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1953-07-07 第16回国会 衆議院 厚生委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月七日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 古屋 菊男君    理事 長谷川 保君 理事 堤 ツルヨ君    理事 中川 俊思君       越智  茂君    加藤鐐五郎君       降旗 徳弥君    中野 四郎君       山下 春江君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君       亘  四郎君  出席政府委員         厚生政務次官  中山 マサ君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         議     員 八木 一男君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 七月六日  委員須磨彌吉郎君辞任につき、その補欠として  中野四郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月六日  未帰還者留守家族援護強化に関する請願(田  中彰治紹介)(第二七六七号)  理容師美容師法存続に関する請願今村忠助君  紹介)(第二七七〇号)  理容師美容師法の一部改正に関する請願(野田  卯一君紹介)(第二七七一号)  国立らい療養所職員の増員並びに待遇改善に関  する請願中村高一君紹介)(第二七七二号)  遺家族援護に関する請願(楯兼次郎君紹介)(  第二七七五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  戦傷病者戦沒者遺族等援護法の一部を改正する  法律案内閣提出第一一八号)  未帰還者留守家族等援護法案内閣提出第一一  九号)  社会保険審査官及び社会保険審査会法案内閣  提出第一二七号)  日雇労働者健康保険法案八木一男君外十名提  出、衆法第六号)  日雇労働者健康保険法案内閣提出第六〇号)     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず日雇労働者健康保険法案内閣提出第六〇号)を議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。中山政務次官。     —————————————
  3. 中山マサ

    中山政府委員 ただいま上程いたしました日雇労働者健康保険法案につきまして、その提案理由説明申し上げます。  健康保険制度は広く一般被用者対象としているものでありまして、被用者全部に本制度適用することが望ましいのは、申すまでもないところであります。政府といたしましては、昨年以来鋭意調査検討を重ねて参りました結果、別途提案いたしております健康保険法の一部改正法律案により、その適用範囲を拡張いたしますとともに、各方面の要望にこたえ、ここに日雇労働者健康保険法案提案申し上げた次第であります。本制度健康保険法と別個の制度といたしましたのは、日雇い労働者就労実態に照らし、健康保険制度と同一の運営をはかることが困難であると考えたからであります。  次に法案の要点について申し上げますと、第一に、適用対象といたしましては、まず健康保険適用事業所に使用される日雇い労働者を被保険者として健雇保険との制度的均衡をはかるとともに、失業対策事業または公共事業就労する者を被保険者として日雇い労働者生活実態に即するよう配慮いたしました。  第二に、保険給付につきましては、保険料負担の点を考慮いたしまして被保険者及び被扶養者に対し、健康保険に準じて療養給付及び家族療養費支給することとし、その期間は三ヶ月といたしました。なお、療養給付または家族療養費を初めて受けようとする日の属する月の前二箇月間に通算して二十八日分以上の保険料が納付されていることを受給要件として、日雇い労働者就労実態日雇い労働者に対する失業保険との調整を考慮することといたしております。  第三に、保険料につきましては、日雇い労働者に対する失業保険の方法を取入れ、一級と二級とに区分して、事業主に印紙をもつて納付させることといたしたのであります。  以上、法律案の概要について説明申し上げましたが、本制度はとりあえず健康保険の最も主体をなす療養給付及び家族療養費内容として制度の発足を企図いたしたわけでありまして、なお、将来諸種の要件の具備をまつて、漸次その充実をはかりたいと存ずる次第であります。  以上をもつて提案理由説明申し上げましたが、何とぞ御審議の上すみやかに御決定あらんことを切望いたします。
  4. 小島徹三

    小島委員長 本案質疑につきましては、次会以後に譲ることといたします。
  5. 小島徹三

    小島委員長 次に日雇労働者健康保険法案八木一男君外十名提出)を議題とし、審査に入ります。  まず提案者より提案理由説明を聴取いたしたいと存じます。八木一男君。     —————————————
  6. 八木一男

    八木一男委員 両社会党共同提出になります日雇労働者健康保険法案提案理由を御説明申し上げます。  配付申し上げました法案の末尾についております理由書をまず朗読いたします。  日雇労働者である被保険者業務外の事由による疾病負傷死亡または分娩及び被保険者によつて生計を維持する被扶養者疾病負傷死亡またに分娩に関し、政府保険給付を行い、あわせて被保険者及び被扶養者の福祉に必要な施設をし、もつてその生活の安定に寄与する必要がある。これが、この法案提出する理由である。  この理由によつて本案提出したわけでありまするが、これより少しくその内容を御説明申し上げたいと存じます。  社会保障制度確立が要望されておる今日において、まだその全般について非常に不十分であります点は、お互いに遺憾とするところでございます。その中におきまして、やや実効を収めておりますものは、健康保険がその一番おもなものであろうと私ども考えておるわけでございまするが、この健康保険法が、特に賃金の少い、就労状態の不安定であります日雇い労働者には適用になつておらないという点、非常に不均衡であり、また当該労働者諸君には非常に気の毒な状態にございます。ここにこの日雇労働者健康保険法案によりまして、この人たちに対して健康保険恩典に浴していただきたいという意味において、この法案提出したわけであります。元来政府案として同名の法律案提出されておりますので、それとの違いを一言御説明申し上げまして、趣旨内容を明らかにさせていただきたいと思うわけであります。  まず第一に政府案との大きな違いの一点は適用範囲であります。政府案の場合には、健康保険法に準じまして職種制限がたくさんあるわけでありますが、この社会党案にありましては農林牧畜水産業を除いてその他すべての職種適用するので、職種の点において大いに恩典がはかられているわけであります。次に農林牧畜水産業でもその事業主が法人である場合はこれを適用するということになつておりますので、その職種の方もほとんどこの適用範囲に入るわけであります。  第二点といたしましては、事業場の大きさの制限の問題でございます。政府案は現在の健康保険法の例にのつとりまして、常雇い五名以上の事業所に雇用される日雇い労働者適用することになつておりますが、本案におきましては日雇い労働者もあわせて五名以上の事業所適用するということになつておりますので、その大きさのわくにおきまして適用者範囲が拡大されるわけであります。  次にもう一つの大きな特長は、認定による被保険者というものがありまして、現在の政府案によるような範囲のときに、また本案による先ほど申し上げたまでの範囲に入らない人でも、その適用を受けたいという人が労働組合を結成して、厚生大臣の認前を受けたときに適用を受けられるという点が内容に入つておりまして、この意味で大いに適用範囲が拡大しているわけであります。例を申し上げますと、付添看護婦というようなものでありまして、この方々健康保険を大いに必要とするわけでありますが、その雇用状態患者に雇用されるということになりますので、患者が五名以上の看護婦を雇うということはめつたにありませんから、この人々はその認定による被保険者という項目を認めませんと全然適用範囲に入らないわけでありますが、それを救うためにこの点をこの中に入れてあるわけでますあす。この意味におきまして、政府案では該当者五十万人と想像されておりますが、本案におきましては約百万の被保険者があると推定されているわけであります。  第二の違いといたしましてはこの給付内容の違いでございます。政府案療養給付三箇月、また家族療養の三箇月、それのみでありまして、以下健康保険法にございますいろいろの給付、たとえば傷病手当金支給埋葬料または埋葬費支給分娩費及び出産手当金支給保育手当金支給、産院への収容、家族埋葬料支給配遇者分娩費支給配遇者保育手当金支給等が全然給付内容にないわけでございます。本案はこの全部を含んでおりまして、療養給付あるいは療養費支給政府案は三割で打切る内容を持つておりますのに、本案は六箇月になつている点がまた違いの一つでございます。  給付内容につきまして政府案との大きな違いのもう一つ給付要件でございます。政府案事故発生前の一箇月間にわたりまして二十八日間の保険料納入要件といたしておりますが、本案におきましては二箇月間に二十四日以上の保険料納入あるいは六箇月間に六十日分母上の保険料納入、そのいずれか一つを満たすことによつて保険給付を受けられるというような要件になつているわけでございます。これはどのような考えで入れたかと申しますと、現在日雇い労働者就労平均は、都会におきましては二十日を越えるところはございますが、地方に行きましては非常に少くて、平均十六、七日、そういう状態にございますために、個人的のちよつとした事故発生で、政府案に盛られております二月、二十八日、すなわち一月、十四日以下に落ちる危険性が多分にございまして、保険料を納めておきながら保険事故発生したときに保険給付を受けられないというような、非常に気の毒な状態に陥る危険性があるわけでございます。これを救うために、保険給付要件としてのこの日数をぐつと下げる必要があるわけでございまするが、これをもし下げ過ぎました場合には、また反対に保険を受けるために、日雇い労働者になるというような逆選択のおそれがございまするので、徹底的に下げるわけにも参りません。その結果といたしまして二月間に二十四日が最も適当なものであるとわれわれは考え、また六箇月間という長期間この労働者立場にあつた場合には逆選択のおそれがありませんので、六箇月間の場合には一月平均十日、すなわち六十日以上で逆選択のおそれなしと認めて、この二つの要件給付要件といたしたわけでございます。  第四の大きな政府案との相違は、国庫負担でございます。この日雇労働者健康保険法政府提出の案が、内容が悪くてほとんど保険実態をなしておらないということは、社会保障制度審議会においてももう認めておるところでございます。どうしてそのような内容になるかという理由は御承知の通りでございますが、現在の日雇い労働者保険料の多額な納入が困難であるという状態から参つております。大体におきまして日雇い労働者のいろいろの組織、たとえば安定所関係労働者組織、あるいは何々組といわれるような土建の組織、あるいはまた看護婦労働組合組織等意見等を拝聴しますと、一日に八円以上の保険料納入は不可能であるという結論に達しております。でありますので、保険料が少い以上は、保険給付が少くなるのは当然のことでございまして、それで政府案はこのように内容が悪くなつているわけでございます。これを救う道としてはただ一つ、この国庫負担を非常に大きくいたしまして、保険料納入の能力のない人々のこの状態を救つてあげるよりほかはないわけでございます。それで私ども日雇い労働者の多くの方々生活保護法を受ける一歩手前にあるという観点におきまして、生活保護法適用を受けている人は、医療給付によりまして自分の負担なしに医療給付を受けておられるという実情から考えまして、少くとも二分の一の国庫負担は当然であるという見地におきましてこの法案を組み立てたわけでございます。  その結果といたしまして国庫負担は二分の一ということになつておりますので、それから当然出て来る結果といたしまして、保険給付政府案に比しまして非常に飛躍的によくなつているわけでございます。これでも一般健康保険法比較いたしましてその内容が低下いたしておりますのは、提案者の一人といたしまして非常に遺憾なのでございまするが、保険であります以上二分の一以上の国庫負担ということは通例として考えられませんし、また被保険者にあたるべき人たち生活状態から八円以上の保険料は不可能でございますので、現在の状態におきましてはこの案が最もいい内容を含んでおるものと私どもは確信いたしておるわけでございます。  その他この法案に関連いたしまして、この法案と歩調をそろえるために健康保険法におきましても改正が必要でございますので、本案のあとの条文におきまして、健康保険法改正もこれに合わせるように中に組み入れられておるわけでございます。施行期日は本年の十月一日、従つて保険給付を受けるのは十二月の一日からということになるわけでございます。約百万の該当者といたしまして国庫負担に要する金額は三十八億四千万円、保険給付についてこの金額でございます。別に事務費といたしまして現在政府提出している予算で足りると考えておるわけでございます。でございますので、恒常的な年におきましては事務費負担三億円、そうして給付内容が三十八億四千万円で、合計四十一億四千万円を要します。本年度におきましては経過期間がございますので、十二月一日から適用するといたしまして、本給付に要する金額はその三十八億四千万円の三分一で足りるわけでございます。  以上で大体の御説明を終るわけでございますが、この健康保険法案が通ることによりまして、全国百万の日雇い労働者が非常に救われるということは委員各位のもうすでに御洞察の通りだと存ずるわけでございます。この日雇い労働者諸君がもし一旦病気になりましたときには、ほかに恒産が全然なく、またほかの救済の措置も非常に不十分でございますので、一家心中の一歩手前にまで追い込まれておるわけでございまして、本案委員各位の御審議によりまして通りました場合には、百万の人々の相当の部分が救われて現実に命が助かるというような状態がありますことをどうかよくお考えいただきまして、政府案との比較におきまして、政府が一応この法案提出した勇気は賞讃に足るものでございますが、その内容は実に羊頭を掲げて狗肉を売るというようなたぐいでございますので、どうかよくお御洞察いただきまして、ただいま御説明申し上げております両社会党提出日雇労働者健康保険法案に対しまして、御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げる次第であります。
  7. 小島徹三

    小島委員長 以上で本法案提案理由説明は終了いたしました。本法案質疑については次会に譲ることといたします。
  8. 小島徹三

    小島委員長 次に社会保険審査官及び社会保険審査会法案議題といたしまして、前会に引続き質疑を行うことといたします。降旗徳弥君。
  9. 降旗徳弥

    降旗委員 委員の手元に配付になりました資料の中から一、二質問を試みたいと思います。  資料の中に社会保険審査会開催数及び受理処理件数調という一覧表がありますが、これによりますと、二十七年五月以降この未処理件数というものは非常に急速に多数になつております。この点について何か特別の事情がありましたかどうか御説明を願いたいと思います。
  10. 久下勝次

    久下政府委員 最近におきまして未処理件数比較的ふえておりますが、特別な事情はありません。ただごらんをいただいておりますように、審査請求件数が逐年、逐月増加いたしておりますので、その比較において未処理件数が増加しているものと解釈いたし場ております。もつとも多少ときにより、月によりまして委員方々の御都合等がありまして、ある月は全然審査会開催されておらないというような月も最近ございますので、そういう点も影響はいたしておると思いますが、根本的に受理件数が逐次増加しておるということが大きな原因だと解釈しておるのであります。
  11. 降旗徳弥

    降旗委員 この一覧表によりますと、審査会開催のまつたくなかつた月は十二箇月となつており、この一覧表の三十六箇月の三分の一を占めておりまするが、これはどういわけでございましようか。
  12. 久下勝次

    久下政府委員 これは現在の審査会構成とその運営実情を申し上げておく必要があると思うのでありますが、御案内の通り現在の審査会構成は、非常勤委員をもつて構成されております。さらにその内訳は、私どもの所管をしておる各保険ごと労使中立各二名ずつの委員構成をしておるわけでございます。それで現在のやり方は、各種保険ごとに各地方から各種請求が出ておるわけでございますが、受理審査をいたします場合には、順次申請の期日の順に審理を進めるというような扱いをしておるのでございます。また一方におきまして、審理をいたします場合には、法律の規定もございますように、各保険について少くとも一名の労使中立代表者委員が出ませんと審理をしないというふうなやり方をしておるのでございます。その関係上、実は具体的に審査会を開こうと思いましても、いろいろ本務を持つておられる方が多いものでございますから、中に中立委員の方あるいは事業主委員の方で支障が起る方があるのでありまして、せつかく予定いたしました日に開催ができずに、またあらためて各委員の御都合伺つて会議の日をきめるというようなやり方をしておりますために、実際にはこういう開催をしておらない月が相当多いのでございますが、開催をいたしますための各委員との連絡は常時間断なくやつておると申しても過言でないくらいにやつておるのであります。
  13. 降旗徳弥

    降旗委員 それで、ただいまの御説明にありますような隘路を打開するために、今度の改正案が出たと思うのでありますが、それによりますと、今度は非常勤常勤になるようになつております。そうなつた場合に、これらの表の上にどういう変化が起りますか、その点を御説明願いたいと思います。
  14. 久下勝次

    久下政府委員 ただいまお話の通りでございまして、そういうような実情でございましたので、常勤審査委員を設けまして審理に当り裁決をしていただくということにしたわけでございます。その結果期待をされますことは、三人の審委査員が毎日勤めておりまして、そして審理あるいは裁決をいたします結果、一面におきましては申すまでもなく審理裁決能率が上るということが期待できます。もう一面におきましては、裁判所のように審査委員それ自身が事件内容責任をもつて審理をし、責任をもつて証人喚問鑑定人の尋問あるいは証拠調べその他をいたすことができまして、文字通り審査委員責任においてその自由心証のもとに公正な判断がされると期待いたすのであります。私どもとしては専任審査委員を置くことによつて、今申上げた能率の点のみならず、審査内容についても十分徹底した公正な判断が行われるものと期待をいたしておる次第でございます。
  15. 降旗徳弥

    降旗委員 ただいまの御説明によつて大体了承いたしましたが、しかしながら法を改正する以上は、この未処理件数百五十一件をいつまでも未処理にしておいたのでは、法の改正の意義をなさないと思う。従つてこれらの未処理件数は、かくのごとき法改正の結果によつて可及的すみやかに処理されるものと期待するのでありますが、その点について伺いたいのであります。
  16. 久下勝次

    久下政府委員 仰せの通りでありまして、私どもといたしましても、常勤審査委員が置かれることによつて処理件数が漸次解消して参ることと思つております。
  17. 柳田秀一

    柳田委員 昨日も杉山委員から御指摘があつたのでありますが、本改正案で、社会保障制度審議会長有田八郎氏及び社会保険審議会長末高信氏両方から出ております答申案は、いずれも三者構成をうたつてあるわけでありますが、その答申案の精神は——おそらく御答弁では、審査委員のほかに利益代表者が二名入るということでお答えになると思うのでありますが、わざわざこの法には、審査会は三者構成を破つて、三名を公益のみにおいておやりになるという特に強い線を出されました。その根本的な考え方はどういうものですか。
  18. 久下勝次

    久下政府委員 根本的な考え方は、降旗先生のお尋ねにお答えしたことと重複いたすのでありますが、私どもといたしましては、昨年来約一年くらい後でないと裁決が行われないという実情になつて参つたのでございます。これは制度を現行のままといたしましてさような結果でございますが、今度の改正案にも現われておりますように、新たに標準報酬に関しての不服がありました場合にも、審査官及び審査会審査請求することができることにいたしてございます。なお、私どもとしては大体そうしたいと思つて考えておるのでございますが、被保険者資格につきましては、現在その資格発生した時日等につきまして、その者としては不服がありましても……。
  19. 柳田秀一

    柳田委員 中途ですが、公益代表のみにして三者構成をやめられた根本趣旨はどういうところにあるかということを尋ねておるのです。
  20. 久下勝次

    久下政府委員 そのことを御説明申し上げようと思いましてやつたことです。そういうふうに新しい審査事項も漸次ふえて参りますと、現在でもかような状態でございますが、ますます審査請求件数もふえて参ると思います。そういたしますと、非常勤で他に本務を持つておられる方々委員をお願いしてやるということは、実際問題として能率の点からいつて適当でない、十分に被保険者利益を早く保護して差上げるという本来の目的に沿わない、こう考え常勤委員を置くという考え方にいたしたわけでございます。
  21. 柳田秀一

    柳田委員 私は局長はもうちよつと頭がよいかと思つた。今の御答弁は、非常勤委員では審査が非常に遅れて、現在降旗委員の御指摘のように、この表にありますように、百五十一件からの未処理ができておる、そういうのをスピーデイに処理せんがために常勤委員をつくつた、こういう意味の御答弁です。非常勤委員常勤委員にするのはどういう理由かということならば今のあなたの御答弁は満点だと思う。しかし私の質問しているのはそうじやない。公益代表のみにして三者構成を破つた理由はどこにあるかということを聞いておる。今まで非常勤委員であるときには開催されぬ月もあつた従つて百五十一件から審理がたまつておる、そういうのをもつと早く処理して事業主及び被保険者利益を擁護せんとするために、こういう常勤委員会制度にしてこれをどんどん処理する、この趣旨はわれわれは了承する、この改正案が一歩前進した、その点は認めるが、三者構成を破つて公益だけでこれを構成された、その理由はどこにあるかということを間うておるのです。
  22. 久下勝次

    久下政府委員 専任審査官を置きますことが、他の被保険者なり事業主利益は全然代表しないものであるというふうにお考えになると、さような結論になろうかと思いますが、私どもは必ずしもそうではないと思つておるのであります。むしろ全体の立場に立つて公正に判断のできる人が、国会の承認によつて選ばれるのでありますから、そういう点から申しまして、従来の考え方労資双方代表の外にある中立委員だけに今度の審査委員として仕事をしてもらうというふうに考えますと、そういうことになろうかと思いますが、その点は多少デリケートな違いがあると思います。なお同時に、これはお答えにならぬかもしれませんけれども利益代表委員というものが置かれまして、実質的には従来の労資双方代表委員の主張が十分審査会の決定に反映をすることかできるように、いろいろな制度が設けられております。これは裏からの申分で、あるいはお答えにならないかもしれませんけれども、そういう点も考え合せまするときに、私は今のお尋ねに対しましては以上申し上げたように考えております。
  23. 柳田秀一

    柳田委員 だからこの質問には、利益代表を二名加えておる、こういう御答弁もあるかもしれませんがということを、最初私はくぎを打つてあるのです。だからそれは別に御答弁にならぬでもいい。問題はこの三者構成を私は必ずしもこれが万全とは思わない。三者構成になると、どうしてもやはりそれぞれわが田に水を引くということは私はあり得ると思う。だから三者構成すると、みなそれぞれ事業主事業主の側の利益代表をやる、被保険者は被保険者の側に立つて利益代表をやる自分の側にのみ立つて全般的の利益考えない。だからそういうことでなしに、公益だけでやりましたと、こういう率直な見解なら御見解でいい。そういことを私は聞いておるのであつて、このたびの改正案においてもなお非常勤でありまするが、利益代表は二名入つておる。それは知つておる。だからそのことはもうお答え願わないでもいい。ただこの三名の審査官公益のみによつて構成されということは、いかなる理由かということを率直にひとつ承りたい。
  24. 久下勝次

    久下政府委員 繰返して申し上げるようで恐縮でありますけれども柳田先生のお話は、従来の三者構成のうちの一部分である公益代表だけか、今度の審査委員会の委員になるというふうなお考えに立つての御質問のようでございますが、私どもは必ずしもさように考えておらないのであります。全然今度の審査会委員というものは、そういうふうな意味のとは性格が違うのでありまして、もつと別の立場で公正に事件判断のできるような方にお願いをするというだけでございますので、それ自身がただちに従来の三者構成のうちの一部分であるところの中立委員と申しますか、公益代表委員と申しますか、そういうものに必ずしも一致するということは言えないと思うのであります。そういうふうに考えております以上、ただいま先生のお話に対しては、実はそれ以上のお答えがいたしかねるのであります。
  25. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると公平なる見地に立つて処理したい。だから裏から考えると、今私もちよつと触れましたが、従来の被保険者代表事業主代表はとかく一方の立場に片寄つて、そのものの利益のみをあまりに擁護するきらいがあるから、これをオミットした方がいい、大体こういうふうな考え方から出発されたのでありますか。
  26. 久下勝次

    久下政府委員 私は逆は必ずしもそうとは思つておりませんし、事実もさように考えておるものではありません。もしそうでありますならば、利益代表委員を設けて、この方々審理に参画し、いろいろな審理上の請求権を認めるということそれ自身が、私はおかしなことになろうかと思います。決して従来の利益代表委員が自分の部門の利益のみを主張して適当でなかつたからというような考え方は、この制度を設けますについては何も考えておりません。
  27. 柳田秀一

    柳田委員 それならば、昨日杉山委員も言われたように、この三月二日付に社会保障制度審議会から「社会保険審査法の制定については、さきに本審議会が勧告した趣旨、特に三者構成趣旨に副はない点があると考えられるので、慎重に考慮されたい。」社会保障審議会が勧告した三者構成趣旨に沿わないということを、はつきり諮問機関であるところの社会保障制度審議会から出て来ておる。同時にまた厚生大臣の諮問機関であるところの社会保険審議会長からの二月十八日の答申案にしても、この改正せんとする趣旨はよろしいが、「しかし社会保険審査委員会の構成については、常勤公益委員をもつて組織することは適当と考えるが、従来の社会保険審査会において利益代表委員が果した弁護的機能はなおこれを存置すべきであり、又公益委員の人選については、利益代表委員の意見を徴することを明文化するとともに、その定数を五名とすべきである。」とわざわざこうして答申が出ておるのであるから、この答申案は当然これは尊重しなければならぬと思うのですが、この答申案がわざわざ出て来ておるのに、なおかつこの中立代表の五名のみをもつて構成されるという考えは、どういうところから出て来ておられるのですか。
  28. 久下勝次

    久下政府委員 まず社会保障制度審議会の答申でございますが、確かに審議会は、第一次勧告の際に、社会保障に関するいろいろな請求事件審査をいたしますために、三者構成委員を設けろということを勧告されておることは、私どもは承知いたしておるのであります。しかしながら私どもが、結論として現在の制度がそうなつておりますものを、あえてかような制度にかえようといたしておりますゆえんのものは、先ほど来申し上げておりますように、何分にも未処理件数が増加をして参りまして、これから先新しい保険制度ができ、新しい審査事項が増して参りますと、ますますこの傾向が増して参ります。三者構成をいたします以上は、どうしても非常勤委員としてお願いをしなければならないことになりますので、根本的にその辺の関係が食い違うと思いましてこういう案をつくつたのでありまして、その後のこの案についての答申、昭和二十八年三月二日の社会保障制度審議会の答申は、今先生のお読みになられた通りでございます。しかし結論としては慎重に考慮されたいという言葉が使つてあります。私はそのときの審議にも立会い、いろいろ御説明を申し上げおつたものでございますが、私の受けております感じでは、これはこの制度は適当でないから反対であるというようなところまで強い御意向の皆さんの意見であつたとは考えておらないのであります。さきに勧告している点もあるので、その点については十分その趣旨に沿うように考えてくれというようなお話でございます。私どももこの点につきましては、その後解散前の国会に提案いたしました案と、ごく一部でございますが、内容をかえまして、利益代表委員審理に関する権限をふやしたりいたしたところもあるのでございます。さようなことで、できるだけ利益代表委員の権限を増し、その結果三者構成の精神を極力生かすようにいたしたつもりでございます。それから社会保険審議会の方の答申は、ただいま御朗読の通りでございますが、これは私どもの案はそのままになつていると考えているのであります。ただ問題になりますのは、利益代表委員の意見を徴して人選をするということについて、明文化されておりませんし、委員の定数が五名という答申が五名になつて来ておるのでございますが、これも杉山先生のこの間の御質問にお答え申し上げました通り、まず人選についての明文化につきましては、制度の建前から明文化することは適当ではないかと思ついおりますが、実際の運用につきましては、こういうようなことをはつきりとお約束しておりますし、実行をいたす所存でございます。それから定数の方は五名にいたしませんでも、五名で現在の段階においては当分審理上の能力は達し得ると考えまして、五名にいたした次第でございます。基本的には社会保険審議会の答申に対しましては、私どもの案それ自身がこの審議会の答申によつてできておると申しても、私はいいと思つております。
  29. 柳田秀一

    柳田委員 私は今の社会保障制度審議会答申案をかように思うのです。この「慎重に考慮されたい。」というのは、これは最後の締めくくりとして、答申案としてやわらかく表現しておられるだけで、この答申案の基本的な骨子は「さきに本審議会が勧告した趣旨、特に三者構成趣旨に副わない点があると考えられるので、」これがこの文章の主文をなしておるのであつて、最後の「慎重に考慮されたい。」というのは、これは表現方法を非常にやわらかくしただけである。私は小学校以来習つた私の国語の理解力ではかように解釈しておる。ところが局長はどこの小学校でお習いになつたか知らぬが、局長の理解力では「特に三者構成趣旨に副わない点がある」ということをぼかされておつて、「慎重に考慮されたい。」という点ばかりを強調されておる。これはいくら言つても水かけ論になるからやめますが、これは一つの逃げ口上であり、先の杉山委員の御質問のときにも、このときの空気にもお触れになつたと思いますが、私はこれはいくら言われても了承できない。  それからもう一つ、今のスピーデイーにものを運ぶためには、やはり常勤委員にしなければできない。これは私もわかります。それならばその常勤委員の中にこの被保険者代表事業主代表を入れれば私はこれはできると思う。常勤委員ならば被保険者代表事業主代表委員に入れられないという今の答弁を裏から見ると、とにかくこれはスピーデイーにものを運びたいからこれは常勤にしなければならぬ、こういうことです。常勤委員の中には被保険者代表事業主代表を入れられない、こういう裏からの解釈になると思いますが、その点はいかがですか。
  30. 久下勝次

    久下政府委員 審査委員の人選につきましては、ただいまのところはこの法案の第二十二条の規定にありますことだけでございまして、政府としてはそれ以上具体的にはまだ考えておらないのでございます。ただ、今お話の中にございました事業主なり労働者側に関係のある人は、この審査会委員としては選ばれないのだという結論は、私は出て来ないと思つております、さような前提を立てることも適当でないと考えておるのでございます。
  31. 柳田秀一

    柳田委員 それは法文の解釈上はその通りになると思いますが、おそらくそれは入つて来ないと思います。大体現在吉田さんもよく言つておられるのですが、行政の簡素化ということがしよつちゆういわれる。ところが各省がそれに対してはレジスタンスを試みてなかなかできない。こういう行政の簡素化のときに、わざわざその簡素化に逆行するようなこういう趣旨を織り込まれるということは、私は非常に疑問があると思う。ただ実際に各都道府県から出て来ましたそれぞれの案件を早く処理するという点ではわれわれは了承するのですけれども、どうも私がいささかふに落ちぬのは、最近の官僚というものが、こういうような特別職の取合いをしておる。たとえばこの欄を見ましても、運輸省が運輸審議会をつくつたら運輸省もひとつ割り込もうということになる。今度はおれのところの省も割り込もうじやないかというような気分が多分にある。そうして局長をおやめになつたあと、これは失礼な話ですが、どこも引受け手がない。それを引受けてくれるたいへんけつこうな席を設けてある。また各省ともどうもこういう線をねらつている傾向が多分にある。厚生省としてはなかなかよいところを見つけられたと思うのでありますが、どうもそういうきらいが見える。きようはそういう品のないことはもう言いませんが、しかしながら今から考えると、これは多分にあることは事実であります。従つて事業主代表やら被保険者代表にこの席を譲らなれるというようなことはとうてい考えられない。これはうば捨て山になるか、うば拾い山になるかわかりませんが、どちらかです。だから根本の趣旨はそこにあつたのではないかと考えます。そのようなことはいくら答弁しても、絶対そうだと言いつこないから言いませんが、何度考えても、私はこういう官僚意識の強い、しかもまず官僚救済事業のような、しかも特別職で高給を呈するようなところに祭り込んで、そうして実際に非民主的になつたようなこの法案には賛成することはできないのであります。これはどうしても三者構成でおやりになるのが一番よろしい。それならば現在の三名でスピーディーに行けると思う。五名にしなくてもいい。その五名を中立側からとる、被保険者側からとる、あるいは事業主の側から出して、そしてその中において委員長を互選する、そういうような線に改めるならば、これはわが党としてはまた大いに考え直す点がある。私はそこまで持つて行かなければ嘘であると思う。そういう点に対してひとつ御見解をお伺いしたい。これは局長でなく大臣に答弁願うところかもしれませんが、政府委員でけつこうです。
  32. 久下勝次

    久下政府委員 人選について重ねてお尋ねでございますが、具体的にはまだ何もきめておりませんので、これはおそらく大臣にお答えをいただきましても、ただいまの段階ではお答えができないかと思います。しかしながらこの社会保険審査会構成というものは、私ども一つの裁判所的な機能を行政的に果して行くというふうに考えておりますので、そういう考え方からいたしますれば、実質的には裁判官と同じものである。これをただいろいろな手数上とかその他の費用を要せずに、簡易迅速にやるために行政部内に置いたということにすぎないと考えておるのであります。そういう点から御判断をいただきますれば、この人選につきましても御心配のようなところはおそらくないのではないか、さように考えております。
  33. 小島徹三

    小島委員長 本案につきましては他に質疑の通告がございまするが、杉山委員の要求の政府委員が、予算委員会が紛糾してとうてい出られないということでございますから、次回に質疑を続行することにいたします。
  34. 小島徹三

    小島委員長 続いて戦傷病者戦沒者遺族等援護法の一部を改正する法律案及び未帰還者留守家族等援護法案の両案を一括して議題とし審査を続けます。質疑の通告がありますから順次これを許可いたします。青柳一郎君。
  35. 青柳一郎

    ○青柳委員 私は実は厚生大臣の御出席を求めて、大臣に対して御質問したい点が多々あるのでありますが、大臣の御出席がありませんので、まず事務当局にお話いたしまして、そのうちの重要な問題につきましては、重ねて大臣の出席のもとに御答弁を願いたいと思います。  まず第一点は、今回の戦傷病者戦沒者遺族等援護法改正におきまして、太平洋戦争中旧国家総動員法に基いて設立された船舶運営会の運航する船舶の乗組員、これは戦時中軍人軍属と同様の戦争の危険にさらされて、まつたく軍人軍属と同様の任務に服していたものであり、その危険の程度は軍人のそれに比肩し、あるいはそれ以上に及んでおるので、この法律の援護の対象とする、こういう大臣の御説明であつたのであります。私は徴用船員の遺族に弔慰金、年金が出し得ることにつきまして、まことに御同慶にたえないのであります。しかしながら翻つて、船員のほかに同じ程度の犠牲を受けた方方がおられるのであります。それはこの援護法の三十四条の二項によりますると、やはり国家総動員法によつて動員せられた学徒あるいは徴用工等にして戦闘によつてなくなつた者もおられます。また満州の原野に開拓団員として働いた人、またはあの原爆の被害を受けた国民義勇隊の隊員などもおるのであります。徴用船員をこの援護の対象とするならば、なぜこれらの方々を援護の対象としなかつたかという点であります。これらの学徒、徴用工、開拓団員、国民義勇隊の隊員なども、弔慰金についてはこの法律で軍属と認められておるのであります。私は大体考えるのでありますが、戦争の末期において、あの学徒動員あるいは徴用工などの制度ができました。あれはやはり国家の強制力によつてひつぱり出されたものでありますから、これらの者に対しては、当然恩給法と同じような法律制度ができるべきであつたのであります。しかるにそのひまがなくてあの敗戦となつてしまつた。これらの方々は非常に気の毒千万であります。そういう点から考えましても、これらの方方の遺族に対しまして、船員に対して今回とられたと同じような処置があるべきであると存ずるのでありますが、政府当局はいかがお考えでありますか、この点について承りたいと思います。
  36. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 戦傷病者戦沒者遺族等援護法改正によつて、船舶運営会の運航する船舶に乗組んでいる船員、つまりC船員でありますが、それを軍属に加えるならば、なぜ他の戦争犠牲者、特に現行法三十四条によつて、弔慰金の対象となつておる学徒動員法による動員学徒その他の者に対して、同じように軍属の範囲に加えるようにしなかつたというお尋ねでありますが、実は昨年この法律を御審議いただきました際にお説明申し上げました通り、戦沒者遺族等援護法の大部分は、軍属恩給の暫定措置法たる性格を持つものであります。今回の軍人恩給の復活に伴いまして、これらの軍人に関する部分は原則として軍人恩給法に転移することになつております。ただ一つ例外といたしまして、戦地において戦死いたしました軍属、これらの方々に対しましては当初よりこの援護法の対象といたしております。その理由は戦争中内地において陸海軍の雇用人であつた方々には、実は陸海軍の共済組合から、戦死した場合には弔慰金、負傷した場合には傷害年金を給する制度を、終戦直前に設けたのであります。内地において陸海軍におられたこういう方々にこういう制度を設けたのに、戦地における軍属の方々が、内地の軍属の方々よりも一層危険が多く、また勤務もはげしかつたのでありますが、なぜそういう制度がないか。その理由はただ当時そういう制度を設ける時間的余裕がなかつたというにすぎないのであります。当然戦争中にこの方々にもそういう恩典を設くべきであつたにかかわらず設けられなかつたというのは事実でもあつたのであります。これは内地の軍属に対します制度は、陸軍共済組合あるいは海軍共済組合を利用してそういう制度を設けましたので、簡単にそういう手が打てたのでありますが、外地の陸海軍の軍属に対しましては、特別な立法措置が必要であつた関係上、時間的に幕切れになつてしまつた、そういう関係がありますので、この援護法におきましては、最初からその方々を取上げまして、内地の陸海軍の軍属と均衡を保つようにいたしたのであります。その際動員関係方々の援護の問題も十分審議されたのでありますが、これをどこで線を引くかということが非常にむずかしい問題でございまして、いろいろ論議を重ねたのでありますが、いろいろな観点から、結局こういう方々は年金の対象とはしないが、弔慰金の対象として取上げることに国会において決定になつたわけであります。今回徴用船員を取上げましたのは、実は同じ船員でも、甲船員、乙船員というのがあります。甲船員というのは陸海軍固有の船員であります。乙船員というのは、若干甲船員とは違つておりますが、しかし身分において、また国から給料が出ておる点において、甲船員と区別がないという点をよく研究調査し、この点の確認もできましたので、この援護法の対象といたしたのであります。ところがC船員は当時から最も要望の強かつたグループでありまして、実はこの方々の戦死しておる率は非常に高いのであります。それから想像いたしましても、その勤務の状況、あるいは危険の程度というものは、軍人、軍属とまつたく同じであり、被害の状況はそれ以上であつたと認められるのでありますが、その性質をよく分析して考えてみますと、船舶運営会と申しますのは、国家総動員法によつて設立されたものであつて、国家が使用権を設定した船舶運航の責めに当つてつたのであつて、いわば一種の国家機関たる性格を持つものと考えてさしつかえなかろうと思うのであります。しかも船員はすべて徴用でありまして、自己の意思にかかわらず国家の権力によつて動員せられ、国家機関的性格を持つ船舶運営会との間に、強制的な使用従属関係を設定せられておりまして、他の軍人軍属の方々とその点きわめて似ているのでありますが、しかもその業務たるや甲船員、乙船員とまつたく同じように、兵員及び軍需物資の輸送に当つたのでありまして、場合によつては第一線の作戦にも参加しておつたのでありまして、その任務の状況から申しましても一般の軍人、他の雇員と何らかわりはなかつた考えるのであります。またその危険の程度におきましては、実に高い戦死率を示しているのでありまして多数靖国神社におまつりされている方々もある。また金鵄勲章をいただいている方も相当おありになるのであります。また一面から考えますと、かような状況であつたので、当時政府の内部におきましてこれらの方々に対して国家補償をなすべきであるという議論が起つた考えられるのでありまして、こういう方々の遺族に対しましては、全額国庫負担をもつて船員保険法によりまして差上げているということは、逆に申し上げますとこれらの方々に対しまして当時すでに国家補償の道を開いておつた考えられるのであります。しかもC船員であつたか、乙船員であつたかということは、ただそのときどきの乗組む船によつて違うわけでありまして、ある人はあるときは乙船員であつた、ところが今度はまた別の船に乗つたならばC船員になる。たまたま沈没したときに乗つてつた船が乙船員であつたために対象になる。そうでなかつたということのためにC船員として対象から漏れるということは、その均衡を失するということで、いろいろ総合的に考えまして、C船員だけは他の船員と同じように援護の対象とすることが、結論的に妥当であろうというふうに考え対象といたしたのであります。こういう点から考えますと、民間の工場に配置されます徴用工、あるいは動員学徒その他三十四条関係の弔慰金の対象になつている方々とはいろいろな点においてやはり違いがあるのではなかろうか。この線において一線を画してもあながち不公平とは言えないのではなかろうかと考えているのであります。もちろん援護の手が広く伸びるという点はけつこうでありますが、それを戦争犠牲者のどこまでやるかという問題もあり、かたがた国家財政との関係もありますので、今回はそのような点まで援護の手を及ぼすことをしなかつた次第であります。
  37. 青柳一郎

    ○青柳委員 ただいまるる御説明がありましたが、その中で私はまだ納得しない点があるのであります。ただいまの御説明の中では、C船員にのみ船員保険適用を受けて、戦争によつて死んだ人に対して、他の船員に比してよけいな金額支給しておりますというわけでなく、これは甲船員にも乙船員にも、A船員にもB船員にも同じように出されておつたという点、あるいは戦死率の多いことでありますが、部隊によつて戦死率が多いということがあり得るのであります。さらには私が先ほど申し上げましたように、これら国家総動員法によつてひつぱり出された人は、自分の意思によらずして強制的にひつぱり出された入であります。従いましてこれらの方々にも当然戦争が長く続き、あるいは戦争が勝利に終つた場合には、恩給法と同じようなものができたと思うのであります。そういう点から申しましてまだ私は納得できないのでありますが、この点は次に大臣が御出席の機会になお大臣に対して質問いたしたいと存じます。  さらにただいまのお話の中で、内地において戦死をした軍属たる雇用員については、共済組合の規定があつたのでありまして、それを昨年この援護法制定の際に、戦地における軍属たる雇用員に何ら規定がないので、それに押し及ぼすようにしたいと言われました。いかにもさようでありますが、ただここに不均衡な点がなおあるのであります。戦地においてなくなつた雇用員については援護法の適用がありまするが、内地において戦死をした雇用員たる軍属には援護法の適用はございません。従いましてこれらには遺族扶助料が出ない、遺族を援護するための金がない、さらに援護法による福祉を得られないという不均衡な点があるのでございます。さらに所得税法において、所得税の控除において六千円と四千円の開きがある。そういう不均衡が現在しておるということを御当局は知つておられるか。知つておられるならばいかにこれを均衡化せられんとするかにつきましてお伺いいたしたい。
  38. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 内地において陸海軍の雇用、いわゆる援護法の有給軍属の方か、戦時災害において死亡された場合におきまして、陸軍及び海軍の共済組合から年金を出す制度が終戦直前に設けられたということは、先ほど申し上げた通りであります。実はこの年金は終戦と同時に一時ストップされましたが、その後復活せられまして、今日大蔵省の主管としております共済組合から、ぺース・アップされた休職年金というものを遺族に差上げておるのでございます。ただこれにはこういう条件がついております。全部の遺族にそういう金を出すのではなくて、戦死者によつて生計を推持しておつた遺族に年金を出すことに相なつております。そこでたとえば両親をとつてみました場合に、両親が戦死者によつて生計を推持しておられた場合におきましては、年金が出るのでありますが、戦死された方がまだ年若く、両親もまだ若く、その戦死した方によつて生計を推持していなかつたという場合におきましては、年金は差上げないことになつております。しかしこの場合におきましても、たとえば海軍で申しますと、年金の十箇年に相当する部分を一時金として差上げることになつておるわけでございます。年金は給料の五箇月分でございますので、それの十箇年分と申しますと大体給料の四年分をまとめて一時金として差上げるということになつてつたわけであります。こういう制度ができる前におきましても、陸海軍の共済組合から、戦死等の場合におきましては給料の三年分以上の一時金が当時の遺族の方に差上げられるようになつてつたわけであります。年金はなるほど一定の制約があつて限定されておりますが、この年金をちようだいできない方に対しましても三年分ないし四年分の給料を一括して差上げておつた、こういう制度かあつたのでございますので、内地の場合におきましてはそれにまかせて、戦地だけに限定しておいてもよろしいのではないか、こう考えて戦地だけに限定してやつたのであります。
  39. 青柳一郎

    ○青柳委員 ただいまの共済組合と援護法との不均衡の問題につきましては、傷痍軍人について御質問いたすときに残しておきます。  次にお尋ねいたしたい点は、この現在の援護法二十三条によりますと、公務上疾病にかかり死亡した軍人、軍属の遺族に年金、弔慰金の支給がせられます。しかもその病気が戦時災害による場合に限つておるのであります。ところで現在の世間の実情を申しますと、その戦地においてかかつた、あるいは内地においてかかつた病気が、公務によるものであるかいなかということによつて差別せられ、公務によるものということが認定せられた者にのみ年金、弔慰金が交付せられておるのであります。しかるに一般は、その病気の種類によつてそういうふうにわけるということについての理解はないのであります。政府におきましては、病気の種類によつてその年金、弔慰金を給付するかいなかという区別をしておられるのであります。そうしてその点が世間の理解を得られないために、一般にどんな病気で死んだ人も戦死者の取扱いを受けております。しかも現に戦死公報も受けておるのであります。疾病の種類、あるいはその疾病が戦地あるいは外地においてかかつたということによつて区別せられるということによつて、遺族さんの中には非常な混乱を生じておるのであります。私は、重大なる過失による疾病はもとよりその範疇に入れるべきでありませんけれども、しからざる限りはすべて公務によるものというりくつが立つと思うのです。また戦争の末期におきましては、確かに内地の方も戦場というふうな認定を受けたと私は考えております。しかもこれらの人々は全部戦死公報を受けておる。そうして世間的には遺族として取扱われております。また靖国神社にもまつられておるのであります。従いまして私のたださんとするところは、病気の種別いかんを問わず、また内外地でかかつたことを問わず、軍務に服しておつた期間に病気にかかつたことが原因で死没した者は、本法においてはすべて公務死として取扱つて、すべて一律に年金、弔慰金を支給すべきであると存ずるのでありますが、政府のお考えを承りたいのであります。
  40. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 私どもの取扱いについて説明が十分御遺族の方々に徹底しない関係上、病気の種類によつて公務かどうかを決定するかのごとき印象を与えておりますことはまことに遺憾でございます。実はそういうやり方をとつているかのごとき印象を与えましたおもなる原因は、昨年この法律通りまして、大量に百何十万というものを短期間のうちに処理しますためには、一件々々を克明に審査して行くというやり方ではとても時間がかかつて、三年も五年もかかるということでございますので、これを機械的に処理するという方式をとらざるを得なかつたわけでございます。そのために従来恩給法においてちやんと認められておるないしは過去において恩給法でこういう病気は当然公務であるというふうに限つてありますものは無制限に、あるいは時期と場所を限定いたしまして、その時期にこの場所でこういう病気にかかつたものは全部公務と認めるという機械的なやり方でどんどんさばいて行つたわけであります。それ以外のものはわれわれの方で非公務と考え意味では決してないのであつて、そういうものは一件々々審査いたしまして、病気にかかつた時期及びそのときの勤務の状況、場所等を十分に総合的に考えまして、その病気と公務との間に相当因果関係があるかどうかという点を十分見て出すというやり方をとつたわけであります。従つてずいぶん早く申請書をお出しになつた方におきましても、そういう関係で個別審査の方にまわされる関係上、時期が遅れた方が相当おありになるわけであります。もちろん病気の種類によりましてはとうてい公務とは考えられない病気もございます。自己の重大なる過失によつてなつたということが明瞭である病気もございます。たとえば脳溢血であるとか、あるいは心臓麻痺等というものは、相当これはむずかしゆうございます。一律に公務と考えていいかどうかというむずかしい問題がございます。特に私どもが心配いたしました点は、援護法は恩給法と不可分一体の関係をなしておるものでありまして、公務という言葉を援護法も使つております。従つてこれが軍人恩給に移管する際には、当然軍人恩給においても恩給が給せられるべきものという建前になつておるわけであります一ところがわれわれの方で万一にも非常にルーズな扱いをし、すべてをよろしいじやないかということでどんどん公務として通して行つて、恩給に切りかわつた場合に、ちよつとこれは待つた、それまでやたらに公務と考えられては困るということで保留になつた場合には、非常に因る結果を生ずるわけであります。私の方では恩給でも公務と考えてさしつかえなかろうというある程度の考えを持ちながら、しかも同時にあまりきゆうくつにならぬように、遺族の御心境にも沿うように、実情に沿うようにということで実はせつかくやつているわけであります。もちろん極端に申しますれば、恩給局とあらかじめ打合せをして、これはオーケー、これはオーケーといつてサインをとつておいてやれば万全でございますけれども、なかなか数も多いし、恩給の方も忙しいので、そういうことをやつておりません。そこで私の方は、先ほど御質問のありましたような気持をもちまして公務であるかないかの審査に当つておるわけであります。数字で申し上げますと、今日まで陸軍、海軍合せまして百八十五万の受付けをいたしております。これは一切のものを含んでおります。公務の方であろうと、あるいは戦沒者の遺族であろうと何であろうと、名の知れた方々は全部含んでおります。その中ですでに裁定の終つておるものが百七十四万でございます。約十万の未裁定があるわけでございますが、その中には目下調査を進行中のものが約半分くらいございます。つまりランニング・ストックと申しまして、審査中のものが約半分でございます。その他調査の資料判断資料が液いために、判断資料を整えるために、いろいろ市町村なんかで資料を整えておるものもございます。従つて病気その他の理由によつて、再審査といいますか、各自一件一件審査している分はそのうちの一部になるわけでございます。正確な数字は今持ち合せておりませんが、そのうちのごく一部のものになります。その一件々々を審査いたしまして、これはどうしても公務と考えられないものは却下いたしております。お話の通り戦地におきまして戦死、戦病死というような公報が出ております者につきましては、御遺族の御心境もあり、実情もございますので、われわれはできるだけ公務の認定範囲を広げて参りたいと考えております。これはできるだけ弾力性をもつて運用しております。ただ問題は、内地で普通の病気でなくなつた方であり、あるいは家に帰つてからなくなつ方々、こういう方々審査上非常に困難をきわめております。いろいろな資料を集める関係からいたしましても、また死亡と病気の関係判断する資料を集めるという場合におきまして、いろいろ苦心しておりますが、手をまわして資料を獲得いたしまして、できるだけ正確に、迅速にやつて行く所存でございます。なお御指摘の問題は、今後の恩給の問題にも関連いたしますので、恩給局ともある程度打合せを遂げまして善処して参りたいと考えておりますが、できるだけ御希望に沿うようにとりはからいたい、かように考えております。
  41. 青柳一郎

    ○青柳委員 厚生省当局が、公務死の範囲を広く考えるという立場をとつておられまする点は非常にあたたかい取扱いでありまして、私もそれをどんどんと広めていただきたい、こう思つておるわけであります。今お話の中に、恩給法への移行の問題を御心配のようでありますが、給恩法へ行き得ないものについては、この援護法で援護しておいて、さらに恩給局と話合いを進めて、恩給局の認定範囲を広めるということに努力をしていただきたい、こう存じます。  次に私が画質問いたしたいと思いまする点は、戦犯処刑者などの遺族についてでございます。戦犯者のうちの刑死者、獄死者についてのあの乱暴きわまる裁判、ほんとうに犯罪であるかどうかということは非常に疑わしいのであります。ことに公務による行動を犯罪それ自体としてとらえておる点、さらに日本の国が独立したこの際に、戦犯者について、さらに戦犯者の中の死んだ方の遺族さんについて、明るい気持を持たすべき必要があると存ずるのであります。この点につきまして、連合国軍最高司令官の命令によつて逮捕、抑留せられ、その拘禁中死亡した考の遺族に本法を準用して援護せられたいのであります。もちろん恩給法が修正せられ、恩給法で解決できればよいのでありますが、しからざるときは少くとも援護法によつて一応解決をしていただきたいのであります。ことにこの問題に関しましては、未帰還者の援護法によりますと、留守家族の間は留守家族の手当がもらえるのであります。それがその途中で御本人が死に、あるいは処刑せられたときには手当がなくなつてしまう、こういうことに相なる点なども十分考え合わされまして、戦争処刑者などの遺族につきましても、これらの援護法の適用があるようにいたしたいのでありますが、当局の意見を承ります。
  42. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 最初に現在の法律の解釈、及び取扱いの方法についてお答え申し上げたいと思います。戦犯者による受刑者で死亡した方は、大きくわけて二つございます。一つは拘禁中に病死された方でございます。それからもう一つは死刑に処せられた方であります。この死刑に処せられた方が、なぜ援護法の対象にならないかと申しますと、戦犯は実は判決がありましたときに、当然復員の手続をとつております。また中には一旦復員して内地に帰られたあとで、逮捕せられて拘禁せられた方もございますが、軍人たるの身分のまま引続き逮捕せられた方々は、確定判決のときに軍人たるの身分を失つたものとして運用しておるわけであります。従いまして刑を執行せられた当時はすでに軍人でないのでありまして、この点から申しますと、この法律の軍人、軍属がその在職期間中に死亡したということにならないのでありまして、これがこの援護法の対象にならない法律上の理由でございます。  それから拘禁中に死亡されたものでございますが、これも大きくわけますと二つございまして、確定判決前に死亡された方と確定判決後に死亡された方とございます。確定判決前に死亡された方は、その死亡の原因が公務に準ずる自己の責めに帰すべからざる事由で死んだ場合は、この援護法の対象になるわけでございます。確定判決後において病死された場合も、その病気の原因が確定判決前にすでに疾病にかかつてつたが、その疾病のためになくなつたという場合には、この援護法の対象になるわけでございます。こういうものに該当される方々に対しては、現在援護法で遺族の方々に遺族援護金をさしあげておるような状況でございます。  そこで問題は、戦犯による死刑に処せられた方々の御遺族の援護の問題でございますが、これは従つて特別の立法措置を講ずるよりほかはないわけでございます。これを援護法上どう取扱うかという問題は、実は恩給法とも密接な関係がございます。と申しますのは援護法の第一条に、軍人、軍属の公務上の負傷疾病という言葉を使つておるわけでございます。これはこの立法の大精神でございまして、公務上の負傷疾病死亡に対して遺族を援護云々というふうに書いてあるわけでございます。恩給法もまつたく同じであります。従つて援護法がこれを取上げまして、戦犯の死刑者を公務、ないし公務と同視すべきものと決定するならば、同じ国家の法律である恩給法に書けない理由はないわけであります。公務であると援護法で考えるならば、少くとも今日の法律がこれを考えて、公務と同視すべきものと判断いたしますならば、そういう立法措置を講ずるならば、同じ国家の法律であり、しかも公務であるということを根本原因として、片方の法律において認めるならば、恩給法で公務であるという書き方をしてはならないという理由はないわけです。しかも恩給法では、戦犯による死亡というものは公務による死亡と同視すべきものであるというふうに書けるかどうかという点について、十分私どもの方からも申入れをし、また研究をしていただいたのであります。この点はいろいろの関係から、今回の恩給法の改正では取上げていただけなかつたのでございます。従つてこれと歩調を合せまして、この戦傷病者戦歿者遺族等援護法におきましても、第一条の精神を恩給法の中に入れるということは、立法上非常に困難でありましたので、今回除いたのでございます。しかしこの点は、今日の国民感情から考えましても、また戦犯の留守家族の方々の援護というものが、今日すでに特別未帰還者給与法の形をかりてやられておるということから考えましても、何とか措置しなければならぬじやないかということ考えられますが、いずれにいたしましてもこれは法律措置をいたします場合に、どういう形においていたしますか、研究を要することではないかというように考えております。高はいろいろの関係からこの援護法の中に取上げなかつたのでございますが、政府といたしましては、できるだけすみやかな機会に実現できるよう、研究を進めて参りたいと考えております。
  43. 青柳一郎

    ○青柳委員 次にお尋ねいたしますのは、戦沒者の父母、祖父母に年金を支給する際の年齢制限の撤廃の問題であります。恩給法におきましては、戦死者の父母、祖父母の年齢によつて年金の支給制限いたしておらないと私は思います。しかも年齢の差によつて精神的打撃を受けるということが違うはずはありません。すべてもう五十歳以上る越えておる人でありまして、生活を見てあげる必要があります。さらにこの法律が国家補償の精神に基いておるという国家補償の観念からいえば、当然年齢の制限は撤廃すべきであると思うのであります。これを財政上の理由のみから打切ることは、まことに気の毒千万でございますが、当局の御意見を承らせていただきます。
  44. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 援護法は、第一条におきまして、国家補償の精神に基いて援護すると規定されておるわけでありますが、根本の精神は確かに国家補償の精神に基いていると存じます。ただ実は厚生省でこの遺族等援護法を立案いたしました際には、恩給の問題は、財政上もまた制度上もいろいろ検討を要する問題があるので、これは将来の問題として、とりあえず援護法という形において措置しようということに政府においてきめられて、これの立案を命ぜられたのでございますが、しかし援護という観点から、実は恩給をレベルダウンするのが率直な建前ではないかと思いまして、恩給をレベル・ダウンして措置したのが援護法であるわけであります。その場合、レベル・ダウンする際に、援護という見地が、重要であることは当然でございまして、若い方にも、年寄りの方にも、全部に損害賠償という見地においてやることは援護ではございませんので、どこまでも援護という以上、社会保障的な見地、生活保障的な見地にかんがみてやらなければならぬのじやないかと思います。そこでわれわれはいろいろ研究いたしまして、社会保障制度審議会とか、社会保険、遺族年金のやり方等を考えまして、六十歳というところで一応線を引くのが援護の見地から割切る場合には適当ではないかと考えまして、かように措置したわけであります。従つて恩給が復活した場合において、年齢の制限がないことは、恩給の建前ですから当然でございます。これは投書賠償という見地、国家補償という見地がきわめて濃厚でありますので当然でございますが、援護法は最初から援護という立場をとつておりますので、恩給が復活したからこちらも歩調を合せて六十歳未満の者にも差上げなければならないということにはならないのじやないかと考えて、今回は改正をいたさなかつた次第であります。
  45. 青柳一郎

    ○青柳委員 援護法を昨年立法いたします際には、厚生省方面は援護の観念でやり、われわれ国会としてはこ葦国家補償の観念に引伸ばすことに努力したのでありますが、その援護と国家補償との闘争の残りがここに存在するのであります。これらの点につきましては、なお将来とも問題として取上げたいと存じております。  次に承りたいことは、父母、祖父母が再婚したときに、年金受給を失格または失権せしめないようにとりはからつていただきたいという点であります。この点につきましては、別に説明は要しません。日本の国情から申しましても、何とかしてこの問題の解決を、この際この国会においてはかりたいのでございますが、一応御当局の御意見を承つておきます。
  46. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 この点は恩給に関連する問題でございますので、現在の実情を御考察くださいまして、十分御審議くださることをお願いいたします。
  47. 柳田秀一

    柳田委員 関連して。今青柳委員からも言われたように、大体国家補償の精神というのは、これはあとで国会において括弧して加えただけであつて、立法精神そのものは援護法である。国家補償の見地に立つてという国会の要望をいれて、括弧して字句だけ「国家補償の精神に基き、」ということを入れたもので、法律そのものは援護法であり、第一条のところだけ国家補償の精神が入つておるから、実際上においてはちぐはぐが幾らでも出て来る。たとえば父母再婚の問題も、これは父母に再婚するだけの資力があるから援護しなくともよいのじやないかというのが厚生省当局のお考えのようでありますが、そういうことは国家補償の精神とも相反しておることになります。たとえば六十歳で、かりに最愛の一人息子を戦死させた、お父さん一人でさびしいので茶飲み友達にばあさんを迎えるということは当然だと思います。そういう場合でも認めないというのは大きな矛盾です。これは青柳委員も申された通りでありまして、厚生省も場十分にこの点を考えて、十五国会のときには間に合わなかつたが、十六国会に出される場合には、国会の請願を見ても、再婚の問題、未復患者が入院した場合の生活費の問題なんかの請願もずいぶんあるのでありますから、やはりそういう点も多少考えに入れてもらいたい。そう費用もかかりませんし、未復患者についても財源は一億くらいで、今後もそうふえる見込みもなく、多少手直してやつてみても大体同じものが出て来るのですから、ひとつ政府の誠意を示してもらいたいと思うのですが、この点について政府のはつきりした御答弁を伺いたいと思います。
  48. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 ごもつともでありますが、実は父母が再婚した場合において受給権を失うというのは、援護法特有の制度ではないのでありまして、もともと恩給法にそうなつております。これはひとり恩給法だけではなしに、社会保険の立法も実際に終戦後そういうふうになつておりますが、恩給法の方がもとになるわけであります。これは現状に即して立案せられて国会に出ておるのでありまして、この点と歩調を合せておるわけであります。実は昨年からこれが問題になりまして、実際運営をいたしましても、正直に申してまことに気の毒な場合があるのでありますが、これは恩給との関係もございますので、その方面とも十分ににらみ合せて処置する必要があるのではないかと考えております。
  49. 柳田秀一

    柳田委員 もう一点伺いますが、恩給法の場合には、事実婚ですか、実際正式に届け出た場合ですか。
  50. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 恩給法の場合に、失権の原因とせられておる婚姻というのは、正式に届け出た婚姻だけではなしに、事実婚も含んでおります。従つて茶飲み友達と申しても、これが事実上の婚姻関係があると認定されれば失権することになるわけであります。
  51. 柳田秀一

    柳田委員 恩給法の場合には、そこまでかたく審査されておらないと私は思います。援護法の場合には事実婚はかたく審査されておるのであつて都合のいいときはは援護法で行き、都合る悪いときには恩給法で行くというような首尾一貫しないことでは困ると思います。
  52. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 援護法においては、失権の原因として婚姻というものは実際むずかしい問題でありまして、正式に届け出た場合には、はつきりしておりますが、事実上再婚に入つた、内縁関係の再婚に入つたという場合は非常にむずかしく、結局地元の市町村の方々の御意見によつて決定するほかはないのでありまして、そう非常識なことはやつていないつもりであります。
  53. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 関連して青柳委員の御質問を先ほどから承つてつたのでありますが、非常に問題がたくさんありますので、一応根本的に次長にお伺いしたいのですが、あなたともたびたびひざを合せましたし、国会解散前にも戦傷病者戦沒者遺族等援護法改正するにあたつてはかくくしかぐの点が問題になるという点の国会の意思表示は、小委員会ですけたども、ずいぶんあなたにもしてあるところが出して来られたこの一部改正というのは、はなはだ誠意を欠いた申訳的なものであつて、ことに第三のごときは事務的なものですね。ですから厚生省がこの改正をするにあたつて、遺族に対する援護にあらずして、補償の精神に切りかえてこれを一部改正しなければならぬということを、どの段階まで掘り下げてお考えなつたかこの改正点を見てはなはだ了解に苦むわけです。ですから先ほどからの青柳委員の質問があのごとく出るのであつて、あれは青柳委員たらずとも、どの政党からも出る質問である。一体政府はどれくらい考えたかということ、これは大臣よりもむしろ次長は長年戦傷病者戦沒者遺族等援護法については国会の意見もずいぶん御存じのはずですから、それをお考えなつたら、もう少し責任ある改正法が出されて、そしてわれわれに審議を求められるならばわかりますが、一体どの辺までお考えなつたか、正気で考えておられるのかどうか了解に苦しむのです。ですからこれを出すにあたつてどのくらいのところまで掘り下げられたか、一応あなたの方のお心構えを承つておいて、国会としてはこれでは問題にならないから、各党共同調整をして——自由党さんも絶対多数の勢力ではなくなられたのですから、六分おわかりになつたでしよう、私も御同情するのですが、政府自体どうですか。どこまで掘り下げてこれを出されたか。
  54. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 よくお考えいただきたい点は、年金を出すということは、これは将来にわたつて恒久的な見地から出すのでありますから、気の毒だからこれだけはやるとか、ちよつとこのたびは気の毒だから出すという考え方ではわれわれは取扱つておらないのであります。これは国があくまでも国家補償を出す根拠を十分確かめまして、国家補償の精神で認知をやらなければならぬという根拠を十分確かめてやるという考え方で、昨年来ずつと一貫してやつて来ているわけであります。ただ昨年は金額がきわめてわずかでございまして、財政上の理由から一万円、五千円という何ら理由がない金額に押えられておりましたので、この金額は恩給の復活に伴いまして、これと均衡がとれますよう二万五千二百円及び五千円という金額に増大をしたのであります。対象の拡大につきましてはいろいろ御希望はございます。しかしいろいろの点を考えましてC船員までにとどめることが適当ではないか。もしこれを広げますと、全部の戦争犠牲者に年金をやらなければならないようなことになつてしまうおそれが多分にありますので、まあこのC船員ということで一線を画することが、現在のところわれわれは最も妥当ではないかと考えておる次第でございます。  それから六十歳未満の者に年金をやらないのは国家補償の精神に沿わないのではないか、こうおつしやいますが、もし国家補償の精神ということをやかましくおつしやいますならば、これは損害賠償でございますので、戦死した人に関する限り、遺族があろうがなかろうが、とにかくすべての人に金を出すのが国家補償の精神に最も忠実であるわけであります。しかし現在の恩給法でも純粋なそういう国家損害賠償という考え方をとつておるのではありませんで、ある程度の限定はいたしております。たとえば戦死した人が相当年をとつており、子供さん現在りつぱな人であるという場合には、現在の恩給法でも年金を出しておりません。これは未成年の子供に限つております。子供が成年に達した場合には扶助料というものは打切られるわけであります。従つて恩給法でもやはりある程度の生活保障的な考え方を取入れているわけであります。援護法はさらにそれを一層強化したというにすぎないのではないかと考えられるのであります。六十歳程度で切ることが国家補償の精神を全然没却しているとは言えないのであつて、やはりそこが国家補償の精神と、援護といいますか、生活保障の精神と融合した妥当な線ではないかと考える。もちろん六十歳未満でありましても、たとえばお母さん一人切りで子供を扶養する人が一人もいないという場合には、年金の対象としております。不具廃疾等の理由によつて生活能力のない方に対しては、六十才以下の場合にも出しているのであります。また生活能力の十分ある方につきましては、六十才になるまでお待ちいただいても、今日のいろいろの国家財政の見地から考えまして、むしろ妥当な措置ではないか、かように考えております。
  55. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私の質問の時間になるべくまわしますが、どうも田邊さんの頭の置き方は、さいふのひもをくくつて渡さないというとをもつて最上とするという考えに縛らられていらつしやるのではないかと思います。遺族の身になつてごらんなさい。あなたの方では末長く年金をやらなければならないから考えなければならぬとおつしやる。失つた方は末長く失つたのですから、遺族にしたら、末長く補償してもらわなければ因る。逆にいえばそういうことになる。あなたの方はさいふのひもを締めんならぬからそういう頭になられるかもしれないけれども、遺族の立場になつて考えなつたら、もう少し頭の切りかえができるのではないか。末長くだからこそ遺族は年金を要求するのだと思う。末長く補償したつていいじやないですか。あんな戦争に巻き込んで、子供から父親をむしりとつて、末長く補償してもらわないでどうするのですか。それは金がたくさんかかるからいけないとおつしやるかもしれませんけれども、私は正当な戦争犠牲者であるならば、末長く補償する考えを持つてできるだけ範囲を拡大なさるのが政府の当然のお考えだと思うのです。根本的に考えが違うじやありませんか。これはきようだけの次長から受ける感じでなしに、ここ六年間を通じてあなたから受ける感じです。
  56. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 年金の範囲をどのくらいにするかという問題は、やはりそれだけの根拠がなればけならぬということを申し上げたのでありまして、もし戦争犠牲者なるがゆえに全部に年金を出すということになれば、これはたいへんな範囲になるし、金額も非常に厖大になると思います。一般の戦災者の方々に全部年金を差上げるということに割切れば非常に楽だと思いますが、それをどこかで線を引くということになりますと、やはり恩給法及び恩給法に関連するいろいろの制度考えながら、それと均衡のとれる範囲において年金を差上げるということに限定して行かざるを得ないのであります。考え方としては、幾ら金がかかつてもかまわないから、全部の戦争犠牲者に年金を出すということにきまつてしまえば、また問題は別であります。われわれは恩給法及びこれに関連するいろいろの制度において、どの辺まで年金を出す方が妥当かという立場をとりながらそれを進めておる、そういう立場でありますために、全部に出せという質問に対する答弁としては、非常にかたいようになると思いますが、従来の建前ということを考えながら、一歩を踏み出しているという実情であります。
  57. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは次長にお尋ねいたしますが、あなたはこの戦傷病者戦沒者遺族等援護法の一部を改正する法律案以前の去年のものを実施していらつしやいますね。その場合、そういう政府の頭でやつていらつしやるのでは、大分金が残つているのじやないかと私はにらんでいるのですが、どれくらい残つておりますか、参考のために言つていただきたい。
  58. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 今詳しい資料は持つておりませんが、当初予定しました戦沒者の数は、大体百七十六万柱と押えておつたのであります。それに対しまして、今日まですでに裁定をしましたものが百七十四万でありますので、おそらく当初の予定した数字を上まわるのではないか、かように考えております。すでに受付けたのは百八十五万でございますが、今後また新しく中央に出て参るものもございます。また未裁定のものが十万くらいございまして、この中から相当数のものが裁定になつて行きますので、年金、弔慰金合せまして当初予定した数字かすかすあるいはそれ母上になるのではないかと考えております。金額の詳細な点はまだ計算してございませんが、あまり残らないのじやないかと考えております。
  59. 青柳一郎

    ○青柳委員 問題はまたあとに残すことにしまして、先に進みます。  次に承りたい点は、これまた皆さんも同じような気持であると思うのですが、戦沒者が二人以上あるときは、その人数に応じて年金を支給すべきものであると思うのであります。恩給法におきましてはさように相なつております。さらにただいまも論議が行われておりまする国家補償の観念から申しますると、弔慰金については戦沒者が二人あれば二人分行くということにもなつておりますし、これは当然行うべきことであると存ずるのでありまするが、当局の御意見を承つておきたいと思います。
  60. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 これはまた同じような御答弁をすることになるのでございますが、最初から援護という見地からいたします場合は、二つ以上の年金を平均することはいかがなものであろうかと考えまして、平均禁止の規定が設けられたのでございますが、この点はこのたびも従来通りという立場をとつておるわけでございます。
  61. 青柳一郎

    ○青柳委員 これも先ほどの問題と同じでありまするから、この解決はあとに残すことにいたしまして、次に戦死後において婚姻または養子縁組をした妻や子があるのでありますが、大体子供を擁して他家に嫁に行きますとうまく行くものではありません、だんだん帰つて来ているのが多いのであります。しかし援護法が施行せられるということで、それをもらうために帰つて来たということもあると思いますが、そういうことは別問題といたしまして、たとえばこの法律施行前すなわち昭和二十七年の四月一日以前に帰つて来たというような人について、まことに気の毒だと思うのでありまするが、そういう人はこの援護法の対象とした方が私はいいと思う。これは別に国家補償の観念でなく、援護の観念からも理解せられると思うのでありますが、御当局の御意見を承りたいと思います。
  62. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 援護法は軍人恩給の暫定措置たる建前で立案せられておりまして、今回軍人恩給の復活に伴いまして、軍人に関する限り原則として恩給の方に転移するのでございます。従つて大部分、数から申しますれば九割以上も軍人恩給の方に転移いたすので、問題のある部分は従つて恩給の問題になろうかと思うのであります。恩給では再婚した場合あるいは他人の養子になつた場合におきましては受給権を失格するというように措置せられておりますので、その点が改められない限り、恩給法でも受ける資格発生しないのではないかと考えております。
  63. 青柳一郎

    ○青柳委員 年金についてもう一点承つておきたいのです。弔慰金については生活保護の中の収入に見られないのでありますが、年金については生活保護の収入に見られております。これはところによりまして措置が違つておるように思うのであります。あるところでは年金の収入があつたその月のみ生活扶助の所得と見られて、その後においては生活保護のうちの生活扶助の収入と認められておらぬというところもありまするし、得られた年金をすべておしなべて何箇月の収入と見るところもある、二つの方法を実際とつておるようであります。これは社会局にお尋ねするのが当然であるかと思いますが、どちらがよろしいか。援護庁の方におきましてはどうしてほしいという考えでおられるかという点につきまして承りたい。
  64. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 これはたびたび当委員会におきましても御質疑のあつた点でございますが、生活保護法の建前から申しますると、恩給の扶助料その他これに類する援護の金はやはり収入と見なさざるを得ないのだろうと思います。実際の取扱いにおいて、いろいろ生活保護の取扱いの技術的な面におきまして、可能な限り収入と見ない、ないしは生活保護の支出の面において考えていただきたいということは希望いたしますが、頭から全部収入と見ないという考え方のできないことはやむを得ないのではないかと思います。
  65. 青柳一郎

    ○青柳委員 そういたしますると、年金を支給せられたその月だけでなく、その得られた金額を数箇月にわたつて収入と見てもさしつかえないというお考えであるのか、その点について承りたい。
  66. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 実は生活保護法内容をあまりよく存じませんので、私からは答弁を差控えたいと思います。
  67. 青柳一郎

    ○青柳委員 ただいまの質問は他日に譲りたいと思います。  次は弔慰金につきまして未帰還者留守家族等援護法案の十六条を見ますると、遺骨埋葬経費につきまして規定せられております。そのうちにその遺族に対しその申請によつて三千円を支給する、括弧がありまして、遺族がない場合においては、葬祭を行う者とこうあるのであります。戦傷病者戦沒者遺族等援護法におきましては、最後は兄弟姉妹さらに再婚した未亡人にまで弔慰金が行つて、それで打切られておるのであります。しかるに実際の状況から申しますと、それらの遺族がおらないというので弔慰金をもらえない英霊があるのであります。これらにつきましては、この未帰還者援護法に準じましてある程度の——もちろん範囲を限らなければならないと思いますが、なおこれを広げるという点について私ども考えておるのでありますが、それについて政府当局のお考えを承つておきたいと思います。
  68. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 昨年この法律が国家へ提出されましたときは、兄弟姉妹は原案においては入つていなかつたのを、衆議院の厚生委員会の御発議によりまして兄弟姉妹の範囲にまで弔慰金の支給範囲を広げたわけであります。実はどの範囲にまで広げるかということは弔慰金の性質にも関連いたしますので、もちろん香奠という意味合いで出すならばなんぼでも広げればよいじやないかという御意見もあるかと思いますが、これはあまりはつきり反対するだけの意思はございませんし、あま広ければ広いほどよいだろうということは考えられますが、ただどの辺まで広げるかということになりますと事務的な問題がございまして、たとえば葬祭を行う者ということになりましたときには多数の者でありますので、また資料等も散失するという点がございますので、そういう技術的な面も実は心配いたしたのであります。未復員者給与法の場合は、これは葬祭料またはその埋葬料でございまして、これは現実に葬祭を行う方、埋葬を行う方に支給されるわけでございまして、それでただ一般の公務員の場合にならつてそういうふうに広げてあるわけであります。弔慰金につきましては、戦争中の阿波丸事件の例にならいまして兄弟、姉妹の範囲まで限定していただくことが必要ではないかと一応考えておるわけであります。
  69. 青柳一郎

    ○青柳委員 弔慰金というものは葬祭を行う者に与えるというゆえをもちまして、生活保護におきましても所得に算入しておらないのであります。そういう意味におきまして他人が葬祭をしておるときとまでは申しませんけれども、おじさん、おばさん、あるいはいとこ、そういう親族が葬祭を行つた場合には考えらるべきものではないかと存ずるのでありますが、これはまた他日の問題といたしまして、次に傷痍軍人につきまして二つほど承つておきたいのであります。  一つは、内地で六項症母上の傷痍を受けた軍属、これにもこの法律適用があるか、こういう点であります。
  70. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 内地の軍属、内地において勤務しておられた間に戦時災害等によつて傷病を受けて負傷者になつた場合につきましては、この法律適用はございません。これは戦時災害によつてその方が負傷疾病された場合におきましては、旧令共済組合からの年金が支給されることに相なつておると思います。
  71. 青柳一郎

    ○青柳委員 ところでその旧令共済組合の支給する共済金についてでありますが、先ほどもちよつと政府当局がお触れになりましたが、内地勤務者でもつて、陸海軍部内の嘱託、雇用人については、旧令共済金障害年金または殉職年金が支給されておるのであります。しかるに戦地勤務者にはその支給がないというので、戦地勤務者に対して援護法の適用があるようになつたのでありまして、それによつて均衡をとるようにしたのだというふうな御発言が先ほどあつたようであります。しかしながら、実は傷痍を受けている者については均衡がとれておらないのであります。今度は逆に、共済組合による年金を受取る者の方が非常に不利な立場にあるのであります。それはどうしてかと申しますと、戦地勤務者の方は援護法によつていろいろな福祉がございます。またその者が死んだときには、遺族が扶助料をもらいます。さらに所得税法において六千円の控除を受けるというふうに、今度は逆は戦地勤務者の方が非常にいい恩典を受けるということになつたのであります。これにつきまして、均衡をとる必要があろうかと思うのでありますが、政府当局の御意見を承りたいと思います。
  72. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 実は昨年援護法を立案いたします際に、戦地勤務の軍人軍属につきましては、大蔵省で所管しております共済組合の中にそれを包含いたしまして、統括的にやるということを一応希望いたしたのでありますが、これは旧令の共済組合ですでに発生している債権債務だけをやるのであるから、拡張するわけには行かないということで、援護法の対象なつたわけであります。実は最初から金額につきましては、ある程度のでこぼこがございます。共済組合の方はどんどんべース・アップをして高くなつてつておりますので、ある面では援護法の方がよろしい、ある面では共済組合の方がよろしいというでこぼこを若干生じております。たとえば遺族年金の場合におきましては、金額の面から申しますと、どうも共済組分の方が若干有利な面もあるようでございます。しかし遺族の範囲等から申しますと、援護法の方が若干有利ではないか。傷痍者の場合におきましては、恩給と並行して援護法の障害年金が認められておる関係上、相当高くなりますので、この点は確かに共済組合の年金は非常に不利になつていると思います。これはお説の通り均衡をとる必要があるかと思いますが、これは共済組合の問題として今後考えて行くことが至当ではないかと思います。
  73. 青柳一郎

    ○青柳委員 私はこれらの問題をめぐりまして大臣に対して質問をいたしたいと思いますから、大臣に対する質問を保留いたします。さらに遺族、傷痍軍人の雇用問題について労働大臣に対して質問いたしたいのでありますが、他日そのようにおとりはからいを願いまして、本日は私の質問を終ります。
  74. 柳田秀一

    柳田委員 私は政府当局に一つ要望しておきますが、現在提案になつております留守家族援護法に対しては、昨年の国会で相当問題点があつたと思うのであります。ことに国会の請願の中におきましては、相当のパーセンテージを占めておる。そこで、国会の権威ということをやかましく言われるのでありますが、国会の権威そのものはわれわれ自身も高めなければならぬ。本委員会においてその請願を採択するということは、単に形式であつてはならない。またそれを実施する行政府にしても、形式的に流しては相ならぬ。そういうような見地から、現在出ております未帰還者援護法については、相当各種請願が出て採択になつております。これらにはすべて問題点があるが、この問題点を政府としてはどういうようにお考えになつておるか。この問題点を全部列記されて、その問題点に対する政府の見解をやはり聞く必要がある。これは法案審議の上に重要なことであると思いますので、次会まで政府の方において、現在やつております二法案に関して、問題になりました請願、採択になりました請願を一括して一覧表をつくつて、これを列記して、それを中心にしてまた一応検討する必要があろうかと思いますが、この点を政府当局に要望しておきたいと思いますから、委員長においてよろしくおとりはからい願いたいと思います。
  75. 山下春江

    ○山下(春)委員 この法律のどれにもはずれて来る者の、わずかな数字でありますが、第三国人の援護でございます。これは今度マヌスから帰つて来た五十何人、巣鴨に三十人、かれこれ合せて百人くらいであろうと思いますが、これは日本としてどうしても援護してやらなければならぬ問題だろうと思います。いずれの法律からも除外されておりますので、今御返事をいただかなくてもよろしいのですが、これは国会として援護してやるべきものと思いますが、今お考えがあれば承つておくし、なければ何か考えていただきたいと思います。
  76. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 現在戦犯として拘禁されておる方々のうちの第三国人の問題でございますが、これは特別未帰還者として特別未帰還者給与法の適用を受けるのであります。ただ俸給を前渡しする場合におきましては、やはり内地に扶養親族を持つている場合のみに限定して支給しております。これは行政権が内地以外に及ばない関係上やむを得ないのであります。従つて内地に扶養親族を持つておられない方々、つまり第三国人が多いと思いますが、そういう方には俸給の前渡しをしておらないのであります。今度留守家族援護法というものに切りかわりますと、どうしても内地に留守家族を持つておる方々だけが対象になるのはやむを得ないと思います。かりに日本の国籍を持つておる方々でありましても、内地に扶養親族を持つておらない方は適用がない。第三国人でも、内地に扶養親族を持つておる方は、当然この法律適用を受けるのであります。ただ扶養親族を持つていない方々の問題をどうするかという問題になりますと、これは厚生省の方で取扱う援護の問題とは別の問題になると思いますので、この点は法務省とも連絡をとつて、法務省の方に十分御研究をしていただいております。なお外地から帰つて来られました戦犯の第三国人の方々の援護の問題につきましては、これは特別未帰還者が帰つた場合、今後も未帰還者留守家族等援護法によりまして、それと同じような取扱いをする方針であります。  それから戦死された第三国人の方方、処刑を受けられた第三国人の方々の問題は、非常にお気の毒でございます。国籍のない方々は戦沒者遺族援護法では対象としておりません。これは恩給法でも同じでございます。これはいろいろの問題があろうと思いますが、何とかひとつその道を講ずるようにしなければいかぬのじやないかと考えております。しかしこれは賠償の問題にも関係があり、また現在進行中の日韓会談の議題にも取上げられておりますので、それらの経過または結果ともにらみ合せて処置すべき問題と思います。将来の問題として慎重に検討を要する問題であろうかと思います。
  77. 山下春江

    ○山下(春)委員 この間マヌスから帰られました二十二名の中の本名が第三国人でありますが、その現状はどうなつておりましようか。今お話のように、賠償問題その他の問題ともいろいろな関係があると思いますが、そういうことを乗り越えて、本委員会及び国会としては、何とかしなければならぬ問題であつて、いろいろなことにこだわらずに、当然何らか援護の措置を考えてもらいたいと思いますが、この間帰られました十名の処置はどういうふうになつておりますか。
  78. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 私が先ほど申しましたのは戦死者の問題でございます。マヌス島から帰られた第三国人の方は、大部分の方が内地に定着されることを希望しておられるようでありまして、それぞれ職を求められまして、それぞれの定着地にお帰りになつたようでございます。こういう方々に対しましては、普通の一般の内地の方と同じように援護の手を差延べておるわけであります。すぐお帰りになる方につきましては、それぞれ手続をとつていただきまして、船賃は全部日本側が負担いたしまして台湾まで送り届けるわけでございます。
  79. 山下春江

    ○山下(春)委員 もうすでにお送りになつた方がありますか。
  80. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 あるかどうかちよつと存じませんが、本国へお帰りになるという御希望の方が非常に減つたようでありまして、大部分の方が内地に定着されるようになつたということを聞いております。正確な数字はまた調べまして後ほどお答え申し上げます。
  81. 小島徹三

    小島委員長 両案についての残余の質疑につきましては次会以後に続行することといたします。     —————————————
  82. 小島徹三

    小島委員長 この際委員諸君に御通知申し上げることがございます。混血児保育所として有名な横浜のエリザベス・サンダース・ホームの視察のため、本院の外務委員、文部委員が来る七月十日金曜日の午後一時に本院を出発することになつており、厚生委員の中に希望者があれば同行されたいとの通知がありました。混血児対策につきましては、本委員会の所管とする児童福祉の問題と密接なる関係のある事件でありますので、希望の方の御参加されるよう御願い申し上げます。なお御希望の方は厚生専門員川井君まで木曜日午前中までに御通知を願います。次会は明後九日午前十時より開会することとし、本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時三十二分散会