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1953-07-09 第16回国会 衆議院 厚生委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月九日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君    理事 堤 ツルヨ君 理事 中川 俊思君       越智  茂君    田中  元君       寺島隆太郎君    降旗 徳弥君       中野 四郎君    山下 春江君       萩元たけ子君    柳田 秀一君       杉山元治郎君    亘  四郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 山縣 勝見君  出席政府委員         法制局次長   林  修三君         厚生事務官         (医務局次長) 高田 浩運君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田辺 繁雄君  委員外出席者         議     員 八木 一男君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 七月八日  食品衛生法の一部を改正する法律案内閣提出  第一八号)(参議院送付) 同月七日  理容師美容師法の一部改正に関する請願(長谷  川四郎紹介)(第二八九四号)  同(志賀健次郎紹介)(第二八九五号)  同(井出一太郎紹介)(第二八九六号) 同月八日  基幹病院新築費国庫補助等に関する請願(田子  一民君紹介)(第三〇〇三号)  国立出目療養所施設拡充に関する請願井谷正  吉君外三名紹介)(第三〇〇四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  戦傷病者戦沒者遺族等援護法の一部を改正する  法律案内閣提出第一一八号)  未帰還者留守家族等援護法案内閣提出第一一  九号)  社会保険審査官及び社会保険審査会法案内閣  提出第一二七号)  日雇労働者健康保険法案内閣提出第六〇号)  医師等の免許及び試験の特例に関する法律案(  内閣提出第一四〇号)  財団法人日本遺族会に対する国有財産の無償貸  付に関する法律案内閣提出第一四四号)  厚生行政に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず日雇労働者健康保険法案社会保険審査官及び社会保険審査会法案の二つを議題とし、質疑の通告がありますので、前会に引続きこれを続行いたします。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今日この社会保険審査会と同じような審査会が、労災保険失業保険等審査制度の中につくられているが、そちらの方は今までの制度である三者構成と同じように行われ、うまく行つているように聞いているのでありますが、この社会保険審査会だけがうまく行かないその理由はどこにございましようか。
  4. 久下勝次

    久下政府委員 労災並びに失業保険に関する審査会は、今日の制度のままで運営されているのであります。これは私ども承知しているところでは、審査請求件数が私どもの所管している社会保険審査会とは非常に大きな違いがございまして、一年に数件あるいは十数件の程度にとどまつているように聞いております。従つて問題は、私どもとしても、この審査件数の問題で問題にしているわけでございます。もう一つのことは、前にも申し上げたのでありますが、現在被保険者から審査請求ができるものは保険給付についてのみで、今回新たに標準報酬についても新しく審査請求を認めることにいたしました。近くまた厚生年金保険法法律改正の際には、被保険者の資格についてもこれを認めるようにいたす所存でございます。そういうふうに漸次審査請求範囲を拡大することと、さらにまた今度は新しく、今御審議をいただいている畳屋労働者健康保険法制度ができて参りますので、現状でも手がまわりかねるところへ、そうした審査請求事項範囲の拡大あるいは新しい社会保険制度創設等により、ますますこの傾向は助長されるのではないか、かように考えている次第でございます。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 非常に手がまわりかねるというお話ですが、私の方の資料によると、昭和二十五年四月から二十七年十二月までの三十三箇月間に、審査会開催された数はわずかに三十回、平均一箇月に一回も開かれないという事情で、しかもその開く時間は午後二時くらいから四時半くらいまでの二時間半くらいしか開かない。こういうふうに伺つておりますが、これではどうしても処理できないのはあたりまえだと思います。これは月に三回とかあるいは五回というふうに開いて、もし必要あれば午前から午後にかけて開くというふうにくふういたしますれば、ただいま溜つているくらいのものは何でもなく処理して行けるのじやないか。ことにこの審査会で決定したものは一つ範例になつてつて同様のケースの場合にはその範例で簡単に処理できるというようにも考えられるのであります。従つて問題はこの運営の仕方であつて制度それ自身の欠陥ではないというふうにも考えられるのでありますが、その点についてはいかがでありましようか。
  6. 久下勝次

    久下政府委員 仰せのような過去の審査会開催実情でありますが、実はそのことが私どもとしてはこの制度改正する理由考えている事柄でございます。と申しますのは、ただいま非常勤職員として委員お願いしております方々は、それぞれ他に本務を持つておられる方々で、ことに会社等の重要なポストにおられますので、なかなかこちらからお願いいたしましても、皆様の御都合のよい日においでをいただくことが困難な場合が多いのであります。実は開催回数も非常に少いようでありますが、その間私ども事務当局としては、ほとんど連日のように各委員に連絡して、各委員の御都合の合つたときにお集まりをいただく、こういうやり方を従来しておつたのであります。それらの事情から開催日数が少くなつている。なお最近はこの春ごろから特に委員方々にも御協力をいただきまして、月二回定例日をつくりまして、二回ずつはやつていただいております。とても今お話のようにそれ以上に回数をふやしますことは困難でございます。ことに一日このことにおかかり願うということはほとんど不可能に近い。他に本務を持つておられる方を中心にお願いするということによつて審査能率を上げるということになりますと、なかなか見通し困難だろう、というのが今度の改正考えました趣旨でございます。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この審査会委員の名簿を見ますと、六人ずつで各三者構成というようになつておりまして、公益代表六人、事業者代表六人ということになつておりますが、実際の委員会のその日その日の運営は何人ずつでやることになつておりますか。
  8. 久下勝次

    久下政府委員 各保険ごとに被保険者事業主及び中立の立場におられる方に二人ずつお願いしておりますので、お話通り現在では六人であります。日雇労働者健康保険法ができますると、少くとも各界からそれに一名くらいずつはお願いしなければなるまいと考えておるのであります。現在の運用は、各種保険につきましていろいろな内容についての審査請求がございます。これを受付順に処理をしていただいておるのでございます。その関係上、審査会を開きます際には、少くとも各保険について一名の各界代表の方のおいでをいただく。つまり言いかえますと、総数現在十八名でありますが、十八名の半分の九名の方の御参加をいただかないと開催ができないというような扱い方をしております。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その点をもつと簡単にして、今日の三者構成の線を維持して行くことはできないであろうか、御意見を伺います。
  10. 久下勝次

    久下政府委員 この点につきましては、実はおそらく具体的には、各保険をばらばらにして、別々の審査会にしたらどうかというお話であろうかと存じます。ところが、事のいきさつは、審査会の整理の関係上一本になつたので、過去においてはそういうことがあつたようであります。しかし実際に運用してみますと、またその他の面におきましても、船員保険厚生年金保険と、健康保険、これはうらはらになる関係がありましたり、あるいは船員保険健康保険とは全然同じように解釈しなければならないようなものが相当ございます。従いまして、それぞれ関係委員方々審議参画をしていただきます方が、全体として公平な審議ができる、こう思いまして、私どもとしては先ほど申し上げたように運用をしておる次第でございます。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私どもがこの制度改正でおそれますことは、申すまでもなく、民主化しましたあらゆる制度が、民主主義がうるさいものでありますから、とかくまた官僚的な機構にかえて行くというところが社会の各方面にございます。そういたしますことが一面能率的のようでありますけれども、やはりそこで官僚の権力が大きくなりまして、かつてわれわれの国が失敗いたしましたような失敗を繰返すおそれなしとしないのであります。われわれは、めんどうではありますけれども民主主義的な態勢をあくまで守つて行かなければならぬと思うのでありますが、今回のこの改正案にいたしましても、われわれそれを非常におそれておるわけであります。こういうようなことになつて常勤審査会の三人の委員でもつて構成されることになつておりますと、この前の委員会柳田委員が辛辣な質問をなさそうたように、そういうおそれなしとしないのでありまして、われわれはその点をあくまで阻止しなければならないというように考えておるわけであります。ほんとうに被保険者立場に立つて発言してくれるのは、やはり被保険者代表委員がいなければならない、こう考えるわけでありますが、この前の委員会で、局長はその三者構成の道でもなくても、今度の常任委員の線でも、被保険者立場に立つた発言ができないわけではないというようなお答えもあつたかと思いますが、その三人の常任委員を選びます方法がここで大きな問題となりますが、法律によりますれば、国会の承認を経てということがございますけれども、どうもそういうことだけでは、今日のそういう行き方でずいぶんいいかげんなものが多いのでありまして、ことに国会の政党の勢力の分野のいかんによりまして、今日ずいぶんいいかげんなことになつてしまつておるわけであります。でこの三人の常任委員を選ぶのに、たとえば労働組合から推薦いたしました代表を選ぶ、あるいは事業主代表、たとえば経団連というようなところから推薦しました代表を選ぶというような、そういう御方針があるかないか、それを承つておきたいのであります。
  12. 久下勝次

    久下政府委員 三人の常勤委員につきましては、前会も柳田委員お尋ねお答え申し上げたのでありますが、私どもは、あくまでもこの法律の規定にありますような、一般的な条件に該当をする方にお願いをするという意味だけでございまして、少くとも両院の同意を得まして内閣総理大臣が任命をいたしました以上は、その人は、すでにそのことによつてある特定の階層を代表するというようなことはなくなるものと考えておる次第でございます。しかしながら、一方において確かに御懸念の点は私どもも認めておるのでありまして、この常任委員だけで実際の審査なり採決なりが行われるということでありますれば、お話通りになると思いますが、一つには、毎々申し上げておりますように、利益代表委員を置きまして、そうして労使双方の団体の推薦によつて厚生大臣お願いをして、その方々審査参画して、それぞれ事業主なり被保険者のために弁護的な意見を述べることができまするし、また必要があれば証人の喚問、証拠調べ、その他必要な要求もできるような権限が与えられております。そういうことによつて審議の過程におきまして、今お話通りのことが実現できると考えておるのであります。さらにそのほかに、法文の上には現われておりませんけれども、すでに私ども社会保険審議会の席上で関係皆様委員の方にお約束をしたことがあります。それはこの前申し上げました通り、三人の常任委員にどういう人を選ぶかということについては、この機関の管理をいたします厚生大臣が一応お世話をすることになろうと思いますが、その際におきましては、厚生大臣は、内閣総理大臣推薦をいたします前に、あらかじめ利益代表委員である労使双方方々の御同意を得るということをお約束いたしておるのであります。そうすることによりまして、私どもは今お話になりました実質的な目的は十分達せられる。一方におきまして、先ほど来申し上げておりますことに関連する審議能率化、あるいは公正ということも保たれまするので、私どもは、それによつてこの制度は実質的にはお話のようになつておると考えておるのであります。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ただいまのお話の、同意を得るということは、実質においては推薦をした者ということになりますか。
  14. 久下勝次

    久下政府委員 その辺は、まだどういうふうな段取りで参りますか、そこまで具体的になりますとわかりませんが、おそらくは、厚生大臣がこういう人はどうだろうといつて相談をして、この人よりこの人がいいというようなことになつたら、その人を厚生大臣がとる場合もあろうと思います。従いまして実際問題として話合いのことになりまするので、少くとも利益代表委員方々が全面的に反対するような方を推薦をする意思はないのでございます。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そこが問題のかなめであろうと思うのであります。その点が明確になりませんと、どうもこの改正案は難点が出て来ると思うのでございます。いずれにいたしましても、この審査会の新しい方式に対しましては、事業主側労働者側も、どうも反対をしているようでありましてその諸君の申しますように、結局事業者側あるいは労働者側利益よりも、厚生省意図、すなわち露骨に申しますれば、保険財政の観点からいたしましてとかく事が処理されるようになるであろう、そういたしますと、今の単なるオブザーバー的な、それに少し毛のはえた程度利益代表参画というような程度では、被保険者利益を十分に守ることはできない、こういうように考えられるわけであります。この事業者側反対あるいは労働者側反対、総評の福祉対策部におきましては、これに対しまして相当強く反対意図を表明しておりますが、こういう反対や、あるいは社会保障制度審議会勧告の中にありますように、三者構成意図、これは厚生省は誤解でやられたかあるいは意識的になさつたかどうかわかりませんけれども社会保障制度審議会がいたしました勧告の線を、その意図通りにはとらないで、逆にとりましてこれを進めていられるようであります。これにつきまして厚生省はもう一度考え直しをすることが必要だと思うのであります。社会保障制度審議会勧告を決して正当にとつておらないということは明らかだと思うのでありまして、名利益代表側意見や、社会保障制度審議会勧告を無視いたしましてこれを進めて行くということは、どうも無理があると思うのでありますけれども、それについてもう一ぺんこれを慎重に考えてはどうか、こう思うのでありますが、当局の御意見をお聞きいたします。
  16. 久下勝次

    久下政府委員 ただいま社会保障制度審議会意見に関連してのお尋ねでございます。その前に申し上げておきたいと思いますことは、法律による社会保険審議会審議なり答申内容でありますが、確かに社会保険審議会におきましては、この制度につきまして労使双方から相当活発な意見があつたことは事実でございますが、私ども立場といたしましても、この審議に応じまして御意見を入れて、当初の原案を相当に修正をいたしまして、大体においてごらんのように答申案内容としては原則的に御了解をいただいたのでございます。社会保障制度審議会におきましては、まずただいまのお話に触れておる内容としては、当初の社会保障制度審議会勧告を今度の答申にもひつぱり出して行く、ただ当初の勧告というものは、申すまでもなく社会保障制度が全般的に統合され、もつと広範囲に実施をされますときのことを予想しての答申とも考えられます。従いましてそれぞれこの種の制度につきましては、実情に応じて被保険者利益保護に遺憾のないようにする必要があると考えた次第でございますが、この法案そのもの審議をいただきましたその間の社会保障制度審議会におきましては、お話のように言葉がちよつとあいまいでありますけれども、私自身審議会出席をいたしまして、この案についての御説明を申し上げ、あるいはいろいろな御質問お答えをしておつたのであります。そのときの事実としては、私は決して審議会意見を曲げてとつているとは思わないのであります。ただこの勧告方針にも反する点があるので、考えてくれということを話しまして、これは必ずしも反対であるととつておらないのでありまして、従いまして社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会の両者の御意見に私どもは反してやつているつもりはないのでございます。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この点がこの間の社会保障制度審議会局長承知通り問題になつたわけでありまして、これは明らかに三者構成ということについての社会保障制度審議会から申し上げました筋と違つていると思うのであります。この点についてはもう一度お考え直しを願いたいと思うのであります。それはともかくといたしまして、結局この社会保険審議会がこういうように改善されて参りますと、船員保険関係する方々船員保険の被保険者は、失業保険にも労災保険の中にも包含されておりますような相互保険でありますが、船員保険の被保険者諸君は、他の陸上労働者諸君と違いまして——陸上労働者諸君労災保険失業保険の三者構成審査制度審査されて、自分利益自分代表によつて述べ、自分の主張を自分代表によつてそこに守つてもらうということができるわけでございますけれども、これに対しまして船員保険の被保険者だけがそういうことでない制度の中に入つてしまう。これは見解の相違で、いろいろ考え系違いましようけれども、私ども考え方からいたしますると、三者構成の線が少くとも薄れて行つてしまう、そうすると船員保険保険者だけがそういう不利な状態に立つと思う。この陸上労働者諸君と海上の労働者諸君とのこの不つり合いはどういうふうに考えられますか。
  18. 久下勝次

    久下政府委員 審査内容と申しますことは、申すまでもなく事実の認定と法律解釈という問題でございます。ことに法律解釈運用が最も審査会として重視されなければならない問題でございまして、この点について私は、今度提案申し上げている制度によつて、被保険者利益を不当に制限をされる懸念は毛頭ないと思つているのでございます。一見確かにお話のように感ぜられる点がないとも言えないと思いまするけれども、先ほど来申し上げておりまするように、利益代表委員が実質的な権限を持つて審議参画してもよろしい、さらに専任の審査委員に対しましてはあらかじめ同意を与えているという一つの心理的な意味合いもあるわけでありますが、さような点から考えまして、私は陸上労働者船員とを両方比較いたしまして、その利益保権に欠けるところがあるとは毛頭考えておらないのでございます。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今日の厚生省の役人の諸君は、非常に進歩的な諸君が多いのでありまして、私ども考えを一にいたしまする人々が非常に多く、進歩的な政策の立案に絶えず努力してくださることにつきまして、われわれは喜んでいるのでございますけれども、しかしいつも厚生省の進歩的な考え方が、大蔵省の諸君によつて絶えず押えつけられてしまつている。そうしてとかくまず国の財政あるいは保険財政というものが先に立ちまして、国民の基本的権利でありまする憲法第二十五条の保障するような線がいつもあとにされてしまつておる。そして、ない袖は振れぬというような、結局ずいぶん困つた考え方になつてしまうことは非常に残念に思う次第であります。そういうわけで私は、この改正につきましても結局そういう結果になつて、被保険者利益をまず守るということよりも、この改正によつて逆保険財政がしわくちやになつてしまうという線が出て来ることを非常におそれるものであります。このことにつきましては、私はなお十分考慮する必要があると考えるのでありますが、きようの質問はこれで終ります。
  20. 小島徹三

  21. 杉山元治郎

    杉山委員 先般お尋ねした社会保険審査官の問題で、第二十七条の点でありますが、私は法律的にしろうとでありますから、ちつよと了解に苦しむのですが、「審査会は、委員長及び一人以上の委員出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。」こう書いてありますが、この「一人以上」というのを、先般の委員会では一人でもいいんだというお話であつたのですけれども、私のような法律的にしろうとの者は、どうも一人以上と書いてあればやはり二人と解釈するのは常識のように考えておつたのでありますが、この点で法制局の方ではどういう御意見を持つておるのか、一応伺つておきたいと思います。
  22. 林修三

    林政府委員 お答え申し上げます。何人以上とか何箇月以上とか、何円以上という言葉使い方でありますが、これはあるいは昔からの法制局の一人よがりの使い方かもしれないのでございますが、何人以上あるいは何箇月以上という言葉は、たとえばこの一人以上という言葉は、一人を含むという考え方で、以上という言葉をすべて使つておるわけであります。たとえば何万円以上という場合にはその何万円を含んでその言葉使つておる。ここではちよつとすぐ引用はできませんけれども、その一人を含まないという使い方をいたします場合には、一人を越えるとか、越えるという言葉法制上は使つて区別をいたしておるわけであります。こういう言葉使い方は、今までの法律技術から申せば、一人以上という場合は必ず一人を含んでおるという使い方で実はやつておるわけです。以下という場合にももちろんその人間を含む。以上、以下という言葉は、そこで使つております数を含んだ意味使つて今までやつておるわけであります。あるいは多少一人よがりの使い方であるかもしれませんけれども、これはずつと明治時代から法律はすべてそういう意味使つておるのでありますから、御了承願いたいと思います。
  23. 杉山元治郎

    杉山委員 多数の場合は何々以上、こう申してその数を含む、こういうことならよく了解できるのですけれども、ただ二人の場合に、ここに一人以上と書いた場合には、一人だけでもいいんだという解釈にはどうもなりにくい。特に審査官は三人しかおらない。この者が一人では開けない、こういうことになると思うので、そういう多数の場合でなく、ごく少数の場合、これは法律慣用語かしれませんけれども、私どもはこれはふに落ちない点があるのであります。このことと、もう一つは、それに引続いて、同じことでその第二項になつております「審査会議事は、委員長及び委員過半数をもつて決する。」こう書いてございますが、そうするとこの「過半数」ということだつて一人でもやはり過半数でしようか。
  24. 林修三

    林政府委員 この第二項は、議事過半数によつて決するということを書いておるわけでございまして、御承知のようにこの委員会委員長一人と委員二人でできております。従いましてこの第二項で委員長及び委員過半数と申します場合は、委員長一名と委員二人、合計三人の過半数という意味で二人の賛成がなければいけない。この議事を開く定足数は二人の出席でも足りる。委員長及び一人以上の委員が出ればそれで足りることになつておりますが、その二人出た場合には、議決は必ず二人の同意がなければいけない。こういう意味で、二人しか出なかつた場合に一対一では議決はできないというのでこの第二項は置いてあるのであります。これは出席者の人数にかかわらず、全体の委員及び委員長の数の過半数、従つて二人の同意がなければいけない。こういう趣旨で書いてあるわけでございます。
  25. 杉山元治郎

    杉山委員 法律的な解釈は専門家におまかせしておきますが、今お伺いしたところによると、従前からお尋ねしておりますように、最後の決定であるので、やはり非常にむずかしい事案になつておると思う。そういうものを決定いたしますのに、委員長審査委員二人で決定するということになりますと、先ほどから同僚委員が強く申し述べておりますように、どうも三者代表の意思が反映しない危険性がある。そういう意味から申しても、私はこの前申し上げたように、委員の数は少い。やはり利益代表の出るような数にまで持つて行かなければいけないのではないか。そういう点で、はたして今言うような利益代表がほんとうに出て、公平的確な審査ができるかどうかという問題と、もう一つはいわゆる二人になつて今言うようにむずかしい、残された問題でありますから、議論がわかれるような場合も多々起つて来るだろうと思うのでありますが、そういう場合はやむを得ないのだ、もう一人出て来るまで待つのだ、こういうことに相なるのでありますか。そうすればせつかく迅速に仕事を運ぼうとしたことが、相かわらず運べないという結果になつて来はしないか、こういう点をおそれますので、もう一度政府の方の御見解を伺いたいと思うのであります。
  26. 久下勝次

    久下政府委員 私からお答え申し上げます。大体まだ具体的なところまできめておらぬのでありますが、三人の審査委員は、委員長を初め具体的には多数の請求事件をそれぞれ分担することになろうかと思います。それぞれ担任いたしました者が責任を持つて審理をいたします。また利益代表委員方々の御意見も伺つてそれらを重要な参考として意思決定するということになるだろうと思いますが、その場合に、主任の審査官である者が一人で自分の判断だけでやつては困るので、少くとも他の一人の審査委員によく事情を説明して、その同意があつた場合にのみ採決ができるというふうにいたしておるわけでございまして、私どもとしては、特別な例外の場合を除きましては議論が沸騰して二人だけでは決定がつかないということは非常にまれであろうと思います。また同時に反面において三人の審査会でありますので、原則としては三人出るのが当然でございます。それが出られないということは、何か特殊な事情がある場合に限られると思います。その特殊な事情が長期におたるようなことでありますれば、当然これは二十四条の規定に基きまして、審査会の決議によりましてその方にやめていただいて、新しい方を任命するというような手続が行われるだろうと思いますので、特別な場合を除きましては、御懸念のようなことはあまりないのではないかと思います。
  27. 杉山元治郎

    杉山委員 お話を伺つても私の疑問は解けません。やはりそれによつてほんとうにこの被保険者なり、そういう利益代表の十分なる審査ができるかどうか、こういう疑問を持つておるわけなんです。以上で私のこの点についての質問は終ります。
  28. 小島徹三

    小島委員長 他にございませんか。——なければ次に移ります。  皆さんにお諮りいたします。ただいま委員外八木一男君より、日雇労働者健康保険法案について発言を求められております。これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 小島徹三

    小島委員長 御異議ないようでありますからこれを許します。  なお八木君に申し上げます。質疑の途中で厚生大臣並びに労働大臣が出席した場合には質疑を中止して、他の委員の方に質疑を続行させていただきます。八木一男君。
  30. 八木一男

    ○八木一男君 厚生省の政府委員の方に伺います。政府提出日雇労働者健康保険法理由には、「日雇労働者は、就労浮動、低賃金等のため、つねに生活基盤が不安定であり、傷病によつて直ちに深刻な困窮におちいることの多い現状にかんがみ、これに健康保険制度を創設して療養の給付及び家族療養費の支給を行う必要がある。これが、この法律案提出する理由である。」こういう理由書が添付されておるわけでございます。この理由書から明らかでございます通り、日雇労働者は非常に就労が浮動で、低賃金で、非常に困つた状況にあつて、傷病が起つたときには非常に深刻な事態に立至ることは当然でございまして、この当然の状態から考えまして、政府案の内容であります給付は、はなはだ不穏当で不適当であると考えるわけであります。たとえば傷病手当金がないために、療養給付だけあつても何もならない。たとえば医者に注射をしてもらつて薬を飲んで安静を命ぜられても、自分の家庭の家計が非常に苦しいために、安静を命ぜられてもやはり日雇に出て労働をして、病気は一向になおらないというようなことが十分に予想されるわけでございますが、政府の方ではいかがお考えでございますか。
  31. 久下勝次

    久下政府委員 健康保険制度の建前から申しますれば、確かに病気のために就労できないような場合には、傷病手当金を出すというのは一般の例であります。この点につきましては、私どもとしては異存のないところであります。ただ問題は、それを実際問題としてどの程度までやるかということが問題でございまして、これは一に保険財政にかかるわけでございます。私他の委員の方に申し上げたのでありますが、健康保険におきましては、今度三年に給付の期間を延長する案を提案しでございますが、これも傷病手当金の方は、一般の疾病は六箇月、結核は一年半で打切つております。これも一に財政上の理由でございます。日雇労働者健康保険制度を創設するにあたりましても、私どもといたしましては何とかして傷病手当金を給付の内容として取上げたいといろいろと検討いたしてみたのであります。何分にも全体の財政が非常にきゆうくつでございまして、傷病手当金まで手が延びませんので、今回の案としてはとりあえずこの程度で出発をいたしまして、将来を期したいという考えを持つておる次第でございます。
  32. 八木一男

    ○八木一男君 先ほどのお約束に従いまして、厚生大臣がお見えになりましたので質問を中断いたしたいと存じますけれども、とにかくこの内容については、厚生省は十分不十分だということを御承知だ。ところが第十五特別国会におきまして、本委員会で自由党の与党の永山委員から、政府案の内容では非常に不十分である。野党から出しました修正案の内容にまで可及的すみやかに引上げなければならない。しかしながら十五特別国会において、予算案が通つているからその点で非常に困難である。そのために政府案に賛成するという討論があつたわけであります。また十五特別国会に入つてからの予算委員会におきましてここに厚生大臣がおられますが、厚生大臣並びに大蔵大臣に対しまして、私からこの問題についていろいろ御質問申し上げ、大蔵大臣も十分にこの問題は考慮するという御返答があつたわけでございますが、それがこの元の原案で出て参りましたことにつきましては、厚生省当局のこの問題の解決にあたる熱意、努力が不十分である。また政府自体も、大蔵省のこの問題に対する理解が少かつたと考えられるわけでございます。この問題の質疑は後に継続させていただきたいと存じますが、厚生省当局保険すべてに対する格段の御熱意の必要があるということを強調いたしまして、一応質疑を打切ります。
  33. 小島徹三

    小島委員長 ただいま厚生大臣出席されましたので、両案のほか本日の日程を全部議題として、大臣に対する発言を順次許可いたします。  ただいま大臣より九州地方水害視察につき報告したいとの申出がありますので、まずこれを許します。厚生大臣
  34. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 私はちようどこの前の委員会出席いたしまして、その日の飛行機で九州地区の水害地の視察、並びに現地におきます対策等の確立に対して参りまして、一昨日帰つてつたのであります。その間国会開会中でありますので、そう長期間にわたつて現地に滞在ができなかつたのでありますが、できるだけその間に災害各地を現地に視察いたしまして、厚生省所管のことを中心にいたしまして、できるだけ応急対策の確立に遺憾なきを期したいと存じて参つた次第でございます。私はたしか二日でございましたか着きまして、すぐに現地の対策本部において、各関係官から被害状況等を聞き、その後連日飛行機、ヘリコプター、自動車あるいは徒歩によつて、大体災害の各地を見て参りました。ただ滞在しましたのが中三日でありましてその間長崎とそれから大分県は、私は参るつもりで機上の人となりましたが、途中で降雨になりまして、パイロットの申入れによつて長崎は途中から引返し、なおまた大分地区は日田地区の途中まで参りましたが、何分にも大分地区その他は飛行場の設備がありません。ヘリコプターあるいは小型機で参りましたので、風速を冒して参り着陸することが危険だというパイロツトの申出によつて、長崎及び大分の両県は現地に参りません。その県下の一部を機上から視察いたしましたが現地には参つておりません。しかし福岡、佐賀、熊本、山口等には現地について視察いたしたような次第でございます。時間もありませんので、詳細なことは政府の対策本部等の発表、あるいはその他の報告がございますから省きまして、できるだけ厚生省所管のことについて申し上げたいと存じます。  なおこの点は皆さん御承知通り、新聞紙等において御承知だと思いますが、今回の災害の特殊な点は降雨量が多かつた、総量においても密度においても非常に多かつた。たとえば私が帰ります現在までにおける対策本部の調査によりますと、福岡において千百十二ミリ、それからその他大体八百ないし九百くらいの降雨量があつたのであります。それで今回の災害の特徴といたしましては梅雨前線と豪雨、それから長雨、この三つが競合いたしましたために、たとえば門司、これはむしろ山津波、それから熊本は泥害、それから佐賀県は長期の滞水、長崎県は山すべり、地すべり、こういうふうにおのおのの県によつて特殊の災害の状況を示しております。機上から見ましても、一番ひどいのは筑後川沿岸であります。遠賀川も決壊いたしております。たとえば佐賀県の嘉瀬川の流域の嘉瀬村にも、私は小舟で河を渡つて、ロープを伝わつて参りましたが、ここなんかは非常に災害もひどく、ちようど私が参つて飛行機から見ましたときには、この嘉瀬川の決壊場所は、何ら人影もなくして、まだ氾濫をしておつた。そして嘉瀬川の下流の方の一帯の地域は、むしろ水量がふえておるというような状態でありました。これをすぐに帰つて対策本部に報告してその翌日から保安隊がいわゆる締切り工事に当つておるような状態であります。  ほかにもいろいろございまするが、建設関係の御報告は、他の機会に報告があつたと思いますから省略いたしますが、とにかく災害は相当にひどく、ことに大分県の日田地区のごときは、連絡等の不十分のために、私らが帰ります一両日の間に漸次その被害状況がわかつて来たというような状態であります。従つてこの災害の規模等については、まだ確かな数字はわかりませんが、私が帰りますときの最後の調査では——きよう現在ではあるいはまた少し変化があるかもしれませんが、大体死者、行方不明合計いたしまして千百四十、それから罹災者の総数が百三十三万五千、世帯数が二十六万一千というふうなことであります。  なおこれはもうすでに新聞紙上で御承知でありますから省略いたしますが、水田、畑地の冠水、流失、埋没、それらは相当の数に上つておりますし、全壊、流失の戸数、半壊あるいは冠水、床下の浸水、床上の浸水も相当の数に上つております。それらのことにつきましては、他の機会に発表があると思いますから省略いたしますが、さような災害下においてまずもつて今回対策本部を中心として政府がとりましたのは、いわゆる災害救助法に基く応急対策並びにそれと並行して防疫対策でありますが、災害救助法に関しましては、結論といたしますれば、実はその間各県の知事にも会い、また市町村においては市町村の責任者にも会い、私が帰ります日に罹災県の民生部長と会議を開き、またその他調査いたしましたところでは、今回の災害救助の応急対策といたしましては、まずいろいろ個々的には問題もありましようけれども、一応順調に支障なく行つておる。たとえばこの災害救助法で一番問題になりましたたき出しでありますが、たき出しは一応六日間ということになつておりますが、これは福岡の現地の本部においては十日に延ばしました。熊本のことはあとで申し上げてもいいのでありますが、白川の氾濫によつて熊本地区の氾濫は相当ひどいのであります。私はかつての阪神地方の風水害を知つております。あの際にも泥害は相当甚大なものでありましたが、今回の熊本におきます泥害は、新聞にもありました通り、阿蘇山のいわゆる火山灰を押し流して、たしかきのうの朝日新聞の夕刊でありましたかに写真が載つておりましたが、例の熊本市内の大きな石の橋があります。その橋のもとから別の川ができて、その流域に百軒ほど家がある、それが押し流された残骸や、上流からの流木が橋げたにかかつておる写真が載つておりましたが相当熊本の泥害もひどい。それから嘉瀬村のごときは、私が行つたときには、決壊場所の修築を全村あげてやつておりましたが、十日間ではあるいは緊急避難が済まないかもしれない。たとえば熊本のごときは家がこわれていなくても泥害で家に帰れないということでありますから、たき出しの期間等も、今後はある程度そういうふうな個々的の場面に応じて考慮せざるを得ぬのじやないかというようなことも考えられております。  なおその他災害救助法の基準につきましては、大体臨機に現地においても対策本部と相談いたしまして、大体五割ないし十割を引上げたのであります。それらにつきましては現地もよく了承いたしておりまして、たとえばたき出しの部分的な延期等について希望がありますほかは、今回は現在のところ一応順調に行つておると思うのであります。  あまり巨細なことを申し上げる時間がございませんが、まず国立病院及び国立療養所の被害について申し上げますると、九州地方は、国立病院が十二、国立療養所が三十六ございます。そのうち被害を受けましたのは、国立病院十箇所、国立療養所二十五箇所であります。そのうち特に佐賀の療養所は相当ひどい被害を受けております。それから門司検疫所は、ああいう地域的な関係で、地すべりで相当の被害を受け、そのうち職員一名、家族二名が死亡いたしております。但し入院患者につきましては、今回は幸いにして死傷はありませんでしたので、この点は不幸中の幸いと思つておるのであります。  なお社会保険関係の施設につきましては、久留米の社会保険出張所、並びに社会保険久留米第一病院、これは浸水を相当受けて相当の被害がありました。今回は久留米は相当被害が多いのでありますが、久留米市の上流にあたります筑後川が氾濫いたしまして、久留米市は、ちようど三角形の底辺にあたるところにありますから、相当の浸水があつたのであります。たとえば、久留米医大に参りましだが、これは二階も、相当な泥を排除はいたしておりましたが、相当いたんでおります。ちようど私が着きました日に、相当飛行機が遅くなりましたが、久留米医大の婦長という人がやつて来まして、自分は六百人ほど屋根の上に患者を上げて避難させたというふうなことを、もちろん着のみ着のままで来て私に報告いたしておつたようなこともありましたが、そういうふうなことで、大体入院患者等には被害はありませんで、今申し上げましたような程度の施設の被害がありました。  それからただいま申しました災害は、厚生省所管では、まずもつて災害救助法による災害救助と、伝染病予防法に基く、あるいはその他に基く防疫対策、この二つが重要でありますが、まず災害救助につきましては、たとえば避難所の設置でありますとか、たき出し、あるいは被服、生活必需品、学用品、仮設住宅の設置、生業資金の貸与、医療、助産、こういうふうなものにつきましては、大体先ほど申したように、いずれも五割ないし十割を引上げ、そうしてその場合に、中央からはケア物資でありますとか、CAC物資でありますとか、あるいは政府の備蓄いたしておりましたものを持つて行くとか、その他緊急の物資につきましては、現在におきましては問題はないと思います。博多において今米のやみ値が多少上つておりますが、それ以外の衣料等の価格は上つておりません。救援物資等の配給等につきましては、いろいろ数字もございますが、時間がございませんから省略いたします。  それから救護につきましては、今回は保安隊が、私が帰りますときで七千三百人ほどおりました。この保安隊は、あの当初において人命救助あるいは救援物資等の配給に相当努力をいたしましたが、そのほかにも日本赤十字あるいはその他の市町村、ことに救護関係につきましては、国立病院、医師会、保健所なんかが救護班をつくりまして救護に当りました。大体五十二班各県にわたつてつくつておりました。  それから防疫でありますが、これはあの災害が起りましてすぐに安田社会局長を送りますとともに、防疫官を中央からも派遣いたしました。なおまた伝染病予防法に基いて、厚生大臣命令でもつて関係各県に救護班の派遣を命じました。あるいは器材等につきましては、水が不足いたしましたので、濾水器等は各府県から送りますとか、あるいは保安隊から借りますとか、あるいは駐留軍から借りますとか、これらに対しても適当な措置をとる。なおまた医薬品、消毒薬、——当時はカルキとか、そういうような消毒薬が非常に不足いたしましたが、現在におきましてはその手配には遺漏はありません。同時に厚生大臣において伝染病予防法に基いて地域の指定をいたしました。  それから予算的の措置でありますが、御承知の法定伝染病予防に関する予算はたしか七億千六百万円本年度予算に計上いたしておりますが、これはいつも年度末清算払いでありまするから、今回のような災害にあたつては、応急にその都道府県あるいは市町村が対策を講じるについて、財政上いろいろ問題もありますので、この該算払いをとりあえず七月一日にいたしまして、四千四百万円を電送いたし、今各関係の自治団体に配付をいたしております。  それからただいま申しました防疫対策のうちで、現在一番大事である給水でありまするが、これに対しては濾水器を、たとえば保安隊あるいは各府県、あるいは駐留軍等から拝借いたしまして、今二十七台活動いたしております。私が佐賀県の嘉瀬村に参りました際に、保安隊の濾水器が非常に活動いたしまして、濁水におおわれて井戸水もない村民が非常に感謝をしている現場を見ております。なお井戸水に対しては、クロール・カルキ等、大体必要なものの入手ができましたので、これによつて井戸水の消毒をいたし、あるいは水道の水に対して消毒用の塩素等を多少増量いたしまして、防疫に当つております。  それから後ほど申し上げたいと思つたのですが、ついでに申し上げますると、今回一番心配いたしましたのは伝染病、ことに赤痢であります。実は赤痢のことを非常に心配いたしまして、私は、ちようど立ちまする前に災害の奏上をいたしました際にも、伝染病に対して特に注意をするようにというお言葉もあつて、赤痢等を中心といたしまする伝染病予防に対して非常な関心を持つて参りましたが、数字を申し上げますると、私が立ちまする日の三日前になりまするか、赤痢の発生状況は、罹災県を通じて五百六十六名であります、これを数字的に見ますると、昨年の同期と比較いたしまして、六月十五日以降七月三日までの累計をいたしますと、福岡県は昨年が三百十一名、今年は二百四十五名で、減少いたしております。佐賀県は昨年が百名、本年が百三十六名で、わずかに本年の方が増加しております。長崎県は昨年が二百六十四名、本年が百四名で、これは著減いたしております。熊本県は昨年が二百二十六名、本年が二百四十二名で、これはわずかにふえております。大分県は昨年が八十四名、本年が百二十五名で、これも少しふえております、山口県は大したことはありませんで、昨年が三十一名、本年が四十一名で、合計いたしますと、昨年の六月十五日以降七月三日までの罹災県の累計が千十六名に対して、本年は八百九十三名であります。これは不幸中の幸いであると考えております。しかし現地においてかようなことを申しますると、いかにも政府が防疫対策に対して安心をしているようなことになりますので、かようなことは申しませんで、防疫対策に対しましては、ちようど私が帰りまする前日に九州地方の防疫官会議を開きまして、防疫対策の強化をいたすことにし、大野本部長と相談いたしまして、今後対策本部としては、その下部機構として一番充実すべきは防疫対策であるから、むしろ防疫対策本部というようなものを置いて、予防あるいは治療、あるいは器材、薬品等の配置、整備、これらに対して遺憾のないようにいたしたいと思つております。もちろん今後伝染病に対する危険等はございますけれども、現在においてはこの赤痢が統計的に見ましてもふえておりませんのは、幸いにして集団地域、たとえば避難いたしたところとか、集団地域には赤痢があまり起つていないということと、それから治療対策といたしまして、たとえば下痢をいたしますと、従来はまずもつて検便をして、しかる後に厚生の指導を与えておりましたが、今回は下痢等の懸念がありますれば、先に厚生物資を与えてまずもつて伝染を断つて、しかる後に検便をするというような措置をとつております。大体さような際には一人当り一・五グラム、千円ほどかかるそうでありますが、そういうような措置をとつて、多少予算はかかりますけれども、これによつて予防上相当の裨益をいたしておるのであります。  なおこの際ちよつとつけ加えておきたいのは、こちらに載つたかどうか知りませんが、当時九州方面の朝日新聞に相当大きく載りましたのは、久留米医大が筑後川の氾濫によつて冠水をいたしまして、この久留米医大の細菌学教室にありました細菌が流出をいたしました、従つて久留米は伝染病の流行の脅威の中に置かれているというような大きな記事が出たのであります。私がその翌日、向うは飛行場がありませんので、ヘリコプターに乗つて参りまして、大学の責任者、県、市の責任者、なお防疫官立会いの上で検査をいたしましたところが、その細菌の管は約二百本ございまして、それは綿栓でもつて封蝋をいたしておりましたが、点検の結果一本も破損をいたしておりませんことが確認されました。なお培養中でありました孵卵器中のものがありましたが、この中には水が入つておりませんから、これまた流出をしていないということを確認いたしたのであります。しかし久留米地区は相当被害がありまするので、そういうことを別個に飛行機上からDDT等を散布するというような措置もとつておりますが、そういうようなことが誤り伝えられて、細菌に対する相当のデマが飛びましたが、これは対策本部からさような懸念はないということを発表いたしまして、その後はおちついているはずであります。  なおそのほかに社会保険関係に対する措置といたしましては、保険診療費、たとえば今回は保険医が相当罹災されております、その保険医に対して、保険報酬が入りませんから、政府といたしましては診療費の繰上げ該算払いをいたしまして、これに対して一億五千八百万円を送金いたしております。なおまた保険料の徴収の延期の措置もとつております。  その他いろいろありまするが、時間もありませんので、災害救助法に対する研究で問題になつております国庫負担の限度引上げ、あるいはまた熊本の泥害は従来の法律あるいは予算というような見地から見ますると、この甚大な泥害の排除に対して予算措置がとれませんので、これに対して何らかの方法によつて予算措置をとるという問題、あるいは今回の災害にかんがみまして、将来防疫用資材とか、器具とか、あるいは薬品とか、あるいは災害救助法の対象になるべき衣料とか、そういうようなものの備蓄配置に対して、平素から相当考える点があるであろうというような、いろいろな問題点がございまするが、大体さようなことで、一応現地における対策本部の仕事といたしまして、厚生省所管の災害救助法、あるいはまた防疫対策に関しましては、大体基本的なことは方針を確立して、その方針のもとに今各都道府県知事あるいはまた市町村長が責任を持つてつているような次第でありま  一応現地の報告を申し上げましたような次第であります。
  35. 小島徹三

    小島委員長 それではこれより前会に引続き順次大臣に対する質疑を坑行いたします。山下君。
  36. 山下春江

    ○山下(春)委員 水害地よりお帰りになつた大臣にちよつとお尋ねしておきますが、罹災地の未亡人の方々から、弔慰金を分割しないで、この際復活資金に充てるために全額ここで換金してもらいたいという非常に強烈な申入れがあるのでございますが、これに対して換金してやるような措置をおとり願えましようかどうか、お伺いいたします。
  37. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お話の点は例の援護法に基く弔慰金の換金の措置だと思いますが、これは御承知通り大体昨年度において二十億、今年度において三十億くらいやりたいという方針で進んでおるのでございます。これは、こういうような問題があります。たとえば今回の水害によつて、生活保護の対象になる人もたくさんふえるだろう。そういう際にはこれは義務費でありますから、生活保護の対象になる人がふえれば、これは義務費としていたすのでありますが、一応予算の配分等につきましては、やはりそういうものに対しては考慮するというような、これは民生委員会議でございましたが、それと同じような問題であろうと思うのであります。これは十分考慮いたしてみたいと思つております。
  38. 青柳一郎

    ○青柳委員 私は一昨日本委員会におきまして、戦傷病者戦沒者遺族等援護法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、当局に御質問をしたのでありますが、その中の重要な問題につきまして、ひとつ大臣に対し二、三質問をいたしたいと存ずるのでございます。  まず第一点は、今回の改正によりまして、戦争当時の国家総動員法によつて設立せられた船舶運営会の運航する船舶の乗組員に対しましては、この遺族に対して、軍人に対すると同じように、年金、弔慰金が支給せられるに至りましたことは、まことに御同慶にたえない、うれしいことでございます。しかしながらここにこれに関連いたしまして問題が起るのであります。それはもちろん大臣御存じであろうと存ずるのでございますが、やはり同じように当時の国家総動員法によりまして、国家の強制力によつて国に召し出されました動員学徒、あるいは徴用工、さらにまた満州の開拓団員、また閣議決定によりましてひつぱり出されました国民義勇隊の隊員、これらの方々の遺族に対する問題でございます。もちろん船員の中でもC船員が一番危険にさらされまして、その死亡率の多いということも存じております。しかしながら当時、船員保険法におきましては、ひとりC船員ばかりでなく、他のA船員船員に対しましても、同じような国家的な措置がとられまして当時は多額の年金が支給せられたのであります。これらのA船員船員におきましても、C船員だけに年金弔慰金が出ることにつきまして、相当な疑惑を持つと思うのであります。大体考えますのに、その他の徴用工にしましても、動員学徒にいたしましても、当時の国家の強制力によつて国に召し出されたものであります。さすれば元来から申しますれば、国家といたしましては、これらの人々に対してその傷疾、疾病あるいは死没について恩給と同様な規定をつくるべきであつたと思うのであります。しかるに敗戦の直前のことでもありますし、それらの方法が尽されないうちに敗戦に突入いたしてしまつたと思うのであります。元来ならばこれらの人々に対しましても、相当な国家的な国家補償が行われるべきであると存ずるのであります。これらの点につきまして大臣は相当なお考えがあると思うのでありますが、そのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  39. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 この徴用船員の遺族につきましては、従来船員保険法の規定によつてあるいは遺族年金が支給せられ、あるいは遺族援護法によつて三万円の弔慰金が出されております。そのうちで一番の、これは私は現実によく承知いたしておるのでございますが、今お話のC船員に関しては、あるいは軍人軍属以上の危険を冒して、しかもその死亡率等も相当多いのであります。従つて従来援護法の適用にあたつては、このC船員の問題が、非常に実質的にもまた精神的にも国家の援護がむしろ届かなかつたという点がありますから、今回援護法の改正において、この問題を取上げてC船員は援護の対象として取上げる、これはもう御承知通りであります。そこで問題になりますのは、そのほかの、いわゆるA、Bと仰せられましたが、これはおそらく甲、乙船員お話だと思います。甲、乙の船員につきましては、これはすでにC船員を取上げる前に軍人軍属に準じて援護法において弔慰金あるいは年金を支給いたしておるのでありますから、これはむしろC船員が漏れておつたのを、今回入れたということであつて、甲乙船員に関しては、従来までに援護の手を差延べておるのであります。またそのほかに船員がおりますが、これは大体においていわゆる船舶運営会の船員でもなく、また甲、乙の船員にも該当しない、いわゆる軍人軍属に準じない、そういう性格を持つていないその他の少数の船員がありますが、これは多くの場合におきまして、危険の程度においてもいわゆるC船員あるいは甲乙の船員とは違いますし、またさような船員においては、大体元の船主との間に雇用関係を存続いたしておるのであります。従つて今回の措置といたしましては、まずもつて重点的にC船員を取上げて、これに対して援護の手を差延べる。その他のいわゆる軍人または軍属に準ずべき従来の甲、乙船員に対しましては、従来においてすでにC船員と同様な待遇をいたしておるのでありますから、この問題は、それ以外のものがありましても、これはたいていごく少数であり、危険の程度も違い、ことに元の船主との間に雇用関係を持つておりますし、その他のいわゆる戦争犠牲者との関係を見ましても、今回はC船員に対する援護を差延べることによつて、一応万全を期し得るのではないか、かように考えております。  動員学徒につきましても、これもたびたび申し上げておるのでございますが、これは国家総動員法に基く例の学徒挺身隊でありますか、学徒勤労令でありますか、女子挺身勤労令等によつてつておる。これに対しては、業務上公務障害等に当りますものに対しては、これは援護をいたしておる。その他のもの、これは多数の国民がやはり徴用されたのでありまして、これに対しましては、同様の危険と同様の戦争犠牲を多くの国民が受けておるのでありますから、そこまで行きますことは、いろいろな均衡の問題等から呈して、はなはだ考えることが多いかと思うのであります。従つて従来総動員法に基く、たとえば学徒、女子挺身隊あるいはそれに準ずるものに対しましては、従来適当の援護の手を差延べておりますから、一応政府といたしましては、この程度でよろしいとは申し上げませんが、均衡の関係、その他からしましてもこの程度で一応進みたい、かように考えておるのであります。
  40. 中川俊思

    中川(俊)委員 関連して、私は一点だけですが、今C船員を入れることになつて、法文を改正されたことについて、私も非常に喜んでおるのですが、ここで、例の徴用航空員があの当時戦死した。つまりあの当時日本から朝鮮の方へ陸海軍の人が行きます場合に、航空機を徴用してやつておつたが、これで犠牲になつて死んだ。このケースはごくわずかです。いくらもないのです。私が知つておりますのは、二十年の終戦直前だつたと思うのですが、当時朝鮮総督府をしておりました阿部大将の関係で、佐官級の人その他十人ばかりを積んで行く途中に飛行機が行方不明になつたことがある。あとだんだん調べますと、鳥取県か島根県の山の中に墜落して全員死んでおつだ。この徴用航空員に対する援護規定が今のところではないように思うのですがどうですか。もしなければこれはぜひ入れてもらわなければならないのです。ちよつとその点を……。
  41. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいまの航空員に対しては、もしも戦時災害等によつて死亡した際には、援護法によつて三万円の弔慰金を出しております。今の仰せのお話は、おそらく戦時災害によらないものじやないかと思うのですが、原因等はどうなつておりますか。
  42. 中川俊思

    中川(俊)委員 原因は不明なんです。とにかく当時その飛行機がどこへ行つたかということも、しばらく調査をしなければわからなかつた時代なんです。しかしこれは今の徴用船員と同様に軍に徴用されておつたことは事実なんです。このケースは、ごくわずかなんです。いくらもないのですから、これはぜひひとつ援護局の方でもお考えを願つて入れていただくように御配慮願いたいのです。
  43. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ちよつと関連して。今の動員学徒その他総動員法、動員令で徴用されました者で、不幸にして結核で倒れた、これが公務死になつておらぬ。ところがあの当時の状況というものは、非常な悪い環境と悪い食事と、そして過労である。当然私はその中の大部分の者は公務死と考えていいと思いますが、この点今日ずいぶん問題が残つていると思うのですが、いかがですか。
  44. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 その前に中川先生にちよつと申し上げますが、行方不明で飛行機がどこへ行つたかわからないということだろうと思うのですが、これはほんとうを申しますと、厚生大臣としてははなはだこれは予算にも関係がありますから、現在の法律のきめた範囲においていたすのが政府の当局者としての任務でありますから、法律を越えてできませんが、しかし考え方としてはほんとうは実に気の毒な方で、何とかしたい、たとえば船舶運営会のC船員におきましても、実際これは徴用されておる、しかも相当の危険を冒して戦地に行く態勢におつた。かりに内地の港湾において病気で倒れた、実際に家族から見れば、徴用をされなければそういうふうな災害も死亡もなかつたわけなんです。ところがこれに対しては、たとえば港で爆撃で死んだときは三万円出しますけれども、病気で倒れたときには出さない。それと同じような問題で、ございまして、戦争災害に対する国家補償の問題で、個々的にいえば何ら徴用されてなくても、事情からいえば実に気の毒な方も多いことでございましようし、ことに学徒動員との関連において同じような事情、あるいはそれ以上の事情に対しても法律上出せないようなことになつております。  今長谷川先生のお話にもありますが、一応結核は公務傷害になりません。しかしこれはどうも結核をその中に入れますと、どの程度までいわゆる戦傷病の原因になつておるかという判断もなかなかむずかしいことであろう。個々的には確かに判断できるものも多いことでありましようけれども、結核等においては、あるいはそういうことがなくても、結核病死ということがあるかもしれぬ、そういうことで実は現在は法の対象となつておりません。これは御意見として承つて、われわれも今後こういう問題を考えまするときの重要な問題として頭には置きますけれども、今それをどうするかということに対しましてははなはだ遺憾ながら一応何とも言いかねます。しかし今後こういう問題はたくさんございまして、学徒動員に関するものもずい分ございまして、私もいろいろ陳情を受けまして、そのたびに頭を痛めておりまするが、一応答弁といたしましては、それは何ともいたしかねる、今後考慮すべきときには一応そういう問題は重要な問題として考慮いたすという程度であります。
  45. 中川俊思

    中川(俊)委員 これは行方不明になりつぱなしではないのです。一箇月か二箇月たつて判明しまして全員死亡しておることが確認されたのです。そしてお骨もとりに行つたのです。こういうのはいまの徴用船員と同じようなものですから、徴用船員を入れるのだつたならば、これもぜひ入れてもらうように、援護局の方で御配慮願いたい。この問題はケースが少いのです。少いからそんなわずかなものは対象にはならぬということになればそれまでですけれども、C船員を入れるということならば、それと同じケースなんですから、これをぜひ研究してみてください。
  46. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 今中川先生のお話まつたく同じように考えるのでありまして、たとえば満州等におきまして、いわゆる戦時災害、公務傷害、こういうようないろいろ基準がありますが、満州において実際戦争行為によつて死んだのではないけれども、事実においてはそれ以上の事情によつて死んだ人も非常に多い。しかしそれが一応の法の建前としては入らないということも多い。毒筆は具体的はいろいろ陳情がありまして、何とかそういうものを、たとえば公務傷害と準ずるといいますか、同じ考え方で行かないかという点は、私どもも研究をさしております。重要なことであると思いまするから、これは決して通り一ぺんの御答弁をするにあらずして、今後よく研究をいたします。
  47. 小島徹三

    小島委員長 青柳一郎君。
  48. 青柳一郎

    ○青柳委員 大臣は船員に関する知識を十分持つておられると思いますから、ただいまの御答弁の中で、C船員については今回軍人同様の取扱いをすることによつて解決する、従前から援護をされておつた甲乙船員についてもなお考えなければならぬが、従来通りでよいというお話があつたのであります。そういうふうに一線を画されることに非常に自信を持つておられます。が、この点につきましては、大臣の方が私より専門家でございますので、これ以上は申し上げません。ただ死亡率のことも申されましたが、実は満州の原野で働いたあの若い開拓団員、これなどの死亡率は非常に大きいのであります。死亡率のみをもつてして、どこで線を引くかということを判断することは、私はどうもはつきりしない点があるのじやないかと思います。私の先ほど質問の中に入れました意見をお聞きおきを願いたい。それはあの戦争の当時国家総動員法に準ずる勅令によつたものもあります。さらにまた戦争の最後の場面におきましては、閣議決定のみをもつて強力な召集を行つた、たとえば国民義勇軍、そういうものもあるのであります。そういうふうなすべて国家の権力でぴつぱり出された方々で、なくなつた人の遺族については、国は恩給法というがごときものを当然制定すべきである。それが戦争の最後の時分であつて、そのひまがなかつたのであるが、国としてはそういう措置をとるべきだつたのであるとどうしても思えるのであります。そういう点につきましての私の意見と、もう一つは、ただいまの御答弁の中にもございましたが、戦時災害はたくさんあります。これをどう処理するかということについては、大臣とされて非常に頭を悩まされると思います。私はこれを大まかに申しますると、人的の被害と物的の被害とにわけたいのであります。そうして人的の被害に重点を置いて、逐次国家補償を行つて行くべきであるというのが私の信念として持つておる点でございます。そういう点も十分に御勘案の上、先ほども御答弁の中に、将来の問題として十分考えるということでありましたが、その中にひとつこれらの問題もぶち込んでお考えを願いたいと思うのであります。  私が大臣にお尋ねいたしたいと思う点は、先ほども他の同僚諸君お話なつた点でもございまするが、こういうことでございます。病気でなくなつた人が多数おられます。そのうちで重大な過失によつて病気になつた人は、これはもちろん除かなければなりません。しかしながら病気の種類によつてこれを区わけして、ある病気でなくなつた人は公務死であるし、援護法の適用を受ける、さらに今回は恩給法の適用を受ける、こうなるのであります。しかるに不幸にして公務死と認定せられない他の病気でなくなつた遺族の方々、こういうような方々は今のところ恩典に浴しておらぬのでございます。これらの現在援護法の適用を受けておらない人も、あの戦争のさ中、あるいは戦争後において軍から戦死公報を受けております。またさらに靖国神社にも祭られておるのであります。私はここですなわち公務死の範囲を拡げられるだけ拡げていただきたいということを申し上げたいのであります。そうしてそれを拡げることによつて、それらの人々を恩給法の対象とすると同時に、それまでに至らなくとも、その努力の過程におかれましてはその援護法の対象として、これらの方々に対してもある程度の国家補償の道を開いていただきたいというのが私の意見でございます。この点につきましては一昨日厚生当局に御質問をいたしましたときも相当色のよい返事があつたのでございますが、大臣におかれましてもどういうふうにお考えになるか重ねて承りたいと思います。
  49. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 この問題も先ほど来のいろいろな問題と同じような問題でございまして、私のいわゆる心情としては、こういうものはいたしたいということでむしろ一ぱいであります。ただ従来は法律の建前として公務傷害ということになつておる。この公務という点の解釈がいろいろ問題があります。いわゆる非公務に対して同じく国家の援護の手をさしのべたらどうかというお話でありますが、非公務といえども内容としては公務と同じような、あるいはそれ以上の場合もあるのでありますから、この点はおそらく私の方の当局から御返答申し上げたと思いますが、今後十分検討いたしてみたい、かように考えます。
  50. 青柳一郎

    ○青柳委員 どうぞそうお願いいたしたいのであります。一般では公報をもらつて遺族さんとして社会に伍して行つておるのに、さて援護法ができてもその援護が受けられないということでは相ならぬのであつて、公務の範囲を広げるということを大臣のお言葉のようにぜひやつていただきたいと思います。  次に、援護の対象となりますものとして、戦犯処刑者などの遺族についてであります。もう大臣御存じのように、これらの戦犯者は戦争に際して国策に従つて行動して国に忠誠を尽し、たまたま執行しました公務のある事項が、不幸にして敵の手によつてまたは処置によつて生命を奪われた方々であります。これらの方々に対しましても、でき得れば恩給法の対象としたいという気持を持つております。恩給法の対象になり得ない場合には、せめてこの援護法の対象といたしたいのでございますが、この点につきまして大臣の御所見を承らしていただきたいと思います。
  51. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 この点は、前に私の方の次長から御答弁申し上げた通りであります。確定判決前あるいは判決後、これらのことによつて現在の援護法の対象になるかならぬかということに相なりますが、お尋ねの点はさような法律上の適用いかんというようなお尋ねにあらずして、今後さような問題に対して先ほど来のいろいろな問題と同じように、国家としてできるだけの考慮を払つたらどうかというお尋ねでありますから、今後その点に対しましては先般次長から申し上げました通りなおよく検討いたして善処いたします。
  52. 青柳一郎

    ○青柳委員 私は本日はいわゆる援護法の対象についての大きい問題を取上げて大臣にお尋ねしたのであります。他にも承りたい点が多々ありますが、同僚委員方々の御質問もありますので、他の点は他日に留保いたします。
  53. 小島徹三

    小島委員長 萩元たけ子君。
  54. 萩元たけ子

    ○萩元委員 私は、まず生活保護費の適用範囲が、昭和二十八年度一般会計歳出予算要求額によつて従来よりも広げられるのかどうか、もし広げられるといたしますならば、どの程度であるか、さらにまたこの範囲を拡大する御意思はおありになるかどうかという点について、厚生大臣に御質問申し上げたいと存じます。
  55. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 生活保護に対しましては、政府といたしましてもその後の物価の推移あるいはまた社会的のいろいろな条件を勘案いたしまして、できるだけこの基準の引上げもいたして、困窮者の声にこたえたいと思つてつております。今年度の予算におきましては、——こまかいことはまた局長からも申し上げますが、とりあえず基本的な考え方について申し上げますと、生活保護七千三百五十四円を八千円に、住宅補助七百三十円を千百円に、その他葬祭補助、教育扶助も上げまして、大体九千三百円内外ということに大体基準をいたしておるのであります。これはもとより多ければ多いほどよいのでありましようけれども、しかしこれはまた他との均衡等もあります。大体われわれが考えておりますのは、たとえば昭和二十三年の八月に第八次の改訂をいたしましたが、その際にいわゆるかような生活保護法を算定いたすときの一つの大きな考え方の基礎になりましたのが、いわゆるエンゲル係数でありまして、昭和二十三年八月の第八次の改訂をいたした際には、たしか八一%くらいになつておつたと思うのであります。それを本年の予算案で御審議を願つておりますようにいたしますと、大体六一%ちよつとくらいに相なります。これは漸次エンゲル係数を下げて行つて、この生活保護の万全を期したいと思つておるのであります。われわれの目標といたしまして、今東京都の一般の家庭のエンゲル係数は五二になつております。労働者はもつと多いのでありますが、一般家庭は五二くらいになつております。できるだけこれに近づけて行つて、そしてこの生活保護の万全を期したい、かように考えておる次第であります。
  56. 萩元たけ子

    ○萩元委員 現在厚生省当局の調査によりますと、当然生活保護の適用を受けなければならないいわゆる生活保護の基準以下の生活を余儀なくされておる国民は、全国で一千七十万と計上されておるそうでありますが、これに対しまして実際に保護を受けておる国民はわずか二百五十万人にすぎないというような状態でございます。これはしばしば政府当局が国民生活の向上であるとか、民生の安定であるとかいうようなことを国民の前に申し立てておりますが、この状態が依然として放置されておるという現状を見るとき、はたして国民生活の向上にどれだけの力が注がれているか、はなはだ疑問とせざるを得ないのでございます。そういう生活保護法を中心といたします日本の厚生三法は、先進諸国のそれと比べれば非常にすぐれたものであるといわれております。しかしながらそれは形式の上においてでございまして、内容から考えますれば、その貧弱さはまた世界無比というも過言ではないと申さねばなりません。この生活保護法の第一条には、すべての国民の最低限度の生活を保障するとありますが、年々打ち続く親子心中はおよそ三万を越え、その大半が生活苦からであるという現実の姿を何と見られるでございましようか。卑近な例をとりましても、去る六月二十三日岩手日報に発表されました母子五人心中のように、農業を経営して苦しいながらもどうにか生計を立てて来ましたものの、最近に至つて主人が神経痛で動けなくなり、十四歳の長女は脳膜炎をわずらつて白痴同様であり、昼間仕事に出るときも家の中に監禁しておかなければならない。その上長男は最近不良化し、貧困農家で、しかも女一人の細腕で主人から子供まで六人を養つて行かなければならないというこの悲惨な状態に、何らの援助もなくして、はたして何人がよく耐え得るで、ございましようか。この結果遂にこの主婦は子供五人を道づれに自殺したのでございますが、このような耳にするに忍びない幾多の事例は、ひとり岩手日報のみならず、各新聞の社会面をにぎわしておることは、今さら申し上げるまでもないと存じます。この不幸な人たちこそ生活保護法の適用から除外された、すなわち一千七十万人から二百五万人を除く残りの大多数の人人なのでございます。かかる悪世相の実態をよく御賢察いただきたい。この取残された人々に対して当局はいかなる責任感を持つておるでございましようか、それをお伺いいたします。
  57. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 今生活困窮者が一千数百万というお話でございましたが、生活保護法の対象になるという数、すなわち生活保護法の対象として、義務費として国がその保護をいたさなくちやいかぬという者の数字として一千数百万あるとは解釈いたしません。しかし現在のいわゆる社会生活も困難でありまして、そのボーダー・ラインにおられる方、あるいは一時的には、あるいは生活保護法の対象となるような、あるいは、ボーダー・ラインから落ちるような方も相当あるでありましよう。また生活困難な現実に政府としては目をおおうものではございません。しかし現在政府といたしましては、生活保護、いわゆる国庫扶助という面は相当重視して参つておるのであります。従つてただいま申し上げました通り、エンゲル係数におきましても漸次改善をいたして参つております。なおまた国家予算に占めます額におきましても相当の額になつております。今後ともこの基準の引上げ等において努力をいたしますことは先ほど申し上げた通りであります。  なおまたただいま仰せのこれの適用に関しまして、ほんとうに涙をもつてそういうふうな困窮者に対すべきだというようなお話はまつたく同感であります。その適用に対しましても、できるだけそういうような方々の心情を害しないように、いわゆる人権を尊重して、そしてほんとうに卑屈な考えで生活保護を受けないようにしたいということはかねて末端の機関にもよく申し入れております。従つてそれらの指導、訓練あるいは監督、これらに対して今社会福祉主事等、そういう末端にまでわれわれの考えを浸透さして、そしてただいまお話のように、福祉事務所に参つても冷たい一片の言葉で追い帰して、そのために一家心中が起つたというようなことがよく新聞に載りますが、さようなことのないようにぜひいたしたい、さように考えておるのであります。  なおただいま申し上げました生活保護の基準を引上げましたが、そのほかに、たとえば未亡人の方等において内職しておる、その内職の収入をもつて生活保護法の運用に際して収入と見るというようなこともよく言われるのでありまするが、それに対しましては、政府もかねて考えて、たとえば収支の認定におきましては、必要な経費はすべて控除する、あるいはまた現在六百円の範囲内においてカロリーの補助等も考えて行く、そういうふうな特別控除の点において弾力性を持たせてやつております。もちろんそれではなかなか希望に沿うものではございませんでしようけれども、政府としても十分御趣旨の点を体して今後ともその運用あるいは基準の引上げ、あるいは予算の計上ということに対して、最大の努力をいたしたいということを考えておる次第でございます。
  58. 萩元たけ子

    ○萩元委員 ただいま大臣のお話を承りまして、お心持よくわかりましたが、なお事例が、ございまして、ぜひともこれはこの委員会にかけまして大臣の御答弁をいただきたいと思つておるのでございます。実は生活扶助を受けております人で、内職をしておるたいへん気の毒な未亡人でありまして、それが病気になりまして、病弱な十八才になる子供がございますので、それが母が病気になりましたために一箇月かかつて袋張りの内職をいたしました。それが四百円ばかりになりましたところが、その内職をして得たお金は生活扶助から差引かれてしまつた、これは何とか救う法律をつくつていただけないものでございましようかと思いますが、いかがでございましよう。
  59. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 内職の収入に対しては、かねているく聞いておりまして、わずか数百円の内職の収入を、基準算定にあたつて控除するというか、収入に入れるということに対しては、いろいろ話を聞きますると実にごもつともな点であります。しかしやはり生活保護という法律の建前から見ますと、一応収支を見るということになります。しかしそれだけではいかにも情のないことになりますので、必要経費の控除とか、特別控除とか、そういう面で実際の事情を勘案してそういうふうな面において弾力性を持たして考えて行こう。問題は、それらの弾力性を第一線の現場の職員が、いかにそういう方々の心情を主に考えてやるかいかんという問題でありますから、それに対しましては、先ほども申し上げた通り、できるだけそういうふうな問題を起さないようによく注意をいたしまして、あたたかい目でもつて、あたたかい援護を与えますように、さらによく注意をいたします所存であります。
  60. 萩元たけ子

    ○萩元委員 なお社会福祉主事の活動状況、人員数、待遇がいかなる実情にございますか、詳細伺いたいと存じます。
  61. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 この点は、後ほど局長から御答弁を申し上げます。
  62. 萩元たけ子

    ○萩元委員 最後に、仕事の責任のみを持たして、恵まれないこれらの人たちに対する仕事をしておる人に、十分なる待遇、身分の保障を与えることも忘れてはならない大事なことであると存じます。このことは、すなわち貧しい人々の福祉に通ずるものであることを強く申し述べまして、私の質問を終わたいと存じます。
  63. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいまのお話は、十分体しまして遺憾なきを期したいと思つております。
  64. 小島徹三

    小島委員長 堤ツルヨ君
  65. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいま萩元委員から、生活保護法の問題について御質問がございましたので、私もまず生活保護法の問題に関係のあの質問を大臣にいたしたいと存ずるのでございます。  私たちは、昨年戦傷病者戦沒者遺族等援護法をつくりましたときに、現に遺族であつて生活保護法の適用を受けておる者が、これができると差引かれた場合に、やぶへびになつて、むしろ生活保護法にかかつておつた方がよかつた。遺族援護法がなまじつかできなかつた方がよかつたという世帯が出て来るが、それはどうするかということを、るる各党から質問申し上げたときに、政府におかれましては、法文の上には書けないけれども、何とかして収入とみなさないで、ことに未亡人、母子世帯については勘案してそういう悲劇の起らないように善処するから、ひとつ勘弁してくれというような答弁をなさつた。ところが、この最もはなはだしいのは、私の選出県の滋賀県であると言われておりますが、この遺族援護法という法律がきまりましたらすぐに、福祉事務所から、あなたのお宅には戦傷病者戦沒者遺族等援護法で年金が来るんだ、弔慰金が来るようになつたから、二箇月先から、いや今月からは金が来るはずだから、生活保護法を打切るから、その覚悟をしろという宣告をいたしまして、滋賀県においてはずいぶんたくさんの生活保護法の打切りをやつた。私の隣村のごときは、三人の子供をかかえて、肺病で血を吐いておる未亡人の生活保護法をぶんどつてしまつて、金は三月待てども四月待てども来ない。暗いかまどの下にたき物もなくて三人の子供が泣いておるというな状態であつた。こういう例は枚挙にいとまがないので、滋賀県下の遺族会長は、私にたくさんこれについての文書を寄せられた。そうして県庁たるや、新聞に発表して、県民の生活保護法の対象であつた者が二千数百世帯救われる。自力更生してまことにけつこうである、こう言つておる。ところが内情を調べてみると、その二千数百世帯は、政府のこの冷たいやり口をうらんでおるのでございまして、何とかしてこれを善処されたいとこの委員会において私はたびたび質問をいたしましたけれども、何ら御処置がない。むしろそれよりか、社会局の方から、できるだけしほれぼれという指令がいき、そうして末端の福祉事務所や県庁で一は、これを一つでもしぼつたことによつて成績が上るというような感がうかがわれる。でありますから、遺族にとりましては、半年も一年も待つても年金は来ないわ、保護法は打切られたわ、こんなものはつくつてくれなかつた方が堤さん増しだつたという声が非常に多いのであります。これは単に滋賀県のみにあらずして、生活保護法の要保護の対象者が減つたとしたならば、それは極力その金をしぼれということの政府の方針が徹底したからだと思うのでありますが、厚生大臣はそういう事実を御存じであるかどうか。  なお厚生大臣のおられるところで私は局長お尋ねいたしますが、遺族援護法の年金を受けたことによつて生活保護法を打切られたところの全国の遺族の数をひとつ詳細にここで御報告願いたい。こんなえげつない政府はありませんから、私は遺族を代表して、未亡人母子世帯を代表して、これは徹底的に納得の行くように聞かしてもらわなければならぬ。これは遺族援護法と生活保護法の関連事項でありますから、納得するまでひとつ御答弁願いたい。
  66. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 援護法ができたために、そういう遺族の方、未亡人の方にかえつて非常に逆の効果を来しておるというお話でありますが、私はさようには考えません。先ほど来いろいろ萩元先生からもお話がございましたが、やはり現在の生活保護法の建前は、——これは法律的な解釈やまたその立法の趣旨等は御存じの通りでありますから申し上げませんが、御承知通り、一応はやはり最後の収支を考えた後において、いわゆる一定の基準に達しない困窮者に対して国家扶助としてこれを救うということであります。ですから、その収入の性質が、いかにいたしましても、ほんとうを申しますれば、これも私の心情として申し上げれば、その父あるいはその夫が死んだことによつての弔慰金、年金等をもつて収入として、それでもつて生活保護を打切るということは心情として忍びませんけれども、現在の生活保護法の立法の趣旨また建前から申しますと、その収支、ここにその収入の性質いかんにかかわらず、一応押し切つて出さぬということは、これは法律の建前でありますから、いけなければこれは法律改正するということに持つて行かなければならないのであつて、現在の生活保護法を一応その建前として政府が行政いたしております間におきましては、その運用において、保護の許す範囲内においてできるだけあたたかい心でもつてやるという以外にはないと私は思うのであります。でありますから、ただいまの、援護法ができたからかえつてそういうものは非常に迷惑だという仰せは、私はいかがかと考えるのであつて、これはむしろ堤先生の失言ではないかと思うのであります。と申しますのは、現在この援護法によつて弔慰金は差上げておりますが、この弔慰金が遅れておるということに対しましてはまことに相済みませんので、昨年末以来私はこの弔慰金の支給に対しては全力をあげて参つております。ただ、弔慰金に関しましては絶対に引いておりませんから、これは遺族の方にとつて決してマイナスになつておるとは思つておりません。ただ、年金に関しましては、その月の収入に一応相なりまするので、これを差引きまするが、しかし現実において、たとえば家の修繕で困つておるとか、あるいは寝具がないとかいうような一時扶助に対しましては、政府はできるだけ考えておるのであります。仰せの通り、また萩元先生の御質問にございました通り社会福祉事務所において、それらの担当官が、いわゆる自分の業績を上げるために不必要な厳重な査定をするということに対しましては、これは私は厳重にさようなことのないように申しておるのでありまするから、先ほど来たびたび申し上げております通り、今後これらに対しては決してさようなことのないようにいたします。ただ、るる申し上げました通り運用に対しましてもしもさようなことがありますれば今後十分注意いたします。  なおその件数等についてのお尋ねでありますが、これは後ほどまた局長から申し上げます。生活保護法の適用に関しましては、ただいま申し上げました通り、一応法律の建前としてはさようでありまするので、その運用に対して今後最善の努力をするということをもつてお答えといたす次第であります。
  67. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣は生活保護法を受けておる人たちにやぶへびではないということが断言できるとおつしやいました。私は、今度の厚生大臣は吉田内閣には珍しいよい大臣でございますから、あまり大臣ににくまれ口を言いたくないのでございますけれども、逆に国会議員の認識不足と言われるならば、私も一言返さざるを得ないと思う。  そこで、局長は私にトータルを示さざるを得ないだろうと思います。現にあるのだから。もし局長がトータルを示して大臣に率直に真相を報告できないならば、私が即刻全国の市町村からこの数を集めてトータルをとつてみせる。実にけしからぬ、冷淡きわまる通達が各府県へ行つている。それを出さなかつたといつて大臣をごまかしておつたら、それは局長の責任です。私は生活保護法の建前は知つておりますし、生活保護法の盲点については、これを改正しなければならぬことは前々から唱えておりますから、幾多の欠陥があるけれども、大臣はそれを考えないで、そうして国会議員の認識不足だと言われるならば、私はここに数を求めてはつきりしなければならぬのでありまして、ひとつ局長の発言を求めたいと存じます。
  68. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 局長から御答弁を申し上げまする前に、誤解のないように申し上げたいと思いますが、私は、その運用に際しましては、もしもさようなことがありまするならば、今後十分戒心をいたしてさようなことがないようにいたしたいということを申し上げているのであつて、私の申し上げておりまするのは、援護法が制定されたことが遺族の方々にとつてマイナスであるということであれば、それはそうではなかろうということを申し上げにのであります。運用いかんについては今後十分戒心いたしたいと思つておりますから、誤解のないようにお願いいたします。
  69. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣は歴代おかわりになるのでありますから、安田社会局長より御答弁を願いたいと存じます。
  70. 安田巌

    ○安田政府委員 大臣からお答えがございましたので、つけ加えることはないかと思いまするが、年金が出ましたときに、全然差引かないようにということは、これは堤委員も御承知のようなぐあいで、今の法律及び生活保護法の考え方からいいますとできないわけなんでございます。たとえて申しますと、遺族年金は、二十七年度におきましてはいろいろなことでこれが遅れまして、一時に出たり二度に出たりいたすようなことがございましたけれども、そういうときに一万二千円なり二万四千円なりが入つて来るわけであります。そういう場合に、その人が従来五千円ならば五千円をもらつておりましたのを、やはり五千円生活保護費として出しまして、二万四千円、一万二千円というものをそのままにしておくということが、今の生活保護法から行くとぐあいが悪いわけであります。そこで、その場合にこれを全然打切つてしまうということでなくて、停止するという措置があると思うのであります。これはまた二箇月なり、三箇月なり、行かないうちに再び生活保護を受けるようなことになりますので、停止するというようなことがあると思います。そのときも、先ほど大臣からお話になりましたように、二万四千円入つたから二万四千円分をまるまるれ見るということではなくて、その方が未亡人である場合に、未亡人だからという点で生活費を少し多く見るとか、あるいはまた、その人が自分の家を持つてつて、長い間修理もできないような状況であつたから、修理をしたから金がいるじやないかというようなことで、一時に金のいるようなこともございましようが、そういうことはできるだけ一時扶助の基準で認めるようにと、こういうようなことを通達いたしておるわけであります。これは援護法ができるときにもいろいろ問題になつたことでございまして、そのときに議論がし尽されたのでございます。これはまた逆に、あとで軍人恩給のときにも当然問題が起きるのでありますが、先にそういう恩給や一時年金の制度がございまして、そこへもつてつて生活保護法という制度が新しくできたときのことを考えますと、その間の事情が御理解願えるのではないか、こういうふうに考えております。運営につきましては、いろいろ御注意がございましたが、ひとつ十分気をつけて参りたいと存じます。
  71. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 要するに局長は、自分がしぼらせた数をここで私の前へはつきりと示すことはできない。私が大臣に認識不足だと言われたことについて、私が大臣と対決する材料はお持ちにならないことは、今ののらりくらりした答弁でわかつている。しかし局長局長なりに、援護法との関連においてしつかりした数はあるはずであります。あるはずでありますから、時を改めて全国的な統計をもう一度出していただいて認識不足だと言われた大臣と私とを対決させてください。この問題はトータルがなさそうですから後日に残しますが、しかしこれは大事な問題でありますから、決して打切つたのではないのです。全遺族のために言わなければなりません。  次に大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、戦傷病者戦沒者遺族等援護法の実施について、援護庁を督励なさつて、非常にスピードをかけて片づけていらつしやる御実績は認めるのでございます。しかし二千三百戸ぐらいの小さな村に行きますと、平均二十ないし三十世帯の未処理遺族、未下付遺族があつて、非常に市町村長の悩みの種となつておるのであります。これらにつきましては、いつまでに片がつくおつもりですか。大体私たちは、三月三十一日をもつてお片づけになるであろうという見込みは立つておりましたけれども、ごく難問題なものは、四月を越しても残るかもしれないという御同情的な見方をいたしておりました。しかしもはや七月も半ばになんなんといたしますのに、まだ片のつかない世帯が相当たくさんありますので、最近ここ二、三日の全国的なトータルをお示し願いたいと同時に、これが一体いつ片がつくかということを、大臣が責任をもつてお答え願いたい。もし大臣が数について最近のトータルを御存じにならなければ、大臣の責任において、どの辺までを遺族のために約束するかということをひとつ……。
  72. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 弔慰金の裁定に際しましては、あるいは年金の支給の裁定にあたつては、かねて申し上げております通り、私といたしましては、全力を尽して参つたつもりでございます。数字は、ただいま私の手元に来た通りでありますが、それを申し上げますと、一応受付が百八十五万六千五百九十三件、これに対して裁定終了が百七十四万四千八百五十四件、そのうち通知済みが百七十二万四百三十二件であります。そのうちで、今御指摘のことは、実はわれわれも承知いたしおるのでありまして、各市町村等からいろいろお話がありますが、この申請をして、まだ査定が済まない、通知が済まないものの大部分は、たいていの場合、先ほど来いろいろお話がありました公務障害によるものであるかどうか、いわゆる査定の基準になります問題について——手続が遅れておるということにあらずして認定が困難なものが大部分残つております。従つてこれらの者に対しても、終戦時あるいは終戦直後におけるいろいろな事情から見て、公務障害の認定に際して法の許す範囲においてできるだけ有利に見るようにしたらどうか、これはここに次長がおりますから、私はうそを申しませんが、援護庁の当局にも、法の許す最大限度において、できるだけ認定を甘くしてやつてくれと申しております。しかし何分にも法は法でありますから、その認定に困難を来しておる。それが大部分残つておりまして、自然昨年の十二月以降、当初十数万件でありましたものが、現在百七十数万件になつておりますが、そのいわゆる申達に対する裁定通知の数の比率は、最近においてむしろさような困難な問題のみが残つておる関係上、仰せのようなことがございます。しかしこれはただいま申したような趣旨で、できるだけ早くするようにさせております。しかしこれが何月何日付でもつてどうこうするということは、単に手続上の遅延でないので、はつきり申し上げかねるのでありますが、何とかしてかような問題の解決を急ぐことは、かねて考えておりますし、せつかくのお話でもありますから、今後ともできるだけ急いで裁定をいたし、またその査定の内容については、ただいま申したような趣旨によつて、できるだけいたしたい、かように考えておる次第であります。
  73. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣のお手元から、戦傷病者戦沒者遺族等援護法の一部を改正する法律案というものが、私たちの手元に今出されて審議中でございます。それで昨年きりのものであるという昨年の援護法の実施については、二十八年度に始まつたものよりもおそく行くというようなことができることは、私は遺族にしてみれば非常にたまらないと思うのであります。従つて、認定困難であるとおつしやいますけれども、その認定困難も、どうやらさいふのひもを締めて、たとい一文でも出したくないから、しぼりたいという根性が災いをして、認定困難になつているものが相当あるのではないか。それは大臣のお手元においては、認定困難ということを次長並びに他の方々は御報告ありましようけれども、しかし少少困難なものでも、気を大きくして、戦争犠牲者をほんとうにできるだけ線の中に入れて、援護でなしに、保障をするという建前に立つてこれを包含する心持になられるならば、私はもう少し認定に困難なものの数は減るのではないかと思うのであります。従つて大臣の御認識は確かでありましようけれども、もう一度事務当局と打合せくださいましてできるだけ認定不可能なものの数を少くしていただきたいということをお願い申し上げたい。次にお尋ねいたしたいのは、この援護法を実施されまして、大臣のところへは、おそらくわれわれ国会議員のところへ来るよりも以上の陳情なり、嘆願なり、あるいは今度の一部改正にあたつてのいろいろな希望意見が来ておることと存じます。ほんとうに政府が誠意をもつて、これの陳情におこたえになり、真に遺族を救おうとなされるならば、ここに出されておる一部改正というものは、われわれの目から見れば、遺族の要求の何分の一にも満たないものであつて、もう少し誠意ある御検討がなぜなされなかつたかという疑問を持つものでございます。政府当局におかれましては、どれくらいのところまで掘り下げて、この遺族の陳情、請願、並びに希望意見などを御検討になつたかどうか、大臣とひざをまじえての御検討の結果、こういう結論が出たのでございましようか、そこのところを一応御事情をお聞かせ願いたいと思います。
  74. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 この遺族援護法の改正につきましては、今回軍人軍属について恩給法復活といいますか、これは法律的に非常にむずかしい言葉になりますが、恩給を復活することに相なりますので、それらと勘案いたしまして、許された範囲で、援護法の適用範囲あるいは内容の改善をはかつたような次第であります。この点は恩給との関連その他において十分に検討いたし、考慮いたしまして、この案をつくつた次第であります。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今日政府のお手元には、今回の援護法改正にあたつての陳情等がたくさん出されておるのでありまして、大臣は多分これにお月をお通しになられたと思います。これらの陳情というものは、相当やはり勘案してもらわなければならぬものがある。従つてわれわれ国会委員といたしましては、遺族を代弁するのでございますから、このような出された一部改正案というものは、同調することができないという結論が、一瞥しただけでも出て来るのであります。従つてできるならば修正をして、各党共同歩調をとりたいというような考えを、わが党あたりは持つております。恩給々々とこじつけないで、もう少し請願、陳情に即した一部改正に政府はお改めになつて国会と妥協なさるおつもりはないか、そこのところをちよつとお聞きいたしたい。
  76. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 政府といたしましては、いろいろな各種の陳情等を十分考慮し、なおまたその他恩給との関係をも考慮して一応案を出したので、今後国会審議によつてまたお話もあろうと思いますが、政府といたしましては、一応いろいろな点を考慮いたして、法律案提出いたした次第でありますから、ただいまのところ、ただちにこれを修正いたして再修正案を提出するということは、考えておりません。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは政府のお気持もわかりましたから、その点は私に異議はございますが、その程度にいたしておきます。  そこでもう一つお尋ねいたしたいのは、戦犯の釈放ということが非常に大きくモンテンルパなどでなされまして、全国民あげて非常によろこんでおるのでございますが、戦犯の中に、まことにお気の毒なことには、これはどなたからも発言されておりますが、第三国人がございます。日本があのむちやな戦争をやつたころ日本人であつて、日本軍あるいは日本政府の要求によつて、また国家総動員法などに基いて、軍人と同じように第一線で活躍した人々が、戦犯のゆえをもつて、今日第三国人が、日本人でないのに縛られておる。そこでこの人たちは、裁判をして釈放されることを求めて来たのであるが、刑期が満了するまではあなた方を許すことができないという結論になつて、第三国人でありながら日本人並の扱いをされていることになると。これは立場をかえて、私たちの子供が第三国人になつて、巣鴨の刑務所に日本人と同じように縛られているということを考えたときに、まことにこの若き青年を中心とするところの第三国人には同情を禁じ得ないのでございますが、もつと気の毒なのは、この留守家族などでございます。従つて生活保護法、遺族援護法の対象に、当然日本人並に刑が終るまでこの人たちが加えられるものとするならば、むずかしい文句を言わないでこの人たちの刑が終るまではこの方々の留守家族の生活保護法適用並びに留守家族援護法等の対象にすべきものであると存ずるのであります。血の出るような叫びの手紙が私たちのところへも来ておるのでありまして、この委員会が済みましたならば、私はこの手紙を大臣に見てもらうべくお手渡しをしようと思つておりますが、若い第三国の方々が絶望的な中から、せめて遺族だけでも、留守家族だけでもその対象にして生活保護法の適用にかけて救つてくれ、留守家族援護法の対象にしてくれということをやかましく言つて来ておられるのであります。大臣のお手元にも届いておると思いますが、これらの処置に関して、外務大臣なりまた政府部内において、閣議等においてお持ち出しになつたことがあるか、また持ち出されたならば、この方々が一方科せられる方は科せられながら、権利としてのこの保護は受けられないというような処置を閣議においてどう解決なさつて、今日まで放置なさつているのか、この辺を少し承りたいと思います。
  78. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 戦争中日本人として従軍をいたして、その後国籍を失つたために援護法等の対象にならない者に対する国家の施策が欠けておるというお話であります。これは私はまつたく同感だと思います。主としてこれは朝鮮人や台湾人でありましようと思います。この点は実ははなはだ遺憾でありまして、講和条約の発効とともにこれらの人々は日本の国籍を失つたのであります。従つて援護法は恩給法と同じように日本国籍を有するということが法の一つの大きな建前となつておりますので、援護法の対象には現在なつておりません。これは非常に遺憾であります。今これに対してどういうふうな話をしたかという話でありますが、私は閣議においてもこの問題を提起いたして話をいたしたのであります。しかし何分にも恩給法との関係その他もあつて、なおまた法律の建前、いろいろな点から、ただいまは援護法の対象になつておりませんが、たとえば朝鮮人につきましては、ただいま日韓会談等の関係もあり、今後はたとえば日韓会談の分科会等におきましてもこの問題を取上げて、何とか法律の建前は建前としてでも、少くとも日本の国籍を持つて日本国のためにいわゆる殉国された人々でありますから、何らか援護の方法をとりたい。しかしこれは今申したような事情からただいまは援護法の対象にいたしておりません。しかし今後はこれらに対して私も努力いたしたいつもりであります。  なおただいま留守家族援護法との関係お話がございましたが、内地に扶養家族を持つておる者に対しましては、ただいま留守家族援護法を法の建前を離れて適用いたしております。この点は申し添えておきます。
  79. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 まことにこの点はお気の毒で、処刑の方だけは一人前で、補償の方はしないというような矛盾はどう考えてみても私は人道に反する処置だと思うのであります。でありまするから、逆にわれわれの同族の日本民族が他国へ行つて、こういう処置を受けておつたときに、血肉をわけた、われわれがどういう叫びを上げるかということは、これはもうほんとうに常識でわかることでありまして、ひとつこの遺族援護法、留守家族援護法また生活保護法などの実施に当つて、ぜひ法律を離れて人道的な見地からこの中へ加えられるよう、血も涙もある厚生大臣の御処置をお願いいたしたいと存じます。  次に、青柳委員質問と重なるかもしれませんが、戦犯で処刑されたところの遺族の問題であります。処刑されないで判決を受けて服役中の留守家族は、留守家族の対象になつて保護されておるのに、早く殺されたがために、獄死をされたがために、国家の補償を留守家族が受けられない。しかもその英霊は靖国神社の中にさえも入れてもらえないというようなことを今日遺族は非常に嘆いておられます。去る日も各党の婦人代議士一人ずつという御指名で、この遺家族の会合に出席をいたしましてるる陳情を承つたのでございますが、留守家族の対象に今服役中の戦犯の留守家族の方々がなるならば、遺族援護法の改正された中に、当然戦犯処刑、獄死された方々の遺族が扱われるのは当然であると思います。これも第三国人の方々と同様に私は取扱つていただきたい問題だと思いますので、恐縮でございますがもう一度伺います。
  80. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 平和条約第十一条に書いてあります裁判によつて拘禁されている者に対してのものにあらずして、獄死をされた人々の家族に対するお尋ねが主であろうと思いますが、前の方のは、今仰せの通りこの未帰還者留守家族援護法の対象になつております。あとの方の問題は、先ほどの鮮台人に関する援護と同じようなものでありまして、われわれとしては、戦犯といえどもその遺家族には罪はないのでありますから、留守家族援護という建前から、戦犯なるがゆえに援護方法がうまく行つていないということは、国民の一人として忍びがたいのでありまして、鮮台人の問題あるいは戦犯遺家族の方々の問題は、閣議においても私は発言して参つたのであります。しかしいろいろな関係で解決しておりません。先ほどの問題と同様に努力いたしたいと思つております。
  81. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 A級戦犯の処刑された遺族の方々が、しばしば問題になるのであります。A級について私もただしましたところ、A級を含めてこれを扱つてくれということが不可能ならば、A級はしんぼうするからA級の指揮棒によつて動いたBC級をせめて救つてくれという悲しい叫びをあげておられます。でありますから、政府部内において閣議でたびたびこの問題をお出し願つて解決を願いたいということをさらにつけ加えておきたいと思います。  次に、先ほど遺族援護法の問題の中で質問を落しましたので一応お尋ねいたしますが、もらつた弔慰金の公債の換金問題であります。生活保護法の対象になつている人々をまず換金の対象にするということで予算が組まれておりますが、この換金は今日までどのくらい換金なさつて、現在手持金はないのか。私がそういう質問を申し上げますのはなぜかと申しますと、生活保護法にはかからないで、子供が三人、四人家におつて、生活保護法の適用者よりも下の賃金で、辛うじて日雇い人夫としてどぶをさらいながらない仕事にありつきながら戦争未亡人が働いている場合がございます。その場合に、生活保護法の対象者よりも働きながらなお低い最低の生活をするところの日雇い戦争未亡人に対して、当然公債の換金がなされなければならぬと思いますが、各地方においてこれを申込みますと、生活保護法の適用者が先であつて、日雇いにまでは手が及ばないといつて捨て置かれておるというのが現状であります。従つて残りの金があるなら、日雇い戦争未亡人にこれを適用していただきたいし、もしないなら政府は即刻金を捻出して日雇い人夫である戦争未亡人世帯にまず手を伸ばしてもらいたいと思いますので、この質問をするのでありますが、もう手持ちは一文もないのでございましようか。その点についてあなたの御所見を伺います。
  82. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 御承知通り弔慰金の換金につきましては、事実いろいろ困つておられますから、これに対して貸付金等のことも考えております。今たしか許される範囲で、——われわれは低利と言つておりますが、そういう方々には決して低利ではありませんので、考慮しておりますが、やはり問題は早く換金することであろうと思います。御承知昭和二十七年度は二十億ということで進んで参りました。今手元に幾ら残つておるかは、その数字がありませんから、それは適当の機会に局長から申し上げます。できるだけ早く換金するように申しておりますから、大体二十七年度の二十億は換金しておるのではないかと思いますが、確かな数字はいずれ御報告申し上げます。それから昭和二十八年度においては三十億ということを申しておるのでありますが、これはまだ予算化されておりませんから、今後の問題でありますが、しかしこれは急ぐ問題でもありますし、なおよく大蔵省とも折衝して、仰せの通りにできるだけ換金を急いでおります。
  83. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 公債換金の問題については、私たちは当時からブローカーのえじきになるということを言つて、しばしば政府に御忠告申し上げおるのです。ただいまの相場を聞いてごらんなさい。五万円の公債は今日三万六千円でたいがい抵当に入れておる。これは戦争未亡人、日雇い人夫ならずとも、生活保護法の適用者ならずとも、子供を学校に入れんがためにみな手離しておるのでございます。こういうことがはたして大臣の耳に入つておるかどうか知りません。かりに金が幾ら残つておるからどうするという数字的なことを大臣に承ろうとは思いませんが、三万六千円の相場が生れておるということをひとつはつきり御認識になつて、二十八年度は御処置願いたいということをお願い申し上げたいと存じます。  それからもう一つお尋ねいたしたいのは、優生保護法の問題でございますが、政府は人口問題は真剣な問題である。小さな土地の中に八千五百万がどんどん産みつ放しではいけないというので、経済政策の一環としても、近ごろ人口問題は真剣に考えられておりますが、この優生保護法も人口問題の中の一環になるわけでありますが、この優生保護法にのつとつて審議会をおつくりになり、それから人口問題調査研究所というものが厚生省の中にありますが、この審議会並びに研究所の中の費用について、真に優生保護法に沿つた指導をし、その目的を完遂し、人口問題を解決し、母体を保護するために、どのくらいの予算が見込んであつて、この予算がどういうふうに使われておるかということを大臣は御存じでございましようか。今非常に大きな問題が目の前にぶら下つて来ておりますので、私は数字については御多忙でありますから、御存じなかつたならばあえてお尋ねはしませんけれども、私の関知する限りでは、経営費にも、審議会のメンバーについて電車賃が払える程度のものしか組んでいない。人口問題研究所などについても、これも予算が非常に少くて、名前ばかりの審議会、名前ばかりの研究所で、優生保護につきましては何らなすところなく産みつ放し、農村にはベツサリー一つ徹底した指導ができないという現状でございますが、この人口問題に関係するところの優生保護法の実施にあたつて審議会並びに人口問題調査研究所について、まず大臣のお考えがございましたならば一応お聞かせ願つておきたい。
  84. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 受胎調節に関して人口問題審議会、あるいは人口問題調査研究所で、どれだけ予算を使つてつておるかということであますが、受胎調節に関しては、人口問題審議会には、今回約八十万円、これはごくわずかでありますが、一応これだけの予算を配付いたしております。研究所等においては人口問題を研究いたしておりますが、今仰せの受胎調節に対しまして、研究所と審議会の予算を使おうということは、これは一応間接の問題であつて、一応今回の予算案において受胎調節に関しては、二十七年に優生保護法の一部改正をいたしまして、いわゆる受胎調節に関する優生保護相談所を設ける、あるいは受胎調節の指導員を置く、そういうことで、三千九百万円のものを計上しております。優生保護相談所は七百二十箇所の保健所に附置するということでやつておりまして、人口問題研究所あるいは人口問題審議会の予算をもつてただちに受胎調節をやつておると考えることは間違いであろうと思います。ただ受胎調節に関する予算が少いから、今後これに対して重点的に考えろというお説でありますならば、政府もそれに対して努力いたしたいと思います。
  85. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この受胎調節の問題でございますが、御承知のように助産婦とか保健婦の方々が、このごろでは講習を受けて、農村などに行つてこまかく指導をしておいでになるのでありますが、これの指導をなさる基本になるデータというようなものが、研究の費用がないためにできておらなくて、基盤になるものがなくて、末端でこれが目的を達しておらないというのであります。従つて私はこの研究所、審議会の費用についてどのくらいあるならば徹底的にデータを集めて、この調査をして、真に受胎調節の目的を達するように末端まで手が届くかということを御研究願いたいと思います。  その次に、母子福祉問題でございますが、母子福祉資金の貸付は、はなはだ残念ながら解散のために予算が流れまして、暫定予算になり、今日まではこの臨時的な御処置がなされている三思うのでありますが、四、五、六と全国的に母子福祉資金貸付に対して打つて来られた大臣の方策のあらましのところを伺いたいと思います。
  86. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 その前に最初にお尋ねではなかつたと思いますが、申し上げたいと思うのは、受胎調節に関して現地の指導がなかなか思うように行かぬ、たとえば指導を受けようと思つてもなかなかできないというお話でありましたが、御参考までに申し上げますと、昨年の七月から本年四月までに約二万三千五百人講習を受けておりまして、そのうち七千五百人が指導員としての指定を受けておりますけれども、今後とも努力いたしたいと思います。  第二の点の母子福祉につきましては、大体四、五、六、七、これを含めて二億四千九百万円、約二億五千万円暫定予算に貸付資金に必要な予算を計上いたしております、これは御承知通りであります。なお本年度予算においては、予算総額は七億七千四百万円で、実際の貸付は六億九千万円か何かでありますが、そのうちこれはできるだけ早く各府県で実施をしてもらいたいと思いまして、各府県に申しまして、十六県は現にこれの割当て等をいたして三千五百五十万円、あとの十二県が今数目中にきまると思うのですが、これが二千七百六十万円、合計六千三百十万円というものが二十八県に対しましては決定をいたして指令を出しております。今後とも努力いたしまして、できるだけ早く——予算が成立することがまず第一でありますが、暫定予算で二億五千万円といつておりますから、これができるだけ早く府県を通じて母子家庭に渡りますよう府県を督励いたして、今後とも善処いたしたいと考えております。
  87. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣は事情を御存じだろうと思いますけれども、府県財政は赤字でありますので、母子福祉資金貸付に関する法律案ができましても、中央で予定されておつたくらいな、見当をつけておられたくらいな額の金を府県財政におきましてはよう組まない。半額が府県、半額が国となつておりますので、たとえば私の滋賀県のごときにおきましては、中央で一千万円くらい予定をしておられるのに知事が五百万円しか組まない。従つて残り五百万円はよそに流れてしまうというような始末なんです。それでは末端において希望者はないかと申しますと、私の県などにおきましては、市町村等いろいろありますが、十五人申し込んでやつと一人がその対象にしてもらえるというような始末でございます。これはやはり法の建前をかえて、母子福祉資金等の貸付をやるのならば、全額国庫でやらなければならないということ、また同時に十五人に一人しかその対象にならないということは——できたらけつこうだけれども、あつてみれば蜃気楼のごとく消えてなくなる法律というような感じがいたしまして、まことに私たち申訳なく思つているのでありますが、私たちがいかほど組みかえ案の中に要求いたしましても、母子福祉対策費というものは現内閣としてどうしてもこれが増額されないような始末で、はなはだ残念でありますが、所管大臣としてはひとつこれが十五分の一ないし十二分の一であるという現状にかんがみて、二十九年度のごときは、何とかこれを全額国庫負担に、または予算増額の点について、具体的にどういうふうにしようと、何か手をお考えになつていてくださるかどうか。まあ法律がないよりはましだから、去年並というようなことを考えておられるとするならば、まことに困つたことでもあるし、しかも時々刻々子供が大きくなつて行きますし、人間は生き物ですから、職にありつかなければ食つて行けないのですから、未亡人、母子世帯のために早く手を打たれることを望むのでありますが、何か賢明なる策をお持ちになつておいででしようか、その点お尋ねいたします。
  88. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 いろいろお話がございました。府県の財政が困難なために、どうしてもこれは全額国庫負担においてやるべきだというお話でありますが、地方の事情はよく御承知通り、この法律が出ますまでに、各府県においてやつておりますところもあり、またこの法律が出ると同時に、いろいろな点において府県が率先して、自分の負担でやつている向きも相当ありますが、府県によつてはいろいろ財政状態が違いますから、いろいろありましようけれども、しかしここで全部国庫負担でやるということはどうであろうか。やはり現在の地方事情との関係からいいましても、府県が半分ぐらい持つて、そうしてやるということによつて、たとえば国家が今回は七億ほどでありますが、そうすれば十五億ほどの規模でもつてやれることになるから、府県も努力して、両々相まつてやることがいいと思つております。  なお今後の予算に対して考えよというお話でございますが、お言葉を返すようではなはだ恐縮でありますけれども、母子福祉資金貸付法というのは、前々国会においてできましたので、これからこの法律内容運営もよく考えて行かなくてはいかぬのでありますから、われわれとしても予算の拡充に対しては努力いたしますが、同時にまたこういうような運営にも相当習熟をし、またいろいろなことも考慮すべき点もありますから、両々相まつて行きたい。ただ予算をふやすだけでもいかぬのであります。もちろんわれわれといたしては、現在のいろいろな社会福祉の面の一つの重要な事案として、この母子家庭を取上げて参つたのであります。さようにして、皆さんの力によつてこの法律ができましたが、これは超党派的にやりたいと思いますから、どの内閣ででき、どの内閣でできないということは問題じやないと思いますので、今後極力努力いたしたいと思つております。
  89. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これで終りますが、最後に私は重要な問題でございますので、大臣の現在の御所感を承つておきたいのであります。この間から保険の法案をたくさん審議いたして来ましたが、どの政党からも、前国会を通じ、今国会を通じて、現行保険制度というものに対する批判がはなはだしいのでございます。国民健康保険がありますけれども、これはまだ実施していない町村が半分くらいあつて、残る半分は不安な市町村でありまして、それを補うのに健康保険がある。しかしこれも組織労働者のみでございます。それから官公吏は共済組合、それから海上の人は船員保険、それから今度日雇労働者、このように一部の人を対象にしててんでんばらばらの保険制度ができまして、何かばんそうこうの継ぎはぎみたいな、しかもどの保険制度の恩典にも浴せざる国民が、三千数百万もまだ残るのであります。国民健康保険も赤字であるならば、健康保険についても国庫の補助をやかまし言われ、いろいろな点を勘案しますときに、現在の日本の保険制度くらい私はばかな制度はないと思うのであります。一部の者を対象として、その場限りのものを少しずつ立てて参りましたから、非常に厚薄があつて不完全なものでありますげ社会保障制度というものは、この吉田内閣の手では実現しませんけれども、やはり社会保障制度の根幹となるべきものは、生の体が一旦病に倒れたときに、国家の保障が一番国民には大事なのでありまして、私はてんぐばらばらの保険制度をこの際厚生省は捨ててしまつて、八千五百万の全国民を対象にして、国民健康保険一本にして、これを義務制にし、そして国庫が負担するところまで打出されなければいけないと思うのでありますが、ここまで画期的な手を打とうとお考えになるような御意思が大臣の手元にあるかどうか、その点をひとつ承りたいと思います。
  90. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 社会保険の統合に関しては、従来委員会あるいは本会議等においてもいろいろ御質問もありまして、お答えいたして参りましたが、現にたとえば医療社会保険の面においてもいろいろあります。あるいはその他の社会保険の面においてもいろいろあります。なおまた現場の窓口等も重複をいたしており、また被保険者から見ましても、いろいろ社会保険が競合いたしておる。そこにむだもあり、またいろいろな点において問題がありますることは、よく承知いたしておりますので、社会保険の統合に対しましては、従来もそうでありまするし、今後もよくこれを検討いたして、最も負担を少くして、しかも効果の多い社会保険の樹立に対しては努力いたすつもりでありますが、今ただちに国民健康保険をもつて社会保険の、いわゆる唯一の保険制度として強制制度をしくということ持しましては一いろいろな問題がありますから、そう簡単に参らぬのでありまして、ただいまその考えを持つているかどうか、イエス、ノーを言えというお尋ねでありましたら、今ただちにさような考えを持つておりません。今後社会保険の統合についてはよく検討いたしまして、最もよき形、また被保険者等に負担の少い形において善処したいということのみをお答えいたしたいと思うのであります。
  91. 小島徹三

    小島委員長 残余の質疑は次会に譲り、本日はこれにて散会いたします。  明日は午前十時より開会いたします。     午後一時十七分散会