにつきましては慎重の上に慎重を期しておるような次第であります。
  109. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は、慎重というよりもむしろ自主性を欠く、極端に言えば李承晩に劣るのじやないか、李承晩は反共俘虜を釈放しておりますよ、堂々と。しかしそれは見解の相違と言われればそれまでであります。  最後にお伺いすることは、この恩給の問題で将来非常に大きな問題になりますのは、いわゆる恩給金庫の問題であります。この恩給証書を担保にして窮状を切抜けようという人たちに対して、国家として恩給金庫をおつくりになる意思はないか。できるだけひとつ考慮していただきたいと思います。御意見を承ります。
  110. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 これは政府としてまだ話合いに上つておりませんけれども、将来受給者の実情に応じまして考えなければならぬことじやないかと考えております。
  111. 辻政信

    ○辻(政)委員 時間をお急ぎになるようですから、その三点で質問を打切ることにします。しかしただいまの御答弁にはどうしても承服できないものがあるということをつけ加えておきます。
  112. 稻村順三

    ○稻村委員長 次は中村高一君。
  113. 中村高一

    ○中村(高)委員 新しく軍人恩給が復活するという一つの観念でありますが、今までも恩給が権利として復活するのか、あるいは一つの既得権が停止しておつたものが認められるのかというようないろいろな観点から質問をされておるのでありますが、おそらく私は、この恩給制度ができて参りましたことは、軍人制度というものがありまして、軍備というものがあつた当時に、その軍備を維持するために、軍人が命を的に戦闘する、もし不幸にしてけがをするあるいは戦死をするというような場合に、国家があとを見てくれる、こういうことが軍備というものと一連の関連を持つてこの制度があるのだと思うのでありまするが、今日日本には軍備もなし、軍人もないのでありますから、この軍を維持する必要のないときにあたつて軍人恩給というようなものはわれわれにはどうしても考えられないのであります。もし日本に将来再軍備でもされるという事態が発生する場合がありまするならばいざ知らず、今日軍という基本のものがなくなつておるのに、それを維持するために必要とされておりますところの恩給制度があるという、その観念は理解ができないと思うのでありますが、これはどういうふうにお考えになつておりますか。
  114. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 恩給の沿革由来につきましてはただいまお話よう事情もあつたかと考えまするが、今日政府が旧軍人恩給をある形において復活しようとしているのは、再軍備というようなこととの関連は何ら考えておりません。ただ国としましては、かりに今回の軍人恩給を、既得権の復活と言わぬまでも、過去において国のために命をなげ出して働いた旧軍人、その人たちの恩給をもろうべかりし意思が占領中にその恩給法が廃止された。それに対して私はよく潜在的な意思というようなことを言いますが、その過去の潜在的な意思に対しては、国としては、かりに既得権でないにしても、その義務を感ぜざるを得ない。それが今回の軍人恩給復活の第一の動機でありまして、今日軍が存在しないから、その必要がない、あるいは将来の再軍備の問題と関連なしに考えることができぬということは、私ども承服できないのでございます。
  115. 中村高一

    ○中村(高)委員 確かに過去において恩給制度というものがあり、その制度のもとに戦闘に参加したのでありますから、その人に対しては国家が補償するということはわれわれも反対ではないのであります。ただ制度として恩給制度という形をとることに対して一つの疑問を持つのであります。非常な負傷をして生活能力を失つておる、あるいはその遺族というよう方々に対しましては、国家が、たとえば補償をするのに一定の金額をまとめて出してやるということも一つの方法でありましようし、あるいは別に報償の方法を講ずるということも方法でありましようし、あるいはその遺族の子供さんは、国がこれを全部引取つて、一人前に育ててやるというよう国家の補償をするということはわかるのでありまするけれども、恩給制度というような古い形を連想させるようなものに対しては、われわれは満足できないのでありまして、特に文官恩給が今日そのまま存続しておりますから、文武両方面に恩給があつたことを考えると、片方はそのままあつて、片方は全然廃止ということのまたむずかしいこともわれわれにはわかるのであります。しかし軍人恩給というものは軍事の制度があつて初めてあり得るものであり、ヨーロツパ諸国などで当初軍人恩給がつくられたということも、軍備というものと相結んで発達したものであることは明らかであります。それに今日の文官恩給というものは便乗したのじやないかと思うのであります。どうもわれわれには、今日の文官恩給制度というものに対しても理解をすることができないところがたくさんあるのでありまして、そういう点から考えましても、私は今さしあたつてこの問題が解決できないといたしましても、将来は社会保障に行くという行き方が正しい、こう考えております。ことに危険を冒して国家のために働いておる者は、官吏のみに限るものでは断じてありません。いくらでも命を的にかけて国家のために働いておるのでありますから、そういうものに移行することが正しいと思つておるのでありまするが、緒方氏のお考えを一応承りたい。
  116. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 将来広い意味における社会保障制度というものが完備した場合には、今日の恩給制度もその中に包括されることがあり得ると考えますが、今日旧軍人遺家族の状況を見ましても、そういうときを待つておれない。のみならず国の義務は潜在的にしろ何にしろ何としても感ぜざるを得ないのでありまして、そういう輿論の要求がありました場合には、これを拒否することは国としてできないのであります。そういう意味から、この際旧軍人恩給を復活するということが、一番時宜に適した施策であると考えております。
  117. 中村高一

    ○中村(高)委員 この恩給法通りますと、一斉に恩給を給せられることになるのだと思うのでありますが、もしこれが恩給の復活であるとか復権であるとかいうことになると、今まで停止をされておつた者は、これは自分の権利であつたものが一時とまつてつたのであろから、停止の勅令が廃止されれば今までの分は全部請求してもさしつかえないというよう一つの既得権的な考えを持たれるようにも思うのであります。これが通過したならば今年の七月分から給与されるものだと思いますが、その点についてはどういうふうになりますか。  それから、文官の方にもそれと同じような例があるのであります。いわゆる追放令によつて停止されておる間というものが四年なり五年なりあつたのであります。もし復権だとすれば、それは一時停止されておつたのである、恩給権が取消されたのではないから、しばらく眠つてつたようなものだと思うのであります。これが目をさましたのでありますから、今までの請求権が出るような感じも持たれるのでありますが、われわれも単なる既得権とだけは解釈したくないのであります。そういう点についてはどうお考えになりますか。
  118. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 恩給権はただいまお話にありましたように眠つてつたのではないので、これは明らかに廃止されておつたのであります。それならばどういうわけで軍人恩給軍人の現存しないときに考えるかというと、過去における恩給受給者であつたその一つの潜在的位置に対して、国としての義務を感じておるということであつて恩給権それ自身は、恩給法も占領中に廃止されておりますし、また既決裁の恩給証書等も無効になつておるので、これは明らかに廃止されておる。従つて、今度の恩給法の場合に、既得権の復活ということは考えておりません。
  119. 中村高一

    ○中村(高)委員 これは緒方さんでなくてもよろしいかと思いますが、現在恩給一般には取消されて、給されておらないようでありますが、傷痍軍人だけはわずかな恩給が現在も給されておるのであります。それが、今度恩給法改正になりますと、現在第七項症でわずかでも受けております者が、今度は受けられなくなるというような問題も起ると思います。そういう事実はありませんか。
  120. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の旧傷病軍人の第七項症の人々に対する問題でございますが、これらの人々に対しては、昭和二十一年勅令第六十八号によつて、従来の年金は廃止され、一時金を給せられることなつて、今日に至つておるのでございます。従つて、今度のこの法案においても、新しく年金を給するよう措置は講じておりません。
  121. 稻村順三

    ○稻村委員長 副総理は水害地緊急対策特別委員会に呼ばれておりますので、副総理に対する質疑を先にお願いいたします。
  122. 高瀬傳

    ○高瀬委員 大分論議がかわされましたが、私は、この旧軍人恩給の問題について、はつきりと今回の改正は過去の恩給権の復活だという立場をとつて、今後論議を進めて行きたいと思います。この前緒方副総理は潜在的恩給権の復活という言葉を使われたようであります。また恩給局長も、この点については非常にそれに類したことを言つておられます。あくまで恩給という点に立脚して考えられたもので、社会保障制度ではない、こういうこと歩恩給局長は言つておられる。諸般の事情を考慮してという言葉を政府は使われますが、その諸般の事情というのは、別は外国に対する気がねとか何とかいうのでなくて、恩給権の復活あるいは恩給を支給することについて、日本政府財政措置を適当にできなかつたというふうに私は解釈しておるのであります。従つて潜在的恩給権の復活だとまで緒方副総理は言つておられるのですから、百尺竿頭一歩を進めて——これはやはり文官と同じく、国家の既得権を尊重する意味で今回の改正をやつたものだと、この間はつきりそこまで言われたのです、ですから私はそこまで解釈して、これは政府恩給権の復活だと声明されても、国民の憲法に保障された基本的人権声尊重するものでありますから少しも再軍備と関係もなければ、過去において軍隊において国家に貢献した人に対する国家の義務の履行でありますから、その点において政府は何も行懸念になる必要はない。将来の自衛軍の確立とか、そういうふうな問題がたとい起きたとしても、そういうものと関係はないのです。過去の国民の基本的人権を尊重するのだという、政府の確固不動の立場をとつて行つてさしつかえない。従つて私は改進党を代表して、今回の恩給法の一部を改正する法律案の審議にあたつては、これは過去の軍人の既得権を尊重して、国家財政とにらみ合せて、その通りできない点はわれわれは了承するけれども、そういう建前から私は論議を進めて行きたい、かように思つております。  それから緒方副総理は水害その他の問題で非常にお忙しいと存じますが、私どもの特に出席を要求しておりますゆえんのものは、緒方副総理に一から十まで完璧な答弁をしていただきたいというのみではないのであります。これは二百万人もおられる軍人関係の恩給受給者に及ぼす非常に重大なる精神的影響を考慮いたしまして、政府が責任をもつて国家財政の乏しきうちからこの処置を講じようと思うならば、やはり時間のある間は積極的に、われわれが要求しなくても、総理なり副総理なりが出て、できるだけこの論議に耳を傾け、国民の言わんとするところを聞いていただきたい、こういう意思にほかならないのでありますから、水害対策でお忙しければ、御退席くだすつても私はその点は一向意に解しない。そこで私はこの恩給法の一部を改正する法律案を審議するについて、非常にいろいろな点に気がつくのであります。たとえばこの恩給法の一部を改正する法律案のうち、第一ページに、第三十一条から第四十条削除という項目がございます。これは恩給局長もちろん御承知だと思うのですが、恩給法の三十八条の中の「公務員其ノ職務ヲ以テ辺陬又ハ不健康ノ地域ニ引続キ一年以上在勤シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付一月以内ヲ加算シ不健康ナル業務ニ引続キ六月以上服務シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付半月ヲ加算ス」「前項ノ地域相互間ノ転勤ハ之ヲ引続キタル在勤ト看做ス」、いわゆる普通の文官に対する加算の制度を削除しておるのであります。しかも三十八条の第四項に参りますと、「鉄道事業ニ於ケル蒸気機関車乗員トシテノ現業勤務」あるいは「炭坑内切羽ニ於ケル連続的現業勤務」「鉄道ノ隊道工事又ハ橋梁工事ノ圧搾空気内ニ於ケル連続的勤務」「肺結核、喉頭結核又ハ癩ノ患者ヲ収容スル病室ニ於テ直接看護ニ従事スル勤務」「保安庁及海上保安庁ノ木船ニシテ排水量百五十噸以下ノ巡視船又ハ排水量二百五十噸以下ノ掃海船タルモノノ乗員トシテノ勤務」「前項ニ規定スル業務ニ従事中引続キ三十日以上服務セサルトキハ全ク服務セサル月二対シテハ不健康業務ノ加算ヲ為サス」こういつたようなことがあるのです。結局政府はこの文官のこういうふうな条項を削除して、軍人恩給権に関する加算等と関連して考えているのではないか。従つてこういうものを加算のわく内から排除して、軍人恩給の加算の問題も適当に処理しようというお考えでやつておるのではないか。私はそう思わざるを得ないのであります。この点について、三橋恩給局長の所信をまず最初に承つておきたい。
  123. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 文官恩給につきまして、今の加算の規定に関する御質問でございますが、これにつきましては、私先般、今度の改正事項のおもなる項目につきまして、いろいろ御説明を加えておきました。ああいうふうな説明を加えました趣旨をもつて、実はこの加算をやめることにいたした次第でございます。
  124. 高瀬傳

    ○高瀬委員 結論だけ伺いますが、これは一体軍人恩給の伏線として、こういう条項の、三十一条ないし四十条を政府は削除されたのではないかと思われる節がございますから、その点はいかがですか。結論だけ伺つておきます。
  125. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私はかりに軍人恩給を給する、給しないの問題いかんにかかわらず、この文官の加算に関する規定につきましては、かねがね再検討を加えておつたのでございます。実はいつこれを実行するかということで数次検討を加えておつたのでございまして、かかる加算に関する制度が設けられましたときと、それから今日とにおきましては、公務員給与の実態というものがかなりかわつて来ておるのではないか、こういうことを考えますと、こういう規定が設けられましたのはかなり昔のことでありますので、早晩再検討を加えなければならぬということで再検討を加えて来まして、今度廃止いたしましたのと軍人恩給の加算をとることにいたしましたのと、たまたま一致したのでございます。
  126. 高瀬傳

    ○高瀬委員 これは先ほど長谷川君からも質問がありましたが、非常にこれらの従事員にとつては重大な問題でありますから、おそらくこちらの方でもこういう点を問題にすることと私は想像いたします。特に私は、さつそくでありますが、この軍人のいわゆる恩給権に達するまでの加算をどういうふうにするか、この点について政府の現在とつている加算あるいは在職年に対する通算制度、これらのものについて非常に私どもは了解に苦しむ点が多分にございます。午前中鈴木義男君もこの点に触れておられたようでありますが、引続き七年以上在職しておらない者はこの恩給法の対象にならぬ、一体これはどこからそういう七年という制度をやつたのであるか、こういう質問があつたようであります。私はこれを引続いて推し進めて参りますと、なるほど通算したり加算したりするということは非常に計算がむずかしいとか、あるいは日本国の財政に重大なる影響があるからできないとか、いろいろ私は政府の方としての理由もおありになろうと思うのです。もしそれがむずかしいというのならば、政府は一体、なぜ継続七年間という前提条件を置かれたか。これだつてやはり通算、加算がむずかしいならば、継続七年ということも非常にむずかしかろう。ですからそういうふうな点について、通算、加算という問題についての政府考え方、それをとらない理由、これがはつきりいたしませんと、改進党としてはどうしても納得ができない、この点についての態度も決定できないわけであります。従つてこの点はひとつ慎重に、合理に、しかもわれわれが納得行くように御説明を願わぬと困ると思うので、この点われわれの主張をはつきり申し上げれば、通算、加算は認むべしということであります。引続き七年でなくとも、七年に計算して達したもの、それから戦地における加算をすることによつて最低の恩給年限に達する者については、実際の実役年数に対して恩給権を与え、恩給額を支給しろ。結論から申しますと、こういうよう考え方をわれわれは持つていますので、その点はひとつはつきり調査を願いたい。
  127. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 加算に関する点は、先日来いろいろと御説明を申し上げましたところ以外になお御納得の行かない点がございますならば、具体的にお示しいただければお答えいたします。それからなお引続き七年の問題でございますが、それにつきましても、先日もまたけさも御質問がございましたのでお答えいたしたのでございますが、今高瀬委員の御質問で新しい問題といたしましては、調査についてのお話でございました。引続き七年ができるならば何でもできるのではなかろうかというような御質問でございますが、そうではないのでございまして、実際に引続き七年おるというような人は実際少い数になると考えております。従つてこれは引続き七年ということで考えました場合におきましては、われわれの今考えおりますところでは、そうでない措置をとつた場合に比較いたしましては非常な違いが出て来るのであります。それで理由といたしましては、今までいろいろ御説申し上げて来ておるのでございますが、その中で何かこういうところがいけない、もう少し説明しろという具体的なところをお示し願えれば、重複を避けて、できるだけ御説明を申し上げる次第であります。
  128. 稻村順三

    ○稻村委員長 高瀬君に申し上げます。恩給局長に対する質問であれば、長谷川君、中村君は副総理の来た関係で中止しておりますので、それから先にお願いいたします。
  129. 高瀬傳

    ○高瀬委員 そういうことであれば、私は今回事務的な質問はこれで打切つて次会にいたします。
  130. 稻村順三

    ○稻村委員長 長谷川君。
  131. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先ほど途中で質問を打切られましたので、引続き質問をいたしたいのでありますが、先ほどの加算の問題でございます。私の郷里であります静岡県の例をとりますと、僻陬地におきます小学校、中学校の教職員の僻陬地手当は四百円足らずでございます。これらは全部ゼロ級地でございますからそれだけしか加算給がない。御提出になりました説明書を拝見いたしますと、これらの加算の理由といたしまして、先ほども恩給局長お話がありましたように、これは昔のことでその後給与制度がかわつて来ておる、そして一面においては手当がついておつて、それらは恩給ができるときには基礎金額になる。だからもうすでにその点が合理化されて来ているから打切つてよろしいというように読めるのでありますが、ただいま申しましたように、僻陬地手当はさようなきわめてわずかなもので、はしにも棒にもかからないというわけであります。従いまして今日このような僻陬地におきましては、現実の問頭といたしまして、教員の来手がなくなつてつておる。これは一例でありますが、そのほか機関車乗務員にいたしましても、あるいは炭鉱における切羽の関係にいたしましても、御承知ように、平均寿命は非常に短いのであります。そうしてさらにまた癩病院あるいは肺病院等におきます勤務も、調整号俸の額が非常に小さい。実地に行つて聞いてみますと話にならない。そういうところから、今日癩病院の職員が非常に不足して、この間の大騒動の一つの原因をなしている。結核療養所におきましても同様でございます。そういう点から申しまして、政府の説明書にありまする理由はきわめて薄弱だと思いますが、この点いかがでありましようか。
  132. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今おあげになりました蒸気機関車乗務員の給与の問題でございますが、私の方の資料で調べたところでは、国鉄の一般職員に比較いたしまして割合にいい俸給を受けておることは事実であります。それからまた今お話のありました肺結核療養所、癩病院等の病室において直接看護に従事する職員に対しましても、今お話のあつた調整号俸によつて相当給与が行われておることも事実であります。俗な言葉で申しますれば、一般の俸給にこぶがついておる。そのこぶをつけて土台としてこれを恩給基礎にしてかつそれに加算をつけるという形になつて来ておる。ところで一般の俸給というものは、昔は私たちとの間に、何も差がなかつたのですが、こぶがついた俸給が給せられるようになつて来ておるところを考えまして、この際この程度のこぶがついておるならば加算はがまんしてもらうことを願えないだろうかということで一応この案を立てたわけであります。もちろん今長谷川委員の仰せられたごとくに、この程度のこぶではまだ給与が不十分であるということも確かに一つの見解だと思います。従つてそういう見地に立つてこの問題を考えれば、この程度の調整が行われておるならば、まあ不満足でもしんぼうしてもらわなければいけないのじやないかという考え方は再考すべき問題になつて来るのではないかと思つております。政府といたしましては、できることならもちろんこういうことはしたくないのでありますが、いろいろの事情がありまして、予算もきゆうくつになつて参りましたので、加算のつくところに勤務されておる方には心苦しい思いをしながらも加算を廃止するよう措置を講じた次第であります。
  133. 長谷川保

    長谷川(保)委員 具体的な数字を持つて来るとよかつたのだけれども、それを持ち合せていないので一つの具体的なことをお伺いしたいのですが、たとえば地方公務員ではありますが、小、中学校の教員は、僻陬地におきましては一万数千円のベースのときにわずかに四百円しかつかない。恩給局人事院給与局と打合せてこの案をおつくりになつたと思いますが、どこに合理性を見つけられたか、それを伺いたい。
  134. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私お答えいたす前に、今の静岡県の僻陬地手当四百円というのはどういうものか、ちよつとお教えいただきたいと思うのですが、恩給法には僻陬地手当の僻陬地というのがちやんときめてございますが、静岡県で私の存じておるところでは、伊東の先に灯台がございますが、あすこだけだと思いますが、ほかにどういうところがあるかちよつと記憶しておりませんので、私の考えておりますところと長谷川委員考えられておりますところと食い違つているのじやないかと思います。ちよつとその点を明らかにしていただきますと私の答弁が非常にしやすいのでございますが……。
  135. 長谷川保

    長谷川(保)委員 静岡県で山奥で僻地というのはきわめてわずかでありますけれども、私も実は先般演説に参りまして、そこで教組から伺つたので、どの村かということはちよつと申し上げられませんけれども、多分磐田郡の奥かと思います。あるいは周知郡の奥になるのじやないかと思いますが、まあそういうところだろうと思います。
  136. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 それは大体わかりました。実は僻陬地の勤務加算のつきまするのは、恩給法では場所をきめておるのであります。静岡県におきましては賀茂郡の神子元島だけなのでございます。それで今長谷川委員の仰せられますのは、おそらく県限りにおきまして、不便な所に勤務されている方に対して特別な手当を出しているその話じやないかと思うのでございます。それでその神子元島に勤務する職員は、今のところは灯台の職員だけでございまして、この灯台の職員に対しましては一般の私たちの受ける俸給号俸よりも割のいい俸給号俸によつて俸給を給されることになつておるのでございます。
  137. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私も神子元島の灯台守の話を向うでも承つたのでありますが、いずれにいたしましてもそのような機関車乗務員、その他ただいま申しましたような僻陬地の職員は、数下申しますれば私は全国でわずかなことだと思うのであります。このわずかの人々が、たとえば今。神子元島の灯台守のお話でありますれば、国家全体のためにずいぶんと僻陬にあつて困難をきわめて勤務をいたしておるわけでありますから、これらのきわめてわずかの人々のこのようなものをとるというようなことは、金額は全体としてはきわめてわずかだと思うのでありますが、今日のそれらの人にとつてみますれば、これはやはり個人々々としますれば相当に痛手だと思うのです。こういうことをしいてしなければならなかつたということにつきましては、給与局とお話になつて両方お打合せになつて合理的な基礎をお出しになつたと思いますが、そういうふうにいたしましてこれが出されておるのでありましようか。それが十分なされて、私どもその諸君に聞かれまして、国会でこういうふうにきめた、こういう合理的な基礎があるのだと返事ができるようでありますならば、われわれは賛成いたしますが、そうしませんとこのことについてはまことに困つたことになると思うのでありますが、この点につきましては十分に給与局とお話合いの上で合理的な数字をお出しになつて、そうしてきめたことでございましようか。その点を伺いたいのであります。
  138. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 昔は一般の——一般というか公務員全体に対しまして、勅任官は勅任官として、高等官は高等官として、判任官は判任官として法給令がございました。それで一般にどこの勤務につきましても給与がされておつたわけであります。そのほかにもちろん特別な所におる者は手当が給せられておつたものもございます。ところが今度は俸給の性質がかわつて参りまして、私たちが給される俸給号俸と、それから今お話になりました灯台なんかに勤務している人の俸給号俸とが違つて来ました。それで一般の俸給号俸と違つたよい俸給号俸の適用で割よい俸給を受けておる者に対しましては、恩給局といたしましては、恩給給与の公平を期するという見地からしまして、そういうような割よい給与を受けていなかつたことを前提として、まだほかの理由もありましようが、加算の制度が設けられておつたことを考え合せますと、この際再検討を加えなければならないということを考えて来たわけであります。今の灯台勤務の職員の問題でございますが、この灯台勤務の職員については、今警察勤務の職員と同じような俸給号俸が適用されるわけでございます。従いまして私ども一般職員よりも割よい俸給を受けられるということになるのでありまして、灯台勤務の職員については、従来に比較いたしまして俸給そのものがよくなつておるだけ、それだけ加算をそのままにしておくということは、従来に比較してよりよく優遇されることになるのではなかろうかという気がするのでございます。もちろんこういうことをしても灯台その他僻陬地に勤務しておる人に報いる点において足りないという見解も成り立つと思いますけれども、国家のこういう現状でございますから、ひとつごしんぼうを願いたい、こういう考えでございます。
  139. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が心配しますのは、今の人事院で俸給号俸をつくりまますときに、この諸君にはこういう恩給の加算があるのだから、それだからこれでいいというふうにしてつくつておるのではないかということを心配します。ですから、その点恩給局給与局が十分御相談の上合理的な線を出していただいて、今までつけ過ぎておるからとつたのだということならよろしゆうございますが、そうでなければ片つ方の給与局でやつたものが恩給がついておるからこれでいいという考え方でやつたら、その諸君はひどい目にあいますから、それで給与局と十分お話合いの上で合理的な線を出しておるかということを承つておかないと、この点は解決しないと思いますが、どうですか。
  140. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給制度につきましては、部局としてはあくまで私どもの方で責任を負わなければならないことだと思つておるのであります。従いまして人事院に打合せるにしましても、俸給をきめるときに恩給の問題を考えて俸給をきめさせるということは、無理ではないかと思つております。俸給をきめる際に、恩給のことを考えてきめさせるかどうかということが問題のようでございます。恩給のことを考えて、俸給をきめてくれということはなかなか言いにくい無理なことでございまして、俸給の性格については、給与に関する法律の中にはつきりと書いてございまして、勤務の条件等に応じて俸給はきめられることになつております。従つて僻陬地に勤務する者は、勤務する所によつてそれだけいい俸給が出されておるということは間違いありません。従来はそういう特別俸給はなかつたのでございますけれども、今日においてはそういうふうになつて来ておるのでございます。そういう状況でございますから、昔そういうことになつていなかつたことを前提としてつくられておるところの加算制度というものは、今日再検討を加えてもよいのではなかろうか、こう思つておるわけでございます。
  141. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今のお話でありますが、しかし今度の軍人恩給復活については、軍人の俸給は安かつた、それは恩給があるからだ、こういう議論がある。それでその恩給を、たとえば健康な職業軍人の諸君がとつてしまうのはいけないのだという議論も盛んにされておる。事実そういうことで恩給あがるから俸給が安い、こういう形になつて来ておる点がある。給与をきめるのに恩給の加算ということも含まれていのですから、この程度で、この号俸でよいのではないかこういう考え方人事院できめておりはせぬかということを心配するわけです。わずかな金ですから、これをとつてしまうということは、もしそういうことであれば危険な所、僻陬地に働いておる諸君が気の毒だ、また不合理であり、国家としてはいけないことだと考えて、その点で心配しておるわけですから、局長のおつしやるようにどうも給与給与だ、恩給恩給だということには現在なつておらぬと思いますが、どうでしようか。
  142. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 給与給与恩給恩給やはりそういうふうになつておると思います。
  143. 高瀬傳

    ○高瀬委員 私どもはこの恩給法改正に関してたびたび会合いたしましたが、大体われわれの主張せんするところはこうなつておると、項目別に申し述べて、政府の所見をただしたいと私があれだけ言つたのに、緒方副総理は自発的に退場されたから、その点は言つてもしかたがありません。これは政府の良心をここではつきりと示した。それでは通算、加算はあとまわしにいたしまして、若年、停止の問題については、本案では四十五才未満は全額、四十五才—五十才未満は五割、五十才—五十五才、三割、こういうことになつておりますが、それらの点について政府はどういう根拠でやられたのか。なおいろいろな要望があると思うのです。たとえば三十才未満は四分の一停止、五十才—五十五才未満は六分の一、あるいは五十五才以上六十才未満は八分の一停止、いろいろ意見があります。一体こういう点はどういうことを標準にしてつくられたのですか、これをお伺いしたい。
  144. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 いわゆる若年停止に関しまする規定を設けるにあたりましては、今高瀬委員の仰せられまするがごとくに、いろいろなケースを考えたのでございますが、一般の輿論といいますか、一般の感情といいますかこれらは、恩給の支給年齢相当引上ぐべきだ、こういうような要望が非常に強かつたわけであります。そこでこの点も考えまして、それならどれくらいに引上ぐべきかということは、いろいろ政府部内で相談をして参つたのでございます。また一面考えなければならないことといたしましては、この若年停止に関する規定は、旧軍人についてはこういうような規定を置く、それからまた旧軍人以外の一般公務員につきましては別の若年停止に関する規定を置く、こういうような差別を設けた規定を置くということなら別でございますが、一本建の若年停止に関する規定を置くということになりますと、どうしても現在の公務員人事行政ということも考えなければいけない、こういうことになつて来たのでございます。そこで実際に人事行政運営のことを考えてみますと、この五才を引上げるところぐらいがほんとうのぎりぎりの限度ではなかろうか、こういうことになつて来たのでございます。それは初給年齢に関して調べてみたのでございますが、昨年の三月、昭和二十七年に裁定いたしました者の初給年齢は四十八才になつておるのでございます。そういうことを考えますと、これ以上に上げますことは、かえつて人事行政を梗塞させる結果になりはしないだろうか、こういうことを考えまして、現在の人事行政運営考えましてはこのくらいのところが限度ではないかということになつたのであります。
  145. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それではその点はその程度にいたしておきます。  先ほど戦争犯罪人について辻委員から御意見があつたようでありますが、戦争犯罪人でたくさん死刑になつた方がありますが、これらの死刑になつた人をほんとうに公務で死んだ者と政府は認める意思があるかどうか、この点ひとつ。
  146. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の問題につきましては、二つにわけて答弁させていただきたいと思います。  その一つは、恩給法上の公務のために死んだ者としての取扱いはできるかどうかという問題、もう一つは、恩給を離れて公務のために死んだ者といい得るかどうか、こういうふうにわけて答弁させていただきたいと思います。恩給法上におきまして公務のために死んだ者として取扱います者は、公務のために在職中に傷痍疾病にかかりまして、その在職中にかかつた傷疾疾病のために死亡した場合に限つておるわけでございます。もちろん在職中に公務のために傷痍疾病にかかつて増加恩給を受けております者が、その公務のために受けた傷痍疾病以外の原因によつて死んだ場合給される扶助料につきましても、公務のための扶助料と俗には言つておりますが、厳格に言いますと、私が前段に申し上げたような場合が公務死亡でございます。そこで刑死に処せられた方が、はたしてこの在職中における公務による傷痍疾病にかかつて、その疾病のために死んだ、こういうことに該当するかどうかということになつて参りますと、該当しない、こういわざるを得ないと思うのであります。従いまして恩給法上の公務のための扶助料を給するようにすることは困難じやないかと思うのでございます。現行の恩給法の規定からいいますと、困難なことになつて来るわけでございます。そうすると、問題は、こういうような方を、恩給法の規定を離れて公務のために死んだ方と言えるかどうか、こういう問題になつて来ると思いますが、これにつきましては、公務に全然関係なくして刑死にされたとは絶対に言えないと思つております。
  147. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それでは、政府は、厳格な法的解釈でなく、これらの人にも国家の道義的な責務、あるいはそういう関係から、公務に関して死んだ者でないということを言い切れないとすれば、国家は、これらの人に対して、単に恩給法上の公務死とは言えないというだけの理由で恩給を全然支給上ない、こういうつもりであるかどうか、この点は、実はどうしても緒方副総理に聞かなければいかないのですが、恩給局長意見からまず伺つておきたい。
  148. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の高瀬委員の御質問お答えいたしますが、恩給法の見地からしますと、刑死になられた方に対しまして、お話ように、恩給を給することはこれは現行恩給法から離れているんじやないかと思います。結局高瀬委員の仰せられましたことは、刑死になられた方に対しましては、戦死された方に給される場合の恩給と同じよう恩給を、公務取扱いをして給すべきではないか、こういうのではなかろうかと思います。そうするためには特別な立法措置がどうしてもいるんじやないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  149. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それではこれらの問題については、将来政府は特別な立法をして、これらの人に対して何らかの恩給に類するものを給する意思があるかどうか、これは非常に重大問題です。
  150. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今高瀬委員の御質問にありましたことを、私が僭越がましくお答えするのはどうかと思いますが、そういう御質問がありましたことを私承つておきまして、そうして上の方に伝えることにさせていただいたらいかがかと思いますが、どうでございましよう
  151. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それじや、この問題については、書類をもつて政府から返答していただきたいと思います。この問題はその程度にいたしまして、次に増加恩給についてでありますが、増加恩給については、今回の恩給法改正について、大将、中将、少将、あるいは大佐、中佐、こういうふうに階級従つて差等をつげて増加恩給を支給するようになつております。しかしながら、けがをしたその事実、あるいは痛かつたという事実、困つておるという事実は、恩給階級によつて支給するという意味合いから申せば、その階級によつて増加恩給の差をつけるのは当然でありますけれども、私はこの増加恩給の支給については、その傷害の程度によつて差は認めますけれども、階級によつての差はこの際認めないで、一律に給したらどうか、これは項症あるいは款症の問題とも関連いたしますが、その点はいかがですか、
  152. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 確かにそういうような御見解も傾聴すべき御見解だと思いまするし、今までもたびたび耳にしておるところでございますが、この法案をつくりましたときの心持ちを申し上げますと、まず第一にはずつと昔からも大体こういうようなことになつて来ているというのがその理由の一つ、それから恩給法類似の制度がございます。あるいは国家公務員災害補償法とか、あるいは労働基準法とか、あるいは厚生年金保険法とがあります。これらにおきましても傷害の場合における補償的な給付は退職時の条件に応じまして給するというようになつておるのであります、そこでそういう制度のことも考え、また今高瀬委員の仰せられましたようなことも十分に考えまして、いわば両方の意見を折衷しましたようなことで、退職時の条件のいい人、俸給の多かつた者ほど割損になるよう法案をつくつたのでございます。  なおこの際高瀬委員に申し上げたいことは、この金額はこれはただ単に旧軍人だけではなくして文官にも適用するのでありまして、すなわち警察官とか刑務所に勤めておる職員にも全部適用するのであります。巡査、巡査部長、刑部補というような人のことも考えますと、どうしても若干のそれ相当の差をつけることも考えなければいけないんじやないかと思います。こういうことも考え、高瀬委員の今の御見解をも十分くみとつて、二つの考えを折衷して案をつくつたような次第でございます。
  153. 高瀬傳

    ○高瀬委員 その点はごもつともですが、やはりこれは階級差でなく項症の差によつて認められた——あの表を拝見いたしましてもずつと大将から少佐の階級にあつてはそれほどの大きな違いはないように思う。私はあの増加恩給の差を拝見して非常に合理的にできていると思うのです。あの程度の差でしたら結局やはり階級差は認めないで、いわゆる項症の程度の差によつて認めるという点に非常に近くあの表ができていると思つて、私はあの表だけは敬意を表している。だからこの際政府も非常にその点を虚心坦懐に考えられて、われわれはそういう階級よる差はやめるという意見を持つておりますから、十分この点を参酌されんことを希望いたします。  それから例の項症の問題ですが、この第七項症と第六項症との差、これは日本傷痍軍人会要求事項というものによつて私は申し上げておりますが、とれを見ましてもあまり違いない、しかしながらこれは全然増加恩給範囲内に入つていない。従つて私どもはこの第七項症、第一款症から第四款症に至る分はただいま申し上げたいわゆる増加恩給の問題と関連いたしまして、一時賜金でなくて、一律に傷病年金を給することにしていただきたい、こういう意見を持つておりますが、この点について政府の所見はいかがですか。
  154. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 政府におきましてもこの案を立てますときはもちろんのこと、また恩給法特別審議会において審議する際におきましても、政府部内において相談する際にも、今高瀬委員の仰せられましたよう意見相当ございました。私も実はできることならばそういうようにいたしたいと思つておるところでございます。ところで御承知ようなきゆうくつな予算に縛られまして、どうしても私の微力ではやりくりがつかぬことになつたのでございまして、私個人といたしましてはもちろん高瀬委員の御意見はよくお察しし得ることでございますし、できることならいたしたいと思つておるところでございます。
  155. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それではその問題はわれわれは政治的に解決するように努力することにいたします。その次に、たとえば父母、祖父母が再婚などした場合に扶助料の受給権を失う、これは非常に問題だろうと私は思う。従つて同一戸籍におる以上はこれは扶助料の受給権を与えた方がいいのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  156. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 昔は、同一戸籍内にあるということが恩給を給する一つの要件になつておりました。ところが現在は同一戸籍という要件がなくなつたのであります。それは新民法が施行されたときからであります。戸籍という観念がかえられたからであります。新民法が施行されまして、男女平等ということがやかましく言われ、新憲法の規定によりまして性別によつて男女間の差別をしてはいけない、こういうことになつて参りましたために、現行法ような規定がつくられるようになつて来たのでございます。従つて新民法、新憲法が施行されまする前におきましては、高瀬委員の仰せられますようになつていたのでございます。私も高瀬委員の仰せられることはよくわかるのでありますが、そういうような新しい立法との関係も考えまして、実は苦慮しつつ今度の改正法におきましては改正し得なかつたところでございます。
  157. 高瀬傳

    ○高瀬委員 新民法に従えば、たとえば日本の家というような観念について大分根本的な変化があるようであります。大体これは恩給を受けたりあるいは扶助料を受ける場合に、やはり古い日本の家族制度というものが基礎になつているわけでありますから、この点は政府も道義的責任を感じて、そういうふうな日本古来の淳風美俗を尊重して、そういう点にはぜひともわれわれの考えているよう措置をとつていただきたい。これに関連いたしまして結婚または養子縁組ですが、そういうものが解消した、そうして元の状態に復したものは扶助料の受給権を与えるかどうか。もし与える場合は元の受給権者の人員を排除しない、たとえばその子供が受給権を持つてつた場合は、帰つて来ても子供が受給権がある、こういう点をはなはだくどいようでありますけれどもはつきりしたいと思うのです。
  158. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の御質問は未亡人が再婚して、その再婚をまた解消した場合のことが一つだと思いますが、未亡人が再婚されますると、なくなられた主人の妻、未亡人ということは言えないので、新に再婚されて妻になられたのじやないかと思います。そういう方までも結婚を解消されたからといつて扶助料を給するよう措置をすることはいかがなものであろうかと思つております。また養子縁組の場合におきましてもやはりその通り考えております。
  159. 高瀬傳

    ○高瀬委員 それは解消してたとえばよそのところで別に住んでいるとかそういうのではなくて、解消して元の家に帰つて来たという状態をさしている。結婚がすぐ解消したという事実をもつて、また元の扶助料を受ける権利があるかということを言つておるのではないのです。
  160. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 たいへん卑近な例をとりまして失礼ですが、私が戦死いたしまして、私の妻が高瀬さんと再婚したとすれば、高瀬さんの夫人でありまして、私の妻、未亡人ではないのであります。私はなくなつて地下にいる。地下に眠る私の妻ではなくなつて、高瀬さんの夫人ということになつてしまつている。従つて高瀬さんと結婚を解消したとするとそれは高瀬夫人たることを失格したにすぎないと、こう私は思つております。
  161. 高瀬傳

    ○高瀬委員 まあその点はそのくらいにいたしてふきます。  それからこの新恩給法では軍人階級があつて十七階級になつております。そこで私どもはこの審議をするにあたつて、先ほどから盛んに社会党の諸君が言われておりますが、社会保障制度をもつてまずその確立が第一義のように言われておりますが、私は恩給権の存在というものと社会保障制度というものは全然別個に打立てられなければならないものと考えている一人であります。しかしながら非常に少い予算のわく内でこの問題を取扱うとすれば、勢いやはりその中に上に薄く下に重いという観念を盛るのは、現在の社会情勢において当然考えられるところであります。従つて十七階級のうちこれをまず十四階級くらいにわけて、恩給なり扶助料なり、あるいはその他のいろいろな受給されるもの兵隊の方は兵長並に全部まとめる。あとは一応階級差を少くして、将官については三階級、佐官についても三階級、尉官についても三階級というようにする、こういつたよう考えをわれわれは持つておるのであります。これは恩給局として別に事務上さしつかえることではないと思うのですけれども。恩給局長としてはそういう点についての御意見はいかがですか。
  162. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給一つ給与でございますから、給与を受ける者の間の秩序ということを考えて給しなければいけないのではないのだろうか、こういう観点に立つて実にこの問題を考えて来たのであります。そう上ますと、旧軍人方々の中においても一つの秩序があつたわけでございます。従つてその秩序に応じて秩序ある給与をすることが一番常識的であり、合理的なことではないか、こういう観点に立つてこの十七階級と言われる階級の差をつけたのでございます。もちろんこの表をごらんいただけばわかることでございますが、兵長以下の金額の差は非常にわずかしかついておりません。しかしこれを全然とつてしまうということになると、そのわずかな差の間における秩序を無視してしまうことになるのじやなかろうか。また今お話の将官、佐官。尉官というところで一つにまとめるということも、確かに一つの御意見ではございますが、まとめればまとめたところで、その範囲において秩序を乱すことになりはしないかという考え方から、こういう段階を設けて規定したのであります。
  163. 高瀬傳

    ○高瀬委員 私が先ほど申し上げたのは、将官を全部一緒にまとめ、佐官を一緒にまとめ、尉官を一緒にまとめるというのではないのです。大将、中将、少将あるいは大佐、中佐、少佐、その差は認める、しかし兵については兵長にまとめるというのであります。なぜかといいますと、ここに辻さんもおられますが、私どもの記憶するところでは、兵隊は一日八銭だか十銭のパット一つ分だけしかもらつていなかつた。これは明らかにいわゆる将校などのもらつておる俸給とは類を異にしており、徴兵制度に伴う犠牲だつた従つて、先ほどあなたの言われたように、一つの秩序によつて恩給を給するという考えは合理的であるにしても、これらの俸給とも何ともつかない軍隊の妙な、その言葉は私わかりませんけれども、とにかくそれは恩給を算定する基礎には全然ならないものである。もしなるとすれば、兵長程度のものしかならないから、兵長以下の者については兵長、一等高いところにまとめてやるというのであります。結局そこに俸給というものと、お手当というか、そういうものの相違を認めてやるというのでありますが、いかがでしよう
  164. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今のお話の兵長以下のところの仮定俸給をつくつたのはどういう理由でつくつたかと申しますと、下士官以下の兵のところについても、下士官の俸給が前提となり、これを土台として恩給の仮定俸給従来ができておりました。その仮定俸給を考えてつくつたのでありまして、その従来の仮定俸給というのは、昔兵隊が隊内で受けておつた給与とは若干違つた、割よいものになつておるような仮定俸給であつたのでございます。もちろん今高瀬委員の仰せられるように、兵長以下の給与は低かつた、仮定俸給も低かつたというような御見解も確かに一つの御見解かと思います。従つて兵長以下のところを兵長にまとめるというの確かに一つの御意見かと思いますが、また一面においては、兵長以下のところは兵長以下として、やはり秩序を考えなければいけないのじやないかということで、実はわずかの差をつけながらああいうよう階級を設けて来たのでございます。
  165. 永田良吉

    ○永田(良)委員 ただいまの高瀬さんの御意見は、ごもつともな点もありますけれども、ここには辻先輩もおられますが、私もかつて軍隊生活をした経験があるのですが、将校と兵との間には下士官、准士官というものがあつた。軍隊のことをいうと失礼だけれども、やはりその間に多少の差異はおいていただいた方が、今恩給局長のおつしやつたように、実際にあてはまりはせぬかと思います。あなたのお説はまつたくよい話だけれども、失礼だが何も軍隊の実際生活には御経験がなくての御意見じやないか、恩給局の方が今やつておられるこの制度くらいが適当ではないかと思うので、これは私の過去の経験から申し上げるのですから、どうぞ気を悪くしないようにしてください。
  166. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいまの永田先輩の御意見は御意見として謹聴いたします。その問題はそれだけにして、今度は、先ほど途中でやめたのですが、恩給権に関する加算の問題です。われわれの方としては恩給権に達するまで加算を認め、受給額は在職年によろう、しかもその在職年通算制をとる、こういう結論を申し上げたわけです。それが計算上できない、あるいは財政的にできない、いろいろな難関がおりになるように伝えられておりますが、直接政府の責任ある答弁を聞いていない。そこで、私どもとしてはそういう立場をとつておりますから、この点について政府のはつきりした合理的な説明を聞きたい。われわれの主張するようにやれば一体国の経費は幾らかかるのか。原則からいうと、私どもは、今回政府提出しておる四百斤十億——この四月にさかのぼつて、四月から十二月まで五百七十七億になるそうですが、四百五十億の範囲内で、この恩給法の一部を改正して、権利のある人に一刻も早く支給したいという考えを持つておる。そこで、実は今日復員局の方から松木、本間という二人の方に来てもらつて、たとえば兵籍簿というようなものが海軍と陸軍でどんなふうになつているかということを聞きましたら、海軍の方は探せばあるような話で、倉の中にしまつてあるという話をうすうす聞いた。陸軍の方は、私の方の赤澤代議士が鳥取県の方で、非常によく事情を知つておりますが、鳥取県の方にはない、神奈川県にもない、東京にもなかろうというようなことはあるけれども、大体七〇%くらいはあるのじやないか。但し、それがあつても、恩給に関する加算の計算に必要な事項が全部記入してあるかどうか、その点ははつきりしないというのです。しかしながら七〇%くらいはあるということですので、あれば多少の犠牲はあつてもこの加算を認めてやる、しかもその在職年の計算は通算でやる、こういうふうにした方が非常に親切じやないか。多少の欠陥はやむを得ないと思う。ですからこれが全然調べられないものかどうか。もし大体七〇%もそれが調べられることになれば、一体費用の点でだめだ——率直に申しますと、自由党の高橋悟のごときは、こういう通算加算を認めるようにすると、とうてい金がまかない切れない、四百五十億ではだめだ、こういうことを言つておられますが、この点についてわれわれははつきりした政府のそういうことができないのだ、金銭の点でできない、あるいはいろいろな証拠書類、兵籍簿とかその他の点でできないのだというような、合理的な納得の行く説明がつかないと、私どもはこの点についてはつきりした党の態度を決定することもできないわけであります。実は私の方の政務調査会でも、この点についてはたびたび恩給局長にも政府当局に対しても書類の提出を求めておるのですけれども、いまだに御返答がない。従つてこれがはつきりしなければ、この問題はどうしても党議として年来主張しておるところでありますから、簡単に譲れないということであります。従つて私はその点を、この委員会を通してはつきりと政府の所見を伺つて、党のわれわれの同志の全部が納得すれば別でありますが、どうもこの点はわからぬぞとかいうようなことになると、なかなかこれの審議は進まないことなつて皆さんに御迷惑をかける。しかしこれはやむを得ないんだ、その点はひとつ政府の誠意ある御答弁を願いたい、こういうわけであります。
  167. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 加算に関しまする問題につきまして、まずお答えいたします。加算の制度につきましては、主要事項につきまして先日御説明いたしましたごとくに、実際に在職しなかつたにかかわらず在職したものとしての取扱いをする。いわば想像上の在職年を実際上の在職年に加えて、そうして在職年を計算するところの制度でございますからして、短期のそして若年の在職者に恩給を給し、また恩給金額も必然的に多額になるような結果となる制度と申しても、過言ではないと思うのであります。従いまして今日のごとき脆弱なる国家財政のもとにおきまして、こういうよう制度を存しつ、旧軍人及び遺族方々恩給を給しますということは、困難なことではないかと思うのであります。もちろん戦争前におきましては、国家財政も許したことでありますから認められたこととは言いながら、今日においてはとうてい私は困難なことではないかと思うのであります。現にドイツにおきましても、イタリアにおきましても、こういうよう制度はとつておりませんし、また戦勝国のアメリカにおきましても、こういうよう制度はとつていないのであります。そういうことを考えますると、今日の脆弱なる国家財政のもとにおきましては、とうていこういうよう制度を存続することは困難なことではないか、こういうように想像するところでございます、  それからその次には今度は、これは事実調査の問題でございますが、かりにこういうよう制度をとると、こういたしました場合において、どういうような障害が出て来るか、こういうことでございます。加算に関しますところの規定は、なかなか複雑な規定でございまして、この加算に関する規定はすでにお手元に参考資料として配布してございまする資料によつて承知願えますごとくに、かなり複雑になつてつたのでございます。従いまして従前加算をつけられておつたごとき加算をつけるといたしますならば、その加算をつけられろがごとき履歴簿あるいは、兵籍簿あるいは戦時名簿に——陸軍で申しますと兵籍簿、戦時名簿でありますが、あるいはまた海軍で申しますならばそれに相当する人事履歴簿でありますが、そういうようなものにはつきりと明記されていなければ、今日におきまして加算の制度運営して行くということは困難なことと思うのでございます。ところで海軍におきましても、陸軍におきましても、終戦時におきましては御承知通り混乱の状態に陥りまして、書類の散逸したものも少くございません。もちろん海軍は陸軍に比較いたしまして人事に関する書類は整備されてはおりますということでございます。しかし陸軍関係におきましては、いろいろな事情等からいたしまして、書類の亡失したものがかなり多いものでございます。また残つておりまする書類にいたしましても、先ほど仰せられましたるごとく、七〇%という数字を申されましたが、私七〇%あつたかどうかということについて実ははつきりしないのでございます。と申しますのは、大体全国におきまして兵籍簿の登載人員がどれくらいあつたか、こういうことをつかまえることさえもなかなか困難な実情書でございまして、正確な把握はできなかつたような実情でございます。それで実際に戦時名簿あるいは兵籍簿が陸軍関係で残つておりますもので、しかもこの加算に関する履歴のはつきりしておるものは何%かということになつて参りますると、私は半分以下でおそらく四分の一前後じやないかとさえも思うくらいでございます。そういうような実情でございますからして、かりに加算に関する制度を昔のごとく運営するといたしましても、事実困難なことと思います。  次に問題は、それならば加算に関しまして、従来のよう制度を改めまして、そうして違つた角度から加算の制度を設けて運営することはできないか、こういう問題がまた出て来るわけでございます。その問題につきましても、いろいろと検討いたしたのでございまするが、もしも加算に関する書類が完備しておつたといたしますならば、何分の一ということで加算を認めることが最も公平で合理的でいいと思うのでございますが、今申し上げますごとく、書類が十分整つておりませんためにそれもできません。従つていろいろのことを想定して考えましたが、加算をつけられる場合とつけられる人は、いろいろ種々雑多でございます、従いまして規定の設け方によりましては、非常な幸不幸がそこにまた出て来るわけでございます。しかもその制度は合理的なものはとうていできかねるような実情でございます。次にそれからまた一面この際考えなくてはいけないこととして私たちが論議いたしましたことは、もちろん生還されて来た方方のことも考えるのでございますけれども、また他面におきまして遺族重傷病者のことも十分考えてあげなければいけないと思うのでございます。遺族傷病者の方は、わずかの在職年であるいは戦死された人の遺族、あるいは傷つかれた方が多いのでございます。従いまして大体におきまして、加算をつけましても、恩給年限に達しないであるいはなくなつたり、あるいは戦傷あるいは戦病にかかられた万が多いのでございます。そういうことを考えますると、この加算の制度を認めることによつて、その恩典に浴する者が遺族傷病者よりも、そうでない人の方が多いという結果になつて来るのでございます。そういうことを考えますると、遺族傷病者方々に対しまして、十分なことができない今日におきまして、そういう方々に対する措置をそのままにしておきながら、今申し上げるような加算の制度を動かして行くということは、はたして合理的な常識的な措置であろうかということにまた思いをいたして来たのでございます。そういうようなことからいたしまして、情においてはまことに忍びないことではございましたけれども、加算の制度というものは理論的にも——理論的といいますか、今日の一般の感情条理から考えまして、また事実問題から考えまして、どうしてもこれはこの際とりやめにするほかないというような一応の結論に達した次第でございます。  それからもう一つは、通算制の問題でございますが、これも私はできることでございますならば、もちろん無制限通算し得るようにしたいものと思つて、実はスタートはそこから考えて行つたのでございます。ところでこの通算につきましても、結局は書類のことに関係すると同時に、また他面には今申し上げますところの遺族に対する扶助料の関係、また傷病者に関する恩給の問題と関連を持つて来るのであります。この通算によつて利益を得る者は一体どういう人かと申しますと、結局遺族傷病者以外の方々即ち生存者になつて来るのでございます。そしてこの通算をすることによつて恩給金額が瀞大を来すことになつて参ります。その結果は、遺族傷病者に対する処遇の、現在においても不満を表せられておるにもかかわらず、今後の改善もなかなか困難になつて来るのではなかろうか、こういうような気がするのでございます。これはその財政上の問題であります。  それからもう一つは、書類の点から申し上げますと、先ほど加算のことについて申し上げましたが、それと同じように。この通算をしますためには、どうしても履歴が整備していなければならない。ところが履歴が整備していないために、今から軍人在職年に関する履歴を整備してかからなければたらないという実情でございます。従つて何もかにも通算をするということで、この恩給を給することにいたしますれば、公平な支給はむづかしくなり、必然的に事務の混乱を来すことは明らかであります。その事務の混乱を来す結果といたしましては、おそらく遺族方々とか、あるいは重傷病者に関する恩給を給する事務も遅れて参るということも起つて来るのであります。そういうことも考えたりしますと、この際事務上からいたしましても、通算をするということは、何らかの制限をつけなければ、公平な支給と旧軍人及び遺族の方に恩給を給する事務を円滑に運営することは困難ではないか、こういう結論に達したわけでございます。そこでその制限を、引続き七年ということにつけたわけでございます。その七年については、それなら理論的な根拠はどうかというような御質問が出るだろうと思います。この七年についてでございますが、この問題を考えまする際には、先に申しましたほかに、一時恩給のことをどうしても考えなければいけないと思います。一時恩給の受給資格者は七年以上ということにいたしておるのでございます。七年以上にいたしました事由は、大体申し上げた通りでございすが、仮にこれを三年以上ということにいたします。と、私のところに両復員局から大まかな推定として報告されている人員でも百八十万人に達するのであります。それで恩給金額といたしましては、一時恩給だけで四百六十五億円くらいになる見込みでございます。そういうようなことに必然的になつて来ることを考えますと、無制限通算し、また一時恩給を給します年限を下げるということも、なかなか困難になつて来るのでございます。そういうようなことを考えまして、たいへん情においては忍びないことでございますけれども、たくさんの方々に急速に恩給を給する、しかも遺族重傷病者に重点を置きつつ、円滑な事務運営をして行くという見地から考えましても、履歴を整備して、新たに恩給を給する措置を講ずる人々に対しましては、若干の制限を加えることは、どうしても必要であるという結論に達した次第であります。
  168. 永田良吉

    ○永田(良)委員 私は今の恩給局長の御答弁は、たいへん御親切で感謝しておるけれども、この恩給の問題は、はなはだもつて複雑な問題であつて、そう簡単に片づくものじやないと思つております。戦争で勝つたならば、今日こういう憂いはないのです。敗戦国の悲しみのうちで、いろいろありますけれども、皆さん、親としても、妻としても、自分のかわいい同胞が白衣で帰つたならば、いかなる感じがするでしよう。私は自分の子供を戦争にやつて、死なせたのもあれば帰つて来たのもありますが、現にむすこが、私が考えても不思議に思うくらいいやな感じを持つておるということをたびたび申します。今後日本が再建の途上にあつて、お互いもろともに戦争をして負けたのであるけども、われわれはむすこや何かを送り出す場合の当時の考えを持てば、今日負けいくさをして帰つた者が、何も言わずにおるけれども、悶々として非常な苦しみを持つておる。それに対して皆様方政府恩給局の方は、ただ自分のひとり考えで、かつてな判断をされますと、大きな憂いが生じますよ。政治は泣き悲しむ人の憂いをとつてやることが大事なんじやありませんか。私はあえてあなたを攻撃いたしません。熱情のあまりに申し上げるのだが、あなたは書類がないから、海軍は多少あるけれども、陸軍は書類がないから停年とか、加俸とか、いろいろなことはできないと言われる。それはむろん実際でありますけれども、あなたの考えはあまりに陸軍省や海軍省にとらわれておると思う。私はいなかの村長も市長もしてみたが、戦争中に連隊区司令官が、軍人がむろん検査はするけれども、各町村役場や市役所には兵籍簿があるじやありませんか。陸軍省の書類は焼けても、恩給局の書類は焼けても、過去において、何年何月には何それがしが招集されて行つたということの記録がちやんと残つておる。兵事係の書類を得ていないと、あなたはそう言われておるが、恩給の関係にある者は、全国の一万数千の町村役場をお調べになれば書類はあると思う。それがめんどうだから、そういうことはできないとおつしやることは、あまりに戦争に行つた軍人に対して冷酷な処置ではないかと私は思う。もつとそういうことは親切に調査をされなければならぬ。再建の途上にある日本は、アメリカ関係等もあるのでしようけれども、何の遠慮がありますか。われわれは負けても、将来立上らなければならぬ。この観点から見て、アメリカがMSA援助をするとか、あるいは予備隊に対して多少の加勢をするとかいう金があるならば、ドイツであつて日本であつても、負けた国の苦痛は同じではありませんか。そういう点から行つて、もしアメリカが真に日本と提携して、共産党でも防ごうという考えがあるのなら、もつとこういう恩給の問題等についても、負けたる国家軍人の心の憂いをとつてやるような心がなくして、将来日本人が外国なんかに行つて戦争するばかがおりますか。こういうことは大事な人の心の悩みをとる重大な案件でありますから、私はあなたが書類がないからこれをそのままにいいかげんにしておこうというようなことをお考えになるということは、恩給局としての大失敗である、政府としても大失敗であると思うのです。こういう点についてはできるだけ親切を尽して、町村役場にもあらゆる方面から——また現に戦争に行つてつて来た者は、そんなことをうそをつきますか。軍人はうそをつくものじやありません。お調べになれば、あなたが心配するようなそう困難な問題ではないと思うのです。この点についてもう一ぺんあなたの意見を伺つておかなければ、私はここから何時間でも帰りはしません。御答弁願います。
  169. 稻村順三

    ○稻村委員長 永田委員ちよつと一言申し上げますが、政府委員としての事務的答弁と政治的答弁と、二つの意味が含まれておると思うのでありまして、政治的な答弁は事務官である三橋局長からは困難であり、従つてこれは総理大臣、副総理、官房長官の御答弁を得るのが至当であると、かように存じますが、今日はおりませんので、三橋局長からの事務的な回答で御満足していただきたいと思います。
  170. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今永田委員からいろいろお話がございましたが、私が会工高橋委員の御質問に対してお答えいたしましたのは、加算の制度というものは、恩給制度上どういうような結果になるかということについて説明申し上げて、この加算の制度を今日の国家の現状において実施することができるかどうかということを、一応前提として申し上げたわけです。それからなおその次に、実際の恩給事務を取扱うというためには、恩給を給するに必要なるところの履歴整備というものが必要なんです。そこでその現状を私はお話申し上げたのであります。永田委員の仰せられますがごとくに、地方の実情が、恩給の支給をする上に一向さしつかえないほどに、書類が整備されておるということでありますならば、非常に仕合せだと思います。今まで復員局の職員なり、また私の同僚の恩給局の職員も、いろいろとおも立つた各県の実情を調べ、この点については私たちはいろいろと慎重に検討して来たのでございますが、なかなか困難な実情があるのでございます。今永田委員が仰せられるがごとくに、幸いにしてもしも私の考えておりますることが杞憂にすぎないということでありますれば、これはまことは仕合せなことでございます。今までいろいろと同僚の諸君からも熱心に調べられた結果の報告があり、これによりますと、また私自身も現地におきまして調べましたところでは、必ずしも永田委員の仰せ通りでもないのではないか、こういうような気がしたのであります。ただ私一つ遺憾に思いますのは、私が非常に冷やかな心をもつてこの問題に処しておるように見られることであつて、このことは、まことに残念に思のであります。私もかつては軍籍にあり、また私も一人の弟を戦地に送りまして、なくしております。従つて、旧軍人及び遺族方々に対しまする熱情といいますか、そういう方々に対する思いやりにおきましては、決して人後に落ちるものではありません。また恩給局の職員も、私と同じような心持をもつてつてくれておることと思つております。その点だけは、ひとつ誤解のないように御了承を願いたいと思つております。
  171. 永田良吉

    ○永田(良)委員 少し私の申し上げたことが失礼に当つたかもしれませんが、もしそういう点があつたら、私は取消しまして、あなたにおわびをいたします。あなたが今思われることも、私が思うことも、ともにいわゆる敗戦国の悲劇であります。実際軍人の関係者から見ると、それはとても立つてもすわつてもおられない。だから私は、あなたが決して冷やかであるとは思いませんよ。しかし、あなたが先ほど長く説明をなさつた点から見て、私がほんとうに考えた場合、あなたは書類がない、書類がないとおつしやる。私は、書類がなくても人がおると思う。日本の人は、ことにそういう軍人をした人は、加算をごまかそうとしたり、うそをつくようなことはしない。——たまにはおるかもしれないけれども、私はおらないと思つたから、御迷惑ですけれども、この困難な仕事を、あなたが一人でも戦争に行つたそういう犠牲者を救つて行こうという愛の心を持つて、民衆のそういう憂いをとつていただくように、ひとつ一般の努力を願いたいという希望を申し上げたのです。私は鹿児島県人で、少し語気が荒いわけです。この点はあしからず。
  172. 高橋等

    高橋(等)委員 関連して……。予算面から、加算の問題について一、二伺つておきたいと思います。まず、七年以上在職者につきまして、一時金を出されることになつた。その七年以上の在職者の人数、及びこれをもし三年とすれば、すなわち戦地加算四箇年と見まして、三年で十二年になるわけでありますが、三年以上の人員数は幾らにはりますか。おわかりになりましたなりば、お知らせ願いたいと思います。
  173. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 百八十万ばかりになります。七年以上は十八万になります。
  174. 高橋等

    高橋(等)委員 そうしますと、もし七年以上に一時金を出される、それと同じようなやり方で、三年以上に一時金を出す場合は、七年以上を入れまと、一体全部で幾らになりますか。
  175. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 四百六十四億円はかりになるかと思います。
  176. 高橋等

    高橋(等)委員 もう一点伺います。加算を認めて恩給を支給するとしまと、三年以上在職の万に恩給を出すことになりますれば、恩給の額は、将来一番ふくれるときは、今度の四百五十億を除いて、幾らになりますか。
  177. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 現在のところの推定人員から推しますと、大体千四百億円ぐらいになるんじやないかと思います。もちろんこれは若年停止といいますか、いろいろな関係で少しかわつて来ますが、大体千四百億前後の金がいるのではないかと思つております。
  178. 高橋等

    高橋(等)委員 それは加算を認めたために、要するに三年以上十二年未満というものを加えた場合に、それだけふえると了解してよろしゆうございますか。
  179. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 さようでございます。
  180. 稻村順三

    ○稻村委員長 高瀬傳君。
  181. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいま事務的な御説明はいろいろ拝聴いたしまして、われわれもたいへん参考になりました。その中で、加算に関する規定は非常に複雑だというお話、但し、私どもは、加算については、非常に簡単に、外地において勤務した人は、一律に一年を二年、そしてたとえば戦車に乗り、あるいは潜水艦や飛行機に乗つたというような人には、危険手当式のものがあつて、一年が四年になる。そういう点は、一律に加算を認める場合は、二年というよう考えておるのです。それから財政上の問題について、ただいまいろいろお話がございました。手続の問題、いろいろございますが、これは一応拝聴することにとどめておきまして、いずれ総括的な政府の所信については、今後緒方副総理なり、吉田総理なりに出ていただきまして、質問をいたすことにいたしまして、本日は私の質問はこれで終ります。
  182. 粟山博

    ○粟山委員 議事進行についてちよつと一言……。この法案は、前国会においても審議されて、その審議の過程において解散になりましたために、自然この特別国会に持ち越されたわけであります。かなり論議を尽されておるのでありますけれども、思うに政府当局のただいままでのような御答弁の状態では、議員の心構えが、ぜひ一日も早くこの恩給法に直接関係のある人々ないしは国民一般の良識にこたえるような結論を出したいと考えましても、なかなか結論を得がたいと思うのです。そこで私が議事進行として申し上げたいことは、もう局長の御説明は了承しております。あなたの心構えについても決して一点も疑うものではない。しかし総理並びに副総理その他関係大臣が、この大きな問題を矛盾した論理の上に、そのままに放棄しておく。それで堅白異同の弁をもつて糊塗する。一旦政府が出したのだから政府の面目、権威にかけて黒を白、白を黒、さぎをからすといつて通さなければならぬというような面目にこだわるようなことがあるなら、これは実にゆゆしき問題だと考えるのであります。それで先ほど永田委員からも発言されましたが、加算ないし通算の問題のごときは、いかにも重要な問題であります。原則としてこれを取入れないと、簡単にいえばそれまでである。しかしそれが恩給の常識において取入れるべきものか取入れざるべきものかということの基礎的観念から追究して、根本的に恩給——恩給という言葉は古いにいたしましても、その恩給を意義あらしめるためには、国民の前に一点の疑念もなく信頼性を持たせようとするには、やはりこれは根本的にはつきりした方がいいと思う。しからば現在あなたの口をかりても、およそその三割は材料があるであろう、あるいは四分の一かもしれない、あるいは半分もといつたよりな、この議席において伺つてもそこに大へんな開きがあることに私どもはいささか不安を感ずるわけであります。そういう点は永田委員の指摘されたように、できるだけその資料を確実にしなければならぬが、もしその資料が焼けたら焼けた、残つてつたら残つておる、隠しておつたのなら隠しておつたが出た、出たものはどれだけだというふうに現状において最善の努力を尽したということが実は今私どもには了承し得ない。どうも最善の努力を尽しておらぬように思う。これだけ問題がやかましく取上げられておるにかかわらず、資料としては不安定な状態においてあなたがその議席からお答えになつておるように私は思うのであります。これは非常に私は悲しいのであります。この特例法は今月審議を終えなければ流れる。すでに恩典を受くべき多数の気の毒なる人々が首を長くして待つておるのです。そしていらいらした気持でこれを見ておる。一体議員というものはこれをどう扱つてくれるか、政府はどうしてくれるのだといつて、この法案が通るか通らぬかということまで心配しておるようなありさまです。私はこういうような世相に多数の気の毒な犠牲者を迷いのうちに、不安定な気持のうちに暮させるということはしのびません。どうかその点において政府はほんとうに誠意を尽して、あるものはある、ないものはない、実は論理において矛盾はあるけれども、現状やむを得ないがゆえにこういう取扱いをするのだ、国の財政が許すならもつと上げたいのだ、その気持はよくわかるのだが、しかしやむを得ない事情おいてこうこうなんだということを言えば、ほかの人はどうか知らぬけれども、本員一人だけはこれを了とします。私は議員としての常識としてこれを了とする覚悟を持つておるのである。これは一日も早く日の目を見さしてあげたいと思う。気の毒な人が多数横たわつておるからである。私はここでこまかいことを取上げて、速記者を煩わして、いたずらにうずたかく原稿を重ねることを決していさぎよしとしない。きわめて簡単にこれを片づけたいのでありますけれども、矛盾した論理の上に、出せば出せると思われるような資料すらも、ここに運んでいただけないということが目の前に展開する限りにおいては、いわゆる時間を費すことになる。決して議員が好んで言論をもてあそぶものではないのである。真に国民の心を心として、犠牲者の気持を肝に銘じて当局者に問い詰めて、その真相を明らかにすることにおいて、初めてわれわれの責任が果せるのである。その責任において私どもは言論をするのである。総理大臣も国務大臣もお見えになつておらないけれども、釈迦は壁にすら説教されたのである。私はこの議席に立つて政府委員三橋局長に申し上げるのでございます。どうか総理並びに国務大臣に、局長から切々と堂々と議員の意のあるところを伝えてもらいたい。出席しなければしないでもまた審議する方法がある。しかしながらかつて当局は新聞に、この修正などは思いもよらないというようなことを書いておつたように見るけれども、はたしてそういうことが許されるか許されないか、われわれは国民の良心にこたえんがための審議には、決して政府考えることそのままがこの委員会を通過することを許さないであろう。われわれは十分わが党においてもあるいは各党の同志との間にも審議を尽して、最も最善の答えをこの委員会においてつくり上げたい、かよう考えておる。われわれの誠意のあるところもくんでもらつて、議事進行を円満にいたしたい。不幸にして政府の態度の煮え切らざるがためにこれが流れるようなことがないようにしたいということをここに希望いたしまして、議事進行に対する所感を述べるわけであります。
  183. 稻村順三

    ○稻村委員長 粟山君の御意見ごもつともでございますので、当委員長といたしましても善処したいと存じます。  本日はこの程度にとどめて、次会は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会