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1953-07-23 第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十三日(木曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 中村 幸八君 理事 永井勝次郎君    理事 伊藤卯四郎君 理事 首藤 新八君       小川 平二君    田中 龍夫君       馬場 元治君    笹本 一雄君       柳原 三郎君    山手 滿男君       加藤 清二君    齋木 重一君       中崎  敏君    始関 伊平君  出席政府委員         通商産業事務官         (通商局次官) 松尾泰一郎君         通商産業事務官         (重工業局官) 葦澤 大義君         通商産業事務官         (軽工業局官) 中村辰五郎君         中小企業庁長官 岡田 秀男君  委員外出席者         農 林 技 官         (林野庁林政部         林産課長)   田中 重五君         通商産業事務官 松本  清君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月二十三日  委員長谷川四郎君及び山崎始男君辞任につき、  その補欠として中曽根康弘君及び下川儀太郎君  が議長の指名で委員に選任された。 七月二十二日  信用協同組合育成強化のための障害除去に関す  る請願(佐藤洋之助君紹介)(第五一九一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長補欠選任  参考人招致に関する件  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  (山手滿男君外十一名提出、衆法第一七号)  木材防腐特別措置法案首藤新八君外四十名提  出、衆法第三五号)     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入る前にお諮りいたします。委員でありました下川儀太郎君が昨日委員を辞任せられ、再び今日委員に選任せられました。つきましては、下川儀太郎君は石炭に関する小委員長でありましたので、下川儀太郎君を再び石炭に関する小委員に選任し、また石炭に関する小委員長に選任いたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。  次にお諮りいたします。武器等製造法案審査のため、参考人より意見を聴取したいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。なお参考人の人選につきましては、委員長に御一任を願います。
  5. 大西禎夫

    大西委員長 それではこれより中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。小川平二君。
  6. 小川平二

    小川(平)委員 先般提案の理由を承りまして提案者がこの法律案によつて意図しておられるところはほぼ了察することができたのでありますが、何分この保険世界というものは、言うまでもなく極度に専門化され、技術化された糧界でありまして、今提案者から大局論を闘わそうじやないか、こういうお話ですが、これは政治家がいわば腰だめで、まあこの辺のところでよかろうというようなことで、簡単に万両断の解決はなかなかむずかしい問題じやないか、しかも保険事業というものは非常に巨額な危険を伴う事業でありますし、一歩を誤るとその及ぼす影響というものは非常に大きいといわざるを得ない。そこでこの法律案は私どもといたしましてもよほど慎重に審議すべきものであろうと思います。あるいは機会をあらためて専門家意見を聞くというようなことも必要であろうかと思うのであります。そのような見地からこの法律案検討いたしてみますると、若干の大きな問題点を残しておるのみならず、逐条的に検討いたしますると、遺憾ながら必ずしも意味の明白でない規定、あるいは全然無意味ではないかと考えられる規定、あるいはまた明らかに相互矛盾撞着をする規定、こういうものが随所に発見されるのであります。これは私が頭が悪いたのに誤解をしておるのかもしれない。いずれあらためて逐条質問さしていたにきまして御答弁を承れば氷解する問題であるかもしれませんが、そういう点が随所に発見される。提案者におかれましては、功を急ぐのあまりいわゆる拙速に出したのじやないか。一言にして評すれば、国会提案をなさる法律案としてはあまりにきめが荒過ぎるのじやないか、まことに失礼な申分でめりますがそういう印象を受けるのであります。そこできようはこの法律案のうちに含まれておる一、二の大きな問題点指摘をいたしまして、とりあえず提案者考えておられる御説明を一応承るという程度にとどめさしていただこうかと思います。力作に対して質問するのですからまだ準備が十分でないと思われますが、今日はこの程度にとどめさしていただくことにいたしまして、さしあたつて二、三の点についてお尋ねをさしていただきます。  この法律案を一読して、だれでも最初に気がつく点であろうと思いまするか、私どもの常識的に考えておりますところでは、保険事業というものは当然民営建前とするものである。それにもかかわらずこの法律案によりますと、火災保険組合保険責任商工中金が再保険をする。そうして中金損失をこうむつた場合には国が補償をする、こういうことになつておるのであつて、これはとりもなおさず一種国富保険ではないだろうか。もちろん国富保険を一般的に否定すべきではないでございましようけれども国営保険民営保険をもつてカバーすることできない領域について行われるのが雪じやないか。民営保険にまかせ一おいては技術的にあるいは採算の面らいつて合理的に成立し得ない。こいう領域について国営保険が行われ大きであつて民営にゆだねておいてもりつぱにやつて行けるような分野において国営保険を行うということはかがなものであろうか、こういう点まず第一に考えられるのであります。  それからさらに商工中金が再保険事業を行うということ、そのこと自体も個の問題ではないかと、考えるのでございます。第一に中金がこういつた種類の事業を行うということは、申し上げるまでもなく、商工中金組合金融中心機関として金融事業に専念すべきものであるという本来の使命から考えましても、あるいはまた保険業法その他の規定しておりまする兼業禁止趣旨から考えても、その点が一個の問題ではないか、かように考えられるのでありますが、まずこの点について提案者考えておられるところを承りたと思います。
  7. 山手滿男

    山手委員 ただいま小川委員のお説の通りでございまして、この法案を慎重だ審議をしていただき、慎重に御検討をいただいて御賛同を得たいと思つているわけでございまして、逐条的にもいろいろ問題はあろうと思いますが、ぜひ御納得の行くようにわれわれ説明をいたいし、もちろんこの法案自体にまだずさんな点も多々あろうと思いますので、皆さん方の方でかくあるべしという御議論があれば十分しんしやくをいたしましてこれを修正する、そうしてより完璧なものにするごとについてはやぶさかではないのであります。その点をまず最初にお断りをいたしておいて、今お尋ねの第一点でありますが、この法案を通すと民営保険がくずれてしまうのではないか、こういうお尋ねでございましたが、この点は私ども考えていることは少し違うのであります。と申しますのは、今日保険日本における普及率を見てみますと、大体今日、日本火災保険普及率は一八、九パーセント——一八、九パーセントと申しますことは、百軒家がありますと、十八、九軒が火災保険にかかつておる。ところが英国あたりを見ますと大体二百。パーセント以上、二百二、三十パーセントになつておるようでございます。ということは百軒家があると、百軒の家が二つあるいは二つ以上の保険契約しておりまして、重複して保険契約しておるという事実であつて、非常に保険がよく普及しておる。従つて保険料も非常に安くて、危険も十分分散されておるということであります。ところが日本保険状態を見ますと、百軒の家があつて二十戸も保険にかかつておらない現状というものは、わが国の保険思想の未成熟であるということで割切つてしまえば何でもないのでありますが、あまりにもわれわれから見ると懸隔があり過ぎる。アメリカだけではない。ヨーロツパ諸国の統計をとつてみましても同様でございます。これは日本保険事業が従来から独禁法のわくを離れて独占的な料率をきめて非常に高い料率を押しつけて参つた。しかしながら大企業におきましては大きな何々財閥というようなところは一貫をして保険をかけておりまして、その財閥関係のある銀行なんかとも関係をして、金を貸すのにはこの保険にかけるとか何とかいうようなことで堂々めぐりをしておる。しかも代理店手数料なんというものは合法的にくぐつておる。ところが中小企業者の方ではそういうふうな代理店手数料なんかを割もどしを受けるというふうな手も全然ございません。そのためにばらばらの中小企業者は非常に高い保険料片方で押しつけられて、片方では何と申しますか、何ら割もどし的なものも享受できない、こういうことであつて、払うにも払えない。御承知のように今日の中小企業実態は非常に窮迫をしたものでございまして、きわめてわずかな税金にも、わずかな保険料にも事欠くということで、できるならば、逃げられるならば、保険料も節約して、かけずにずつて行こうというのが中小企業者の大体全部の考えでございます。そこでどうしても保険料も安くしなければいかぬのだが、残念ながら今日ではそういうことを強制する手段もございませんし、今日全国的にほうはいとして起きておりまするところの、この組合員の手によつて自分たち保険を再保険をしよう、こういう運動というものは、そういう実態に即して起きた大きな声であろう、運動であろうと私は思つておるのであります。すでに相当広く、今日東京都、北海道、あるいは愛知県そのほか、今日私がこういう発言をしておりますときも、設立準備が各都道府県で行われておりまするけれども、これはやはり私は頭から押えるということはいけない、できるならば、これは法律で規制をして今日のやみ金融のようなことにならないように指導をし、育成して行くことが妥当であろう、こう私は考えておるわけであります。言葉は足りませんけれども、そういうことでありまして、この法律通つて、より安い、しかも自分たち保険であるというふうなことになれば、協同組合を通して組合の総会かなんかで、役員、幹部の人が少し音頭をとれは、わざわざ無理をして勧誘してもらわなくても、自発的にどんどん保険にかけられるという事態が起きるのであつて、そうすることによつて私は保険思想保険にかけなければいかぬという考え方が非常に普及をして参るだろう。しかもこれは三百万円までの契約でございますから、今日の営利会社でやつておりまする、保険会社でやつておるような大きな保険まではとうてい行つてもおらないのです。むしろこういうものがあつて零細なものにまでも保険にかけなければいかぬという思想普及するならば、私はそのことによつて、今日百軒のものが二十戸しか保険にかけておらないのが、アメリカのように一〇〇%、あるいは二〇〇%の域にまで逆に保険普及をして行つて日本保険業のために、民営保険のために、私は非常にこの法案はプラスになるものであろう。何ら保険会社のやつておられる保険と、この中小企業者の、自分たち保険というものとの間には摩擦は起ぎない、むしろ民営保険を助長し、健全な保険の発達にこそ私はなるものであろう、こういうふうに考えておる次第であります。
  8. 小川平二

    小川(平)委員 日本において保険利用率と申しますか普及の度合いと申しますか、これが非常に低いということは御指摘通りだろうと思います。このことは一つには保険思想普及しておらないということもございましようし、またある意味では、一般的に日本国民経済の脆弱さと申しまするか、あるいは回復が十分でないというような点にも原因があるでございましよう。同時にまた御指摘のように、民営保険会社料率が高いということも原因であるかもしれない。しかし今お話のように、組合保険によつて保険利用率を上昇させて行こう、保険思想普及させて行こうというためには、この組合保険によつて、非常に、あるいは相当に低い料率を適用することができるという実際的な、数字的な根拠が明らかにされなければならないと思うのであります。私ども考えまするところによると、財的な基礎が十分でない協同組合保険で、たとえば損害の査定であるとかあるいはまた再保険に出すというようなことも、非常な長年の経験と技術を要する仕事のように聞いております。こういう専門的な技能を持つたスタッフを大勢おいてやつて行く場合においては、これはなかなか低い料率を適用するということは困難な仕事になるのじやないだろうか、こういうふうに考えるわけでありますが、この点につきましては、後刻あらためていろいろお尋ねすることといたしまして、今は一応提案者の御説明を承つておきます。  次の問題といたしまして、商工中金は、この法律案によりますと、組合の再保険をいわば無選択に引受けなければならない、こういうことになつておるのであります。この結果としてどういうことになるかと申すと、この組合の行いまする元請保険が非常に無秩序な放慢なものになつて来るのじやないかということが、きわめて自然に当然に予想されるのであります。再保険者が無選択に再保険を引受けるということになれば、とかく危険度の低い契約は再保険に出さない、危険度の高いものだけ出す、こういうことが許される結果になつて来る。そこでたとえば、きわめて危険度の高いセルロイドの工場のようなものを料率を低くして引受けてしまう、そしてそつくりそのまま中金に再保険に出すということが当然起つて来るのじやないか、こういう結果になりますと、協同組合の行う元請保険というものが非常に無秩序な放慢なものになつて来る危険が多分にあるんじやないだろうか、こういうことが考えられるわけでありますが、この点をどう考えておりますか。
  9. 山手滿男

    山手委員 商工中金を再保険機関としてここに入れましたことには、いろいろ御意見もあるようでございますが、さつき言い落しましたが、私ども組合員が出しました保険料、これは全国都道府県で醵出をいたしますと相当な金額に上ることも事実であります。今日全国の十九か二十の、集めておりまする保険会社中小企業からは相当なものを集めておるわけでありますが、ほとんどこの中小企業には還元をされておりません。中小企業還元をされることなしに、しかも高い保険料を吸い上げられてばかりおるということでございますので、商工中金をしてここに一役買わすことによりまして、中小企業者保険料をさらに自分たち組合に還流をさして行く道を講じようじやないか。ことにいろいろありますが、商工中金全国的にすでに店鋪も持つておりまするし、秩序が立つておりますので、いろいろなスタツフもそろつておりますし、私はその点においては十分初期の困難にも打勝つて行ける存在になるであろう、こういうことを考えて、商工中金にひとつ一役買わせようじやないかということで、こういうことにいたした次第であります。ただいまお話のありました、それでは商工中金は再保険強制をされるのではないか、こういうふうなお尋ねでございましたけれども、決してなんでもかんでも商工中金は再保険強制をされるというものではございません。正当の条件——認可のときにいろいろきびしい条件なんかもつけられるわけでありまするが、その条件をたさないような、今御指摘になりましたような、意味のないと申しますか、非常に危険な契約については、再保険を拒否するというようなことができるのでございまして、商工中金は決してなんでもかんでも押しつけられるということはないことになつでおります。これは条文を読んでいただけばわかるわけでありますが、しかしながら反面に、すでに正当な条件で要件を備えて出て来ておりまする保険会社保険協同組合の再保険については、当然商工中金が再保険をして行く、こういうふうに建前をいたしておるわけであります。もう一つ国家がさらにそれを補償するという問題を問題にされるであろうと思うのでありますが、これは最悪の事態をわれわれは予想をいたして考えておるのです。今日愛知県、北海道そのほか各業種組合がやつております保険実態を見ましても、正常の状態においては、少々の火災がありましても、何ら支障なしに運営して行けるということは経験済みでございます。ただ一地方に、函館の大火とか関東の大震災とか、そういうふうなものがありました場合には、不測の損害商工中金に与えることもあるであろう。その場合には国家がやはりめんどうを見てやる。こういうことに建前上はしておいた方がよかろうということで、この法案にはそう規定をしたわけでございます。御承知のように関東大震災のときには、国家があの当時の金にして六千万円でありますか、今日の金で言えば莫大な金を火災保険会社の救済に使つておるという事実がございます。あいう国家的な大災害があつときには、その都度国家が臨機の処置をとつて行くということで済まされないこともないのでありますが、これは中小企業者のこういう時節柄、一種のいわば社会保障的な構想に立つた施策でありますから、むしろそこに安心感を与えるために、国家補償して行くということは心配ないのでありますが、一項入れていただいておいた方がさらにいいのではないか。こういうことで商工中金に対しても、異例の損失をこうむつたときには国家補償をするということにいたした次第であります。
  10. 小川平二

    小川(平)委員 資金中小企業還元したい、こういう御趣旨はまことにけつこうなことと存じます。しかしそれならば、商工中金はもつと端的に協同組合に対して金を貸し付けてやることができるのであつて、何も好んで再保険を引受ける必要はない、こういうことが言えるのではないか。もう一つ国家が蓄積された資金中小企業にまわしてやる、これもけつこうなことでありましようけれども計算をしてみると、はたしてこれによつて現実的に中小企業がどれほど資金的に潤うであろうか、疑問なきを得ないような数字が出て来るわけであります。しかしこういう点についてはさらにあらためて詳細に承ることにいたしましよう。  それから今、商工中金組合の元請保険を決して無選択に引受けるのではないというお話をされたのですが、きわめて自然に虚心坦懐にこの法律案を読んでみますと、そういうふうにしかとれない。先ほど非常に不明確な規定が多いと思われると言つたのも一例であります。この点は逐条に御質問を申し上げるときに、またあらためて承ることにいたしましよう。それからもう一つの問題でありますが、国が商工中金の再保険損失補償することについて今御答弁があつたわけですが、国が補償をするということになれば、当然予算措置を伴うことになろうと思います。一体いかなる基礎によつて、どれほどの金額を予定しておられるか。この点は先ほど申し上げました通り保険などというものは非常に技術的な数字世界なんですから、かような点についても十分御検討になつておることと思いますので、この際計算基礎並びに一体どのくらいの金を予定しておられるのか、これを承りたいと思います。
  11. 山手滿男

    山手委員 この法律が今国会成立をいたしますと、各都道府県でいろいろ準備も始めて参るでありましようし、相当慎重にもさせなければ、将来禍根を残すというようなことでもいけませんので、いろいろそういう重する向きがあれば、全国的にも集まつて研究をし、その上に慎重に組合の結成をさせた方がいいのではなかろうかということを考えておりますので、実際的にこういう組合が動き出して保険業界にデビユーをいたしますのは、早くて私は来年の一月ごろになるのではなかろうかと考えておるのであります。従つて国家補償するという建前上、あらかじめ莫大な資金補償用商工中金に対して予備金の中で積まなければいけないのではないか、こういうふうな御主張でございますが、私は必ずしも今すぐそれをやる必要はないとも考えます。もし御指摘通り必要があるとするならば、この秋行われます臨時国会——十億もあれば十分間に合りのではないかと考えております。と申しますのは、現在北海道あるいは愛州県等の県の補償というふうな形における地方公共団体補償、これが国家補償にかわるわけでありますが、北海道あたりでは五十万円程度を予定いたしております。全国から保険料、再保険料そういうものが集まつても参りまずし、十億もやつておけば十分過ぎるほどの金額ではなかろうかというふうに考えておりますが、法案成立の見通しとにらみ合せて、予算措置についしどういうふうに持つて行くかは最後的に決定をいたしたいと思つておる次第であります。
  12. 小川平二

    小川(平)委員 今例に引かれました北海道協同組合保険等というものは、いわばこれは保険類似事業をやつておるわけですが、こういうものは保険業法に違反するのではないかという多分の疑義を存しておるので、こればいわば日陰の存在である。この法律案通過をいたしまして実施されるということになれば、おそらく協同組合保険はあつちにもこつちにも非常にたくさん出て来るのではないかと考えられます。そこで現に行われておる保険類似事業に対して、都道府県等補償しておる金額基礎にして十億というような数字を漠然と考えておられるようですが、お言葉のごとく、この法律案通過をして協同組合保険事業が現実に発足をいたしますのは先のことであるに違いないけれども、どの程度金額を用意しておけばよいかというような問題についても、もう少し慎重な計算をなさつておいてしかるべきものではないかというふうに考えます。  それからさらにこれは比較的軽微な問題でありますが、商工中金損失をこうむつた場合に、政府補償を受けることになつております。そうすると利益を受けた場合には当然これを納付するということでなければ、りくつが合わないのではないかと考えられるのですが、この法律案を拝見いたしますと、どこにもそういう規定が置いてございません。この点はどういうふうにお考えでございましようか。
  13. 山手滿男

    山手委員 お説の通りでございます。商工中金が再保険を引受けますと、特別会計をつくつて普通の金融事業とは別個に計算をして参るごとになりまして、損失をこうむりました場合も、利益金が出ました場合にも、一目瞭然とはつきりいたして参ることは事実であります。従つて片一方で損失をした場合には補償をするのだから、片  一方でどんどん厖大な利益が出て行く以上は国家に納付させたらいいではないか、こういうお説でございますが、組合自己保険というものは、原則として営利的にどんどんもうけて行くというふうな構想に立つた保険でないのでありまして、再保険料そのほかがどんどんもうかつて参るというふうなことになるならば、組合員相互利益のためにやつておるのであつて、利潤を生むためにやつておるわけではないのでありますから、危険に対する積立準備金というものも十分にでき、さらにその上にもうかつて行くということならば、どんどん組合員のために保険を引下げて、組合員利益になるようにして参りたい。従つてそうむちやくちやな利益は出さない。国家に、御迷惑をかけることのないように、積立金をある一定のところまで積立さす、そういう限度までは参りますが、ある一定の十分な積立てもでき、安全であるということになれば、国家補償なりはとつてしまつてもいいと私は思う。そうしてそういう状態がすでにできますならば、組合にはほとんど利益なしというふうなかつこうで組合を運営して行けばよいと思うのであつて、何も営利会社のようにもうかつてしようがないというふうなところまで行つて、しかもそれを放置をしておくという運営はさせないつもりであります。
  14. 小川平二

    小川(平)委員 しかし現実にもうかつてしかたがないというような事態が出て参りました場合に、放置させないといいましても、法律にその規定がない以上は、これを国に納付するというようなことはできないのじやないかと考えられます。まだ今の御答弁必ずしも納得できないのでありますが、一応これは承つておくとしまして、もう一つ、この法律案を一読してだれでもただちに感ずるであろうという点は、この八十二条の四に規定をしておる引受け限度三百万円というのはバランスを失しておるのじやないか、高きに失するのじやないかという点であります。これではたして健全な経営ができるだろうかということが一応疑問に思われる。単純な算術をやつてみましても、どうもこれじやあぶないのじやないかという危惧の念を禁じ得ないわけであります。そこでかりに件数一万件の引受けがあつて、平均一件二十万円といたします。料率を千円に対して五円ということにいたしますと、一千万円の保険料になります。手数料とかその他の経費があるわけでしようから、これをまあ二五%と見る、未収保険料もありましようから、これを一五%と計算をいたします。そうすると、残りは六百万円ということになるわけであります。この六百万円を基礎にして三百万円の危険を引受ける。もし火災が起つて来ますと、わずか二日分しか填補できない。これで組合はつぶれてしまう。こういう非常に単純な計算をしますと、こういう結果が出て来るわけです。こういう点をいかが考えておられるか。あるいはまた数字の問題になつて恐縮でございますが、冒頭に申し上げた通りこの点は非常に大事なことであろうと思う。私も保険のことについてはまつたくのしろうとで、わからないのですけれども、これはしろうとなりに一応のそろばんをはじいてみなければならない問題だと思うのです。恐縮ですがお聞き取りを願いたい。  消防庁の調査によりますと、昭和二十一年から二十六年に至る六箇年の間に、五十戸以上焼失した火災が何回あつたかと申しますと、百五十六回、一年に平均して二十六回という数字が出ております。焼失した戸数が三万八千九百九十六戸、こういうことになつております。そこで以上の回数で、つまり焼けた回数で焼失した戸数を割つてみますと、その数字が平均焼失戸数ということになるわけですが、これは二百五十戸という数字が出て来るのであります。そこで火災保険会社のいわゆる普通物件契約普及率、つまりこれはこの件数を世帯の数で割つた数字ということになるわけですが、これはさつきもお話が出ました全国で二%くらいのもので、人口十万以上の都会では約三%ということになつておるようでありますが、そこでかりに地域別の保険組合について以上申し上げた数字基礎にして計算をいたしてみますと、平均保険金額五十万円として、平均焼失戸数はさつき申し上げた通り二百五十戸です。契約普及率はこれを三〇%といたします。三つの数字をかけ合せますと、三千七百五十万円という数字が出て来る。そこで今度は収入の方はどうなるかと申しますと、契約件数がかりに一万五千件とします。件数一万五千というのは組合としては中以上の、比較的大きな組合になるだろうと思いますが、料率五円として計算しますと、やはり三千七百五十万円という数字が出て来るのであつて、収入と支出が完全に一致する、こういうことになつて来るわけであります。ここで例に引いた組合は、今申し上げた通り相当大きな組合であろうと考えるわけですが、ただいまの例で判明いたしますように、大火が一ぺん起ればただちに壊滅をしてしまうという結果が出て来るじやないか、再保険を考慮に入れるとしても、これは迅速確実な保険金の給付ということが困難じやないだろうか。こういう点から考えまして、どうしてもこの引受け最高限度三百万円というものは、基礎の弱い組合の行う保険事業にとりましてはいささか高きに失するじやないか、こういうことが考えられるわけであります。この点をどういうふうにお考えでありましようか。
  15. 山手滿男

    山手委員 ただいまのお尋ねはごもつともな点であると思いますが、八十二条の四は「三百万円をこえる保険契約を締結することができない。」となつておりまして、いわゆる最高限度これ以上を越して契約をしてはいけないという規定でございます。保険会社の方は無制限に青天井で契約できるということであります。保険会社のような状態で行きましても、平均いたしまして一件当りが三十四、五万円ということたそうでありますし、現在現実に北海直、愛知等でやつておりますのは、平均いたしまして一件当りが北海道が十三万円、愛知が八万円程度というふうなことになつているのでございまして、この三百万円というのは、これを私どもは最高限度と解釈しているわけでありまして、現実にはもつともつとうんと低い零細な中小商業者の契約になつて参りますので、そう大きなものにはならない。ただ御承知のように、中小企業者の中にも非常に熱心な人が相当大きなとまでは行きませんにしても、ある程度のものを持つてつて、それを保険する場合もなきにしもあらずでありまして、商工中金が再保険をいたします場合でも、商工中金に再保険の機能を十分発揮させようとするならば、この商工中金に入れてあります担保の保金をきす建前からも、この程度のものもあつていいじやないか、最高三百万円くらいならそう大して問題ではあるまいということで、こういうふうにいたしているのでありまして、実際やつて参りますと、今申し上げました北海道あるいは愛知の例をとつてみましても、もつともつと低いものになることは必定でありまして、あまり御心配はいらないのじやないかというふうに考えております。
  16. 小川平二

    小川(平)委員 さきに私が例を引いて申し上げましたのは、保険金額五十万円の場合にもなおかつこういう危険がきわめて容易に起り得るという結果になつて参ります。また今お話のありましたように、この点についてはひとつ正確な資料を御提出願いたいと思つております。普通の民間保険会社の場合は平均して三十万円とかなんとかいうことになつているようでありまして、現実には三百万円などというのはきわめて蓼々たるものであるように聞いております。そういう実際の状態、現実と対比いたしまして、この三百万円という数字がいかにも当を失して高過ぎるのではないか、ほとんどそういうことはあり得ないというきわめてまれなケースであるならば、これは三百万円と規定することはおかしいのではないか。もう少し実際に即した限度に引下げるのが至当ではないか、こういうふうに考えるわけであります。この点はしかしただいま一応御説明を承つておくことにいたします。  それから次に、この火災保険組合に対して出資義務を負わされておりますものが、設立当初の組合員だけということになつておるのですが、この点がいささか変ではないだろうかという感じが実はいたします。保険関係が終了して、組合員が脱退をする、こういうことになるととにも、出資金がだんだん減つて来る勘定になります。事実上無出資同様の納采になるということがあり得るのではないだろうか。いかにも奇妙な感じを受けるわけであります。この点ひとつ御教示を願いたいと思います。
  17. 山手滿男

    山手委員 実は解散されました前国会にも、この法案を当時の野党三派で提案しておりましたが、その当時は非出資組合にしておりまして、全然出資はしないことになつておつたのであります。と申しますのは、百万円や三百万円出資をさせてみても、それは出資したからどうこうということではないだろうというその当時の議論であつたのであります。よく考えてみますと、何人かの発起人が出まして、協同組合をつくつて、これかれの事業をやるというのに、設立者、発起人自体が全然出資をしないで、ただ手ぶらで組合をつくつて、これだけの事業を営むということは、いかにも軽卒だというふうに考えましたので、中小企業実態にかんがみまして、過当な厖大な出資を強制することもいかがであろうか。しかし組合をつくつて発起人が自分たちでこういう事業をやつてこうするんだという以上は、発起人たちの責任の帰趨も明らかにする必要があるので、最低百万円くらいの出資をさせることにした方がいいだろう。しかしすでに保険組合がスタートいたしまして、円滑なる運営ができ、組合員もふえて参るどいうことになると、何も出資金の多寡によつてどうこうということではなくて、責任準備金、リスクに対する積立金の内容というものが、この保険組合実態を支配するわけでございますから、そう新規に入るものにまで出資の責任を負わすとかなんとかいうことをする必要もあるまいという構想によつて、実はこういうふうな規定にいたしたわけであります。組合保険でございますから、さつき申し上げましたように、何も初めは出資をさす必要もないのではないかという議論さえあつた。しかし今言いましたような理由によつて、最低限度ではございますが、責任の帰趨を明らかにする意味もあつて、この程度の出資をさすことにいたした次第であります。しかしこの点については二、三いろいろな御質疑も非公式に承つておりまするので、百万円の出資では少い、あるいはその後組合ができたあとにさらに当初の組合員が出資から抜けて行くというようなことでは困るのではないか、こういうふうな議論もあるそうでございますから、その点は大した問題でもありませんので、御要望があれば修正をして貴意に沿うことにはやぶさかではございません。
  18. 小川平二

    小川(平)委員 どうも御答弁によれば、これは本来無出資であるのが建前である。それでけつこうなんだが、それもいかがかと思うから、一応責任の帰趨を明らかにする意味において出資をさせることにしたんだという御説明で、われわれの認識とは非常な大かな隔たりがある。それにもかかわらず、何なら諸君の期待に沿うようにしてもいいというお言葉で、これまた非常に意外な御答弁でございます。せつかく暑い中を精励されて法律案を出されたのですから、そんなに何も安売りをなさる必要もないと思うのであります。この点については、突はあなたがおつしやるように、どつちでもいいというような問題ではございません。そういうようなものの考え方というものが、この保険事業というような、初めに申し上げました非常に専門的な技術的な世界の、しかも大きな危険を伴う、一歩間違えれば非常な悪い影響が及ぶ、こういう問題をお取扱いになる心構えとしては、いさきかいかがかと私は考えておるのです。それからあとはただいままで私がいろいろお尋ねをいたしました問題に関連して、あるいはただいままでにお尋ねした問題とは関連なしに逐条に承りたいと思います。これは一々条文について大政治家に対してこまかいことをお尋ねするのは恐縮のようでありますが、先ほど申した通り、どうもこれはおかしいと思われる点が、ほんとうに失礼な申分ですが、枚挙にいとまなくありますので、今日はこの程度にいたしまして、次会からそろそろと承りたい、こう考えるのです。
  19. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は本案の審議に関連して動議を提出いたします。  小川君の御質問はまだ残るようでありますが、先ほど来の質疑応答を聞いておりますと、提案者の方にもどうも確固たる信念も若干欠けておるようにとれる節も大分あります。申すまでもなく、保険事業は非常に危険も伴いますし、やる以上はどうしてもしつかりした万全の策を講じなければならぬと思います。そういう点でこの法案から見ますと、いろいろ関連しておる向きもあるようでありますので、適当の機会におきまして、保険事業者の代表であるとか、あるいは現に組合保険のような事業をやつておる向きであるとか、あるいは再保険業を引受けることになつておる商工中金の代表であるとか、あるいは保険専門の学者であるとか、そういつた方々に一回参考人として当委員会に御出頭願つて、そういつた方々のいろいろな御意見も承ることにいたしたいと思うのであります。この点は委員長からお諮りを願つて、適当の機会にそういう参考人を招致することにお願いをいたしたいと思います。かようなことを私は動議として提出いたします。
  20. 大西禎夫

    大西委員長 ただいまの小平君の動議に御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。
  22. 山手滿男

    山手委員 ただいまの動議に言葉を返すわけではありませんが、今日すでに中小企業者の間にこの保険組合運動というものは猛烈に起つております。アメリカにおいてさえ優良工場が率先をして火災保険組合をつくつて保険会社と対抗して行く、しかも非常にりつぱな火災保険組合を今つくつて育成をして、自分たちで運用しておるという実情がございます。今日すでに各府県でこの機運は十分みなぎつておるのみならず、従来からも北海道とか東京、愛知そのほか各都道府県にあるような、類似保険とまで言われるような、本来の火災保険会社によつて運営されておる火災保険でないものがずいぶんあります。しかも今年のように天災異変の多いときにおきましては、一地方だけでああいうふうな組合を運営をして行くということは、ある意味においては非常に危険なこともあろうと私は思いますので、全国的な災害の危険分散という建前からも、できるならば私はこの四派提案法案を今国会中に成立させていただけるように御審議をお願いしたいと思います。これは私の要望でございます。
  23. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私が動議を提出いたしましたのは、何もこの法案に反対だからという意味で出したのでも何でもありません。ただいまの提案者言葉もよくわかります。すでに現実に事業が行われておるということも承知をいたしております。従つてわれわれといたしましても、保険事業の本来の立場にかんがみて、あくまでも堅実なものにして行きたい、こういう建前からいたしまして、むしろ提案者に御協力を申し上げる意味において特に慎重を期したい、こういう次第でありますので、その点はひとつ提案者にも御了解を願いたいと思います。
  24. 齋木重一

    ○齋木委員 ただいま提案者の御説明があつたごとく、近畿地方において浴場組合等が盛んにやつて、實績を上げておる例もたくさんあるのであります。特に福井市の災害について、十何社かの保険会社を相手にとりまして、五億幾らの災害保険料の請求事件が、今日まだ未払いになつて訴訟になつております。こういうような一つの例を見ましても、民間のこういう保険組合というものをつくつて中小企業を助けるという意味におきましても、どうしても本国会成立さしていただきたいということを、私はつけ加えておぐ次第であります。     —————————————
  25. 大西禎夫

    大西委員長 次に、木材防腐特別措置法案を議題といたします。質疑の通告がありますから、これを許します。福田一君。
  26. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいま提案になつておりまする木材防腐特別措置法案は、一応各派の共同提案ということに相なつておりまして、その趣旨において必ずしも反対するという意味ではございませんけれども、しかしおよそ法案というものは議会に出まして——たくさんの議員立法がございますが、最近の傾向を見てみますと、いろいろの事情によつて議員立法がふえておるような傾向もありますし、また議員の間で立法したものについては何ら質問も行わない、あるいは討論も省略するというような程度において上げられて行つてあとで非常な重大な故障があろような問題もしばしばありますので、こういう意味合いにおいて、議員立法であるからといつて審議を粗略にいたしてよいという理由は、私は断じてないだろうと思う。この意味で私は提案者に対しまして二、三御質問をさせていただきたい、かように考えておるわけであります。  まず第一にお伺いいたしたいのは、本法案は前国会におきましては、政府提案ということに相なつておつたのでありますが、提案理由の説明を見ますと、「その内容をしさいに検討いたしますると、むしろ議員立法といたす方が妥当であると考えられまするため、私ども提案者として本国会提案いたすことと相なつた次第であります。」こういうふうにお書きになつておられる。この間の事情をまず御説明願いたいのであります。
  27. 首藤新八

    首藤委員 お答えいたします。御質問の通りに、前国会では政府提案にすべきであるということで閣議の決定もいたしておるのであります。しかしながら法案の内容が政府を相当制約するような箇所もありますので、また一部には行政措置でやつた方がいいのではないかというような意見もありまして、一応閣議決定は見たのでありますが、なお最終的にいろいろの面で疑義が残つておりましたので、しかもこのまま提案を延ばすことは日本の木材資源を確保いたしますためにもとるべき対策でないということから、この際最も提案しやすい議員提案にした方がいいのではないかという考え方から議員提案として提案いたした次第であります。
  28. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいまの御説明によりますと、すでに閣議で決定は経ておるけれども、いろいろな問題もあるし、行政措置でやつた方がいいのではないかという問題もあり、その他云々という御答弁でありますが、それでは私のお伺いしたことに対する御説明が少し足りないのではないかと思うので、もう少し詳しく「その内容をしさいに検討いたします」というのはどういう点を御検討になつて、どこが悪いから議員立法にいたしたのか、お伺いいたしたい。
  29. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、木材防腐特別措置の問題につきましては、前国会の前の国会で議員提案で問題を検討した上でお願いしようというようなことがございましたが、これは次期国会提案されずにおつたわけであります。そこで通産省としまして、関係御当局であります農林省方面とも相談しつつ、木材防腐特別措置の立法化を考えてみてはどうかということで、事務的にも検討を進めて参り、前国会におきましてはこの問題を特に政府でひとつ立法化してみたいという気持を持ちまして、一応閣議に諮り、国会提案の運びにいたしたのでございます。この木材防腐特別措置法の内容を相当検討いたしてみますると、どちらかと申せばこの立法は政府の外郭団体、たとえて申しますと国有鉄道でございますが、あるいは外郭団体でなくても公共的な性格を持つた需要家、たとえば電力関係あるいは公共事業費等を背景といたします建設事業方面、こういつたような方面におきます需要家をこの法律によつて拘束するというような趣旨の条文が中心を占めておりまする関係で、行政機構に関連して考えますと、どちらかと申せば行政指導と申しますか、こういつた面に重点を置いてやるべき性質の部分が多い関係で、政府提案考えますことよりもむしろ国会の最高意思で、これらの公共的性格を持ちます消費者の方向をきめるというような意味合いが妥当ではないかというぐあいに考えまして、最初国会方面で御研究になつた、前々国会考え方にもどしたというようなことで、ただいま御質問にございましたが、前国会では政府提案でありながら今国会には国会の御提案ということをお願いすることが筋ではなかろうか、こういうぐあいに感じておる次第でございます。
  30. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいまの政府委員答弁によりますと、これは行政措置的の問題が主であるからして、何もあえて政府が立法をするほどのことは必要はないと思うけれども、それをやはり国会で必要と思うならばおきめになつてよろしい。こういうふうに私は了解したのですが、それでいいですか。
  31. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 私の一説明が少し舌足らずであり。あるいはポイントが少しぼけたかと思いますが、そういつたような面もあるのでありますが、広く木材資源の確保という守りた高い角度から見ました立法の必要性ということもございますので、単に行政指導に放任してよいのだというのではなくて、行政機関がみずからやるべき部面というか、行政機関に準ずべき性質のものがやるべき要素が多いという点を先ほど申し上げたのでありますが、法自体から申しますと、木材森林資源の保護、こうりう局い要請から見て法律というものを必要とするという観念においては政府も従前とかわりございません。ただ行政機関に準ずべきものを取締るということに実体がございますので、その面から行政機関それ自体が、たとえば通産省が建設省の仕事を縛るというような関係——実際に法的にはそうなるのでありますが、そういつた行き方なり、運用よりは、やはり広く国会の御提案で行つた方が合うのじやないかという感じの点だけでございます。
  32. 福田一

    ○福田(一)委員 どうも提案者の御説明を聞いても、政府委員の御答弁をお伺いしても、私はその点において特に議員立法にした方がいいのだというその提案理由の説明には非常に不十分のものがあるように見られてしかたがないのでありますが、しからば行政当局の方へ一応お伺いいたしますが、木材資源愛護という意味から行きますと、なるべく木材を使わなくて済むような場合があつたならばこれを使わないようにするということも一つの観点ではなかろうかと私は考える。特に最近の水害のごときものを見ますと、ほとんど奥地におけるところの森林が伐採されるためにこういうような水害が起きておることも一つの大きな原因になつておることは全部の八が認めておるのでありますが、私の承知いたしておるところでは、電柱のごときものにつきましてはセメントによる電柱をつくつた方がより効果的であり、より耐久力があり、経済的にも非常に効果があるということを聞いておるのでありますが、提案者はこの木材資源愛護という大局的見地から御提案なつた以上、ことに法案の中に電柱をお取入れになつておる以上は、その点について御研究になつたことがあるかどうか。あつたとしたらその内容を御説明願いたい。
  33. 首藤新八

    首藤委員 お説のごとく、セメントでやりますれば耐久力の点からも、また木材を確保する点からも有利だという点ははつきりわかるのであります。ただしかし経済的に考えた場合、セメントで電柱をつくりますれば相当高価な犠牲を払わなければならない。犠牲ということはいいか悪いかは疑問でありますが、とにもかくにもこれを建設する場合に多額の経費を必要とするということになりますれば、その建設者がその負担にたえ得ない。従つてやりたくてもやれないということが当然考えられるのであります。そこで今日まで長い間実際わかりながらも、事実上使われてないということは一にかかつて経済的な観点が原因しておるものだとわれわれは考えておるのであります。しからばつつ込んでこの範囲内においていかにこれを有効にするかということが本法の目的でありましてたとえばこれを防腐材としますれば十年のものが二十五年になり、十五割の耐久力が延びる。また経済的にこれを計算いたしましても相当利潤がある。これで建設する企業家といたしましても、防腐材でやることが、それは当初若干の経費は増嵩いたしますけれども、終局においては非常に利益であると同時に、また木材を確保できるというような点から、この際そのでき得る範囲内の、しかも最良の方法をとることが上い、かような観点から、あえてセメントの問題はここでは取上げなかつたのであります。
  34. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいまの御説明によりますと、一応お考えなつたというのでありますが、しからば経済的に見て非常に効果が上ると言われたが、セメントでやつた場合にはどれくらい、また木材を防腐してやつた場合にはどれくらい、耐久力その他を勘案してどれくらいの値段でどういうような効果があるかということを、わかつておるならばひとつ説明してもらいたい。わかつておらなければ、研究して、その資料を出してもらいたい。
  35. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。木材の場合は防腐いたしますと、二十五年程度になります。それからセメントでやつた場合は五十年といわれております。これを経済的に申しますと、木材の場合は七〇%の価格の値上りを見ますが、セメントの場合でありますと、五倍の程度の価格になりまして、どちらかと申せば、木材の方が現状におきましては、割安だと考えられます。
  36. 福田一

    ○福田(一)委員 私はあげ足をとりたくありませんが、政府委員がこういう面の答弁をするのに、一々そこで相談してからするというようなことであつては、この問題について研究が十分でなかつたということを明らかにすることができると思います。しかも今は大体の数字ではつきりしておらない。一本の単価が幾らで、それに対して何分をかけるとこういうことになる、片一方の方は今のところは高いけれども、これをこういうふうにするとその比率においてどうなるかというような数字を、今すぐ出せといつても気の毒だから、その面のこまかい計算をして出していただきたい。
  37. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 資料はすでに配付してございます。
  38. 福田一

    ○福田(一)委員 この資料を拝見しますと、セメントに関するものは入つておらない。それでは比較対照することができない。だからセメントと比較してどれくらいの効率があるということを明らかにしてもらいたい。その点の資料が出ておりませんので、ひとつ出していただいて検討さしていただきたい。それを政府委員の方でつくれるかどうか、一応答弁していただきたい。
  39. 松本清

    ○松本説明員 ただいまの仰せのようなことは、まだ学理的には出ておりません。
  40. 福田一

    ○福田(一)委員 そういうことだから私はいけないと言うのです。そもそもこういう重要な法案を出されるときには、そういう代替物があるか、あるいはまた木材資源を愛護する意味において、もつと何か方法はないかというような研究まですべきである。ただいま学理的には、まだそういう研究ができておらないというけれども、現に電柱はセメントでつくつておるではありませんか。しからばそういう電柱を使つておるところへ行つて、大体どういう理由でセメントの電柱を使つたかということをよく研究してみたらいい。そうすればちやんとデータが出て来る。そんなに最初から存じませんというようなことであつては、この経済原則のきびしい中においては、そういうことは絶対にやれません。セメントの電柱はやはり非常に効果があると考えたから実際に使つておるのです。私の了承する範囲内でも、電力会社その他においても使つておると承知いたしております。そういう方面をよく研究して、資料を整えることは、非常に重要なことなんです。そういうことをしないで、こういうことに対する答弁をされるということは間違つておる。私は比較検討を言つておるのであつて、木材を防腐した場合と防腐しない場合との数字を出してくれと言つておるのではない。セメントでやつた場合が得か、木材を防腐してやつた場合が得か、どちらが得か、その数字を明らかにしてもらいたいということを要求しておるのであります。
  41. 首藤新八

    首藤委員 今の御質問でありまするが、先ほど政府委員の方から答弁いたしましたように、セメントの電柱は現在試験的にやつておるが はたして使用に耐えなくなるまでに何年かかるか、まだそれの判定がついていないのであります。従つて今後なお相当の日月を要してはたして何年もつかという見きわめがつかなければ、私は判定が困難だと思うのであります。と同時にこの際はとにもかくにも窮迫しておる森林資源を確保しなければならない、それがためには耐久力を延ばすことが最も効果的だという考え方から立法いたしたのであります。
  42. 福田一

    ○福田(一)委員 私はそれでは承服いたしかねます。現実にセメントは、とにかく試験用にもせよ相当使つておる事実がある。その事実を、まだ使つてないと言われるのははなはだ無責任な答弁だと思う。現実に試験用にもせよ使つておるということは、その試験用にする場合に何らかの根拠があつてしているわけです。その試験の結果それがいいということになつたら、電柱あたりはむしろセメントの方に切りかえるという法案ならば、これははなはだけつこうであります。そういう研究もしないで、電柱をすべてこういうふうに切りかえて行こう、木材防腐せねばいけないということを言われるだけでは世間が納得しないと思います。現実にセメントで電柱をつくつた事実がない。従つて一本もつくつていないで、今研究しておりますというのなら今の答弁けつこうですが、現に試験用でつくつておる。私の承知しておるのでは試験用どころではない。ただ金の問題で、その方が得なのだけれども、セメントの電柱がつくれないのははなはだ遺憾であるといヶことを、私は電力会社その他から聞いておる。今御答弁なつたような、こちらの方が得だからという意味で木材を使つておるとは私は聞いておりません。もしそういうことであれば、参考人を召喚してひとつこの問題を明らかにしてもらいたい。
  43. 首藤新八

    首藤委員 私の答弁いたしたのは、まだ使つていないということは申し上げてないのであります。使つておるけれども、はたしてそれが使用に耐えなくなるまでに耐久力が何年あるかという判定がまだついていないから、従つて経済的に利益があるか、損であるかという判定が困難だということを申し上げておりまするのと、先ほど申し上げたように、かりにこれが経済的に利益があるという判定ができても、五倍も六倍もの高価なものを使わなければならない。はたしてその経済的負担に耐え得るかどうか。現在防腐剤を注入することによつて価格は四割あるいは五割高く左るのでありまするが、これでも相当の問題が提起されておる。いわんやこれが五倍あるいは六倍というような高価になつた場合に、企業家として耐え得るかどうか。こういうことを考えた場合、かりにこれが利益があるという結論が出ましても、現在の企業家の経済状態ではそれを使用できないという点に帰着するのではないかというような考え方を持つておるのであります。従つてこの際四割あるいは五割くらいの値上りで、しかも耐久力が何倍かに延長されるということになれば、経済的負担にも耐え得るであろうし、耐久力が非常に延びるごとによつて利益であるということがはづきりする。同時にまた木材を確保するという利益もあるから、この際こういう方向をとつた方がいいのではないかという考え方に基いておるのであります。
  44. 福田一

    ○福田(一)委員 五倍、六倍と言われるのでありますが、しからばセメントの電柱は一本幾らでできるのですか。
  45. 首藤新八

    首藤委員 政府の資料によると、電柱の場合防腐剤を注入したときに二千五百円、しかるにこれをセメントに代替した場合には、一万六千円かかる、こういうことになつておりまするので、大体六倍、こういう価格になつておるようであります。
  46. 福田一

    ○福田(一)委員 私はこまかいところをつつついてどうしようという意味じやないのですが、一万六千円かかるというのはどこで調べた数字ですか。
  47. 松本清

    ○松本説明員 電柱も、通産省で所管いたしておりまして、建材課で私生産を担当いたしておりますが、大体今の市場価格はその程度になつております。
  48. 福田一

    ○福田(一)委員 もしそういうことであるならば、この資料の中にそういうこともちやんと入れておいた方がよい。それだからこそこういう質問もしなければならなくなつたりして、迷惑をする。まことに勉強が足りないと思う。提案者の方も、電柱が一本幾らになるか知らないで、今ごろここで聞いてみて、それから答弁しなければならないようなことでははなはだ不勉強だと思いますけれども、しかしあまりそういうことを言うのもどうかと思いますから、一応数字の点だけは了承しましよう。しかし数字の点を了承したということは、必ずしも電柱あたりは木材でやらなければならないという立論にはならないと思います。そもそもセメントなどというものは、今日本の国内で高過ぎる。セメント業者がカルテルをつくつて非常に利益をむさぼつていることは、株価をごらんになればよくわかる。今セメント工業は一番高い株価を維持しておる。しかも年三割、四割の配当をしているというようなことが見られるだけでもわかるのでありまして、こういう点から見て、セメントをもう少し安く生産して供給することになりますならば、耐久力その他から見ても、セメントの電柱をつくるようにした方がよいという現象が出て来ると確信いたします。その点は非常に大きな問題である。決して小さな問題だからといつて等閑に付すべきではないのでありまして、今後日本の建築その他において、もつとセメントを利用することは非常に大事なことであるが、それと同時に、日本には御承知のようにセメントの原料は幾らでもある。これを合理的に使うようなくふうをすることが軽工業局の重大な使命であると私は考えておるのですが、これについて局長はどういう考えを持つておりますか。
  49. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 今セメントの御質問でございますが、セメントの今の生産の状況から見ての見通しを申し上げます。  セメントにつきましては、需要関係考えましても、増産の必要があることは御承知通りであります。現状におきまして通産省といたしましては、セメントについては生産拡充という面で相当従来から努力して参つておりまして、五箇年計画というような見通しを一応立てておりますが、二十八年度におきますと生産の見通しは、大体現状で九百九十七万トン年産できる状況になつております。昨年の見通しでは、二十八年度は九百二十二万トンでございましたが、需要等から勘案いたしまして積極的に増産計画を推進いたしておりまして、現状ではすでに九百一九十七万トンの年間生産ペースに到達しております。最初の見通しにおきましては、二十九年度に一千六十万トン程度の生産見通しの設備拡充を期待しておりましたが、二十八年度末におきましては、二十九年度に考えておつたような数字を実現し得るような設備の拡充ができるものと思つております。そういうような状況で、価格の問題もございますが、セメントの合理的利用という観点から、特に生産拡充の方に努力して参つておるという状況であることを申し上げておきたい、こう考えます。  価格カルテルというような点がございましたが、ただいまの九百九十七万トンの年間べースに対しまして、四月の生産実績は七十五万トン、五月は八十万トン、六月は七十五万トン程度になつておりまして、七月も依然生産を上げております。そういうような状況で、生産協定というような事実は認められないわけであります。
  50. 福田一

    ○福田(一)委員 この問題については、それに関連して実はまだまだ質問したい点があるのですが、あまりよそにわたつてもいけないと思うので、一応その点は他日御質問することにして、もう一点今度は別の角度からお伺いしてみたいと思います。  それはこの法案は、前には木材防腐というものはどうしてもやらなければいけないという強制義務的な法案であつたと了承しているのですが、今回の法案によりますと、使用者はいやだつたら届出をすればそれで済むことになつておるのでありまして、本来の森林資源あるいは木材資源の愛護という観点からするならば、強制義務的な法案といたすべきにかかわらず、事実この法案の内容を見ますと、法第三条第二項の四号に、前条第一項の表示をした木材を使用することが困難な場合において、主務省令で定める期間内に、事由を具して主務大臣にその旨の届出があつたときには、この法律を適用しないということになつていて、いわば法案自体は換骨奪胎されておる法案であるが、そのような法案でもなお通さなければならないのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  51. 首藤新八

    首藤委員 今御質問の除外の点でありますが、これは特別の理由がある、そして防腐剤注入の用材を使用することが困難である場合、あるいは使つてもさして効果がないというような場合を想定して、これらのものに該当するものは届出で除外できるということを表現しておるのでありまして、原則的にはまくら木、あるいは電柱、橋脚等等は絶対に使わなければならぬということになつておるのであります。
  52. 福田一

    ○福田(一)委員 しからばいかなる場合にはこれを許していいという具体的な事例を示していただきたい。
  53. 首藤新八

    首藤委員 たとえば電柱の場合を申し上げますれば、非常に深山の中に電柱を立てる際、これを都会まで運搬して防腐材を注入して、また深山に持つて帰るということになれば、普通の場合は四割か五割高くなるものが、こういう場合には何倍かの値段になる。そうすると耐久力から計算して必ずしも利益ではないことになるので、そういう場合にはこれを除外しよう。あるいはまた橋の場合、橋脚その他はあくまでも強制でありますが、道路に面しておるところは、むしろ自然に腐蝕するというよりも、車馬あるいは人間の歩行することによつて磨滅する度合いの方がはるかに高い。そういうような場合には、高い防腐剤を使つても必ずしも効果がないというような事実もありますので、そういう場合にはこれを除外しよう。おおむねそういう観点から、それに類似するような場合にはそれを除外しようという考え方であります。
  54. 福田一

    ○福田(一)委員 本法案が通つたときには、政府もそのようなこまかい規定を設けられる意思がありますか。
  55. 首藤新八

    首藤委員 その通りでありましてこの点を詳細にきめておきたい、かような考え方であります。
  56. 福田一

    ○福田(一)委員 しからばその案を御提示願いたい。
  57. 首藤新八

    首藤委員 お手元に木材防腐特別措置法案に基く政令及び省令の概要というのを差上げてあるので、ごらん願いたいと思います。
  58. 福田一

    ○福田(一)委員 この資料も今渡されて、私見たぽかりですから、一応読ましていただかなければなりませんし、この法案にはまだいろいろの問題がありますので、私は質問を続けたいと思いますけれども、一応本日はこの程度にしておきたいと思います。
  59. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は林野庁から説明を求めておりますので、この際きわめて簡単に質問いたしますから、御答弁を願いたいと思います。  木材の耐久力なり利用度を高めるという考え方に対しては、われわれは賛成をするものでありますが、この法案では不十分であると考えます、またこういう問題は、単に電柱であるとか、まくら木であるとか、坑木であるとかに対して部分的な一つの統制を行いましても、全体としての計画がなければ効果を上げることはできない、かように考えるのでありますが、これが前の法案よりもずつとゆるやかになつて来ておる。客観的な情勢はもつとこれを強化しなければならない情勢であると思います。九州の災害、関西の災害、これらは雨が降つたから水害が起つたと言いますけれども、事実は山の木を切り倒したから、その結果として雨に耐えられないでこのような災害が起つた。災害復旧のためにも木材の需要が非常に起つておる。こういうふうに客観的な情勢は、前回に提案した当時よりももつと統制を強化しなければならないという状況であるにもかかわらず、本法案はこの状況に対しで逆行しておるのではないかと考えるのであります。この点に関して提案者首藤氏に説明を願いたいのと、さらにこの法案最初政府提案であつた当時、通産省と林野庁との間において、どの程度の話合いがなされて、どういう話合いの結果としてこういう形になつて来たのか。一つ提案者一つは行政官庁である通産省、林野庁、両方のお話を伺いたいと思います。
  60. 首藤新八

    首藤委員 現在の日本における木材の蓄積量並びに消費量、さらにまた自然成長量、これらを勘案して計算いたしますと年々蓄積量が相当多量に消耗して参つておるのであります。こういう点から考えますれば、お説のごとくできる限りこの際木材を節約するような強硬な法案を用意する必要ありと考えておるのであります。しかしながら先ほども申し上げましたごとく経済的な面にただちに非常に関係を持つております関係上、理想的な案をつくるといたしますれば、その及ぼす範囲はきわめて広汎になる。それを全部包含するには実際上困難な点がまだ相当あるのであります。そこでこの際は一応経済的に考えて、防腐剤を注入した木材を使うことが非常に有利である、同時にまた木材をそれだけ節約できるというはつきりしたものだけを対象とした立法をすることが適当であろうというような考え方から、この法案に示した範囲内に実はとどめておるのであります。建築用材についても一応考慮いたしたのでありますが、建築用材は、御承知通り一般国民の生活程度から見て四割あるいは五割の値上りすることによつて、非常に緊急に必要とする住宅の建設がこれに妨げられて困難になるというような面が非常に多いので、この点はこの際十二分に考慮しなければならぬという考え方から、一応建築用材の面は除外したというところに、法案が見方によればある程度緩和したとお考えになるかと思いますが、趣旨はそういう点にありますので、御了承願いたいと存じます。
  61. 田中重五

    田中説明員 林野庁といたしましては、どういう趣旨からこの木材防腐法を見ておるかというお話でございますが、今までたびたび話が出ましたように、戦争から戦後にかけての非常な森林の濫伐ということで、林野庁といたしましては、早急に何らかの有効な手を打たなければならぬ、こういうことで、まず最初に対策としていたしましたのは、御承知の森林法の改正ということで、森林の一部の伐採制限ということを行つたわけでございました。ところが一方木材に対する需要はますます増大の傾向にある。この消費を制限された生産に対していかにマッチさせて行くかということが重要な問題になつて参りますが、それに対しましては、供給の面では外材の輸入に依存するということも考えられます。それからまた林野庁の予算の面で大きく浮び上つて来た問題としましては、まだ手のついていない奥地の山に道をつけて、そこの利用を極力はかるというような点も大いに考えなくちやならぬ。しかしそれだけではなかなか問題は解決しませんので、今度は消費の面におけるところの節約、つまり木材利用の合理化という面で、これを大いに生産とマッチさせるように推進して行かなれけばならぬ。消費の面でどういう方向へ向うべきかと申しますと、要するにまず第一は原単位の低下というか、ほんとうの意味での消費の節約であります。それからさらにさつきコンクリートの話が出ましたが、そういう代替資源への転換、さらには木材を使用するにいたしましても、その耐用命数の延長というような問題、さらに日本の森林として特に不足しております針葉樹を広葉樹に置きかえるというような四つの目標が考えられるのですが、ただいま問題になつております防腐法案にいたしましても、これは使用命数の延長ということから取上げなければならぬという問題になつて来るわけでございます。木材利用の合理化の面にはいろいろ問題がございまして、そういう原単位の低下にしろ、耐用命数の延長にしろ、代替資源への転換というような問題にしても、法的措置でそれが片づくという面もあるいはございますし、またそういうようなことがなかなか経済的な面から強制しにくい、行政指導で漸次その効果を待つということしか考えられない問題もございます。いろいろ問題がございますが、木材利用合理化の一環といたしまして、防腐の強制という問題は、その中でも比較的法的措置のとりやすい問題であるというような観点からこの問題が取上げられたのだと私は存じている次第であります。
  62. 永井勝次郎

    ○永井委員 今森林の蓄積が六十億石あり、そのうち二十億石は深山幽谷にあつて利用不可能である。利用可能な森林蓄積の対象は四十億石よりない。成長率を四%と見れば、一億六千万石内外より一年間切ることができない。にもかかわらず、現在は薪炭その他を入れれば三億石に近い伐採をやつておる。しかも今お話のように、針葉樹はどんどん過伐して、広葉樹がどんどんはびこつで来ておる。山にも雑草が茂るわけでありますから、広葉樹が針葉樹に置きかわつて、どんどん伸びて来ておる。こういう状況、しかも今言つたように森林全体に対する合理的な経営というものができておるかといえば、そういうことはできていないし、林道などはちつともつけないで、ただ計算上これだけの蓄積に対してこれだけの木が切れるのだという計算から里山をどんどん過伐して、部分的には非常な過伐が行われておる。このようなことで九州あるいは近畿におけるちよつとした雨にも災害がすぐ起るというような状態になつておる。国土がまさに崩壊しつつあるのであります。こういうような状態からいたしまして、たとえば林野庁の仕事の中においても、産業行政としての森林の仕事が伸びないで、治山というような、一つの建設行政のようなものがこれに置きかわるというような情ない状態に置かれておる。こういうところから見ましても、森林のこういう現実の上から行けば、たとえば林道の予算に比例してどれだけの木が切れるという、ただ紙の上の計算ではなしに、具体的な山の実態に即した一つの伐採計画というものが立つて、それから配給計画というものが厳格に出て来なければいかぬ。国有林というものが主たる内容でありますから、国が持つておるその森林経営においてもつと合理的な科学的な経営というものが確立されて来なければいけないと存じます。ところがこれが山の状態をそのままにしておいて、消費の実態に押されて、そうして数字をいじくつて、山を荒らすことばかり現在やつておるという森林行政に対しては、われわれは非常に反対でありますし、情ないとわれわれは考えておるのであります。こういう点からいえば、今言つたような電柱をどうする、枕木をどうするというようなやさしいところからやるというような問題じやなしに、もつと総合的な科学的な一つの計画経済の上に立つた、生産と消費とをマツチさせたちやんと筋の通つた計画どいうものがここへ現われて来なければいけない、こう思うのでありますが、これは最初の案よりはずつと後退して情ないような内容になつてつておるのであります。全国の七割に近い地域を管轄する林野庁としてこれをどういうふうに考えておるか、このような案で満足と考えておるかどうか、これを承りたい。
  63. 田中重五

    田中説明員 今お話になりました趣旨は全面的に賛成でございまして、そういうような趣旨から森林行政というものもますます強化しなければならないという点、まつたく同感でございます。ただそういう行政に対する方向が全然計画的にできていないという御説に対しましては、これは別に御調査を願いまして、予算の面その他ででき得るだけの推進をはかつておりますから、その点についてはまた御検討並びに御了承願いた一と存じます。それでそういう大きな観点からの政策が進みながら、また一方消費の合理化につきまして取上げ得るものから取上げて行くことは、これも等閑に付すべきでないという面から、木材防腐法の成立ということにつきましても、われわれとしては歓迎いたしているわけでございます。この内容は、御説の通りに確かになまぬるいものであるということも、われわれまた同感でございます。これはもつともつと強化された形において施行されるのでなければ、その目的とするところの趣旨はなかなか貫徹できないというふうに考えております。
  64. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 通産省が先般の国会政府提出で出しましたものが、本国会で議員提出の形で提案されたというような経緯につきましては、先ほど提案者からも、私からも御説明いたしました通りであります。法案の実体につきましては、字句その他から見ますと、前の法案より緩和されたと考えられるような点もございますが、本法施行の方向から申しますと、木材資源の保護という見地から、この法律が第一歩といたしまして、行政の指導面からもあるいは業界の関係方面からも本法立法の趣旨が今後ますます強く押し出されるという基礎に相なると思います。この法律政府検討しておりました際も、ただいま林野庁から申し上げましたような広い意味におきましての木材資源の保護という見地からいたしますいろいろの施策があるのでございまして、これ自体をそれぞれ取上げますと、あるものについては行政指導で十分なものもございます上、あるももにつきましてはさらに根本的に検討した上でなければ、具体的な措置として現われ得ないような研究段階のものも多くございます。そういうような見地からいたしまして、通産省といたしましては、木材資源の問題が緊急を要します関係もございまして、木材防腐という、比較的行政指導の法律的な根拠をつくります分野で、どちらかと申すと立法化するのにふさわしい部面から立法化して参るという思想で手をつけたものでございまして、私もこの程度法律で事足りるというようなことは毛頭考えておりません。先ほども福田委員から御質問のありましたセメントの問題にいたしましても、セメント電柱の経済的な問題を別にいたしまして、試験的にやつておりますこの利用がさらに確固たる基礎を得て、たとえば木材でやりました場合と、セメントでやりました場合には、振動に対する関係の技術的の問題が残つております。そういうような観点からいたしまして、他の資源の利用によりまして、木材を使わずに済ませる部分が、今後相当現われるのではないかと思います。しかしそれらの部面も、法律的な強制というような立場から見まして、立法化するためには、今日ではまだやや尚早に過ぎるのではないかというのがわれわれの考え方であります。御質問の御趣旨については同感でございまして、今後御趣旨に沿うような立法化についても特に考慮いたしたいと考えております。
  65. 大西禎夫

    大西委員長 本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会し、午前中は武器等製造法案について参考人より意見を聴取いたし、午後一時より大臣に対する質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    六午後一時四分散会