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1953-07-03 第16回国会 衆議院 建設委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 内海 安吉君 理事 瀬戸山三男君    理事 田中 角榮君 理事 山下 榮二君       逢澤  寛君   岡村利右衞門君       仲川房次郎君    松崎 朝治君       五十嵐吉藏君    村瀬 宣親君       三鍋 義三君    山田 長司君       中井徳次郎君    細野三千雄君       高木 松吉君    只野直三郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣 戸塚九一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      山内 隆一君         総理府技官         (調達庁次長) 堀井 啓治君         建設政務次官  南  好雄君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君         建設事務官         (計画局長)  渋江 操一君         建設事務官         (住宅局長)  師岡健四郎君  委員外出席者         議     員 岡  良一君         総理府事務官         (調達庁総務         部総務課長)  沼尻 元一君         建設事務官         (計画局総務課         長)      八巻淳之輔君         建設事務官         (住宅局住宅経         済課長)    鮎川 幸雄君         専  門  員 西畑 正倫君     ――――――――――――― 七月二日  委員高田弥市君辞任につき、その補欠として平  井義一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月一日  土地收用法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四一号)  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定実施に伴う土地等の使  用等に関する特別措置法の一部を改正する法律  案(岡良一君外二十六名提出衆法第一九号) 同月二日  後川右岸堤防築設に関する請願濱田幸雄君紹  介)(第二三〇一号)  大平地内の地すべり対策確立に関する請願(田  中彰治君紹介)(第二三七六号) の審査を本委員会に付託された。 同月一日  十号国道改良事業実施に関する陳情書  (第六一六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  産業労働者住宅資金融通法案内閣提出第八九  号)  土地收用法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四一号)  北海道防寒住宅建設等促進法案瀬戸山三男君  外三十八名提出衆法第一三号)  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定実施に伴う土地等の使  用等に関する特別措置法の一部を改正する法律  案(岡良一君外二十六名提出衆法第一九号)  九州地方における豪雨災害状況に関する説明聴  取     ―――――――――――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  建設大臣が、やむない所用のため少々遅れますので、九州地方における豪雨災害状況に関する説明は、大臣が御出席になりましてから伺うことにいたします。     —————————————
  3. 久野忠治

    久野委員長 次に土地收用法の一部を改正する法律案議題といたします。提案理由説明を聴取いたします。南政務次官
  4. 南好雄

    南政府委員 土地收用法の一部を改正する法律案につきまして、その提案趣旨及び法案概要を御説明申し上げます。  改正の要点は二つありまして、その第一点は、近時電源開発治山治水等ためダム建設事業が増加して参りましたが、これら事業準備ために測量、調査を行うにあたりまして、障害となる植物、かき、さく等を伐除し得るという規定は、現行法にありますが、地質調査ため土地試掘等、いわゆるボーリングをする場合の規定がありませんため土地所有者の同意が得られない場合は、ダム工事等準備段階におきまして行き詰まるという事態が起きますので、この点を解決いたしますため事業施行者は、知事の許可を受けて、ボーリングを行い得るよう規定を整備しようとするものであります。  改正の第二点は、公共事業施行に伴う用地の取得に関して、関係当事者の間に合意が成立しない場合に、土地収用手続をとる以前におきまして、これが解決されるよう、あつ旋委員によるあつせんという制度を設けようとするものであります。すなわち、用地問題はすべて、収用手続を開始する以前の任意交渉段階において起きるわけでありますが、この場合事業施行者はもちろん、土地所有者側土地收用法発動を見ることなく用地問題を解決し、円満に公共事業が促進せらるるのが望ましいのでありまして、当事者間の任意協議段階における第三者のあつせん制度の必要が痛切に感じられているのであります。従いまして本案のあつせん収用手続に入る前の段階において行われるのでありまして、収用手続に入りました以後すなわち土地細目公告という収用手続がありましたならば、これを打切ることとしております。これと同時に、あつせんが行われている間は、一定期間を経過しないうちは、事業施行者に、土地細目公告申請による強権発動を許さないことにして、あつせん制度を意義あらしめることとしております。  あつ旋委員は、事件ごとに、知事が、収用委員会の推薦に基いて、五人を任命することとし、そのうちの一人は収用委員会委員が当ることになつております。  以上が本法案提案理由とその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  5. 久野忠治

    久野委員長 本案につきましては、本日はこの程度とし、質疑次会に譲ることにいたしたいと存じます。     —————————————
  6. 久野忠治

    久野委員長 次に産業労働者住宅資金融通法案議題といたします。  本案につきましては、質疑は全部終了いたしております。ただいま委員長手元に改進党村瀬宣親君より修正案提出されておりますので、この際提出者よりその趣旨説明を求めます。村瀬宣親君。
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員 まず修正案を申し上げます。   産業労働者住宅資金融通法案に対する修正案   産業労働者住宅資金融通法案の一部を次のように修正する。   第九条第一項の表を次のように改める。  本修正案趣旨を簡単に申し上げます。  原案第九条におきましては、貸付条件が、貸付金限度利率償還期間、ともに金融公庫一般貸付の場合に比べて、相当きびしくなつております。これは一面民間資金導入あるいは資金能率的回転等ため措置ではありますが、委員会における審査の経過にかんがみましても、貸付割合の過小は、中小企業者の利用を困難ならしめ、償還期間の縮減は、償還金を多額にし、ひいては家賃を高めるごとき結果に陥ることは明らかであります。従いまして本修正案におきましては、貸付金限度耐火構造及び簡易耐火構造住宅については六割、その他の木造等住宅については五割五分とし、貸付金償還期間に関しましては、現在の金融公庫法規定と同様に、耐火構造の場合三十五年、簡易耐火構造の場合二十五年、木造等の場合を十八年といたした次第であります。  なお貸付金限度に、耐火的なものと、しからざるものとの間に五分の差をつけましたのは、金融公庫からの一般貸出しの場合に準じ、また耐火的な建物を奨励する意味からであります。  何とぞ本修正案に御賛成あらんことをお願いいたします。
  8. 久野忠治

    久野委員長 これより本案に関する修正案及び原案を一括して討論に付します。
  9. 田中角榮

    田中(角)委員 この際動議提出いたします。本法案並びに修正案に対する討論は省略して、ただちに採決せられんことを望みます。
  10. 久野忠治

    久野委員長 ただいまの田中角榮君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 久野忠治

    久野委員長 御異議ありませんので、さよう決しました。  それではこれよりただちに本法案採決いたします。  産業労働者住宅資金融通法案に対すむ修正案について採決いたします。本修正案賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  12. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よつて修正案可決いたしました。  次に、ただいま可決せられました修正案修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  13. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よつて産業労働者住宅資金融通法、案は、修正案の通り修正議決すべきものと決しました。  この際山下榮二君より本案に対する附帯決議提案があります。これを許します。山下榮二君。
  14. 山下榮二

    山下(榮)委員 ただいま御決定になりました産業労働者住宅資金融通法案に対する附帯決議提出いたしたいと存じます。  まず先に附帯決議の案文を朗読いたします。   産業労働者住宅資金融通法案に対する附帯決議案   政府は、本法施行に際し次の措置を講ずべきである。  一、現下の深刻な住宅難特に住宅不足の甚しい勤労庶民階層の事情にかんがみ、これに対する住宅対策を更に強化するとともに、その一環たる本法に基く産業労働者住宅建設については、最近の機会において貸付資金の増額をはかる措置を講じ、あわせて資金貸付範囲拡大貸付金限度引上及び貸付金利率の低減に努めること。  二、住宅対策審議会所要部会を設け、本法に関する重要事項についての住宅対策審議会意見を充分に尊重すること。  三、貸付金に係る住宅入居者資格及び家賃その他の賃貸条件について入居者意見を充分に反映させるために、必要な措置を講ずること。  四、勤労庶民住宅建設を促進するため、これに課せられている税金の減免に関し適当な措置を講ずること。  次に本案趣旨を簡単に申し上げます。第一に、貸付金は、昭和二十八年度の本予算に二十億円が計上され、これにより約六千五百戸の住宅建設が予定されておる由でありますが、現在の住宅不足数は三百万戸以上に及んでおるのであります。ことに産業労働者においても、百十九万戸の不足が数えられておるのに対し、これではあまりに僅少といわなければなりません資金運用部資金中には、厚生年金積立金が六百億円以上も含まれておりまして、これらの相当部分は、当然労働者住宅建設資金の財源として利用してさしつかえがないものと考えるのであります。政府は、すみやかに貸付金を大幅に増額する措置を講じて、建設戸政を増大すべきであります。これが実現すれば、次には地方公務員その他に対する貸付範囲拡大をはかり、また貸付金限度引上げて、中小事業者住宅建設に対する融資をも円滑化させねばなりません。さらに、政府財政資金の一部を投入することにより、貸付利率を低減し、もつて償還金を軽減し、家賃を低下すべきであります。  第二は、本法施行に際し、融資が一部大企業に偏することのないよう留意すべきはもちろんでありまして、これがためには、住宅審議会所要部会を設けて、本法の公正な施行に関し、常に当局意見を具申するごとき方法をとり、建設当局はその意見を十分に尊重して、本法の適正なる運営を期すべきであります。  第三に、入居者資格及び家賃その他賃貸条件に関しましては、入居者意見を十分に反映せしめるため、各事業主体ごと住宅管理委員会とでも称すべきものを設け、事業者及び労務者の代表により、適正なる運用を行うべきであります。  第四に、現在かかる労働者住宅に、相当税金が課せられている実情にかんがみ、その軽減措置を強化すべきであります。すなわち地方税たる固定資産税に関しましては、床面積十五坪以下の専用住宅に限り、三箇年間半減措置をとることが適当である旨の地方財政委員会の通牒が出されておりますか、大都市では、いまだ実施されていない状況にかんがみ、要すれば地方税法改正しても、これを徹底すべきであります。また国税である所得税及び法人税に関しましては、租税特別措置法により、現在賃貸住宅減価償却を損金に算入する場合、建設後三箇年を眠り五割増しとすることが認められておりますが、この期間は、少くとも五周年に延長する必要があると考えられます。政府当局は、本決議目的達成ため、万全の措置を講ずべきであります。  以上、本案趣旨を簡単に説明いたしました。何とぞ各位の御賛成をお願い申し上げてやまない次第であります。
  15. 久野忠治

    久野委員長 ただいまの山下榮二君の提案に御意見があれば、これを許します。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 久野忠治

    久野委員長 別に御発言もないようでありますから、採決いたします。ただいまの附帯決議賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  17. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よつて附帯決議可決せられました。  この際お諮りいたします。ただいま決議いたしました議案に関する衆議院規則第八十六条による委員会報告の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。     —————————————
  19. 久野忠治

    久野委員長 次に北海道防寒住宅建設等促進法案瀬戸山三男君外三十八名提出衆法第十三号)を議題といたします。  ただいま委員長手元に、改進党の五十嵐吉藏君より修正案提出されております。その趣旨説明を求めます。五十嵐吉藏君。
  20. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員 まず修正案を申し上げます。   北海道防寒住宅建設等促進法案に対する修正案   北海道防寒住宅建設等促進法案の一部を次のように修正する。   第八条第二項中「資金貸付をする場合においては、」の下に「貸付金利率は年五分五厘とし、」を加え、「公庫法第二十条第一項及び第二十一条(貸付金利率並びに償還期間及び方法)第一項の規定にかかわらず、」を削る。  第九条第二項中「資金貸付をする場合においては、」の下に「貸付金利率は年六分五厘とし、」を加え、「融通法第九条第一項の規定にかかわらず、」を削り、同項の表を次のように改める。  本修正案趣旨を簡単に申し上げます。  本修正案は、先刻議決されました産業労働者住宅資金融通法案修正に伴いまして、必然的に修正されなければならない性質のものであります。すなわち、産業労働者住宅資金融通法案第九条に掲げる貸付金条件について、若干の修正がありましたので、本法案におきましても、同様に貸付金限度を六割に引上げ、さらに貸付金償還期間については、原案におきましては、耐火構造住宅及び簡易耐火構造住宅ともに三十年以内と規定してありましたが、これを前者は産業労働者住宅資金融通法案と同様に三十五年以内、後者は三十年以内とし、そのほか若干の条文の整理を加えたものであります。何とぞ御賛成くださるようお願いいたします。
  21. 久野忠治

    久野委員長 これより修正案及び原案を一括して討論に付します。討論通告順にこれを許します。中井徳次郎君。
  22. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 ただいま上程になつておりまする法案につきましては、原則的に私どもは反対ではありませんし、むしろ提案者になつておるわけなんであります。ただしかし、前の委員会のときたも、他の委員から御発言がありましたように、衣食住の問題につきまして、食の問題は、国全体として助成その他の方法がとられておりますが、住の問題について、ある地域だけに限つて政府が何らかの助成をするというのは、おそらく今回が初めてであろうと思います。そういう意味におきまして、私どもは将来この問題についてはよほど考えてみなくてはならぬと思うのでありまして、願えますれば、将来は北海道というふうな地域を限らずして、一般的なものとして取扱うというふうな考え方をいたしております。この点だけを私ども希望として、寒冷地帯あるいは積雪地帯というような表現によつて、こういう問題を扱つて行きたいというふうな希望を持つております。この希望だけ申し上げまして、修正案賛成いたしたい、かように考えます。
  23. 久野忠治

    久野委員長 ほかに討論通告がございませんので、これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  念のため採決の順序を申し上げます。採決は、まず修正案について行い、次に修正部分を除いた原案について行います。さよう御了承願います。  修正案賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立
  24. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よつて修正案可決せられました。  次に修正部分を除いた原案について賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立
  25. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よつて本案修正案の通り修正議決せられました。  なおお諮りいたしますが、本案に関する衆議院規則第八十六条による委員会報告書につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。  瀬戸山三男君より発言の申出があります。瀬戸山三男君。
  27. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 ただいま北海道防寒住宅建設等促進法案について、一部修正により御可決願つたのでありますが、提案者代表といたしまして、お礼かたがた意見を申し上げます。  先ほど北海道という特別な地域だけにするのは必ずしも適当でないという御発言があつたのでありますが、これは質疑中にもその御意見がありました。きわめてごもつともな御意見だと考えておる次第であります。ただしかし、前に審議中に申し上げましたように、北海道開発法従つて、狭くなりました領土の、特に未開発地帯北海道開発をするために、特別立法をいたして、今その実施に当つておる次第であります。そこで住の問題が開発の基礎になるという観点から、特別に北海道について、非常に内容の貧弱な法案ではありますけれども、その趣旨を込めて立案をいたした次第であります。幸いにいたしまして、皆様方北海道日本の国土における重要性にかんがみて御可決くださいましたことを、衷心より感謝いたすのでありますが、私提案者といたしましても、住の問題は、先ほども産業労働者に対する住宅の問題が御可決になりました通りに、きわめて日本の国内では重大な問題であります。耐寒住宅というばかりでなく、不燃住宅建設の問題は刻下の急務でありますので、将来は私どもだけではなくて、国会として、そのような一般的の法律にすべきであるという考えを持つておりますので、御了承をお願いいたしておきます。     —————————————
  28. 久野忠治

    久野委員長 次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。提案者より提案理由説明を聴取いたします。岡良一君。     —————————————
  29. 岡良一

    岡良一君 ただいま上程されました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、提案理由説明いたしたいと存じます。  その理由は、内閣総理大臣が、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法規定によりまして、土地等使用または収用の認定に関する処分を行おうとするときには、その処分が適正に行われるように、あらかじめ関係行政機関の長、関係のある都道府県及び市町村の長並びに学識経験を有する者の意見を聞かなければならないことにする必要があると思いまして、この改正案提出いたしたものであります。  何とぞ慎重御審議の上、心から御賛成のほどをお願いいたします。
  30. 久野忠治

    久野委員長 本案に関します質疑は、後日に譲ることにいたします。     —————————————
  31. 久野忠治

    久野委員長 ただいまより建設大臣から九州地方における豪雨災害状況に関する説明を聴取いたしたいと存じます。戸塚建設大臣
  32. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 このたびの西日本における災害は稀有のことでありまして、まことに遺憾なことであります。ただいま宮中に伺つて概況を奏上して帰つて参つたようなわけであります。つい遅れて参りまして、まことに申訳ありません。  二十六日の午後三時ごろ第一報を受取つたところ、増水の状況降雨量等を勘案して、これはたいへんなことになりそうだという予感がいたしました。飛行機の都合がありましたので、その翌朝河川局長と厚生省の社会局長にただちに行つてもらつたのであります。その後の状況で、一応こちらの打合せを済ませて、二十七日の夕方三時二十分日航機で東京を出発いたしました。福岡に着きましたときは非常な雨の中で、着陸など困難であつた関係もあつて福岡県庁参つたのは十時過ぎでありました。その後三日間滞在いたしまして一昨七月一日の夜の十時ごろ羽田に帰つて参つたわけであります。その間最も被害の甚大であつた福岡県、佐賀県、熊本県のほんの一部ではありますが、なまなましい被害状況を視察いたしました。親しく罹災者に接して慰問と激励の辞を送り、なお現地当局とも打合せもし、督励もいたしました。それぞれ必要な措置を講じたつもりでございます。  今回の梅雨災害は主として福岡熊本佐賀大分、長崎、山口の六県にわたつて、甚大なる損害をもたらしておりますが、その主たる原因は、従来の記録をはるかに突破したほんとうに異常なる降雨によるものと考えられます。その雨は二十五日の朝以来二十九日に至る五日間、二十九日は大体小やみになつておりまして、福岡辺ではほとんどやんでおりました。このときは梅雨前線がやや南の方に行き、その前日は北の方に行つた。とにかくこの五日間あの辺に梅雨前線なるものが停滞しておつたような状況でございます。そのために連続の雨となつて熊本県の小栗、その他の山間地帯における総雨量は千ミリと称せられております。また平地におきましても、福岡あたりで六百ミリ、いずれもいまだかつてない記録である。福岡気象台長に聞いたところでは、従来の六月の雨量記録は四百五十と言つておりまして、かれこれ平地においても倍の所が相当に多かつたということであります。これがために各河川は増水して、降水、すなわちオーバー・フロウ、そういうわけで堤防が至るところで破壊されました。特に大分熊本福岡佐賀の四県にまたがつております筑後川は、全面的に堤防決壊したといつてもよろしい。また決壊箇所は、ただいま四十一箇所と調査をされております。こういうわけで、濁水が筑後平野に浸入して、五万町歩に及ぶ沿岸一帯がどろ海なつたというわけであります。  また遠賀川は、直方の少し下流植木町というのがありますが、この植木町から一キロばかり下流の所で左岸決壊をいたしまして、植木はちようど孤島のようになつてしまつた。その左岸から流れた水が突き当る所が鹿児島本線、国道三号線、こういう重要幹線交通路まで破れたのであります。もつとも鉄道の方は、水がかぶつておるのであつて、ひどくこわれたところはないように聞いております。そのほか矢部川、熊本県では菊池川、白川、緑川、大分大分川、大野川なお佐賀県の嘉瀬川、こういう川の本川、支川がほぼ同様な惨状を呈した。このために道路、鉄道交通機関が杜絶して、家は流れあるいは屋根まで浸水をする、耕地は土砂で埋まる、耕作物は流れる、炭鉱は水につかつて作業停止のやむなきに至つたものもある。  総被害は目下調査中ではありまするが、おおよそ一千数百億に及ぶものと見受けられております。また人命は、これも損害の莫大なものでありまして、三十日現在で死亡、行方不明、負傷合せて二千名と報告をされております。家屋の損害は三十一万戸罹災者は百五十万人に達しようとしている、耕地損害も十伍万町歩になんなんとしておるのであります。特に筑後川下流部平野の広汎な区域にわたつて筑後川本川の水位が低下しないために、今なお湛水してその減水はきわめて遅々としておる状態であります。  なお、特に惨状のはなはだしかつたと思いましたのは熊本市であります。子飼橋という橋がありますが、その左岸地帯で——これはなお後に詳しく申し上げますが、二十六日の夕方一瞬にして百数十世帯を流した、人命も百数十を失つたというような状態であります。  炭鉱の被害は、福岡県で百八坑、佐賀県で二十坑、計百二十八坑が水が入つたというように報告されております。この被害額が二十六億と見られております。  鉄道被害については、河川の氾濫と同時に鹿児島本線、長崎本線、日豊線を初めとして、ほとんど全線が不通になり、現在なお十数本の不通線がありまして、特に関門隧道は浸水のため本州と九州との連絡が杜絶し、ただいま海上連絡をはかつておる実情であります。目下の予想では、九州地内の鉄道はおおむねこの五日ごろまでには全通させたいという努力をいたしております。関門隧道の開通は今月の二十日ごろになるものと予想をいたしておるのでありますが、交通、通信諸施設の復旧が、今次災害復旧施策中最も緊要なことと考えられますので、この点に重点的に努力をいたしております。  なお、この災害につきまして、各県ともそれぞれ災害対策本部を設置し、ただいままでのところでは——と申しますのは、私が帰るまでのところでは、人命の救助及び罹災者に対する食糧、衣料の配給あるいは伝染病に対する予防というようなことに全力を注いでおるのでありますが、これらに必要な運搬用の船が非常に熱望されたのであります。災害突発当時から各地に船が不十分であるので、ほかに方法がないので、特に船が方々から要求をされておるような次第であります。これには米軍の援助を求めたり、あるいは保安隊の出動を要請するというようなことで、いずれも非常に熱心に協力して救助、救済の活動が続けられております。なお重要交通路を確保するために、流失した橋に対しては仮橋をかけたり、あるいは迂回路を設けるというように緊急な措置をとつております。  久留米の病院から患者を輸送するのに、非常に米軍が協力してくれた。これは一例でありますが、そういうことがあり、また佐賀県の神埼町というところに城原川という川があります。これは小さい川でありますが、国道の橋が流れたのに対して保安隊が出動して、たまたま持つてつた資材で短時間に仮橋をかけたというようなことも目ざましい活躍の一つであります。  政府におきましては、今回の災害の甚大なのにかんがみて、災害発生とともに、時を移さずという意味で、私並びに篠田農林政務次官以下関係官が現地におもむきまして、各関係機関を督励して、罹災者の救助、水害防除及び応急復旧に当るとともに、現地並びに内閣に西日本災害対策本部を設けまして、災害対策に万全を期しておることは御承知の通りであります。水も一両日前からだんだん減水して参りました。これからいよいよ本格的の復旧工事も可能となつて参つたのであります。とりあえず筑後川外直轄河川の応急復旧費として昭和二十八年度災害予備費から六億円の支出を決定いたしました。これと同時に、地方団体の公共施設応急復旧の質金に充当するために、これもとりあえず資金運用部資金から福岡佐賀、長崎、熊本大分、山口の各県に対して、合計十億円を融通することにいたしたのであります。また今回の水害によつて流出、倒壊した戸数は四千五百戸に達しております。これらに対しましては、とりあえず、災害救助法を発動して、応急バラックを建設して、罹災者を収容いたし、なお今後は公営住宅建設なり、住宅金融公庫の特別融資というようなことによつて遺憾なきを期して行きたいと考えております。  なお、以上のほか、被災地の国税の減免あるいは稲の苗の補給等の応急措置を講じておるわけでありますが、さらに根本的に将来再びかような災害の発生することを防ぐために、従来の治山治水の計画にさらに再検討を加えて、治水の万全を期する要があると存じまして、さつそく研究にかかつておるような次第であります。  このほか治安状況は、最もはなはだしかつた熊本市内におきましても、熊本知事が申しておりましたが、こうした非常な混雑の割に平静であるというようなことで、全体もそのように承知いたしました。  それから、先ほど申しましたが、伝染病のことは、すでにこの災害の前から福岡県あたりには二千名も赤痢患者があつたというようなことでありまして、こうしたあとは、どこでも伝染病が非常に蔓延するものでありますから、私は各県の当局者に会う人ごとに、この点を特に注意をいたしておきました。  その他ただいま申し上げましたようにまだ交通、通信いずれも困難あるいは不能の状況でありまして、各地との連絡はきわめて不十分であります。まだ私が帰りますまでは、どつちかといえば今申し上げたように救助、救恤、救護というようなこと、あるいは物資の手当というようなことに全力が注がれておるようなわけでありまして、まだ復旧という段取りには十分に入れないような状況であります。今後湛水しておる水が引いて来るに従つて被害もまだふえて参りましよう。同時に、それによつて各地からの報告ども詳しくわかることと思います。各県ともほぼ連絡ができておりますが、まだその県内の各地には、とうてい連絡等がとれない所が多いような状況でありますから、おのおのさらに今後の報告を待つて皆様にも御報告申し上げたいと存ずる次第であります。  一応の報告でありますが、今申し上げたように、実際交通が不便でありますので、どこへ参りたいと思つてもなかなか参れません。私としては、せめて福岡佐賀熊本、これだけは県庁だけでも何とか行つて来たいという気持は初めから考えておつたのでありますが、二十七日の夜着きまして、その日は県庁でいろいろ打合せをし、当時知事は久留米へ見舞に行つたまま帰れなくなつたというような状況であります。そのあくる日の二十八日は、御承知のように非常な豪雨でありまして、この日だけでも一つの洪水になろうかというような、二百ミリくらいの雨が降つたようでもります。そういうわけで、その目に駐留軍の飛行司令官が、何とかして上空から見せてやろうということで、私ども飛行場まで行つてしたくをして、しばらく待たされて待つてつたのでありますが、どうしても雨がやまない。やむを得ず今日はだめだということなので、ついでと言つてはあれですが、筑後川の沿岸になるべく近いところ、ちようど佐賀県と福岡県の境目で大木川という支流がありましてその支流の行けるところまで行日つてながめて帰つて来ました。その辺に支流がだんだんとありますが、いずれも本流の決壊から来たので、横つ腹をみな破られたようなかつこうで、一望のどろ海でありました。その次の日には、また飛行機のことを考えましたか、まだ天候が定まつておりませんので、そうこうしておるうちに時間をむだにしてはいけないと思つて佐賀県にとにかく入ることにしました。鳥栖から久留米の方へ行くところを少し入るだけ入つて筑後川に約三キロの地点まで参りました。その辺は鉄道の線路もまだ水につかつておるというような状況で、久留米に入ることはできませんでした。  それからただちに佐賀県に向いまして、先ほど申し上げました保安隊が仮橋をかけてくれたところを渡つて、また佐賀へ行く国道はトラックの輪がちようどつかるくらいに、国道自身がまだつかつておりました、佐賀へ三キロか四キロあるでしようか、そのうち三分の二くらいはまだ水であつた、こういう状況であります。県庁でいろいろ話を聞いたりして帰つたわけでありますが、佐賀市内も、全部ではありませんが、ほとんど水をかぶつたのであります。私が行つた時分には少し低いところはみな水につかつていた。国道も、反対側の国道もやはり水につかつてつて行くことができないというような状態でありました。  その次の目の昼ごろ、幸いにようやく飛行機が出られるということで、昼少し前でしたか、軍用機に乗せてもらいまして上空から筑後川の河口、それから佐賀市、ずつと上流へ行つて大分県に入つた夜明という発電所のあるところ、その辺までずつと見てまわつて続いて熊本に入つたのであります。  熊本市は上空から見たところ、これはほんとうに全面的に水をかぶつたということが明らかにわかるような状態でありました。と申しますのは、上から木材の流れ着いたのが至るところにばらばらと上から見える。郊外二里のところに着陸いたしまして、それから県庁へ行き、その間に市内の急所を見せてもらつたり、先ほどの報告の中で申し上げました子飼橋というところ——これは熊本市内の一番おもな道路、国道で電車の通つておる大きな道からちよつと横へ入つた、つまりそれに沿つた白川にかかつておる橋であります。この橋の——たとえばこれだけが橋といたしますと、この橋はコンクリートづくりの橋なんですが、これに流れて来た木材や家のこわれたのが全部ここにとまつて、それがどのくらいありましようか、ここにほかの写真の例がありますから、あとでごらんに入れますが、水口をふさいだようなかつこうになつておる。そこで水がはけ口を求めた結果、この川はちようど向うからこういうふうにまわつて来ておるのでありますけれども、そこも家があつたところらしい。これををぶち抜いて、この家を全部流してしまつて、そしてこつちが詰まつておるから——ここも道路があつて、両岸も家でしようけれども、これをぶち抜いて、新しい川ができているただいま百数十世帯と申し上げましたが、まだまちまちで、その土地の人の言うことでもわからない。二百世帯という人もあれば、いや百何十世帯だというような状態で、またさつきも死骸が一つ上つたというようなぐあいで、流れたのももちろんありますというような惨状でありました。熊本市内の白川にかかつた橋が十三あるそうで、そのうち残つているのが二つだということです。市内は完全にオーバー・フロウで、上流から持つて来たどろがみな各家に入つている。県庁も水が入る。知事公舎などは、川岸にありますから、ずいぶん高いところまで入つておりました。私の行つたときは、ちようど水が引いておりましたので、各戸家の中に入つたどろをかき出しておる。それが雪国で屋根から雪を落して雪がたまるように、一間ぐらい両側ずつとどろがたまつている。これをぼつぼつ運んでおるというような、ちよつと見た者でないと、ぴんと来ないかもしれませんというような状態であります。  一昨日、五時の飛行機に乗る前に、今度は遠賀川の筋へ行つて見たのです。遠賀川の植木町というところから左岸に普通水路がこうあるのが、これを堤防式に打切つて川筋がかわつておる。それで左岸一帯が水浸しになつていまだに湛水しておる。そして途中の道路もこわれておるというようなわけで、現場へ行くことができませんでした。行くにしても非常に迂回するので、時間がかかるというので、やむを得ず私はむしろ湛水の状況を見るためと思つて——これからちよつと五、六キロ下が国道で、遠賀川の駅があります。その方へ行つてみよう。そこへ行くために、海老津という駅から——海老津は遠賀川駅の手前の駅でありまして、それを通つて行くと、間もなく国道が水につかつておる。そこを船で渡してもらいました。和船で十分か十五分ぐらいこいで行く距離がある。それから今度線路へ上つて、そして駅へ出る。駅からさらに鉄橋まで行つて、様子を見て来ました。本線の方は水がすつかり引いてしまつて、ほとんど平生に近い。これも河口がとまつたようなもので、左岸一帯芦屋に至るまでが水浸しになつておる、まあこういうような状況であります。  そのほか門司は風師山という山があつて、その山は国道の南側でありますが、山くずれがあつて国道を突破して国道の向い側まで行つております。これは行つてみることができませんでした。  小倉は山くずれでなく、水の方である。これが関門隧道におどり込んだという状態であります。相当どろを運んでいるので、この片づけが二十日ころまでかかるという状態であります。  かわつたところでは、長崎県の北松地帯と申しますか、炭鉱のあるところでありますが、ここはこの前にもあつたらしいんですが、地すべりが数箇所あつて、それと隣接した佐賀県にも地すべりがあつた。これはほんのお話ですが、私が佐賀の県庁に行つているときに、そこヘ報告の出ておつたのでは、死者二十四名と書いてある。と言つているうちに、鉛筆で直して来たのが、もう二十五人追加するという。それは北松地帯の地すべりです。  まだ何分にも混雑しており、繰返し申し上げますように、交通なり通信が十分でありませんから、各地の模様がまだすつかりわかつておりません。順次報告従つて申し上げたいと思います。簡単でありまするけれども、大体以上でございます。
  33. 久野忠治

    久野委員長 質疑の申出があります。よつてこれを許します。瀬戸山三男君。
  34. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 今度の北九州地方を中心とします大水害について、大臣がただちに現地に行かれた。さらにまた、政府が特別な対策本部を福岡に設けられて、その善後措置に努力しておられることは、私どももまことに適宜な処置として、感謝いたしております。これは日本経済、産業から申しても、重大な損失で彫りますが、できたことをいまさら申し上げるのではございません。六百ミリないし千ミリという、今までほとんど経験のないような大豪雨でありましたので、人力をもつてこれをどうするということは、まず不可能な、いわゆる不可抗力のような事態ではありますけれども、国の治山治水が叫ばれていることは、いまさら私が大臣に申し上げるまでもなく、すべての者が叫んでおるところであります。直接の被害が、きようの新聞報道によりましても、千四、五百億ということでありますが、間接の被害日本の産業、経済に及ぼす被害は、莫大なものであると考えられるのであります。  そこで、私はこの災害後の処置については政府を信頼いたしておるわけでありますけれども、私どもは常に考えております日本の特殊な地域における災害の予防措置が、口で論じられているほど実際には行われておらぬ。財政事情、財源事情ということのもとにおいて、その計画の何分の一も行われておらないというのが、今、日本の政治の重大な欠陥だと私は考えております。この災害は六月に始まつたのであつて、今や第四号の台風が接近しつつあると報告され、十月末、場合によつては十一月の終りまで災害が来るのでありますが、これに対する根本的な政治が、私は行われておらないような気がするのであります。二十八年度の予算においても、治水費は、昨年度よりは少額ふえている。それも、もちろん多目的ダムその他の増額でありますけれども、一般河川についての経費は非常に貧弱である。財政事情ということも、もちろんわかりますが、こういつた一瞬にして手数百億の損害をこうむる重大な原因が、ほとんど明らかになつておるのでありますから、私は日本の政治の根本問題として、他のある程度の財政支出は削減しても、この根本問題を解決するのが、日本の政治の中心課題であると考えております。もちろん大臣もそういうお気持ではあろうと思いますが、これをもう少し根本的に解決しなければならない、こういう考えで、私は大臣の気持といいますか、決意をお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  35. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 一々ごもつともな御意見であります。今までも治水、治山の対策は、できるだけ——このできるという意味は、財政で許さないからしかたがないというような気持ではなく、やつてつたものだとは思いますが、ことに今回のような未曽有の雨量があるということを考えました場合、どうしてもこれはあらためて治水の対策を考えなければならない。それには山の方の始末、たとえば植林でありますとかあるいは砂防というようなことについて、もう少し強く考えて行かなければいかぬと思います。いずれにしましても、国民の安心をいただけるように対策は講じなければならぬということは、重々ごもつともに思つておるのであります。こういう場合には、とかく財政の事情がということだけで済まされがちですが、そういうことではいけないと思います。私どもも今後の対策として、さらに考えをかえて参らなければならないというふうに、目下寄り寄り話をいたしております。私は、実はせんつてのこの委員会でも、災害の復旧ということが何年もかかるのはおかしなやり方なんだ、これはどうしてもすぐ復旧するということがほんとうの建前にならなければならないということを、申し上げたのであります。それのみならず、治水の対策ということは、今まで考えておらぬわけではありませんけれども、もう一息何とかくふうを加えなければならぬということを、せんつて来省内でもしばしば話をいたしておつたようなわけであります。たまたま今回のような災害に際会しまして、一層その気持を強くいたしたのであります。また、ただいまお話の中にありました被害ということを考えれば、ここに国帑を相当費すこともやむを得ないということ、これも私ども重々、ごもつともだと存じます。しかし何分国の財政はいろいろな方面に仕向けられておりますので、私どものところだけが思うように参るというわけにも参りますまいけれども、しかし、御趣旨の点は十分に尊重をいたして参りたい、かように考えております。それにつきましても、国としてもう少し河川の管理の方法について根本的に考えなければならぬ点があるが、これは今までも皆様から始終お話があつた通り、そういう点についても強力に進めなければならないと思います。また河川のみならず、国土の保全ということについて、さらにいろいろ考えて行かなければならぬ点がたくさんあるように思います。こういう点についても、今後十分に研究をいたして参りたい、かように考えております。
  36. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 大臣の決意のほどをお伺いして、敬意を表します。ただ、その決意が、精神的な決意で終らないことを希望しますとともに——これは私はお答えを願うのではありませんで、希望を申しておくのですが、今国土の保全という言葉を使われましたが、国土の防衛という名前のもとに、数百億の金を今、日本の財政は投じておる。もちろんこれも必要でありますが、国民自体は、これが何ゆえにさように必要かということについては、認識が薄いのであります。しかしこうやつて、ただ一日か二日の間に千数百億の直接被害を受けておる。そのほかに交通杜絶その他によつて産業経済に及ぼす影響は莫大なものであるということは、先ほど申し上げた通りであります。こういう日本の狭い国土に——今度の事例は一つの例でありますが、今後こういうことがたびたび起るであろうと悪い予感がするのであります。真に国土の防衛をする、真に日本の国民の安住の地をつくるのには、枯尾花におびえて防衛費をたくさん出すよりも、この際、日本国民の幸福のためには、少くともここに数百億の金を投じてやるべきだ、かような考えを持つておりますが、それについてはお答えを求めません。  それからもう一つ。今度も住宅に関する法律を二件も審議いたしたのでありますが、この際、金融公庫貸付率を上げるとか、あるいは公営住宅についての補助率を上げるとか——これはもちろん法律改正を要するのでありますが、そのくらいの非常措置をしてこれを救済すべきであると私は思う。金融公庫から借りるにいたしましても、御承知の通りあれだけの大災害を受けておるのに、何万円かの頭金を出せということは、これは政治ではないと思いますので、この際そういうことを政府部内においてすみやかに研究されることを希望いたしますが、これについてもお答を求めるわけではありません
  37. 田中角榮

    田中(角)委員 九州の災害について、詳細な現地の報告建設大臣から伺つたわけでありますが、いつも当委員会で申し上げている通り、災害は起きてからいかに考えても、手の施しようがないわけであります。そればかりではなく、今年は非常に早く災害が参つたわけでありますが、ただいま瀬戸山君が言われたように、これから十一月までは、これよりも大きな災害がいつ来るかもわからない。災害は来るものであるという前提で考えなければならぬのが、戦後の日本の実情であります。昨年の予算編成に際しまして、昨年度は比較的に災害がなかつたから、予備費の八十億はそのまますえ置いて、二十八年度の予算編成に際しても、この程度でよいのではないかというような大蔵省、経済審議庁両当局の意向があつたようでありますが、当委員会といたしましては、このような考えが政府部内にあるからこそ、年々歳々災害亡国から脱却することができないのだということを強く意見を申し述べ、これが蒙を開いておつたわけであります。この災害対策というものに対しては、いわゆる災害対策ではなくして、いかなる内閣ができても、内閣の施策のうちの最も大きなものにこの治水対策を取上げなければならない。もちろん、今までも歴代内閣が取上げておるのでありますが、戦時の過伐、濫伐というような状況から考えまして、毎年度の予算に盛られておりますところの治山、治水の費用が少いとは必ずしも申し上げられないのでありますが、このような大きな災害を繰返している日本の現在から見ますと、抜本的な施策を行つて、もう少し別な財政措置を考えなければ、災害亡国となつてしまつて再び立ち上れない日本になるのではないかということを私は痛切に感じ、常に発言もし、建設当局にもそれが具体的な措置を要望して参つておるわけであります。災害対策について具体策を講ずることは、これはもう当然のことであります。しかし、ただいまも申しましたように、抜本的な治水対策を樹立すること、これこそ災害亡国より脱却するたつた一つの道だといつても極言ではないということを申し上げたいのであります。降雨量が、歴史的に見ましてもまれなほどであつた。それがために、計画洪水よりも非常に大きな降雨量でありましたので、川はこれを吐くことができなかつたというようなことも、この委員会で言われたのでありますが、歴史になかつたようなまれな大きな降雨量があつたから、堤防決壊しても溢水してもやむを得ないということは、これは言えたものではありません。私は、そういうところに政治の大なる欠陥があるということを申し上げたいのであります。当然戦前の、何十年、何百年までの日本内地における洪水の統計に基いてやつておるわけでありますが、少くとも戦争中の過伐、濫伐というこの大きな現象から起きる戦後の災害対策というものは、統計数字よりも別な角度から考えられなければならなかつたにもかかわらず、歴史にそういうような降雨量がなかつたということによつて、今までの計画が間違つてつたとするならば、私はこの大水害の責任の大半は、やはりその行政官庁も負わなければならぬということさえも考えておるわけであります。いわゆる歴史にまれなものであつたからといつて、その責を免れることはできないと言つても、私は過言でないということを考えておるわけであります。なお、当委員会といたしましても、毎回でありますし、特にこの前の委員会におきましては、もう洪水時期でありますから、財政措置を講じてもらいたい、しかも災害基金制度等に対しては、特別な考えを持てないかということを大臣にも申し上げております。もう一つは、本年度は選挙その他によりまして、暫定予算を組んでおりますが、六、七月の暫定予算に対しては、特別な配慮をもつて公共事業費の大幅増額を強く要請しておつたわけであります。にもかかわらず、七月の予算にはこれを盛ることができなかつたのでありますが、私はこういうおおうことのできない現象に対しては、少くとも七月予算に盛らなかつた大蔵当局、その他内閣の諸君も、深い反省をしなければならぬ。そうして六億や十億という問題を申しておるのではなく、根本的な観念をかえなければいかぬ、また自分たちの考えに対して、謙虚な反省をしなければならぬ、私たちはそういう強い希望を申し上げておきたいのであります。  もう一つは、大臣もちよつと触れられたのでありますが、私たちはいつも言つております。水行政の統一ができないから、だからこのような問題を起すのだということを言つておるのですが、毎回々々、年々歳々災害を繰返しておつて、お隣の中国では、水を治むる者は中国を治むる、今、日本の政治は、水を治める者は日本を治める、水を治められない者は日本を治められないとさえ私は極言しておるのでありますが、一部の人たちは、建設委員会は自分の所管の建設省の費用や窓口を広げたり、増額したいためにやつておるのだというようなことを言われるのでありますが、私たちは心外にたえない。こういうところに政治の欠陥があり、われわれ自体が深く反省しなければならぬ問題があるということを考えておるわけであります。私は昨日も道路整備のためのガソリン税収入相当額を、道路整備の費用に盛れという法律案を、参議院の大蔵、建設委員会審議をしていただいたのでありますが、道路整備の急を、何人もこれを肯定しながら、現在の財政状況においてはこの程度でいいのではないか。しかもこのような法律は、必要性は認めるけれども、税制の根本を乱すおそれがあつたり、財政当局の予算の編成及び審議権を拘束するおそれがあるから考えなければならぬと言う。私はこういう考えそのものが日本を危うくしておるのだということを、きのう率直に自分の意見を表明してあります。経済再建のために、日本復興のために必要な処置であるならば、私は非常立法をどんどんやることが政治であると思つております。しかも戦後の予算編成の状況を見ますと、ある特定の人、特定の地域に対する補助立法がどんどん出ております。きようもこの委員会北海道に対する防寒住宅法に対しての法律案を上げました。産業労務者に対する二十億の予算を盛られておる法律案を、同時に上げたわけであります。しかし、私はここで申し上げたいのは、治山治水、道路、港湾というような、こういう大きな整備というもの、その利害というものが全国民を対象としておるような問題に対しては、比較的関心が薄いのではないかということを私は率直に申し上げたい。道路とか河川とか、海岸堤防災害対策、こういうような利害が全国民を対象としているような問題、特に予算編成に対しては、このものこそ大きく打出さねばならぬ問題に対して、議員であるお互いでさえもそうでありますが、そういうものよりも特殊なもの、ある地域の者に対する利益擁護や予算の増額というものに、われわれは少し重点を持ち過ぎるのではないかということさえも考えておるのでありまして、現在予算も編成せられ、また二十九年度予算も今事務局で立案しつつある現在でありますので、私は少くとも内閣の責任において、また内閣だけではなく、今選出せられておるわれわれ衆参両院議員の良識と熱意によつて、この災害亡国から脱却しなければならぬ。それで、このような災害、千数百億を一日か二日のうちに流してしまうような大きな問題に対しましては、少くとも来年、再来年からこれを繰返して行かないという、抜本的な対策を立案していただきたいし、またわれわれ自体もそういう態度をとらなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。これは私たちが建設委員会だけで、いかに声を大きくしてもできる問題ではなく、特にのど元過ぎれば熱さを忘れるわけであります。今二千数百人の死傷者を出して、何十万戸、何百万戸という罹災者を出しております。このなまなましい現実の中で、これを目の前にして、これを再び繰返していいのかということを発言するのには、私は非常な好機であると考えております。建設大臣は勇敢に、われわれ自体もまた両院において世論の喚起にも努め、われわれ自体も立法措置に持して努力をいたしますが、大臣も農林、通産、運輸等の諸大臣とも十分連絡をとられて、このなまなましい現実があるときに、のど元を過ぎないうちに抜本的な対策を講ぜられんことを強く希望いたしております。
  38. 久野忠治

    久野委員長 引続いて質疑を継続いたします。岡村利右衞門君。
  39. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 私、簡単に一つ質問したいと思うのですが、それは今度の災害は、いろいろの原因あるいは欠陥があつたのでございましようが、役所のセクシヨナリズムがあまりあり過ぎるのじやないか。たとえて言えば農林砂防だ、あるいは建設砂防だというように、砂防だけについても二つにわかれておるというようなことが方々にあるのではないか。このことにつきまして、大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、承つておきたいと思います。
  40. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 先ほどもちよつと申し上げたと思いますが、こうした国土の保全というような立場から、根本的な考え方をして行かなければならない、かように私も考えておるのであります。今お話にありましたように、セクシヨナリズムがどうとかいうことは、あまり具体的に申したくありません。御趣旨のことは、よくわかつておるつもりであります。先ほどまた田中委員からもだんだんお話がありまして、抜本的施策ということは、そういう意味も多分に含んでおられることと、私は拝聴いたしておつたのであります。決してその点についておろそかにしないつもりでおります。もつと露骨にいえば、私はかような立場になります前から、この問題が一番日本を毒しておる。円滑を欠いたり、また施策の施し方が不利というか、損だというような気持を持つてつた一人であります。そういう点では、はなはだなまいきなようでありますけれども、皆さんと決して考えがかわつておらぬつもりであり、またこういう点については、多少は話をぼつぼつしておるので、あまり表面切つて今どうということはどうかという気持もありますから、その点はもう少しおまかせを願いたい、かように考えております。
  41. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 大臣のお考えはよくわかりましたけれども、ちようど今御主張なされば最もいい時だと思いますので、この点よく御決心をなさいまして、御主張なさることを切にお願いいたします。
  42. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 今言い出すのがいいかどうかについては、なかなかむずかしいところでございましてれそうでなくても、言うていいところにはすでに言うております。
  43. 山下榮二

    山下(榮)委員 ほとんど質問も言い尽されておるようでありますが、今岡村君も触れておられたと思うのですけれども、今度のあれだけ大きな災害に対して同情をしたり、いろいろ過去を悔んでみても、しかたがないと思います。大臣は先ほどの報告で、福岡災害対策本部を設けた、あるいはさしあたり十億の金を出した、こう言つておられるのですけれども、千数百億の損害を受けた九州地方に、十億を出してみたつて二十億を出してみたつて、これは二階から目薬のような感じでありまして、とうていおついて行かないのであります。せつかく今予算の審議の最中でありますが、大臣は、予算の組みかえを要求して、大幅なる災害に対するところの復旧復興の方策を立てられる腹を持つておられるか。さりとて、組みかえができないとするならば、新しく予算を要求して、今の二十八年度本予算に対してもつと追加計上して、今度の災害を早急に復旧復興する対策を立てられる考えを持つておられるか、その点を伺いたいと思うのであります。  今までしばしば本委員会でも私は申し上げたのでありますけれども、過去の災害から考えまして、災害が起つても、その復旧復興が五年や三年で解決がついていないのであります。一例を申し上げますと、阪神間に神戸を中心とする大災害昭和十三年に起つたのでありますけれども、その災害の復興がいまだに完成をいたしていないのであります。十年を過しても復興が完成しないということでは、復興よりも災害の方が先に追いかけて参るのであります。私は九州の今度の災害についても、それをおそれるのであります。もう少し建設当局はそういう点に思いを置いて、再びかかることを繰返すことのないように考えますと同時に、早急にこれが解決をすることを考えなければならぬのであります。ことに今は、九州地方においては、先ほどの大臣の御報告にもありましたように、農村は田植えの植付時であります。一体これらに対してどういう措置をとられるかということは、食糧問題とからんで国民の大きな関心の的であろうと私は考えております。こういうことと、今審議中である年度予算とからみ合せて、早急にその措置がとられなければ、われわれはまたかつての阪神間の風水害と同じように、五年も十年も見失われてしまうのじやなかろうかということをおそれるのであります。私はその辺に対するところの大臣のお考えを伺いたい、こう考えておるのであります。  先ほどの自由党の方の質問の中に、防衛費を千億近く組んでおるが、これをこういう方面にまわしたらという意見があつたが、われわれはもとより賛成であります。もう少しそういう時宜に適した方策を、この際建設大臣は思い切つてつていただきたい、これを私はお願い申し上げたいのであります。
  44. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 融資に十億、直轄河川の復旧に六億と申しましたのは、これはほんの一応のものでありまして、災害があつたときに、報告を全部集めてそれからぼつぼつやるというのは、うそのやり方でありまして、これはせんつても申し上げたと思いますが、急を要するものは、すぐやらなければならない。従つて、今回の予算六億なり十億というものは、交通輸送の面に重点を向けて、早く復旧しなければならぬ、のにとりあえず着手をする。現に遠賀川の決壊の箇所では、私がおりましたときに、すでにもう復旧に着手しておりました。まだ水のあるところでも、少し無理でも早く着手するということでやつて行くことが、一番大事なことじやないかと思うのでありまして、損害額と比較してやるのではなくて、さしむき必要なものからとりあえずやるということが必要だと思うのです。ことに筑後川のごとく四十箇所も切れたようなところでは、苗を植えつけした後でも、農家は非常な不安がありますから、こういうところは至急に復旧しなければならない。あるいは仮締切りのところもありましよう、また従来のものと同じように、直接本格的な復旧にかかる場所もありましよう。これは河川により箇所によつて違いがありますが、とにかく早くやるという意味で予算をとつたのです。また府県に融資した分も、府県管理の河川も多多ありますから、そういう点に重きを置いて、堤防の修理を少しでも早くやり、ことに主要河川を早く直すという意味であれをやつたのでありまして、あれでもつて一時しのげるとかいうふうに簡単に考えたわけではございません。まだ諸般の報告も十分に参つておりませんので、これから調査、設計も順次やらなければならぬのでありますが、これにどれほどの復旧費がいるものか、まだ今のところ見当もつかないようなわけであります。従つて、ただいまお話がありましたように、本年度の予備費でやるか、追加をするか、あるいは組みかえをするかという点については、まだそこまで進捗しておりませんが、何らかの方法を講じなければならぬと若えておる次第であります。  それからお話のように、災害の方が復旧よりも先に走るというような実情に見受けられることも、多々あると思います。ことに過年度災害については、ずいぶん残つておるところがあるのでありまして、それはそれぞれ箇所によつて緩急がありましようが、いずれにしても残つておることは事実であります。このことは、先般の第二台風の災害復旧の際にも問題になつて災害の復旧はそう長く延ばしておくわけには行かない、少くとも翌年度までには片づけるようにしなければいけないというので、これは金との相談もありますけれども、何とか方法をとつて従前の、つまり昭和十二、三年ごろのような正道に帰すことに努めたいと考えておつた次第でありますが、そこへ今回のような大きな災害が起つたものでありますから、またひとしお私も頭を悩ますことになるわけであります。しかしその方針は、何とかして貫くようにして行きたい、かように考えております。  それから植付のお話がありましたが、先ほど申し上げましたように、筑後川沿岸あるいは遠賀川の下流佐賀県の方は、いまだ冠水しておる所がありますので、やむを得ませんが、福岡付近の大体水の引いた所では、もう盛んに植付をやつておりまして、私のおつた二、三日のうちに、見る見る植付が済んでしまつた所も見受けられました。また佐賀県では、まだ時期がよいので、今のうちにもみを集めて、適当な場所を借り上げて、県でそこへ苗をつくつてやれば、二十日ごろまでには間に合う、かえつてよそから集めるよりも、その方がよいのじやないかというような対策に出ておるようであります。また他の地方では、苗をほかから融通を受けるというようなことをやつておる所もあるようであります。これは農林省の当局においても、それぞれ手配をしておるように承知しておりますので、幸いに時期がそういうような時期でありますから、九州地方は六月の末でなくても、七月になつて植えつけても、さほどのかわりはないように——めい虫などの関係で、いろいろありますけれども、ないように考えております。私がかつて二十年ほど前に福岡におつた時分には、旱魃のために、七月を越して八月になつて植えつけたときもあるくらいでありまして、その点は別に心配がなかろう、こういうふうに私は考えております。
  45. 山下榮二

    山下(榮)委員 昨日本会議大臣報告を伺つておりますと熊本地方等は、どろが流れて屋根までつかえている、その処置にたいへんだという報告を伺つたのであります。今度の災害を通じまして、家の問題といい、道路といい、橋梁といい、砂防といい、河川といい、かかつてこれは全部建設関係だと申し上げてもいいように思うのであります。過日の新聞によりますと、これだけの大きな災害に対して、警備隊や何かの出動を求めるような記事が出ていたのでありますが、もし熊本地方等の土砂搬出に、とうてい民間だけでは手に負えないというようなことでありますれば、そういう道等もあろうかと考える向きもあるのでありますが、大臣は現地のなまなましい実情を見て来られて、それらの点に対して、いかようにお考えになつておられるか、伺いたい、こう思うのであります。
  46. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいまお話の警備隊とおつしやつたのは、保安隊の意味でございますか。——今回の災害については、先ほども申し上げましたように、駐留軍もずいぶん協力してくれましたし、保安隊の活動も非常に活発でありました。なお保安庁では、他地区から応援に出してもいいというようなことも言うております。私は向うで、現地の保安隊で足らなければ、他地区から持つて来てもらつたらいいじやないかということを言つたこともあります。ただいまの熊本の跡片づけのようなこともあります。私の方の堤防の復旧というようなことにも、こちらでやるばかりでなくてそうした保安隊に協力をしてもらうことが——また向うの第四管区ですか、その総監もそういう方面にもどんどん人を出したいというふうに言うておりましたから、私の方からも、もちろんそういうふうに言いますが、その通り活動をさせるということになろうと思つております。
  47. 山下榮二

    山下(榮)委員 最後に一言だけ大臣希望を申し上げておきたいと思うのであります。  大体以上で、いろいろな実情もよくわかりました。建設大臣は昨日帰られたばかりであります。吉田総理大臣は病気だと伺つておりますが、できれば吉田総理大臣の病気のまくら元で臨時閣議を開いてでも、本復旧復興に対して思い切つた予算的措置を講ぜられるように御尽力を願いたい。ことに、私は先ほどの答弁を伺つてつて、本年度予算内の予備費等のごときでは、これはとうていおつくはずがなかろうと思うのであります。新しく予算的措置を考慮されて、ひとつ閣議でうんとがんばつていただいて、この災害が一日もすみやかに復旧復興するように御尽力をお願い申し上げたい、こう思うのであります。
  48. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 別にお言葉を返すわけではありませんが、さきにも申し上げましたように、まだ調査の方が見当もついておりませんので、そういうものがまとまり次第、私は善後措置について十分の協議をいたしたい、かように考えております。
  49. 久野忠治

    久野委員長 逢澤寛君。
  50. 逢澤寛

    ○逢澤委員 先ほど来の同僚諸君のお話で、大体尽きたのでありますが、私はただ一、二点だけこの機会に大臣の所信を明らかにしていただきたと思います。今回の九州に起りました災害にあたりまして、さつそく現地に出張し、親しくその被害状況をごらんくださつた、その点に対しましては、私ども非常に敬意を表しております。罹災民の救済等、今後の災害復旧に対して、ただちにやるということは当然のことでありますが、私はただいま大臣がお答えになつておりました——これは大臣の御意中かどうか知りませんが、私の耳に入りましたのは、今が時期かどうかは云々というお言葉があつたように記憶しております。私は災害復興をやることも一番重大なことであり、一番急を要することであると思いますが、それと同時に、責任大臣といたしまして、また私ども責任のある委員会といたしまして、恒久対策をこの機会に考えねばいかぬ。災害復興をやるにあたりましても、恒久的の考え方の上に災害復旧を立案せなければならぬと思います。予算の問題につきまして、あるいは財政の都合によつて、かくやりたいと思う事柄ができずにおります。それがために、何十万という罹災者がそこにできるということは、いろいろな点におきましてお互いの責任が私はあると思います。もしそれ端的に申し上げますならば、そういうような危険地帯に、安住の地として人民が住むということは、それ自体に対して、相当注意を払わねばいかぬということまでも考えなければならぬことだと思うのです。それは主管大臣であり、またわれわれ主管の委員会といたしまして、当然研究を常にやつておかねばならない問題だと考えておるのであります。そこで、先ほど山下委員の方からお話がありましたが、総理の枕頭にでも行つてということは、ちよつとどうかと思いますが、この機会にできるだけ大幅な恒久対策をやりまして先ほど田中君から抜本的の対策を樹立すべきであるというお話がありましたが、私もまつたく同感であります。申し上げたように、起つた災害を急速に復興するということは当然であります。しかしながら、それに偏するの余り、恒久的のことを忘れているということは、考え直さねばならぬと思います。そこで、結局これは予算の問題になつて来ると思いますので、私どももこれは責任があると思いますが、閣僚であるあなた方、また主管省である建設省とせられましては、この機会に特別の考え方をしていただきまして、今後の予算措置——私は筑後川のことについて多く語ることを避けたいと思います。しかしながら、先般来のいろいろな報告事項を総合して考えますと、われわれも反省せねばならぬことがたくさんあると思う。この反省すべき河川の周辺に何十万という人々が安住の地として住んでいることに対しては、私は非常に不安を感じておるのであります。これはひとり筑後川沿岸だけではないと思います。日本河川には、至るところにこういうところが現存することを、私は非常に心配いたしております。それに対しては、今後の恒久措置については、ただいまお話にございましたように、この時期が適当の時期かどうかということは、私はさらに検討したいと思いますけれども、内閣といたしましてこの機会に、このまざまざしい現実を見たときに、予算がないからそうしたことはできぬといつて逃げることはできぬと思う。もしそれ、予算がないからできぬのでありますれば、この地帯は危険地帯として安住の地でないということは、そこに表示せねばならぬ責任があると思う。こういう点につきまして、私が申し上げなくても、大臣の方ではいろいろお考えがあると思いますけれども、私ども委員会といたしましても、重大なる責任を感じております。この点については、お答えは私はさらに求めませんが、あなたが責任大臣といたしまして、今後日本河川はこういうような貧弱な河川が、なお相当、九州のみではない、各地に点在しておる。それに対する対策としてこういうようなことをやらなければならぬということを、この機会にお考えを承りたいと存じます。
  51. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お話の御趣意はよく了承いたしました。この機会がどうこうと言つたのは、これはいろいろの問題がありますから、何と言うのでしようか、あまりチヤンスをつかみ過ぎたようになることもどうかという気持があるのでございます。もちろん私どもとして考究をしなければならぬことは、昨日からそれぞれいろいろ話合つてはおります。この上はひとつ委員会の皆さんにも格別の御協力をお願いする以外に、ただいまは私申し上げる言葉はございません
  52. 逢澤寛

    ○逢澤委員 結局は予算の問題であります、財政の問題だと思います。従来大蔵省が考えておる考え方が、あまりにもおざなりになつておりはせぬか。そこでこういうような大被害があつた折には、一番よくわかると思います。申し上げましたように、日本河川の中には、第二、第三の筑後川がだんだんあるということを、財政当局にもよく認識させねばならぬと思います。この点は特に御注意を願いたいと思います。
  53. 久野忠治

  54. 只野直三郎

    ○只野委員 私、治山治水の建設行政の根本問題について、実は大きな疑問を持つておる。それは今の日本建設行政の制度に大きな欠陥があるのではなかろうか。その欠陥というのは、実は地方の建設行政を見ても、中央のそれを見ても、実際の建設に携わつておるのは労働者と議員と政府の役人、これだけなんです。そうして国民の大半は、ほとんどわれわれには関係のないことだ。ことに農業者以外の階層の人々になれば、そういうことがあることすら忘れておる場合がある。要すれば、日本の国の人々一人々々が、建設に関する認識という点において足りないのではないか。認識がないから協力がない、ここに私は日本建設行政の重大な欠陥があると思う。それで、現在の制度、機構についての疑問というのは、要すれば中央に依存すれば何でもやつてくれる、中央の建設省に頼めば、たいていのことはやつてもらえるのだというこの考え方が、一般に多いのではないか。その原因がどこから来るかというと、これは中央集権の制度から来ておる。それで建設行政、その他全般に関しても同様でありますけれども、ことに建設行政に関する限りは、徹底した地方分権の方式によつて、地方民の民力活用の方式をとらなければならない。私ども徳川時代の各藩における治水治山の対策を多少研究してみて感ずることは、各藩の百姓が山の木を切るにも植えるにも、これはおれたちの川を守るのだ、おれたちの山を守るのだという意識でやつておる。それが今の日本にはなくなつておる。ここにいわゆる建設行政の抜本塞源の道がちる。その根本を改めない限り、どんなふうに役人が動いても、議員が演説をしても、実は効果があがらないのではないか。私は今度の筑後川の大災害に関連して、これはあえて筑後川たけの問題ではありません、阿武隈川があばれ出ずかもわかりませんし、北上川がほえ出すかもわかりません。いつどこに天災が来るかもわかりません。そういう意味から考えても、この際建設行政の根本的な制度について、さらに検討する必要があるのではないか。それで大臣にお尋ねしたいことは、そういう意味においてそういうことの研究をする機関を——今あるかもわからぬが、あるならばさらに拡大強化して、天下の識者を集めて国策の根本を決定するなりいたしまして、早くやる必要があるのではなかろうか、このことをお尋ねしたわ十意見を述べたりしたがつたのであります。
  55. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お話のうちにございました旧幕時代と比べて、地方の人が自分らを守るという考えがなくなり、お上をたより、政府をたよるという気風がふえて来たということは、確かに考えられます。それは逆に、従前には、そういうふうに中央で、つまり幕府で地方の施設までするような制度になつておらなかつたという点もあろうかと思います。これは今のように、中央から地方にほんとうのつながりができて来たような時代とは、やや違うとは思いますけれども、しかしお話の中に、地方の者がもうちよつと本気になつて、みずからやろうという気持にならなければいけないということは、まことにごもつともだと私も考えます。何でも政府に言えばいいんだというような思想、こういうことでもおもしろくないと思います。但し、これは地方制度その他とも、いろいろ関連するところがあろうと存ずるのであります。また地方制度についても、目下財政制度その他の処置について、いろいろ研究をされておることでありますので、そういう点についても、また地方でもつとみずからの土地を守るというふうな気風が起るように、そういうふうな制度の改革があることは、非常に願わしいことだと私も考えます。御趣旨はよく承つておきまして、また私ども研究の参考にいたしたい、かように思います。今どういう委員会制度があるかということについては、私はつきり承知いたしませんけれども、この点についても、それぞれいろいろな委員会がありますから、そういうところに、またこちらの注文を出すということで考えて行きたいと思います。
  56. 久野忠治

  57. 村瀬宣親

    村瀬委員 簡単にお尋ねをしておきたいのでありますが、予想外の大水害でありますので、数字の固まつたものが容易に出て来ないことも想像できることであります。しかし、根本問題といたしましてこの千数百億に上る災害には、応急策だけでも、ずいぶんな予算を要すると思います。政府におかれましては、現在提出されております二十八年度予算の範囲内で、この水害が片づき得るものであるとお考えでありますか、それとも根本的に補正予算をお考えになる段階に来ておるとお考えでありましようか、その基本問題についてお尋ねしておきたいと思います。
  58. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 先ほどもそれにほぼ似たお尋ねがあつたわけであります。ただいままだ被害の実情も十分まとまつておらぬのでありますので、明確なお答えは申し上げかねます。しかし予想では、あるいは二十八年度の予備費に、つまり八月になつて、全部でも足りないかもしれないというようなことも考えられるわけでありますが、これらについてどういうふうに措置して参りますか、この点については各省の関係もありますから、いま少しく報告を待つて考えて行きたい。もちろん、こちらにおきましては、そういうふうな予想もあつて、いろいろ大蔵省なり何なりと研究をしてもらいたいとは思つておりますけれども、今ここでどういうふうにということまでは、申し上げかねるのであります。
  59. 村瀬宣親

    村瀬委員 それから台風第二号を中心とした前後の災害と今回の大災害と重複した府県もありますし、また前回の台風第二号を中心とした災害に主として見舞われて、今回は幸いにも免れたという府県もあるのですが、台風第二号による災害に対しまする措置は、かなり時日を経過いたしておるのでありまして、その災害を受けた府県におきましては、首を長くして何らかの措置に早く潤うように待つておるのであります。これらの措置に対しましては、今度の災害と一括して御措置をなさる方針でありますか。そうなりますと、前の災害はまだ相当時間を要せねば救済の手が伸びないということになるのでありまして、御方針を承りたいと思います。
  60. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 先般の災害の分は、実はまだ査定にもかかつておらぬ。地方によつて査定にかかつたところと、まだかからないところがあります。九州の方は、まだそこまで行つておらないのであります。自然あわせてというような地方もできると思います。  なお先般の災害については、各省関係の方はどういうふになつておりますか、私どももはつきりいたしませんが、何か三億五千ときまつたとかどうとかいう話を聞いた程度でありまして、建設省の関係は、今申し上げたようなわけであります。
  61. 村瀬宣親

    村瀬委員 御答弁の趣旨がはつきりしないのでありますが、私の申しますのは、台風第二号を中心とした前後の災害を受けてから、かなりの日数がたつている。今度のは、ただいま御説明にありました通り、大きな災害でありますから、これが査定を完了して数字を固めるまでには、なお相当の時日を要する。今度の災害のすべての調査査定が終らねば、台風第二号によつて受けた災害も、そのまま手をこまねいて待つておらねばならぬというのでは、補修その他においても時機を失してしまう、また関係被害民は、非常に失望するわけでありますので、その措置はどういうふうになさる御方針であるかという時期的な問題が一つ。  それから建設省に関する限りは、まだ他の問題よりは多少——もし一緒にしても、いずれ査定するのであるからといつて、納得さす余地が、全然ないことはないのでありますが、この災害は農業災害その他の災害が非常に大きいのであります。台風第二号の場合におきましては、それらの措置までもこれに巻添えを食うということになりますと、台風第二号によつてこうむつた被害府県民は、まつた被害のまま長く放置されるという状態になりますので、そういう点もお考えになつて、御方針を承りたい。
  62. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 区別のできるところと、できないところとがおそらくあるかもしれない。これは常識でわかりますが、もちろん今度の災害があつたから、この災害の査定が済むまで前の分まで引延ばす、さようなことはいたさないつもりであります。
  63. 久野忠治

    久野委員長 次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十六分散会      ————◇—————