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1953-07-16 第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十六日(木曜日)     午後二時十三分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 中村 幸八君 理事 長谷川四郎君    理事 永井勝次郎君 理事 伊藤卯四郎君    理事 首藤 新八君       小川 平二君    小金 義照君       田中 龍夫君    土倉 宗明君       馬場 元治君    柳原 三郎君       加藤 清二君    齋木 重一君       下川儀太郎君    中崎  敏君       山口シヅエ君    始関 伊平君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         通商産業政務次         官       古池 信三君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         中小企業庁長官 岡田 秀男君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    石井由太郎君  委員外出席者         参  考  人         (八幡製鉄株式         会社常務取締         役)      稲山 嘉寛君         参  考  人         (野崎産業株式         会社取締役会         長)      野崎 一郎君         参  考  人         (日本貿易会専         務理事)    谷林 正敏君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 七月十六日  委員塚原俊郎君辞任につき、その補欠として坪  川信三君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十五日  盛岡市に電気試験所支所設置請願柴田義男  君紹介)(第四一〇六号)  農事用電力料金引下げ請願高津正道君紹  介)(第三九七七号)  日中貿易促進に関する請願帆足計君外二名紹  介)(第三九七九号)  菅平硫黄採掘反対に関する請願吉川久衛君外  三名紹介)(第四〇二四号)  電気料金値上げ反対請願高橋圓三郎君紹  介)(第四〇二九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  日中貿易促進に関する陳情書  (第八二六号)  鉱業施策実施に関する陳情書  (  第八三〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  連合審査会開会申入れに関する件  輸出取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四八号)     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入りまする前に、水害による石炭鉱業被害復旧対策に対し、伊藤委員よわ発言を求められておりますので、この際これを許します。伊藤卯四郎君。
  3. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 通産大臣がお見えになりましたので質問をいたしますが、大臣も御承知のように、七月八日に本委員会決議をいたしました。それは石炭小委員会水害炭鉱復旧について、九箇項目にわたるものであります。そのうちで特に、つなぎ資金として、十億円の緊急処置をとられたいということを、あわせて私はるる大臣質問し、要望しておいたのでありますが、小委員会できめ、本委員会で決定し、さらに私が関連して質問をいたしました、それからすでにもう八日間からたつておりますが、その八日の間に、大臣はこれをどのように処理されつつあるか、その経過と現状について、大臣はどのようなことをやられておるかを伺いたいのであります。
  4. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。先般小委員会の御決議をいただきまして、さつそく私といたしましては、部内関係部局長にもよく申し伝え、同時に災害対策本部に出しまして、そうしてただいまいろいろやつているのでありますが、ただ非常に広汎なものでございまして、その全貌はつきりわからないので、まだ実効が上つていませんが、しかしただいま私といたしましては、大蔵大臣その他に金融の方法について十分申し伝えておきましたし、事務当局といたしましては、毎日それに対して、現地通産局その他と打合せて仕事を進めておる次第でございます。
  5. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 八日間もたつて、具体的に道はちつともあかぬのですか。さらに大野国務大臣現地から帰つて来られて、この石炭に関する限りにおいても、私は具体的な報告をされてあると思うのでございます。多分大臣もそれをお聞きになつておると思うのであります。聞くところによると、大野国務大臣現地水害炭鉱代表に、五億円は緊急つなぎ資金約束をして帰つておるようであります。従つてそれらの約束をして帰つて来られれば、当然所管は通産大臣に関することでありますから、大臣はこれを聞かれ、さらに、これらに対する対策が立てられておることと、私は信じておる。しかも、しばしば私が質問しておるように、今度の水害に対しては、従来の官僚的な、大臣もそれをきらいだと言われておつたが、いわゆる管轄争い、そういうことによつて、いたずらに日にちを遅らせて行くことはいかぬ。だから現地でまとまつたものは、中央本部がこれを即決する、こういう上に立つておるわけです。しかも日にちは幾らたつておりますか。そういう具体的になつておるのに、今大臣答弁されるような程度で、一体この天災に対して緊急なる処置をとつておると言えますか。これらに対しても、大野国務大臣報告とあわせて具体的に御答弁願いたい。
  6. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。大野国務大臣は非常に勇敢にやられまして、向うで相当な金額——要求額は十五億でございましたが、われわれの承認も得ないで、すぐ出すということを言明されました。われわれはそれをさつそく追認しておいたわけでございます。その後、まだほかにいろいろわれわれの方で研究したものも、まとまりかかつてはおりますけれども、いろいろな情報が入つております。それについて、割振りを今検討しておると思います。水害対策本部の方の事情は、毎日報告は受けておりますけれども、まだその点が、つなぎ資金として被害者の方に渡つたかどうかというところまで、私はまだ突きとめておりません。
  7. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 最近この院内におきましても、この炭鉱水害等は第二義的に扱われつつある、とかくこれは影が薄くなつて行きつつある、こういうことが今院内でも流布されております。またややともすれば、そういう状態に今なりつつあります。これは私は通産大臣政治力というか、大臣がもつと責任を持ち、熱意を込めておやりにならぬところに、だんだん国会内におけるところのこの水害対策特別委員会の中から、漸次除外されて行きつつあるのではないかという気がするのであります。大臣は一生懸命にやつておるということをおつしやいますけれども、それが具体的に解決されて行かなければ、まただんだん第二義的に扱われて行くということになれば、これは大臣政治力の貧困の問題を、おのずから論議されるようになると思う。しかもこの問題につきましては、大野国務大臣が、先ほど私が申したような現地に対する約束をして来ておる、ところがつなぎ資金の問題も、復旧対策の問題も、具体的にならぬというので、現地炭鉱被害者の連中に、あなたの出先機関であるところの石炭部長はとりかこまれて、実にひどいつるし上げをくつておるようであります。そういう点から現地本部も問題にならぬ、中央本部もあのような約束をしておるけれども具体的解決に何ら熱意を持つてつておらぬというので、六、七十名の諸君が今晩から明日の朝にかけで押しかけて来ることになつておる。これは当然あなたのところへも行くでしよう。現地でそれを即決すると政府は高言しながら、そのような事態が起るまで放任しておくということははなはだ怠慢ではないか。これら現地諸君が来れば、当然何らかあなたはお答えをされなければならぬと思うが、それに対する用意を準備されておるかどうか、伺いたい。
  8. 岡野清豪

    岡野国務大臣 御承知通りに十五億出しましたが、また五億何千万円が、特にその方に行くというようなことが話されておるのでありますが、これは中小企業全体に関連しているように私聞いておりましたので、それでは石炭の方の関係に薄いのではないか、同時に小委員会の方の御決議もございましたので、これは何とかそれよりもう少し足し前してやらなければならぬと思うのでございまして、政府資金の放出に二、三日前に大蔵大臣に話し、事務当局に流しておいたわけでございますが、ただいま十分検討中だそうでございまして、下までまわつておらぬことは遺憾に存じます。
  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうもあなたの答弁を伺つておると、のれん腕押しのようなことで、まつたくらちがあかぬ、だから平常であればそれでもまあしんぼうしますが、こういう緊急処置のものを、一体そういうのれん腕押しのようなことで済ますことはいかぬと思います。そこで何らかこれを具体化して行くところの熱意責任を示さなければならぬと思います。そういう点からこのつなぎ資金の問題についてもとかくの議論をされておりますが、つなぎ資金としてどんな性質のものを考えて今進められつつあるのか、あるいはどのくらいの金額を融通しようとされておるのか。あるいはさらにまた復旧資金としても、どういうような対策を立てて至急これを復興させて行こうとしておられるか、それらに対してもう少し大臣は具体的に親切に責任のある答弁をしてもらわなければならぬ。われわれ委員会といたしましても、さきに小委員会で至急とりまとめ、それから緊急を要するものなりとして本委員会でもこれを満場一致決議をされておるのでございます。やはり院議の尊重の意味においても、私はもう少し大臣責任のある立場に立つて、これらの問題に対する処置をしてもらわなければならぬ。今申し上げた点に対してもう少し具体的にお示しを願いたい。
  10. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは私この前もちよつと申し上げたと思いますが、ただいまお説のように非常に緊急な場合である、早く金をまわして復旧しなければならない、また賃金支払いもしなければならない。しかし、先般も申しましたように農業災害補償法のような特別の立法もございませんし、今度の災害を受けた点によつて見ますと、どうも金融措置というものが、制度として現行法でははなはだ不完全であるということを私は見ております。と申しますことは、中小企業炭鉱でありますが、市中銀行相互銀行、信用金庫などに今後政府資金を預託してまわすということになつておりますが、これがどうも市中の普通の金融に乗らないものでございまして、また出先通商局事務官あたり、いろいろこのあつせんはいたしておるのでありますけれども、何さまただいまの制度の上でのあつせんでございまして、極端に申しますれば、国家が損失補償するというようなところまでの腹づもりでこの金を出して、急場を救うということが現行法上許されておりませんので、現行法をかえていただかなければならないということは将来のためには思つておりますけれども、ただいまの問題といたしましては、やはり現在の制度のもとにおいてできるだけの努力をして中小企業炭鉱にまわす。それにはわれわれが現地においてできるだけごあつせん申し上げると同時に、私といたしましては、炭鉱の方はほかと違いまして、もう少し政府資金を出さなければ、とても立つて行かぬ。ことに小委員会の御決議もございますものですから、特に石炭に関する限り、今後もう少しよけいに出してもらいたいという要求をして、大蔵大臣と私は話したのですが、同時に事務当局の方でもそういう方向に努力せられつつある。しかし、何さま非常に広汎なものでございまして、その全貌がまだはつきりいたしませんので、あるいは手落ちの点があるかとも存じます。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今大臣答弁された点を伺いますと、それは平常のときと同じやり方ではないかと思うのでございます。今度の場合はしばしば申し上げるように非常に緊急を要するので、現地には大野国務大臣を派遣して現地本部をつくり、各省代表として局長級人たち大野国務大臣の幕僚として送つて、そこでまとめられたものは中央本部においてこれを即決する。そのために論議もされておりましたが、総理大臣も来た方がよかろうというので、その結果緒方総理本部長になられておるのであります。そういう点から、従来のなわ張り主義というか、管轄主義というか、そういう古い制度にとらわれたようなやり方でなく、緒方総理のもとにおけるところのこの扱いは、各省にとかくのそういう議論はさせない。そこで統一即決するということを初め政府側でも言われておつたことではございませんか。そういう点から国会においてもこの問題は超党派として水害対策特別委員会をつくつて、そこできめることに対しては、国会においてもあげて協力する、こういうことになつておるのではありませんか。今大臣の言われることを伺つておると、平常のときと同じ。各省がセクシヨナリズムとかなわ張り争いとか、管轄争いとかいうようなことで、いたずらに日にちを過しておつたのでは、この問題の対策は立ちはしません。これらに対して国民約束されておりながら、さて実行に移すということになれば、各省との関係においてこれがやれない。私は何といつて政府国民約束したことは、被害者の期待にこたえてやるべきだと思うのですが、遺憾ながらそれがまだやられていない。そういう点はあなた一人を追究してもどうかと思うが、後ほど緒方本部長に来てもらいまして、私は十分意見交換をするつもりであります。  いま一点伺いますが、水害炭鉱へのつなぎ資金あるいは復興融資をする資格条件というものがきまらない、そのために通産省側として、閣議なりあるいは役所側に押しがきかぬのではないかといううわさも立つております。また全部炭鉱を助けるということなら、それは困るという意見の出ておることも聞いております。そうすると、この融資を受ける炭鉱資格条件、そういうものが通産省できまらないところから、これらの問題が軌道に乗らないということも聞いておるのでありますが、一体このつなぎ融資条件は、どういうようなところにその基準を置いておられるか、そういう点等もしあるとするならばお伺いしたい。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 在来は資格条件というものがあつたはずでございますが、今回は、先ほども仰せのごとく、そういうことを無視するというとおかしゆうございますが、超越しまして緊急にこれを助けて行きたいというので、この際はそういうことを申しませんでわれわれの方ではやつております。  それから先ほどのお話でございますが、緊急対策といたしましては、御承知通り大野国務大臣本部の許可も受けないで、全権をまかされたものですからどんどん勝手に、勝手というわけでもございませんが、十分向う意思を聞いて即座に資金を出すということを表明しまして、そうしてわれわれが事後承諾を与えておられるのです。しかしそれではいわゆる緊急の手当というだけでございまして、私どもといたし美しては、なかなかそんな金で済むわけのものじやない。同時に、相当政府が腰を入れてあとのつなぎ融資をしなければならぬ、こういうわけでございますと同時に、かたがた委員会でご指導をこうむりましたので、われわれといたしましては、余分に財政資金をとりたいという努力をいたしておる次第でございます。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今大臣答弁を伺いましてわかつたのでありますが、さらにはつきりさしておきたいと思いますことは、経営者側からぜひ復旧さしたいという希望のあるもの、それからまた復興資金申込みのあるものには、甲、乙、丙、丁にかかわらず、その条件をつくらずに、全体にわたつてこの際それらに対しては復興してやろうという通産省の方針であるかどうかを、もう一ぺんここではつきり伺つておきたいと思うのであります。
  14. 岡野清豪

    岡野国務大臣 先ほども申しましたように、今まではなかなかむずかしい資格条件がございましたけれども、しかしこの天災により損害を受けたときに、今までの平時のごとき資格条件というようなものを云々しておりましては、被害者に対してお気の毒でございますので、そういうことは抜きにしまして、とにかくわれわれといたしましてはできるだけ復旧したい、こういうようなお方にはこれに対して十分なることのできるように大いに努力しようと思つて腹をきめてやつておるわけであります。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 約束大臣の時間が来ましたので、またこれ以上岡野大臣を責めることも、お互い一緒毎日審議するのにどうかという気もしますから……。ひとつほんとう災害復旧のために大臣政治力を百パーセントきかしてやつていただきたい。これは私どもが今後通産行政の上に大臣を信頼できるかどうかというきわめて重大な試験台である、というと言葉が語弊がありますけれども、われわれはそう見ざるを得ない点もありますから、第二義的に取扱われたり、とかく忘れられたり、それからまた二千万のつなぎ資金復興資金を貸して、これをどういうように復興さすかという、そういうことでいたずらに日にちを過さないようにして、院議を尊重する意味においてひとつ全力を尽して早急具体的に解決されるよう、この際切にお願いをしておきたいと思うのであります。  さらに委員長に申し上げておきますが、緒方総理が見えられましたらただちに本委員会に御出席されるようおとりはからいを要望いたして大臣に対する質問はこの程度で打切つておきます。
  16. 下川儀太郎

    下川委員 ただいま伊藤委員から強い要望がございましたが、私も同感でございます。ところで先般わが党の加藤委員から、九州水害に関連して、中部並びに関西地方業者盂蘭盆を控えて弱つておる、その被害も非常に甚大でございます。たとえば小さい静岡市の例をとつてみますと、約八千万円の被害高であります。それに対しまして大臣は、そのとき十二分に関連産業被害に対しましては考慮するということを言われておりますが、どのような考慮が具体的に払われたか、その点ひとつお伺いしたいと思います。
  17. 岡野清豪

    岡野国務大臣 そういう面につきまして、まだ私詳細なる報告を受けておりません。しかし私といたしましては、関連産業並びに関係手形発行者なんというものは、現地にいなくても当然臨時の損害を受けているわけでございますから、これは現地にあるとまたほかの地にあるとを問わず同じような被害者とこう考えて、それに公平に援助の手を差延ばすということに努力しておりますから、大体そういう趣旨は部内にもちやんと通じておりますし、対策本部でも持込んでやつておることと存じます。詳細な点は私まだよく存じておりません。
  18. 下川儀太郎

    下川委員 この前の石炭小委員会報告並びに文書をもつてすでに委員長の方から差出しておるので十二分に大臣はそれは御承知のことと思います。しかも盂蘭盆を前に控えて非常に困窮している中小企業あるいは関連産業に対する問題でございますから、強く要望したはずでございますが、今日もうすでにお盆が来ておる。しかも数億の関連産業被害に対して考慮中とか、あるいは研究中とか、調査中とかいうことは、担当の大臣としてはなはだ不誠意じやないか、さように心得ますが、その点はどのようにお考えでありますか。
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は通産行政上、これに対して対策本部を置いているものでございますから、その方面十分ひつぱたいて対策本部に適当なる措置を早くするようにということをするのが役目でございまして、その方面をやつております。しかし対策本部がいろいろ研究の過程でございますが、実のところ全貌がわかりませんものですから、いろいろこれを検討してやつておることと、こう考えております。
  20. 下川儀太郎

    下川委員 その具体的なものをわれわれはお伺いしたので、たとえば私がちようど静岡県に帰つて参りますると、この問題が非常に取上げられておる。そこで石炭小委員会報告をかねて関連する産業被害についての要望を私はして来た。そこで大臣ほんとう誠意をもつてつてくださるならば、大蔵当局に向つて、あるいは市中銀行その他の金融機関に、九州水害に関連する産業が非常に弱つておるから、何とか金融措置をやつてくれとか、あるいはまた手形の問題、あるいはつなぎ資金の問題等々を十二分に考慮してくれというようなことを、大蔵当局を通して地方銀行あるいは地方当局に言つていただいてもいいじやないか、かように私は考えるので、調査中とか、あるいはまた考慮とかということで逡巡しておつたのでは、何ら具体的な効果は上つて来ない。そのうちにはお盆が来てしまつて、しかも多くの産業が次々とつぶれて行く。目の前に現実につぶれて行く姿が今日たくさんあるのでありますから、もし誠意があるならば、やはり大蔵当局を通してでも、どういう形においてでも、地方の自治体あるいは金融機関にその十分な配慮を願つてこそ、われわれの議会する大臣であります。それがどのようになされたか、その点をもう一度お伺いしたい。
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申します。本部におきましては、私は大蔵大臣に十分毎日のように催促しております。それからまた中央対策本部に対しましては、私の方でも事務当局を出しておりまするから、それに毎日事務次官から指令いたしてやつております。それから全国——全国と申しましてもそう大して、この九州被害に対しては関係のない地方もございますが、しかし全国通産局長に、こういうようなふうになつて金融措置もしてあげなければならぬ、また普通の制度であつたならば、これはなかなかできぬことでありますけれども市中銀行並びに各種の金融機関から。ごあつせんするように、また手形なんかが期日が来てどうしても払えぬということも出て来るだろうから、そういう場合には手形の保金と同時に、その手形を持つてつておる人には、こういうふうにしてあげてくださいと、こういうことは各通産局長に指令を出してやらしておるはずでございます。
  22. 下川儀太郎

    下川委員 もう一つ、この前の石炭小委員会報告の最後に、九州水害と関連して、多くの石炭業者あるいはその他の産業が、休業あるいは企業整備というような名において、労働者諸君を首切つたりあるいはまたいろいろな労働基準法の違反をやつておるということを私は強く表明しておきました。それについて、十二分に当局側としても労働行政の上にその意思を反映していただきたいというような報告をやつておりますが、いわゆる通産大臣としては、労働省の方に対して、そのような警告あるいはまた要望をしてくださつたかどうか、その点をひとつお聞きしたいと思います。
  23. 岡野清豪

    岡野国務大臣 むろん労働省の方にも連絡をとつてございますが、われわれの方で考えますことは、この経済が先行き不況にでもなつて来やせぬかというようなことを、むしろ心配しておりますところの時代におきまして、首切りがあつたりまたこれがつぶれて行つたりするということは、これはよくないことだ、原則的によくないことだから、できるだけそういうことはお手伝いして続けて行き、賃金も支払つて行けるようにやつて行きたい。と同時に、賃金支払いがあるために、立てかえとして融通資金をとにかく十五億を早くわけて、何でも六月の初めの賃金は二十四、五日ごろに払われる、六月下旬の分は今月の初旬に払われる、こういうことを聞いておりますので、その点は万遺漏なくやつておるはずでございます。
  24. 下川儀太郎

    下川委員 先ほど水害に関連する中小企業の、あるいはまた関連する産業被害に対する対策並びに労働者首切り等のなきよう、強く大臣から各省にわれわれの意見を反映していただきたい、この点を強く要望いたしまして打切ります。
  25. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は一点だけ、ただいま先輩委員伊藤さんの質問に関連しまして、この前、すでに十日ばかり前に、送つた品物が流れておかげで金をとることもできなければ、手形に困つている、そういう方々に対してどのような処置をとつていただいておるか、これはさしずはするということでありましたが、さしずするくらいでは銀行は言うことを聞いてくれない。大臣は大体銀行家のはずである。いつもおつしやるように、私は実業家の出身だ、銀行家の出身だ、それだつたら銀行が一時間一分も待つたなしで不渡りをくらわせるということをよく御存じのはずなんです。だからこれに対して早く大蔵省ともよく協議の上、そういうために手形下渡り、倒産にならないようにしていただきたい、すぐ手を打つ、こういうお話であつた。ところがあれから十日過ぎた今日の間に、東京で毛織物商の四億の公称資本金を持つておるものが倒れた。大阪の公称資本金八億のものが倒れた。そのおかげで、大阪と愛知地方では今てんやわんやの大騒ぎになつておる。それが原因はどうかというと、夏物が売れないからということが一番大きい原因なんです。ところがせつかく九州べ売れて行つた品物が流れてしまつて金がとれなかつたら、これは一層それに輪をかけて倒産が続出するということに相なつて、とても銀行が管理ができない状態になつて来るではないかというおそれがある、いや現に起つておるのであります。すでに十日前に警告したときに、そういうおそれがあるから、早く手だてをしてもらいたいというたにもかかわりませず、今日その十分な手だてができていないということは、まことに遺憾に思うのです。この点、銀行家であらせられる大臣は、一体どのように考えていらつしやるのか。これからでもいいですから、ひとつその覚悟のほどをこの際示して、ほんとうにそのために倒産が続出しないような手を早急に打つていただきたいものだ、こう思うわけなんです。
  26. 岡野清豪

    岡野国務大臣 この前そのお話を伺いましたので、さつそく大蔵大臣にも話しましたし、事務当局から大蔵省の事務当局にも連絡いたしました。大蔵大臣の話では、前例もあることだから善処する、こういう返事がありました。そしてさつそくとりはからつてもらいたい、こう言つておきましたら、さつそくやりますと、こういう返事でございます。でございますから、もしそういうことがございますならば、ひとつ大蔵省並びに日銀の方べ御紹介してもよろしゆうございますから、もしお困りの人がありましたら、お知らせ願いたいと思います。ただ漫然として倒れてしまうのを見ておるわけに参りませんから、何と申しましても、たくさんの業者でございますから、どの方が手形が下渡りになりそうで困つておるということは、こちらでちよつと調べがつきませんから、もしおわかりでございましたらお知らせ願つて、それに対する適当な処置をとるようにお願いしたいと思います。
  27. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじやその問題はさつそくお知らせしますが、大勢の業者の声を全部一堂に集めてするというわけには参りませんので、私はこの前、これに便乗して九州べ送つていないにもかかわらず、送つて流れたというような悪徳業者は、これは制御をすべきである。しかしそうでないものについては、銀行に指令を発して適当な処置を講じてもらいたい。手形の書きかえなりあるいは要すればモラトリアムまでもやつていただきたいということをお願いしておいたわけですが、今の大臣のお答えですと、通知してくれということでございますから、それは私の手元で集まつておりまする材料ならばすぐ提出ができまするけれども、それに漏れた方も多々あると存じます。そこでそういう漏れたものに対しても、ほんとう政府の親心が行き届くような方法というものをよく考究していただいて、被害者に全部親心が行き渡るようにしていただきたい、こうお願いするわけです。     —————————————
  28. 大西禎夫

    大西委員長 次に輸出取引法の一部を改正する法律案を議題といたし、参考人より意見を聴取いたします。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、本委員会のために御出席いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。参考人におかれましては、それぞれのお立場より、忌憚ない御意見をお述べをいただければ幸甚に存ずる次第であります。  それではこれより順次参考人より意見をお述べ願います。  まず八幡製鉄株式会社常務取締役稲山君より御意見の御開陳をお願いいたします。
  29. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 御指名によりまして、簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。私八幡製鉄の稲山と申しますが、おそらくきようお呼び出し願いましたのは、鋼材の輸出組合の理事長を兼ねておりますので、その方の代表という意味でお呼びいただいたのだろうと思いますから、輸出組合といたしましての意見を簡単に述べさしていただきたいと思います。  政府はこのたび輸出取引法を改正する法案をお出しになつていられるようでありまして、私どもも御説明をしていただきました。結論といたしまして、政府が御提案になつていられるような線に沿いましてぜひ決定をしていただきたい、かように考えておるわけであります。ただせつかくでありますので、この機会に私どもで話合いましたことについて簡単に一、二申し上げたいと思うのであります。それは今度の政府の御提案は、私どもの希望から見ますれば、決して百パーセントのものではない、ごく最小限度のものだと思つておりますので、これだけはぜひ通さしていただきたい、かように思うわけであります。もつと基本的に申しますれば、私どもといたしましては、独禁法そのものをもつともつと大幅に緩和するのが、日本経済の発展のためにいいのじやないか、こういう考えを持つておるわけであります。日本の産業は、御存じのように敗戦後まだ基礎が固まつておりませんので、これか大いに助長保護して行かなければならないと思うのであります。その場合に、保護するということは、必ずしも助成金をいただくとか、補助金をいただくとかいうことではなくして、少くとも民間人、産業人が、自分で考えたことが自由に実行できるような仕組みだけはつつておいていただきたい。それによつて、もしかりにお互いが団結してこの難局を切り抜けよう、それが一番いい方法なんだということをみんなが自発的に考えたら、少くともそれが実行し得るような法制的処置を講じておいていただくということが一番肝要じやないかというふうに私どもは考えておるわけであります。ことに先進諸国をごらんくださいましてもわかりますように、ドイツにいたしましても、英国にいたしましても、ベルギーにいたしましても、製鉄国の全部は少くともカルテルを実施いたしておるのでございますので、これらと対抗して行くという立場から見ますれば、特に鉄鋼業は遅れておるのでございますから、日本の鉄鋼業としては、団結の力以外にないのではないか、かように私は考えておるわけであります。ことに私ども過去の浅い経験からでございますが、日本の産業家は一体カルテルの弊害をほんとうに感じておつたのだろうかというと、そうじやなくして、お互いが濫売をする、お互いがとも食いをする、そうしてお互いが競争する、その不公正な競争、つまり不当な競争により産業の発達が阻害され、日本経済が阻害された部面がむしろ多かつたのじやないかとさえわれわれ考えておるわけであります。  それから鉄に関してでございますが、最も大事に私ども考えておりますことは、なるほど不況のときでございますと、何か一応価格を維持することによつて消費者に被害を与えるのじやないだろうか、こういうお疑いがある、これはもとよりでございますが、私どももう一歩進めて考えますと、そういう意味ではなくして、つまり物が足りなくてもうかるとき、いくら高くても買手があるときには、鉄みたいなもの、あるいは石炭みたいな重要産業はむしろ価格を押えなければいかぬ、暴利をとつてはいけないのだ、そのとつてはいけないのをどうやつて押えるかという場合に、自治統制で、みんなの自覚で価格を押えて行く、これが消費者のためであるのじやないか、こういうような意味合いにおいての独禁法の緩和を私は願つておるわけであります。私どもから見ますれば、昔の共販時代の経験からして、そういうような動きで私どもとしては動いておるつもりなんでありますが、そういう意味でお願い申し上げたわけであります。もちろんカルテル行為の弊害はずいぶんあると思いますが、そういうものを取締るということは十分おやり願わなければならぬと思うのであります。とにかく監督という面ではよろしいのでありますが、できるだけ大幅に緩和していただきたい、かように考えておるわけであります。ことにこういう意味から言いまして、輸出市場はただいまお互いがほんとうに無用な競争をしておる実情でございます。アルゼンチンにいたしましても、パキスタンにいたしましても、現に輸出の間値がございますが、商社が非常に濫立しておりまして、私どもと無関係に、ただ商社がアルゼンチンなりパキスタンに行つて、たつた一つの注文をめぐつて競争をしておるわけであります。あるホテルのごときはまるで日本人だけしかおらない。商社は何もすることなく、ホテルでただもううろうろとしておつて、そういう経費がみなかさんで来ているというので、アルゼンチンの政府筋の人も、日本人は何しに来ているのだろうかというようなことを申しているようにわれわれは報告を受けているのであります。こういう意味合いからいたしまして、無用な競争を排除する、つまり不当な競争を排除するという意味で、今度政府輸出取引法の一部改正を御提案くださつたことに対して、私どもとしては最小限度これだけはぜひお通し願いたいのでありまして、その実現を期待いたしている次第でございます。  簡単でございますが、以上で終ります。
  30. 永井勝次郎

    ○永井委員 議事進行で……。この議事は、参考人の方々から一応全部お話を伺つた上で、質疑のある者は質疑をするのか、それともお一人一人、お話をいただいたあとで質疑をするのか、その辺をきめておいていただきたいと思います。
  31. 大西禎夫

    大西委員長 委員長といたしましては、お話が簡単でございますから、全部済ましてから質疑をやりたいと考えておりますので、御了承願います。  次に野崎産業株式会社取締役会長野崎一郎君。
  32. 野崎一郎

    ○野崎参考人 ただいま御紹介をいただきました野崎一郎でございます。  一言現在の貿易の状況がどういうことになつているかということを簡単に加えさせていただきたいと思います。世界の貿易は現在ドル不足から深刻なる競争にかわつておりまして、現在は食うか食われるかというようなところまで追い詰められているのが現状であります。各国はその国の通貨価値を引上げまして、それで物価を引下げて、貿易カルテルを組織いたし、特殊の奨励金制度を設け、あるいは振興方策をもつて輸出特殊機関をつくり、あるいは貿易協定によりまして、先方の輸入の見返りとして、割高のものを当方へ押しつけて買わせるというような方法をとりましたり、あるいは貿易管理とか為替管理から極度の輸入制限をいたしまして、ときには差別的高関税をかけまして苦しめる等、まことに百鬼夜行の状態でございます。しかるに日本人は人口の多い関係か、外商とは今はあまりけんかをしないで、おのおの日本人同士が出血してけんかをするというような状態になつております。戦前は外商と相当に争いまして、出血しても闘い勝つというようなことをいたしておりました。これは日本の銀行機関とか船会社、保険会社等が先方で十分に活躍をしておりましたし、同時に各商社が各地に支店を設け、あるいは出張所を設けまして実力を持つておりましたので、この芸当ができたのでございますが、戦後はそれらを全部失いまして、それで輸出組合のごときものは厳禁されまして、しかも敗戦のつらい経験をしておりましたことからか、外商と事を構えるような気分を失つてしまつて、以上のような傾向になつた次第でございます。この傾向は非常にまずい傾向でありまして、先方のお客さんに不安を与え、またあとから安いものが入つて参ります関係上損をいたしますので、一層値切りまして、自分の身を守るというようなことから、結局日本人同士の競争を激甚にさせるという結果になりまして、輸出はもうからないし、またむしろ人件費がかかつて損をするという実情で、実力のないことと相まちまして、勢い商売は投機的になつて来るというのが現状でございます。ですから日本品は安くて品物がいいけれども、危険だから取扱うのはいやだというようなわけで、どうしても輸出組合をつくらなければならぬということを盛んに叫びまして、米国のウエツブ・ポメリン法というのをたてにとりまして、その当時スキヤツプの意思にさからつても、大いにそれを主張したのでございます。  これが講和会議以前の実態でございましたが、朝鮮事変は世界と一緒に日本もその渦中に巻き込みまして、物価は非常に高くなりますし、それで物価の体系をこわしてしまつたというような状態でございます。その後特需がありまして非常に甘やかされた関係上、日本経済は世界経済の大勢からほんとうにおいてけぼりを食つたというのが現状でございます。  それで講和後に輸出組合はできましたけれども、実際は実体がないにもかかわらず、陰のスキヤツプの姿におびえまして、公正取引委員会にも気がねをいたしましてできたのが、現在の輸出組合法の実態なんであります。従つてここに改正されることは、まことに時宜を得たことでありまして、むしろ遅過ぎたという感じがする次第でございます。世界の大勢は先ほど申しましたような状態でございますので、まことに百鬼夜行のところまで参つておるのでありますけれども、ドル不足は、依然としてかんじんの米国が考え直してくれない限りは、ますます深刻になつて参ることは明らかでございます。米国の軍拡のスロー・ダウンから、米国の景気もすでに頂上に達しておることは明らかでありますし、従つて米国の景気が悪くなれば、これがスターリング・エリアの貿易には十倍に響き、日本に対しては二十倍近く響くことは、これはもう過去の統計で明らかなところでありますので、今のようにいよいよ特需がたよりにならないような状態になつて参りますときには、どうしても輸出組合法のようなものをつくりまして——無防衛の裸で行きましては行き詰まつてしまいます。現に日本の物価が非常に高いということと相まつてほんとうに貿易は行き詰まつたような状態になつております。ここで法文が大改正されまして、一度にたなこころを返すようによくなることは常識上考えられませんけれども、現在日本政府は輸出第一主義ということをおつしやつておられまして、強力な手がこれから後にどしどし打つていただけると思いますので、これがまず第一の手というふうに感じられまして、この改正案に対して有効に活用して参るようにしていただきたい、こう思う次第でございます。輸出組合ができますについては、組合員にこの組合に入つてよかつたという感じを抱かせることが一番大事ではないかと思います。金はかかるし組合員ばつかり取締りがやかましく言われ、かつアウトサイダーに、入つてない方がよほど楽だというような感じを抱かせるようなことでは、むしろ組合がない方がよほどよいわけでありまして、これは組合の幹部のいかんにもよりますけれども、根本はこの大本であるところの輸出組合法の精神がこれに合致しておるということによるのではないかと思うのであります。その点で本改正案を拝見いたしますと、非常にこまかいところまでも行き届いて注意されておりますことに対しては、私は非常に敬服いたしております。しかしどこに気がねなさつたか知りませんが、法文が非常にまわりくどくて難解で、しろうとには読めないという感じがいたします。ほんとうのしろうとばかり寄りました組合員が、だれが読んでもわかりやすいように簡単に書いていただきたいと思つております。  それからアウトサイダーに対する押えがどうもきいておらぬような感じがいたします。特に外商に対して妙な気がねをしておられるように思う点は、非常に残念に思います。もともと外商が日本に来て商売する以上は、輸出組合べ入つたらいいじやないか、それをアウトサイダーに残つてつてだだをこねるということは、まことにけしからぬ次第だと思います。こんなようなところに属領気分が残つておると悪口を言われる原因があるのではないかと思われます。独立した日本、かつ貿易が独立独歩でありますごとについて気がねなしに大道を闊歩して進んでいただくというように、私たちは希望する次第でございます。  次にこの組合法もともと野放し自由経済を多少とも制御するということが精神でございますけれども、とかくこれが統制に走り過ぎないようにしていただきたいということを希望するのであります。但し外国が違つた政策をとり、またその競争国が違つた貿易政策をとつております以上は、ときには当方も一本になつてぶつかつて行かなければならぬという点もございますので、この点も十分この法案に織り込まれておりますことは、まことに時宜に適した改正案だと存じます。これがなお内地のメーカーとも協定の道を開いたことは実現を期する点において万全の策としてけつこうだと存じますが、メーカーが先ほどお話がございました不況カルテルのように進むおそれはないと思いますし、また同時にこの点は十分注意されて作成されておりますから、杞憂にならんことを希望する次第であります。輸出組合が初め組織されましたときに、濫立しまして、この負担が全部輸出業者にかかる、ただでさえ存立に苦しんでおる輸出業者にこの負担がかかるようでは容易なことではないとおそれておりましたが、ただいま四十組合見当にとどめられたことは、これならば何とかやつて行けるだろうと思います。ここにこの数までにとどめられましたところの尽力に対して深く感謝をいたします。しかし輸出組合というものはこの上にまた負担がかかることでございますから、輸出組合の組織以上に数を圧縮していただくような方法で制限されることを希望いたします。  なおここに問題の起るのは地域別組合であります。これは先ほど申しました通り、いろいろな商売が非常に個々に違つて参りますから、地域別組合もできやすいと思いますが、これはなるべく下部の組合の形においてしていただくように今から十分御研究くださつて対策を立てていただきたい、こう存ずる次第でございます。この組合とは意味が違いますけれども、前にも申し上げました通り、輸出組合の数はできるだけ縮小して行かなければなりませんし、また中には、独立してやつて行くには経理上やつて行けないという小さな組合も、みな類似法人の中に一括して加入しております。一応ひとしく一部会となつて組織しておりますけれども、その数多い中の各部会が、各自業種がみな違つております。また連絡もないのですから、勢いその部会が独立の方針で進んで行くようにしないとやつて行けないのでございます。現在の法案は、組合の総会の議を経なければならぬということになつております。たとえて申しますと、自分が関係いたします農産物輸出組合でございますが、たとえばゆり根のチエツク・プライスを変更するために、全国の農産物である雑穀、青果物、蔬菜、はつか、除虫菊、澱粉等の業者を、全国から集めて総会を開くということは、実際問題として、チエツク・プライスの変更くらいではできないのであります。そういうことをしましたら、時機を失しまして、どうにもならぬということがございますので、これはなるべくならば、理事会の決議をもつて最後としてもらうように改正をさぜていただくことを希望するものでございます。これはこの法案ばかりに関係したことではございませんが、この法案の施行に対して、とかくガツト加入に支障を来すおそれがあるというので、外商または他国の政府に対して非常に思惑して、御遠慮がちのように見受けられますけれども、戦後のドイツをごらんいただきますればよくわかりますが、実に思い切つた貿易政策を大胆に実施しておりれます。こういう点を御検討いただきまして気がねなしに実行して、時機を失しないで、十分な施策を進めていただきたい。通産省が主張いたしましても、大蔵省が反対する、ときには、大蔵省内の為替局及び主税局が賛成されましても、主計局が反対されるというので、まことに障害が多過ぎて、困るのです。これを実現するには、半年かかる、または一年かかるというようなことになりまして、でき上つたときには時代がかわつてしまつて、役に立になくなつたという例がたくさんございます。ほとんど全部と言つていいくついであります。今回のドイツ式の輸出奨励免税制度でございますが、これも今問題になつておるのでございますが、これはドイツがすでに実行して効力を発生して、十分使い切つて、もう用がなくなつたというころになつて日小が実行する、これでは実際どうにもならぬというようなことでございますので、このようなことになつては、いかに日本人が勤勉であつても、世界のこういうような情勢におきましては、世界の落伍国とならなければならぬというような状態にあるわけであります。どうか行政を簡素化していただいて、慎重な検討はまことにけつこうでございますが、時機を失せず、時宜に週したところの力強い貿易政策を確立して、実行していただきたいというここを切望することを最後に付言いたしまして、御清聴を煩わしましたことを感謝いたします。
  33. 大西禎夫

  34. 谷林正敏

    谷林参考人 私谷林でございます。実は私自分のことを申し上げるのは恐縮でございますが、約一箇月半寝ておりまして、つい最近出て参りまして、昨日こちらに出て来いというお呼び出しに相なりました。実は研究が非常に不十分でありますが、前々から考えておりましたことその他を、御参考になるかどうかわかりませんが、ちよつと申させていただきます。  それで本日は、この一部改正する法律案となつておりますから、それに対して私どもとしての意見を最初に申し上げまして、それから一般論といいますか、そういうものを簡単に申してみたいと思つております。  それでこの改正案は、私拝見いたしましたのですが、二、三問題点が私としてはあるのでございますが、あるいは、私の研究が不十分でありますのできようは通産省の方もお見えになつておりますから、私自身が教えていただくことになるかと思うのであります。  それは第五条の第一項の第一号にあるのでありますが、「貨物の輸出価格が著しく低く、又はその輸出数量が著しく多いため、」云々とありまして、従来は輸出価格が非常に安過ぎる、そのために相手国において関税を上げるというようなことをされると非常に困るから、この場合には一応調整をする、こういうことになつておるのであります。ところが今回はそれにさらに、数量が非常に多く入り過ぎるから、その場合には当方で何かこれに対して調節をする、これはもちろんそういう必要があるのでありましようが、これは実際上それを実施されるとき、あるいはその協定並びに輸出組合ができて、それをされるときに、その輸出組合そのものの性質がどうであるかということで、相当大きい影響を及ぼすのではないか、こう考えております。たとえて申し上げれば、その輸出組合がある制限をしておる。会員の入会資格に対して制限をしておる場合には、これが問題になる。つまり、これは先ほども参考人の方からお話がありましたが、こういう組合をつくる、しかし入りたくない、こういうものはいいのでありますが、入りたくても資格がないから入れないというものが若干ある、あるいは相当多数ある、そういうような組合において、こういうような数量制限をした場合には、その数量制限の恩恵を受けるのが組合員である場合には、その外におる者が非常な影響を受けるのじやないか。たとえば年間一万トンを出す、一万トン以上はたとい出させてもよそうじやないかという場合に、その一万トンを組合員だけが出せるようにすれば、そのほかの者はどうするかという問題が一つであります。それから価格の制限、価格が非常に安いからこれを調節するという場合には、これは必要がありまして、たとえば香港なら香港に日本がライターを出す。アメリカのライターと全然同じであるけれども、たとえば十分の一くらいの安い価格で出せば、相手はどこか悪いだろうというので買わない。だから日本は百円で売る、向うは千円で売る場合に、日本は八百円まで持つてつてもいいわけであります。しかしその場合に、品質を日本で相当よくするとか、将来の研究費に充てるとか、その価格の差が将来の輸出の増進のために、有効に使われなければならぬ。そうすれば、輸出増進にもなるし、片や日本の外貨収入も多くなるというので、価格調整の方は私はいいと思うのであります。数量の調整の方は逆でありまして、その数量以上がどんどん出る場合にこれをチエツクするということは、日本の貿易全部からいえば、それだけ外貨収入が減る。片やこれの目的として、向うで関税その他をやるのを防ぐ意味においてはいいのでありますが、そういう意味で、これをやるときには非常に注意していただかなければ困る。それともう一つは、数量制限は実際上どういう方法でやられるか、たとえば季節的に割当てるのか。年間の分をきめても、一度に出るならば、これは困るのでありますから、それをどうするか。あるいは一つのデイステイネーシヨン、目的地には制限をするが、まわつてつた場合には、これをどうするか、そういうような点で、相当厳重なる施行細則といいますか、そういうものをきめておかないと、これはなかなかむずかしい問題が起こるのではないか、こう考えております。  それからその次、第三号でありますが、第三号では、従来は輸出をした相手の土地で、いろいろな制度その他がある場合にはという取締り規則があつたのに対して、第三国がそこに持つて来ていろいろなそういうことをやつた場合の対抗規則でありますが、その最後に、「国内の関係業者の利益を著しく害し、又は害するおそれがあること。」いう文句が書いてありますが、これは、なぜ第四号の終りと同じように「その貨物の輸出取引の成立が困難となり、又は困難となるおそれがあること。」というように、輸出のみに限定して書かれなかつたか、こういう点が、私なぜここに国内的に飛んでいるのかというような気がするのであります。  それから第四号におきまして、これは新市場の場合でありますが、新市場の場合に、相手国が日本からいろいろな商社が来るのは自分の方でもわからぬ、何とか一体になつて来てもらいたいということもありましようし、あるいは新市場で向うも一手である、だからこちらも一手で行くというので、こういう必要があると思うのですが、ここに「競争が過度に行われることにより、」ということがあるのでありますが、これは実際に移されるときに非常に問題じやないか。あるときには競争が過度に行われて濫売になる、そういうことを予想してこういうことをつくるという場含もありましようが、ある場合にはむしろ競争がなくて、だれもそこに入るものがいろいろの条件があつてこわくて入れない、さて売りたいというような問題も起るんじやないか。むしろこういう表現よりも、当該地との貿易の健全な発展を阻害し、または阻害のおそれありと認められるときというような、これはしろうと考えでありますが、そういう方がこれを実行に移すときにやりいいのじやないかと私は考えるのであります。  それから第三項の第三号であります。「その協定に参加し、又はその協定から脱退することを不当に制限しないこと。」、これは非常にけつこうでありまして、輸出組合法あるいは輸出入取引法、こういうものができるときに、これはある事情であるいは入会者の制限をする必要があるかもしれません。しかし正当なる、能力のある業者を締め出し得ないようなこういうような条項はこれはけつこうでありますから、これは通産当局において実行されるときには厳重にこれを守つていただきたいこう思うのであります。  それからもう一つ、前にちよつと返りまして、新市場の問題、これでとりあえずそういうような特別の協定なりあるいは輸出組合をつくるという場合はきわめて短期間にしていただきたい。つまりその市場がすでに確立して、新たにほかのものが入つてもできるような場合にも、前からの組合というようなものあるいはその他のものがそこに特権を持つてつてつては困る。そこでこの場合にはその必要性がある時間に限つてやる。なくなつたらすぐやめるというのをどこかに入れておいていただいた方がいいのじやないか。なるほど第六条において、通産大臣がその必要がないときには認可を取消し得るということがありますが、第七条において輸出業者の方は協定を廃止するときには届け出る、こうあるので、そういう事由がなくなつたときには輸出業者も自発的にそういうことを廃止するという義務を、これは今回でなくてもこの次の御改正のときには入れておいた方がいいのじやないか。つまり輸出業者の方にも自発的にやる義務がある。それを通産省の方で監督するという建前の方がいいのじやないかと思います。これは今回特にどうこうと言うことにはあたらないかもしれません。  それから次は、ずつとあとの輸入の場合でありますが、この輸入の場合のいろいろな特殊性から、こういう輸入組合の条項をつくられたというのは私非常にけつこうであり、これは必要の条項と思つておるのであります。ただ輸入業者をどういうものを指定するか、あるいは輸入組合をつくる場合にどういうものを加入者にするかということが問題でありますが、これは政令で定めるものの輸入業者というようなことが第十九条の三にあるのでありますが、この政令で定めるものというのは、その輸入物資、輸入貨物の方を定めるのでありますか、あるいは同時に輸入業者まで定めるのか、あるいはその輸入業者の資格を定めるのかということがちよつと疑問に思つておるのであります。この点ははつきりしていただかないと、ある種の独占といいますか、従来ある程度の実績があつたものが、その中に入ることを喜びますが、その外に出たものに不公平になるというようなことで、第十九条の五に、「輸入組合の組合員たる資格を有する者は、第十九条の三に規定する者であつて、定款で定めるものとする。」、この条項にも関係いたしますから、この点ははつきりしておいていただきたい。こういうふうに考えております。  以上が私がこの改正法律案に対して考えておる意見であります。総括的に申し上げれば、輸出取引法を最初つくられたこともけつこうでありますし、さらに今回こういうような改正を加え、さらに輸入の方にも新しくこういう条項を入れられたということは時宜に適しておると思うのであります。先ほどからいろいろ世界貿易のことがございましたが、当然いろいろな国において輸出対策、輸出促進策を講じなければならない、これはその一つでありまして、こういうもの、害のある場合には困りますが、不備であつても、よいものならどんどん時機を失わないようなときにやつていただきたい。こう考えております。ただいろいろの点について私が申し上げましたのは、戦後の経済の民主化という線はあくまでもやはり守らなければならないと同時に、日本の経済力というか、商社が貧弱であり、力がない、これもある程度で対抗しなければならない。その両方に非常に違つた面がありまして、国内物価でもある程度安定しなければならない。しかし貿易輸出品は下げなければならない。これも違つた方向でありましてこれを調節して行くということはむずかしいわけではありますが、ともかく大綱というか、メイン・ラインは失わないようにして行くということが必要である。こう考えておりますので、ちよつと私の考えを申し上げておきます。     〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
  35. 小平久雄

    ○小平委員長代理 以上をもつて参考人各位の御意見の御開陳は終了いたしました。質疑の通告がありますから、順次これを許します。長谷川四郎君。
  36. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 谷林さんにお伺いいたしますが、皆様はこの法案には御賛成のようでございますが、しかし今おいでになつておる方々は大資本家、大企業家、大輸出家の方であります。しかしこれがはたして一貫して輸出しておる方々に対してこの法案が欠陥となつて現われて来るというようなことはございませんでしようか。それからこれは一つの輸出カルテルとなつてしまうと思うのですが、それに対してどうお思いになりますか、とりあえずその二点についてお尋ねいたします。
  37. 谷林正敏

    谷林参考人 ただいま御質問の、本日出席しておる者は大企業の代表というお言葉がありましたが、出身はそうでございますが、私は少くともそれのみを考えておりません。ただどうしても関係するところが近いものでありますから、あまり関係をしない方からの声が入つておらないという欠点もあるいはあるかと思います。  ただいまの御質問の第一でございますが、輸出組合をつくる、この法律をつくることによつて、中小輸出業者に対して欠陥はないかということですが、それはたとえば輸出組合自身が最初の目的のように、だれでも希望する者は入り得る。それにはもちろん些少の資格はございましよう。非常に小さくて、戦後ありましたように貿易を片手間にやるというようなものとか、あるいは一定の店の大きさとか、資本とかのないようなもの、こういうようなものには些少の制限があつてもさしつかえないかと思いますが、ともかくその仕事をなし得るある程度以上の規模を持つ者は全部入れるというような加入に自由性があり、脱退に自由性がある場合には、これは全然そういう欠陥は起つて来ない、こう思うのであります。ただこういうことがあるのであります。輸出組合というものが非常に多くなる。そうすると、あそこの輸出組合にも入らなければ、将来こういう仕事をするときにできないのではないか、ところがこちらの方でも輸出組合をつくると、そこにも入らなければならないというふうなことになりますと、これは中小の小さいところでなくても、相当大きいところでも、最近そういうことは非常に弱るのであります。そこで輸出組合ができますときも、その後も、私どももそういうことを希望しておつたのでありますが、輸出組合はできるだけ数を少くしてもらいたい。そうしてあちらに入り、こちらに入るというような経費上のむだな出費というものはよしてもらいたいということが一つ。それからもう一つの希望といたしましては、これが単なる概念的な、輸出増進であるとか、あるいは調査をするとか、そういうことのために輸出組合があつて、そこに入るために相手に売れるというような行動を起してもらえなければ困る。たとえば例は先ほども出ましたが、カラチに大勢行く、百人行く、これを何とかしなければならない。そのときに輸出組合があつて、お互いに自制して出ないということになれば、これは非常に心いわけであります。これこそ過度の競争であります。これが実際上防止できないとすれば、これは輸出組合ができても何もならない。フラクチユエーシヨンが多い。ある者が非常に乱売するから値段が多く動き過ぎるということであれば、従来の輸出取引法でも押えられる。あるいは安過ぎる場合には云々ということも押えられる。しかしそうではなくして、大勢で競争する、そこで相手方はいやになつてほかの国から買うという場合には、輸出組合がもう少し出て行かなければこれは押えられない。しかしこれは今の安過ぎる方面、あるいは値段が高過ぎるから輸出を阻害するということも押えられるのでありますから、要するに加入のメンバーに制限をしないということならばこれはよい。  それから第二のカルテルの問題、これもまた今と同じことが申し上げられるので、自由のかつご5にすればそういう問題は起らない、こう私は考えております。
  38. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 次にもう一つ伺いたいのですが、この法案を見て、輸出の保護政策の一環として現われて来ておるのですが、あなたのお考えとし、て、これが輸出また輸入の保護政策だとお思いになるか、もちろんこれだけでは保護政策ではないだろうけれども従つて保護政策として認めることができましようか。
  39. 谷林正敏

    谷林参考人 御説の通り、これが全部ではございませんが、これは保護政策の一環として確かにその一部を果してしおると、こう考えております。
  40. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 専門に御研究なさつている谷林さんの、現在の日本の輸出のあり方、この不振はどこに欠陥があるかということ、政府がいるから、     〔小平委員長代理退席、委員長着席〕 政府に気がねすることなく、あなたのお立場において、あなたのおつしやることが、しかもそれが反映しなければならないので、政府の役人に気がねして、言うことを控えてもらうと、われわれにも、この審議の過程ばかりでなく、すなわち日本の輸出というものに大きな欠陥を生じて来ますので、御遠慮なくおつしやつていただきたいということが一つ。  また保護政策にもどるのですが、たとえば先ほどのドイツのような例をとつてみましても、これはわれわれの委員会としては相当考えておる問題であります。たとえば税金の問題であるとかいう面でございます。こういう点については、ずいぶん考えているのですけれども、なかなかこれが行われてはおらないのでございます。さらに外商との問題でございますが、当然国内に入つて来て輸出貿易をしようというならば、この中に加入せしめなければならない。私はそう信じております。こういう点についてあなたは当然入れなければならないんじやないかという御意見ですが、それに対してもう一度はつきりとお伺いしてみたいと思うのでございます。
  41. 谷林正敏

    谷林参考人 私の考えております日本貿易の現状及びこれをどうしてやつて行けばいいかという御質問でございます。これは最近いろいろな雑誌とか、あるいは新聞でずいぶんと論議せられており、通産当局においてもいろいろの対策を出されております。私はそういう対策もちろんけつこうでありまして、どれもこれももちろんやつていただけばこれに越したことはないのであります。ただ御承知のように、貿易というものは相手がありまして、また時期を失しては非常に困る、この二つの大きな問題があるのであります。  それから輸出ということを考えますと、今は輸出しない。追つて力をたくわえてから二年後、三年後にやろうという考えがたとえばあつたにしても、それは全然だめでありまして、輸出は刻々に実績を整えて相手市場に入つて行かなければ、これはだめであります。そういうようなことを考えますと、いろいろな対策を立案されましても、一月遅れ、二月遅れて行けば、これは価値を非常にそこなうということを、私はいろいろな機会に痛切に申し上げておるのであります。最近どうやればいいかというようなことは、いろいろの方が御研究になつておりまして、私が申し上げるのはおこがましい点もあるのでありますが、まず第一にわが国の物価が非常に高いという問題であります。これは物価が高いから相手に入らないという説と、物価が高いのではない、相手が輸入制限をしているからで、制限がなくなれば入るといういろいろな説がありますが、これは両方が同時に働くか、おのおのが単一に働くか、いずれにしても一つのみが有効的原因であるとは言い切れないと思います。そこで物価が高いということで安くしなければいけない。ところがこれが先ほどもちよつと触れましたが、国内のいろいろな産業の連関において二つの違つた矢じるしになります。一つは国内物価の安定ということであります。これは急激に下げるというわけには行かぬといういろいろな問題もございましよう。それから国内の企業で下げたくても、おのおのの企業の力ではもう限界に来たというものもありましよう。そういうようなところで非常にむずかしい。しかし貿易の面を考えてみますと、かりに輸入制限というものを今除外して考えても、いろいろの国際入札においてあちらこちらで実情を見せられておるのであります。日本の物価は非常に高いために向うに入らない。これは貿易が商売であり、各国がおのおの安いところから入れようとしているごきに当然のことであります。ただ物価が高くても、安くても輸入制限というものを設けまして、相手にそこで一つ障壁を築かれれば、これはいたしかたないのですが、もちろん輸入制限というものは、通商協定、あるいは個々の国との特別な話合い長つてだんだんなくして行くという努力は必要でありましよう。これは実際上政府においてもやつておられます。日英通商協定、日英支払協定、あるいはそのほかの通商協定はだんだんできております。ただそういうものができて参りましても、相手国は相手国で最近の国際情勢から貿易が非常に困難になつている。これは御承知と思いますが、最近の欧州各国の情勢では、だんだん国際収支が悪くなる。そうして貿易がジリ貧になる。そうすると、その目標はどこかというと、東南アジアと中南米であつて、日本と競合する地域にやつて来るということであれば、日本は一歩も早く、一時間も早くそこに安いものを売り出すことが必要であろう、これが第一であります。  第二には日本が外国に売るときに、ほかのわれわれの競争国がその国にいろいろ許しております決済関係の問題が相当重要ではないか。これは私欧州決済同盟とか、そういうものの詳細を知つておりませんから、はたしてそれがどういうぐあいに日本の加入の場合にはできるかというような、こまかいことは、もちろんここでお話できないのでありますが、その形態はどうにしろ、日本がこのEPUに何かの関係をつけて、その関係国には三角、あるいは四角の決済をつけるということができなければ、東南アジアのような、国力もあまり大きくなく、経済的にも最近特に困つているというような国に対してはなかなかむずかしいのじやないか。ことにEPUというものはいろいろな批評はあります。来年終るだろう、あるいは今でもとまつているというような批評はありますけれども、とにかく従来は加入国は相当の効果を上げておる。先ほど申し上げましたように、貿易自身は相手国があり、相手国のやることはわれわれとしては一応まねをするというか、同様のことを一ぺんしなければならぬ。それをこつちでしているうちに相手はそれから他に移る。そのときにわれわれがそこに移るということでは何にもならないのであります。相手がやつているうちにわれわれとしてもそれをやるということが必要であろうと思います。それからいろいろな問題がありますけれども、日本が外国と非常に孤立して——外交というものは今申し上げることはおかしいことでありますが、経済の方、あるいは貿易というものがどうしても孤立せざるを得ない。これは人情、風俗、地理的にいいましてもいろいろむずかしい。それから各業者にしましても、なかなか商業的に国際道徳を守り切れないものも従来多かつたというようなこと。ところが一方御承知のように欧州の経済同盟というものは戦後着々としてあらゆる面でやつておる。政治的には欧州同盟がありますし、それからシユーマン・プランもできますし、あるいはブラナン・プランという農業関係の同盟も結ぼうとしておる。関税同盟もやろうとしておる。運輸の同盟もしようとしておる。結局欧州というものが一緒になつていろいろなことをやろうとしておるときでありますから、われわれとしても孤立しないように、なるべく連絡をとつてやるようにしたい。そこで私は、これは希望としていつでも述べておるのでありますが、日本のそういうような通商貿易の首脳者は、先方のそういう首脳者とも常時いろいろ意思疏通をやつて行くことが必要ではないかと考えておるのであります。これは非常に何回も言つておりまして、またそういうことはなかなかむずかしいし、それが日本の貿易の一つのがんであるとも思うのでありますが、欧州の諸国、ことに主たる貿易国に比較いたしまして、日本は貿易関係調査機構といいますか、調査機能が欠如しておる、いろいろ方々にありますけれども、なかなか予算がなく、人もなく、そういうような十分な研究とか十分なデータも集めておりません。そこでシユーマン・プランあるいはドイツの促進策がある欧州はどうかというときに、その都度日本から向うに行つて研究しなければならぬ。そこにどうしても数箇月の遅れがある。それで向うのよすころにこつちはようやくやるということになるのでありまして、これは今後日本が貿易立国ということを考え、日本の貿易をもつとふやすということを考える上からは、どうしても貿易関係調査機構のはつきりしたものをつくる。そうして民間もあるいは官界も、このデータを常に集めつつ、そこで経験者あるいはその方の長老の意見を聞くということでなければ対策はつきりしたものがどうしても出て来ない。アメリカにおいても御承知のようにスターリング・エリアの研究機関その他非常に厖大なる研究をやつております。あるいは不況対策というものもイギリスにおいては十分やつております。日本においては貿易対策というものは今やつておりますが、さてアメリカに不況が起つたならば、あるいは欧州に不況が起つたならばどういう影響があるということは、私の知つている範囲においてはこれを掘り下げてやつておるところはまだ聞いておらない。こういうものが全部一体となつて初めて日本の貿易というものが今後増進する。  最後に私一つつけ加えたいのは、貿易に対する日本の対策であります。戦後御承知のように、あるときは輸出が第一である。日本は輸出国であるから輸出しなければならぬという時代があり、やがてある時代に輸出が出ると、輸出はインフレだ。そうして赤字輸出をする必要がないからとめておいてもいい。だから余つた金で輸入をしろというようなことがあり、輸出、輸入というものは、山川々々と谷引きして進んで来るのであります。御承知のように輸入は相当大きな業者がやつております。しかし輸出は零細業者も誉めてそういうものが一生懸命やつておりますから、時の政府の施策というものは輸出に最も大きな影響を及ぼすのであります。輸出に対していろいろな補助をする、輸出を大いに助成しようというときに、これは銀行の下部機構から全部そういうものがそういう気分になります。そこでそこにどうしても力を入れますが、これが逆のときにはその打撃というものはもつとひどいというようなこと。それで日本はやはり輸出が一番必要だ、いつも輸出が第一だということが必要じやないか。たとえば外貨が余つて日本がいろいろ考える。それはデフレーシヨンその他を考えればこれは心配ではありましようが、世界のどこに外貨が多くあり、輸出が多くなつてそれを心配する国があるかと思うのでありまして、どうしても日本が外貨をかせぐ必要があるならば、あらゆる機会に——しかしこれは正しい方法で、いい品を安く、そうして多く売るということが必要である、私はこういうように考えております。  それから第二の点でありますが、ドイツに関連して外商の問題の御質問がありました。外商はどうしても輸出の方にも入れるべきである。組合の方に入れるべきである。あるいは輸入にしても組合法がある以上、その中に外商も包含しなければならぬではないかというお話でありますが、これは私前にも申し上げましたように、組合がある以上全業者がこれに加入すべきである。アウト・サイダーに対する心配というものはない方がいいのである。ただ今の組合法ではこれをどうしても入れろという魅力もありませんし、力もないというような関係で、これは遺憾ながらその組合なるものが非常にアトラクテイヴになる仕事をするというようになれば、自然的に入つて来る、こういうように考えております。
  42. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 大体現在の輸出にいたしましてもだれが金をもうけているのだ、皆外商でしよう。これは私が申し上げなくてもよく御存じの通りであります。犠牲を払つているのはだれか、日本の生産者、また日本の消費者でしよう。こういうような点等は今後の問題といたしまして、お話の通り日本の政府そのもの、すなわちそれに対する調査研究というものが少い。これは私は政府も少いであろうが、大体業者になさ過ぎはしないかということをまず指摘しなければならない。たとえばよその国に行つてみて一つの会社があつて、一つの会社があれば必ず研究所を持つておる。そういうようにやつておる。ところが日本の人たちはどうも景気が悪いとか、輸出が振わないとかいつても、少しもみずからの創造牲をもつてこれに当つていない。どこか欧州でこんなものが出るそうだ、それではやつてみようかという、いつでも他動的でなければ物事が起きててない。これが一番大きな欠陥だと思う。それほど日本人というものは能力がないかと思うと、日本の歴史から見てもそうでもなさそうだが、どうもそういう面においてはそういうふうに考えられます。私は先日ラピツトの工場を視察に行きました。ところがあれだけの大工場であつて、これが私のところの研究室でございますとよくはずかしくなくて見せられるか。これがどうして私たちの研究室かといつてわれわれに見せられるか、どうしてわれわれがそれをラビツトの研究室として考えられるか。ただその品物が出て行つて売れておればいい、あとの研究は何にもしておらぬ。それで行詰まつたときに初めて研究しようということになる。並行した研究をやつていないというところに欠陥があるのじやないか、こういうふうに私は思います。従つて私は谷林さんに申し上げたいのは、こういうような欠陥をあなたも指摘している以上は、大いに業者の各位にこれを推進していただかなければならないと思うから私は申し上げるのでございます。従つてもう一点だけ伺つてみたいのですが、稲山さんにお伺いしたいのですが、日本の貿易のあり方といい、またあなたが先ほどおつしやつた中にもいろいろ御不満もあつて、ただこれに賛成だというばかりではないようでございますけれども、もう少しあなたにこの法案に対する欠陥の指摘がなければならぬと私は思うのですが、それがございませんでしようかということです。これをひとつお伺いしたいのです。
  43. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 決してこれで全部いいという意味で私は申し上げたのではないのです。今のいろいろな情勢をわれわれも承知しておりますが、これ以上望むことはできそうもない。そんなことをやつて時間をかけているよりは早い方がいいというように考えておりますので賛成を申し上げておるわけであります。
  44. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 一たび法律が法律としてでき上りますと、これがなかなかすぐ改正するというわけには行かないのでありまして、ここで一日や二日どうなつていてもも、つと慎重にして万全を期さなければならない。あなたも御承知通りの日本の輸出の状態でございますので、政府もこの法律をつくり上げて、輸出をよりよきものにして行きたいのだという気持でございますが、何かこれには欠陥がありはしないか、そういう欠陥があれば織り込まなければならない、そうして振興をはかりたいというのが私たちの考え方であつて、その審議に当つているわけであります。谷林さんに最後にお願いを申し上げたいのは、先ほどあなたがおつしやつたことは、私も先日指摘しておいたのでございますけれども、第五条、第十六条等々の点についてあなたが言うてくれましたけれども、その欠陥をあなたの目で見て、この法律はこういうようにつくるべきである、そうしたならば、必ず日本の今後の輸出にもよりよいものが報いられるだろうというお考えを——大きな方が今日来ておりますし、小さい方もおるので、それを総合してみて、どういうように訂正して行けばいいということを、政府に御遠慮なく御提出願いたいと思うのでございますが、委員長からもその点をお願いをしていただきたい。以上をもつて私の質問を打切ります。
  45. 大西禎夫

  46. 永井勝次郎

    ○永井委員 野崎さんにお尋ねいたしたいと思います。先ほどのお話では、この法案はカルテル的な点もあるが、それよりも独禁法そのものは早く廃止すべきではないかという御意見であつたと思うのですが、独禁法はふらちである、早く廃止すべきであるというふうにお考えになつておるかどうか。それから経済の民主化という問題をどういうふうにお考えになつておるか。それから西欧各国の輸出対案をいろいろお話になりましたが、輸出対策の基盤としてのそれぞれの各国の経済的基盤——イギリスなり西ドイツなりの各国は、経済の民主化も非常に進んでおる。民主化どころではない、社会化されておる。こういうような基盤の上に立つての一つの計画的な輸出対策というものが出て来るわけでありますが、その国内の経済的基盤はそつちのけにして、ただ輸出の面だけ業者本位の安易な対策を期待するということは、ほんとう意味における輸出対策にはならないのじやないか。その輸出を振興する基盤は、国内経済全体としての民主化であり、業種としての合理化が基盤となつて、その上に輸出に対する施策というものが出て来なければいけないのではないか、かように思うのでありますが、これらに関連した事項について、どういうふうにお考えになつておるか、承りたいと思います。
  47. 野崎一郎

    ○野崎参考人 前の方につきましては稲山さんの御意見であつたものですから、これを譲りまして、あとの方の分をちよつとお答えいたします。  ヨーロツパの方におきましては、御承知通り西欧諸国はカルテルの非常に盛んなところでありまして、そのカルテルは、アメリカに占領されましても、やはり依然としてカルテルの道はつけております。それで現在輸出に対するいろいろな方策は非常に盛んになつております。たとえば今度問題になつておりますトレーダーに対する一分の免税、メーカーに対する三分の免税、あるいは積立金制度につきまして十年間のすえ置にするというような方法もとつておるのでありますが、そのほかに外貨貿手を強化しまして、売先に低金利をもつて金融するというような方法をとつたり、いろいろの方策をとつておりますが、これは輸出に向つて、ことに国際競争のものに対して、非常な大きなフエーヴアーを与えております。たとえばフランスのような、そういつては何ですが、ああいうような財政の非常に困難な状態にあるにかかわらず、輸出に向つては四百六十億フランの補助金を出しております。これについてはIMFという通貨基金制度に対してもかなり問題になる点もありますが、実にそういう点は大胆にやつておる次第でありまして、これを民主化とかいうような国内問題には関係なしに実行しておるというのが現状なのであります。ですから先ほどのトラストその他につきましての御意見は、これは稲山さんからお話がございましたので、それにお譲りいたしますが、大体そういうような状態であります。
  48. 永井勝次郎

    ○永井委員 それでは前の問題について、独禁法の問題、それから国内経済の民主化の問題に対する考え方をひとつ承りたい。
  49. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 問題が大きいので、私どもとうていわからない問題でありまして、お答えができないと思うのでありますが、ただ私どもとして簡単に考えておりますことは、要するにアメリカみたいな高度の資本主義で、高度の産業の独占の弊害の現われているところまで行けば、それはあるいは独禁法その他を設けてそういう弊害を積極的に除去して行かなければならぬ必要はあると思うのでありますが、日本がはたしてそこまで発達しているのかどうかという認識の問題だと思うのでありますが、私どもは、まだ日本はむしろ逆に競争の弊害が出ておる、独占の弊害よりは小さなメーカーが濫立すると心、あるいはいろいろな競争状態の方から来る弊害の多いときに、かりにみなが手を握つて、生産原価を維持し、また将来も生産原価以上に値を上げないというように、みんなで暴騰、暴落を防いで価格の安定をはかるという必要のあることを認めているものを、そういう協定をしてはいけないのだという法律はつくる必要はないのじやないか。むしろものによつては、そういう協定をさせて、それを監督して、価格の安定をはかると同時に、その産業を育てて行く。価格が安定することによつて、その物資を消費する関連産業もかえつて事業が栄えて行くということを私は考えておるのであります。つまり安いということよりも、とにかく価格が安定するということが一番大事なのじやないか。しかる後にもちろん価格は安くならなければいけない。こういうような考え方から申し上げておるわけであります。
  50. 大西禎夫

    大西委員長 永井君にちよつとお諮りいたしますが、谷林さんは四時に参議院の方へ呼ばれておりますので、もし御質問があつたら、谷林さんの方を先にしていただきたいと思います。
  51. 永井勝次郎

    ○永井委員 討論をするのではございませんで、いろいろお話をしていただきたいと思いますが、それでは谷林さんにお尋ねしたいと思います。  今輸出貿易の関係で当面われわれが特に要望しておることは、ガツト加入の問題であります。それから輸出入の取引についての外国からのいろいろな政治的、経済的な介入が現在ある。そういうものを独立して自由にできるような条件を確立する。すなわち日本経済の自立性を確立するという問題です。それから国内的には経済の計画性、長期展望を持つた一つの計画を具備するというような事柄、それから海外の状況を正確に把握するというような事柄、こういう一連の問題が当面喫緊の要件として、われわれが期待しておるところではないか、かように思うのでありますが、これに対する御所見を承りたいと思います。
  52. 谷林正敏

    谷林参考人 ただいまのお話は私どももその通りに考えております。いろいろなそういうような条件全部を集めて、やはり経済の自立性ということをどうしてもはからなければならない、こういうふうに考えております。これに関連する点は、先ほども申し上げまして、もう一ぺん重複するのもいかがかと思いますが、結論的に申してあなたの御説の通り考えております。
  53. 中崎敏

    ○中崎委員 谷林さんにお尋ねいたしますが、この改正案によりますと、輸出並びに輸入の両方面にわたつての改正になつておると思うのです。輸出の場合においては、以前も認められておるわけですが、今度は輸入の場合も新しく業者の協定並びに輸入組合等が認められることになるわけです。ところが輸入と輸出は相当性格が違つてつた。輸入の場合にはそう無制限に組合をどんどんつくらしてやるということは、かえつて自由公正なる取引をある程度阻害するという心配もあると思う。それで外国の事情等によつてほんとうにやむを得ないもの、たとえば米とか小麦とか綿花とか、そういう特定のものとか、あるいは特殊の業種についてのみ、こういうものを認めて行く。さらに将来の状況に応じて、追加する必要のある場合が生じたときには、それについてまたあらためて国会等で審議すればいいのではないか。輸入の場合においては、業種を指定した方がいいのではないかという考えを持つておりますが、その点はいかがでございますか。
  54. 谷林正敏

    谷林参考人 その点は私先ほども輸入組合の点で特に強調したのであります。御承知通り輸出と違いまして、輸入は実際はない方がいいのであります。ただない方がいいのでありますが、問題にになつておるあるいは綿花であるとか、あるいは米であるとか、これは国民の食糧生活といいますか、非常に重大なる生活要素をなすものでありますから、何か相手国のいろいろな事情が、日本側で大勢の競争があるために、高いものを買わなければならぬというようなことになると、これは日本として非常に困りますから、そこで輸入組合ができる、これはいいのでありますが、御説のように私もこれは極力しぼつていただきたい。輸入組合の数は非常に厳選をしていただきたい。それからその役目が済んだならば、すぐこれをよしていただきたい、こう考えておるのであります。  それからこれは輸出の方もそうでありまして、ある一地域にある複数の品物を扱うというような組合ができた場合、これは個々の場合、たとえば今回のアルゼンチンの場合、向うから小麦を入れてこつちから鉄鋼を出す。向う関係でこちらがある商社を指定した方がやりいいというような場合はやつてもいいのですが、そのかわりそれが済んだら、すぐよしてしまう。だからその次にはほかのものにもチヤンスがある。こういうのはいいのでありますが、ある地方にある業者がそのときに必要性があるためにつくつて、それがある期間だけずつと永続するというような場合には、これは非常に注意して、できたらすぐよすというようなことにしなければならぬ、こう考えております。
  55. 中崎敏

    ○中崎委員 次にお尋ねいたします。この法案によりますと、だれもかれも業者の強制加入ではないのです。ですからアウト・サイダーが当然出て来ると思います。法案の趣旨によりますと、アウト・サイダーに対しては遵守すべき事項を組合自身が定める、あるいは今度通産大臣がこれにさらに強力な命令みたいなものを出せることになつておる。それでまず二つの問題があるのですか、一つには、そういうことは組合の自主的な運営によつて、まず規約の面において、どういう事項とどういう事項とをアウト・サイダーに厳守させるんだというような事項を組合が自主的につくつて、その方法を厳守させて行く、これが一つなんです。もう一つは、それといつても、無制限というか、アウト・サイダーにほとんど手も足も出ないようにたたきつけて行くというようなことは行き過ぎだろうと思う。それで遵守すべき事項の範囲を一体どこまで組合がアウト・サイダーに及ぼすかということも限界を置くべきだと思う。従つて今度通産大臣は組合を通じて組合の自主性にまかす、そうして組合指導によつて行くんだ、こういう方針で行くべきだと思うがどうか。それにしても限界というものを置いて、そうして自由の範囲をある程度は認むべきである。組合の方の力によつてとことんまでたたさつぶして、身動きならないというようなきつい制約の権利を組合に与えられるということは行き過ぎじやないか、こう考えておるのですが、その点はどうですか。
  56. 谷林正敏

    谷林参考人 第一のアウト・サイダーに対するいろいろな問題でありますが、この取引法ができ、組合というものをやつた方が日本の貿易の健全なる発達に必要である、あるいは輸出入貿易の秩序確立に必要であると考える以上は、なるべく同じ業種のものは全部入る方がいいと考えるのが当然だと思う。といいますのは、その入ることによつて非常に大きな負担があるとかあるいは義務が起るとか、ずいぶんいろいろいやな面もあるなら、そこで強制するとかしては困りますが、むしろそういうことでなくて、お話合い願えればいいのでありますから、それはおのおの入り得るものを持つておると思う。ただその場合に強制ができないために、アウト・サイダーができる、これはいたしかたがないのであります。しかしアウト・サイダーはアウト・サイダーで何でもかんでもできるということになりますと、この法律をつくつても、法律はそういう抜けがけといいますか、外におるものの力が強くなればだんだんだめになるということで、ある程度これに対する制限をする、通産大臣はまたこれを押えるという規定がありますが、今御指摘になりましたような何でもかんでも広く押えるというようなことは、ちよつとこれを拝見したところではないのではないか。つまりその組合は定款でこれこれのことをするということが一応うたつてありますし、この条項の中には、こういうことに対して自分たちだけでは困るときには他も押えることができるし、それに、必要があつた場合には通産大臣がやるということが一応ありますから、私は無制限にそういうことまで影響ぶ及ぶとは考えておらないのであります。この法律によつても、そういうぐあいに外のものを縛るということまで行くのは困るという、監督その他が必要と思いますが、この法律自身ではそういうところまでは縛つてないじやないか、私はそう考えておるのであります。
  57. 中崎敏

    ○中崎委員 大体この組合の遵守すべき事項というのは、アウト・サイダーに対して考える場合は、まず価格と数量の問題が一番大きい問題と思う。そのほかこれに附帯する条件がかれこれあると思いますが、たとえば組合内の人だけが、あなたの言われるように、価格はいいのですが、数量の場合、一万トンなら一万トン輸入する、こうやつて行こう、これではほかの輸入業者はほとんど手が出ないことになつて参ります。その数量についてもアウト・サイダーには全然やらさないというようなことで、まるきり手も足も出ないようなことをされると、結局強制加入と同じような結果を来すことになるのです。そういうような面において無制限にやられるようなことになると困りはせぬかという問題があると思うのです。
  58. 谷林正敏

    谷林参考人 今の点、私先ほど申し上げましたように、価格の点においてはいいのでありますが、数量の点においては私自身もそういう点に懸念が大いにあるのでありまして、これは価格と数量の方をどういうぐあいにして調整をするか。ことに出るものを押えるということは、輸出貿易そのものからいつても非常に危険なものでありますから、これが実行には相当きびしい政令というか、やり方というか、そういうことをやらないと非常に危険がある、こういうように先ほども申し上げました。ただいまおつしやつたととにも、私は後者の方に賛成であります。
  59. 中崎敏

    ○中崎委員 この組合法制定の趣旨からいいますと、だれもかれもこの組合に入つてもらうのが一番いいと思う。ところが場合によればごとさらに資格制限を厳重にして、多くのものをはじき出そうという考え方も起つて来ないとは言えない。それから一つには、要するに大きな政治力、経済力等のあるものがやはり組合の指導者になる。それがかつてぼうだいをやる。中にはどうも信頼できぬということもあり得る。そういうふうな場合においても、いやでもおうでも入らざるを得なくなる。入らないことは立場上許さないということもあり得るのです。いろいろ具体的な場合はあると思う。そういうふうな場合等もいろいろ想定してみると、この問題の運用等については、きわめて複雑な事情が起きて来ると思う。それを一体どこでどういうふうに調整して行くか。そしてまたいわゆる大資本なり少数のものだけがその組合を支配するような大きな影響力を持つ、そういう運用の仕方になりがちなものでありますけれども、そういうものをどう調整するかということは、運用ばかりではなく、実際の法規の上においてもある程度の配慮が払わるべきものだと考えておるのでありまして、そうした面について、それは恐るべきものではないとか、あるいはこういう制度をつくるからには、必然的に大局的な目的からやむを得ないものだとか、あるいはこういう方法でやればある程度これが緩和されるとかいうような、何か具体的な御意見でもあればお聞きしておきたいと思います。
  60. 谷林正敏

    谷林参考人 そのことは確かにこの運営上必要なのでありますが、たしかこの法律のあとの方に輸出入取引審議会というものがありまして、そこに民間の各界の代表者が集まつて、いろいろその関係の資格とか、あるいはそういう重要事項に関しては審議されると思いますから、これが十分に民主的かつ自主的に審議をすることが必要でありますが、それが審議をして行きますならば、そういうかじは十分にとれるのじやないか。私はそこで十分かじをとつていただきたい、こう考えております。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 谷林さんにちよつこお尋ねしたいのですが、今日の貿易不振の原因がコスト高にあるということ、調査機構が不十分であるということその他は、先ほど長谷川君の質問にお答えになられたのですが、私はこの際こういうことを考えておるのです。この考え方が間違つているかいないかということと、またあなたのお考えがどうかということを承りたいのです。実は貿易不振の一つの大きな原因に、貿易商社の資本が非常に少い。そのおかげで外国商社並びに外国からの信用が非常に少い。これが輸入の面において非常な不信をかつている。私はさように考えているのです。そういう具体的な実例も持つておるのでございまするが、この点一体いかにお考えになつていらつしやいますか。それからもし事実信用がないとするならば、現段階においてどのような施策を施したならば信用を回復すると申しますか、信用を増大することができるとお考えになつていらつしやるのか、それがまず承りたいことの第一点でございます。  それからもう一つ、戦前の貿易と戦後の貿易とを比較いたしました場合に、ガツト加入とかどうとかいう外国関係以外の問題で、国内だけで処理ができるけれども、なおそれが行われていないというのがこのカルテルの一つでございましようが、もう一つ為替の問題があると思います。現在御承知通り大蔵省がこれを握つてしまつて、外貨の割当だの何だのということをやつておるのでございまするが、この問題をほんとうに自由主義経済の立場に立つて考え、また戦前の貿易が非常に振興していた時代の様子と比較いたしますると、今日の為替の手数料とか、金利だとか、保証金という問題が、小さい商社の輸出振興の阻害を結果的に生じさぜているではないかということ、それからもう一つは、為替チエンジのうまみと申しましようか、日本から輸出する場合にはある程度出血であつたけれども、これから得るところのドルが、ボンドなり、あるいはルピ、にチエンジすることによつてさやかせぎもでき、出血も補うといううまみを持つしいたと存じますが、それが今日の状態ではできないということに相なつてわります。先ほどお答えになりました三角貿易とか、四角貿易というのはこの意味をさしているのかどうかわかりませんが、この為替チエンジのうまみを商社自身に持たせるということが、一層この励みをつけて貿易振興なり、あるいは外貨獲得なりに非常に貢献をすることでないか、この点は一体いかがなものでありましようか、御意見を承りたいと存じます。
  62. 谷林正敏

    谷林参考人 非常に大きな問題で、はつきりしたお答えができるかどうかわかりませんが、まず日本の貿易不振の事情——先ほどいろいろ私が申し上げた以外に、商社資本が非常に小さい、それで信用もないから、できないんじやないかというような御質問でありますが、なるほど各商社を見ますと、戦前に比較いたしましても、外国の商社と比較いたしましても、小さいのであります。それがために信用がなくて、それで貿易ができないのだということは、ある部分にはそういうことが言えるかもしれませんが、全般的の大きな問題といたしましては、そうはなつておらないのであります。私考えるのに、従来の関係があつて、戦前にも相当信用ある取引をした、その流れをくむA、B、C等十か二十というものは外国でも知つているから、それに対しては人的関係その他信用はあるのでありますが、日本の商社としておのおのが規模が非常に小さくなつておりますために、戦前のように各地各方面に十分なスタツフを出して、そこで貿易をするというようなこともできない。あるいは先ほど商社の方の調査機関が云々というお話もありましたが、これもやはりいろいろそういう関係がありまして、戦前のように十分そういうこともできない。あれやこれや、そういうことが商社の力を小さくしている。そこで商社が小さいから、従来なら貿易ができるところができないという部門もあると思いますが、信用云々というほどの強い問題では——戦後すぐありましたが、現在ではそういう面は少くなつたのではないかと考えております。そこで第二の問題の、信用増大についてどうするかというようなことは、当然各商社がなるべく堅実な、そうして大きな組織のものが出て行く。戦前においても日本の三井とか三菱とかあるいはその他数社ありましたが、そういうのは世界にも例を見ない特殊の商社でありまして、これは日本の貿易自身が、御承知のように国が小さくて、貿易は世界と同じようにやらなければならぬ。国内の事情、言葉の事情が違うのに、それと伍さなければならぬという特殊事情がございましたが、これらの特殊の会社があつたがためにできた。それと比べては非常に今劣つております。どうしてもそういう点で強化しなければならぬ、これは確かにその通りであります、  それから先ほど外国関係の問題がいろいろあるが、そのほかに為替の問題もあるじやないか。つまり国内だけで処理できる問題で、貿易不振の方の何かの原因をなしておる、たとえば手数料その他いろいろあるから、それが害をしておるだろうというような御質問であります。これは中小のみならず、大きなトレーダーにいたしましても、今日金利が高いということは、各商社とも声を大にして言つておるのでありまして、手数料その他の問題もありますが、その中でも特に言えるものは金利の問題で、これはできるだけ国際水準に近づけて安くしてほしい。それのみを安くしても何ほどの利益があるかというような駁論も聞くのでありますが、貿易促進対策は、一つのもので一というような力のあるものはなかなかむずかしいのでありまして、いろいろなものを合せて一本にしなければならぬ。そこでそういうものもできるものからやつていただきたいと私は平生から考えております。  最後に為替操作の問題で、戦前はいろいろ為替操作ができたが、戦後はできないというお話でありますが、戦前でも各商社が直接できたわけではありませんで、各商社が当時の正金銀行なりあるいは三菱三井その他の店舗を外国に置いておる銀行を通じて為替操作をやつてつたのであります。そして各商社がそういうことをやるという、その一歩前に、日本銀行が外国の方々の為替銀行と相伍して、そこでいろいろな外貨の売り買いというようなことをやつて行けば非常にいいのでありますが、これは御承知のように、日本の現在の外貨保有量が非常に制限されておる。それから戦前においては、そういう心配がなかつたのみならず、いかなるときでも——と言うと語弊がありますが、とにかく僭越しもできれば、いろいろな借款もできた時代であります。今日は現在持つている金がなくなれば、金のなくなつたのが運の尽きと申しますか、何もできないというようなことで、なかなか為替自身を手放しにすることは今むずかしい、これは私もそう思うのでありまして、商社自身ができないことも遺憾でありますが、せめて外国銀行がある程度にできるようになり、大蔵省云々というお話もありましたが、大蔵省が全般的に見るというのは、戦前でもそうと思います。ただ言にいろいろな為替専門銀行——これは最近の問題でもありまして、なかなか簡単にはいかぬむずかしい問題でありますが、数行なりそういうものが必要と思うのであります。これはいろいろな問題ありまして、すぐにはできないと思いますが、私もおつしやるようになるべく為替の自由化、そこにはドルとボンドの兌換もできないという、戦前と非常に大きな違いをなしておりますから、日本が相当な国力があつても、ドルとポンドのとりかえはできないという問題もあります。いろいろむずかしい問題もありますけれども、まあそういうふうに進めば、貿易の方もやりやすくなると私は考えております。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 先ほどの稲山さんのお話に、売込みにしても、買付にしても、商社がたくさん行つて——パキスタンの例が出ていたようですが、非常に経費がかかる。従つて高くなる。だからカルテルが必要であるというお話がございましたが、今日売りにしても、買いにしても、メーカーが直接行つておる場合もあるように聞いておりますけれども、事貿易に関しましては、やはりエキスパートが当つて、なるべく売るものは高く、買うものは安くというふうに行つた方がいいのではないか。そのためには少々経費はいつても、それ以上安く仕入れた幅の方が多いという場合には、国家的な利益が多くなるという見地から考えまして、この際もつと商社の進出をはかるべきである。いわば貿易政策と申しましようか、そういつたものを助長させるということが必要のように考えられますけれども、やはりメーカーが直接商売に当つた方がいいのか、あるいは商人が当つた方がいいのか、あるいは専門の商社が戦前のように当つた方がいいのか、この点は両者にお伺いしたいのですが、お急ぎのようでございますから、谷林さんに先にお伺いいたします。
  64. 谷林正敏

    谷林参考人 どうもむずかしい問題でありまして、稲山さんのような専門の方をわきに置いて、申し上げるのはどうかと思いますが、しかしこれは理論ですから、理論を申し上げます。私はこう考えます。今おつしやつたように、貿易はあくまで貿易業者の仕事でありますから、買うにしても、売るにしても、貿易業者が出るということが妥当であるし、至当であると思つておるのであります。ただ最近原料資材の買付であるとか、あるいは物を直接売るとかで、メーカーの方々が直接行つておられるという場面があるわけであります。それは先ほどのお話にもありましたように、貿易商社それ自身非常に弱体である、あるいは貿易商社にエキスパートが少い。ことに信用の問題が——国外ではありませんが、国内のメーカー・サイドからある点においてあるのではないか。そういうような場合には、メーカーの方も行つていろいろやられるようでありますが、しかし最近私が伺つておるのでは、メーカーも直接行つておられますが、現地に行つておる、あるいは国内で、いろいろ話合つて貿易商社それ自身をどうもお使いになつておるように聞いております。それから戦後すぐは各メーカーとも間にトレーダーを入れるということは、屋上屋を架するもので、口銭だけとられてつまらぬじやないかというので、直接やられたものもありますが、これは戦後のように非常に複雑でありまして、とちらから出すには相手方から全然品物の違つたものを入れなければならぬというようなときには、売込みに対し七買入れができない、あるいはいろいろな理由もありまして、メーカーの方もだんだん貿易商社を使うというような方向になつて来られました。これは貿易業者自身も大いに勉強され、そうして規模もだんだんしつかりしたものになれば、メーカーとしても貿易の方は、ごく特殊のものを除き、ごく専門的なものを除いては、資材を輸入するにしても、売るにしても、貿易業者をお使いになるだろうと私は思つております。またそれを希望しておりますけれども、日本の貿易の発展その他のためには、より多くいいものを買い、日本のものも売るこう行きたいと考えております。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいま最後にお尋ねいたしました問題ですが、貿易振興と、なるべく利益を増大させるという見地に立つた場合には、少々の経費はかかるかもしれませんが、やはり専門のエキスパートにまかせた方がいいではないか。それからもう一つは今日のような状態の場合は別でありますが、だんだん貿易が振興して行きました場合には、この輸出輸入というものが相関関係を生じて来る時代が遠からず来ると思います。その場合、ある特殊なメーカーが貿易業務に携わるということよりも、むしろ専門の商社にまかせた方が適当ではないか、かように考えられておりますが、稲山さんは、そういうことは経費がよけいかかつてむだだとお考えになつておりましようか、いかがでございますか、お尋ねしたい。
  66. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 私ども鉄の関係では、昔から商社を使つておりまして、終戦後いろいろ問題のあつたのでありますが、あくまで商社を使う。その方がいいんだという結論になつておりまして、ただいま鉄鋼業界の方では直接売つているところはほとんどございません。全部商社を通しておるのでございます。ただ先ほど申し上げましたのは、商社が私ども関係なくかつて向うへ入り込んでおりまして、そして商社がわれわれから値段ももらわないのに、八幡のレールを幾らで売るから注文してくださいということを向うのバイヤーに言つて歩いておるわけであります。そのために向う政府は、大勢八幡の代理人が来ているような形になつてしまいまして、どれと会つていいかわからない。ことにアルゼンチンなど今行つている様子を聞きますと、向うの鉄道省が買いつけるのでありますが、鉄道省のお役へはこれらの商社とはほとんどお会いしない。会えるような有力な人を商社では派遣していないのであります。そういたしますと、われわれと今無関係に品物を持つた人が、かつてに入り込んでおるというのが現在の状況であります。そういうことは困るだけでありまして、結局私どもしかたがありませんから、この間係りを派遣いたしまして、ただいま向うの鉄道省と直接話合いをしております。話ができたあとで、今度は商社の方々に契約をしていただきまして、そして取引をするということにお話合いがついております。ということはつまり戦後非常に違いましたことは、昔は三井とか三菱とかいうように非常に大きな商社があつたが、それが今ではほとんどなくなつております。それが一つと、それから飛行機が非常に便利になつて来ておりまして、昔は向うにおつた人たちと、われわれ日本におる人とは非常にハンデイキヤツプがあつたわけであります。ところが今は向う政府の方がわれわれ直接話をしたいといつて、飛行機でどんどん飛んで来られますから、そこで話ができてしまうわけであります。それでわれわれもどこかで入札がありそうだというと飛んで行きさえすれば、商社との能力の差がないわけなんでございます。そこでそれでは一体どうなるかという問題で、日本の商社がつぶれてはたいへんでありますから、そういうことではいけないので、われわれができるだけ直接には話をして行きますが、最後は商社に実を結ばしてやつて取引をさして行くうちに、だんだん濫立しております商社が自活の問題でありますから、いろいろ合併も行われ、また合同もして行くのではないかと思うのであります。そういうようにして将来有力な商社が育つのをまつよりほかしかたがないじやないか、かように考えておるわけであります。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 私があえてこのことをお尋ねしたいゆえんのものは、八幡製鉄さんはどうかしりませんが、鉄鉱石を南方方面から輸入する場合にあたつても、製鉄屋さんが直接取引をしていらつしやる実例を私は知つておる。それから今度は鉄を材料としてできた織機なり紡機なりを今度輸出する場合は、やはり紡機、織機のメーカーさんが直接取引していらつしやる実例を知つておるのでありますが、ところがその方々は製造の技術は持つていらつしやるけれども、輸出入のいわゆる貿易経験というものを持つていらつしやらない。おかげで、相当不利をこうむつていらつしやる実例を見たり聞いたりしておりますので、こういう状態がいいのか悪いのか、将来はどういうふうに業界としては考えていらつしやるのかをお尋ねして、よつてつてこの法案の貿易組合をどう育てたらいいかという参考にしたがつたからお尋ねしたのであります。  それからもう一つお尋ねいたしまするが、今カルテルというものは、私の考えではメーカー側のコストを出血にさせないために行われる。つまりむやみに値下りをさせないために行われるものと考えておるわけなんでございますが、その考え方は間違いであるかないか。  次に、お尋ねしたいことは、今日の鉄鋼関係から行きますと、日本の鉄を資材としてつくる造船にしても、織機にしても、紡機にしても非常にコストが高いのでありまするけれども、このコスト高の原因は材料である鉄が高いからこういうことになつておるように聞いておりますが、これもまた間違いであるかないか。その際に高い高いと言われておる鉄鋼の関係の方々がカルテルを結ばれて一体どのようにして値下げを行われようとするのか。今値下げはしなくても今日のままでいいとお考えになつていらつしやるのか。今日機械なり船舶なりの輸出がきかないのは、どうも鉄のコストが高いからだと聞いておるのです。そこで先ほどあなたは値下げは自治統制で行いたいというようにおつしやつていらつしやいましたが、ほんとうにカルテルを行うことによつて、それができるかできないか、こういうことをお尋ねしたいのであります。
  68. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 簡単に申しますれば、私どもはできる、そうしなければいけないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。ということは、私ども鉄の経験はまだこ十五、六年でございますが、私ども学校を出てからいきなりやりましたときから、共同販売組合を鉄においてはつつたのであります。そのころはまだほかの商品には大してなかつたと思います。そのときにわれわれがつくりましたのは、ドイツの共同販売組合のまねをしてつくつたわけでございます。そしてそのときには不況のカルテル、すなわち不況がどん底でございまして、欧州大陸から品物がどんどん流れて来たものですから、対抗する方法がございませんので、やむを得ずカルテルをつくりました。しかし、その後長年のカルテルの経験から行きますと、昭和九年に満州事変を控えまして、鉄の市場が暴騰いたしたわけであります。このときに私どもが売つておる鉄は安いのであります。ところが問屋さんに流れますと、問屋さんが市場価格を形成しておりますが、その市場価格が暴騰したわけであります。これを防ぐのにどうしたらいいかということで非常な問題が起きたわけであります。政府からは非常にお小言をいただくのであります。われわれの鉄が支配的であればいいのですが、そのごろ昭和九年の満州事変を控えまして、アウト・サイダーが濫立した当時でございます。従いましてわれわれは安く売るのですが、アウト・サイダーが高くやつてしまうということになりまして、どうにもしようがない。しかたがないので外国からわれわれは鉄を買入れました。われわれメーカーが買い入れたのであります。それをプールして安く鉄を供給するという仕事をやつたわけであります。そこで日本鉄鋼連合会というのがその後できたわけでありますが、その日本鉄鋼連合のできました動機は、そういう時代を背景といたしまして、これでは必ず鉄鋼業者は非難を受ける、これではいけないから、何とかして安く供給する組合をりくろうじやないかということで、私ども二、三寄りまして話し合つた。ところが、入らなかつたらどうするかということだつたのですが、入らなくてもしようがないじやないか、三軒でもいいからやつてみようじやないかといつて唱道をしましたところが、皆さん御賛同くださいまして、鉄鋼統制会の前身であります日本鉄鋼連合会ができて、昭和十六年に鉄鋼統制会のできますまで四年間継続いてしたわけで、そういう関係で、鉄に関しては私どもはそうしなければいけないんじやないかと実は考えておるわけであります。だから朝鮮事変が起きまして、あそこで暴騰をいたしました。そのときにはカルテルはございません。従つてみな高く上げて行くわけであります。高く上げて行つた場合は、必ずどこかで暴落しなければならぬ。そういうことがあつてはたいへんだからというので、メーカーで話し合うのですけれども、これもカルテルがありませんから、話し合うという程度で、たいへんだ、たいへんだということを話し合うばかりで終つてつたわけであります。そういう意味合いにおいても、われわれとしてはぜひとも鉄についてはカルテルをつくつた方がいいじやないか、むしろ強制カルテルをつくるべきじやないかというように考えておるわけであります。カルテル全体がこうであるかどうかは私は保証しておりません。但し問題は、日本で輸出組合法ができまして、輸出組合がたくさんできておりますが、ほんとうに業界でひとつ価格安定をするためにやつて行こうじやないかという意味で現に動いている組合は、私はほとんどないんじやないかと思うのであります。だから要するに日本人というのは、手を組んで行こうという場合に競争を廃止することのできない国民なんで、カルテル法をつくつたつておそらく実行する組合はほとんどないのじやないかと思う。鉄鋼統制会ができまして、あるいはぞろぞろ統製会ができましたけれども、ああいうのは強制だからできたのでありまして、みな仲よくひとつ価格を維持して行こうというようなカルテルは、私は日本ではなかなかできないんじやないかと思つております。ですからできる組合はほんとうに必要な組合なんだから、そういうものを監督して行くべきじやないかという意味で私申し上げたのであります。  それから鉄が高いために関連産業が困つておりますことは、私非常に同感でございまして、これは何とかしなければいけないわけでありますが、しかし私どもといたしますれば、決して無責任にやつておるのではなくて、高い高いと言いますが、どこと比べて高いのかという問題となるのですが、かりにアメリカに比べて高いということにしますと、確かに高うございます。二割五分くらい高いんじやないかと思うのでありますが、しかしそれに使つております鉄をつくるための原料は二割五分どころの騒ぎじやない。非常に高いものだろうと思うのでございます。だからかりにアメリカの業者と同じに原料を与えられたと仮定して、なおコストが高い場合には製鉄業者責任だと思うのでございます。私どもとしては、鉄が高いと言われると、今度は鉄は石炭を使いますから石炭が高いと言い、結局いたちごつこになつているのであります。この問題で鉄が高いということを取上げる前に、日本の物価が全部高いということを認識していただきたいと思うのであります。アメリカと日本の、かりに二十品目くらいの重要な物資をとつて比べてみましたけれども、日本で安いのは繊維製品だけだと思います。ほかのものはみんな高いわけです。高いのはなぜかというと、大体石炭を使いますから、石炭関連産業はみんな高い。石炭を使わぬ産業は安いのであります。そういう意味で、決してのがれ品をきくわけではありませんが、もつとほんとうの解決の道は鉄にあるのではなくて、鉄を構成する原料にあり、その原料を構成する労働にあるというように、もつと基本的なものじやないかというように考えているわけであります。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は専門家の稲山さんをとつつかまえて、あなたの鉄が高いから安くしろということを言うておるわけではありませんし、また専門家に向つてこれをやつつけようというような大それた考え方は、牛車に向うかまきりでございまして、そんなことはつゆさら考えておりませんが、少くともこの法案を審議するにあたつて、いろいろ専門家のあなたの御指導をいただきたい、こういう気持でお尋ねしているわけでございますから、ひとつ親切にお教えを願いたい、こう思うわけであります。私が疑問に思います点はおつしやる通りでございまして、日本の鉄の高いのは石炭が高いからだ、いやそれだけではない、全般にコストが高いのだという場合に、なおかつそのコストを引下げるためにはカルテルを強化した方がよい、こうおつしやつたのですが、そういうことをしてはたしてそのコスト高の声を安くさせることが可能であるかないか。もし可能であるとしたならばどういう点からそういうことが生れて来るか。カルテルを行つたがためにコストが下るというゆえんのものをひとつお教え願いたい、こう思うわけです。
  70. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 コストを下げるためにカルテルをつくるということを私は申し上げた覚えはないのであります。つまり価格が暴騰する場合に、暴騰を押えるカルテルということを申し上げたのであります。必ずしもカルテルだからコストを引下げられるということではないと思います。しかし非常に関係はあると思うのです。たとえば今度の法律によりまして、かりに生産分野の協定が許されるということになりますれば、生産集中ができますから、各会社で得意のものを集中してやればコストが下るとか、そういう意味合いにおけるカルテルの利益はコスト引下げに関連があると思うのでありますけれども、しかし今度カルテルをつくつたらすぐに原価を下げてみせるというようには私ども実は考えておりません。コスト引下げの問題は別途の問題だと思つております。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 では最後に一つ伺います。この正月ごろお宅は値上げをおやりになりましたですね。それから去年の五月だつたか六月だつたはつきり記憶しておおりませんが、そのころから仙台のメーカー七社ばかりが操短をおやりになりましたですね。そこでこういう鉄の高い折に、なおそういう声を押し切つても操短をしなければならない、こういう点を教え願いたい。それからもう一つは、私の考え方から行きますと、操短をした場合には、価格を下げるのをとめて、価格を保持するということには非常に有効だと思うのです。もう一つは、カルテルを行つて得した例は見ないという、それに似たお話がちよつとありましたが、鉄鋼業界の歴史のことは私よく存じません。しかしながら、綿紡、毛紡の方におけるカルテルは、明治二十三年以来十一回にわたつて行われておりますけれども、この綿紡が半世紀間にあれほどよく伸びて世界に君臨することができたゆえんのものは、これはカルテルのおかげであるということを商工行政史がはつきりと述べておりますが、この商工行政史に資料を与えられた方方は何を隠そう綿紡の方々である。こういう事実から見まして、私は操短ないしカルテルということは、これは価格維持ないしはメーカーに資本蓄積をさせて、それを堅実に歩ませるということに大きな効果を持つておるものである、かように結論づけておるわけでございますけれども、その考え方がはたして間違いでありやいなやという点についてお尋ねしたい。以上でございます。
  72. 稲山嘉寛

    ○稲山参考人 結局私はカルテルは価格を上げるとか下げるとかいう、その上げたとか下げたというのは一時的な現象でありまして、あるいは非常な安いところから上つた場合と、非常な高いところから千円下つた場合と、その千円の価値というものは非常に違うのでありまして、われわれから見て最も問非なのは、その産業がコストでペイして行くかどかということが大事なんだろうと思うのであります。つまり価格の安定ということをねらつてカルテルをつくるべきだというように考えておるのでございます。それはある一時の不況から、できれば千円上げたということになりますが、あるいは高いところでカルテルをこしらえれば、そのカルテルによつて価格を安定させようという安定点を求める場合は、下げることもあるのでありまして、それは現象の問題だと思うので、むしろわれわれは価格の安定を望むカルテルをつくりたい、こういうように考えておるのでございます。
  73. 大西禎夫

    大西委員長 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければ、この際参考人各位に対し一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位におかれましては、それぞれのお立場より忌憚のない御意見をお述べいただきましたことにつきまして、お礼を申し上げます。法案審査のため資するところきわめて大なるものがあると存じます。委員会代表いたしまして私より厚く御礼を申し上げます。  この際お諮りいたします。中小企業金融公庫法案に関し、農林委員会より連合審査会を開きたい旨の申出があり  ますので、本委員会といたしましても、農林委員会と連合審査会を開くことといたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。  なお連合審査会は明日午後一時より開会いたします。  またこの際お諮りいたします。ただいま大蔵委員会において審査をいたしておりまする関税定率法等の一部を改正する法律案に関し、大蔵委員会に連合審査会を開きたい旨の申入れを行いたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさようとりはからいます。  本日はこの程度にいたし、散会いたします。     午後四時五十三分散会