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1953-07-24 第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十四日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 中村 幸八君 理事 永井勝次郎君    理事 伊藤卯四郎君       小金 義照君    田中 龍夫君       土倉 宗明君    馬場 元治君       笹本 一雄君    山手 滿男君       加藤 清二君    齋木 重一君       下川儀太郎君    中崎  敏君       山口シヅエ君    始関 伊平君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         通商産業事務官         (重工業局長) 葦沢 大義君  委員外出席者         参  考  人         (兵器生産協力         会理事長)   菅  晴次君         参  考  人         (前日立重機株         式会社社長)  三善幾久次君         参  考  人         (神戸製鋼所常         務取締役)   安並 正道君         参  考  人         (東京製作所社         長)      田中 文吉君         参  考  人         (日本油脂株式         会社常務取締         役)      松室 信夫君         参  考  人         (村田発条株式         会社専務取締         役)      村田利十郎君         参  考  人         (日本製鋼所赤         羽工場労働組合         副委員長)   前田 信義君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月二十四日  委員首藤新八君辞任につき、その補欠として森  清君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  武器等製造法案内閣提出第四四号)     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  本日は、まづ武器等製造法案を議題といたし、参考人より意見を聴取いたします。  本日出席参考人兵器生産協力会理事長菅晴次君、前日立重機株式会社社長三善幾久次君、神戸製鋼所常務取締役安並正道君、東京製作所社長田中文吉君、日本油脂株式会社常務取締役松室信夫君、村田発条株式会社専務取締役村田利十郎君、日本製鋼所赤羽労働組合委員長前田信義君、以上七名であります。  この際参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。本日は暑さの中、御多忙中にもかかわりませず本委員会のためわざわざ御出席をいただきましてありがとうございました。何とぞ各位のお立場より本法案に関する御意見を忌憚なくお述べいただければ幸甚に存ずる次第であります。  それではこれより順次御意見をお述べ願いたいと存じますが、時間の関係がありますので、御一人大体十分程度でお願いをいたしたいと存じます。  なお委員よりの御質疑は、参考人より意見の御開陳が全部終了いたしました後、お願いいたしたいと存じまするから、さよう御了承願いたいと存じます。  それではまず菅晴次君より御意見の御開陳を願いたいと存じます。
  3. 菅晴次

    菅参考人 私はただいま御紹介いただきましたように、兵器生産協力会理事長をやつております。また過去におきまして、約三十四、五年間兵器研究とかあるいは製造とか保管、管理、補給というようなことを軍に勤めさしてもらつておりまして、終始一貫それをやつておりました関係上、あるいは私の申します卑見は手前みその感を深くなさる方もおありかとも存じまするが、それはそれなりに御了承願いまして、一、二この製造法案につきまして、卑見を述べさしていただきます。  武器製造法案というものが議会に出されておるということは、かねかね承つておりましたが、はたしてそういうものが必要であるかいなかということでございますが、一番根本問題は、日本は今や平和憲法の国でありまして、軍備もないのであるから、兵器なんかつくる必要はないじやないか、兵器をつくる必要がなければ、こういう法案も必要がないじやないかという問題になると思いますので、それについて一言申し述べさせていただきます。  御承知通り過去の戦争中には、国をあげて軍需の生産をやつておりました。敗戦のうき目を見まして、みなすべての生産界は非常な打撃を受けられました、しかしながら非常に業界の方方は皆さんお骨折りになりまして、極力民需産業平和産業に転換をすることにお努めになつた次第であります。それで一時は相当日本の軽工業も発展をし、いろいろその道に向われたのですが、御承知通り、それでもまだ相当兵器工業に、武器工業に向きます設備なり技術者なりというものが、遊んでおるわけでございます。これをむなしく遊ばしておくということは、国家の財政並びに経済の不況のときに非常に残念なことである、こういうふうに私は考えるのであります。もとよりこれらのものもでき得たならば、なるべく平和産業輸出産業民需産業へ向けて行くことが大事なことでございますが、それには皆さんすでに相当御労力をなさつておられますし、また政局の施策もそれに向つておられるのでありますが、それでもまだ一ぱい設備なり、機械なり、技術者なりが働いておらぬわけでございます。日本といたしますと、何としてもそれでは経済が自立するところまで参りませんので、何かここに外貨をかせぐ方法があれば、これは私はたといそれが武器であろとも、それに利用するということが非常にいいことではないか、究極の目的は必ずしもそこになくても、一つの、これらの余つておる設備機械、人、こういうものをそういう方に向けて、そうしてドルをかせぎ、それによつて少しでも利益が上れば、それによつて設備を逐次改善をする、またそういうものをつくることによりまして、日本技術改善向上する手段とし、やがて生産力全面的復興に寄与する、こういう意味において、もしほかから兵器注文がなければしかたがありませんが、たまたま米軍の方からいろいろそういう注文があるのであります。現在においてはタイ国あるいはその他の国からも、ときどきそういう引合があるような次第であります。そういう現実状態に対処しまして、それでも日本平和憲法の国だから武器なんかつくらずにおるというて、手をこまねいておれるような経済状態かどうかということを考えますと、私はやはり極力平和産業に力を尽さなければなりませんが、余つておる施設、技術なりを活用して、そういう方面に向けるということは、むしろ時宜に適した仕事ではないか、こう考える次第であります。ところがしからばそんな兵器なんかは、日本はもう十年あるいは十五年の遅れがあつて、いまさらそんなものがつくれるか、こういう話もございますが、それはもとより非常な遅れがありますが、また設備も非常に荒廃しておりますけれども、しかし若干の設備の補修をすれば、ここにまたつくり得ないことのない兵器も相当あるわけであります。現実アメリカが今たま類なり機関銃の銃弾なり、迫撃砲なり注文しておりまして、現につくつておる。火薬のごときもそうでありますが、そういうものがあるのであるから、これを少しでも受入れて、生産して日本外貨獲得に寄与するということは、国際収支のバランスをとる上においても非常に効果がありますし、また先ほど申すように、これによつて少しでも設備改善向上また御承知通り兵器というものはだんだんなれて行けばいいものができるのでありますから、またいいものをつくらなければならぬという絶対条件があるのでありますから、一般の民需産業と比べまして、精密度というものが非常に高いのでありますから、これをやることによつて、再び遅れておつた技術改善向上する資料になると思います。近ごろ盛んに日本経済自立のためには輸出産業を振興しなければならぬ、こういうことを方々で言われますが、輸出産業を振興するには何と申しましても、安くていいものをつくらなければ、これはとうていできないのであります。そこで安くていいものをつくるには、やはり設備改善向上をはかるなり、技術向上進歩をはからなければならぬのであります。今政府に予算の余裕がありまして、研究費なり、そういう技術改善向上に資する金が何ぼでもあるというならこれは別でございますけれども、それが十分でない以上は、やはり外貨による注文を利用して、これによつてそういう方面に力を尽していくということは非常に意義深いことじやないか、こう考えます。ぞれから輸出輸出とみな申されますが、大体日本の有力な将来の外国の販路を考えますと、これはだれが何と申しましても、東南ア地域がおもだろうと思います。よくても南米からアフリカ方面だろうと思います。そうなりますと、これらの地域とても日本が今まで輸出しておつた程度繊維品であるとか、ああいう簡易な工業品では、これらの国といえども、やはり自給自足という見地から、今は逐次自分でそういう程度のものはつくることになると思います。そうなるとわれわれは何をもつて工業国として輸出するかと申せば、やはり高度の精密機械であるとか、高度の知識を技術に傾注して生れるであろう製品でなければいけないわけであります。そういう意味から申しましても、どうしても重工業に、あるいは高級の化学工業日本産業を持つて行かなければならぬ、そのためにもやはりこの武器なんか製造することもそういうことの改善向上に非常に役立つて行くのではないか、こういうふうに思います。ただ武器をつくることが平和維持と非常に相矛盾するように言われますが、しからばスエーデンはどうか、スイスはどうか、こういうことを申せば、スエーデンのごときは御承知のごとくゴフオールスを初めいろいろな精密な武器工業をやつております。それでも第一次、第二次大戦に少しも戦争の渦中に投じておらぬ。スイスまたしかり。要するにそういうことは一種の懸念にすぎないと私は思う。政治に関与せられる皆様方がそういうことに対して確固たる信念を持つて指導なされるならば、武器をつくるからただちに軍備である、武器をつくるからただちに戦争だというような婦女子的な心配は決してないのではないかと私は思う。しかも過去の戦争におけるごとく国をあげて武器をつくるというような場合なら別ですけれども、先ほど申すように、日本工業力というものはまだ余力があるのだ、これを活用して、少しでも日本経済自立に寄与しようという程度武器製造ならば何ら心配はない、かように考えます。私はこれで終ります。
  4. 大西禎夫

  5. 三善幾久次

    三善参考人 私はこの一月に日立重機株式会社社長をやめました三善であります。やめた理由は、約二箇年にわたつて特需の仕事をいたしまして、二十億円くらいの仕事をしながら約四億円くらいの赤字を出しまして、その責任をとつてやめたのであります。今月号の中央公論にもその内容が出ておりますから、ごらんください。それで私の体験から判断して、今度の武器等製造法案必要性というものを申し上げたいと思います。  私は日立製作所に入つて約三十五年になるのでありますが、そのうち後半の十七、八年というものは日立の引受けておる兵器類製造を担当しておつたわけなんです。それで米軍の方からある慫慂を受けまして、大きな仕事を引受けることになつたのでありますが、その引受けるにつきましては、すべてアメリカ規格によらなければならない。その規格が、日本の以前の規格から見れば非常に高いのであります。また終戦後非常に技術の落ちた面から見れば、調達困難なくらい非常に高いのであります。しかしこの高い規格のものをつくり得るだけの力に日本工業界を持つて行かなければならぬ、日立自身技術もすべてこういう高い規格が保てるように持つて行かなければならぬ、そういう点から、利益を度外視して——もちろんこれは採算がどうかこうかとれるということは考えますが、大きな利益を期待しないで引受けたわけであります。初め非常に厖大な約束であつたのが、米軍側一つの誤算でありまして、事実その数分の一も仕事がなかつたのであります。私どもはこの厖大なものを引受けるような段取りで進んで行つた。ところがそういうことになつて、結局経費倒れになつたというのが第一の原因でありますが、もう一つは、大体日本重工業界といいますか、金属工業界に非常に仕事が足りないのであります。これは先ほども菅さんから申されたように、終戦日本兵器工業界は非常に厖大になつて来て、非常にたくさんの設備を持つてつた、また技術も温存しておつた。それにもかかわらず、平和産業に転向するとしても、そう全面的に転向するわけにいきませんので、結局設備をたくさん遊ばし、労務者をうんと減らして、それでどうかこうか食いつないで行くという状態でありまして、現在でも仕事が非常に足りない。こういうふうなことから、私がある契約を結んで、一時独占的な形になつたのに対して、非常な干渉が入りまして、日本業界からむしろ打倒三善というくらいの運動が出まして、非常な安い値段を入れられた。私どもの入れた値段というのは、材料費が幾らかかるとか、加工に何分間かかるとかいうことで、一分間当り加工の単価というものをきめてありますが、それをかけ合せてやるというように、きわめてまじめなものをつくるために、実際には非常にまじめな値段であつたのであります。それが横合いから、これは三分の一でできる、四分の一でできるというようなことで、しやにむに食い込まれる、そういうことから私どもは非常な苦境に立ちまして、ある程度そういうものもがまんしなければならぬというようなことも起りまして、それによる赤字も相当累加されたのであります。これから考えると、日本重工業界が非常に仕事が足りないので、これを何とか埋めなければならぬ、そこでもしそういう仕事があるとすれば、その仕事をできるだけ受入れて、仕事の足りないのを補つて行かなければならぬ。しかもそれで外貨をかせぐことができるとすれば非常にけつこうなことである。それからもう一つは、日本技術が非常に立ち遅れている、これを急速に回復するというためにも、これは進んでやつて行かなければならぬ。大体武器類というものは、規格というか、精度というか、そういうものの最尖端を行くものでありまして、これがうまくこなせるようになつて、それに右へならえしてあらゆる製品ができ上るとすれば、日本のすべての製品が世界的な技術水準に到達するわけであります。この点は技術水準を上げるために非常に大事なことであります。そういう意味からも、何とか受入れて行かなければならぬと思うのでありますが、一面現在仕事が非常に足りないので、めちやくちやに各業者が競争している。中には技術も何もないところが引受ける。実は私は昨年から日米合同委員会契約調停委員に選ばれて出ているのでありまして、すでに昨年二十数件これを解決したのでありますが、こういうものを見ましても、実にひどいのがあるのであります。何も受入れ能力のないものが安い値段で切り込んで、そして銀行から金融を得てどろんしてしまう。しかも下請をやらせて、下請は一文のお金ももらえないで非常に困つて、その下請が訴えて出ているというような例も多々あるのであります。こういうようなことから考えますと、やはり過去の経歴において十分に受入れ能力のあるところ、すなわち設備も持つており、また技術も温存しているというようなところを選んで、それにやらせるような方法を講じなければいかぬのじやないか。そうすると、そういう設備改善もやらなければなりませんけれども、過去において相当りつば設備を持つておれば、それに幾分の改善を加えることは大した費用もかからない。それをたくさんの業者があるものに集中して、それの受入れ態勢をして、設備をつくる。たとえばここに小銃弾がある、これには特殊の設備がいるが、その特殊の設備を十軒も二十軒もでやる、そしてその設備はどうしても輸入機械によつてやらなければならぬが、その輸入機械の申請がみなから出て来る、そういうことになつて来ると、一体どこへどうしてやつたらいいかということで非常に困るのであります。それに対しては適当な制限というか、許可制といいますか、やはりそれに最も適当な、最も経済的にできるようなところ、そういう能力を持つたところにそれをやらすような形にするという意味合いから、この製造法案というものは大体そういうところをねらつてできたものと思いますので、自分の苦い経験から考えまして、これも私どものそういう希望を全部全くするというものじやありませんが、少くとも現段階においてはそのくらいの程度のものはぜひあつてほしい、こういうふうに思いますので、皆さんの絶大な御協力をお願いしたいと思います。
  6. 大西禎夫

  7. 安並正道

    安並参考人 私はただいま御紹介をいただきました神戸製鋼所常務取締役安並でございます。  私ども神戸製鋼所は、現在米軍から武器の一部を注文を受けまして製造いたしておる会社一つであります。今度の法案につきまして、結論から先に申し上げますと、私どもはこの法案の成立を非常に希望いたしております。私が知つておる範囲では、私どもの同業者はみな希望いたしております。なぜ希望するかということにつきまして、私は最近ありました実際の例を一つあげまして、皆さんの御参考にいたしたいと存じます。  過日アメリカの大使館から私ども工場視察に見えました。そのときこういう話がありました。お前の会社はそういうことはないけれども、どうも日本には実にけしからぬ会社がたくさんある。それは社長が横浜のJPAやオードナンスに出て来て約束したことを工場視察に行つてみるとさつぱりやつておらぬ、あるいはまたやつてつても違つたことをやつておる、そういう会社がたくさんある、実にけしからぬ話じやという非難をしきりにいたしておりました。これはただいま三善さんから申し上げましたこととちようど一致するわけですが、そういう非難を非常にされました。そこで私ども会社では、それに答えまして、なるほどそういうことがあるかもしれない、あるでありましよう、しかしながらそれはどういう会社であるかというと、技術の点で、あるいは設備の点で十分でない、あるいは経済力金融力の点において十分強固でないというような会社に、そういうものが間々あると思う。しかしながら、これは日本人だけの責任じやなくて、アメリカ軍の方にも一半の責任はあると思う。なぜかというと、その設備なり技術なり経済力なりが優秀な会社、それからそうでない、いわばどうかと思われるような会社も、一緒に入札をさせて、そして一銭でも安い方へ米軍注文をするということで、今のやり方においては、結局悪貨は良貨を駆逐するという原則の通りに、そのいかがわしい会社がよくわからないで安い値段を出し、あるいはむちやくちやに無理をして安い値段を出し、その方へ注文が流れて行つてしまう、その結果が今日こういうことになつておるのじやあるまいかと思う。これをたとえて申しますと、たとえばアメリカ人東京駅へぽかつと着いた、そして大きな荷物を持つておる、その荷物をホテルまで運ばしたいが、そこへ私に荷物を持たしてくれと言つて大人子供と二人出て来た、そういう場合に大人の方は料金が百五十円だ、子供の方は百円だという場合、米軍の方では値段が安いからというので百円の方に注文したから、そういうことになる。やはりその設備において、あるいは技術において、あるいは経済金融的な能力において、十分備わつた人にやらしてもらわぬといかぬ、そういう人たちを選定して、そういう人たちによつて競争をさしてやるのならば、そういう非難は起るまいと思う。それで米軍の今の制度を改善してもらわないといけないという話を、アメリカの方にいたしました。考えてみますと、これはまことにその通りでありますが、しかしながらアメリカの人にそういう要望をするということがちよつと無理なんでありまして、あるいは今の大人子供のように見てすぐわかるものならよいのですけれども会社となりますと、この会社十分能力資格がある、この会社資格がないという区別が簡単につかないと思いますので、これはアメリカ軍にそういうことを見わけろといつても無理なんでありまして、日本の側でそういう区別をつけてやらないといけない、それには国家的に何か基準があつて、その基準に照して資格のあるものを選んで、それに入札を命ずるというぐあいにいたさないといかぬと思います。そうしてこそ生産技術向上し、米軍非難を受けることもなくなり、また国内で出血の非難を受けるということもなくなるわけであります。これは最近起りました例でありますが、私は今度の法案が実施されんことを望む一つの例として申し上げた次第であります。
  8. 大西禎夫

  9. 田中文吉

    田中参考人 私は東京製作所社長をやつております。中企業と申しますか、その程度会社であります。ただいま砲弾信管を専業としております小松製作所の受注しました砲弾信管製造をやつております。上に小松という元請を持ち、下部に約三十軒の下請を持つております。しかも経済力はたいへん弱いのでございます。しかしその位置は非常に重要であります。私の方の信管ができないということによつて小松たまの納入はできません。またわれわれがここで何かの誤りをして、経済的な破綻に陥るというようなことがあれば、われわれの直接かかえております従業員約四百人が困ると同時に、下請三十軒みな困るのであります。しかもこういう法案がないためにたいへんあぶない綱渡りをしておるという状態であります。なぜあぶないかといいますと、これは現に元請であるところも破綻を生じておるところがあります。これはわれわれ及びその下請にみな及んで来るのであります。この事業法は絶対に必要であると考えます。前国会にせつかく衆議院を通りながら解散のためにこれが通らなかつた、私はむしろ解散をこの法案一つのために非常に恨んでおるわけであります。なぜこれが必要かといいますと、われわれ中程度企業としましては、武器製造がもうかりそうだといいますと、われもわれと手を上げるのであります、技術がないのにちよつとした設備技術だけあつて、金も設備もないというようなものが、われもわれと手をあげるのであります。そのためにすでに、われわれの同業者、あるいは同業者たる資格のないものかもわかりませんが、これらが倒れておる。そのために元請はもちろん迷惑いたしますが、その下部のもの全部に迷惑が及んで行くのであります。この法案の趣旨は第五条の三項にあるかと思うのであります。今とにかく、戦争中たくさんのたまをつくり、あるいは大砲をつくつてつたというようなところが、たくさん遊んでおります。しかもただ設備だけが残つておるところがある。あるいは技術だけが残つておるというようなところもあります。しかし全体としてはいかにも余力があるように見えるのであります。これを余力ありというが、それはかたわの余力であります。それを過信いたしまして、そして簡単にわれもくと手をあげる。これが大きな破綻のもとになるのでありまして、こういう法案でしつかりとその業態を見きわめて、そうして許可して行くということは、絶対に必要であると思います。
  10. 大西禎夫

  11. 村田利十郎

    村田参考人 私がただいま紹介にあずかりました村田発条株式会社村田でございます。本日当通商産業委員会におきまして、武器等製造法案に関する参考陳述の機会を与えていただきましたことに対しまして、心から御礼申し上げる次第でございます。  私の会社で現在製造いたしておりますものは、バネでございます。いわゆる船舶、鉱山機械、自動車その他あらゆる諸機械用のスプリングをつくつております。本日おいでになられております参考人の方々は、皆様大企業の代表でありますので、私は中小企業の代表と申しますとはなはだ僭越でございますが、下請メーカーの立場から意見を申したいと思いますゆえ、御了承願いたいと思います。  武器等製造法案の具体的内容につきましては、あまり詳しく知らないのでございますが、第一に武器製造の許可についてであります。本法案の第三条及び第四条の規定につきましては、技術的にもまたその他の点におきましても、できるだけりつぱな事業会社、これは企業が大きい小さいということにかかわらず、真に武器製造に熱意のある事業会社に許可をするということを極力要望いたす次第でございます。従つて次にあります第五条の許可の基準につきましては、いわゆる総花的でたく、重要な基準のもとに事業会社を許可されるよう、政府に特に要望いたします。そうでありませんと、むやみに事業会社が濫立しまして、せつかくの優秀な企業が共倒れになるというようなことになりますと、国家的に見ましても大きな損失となりますゆえ、政府の方と申しますか、通産省の明快なる判断をお願いいたす次第でございます。いわゆる武器と申しますと、その目的はややもいたしますると、人を殺すものと考える面もございますが、必ずしもそうでない面もあると思います。また武器製造は、先ほども申されましたが、これによつて外貨を獲得する事業でありますから、一概に無視できない面もあると思います。ですから、十分なる国家の助成と申しますか、厳重な監督とともに、積極的な指導及び育成を特にお願い申し上げたいと思います。  次に本法案第十六条の契約の規定について申し上げますが、政府におきましては、契約の届出のありました場合、親請会社の実情のみを検討されることなく、われわれ下請会社と親請会社との関係につきましても、十分関心をお寄せ願いますよう、特にお願いいたします。われわれ下請会社は、ある意味におきましては、きわめて弱い業者でありますが、われわれのようなものを全然無視して、親会社製品をつくることはできないと思いますから、中小企業の活用と援護につきまして、特別の考慮をお願いいたします。われわれ下請業者は本法案の直接の適用を受けないと思いますが、間接的に大いに関係はあると思います。  最後に、本法案には武器製造に対しまして、資金面の援助ないしは助成措置が何ら規定されておりませんが、私は私たちの事業も国家のためにきわめて大事な事業であると確信いたしておりますゆえ、強力なる国家的御援助を特にお願いいたすものでございます。特に外国からの注文に対しましては、政府の方におかれましても、その実態を十分把握していただきまして、同時に資金的な面、あるいは税制の面におきまして、武器製造品もりつぱな輸出品でありますから、輸出産業並のある恩典を与えていただきたいと思います。  とりとめのないことを申し上げまして、はなはだ恐縮でございますが、どうかわれわれ中小企業下請業者の立場を十分お認めくださいまして、われわれが希望と誇りとを持つてりつぱに働けるよう、皆様方の特別の御高配を要望いたしまして、私の公述を終りたいと思います。御清聴を感謝いたします。
  12. 永井勝次郎

    ○永井委員 ちよつと希望があるのですが、実は本日お忙しいところ、参考人の方々に御足労を煩わしたゆえんのものは、武器製造法が必要であるかないか、個人的な御意見参考として承るのではなくして、現在のJPAとの契約の内容、実態、それから産業系列の問題、あるいは輸出産業として成立ち得るかどうかという事柄や、出血の原因がこちらの方にのみあるのか、あるいは出血の原因がどこに所在しておるのか、こういう問題を、具体的に扱つておられる方々の実情を率直に承りたいというのが、御足労を煩わした理由であつたとわれわれは思うのでありまして、ただいまのところ、承つておりますと、単にこの法案が必要であるかどうかという御意見だけなんで、これはせつかくの時間に残念でありますから、その点はひとつはつきりと具体的な内容について、われわれに参考意見を述べていただくことができますならば幸いだと存じます。
  13. 大西禎夫

  14. 前田信義

    前田参考人 私は日本製鋼所赤羽工場労働組合前田でございます。この委員会に参りまして、武器等製造法案云々ということになりますと、われわれ労働者の立場からいいますと、頭からわれわれは再軍備反対でございますと言つてしまえば、それで話は終りでございます。そこで今御質問の委員の中から出ておりますが、私たちは現在日本製鋼赤羽作業所におきまして大砲、戦車、その他いろいろ兵器の修理作業をやつておるわけでございます。これはどういう形でやつておるかと申しますと、つまりJPAと業者との間における契約によつてやるわけでございます。この契約そのものが非常に一方的な契約であるということで、このことについてはわれわれ労働者ばかりでなく、業者も同じであろうと思うのでありますが、従来から反対して参つたわけでございます。なぜこれが反対であるかといいますと、つまり現在におきましては明らかに日本も独立国であるにかかわらず、一方的な契約が押しつけられるということであります。この契約におきまして、たとえば内容的にいえば人事条項その他、われわればかりでなく業者にとつてもあまり芳ばしからぬような条項が種々うたつてあるわけでございます。こういつたこと自体を、われわれといわず業者といわず、不利であるにかかわらず、こういつた状態において受けなければならないということは、要するに正常な意味契約がなされていないわけでございます。このことにつきましてはわれわれは従来から政府が一括して受注し、そしてそれを業者が受けるというふうな形にすべきであるということをしばしば唱えて来たわけでございます。そういたしませんと、先ほどどなたかも言われましたが、ただいたずらに一番安いところにその契約を請負わせるという形になりまするために、そこにダンピング契約という形のものが起きて来るわけでございます。ダンピング契約ということがなされますと、当然われわれ働く者にとりましても低賃金という形が押しつけられるわけでございます。これはわれわれにとつてとうていたえ得られないところでございます。そのためにこの契約政府が受注して業者に請負わせても、この入札という形は当然起ると思いますが、しかしながら入札という場合におきましては、当然業者も選択し、安全なる企業にまかせられるという形が起るわけでございます。現在の場合におきますると、結局軍の意向に沿わないとほかの業者にとられるというふうに、この業者自体が非常に不安定な位置に置かれていることは事実でございます。業者が不安定であれば、われわれ働く労働者がなお不安定であるということは疑いのない事実であります。実際に米軍がその企業の内容というものをよく知つておればよろしいのでございますが、その点が実際には把握されていないで、ただ安いから請負わせるというふうな形になつて参ります。そのためにわれわれは北大西洋条約にもありますところの契約方式を採用すべきである、それを公契約法という形で制定すべきであるということで、本年二月におきましても当時のマーフイー大使、日米合同委員会あるいは衆参両院、それから政府に要請して参つたわけでございます。しかしながら具体的にそのことに対する結論は出ていないというのが、大体要約しての現状でございます。
  15. 川上貫一

    ○川上委員 いろいろ参考人の方々より御熱心な御感想をお聞きいたしましたが、今前田さんよりは適切な話を非常に聞かしてもらつたわけでございますが、残念ながらほかの方のお話はどうも金もうけしか考えておらない。これではさつぱりわれわれ参考にならない。そこでいろいろ聞きたいことがありますので、質疑の時間を十分にひとつとつてもらいたい。今承りました範囲では私らは何にも参考にならぬ。この点をひとつお願いいたしたい。
  16. 大西禎夫

    大西委員長 あとで質疑を順次各党順にやつていただきますから、その節お聞き取り願いたいと思います。  次に日本油脂株式会社松室信夫君。
  17. 松室信夫

    松室参考人 私きのう夕刻突然意見を聞きたいから出てくれという話で、何ら準備のひまがなく、どういうことであるのか、何か御質問があつて、それによつてお答えするのだと心得えて参りました。昨日おそく参りましたので、時間の繰合せがつかぬので、きよう十一時でないと伺えないということはあらかじめ申し上げておきました。その関係でどういう内容でこれが進んでおるか、私よくわからないのでありますが…。
  18. 大西禎夫

    大西委員長 武器等製造法案に関しまする一般的御意見を伺つて、そうして各委員から御質問申し上げる。かような仕組みにいたしております。
  19. 松室信夫

    松室参考人 大体私どもの立場としますれば、私どもは火薬の製造業者でありますが、火薬がこの武器等製造法案の中に入るか入らないかという問題につきましては、私は火薬をこの中に入れる必要はないものだと考えております。それはこの武器製造法と申しますのは、初めの目的のところにもありますように、「事業活動を調整することによつて、国民経済の健全な運行に寄与するということと」、それから「公共の安全を確保する」この二つの目的のようでございますが、公共の安全を確保するためにはすでに火薬類取締法というものがありまして、それによつて私は目的を達し得られているものと思いますし、またもしそれに少し足りないところがあれば、その方を改正してやつていただきたいと思います。それからこの事業活動の調整によりまして国民経済の健全なる運行に寄与するという面におきましては、これは非常に概念的に申せば火薬製造業もやはり普通の企業一つでありますから、従いましてたとえば特需の場合に出血受注とか何とかいうことを防止するためにこれによつてつて行くということも考えられますが、実際問題としますと火薬製造というものは非常に厖大なる土地を要し、作業場をつくつたり非常にめんどうくさいことがあるので、なかなかそう簡単に、ちよつと旋盤でものを削つてつくるというようなかつこうで行かないものであります。従つて今後そうやたらに火薬製造業者というものがふえて来るということも今のところではちよつと考えられないような状態にあります。従いましてこの武器製造法によりまして、両方でもつて規制されるということになりますと、一つ工場産業用の火薬とそれから兵器用の火薬と両方を製造している私どもにとりましては、二元的な監督なり規制を受けるようになりまして、非常にめんどうなことになるわけであります。一つの例を申しましても、たとえば無煙火薬につきましても、当然無煙火薬というと一応兵器用のものが考えられるのでありますが、私どものところでは兵器用の無煙火薬もつくつております、それと同時に捕鯨用の大砲に使います無煙火薬であるとか、あるいは猟銃用の無煙火薬であるとか、さらに石油等におきまして、非常に深いところの石油を掘るときに下の方で火薬を使つて穴を明ける、そういつたような特殊のものもつくつておるのであります。それとこの兵器用のものと両方を同じ設備を使つてつておりますのが、両方の法によつていろいろとやられまして、その担当者の意見が違つたりしたような場合には、どうにも収拾つかなくなつてしまうようなことになりますので、私どもとしては、火薬類はこの中に入れていただきたくないと思います。以上です。
  20. 大西禎夫

    大西委員長 以上をもつて参考人よりの御意見の御開陳は全部終了いたしました。これより質疑に入ります。質疑の通告がありまするから、順次これを許します。小平久雄君。
  21. 小平久雄

    ○小平(久)委員 各参考人の御意見を拝聴いたしたわけでありますが、それぞれのお立場からの御意見でありまして、結論的には大部分の方々は本法案を必要となさるという御趣旨のように拝聴いたしました。もつとも前田さんの御意見は、結論的にはどういうことかちよつと不明確でありましたが、それはとにかくといたしまして、本法案の当委員会における審議の過程におきまして、いろいろ問題がございましたが、特に第五条による事業の許可に対しまして、一部の限定された者だけに許可されるではないか、そのために、それに続くような優秀な工場が、資格がありながら、俗に言えば浮ばれない、こういうことが起るではないかということが非常に心配されておることと、事業系列として関連産業というか、あるいは協力工場下請工場、こういつたものとの関係が非常に心配をされておるわけなのであります。  そこで私は三善さんにちよつとお伺いいたしたいと思うのですが、三善さんは日立重機の社長さんとされまして、特需の契約が予定通りに行かなかつたという関係責任をとられた、こういうお話でありましたが、おそらく二十億からの受注ということになりますと、日立重機さんといえども幾多の関連産業あるいは下請工場等と御関係になつたことと思うのでありますが、日立さん自身が犠牲を払われたということを伺つたのでありますが、そういう際におきまして、関連産業なりあるいは下請工場なりの処理というものを、当時三善さん御自身がどんなふうになされたか。というのは、ややもすると出血々々と騒がれておるが、元請の方はあまり出血もなくて、どうもそれを下請なり関連産業に押しつけておるんじやないかということが世上間々言われておるわけであります。そこであなたは実際その衝に当られて、こういつた問題であなた自身は責任をとられておるのでありますが、関連産業あるいは下請産業に対してどういう処置をとられたか伺いたい。
  22. 三善幾久次

    三善参考人 下請業者というのはいわゆる中小業者でありますが、これは相当たくさん、百軒ばかり使いましたけれども、それを二つに分類することができるのであります。一つは専門メーカー、今、村田発条さんが出たし、あるいは東京製作所というのはこれはみんな専門メーカーであります。これはある特定の部品を責任を負つてつくる、たとえばスプリングをつくりあるいは砲弾信管なら信管をつくる専門メーカーであります。そういう専門メーカーの下請工場と、もう一つはほんとうの加工、これは旋盤加工だけやるとか、あるいはダイスの加工だけやるとか、プレスの加工だけやるというように、材料を全部支給して加工だけやる工場とがあります。こういう二つの種類にわかれております。専門メーカーは自分でそういうものをつくつておられるのであるから、これにわれわれの方がお願いするわけであります。規格も非常に高いのでいろいろ苦心されると思いますが、私は下請に対して最初お願いするときに、どういう値段でどういうふうになすかということが詳しく計算して出ているから、その通りやらすということと、それから前金を相当に出したのであります。そういう意味から下請業者仕事に損失——もちろん技術的に非常にむずかしくて、うまく行くと思つたがうまく行かないというようなものも少し専門メーカーさんにあつたようでありますが、加工メーカーの方は“私どもがこういうふうにしてくれというふうに指令をして、その通りに道具も全部与えてやるのでありますからそういう困難はなかつたようであります。現在下請から、前金その他でやつたので、回収のできないのはありますけれども、品物で損をされたというようなことはないように私ども聞いております。まあ私の親会社の方でかぶつたわけでありますが、先ほども申し上げたように、私どもがかぶつたのは、年間少くとも二千万ドルというような非常に大きな掛け声であつたのでそれに応ずるつもりであつたが、三百五十万ドルしか出なかつたという誤算からであります。もう一つは、アメリカさんはみそもくそも一緒にするような行き方で、安い値段がどんどん出て、それに非常に牽制されて値段を無理やりに切下げられたというような、最初のスタートのときは正常な姿で行つたのが、むちやくちやに切下げられて赤字を出すようになつたというような二つの原因があります。われわれは、下請さんに対してはできるだけ御迷惑をかけぬような形で進んで来たわけであります。
  23. 小平久雄

    ○小平(久)委員 日立さんの場合は下請の方には迷惑をかけなかつたということでありますが、この法案との関連において考えて、この法案が成立しますと、元請の関係では無用の競争が排除されるという道が確かに開けると思うのでありますが、それとつながる中小企業者、これに至りましては、依然として自由なる、また無用の競争が残ろわけであります。そこで武器産業者として許可になる会社と、これとの関連産業ないしは下請産業との系列化というか、こういうものを進めないことには、元請だけは今言う通り、今度はやや安泰のところに参ると思うのでありますが、その下の最も弱いところは依然として無用な競争をしいられることになると思います。そういう点につきまして、三善さんの長い御体験等からいたしまして、この法案との関連において中小企業者の立場を考えるときに、どの点をどうしたらよいとか、あるいは修正とまではいかぬでも、運用上どうしたらこの点を排除できるか、こういう点についての御意見を承りたい。
  24. 三善幾久次

    三善参考人 私は、専門メーカーさんに対してはある程度規格づけが必要ではないかと思います。専門メーカーというものは、大きな会社につながりを持つており、どれはどこへお願いするというような形になつておるので、私ども日立製作所のつながりから考えまして、スプリングならスプリングの特定のメーカーさんを呼んでそこで見積りをさせるというような行き方で進んで来たわけであります。そういう意味から、専門メーカーについてはやはり法案が及ぶような形に持つてつていただく方がいいのではないか。ほんとうの加工メーカーになりますと、われわれの方で加工をするのをお手伝いしていただくのであるから、われわれの加工の費用はきまつておりますので、このきまつた加工の費用でやつていただくということが本筋なのではないか。加工メーカーというのは、あたかも一つの身内のような形で大工場につながつているのが大体の現状だと思います。だからそれはそういう形で助長して行く方がいいのではないかと考えております。
  25. 小平久雄

    ○小平(久)委員 最後に私は田中さんにお伺いいたします。田中さんは先ほど御発言の通り企業の代表者のような立場におありになるようですが、先ほど申しましたが、従来出血受注ということが非常に叫ばれたときにおいて、親工場は案外出血はしていない、中あるいは小に非常に出血が転嫁されている、こういう見方が非常にあるわけでありますが、あなたにそういう御体験があるかどうか。  またただいま三善さんにお尋ねしましたが、本法案との関係において、あなたのお立場から何か御希望がありませんか。  時間がありませんから、私は最後に前田さんにちよつと伺いますが前田さんは御発言の冒頭で、再軍備反対だ、そう言つてしまえばそれでおしまいだというお話をされましたが、一歩お譲り願つて武器製造現実にやるという前提の上に立つて、こういつた法案があなた方の立場からして必要であると思うかどうか。またこの法案の内容を妥当とお考えになつたかどうか、その点だけをお聞かせ願いたい。
  26. 田中文吉

    田中参考人 元請が出血であるやいなやということは重大な関係がありますが、私に関する限りは——今砲弾関係をやつておりますが、元請が火薬をどのくらいで買つておるか、よその方はどういうふうにやつておるかというようなことは、われわれにはわかりません。しかし出血々々といつておりますが、率直に言つて、元請は米軍との間の契約に一割の余裕を持つております。そうしてこれを元請は何としてももらおう、こういうのではないかと思うのです。それで出血々々という声を早くから放送して、何とかしてふんだくろうと考えているのではないかと思います。ただ最近破綻を来たした元請のたまなんかは、確かに目方から考えて安かつたように私は思います。だからああいうことがありますと、いかにわれわれがもがいても何してもしようがない。われわれの力ではどうにもならない。われわれが安心をしてやるためには、われわれのところにまでこれが及ぶかどうか——多分及んで来るぜろうと思いますが、元請がしつかりしておつてもらはないと、はなはだ困るのであります。われわれはアメリカさんと話をするのではありませんが、元請とは言葉がよく通じます。それで言いたいことも言い、また事実、損したから値上げをしてくれということも言えると思います。現在私は小松製作所の信管下請をやつておりますが、下請五社のうち、一社はやりそこないました。私の目から見れば、設備はあつたけれども技術的な欠如であつたと考えております。幸い私のところでははつきりペイしております。ただ最初の米軍規格によつてつくるということが、こんなやかましいものではないと思つていたところに、少し思い違いがありました。そのために、もうけるつもりのものが、もうけそこなつたということにもなつております。しかし冶具、工具、ゲージというものに非常にたくさんの金がいるのですから、どこかの系列に入つてつて、同じ信管仕事が引続いて来るということになれば、最初の注文だけで全部これを償却する必要はないのであります。これが有効に次の注文にも使つて行けるということであれば、はつきりとペイしておるということも申し上げられると思います。ですからどうしても系列に同じ種類の商品が続いて渡せるということが必要でございます。
  27. 前田信義

    前田参考人 そこをまげてというふうなことで御質問を受けたのでございますが、武器等製造法案ということになりますと、何かしら大企業のみ優位するという考え方から行きまして、われわれ中小企業という面を考えてみますのに、当然われわれとしては反対であるということであります。
  28. 小平久雄

    ○小平(久)委員 ない方がいいということですね。
  29. 前田信義

    前田参考人 そうでございます。
  30. 大西禎夫

    大西委員長 次に山手滿男君。
  31. 山手滿男

    ○山手委員 私は三善さん、安並さん、いわゆる元請会社関係の方からまず伺つてみたいと思います。  先ほどからいろいろお話があつたのでありますが、向うとの契約、JPAとの関係等いろいろ問題があるようでありますが、従来ずつと兵器製造契約をして参られました今までの経験にかんがみて、こういう点で非常に困つた、こういうふうに改善してくれればまだうんとやりやすくなるというふうな、契約をし、あるいは契約に基いて仕事をやつておいでになる上での御不便なり苦情というものがあれば、まず承つておきたいと思います。
  32. 三善幾久次

    三善参考人 今の御質問は非常に私は歓迎しているわけでなのですが先ほどどなたかからも言われたような形で、私ども業者全体あるいは日本全体としてほんとうにお願いしたいことは、特需の仕事にしましても、今後相当厖大に発展すると思いますが、これを最も合理的に行われるようにするためには、日米の共同発注機関というものができて、それによつてなされるということが行われれば、最も混乱のないスムーズな形で行けるのではないか。このことは最初から私どもは念願してやまないのであります。これが私の希望であります。
  33. 安並正道

    安並参考人 私どもは元請でございますけれども、実は共同で受注しておるというような内容になつております。たとえば私どもが受けております砲弾について申しますと、このたまの体は私どもがつくりますけれども、そのほかに火薬だとか信管だとか薬莢だとか荷づくりの箱だとか、あるいは火薬を装填し荷づくりをするというような作業をする人たち、合計八人によつて、神戸製鋼所が代表になつて契約をいたしておるようなわけでございます。それでその見積りを入札いたしますときも、一つの系列から見積りをもらいまして、それで皆さん値段をつけて、そして全体の値段を私ども入札をしております。落札して契約しますと、その値段で系列の方に分担をしてもらうというやり方になつております。これがただいま三善さんが申しました専門メーカーということに相なるわけでございますが、この専門メーカーの方は、信管信管メーカーとして、あるいは薬莢は薬莢メーカーとして、これはやはり武器等製造法案の許可の対象になるものだと思います。それて元請の関係ばかりじやなく、そういう部品をつくつております大きな会社も小さい会社も、みなこの法案の対象になるように私は承知いたしております。私どもが念願いたしておりますのは、出血受注ということは、生産技術の進歩発展からいいましても非常に困りますので、やはり資格のある人たちでフエアな競争をさしてもらいたいということなんであります。
  34. 山手滿男

    ○山手委員 そこでお伺いしたいのでありますが、ねこもしやくしも一緒にして入札をさせる、不当に値段を引下げるように向うが仕向けて参る、こういうお話がるるありました。実際にそういうふうに力のないものや何かが出て行つて不当に競争した場合には、すぐ馬脚を現わしてしまうわけでありますが、有力なメーカーの間においても、なおかつそういう不当な競争が起らざるを得ないように仕向けられておるものかどうか、さらにまた片一方では非常な安い価格で発注するようにし、片一方では完成したあと不当な利益が出たということになると、向うの法律に基いて利益の返還を要求される場合が起り得る、あるいは納品をしてしまつたあとで、きずものや何かについても非常にきびしい問題を提起される、しかもキヤンセルの問題が非常にやかましい、こういうふうなことで今までいろいろ問題も起きておるようでありますが、そういう間の事情について、もう少し打割つた話を今の御両氏から承りたいと思います。
  35. 三善幾久次

    三善参考人 私ども言いたいことは大体言い尽したわけでありますけれども、大会社の間で不当な値段を出して競争するということは、最近は非常に少くなりましたが、こういう仕事が始まつた当初においては、ひどいことがたくさんあつたことは御存じだろうと思います。私どもいろいろなことをよく聞いておるのでありますが、先ほど申し上げましたように、何もないものが下請を当てにして仕事をするというような注文をとることから、むちやくちやな値段を入れてやつて下請にみんなおつかぶせて、自分金融してどろんしてしまつたというような例もある。しかし大会社にしますと、そうむちやなことはできません。なぜかといいますと、やはり大会社は相当な組織で仕事をしておりますので、そう社長のワン・マンでかつてなことはできないのであります。それにしても大体において大会社といえども仕事が少いので、一割値上げというものができるという予想をして、ある程度切り詰めた値段を出されるということは現状であります。ただ今後自分の今までやつておる仕事がぐあい悪いために、ほかの方に入ろうというのでいろいろ画策されて、無理をされることがあるのをわれわれはおそれるのでありまして、現在ではそうむちやな状態はないのではないかと思つております。
  36. 安並正道

    安並参考人 大体三善さんがただいま申されたことと同様でございます。
  37. 山手滿男

    ○山手委員 お立場上いろいろ言いたいことはあるのだが、お話ができないのではないかと思いますので、中小メーカーの方の皆さん方に私はお聞きをしてみたいと思うのでありますが、さつき元請の方は米軍の方から一〇%の利益を大体保証をされておるように聞いておるというお話がありましたが、その通りだろうと思うが、いわゆる加工メーカーが元請の方のきまつた加工賃に従つて発注をされるということでありますが、親会社の方で不当に安い受注をしておつた場合にはそういう加工賃が当然圧縮されて来るわけでありますが、そういう場合に関連して従来系列の中に入つてつた下請会社は相当圧力が加わつて来るし、まあ利益はなくてもやらなければならぬというふうなことになつて参るだろうと思うのでありますが、そういう場合を想定をいたしますと、親会社、向うとの話合いをつけて行く方は数が多くても三社か本社くらいのところであろうと思うのでありますが、下請業者というものは専門メーカーにいたしましても、加工メーカーにいたしましても、数限りなくあつて、請負の方が相当乗りかえて行く、あるいは非常に歴史的なものは別として、いろいろそこでまた入札競争というものがはげしくなつて乗りかえられて行くというふうな不測の事態、損害があるということがありますかどうか、村田発条さん、東京製作所さん、そのほか中小メーカーの方から御説明を願いたいと思います。
  38. 安並正道

    安並参考人 私はただいまの元請メーカーは一割の利益を保証されておるということについてちよつと発言させていただきたいのです。ただいまのお話で元請は一割の利益を保証されておるというふうに承りましたのでありますが、この点はわれわれやります仕事アメリカの図面仕様書でやりますのが初めてでございますし、様子がわかりませんものですから、入札の当初から最初二五%納入したときに原価計算をやろう、そうしてそれによつて最後の値段の修正をすることができるという条件のもとにやつたわけなんでございます。ですから今契約は単価何ぼと契約いたしておりますけれども、数量の二五%納入いたしましたときに、すなわち私どもから言いますと、来年の三月になりますが、原価計算をいたしまして、もし損をしておれば一割の限度で値段を修正してくださる。もしもうかつておれば下げるぞということになつておりますので、その利益をもらえるものとは限つておりません。ただ適正利潤はぜひもらおうと思つております。
  39. 田中文吉

    田中参考人 系列がまだはつきりできておりません。しかしこの武器製造のごときは、当然必要でもありますし、自然にできて行くと思つております。まだはつきりできておりませんから、従つてわれわれ下請業者も元請業者に対して競争がございます。また新しい業者が出て来たり——今私のやつている小松仕事で言いますと、五軒の信管会社がお互いにせり合つて小松がとつた注文一つでもよけいとろうこする。しかし大よその値段は元請できめております。それであとは生産力技術、よそよりも早く納める、こういうことで競争をしておりまして、値段でたたき合つておるということは、ただいまのところございません。それからわれわれが下請に対しましては、単価はそれぞれ修正をしております。安過ぎたと思うものは値を上げるし、またなれて来て能率が上つて来たものは、それじやここまで下げてくれ、それから、われわれが元請からもらつた値段が今度二割下げられたから、君らもひとつこれに協力して下げてくれ——これはすべて話合いでやつておるのでございます。われわれが下請を使いますときには、ほとんど話合いばかりでありまして、下請を競争さして値をたたくということはやつておりません。
  40. 村田利十郎

    村田参考人 私たちの工場はバネをやつておりますからへ専門メーカーでありまして、たまたま出血受注のお話で下請業者がいじめられるかというお問いのようでございますけれども、そういうことも若干、今まで確かにございました。これは親会社がいじめるということではなく、あまりにも業者が濫立しておるために、出血してまでも仕事をとつてつてしまうというやり方がたまたま起きておりまして、そういう事態が長く続くと、確かに下請業者は倒産のうき目にあうと思います。もちろん普通民需生産の場合は、自由競争によつてわれわれは向上し、合理化して行かなければなりませんからけつこうと思いますけれども兵器生産というような国家的な事業になりましたら、国で工場水準をきめて、それをA級、B級というような階級にわけて、厳重に検査して、工場を推薦して、その工場兵器をつくらせるというような、何らかの措置を与えていただかない以上、いいものが安くできないということになると思います。
  41. 山手滿男

    ○山手委員 神戸製鋼の安並さんにもう一ぺん伺つておきますが、向うの関係では原価計算に繰入れるものでありますが、日本の今の金利は、向うから考えると非常に高いものであるし、それから運転資金を相当設備資金に無理をしてつぎ込んでおられる。そういう関係で金利や何かも相当にかさんでおる。アメリカとは事情の違つたことがあつて、マージンの点や何かについても相当見方がかわつておるのでありますが、そういうものについて、現在向うはどの程度めんどうを見てくれておるのか。原価計算の要素の見方について、現在どういうふうに行われつつあるか、その点参考に私は一点伺つておきたいと思います。  それから村田さんにお伺いしたいのですが、この法案を通しますと、下請は別として、直接発注を受ける方の親請負の方は、この法案で規制をされて非常に安定をして来ますが、その下の段階は、この法案が通つても、同じように下請負として、中小企業者として、出血受注の競争をなお継続をして行くここになるこいう結論になると思うのでありますが、その点についてはどうであるか、もう一ぺん御答弁を願います。
  42. 安並正道

    安並参考人 ただいまの原価計算の問題につきましては、実はまだ私ども来年の三月か四月にならないと、具体的にそういう問題にぶつからないものですから、目下アメリカのやり方の研究をやつておりますのと、それから日常のことについては、細大漏らさず全部記録をとつて整理をいたしております。それで今のところまだはつきり申し上げる段階に至つておりませんが、とにかく仰せの通りに金利はこちらは非常に高い。アメリカは安い。従いまして、この金利を経費として見てもらうということに、相当困難があることをわれわれ覚悟いたしております。それでその点は、向うの慣習上経費としてやれなければ、適正利潤の方で見てもらうように努力をしなければならぬと思つております。現在のところそういう段階でございます。
  43. 村田利十郎

    村田参考人 われわれはどこまでも出血受注ということは、今後続いて行くのではないかと心配しております。ですからこの法案が通過しました場合、中小企業のいわゆる国家的水準というものをきめ、またそれに携わる事業に対しては、ある程度の減税または資金的な援助、融資、そういうものがない限り、今後なかなかうまく行かないと思います。
  44. 山手滿男

    ○山手委員 最後に私はもう一つ前田さんに承りたいと思います。先ほどの小平委員の質問に対して、この法案自体には反対であるがというふうな漠然としたお話でありましたが、あなたの方の会社は相当大きな会社であるし、この法案が通つて、現在の作業自体が一応安定をして行くということは、労働組合の幹部としても歓迎をされるということにはならないかどうか。むしろこういうものがなくて、大いにどんどんやつて行く方がいいというお考えであるか。さつきのは不明確でありましたから承つておきたいと思います。
  45. 前田信義

    前田参考人 私たちは現在兵器の修理作業をやつて、それが生活のかてになつておることは事実でございます。しかし私たちは、私たち労働者のすべてがそうであるように、あくまでも平和産業ということを常に念願しておるのでございます。そういつた大局的な面から見まして、私たちはこれに反対するということであります。
  46. 永井勝次郎

    ○永井委員 われわれがこの法案の審議にあたりましては、実はJPAとの間における契約の実態、その契約日本産業に持ち込んで、どういうふうな形でプラスして行くのか、行けるのか。基本的にプラスになる条件はなくて、アメリカから日米安全保障条約あるいは行政協定あるいはMSAというようなもので、一方的に押しつけられて、出血受注の形によつて奴隷的な賃金で働かされる結果になるのか。そこの問題を明確にしながら、この問題の批判をして行きたい、こう考えておるわけであります。もしそういう形で出血受注が押しつけられておるとするならば、国内に対して日本政府は完全な独立をしたように見せかけておるけれども、実質はアメリカからいろいろ押えつけられて、につちもさつちも行かないのだ。そういう日本政府が動けない立場を、民族的な立場に立つて議会がこれを取り上げて、正常な契約と正常な商取引ができるような、そういう平等の条件を確立することがわれわれの任務である、かような立場に立つてわれわれはお尋ねをいたすのでありますから、歯に衣を着せないで率直にいろいろなことの事実を明確にしていただきたいとお願いをする次第であります。  そこで第一に、先ほど来のお話を承つておると、世間や新聞雑誌等で宣伝されるほど出血がないのではないかというような印象を受けるのでありますが、それぞれの業態、それぞれの何で違いましようけれども、はたして総体的に見てほんとうにうわさされるような出血があるのかどうか。出血を各として一面下請工場をたたき、一面労働賃金を引下げる。そして一面価格改訂条項によつて価格の改訂を向うに望む。こういうような一つの考えでそういうことをなされておるのか。この出血があるのかないのか。一体計算上の実体がどうなつておるのかということをひとつ簡単でよろしいですから、各皆さんから一言ずつこの実情をお伺いいたしたい、かように思います。
  47. 菅晴次

    菅参考人 私は自分で事業をやつておるわけではございませんけれども、今までのそれに関連しておるところから想像しておるのですが、大体あまり出血はないんじやないか、こう思つております。  ただそのうちで、特に会社の名前をあげたりするのはあれでございますから、私がかりに事業を自分でやるとしたならば、大阪機工が受けられた迫撃砲とか、佐世保船舶が受けられた擲弾筒とかいうものは、あるいは出血じやないか、こういうふうに想像しております。
  48. 三善幾久次

    三善参考人 私から申し上げます。私が実は特需出血の親玉でございます。はつきり申し上げます。それで社長やめた。その理由は先ほど申し上げた通りであります一要するに彼らの誤算であつた。これに対処して厖大設備をしたということが、要するに経費倒れになつたということの大きな原因であります。もう一つは、ちようどこれは二年前でありますから、非常に業界仕事が足りなくて、何とか食い込みたいということから非常に安い値段でやつて、それに牽制されたというようなことがあげられます。現在のいわゆる特需で私どもがやつたのは、自動車なり戦車なり、いろいろな修理を各工場でほとんどおやりになりますが、それの補給部品でありまして、種々雑多な何万種類というものをやつたわけでありますが、現在大量に出ております砲弾とか迫撃砲というものは、これは材料費から鍛造費からあるいは機械加工費から、あらゆるこまかいものを原価計算いたしまして、その原価計算の内容によつて、いわゆるネゴシエーシヨンを、折衝をいたしてきめるのでありまして、そう極端な形にはなつていないわけであります。ただその中に幾分のかげんというか、どうしてもとるために幾分のかげんをする傾きは、二、三今昔さんの言われたようにないでもありませんけれども、そういう形で詳細な内容検討をやつてやるのであります。この点を申しあげておきます。
  49. 安並正道

    安並参考人 私はJPAにおきまして、昨年から実に数を忘れたほどたびたび入札をいたしまして、それで受注落札をして契約が成功いたしましたのは現在までたつた一種類であります。そのほかは全部私ども値段と比べて、ほかが非常に安いものですから、とうていわれわれは近寄ることもできなかつたのであります。幸いに私どもが落札できたものは、そうむちやな値段じやなくて、私どもから見れば合理的な値段でありましたので非常に幸いいたしておりますが、しかしこの数多い中にはそういう出血受注であるものが多々あると思います。それをJPAが押しつけたかというと別にそうじやなくて、結局業者がお互いに競争をして値段をせり下げてしまつたということでそうなつているわけであります。実情はそんなようなことであります。
  50. 前田信義

    前田参考人 私一人がちよつと立場が違うのでございますが、私といたしましてはうちの立場において申し上げてみたいと思います。日本製鋼といたしましては、このJPAと契約するわけでございますが、この契約には法定利潤というものが明確に認められておるわけであります。法定利潤というものが八%、ちやんと押えられております。契約の種類はタイム・アンド・マテリアル方式といいまして、法定利潤が八%なら八%あと間接労務費であるどか直接労務費が幾らというふうにきまつておりまして、契約の単価いかんにかかわらず一応法定利潤といづものの八%は認められておるわけであります。ですから実質的におきましては業者としては何ら出血がないわけであります。ただその契約単価のいかんによつて出血受注という形が下の方に来る、こういうことであります。
  51. 永井勝次郎

    ○永井委員 三善さんにお尋ねいたします。三菱さんがいろいろ雑誌等にお書きになりました記事は拝見させていただいて、非常におもしろく、参考になる点が非常にあるのでありますが、三善さんの体験を通しまして、お答えを願いたいのです。  向うの原価計算の中には金利は認めない、旅費も認めない、交際費も認めない、こういうことになつておるというのでありますが、その通りでありますか。  それから労働賃金の単価は大体一時間二十セントというようなことでありますが、労働賃金の単価はどのようなとりきめになつているのであるか。  それから契約にあたりましては、向うは口で約束したり、あるいは書類を交換してもサインをしないものは、一切これは正式のものと認めない、こういうことで、書類を交換したからそれで確かだと思つたら、これはサインがないからだめだ、こういうようなことで、それぞれのセクシヨン、セクシヨンで話が全然最初と違つて行く、こういうような事柄があるかどうか。  それから入札等におきましても、第一回入札、第二回入札、はなはだしいのは三回までも入札が行われておるということであります。これはまだ箱を開かないうちに入札内容が漏れて、そして最低の札を入れたものよりももつと安い価格で仕事をやるという申出があれば、その安くやるというものに機会を与えるという理由によつて、第二回、第三回の入札が行われておるというようなことがあると聞いておるのでありますが、その事実があるかどうか、  それからJPAに勤務しておる者が退職しますと、こちらで事務所を持ち、業者になつて、そうしてその契約入札なり、そういつた仕事の中に入つてブローカーをやつて、頭をはねるというようなことがもうあたりまえのようになつておるというようなことでありますが、それがほとんど向うの慣習のようになつておるということでありますが、そういうようなブローカーとして頭をはねるものが、契約高に対して大体どのくらい頭をはねておるのか、そういう事実をひとつこの際明確にしていただきたいと思うのであります。
  52. 三善幾久次

    三善参考人 これは先ほど安並さんが言われたように、私どもいわゆる経理監査というものを受けております。それで三、四人の方が見えておるわけでありますが、大部分が二世の方が多いようであります。それでわれわれの方からも経理部の人間がみな立ち会つて金利を認めないとか、交際費は認めないとか、まあ旅費は認めるのでありますが、金利と交際費というような問題になりますとこれはもちろん不当な交際費なんか認めるのはとんでもないのでありますけれども、それが向うの原則になつておりまするが、しかしいろいろ向うと折衝している間に、こういう費用はこういう費目の中に入れたらどうかというような話合いもできておる。そうしてある程度歩み寄つてもらつておるのでありまして、それでも利子の全額を認めるというわけにはなかなか行きませんけれども、まあある程度はこういう費目の中に入れて処理したらどうかというような形で、それに順応するような形てやつておるわけであります。それにしても原則的に利子を認めないということについては、これは向うの、いわゆるアーミイ・レギユレーシヨン、調弁規約がありますので、ちよつと日本では困る問題だと思います。事実上はある程度のコンヴアーセーシヨンはやつておるわけであります。それから交際費の問題は私どもも大した交際費を使つておりませんから、あまり痛痒を感じておりません。  それから労務者の賃金の問題ですが、これは各職種によりましてこまかく数十種類にわかれておりまして、それの現在私ども会社で実施しておりまするのは、平均一時間当りの賃金をやつておりますので、平均しますとこれを契約をやつた当初は二十一セントちよつとになつたと思いますが、二十一セント幾らになつております。もちろん高いのは三十セントくらいのもあり、安いのはほとんどしろうとの人ができるのは十七、八セントのようなものもありまするから、それぞれ段階がついております。この問題は私ども何も異論はありません。それからあれが一時間四十八セントという経費込みでアワリー・レートという形になつたのでありますが、この四十八セントは私どもは絶対に拒否したものでありますけれども、これについては時間をその割合で水増しするということで了解を得て、そのようにしてやつて来ておつたのであります。ただその後いわゆる同じものを公開入札に出す。たとえば私どもが四ドルでやつてつたものを公開入札に出されて、これが二ドル五十セントの入札が出たというと、これを無理やりに引下げようとする。私どもはとてもそれは下らぬ。しかし最初は四ドルでとんとんだつたが、だんだんなれて来て最近では三ドル五十セントくらいまで行くようになつたというので、三ドル五十セン十くらいまでわれわれが下げてやる。そうするとこれはいかぬ、三ドルにしろというようなことを大分要請されたことはございます。これは業界のほかのメーカーからそういうものが出て、結局私どもは、今までずつと一年ばかり、最初割合に文句なしにやつてつたのが途中からわれわれのやつたものを公開入札に出された。最初は公開入札に出されなかつた、これは図面もなければ何もない。われわれは全部見本から判断して図面をつくる。それで、規格をつくつて向うの承認を経てつくつたその図面が、向うの手に渡りますと、向うはわれわれのつくつたスベキユレーシヨンによつて公開入札をすることができるというような作戦にひつかかつて、公開入札になつたということでありまして、われわれは非常に最後が悪かつたのであります。  それからブローカーの点ですが、JPAに勤めていた人がやめて私ども仕事関係したという例もありませんし、私どもそういうことを不敏にして知りませんが、最初米軍の発注が出たときに、たとえば三菱商事とか、三井物産とかいう、ああいう大きな外国貿易をやつていた商社が非常にこまかくわかれまして、たくさんの会社ができまして、外国の各支店長なんかをやつておられて語学の非常に達者な方が最初に向うと交渉して、いろいろと仕事をとられて、小さな工場なんか利用してやられたというような事実はたくさんあつたわけでございます。しかし向うに勤めておつた人がブローカーをやられたということは、私よく存じておりません。その点御了承願いたいと思います。
  53. 永井勝次郎

    ○永井委員 前田さんにお尋ねいたしますが、前田さんの関係を通しまして、職場の中で日本国内に適用されている労働者の権利というものが保持されているかどうか。賃金その他において一般の国内の技術者技術を修得している者の基準において高くなつているか、安くなつているか。  それから工場にはアメリカの監督官がそれぞれ来て何かすると思いますが、そういうような形を通して日本産業としての自立態勢を職場においてこのような状態で確立をして行けるかどうか、こういうようないろいろの点について職場における日本人として、労働者としての基本的人権、日本人としての基本的立場が保持される状況にあるかどうか、こういう事柄についてひとつ御所見を承りたいと思います。
  54. 前田信義

    前田参考人 大体日本製鋼におきましては、七月一日から契約が更改されるわけであります。この契約が更改されますときに、事実上契約単価というものが引上げられております。不時の際の物価変動その他の場合におきましては契約の一〇%以内で契約単価が引上げられることはあるのでございますが、大体契約更改時期に単価が引上げられるわけでございますから、つまり私たちの賃金につきましても、この七月の契約更改期をねらうという形で賃金値上げという形を打出すわけでございます。ほかの場合におきましては、実際には賃金値上げができない。すなわちその賃金は現在どうかといいますと、たとえば一番わかりいい話が、私たちの立場と、それから全駐留軍——私たちと同じような作業をしておりますが、LSO労務者との賃金の開きは、私たち最近賃金値上げを獲得いたしたわけでございますが、現在においてもなお同一職種におきまして駐留軍労務者とわれわれ特需労務者との間の賃金の開きが約二千円くらい開いております。これがまつたく同じ作業をし、同じ労働をしておつてこういうふうな状態でございます。私のところは現在六千人おりますが、あの赤羽の基地の中におきましては、LSOの労務者が約四千人ばかり働いております。同じ基地の中で、一方はLSOである。一方はわれわれ日本業者に雇用されるものであるということで同じ基地の中に働いておりながら、同じ作業をしておりながら、そういうふうに賃金の開きがあるということでございます。  またこの内部においてどうかという面になりますと、たとえば現在あまり食堂の設備がない。それから便所等も少いというふうに、いろいろ厚生設備その他の面で常に会社にいろいろ要求するわけでございます。しかしこの基地の中の造作その他につきましては、会社だけの立場ではできないわけでございます。これはすべて軍の許可がなければできない。極端な話が棒一本打立てるにも軍の許可がなければできない。六千人おりまして工場が約四十くらいあるわでございますが、そのうち食堂の設備があるのが約一割くらいしかない現状でございます。ほとんどがどろにまみれた戦車の上であるとか、あるいは車の上で飯を食うとか、表で飯を食うというのが実情でございます。それとともにあの中は私たちが通称たんぼと言つておるくらいに非常に道が悪いのであります。極端なところになりますと、雨なんか降りますと一尺以上もぬかる、日本製鋼に勤めるのには長靴がなければ就職ができない。それが一つの条件になるほど道が悪い。まつた設備が不完全であります。それからまた百メートルも二百メートルも行かなければ便所がない。便所がたつた一箇所しかないというような状態であります。そういう状態でありますから、むろん私たちが労働者としての権利でありますところの、たとえば組合活動でありますとか、集会でありますとかいうようなことは、あの基地内においては一切許されておりません。現在私たちが闘争を通じまして一応獲得しましたことは、お昼の休憩時間に、門から外へ出てから組合活動をやつてもよろしいという条件を獲得しただけでございまして、実際は基地の中におきましては、一切の集会、一切の組合活動、一切のパンフレツト等の配布も禁ぜられております。私たちの権利というものは全然認められていないわけでございます。但し私たちと業者との間におきますところの就業規則その他には、一応労働三法が認められておりますが、実際は軍の勧告、指示、命令という形でそれが一切ほごになつておるというのが実情でございます。
  55. 永井勝次郎

    ○永井委員 最後に菅さんにお尋ねをいたしますが、先ほどのお話では施設が遊んでおる、技術が余つておる。これを活用することが必要であり、輸出産業として武器生産がきわめて国策的である、こういうお話でありましたが、アメリカの国内法には、アメリカの国内で調達できるよりも高い価格で域外調達をしてはならないというのがあるわけであります。こういうことで、もしMSA受諾によつてこの原則が適用されることになると、ただちにアメリカの価格が日本の国内法に適用される、こういう形になつて参ろうと思います。そういう形において、出血なしにこれに対応できる条件があるのかどうか、それから武器生産というものが大体そういう不安定な、どこに需要があるかわからないような外国の注文を対象として、不安定な形でこれをやるということで、企業として成り立つものであるかどうか。それから経団連では防衛生産委員会において、日本の防衛のいろいろな具体的な生産態勢を用意しておるようであり、あるいは保安隊が現在違憲をのがれて、言葉だけのごまかしによつて実際は再軍備をやろうとしておる。その一環として武器生産がこういう形によつてごまかされて、既成事実としてつくり上げようとしてやつておるわけでありますが、こういう事柄についてどのようにお考えになられるか。われわれはやはり武器生産をするならば、その武器生産も堂々と国会で論議をすればよろしい。再軍備をやるならば堂々と再軍備の可否を国民に問うてやるべきである。そういうことを国会を通さないで、アメリカとの行政協定によつて契約その他においても日本の主体性においてこういうものをやるのでなくして、アメリカから武器生産をやらされておる。その手先をつとめておるのが政府及びこれにつながる財閥その他旧軍人、こういう方たがこれにつながつておどつておるのではないか、こういうふうに考える。ほんとうに民族的な立場で日本産業を立ち上らして行くんだ、そうして日本経済の自立を通して日本の完全な独立を確保するためにわれわれは困難な道を努力して行かなければならないのだ、こういう一つの基盤を確立しようとするならば、こういうごまかしな、あやふやな言葉の先だけのきれいごとでやつて行けるようなおめでたい条件ではないのではないか、こういうように思うのでありますが、これに対してどうお考えになるか。
  56. 菅晴次

    菅参考人 第一の御質問の、かりに域外買付で武器注文が来るとしても、アメリカ国内法によつてアメリカ生産するよりは安くなければならぬという条件がある以上は、東南ア地域から兵器注文が来てもだめではないかという御質問に対しましては、そういうことになれば確かにアメリカとの競争はできないと思います。アメリカの方が日本と競争して、東南ア地域兵器を輸出することになればさしあたりはできない問題だと思います。しかし私は先ほど申し上げましたのは、東南ア地域の諸民族もすべて独立したのでありますから、いずれはこれらの国々も経済が充実して来たならば、何らかの形でおのおの自分の国の自衛軍をつくるだろうと考えております。そうなりますと、おのおのその国の金によつてどこからか兵器を買うだろう、現実に今ベルギーであるとか、あるいはスイスであるとか、フランスであるとか、いろいろの国から兵器の引き合いを申し出ているくらいでありますから、いわんや日本がやつてなかつたならば、おそらくこれらの東南ア地域の独立諸国はその兵器をヨーロツパ諸国から買い付けるだろうと思います。そういう場合において、今たまたまアメリカ日本兵器注文しようというのですから、それを活用して——活用してと申すか、利用すると申すか、やつて、早く東南ア地域におけるそういう注文があつた場合に応じられるような、つまりアメリカにも競争をして、安くいいものをつくれるような過渡的な一つの手段として兵器を大いにつくつたらどうか、こういうのが私の考えでございまして、最近すでに日本製鋼はタイ国たま注文を受けてやつておられます。そういうものが現実にできておるのでありますから、これは必ずしも私は今すぐにMSAとか何とかいうようなことで制限を受ければそういう問題になると思いますが、それがなければできることではないか、こう考えております。  それから兵器をつくるならばもつと堂々と日本の自主的立場からやつたらどうか、こういうお話でございますが、これは全然御同感でございまして、何もアメリカが無理につくらせるからこつちがそれに圧迫をされてやるというような気持では私はないのであります。またこれを将来の再軍備の下地にするというような意味で私はこの兵器生産協力会をやつているわけでもございません。まつたく先ほど申したように、私は皆さんが非常に御努力になつて、あらゆる平和産業民需産業をやつておられるけれども、まだ余つているものがあるからこれを活用したい。たまたまアメリカがそれに注文してやろうというのだから、それを大いに利用したらいいじやないか、まあ簡単に申せばそういう意味でございます。しからばアメリカ注文がなくなつたり、あるいは再軍備しなかつたらどうするか、経営者としてはまことに見通しのない仕事じやないか、こういう問題が必ず起ると思いますが、これにつきましては過去の多年の経験、並びに古い話ですけれども、外国を見歩いて、イギリスにおいてはヴイツカース、アームストロング、ドイツのクルツプ、スエーデンのボフオース、チエコのスコダ、イタリアのフイヤツト等の方々の会社、フランスではシユナイダーの会社に三、四年おりましたが、それらの工場に長くおつて見ておりますと、工場内にころがつておる兵器の大砲の筒であるとか機関銃の銃身であるとかいうものは、どこの注文かというとみな外国の注文である。アルゼンチンの注文であり、ペルーの注文で優秀な工場が動いておつたのを親しく目撃しました’それでありますから、われわれの努力次第では——これは輸出業者も大いに努力しなければいかぬが、兵器一つ機械の輸出と見れば、何も日本軍備の下地とかいうようなことを考えなくても、またアメリカ注文がなくても、努力次第ではやつて行けるのじやないか。そうかといつて戦争のときのように、国をあげて兵器産業をやる、これは大それた考えでございますが、産業の一部をもつてこれに指向して行くということは、先ほど申したように、附帯的にも日本技術向上改善に非常に裨益するところがある、こう考えております。
  57. 大西禎夫

    大西委員長 次に中崎敏君。
  58. 中崎敏

    ○中崎委員 ちよつとここにおりませんでしたので、あるいは以前質問がされていて、重複する面があるかもしれませんが、その点御了承願いたいと思います。  私、参考人のお話を聞いておりますのに、今日の参考人の御意見の大部分は、この法案が可決されて一日も早く実施されることが望ましいというふうな御意見であります。そこでお聞きしたいのでありますが、大体吉田内閣並びに自由党は自由主義の考え方の上に立つておるのであります。いわゆる自由競争によつて、よいしかも安いものを多数に売るんだという考え方の上に立つております。おそらく皆さんも大体そういう考え方の是認の上に立つておられると思う。ところがこの法律を見ますと、自由に企業が興ることを制限して、政府がこれをチエツクして行こうという二とが骨子である。そうしますと、自由主義の基調の上に立つたところの、どういう会社でもどんどん自由にできたらいいじやないかという考え方に、明らかに制限を加えるという考え方が新たに加わつて来るのでありますが、この点は十分に御了承の七のことと考えていいのかどうか、これは代表してまず菅さんにお聞きします。
  59. 菅晴次

    菅参考人 ごもつともな御質問でございまして、これは私の私見を申し上げますと、これは兵器産業の特殊性というものが非常に問題になると思うのであります。つまり兵器というものは、どこへでも需要があるというものじやないということと、注文政府注文が大部分であります。それが一つと、それからいろいろな危険性かあるから、監督指導を非常に厳重にしなければならぬ。それを悪用されては困るという点もございます。それから秘密保持というような問題も、自分の国の兵器になれば起つて来る。兵器にはいろいろそういう特異性がありますから、いかに自由党の天下といえども、これを野放しにかつてほうだいにやれというわけに行かない。またやらせたならば、これは必ずどこか破綻を来す。いわゆる過剰生産とかいろいろなことになつて来まして、収拾がつかぬことになるのではないかと思います。これはやはり昔、いろいろ監督官制度を設けて調整をしておりましたが、やはり事業活動の調整は、過度の制限はいかぬと思いますが、低度のものは必要ではないかと考えております。
  60. 中崎敏

    ○中崎委員 兵器に特異性があるというお話でありますが、そう言うと何でもかんでもみなそれぞれ特異性があるかと思う。買う人が少数であるという性格の仕事には、みな同じように制限を設けなければならぬことになり、買手が主として政府であるという場合にはみなそうであるということになると、その問題はなかなか簡単に割切れないのではないかと思う。特にこの兵器にだけこうした法律を設けなければならぬという理由がどうしてもわからない。そうしてまたもしかりに一歩下つてこれを認めたとしても、今度独禁法というものが相当大幅に改正になるという運びになつておりまして、国家公共の立場から一般に私的の経済活動の制限をある程度ゆるめるということになるのでありますが、今度ゆるめられた私的独占禁止法の適用によつて一つ二つの相手にたくさんの人が殺到して出血的に入札するとか受注の申出をするという場合には、必要に応じては業者が相談し合つて、やたらに安く売るまいというような価格カルテルみたいなものもできるのじやないか。あるいは企業合理化をやつて行く上において、お互いが相談し合つて、大体この程度で納めて行こうじやないかという協定もできる道が開けるように思うのでありますが、その法律の適用によつてもなおかつこれをやらなければならぬ理由があるのかどうかということをお聞きしてみたい。これは三善さんにお尋ねしたいと思います。
  61. 三善幾久次

    三善参考人 先ほど菅さんから言われたように、危険防止とか、あるいは治安の問題とか、秘密の保持の問題とかいうような特異性は、兵器には必ずございます。兵器の特異性というのはそういうことをおつしやつたのだと思う。そのほかにもう一つ特異性があるのは、ほんとうの特殊なものが相当たくさんあるのであります。それをつくるには特殊などうしてもなければならぬ設備というものがあるが、そういうような設備は占領当時米軍の指示によつてぶつこわしたのがたくさんあります。ほかのものは全部あるけれども、その一つだけないというものがある。たとえば機関銃なり小銃をつくるときのライフル旋盤というものは、みなぶつたつてこわしてしまつたから、ほかの設備は全部あるが、それだけがない。だからそれだけをそこに与えればできるわけであります。その機械が遺憾ながら日本でできなければ輸入しなければならぬ。そうすると野放しにしておいたら、おれのところも輸入する、おれのところも輸入するというので、外貨を方々がら奪い合いするという問題が起るのではないか。これは大砲をつくるという問題でも同じじやないかと思います。特殊などうしてもやらなければならぬ設備でも、むちやくちやに必要量の何倍というものを輸入して、日本外貨を非常にそれに濫用しても困るし、また日本でできる設備にしても、そういう特殊な厖大設備を——自己資金といえば株主の資金であり、あるいは他人資金は借入資金であるが、そういう資金の少いときに、方々でそういうものをやられても非常に困るじやないかということから、最も経済的にでき、最も適当したところにやらすということにして、そうむちやくちやな設備の拡充はやらぬような形にしたらいいじやないかというようなことも、この法案には考えられていると思う。これは菅さんのさきの兵器の特異性の御意見に対する補足であります。
  62. 中崎敏

    ○中崎委員 そういうような事情のものは、兵器に限らずたくさんあると思います。また現在日本においては少い物資を輸入したいが、外貨関係とかいうような意味も含めて、ここに一つの制限をしておるという仕事はたくさんある。そういう仕事には一々使用許可をするような個々の法律をつくつてもいいのじやないかというふうな気もするので、どうしても兵器にだけ特にこの法律をつくらなければならぬ理由はほかにあるのではないか。言いかえれば、たとえばアメリカ言つてはおかしいのですが、ある特定国の発注が多い。その発注の関係上特に何らかの意思表示があつて、そうして政府の側においてその通りに唯々諾々としてこういう法律をつくるようになつたのではないかというような気もしておるのでありますが、これはあなたにそこまで聞いてもわかるかどうかわかりませんが、何かほかに特別重大なというか、そうした大きな理由がなければ、こういうものをつくらなければならぬということはわからない。たとえばこの法案の内容を見ますと、飛行機なんかを除外する。そういうものは、われわれはりつぱな平和産業にもなるかもしれぬが、りつぱな兵器にもなるようなものだと考える。そういうようなものは除外された。船はまた管轄違いだというので除外されているのでありますが、管轄違いであるといつても、政府が一本でやつておるのだから、通産大臣であろうが、運輸大臣であろうが、何大臣であろうが、政府一本でまとまればいい。そういうものを除外しているのであります。いずれにしても狭い範囲ではあるが、これだけを目的としたところの法律をつくるという理由がどうしても私にはわからない。そこで今言うように、何らかのよそからの重大な圧力というか、強い意向が反映したというか、あるいは事前に何らかの約束がされておるか、何物かであるということであるのだが、かんじんの国民の代表である国会議員にも知らされていないので、私はこの法案の審議の上に非常に大きなる懸念を持つておるわけなのでありまして、何かそういうことについて、業者のあなた方のだれでもいいのですが、納得の行くような説明を、実は別にこういう理由があるということの片鱗でもおわかりになつておるならば、はずかしながらお聞きしておきたい。
  63. 三善幾久次

    三善参考人 今までずつと発達しておるいろいろな業種といいますか、仕事というものは、やはり相当なバランスができておるのであります。ここに終戦というものによつて非常に故意的に、致命的なアンバランスを受けた仕事、この仕事が再び台頭するという事態になつたときに、やはり元のバランスのとれた形に直すということが必要になつて来るのではないか。ここに新しく起きた仕事なんです。終戦前はとにかくバランスがとれた姿で正々堂々とやつてつたのですが、それが故意的な形でああいうふうになつた。それを元の姿に復旧する必要はありませんが、これからの需要に応ずるために最小限度のバランスの形を復旧する必要がある。これは新しく、急速に兵器産業が勃興したということを前提にしてお考えになつていただかなければいかぬのではないか。今までの仕事というものは長い間かけて来ておつた兵器産業も長い間かけて来ておつた。ところが終戦という厳粛な事実によつてがちやつと一刀両断にやられた。しかし心臓はとられたけれども、あとの胴体は残つておるので、心臓さえ入れればいいのではないか、目玉だけ入れればいいのではないか、ほかのものは目玉もちやんとそろつておるのです。兵器産業もそうだつたのです。
  64. 中崎敏

    ○中崎委員 この問題は、たとえば重化学工業なんかでも、終戦後において、ことにここ二、三年来、日本でも遅ればせながら目ざましい発展をして来ておる。それと同じことはやはりある。ただ兵器だけということは私にはどうしてもわからない。われわれは兵器は人を殺すものだということはわかる。それなるがゆえにこれを取締るということもわかるが、殺すものだからその生産の上に特に許可制を設けなければならぬという理由はどうしてもわからない。そこでこれは外国から圧力か何か大きな理由がなければならぬと思うのでありますが、この点はこの程度にしておきたいと思います。いずれ政府の方からもう少しつつ込んだ話があるということを期待して、その問題はほかのときに聞くことにいたします。  そこで先ほどからのお話の中に、何だか特定の国から武器注文を受けるということで、これはことに関係の深いものに限ると思うのでありますが、これは外国の軍の管理工場であるのじやないかという印象を持つ節があつたのでありますが、現実に一体どういうふうな状況になつているか、それをひとつお聞きしたいと思います。神戸製鋼の安並さん、おわかりになれば…。
  65. 安並正道

    安並参考人 兵器を受注して製作いたしておりますが、これに対して私ども米軍の検査官が参つておりまして、できました品物の材質の検査あるいは寸法の検査をするだけでありまして、そのほかに何ら管理を受けておりません。何も制約を受けておりません、ただわれわれがつくる品物が向うで要求する図面通りになつておるか、仕様書通りになつておるかということを検査するだけであります。その他の管理あるいは制約は何も受けておりません。それは私どもの同業におきましても同じことなのでありまして、ただ、ただいまの日本製鋼所さんの赤羽工場は、これは軍の施設の中でやつておられるのですから、自然われわれとは趣が違つておるだろうと存じます。
  66. 齋木重一

    ○齋木委員 関連して……。管理を受けられないということですが、ただいま中崎さんの御質問に対して確かに三善さんが御発言になつたと思います。会計監査を受けておるということを言われておつたように私ども聞いております。それで中崎さんがそういう御質問になつたと思います。
  67. 三善幾久次

    三善参考人 会計経理監査というのは、別に私どもは管理工場でありませんけれども契約の条項には、非常にもうかり過ぎるから削る、特定の利潤だけしか認めない、また損したら損の理由をよく見て、カバーしてやらなければならぬということで経理監査がなされるので、これは契約の条項に入つているのです。とにかく米軍の発注は全部、管理工場でなくてもそういうふうなことをやられることになつております。  管理工場のことでさつき御質問ありましたからちよつと申し上げますが、管理工場というとおかしいのですが、軍が接収をして、そこで日本製鋼さんのような、あるいは日本自動車さんあるいは新三菱重工、ああいうようなところで労務を提供されて、米軍の管理のもとにやらせる。あれは軍の直轄工場でやる、こういう形になつている。あれだけが管理工場というふうなもので、現在砲弾をつくつておるとか何とかいうものは自主的な形でつくつておられて、ただ検査なりあるいは経理監査なりはやられるということにはなつておるのであります。
  68. 中崎敏

    ○中崎委員 次に話題をかえますが、輸出々々とよく言われておるのでありますが、武器の輸出について、アメリカの特需は別として、そのほか現在において兵器の輸出を現実にやつておられるのか。この点をどなたでもいいのですが、おわかりになつておる方からひとつお聞きしたい。
  69. 菅晴次

    菅参考人 現実にやつておりますのは、日本製鋼がタイ国に対して、日本が向うにぶんどられた戦車の、大砲の弾丸がなくなつたので、その弾丸を、五十七ミリと思いますが、それを今五万発やつているわけであります。それが現実の例であります。
  70. 中崎敏

    ○中崎委員 輸出については今みたいに非常に心細い状況であり、今後の見通しにおいても必ずしも明るくないと思います。そこでこれが輸出のために云々というような話は、どうも私どもはわかりかねるのであります。そこで結局特需が中心である。将来日本軍備漸増というか、そういう意味において国内からの発注もあるであろうということは期待されるかもしれませんが、これはMSAの関係等も一連の関連性があると思いますが、いずれにしても純然たる輸出という面については大した問題にならないげそこでまず今後さらにどんどんこういう工場ができて、国家の重要なる資材、金を使うということは非常に残念なことです。そこでこれはいわゆる計画経済で行くべきである。ただこれだけではない。非常に国家経済の窮迫している今日において、資材、金なんというものはやたらにむだなところに使うべきものでないということで、これは国の経済としてそういう計画を立てるべきだという考え方を持つておるのですが、吉田さんはそういうことは非常にきらいなんで、あの人が内閣を持つておられる限り、なかなかそう簡単にも行かぬと思いますが、そういう一連の日本経済というものを考えたときにそう言えるのであつて、この問題だけを法律的にきめて行くというわけにいかぬ。ただ少数の、現在地歩を持つておられる大きな事業経営者が、あとからどんどん競争者が出て来ては困る、まあまあ安泰にやろう、そのために国家の特別の保護をやつてもらいたいということ以外に大きな理由は認められないというふうに私は考えているのでありますが、私の考えに大きな間違いがあるかどうかということについても一応意見を聞いておきたい。これはどなたでもけつこうです。
  71. 大西禎夫

    大西委員長 御意見がないようですが…。
  72. 中崎敏

    ○中崎委員 それじや…。
  73. 大西禎夫

    大西委員長 次に川上君。
  74. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 議事進行について——今一時のようですが、まだあと質問が大分あると思いますが…。
  75. 大西禎夫

    大西委員長 私考えておりますのは、各党一名ずつやつていただいて、なおぜひお聞きになりたいという点があれば、つけ加えていただきたい、かような考え方で、時間が大体三時間でありましたので、発言者も十分ずつにしていただき、各党一名ずつということで、なお御希望の方があれば簡単にそこだけをひとつ聞いていただく、こういう構想でやつたのであります。その辺どうぞ御了承願います。
  76. 永井勝次郎

    ○永井委員 せつかく参考人もいらつしやつていることだし、重要な法案でもあるし、各党一人ということでなしに、質問があれば、わずかな人ですから、簡単でもよいからそれぞれ発言をお許し願いたいと思います。
  77. 大西禎夫

    大西委員長 さようなわけですから、各党一名ずつ済みまして、それでなおこういう点は聞きたいという方に簡単にひとつ聞いていただく、そういうことで御了承願いたいと存じます。川上貫一君。
  78. 川上貫一

    ○川上委員 私のはそう長くありません。議論にわたらぬように聞きたいのですが、三善さんにちよつとお聞きいたしたいのですが、あなたがやつておられます間に、あなたの工場でストライキがあつたことがありますか。
  79. 三善幾久次

    三善参考人 ストライキは、仕合せにもありませんでした。
  80. 川上貫一

    ○川上委員 もしストライキがありましたら、アメリカとの関係はどういう約束になつておりますか。
  81. 三善幾久次

    三善参考人 ストライキが起つた場合のいろいろなわれわれの損失は、私ども責任を負わなければならぬわけです。アメリカさんは何にもこれに容喙しないことになつております。管理工場でなく、私どもは自主的な工場になつておりますので……。
  82. 川上貫一

    ○川上委員 実際は方々で容喙しているのですが、あなたのところでストライキがなかつたと言われれば、実際の経験がないからそうかもしれませんが、これは実際はやつているのです。ほんとに正直に言つてください。アメリカは、法律的には別ですが、どんなストライキが起つても、実質的にだまつて見ている、ほんまにそうお考えになりますか。たとえば無期限ストライキのようなものが起つたときに、規則の上ではアメリカが干渉する規則は何にもありませんが、実際問題としてそうなつた時分に、莫大な発注をしているアメリカがだまつて見ていると、ほんとにお考えになりますか。
  83. 三善幾久次

    三善参考人 期限が相当重視されますから、私の方でストライキの関係から品物ができないというような場合には、私どもでやつてつたものを、あるいはそのまま効力を失わないで別のところに発注される可能性はある。そういうことはやるかもしれません。
  84. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことをやられたら、たとえばあなたの会社ならひどく参りますか。
  85. 三善幾久次

    三善参考人 ストライキによる損害はあります。
  86. 川上貫一

    ○川上委員 別に発注せられましたらたいへんなことになりまして、場合によつては、大きい会社はともかく、中くらいの会社ならつぶれるというようなことがありますか。
  87. 三善幾久次

    三善参考人 それは長い間ストライキが続けば、どうしてもそうならざるを得ないと思います。
  88. 川上貫一

    ○川上委員 ストライキが行われれば、途中で契約をやめるという条件があるのですか。
  89. 三善幾久次

    三善参考人 それはございません。契約はやめませんけれども、ストライキの解決にはできるだけわれわれが携わらなければならぬということは、それは私どもの立場からそうやらなければならぬが、米軍側契約を破棄するということはありません。ただ期限の間に合わないものは他に発注せぬと、向うも困りますから、そういうことはわれわれも了承しなければならぬ意いますし、向うもそれはやると思います。
  90. 川上貫一

    ○川上委員 期限が間に合わなかつたら、契約をやめたり、もういらないと言つたり、キヤンセルするという契約があるのですか。
  91. 三善幾久次

    三善参考人 期限が間に合わないときはキヤンセルされることがあるかということですがございます。
  92. 川上貫一

    ○川上委員 この期限はどれくらいですか。どれくらい違うたらキヤンセルになるか。
  93. 三善幾久次

    三善参考人 部品の種類によつて違いますが、大体一箇月から六箇月くらいの期限でわれわれはやつているわけです。しかし今までのわれわれの体験から申しますと、二箇月ないし四箇月くらい遅れたものは理由さえあれば、また自分の方で何とか間に合いさえすれば、キヤンセルはしませんでした。間に合わなかつた場合に、それをキヤンセルしないで、別のところに発注されて、われわれが遅れたのをとつていただいたこともあるし、またわれわれの方と相談をして、どうだ、これはどんなところで困つているのだ。こういうことで困つているのであるから、これはわれわれもキヤンセルした方がいいんじやないかということで、相談づくでキヤンセルするというようなことはありました。
  94. 川上貫一

    ○川上委員 そうするとあなたのお話では、厖大注文を受けておつて、そうして資本家の方が労働者の要求をちつとも聞かぬ。その時分に非常に長期にわたるストライキが起つたという場合には、中くらいな会社——あるいは大きい会社でも場合によつては参つてしまう、こういう危険があるという結論だと思う。そういうことになると思うのです。  いま一つ三善さんですか、軍需生産を元のようにするつもりだというふうに言われましたが、ほんとうにそう思われますか。
  95. 三善幾久次

    三善参考人 川上先生は頭のいい方だから、私の考えは御存じだろうと思うのですが、それは元の厖大な軍需生産を復活することはできぬが、しかしこれからの軍需生産に応ずるだけの復活はやるべきじやないか、こういうふうに私は考えております。
  96. 川上貫一

    ○川上委員 わかりました。参考人においでくださつた方で、政府ではないのですから、議論はいたしません。  安並先生にお伺いしたいのですが、経理監査に来ると言うておられましたが、一週間に何回くらい来ますか。
  97. 安並正道

    安並参考人 現在はまだ参つておりません。私ども仕事が進みまして、そうして値段の修正について、私の方から修正してもらいたいということを願い出たときに、向うから来て、私どもの過去に実際にかかつた費用の実績を調査することになると思います。
  98. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、注文をして、あなたの方の会社がどんなことをやりおろうと、どんな生産をしておろうと、労働者がどんなことをやろうとも、あなた方が監査をしてくれというて願い出るまで、向うがじつとしてほつておきますか。これは国会の記録に残るのですから、正確に言つてもらいたい。
  99. 安並正道

    安並参考人 私はまだその点は正確な答弁はできません。
  100. 川上貫一

    ○川上委員 それはちよつとおかしいのですが、政府当局でないから資めることはできぬが、正確に言うてもらいたい。
  101. 安並正道

    安並参考人 私はその経理の担当でないのですから、よく存じないのです。
  102. 川上貫一

    ○川上委員 私の聞いているのは違うのです。経理の問題は今お話になつたのですが、その工場でどんなやり方をしようと、労働者と資本家の間がどんなことになりおろうと、あるいはどんな工場の経営をしておろうとも、整理ができて監査をしてくれというて願い出るまでアメリカさんはじつと見ておりますかということです。簡単なことなんです。
  103. 安並正道

    安並参考人 私の方はまだその域に至つておりませんので、まだここで明答することができません。はなはだ失礼でございますが……。
  104. 川上貫一

    ○川上委員 これはアメリカの方のことで、ほんとうのことが言いたくないのでしようが、政府の方ならば承知いたしませんけれども参考人の方ですから…。あなたの発言はよくわかつたのです。これはなかなか言えない、それでけつこうです。  それから前田さんにちよつとお尋ねしたいのですが、あなたのところは、経営権は会社にある。基地の中であるというだけであつて、経営施設そのものは、何もアメリカのものでもないし、基地でもない。そうですな。——そのときに工場の中ではストライキができぬということになつた、こういうことなんですが、こういうことになつたことについて、労働組合の方ではどういう根拠によつてそうなつたと考えられておりますか。これは根拠がないとお考えになりますか。向うさんあるいは会社は、こうこういう根拠で工場内のストライキをとめた、これは当然だとお思いになりますか。この根拠の問題を知らしてもらいたい。
  105. 前田信義

    前田参考人 日本製鋼のあそこは、土地並びに建物は政府の所有になつております。それであそこは全部施設でございまして、基地になつておりますので、日本製鋼といたしましては、単に労務の提供だけをやつておるわけでございます。それからストライキのことでございますが、私たちは過日ストライキをやつたわけでございます。そのときに会社としては非常に困ります。ストライキをやられて——実際に私たちは被害はありませんけれども契約が破棄されるようになると困りますという程度でございます。あそこは基地になつておりますので、基地司令官として大佐がおりますが、それに私たちが再三呼ばれまして、君たちがストライキを打つならば、従業員会社もキヤンセルするぞということは、再三言われました。しかしながら私たちは、私たちの生活の向上のための当然の要求として、ストライキを打つたわけでございます。そのストライキをやめることにつきましても、別に軍からこうあるということでやめたわけではないのであります。
  106. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカの司令官とか何とかというのは、どういう資格で労働者の代表を呼ぶのですか。
  107. 前田信義

    前田参考人 つまりあそこが基地になつておりますので、当然行政協定に基きますところの管理権という面から呼ぶわけでございます。
  108. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、呼んで、その司令官か何だか知らぬが、それが言うのには、ストライキをやれば会社も労働者もキヤンセルにしてやるぞ、こういうことを言うのですか。それで会社も、それじやつぶれるからと思うて、困る、こういうことになるわけですか。それ以上のことは言わないのですか。
  109. 前田信義

    前田参考人 会社は、軍がそう言つたから困るというのではなくて、会社としては会社の立場で、もしやれば、そういうふうになると困る。会社が困るばかりではない。君たち労働者も困るではないか。だからやめてくれ。会社言つておるのは、軍がそういうことを言つておるから困るというのではないのであります。
  110. 川上貫一

    ○川上委員 労働組合が軍に呼ばれましたときに軍はどう言いましたか。
  111. 前田信義

    前田参考人 呼ばれましたときに、ストライキはやらないでくれと言つたのです。
  112. 川上貫一

    ○川上委員 そこがはつきりしないのですが、やらないでくれと頼んだのですか。やつたらこういう処分をするぞということを言つたのですか。はつきり言つてください。
  113. 前田信義

    前田参考人 ストライキをやられては困る。やつたら部隊も君たちもキヤンセルするぞということを言つたわけです。
  114. 川上貫一

    ○川上委員 あなたのところの会社は、政府の資産並びに土地だというのですが、中にはアメリカ自体の機械をすえつけておりますか。
  115. 前田信義

    前田参考人 その通りでございます。あそこにありますところの器材器具、日常使いますスパナ一つに至るまで、全都米軍から供給されております。
  116. 川上貫一

    ○川上委員 これは組合の方に聞くのは無理だと思うのですが、その所有権はどうなつておるのですか。
  117. 前田信義

    前田参考人 一切全部軍の所有になつております。
  118. 川上貫一

    ○川上委員 軍の所有になつてつて、それを会社が使つておる、これはどういう関係になつておるのですか。
  119. 前田信義

    前田参考人 その点は明確ではございませんが、つまり会社としましては、人入れ稼業的に、単に労務を提供するだけでございますので、中におきますところの管理権というようなものは当然軍が持つておりますので、事実上は軍の指示によつて作業をしておるというふうな形でやつておるわけです。
  120. 川上貫一

    ○川上委員 会社の所有に属するものは、スパナ一つといえども中には何もないわけですか。
  121. 前田信義

    前田参考人 ございません。
  122. 川上貫一

    ○川上委員 軍のものでなかつた政府のものというわけですね。
  123. 前田信義

    前田参考人 そうです。
  124. 川上貫一

    ○川上委員 わかりました。それから安並さんにお尋ねしたいのですが、経理の監査が来るというのですが、これはどういう資格でやつて来るのですか。アメリカ関係は、契約に経理の監査をするぞという契約になつておるのですか。
  125. 安並正道

    安並参考人 経理の監査をするぞということではないと記憶しております。それは契約に基いて価格を修正する場合に、私どもの記録を調査するということになつております。
  126. 川上貫一

    ○川上委員 これは相手がアメリカだろうが、どこだろうが、商契約だと思う。あたりまえの契約なんです。あなたの方でほかのところの注文をお受けになつた場合に、ほかの会社から経理監査に来ることがありますか。
  127. 安並正道

    安並参考人 初めの契約でございまして、双務契約でございますから、それで最初の約束に基くわけです。それで最初私の方では材料の値段が非常に変動ずるという場合には、それじや十箇月先に行つて原価計算をした上できめようとか、あるいは材料の値段がどうなつたらどうしてもらいたいというような契約をいたしました場合は、日本人同士であつてもやはり向うの会社から参りまして、その何は何ぼで注文しましたか、そういう調査をいたすわけです。
  128. 川上貫一

    ○川上委員 それがおかしいのです。そういうことを聞くことはありません。これは私と二人で討論し合つておるのじやない。実情を知りたいのです。経理監査に来るのです。経理監査に来るといえばやはり資格を持つて来るわけです。そうすると前のお話じやそれは契約書には書いてない。こういうのです。しかし先ほどの答弁では、会社が経理監査を発法人から受ける。これは普通の取引だと思われますか、それは違うと思われますか。
  129. 安並正道

    安並参考人 経理監査というと非常に大きな、きゆうくつな、重大な問題に聞えますけれども、この場合は契約に基いて向うから原価計算の担当の方が来て、実際にかかつた原価計算の書類を調べるということでありまして、これは契約に基いてやるわけであります。
  130. 川上貫一

    ○川上委員 私は経理監査々々々々ということを大層問題にしておるのじやない。あなたのところはそうでないということを言われておりますが、実際はそうじやない。もつとひどい監査をしておる、監督しておる。これは材料はたくさん持つておる。今のこの軍の軍需工場、これは経理監査だけじやない。そのほかの全部を管理しまして、間接的に労働者の雇用条件まで管理しておるのです。これは材料を出せと言われれば私たちは出せるのです。そこであなたのところにもこういうことがあるのだということを、参考意見として言われるかと思うのですが、それはないということだし、わからぬということですから、時間をとりますからこれでけつこうです。それから三善さんにもう一つ聞きたいのですが、受注をしました時分の条件の中で、どうしてもこれは困る。実際にこれは会社だけのもうけとか何とかいうことと離れて、もつと日本の独立の立場から考えて、この武器の受注の契約のこういう条項、こういう条項が慣例になつておるか、これはどうしても改正しなければ、たとい製造法というものをつくつてもこの条項を押しつけられて来たのじや非常に困る。これがあると思う。これをひとつあなたの考えを伺つておきたい。たとえば会社の問題とか、労働者の雇用関係の問題とか、製品の検査の問題とか、それから罰金の問題とか、この条項の中にあるこういうことで、これじや非常にいかぬという点です。
  131. 三善幾久次

    三善参考人 私ども仕事をやつて非常に困つた問題は、何万種類という非常にたくさんの仕事がありまして、この種類一つ一つについて最初向うに私たちで図面をつくつて提示する。それから図面がオーケーになつて見本を提示する。見本がオーケーになつて初めて正式にかかる、こういうことになつておるわけであります。これはそれていいわけなんですが、ただこの図面自身がオーケーになるのに非常に時日を要する。それから見本自身がオーケーになるのに非常に時日を要する。この問題がわれわれ非常に困つたわけなんでありまして、私どもそれで方々飛んで歩いたわけなんです。これは私どものいろいろ想像なんですけれども、おそらくその図面をチエツクする能力に欠けておるじやないか、自信がないじやないか、あるいは見本を十分にチエツクする能力が担当者に欠けておるではないか。これは日本でもあるいはそういうことがあつたかもしれぬと思いますけれども、彼らは特に一年なり二年なり来ている人が多いのですから、自分のおる間にミステークを犯したくない。そこでむずかしいものになつて来ると、もうしばらくすればおれは帰るのだから、できるだけあとの者にまかそうということがありはしないか。それでむずかしいものになると非常にひまがかかるという、非常に困つた事例がたくさんあります。それでわれわれも大いに向うの司令官に食つてかかつて、こんなことじやだめじやないかと言うたところが、司令官から、日立から提供した図面は五日以内にこれを解決すべしとか、あるいは見本の検定は一週間以内に解決すべしという指令が出て、どこの工場へ行つてもそれを大きく、その基地々々の司令官の部屋のうしろに張りつけてあつたという事実も見たのです。その当時一時うまく行つたが、またいけなくなつたというようなことで非常に困つた例はあります。そのほか契約の内容とか何とかいいますと、われわれは一応いわゆるアメリカの陸軍調弁規約に従わなければならないのだということで、あのころはもちろん占領時代でありましたからそれに従わされておつたのですが、あの調弁規約というものは、日本の発注方式には非常に合わないじやないか。だからあの規約によらないで日本の自主的な発注方式、自主的な受注方式で行かれるようになつた方が非常にいいじやないかというように私は考えております。
  132. 川上貫一

    ○川上委員 もう一つ、今のような形でやられましてこれを法律で規制するというのですが、どんなかつこうをしても結局出血受注になる。向うさんは日本を助けるために来ているのじやない。つまり日本にやらせる方が都合がいいから、安いから言つて来る。こういう形になろうとなるまいと、ああいう発注の仕方、ああいうような条件の形でやられましたら、いつまでたつても出血的な受注になる、こういうことはないのですか。あると思うのですが、あなたのお考えを承りたい。  第二には、これはどうしてもこの形でやられますと、不等価交換になる。なるほどドルは日本に来る。ドルが入るからドルだけ見ますともうかつたような気がする。ところが、不等価交換になる。ストライキはできぬ、ストライキするとキヤンセルになる。そういう形で労働強化、賃金の引下げをしなければならない。結局不等価交換になる。価値と価値の交換にならぬドルが入るように見えるけれども、長い間続けていると国の経済はだんだんやせる。つくればつくるほどやせる。こういうりくつになるのです。この点について、会社で長いこと経験なさつた方としてお感じになることは何かありませんか。私の質問はこれだけで終ります。
  133. 三善幾久次

    三善参考人 今川上先生のおつしやつたことについて、これは見解の相違もございますからあしからず御了承願いたいと思います。不等価交換になるというお話でありますが、私はそこは絶対反対の意見であります。それは先ほども申しましたが、兵器生産は非常に品質の高いものをつくることになりまして、重工業界の品質を高めるということについて非常に効果のあるものであります。おそらく日本の今までの重工業界がここまで発展をいたしましたのも、兵器生産が非常に大きな役割を果した、こう考えていいじやないか。やはり日本産業界の品質を高めるといことが大事なんじやないか。そのためには一つの方便として、こういうものを大いに活用していいんじやないか、しかもかなり大量生産によるコストの切り下げ、能率増進によつてコストを切り下げるということも考えまして、その考え方を全製品に及ぼして、日本のあらゆる製品の品質が高まり、しかも値段が国際的に十分引合うような形になる。その誘い水として、私はこれを受入れてやるべきじやないか、こういうふうに思うのであります。これは私の見解であります。  それから私が先ほど申しました非常に困つた問題がありましたけれども、この問題は何万、何十万という種類の部品を一々やつたので、非常に混乱をしたのでありますけれども、今後ある特定な完成兵器を請負うというふうなことになりますと、最初のスタートにおいてこれはもちろん相当苦労をされるけれども、それがすべて一応決定的な段階に入れば一瀉千里で行くことと思います。私どもは毎日そういう何十種類のものが累積したので、そういう点で苦しんだのであります。これからの武器製造に対しては、そういうような点はないんじやないか、こういうふうに思います。
  134. 大西禎夫

    大西委員長 大分時間も経過いたしましたし、お昼の御飯の時間も過ぎておるようなので、残りの方々がまだ御質問があるようでございますが、できます限り、そういう事情御勘案の上、簡潔にお願いいたしたいと存じます。齋木君。
  135. 齋木重一

    ○齋木委員 参考人の方々から、先ほど来出血輸出とか、いろいろなことをやつて、元請の方がやつておるというように聞いておりまするけれども、実際においては、元請は出血をしていないということも私どもは実例を見ておるのでありまして、みな下請工場にこれが転嫁されておるということも聞いております。それと同時に、またもう一点は、私は福井県でありますが、お隣りの小松製作所、石川県にありますが、ああいう小松製作所の実情を見ましても、できない場合においては、会社自体は決して出血せずして、労働者を首切り、賃下げをやつて会社の維持をはかつて行くという実情もまざまざと私どもは見ておるのであります。それらの点に対して実際は出血をしないことをわれわれは見ておりますと同時に、先ほど来どなたか言いましたが、商取引によつて契約をいたしまするならば、あとから実際の原材料その他の問題について契約をするときには、すべての観点から入札をいたすのでありまして、契約の改訂ということは、特に原材料その他の変動が急速に起きた場合にのみ改訂するということが商取引の原則ではないかと存じておるのでありまするが、それらは軍需生産兵器生産に対しては自由にあちらさんとそういう契約を持つことが会社としてはできますか。
  136. 安並正道

    安並参考人 この改訂はあとからきまるのではなくて、入札のときにそういう条件でもつて承知の上で入札をしたわけなんであります。私どもにとつては、今度アメリカたまをやりますのは初めてでありますので、それで実際われわれは大丈夫できると思つてつても、さてやつてみると、存外非常に思い違いがあつたということがあつてはいかぬので、むしろわれわれはそれを希望したわけなんです。それであとで実際問題としては、あなたもおつしやるように、われわれが予期しない事態があつた場合に適用されるんじやないかとわれわれ考えておりますのですが、そういう条件でもつて初めから入札をしたわけなんであります。
  137. 齋木重一

    ○齋木委員 諸情勢を考えて、生産コストとか、すべてのものを勘案し、研究して入札されるものと私どもは考えておりますが、そういう場合にあとからそういうことを受入れるはずはないと思います。そうだとすれば、出血とか、何とかいうことは解消されると私どもは考えておりますが、いかがですか。
  138. 安並正道

    安並参考人 私どもはこの問題は反対でありまして、われわれが予測しないような事態にあつて、高くかかつた場合に、ぜひともこの条項によつてそれをカバーしてもらうというふうに考えております。
  139. 齋木重一

    ○齋木委員 皆さんの立場は違うのでありましようけれども前田さん以外の方は、この法案については競争が激甚になるので、保護することを一つの建前として賛成をされているように承つているのでありますけれども政府といたしましては、資本主義的な自由経済における自由競争を原則としている建前から行くと、そこに大きく矛盾が出て来ると思うのでありますが、皆さんは法律の保護を受けようという熱意を持つておられる。片一方においては政府は自由経済を強く打出していながら、こういつた法律を行う。これは政府当局に質問をいたすことでありますけれども、矛盾を生じて来ていると考える。また皆さんも自由主義的、資本主義的な観点において商売をやつて行くという考え方か、また計画経済におけるところの法律によつてつてつた方が安全であるというお考えの方が多いかどうか、あなた方の頭の中に矛盾を生じているのではないかと考えますが、いかがでしようか。これは前田さん以外の方で、どなたでもけつこうです。
  140. 大西禎夫

    大西委員長 御答弁がないようですが…。
  141. 齋木重一

    ○齋木委員 それではこれだけにしておきます。
  142. 大西禎夫

    大西委員長 加藤君。
  143. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 たいへん皆様お疲れのようでもございますし、委員長の御注意もございましたので、前者の質問と重複することを避けまして、簡単に要点をかいつまんでお伺いいたしますから、簡単にお答え願えればけつこうだと思います。  まず第一番に今までの質問で大体看取できた二とでございますが、この仕事をやるにあたつては、アメリカの干渉が非常に多いと思う。経営者側にも、労働者側にも、他の産業に比較して干渉が多いということがわかつたわけなんですが、なおかつそれでもこの産業を振興するためにこの法律を通してもらいたいという御熱意があるようでございます。そこでお尋ねいたしたいのでございますが、この仕事をほんとうに輸出産業として国家の産業機構上重要な位置を占める仕事として推進して行くにあたつて業界としてはこういう法律をまず通すということが先決条件であるのか、ないしはアメリカの干渉というものをこの状態において置くということがいいのか悪いのか、この法律を通す以前にそういう干渉をなるべく少くしたいという意思があるのかないのか、そういう点についてまず菅さんにお尋ねします。
  144. 菅晴次

    菅参考人 実際はこういう法律がなくても業界が結束して、そうして日本業界の総意としてアメリカに強く当れば、今までの契約上のいろいろな問題とか、そのほか向うの政府の干渉とか、そういうものは排除できるのじやないかというので、実はこういう兵器生産協力会のようなものを組織しまして、業界の総意を私が代弁を勤め、多年の経験がありますから、向うのゼネラル級の人もよく聞いてくれますので、非常に努力して、政府の、通産省の方々の御意向も伺い、過激なこともできませんので、なるべくならば隔意なく意見の交換をして、十分了解を得て日本の国情に合うような、いわゆる日本の商慣習面を尊重してもらつて、そうして日本でやるからにはすべての点においてアメリカと違うのだから、そこをまず了解して、もつと合理的、適正な方法で処置をしてもらい。たいということを何べんか大使館にもあるいは米軍当局にも、あるいはJPAにも、八がかわるたびに、また同じ人にも、実はこういうことは何べんか努力したわけです。しかし残念ながら、少しずつ一歩々々向うもこちらの意見を尊重して改善進歩のあとは確かにあるのでありますが、何分私どもは一介の野人でありまして、法的根拠のある権限はないのですから、ここに何らかこういうものによつてより力強い業界の事業活動の調整ができて、その力によつて向うに当つてつたならばそういう念願しておる目的が達せられるのではないか、こういう見解を私は持つております。
  145. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると業界の代表者である菅さんも、この業界の発展を期するには、こういう法律をつくることも必要ではあるけれども、なおそれ以上に他の業界に比べてより一層強いところの干渉を排除するということの必要性を認めて、それを政府に要望していらつしやるわけですね。そう解釈してよろしゆうございますか。
  146. 菅晴次

    菅参考人 そういうことでございます。
  147. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その場合に考えられることでございまするが、まず向うの発注をこちらが受ける場合の契約、これがキヤンセルになつた場合の法的措置というものについて、私は先般政府側にお尋ねいたしましたところ、遺憾ながら米国の国内法が適用されるのであつて日本のキヤンセルの場合の商法は適用されないのだというお答えでございましたが、これは業界の人もさように認めていらつしやるのでございますか。
  148. 菅晴次

    菅参考人 現状ではそうだと思います。
  149. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 現状なり過去でけつこうであります。将来はまた将来でございます。  そういう干渉があつた場合に、注文から規格から価格から納品に至るまで全部干渉がある。そこで向うの言うなりにつくつた。ところが向うの言うなりになつてつくつたけれども、その工場が経営不振と相なつて成り立たなくなつた場合において、このめんどうをアメリカは見ているかいないかを三善さんにお尋ねいたします。
  150. 三善幾久次

    三善参考人 今加藤先生の質問は重大な質問なんで、私の方もむろん同じ運命になると思いますが、昨年からそういうような事態に立至つて非常に困られて、業界から訴えが出ております。私昨年から調達調停委員をやつておりまして、その中では唯一の民間の代表で出ているわけです。私は業界の最も有力な味方になつているつもりでありまして、アメリカさんの委員を向うにまわして、日本業者の言われることでもつともだと思つたようなことは全部通さしておりまして、昨年だけでも数十億の損害をカバーすることができたわけで、この点そういう立場に立つてそういうようにやつておる。だから業界でももしもそういう困つたような問題は持つて来ていただけばどんどんそれを解決して行く、私どもやはりそのところに提訴することになると思いますが、私は提訴する場合には委員を一時退かなければならぬと思いますけれども、これは要求するものは十分要求するというつもりでございます。
  151. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 日本側の業界が要求なさることはよくわかりましたが、その結果を聞きたいのですが、はたして日本の商社と商社の間、あるいは日本業者業者の間で、それほど干渉をしていたとするならば、これは完全に管理ということが言えるわけです。そういう場合に見るめんどうと、こちらが提訴なり、要求なりをした場合に、アメリカ側が見るめんどうの見方と比べて相違があるかないか。もしありとするならば、それを将来どのように改革したいというのが業界の希望であるのか、その二点をお尋ねいたします。
  152. 三善幾久次

    三善参考人 いろいろなめんどうがたくさん出ておりますので、こういうめんどうを未然に防ぐというような意味合いから、あの有名な価格再決定の条項を打消すとか、あるいは今の日本製鋼さんのような労務提供の場合のいろいろな変更に対してカバ十する条項を入れるとか、そういうような条項を入れることによつていろいろ提案をして、向うの委員としては一応受け入れて向うと折衝するというような段階になつておるのであります。  それから昨年の事例で一つの例を申し上げますと、これは十社ばかりの紡績業者が毛布とか帆布とか、そういうきれ地をたくさん請負われたんであります。大分部厚い契約の条文がついておりまして、とてもそれを検討しておるひまがありませんので盲サインをなされたわけです。ところがそれにはやはり価格再決定をやる、オウデイツトといういわゆる原価審査をするという問題があつて、それがもしも不当に利益がある場合には値引きする。また利益がなければこれを値上げをするというような条項がありまして、そのために実は非常に大きな利益があつたのであります。それは国際市場の原料が非常に下りましたので、利益の大きいところでは八五%あつて、少いところでも一五%くらいの利益があつたのでありますが、それを差引くというようなことが起つて業界からの訴えがあつたのです。その訴えの理由は、こういうものはいわゆる相場で仕事をするのであつて、いろいろな市場の原料が下るか、上るか、そういうことを見趣してわれわれは請負うのである。それでこういうものの製品の性質はそのときの相場でやるのであつて、もうかつたから下げるとか、損したから上げるとかいうものではない。やはりある程度思惑の入るしろものである。だからこういうような条項はその場合には適用しないでくれという問題だつたのであります。これはそういう仕事の性質であるから、適用するのじやないだろうというようなことで、これは非常に助かつた例であります。それから、わずかの間に、こんな厚い英文の本を翻訳して、それをいろいろ検討する。しかも翻訳した文章というのはなかなか見にくいものであります。そういう条文が入つているのをよく知らないで見のがしたということもあつたのであります。これは見のがしたのが悪いのだけれども、ほんとうを言えば、日本人にもわかるような懇切丁寧な翻訳をつけて、これで検討してくれと言つた方がいいのじやないか。むしろわれわれが進んで一般条項についての翻訳の懇切丁寧なものをつくろうじやないかということも考えて、着々準備しておるということなのであります。しかし何にしても日本業者のことなのでありますから、日本業者としましては、日本業者の受け入れやすいようなアメリカの発注方式が、ああいうレギユレーシヨンによらない行き方でできるのが、最も望ましいのじやないかということを私は痛切に感じております。
  153. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大体わかりました。米国の干渉によつて業界が他産業に比べればある程度苦しい状況下に置かれているということはわかつたわけなのですが、そういう状況下において、その問題を解決する法案よりも、なお先にこの法案を審議し、この法案を出さなければならないゆえんのもの、それを尋ねましたところ、やはり二重投資を避け、競争のはげしさからのがれこるとだという意味政府側の答弁がありましたが、これについては業界は御同感でございますか。これは菅さんにお尋ねしたい。
  154. 菅晴次

    菅参考人 それはその通りでございます。
  155. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうなりました折に、他産業にもこのような問題が方々にあるにもかかわらず、なおこの業界だけがこういうふるいにかけるところの法律をつくらなければならないゆえんのものは、一体どこにあるかということについて、やはり菅さんにお尋ねしたい。
  156. 菅晴次

    菅参考人 先ほど私は兵器産業の特異性ということについて申し上げましたところ、特異性は何にでもあるというお話がございました。それは突き詰めて言えば何でも特異性は持つおりますが、兵器だけは何と言つてもあぶないものでありますし、それからこれは私どもの経験からしても、アメリカ軍としてもどうしても機密保持というものがあると思います。それから大体注文政府注文である。民間から注文することはどこの国でもないと思います。だからどうしても、これは統制と言えば語弊があるかもしれませんが、何かこういう法律である程度これを調整、あんばいして行く必要はあると思います。そこへ持つて来て、ほかの産業はずつと発達しているが、先ほど三善君も言われましたように、これはすつかり壊滅された仕事でございますから、やるやらぬを論ずれば別問題でありますが、やるとすれば、やはりこういうものがいると私は思つております。
  157. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、この法律かどうしても必要なゆんのものは、発注者が政府であるということですね。これは局長さんの答弁でも、発注者が一人だけであるからという御答弁があつたことを記憶しておりますが、それでよろしゆうございますか。
  158. 菅晴次

    菅参考人 現在では米軍一人です。
  159. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私のお尋ねしているのは、過去及び現在のことをお尋ねしているのであります。
  160. 菅晴次

    菅参考人 現在はタイ国からも注文がありますから、二つになつております。引合いについてはそのほか現在いろいろの国から入つております。
  161. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、この法案を通すことによつて日本業界に一番プラスになるものは一体何ですか。私の考えでは、まず一国の過重な干渉を排除することの方がプラスになるような気がするのです。それが今日の状態としてできないから、あえてこれを通してもらいたいという意向のようですが、これを通すことによつてプラスになるところとマイナスになるところがあると思うのですが、プラスになるところだけを聞かせてもらたい。
  162. 三善幾久次

    三善参考人 加藤先生の御質問は、えらいというがつた質問なのでありまして、これについて私は明決なる答弁を申し上げたいと思います。それはこの法案を通すことによつて、最も経済的に必要な程度の軍需生産ができ上るということなのであります。それからアメリカの発注側にももう一層の発言権を日本政府が持つてもらいたいと思います。これは私どもしりをたたいている一人でありますが、それには一応受入れ態勢というものも考えて行くことが大事なのであります。腰がふらついていて向うに強くかかつてもやられてしまうから、こちらの受入れ態勢——こういう法案を整備して生成発展するということを考えて、そういう基礎の上に腰を強くしてもう少しぶつかつて日本業界の望む方向に向つて行くというようにしていただきたいと考えております。
  163. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はプラスになる部面がどこかということをお尋ねしておる。
  164. 三善幾久次

    三善参考人 それは両方ともプラスになります。
  165. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それはそれでけつこうでございますが、競争のはげしい、二重投資を避ける、しかも発注者が一人であるという状況が解消された場合においては——今の菅さんのお話によると将来解消されるはずなのだ。先ほどの活によると、東南アジアにも売りたいのだ、輸出産業としたいのだ、こういうお話でございますから、これは解消される運命にあると思いますが、その場合にはこの法案必要性がなくなると解釈してよろしゆうございますか。
  166. 菅晴次

    菅参考人 こういう法案によりまして、日本兵器産業武器作業が健実な発展をとげたあかつきにおいては、私は解消されていいと考えます。
  167. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、あくまでこのときにあたつての暫定措置と考えてよろしいわけですね。
  168. 菅晴次

    菅参考人 私個人としてはそう考えております。
  169. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは個人でけつこうです。わかりました。その次に、いかに暫定措置であるとしても、現在これがどうもすつきりしないというのでは、経営上もお困りであろうと思いまするが、業界としては今年の注文をどの程度とお考えになつていらつしやいますか。注文量を政府側は金額に見積つて大体一億ドルに達するかいなかなからいだというお答でございますした。それでよろしゆうございますか。
  170. 菅晴次

    菅参考人 純兵器はそんな程度だろうと私も思つておりますが、これは想像でございます。
  171. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 来年は、再来年はとお尋ねいたしましたところ、前の通産大臣も、このたびの通産大臣も、それはわからないという御答弁でございましたが、せめてこれを熱心に要望なさる業界にはわかつているのじやないかと思いますが、これもわかつておりませんか。
  172. 菅晴次

    菅参考人 それはわかつておりません。
  173. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは日本政府が発注者になつて皆さん工場に発注することを期待していらつしやるのか、そういうことは期待していらつしやいませんか。
  174. 菅晴次

    菅参考人 これはどつちともつかぬと思います。
  175. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そういたしますると、ここに問題になる点は、ことしの注文はわかつた。ところが来年の注文になると、業界政府も皆目見当がつかないままにこの仕事を育てて行くと考えてよろしゆうございますか。
  176. 菅晴次

    菅参考人 それはまことに大事な問題でございまして、業界の方々も一番悩みの種にしておられるところだと思います。それで、見通しのつく、永年計画にわたる発注量を示せということは、経団連もやかましく言つておられるし、私どもも及ばずながら絶えず米軍に当つておるのでありますが、そういう問題は、今度のMSAのような問題ができて、相互援助条約でございますか、ああいうものができぬ限りは、アメリカ軍事機密だから示されないのだ、こういうのでございます。アメリカだけの注文ということを考えますと、そういうわけで予測できません。
  177. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうなりますると、予測し得ない将来の発注を夢見て設備をして行かれる、こういうことに解釈してよろしゆうございますか。
  178. 菅晴次

    菅参考人 そこで、設備なんかをむやみにしないようにこういう法律ができるのだろうと私は思つております。
  179. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、先ほどの三善さんのお考えと違いまして、設備を二重投資するといけないから、外貨を余分に使つらやいげないかろ、こういう法律をつくるという言葉と大分矛盾が来る。あなたのさつきの発言は、工場が余つておるからやるのだ。そこへ米国が注文して来たから、待つてましたというわけで、いわば渡りに舟だというようなお言葉がございましたが、それと、設備の上に二重投資を避けるという点に非常な矛盾を来すんじやないかと考えまするが、これはいかがでございますか。と同時に、今日の設備でもつて、新しく設備を増設しなくても、発注の兵器武器は完全にこれを規格通りつくつて、期日通り納あることができるかできないか、この問題についてお尋ねいたします。
  180. 三善幾久次

    三善参考人 実は私は三十何年の技術者でありますので、私の言うことがよくおわかりにならぬのじやないかと非常に心配しておるわけですが、私としてはできるだけおわかりになるように申し上げたいと思うのでありますけれども、できるだけ設備を拡充しない、これは今菅さんの申しました通り。しかし九十九の設備があるけれども、一の設備がこわされてない。あるいは非常にこのごろ進歩しておるから、九十九の設備は助かるけれども、一の設備だけはどうしてもとりかえなければいかぬ、こういう状態にあるのであります。だからできるだけ設備もあり技術者もそろつておる、これは大丈夫だ、この一の設備だけやつてやればいいというところにやつてやる。それでやらせれば非常に経済的に行くのじやないか。しかしおれのところもくれ、おれのところもくれというようなことがたくさん出て来ると、非常に困るので、できるだけそういうような二重投資を避けて——二重投資といつても、これは何も大まかにするのじやなしに、そういう考え方でやつて行くというのが、この法案の持つておる重要な意義じやないかということを私は申し上げておるのであつて、菅さんの先ほど申し上げましたのと私の申し上げましたのとは、矛盾はしないのであります。これを矛盾しておるとおつしやるから、あなた方をしろうとと申しては非常に失礼でありますが、しろうとであると申し上げるわけです。
  181. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はしろうとでございまして、くろうとのあなたたちとその点で理論闘争をしているのではございません。従いましてみんな、それでよろしゆうございますかと言つてお教えを請うておるのでございまして、そんなかまきりが牛車に向うような大それたことは決して考えておりませんから、ひとつなごやかなうちにお手やわらかに御指導をいただきたいと思います。  二重投資、新しい設備、こういう問題ですが、先ほど来の発言から行くと、確かに私は矛盾している、こう思うわけですが、それは理論闘争じやないのですから、どつちでもいいです。  もう一つそれに関連してお尋ねしたい点は、九十九まで設備があつて、一だけの新しい補充が必要である、こうおつしやいました。ところが、私の調べたところによりますと、過去においてすでにこの事業に携わつていらつしやる工場側といえども、今日なお新しい設備が要求されておる。今度この仕事の発注を受けたいという熱烈な希望があるという方々の工場も、なお現在だけではとうていやり切れない、こういう事実を私は知つております。それが下請工場のみならず、国家の遊休施設や財産を受けてこの仕事をやりたいと考えていらつしやるような大企業の方々も、なお設備には相当の費用を要しなければならないという具体的事実を、私は国有財産処理委員会の方で調査して知つておりまするが、この点は私の調査が間違いでございましようか。それとも、政府側がここへ提出された資料と、他に提出ざれた資料に相違があると解釈してよろしいのか。それとも、今お答えになりました三善さんが、大先輩であり先生であるから、政府側ないしは業界をカバーしてお答えになつていると解釈すべきでございましようか。まことにしろうとでございますので、とんでもないことをお尋ねいたしまするが、親切にお教え願いたいと思います。
  182. 三善幾久次

    三善参考人 加藤先生のなかなか辛辣な御質問でございますが、私が先ほど九十九と申しましたのは、一つの例として申し上げたのでございまして、企業家でも欲望がありますものですから、元の造兵廠を借用して、そこにある機械だけでは足りなくて、国有財産にある機械を利用して自分で大いにやりたいという欲望というものもあると思います。欲望があることは非常にけつこうなのですけれども、欲望があつてそういうことができたとしても、それを受け入れて十分な能力を発揮できるところなら、それは大いにやつてけつこうだと思う。しかし十分な能力のないところが、政府の方に運動する、あるいは代議諸君にもいろいろ運動をして、もしもそれをやつたとしても、十分な能力を持つていない人がやつても非常に困るのじやないか。やはりそこに欲望というものはみなあると思いますが、できるだけ十分な能力を持つたところに重点的にやらせるという行き方をした方がいいのじやないかというように考える。能力という問題は、ちやんとした技術者をかかえて、技術を持つておるということ、それから設備が相当に準備されておつて、わずかに補強することによつてこれが達成されるということ、こういうことを私は能力と申すのであります。そういうところに重点的にやらすという行き方がいいのじやないかと私は思う。人間の欲望はたくさんあるのですから……。
  183. 大西禎夫

    大西委員長 加藤君に申し上げますが、もう時間も非常におそくなつて参りましたので、ひとつ結論を出していただきたいと思います。
  184. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 委員長さんの言はきわめて尊重して、まだこの問題についてお聞きしたいことがありますが、それでは先に急ぎます。もう結論をお尋ねしたいと思います。来年のことがわからない——再来年のこともわからない。それが一つの国の注文である、日本政府はこれに対して保証し得るだけの注文を発するかというと、それもわからない。こういう場合に直面なさいまして、かりに古い設備でございましようとも、ましていわんや新しい設備を増強なさいまして仕事をなさいました折に、それから生ずる、製品の価格を決定する場合に、少し足りないものが出て来るようにも思います。この点は御満足でございましようか。これは菅さんにお聞きします。
  185. 菅晴次

    菅参考人 それは私はその企業家自身の腹だと思います。それでもかまわずやるという人はしかたがない。しかしなるべくならば政府としてはそういうものをやらせないように指導調整するのがやはりこの法律のねらいじやないかと思います。私はそういうように考えております。
  186. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではこの問題について、安並さんの工場が私の地元にもございますので、安並さんとしてはこういう状況下においてコストを決定なさる場合に、どのようにお考えになつて経営をなさいましようか。お尋ねします。
  187. 安並正道

    安並参考人 御質問の意味が私どうもはつきりのみ込めないのでございますけれども…。
  188. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは簡単に申し上げましよう。コストを決定する場合に、設備の価格あるいはそれに投じたところの資本、これをどう考えて行きますか。これを私はかつて大臣にお尋ねいたしました折に、政府の援助資金は出さないのだ、自己資本によるのだということをさきの通産大臣がお答えになりました。今度この法案が提案されました折に、さきと今度と違うところがありやいなやという質問に対して、この点にはお触れになつておりませんでした。そこで依然として同じ状態に置かれて行きました場合に、当然起り得ることは、投入した資本、設備の償却、そういうことによつてコスト決定の場合に、来年、再来年のことがわからなければ今年一年で何とかしなければならないというのか、ないしは過去の蓄積をこれに投入して、そうして一か八かでやるということに相なるわけでございますか、この点でございます。はたして経営がうまく成り立つか、成り立たないか。すでに倒れた工場もあるということを聞いておりまするので、懸念の上に立つてお尋ねするわけでございます。
  189. 安並正道

    安並参考人 先のことについては、ほかの方が申上げましたように、これはわかりませんが、ただ私どもはなるべく継続して発注があることを希望しておるのです。それから現在私ども注文を受けておりますものは昭和三十年の四月まで継続いたしております。設備につきましても、砲弾をつくるだけに使う、そのほかのことには使えないという専門の機械を現在受けておる注文で償却をしなければならぬと思つております。それからまたそのほかに使えるという機械設備につきましては、これは普通の日本の償却法に基く方法で償却をして行く考えであります。
  190. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。それに引続きまして、減価償却を今日の法律に基いてやつて行くとおつしやいまするが、来年のことさえわからない、朝鮮休戦ですでにもう注文がなくなるだろうということで株が安くなつたり高くなつたり、てんやわんやになつたことがございます。そういう折に、株が安くなる高くなるはきようの論外といたしまして、この経営をして行くにあたつて税務の問題をどう取扱われまするか。減価償却を今日の法律に当てはめて行くとおつしやいますが、来年、再来年のことがわからなければ当てはまらない現状にあると存じます。それをどう税務の問題で考えて行かれますか。この点をひとつはつきりとお尋ねしたい。これは菅さんにお尋ねしたい。計算が成り立たないのじやないかと思いますが、やはり腹ですか。
  191. 菅晴次

    菅参考人 私はその点はもう腹よりしかたがないと思います。
  192. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これはまたまことに非科学的なことでございまして、腹と勘でやられたおかげで税務の問題は片づいたとしても、今年はあつたが、来年ないということで、臨時雇いの人がちよちよこと首切られる。下請の方方が薄口銭でやらされたおかげで、爆弾とともにうら若い早乙女が二十何名も東京のまん中で青空にふつ飛んで行つてしまつても、何らなすところがなかつたということに相なりますときの腹をひとつお尋ねしたいのであります。腹で行かれるならば、そういう場合の腹をぜひお聞かせ願います。
  193. 菅晴次

    菅参考人 私は大事業家でもないのにはなはだ大それた申し上げようかもしれませんけれども兵器産業ばかりでなく、ほかの事業も五年と同じ状態でいるということは私は少いのじやないかと思います。終戦後でもずいぶん石炭が景気がいいとまた悪い、またいいというように、絶えずかわつているのですから、事業家としては、繊維工業またしかり、肥料工業またしかりで、みな同じことだと思います。結局経営者というか事業家の腹です。そこがまた事業家のセンスといいますか、頭じやないか、私はそういうふうに思つております。
  194. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 やはり腹で手当てをして行く、こういうことですね。それはどこの業界でも同じです。私は別な畑におる人間でございまするが、それはあなたのおつしやる通りで同じことでございまするが、それが同じことであるならば、こういう法律を別な畑にもつくらなければならぬ。これが過去の実績によつて行けるからほかのものには必要ない、このものには必要である、こういうことになつたので、私は現状に即してお尋ねしているわけでございます。  最後にお尋ねしたいことは、この問題については新しい設備をつくる、工場の払下げを受ける、あるいはこの納入につきましてもいろいろな干渉があると存じます。すでに米国側の干渉があることはここで明らかにされたことでございまするが、工場側に向つても、米国以外の干渉もまた非常に多いと存じまするが、その逆に企業者側がよそに向つて干渉をなさつたことが過去にあるかないか。将来はこれをどのように考えていらつしやるか。これを最後にお尋ねしたいのでございます。これもやはり菅さんにお聞きします。
  195. 菅晴次

    菅参考人 私はそういうことがあつたかどうか存じません。
  196. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは具体的実例を申し上げますと、新聞面に、内灘の問題がああなつて来たというのには相当業界のサゼスチヨンが行われたと聞いております。しかしそれはそうであつたにしろ、それは私の問うところではございません。私がぜひあなたの腹をもう一度割つてお尋ねしなければならない点は、この法律の通過することによつて救われた業界はそれで助かるでございましよう。しかし同じ業界においてもこれは一つのふるいであり、入学試験であると、はつきり大臣もそれを認めております。このふるいにかけられておつこちた方々は、あなたのおつしやるように、ほんとうに設備をあけて待つていても、他の産業はできないので、おぼれんとする者がわらをもつかまえる気持でつかまつて来るでしよう。なおそれでもこの方々は下請工場となり、あるいは二重、三重の手数料をとられて仕事をしなければならない運命に置かされると存じます。そこに働く、いわゆる中小企業工場に働く工員の方々も、大工場に働く方々とは違つて、一層みじめな状況に追い込まれなければならないということが、この法律を通して目に見えて来ることが第一点。  次に、わからぬとおつしやるならば、もつと具体的に御説明申し上げます。もう一つは、この仕事のおかげで内灘が困つている。砲弾の集積場はごめんだ、それを運ぶ道路はごめんだ、これに携わる鉄道の方々が危険にさらされている、いろいろな問題がかもし出されて来ると存じまするが、これについては一体どのような腹を持つていらつしやるか、前の問題、あとの問題について簡単でけつこうでございますが、お答えを願いたいと思います。
  197. 菅晴次

    菅参考人 要するに今おつしやる通り、法というものは、もういまさら私が申し上げるまでもなく、運用いかんによつてよきにも悪きにもなると思います。今御懸念のようなことは、運用いかんによつてはそういうことがあると思います。なるべくそういうことのないように、これの運用は当事者として非常に慎重にやらなければいかぬ、こう考えております。運用さえよろしきを得たならば、いいところだけをとつて悪いところは除かれる、こう私は思つております。内灘のような問題は、今いろいろああいうふうになつたものですからおつしやいますが、たとえば鉱山爆薬をどうして運搬するか、これだつてやはり危険じやないか、こういう問題はあると思うのでする何もこれだけをきゆうくつに考えなくてもいいんじやないかと思います。そういう点もございます。その点は政府皆さん方の御指導なり御監督なりによつて皆さんの意に沿うようにできぬことはないじやないか、こう考えております。
  198. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは大分皆さんお急ぎのようですので、これで、あとは大臣に質問させていただきたいと思います。
  199. 大西禎夫

    大西委員長 下川君。
  200. 下川儀太郎

    ○下川委員 大分時間がおそくなりましたので、簡単に二、三質問を申し上げたいと思います。  先ほどの川上君の質問を聞いておりますと、あなた方の答弁の中でいろいろ苛酷な制約を業者が受けている。しかも労働者側も非常に悪い条件で働かされているということを聞いておりますが、そこに問題があると思う。苛酷な条件で、しかも出血取引がされているにもかかわらず、法的な保護を求めても、その生産を上げようとしている。そうなると、あなた方の本質的なものがこうした苛酷な条件でしかも出血取引であると言われているけれども、その内容は相当の利益があるから、そういう苛酷な条件にも一応屈服して、労働者を低賃金に縛りつける、あるいは税問題を適正により以上に安くしてもらうような方法をとるとかいうようなことで、一応もうかるから、いわゆる兵器生産に意欲を燃やしているのか、それとも現実的に苦しい立場に置かれていても、やがては日本が再軍備される。そうなつた暁にはそのまま今の工場あるいは技術がその方に向けられる。従つて将来の兵器生産の夢を見ているがために、今日のあなた方の兵器生産の意欲が高ぶつているのか、あるいは現実的にもうかるから、いろいろな法的保護を求めても、兵器生産に対する意欲を燃やしているのか、それともその両方の考え方で兵器生産に対する法的な保護を求めているのか、その点をお話願いたいと思うのです。
  201. 大西禎夫

    大西委員長 下川さん、今の問題はらよつと業者の方で御答弁ができかねるようですが、何か参考意見のことでもございましたら、簡単に説明を願いたいと思います。
  202. 下川儀太郎

    ○下川委員 私は兵器生産というものの本質、性格あるいはまた先ほど加藤清二君が申された兵器産業と内灘の問題等については十分業者の立場について聞きたかつたのであります。しかしいろいろ問題があり、また本日は参考人の立場からおいでを願つているので、その点一応省略いたしますが、ただ先ほどるる加藤君から申された通りに、あなた方が兵器生産する——結局兵器というものの本質は、これはもう防衛という名にしろ、あるいは侵略という名にしろ、戦争の用具にはかわりはないのであります。しかしそうした兵器生産が拡大されて行き、あるいは兵器生産の保護をする。その一方においてはいわゆる輸送の関係とか、そういう危険な関係ではなくて、たとえば内灘の一箇所が、日本の土地の中の一部分が、あなた方の生産する迫撃砲、あるいは砲弾の試射場として用いられている上に、それらの漁民、農民の生活が危機にさらされているという現実をわれわれ今日見ている。しかも私の郷里の静岡県では内灘の試射場を最初遠州灘にしようとした。これが遠州灘から伊良湖に行き、伊良湖から内灘に行つた。私の望むのは、静岡県かつも、愛知県からも、石川県からもそういう砲弾の危険や、あるいは生活権を奪われないように、試射場のようなものは太平洋の中に捨ててしまいたいということです。しかもあなた方は兵器生産し、その拡大を求めている。そうすると、資本主義的な性格を持つた政府である限りにおきましては、勢いいわゆる財閥と結びつき、兵器産業者も財閥と結びついて日本民族を儀牲にしようということになつて来る。それをわれわれは非常に憂えるので、あなた方が兵器生産の保護を求める前に、すずわれわれが解決しなければなりませんのは、これらの軍事基地の問題、これらを政治的に解決しなかつたならば、あなた方の望みは達成できないと同時に、今後のわれわれの平和的な闘いは、やはり兵器戦争への武器としてこれを抹殺することにある、その点を私たちは十二分に考えておるのでありますから、あなた方のいろいろな腹もあるでしようし、あるいはまた業者としての利害関係もあるかもしれませんが、この点を十二分に、いわゆる民族の一人として、良心的にお考えくださることを私は強く要望いたしまして、今日のお招きに対するお礼とともに、私の質問を打切ります。
  203. 大西禎夫

    大西委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、この際参考人各位にごあいさつ申し上げます。本日は参考人各位におかれましては、それぞれのお立場より忌憚ない御意見を述べていただきまして、まことに本案審査のために資するところ大なるものがございました。厚く御礼申し上げます。  午前の会議はこの程度にいたし、午後三時まで休憩いたします。     午後二時二十二分休憩     —————————————     午後四時十九分開議
  204. 大西禎夫

    大西委員長 これより午前に引続き審査を進めます。質疑の通告がありまするから順次これを許します。笹本一雄君。
  205. 笹本一雄

    ○笹本委員 私は武器製造法案について大臣に質疑を行いたいと思います。時間の関係上、一問一答ですと時間が非常にかかると思いまするから、ずつと私が質問を続けますから、あとでまとめて順次に大臣から答弁をいただきたいと思います。  まず第一番に伺いたいのは本法を立案いたしました時を承りたいと思います。それから説明資料を拝見いたしますると、昨年の十月十四日のポツ勅廃止後は武器生産は自由放任になつておる。でありますから、先般の東京都下における花火工場において大きな事故を起した。あるいはピストルの密売であります。とか、共産党の武器、白製ピストルによる強盗とか、あるいは自殺。まだそういうことがなかつたからよかつたですけれども、もし製造が自由になつて、朝鮮とか、台湾、あるいは北鮮あたりに多量のものが密貿易で出されて、これが向うに使われたりするようなことがあつたならば、これこそ日本の国際的信用を落すものであります。この点においても、この法案のごときはポツ勅の廃止前に立案して、先国会の劈頭に出して制定すべきものだと私は思うのであります。今保安隊の弾薬の製造、保管——製造するのは自由であつても、保管は違反ではありませんか。また警察官が持つておりますピストルのたまを昭和金属あたりに発注しておる。製造するのはいいが、保管して置くことはすでに違反になつておる。政府がこういう違法違反のことをして国民に遵法精神を慫慂するということは許せないことであります。この意味において、これは政府の怠慢といわざるを得ないのであります。治安確保の上から見ますと、政府に重大なる責任があると私は思うのですが、この点大臣はどう思つておるか。  次に伺いたいのは、特需とはどういう性格のものであるかということであります。私の承知いたしております範囲におきますれば、特需とは、米国において日本経済育成援助の意味をもつて日本製造者に発注するものだ、こう思つております。しかし現実はそれとはまつたく反対の結果を見ている現状であります。これは今岡野大臣に責任を追究してもどうかと思いますけれども、こういうふうになつて来たことは、先般輸出振興にからんで私が申し上げましたごとく、終戦後におきまして、戦争のありましたアジアはもちろんのこと、欧州においても物の少くなつたことは、実際問題といたしまして、特に繊維にしましても、肥料にしても、自動車にしても、セメントにしても、石炭にしてもあらゆるものがなくなつて来た。そのときに古池に水か入るごとく、平和になつて生産したものは何でも売れた。売れるからいいといつて、特に繊維のごときは、南方方面への輸出量はたいへんなものでありました。その当時から計画的の生産指導、量、質の問題、合理化の問題ということを考えない結果、国内の工場には非常な生産設備をしてしまつた。そして工員をたくさん包擁してしまつた。そこへ不況が来た。そのために特需というものが出て、その特需も、さいぜん参考人が来ていろいろ話を聞きましたが、アメリカ軍がじかにメーカーから見積りをとつて、最も安いものにさせる。現在御承知ような経済状態でありますから、手形のやりくり、あるいは工賃の払い、そういうような関係でみすみす採算に合わないものでもそれに飛びつかなければならないというような現状になつたことは、繰返して過去のことを言つてもしかたがありませんが、要するに計画的な政策がなかつたからこの結果になつたのではないかと私は思うのであります。     〔委員長退席、中村委員長代理着席〕 そこで、しからば米国が日本経済育成援助のために特需を出してくれるという原則がきまつて発注をしてもらうのであつたならば、当時の外務大臣あるいは通産大臣、はたまた総理においても、その責任をまかしてもらつて、その工場の性格あるいは技術その他配分あるいは見積りの程度も、これならばぺイする、これならば出血しないということを定めて、そうして政府がまとめてとつたならば、かくのごとき混乱は来なかつたと思う。その点におきまして、政府は今日あるを知らずして放任しておつたということも、これひとえに政府責任ではないか。これは今後MSAを受ける上におきましても非常に重大な問題だと思うのです。先般も山口委員からの質問がありましたが、東京螺子と日平産業のごとき、三十何セントで受けるものを片方は二十何セントで引受けておる。そうして非常な出血であつた。これは新聞にも出ておりました。こういうことは、やはり業者同士においてせり合つて高くとれるものをみすみす安くしおる。日平と東京螺子の問題は、工場設備技術その他において多少の開きはできても、かくのごとき開きを及ぼしたということも、国内の不況と相まつて起る問題でありますから、私は委員長にお話して、日平及び東京螺子の当時の責任者にこの委員会に御出席を願つて、当時のいきさつを詳細に承り、そうしてこれを日本のメーカーに流して、かくのごとく相争うとお互いに損するということを警告したいと思つてつたのでありますが、審議の期間も迫つておりますので、それは省略いたしますが、監督の任にある通産省においては、業界の人に、通産委員においても各種のことを案じておるということを伝達していただきたいと思うのであります。MSAの援助を受ける方針で米国と交渉を行つておるようでありまするが、交渉過程において各委員会の質問においても、それは交渉中でどういうものができるかまだ言明できないと、どこの委員会でも答弁しておるのでありますが、おなかに宿つたことは事実である。生れて来る子が男か女かはわからぬにしても、これを受けるという方針ですから死産はしないだろう。その心構えを各委員会で一生懸命質問するのでありますが、——MSA援助を受けるということは、さいぜん話しますごとく、従来は、駐留軍が日本経済育成のために国防省の予算によつて好意的に日本にドル獲得の機会を与えるために注文をしておつたのでありまするけれども、今度は非常に事情が異なつて来て、この注文、すなわちMSAの援助を受諾するとともに、米国の対日援助ではあるが、日本はこの援助を受けることに伴つて義務を負わなければならないと思うのであります。従来の一方的な米国の調達とは違つて、受注になるべきでありますので、政府は、この発注、受注に際して自主的な受発注機関を設置して、計画的武器生産を行う態勢をつくらなきやならぬと思うのであります。話が飛躍しますが、今肥料の過剰のものを輸出するのに、輸出会社を特例でつくろうとしておりますが、このMSAの援助を受ける場合に、一つの受注会社というものをつくつて、そこでコストなりをやつて行くような考えがあるかどうか、これを聞きたいのであります。それからもう一つはMSAを受けましても、やはり特需というものは継続するものであるか、その点も承つておきたいのであります。武器等製造法案を見て参りますと、許可の条項が幾つもあります。その中には設備とかあるいは経済状態だとか、あるいは技術であるとか、いろいろなことがありますが武器兵器生産に対しましては、法人体にしても、個人にしても、生産する人がもし百の注文を受けまして、百二十つくつてこれをやみに流すようなことがあつたならば、それこそ治安確保の上にも重大な問題なのでございますから、この許可に対しては最も慎重に、そしてまたときそれこの委員会で発言がありましたが、アメリカから特需を受ける、MSAを受ける関係におきまして、そのアメリカの絶大な力によつて押しつけられるのではないか。はたまた他の内閣の力とか、あるいは政党の力によつて許可に対する考え方をかえるようなことがあつたならば、ほかの品物と違つてこれは非常に重大な問題であると思います。もちろんそういうことには万全の留意をして、遺憾なきようにするという御答弁をされるかもしれませんけれども、これこそはほんとうに真剣に考えてもらわなければならぬと私は思うのであります。また武器生産を計画的にやる——この法案によりますると、向うから発注がありましても、発注があつたのに対しては、そのコストとか、期日とか、あるいは生産高というものを届出させる、それによつてそれが今の日本経済のあり方からいつて、極度に安過ぎるということになると、出血になり事故が起きるので、それに対して審査をして、いけないときは不許可にするという点は私は最も当を得たものと思つております。この点において、参考人からもあるいは委員からも午前中に申されましたが、生産を拡充いたしまして、遊休設備を活用するとかいいますが、その中の一部分の機械が足りないものは輸入する、あるいはそれをつくつてもらう、その場合において、その設備ができれば、その入札権ができて来るというような関係で競争が熾烈になつて来る、その結果それだけの注文がなかつたということになると、また経済破綻になつて来るのではないか、特に留意したいのは、先般の大臣の答弁の中にもありましたが、MSAとか特需とかを業界が過大に見込んで、苦しいながらも設備をして行く——まだMSAの方は具体的の談合に入つておらないので、これははかり知れないとおつしやるかもしれませんけれども、これを過大に見積り、あるいは設備をした上において、世界の戦局の情勢上アメリカの軍需品の生産増強をやつておるものが、今度品物によつて日本を援助するということになつたときには、よほど留意しておかなければ、日本経済はまつたく破滅するほどまで行かなくとも、及ぼすところが重大である、かるがゆえに、現物で支給されるということも考慮に入れる必要が非常にあるのではないかと思うのであります。また委員会で一番皆さんの聞いておられることは、許可の権力を役所で持つことは非常に危険であるということでありますが、許可ということになれば、結局審査というものは役所でしなければならぬ、前にも大臣野人の時分からも御承知でありましようが、通産省にとつてみましても、切符制度のあつた時分には、いろいろなスキヤンダル、いろいろな問題が起きて、前途ある有力なるところの官僚で、業者に操縦されて惜しくも失職した人もあるのであります。先般同僚委員の質問に対して、局長は、通産省の官僚は頭の切りかえは十分できおる、われわれはまつたく国民の公僕であるということを断言しておられましたが、特にこういう権力を把握した上においては、官僚独善の弊に流れやすいのであります。この点においては十分なる注意を願わなければならぬと思つておる。またさいぜんも話しましたが、今の特需のあり方が自由競争だ、たたきにたたかれてとられておる。ところがこの法案の内容を見てみますと、その点は規制されるように見られておる。私は軍需産業、つまり武器製造あるいは輸出、あるいは特需、MSAを受けるにおいては統制するということは当然のことと思つておりますが、受けたあとの下請関係であります。先般も某社で、親請の方ではそろばんに合つたが、下請の方でての納期に納められなかつた、キヤンセルが多かつたという点でありますか、親会社下請に対しても、親会社か受けたとき届出をするごとく、この下請に対してもその利潤の関係を勘案して、この法案に出ておりますところり届出によつて出血のないように育成して行くといいますが、中小企業の育成のために下請業者に対してもこれと同じ気持を持つて実施していただきたい、こう思うのであります。また一方においては委員会においていろいろと審議されるにおいて、責任回避のために、あるいは学識経験者とか業界の人とかを集めて審議会のようなものをつくつて、その人たち責任を負わせて、役所には責任はないというようなことで審議会をつくるような考えがある。こういうことになりますと、また業者はその審議会に対して陳情しなければならぬということになりましたならば、時を争う発注、受注の関係において、これは机上では非常に正しい運行になるようには見えますが、実際上の問題においては非常に手間取り、いい結果は来ないものと思う。かるがゆえにこの法案を実施するとしたならば、全責任を持つという考えで行つたならばどうか、まずその点について大臣の御答弁を拝聴したいと思います。
  206. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。この法案の立案の時期はいつごろだつたかという仰せでございますが、これは昨年の八月ごろから立案しかかつたのでございます。と申しますことは、御承知通りに、ポツダム共同省令によりまして、兵器航空機等の生産制限に関する件というものがございまして、それによりまして大体兵器というものはつくれないということになつておりました。昨年の四月に、通商産業大臣の許可があれば、例外的にこれを認めてもよいということになつたのでございます。そこでそのころにおきましては、あまり武器生産につきましては、業界において盛んではなかつたのでございますが、昨年の夏ごろから非常に砲弾とか銃弾とかいうものの注文か殺到いたしましたので、これではまた来界に不十分な、欠点のあるような工場でもつくつて、近所迷惑に爆発したりするような、しかも公安秩序を乱るような危険が起きやしないかということが一つ。それからもう一つは、業界が好景気でなくなりかかつた当時でございますから、何でも注文があれば、これを引受けてやつて行きたいというようなことで、今まで持つておりました遊休設備に少し手を入れて、すぐにこれに飛びついて注文を受けるとかいうことになりまして、はなはだ不健全な企業形態が出て来るというようなこともおそれましたので、この立案をしておつたわけでございます。ただ問題は昨年の十月二十四日までは、ポツダム共同省令というものがございますので、一応は目的を達せられる。その以前にこの法律案を通していただいたらいいだろうということで出しましたのですけれども解散等のことがありまして、できませんで、遂に空白状態ができまして、今日に至つておる次第であります。むろんお説の通りに、こういう法案は早くつくつておいた方がよかつたということには間違いございませんが、その辺いろいろな四周の情勢のためにできなかつたことを御了承願いたいと思います。  それから第二番目に、ただいま実は自由になつておりますので、もしいろいろのものをつくりまして、それが日本に不利益方面に使われるとか、あるいは国内におきましても、そういうものがやみに流れまして、そうして国内の秩序にも不安を起すような使い方をする人間がないとも限らぬ、こういう御注意でございますが、これはしごくごもつともなことでございまして、この点は常にわれわれ心配しておることでございまして、外注を受けてやつておりますものの、それがもしもそういう方面に使われては困るということを常に心配して、いろいろの手段によりまして、そういう方に流れて行かぬように、行政的の措置をいたしておる次第でございます。  それから特需の問題でございますが、これは御承知でもございましようが、日本が特需が出始めまして、非常な不景気になりかかつたのが救われて、特需景気というものが出たのでございますが、しかし私どもといたしましては、これは経済審議庁長官としての考えでございますが、特需は何にいたせ、そう長くはあるべきものでない。また臨時的のものである。そういうものに依存して今日の日本経済が成り立つておるということは、これは悲しむべきことでございまして、できますならば、日本経済自立をいたしますのには、こういう特需がなくて正常な取引によつて日本経済を確立して行きたいと念願しておる次第でございます。しかしただいまのところでは、少くとも今日の生活水準を維持しておられる国民経済というものは、よかれあしかれ特需によつてささえられるということも過言ではないと存じます。そこで、この特需につきまして、注文の問題でございますが、これはただいまのところでは日米行政協定のたしか十二条——間違つておりましたら取消しますが、十二条の規定によりまして、アメリカの機関が日本経済に悪影響を及ぼさぬということを考えに入れて注文をするということになつておりますので。ただいまわれわれといたしましては、この注文アメリカの機関が日本の内地の業者を選んで注文をしている。それにつきましては、大体実情を見ますと十社ぐらいを競争会社にあてまして入札をさしておるようでございますが、たくさんございますものを無理やりに競争入札に入れますと、いかがわしいものとか、あるいは基礎が薄弱であるとか、あるいは受注をしても完全に納入することができるかどうかといまうな、われわれの目から見ますと、疑問を抱かせるような業者が、受注の入札に入つておるのもまま見受けるのでありまして、こういうことはよくありません。     〔中村委員長代理退席、委員長着席〕  今後日米行政協定の改訂につきましては、ぜひ日本がある程度の主導権を持つて、この入札会社を指定するとか推薦するとかいうようなことをやつて行きたいという考えを私は持つております。  それから将来何かMSAの問題でもありましたときに、今度できますところの肥料の輸出会社のような一本の機関にして受注を受けたらどうだろうかというお説、これも一つのりつぱなお考え方でございまして、われわれもMSAがいかなる形において今後入つて来るかということがわかりますれば、それに対して適当な、やはり御趣旨に沿つたようなことも考えてみたいと思つておりますけれども、御承知通りに、ただいまどういう形でMSAが日本に来るものであるかがまだわかりませんものですから、心の用意のほかには具体的には考えをまとめておりません。  それから先ほどのお説の日平産業の問題でございますが、あれはたしか一千万発ぐらいな弾丸の注文でございましたが、東京螺子と日平産業との間に競争がございまして、二十七セント七ぐらいな入札価格でやつておりました。ところが通産省で大体の計算を出しましたら二十七セント以上でなければ採算に合わないだろうという通産省の一つ基準と申しますか、試算が出ておるわけでございます。しかしあれは何かはかにも事情もあるようでございまして、ただいま詳しく調査をさせております。将来はこういうことのないように努めなければなりませんし、これに対する善後策も講じなければならぬと考えて、おります。  それから生産業者の問題でございますが、これは今もその通り、将来もおそらくいよいよ不景気になつて来れば、生産業者が許可を受けに来ることでございましようが、そのときにはやはり通産省としましては、その設備の内容も十分取調べますし、また先ほど御心配をくださいました下請工場たる中小企業というもの、これはこの法律では届出をしなくてもいいことになつておりますけれども、ある一つ会社を許可いたします場合には、やはり一応どういうような関連の下請業者があるかということにつきましても、相当研究した上で許可をして行きたいと考えております。  それから役人が——これは非常に残念なことでございますが、過去において、少数とは申しながら、いろいろ世間の指弾を受けるようなことがありましたことも事実でございまして、その点まことに遺憾でございますが、しかし私が通産大臣になりました後、いろいろなことを各役人について気をつけておりますと、昔の官僚と違いまして、いわゆる民主的になつたと申しますか、非常に民主的に仕事をやつておりますと同時に、心配が過ぎはせぬかと思うほどガラス張り的の仕事をしなければならぬといつて一生懸命にやつておるようでございます。むろんこれは私が就任早々であまり詳しく知らない、お前はそんなことは知らないではないかというようなお叱りをこうむるかとも存じますが、私自身ではただいままでにいろいろ接触しました点におきましては、ただいまの通産省の役人は、過去のごく少数とはいいながらいろいろの非難を受けたということにつきまして、非常に反省をいたしまして、自分たちは将来の名誉のためにりつぱな仕事をして行くというように考えて、かたくなり過ぎるくらいにやつておるように見受けております。しかしそれによつて私は自分自身で今後安心しておるわけではございません。人間というものはしよつちゆうそういうことを注意しておきませんと、いつ魔がさすと申しますか、いろいろなところの誘惑にかからぬとも限りませんから、ごくごく注意はいたしますけれども、ただいまの現状はそう考えております。  それから官僚が審議会というものをつくると、その審議会の方に責任を転嫁して、自分たちの責任のがれをするというようなこともよく昔言われたことでございますが、今後はやはりわれわれといたしましては通産省が全責任を持ち、同時に審議会の委員の方にも十分なる責任を持つていただきまして、まことに公平でフエアーな仕事をして行きたい、こう私は考えております。  それから出血受注のことでございますが、この点におきましては私は心配を同じくするものでございまして、今後許可とか契約の届出なんかをされるときに、よく内容を検討いたしまして、そういうふうなことにならないように保護して行きたい、こう考えております。
  207. 笹本一雄

    ○笹本委員 もう時間がないと催足されておるので、質問したい十分の一も終えなかつたのでありますが、この武器生産は一般民需品とは異なつて、まことに危険な凶器であります、あるいは爆発物でありますから、今大臣の答弁にありましたことく、この取締りについては非常に力が加えられる。それからこの第一条の方に「武器製造の事業の事業活動を調整することによつて、国民経済の健全な運行に寄与する」とあります。これはただ経済的のことばかり載つておりますが、この武器生産はその生産額がだんだん増大して来ると思います。特需からMSAあるいはまた新聞に出ている保安隊の強化ということになつて来ると、これはだんだんと増大して来る。すると従つて民需生産が圧迫される憂いがあると私は思うのであります。そして国民経済に悪影響を及ぼすと思うのであります。政府はこれに対してどういう対策をとろうとされるか。私はこの悪影響を避けるためにはどうしても——この武器生産は、自由党が自由放任でやつて来た結果、かくのごとく特需について出血の注文を受けなくちやならない。そしてせつかく終戦後立ち上つた各メーカーが破綻状態に立至らなければならないという関係から申しますると、やはり自由放任ではだめだ。計画的に指導すべきものであると私は思うのであります。私はこの答弁を聞きまして、また機会がありましたらお尋ねするとして、これで打切つておきたいと思います。
  208. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これを自由奔放にただいまのまままかしておきますと、お説のように民需生産の圧迫というところまで行かぬとも限りません。またそういうことがあつてはならないのでございまして、私どもがこの法案をお通しを願いたいと念願いたしております趣旨も、その底にそういうことがございますので、やはり特需が出まして、それがどれくらい長く続くであろうとか、またどのくらいな注文が出るであろうということを十分見きわめまして、そうしてその業者注文を引受けても、すぐ崩壊するとかまた破綻をするとかということのないように、先の見通しをつけ、現段階における注文の多寡というものもよく注意しまして許可もいたし、同時に契約もして行きたいと思います。これをもし自由奔放にいたしますならば、まつたくお説の通りに、今すぐ注文があるのだから、また相当かたまつたものがあるのだから、ほかはほつておいてもその方に行つて金もうけでもしよう、こういうふうな考えを起して民需生産圧迫に走りかねないことは、これは私は当然だと思つております。その点は今後行政指導の点におきまして、またこの法律の規定に従いまして、十分注意をして行きたい、こう存じております。
  209. 大西禎夫

  210. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 去る三日の本委員会におきまして留保いたしておきました私の質問につきまして一言お伺いを申し上げたいと存じます。  私が、出血受注を防ぐために受注契約もまた製作同様許可制にしてはいけないかとお尋ねを申し上げましたのに対しまして、大臣は、第一は受注契約は私契約だからこれを許可制で縛るのは好ましくない。第二には生産許可制によつて無用の競争を避けるための抜本策を講じておるからよろしかろう。第三に商人は信用を重んずるから戒告だけでも大いに効果がある、大体以上のような三つの理由によりまして、大体現状でけつこうであるという趣旨の御答弁でありました。しかしながらまず第一の点でございますか、注文を受けるのは私契約だから許可制で縛るのはおもしろくないと言いながら、一方におきまして製造許可制にすべきであるということは、どうも私といたしましては納得いたしかねます。私契約だから拒否権を発動しないというならば、製造に対しましても同様にするべきでないかと私は存ずるものでございます。  次に第二の点でございますが、無用の競争を避けるために、まず生産設備を制限することはまことにけつこうでございますが、これだけでは出血受注は防がれません。たとえば発注者が契約価格をたたかんとする場合などは、生産設備が制限されていたといたしましても、何ら出血受注に対してかわりはないと私は考えるものでございますが、いかがでございましようか。  第三は信用の問題でございますが、商人の信義感に全幅の信頼が置かれるものとするならば、先日も私が申し述べましたように、製造に対する許可制や罰則の必要もないという道理でございまして、この間大きな矛盾が生ずるのではございませんでしようか。  以上まことにくどいようではございますが、本日の会議におきまして聞きました意見によりまして、一層私はこの点を痛感いたしたものでございますので、もう一度大臣の御答弁をお願い申したいと存じます。  なお前回お伺いいたしておきました日平産業砲弾受注の件でございます。これは先ほど笹本議員によりまして質問され、大臣より御答弁を承りましたが、三日にお願いを申し上げておきましたことですから、もう少し御調査が進んでおるのではないかと考えておりましたが、いまだはつきりした御答弁がないように感じます。現実の状況を正確に知るということは、やがては防止対策を講ずる大きな参考資料ともなり、また大臣の御答弁を納得する材料になるとも存じますので、あえて重ねてお願いをいたす次第でございます。御調査のお時間が御必要とならば、もう一、二日はお待ち申し上げますから、ぜひ正確なる御調査の上、御回答願いたいと考える次第でございます。
  211. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。第一の点の私契約だから許可制にするのはおもしろくないと私が申しましたにつきまして、重ねて御質問を承りましたが、私は御承知通りに、自由主義経済によつて日本経済を進展させて行きたいというのが私の根幹の考え方でございますから、できるだけ業者、商人の自由活動というものを束縛しないということがいいのだということで私どもは私契約に対してそこまで許可制にするのはおもしろくない、こう私は感じておるのであります。しかしながらその契約に対しては届出制をとらせておりますから、もしもあやまちがあつてはならぬというような意味におきまして、われわれが相当の指導をして行ける、こう考えております。  それから、それじや製造をする会社許可制にするのがおかしい、矛盾しているじやないか、こう仰せになるのでございますが、私といたしましては、私契約は私契約として、普通の取引のうちに、少し監督とか、助成指導を加えたものにしておりますが、この会社の許可ということにつきましては、これは大きな目から見まして、とにかく危険物をつくるところの会社でありまして、これが社会公安のために、また社会の危険防止のために保護されるかどうか、許可をされるかどうかということについては非常に重大なる関心を持たなければならない問題でございますから、自由自在にどこにでもたけのこみたいにによきよき出て行くことについては、私は国内の秩序を維持する上においておもしろくないと申すことは、昨年の夏以来の経験で見ますると、景気があまりよくありません。そのために砲弾でも出て来れば、これはもう今までありましたところの工場とか何とかいうものが、十分完備していないにもかかわらず、早くこれをとつて、とにかく注文を受けて製造したいということで非常に濫立しまして、その濫立したことが、非常に不健全なものであるということと、またその濫立のために競争がはげしくなつて、いわゆるよんどころなく出血受注させるという不利もございますので、やはりこれは許可にいたしまして濫立を避けなければならぬ、こう考えている次第でございます。  それから第二の点でありますが、発注者が契約価格をたたこうとする場合には、発注者が値段をたたくということは、これは商売の道でございますから、むろんそういうことになつて行く。片方ではまた高く売ろうとして競争する、こういうことで商売というものは成り立つておるものでございますから、われわれといたしましては発注者が一人であるということが、注文を受けるためには非常に便利な建前でもあるし、同時にまたその一人々々の考え方いかんによつて幾らでもフリー・ハンドが振えるという点が不利な点でありますのでその点におきましては業者の方におきまして、できるだけそれを受けないようにやつて行く、そういうことをするために、できるだけ濫立を避けて、基礎のしつかりしたものだけが、発注を受げるということにしておくことが必要だと思います。それにつきましては、やはり濫立を防ぐところのこの法律によつて規制するのが必要だと感じております。  その次に、これはまあ私どもといたしましてはまことに残念なことでございますけれども日本はただいまのところ商売をいたしまするにつきましても、ゆつたりと構えておつて商売ができるような時代でございませんので、商人の信義感に訴えてということは、私あなたからそういう御疑問が出ますのも、しごくごもつとものことと存じますけれども、しかしこれはやはり許可制によつてちやんとこれこれの会社はこういうような仕事をしているのだ、そうしてほかにたくさんの無名の、もしくは信義を重んじなくても、どうにでもしていいというような商売人、生産業者が中へ入らないという意味におきましては、私は許可制にして、その許可するときに非常に厳格に、また十分に通産省の方でこれを検討しまして、これならば大丈夫だろうというような会社に許可することになりますから、また同時にそれは一面におきまして将来も仕事を続けて行くためには、やはり信義を重んじなければならないという観念も、その会社あたりには出て来ると思いますから、大体におきまして戒告程度のことをしておきまして、そうして信義は守れることと思います。しかしいろいろなことを考えますと、非常に苦しい立場になつて参りますと、えてして信義を守らないような商人も出て来ないとも限りません。しかし一応特定の資格を与えられたものが信義を守らないという場合には、その分にだけ与えられるところの不利というものが明白であつて、また非常に打撃が大きいと思いますので、一応われわれはこの商人の信義を重んじ、同時に戒告程度でこれをやつてつたらいいのではないかと考えている次第であります。  それから日平産業のことにつきましては、その後調べているはずでございますが、もしただいま書類でも持つて来ておりますれば、政府委員から御答弁させたいと存じます。
  212. 葦沢大義

    葦沢政府委員 日平と東京螺子の問題につきまして、かねてお尋ねがありました。われわれの方も先般あの御指摘がありましたときに、新聞紙上に載りましたので、すぐに調査を始めたのでありますが、何分今もつて当事者からの資料の提出がありません。私も社長にじかにわれわれの方で調査をしているから、ぜひ資料を出してほしいということをお願いしたのであります。社長は出すからという話でありましたが、われわれの調査する係の方には再三催促をしましても、出て参りません。向うにもいろいろ事情があるのかどうか、今もつて出して来ないところを見ると、会社側でもよほど説明のしにくいところがあるのではないかというふうに想像をいたしております。しからばほかの会社の状況はどうだろうかと見てみたのでありますが、たとえば競争いたしました東京螺子は一発四十セントというものを出しております。先ほど大臣からも御説明いたしましたが、われわれ役人が計算したところでは、あまり実情に適していないという、また非難もあろうかと思いますが、これで見ましても、三十セントを上まわつているような状況でありますので、日平産業の二十七・七セントというものは、相当安い値段であるということは言えると思うのでありますが、当社としてはたして出血であるかどうかという断定を下す段階に至つていない状況であります。
  213. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 山口の質問を終ります。
  214. 大西禎夫

    大西委員長 それでは本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会