○安武参考人 ただいま御指名を受けました全国
信用金庫協会の常務安武でございます。
お話を申し上げます前に、
関係がら
信用金庫の現況につきましてお話いたしたいと思います。
信用金庫は、御承知の通り、一昨年
法律が施行せられまして、従来の信用
協同組合から組織を変更して参
つたものでございますが、本年の六月十五日をもちまして、この改組
期間が満了いたしたのでございます。従つて組織面におきましては、態勢が一応整
つたわけでございますが、これによりまして、全国に五百六十一の
信用金庫が誕生を見たのでございます。そうして国民大衆、特に
中小企業者の
金融にそれぞれ活動をいたしておる次第でございます。
信用金庫の現況につきまして大ざつぱに申し上げてみますと、現在預金総額が、この五月末におきまして千六百五十億でございます。これを金庫法施行前、すなわち二十六年の五月末に比べますと、当時が五百二十六億でございますので、まさに三倍に
なつておるわけであります。従つて法施行後の二年間におきまして、一千億を
増加したということに相なります。これは
信用金庫の制度が非常に確立されまして、
一般大衆に受けました面と、業務の面が非常に拡大されて参りまして、現下の
中小金融の逼迫に相こたえました結果であろうと思います。
このような
増加ぶりを昨年の各
金融機関別の貯蓄目標の達成率について見ますと、
銀行が一四一、
相互銀行が一二一、郵便局が一三四に対しまして、
信用金庫は最も優秀な成績で、一六二という指数を示したのでございます。このような
資金量の増大は、
中小金融に対します貸出しの面におきましても、飛躍的な
増加と
なつておりまして、その総額は、手形の割引を含めまして一千二百八十億でございます。これもまた二年前の三・三倍以上に相当しておりまして、昨一箇年間におきまして新しく貸出しをいたしました
件数は百八十二万件、
金額にいたしまして二千六百四十二億に及んでおるのでございます。これらの詳細な数字は、別にお手元に簡単な表を差上げてありますので、ごらん願いたいと思います。
その三ページにありますように、
中小企業庁の
金融機関別の
中小企業融資調べにおきましては、そういう実績を示したので、二十七年の三月末におきましては、九・四という割合でありましたが、二十八年三月末におきましては、一二・一という数字に相
なつておるわけでございます。従つてこれらの一件あたりを見ますと、大体十四万円くらいのところでございまして、最近一、二年では一万円から二方ずつ一年に上つておりますので、
信用金庫は、
零細企業や
中小金融を忘れたのではないかという非難をする向きもあるのでございますが、決してそうではございません。試みに一番最後の表に
金額別の貸出し
状況を差上げてございますが、本年の三月末の数字がまだ未調査でございまして、二十七年三月末の表をごらんになりますと、十万円以下の貸出しが、
人員にいたしまして六五%
金額にいたしますと一六%という
状況でございます。かりに三百万円超のものを考えてみますと、
人員にいたしましてはわずかに〇・二%、
金額で八・七%を占めておるという
程度でございまして、大体三十万円以下が
中心に
なつておるというのが、その表に如実に現われておるわけであります。
次に、
中小金融の問題、特に
類似金融対策に関連をいたしまして、私見を申し上げたいと思います。私は率直に申し上げまして、最近の株主相互
金融、あるいは匿名組合契約によります
金融につきましては、その実績が非常に大きな活躍をされておるのでございますが、これは戦後の
経済不安定の時代におきまする一時的なものではないか、永続する制度でないのではないかというふうに考えます。特にこれらの機関は、金利が非常に高いということでございますし、また高くなければ成り立たないわけでございます。これを
中小企業の面から申しますと、大企業の方は金利は低いが、
中小企業は高い金利でなければいけないというような
状況では、
中小企業の振興はできないわけでございまして、やはり
中小企業にとりましても、できるだけ安い金利のものを提供しなければいけない、こういうふうに考えるのでございます。なお株主相互
金融の様式によりますと、株式をお引受けになりまして、三倍までは原則として貸されるということがよく言われておるのでございますが、この三倍を貸すということでは、
担保も十分ない、また信用でお貸しになるわけでありますので、こういうようにただ数学的に三倍まで貸すということは
金融常識からいいまして、きわめて危険なものではないか、やはりほんとうに貸せる人と貸せない人をしつかりと判別すべきではないか。そういうことでございますので、三倍まで貸しますと、集めました
資金よりも常に三倍の
資金が必要でございますので、
資金がふえております場合はそれも成り立ちますけれ
ども、
資金の
増加が鈍化して参りますと、そうしたことができにくいというような面からも、これは制度的に不十分ではないかというふうに考えます。そのほか先ほど申しましたように、集金等によりましてサービスをされておりますが、これの人件費、あるいは利息に相当するものから考えてみますと、相当コストの高いものでございます。この点は先ほど申しましたように、もつと安い金を
中小企業者には貸してやるという建前からいたしましても一相反するものだというように考えます。これを利用しておる人たちも、あるいはごく零細な人も多いと思いますが、最近の
新聞等で見ますと、大
会社、有力
会社の手形の不渡りの問題に関連をいたしまして、こうした金がかなり利用されてお
つたということが現われておるのでございまして、これは言われる通りの、必ずしも
零細企業者だけのものではないということで、
経済破綻といいますか、そうしたものの温床に
なつているのではないかということを憂うるわけであります。この問題につきましては、前国会のときに
銀行局長から、法令的に適法に処理されておりまして、現在では非合法とは言えないという説明がなされたのでありますけれ
ども、私は今申しましたような点から、むしろこれは商法上に不備があるとするならば、商法の
改正もいたしまして、こうした制度の発生の余地のないようにすることが必要ではないかと思います。現在金庫という名称使用の禁止の
法律が御審議中と伺つておりますが、これもけつこうでございます。特に私
どもは
信用金庫といたしまして、これらの金庫と非常に似通
つた名前でございますので、大衆がどちらか判別がつきかねるということで、いろいろな場合に迷惑しておりますので、ぜひともこれはすみやかに通過させていただきたいというふうに考える次第でございます。
しからば、既設の
金融機関からなかなか融資を受けがたいという人には、どういう
方法で
金融をしてやるかということが問題に
なつて来るわけでございますが、この点につきましては、私
ども信用金庫なり、あるいは
相互銀行なり信用組合が、それぞれ真剣に考えておるのでございまして、私
どもといたしましては、なるべく
信用金庫をひとつ活用していただきたいというような宣伝活動も進めておる次第でございます。
まず
中小金融対策の根本といたしましては、何としても
資金を
増加させるということが必要でございます。これがためには、各既設の
金融機関も血眼に
なつて
資金を吸収いたしまして、貸出しの源泉をつくることに熱中しておるわけでございます。また
政府におきましても、国庫の余裕金、あるいは
地方公共団体の余裕金の預託ということも行われておりますが、これも今後はなお
増額して、ふんだんにまわし得るようにしていただきたい。しかも
期間的にも、さらにこれをもう少し長いものにして、長い
期間の金にしていただきたい。こういうふうに考えます。それにつきましては、現在の国庫余裕金では、諸般の
関係で困難であると思われますので、
資金運用部資金を
中小金融の専門機関に預託し得るという道を開いてほしいと思います。この
資金でありますれば、やや時間的にも長く活用できるのではないかと思いますので、現在
地方公共団体への
貸付なり、あるいは社債の引受け、
政府機関への
貸付等に限定されておりますのを、
信用金庫等の
中小金融専門機関にも預託できるよう、
法律改正をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
さらに
国民金融公庫の問題でございますが、この
資金源も年々
増加されておりますことはけつこうなことでございますけれ
ども、これも百尺竿頭一歩を進められまして、この
資金を
増加していただきたい。それとともに、
国民金融公庫は現在員人当り五十万、連帯の場合は二百万というような、かなり高いところに線が置かれておるのであります。もちろん一件当りでは十四、五万というふうに伺つておりますれけ
ども、この貸出し限度はむしろ私は引下げまして、そうして
零細企業、
中小企業の、しかも中以下のところに専念をさせるということが適当ではないかというふうに考えます。特に今回は、
中小企業公庫も設立されるというような情勢下でございますので、百万、二百万というようなところは、でき得れば
中小企業公庫の方にまわしていただいて、五十万ないしは三十万以下のいわゆる
零細企業、
零細金融に専念をさせるというふうにして行つてたくさんの人がこれを活用できる、利用できるというふうにした方かいいんしやないかと思います。
それからいま
一つの問題といたしまして、それに関連をいたしまして、どうも
政府の方におきましては、
中小企業といいますと、すぐ最高が一千万とか、あるいは従業員が三百人というようなところで線を引いておるわけでありますが、もちろんそれらのところでも
中小企業には違いないと思うのでございますけれ
ども、
中小金融のほんとうの金の必要なものは、五十万から百万、あるいはもつとそれより以下のものでありますので、特に
政府機関であります場合におきましては、
一般の
金融機関から融資を受けることの困難なと第一条に書いてあるのでございますので、ねらいを
中小企業のうちの中以下のところに重点を置いてやつていただきたい、こういうふうに思います。
それからいま
一つは、金ができましても、やはり先ほど申しましたように借り得ない、いわゆる信用度の低い人があるのでございまして、この面をいわゆる信用力を補強するというのは、ぜひとも必要ではないかと思います。現在も信用保証
協会の法制化なり、あるいは
中小企業信用保険の拡充強化がはかられておりますが、私はこれらをもつと
政府の力で拡充をしていただきたい。特に十万円以下くらいの特別の保証制度、あるいは保険制度というようなものをつくつていただいて、それによつて、先ほど申しましたように、信用力の薄くて既設の
金融機関から借り得ない、正常の形では借りがたいという
方々には、そうした十万円以下の簡単な保証をつけまして、それによつて
金融機関は積極的に出すというような裏づけをすることが必要ではないかと思います。それらの
資金につきましては、私こまかく計算はしておりませんが、そう大した金が必要であるわけではありませんので、せめて十億から二十億
程度の保証で、最高限度を非常に低いところに置いていただければ、十分活動ができるんじやないかというふうに考えております。
それからいま
一つ信用
協同組合の問題に触れてみたいと思います。
信用金庫法ができまして、従いましてこの信用
協同組合の方は、組合員の機関ということに相
なつたわけでございます。従つて法制的には、一方におきまして
信用金庫は、
一つの地域を業務区域といたしまして、
一般大衆を対象に
金融を行つて行く、それから信用
協同組合の方は、特殊のいわゆる同一の職場でありますとか、あるいは同一の
業種という方がおつくりに
なつてやつておる、こういうような仕組みで、一応
法律的にはわけられたのでございますけれ
ども、実際の面からいいますと、これが強制的に
信用金庫に移行するという仕組みでございません
関係から、そうしたように性格的に
はつきり分離しないで、
一般地域の組合も金庫にならないでおられる向きもあるわけでございます。特に法施行後におきましては、
府県認可の組合ができて参つておるわけでございまして、これなどは大多数が
一般区域を対象にいたしておるわけでございます。従つて、そういう性格的な分離が現在ではきわめてあいまいに相
なつておるわけでございまして、従つて、それらの信用組合の
方々から、員外預金を
信用金庫と同じようにやらしてくわという要望がしばしば出ておることを聞いておるのでございますが、性格的に、信用組合はあくまでも組合員のものでありますから、組合員の現在
程度の預金に限定すべきでありまして、もし
一般大衆を対象としてやるということになりますれば一いわゆる員外預金を扱うということでございますれば、その制度こそ、これは
信用金庫でございますので、信用組合から
信用金庫へ移行するような道を開いてやりさえすれば、問題は解決するのではないか。従つて制度としては、員外預金をやる
信用金庫と、やらない信用組合、この二つの制度がここに
はつきり確立されるということになるわけでございます。その点を特にお願いをいたしたいと思う次第でございます。
なおいま
一つは、信用組合の問題は、最近非常に各地にできて参つております。これも
一般の
金融難を反映してのことだろうと思いますが、やはりこの信用組合といたしましても、
金融事業をやつております。ことにそれらの
一つの破綻が、全体の破綻の先がけにならないとも限りませんので、これらにつきましては、現在
府県の監督下にありますが、今すぐ設立の認可
方針なり、あるいは監督
方針を強化していただくということが望ましいのではないかというふうに考えます。でき得れば、
金融の一元化からいたしまして、
大蔵省の管轄に返すことが適当ではないかというふうに考えております。
以上二、三の問題につきまして私見を申し上げたわけでございますが、これで私の説明は終ります。なお御質問によつてお答えしたいと思います。