○大江
政府委員 ただいまフイリピンのモンテンルパにおりまする日本人戦犯の釈放に関しまして、フイリピンから参りました
政府の公報というものについて内容を話せということでございますが、一応経緯を申し上げたいと思います。
新聞にもございます
ように、七月四日のフイリピンの独立記念日に際して、キリノ大統領が日本人戦犯に特別の考慮を払
つて何らかの
措置に出るだろうということは、実は前々から
中川在外事務所長から一応の内報としては参
つてお
つたのでございます。但しこれは限られた数字でございまして、今回の
ような広
範囲なものには
考えておらなか
つたのでございます。またそういう問題は非常にデリケートな問題でございまして、新聞に発表されますとおもしろくない影響もございますので、実は内々に伏せて参
つたのでございますが、土曜日、二十七日の午前中に電報が入りまして、実はキリノ大統領が二十七日の午後に病気
療養のためにアメリカに参ることにな
つておりまして、その前に日本人戦犯に対する恩赦令に署名をするという
ような情報が参
つたのであります。そうして
相当多数の日本人戦犯が釈放される、あるいは減刑されるだろうという情報は参
つてお
つたのであります。但しこれは七月四日の独立記念日にその特赦令の署名を実際発表するまでは、絶対極秘でほしいということでありましたので、そのつもりでおりましたところ、外国電報、UPあるいはAPが現地からこの問題を
相当大きく打
つて参りました。これは日本の新聞にも必ず出るだろうということを
考えましたので、外務省といたしましては、折返して
中川在外事務所長に対して、発表その他の点をどうするか、先方と打合してやる
ようにというふうに尋ねてや
つたわけでございますが、これと行き違いにその後の新聞に出ておりまする
ような、多数の日本人戦犯が釈放されあるいは死刑囚が無期に減刑されるという
ような情報が参
つております。但しこれはいずれも新聞にありますのと同様の内容のフイリピン
政府がとろうとする
措置につきましての情報でございまして、フイリピン
政府からの正式の在外事務所長に対する通報、あるいはフイリピン
政府の発表というものは、実は二十七日一ぱいはなか
つたわけでございます。昨日の午前中に公電が入りまして、フイリピン
政府も七月四日の公表をまたずに繰上げて発表すると申しまして、大体次の
ような発表をいたしております。私は電報を実は用意して参りませんので、記憶によりまして申し上げますが、それともう一つは、フイリピン
政府の正式の発表文というものは、まだ入手しておりませんので、発表それ自体のものではないのでありますが、大体の内容といたしましては、キリノ大統領はキリスト教精神に基いて、人道的
見地より七月四日の独立記念日に際して、モンテンルパにおるフイリピンの対日協力者約三百人及び日本への戦犯に対して特赦令に署名をする。日本人の戦犯者に関しては、無期刑以下の有期刑者に対してはこれを全部釈放する。それから死刑囚はこれを無期に減刑して、年内に国内に送還する。こういう内容でございます。さらにつけ加えまして、フイリピン
政府は今回の
措置は、今後の日比国交の改善に資するためにもこれをやるのである、特に懸案事項の解決、賠償問題の急速なる解決を希望するという旨を付言して発表をいたしておる
ような内容と
考えております。先ほ
ども申しました通り、発表文そのものの原文がまだ参
つておりません。
中川所長からの要旨をお伝えいたしますと、ただいまの
ようなことにな
つております。そこで数字を私は今持
つて参
つておりませんので、正確を期しがたいのでありますが、新聞に出ておりますのが大体間違いございません。死刑囚五十九名のうち二名が特別のはからいで釈放の中に入るということになりますので、死刑囚五十九名のうち二名を除いた五十七名というものが無期とな
つて年内に送還される。あとの者、すなわち四十八名でございますか、これが七月四日に釈放されて内地へ送還される。但しこれは人名その他はフイリピン
政府としては七月四日までは発表しない。また送還方法その他については何分とつさのことでございまして、目下在外事務所長とフイリピン
政府との間で話をいたしていると思うのでありますが、これに関しましてはまだ電報に接していないわけでございます。外務省といたしましては、この受入れ態勢あるいはこれに伴いますいろいろな
法律関係もございますので、目下担当の局で鋭意研究中でございまして、なるべく大勢の人々を早く国内に引取るという
措置をとりたいと
考えております。これに伴いまして、昨二十八日の午後六時に外務
大臣の談話で、
政府は公式の電報に接したということを前提といたしまして、ただいま申し上げた
ような
趣旨の外務
大臣の談話を発表いたしまして、フイリピン
政府に対する感謝の意も表しました。あるいは今後の戦犯に対する努力をするということも意思表示をいたした次第であります。
海外におります戦犯の
関係は、ただいまも御指摘がございました濠州のマヌス島の戦犯の方々でありまして、これをわれわれとしては何とか早く内地送還を実現したいと思うのでございます。この点につきましては、従来からもいろいろ努力をして参りましたし、また現在向うに行
つております西大使が内々いろいろな手を打
つておるわけであります。表向きに正式に交渉という
ようなことはまだいたしてはいないのでございますけれ
ども、非公式にいろいろや
つております。何分最も対日感情がデリケートな濠州のことでございまして、思う
ように参らない漁業問題の交渉、そういうものとの関連もございまして、早くそういう交渉を成立させますれば、全般的の対日空気の好転ということとも伴いまして、マヌス島の国内送還ということもそれによ
つて促進せられるのではないか。もちろん今回のフイリピンの戦犯が帰るということが、濠州
方面に対する一つの
考えさせる要素になるとは思うのでございますが、濠州はまた濠州で、いろいろな立場をと
つておる
ようでございまして、ただちにこれが響くということがはたしてあり得るかどうか、多少疑問を持
つておるわけであります。マヌス島からは、御
承知の
ように最近満期になりました者が約二十三名でありますか、帰
つて参りました。さらに引続いて年内に三十数名の満期者が帰
つて参りますが、いわゆる釈放なりあるいは減刑、こういう
ような
措置による帰還ということは、まだ目鼻がついていない
ような次第でございます。
以上が大体フイリピンの戦犯に関します先方の公式の発表あるいは内容でございまして、また御
質問の濠州
関係の戦犯に関する現状でございます。