○田渕委員 北海道
水害地実地調査の報告を申し上げます。
本
派遣委員は自由党田渕光一、改進党田中久雄君、社会党(左)原茂君、社会党(右)
伊瀬幸太郎君の各派代表四名をも
つて、今次
水害による
被害並びにその
復旧状況調査のため、八月十三日東京出発、翌十三日より五日間にわたり、北海道
各地の
水害地を延べ行程約三百二十里に及び
実地を
調査し、北海道庁、北海道議会、北海道開発局、保安隊北部総監部、札幌管区気象台等、各機関における総括的
調査のほか、空知支庁、上川支庁、胆振支庁及び道各支庁管内四市五十九箇町村にわたり、その
被害状況並びに要望等に関し
実情を聴取し、資料を収集し、おもなる
被害現場を
実地に視察し、
被害農作物の現物の収集等に当
つたのでありますが、本
派遣委員が短時日の間に広大な
地域における
調査をよく全うし得たことは、
地元出身の
武田信之助君、松浦周太郎君、芳賀貢君、小平忠君外衆参両院議員、道議
会議員、知事以下道庁当局の絶大なる協力に負うべきところが大でありまして、この点まず各位に謝意を表明する次第であります。
以下
調査の概況を述べれば、次の通りでございます。
一、
災害の要因たる異常気象の概況について申し述べます。今次夏型異常気象は、まる六月下旬、九州を初め西日本
一帯に
災害を発生せしめたのでありまするが、七月に入
つて、北海道においても前後三次にわたり、約十日間の間隔を置いて、集中的に道北、道南等に
豪雨があり、七月中の総降水量は
各地において平年の一・五倍から四倍の多きに達し、旭川、留萌
地方の七月の降水量は、今までの最高と言われているのであります。第一次は七月七日より七月九日に至るものであり、第二次は七月十九日より七月二十日に至るものであり、第三次は七月三十一日の
豪雨であります。
なおここに特に付記しておくべき点は、北海道の
災害と九州の
水害を発生せしめた異常気象の関連についてでありまするが、九州
水害を発生せしめた異常気象は、南海高気圧とオホーツク海高気圧より張り出した梅雨前線が西日本をはさんで停滞し、温寒両気層の接触による大雨を起したものであ
つて、梅雨前線の張り出しはこの季節には常に発生するが、今回は両者の活動が活発であ
つたために、一
地帯に長く停滞いたしてお
つたのであります。北海道に
水害を発生せしめましたのは台風第四号の延長であ
つて、北海道と九州の
災害は、直接的気象要因としては、一応別個のものとされておりまするが、しかし九州
水害を発生せしめた梅雨前線が、台風第四号の発生する条件を持
つた気象配置によ
つて、その活動が活発化せしめられたのであります。台風第四号の進路を見るに、南海高気圧の停滞による影響であることも十分認められまするが、なお、
水害発生日の降水量を比較すれば、日積算
雨量は、福島県六百十五ミリ、
佐賀県六百四十二ミリに対し、胆振支庁五百五十九ミリ、目高支庁五百五十七ミリであるのであります。
第二、
災害の概況は、前述のごとき夏型異常気象が、七月に北海道
各地において前後三次にわたる大洪水、高潮等による
災害を発生し、昨春の十勝沖地震にも比すべき広汎かつ甚大な
被害を与えたのであります。すなわち、七月七日より九日には台風第四号の延長たる強風を伴う
豪雨が、道南部、中央部、東部の広汎な
地域にわた
つて災害を発生し、同月十九日より二十九日には、さらに同
地域に
豪雨出水が断続的繰返され、さらにまた同月三十一日にに至ります
豪雨は実に四十九年ぶりといわれ、上川
地方の中央部と留萌
地方並びに北空知
地方に甚大な
被害を与え、道中央部から源を発する石狩川、天塩川、雨竜川、空知川及び留萠川等の各水系は異常の
氾濫状態とな
つたのであります。水門扉の破損、ダム及び
堤防の決潰等による
流域の冠水は七十箇町村に及び、その
被害総額は
地域の厖大に加えて
災害が三回にわた
つているので、
調査漏れもあると思われますが、八月十五日現在における道庁の集計によれば、道
関係七十九億二千二百三十七万六千円に上り、開発局
関係五億六千百五十三万三千円を合せて八十四億八千三百九十万九千円と称せられておるのであります。第一次
災害におけるおもなる
被害地帯は、胆振、日高、十勝、渡島、檜山、石狩管内であり、第二次
災害におけるおもなる
被害地帯は、空知、上川、留萌、檜山、網走管内であり、第三次
災害におけるおもなる
被害地帯は、空知、上川、留萌管内であります。すなわち第一次、第二次、第三次
被害を総計すれば、
人的被害は死者九、行方不明一、負傷十七、計二十七人。
家屋被害は
流失五十七戸、全壊十六戸、半壊二百二十五戸、床上
浸水四千五百八十九戸、床下
浸水一万四千七百三十八戸、非住家千三百四十三棟、計金額にして二億六千四百六十三万円。
農業関係において、
農作物被害面積十四万一千三百六十六町歩、四十二億五百六十三万円。家畜家禽
被害六百三十七万円、土地改良
被害として
農地一千七十八町歩、一億三千二百万円、
施設百二十二
箇所、四億一千四百七十万円。開拓
被害は
施設被害五十六
箇所、四千十五万円、開拓者住宅
被害四百二十二戸、四千三百万円、計四十八億四千百八十七万円余であります。
水産関係におきましては、定置網の四百六十七統など漁具類の
被害二億三千七百三十四万円、漁船
関係被害六十三隻、五百三十九万円、倉庫その他の
施設四千九百七万円余、海藻資源及び製品二億五千二百三万円余、計五億四千三百八十五万円余であり、
土木被害については
道路被害四百九十
箇所、三億二百六十六万円、
橋梁被害八百五十九
箇所、六億益千二百七十二万円、
河川被害七十七
河川、七百九十九
箇所、八億二千八百八十六万円、海岸
被害七
箇所、四千二百六十四万円、計二千百五十五
箇所、十八億六百八十九万円余であり、
林業被害としては林道
被害五
箇所、三百十五万円、林産
被害二千五十五万円、治山
関係十六
箇所、三億二千五百九万円、計二十一
箇所、三億四千八百八十万円、その他国民健康保険
関係一千三百八十万円、商工業者
関係五千百七十八万円、公用建物
関係二千十五万円、その他三千五十八万円を加え、その総
被害額は道
関係七十九億二千二百三十七万円余、これに開発局
関係五億六千百五十二万円を加え、総計八十四億八千三百九十万円と見積られております。
これら各般の
被害の態様を見るに、まず
農作物の
被害については、第一次
災害によ
つて、道中央、道南、道東の広汎な
地域が強風を伴う
豪雨に見舞われ、四万七千町歩に及んで甚大な
被害を受け、第二次
災害における
豪雨で、大小
河川の
氾濫、塩水、
堤防の
決壊等が相次いで起り、特に道の
穀倉地帯たる上川
地方及び北部空知
地方においては、雷鳴を伴う
豪雨に見舞われ、傾斜地畑作
地帯においては泥流による表土の
流失、平坦地水田
地帯においても随所に水田の
埋没を見、四万三千町歩に及ぶ
被害を受け、さらに第三次
災害のはげしい
豪雨に襲われ、各
河川の
氾濫、洪水とともに、遂に石狩川も
堤防が
決壊し、五万六百町歩に及ぶ
農作物に甚大な
被害を受けたのであ
つて、ここに注目すべき点は、十四万一千三百六十六町歩に及ぶ広汎な
被害はさることながら、
災害時においては各種
農作物は相当の成育を遂げ、種類によ
つては出穂、開花の時期に達した後において
被害を受けたため、今後における回復は限定を余儀なくされ、また
被害の多い圃場の他作物への転換は時期的に制約を受け、
農作物の減収は免れがたく、農家経済に及ぼした損失は甚大であると認められるのであります。
次に、
水産関係の
被害について注目すべき点は、今次
被害地の渡島、檜山、胆振三支庁管内の大部分は、積年の凶漁並びに漁価安等のため、漁家の
収入は道内において最も低く、かつ
漁業協同組合の財務
状況も不良であ
つて、借入金の重圧にあえいでいるという特殊
事情にあり、道及び
関係町村は、それぞれ不振打開のため浅海増殖
施設の拡充、
漁業経営の合理化、負債整理の促進、道外船入漁の調整等その他諸般の
措置を講じ、その立上りに苦慮しつつある際であ
つて、今回の
災害の及ぼす影響はきわめて深刻なものがあると認められます。
次に、
河川被害に関しては、北海道の各
河川は、その大小にかかわらず、すべて原始的
状態にあり、特に石狩川、天塩川両水系の
河川にあ
つては、七月
豪雨の際その
水害の及ぼした範囲がきわめて大であり、これは各
河川ともに無堤蛇行
箇所の多いのに基因しており、早急に完全改修の
実現をはかる必要が特に痛感されたのであります。
三、道当局等の応急
対策概要について申し上げます。
今次
水害に際し、道内の各気象官署は、気象
状況の悪化に伴い、逐次大雨注意報あるいは洪水警報を発令し、道当局においてもこれと密接な連絡を保ち、気象配置、
降雨出水及び各
河川の
水位の
状況を刻々
関係支庁、市町村、
土木現業所等に周知徹底せしめ、警戒の万全をはかるとともに、
災害情報の収集並びに連絡に努め、水防資材を急送し、係員を急派して水防
作業並びに応急工法の指導に当らしめ、また罹災者
救助等のため、たき出しを必要とする市町村においては、臨機に食糧の配給を行わしめ、防疫医療については道及び保健所より係員及び防疫班を急派するとともに、鼠族、昆虫駆除のため十九箇町村に伝染病予防法第十六条の二項を
適用、その他
浸水家屋、井戸、水道の消毒、保健所所管の濾水機及びフオグマシンの貸与、水質試験車の
派遣、検病
調査の実施、
災害救助法による委託業務としての日本赤十字社医療班の巡回診療等各般の医療防疫
措置を講じ、病害虫防除については、罹災
農地における稲熱病を初め各種病害虫の発生防止のため、緊急備蓄農薬ボルドー百八十トンを放出するとともに、
各地に防除督励班を
派遣し、その指導に当らしめ、さらに家畜伝染病の発生及び蔓延防止のため、支庁、家畜保健所、家畜防疫員、獣医師、
関係団体等を総動員して、環境の整備、畜舎の消毒、疾病の早期発見及び早期治療に
全力を傾注し、一方、
被害農作物の再播用として、
災害対策用雑穀種子を緊急あつせんするとともに、農業技術陣を総動員して、青刈り大豆、かぶ、ゲントコーン、緑肥作物等の再播、補播の指導に当
つたのであります。
災害救助法の
適用については、第一次
災害において七月十日、日高支庁管内浦河町、三石町、十勝支庁管内大津村、豊頃村四箇町村に法を発動、その
救助費は六十六万円であり、第二次
災害においては、七月二十二日に上川支庁管内美瑛町及び留萌市に法を発動、その
救助費は五十六万円であり、第三次
災害については、八月三日に留萌支庁管内鬼鹿村、増毛町、上川支庁管内上士別村、和寒町、剣渕村、多寄村、士別村、温根別村、美深町、空知支庁管内妹背牛町、滝川町、一巳村、新
十津川村、雨竜村、沼田町、以上十五箇町村に対し法を発動、その
救助費は概算四百四十万円であり、罹災者の避難収容、たき出し、被服、寝具及び生活必需品の給与、医療、埋葬等の応急
救助を
行つております。
なお、罹災各町村においては消防、警察等の
関係諸機関は言うまでもなく、住民の総力をあげて水防
作業並びに罹災者の救出等に当
つたが、特に第三次
災害の石狩川
水害時に際し、名奇町、上士別村、多寄村、深川町、滝川町、妹背牛町の各町村は、
堤防の
決壊防止、人命救出
作業等に困難をきわめ、情勢危機に瀕したので、支庁を通じ保安隊の
派遣方を要望したので、道においてはただちに札幌総監部に要請し、総監部よりもよりの駐屯部隊に指示を与え、延べ四百名に上る保安隊をこれらの各町村に出動せしめ、各
作業に協力して
被害を最小限に防止し得たと報告されております。
四、財政
措置について申し上げます。前述した通り、今次北海道
災害の
被害総額は、道庁の調べによれば八十四億八千三百九十万円余であ
つて、その
復旧費は、国費直轄施行分を除いて、概算道
関係五十二億三千九百二十七万円、市町村
関係十四億六千八百二十一万五千円、計六十七億七百四十八万五千円と見積られ、その内訳は、応急
対策費、道
関係四億五千四百十六万円余、市町村
関係一億二千七百十三万円余、計五億八千百二十九万円余、
復旧対策費、道
関係四十七億八千五百十万円余、市町村
関係十三億四千八百万円余、計六十一億二千六百十八万九千円とな
つておりまして、うち融資所要額十八億六千九百六十三万六千円と積算され、つなぎ
資金所要額は道
関係十三億六千百万円、市町村
関係七億三千六百万円、計二十億九千七百万円と見積られております。融資所要額の内訳は、農業七億九千五百七十一万三千円、土地改良二億円、水産四億七千五百六十二万五千円、林産三千百六十九万八千円、
中小企業三千五百万円、住宅八千二百四十万円、生業
資金一億四千九百二十万円と計算され、つなぎ
資金所要額の内訳は、道
関係においても応急
復旧費四億三千三百万円、
復旧対策費九億二千八百万円、計十三億六千一百万円、市町村においては、応急
対策費六千八百万円、
復旧対策費六億六千八百万円、計七億三千六百万円と見込んでおります。
今次北海道
水害の
復旧には、右のごとく
巨額の
資金を必要とするので、道並びに
関係市町村のみの力をも
つてしては、とうていこれが望み得られないのでありますから、国において、九州、南畿等と同様諸般の
復旧方途を講ぜられたいというのが、現地の
罹災民の強い要望であります。われわれ
派遣委員は、一方この熾烈な要望を耳にいたしますると同時に、この目で、みずからの立上りを決意した現地当局及び
罹災民の伝統的な屯田兵的精神に輝く昼夜兼行の
復旧努力の姿を見たのでございます。現に北海道は、選くべくして避け得られないところの来るべき結氷降雪期を目睫にしているのであります。それ以前に一切をあげて急速に復興せんとする涙ぐましき復興意欲を、われわれは行く先々の罹災地で認めたのであります。しかしながら、道及び
関係市町村並びに
罹災民には、みずからの力の限度があることは言うまでもないのであります。よ
つて、国において、この北海道
水害に対し、早急に応急
対策を講ずるとともに、さきにわれわれが立法した
水害地対策に関する諸
法律を
適用し、も
つて国土の保全と民心の安定をはかる必要があると認める次第であります。
以上北海道
水害についてその要因、
被害状況、応急
対策の概況、財政
措置等について総括的に申し述べたのでありまするが、
被害市町村別の詳細な
状況及び道庁の
被害地域の指定、財政及び法令上の
措置算について、数十項目にわたる要望、その地市町村及び各種現地機関及び団体等の陳情につきましては、本報告書とともにお手元に配付いたし、ことにわれわれ
調査団の手において現地で収集いたしましたその資料は、この委員室の
委員長に向
つて右側の机の上にとりそろえておるのでございます。これらを詳細にごらん願いまして、
農作物の
被害状況等を御了承願いたいのであります。われわれ
調査団といたしましては、まずこれらの諸点を
調査いたしまして、八月十七日に東京に帰京いたした次第でございます。
以上御報告申し上げます。(拍手)