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1953-07-24 第16回国会 衆議院 電気通信委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十四日(金曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 成田 知巳君   理事 岩川 與助君 理事 橋本登美三郎君    理事 原   茂君 理事 松前 重義君       菊池 義郎君    庄司 一郎君       齋藤 憲三君    長谷川四郎君       柴田 義男君    甲斐 政治君       松井 政吉君    三輪 壽壯君  委員外出席者         参  考  人         (日本民間放送         連盟理事)   高橋 信三君         参  考  人         (一橋大学教         授)      田上 穰治君         参  考  人         (日本放送労働         組合中央執行委         員長)     中塚 昌胤君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     古垣 鉄郎君         専  門  員 吉田 弘苗君         専  門  員 中村 寅市君     ————————————— 本日の会議に付した事件  放送法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四五号)     —————————————
  2. 成田知巳

    成田委員長 これより開会いたします。  本日は放送法の一部を改正する法律案について、参考人各位より御意見を伺います。  参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず御出席くださいまして、厚く御礼申し上げます。申すまでもありませんが、本法案現行放送法の重要な改正案でございまして、多くの問題を含んでおると思います。いわゆる公共放送、非商業放送民間放送商業放送とのあり方及びその関連、あるいはまた今度の改正法案には、郵政大臣放送事業に対する監督命令権を与える規定がございますが、その規定放送言論の自由との関係、あるいは業務命令罷業権との関係、こういう重要な問題を多数含んでおります。従つて一般的にもあるいは関係者各位におかれましても、いろいろ御意見があると思いますので、慎重に審査いたしておりますが、本日学識経験者並び関係者各位に御出席を願いまして、あらゆる角度から忌憚のない御意見を伺うことができることはまことに幸いだと存じております。  御発言はお一人大体二十分以内にお願いしまして、その順序はかつてながら委員長におまかせ願いたいと存じます。なお御意見御発表の後、各委員から質疑があると思いますから、その節はお答え願いたいと思います。それでは古垣鉄郎君よりお願いいたします。
  3. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 今回放送法の一部を改正する法律案国会提出せられまして、これに関しまして、日本放送協会意見を申し述べる機会をお与えくださいましたことを、最初に感謝いたします。  この法律案は、御提案趣旨によりますと、当面必要な改正だけにとどめるということでございます。この点に関しまして、一部には今ただちに放送法について根本的なる改正を行うべきであるという御意見もあるようでありますが、私ども考えといたしましては、御提案趣旨賛成するものでございまして、四箇年の歳月を費してでき上りましたこの放送法は、私どもにとりましては、いわば放送憲法とも申すべきものでありますが、この放送法は生れてからまだようやく三年の経験を持つだけでございます。もう少し時間を経過いたしませんと、全般的に批判させていただく段階になつていないと思います。またその間商業放送もその後次々と発足いたしましたが、これまた長くて二箇年、多くはそれよりも少い年月を経ましたのみであります。しかもNHKが二十八年にわたつて営々と築き上げました経験技術、そして一千万という受信者世帯の上に立つて、そこに発展しておられるのでありまして、むしろこれから商業放送としての特色を大いに発揮されて行くことが考えられるのでございます。そこへまたテレビジヨンという新しい問題も最近実現を見ました。これまたいかなる経過を今後とつて発展して参りますかは、いましばらく時期を見なければ何とも申し上げられない段階にあると思います。これらの状況を見ますと、どうしてもいましばらく全体的な事業の動向を見きわめてから、適正な放送法の一般的な改正をいたしますのが順序であろうかと思いますので、政府の御提案が当面の必要とする問題だけの一部を改正しようとするのは、まことに妥当と考えて、おります。  それからこの一部改正案内容は、御提案理由説明資料によりますと、大体四つの点ということになります。  第一の点は、NHK理事監事増員であります。すなわち理事三名、監事二名の現状を、理事三人以上七人以下、監事二名を三人以下に改めるという御提案であります。これは現在のNHKの実態、すなわち全国二重放送網拡充テレビ放送並びに国際放送等拡充、それから厖大な組織を持つております現在、多岐多様の仕事が毎日ございますし、しかも全国的にも地域的にも仕事を持つておりします関係上、今回のこの増員は、私たちの日常をよくしんしやくしていただいた妥当な改正であると存じます。さりとてまた役員があまりに多くなります、一とは、私は決して賛成しないのでありますが、理事七名以下、監事三名以下という改正ならば、全面的に賛成いたすものであります。  第二の点は、協会業務内容拡充規定し、放送進歩発達に必要な研究外部依託、あるいは放送進歩発達に寄与する外部研究業務助成を新しく認められることとなつておりますが、まことに妥当であると存じます。しかしこれらの事項を行うにあたりまして、郵政大臣認可を必要とする旨を規定いたしておりますが、これらはいずれも事業計画及び収支予算を通して、国会の御承認をいただいて行うわけでありまして、そのわくの中のさらに軽微なものにまで郵政大臣承認をいただかなければならないということは、事業運営活動性が著しくそこなわれるものと考えます。協会業務は、経営委員会を通じて絶えず逸脱することのないように指導統制を受けておりますので、これは何とか経営委員会におまかせいただきたいと存じます。なお同条第六項は、NHK行つた研究の公開を義務づけておりますが、NHK研究は、従来ともにできるだけ一般のお役に立つよう公開し、十分成果を上げて参つたつもりでありまして、これをこの際法的に義務づけられるよりも、今まで通り協会におまかせ願いたいと存じます。  次に、経営委員任命にあたりまして、住所主義わくをはずすこととしておりますが、これは地域的な制約による人選難のないようにという御考慮もあると存じまして、御趣旨には賛成する次第であります。しかし協会は、全国あまねく放送が聞えるよう、全国的な組織を持ち、全国聴取者にサービスを行うことをもつて目的とするのでありますから、ぜひとも地方的利益十分考慮し得るようにくふうしていただきまして、中央集権的でなく、全国的な視野から、この経営委員を選んでいただきたいと存じます。  最後に、改正案監督命令の点は、「協会は、郵政大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。」第四十九条の二、それから「郵政大臣は、公共福祉増進するため特に必要があると認めるときは、協会に対し監督上必要な命令をすることができる。」第四十九条の三、及び「郵政大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、協会からその業務に関する報告を徴することができる。」第四十九条の三第二項、こういう条文を追加する点であります。これに関しましては私どもは、郵政大臣郵政省設置法第四条の通りに、「法令の定めるところに従い、日本放送協会監督する」ということはもちろんでございますが、今回の改正案に示されました包括的監督命令権につきましては、疑問を持つものであります。すでに御承知のように当協会昭和二十五年六月、従来の社団法人日本放送協会を、新たに放送法による特殊の法人として改組いたしまして、国民基盤とした、国民のための自由な言論報道機関としてスタートいたしたのでございます。すなわち日本放送協会は、この言論報道機関たる性格にかんがみまして、現行放送法は、日本放送協会国民のための特殊法人として設置し、国会同意を得て総理大臣任命した経営委員事業運営最高責任を負わせ、政府自体はできるだけ干渉しないという建前で立法され、政府命令監督し得る事項は、すべて現行法各条に具体的に定められているのであります。協会特殊法人として非営利的に、公共福祉のために運営されるという点では、専売公社国鉄、あるいは日本電信電話公社等の、いわゆる公共企業体に類似するものでありますが、これらの公共企業体NHKが根本的に異なるのは、まず第一にその成立の経緯であり、第二には協会国民基盤とする言論報道機関であるという点にあると言えるかと思います。  電電公社国鉄等は、いずれも国家資本を導入いたしまして、国家意思というものと密接に関連して運営されたものであり、いわば国家代行的機関であると申してもよいかと思います。これに対しまして日本放送協会は、国家資本を一切受入れることなく、受信料基礎とし、自由かつ独立言論機関として、国民大衆要望にこたえて、最も公共福祉に寄与することを目的として運営されるものであります。全国受信者にその基礎を置き、政府から干渉されることなく、大きな自由と独立を享有して、国民のために放送を行い、運営されるところの企業体でございます。この点が、ただいま申し述べました他の公共企業体本質的な差異のある点であると存じます。  第二の、協会言論報道機関であるという点でありますが、御承知のように、言論の自由は憲法第二十一条の保障するところであり、協会言論機関であるということは、この番組運営は、政府によつて不必要に干渉されることがあつてはならないということであると存じます。言葉をかえて申しますと、協会番組編集は、国民の輿論、要望沿つて編集されている限り、何人からも干渉されたり、規律されることがあつてはならないのであります。また番組の自由な編集を妨げるというような政府干渉が、直接的にも間接的にもあつてはならないということであると考えます。すなわちこれを法律の上に見ますと、公共企業体すなわちパブリツク・コーポレーシヨン、特に言論機関として自主的な経営を可能にし、一方公共福祉をはかるために、放送全国普及義務を定めるとともに、広告放送を行うことを禁止し、半面、受信料徴収規定を設け、営利を目的としてはどうしても普及し得ないような山間僻地や津々浦々までも、放送文化の恩恵に浴することができるように運営し、国民すべてのための言論報道機関として、自主的に国家の政策に協力し、国民のよりどころを明確にして、その日常生活に切り離せないものとなつている次第であります。すなわち協会は、この自由と独立立場から、国会承認を得ましたところの国策につきましては、全力を上げて国民に徹底し、普及することに最善の努力を傾けることをその方針とし、責任として参つておるのでありまして、また協会に対する監督命令につきましては、すでに放送法に列記されておりますので、もし今回のごとき公共福祉という名目のもとに、包括的なる郵政大臣監督命令規定が入り、現在各条文に定める事項以外のすべてに及ぶということになりますと、これは放送法の根本的な改正にもひとしいと思うのでございます。  以上のような考えのもとに、現行法各条以外に真に協会命令すべき事項がありますならば、現行法のように、具体的に列記していただきたいと存じます。なおこの監督命令につきましては、番組に及ばない旨の但書をつけてはという御意見もあるやに聞いておりますが、放送事業番組を中心として、技術普及、管理などのあらゆる業務が一体となつて運営されて、初めてよくその機動性を発揮し、言論報道機関として遺憾のない働きが可能なのでありますから、この但書だけでは間接的に番組に対して制約が及ぶ場合も考えられるのであります。  今回の改正案を拝見いたしますと、以上申し述べました通りプラスの面とマイナスの面があるように考えますので、プラスの面につきましては、その実現を熱望いたしますとともに、マイナスの面につきましては、私どもの意のあるところをおくみとり願いたいと存じます。これを要するに今回の放送法改正に対しましては、政府監督必要最小限度にとどめていただきまして、その自主的な運営を保障するようにおはかり願いたいと考えます。特に番組編集の自由は、繰返し申し述べました通り協会の生命とも申すべきものであります。これに制肘が加えられます場合は、その放送いたしますところの番組、特に放送いたしますところの報道真実性はそこなわれ、信用を失い、ひいては死命を制せられるにも至る点を指摘させていただきまして、皆様方の慎重な御理解ある御考慮をお願いいたす次第でございます。
  4. 成田知巳

    成田委員長 古墳参考人はよんどころない御所用でお急ぎのようでありますので、古垣参考人質疑がございましたならば、この際お願いいたします。
  5. 齋藤憲三

    齋藤委員 いずれ速記録を拝見いたしましてから、また必要がありますれば御質問を申し上げてみたいと存ずるのでありますが、ただいま古墳さんは、この政府提出原案賛成だと前提をされたのですが、お話を伺つておりまずと、最もかんじんなところには反対のようであります。すなわち今回の改正案におきまして最も焦点となるべきものは、第四十九条の二、第四十九条の三、これらの郵政大臣監督命令及び報告、異議の申立て、こういうものが今回の改正案の重点であり、われわれもこの点に関して慎重審議を重ねて行かなければならぬと考えておるのであります。ということは、一部改正と申しておりますけれども、今のお話を伺つておりますと、これはNHK従来の発展的過程におきます根本的な問題であると考えられるのであります。この点に対して反対を表明せられ、しかも全体に対して賛成の意を表されるということは、ロジツクとしては合わぬように考えられるのでありますが、この点に対して御説明を承りたい。
  6. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。私が最初賛成を申し上げましたのは、この改正案を御提出になりました趣旨が、この際は全面的でなくて、一部の当面の改正にとどめるという、この趣旨には賛成ですということを申し上げた次第であります。
  7. 齋藤憲三

    齋藤委員 そうしますと、全面的改正をしないで、この際一部の改正にとどめるということには賛成だ、しかしその改正案本質には反対だ、こういうことになりますか。
  8. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答えいたします。本質の中で四つの点が政府提案にございますので、その四つの点について一つ一つ見解を申し述べさしていただいた次第であります。
  9. 齋藤憲三

    齋藤委員 もう一点伺いますが、それではその四つのうちでどの点を一番NHKしては重点的にお考えになるのでありますか、これを伺いたい。
  10. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 先ほど開陳いたしましたように、この監督命令の点でありまして、監督命令はできるだけ必要最小限度にとどめていただきたいというのが、協会の最も希望する趣旨でございます。
  11. 齋藤憲三

    齋藤委員 最小限度の必要と申しますと、ない方がいいことだと私は解釈いたします。そうしますと、この四つの中で最も重点的にお考えになつておるそのものがなくてもいい、いわゆる反対だということになりますと、今回の一部改正法律案には、NHKとしては反対だというような結論になると思うのでありますが、この点いかがですか。
  12. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 必要な最小限度監督でありまして、先ほども申し上げました通り郵政大臣郵政省設置法第四条によつて法令の定めるところに従い、日本放送協会監督する」ということになつております。従いまして、この監督が必要なる最小限度であつてほしいということでございます。またいろいろ私どものこの監督命令の点につきましての考え方なり希望を申し述べましたので、この点を修正してそういう心配がないようにしていただければ、その他の点において異存はないということを申し上げた次第でございます。
  13. 齋藤憲三

    齋藤委員 お忙しいようでありますから、私の方ももう少し勉強をいたしまして、また古垣さんの方にももう少し実行していただきまして、いずれ機会ありますときに再質問して御意見を承りたいと思いますので、委員長はその点お含みの上おとりはからい願いたいと思います。
  14. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 齋藤委員から一応お聞きしましたので、重複するところがありますが、まず最初に、先ほど公述を聞いておりますと、今齋藤君からの質問があつたように、改正条文の一部を修正してもらえれば、この改正法案に対しては反対はない、こういうふうに聞かれたのですが、再度その点についての御所信をお伺いいたしたい。
  15. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 その通りでありまして、最初に陳述いたしましたNHK意見要望等が十分盛り入れられましたような修正ができますならば賛成でございます。ただ先ほども申し上げましたように、但書をつけて、監督命令番組に及ばないというような程度では、間接的に番組に対して制約が及ぶ場合も考えられますので、もつと私ども希望沿つて編集権独立が保障されるような御考慮をいただければ幸いだと存じます。
  16. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 今根本問題をお聞きしたのですが、続いて逐条的にお聞きしたいのです。この改正案の中で第九条の第二項に、八として「放送進歩発達に必要な研究を委託すること。」九として「放送進歩発達に寄与する研究その他の業務助成すること。」この二項目が加えられて、これは郵政大臣認可、こういうことになつておるのです。これに対して会長からは、国会においてこれらの予算については総括的な承認を受けておるのであるから、あらためて郵政大臣認可は必要でないのではなかろうか、こういう見解のもとに郵政大臣認可の必要はなかろう、こういう御意見でございますが、国会では大体予算の款項目に、どういう事業、どういう人に助成をするということは掲げないのであります。総括的には助成金なりそういう方法で、あるいは他の費目からも出せるでありましようが、そういうことでやることになろうと思います。経営委員国会同意を得て任命せられたのでありますから、一応国会意思も代表せられるようにも考えられますが、法律的には経営委員会国会意思を代表しておりません。協会意思を代表するのであります。従つて国会としては総括的な予算承認をいたしますが、その具体的な使途について——もちろんこの条文によつて原則はきめられておりますが、事業と申しましても非常に広範囲になりますから、ある程度金額の問題その他きめる必要もありましようけれども、どの程度以上は郵政大臣認可が必要である、こういう条項の方が法律的には妥当であるとわれわれは考えますが、その点に関する御意見を伺いたいと思います。
  17. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 ただいま橋本委員より法律的な御意見を伺いました。これは十分考慮してみたいと思いますが、NHKとしての希望は、考え方は、一々郵政大臣認可を軽微なものにまで受けて参りますと、事業運営活動性が著しく下げられて、かんじん事業そのものに支障を来す。やはり事業そのものが私ども仕事最終目標でございますから、できることならば、先ほど経営委員会性格についても御指摘がございましたけれども、この経営委員会が十分にその責任使命を果す場合においては、おまかせしていただければ事業発展のためには非常にプラスである、かように考えます。
  18. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 その点当委員会においても大いに研究してみたいと思いますが、一応そういうぐあいに私ども考えているわけであります。なお先ほど公述を聞いておりますと、経営委員任命地域的な問題ですが、ちよつとあるいは言葉が不十分であつたためにそう聞えたのかどうか知りませんが、放送事業はあまねく全国普及する義務を持つている。従つて従来のごとく全国地区から選ばれることが妥当であろうというよりに聞えるのですが、要するにこれは政府当局において人を選び任命するのでありますから、一応改正案では形式的な地域を撤廃したために、実際上の任命方法において常にNHK使命考えて、広く人材を地域的に求めて候補者をきめ、経営委員会を決定してほしい、こういう意味でのお話でありますか、それとも従来のごとくに明確に八地区規定して、そうして形式、実質とも地方地区からの人を出すということの方がよりベターである、こういうお考えであるか、承つておきたいと思います。
  19. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。今まで通り地域住居主義を固執する方がよいという考えではなくて、前半に御指摘のような考えを申し上げたつもりであります。地域的な制約による人選難のないようにという御考慮に対して賛意を申し上げ、また同時にNHK事業は、全国地方の利害ということを十分考慮に入れて仕事をしなければならないと存じますので、この新しい方法によります場合に、運営の面で地方集権的にならないように、全国的な視野から地方的利益も十分反映するような人選方法にしていただきたいということを申し上、げたのであります。
  20. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 会長趣旨はよくわかりました。私と同じ意見のようであります。問題は第四十九条であります。これは御指摘のように言論報道機関であり、ひとり放送協会のみならず、民間放送事業及び新聞事業にまで、この規定は広く影響を与えるべき重大なる条項であります。従つてこの条項については、当委員会においても論議の集中せられるところでありますが、ただ法律を真正面から見て、監督を受ける立場であり、命令を受ける立場である放送協会としては、具体的にはどういう点に影響があるとお考えになつておられるかを、参考のためにお伺いしておきたいと思います。
  21. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答えいたします。この点が日本放送協会として最も関心を有する点でありますが、具体的には言論報道機関としてのNHKが、その放送の、あるいは番組独立自由というところが、直接あるいは間接干渉されないようにという点でございます。直接的には番組の自由、編集権というようなものが第三条でございましたかで保障されておりますけれども、しかしその他の面で間接にこの番組編集権干渉を受けるということがないように、もちろんNHK監督官庁郵政省であり、郵政大臣日本放送協会監督するのでございますが、その監督命令というものはできるだけ少く、必要最小限度にしていただきたい、かように考えております。
  22. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 放送法第三条は御承知のように「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」こうなつております。そこで実際上の放送法建前、精神から言えば一番組自由権を侵すという意味はもちろんないのでありますけれども、この第三条に「法律に定める権限に基く」ということが書いてありますから、これをしやくし定規解釈をすれば、第四十九条の権限に基いて第三条を侵し得るという解釈もできるわけでありますが、その点についてはどうお考えになつておりますか。
  23. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 私どももただいま御指摘の御意見のように考えて心配しておるものでございます。
  24. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 この法律修正部分ですが、「公共福祉増進するため」というのを「公共福祉のため」と「増進」をとつた場合、あるいは「確保」という言葉でもけつこうですか、「公共福祉増進する」という言葉は、行政命令に対して積極的な意図を持つておる、こうわれわれは法律を扱う上においては解釈するのでありますが、協会といたしましてはこれをどう解釈いたしますか。
  25. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 公共福祉を「増進する」という言葉は、非常に積極的な意図を持つておる表現であると思います。しかしこの「増進」という字がございませんでも、「公共福祉のため」という言葉でも、やはり非常に危険性を感ずるものでございます。
  26. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 いろいろお聞きしたいのですが、時間がありませんので、具体的な例証をあまりあげておられませんが、たとえば政府の資料の中にありますけれども、それらは除きまして、その資料以外の業務運営、たとえばストライキ等が行われた場合、これに対しては、電波法では放送をしなければならぬ規定はあるようですけれども、そういう場合においては、当然この条文影響されると思いますが、それによつて、スト権といいますか、労働権が侵害せられるとお考えになるかどうか。あるいはそういう心配があるかないか、こういう点ひとつ伺いたい。
  27. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 その点は社団法人当時においても、日本放送協会の組合は罷業権を持つておつたのでありますが、しかしやはり政府命令によつて放送をなさせることができた例がございますから、従いまして新しい企業体特殊法人となりました場合も、事業そのものは同一の方針でやつておりますので、特にここで組合の罷業権を制限するという必要はないように考えます。
  28. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 私は、政府にその意図があるかどうか、まだ十分な審議をしておりませんからわかりませんが、この法律の上から見て、そういう権限がこの法律によつて郵政大臣に与えられると、御解釈になるか。それとも実際上の問題としては、ストライキをやめろということはできないのであつて放送を継続すべしという命令しかできない。その場合には協会としては、ストライキに加盟しない人をもつて、いわゆる非組合員をもつて最小限度放送をやるように強制せられるようになると思うのですが、私の言うのは、そういう場合に、この法律の上から見ると、放送継続命令が出されるというように解釈されるのですが、そういうようにお考えになるかどうか。
  29. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 どうもそういう命令によらなければ、継続できないという場合を想像したくないのであります。それからまたそういう制限下に組合員、すなわち放送協会の職員が放送事業に当るという点において、今までのNHK放送事業に対する熱意、志気、理想というものが、初めから制限せられ、打撃を受ける点を心配するのであります。
  30. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 そうしますと、参考人の御意見は、そういう命令があるなしを問わず、協会建前としては、いかなる方法をもつてしても放送を継続する確信と自信を持つている。だからこの法律によつてそういう命令が出せると考えるならば、そういうものは必要はない、そういうように解釈してよろしゆうございますか。
  31. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 その通りでございます。
  32. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 なおこまかい点でありますが、先ほどお話の中には、間接的に直接的に人事権も影響を受けるであろうというお話でありましたが、これはおそらくこういう意味だろうと思うのです。たとえば番組干渉ができるということになりますと、この番組編成が不適当である、従つてその関係者も不適当であるという間接的な影響を与えることができる、こういう意味だと思うのですが、そう解釈していいかどうか。
  33. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 私は人事権までは申し上げませんでしたけれども番組編集が、直接できなくても結局間接影響されるということは、ただいま御指摘のようなことも頭の中に描いているわけであります。
  34. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 要するに参考人の公述とその後の陳述において、公共企業体であるから、その日常業務についての言論の自由、報道機関の自由を侵さない範囲における最少限度郵政大臣の規律があつてもやむを得ない。従つてそれをきめるためには、包括的なものであると逸脱するおそ、れがあるから、かくのごときものだけを業務的に監督するのだという意味での列挙主義的な箇条的なものであつて番組の編成その他の運営上、悪影響を与えないものならば、最小限度監督は当然であるというようにお話なつたように思うのですが、そう解釈してよろしゆうございますか。
  35. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 その通りでございます。
  36. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 お伺いしたいことは、これだけの一部修正にしろ、修正提案されておるのであります。そこで放送協会の一事業年度のうち、末期に至つてもし国会が解散になつたとする。翌年の予算が成立しないうちに国会が解散になつて、翌年の予算が成立しておらないという場合には、協会としては従業員の給料の支払いもすることができないという状況が起ると思うのでありますが、一部修正を行う場合、現在これらに関連しなくてもさしつかえないのでありましようか。
  37. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 ただいま御指摘のような点が確かにございます。そうしてその点を心配しながら、そういう事態が起りませんように念じ、または国会の方に対しましても、そういう心配を表明して善処して参つておりますが、確かにそこに欠陥があると思います。
  38. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 これは会長が幾ら心配したつて国会の解散は会長の心配くらいでは避けられません。従いまして、そういうときの処置をどうするかということについて、おそらく政府の方へも一部修正の場合には申し込んであると思うのでありますが、そういう点について申し込んであるやいなやをお尋ねいたします。
  39. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 正式には申し込んでございません。と申しますのは、この放送法改正は、私ども前から検討はいたしておりましたけれども、いろいろの関係から、すぐ改正することがいいのかどうか、改正するとすればどの点まで技術的な改正をすべきか、根本的な改正をいかにすべきかということにからみ合つていたものですから、当局には正式に何にも申し出ていない状態において、今度の改正案が出た次第でおります。
  40. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 そうしますと、そういうようなものが必要であるということは、御確認できますか。
  41. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 必要であるとは思います。
  42. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 特に伺いたいのは、先ほどお話の中にあつた四十九条の三の問題でございますが、会長として、放送番組編集の自由を侵さないということがはつきりと現われた修正であるならば、さしつかえはないのだ、こういう御意見のようでございますが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  43. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 その通りでございます。しかしそれが但書程度では、私は十分でないということも申し上げたわけであります。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 重複を避けまして、二点だけお伺いしたいと思います。その第一点は、先ほどの御陳述の中に、言論に対する制約のあることを非常に御懸念になつておられた。そこでお伺いしたいのは、今日今のこの放送法のもとで、何か言論制約されているようなことが多少ともおありかどうか。現状を先にお伺いしたいと思います。
  45. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 幸いにしてただいままでのところは、さようなことはございません。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 私ども聞いているところでは、直接、間接的にも指示命令による言論制約は受けていないように承つておりますが、時の政党のウエートの関係から、力の強い政党からの番組その他に対する好ましくないといつたような意向が伝達されますと、それによつて多少の編成上の考慮を大きく協会か払うというようなことが現実にあるように、私どもには考えられるわけなんですが、そういうこともございませんか。
  47. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 さようなことは私は受けていないと思います。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 現在はないとおつしやいますが、そこでこの四十九条に関していろいろ今後の参考に供したいためにお伺いしたいのですが、占領中におきまして占領軍から、あるいは占領軍の意図を受けた政府からの何らかの制約が必ずあつたと思うのですが、当時の言論に対する制約の度合いとそのルートをお伺いしたいと思います。
  49. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 占領治下におきましては、進駐軍といいますか、スキヤツプと申しますか、それが必ず指導するという立場にございました。またスキヤリプのメモランダムというものが出まして、いろいろこれを放送してはいけないという箇条がございました。そういうことで、進駐軍のスキヤツプの放送監督者の側に立つた人から、示唆という形あるいは忠告という形でいろいろの申入れがありました。しかしそれらは示唆であり忠告であるので、こちらがそれはいけないと思う場合には拒否すべきものでありまして、それで拒否したものもございます。またその通りに受入れてやつたのもございます。それは占領下の特殊情勢でありまして、示唆といつても忠告と申しましても、普通の人の場合の示唆や忠告よりは強い力を持つていると感じましたけれども編集権の自由独立はあくまでこちらにあるのでありまして、一旦そういう番組放送いたしました以上は、それは日本放送協会責任においてやつたことでございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 指導あるいは示唆、こういうものを占領軍から受けたわけですが、その間に政府が多少これの取次をしたり、あるいはいい意味にしても悪い意味にしても、何かこれの介在をしたようなことがありましたか。
  51. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 そういうことはございませんでした。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでもう一つさかのぼつてお伺いしたいのですが、戦争中は御承知の情報局がございました。もちろん当時情報局から相当の制約はあつたわけでありますが、その当時の制約の状態をひとつ参考にお聞かせ願いたいと思います。簡単でけつこうですから……。
  53. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 はなはだ遺憾に思いますことは、私は終戦後の改組された放送協会、つまり情報局のそういう干渉から日本放送協会をはずして、そしてほんとうに国民の輿論を反映する放送協会をつくらなければならないという進駐軍の方針に沿つて発足した当時からの関係でございまして、ただいま私の記憶の中に情報局時代のことは存じないものですから、その点不満足なお答えしかできませんことを御了承願いたいと思います。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 第二点としてお伺いしたいのは、現在の理事監事を三人以上七人以下、あるいは三人以下というふうに増加することが、この改正案に出て参つたわけで拠りますが、そのことに対する御意見として、業務の拡大発展して行く途上においては、現在の理事監事では確かに手不足を生じておる、今こういうような御説明があつた。そこで今理事の担当している分野、監事のやつております仕事、こういうもので一体どういうところが現実に手不足を来しているのか、業務の分担があると思うのでありますが、これだけの数にふやさなければ実際に手不足があつて困るという、簡単でけつこうですから、理事監事にわけて御説明を願いたいと思います。
  55. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 ただいま理事がわずか三名でございます。しかしこれを増員して七名以内ということであれば、非常に当を得た増員であろうと私は考えております。七名以内と申しますから、必ずしも七名まで必要であるかどうか、それは検討を要すると思いますけれども、現在の五名ではどうしてもやつて行けない。それは従来は番組の面と技術の面と、それから業務サービス面、受信者に対する面、こういつたように大きく三つにわけておりました。従つて五名の理事がその一つずつを分担するという形になつて参つたのでありますけれども、当時に比べて放送協会の機構は格段の拡充をいたしました。また新しくテレビジヨンがことしの二月から始まつておりまして、このテレビジヨン一つだけでも非常に大きな問題で、今後これと取組んで経営執行の任に当つて行かなければならぬ。また昨年の二月から国際放送というものを国家の委託によつてつております。これまた諸外国の例から見ましても、非常に重大なものでございますから、この国際放送だけでも単独に一人の理事がいるべきじやないかといつた考え方、以上は中央ばかりのものでございますけれども全国にたくさんの放送局を持つております。中央局だけでも七つ持つておりまして、昔社団法人時代は、中央局の局長は入な理事であつたのでございますが、今日は職員になつております。しかるに新しい放送法によりまして、商業放送全国にできて参りました。簡単に一つの例をとりますと、大阪の場合でも、大阪に商業放送局とNHK放送局があります場合に、その局長たる人は、対商業放送関係も行わなければならぬ、あるいは業務番組技術、そういうような全体の点から言いましても、どうしても役員であることが望ましいという形にだんだんなつて参呈す。これはただ例として申したのでありまして、決して大阪中央局長だけを理事にしなければならぬという意味ではございませんが、全国的ににらみますと、地方局の方を扱う人たちも役員の中にいてほんとうの経営執行の責任者であることが望ましい、最小限度考えてこの程度ならばいいのであろう、業務執行の役員でありますから、ただ必要があるからといつて人数ばかり多くなつてもまずいのでありまして、七名以内ということであればよろしいと思います。それから監事についても同じことが言えるのでありまして、今日会計検査院の検査を受けております。また全国受信者から入るところの受信料といつたものの使い方、さらにお金の面ばかりではなくて、業務運営の面におきましても、以上に申し上げましたように、業務の大きな拡張に沿つてこれを監査するということが非常に必要だと思います。先般も原さんから御指摘がございましたけれども業務監査ということを積極的にやつてつて、単に間違いがないばかりでなくて、ほんとうに積極的にサービスをよくして行てようにするためには、監事がもう一名あるということは決して多過ぎない、その人にしてもらいたい、そうして能率を上げて行きたいというように考えております。
  56. 原茂

    ○原(茂)委員 今の御説明の中にもありましたが、七名以内とあるけれども、七名まで全部を必要としないというようなお考えがちらつと漏れたのでありますが、これは将来に対してある程度のゆとりを見たために、三人以上七名ということをうたつたと思うのです。そこで今会長とされては、真剣にいろいろな業務その他の面から、理事の手不足はここにあるということをお考えになつていることがありくとわかつたわけでありますが、その点から言いまして、現段階では三名以上七名以内と言わないで、何名で理事が足りるかというくらいのお考えは当然あることと思いますので、その点を率直にお伺いしたい。
  57. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。私は七名までは必要でないという考えを持つておりません。七名以内、七名までと心うことならば多過ぎない数であろう。それから現在法律建前で、三名で一生懸命でやりくりして行つておる段階でございますから、七名の理事を置くことが許されます場合に、その方が一番能率的であるという結論に達したら、必ずしも七名足らず、たとえば六名まで理事にするということはしない考えでございます。ただいまはまだこの改正案が成立しておりませんので、私成案を持つておりませんから、できるだけ理事の数は必要な最少数にあつた方がよい。しかし七名まではほんとうに必要な数であり、また運営するのにも適当な数である、かように考えている段階であります。
  58. 甲斐政治

    ○甲斐委員 いろいろお伺いしたいこともあるのでございますが、お急ぎのようですから、基本的な問題についてのお考え方を一、二伺つておきたいと思います。今回は放送法の一部改正ということでありますけれども、これは放送法全般から切り離しては考えられない問題であつて、なおまた放送法のみならず、関連する各法規並びに日本の電波全般にわたつて影響する問題であり、それらについての基本的な考え方から一部改正考え方が出て来なければなりません。こういう意味でお伺いを申し上げたいと思います。  放送法の第一条に「放送国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。」かようにうたつてあるのでございますが、国民に最大限に普及されるという意味は、現実に会長として放送事業をおやりになつておりますが、その立場からこれを放送協会事業だけで国民に最大限に普及しなければならないのだ、かように考えておやりになつているのかどうか、並びに民間放送も出現していることでありますから、民間放送とともに長短相補い、相まつて国民に最大限に利用せしむるように規定されている、かように解しておられるかどうか、その点をお伺いいたします。
  59. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答え申し上げます。私たちは、この放送法は一方において公共企業体としての日本放送協会、他方において一般放送事業という商業的利益を追求するところの放送事業体、両々相まつて日本の放送事業をするように規定してあるものと思つております。しかしながら、その性質は御承知通り違いますから、それぞれ違う性質を発揮して行かなければならぬ。商業放送の場合には商業利益を追求いたしますから、どうしても都市偏重になるということは当然でございます。それが商業放送の一つの性格でございます。他方放送協会の場合は、かかる商業利益を追求しない、広告放送をしてはいけないということになつておりますから、どうしても民間放送放送事業のできないような地方にまで、われわれは放送を行うように努力しなければならない、かように考えます。そうしてそのすべてで国民に最大限に普及させて、その効用をもたらすことを保障することになるだろうと思いますが、全国普及といつたようなことは、主として放送協会に課せられたことであつて、これを商業放送に課するということは、性格上適当でないというふうに考えております。
  60. 甲斐政治

    ○甲斐委員 国民に最大限に普及させるということは、放送協会と一般放送と両々相まつてやるべきものだというお考え方だと承ります。われわれも同感なんでありますが、ただいま御説明の、その経営形態の相違が、一般放送は主として都市でやる、NHK経営形態の当然の結果として、またその使命として、民間放送があまり手を出すことのできないいなかの方にも力を注ぐのだ、かように御説明なつたわけでありますが、その点につきましては、私どもも都市中心であることが決して放送協会使命ではなくして、むしろいなかの方に力を加うべきものである、かように感じております。この点についてはどう考えておられますか。
  61. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答えいたします。放送事業というものの性質から、どうしても全国的でなければならないと思います。たとえば東京という、日本の全国的な一つの代表的な主要な都市、これを度外視しては放送はあり得ない。しかも津々浦々の、辺鄙な地方に対しては、中央の放送を送つてこそ初めてそこで放送を聞く意味が成り立つのでありまして、もちろん辺鄙な地方における、商業放送の及ばないいなかに対する放送事業発展に努力はいたしますけれども、そのことは決して都市を軽んずるということではなくて、むしろ大都市に放送材の中心がございますから、必然に大都市において盛んに放送が行われ、かつそれが地方にまで及んで行く、そうして中央も地方もひとしく文化の恩恵に浴するというようなものであろうかと考えております。
  62. 甲斐政治

    ○甲斐委員 次に、よく問題になりますが、公共性の問題であります。この点については会長として、公共性はもつぱら放送協会に課せられた性格である、こうお考えになるか、あるいは第一条の普及の点において、一般放送と相まつてこの公共使命を果すというお考えであるか、この点についてお伺いいたします。
  63. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 公共性の点でございますが、放送ということは公共性を持つたものでございます。その同じ公共性を持つた放送事業の中で、この放送法の中に規定してありますところの日本放送協会は、非常に強い公共性のもとに立たされており、それに対して一般放送事業者の場合は、日本放送協会ほどの強い公共性を要求されていないという点でございます。それから内容自身について同じではないかとおつしやいます。それは番組そのものには同じことがあり得ますけれども、ただ目的が、今申し上げましたように公共目的の度合いが多少違うのではないか、かように考えております。
  64. 甲斐政治

    ○甲斐委員 放送の中心が番組である、また番組放送事業の生命であるということは、先ほど会長が繰返しておつしやつているのでありますが、放送事業の生命である番組の面においては、一般放送日本放送協会との間に相違なし、かようにお考えになりますか、お伺いいたします。
  65. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 お答えいたします。私は本質的にはさようには考えません。ただ表面的に、ある一つの番組とある一つの番組NHK番組商業放送番組が同じ種類であり得るということを申し上げました。しかしここに本質的な違いがあります。それはNHKが組みます番組は、究極の目的を、先ほど来言つております国民に直結して、国民福祉をはかるために組むということでございます。番組内容そのものが、そういう目的を持つた番組でございます。しかるに一般商業放送の場合は、個々にスポンサーがおられまして、たとえば紅の広告あるいはおしろいの広告を放送によつてしたいという場合、その紅の広告、おしろいの広告をするために番組が組まれておるわけでございます。つまり広告主は自分の商品をたくさん売つて、一層利益を上げるために組まれる番組でございます。なおもちろん商業放送の場合にも自主番組というのがございまして、いわゆる広告を含まない番組がございますけれども、やはりそれも広告料によつてまかなわれている番組である、そういう点においていささか違う点があろうかと思います。
  66. 甲斐政治

    ○甲斐委員 第一条において「公共福祉に適合する」云々並びに国民に最大限に普及せらるべきものであるということ、これは日本放送協会事業のみならず、一般放送にも当てはまるものだ、かように冒頭の私の質問に対してお答えがありましたのですが、それとただいまのお答えとは少し矛盾するように考えますが、いかがでしようか。
  67. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 私自身においては、矛盾すると思つておりません。この法律によつて広告を営むことができて、しかもその商業放送運営の資本が広告料によつてまかなわれている以上は、広告主がやはりその提供したい番組放送法の第一条に合うことを念願するということは、根本条件であろうと思いますから、表面の形において相似たものがあるわけでございます。しかしその企業の目的が違う点は、やはりいなめないと思う、こう申し上げたのであります。
  68. 甲斐政治

    ○甲斐委員 放送の生命があくまで番組にある。しかしてその番組においては、両者相違がないはずである。先ほどからお話がありますように、両者の相違というのは、要するにそれは経営形態の相違である、かように解さなければならぬと私ども考えておるわけでありますが、繰返してその点についての御意見を承りたいと思います。
  69. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 私どもはもちろん放送公共性、また第一条に掲げてある目的を否定するものではございませんけれども、その目的を追求する手段、企業形態あるいは放送に現われた番組の質の点において、同じ目的を達成しつつも、そこに必然の差があることはいなめないと思つております。それからやはり商業放送の場合に、放送を営む資本が主として広告主に依存しているということであろうかと思います。その点を申し上げたのでございまして、日本放送協会商業放送協会も、「放送公共福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的」止しているということを私は疑わないものでございます。
  70. 甲斐政治

    ○甲斐委員 ただいまのお答えでわかりましたが、この問題については、私どもといたしましては、一般放送日本放送協会放送との両者が相協力して、わが国の電波を合理的に効率的に活用せられることを特に希望するものてございますので、この点については特に会長に、そういう意味のことをお考えの中に入れていただきたいということを希望いたします。  それから次に、ここに提出されておりまする一部改正法律案のうちの監督命令権に関して、いろいろ質疑応答がかわされたのでありますが、この点につきまして、会長としては最小限度監督命令にとどめてもらいたい、かようなお考えと聞いております。私どもといたしましては、言論の自由はあくまで守らなければならないと思います。その立場から言論の自由が侵されるようなおそれあるものに対しては、断固として闘うつもりでございます。しかしながらこの放送協会はきわめて手厚い国家の保護、特典を与えられておりますので、ある程度国家監督命令は必要ではないか、これは一般がさように考えております。そこで会長のおつしやるところの、最小限度にとどめてもらいたいというのは、具体的にどの程度であるかということが伺えたら幸いだと思います。
  71. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 ただいままで、この放送法によつていろいろの義務を負わされております。決して手厚いもてなしを受けておるのでなしに、現に商業放送の場合は、わずかに法律二、三条にとどまるに対して、放送協会に対しては、その残りの全部が放送協会規定しておるのでございまして、放送協会予算も決算も、また事業運営につきましても、すべて国会の御審議をいただき、またそれによつて運営して行く。その他監督官庁である郵政省のいろいろの監督もございます。すでにいたしまして、それは円満に行われていると思うのでございます。たとえば国会において御審議になることは、私どもありがたいと思つております。かようなわけで、そういうものがすべて商業放送にはないのでございます。でありまするから、現在の程度にとどめていただきたいということを申しておるのであります。
  72. 甲斐政治

    ○甲斐委員 結論は現在の程度でとどめておくということであつて、この改正案には、この点については反対だ、かような意味でありますか。
  73. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 最初の原案の監督命令のところでは、非常に強化されることをおそれまして、包括的に監督命令が出されるということであれば、非常に困りますということを申したのであります。
  74. 齋藤憲三

    齋藤委員 議事進行について委員長にお願いしたいと思いますが、電波という本質的な観念から申しますると、これは現在の人類社会におきましても、また国際間におきましても、最も重要視すべき問題でありまして、今回ここに提案せられました放送法の一部改正法律案の中の条項を見て参りますると、これはなかなか端的に決定いたしかねる、さような感じに打たれるのであります。特にNHKに関しましては、これは委員会が開催せられるごとに、各方面から非常にたくさんの質問が集中されることであろうと思うのであります。またそうでなければならぬと思うのであります。ことに国際的に影響のないように放送いたしましても、電波でございまするから、これは全部国際的に影響をもたらす。それで今回のように郵政大臣命令その他の問題が根本的な問題としてここに提出されておる、こういう点から考えますと、当該委員といたしましても、国家的に考え、あるいは民族的に考え、日本の再建のすべてに関連性を持つ重大問題だと思うのでありますので、本質的なことでもありますから、かような小刻みな改正法律案提出されるよりも、もつと現在の世界情勢に即応するような根本的な改正法律案を出すべきであると私は考えております。しかし一旦提出されましたこの改正法律案を審議しないわけに行かないのでありますから、これには全力を傾注する覚悟でおります。従つてNHK会長におかれましても、時間を端折るとか、そういうことは今後なさらないで、この審議継続の期間は、NHKのために全力をこの委員会に傾注せられまして、常に御出席を賜わりまして、この審議がなるべくすみやかに行われるように、ひとつ委員長を通じてお願いをいたしたいと思うのであります。
  75. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質問はございませんか。——それでは私から甲斐君の質問に関連いたしまして一言お尋ねしたいのですが、ただいま甲斐委員の方から、郵政大臣監督命令というものは最小限度にとどむべきだという古垣さんの御意見は、現行法で必要にしてかつ十分だ、こういう意味かという御質問があつたと思うのですが、御答弁で、そのようにも解釈されるようなお話もあつたようですが、またさらに抽象的でなければいい、四十九条の二とか四十九条の三のように抽象的な規定でなければいいのだという御答弁であつたようにも解釈されますが、非常に重大な問題ですから、念のためにお尋ねしたいのですが、古垣さんの言われる最小限度監督命令というのは、ただいまの四十九条の二、四十九条の三にはもちろん反対だ。さらに第三条の番組編成の自由に対して但書をつけることも、間接的に圧迫を加えるから反対だ。こういう御趣旨のもとに現行法で必要にしてかつ十分だ。これ以上の監督命令は、たとい具体的に書いても適当でない。現在のところそうお考えになつておる、こういうふうに解釈してよろしゆうございましようか。
  76. 古垣鉄郎

    ○古垣参考人 委員長から非常に敷衍していただきましたけれども、私が申し上げましたことは、この新しい改正法律案にあります監督命令番組には及ばないというような但書では、やはり直接、間接番組に対しての制約が起り得る場合が予想される。そこでそれでは不満足に存じますということを申し上げたのであります。また必要な監督命令というのは、これは当然でございますから、かかる監督命令は必要の最小限度にしていただきたい。現在すでにいろいろ監督を受けおります。また命令を受ける規定がいろいろございますから、できるならば現状で十分ではないか、しかし将来、いろいろな事業発展して参つております。国際放送もいたしておりますし、またテレビジヨンも始まつております。今までやつて来ております事業にいたしましても、以前とは格段の拡大、発展をしておりますから、今まで必要でなかつたものが今日は必要になることがあり得ると思います。そういうものについて、常に必要の最小限度にしていただきたいというわけでございまして、それは現行法各各以外に、協会命令すべき事項がありますならば、現行法のように具体的に列記していただきたい、かように申し上げた次第であります。
  77. 成田知巳

    成田委員長 ほかにございませんか——。次は高橋信三君にお願いします。
  78. 高橋信三

    ○高橋参考人 私、高橋でございます。放送連盟を代表いたしまして、意見を申し述べたいと存じます。念のために申し上げますが、放送連盟と申しますものは、民間放送事業者が全部加盟しておる団体でございまして、民間放送事業者の共通の利益、あるいは共同の仕事という面において一致しておるのでありまして、今回の私の考え方も、放送連盟の代表といたしまして、民間放送事業者の共通的な意見というようにおとり願いたいと思うのであります。  今回の放送法の一部を改正する法律案に対しましての私の見解を述べるわけでありますが、これにつきまして、問題はまずこういう法律の一部改正というものが、なぜ出されたのかという点に最初の問題があるのでありまして、こういう一部の改正をしなければならない理由につきまして、われわれ十分な説明を与えられておりませんがゆえに、いかなる理由のもとにこういう一部の改正が突如提案されたのかということがわからないのであります。従いましてこの点については、私は単にこの条文を読みまして、内容を検討することになるわけでありますが、その前にこういう一部の改正というような、改正の仕方そのものにつきましては反対なのでありまして、放送法の一部を改正しなければならない理由がどこに翻るかわかりませんが、明らかに現行法が完全でないがゆえに、一部を改正しなければならないということを裏書きしておるのではないか、これがたまたま今回の改正案だけでありますなれば、あるいは納得できるのであり言すが、前回の国会におきましては、法律ではありませんが、法律の施行細則的な放送局開設の根本基準の一部の改正がなされたのであります。これも必要に応じた一部の改正でありまして、当時の必要と申しますものは、たまたまNHKのある局を存置しなければたらない必要に迫られて改正案が出されたのであります。今回またこの内容の一部を伺いますのに、NHK理事増員という必要に迫られて出されたのではないかと思われる節もあるのであります。こういう意味におきまして、郵政省側は法律をちびちび改正されようとしておるのでありますが、このこと自体が、現行法そのものがいかに現実にそぐわないかということの証拠ではないかと考えます。ゆえに一部を改正するというようなけちな考え方はこの際捨てられまして、根本改正という問題を考えられまして、根本改正の中に今回の改正案を盛られることが、最も妥当ではないかと考える次第でありまして、この意味からは今回の放送法の一部を改正するということ自体に反対なのであります。しかしながら現実に一部の改正案提案せられておりまして、この内容についての意見を述べなければならない段階でありますがゆえに、一応意見を述べますが、誤解のないように、一部の改正には反対であるということを念のために申し添えておきたいと思うのであります。  今回の改正案につきまして逐条的におもな点を申し上げてみますならば、まず「放送進歩発達に必要な研究を委託すること。」「放送進歩発達に寄与する研究その他の業務助成すること。」これはNHK業務拡充に関する条項でありますが、この点につきまして、は一応異議はないのでありますが、現実の運用いかんにつきましては、放送界全般に非常に大きな影響がある。どういう点かと申しますれば、この改正案の第九条に八と九とを加えることによりまして、NHKが——かりにでありますが、おそらくそういうことはないと思うのでありますが、芸能人を専属しようと思えばできるのであります。多くの芸能人をNHKが専属にいたしまして、民間放送側には出さないというようなことも、場合によつてはできるという危険が含まれておるという点におきまして、第九条の八、九については、これこそ郵政大臣が十分なる監督をされる必要があるのではないかと考える次第であります。  また第九条の6の「協会は、放送進歩発達に必要な研究の成果を公表しなければならない。」これはわれわれにとりましても非常にけつこうなことでありまして、日進月歩の電波関係技術的な面、あるいはそのほかの調査資料につきまして、われわれ生れたばかりの民間放送事業者の手によつては、とうてい調査し得ない研究があるのでありまして、日本放送協会は二十有年の歴史を持たれまして、こういう研究をされておるのでありまして、そういう研究の成果を一般の放送事業者に利用させ得る道を与えるという意味においては、この第九条の6は賛成でありますが、できればこれは一歩前進させまして、現在の放送協会研究機関を、国家独立機関にされてはどうかという考え方を持つておるということを申し上げたいと思うのであります。  第十六条はいわゆる経営委員住居主義の廃止でありまして、現在の経営委員というものが住居主義にのつとつておるがゆえに、適正なる委員任命ができないということによつて、今回改正せられたのではないかと思うのであります。郵政省が出されました改正する法律案の要綱の内容の第一の中に協会経営委員任命の適正をはかるという一句があるのでありまして、この言葉から推察いたしますれば、現在の経営委員任命は適正でないという解釈が成り立つのであります。現在の経営委員任命の仕方が適正でないがゆえに新たにさらに適正をはかることによつて従来の足りなかつた点を補う、この点は賛成なんでありますが、せつかくここまで郵政省として意をいたされますならば、かりにこの法律が通つた場合には、現在の経営委員をただちに改選されるのが妥当ではないかと考えるのであります。ところがこの法律の附則には「この法律の施行の際現に経営委員会委員である者は、」云々とありまして、改選される意図がないようにうかがわれますが、この点においてはこの附則の第三項を削除されまして、第十六条の第二項を削ることによつて経営委員の選任の仕方をかえられますれば、ただちに新しい選任の方式によつて経営委員を改選されることが望ましいということを申し上げたいと思うのであります。  第二十四条の日本放送協会理事及び監事の件でありますが、はたして現在の理事の数が少な過ぎるのか、あるいは七人以下が妥当であるのかということにつきましては、われわれNHK内容を十分に知りませんがゆえに、これに対しましては十分なる意見が申し上げられないのでありますが、これは一言で申せば、その必要があればこの二十四条の理事増員の件については、必ずしも反対でないということを申し上げたいと思うのであります。  第四十九条の先ほどから問題になつております監督の問題であります。協会は、郵政大臣がこの法律の定めるところによつて監督するというこの四十九条の二につきましては、これはある意味においては賛成なんであります。日本放送協会という特別の目的のもとに成立しております協会、しかもそれが国家の保護を受ける特権を認められております協会といたしましては、ある監督が必要であるということは首肯できる。たとえば官立の大学は、私立の大学以上の監督をある場合には受けなければならない。一般と同様ではないという意味においては、四十九条の二の「協会は、郵政大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。」という面は賛成でありますが、実際の監督の仕方については、これはいろいろの問題があると思うのでありまして、四十九条の三にあります「郵政大臣は、公共福祉増進するため特に必要があると認めるときは、協会に対し監督上必要な命令をすることができる。」という面が問題ではないか。すなわち「特に必要があると認めるときは、」という字句が問題になる可能性があるのでありまして、これは法律の文章でありますがゆえに、やむを得ないといわれるならばいたしかたないのでありますが、「特に必要があると認めるときは、」というような抽象的な字句が法律に盛られることによつて、現在の郵政省考え方がはたしてどこまで続くかという点にも問題があるのでありまして、こういう意味においては、かりに四十九条の三のような条文が必要とされますなれば、列挙的にこういう場合、あるいはこういう場合には監督上必要な命令を出すのだというような表現にされることの方が好ましくないか。列挙的に具体的な例をあげられますことによつて先ほどから問題になつております番組編成に対する干渉というものが排除されますでありましようし、そういう安心感が与えられると思うのでありまして、われわれの立場におきましても、郵政大臣があるいは国家が、番組編成の問題にまで干渉することにつきましては、先ほどから皆さん方がおつしやつておりますごとく言論の自由という意味においては反対なんでありますがゆえに、四十九条の三につきましては、こういう場合にはこういう命令を出すのだというように明確にされる必要があるのではないか。四十九条の三の二項の「郵政大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、協会からその業務に関する報告を徴することができる。」という条項でありますが、これにつきましても、実は従来こういう問題に対して国家がどういう監督の仕方をされておつたかということが疑問なんでありますが、突如今回の改正案にこういう条項を入れなければならない理由がどこにあるかということが明確でありませんがゆえに、われわれ従来の例がわかりませんが、業務上の監督というものは、NHKという特殊の性格を持ちました団体に対しましては、当然行わるべきごとではないか。われわれ国民としましても、現在のNHK予算をどういうように使つておるか、あるいは経営方式がはたして合理的に行われておるのかどうか知り得る機会がないのでありまして、もちろん国会予算、決算委員会を通じて、そういう監督をされておるとは思いますが、さらに適切な監督をされて、聴取者に安心感を与えられる意味においては、業務上の監督は必要であろうと考えますがゆえに、この二項については賛成であります。  そのほかの条項は、特に取上げて申し上ぐべきほどの問題はないと思うのですが、先ほど申し上げましたごとく、現在のNHK経営委員には、法律上いろいろな重要な権限を持たしておるのですが、実際に経営委員会がどういう運営をされておるのかということが問題であると同時に、経営委員会がもつと積極的な活動をするなれば、必ずしも国家監督がなくとも、NHKのあり方というものが妥当の方向に行くと思うのですが、全般を通じて経営委員の積極的な活動並びに郵政大臣監督を必要とする理由、そういう理由の根本的な問題を尋ねて参りますれば、一体日本の放送協会というものは、何を目的に設立されておるのか、これは法律にはあまねく電波を国民に云々とありますが、そういう形の問題ではなくして、内容的な問題において、NHKというものは国家がいかなる要請のもとにこれを設立しておるのかという問題を、根本的に解決する必要があるのでありまして、その目的さえ明確になりますれば、言葉をかえれば、国家放送事業に対する政策が明確になりますれば、おのずから監督の問題も解決するのではないか。先ほど古垣会長は、公共性の問題に関連しまして、日本放送協会公共性は民間放送より高いというような意味のことを申し述べられておるのでありますが、この点はわれわれ納得できないのであります。かりに国家監督がより厳重であるがために、公共性が高いという意味でありますれば、逆の意味において、公共性を高くする意味においては、国家監督も必要だということを裏づけしておるとも理解できるのでありまして、はたして国家が何をどのように監督するかという問題になりますれば、NHKには一体いかなる目的のもとに、どういう仕事をさすべきかという点を明確にしなければならないのでありまして、この点について現在までのNHKのあり方は、はなはだ不明確であります。おそらく郵政大臣も、この点については確固たる信念を持つておられないのではないかと考えるのでありまして、この問題こそは現実に今急いで解決しなければならない問題であります。私の申し上げたい点は、NHKのあり方という根本問題をまず解決されまして、NHKはかくあらねばならないという国家の方針がきまつた後において、現在の放送法全般を改正され、その機会に今回必要として提出されておりますような、一部の法律改正を行われることが順序ではないかと思うのであります。こういう意味から、われわれは現行法の根本的改正が先決問題であるということを申し上げますと同時に、現在の放送法においては、先ほどから申しておりますNHKの設立目的の再検討、具体的には現在のNHKの第一放送並びに第二放送のあり方を明確にするという問題、また現在のNHK経営機構であります経営委員会権限並びに現実の活動についての再検討が先決問題でありまして、これに関連して、現在NHKが持つております研究機関独立の問題、あるいは聴取料—法律的には受信料になつております現在の聴取料が、はたしてああいう形において徴収されることが妥当であるかどうか。一般世間の聴取者は、あれは明らかに聴取料という観点において支払つておるのでありまして、聴取料でありますれば、NHKを聞かない場合は払わなくてよいというのが、一般の考え方であります。ところが法律は、NHKを聞かなくとも聞き得るような設備を持てば、受信料を払わなければならないというように要求がなされておるのであります。こういうような要求が、はたして一般聴取者の通念とマツチ、妥当な一致をしておるかどうかという点も、再検討を加える必要があるのであります。  こういう問題を推し進めて参りますれば、今回の改正案は、単なる一部の改正でありますが、非常に多くの問題を含んでおります。特に問題になります監督権のあり方、あるいは監督の仕方という問題を取上げてみましても、放送界全般の根本問題の解決が先でありますがゆえに、私といたしましては、この一部の改正は先に延ばされまして、根本問題の改正と同時にやられることが妥当ではないかと考える次第であります。以上をもちまして、一応私の考え方を申し述べた次第であります。
  79. 成田知巳

    成田委員長 高橋参考人はお忙しいようでございますので、この際質疑があれば許します。
  80. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 簡単にお尋ねいたします。修正案の内容については別に反対ではないようでありますが、根本問題について考えてもらいたい、こういうお話のようであります。根本問題についてお聞きしたいのでありますが、あの放送法というものは、御承知のように放送の原則と同時に、日本放送協会という一つの団体とを一緒にしてあの放送法ができた。こういうような法律のつくり方については私も疑問を持つておりまして、放送法というものを法律の構想の便法として、日本放送協会規定はこれを別個につくるということも一つの方法ではなかろうか、こう考えているのでありますが、これについてのお考えを一応……。
  81. 高橋信三

    ○高橋参考人 現在の放送法ができましたいきさつについての私のあさはかな見解でありますが、おそらく現在の放送法ができました当時は、現在の日本放送協会の改組という問題が非常に重要問題でありまして、日本放送協会を改組する目的のもとに現在の法律ができ、これにたまたま民間放送を開設さそうという道を加えたというような形になつて、でき上つておるのではないかと考えるのであります。この点先ほど甲斐委員から質問がありましたたとえば放送法の第一条の「放送国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障する」ということについては、これは民間放送を含めての法律でなければならないはずなのであります。ところがたまたま第二章以下、すなわち第七条以下すべて日本放送協会に関する条文になつておりまして、一般放送事業者の面については五十一条、五十二条、五十三条とわずか三条しかない。これはある意味におきましては、一般放送事業者というものには、自由奔放な活動をさしたい。法律によつてわくをこしらえたくないという、非常に進歩的な考え方から出ておると考えられるのでありますが、これもたまたまさきの国会速記録を読んでおりますとだれかが、この放送法を見れば、民間放送のことは三条しかないじやないか。日本放送協会のことは五十何条あるがゆえに、日本放送協会の方が公共性が高いのだというようなことを言われた。そういう誤解をされている人があるほどに、この法律はややこしいのでありまして、この点から、先ほど橋本委員の御質問に対しましての私の答えになるのでありますが、日本放送協会に対する法律だけは別個にされることが妥当ではないか。たとえば日本放送協会何とか法というような法律をつくりまして、放送一般に対する法律は別個にされた方が妥当ではないかと思うのでありますが、この放送法を見て参りますと、別個にするほどの条項がしからば幾つ残るかということになりますがゆえに、一歩これを前進させまして、現在の電波法と放送法を一本にされまして、放送全般の法律とされ、日本放送協会の分だけは別個の特別法にされたらどうかと考える次第であります。
  82. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 高橋さんのおつしやつたように、放送法をつくりました当時、政府当局におきましても、近く民間放送が開始せられるということについては予見を持つておりましたけれども、今日のように急速にこれだけ発展をするということは、われわれにおいても予測がつかなかつたのであります。しかし放送法の審議にあたりましては、そういうぐあいに将来発達の予見のつかない民間放送であるから、できるだけ条文によつて取締る。大体法律は取締法でありますから、取締るようなことをせずに、できるだけ自由に発展せしめて、その後においてこれらの問題についての取扱い方を考えたらよかろう、こういうような意見もあつたのであります。ところがそれができましてからただちに問題になつたのは、財産抵当法の問題と事業税の免除の問題であります。これは当時われわれも十分に審議ができなかつたために、財産抵当法、ことに放送事業者の抵当権の設定の問題が、十分に考慮されておらなかつた。これらが民間放送業者が発達されまして、そこでそういう金融問題にからんで来て、初めてこれらの問題が重大な問題として民間業者の方で取上げられて来た。われわれもそれを納得いたしまして、当委員会において、直接の委員会仕事ではありませんが、少くともその責任は当委員会にあります関係上、これを取上げて、法務委員会等に実情を話をしてあの改正を行つたようでありますが、そういう次第でありますから、実は当時はこれまで発達するかどうかということも十分に予見ができなかつたのと、実際どういうようなぐあいに経営され、運営されるか、金融される力が十分でなかつたために、きわめて不十分な点が多いのでありまするが、これらは一応他の法律もありますけれども、できますれば他の法律に見るように、これらの特殊の事業に対しては、その当該法律をもつて規定する、こういうことを考えてみたいと、将来は考えておるわけであります。なおいわゆる放送法におきましては、まことに法三章である。なるべく厳重に取締つたり、規定したりして、発達を阻害しない方がよかろうということも一つの理由でありますが、非常に法三章でありますが、現在のいろいろの情勢から考え、ことにテレビジヨンが行われる、こういう状況から見ると、放送法というものが独立して権威のあるものがあつてよろしいのではなかろうか。あるいはまたそれに関連しては、ただいま申しました抵当権の設定の問題、あるいは工場財団、あるいは事業税の問題、その他の問題が入つて参りますし、現在の民間放送事業というものは、電波行政の建前からは、なるほど郵政大臣がこれを監督する、こういう建前になつておりますが、放送法建前から行きますと、単にラジオ・コードの面においてのみ郵政大臣監督をする、こういうだけになつておるのであります。従つて放送事業それ自体に対する助成あるいは合理的なアドバイスとか、そういうようないい面におきましては、放送法はこれにタツチしておらない、こういう状況になつておるのでありまするが、将来そうしたものをあるいは電波法に包含するか、あるいは放送法で一本建にするかは将来の問題になりましようが、いずれにせよ、そういう場合において、一面において保護規定が設けられると同時に、一面において監督規定が設けられて、その放送事業に対する所管大臣が明確にせられる、こういうことに相なると思うのですが、そういう場合を予想して、いかにお考えになつておられますか。
  83. 高橋信三

    ○高橋参考人 今の問題は、日本の放送界——日本の現状において、すでに日本放送協会という特殊な放送事業者と、一般放送事業者といういわゆる自由奔放に活動させるものとの二本建ということは明確になつたのでありまして、この二本建のあり方いかんがどうきめられるかによつて、今橋本さんの言われました法律のつくり方というものが、明確になるのではないかと思うのでありまして、現実にはそのあり方の方を先にきめることの方が必要ではないか。今橋本委員が申されましたことく、事実この放送法が生れます当時は、民間放送というものがこれほど発達するとは考えられておらなかつたがために、日本国民に対する放送文化、あるいは放送文化を通じてする公共福祉増進ということについては、NHKに重要なるウエートがかけられておつたのでありますが、すでに民間放送というものがここまで発達いたしまして、今後の発達の可能性も十分に見きわめられる事態に立ち至つた現状においては、この現状を出発点とされして、今後の放送事業界のあり方というものを検討され、そのあり方がきまれば、おのずから法律のつくり方がきまるのではないかと考えるのでありまして、これは私がよく例にとるのでありますが、日本に国有鉄道と私鉄という二本建の鉄道のあり方があるのでありまして、もちろん私鉄というものは都会地においてのみ発達いたしまして、経営的に成り立たない面においては発達しないのでありますが、経営的に成り立たなくとも、国家的に必要な地方に対しましては、国有鉄道というものが犠牲を払いまして、これを敷設して行くというやり方をやつておるのでありまして、これと同様、放送界におきまして、日本放送協会民間放送のあり方というものは、今や国鉄と私鉄の関係ではないか、現在の民間放送のあり方をごらんになりましたならば、十分に日本の国民への寄与というものは成り立つのではないかと考えるのでありまして、これについて先ほど古垣会長は、民間放送は商業利益の追求を目的にしておるというような表現をされたのでありますが、これは非常な誤解を生みますがゆえに、一言訂正いたしたいのでありまして、民間放送といえども目的放送事業をやろう、放送というものを通じまして、国民公共福祉に寄与したい、目的はその面にあるのでございます。あたかも新聞というものが、新聞発行を目的にして成立しておるのと同様であります。たまたまその目的を遂行いたしますための財源を、いわゆる広告収入によつてまかなつておるにすぎないのでありまして、目的放送をやろうという点にありまして、財源の方はその目出に沿うための方法なんであります。ところが古垣会長言葉をそのままにしておきますと、あたかも利益追求のために放送会社が設立されたというような誤解を生みますがゆえに、これも一言申し添えておきたいと思うのであります。と同時に先ほどスポンサーの番組は、公共性が低いようなことを言われたのでありますが、この点にも一つの誤解があるのでありまして、スポンサーはなるほど番組につきまして注文をするでありましようし、先ほどの例で申せば、おしろいや口紅の広告的なスポツト・アナウンス、いわゆる商業アナウンスも入れるでありましようが、これは必ずしも番組内容について、強硬に主張するわけではなく、たまたまわれわれが持つおります番組に対しまして、提供者となることによつて、三十秒なり一分間のスポツト・アナウンスを入れる、これが目的であります。この意味においては、放送内容NHK放送内容とかわらないのでありまして、ただ民間放送には放送内容の外側に、絵で申せば額ぶちがついておる。その額ぶちのどこかに、この絵の所有者はだれだ、提供者はだれだということがうたわれておるにすぎないのでありまして、スポンサーの要求にわれわれが応じます意味は、その額ぶちの外側の面でありまして、内容については、われわれ十分なる自戒と自律を持ちまして、NHKと同様の公共性を持続しておる、維持しておると考える次第であります。これを具体的に申しますならば、あるいはあるオーケストラのシンフオニー音楽にスポンサーがついたという場合に、音楽の内容にまでは全然タツチしないのでありまして、その外側の額ぶちの面において、スポンサーの言いたいことを言わすにすぎない、この点も誤解があるのであります。この誤解を解きまして、現在の民間放送公共性をもしも認識されますならば、その新しい認識のもとに、民間放送はかくかくの道をたどつて発達さすべきだ、日本放送協会はこういうあり方によつて民間放送を助けるべきだ、もちろん両々相まちまして、日本の放送界に貢献すべき役目を持つておるのでありまして、たとえばでありますが、日本放送協会放送内容というものは、これは経営委員番組の基本方針をきめるのであります。非常に国家の最高文化の水準を目標にして、番組を組む、聴取率が低くとも、文化の最高を行くようなものを組む。民間放送の場合においては娯楽面を、ややNHK以上に娯楽放送に力を加えるというあり方によりまして、おのずからその分野はきまると思うのであります。その分野のきめ方は、国会皆様方なり、あるいはそのほかの権威者が今後まずこれをきめられまして、これがきまればそれを法律に盛りますがゆえに、そのきめ方いかんによつて法律内容がかわつて来るのでありまして、これは橋本委員の御質問には直接のお答えにならないかと思うのでありますが、私はまず放送界のあり方をきめまして、それさえきまれば、法律内容はおのずから規定されて行くということをもつて、お答えにかえたいと思う次第であります。
  84. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 これはこの法律に直接関係がありませんが、いい機会でありますから、簡単にお聞きしたいと思います。われわれは事業税免除ついて努力して、これを決定したのですが、民間放送連盟としては、商業番組の時間に対してある程度の制限を加えておるか、もしくは自粛してやつておられるか。もう一つは配当制限等についても、何らかの考慮をしておられるかどうか、その点をお聞きしたい。
  85. 高橋信三

    ○高橋参考人 これは私の会社なので、よその会社のことまで申し上げるのはどうかと思いますので、申し上げないのですが、商業番組の制限という問題は、実はわれわれも考えておるのであります。たまたまその前例がアメリカの例をもつてわれわれ考えて参つたのでありますが、アメリカにおける実情というものは、現在の日本の実情とやや違うのであります。と申しますのは、アメリカにおいては、日本放送協会のような特殊な国家の要請によつて成り立つておる放送協会がなくして、すべてが民間放送なのであります。しかもその民間放送がある意味において弊害を生ずるほどのところまで行つた。どういう点において弊害が生じたかと申しますと、番組の決定権が放送会社自体になくなつてしまつて、代理店あるいは広告主に移つた、この危険はわれわれ事前から知つておりましたがゆえに、われわれが民間放送をやりますについては、番組の最終決定権は放送事業者にあるのだ、スポンサーがいかに金を持ち、いかなる要求をなそうとも、番組編集方針に沿わない場合には、これを拒否しようという態度をもつて、われわれは来ておるのであります。従いましてアメリカのように、放送会社が単なる設備会社になつて放送内容は、スポンサーなり、そのスポンサーを代行するところの代理店がきめるというような弊害が出ないように、われわれは今後努力することによりまして、これを防ぎたい。また幸いにいたしまして、日本においては商業主義と申しますか、アメリカほどの商業主義がありませんがゆえに、スポンサーといえども、代理店といえども、われわれの言い分は十分に納得してくれるのであります。この点においてまず第一の安全性がある。しかもわれわれは番組の編成について、いわゆる自主番組と商業番組との比率をきめる。——どこにきめることが妥当であるかということにつきましては、たとえばわれわれは一日現在十七時間放送しておるのでありますが、現実の商業番組内容は九時間半ないし十時間であります。これを十時間にとめるか、あるいは十一時間にとめるかについては、われわれは十分な資料を持つておりませんが、ただ私として言い得ることは、スポンサーのついた番組だから内容が低俗になるという一般にいわれておりますような懸念は決してない。たとえば今日まで自主番組であつたのが、たまたま来月からスポンサーがついたという場合においても、内容は同じものなのであります。従いまして、自主番組であるがゆえに内容が高級である、スポンサーかついたゆえに低俗になつたという考え方の判定は、しにくいのではないか。しかしながらなおこの点についても、一般の世間の人の誤解もありますがゆえに、われわれは一日十七時間の全部をスポンサーに売ろうという気持は持つておらないのであります。私の会社自体の内容から申しますならば、ある事業ごとに採算が成り立つ線——これが十時間であるか十一時間であるか、まだ決定いたしておりませんが、その線においてそれを押えたい。  もう一つは配当の問題でありますが、配当については公共事業の例にならいまして、あるいは現実に公共事業でありますところの電力会社なり、あるいは電電会社がどういうことをしておりますかは直接存じませんが、私の考えといたしましては、公共事業の配当というものは、その時勢の一般金利に二分くらいを増したところをもつて限度にすべきではないか、あるいはその時勢において国家が出しております公債の利子に二分を増したくらいのところをもつて限度にすべきではないか。それ以上の利益があれば、これを番組内容の向上とか、設備の改善に充てるべきではないかという考え方を持つております。
  86. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 補足してお伺いしておきます。われわれの方の事業税免除に関する考え方を申し上げておきますが、これは当時民間放送連盟からの陳情がありまして、放送時間のうち三分の二程度でしたか、この程度は収入のある番組の編成である、その他はニユースを初めとして収入のない番組国民公共的利益のために提供しておるのだ、こういうことか十分なる理由となつて事業税免除の方法がとられたのであります。従つて番組自体が高級である、あるいは高級でないということは、事業税免除の上においては問題ではないのですが、要するに一般放送事業者が自制して、これだけの番組を提供しておるのだ、この面においては収入を得ているが、この面においては無料奉仕をして、しかも国民公共の利益に合致せしむるように活動しているのだ、従つて新聞同様に事業税の免除を行うべきだということが根拠になつておるのであります。この点については、お話ではある程度限度考えておられたようでありますから、それでけつこうでありますが、この点は民間放送連盟に明確な考え方を持つていただくと、将来国会において事業税免除の問題が審議せられる場合においての、一つの材料になろうと思うのですが、当時民間放送連盟の方の御意向は、今申し上げたような理由でやつておるのであるということから、事業税免除の方針をとつたのであります。大体の方針としてはとつておられるようでありますが、なおその点について将来の企画について言及あらんことをお願いいたします。
  87. 高橋信三

    ○高橋参考人 事業税免除の問題については、非常に御協力、御援助願つたことを、この機会に御礼申し上げます。商業番組が三分の二ということは、当時われわれ民間放送連盟の理事会あるいは総会において、懇談的に、これを基準にすべきではないか、三分の二以上スポンサーをつけることは、われわれの立場としては遠慮すべきではないかというような話合いはあつたのであります。これを成文化しておりませんが、現実に三分の二以上売つておる民間放送事業者はないのでありますから、かりに三分の二以上も売らなければならないような、あるいは売るという意思を持つたような放送事業者が出ました場合には、われわれの立場において、監督と申しますか、一応話合いをするという気持は十分持つております。この点御了承願いたいと思います。
  88. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 高橋さんにちよつとお伺いします。民間放送といえども営利を目的とした企業ではない、つまり民間放送は営利を追求するものではないのだということが前提でありますが、そうなりますと、あなたのおつしやる目的も、放送協会が行う目的も、両者とも一体であるのであります。そこでお話にもあるように、NHKの今のあり方を改組して、NHKも普通の民間放送と同じ広告放送をさせることにして、料金をとらないのだというふうに進めて行くことになつて参りますと、一般民間放送であるから、その上に立つた一つの法律的なものも、むずかしいというわけではないけれども、ある一つの取締りというか、それに対するところの監督命令というものも必然的に伴わなければならないと思うのでありまして、そういうふうな考え方が行われるか行われないかは別問題ですが、そういうような点について何かお考えがございましようか。
  89. 高橋信三

    ○高橋参考人 これは仮定の問題でありますが、たとえば日本には日本放送協会のようなものはいらないのだ、すべて商業放送でいいのだというような結論が出て、現在の日本放送協会民間放送に払い下げるかどうか知りませんが、自由奔放にやれ、そういうことに国家の方針がきまれば、われわれは必ずしもそれに対して反対でないのでありますが、但し現在七十何億の予算をもつてやらなければならないような日本放送協会、七十何億というような財源を日本の現在の経済力において、広告財源で求め得られるかどうかというところに、現実問題があるのであります。  もう一つは、先ほど申し上げましたが、目的放送事業である。しかしながらその放送事業は、NHK広告放送が許されておらないというきゆうくつな面をはずした放送をやりたい。広告放送というものについては、いわゆる広告といえども一つのニユースでありまして、あるいは百貨店のいろいろな催しもの、あるいはどういう商品が売られておるか、これは私の考え方でありますが、ニユースであると同時に日本国内の商取引の機会を与える、大げさな言い方になりますが、日本の経済を増進さすというような意味においては広告内容を持つたような、スポツト内容を持つたような放送も必要だ。それがNHKにできない、民間放送にはできるというような形において、民間放送事業者が許されておりますがゆえに、われわれは放送事業目的といたします際には、もちろん初めからスポツトというものも考慮に入れておるのであります。しかしながら利益を追求するのが目的でないという意味は、いわゆる利益追求のために放送事業を計画したのではなくて、放送事業を計画するために、財源を求めるということは、放送事業が成り立つ範囲においていわゆるスポンサーへのタイム制と申しますか、料金をきめておるのでありまして、もしも利益のみを追求するのでありますならば、現在の倍もスポンサーからとればとり得ないことはないのであります。これは新聞の広告代金と比べまして放送料金は非常に安いのであります。しかしわれわれはそれをとらないというのは、必要な経費がまかなえればいいという限度においてやつておることを御了承願いたいと思います。
  90. 原茂

    ○原(茂)委員 多少重複する点がありますが、高橋さんが冒頭お述べになりましたNHK事業内容が、目的とするところがはつきりしていないために、この一部改正の問題もむしろ起きて来たので、根本的には放送法の全面的な改正をする。その焦点は、今日のNHK放送事業内容目的とするところが画然としていないということを、最初非常に重点的に御説明があつた。次につい先ほど協会会長の言われた利潤追求を目的とするのではなくて、協会と同じように公共福祉を高揚することが民間放送の場合も目的であるのだ、かような御説明もまたはつきりあつたのでありますから、この間には多少矛盾があるように感じたわけであります。従つて協会民間放送ともに公共福祉を高揚する。ここに事業内容目的とするものがあるのだ、こういうことにあとでとりもなおさず訂正されたように聞き取つたわけでありますが、そう解釈してよろしいでしようか。
  91. 高橋信三

    ○高橋参考人 民間放送といえども公共福祉増進のためを目的にして事業をやらなければならない。現実にわれわれは免許事業でありまして、それを目的にしない場合は、おそらく免許を受けられないのではないかと考えますと同時に、放送そのものはすでに公共性を持ち、放送を通じて一般国民福祉増進に寄与し得るという自信と信念を持つがゆえにこういう事業をやるのでありまして、この点あわせて申し上げたいと思います。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで協会民間放送との違いを参考までにお伺いしたいのですが、協会国家の手厚い保護のもとに運営がされている。しかし協会の手厚い保護といいましても、御存じの法三章だけでなく、非常にきつい取締りも受けておる、監督、指導も受けて、しかも資金的には国家に依存するのではなくて、自己の運営する面から資金の大半を補つて行く、こういうことが協会に言えると思うのであります。民間放送の場合は、スポンサーその他から収入を得て資金運用をしている。あまり大した違いが私はないと思うのですか、そこに多少の差があります。手厚い保護という言葉を使うと、非常に大きな差があるようですが、分解してみるとあまり大した差はないように思うのです。にもかかわらず、今次改正案の四十九条の二の適用は、国家の手厚い保護を受けておるがゆえに、郵政大臣監督を受けることは当然と思うから賛成だ、かようにおつしやつておられますが、そうしますと、民間放送の場合は手厚い保護にかわるものを、スポンサーに置きかえておそらく間違いないと思いますので、スポンサーの集団による郵政大臣にかわる監督民間放送に加えられても同じだ、こういうふうに解釈できるわけです。いわゆる額ぶちだけがあるので、内容は同じだという第一点にお伺いした点はわかつたわけですから、すると額ぶちが今度監督者になることも当然であります。公共福祉を高揚する放送事業である以上は、郵政大臣監督を当然協会に対してするならば、民間放送に対してはスポンサーの集団的な何か委員によつて、やはり強い監督が行われても当然だというふうに高橋さんの御意見はなるものと私は解釈するわけですが、そう考えてよろしいかどうか伺いたい。
  93. 高橋信三

    ○高橋参考人 今のは非常に誤解じやないかと思うのです。というのは、スポンサーというのは放送を利用いたしまして、それによる十分な対価を得ておるわけです。放送を利用して自分の商品のあり方を一般民衆に知らすという対価を得ておりますがゆえに、これは相対的な取引でありまして、スポンサーが金を持つて来るということは、放送させてもらうことに対する一種の報酬にすぎない。従いまして、それ以上の監督を彼らが要求する権限はどこにもないと思います。かりに監督があろといたしますならば、われわれ株式会社の場合は株主といわざるを得ないのであります。それからもう一つ、国家の手厚い保護と申しましす意味は、具体的に申しますならば、受信料の強制徴収であります。受信料は強制的に徴収し得るような法律ができておるのでありまして、しかも一般人はこれを聴取料と考えておる。聞かなくても払わなければならないというようなお金を、日本放送協会は得ておる。これが私の手厚い保護と言う意味でありまして、現実にはNHKを聞かなくとも、これは多少我田引水になるかもわかりませんが、民間放送が出現いたしました以後、百万の聴取者がふえておる。月に五千万円の金でありまして、年額六億であります。この百万の聴取者は必ずしも民間放送がふやしたとは申しませんが、その何割かは民間放送ができたことによつて、一般の聴取者がふえたと言い得ると思うのであります。にもかかわらず、その聴取料が全部NHKに行くということによつて、私は手厚い保護というわけであります。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもこれはゆつくりやらないと解決できそうもないのですが、スポンサーが払つた料金に対する対価を得ている。政府意図する公共福祉国民大衆福祉増進という目的は、まさに協会を通じて達しているわけですから、やはり対価を得ているといつて過言でないと思うのです。民間放送の場合は、もし監督するならば、株式会社である以上、役員会がこれに当るべきであるというならば、ちようど協会におきましても、協会経営委員がこの監督に当つてしかるべきであるという論理と一致するものと解釈するわけですが、これ以上お聞きしてもしようがないわけですから、私の質問は終ります。
  95. 高橋信三

    ○高橋参考人 今の問題については、実は私も同感なんであります。現実に経営委員がどういうようにされておるか私は存じませんが、月に一日会合されて帰るというようなやり方でなくて、経営委員がほんとうにNHKのために情熱を打込まれますならば、私は国家監督は不必要じやないかと思うのであります。ところが現在それをやらなければならない、しかも経営委員の選任の仕方をかえようとされております点は、逆に現実の経営委員が適正でなかつた。これはかえつて郵政省がそういう説明をされておるのでありまして、そういう点からこれは皆様方が十分に御審議をされることが妥当ではないかと考える次第であります。
  96. 松井政吉

    ○松井(政)委員 時間がたちますから、要点だけ二、三お伺いいたしたいと思います。まず最初におたくからいただきました資料の、電波行政の基本方針の確立が先決だ、これは同感であります。御承知のようにすべて電波、放送に関する今の行政監督は、郵政省にございます。前は御承知のように電波監理委員会がやつた。これを郵政省が担当するのは妥当であるかどうか。電波という特殊なものでありますから、特殊な行政機関をつくつて放送電波のみを担当する行政機関があつた方が、あなた方としてはぐあいがよろしいのか、この点の御意見をまず第一にお伺いしたい。
  97. 高橋信三

    ○高橋参考人 この問題はいろいろ議論があると思いますし、私は簡単に結論を出すわけには行かないのでありますが、私見として申し上げますれば、今申されましたことく、特別の監督庁がある方が、むしろまとまつていいのではないか。現在のように、NHKも含めてでありますが、経理は会計検査院だとか、予算国会だとか、あるいは郵政省が一部持つておるというようなことにおいて、いろいろな煩雑さもあるでありましようし、おのずから郵政省としては監督し得る性格のものとし得ないものとが生ずるのではないかとうい点において、独立監督官庁ができた方が、しつくりしていいという意味においては、そういうことができれば、その方が好ましいと思います。
  98. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そういたしますと、ただいまのような部分的な改正ではなくて、放送法そのものを根本的に考うべき点だということについては、私も異論がないのです。そうすると、ただいま申し上げた監督を行う行政の形態まで考えられて、根本的に放送法改正した方がよろしいというお考えの中には、それも含まれていると解釈してよろしゆうございますか。
  99. 高橋信三

    ○高橋参考人 含まれております。
  100. 松井政吉

    ○松井(政)委員 その次に審議の参考までにお伺いをいたしたいのでございますが、NHKだけは別個の法律でやる方がいいような気がするというお言葉を伺つたのでございますが、そういう考え方は、経営形態が違うからという意味でありましようか。それとも放送協会民間放送とは放送目的が違うから、別個にした方がいいというお考えでありましようか。この点をお伺いしたいと思います。
  101. 高橋信三

    ○高橋参考人 この問題は、一体日本放送協会というものは何を目的に設立さすかという問題までからむわけであります。もちろん先ほどからたびたび問題になつております言論の自由という問題にもからむわけでありまして、非常にむずかしい問題でありますが、およそ一つの国家の中における言論の自由というものが問題になるのではないか。たとえば、これは私の推測になるかもしれませんが、NHKが国際放送をするという場合には、日本の国家に不利な放送をするはずがないのであります。不利な放送をするはずはないし、そういう放送をさすべきでないというところに、おそらく国家意思というものが何らかの形で入るのでなければ、こういう特権を与える必要はないのではないか。こういう意味におきまして、それに関連して参るわけでありますが、今申されました問題も、その問題の関連性においておのずから結論が出るのではないかと思います。
  102. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それでやはり経営形態も違うが放送目的がおのずから違う、こう解釈してよろしゆうございますか。
  103. 高橋信三

    ○高橋参考人 たとえば、これはああいう形にNHKがなることがいいかどうかは別でありますが、国際電信電話会社あるいは国内の電信電話公社とか、あるいは鉄道公社のごとく、これらはいずれも国家の特別な要請によつて成り立つておる企業体であります。そういうものはすべて独立法律によつて成立され、あるいはいろいろな監督なり関係がある。こういう意味においては日本放送協会に対するものは、一本の法律にした方が妥当ではないかという、私の考えの一端を申し述べた次第であります。
  104. 松井政吉

    ○松井(政)委員 その問題を突き詰めて行きますと、先ほどお話の中にございましたように、娯楽放送は民間の方にウエートを置いて、NHKという公共放送は、やはり国家的な目的、教育的な目的、そういうようなものでやつた方がよろしいという片鱗を私はお伺いしたわけです。そういう考え方から別の法律がいいというお考えではないかと思いますが、公共性を持つことについては、これは要するに国民全体を事業の対象とする企業は、民間経営であろうと、国営の形態であろうが、あるいはコーポレーシヨン経営であろうと、全部公共性を持つておると解釈したいのです。聴取者の方に向けては同一なんですね。ところが経営形態が相違するから、別の法律を持つて行つた方がいいという解釈をかりにおとりになりますならば、経営形態について聴取料の問題が出る。それならばあなたのおつしやられる公共放送は、国家の一般会計の予算からまかなうのか、特別会計の予算からまかなうのか。その場合における財政経理の取扱いはどういう経営形態が望ましいか、この考え方がなければ、あなたの御意見にはならないはずであります。その点を参考までに伺つておきたい。
  105. 高橋信三

    ○高橋参考人 これまた私見でありますが、私がそういう考えを申してもそうなるかわかりませんし、国家がどう考えるかわかりませんが、民間放送がここまで発展いたしました現状において、放送協会のあり方を再検討した場合に、いつそのことこれを国営にした方がいいじやないかという問題になれば、当然国営にされることの方が望ましいという考え方を持つております。聴取料のごときも、ああいう強制契約をされるかわりに、大蔵省が税金の形において徴収されて、交付金によつてNHK経営されるというところまで行つた方がすつきりするでありましよう。これはNHKの今後のあり方いかんなんですが、私自身の意見を求められますならば、私はNHKはそうあるべきではないか。国営といえども——国営の形式が問題になるでありましようが、NHKの第一放送内容、第二放送内容、これも問題になるでありましようが、そこまで行つた方が結局このいろいろなややこしい法律より、趣旨が徹底するのではないかという考え方に立つております。
  106. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そうすると、そういう考え方の上に立つて先ほどお話をなされたとすれば、先ほどの御答弁の中に公共放送といえども民間放送といえども番組等の自由は確保さるべきだ、あるいは新聞も一種の公共的な企業でありましようから、やはり編集等の自由は確保さるべきである、こういうことと、そういうことを確保するために、番組にまで監督権を発動することについては、あなたも反対意見も述べられておる。もし公共放送番組に至るまで国有国営で、たとえば監督に当る行政機関としての政府が編成するというようなことがよろしいというようにお考えになつておるわけでありますか。「
  107. 高橋信三

    ○高橋参考人 番組干渉という問題は、非常に抽象的な表現なんですが、言論の自由の問題との関連性において申しますならば、かつての戦争時代の検閲のごとく、ある人の意見を検閲制度によつて抹殺するということは、明らかに干渉であります。しかしながらたとえば国家の要請によつて、一日のうち半分は教養番組をもつてすべきであるという基本的な要請は、番組干渉ではないと思うのであります。番組干渉ということは、個々の番組についてこういうものは削れとか何とかいうような点において、問題があるのではないかと思います。
  108. 松井政吉

    ○松井(政)委員 これで私はあなたにお伺いするのをやめますけれども、要するに私は考え方が違うのです。あなたは経営者でございますから、具体的にきようの番組のこれがいけないということでなければ、干渉でないとおつしやるのでありますが、われわれはそうではない。放送そのものから出発して、そしてその放送者が文化的な知能と技術と、それから国際的に見た放送の精神を生かす大きな自由というものが、番組の自由だと思つておる。あなたの方は経営者ですから、当面組んだ番組のらくについて干渉がなければ、干渉ではないとおつしやるけれども、そういう立場から行きますと、われわれの考え公共放送というものは、国有国営にして政府経営にまかせれば、当然時の内閣のための公共放送になるのでありますから、そこに弊害がある。政党政派を超越してほんとうに公共放送を保つということが番組の自由でなければならぬ、こういうところに立つわけですから、見解が違うのでありますから、論争はいたしませんけれども、そういう考え方についての番組の自由についてどのようにお考えでありますか。
  109. 高橋信三

    ○高橋参考人 国営の場合における番組の自由は、いかにすれば確保されるかという問題については、番組編成委員会というようなものを別個に存在さすことによつて、非常な自由が確保できるのではないか。しかしこれは抽象論でありまして、現実問題として自由というものの限界、これは国家における自由の限界ということになるのでありますが、たとえば大学において学問研究の自由ということが主張されておりますし、現実には確保されておるのでありますが、その学問研究の自由のわくというか、あるいは何というか、そこに何らか日本の大学という場合においては、日本というわくがおのずからあるのではないかというような点も、考えれば抽象的には自由と言い得られるでありましようが、自由のあり方について、あるいは自由をいかに自由であらしめるかという点についての方法論が、今後の問題になつて来ると思うのであります。しかし、その方法は必ずしもないというわけではないと思うのであります。国営になつたから、時の政府の言うままになるというような国営のやり方でないやり方を確保できると考える次第であります。
  110. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質問はございませんか。——ないようでしたら、今の松井委員質問について、私から一言お伺いいたします。NHKは聴取料その他の点で、国家の手厚い保護を受けておる。だからある程度政府監督命令は必要だと思う、こういう御意見なんですが、それに関連しまして、今度の法案の四十九条の二なり、四十九条の三についても御賛成のような御供述であつたと思うのですが、番組編成の自由というものの内容をどういうふうに考えるか。松井委員と高橋さんとの間に意見の相違もあるようですが、高橋さんの言われるような番組編成の自由、すなわち個々の番組編成に対して政府監督命令があるかどうか、こういう意味での自由と解釈いたしました場合でも、四十九条の二、四十九条の三を設けるということは、番組編成の自由の侵害になるのではないか、こういう疑問も出るのですが、いかがでございますか。
  111. 高橋信三

    ○高橋参考人 先ほどあるいは言い足りなかつたかとも思うのですが、四十九条の二は、「法律の定めるところ」という字句があるのでありますが、四十九条の三については、こういう監督の必要があることについては是認できるが、この法案の表現をこのまま残しておけば、今後だれかこれを悪用する人間が出て来た場合には、番組編集権にまでタツチするかわからないという点において、特に必要がありと認めるときにというものを列挙的に法律において規定せらるべきではないか。そういう条件付において、この条項賛成なんであります。
  112. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質問はございませんか。——なければ次に中塚昌胤君にお願いいたします。
  113. 中塚昌胤

    ○中塚参考人 今回政府から提出されました放送法の一部を改正する法律案につきまして、当委員会において意見を述べる機会を与えていただきましたことを深く感謝いたします。私は日本放送労働組合を代表いたしまして、七千組合員を代表いたしまして、ただいまからこの一部改正案について意見を申し上げたいと思うわけでございます。  昭和二十五年六月に現在の放送法が施行せられましてから三年になりますが、この間われわれ日本放送労働組合といたしましても、日本放送協会の負わされた使命を達成するために努力して参つたわけでございます。現行の放送法が制定されるに際しまして、最も基本的に考えられた問題は、言うまでもなく放送というものは、国民文化の向上にきわめて大きな影響がある。従つていかなる政党やその他の団体あるいは個人からも支配されない、自由にして独立なものにするということであつたと思うのでございます。当時の国会におきまする政府説明によりますと、従来の放送事業を規律していた無線電信法は、今日の放送事業を規律するには多くの不備な点がある。それは、かりでなく、この無線電信法によりますと、主務大臣にきわめて広範囲の自由裁量権を与えておつて、新憲法の精神にも沿わないというふうに言つております。また日本放送協会につきましては、これを国民公共機関として改組して、その経営を民主的に行わせなければならないというふうに言つておるのであります。そしてこの放送法に基いて設立さるべき日本放送協会というものについては、全国民国会を通じて、その人事、業務運営、財務等について必要な監督を行う、このように政府説明では言つておるのであります。さらに協会に対する監督につきましては、協会運営がその目的沿つて行われることを確保するために、国家として最小限度必要な監督を、しかも一行政機関の独善とならないように考慮して、あるものについては当時ありました電波監理委員会、またあるものについては会計検査院というふうに、それぞれその機関使命に基いて分担をきめて行くというふうに、政府の当局者は説明しているのであります。このように考えまして、今回政府から提出されました改正案を見まするときに、その中で何点かの改正点があるわけでございますが、われわれといたしまして一番重要視いたしておりますのは、四十九条の二及び四十九条の三、これでございます。ことに四十九条の三の第一項によりますと「郵政大臣は、公共福祉増進するため特に必要があると認めるときは、協会に対し監督上必要な命令をすることができる。」というふうになつております。この改正によりまして、郵政大臣協会業務全般に対しまして、包括的な監督命令権を有することになるわけでございます。これは前に申しました通り現行法制定のときの政府説明に照しましても、放送法立法の趣旨にまつたく反するものであるというふうに考えるわけでございます。現在放送協会には国会承認を受けて、内閣総理大臣によつて任命されますいわば国民代表ともいうべき、経営委員によつて構成されておりますいわゆる経営委員会というものがございまして、これが協会経営の最高機関といたしまして、業務運営を指導し、統制しているのであります。ところが今回の郵政大臣の包括的な監督命令権を認めますならば、国民代表としての経営委員会というものも、まつたく無意味な存在になるのではないかというふうに考えるわけでございます。また郵政省当局は、この監督命令権は他の立法例の形に合せただけであり、従つて放送法第三条にいう番組編集の自由には及ばないというふうなことを言つておられますが、しかし協会は他の公共企業体、たとえば国鉄あるいは専売公社あるいは電信電話公社、これケの他の公共企業体とその成立の過程が全然異なるものでございますし、最も根本的に違つておりますのは、放送協会言論機関であるということでございます。現在の放送法が制定されるとき、協会国家機関とはしないで、また公共企業体ともしないで、放送法に基きます特殊法人といたしましたのは、協会言論機関であるということからでありますし、今回の改正案はこの協会性格をまつたく無視したものではないかというふうに考えるわけでございます。  業務命令権というものは、番組編集の自由には及ばないというふうに立案者は考えておられるようでありますが、これが将来にわたつてはたして保障されますかどうか。一たびこのような規定が設けられますならば、りくつのつけ方いかんによつては、編集権にまで制限を加えることは十分考えられるところでございます。またかりに番組編集の自由を保障することを明記いたしましても、協会業務全般に対して監督命令権を有する以上、他の業務を規制することによつて、人事その他の面から間接的に編集権にまで及んで来るというふうにも考えられるわけでございます。これはかつての逓信省時代、あるいは情報局時代に、われわれが身をもつて体験したところでございます。すなわち逓信省時代には、協会幹部のほとんどが逓信省の古手官僚によつて占められ、協会はまつたく逓信官僚の姥捨山というふうにいわれたのでございます。そして個々の番組内容に至るまで検閲が行われ、あるいは干渉され、いわゆる政府の御用放送を行わせられたのでございます。このようにいたしまして、いわゆる思想善導という名のもとに国民をだまし、国家をあやまらせ、戦争から遂に敗戦へと追いやつてしまつたのでございます。終戦後七年、昨年四月の独立を契機といたしまして、ようやく自主独立言論機関として、国民のラジオとしての使命達成のために努力いたしております今日、かかる改正か行われるごとにはわれわれとして絶対に反対でございます。最近私の方の番組に、「私たちの言葉」という番組がございますが、それにあてた投書が来ておりますが、その番組の担当者の言によりますと、大体現在までこの放送法改正についての投書が約十四、五通来ているそうでございますが、賛成の投書は一通もないという話でございます。そしてその内容も、いずれも言論に対する政府の統制あるいは干渉には、反対だというふうな内容が盛られておるというふうに聞いております。このような点を見ましても、今回の政府改正に対して、国民がいかに不安を感じ、反対しているかということがわかると思うのであります。  また郵政当局は、この監督命令は労働関係法令上認められておる罷業権などには及ばないというふうな説明をしおられますが、われわれは労働組合といたしましても、公共放送としての日本放送協会が帯びております使命責任というものを十分自覚いたしておりますし、従いまして組合活動あるいは争議戦術の面につきましても、従来からもきわめて慎重な考慮を払つて参りましたし、将来も払つて行かなければならないというふうに考えております。しかしながらもし万一労使の間におきまする調整がどうしてもできずに、最悪の場合に罷業権を行使して電波をとめるというような事態が起きた場合、郵政大臣はわれわれの罷業の禁止命令は出せないというふうに考えましても、協会に対して放送を継続しろ、電波を発射しろという命令は、この業務命令によつて出せるものというふうにわれわれは考えております。これはやはりわれわれの争議行為に対する一つの制約であるというふうに考えまして、われわれといたしましては絶対に反対するわけでございます。  今回の政府案の提案の理由、この刷りものの終りに出ておりますが、これを見まするに監督権、命令権には何ら触れておらないのでございます。われわれが最も重要と考えておりまするこの監督権、命令権には全然触れておらないということは、われわれ非常に理解に苦しむところでございます。われわれは今回の改正案の最重点は、この監督権、命令権であるというふうに考えております。郵政官僚が一方において監督命令規定し、他方において協会役員の増員というものを提案して来たのは、かつての逓信省時代の夢を追う郵政官僚が、放送に対する自分たちの権限の拡大をはかるとともに、協会を古手の郵政官僚の天くだり場所、あるいは植民地というふうにしようとする野心の現われではないかというふうにわれわれは考えるわけでございます。  なお付言いたしますと、提案者はこの監督命令は、第九条の三項、四項、五項の違反あるいはその他の義務違反に対してなすものであるというふうに説明しておられます。しかし第九条の三項、四項、五項については罰則があるのでございますから、告発をすべきではないか。その他の義務違反については罷免の道もあるわけでございますから、必要がないのではないかというふうに考えるわけでございます。以上の観点から四十九条の二、四十九条の三、これにはわれわれ絶対に反対するものでございます。  次に経営委員の選任方法についてでございますが、現行法の制定当時政府説明によりますと、放送全国のあらゆる分野に関連する文化事業であり、公共事業であるから、文化、科学、産業その他の分野が公平に代表されるように考慮するとともに、全国を八地区にわけたというふうに言つているのでございます。われわれは当時におきましても、労働界代表あるいは農村の代表というものが必ず選出されるように、規定修正すべきであるというふうに主張したのでございます。現在の経営委員のメンバーを見まするに、各分野が公平に代表されているということは絶対に言えないと思うわけでございます。一部の人たちに都合のよい人選であるということは明らかでございます。現在の地区別の選出方法を廃止いたしまするならば、その傾向がますます強くなる危険性があるというふうに考えられます。また協会放送全国にわたつておる点を考えまするならば、やはり地方の実情を知つた人が選ばれる方法をとるべきであるというふうに考えるわけでございます。  次に協会役員の増員に関してでございますが、人数が多くなれば能率が悪くなるどいうのが通常でございます。放送のごとく機動性を必要とする事業にとつては、少い方がいいことははつきり言えるのではないかと思うわけでございます。現在の協会役員が能力があり、完全にその職責を果しますれば、現在の数で十分やつて行けるはずであるというふうに考えられます。  以上で大体改正案についての見解を述べたのでございますが、要しまするのにわれわれはこの改正案のごとく言論機関本質を無視し、現行放送法の立法の精神を蹂躙したいわゆる逆コース的な改正案に対しましては、絶対に反対するものでございます。以上簡単でございますが、日本放送労働組合を代表いたしまして意見を申し上げた次第でございます。
  114. 成田知巳

    成田委員長 次に田上穣治君にお願いいたします。
  115. 田上穰治

    ○田上参考人 今回の放送法改正法案につきまして、実は私は放送協会の実情をあまり存じませんので、はたして経営委員の選任方法、ないしはその人数でありますとか、そういう問題につきまして、今回の改正法案が適当であるかどうか、そういう点はあまり意見を申し上げる資格がないのでございます。従いまして、私は主として問題になつております法案の四十九条の三の問題につきまして、簡単に意見を申し上げたいと思うのであります。  郵政大臣放送協会に対しましてどの程度監督権を持つのかということについて、従来の規定ではまだ不十分である。今回の四十九条の二、三、ことに三でありますが、こういう公共福祉増進するため特に必要があると認めるときは、監督上必要な命令を準ずることができる、このような規定をはたして設ける理由があるかどうか。この点に関しまして、私はまず第一に、日本放送協会は特殊な法人ということになつておりますが、歴史的に見て元来社団法人である、そして資本の関係からも政府とは一応独立経営されている。これは確かに一般の国鉄その他いわゆる公共企業体と異なるもののように思われます。たとえばその結果としてこの新しい四十九条の三によりまする命令は、協会に対しまして経済的な負担を伴うような場合は、やはりむずかしいのではないかと考えるのでございますが、それだけでなくて、第二に、これもすでにお話があつたと思いますけれども放送協会事業性格から申しまして、特に番組編集の自由と申しますか、これが憲法第二十一条の言論報道の自由に関係を持つており、重大な意義がある。その点ではこの公共企業体に対する政府監督とは、やや趣を異にする必要があると考えるのであります。  これは先ほども御指摘があつたと思いますが、放送協会に対する政府立場といたしまして、第一には放送によりまして、国民に周知、徹底、普及せしめるという、放送全国に対する普及義務につきまして、かなり積極的な監督政府側の要請が考えられると思うのであります。この点は私は民間の放送についても準じて考えてよいかと思うのでありますが、しかし直接法律的には義務はないので、もつぱら日本放送協会に負わされた一つの使命である。この点では積極的な監督考えてもよかろうかと思うのであります。ただしかしこれも先ほど放送協会政府の資本によつていないということから、おのずからそこに郵政大臣監督上の命令にも限度があると考えるのでありますが、この点は積極的にいわゆる公共福祉増進するための命令が認められるかと思うのであります。  しかしながら第二に、放送事業の特色としまして、一般公衆に対する影響がきわめて大である。従つて特に報道真実性と申しますか、この点で政府の特に政治的な影響から独立でなければいけないという点は、特に重んぜられなければならないと思うのであります。もちろん報道真実性というふうなことも、見方をかえますと、今度は放送協会がかりにこの点で態度をあやまつて、現在の放送法の四十四条の第三項にあるような、公安を害しない、政治的に公平でなければいけない、その他こういう点でもし放送協会編集の方針が誤るといたしますと、やはり政府としても監督を加える必要がある。もちろんそういうことはほとんどないと思いますけれども、かりにそういう事実を仮定いたしますと、消極的な監督は必要であろうと思うのであります。しかしながらその点では、ひとり日本放送協会のみならず、一般の放送事業者に対しましても、同様なことが言われるのでありまして、言論報道は自由であつても、公共福祉に反する場合には、最小限度において政府は規制することができるし、またその必要があると思うのであります。しかしながら法案にございます、一般に「公共福祉増進するため」という表現は、今の報道内容あるいは番組編集そのものにつきましても一単にこれが常軌を逸しない、政治的に公平な立場を守るように、そういうような消極的な監督ではなくて、さらに進んで積極的にある政治的な注文をつけるというふうになりますと、これは放送法の根本精神に反するし、また憲法二十一条の精神にも反すると思うのであります。積極的に公共福祉増進するための監督でありまするから、放送協会に対しては特に制限をする必要がある。もう一度申し上げますと、放送全国普及義務というか、そういうふうな面におきましては、積極的な監督考えられると思うのでありますが、しかしながら報道内容についてこれが不偏不党、そして番組の編成などにつきましても、特に政治的に影響を受けないという点におきましては、政府監督は消極的でなければいけないというふうに考えるのでありまして、そのあとの点においては、公共福祉増進という言葉が少し強過ぎる、むしろ公共福祉に反するような場合に、これを是正するといいますか、防止するような消極的な監督になるべきではないかと思うのであります。  第三に、日本放送協会運営経営委員会によつて行われておる。この実情は、政府が直接会長に対しまして命令をするという場合にも、当然考慮されなければならないと思うのであります。経営委員会の議決事項につきまして、その結論を郵政大臣の方から会長に対して示すということになりますと、結局議決をすることが無意味になるのでありまして、経営委員会はその限度で浮き上つてしまう。そういうことは、やはり放送法の現在の十四条その他の規定に違反すると思うのであります。従いまして四十九条の三による必要な命令と申しましても、今の経営委員会の主として議決事項、これについては、当然に放送協会側の自主性が認められなければならない。しかしこれは私どもでは特に条文に明記しませんでも、経営委員会という会議機関を置いて、法律でその議決を要するとなつておりますると、解釈上も当然に郵政大臣監督権が制限されるように考えるのであります。これはもちろん行政委員会という場合とは違いますが、しかしながら会議制の機関が多数決に上つてきめるその結論を、委員会に付議する前に、あらかじめ政府が提示するということは、委員会を認めたこの法律趣旨に反するものと考えるのでありまして、この点においても、現在の法案解釈上、当然に監督権の限界があるように思うのであります。  なお蛇足を加えますると、憲法上行政権が内閣に属するとか、あるいは内閣はこの法律を誠実に執行する義務があるとかいうような規定がございますが、この点だけからただちに、郵政大臣日本放送協会に対して当然一般的な監督権を持つというふうに言えるかどうか。私は今申しました放送法の現在の規定から申しまして、政府監督権に幾つかの限界がすでに設けられておるように考えるのであります。郵政省設置法では、放送協会に関する事項を分担管理するということが出ておりまするが、設置法の規定は、直接監督そのものを認めたものではなくて、むしろ放送法その他によつて、実体的な規定権限が認められておる、これを前提とするものでありまして、郵政省設置法のみで監督権を持つというふうにはとれない。これは郵政省設置法の明文でも明瞭でありまして、法令の定めるところによつて協会に対して監督を行うというようになつているのであります。  以上申しましたところでは、四十九条の三の規定があるから、当然に、いわば無制限に監督が行われるというのではなくて、現在の放送法規定から、そこに幾つかの当然解釈法案のままでも一監督についての限界は考えられると思うのであります。もし四十九条の三の規定自体に何ら但書がないから、従つて法理上はいかなる監督でもできる。公共福祉増進するために特に必要があれば、できるというふうな解釈でありますると、これははなはだ不都合と申しますか、放送法の基本原則に反するように思うのでありますが、私はこの法案の字句から見ましても、当然放送法の他の規定によつて監督の範囲が制限されておるように考えるのであります。もちろん四十九条の三の規定も、放送法の一つの条項でありますから、他の条項に対していずれがまさるかということは一概に言えませんが、しかしながら法律全体を通じまして、その基本原則は、四十九条の三の監督命令によつてくつがえすことができなかろうというふうに思うのであります。  なうそのほかに、しばしば申されますが、たとえば罰則が用意されておるような条項については、特に監督上の必要な命令を出すことはおかしい。あるいは罰則がなくても、義務違反に対しては経営委員または会長に対して罷免の方法があるから、従つて特にあらかじめ義務違反を防止するとか、あるいは義務違反に対してその結果を是正するような行政監督上の措置は、必要がなかろうという御意見がしばしばあるのでありますが、私はこの点は必ずしもそうではなくて、罷免ということは第一これは容易ならぬことであります。実際にはそう簡単にできない。経営委員につきましては両議院の同意も必要のようでありまするし、またわずかな義務違反を理由として、常に罷免権を発動するというようなことはできないのでありまして、これはかなり重大な義務違反の場合に限られることは当然であります。従いまして罷免の理由がない、あるいは罷免の必要がないような場合でありましても、軽微な義務違反ということは考えられるのでありますから、そういう場合にも監督方法手段がやはりあつた方がよろしい。もちろんこれは法律規定を要するのでありますが、そういう点ではやはり四十九条の三の第一項の規定は、無意味ではなかろうと思うのであります。  また公共福祉に適合するかどうか、これを増進するということは放送協会が自主的に判断をするし、あるいはまた輿論の調査によりまして、国民自身にその判定はまかさるべきであるという御意見がございますが、もちろんこれは立法政策としてそういう方法も私は考えられると思うのでありますが、また反対政府がこの点でやはり公共福祉について判断をし、そしてその増進あるいはこれを害されないように、政府がある程度の規制を加えるということ、これは必ずしも立法論としては許されないことではないと考えるのであります。この点は私は言論とか報道の自由、広く申しまして憲法二十一条の自由が絶対に取締れないのであるという見方も一部にはございますけれども、これはやはり「公共福祉に反しない限り」という限定を当然私ども考えるのでありまして、一部の者の極端な自由を主張し、その結果大多数の一般民衆が同様な自由を失うようになる。そういつた行き過ぎ、自由の濫用に対しては、これは一般公衆の利益のために、政府はある程度最小限度においては監督ができる。それは憲法二十一条のような言論報道その他の自由につきましても同様であろうと考えるのであります。しかしながらその場合には、繰返し申し上げまするが、公共福祉増進するというふうな、そういう積極的な広い範囲の監督はもちろん許されないのであつて、これは明らかに公共福祉に反するという事態が起きたときに、たとえば先ほどの四十四条の例で申しますと、ある特殊な政治的な立場、そしてこれが他の政治的な立場に対しまして著しく不公平になる。そういう一党一派に偏するような極端な放送に対しましては、もちろんある程度最小限度におきましては監督を加えることができるし、またあるいはその必要があるというふうに考えるのであります。従いまして四十九条の三の規定が当然に許されない、無条件にこれは削除すべきであるというような意味には考えないのでございます。  けれども、それならばこのままでよろしいかと申しますると、初めにお断りいたしましたように、放送全国普及義務というような面におきまして、つまり放送法の第七条にうたわれております趣旨でありますが、こういう意味においては積極的に政府が援助をし、またこれを推進し、監督を加えることができるかと思いますが、しかし第三条に示されるような、そういう放送番組編集の自由という問題につきましては、むしろこれは消極的な監督でなければいけない。ところが四十九条の三の方では、その点の区別が示されてないのでありまして、広く公共福祉増進という積極的な目的のための監督もできるように思えるのであります。この点はやはり法案の表現が十分でないと申しますか、あるいは訂正を要するのではないかと思うのであります。私どもの方では、公共福祉に反する場合に取締るということと、福祉増進するために必要な場合監督を加えるということとは、かなり区別をしているのであります。福祉増進ということになりますと、これは消極的ではなくて積極的な注文をつける。だからこの条文を切り離して考えますと、たとえば政府の政策に有利なように、放送に対して注文をつけるということも考えられるのであります。もちろん現在の郵政省はそういうお考えでないと思いますが、四十九条の三だけを私どもが文字について判断いたしますと、そういう場合も出て来ると思います。従いまして、あるいは「公共福祉増進」というような言葉を、かりに「この法律を執行するため特に必要があるとき」というようなことにすればよほど穏やかになり、また第七条の方ですでに「公共福祉のため」ということが出ておりまするから、格別提案の御趣旨には反しないのではないかと思うのであります。  また私どもの一つの疑問は、やはりこの第三条との関係でございまして、現行法の第三条には「法律に定める権限に基く場合でなければ、」という言葉が出ております。これはもちろん他の法律も含まれますが一この放送法自体の規定で定まつておる権限ももちろん含まれるわけでありまして、国際放送に関する条文のごとき明白であろうと思います。その場合新しく加えられます四十九条の三の規定が、第三条における「法律に定める権限に基く場合」に該当するかどうかと申しますと、私は条文の字句から考えまして、この三条の「法律に定める権限に基く場合」に含まれるように考えるのであります。言いかえますると一、三条の規定によれば、四十九条の三によつて郵政大臣監督上必要な命令を出しますると、それによつて放送番組が規制されるようになる、少くともそういう事態が起きたときに、これが放送法違反であるという二とはいえなかろうと思うのであります。もし政府の方のお考えが、そうではない、第三条の番組編集の自由には何ら手をつけるものではないということでありますと、その点はやはり法案解釈上は無理でありまして、一応但書か何かで、第三条の場合の編集の自由に手をつけると申しますか、妨げるものではないというような断り書きをつけなければ、無理であろうと思うのであります。  その他、先ほど申し上げましたように、特に法案の字句を修正しないでも、解釈上すでに私どもはこういう法律に対しましては一定の限界がある。監督は決して無制限ではない。もう一度申しますると、放送協会の従来の性格が社団法人であり、また現在におきましても政府の資本とは独立であるというふうなことから、財政的には会計検査院の検査、予算における国会の審議、そういうような監督はありますが、そのほかに特に行政上の監督を加えるということはあまり適当でなかろう。これも全然不可能とは思いませんけれども、著しく放送協会に負担をかけるようなことになりますと、あるいはその点で事業に対する負担というか、圧迫を加えるようになるのでありまして、私はその点全額政府の出資による国鉄その他とは、監督程度、範囲がおのずから異なる。第二は番組編集の自由に現われておりまする言論報道などの自由、こういう点は特に尊重されなければいけない。第三は、経営委員会による運営でありまして、こういう会議制の機関が一応責任を持つ。少くともその議決を要するような事項については、当然監督が制限される。もつともこれは絶対に監督ができないという意味ではないのでありまして、少くとも法案四十九条の三の第二項にありまするような報告を徴することは、格別さしつかえはないと思いますが、必要な命令を発するような点におきましては、経営委員会の議決を不必要ならしめるような監督は本来許されない。この三点であります。しかしそういう解釈をいたしましても、なお最後に申し上げましたように、法案の字句では公共福祉増進という言葉がありますから、これは少し広過ぎて、特に番組編集の自由などにつきましては無理がある。むしろ率直に申しますると、憲法の自由に影響を与える点で不適当であるように考えます。また第三条との関係におきまして、第三条は字句の上から申しますと、ほとんど新しい四十九条の三による命令によつて自由に、この自由を動かすことができるようであります。そういう点ではやはり明文で断り書きを加えることが必要であろうと考えます。  以上をもちましてはなはだ簡単でありますが、主として監督上の命令を出す規定についての考えを申し上げまして、私の意見を終ります。
  116. 成田知巳

    成田委員長 中塚、田上両参考人に対して質疑があればこれを許します。なお一言お断りしておきますが、辰野参考人は手違いのためにきよう御出席できないとのことであります。御了承願いたいと思います。
  117. 原茂

    ○原(茂)委員 まず田上さんに一点だけお伺いしたいのでありますが、ただいまのお説によりますと、公共福祉憲法二十一条に規定する自由に優先する。逆に言いますと、自由は公共福祉のためには二義的なものである。こういうお説が今あつたわけであります。この問題で参考までにお伺いしたいのでありますが、公共福祉を守るためには、憲法二十一条に規定する自由というものは否定される。そこでそのお説がもし正しいとしますと、その前に公共福祉とは一体どういうものかというはつきりしたわく、範囲、これを明文化さない限りにおいては、ただ単に公共福祉といつておる範囲では、一体だれがこの公共福祉というものの範疇を決定するかが、非常に重要な問題になつて来ると思います。今日いわれておる公共福祉というのは、今問題になつております放送番組編集その他の問題一切をひつくるめまして、公共福祉考えておるようでありますが、この及ぼすところは私ども日本国民の生活万般にわたりまして、この公共福祉問題をあらゆる面から考えられて来なければいけないわけでありますから、この憲法二十一条に規定する自由と公共福祉との間におきまして、公共福祉というものを一体どの範囲に考えるべきであるか、また公共福祉というものをはつきり認定し得るものは一体だれか、こういう点を参考までに伺いたい。
  118. 田上穰治

    ○田上参考人 簡単に御質問に対してお答え申し上げます。私どもが学界におきまして公共福祉と申しますることは、もとより今の憲法のたとえば十二条、十三条などに用いられておる用語でございまして、もちろんこの言葉を広く解釈いたしますと、昔の警察国家、独裁政治になるおそれが十分にございます。憲法は十三条で、公共福祉に反しない限り国民の生命、自由、幸福追求に関する権利を、政府が最大限慶に尊重しなければいけないと書いてございまするから、私ども反対に、公共福祉に反する場合の取締りは、最大限度の尊重の逆でありますから、例外として最小限度にとどめなければいけないというふうに考えるのでございまして、その意味政府側の権力の濫用に対しては、これは憲法違反であつて、極力これを押えなければならない。この点で、しからばだれが公共福祉に適合するか反するかということを判定するか。この問題はもちろん最初は、たとえば今の放送法改正法案におきまするような法律に書いてある場合にはもとより郵政大臣政府とその行政当局が判断をして、そしてこの法律を適用するのでございまするが、もちろんこれは最終のものではなくて、最後に争いが起きて判断をする場合にはこれは最高裁判所、直接は下級審もございましようけれども、最終的な責任あるいは解釈権は、最高裁判所にあるというふうに考えるのでございます。  しかしながらこれは、このたびの改正法案の議論から少しはずれまして、時間をとつてはなはだ恐縮に思うのでございますが、実はそれだけでないのでありまして、最高裁判所による解釈というのは、これは現在はいわゆる憲法裁判という制度を認めておりませんから、従つて一般的抽象的な問題として、裁判所にその公共福祉についての判断審査を求めることはできない。具体的な事件について原告の権利が侵された場合でなければ、訴訟にはならないのでございますから、そういう裁判にならないような場合には、これはやはり国会が最高機関として、その政府の措置を批判し、そしてそれがもし行き過ぎだという監督上の命令が出ておるというような場合には、当然に政府責任を問うべきである。だから最高裁判所にもつぱら公共福祉解釈、判断をゆだねるということは、私は十分な答えではないのでありまして、訴訟の問題になるような場合には、もちろん行政当局の判断よりも、裁判所の判断が優越するのでございますが、そうでなく、訴訟にならないような場合には、これはやはり国会が当然に何が公共福祉のために必要であるか、あるいはその増進はどういう意味であるか、これは国会において解釈をし、また政府監督さるべきであると考えるのでございます。  なお蛇足でございますが、公共福祉という言葉意味につきまして、政府自身の利益、これは含まれないと考えております。そうではなくて、一般公衆、あるいは国民と申しますか、人民一般公衆の利益、これが憲法でいう公共福祉でありまして、もし政府自身の利益のために、国民の基本的な人権を制限することができるとすれば、これはまさに一種の専制政治、非民主的な政治でございますが、そうではなくて、われわれ人民は平等に、言論の自由にしても、行動の自由にしても持つておるのである。だから一部の者が特にその自由を濫用して、平等な他の者の自由を無視する、あるいは無意味ならしめるような場合には、その行き過ぎに対して、一般公衆にかわつて政府が全体の奉仕者という立場におきまして、その行き過ぎをとがむべきである。とがめることができるのではなくして、政府には義務がある。しかしながら「その場合、政府自身の利益を表に出しますと、これは明らかに憲法上許されないと考えているのであります。これは憲法が平等に各人に自由を認めておることから出て来るのでありまして、その点は、実は特別なりくつではなくして、われわれの人権に対するきわめて常識的な判断でも御理解願えると思うのであります。政府に特別な権力を与えよう、あるいは憲法上認めるというような議論ではないのでございます。なお最後に、こういうふうな解釈は、大体今日学界の通説であるかと思うのでございますが、裁判所の判決、判例においても、今日はかなり明確に示されておるところでございまして、一々判例の日付をあげることは控えますけれども、最高裁判所の判例においても、ほとんどこれは確立された解釈のように考えております。
  119. 原茂

    ○原(茂)委員 根本になるものを丁寧に御説明いただいてありがたく思うのですが、先ほどのお説の中ほどで、第四十九条の三が現放送法の条章をくつがえすことはできない、こういう所論がやはり述べられたのでありますが、そうしますと、公共福祉、これを「増進」という言葉は強過ぎるとおつしやいましたが、弱く「公共福祉に反する」と言葉をかえましても、その場合に、郵政大臣監督なりあるいは監督上の命令権というものが発動されるときに、四十九条の三が現放送法の条章をくつがえすことはできないとお考えになれば、あとで御説明いただきました第三条との関連において矛盾が生じて来るわけでありますが、この点の御見解を最後に伺いたいと思います。
  120. 田上穰治

    ○田上参考人 実は私も四十九条の三によりまして、どういう監督上の命令が一体出せるものか、その点あまりよく検討していないのでございますが、たとえば、これははなはだ御議論があると思いますけれども先ほど申し上げました放送法の四十四条の三項を見ますと、公安を害しないこと、あるいは政治的に公平であること、報道は事実を曲げないですることというふうな、その他ございますが、こういうかなり重大な問題がございます。そしてこれまで日本放送協会においては、こういう点で何ら法律に違反はしていないと思うのでございますが、かりに法律論でございますから、最悪の場合——仮定的な議論でございまして、かりにもし報道が政治的に公平でない、あるいは公安を害するというような場合にどうするか、その場合に、もちろん現在といたしましては罰則がございませんから、結局放送協会の自主的な判断、責任において運営解釈されるのである。そしてまた極端な場合を申しますと、明らかにこの条項に反すると政府が判断した場合には、そこに放送協会当局の義務違反という問題が起きて来ると思うのでございます。しかしながら現状においては、それ以上義務違反と申しましても、ただちに罷免するということは、おそらく法理上もむずかしい。罷免するにはそれに相当する重大な義務違反が必要でありまして、法律解釈といたしましても、軽微な義務違反に対して、ただちに罷免権を発動するということは違法であると考えるのでございます。そうなりますと、こういうような点で、最もこれは重大な点でございますが、もし最悪の場合には政府としても、編集の自由について、あるいは行き過ぎに対し、ある程度是正するための措置がとれるのではないか。今の放送協会の方に対してそういうことを申し上げるのは、はなはだ失礼と思いますが、一般論としてお聞き願いたいのでございまして、もし一般に極端な一部の動きに対して自由を濫用した場合には、これは先ほどから申し上げておりますように、政府としても最小限度ではありますが、それに制限、規制をすることができなければいけない、人権の濫用に対して、まつたく政府が何にも手が打てないということでありますと、その限度で無政府状態になる公それがある。だから必要最小限度で制限ができると考えるのであります。まちろんそうなると、今度は逆に政府の方の行き過ぎがあるではないか、政治的に公平であるのに不公平だと判断して、そうして監督命令を出すことがあつたらどうか。これは法律論としましては、もちろん政府の側にも濫用の場合を予想しなければいけない。その場合は、やはり一応法律論としては、一方では訴訟の道と、他方においては国会の批判、こういう方法で解決をするほかはないのでございまして、政府の取締り権限の濫用はもちろん警戒しなければなりませんが、他方においてわれわれ国民の側の人権の濫用についても、あるいは自由を一般に濫用する場合にも、やはり最小限度における制限は覚悟する必要がある。政府も人民も、いずれの側からしても濫用は許されないと考えるのでございます。
  121. 松井政吉

    ○松井(政)委員 時間が大部過ぎましたから、一点だけお伺いいたしたいと思います。ただいまの同僚原委員質問で大分明らかになりましたが、田上参考人にお伺いいたします。この四十九条の二と三が新しく加えられておりますが、この場合の監督命令の区別、監督の性質と命令の性質、それからこの場合、たとえば先ほど指摘されましたように、郵政省設置法並びに、電波法、放送法等によつて、行政上の所管が郵政省であることは間違いないのであります。にもかかわらず、監督命令というものが必要だと考えられて、改正案が出ているのであります。従つてその行政上の監督とさらに命令というものの性質について、学問上どういうような理論的な説明をなさるのが呼当であるか、これをお伺いしたい、
  122. 田上穰治

    ○田上参考人 法案の第四十九条の二の監督意味でございますが、私はこの監督はもちろん行政上の監督と申しますか、私ども言葉でありますと、司法上の監督と立法上の監督に対しまして、行政上の監督という言葉をもし使いますと、それに当るのであつて、特別に郵政大臣が、たとえば郵政省令あるいは新たな法律をつくるとかいうような必要は必ずしもないのでありまして、具体的な処分と申しますか、そういう場合のいわゆる行政権の発動によつて監督ができるというふうに考えておるのでございます。もちろんある学説によりますと、こういつた言論報道の自由につきましての監督は、行政上の監督を避けて、もつぱら司法権による監督でありますから、罰則の適用とかその他によつて、裁判所において、放送協会にもし行き過ぎがあれば、これを是正すべきであるという意見もございます。これは何もこの問題だけでなくて、一般的に広く人権の濫用に対しては、行政上の監督は許されないが、司法権による監督はさしつかえない、こういう意見がかなりあるようであります。しかしながらこの解釈は、大体におきましてアメリカ流の考えであつて、司法権ならば信用できるが、行政権はとかく濫用するおそれがある。むしろ非民主的であるから、極力政府当局には権力を与えないで、取締る必要があれば、それは裁判所の判決によるべきである、こういう議論であります。もちろんそれは相当の理由があり、裁判所においては、そう簡単に軽率と申しますか、急いで判決ができないかわりに、非常に慎重な手続をふんでやるのでありますから、大体は判決に間違いがない。行政権の方はとかく敏速にいたしますかわりに、あるいは判断を誤り、従つて違法な取締りも考えられないわけではないのであります。しからば違法なる監督ないしは行政権の濫用に対して、どの程度に、あるいはどういう方法でこれを是正することができるか、政府の措置を人民の方から争うことができるか、その問題について考えるべきでありまして、そのことからただちに行政権による監督は、絶対に基本的人権に対しては許されないとする明白な憲法上の根拠は、私は見当らないと思うのであります。法律の定める手続によらなければ、自由は奪われない。国会の立法がなければ、行政権によつて取締ることはもちろんできないのでありますが、しかしまた立法がなければ、司法権による監督もできないのであつて、その点国会の立法のもとにあつて、行政権、司法権は一応平等に考えらるべきである。ただ行政上の監督に対しては、あとで裁判所に行つて人民は争う道がある。だから最終的なものではございませんけれども、しかし公共福祉のためにやむを得ない最小限度において、そういうふうに政府当局が判断した場合には、監督権が発動できるのである。しかしもしその判断が不幸にして間違つておれば、人民は裁判所に持つてつて、その行政上の措置を取消すべく当然争うことができるのでありますから、その方で考えればよかろうかと思うのであります。要するに私どもは、行政上の監督ならばいけないが、司法権による監督は合憲であるという一般的な考えは、どうも明確な憲法上の根拠は見当らないように考えるのでございます。言葉がはなはだ過ぎたかもしれませんが、意見を申し上げた次第であります。
  123. 松井政吉

    ○松井(政)委員 もう一つお伺いしておいたのでございますが、この場合に、条文における命令というものを、どのように御解釈なさいますか。
  124. 田上穰治

    ○田上参考人 命令は、必ずしも郵政省令というような法規命令には限らないのでありまして、省令でもさしつかえないと思うのであります。しかし日本放送協会という特定の相手方に対するものでありますから、理論上はむしろ単純な処分によるのが筋が通つていると思うのであります。しかし省令によつていけないというはつきりした根拠はないと思うのであります。要するに省令には限らない、いわゆる行政上の処分も当然にこの命令に該当すると考えておるのでございます。
  125. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 田上先生には最後までおいでくださいまして、ほんとうにありがとうございました。本日の参考人の大方の御意見等は、自己の宣伝と他を誹誇する一方であつたと私にはとれてなりません。本日の参考人のお方には、わざわざお忙しいところを来ていただいてまことに申訳なかつたけれども、私はこの点については満足いたしません。本日この重要なる法案の審議を控えて、自己の宣伝をここでしてもらおうとは思つておらぬ。もつと真剣にわれわれが聞きたいことがたくさんある。しかるに自己の宣伝のみに終始一貫しておるということは、委員長としてもこれを許してはならなかつたと私は思う。こういう点について、最後まで漫談的な宣伝のために、田上先生におそくまでおつていただいたことは、私はまことに申訳ないと考えております。  一点ただしておきたいことは、ただいまの命令の問題でございますが、私たちの考え方で行けば、この際の命令というのは、受信機の修理であるとか、あるいはサービスが不十分だからというようなことだとか、あるいは電波のサービスが不十分な地域がある、こういう地域に向つてもう少しカバーしなければいかぬとか、こういうことがわれわれに考えられるところの命令だと思うのであります。しかしながらこの法案そのもので行きますと、人事権にまで及ぼし得るかいなか、先生の御判断を伺いたいのであります。
  126. 田上穰治

    ○田上参考人 これもはなはだ重大なことであり、申し上げませんで、はなはだ恐縮でございますが、具体的な人事権につきましては、もとより会長あるいは経営委員会の方で、議決あるいは決定するようになつておりますから、先ほど申し上げましたように、もし直接郵政大臣の方でその点について具体的な指示を与えることになりますと、そういつた人事権に関する法律規定ないしはその制度がまつたく無意味になつてしまう。これは人事権のみならず、一般に申しまして監督上の命令と申しますのは、会長なり経営委員会にかわつてそのなすべきことを、郵政大臣命令で決定してしまうというふうには私ども考えないのでございます。いわゆる代執行——監督者の行政庁がかわつて、その会長なりその他の行う事務を決定するというのではなくて、それに対して、平たく申しますと注文をつけるということであつて、その点で意思決定の自由は、そういう具体的な問題につきましては、会長なり経営委員会の左に残つている。そうでなければ、先ほど経営委員会につきまして一般的なことを申し上げましたが、放送法関係条文、あるいは放送協会組織に関する基本的な規定でございますが、これに反するものと考えるのでございます。従いまして今の御指摘のような問題につきましては、特に新しい改正法案にそういう断り書きをつけなくても、当然に許されない。きわめて一般的な指示を与えるにとどまるのであつて、具体的な人事につきましては、これはもつぱら会長あるいは経営委員会の方にその決定の巨由か残されているように、つまりその関係条文によりましてその点は明白であろうと考えるのでございます。新しい四十九条の三が入りましても、そのような事項については具体的な指示を与えることはできないと考えております。
  127. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 先ほど先生は罰則があるものについて監督命令が出るというのは、おかしいと思うけれどもというお話たんですが、罰則があるのにこの監督命令が出ている。もし違反があるとすれば告発すべきである、さらにこれを国会に取上げて論議すべき問題があるのではないか、こういうふうに私は考えるのですが、この点につきまして罰則があるのにさらにこの上に監督命令が出ても、法理上から考えて別におかしいものではないでしようかということが一点、もう一つ会計検査院の所管であるのに、さらに郵政大臣がこれを監督するという立場から、この書類を二箇月以内に全部提出しなければならないという命令があるのですが、会計検査院というものがあるのにもかかわらず、こういうような命令が出て来ると、むしろこういうことは越権じや大いかというようにも私は考えるのですが、その点はどうでございましよう。
  128. 田上穰治

    ○田上参考人 先ほど罰則のある規定につきまして、監督命令が無用であるというようなことをちよつと申し上げたかと思いますが、私の気持は実はそうでなかつたのでございまして、そういう御議論もありまするけれども、私自身は格別当然には無用だとは思わないという意見でございます。これは大体におきまして罰則がありますると、その条項に違反するということはよほどむずかしくなる。あるいは少し悪く申しますと勇気を要することであつて、まず大体は精神的にそういつた違反行為をあらかじめ押える、予防することになると思うのでございます。けれども実際に違反行為があつたときに、罰則がただちには適用されないのでございまして、当然それには刑事の訴訟手続をして——これは往々にしてかなり長い期間を要するのでありまして、そういう点でまた違反行為があつたから、必ず裁判所が有罪の判決を下すかというと、これはやは、刑事政策の点もございまするから、罰則に違反しても軽微なものは刑事訴訟法においては下問に付せられる、検事が起訴しないということも考えられるのでございます。それよりもむしろ問題によりましては行政的な措置、これはもう単刀直入、簡単にその違反行為が抑制されるわけでございますから、罰則にまかせるか、あるいはそのほかに行政上の監督法律で認めるか、これはもちろん立法政策でございまして、どちらでなければいけないということを申し上げるのではございませんが、かりにこの法案のような規定がありましても、私は当然これが矛盾しておるというふうには考えないのでございます。  それから第二点でございますが、会計検査院の検査、それからもし予算支出などにつきまして郵政大臣監督を加えることになると、そこに二重の監督が出て参ります。これもそういつたことが適当か不適当かという政策的な議論はもちろん十分に考えたいのでございますが、他の例を申しますと、一般に政府機関については行政監察、ないしは会計法による予算の執行についでば、大蔵省関係の財務の監査が現在行われている。これは会計検査院の検査と並んで——もちろんこの点はそういつた重複がはたして適当かどうか、その点は大いに御議論があるかと思いますが、一般に国の機関については二重三重に監督が行われておるのでございます。放送協会は国の機関ではございませんが、たまたまそういうふうに二重の監督が行われるとしても、当然それが会計検査院法に反するということは言えないのじやないか。しかしながらこの点ははたして適当かどうかということでございますと、私はあまり感心できないのでありまして、そういう点やはり立法論としては、あるいは会計検査院の検査と重複しないようにというような心構え、用意が望ましいかと思うのでございますが、ただ当然会計検査院法に反するかどうか、その権限を侵すものかどうかという御質問に対しましては、ほかにも例があり、必ずしも許されないものとは思えない。はなはだあいまいな表現でございますが、私の気持はそういうふうに考えております。
  129. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 もう一つお伺いいたしますが、番組とか業務内容にタツチする、さらにそのほかにたとえば広告放送かいなやという点、これを郵政大臣が判断をするということがあるとしたならば、これは適当でしようか、適当でないでしようか。
  130. 田上穰治

    ○田上参考人 ただいまの御指摘は、私ももちろん適当とは思わないのでございまして、広告放送かどうかということは、やはり番組編集の自由に属するものと考えるのでございます。しかしその判断を誤つて、常識的一般の考えでは広告放送と思われるものが行われたとしても、ただちに政府の方でそれに干渉するということはもちろん望ましくないし、適当でないと考えるのでございます。しかしながらこのあたりは非常にデリケートなところでございまして、先ほど申し上げました四十四条の方も、政治上公平かどうかというふうな判断もやはり同じような議論になるわけでございまして、その判断を誤ると、これは明らかに郵政省監督が行き過ぎであり、違法となる、決してこれは政府の自由に判断できることではなくて、これは法律従つて厳格に判断をしなくてはいけない。もしその判断を誤れば、当然に裁判所においても審査を受ける法律問題、違法の取締りになると考えるのでございます。しかしながらこまかい点でありますが、そういつた広告放送について政府干渉を加えて、その命令は当然に無効であり、放送協会は当然応ずる必要なしという議論は、今の解釈では少し無理なように思うのでありまして、御質問趣旨が適当かどうかというお話でございますから、それに対して私どもはもちろん適当でない、できるだけそういうことは避けるべきだ、こう考えるのであります。
  131. 原茂

    ○原(茂)委員 中塚さんにお伺いいたしたいのですが、その前に今同僚の委員から発言があつたのですが、本日御参席いただきました参考人各位のうち、自己宣伝に終始したという非常に強い御意見が出たようですが、われわれの立場から言いますと、おのおの違つたところに準拠してものを考える方をわざわざ選びまして、ここに自由にその御意見を聞かしていただくために、むしろお客様として招聘いたした立場にございますので、委員である私どもが、そのお客様に対して、自己宣伝をしたというような叱責をすることは、私の考え方からははなはだ意に満たないものがあります。どうぞ私はこのような考えを持つておりますので、参考人各位におかれても、あしからず御了解願いたいと思うのであります。もとよりその点から委員長の処置に対して何ら非違はない、かように考えるわけでございます。  そこで中塚さんにお伺いしたいのは、時間もありませんから一点だけお伺いしたいのですが、今日まで協会の側といろいろ業務上あるいはベース・アツプないし分配問題などで、折衝が行われたことと思うのでありますが、その間におきまして、経営者側の経営内容説明の過程に、何か今日の上部の機構に手不足があつて穴が明いたために、協会運営がうまく行かない、そこに業務上生ずべき黒字が生じない、あるいは困難な状態を任じているというような説明がかつてなされたことがありますかどうかを、一点だけお伺いしたい。
  132. 中塚昌胤

    ○中塚参考人 われわれが今まで経営者といろいろな問題で交渉いたしまして、ことに給与問題についてそういう説明がなされたということはございません。われわれも今の協会経営者が完全であるというふうには思つておりません。しかし、やれる範囲内で努力はしているというふうに考えております。
  133. 甲斐政治

    ○甲斐委員 大体質疑も終つたようでございますので、委員長に一言希望を申し上げておきます。この暑いのに、参考人の方々には特に出席いただきまして、きわめて懇切なる御意見をそれぞれの立場から陳述していただきまして、われわれとしてまことにありがたく考えておる次第でございます。立場が異なれば異なるほど、一層われわれの参考になつて感謝しておる次第でございますから、委員長からもよろしくお礼を申し上げていただきたいと思います。さらに本日出席にならない辰野隆参考人は、先ほど伺いますと、何かの行き違いでおいでにならなくなつたということでございますが、私はちよつと仄聞したのではつきりわかりませんけれども、何らか国会側の手落ちか、あるいは失礼が原因であつたかに聞いております。これは国会の権威と信頼のために、もし国会側において手落ちがあつたのならば、丁重に陳謝、善処されることが必要だと思います。このことについてお願い申し上げておきたいと思います。
  134. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質疑はございませんか。  一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ、長時間にわたつて貴重な御意見を開陳していただきまして厚くお礼申し上げます。先ほど長谷川委員から委員長に対する御叱責がございまして、参考人の方のうちで他を誹誇し、みずからの宣伝にこれ努めた方があり、この発言を許したのはおかしいじやないかということでございましたが、これは御叱責とは思いたくないのでありまして、実は田上参考人の該博にして真摯な御公述を称讃するのあまり、例にお引きになつたものと思います。ここに参考人の皆さんのために厚く御礼を申し上げます。  なお辰野参考人の件でございますが、申し上げますと、一時から二時までの間に裏門の方からおいでになつたらしいですが、バツジがないというので正面玄関にまわつてもらいたいということを衛視が言つたらしい。そうしたら正面玄関をお取違えになられて、正門の方に行かれた。正門は警察官なので、相当官僚的な扱いをしたために感情を害されたらしいです。実情は今調査しております。さつそく辰野さんの方にはお電話を申し上げましておわびを申し上げ、また専門員に自動車で行つていただきまして、至らぬことをおわび申し上げておきました。この点、松井さんもおられますから、十分ひとつ議運の方でもお調べ願いまして、こういうことのないように御協力いただきたいと思います。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十八分散会