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1953-05-27 第16回国会 衆議院 昭和二十八年度一般会計暫定予算につき同意を求めるの件外六件特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十七日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 橋本 龍伍君    理事 西村 直己君 理事 川崎 秀二君    理事 成田 知巳君 理事 川島 金次君    理事 山口 好一君       植木庚子郎君    川島正次郎君       迫水 久常君    鈴木 正文君       辻  寛一君    富田 健治君       灘尾 弘吉君    西村 久之君       羽田武嗣郎君    喜多壯一郎君       櫻内 義雄君    中曽根康弘君       橋本 清吉君    伊藤 好道君       久保田鶴松君    田中織之進君       古屋 貞雄君    河野  密石       吉田 賢一君    中村 梅吉君       黒田 寿男君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         通商産業大臣  岡野 清豪君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君     ————————————— 五月二十七日  委員福田繁芳君及び辻原弘市君辞任につき、そ  の補欠として櫻内義雄君及び伊藤好道君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国  憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求め  るの件(内閣提出予同第一号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算につき日本国  憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求め  るの件(内閣提出予同第二号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算につき日  本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を  求めるの件(内閣提出予同第三号)  国会議員選挙等執行経費の基準に関する法  律の一部を改正する法律昭和二十八年法律第  二十二号)につき日本国憲法第五十四条第三項  の規定に基く同意を求めるの件(内閣提出、法  同第一号)  国立学校設置法の一部を改正する法律昭和二  十八年法律第二十五号)につき日本国憲法第五  十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件(  内閣提出、法同第二号)  不正競争防止法の一部を改正する法律昭和二  十八年法律第二十六号)につき日本国憲法第五  十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件(  内閣提出、法同第三号)  期限等の定のある法律につき当該期限等を変更  するための法律昭和二十八年法律第二十四  号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定  に基く同意を求めるの件(内閣提出、法同第四  号)     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件外六件を一括議題といたします。討論に入ります。討論は順次これを許します。植木庚子郎君。
  3. 植木庚子郎

    植木委員 ただいま議題となりました同意を求めるの総計七件でありますが、その七件に対しまして、自由党を代表いたしてこれに同意を与えることに賛成するの意見を表明いたします。  七件のうち四件は法律に関するものでございます。この法律は、形式内容ともにいずれも大して問題のない事項でございまして、この点については、本委員会においてもさしたる異論がなかつたように考えます。ただ期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律につきましては、その法律の構成の形式につきまして若干の異論があつたようであります。しかしながら、これにつきましては、多数の内容の異なる法律を改正する場合にあたりまして、あるいは変更する場合にあたりまして、一つ法律でもつて処理していることは先例もあることでありますし、まずもつてさしつかえないものと考える次第であります。なお、法制局当局におきましても、この問題については爾後よく研究するというようなお話もございました。従いまして、この法律関係の四件につきましては、何ら特別な意見を述べるほどの必要を認めません。  他の三件は暫定予算に関するものでございます。この暫定予算に関するものにつきましては、いろいろな観点から議論が行われております。まず私はその重要な点について一、二の意見を申し上げたいと思うのでありますが、第一には、この暫定予算がはたして憲法違反しているかいないかというような議論があつたのであります。その第一は、憲法第八十三条の規定に照して、財政上の必要な処分の問題につきましては国会議決を求めなければならない、かようにきまつており、しかも今回の暫定予算は、いわゆる参議院緊急集会に付議して、そうしてその同意を得たものであるが、そこに若干の精神論的に憲法違反の疑いがないかというような議論であつたようであります。私は、この点については、現行憲法をすなおに解釈いたしますときに、何らそうした心配はない、かように思うものであります。いわゆるそうした憲法論者の考えておられることは、察しまするに、憲法の六十九条において、不信任案可決後十日間の余裕期間がある、その余裕期間内に、いわゆる財政法三十条の暫定予算を提出して、その議決を求めるのが最も妥当ではないかというような御議論でありますが、これも一つの見解ではございましよう。しかしながら、この十日間というものは、必ずしもいわゆる解散後における諸般処置を講ずるがためのみに規定せられた期間とは言い得ないのであります。むしろこの際総辞職をすべきか、解散をすべきかということを十分に研究をする、その余裕を与えてある期間であると私は信ずるものであります。従いまして、この十日間という余裕規定があるから、それでこの暫定予算緊急集会にかけたという手続はよくないという考え方には賛成ができないのであります。のみならず、かりにそれがいいと仮定いたしました場合を考えますと、不信任案を決議せられた内閣が、暫定予算を編成して当該国会にまた一つの議案を出して、そうして議決を求めるような変なかつこうになります。そうしたことはかりに別問題といたしましても、今回の実際の事案にあたりましては、この際当時の政情の実情からして即刻解散をする必要があると認められて解散に相なりましたので、やむを得ず財政法三十条及び憲法の五十四条に従つて参議院緊急集会を召集せられて、これに必要な予算暫定予算として提案せられたものであつて、その委員会においても本会議におきましても、多数決をもつて可決確定に相なつたものであります。従いまして、私は、この点については、憲法のどの条文を考えてみましても、おおむねすなおに解釈して何らさしつかえがないものと、かように考えるものであります。  さらに法律論の第二点といたしまして、暫定予算内容そのものと、そうして憲法の五十四条の二項の「緊急の必要がある」緊急性の問題との関連としての違憲ではないかという議論であります。この点につきましても、ある点うなずける節がないでもございませんが、しかしながら、現在の財政法憲法とを相通じてすなおに読んでみますと、その点はこれまた内容に不急不要な経費が入ることはもちろん避けなければならぬと思いますけれども、おおむね妥当なものと思うのであります。この内容を見ますと、国政運営に必要な最小限度経費を組んであるということでありまして、おおむねその説明の通りに相なつております。事項によりましては四、五月の二箇月分につきましても、決してただ十二分の二すなわち六分の一を計上するというようなことではなく、それぞれ内容をしさいに検討せられまして、不必要なものは二箇月分といつてもでき得る限り圧縮してある、あるいは新規な政策に属する経費はその計上を避けておる、あるいは二箇月分といえども、諸般法律規定その他から、その二箇月内に必要とするものについてはあるいは四分の一を計上する、あるいは事態のいかんによつて二分の一を必要とするものについては、おおむね全額の二分の一を計上しておるというふうに相なつておりまして、政府が経常的に国政運用する上において、必要な限度計上しておると考えられますので、この点も私は何らさしつかえがないものと考える次第であります。  さらに第三に、政治論的に考えますときに、この暫定予算が非常に経済界その他に大きな影響を及ぼしておるということについて、この暫定予算の問題についての議論がございます。これについては幸いにして政府当局も十二分にその点を考慮せられまして、たとえばこの四月及び五月の国庫民間出資の分を見ましても、適時指定預金追加等措置がとられたため、大よそ百億円の揚超にとどまつておりますが、この点は、例年の状況と比べまして、さしたる変化がないように思えるのであります。また財政投融資でありますが、これは関係法律不成立によりまして、一般会計からの出資農林漁業金融公庫に対する二十億円の計上があり、そのほか預金部運用資金見返り資金の活用をはかつてありまして、資金運用部資金から百四十六億円、見返り資金から七十五億円、合計二百四十一億円を投融資することに相なつておりまして、これによつて目下緊要なる電源開発でありますとか、あるいは外航船建造等の促進でありますとか、あるいは中小企業金融疏通でありますとか、国鉄及び電信電話事業建設等に遺漏なきを期しておられることは認められるのであります。財政投融資がおおむね円滑な実施を見ていると思われるのでありますが、なお、特に中小企業につきましても、国庫金指定預金等によりまして、金融疏通がはかられております。要するに、今回の暫定予算による経済界に対する影響は非常に大きいものであるが、これに対し政府はあとう限りの適当なる措置を講じておるということを考えますので、この点また反対論はいかがかと考える次第であります。  さらにまた、最後政治論といたしまして、この同意を求むる件が成立しなかつた場合、これに反対した場合にどうなるかということを考えますと、それに伴うところのいろいろな事態混乱が起りますが、その混乱の収拾については容易に善処しがたい部分が起るだろうと思います。そういう部分を考えますと、よほどの欠陥がない限りは、この暫定予算案に対して不同意を表明するがごときことは適当でないものと考えます。  以上によりまして、私は、この予算関係の三案に対しても何ら反対する必要なし、これに同意を与えてしかるべきものと考える次第であります。  以上をもつて賛成討論といたします。(拍手
  4. 尾崎末吉

  5. 喜多壯一郎

    喜多委員 改進党を代表して、本暫定予算三件及び法律四件に同意する。同意理由二つあげる。その一つは次のことである。本暫定予算には政策的な経費が織り込まれていないことである。本暫定予算、それにはともするとこんなことにも党利党略をあえてやりたがる自由党内閣としては、いかにもひとり慎むという傾向が見えないでもない。それのみか本暫定予算案行政事務上の経費は、二十八年度本予算における行政事務費年額の十二分の二弱に相当する金額、すなわち十二分の二を下まわるという、いわば十二分の一・八のものが計上されている。この点からすれば、国政運用上欠くべからざる最小限度的の事務的経費に限定されていると言うことができる。すべて自由手放し主義自由党吉田内閣としては、一応は慎み慎んだ態度だと言つてよいことである。  同意理由のいま一つは、防衛支出金計上のことである。これは問題とすれば問題になる。現に本暫定予算審議するにあたつて大いに論議をされた点である。元来防衛支出金の追認問題は、改進党としては、大いに検討し、大いに論議をし、審議もしたいのであつた。だが、本暫定予算防衛支出金計上条約に基く既定の歳出ではあるし、また保安庁経費にしてもまつた防衛維持上の最小限度経費であるから、一歩どころか千歩、万歩譲つて、万やむを得ずとして同意する。  以上同意する理由二つは、辛うじてすれすれの合法性を持つているのにすぎない。かすかすの合理性を持つもので、本暫定予算については同意し、また法律四件もやむを得ぬ措置として同意をする。しかしこの際、改進党としては政府に対して一言警告をしておきたいことがある。本暫定予算については同意はしたが、この暫定予算基礎となるべき昭和二十八年度本予算については、論議すべきこと、非難すべきこと、反対すべきことがたくさん盛り込まれていたや二十八年度本予算編成骨格そのものは、国家権力の陰に隠れて横着千万なふるまいをやつている厖大官僚群消費的な、浪費的な、濫費的な行政事務費が数千億円も占めていることである。このことは、すでに第四次吉田自由党内閣が第十五特別国会に二十八年度本予算を提出したときに、大いに指摘もし、誤謬も正し、明らかにしてはいるが、自由党自由手放しの行き方にこれ幸いと便乗している官僚群消費的な、浪費的な、濫費的な充足第一主義に基く総花盛込みの方針を一歩も出ていないということは、断じて見のがしてはならないことだと言うべきだと思う。官僚消費浪費濫費充足第一主義の二十八年度本予算が、その編成骨格はずらりと金額をうんと並べ込んではいながら、独立日本の今このとき、わが国経済自立を達成すべき長期経済計画の実現に最も必要であり、今まさに使わなければ金の値打が少くなるようなこのときの費用は、言いかえれば基幹産業への最重点的投資、並びに産業合理化から貿易振興、また特に食糧自給自足の増産に及ぶわが国産業基盤拡大のためのすべての諸経費は、まつたく重点的でない。それらと、さらに国民生活安定のために欠くことを許さない住宅増設、米価すえ置き、社会保険均衡と拡充など、いわゆる社会保障上のすべての経費、さらに中小企業農林漁業経済向上のすべての経費を見ると、重点的に盛り込むことをむしろ阻止している形が顕著である。このことは、要するに二十八年度本予算官僚群消費浪費濫用のだらしのないもので、国民経済との均衡から、また国民負担の軽減の観点から、さらにまた財政規模の圧縮によるインフレ防止の見地からすると、絶対に見のがしてはならない重要な事実である。だから、われわれ改進党としては、行政費大幅節約とその現実化、さらに予算重点化を要求し、かつ具体的な数字をあげてこれが組みかえを主張した。ここに今同意こそしつつあるが、本暫定予算は、要するにわれわれ改進党側から見ると、悪魔的な二十八年度本予算亡霊にすぎないと思う。魂の抜けがらでもあると感ぜられる、亡霊暫定予算二つ理由同意はするが、魂の入つて来た悪魔的な本予算に対しては、きびしい検討と審議とを加えて、国費収支に対して厳正な態度をとる。そのことをはつきり申し残しておきたい。  最後に触れておきたいのは、本暫定予算参議院緊急集会に提出したときの政府態度のことである。また不信任案衆議院可決された後の政府の十日間という時間上に現われた態度のことである。これらのことについては、憲法の解釈上からしても、また正しい民主政治に対するロイアルテイ、言いかえれば民主政治上の信義的行動からすると、吉田内閣の歩んだあとには多々疑惑があり、指弾すべきことは当然免れていないと思う。そういつた事実がたくさん示唆されていることも政府当局は省みなければならない。かようなことは、今後政府は、どこから見ても、だれから見られても、どこから突かれても正しいという断定を大衆自身が直感できるよう、正しくあるべしと警告の結びをすると同時に、本委員会における討論における同意についての改進党の結論とする。(拍手
  6. 尾崎末吉

  7. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和二十八年度一般会計暫定予算並びに外六件につき同意を求むる件に対しまして、暫定予算については同意ができない旨を表明し、外四件につきましては同意するものであります。  その第一の理由は、本暫定予算予算であります以上は、憲法第八十三条の精神に基きまして、国会議決によつてこれを行使しなければならないのであります。従つて、本暫定予算参議院緊急集会に提出し議決したことそれ自体が、憲法第八十三条の精神違反しておるのであります。すなわち「国の財政を処理する権限は、国会議決に基いて、これを行使しなければならない。」と定めておりまして、同条は財政民主化基本原則規定したものでございます。すなわち、国会とは申すまでもなく衆参両院をさすことは議論余地がないのでありまして、従いまして、原則として予算衆参両院議決を必要とするものであります。特に予算については、衆議院優先の建前になつておりますので、衆議院議決が必要であります。たといそれが暫定予算でありましても、予算である以上、参議院議決のみで行使することはこれまた憲法第八十三条違反であります。しかし緊急の場合は、憲法第五十四条二項の規定によりまして、参議院緊急集会のみによつて一応暫定予算を行使することができると思いますが、それはあくまでも衆議院議決が不可能の場合に限られるのでありまして、先ごろの第四次吉田内閣衆議院において不信任なつた際の暫定予算について、衆議院議決を求むることは可能であつたのであります。すなわち、憲法第六十九条において総辞職解散かの自由選択期間が十日間認められておりますので、この十日間に、暫定予算その他期間延長法律案につきましても、両院議決を求め得られる余地があつたのであります。しかるに吉田内閣は、かかる手続を経ずいたしまして、即時解散を行つたために、参議院緊急集会暫定予算議決しなければならなくなつたのであります。しかも、このいわゆる即日解散は、憲法第六十九条に基きまして吉田内閣は総辞職すべきであつたにもかかわらず、何ら自己の政治的責任について反省するところがない。まつたく独善的に憲法第七条によつて解散の挙に出たことは、憲法精神を無視し、天皇の国事に関する行為を濫用し、解散権を不当に濫用したものでありまして、民主政治運用の上に重大なる汚点を残した暴挙であると言わなければならないのであります。かくのごとき無謀なる解散の結果といたしまして、昭和二十八年度予算不成立となり、ひいて暫定予算参議院緊急集会にかけざるを得ないという、この事態を引起したものであります。このような二十八年度予算を成立せしめなかつた責任は、もつぱら第四次吉田内閣にあるのでありまして、われわれはこのような吉田内閣責任に属する重大なる失態に対しまして、責任を負うわけには参りません。従いまして、この失態に基き、さらに憲法第八十三条の精神にもとるところの本暫定予算そのものに対しましては、断じて同意をいたすことはできないのであります。  第二の理由は、本予算内容に関するものでありまして、本暫定予算の性格は、憲法第五十四条、第六十条、第八十三条、財政法第三十条の精神からいたしまして、国政運用上必要にしてしかも緊急のものに限られ、政策的な経費は厳に禁じられてあります。従つて不信任された第四次吉田内閣は、いわゆる禁治産内閣であり、選挙管理内閣でありますので、以上のごとき幾多の制約を受けておるものであります。ゆえに、本国会開会前に日米通商航海条約等に調印をなすがごとき、憲法違反もまたはなはだしいものであります。  なお本予算には、はなはだ基本的な国策とも言うべきわが国の安全と平和に関する経費計上せられております。すなわち吉田内閣政策である再軍備経費が、多分に計上されておるということであります。たとえば百五十億の防衛支出金保安庁費五十八億円のごときは、その顕著な例であります。しかも、かかる多額の経費中、防衛支出金支出基礎となつておりまする日米行政協定のごときは、国会の承認を得ていないものにもかかわらず、当然のことであるかのごとく計上し、しかも緊急にしてかつ国政運用最小限度経費なりと主張すること自体が、きわめて政治的、政策的な意図によるものであると断ぜざるを得ないのであります。特に、右百五十四億の防衛支出金の中には、施設提供等諸費用の十一億円のごとき、新たに提供すべき施設費をも含まれておるのでありまして、緊急にして必要な費用ではありません。さらに保安庁経費につきましては、二十七年度から二十八年度への繰越金が七十六億円もあるにかかわらず、なおまた、本暫定予算には、二箇月分の維持費といたしまして五十八億円の計上をいたしておるのであります。かるがゆえに、われわれは、かかる厖大な再軍備費、しかも憲法の諸条項に反して組み立てられておる本暫定予算に対しましては、これまた断じて同意することができないのであります。  次に昭和二十八年三月三十一日に期限が到来し効力を失う法律を、さらに延期する旨の法律でありますが、この法律を延期いたしまする結果といたしまして、国の収入が減少し、あるいは反対にその支出が増加するというように、国の財政に少からざる影響を来すものでありまするから、前に述べた理由で、憲法八十三条により処理すべきものであります。よつて衆参両院議決に基いてなされなければならないのでございます。しかるに右案件の中には、緊急必要でないものがあるばかりでなく、政府の怠慢によつて延期せなければならなくなつた法律等も含まれておるのであります。その跡始末が参議院緊急集会に持ち込まれ、今また本院に提出せられたのでありまして、民主憲法民主主義財政精神を蹂躙することこれよりはなはだしいものはないと思います。かくのごとき処置を認めることは、今後きわめて重大な悪例を残すことになるのでありまするから、特にこの点について、将来のため、ここに政府に対し警告をなすものであります。しかし本件には、当然同意すべきものも含まれておりまするので、不本意ながら同意するものであります。以上であります。(拍手
  8. 尾崎末吉

  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和二十八年度一般会計、同特別会計、同政府関係機関の各暫定予算案、並びにその他の四つの法律案に対しまして、賛否の意見を述べます。前者の三つの暫定予算に対しましては同意せず、残りの法律案に対しましては同意する。以下その理由を申し上げます。  まず不同意案件についての理由を開陳いたします。  第一は、これは政府が、憲法五十四条第二項によつて参議院緊急集会を召集し、これに付議いたしたのでありまするが、これは国会召集権濫用であります。重大な憲法違反であります。何ゆえならば、およそ憲法の同条第二項によりますると、国のため緊急必要なる事項についてのみ、政府参議院緊急集会を召集し得る権限を付与されております。非常に厳格な制限規定があるわけであります。一方財政法規定によりますると、同第三十条によりまして、単に内閣がその必要を認めたときには、会計年度一定期間暫定予算を作成して、国会に付議し得るということが規定されてあるわけであります。そこで本暫定予算についてこれを検討してみますると、はたして憲法の厳格に求むるところの措置の対象としての条件を具備したものであるのかいなや、この点について、先般来当委員会において、われわれの質疑に対する政府側幾多の答弁を求めたのでありましたけれども、十分に満足を得られないまま経過しておつたのであります。しかしながら、財政法規定する暫定予算なるものは、財政法のみに規定されておるものでありまして、その条件は、今申したごとくに、単に必要を認めたときはこれを編成し得るということになつておるのであります。憲法制限規定は最も厳格に解釈せねばならぬことは、これは旧憲法以来一貫した精神であろうと思います。旧憲法第八条の緊急勅令の緊急の精神、第七十条の緊急財政処分の緊急の趣旨は、いずれも現行憲法の五十四条二項の緊急の字句、その精神、趣旨に同一であり、承継されておることは、過日の副総理の答弁でも同意になつてつたし、またこれは学者一般に何ら異論のない通説であります。そこで、この暫定予算なるものがはたして緊急性を持つておるかどうかにかかるのでありまして、緊急性のないものを緊急性ありとして憲法上の規定を利用せんとすることは、これは憲法内閣に許しておらぬのであります。  そこで予算案の内容について見ますると、たとえば政策的な予算がありますることは、われわれしばしば指摘したところであります。防衛関係経費につきましては、国会において非難をせられ、国会において反対をせられておりましたところの、顕著な大いなる政策経費であることは申し上げるまでもありません。これが麗々しく提示されておるのであります。また不急の経費につきましても、これは断じて緊急措置の対象とすることは評し得ないのであります。たとえば私どもが指摘いたしましたごとくに、一般の交際費にいたしましても、また一般予備費にいたしましても、これを緊急経費と見るということは、憲法を曲解するものと申すほかはありません。そこで、これらの例示いたしました多額の経費が緊急の名によつてみな暫定予知に組まれまして、緊急の条件を厳格に構えておる憲法緊急集会の対象として持ち出しておりまするので、これは何としても、善意に解しましても、政府のこの上ない近来まれな憲法違反の失策であつたと申さねばなりません。これをしも憲法違反にあらずして、われわれは、過日総理が、憲法は慎重に運用すること、憲法は厳格に解釈することということに同意になりました。その美いずこにありやと申さねばなりません。新憲法実施以来、憲法が忽卒の間に制定せられましたような経緯にもかんがみまして、世の風潮は、憲法の解釈につきまして、とかくこれを軽侮せんとするような風が見えないではありません。内閣が率先して憲法精神を蹂躙するというようなことは、国会は断じて許すことができぬのであります。要するに、かくして憲法違反の重大な事犯を犯して来たのであります。これが反対論の第一理由であります。  第二には、内閣はこの暫定予算を通じまして、国会軽視、国会無視の思想を露骨に現わしておられるということをいなむわけには参りません。元来、申すまでもなくわれわれ衆議院は、憲法六十条によりまして、予算の先議権を持つております。予算はあらゆる場合におきまして、国民の大多数の代表である衆議院に先議権を付与しておりますることは、これまた世界のおよそ立憲憲法の一貫した思想であり、今日の現行憲法もこれによつておりますことは申すまでもありません。そこで、吉田第四次内閣が、三月の十四日に衆議院におきまして不信任決議案を可決せらるるや、憲法の六十九条によりますると、その間十日間の余裕をもつて、あるいは退陣するともあるいは衆議院解散するとも、二途選ぶ道も一面与えられておる。十日間の猶予期間というものは、政府がだんだんと答弁になるような、さように偏狭に、きゆうくつに解釈すべきものではありません。およそこの十日間におきまして、いずれの道を選ぶとも、すなわち解散をもつて臨むとも、総辞職の道を選びまするとも、いずれにいたしましても、政府といたしましては、国務の渋滞を来さないように、国民生活に支障を来さないように、国家経済に悪影響を来さないように、あらゆる観点からいたしまして、臨時の緊急なる措置をなさねばならぬはずでありました。この善後措置のためにも、十日間は与えられておるというふうに解釈すべきが理の当然であります。最も道理にかなつた同条の解釈と申さねばなりません。しからば吉田内閣といたしましても、当時すでに、三月二日衆議院によつて多数で可決せられて、参議院に回付せられ、その審査の途上にありましたところの本予算につきまして、この十日間に全力をあげましてその通過をはかるべきことが、第一のなすべき措置でなければならぬと思う。また第二には、臨時の暫定予算を編成いたしまして、国会両院存在するのでありますから、衆議院予算先議権を尊重いたしまして、衆議院に対してこれを提示する。提案する。かくいたしまして、憲法の条章によりまして衆議院にこれが審査を求めるということが、第二にとられなければならぬ当然の措置であつたろうとわれわれは思う。ところが吉田内閣は、不信任案可決を食らうや、何を狼狽いたしましてか、即日解散の暴挙に出たのであります。これは、憲法の条章を真に厳格に履行せんとする忠実なる態度に欠くるところがあつたのが根本であるし、また衆議院予算先議権、国会予算について重大なる審議権限があるということについて、従来からも現われましたごとくに、国会軽視、国会無視のその傾向が、勢い事ここに至らしめたものとわれわれは断ぜざるを得ないのであります。かように考えて参りますると、当時の吉田内閣といたしましては、なすべきこの二つの方途に出ずして、解散の暴挙に出てしまつたのであります。解散になりましたならば、国会の機能は即時停止、参議院は閉院になり、衆議院はなくなりました。国会において国事を議する道は大体奪われてしまつたのであります。ただ一つ残されておるものは、憲法五十四条の第三項によりまして、政府緊急集会を求め得る道であります。ところがそこにおきまして、政府暫定予算緊急集会のことに思いつかれたものと思う。暫定予算を組んで、緊急集会に出してこれを通過せしむるならばそれでよいと、きわめて軽率にかような措置に出られたものと私は想像いたします。ここに根本的に国会軽視の思想がありましたことが、このあやまちを犯さしめておることと、また暫定予算が、無条件に、いつの暫定予算でも、いかなる暫定予算でも、常にこれは緊急集会の対象となり得るような、昨日あたりの政府委員の答弁に盛られておりましたごとき、そういう思想が内在しておつたことが、あやまちを犯したことの第二の理由であつたろうと私は思う。いずれにいたしましても、何らかの措置に出でなければならぬ。国政、国務は一日も荒廃させることは許されません。どうしても方法を選ぶとなるならば、この財政法による暫定予算を取上げまして、そうしてそれを緊急集会に持ち込んで行くという以外に道がないというのが、政府が到達しましたところのただ一つの道でありました。けれども、憲法緊急集会条件を厳記しておりますることは前段述べました通り。これへ持つて参りました暫定予算が、ほんとうに憲法精神を十分に厳格に解釈し尊重いたしまして編成した暫定予算であるならば、参議院において、またわが衆議院において、かく議論が沸騰することなく、違憲論が盛んに唱えられることなくてあるいは済んだであろうと思う。にもかかわらず、それに持ち込まれましたものが、先に第一の理由に述べましたごとくに、きわめて積極性を持ちましたところの政策経費、非緊急性を持ちましたところの各般の経費、こういつたものを漫然と織り込みましたまま、暫定措置の対象として参議院に持ち込んで行つたという経緯になつておるわけであります。これは政府が、憲法六十九条の十日間の期間に当然なさねばならぬところの必要なる臨時的なる善後措置をなすことを怠りまして、やむを得ずなしたところのその措置についての責任国会に転嫁せんとするところのやり方であつたと、私どもは断ずるのでございます。この点につきまして、政府の持つておりまする政治的責任は、まことに重大なものと言わねばなりません。われわれは、かかる大きなる失策によりまして、国会責任を転嫁せられようとするそれを受取るわけには参りません。これが、私どもがこの暫定予算に対しまして同意をいたすことのできない理由の第二であります。  第三は、憲法財政法上の一種の盲点ともいうべき、財政法三十条と憲法五十四条第二項の規定の関連におきまして、憲法運用上の一つの盲点を第四次吉田内閣は悪用したものであります。悪用したものでありまするので、私どもは、これらにつきましても、やはり附加して反対理由として強調せねばならぬものと思うのであります。もし政府が十日間に適当なる措置をとつておりましたならば、これは緊急措置に持ち込む必要がなかつた。また財政法暫定予算なるものの定義、その内容、性格、条件といつたものがもつと明確に規定せられてありましたならば、あるいはまたこの措置を誤ることなくして済んだかもしれません。また憲法には、旧憲法の七十条によつて財政緊急処分、七十一条によつてそれの施行予算、踏襲予算規定がありましたが、かような規定が一切ないのが現行憲法であります。一切ありませんので、ここに盲目的にと言いまするか、暫定予算財政法によつて編成いたしまして、憲法のこの一つの新たなる欠陥というと少し言い過ぎでありまするが、憲法の新しいこの書き方に乗じまして、そのすきに乗じて盲点を利用いたしまして、ここに緊急措置の対象として参議院に付議いたした次第でありまするので、これは何といたしましても、これらの憲法運用上の、今後何とか改善されなければならぬところの一つの盲点を、たまたま吉田内閣が悪用いたしましたのでありまして、これまた政治的責任まことに重きものと言わねばなりません。のみならず、かくいたしまして、私どもは、もし、吉田内閣のごとく、かように憲法財政法規定の関連におきまして、むぞうさに憲法解釈を曲解したり、無視したりするようなことが許されて行くといたしましたならば、まことに私どもは恐るべき将来を予想しなければならぬと思うのであります。何事ぞと申しますれば、たとえば吉田内閣は、憲法第七条によりまして——幾多の疑義があり、その解散権の有無につきましても学者にも論議をされておりましたが、憲法七条によつて衆議院解散し、憲法五十四条によつて参議院の一院に緊急措置を求める、しかもそれは緊急措置の対象となり得ないような、緊急措置の当然求むるところの要件を欠いたところのさような予算案を、要件を守られずしてこれに付議しておる。かように憲法七条と憲法五十四条が併用せられて、しばしば繰返されるということに、もしなるといたしまするならば、これは政府が独裁の政治を実現し得る道を開くものと申さねばなりません。国会の存在を無視し、国会の権能を蹂躪し、衆議院予算先議権、国民の代表である国会の存在を無視することかくのごときはなはだしいものはないと言わねばなりません。かくいたしまして、余儀なく衆議院にその同意を求め、もし同意しないとすれば国務は渋滞する、国民経済は停頓する、国民生活は悪影響を受けるといつたようなおどかしを一面に持ちまして、事に臨んで行くということになりまするならば、私は、日本の真に民主的なる平和的なる憲法政治の運用におきまして、まことに恐るべき悪例の端緒をなすものと言わざるを得ないのであります。これが反対同意の第三の理由であります。  そこで私は、第四に、一言われわれの立場につきまして誤解なからしむるために申し上げておかねばならぬと思うのであります。私どもは、前段るる述べましたごとく、国といたしまして国務の進行はこれを一日もむなしゆうすることを許されないのは、何人にもまして強い責任を持つてこれを感じておるものであります。しかしながら、もし衆議院によりまして不同意議決がされたといたしますれば、その際に責任は一体だれが負うでしようか。その際の責任衆議院に負わし、反対する者に負わすということでありましたならば、これはもう憲法政治ではなくなると申すほかはありません。私は、もし反対、不同意の結果といたしまして、執行の責任はいずれが負うやといたしましたならば、これは当然吉田内閣が負わねばならぬものと思うのであります。またすでに去る五月の二十三日現在、支払い計画承認済みのものが千四百何がしの予算のうちで九六・四%に当つております。従つて現実的には、支払いのこの経費なるものはもう百パーセントに近く使われておる、九六%以上使われておるものと推定し得ます。もつとも、わが川島委員からその後の予算執行の状況について政府側の答弁を求めましたけれども、これは現実に把握することは困難であるというふうに逃げておりました。いずれにいたしましても、当時、現在において九六%以上支払い計画が承認されておつたものと、かように見まするならば、現実の支出、会計、財政の面においては多くの影響がないものと思われますので、これは一言附加しておきます。  次に述べておきたい点は、凍霜害対策に対する経費の問題であります。これは、全国の被害農民はもちろん、わが党もこぞつて緊急すみやかに万全の措置の講ぜられんことを猛烈に要望しておることは、顕著な事実であります。そこでこの被害対策の経費といたしまして、政府は災害対策予備金のうち相当額の支払いを予定しておるがごとくにわれわれは承つておるのであります。災害対策予備費十億円を組んでおりまして、これを支出するということについては、これはもつともなことであろうと思いますので、こういう点についても、私どもは、内容的に災害対策予備金が使用されるということについては、何の異議もないのであります。このことは誤解のないように申し上げておかねばならぬと思うのであります。  さらにもう一つ申し上げておかねばならないことは、私どもは、さきに、経済あるいは国民生活の将来を遅らすことのないように欲することは人後に落ちないと申し上げましたが、その通りであります。そこでわれわれといたしましては、この暫定予算内容において、さきに指摘いたしましたごとくに、幾多政策的、積極的経費幾多の不緊急なる経費が含まれておりますので、そういつたものをことごとく削除するといつたような修正、あるいは組みかえというようなことは、これを望みたい一つの立場でありますけれども、いろいろ各般の議論上下いたしました結果は、これは同意を求めておる。だから同意するかいなやという不可分論的なる結論が大勢を支配しておつたようでありますので、かような理由も織り込みまして、不可分論というような考え方を前提にいたしまして反対理由を述べましたことについても、国民の了解を求めておかねばならぬと思うのであります。  さらにもう一点申し上げておきたいことは、この財政法の三十条が、暫定予算について明確にその性格を規定しておらぬということが一つは盲点になつておりましたので、こういうことにつきましても、将来憲法運用上万全を期する意味におきまして、何らかの措置がとられなければならぬものと思うのであります。これらにつきましても、過日も質疑応答いたしたのでありますが、今は政府においてその意がないような意向を承りました。まことに遺憾であります。  以上数点を述べまして、私どもは不同意態度を表明する次第であります。残余の各法律案につきましては、やむを得ざる理由ありといたしましてこれに同意する次第であります。以上をもちまして討論を終ります。
  10. 尾崎末吉

    尾崎委員長 山口好一君。
  11. 山口好一

    ○山口(好)委員 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和二十八年度一般会計暫定予算につき同意を求めるの件外六件に対しまして、賛成の意を表するものであります。しかしわれわれは、吉田内閣の施政その他に対しましては、全般的に共鳴しこれを支持するというわけではありません。しかし、本暫定予算その他につきましては、前第四次吉田内閣責任において、緊急の必要から参議院緊急集会に提出せられまして、その議決を経て実施せられたものでありましてまつた衆議院の成立しておらないやむを得ない処置であつたことを認めるゆえに、これに賛成をいたすものであります。  さかのぼつて、かの解散当時の処置が立憲的であつたかいなかというような議論でありますが、むしろわれわれとしましては、あの場合においては、この暫定予算を施行しなければならない原因となり、あるいは数箇月にわたりますような政治の空白を生ずるという結果を招来する解散によらずして、むしろ不信任案を誠実に受けて、みずから総辞職をいたすべきものと考えておるものでありますが、この場合においてそこまでさかのぼつて議論しても、もはや手遅れと申さなければなりません。  さらに、憲法第五十四条第二項及び財政法第三十条、この問題につきましても、いろいろの疑義が存するのでありまして、ただいま憲法違反その他の問題が起きておるわけであります。しかし、憲法第五十四条第二項は、緊急必要ある場合において参議院緊急集会によつて決定し得べきことを規定しておるのでありますから、今後かような盲点になるものは、これを財政法の改正によつて解決いたさなければならないものと考えるのであります。  要は、今まで吉田内閣のやり来つたことは、ことごとく独善的であり、多数を慎んで専断的に事を処理して参つたために、他の党派の諸君から、今回の処置につきまして、国会を軽視した憲法違反であるというような御議論が立つことと思うのであります。政府は今後大いにこの点を戒飭をいたさなければならないものと深く信ずるものであります。ともかくも、このやむを得ざるところの処置、これに対して今同意を拒むようなことがありますれば、その及ぼす影響ははなはだしく大でありまして、さなきだに暫定予算施行のために国民生活ははなはだしく苦境に陥つておる現状であります。一日も早くこの苦境を除去いたさなければならないと考えますので、政府において今後の善処を促し、今後の暫定予算並びに本予算の編成、実施にあたりましては、この四、五月分の暫定予算のためにこうむりました各方面の弊害をすみやかに取除かれまして、国民生活に光明を与えるように、その償いをつけなければならない。こういう要望をいたしまして、一括同意を与えることに賛成いたします。
  12. 尾崎末吉

    尾崎委員長 黒田静男君。
  13. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、労働者農民党を代表して、昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件外六件に対し、全面的に同意することに反対いたします。  ただいま討論の対象になつております案件は、吉出前内閣が、国に緊急の必要があるとして参議院緊急集会を求め、その集会において、昭和二十八年度一般会計四月分及び五月分暫定予算外二件の予算措置、及び国会議員選挙等執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律外三件の立法措置をとり、その措置に対する衆議院の事後承諾を求めている案件であります。  そこで、第一に考えなければならぬことは、諾否の標準は一体何かということであります。それは第一には、先般の緊急集会において、本件のごとき措置をとつたことが憲法上の必要条件を満しておるかどうかということであります。第二には、かような措置内容が、財政上及び立法上適切妥当なものであつたかどうかという点であると思います。  まず第一の点から考えてみたいと思いますが、緊急集会を求めるための要件は、衆議院解散せられてその存立が消滅に帰しておりますときに、新たに立法上ないし財政上の措置を講じなければならぬ緊急の必要を生ずる。しかもその必要に応ずるためには、総選挙後の衆議院の成立を待つごとができないという事情にあることであると思います。われわれはこのように考えるのであります。この考え方に立つて本件の具体的場合を検討しますと、重大な問題点にぶつかるのであります。それは何であるか。本件の場合における緊急性の問題であります。国に緊急の必要があるとき一参議院緊急集会は召集せられるのであります。けれども、召集の要件は緊急の必要ということであります。しかるに本件の具体的場合は、その緊急性を欠除しておると断定せざるを得ない事情が存在しておると思います。一体緊急の必要という場合の緊急とは何でありましようか。それは第一には、衆議院解散の当時には全然予期せられなかつた事態が発生したために、何らかの立法上または財政上の措置をなす必要が生じたこと。第二は、その必要に応ずるためには総選挙後の衆議院の成立を待つことができないという事情にあることであると思います。この二つであると私は思います。  それでは本件の具体的場合はどうかといいますと、この条件を欠いておると私には考えられるのであります。すなわち本件の場合には、緊急集会でとられた具体的措置であるこの四、五月両月の暫定予算措置その他四件の立法措置は、吉田内閣不信任案が去る三月十四日に衆議院を通過した当時、すでにこれをなさなければならぬという必要は何人にも予想されておつたものであります。しかも、不信任案通過から解散ないし総辞職に至るまでの間には、憲法上十日間の余裕があるのでありますから、この期間が他のいかなる必要のために設けられてれるという議論が成り立つといたしましても、この期間衆議院審議に付するという方法で、必要な措置を講ずべき期間として利用すべきであると思います。利用すべき余地がある限り、衆議院審議に付さなければならぬ憲法上の義務があることは、憲法第五十九条、第六十条及び第八十三条等によつて明らかであると私は考えます。その措置をなす余裕があつたということは、参議院緊急集会を求める緊急の必要があつたということと両立しないのであります。それをなす余裕がなかつた場合に、初めて参議院緊急集会を召集すべき緊急の必要があつたと言い得られるのであると私どもは考える。本件の場合口は、緊急の必要があつたとは言えず、逆に、本件の場合には、必ず衆議院の議に付すべき義務があることは、私がただいま列挙いたしました忍法の条文によりまして明らかであると考えます。解散前に衆議院の議に付して措置をとるか、それとも緊急集会に付すのかについて、政治的理由によつて選択する自由は私はないと思います。そういう自由は許されていないと私は考えるのであります。衆議院の議に付する余地がある限り、衆議院の議に付するのは政府の義務である、憲法上の義務である、私はこういうふうに厳格に解釈を下したいと思うのであります。憲法第五十九条、第六十条及び第八十三条に反して、衆議院議決をまたずして法律を成立せしめ、あるいは衆議院の先議をまたずして予算措置をとる、参議院の一院のみの議決財政措置及び立法措置をなし得るのは、衆議院の議に付すべきことが絶対的に不可能な場合にのみ限ると、私どもは厳格に解釈をしなければならぬと思います。この場合にのみ、衆議院の議に付さぬことが憲法違反を免がれるのであると私は考える。繰返して申しますが、本件の場合は、衆議院の議に付すべき余裕があつたのでありますから、緊急性を欠くということになる。そこで本件は、憲法第五十四条の場合に該当しない。あわせて第五十九条、第六十条及び第八十三条に違反するものであると思いますので、私どもは本件の処置を承諾することはできないのであります。  次に、本件諾否の第二の標準であります緊急集会においてとられた措置内容が、立法上及び財政上適切、妥当であつたかいなかという点についてでありますが、この点につきましては、私は論難すべき多くの点を本件の諸案の中で発見するのであります。またこのことにつきまして、ことに予算内容につきましては重大な論争点を発見するのであります。また他面、もしそれが正常な方法で衆議院の議に付せられていたといたしますならば、通うしてもよいと思われるようなものも必ずしもないではないと考えます。しかしながら、すでにこの案件を諾否すべきかいなかということの第一の標準に照して、本件措置を承諾すべからずと私ども断定いたしました以上、すなわち緊急集会財政上及び立法上の措置を求めたことが、今回の具体的場合におきましては憲法違反であると私ども断定いたしました以上は、第二の標準についてはもはや論及する必要はないと考えます。  以上の理由によりまして、私どもは参議院緊急集会においてとられた措置同意を求めるの件に対し、全面的に、すなわち各案を通じて同意を与うることに反対したいと思います。  以上は憲法論上からの反対論でありますが、最後に簡単に政治的論点から一言つけ加えておきたいと思います。  吉田内閣は、憲法を無視し、衆議院を軽視するフアツシヨ的傾向を多分に持つております。保安隊を戦力にあらずと強弁したり、過去二回の衆議院解散の方法等にこのことがよく現われておりますが、今回の参議院集会においてとられた措置の中にも、まだそれが現われておると私は考えるのであります。ただいま自由党議員の賛成意見を承つておりますと、不信任を受けた内閣が、本件のごとき財政処分及び立法行為について衆議院に付議することは不適当だという御議論でありましたが、もしそのような議論が立つとするならば、不信任を受けた内閣が日米通商条約のごとき重大なる国際条約に調印するのはどうでありましようか。同一の論法をもつて論ずべき二つの事柄を、自分の都合によつて論法をわけて強弁これ努める。これが政府及び与党の態度であると私は思う。憲法を無視し、自己の専恣によつて国政を壟断ずる。これが独裁政治家の常に用いる手法でありまして、私は吉田内閣の中には実にこの傾向が強く現われていると思いますし、本件の場合にもこの傾向を証明する一つの材料がはつきりと現われておると思うのであります。憲法を擁護し、憲法によつて保障されておりまする衆議院国政上の地位と権利とを守る、これが私ども衆議院議員の崇高なる責務であります。われわれは、憲法違反をあえてし、衆議院軽視をあえて行う吉田内閣のフアツシヨ的傾向、その傾向の中から生れました本件の措置に対しましては、こういう政治的理由からいたしましても、これを承諾するということは絶対にできないのであります。  私どもはその意味におきまして、全面的に反対をいたします。以上をもつて私の討論を終ります。(拍手
  14. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、暫定予算に関する三件を一括して採決いたします。昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、昭和二十八年度特別会計暫定予算につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、昭和二十八年度政府関係機関暫定予算につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、以上三件はこれに同意すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  15. 尾崎末吉

    尾崎委員長 起立多数。よつて暫定予算に関する三件はいずれもこれに同意すべきものと決しました。  次に、法律に関する四件を一括して採決いたします。国会議員選挙等執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律昭和二十八年法仲第二十二号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、国立学校設置法の一部を改正する法律昭和二十八年法律第二十五号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、不正競争防止法の一部を改正する法律昭和二十八年法律第二十六号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律昭和二十八年法律第二十四号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件、以上四件はこれに同意すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  16. 尾崎末吉

    尾崎委員長 起立多数。よつて四件はいずれもこれに同意すべきものと決しました。  ただいま議決されました七件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決しました。  この際一言ごあいさつを申し上げます。ふなれな委員長でありましたが、幸いに委員諸君の御援助、御協力によりまして、大過なく職責を全うすることができましたことは感謝にたえないところであります。衷心より厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十一分散会      ————◇—————