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1953-06-01 第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月一日(月曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 村上  勇君 理事 長谷川四郎君    理事 永井勝次郎君 理事 伊藤卯四郎君    理事 首藤 新八君       田中 龍夫君    土倉 宗明君       馬場 元治君    柳原 三郎君       山手 滿男君    齋木 重一君       中崎  敏君    山口シヅエ君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         通商産業政務次         官       古池 信三君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局次長) 小室 恒夫君         通商産業事務官 和田 正憲君         専  門  員 谷崎  明君     ————————————— 五月三十日  企業組合育成強化に関する請願(田中稔男君  紹介)(第一四八号)の審査を本委員会に付託  された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長選任の件  通商産業行政に関する件     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。本日は通商産業行政に関して審議を進めます。質疑の通告がありますから、順次これを許します。山手滿男
  3. 山手滿男

    山手委員 金曜日の日にもいろいろ申し上げたのでありますが、私ども貿易そのほかの問題について、通商産業省の政策に関係することが非常に危険な状態に瀕して来つつあるという事態であつて、一刻もゆるがせにできないということから、ここで大臣がんばつていただかなければたいへんなことになる、こういうことで申し上げておるわけであります。率直にお答えを願うことの方が、われわれも了承するし、いいことだと思うわけであります。まず私がお伺いをしたいのは、金曜日にも大臣経済外交を推進しなければいかぬということをおつしやつたのでありますが、経済外交を推進するということになると、実際的には通商協定の締結ということがすぐ問題になつて来ますが、先般からの日米通商協定、そのほか解散協定成立がいろいろあるのでありますが、あるいは日パ協定にいたしましても、こういうものについて、政府当局事務当局まかせでおやりになつておるのではないか。政治的配慮がどういうふうにあつたか、私どもは疑いたくなるのであります。日米通商協定、あるいはことに批判の対象になつておりまする日パ通商協定等について、大臣はあれでいいと思つておられるのかどうか、まずその点からお聞きしたいと思います。
  4. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。  国際情勢下における日本立場と申しまするものは、戦前われわれが先入的に考えておりました日本国力が非常に強かつたときとは違いまして、ようやく昨年四月二十八日に独立しまして、その後国力の非常に弱い、また経済も非常に脆弱であり、国内もまだよくおちついていない、こういう立場におります国といたしまして外国といろいろ協定をするということについては、外交折衝上非常に困難な点が多いと思います。御承知通り外交国力国力とのとつ組み合いでございますから、やはり何と申しましても国力というものがしつかりしなければ、外国との折衝にも円満を欠く点が多いと思います。そこで今までできましたいろいろな通商協定とか、貿易協定とかいうものにつきましても、私はむろん万全ではない、こう考えますけれども、しかし現段階においては、少くともわれわれはできる限りの努力をして、あそこまでこぎ着けた、こういうことになつておりますので、むろんこれからどんどんわれわれの方といたしましても、外交機関を総動員しまして、また内閣も一丸となつて、そしてできるだけ新販路拡張、それからまた貿易内容拡大ということに努めなればならぬ。こう考えて、政府もこれに対して一層今後努力したいと考えおります。
  5. 山手滿男

    山手委員 日パ協定のような非常に文句を言わなければいかぬような協定が結ばれておるし、ことに選挙管理内閣のような状態になつてから、事務当刊だけによつて日米の間にああいう重八な協定が結ばれておる。いわゆる事例的な協定であつて政治的な含みのない協定である。しかも政治的には非常は譲歩をした協定が結ばれておることについて、きわめて遺憾に私は思つております。外務省の方からも次官も局長もお見えでありまするから、通産大臣と両方からお答えを願いたいのでありまするが、日パ協定のごとき問題は、あれでいいと思つておられるのかどうか。生産財重要機械輸出に対して五箇年間の延払いを認める、しかも五箇年間無利子で行くというふうな協定を結んでおつて、単に今大臣お話のような、日本パキスタンとの間の国力の相違によつてこういうふうなものを押しつけられたということは当らない。しかも皆さん御承知のように、パキスタンは私どもの方がむしろ非常に恩恵を施し過ぎて来ているような状態の国であります。それが五年間も延払いを認める、しかも無利子で行く、こういうふうな協定事務当局によつて独断的に行われておる。政府当局はどのような態度でこれを無修正のままやりて行つていいと思つておるのかどうか、この際まずお尋ねをいたします。
  6. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申します。まず私が申しました国力ということは、日パに限られたわけではございません。とにかく日本立場としては、よほど慎重に、また相当に力を尽さなければはりませんけれども、十分なる外交上り力が振えぬ、これは外務大臣もおつしやることでございましようが、そういうことになつております。これが外交事情でございます。日。パ協定につきましては、これはむりん条件としては、欲を申せばもつともつといい条件ですべきものであろうと思いますけれども、しかし御承知通りに、貿易は国際的に非常に競争が激化して来ておる今日でございます。またこれは世界的の全体の情勢でございますが、とくにわれわれといたしましては、特需というものが、将来当分続く意いますけれども、もともと特需正常貿易に加味すべきものじやなくて、われわれとしましてはできるだけ特需を抜きにして、正常な貿易国際収支のバランスがとれるようにやつて行きたい、これが希望でございます。そこで今国際的に非常に競争が激化し、おるというときに、われわれは何でもいいから新販路をとにかく確保しておきたい、こういうことが一つ心の底に残つておりまして、できるならば十分なるりつぱな条件を備えてやりたいのでございますが、それでいつまでも待つて砦と、いろいろな国内産業もしくは国際競争の関係などもありまして、貿易、ことに輸出貿易条件としましては非常に不利な立場になるのでありますから、いろいろ勘安しまして、できるだけ販路拡張というものに万全を尽したい、こういうことでございます。お説のようにわれわれは十分満足しておるわけではございません。現段階日本輸出貿易を振興して行かなければならぬという至上命令のもとには、ある程度まで妥協をしなければならぬ、こういうことになります。
  7. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 パキスタンとの協定——パキスタンは御承知通り、過去数箇年間私の方の非常によいお得意先でございまして、去年もそうでございますが、今年も向うは非常に食糧事情が悪化いたしまして、食糧を買わなければいけないということになりまして、今までも日本の方から綿布を非常に買つてくれていたのでありますけれども、今年は綿布は初めは一ヤールもいらない、このくらい困つて来たという状況をるるとして述べまして、まさにその通りなのであります。従つて金がない、そこへもつて来て各国とも延払いを非常にやつておる。パキスタンも今後とも日本とは貿易を非常に伸ばしたいのでありますけれども、何しろ外貨事情が非常に悪化いたしまして、そこへもつて来て食糧を買わなければならぬということから、各国がやつておりますように、延払いをやつてもらわないと買えないのだ。しかもその条件でなければ政府としては許可がおろせないという状態であるということでございます。各国がやつておるということで、私の方も機械延払いということを認めたのでございます。但しこれは原則的にそういうことになつたのでありまして、絶対にそれでなければならないというわけではないのでありまして、一々のケースにあたりましては、それの必要がない場合には排除するということにしたわけであります。
  8. 山手滿男

    山手委員 外務省の方からの御説明は、それは逆であります。こういう生産財その他に五箇年間の延払いを認めたことによつて日パ協定影響というものが全スターリング地域における協定にも波及するおそれもある。どうしてもパキスタンが現在の状況から今すぐ払えないのであるならば、例外的に延払いを認めるように協定をしたならいいけれども、原則的に延払いであつて、必ずしも延払いをしないでもいいというふうな協定ではいけないのであります。これは非常な影響力を持つておる。しかも機械のようなものは、五箇年間も延払いを認めるというと、その間にクレームがつく。クレームがついて支払い問題に大きなしこりを残すことは事実であります。しかも日本から従来たくさん行つてつた繊維機械なんかのごときものについても、全部延払いを要求されるというふうな状態になると、しかも日本のメーカーは高金利の融資を受けて、こういう機械輸出しておる。これの救済通産大臣はどうするのか。これは通産大臣が腹をきめ、大蔵大臣も十分そういう面の救済を考慮に入れてでなければ、こういう協定事務当局や何かがかつてに結べないはずなんだ。しかもこれをやつておるのでありますから、私どもはこういう協定を軽々には了承することはできない。ことに。パキスタンに対しては非常に割高の原綿を買いつけるというのは、私ども雑綿買付については賛意を表しておるのでありますが、こういう片一方において非常に不利な日本の受取り勘定の状態をつくりながら、向うからは義務的に六十万俵ないし六十五万俵というような慶大な原綿買付を約束しているように思う。これは向う輸入すれば、これに応じて日本が買いつけるというような弾力性ある強力な協定であるならば、これは私どもとしても何をか言わんやでありますが、こういう日本だけは義務的にそれを受取るような印象を向うに与えておきながら、こつちが受取るものについては、五箇年間も無利息の延払いというふうな非常識、けたはずれ——現在の日本の国情では、そんな貿易をやると、これは各国貿易影響して来る。日本アメリカ協定においても議論しなければならぬ問題もいろいろ多いのでございますが、私はこういう日パ協定のごとき問題は、将来に悪影響を残すものであると思うのでありますが、通産大臣はどういうふうにお考えか、この点御説明願いたい。
  9. 岡野清豪

    岡野国務大臣 先ほども申し上げましたように、各国貿易の激化を来しおるときに、われわれとしては少くともある商権を確保しておかなければならないことは必要だと思います。それから金利とかなんとかの問題でございますが、これは商売金利も織り込んで取引をするというようなところもございますので、その辺のところはいわゆる商業上の扱いにまかしておいたらいいと思つております。  それから延払いの点でございますが、これは私も実はまだ研究しておりませんけれども、今後東南アジアに対してプラント輸出なんかしますときには、どうしても一時には払えないということでございまして、今後やはり延払い、何年賦とかいうことをしなければ品物が売れないような情勢じやないかと思つております。これは私の見通しでございます。そこで私どもといたしましては、買う力がないところに物を売ることについては、いやそんな不利な条件では困るといつて商権を捨ててしまうか、もしくは何か向うの力のつくようにしてもらうことを促進し、同時に向うが買えるようになる。しかしわれわれの方でも売りたいのだから、それを売つて行くということで、将来東南アジアに対する大きな施設とかなんとかにつきましては、どうしても延払いを実行しなければならぬ情勢になるのじやないかと思います。その意味におきまして、今まで日本金融機関としての輸出入銀行が短期の流動資金はやり得るのでございますけれども、しかしそういう場合に即して、できるだけ商人並びに生産者の活動のし得るようにと思いまして、先般、たしか昨年の前国会だつたと思いますが、輸出入銀行の法律を一部改正しまして、長期投資ができるようにやりまして、輸出入銀行から長期の金を出してそういう欠陥を補つてやりたい、こういうふうなことも考えております。私まだ十分なる検討はいたしておりませんけれども、大体われわれがコマ—シヤル・ベースによつて貿易ができるというのには、やはり国の面子もありましようし、またいろいろ稀な点もありましようし、またいろいろなこと獲かの方にも累を及ぼすとか、いろいろな条件もございましようが、そんなことを総合勘案しましてまずとらんとする方策は、輸出貿易第一主義であり、その輸出をするためには、できるだけ販路を確保しておかなければならぬ。しかも今のヨーロツパあたり情勢を見ますと、うんとコストを引下げて、できるだけ商権を確保したいというような競争的の商売をして来る傾向がずつと現われておりますから、これに対して、われわれとしては幾分の不利は忍んでも、できるだけ早く手を打つて、そうして各地方に国の商権の地盤をつくつておきたい、こういうように私は考えております。
  10. 山手滿男

    山手委員 大臣はちよつと混同しておられますが、プラント輸出等のごときものに対して延払いをするということならば、それは何もわれわれは異存はないのですが、パキスタンに対する機械輸出の非常に大きな部分を占めておる繊維機械のようなものは、わずか二月、長くて三月くらいで皆取引が完了するものである。そういうものにまで延払いが蔓延をして行つて、二月くらいで取引が済んでおるのに五箇年間に金を決済してもらうなどというようなことは非常識きわまることであつて、そういう問題を私は通産省や外務省事務当局が一律にきめておられると、今まで正常貿易でできるものまでもできなくなるような零囲気が出て来やせぬかと思う。かえつて日本と。パキスタンとの間に二箇月くらいで決済のつくものを、五箇年間もあとになつて金を払えと言つても、そのときは機械がいたんでしまつてつていけなくなる。それで金を払えというようなことであるならば、かえつて感情を悪くするのであつて、そういう譲歩の仕方では私どもはとうてい日本貿易の伸張はできないということを言つておるのであります。この問題はこまかくなりますから先に行つて議論することにいたします。  先般来岡野大臣が非常な勇気をもつて言明をしておられたと思うのでありますが、中共との貿易についていろいろ予算委員会においても説明が加えられております。吉田総理大臣岡野さんの抱負との間には相当まだ隔たりがあるのじやないかと思われます。先般来ダレス国務長官言明などというものも新聞紙上に伝えられておりますが、こういうものを勘案されて、通産大臣はどういう決意を持つておられるのか、あらためてこの委員会説明をお願いします。
  11. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。それはあくまで新聞紙のことでありまして、私自身の考えといたしましては、何も総理との間に思想の間隔があるわけではない。まず前提といたしまして一翼知通りにわれわれは国連協力の線に沿つて国際条約並びに国際信義というものを尊重する方針で来ておるのであります。それは総理と私はむろん一致しておる。ただしかしその前提というものが抜けて私のあとの分だけが大きく取扱われておるということでそういう誤解が起きたと思いますが、私はいつも申し上げますように、輸出貿易第一主義で行かなければ日本の国が立たないのだという鉄則がここに打立てられますならば、私はあんなところは大した伸びはないのだと思つておりますけれども、しかし私は銀行家でありますから、ちりも積れば山となる、何でも少しのことでも集めて行つて商売ができるならば、輸出ができるならば、その輸出をやつて確保して、またでき得る限りそれを進展させて、それがたとい東南アジアとか、アメリカとか、スターリング・ブロックとかいう方面とは比較にならないといたしましても、小額でもかき寄せて、やはり輸出貿易の増大に寄与していきたい、こういうことで私は一文惜しみでもしてこの輸出貿易第一主義というものを実行して行きたい、こういう意味でございます。そこで私がああいう考えを起しましたのは、前提といたしまして、これは新聞に書いてくれないから総理と食い違いがあつた国連協力並びに国際信義を決して阻害しない。それは尊重して行く。同時に各国もやつておることでございますから、中共との貿易ができ、また現に日本でも二十七年に六十一万ドルの輸出ができておるというならば、これをうんとふやして行く、うんとふやせないことは私は決して実際に考えておりません。しかしできるだけこれをふやすように努力するということで考えておりました矢先に、六十一万ドル一年間にやつと輸出ができたにかかわらず、戦略物資緩和というようなことをいたしました結果として、この一月——三月には二百二十万ドルに増しておる。そういたしますと、一年間に六十一万ドル、三箇月で二百二十万ドル輸出ができたというこのことは、やはり戦略物資の大幅の緩和ということは望み薄でございましようが、われわれとしましてはできるだけ努力しましてその範囲を縮めて、そして中共に対する貿易が幾らかでも、たとい十万ドルでも二十万ドルでもふえるということはやはりちりも積ればでありますから、それを催して行きたいこういうのが私の考え方でございます。
  12. 山手滿男

    山手委員 大臣決意としてはよくわかります。しかし、現在の状態から抜け出して少しでも中共貿易拡大して行くということに持つて行こうとするならば、それにはそれ相当の手が打たれなければ拡大はできないわけであります。現在のところにとどまつてつて、ただ口先だけで言つても、中共貿易拡大はできないわけであります。そういたしますと、先般も開演炭輸入を見た場合に、いろいろこつち側からいえば、苦情を言わなければならぬような事態もあつたというようなことであるし、決済の仕方その他配船、いろいろな面で露はあるわけでありますが、こういう隘路を積極的に打開するために、たとえて言えば、業者側も少し旅券をもらつて中共に入つて行くというようなこと、あるいは調査団というふうなものが中共に行ということ、先般も中共の方から中日貿易促進議員連盟の方に来ておる招請状なんかについても、政府がこの際、政治政治商売商売というふうなことで積極的な手を打つて行くというふうなお考えであるかどうか、その点明らかにしていただきたいと思います。
  13. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の今考えておる構想といたしましては、われわれがいろいろ自由民主主義国の間で話合いをしまして、いわゆる戦略物資と称するものの制限を緩和して行く、これが私の今考えておることであります。それからむろん商売をして行きますのには、東南アジアあたりがそうだと思いますが、使節団を出すとか、向う通商代表をこちらへ受付けるとかいうようなことは、これはむろん必要なことでありまして、やらなければならぬかもしれません。ただ問題は、いわゆる政治外交の面でございますが、政治外交の面は、私の独断では考えられないことでありまして、これは外務大臣もしくは閣内でいろいろ相談いたしまして、それに対する適当な考え方をまとめたいと思つております。その段階までは私就任早々行つておりませんことを御了承願いたいと思います。
  14. 山手滿男

    山手委員 私は大臣がおつしやつておられることと、アメリカ政府言つていることとは少し符合している点もあつて、あるいはココム会議でわれわれが言つておる程度以上の秘密のとりきめがされたのじやないかというふうなものがあります。ココム会議の模様については、解散前の委員会黄田さんを相当とつちめてお聞きしたわけでありますが、結論らしい結論は結局御説明がなかつた。これは秘密の約束であるからというようなことで、秘密を守る建前上というふうなことで、いろいろあつたわけでありますが、私は何もそういうことについて躊躇される必要はないので、ハリのリストと東京のリストとどういうふうに持つて行くような話合いになつたのか、片鱗でもよろしいですから、この際もう一度解明しておいていただきたい。
  15. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私もそれはそこまで十分まだ研究しておりませんので、いずれ研究した後に御報告申し上げたいと思います。問題はいろいろございましよう。先ほどから申し上げておりますように、戦略物資緩和ということについていろいろ手を打つということもありますが、その点はまだ手を尽しておりませんし、事情もよく聞いておりませんので、いずれまたもう少し研究しました上で御答弁でき得ると思います。
  16. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 ある国々に対しまして、いわゆる自由国家群の方から物を出す、あるいは出さないということに関しましてでこぼこがございます。これは御承知通りでございます。アメリカカナダ等は何も買わないという主義、主張をしておりますし、またそれを実行しておりますが、他方日本よりも少しやわらかい政策を実行している国もある。そこで足並をそろえた方がいいんじやないかということでパリに非公式の会合を持ちまして、昨年の八月か九月でございましたか、日本もそのときから参加いたしまして、そこで協議をいたしておる次第でございます。つまり目的は特殊の国々に対する戦略物資の輸送をどういうふうにしたら効果的に調整できるかということを目的としておるのであります。それがパリで非公式に行われておりますところの委員会目的であります。
  17. 山手滿男

    山手委員 局長の話は何かさつぱりわかりませんが、ほかの方も御質問があろうと思いますから、中共貿易の問題はこれくらいにして、例のこの間の出光のイラン石油買付けでございますが、外貨資金割当について、私どもも特に石油外貨資金割当につい、は承知をいたしております。その資金割当は来月くらい割当てられると思うのですが、しかし、今度はそのときに輸入地の地名を表示をしてどこから買入れるかということを出させて資金割当てるというふうに割当の仕方をかえられるというお話であります。まあ、裁判やなんかでもああいうふうになつて行つたのですが、このイラン石油の問題については先例があつてイタリアはすでに同様なケースをくぐつて今日まで五へん、六ぺん、七へんと順次イラン石油を地中海の英国の基地のど真中を通うて引いて来ておる。アメリカ態度はむしろイランに非常に同情的であつて英国の行き過ぎをたしなめるような行き方をしている。イタリア政府自体イランから石油を買入れるということは明らかに承知の上で外貨資金をどんどん割当て、今言いましたように六ぺん、七へんとずつと買付けタンカーを仕向けて出動させております。このことは非常に興味のあることでもあるし、どうなることであるかというふうに考えておりますが、英国政府は反面に、一旦イラン石油受取つたタンカーについては、再び英国品を積ませないというふうな作意的な手で出て来る、あるいはイラン石油を積みとつた日章丸というふうなものが英国の港に入つた場合は、英国の法律に従つて、どろぼうした船であるというので抑留をする、仮差押えをするような法的手続をするのではなかろうか。さつきのお話のように、日本英国との貿易関係を全面的に悪化さすようなことが起きては困るのでありますが、すでにイタリアあたり製油施設を持つておる国は、アメリカは別ですが、そういう手に出ておるのですが、この点について大臣はどうお考えか。単にしやくし定規的に、もうイラン石油に対しては割当てない、こういうことであるのかどうか、御説明を願いたい。
  18. 岡野清豪

    岡野国務大臣 今お説のように、イギリスはイラン石油というものに対して非常な関心を持つております。これは何年間か続いておる紛争の結果と思い事。そこ誇れくといたしましては、むろん先ほど申し上げましたように、有利な貿易というものは、どんなものでも日本産業のためにこれを確保して行きたいというのが一つの信念であります。ただ問題は、イギリスが東洋において、ことに、日本がこれから貿易を伸ばして行こうというのに対して、イギリスとは非常に関係が深いものですから、もし感情によつて日本貿易に対して、ただ百万ドルくらいの石油を買つたということだけで、ほかの大きな商権を阻害されるという結果が起きちやいかぬという心配を持つております。これはりくつから申しますれば、そんなことはないのじやないかと仰せになるかもしれませんが、しかし問題といたしましては、いつも申し上げますように、世の中というものは、りくつ三分で感情七分のものでありますから、もし感情が非常に激化するということになりますと、商業上の不利益をこうむらなければならないとも限りません。ことに現にあの日章丸の問題からイギリスは相当神経をとがらせておるように私は感じております。そこで私どもといたしましては、まあ当分の間は石油に対してはあまり問題を起さない方が、日英間にも、また東洋におけるイギリス、日本との協調した貿易という点においてもいいんじやないかということもありまして、しばらく推移を見たいとは思いますが、今後外貨の割当とか何とかいう場合には、そのときに起きました情勢によつてあらためて判断をしたいと思います。
  19. 山手滿男

    山手委員 今の問題は動力源政策をどういうふうに持つて行くか、どういう決意をするかということと非常に関連があります。特に日本の石炭や何かの、今困つておる実情、重油転換の問題なんかとも関係があるし、特に日本が将来どういうふうにこの石油の問題を処理して行くか、こういうことと関係があるのでありますが、私十分熟考をしてもらいたいと思います。  石油の問題に関連して先般改進党の方から例の四日市の海軍燃料廠の問題について政府に申入れをいたしておりまして、官房長官に私も参つて申入れいたして参りました。今まで八年間も四日市の海軍燃料廠が風雨にさらされて腐りつつある状態、これは一旦高橋大臣のときに決定を見たのでありまするが、この決定が白紙還元というふうなことで、御破算になつてしまつておる。しかもあの場合の三菱石油に払い下げるという線の裏には、厖大な投資を擁してこれを押えんとするところの英国資本の背景がこれにあつて、われわれはこういうものには断然反対の立場に立つものであるということも言つてつたのでありますが、なぜかあの際政府によつて白紙還元という事態に立ち至りました。改進党としては、あの問題だけでなしに遊休施設の早期活用という問題について非常な関心を持つて特別委員会をつくろう1国会内において遊休国有財産の即時活用のために特別委員会をつくろうじやないかという考えまで出ておるわけであります。特に海軍燃料廠の問題は非常に重要であるし、私個人としても、選挙区にあつて非常な関心を持つてつたのでありますが、何のためか、アメリカ資本やイギリス資本に牽制されておるためであるか、あるいは多くの業者の競願によつて政府がはさみ撃ちにあつているためであるか、われわれは了解に苦しむのでありますが、せつかくのこういう厖大な当時の建設費を今の金に換算するならば、一千億円以上の国費を投入した、国税を投入したあの施設を放置して、あれ考抜きにして周辺に、全国各地に多くの石油精製施設なんかの新設を認めつつあるということは、いわゆる二重投資もはなはだしいものであつて、きわめて遺憾に思つております。先般政府に申入れをいたしました、強硬申入れを官房長官にいたしましたのは、即時これが活用をすべし、これ以上の遷延は許されぬ。国会対策委員会で決定をいたしました線は、かくのごとき四日市燃料廠のような問題をいたずらに政府が業者の陳情なんかに左右されて放置をしておく状態1まあ、少くとも六月一ばいくらいで解決をしないということであるならば、通産大臣には誠意がないということであつて、通産省関係の法案は全部阻止すべしという結論である。そういうことはきわめて遺憾なことであります。これはだれが考えても、常識的に言つて七年も八年も野放しにして、赤さびにして、ああいう厖大な施設を放置しておくということは、許されるべき状態ではないのである。ここで何はさておき、通産大臣が断を下されるように、党の決定もあつて、ここで特に大臣に申し入れておきます。それについて大臣の御回答を期待するものでありますが、まずここでそれについての態度をお聞きしておきたいと思います。
  20. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説しごくごもつともでございます。われわれといたしま、ても、早急にこれを解決して行きたい、こう考えております。ただ問題は、被占領下におきましては、思うようにものが運ばなかつた、それで自主的な考えを起したのが昨年の四月二十八日からでありますから、まあ七、八年もさらしておいたという事実については、あるいはそれはそうかもしれません。しかし私自身といたしましては、ああいうような、いわゆる国民の税によつてできた非常に厖大な資産のものが、その後寝かされておつて活用できぬということは、お説の通りでありまして、一日も早くこれを活用して行きたいと考えております。そういう点私今回当面の責任者になつたのでありますから、できるだけ御趣旨を尊重しまして、早いところ解決したいと存じております。ただお願いしたいことは、その問題が解決されなければ、通産省に関する法律は全部阻止するということは、これはひとつ御勘弁を願いたい、その点がうまく行きましても、あるいはまずいことが起きましても、ほかの法案がいいとなつたら、やはり御賛成を願えるものと御期待を申し上げますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  21. 大西禎夫

    大西委員長 ちよつと山手君に申し上げますが、大臣が宮中に参りたいと申しておりますので、退席いたしたいと申しておりますが、政府委員にお尋ねになりますか。
  22. 山手滿男

    山手委員 それでは一つだけ簡単に。今の大臣の御答弁でありますが、それはわれわれの考えと非常に違うのであります。そこに官房長がお見えでありますが、事務的にはあすの日にでも処理できる段階に来ている。すべて官房長のお話を聞いても、事務的にはいつでも解決できますという状態なのであります。ところか自由党内閣の内部の事情によつてこれが放置をされている。そういうふうなことで党内のいろいろなつながり、特定の商社なり、特定の資本とのひもつきなどによつてこういう問題が処理されるような政府態度であつては、われわれはそういうふうな態度政府が法案なんかいろいろやつて来ても、それはもう前提条件が違つておるのだ、こういう考えである。従つてわれわれの方だけが政局の安定のために協力せよと言われることは間違いであつて、自由党自体も、政府自体も謙虚な気持でおりて来て、われわれの主張に耳をかして協力できるような態勢をつくつてください、こういうことであります。いろいろありますが、私はこれで終ります。
  23. 大西禎夫

    大西委員長 それでは午前中の会議はこの程度にいたしまして一午後一時より開会いたします。  暫時休憩いたします。     午前十一時四十分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  24. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  先ほど山手委員の質疑に関し、黄田政府委員より補足説明をいたしたい旨の申出がありますから、この際これを許します。黄田局長
  25. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 けさ山手委員からパキスタンとの貿易の問題に関しまして、年賦払いの問題で御質問がございました。そのことに関しまして、ちよつと補足いたしたいのでございます。  このたびつくりました。パキスタンとの協定におきましては、日本側からパキスタンに出しますものに関しまして、日本のみにライセンスを与える、一般のライセンスと区別いたしまして、日本のみに与えるものという条項をつくつたのでございますが、それが機械に関しましては約六百万ポンドございます。問題になつております年賦払いと申しますのは、この六百万ポンドの機械輸入に関してでございまして、この六百万ポンドに関しましても、五箇年と申しますのは最大限五箇年で、五箇年以内でもむろんかまわないのでございます。そのほかに日本のみに与えるものでなくて、一般的に許可をする、そのうちには日本も含むのでございますけれども、その一般許可の中にはこれはキヤツシユで払うものもあるのでございまして、現に決済によつてライセンスを発給しているのでございます。それはどういうものかと申しますと、たとえば小規模の機械あるいは機械部分品等でございまして、価格がパキスタンの金で五十万ルピー以下のもの、大体これは五千万円くらいになるかとも思いますけれども、それ以下の資本財に限りまして、キヤツシユ・ベーシスによるライセンスもおろしておるのでございます。従つてこの年賦払いというものが全部ではないということを補足して申し上げます。
  26. 大西禎夫

    大西委員長 これより質疑に入ります。永井勝次郎君。
  27. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、現在日経連及び経団連等、経済界の一致した要望は、日本経済に対して長期の見通しを持ちたい、そのための長期計画の樹立が必要である、こういう要望があるわけでありますが、これに対して大臣は、日本経済長期の展望及び計画樹立に対してどのようなお考えを持つておられるか、これを伺いたい。
  28. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。経団連から出ておるものも一応は拝見しました。しかしこれについては通産省並びに経済審議庁でも内容の検討をいたしております。私といたしましては、各方面からいろいろな御意見を承ることはしごくお国のためにいいことだと思いますので、あらゆる角度からそういうものに対して検討して行きたいと思つております。ただ私はまだ御承知通り就任早々でございまして、掘り下げてこれをいかに国策に即応させるかという結論まで到達しておりませんので、ただいま所見を申し上げる段階には至つておりません。
  29. 永井勝次郎

    ○永井委員 私がお尋ねいたしたいと考えますのは、長期計画の内容、こういう点についてお尋ねするのではなくて、従来のようなやはり自由放任の経済にまかせるのか、あるいは一定の計画のもとに日本経済の自立をはかつて行くのか、あるいは計画的な内容を持つた経済の運営を考えて行くのか、その基本的な考え方についてお尋ねをいたすわけであります。
  30. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。自由奔放にすべてのことをやつて行くというのでは、こういうように物資が不足しており、同時に資源の少いわが国としては輸出貿易によつて国を立てて行くということはなかなかできないだろうと思います。ことに国際情勢がいくらこちらで自由主義的にいい安いものをつくつたところが、それが向う行つて決して売れるものでもなく、市場があるわけでもないのですから、やはりある程度の計画はむろん立てて、同時にその計画を遂行するためには、はなはだしく言えば、外交交渉によつて販路拡張を通産省と外務省とが一緒になつてやるということでございまして、私はいわゆる言葉が非常に強く聞えるとまた問題を起しますが、計画経済、何もかも国家が計画を立てて、その通りに一般の財界もしくは各方面がついて来い、こういうことに聞えるような計画経済では困りますが、しかし今の日本の置かれたところの国内資源の乏しいこと、外国から原材料を輸入してこれを輸出に向けなければならぬ、こういう一つの筋道がございまして同時に外国においてはこれを無条件に受入れてくれるわけではないというような世界情勢のもとにおきまして輸出を進展し、国内経済を安定して行くということに対しては、ある種の計画を持つてやらなければいかぬということは考えております。
  31. 永井勝次郎

    ○永井委員 計画を立つて、いろいろ外交的にもこういう問題と関連させてやつて行くという御答弁であると考えるのであります。そういたしますと、計画樹立の上におけるフアクターをどういうふうに考えておりますか。何もかも計画経済ではなしに、幾つか取上げ、それを柱にして計画を立つて行きたい、こういうような御答弁であつたと思うのであります。それについて日本経済の現在の現状分析に対する把握の仕方及び国際情勢の判断及びこれに立ち向う日本経済の自立をはかつて行く上におけるいろいろの諸問題、そういうことも大臣はどういうふうに考えておられるか、それをひとつ伺いたいと思います。
  32. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。日本経済は、とにかくわれわれ自由党といたしましては自由経済主義行つておるのでありますが、先ほど申しましたような情勢上ある程度の計画を持たなければならぬ。しかしその計画を立ててもしこれを実行するといたしますと、どうしても業者に対してある程度の制肘を加えなければならぬ、また統制もときには必要だと思います。その統制とか制約とかいうものはできるだけこれを緩和しましてそういうことのないようにする。しかしながらその計画を持つて行くにはどうしたらよいかと申しますれば、結局問題は輸出第一主義で私ども考えておりますので、その輸出貿易を進展さして行くのには最小限度においてどういう点に重点を置いて行くかということの軽重をはかつて、私どもとしては基幹産業に対してある程度の考慮を払い、またもしくは輸出のいろいろなことを考えるということにして行きたいと思います。私どもといたしましては非常な小範囲にその点は限つて行きたい、こう考えております。
  33. 永井勝次郎

    ○永井委員 計画樹立の焦点を基幹産業の安定、こういうところに焦点を合せて行くのか、国民経済全体の安定、こういうところに焦点を合せて行くのか。ただいまの話でありますと、重要なる産業に対して規制をし、あるいは統制をするというようなことは避けたい、自由主義経済の原則を守りながら計画を立つて行くということになると、一験どういう計画がそれならばそういう範疇に入るのであるか、ひとつそれを具体的にお示し願いたいと思います。
  34. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。国民経済の自立安定、生活水準の向上をはかりたいためにする一つの方策でございますから、もちろん第一に望むべきことは、国民生活の水準を高くし、同時に生活を安定して行く。そういう経済を打立てて行くための手段でありますから、これはどちらが重いかとおつしやれば——もしほかによい方法があれば、何もそういうようなことをしなくともいいのですが、私が先ほど申し上げましたように、今日本の置かれております立場から申しますれば、輸出が一番大事なことである。それだから輸出に便利なようにある程度のいろいろな計画を立てて行きたい、こういうことであります。具体的には私はまだ十分検討しておりません。しかし今まで問題となつております点は、いわゆる石炭がどうであるとか、鉄鋼がどうであるとかいうふうなことは個々別々にいろいろあります。これはまだ細目を検討しておりませんが、方針といたしましては、ただいま申しましたように、自立経済の確立、すなわち国民生活の安定、生活水準の向上という目的のために、原料不足のものの入手、またそれを入れてつくつて外国に売ることがときないと困るので、その市場の獲得という方面にいろいろ策を練つて行きたい、こう考えております。
  35. 永井勝次郎

    ○永井委員 国民生活の水準を引上げながら輸出を増大して行く、こういうお話でありますが、それならば対米関係はどういうふうに考えるのか、中共関係はどういうふうに考えるのか、あるいは東南アジアその他とのいろいろな経済関係はどういうふうに考え、また武器の生産と平和産業、そういうものとのつなぎ合せをどういうふうに大臣考えておられるか、これをひとつ総括的にお伺いをいたしたいと思います。
  36. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。総括的に具体的にこうする、ああするということを申し述べることは、まだ頭もちやんと固まつておりませんし、非常に広汎なことになります。でありますが、しかしアメリカとの関係ということから考えて行きますと、今のところやはりアメリカとの間に非常に親密な連携がなければ、日本経済は立つて行かぬということが一つの重要なポイントでございましよう。そこでアメリカとの関係は今まで通りやはり親密にやつて行く。また東南アジアは先日も申し上げましたように、戦後における貿易の比重というものは非常に強くなりまして、輸出総額の約四割近く、三割六分と出ておりますが、私数字はあまり詳しくございませんが、輸出が総輸出額の三割六分に当るというような点におきましては、東南アジアというもの今後ますます日本にとつて比重を加えて来る。またこれを促進しなければならぬ。また促進し得る余地がたくさんあると考えております。東南アジア方面にも——にもではなくて東南アジア方面には非常に力を入れたいと考えております。それから中共の問題でございます。これは非常に誤解がございまして、総理と私との間の意見が食い違つておるということがいつも問題になつておりますが、これはちつとも違つておりません。ただ前提条件を私はしやべらない。総理前提条件だけ話しておるということから食い違いが起つておるかと思います。繰返して申し上げますれば、われわれは国際信義上国際条約は十分尊重して行く、同時に自由民主主義国家群の経済協力はこれはその通り促進して行くという一つの範疇があるのであります。同時に中共貿易はそう望めないのだということもその通りであります。しかし私が中共貿易を申しましたことは、そういう制約があるけれども、しかし輸出第一主義で行くならば、やはりわずかなものでもこれを進めて行くべきである。すなわち百万ドルでも三十万ドルでもとにかく輸出貿易に寄与するならばそれをやらなければならぬ、そういうように考えておりまして、今いろいろ構想を練つておるわけであります。
  37. 永井勝次郎

    ○永井委員 現在わが国経済の当面している困難な条件というものは、年々八億ドルに及ぶ輸入超過である。この輸入超過をどういうふうに埋めて行くか、たとえば輸出の増大によつてバランスをとつて行くということが可能であればたいへんけつこうでありますが、この穴埋めのために、八億急激に輸出を増大する諸条件がまだ整備してない。その見通しもなかなか困難である。しからばこの八億のアン・バランスをいかに処理しながら、国内経済の均衡をはかつて行くかというところに計画的ないろいろな措置が必要であり、自由放任にまかしておけない段階に追い込まれておる。自由党の自由経済というものが壁に行き詰まつて政策の転換をしなければならぬ段階に来ておることに問題があるとわれわれは考えるのであります。国民生活の切下げを行わないで八億の赤字を輸出の増大によつて措置して行く、穴埋めして行く、こういう措置を大臣はどういうふうにしてやれると考えておられるのか、それをひとつ具体的にはつきり伺いたいのであります。
  38. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。なるほど八億の特需によつて今の貿易はバランスしております。これはその通りの事実でございます。そこでそれにたよらずに正常貿易によつて国際収支を合して行きたいというのが、これは理想でございます。しかしどういう方策を講じたら八億の特需によるバランスの合せ方を一挙にすぐ解消してしまうことができるか。これは私は急には不可能だと思います。そこで特需の見通しといたしましては、私はそう急にこれがすぐなくなつて、非常な国際収支上困難を及ぼすということはなかろうと思いますが、だんだんに減つて行くということはこれはまた事実でございます。そこで私はその特需がありますうちにいろいろな手を施して輸入をなるべく防過し、同時に輸出を促進して行きたい、こう考えております。そうなりますれば——これは今責任をもつて申し上げるわけじやございませんけれども、私の感じますところでは、輸入に対してはある程度の抑制をしなければならぬと思います。と申しますことは、日本がこれだけ経済上苦しんでおるにかかわらず日本人が使つておるものは、ほかの経済上もつと有利な条件の国にも増して何か警務的の消費がされておるのじやないか、こう私は考えます。一昨年ロンドンから世界をまわつてみましたけれども日本人が食つたり飲んだり身につけたり何かするものについては、そういう方面の国より相当ぜいたくしておるように考えられます。もしそれが外国品であるならばこれはある程度防過しなければならぬと思います。そんなことで輸入はやはり重点主義でやりまして、日本に入りましたものは、加工するとか、変形するとかという形で一輸出貿易に非常に役立つというものをまず最初にあげて、輸入の外貨の割当をするということにしたいと思います。また輸出につきましては先ほど申し上げましたように、東南アジアに力を入れるということをまず第一に考えなければならぬ。これは効果の多いことだと思います。その意味におきまして今まで通産省におきましていろいろ考えております東南アジア貿易を、いかに伸張して行くかということは、いろいろな考え方もありましようが、二つにわかれまして、一つは外交交渉でできるだけいい条件で、その内容もときに応して拡大して、輸出がたくさんできるようにしたい。それから今度は通産省のいわゆる商業上の立場から申しますと、日本の品物があまり向うに認識されていない、また技術も認識されていない、こうういことがあるので、その技術の交流とか、技術の認識をさせるために、向うに技術相談施設を置くとか、また通商派遣団を考えるとか、いろいろなことを考えて、今まで考えておつたことをもつと検討して、輸出の促進を力強くやつて行けるように考えたいと思います。
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 国内生活のぜいたくの面の規制をしなければならぬということでありますが、議事どんどん輸入する、あるいはゴルフの用具が前年に比べて五倍も六倍もふえておる、あるいは料飲店その他における社用族の消費というものは非常に多い。こういうような面に対する規制ということは、これは当然しなければならないが、それは自由経済、自由放任の中において、そういう規制を一体どういう形でおやりになるのか。それからそういう問題を取上げてみると、ゴルフだ、高級車だ、飲食だ、こういうふうに科目は取上げることができますけれども、こういうものによつて使うところの消費の金額というものは、そう大きなものでない。八億の穴を埋める金額としてはそう大きなものでない。やはり輸入の面において大きくこの問題を穴埋めの方向に役立たせて行くためには、何と申しましても食糧と繊維関係の原料あるいは鉄鋼関係の原料の輸入、こういうようなものがある程度大きく取扱われなければ、輸入を減少して行くという条件にはなつて来ない。大臣は国民生活の犠牲をしないで、しかも自由経済の中で、たとえばこういう輸入の面だけ見まして、国民生活のぜいたくな面をどういうふうに削つて行くのか、それから金額的に見て大きな輸入のフアクターとなつておる食糧及び繊維関係、こういう輸入原料というようなものをどういうふうに措置されて行くのか、これを承りたいと思います。
  40. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。品は、金額にしては大したとはないというようなおぼしめしかどうか存じませんが、しかしながら国民精神に与える意気込みというものは私は相当な効果があると思います。またそれをいかに押えるかは、これは外貨の割当だと思いますが、そこまで事務的によく存じておりません。多分高級車とか香水とかいうようなものを輸入するときには、外貨の割当で何かで出るようになつていると思うのですが、これは事務当局から権威のある御答五をさせたいと思います。  それからもう一つ、お説の通りに、繊維関係とかまた食糧関係とか、そういうものに対する輸入外貨というものは、相当なものでございますから、これはむろん抜本塞源的に考えなければならぬ、この点におきましては、食糧増産の計画も農林省あたりで考えておるようでございますし、それから繊維関係でも、御承知通りにビニールは日本の原料だけでできるということを聞いておりまして、そういうものの増産計画をしておりますけれども先ほど申し上げましたように、急激にそれをきよう考えて、あす実行して、あさつてから効果が上るというようなことは、とうてい望めないことですから、やはりある程度の期間を置いて、そういう方向に進んで行かなければならぬと思つております。
  41. 永井勝次郎

    ○永井委員 たとえば八億の輸入超過に対する穴埋めをするため、その重要な部分を占めておる食糧の問題、繊維の問題こういうものに対処して行かなければ、繊維関係においては原料輸入でなくして、御説のようにアミラン関係は石炭酸が必要でありますから、これは日本の立地条件として不適当だ。ビニロンの方の合成繊維にとつてかわつて漸次そういう方面の助長して行かなければならない。あるいは食糧の面においては輸入食糧を減じて自給度を高めて行かなければならない。こういう一つの関連した経済活動の中で問題を計画的にやらないで、どうして自由放任の経済の中でこういう問題を発展さして行くのか、この問題を承りたいのであります。基幹産業に補助金を出すということだけで問題は解決するのではなくして、国民生活から、国内の関連産業から、国内におけるいろいろな農業生産まで、これは関連するところが非常に大きい。そういう問題を過不足なく合理的に、しかも時間的にもそういう生産に見合うような態勢を整えて、そういう計画性を持たないで、どうして自由経済の中でこういう問題の措置が効果的に上げて行くことができるのか、できるとすればこういう理由に基いてできるのだという具体的な表示をひとつしてもらいたいと思います。
  42. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほど申し上げましたようにむろんそういうような計画を立てなければならない。そこで食糧の増産とか、もしくは繊維製品を日本内地における原料によつてこれをつくつて行くとかいう計画もいろいろ進めております。そういうことが計画されましても、それが翌年すぐ効果が上るとかいうことにはならないので、先ほど申し上げましたように、特需が続く間にできるだけ早くそういう総合的の工作をしまして、一日も早くそういうふうに輸入を減し、輸出を増進して行きたい、こう考えますが、計画は一年とか何とかいうことでなくて、四、五年はかかることと思います。
  43. 永井勝次郎

    ○永井委員 私が大臣にお尋ねしておるのは、何も二十八年度の予算の中でこういう問題を処理するとかいうような時間的なことを言つておるのではない。最初お話を申し上げた通り長期の計画経済を樹立しなければもちろんできない。たとえば食糧の問題にいたしましても、土地改良、種子改良、家畜導入あるいは農機具の改良等各般の問題が総合的に食糧増産を盛り上げて来るのであつて、肥料をこれだけやつたからすぐ増産ができるというそういう速効的なものではない。日本経済の現状を分析してつかめば、いろいろ困難な問題がある。しかもそういう速効的なものはもちろんないし、また五年なり十年の長期の計画の中においても、なかなか容易なものではない。それほど困難な問題であるだけに計画的な政策を樹立し一つ一つ積み上げて、そうして可能な目標へ到達するように努力する。この努力の集積こそが日本経済を樹立させるところの唯一の道であつて、小手先でごまかしてできるようなそういう条件はどこにもないと思うのであります。そういうことで大臣はやはり自由経済でそういう目標に到達できるとお考えになるのかどうか。計画というものは総合的なものでなければならない。何も従来の官僚の統制が唯一の形式であり、唯一の運用の道ではないのであつて、資本主義経済の中において立てる計画は、資本の蓄積、資本に奉仕させて——大衆の生活を犠牲にして少数の資本の利益を安定させる、こういう方向に行くからそこに反撃が起こり、いろいろ条件が悪化して来るのであつて、もつと角度をかえて、全体の国民生活の安定というところに焦点を合わせる。それにはどうしたらいいかということになれば、現在こういうふうに国民が苦しんでおる中においても、ゴルフをやつて遊んでおる者もある、あるいは高級車をかつてどんどん乗りまわして遊んでおる者もある、あるいは社用族が料理店の建物を建てさせ、毎日の経営が成り立つところの主要な条件となつておるが、こういうものを削つて、そして財政、経済産業投資へこういうものを振向けさせて行く。あるいはそういうものからそれに適当したところの税金を取上げるとか、そういう根本的な切りかえをしないで、そしてもうけほうだいにさしておく。一面国民には生活上の犠牲をさせて、中小企業は倒産前夜にある。こういう条件を放任しておいて、そう急にはできないのだからゆつくりやつて行くんだ。自由党は自由経済なんだから、計画を立てていろいろやるということは政策の転換になるから、自由経済の範囲でなしくずしに計画を立ててぼつぼつやるのだ、こういうことになれば1手術には手術する時期がある。盲腸なんか、腐つて腹の中にうみがたまつてしまつたらもうちよつとやそつとの手術では治療することはできない。日本経済の持つておるいろいろな病気は、幾らかドルの資金も持つておる、ポンドの資金も持つておる、手術すれば立ち上れるという手術可能な体力を今持つておる。こういう条件のときにこそ、急速にそういう手術を断行するのでなければ一日本は自然衰弱で、手術もできなければ何もできない、野たれ死にしてしまうことになる。これは自由党の政策のために国民が犠牲になるということは、われわれは断固できないわけであります。そういうことに対して、大臣はもう自由経済ではだめなんだとお考えになるのか、やはり自由経済でこういうものに十分対応できるのだとお考えになるのか、できるとしたならば、どういうわけでできるのだという根拠をひとつお示し願わなければ、ただ観念的な言葉だけの答弁ではわれわれは承服できない、かように考えるのであります。
  44. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げす。大分お話が根本に触れて来ましたが、自由主義をとるかとらぬか、捨てるか捨てぬか、自由主義を踏襲して行くかどうか、こういうことになると思いますが一とにかくわれわれといたしましては、自由主義経済というものは自由民主主義諸国間で一応繁栄を来しておるのでございますから、これはやはり堅持して行きたいと思います。しかしながら先ほど申し上げましたように、非常に不自由な情勢においてこの経済の危機を乗り切つて行かなければならぬということになりますと、これは方策を練らなければならないと思うのであります。先ほど盲腸のお話出ましたが、今これを自由主義的に申しますと、どこに出血が出てもかまわぬから、日本経済を安全にするためには、相当出血すればドラスティックなこともできるかもしれません。しかしそれがためにいわゆる血管が切れるとか、毛細管が切れるということになりますと、これはまた考えなければなりません。私といたしましては、今とにかく終戦後ここまで民生が安定して来ておつて、どうにかこうにかここでなつて来ておる。企業者を絶対につぶさないで、しかもますますその企業者が繁栄して行くという手をとりますには、ちようど盲腸を切つたり、腹の中を切つたり、血を出したりせずに罨法をしたり何かして、時日をかけて直して行く、それには相当の苦心もいるし、方法もいる。しかしただいまのところその方策としては相当いろいろと考えなければなりませんので、その方策を私はしきりに考えております。要は、今の危機を乗り切るためにドラスティックな政策行つて、そうして一部の業者、一部の方面の業種がつぶれるとか何とかいうことのないように、みんなそろつて繁栄して行けるような方向に経済を立て直して行きたいと考えますので、私は時間がかかる、こう申し上げている次第であります。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 産業の合理化は失業者を出さないで、全部が就職できて、そうして生活が切下げられないで繁栄して、今より生活が向上して行く、しかも輸出貿易が繁栄して、輸出輸入のバランスがとれて、そうして罨法しながら時をかけてやつて行けばそういうことができるという、たいへん天下泰平なおめでたい話ですが、そういうおめでたい方法というものがどういうところにあるのか、それを私は先ほどから具体的に聞いておるのです。手術すれば血が流れつばなしで、たいへんな出血ができるといいますけれども、手術には手術の方式があつて、止血管でちやんと血管をとめてやるのだし、手術には手術の合理的な、科学的な手術の方式をやればいい。診断を間違つて盲腸でもないものを手術したり、うんで行くのをまだまだまだうまないのだというような判断でうましてしまうという考えが非常におそろしいので、手術することが出血だという、そんなばかな話はないので、やはり科学的な基礎に立つて、ちやんとりつぱな手術はやれるのであります。経済の立て直しについてもそれぞれの時期というものがあつて、それがためには現在日本経済というものはどういう実態にあるのか、病気はどこにあるのかという明確な診断が必要である、その診断の上に立つて、これはあたためただけでよろしい、ペニシリンの注射でよろしい、あるいはこれはどうしても手術しなければならない、そういう方法がそこから出て来ると思う。手術をしなくても、今あなたの言われるように、日本経済はみんなが商売がつぶれないで、輸出貿易がバランスがとれて、そうして失業者も出ないで、価格のコストが引下げられて、国際市場においては、海外のいろいろな各国との市場における競争に打ち勝つて伸ばして行ける——こういうような条件があるのかないのか、私はそれをはつきりと承りたいのであります。抽象論ではなしに、そういう大臣のねらいというものはよくわかりますが、そのことと実情とは非常な違いがある。現在の日本経済というものをどういうふうに診断されているか。手術はまだしなくても、十分立て直しができるんだというお考えになられる根拠をひとつお示しを願いたい。
  46. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。失業者も出ないし、企業者も倒れないし、それで輸出貿易が盛んになる。同時に貿易のバランスがマッチして行く、こういうことは理想でございまして、私はそれが一番いいことである。責任ある者といたしましては、ぜひそうしたいという理想でございます。しかし世の中のことはそう参りません。できるだけその理想に近い点において物事を進める。それには相当の時間がかかります。  それから今どういう方策があるかということのお尋ねを受けましたが、それについてはほどなく経済審議庁において日本の各種の情勢の内外にわたる分析をいたします。その分析によりまして承知しまして、こういうことを直したらいいだろうという方策を立てて行きたいと思います。
  47. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣就任早々でまだ具体的にいろいろ説明する段階にない。そういう時間的な問題はよくわかりますけれども、今大臣に尋ねていることは、何も具体的な内容について尋ねているのではなくて、現在の日本経済というものをどう把握してこれに対処するかという考え方大臣の大きな方針というものを聞いているわけであります。もう八億というアンバランスができている。この八億をどう埋めて行くのか、この穴埋めはやはり今後アメリカからする武器発注に依存して行くのか、またこれが今度はMSAに統一される。統一された場合にこのMSAを受諾して、必要なら必要な点をやつて行く。しかもこれは今のところは新聞その他の報道では二箇年は保障する。その二箇年も一億五千万ドルですか、そういうものより保障されていない。そういうようなものに依存するために日本産業構造というものを武器生産の構造に切りかえて行くのか、あるいはそういうものには依存できないから、平和産業を重点にしながら国際市場においてほかの国との競争に打ち勝つような力を培養して行く方向を大臣はとつて行かれるのか、そういう点を私は聞いているのであります。大臣はもつと親切に、また具体的な内容について説明ができなければ、現在大臣が持つておられる考えが固まりつつあるその考え方の輪郭でもいいから、はつきりと示すべきである。こういう抽象論をただとりかわしていたのでは、少しも論議は進展をいたしません。計画経済で行くのか、自由経済で行くのか、自由経済とするならば、自由経済のどういう根拠によつて、こういういろいろな問題が処理できるのかということについてお尋ねしても、答弁がない。あるいは現在の日本経済に対する診断をどういうふうにしておられるのか。これは価値論ではないのでありまして、まつたく没価値的な、どういうふうに診断して行くかという、こういう問題をお尋ねしておるのに対しても、答弁はない。意見のわかれるところはどこから来ておるのかということが、はつきりといたさないのであります。でありますから、どういうふうに現状を診断されて、どういう診断の上に立つて行くのか。特需をある程度引受けて行かなければならない。穴埋めをするための特需は大きな力である。従つて日本産業構造を武器生産の方向へ切りかえて行くのかどうか。平和産業へ持つて行くのか、あるいはMSAの受諾によつて武器生産の構造へ切りかえて行くのか、そういう点をひとつ伺いたい。
  48. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。武器生産という問題は、そのときどきの国際情勢によつて非常に変化が多いものでございますから、私はこれを正常貿易の基礎にするということは間違つていると思う。でございますから、私の方針といたしましては、特需というものがある間は少し続くと思いますが、その続いている間に、できるだけいわゆる正常貿易によつて行く。正常貿易によつて行くということは、平和産業によつて日本を打立てる、こういうことになると思います。
  49. 永井勝次郎

    ○永井委員 平和産業に切りかえて行くというのであれば、今国際情勢は、軽工業から重化学工業へ転換している。軽化学工業の発展の余地はないと私は思う。それならば、軽工業から重化学工業へどういうふうに転換させて行くのか。それから二年なり三年臨時的な特需を平和産業へ吸収しながら平和産業を発展させるという、そういう手段方法はどういうふうにおやりになるか、それを伺いたい。
  50. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。よく武器生産とかなんとかいうことがありますが、もしそういうことがあるとすれば、今日本には昔のいろいろな工場で遊休なのがあるものですから、おそらくそれで引受けられると思いますので、平和産業をつぶして武器生産とか防衛生産とかいわれておりますようなことをするという意思は持つておりません。今の平和産業の規模並びに基礎をもとにしてますます発展させて行く、こういうことに私は考えております。
  51. 永井勝次郎

    ○永井委員 軽工業から重化学工業への転換は。
  52. 岡野清豪

    岡野国務大臣 軽化学工業は、やはりよそに品物が売れることによつて物事が違つて行くと思います。しかし東南アジアの方へは、私はどうも重化学工業の売れ方の方が多いと見ております。しかしこれもはつきりした断定を下しているわけではございませんで、今までずつと通産大臣になる前から見ておつた私の判断であります。
  53. 永井勝次郎

    ○永井委員 もう軽工業では第二次世界大戦後における国際経済情勢に立向つて行けないということは、みんなの一致したところであります。インドその他各国が独立して、自給自足態勢へ、民族意識が高まつて動いている。たとえば、輸出の主要な部分を占めている繊維関係から考えましても、戦前の世界の取引の半額より輸出貿易の線に乗つて来ない。単に日本だけの問題ではなくて、これは世界的な情勢であります。繊維工業がこういうふうに半額に減つて来る。あるいはまた日本輸出の大宗であつた生糸が現在このようなみじめな状態にある。そういうふうな情勢の中で、それではどういうふうにしたらこれらを昔のような力に復元させて行けるか。それは重化学工業一転換するよりないとわれわれは考えるのでありますが、それほどでもないとお考えになるならば、どういう根拠によつてそれほどでもないとお考えになられるのか、その根拠をひとつ示していただきたい。
  54. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説の通り、重化学工業でわれわれはもう少し東南アジアの方に貿易を進展さしたい、またそれが可能であると考えております。軽工業につきましては、世界の大勢としまして、各後進国は皆生産力を増強しつつある次第ありますから、あるいは多くを望むことはできぬと思いますが、しかし日本生産者並びに商売人は、やはりこれにも相当な見込みを持つて、意気沮喪せずに輸出貿易に尽すという覚悟を持つておりますから、これもむろんできるだけの援助をして、そういう面も衰えさせないようにしなければならぬ、こう考えております。
  55. 永井勝次郎

    ○永井委員 八億のアン・バランスを埋めるためには、輸入の面において食糧を減らして行かなければならぬ。あるいは繊維原料の輸入を減らして行かなければならぬ。あるいは国民のぜいたくな生活の用具その他についてはこれを押えて行かなければならない。それだけではなしに、昭和三十二年には九千何百万という人口にふえて行く。毎年百五十万からの人口がふえて行く。それによるところの消費増というものが当然伴つて来る。そういう面における消費増というもの、現在国内経済が一応小康を保つているのは、輸出関係におけるところの赤字が、それを特需にすがつているからである。それから属のいろいろな中小企業その他の産業は、国民の消費財の生産によつて小康を保つておる。これをいつまでも食いつぶして行くわけに行かないから、国民生活の消費規正も当然やつて行かなければならない。あるいは企業の面においては、これの合理化をはかつて行かなければならぬし、産業への投資を多くして行かなければならない。あるいは合理化によつてそこから出て来る、近代化によつて出て来る失業者の問題をどう処理して行かなければならないか。あるいは輸出の面において、コストを引下げるための万般の施策をやつて行かなければならない。軽工業は多く期待できない。重化学工業へ期待して行かなければならない。そうなると、鉄鉱石なり粘結炭なり、こういう高い原料の輸入に対する措置を考えて行かなければならぬ。アメリカ依存による現在のようなやり方では、日本は原料高の製品安であるから、そういうコストを引下げるためには労働者だけが、中小企業者だけが、農民だけがその犠牲にされて行くという条件が当然出て来ると思うのであります。そういうような点をにらみ合せて、やはり日本国内におけるいろいろな病気の所在を明確に診断して、その病気の治療対策をはつきりと立てて行くのでなければ日本経済の自立ということは困難である。しかも大臣言つておられるように一特需はいつまでも続くものではない。現在小康を得ているのは、特需国内の国民生活の消費財の生産、こういうことによつてであつて、非常に危険な状態にあるのである。そういう状態の時期にわれわれが根本的な手術を行うのでなければ、日本経済自立の条件というものは出て参らない、こう思うのでありますが、国民の生活水準に対して大臣はどういうふうに考えているか。それから重化学工業の合理化の面についてどういうふうに考えているのか。特需のなくなつた後、この輸出増をどういうふうなプログラムによつて穴埋めして行くと経済の自立が可能であると考えるのか、それをひとつ伺いたい。
  56. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お説しごくごもつともでございまして、その通りでございます。その通りでございますので、非常に広汎にやつて、内外の経済情勢を分析して、それからいろいろの方策を具体的に勘案して結論を出さなければならぬ、そういうように考えております。
  57. 永井勝次郎

    ○永井委員 どうも大臣の答弁は答弁にならぬ、こう考えるのでありますが、それでは国民生活の水準はどういうふうに考えておりますか。
  58. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。国民生活の水準も、経審の統計によりますと、大体戦前に近い程度まで進んで来ておりますので、この水準をますますます進めて行きたい、こう考えております。
  59. 永井勝次郎

    ○永井委員 人口はふえる、生産は高まらない、輸出はそう伸びないという条件の中では、当然われわれは経済自立の立場から、国民生活水準のある程度の切下げはやむを得ない状況にあるのではないかと考えるのでありますが、大臣は非常に朗らかで、戦前の生活水準を保持しながらこういうことをやつて行くという、そういう現状診断をされておることに対しては、また後円いろいろな機会を得て論議を尽したいと思います。ただいまのをいろいろな問題に発展させて行けば、当然これは国際情勢の判断にまたなければなりません。現在自由党内閣のもとにおける経済政策の行き詰まりは、外交の失敗に原因しておる。外交関係を調整することなしに、こういう一つの壁を打開することなしには、輸出の増強はできないと考えるのでありますが、中共に対する考え方、ソ連に対する考え方東南アジアに対する考え方、それから賠償の問題、通商協定における今後の見通し、そういう問題を一括して、国際情勢の判断、それから賠償の問題、通商協定その他における通商関係の見通しの問題、こういうことを一応承つておきたいと思います。
  60. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは大体外務大臣の主管だと思いますが、私から私の考え方を申し上げます。中共貿易のことは私の発言で大分問題になつておりますが、しかしながら現段階におきましては、従来通りの国際関係以上にまだ発展してないと思います。これはわれわれといたしましては一番の隣国であつて、また非常に長い伝統のある、関係の親密な国でありますから、これは正常な国際関係に直して行かなければならぬと思います。それについて機会あれば外務省あたりでいろいろな努力をされていることと思いますが、しかしそれは私よく存じません。それから東南アジアの方面におきましては、ただいまいろいろ御意見が出ておりますが、この点におきまして日本外務省の御援助を得まして、通商航海条約もつくり、いろいろの協定もできるだけつくらなければならぬと思いますが、これはいささか中共とかわりまして、日時を経れば相当拡大もできると思います。賠償の問題は私よく存じませんが、この問題もできるだけ早く片づけなければならぬという希望のもとに、外務省とせつかく努力しておる次第であります。一概にいろいろな国際情勢の関係を判断いたしますと、先ほどお述べになりました国際的の貿易情勢は、だんだんと競争が激化して来るということであり、また同時に各後進国においていろいろな事由が起りまして、日本でつくつた物が売れなくなるという懸念もないではありません。しかし私どもといたしましては、そのときどきの情勢に合して万全の処置をして、とにかく輸出貿易ができるだけたくさんできて、貿易のバランスを合して行きたい、そういう方向に進んで行きたい、こう考えております。
  61. 永井勝次郎

    ○永井委員 くどくなるようでありますからいずれかの機会において日本経済の自立方針、自立政策というような問題を重点にして、大臣にいろいろお尋ねをいたしたいと存じますが、本日はこの問題についてはこの程度にとどめておきたいと思います。  もう一つこの問題に関連して、基幹産業の助長といいますか、そういうような政策をとられるということを先ほど言われたのでありますが、その助長政策は補助金を出すというようなことであるのか、あるいはまた別個な、たとえば税金を安くするとか、あるいはいろいろな金融の面において措置をするとか、そういつた限界にとどまるのか、いろいろ助長政策をされるといつた内容の具体的なものの、現在の段階における情勢というものをひとつ示していただきたいと思います。
  62. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。ただいまお説のようにまず一番手取早い即効薬は補助金を支給するということがいいじやないかというようなことでございます。それからまた金融の世話とか、また税法上の改正をして助長をして行く。またいろいろあるでございましようが、しかしそういうことも一応研究の対象になることでございますが、私はまだその結論はよう出しておりませんが、補助金政策というものについては一利一害がございまして相当考えなければならぬことかとも思います。  それから金融の面につきましては、実は私が銀行家出身でありますから、何とか金融方面では考えられる余地があるのじやないか、銀行家並びに専門家に聞いてみようと思つておりますが、これは確かに幾らか明るい感じがいたします。  それから税法上によつて措置する。これもやはり政府が皆様方の御承認さえ得られればできることでありますから、できるならば私は税法上の補助ということはぜひやつてみたい、今こう考えております。
  63. 永井勝次郎

    ○永井委員 それではこの問題をこの程度にしておきまして、ひとつ肥料の問題が非常に重大になつて来ていると思いますし、秋肥を控えまして価格の問題も非常に迫つてつておると思います。当委員会においても肥料に対する小委員会を設けましてこれらの問題を具体的に、徹底的に究明して行きたい、こういう委員会全体の空気でありますから、現在審議会において進められておる状況及び原価計算が明らかにされたのかどうか。それから価格に対する対策をどういうふうにお考えになつておるのか、あるいは肥料生産、企業に対する考え方、あるいは非常に高いコストにつくところの企業をどういうふうに処置して行くのか、あるいはガス法を電解法にして行く考えがあるのか、そういうことに対する施設の助成をどういうふうに考えて行くのか、今の段階において国民が非常に知ろうとしているこれらの諸問題について、ひとつ具体的にお示しを願いたい、それだけ最後にお尋ねをいたします。
  64. 岡野清豪

    岡野国務大臣 肥料の問題は相当重要な問題であります。そして今せつかく審議会で研究中だそうですが、詳しいことはよく把握しておりませんから、専門の局長から答弁をいたさせます。
  65. 中村辰五郎

    ○中村(辰)政府委員 肥料のただいまの御質問の総合的な問題につきましては、大臣の御答弁にもございましたように、肥料対策委員会で昨年の末から今日まで需給関係を中心にしましては小委員会、合理化につきましても小委員会をつくりまして、愼重審議を続けて参つたのであります。本問題は非常に重要でございまして、同時に秋肥対策の問題も切迫して来ておる状況でございますので、結論は早急に出すように肥料対策委員会に希望いたしております。明日両小委員会の審議の経過を中間報告する対策委員会を開催いたします。なおその際結論に到達いたすかどうかははつきりいたしませんが、われわれといたしましては、できるだけ早急に肥料対策委員会結論を得まして答申を待つて最終的な政府態度をきめるという方針に従つて臨んでおります。ただいまの合理化並びに需給小委員会におきましては、御質問の重要点につきましては、それぞれ各委員の意見も徴しておりますので、総合的な対策も出るものと期待いたしております。
  66. 大西禎夫

  67. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石炭、炭鉱の問題は、現在日本の非常に重大な問題でありますので、きわめて具体的な事例をあげてお伺いをいたしますので、政府の方でも抽象的でなく、具体的にそれぞれ答弁をしていただくよう要請しておきます。  本年度は石炭の生産はどの程度が適当であるか、その根拠となる資料等の提出あるいはまた答弁で納得の行くような点を示していただけばそれでけつこうでありますが、できなければ資料等の提出をしていただきたいと思います。
  68. 岡野清豪

    岡野国務大臣 専門の局長をもつて答弁させたいと思いますから御了承願います。
  69. 佐久洋

    ○佐久政府委員 ただいまの質問にお答えをいたします。今年度の生産が大体見通しとしてどのくらいか、需給の関係からどういう情勢にあるか、こういう趣旨の御質問と思いますが、本年度の石炭需給の見通しは実はまだ確定される段階に至つておりません。ただまつたく事務的に私の方でつくりましたのを御参考に申し上げますと、前年度、つまり二十七年度からの繰入れ、これは貯炭でありますが、山元、港、それから販売市場、なおそのほかに大口工場、小口工場の貯炭の全部を入れまして大体六百四十万トンと推定されます。それに対して供給は国内炭として大体四千五百万トンないし四千六百万トン、輸入炭として三百六十万トン程度の見通しでございます。それで行きますと、つまり二十九年度に対する繰越しが今年度と大体同じような六百三十万トン程度の見越し、こういうふうに考えられるのであります。
  70. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 重油の輸入の数量、価格、重油と切りかえられた石炭の数量、その石炭の種類等について、具体的にひとつお示しを願いたい。
  71. 佐久洋

    ○佐久政府委員 今日まで重油が石炭にかわりまして、燃料として転換した数量は必ずしも正確な数字をつかんでいるわけではございませんが、私どもの方で調査した結果によりますと、昭和二十六年度におきまして、三十八万八千キロリットル、二十七年度におきまして、前年度と合計して百五十四万七千キロリットル、さらに二十八年度の今後の推定を入れますと、二十八年度末におきまして、二百十万キロリットル程度の重油転換が行われるものと思います。これを石炭に換算いたしますと、大体二倍でございますから、四百数十万トン分の石炭にかわるものとして重油転換が行われておる、こういうふうに思います。なお重油の価格の問題でございますが、四月の状況を見ますると、A重油で、カロリーが一万三千のものが一万四千五百円でございます。B重油が、カロリー一万二千で価格が一万二千五百円、それでどういう炭種のものが重油に切りかえられたかという御質問でございますが、大部分は一般燃料炭でございます。
  72. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今の石炭局長の数字は間違つてはおりませんか。大体現在切りかえられてあるのが五百四十万トンから五百六十万トン切りかえられてある。さらに通産省はもう百万キロリットル入れようとしておるようですが、そうするとこれが石炭に換算すると二百万トンになります。七百万トンから八百万トン近く切りかえられるということになるが、数字の間違いではありませんか。
  73. 佐久洋

    ○佐久政府委員 ただいま四百数十万トンと申し上げましたのは、本年度つまり二十八年度の転換というものを見通した数字を全部含んでございます。つまり本年度重油としましては、大体五十五万キロリットルを一応予定しておりますので、その分百万トンが追加になるわけであります。
  74. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この点はあとで数字上でひとつ明らかにしたいと思うのです。それから石炭を使うより重油を使う方が需要者のために大体どのくらいの燃料代としての利益を与えておるか、この比較された数字をひとつお示し願いたい。
  75. 佐久洋

    ○佐久政府委員 具体的に使う産業によつて違いますので、石炭との比較を一概にまだ実は調査をいたしておりませんが、カロリー当りの価格を比較してみますと、石炭よりも重油が若干高くなつております。しかしこれを使用する上の便不便、つまり労力が省けるとか、あるいは使用した後の始末が楽であるとかいう点を考慮すると、重油の方が有利であると、こういうふうにいわれております。
  76. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大体一般的に概括的な計算としては、現在の日本の石炭炭価と、今入つて来る重油に切りかえた場合を比較すれば、石炭のトン当り千円から二千円くらいの間がそれぞれ消費者としては燃料代が安くなるということになつておりますが、それに対する具体的な数字は出ておりませんか。
  77. 佐久洋

    ○佐久政府委員 まだそこまでの調査の数字を持ち合せておりません。
  78. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これは具体的なものがそれぞれ産業別に大体出ておりますから、至急ひとつお調べになつて資料の提出をされるよう要求いたしておきます。  この重油の油会社の日米資本構成は、どういうふうな形で構成されておりますか。
  79. 佐久洋

    ○佐久政府委員 私の所管外でございますので、その知識を持つておりません。
  80. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 だれか所管の責任者の局長がおられますか。
  81. 大西禎夫

    大西委員長 今来ていないそうですが……。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これは非常に重大な問題であります。大臣もおられますから——具体的なことはおわかりにならなければお答えにならぬでよろしゆうございますが、数字上の問題は別として、私が大臣にお伺いしたいと思うのは、大体この油会社は、日米の合弁会社ということになつております。アメリカ資本が七割五分、日本資本が二割五分ということに大体なつておるようでございます。従つてこの油会社が日本に油を入れて来ます。そうして上つた利益がどのようにされてあるかということは、非常に大きな問題でございます。漸次あとからまだ伺つて行きますが、もし今私が申し上げるようなことでこの油会社の資本構成がされてあるとするならば、これは今後伺つて行く問題等に関連をして非常に重大な点がありますから、大臣よくお聞きを願つておきたいと思います。なお今からでも関係の政府委員がおいでになれば、私の質問中に答弁をしていただきたいと思いますが、この点委員長いかがでしようか。
  83. 大西禎夫

    大西委員長 呼んで来るそうです。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それではあとまわしにいたします。重油輸入税はどうなつておるか伺いたいのですが、これも政府委員おりませんか。
  85. 大西禎夫

    大西委員長 これもあとで一緒にお願いいたします。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それではこれも後刻関係政府委員をお呼びの上御答弁を願います。  それでは、これは現に明らかになつておることですから、大臣でもおわかりになると思いますが、重油関係が無税で入つております。厖大な油が入つて日本の石炭、炭鉱を圧迫しておるのに、何ゆえに無税で入れられておるか、関税を何ゆえにとられぬか、この根拠について大臣から伺いたい。
  87. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私も実ははつきりしたことを伺つておりませんが、重油に転換したのは結局二十六年度あたりからやつたことでありまして、それ以前は石炭と非常に角突き合せるというような情勢にはなかつた考えますことと、それから日本といたしましては、どうしても油をうんと入れて産業を興さなければならぬから、その意味において関税が無税になつているのだろうと思います。これは正直に申しまして、私の想像でございますから、いずれよく取調べまして御答弁申し上げましよう。
  88. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも大臣も御承知にならぬからしかたがないと思うのでありますが、これは今後の日本産業の多くに影響を与えて来る重大な問題でありますから、関係政府委員が見えましてからさらに大臣の信念も伺うことにいたします。  さらにまたこの点もおわかりにならぬかもしれませんが、油会社の経営状態の内容、それから利益金の処分の問題、こういう点も非常に日本としては重大な問題でありますが、この点について政府委員でだれかおわかりになつている人はおりませんか。
  89. 石原武夫

    ○石原政府委員 今ちよつとわかりかねます。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それではこの点も関係政府委員が来てからということにいたしますが、これは非常に重大な問題であります。従つてこういう点について、非常に重大であるから、大臣と所管の答弁のでき得る政府委員説明員はぜひ全員出席するよう、委員長からも強く政府側に要望してあつたはずでありますが、この点はなはだ遺憾と思います。従つて私の質問中に、委員長からすみやかに政府委員説明員等をそれぞれお集めになつて御答弁されるように、委員長に要望しておきます。
  91. 大西禎夫

    大西委員長 かしこまりました。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それではそうした問題は一応あとまわしにいたしまして、輸入炭の数量及び炭種、需要者の受取炭価は日本の炭価と値段の上においてどういうような開きになつておるか、この点は多分おわかりだと思うからお伺いいたします。
  93. 佐久洋

    ○佐久政府委員 輸入炭の種類は強粘結炭、ガス炭、無煙炭でございますか、強粘結炭が二百八十万トン、ガス用灰が五十六万トン、そのほかに無煙炭として二十万トンあります。価格の方は、強粘結炭は米国から入るものが四月のCIF価格で十八ドル五十セント、円に直すと六千六百六十円であります。インド炭が十六ドル、円に直して五千七百六十円であります。これに対する国内炭の原料用炭がやはり京浜のCIF価格で七千三百五十円、発生炉用炭が七千八百円、なおこの発生炉用炭と無煙炭の輸入価格は、今のとこう資料を持合せておりませんので、調査をいたしまして御報告いたします。
  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今局長も答弁されておりましたように、比較対照等の問題が明らかになつておりません。従つてこの点に関して至急具体的な比較対照をされた資料の提出を要求いたしておきます。それから石炭の輸入税はどういうことになつておりますか、これをひとつ伺いたいと思います。
  95. 佐久洋

    ○佐久政府委員 石炭については無税になつておるはずでございます。
  96. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 油も無税、石炭も無税、しかもそれが少量であるならともかくも、厖大な四百万にも上らんとする石炭が無税で入つて日本の石炭を七百万トン以上も圧迫して来ておる。一体日本は昨年の四月から独立国になつておるはずでありますが、アメリカの油とアメリカの石炭のために、このように日本の石炭、日本の炭鉱が圧迫されて危機に陥ろうとしておる。それでもなお無税で入れなければならぬとすると、その理由はどこにあるのか。聞くところによれば、昨年の暮ごろ吉田総理大臣は、石炭でも油でも安いものはどんどん入れたらいいじやないかというようなことを言われておつたということを私伺つておるが、そういう考え方で吉田内閣がやるとするならば、一体吉田内閣日本政府であるかどうか、日本産業日本国民の福祉ということを考えてやろうとしておるのかどうか。そのような考え方であるなら、アメリカの油会社、アメリカの炭鉱、アメリカの資本家、アメリカ政府の代弁的な機関にすぎないという批判をされても答弁の余地がないと思うが、一体吉田内閣はどういうような考え方でこうした問題を扱おうとしておられるか、所管の通産大臣からこれらに対する信念の点をひとつ明らかにされたいと思います。
  97. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはとにかく日本がそういう方面に非常に不足しておつたときに、やはりそういう方面に依存して日本産業を更生して行かなければならぬという必要から出たものと私は想像しております。しかし幸いにして石炭あたりは今年は非常に増産に向いつつありますから、一応考慮しなければならない段階に立ち至つたのではないかと思います。
  98. 石原武夫

    ○石原政府委員 ちよつと補足して説明をいたします。ただいま御指摘がありました重油にいたしましても、粘結炭その他の石炭にいたしましても、無税にいたしております理由を事務的に御説明いたします。重油につきましては、詳細な数字は、後ほど鉱山局長が参りましてから申し上げますが、約三百万トン程度二十七年度入れておりますが、そのうち約半分が船舶用でありまして、あとの半分近くが鉱工業用になつておると思います。これらの石炭につきましても、現在入れておりますのは、主として強粘結炭を中心とする炭であり、原則として日本国内で供給の不足しているものを入れるという建前で入れておるわけであります。それから石油にいたしましても、石炭にいたしましても、日本経済の運行上必要と認めたものを入れる。国内では十分まかなわれないから、その不足分を入れるという趣旨で入れておりますので、これらの原料的なものにつきましては、むしろ日本産業の合理化を進める上、あるいはコストを引下げるというような意味で、関税の扱いも一般に無税が多くなつております。ただ国内産業保護ということで関税をかけているものも相当ありますが、今申し上げましたように、重油にいたしましても、石炭にいたしましても、原則として国内で不足する分、あるいは質的に足りない分について入れるという方針に従つておりますので、現在のところ無税になつておるというふうに承知をいたしております。
  99. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 安い強粘結炭を入れて日本産業の基礎をつくろう、特に基幹産業、重工業関係の基礎をつくろうとされるなら、中共地域から強粘結炭を従来から入れておりましたが、これを入れるということになれば、アメリカから現在入れている半分以下で入つて来るはずですが、入れるがごとく、入れぬがごとく、いろいろやつております。こういう点に対して、具体的に中共側と話を進められておるのかどうか。政府はことさらにこれを忌みきらうごとくにして、やつておらぬようであるが、今局長が言われるようなことであるなら、むしろ中共地区から入れることの方が、日本産業のためにはるかに基盤をつくると私は思うのであるが、そういう点についてどのような交渉を進められておるか、どういうような点等が障害になつておるのか、そういう点に対して、ひとつ具体的にお示しを願いたいと思う。
  100. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 ただいまの御質問に対してお答えを申し上げます。先ほど石灰局長からお話になつておりましたか、かりにアメリカの石炭は十八ドル余それから現在中共から入つております石炭は、やはり粘結炭で十一ドル半くらいになつております。従つて目的には確かに中共の炭の方が安いのでございますが、いわゆるメリット計算をして考えますと、八幡に中共の炭が着く場合、それから川崎とか、広畑に着く場合において若干違いますが、価格にしまして大体とんとんか、あるいは中共の炭の方が少し高いというふうなことに相なつておるわけであります。それから中共の炭をとることについて、先方と話合いをしているかどうかというお話でありましたが、現在のところ、御存じの通り民間貿易をやつておりまして、先ほど大臣から中共貿易についてお答えがありましたように、昨年の大体秋ごろから輸出の統制を一部緩和しました結果、かなり引合いがふえて参つておりまして、この一月から四月ごろまでのバーターの許可実績の中におきまして、たしか石炭は十七、八万トンくらい入つているかと思います。今後いま少しふえるだろうと思つております。まあ御存じのような間柄にありますので、まだ政府間の話合いをいたすというような段階ではございませんから、民間貿易ということで、また輸出の物資もかなり範囲が広くなつておりますので、輸入輸出ともかなり増加するであろうというふうに存じております。
  101. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 中共地区から原料粘結炭を入れるという問題は、御承知のようにバーター制になるのであります。従つて粘結炭が入つて来るようになり、あるいはごつちからも向うのほしいものをやるという状態が回復すれば、鉱石なども従来から非常にいい鉱石がたくさんあつて日本も厖大な投資をして開発もしてあるが、そういうものとの間においても友好関係の渡りがつくわけでございます。そういう点に対して一体どのような考え方を持つておられるのか。何でもアメリカアメリカ言つておられるが、そのアメリカ日本から買うものは三億ドルか四億ドルくらいしか行つておらないが、日本アメリカから買うのは、すでに政府側でも御承知のように、十億ドル以上を買つているはずです。そういう不合理な状態がある。ところが、中共関係については、今申し上げるようなことで、この道が開けることは、日本産業再建、経済復興、国民生活の安定の上に非常に大きな寄与をするわけであります。こういう点に対して、なぜもつと積極的に進められないのか。このバーター制について、あるいは国連関係、アメリカ関係というか、そういう点からどのような具体的な制約を受けてそれがやれないのであるか。この間のいきさつについて具体的にお示しを願いたい。
  102. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 鉄鉱石の輸入の問題でありますが、石炭の輸入の問題と同様、私たちといたしましては、別段これを輸入抑制をするというつもりは全然ございません。業界で引合いができますれば、できるだけ許可をして参りたいというつもりにいたしておりますが、価格の問題か、あるいは積出地における問題かよくは存じませんが、現在までのところそういう輸入の許可の申請が参つておりません。たとえば海南島あたりの鉄鉱石の輸入について話は若干われわれも聞きましたが、何分向うの軍事的な基地になつているというふうな関係上、実際現地の司令官の許可を得ることが非常にむずかしいというふうな話を聞いている程度でありましてもちろん輸入についての話がありますれば、われわれは石炭と同様に、積極的に促進して参りたいというふうに考えております。
  103. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この答弁を政府委員にやらすということは、大臣もはなはだ私はどうかと思うのであるが、これは根本的な経済外交上の政府の今後の方針に関する問題でございます。従つてこれは大臣がどのようなお考えを持つて今後こうした中共関係等の問題を扱つて行くか。あるいは、アメリカ関係、国連関係との間に制約されておる問題をどう妥結して行くか。これは自主独立国家としての日本経済外交上の根本的な今後の大きな問題であります。この点について大臣から御答弁願います。
  104. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。今中共とは国交の回復ができておりませんので、政府は表立つて商売するということもできませんし、また中共の方ではただいま政府が管理してやつておりますから、もしこれをお説のように考えますならば、どうしても国交の回復がまず第一の段階でございます。しかしいろいろ御指摘の通りに、中共の方面からとれば非常に安くていいものが入るということも事実でございましようが、それをいたしますのには、外交上一日も早く国交の回復をしなければならない。それができないうちでも商売というものは現にできておりますし、できつつあるのでございますから、やつて行かなければならぬ。それにつきましては、民間で業者同士がやつて行きまして、そしてできたものを通産省としてもできるだけ早く許可を与えてせつかく取引ができたものを遅延させるとか、延引させるとか、拒否するとか、もしくはキャンセルされるとかいうことのないように、万全の注意を払つて貿易の進展に尽したいと思つております。要するに問題は、政府が立ち向つてどうしようこうしようという立場になつておらぬということが一つの欠陥でございます。
  105. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 対中共関係は今大臣の答弁される通りです。この道をあけるために、アメリカなり国連関係との関係において、日本としてもつと積極的にこれを打開するための外交上の交渉はどのようなことをやられておるかを聞きたいのでございます。すでに自主独立国家になつて一年余たつておる。ところがこの問題については、遅遅として何ら具体的には進みません。のみならず東南アジア、特に中共を中心にする方面において、日本商品の輸出は極度に制限されております。この種類は何百種類あるか知りませんが、おもなものだけでもよろしいから、制限されておる品目を具体的にひとつお示しを願いたい。なお本日言葉をもつて示されないなら、後日具体的な資料の提出を願います。  そういうように、主として対外交上の問題としてこれは道をあけなければならぬ。ところが道はあきません。一体何をしておるのであるかということを、われわれは政府を弾劾せざるを得ません。こういう問題については、単に国際関係においていまだ十分なる実力を持たないということだけで私は事を済まされぬと思う。それならば、対アメリカ、自由主義国家群関係、国連翼係に対してどういうように折衝しておられるか、これらのいきさつについて伺いたい。どういう点が障害になつておるか、こういう点もあわせて伺いたい。
  106. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほどお答えするところでちよつと落しておりましたが、中共との関係はそうでございますが、しかしその基礎をなしますところの貿易品の範囲の拡大ということについては、政府としても非常に努力しております。その努力が昨年の秋実を結びまして、幾らか余裕ができたというために、ことしの一月から輸出貿易がふえたのであります。ただいま何百という物資について、いろいろ構想も進めておるのでありますが、その辺のところは詳しく存じませんが、輸出を制限されておるものをできるだけはずして行くということについて、いろいろ国際間で誓いをしておるわけであります。その辺の詳しい事情は次長から申し述べさせたいと思います。
  107. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 禁輸品目は別途資料をもつて御提出をいたしますが、一口に申しまして輸出貿易管理令の別表第一号というものがそれに該当するわけであります。ただいま大臣から大体のお話もあつたのでありますが、昨年の秋にまず紡績機械とか紙類あるいは染料等の品目を禁輸品目からはずしたわけでありますが、それ以来かなり広汎な品目をはずして参つております。最近になりましても漸次禁輸解除の結果を見まして品目の解除をいたしております。国際的な話合いでございますので、どういう品目を今どういう方法で話合いをしておるかということはちよつと申し上げかねるのでございます。先ほど大臣からも言われましたように、いろいろの国際的な制約もございますが、われわれといたしましては、できるだけこの品目を解除するという方向に努力いたしておる次第であります。
  108. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも政府側の方ではどういう点で躊躇されるのか私は理解に苦しむのですが、外国関係ではどんどん発表されてあるものを、しかも日本がそれに対してどのような意見を持つておるかということまで発表されおるものを、日本政府はいろいろ国際関係にさしさわりがあるとか、あるいはそれは秘密になつておるからとかいつてこの国会でそれを発表せないのでございます。外国ではすでに明らかになつておるものを何で政府は、しかもこの国会においてそれを明らかにされないのか。この点ははなはだわれわれは遺憾でございます。こういう点が吉田内閣秘密外交であるということで論難攻撃される理由になるわけでございます。だから外国で発表されてあるものは、この国会においては発表の方法はいろいろな形でどんなに秘密なことでも発表されるわけでございます。そういう品目等の問題はきわめて重大でございますから、発表のでき得る限り発表してもらいたい。なおまた資料として出してもらいたい。その点について大臣から政府の方針を明らかにしていただきたいと思います。
  109. 岡野清豪

    岡野国務大臣 国際間で申合せしましてこれは禁輸からはずしてもよいとなつたものは私はお説の通り発表してよいのだと思います。ただこういうもりをはずしてもらいたいとか、こうしたらどうだとかいうことはそのときどきに業者からも申出がありまして、これをどうするということもありましようし、それからまたほかの国の人間がもし日本がこれをはずして輸入しようと思うならば、その決定に至る前に先に準備して先に売り込むというような商売上の競争もありますから、今懸案中で交渉しておるものは商売上から言つて秘密にした方が世界的に得ではないかと考えております。その方面は何かどうなつておるということは、そのときどきの申請とかなんとかいうものによつて交渉をするときもありますし、またそれができないうちに発表すると、世界のほかの国の業者にどうとかいうこともありますので、はつきりきまるまでは発表を見合せた方がいいのではないか、私はこう考えております。
  110. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は大臣にこの際強く要望いたしておきますが、従来のやり方を見ますと、すでにやつてしまつて、抜き差しならないようになつてから国会に対して報告する、国会は単なる報告の機関にすぎない、こういうやり方をしております。これが吉田内閣の国会軽視である、国会無視である、こういう点を攻撃される理由でございます。国会が国民の代表として国民の総意を強くその扱い上に反映するところに、私は日本の独立国家の自主性と権威の強さがあると思う。この点は今次の扱いの上に、国会は単なる報告機因であるというような軽視の考え方を弘めてもらいたいということを強くこの機会に私は要望しておきます。石炭の問題にもどりますが、大体現在の貯炭がどのくらいあるか、現在の状態のままで進行するとすれば、本年一ばいにどのくらいの貯炭になるか、こういう見通しについてひとつ具体的にお示しを願いたいと思います。
  111. 佐久洋

    ○佐久政府委員 現在の貯炭状況でございますが、四月末現在におきまして、全国貯炭、つまり山元、港、販売市場、これの合計が三百万トンでございます。そのほかに大品工場の貯炭がやはり三百万トン、小口工場で七十万トンぐらいございますから、合計して六百七十万トン、それから五月中旬の貯炭が、先ほど申しました全国貯炭が三十万トンほど増しまして、三百三十万トンになつております。それから本年度末の貯炭がどのくらいになるかという御質問でございますが、これは前提条件次第でどうにでもなる問題でありますが、今のままほつておいて来年三月末に貯炭がどうなるかということはちよつと見通しがつきかねます。と申しますのは、このままほつておけば相当倒産する炭鉱が出ると思いますので、どの程度の影響が及ぶかということは、ちよつと見通ししかねる状態でございますので、来年三月末の状況はちよつとわかりません。ただ十月初め、つまり上期の終りあたりの状況を推定いたしますと、今のままで参りますれば、おそらく貯炭が一千万トンぐらいになるのじやないかというふうに推定しております。
  112. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石炭炭価は大体どれくらいが妥当と考えておられるかを伺いたい。
  113. 佐久洋

    ○佐久政府委員 輸出振興というような観点から見まして、鉄あるいは硫安、そういう産業国際競争に立ち向えるための炭価というものは一大体現在の炭価よりも、鉄についてはざつと三割、硫安については二割五分くらいさらに安くしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  114. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今石炭局長が言われたような、三割以上の値下げをさす、これは非常に重大な問題だと思いますが、どのようにしてこの三割以上の炭価値下げをしようとしておられるか、その具体策をひとつお示し願いたい。
  115. 佐久洋

    ○佐久政府委員 一つの案として通産省の案ございますが、まだいろいろ根本的にむずかしい問題がそれに付随いたしますので、具体的に進め得る状態にまではなつておりません。大体その案を御紹介申し上げますと、結局現在の石炭の価格が高い原因は、戦時中及び戦後の石炭需要をまかなうためにかなり無理な採炭をやり、無理な操業をやつて来たところに根源がございますので、その根源を根本的に是正しない限りは、炭価を大幅に下げるという方法はないのでございます。それでその是正の方法として、いわゆる炭坑の合理化、若がえりというものを実施いたそうというのが案の骨子でございます。大手筋の将来合理化の可能な炭坑につきまして、現在かなり老朽化したものについては縦坑方式をとりまして、従来の斜坑方式から転換する。なお中小炭坑につきましては機械化の度合いが非常に遅れておりますので、これの機械化をはかる、こういうのが中心の問題でございます。それに対する金融あるいは税制の改正というような方法によつて資金のまかないをつけよう、こういうのがごの炭価引下げの中心の考え方でございます。
  116. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 具体的に値下げをやらす条件という上から見れば、今の局長の答弁は、はなはだ抽象論でございます。現に今石炭炭価を下げなければならぬということは、日本輸出工業の上において世界市場で打ち勝たすための絶対条件である。それからアメリカから入つて来る油、外国炭と闘わす上においても絶対条件である。それはもうあすの日を論ぜられない、きようの問題でございます。将来対策の問題は、私は今局長の言われることを了解しますが、今日の問題であるところの石炭炭価を下げなければならぬ、その条件があり得るかどうかということを私は伺いたい。たとえば、炭鉱で人件費に次ぐ一番多くの費用を要するのは坑木でございます。これが人絹。パルプ会社などが買いあさりをするので、最近になつて三割以上値上げになつておることを御承知でしよう。あるいは鉄材あるいは労働賃金においても、朝鮮戦乱以来特需関係の刺激を受けて一般生活物資はどんどん上つておることを大臣局長も御承知でしよう。そういう点から、炭坑労働者の関係では、この物価値上りに対して生活を維持するためにスライドしてもらいたいという要求は切々たるものがある。こういうように炭鉱経営上にその多くを要する諸条件は、値下げができなくなつておる。これらを値下げせぬ限りにおいては、今日石炭炭価を値下げをさせるということを政府は要請する何ものも持つておらぬと私は思う。政府が値下げをさせなければならぬ。しかし値下げをさす以上は、たとえば坑木なり、鉄材なり、あるいは労働賃金なり、こういうものに対してこのようにすればあるいは一割、二割一三割値下げさすことができるじやないか、こういう具体的なものをお取上げにならなければならぬはずでございます。長期計画よりさらに具体的な今日の問題を解決しなければなりません。こういうことについてどのようにお考えになつておるかを伺いたい。
  117. 佐久洋

    ○佐久政府委員 ただいま現下の炭価高を是正しなければならぬということはお説の通りでございます。ただその内容、つまり現在の炭価高の原因をなしておる消費財の割高の問題、あるいは労賃の問題というのは、一石炭局長ではいかんともいたしがたい問題でございまして、最近石炭の需要が減りましたので、かなり一般市場における炭価は下つて参りましたが、しかしこれは変則的な下り方で、操業自体が健全化した結果の下り方ではございませんので、私としてはあくまで根源的な合理化を進めたい、こういうふうに考えております。
  118. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それは石炭局長のおつしやる通り、この重大な問題について局長が御答弁できぬのはあたりまえでございます。そこで今局長が言われたように、今のままの形で推し進めて行けば、それは非常に不自然な状態が加わつて来るわけであります。従つてそれはアメリカの重油なり石炭なり、そういう関係に押されて来て、これは炭価が下るということより、むしろ炭鉱がつぶれるということでございます。従つて将来の問題と今日の問題とについて私が伺うのであるが、これに対して一体通産大臣はどのような信念を持つてこの問題を解決しようとしておられるか、この点をひとつ伺いたい。
  119. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはたいへんむずかしい問題だと思います。と申しますことは、国家がすべての経済政策をきめて、国民にその通りついて来い、こういうふうにやつて行けるというふうな政治形態でございますと、これはまたいろいろ総合的に見ましてでき得る面もありましよう。ただいまのところは民主主義的に、各企業者は自由に競争してよろしい、自由に経営してよろしい、自由に掘り出してよろしいということにしてあるものでございますから、これをその民主主義の趣旨に反して統制をして、多過ぎたから、これをどんどん減して炭価を維持しろとか、いや、とにかく今のところでは高過ぎるからまけろ、まけるためには何とかしろ、こういうようなことをさしずするわけには行かないと思います。ただ問題は、われわれとしましても、大きな経済の面から見ますれば、お互いに国民生活がよくなつて行くのには、どういう経済政策をとつたらいいかという根本の理念に立ちまして、政府に許されたる範囲内におけるところのさしずをするとかなんとかいうだけのことを利用してやつて行こうということでございますから、たいへんまだるつこしいことになりまして、仕事が非常に遅延する。けれどもまあわれわれといたしましては、この石炭業界の非常に重大な時期におきましては、できるだけ各企業者がきずのつかないようにして、しかも生産コストを安くするために炭価が下りなければならぬという要望にもこたえなければならぬと思いますので、値下げの点につきましては、今せつかく省内において考えておる次第でございます。しかしただいまのところ、まだ結論に達した名案は出ており、ませんが、これは一日もゆるがせにすべからざることでございますから、速急に研究をしておる次第でございます。
  120. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣の御答弁の自由主義競争論のことですが、私は、国内の業者が競争をして、その結果いわゆる優勝劣敗というか、そういう形で日本の生産品が、いい物が安くどんどんできて、国際市場で打ち勝つて行くというのであれば、これはやはり私は、日本産業経済が国際的に優位な地位を占める上において、考えられることでございましよう。ところが今私が質問をしておる問題は、アメリカの油資本とアメリカの炭鉱資本のために、日本の炭鉱が圧迫されて、今危機に陥ろうとしておるのでございます。そこでこれを、今大臣のおつしやつたようなことで放任をしておくということになれば、アメリカ資本のために日本の炭鉱がつぶれて行く。そこで今度もし油が国際的ないろいろな問題から思うように入つて来ないという状態が起つて来る、あるいは石炭が思うように入つて来ないという状態が起きて来る。日本の炭鉱はそのために非常につぶれて行く、こういう事態も、絶対起らないとは、大臣も断言されることはできないと思う。そういう大きな将来に対する問題もあろうと思う。のみならず、現実においても、アメリカ資本のために、日本の炭鉱がつぶれなければならぬ。これを自由競争にまかしておくということであるならば、これはアメリカのあの厖大なる優位な地位を占めておる資本力に対して、日本産業は太刀打ちはできません。ことごとく、これは石炭のみならず、あらゆるものがつぶされて来るでしよう。この点をどのようにお考えになつておるか。これは民族産業、民族生活を守る上に、非常に重大な問題だと思う。こういう点に対して大臣は、やはりこれも一つの自由主義国際競争日本が負けておるのであるから、これはしかたがないということで、放任される意思であるかどうかをひとつ承りたい。
  121. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。石炭に関しましては、先ほど通産局次長から申し上げましたように、輸入いたしておりますのは、粘結炭とかガス用の石炭というようなものでございまして、これは事実日本にできないのでございます。私の記憶違いでしたら、あとで通産局次長から答弁させますが、日本で、粘結炭に類するもの、もしくはそういうものに使うものは、四十万トンくらいしかとれておりません。そういたしますと、日本の今の製鋼、ガスの規模から申しますと、やはり外国からこれを輸入しなければならない。その外国から輸入しなければならぬものに対してだけ輸入を許しておるわけでございまして、内地の石炭業者と競争的の立場にある石炭は、輸入いたしておらぬはずでございます。  それから油の問題でございますが、重油等に転換する点が問題になるかもしれませんが、船舶はむろん油を輸入しなければならないのですが、もし極端に考えますならば、あるいは重油転換を一応見合せてもらうというようなことが、一つの解決策かと思います。しかし要するに油と申しますものは、ほとんど九割までが、外国に依存しなければならないものでございますから、この点はまた相当いろいろな角度から検討しなければならぬ問題だと私は考えます。
  122. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 現状はすでに、先ほど石炭局長が答弁をしましたように、私が先ほどから質問いたしました当面の具体的解決案をもつて政府が解決されない限りにおいては、本年は相当炭鉱がつぶれて来ることは明らかでございます。従つてつぶれる炭鉱、生産制限をする炭鉱、いわゆる企業整備をする炭鉱、従つて相当の失業者も出るわけでございます。これらに対する点は、当然生産省である通産省は、労働省との関係においても、あるいは閣議においても、この問題はすでに今日起りつつあり、相当大きく出て来る社会問題である、こういう問題に対して、事前に具体的な対策をどういうように立てておられるかを伺いたい。
  123. 岡野清豪

    岡野国務大臣 ただいまそういうことは研究中でございます。
  124. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 研究中というのは、いつまで研究されるのか、私にはわからないが、従来からの政府のやり方を見ますと、問題をとことんまで持つて行つて、すでに爆発をさせてしまつて、これを法律的に取締る処置で解決をしようとしておられる。今度電気なり石炭に対するスト規制法を政府は出すということを、強く発表しておるようであるが、おそらくこういうことで、この起り来る問題を政府は処置しよう、あるいは取締り、圧迫しようというようなことを考えておられるのではないかということで、炭鉱労働者の間には大きな疑惑を持たせておる。こういう点に対して、大臣の御答弁を願いたい。
  125. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私の考えといたしましては、禁止法というものは、できるだけ出さない、また最小限度に出す、こう考えております。そこで私の考えといたしましては、失業者もないようにまたつぶれる会社もないようにして、そうして所期の目的を達しよう、こういうものでございますから、相当苦難の道でございます。しかしこの苦難の道が、やはり国民経済の再建のもとになると思いまして、努力をしておる次第でございます。
  126. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣のお考え、私は大賛成であります。そこで炭鉱もつぶさぬ、企業整備もしない、失業者も出さぬようにするというその方針を実行されるについては、やはり将来に対する具体策をお考えにならなければ、解決はできません。絵に描いて解決するものではありません。従つて当面の問題の解決を、まだこれから研究するのだと言われておりますが、これにいたずらに日を過されるということになれば、私がさつきから苦言を呈しておるような問題が起らざるを得ません。これは重大なる社会問題である。すみやかに具体的な案をお示しを願いたい。それは国会が再開をされる本月の半ば過ぎには具体的にそれを示されるよう、私は強く大臣に要望いたしておきます。  さらに当面並びに今後の具体的な問題になるわけでありますが、先ほど局長言つておりました、いわゆる炭鉱を若返らせて能率を上げ、生産費を下げる。そのためには大手炭鉱に吉田内閣は四百九十億の融資をするということを発表しました。さらに中小炭鉱に対しては三十二億の融資をする。これは金庫法という法律でやろうとしたようでありますが、議会が解散なつたために、お流れになりました。そこで通産大臣は、中小炭鉱に対する三十二億の融資の金庫設置の法律案を本議会に出される意思であるかどうか。あるいは四百九十億の大手に対する融資、これはとかく大蔵省の方にも問題があるようにわれわれ商い薫るのであるが、これもこの計画通りに融資ができるかどうか。  さらに多くの貯炭の山ができて来て、従つて労働賃金などがすでに払われないというようなところが今至るところにできて、そのためにいろいろ問題が起つて来つつありますが、こういう問題に対する政府の当面の解決策、あるいは将来に対する生産費を下げて行く対策、これらについて大臣の具体的な御意見をお伺いしたい。
  127. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほど仰せの、中小炭鉱について機械を改造するために三十億か三十二億か、その辺はつきりしませんが、その融資、それから大手筋に対して四百何十億、これもはつきりいたしませんか、その予算についての法律案は、この再開国会にぜひ出したいと考えております。それから当面の問題といたしまして、賃金不払いとかなんとかいうことで非常に困つておるというお話がございましたが、実はそのようなことは、私中小企業者方面からの陳情などをよれ存じておりませんので、これは部内の所管局長から事情をよく聞きまして、実情に応じて適当な対策をとりたいと考えております。
  128. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石炭局長にお尋ねしますが、大臣がさつきから答弁をされておられる考え方は私非常に賛成です。山もつぶさぬ、企業整備もせぬ、失業者も出さぬ、労働者を不幸に陥れぬ、こういうことをやることは、私まことに賛成です。ところが具体的にはすでに火がついて、どんどん社会問題が起りつつあります。これは石炭局長が一番よく知つておられると思う。そこで今の状態であれば、おそらく何万人の失業者が出るか、一千万トンの貯炭が売れないという状態が出て来れば、これは日本の全体の出炭の四分の一弱が売れなくなる状態が出て来る。そうすると炭鉱労働者の四分の一弱がやはり失業するものと考えなければならぬ。これはあらかじめ考えておかなければならぬ問題である。現に失業問題が出て騒いでおるところがある。こういうところは賃金も払えない。そこで貯炭が売れたら払うといつておる。しかし貯炭が売れないのだから払えない。退職手当もやらぬ、予告手当もやらぬ、働いた賃金も払わぬ。みんな貯炭に名をかりて払わないでおる。非常に深刻な問題が現在も起つておる。おそらく七月、八月になれば、石炭事情に詳しい石炭局長はもう想像がついておると思う。労働者は働いた賃金ももらえない。首を切られても、予告手当も、退職手当ももらえない。こういう状態でほうり出されて、あといかんともすることのできないという悲劇が起りつつある。こういう具体的な問題に対して、これらを労働省との間にも話をしながら、どのように事務折衝をしつつあるか。その過程をお伺いしたい。
  129. 佐久洋

    ○佐久政府委員 お答えをいたします。ただいま一千万トンの貯炭ができれば、大体四分の一の失業者が出るというお話でございましたが、この点については、若干私ども見解を異にしております。と申しますのは、各産業が通常の操業を続けている場合におきまして、工場の手持ち及び全国の貯炭を合せますと、大体五百五十万トンから、少しよけいなときには六百万トンくらいの貯炭というものが通常の状態であるわけでございます。従いましてそれよりも過剰になりますと、石炭というものは置場にも非常に困りますし、ほうつておけばこれが風化する、あるいは硫黄があつて自然発火するという、扱いに非常にやつかいなものであるだけに、担保力に非常に弱い関係で融資にかなり困る。そこで炭鉱そのものの操業がきわめて困難になるということでございます。ただいま予告手当も退職手当ももらえない、それらの失業者について労働省とどういう話しをしているかという御質問でございますが、先ほど大臣からお話がありましたように、政策といいますか対策そのものはまだ完成いたされておりませんので、実は労働省の方とは正式な話合いをする段階になつておりません。若干操業が困難になつたために経営を落したという炭鉱もございますが、少し企業がまとまつたところにおきましては、生産を制限するからただちに廃坑するというようなことは実際は行われないものなので、その間に配置転換を考えるとか、あるいは超過勤務をやめるとか、あるいは操業時間を平均的に短縮する。さらに操業日数を短縮するとか、いろいろ方法を考えまして、できるだけ失業者を出すというような方法をとらないように努力をいたしているはずでございます。ただ自然条件が非常に悪い、つまり炭質が劣悪であるとか、あるいは坑内の条件がきわめて悪くて、生産費がよその平均よりも高くついた、あるいはいろいろの原因で社内の蓄積が非常に少かつたというようなところについては、この不況の波が予想外に早く来ていると思いますので、目下せつかく省内におきましてその対策を検討いたしておるところでございます。
  130. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石炭局長考えは非常に甘いです。それは私が申すまでもなく、昨年炭労争議が起つて解決される当時は、日本にはたとえば若松の貯炭場とかそういう貯炭場には石炭が一トンもなくて、踏みつけられた粉炭までおこして工場にたいている。もしこれがあのストライキがなくて平常のような状態で出炭をしておつたとするなら、もう今日一千万トンの貯炭は突破しております。あのとき一つも炭がない状態であつたのに、わずか四箇月、五箇月そこそこの間にこれだけの貯炭ができて来た。だから今のような状態で進むならば一千万トン以上の貯炭ができることは、これはくろうとがみんな見ております。この上に通産省はさらに百万キロワットの重油を入れるということになるなら、これでまた二百万トンの石炭が切りかえられて来るなら、いよいよもつ非常な動かすことのできない大きな貯炭になつてしまうことは明らかであります。従つて局長が言われるように、配置転換とか、いや何とかいうことでそんなところで待つておるところはどこもありはしません。どこもかしこも半失業者、失業者の処置にすでに労働省も困つておる状態ではありませんか。この点は局長考えが甘いのであるからもつと深刻に考えて、この問題は事前に対策を立てられなければ取返しのつかない状態が出て来る。こういうことから大きな炭鉱の全体のストライキが起るなどということになるなら、これは政府政策対策の弱体無能から来る、政治上の失敗から来るストライキであるから、政府が責任をとらなければなりません。これは政治争議であるといつて政府は逃げることはできません。政治の失敗から来ることであります。こういう点を私は事前に強く警告をしておきます。そこで生産制限云々というが、政府は生産制限を指令し、命令してやらすことができるかどうか。これをひとつお伺いしたい。
  131. 佐久洋

    ○佐久政府委員 現在業者自体の不況に対するカルテルというようなことが独禁法の関係で禁止されておりますので、業者みずからの申合せというような方法はとれません。ただ各企業としては自己の企業を守るためにおのおの自己の判断において生産制限をするという第一段の手は当然とられるものと思います。政府としていよいよこの窮境を打開するために必要なる場合は生産制限の勧告という方法が一つございます。これはかつて綿紡について行われた方法であります。
  132. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府がそういうものをお出しになる場合には必ずこれに食いつかれて来るということが起りますが、これらに対する用意と準備はよろしゆうございますか。
  133. 佐久洋

    ○佐久政府委員 現在生産制限の勧告というような問題についての可能性、それの利害というような問題も同時に対策として考慮いたしております。
  134. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これはどうも私が具体的に説明を求めるけれども、なかなかできそうではございませんから、これは休会明けにさらにもつと深刻になつて来ますから、その折にこの具体的な炭鉱問題をひとつ聞くことにいたします。  先ほどから保留になつておりました油に対する関税の問題、石炭に対する関税の問題、これらに対して鉱山局から和田説明員が見えたということでありますから、和田説明員から保留になつておる問題についてひとつ答弁を願います。
  135. 石原武夫

    ○石原政府委員 便宜私からお答えを申し上げます。先ほどの御質問のうち、たしか第一点にあつたと思いまするが、石油精製会社で外国資本と提携をしておるものをまず第一に申し上げます。五社ございまするが、一つは日石とカルテックスが提携をやつております日本石油精製という会社でございます。これはカルテックスと日石と五〇%ずつでございます。その次に東亜燃料、これはスタンダードと提携をしておりますが、これはスタンダ—ドの持分は五五%でございます。その次に昭和石油、これは英国のシェルと提携をいたしております。これはシェルの持分が五〇%でございます。その次に三菱石油アメリカのタイド・ウオーターと提携しておりますが、このタイド・ウオーターの持分が五〇%、もう一つ興亜石油という会社がございますが、これがカルテックスと提携しておりまして、カルテックスの持分が五〇%でございます。この外国資本と提携をいたしております五社の地位と申しまするか、全体の石油精製に占める地位がどれくらいになるかという点は、いろいろ見方があるかと思いまするが、原油の精製の処理量で参りますると、大体七五%前後でございます。  その次のお尋ねは輸入税の問題だと思いまするが、これは現在の関税法の建前では一〇%の税がきめられてございまするが、これは御承知のように国会等で毎年一年限りということで延ばしておるようでございまするが、現在は暫定的に税をかけないことになつておりますので、現在では原油、重油につきましては無税でございます。その理由は先ほどちよつと申しましたが、日本石油の生産が全体の需要量の五、六パーセントになりますが、三十数万キロございます。従いまして九割何分というものは輸入にまたざるを得ませんので、それらの需要者の負担をできるだけ軽くするという趣旨からいたしまして、現在無税にいたしておるわけでございます。これは先ほども申しましたが、石炭につきましても、これは石油とは事情は違いますが、現在入れております強粘結炭及び弱粘結炭の一部は、日本国内生産ではまかなえないために、数量を限つて輸入をする方針でございますので、これらも輸入をいたします数量をきめて、輸入をいたす上に、税がかからないものを消費者に渡す方か消費者のためになるというので、税をかけておらぬわけであります。  その次にお話がございました石油各社の収益状況あるいは利益処分等は、今手元に資料が整つておりませんので、至急に整えまして文書で御返事をさせていただきたいと思います。
  136. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣もお聞きの通り状況です。そこで今日では日本産業を圧迫して来ておるのであるから、これに対して課税するということは、自主独立国家として、国家の権威から見ても当然だと思う。これらに対して課税をされる意思があるかどうか。あるいはまたこの圧迫をしておるものに対する制限をしようというようなお考えがあるかどうか、この点をひとつ大臣に伺いたい。
  137. 岡野清豪

    岡野国務大臣 関税をかけるという点においてはもう自主独立しておりまして、われわれがかけようと思えばかけられる段階になつておりますから、われわれが自主権を失つておるわけではありません。ただ経済政策上、かけた方がいいか、かけない方がいいかということは、これはまつたく純経済的の問題でございます。ただいま御説のような石炭の状態に直面しておるものでありますから、それも総合いたしまして研究の余地があろうと思つております。
  138. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大分時間もたつてつたようでありますから、その他の理解できない問題については休会明けのことにいたしますが、さらにもう二、三点お伺いしたい。それは外国からの輸入品に対しては、今質問をしておりますような、油、石炭、そういうものに対して無税で、日本産業を圧迫されて来つつある。そこで輸出日本品に対して外国の関税関係はどのように扱われておるかを、おもなものでよろしゆうございますからお示しを願いたい。
  139. 岡野清豪

    岡野国務大臣 政府委員をして答弁いたさせます。
  140. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 日本の商品の海外における関税でありますが、現在なおガット等に参加しておりませんので若干不利な待遇を受けておるところもございます。しかしながら近くガット加入も実現するでありましようから、その不利な点は改善することであろうと考えております。
  141. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今私がお尋ねしました具体的なおもなるものに対して御答弁がないのでありますが、これは多分資料によらなければならないものだと私も思いますので、おもなるものでよろしゆうございますから、日本輸出品を多く輸入しておりますところのそれぞれの国別に、どのように関税をとられておるか。その関税がどのように漸次高められつつあるかというような点をお示し願いたい。というのはだんだん日本商品入るべからずというような状態があるようであります。そうすると日本国内でいかに優秀な安い品物をつくつても、相手国が一方的に関税障壁を設けるということになれば、それこそ国民が、あるいは勤労者が生活を犠牲にして輸出をはかろうとしてもそれは不可能でございます。いたずらに相手国の関税かせぎの犠牲になる以外にない。そういう点は漸次どのような動向にあるかを具体的に資料を出していただきたいと思うが、いかがですか。
  142. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 資料として提出いたします。
  143. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それは具体的に資料を出していただいて、それを見た上でお尋ねをすることにいたします。  ガット加入の問題はもう昨年の夏ごろからこれは問題になつておる。加入しておらぬために一方的にきめられて来るので日本がいかに窮地に立たされておるかということは、これはもうあえて申すまでもない。ところがもうじきにできる、もうじきにできるということを政府の方ではその都度答弁をしておるようでありますが、一向具体的にならない。そこで大体において今年の何月ごろまでにガット加入問題は具体的に成立するのか。それらの見通しについて答弁をしていただきたい。
  144. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 日本のガット加入の問題でございますが、昨年の十月及び本年の二月のジユネーヴにおける会議におきまして、原則的には日本の加入を認めるという大勢になつたわけでありますが、まだそれを正式に決定する総会が開かれません関係上、今日のところいつ正式の加入が認められるかということは、はつきり申し上げる段階にない存であります。当初のわれわれの目標といたしましては本年の末ごろということを目標に考えておつたのでありますが、現在のいろいろな情勢からしまして、いま少し遅れるのではないかというふうに考えております。
  145. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 伺つておると、もうきわめて早い機会にできるのじやないかと思つて私は喜んでいたところが、今年の末ごろか、さらに遅れるのじやないかということになると、来年のことを言うことになります。来年のことを言うと鬼が笑うという話があるけれども、一体そうばかばかしいのろまな話があるだろうか。このガット加入の問題こそが日本が自主独立国家であるかどうかということを決定するものであります。これに加入のできない限りにおいては、経済的に日本は自主独立国家とは言えない。言えないでしよう。おそらく大臣にしても政府委員にしても、ガット加入のできない今日、相手方が一方的に何でもきめて、それに盲従しておらなければならない。いかに不利な状態に追い詰められておるか、これをして私は自主独立国家でございますということを答弁できる人はなかろうと思う。それがしかもこのために厖大な損害を受けつつあるのである。一体それが独立国家になつて一年たつてもできない、二年たつてもできないそういうばかばかばかしいことがありますか。この点は、これは岡崎外務大臣に出て来てもらつて、ひとつ答弁をしてもらうことにして、委員長、これは保留しておきます。  通産大臣にいま一、二点ばかりお伺いしたいんですが、吉田内閣は昨年の夏の終りごろでしたか、昭和二十八年度の輸出貿易は十七億ドル以上やるということを発表しております。ところが昨年の冬ごろになつて十一億ドル余に修正せざるを得なくなつたということを発表しております。この七億ドル近くの輸出貿易ができなくなつたということは、日本経済にとつて大きな問題でございます。そういう点から輸出品が今日滞貨をなしつつある。そのために非常に経営が苦しくなつて、いろいろトラブルの起つておることは御承知通りである。一体この七億ドル近くも輸出貿易ができなくなつたという根拠、そういう点をひとつ具体的に大臣からお示しを願いたい。
  146. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私よくまだ調べておりませんので、政府委員から答弁いたさせまして、御説明申し上げます。
  147. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 ただいま目標よりも七億ドルばかり輸出の実績が少くなつたというふうなお尋ねのように伺つたのでありますが、これは何かの間違いではなかろうかと思つております。昨年度の輸出の見通しとしましては、いろいろ情勢によりまして、変化も加えましたが、従いまして、最終的な輸出の見通しからいいますと、実績はそう悪くはなかつたのでありますが、当初通産省で目標として考えておりましたのは、たしか十二億四、五千万ドル程度を考えておりましたので、従つてそれから見ますと、今年の三月に終る一年間においては、十一億六千万ドル程度でございますので、若干減つたというように思われますが、七億ドルと申すのは何かの間違いではなかろうかと思います。
  148. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私が言いました数字は、政府側の発表として昨年夏の末に十七億ドル以上輸出貿易をするという発表をしばしばしておるのでございます。大新聞など全体にわたつて、報じておりますし、政府はこれを取消しておりません。それから昨年の暮れになつて十一億ドル余に修正するということもこれまた政府のものとして発表しておるのでございます。そこでこの間の数字上の開きは幾らかあるとしてもも、とにかく輸入は御承知通りにだんだん多くなつて行く、輸出の方はだんだん窮地に立つておることだけは間違いありません。たとえばこれは前の問題になりますけれども、重工業品、特に鉄鋼なり化学製品というものが、外国市場において日本の製品が四、五割高い、これが非常に困難な市場の問題だということをしばしば訴えられおるのであります。それからインドに対する硫安の輸出、いわゆる入札についても西ドイツなり、イギリスなり、べルギー等の関係を見ると一三割以上日本が高いというので、この落札は日本はとれないだろうということが発表されておる。こういうように大きな品物について、日本商品が高いためにその市場を確保することができないでおる。これが大きな悩みになつておるわけで、こういう点がやはり輸出の上に思わしくない。これはもちろん関税障壁を設けられるということもありましようが、そういうわけで輸入の方はだんだんふえて来る、輸出の方はなかなか思うように行かない。そういう点から遂にアメリカの駐留軍関係というか、軍事関係というか、特需関係というか、あるいはMSAの関係というか、そういうものにたよらざるを得ないという状態を苦しまぎれにつくるのでございます。こういう正常にあらざる日本産業経済状態をもつてアメリカヘの依存的な考え方をもつてするならば、経済支配を通じて、軍事的にも、政治的にも支配をされるということは論をまたないところである。こういう点に対して通産大臣は、この行き詰まれる輸出の現状、輸入がだんだんふえて来る状態、そうしてアメリカ経済に何でもいいから依存して行こう。そうして日本の独立国家の自主権を失う、いわゆる属国的な支配をいろいろな形で受けておる、こういう状態をどのようにして打開しようとしておられるか、その幾つかの具体的な点について、ひとつ自分はこういう信念を持つて行くということをお示し願いたい。
  149. 岡野清豪

    岡野国務大臣 昨年の例で見ますと、特需の関係で七億八千万ドル日本経済は助けられておるということは事実でございます。そこで私の考えといたしましては、お説と同じようにそういうものに依存して日本経済を維持して行くことは邪道でございまして、どうしても一日も早くこれを解消して行かなければならない、こういうことはむろん私はまつたく御同感でございます。日本が今置かれました経済上の地位から申しますれば、まあそういうものがあつたから今日の経済の安定もできて来たのだという結論も立つわけであります。しかし、これはお説の通りに、そういうふうに依存せずに、いわゆる正常な貿易、自主独立の、自立の経済を打立てて行かなければならぬ、こう考えますので、私どもといたしましては、輸出を増進し、また輸入を防過して、そうして特需というものを置かなくてもりつぱにやつて行ける、もし特需があれば、それは景物というくらいにやつて行きたいと考えておりますが、何を申しましても、今の日本というものは、原料など向うから輸入しなければつくることもできないというような情勢もありますので、急速にこれを改めて参るわけには参りませんが、できるだけそういう方向に参りたいと考えております。輸出の振興につ毒しては、輸出振興のいろいろの手がございましてこれはたびたび申し上げたことでございますが、今の日本といたしましては、経済立場から申しましても、ちようど平和の時代でございまして、また自由貿易が非常に発達しております時代でございますれば、品物をうんと安くていい物をつくればどんどん売れて行くはずであります。そういうことがありましても、外国で関税同盟とか、不買のような協定なんかもつくりまして、日本のいい商品がはけなくなつたという時代もございました。しかしそういうことがありましても、まあできるならばいい品物を安くつくる方向に進まなければならないのでありますが、しかしただいまの情勢でありますと、たといいい物をつくつたつて外国でこれを買つてくれるのではなく、また外国も非常に資金が不足を来しておりまして、買いたくても買えぬというようなことで輸入制限をされております。まず第一に今日の情勢といたしまして大事なことは、外交交渉によりまして相手方が輸入制限を緩和し、できるだけ日本の物を買つてくれるというふうに手を打つことが必要ではないか、その点につきましては、日英会談がこの間成功しまして、相当緩和しました。また。パキスタン、アルゼンチンなんかと協定ができましてよくなりました。そういう方面でますます努力をいたしまして、品物を買つてくれるような意欲を起すような方向に進んでおります。  それから問題は、通常の経済原則から見まして、物を安くつくるにつきましては企業の合理化が第一でありますが、その他金融方面で援助が必要なら金融面の援助をして行かなければならぬし、それからまた税法の改正をいたしまして輸出に関係する企業の経営を楽にする、そのためには相当税法上の点で考慮し、検討して援助して行かなければならぬ、こういうふうに考えております。  また輸入の防遏につきましては、先ほども他の委員に御答弁したのでありますが、まず数量は少いと申しましても、日本の今の経済の置かれている苦難のとき、非常にぜいたくなものが使われておる、これは金額は小でございましても、抑制しなければならぬこともございますが、またそうすることによつて国民の元気も出してもらいたいと考えております。その点におきましては、輸入の一番大きなものは食糧とか、繊維製品なんかの原料、資材でありますが、食糧の問題も、やはり輸出貿易、すなわち国際貿易立場から行きましても、日本食糧を増産し、食糧自給をする——自給まで行きませんけれども、できるだけ外国から食糧を少く買う、すなわち外貨を節約するという方向に行きたいと思います。また向うから原料を輸入して行かなければならぬ軽工業につきましても、できるだけ日本国内資源を開発しまして、その資源によつて外国へ高い金を払つて原料を買うよりは、国内の資源でこれをつくつて行く。総合施策としていろいろなことがございますが、要は外交によつて売る力、すなわち販路を確保して行く、またその販路拡大して行くということが一番大事であります。第二段といたしましては、できるだけ企業の合理化とか、何とかいう方面につきましては、先ほど申し上げましたような税法の改正とか、金融措置ということをいたしまして、企業を助け、行く。またそういうことをしてコストを安くして行くことを考えております。いろいろ具体のこともございますが、これを具体的に申し上げますれば長くなりますし、その具体的方策をいかにして行くかということは、ただいま勉強しているわけであります。
  150. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま一点だけお伺いいたしますが、従来日本輸出貿易かせぎをするということは、低賃金、長労働時間、いわゆる賃金操作で外国市場へ売れ、こういう経営者の考え方であります。ところが日本の今日、今後においてもはや従来の国際的に非難されたソーシャル・ダンピングのやり方では、断じて外国市場において打ち勝つことはできません。また低賃金、長労働時間なんということは考えられません。ところがだんだん言後鼻的に議論をされて来まして、長い労働時間と安い労働賃金というものは決していい品物をつくるゆえんではないという結論が今日出されております。そこでこの点については、資本家か古い観念に立つてやろうとすることに対して目をさまさせるということが、通産省の指導上の立場から来る新たなる使命だと私は考えておりますが、こういう点に対してどのようにお考えになつておるか伺いたい。  それから欧米に対する日本の今後の輸出額を高めて行くということは不可能であると思つております。のみならず彼らは従来自分らの植民地であつたこの地域においてさえも、日本商品の入つて来ることをいかに妨害しようかということに懸命になつていることは御承知通りであろうと思う。そこで今後の日本輸出貿易かせぎをしようというところは東南アジア以外にありません。そういう点から多分吉田総理大臣も最近東南アジアに非常に期待をした言葉をしばしば発言されているのであろうと思つております。ところがもう講和条約を結んで二年にもなるのに、未だ友好親善関係を復活しておらぬ。これは賠償問題にからまるからでしよう。こういう点から、友好親善関係が復活しないのであります。たとえば率直に言えば、従来の敵国と同じような状態であるというところに、いや開発だ、いや貿易だと言つて、われわれが尽すべきことを尽さないで、いろいろなことを言うことは、日本はわれわれ民族独立国家を何と心得ておるか、こういう感情的な反撃をもつてこたえられるということが想像できる。だから今のような状態で、開発に協力するとか、指導するとか、いろいろなことを抽象的に発表すること自体が、日本に対する反民族感情をあふるゆえんではないかということを想像する。だからやはり東南アジア以外に日本の今後の産業の力、経済復興の力、国民生活を高めて行くところはないのでありますから、ここに向つては早く友好親善関係を復活さす、いわゆる外交上の問題、その上に立つて経済外交上お互いに理解と協力を打立てて行く問題、こういう一つの基礎的な問題を先に解決をしない限りにおいて参具体的な貿易取引というものは非常に困難であろう、こういう点について通産大臣日本貿易かせぎになお期待するところがあるのか、いや今後は東南アジア以外に期待するところはない、それで東南アジアこそがこの狭い国土に一億の人口を養つて行こうという重大な生命線であるから、この問題を解決するためにはどのように外交上の問題1これは外務大臣でなければなりますまいけれども、なお経済大臣として、経済上有無相通ずる、友好親善の上に解決しようということについてどのような構想をもつて今後臨もうとしておられるのか、ただゼスチユアだけでよけいなことを言うということは、ちようど日本アメリカにあまりよけいなことを干渉するなと言うのと同じような、より以上の反民族感情が起ると想像される。そういう点に対して、より具体的に、どういうようなことをもつてこれと取組んで道を開こうとお考えになつておるか。これはもちろん大臣の、あるいは希望であつたり、あるいは構想であつたり、あるいは努力したいということに今日の場合とどまらざるを得ないであろうけれども、いろいろな甘い考え方政府側からも、しばしば出されておるようでありますから、こういう点持して、なかなか甘くはないのだ、どういうような苦心と努力をしなければならぬのか、特に最後にこれらの重大な問題に対する大臣の信念をひとつお伺いしたい。
  151. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。第一の賃金の問題でございますが、これは労使相対立しているというような観念で、労働者の方から申しますと資本家が悪い、資本家の方から見れば労働者の要求が大きいということがいつも問題になるようでございますが、しかし、ただいまの日本の置かれておりますところの法制上の建前から行きましても、また戦後民主主義になりました国民感情から、行きましても、その賃金をうんと安くして、そうしてそれでもつてダンピングして行こうというようなことは、事実私はできない問題だと思います。その点につきまして私は、むろんお説のように資本家にも反省を促すことは躊躇いたしませんけれども、賃金をカットして、そうして商品を安く外国に出そうというようなことは、資本家も考えておりませんし、またできることでもなかろうと思います。お説の通りに、賃金を安くして長時間勤めさせたからといつて能率の上るものではありません。むしろ賃金を上げて短かい時間働かせると、それに対応して労働者の方でも感激して働くというような点もございましようから、これはやはり各企業々々の労使の間の、いい理解のもとに物事を運んで行くことを希望すると同時に、そうして行きたいと思います。これから欧米に対してわれわれの輸出貿易が今後どうなつて行くかという見通しでございますが、私まだ十分各国情勢を調べておりませんから、個個の具体的のことは申し上げかねますが、しかし世界の第三次大戦が遠のいたという感じで行きますと、その段階にいろいろ過程ありますけれども向うではやはり生きて行くために、相当世界に商品を売り出すという努力を続けるにきまつております。そういたしますと、日本の商品の入つて行く余地がない。こういうようなことにも考えられますけれども、しかし私の考えといたしましては、たといそういうふうなことになりましても、経済というものはまた別でございまして、いろいろの関係で物が売れることがたくさんあるのでございまして、私は欧米に対して、今後日本の商品を入れる余地がなくなるだろうというような悲観論は持つておりません。  それから東南アジア開発ということがよく出ますが、これはお説の通り日本がもと申しましたような功利主義経済をするというようなことに逆にとられること、そういう考えはないのでございますから、そういうことを向うの国民感情に与えるということはよくないと思います。その意味におきましてわれわれといたしましては、向うでほしい商品をできるだけ出したい、また向うで技術の必要がありますれば、技術もこちらで出してよろしい。向う経済を促進して行くのに、非常に近い日本において役に立つことがあればどんどん役に立たしてもらいたい、こういう立場であります。東南アジアとの問題は、お説の通り賠償問題がひつかかつておりますけれども、賠償問題はやはり政治問題でございますので、政治問題は政治問題と一応しまして、外務大臣が十分努力をしておりますけれども、もうすでに東南アジアとは、金をとつて来るのに困るほど実は輸出もできておるような経済上の緊密な関係ができておりますので、この情勢をますますよくして行くことに努めたい、こう思います。われわれといたしましては、政治問題は政治問題でございますが、その陰に、向う経済発展のために希望しておるものがやはりあるのでございますから、それに協力したいと思つております。  そこで私戦後におきまして考えておりますことは一日本において外国貿易をしておる商社の信用が戦前のごときものでないことで、これを非常に遺憾に存じております。私一昨年イギリスに参りまして——これはほかの用で参りましたのですが、向うの実業家に会つてみますと、こういうことを言つてつたのであります。日本にはもと三井、三菱とかなんとかいうのがあつて、三井と聞けば安心して物を注文しても売つてもよかつた。それにかかわらず、今では一体何という商社が日本で信用があるのか、また実力があるのか実情を知らないので商売が非常に停頓しておる。もし帰つたならば、日本政府において、これこれの商人は信用が置ける。基礎確実のものであるという通知を出してくれということを聞いたこともあります。そういう意味におきまして、これは一例でございますけれども日本の商社の海外貿易力、信用、内容とかいうものが、戦前に比べて非常に劣つている、この点は、私は日本の敗戦後の欠陥だろうと思います。こういう方面にも私は力を注ぎまして、商社の育成発展に努めて行きたい、こう考えております。  お説のように、日本が開発するという言葉を自主的に使うことは愼むべきことだろうと思います。
  152. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 まだお尋ねしなければならぬ重要な点がございますし、なおまた外務大臣等に来てもらつて聞かなければならぬ点等もございますが、しかし本日は非常に時間がたつて参りましたから、いずれ休会明けの機会に質問をいたすことにいたしまして、本日はこの程度で私の質問を一応打切つておきます。先ほど大臣及び政府委員から約束をされましたそれぞれの資料は、すみやかに提出してもらうよう委員長からも特に政府側に要望していただきたいと思います。  以上をもつて私の質問を一応打切ることにいたします。
  153. 大西禎夫

    大西委員長 承知いたしました。  それではこの際小委員会設置の件についてお諮りいたします。  国政調査の一方法といたしまして、小委員会を設けたいと存じますが、小委員会の設置はその必要のある場合に限り理事会の協議によつて設けることといたし、今回は理事会の協議によりまして遊休施設活用に関する小委員会、石炭に関する小委員会、化学肥料に関する小委員会、以上三小委員会を設けることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。  次に小委員及び小委員長の選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければ、遊休施設活用に関する小委員として    村上  勇君  小平 久雄君    山手 滿男君  加藤 清二君    山口シヅエ君  首藤 新八君  石炭に関する小委員として    田中 龍夫君  中村 幸八君    柳原 三郎君  下川儀太郎君    伊藤卯四郎君  始関 伊平君  化学肥料に関する小委員として    土屋 宗明君  福田  一君    笹本 一雄君  齋木 重一君    永井勝次郎君  中崎  敏君  小委員長として遊休施設活用に関する小委員長山手滿男君、化学肥料に関する小委員長に土倉宗明君を御指名いたします。  なおこの際お諮りいたします。小委員会において参考人を招致いたす場合には委員会の許可を得ることになつておりますが、化学肥料に関する小委員長より参考人招致に関しあらかじめ委員会の許可を得たい旨の申出がありますので、これを許可いたしたいと存じますが一御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十二分散会