○小高
委員 私は、
日本の
公海漁業の
発展と主権の確保に関しまして、大体四点にわた
つて緊急質問をいたそうと思
つております。最初三点を一括述べまして、
あとの一点は竹島に関する問題であります。私は、今、
日本全国の
漁業者が、押し寄せる怒濤と闘いながら、公海上に操業しつつある真剣な姿を念頭に浮べながら、
日本の
公海漁業の
発展と主権の確保に関する
緊急質問をいたさんとするものであります。
去る六月十二日、
日本、アメリカ、カナダ三国
漁業条約批准書の交換も終り、ここにようやく平和への転換、
公海漁業への躍進を期待し得る段階に当面いたしたのであります。われわれは、まさにこの千載一遇の機会においていよいよ腹をきめ、腰をすえ、独立
国家として、権威ある万全の国策を樹立し、光栄ある
責任を果さなければならないと思うのであります。
政府においては、韓国との復興
協力、公海自由の確保に対処する具体案等については、すでに慎重なる研究を行
つておることと思うのでありまするが、顧みて過去における
政府の外交は、遺憾ながら極東情勢の変化に対処する措置のきわめて貧困さを露呈いたしておりまして、国民大衆のひとしく悲憤慨嘆にたえざるところであります。この際私は特に権威ある国策の策定に資するため、次の三点につき、岡崎外務大臣にお尋ねいたしたく、数回にわた
つて、当
委員会に
出席を求めたのでありますが、MSA問題等のために、
出席ができませんとのことでありまして、本日は
外務政務次官が御
出席でありますので、
政務次官からお答えを願いたいのであります。
まず第一点として承りたいことは、去る
昭和二十七年九月二十七日、国連軍によ
つて設定され、このため
日本の
漁業に非常な制約と不便を与えておる防衛水域は、朝鮮の休戦に伴い、必然的に解消されるものと了承してさしつかえなきやいなや。また
政府は防衛水域のすみやかなる解除
方法について、事前にいかなる措置、いかなる交渉をいたされておるか。あるいはまたこれに対する何らの
方法も考慮せられておらないかどうかという点であります。元来この防衛水域なるものは、私の思考するところによればまことに奇妙な存在でありまして、およそ戦時国際法におきましても、その類例を見ないものと思うのであります。すなわち防衛水域と称するものは、敵国の水域にこそ設定して、敵国に対する交易を遮断し封鎖するためには必要であるとしても、これを自国の周辺に設定する理由について実に了解に苦しむのであります。私は
日本の立場よりして、きわめて不可解なできごとであると断ぜざるを得ないのであります。従いまして、今後たとい米国と韓国との間に相互防衛の条約が締結されようとも、かかる防衛水域は、当然この機会において解消さるべきであると信ずるものでありますが、この点につきまして外務省の所信を伺いたいのであります。特にこの際つけ加えておきたいことは、目下さば
漁業の漁期を控え、数百隻の
日本漁船が、公海である朝鮮海峡への出漁を待機しておるという事実を御認識願いたいことであります。
次に第二点といたしまして、終戦以来今日に至るまで、韓国に拿捕抑留された
日本漁船は実に百四十五隻に及んでおるのであるが、これらは一体いかなる理由によ
つて拿捕されたものでありますか、この点を明確にお答えを願いたいのであります。たとえば韓国領海の侵犯によるものが何隻、防衛水域侵犯によるものが何隻というように、類別してお答えを願うとともに、また
政府はこの拿捕抑留の事実及び理由について、その都度連絡を受けてお
つたかどうかということであります。さらに
政府は、韓国に対していかなる交渉をいたされたか、またいかなる措置をとられたか、これらの点についてお伺いいたしたいのであります。なお中共に拿捕、抑留されておるわが国の漁船は、類計百十四隻に及んでおるのでありまして、抑留人員三百七十一名、さらに漁船、漁具の直接
損害のみで約四十億と聞いておるのであります。この抑留されておる
漁業従業員を、すみやかに一般中共引揚者と同様の
方法をも
つて帰還せしむる方策を
政府は
考えておられるかどうか。また拿捕船の返還及び拿捕防止について、いかにお
考えなす
つておられるかを伺いたいのであります。
質問の第三点は、先般批准書の交換を終えた
日本、アメリカ、カナダ三国の
漁業条約についてであります。昨年六月十一日、この条約の締結に関し承認を求むる件につき、本院において開かれた外務、
水産両
委員会連合審査会の席上におきまして、私は岡崎外務大臣に向い、さけ、ますに関する質問中、アリユーシヤン列島の中ほどに位するアトカ島寄りの西経百七十五度線は、同条約による国際
委員会が決定することとな
つていたにもかかわらず、付属議定書においてこの線をきめ、五箇年間自発的に
漁業を抑止するということがうたわれておるのはいかなる理由に基くものであるか。すなわちこれは条約及び議定書をとりきめる際の
一つの手落ちではなか
つたか。しこうしてこの手落ちが一部公海の自由を放棄したという国際的先例とな
つて、将来の
日本漁業を制約し、国際的
漁業交渉の上に大なる禍根を残すであろうことを憂慮し、修正すべきことを提議いたしたのでありましたが、これに対して岡崎外相は、条約及び議定書のとりきめに際し手落ちはなか
つたと確信する、この線を規定し、五箇年間自発的に、
漁業を抑止する旨をうた
つたことは適切な処置であり、これをも
つて世界の各国が、
日本の
公海漁業の制限を承諮したとは信じられないと答弁されておることは、当時私の質問に対する
速記録によ
つて明らかなところであります。しかしながらその後における世界各国の論調を見まするに、岡崎外相の答弁されたこととは
まつたく逆に、断じて安閑たるを許さぬ状態に相な
つておるのであります。たとえば今年三月十日、鹿児島の漁船第三海洋丸がルソン島の北方、パターン島の西方約二十マイルの公海上において、フイリピンの警備艇のために領侵犯の理由をも
つて拿捕せられた事実、あるいは現在アラフラ海における真珠の採取に関し、濠州より提起されておる海区の制限等、要するに諸外国の先に述べました日米加三国
漁業条約を
一つの国際的先例として取扱い、これを基調として
日本漁業を制約せんとするものであり、この点まさに岡崎外相の重大なる手落ちと断ぜざるを得ないのであります。しからば岡崎外相はその
責任をとられるか、再びその所信をただしたいところでありますが、しかしながら顧みて三国の
漁業条約は、すでに批准書の交換を済ませた今日、事ここに至
つた際、特に私はこの重大なる手落ちを本条約に規定する国際
委員会の審議に付し、すみやかにこれを修正するの意図を
政府は有せられてをるやいなやについてお尋ねいたしたいのであります。
以上申し上げました三点は、特に本日御
出席の
外務政務次官の
責任ある御答弁を求めて、私の質問を終る次第であります。