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1953-09-10 第16回国会 衆議院 水害地緊急対策特別委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十日(木曜日)     午後三時四十分開議  出席委員    委員長 村上  勇君    理事 江藤 夏雄君 理事 熊谷 憲一君    理事 田渕 光一君 理事 吉田  安君    理事 滝井 義高君 理事 稲富 稜人君    理事 世耕 弘一君    上塚  司君       大久保武雄君    武田信之助君       綱島 正興君    徳安 實藏君       仲川房次郎君    降旗 徳弥君       坊  秀男君    三池  信君       山中 貞則君    岡部 得三君       田中 久雄君    舘林三喜男君       中島 茂喜君    廣瀬 正雄君       本名  武君    井手 以誠君       辻原 弘市君    芳賀  貢君       原   茂君    八木 一男君       山口丈太郎君    伊瀬幸太郎君       池田 禎治君    小平  忠君       辻  文雄君    堤 ツルヨ君       松前 重義君    佐藤虎次郎君       首藤 新八君    中村 英男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局次長) 原  純夫君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君     ————————————— 九月十日  理事岡部得三君の補欠として吉田安君が理事に  当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  水害地対策に関する件     —————————————
  2. 村上勇

    村上委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事岡部得三君より理事を辞任したいとの申山があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。  つきましては、この際その補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、選挙の手続を省略しし委員長において指名するに御異議ありませんか、     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。それでは吉田安君を理事に御指名申し上げます     —————————————
  5. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。それでは吉田安君を理事に御指名申し上げます
  6. 村上勇

    村上委員長 ただいまより水害地対策について議事を進めます。まず各水害地実地調査につきまして、派遣委員より報告を聴取することといたします。  まず私より、北九州、中国、南近畿地方及び岐阜長野県下状況について御報告いたします。  第十六回特別国会最終日水害地緊急対策特別委員会におきましては、会期中に決定した水害地対策法律調査の終了した地域に対してはただちに政府が実施することを決議する一方、委員会独自の調査対象県として二十一県を決定し、被害地実情を実地に調査し、地域指定等の的確をはかることを決議いたしたのであります。本調査班は、この目的をもつて綱島委員舘林委員滝井委員稻冨委員辻委員及び首藤委員と私をもつて構成され、去る八月十三日東京を出発し、二十数日間にわたり、福岡佐賀長崎熊本大分山口広島岡山鳥取島根兵庫奈良和歌山岐阜及び長野の各県下をつぶさに調査して参つたのであります。ここに私が、派遣委員各位を代表いたしまして、各地実情を報告いたし、今般の派遣の目的である地域指定等について、当委員会の参考の一助に供したいと存ずる次第であります。  まず、総括的に申し述べますと、今回の大水害被害は、従来のわれわれの常識をもつてしてはとうてい律し得られないような異常なものでありまして、被害の及ぶ範囲は、農林土木、通産、厚生、労働、交通等、国家及び地方経済全般にわたる広範囲なものでありますとともに、その被害程度も激甚をきわめるものであつたことは言うまでもないことであります。前国会においてわれわれが立法いたしました特別措置によつて各種復旧事業国庫負担率を大幅に引上げる等の対策をとつて参つたのでありますが、これら特別措置がはたして妥当なものであつたか、あるいは多少の行き過ぎがあつたのではないかという懸念がないではなかつたのでありますが、今般現地を実地調査いたしました結果、各被害地惨状より見て、被災地の早急なる復興、罹災民の更生のためには、われわれのとつた措置はきわめて適切かつ妥当であつたことを確認し、大いに意を強ういたしたものであります。被害地におきましても、これら特別措置法にはもちろん大なる期待をかけているようでありますが、その反面、共通した懸念として感じましたことは、どの程度の予算の裏づけができ、災害復旧に寄与するであろうか、また復旧年次につきましても、四・四・二あるいは六・四の強力な比率による実現を願望しており、やむなく三・五・二の比率で行われるとしても、確実にこれを実現してもらいたいということであつたようであります、われわれといたしましても、できるだけこの被害地の声にこたえるべく、十分なる努力を尽さねばならぬと痛感している次第であります。  以下各県ごとにその被害並びに復旧状況等特徴と思われる点を述べてみたいと思います。  まず、福岡県における被害総額は七百九十三億八千余万円であり、このうち土木関係百七十六億、商工関係百七十四億であり、ともに被害総額の約二二%程度を占めており、農林関係すべてを合せましても二百億近い被害であり、相当高率を占めているのであります。これら被害特徴は、筑後川遠賀川その他の河川決壊による穀倉地帯の大被害、及び北九州工業地帯を占める各都市浸水または山津波による被害、さらに筑豊その他の炭田地帯水害によるものでありますし筑後川本流直轄復旧工事は、二箇月を経た今日、仮堤防締切工事が終了している現状でありまして、さすがに直轄工事の迅速優秀さを現わしていたのは注目すべきでありますが、なお三百ミリ程度豪雨には決壊のおそれがあり、堤防の土が水になじむまでは相当期間不安が続くものと思うのであります。遠賀川は仮堤防工事が三度も決壊されたのであるが、その応急工事は実にめざましく、しかも頑強に築かれまして、みごとなものでありましたが、堤防外農地に水が流出したため大きな湖水ができており、この復旧については河底の泥土をサンド・ポンプで注入する等の方法をとり、完全な復旧を行うべきものと思われました。しかし、この仮堤防も、本堤防より四メートルも低いため、水位が四メートル以上となれば決壊のおそれがあり、必ずしも満足すべきものではないのでありまして、再三の被害に襲われた遠賀一帯穀倉地帯の保全のためにも、すみやかな本復旧が望ましいと思われます。矢部川においても堤防決壊箇所の仮締切行つてはいるが、同様に警戒水位相当下つているため、二百五十ミリ程度の雨が降ると決壊のおそれか多分にあると思われます。また、この河川被害特徴としては、上流の八女郡星野村に戦時帝国鉱発株式会社の金山があり、その鉱滓三十万トンが積まれたままになつていたため、今次豪雨決壊し、危害を与えたのでありますが、いまだ二十八万トンが残つておりまして、危険なる状態にあるのは憂慮すべきことであります。また門司市初め北九州都市においては、山津波による被害が甚大であつたが、いまだ危険な状態が続いており、今後のわずかな雨量によつて崩壊のおそれがあるので、市当局としては暗渠等復旧努力していますが、さらに本格的な砂防工事を早急に行う必要があると認めるのであります。  佐賀県における被害総額は二百二十億円であり、そのうち土木関係五十六億円、農地関係四十一億円、農林関係四十七億円を占めております。本県特徴は、筑後川の、ごとき大河川以外に、嘉瀬川、牛津川等の比較的小河川氾濫により農耕地等流失埋没し、あるいは長期間浸水したものであり、特に嘉瀬村のごときは一箇月間も浸水し、家財、保有米等の損失はおびただしく、農民は極度に疲弊している状態であり、また山岳部には地すべりも相当発生しておりまして、県財政は極度に貧困であり、通常五十五億のうち県税収入はわずかに八億しかなく、この財政規模の四倍に上る被害をこうむつているために、とうてい負担に耐え得ず、資金の不足に悩んでおり、これを市中銀行より一時借り入れるにいたしましても、一般農民及び中小企業の借入れに圧迫を加え支障を来すおそれがあるなど、なかなか深刻なものがあるのであります。  長崎県の最も大きな被害特徴としては地すべりであります。特に北松浦一帯地すべりによる被害は実に甚大なものがあり、そのうち今福町の地すべりにより埋没した田畑は、崩壊土砂が大量であるため、手の施しようのない惨状を呈しており、町当局もこれが復旧には国の処置をまつ以外に施すすべがないと言つておるのであります。また他の地域における地すべりもいずれも大規模なものであり、県当局の不断の地すべり防止対策事業効果にも見るべきものがあるのでありますが、今後ともこの地方特色として防止対策事業に万全を期する必要があると思われます。国鉄松浦線はいまだに開通見込みが立たず、当地の復旧一大支障を来しているので、これが復日については、すみやかに国鉄と地元との協力により円満に推進する必要があると認められるのであります。  ここで国鉄復旧が出て来た関係上、国鉄全般被害復旧について一言申し述べますと、今次の大水害による国鉄被害額巨額上つたにもかかわらず、国鉄当局の熱心な努力により、関門トンネルを初め、各不通路線復旧に励み、予想以上に各線の開通が早く行われて、被害各地全般的復旧事業の促進に大いに貢献したことは、まことに賞讃に値するものであると思われます。しかしながら、松浦線のみがいまだ復旧していないことは、その工事困難性もさることながら、今までの国鉄の功を一簣に欠くことにもなるので、これが復旧には全力をあげ、万難を排して作業を進めるべきものであると思われます。  熊本県の被害最大特徴といたしましては、白川氾濫により、阿蘇地区火山灰土が、熊本市を初め肥後平野一帯に堆積し、民家、農耕地道路等を破壊したものであつて、その惨状は目もおおうものがあり、これが復旧はきわめて困難を伴うものであります。熊本市の例をとれば、この堆積土砂推定量は二百四十万立方メートルであり、これが排除には十二億を要するほどの大作業であり、このため、市職員の昇給も一時停止して、全力をあげてこの作業資金を注入している事情であります。県財政も全然先の見通しがつかず、政府援助がなければまつた復旧できないと思われるほどであります。白川は言うまでもなく広大な阿蘇火口原に源を発しているものであり、阿蘇総合開発計画を早急に推し進めて行くのでなければ、いかに白川の本流のみを直轄工事で改修してみても、まつた効果が薄いと言わざるを得ないのであります。阿蘇総合開発計画については、阿蘇山が、熊本を初め、福岡大分等重要河川の源となつて北九州の屋根ともいうべきものであるから、これら各河川の形成している北九州の重要な穀倉地帯を守るため、単に熊本県のみの問題ではなく、北九州全体の問題として取上げ、地元住民は、この計画実現のため、いかなる犠牲も惜しまない決意が必要であり、政府としても、来年度予算編成までに、拙速をたつとぶ意味から、一部でも実現努力する必要があると思われるのであります。  大分県の特徴としては、急坂傾斜の複雑な地形であるため、山間部の山くずれと河身の変更等により、農地道路橋梁家屋等流失または埋没したりして、その被害は非常に深刻な様相を呈し、他県にその例を見ない惨状であります。人的被害もさることながら、農耕地、山林の被害のみで七十五億に及び、被害総額の半ばに近い率を占めており、大分川、大野川流域大分郡、大野郡、直入郡を中心とした被害相当額に上り、特に筑後川上流流域の激流による日田市・郡、玖珠郡の被害は甚大であり、県財政貧困である上に、これら地帯被害による収入減巨額に上ると見られるので、いかに県財政の節減に努力しても、数億円程度しか復旧費にまわす余裕がないといわれている実情にかんがみて、早急な政府援助が必要と認められるものであります。  山口県の被害特徴は、下関市か門司市と同様な山津波による被害を受けているが、その一原因が戦時中掘られた防空壕を放置していたことにより、その崩壊が促進したことであるのは注目すべきであり、かつ私有地の小規模崩壊が多数あるため、これの対策をいかにするかということがきわめて特異の例であると思われる。また厚狭郡の木屋川、厚狭川等の小河川決壊による農耕地施設流失埋没、市街地の浸水等による被害相当額に上つております。県財政も今次の水害により相当逼迫することは必定で、このため経費の削減を行つたり、県単独の新事業は一応停止して災害復旧に向けていたが、どの程度復旧ができるかは疑問であるというような状態でありました。  広島県の特徴としては、当県は元来年間降雨量が非常に少く、平均千二百ミリ程度であつたのに、六月、七月、二箇月間で六百ミリ以上の降雨があり、そのため河川決壊田畑埋没流失道路橋梁破壊等を引起したものであり、被害総額は四十七億円に上つているが、しかし、大水害を免れたのは、当県が砂防工事模範県であり、非常に発達した砂防工事行つていたためであるが、なお当県の耕地面積が非常に少いため、被害農耕地面積の割合が高率を占めているのでありまして、特に農作物被害が実に被害総額の半数以上の二十九億円を占めているのであります。  岡山県の被害は児島湾の干拓地帯における農地浸水被害と、第二号台風関係による藺草の被害が甚大であつたにかかわらず、この対策補助がほとんど取上げられなかつたものであります。今後は被害藺草による加工施設に対し補助を与え、これによつて損害を救済して行くことが適当と認められるのであります。  鳥取島根両県は、いずれも裏日本にある寒冷単作地帯であり、南海大地震以後地盤沈下の度が著しくなつているところに、今次の豪雨により農耕地浸水し、これが長期間続いたため、農作物等被害が著しいものである。また三百ミリ以上の豪雨であつたため河川氾濫等による被害も相当な額に上つているのは他の県と同様な状態であります。また、特用作物のぶどう、なし、藤某、桑、綿花の被害も特に著しく、これに対する経営資金の貸付、補助等の必要が認められたのであります。また両県とも県財政はきわめて貧弱でありますので、国庫に依存しなくてはとうてい復旧はおぼつかないと思われるのであります。  兵庫県下被害としては、但馬地方に二百八十ミリの雨量があり、このため河川増水による堤防道路決壊橋梁流失田畑冠水家屋流失、山くずれ等の被害を受けたものであり、その被害も、局部的ではあるが、相当な額に上つております。また和歌山県の大水害による余波として、明石淡路島沿岸に十万石の流木が漂着し、漁船、漁具等被害を与え、かつ漁業操業にも著しい支障を来し、浮遊しているときはまつた作業不能であるが、これが沈積しても、操業は著しく制限され、その影響は今後になお持続されるため、この沈積無主物排除等掃海作業に要する経費約六億円を全額国庫負担し、早急に解決する必要を認めるのであります。  奈良県の被害特徴は、県南部を占める吉野一帯で、短時間に数百ミリの降雨があつたため、十津川野迫川等山間部において急激な増水と山くずれにより、局部的に異常な土砂岩石流失し、道路農地、森林、高野豆腐製造施設筆に激甚な被害を与えたものであります。奈良県総被害額八十二億円中、土木被害二十九億、三五%、林業被害二十四億、三〇%であるのを見ても、いかに山間部災害が異常であつたかがうかがわれます。県当局も、吉野郡のみに災害救助法を通用し、救助に当つたこともうなづけるのでありますが、一方五条町を中心とした平野地帯農耕地帯被害相当額に上つていることは、特別措置法地域指定に際し、災害救助法適用区域内にとどめるべきでない最良の例ではないかと思います。また、十津川村、野迫川村筆の山間部災害地に通ずる県内の道路はことごとく破壊され、不通となつており、ただ遠く和歌山県の高野山を経て尾根伝いに通ずる道路一本のみしか開通していないことは、災害地域復旧に大いなる支障を来しているものであるから、早急に県内道路を開通することが望ましいのであります。  和歌山県の被害特徴は、きわめて短時間に山間部中心に四百ミリ以上の寒雨があつたため、数時間の間山をくずし、材木を流し、急激に増水奔流し、多くの人命を奪い、住宅を倒壊流失し、堤防決壊し、未曽有の大氾濫を起したものでありまして、山間部のおびただしい立木、材木の流出等山津波による被害はきわめて激甚であり、諸所に自然ダムが形成されているなど、今もなお不安な状態が続いているのであります。本県被害総額は実に八百億円に上ると言われており、そのうち耕地関係百四十二億、土木関係百五十億、林業関係百十二億、農業関係八十六億、水産関係百九十四億円、商工関係七十九億円という実に厖大な額であり、農地の例をとつてみましても、その被害面積四千三百町歩、その被害額北九州各県の被害に匹敵するものであります。農地被害程度は、例外なく異常な土砂岩石樹木等の堆積によるもので、いまだに全然手がつけられておらない状態は憂慮されております。また、当県の特産物たるみかんの出荷に野つていた有田鉄道は全面的に破壊されたため、現在当地方農家唯一の収入となつているみかんの出荷に支障を来しておる状況も見られたのであります。  長野県及び岐阜県。長野県及び岐阜県の被害特徴は、山間部における豪雨により、河川氾濫し、人家、耕地流失、損壊させ、山林原野崩壊を来したものであり、局地的な災害とはいえ、木曽谷伊那谷及び長良川流域においては、被害程度は相当甚大なものがあり、かつこれらをそのままに放置せんか、必ず次の豪雨によりさらに下流の沃野に激甚な被害を与えること必定であります。これらを防止する意味においても、すみやかな渓流の抜本的改修等を必要とするものであり、これらに対してはただちにつなぎ融資措置を講ずるの必要を認めるものであります。  以上簡単に各県の被害状況及び復旧状況について述べたのでありますが、これらを総合すると大体次のごときケースに分類できると思われます。すなわち、大河川堤防決壊による道路耕地家屋等の大規模流失埋没及び長期浸水による被害、第二は小河川堤防決壊による局部的氾濫による被害、三は地すべりによる被害、四は泥土、異常な堆積土砂による被害、五は山間部における岩石土砂流出による被害、六は流木及び山津波による被害、七はその他地盤沈下地帯における浸水。等の被害等である。これらについて言及してみますと、大河川堤防決壊による被害については、筑後川遠賀川嘉瀬川大分川、有田川、日高川等のごとき大河川、並びに沃野を流域に持つ河川堤防豪雨による増水のため決壊し、農村都市を問わず、いわゆる大洪水に見舞われ、道路耕地家屋流失し、各平野はすこぶる広範囲の面積が長期間にわたつて浸水したものでありまして、農地被害は特に著しく、農作物は全滅の状態なつたものであります。しかして、これら各地農民の共通した心理として、土地に対する愛着は驚くほど強く、復旧の熱意に燃えていたが、その進捗はあまりはかばかしくない状態にあり、農村は極度の疲弊を来しており、農民植付復旧にのみ頭を悩まし、収穫減収まで考えの及んでいないのは、そのひまのないありさまであつたのであります。また、農地を失い、生産の場所を持たない農民たちは、土木工事筆による人夫賃によつて生活を続けているありさまで、この人夫賃にも事欠く地方公共団体も少くない状態であり、またこれら平野はいずれもこの地方穀倉地帯であり、かつ過去においては率先して供出を完納した村でありますが、これら農村被害をすみやかに、優先的に国家援助を与え、そして一日もすみやかなる復旧をなし、農業生産につかしめることが、単に農村厚生のためのみならず、食糧政策の上においても、また国家経済の上から見ましても、最も緊急かつ心要なことと言得ると思うのであります。  小河川堤防決壊による被害につきましては、大河川氾濫に比べその被害も小規模かつ局部的なものではありますが、各県ともあらゆる地方に見られた現象であり、その総合した被害程度は必ずしも大河川に劣るものではない。すなわち山間盆地等の比較的耕地面積の少い箇所に発生したものであるため、当該地方被害としてはかえつて深刻なものがあることは言うまでもないのであります。  地すべりによる被害については、長崎北松浦郡、南高来郡、東彼杵郡一帯及び佐賀県西松浦郡一帯における地すべりによる被害は、田畑、森林を押し流し、鉄道を埋没し、家屋を倒壊し、農地表面には無数の亀裂を生じており、農耕はまつたく不能の状態にあるところが多いのであります。この地帯崩壊途上にある第三紀層により組成されているため、わずかの雨にも地すべりを起すものであり、現在でもその危険な状態が続いているものであります。かかる現状からも、地すべり地帯復旧を可及的すみやかに行うことはもちろんであるが、政府としても、地すべり防止対策には、総合的研究機関を設けて科学的根本的な対策を樹立し、早急な適宜な措置を講ずる必要があろうと思います。  泥土の流入による被害熊本白川氾濫に伴い肥後平野及び熊本市に阿蘇火山灰土が著しく多量に流入したことは、まつたく従前にその例を見ない異常なものであり、農地といわず、宅地といわず、あらゆるところに堆積し、その排除作業は困難をきわめております。今回成立したたい積土砂排除に関する法律の適用により相当救助されるであろうが、なお農家宅地等私有地に堆積した泥土排除は、農民等負担にはとうていたえられないほどの量であると思われますので、これについても何らかの措置を必要とすることを痛感したのであります。前にも熊本県のところで一言述べましたように、いかに白川直轄河川として改修しても、あの大阿蘇の山はだを荒廃のまま放置しておけば、再び今回のごとき大災害に見舞われないとだれが断言できるでありましようか、この点今後十分な総合計画を練ることが必要と思うのであります。  山間部における岩石流出による被害。各県の山間部の共通な特徴として、異常の豪雨のため山くずれを起し、通常は水の流れていない小渓流に沿つて、巨大な岩石樹木流出し、零細な農地家屋等にきわめて激甚な被害を与えております。これらについてはまつた予想もしなかつた現象であるため、罹災民等の困惑は目に余るものがあり、局部的な被害であるが、狭隘な山間部落としてはとうてい負担にたえ切れないものであり、できるだけ援助を与える必要を認めるものであります。  流木及び山津波和歌山県の日高川、有田川の上流部分から流出した樹木が、遠く瀬戸内海を渡り、兵庫県の明石淡路島沿岸に浮遊漂着し、また沈積して漁業に重大な支障を与えていることは前述した通りであります。また海岸まで流出するに至らずに、河川流域土砂とともに堆積した巨大な樹木等排除についても、町村にはまつたくその負担力なく、全額国庫負担に依存するより方法なき事情であります。  その他地盤沈下地帯における農地浸水鳥取島根県下における農地災害特色は、前述したように地盤沈下地帯における農地浸水であります。これは、この地方河川上流からの砂の流出による漂砂のため、河口鎖閉の現象を起し、非常に排水が悪くなつておるところに、今回の豪雨によりこれら河川氾濫し、地盤沈下地帯浸水したものであるから、浸水期間が長期にわたり、農作物被害が著しかつたのでありまして、この対策については、これら沈下地帯の全面的、大々的な客土を行うこと、たとえば宍道湖の湖底の泥土をサンド・ポンプにより搬入すること等によつて、裏作も可能なりつぱな乾田とすることができて、かつ反当収穫量も飛躍的に増大するものであるから、食糧政策上から見てもぜひ取上げて行う必要があると思う。また当地方及び広島県等の特徴たる天井川の河底掘下げも恒久対策として行う必要があるが、とりあえず灌漑用水門に排水ポンプを兼備する等の応急措置も必要と思います。  以上各ケースについての考察を試みたのでありますが、これらを総合して結論を述べると次の通りであります。  つなぎ融資の増額、各地方公共団体が今回こうむつた災害は、とうていその負担にたえられないほどの巨額に上つているため、つなぎ融資のわくを拡大するとともに、この金利の国庫補助等を考慮することであります。  また、第二点としては、各地方公共団体全般的な災害復旧事業については、優先的に起債を認めるとともに、災害特別平衡交付金を大幅に支給すること。  第三点は、農林土木関係の査定の実情にかんがみ、関係各省をして特別措置法の立法の精神に沿い、原形復旧にとどまらず、改良復旧も行い得る程度の査定を行わしめること。  第四点は、各地方公共団体に配分したつなぎ融資は一刻も早く災害復旧に充当せしめること。  第五点は、応急仮設住宅等の建設については、資材、賃金、土地等の高騰を考慮して坪単価を引上げるよう考慮すること。  第六点は、学校教育施設災害復旧が遅延しているため、第二学期から授業もできたい学校もあつたようであるから、教育施設復旧には特に力を注ぐこと。  第七点は、政府地方鉄道の復旧についての融資のあつせんに努めること。  第八点は、農民の思想悪化と自暴自棄化を来さぬよう善導するとともに、治安対策の万全を期すること。  第九点は、畜産関係被害復旧に対する特別措置が何らとられていないので、今後すみやかに研究すること。  第十点は、最後に抜本的治山治水計画の樹立について一言すると、多年にわたる山林の濫伐、河川の荒廃等により、近時深刻な災害が続発しているので、従来の治山治水対策に再検討を加え、抜本的対策を確立し、これを強力に推進することにより、国土の保全と災害防止を期すること。すなわち、重要各河川流域ごとに総合計画を立て、水源林の造成事業を拡大し、民有林造成のための助成を強化する等の大規模な植林政策を実施するとともに、山地の荒廃をすみやかに復旧し、砂防事業を推進し、まず山を治め、しかして主要河川の改修計画を再検討し、治水上必要な中小河川の根本的改修事業を早急に完成すべきであります。  以上をもつて調査班の報告を終るのでありますが、本調査班目的たる地域指定等については、この報告を参考とされ、委員会において適正かつ公平な結論を出して参るようにいたしたいと存ずる次第であります。  以上であります。(拍手)  次に北海道班の派遣委員を代表して田渕光一君より御報告を願います。
  7. 綱島正興

    綱島委員 緒方副総理の出席の時間に制限がございますので、この際水害地緊急対策法律適用地域指定基準に関する本委員会の決議を先にしていただくことを希望いたします。
  8. 村上勇

    村上委員長 ただいまの綱島君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。それでは、昨日来の御懇談でとりまとめの上、本日の小委員会において御協議の水害地緊急対策法律適用地域指定基準につきまして、御協議を願うことといたします。案文は印刷物としてお手元にお配りいたしてありますが、訂正箇所がありますので、念のため朗読いたします。    水害地緊急対策法律適用地域指定基準  一、都道府県の公共事業復旧費農地及び施設の小災害を含む)が昭和二十八年度標準税収入を超える都道府県については、その都道府県を指定すること。  二、右の標準に達しない都道府県については、次の基準によつて、その何れかに該当する市町村を指定する。   1 公共事業復旧費農地及び施設の小災害を含む)が昭和二十八年度標準税収入を超える市町村   2 災害救助法を実施した市町村   3 水防法を実施した市町村   4 国家公務員給与の繰上げ支給を行つた市町村   5 農林水産物の減収が通常生ずべき収入の三割を超える被害農林漁家戸数が全農林漁家戸数の一割を超え、又は三割以上の減収被害耕地面積の合計が百町歩を超える市町村   6 農地及び施設復旧費をその区域内で被害を受けた関係戸数で除した場合、その額が三万円を超える市町村   7 林道の復旧費をその区域内で被害を受けた林道の総延長の米数で除した場合、その額が三百円を超える市町村    8 漁場並びに漁業施設復旧費被害漁家戸数で除した場合、その額が三万円を超える市町村   註 第一項において指定された都道府県の市町村であつても、第二項各号の一に該当しない市町村は、これを除くものとする。  本案について御意見があれば御発言を願います。——別に御発言もないようでありますから、本案文について御決定を願うことといたします。  それではお諮りいたします。本案文に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。よつて本案は決定いたしました。  引続きお諮りいたしますが、本適用地域指定基準は、これを当委員会の決議として、文書をもつてこれを関係各大臣あて送付することといたしたいと存じますが、これに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたしました。  この際緒方副総理より発言を求められております。緒方国務大臣。
  12. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今回のこの災害地地域指定はなかなか大きな問題でございまして、先般来委員の各位が、それぞれ手わけをされて親しく現地を御視察になり、さらにその御視察の結果を十分に御検討、御協議くださつて、その政令の基準を今日ここに議決された次第でありますが、政府といたしましても、初めてここに政令を出しまするよりどころを得たような次第で、酷暑の際委員の皆様の長い間のたいへんな御労苦に対して、深く多といたす次第でございます、まだ十分にこれを検討しておりませんけれども、先般来たびたび繰り返し繰り返し申しておりますように、この災害につきましては、国会においても超党派的にいろいろな立法をお考えくださいましたし、政府におきましても災害の害態を大体把握しておるようなつもりでございます。できるだけ国会の御意思に沿いたいと考えております。重ねて長い間の委員会のお骨折りを多といたします。(拍手)
  13. 村上勇

    村上委員長 次に、北海道班の派遣委員を代表して、田渕光一君より御報告を願います。
  14. 田渕光一

    ○田渕委員 北海道水害地実地調査の報告を申し上げます。  本派遣委員は自由党田渕光一、改進党田中久雄君、社会党(左)原茂君、社会党(右)伊瀬幸太郎君の各派代表四名をもつて、今次水害による被害並びにその復旧状況調査のため、八月十三日東京出発、翌十三日より五日間にわたり、北海道各地水害地を延べ行程約三百二十里に及び実地調査し、北海道庁、北海道議会、北海道開発局、保安隊北部総監部、札幌管区気象台等、各機関における総括的調査のほか、空知支庁、上川支庁、胆振支庁及び道各支庁管内四市五十九箇町村にわたり、その被害状況並びに要望等に関し実情を聴取し、資料を収集し、おもなる被害現場を実地に視察し、被害農作物の現物の収集等に当つたのでありますが、本派遣委員が短時日の間に広大な地域における調査をよく全うし得たことは、地元出身の武田信之助君、松浦周太郎君、芳賀貢君、小平忠君外衆参両院議員、道議会議員、知事以下道庁当局の絶大なる協力に負うべきところが大でありまして、この点まず各位に謝意を表明する次第であります。  以下調査の概況を述べれば、次の通りでございます。  一、災害の要因たる異常気象の概況について申し述べます。今次夏型異常気象は、まる六月下旬、九州を初め西日本一帯災害を発生せしめたのでありまするが、七月に入つて、北海道においても前後三次にわたり、約十日間の間隔を置いて、集中的に道北、道南等に豪雨があり、七月中の総降水量は各地において平年の一・五倍から四倍の多きに達し、旭川、留萌地方の七月の降水量は、今までの最高と言われているのであります。第一次は七月七日より七月九日に至るものであり、第二次は七月十九日より七月二十日に至るものであり、第三次は七月三十一日の豪雨であります。  なおここに特に付記しておくべき点は、北海道の災害と九州の水害を発生せしめた異常気象の関連についてでありまするが、九州水害を発生せしめた異常気象は、南海高気圧とオホーツク海高気圧より張り出した梅雨前線が西日本をはさんで停滞し、温寒両気層の接触による大雨を起したものであつて、梅雨前線の張り出しはこの季節には常に発生するが、今回は両者の活動が活発であつたために、一地帯に長く停滞いたしておつたのであります。北海道に水害を発生せしめましたのは台風第四号の延長であつて、北海道と九州の災害は、直接的気象要因としては、一応別個のものとされておりまするが、しかし九州水害を発生せしめた梅雨前線が、台風第四号の発生する条件を持つた気象配置によつて、その活動が活発化せしめられたのであります。台風第四号の進路を見るに、南海高気圧の停滞による影響であることも十分認められまするが、なお、水害発生日の降水量を比較すれば、日積算雨量は、福島県六百十五ミリ、佐賀県六百四十二ミリに対し、胆振支庁五百五十九ミリ、目高支庁五百五十七ミリであるのであります。  第二、災害の概況は、前述のごとき夏型異常気象が、七月に北海道各地において前後三次にわたる大洪水、高潮等による災害を発生し、昨春の十勝沖地震にも比すべき広汎かつ甚大な被害を与えたのであります。すなわち、七月七日より九日には台風第四号の延長たる強風を伴う豪雨が、道南部、中央部、東部の広汎な地域にわたつて災害を発生し、同月十九日より二十九日には、さらに同地域豪雨出水が断続的繰返され、さらにまた同月三十一日にに至ります豪雨は実に四十九年ぶりといわれ、上川地方の中央部と留萌地方並びに北空知地方に甚大な被害を与え、道中央部から源を発する石狩川、天塩川、雨竜川、空知川及び留萠川等の各水系は異常の氾濫状態となつたのであります。水門扉の破損、ダム及び堤防の決潰等による流域の冠水は七十箇町村に及び、その被害総額地域の厖大に加えて災害が三回にわたつているので、調査漏れもあると思われますが、八月十五日現在における道庁の集計によれば、道関係七十九億二千二百三十七万六千円に上り、開発局関係五億六千百五十三万三千円を合せて八十四億八千三百九十万九千円と称せられておるのであります。第一次災害におけるおもなる被害地帯は、胆振、日高、十勝、渡島、檜山、石狩管内であり、第二次災害におけるおもなる被害地帯は、空知、上川、留萌、檜山、網走管内であり、第三次災害におけるおもなる被害地帯は、空知、上川、留萌管内であります。すなわち第一次、第二次、第三次被害を総計すれば、人的被害は死者九、行方不明一、負傷十七、計二十七人。家屋被害流失五十七戸、全壊十六戸、半壊二百二十五戸、床上浸水四千五百八十九戸、床下浸水一万四千七百三十八戸、非住家千三百四十三棟、計金額にして二億六千四百六十三万円。農業関係において、農作物被害面積十四万一千三百六十六町歩、四十二億五百六十三万円。家畜家禽被害六百三十七万円、土地改良被害として農地一千七十八町歩、一億三千二百万円、施設百二十二箇所、四億一千四百七十万円。開拓被害施設被害五十六箇所、四千十五万円、開拓者住宅被害四百二十二戸、四千三百万円、計四十八億四千百八十七万円余であります。水産関係におきましては、定置網の四百六十七統など漁具類の被害二億三千七百三十四万円、漁船関係被害六十三隻、五百三十九万円、倉庫その他の施設四千九百七万円余、海藻資源及び製品二億五千二百三万円余、計五億四千三百八十五万円余であり、土木被害については道路被害四百九十箇所、三億二百六十六万円、橋梁被害八百五十九箇所、六億益千二百七十二万円、河川被害七十七河川、七百九十九箇所、八億二千八百八十六万円、海岸被害箇所、四千二百六十四万円、計二千百五十五箇所、十八億六百八十九万円余であり、林業被害としては林道被害箇所、三百十五万円、林産被害二千五十五万円、治山関係十六箇所、三億二千五百九万円、計二十一箇所、三億四千八百八十万円、その他国民健康保険関係一千三百八十万円、商工業者関係五千百七十八万円、公用建物関係二千十五万円、その他三千五十八万円を加え、その総被害額は道関係七十九億二千二百三十七万円余、これに開発局関係五億六千百五十二万円を加え、総計八十四億八千三百九十万円と見積られております。  これら各般の被害の態様を見るに、まず農作物被害については、第一次災害によつて、道中央、道南、道東の広汎な地域が強風を伴う豪雨に見舞われ、四万七千町歩に及んで甚大な被害を受け、第二次災害における豪雨で、大小河川氾濫、塩水、堤防決壊等が相次いで起り、特に道の穀倉地帯たる上川地方及び北部空知地方においては、雷鳴を伴う豪雨に見舞われ、傾斜地畑作地帯においては泥流による表土の流失、平坦地水田地帯においても随所に水田の埋没を見、四万三千町歩に及ぶ被害を受け、さらに第三次災害のはげしい豪雨に襲われ、各河川氾濫、洪水とともに、遂に石狩川も堤防決壊し、五万六百町歩に及ぶ農作物に甚大な被害を受けたのであつて、ここに注目すべき点は、十四万一千三百六十六町歩に及ぶ広汎な被害はさることながら、災害時においては各種農作物は相当の成育を遂げ、種類によつては出穂、開花の時期に達した後において被害を受けたため、今後における回復は限定を余儀なくされ、また被害の多い圃場の他作物への転換は時期的に制約を受け、農作物の減収は免れがたく、農家経済に及ぼした損失は甚大であると認められるのであります。  次に、水産関係被害について注目すべき点は、今次被害地の渡島、檜山、胆振三支庁管内の大部分は、積年の凶漁並びに漁価安等のため、漁家の収入は道内において最も低く、かつ漁業協同組合の財務状況も不良であつて、借入金の重圧にあえいでいるという特殊事情にあり、道及び関係町村は、それぞれ不振打開のため浅海増殖施設の拡充、漁業経営の合理化、負債整理の促進、道外船入漁の調整等その他諸般の措置を講じ、その立上りに苦慮しつつある際であつて、今回の災害の及ぼす影響はきわめて深刻なものがあると認められます。  次に、河川被害に関しては、北海道の各河川は、その大小にかかわらず、すべて原始的状態にあり、特に石狩川、天塩川両水系の河川にあつては、七月豪雨の際その水害の及ぼした範囲がきわめて大であり、これは各河川ともに無堤蛇行箇所の多いのに基因しており、早急に完全改修の実現をはかる必要が特に痛感されたのであります。  三、道当局等の応急対策概要について申し上げます。  今次水害に際し、道内の各気象官署は、気象状況の悪化に伴い、逐次大雨注意報あるいは洪水警報を発令し、道当局においてもこれと密接な連絡を保ち、気象配置、降雨出水及び各河川水位状況を刻々関係支庁、市町村、土木現業所等に周知徹底せしめ、警戒の万全をはかるとともに、災害情報の収集並びに連絡に努め、水防資材を急送し、係員を急派して水防作業並びに応急工法の指導に当らしめ、また罹災者救助等のため、たき出しを必要とする市町村においては、臨機に食糧の配給を行わしめ、防疫医療については道及び保健所より係員及び防疫班を急派するとともに、鼠族、昆虫駆除のため十九箇町村に伝染病予防法第十六条の二項を適用、その他浸水家屋、井戸、水道の消毒、保健所所管の濾水機及びフオグマシンの貸与、水質試験車の派遣、検病調査の実施、災害救助法による委託業務としての日本赤十字社医療班の巡回診療等各般の医療防疫措置を講じ、病害虫防除については、罹災農地における稲熱病を初め各種病害虫の発生防止のため、緊急備蓄農薬ボルドー百八十トンを放出するとともに、各地に防除督励班を派遣し、その指導に当らしめ、さらに家畜伝染病の発生及び蔓延防止のため、支庁、家畜保健所、家畜防疫員、獣医師、関係団体等を総動員して、環境の整備、畜舎の消毒、疾病の早期発見及び早期治療に全力を傾注し、一方、被害農作物の再播用として、災害対策用雑穀種子を緊急あつせんするとともに、農業技術陣を総動員して、青刈り大豆、かぶ、ゲントコーン、緑肥作物等の再播、補播の指導に当つたのであります。  災害救助法適用については、第一次災害において七月十日、日高支庁管内浦河町、三石町、十勝支庁管内大津村、豊頃村四箇町村に法を発動、その救助費は六十六万円であり、第二次災害においては、七月二十二日に上川支庁管内美瑛町及び留萌市に法を発動、その救助費は五十六万円であり、第三次災害については、八月三日に留萌支庁管内鬼鹿村、増毛町、上川支庁管内上士別村、和寒町、剣渕村、多寄村、士別村、温根別村、美深町、空知支庁管内妹背牛町、滝川町、一巳村、新十津川村、雨竜村、沼田町、以上十五箇町村に対し法を発動、その救助費は概算四百四十万円であり、罹災者の避難収容、たき出し、被服、寝具及び生活必需品の給与、医療、埋葬等の応急救助行つております。  なお、罹災各町村においては消防、警察等の関係諸機関は言うまでもなく、住民の総力をあげて水防作業並びに罹災者の救出等に当つたが、特に第三次災害の石狩川水害時に際し、名奇町、上士別村、多寄村、深川町、滝川町、妹背牛町の各町村は、堤防決壊防止、人命救出作業等に困難をきわめ、情勢危機に瀕したので、支庁を通じ保安隊の派遣方を要望したので、道においてはただちに札幌総監部に要請し、総監部よりもよりの駐屯部隊に指示を与え、延べ四百名に上る保安隊をこれらの各町村に出動せしめ、各作業に協力して被害を最小限に防止し得たと報告されております。  四、財政措置について申し上げます。前述した通り、今次北海道災害被害総額は、道庁の調べによれば八十四億八千三百九十万円余であつて、その復旧費は、国費直轄施行分を除いて、概算道関係五十二億三千九百二十七万円、市町村関係十四億六千八百二十一万五千円、計六十七億七百四十八万五千円と見積られ、その内訳は、応急対策費、道関係四億五千四百十六万円余、市町村関係一億二千七百十三万円余、計五億八千百二十九万円余、復旧対策費、道関係四十七億八千五百十万円余、市町村関係十三億四千八百万円余、計六十一億二千六百十八万九千円となつておりまして、うち融資所要額十八億六千九百六十三万六千円と積算され、つなぎ資金所要額は道関係十三億六千百万円、市町村関係七億三千六百万円、計二十億九千七百万円と見積られております。融資所要額の内訳は、農業七億九千五百七十一万三千円、土地改良二億円、水産四億七千五百六十二万五千円、林産三千百六十九万八千円、中小企業三千五百万円、住宅八千二百四十万円、生業資金一億四千九百二十万円と計算され、つなぎ資金所要額の内訳は、道関係においても応急復旧費四億三千三百万円、復旧対策費九億二千八百万円、計十三億六千一百万円、市町村においては、応急対策費六千八百万円、復旧対策費六億六千八百万円、計七億三千六百万円と見込んでおります。  今次北海道水害復旧には、右のごとく巨額資金を必要とするので、道並びに関係市町村のみの力をもつてしては、とうていこれが望み得られないのでありますから、国において、九州、南畿等と同様諸般の復旧方途を講ぜられたいというのが、現地の罹災民の強い要望であります。われわれ派遣委員は、一方この熾烈な要望を耳にいたしますると同時に、この目で、みずからの立上りを決意した現地当局及び罹災民の伝統的な屯田兵的精神に輝く昼夜兼行の復旧努力の姿を見たのでございます。現に北海道は、選くべくして避け得られないところの来るべき結氷降雪期を目睫にしているのであります。それ以前に一切をあげて急速に復興せんとする涙ぐましき復興意欲を、われわれは行く先々の罹災地で認めたのであります。しかしながら、道及び関係市町村並びに罹災民には、みずからの力の限度があることは言うまでもないのであります。よつて、国において、この北海道水害に対し、早急に応急対策を講ずるとともに、さきにわれわれが立法した水害地対策に関する諸法律適用し、もつて国土の保全と民心の安定をはかる必要があると認める次第であります。  以上北海道水害についてその要因、被害状況、応急対策の概況、財政措置等について総括的に申し述べたのでありまするが、被害市町村別の詳細な状況及び道庁の被害地域の指定、財政及び法令上の措置算について、数十項目にわたる要望、その地市町村及び各種現地機関及び団体等の陳情につきましては、本報告書とともにお手元に配付いたし、ことにわれわれ調査団の手において現地で収集いたしましたその資料は、この委員室の委員長に向つて右側の机の上にとりそろえておるのでございます。これらを詳細にごらん願いまして、農作物被害状況等を御了承願いたいのであります。われわれ調査団といたしましては、まずこれらの諸点を調査いたしまして、八月十七日に東京に帰京いたした次第でございます。  以上御報告申し上げます。(拍手)
  15. 村上勇

    村上委員長 これにて水害地各地実地調査の報告は一応終了いたしました。派遣委員各位におかれましては、炎暑きびしき折にもかかわらず、かつ閉会早々のお疲れをもおいといなく、全国各地水害地を視察いたされまして、親しく罹災民を激励されますとともに、貴重なる資料を収集の上、詳細に各地状況を御報告いただきましたことは、当委員会今後の審議の上に大きな成果をあげることと存じます。ここに委員長といたしまして各位に厚くお礼申し上げる次第であります。  なお、地元出身の各委員の方々には、派遣委員に絶大なる御協力を賜わりまして、この目的を達成することのできましたことを、あわせて厚くお礼申し上げる次第であります。(拍手)  次に、原委員より、派遣委員の報告に関して、長野県下状況について補足的に発言したいとの申出があります。この際これをお許しいたします。原茂君。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 長野災害の一般的状況は、ただいま委員長の御報告くださいました通りでありますが、二、三補足的にお聞取りをいただきまして、同僚委員各位の格別な御同情を得たいと思いまして、ただいま発言をお許し願つたわけであります。  もとより、今次災害のうち、その範囲とか、災害の度合いにおいては、九州、和歌山に匹敵し得くべくもないのでありますが、局部的な災害の甚大さにおきましては、何ら遜色のない長野県下災害でありまして、各村年間予算の少くて数倍、大部分が数十倍に達する損害額を出しておることを見ましても、この長野県町村の損害をうかがい知ることができると存ずるのであります。  他府県と違うと思われる特徴を二、三まずお聞き願いたいのでありますが、第一に、いまだに災害時の状況がそのまま行われている地域が数箇所ございまして、慢性的災害状況と申しましようか、いまだにその地域があるのであります。そのため、全村あげまして消防団員等の肩の奉仕による食糧輸送がまつたく命がけの崩壊道路災害以来今日に至るまでいまだに五十何日間行われておりまして、村民の生命を維持し、しかもその地域においては、ようやく流失を免れました公共施設や住宅等に対しまして、いまだに消防団その他村民こぞつてその流失を防止する作業をやつておるのであります。しかもこれが救援は意のごとくなりませんで、全農民このために疲労困憊、人心はうんで、自暴自棄の一歩手前にあります。今や村をあげて村民ともどもに崩壊の危機に直面するものと言えるのでありまして、これが救済には、一日も早く、一切の法を超越して、つなぎ資金による緊急援助を与える必要があるのであります。  以上、これを要しまするに、全国的にもまれなる災害の慢性化と言わざるを得ない現象が、長野県町村下に数箇村あるのであります。このような地域、これにつきましては、他に林業による生活をなせるため、その林道その他の施設が壊滅になりましたために、すでに村民の大半が職を奪われておりまして、今日すでに配給食糧の購入に事を欠いている始末でありまして、平均各村の年間予算五、六百万円というきわめて貧弱なる村財政なるために、村当局としても手の打ちようもなく、文字通り、あすの米をどうするかの一日も放置できない状況に追い込まれつつある村が数箇村あるのであります。これが救済もまたあげて早急なるつなぎ資金にまつことは言をまたないのであります。  なお、災害の直接的被害と間接的被害とがあると思われますが、今日問題になつている直接的被害に対しましては、当委員会におきまして逐次決定されつつありますが、間接的被害救済にはたくさんのケースがあるのでありまして、中でも、同じ災害地域内にありながら、本被害の直接的災害をわずかに免れた所であつても、長期の雨につきものの冷害と稲熱病による被害とが今日に至つて続々発生いたしまして、地域によつては全滅または三割以上の減収の箇所が、全県的に発生しつつある状態であります。この重ねての災害にまさに虚脱放心状態農民こそ、六、七月の水害の間接被害者と言つても過言ではなく、これに対しまして、その後の判明せるところにより、全国的にその被害の甚大さが伝わつておりますので、わが長野県のみならず、当水害対策委員会と同じ精神において、他の機関による超党派的な別途の救済策を講ぜられたいと考えつつあるほど、わが長野県は、その被害は全国まれに見る甚大なものと今日査定いたされております。  なお、北海道における貯水池あるいは発電ダムの決壊による激甚なる人命れその価の被害と同じケースと考えらますが、長野県におきましても、今次水害は、やはりダムを中心に沿線耕地その他に多大なる影響を与えまして、今日これが解決、救済は単に一電力会社対被害地域町村または個人的な折衝にまかせておく段階ではなくて、これまた後日早急に別途機関によるダム中心の損害に対する補償法のごときを制定して、電力会社に実行せしめるがごとき措置を講ずる必要を鶴首して待つの状態にある各河川並びに関係町村民の数の多いことも、長野県の重要な一特徴であると強く御記憶願いたいと  最後に、長野県は、北海道と同様に、十一月ともなればすでに降雹、降雪あり、およそ工事と名のつくものはほとんど着手することの得ざるところでございまして、これを考えますとき、つなぎ融資の必要性は、緊急融資をすでに受けた他府県に比較して何ら劣るものではないと考えられるのであります。かかる慢性災害状態、その他以上の特異性、災害以来いまだ一銭のつなぎ資金をも当長野県に支出されていないことを御考慮賜わりまして、幸い全委員各位の御同情ある御支援をいただき、現段階においては異例ではございましようが、長野県に対しましてつなぎ融資第一回分として最小限度一億五千万円の早急なる支出手当を、でき得れば当委員会の御決議をいただきまして、明日にも送金手続のできますことを、全県民、特に死を直前にして、旱天に一粒の慈雨を待つがごとき全被害者、しかも慢性的災害状況下にある農民被害者を代表いたしまして、幾重にも衷心からお願いいたす次第であります。(拍手)
  17. 村上勇

    村上委員長 本日はこの程度にとどめまして、明十一日は、午前十時より建設関係対策委員会、午前十時三十分より農林水産対策委員会を、午後一時より本委員会をそれぞれ開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十二分散会