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1953-09-08 第16回国会 衆議院 建設委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月八日(火曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 内海 安吉君 理事 田中 角榮君    理事 中島 茂喜君 理事 安平 鹿一君    理事 山下 榮二君 理事 佐藤虎次郎君      岡村利右衞門君    仲川房次郎君       堀川 恭平君    松崎 朝治君       志村 茂治者    三鍋 義三君  出席国務大臣         建 設 大 臣 戸塚九一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         建設政務次官  南  好雄君         建設事務次官  稲浦 鹿藏君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君         建設事務官         (計画局長)  澁江 操一君         建設事務官         (住宅局長)  師岡健四郎君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ————————————— 九月八日  山下榮二君が理事に補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事互選  治山治水に関する件     —————————————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前にお諮りいたすことがあります。すなわち山下榮二君が去る八月七日委員を辞任され、八日再び本委員となられたのでありますが、同君は理事でありましたので、これが欠員の補欠選任を行わなければなりません。補欠選任の件につきましては、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久野忠治

    久野委員長  御異議なしと認めます。それでは山下榮二君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 久野忠治

    久野委員長 治山治水に関して調査を進めます。すなわち戦後国土の荒廃、特に今次の災害のため、わが国の産業経済の麻痺ははなはだしいものがあるのでありまして、当委員会といたしましても、大いに治山治水対策早急樹立必要性を痛感する次第でありますが、まず政府当局より、その根本対策方針あるいは計画について説明を聴取いたすことといたします。米田河川局長
  5. 米田正文

    米田説明員 治山治水根本対策に関しましては、御承知のように内閣に、関係大臣及び学識経験者をもつて組織いたしております治山治水閣僚協議会が発足いたしたのであります。そこに建設省及び農林省としての、それぞれの対策案を今提出をいたしたのであります。その資料をお手元に差上げておりますので、それについて御説明を申し上げます。  さかのぼつて沿革的に簡単に申し上げますと、日本水害としては、私どもこれが三回目の大水害であろうと存じます。第一回は、明治二十九年に全国的な大災害があつたのでございます。そのときには国会措置といたしましては、ちようどその年に日清戦争賠償金が約三億五千万円入つて来ましたので、そのうち一千万円をさいて災害基金という制度をつくつたのでございます。同時に、教育基金というのをやはり一千万円でつくつて、この二つの基金制度をこしらえたのであります。そうして今後の災害対策基金にして行くという方針を決定いたしたのでありますが、数年ならずしてまたその後の情勢変化に伴いまして、その基金制度が解消されたのでございます。  その次に大水害参つたの明治四十三年でございます。このときも全国的な大水害でございましたので、国会としては、治山治水根本対策を立てることになりまして、同時に、全国の六十五河川根本対策を立てたのでございます。そのうちの二十本を早急に実施をするということが、国会で決議をされたのでございます。  その後、たびたび水害はありましたけれども、そういう全国的な大災害はなかつたと申してよかろうと思います。部分的には非常にひどい災害もございました。その後大正十年及び昭和八年等に、河川根本対策に関する対策を立てたことはございますが、たとえば大正十年には臨時治水調査会というものを内務省に設けて、全体の河川計画について検討をいたしました。次には、昭和八年にも同じく土木会議を設置いたしまして、全体の河川根本対策を練つたことがございます。  そういう沿革を見ておりますが、今時の災害は、私は最初申し上げました明治二十九年と四十三年に次ぐ大災害ではないかと存ずるのでございます。ここに三たび目に国会対策として、治山治水根本対策が立てられようとしておると存ずるのでございます。  今度の治山治水対策の問題は、従来いろいろと全国的に河川改修をすでに行つており、それを検討しようというのが根本でございます。現在全国水害を受ける危険のある面積が、二百二万町歩を算定せられております。この二百二万町歩の中に戸数約四百万、八口約二千万人というものを包含をいたしておるのでございます。毎年この二百万町歩のうち。どこかしら五十万町歩ずつ平均いたしまして水害を受けておる現状でございます。この二百万町歩のうちの五十万町歩というものか、年々循環をしておるという実情でございます。毎年の災害被害額が、二千五百億程度に上ると推定をいたしております。かような状態を、特に終戦後毎年繰返しておる現状でございますので、この災害契機といたしまして、この根本対策を立てたいという趣旨で計画を進めておるのでございます。  そこで河川計画を、各河川につい検討をいたしておるのでございますが、終戦後は戦争前と比較したしまして、川の状態がいろいろと変化をして来ております。従いまして、そういう変化に応ずる今日の河川計画を立てたいというのでございますが、全体としては、あまり非常な変更をする計画ではございませんけれども、ごく部分的な特別な河川についての計画変更ということになるのでございます。全体として考えておりますのは、治水方式検討をすることでございます。これは従来、比較的に下流堤防改修というものが治水根幹をなしておる。これは明治五年オランダ人が来て指導をして以来とられた日本治水方式でございますけれども、今日の情勢は、すでにこれを許さないような事情も多々出て来ておるのでございます。そこで世界的な治水方式ともにらみ合せ、かつ今日の日本の諸事情を参酌いたしまして、今後の治水方式はできるだけ上流処置をするいわゆる治山の問題と、上流地域における土砂崩壊の防止を中心にし、かつ上流洪水調節用ダムを建設するということにいたしたいのでございます。今度の白川上流、阿蘇山及び門司、小倉の山の崩壊、あるいは北松地帯の問題、あるいは和歌山の水域、有田川あるいは日高川の上流地帯に見ますように、土砂崩壊が非常に多かつたのでございます。これはその原因についても、いろいろと研究をいたしておるのでございますけれども、要するに、山の谷間の脚が非常に弱かつたというのが重大な原因でございます。こういう山の脚、いわゆる山脚を防止する工事及び谷どめをやつて行く、いわゆる渓流工事砂防工事として進めたい。それから上流洪水調節ダムによりますものは、洪水用貯溜をするのみならず、今次の災害にかんがみましても、流木が多かつたので、流木貯溜としての効用を上流調節池が果すのでございまして、洪水調節池は、ひとり洪水のみならず、流木、流砂の貯溜作用を兼ね持たせることにいたすのでございます。  下流の従来やつております河川堤防改修につきましては、これももちろん等閑に付することのできない問題でございまして、たとえば筑後川のごときあれだけの水量下流に参りますと、いかに上流治山が行われ、あるいは砂防工事が行われましても、あれだけの水量になつて参りますと、洪水調節池がございましても、なお相当な水量を下に流すのでございます。従いまして、それらについても下流堤防改修という問題は、やはり重要な一つ工事として進めて参らなければならぬのでございます。ただ、従来こういう堤防の余裕の高さとか、あるいは堤防方式がやや包囲式であつた。というのは、堤防があまりにきちんとでき過ぎて、非常な異常洪水の場合に、それが氾濫をした場合の処置についての考慮が払われておらなかつた点については、今後是正をいたしたいと考えておるのでございます。このためには霞堤、あるいは溢流堤というような方法によつて一定地域計画的な氾濫をさせる、あるいは流水をさせるというような措置を講じたいのでございます。  それから、主として下流でございますが、熊本の白川にかかつておる橋梁等を見ましても、非常に橋梁等河川氾濫に重大な役割を来しまして、たとえば白川上流の子飼橋のごとき、あれに流木が詰まつたために、横の方に氾濫をして水が流れたというような状態であります。橋梁架設地点橋梁の径間等の問題は、その工法について今後必要な規制をいたすようにしたいというように考えております。  こういうような点を考慮して、河川計画というものを再検討いたしておるのでございます。これらが大体でき上つたといたしまして、今後の実施をどうするかという問題になるのでございますが、実施は現在直轄河川として、北海道を含めまして九十三本の重要河川直轄として実施いたしております。     〔久野委員長退席内海委員長代理着席〕 これは極力推進をいたしたい。さらに中小河川は現在約六千本あるのでありますが、このうちの特に急ぐもの一千百本程度重要中小河川として実施をしたいのでございます。  これらは、河川工事及び砂防工事と、上流から下流に至るまで一貫総合した計画のもとに実施をいたしたいのでございます。その次のページにこれを実施するに必要な経費を書いてございます。直轄河川特殊河川——特殊河川と申しますものは、北海道だけの河川でございます。中小河川局部改良直轄工事としての堰堤補助工事としての堰堤直轄工事としての砂防補助工事としての砂防、それから東京、大阪の高潮対策としての工事、これらを全部包含いたしまして一兆一千七百七十三億でございます。これは工事期間を、直轄河川を十年程度特殊河川を十年程度中小河川は十五年、局部改良は十五年、直轄堰堤は十年、補助堰堤は十年、直轄砂防は九年、補助砂防は十五年、高潮対策としての工事は、二十九年度から二箇年という程度実施をいたしたいという計画でございます。これは直轄河川中小河川よりも短かくしてあります。逆にいいますと、中小河川の方を五年ほど延ばしてございますのは、河川改修方針として、直轄河川部分、いわゆる根幹となる河川部分をまず完成をしたい。その支流等になつております中小河川は、幾分根幹部河川よりも工事を遅らせているという方針をとりたいのでございます。補助砂防工事が十五年となつております意味は、砂防工事は、御承知のように一つ谷間にいたしましても数本あるいは十数本という堰堤を一本の渓流に入れて行くのでございますが、これは一時に数本のものを入れる必要はないので、逐次砂防堰堤を増加して行くというような工法をとるために、こういうように年限をずらしてあるのでございます。砂防の効果は、十年ぐらいには全部発揮をしながら、その後なお工事を増加して行くという方針でございます。  次に、河川砂防に関する根本的調査計画でございます。これはただいま申し上げましたように、多くの河川については、今日の計画でそのまま行けるのでありますけれども、検討を要する部分については早急に検討をするということと、河川工事等は、長年の調査資料に基いて計画をすべきものでありますので、将来のためにも、今日仕事をしておるものについても、なお種種の調査をして行きたい。河川計画も、二百年、三百年というような基本的な資料が出て参る時分になると、非常に正確な計画ができるのでございますが、そういう性質を持つておるのでございまするので、調査計画というものはうまずたゆまず続けて参りたいのでございます。  それから水防態勢強化及び応急復旧用資材の問題。これは今度の水害等にかんがみましても、応急用資材を持つてつて、あるいは借りて、早急に橋梁復旧をしたというような問題もございますので、そういう資材等備蓄、あるいは水防態勢を整えるために水防倉庫だとか、水防資材備蓄をするとか、水防に関する災害時の災害を受けた者に対する補償の制度を確立するというような方途をとりたい。  八は、河川管理強化及び河川愛護運動でございますが、これは今日ごらんになりますように、各河川堤防及び河川敷地が、まだ耕作地として残つておるところが非常に多いのでございます。河川敷地の中がたんぽになり、あるいは畑になつておるような状態が非常に多いのでございます。これは洪水時に川底の土砂を押し流して行くことを促進するのでございまして、われわれとしては、早くこういう状態是正して、河川敷洪水時に土砂の洗掘等が起らないような状態に、常に良好な管理をいたしたいのでございまして、こういうような河川管理監督等も今後は強化をいたしたいのでございます。  そのほか気象観測等観測及び洪水時の通信施設整備拡充、あるいは工事実施機構刷新をして行きたい、あるいは工法も極力刷新をしたい、あるいは今後工事が盛んになつて参りますにつれて、極力機械化工法によりたいと考えております。たとえば、堤防工事一つにいたしましても、従来は機関車でトロツコをひつぱつてつて行つて、その現場に捨てるというだけの処置をいたしております。しかし、これはやはりブルトーザー等で押して、それに乗つて固めながら突き上げて行くというような方法をとりたいのであります。  以上が、大体この計画概要でございまして、まだ二、三、たとえば所要人員の問題とか、所要資金の問題がございますが、これはまだ今日申し上げるのに早い問題でございます。  なお、最後に河川法等関係法令整備の問題でございますが、これは今次の災害にかんがみましても、いろいろと是正を要する、あるいは増補を要する問題がございます。これらについしも、早急に研究を進めたいと思います。大体今ので概要を申し上げたのでございますが、資金の問題についてちよつと補足をいたしますと、今総額で一兆一千七百七十三億と申し上げたのでありますが、これを中小河川の一番長いので十五年、直轄河川で十年くらいの配列に計画をいたしてみますと、たとえば二十九年度ではそのうちの千円四十四億となるのであります。そうしますと、そのうちの予算に計上する自費は八百九十九億、約九百億程度来年の予算として必要とする見込みであります。今年度二十八年度のこの九百億に相当する予算は幾らかと申しますと、二百六十七億であります。ですから約三倍半ぐらいになりますが、今年度の予算の三倍半程度のものを来年度必要とするという結果になるのでございます。大体の規模はその程度と御了承願いたいのであります。  以上概略御説明申し上げます。
  6. 内海安吉

    内海委員長代理 昨日の委員会におきまして、岡村君並びに中島君、さらに私より国政調査報告をいたし、かたがた質問があつたのでありますけれども、それは後刻に譲りまして、せつかく戸塚大臣が出ておりますから、ただいまの説明に対して質疑に入りたいと思います。  まず通告順がありますので、それによつて許すことにいたします。田中角榮君。
  7. 田中角榮

    田中(角)委員 いまさら治山治水議論でもないわけでありますが、今次の、明治より第三回目の非常に大きな災害契機として、われわれ委員会及び建設省当局等が、多年にわたつて研究をして来ておつた種々な問題に対して、結論が急がれておるようでございまして、はなはだ欣快にたえない次第であります。なお、ただいま米田河川局長から、具体的な方式等に対する御説明を徴したわけでありますが、私は、もうここまで来たならば、議論段階ではない、そして政府国会も、特にこの問題については、与野党の別なく、ひとつ勇敢に、これをいかに実施をするかというところに結論づけられておると考えておるわけであります。ただいま十三項目にわたつて説明があつたわけです。もちろんこのすべてに対して賛成でありますが、これをいかにして実施に移すかという問題に集約せられると考えております。その意味において、私は三つ、四つ、この十三を集約をして、われわれ委員会を主軸として、具体的な処置を講じなければならない。しかもその問題に対しては、建設大臣としてではなく、国務大臣としての戸塚大臣にも、非常に強い決意と努力をしていただかなければならないというふうに考えておるわけであります。  その意味におきまして、まず第一の具体策としましては、治山治水利水に対する一連計画樹立を早急に急がなければならない。これはもちろんただいま米田さんが説明された中にも、そういうことが書いてありますが、集約をして申し上げて、一連計画の樹十ということになるわけでありますが、この具体策としては調査、測量、観測機構整備ということと、もう一つは、ちようど行政機構改革が進められておるのでありまして——、これは歴代内閣のかけ声は、常に行政機構改革ということになつてはおりますが、龍頭蛇尾に終つておるようであります。私はこの水害契機にして——このままで進めて行つたならば、一生間の総予算額の平均四分の一ずつ毎生災害を繰返しておる状態でありますし、年間国民の総所得額の五%から一〇%にわたるところの厖大な損失を繰返しておるのであり、特にこの種の計算は、今の段階においてこういう数字が出るのでありまして、災いはまさに災いを呼ぶわけであります。だから、この災害に対して処置適切を欠いた場合には、この数字が一年後、二年後には、もつと大きく飛躍するわけであります。水を治めるものは国を治めると言つておるのでありますが、まさに終戦後の日本の政治の焦点治水にあり、こう言つても過言ではない状態でありますので、行政機構改革という焦点は、私は水行政機構一元化ということに集約されても誤りでないということを考えておるわけであります。その意味におきまして、行政機構の、特に水行政機構一元化ということに対して、大臣の所見をただしたいということと、いわゆるこれが機構改革に対しては、勇敢にひとつ立案を願い、実施に運んでいただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  その次に、先ほど米田さんからも申ざれた通り、水の憲法であるといわれておるところの河川法改正も、幾たびか議論を続けられておるわけでありますが、この種の法律としては、明治二十九年制定以来、抜本的な改正が行われない。旧憲法そのままであるというようなものは、河川法改正を残してはないのでありまして、これはもう閣内統一とか、そういうふうな段階通り越しておる問題でありますので、特に行政機構一元化とあわせて、早急に河川法政府提案でお出しになつていただきたい。もし政府提案でお出しになれないというような事情のときには、建設委員会十分連絡をとられて——われわれも過去七年間にわたつて、この種の問題に対し、小委員会をつくつて研究し、しかも成案はすでに得ておるのでありますから、これが実施に対しては、当委員会としても、来る臨時国会には勇敢に提出をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  第二の問題としましては、工法刷新及び工事実施適正化をはかるという問題に集約せられるわけでありますが、これに対しては、やはり公共事業法制定、または建設業法抜本的改正ということをお取上げにならなければならない。先国会においては建設業法のまつたく小さな改正に終つたわけでありますが、実施機構に対しては、こういう法制化を急ぐ以外にないのでありまして、この問題にもいろいろな問題がありますが、いろいろな問題があるということをもつて、荏苒日をむなしゆうしている場合には、国の災いというものは、防ぎ得ないのでありますから、これが法制化に対しても、われわれ自体も、研究を進めるというよりも、これが制定に対して努力をするつもりでありますので、この種の立法及び抜本的な改正に対しては、大臣もぜひ熱意を示されて、これが実現をはかられたいと考えておるわけであります。なお、先ほど米田さんが、工法の問題に対して言われたのでございますが、新しい機械化とともに、霞堤等の存続という、まつたく違つた面から水を論じられておるのでありまして、この工法には、今建設省機構の中でも、研究所その他があるのでありますが、やはり日本の戦後というものは、戦前の技術者の考えた治水と多少技術的に違うという面もありますので、私はこういう新しい総合的な工法刷新については、もう少し広く人材を求めてこれが適正化をはかつていただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。     〔内海委員長代理退席委員長着席〕  第三の問題としましては、治山治水利水計画実施に必要な資金措置、こういうことであります。先ほども申された通り明治二十九年に非常に大きな災害があつた。そのときには、ちようど日清戦争賠償取立金三億五千万円のうち千万円を基金に出されたということであります。私はちよつと逆算して考えてみたのでありますが、千倍として百億円であります。米の値段から私ちよつと逆算してみると、約一千億近い金が基金として出されたわけであります。明治二十九年の災害対策としてぴんと頭に入るのは、一千億の金を出した、五千倍としても五百億円金を出しておるわけであります。いつでも治水計画は立てられるのでありますが、これを立てたら実施しなければならぬ。実施をする場合には、金の問題がある。この金の問題が解決しないところに、絶えず問題が起つておるのでありまして、もうすでにこの金の問題というのは、最も早く解決をしなければならない問題である。その意味では、これは与野党というよりも、時の政府が何党にかわつても、少くとも日本治山治水利水の面に対するこの種の法律というものは、当然継承せらるべきものであります。その意味におきまして、やはり法律的義務を時の政府に負わせなければならない。また特に基準立法がなくしてこの種の問題が解決せられておる、現行河川法だけによつてつておるというところに根本的な問題があるのでありまして、この問題に対しては、やはり治水利水計画の十箇年計画法というようなものをつくる必要がある。そして結論的には、いかなる内閣であつても、これが十箇年計画法によつて年度予算の中でそれだけのものが天引きせられるのだというところまでやらなければならぬ。都市計画に対しても、今五箇年計画法その他があります。世界においても、復興に大きく力を入れているソ連におきましても、どこにおきましても、五箇年、十箇年という準拠法によつて予算を拘束しておるのであります。これは今の時代において当然なことだと考えるわけでありまして、名称はどうあろうとも、治水利水計画の十箇年法、または大きく取上げるならば、敗戦日本としては国土計画十箇年法の制定を急がなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。  なお第四としては、昭和二十九年度の予策編成及び今年度の補正に関してであります。これは財源がないというのは、確かにもうすでに今年度食い詰めてしまつて、二十九年度の財政投融資関係はほとんどないといわれております。なおその数字的確性に対しても、私たちもそれを認めるものでありますが、これはわれわれの今までの予算編成上の観念において財源がないというのであつて、今こそ新憲法下における新しい議院内閣制がつくられて、総理大臣国務大臣というものは、いわゆる官僚が、今までの尺度で求めたところの財源がないという問題で、二十九年度の予算を編成してはならないということを考えておるわけであります。しかも治山治水利水というものが、これは欠くべからざるものであるということが事実であるならば、一兆で押えなければならない二十九年度予算であつても、十箇年計画法に盛られたものは天引きをしなければいかぬ。もちろん今までの総花式の予算編成は廃さなければならぬ。これほど貧乏した国が立上つて行くのでありますから、総花式でもつて予算を組んで、これだけの大事業ができようはずはありません。三年、五年とあるものは出さなければならぬということに勇敢に手を打たれなければ、この問題の解決しないということを考えておるわけであります。私は二十九年度の予算編成及び二十八年度補正の編成にあたつて、これこそ総理大臣は身を挺して、大蔵大臣にまかすというようなことでなく、総理大臣のほんとうの任務というものは、最後のどたんばで右のボタンを押すか、左のボタンを押すかということにかかつておるのでありまして、今こそ私は、基金制度に対しては財政的な技術屋のみにまかすことなく、もつと真剣に、もつと新しい構想を取上げて、勇敢にこれが処置に当らなければならないということを考えておるわけでありまして、財源がないなどということを考えておるならば、このまま水禍とともに日本は滅亡の深渕に落ちるわけであります。私は、その意味におきまして、治山治水費及び災害復旧費は予算から天引きをして、十箇年計画法、もしくは十五箇年計画法実施が完全に行われるようにしていただきたいということを考えるわけであります。  なお申し上げたいこともたくさんあるのでありますが、これはもう釈迦に説法でありますから、以上をもつて私の質問及び意見は終るわけでありますが、これに対し建設大臣の御答弁を煩わしたいと思うわけであります。
  8. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 だんだんのお話で、ございましたが、今後の治山治水の恒久の対策としては、大体先ほど詳しく局長から申し上げたので、御了承いただけると思いますが、私はせんだつて災害等を考慮してみて、やはり戦後の日本国土のあり方というようなことからいろいろ考え合せまして、今度の恒久対策には、どうしても山の元で水の処理をするということが一番根本だ、こういうふうに考えております。もちろん、河川改修その他工法なりあるいは機械化の問題もいろいろありますが、根本はそこにある、これに集中したいという気持でおるのであります。なおそれについて従来問題になつております、長年皆さんが御心配になつておりまする河川法改正ということは、ぜひこの際実現をされなければいけない、これもかたくさように考えております。  ただ、ただいま田中君からお話の機構の改革の問題がございましたが、これは国政百般に通ずるところであつて、行政事務というものは、きわめて複雑でありますので、こちらで考えた通りにまとまるものでもなし、これは一般の機構改革の問題にあわせて、私としても十分考えて参りたい。目下いろいろ事務当局等とも研究を続けておるようなわけでありまして、それと引き離して、河川法は水系一本というやり方がはつきりいたしますれば、今後の治水対策としては私相当に効果があげられることになるであろう、かように考えておる次第であります。その他建設業法の問題等につきましても、かねての皆さんの御意見もありますので、十分に考慮いたしたい、かように考えております。  なお、資金の問題、これが確かに一番難物であります。難物でありますけれども、ただいまお話のように、この際相当の資金を、国の財政の許すとか許さぬとかいう問題を超越してでも考えて行くということが、ほんとうにわが国の今後の国土の調整といいますか、整備という上から大切な点だということは、肝に銘じて考えておるつもりであります。  なお、法律にするかどうかというような問題は、私にはよくわかりませんが、少くとも継続費で、一種の縛るという意味もありましようけれども、そういうふうなやり方でなければいけないのではないか。それからまた、単に建設省当局が考えておるのみならず、これは政府としても十分にこの問題については力を入れて行くつもりでおるのであります。目下恒久対策につきましては、御承知通り関係閣僚を中心とした治山治水協議会というものができておりまして、ここ数回の会合で、この対策ははつきり立てたい、かように考えておる次第であります。  大体以上の通りでございます。
  9. 田中角榮

    田中(角)委員 建設大臣の御答弁で、大体満足をしたわけでありますが、新しく主計局長になられた森永さんがおいでになつたようでありますから、私の今の話を聞いていただいておるとよかつたのでありますが、私の話が終つて大臣の答弁のときにちようどおいでになつたので、繰返して申し上げる必要はないと思いますけれども、計数的に非常に明るいあなたでありますから、簡単に申し上げますと、戦後すでに毎年千五百億ずつの災害を重ねておるわけでありまして、年度予算の総額の四分の一が費え去つておるわけであります。ただ、この数字だけを考えてみますと、大したことはないのでありますが、国民総所得を四兆ないし五兆に押えた場合は、これは五%ではないかということが考えられるのでありますが、この山と水の問題は、私が言わないでもおわかりのように、災害災害を呼ぶのでありまして、これが五、三の比率で三箇年で終らないという場合には、火は火を呼び、災い災いを呼ぶという非常に古い簡単な言葉でありますが、これほどはつきりしておることはありません。お隣の支那でも、水を治める者は国を治めるという言葉がありますが、今の日本はまさにそうであります。水を治める者は国を治めるというわけでありまして、このままで進めて行つたならは——これは何人でも考えられるところの問題でありますが、特に私はひとつ大蔵委員にしてもらつて、今度少し財政の勉強をしようと思つておるのでありますが、戦後の予算編成には、新しい憲法がしかれて、特に議会内閣制であり政党政治でありますから、やはり大衆の声も聞かなければならぬということで、結論的には総花的になつております。これは新憲法下におけるこういう制度一つのマイナス面の露呈であります。やはり戦争に負けた日本がこうして立ち上るのですから、ある程度ある面においては窮乏も忍ばなければならぬ。ある面においては、生産的な面に対しては勇敢に投資も行わなければならぬ。特に二十八年度の財源が枯渇をしておりまして、二十九年度の予算編成に対しましては、財政投融資はほとんど考えられない。二十八年度補正においても同じく財源がない。もちろん、あなた方が言われることも、私たちはそのまま受入れるわけであります。しかし、こういうふうな予算の編成の仕方とか、しかも二十八年度においては、公共事業費で盛られておる新規事業でさえも押えなければならぬじやないか、これは確かにわかるのです。それでまたここでもつてわずか十億か十五億のものを受けることによつて、来年度はそれが十倍になつてはたしてつけられるかという考えはわかりますが、私は釈迦に説法式でありますが、私の考えをもつてするときには、他面においてここにどうしてもやらなければならぬ問題があるのでありますから、これはやはり二十九年度の予算及び今年度の補正等については、時の政府が大きな線を打出して、その線に沿つたところの事務的な技術的な操作を進めてみるということでなければ、この二十九年度の予算編成はできないのでないか。できなければ、こんな治山治水十箇年計画を二十箇年計画にしたところで、これは問題になりません。こういうことを明治初年から続けておるところに、相かわらずの災害が続いておるのでございまして、先ほど米田君の説明の中で、たつた一つ私の頭の中にぴんと入つたのでありますが、全国的な災害は三回目である。その第一は明治二十九年である。ちようど三億五千万円の日清戦争賠償金が入つて来たから、そのうち一千万円だけ災害基金として出した。米の値段から言いますと、ちようど五千倍でありますから、二十九年度は五百億であります。タバコや何かの一万倍という大きな数字から言うと、これでさえも一千億という程度でありますが、実際今の公共事業というような費目は、予算面においては相当大きくとつておるのでありまして、これ以上とれないというけれども、確かに実際の需要する金額に比べると非常に小さいわけです。だから、そこに金はない、ないそでは振れない。但し、やらなければならぬ、これが財源一ぱいだというのが毎年の予算でありますが、少くともあなた方は専門家でありますから、今度は財政インフレになるとかそういうことではなく、知恵をつけられて、インフレにならない金の出し方もあります。私たちも、まつたくどうにもならない会社を引受けて、金をうんとつき込んで何とかなる場合もありますから、私は二十九年度の予算編成及び二十八年度の補正に対しては、これは大蔵省の財政当局が新しい予算編成に対して、大蔵省の財政技術屋にまかすか、新しい制度をもつてやらなければいかぬかという、一つの試金石だと思います。これは財政技術屋にまかせる段階にあるか、もしくは新しい構想のもとに編成しなければならぬか、国家的に見て私はそうなると思う。こういう難局に新しく主計局長になられたわけでありますし、次官は特に前主計局長でありますから、これは大蔵省として非常に大きな問題であります。またわれわれは弱小二百二名の与党しか持つておりませんが、二百二名のときに、よくもこういう重大な難関にぶつかつた。今こそ勇敢にこういう問題に飛び込まなければならぬということを考えておるわけであります。私たちは、ただ党人であるから、政党に属するからというような簡単な問題ではなく、これはもう予算編成という問題に対しては、与野党いずれが内閣をとつても、こういう問題は今年よりも来年、来年よりも再来年ということになつて、どこかでもつてこれは打切らなけければならぬ、新しい編成方針に切りかえなければならぬ、こういうふうなときだろうと思います。特に二十八年度は、新聞に散見するところによると、まずたいへんであります。これは自由党内閣を持つておる与党は、たいへんだというのじやなく、特に新規事業を打ちとめる、とにかく二十八年度の補正も何もできない。二十九年度のこの種の計画をつくつても、金が出ないというのでありますと、これはもうだれが天下をとつても、とてもやつて行けません。だから、私は今こそ、ないそでは振れないというようなことではなく、打切るものは打切る、政治的な圧力に対しても、敢然として抗するものは抗する。そのかわりに、あなた方は財政技術屋として、いいと思うものは勇敢に内閣に提示をしてもらわなければならぬ、また内閣もこれを大幅に取入れるということでなければいかぬと考えておるのでありまして、私たちは、あなた方を呼んで何回も言おうとは考えておりません。もう右か左か、右のボタンを押すか、左のボタンを押すかという段階でありますので、新しい局長とされては、ひとつこの治山治水十箇年計画というものに対とて、ちようど大臣がおいでにならないので事務局長から答弁を煩わすわけでありますが、ひとつあなたのお気持を率直にお述べになられて、今までのようなただ財政技術上の問題でもつて片づけられないということだけ、しつかりとお考えになつていただければ幸甚だ。そのかわりに、私自身も建設委員会におるから、建設省のことばかり言つておると言われてはかないませんから、財源というものはほんとうにないのかどうか。大蔵委員にでも転向して、ほんとうにあなた方から教えを請うつもりでおります。そういうものをつくつたら、これに身を入れて実施に移すには、どうしてもそこまで考えなければ、これはどうにもならないことであつて、私たちもそこまで考えて意見を伺つておるわけでありますから、でき得れば二十八年度の補正及び二十九年度に対するこの種の問題に対する見通しをお聞かせ願いたい。
  10. 森永貞一郎

    ○森永説明員 手違いで、たいへん遅れて申訳ありません。私も就任早々でございまして、まだ予算検討は十分いたしていないのでございます。従いまして、大いにしろうとくさいお答えをすることになるかもしれませんが、ごかんべんを願いたいと思います。  年々災害を繰返す面からも、根本的に治山治水方策を立てることの方が急務であるということにつきましては、私どもといたしましても、全然同感であります。内閣で開かれております治山治水協議会にも、二、三回参加いたしておるわけであります。伝えられる一兆数千億の治山治水方策、これは何分にも金額が厖大でございまして、私どもといたしましても、これを消化するのに、いささか当惑いたしておるのでございますが、しかし、先ほど申し上げましたような趣旨から、この際施策の重点といたしましては、やはり第一順位に考えるべき事項だと考えておる次第でございまして、私どもといたしましても、財政的にどの程度のものが捻出できるかどうかというような点につきましては、せつかく検討中でございます。  ただ、この間もお話がございましたが、昭和二十八年度の補正にしろ、来年度の本予算にいたしましても、災害復旧費の要請がございます。軍人恩給の増加額であるとか、給与の問題であるとか、要請の方は数え切れないほど多いのでありまして、その間見合つて、勇敢なるところの治山治水計画に手をつけて参りますのには、やはり予算全体、ことに公共事業費につきまして、今までのようなやり方をこの際根本的に反省し直しまして、超重点主義と申しますか、これによつてそのような財源を捻出して行く。その意味で、ただいま非常に心強いお言葉を承りまして、私ども大いに感謝しておるのでありますが、よほどの決心をもつて、この総花主義を排して超重点主義に徹するということをやつて行かない限りは、どうにも捻出のしようがないのでありまして、その点につきまして、しろうとながら今いろいろと検討いたしておるような次第であります。災害復旧にしろ、治山治水にしろ、財政の許す限りできるだけのことはしたいと思つておるのでありますが、それには、ただいま申し上げましたように、財源の捻出について今までとかわつた考えをもつて超重点主義的に予算編成に臨む必要がある、さように直感いたしておる次第であります。
  11. 田中角榮

    田中(角)委員 もう一点だけ。簡単に結論だけを申し上げておきますが、もちろん新任局長でありますし、大臣もおいでにならないのでありますから、結論的なことは御発言になれないわけでありますが、私は二十八年度の補正と、それからあなたの力で組まなければならぬ、また組みつつある二十九年度予算に対して、一言だけ申し上げておきたいのは、いつの年でもそうでありますが、特に戦後は、私が言うまでもなく敗戦国として消費面に対して——例はあげません。例をあげますと、私も代議士でありますから、その方面からたたかれますから申し上げませんが、いわゆる生産の伴わない、敗戦国として当然負わなければならない消費面に対する国家支出の面が多少多いようにも考えております。いわゆる生産面に投資しなければならない額と比べると、比較的多い。各党から持ち出されるところのいろいろなものが多過ぎて、総花を政府自体が決定してくれなければという結論になることは当然であります。ただ、技術的に簡単に申し上げますと、とにかく予算書をずつと読んで行きますと、ある局部の特定な人の利益を代表するものが強く政治力を働かしますと、簡単に十億、二十億を見ております。ところが、川とか災害——災害のときはもうたいへんであります。ところがある時期が過ぎますと、利害得失の対象になる事項というものは、どうも各党とも、災害のときだけぱつぱつと運動します。ちようど災害対策委員会は、二十幾つかの立法をやりましたが、それに対してどの程度あなた方と妥協ができるか。これと同じでありまして、国民全般の利害の対象になる予算科目は、多少やはり計上額が少くなつております。率は確かに少い。だから、治山治水というのは、総額から見ると、公共事業費でもつてうんと食つているではないかというけれども、国の損耗という角度から見て行くとまだ少い。こういうふうになるのでありまして、予算編成をやるときに、私たちも与党としてあなた方と折衝をしたのでありますが、私たちが根本的に総花を打切つて、重点的な予算を組んで行こうとすると、やはりあなた方は技術屋ですから、その前に今までの踏襲予算の変型したものをさつと出されますので、なかなか直らないのです。今年はひとつあなた方が、今までの尺度に相当な技術的な面を加えたものを出すと同時に、やはり内閣や各党の意見をいれた、場合によつてはこういうものまで打切らなければならぬというような超重点的な予算と、一案をつくつてもらう、そしてあなた方自体は、そのときの政府自体の蒙を開き、議員自体の蒙を開くというぐらいにやつていただけば、たいへん幸甚である。そんなことは議員がやる仕事だと言われれば、まつたくその通りでありますが、どうも私たちだけでもやれないのでありまして、これはひとつお力添えを願つて、私たちが地方遊説などでばらばらになつてつて来て、さてやろうとして組んでいるときには、あなた方の事務案というものがさあつと先走つているということがあるのでありますから、今度の予算には、そのように非常にむずかしい問題を含んでおると同時に、これは年度年度に打切るものではなく、二十九年度からは、少くとも十箇年間継続の予算を組まなければならぬ。これはもう昭和二十年からそうであつたわけでありますが、どうも事実はばらばらになつてしまい、しまいには収拾できない。今年十億の新規事業を始めたら、来年は五十億になるからだめだという壁にぶつかつておるのでありますが、今度の予算はまだ相当時間もありますし、十二月の初めに提出することになれば、まだ三、四箇月、百日以上もあるのでありますから、これは十分連絡をとられて、時間的に、技術的に間に合わないから、今年度はしようがないからこの予算で何とかしようということのないように、新主計局長の絶大なる政治力及びそういう努力に期待を申し上げたいということを申し上げておきます。
  12. 久野忠治

    久野委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ私からも主計局長ちよつと質問いたしたいと思います。  ただいま同僚田中委員から、まことに力強いお言葉がありましたが、私もまつたく同感であります。その質疑に対して、主計局長は、災害を予防する意味からも、恒久的な対策根本的に打立てるべく、予算措置を講じなければならないという力強い御答弁があつたわけですが、この恒久対策の一環として取上げられておりますのが各種の治山治水事業だと思います。この治山治水事業は、年々新しく追加されまして、新規の事業が加わつておるわけですが、最近新聞紙上で拝見をいたしますところによりますと、何がしかの新規事業は打切るという方針であるかのごとく発表がなされておりますが、そのような事実がありますか。
  13. 森永貞一郎

    ○森永説明員 決定ないし発表されたという事実は、全然ございません。ただ、昭和二十八年度の補正ないしは来年度の予算の編成に関連いたしまして、何分にも財源がきゆうくつでございますし、一方災害対策ないしはただいまお話の治山治水その他の経費の増額も必至でありますので、公共事業の施行につきましても、一層重点的に考える必要がある。いろいろ御批判もあろうかと存じますが、率直に申しまして、今のやり方につきましては、総花主義にいたしておる点も少くないのでありまして、そういう点につきましては、この際再検討をする必要があるのではあるまいか。そうしますと、今年からもう——治山治水災害復旧に関係のないような公共事業等もあるわけでありますから、総花を排する意味で、ある程度検討してみたらどうかというような話が起つておるという程度でございます。決定ないしは発表はいたしたことは、全然ございません。
  14. 久野忠治

    久野委員長 それは治山治水事業等に関連した事業については、考慮されておらないということですか。
  15. 森永貞一郎

    ○森永説明員 治山治水ないしは災害復旧の経費を捻出するために考えておるわけでございますから、治山治水の経費に四百億ぐらい計上してあると思いますが、それに手をつけるということは、本末転倒ではないかと考えます。具体的にまだ検討をし尽しておるわけではございませんが、そういうようなことは、将来も考えるべきではないと私は考えます。
  16. 久野忠治

    久野委員長 治山治水に関連した新規事業は打切らないと解釈してよろしゆうございますか。
  17. 森永貞一郎

    ○森永説明員 新規事業につきましては、根本計画も打立てられることでありますから、それとの関連において、あるいはこの際見合せて、将来の大きな計画の一環として考えた方がいい。今それに手をつけることは、将来の大きな計画の支障になるというようなものもあるかもしれません。そういうものについて全然手をつけないということを、ここで確約申し上げるわけには参りません。具体的に検討しなければ結論は出ないわけですが、治山治水ないしは災害復旧費を捻出するための経費でありますから、そちらの方の経費を減らすということはおかしい。但し、具体的な問題になつて来ると、必ずしも一律に行かないということになつて来るわけであります。
  18. 田中角榮

    田中(角)委員 私もそこまで言いたかつたのですが、言わないでおりましたら、委員長がやはりそこに触れられておりますから、やはり触れられると、くぎだけさしておかなければなりませんが、そういうようなうわさもありますし、またうわさばかりでなく、超重点的というと、そういうことも考えなければなりませんし、また二十八年度の予算も通つておりますし、建設省が出された計画は、厖大なものでありますし、その中からごく一部分をとつたものだけであつて、これは治山治水、利水という面に関連する事業の中で、こういうものを二十九年度の新規の事業や何かをひつくるめて、なおなお足らないから、これをいかに捻出しようかということを言つておるのでありますから、建設大臣は、大蔵大臣ちようどおいでになりませんが、ここに一兆一千億というのは、閣僚協議会では、緒方副総理が大将になつてつてれられるのでありまして、これは主計同長とも十分お話になられて、超重点…というような感覚から、すでに二十八年度の予算は通つておる。公共事業の新規事業のものだとか、それから今までの関連事業であつて当然行わなければならないというような、今に残つておるようなものは、ひとつ建設大臣も、閣内において大いに強調せられて、できるだけ早く決定していただきたい。今のこういう問題は、各府県に関係がありますので、これが延びると、いろいろな面で陳情もしなければなりませんし、特に裏日本等は、十二月になれば降雪がありますので、事実上一箇月も二箇月も遅れると、二十八年度の予算には計上されたけれども、実際は二十九年度、しかもそのまま流すのはもつたいないということで、二十九年三月三十一日で終りましたというようなことをいつて、会計検査院にしかられるといけないから、ごまかさなければならぬ、またそこに犯罪問題が起きると思いますので、この点はまつたく議論の余地がないと思うのでありまして、これは早急に閣内において決定されるように要望しておきます。
  19. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 ここであまり具体的にお答えしてしまつて主計局長のお話になつたこともありますので、私が申し上げることはどうかと思いますが、お話の御趣旨は私まつたく同感であります。本日も閣議でこの件に触れておいて、代理の大蔵大臣が善処するという話合いをしております。これは遅れてしまつては、ほんとうに困りますから、その点は十分注意いたします。
  20. 堀川恭平

    ○堀川委員 先般私国政調査で、今回の水害の状況を視察して来たのであります。水害対策につきましては、いろいろな面から本年の臨時国会あるいは二十九年度の予算に相当盛られることと思うのであります。そこで、先般各都市を一緒にまわつたのでありますが、戦災復興の面については、実は大臣に御質問申し上げ、また来年度予算のときにも御獲得なさるようにお話があつたと思います。今ちようど主計局長が来ておられるから、私申し上げるのでありますが、五箇年計画になつて、百十五、六かの戦災都市の復興に対して、復興費が二百六十億だつたと思うのであります。ところが、その五箇年計画の今までの四年間は、五分の一ずつではなかつた。そこでしわ寄せが二十九年度になつて、二百六十億のものが約九十億になつておると思います。ところが、先般各都市に行つてみると、これをどうしてもやつてもらわなければ困るということを、相当強硬に言つているので、先般建設大臣にはお話して、大臣としては了承されておるのでありますが、ちようどここに主計局長がおられるから、私あなたにちよつとお聞きしたいと思いますし、あなたの御決心もお聞きしたいと思うのであります。五箇年計画の最後の年である昭和二十九年度には、この五箇年計画予算だけは十分に獲得できるように、予算面にお盛りになると思うのでありますが、その点ちよつとお聞きしたいと存じます。
  21. 森永貞一郎

    ○森永説明員 先ほども申し上げましたように、まだ新米でございまして、深く検討を遂げておらないのでございますが、来年度の予算につきましては、皆目まだ見当がつかない状態であります。先ほど来申し上げておりますように、来年度にはいろいろ制約がございますし、歳出の方は、重要なものが山積いたしておりまして、予算の編成難に遭遇しておるというのが実情でございます。二十九年度の予算の具体的な姿が、どういう形になるかということは、実は今日のところ、まだ見当がつかないのであります。都市計画費につきまして、残りを全額来年度に計上ができるかどうかというお尋ねでございますが、今のところは、非常に困難ではないかという感じがいたします。今後十分検討いたしますが、ただいま私どもが当面しておりまする状況から考えますと、困難が伴うということだけは御了承いただきたいと思います。
  22. 堀川恭平

    ○堀川委員 二十五年度から五箇年計画ということになつているのでありますが、それに百十何都市の戦災都市があります。これに対して二百六十億、この金でこの戦災都市の復興ができると思われますかどうか。私は、主計局長もできるとは思つていないと思う。むろん来年度に五箇年度の分が全部出ても、この戦災復興の都市計画はでき得ないのであります。そのあとの問題が、今まだ問題になつている状態でありますので、それがどうも危ないような主計局長のお話ですが、われわれといたしましては、この戦災都市を復興さすために、二十一年からやつてつてしかるべきであつたものが、御承知のようにああいう占領下であり、司令部から、戦災という名目が気に入らぬということで、二、三年遅れて二十五年からようやく認められたというような現状でありますので、この戦災都市に対しましては、相当御同情をなさつて、二十九年度の予算が済んでも、まだ引続いてやらなければならぬ事業が相当あると思いますので、それに対して主計局長が何とかこれだけは獲得するということを言われてもいいのではないかと思うのでありますが、どうでありますか。
  23. 森永貞一郎

    ○森永説明員 限られた財源の中で、それよりはるかに上まわつている財政需要を切り盛りするわけでございまして、予算編成が相当進んでおりますれば、具体的に都市計画についてはどうだということもお答えできるわけでありますが、まだあと三、四箇月先の問題でありまして、今日からどの部分は入れるということは、ちよつと御返答に苦しむのでございまして、先ほど申しましたように、御趣旨は十分検討をいたしますが、結果につきましては、ここでどうということを確約することができない点を何とぞ御了承いただきたいと思うのであります。
  24. 堀川恭平

    ○堀川委員 まだ二、三箇月余裕があるそうでありますから、私も安心いたしますが、これだけ言えば、頭へぴんと来ておられると思いますから、この問題は十分念頭に入れておいていただきたいということを申し上げておきます。まだ百日あるそうでありますから、その間に何度も局長の所へ行くかもしれません。とにかく行かぬでも、建設省の方から予算の請求があつたら、できるだけお考えくださるように、特に本日は希望を申しておきます。
  25. 三鍋義三

    ○三鍋委員 この終戦後の毎年平均水害の現況のところで、被害人口というのがあります。約二百七十万人とあるのですが、これはどなたでもよろしゆうございますが、この中で死亡とか行方不明というのはどれくらいになるかわかりませんか。ちよつと参考に聞いておきたいのです。
  26. 米田正文

    米田説明員 その内訳を書いてないので、そういう点はすぐわかりかねるのですが、御要求であれば、この次に資料を持つて参ります。
  27. 中島茂喜

    中島(茂)委員 水害地を視察いたしまして、現地においていろいろ要求のありましたことについて、建設省並びに大蔵省の見解をただしておきたいと思つたのでありますが、これは特別委員会の方でさらにお尋ねすることにいたしまして、本日は簡単に二点だけ大臣並びに主計局長にお尋ねをしておきたいと思います。  今回の水害で破損を受けました住宅でありますが、流失、全壊等。被害住宅につきましての災害復旧の方途は、法的に講ぜられております。ところが、半壊と申しますか、全壊、流失には至らなかつた、しかしながら相当手を加えなければ住居とすることができないというような住宅の数は、相当数に上つておるのであります。過去の福井の震災のときの例を私ども思い起してみましても、あの当時一戸当り五万円くらいの融資を国が行つた実例があるのであります。従つて、今回の被害地の罹災者から、前例にかんがみまして、ぜひともこうした破損家屋の修理費の融資をしてもらいたいという強い要望がございましたので、特別法を制定いたしました当時にも、附帯条件のような形をもちまして要望をいたしております。最近聞くところによりますと、これに対しまして建設省では、融資額あるいは融資の対象となる戸数等の構想がまとまりつつあるやに聞いておるのでありますが、五千戸くらいを融資の対象とし、しかも戸当り七万円ぐらいというお考えのようであります。しかしながら、これではとうてい罹災者の要望を満たすことは不可能だと思うのでございますが、この点に対して、建設省並びに大蔵省の考え方を、ひとつこの際承つておきたいと思うのであります。  もう一点は、建設大臣は、しばしば本委員会におきまして、今度の水害の場合に、災害を受けました災害箇所の十万円以下五万円まで、従来でありますと、地方公共団体が自分の力をもちまして復旧しなければならないこれらの災害箇所の復旧について、平衡交付金か、あるいは災害復旧特別交付金と申しますか、そういう形のものをもつて市町村にその復旧費を裏づけしてやろうという意味のことを二回ほど言明されたことを記憶いたしております。これは地方公共団体といたしまして、非常に大きな期待を持ちまして、その実現を要望されておるのでありますが、これに対しまして、建設省並びに大蔵省は、建設大臣の言明の通りに実行される構想でお進みになつておるか、この二点だけをここで承つておきたいと思うのであります。
  28. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 住宅の問題につきましては、なおあと住宅局長から申し上げます。  小災害の、県で十万円、市町村で五万円、この程度災害について特別の考慮をということは、しばしばお伺いいたしました。今回の災害については、そういう小災害を、お話があつたように、建設省で扱つておる災害の限度を下げるということは、将来の悪い例になりはしないかという心配がありますので、これは特別の交付金等の考え方で処理をして行きたいということは、確かに私たびたび申し上げてございます。ところが、建設省で直接これを扱うという段になりますと、現地の視察、査定というふうなことが、ほとんど言うべくして行われない。自然府県にこれをまかせるということが、最も適当であるという結論に達しておつたのであります。従つて、特別交付金といいますか、それは自治庁の仕事の方に移されなければならないという関係になつております。これは自治庁の長官ともしばしば打合せをいたしておつたのでありますが、当時、あるいは本年度において全部の交付をするというふうにおとりになつた面があるかもしれません。が、私の承知いたしておりますところでは、自治庁の長官が、どこかの委員会であつたと思いますが、これは一部あるいは交付金が出るかもしれない、また出ないところは起債に持つて行つてその償還を見てやろう。つまり本年度ではなかなか金もなし、できないから、将来地方の負担にならぬように見てやろう、こういう意味のことを話されておつたのを私も聞いております。また現在自治庁と私の方との連絡、打合せにおきましても、そういうふうな考え方で進んでおるということを私承知いたしておりますから、この点については、地方の負担の上に御迷惑にならぬように処理ができるだろう、こういうように考えております。
  29. 師岡健四郎

    ○師岡説明員 半壊住宅の点につきまして、お話の通り全壊住宅につきましては、公営住宅法により、その損害額に対して対策が講ぜられることになつたわけでありますが、全壊に至らぬ半壊住宅につきましては、従来あまりその対策を講ぜられた例がないわけでございます。しかしながら、今回の水害におきまして、全壊には至らぬが、相当の被害を受けたいわゆる半壊住宅を、そのままにするわけにはちよつといかぬじやないかというような事情でございます。もちろんきわめて軽微なものは、これはぼちぼちと直していただけばよいのではないかと思いますが、相当の被害のものにつきましては、これは何らかの対策を必要とするのではないかと考えられるわけでございます。そこでやはり補修費に対する転貸ということを必要とするのではないか。結局附帯決議にありました趣旨に沿いまして、転貸起債を認めて行く必要があるのではないかと考えまして、関係方面と折衝しております。自治庁方面におきましては、ある程度必要性を認めておられるという意見でありますが、ただ、その起債の資金問題があるわけであります。いろいろの災害対策に要する資金も、相当多量にいるわけでございまするし、そういつた資金面におきまして、これに出すところの資金がきわめてきゆうくつであるという大蔵省方面の見解でございますが、なお十分に折衝いたしまして、はたして絶対にないものであるか、何らか対策を実現する程度のものを出していただきたいと、さらに折衝いたしたいと思つております。
  30. 森永貞一郎

    ○森永説明員 半壊住宅の資金対策の問題は、ただいまお答えがありましたが、大蔵省の関係では、地方の財政計画に対して起債を幾ら認めるか、そういう資金運用部の方の資金運用の問題になつて来るわけであります。直接私の担当ではございませんが、よく問題の所在を伝えまして、十分検討をいたすようにいたしたいと思います。  なお十万円以下の単独復旧事業の財源の問題がございましたが、これは単独事業だけでなくて、補助事業に伴つても、いろいろ地方の負担はふえるわけであります。そのふえます地方負担に対しまして、地方財政計画をいかに編成するか。足りないところは、結局起債で見るという問題にもなつて来るわけでありますが、資金が十分あるだろうかという問題、そういう問題になつて来るわけでありまして、そういう地方財政計画全体の問題として今後検討せらるべきでございまして、これだけ切り離して取扱うことについては、困難が伴うではないか、さように考えます。
  31. 久野忠治

    久野委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ、本日はこの程度にて散会いたします。     午後三時十分散会