○粟山
委員 私は、
日本が完全
独立でないといたしましても、一応の
独立国家にな
つているので、われわれの気持からすれば、
独立したる
国家の国民として、列国との間には、平和的に世界の経済ということも、世界の人文の発達ということも、むろん考えなくちやならない。自分のことだけ考えて、人のことは考えないというようなことはいけない。ところで
日本は、これはもうわかり切
つたことであるが、戦争のために国が半分にも小さなものにな
つて、人間は、たれもかれも言うがごとくに多くな
つて、そしてなおバス・コントロールも十分できずに年々非常にふえて行く。一年の
増加はさるものにしても、五年、七年、十年の先を考えると、実に戦慄すべきものがあるというような
状況の前に、何としても考えなければならぬことは、人口問題である。この人口問題を取扱う一つの
仕事としての
移民問題というものは、言うまでもなく国としては非常に重大な問題です。ところで優秀な
移民を外国に出すことはけつこうです。悪い者を出してはいけない。品物ですらもいい物を出さなければならぬ。いわんや人間を送り出すにあた
つては、より以上に良心的ないい人を出すといふことは、これは論をまたぬ。しかし
日本の国内は、この狭い国土で戦前と違
つた様相においての国内の産業
状態から、あるいは分配、消費ないしは直接生産、間接生産というようなことまで織り込んで、いろいろな面から考えてみて、なかなか
日本は容易じやない。そのときに、この問題を扱うだけでもすでに二億円以上の
予算が組まれている。私は前途非常に見込みのある計画が立つなら、一億も三億も五億もよかろう。けれども二億円ずつ五年、むだな金を使えば十億円である。そしてこの金が国民の負担においてなされることを考えると、貧乏な赤字の
日本のこの現状において、ことに
地方財政のごとき、あるいは
中央においても、また個人の生活
状態から見ても、実にさんたんたる計数の上に生活をしている。そういうような
状況から考えますときに、国の税金でまかなうべきものは、よほど見通しのついた確かなものでなければいけない。私はよいものを出そうとしてよいものが出ないような場合には、むしろそういう金を国内において、他の農村の振興であるとか、あるいは土地の改良だとかいうことに使うというように、
移民が
目的とするところのその
目的を達する方法いかんということを一つの考えに織り込まなければいかぬと思う。
移民は決して悪いことではない。やらなければならぬことである。
日本の過去のカリフオルニアにおける
経験からしても、あるいは
ブラジルにおいても、その他においても、
移民というものは全部失敗の歴史だとは思わない。しかしながらこれはそのときの
状況において、そのときの
移民そのものの、非常なる苦難においてでき上
つていることを知らなければならない。そして
移民の成功というものは、どういうものであるかということについての根本的な研究が、私は頭のよい皆さんの間に足らぬと思う。そういうことから、大きな国の
予算を使
つて、まことに国のためになり、国民のためにお返しになるというその成功を収めかねているという点に、非常に上
調子ものがあると思う。福島県の安績の疎水は、明治大帝からの因縁の深いものであるけれども、これがどうです、あの福島県の瘴癘の地と言
つていいようなところへ
移民が入
つたということは、あまりにも有名なとであるが、この歴史を御存じでございますか。それから満州が開拓された。朝鮮には華民族がいる山東から苦力が仁川に渡
つて元山まで行き、華民とな
つて奥に進んで、さらに満州に入
つて、満州の国土を開発したというような
状況における
移民の非常にさんたんたる、みずから発心して進軍いたしましたところの
状況を御存じですか。またカリフオルニアにおけるわれわれの同胞のその犠牲、そのときの気構え、そのとき世話をした人々の心構えというようなことをよく御存知にな
つておりますか。私は今こそ敗戦後におけるこの
日本をどうしても、どの角度からなりとも復興させねばならぬ、さらにこれを調整しなければならぬということを考えるときには、もつともつと根本的なことを考えて、税金でまかなうところの金をむだに使わないという真剣な心構えがなければならぬと思う、皆さんは大学を出るときには秀才であ
つて、優秀な成績でそしてそのポジシヨンを得られ、長い間の
経験を持
つているが、諸君こそは1代議士がただ単に
予算を通過させるばかりじやない、法律を決定するばかりじやない。
官吏諸君が真剣な研究をしてくれなければならぬと思う。私は、希望のようなことであるけれども、あまりにも大きな問題を取扱うについて、意外な質問を聞きますがゆえに、当局に深甚なる考慮を促したいと思うのであります。