○野崎参考人 ただいま御
紹介をいただきました野崎一郎でございます。
一言現在の貿易の状況がどういうことにな
つているかということを簡単に加えさせていただきたいと思います。世界の貿易は現在ドル不足から深刻なる競争にかわ
つておりまして、現在は食うか食われるかというようなところまで追い詰められているのが現状であります。各国はその国の通貨価値を引上げまして、それで物価を引下げて、貿易カルテルを組織いたし、特殊の奨励金
制度を設け、あるいは振興方策をも
つて輸出特殊機関をつくり、あるいは貿易協定によりまして、先方の輸入の見返りとして、割高のものを当方へ押しつけて買わせるというような方法をとりましたり、あるいは貿易管理とか為替管理から極度の輸入制限をいたしまして、ときには差別的高関税をかけまして苦しめる等、まことに百鬼夜行の状態でございます。しかるに日本人は人口の多い
関係か、外商とは今はあまりけんかをしないで、おのおの日本人同士が出血してけんかをするというような状態にな
つております。戦前は外商と相当に争いまして、出血しても闘い勝つというようなことをいたしておりました。これは日本の銀行機関とか船会社、保険会社等が先方で十分に活躍をしておりましたし、同時に各商社が各地に支店を設け、あるいは出張所を設けまして実力を持
つておりましたので、この芸当ができたのでございますが、戦後はそれらを全部失いまして、それで輸出組合のごときものは厳禁されまして、しかも敗戦のつらい経験をしておりましたことからか、外商と事を構えるような気分を失
つてしま
つて、以上のような傾向に
なつた次第でございます。この傾向は非常にまずい傾向でありまして、先方のお客さんに不安を与え、またあとから安いものが入
つて参ります
関係上損をいたしますので、一層値切りまして、自分の身を守るというようなことから、結局日本人同士の競争を激甚にさせるという結果になりまして、輸出はもうからないし、またむしろ人件費がかか
つて損をするという実情で、実力のないことと相まちまして、勢い商売は投機的にな
つて来るというのが現状でございます。ですから日本品は安くて品物がいいけれ
ども、危険だから取扱うのはいやだというようなわけで、どうしても輸出組合をつくらなければならぬということを盛んに叫びまして、米国のウエツブ・ポメリン法というのをたてにとりまして、その当時スキヤツプの
意思にさから
つても、大いにそれを主張したのでございます。
これが講和
会議以前の実態でございましたが、朝鮮事変は世界と一緒に日本もその渦中に巻き込みまして、物価は非常に高くなりますし、それで物価の体系をこわしてしま
つたというような状態でございます。その後特需がありまして非常に甘やかされた
関係上、日本経済は世界経済の大勢から
ほんとうにおいてけぼりを食
つたというのが現状でございます。
それで講和後に輸出組合はできましたけれ
ども、実際は実体がないにもかかわらず、陰のスキヤツプの姿におびえまして、公正取引
委員会にも気がねをいたしましてできたのが、現在の輸出組合法の実態なんであります。
従つてここに改正されることは、まことに時宜を得たことでありまして、むしろ遅過ぎたという感じがする次第でございます。世界の大勢は
先ほど申しましたような状態でございますので、まことに百鬼夜行のところまで参
つておるのでありますけれ
ども、ドル不足は、依然としてかんじんの米国が考え直してくれない限りは、ますます深刻にな
つて参ることは明らかでございます。米国の軍拡のスロー・ダウンから、米国の景気もすでに頂上に達しておることは明らかでありますし、
従つて米国の景気が悪くなれば、これがスターリング・エリアの貿易には十倍に響き、日本に対しては二十倍近く響くことは、これはもう過去の統計で明らかなところでありますので、今のようにいよいよ特需がたよりにならないような状態にな
つて参りますときには、どうしても輸出組合法のようなものをつくりまして——無防衛の裸で行きましては行き詰ま
つてしまいます。現に日本の物価が非常に高いということと相ま
つて、
ほんとうに貿易は行き詰ま
つたような状態にな
つております。ここで法文が大改正されまして、一度にたなこころを返すようによくなることは常識上考えられませんけれ
ども、現在日本
政府は輸出第一主義ということをおつしや
つておられまして、強力な手がこれから後にどしどし打
つていただけると思いますので、これがまず第一の手というふうに感じられまして、この改正案に対して有効に活用して参るようにしていただきたい、こう思う次第でございます。輸出組合ができますについては、組合員にこの組合に入
つてよか
つたという感じを抱かせることが一番大事ではないかと思います。金はかかるし組合員ばつかり取締りがやかましく言われ、かつアウトサイダーに、入
つてない方がよほど楽だというような感じを抱かせるようなことでは、むしろ組合がない方がよほどよいわけでありまして、これは組合の幹部のいかんにもよりますけれ
ども、根本はこの大本であるところの輸出組合法の精神がこれに合致しておるということによるのではないかと思うのであります。その点で本改正案を拝見いたしますと、非常にこまかいところまでも行き届いて注意されておりますことに対しては、私は非常に敬服いたしております。しかしどこに気がねなさ
つたか知りませんが、法文が非常にまわりくどくて難解で、しろうとには読めないという感じがいたします。
ほんとうのしろうとばかり寄りました組合員が、だれが読んでもわかりやすいように簡単に書いていただきたいと思
つております。
それからアウトサイダーに対する押えがどうもきいておらぬような感じがいたします。特に外商に対して妙な気がねをしておられるように思う点は、非常に残念に思います。もともと外商が日本に来て商売する以上は、輸出組合べ入
つたらいいじやないか、それをアウトサイダーに残
つてお
つてだだをこねるということは、まことにけしからぬ次第だと思います。こんなようなところに属領気分が残
つておると悪口を言われる原因があるのではないかと思われます。独立した日本、かつ貿易が独立独歩でありますごとについて気がねなしに大道を闊歩して進んでいただくというように、私たちは希望する次第でございます。
次にこの組合法もともと野放し自由経済を多少とも制御するということが精神でございますけれ
ども、とかくこれが統制に走り過ぎないようにしていただきたいということを希望するのであります。但し外国が違
つた政策をとり、またその競争国が違
つた貿易政策をと
つております以上は、ときには当方も一本にな
つてぶつか
つて行かなければならぬという点もございますので、この点も十分この法案に織り込まれておりますことは、まことに時宜に適した改正案だと存じます。これがなお内地のメーカーとも協定の道を開いたことは実現を期する点において万全の策としてけつこうだと存じますが、メーカーが
先ほどお話がございました不況カルテルのように進むおそれはないと思いますし、また同時にこの点は十分注意されて作成されておりますから、杞憂にならんことを希望する次第であります。輸出組合が初め組織されましたときに、濫立しまして、この負担が全部輸出
業者にかかる、ただでさえ存立に苦しんでおる輸出
業者にこの負担がかかるようでは容易なことではないとおそれておりましたが、ただいま四十組合見当にとどめられたことは、これならば何とかや
つて行けるだろうと思います。ここにこの数までにとどめられましたところの尽力に対して深く感謝をいたします。しかし輸出組合というものはこの上にまた負担がかかることでございますから、輸出組合の組織以上に数を圧縮していただくような方法で制限されることを希望いたします。
なおここに問題の起るのは地域別組合であります。これは
先ほど申しました
通り、いろいろな商売が非常に個々に違
つて参りますから、地域別組合もできやすいと思いますが、これはなるべく下部の組合の形においてしていただくように今から十分御
研究くださ
つて対策を立てていただきたい、こう存ずる次第でございます。この組合とは
意味が違いますけれ
ども、前にも申し上げました
通り、輸出組合の数はできるだけ縮小して行かなければなりませんし、また中には、独立してや
つて行くには経理上や
つて行けないという小さな組合も、みな類似法人の中に一括して加入しております。一応ひとしく一部会とな
つて組織しておりますけれ
ども、その数多い中の各部会が、各自業種がみな違
つております。また連絡もないのですから、勢いその部会が独立の方針で進んで行くようにしないとや
つて行けないのでございます。現在の法案は、組合の総会の議を経なければならぬということにな
つております。たとえて申しますと、自分が
関係いたします農産物輸出組合でございますが、たとえばゆり根のチエツク・プライスを変更するために、
全国の農産物である雑穀、青果物、蔬菜、
はつか、除虫菊、澱粉等の
業者を、
全国から集めて総会を開くということは、実際問題として、チエツク・プライスの変更くらいではできないのであります。そういうことをしましたら、時機を失しまして、どうにもならぬということがございますので、これはなるべくならば、
理事会の
決議をも
つて最後としてもらうように改正をさぜていただくことを希望するものでございます。これはこの法案ばかりに
関係したことではございませんが、この法案の施行に対して、とかくガツト加入に支障を来すおそれがあるというので、外商または他国の
政府に対して非常に思惑して、御遠慮がちのように見受けられますけれ
ども、戦後のドイツをごらんいただきますればよくわかりますが、実に思い切
つた貿易政策を大胆に実施しておりれます。こういう点を御検討いただきまして気がねなしに実行して、時機を失しないで、十分な施策を進めていただきたい。
通産省が主張いたしましても、大蔵省が反対する、ときには、大蔵省内の為替局及び主税局が賛成されましても、主計局が反対されるというので、まことに障害が多過ぎて、困るのです。これを実現するには、半年かかる、または一年かかるというようなことになりまして、でき上
つたときには時代がかわ
つてしま
つて、役に立になく
なつたという例がたくさんございます。ほとんど全部と言
つていいくついであります。今回のドイツ式の輸出奨励免税
制度でございますが、これも今問題にな
つておるのでございますが、これはドイツがすでに実行して効力を発生して、十分使い切
つて、もう用がなく
なつたというころにな
つて日小が実行する、これでは実際どうにもならぬというようなことでございますので、このようなことにな
つては、いかに日本人が勤勉であ
つても、世界のこういうような情勢におきましては、世界の落伍国とならなければならぬというような状態にあるわけであります。どうか行政を簡素化していただいて、慎重な検討はまことにけつこうでございますが、時機を失せず、時宜に週したところの力強い貿易政策を確立して、実行していただきたいというここを切望することを最後に付言いたしまして、御清聴を煩わしましたことを感謝いたします。