運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-25 第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十五日(土曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 中村 幸八君 理事 長谷川四郎君    理事 永井勝次郎君 理事 伊藤卯四郎君    理事 首藤 新八君    小川 平二君       小金 義照君    田中 龍夫君       土倉 宗明君    坪川 信三君       馬場 元治君    村上  勇君       笹本 一雄君    山手 滿男君       加藤 清二君    齋木 重一君       下川儀太郎君    中崎  敏君       山口シヅエ君    始関 伊平君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦澤 大義君         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 七月二十五日  委員中曽根康弘君及び森清君辞任につき、その  補欠として長谷川四郎君及び首藤新八君が議長  の指名で委員に選任された。 同  長谷川四郎君及び首藤新八君が理事補欠当選  した。     ――――――――――――― 七月二十四日  石炭業基本政策に関する陳情書  (第一二〇二号)  中小企業金融公庫法成立促進に関する陳情書  (第一二〇三号)  中小企業金融公庫法案に関する陳情書  (第一二一八号)  電力料金地域差撤廃に関する陳情書  (第一三〇六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  武器等製造法案内閣提出第四四号)  木材防腐特別措置法案首藤新八君外四十名提  出、衆法第三五号)     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず木材防腐特別措置法案議題といたします。御質疑はございませんか。——別に御質疑がなければこれより討論に入りますが、討論はこれを省略し、ただちに採決に入ぼたいと存じますが、御異議ありませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  3. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければ討論はこれを省略いたし、ただちに採決に入ります。本案に賛成の方の御起立を願います。  (総員起立
  4. 大西禎夫

    大西委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました
  5. 大西禎夫

    大西委員長 次に武器等製造法案議題といたし質疑を続行いたします。御質疑は一人大体二十分程度でお願いいたします。齋木重一君。
  6. 齋木重一

    齋木委員 この武器等製造法案に関連いたしまして私は石川県におけるところの小松製作所、これは砲弾をこしらえるとかなんとかいう問題で、内灘問題に関連して非常な大きな問題を提起いたしておる、その根元をなす弾丸製造をやつているそうであります。これらに対して工場長すなわち会社職工首切りをやり、または賃下げをやつて大動揺を来して、一回三百何十人かの職工首切りをやつた現実があるのであります。わが党といたしましては全面的にこの武器等製造法案に対しては反対の意見を表明するものでありますが、こういう問題が起きることにおいて、この法案によつて制約するとか何とかと大臣初め言うておりますが、実際においては政府並びに政党が自由主義をモツトーとしているにもかかわらず、反面においては制約をしておるというようなことに矛盾を生じておる。こういうことを私どもは納得が行かないので、ひいてはこれらの問題が起ると職工首切り賃下げということが派生して来ることを憂うるものであります。こういうことに対しましては、この方面に対して大臣並びに当局はどういうような処置を今後においてとられるかということをお聞きいたすのであります。
  7. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。小松製作所の問題は何か臨時工を解雇したとか、縮小したとかいう話を聞いております。詳しいことは事務当局から申し上げるかと思いますが、そういうふうなことが出で来ませんように、この武器等製造法によりまして、よく会社内容並びに規模というものを規制して行つた方がいいのではないかと私は考えております。政府委員をして詳しい事情を御答弁いたさせます。
  8. 葦澤大義

    葦澤政府委員 お答え申し上げます。小松製作所の問題は、ただいま大臣からもお話がありましたように、臨時工の問題と私どもは聞いておりますが、臨時工はもともと特別の用務従つて一時雇用をいたしたものでありますので、その用務が一定の期間を経過いたしまして終つたという意味において解雇の問題が起きたというふうに、私ども承知いたしております。
  9. 齋木重一

    齋木委員 大臣並びに局長臨時工と申しますが、実際は臨時工ではありません熟練工もその中に包含されて首切りになつておる。それから御承知でもありましようけれども小松製作所弾丸をつくるそうでありますが、弾丸自体一貫作業によつて小松製作所工場内において製造されるのではない。信管はどこそこ、火薬を充填するのはどこそこというようなぐあいにして、ただ組立てをやつて一箇の弾丸をつくる形態のように工場内容がなつておると私どもは思つている。火薬は三重県の火薬工場で充填し、信管は神戸製鋼でやつて、ただ組立てをする工場小松製作所だと私どもは聞いておる。戦時中からそういうようなものを製造いたしておつた工場でありますから、職工といつても大体において臨時工ではありません熟練工です、特需が打切られたいうようないろいろの口実のもとに、これらを大量首切つたという問題があるのであります。ただ単なる臨時工の首を切るというようなことではないということを私どもは言明しておきます。従つてこの法案そのものから矛盾をする点も私どもは出て来ると思うのでありますが、そういうことのないように最善の方法を講ぜられんことを願うとともに、こういう問題に対してどういう対策を——大臣事務当局よりと申されましたが、事務当局もどういうような腹でそういうことに対処されるかを、重ねてお伺いする次第であります。
  10. 葦澤大義

    葦澤政府委員 中小企業なり、あるいは労働者仕事の繁閑に応じて、いろいろな問題が出て参ることは、御指摘のように今後もあるかもしれません。しかしそういう問題も、この法案が成立いたしましたときには、生産を開始する許可の場合に、そういう内容につきましても、申請側計画をよく聴取いたしまして、また契約を履行いたす場合にも事前に届出が行われるわけでありますから、その内容において、中小企業者あるいは労務者の問題につきましても、計画、心構え、用意というものをよく伺いまして、総合された適正なものについて許可をするあるいはそれが不適正な場合には戒告をするというような運営をいたしまして、御指摘のような問題の発生した場合には、それを削除するというような措置をとりたいというふうに考えておるわけであります。
  11. 大西禎夫

    大西委員長 次に加藤清二君。
  12. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はこの法案はきよう上げるという委員長の意思に従いまして、簡単にお尋ねを二、三したいと思いますので、大臣は陣笠の質問に対してそういかめしい顔をせぬで、もうきよう上げるのですから、なるべくにこやかに御指導いただきたい。  第一は、この法案が通過した場合に、通産省人事構成にある程度の相違が来ると思いますが、どのくらいの人員をふやす予定でございますか。
  13. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところでは特に人員を増加しなければならぬようなことにはならぬと思います。
  14. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは現在の人員だけで、規格の検査だとか工場検査だとかいうようなことが十分に行われる、そう解釈してよろしゆうございますね。
  15. 岡野清豪

    岡野国務大臣 その通りでございます。
  16. 加藤清二

    加藤(清)委員 この法案が通過することによつて、今度工場設備がふえますか、ふえませんか。きのうの業界の代表の方の答弁には、工場が余つておるのだ、そこヘアメリカから注文が来たので、渡りに船だからやるのだ、こういうお話でございますが、そのお話を額面通り受取りますと、国有財産遊休施設処理委員会の方でちよつと疑問に思わなければならぬ点が生じて参りますので、それの払下げについては地元の方々も重大な関心を持つて見ておることでございますから、一応お尋ねするわけでございます。
  17. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは今後の武器生産見通しでございまして、その見通しによりまして、業者がこれにどういうような受け答えをするかの問題がきまるのでございまして、これは非常に仮定のことになりますが、今後注文がどのくらい来るかということにつきまして、われわれはまず見通しをしなければなりませんし、それと同時にこれに対して、たくさん遊休設備がございますから、これを利用して注文を受けようという業者がおそらく出て来ると思います。しかしその場合に、やはりこの法案の趣旨にのつとりまして、十分なる検討をいたしまして許可をすることになります。ただいまのところでは、MSAの問題なんかがはつきりいたしませんから、わかりませんけれども、もし日本で相当な注文を受けるということになれば、申請者は出て来ると思います。しかし申請者は出て来ましても、やはりその申請に対して資・格があるかないかということを検討し、同時にその資格検討のうちには、将来の注文見通しというものをつけて許可いたしますから、ただいまのところ、大してふえないのではないかと考えております。
  18. 加藤清二

    加藤(清)委員 ふえないならば遊休施設工場をほかの方へまわすような方途に出てもよろしゆうございますか。
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 平和産業とかなんとか言いますが、兵器を特別として申し上げますれば、ほかの事業に利用し得る遊休設備がございまして、その遊休設備を使つて行こうという者にはむろん許してさしつかえないと思います。われわれとしましては、その業者申請をよく見まして、これに対して適当な処置をして行きたいと考えております。
  20. 加藤清二

    加藤(清)委員 将来の問題についてちよつと承りたいと思いますが、今までの答弁なり質問なりを聞いておりますと、将来の発注見通しは今年度だけははつきりしておるが、来年度以降ははつきりしていない、このように受取れるわけですが、それでよろしゆうございますか。
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 その通りでございます。
  22. 加藤清二

    加藤(清)委員 その通りだとおつしやいますと、もう一つどうしても聞かなければならぬことがございます。この発注者が現在のところは米国一人である。だからこそ他産業にもこういう競争のはげしいところもあるけれども、それにはこういうふるいをかける法律はつくらずに、この武器のみに特にこういう法律をつくる必要性があるんだという葦澤局長の御答弁でございましたが、それでは日本政府は、来年、再来年になつても、製造を許した工場に対して発注をするかしないかという見通しなり何なりがついておりますか、おりませんか、大臣の腹でけつこうであります。
  23. 岡野清豪

    岡野国務大臣 ただいまのところ、その点はよくわかりかねます。日本政府兵器注文するかどうかということにつきましては、まつたく私は存じておりません。しかしただいまのところ、発注者が一本であるから、この法律によつてということは、これは全部じやありません。御承知通り兵器生産法案と申しますのは、いろいろな観点からこうした方がいいということでございますので、発注が一本であつても二本であつても、やはり同じことであります。社会の治安並びに危険を防止するというような意味、また受注者が濫立して無謀な競争をして出血受注をしたり何かするのを防ぐ、またいろいろな危険がございますから、その工場のあり方というようなものもよく検査いたしまして、また武器製造中にとられて社会の秩序を乱すような者に陥つても困る。かたかたいろいろな理由でこの法律を出しておるのでありますから、発注者が一人であるからこの法案を出すということには限らぬ。しかし発注者が二人になりましても、三人になりましても、これは一向さしつかえないことと考えております。
  24. 加藤清二

    加藤(清)委員 一人、二人ということが問題になるわけじやない。その原因の一つが一人だということです。それはそれとして、そうすると、私の聞きたいことは、そういうところが要点でなくして、日本政府は、来年になつても再来年になつても、製造許可をした工場に対して、日本保安隊なり何なりに使用するところの武器発注することができるかできないか、そういうことをするかしないかということを聞いておるのであります。  (委員長退席中村委員長代理着   席〕
  25. 岡野清豪

    岡野国務大臣 もし保安隊なんかでぜひそれがほしいとか、何とかがほしいとかいうような場合に、必要があるとしますれば、むろんその会社注文していいと思います。これは当然であります。
  26. 加藤清二

    加藤(清)委員 現在はそれが許されておりますかおりませんか。
  27. 岡野清豪

    岡野国務大臣 現在はそういう発注はございません
  28. 加藤清二

    加藤(清)委員 許されていないわけですね。
  29. 岡野清豪

    岡野国務大臣 注文がございません
  30. 加藤清二

    加藤(清)委員 現在のところは保安隊で使用する武器はほとんどがアメリカの支援によつておる、こういうことなんですね。
  31. 岡野清豪

    岡野国務大臣 御説の通りでございます。
  32. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。そうなりますと、私はどうしてもここに質問をしなければならぬことが生じて来る。それは、この法律は二重投資を避けるんだ、新しい設備をなるべくさせないようにするんだというような目的である。ところがこの法案の第一条を見ますと、その目的はつきりしておる。「国民経済の健全な運行に寄与する」これが経済的な目的であるということがはつきりしておるわけです。そこでぜひ大臣はつきりしたことを承つておかぬといかぬことが生じて来。と申しますのは、工場設備資金でございますが、それは政府援助をするのですかしないのですか。
  33. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これはむろんその会社が十分財政的の基礎を持つておるということが、その会社許可する一つ条件でございます。大体においてそれは財政的には十分やつて行けるというものでございます。しかし流動資金とかなんとかいうようなものは、むろん金融の面にたよらなければならぬ。そこでもしそれが開発銀行あたり資金対象になり得るということであれば、むろん開発銀行に対してそういうような政府資金を投ずるようなことになるかと存じます。それは許可申請をしてある会社、同時にその会社が運行して行くその過程におきましてその当時の事情をよく勘案しまして、金融の道の中に政府資金を投ぜられることもあり得る、こう私は考えております。
  34. 加藤清二

    加藤(清)委員 運転資金は、融通することがあるかもしれない。ところが設備資金はいかがでございますか。
  35. 岡野清豪

    岡野国務大臣 その設備資金の点におきまして、市中銀行対象にならないで、しかもその会社としてやはりやつて行かなければならぬという、いわゆる必要条件が備わりますれば、やはり開発銀行あたり金融機関としての対象になる、こういうことでございます。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 援助というても、融資をするという援助でございますか。
  37. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それはあつせんをいたしましてやります。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 融資のあつせんですね。
  39. 岡野清豪

    岡野国務大臣 さようでございます。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうなりますと、ぜひ承らなければならぬことがございます。大体自己資金でやらなければならぬ、こういうことですね。ここが一番私の聞きたいところでございますから、そこをはつきりとお答え願いたい。今までのことは前提条件です。会社自己資金によつて設備をして、アメリカから注文を受けてつくつた。その間にいろいろな干渉があつた。昨日のお話によりますと、経理監査まで行われている、こういうことです。価格の強制もされた。ところが最後にぶつ倒れたらめんどうを見るか見ないかと質問したら、めんどうを見ないという結論になつて来た。この場合に日本政府としては、ぶつ倒れた場合にめんどうを見るか見ないか、この点が聞きたい。
  41. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。兵器生産会社と申しますものを、こういうふうないろいろな観点から規制をしていることは、日本財界並びに一般社会情勢から必要であるというために、最小限度規制をしておるわけでございますが、しかしその生産業者というものが企業を行いますのは、まつたく私企業でございますから、その私企業において自分自身で、自己資金設備をすべきものである。しかしながらその自己資金でも足りないし、しかし必要に応じて相当な設備も拡張しなければならないというような場合には、もしわれわれが必要と認めますればあつせんをいたしまして、融資もくふうして差上げよう、しかしこれはまつたくコマーシヤル・ペースでやることでございまして、これが経理とか何とかいうものは、いろいろわれわれも参加いたしまして、経営が困難にならないようにはやつて行きます。しかしこれが行き倒れたからといつて政府が国家補償によつてこれを助けて行くというところまでは、私ども考えておりません
  42. 川上貫一

    川上委員 関連して。非常に簡単なんですが、今の大臣お答え、その通りだと思う。これは何ら政府が補償したり何かをしたりするものじやない。だからあぶない。兵器生産しておつたら、軍事基地を多くして戦争を始めてくれなければもうからない。そこでちよつと聞きたいが、内灘の接収問題について、武器製造業者が、政府はなぜこれを早く接収せぬのか、すぐ鉄砲をぶつぱなしてしまつたらいいのだ、こういうことを、関西並びに関東の一部の業者から政府に強引に強要した、こういう事実を通産大臣は知つておられますか、知つておられないか。またそういう事実はないと確言されますかどうか。これだけ伺いたい。
  43. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私寡聞にいたしましてそういうことを聞いておりません
  44. 加藤清二

    加藤(清)委員 皆さんお急ぎのようでございますから、了解しにくい点があるかもしれませんが、簡潔に質問しますから、大臣も簡潔にお答えを願います。そこで自己資本仕事を始めた、政府許可がとれた、やれうれしや、発注を受けた、その間いろいろな干渉を受けた、そして結局採算がとれずに、すでにはやぶつ倒れたところもありましよう。そういうものが将来生ずるか生じないかという見通しについて、大臣はどうお考えでございますか。
  45. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はそういうことのないように全力をあげて努力したいと思いますけれども、しかしただ単純に財界のことはわかりませんので、ほかに大きな不況が起きるとか何とかいうことで、それに関連していろいろな情勢経営困難になることもないとも限りません。でございますから、ただいまのところでは、人間見通し得るところの最善の注意を払つて、そういうことのないようにしたい。同時に相当注意すれば、そういうことはないのじやないか、こう私は考えております。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 さきに通産大臣にもこの通りのことをお尋ねしたわけなんです。そうしたら、ことし一年間は大丈夫だ、来年、再来年はわからぬけれども、ことし一年間は大丈夫だと言われた。いやそれははつきりできないでしようと言うて、私はそのときに疑問を残しておいた。そうしたら案の定、半年たたぬうちに、朝鮮の休戦と同時にがたくして来て、御承知通り株が下りました。おかげでどういうことが生じて来たかというと、会社が困つただけでなくして、今までさる会社が、この遊休施設は私の方が受けたい受けたいと言うて、再三再四地元人立ちにいろいろなことをしておいたので、それじやまあと言うて、地元の人もその気になつてつたところが、きようこのごろになつたら、そういうようなものはいりませんというようなことになつた。それで地元当局者はつきり言えば、市長さんや助役さんや議会なんかが、てんやわんやで困つてしまつたことがある。そういうように、よそにまで影響を及ぼして来る。しかしそこまでは、悲しいことに人間の力で思考できないとしても、思考し得る範囲がございます。そこを私は大臣にお尋ねしたいと思いまするが、まず第一点に、コストを決定するときにどうやつて決定したらよろしゆうございますか。つまりことし設備をしたとしましよう。それが来年、再来年注文があるかないかわからないでしよう。この間富士産業の見学にも行きましたが、第一回の注文を受けたけれども、二回、三回の注文はわからないという社長答弁でした。その研究費にずいぶん費用を使つたというお話でした。次に二回、三回なければとても採算が合いませんと、参議院議員である社長さんがはつきりとお答えになつていた。こういうことになりますると、自然出血を予定しなかつたけれども、遂に出血つたという結果になる。その仕事が過去の蓄積において行われた、こういうことになるわけです。そこでコストを決定する場合に、いろいろありまするが、コストは、アメリカ法律によつてアメリカの国内の値段よりも日本値段は安くなければならぬということに相なつておる。おまけにがちやがちやその入札の変更がございまして、ますます安くさせられざるを得ない。こういう状況なんですが、これに対する手だてのために、こういう法律ができるのかもしれぬけれどもメーカーの立場に立つた場合に、ことしのコストは一体どうきめるのですか。銀行家であらせられるあなたなら、よくおわかりになると思いまするので、その点、メーカーはどうコストをきめたらいいかということを伺いたい。
  47. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の考えといたしましては、企業は常に投機であります。先の見通しがよく見えて、そうして自分のつくるものを最も適切な分量でつくつて、しかもコストを安くしてやつて行く、そうしてもうけて行く、そこでもし日本がこういうものを国営でしておるという場合には、政府コストをいろいろ考えてやらなければならぬかもしれません。しかし規制はいたしましても、これは自由企業でございますので、企業経営者というものが自分自身で、どうして——むろん企業でございますから、もうけて行きたいためにやつておるにきまつている。そうしますと、もうかるようなもくろみ書をつくり、同時にそのもくろみ書によつて自分経営内容をいろいろ研究し、同時に結論を出して、それから生産コストをはじき出すということでございまして、そういう場合に、見込み違いであつて損をしたとか、つぶれるということになつたら、これはやはり企業経営者の大半の責任だと思います。しかしそのコストにつきましては、やはりわれわれもあまりに無謀な競争をされては困りますので、できるだけこういうふうな出血受注をするような値段で売るようなことはおよしになつたらいいだろうというようなこともアドヴアイスしなければなりません。そこで契約なんというものも一応は届け出てもらいまして、こういうふうにやつて、これなら損をしないだろうということを、間接には見て行きたいと思いますが、しかしコスト決定は一に企業家自分のデイスクレツシヨンによつてつて行く、こう私は考えております。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、コストは一に企業家経営手腕による。昨日の参考人答弁では、腹による、こういう御答弁でございましたが。それではもう一つ、今度は政府側に立つた場合の観点においてお尋ねしたいのですが、ことしの設備は来年、再来年、その次と償却して行かなければならぬはずなんですが、来年、再来年の注文はさつぱりわからぬ、こういうことになりますと、減価償却ということは全然できぬわけですね。その場合にここから税金を徴収する方の側は何を目標にことしの収益を決定するのでございますか。その折に減価償却ということはオミツトして行われようとするのでございますか。その点をはつきりお尋ねしたい。通産省としてはどのような指示をなさろうとしていらつしやるか。
  49. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。結局特需注文というものは、私の今の考えではそう永久に続くべきものではない。そうしますと経営者の側におきましてはそう長く注文もない、だからできるだけ早く償却しておくべきものだ、こういう考えが起きると思います。そこで償却はやはり事情に応じて早くさせなければならぬということも出て来ますので、その辺のところは私、企業家の立場に立ちまして、同時に今後の兵器生産というものの見通しにつきまして、償却はなるべくすみやかにやらせ、同時にそれに対するある程度の税法上の関係も考えなければならぬ、こう考えております。
  50. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣さんはすみやかにという抽象的な言葉で事は足りるけれども、実際具体的にことしの収益から減価償却の分をどれだけ差引くかというようなことは、これは数字の問題で、抽象論では行かぬわけなんですが、それではことし一年だげで全部差引いてしまつてもよろしゆうございますか。
  51. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。それはいろいろ関係の省もございますので、通産大臣はこういうふうなとが希望であると申しましても、制度上いろいろのこと奮呈すので、その辺のところはよく検討いたしまして、そうしてできるだけ私の趣旨に沿うように持つて行きたいと思つております。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 きめられた税法によれば、この機械は何年間、この機械は何年間ということがきまつているはずですね。それを今の大臣さんの言葉によればすみやかにやる、こういうことになりますと、そのすみやかという言葉は現在行われている税法上の規則を破つてもよろしいのでございますか、破つてはいけないのですか。
  53. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまは、法律にきまつております以上は、法律の規定通りしかできません
  54. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうするとすみやかにとおつしやいましても、すみやかにできないですね。ことし一年で差引いてよろしいという法律はないのだから、いくら短かくても三年から五年、多いものについては十年間の償却にこの機械設備はなつているわけですね。そうなつた場合に、せめて来年、再来年のアメリカ注文がわからなければ、日本側がこれを保証するとか何とかいうことになつておれば法律通りに行けますけれども、それができない場合の問題に相なつて参りますると、これは一体どういうことになるのですか。具体的にどうやるとよろしゆうございますか。
  55. 葦澤大義

    葦澤政府委員 加藤さんは事業を経営なさつていらつしやるので、償却のこともよく御存じだろうと思うのですが、償却はお話のように、あとの注文が相当あるかないかというところにかかつて来るわけでありますから、そこで一番安全を見積りますると、それに使用した機械をその注文だけで償却してしまうということにすれば一番安全なことはもとよりであります。しかしながら全部の機械がほかに全然転用あるいは利用できないという場合もないわけではないのでありまして、その製品にだけしか使えない機械というものがあれば、その機械だけはその注文だけで償却をしてしまうということが安全でありましようが、その他のものにつきましては、他の仕事によつてまだ働く機会もあるわけでありますから、そこにおのずから償却の長短が出て参る。かりに割増し償却というようなことにいたしますと、現在の法律体系のもとにおきましては租税措置法によつてこれが規定されるわけでありますので、それの政令なり、あるいは大蔵省との関係になりますが、省令なりの改正によりましてそういう措置ができるわけであります。しかしながら根本的にさらにそういう償却制度に改正を加えるということになりますれば、これは法律の改正ということになりまして、そこに時間的のすみやかとか即時にということはおのずから長短が出て参るということでありまして、私の説明は加藤さんはもうすつかり一部始終御存じのことだろうと思います。御了知願えるというふうに思うわけであります。
  56. 加藤清二

    加藤(清)委員 実はこの法律をつくることによつて通産省は、お前のところはこの仕事をやつてよろしい、お前のところはこの仕事をやつちやいかぬ、こういうことになるわけでしよう。これはふるいにかけるのですから……。そうすると、お前のところはやつてよろしいと許可した以上は、そこのめんどうは見ないとしても、税金をどう納めたらいいかぐらいのことを質問された場合に、これで答弁ができぬという係官がおられたら、これはとんでもないことになるでしよう。そこで今の局長さんのお話でございまするが、同じ旋盤にもいろいろございまするし、ほかに転用できる旋盤もありましよう。ところがそれにしか使えないという機械もあるはずでありまするし、同じたまにしても、雷管にしてもあるいは補助ターンクにしても、日本のと規格が違うのです。溶接の仕方までが違つているのです。それをみんな向う様の言う通りに、こちらはまねてやらなければならぬのです。その研究のためにずいぶん費用がいるのですよ。その費用は会社の過去の蓄積によつてやるまではやつた。ところが注文は一回きりで切れたということになりますと、減価償却を一回だけでやつてしまえばいいけれども、それができぬ場合に、あとは出血だ、こういうことになるわけですね。その点をどうしてくれるか、こういうことなんです。
  57. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は加藤君のお説ごもつともと存じますが、こういう一つの前提を……(加藤(清)委員「理論じやない」と呼ぶ)理論です。と申しますことは、これはある会社に物をつくれという命令をしたときにはむろんめんどうを見なければなりません。しかしこれは私企業でございますから、とにかく経営者そのものがこれで採算が合うと思われなければ自分で事業を始めようはずがない。そういたしますればその見込み違いによつて損したとか、償却ができない——償却は今の法律によつて注文をとつて、それによつてつて採算がとれると思えばこそ私企業をつくるのであつて採算がとれぬと思うものが事業に従事しようはずはないと思います。実業家としての頭から考えればそう考えます。
  58. 中村幸八

    中村委員長代理 加藤君、お打合せの時間も大分過ぎましたし、あとの質問者も残つておりますから、一問だけ……。
  59. 加藤清二

    加藤(清)委員 他にまだたくさん逐条質問の要点がありますが、もう一点だけで終ります。  さらにお尋ねしておかなければならぬことは、そうすると減価償却の場合。も、コストの場合も、一にかかつて経営者の手腕にまかせておる、腹にある。その場合にもうけようと思う者ならば、つまり採算を合せよう、そろばんを合せようと思う者ならば、おそらく一回でやるかもしれません。ところが一回で償却しようとしたつて、向う様の値段がございますから、それはできないかもしれない。そうすると注文が切れて、切捨てごめんということになりますと、これは業者はやむなく税の面の減価償却だけは一年でやつてしまうところができるかもしれない。腹にまかし、手腕にまかしたのであるから……。そういうことは予見できます。ね。しかし業者はもうからなければやらないのですから、銀行ももうかるところでなければ金を貸さないのですから、来年、再来年のことはわからないというような設備には絶対金を貸しません。そうなると、腕にまかしておいた、それを一年でさつぴく、こういうことも予見できるお覚悟でいらつしやいますか、そういうことはわしや知らぬとおつしやいますか、いずれでございますか。     〔中村委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は、どうも御質問の趣旨として、私企業の性質がはつきりとつかめないのでございますが、と申しますことは、注文を受けるためにもちろん企業経営するのでございますが、それが一年しかできないのなら一年で、現行の法律下において許されておる範囲内で仕事ができて、しかももうかるというものでなければつくらぬと思うのです。でございますから、ことしは注文がありそうだけれども来年はないのだといえば、それに対して、ことし一ぺんに償却してしまわなければならないような採算で、しかもその採算では向うが引受けてくれないというような事業なら、事業家は経営しないと、思います。そういう意味におきまして、私は私企業経営者見通しを立てて、何年くらいは注文があるだろうとこう自分考えて、どのくらいの値段にしてどのくらいの償却で、すなわち現行法で許されたところの償却で、どのくらいならほぼ採算がとれる、それがもくろみ書になつて——新しい会社をつくればそうなるわけですから、私は御説のようなことは、おそらく見込み違いで、ことし一ぱいにしてしまわなければならぬというような場合に追い込まれた場合の苦難の考え方だろうと思います。しかしそれは今後あり得ないことだと思います。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 今後はあり得ないという言葉を聞いて私は安心しましたが、過去においてはそういうことがあつたはずです。そのことは大臣もよく御存じのはずです。今後はそういうことはあり得ない、一年間に償却しなければならぬようなことはあり得ないとおつしやるならば、やがてはMSAの注文なり、アメリカの別な注文なり、あるいは日本政府注文なりがしばらくの間は続くであろうということは、すでに政府においても予想されているはずなんです。そこで、それについて実は一問一答でいろいろお尋ねしたいのですが、委員長からの注意もありまするので、私はこれで質問を打切りたいと思いまするけれども、問題は、せつかく法律をつくる以上は、企業が成り立たなければならないということも大事でございまするが、ほんのしばらくだけ仕事があつたために、雇われたけれども仕事がなくなつたので、ちよんと首を切られる働く方々の方が一層気の毒な状況に追い込まれて行くわけでございます。こういう点について慎重にお尋ねしたかつたのでございますし、また将来の注文量、MSAがはたして一万五千ドルで終つておるのか、六万五千ドルあるのか、それをはつきりすることによつて業界も人員の問題やら首切りの問題やらある程度将来の見通しがつくじやないか、こう思つてつたわけでございますけれども、注意が再三ございますので、私の質問はなまはんかで、ほんの緒論に終るわけでございますけれども、この程度で終つておきます。
  62. 大西禎夫

    大西委員長 次に中崎敏君。
  63. 中崎敏

    ○中崎委員 自由主義の基調の上に立つておる現内閣並びに岡野通産大臣考え方から言いますと、明らかにこの法案自由主義考え方を大きく是正するものだというふうに考えておるのであります。ところで、一応それはそのまま受入れるといたしましても、ことに武器に対してのみ自由主義を著しく変更しなければならないという理由がわからないのであります。たとえば私たちの考え方から行きますと、武器一つの商品である。また国の産業から言えば、重要な商品は武器ばかりではない。国の産業の地位から言うても重要な産業はたくさんある。そういうふうなものは手放しに放任されておつて、ただこの武器製造のみが大きな制限を受けるということについて、私たちはその設立の意義がわからない。そこで武器に何ゆえこうした制限を設けなければならないのか。その理由といたしましては、たとえば出血受注とかあるいは濫立防止とか言つておられる。現在日本産業のあらゆる業界を見ても、業者が多過ぎて無用の競争をやつている面がある。紡績についてもそういうことが言える。その他重化学、軽化学、ありとあらゆるものがそういうことに悩まされている。ひとり武器にのみそういうことが成立つという根拠がわからない。そこでこの点納得の行くように御説明願いたい。
  64. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。なるほど自由党政府といたしましては、自由主義経済を標擁しております。これに対してこれだけの規制をいたすということはなるほど例外でございます。ただ例外と申しますけれども、これはいろいろな事情がございます。御承知通り、昨年の夏ぐらいから非常に兵器発注が多くなりまして、たくさんの業者が濫立いたしまして自由自在に経営をし、また業を始めるということができるものでございますから、そういたしますと、あまりにも業者がたくさんできると同時に、その業者に基礎のしつかりしていないものも入りまして競争に加わる。はなはだしくなれば、この注文さえとればあともう倒れてもよいというような冒険心まで出してやつているような業者もないとも限りません。そういう点からいたしまして、日本国民経済としまして、できるだけ採算がとれ、同時に業者が倒れることのないように、倒れると申しますことは、先ほども仰せになりましたように、労働者あたりが、せつかくよいところへ使われたのに、途中で倒れて首を切られるとか、やめさせられるということがあると、社会に経済的な混乱がたくさん出て来るようなことがありますものですから、やはりしつかりした会社経営させると同時に、仕事を受注させて、その受注もあまり無謀な競争をやらないようにいたしたいというのが一つのねらいであります、と同時に、もう一つは、兵器と申しますものはむろん武器でありますから、これが監督不行届で、発注者に正当な筋道で渡つて行くならば社会の秩序を乱すことはないと思いますけれども、もしこれがどろぼうにとられるとか、もしくはそつとほかの用に供されるとかいうようなことがありますと、これは国民生活上非常な不安を来すわけでございますから、その辺のところは十分監督してやつて行かなければならない。いろいろな事情によりまして、自由自在にやつておるというような業種を武器生産に関する限りは、今回これをひとつ規制して行きまして、経済的に日本財界に安定を与える、同時に社会的にそういうような不安の根を根絶するという意味で、今回の法案を提出して御審議を願つておる次第であります。
  65. 中崎敏

    ○中崎委員 二つの理由をあげられましたが、その一つの理由については、たとえば繊維にいたしましても、コムにしても、皮革にしても、あるいは油脂にしても、あらゆる事業がみな競争をやり過ぎて青息吐息の状態にあるので、これは依然として武器だけの理由は認められないのであります。ただあとの理由でありますが、つくられた武器が野放しにあちらこちらをまわつてつて、これが公安を害するおそれがあるから、事前に規制をして取締りをして行くという考え方は、一応納得が行くのであります。しかしそうかといつて、今日までとにかく野放しの状態にあつた武器製造については、こういう法律がなかつたためにその間において一体どういう弊害があつたか。去年あたりから武器製造業者は濫立してたくさんあると言われておる。それが過去一年間において許可制でやらないために実際においてどういう実害があつたか。またたとえば猟銃とかピストルとか爆薬とかいうものについては、それぞれの取締り法規があつて、その販売についても一々厳に取締りを受けておるから、何をだれが持つているかということもわかつておるはずだ。それでさえもなおかつ不十分であるというならば、この法律によつてそれ以上に守られるとも考えられない。いわばもぐつて、やみからやみへと法律を蹂躙してやつておるのでありますから、そういう者に対してはどういう法律をつくつてもだめだ。そういう意味において、あの現在の取締り法規以上に必要性を認められない。そういう理由であなたの御答弁は私の場合においては正しいと考えられないのですが、二つの質問に対してお答えを願いたい。
  66. 葦澤大義

    葦澤政府委員 御質疑ごもつともな点があります。現在武器はなるほど自由なことになつておるのでありますが、ただ所持につきまして制限がされております。ところが実際上武器生産をしております者の所持は規定がないわけでありまして、便宜な取扱いをしているというような状況であります。のみならず、現在までのところ大体十社ぐらいのものが武器生産をしておるのでありますけれども、われわれの承知しておる範囲内におきましても、六十社ぐらいのものが生産の希望あるいは準備をしておるというような情勢でございまして、これが生産財でありますと、国全体の経済の上から見ましても、相当効果があるという見方もできるのでありますが、何と申しましてもこれは生産されましたものそれ自身が不生産財でありますので、そういつたものの設備が過大になつて参るということは、やはり全体の上から見ますと憂慮すべき事態であるというふうに考えられるのであります。
  67. 中崎敏

    ○中崎委員 生産財であるか、不生産財であるかということの問題でありますが、不生産財であるならば、設備の拡大をチエツクするだけの強力な手が打たれる、言いかえれば国の計画経済に基いて、こういうものとこういうものは急を要さないものである、しかも不生産財である。だからそれには貴重な国家の資金、資材をつぎ込むべからずという規制をきれるなら話はわかる。だが武器だけに不生産財という理由をつけられることはどうしてもわからない。  そこで私は今度は角度をかえてお尋ねいたしますが、近く独禁法が改正されて法律化されるという状況になつて来ておるのでありますが、これによつてこの独禁法改正の主たる目的である出血受注、あるいは会社の濫立というものを防ぐ方法があり得ると考えるのでありますが、この法案の適用によつてはこの目的は達せられないのかどうかということをお聞きしたい。
  68. 葦澤大義

    葦澤政府委員 御説のように、独禁法の改正がもしできますと、不況カルテルあるいは合理化カルテルということによりまして、お説のような趣旨を達成できる場合があるかもしれません。しかしながら現在のように武器発注が非常に特定なものに限られております場合において、これを受注する面の側ではたしてそういうような話合いができるかできないかということは、現在の状況から徴してみますならば、非常にむずかしい事態があるのではないかというように思われるわけであります。
  69. 中崎敏

    ○中崎委員 現にこの委員会において審議中でありますが、輸出取引法の一部を改正する法律案というのが出ております。これにつきましては、今の政策がかりに武器生産が一応輸出を対象としておるものであるとすれば、カルテルもつくることができる、あるいはまたそうしたものの組合もつくることができる。またアウト・サイダーに対しても相当強力なる組合としての発言、あるいは通産大臣としての監督権、命令権というものが発動されるような仕組みになつておるのでございます。これがそのまま通過されますかどうかは別として、一応そういう法律案が現に出ておるのであります。これが法律化された場合において、これを適用して武器の輸出を対象とするいわゆる特需も輸出として見られるかどうかということは一つの問題でありますが、かりにそういう範疇に入るとすれば、改正された輸出取引法を適用することによつてその目的が達成できるのではないかということも考えられるのでありますが、この点についてお聞きしておきたい。
  70. 葦澤大義

    葦澤政府委員 輸出取引法の改正案が提案になつておりますが、これは特需を対象にしておりません。かりに特需を対象にいたすにいたしましても、何と申しましても特定な注文者から参りまして、その注文者をはずしたならば、ほかに注文がないだろうと思います。輸出入の場合におきましては、たとえば鉄にいたしましても、機械にいたしましても、その場合両者の商談が成立いたしませんでも、また他の不特定多数の需要者が予想されるわけでありますから、そちらの方に話をするという機会もあるのでありますが、武器は何と申しましても限られた発注者のわけでありますから、それの話がつかないことには一切商売ができないという事態になりますので、そこにおのずがら差異があるというふうに考えられるわけであります。
  71. 中崎敏

    ○中崎委員 相手が特定者であるとか少数者であるとかいうようなことは、取引の上において重大要件ではないと思うのであります。といいますのは、たとえばドル貨を稼ぐんだから、外貨の面においても一つの輸出の範疇に入るべきものであると思う。そうすると、武器を特定の国なら国との交渉において受注をする際において三名なら三名の業者が、おれたちは今度加わらぬ、出血受注はやめようじやないか、やたらにコストまで割つて注文を受けるのはやめようじやないかという話合いもできる機構になつております。これが今までできなかつた。ところが今度法律化されれば、今度はそれによつて、相手が特定であろうと何であろうと、おれたちはそんなことでは注文を受けて仕事をやらないのだという腹構えもできる。そういう意味合いにおいて、むしろこの取引法の範囲解釈を広げてそういうものを当てはめてそういう法律の適用を受けるように業者を慫慂したらどうかというふうに思います。
  72. 葦澤大義

    葦澤政府委員 お説のようなこともできる場合があろうかと思います。しかし何と申しましても、現在大体六十社以上の多数のものがそういう話合いがつくかつかないかということになりますと、私は話合いがつくだろう4想定するのはむずかしいのではないかというふうに思います。ただお説のように二社なり三社のものが話合いをするという可能性はあろうと思うわけであります。
  73. 中崎敏

    ○中崎委員 特需の実情については知りませんが、たとえばアメリカの軍の方から砲弾の受注を何ぼ受ける、あるいは鉄砲のたまを何ぼ受注を受けるという場合に、六十社がわつと殺到して行くものではない。このうちで大体自分の方ではこういうものだという見通しを立ててその中の何社か出て来るんじやないかと思いますが、業種別でもよいのでありますが、一つの組合をつくつて、それによつて一つの統制された動きをすることによつて、水も漏らさぬところの相手に対抗して行けるのではないかという考え方を持つのでありますが、そこに行けば業者は利にさとい、自分がうまくやろうというものもあるけれども、こうした有力なる法律武器があつて、その恩恵を受けてお互いが利益をはかれるという場合においては、必然にそういうものがうまく運用されるのではないか。それだからこそ、今度局長が出しておられるような輸出取引法の一部改正の法律案が出されて、有効にこれが利用されるという考え方の上に立つている。であるから、せつかくその法律ができるならば、この場合においてもこれを適用したらどうかというふうに考えるのでありますが、これはこれ以上申しません。  ところで一応こういうふうにやれるとすれば、少くとも当局の方では一つ計画がなくちやならぬ。どれくらい注文が来るのか、前途の見通しがどうなるかわからぬのに、これだけの設備は多いとか少いとかいうことは言えないはずである。でありますから、どうしても当局においてははつきりした計画があるだろうと思う。たとえば今年度はどうとか、来年度はどうとか、その次はどうというふうな見通しが立たず、お先まつ暗の上で、この会社許可するとかせぬとか、この設備は多いとか少いとか言われるのはおこがましい。実際迷惑である。であるから、十分確信を持ち責任の持てる範囲における計画があるはずである。その計画をまず聞きたいということが一つ。もう一つは、一応これはいいといつて設備許可をする。ところがまた次に思いがけなく大量に注文が来た、つまり過剰の注文が来たという場合においては、これは日にちのずれがあつても、許可するからいいとして、さて設備許可し過ぎた、その後の実情においてそれだけの注文が来なかつたという場合においては、減さなければならぬ。その場合に今度は減すだけの考え方を持つておられるか、この点をお聞きしたい。
  74. 葦澤大義

    葦澤政府委員 今お尋ねの点は本法案の非常に重要な点でございましてこれは数回論議を重ねられた重要な点だけに、われわれとしても大いに慎重に考えなくちやならぬと存ずるのであります。注文の程度は、再三御説明を申し上げましたように、大体来年は今年と同じ程度のものがあるという見通しでございますが、種類別にわけて考えなければならぬわけでありまして、この法案の中にあります審議会におきまして、その具体的なものにつきまして一応の見通しをつけて行きたいというふうに考えております。二年、三年の先はわからないじやないかという御質疑につきましては、なるほどその通りでありますが、そういう事態がなるべく早くなくなりまして、早くわかるということをわれわれとしては期待しているわけであります。また一旦膨脹いたしました設備が、注文がなくなつてそれを削減しなければならぬという事態もあり得るかと思いますが、そういう際においてそういう設備を削減するということは、本法の規定にはございません。そのときは従つて過剰のままに残るわけですが、そういう事態を来さないように、事前に慎重に注意する必要がありますが、それにしてもそういう事態が参つたというときには、そこにおのずからやはり業界との話合いによりましてそれに善処する方策をきめなければならぬというふうに存ずるわけであります。
  75. 中崎敏

    ○中崎委員 この法律がで、きてこれが適用されたあかつきにおいては、たとえば兵器生産のための設備、準備なんかを整えている向きもあるが、それが許可を受けない場合もあり得る。そういう類のものに対して一つの補償を考えておられるか。言いかえれば、企業合理化というような場合においては、かつての戦争中の場食いろいろ企業の統合整理をやつたが、やはり一つの補償というようなものも考えられておつた。これをやりつぱなし、切りつぱなしで、切捨てごめんというような結果になるものなのかどうか、それをひとつお聞きしたい。
  76. 葦澤大義

    葦澤政府委員 そのときは切捨てごめんというようなことでむろん事態は解決しないのでありまして、いろいろ金融的な措置なり、あるいは他の産業に転換するなら、転換するあつせんなり、そのときに法律の規定をまたずして、その設備の活用と申しますか、転用と申しますか、そういうことについて措置せられるものだというふうに考えているわけであります。
  77. 中崎敏

    ○中崎委員 元来自由な立場において自分が事業をやる場合は、それで損をしてもやむを得ぬ。国家の方で、これだけはやらす、これだけはやらせないというふうな強権の発動によつて損失を受けた場合においては、当然国家において補償するのがものの筋だろうと思う。これについてただ行政措置ではわれわれは信頼できない。一つ法律をつくつてこれで強力な実力を発動してやるというのに、片方は切捨てごめんだ、行政措置でやるというような、そういうなまぬるい、無責任なことでは困るから、そういうものについてはこの法律の中に何らかの措置を講ずるという一つの条項を差込むだけの考え方を持つておられるかどうか。
  78. 葦澤大義

    葦澤政府委員 そういう事態に対処する対処の仕方について事前に法律の上においてそういう規定を設ける必要はないと存じます。と申しますのは、そういう場合に善処する仕方につきまして、法律の強権的な力をまたずして解決する道が幾多残されているというふうに考えるからであります。
  79. 中崎敏

    ○中崎委員 それでは一体どういうふうにして責任を持つか、それを明らかにしてほしい。ただ道は幾らもあると言われてみたところで、首を切られた業者としては、それであきらめられない死活問題である。であるから、それに対して一体どういう措置を講ずるかということをはつきりしてもらいたい。
  80. 葦澤大義

    葦澤政府委員 ただいま申しましたように、他の事業をしたいという場合に、その金融のあつせんをする、あるいはそのときに償却等について別途の考えを持つ、あるいは税法上減免の措置をとるとかいうことは考えられるわけであります。具体的にはその事態に処して考え、単なる行政的な措置では解決しないというときに、初めて法律の根拠による解決策というものを打出されてもいいんじやないかと存ずるわけであります。
  81. 中崎敏

    ○中崎委員 どうもわからないのですが、まず第一に、税法上の措置がただ単なるあなたの口頭禅でできれば一番いいのです。言いかえれば、税金の減免ということは特別の法律の裏づけがなければできぬのです。それは言うまでもないことでありますが、そういう裏づけを現在においてやられるだけの熱意を持ち、その責任を持たれるかどうか、そういうことができればそのときに考えると言われますが、そうであるならばこの法律もいらない。将来注文がよけい来るかどうかも今わからない。にもかかわらず、注文がよけい来ないような場合においても、設備がよけいできたりしては困るから規制すると言われる。将来を予想してやつておられる。であるから、その将来の予想の上に、結局あるものが出血せざるを得ない。言いかえれば、首を切られざるを得ない。こういうこともはつきりしている。そのためにこの法律はつくられる。はつきりした事実の上に、これを無視して、そうしてそれだけは将来に譲るのだ、これだけをつくるのだということが、どうも私はわからない。その点をもう一度はつきりしてもらいたい。
  82. 葦澤大義

    葦澤政府委員 少くとも来年一年は現在と同じくらいな注文がある、こういう予想に基いているわけでありまして、それから先がかりにはつきりわからないにいたしましても、しかしその一年に善処するという意味においても本法の意義はある。ましてその先がわからないのでありますから、お説のようにそこですつかりなくなつてしまうということになるのか、それからさらにまた来るのかというところは、これは見解の相違ということになると思うわけです。
  83. 中崎敏

    ○中崎委員 少くとも一年はあまり大きな増減がない、変化がないという見通しのようでありますが、そうであるならば、現在やつておる実際の武器製造のための設備、並びに現在やろうとしておる、もういつでもやれる段階に入つておる設備、これだけは無条件で認められるのかどうか。
  84. 葦澤大義

    葦澤政府委員 むろん無条件ではないのでありまして、第五条に規定いたしてあります条件に合致するということになるわけであります。
  85. 中崎敏

    ○中崎委員 それではちよつとおかしいのであつて現在においても、とにかく現在の受注に間に合うべき一つ設備はある。これを企業整備ではつきりやめさすということならば、企業整備の方針に基いて、別個の整備要綱を持つて来られるならわかる。それが単に来年もことしとあまり違いがないというならば、現在の設備、それから現在やつても間に合うところまで来ておるようなものも一応そのまま認められて、その後において新しくどんどんできて来ようとするものに、君たちは設備をやたらにやつてはいかぬのだという事前の予告を与えるという意味と、それからぽんとうに今度は余り過ぎた、そういうふうな場合にどうするかというような二段の問題があると思うのであります。とりあえず来年もことしと同じだということなれば、現在の設備でやつておるところ、並びに現在やろうとして間に合うべきところまで来ておるという種類のものまで認められないというのは筋が立たないと思う。
  86. 葦澤大義

    葦澤政府委員 全体の金額から申しまして大体同じ程度だということでありまして、武器の中にも非常に範囲が多いわけでございますから、第一条に定義をいたしておりますように、たとえば現在銃弾を相当つくつておりまするが、砲弾の方が多くなるかもしれない。あるいは部品の注文が多くなるかもしれない。それに応じて、設備、機械というものが相応したものがそろわなければならないわけでありますから、むろん現在つくつておりますもろもろの注文が、内容そのものにかわりなければ、現在のものがそのまま行くわけでありまするが、いろいろ武器の中にも種類が多いのでありまして、その中の調整は必要なわけでありまして、本法の意義がそこにあると思うのであります。
  87. 中崎敏

    ○中崎委員 あまりこの問題に深入りしませんが、ただ今の点についても、たとえば種類は実際違うでしよう。多少ふえるものも減るものもあるでしよう。あるいは数量においてもそういうことがあるでしよう。大体においてどこに駐留しておる軍隊がどの程度のものをやるのだということですから、そう大きな変化があろうとは思わない。それはそれでいいですが、MSAの問題が非常にしばく問題になつているのでありまして、もう草案まで起草するというところまで行つておるのでありますが、MSAというものは、武器製造法律の適用上重要な問題であり、われわれもまた重大な関心を持つておるがゆえにお聞きするのですが、通産大臣においてある程度武器製造のこの法律に関連性があるという面において多少の新しい知識、情報を得られておるかどうか、それをひとつお聞きしたい。
  88. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところでは、MSAの交渉は始まつておりますけれども、この注文のことには何ら触れておりませんし、ただどういうふうに取扱つて行くかというような根本のことを交渉しているように私は聞いておりまして、MSAによつていかなる注文が出て来るか、また何が来るかということは、まだまつたくわからない状況であります。
  89. 中崎敏

    ○中崎委員 どうもおかしいのは、お互いの協定案文までつくられるというときに、原則的にはほぼ一致して、あとは条文の表わし方をどうする、いわゆる英語でどういうふうに訳すか、日本語でどう書くかというところに来ておると思うのでありますが、それにもかかわらず、一国の通産大臣としてまた一国の内閣として国の産業、経済、財政に重大な関係のある問題が、まだこの段階においてはわからぬというのは、いささか怠慢ではないか。もう少し国会において実情をはつきりしてもらつて、なるほどそうか、わわれれもこの点については協力しなければならぬじやないかという心構えをつくらせるようにしてもらいたいと思うのです。今までの感じは、しばしば言われておるのでありますが、臭いものにふたをしてかんじんなところはみな裏から裏へほうむつている。初めの平和条約もそうでありますし、日米安全保障条約も軍事協定もそうでありますが、初めは国民に言わない、隠されたような約束をされておつて、ずんずんそのために引きずつて行かれるのじやないか、この法律もそういう結果から出て来るのじやないかというふうな心配さえするのであります。百パーセントものを言うてもらいたいとは言わないけれども、もう少しそうしたような重大な問題を、多少感得ができる程度のことはちよつびりでも言うてもらいたい。そういうことを特に私は念願するのでありますが、それとも全然産業経済に関係あることはお話合いの見通しが立つていないのだというふうに依然として言われるのか。あるいは自分としてはこういう見通しを持つているのだ、多少こういうような情報があるということがあれば知らせてもらいたい。
  90. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは通産大臣としましては、お説と同じ考えであります。どういうもので来るか、そうしてどういうふうな注文の仕方をして来るかということをなるべく早くわからせてもらいたいということは、ついて行つている係官に話をしておるのでありますが、ただいまのところはそれにはちつとも触れていないのです。ただ原則論としてどういうふうな協定をつくろうじやないかということで話合つておりまして、私もあなたと同じ欲求を持つておるのです。なるべく早く経済政策並びに貿易政策なども立てなければならないし、それにはMSAというものが何らかの形で来ることになれば、完成兵器で来るか、金で来るか、金で来るとすればどのくらいになるか。また武器製造の点から言えば、完成兵器で来たのでは注文がとれませんから、それを二つにわけて、ぜひ外貌だけでもほしいということは欲求でございます。まつたく同感でありますけれども、その点までは進んでおらぬことは事実でございますから、これは御了承願いたいと思います。
  91. 中崎敏

    ○中崎委員 そうすると、いよいよMSAが調印でもされて、大体日本産業経済に及ぼす影響等の見通しがついてからこの法案が審議されていいと思われますが、その点どうですか。
  92. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えいたします。MSAというものがこれから出て来て、もし私の希望しておりますように金で来て、日本生産をしてくれるということになれば、生産業者に対してどういうふうに許可して行くかという方針をきめますけれども、しかしこの武器生産は、現在あるところの武器生産業者、並びに今発注を受けておるものに対して、どういうふうに業者が自粛して行くか、同時に経営をして行くかということに対して、われわれはやはり一応の基準をきめて、出血受注をしないように、合理的運営ができるようにやつて行きたいと思いますから、結局MSAの問題が早くわかりますれば、その点におきまして、この法律によつて認可、許可をする材料がふえて参りますから、これはプラスになるでしよう。しかしただいまの情勢におきまして、やはりこれをやつておかないと、日本財界に不測の不安もしくは危険を生じやせぬか、こういうことでやつておりますから、現在の情勢においてこれが必要なわけでございます。
  93. 中崎敏

    ○中崎委員 武器製造業者の実情を見ましても、業者はなかなか敏感なものです。であるからMSAの成行きには重大な関心を持つておると思うのです。それで今度は大きく来るかもしれないという仮定において設備の増設なんかやらないと思うのです。そういう意味合いにおいて、むしろこれを急ぐよりも、はつきりしだところで、それを見た上で、大体こういう見通しになるのだから、この法律もこういうように行こうじやないかというふうな方向に持つて行くのが、私は一番いいと思うのです。そういう意味において一日二日を急がないで、少くともMSAが調印されるまで、また大体の見通しが立つまでこの法律案を一時保留しておいたらどうか。言いかえますと、こういうようなものは今日までほとんど空白状態にあつたのだ。それもまだMSAのかんじんな問題もわからないのに、そんなに急いで法律にしなければならぬということはどうしてもわからない。一日一刻を急ぐということがわからない。濫立防止、国の金あるいは資材をむだに使うかもしれないという心配は、今の段階においては全然ない。そういう意味において、この法律を一日も一刻も急いでやらなければならぬという感覚は私はわからない。その点をもう一度お聞きしておきたい。
  94. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は自分の観念から申しますと、MSAは私も、あなたも御承知のように早く内容を知りたい。しかし財界人間考えますのにつきましては、おそらく何かの形で注文がふえるにきまつておるということを敏感に感じることはお説の通りであります。そういたしますと、実際つかめていない、架空と申しますか、まだわからないものを当てにしてどんどん生産設備をし、同時にまたいろいろ計画を立てて、そしてあけてみたところがそんな注文ばなかつたのだ、これはしくじつたということになりかねないことが非常に心配なのであります、そういう意味におきましては、むしろ一日も早く通しておいて、先の見通し業者もつき、同時にわれわれもついた時に始めて許可をして行く。今では自由濫立状態でございますから、財界人は敏感と仰せられますがその通りでございます。でありますからMSAが入るかどうかわからないけれども、入るにきまつておる。入るにきまつておれば注文があるにきまつておる。こう考えて、いわゆる投機的にいろいろなことをして濫立がますます多くなりはせぬかということがおそれられることでございます。一日も早くこれをお通しを願つておいて、そうしてわれわれは業者の行き過ぎ、すなわち見通しの聞違いというようなもので誤りを起させないようにやつて行くのが根本の趣旨であります。この点は私の考え方から申しますれば、一日も早く通していただいて、そういうような先走りな財界人の投機的の投資とか、設備拡張というものはやめさせておく方がいいのじやないか、こう考えます。
  95. 中崎敏

    ○中崎委員 もうあまりこの問題は突つ込みませんが、その点においては財界、ことに金融界において相当名をなされた岡野ざんとしては私どうも受取れないのです。たとえばMSAがこれから十億ドルも注文が来るとはだれも考えてはおりません。ことに砲弾とかあるいは武器をつくるような、そういう業者がそう軽卒に、何日か知らぬが今にも調印されるであろう、見通しもつくであろうというその段階において、あわてて急いで設備をやろうと考える人はだれもいないと考えます。そういう意味において、岡野さんがそれをおわかりにならぬことはないのだけれども、まあ国会で何とかやつておこうという考えだろうと思います。それはそれでいいのです。それ以上突つ込んでみたところで何ですから、この程度にしておきます。  それから兵器生産武器生産工場の中女依然として向うが接収したような形において管理されておる工場がかれこれあると聞いておるのでありますが、こういうふうなものは一日もすみやかに返してもらうというふうな、そういう考え方は持つておられるか、そういう努力をされたかどうか。今日占領の余波を依然として残し、そうして直接向うに必要でも何でもないような、国の財産というふうなものを、依然として押えておつて、それを管理しておる。こういう状態では好ましくない。だからしてそれについては一日も早くそれを国へとりもどし、そうしてほんとうに政府が一元的に統制というか、調整し得るような措置をつくつてもらいたいと思うのでありますが、この点についてのお考えを承りたい。
  96. 葦澤大義

    葦澤政府委員 現在向うが接収しております工場は数箇所あります。これは設備その他一切みずから持つて来てやつております。土地はこちらのものを提供しておるわけでありますが、これは昔の軍工廠を活用しておるわけであります。その土地を至急こちらが使用したいということになれば別でありますが、現在そういう具体的な事態も出ておりませんので、私どもといだしましては、まだ向うにそういうものを至急返還してほしいというかけ合いはいたしておりません。しかしながらそういう必要性がある場合には、むろん向う側にも交渉いたしたいというふうに考えております。
  97. 中崎敏

    ○中崎委員 きのうも参考人として出て来ました日本製鋼所の赤羽工場は、スパナとかそういう器具類は向うのものだ。しかし土地、建物、機械——機械はどうであつたか存じませんが、大体そういうものはほとんど、大部分が日本政府の財産です。そういうものが向うの方で管理されておる。人間は労務提供だけしておるのだというようなことも聞いておるのでありますが、こういうふうなものについても、少くとも返還を要求すべきものだと思うのでありますが、これについてはどうでありますか。
  98. 葦澤大義

    葦澤政府委員 今私がお答え申し上げましたのは、御指摘のようなものについてのお話を申し上げました。
  99. 中崎敏

    ○中崎委員 次に下請業者でありますが、下請業者は御承知通り中小業者であります。一方において親工場が荒波にもまれてしわくちやにされてしまう、その結果下請工場に及ぼす影響もかれこれ相当あると思う。これについて一体総合的にどういう対策を考えておるか。
  100. 葦澤大義

    葦澤政府委員 御指摘の点につきましては、本法運営上非常に重要な問題でありまして、従いまして数回御論議がございましたが、かりに本法のできました場合におきましては、許可の際に下請工場、中小企業との関連をどういうふうにするのか、申請者計画内容を十分に検討するとともに、契約の履行にあたりましては届出制がありますので、その際に十分に調査審議をいたしまして中小企業に圧迫になる、あるいは出血的な要素を下請業者に転嫁するというよケな事態の起らないようにいたしたいと考えております。
  101. 川上貫一

    川上委員 関連して簡単に大臣にお聞きしたいのですが、今中崎委員から聞かれたことは大事な点があると思う。つまり武器生産業者を認可をする、許可をするということになると、限定されるわけです。それは命令したのじやないのですから、政府が当面のその企業経営の責任を持つという法律上の義務はありません。これは御説明の通りですが、認可の制度になると、どうしても政府がその業者を特定されることになる。そうして生産をやるときには日本注文だけではなく、外国の注文ですから難儀な条件があるのです。そうすると機械の設備にしてもいろいろなものにしても、これは相当めんどうを見てくれと言うて来るに違いない。また何とかしてやらなければならぬことになると思うのです。実際問題として自由競争をさしているのではないのです。ここに私は問題があると思うのですが、これは正直に聞きたいと思う。今後いろいろな発注あるいは設備その他の問題で、業者としても難儀なことが出て来るに違いない。それに対して政府は相当めんどうを見てやるつもりでおられますか。あるいは御答弁だけ聞いておりますと、これは私企業だ、許可だけはするけれどもあとは商売でやるのだ、そういうようになる。これは形式的にはそうなつてしまいます。これは政府答弁としては最も賢明な答弁だと思うのですが、実際問題としては私はそうならぬと思う。そこである企業において非常に大きな欠損をした、出血をしたという時分には結局道義的の立場からでも政府としてはこれは何とか片づけてやらなければならぬということになると思うのです。今までの兵器以外の産業についても言えると思う。こういう点について、こうした一切やりたいというお考えがあるか、これは非常に重大な点ですから、認可するが、あとのめんどう私企業だからかつてにやれというのでは実際通らないと思う。融資の問題それから設備に対する援助の問題、それから非常に損失をした場合には法律上の責任はないけれども政府としては許可をし、自由競争に対して一定の制限をしているのだから、これは何とかしてやらなければならぬという政府としての道義が出て来る、こういう場合に何かお考えになつておるに違いないが、この点を実はこう思うのだということを、腹の中を割つてひとつ答弁してもらいたいと思う。
  102. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは私と川上さんとの間に思想の相違があるかもしれませんが、しかしこの許可と申しますことは、前にたびたび申しましたような目的のために許可した方がよろしい、しかし私企業でありますから、これで迅速に商売をやつてもらいたいというのが、目的でありまして、命令して、お前やれと言つて政府が責任を持つてやらせるものとは、少し性格が違います。ただ認可、許可をしましてやらしておりますから、まず第一に、そういうような財界の激変とか何とかいうことがない限りは普通にやつて行けるように仕組まれておる。そうして業者に対して許可をするということになります。同時に今後契約をしましたときには届出をしてもらうというようなことになつておりまして、はたしてこれが経営が完全に行つているかどうかということをわれわれはじよつちゆう見ております。その意味におきまして指導的にあやまちのないようにさして行きたい。しかしいわゆる不可抗力によつていろいろな経営に対して故障が起きるとか何とかいうような場合には、われわれといたしましては、むろん融資のあつせんなどにつきましては、相当に御尽力申し上げなければならぬ、こういう道義的の考えは持つております。
  103. 大西禎夫

    大西委員長 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければ質疑はこれにて終局いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告がありまするから、これを許します。永井勝次郎君。
  104. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつております武器等製造法案に対しまして反対の意を表明するものであります。  本案は徹頭徹尾うそと欺瞞とをもつてつづられる、白昼公然とごまかしを押し通そうとしておるふらちきわまるものでありまして、われわれの断じて許し得ざるところであります。法案に対する反対理由については、いずれ本会議において明らかにしたいと考えますので、本委員会においてはその概要だけを述べるにとどめたいと考えるのであります。  本案制定の目的は、企業許可制と契約の届出制、この二つを骨格としておると考えるのであります。企業許可については二重投資、過剰施設を制限するという効果をねらつておるようでありますが、施設なり、技術の遊休のものを活用するということになれば、過去の軍需産業資本家に限定されます。旧軍需産業資本家の復元以外の何ものでもないことは明らかでありまして、下請工場の関係にいたしましても、大資本を中心にした下請系列が整備される結果になりますことは必然であります。さらに武器の規定は事実を歪曲したものであり、総合的な軍需産業一般ではなくて、猟銃や、銃砲といつた一部の武器をもつともらしい顔をしてここに並べておりまして内容についてはすべて政令でこれを定めるということに譲つて、運営の面でごまかして行こうとしておるのであります。本法のこのような企業許可の制度の内容では企業系列の確立も、企業の合理化も望めないのでありまして企業許可制を置いた意味を達せないことは明らかであります。  第二の契約の届出制によつて出血受注を抑制するということでありますが、届出によつて足りない分については政府が補助するとか、あるいは税金をまけてやるとか、金融措置をして金利を引下げてやるとか、何らかの経済的恩恵を与える条件が何もなしに、ただ契約の届出をさせる。それによつて出血受注を抑制する。そういうばかげたことができるものではないのでありまして、契約の届出を正直にすれば、収益に対しては税金もかかりましよう、あるいは今後の契約における価格の上においても影響を与えましよう。そういう不利な条件だけが結果される届出を正直にするばかは世の中にはないと思うのであります。この契約届出制によつて出血受注を押えようという効果は上らないことは明らかであります。企業許可制によつて企業の合理化ができない。旧大資本家の復元をはかるだけである。届出制というまことしやかな方法をここに羅列しまして実質的には大資本家の利潤を安定させてやる。こういう含みをこの法案の中に隠しておるというだけの何ものでもないとわれわれは考えるのであります。また本法は憲法の違反であります。憲法違反の条項につきましては、いずれ本会議で述べますが、もともとこの法案は憲法に違反するおそれがありますので、その点を避けてごまかしているから、徹頭徹尾うそとごまかしで満たざれる結果になつておると考えるのであります。  第三は、この武器等製造法による武器生産を再開することによつて日本の再軍備と、日本産業構造が質的に大きな転換をするということでありまして、MSAの問題にいたしましても、日本の国内でこそ今まで何にも交渉がなくて、突然降つて湧いたようにMSAの問題の折衝が開始されたようなことを言つておるのでありますが、アメリカの議会におきましては本年の五月の五日、すでに議会で論議されております。その前に三月十一日の公聴会においてもMSAの問題が論議されております。米国国防次官補のナツシユ氏は、このことを議会において明らかにしております。日本の国民に制服を着せ、防空陣地につくよう訓練すれば、同じ陣地に二人はいらないのである。そういうことをすることによつてアメリカ日本から引き揚げるのだ、日本の兵隊はすぐれた軍隊だ、こう言つております。それから国務省東北アジア局長日本担当官のヤング氏は日本人の使う言葉は大切だ、日本人が自衛または防衛軍という言葉を使うときは十一万内外の保安隊を言つているのである。再軍備という場合には五十万、百万という軍隊を考えているのである。量的にこれは日本人が差別をつけているのであつて、質的には再軍備をやるのである。こういうことを明確にここで言つておるのでちります。防衛軍あるいは再軍備、こう日本人は言葉の上で使いわけているが、事実その内容として質的には再軍備をやるのであるということを議会において明確にしておるのであります。ダレス氏は、日本はまた米国と運命は一つである。またオルムステツド将軍は、中共はどうしてもやつつけなければならない。そのために日本の再軍備が必要であるということを議会において述べておるのであります。こういう背景において、この武器製造法が出て来、MSAが出て来、すべての問題はそこから出発して来ている。それらをごまかすために、あらゆる手段と方法を表現がなされておるというのが現在の状態であり、武器製造法はその一つの表現にすぎないとわれわれは考えるのであります。従つてこの法案の審議にあたりまして、政府当局がいろいろ答弁をなされておりましても、この答弁日本人の魂において、日本民族としての魂において答弁しておるのか、スメリカの出先機関として、ここにこういう背景を日本語によつて表現しているのか、われわれは疑うくらいでありまして、この意味におきまして、われわれは本会議において、これらの諸問題を徹底的に討議を尽しまして今日の段階におけるわが国の完全独立と、日本民族の自立のために、われわれはいかに闘わなければならないか、今そのためにどういう問題が障害になつており、何がわれわれの民族の独立を阻害するものであるかということを明確にしながら、われわれは今日生きておるこの段階を闘つて行かなければならないと考えておるのであります。この意味におきまして、われわれはこの法案に対して断固反対をいたすものであります。
  105. 大西禎夫

    大西委員長 次に川上貫一君。
  106. 川上貫一

    川上委員 私は小会派として、本案に反対の意見を述べたいと思います。  この法律案は一口に言いますと、兵器生産を調整するというのでありますけれども、これは実質的に法律でこれを認めて、そうしてこれを助成し、奨励する、こういう法律なんであります。これが根本問題なんです。日本兵器をつくるということがこれが根本問題なんですが、一体兵器をつくるということはこれはどういうことかというと、これも一口で言うてみるならば、兵器をつくつてアメリカに提供するのです。そうしてアメリカはこの兵器を使うて他国の内政に干渉したり、他国に侵略したりすることに使うわけです。これはもう今までの事実が明らかにわかつておる、それで吉田内閣というのは、さきには御承知のように、朝鮮の戦争のために、日本を戦略基地にすることを承知しておる、それからたくさんの武器をつくつてアメリカの軍隊に提供したのです。この武器を使うて、アメリカの軍隊は中国人や朝鮮人を何百万人というほど殺した。これらは世界周知の事実です。これが武器生産の第一の形なんです。これは新しい法律をつくつて、こういうことをもつと大々的にやるというようなことはしてはいかぬのです。こういうことをしますと、必ずアメリカのアジアを処置する兵器廠に日本がなることは明らかだ、私はこれをここでは詳しくは申しませんが、本会議で一詳しく反対理由を申したいと思うのですが、こういう法案をつくるということは、結局にわいて日本産業を軍事的に再編成するねらいになる。このことはきようの通産大臣答弁でももう出ておる。第二番目にこれは憲法違反であるということがさきに他の議員の方から発育がありましたが、その通りです。一口言うておきますが、憲法の第九条の戦力というものは、これは今政府が言いおるようなものじやない。あの戦力というものは、客観的に判断しまして、戦争に転用し得るような物的人的資源を戦力というのであつて、正面を切つた兵器が、第九条の規定に抵触せぬなどというのは、これはもうとんでもないこと、私はこんなことを言う人は吉田内閣以外にはおそらく世界に例があるまいと思うのです。どうも吉田内閣は、こういう法律をよく喜んでつくるし、アメリカの言うことになると恥も知らぬし、外聞も知らぬし、もうまつたく道理なんかも一向平気で踏みにじつておる、だから保安隊をちやんとつくつておいて、これは軍隊です。アメリカのさしずの軍隊ですが、これを軍隊ではないと言つている。驚くことには、最近は原子爆弾でもこれはちつとも戦力じやないという。これはとんでもないことを言うておると思う。私はたくさん言いませんけれども、これほど国民を愚弄し、これほど国民を侮辱する政府というものは、私は前代未聞だと思う。兵器生産というものの奨励をするような法律をつくる精神はここから来ておる。もう一口言うておきますが、記録にはつきりとどめておいてもらいたい。こういう人々が国民の上にほんまにのさばり返つておるものだから、日本中えらいことになつておるのです。国土が荒廃し、民族の屈辱は、日本開闢以来これほど民族的屈辱を受けたことはありません。これは一句が私は吉田内閣の責任にあると思う。九州の災害にしても、全国にわたるところの国民生活の破綻にしても、この責任は絶対政府にあつて、ほかにあるとは言わすことはできないと思う。  第二に、本法案は国民の要求にこれは反しております。国民はこんなことを要求しておりません。国民は軍事基地の撤去を要求しておる。国民は軍需生産、軍需輸送をやめることを要求しておる。これ国民の要求です。だから一口言うておくが、あの内灘、石川県の僻村のあの内灘の小さな村の漁民の反対闘争は、今日本国中の国民を奮い立たせておる、これは一体どういうことなんだ。あるいは日鋼赤羽の労働者が軍需の生産反対の闘争をやつておる。北陸鉄道の労働者が軍需輸送をとめておる闘争が全国民の支持を受けておるのです。これが国民の要求なんです。ところが今武器製造業者はどんなことを言うておるか、関西の業者は内灘の接収問題について、なぜ政府は早くあれを接収せぬのか、鉄砲をすぐぶつ放したらいいではないかということを強引に政府に申し入れて来ているという事実がある、これが兵器生産というものの本性なんだ。私は吉田内閣がほんとうに国民の声に耳を傾ける気があるなら、こういう法律じやない、武器製造を禁止する武器製造禁止法、武器の輸送を一切禁止する武器輸送禁止法を出されたらよいと思う。  それから第三番目に、これは再軍備の裏づけ法であつて、MSAの受入れ態勢法だ。さきの反対討論をなされた同僚議員の意見もここでありましたが、その通りです。一体MSAというものは、これは一生懸命政府は哀願しておられるようでありますけれども、そんななまやさしいものじやありません。私はMSAの問題について、そうたくさん詳しく言おうとは思いませんが、一口だけ言うておきたい。ここに世界労働週報というものがある。これにこう書いてある。昨年四月にアメリカの商工会議所の機関誌が明らかにしたように、「アメリカ政府はスパイや破壊活動分子の専門家を養成して来た、そうして、このための資金は一億ドル修正条項の名で呼ばれるMSAの規定によつてアメリカ政府から公然と支出しておる」のであると書いてある。これがMSAの性格です。私はなまやさしいものじやないと思う。このMSAが日本に来た時分に一体どういうことになるかということは、これはきようはここでは述べません。ただこれだけは言うておきたい。石橋さんは本会議で、木村長官のあの悪名の高い防衛五箇年計画——あんなものは実際はないのです。政府はあんなものを持つてはおらぬと言われた。私はほんとうかもしれぬと思う。ありはせぬのかもしらぬ。というわけは、ああいうものは木村長官なんかがこしらえるまでもなしに、ちやんとアメリカがしてくれると思う。これがほんとうのことだと思う。これをただ忠実に実行するだけが吉田内閣の仕事だと思う。自衛だとか、防衛だとかということは言われておりますけれども、防衛なんかも非常に日本としては考えなければならぬ。かつてアメリカ自分の国の海岸から太平洋を隔てて台湾に手を出し、朝鮮の戦争を始めた。これを防衛だと言うておるのです。これは一事が万事であつてこの筆法、この作法がアメリカの防衛だ。これが吉田さんの防衛であつてMSAの援助を受けるということは、一事が万事で、これはアメリカ日本に三十五万の土民軍をつくるという下心であつて、これを海外に出兵させるという、こういうひもつきであるということは、私は言わぬでも明らかだと思う。この裏づけがこの法だと思う。兵器生産がこれだと思う。こういう法律によつてどんどんと兵器生産武器生産を公認し、これを規制するという名目によつて助長するというようなことをすると、必ず日本産業は、そうして日本労働者アメリカの軍事支配に縛りつけられるということは明らかだ。この糸口なんです。私はこういう立場から、この伝案は絶対につくつてはいかぬのでありて、こういう法案考えるかわりに、ほんとうに吉田内閣が防衛をお考えになるなら、現在日本アメリカによつて侵略されておりますから、これに対して戦うてもらいたい。第二にはほんとうに防衛を考えるのならば、国民はアメリカの侵略に抵抗しておりますから、この抵抗権を完全に認めて、これを決して弾圧するようなことはしてはならぬ。この法律なんかはひつ込めて、ストライキ禁止法なんかもひつ込めて、そうしてMSA、こういう援助はちやんとお断りをして、サンフランシスコ条約もやめてもらいましようということを国会に諮つてもらいたい。  以上で私のこの法案に対する反対討論を終ります。
  107. 大西禎夫

    大西委員長 次に、伊藤卯四郎君。
  108. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は日本社会党を代表して、本法案に反対するものであります。  反対の理由の第一は、政府国民経済に悪影響を与えない範囲においての軍需産業の規模を具体的に明らかにしておりません。将来の産業構造に対する十分なる見通しもなく、目先の利害にとらわれて武器生産に走ることは危険であり、従つて十分警戒すべきところであります。計画性なき武器生産を認めることには絶対に反対であります。  第二に、日本経済の自立達成のために、武器生産というものはきわめて不健全な産業であります。特需や新特需のなくなつたときのわが国の産業界の混乱を考えるとき、軍需生産日本の運命をかけるのであればともかく、政府武器生産をどうしても認めるのであれば、もつと厳重な規定を加えるべきであるにもかかわらず、このような規定には承服ができません。  第三に、本法の内容はきわめてずさんであり、これで武器生産を取締ることはできません。このような安易な方法で国民経済の運行を阻害しないと考え政府の態度を怪しまざるを得ません。  その他本法とMSAとの関係、新たに起つて来た日本産業構造上重大な問題に少しも触れずに、ほおかむりをして本法を制定することは無意味、無価値であります。さらに元請業者と下請業者との関係、出血受注に対する点等が不明確であります。  このような誠意のない政府提案の本法律案に対して、私は国民の名において強く反対するとともに、本法が再びわが国の運命を経済的に民族的に誤らしめるものであることを明らかに指摘をして私の討論を終ります。
  109. 大西禎夫

    大西委員長 以上をもつて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。本案に賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立
  110. 大西禎夫

    大西委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  この際長谷川委員より発言を求められておりますので、これを許します。長谷川四郎君。
  111. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 私は皆さんに諮つていただきたいと思いますのは、この法案につきまして附帯決議を付したい、こう思うのであります。  その理由といたしまして、昨年度駐留軍の武器発注が相当額にあるのでありまして、現在までこれらの武器製造に対する法的規制というものがなかつた。それがために業界は思惑による混乱と、さらに不渡り手形等の濫発が非常に多く出まして、産業界といわず経済界を非常に悪化させておつたのであります。従つてこれらの業界の混乱を防止するためには、この法案に対して附帯決議が必要ではないか、こういうふうに考えるものであります。この法案に対する附帯決議といたしまして、  一、本法施行上大企業偏重に堕することを避けるため、中小企業の活用、擁護について政府は特別の配慮をすること。  二、武器生産審議会を最高度に活用するは勿論特に本法第五条第一項第三号「当該武器製造能力」の判定に就いては、公正を期すると共に、武器製造に関連する下請企業をも包含して生産系列としての能力を判定すること。  三、過度の競争による弊害は、元請業者相互間に於てのみならず、当該受注業者の下請業者間に於ても起り得る点に鑑み、此等下請業者間に於ける不当なる競争の排除に就いても、本法律案の趣旨が徹底する様、運用上特に意を用いること。  この三点を付したいと思います。この附帯決議に対して皆さんの御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  112. 大西禎夫

    大西委員長 ただいま長谷川君提案にかかる附帯決議を付することに賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立
  113. 大西禎夫

    大西委員長 起立多数。よつてただいまの附帯決議を付することに決しました。  政府より発言を求められておりますから、この際これを許します。葦澤政府委員
  114. 葦澤大義

    葦澤政府委員 ただいま大臣がお見えになりませんので、私からかわりまして一言申し上げさせていただきます。  ただいまいただきました附帯決議は、本法の運営上きわめて重要な諸点でりますので、これが運営にあたりましては、十分に附帯決議の御趣旨に沿うようにいたしたいと存ずる次第でございます。
  115. 大西禎夫

    大西委員長 この際お諮りいたします。本日議決いたしました議案に関する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさようとりはからいます。  なおこの際お諮りいたします。長谷川四郎君及び首藤新八君が委員を辞任せられ、再び委員に選任せられましたが、両君は理事でありましたから、再び理事に選任いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  118. 大西禎夫

    大西委員長 伊藤卯四郎君より炭鉱の復旧対策に関と発言を求められておりますので、この際これを許します。
  119. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 水害問題につきまして大蔵大臣の出席を求めたのでありますけれども、御出席がありませんので、大蔵事務当局がお見えになつておりますから、この際具体的な問題を三、四点お尋ねをしたいと思うのでございます。  西日本水害復旧は、政府としては、現地本部でまとまつた必要資金、特につなぎ資金融資のごときは、政府はこれを即決主義でやるということを国民に公約していたのであります。現地被害者はこれに非常な喜びと期待をしていたのであります。しかるに、水害後一箇月もたちますのに、いまだにつなぎ資金の問題などは、被害者の手にその大部分が渡つておりません従つて復旧の問題、立ち上りの問題も、具体的にならぬのでございます。そういう点から、現地被害者はこの政府の鐘たいこ入りでの公約に失望を感じ、むしろ最近に至つてはうらみを感じて、被害者が政府へ押しかけて来るという状態になつておることは、政府も大蔵当局も御承知であると思います。ところが、これらの問題が具体的になり得ない理由について、特につなぎ資金においては、大蔵事務当局がこれに反対をして、これらの問題が具体的に解決しないというが、大蔵事務当局は、何ゆえに政府の方針とする、また国会をあげて要望することに対して、具体的に解決し得ないように反対をしなければならぬのか、それらの反対の点を具体的にひとつお示しを願いたい。
  120. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 お答えいたします。つなぎ融資というお話でございますが、府県市町村に対するつなぎ融資につきましては、御承知通りすでに三十億を支出いたしております。さらにそれに対しましてなお十億ぐらいを追加する方針を決定いたしておる次第であります。これにつきましては、現地の財務局におきまして、いつでも資金の準備ができておりますので、県、市町村の要望がございますれば、また配分等につきまして、県、市町村の間に決定がございますれば、いつでもお出しする準備ができておる次第でございます。ただいまのお話は、そういつた県、市町村等の公共事業の復旧資金のつなぎ資金の問題というよりは、むしろ中小企業者その他の事業者に対する金融の問題であろうかと思います。これがつなぎ融資ということではないかと思うのでありまして、私どもがつなぎ融資と申しておりますのは、政府が補助金を出すまでとか、あるいは将来起債を認める、それのつなぎという意味でつなぎ資金を出しておるわけでございます。中小企業者その他の資金需要ということになりますと、つなぎ融資というよりは、むしろ応急復旧資金をいかにして円滑に供給するかという問題であろうと思います。その問題につきましては、私どももその必要をつとに認めておる次第でございまして、災害直後に被害地の金融機関に対しまして、十五億円の指定預金をいたしております。さらに最近中小炭鉱方面における資金の要請もございましたので、十五億円の指定預金をさらに十億追加いたしまして合計二十五億円といたしまして、この中から、炭鉱その他現地における応急復旧資金の需要に応じ得られるように、金融機関の手元を充実した次第でございます。なお開発銀行が担当しております中小企業融資は、将来中小企業金融公庫ができますれば、そちらに引継ぐ予定でございますが、現在開発銀行が担当しておりますその融資のわくも、災害直後に五億五千万円を追加いたしました。さらに最近やはり炭鉱等の要請もございますので、五億円をさらに追加することを決定いたしております。このような次第でございまして、応急復旧資金の供給につ美しては、われわれといたしましても、万遺憾のない態勢をとつておる次第でございます。
  121. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 順次具体的にお尋ねをして行きたいと思います。第一回国庫余裕金の預託十五億円中、今日までに金融機関の窓口から貸し出したものは六億円と聞いておるが、その六億はいかなる方面に融資されたか。特に炭鉱などにはつなぎ融資としてどのようにされておるか、そういう点をお伺いしたいのであります。
  122. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 十五億を指定預託いたしました金融機関は、被害各県の地方銀行、相互銀行、信用金庫等でございましてその数も非常に多いのでございますが、それらの金融機関におきまして、いかなる方面に現在までに融資いたしたかという点につきましては、担当局の方にはあるいは何か資料があろうかと存じますが、今日私資料を持ち合せておりません。おそらくまだ完全なる統計はできていないのではないか、従つてどのくらい融資したか、どの方面に融資しておるかということは、正確なところはわからないのではないかと思います。
  123. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その具体的な貸出しの方面がわからないということが問題の点でございます。というのは政府は金を銀行に預託さえすれば、それが被害を受けたそれぞれの業者に貸し出されてあるように考えておるようでありますが、実はその大部分はいまだ被害者に貸し出されておらぬのであります。従つてこの六億円がいかなる方面に融資されたか、そういう点について今日官房長が御承知でなければ後刻でも大体おわかりであろうと思うから、その具体的な数字を資料としてお出しを願いたいと思います。お伺いしたいのは第一回の開発銀行の中小企業わくとして五億五千万円を水害地に向けたのでありますが、その貸出しは一件百五十万円に限られております。そういう関係で炭鉱はほとんどこれによつて救済されていないことは御承知であろうと思うのでありますが、これらの対策をどのように考えておられるか、この点をお伺いしたいのであります。
  124. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 第一回の開発銀行に追加いたしました五億五千万円は、これは炭鉱と申しますよりは、むしろ中小企業一般ということを考えて出したのでございます。もちろん炭鉱も含まれるわけでございますが、一般的な中小企業の応急復旧資金として出したわけでございます。従いまして、できるだけ多くの人に融資し得るような態勢にした方がよろしいのではないかということで、一件の金額百五十万円ということで開発銀行と打合せをいたしておるのでございますが、最近追加いたしました五億円、これは炭鉱等の資金需要があることをよく承知の上で出しました次第でございまして、その分につきましてはあるいは百五十万円ということでは現実に中小炭鉱の需要に応じ切れないということもあろうかと存じまして、その最高限度をいかにするかということにつきましては、私どもといたしましても、再考いたす所存でございます。
  125. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今官房長から伺つて、実は私非常に奇怪に思うのは、大野国務大臣は現地において水害炭鉱業者代表に、自分が東京に帰つたら必ずつなぎ資金としてさしあたり五億を出さす、こういう約束をして帰つておる。これに基いて五億五千万円は出されたものとして炭鉱被害者も思つております。従つて今日まで通産大臣の御答弁なり、通産省政府側の人たちからの私に対する答弁にも、これはほとんど炭鉱に対するつなぎ資金として出されたものであると私も信じ、また被害者もそれを信じております。その答弁の中にも明らかにそういうようにとれるような答弁がされておりますが、この点は今もし官房長の意見のごとく考えるならば、今日まで通産大臣なり通産省政府委員側から私どもに答えたのと非常に違いがあると思うのであるが、この点をひとつ大臣もおられるから、明らかにしていただきたいと思います。
  126. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 当初の五億五千万円は、これはいつでございましたか、正確な日にちは今存じませんが、七月のごく初めの方で決定いたしたのでございましてその当時の気持といたしましては、石炭も含まれますけれども、中小企業一般というような考えでおりましたのは事実でございます。水害対策委員会等で御質問がございましたときにも、大蔵当局としてはそういう御説明を申し上げておるわけであります。もちろんこの中には炭鉱も含まれておるわけでありますが、炭鉱のみの中小企業融資という考え方ではなくて、一般的なわくとして考えておりましたことは事実でございます。
  127. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府側答弁にただいま申し上げたように食い違いが起つておるということのみならず、ただ漠然として中小企業とおつしやつても、私はその点は実際それがどういうところに使われて行くかという点については、相当問題であろうと思うのであります。今なお炭鉱被害者は五億五千万円のほとんどが炭鉱へのつなぎ資金考えておる。ところが今私が質問しておりますように、一件百五十万円では、これは炭鉱復興への資金としては、問題にならないと私は聞いておるのみならず、その五億五千万円は通産省側では、ほとんど炭鉱側へ出していいと答弁されておる。大蔵当局側の答弁では、今あなたのおつしやるように広い意味でこれを見ておられる。そうなつて来ると、一体そのわけ方というか、大わくというか、その辺は何らかのわけ方がなければならないと思う。またそれを明らかにされなければ、問題が起つて来ると思うのであるが、それらのわけ方について通産省と大蔵省側とでどのような打合せをされておるか、伺いたい。
  128. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 従来開発銀行が担当しておりました中小企業別わく融資につきましては、資本金一千万円以下とか、使用人が何人以下で融資計画幾らというようなことでございまして、業種等につきましても基準があつたわけですが、そのわくを水害関係の別わくとして五億融資するということでありまして、私どもの方といたしまして、当初の五億五千万円につきましては、特に何の業種に重点を置くというような指示はいたしておりません開発銀行ないしは開発銀行の委託金融機関であるところの各地方銀行その他の従来の中小企業融資取扱いの実績等から判断いたしまして、良識に従つて融資してくれることを期待しておるわけでありまして、業種別のわくは、その中で特に規定はいたしておりません
  129. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この問題は後日に譲ります。  さらにお尋ねしたいのは、開発銀行から中小のわくとして増加された分五億を出すという決定をしておるようであります。そして一件当りの貸出し限度を一千万円にしておるようでありますが、この五億は炭鉱に限定した融資であるかどうか。この点もやはり炭鉱であるとわれわれは承知しておるのであるが、先ほどのことでこれが非常にあいまいになつて来ましたので、この点も一応ここで明らかにしておきませんと、現地においても、また私どもが審議をする上においても問題になると思いますので、この点もあわせてこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  130. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 あとから追加いたしました五億円につきましては、いわゆるひもつき的な考え方は、この制度上とることは好ましくないというような考え方を持つております。しかし、五億円を追加いたしました以上は、主として炭鉱関係の資金需要があることを考慮いたしまして五億円を追加したわけでございまして、実際上は炭鉱関係の資金に充当せられるものと期待いたしております。政府の方でひもをつけて、この分は炭鉱関係ということを制度的に申しますことは適当でございませんので、そういう表現は避けたいと思いますが、実際問題といたしましては、ただいま申し上げたようなことになることを期待いたしております。
  131. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 開発銀行融資のわくを二回にわたつて今申したように増加したのでありますが、これは将来中小企業金融公庫に引継がるべきものであるから、いわゆる中小企業の定義、すなわち資本金一千万円以下、または労働者一千人以下という定義がございます。この定義に入らない炭鉱は、市中銀行なり開発銀行から借りるほかに道がないように思うのでございますが、政府は二回の国庫余裕金預託十億を出したと聞いております。ただ銀行その他の金融機関に預託しただけでは、その金が実際に金を必要とする者の手に渡るということはわれわれはなかなか考えられない。ところがこれが出されたのについて、渡る方法について具体的に私どもの納得できるような確信があるかどうかを伺いたいのであります。
  132. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 指定預金の十億を追加いたしましたのは先ほど申し上げましたように別にひもつきではないのでありまして、ただこれを追加いたしました事情といたしましては、炭鉱関係の資金需要等もあるので、資金を充実する、そういう態勢をとつておるわけでございます。この金がいかなるルート、方法で炭鉱のみならずその他の中小企業に流れて行くかという問題でございますが、これは各企業金融機関との取引によるわけでございまして、取引金融機関等を通じて各金融機関から金が流れて行く、さようなことに相なるわけでございます。ただこの金融機関の中には商工中金をも含めております。相当な金額を商工中金にも指定預託するつもりでございますが、商工中金の融資ということになりますと、企業組合でないと流れない。あるいは他の反面から申しますれば、企業組合をつくつて商工中金から借りることもできるわけでありますが、これらにつきましては、現地で各企業者が商工中金の首脳部ともよく御懇談願えば道がおのずから開けて行くのではないか、さように考えております。
  133. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 答弁に納得のできない点がありますが、あとで結論的に伺いたいことがありますから後段に譲ることにいたします。さらにお尋ねしたいのは、信用保険制度の活用の点、たとえば六五%を八〇%に引上げた。この活用によつてある程度まで貸出しを緩和することができると思いますが、信用保険は貸出し一千万円以下について適用されると了解するが、そうだとすれば一千万円以上を必要とする多数の炭鉱は、その恩典に浴さないが、かかる炭鉱の金融については損失補償制度を設ける必要があると思うが、政府はこれらの点についてどのように考えておられるかをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  134. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 中小企業に対する資金の供給につきましては、ただいまお話の中小企業信用保険を極力活用して参る所存でございます。保険料も従来は三分ということでございましたが、罹災地の企業者に対しまして資金を貸付けます場合には、これをさらに軽減することを考慮いたしておりまして、別途法的措置を考究いたしております。  なお一千万円を越える融資についていかなることを考えておるかというお尋ねでございますが、一千万円以上の融資ということになつて参りますと、企業の規模も、いわゆる中小企業の規模よりも大きい場合が多いのでございまして、そういう企業に対して政府が損失補償をする必要があるかどうか、かりに実行いたしますれば全般的な影響も持ちますし、財源の関係その他いろいろな問題がございまして、私どもといたしましては今の中小企業信用保険でカバーせられる限度において考えるべきであつて、そのわくを越えるものについても損失補償をすることは行き過ぎである、さような考え方を抱いておる次第でございます。
  135. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先ほど私がお尋ねしたように、政府がせつかくつなぎ資金としてそれぞれいろいろな形で融資をその被害地の金融機関に預託をされるのであるが、それがいまだまつたく被害者の手に渡らないのであります。この渡らない問題は申し上げるように利子補給の問題、損失補償の問題、そういう貸出し銀行に対する具体的な条件というものが満たされないところから窓口貸出しができない状態である。これはどういう点かというと、大蔵事務当局がこれに強い反対をしておるということをわれわれは聞いておるのであるが、大蔵事務当局はどういう根拠によつてこの非常時の処置に対して、なぜ旧来のやり方のみにとらわれた形で反対するのか。たとえば現地でまとめたものを中央本部が即決するといつても即決にならぬ。そういう点でなぜ大蔵事務当局はこだわらなければならぬかという点についての根拠を私は伺いたい。  それから損失補償、利子補給等について、議員提案による臨時立法を行つた場合に、政府はこれをいかに取扱うつもりか、全然無視するつもりか、無視しないで、何らかの形でこれに考慮を払うとするならば、今ただちに政府はそういう範囲内で手を打つてもいいはずである。いわゆる臨時立法がつくられておることは大蔵当局もよく知つておられるところである。そうすれば従つて事後処理の形でこれはできるのである。そういう点を考えておるかどうか。国会で議員立法でつくつたものを政府が全然無視するということであれば別、無視しないで尊重して行くということであるならば、この立法で事後処置をしてもらえばいいのである。従つてその範囲内でこれらのなめらかなこのつなぎ資金の緊急処置の手が打たれるはずであるが、そういう点をどのように考えておられるか、これは非常に重大な問題であるから具体的に誠意のある答弁をしてもらわなければなりません
  136. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 第一点は利子補給並びに損失補償に対して大蔵事務当局は何ゆえに反対をしておるかというお尋ねでございますが、従来の財政制度から考えまして、天災による被害をこうむつたもので、これは個人的には非常にお気の毒なことでありますが、財政的な立場も考えますと、個人の財産の減耗に対しましては極力金融面の措置はつけるが、財政負担はできるだけしないようにというような考え方でずつと参つたわけでございます。たまたま凍霜害の場合に融資に対する損失補償ないし利子補給等の例が出たのでありますが、これは何分にも原始産業のことでございますし、また一人当りの融資金額も十万円というような零細な金額でございます。また食糧増産という問題もございまして、当時の事情としてやむを得なかつたものと存ずるのでございますが、今回の災害につきましても私どもといたしましてはできれば凍霜害までの前例によつて処理したいと考えておる次第でございます。なぜそれを中小企業特に炭鉱等に及ぼすことに反対であるかという点になりますれば、結局これは国家の財政が持たない。今回の例だけでは済みません。業種もまた炭鉱だけに特定するわけには行かないのでありまして、その他のこれに類似の場合すべてに及ぶことは必至でございます。そうなつて参りますと、政府の財政負担も厖大な金額に達することが想像できるのでございまして、政府は他面において国民の租税負担も考えなければなりませんし、さような観点から、財政制度としては利子補給、損失補償をいたすことには私ども事務当局といたしましては反対をしておる次第でございます。しかし零細なる中小企業につきましては、当面の応急復旧資金を円滑に出すという必要については私どもも十分わかつておる次第でございましてそのために開発銀行のわくを広げる、これは利子補給を要しない程度の利率、すなわち一分五厘くらいで供給するということを考えておる次第でございます。また中小企業信用保険でカバーできる範囲のものはできるだけカバーしたい。そのために特に罹災金融をいたしまして、業者の信用保険料の軽減をはかつておる次第でございまして、そういつたいわゆる中小企業のわくに入つて参りますものにつきましては、極力現行法の範囲内で善処いたしまして、利子補給、損失補償の円滑を期したい。中小企業の範疇に入つて来ない資金ということになつて参りますと、利子補給、損失補償等の問題も、先ほど申し上げました財政上の理由から、できれば御容赦いただきたい、こういうのが大蔵事務当局の意見でございます。  なお国会で議員立法をした場合はどうするかというお尋ねでございますが、これは国会で法律を御訂正になりまして、こうしろということでございますれば、予算措置は現在はございませんが、おそらく将来適当な時期に予算措置をとらなければならぬということが、政治的な政府の義務になろうかと存ずるのであります。しかしこれは何分にも政治的な問題でございますので、私ども事務当局といたしましては確言申し上げることができないことを遺憾といたします。
  137. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 きようの官房長の御答弁は、事務当局者としての御答弁ということでなく、大蔵大臣が参議院の予算委員会等で出て来られないから、官房長を自分のかわりとしてやる、従つて官房長の答弁、意見は大蔵大臣の全責任を持つものであるということを言われておることを、私の方の委員長から伺つておるのでございます。従つてあなたの御答弁というものはそういう重大な責任を政治的にも持たされておるものと私は信じて質問を続けて来ておる。そこで政府としても、また事務当局としても、これは議員立法が出されて、これが国会で議決をされるということになれば、これは無視できないのは当然であります。そこでこれも当然尊重する、あるいは後日予算化の問題、あるいはこれからいろいろ事後処理しなければならぬ問題等々が起つて参るということになれば、この議員立法の問題はもう時間の問題でありますので、この見通しはあなた方の方でも明らかにされておると私は思う。それでせつかく地方に預託されたその金が銀行の窓口から出ないでおる、これを出さなければつなぎ資金融資の使命が達成されない、従つて復旧はされない、そういう点からこれをなめらかに早く貸出すためには、利子補給の問題、損失補償の問題を明らかにせなければこれが解決せないということが今日きわめて具体的になつておるのでございます。これは現実の上で、せつかく出した金が窓口から出ないということになる。そうすると、これを解決するために議員立法がつくられる。これは超党派的でございますから、全会一致できめられることは明らかだ。そうすれば、これらの見通しがついておれば、従つてその範囲内においての処置政府が政治的に解決することが政府の責任であり、使命であると私は思つておる。これがなぜやれないのか。これをやらないならば、必ず政府は現地の被害者から、国民から、また私ども政党から非常な責任の追究をきれるでありましよう。われわれはまたせなければなりません。そういうふうに重大な使命と責任を負わされておると私は思うのであります。せつかくの金がこの銀行の金庫の中で眠つておるとするならば、これを早く貸し出す方法として、今のような緊急の処置をなぜとれないのか、こういう点について、さらに国会を尊重されるという意思があるならば、それらの点に対して当然責任をとるべきである。解決さるべきであると私は思うが、それらの点についてもう少し具体的に誠意のある答弁を願いたいというのであります。
  138. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 一千万円以下の融資につきましては、開銀なり、中小企業信用保険なりの制度を活用することによりまして円滑に行くことを期待いたしている次第でございます。一千万円を越える資金需要があるような業者、その中にはもちろん小ざな業者もあるかもしれませんが、大部分は大きな業者ではないかと思うのでありますが、そういう大口の業者になつて参りますと、日ごろ金融機関との取引もございますし、金融機関資金の充実をはかる措置でひとまずは円滑に参るのではないか。私ども業者の方から直接お話を伺つたわけでもありませんが、とりあえず開銀に五億円出し、預金に十億をすれば、そしてまた商工中金等を活用して組合を結成して金を借りるというような方途を講ずれば、まあ何とかなるじやないかというお話も、実は間接ではございますが、承つているわけでございます。現在のところは今まで政府が講じました措置で大体所期の目的を達し得るじやないか、さように考えている次第でございます。
  139. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そうすると、臨時立法が制定されれば別であるが、そうじやなしに、その範囲内においてそういう解決への臨機の措置をとることはできない、こういうことでございますか。
  140. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 先ほども申し上げましたように、事務当局といたしましては、利子補給なり損失補償の制度を特に石炭に限つて立法化せられることについては、私どもといたしましては反対でございます、法律がなければもちろんできないわけでございまして、立法化についても大蔵省の意見をお聞きくださいまするならば、そういつた反対意見を申し上げざるを得ない立場にあるわけでございます。ただ先ほど御質問がございましたように、立法をして成立した場合にどうするか、これはまた別問題でございまして、これは国権の最高機関としての国会の御意思がもしそういうことで確定いたしましたならば、その場合はそれに合わせていろいろ考えて行くことは事務当局の義務であると思うのでございますが、その前の段階におきまして大蔵当局の意見を言えということでございますれば、反対を表明せざるを得ない立場にあることを御了承いただきたいと思うのであります。
  141. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は官房長は大蔵大臣の名代であると心得てやつているのであるが、なかなか名代ということにもならぬらしいから、この点はやはり私は大蔵大臣等において政治的な問題としてこれをどうするかということについて、大蔵大臣みずからとの間で論議をしなければ話は解決しませんし、納得もできません従つてこれは大蔵大臣と話し合うことにしまして、官房長との話はこれ以上するということも少し無理のような気もするから、私はこの点はこの程度でとどめます。  いま一点だけ、これは今は大蔵省との直接の関係ではまだないかもしれませんが、伺いたいのは、今度の水害のために長崎、佐賀、福岡、山口等の炭坑が全部あるいは一部水没し、炭坑労働者が多く失業しており、また賃金の支払いを受けられないでおります。さらに廃坑になつて退職手当がもらえないでおります。それらの点を福岡県議会の決議として政府、国会等にもいろいろ陳情をいたしております。大蔵省はそれをごらんになつておるかどうか、おそらくもう行つておるのではなかろうかとも思うが、それを見ますると、完全水没と一部水没とで、福岡県だけでも労働者の賃金未払い分が、九億一千余万円あることを数字的に明らかにして来ております。毎日働いて生活をしておる労働者が、この厖大な労働賃金をもらえないということは、労働者の立場からすれば非常に大きな問題であります。また政治上から見ても重大な社会問題であると思うのでありますが、この点はおそらく水害対策特別委員会等でも取上げられるだろうと思うし、また労働省からも具体的に取上げられると思う。そこで、こういう問題が具体化して来れば、臨時の金融処置というか予算上の処置ガ、労働省あるいは通産省あるいは水害対策特別委員会等で具体化され、あるいは立法化されて来るのではなかろうかとも考える。あるいは労働省関係の法律を一部修正した形で出されて来るかとも思うが、そういうことに対して大蔵省として今日まで何らかの交渉を受けられたという経過があるかどうか、またこれは当然起つて参りますから、起つて来た場合に、大蔵省としてこの資金的な処置を何らかお考えになつておられるかどうか、また考えられるとすれば、どういうような形で考えられるものであるか、この点をお伺いいたします。
  142. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 水害対策委員会での御質問にもあつたのでありますが、たとえば労働金庫というのがあるが、労働金庫で一億三千万くらいの資金を調達して給料の未払いその他の水害勤労者に貸し付けたい、そういうお話があつたのであります。この点につきましては、労働金庫と申しますのは、今度特別立法が成立したのでございますが、いわゆる信用組合でございまして、現在のところは、政府がこれに指定預金等の資金を流すルートは実はついていないのであります。県が公金預金をしておるというようなこともあるから、県に金を流して、県からまわしたらどうかというような御主張も、その当日の委員会でありました。それに対しては、政府の立場として、なかなか金を出しにくい立場にあるわけでございますが、なお十分検討してみることを大蔵大臣から答弁されております。その後事務的いろいろ検討はいたしておるところでございますが、具体的にどうするか、できるかできないかということについての結論をまだ得ておりません。引続きすみやかに検討はいたしたいと存じております。
  143. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 災害地の労金から、あなたの方にも二億何千万円か政府余裕金を融資をしてもらいたいという陳情はしておるだろうと思います。直接政府から労金に預託をすることはなかなか困難性もあるであろうというところから、それぞれの災害県の県がこれを借りて、それを県の責任において預託をする、そういう形は非常に筋が通つているのじやないかという点なども話合いがされてあつたようでありますが、それらの点についての大蔵省の話合いはその後どのように進展されつつあるか、あるいは災害県との間に、何らかそういうことについての話合いなども進められておるかどうか、その点お伺いいたします。
  144. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 国庫が直接労働金庫に指定預金をいたしますことは、先ほど申し上げましたように、信用組合には預託をいたしていない現在の制度から申しましても、また労働金庫の組合員が労働組合だけであるということから考えましても、ちよつと実現性に乏しいのじやないかと思います。まあ実行するとすれば、結局今お話のございましたように、県に何らかの形で金を流して、県がそれを公金預金をするということであろうと思います。しかしそれにいたしましても、県での償還財源の問題、貸付条件の問題、その他いろいろ問題があるわけでございまして、いわゆるひもつきで、たとえば無利子で貸し付けるということはできないわけであります。それらの点を検討をしておるところでございます。いまだ結論はいずれとも出ておりません
  145. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間等の関係もありますから、本日はこの程度にしておきまして、先ほど私が委員長等に相談の意味で申しておりました重要な問題を、大蔵大臣政府責任者が政治的にどのように解決するか、たとえば当然議員立法として制定され、その中には利子補給、損失補償等の問題が取上げられるのであるから、つなぎ資金の事後処理をその法律によつてしてもらうという形で政治解決の点をわれわれは非常に急がなければならぬと思うのであります。この点は先ほどから申すように、大蔵省官房長にこれを明らかにしてもらうことは困難な点もあることは考えられるので、機会を見て大蔵大臣なり緒方水害対策本部長に質問をして明らかにしたいと思いますので、この点お含みを願つておきます。以上をもつて私の質問は一応打切ります。
  146. 田中龍夫

    ○田中(龍)委員 ただいまの伊藤君の質問に関連いたしまして、二、三ごく簡単に官房長に承つておきます。われわれが石炭の融資の問題について非常に心配をいたし、関心を持つておりますことは、九州の経済というものは炭鉱という基幹産業に関連する面が非常に多い、九州の災害の復旧、さらに復興という面におきまして炭鉱の帰趨が経済的に非常に影響を持つという意味からも、これが応急の処置なり、あるいは復興について非常に関心を持つておる次第であります。ただいままでのつなぎ融資並びに指定預金なり、あるいはまた開発銀行を通じてお流しになつたものの中で、ただいまのお話のごとく、つなぎ融資の四十億は、公共土木なり、あるいはまた地方公共団体に対します資金であろうと存じますが、次の指定預金の二十五億、並びに開発銀行に対します五億五千万プラス五億の十億五千万円、これは地元におきまする中小企業者、あるいはまたその他のもの、さらにその中には炭鉱を含む、かような御意見であります。しかしながら、数日前の水害特別委員会におきまして大蔵大臣は、この開発銀行のプラス五億に対しましては、炭鉱のために別わくで五億出す、こういうふうに明言されておるのであります。ただいま官房長に承りますれば、これまた炭鉱等というような、その辺がはなはだ不明確なことに相なつておりますが、その点をひとつはつきりしていただきたいと存じます。なおまたこのほか指定預金の面におきまする十五億プラス十億、これにつきましても一体どの程度炭鉱に流れているか。われわれは今回の石炭関係の災害復旧に対しまして非常な関心を持つているのでありますが、一体どの程度金が流れたのか、その点実に不明瞭であります。先ほど伊藤君から、大蔵省は炭鉱に対する融資に対してあまり関心をお持ちにならないんじやないかといつたような御質問もありまし系、われわれその点実は気づかつておるのでありまして、ことに日銀からの現地報告は、今次災害に対して被害は大したことはないといつたような最初の報告が来ていることも承つているような次第でありましてどうも大蔵当局におきましては、今回の炭鉱の被害についてあまり御同情、御関心が薄いのではないかということをわれわれ非常に懸念をいたしておるのであります。ことにただいま申しますように、大臣が明確におつしやつたことに対してまで、官房長が、その点は炭鉱等ということになりますと、さらに事務当局の御関心のほども推して察せられる、こういうように考えられるのであります。私はそこでお願いを申し上げたい点があります。それは来週の火曜に石炭の小委員会があるわけであります。今日までの指定預金、あるいはまた開銀を通じての融資に対しまして、それまでの間に、今まで出ました炭鉱向けの融資に対しまして御調査を願つて、資料を御提出いただくことはできないものでありましようか、これをひとつ伺いたいと存じます。
  147. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 大蔵省が炭鉱の被害状況について冷淡でないかというおしかりを受けたのでございますが、これはわれわれも災害地方に現地に調査員を派遣いたしまして、災害の状況はよく承知いたしておるつもりでございます。今次の災害に対する認識においては大蔵省の全員欠くるところはございません。ただ利子補給、損失補償という問題になつて参りますと、これはやはり中小企業という観念でもつて律せられる範囲のところは、今の制度を活用していただく。それ以上の大きなところになつて参りますと、これはほかの産業の関係もございますし、また国民全般の租税負担にも関係のある問題でございますから、中小企業の範囲に属しないものにつきましては、信用も相当あることでございましようし、ことにまた炭鉱は、最近はそれほどでもありませんが、かつては相当活況でございまして大所得者も相当あつたことでございますから、信用も相当充実していることでございますし、普通の金融機関の取引にゆだねましても相当金融がつくはずである。さような認識に基きまして、利子補給、損失補償を一般化することにつきましては反対をいたしているわけであります。  なおただいまの五億並びに十億の問題でございますが、開発銀行に対しまして、政府は五億を石炭事業に融資せよという命令を出すというような制度になつておりませんために、特にひもつきということには実はしがたいわけでありまして、五億を追加いたしました事情は、一に石炭関係が九九%ございますから、五億追加いたしました金は、おそらくはとんどが石炭関係に流れることを期待している、さような答弁を申し上げたわけでありまして、大臣のお気持とそう食い違つておるとは実は存じないのであります。指定預金の方につきましては、これまたひもつきの指定預金ということは、各金融灘関に対して非常な拘束を加えるわけでありまして、これは金融機関と大蔵省の関係でできないわけであります。従いましてこれまた炭鉱の融資要請もあるから、五億追加はそういうことに法制的にはならざるを得ないわけでありますが、しかしこれをふやしました事情は、炭鉱関係の資金要請が主たる理由でございますから、結果的には炭鉱関係に相当流れることを期待しているわけであります。なお今までに幾ら炭鉱関係に資金が流れているかというお尋ねでございますが、被害地のたくさんの金融機関を相手にいたしていることでございますし、特に開発銀行関係といえども、これまた各金融機関に委託をいたしているわけでありまして、極力努力はいたしてみますが、はたして火曜日までにまとまつた調査ができますかどうか、その点はちよつと確信いたしかねるのでございますが、なお極力努力をしてみることにいたします。
  148. 田中龍夫

    ○田中(龍)委員 この問題はわれわれといたしまして非常に関心を持つている問題でありまして、また水害特別委員会といたしましても真剣に取組んでおる問題でありますので、これ以上官房長に申し上げましても御無理かとは思いますが、このプラス五億のひもつき融資、その他の一般中小企業に出ております前の五億五千万円、並びに指定預金の二十五億、これにつきましても、特に炭鉱の方面からは、出してもらつたとはいいながら一向手に入らぬということを言つております。それはコマーシヤル・ペースに乗らない部分もあるかもしれませんけれども、乗る部分もあるわけです。大野国務大臣も現地において言明され、また大蔵大臣も緒方副総理も、炭鉱の融資については、はつきりとお約束をなさつているのであるから、事務当局におかれましても、くれくれもその点を留意せられまして御指導いただきたい、かようにお願いいたします。
  149. 大西禎夫

    大西委員長 次に外貨割当に関し加藤君より一点だけ質疑いたしたい旨の申出がありますので、これを許します。加藤清二君。
  150. 加藤清二

    加藤(清)委員 簡単にお答え願えればけつこうです。実は毛製品の輸入について優先外貨の割当を、通産省側では通商局長及び繊維局長両名の名義をもつて、例の九〇%の問題ですか、これは必ず実行するという通達が四月二十八日付で出ております、それがこのたび実行に移すことが困難になつたという状況を申しましたので、この委員会でそれをただしましたところ、必ず通達通りに実行いたしますという御答弁でございました。これについては大蔵省側との打合せも必要であつたりいたしますので、実は大蔵省関係の方を通産委員会にお招き願いたいということを再三申し出ておつたわけでございますが、それが今日になつたわけで、通産省側といたしましては、局長さんたちの意見によれば、ぜひこれは実行に移したいと言つておられるようでございまするけれども、漏れ承るところによると、大蔵省側で非常に難渋を来しており、しかもそれをそういうところへ使うよりも、もつと緊急に必要なものがあるから割当は困難であるというような経過のように聞いておりますが、現状ははたしてどうなつておりましようか。もしこれを将来割当てないとするならば、通商局長及び繊維局長は地方の通商局長及び業界に対して食言をしたという結果にも相なりまして、本省自体としても重大な問題に逢着しなければならぬことになると思います。ただいままた御承知通り、九州の水害もかてて加えてでございまするが、繊維業界に倒産旋風が吹いている。公称資本金四億、資本金八億の連中たちがばたばた銀行の手助けが絶えたおかげでいかれた。そのおかげで機場地区もいかれた。こういうやさきに、輸出可能なための輸入外貨割当がとだえたということになりますると、機場地区が、輸出されるであろうと予想して注文を受けて今動いていたわけでございますが、外貨割当がないとなると、当然商社ないし紡績機場がこの出血を補わなければならない。そこでそういうことはとうていできないから、輸出キヤンセル、その結果から生ずる倒産旋風にプラス・アルフアーを加える数字というものは近畿地区、名古屋、中京地区では大きなものだというので、業界ではこれを非常に大きな心配の目をもつて注目しておるのでございます。この点大蔵省としてはどのように考えていらつしやるか。将来どうしようとしていらつしやるのか、この点について現状及び将来の見通しをここでお答えいただきたい。
  151. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 外貨割当の問題は為替局長の所管でございますけれども、私もほのかに今の問題についての経過は聞いておるのでありますが、詳しいことは申し上げられないことを非常に遺憾に存じます。今週の外貨割当の幹事会で、通産省からポンド地域の毛型品の優先外貨のわくをふやす案が出るということは承知いたしております。事前に私が部内で聞きましたところでは、毛製品の需給状況並びにポンドの資金繰り、これは現在非常によくないのでございますが、そういつた問題から考えまして、幹事会では一応大蔵省としては反対という意見を持つて臨んだように記憶いたしております。但しその幹事会の結果がどうなりましたか、その辺は実は承知いたしておりません。ただいまの御意見も合せまして原局に伝えまして、その後どういう筋になりましたか、よく取調べまして結論を申し上げたいと思います。中間的な答弁しかできないことを非常に遺憾に存じます。
  152. 加藤清二

    加藤(清)委員 これで私の質問は終りますが、この外貨割当は御承知通り、すでに業界が出血輸出をして稼いだ外貨でございまして、何も新しくどこから余分にくれというわけではございません。すでに稼いで政府の方に預けてある金なんです。しかもそれを全額くれというわけではございません。規定通り九〇%いただけばけつこう、こういうことであり、ポンド地域においては九〇%ではなくして、実質においては八〇%ぐらいになつておると思いまするが、そのすでに稼いで預けておいたのをくださいというのでございますので、決してこれは無理ではない。筋道が通ると思います。かてて加えて業界の今日の状態を考えてみれば、それが輸入というところにウエートが置かれると異論が出て来るだろうと思います。ところがそれで稼いだ幅を毛製品の輸出振興に向けているのでございます。この点はよく御承知だと思います。決して間違いじやないと思います。もし毛製品の輸出において稼いだ外貨をよその方へまわされたがゆえになくなつた、それで少くなつたからいけないとおつしやつたとするならば、これは病人の血をとつて来て、そうして他の病人に輸血したという結果になりまして、他の病人は助かつたかもしれませんけれども、稼いで病気になつた病人は血までとられてしまつて、一層倒産して行かなければならない。こういう状況になりまするが、大蔵大臣は前の通産大臣でございまするし、地元愛知でありまするから、この点はよくおわかりだと存じます。その点よく御留意の上、決して輸入が目的ではない、輸出のための輸入であるということを御考慮に入れていただきまして、慎重審議の結果、なるべく病気の業界を一日も早く救うという通産大臣の意見を尊重する態度に出ていただきたい。こういうことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  153. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 十分検討いたします。
  154. 大西禎夫

    大西委員長 本日はこの程度にいたし、次会は明後二十七日月曜日、午前十時三十分より開会いたし、輸出取引法の一部を改正する法律案に関し、質疑及び討論採決に入りたいと存じまするから、さよう御了承を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十八分散会