運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-13 第16回国会 衆議院 水害地緊急対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十三日(月曜日)     午後三時五十三分開議  出席委員    委員長 村上  勇君    理事 逢澤  寛君 理事 生田 宏一君    理事 綱島 正興君 理事 中島 茂喜君    理事 滝井 義高君       上塚  司君    大久保武雄君       高橋 英吉君    馬場 元治君       林  信雄君    平井 義一君       赤澤 正道君    舘林三喜男君       吉田  安君    井谷 正吉君       井手 以誠君    細迫 兼光君       受田 新吉君    辻  文雄君       松前 重義君    松永  東君       中村 英男君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君  出席政府委員         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君  委員外出席者         農林委員会専門         員       難波 理平君     ————————————— 七月十三日  委員足立篤郎君辞任につき、その補欠として江  藤夏雄君が議長の指名で委員に選任された。     —————————————  本日の会議に付した事件  西日本の豪雨による被害状況に関する説明聴取  の件  水害地対策に関する件  派遣委員よりの調査報告聴取の件     —————————————
  2. 村上勇

    村上委員長 これより水害地緊急対策特別委員会を開会いたします。  まず、厚生大臣より、現地状況及び対策につきまして、説明を聴取いたします。山縣厚生大臣
  3. 山縣勝見

    山縣国務大臣 今回の災害に関しまして、私は、二日に立ちまして、足かけ五日間滞在いたし、視察をいたして帰つて参りまして、すぐに当委員会に御報告いたすべく待機いたしておりましたが、いろいろな時間の関係等もございまして、御報告が遅れたのであります。この点まずもつて御了承願いたいと思うのであります。  今回の災害が起りまして厚生省といたしましては、社会局長あるいは医務局長を派遣いたしまして、災害救助法並び防疫対策の二つの面について遺憾なきを期しました次第であります。なお、災害状況等につきましては、これは対策本部等において発表もいたしておりますし、その他の機会に十分御報告があつたと思いますから、本日は、今回の災害に関して災害救助法並び防疫対策厚生省所管の二問題について、大体御報告を申し上げたいと思うのであります。  今回の災害に際し、すぐに災害県に対して災害救助法を発動いたし、御承知のたき出しあるい衣類あるいはその他の物資の配給、その他災害救助法に規定いたしております緊急災害対策を講じました次第であります。なおまたその間、アメリカのCAC団体、あるいはケア物資、あるいは政府備蓄衣料、毛布あるいは救助物資、これらをあらゆる輸送機関、空路あるいは陸路あるいは保安隊等協力を得て輸送いたしまして、遺憾なきを期しました次第であります。詳細なることは、もう大分時間も経ておりますから省略いたしまして、災害救助に関しましては、現地参つて府県とも連絡をとつてやりまして、大体遺漏なきを期しておるつもりでありますが、たとえば、たき出し機関のごときは、熊本であるとか、あるいは久留米であるとか、あるいはその他の地区において、既定の六日間、はまだ緊急避難が終えませんので、対策本部においてとりあえず十日といたしましたが、今後なお、場所によりまして十日をもつて緊急避難を終えないような場合に際しては、厚生大臣の認定その他の方法によつて、これを延ばすべきではないかと思つております。なおまた緊急仮設住宅につきましても、単価引上げ、あるいは衣料等の申告の期間延長、あるいは学用品単価引上げ、いろいろな点について対策本部において一応決定をいたして、さようにとりはからつておりますが、今後に残つております問題は、災害救助法におきましては、現在都道府県災害に対しては、大体その普通税収入の百分の一を超過する分について、五割ないし八割の補助国庫が出すことに相なつておりますが、今回の九州地方災害状況甚大なる点にかんがみまして、災害救助決、の国庫補助基準引上げに対して、問題が存しておるのではないかと思うのであります。私がおります間に、罹災九州地区民生部長会議を開きまして、これらの点につきましても各都道府県要望を聴取いたしましたが、災害救助法に基く国庫補助国庫負担限度引上げに対して、相当強い要望がございましたので、これに対しては今後検討を要するのではないかと思うのであります。なおまた、災害救助法に上る緊急救助の各項目の単価引上げ、あるいは期間延長、これらに関しましても、一応必要な限度において決定をいたして参りましたが、今後とも状況いかんによつて考慮を要する点もあろうと思うのであります。  次に、防疫対策でありますが、防疫対策につきましては、すぐに伝染病予防法に基く地域の指定をいたし、あるいは救護班を各府県から派遣いたすように厚生大臣命令出し、あるいはまた中央から防疫官を派遣いたし、その他保安隊駐留軍あるいは各府県協力を得まして、たとえば濾水器のごときは、私が帰ります現在において、二十八台活動いたしております。なおその他、当初消毒液あるいは医薬品等現地調達を懸念いたしましたが、私が帰ります際においては、大体現地調達可能なりといわれておりましたが、ただ部分的に輸送関係でそれが届かない向きもありましたので、これに対しては、あるいはヘリコプターを利用し、あるいは小型飛行機を利用いたして場合によつて中央からそれを輸送いたし、あるいはまた製薬会社に対しましては在庫品調査をいたす。いろんな関係医薬品あるいは消毒液ー当時クロール・カルキが不足いたしておりましたが、これが現在大体調達可能であります。そういうふうにして人的、物的の配置は大体完了いたしまして、防疫陣をしいております。ちようど私の帰ります前に、府県衛生部長会議あるいは防疫官会議を開きまして今後の対策を協議いたし、なおまた大野部長とも相談いたしまして、遺憾なきをを期しております。なお、赤痢でありますが、一番おそれましたのは災害地における伝染病の流行でございましたが、赤痢は、今回は大体においてただいまのところ集団地区、すなわち避難地区等には集団的に起つておりません。府県によりますと、昨年同期に比して減つておるところもあります。しかし、さようなことを申しますと、いかにも防疫対策をおろそかにいたしておるように相なりますので、さようなことはあまり申さないで、防疫対策が今後の水害対策の一番重要な一つと考えまして、いろんな点に対していつでも緊急に救護班出し得まするように、なおまたその他の万全の措置をとつております。私が帰りました前日の七月の三日までの統計で参りますと、昨年が罹災県を合計して千十六名でありましたのが、本年は八百九十三名、こうなつております、もちろん今後にもやはり水害という一つの大きな悪条件がございますので、今後防疫対策には万全を期するつもりでありますが、御参考に申し上げておきますと、今回の伝染病、ことに赤痢に対する防疫対策は、たとえばいつもでありましたならば、下痢をいたしまして、しかる後に検便をして、しかる後に厚生物資等を与えるということでありましたが、今回はまず厚生物資を与えて、しかる後に検便をいたすというようなふうで、まず伝播力を断つて、しかる後に対策を講ずるというような方法をとりまして、赤痢等中心にいたしまする防疫対策には最も意を用いておる次第であります。なお濾水器等につきましても、今回飲料水が非常に不足いたしておりますので、濾水器を必要な村に持つて参りまして、遺憾なきを期しております。  なお、今回の災害に関しましては、予算的の措置でありますが、一応災害救助法に関しましては、先ほど申しました国庫負担限度を上げる必要があるのではないか。とりあえず災害救助法に基きます予算措置は、いつも年度末に清算払いをいたすのでありますが、今回はさようなことでは間に合いませんので、とりあえず第一回分として四千四百万円ほど概算払いで各都道府県に電送いたました。なお、たとえば社会保険に従事いたしておる診療医等に対する支払いが、自然水害によつて遅れます。それによつて診療機関が非常に困る関係もあつて罹災県に対しまして、すなわち保険医に対しましてとりあえず一億五千八百万円、これを概算払いいたすような措置を講じ、なおまた保険料徴収延期措置その他を講じて参りました次第であります。大体巨細に御報告をいたしたのでありますが、大分時日もたつておりますし、今後問題になります災害救助法基準引上げの問題、あるいはまたこの防疫対策に対する今とつております施策の大綱、これを御報告いたした次第であります。
  4. 村上勇

    村上委員長 これにて厚生大臣説明は終りましたが、質疑の通告がありますのでこれを許します。舘林三喜男君。
  5. 舘林三喜男

    舘林委員 厚生大臣ちよつとお伺いいたします。ただいま災害救助法関係のことにつきまして御説明いただきましたが、まつたくお話通り災害救助法が施行された場合に、府県負担が、現在は地方税の百分の一ということになつておりますために、普通の県におきましても、全面的にこれを施行する場合に、県財政というものは耐え切れない打撃を受けているのであります。一昨日でありましたか、厚生省から資料をいただきましたが、ただいままでに全面的に施行した数年間の例を見ましても、地方負担が非常に大きくて、しかもそれが非常に貧弱県に多い。従いまして県といたしましては、全面的に施行して法の精神通りやりたいと思つておりますけれども、県の負担が多いために、実際はその通りつていないというのが各県の実情であります。その意味からいたしましても、ぜひ、大臣がおつしやいましように、三十六条の負担金をどうしてもこの際思い切つてかえていただきたい。これは各県知事あるいは各市町村長の切なる願いでありますので、ぜひこの点につきまして大臣の特別な御考慮をお願いいたしたい、これが第一点であります。  それから、それに関連いたしまして、災害救助法の二十二条には、生業に必要なる資金として一万円出すことになつております。しかしこれは、現在社会的な実情から申しましても、一万円の金をいただいて、これが生業資金ということは、およそ社会観念からいつても問題にならない数字ではないか。またこれは、現在法律改正を要さなくても、予算さえ見込みましたならば、これを三万円くらいに増額することも、通牒趣旨からいつたらできるのではないかと思つております。また応急仮設住宅につきましても、現在現行の厚生省通牒は一戸当り、六万円となつておりますけれども、六万円では現在、いくら仮設住宅とはいいながら、これの実施が困難じやないか、そんな観点から考えましても、ぜひ厚生省といたしましては、法律改正が根本的でありますけれども、とにかく施行規則等を思い切つてかえられまして、ぜひ現在の地元の切なる要求に沿うように、ひとつ考慮をお願いいたしたい。なお、先般のこの委員会におきましては、現在設けられております九州にあります大野対策本部長中心とする出先の本意、それをなるべく時間の許す限り半恒久的に置いていただきたいということが、各委員の強い要望でありました。それに対しまして大野大臣は、すでに相当恒久的な性格を持つている防疫対策本部というものが置いてあるということであります。この防疫対策本部機構というようなものは、どんなことになつておりますか。この防疫対策本部等は相当長い期間存置していただけますか。この点に対しましても大臣の御意見を承りたいと思います。
  6. 山縣勝見

    山縣国務大臣 この災害救助法に基く、いわゆる国庫負担限度を上げる——むしろ下げるというのがいいのかもしれませんが、要するに現在の税収入の百分の一というのを、むしろもう少し下げてそうして国庫負担の範囲を拡大するということに対しては、先ほど私が申し上げました通り、これは今後考慮すべき問題たと思つております。しかしこれは御承知通り法律改正を要しますので、これは、何らかの方法によつて、そういうような目的を達成いたしたいと考えております。  それから、先ほどお話生業資金なりあるいは仮設住宅の問題でありますが、これは、御承知通り、従来たとえば市部が千戸、郡部で百戸以上という制限がありましたのをとつて、しかも従来五千円でありましたのを今回一万円にいたしたのであります。なおまた仮設住宅は、従来一万円のものを一万二千円に今回いたし、なおまた市部が一割でありましたのを二割、郡部が二割でありましたのを三割に一応いたしたわけでありますが、これは今後の情勢によつてまた善処いたしたいと思つております。  なお、ただいま仰せの対策本部の設置の期間、これは閣議等において決定すべき問題で、私だけの考えでは申せませんが、対策本部の中に防疫対策本部というものを置いておるが、その機関いかん、また今後かりに防疫対策大部を置くとすれば、今後どの程度までどういう機構で置くかというお尋ねであります。ただいまは九州現地対策本部がありまして、従つて防疫対策本部は置いておりません。とりあえず対策本部の中の防疫班として、今必要な機構のもとに善処いたしております。大野国務大臣の言われたのは、たとえば対策本部を今後現地においてなくするか、あるいは何らか機構の変更があつた場合においては、防疫問題は今後重大であるから、たとえば対策本部のごときものを置いてやりたいということでございますから、その場合にそのことを考えたいと思つておるのでありまして、ただいまのところは、一応対策本部のあの機構の中に現在持つております人的、物的の配置で一応十分であろうと考えておる次第であります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 今災害救助法関係の御質問がありましたが、少しつつ込んでお聞きいたしたいと思います。現在あの災害の起つた当時に、百万人、二十六万世帯の人々災害救助対象なつたということでございます。現在そういう人たち状態をずつと調べてみると、主としてこれは家屋の全壊、半壊あるいは流失という、こういうものが主たる原因になつて災害救助法対象になつて来ておると思う。ところが、その百万人対象になつてつた人たちが、しからば現在どの程度災害救助法対象にならなければならないか。これは大野国務大臣に尋ねてみますと、なお十万人くらいは災害救助法適用を必要とするであろうというお話があつたのでございます。そうしてみると、おそらくこれらの方々はお宮お寺学校というものに主として収容せられておると思います。こういう十万人に余る災害救助法適用を受け、たき出しを受けておる人々を、現在の状態で放置しておつては、これはその人たち独立生計を営むような態勢というものはいつまでもできないと思う。従つて、これらの十万の人々独立生計を営ませるためには、まず第一に仮設住宅をつくつてあげなければならないと思いますが、現在そういう仮設住宅厚生省はこの災害救助法に基いてどんどんやつておるのかどうかということがまず第一点。第二番目には、そういう仮設住宅をつくつてやるからには、今度はそこに必要なるところの厨房品台所その他に用いる品物、あるいは衣類というようなものが、当然罹災者——少くとも親戚その他縁故者をたよれない、現在お宮お寺学校等に寄宿している人には、必要になつて来ると思います。仮設住宅、そういう台所品物、あるいは学童が学校に行くということになれば、当然災害救助法学用品を提供しなければならない。こういう災害救助法に伴う具体的な点は、現在、すでに災害が起つて大分になりますが、どういう具体的な手を厚生省は打つているのか、まず第一に御説明を願いたい。
  8. 山縣勝見

    山縣国務大臣 今お話がございましたが、大体どの程度災害救助法適用を受けておるかということについては、これは数字的にはただいま私の手元にございません。対策本部長の方から発表いたしておると思うのであります。  なお、ただいまお話生業資金とか、あるいは仮設住宅等は、これは厚生省が直接やる問題にあらずして、災害救助法とは、都道府県知事が、この災害に対して、緊急に、あるいは生業資金を与えるとか、あるいはたき出しをいたすとか、あるいは応急仮設住宅建設いたした際において、その地方財政状態を勘案して、国がどの程度の費用を見るか——府県がその現実を見て、そうしてその必要なものを見て、そのあとしりをどの限度国庫において持つかということでありますから、これは厚生省がすぐに自分みずから立てる問題ではないのであります。従つて、これには私が先ほど申した税収入の百分の一、あるいは五百分の一、あるいは千分の一というような問題に関連して、都道府県がこの災害に即して、できるだけ十分な対策をとり得るようなしりを、いわゆる法律に基いて国が国庫負担をいたすということが主であつて厚生省が直接立てるものでもありませんから、これは少し御質問趣旨が違つているのではないかと思います。
  9. 滝井義高

    滝井委員 実は、そういう答弁があるだろうと思つたのでありますが、現在の府県財政状態からいつて仮設住宅を建てたり、あるいは生業資金を貸すだけの財政的な余力が自治体にはないことは、大臣も御承知通りであります。従つて、そういう客観的な事態、十万人に及ぶ人が現実に路頭に迷つている、家もなければ何もないという状態に置かれている。当然これは政治的に、厚生省が早くわれわれの委員会その他に案を示して、現実大臣現地行つて見たところが、こういう事態が起つているので、早く救出法適用して、仮設住宅その他のことをやらなければならぬということを、大臣の口から実は私は言つてもらいたいと思うのであります。もちろんその責任は、当面の自治体における知事にあることはわかつておる。ところが、知事責任があるからといつて知事にまかしておいては、現在知事のところには金がないのですから、やむを得ないわけなんです。やらなければ、いつまでも学校お寺お宮にそういう人たちがたむろしておるということなんであります。そうすると、これはますます地方自治体財政を貧困に追い込み、無責任な政治が民衆に押しつけられるという事態が出て来るのでございます。従つて、まずそういう具体的な——さいぜん向うの方からもいろいろ質問が出ましたが、おそらく厚生省には、この救助法を具体的にどういうぐあいに改正して、これに手を打つのだという成案があるはずだと思うのであります。それがあれば、ひとつわれわれに配付をしていただきたいと思いますが、そういう資料はありますか。
  10. 山縣勝見

    山縣国務大臣 御承知通り、たとえば今お話仮設住宅だとか、そういうふうな緊急の施策都道府県知事がいたす必要がありまするので、もしも、そういうふうな計画がすぐに厚生省に何千件、あるいは何百何十件というものが参りますれば、つなぎ資金等はいらないのであつて、そのゆえに、大野国務大臣がわざわざ行つて、十億を二十億、二十億をさらに三十億にふやすという努力をされておるのであります。でありますから、これは緊急対策であり、しかも、災害救助法というものは、どこまでも緊急対策でありますから、都道府県知事現地に即してやつて、それをできるだけ国としてもあと財政的なしりを持つというのが建前でありますから、これは厚生省自分建設の案をつくつてどうこうということは、これはやつてもよろしいかもしれませんが、それは実情に即さないことであります。いかにして、都道府県知事が、財政上の困難を伴わずして、応急対策を立て得るかということに主眼があるのであつて、私は、御質問趣旨はやはり違つておると思うのであります。
  11. 滝井義高

    滝井委員 それはやはり私はおかしいと思う。少くとも災害救助法所管というものは、これは厚生省所管である。従つて、当然大臣現地行つて見られて、現実民衆が十万人もお宮お寺学校に住んでいるということから、帰つて来て、この法律のどういうところに欠陥があるかということを知られたならば、その欠陥を指摘して、みずから大蔵省なり何なりにこういうことをやることが必要だということを述べるのが、国務大臣としての当然の責務だと私は思う。さらにつつ込んで言いますが、現在大野国務大臣が三十億を出されております。現在私の調べたところでは、市町村あるいは府県から、急に必要な金高というものは三十億では足らないと言つて来ている。現在百二十億必要だということであります。従つて、国の方で三十億出しても、これは現実には焼け石に水なんです。都道府県が家を建てたり、あるいは防疫対策を具体的にやつたりするには、間に合わないのであります。従つて、今のように、それは自分所管じやないからといつて逃げてしまうならば、それでは、この救助法は、われわれはどこに持つて行つてお願いすればよろしいのですか。
  12. 山縣勝見

    山縣国務大臣 私の申し上げたことが、私の言葉が足らないために、いろいろ誤解があつたかと思いますが、災害救助法厚生省所管でありますから、これに対しましては、われわれはできるだけ水害対策遺漏なきを期して行くのでは当然であります。ただ、現実に、たとえば府県においてどの地区にどれだけの仮設住宅を置くかということは、これはやはり府県において案を立てられて、そうして、それに対してできるだけ国が援助をするという建前で行きたいと思つておるのでありまして、ただいま私の手元に、どの地区に、どの村に、仮設住宅が何軒という資料は、ただいま持ち合わせておらないと申し上げたのでございます。
  13. 安田巖

    安田政府委員 大臣の先ほどの御答弁を補足させていただきます。災害救助法で実際に金を出し災害救助の仕事をやりますのは、府県知事であります。それに対しまして、災害救助法建前精算補助になつておるわけであります。その補助の率は、先ほど舘林委員からお話がありましたように、県税普通税徴収見込額に対する百分の一以上の金を使いましたならば、それを越えると、二分の一の補助がある、こういうことになるわけであります。しかし今お話のように、すぐに金がいる。それをあと精算補助じやしようがないじやないかというので、私の方では、できるだけ早く、府県のお出しになつた金をもとにいたしまして、概算交付をしたいと思います。それを、ちようど七月八日の持ちまわり閣議で、概算交付を、福岡、佐賀、長崎、大分熊本に対しまして四億ばかりいたしました。なお、その前に、七月六日の方でございますけれども、四億の概算交付が少しでも遅れてはいけませんので、その日のうちに二億九千八百万円ばかりを、つなぎ融資として、資金運用部の方から電話でやつていただきまして、それは、今の二十億あるいは三十億のつなぎ融資わく外に出ておるわけであります。そういうふうな措置とつたわけであります。
  14. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、概算交付四億と、それから三十億の別に、二億九千八百万円のつなぎ融資をやつているという二本建になつているわけでございますね。
  15. 安田巖

    安田政府委員 そうです。
  16. 滝井義高

    滝井委員 それでは、その次にもう一つお伺いしますが、ただいま防疫対策のことが話題に上つたのでございますが、大体福岡県その他九州における赤痢というものは、これは駒込B3と申しまして、冬季にも非常に猖獗をきわめた赤痢でございます。これは、大臣御存じのように、ズルフアミンがきかない赤痢で、現在日本にはやつておる。特に九州には多いわけでございます。従つて、この赤痢対策のためには、現在十万人以上の、そういう集団的にお富、お寺学校等に収容されて、救助法対象になつておる人がいるわけでありますが、当然これらの人々の糞尿の処理、あるいは井戸水、あるいは食品の管理というようなこと、あるいはさらに、それらの赤痢の出た対策、いわゆる隔離病舎、こういう問題は、少しこまかくなりますが、現在厚生省はどういうぐあいに指導されておりますか。
  17. 山縣勝見

    山縣国務大臣 詳細なことは、また関係の局長あるいは課長から御説明を申し上げまするが、防疫対策に対しましては、先ほどお話の糞尿の処理等については、たとえば熊本等にはいささか問題がございまして、糞尿の処理に対して相当市、県当局においても苦慮をされ、一時いろいろ問題があつたことも私現地において聞きましたが、保安隊等協力を得て善処をされておるようであります。なお、先ほども御報告で申し上げましたが、消毒薬の入手等、ついても、大体今現地調達が可能でありますので、たとえば、井戸等に消毒薬をまくとか、あるいは水道水に対して従来の消毒薬をこくするとか、いろいろ措置をとつております。それから、先ほど申しましたが、集団赤痢は幸にあまり起つておりませんので、その方の懸念は少いのであります。しかし、将来伝染病が伝播いたします素地は十分ございますから、それらに対しましては、必要なときには検便するとか、あるいは先ほど申しましたように、少し下痢等をいたして、あぶないときには、すぐ衛生班あるいは防疫班が参りまして、あるいは厚生省あたりとか市町村の担当者が参りまして、隔離するとかいたしております。なお、隔離病舎等についても、浸水をいたした都市についてはいささか懸念される向きもございましたが、ただいまのところ、現地において私が総括的に聞いたところでは、一応この程度の患者の発生数におきましては、決して十分とは申せませんか、まず遺憾なくやつておるようであります。なお、現地には防疫官行つておりますし、その指導のもとに、各府県から応援に参つておりますもの、あるいは当該罹災県の衛生班、あるいは赤十字社の救護班、あるいは久里浜から参りました保安隊の衛生班等と協力いたしまして、これらの点に対しましては、消毒、治療、予防等、大体今のところ手配を了しておる次第でありますが、詳細な点は局長の方から申し上げます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 現在の伝染病予防法によつて、いろいろ市町村が手を打つた経費については、多分二分の一が国庫補助になつておると思います。ところが、現在こういう非常な事態になりますと、ただでさえ出費の多い府県あるいは市町村状態でございますので、二分の一の金を自分出して予防しようという積極的な意欲が出て来ない状態が、相当私は出て来ると思うのです。こういう点について、できれば国の方で二分の二くらいを負担して、三分の一を県が持つ。あるいは市町村の段階になれば、三分の一が県で、三分の一が国で、三分の一が市町村、こうなつておるのですが、市町村あたりはいわゆる防疫第一線でございますので、むしろこういうところには、防疫のそういう予防的な費用というものは国が全額負担してやるということの方が、今度のようなときには非常にいいのではないか。そういう意味で、伝染病予防法を特にそういうふうに持つて行くか、あるいはこういう面について、災害救助法全般を改正する時期でありますので、そういうことでやるか、こういう点について厚生大臣のお考えを伺いたい。
  19. 山縣勝見

    山縣国務大臣 本年は、たしか法定伝染病の予防費として七億一千六百万円でございましたか、予算に組んで御審議を願つておるはずでございますが、私がおります間に、各県の衛生部長会議を開いて、大体今回の災害救助に対応した防疫対策に必要な経費等も一応数字を聞きましたが、今後はどうなるか、赤痢等の発生状況を見ればわかることでありますが、ただいまのところ非常に超過してどうこうということもないと思うのであります。二分の一をむしろもつとふやして全額国庫負担にしたらどうかというお尋ねでありますが、これはやはり今後の罹災地における伝染病の伝播状況等も勘案して考慮すべき問題で、たとえば、そのほかに多少起りましても、予備費等で処理ができるのではないか。ただちに全額国庫負担にするということは、ただいまのところ考えておりませんけれども、これは今後の状況いかんによることと思います。
  20. 滝井義高

    滝井委員 それから、これは災害救助法の問題に返りますが、現在福岡、佐賀等において、炭坑の浸水あるいは鉄道の不通等のために、労使双方の責任に帰せられない原因で多くの労働者が遊んでおる。あるいはサラリーマン等も相当遊んでおると思うのであります。こういう人は現在失業保険の対象にならないわけであります。そうかといつて、そういう人たちは家が流されておるわけでありませんので、災害救助法対象にもなりかわるという状態だと思います。現在そういう人たちが、地元の佐賀県の県庁あるいは福岡県の県庁に、自分たちの生活をどうしてくれるかといつて押しかけて来ている現状だと聞き及んでおります。こういう著については、民生安定の施策を担当しておられる厚生省においては、災害救助法と関連を持つてか、あるいは何らかの形でやらなければならぬと思いますが、そういう問題について何かお考えになつたことがありますかどうか。
  21. 山縣勝見

    山縣国務大臣 この問題はなかなか困難な問題でございまして、これは単に地方々々のいわゆる完全な失業者のみにあらずして、たとえば熊本市内のごときは、水害でほとんど商行為が停止されている、市民生活は停止されているということでありますから、従つて、盆を控えてなかなかいろいろの問題があります。これは炭鉱の失業対策だけの問題でなくして、今回の災害に対してどうするかということは大きな問題であろうと思う。しかしこれは、失業保険でも救済できなければ、あるいはまた災害救助法はおのずから法の精神が違いますから、これも適用できない。そこで自然、現在としては、そういう意味において現実にその日の生活に困られる方に対しては、社会福祉の面において、たとえば生活保護法を適用しますとか、現在の法律で許される範囲においてできるだけのことをする。たとえば、生活保護に関しましては、一応今御審議願つておる予算に計上しておりまするが、その予算の割振り等においても、罹災県に対しては相当の考慮を払わなければならぬのではないかということは考えております。しかし、現実に炭鉱の失業者に対してどうこうということは、ただいまのところなかなかむずかしい問題であつて、これは総合的に大きな見地から考えなければいかぬのじやないか。厚生省所管をもつてしては、生活保護その他の法律によつて現実の困窮者を救済する以外はなかなか困難である。但し、熊本の市内等におけるそういう困難な事情の方に対しては、金融措置をもつて、たとえば預託をするとか、あるいは手形の期限等の問題を解決するとか、そういうような側面の間接的な政策によつていろいろ満たされることと思います。直接的な法律的の措置をもつてやるということはなかなか困難であろうから、できるだけ間接的ないろいろの方策をもつて、国家としてそういう困窮者を救う方向に持つて行くべきでやないか、こういうように考えております。
  22. 滝井義高

    滝井委員 先日私は、やはり当委員会において、大蔵省の方にその問題について大分いろいろ質問した。ところが、答えは、自分の方の主管でないので、厚生省と十分相談をしてできる限りのことをいたしたい、自分の方としては、たとえば炭鉱の問題なんかは、炭鉱の事業主に一応のつなぎ融資出してそして、事業主から一応金を貸すという形に持つて行きたい。こういう御意向であつたのでございます。ところが、現実九州の炭田の状態を見てみますと、すでにもう貯炭が三百万トン以上あるという状態でございまして、中小の鉱山は水につかつて、今後再開をするかどうかということが疑問なのでございまするしかも、政府自体におけるこういう中小炭鉱に対する対策というものは、現在必ずしも保護をするという方向に向いていない。むしろ、現在縦坑をつくるという大手筋に対しては、三、四百億の金を出して、いわゆる炭鉱の合理化をはかろうという意図はあるようでありますが、中小の炭山に対しては、莫大な融資でもして救つてやろうという意図は、われわれ現在の二十八年度の政府の予算の上から見ても、そういう片鱗が見受けられないのでございます。従つて、そういう片鱗が見受けられない現実においてさらに水害によつて非常なシヨツクを受けている。しかも、その炭鉱が再興する見込みがないという状態なんです。従つて、これはまだ閉鎖はしていないが、ここで政府が何とかしようということで手でも打つてくれなければならぬ。しかし、何とかしようということも、その時間があすか、あさつて何とかするならいいが、一箇月も二箇月も何とかとかで過しておつたのでは、現実の労使双方の責めに帰せられない水害のために休業している人は、失業保険ももらえなければ、災害救助法適用も受けられないということになつて、その人たちは食わないでおらなければならない。ところが、それではすぐに生活保護法の対象になれるかというと、これは現実の問題としてはなかなかなれない。従つてこれは、この前も大蔵省の方々、通産省の方々がいろいろ言いますけれども、現在何ら政府においては具体的な積極的な対策がないのが現状である。今の大臣の御答弁もそういう状態だつた。九州における中小炭山の人たち、あるいは今大臣の御指摘の熊本の中小商工業者の人たちは困つている。何とか政府の方でお話合いくださいまして、閣議でこれに対する何らかの決定的な線を出していただきたい。そのイニシアチーヴを、こめんどうでしようが大臣にとつていただきたいと思いますが、どうでしようか。
  23. 山縣勝見

    山縣国務大臣 この問題はなかなか一概に言えない、いろいろなケースのある問題であつて、たとえば、熊本の一般の中小企業の商店の現状、あるいはまた筑豊炭田における中小の炭鉱の問題等があると思います。中小企業の炭鉱の問題でありますれば、その炭鉱の将来の問題あるいは合理化問題等とも関連しておりましよう。でありますから、そういう向きに対しては、社会福祉の面でとつております政策と同じように、いわゆる救貧にあらず防費、従つてちようどボーダー。ラインの前後にある人でありますから、そういうふうな境涯に落ちないように手を打つて、たとえば熊本における中小企業に対する金融対策もありましよう。為るいは筑豊炭田における中小炭鉱の更生に対するいろいろな手もありましよう。これは各省に通ずる問題で、あえて私がイニシアチーヴをとるとらぬという問題でなくして、やはり重大な問題であります。閣議においても話合つておることでありますから、今後とも一つの問題として、われわれも努力はいたしたいと思います。
  24. 滝井義高

    滝井委員 実は通産省の方から出ておる中小炭鉱の対策としては、救助法の二十三条でやるということを書いておる。ところが救助法の二十三条ではできない。できないものをやると対策の中に書いておる。これでは困る。大臣はどうも消極的で困るのですが、もつと積極的に、ぜひこれは解決してもらわなければならぬ。末解決の問題で現在困つておりますので、これはやつていただきたいと思います。これで一応私の質問を打切つておきます。
  25. 大久保武雄

    ○大久保委員 住宅問題につきましては、ただいま同僚議員から御質問になりましたから、私は衛生問題に関しましてお伺いいたしたいと思います。厚生大臣は、この問九州現地においでになりまして、適宜な措置をおとりくださいまして、進捗をいたしておりますけれども、罹災者の栄養状態といいますか、交通が杜絶をいたしまして、家財一切のものを流失いたしまして、まつたく裸の着の身着のままで、あるいは学校なりあるいは寺院なりに収容されております者の栄養状態に関しまして、若干憂慮すべき徴候か現われておる面もあるようであります。今回はきわめて広汎なる地域であつて、しかもきわめて交通不便なところに多数の罹災者を出しておりますから、一気に十分な手当ができないことも、もちろん想像はいたすわけでありますけれども、たとえて申しますと、熊本のごとき非常な大災害を受けまして、市におきましては、三十二箇所の収容所に八千百十一名が収容せられております。きわめて多くの収容者を出しておるわけでありますか、このうちで外傷が千五百二十一人、内科が千百九十六人、——先ほど赤痢の問題がありましたが、赤痢は県内ですでに三百人近くの発生を見ております。これは今後必ずしも楽観を許さぬと私は考えておる。栄養疾患が三百六十六人であります。これはかなりな栄養疾患であります。栄養疾患の軽いものを入れますと八千百十一人の四五%に当るのではなかろうか。こういうことも言われております。私が見舞いましたある収容所、熊本で一番災害を受けました地帯の収容所におきましても、かなりな栄養疾患が出ております。現に子供の足が栄養疾患のためにねじれておる。こういうような現実を見て参つたのであります。そこで、この罹災者に対する給食費と申しますか、これは当局の御考慮によつ三十円が四十円に値上げされておるということでありますけれども、現在におきましてはこれは主食代にしか当らないそうであります。そこで副食は自分負担でありましても、一銭も持たないのでありますから、栄養のとりようがない。そこでかような栄養疾患が出ておる次第であります。これは単に熊本のみならず、罹災者を出しておる僻遠の地では、おそらくこの例が該当するだろうと私は考えております。そこで、この給食費の一日四十円を若干値上げする方途がおありであるかどうか、この点に関する厚生大臣の御意見を承りたい。かように存ずる次第であります。
  26. 山縣勝見

    山縣国務大臣 実は災害救助法に基くたき出しの問題でありますが、これは当初御指摘の通り三十四円になつておりまして、それは一応六日間ということで三十四円に相なつておつたのであります。思うに、災害救助法というものは災害に対する緊急の救護法であります。従つて大体、普通の場合においては、一週間足らずで緊急避難並びにそれに対する緊急の救護というものはできる。その間は、火事が起つたときは握り飯というような、主食を主にした食糧で済むということであつたろうと思いますが、ことに私も現地において六日を十日に延ばしたわけでありますし、また地域によつてはそれだけでは済まない現状においては、これでは栄養不良になるであろうというので、中央においても大蔵大臣と協議をいたして、何とかこの三十四円を上げたいというので一応四十円に上げましたが、その後災害のいわゆる集団的な救助保護というものは、なお完全に必要がなくなつておりませんし、長期にわたりますれば御指摘のようなこともありますので、ただいまのところは救援物資等その他カン詰等をできるだけ配給いたして、副食の面においてこういう予算以外の点においてできるだけのことをいたしたいと思つて、実はそういうふうに指令もいたしておるのでありますが、しかしそれも輸送関係その他で、なかなか思うようになつておらぬとは思います。今後この点について、私も相当関心を持つて心配いたしておりますので、状況を見、この点はなお努力いたしてみたいと思います。なお、お説の栄養の面でありますが、これは実は私も現地においてその点を痛感いたしましたので、今後の罹災者の栄養の面に対しては、あらゆる点において注意をいたし、またこれに対しましても検討するように現地に申しておりますが、まだこれという具体的な案は立つておりません。とりあえずのところは、できるだけ救援物資等もカン詰とかなんとかをふやしてもらつてこれを補いたい。なおまたお気づきの点がありましたら、おつしやつていただいて、できるだけのことはいたしたい、かように考えます。
  27. 大久保武雄

    ○大久保委員 ただいま厚生大臣から、長期にわたれば考慮しよう、かようなお言葉をいただきまして感謝いたします。
  28. 吉田安

    ○吉田(安)委員 厚生大臣に一点御意見を承り、なおお願いいたしたいと思います。これはいろいろありますが、厚生大臣もこのことは陳情をお受けになつておりはしないかと思いますが、例の遺家族の方が九州では至るところで災害を受けておられます。この人たちに対する例の国債五万円の問題がありますが、あの方面から非常に痛切なるお願いをしております。どうぞこういう際、できますならば、一時のお支払いを願えないだろうか、できないとして無理でありますならば、半額でもこれを何とか支給していただきたい、こういうことを痛切に願い出ております。おそらく大臣自身もかような陳情を受けておると思いますが、この席上で大臣のお気持を承り、かつお願いいたしたい、かように考えます。
  29. 山縣勝見

    山縣国務大臣 実は私も最大限に考慮いたしたいと思つております。たとえば、そういう罹災地の方々に対して、従来御承知通り昭和二十七年度で二十億、二十八年度で三十億を予定しておりますが、そういう罹災地の方方に対しては、最大限の考慮をいたしてみたい。これは大蔵大臣ともなおよく相談してみたいと思つております。
  30. 吉田安

    ○吉田(安)委員 どうぞひとつさような気持で御善処方をお願いいたします。  これはさいぜんの質問に多少関連しておりますが、大臣から数回熊本のことを例としてお引きいただいておりますことは感謝いたします。ただ、今回の災害は、ひとり熊本だけではない。災害を受けた各県全部が一様に苦しんでおることであります。熊本だけを言うわけではありませんけれども、熊本実情をごらんくださいまして、熊本市の救済の方面のことについては大分御傾倒くださつていることは感謝いたしますが、生活保護法でもちよつと当てはまらないし、災害救助法もどうだろうか、失業救済の対象ともならないというものがたくさんあります。これは大臣の御所管と限つたことではありませんが、盆前にわずかの資金で店を張つてつておるところに、思わざる災害があつて、何もかも流してしまつた。小さいのは十五万とか二十万とか三十万というのが、実際さしあたつてどうすればいいのかと、とほうに暮れておることだと思います。といつて、どういう法律でこれを救済するかということになると、これはあと建設大臣にお尋ねしたいと思うのですが、困つたことだ、こういうように被害地も行き悩んでおりますし、われわれもそうであります。政府当局もそうだと思いますから、どうぞできます範囲内の方法を御研究くださいましてわれわれも研究いたしますから、相ともに彼らのために努力をいたしたい思います。十分お願いいたしておきます。
  31. 村上勇

    村上委員長 次に、建設大臣に対する質疑を許します。大久保武雄
  32. 大久保武雄

    ○大久保委員 私かお尋ねしたいのは、先日大野国務大臣の御配付になりました西日本災害対策中間報告書を読みましても、今回の災害一つの大きな特色は、洪水であるとともに、どろが非密な損害を及ぼしておるという点であろうと考えております。どろの被害は、あるいは長崎県に、あるいは熊本県に、あるいは福岡県に、所々に起つておる次第でありまして、このどろの災害に対して、従来の救済法規では的確なものがないということでございます。この点は非常な大問題でございまして、そのどろの重大な損害を受けておる熊本県の例をとりましても、熊本市だけでも二百四十万立方米であつて、その排土作業費が十二億ないし十五億ということもいわれております。このどろの排除費用は、今までの法規を過用したのでは、とうてい救済することはできない。また、しいて適用しても、県市がその負担をすることができない、こういうことに相なろうかと考えております。また、どろの排除費につきましては、個人の住宅におきましてもきわめて大きな損害を受けておりまして、知事官舎を例にとりましても、知事官舎の排土費が百万円かかるということでがざいまして、家が一軒建つくら」の費用が、どろを取除くだけでいるわけであります。この費用は個人が負担しろといつても、負担できるものではありません。もちろん、個人が自分の生活を立てるために、まつ裸になつてこのどろの排除をいたしておりますが、これらのどろの排除費に対してもし的確な法律がないとするならば、それをいかなる方法によつてなさろうとするのか。今度の災害にきわめて特異などろの問題につきまして、建設大臣の御意見を承りたいと思います。
  33. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お話のように、熊本の市街を襲つたどろの始末は、まことにむずかしいことだと考えております。今お話の復興の係でありますけれども、これは、従来の建前から行けば、たとえば都市災害とか、そういうような形で復旧の補助というやわ方があるのでありますが、今回のものには、従来のままでいいかどうかということは、また考えものだと思います。ただ、今私が心配しておりますのは、むしろそれよりも、早くどろを処理することが一番大切でありまして、この点では熊本としても捨て場に困り、また運び方にも困るというので、非常に因つておられるようでありますので、現在の状況をただいま照会をいたしております。私どもの考えたのでは、結局、ただいまやつておるような、市の付近に捨てるというだけでは間に合わないのではないか。これは考えただけであつて、やつてみてほんとうにうまく行くかどうかわかりませんが、軌条でも敷いて、海に持つて行つて捨てるということをあわせて行うことがいいのではないか。それには地勢のこともありますから、今照会をいたしております。そういう方法で、金の問題は二の次にして、早く片づけることが一番大切であるという点を主として考えております。金の点は、ただいま申し上げましたように、従来の制度で復旧の補助というやり方はありますが、金額も相当のすことでありますから、はたしてそれで済むかどうか。また別の考えをしなければいかぬということも考えられますけれども、その点については、大蔵省と折衝しておるというところまではまだ行つておりません。結局これは十二億というのも概算のことであつて保安隊協力するとか、あるいは市内で職のない人が協力するとかいうことも考えられますし、レールを敷いてやるということになれば、はたして一立米の単価がどれほどになるかということもまだ正確にはわかりません。そういうことがはつきりした後でいいのではないかというふうに考えております。別にゆるがせにするわけではありませんが、とりあえずはつなぎ資金でやつて参ろう。こういうように考えております。
  34. 大久保武雄

    ○大久保委員 ただいま建設大臣から応急のどろの排除について努力するという御説明を承りましたが、恒久的には海まで持つて行つて捨てることも考えておるという御意見でありまして、この点は私どももきわめて賛成であります。熊本のどろの排除は、大きな道から逐次片づけて行かなければなりません。順次どろをレール式に送つて行かなければならぬ、こういう点が出て参ります。これはあるいは他府県におきましても同じ問題があると思いますから、かようなどろを捨てる場合においては、将来あるいは埋め立てることが必要なら埋め立てる、そういう最終の目的地に行くまで、国が親心をもつてめんどうを見てやつていただきたいと考えます。将来のこれらの費用に関しましては、今後考えるというただいまの御説明でありますが、これは今後農地の問題その他にもかかつて参りますが、今度の災害は、これはとうてい県、市がこれらの災害に対してとつ組める段階ではございません。そこで、どうしましても、これは特別法なり、あるいは何らかの特別の非常措置をとつていただくことが必要だと思いますが、何らかの特別法をこの問題についておとりになるお考えがありますかどうか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  35. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 ただいまのお話しでありますが、どろを処理する費用のことだつたでございましようか。
  36. 大久保武雄

    ○大久保委員 そうです。
  37. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 それは、先ほど申し上げましたように、大野大臣は、もう全額国庫でやるくらいにということを、ここの委員会でもお話があつたのでありますが、いずれそういう点については今後協議もしなければならぬと思います。先ほど申し上げましたのは、現在の制度で行うという意味では災害復旧制度がありますが、それ以上ということで、まだ大蔵省との折衝までは進んでおりません、それだけならすぐ持つて行けますけれども、それ以上ならばもう少し考えるというようなことになる場合も予想しまして、まだ折衝はしておりません、こういうふうに申し上げている次第でございます。
  38. 大久保武雄

    ○大久保委員 建設大臣の、全額負担に近いところまで非常な努力をしようという御意見に納得しまして、今後とも御尽力をいただきたいと考えております。  次にお尋ねしたいと考えますのは、今度筑後川、白川その他の九州の河川が非常なる災害を起しましたが、これらの河川に対しまして今後いかなる施策をとろうとされるか。すなわち、今度の河川の氾濫に対して、その原因を探求し、速急なる永久策を立てることにつきまして、何らか緊急な手をお打ちになつているかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  39. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 緊急な処置としては、先だつてからも申し上げましたように、とりあえず締切りなりあるいは応急の復旧ということを考えておるのでありますが、恒久的には、今回の雨量が非常に従来の例を破つたというような関係もあつて、よほどむずかしい点があると思います。しかし、大体私はやはり元の方から、川の水の管理といいますか、そういうことを考えなければいけないのじないか、今までもちろん考えているに違いありませんけれども、もつと集中的に元の方から考えて行かなければならぬのじやないかというふうに考えておるのであります。まだはつきりした具体案までは参つておりません。これは十分研究しまして、もちろん今度の災害のみならず、全国的にもずいぶんこの例をとつて不安になつている向きが多いと思いまして、こういう点については慎重に研究をいたしたいと考えております。なるべく早く恒久策を立てたい、かように考えております。
  40. 大久保武雄

    ○大久保委員 今回の災害河川の、従来の国の取扱い、あるいは直轄改修等にしてもある河川は直轄河川になつていない。そこで、あるいはこれらの河川の改修が若干手遅れであつたのではないか、こういうことも罹災民の間には言われておる次第であります。そういう従来の河川の取扱い、たとえて申しますならば、熊本の白川などは最もひどい惨害を起しておつて、しかも今まで直轄改修河川ではない、こういう河川に対して、至急何らか将来直轄河川にするための調査その他の措置をおとりになるかどうか、この点をお尋ねいたしたい。
  41. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 白川につきましては、従来、政府におきましても、直轄河川にした方がよいではないかという案があつたように私承知しておるのでありますが、地元との話合い等で、あるいは延びておつたのでありましようか、今までのような形でおつたというように承知をいたしております。しかし、こういうことを見ますと、どうしてもやはり直轄で河川の管理をして行くことがいいのではないかと思います。とりあえずどういうふうなやり方をするか調査をいたしまして、なるベく早い機会に直轄河川にいたしたい、こういうように考えております。
  42. 大久保武雄

    ○大久保委員 私も、大臣と同様に、白川はどうしても直轄改修で行く以外に今後の根本救済の方途はないと考えておるのであります。速急に調査をいたして、一日も早く総合的に白川の治水問題を御解決願いたい。同時に、他の河川に対しましても、今回の災害の抜本的な方途を講ぜられんことを要望いたしまして、質問を打切ります。
  43. 松前重義

    ○松前委員 私は、建設大臣に、今度の水害に対して現地で機動的なやり方をおとりになつておられるかどうか、すなわち修羅場であつた現地の混乱に対して、対策本部あるいは建設省の出先方面は、市や県に対してどの程度の自由性を認められ、機動性を発揮されているのであるか、その辺の大臣のお考えと現状について伺いたいと思います。
  44. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 機動性ということは、どういうことに受取つていいかわかりませんが、今回の災害につきましては、私も御承知のようにいち早く現地に参つたわけであります。こういう場合にあまり事をめんどうに考えることはいけないと思いまして、出先地建でも、あるいは私の方から行つた者でも、復旧ということに少しでも早くかかるように、またもう一つ地建の出先の事務所がありますが、そういうところの人も、自分の受持つ現場について災害後すぐ処理をするというようなことは、あとから報告をしてもいいから、手当を少しでも早くするのがいい、一例でございますけれども、こういう指示を出したのでございますが、全体をそういう動き方でやつてもらいたいということが、実は私の気持であつたわけでございます。
  45. 松前重義

    ○松前委員 ただいまのお答えはまことに適切であると思います。但し、現実はしからずでありまして、まことに遺憾なる現象が現われていることを御承知願いたいと思います。と申しますのは、おそらく水害地の各地にわたつて同じような例が行われていると思うのでありますが、ただいま大久保君から御質問がありましたどろの問題のごとき熊本市に対してどろを除去しておるのに、そのつなぎ資金を出すときに、一体保安隊かどのくらいの土量を運んだのであるか、そうして全体のどろの量はどのくらいであるか、このような数字を全部持つて来なければお金は出さぬ。——このような事務の末端に走りましては、水害応急処置なんというものは絶対にできないのであります。これは決して熊本だけの例ではなく、水害地全般に及ぶ現在の建設省のやり方であると思うのでありまして、このような問題に対して大臣はどのような処置をとられようとするか伺いたい。
  46. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お話のごとくであれば、まことに申訳ないことだと思います。先ほど申し上げましたが、私も実は前に三日ほどおつたのでありますけれども、あの通りの交通不能の状態で、各所に参ることはとうていできませんでしたが、私が行つた限りにおいては、ただいま申し上げたような指示をしたのであります。また地建等に対してもそういう指示はいたしたのでありますけれども、これが不徹底であつて、かえつて今御指示をいただいたような点もあつたかと思いますが、私の気持とまつたく違つた結果が現われておつたとすれば、はなはだ遺憾に存じますが、十分注意をいたして、さようなことがないように今後もいたしたいと思います。
  47. 松前重義

    ○松前委員 くどく申し上げる必要もございません。ただいまの御処置をすみやかにおとり願いまして、市や県などの自由なと申しますると語弊がありまするが、ある程度自己の裁量によつて能率よく動くことのできまするように、おとりはからいを願いたいと思う次第であります。たとえば、ただいまの、保安隊がどれだけ運んだか、そんなことを計算しているときではないのでありまして、先ほどお話のように、一日も早く復旧しなければならぬときでありますから、そういうことに関係なく、つなぎ資金でありますから、思い切つてむしろ督励してやらせるようにしなければならない事態だと思うのでありまして、すみやかなる御処置をお願い申し上げる次第であります。  その次には、先般大野国務大臣にも御質問申し上げておいたのでありますが、大野さんの御答弁はどうもあまり要領を得ませんでした。建設大臣は、その関係の主管の大臣でありまするから、おそらく明快な御答弁ちようだいできると思つておるのであります。それは、ただいまのような被害の現象に対しまして考えられることに、その復旧の問題があります。その復旧の問題も、応急な復旧のほかに、根本的な問題を考えておかなければ、応急の復旧あるいは恒久の復旧に対しましても将来災いを残すおそれがたくさんにあると思うのであります。委員の方々は、二度目でまたかとお思いになるかもしれませんが、先般の質問に対しましてお答えが十分でありませんでしたから、承る次第であります。それは、現在政府がやつておられるところの国土総合開発計画というものがあります。国土総合開発計画なるものは、国土総合開発審議会に付議いたしまして、そうして国土の、ことに河川の問題を中心として、その資源を開発し、その治水あるいは治山の問題を取上げて、しかも日本の国力、すなわち天然資源をいかにして開発するか、水力電気やあるいは灌漑とか、そのような問題を開発するかという問題が、現在着着として行われておるのでありますが、北上川のごときはもうすでにそれに着手しておる。このようにいたしまして、治山、治水と密接な関係があると同時に、電力開発等とも非常に深い関係を持つておる国土総合開発計画なるものが、今度の九州地方に対しまして、特にこれは考慮されなければならない問題であると思います。筑後川にいたしましてもあるいは遠賀川にしても白川にいたしましても、すべての河川に対して今日これを早急に解決しなければならないと思います。これらの国土総合開発計画は、さしむき復旧工事と密接不可分の関係を持たせなければ、将来において非常な不経済を来すおそれがある。せつかく復旧してみても、国土総合開発の見地から見ては、またつくり返さなければならぬというようなことでは、二重の浪費になるのでありますから、これらの問題を今にして根本的に計画を樹立し、そうして大体の方向を決定して、着々と計画的に進めて行かなければならぬと思うのでありますが、これらに対しまして、いわゆる災害の復旧と国土総合開発の関連性について、大臣は今後どのようにおやりになるおつもりがございますか、お伺いしたいと思います。
  48. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 今回の災害地の河川につきましては、先ほども申し上げましたように、とりあえず締切り、次に応急の復旧、そうして第三段に本復興をいたす、かような順序で参りたいと考えます。本復旧をいたしますまでには、もちろんただいまお話のような国土総合開発と関連してあやまちのないようにしなければならぬ、こういうふうに存じます。ただ、今回の災害河川は、いわゆる総合開発と関係しておるものは現在調査中に属する程度のものだけでありまして、まだ十分進行いたしておるものもありませんから、幸い御趣旨のようにあやまちなきを期して参りたい、かように存じます。
  49. 松前重義

    ○松前委員 どうもお話の焦点がはつきりいたしません。しかし、この問題に対してもう一つお伺いしたいと思うのは、私の申し上げておるのは、せつかく復旧をするならば、国土総合開発計画という国家の大きな資源開発、すなわち水力資源の開発あるいは灌漑、治山、治水というような問題とからみ合せて、そうしてその方向に合うように復旧した方が、最も経済的に、最も二重投資にならぬようになるではないか、このようなことを申し上げておるのであります。このような見地から次の問題で御答弁を願いたいと思います。と申しますのは、今回災害を受けました九州地方は、水力資源のある程度豊富なところであります。でありまして、ただいま国土総合開発なるものが全国に方々で取上げられておるのであります。この国土総合開発が取上げられておるのでありますが、それらの中で、九州地方に対して特に重点を注いで総合開発の着手の——着手と申しますか、その計画の立案と、そうしてその方向を早くきめる必要がある。このような意味において、いわゆる経済審議庁に属しておるところの国土総合開発審議会でありますけれども、建設省の事実上の指導下に置かれておる審議会でありますので、この審議会とこの災害復旧との相関関係を密接にいたしまして、すみやかに九州地区における計画を樹立し、そうして不経済がないようにするということが最も重要な問題だと思うのでありますが、大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  50. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 二重のむだにならぬようには十分気をつけて参りたいと考えます。また九州地方の総合開発計画と、治山、治水、また今後の行き方についても十分にあやまちがないようにいたして参りたいと考えます。  なお、先ほどちよつと申し落しましたが、筑後川のごとき今度非常な災害でありましたので、治山、治水上も、今度の災害の場所の復旧以外に、さらにあの川の管理については一歩進めた調査をいたして、復旧と同時に、川の改修をもう少し誤りのないように進めて参りたい、かような計画をもつて今進めております。それらのことは、自然ただいまお話の御心配の国土総合開発とあわせ見て、間違いのないようにいたして参ることができる、かように声考えます。
  51. 松前重義

    ○松前委員 国土総合開発として指定されております地域は、九州においては阿蘇地方とか、球磨川——有明海に注ぐところの河川であります。このようなところが現在特定地域として指定されておるのでありますが、また、その他これらのうちの筑後川の問題にいたしましても、あの上流にしかるべき水ためをつくるならば、このような惨害は比較的減殺されたであろうと言われておるのであります。そうして、その案は、すでにかつて開発の見地から主張され、調査された結論があるというのであります。ところが、その地域が大分県に属し、下流は福岡県であるために、両県の折合いができないで、遂にそのままになつておつたという話を聞くのであります。この県と県にまたがる問題に対しましては、建設省の指導のもとに強力にこれらの問題を解決しなければならないと思うのであります。今筑後川のお話がありましたので、まず第一にこの問題について大臣の御所見を伺いたい。  もう一つは、阿蘇の総合開発の問題であります。これは私どもの国であつて自分がここで申し上げては申訳ありませんけれども、とにかく阿蘇の総合開発に治山すなわち砂防の問題があるのであります。これらの問題がある程度進展し、もしある程度できておつたと仮定すれば、多少なりとも今度の災害に対して役に立つておるはずであります。山を治めれば下流における水は治まる。白川の水もある程度治まる。このようなことでありますから、この相関関係に対して、いわゆる白川自体の問題もありますけれども、もちろんこれは直轄河川としてやつていただかなければならないのでありますが、この阿蘇の総合開発に対して、この水源を治めることに対して、どのような考えを大臣はお持ちであるか、この二つの問題でお答えを願いたい。
  52. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 筑後川について大分福岡との関係お話がございました。建設省でも、筑後川の洪水量の想定が従来よりは多くなければいけないというので、一応の案を立てておつたのでありますが、まだこれを実現する運びに至らず、むしろ従来の計画さえ完成しないうちに今回のような被害を受けるようになつたので、まことに遺憾に存じておるのであります。将来は、ただいまお話のありました点については、適当にこれを解決して行かなければならぬものと私は考えております。  それから阿蘇の問題でありますが、もちろん従来も山を治めるということについて相当の考えはあつたと思います。けれども、今回のようなことによつて一層痛切に感ずるのでありまして、山を治めるということを第一に考えて参りたい。これは私先ほどもちよつと申し上げたと思いますが、水源を治めるということは、今後極力強く考えて行くようにしなければ、日本の川の管理がうまく行かないのではないかというように考えております。阿蘇についてはもちろん十分に考えております。
  53. 松前重義

    ○松前委員 建設省は相当のスタツフをお持ちでありまして、相当なるいろいろの専門家を擁しておられ、経験を持つておられるのでありますから、これらの問題に対して民間の知識を動員されまして、すみやかに計画を樹立されんことを希望いたし、しかもそれに対して強力なる適切な手を打つていただかんことを希望する次第であります。  次に住宅の問題がありまするが、私ども聞くところによりますると、今度の予算が通過したと仮定いたしますれば、公営住宅は五万戸くらいの計画があるという話を聞いておるのでありますが、今日九州地方における水害地は非常に住宅に困つており、二、三万戸は当然いるものと考えられますので、これらの公営住宅五万戸のうちで相当部分を災害地にまわして、すみやかに住宅の建設に着手される御意図はありませんか、伺いたい。
  54. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 災害地に対しては、全壊家屋の数の三分の一を公営住宅としてやる建前になつております。ただいまお話の公営住宅五万何百戸というのは予算にありますけれども、これとは別に、ただいま申し上げたようなものができるのであります。まだこれは正確な数字の報告はありません。ただいま二、三万戸というお話がありましたが、私どもの手元に最近までに来ているのでは、六千戸くらいの報告であります。
  55. 松前重義

    ○松前委員 公営住宅は全壊の三分の一とすると、あと三分の二はそのまま放置されることになりまするが、全壊に限らず半壊もおそらく住めないと思う。場所によつてどろの害を受けたようなところでは、こわれてなくても住めないところがたくさんある、こういうようなことでありますので、住宅資金につきまして急速な手を打つていただかんことを希望する次第であります。  その次に、災害の復旧に関しまして、政府の大幅な補助の増額をしていただかなければなりません。これらの問題は、すでに御答弁もあつたし、また大野大臣も非常に力強い答弁をされており、建設大臣からも先ほど来お話がありましたが、もうすでに大分時間もたちまするので、政府としては、いろいろな意味において、これは建設省以外に、肥料あるいは苗、あるいはその他先ほど来の厚生関係の問題等で、いわゆる特別立法、非常立法をしなければならないものがたくさんにあるのでありますが、建設省に関する問題につきましてすでにもう御準備のことであろうと思いますので、先ほど大久保君も質問したようでありますけれども、その問題と違つて、とにかく復旧の補助に関しましてどのような具体的な処置を急速なる処置をおとりになるのであるかという問題をお伺いいたします。
  56. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 復旧の水害補助については、私といたしましては、従来の災害復旧と上同じようなものについては、特別の考えをいたしたくないというふうに考えております。しかし、先ほどの話が出ましたが、こういうものを特別に扱うやり方は、また別の考え方でも行けるのではないかというふうに思います。災害復旧は、申し上げるまでもなく、年々非常なものでありまして、従来の災害復旧が、順次過年度の事業の方が繰越されて来てたまつておるような実情であります。これをさらに率の上で考えて行くということになりますと、今後災害復旧がほとんど行われないようになりはしないかというふうに私は心配いたしまするので、特殊な場合に特殊な扱いをするのは、別の考え方で行く方がいいのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  57. 松前重義

    ○松前委員 ただいまお話を承りますと、どろだけを特別にお考えになつて、その他の今回のような集中的な攻撃を受けたところの——ほとんど全県崩壊に瀕せんがごとき惨状を呈しておるこの実情大臣もごらんになつたところであります。それにもかかわらず、そのような平常の考えでおやりになるとすれば、これではとうてい復旧というものは困難ではないか。先般大野国務大臣が、これは特別措置を講ずるとおつしやつた。あの方はなかなか調子のいい人でありますから、そうおつしやつたかもしれませんが、とにかくわれわれはそれを聞いて今日まで信じておりました。ところが、ただいまのお話を承つて非常に失望いたします。これではとうていあのような集中的にやられた地域の復興はできない。現地における県も市も町村も、ほとんど負担能力は欠如どころでなく、もうたいへんなことになつておる。このような状態に対しまして、あくまでも建設大臣は普通の災害復旧と考えるというお考えでありまするか、重ねて伺いたい。
  58. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私が申し上げましたのは、災害の復旧というものについて、この際率を多くするというように制度的にかえて行けば、今後他の地方から出て来る災害が、つまり早い話が、金額に見積つてみましてもますます多くなつて、国の財政からしてもそれはやり切れぬようになりはしないか。災害復旧というものは、少くともそのあくる年までにやりたいというふうに私は考えておりますから、これ以上率をふやして行くことはどうかということを申し上げたのであります。しかしそれでも、私はよく承知しませんが、おそらく事業費の八割くらいまで補助が行けるのでありますから、このくらいの程度でやれるのではないかと思います。  それからもう一つ、今回災害地方で非常に心配をしておられるという話を聞いておりますのは、府県において十五万円あるいは町村において十万円という一番低い範囲の制限があります。それをもつと下げてくれという希望が非常に強いのだということを、これは大野さんからも私聞いております。なるほど今度は一村について十箇所も二十箇所もということになれば、かりに十万円のものでも積れば多くなるということも考えられるので、それではなかなか町村の負担がたいへんであろう。先ほど特殊な考え方をしてというのは、そういうふうなものについて少し研究をして行つたらどうかということを、私は申し上げたつもりであつたのです。他のどういう箇所があるか知りませんが、もし今回の災害全部を例外なしに国で持つということにすればとにかくとして、そういう例が制度の上できまつて行くことはいかがなものであるかというふうに考えておる、かように申し上げたつもりであります。
  59. 松前重義

    ○松前委員 制度の上できめるのはいかがかというお話でありますが、制度としてきまらなければ不可能なことであります。それでは、何度も繰返しますけれども、あのような惨状を復旧するというのは、不可能に近いと言わなければならないのであります。いずれにいたしましても、先ほど来のお話を承りまして、あまりにくまれ口は申し上げたくありませんけれども、災害に対する差迫つた非常感にどうも乏しいのじやないか。せつかくあそこまで飛行機でおいでになつてごらんいただいたその当時は、おそらく相当な切迫感をお持ちになつたと思うのでありますが、今日においては多少熱がさめたのではないか、このような感じがするのであります。とにかく政府は、これらの問題について、抜本塞源的に、急いで法案の提出すべきものは提出し、この非常災害の救済に対しまして毎日政府の方を向いていかなる手を打たれるか待ち望んでおるところのあの地方罹災者諸君に対して、熱意を持つてこたえられんことをお願い申し上げる次第であります。  長くなりますから、この辺で私の質問を打切ります。
  60. 吉田安

    ○吉田(安)委員 関連して。たつた一言であります。建設大臣が、対策本部ができますと、あの熊本に一番やりでお入りくださいましたことには、ほんとうに感謝いたします。私どもも国会を代表して行きましたものの、どうやつて熊本に入ればいいか、その方法にさえ迷うたのであります。あの際大臣ははたして着陸ができるかどうかさえも懸念いたしまして、実はあのとき大臣の飛行機が飛んで帰つたならば、その飛行機にわれわれが乗せてもらつて入ることに軍部とも約束しておつた。天気が悪いものですから、松前、今日はあぶないぞ、大臣の飛行機が飛ぶか飛ばぬかわからぬからと言うて、私どもはジープで入つたような次第であります。とにもかくにもそれほどの危険を冒してお入りくださつたことは感謝いたします。  今日は何だか、聞きようによりますと、熊本災害デーのような気がいたしまして、他の議員各位に恐縮でありますが、せつかく立つたのですから、お尋ねかつお願いしたいことの一、二を申し上げたいと思います。  ただいま松前君は、総合開発の見地から恒久対策を大いに力説されました。これはまつたく全議員同感であります。ほんとうを申しますと、九州全部の国会議員はすベて一丸となつて九州の総合開発をやろうじやないかということで、寄り寄り話合いが進みつつあつた際であります。さような際にこの大災害をこうむりましたために、今後一層九州の総合開発ということについては拍車をかけて行くことだと存じます。さようなときには、より以上大臣も御配慮を賜わらんことを、この際お願いをいたしておきます。  私端的に申し上げてお願いをしますが、さいぜん白川でありますが、これは直轄河川にする必要がある、こういう大臣のお言葉を聞いて、私は意を強うしました。大野部長の話は、ぜひそうやらねばならぬが、どうも建設省がというような口ぶりもありましたために、今日は実は建設大臣のおいでになるのを手ぐすね引いて待つておつたのです。ところが、先刻のお話で非常に意を強うしました。ただ、かつて二十年ばかり前でありまするが、白川を直轄河川にしようという運動が盛んに起りましたが、あの時分に立消えになりましたことはお言葉の通りです。しかし、必ずしも地元の腰が砕けて立消えになつたのではありません。熱意は大いにあります。大いにありまするものの、あの当時はいろいろの事情で立消えになつておりました。今度のような目にあいますると、立消えどころではない。火の玉となつて、直轄河川にしていただくことをお願いいたしてやみません。御承知通りに、白川は阿蘇山から出ておる川でありまするから——この間もそう言つて笑われましたけれども、あの大阿蘇が存在する限りは、今度のような大水害が再びないとは保証できません。まつたくこれは心配にたえない。この間の災害あとでもう一ぺん熊本はやられております。あのときわれわれは東京におつて、ひどいようだが、またどろを持つて来やせぬだろうかと言うほどみなが心配したのであります。繰返して申します通りに、阿蘇の白川であります。ただ復旧々々というて元へ返すだけではどうにもしようがない。復旧と同時に、将来いかなる災害にあつても、断じてこれをせきとめるというだけの復旧になしていただきたい。かように思うのであります。これは繰返してお願いをいたしておきまするが、九州の他の地方にも白川のような川がありまして、やはり直轄河川にいたす必要があるといたしますれば、当然この際断じてさようにお運びを願いたい、かように存じます。  それから、熊本のどろが非常に有名になつて、どろ熊本になつてしまいましたが、これは所管が多少違いまするから、いずれ農林大臣の出席を求めてお尋ねしたいと思いますが、熊本市はさんたんたる状態であります。あの洪水の出つぱなよりも今の方がなおひどいのです。あのあとの様子を見ますると、熊本市長が念の入つた写真を二十種ばかりとつて、おそらく大臣のお手元にも出しておると思います。議員各位にもごらんに供してあると考えまするが、ああいう状態でありまするから、ややもすると熊本市のあの惨害に目がくらんで、郡部のことがうつかりすると多少でもおるすになりはしないかという心配がございます。熊本市の泥土排除には、これは、大臣のおつしやる通り、見積りではありまするが、十二億を要すると申しまするが、一たび郡部に足を踏み込みますると、郡部の耕地がまたこれに劣らない災害をこうむつております。それで、郡部の耕地の、害があつて肥料にならないあの泥土をとりのけることについては、農家の方々はぼう然自失の状態であります。われわれの手ですれば何年かかるかおそらく十年かかつてもできぬだろう、こう言うております。これは思想的にも考えねばならぬところでありまするから、大臣所管が違うかもしれませんけれども、ひとつ各閣僚におかれましては総合的にお考えを賜わりまして、泥土の排除にも御尽力をくださいまするようにお願いをいたします。  それから、これは私よくわかりませんが、橋梁道路の損害、これは九州全県に対しておびただしいものだと存じまするが、大きなものにおいては国庫補助対象にもなりまするからいいのであります。しかし、いなかに行きますると、三十万、四十万あるいは五十万、結局百万に満たない橋梁だとか、あるいは道路だとか、たくさんありますが、こういうのは国庫補助対象になるのですか、ならぬのでしようか、お尋ねいたします。
  61. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 橋梁も、やはり道路その他と同じように、町村のでも、災害の復旧ならば相当額の補助があると思います。
  62. 吉田安

    ○吉田(安)委員 大野部長の話では、二十万、三十万のものではどうにもしようがないのじやないか——大野部長の考えにこの間賛意を表しておいたのですが、そういうところが一村にたくさんあるならば、百万に足らぬようなものが幾つもあるのを集めて、それを対象にしたらいいじやないか、こういうことを言つておりまするが、四、五万円でもやはり助かりまするから、そういう点についてはどういう対策をお持ちになつておりましようか、お尋ねをいたします。
  63. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 府県の工事で十五万円、町村で十万円以上が災害復旧の対象になつております。ただいまのお話は、おそらく府県において十五万円以下、町村において十万円以下のものは、地元でみな負担しなければならぬから困るだろうというお話だと思います。それはさつき松前さんのときにお答え申し上げたと思うのですが、これが、数が重なつて町村なり府県負担が大きくなる。つまり補助がないので大きくなりはしないかというのが、今地元で心配しておられるところだと思います。それを私どもも何とか考えなければいけないと思うが、しかし、地元で今希望しておられるように、十五万円のものを十万円に、十万円のものを五万円にということになりますると、今後災害が他の地方で起つた場合に、みなその例にならうようになれば、災害復旧費が一層かさんで参つて、今でさえ災害復旧ができないのがなお困難になる。なるべくならば、災害はその年ないしはあくる年までに復旧するという建前を維持してと言いますか、今少し破れておりますから、もう一ぺん、昔のように、その年あるいはそのあくる年にやつて行くことを維持して行くには、今申し上げるような小さいものまでも含めて来るようになると、一層額が多くなつて、全体の災害復旧が遅れるようになる。しかし、ことしのは例外的に一つの村で非常に数が多いというようなところもあろうから、それは別に考えたらどうか。というのは、私ここで申し上げては悪いと思つて実は控えておつたのですけれども、今大蔵省と交渉いたしております。というのは、どういう限度になるかわかりませんけれども、とにかく一つの村でたくさん何箇所もあつて、金額としては多くなつて来るというようなものは特別な扱い方をして、災害の中へ入れられると困るから、制度の方は今の制度のままにしておいてもらつて、今回に限り特別な扱いをするというやり方はどうか、こういうことを話合つているわけなのであります。私の試案としては、町村は困るから何とかしてやりたいが、七割なら七割補助をする。しかし、その補助を、今のように制度をかえて行くと困るから、かえないでやつておいて、地元でやることにして、それに該当する七割なら七割というものを平衡交付金で割当ててやるようにすればいいじやないか。これは私の試案で、大蔵省がうんと言つてくれるかどうかわからぬのですが、そういうふうな一つの特例を設けたら、私の方も将来困らないし、地元の方もそれで浮ぶんじやないかと考えておる。現に昨日あたりから交渉はしているのですけれども、あんまり言うて、それはだめじやないかと言われると困ると思つて、実は特別の方法を考えたい、こう申し上げるだけにとどめておきたかつたのです。
  64. 吉田安

    ○吉田(安)委員 今おつしやつたことを聞きまして、たいへん安心いたしました。どうぞその線に沿いまして、特別取扱いの方に全力を注いでいただきますように、くれぐれもお願いいたします。
  65. 細迫兼光

    細迫委員 重複したら恐縮ですが、すべて災害復旧工事は、旧態に復するだけでは足りないと思うのです。よろしくこの際に拡大強化して、再び災害を繰返さないように努めなければならぬと思います。すなわち木橋はコンクリート橋に強化し、あるいに川幅も思い切で広げるというような方針でやられなくてはならないと思う。しかしながら、これについては、国の機構においてはもちろんのこと、府県町村には大いに補助を見てやるからという方針で奨励なさる必要があると思いますが、災害復旧を、旧態に復するだけで足れりとなされる方針か、大いに拡大強化せねばならぬというわれわれの考えに御同調であろうか、承りたいと思います。
  66. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 拡大強化するといつても、おのずから限度があることになるかもしれぬと思いますが、しかし、少くとも今後また同じようなことを繰返さないような復旧をいたしたいと考えます。また、先ほどもちよつと申し上げたと思いますが、筑後川のような大きな川については、復旧のみならず、この際さらに調査を加えて、よりよくすべき箇所があれば、災害復旧でない別の予算ででもやつて行きたいというふうに考えております。
  67. 細迫兼光

    細迫委員 もう一つの問題は、復旧工事にあたり、または河川改修にあたりまして、現状を見れば、はなはだ自然を軽蔑して、自然に抗して、この幅だけを流れろというような、いたずらに堤防を高くするということがなされておるところがあるように認めるのであります。これを、自然の勢いに従つて川の水を流すというような方針で、思い切つた改修なり復旧工事がなされなくてはならぬと思うのでありますが、大臣の御方針はいかがでありますか。
  68. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 自然というものは、申し上げるまでもなく、なかなかむずかしいものでありまして、あまり自然に抗したことは、かえつて無恥があつたというようなことも、よくある例であります。そういう点については、あまり無煙な、自然にさからうようなやり方をしないことが、川の改修などについては考うべきことだと私は考えております。
  69. 滝井義高

    滝井委員 さいぜん御説明になりました中に、全壊家屋六千戸と言われましたが、これは全壊、流失を含んで六千戸ですね。どうも私たちの集めた新字とは少し違うのですが、これは国家警察の数字でしようか。住宅対策の上から大事ですから、内訳を言つていただきたいと思います。
  70. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 これはなお詳しく申し上げますが、まだ私は報告を待つておりまして、正確なものはだんだんこれからわかつて来るのじやないかと思つております。
  71. 滝井義高

    滝井委員 実は各府県とも、こういう六千戸というような数字が出れば、これは将来の住宅対策に、自分の県が大体何ぼぐらいに建設省から見られているかということを非常に神経に病んでいる。先日来長崎県知事が参りまして、長崎県の被害が八億だというが、非常に少い、どこからこういう数字が出たかということで、地元の市町村長なり知事は非常に神経質になつております。ですから、六千戸という数字が出ますれば、その内訳か、国家警察なら国家警察の調査ではどうなつているかということを、一応正確に知らしておいていただく方がよいのじやないか。私たちが府県から集めた数字とは、千七、八百ぐらい違うのですが……。
  72. 石破二朗

    ○石破政府委員 数字のことでございますので、私からかわつて答弁申し上げます。先ほど大臣が話しました数字は、七月七日現在国警調査による約六千百戸という数字でございます。内訳につきましては、別途資料を提出いたしたいと思います。  なお、御参考までに申し上げておきたいと思いますが、全壊、流失と申しますのは、日がたつて水がひいてみますと、大丈夫使えると思つていた家がこわれていたとか、住めないというような状況か多い模様でありまして、各県の知事からの話によりますと、警察の数字は非常に少な過ぎると言つております。私の方は、警察だけによらずに、県知事のおつしやることもよく聞きまして、数字に誤りのないようにいたしたいと思います。
  73. 赤澤正道

    赤澤委員 大臣の御都合もあるようでございますから、きようは簡単に二つばかりお尋ねいたします。  今細迫先生から質疑がありましたが、どうも河川の改修計画そのものに大きな誤りがあるのじやなかろうか。私らが仕事の面を見ましても、水路の決定その他に無煙のあるところがいかれておる。これは私どもわずかな日にちをもつて歩いたので、視察も調査も不十分かもしれませんけれども、行つた地点にそれが多々あるわけでございます。また工事の施行方法についても、私は、今の堤防のつくり方が万全であるかどうかということについては、疑義を持たざるを得ないのです。堤防のつくり方などは非常に不安定で、たとえば川に面した方は練り積みの石垣になつているが、中には堤心が入らないで、裏側はから積みになつている。その付近の、名前はあげませんけれども、ある土木出張所の所長さんに聞きましても、どうも大体これではいかぬのだ、水位がだんだん増して参つたときの状況を聞いてみますと、決壊する前にどんどん漏つておるのです。つまり堤防のもとのところから漏つておる。そういうところは全部流れてしつております。さらに、これは直轄河川の直営でおやりになつているところ等にたくさん見受けたのですが、どこでもとりつけ石垣がみんなやられております。それをのぞいて見ますと、上の方はこんもりといい形になつてセメントでくつついているけれども、その上に上つたら、中が実に空洞になつてつて、危険な箇所がたくさんできている。こういつた面について、私どもは真に今日の河川工学をも含めての、土木科学の粋を集めてはたしてやつていらつしやるかどうか。今日建設省でどういう研究機関をお持ちになつていらつしやるかどうか知りませんが、やはり大学等にいろいろな権威もおられるでありましようし、いろいろこういつた点について御研究にも相なつておられるでありましようが、今日旧態依然として行われておるところのこういう工事の方法について、かなりの反省もあつていいのじやないか。なるほど、今回の水害は、非常に大きな水害でありまして、人為をもつてしては、おそらく防ぎ切れながつたと思います。どんなりつぱな工事をしてあつたにしたところで、おそらく押し流されたと思いますが、かと言つて、私どもは、こういつた面において、責任の所在をぼやかしておくべきではない。やはり一応こういつたことをも予想して、あらかじめいろいろな御計画があつてしかるべきではなかつたか。一例を申し上げますと、これは私非常に感心したのですが、昔の人は偉いと思つた。つまり遊水地帯ということを九州に行くと盛んに言われるのです。遊水地帯とは水が遊ぶ地帯だという。つまり別に二段構えの設備まで昔の人はやつておつた。こういう大がかりなことをします場合には、莫大な費用を食うかもしれませんけれども、こういつた面につきまして、河川局長さんの方では一体どういう計画を今までお立てになつておりましたか、お尋ねしたいと思います。
  74. 米田正文

    ○米田政府委員 河川の計画について十分じやなかつた点があるじやないかというお話でございますが、河川の計画は、基本としては雨量——雨の降り方を基本にいたしております。今度の例を筑後川にとつてみますと、これは大正十二年の洪水を標準にとつております。そのときの雨が基準になりまして、それに明治二十二年の大洪水がございます。そのときの洪水の状況を加味して計画の雨量をとつたのでございます。その当時の雨としては、筑後川上流一日の雨量二百六十ミリというのが当時の記録であつたのであります。それで、今度の雨量は大降りで、一日の雨が五百ミリを突破いたしました。そこで計画の洪水をはるかに突破したものでありまして、当時の計画が今日の雨量を想定してなかつたということでありまして、災害を受けたのも計画としてはやむを得ないと思つております。それで、最近盛んに河川工学で論せられておるのは、将来予想し得る最大洪水ということがアメリカあたりで言われております。しかし、これを今、日本にとつて参りますと、たいへんな額になるのであります。現在の河川費の数倍の工費をかけないと、その計画に及ばないのであります。従いまして、現在われわれとしては、その川について今まで出たところの最大の洪水を一応の基準にして、その計画が一体何年に一回起き得る洪水であるかということを定めて計画しております。大体六十年ないし八十年という計画を最近の計画としてはとつておる。  先ほどのお話は、河道の計画についてであろうと思いますが、大体河道というものは、自然の形できまつて来ておるのを尊重いたしております。しかしそれかと言つて、非常に曲つたところをそのままというわけには行きませんので、やはり川の流れに沿つて、しかも洪水のはけをよくするように、しかも水の当りが非常に一箇所に集中して当るようなことのないようにというような配慮をし、さらに付近沿岸の滞水というようなことを極力避けるようなことを考慮して、計画をきめておるのであります。多くの川——現在直轄河川で七十六本の川を実施しております。小河川では大体二百四、五十本の河川を一年間に実施いたしております。それらについても大体そういう方針でやつておりますけれども、今御指摘のあつたような点については、特に具体的にお話がございまするならば、私の方から御説明を申し上げまするし、もし直すべき点があれば直すにやぶさかでないのであります。  なお、工事の実施について、工事の実施が悪いところがあるというお話でありますが、これは、河川工事もほかのものと同じでありまして、一応でき上りましても、その後の維持、修繕、管理というものが万金でないと、りつぱにできておるものも、十年、二十年たつうちに、いつの間にか破損をしておるという事実が非常に多いのであります。今お話のありましたように、裏塗りがから積みであつて、そこから水が抜けておるというようなことも見受ける場合があるのであります。これらについては維持、管理をかねてから注意をさせておるのでありますけれども、なお今後はさらに一層こういう維持、管理の徹底を期するように努力をいたしたいと思います。  最後に、遊水池の話というのがございましたが、これは日本の川には非常に多く採用されておる方法であります。現在も、われわれの計画の中にも、遊水池適地のある場合にはこれを加味いたしております。たとえば、最近の北上川の計画のごとき、やはり遊水池の箇所を計画いたしております。そうして、部分的なこういう河川工作物等に対する研究については、土木研究所というのが建設省にありまして、河川に関する工作物の研究をいたしております。
  75. 赤澤正道

    赤澤委員 きようはたいへんお急ぎのようでありますので、具体的のことについては次会に質問をいたしたいと思います。  ただいま河川局長お話にもありましたし、それからまた今議員諸氏の質問にも、やはりこの予算関係が非常にきゆうくつだからということが常に出て来るわけでございます。ただいまの話にもありました通りに、河川を完全に改修するためには、非常に巨額の金がかかるということでございますが、大体こういう不時の、しかも二百年来といわれておるのですけれども、こういう水害に見舞われまして——しかし、大体災害国でありますために、始終小さい災害には侵されておるのでありまして、やはりいつかは根本的にこの対策を立てなければならぬと思う。ただ、こういつた対策を立てるための費用というものは、ことし、明年、再来年ということでなしに、やはりわれわれの時代で足りなければ、次の時代の者も背負つて行くべき性質のものであると思いますので、この際思い切つて建設公債のごときものを発行して、根本的にこの改修計画をお立てになる御意思はないかどうか。このことは大臣にお尋ねいたします。
  76. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 先ほど来だんだん申し上げておりますように、恒久的な根本対策はどうしても立てなければならぬ、かように考えております。それを実施して行く上にどういう方法をとるかは、またその後に考えなければならぬ問題だと思います。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 一言だけ……。目下本予算の最終審議段階に入つているのですが、この重大事態に対して、政府としては、この際まだ衆議院で最終段階の審議の期間でありますので、大急ぎでその予算の追加修正をする用意はないか。これが来国会になると、民心の不安を一層高めることになるのですが、建設大臣として大蔵省と折衝を大急ぎでやる、また建設省として強力に主張して、この重大な災害に対して早急に打つ手を用意しておられるかどうか、これはたいへん大事な腹構えでありますが、大臣の御答弁を願いたいのであります。
  78. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 時期が時期であるからこの際に、というお考えはごもつともでありますが、まだ建設省の関係としては、直轄河川につきましては一応の予算を立てておりますが、いよいよ実施ということについては、まだ変更があるかもしれぬという考えであります。なお、地方の県の関係におきましては、やはり実際に査定をするなり、実地の検分に行くなり、そういうふうな手続を踏みませんと、従来よく、地方から出て来た額の八割くらいが大体のところだとかいうようなことを言いますけれども、もう少しはつきりしたものにしたいと私は考えております。なお、ほかの省の関係のいろいろ今回の災害予算についてのお考えもありましようが、今ただちに今回の災害について予算をはつきりときめるというところまでは、ちよつと私としては無理ではないかというように考えております。
  79. 村上勇

    村上委員長 これにて建設関係の質疑は終りました。     —————————————
  80. 村上勇

    村上委員長 この際、北九州水害調査のため特別委員会より派遣されました委員より報告を聴取することといたします。生田宏一君。
  81. 生田宏一

    ○生田委員 私たち派遣委員は、北九州の豪雨による被害状況実地調査のため、七月二日より十日間にわたら、福岡、佐賀、長崎、熊本大分各県下の水害地を三十数個所にわたり実地に調査したのでありますが、各地における災害状況及びこれに対する緊急並びに恒久対策と認められるもの、その他委員会において参考となるべき事項について、現地において収集した資料及び各地の要望書を添えて、ここにその概要を報告いたします。 一、災害の概況  今次の災害は、いわゆる三百年来の大水によるものであつて、六月二十四日九州南方にあつた梅雨前線は、二十五日未明に北上し、五島列島付近より九州南々東に横断し、宮崎付近より四国沖に抜け、二十六日にはさらに北上を続け、この線上にあたる対島海峡付近には千ミリバールの低気圧が発生し、その活動はさらに活発化し、北九州一帯に豪雨をもたらしました。すなわち、その降雨量は、平地においてはおおむね六百ミリ内外、山間部においては千ミリに達し、各地にわたり甚大な人的、物的被害を与えたのでございます。  これらの災害の原因を考察いたしまするに、(一)降雨はかなり長期に及び、かつ一時に多量の降雨があつたこと、(二)山地における濫伐、過伐、及び造林の不足、(三)不自然な河川改修計画が所々に見られた。(四)過年度災害復旧工事の未完成等に基因するものと考えられますが、その最も大きな原因は、今回の水が超々大水であり、河川の計画洪水量をはるかに越えていたことであります。  今次災害の態様についてこれを区分いたしますれば、一、山岳地帯(小段地を含む)における災害二、平原地帯における災害、三、山くずれによる災害、四、地すべりによる災害にわけることができます。これについて各別にその概要を述べれば次の通りであります。 (一)山岳地帯における災害  山岳地帯においては狭い渓谷に河床が狭扼されている関係上、一時多量の降雨によつて水嵩が異常に上昇し、河岸を決壊し、耕地、道路、橋梁、人家家財道具を大量に流失破壊いたしまして、人命の損傷はきわめて大きいのであります。耕地の流失につきましては、その原形をとどめず、長期にわたり耕作を不能ならしめたものがたくさんございます。また、随所に起つた山くずれは小段地耕地をことごとく流失せしめております。  この事例は、大分県下玖珠、日田、熊本県下阿蘇、菊池、鹿本、佐賀県下小城、長崎県下の小段地について随所に見ることができます。 (二)平原地帯における災害  水系源における多量の降雨により、各河川は怒濤の奔流するところとなり、岩石、立木、土砂を押し流し、橋梁を流失し、各所において堤防を決壊した大洪水は、筑後川、白川、遠賀川、矢部川、嘉瀬川、城原川、田手川、大分川、大野川等、各河川の流域一帯の沃野を広範囲に冠水、決壊現場付近には荒土、岩石の堆積せしめ、あるいは水路の変更を生じ、交通機関の杜絶、家屋の流失、灌漑用水路の破壊等、その被害はきわめて大であります。また、熊本市、久留米市、佐賀市の全域、福岡市、大分市、佐世保市の一部その他の都市を浸水し、あるいは水道送水管は不通となつて断水し、屋内、道路に泥土を堆積せしめ、多数の人命を奪い、中小商工業者に対して致命的打撃を与えたほか、罹災民の生活を極度に困窮に陥らしめました。農作物につきましては、前回の二号台風に引続き、重ねて被害をこうむり、前回ようやく災害を免れたる麦類、豆類等の春期収穫農作物及び保有米をことごとく冠水したほか、田植の時期を失し、長期冠水と苗代の被害により植付は不能に陥り、かつまた冠水を免れた植付完了田も、灌漑用水路の破損によつて植苗は枯死寸前の状態となり、かつまた将来の旱魃は必至と認められる状態であります。   なお、平原地帯における災害の特異な事例をあげれば次のごとくであります。  (イ)白川流域における災害の特異性   白川は阿蘇外輪山の水を集める河川であつて、水源山岳地帯に激甚な出潮が起り、亜硫酸ガスを含む火山灰土を急激かつ多量に流失し、流域一帯の耕地を初め熊本市にこの泥土のおびただしい堆積を来した。この泥土は悪質であつて肥料分を含有せず、その排除は耕地及び市内を間わず絶対必要であるが、排除作業は困難をきわめています。なお、熊本市内における堆積量は平均三十五セソチに達するといわれております。  (ロ)有明海沿岸干拓地帯における災害の特異性   佐賀県有明海沿岸の干拓地帯はきわめて低湿であり、出水後二旬を経過するもいまだに冠水し、排水作業は潮の干満に左右され、その進渉状況ははかばかしくありません。各部落はまつたく不衛生状態に置かれている一方、また、手持ちの米麦はほとんど腐敗または発芽に瀕し、農民は、玄米を泥水にて洗い、蒸して干飯とした上食用に供せんとする等極度に食糧に窮していると見てさしつかえありません。 (三)山くずれによる災害   門司市、阿蘇地区において人的物的にきわめて甚大な被害を与えた山くずれは、おおむね戦時中の山林濫伐に基因するものと思われますが、一方山津浪の特徴としては、瞬間的かつ水量が大であつて岩石を含んでいる。従つて、その被害は特に大きいのであります。家屋の被害につきましては、自然に抗した危険な位置に建築がなされていること、人家が密集していること、家屋が脆弱なこと等があげられます。なお、山くずれによる被害は、門司、阿蘇地区以外の各地においても随所に見ることができます。特に門司市においては、市街地が急傾斜、脆弱な地盤よりなる山地を背後にめぐらすため、山くずれに伴う山津浪によつて一瞬にして多数の家屋が倒壊し、岩石と流木相かむ渦流は、多数の人命財産を初め、道路河川、耕地等に大損害を与えました。 (四)地すべりによる災害  長崎県南高来郡一帯、北松浦郡一帯、東彼杵郡一帯及び佐賀県西松浦郡一帯における地すべりによる災害は、田畑、森林を押し流し、鉄道を埋没し、家屋を倒壊し、農地表面には無数の亀裂あるいは凹凸を生じ、耕地の細分化を余儀なくされ、また田の底の地層に亀裂を生ずるため、常に漏水を起し、水田耕作を不可能ならしめている状態であります。この地帯の町費は第三紀層の上に玄武岩とその風化物でおおわれているのであり、今回の豪雨はその誘因たる刺戟的原因となつております。 二、今次災害に対する対策  前記のごとききわめて甚大なる災害に対し、とるべき緊急並びに恒久対策と認められるものをあげれば次の通りであります。 (一)緊急対策  災害実情にかんがみ、当面応急的に、交通、通信、衛生、住宅、食糧、失業対策に関し、重点的に緊急適正な措置を断行する必要があると認められるが、それは枯渇せる現地資金に活を入れることであり、人心を安定せしむるを第一義と考えられる。地方公共団体については、その支出しなければならない諸般の災害対策費は莫大であり、一方税収入は減少するのであるから、資金繰り及び財政援助措置を講ずる必要があり、また、罹災者に対しては、主として生業及び生活補助の見地から、当面せる各般の応急対策をとるべきものと認められる。  地方公共団体については、これを項目別に列挙すれば次の通りである。  (1) 地方公共団体に対する対策   イ、つなぎ融資の大幅増額   口、地方起債わくの拡大、全額起債の承認   ハ、災害復旧に関する補助額の拡大及び補助率の引上げ   二、過年度災害復旧の繰上げ実施   ホ、災害救助法改正   へ、税の減免措置   ト、特別平衡交付金の大幅増額   チ、利子補給及び利率の引下げ   リ、災害校舎復旧費の全額国庫負担   ヌ、すえ置き長期低利の救済資金の貸付   ル、仮設住宅の建築の融資、公営住宅の建築  (2)罹災者に対する対策   (イ)農民に対する対策    (一)、共済保険金仮払いの早期実施    (二)、飲用米麦の貸与    (三)、種苗、肥料のあつせん交付(種苗は全額)    (四)、田畑復旧工事については耕作者請負とすること   (ロ)中小企業者に対する対策    (一)、手形決済の延期、長期低利資金の融通   (ハ)、失業者に対する対策    (一)、復旧事業べの雇用、賃金の即日払い    (二)、浸水炭鉱の労務所に対する失業対策   (ニ)、学童に対する対策    (一)、教科書、学用品等の迅速な無償交付  (二) 恒久対策  前記の通り、当面せる応急措置を講ずるほか、今次災害の経験にかんがみ、将来に備え、災害の復旧防止につきまして、これが恒久対策を樹立する必要があることは言をまちません。よつて、以下実地調査実情に照し、是正を要する事項等について、これに関し一応参考のために記述しておきます。  (1)中央災害対策の常置機関を設置するとともに、行政出先機関の相互連絡の緊密化をはかること  (2)気象、測候、火山、地震等に関する調査研究諸機関災害防止のために十分段立たしなめるごとく措置すること。一例を申しますならば、気象台が文部省の所管にあるがごときは一考を要すると思うのでございます。  (3)地方公共団体の財政状態がきわめて窮迫しているので、災害に対し予防並びに緊急即効的な手段を講ずることができず、また、現行災害救助法に規定する救助費ではまかないきれない実情にあり、かつ、公共土木災害復旧事業費国庫負担法による国庫補助程度では、その補助対象とならないものが全体の三割を占めるがごとき今回の災害につきましては、地方公共団体及び個々の罹災者はとうてい復旧事業をなし得ないから、これらの点について法律改正を行い、是正策を講ずる必要があると認められる。  (4)市町村役場、警察、消防団、水防団等の災害防止復旧に関する努力は十分認められるが、統一ある指揮のもとに訓練されていたならばといううらみがあるので、これについては適当なる是正措置を講ずること。  (5)保安隊の活動については、より一層の効果をあげしめるために、鉄舟、トラック等による機動性を持たせるとともに、災害復旧のための器材器具等を整備いたしたならば、さらにけつこうであると存ずるのであります。  (6)気象連絡については、山間僻地においては特に不十分であつたので、気象速報機関の設置を促進するとともに、各市町村において携帯無線機等の設備が好ましいと存ずるのであります。  (7)災害河川の水源地はおおむね山林が濫伐されたまま再植林が実施されておりませんので、これが災害を増大せしめた原因となつており、今後は植林及び砂防工事を強力に推進する必要があると思います。  (8)河川については、同一水系において、下流は直轄河川であり、上流は県費支弁河川となつている場合が多く、一貫した治水工事が行われていないのが認められるので、これが是正策を講ずる必要がある。筑後川はこの端的な事例であります。  (9)土木工事が自然に抗して行われ、かえつて自然の猛威の反撃を受けて大きな災害を認来しているうらみがありますので、特にこの点留意する必要がある。日田市内における玖珠堤防決壊はその事例と認められる。  (10)長崎県下を主とする地すべりについては、特に研究機関を設けて調査研究を行うほか、危険地帯を設定して、住居移転等を行わしめる必要がある。  (三) その他  その他の問題について偶感的に申しますれば、以上災害の概況並びにその対策について記述したが、その他実地調査したもののうち、委員会として参考となるべき事項について若干補足しておきます。  (1)遠賀川の堤防決壊並びに下流一帯について   福岡県遠賀川流域は、地底、河底を問わず坑道が縦横に掘りめぐらされているため、堤防の地盤はゆるみ、堤防は傾斜をなして沈下しており、決壊は当然予想さるべきものでありました。なお、堤防決壊現場たる植木町付近は鉱害補償を受けている地域でありますが、この浸水の影響を最も深刻に受けた同川下流の鹿児島本線遠賀川駅付近の村落は鉱害地の適用を受けておらず、鉱害補償地域と無補償地域における災害の関連については一考を要する問題があり、また、将来に対しては炭鉱業者に対する監督に遺憾なきを期すベきであると考えられる。  (2)関門隧道の浸水とその復旧作業について   関門トンネルは、今次豪雨により浸水不通となりましたが、その浸入口たる両側入口における防水設備は必ずしも万全の構えをとつておらず、その地形的条件に対する認識が不十分であつたと言わざるを得ません。   さらに、トンネル内の排水作業については、実地調査時においてすでに浸水後七日を経過しておりましたが、ようやく両側合せてわずか六本の四インチ・パイプの設置作業を進めている程度でございまして近所に存在する石炭、ガス、鉄鉱等の民間会社手持ちの優秀なる排水ポンプが多量にあるにもかかわりませず、米軍の資材を借り受けて排水に従事したものであり、排水完了時期が遅延しておりますのは、国鉄の排水に対する態度にいささか遺憾な点があつたと思うのでございます。なお、この本州と九州とを結ぶ大動脈たる関門トンネルのごときに対しましては、国鉄当局は平常から緊急時に対する万全の用意があつてしかるべきと認められるのでございます。  (3)稻苗の遠距離輸送及び水浸し米麦について   洪水で田畑を冠水された農民はまた植付期を失した苗床をもことごとく流され、減水後も値付不能に陥つていたが、これに対して、近県はもとより、遠くは四国、近畿からも救援の稻苗が到着し、各地でけなげな植付が始められておりましたが、この輸送された稻苗は苗根が腐敗して活着きわめて悪く、農民の努力は灌漑用水の破壊と相まつて水泡に帰せんとしている状態である。なお、水浸し米麦については、麦類は発芽を見て発酵しており、これを飼料に供したがため、貴重なる家畜を死に至らしめた事例が熊本県にあり、また水にしたつた米は精白時に小破するを通例としますが故に、手持ち主食は全滅に近い状態であります。  (4)罹災者収容所の状況について今次災害により住居を失つた罹災者の収容所の状況を見まするに、熊本市大江小学校においては収容者が自治的運営を行つているが、その人たちの悩みは、災害救助法適用が停止せられたときにおける生活の不安、救助物資の末端配給の不円滑及び給与の不十分等があげられます。  同所における救助物資は、収容人員三百九十二人に対し、毛布三十枚、たび十ダース入四箱のみで、その他は何ら配給せられておりません。給与は七月三、四、五日の献立を見るに、三日は一〇八〇カロリー、四日は一一八五カロリー、五日は一一八四カロリーでありまして、普遍人体の所要カロリー二四〇〇カロリーに対しその半分以下で栄養失調が現われて来ていることを訴えております。なお、当収容所は最初五百人を収容しておりましたが、目前の不安に耐えかねて自由出所した者がすでに百名に達している状況でありました。   (5) 中小炭鉱の被害について今次水害により百余の中小炭鉱が被害を受け、その生産減は約七十万トンと称せられておりますが、自己復旧の困難なこれら中小炭鉱に対しては、いろいろ議論の余地はありますが、少くとも炭鉱労務者に対して適当な失業対策を講ずる必要があると考えられます。  (6)西日本水害対策本部の設置について政府は六月二十九日、大野国務大臣を長とする西日本水害対策本部福岡県庁内に設置し、とりあえず応急対策の実施に当つておりましたが、これについては地元はいずれも多大の好感を寄せ人心安定の上にきわめて効果があつたものと認められるのであります。  以上実地調査を行つた各地の被害状況及びこれに対する対策並びにその他委員会の参考となるべき各般の事項について記述した次第でありますが、なお、各地の被害状況及び被害額に関する数字等については、本派遣委員が短時日の調査期間において精密に調査把握することは不可能であつて、これについては本報告書に添付した県当局作成の資料及び西日本災害対策本部提出の資料によるほかはないと存じます。右報告いたします。(拍手)  昭和二十八年七月十三日水害地緊急対策特別委員会派遣委員            生田 宏一            赤澤 正道            細迫 兼光            受田 新吉            松永 東            中村 英男  水害緊急対策特別委員長村上 勇殿
  82. 村上勇

    村上委員長 生田君の総括的報告は終りましたが、赤澤委員より長崎地方の実例につき、また細迫委員より阿蘇地区の被害について補足説明を聴取いたします。赤澤正道君。
  83. 赤澤正道

    赤澤委員 今河川局長の話によりまして、国立の土木研究所があるということを初めて私承知いたした次第でございます。大体この長崎の地すべりにつきましては、もちろん当該県の長崎県もいろいろ御研究を遂げられておるようであります。私初めて災害地行つて見たのでございますが、この状態を見て、まず処置なしという感じを受けました。実に広範囲な地すべりが随所に起つております。さすがの大野国務大臣も、これを見て、天変地異と称して慨嘆これ久しゆうされたという話でありますが、これは自然の暴威と申しますか、長崎の方々にとつてはまことにお気の毒な次第でございます。もちろん地元においてもこの地すべりを十分御研究になつておりますが、その結論を見ますと、お気の毒にも各大家の結論がおおむね一致しております。たとえばこれは総合開発審議会の専門員の理学博士小出という人の研究でありますが、医学がどんなに進歩しても、まだ治療のほとんど不可能な病気があるように、防災科学が進歩しても、地すべりについてのわれわれの知識の現段階は、人体におけるがんに似たものであるというのであります。こういう判断を下されたのでは、長崎の方々は浮ばれないと思う。事実こういうふうにとても人力が及ばないというのであれば、さて次善の策はどうかということでございますが、これは私どもはいろいろ方法があると思う。この予防について長崎ではずいぶん研究されておりまして、横にボーリングをして水を抜けば持つのだというので、四、五箇所これを実験したら、現にそこのところは地すべりを起しておらぬということを言つておられます。これはただいまの国立土木研究等で十分研究してもらうべき性質のものである。さらに、どうしても地すべりがとまらぬ場合には、もちろんその上には田畑もありますし、人家もたくさんあるわけでございますから、こういう箇所を一応危険地帯に指定をして、ぜひとも立ちのいてもらうような措置を講ずる。その場合は必然に補償の問題が伴うわけでございますけれども、これはただいま生田代議士の報告の中に入れてございましたように、やはり研究機関をつくつて研究するとともに、至急に対策を講ずる必要があるというふうに私は見て参つた次第でございます。  簡単でありますが、地すべり現象並びに対策についてちよつと御報告いたしました。
  84. 村上勇

    村上委員長 細迫兼光君。
  85. 細迫兼光

    細迫委員 熊本県の白川流域の状態は特殊の形態をとつておりますので、特に報告を追加したいと考えておるのでありますが、先ほどからずいぶん話が出ましたので、簡単にしておきます。  この白川は、御承知のように阿萩の外輪山の中の水を集めて、山岳地帯を縫うて流れ、熊本市のわきを通つて下流の田畑を潤しておる川なのであります。阿蘇山の形は、中の溶岩がしんになつておりまして、その上に火山灰が積つておるというような状態であります。その上と下としんとを縫いつける大きな樹木もない。いわゆる草千里の美しい草原をなしておるという状態でありまして、この溶岩の上に積りました火山灰が、このたびの大雨でみな流し落されたというわけであります。各所に、地すべりではございませんで、山漸を惹起しております。阿蘇の外輪山は、ために、くしの歯で削つたようにどす黒いはだを各所に現わしておるのであります。この山津波は、瞬間的に、ふもとの山林といわず、田畑といわず、部落といわず、ことごとくその跡形もないように押し流し、押しつぶしておりして、累々たる大きな石の河原と化しておるのであります。このために、阿蘇郡で最もひどいのは長陽村及び白水村でございますが、ここらは交通杜絶のためにわれわれは徒歩で調査したのでありますけれども、一部落六十一戸の中で四十二戸が跡形もたく、十六人の人間が死んでしまつておるということで、死体も発見できないのが本名もある。あるいは白水村では、人口六千人のうち死者が四十四人、一千百戸の中で約二百戸が跡形もなくなつておる。耕地五百五十町歩のうち三百歩が押し流されておるという深刻な被害を受けておるのであります。かくのごとき犠牲を生んだ山津波が深い谷底の白川に流れ落ちまして、白川の流れを火山灰でつくつたしるこのようなものにして流れたわけなのであります。このどろんこ永が狭い峡谷を押し進んだのであります。重い比重のそうしたどろんこ水が急激に流れたのでありますから、両側の岸といい、田畑、橋梁、堤防、家屋、灌漑水路、道路等、あらゆるものを削りとつて行つてしまつたのであります。菊池郡におきましては、この川筋に十二の遺跡が昔からありまして、加藤清正が築いたとかなんとか言われているそうであります。それは三百年以上もたつていると認められているものでありますが、そういうものすらこのたびの水害では跡形もなくやられております。熊本市内の十二の橋梁で、残つたのはわずかに二つであるというような状況であります。最後に、この白川筋の最も顕著な特異性は、しばしば話が出ましたように、水の引いたあとの始末にたいへん困つているというところにあるでのあります。すなわち、白川の流れは前述のように火山灰によつてできたしるこのような水でありますから、冠水したところ、浸水したところは、田畑といわず、市街といわず、あとにおびただしい泥土を残して行つているのでありまして、熊本市内の泥土を除くには、三十三台のトラック、千人の人を動員して十箇月かかると言われているのであります。これがかわけば、軽いのですから飛び散つて目もあけられない。熊本市の者はみなマスクをして歩いております。ことに、田畑の跡始末にほんとうに困つたものでありまして、しばしば言われましたように、この火山灰は肥料にはならない。毒になるのでありまして、今年の稲の植付は絶対に不可能であります。こういう状態であります。よつて、この地域の農民に対しましては、当然また特別の対策が考究せられなければならない、こういうふうに考えた次第であります。  以上簡単ながら水害調査報告を終ります。(拍手)
  86. 村上勇

    村上委員長 これにて派遣委員よりの報告は終りました。  私より派遣委員諸君に対して一言御礼のごあいさつを申し上げます。  ただいま緊急、応急、恒久あらゆる対策につきまして、最も有意義な資料をあの短時日の間に作成して、われわれに今後の対策に対するヒントを与えていただきましたことを厚く御礼申し上げます。しかも、あの交通の不便な際に、皆さんには地下たび、脚絆、実に不眠不休の御活躍をなさつたことを私ども承つているのであります。新聞紙上に、国会より派遣された調査団あるいはまたその他の視察団の方々がいろいろととかくの批評を受けている際に、当委員会より派遣されました皆様方には、まつたく他の人たちに範を示すような適切なる御調査を賜わりましたことを、われわれ委員一同深く感謝申し上げる次第であります。一言簡単でありますが、皆さんに対して御礼の言葉といたします。(拍手)  他に質疑のある方はございませんか。     —————————————
  87. 舘林三喜男

    舘林委員 ただいま生田委員から、緊急、応急対策、恒久対策と、たくさん対策をおあげになりましたが、たとえば建設省、農林省関係災害復旧というような問題に、現地の査定によつて予算を組み、あるいはそれに必要な法律案をつくるのに、相当時間のかかるものがあると思います。しかしつなぎ資金が三十億で足りるかどうかという問題とか、あるいは先ほど質問いたしました災害救助法改正というような問題は、非常に焦眉の急に迫つているわけでありまして、承れば、災害救助法府県支弁分の国庫負担に関する三十六条の改正について、厚生省はすでに大蔵省と折衝しているようでありますが、しかし、大蔵省が強くてなかなか厚生省の言う通りにならないというようなこともありますので、あの災害救助法改正等につきましては、もちろん精算補助であつて、今予算を組まなくてもいいわけでありますから、あの問題はぜひ早く委員会として取上げて、改正案等を立案していただくようにということをお願いしておきます。
  88. 村上勇

    村上委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十四日午後零時半より理事会を開催し、午後一時より委員会を開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十七分散会