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1953-07-08 第16回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月八日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 大村 清一君 理事 高橋  等君    理事 八木 一郎君 理事 上林與市郎君    理事 鈴木 義男君       永田 良吉君    長野 長廣君       船田  中君    牧野 寛索君       高瀬  傳君    粟山  博君       神近 市子君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     廣瀬 節男君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      北島 武雄君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局第二課         長)      佐藤 日史君         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ————————————— 七月七日  軍人恩給復活に関する請願千葉三郎紹介)  (第二八〇三号)  同(田渕光一紹介)(第二八〇四号)  同(田子一民紹介)(第二八〇五号)  同(坊秀男紹介)(第二八〇六号)  同(大村清一紹介)(第二九〇四号)  増加恩給並びに傷病年金復活に関する請願(永  田亮一紹介)(第二八〇七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付し事件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一二二号)     —————————————
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより開会いたします。  まず大蔵省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。質疑通告があります。高橋等君。
  3. 高橋等

    高橋(等)委員 大蔵省設置法の一部改正について三、三の点でお伺いいたしたいと思います。この改正に伴いましての定員増加あるいは定員をどういうふうにわけられるのか、及びこれに関する予算の点についてまず伺いたい。
  4. 北島武雄

    北島政府委員 御質問に対しましてお答え申し上げます。今回東京税関長崎税関独立に関しまして大蔵省設置法の一部改正をお願いいたしているわけであります。これに伴いまして人員といたしましては実は新しく定員の御要求をいたしません。既定人員の差繰りによつてまかなうつもりでございます。また予算面におきましも、この二税関独立のために特に新たに予算増加要求をいたしておらないのでございます。
  5. 高橋等

    高橋(等)委員 そこでお尋ねをいたしたいのでありますが、まず東京税関の問題、この既定人員を差繰つてそれでおやりになると言われますが、現在この東京港に関する税関事務東京税関支署でおやりになつておるわけであります。この支署人員の差繰りも何もしないでただ局にして、それによつて税関の能率が上るとかなんとかいろいろ書いてございますが、それならそんなことをしないでもよいのではないか、ことに東京横浜と非常に近いのでありまして、何か局を置くためにやるのではないか、こういうような感じがいたしますか、その点はいかがでありましようか。
  6. 北島武雄

    北島政府委員 東京税関支署税関昇格についての理由お尋ねでございますが、御承知通り現在東京税関支署横浜税関管内に属しております。横浜税関東京税関支署という正式な名前になつております。ところでこういうふうな形態になつておりますと、現在仕事の運び方から申しますとかりに東京税関支署で何か片づかない問題がございますと横浜税関本関に行きましてお伺いを立てる、横浜税関本関において処置できないことを東京本省にもどつて来てさらに打合せる。それから本省から指示いたします場合にも、何分にも東京税関支署横浜税関管轄区域内にございますから、一応横浜税関の方に通知しまして横浜税関からまた東京税関支署へもどつて来る、実はこういうような迂回コースをたどつておるのでございます。そこで東京税関支署仕事か、大してないうちはこれでもけつこう済んでおつたのでございますが、最近東京税関支署仕事は急激に増加いたして参りまして、もはや現在では横浜税関管内に置くことは一税関支署としての限度を越えておる。横浜税関としても、東京税関を、いわば俗な言葉で申せば振りまわし切れないというかつこうになつたのであります。それがために通関の方面につきましても、相当な遅延の問題が起ります。たとえば税関におきましては、貿易管理上から申しまして、現物ライセンスと対照いたしまして、一々現物通りであれは通関いたしておるわけでございますが、ところがライセンスの品名と現物と違う、少くとも怪しいと思うような場合におきましては、一応通商産業省の方へ照会することになつております。その場合におきましても、まずそれが横浜本関へ行く、それから東京本省へ来るというふうに迂回コースをたどつておりますために事務手続が遅れまして、貿易業者が相当迷惑をこうむつておるような事情でありますので、この際東京税関支署横浜税関管下から独立させまして、これを本省と直結いたしまして、その監督を十分に行い、事務手続も早くして行く、こういう関係でございまして、特に距離が近いという点もございますが、距離の近い点で申しますと、たとえば神戸税関大阪税関は近い。それでもまた独立税関になつておるというような関係もございます。もつばら事務のあんばいから申しまして、現在では東京税関支署は、支署といたしましては、すでにその限界を越えておるという事務分量に達しておる。こういうことが東京税関独立をいたしました理由でございます。
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 了承いたされる点もあるし、ことに国際航空関係の充実に伴つた仕事というようなことは非常に重要な問題であると思いますが、できる限り支署あたりの権限をふやしていただきまして、なるべく行政機構を拡大させないということは国の大きな政策になつておる際であります。今後の点については十分な御関心をお願いいたしたいと思います。  次に長崎税関についてお尋ねいたします、この設置理由密貿易の取締りということが重点になつておるようでありますが、そうなんでありますか。
  8. 北島武雄

    北島政府委員 長崎税関独立理由を一応御説明申し上げますと、御承知通り長崎港は昔からの古いいわれのある港でございまして、安政条約において開港場に指定され爾後税関ができましてからずつと本関といたしまして継続いたしておつたのでございます。戦争中一時税関海運局に吸収されまして、昭和二十一年の六月に税関をまた大蔵省において再開いたすことになつたのでありますが、その際におきまして他の函館、横浜、名古屋、大阪神戸門司の六税関はそれぞれ独立本関といたしまして設置されたのでありますが、長崎につきましては、その当時の状況から申しまして、まだ正常貿易も行われず人員並びに予算の点について見ましてもきわめて少額でございましたので、とりあえず門司税関管内に属せしめて、一時税関支署として発足しようじやないかということになりまして、実は長崎税関支署という形でもつて現在まで至つておるわけでございます。その後正常貿易が再開いたされまして、だんだん貿易量も多くなるにつれまして現在の門司管下、すなわち九州地方と山口県を管轄いたしておるのでありますが、その管轄区域は一税関といたしましても広過ぎるのであります。海岸線も長大であり、税関官署も他の税関に比べまして多うございます。現在全国の六つの税関の下に税関支署、出張所及び監視署を合せまして百九十九ございます。約二百でございます。そのうち門司税関管内におきまして七十四の税関官署かあるというふうに、他の税関に比べまして非常に税関官署が多い。従いまして事務分量の少いうちは門司税関においてこれを全部監督することもできたのであります。だんだん事務分量がふえて参りますと、どうも長崎税関支署として門司税関管下に属することは十分でない。従いまして現在の門司税関管内を二つにわけまして、南九州長崎税関管下に属せしむる、こういうのがお願いする理由でございます。
  9. 高橋等

    高橋(等)委員 長崎税関管轄区域を参考にお伺いします。
  10. 北島武雄

    北島政府委員 ただいま予定しております長崎税関管轄区域ですが、長崎県、但し壱岐郡、下県郡、上県郡を除きます。佐賀県につきましては唐津市、東松浦郡、西松浦郡を除きます。それから福岡県のうち久留米市、大牟田市、浮羽郡、三井郡、三潴郡、八女郡、山門郡、三池郡を長崎税関管轄しております。そのほか熊本県全県、鹿児島県全県を管轄する税関でございます
  11. 高橋等

    高橋(等)委員 長崎税関は将来中共貿易等が行われるようになりますれば、また必要度が増して来るかと思いますが、これは戦前におきましては、長崎港の税関使命がだんだん縮小されておつたように私は記憶いたしております。間違つておれば失礼いたします。それで現在のところは密貿易を取締るというようなこともここにありますが、大体港湾に入つてから後の仕事税関仕事であります。こういう税関でやつてつたと同じ人の数で、こうした機能が発揮できるかどうかということにつきましては非常な疑問を私は持ちます。むしろ長崎税関を昔のように局に復活させるという意味だけしかないのではないかという感じもいたすのであります。ことに局に昇格させますと、現在は定員もふえておらない、物件費もそのままだと言われますが、将来におきましては、どうしても人もふえ、また自動車であるとか何とかかんとか物件費の方はだんだんそれに伴つてふえて来る。これは明年度予算を見れば明らかにそうなると考えるのであります。しかし門司税関管轄の範囲が広いということは一応了承されますので、しいて本案に反対するのではありませんが、今後官庁の機構簡素化重点を置かれ、なお冗費を十分節約されることを御忠告を申し上げたいと思います。
  12. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 税関研修所というのは今度初めて設けられたのですか。
  13. 北島武雄

    北島政府委員 さようでございます。
  14. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 どういうことを教えるのですか。
  15. 北島武雄

    北島政府委員 税関官吏仕事と申しますと、単に輸出入貨物通関手続をやりまして、関税その他の租税を徴収するだけの機関では実はないのであります。そのほか貿易管理為替管理の第一線の現場事務をやつておるわけであります。それからまた貨物検査につきましては、相当高度の技術的な知識も必要であります。また特に税関の一種の国際性と申しますか、税関官吏態度によりまして、その国に対する印象が左右される場合も非常に多い。ちよつとうぬぼれかもしれませんが、いわば外交官的な意味合いもあるということで、税関官吏につきましては、十分に研修しなければならぬわけであります。従来は中央におきまして、高等税関講習会というものを年に一回開催しておりまするほか、必要に応じまして、監督者研修とか、あるいは五級職、六級職の研修中央で行い、また地方におきましては、各課におきまして新規採用者訓練、あるいは語学の研修等をいたしておつたのでありますが、しかし実はそれぞれ各職員が通常業務のあいまに余暇を利用して、——余暇と申しますと語弊がございますが、通常業務のほかに臨時に勉強いたしまして、研修の講師になるというようなかつこうでありまして、全般的、組織的に、また統一的に行われないうらみがあつたのであります。そこで今回大蔵省付属機関といたしまして、税関研修所設置いたしまして、統一的、組織的に全国を通じて税関官吏研修行つて税関行政の運営を円滑に運んで行こうというのが趣旨でございます。
  16. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 外交官的な使命を持つておるということは、私ども旅行して痛感するのであります。文明の程度の低い国ほど税関がやかましい。悪いことをする人が多いためかもしれません。一見して密輸入なんかしないことの明らかである者に対しても、規則通り検査をする。ヨーロツパなどに行つてみると、どこの国でも、公用で来た人であるとか、国際会議に代表で出て来たというような人に対しては、その身分や目的を聞いて、あつさり見るだけ、あるいはカバンもあけさせずに通関させて、なるたけ不愉快な思いをさせることをなくすることに努力していることがよくわかる。ところがイラクとかインド、パキスタンなどは規則通りにやかましくやるので、わずかの滞在でも不愉快になる。そういうことが日本の場合それほどではないかも上れぬが、ヨーロツパに比したらやかましい方だろうと想像される。そういう点について、観光国になる日本として、特別の御用意があるかどうかということをちよつと承つておきたい。
  17. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまの鈴木先生お話はまつたくごもつとでございまして、現在日本に一番多く国際的なお客様が参りますところは、羽田税関支署であります。実は羽田税関支署仕事やり方は、昨年の秋ごろまではいわゆるアメリカ流やり方でございました。その当時いろいろ税関官吏態度がきつい、検査が厳重過ぎるというような非難がございました。私去年の秋に実はガツトの会議に列席いたしまして、その帰りに欧州各国税関アメリカをまわつて来たのございますが、そのとき受けました印象は、まつた先生印象通りでありまして言葉は悪いですが、結局後進諸国あまり独立意識の強過ぎる国は、税関官吏態度が非常にきつい。それからまた、名前をあげてはいかぬかもしれませんが、あえて外客誘致を必要としないような国は、非常にきついという感じを受けたのです。ところが日本はそのいずれでもないということを痛感いたしまして、実は帰りましてから、羽田税関支署に参りまして、二時間ばかり、今までの通りにやつておいてくれということを指示いたしまして、やつてもらいまして、そのあとで欧州各国税関官吏執務態度検査状況などを逐一話しまして、これからかえようじやないか、日本はそう後進国独立意識に固まつている国でもないし、また外客誘致を必要としない国のいずれでもないのだから、日本欧州風にやろうというふうに指示いたしまして、その後昨年の暮れあたりから大分改まつて参りました。ところが一税関部長が申しましても、あるいは税関部長はただはつたりで言つているのかもしれないというので、なかなか現場官吏に徹底しないかもしれないということをおそれまして、実は羽田税関支署旅具謀長と係長の二人を、ごく短期間三週間でロンドンまで飛行機で見せにやつたのです。その結果、やつぱり税関部長言つた通りだ、これからそのつもりでやるという報告でありまして、最近では、ときたま私の方にも、今までなかつたよう羽田税関に対するほめ言葉も耳に入つているような次第であります。私どもといたしましては、ただいまの鈴木先生お話のように、税関官吏態度がその国に対する外客印象を非常に左右する点の多いことを考えまして、今後も一層その点に気を配つて行きたい、また航空機だけでなく、船舶の方につきましても、そのつもりでやらせて行きたいというつもりございます。
  18. 稻村順三

    稻村委員長 ほかに質疑はありませんか。——質疑がなければ、次に本案討論に付します。  討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 稻村順三

    稻村委員長 御異議がなければ採決いたします。大蔵省設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立
  20. 稻村順三

    稻村委員長 起立総員。よつて本案は可決いたしました。  なおただいま可決いたしました委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願います。     —————————————
  21. 稻村順三

    稻村委員長 次に外務省設置法の一部を改正する法律案議題とし、その質疑を行います。質疑通告があります。鈴木義男君。
  22. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 外務当局お尋ねをいたします。この提案理由説明に大体書いてありますから、数字お尋ねするのは重複するかと思いますが、今年度はブラジル移民を二百五十家族、千二百五十名予定しておられるのでありますか。
  23. 小滝彬

    小滝政府委員 その通りございます。
  24. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 今まで何人送つて、これから残り何人あるのですか。
  25. 小滝彬

    小滝政府委員 本年すでに送りましたのは、第一次のさんとす丸、これは昨年の暮れになりますが、二十七年十月二十八日に出たものでありまして、十七家族人員が五十四名で、アマゾン河流域ジユート栽培地におもむく目的のものであります。第二次がチチヤレンカ号というので、この六月十六日にこちらを出帆いたしまして、マツト・グロツソ州のドラードスの方へ行く移民であります。これが家族数にいたしまして四十七、人員で二百四十一名であります。第三次のあめりか丸は六月の二十五日に出帆いたしまして、この入植地はバイア州のウナ、ハラ州のアカラ、マツト・グロツソ州のドラードス、この家族数は七十九家族人員にいたしまして四百九十二名であります。それから第四次といたしまして七月二十七日に出帆を予定しておるものがございますが、これの行先はパラ州のモンテ・アレグレ、それからアマパ領のマタピー、アマゾナス州のマナカブール、それで家族の数にして七十七家族人員にして四百八十八名であります。これを合計いたしますと家族数にして二百二十家族人員にして千二百七十五名、これが今年度の計画でございます。
  26. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 来年もほぼ似たところかあるいは少上多くなると予定されるわけですか。
  27. 小滝彬

    小滝政府委員 正確な数字はつきり申されませんが、大体三千若くらい予定しております。
  28. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 これは外務省欧米局第二課の移民班で扱つておられるようでありますが、どういう人がこれをお世話しておられるのでしようか。つまり現にブラジル行つて来て事情がよくわかつておる人が指導しておられるのか、そういうことを聞きたいのです。
  29. 小滝彬

    小滝政府委員 その通りでありまして、今課長をしておる佐藤課長向うにおつたこともありますし、なるベくそういう系統の外務省員をしてこれに当らしめておる次第であります。
  30. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 実は私の親戚の者が最近のあめりか丸であちらに移民いたしたわけです。家屋敷すべて売りまして家族相携えて大いに志を立ててウナ行つたのであります。これは私は農林省にお願いして、りつぱな男であるから、日本の名誉にこそなれ不名誉にならぬ、ぜひその選に入れていただくようにといつたのでありますが、幸いに多数の中から選抜されて団長にされて行つたのであります。しかるにそのお取扱いが非常におもしろくないという事情横浜に送つて行つて聞いて驚いたのであります。まず神戸に集めてそして訓練をした。これが四百九十名集まつた。移民が来たからカン詰は三割増である、実に六十円のカン詰が九十円近くに上つた。万事この調子で高いものを買わせられる。しかも、家屋敷を売つて行くのであるから、莫大な金を用意しておつた。それをできるだけドルで持つて行きたいと思つてつたところが、あちらに行つて来たという指導者が、金は持つて行けない、三十五ドル以上持つて行くことは許されない、こういうことです。そこで、金を持つて行けないなら農機具を買おう、電気スタンドを買おうとつまらぬものをむやみに買いました。そして結局神戸の商人を利せしめたわけです。わずかの金を残して横浜に今度船でまわつて来て、横浜で聞くと、金は幾ら持つて行つてもよろしい、ドルにかえてやるから持つて行つてよろしい、こういうのです。それで、なぜ神戸でそのことを言つてくれなかつたかということで憤慨しておるのです。しかもその指導者ブラジル行つた人である。ブラジルのどこにおられたか知らぬが、都会でともかくコーヒーなどま十分飲んで来たという経験を持つておられますが、これからわれわれの行こうとするウナについては何らの知識がない、そして行つたらどういうことをやるのかどういうふうにするのか、少しも具体的な御指導をいただくことはできなかつた、実に不親切きわまる、これで移民政策などというのはとんでもない話であるといつて言葉を極端にすれば恨みをのんで立つて行つたわけであります。しかし、そんなことは国家に頼ることが間違いなんだから独力で大いにおやりなさいといつたわけでありますが、そういう調子指導ならば何も役所をまたなくてもよいと思う、民間にまかしておいてもよろしいのじやないか、むしろその方がかえつて無難なんじやないかとさえ思われる。そういう点について、はたしてどれだけ真劔な指導をなさつておられるか、この機会に承りたいと思います。
  31. 小滝彬

    小滝政府委員 何分にも最初でふなれでありましたために手落ちがあつたかと思います。その点は非常に残念に思いますが、この設置法説明にも書いております通り、手も非常に足りないので、そうした意味でもこれからよくして行きたいと考えてこの法案を提出いたした次第であります。国家の方でも助けてやらなければならない補助金関係とかいろいろございますので、全部今民間におまかせすることもいかがかと考える次第でございまして、そうした点もよくするという意味を含ませてこの法案を提出したのでありますが、詳細につきましては係の廣瀬参事官にお答えしていただくことにいたします。
  32. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 こまかいことを聞く必要はない。要するに仕事の量から見て、今言つたお茶をにごす程度の世話をしているにすぎない、これは明らかなのであつて、人をふやせば親切になるかといえば決して親切になるとは私は思えない。これが何万人も送るということなら局を設け、人員を充実させる必要があると思いますが、人数からいつても大した増加でもなし、そして今言つた程度指導をしているということならば、局などをつくる必要はごうもないとわれわれは考える一どうしても局をつくる必要があるという理由をひとつ承りたい。
  33. 小滝彬

    小滝政府委員 今までは一つの課の班にすぎないもので数名でやつておるというようなことでありますので、自然、一生懸命にやりましても手落ちを生ずる場合もありますので、この際人数必要最小限度程度まではふやし、かつ専任の局長を置きたい、これから先まだまだ数のふえて行く仕事でございますので、移民関係を取扱う局を充実して行きたい、そうしないとまたこれまでのような手落ちがあつては申訳ないという点がございますので、これを提案したような次第であります。
  34. 神近市子

    神近委員 私も同じような経験があるのです。呼寄せ移民で、老人が行つたのですが、外務省の扱いは決して親切な方ではなかつたと思うのです。何日も何日も日参してやつたというような状態つたと思います。それは別といたしまして、アマゾナス州かどこかに行つた三十二家族が逃げて帰つて来た事実があつたのでありますが、あの状態なと見ますと、役所の方の努力が足りないということをおつしやつていられたようですけれども、アマゾナスあたり日本の農民が行つて実際に居住に耐えるかどうか、その点と、それからジユート栽培がおもな産業になつているようですけれども、一面からいいましての栽培がほとんど頭打ちになつて来たということも承りますが、そういうような見通しはどういうふうでございますか。
  35. 小滝彬

    小滝政府委員 これまでいろいろ調査の不行届きであつた点は、まことに遺憾に存じます。先方に出先機関を設けましたのも、つい最近のことでありますので、こうしたことのないようにと存じまして、調査団を派遣いたしまして、すでに帰つて来ておることでございます。将来こういうことのないように、今後も現地と連絡をとりまして、あやまちなきを期しておるような次第であります。
  36. 神近市子

    神近委員 ジユートの問題は、今御答弁がなかつたようですが……。
  37. 廣瀬節男

    廣瀬政府委員 ただいま二十二家族脱出したとおつしやいましたけれども、二十二家族行つたので、その中の三家族が脱落したのです。これはブラジル政府の許可がありましてから、ほんとうはもうちよつと早目に出さなければなりませんのが、向うとの打合せ条件がなかなか整いません、それでいよいよ期日が迫りまして、最後のどんづまりになりまして、この約束を果しませんと、今後またアマゾンに出せないという状態になりましたので、年末に至つて、大至急人選をして出したわけであります。そういう非常な短期間に募集をしたということは、まことに申訳ないのでありますが、そういう事情から、三家族の若干の不適格者が出たわけでございます。ことにこの二十二家族が現地に着きましたときには、アマゾンの川が三十年ぶりの大洪水だつた。しかも三箇月早く洪水がやつて来ました。それで恐れをなして、この三家族はたちまち逃げ出した。それから引受者との感情の衝突もありましたりして、三家族は出ましたが、ベレンに行つておりますわが方の館員、それから世話人の辻さんなどが極力説得いたしまして、ただいまのところは、三家族とも大体ベレン付近の野菜園におちついております。こういう脱退者が出たということは、まことに残念でございまして、これがブラジル政府の今後のわが移民受入れに対する態度等にも悪い影響がありはしないかと思いまして、非常に心配しておりましたが、ただいままでのところは、ブラジル政府から何らそれに対する批判もございません。今後は、移民の審査はもつとも厳重にいたしたいと考えております。これはブラジルからの注意もございまして、現に神戸で出港の際にも、ブラジル総領事の査証を受けるのですりますが、現在はブラジル総領事が一人々々に面接しております。そういう厳格な態度をとつてつておりまして、両方の審査を厳重にいたしますので、今後はそういう脱落者はないと思います。純然たる農家以外は出さない。しかも意思の堅固な、身体強健なる家族という条件で選択しております。  ジユート栽培につきましては、今年は前に出しました家族で打切りでございます。それというのは、現地の方から、今年の配航は見合せてくれという通報かございましたので、今年は、先ほど申しました二十二家族以外は、ジユート移民は参りません。ジユート栽培、その結果の収穫が、ブラジルにおけるジユートの増要に対してどう見合つているかと申しますと、まだ若干のゆとりはありますが、もうそろそろ、ブラジルで生産するジユートは、ブラジル消費の限界に近づいて来ておるような状態であります。今の規模で行きますれば、ブラジル政府がこのジユートのはけ口を見つけない限りは、ジユート移民は大体限界に近ずきつつあるというふうに考えております。
  38. 神近市子

    神近委員 悪く言えば、移民でなくて、日本政府は棄民しておるというような言葉さえ民間では言われておるくらいです。たとえばアマゾン州なんかにおきましては。マラリアが非常にひどい。その他の害虫も非常に多い。たとえばガラガラへびや何か——ガラガラヘびは何か保身術があるようですが、マラリアなんかは保健の生活のできる程度に何かの施設をやつてやるというところまで、お世話が行つておるかということをお伺いしたい。  それから行きまして、一年間の生活費はどういうふうになつておりますか。
  39. 廣瀬節男

    廣瀬政府委員 ただいまにおきましては、アマゾン流域においてはマラリアはほとんど絶無に帰しておる状態でございます。現地から調査団が帰つて来ましたが、マラリアはまずございません。かなどもほとんどおらぬ。かやをつらなくても寝られるというような状態になつておりまして、衛生状態は七日のアマゾンとは隔世の感がありまして、その方面ではブラジル側も衛生保健所を設けておりまして、こちらの先に行つておりますジユート栽培者等も、十分衛生状態を気をつけておりますのて、マラリアその他の害虫等で生命を落すという危険は、最近においては全然ございません。  それから現地における一般労働者の日給は、二十クルセーロ、日本の金にして約二百円でございます。新移民の最低賃金は、契約上は成年男子二十五クルセーロと規定されておりますが、仕事量に応じてさらに能率給が別途に支給される。また女子その他については右に準じて支給される。昨年送りましたジユート移民は、無理な条件と知りながら、特に労働力ある者ばかり三人で構成する家族を募集しておりますので、一日の収入は七十クルセーロといたしまして、一月二十五日の労衝量で計算しますと、千七百五十クルセーロの収入となります。なおカカオの収穫をとの副業を考慮に入れますと、約三千クルセーロの収入になります。但し本年は先ほど申しましたような三十年来の洪水等の天災に見舞われまして、諸物価が高騰しておることを考慮に入れなければならぬ、こういう状態でございます。それで新農園開始のこの八月までは労働者となつて、その後は現地における引受者と共同経営に入ることとなつております。増水によるジユートの損害は直接移民に及ぶことはありません。また引受者は移民の宿泊所を無料提供し、また食糧、農具、医薬など現物を支給する契約となつておりますから、高物価が今ただちに新移民の生活の基礎を脅かすとは考えられない、こういう状態ございます。
  40. 神近市子

    神近委員 それでこの程度移民を扱うのに、今の外務省の係でおできにならないはずはないように思うのです。もし新しい部局をおつくりになるとすれば、もう少し移民にとつて親切な企画をしていただきたい。たとえばもう飛行機があんなに早く行けるようになつているのですから、現地とこつちと始終吾つたり来たりするような人をおつくりになつて、むしろその方面にお金をお使いになつて、こつちの事務局の側では、口内ですから、お互いに仕事を融通してやるというようなことができると私は考えます。それてこの移民に対してもつと親切なことを考えていただくことができるならば、私はやつていただきたい。
  41. 小滝彬

    小滝政府委員 お説まことにごもつともでございまして、今度移民局をつくりましたら、もちろん親切に皆様の期待に沿うようにいたさせたいと考えております。ただ融通してなるべく費用のかからないようにとおつしやいましたが、外務省でも行政簡素化の趣旨を徹底するために、でぎるだけ各課の廃合、あるいはやりくりをいたしまして、この局を設けますために新規の増員というものはたつた六名だけにとどめておるような次第であります。外務省の方は、最近国交が回復いたしまして、海外にいろいろ出先を持つようになりましたが、それにもかかわらず本省の方は、本年度の予算におきましても三十一名を減員しておるような状態でありまして、三十一名減員いたしましたけれども、特にこの部局のためにいろいろやりくりしてみたけれども、やりくりがつかないので、局長を含めて六名だけを増員するというように、十分その点も留意しておるつもりでありますから、どぞその辺も御了承くださいまして、御審議の上、御賛成願いたいと思います。
  42. 高瀬傳

    ○高瀬委員 この海外移住局の設置につきまして、この提案の理由並びに説明書を拝見いたしますと、依然としてわれわれの同僚議員であり、先輩である上塚司先生あるいはこの松原という人はどういう人か知りませんが、この人たちの計画したもので外務省がそれに従つて世話をしている。おそらく入国の手続とか査証、そういつたようなことばかりしていて、積極的に外務省として移民政策をどういうふうにしてやつて行くか、今後これだけの移民を外国に出すとか、あるいはブラジルのみならず、積極的に外務大臣の責任においてどことどことどこに交渉するとか、いわゆる日本移民計画についての積極的な方策が一つも見らない。この点は私は非常に遺憾だと思うのですむしろこれは外務大臣に伺わなくちやならぬと思うのですが、旧態依然たるいわゆる昔から移民を連れて行つて、いろいろなことをやつた方によつて日本移民事業が敗戦後初めて手をつけられ、これによつて指導される。ただそのしりぬぐいをされるだけの移民局では私は意味がないと思う。私は外務省として大いに積極的、に日本移民政策について、これこれの意見を持つておるから、今まである部局を入れて移民をつくる、こういう御計画であれば、喜んで賛成する一人なんです。その点について外務当局日本移民に関する積極的な政策を伺つてから賛否を決したい、かように思つているわけであります。
  43. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま高瀬委員のおつしやつたことはまことにごもつともでありますが、現在は何としても終戦後における草わけの時代でありまして、これまで関係を持たれた方、事情を詳しく知つておられる方に積極的にこうした面で働いていただきましたので、まずそれをとりあえず直わけとしておく。しかしわれわれとしても相手方の方の事情も研究しなければなりませんので、今は平たくいえば、調査、研究の階梯とも考えられるのであります。もちろん将来はイタリアがやつているように、移民条約というものでもつくつて、もつと計画的にやらなければならないと考えますが、現在は、イニシアル・ステージでありますので、今やつておりますことはまことに御不満ではあろうと存じまするが、こうした計画を立て、今高瀬委員のおつしやつたような趣旨を徹底させるためにもこの移民局を設置いたしたいと考えておるような次第でございます。
  44. 高瀬傳

    ○高瀬委員 先ほど神近委員から質問がありまして、移民の衛生状態その他現地におけるいろいろな衛生施設その他の問題はどうかというお話がありましたが、事実私はかつて十五、六年前、南米の港、サントスでしたか、サンパウロてしたかでアメリカの船に乗つて見ておつた日本移民がたくさん船をおりて来まして、アメリカの船員ですら私に言うのです、ミスター高瀬、日本移民はライタ・キヤトルだということを言いました。今でもその言葉を骨身に徹して覚えています。家畜がおりヘ入れられて行くように、あの港におろされて行く、第一人間の住まないところへその移民を送つて行く。一体日本政府というのはどういう政府なんだ、われわれだつてあんなところに行つて働きつこない。第一人間が住むところではないのだ。そういうところへああいうふうに家畜のようにおろされて行く、日本移民はどんどん行くが、一体あれはどういうわけなんだということを、単なる船のボーイが言つているのをサントスの港で聞いたときに、私は実に暗然としたのです。事実成功している方にありましようが、現地におつて多くの同胞が非常な犠牲になつている。そこで私は多くの—上塚先輩なとのやつているブラジル政府との交渉は別でありましようが、—今までは移民異者みたいな、移民をやると言つて金をもうけるとか、いろいろなことをやつていた人があつたので、この際移民局を置くならば、そういうようなことはやめにしていただきたい。そうして国家の経綸の上に立つたほんとうの移民政策を実行するのでなければ、私は移民局をつくつてもだめだと思う。こういうふうな単なる、おれは向う行つて何方エーカーの土地をせしめて来たから移民を送れとかいつた山かん的なことのしりぬぐいを何も日本の政府がやる必要はないのだから、この点について外務省はつきりとした見解を伺りておく必要があると思うが、いかがですか。
  45. 小滝彬

    小滝政府委員 高瀬委員のおつしやることは、ごもつともであります。利権屋の手先になるというようなことがあつてはならない。これまでそういうことがあつたとは申しませんが、そういうことがないように、党の方でもい言明を信頼しまして、さよう了解いたしますが、この移民局をつくるについて、各部局を寄せてやるので六名ぐらいしかふえないというようなことになつておりますが、海外移住局をつくりますと予算は一体どのくらいに相なりましようか。
  46. 小滝彬

    小滝政府委員 移民の振興に必要な経費として六月の暫定予算では八千五百万円、本予算として一億六千三百万円を計上いたしております。なおあつせん事務を処理する神戸移住あつ旋所のために必要な経費といたしまして、本年度合計で七千八百万円というものを計上しております。
  47. 高瀬傳

    ○高瀬委員 そうするとこれは予算面においては、相当の増額になると思いますが、どのくらい増額に相なりますか。
  48. 小滝彬

    小滝政府委員 事務費の方になりますと、ただ六名ふえるだけでございますから、その限度しかふえないわけでありますが、貸付の費用は、このたび現実に向うへ行くようになりますので先ほど申し上げましたように八千五百万円、それから七月以降ので七千七百万円、それを合計いたしまして一億六千二百万円という今までなかつたものが出て来るので、それだけがふえてるわけであります。
  49. 神近市子

    神近委員 私はあまり政治のことはわからないのですけれども、今まで民間から眺めていると、お役所仕事は実に不合理がたくさんあると思うのでたとえば今鈴木さの御親戚の場合でございますね。そういうふうな指導手落ちて、みんな持つている財産を売り払つて来て、しかも三十五ドルしか持つて行けないというような指導を受けて損失をした場合に、その予算の中からでも、そういつたものを賠償するというような良心的な施設ができるのでございましようかということが一つ、それから野菜の栽培ということをちよつと承つたのですけれども、この野菜は大体どこに向くものでありましようか。私が聞いた実地の話ごでざいますと、たとえばじやかいもが非常にたくさんできる年があると、とたんにじやがいもの値打が下つてしまう。それからトマトをつくる。これは日本の農家でも同じでございますけれども、昨年はトマトが非常に値がよかつたというと、ことしまたそれが大量にでき過ぎる。そうすると移民はずいぶんみじめな目にあう。ほとんどたたき売りでたたかれて、非常にひどい日にあうということです。これは日本の仲買人がいないことと、そしてそういう利益のことになりますと、たとえば同じ民族でも親切ではないのに、異民族同士であるからなおさらひどい目にあうということを、私は、向うに二十年くらい移民をしていて、あちらに家族を持つている人の話を聞いたのですけれども、そういうことについてのブラジル政府の何らかの考慮を得ることができるかどうか。日本はこんなに人口過剰でございますから、移民は非常に大事だと思います。けれどもみんなが喜んで安心して行けるような態勢にしなければ捨てておくようなことでは、たいへん困ると思うのですけれども、そういうことについて、十分御考慮をいただけるかどうか、そして実際可能であるかどうかということを、ちよつと承りたい。
  50. 小滝彬

    小滝政府委員 最初の点の、官吏の取扱いがよくなかつたために、損害をこうむつたような場合は、普通の民法による賠償の条項で救済するほかはない。これは国家賠償というような普通の規定によつて賠償するよりしようがないので、この移民事務委託費、移民渡航費、貸付金の項目からは出せないと思います。  それから野菜の方は特に大都市ベレンの近くでつくらすことにしておりますので、需要が非常に大きく、しかもあの近辺で野菜をつくつておりますのは日本人だけでありますから、そう急激なる打撃を受けることは万なかろうと考えますけれども、しかしもしそういう事態があれば、ブラジル政府と交渉いたしまして、救済の措置を講ぜしめるように努力するという考え方であります。
  51. 粟山博

    ○粟山委員 だんだん質問に対する御答弁を聞いておりますと、一体日本は敗戦後における国情にかんがみて、移民という問題はよほど大きな問題として、国策的に考えなければならぬものであると私は思うのであるが、外務省当局、なかんずく事務の取扱いに直接長い間研究しておられる事務官の方から、どういうお考えで取扱つておられるか、伺つてみたい。
  52. 佐藤日史

    佐藤説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。できるだけ多くの移民を送出したいということは、もちろんのことでございますが、ただいまのところ、戦後移民が再開されたばかりでもありますし、そのことをさておきましても、りつぱな、優秀な移民を送り出すことがまず第一だということをわれわれは常に考えております。その具体的な内容といたしましては、現地に長く定住して、一時の出かせぎ根性で行く移民ではなしに——ブラジルの例をとりますれば、ブラジルのりつぱな国民となつて、まず第一にブラジルの産業の振興に貢献するという心構えを持つた人を送りたいということを念願しておりまして、先ほどいろいろ御批判も承つたのですが、神戸移住あつ旋所というところは、そのために最大の努力を払つておりますが、移民出発前に現地事情を講習いたすことはもちろんのことでありますが、そのほかに移住の共本的心構え、昔の移民の方々と違つた、もつと進んだ考え方を——自分の生活を第一義的に考えて行つてもらつては困る。それではせつく再開された移民の道が、また日本移民に対する反感が受入れ国内に起りまして、移民の道がとざされたらそれきりだから、従つて現地の人とよく同化して、長く定着して、りつぱな受入れ国民となるという心構えで行つていただきたい。そういう考えを中心として仕事をいたしております。
  53. 粟山博

    ○粟山委員 私は、日本が完全独立でないといたしましても、一応の独立国家になつているので、われわれの気持からすれば、独立したる国家の国民として、列国との間には、平和的に世界の経済ということも、世界の人文の発達ということも、むろん考えなくちやならない。自分のことだけ考えて、人のことは考えないというようなことはいけない。ところで日本は、これはもうわかり切つたことであるが、戦争のために国が半分にも小さなものになつて、人間は、たれもかれも言うがごとくに多くなつて、そしてなおバス・コントロールも十分できずに年々非常にふえて行く。一年の増加はさるものにしても、五年、七年、十年の先を考えると、実に戦慄すべきものがあるというような状況の前に、何としても考えなければならぬことは、人口問題である。この人口問題を取扱う一つの仕事としての移民問題というものは、言うまでもなく国としては非常に重大な問題です。ところで優秀な移民を外国に出すことはけつこうです。悪い者を出してはいけない。品物ですらもいい物を出さなければならぬ。いわんや人間を送り出すにあたつては、より以上に良心的ないい人を出すといふことは、これは論をまたぬ。しかし日本の国内は、この狭い国土で戦前と違つた様相においての国内の産業状態から、あるいは分配、消費ないしは直接生産、間接生産というようなことまで織り込んで、いろいろな面から考えてみて、なかなか日本は容易じやない。そのときに、この問題を扱うだけでもすでに二億円以上の予算が組まれている。私は前途非常に見込みのある計画が立つなら、一億も三億も五億もよかろう。けれども二億円ずつ五年、むだな金を使えば十億円である。そしてこの金が国民の負担においてなされることを考えると、貧乏な赤字の日本のこの現状において、ことに地方財政のごとき、あるいは中央においても、また個人の生活状態から見ても、実にさんたんたる計数の上に生活をしている。そういうような状況から考えますときに、国の税金でまかなうべきものは、よほど見通しのついた確かなものでなければいけない。私はよいものを出そうとしてよいものが出ないような場合には、むしろそういう金を国内において、他の農村の振興であるとか、あるいは土地の改良だとかいうことに使うというように、移民目的とするところのその目的を達する方法いかんということを一つの考えに織り込まなければいかぬと思う。移民は決して悪いことではない。やらなければならぬことである。日本の過去のカリフオルニアにおける経験からしても、あるいはブラジルにおいても、その他においても、移民というものは全部失敗の歴史だとは思わない。しかしながらこれはそのときの状況において、そのときの移民そのものの、非常なる苦難においてでき上つていることを知らなければならない。そして移民の成功というものは、どういうものであるかということについての根本的な研究が、私は頭のよい皆さんの間に足らぬと思う。そういうことから、大きな国の予算を使つて、まことに国のためになり、国民のためにお返しになるというその成功を収めかねているという点に、非常に上調子ものがあると思う。福島県の安績の疎水は、明治大帝からの因縁の深いものであるけれども、これがどうです、あの福島県の瘴癘の地と言つていいようなところへ移民が入つたということは、あまりにも有名なとであるが、この歴史を御存じでございますか。それから満州が開拓された。朝鮮には華民族がいる山東から苦力が仁川に渡つて元山まで行き、華民となつて奥に進んで、さらに満州に入つて、満州の国土を開発したというような状況における移民の非常にさんたんたる、みずから発心して進軍いたしましたところの状況を御存じですか。またカリフオルニアにおけるわれわれの同胞のその犠牲、そのときの気構え、そのとき世話をした人々の心構えというようなことをよく御存知になつておりますか。私は今こそ敗戦後におけるこの日本をどうしても、どの角度からなりとも復興させねばならぬ、さらにこれを調整しなければならぬということを考えるときには、もつともつと根本的なことを考えて、税金でまかなうところの金をむだに使わないという真剣な心構えがなければならぬと思う、皆さんは大学を出るときには秀才であつて、優秀な成績でそしてそのポジシヨンを得られ、長い間の経験を持つているが、諸君こそは1代議士がただ単に予算を通過させるばかりじやない、法律を決定するばかりじやない。官吏諸君が真剣な研究をしてくれなければならぬと思う。私は、希望のようなことであるけれども、あまりにも大きな問題を取扱うについて、意外な質問を聞きますがゆえに、当局に深甚なる考慮を促したいと思うのであります。
  54. 小滝彬

    小滝政府委員 御注意まことにごもつともでございまして、先ほども高橋委員の御質問に答えましたように、今は計画を立てる創業時代のようなものでございますから、今後の移民計画を立てますにあたりましては、お説のような点を十分勘案して策定いたしたいと考えております。もちろん人口問題解決に移民がすべてでない。これはほんの単なる一助にすぎないという点も私どもわかつておる次第でございます。  なお先ほども予算の点をおつりやいましたが、私の読み上げました一億六千二百万のうちの大部分は移民渡航費の貸付金でありまして、これは返すことになつております。その貸付金の総額は一億三十万余り、ほとんど一億四千万は貸付金でございますから、税金で取立てたものを全部ここに使つてしまうという仕組みではございません。それからサンパウロ附近の例をとりましても、現に二兆円ぐらいの金を、先ほど仰せになりましたように貯蓄してくださつておるようでございまして、これなども送金などもがございます。ただ移民というのが近ごろはなばなしい与論のかけ声があるからというので、無鉄砲にその方面ヘ進もうとしておるのではない点も御了承を願いたいと存じます。ただ移民の方は、農民が参りましても、結局それは農具を売るもとになり、あるいは技術移民向うに出て行きますれば、日本の技術が知られ日本プラント物の輸出の助けになるというようなことで、通商上の大きな役割をするという点もございますし、また、独立国の見識というような点も考えまして、適正にあやまちのない計画を立てて行きたいというふうに考えておりますから、さように御了承願いたいと思います。
  55. 稻村順三

    稻村委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後愛時三十七分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた