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粟山委員 私は旧
憲法下においての
議会政治に多少ある年月の
経験を持
つております。私の良心にははなはだ不適当なものであ
つたけれ
ども、追放になり、私は昨年以来この
なつかしい議事堂に議席を持つことが許されたのであります。そこで私ははなはだ私見を述べるようで失礼でございますけれ
ども、この
議会を運営するにおいても、この
日本の国を健全なものに導くにしても、われわれは大きな反省を持たなければならぬ、私
たちは過去の
政治活動において良心的にや
つて来たつもりでありますが、しかしながら時勢に流されてやむを得ず、一木のよく支うるところにあらずして
自分たちの希望には添はない大きな動きに耐えないこともあ
つて、そうして
国家から見れば取返しのつかない実に大きな失敗を
戦争の結果しております。私は老いたる者も若き者も、再びこういうような大きなあやまちは繰返したくないということは何人であ
つてもこれは念願であろうと思う。ことにそういうことを
考えますときに、私
どものあとを継ぐものは何かといえば、この
青少年よりほかないのです。つまり頭が、まだ感情の上、理性の上において固ま
つていない。早くいえば白紙のときからよくむらがないように染め上げて行くということは、私は非常に大事なことだと思う。その点から
考えると、むろん
青少年の問題というものはすべてのものが全力をあげて取上げなければならぬことであるが、その効果ということはよい結果をもたらすか、悪い結果をもたらすかということをます
考えなければならぬ。そういう点から
根本的に
考えて行きますときに、今あなたが私に明らかにしてくださいました年層、
青年男女は、
戦争中のあの——くどくどしくは言わぬけれ
ども徴発だ、徴用だ、学徒動員だという、実に気の毒な状態において家庭を離れた
人たちである。今度
戦争の済んだころに生れた人はまだ七つや、八つでございますけれ
ども、小学校に入
つた、あるいは小学校を出るころというような年層がちようどこれに当る、国の一番悪い、有形、無形の大きな病気をわずら
つているときに育
つた人たちであります。一膳の飯を食うにしても、親子の間で目を三角にとがらして見合うようなさんたんたる状態のもとに育
つたのであるから気の毒です。この気の毒な者が今日統計的に犯罪層の一番恐るべきものを示しておる。これは何かと言えば、過去のことは、もう繰返してもしかたがないけれ
ども、こういう
思想の面をすなおに導こうと思うには、生活と環境の改善よりほかにないと思う。
青年の
活動ということは、さらにもう一歩先の問題である。せつかく先のことに先走
つていろいろ金をかけてや
つてみても、
根本のものを調整してやらなければ、かえ
つてプラスになるよりも大きなマイナスにな
つている例が多くあるのです。
日本の今日の世相はこれであると思う。なるほどわれわれは戦後は汽車の窓から物を背負
つて、この年齢で窓から入
つたり出たりするような思いをして、食糧や生活品を運んだ、
自分のからだまでもそういう状況において運んだ、そうして着物はといえば、カーキ色の色あせたもの、破れたもの。しかしだれもそうだからはずかしいとは思わなか
つた。しかし今日のようにたれさまのおかげか知らぬけれ
どもみんなが——私もそうです。とにかく一
通り見てみぐさくないような着物を着て生活ができるように
なつたときに、たれが耐乏生活をせい、精神的生活に入れと言
つたつて、政府がいかにさかさにな
つて笛やたいこをたたいた
つて、そうは行くものではない。私は政府
当局は終戦後において今日まで六、七年の間に大きなミスをしておる。その点において、
ほんとうに国民みずからが耐乏生活をしなければならぬときに、成長しながら正しい歩みを続けて、生産の拡充なり、あるいは生活の改善なり、あるいは米を離れてパン食に入るなり、やれるときにやらないでおいて、今にな
つて幾らか楽なような生活環境を来したときに、やれ耐乏生活だなんて言
つたつてなかなかそうは行かぬ。そういうことを
考えますと、今
青少年の問題をここに取上げたあなた方の
気持はよくわかるけれ
ども、あなたが指摘されたような
指導階級の
人々の
思想、感情、過去の
経験によ
つてはたしてこの
時代に即したところの、つまり
国家に対し、民族に対し大きな希望を持
つた、その骨身に徹底したこの
青年運動の
指導がはたしてできるかどうかということについても十分お
考えを願わなければならぬ。もちろん私自身においても反省も必要であり、自制も必要であると思う。しかしながら少くとも私は
衆議院議員としてここに議席を持
つておるが、あるいは県会
議員らもこの
青年団体を
指導するならば、その人の
思想、その人の性格、その人の行いというような問題についてはよほど深刻に
考えられなければ、私はかえ
つてこれはあやまちの方面に導くようなことにな
つて重大なる違算を生ずると思う。私はこういう問題については非常に
根本的な問題でございますから、何かの機会において、われわれ八千万国民の名において、その実において
根本的なものに触れなければならぬと
考えておる一人でありますが、
同僚議員の
質問を機会といたしまして、
当局においてこれを実施するにおいても私はあえて妨げるものではないけれ
ども、マイナスにならないように深甚なる考慮を払われんことを切に希望いたしましまして、私の
質問はこれをも
つて終りといたします。