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1953-07-09 第16回国会 衆議院 経済安定委員会農林委員会通商産業委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月九日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員  経済安定委員会    委員長 佐伯 宗義君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 栗田 英男君 理事 阿部 五郎君    理事 菊川 忠雄君       秋山 利恭君    岸  信介君       迫水 久常君    神戸  眞君       楠美 省吾君    飛鳥田一雄君       石村 英雄君    小林  進君       杉村沖治郎君    中村 時雄君       山本 勝市君  農林委員会    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 佐竹 新市君    理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       佐藤洋之助君    松岡 俊三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       芳賀  貢君    稲富 稜人君       川俣 清音君  通商産業委員会    委員長 大西 禎夫君    理事 福田  一君 理事 永井勝次郎君    理事 伊藤卯四郎君 理事 首藤 新八君       小川 平二君    小金 義照君       田中 龍夫君    土倉 宗明君       笹本 一雄君    加藤 清二君       始関 伊平君    川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         通商産業政務次         官       古池 信三君         通商産業事務         官         (企業局長)  中野 哲夫君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁業務第         二部食品課長) 東辻 正夫君         経済安定委員会         専門員     円地与四松君         経済安定委員会         専門員     菅田清治郎君         農林委員会専門         員       難波 理平君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         農林委員会専門         員       藤井  信君         通商産業委員会         専門員     谷崎  明君         通商産業委員会         専門員     越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇四  号)     —————————————
  2. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これより経済安定委員会農林委員会通商産業委員会連合審査会を開会いたします。  私が経済安定委員長でありますので、委員長の職を行います。  本日は私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。会、通商産業委員会     —————————————
  3. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これより質疑に入りますが、この際先ほど理事会において申合せを行いまして、質疑は、通産農林委員会四人までとし、一人十五分程度関連質疑は一人一問を許すことに相なりましたから、さよう御了承願います。それではこれより順次質疑に入ります。質疑農林通産交互にこれを許します。まず足鹿覧君。
  4. 足鹿覺

    足鹿委員 私は農林委員立場から若干の質疑を試みたいと存じます。  本法律案の特徴と申しましようか、前回のものよりも著しくカルテルの範囲を広めておられるようであります。すなわち第二十四条の三等におきまして、技術的によるもののほか生産販売設備制限についての共同行為のほかに、これと並行して価格カルテル結成を認めておられることが、前回国会に御提案になり、不成立になつた案とは著しく異なつておる第一点であろうと思うのでありますが、その基本となる考え方については、どのような御見解によつて新しく価格カルテル結成を認めることとせられたのでありましようか。まずこの点からお伺いいたしたいと思います。
  5. 横田正俊

    横田政府委員 前国会にお出しいたしました二十四条の三に、技術的理由生産制限が著しく困難の場合につきまして、きわめて例外的に対価決定にかかる共同行為をすることを認めたのでございますが、今回さらにこの法案出しますにつきまして、いろいろ検討いたしました結果、この場合ばかりでなく、さらに生産数量制限相当やりましても、なお有効にこの危機を克服することができない、こういう特殊の場合について対価決定を許し、少しでも早くこの不況を回復させる道を開いたわけでございまして、なるほど前回のよりは広がつておりますが、おそらくこの対価協定までを認める場合は非常に限定された場合であろうと考えます。
  6. 足鹿覺

    足鹿委員 これは私的独占禁止及び公正取軒の確保に関する法律の一部を改正するとなつておりますが、この価格カルテルをお認めになり、現行法規の根幹とも言うべきこの点を前進せしめられることは、法そのものの精神を骨抜きにする結果になることを私はおそれるのであります。生産販売あるいは設備等についての制限に対する共同行為をさせないということでは、結局この改正案の目的が達成できないという御意見であります。特殊の場合に限つて価格カルテルを認めるということでありますが、その特殊の場合というものの具体的な基準はどういうことになりますか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  7. 横田正俊

    横田政府委員 法文言葉をもつていたしますると、前項の認可を受けて共同行為をした後において、これだけでは事態を克服することが著しく困難であるというふうな表現になつておりまするが、この意味は、少し生産制限をやつてみて、それでも効果が上らない——すぐに価格協定の方へ安易に移つて行くというようなことは厳重に制限いたしまして、相当程度生産制限をいたしましても、なお非常に困難であるという場合に限られておるのでございます。結局それならば生産制限をどの程度、何割までやつて、それでいかなかつた場合に許すかということでございますが、これは抽象的にはちよつと申し上げかねるのでございまして、各の場合に々々、またいろいろな業種によりまして違うことと思いますが、相当程度まで生産制限をやつた上でというふうに解釈いたしております。
  8. 足鹿覺

    足鹿委員 私ども長林委員会としましては、目下非常に大きな問題になつておる案件に、公正取引委員長の御存じのように、肥料の問題があります。一つ事例として私はお伺いしたいのでありますが、本年の二月における事態は、業者価格協定だと私は見ておりますが、ああいつた事態は、事実とすれば明らかに現行法規の違反であるということを、先回の農林委員会において公正取引委員長は御言明になつた。現在の肥料情勢下にあつて、日本の肥料工業国際競争に耐えない、これを近代化合理化して行くということについては、私ども農民立場といえども、あえて反対をするものではない。しかしそれが国内農民犠牲の上において国際競争に耐え得るような振興をはかられる場合において、初めて大消費者としての農民立場から、また国民人口の五割以上を占める農民立場からも、また国民的な立場からも、これが問題になつて来ることは、よくおわかり願えると思います。具体的に言いますならば、現在硫安協会等が行つておる価格協定行為というものは、生産制限あるいは滞貨の処置、設備等について必ずしも万全を期しておるとはわれわれは考えません。まずみずからが国際競争に耐え得るような近代化合理化を進めなければならないはずであるにもかかわらず、事実はいきなり価格協定行為によつて国内農民犠牲の上に輸出ダンピングをやる、こういう形が現実に現われておる。こういつた事態を、この法案成立後においては、この改正法案に照して、公正取引委員会としてはいかようにお考えになりますか。抽象的ではなかなか答弁しにくいというお話でありますから、具体的な事例としてこの点を伺つておきたい。
  9. 横田正俊

    横田政府委員 この不況カルテルは、実は条件が非常に厳格にできておりまして、その第一項の第一号におきまして「当該商品価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者相当部分事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」というようになつておりまして、よくよくの場合でなければ生産制限カルテルもできないということになつております。ただいまお話硫安の場合におきまして、はたしてこの一号のような状態が先般の二月でありましたか、あの当時もあつたかどうか、また今後の問題といたしましても、こういうような相当不況事態まで行くことがあるかどうか、問題は実はその点にかかるように思うのでございましてこの点について、もしもこういうような状態に至りますれば、その不況打開のためにカルテルが認められる、もつともこの場合につきましても、第四号にございますように、一般消費者関連事業者、ことに硫安でございますれば農民利益を不当に害するおそれがないことというようなことが、カルテル認可条件にもなつておりますので、それらのデータを厳正に検討いたしました後でなければ、カルテルは許されないというふうに考えます。
  10. 足鹿覺

    足鹿委員 不況カルテル結成条件基準について、一応はお話のように載つております。たとえば、「必要な程度をこえてはならない」というような字句があります。また「消費者及び関連事業者利益を不当に害するおそれがないこと。」と、「不当に」というような言葉使つてある。また「不当に差別的でないこと。」というような、言葉はきわめて抽象的であります。一体これはだれがその判定を、いかような方法によつておやりになるのでありますか。硫安の場合でも、政府肥料対策委員会というものをつくつて、それぞれの各界を代表する人々にさらに学識経験者を加えて、ほとんど半歳にわたつて対策をお練りになつた。しかるにその対策委員会におきましては、生産費の点については何ら具体的な結論に達しなかつた。こういう一つの最近の事例からいたしましても、たとえば必要な程度、あるいは不当に関連産業利益を害するおそれがあるかないかというようなこと、あるいは価格平均生産費を下まわつているかいなかについての判定——一体この平均生産費というものは、現在の肥料の場合においては、業者が一方的にお出しなつたもの以外には、あまりわれわれは正確なものを存じておりません。こういう事態から現実の問題として考えてみましても、条文にはそれぞれ適当な条文あるいは事項が記載してありましても、最終的には、現在の経済機構下にあつては力が左右するのではないか。ほんとうの意味において政府を動かし、またそれに近い力を持つておるもの、これが実際的には、この不当の問題であるとか、あるいは必要の程度を越えるとか越えないとかというようなことは、その力関係によつて最終的には、私は決定づけられるものではないかと考えます。これはなかなか微妙な問題でありますが、現在お出しになつておる不況カルテル結成条件のこの程度基準をもつてしては、私は結局この法文は、事実上において効力を発揮することが薄く、あるいはなく、最終的には力関係によつて、一方的な価格でもつて消費者大衆利益を害する行為が起きるものではないかということを危惧するものでありますが、そういう点について、公正取引委員長の御所見はいかがでありますか。
  11. 横田正俊

    横田政府委員 今度のこの認可事務の非常にむずかしいものであることは私も認めまするが、結局ここにございますような条件認定いたしまする前提といたしましては、事実の把握ということが必要になります。これにつきましては、主として認可申請をして参りまする事業者出したいろいろなものが、一応の材料にはなりまするが、それは単に一応の材料でございまして、その上にさらに、公正取引委員会法律できめてございまする調査権を十分に活用いたしまして、これらの事態がほたして認められるかどうかという点については、慎重に調査して参りたいと考えております。結局この要件が満たされることが認められなければ、われわれとしては絶対にこのカルテル認可はいたさないつもりでございます。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 事実の把握のために、調査権発動があるから、慎重にそれを調査した上でなければカルテル結成については認容しがたい、これは一応ごもつともであろうと思います。その通りだろうと思います。しかし現在のこの法律が成立した後における影響として考えられることは、一番最初に紡績あるいは鉄鋼、肥料、こういうようなものが、最も顕著にこの法案によつての動きが出て来るものだと私どもは見ておりますが、その場合、私は他の業種についてはわかりませんから、肥料の場合をいま一つ申し上げてみまするならば、事実上において、公正取引委員会が、今まで肥料生産費調査について、いかように調査をお進めになつておりますか。事実私ども、前に一回聞いたこともございますが、必ずしも私どもの見ておるものと、これは一致しておらない点があつたと記憶しております。しかもこの調査権発動に際して、二十四条の第十三に、調査権通産大臣にも認めると、今回は規定を新たに加えておられます。さよういたしますと、公正取引委員会調査権発動をやる、通産省調査権発動をやる、こういう二つの調査権発動が出て、異なつた調査の結果が現われた場合には、その調整はどちらがおやりになるのでありますか。その調査の結末、処理の仕方というものは、どういうふうになるのでありますか。
  13. 横田正俊

    横田政府委員 通産大臣認可をいたしまする前提といたしまして、公正取引委員会のこれらの要件が満たされておるかどうかの認定が必要になつております。従いまして、通産大臣公正取引委員会見解が相違いたしました場合には、認可はできない。結局公正取引委員会認定に拘束せられるというふうに私は解しております。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員 重大な御発言をいただいたわけでありますが、ただいまの問題について、通産省の御見解はどうでありますか。
  15. 古池信三

    古池政府委員 お答え申し上げます。ただいま公正取引委員長から御答弁がありました通りに考えております。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 現在の生産費問題についての実際を見ますると、肥料の場合なんか、当局自体がその判定にほとんどさじを投げておる。あつてもわれわれに示さないのか。大体われわれも、当局さじを投げておると見ておる。特に肥料の場合は、いかような機構をつくり、いかような手段方法をもつてしても、真に納得し得るものがわれわれに示されたためしがない。これは言い過ぎかもしれませんが、通産省自体が場合によつて業界利益代表者的な存在となりつつあるような傾向すらも、われわれは考えざるを得ない場合も従来しばしばありました。国の公正な行政官庁が、実際においてはそういう傾向を示しつつあるときに、何を好んで通産大臣調査権を認める必要があるでしようか。先刻も申しましたように、公正取引委員会は、おそらく公正におやりになるとしましても、さような御見解であつても、力関係によつて、実際的にはその力の前には、何ほどかの制約なり、あるいは圧迫なり、いろいろな形において受けられる影響というものを無視することは、私どもはできないと思う。むしろかような条文は、百害こそあれ一利もありません。そういう点で、私どもはことさらに並行して調査権発動通産大臣に認められるとするならば、関連産業として、いわゆる国内消費者大衆の中心を占めておる、肥料の場合には農林大臣にも——肥料の問題については、従来その監督権の一元化の問題もしばしば出ておる。これはなかなか重大な問題であつて、未解決になつておりますが、当然いわゆる消費者側立場に立つた調査権の発動というものがあつて、初めてここに利害の相反するものが、その調査権発動をして、そうしてその判定公正取引委員会がおやりになるということであるならば、若干うなずける点もあります。ただ私は肥料の場合を申しておるのでありますが、先刻も申しましたごとく、通産大臣自体業界利益を代表しておられるような感をわれわれは深くしておる。通産省公正取引委員会と並行して調査権発動をされることは、無用であると思う。一方的であると思う。少くともこれは大きな消費者であるところの農民を一応行政的に代表しておる農林省にも、並行してこれを認めしめて、そして最終的には公正取引委員会が御決定になるとおつしやるならば、ある程度これは私どもも筋の立つた話だと思いますが、これでは非常に一方的に偏するものだ。従つて消費者大衆の意向というものは反映せずして、いたずらに業者利害というものが、その調査権発動から結論に至るまでの間に含まれがちであると、われわれは考えますが、公正取引委員長はこの点について御所見はいかがでありましようか。
  17. 横田正俊

    横田政府委員 ただいま私のお答えが少し不十分でございまして、補足さしていただきたいと思います。公正取引委員会調査をした上認定をするということを申しましたが、その調査手段はいろいろなことが法律規定されておりまして、大体独占禁止法の四十条から四十二条までがそれに関する規定でございます。四十条の方は、「職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人事業者若しくは事業者団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料提出を求めることができる。」となつており、これには罰則もついてございます。四十一条では、「職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、学校、事業者事業者団体又は学識経験ある者に対し、必要な調査を嘱託することができる。」四十二条では、「公聴会を開いて一般意見を求めることができる。」というような調査手段規定してございまして、ただいま仰せになりましたような、たとえば肥料につきましては、もちろん農林当局意見を十分に聴取いたしまするし、あるいは学識経験ある人の知識を十分に利用いたしたいと考えております。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 時間がございませんので非常に残念ですが、いま少しお許しをいただきたいと存じます。問題はこの調査権発動するということ自体は、別に私どもは異議はないのでありますが、その成果がはたしてあがり得るかいなかということに危惧を抱いておるのであります。公正取引委員会機構は、この独禁法の緩和によつてむしろ縮小の傾向をたどるのではないかと私は考えますが、この調査権発動され、その結論に基いて重要な価格カルテルを認めるか認めないかというようなことになりますと、この調査発動に必要なそれ相当調査機構人的要素予算的措置、そういうものが相当拡充強化されざる限り、現在のごとき事態においては、満足すべき調査権発動は期待できないのではないかと私は考えますが、現在通りでその確信がありますかどうか。
  19. 横田正俊

    横田政府委員 予算の面あるいは定員の面におきまして、きわめて不満足な状態になつておりますることは事実でございまして、この点はわれわれといたしましては、できるだけその是正に努めたいと考えておりますが、しかし大体行政整理傾向にもございますので、われわれのただいまの気持といたしましては、少い人間でございまするが、その人間が十分に仕事をいたしまして、このむずかしい仕事をやり抜けるというふうに考えておるわけでございます。もちろん予算もございませんので、そういう面からの制約もございますが、それらの点を克服いたしまして、ぜひともこの仕事はりつぱにやつて行きたいと考えております。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 一言だけ関連して……。私は蚕糸業法の一部改正との関連において、まだ繭取引問題等についても質疑をいたしたいと思つておりますが、他の委員の人に御迷惑をかけても恐縮でありますから、引続き時間が許しますならば別の機会に発言を許していただきたいと思います。一応ただいまの質疑は継続さしていただくという前提に立ちまして、この際打切つておきます。
  21. 佐伯宗義

  22. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 通産大臣はきようお見えになりませんか。
  23. 佐伯宗義

    佐伯委員長 まだおいでになつておりませんが、きようは参ることになつております。
  24. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 時間がきわめて制約されておりますから、要項的に二、三点を質問してみたいと思います。不況カルテル国民生活を必然的に圧迫する結果をつくると思うが、この点に対してどのような対策を考えておられるか。
  25. 古池信三

    古池政府委員 簡単なお尋ねでございまするが、私どもといたしましては、不況カルテル認可によりまして事業が堅実に運行されるならば、それによつて国民生活はかえつて安定こそすれ、それによつて侵害を受けるということはないと考えております。
  26. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今答弁されたような抽象的なことで納得できません。従つてまた、おつしやるような国民生活安定化に持つて行くことは不可能であると思います。というのは今度の認可を厳重にするというようなことを言われておるようであるが、厳重にするという意味は、従つて平均生産費をいかにして見るか。そういう調査というか、そういうことを確実に見得るかどうかという点に対する具体的な、確信のある点をお示し願いたい。
  27. 古池信三

    古池政府委員 私どもは各産業につきまして日常相当調査もし、資料もとつておるのでありますが、特に不況カルテル認可しようというような場合には、さらに慎重に所属機関を動員いたしまして、十分なる調査をし、また報告も聴取して、万全を期して参りたいと思いますので、ただいま御心配のようなことは万々あるまいと存じております。
  28. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 通産省生産業者代表機関と言われております。従つてさらに大企業利益代表存在のごとく言われておるのも事実であります。従つて先般来からしばしば論議をされております、たとえば輸出出血輸出をしておるということがよく言われるが、はたして出血輸出であるかどうか。その甲乙丙丁生産業者生産費を調べておられるかどうか。これはおそらく私は、そこまで深入りをした調へ方というものを持つておられないと思う。もし持つておられるとするならば、一例をあげてお示しを願いたいと思いますが、それはおそらく持つておられぬと思う。さらに同時に、たとえば非常に景気のよいときに資本蓄積しておつた。不景気になつて赤字であると言つてたこ配をしておるというが、たこの足は少くならない。これらはやはり蓄積資本の操作をやつておるのでございます。通産省等所管庁はそういう点を厳格に把握しておられるかどうか。こういう点を私はお伺いしなければなりません。
  29. 古池信三

    古池政府委員 お答え申し上げます。最初お話のありました、通産省生産業者あるいは大企業者利益代表ではないかというお話は、私どもとしてはなはだ心外な点でございます。通産省は、国家機関立場上きわめて公正な立場に立つておるのでありまして、むろん所管関係から、産業育成発展ということにまず力を注ぐことは当然でございまするけれども、一方国民消費者立場を考慮に入れることはもとより申すまでもないことでございまして、一部の者の利益代表というようなことは、絶対われわれはないつもりでおります。ただいまのは御意見として承つておきます。  次に生産業者のコストその他について調査をやつておるかというお話でありますが、これは各産業部門についてそれぞれ調査をいたして握つておるのであります。
  30. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 あなたの答弁はきわめて抽象的でございます。というのは、今まで私どもはしばしば資料出してもらい、また論議をしたことがありますが、通産省がそれぞれ個々の産業別経営者、その生産費というものを具体的におつかみになつてつた例というものを、私は知りません。さらにまたどのくらい利益をあげて、どのくらい資本蓄積をしておるか、資本操作をしておるかということを、具体的におつかみになつておるという確信もまだないと私は信じておる。私がさつきから質問しておる、不況カルテルというものが国民生活を圧迫して来るということは論ずるまでもない。そういう点を明らかにされなければ、今度のこの改正というものはわれわれは納得ができない。  さらに質問したいのは、合理化カルテルは、大資本を中心に強化されて来ることは明らかでございます。従つて私がさつきから質問しておる点が明らかにされないということになりますと、企業整備の名のもとに、当然従業員の首切りの問題が起つて参りましよう。あるいは経営操作を賃金の面に持つて来ることも明らかになりましよう。そういうことになれば、従つて問題が起つて来るということは——すでに労働組合などがこの独占禁止法の緩和廃止へ持つて行こうということに強く反対しておる点も、御承知のことであると思うが、これらに対するところの対策を十分考究されてあるかどうか、伺いたい。
  31. 古池信三

    古池政府委員 ただいまの合理化カルテルの成立によつて企業がますます大きくなるのではないかというお尋ねは、一応ごもつとものように存じますけれども、必ずしもそういう場合ばかりではない。やはり日本の産業はまだまだ不合理な点が非常にたくさんありまするので、これを合理化して能率的にして参りまするならば、これによつて製品の価格合理化され、ひいてはこれを購買し、消費する国民大衆の利益になるものと考えております。また合理化することによつて従業員が減ることはないかという点は、まことにごもつともなお尋ねだと存じます。産業内部が機械化され、高度に技術化されて参れば、従業員の数は漸次減少すするということが一応考えられるのでありまするが、これは一つの労働問題といたしまして、その合理化の過程をどういうふうに持つて行くか、またこれと並行して失業対策をどうして行くか、という問題に関連して十分に考えて行かなければならないと存じます。
  32. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 品種の協定の名のもとに当然専門的なものが重要視されて来ることは明らかであります。従つてこれは、独占的な力関係というものが大きく出て来ることも明らかであります。そうすれば、大企業に有利な協定が結ばれるということも明らかでございます。そういう必然の結果として優勝劣敗というか、弱肉強食ということが現われて来ることは論をまたないと思います。そうなれば、従つて中小企業は押しつぶされて来るということになるが、この結果から来る中小企業に対する対策としては、どのようなことをお考えになつておるかを伺いたいのでございます。
  33. 古池信三

    古池政府委員 ただいま弱肉強食という言葉をお使いになりましたが、極端な表現と申しますか、要するにわれわれ自由主義経済をとつておりまする場合には、そこにおのずから淘汰が現われて来るということは、これは否定できない事実だと存じます。しかし日本の現状から申しますれば、産業の九十パーセント以上は中小企業者でございまして、中小企業者を衰微させるということは、すなわち日本の産業の衰微になるかと存じます。一方におきまして、比較的大きな企業者が合理的に発達して行きますと、またこれに伴つて中小企業の発達ということも期待できるのであつて、大企業と中小企業というものは、必ずしも相対立して抗争しているものではない。大企業が発達すればそれにつれて、たとえばその下請企業というものは十分に発展の余裕があるものであり、またその希望もあると思うのでありまして、その産業構造の上においていかに調和して日本の現状に寄与せしむべきかということが、今後の産業政策の大きな課題であろうかと考えます。
  34. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今あなたは軽い意味でこの問題を見ておられるようでありますが、今度この独禁法が緩和されることについて、中小業者並びに労働者側が非常に反対しておることは、御承知の通りであります。それは、それらの対策が具体的に講じられていないという点からでございまして、従つて中小企業者、労働者が反対するということは、その経営が、生命というか、生活に直接重大な影響がある、いわゆる職場問題、生活問題に大きな影響を与えるということから、死活の問題として反対をしているわけでございますが、この大企業から漸次押しつぶされて来るものに対する対策を、どう講じて行かれようとするのか。これらの点をもう少し明らかにされなければ、私は納得ができないのでございます。こういう点について具体的に納得のできるような、お考えになつている点をお示し願いたい。
  35. 古池信三

    古池政府委員 この法案の成立につきまして反対をしていらつしやる方々は、おそらくこの法律の趣旨あるいはこれが実施された場合におけるその運用等について、もう少しつ込んで御了解を願えば、さような反対も少くなつて行くのではないかと考えるのでありますが、ただいまお話の大企業に対して中小企業は非常に困つておる。その点は私もよく存じておりまするし、この問題を軽く見ておるつもりは毛頭ございません。中小企業は何と申しましても数が多いのでありますから、これに対しましては、御承知のように、当省としては、中小企業庁がもつばらその指導、育成のためには中心になつて働いておるのでありますが、さらに地方の出先機関といたしましては、各地の通商産業局、さらにまた各府県の経済部その他とも十分に連絡をとりまして、中小企業の振興育成のためには、あるいは技術の指導なり、あるいは金融のあつせんなり、あらゆる面からあたたかい手を差延べて指導をしておるつもりでございます。今後もそういう方針でやつて行くつもりでおります。
  36. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 時間がもう大分なくなつて来ているようであります。その辺も心得てやりますから、いま一問だけ伺いまして、もつと根本的にいろいろ質問しなければならぬことがございますけれども、時間の関係で省きます。  最後にいま一点だけお伺いしたいのは、再販売価格維持の契約について、共済組合的な福利施設の運営に当る団体としております、たとえば農協の組織、あるいは労働組合の組織、あるいは消費組合等の組織、これらの販売業の業務には適用しないということが一応明らかにされておるようでありますが、私がお尋ねしようとするのは、今日大きな事業場というものは、購買会というか、そうした従業員のための消費組合と見るベきようなもの、生活協同組合と見るべきようなもの、そういうようなものをみんな持つておるわけでございますが、これらの機関というものを一応指定されておりますような団体に適用されるかどうか。そういうように見られるかどうか。これは非常に大きな問題でございます。これは労働賃金の上に、労働生活の上に、あるいはその待遇の上に非常に大きな影響を持つておる。これらを見られないということになりますと、生活問題としてこの問題は大きく持ち上つて来ます。これらをその団体にお含めになつておられるかどうか。含めないとするならば、非常に重大な問題が起つて来ると考えます。これらに対してまたどのようなお考えを持つておられるか。これは現にすぐ起つて来る大きな問題でございますから、具体的に、確信をもつてこれらの点について御説明を願いたい。
  37. 横田正俊

    横田政府委員 その点は便宜私からお答え申し上げます。  再販売価格維持契約の例外といたしまして、ここに十一あげてございます法律に基きまする組合は、定価売りを押しつけられないということになるわけでございます。それ以外の会社等の私的の、いわゆる共済会というようなものはこの中に入らないのであります。その理由は、なるほどそういう私的の共済組合も、労働者その他の福利厚生をはかる面がございますが、実例を申し上げますと、これらの会社等の私的の組合におきましては、きわめて活発に員外の人に物を売るというようなことを伺つております。たとえば八幡の場合におきましては、従業者のみならず、一般市民に広く販売をいたす、しかも市中にたくさんの店を持つて、ほかの普通の小売店とまつたく同じような態度で物を売る。これは法律に員外営業に対する規制が一向にないから、どういうことをしてもいいことになつておるのでありますが、これらに対しましては、土地の小売商あるいはその団体等から、公正取引委員会にもたびたび申出がございます。これは何も八幡だけではなく、至るところの大きな都会にある現象であります。従いまして小売商の最低のマージンを確保してやろう、生活の安定をはかろうというこの維持契約に、こういう法律規定以外の私的のそういう共済会までもがそのらち外に置かれるということになりますと、この制度を設けました趣旨がまつたく通らないことになりますので、この点はわれわれよくよく考えました結果、これだけの法律規定のあるものだけに限定いたしたわけであります。
  38. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今御答弁になりましたのは、実例をお知りにならない、間違つた答弁をされておりますから、お伺いします。  今一例に八幡製鉄の購買会をお示しになりました。一般市民に販売をしておる、そのために一般商人が圧迫を受けるからいかぬのだということをおつしやいましたが、私も八幡に三十年住んでおる一人でございます。従つて組合との関係もありますから実情はよく知つておりますが、一般市民に購買会が販売をしたということをいまだかつて聞きません。また売ることはできなくなつております。だからどういう材料に基いてそのようなことをおつしやつたかを伺わなければなりません。同時にまたそのような考え方でこれをいかぬとおつしやるならば、それは非常な間違いであると思う。そういう抽象的な間違つたことでこれらをその範囲内に入れないと指摘されることは、私ははなはだ遺憾に思います。だからそういうものを入れないとおつしやるならば、この改正案というものは一応考え直してもらわなければなりません。そういう点について私はもう少し確実な点をもつてお示し願わなければなりません。そういう点ではわれわれはこの法案改正に承服することはできません。
  39. 栗田英男

    ○栗田委員 今の伊藤さんの御発言関連をいたすのですが、実は私二、三日前に、当該委員会でこの再版売維持契約の審議をいたしておりますと、福岡県の薬剤師協会長と福岡県の薬事協会長が当委員会に参りまして、八幡の購買会の状況を陳情して参つたのであります。その陳情の内容がもしも今伊藤さんの言われたように、まつたくこういうことをやつておらないというのなら、われわれもまた考えなければならぬと思うのですが、これは九州からわざわざ委員会まで来て陳情いたしたのであります。それはどういうことかというと、八幡製鉄所の購買会が製鉄所従業員の積立金によつて福利施設として購買会をやつておる。しかも八幡と戸畑の両市の目抜きの町に十四箇所のデパート然とした購買会の出店を持つてつて、ここで薬剤師も置かずに薬品なり化粧品を販売いたしておる。しかも一般市民、製鉄所従業員の区別なく、全品目をそろえて積極的にこれを販売いたしておる。しかもその価格はどうかというと、八幡市においては二十三万の人口で、薬局数は五十八であるけれども、そのうちの十四箇所が購買会の出店である。しかも医薬品をどのようにして販売しておるかというと、注射薬プレホルモンは、小売店の仕入れ価格は百二十円であるにもかかわらず、購買会の価格は百二十五円で売つておる。また新薬は強オバホルモン錠が、小売店の仕入価格は二百円であるけれども、購買会は二百十円で売つておる。家庭薬として龍角散が七十八円の仕入価格であるのに八十五円で売つておる。また体温計は、仕入れ価格は百五十五円であるけれども、これはまた三十円安の原価を割つた百二十五円で売つておる。その結果、八幡市における薬剤師、化粧品店等の小売の販売高というものは全九州の最低位になつて、このままでは倒産をするということで、非常に熱心に陳情に参つたのであります。そういたしますと、私のところへ八幡から来た陳情と伊藤さんのお話とは、まつたく食い違つておるように思いまして、私は非常なふしぎな感を持ちましたので、念のために申し上げます。
  40. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今おつしやいました点ですね、十四箇所ぐらいあると言われましたが、それはおそらくそのくらいあるだろうと思います。ああいう広い土地でございますから、配給所というものがあるわけでございます。多分その配給所のことだろうと思います。八幡市においては製鉄の従業員だけで四万人近くおりますから、家族を加えますと、全人口の大部分といつていいわけでございます。従つて、そういう家族の者が買いに行くときには、それぞれの通いというか証明というか、そういうものがあるわけであります、多分そういうこととの関係ではないかと思います。八幡市においては、一般商人の方々とこの購買会の問題が絶えず問題になるわけであります。多分そういうことから起つて来ておることだと思いますが、私もその陳情をしばしば受けたことがございます。事情はよくわかつておりますが、原則として従業員及びその家族以外には売らないということが明らかにされておるわけでございますから、この点は私の申すことは間違いございません。それから先ほどの質問に対する政府委員答弁を願います。
  41. 横田正俊

    横田政府委員 員外の人に売らない建前になつておることは私は承知いたしており、また八幡の方もできるだけ自粛したい気持であることもわかつておりますが、実際はそうではないというふうに私は聞いておるわけでございまして法律に基かないものでございますから、かりに一応そういうふうにきめましても、その保証が全然ないわけでございます。やはりこういう法律規定のあるものとは、たいへん扱いが違つていいのではないかと考えます。
  42. 佐伯宗義

    佐伯委員長 始関伊平君。
  43. 始関伊平

    始関委員 いわゆる独禁法の改正案が実施されるといたしますと、この法律をきわめて限定的に適用するという御方針でありましても、日本の経済の実情から申しまして、相当広範囲にいわゆる不況カルテルあるいは合理化カルテルというものが実際行われて来るのではないかと考えますが、その点についての見通しをお尋ねいたします。なお特にただいま予想せられておりますこれらのカルテルの適用されます業者は、どういうものでありますか、その点をお尋ねいたします。
  44. 横田正俊

    横田政府委員 おそらく現在この条件に当てはまるものはあまりないのではないか、また将来このカルテルができることもあまり予想されないと私は思います。
  45. 始関伊平

    始関委員 その点はしばらくおきまして、この法律の適用を適切にやるという点から申しますと、各種の調査、特に原価調査がきわめて重要であり、かつ困難な問題になると思うのでありまして、私どもが戦時中価格統制をやりました際の経験から申しましても、会社から出して参ります原価はきわめて不正確であります。のみならず水増しが多いのでありまして、これを適切に査定して参りますためには、公取委なりあるいは主務省におきまして、相当の専門家をそろえる必要がある。また統一的な原価計算方式なども準備をいたさなければならぬのでありまして、そうでありませんとこの法律の実際の運用の結果、国民生活の非常な圧迫というような事態も生じて参ると思いますが、この原価の認定は公取委でおやりになるのでありますか。あるいは主務省でおやりになるのでありますか。いずれにいたしましても、私はただいま主務省にも公取にも大した専門家もいないように思うのでありまして、その点についてうまくやれる自信がおありかどうかという点を、お尋ねいたします。
  46. 横田正俊

    横田政府委員 この点は、実施に際しまして十分にこまかい手続等も設けて、認可あるいは認定仕事に役立てたいと思つております。ただいま公正取引委員会にろくな人間はおらぬじやないかという御質問でございますが、人数は非常に少うございますが、しかしこの委員会調査課というのがございまして、それぞれの業種についてかなり専門的に平素から研究しておる者がございます。もちろんそういう人だけでは完全な仕事はできませんから、先ほども申しましたようないろいろな規定を十分に活用いたしまして、通産省あるいは農林省その他の官庁あるいは学識経験者というような外部の方の知恵も拝借いたしまして、この仕事をやつて行くつもりであります。
  47. 始関伊平

    始関委員 公取委員会認定がない場合におきまして、あるいはそれを無視した状態において主務大臣がカルテル認可をしたという場合には、これは内部関係は別といたしまして、法律上は外部に対して有効であるのか無効であるのか、その点の解釈をお伺いいたします。
  48. 横田正俊

    横田政府委員 公取委が認定をいたしません場合に主務大臣が認可をするということは、絶対にあり得ないということになると存じますが、単なる抽象論としまして法律問題として考えますれば、その場合の認可はいわゆる瑕疵のある認可ということになりまして、大体無効ということになろうかと思います。この点は北海道大学の行政法の先生である今村という人が、はつきり違法であるということを言つております。最高裁判所ではそういう同種の場合の判例はちよつと見当りませんが、下級裁判所では同様の場合について無効という認定もあるようであります。
  49. 始関伊平

    始関委員 いわゆる独禁法の改正は、この改正案の出ます前に、実質的にはすでにある程度行われておると思うのでありまして、たとえば中小企業安定法案あるいは輸出取引法というものは、実質的にはこの改正案の趣旨とほぼ同様なものではないかと存じますが、その点はいかがでありますか。またそうであるとすれば、今回のこの法律改正案におきましては、中小企業安定法案あるいは輸出取引法のような別の法律によりませんで、同一の法律改正、いわゆる独禁法の改正によつたというのはどういう事情でありますか。その点をお尋ねいたします。
  50. 横田正俊

    横田政府委員 この独占禁止法の修正の仕事は、実は昨年の国会あたりから問題になつてつたわけでございまして、つまり貿易振興の場合にある程度カルテルを認める、それから中小企業不況の場合に対処しますために、ある程度カルテルを認めるというような点におきまして、この独占禁止法より一足先に、昨年の国会におきまして、今仰せになりましたような二つの法律が出たわけでございます。今回はさらにこの中小企業とか、あるいは輸出とか、そういう特殊の場合に限りませんで、一般的に各事業につきまして不況の場合の対策、それから合理化の場合のカルテル、これをある程度認めようということになつたわけでございまして、結局きわめて問題が一般的であるという意味におきまして、独占禁止法自体の中へこれを織り込んだ次第でございます。
  51. 始関伊平

    始関委員 今回の独禁法の改正案は、形式から申しましてもいわゆる独禁法の改正でありまするし、またその内容から見ましても、これは独禁法のいわゆる緩和あるいは例外措置であると思うのであります。そうであるといたしますれば、世間で議論されておりますように、公取委員会認定なりあるいは認可なりで足りるのではないかと思うのでありますが、公取の認定の上に、さらに主務大臣の認可というものを加える必要があるのは、どういう事情によるのでございますか、この点をお尋ねいたします。
  52. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、もちろん公正取引委員会といたされましても、このカルテル認可にあたりまして十分な調査をいたされることは申すまでもないのであります。しかしながらわが国の産業につきまして、特に専門にこれを主管し、研究し、調査しておりまするのは、それぞれの産業官庁であろうと思います。従いまして、かようなカルテル認可というような問題については、できる限りこれを慎重にして、国民に及ぼす影響もよい影響を与えるようにせねばなりませんので、最も産業に精通しておる、たとえば通産省関係にしますれば通産大臣がこれを認可をする、しかもその場合には、公正取引委員会認定をまつて、そうして主務大臣が認可をするという慎重な方法をとるわけであります。大体主務大臣の認可を必要とする理由は、以上のようなわけであります。
  53. 栗田英男

    ○栗田委員 今の問題に関連をして政務次官にお尋ねをしますが、この独禁法の運用というものは、準司法的な行政手続と特殊な司法審査制というもので運用されておるわけです。これは普通の行政と大分違つておる、これは独禁法に特有な一つ法案です。そこで今のように、あなたの方が突然横から認可ということで飛び込んで来た場合において、この申請者に裁判的に及ぼす影響はどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。たとえば公取委が認可した場合と、公取委が認定して通産大臣認可した場合において、申請者は、その結果どういうふうに違うのかということです。
  54. 古池信三

    古池政府委員 あるいは私が誤つていたかもしれませんが、大体お気持を察しまするに、公取委の認定と主務大臣の認可とは、法律的な効果においてどう違うか……。
  55. 栗田英男

    ○栗田委員 いや法律的でなくて、申請者に及ぼす影響です。
  56. 古池信三

    古池政府委員 わかりました。申請者といいますか、その事業者に対して、どういう法律的な効果を及ぼすか、こういうことだろうと存じます。これはこの法律にもございまするように、主務大臣はこの認可をしようといたします場合には、あらかじめ公取委員会認定を得なければならない、かように義務づけられておりますので、その認定を得た上で認可をするのでございまするから、申請者に対する法律的な効果は同一と存じます。
  57. 栗田英男

    ○栗田委員 そういたしますと、非常にそれはおかしいことなんです……。     〔「関連じやない」と呼び、その他発言する者あり〕
  58. 佐伯宗義

    佐伯委員長 栗田君の発言を許しません。
  59. 始関伊平

    始関委員 カルテル認可は、形の上で見ますれば、独禁法の例外を認める独禁法の運用でありますが、同時にこれは裏から申せば、不況の克服であり、また合理化の推進でありまして、これは通産行政の最大の眼目であるという意味合いにおいて、この権限関係におきましては、私はこの原案の趣旨に賛成でありますが、その点はすでにございまする中小企業安定法あるいは輸出取引法と同様でありますか、お尋ねいたしたいと思います。
  60. 古池信三

    古池政府委員 不況カルテルあるいは合理化カルテル認可によつて産業の育成、発展をはかるというその目的は、中小企業につきましては中小企業安定法、また貿易関係につきましては輸出取引法によつて行政措置を講じておりまするのと、目的はまつたく同じであります。
  61. 始関伊平

    始関委員 私のお尋ねいたしますのは、主務省と公取委との権限関係におきまして、今回の改正案と前にあつた二つの法律とが同じであるかどうかという点であります。
  62. 古池信三

    古池政府委員 権限関係については、必ずしも同一ではないと存じます。
  63. 始関伊平

    始関委員 このカルテル認可は、認可制度をやめて届出制度で足りるのではないかという意見もあるのでありますが、これについて御研究になつたことがございますか。またあるとすれば、どういう理由でこれを採用しなかつたかということを、お尋ねいたします。
  64. 横田正俊

    横田政府委員 今回の改正法によりまして、カルテルをある範囲で認めることになりましたが、やはわ基本的には、カルテルというものはいろいろな弊害を伴いがちなものであるという、態度はかえておりません。従いまして、認めます場合もいろいろの要件をきわめてやかましく法律規定いたしまして、限定的にいたしております。従つてそれらの条件に当てはまるかどうかということを、事業者に自主的に判断してもらうということは、非常に困難ではないか、ことに関連産業に対する影響、あるいは一般消費者に対する影響事態を克服するため必要な限度を越えているかいないかというようなことは、その当該事業の方々に公平な判断をお願いすることは、非常に困難ではないかというふうに考えますので、こういう認可制をあわせて採用することによつてカルテルをなるたけ濫用されないようにというのが、今度の改正法の建前でございます。
  65. 始関伊平

    始関委員 最後にもう一点、こまかい問題でございますが、商標の信用によつて販売される商品、たとえば化粧品のようなものでございますが、これが製造業者が調べた価格によるいわゆる再販売価格維持契約というものを認めてほしいという陳情がここにございますが、これを認めるようになるのかならないのかという点を、お尋ねいたします。またならないとすれば、どういう理由によるのかということをお尋ねいたします。
  66. 横田正俊

    横田政府委員 その点は、前国会にもその案をお出ししまして、それをさらに多少修正いたしまして、今回の第二十四条の二というので、その業界からの要望にこたえ、これによりまして、小売業者の適正な利潤の確保がはかれるというふうに考えております。
  67. 川俣清音

    ○川俣委員 ちよつと遅れて参りましたので、質問の点についてダブることがあれば、御注意願えれば省略いたしたいと思います。前の国会において、横田公取委員長に対しましていろいろ質問いたしましたが、現在の硫安協会の行う行為について、慎重に検討された結果警告を発せられたようでありますが、その後その硫安協会に所属しておりまする事業者がどのような誠実さを示したか、これをお示し願いたい。
  68. 横田正俊

    横田政府委員 先般警告を発しました後は、割合に警告の趣旨にのつとつてつておるように思われるという担当官の話でございます。あの警告の趣旨は、いわゆる建値の発表というものが、共同カルテルの趣旨を含んでおるか、あるいは単に一つの参考の値を出したにすぎないか、つまり業者を束縛する趣旨であるか、あるいはそうでないかという点につきまして、硫安協会長に問いただしまして、結局それは拘束性の全然ないものであつて、各事業者はあの値に拘束されずにかつてにやつてよろしいという趣旨であるという言明を得ましたので、それならばそれを天下に発表し、また事実上そうであるような態度を各製造会社がとつてほしいということを申しまして、その趣旨の発表もございましたし、その後、大体今申しましたような態度で処理されたように考えております。
  69. 川俣清音

    ○川俣委員 今横田政府委員答弁によりますと、警告を発したことが誠実に具体的に現われておるものと認められるという御答弁でありますが、しからば警告を発せられる以前と、発せられた結果どのように一体変化が来ておるとお認めでございますか、確かに変化があるとお認めでございますか、変化があるとすれば、どのように具体的に現われておるか、その点を具体的にお示しを願いたい。
  70. 横田正俊

    横田政府委員 われわれの念願いたしましたところは、結局各業者が適正な価格で自主的に売るということにあつたのであります。しかし御承知のように、硫安は買います方が大体一本になつておりまする結果、実際に出ました値は、結局一本というような形になつて来たものと思いまするが、これは取引方法の特殊性に起因したものであつて、個々の業者が団結をしまして、いわゆるカルテル結成して値をきめたというふうには、私どもは見ておらないわけでございます。
  71. 川俣清音

    ○川俣委員 しかしこれは、相当慎重に公取委はそれを検討せられて、単なる形式上の警告を与えられたものとは、私どもは思わないのであります。形式的な、実質を伴わないような警告を与えるということは、これは公取委の権威に関するのでありますから、おそらく内容の変化を当然期待された警告だろうと思う。また今の御答弁によりましても、この警告の結果が具体的に現われておると認めるという御答弁であつた。ところが何らこれは形式的に現われていない。ただ警告があつたのに対しまして、一応の声明が出たことは事実であります。今横田政府委員は、買受けの方が一本であるから、これは一本になつておるだろうなどと申されまするけれども、これは実情を公取委が調査していないということをみずから暴露しておる。なるほど全購連が一本で買つておるというふうには見られるかもしれませんが、全購連のほかに、多くの商取引者がおるはずであります。ことに最近あの問題が起きて以来、全購連の数量よりも、一般の数量がふえておるとさえ見られておる。これが一本だなどという認識を持つて、警告が十分徹底しておるなどという御答弁は、まことにふかしぎである。もう一度御研究の上御答弁を願いたい。
  72. 横田正俊

    横田政府委員 硫安問題につきましては、先般も経済安定委員会の方で、一応簡単な事柄は申し上げたのでありますが、この事業の性質が、今仰せられますように、協定をしがちな、あるいは生産制限等をしがちな業種でございますので、今後もそういう値段の問題あるいは生産関係の問題につきまして、十分に注意して参りたいと考えております。
  73. 川俣清音

    ○川俣委員 十分注意されるという御答弁ですから、これ以上質問することもないように思うのですけれども、たとえば肥料対策委員会に臨むにいたしましても、全国硫安協会に集めて、一日協議をしなければ、業界意見がまとまらないということが、新聞紙上にもたびたび現われておるわけです。それは価格に関することです。間接には価格に関することです。そのように依然として強固な団結を持つておる。また全購連の取引については、確かに一本でありますことは、買受けの方法からいたし方ないといたしましても、全購連と一般商取引とが、やはり同じ価格でもつて取引されておりますことは、われわれのようなしろうとでもわかるのでありまするから、これは当然、これが警告を与えられた公取委としては、その後いかなる変化が起きておるかということは、当然お調べになつていなければならぬはずだと思う。お調べになつておりませんかどうか。なぜお調べにならなかつたか。
  74. 横田正俊

    横田政府委員 ある程度調べておるそうでございますが、まだここではつきり申し上げる段階に達していないそうでございます。
  75. 川俣清音

    ○川俣委員 調査中だというこでありまするから、すみやかに調査の結果を本経済安定委員会なり、あるいは農林委員会に発表願いたい、この点もう一度委員長に念を押しておきます。
  76. 横田正俊

    横田政府委員 できるだけそのようにいたしたいと思います。
  77. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村時雄君。
  78. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連質問ということは対象があつて質問する、参考資料を持つてつて質問ととられるなら、こういう国会の新字典でも発表してもらいたい。また表に出ましたら、農林大臣にぶつかつた。あなた呼ばれておつて重大な問題がたくさんあるのだ、一体どうされるのですかと聞いたら、一体何の質問するんでしようかと言つて向うに行つてしまわれた。こんなことで農林大臣を呼ばれたんですか。それはそれくらにしておきまして、政務次官はこの法案の内容がおわかりにならないらしい。そこで現実的な問題に関連してお尋ねしたい。まず第一に、たとえば不況カルテルの問題、不況カルテルにおきまして、先般の操短から来ました結果においても、労働者の首切りが事実においては二万人以上出ておる。これも認めておる。また中小企業のその人たちが、操短をやつたがためにアウト・サイダーに無理にされたために、実際の割当が少くなつて来ている。割当が少くなつたために経営上非常に困難を来しておる。これも事実として現われて来ておる。またそのほか砂糖におきましても、これは金融と結びついている。たとえば砂糖消費税をきめて来た。その砂糖消費税を、たとえば七万トンくらいのものを考えて行つた場合、それを六十五億円から銀行に積立てをしなければならぬ。それに基いて金融機構は金の貸出しをやつておる。ところが砂糖が値下りになつて来ると、これは危険が伴う。そこで金融機構からその業者に対して話合いをつけ、そうして価格の値上りをさせて行きますと、これに伴うた危険性がないから金融機構は安体になる。そういうように金融機構から砂糖が現実に上つている。しかも生産費云々というと、その生産費の考え方も実にずさんでわかつておらない。ほとんど輸入為替によつてつておる。そういう状態がある。またそのほかにえさの問題にしても、たとえば日清粉、日粉がどういうことをやつておるか、実際問題といたしましては、昨年度の四半期において一億五千万円からもうけておる。それはめん粉においてはもうけてない。たとえば一袋の小麦から二袋のめん粉がとれ、二袋の小麦から一袋のえさがとれる。その意味から一億五千万円をもうけたということになつておる。これに対し、飼料需給調整委員が外国から買つて来て、これによつて調整をなさるとおつしやる。だから外国から原麦で買つて来てやつているものを、その操作の期間を延ばして行きますと、少くとも価格の高値はきめて行ける、そういうカルテルなんです。そういうことを認めておきながら、あなたは実際の行動としては大丈夫だとおつしやつておる。ちつとも大丈夫じやない、困つて来るのです。たとえば再販売価格にしてもそうです。きのうもそういう話は出たのですが、たとえばここに大きなメーカーがおる。たとえば丸金なら丸金でいい、あるいは資生堂なら資生堂でいいです。そういうふうに失業者があふれている。また潜在失業者がいる。これが手取り早いのは、小売商になろうと思つて、そういうりつばなメーカーと提携しようと思つても、生産から卸、小売と縦の連繋が認められていて、新しく食い込もうと思つても食い込めないのが現実なのである。しかもこれに加えて通産大臣が許可権を持つような官僚独善の空気がふんぷんとしておる。こういうようなことを考えたならば、これが許可権を持つ官僚機構と結びついたら、生産費調査もできない公正取引委員会が何ができるか。そういうことが現実に出て来れば完全にこれは独占資本である。少くともあなた方の考えているのはカルテル、トラスト、コンツェルンまで考えて、そうして昔の考え方に基いた経済立地の立て方をしようとしている。そうするとこの法案の自由なという立場と根本的に異なつた骨抜きになつてしまうのです。だからこういうことについて、少くとも二十四条のこういうものを削除するとか、あるいは公正取引委員会に許可権を与える、あるいは労働者、農民をその線の中に入れる。そうしてほんとうの消費者としての姿を打出すだけのお考えがあるかどうかということをお伺いしたい。
  79. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村時雄君どちらにお聞きですか。
  80. 中村時雄

    ○中村(時)委員 政務次官にです。法案の内容がわからないから……。
  81. 古池信三

    古池政府委員 法案がわからぬというおしかりを受けてまことに恐縮ですが、私も相当勉強しているつもりですけれども、ただいまお話になりました製粉というような問題は農林省の所管でございますので、農林省の方からお答え願いたいと思います。  なお不況カルテル、あるいは合理化カルテル、こういうようなものについて、さらに進んでこれがトラスト、コンツエルンまで行くのではないかというお尋ねでありますが、これは考えようでありまして、あなたはそういうふうなお考えをお持ちかどうか知りませんが、私どもはさように考えないのでありまして、あくまでもそのカルテル認可は慎重にし、その濫用は慎んで行きたいというのがこの法律の趣旨でございます。
  82. 佐伯宗義

    佐伯委員長 首藤新八君。
  83. 首藤新八

    ○首藤委員 時間に制約がありますから、率直にお伺いします。今回の独禁法修正は、過去七年の間日本経済の再建に大きな圧力となつていたものをある程度緩和するということでありますから、その趣旨には私は賛成するものであります。同時に当面最も関心を持たれますのは、今論議の的となつている不況カルテルでありますが、これに対して先ほど始関委員から、現在この不況カルテルを適用するのかどうかという質問に対してしないと答え、さらにこういうものは将来もないという横田政府委員答弁でありますが、もしもそのようなお考えでありますれば、わざわざ法案を修正する必要はないと思うと同時に、われわれの考え方と大きな食い違いがあるのでありまして、われわれの見るところでは、現在この不況カルテルを適用しなければならぬ産業があり、同時にまた将来もそれをやらなければ日本経済の秩序を確保できないという考え方を持つておるのであります。にもかかわらず、横田政府委員が、将来もかわらないであろうという答弁をされたことは、今後これを適用する場合に、事実上許可しないような厳格な考え方をもつて臨むおつもりであるかどうか、その点を明確にしていただきたい、かように考えます。
  84. 横田正俊

    横田政府委員 多分将来ないであろうと申し上げましたのは、将来永久にということではもちろんございません。近き将来に起りそうにないと私は見ております。しかしこの点は通産省の方でどういうふうに見ておられますか、そちらの問題は通産省の方からお答えをいただくことにいたしまして、この適用につきましては、要件に当てはまるものがございますれば、もちろん公正取引委員会は認めるわけでございまして、初めから認めない態度で出るということはないのでございます。
  85. 古池信三

    古池政府委員 ただいま公取委員長から御答弁がございましたが、おそらく不況カルテルにしましても、合理化カルテルにしても、これを認可し、あるいは認定する場合には、十分に慎重にやろうというお考えから、今さしあたつてないのではないだろうかという御意見であると思いますが、われわれといたしましては、特に合理化カルテルにありましては、今後これは相当あるのではないか、またこれによつて相当日本の産業合理化して行く必要があるのではないか、かように考えます。また不況カルテルは御承知のように、私から申し上げるまでもありませんが、景気の変動によつて非常に事情が違つて参りますから、今はつきりいつからどうということは申し上げませんが、将来の経済情勢の推移に伴いましてあるいは出て来るかもしれない、かように考えます。
  86. 首藤新八

    ○首藤委員 古池政務次官の御答弁によつて今後もその方針で進んでもらいたいということを特にお願いしておきたいと思うのであります。そこで多少具体的な問題になりますが、第二条の第六項でありますが、二の「不当な対価をもつて取引すること。」、三の「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。」とあつて、今回の修正によりまして不況カルテル、あるいは合理化カルテルが認められたということは、経済秩序を維持する上において非常に適切な対策だと思うのであります。そこで現在の日本の経済界で、最も経済の秩序を破壊しておりますのは、実に不当な対価をもつて取引すること、あるいは不当に競争者の顧客を奪うということが、現在日本の経済を非常に破壊している一番大きな問題であると見ておるのであります。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、不当な対価をもつて取引するということは、常識的に考えて、原価を割つて取引するということだろうと了解しておるのでありますが、もしある企業家が非常に困難を来した、あるいは手形を落すのにどうしても現金で売らなければならぬ。ところが現金では買い手がないということで、原価の六割あるいは五割で投げた場合に、一体これが適用されるものかどうか、この点をちよつとお尋ねしておきたい。
  87. 横田正俊

    横田政府委員 この第二号は、仰せのようにいわゆるダンピングを取締るのが一つのねらいでございまして、今設例でお示しになりましたような場合に、これがダンピングに当るかどうかという点は、この新しい第六項の、公正な競争を阻害するおそれがあるがために——つまりそういうことによつて他の事業者をやつけるという目的でやつております場合は、これに明確に触れるのでありますが、しかし今仰せられましたように、自衛的にやむを得ずやるというような場合には、必ずしもこれに当てはまらぬと思います。
  88. 首藤新八

    ○首藤委員 しからばお伺いしますが、ある金融会社がある。その金融会社がある産業に対して特別な関係があるということから、ある産業の製品が金融につまればその金融会社にほとんど持つて行かれる。そうしてその金融会社は時価の六割あるいは六割以下で全部これを買う。そうして買いますがゆえに販売する。それから一割あるいは二割の利益をとつて販売するのでありますが、しかし他の一般企業から見ますれば、必ずこれは原価を割つたところの価格になりますから、他の競争会社に対しまして非常な圧迫を加えることになるのです。そういう場合にはどういう見解をおとりになりますか。
  89. 横田正俊

    横田政府委員 銀行自身が担保品の処分として売ります場合は、今申しましたようなダンピングには必ずしも当らぬと考えます。
  90. 首藤新八

    ○首藤委員 それが特殊の場合にあるならばお説の通りだと思いまするが、そのある産業に特別な関係を持つている銀行ではありません。一つの金融業者であります。そこには各企業から盛んに商品を持つて行く。そこでその金融業者は、ある一定の会社と通常は限定されておるけれども、異なつた同種の業者から担保として持ち込まれる。従つて一つの営業として常にその同一の商品をその金融会社が非常な安値で販売する。そうして一般の市価を非常に乱しておるという事実があるのですが、こういう場合はどう考えられるか。
  91. 横田正俊

    横田政府委員 そういうふうに組織的に、しかも銀行ということでなくて、個人が半ば営業的にやつているということになりますと、ダンピングのにおいが非常に濃くなつて来ると思います。
  92. 首藤新八

    ○首藤委員 その金融業者はダンピングじやないのですよ。たとえば六割か六割以下で買い取つておるのである。それをまた一割あるいは二割の利益をとつてつて行くのであるから、金融業者自体はダイビングじやない。ダンピングじやないけれども、しかし一般の市価から比較しますれば、また一般企業家の原価から考えれば非常にはなはだしい安値だということになる。そうして市価を乱すということになるのですが、こういう場合にはどうか、こうお尋ねしているのです。
  93. 横田正俊

    横田政府委員 あるいは御質問の趣旨に少しもとろかもしれませんが、結局その業者の売ります行為そのものは必ずしも不公正競争方法に当らぬようでございます。しかし金融をもつてそういう業者を押えつけて、それを安く売らせて、それを他に売るというようなことになりますると、あるいは今回新たに不公正競争方法の中に追加いたしました第五号の「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること」というような条項に当つて来る場合があるかと思います。
  94. 首藤新八

    ○首藤委員 それは実際問題を申し上げると決して不当ではない。この値段でなければ買わないとか、あるいはどうするかということは金融業者の自由であります。ところが一方販売しようという企業家はこの金が得られなければその日の手形が不渡りになる、自分の企業体が生きるか、死ぬかという重大な段階に立つておりますから、かりに向うから強制しなくても、向うの希望する値段で投げざるを得ないということが、現代の経済面では非常にたくさん行われておるわけであります。そこでその金融業者は、たとえば甲の製品は数量が少くとも乙、丙、丁、こういう同業者が次から次に金融業者に持つて行くから、この金融業者一つ販売業者というような形で、毎日同じ製品を格安で販売する。そうして一般の市場価格をこれによつて欄乱されるという事態になつておるわけです。
  95. 横田正俊

    横田政府委員 どうもそれだけのことでございますと、あるいは不公正な競争方法の問題でないように思われます。値段も別に特にコストを割つてどうというようなことでもない。一般の人よりは安いものが買えるということになるわけで、どうもあまり不公正な競争方法にはならないように思いますが……。
  96. 首藤新八

    ○首藤委員 それはこの法案の趣旨、目的から見てならぬというお考えであるならば、きわめておかしいと思うのであります。たとえば一般の市価が千円である。また原価が九百円である。具体的に申し上げますれば、それを九百円のものを金融に困るから六百円で金融業者に持つてつて、その場合に金融業者は七百円で売る。これは百円もうかるから七百円で売る。しかし一般の正常な企業家の原価から見ますれば、それは二百円下だ。いわんや販売値段が千円でありますならばそれは三百円下まわつておる。従つてそれが販売されることによつて一般のその業界販売価格、いわゆる市場価格を撹乱して、非常な打撃を一般業者に与えるということに相なつておるのでありますから、それをそのまま放任するということは、せつかく独禁法ができながら、不当な取引を抑制しようという目的に反すると私は息うのでありますが、それでもかまわぬのですか。
  97. 横田正俊

    横田政府委員 九百円で売れるものを無理やりに六百円で売らせる。これはあるいは金融に困つたから売るんで、別に強制したのではないとおつしやるかもしれませんが、しかしそれはやはり取引上の地位の不当の利用というようなことになるのではないかと思いますので、その面で第五号で処理されることになると思います。
  98. 首藤新八

    ○首藤委員 どうも不徹底で理解しにくいのですが、時間がありませんから他日に譲ります。  もう一つお尋ねいたしたいと思いますのは、これは大体似たり寄つたりでありますが、最近販売業者が景品付の販売を競争的にやつております。この景品付の販売方法に対して、公取はどういうお考えを持つておるか、この点ひとつお尋ねしておきたいと思います。
  99. 横田正俊

    横田政府委員 景品付販売は、ちよつと度を越しますと結局不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引するという、不公正競争方法に該当するということになると思いますが、ただそれは程度問題でございまして、ある一定の時期に、いわゆるほんのおなぐさみ程度の景品をつけることは、一般慣習としても認められていることで、あえてこれを不当とする必要はないのでございますが、ただわれわれがだんだんいろイーな問題を扱つて参ります間に、すでに御承知のように、しようゆ、みそ等についてはなはだ行き過ぎた景品付販売がございます。あるいはさらに最近におきましては、ソースとかカレー粉とか、われわれのいわゆる日用品につきましてそういう弊害が非常に起つて参りましたので、この点につきましては、現行法の第七号の公正取引委員会の指定という方法で、景品付販売は違法であるということを特に明らかにいたしまして、それを告示の形で、しようゆ、みそ、それから七月の一日にソース、カレー粉というようなものをすでに指定しておるのでございます。さらにその他の業種につきましても、そういう弊害が特にはなはだしいものにつきましては、その商品の性質、消費者に及ぼします影響等を考慮いたしまして、今度の新法によりましても、特殊の業種についてこの不公正競争方法に当るという趣旨を明らかにする意味におきまして、そういうような指定ができることになつておりまして、その制度を活用して参りたいと考えております。
  100. 首藤新八

    ○首藤委員 私は現在の販売業者の不当競争が盛んに行われておる場合においては、さような問題が起つてから警告をするというよりも、むしろ未然に防ぐような、こういう場合にはこれが違反になるというようなことを、周知徹底さすような方法を講ずる必要があると思いますが、いかがでありますか。
  101. 横田正俊

    横田政府委員 まことに仰せの通りでありまして、その点については十分に検討させていただきます。
  102. 佐伯宗義

    佐伯委員長 綱島正興君。
  103. 綱島正興

    ○綱島委員 もう時間がないようですから、ごく簡単に二、三御質問を申し上げます。この公正取引と独占禁止ということは、自由経済のほんとうのバツク・ボーンでありますから、この点については非常に力を入れて、これは通産省公正取引の方もお考えを願いたい、こういうことを前置きしてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  この法案等でたいへん問題になつて来ますことは、審査の問題でございます。審査をするときに、一体どれくらいの役人をもつて、どれくらいの手が届くように——具体的に申し上げれば、予算がどれくらい組まれて、どういう機構を持つておられるか。これは紙の上でいくらお書きになつても、そのことがなければどうにもならぬと思うのですが、その点、ただ単に当事者から出て来たものを机上で審査なさるだけでございますか。それとも積極的に独自の立場から十分に審査なさるだけの機関、予算等をお持ちになりますか、その点をお伺いいたします。
  104. 横田正俊

    横田政府委員 公正取引委員会の定員は、現在は二百四十人、これは、地方に事務所が三箇所ございまして、そちらに合計三十人おりますので、東京には約二百十人の人しかおりません。もちろんこの中には給仕から自動車の運転手まで入つております。この中がまた経済部、審査部とわかれておりまして、審査の仕事は審査部で行うことになります、それから今度認可制というようなことになりますと、おそらく認可の事務は経済部の方でとることになると思います。いずれにいたしましても、各部の人員の中で、現に実質的な仕事をしているものは数十名という割合になるかと思います。先ほど申しましたように、はなはだ手不足でございますけれども、一人で十人前の働きをするという気持でやつてつております。なお予算は、正確な数字は覚えておりませんが、九千万円で、そのうち人件費が三分の二を占めておりまして、あとの物件費等は約三分の一というような振合いでございまして、これも十分な仕事をするにはまことに不足はしておりますが、その中でできるだけのことをやつて行くというふうに考えております。
  105. 綱島正興

    ○綱島委員 それから今度審査を請求する側から行つて、これに対する機会と手続とを最も簡単に、たとえば消費者立場で、こういうことで困つて参りますとか、あるいはこういう不当取引があるとか、あるいは必要以上にカルテルが行われているとかいうような、いろいろ問題となつていることに対する審査請求、それの窓口と申しますか、そういうものについての機構について、委員長としての御配慮はどういうぐあいになつておりますか、伺つておきたいと思います。
  106. 横田正俊

    横田政府委員 今申されましたのは、大体違犯事件としての申出ということに了解いたしますと、これはやはり審査部にそういう問題を受付けるところがございまして、これは口頭でもよろしゆうございますし、書面でも、はがきでもけつこうでございまして、それを審査部で受付けまして、担当の方へまわし、そこで一応調べまして、いよいよ事件になり得るものは立件という手続を一応やりまして、その後は四十六条の規定で非常に強い、いわば検事の権限に似たような調査権がございますので、その調査権に基きましてだんだん手続を運ぶ、こういうことになつております。もちろんそういう申立を受けますことに関しまして、あるいはもう少し詳細な規則なりをつくることが必要でございますけれども、その点につきましては、まだそういうこまかなところまでやつておりません。なおそういう正式な申立て以外に、一種の相談部というものが総務課の中にございまして、そこへおいでになりますれば、こういう問題は事件になるかどうか、あるいは違反になるかどうかというような点につきまして、ある程度の御相談に応じているわけでございます
  107. 綱島正興

    ○綱島委員 実は先ほどから農林関係からたびたび質問がございましたように、肥料問題等は非常な重大問題でありますが、先ほどからのお答えやいろいろなことから想像して、これは勘でございますけれども、憂慮にたえないのは、どうも実態把握ということについて、役所の方で十分なお手ぞろいがないのではないか。それならといつて非常な予算を組めば、国家の予算上から非常に困つて参りますので、そういうときに、何らか他の行政庁あるいは公共団体あるいは事業者団体等々と協力して、ものを進めるような有効な組織はお持ちにならぬですか、またそういう御意図はありませんか。
  108. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど申し上げました調査権の中に、いろいろそういうものの協力を求めることは一般的に規定してございまするが、そういうものを組織化して、いつでもそういう機関を適当に利用するというようなことには、まだなつておりません。もつとも先ほど申しましたしようゆの不公正競争方法につきましては、これは役所だけで取締ることはほとんど不可能でございますので、これは不公正何とか協会というようなものが各業種についてできておりまして、その団体ときわめて密接な連絡をとり、そういう景品付販売等の防止に努力しておるというような例もございます。
  109. 綱島正興

    ○綱島委員 最後に一問だけお尋ねをいたしておきますが、私が危惧しておりましたのは、業種の人の代表者あるいはその関連者というものを主にしてお考えになります、いわゆる消費者立場というものが閑却されまして、勢いこの公正取引及び独占禁止の問題が生れて来るということになります。自由経済の活発なる活動がむしろ阻害される方に重点が置かれるおそれがありますので、消費者立場に対する協力をお求めになるということが非常に必要である。それについて特に何らかのお考えがあるかどうか、あるいは組織をお持ちになりますか、この点を伺いたい。
  110. 横田正俊

    横田政府委員 その点はおつしやる通りでございますが、一つの組織としてどこにどういう場合に連絡をするというよう組織立つたものはまだございません。しかしこれは問題によりましては、たとえば主婦連合会その他消費者代表と思われます方面に、その場合場合にいろいろ連絡をいたしまして、意見を聞いたりすることはやつております。
  111. 佐伯宗義

    佐伯委員長 川上貫一君。
  112. 川上貫一

    ○川上委員 通産大臣を待つてつたのですが、拙いでにならぬようでございますから、大臣に対する分の質問は除きます。  第一番に聞きたいことは、今まで独禁法によつて摘発された件数ですな、これが石炭と鉄鋼、紡績、人絹、硫安、これを一括した数と、それから中小企業を摘発した数との、数字だけでけつこうですからお知らせ願いたい。
  113. 横田正俊

    横田政府委員 公正取引委員会で昭和二十二年の発足以来正式に取上げました事件につきましては、勧告、審判開始決定事件一覧表というものを、先般経済安定委員会の方にお出しいたしました。件数にして大体百二十五件になつておりますが、その事件の種類は非常にまちまちでございまして、中小企業が何件、大企業が幾つというふうに、ここで簡単にお答えすることがちよつとできませんが、しかし中小企業に関する事件も相当ございます。
  114. 川上貫一

    ○川上委員 それはわかつておりますが、その中で石炭と鉄鋼と紡績と人絹と硫安を摘発した件数がなんぼあるか、その他のものがなんぼあるかということを数字的に聞きたい。
  115. 横田正俊

    横田政府委員 鉄鋼と石炭につきましては、まだ正式の事件として取上げておるものはございません。それから硫安につきましては、先般警告を発しましたが、正式の事件としてはまだ取上げておりません。人絹につきましては、スフの操短問題につきまして、昨年の六月ごろでございましたか、正式の事件として取上げまして、近日中にその結論は出ることになつております。紡績につきましては、これはちようど人絹と同時に問題にいたしましたが、この点につきましては、実は通産省の勧告という形で操短が行われておりまして、しかもその勧告に従がわなければ原綿の割当をしないという、一種の罰則付の勧告で各紡績会社に操短を命じておりますような関係からいたしまして、これをいわゆる独占禁止法上の共同行為というふうに見ることが困難でございましたので、この点につきましては、むしろ通産省の方でいろいろ申入れをいたしました。
  116. 川上貫一

    ○川上委員 正直に答弁してもらいたいのですが、今大企業は実質的に協定をしておる、実質的のカルテルをやつておるのです。これをやつておると通産省はお認めになりますか、実質的にやつてはおらぬとお認めになりますか、これは政務次官の方から伺いたい。
  117. 古池信三

    古池政府委員 紡績の操短の問題は、これは政府が一種の勧告をいたしまして、これに基いて操短をしたのでございまして、その意味においては共同行為と申しますか、そういうことは認められまするが、ただ業者が自発的にそういうことを共同してやつたものではないと思います。
  118. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁をするからいけないのです、そういうことを聞いておるのと違うのです。たとえば硫安にしましても、硫安協会は貿易の面では窓口一本でやつておるのです。ここでは実質的には価格協定ができておる、それから通産省の勧告にしましても、これは法をくぐつただけで、事実上の独禁法違反をやつております。そのほか人絹、石炭、鉄鋼でもこれは協定をしておることは明らかだが、これは実質的には絶対にしておらぬとお考えになるのか、しておるとお考えになるのか。この聞いた結果によつては、私はきようは時間がありませんからいたしませんが、あとであらためて、これは通産の方になると思いますが、具体的な資料を提供してお尋ねいたしたいと思います。
  119. 古池信三

    古池政府委員 紡績の問題は先ほどお答え申し上げました通りでありますし、あと石炭等につきましては、これは各自が建値をつくつておることは申すまでもありませんけれども、共同してそういうことをやつたとは認めておりません。
  120. 川上貫一

    ○川上委員 そう言われるだろうと思つたのですが、この問題は政府が明らかにそう言いましたから、これはあとで時間があるときに十分質問したいと思います。この独禁法の緩和の法律は、現在行われておるところの実質的なカルテル行為を合法化するにすぎないのです。現在はとにかくカルテル化をやつておる。これを合法化しようというねらいを持つておるほかにはない。だから実際は公取委でやつておるものを、通産大臣認可通産大臣がこの実権を握るということにしてあることは明らかです。しかしこれは議論になるから、私はこれ以上言いませんが、そうすると、お聞きしたいことは、まず一つは、今度の調べは公正取引委員会の方で十分に調べて、承知しなければ通産大臣はこれを認可せぬ、こういうふうに言うてある。私の聞きたいことは、現在でも実質的にはやらしておるのだから、こんなことは全然だめだということをお聞きいたしたいのですが、それに対して公正取引委員会は、給仕なんか除いて、実際の構成員は、官僚が何人おるのか、それから実業家出身が何人おるのか、それから中小企業等の代表者が何人入つておるのか。給仕なんかというものはいりません。首脳者です。二百人の中で何ぼおるか、これをちよつと聞かしてちようだい。
  121. 横田正俊

    横田政府委員 今正確にお答えできないかもしれませんが、委員会は五人の委員からなつておりまして、この五人の委員は、私は司法部出身でございまするが、他の一人の方は大蔵省並びに証券取引委員会に長く勤められましてこちらに入つた方でございます。もう一人は外務省系統の方で、これは長くアメリカにおられまして、アンチ・トラストの制度を実際にアメリカで見ておられる方でございます。それからもう一人は、昔の商工省に長く勤めておられた方でございまして、最後に一人、日本経済新聞に長くおられて、渉外部長まで行かれ、また総理の秘書官等を勤めた方が一人入つておられます。そういうような方でございまして、最高首脳部は、現在大体官僚出身の人が非常に多いことになつております。それから下の事務局の構成は……。
  122. 川上貫一

    ○川上委員 事務局はようございます。これは非常に弱体で、予算のこともわかりましたが、それで実に手練手管をやつておる大企業、大資本が、事実上カルテル化されて、あらゆる協定をやつておるということを十分に委員長は調べられると今まで思うて来られましたか、これで完全にやれるとお考えになりますか、正直にひとつ……。
  123. 横田正俊

    横田政府委員 これは予算人間の数また人間の質から申しまして、この仕事は非常に困難であると私は考えております。人間の質と申しましたのは、このお役所は御承知のように、終戦後初めてできました、いわば日本で今まで二千六百年間やつたことのないことを初めてやり始めたことでございまするし、仕事も全然新しい人が集まつてつて来ておることでございますので、いろいろな面で非常な困難がございますが、しかしこのわずかな人でも、結局問題はわれわれの決意にかかつておると思いますので、はなはだ不満足ではございまするが、ある程度はやつて行けるというように考えております。
  124. 川上貫一

    ○川上委員 独禁法でひつかかつてやられたのが、中小企業が百二十件以上です。ほとんど全部です。今言うた大企業の方は、ちつともやられておらぬのです。これは明らかな事実なんです。これは実際やらなかつたのじやとは政府や公取委じや言えぬでしようが。委員長は正直に言うて、今のようなスタツフで、今のような形で、今まで実際に独禁法の違反について大企業、独占企業を押えて来れると思つておりましたか、また実際に委員長は、この大企業の違法は完全になかつた、われわれの調べは完全無欠であつた、どんな資料を出されてもはつきり答弁ができる、こうお言い切りになる自信がありますかどうですか、これをお聞きします。
  125. 横田正俊

    横田政府委員 その問題につきましては、実ははなはだ不完全なものではございますが、先般経済安定委員会に対して、「最近に於けるカルテル並にカルテル類似活動の状況」というものを御提出いたしました。大体おもなる産業につきまして公正取引委員会が認めて参りました事実、それに対しましてとつて参りました処置等をまとめておりまするが、実はこの仕事は続いておるわけでございまして、だんだんこの調査仕事に実を結ばして行きたいと私は考えております。
  126. 川上貫一

    ○川上委員 どうも答弁が非常にあいまいなんですが、今まで実際において、事実上カルテル化しており、事実上協定をしておる。生産について、販売についてその他についてやつておる。これが独禁法違反なんです。この問題で摘発された百幾十件のうち、百二十件までが中小企業なんです。そうして今のお話によると石炭、鉄鋼、紡績、人絹、硫安というものは一つもやられておらぬのです。これは実際やつておるのがやられておらぬ事実があるのです。このことについて私の聞いたのは、十分な調査をしてそのような事実はないということを確言できますか、あるいはスタツフも少いし、予算も少いから、そこまでは行つておりませんので、中小企業はすぐつかまるし、これはいじめてもあまり大したことはないから、ここに以上のようなことに実際なりましたのだと、正直に言うてみたらどうですかというのです。
  127. 横田正俊

    横田政府委員 それは、大いに疑いがあるという趣旨で、実ははなはだ簡単ではございますが、綿紡、化繊、自動車タイヤ、過燐酸石灰、苛性ソーダ、薄板、線材、硫安、石油、砂糖など、最近は石炭に関しましてもいろいろ調査をいたしておりますが、これにつきましてこの御報告をいたしたわけでございまして、この中にそういうカルテル類似あるいはそういう疑いのあるものが相当あるというふうに申し上げてあるわけでございまして、ただそれなら、それをどんどん取上げないかということになるわけでございますけれども、それは私どもこれからの仕事でございまして、要するに証拠の関係その他いろいろな点で、まだそこの段階まで達しておらぬわけであります。
  128. 川上貫一

    ○川上委員 政府答弁というものは、いつもこういうことになつて、われわれは困ると思うのだが、現在においてそういうことになつておるのに委員長は、これからカルテル化するものはよけいないと思うと言われておる。ところが実際やつてしまうてある。そうしてなかなかこれはむずかしい問題であつて、悪いやつはだんだん調べをこれはやるんだ。ところが法律をつくろうとしよる。これを合法化しようとしよる。ところが合法化してもできやしませんという答弁をしておる。どんどん雲のごとくできるのと違いますか。どうしてできやしないですか。できやしないどころではない。現在でも一ぱいできておるやつを取締つておらぬ。これをこの法律で合法化しようとしよる。これはとんでもない法律なんです。ところが今度できやせぬということを言うておる。これはどういうわけでそういうことになるのかということ、この問題は私は重大だと思う。ここに問題の本質がある。時間がありませんので十分に聞かれぬことが残念ですが、あとは通産委員会の方の時間で私は聞きたいのですが、しかし法律が上ろうとしておる。だからこれはどうしても聞かなくちやいけない。というのは、政府の人をいじめるだけならあとでもいい。しかし実際この法律が通るか通らないかということになつて来ておる。きようでなければほんとうはうそなんです。しかたがありませんから、今私が申し上げた点をひとつはつきりとお答え願いたい。
  129. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、これからカルテルができないというふうには申し上げなかつたので、認可のできるようなカルテルはないであろうというふうに申し上げたわけでありまして、これは不況の問題につきましてそういうふうに申し上げたわけでございます。
  130. 川上貫一

    ○川上委員 政務次官はたくさんできると言うたのですが、これはどうなるのです。
  131. 古池信三

    古池政府委員 先ほど私の申し上げましたことは、速記録をごらん願えばわかると思いますが、私の気持では、合理化をせねばならない現段階において、その方のカルテル相当できるであろうという私の見通しを申し上げたのであります。
  132. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁はむちやなんです。政府の中で、法律を通そうというのに、公正取引委員会は、たくさんできそうにない、なかなか認可するのは出て来ぬと言う。政務次官はいやなかなかできそうだと言うておる。何ぼ速記録を調べてみても、そう言うてあるのだからしかたがない。これほどずさんきわまるものを出して、それを通してしまおうとしておる。これがどういう陰謀を持つておるかということは明らかだ。これは独占禁止法を骨抜きにしようとしておる。公正取引委員会を失礼だけれども、有名無実のものにしようとしておる。これを通産大臣が握つてしまおうとしておるのです。これでは日本の民主化どころではないMSAの援助や中日貿易の禁止や、武器製造法等の法律や、全部一緒にひつかかつておるのです。私はあてがわれた時間を少しよけいとつております。これは同僚の委員諸君に対して申訳ない。規定の時間を二、三分よけいにとつておりますから、これ以上私は言えませんけれども、こういう問題については、政府は手練手管でいいくらいのことを言うて通しさえすればいいという態度は、政府のとるべき態度ではない。日本の国民は真剣になつておる。中小企業はほんとうにつぶれようとしておる。これに対して責任を持つのが政府なんだ。委員会ではいいくらいのことを言うて、法律通りさえすればいいというものではない。二つの違う意見を言うておつて平気でおるどいうような態度は、日本国民に報いるところの政府の態度ではない。私はこれを警告して、時間がありませんから、私の質問を終らしてもらいます。
  133. 佐伯宗義

    佐伯委員長 午前の会議はこの程度にいたし、午後二時まで休憩いたします。     午後一時三分休憩     —————————————     午後二時三十九分開議
  134. 佐伯宗義

    佐伯委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。質疑は通告の順に従いまして、順次これを許します。栗田英男君。
  135. 栗田英男

    ○栗田委員 これは公取委員長にお尋ねをするのですが、この法案を読んでみると、公取委員会が指定するというのが、あちらこちらに出て来るのです。そこでここに出て来るその指定の一つで疑問があるのですが、この対照表の七ページの第七項ですね、結局これは第二条になりますか、第二条の七項に「この法律において不公正な取引方法とは、左の各号の一に該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。」とある。ところが旧法では公正取引委員会が指定をしなくても、この六項では「この法律において不公正な競争方法とは、左の各号の一に該当する競争手段をいう。」ということで、旧法では、こういうものが不公正な競争方法だということになつておるし、改正案では、そういうものの中から今度は公正取引委員会が指定するというふうに出ておるのですが、こういうふうになつた経緯と、この指定の方法をどういうふうにやるのか、この点をお尋ねをいたします。
  136. 横田正俊

    横田政府委員 この不公正な競争方法は、現行法では一号から六号までの事項を法律できめてございまして、その上に七号へ持つて参りまして、前各号に掲げるもののほか、公共の利益に反する競争手段につきまして、七十一条、七十二条の手続を踏んで公正取引委員会が指定するもの、これを随時公正取引委員会が追加して行ける、こういうことになつておるのでございます。今回の改正はこの追加主義をやめまして、今度の新法の一号から六号までのわくを一応法律できめまして、それをさらに具体化するという意味において指定を行うのでございます。この指定は、各業に通じまするいわば一般的な指定と、それかう特殊の業務に適切な問題と、大体二種類あり得ると思うのでございますが、この一般的の指定につきましては、七十二条で告示でこれをやるということになつておりますし、それから特殊の業界についての指定につきましては、その特殊の業界のいろいろな意向だとか事情を指定の上に反映させる意味で、七十一条によりまして公聴会を開きましたり、あるいは事業者意見を聞いたりいたしまして指定を行う、大体この三和類になるわけでございます。結局こういうふうにいたしまして、いよいよこの法律の施行の際には、この法律に書きましたものよりもう少し具体的に、こういうものが不公正な競争方法であるということが明らかにされると思います。
  137. 栗田英男

    ○栗田委員 そうすると、この公正取引委員会が指定するということは、ある場合においては告示によつてこれを行い、またある場合においては公聴会を開いてやるという二通りになるわけですか。
  138. 横田正俊

    横田政府委員 すべて告示でやることになつております。ただある場合には七十一条の手続を経て告示でやる、こういうことになるのであります。
  139. 栗田英男

    ○栗田委員 そうすると、すべては告示でやつて——非常にここは解釈しにくいのですが、特定の事業分野における特定の取引方法というものは公聴会を開くわけですか、それは具体的にはどういうことですか。
  140. 横田正俊

    横田政府委員 これは大体現行法にある規定でございますが、けさほども質疑がございましたが、たとえばしようゆ業界で非常におもしろくない景品付販売のはなはだ不当な競争が行われるというような場合には、この七十一条によりまして特にしようゆ関係あるいはそれに同種の事業を営む事業者意見を聞き、なお公聴会も開きまして仮案をつくる、こういうふうな案を立ててそれに基きまして告示をする、こういうつもりでございます。
  141. 栗田英男

    ○栗田委員 先ほど古池政務次官にお尋ねをして、時間もありませんで解決をしなかつた問題がありますので、この際簡単にお尋ねをいたします。この認可の裁判問題を私がお尋ねをしたいのですが、この申請者に対して認可を与えた場合には、これは申請者は問題ないと思うのです。これは認可さえ受ければ裁判をするという必要はなくなるわけであります。ところが不認可なつたときには、結局申請者としては、結論としては裁判に訴えるということになります。その場合において、この法案の性質から見て、公取委の認可の場合と通産大臣認可の場合と、どのように相違があるかということをお尋ねしたわけです。
  142. 古池信三

    古池政府委員 先ほどの御質問の際は時間もありませんでしたので、私のお答えもはなはだ足りないところが多かつたかと思います。ただいまお尋ねの点は主務大臣が認可をしなかつた、そういう場合にこれに対して訴訟の道があるわけですが、公正取引委員会認定をしなかつただけでは——そのことは主務大臣がさらにそれを受けて不認可の処分をするわけでありますから、その主務大臣の不認可に対して訴訟を起すなら起すというふうに私は解釈いたしております。
  143. 栗田英男

    ○栗田委員 今のに関連してですが、まだ私の言うことがよくわかつておらないのですが、もつと一歩を進めると、今の不認可になるということになると、通産省の場合はこれは単なる行政手続でやるわけでしよう、そこでこれはいけないということで、その場合には、通産省が被告になるわけですか。
  144. 古池信三

    古池政府委員 さように考えます。
  145. 栗田英男

    ○栗田委員 しかしながら問題は、通産省が被告になるけれども、不認可にしたいという場合には、これは二つの場合があると思うのです。私はこの点に関しては疑問があるのですが、いずれ大臣が来たときにただしたいと思うのだが、先回に小室説明員の話によると、受付けた場合において公取委の方にまわさないうちに通産省自体で不認可にする場合がある、私はこれには疑問がある、かりにそういうこととして仮定をいたして、今度はもう一つの場合においては、通産省認可しようと思つてこれを公取委にまわした、ところが公取委からこれは認可することはだめだといつて認定を受けられなかつた場合と、申請者にしてみれは二つあるわけです。従つて通産省の窓口で断わられた場合においては、これは通産省を被告として訴えた場合において、通産省としては説明が非常にしやすいわけですが、直接こういうわけで不認可にしたのだという立証がしやすいわけですね。申請者として納得が行くわけです。ところが今度は公取委の認定を得られなくて不認可なつたということになると、やつぱり通産大臣を被告とするわけですか。
  146. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお説の通り通産省が公取委員会に申達をしないで、単独で不認可の処分をした場合には、通産大臣がその訴訟の被告になるわけです。ところが通産大臣から公取委員会の方に申達をして、これが認定を受けなかつたがために通産大臣としても不認可の処分をしたという場合には、一応正面の被告は通産大臣でありますけれども、しかしその原因が公取委員会の不認定ということにあつたとすれば、公取委員会政府機関の一つとしてその場合拘束されるものというふうに私は考えるのでありますが、これにつきましては、公取委員長の御意見もあろうかと存じますので、お尋ねいただきたいと思います。
  147. 栗田英男

    ○栗田委員 もちろん公取委も拘束しなければならないとは思います。これはいろいろこまかな訴訟手続を調べればわかることだと思いますが、いずれにしても、この場合公取の認定が得られずに不認可なつた場合においても、私は当然通産大臣が被告になると思います。こうなると同じ不認可の場合においても、非常に違つた裁判形式をとらなければ、ほんとうの張本人——といえばぐあいが悪いだろうけれども、不認可なつた大元は公取委であるけれども通産大臣を被告にするということは、申請者にしても非常にぐあいが悪いことで、この点私は認可認定のそういう矛盾が現われて来るということと、もう一つこれに関連することは、先ほども申し上げましたように、公取の独禁法の運営は、今は準司法的な手続でやつておるのです。今までの公取の認可、不認可というものは、全部審決をもつてつておるわけです。審決をもつてつておるわけですから、審決によつて認可の場合と、今度の認定による不認可の場合と、また二通り、公取の中においても出て来るわけです。そうすると今の通産大臣認可の場合には、これに申請者が不服の場合は、裁判所はどこになりますか。
  148. 古池信三

    古池政府委員 通産大臣に対する訴訟の場合は、これは行政訴訟と考えますので、通常裁判所に提起されると思います。
  149. 栗田英男

    ○栗田委員 東京高裁ですか、地方裁判所ですか。
  150. 古池信三

    古池政府委員 第一段としては地方裁判所であります。
  151. 栗田英男

    ○栗田委員 東京地方裁判所になるわけですね。ところが、これが認可、不認可を審決でやつた場合においてはどうですか。
  152. 古池信三

    古池政府委員 公取委員会の審決に対しまする訴訟は、高等裁判所が受付けるものと考えております。
  153. 栗田英男

    ○栗田委員 そういうことになると、もたそこに非常な矛盾が出て来ると思うのです。この法案の中に公取の認可、不認可というような条項がなければいいのですが、別にまた公取の認可、不認可ということが出て来る。それはどういうことかというと、例の十一条の株式の保有の問題である。これの認可、不認可は公取がやることになつておる。従つて同じこの法案の中に、公取が認可、不認可をする場合と、通産大臣認可、不認可をする場合の二本建がここに出て来るわけです。そこで一番問題なのは、株式の保有の問題よりも、不況カルテルであるとか合理化カルテルの方が、はるかに大切な仕事です。そこでどうなつて来るかというと、一番大切な仕事は、一番初めの初級裁判所からやらなければならぬ。ところが今度は株式所有の問題になつて来ると、これを公取審決をもつてやる場合においては、これは独禁法の中に明らかなように、これを東京高裁でやる。しかもその場合において、新しい事項の出て来ない限りは、裁判所を拘束するということになつておる。しかも公坂が審決をもつて行う場合においては、裁判的な手続が簡単に行く。簡単に行くばかりではなく早い。ところがそこに主務大臣が入つて来たために、今まで持つてつた裁判のスピードがなくなつて、一番大切な認可、許可の場合には逆に煩雑になつて来た。東京地方裁判所でもつて、公取の認定というものは考えずに、一番最初の初級裁判所からよちよち始めなければならぬということで、公取の認定通産大臣認可ということから、こういうような裁判的な面でも非常に複雑になつて来た。そこで私は政務次官のお考えを聞きたいのですが、こういうことは、申請者としてもかえつて不便じやないかと思うのです。しかも非常な二重行政だ。こういうややこしいことをやらなくも、公取委も同じ政府部内なんだから、通産省意見をまつたく度外視して認許可をするはずはないのであるから、やはり前の十一条のように、大蔵大臣と協議するということにして、あらためて産業行政的な立場から意見具申をすればいいのであつて通産大臣と協議するということで一向さしつかえないというふうに私は信念的に思つておるのですが、その点あなたのお考えはどうですか。
  154. 古池信三

    古池政府委員 ただいまの栗田さんの御意見も一応は私もごもつともな点があると存じます。確かに同じ法律の中で物事によつて取扱いが違うということは、複雑になつて来ることは当然でありますが、しかし株式の場合とカルテルの場合とはやはりおのずから事情が違います。対象となる題目が違つております以上は、これを審決し、あるいは認定をする手続が違つてもやむを得ないのじやないか。また公取の審決があれば、これに対してただちに高等裁判所が取扱い、その認定を経て通産大臣認可をした場合には通常裁判所に持つて行くということも、これは事の自然として許さるべきではないかと思うのであります。ただ、両方の方法をあわせてここに採用しておるということは、同一の法律の中でありますから、いかにも事を複雑にしたような感じを与えることは、まつたくお説の通りであります。しかし私はやはり事態の実態ということをもう少し重く考えますならば、大蔵省関係の場合と各産業の主務省の場合とは、いささか様子がかわるのではないかというように考えますので、ただいまの御意見はいかにもごもつともな御意と一応拝承いたしますけれども、われわれとしては、この原案として提案いたしました方法が、やはりいいのではないかという考えを持つております。
  155. 栗田英男

    ○栗田委員 保留いたします。
  156. 阿部五郎

    ○阿部委員 今も承りましたが、どうもいかにも納得の行かないお答えのように聞かれるのであります。何のために一方は高等裁判所に、一方は通常の裁判手続で、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所というふうに、わざわざそうしているのですか。なぜそうしなければならないか。またそうすることによつて、何か一方を重く見、一方を軽く見ておるという理由があるのかないのか、その点はつきりもう一ぺん承りたいと思います。
  157. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお尋ねでございますが私どもとしましては、一方を重く見、一方を軽く見るという気持はありません。いずれも重要な事項と考えておるのでありまするが、ただ法律的な手続といたしましては、一方において公取委員会が審決という手続にによつて決定いたしました問題は、これは高等裁判所の方ヘ直接持つて行く。それから一方において認定を得た上で主務大臣が行政処分として不認可の処分をしたという場合には、これは一般の行政訴訟の例に従つて、普通裁判所に持つて行くということは、これは法律上の手続としては、ごく普通の考え方ではないかと思います。そこに公取委員会の審決には審判的な気持が入つておる一方、またわれわれの行政処分は行政処分として、当然これは行政訴訟の対象になり得る、かように考えますので、おのずからそこに違いがあるのではないかと思います。先ほどのお尋ねは、両者をどうしてそういうふうに違つた扱いをするかということかと思いますが、株の所有の問題とか、そういうことは決して重要ではないとは申しませんが、事柄が比較的簡単に私は把握できる問題だと思います。一方不況カルテル合理化カルテルのような問題になりますと、真実を把握するまでに相当調査もいる、あるいは報告もとるというような必要が出て参りまするので、事の軽庭というよりも、その性質の内容いかんによつて、かような取扱いを異にするものというふうに御了解願えればよろしいと存じます。
  158. 阿部五郎

    ○阿部委員 性質が違うからとおつしやいましたが、一方むしろカルテルの場合においても、その内部段階としては公取の方で認定をなさるのであつて、その認定をなさる時分には、実質上の同じような手続をなさつておるのであります。十分慎重なる審理を公取においてなさつておる。それをさらに通産大臣において認定をして、そしてこれの認可、不認可をおきめなさる、それがさらにまた裁判手続になつた場合においては、さらに第一審から出発しなければならない、この理由がどうしてもわかりません。一体どこに理由があるのでございましようか。
  159. 古池信三

    古池政府委員 どうも私の説明の仕方が下手でございまして、御満足行かなかつたのははなはだ遺憾と思つておりますが、先ほども申しましたように、カルテルの場合には非常に調査範囲が広いのであります。従つてむろん公取委員会としても十分な御調査はなさるでありましようけれど、やはり立場産業を主管する行政官庁と、独占禁止法という法律のねらつておりまする基本原則を守るという立場におられまする公取委員会とは、同一のものを対象といたしましても、見る目と申しますか、方角が多少は違つて参るのであります。従つてその違つた立場々々から見て、最後の結果を最も公正妥当なところにおちつけようというのがねらいでありますので、ちよつと考えますと、いかにもダブつて、むだなような感じをお起しになると思いますが、ただいま申しました基本的な考え方から申しますれば、決してむだではないので、両者がそろつて満足なる結果を得られるものではないかと私は考えております。
  160. 阿部五郎

    ○阿部委員 幾ら押し問答を重ねても、一歩も進展しないようでありますから、この問題は、ほかの法律の問題とともに法制局長官の御出席を願つてお尋ねすることといたします。
  161. 佐伯宗義

  162. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは時間が少うございますから、ばらばらの二つの点だけの質問させていただきます。まず第一に、二十四条の三の五項に「主務大臣は、第二項又は第三項の認可をした後において、当該共同行為が左の各号の一に該当するに至つたと認めるときは、その行為をしている生産業者等に対し、これを変更すべきことを命じ、又はその認可を取り消すことができる。」こう書いてあります。先日来認可、不認可最初の始まりについての御議論は多かつたのですが、今度取消しまたは変更ということが書かれております。法律の上では非常に簡単でよくわかるのですが、実際に許可して進行を開始してしまつたカルテルが、そう簡単に取消せるものでしようか。その点、次官にお伺いいたします。
  163. 古池信三

    古池政府委員 これは実際問題といたしまして、実態をどう考えて行くかということだと存じます。しかし、この法律案条文にもございますように、認可をする場合に必要とした要件がなくなつたというような場合には、変更ないしは不認可の取消しの処分をいたしますのは当然であり、その場合には一旦つくりましたカルテルも、これを解消するということは、そんなにむずかしいものでないと私は考えております。
  164. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうおつしやいますが、カルテルの中に販売条件についてのカルテルなどという場合と違つて、品種のカルテルがあるはずです。いわゆる品種について協定するというような場合が出て来ます。この前の公取委の委員長お話でも、ボール・べアリソグなどは非常に多種多様であつて、これは品種についてカルテルを認める必要があるのではないか、こういうことを言つておられましたが、たとえばそういうような場合に、各社に品種を割当てまして、A社にはボール・ベアリングをつくらせ、B社にはロール・ベアリングをつくらせるというような形でやつて参りますと、カルテルというものは、形だけでなしに、その各社の経営の規模を変更して来ますし、またさらに進んでは資本のあり方まで変更して来ます。生産手段の配列についても当然かわつて来るはずです。こういうような場合に、単に外形がちよつとかわるという意味でなく、カルテルというものは、その企業自体の実質を徹底的に変更して行く力を持ち、またそうでなければ意味をなさないわけであります。こういうものが一片の行政措置によつてそう簡単にかえられるかどうか。  それからもう一つお答えをしていただきたいと思いますことは、今のボール・ベアリングとか、ロール・ベアリングとか品種を制限した場合について考えてみても、カルテルを解きますときには、かえつてその生産工場を建て直すくらいの金がかかる。その際に不況から救うために、あるいは合理化をさせるためにということでカルテルを認めておきながら、取消す場合は、より以上の大きな不況に突き落し、より以上の大きな困難に突き落すような場合がしばしば出て参ります。  そういうような点から考えてみますと、一体できるのかできないのか、法律案の上ではなるほど取消すことができると書いてありますが、そう簡単には行かないと思います。ことにこれは他の法令と違いまして、この独禁法のような経済法令については、そういう実態をよく見ていただかないとまずいのではないかと思いますが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  165. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお尋ねはまことにごもつともなお尋ねだと存じます。幾ら法律でそういう規定をいたしておいても、はたして取消しをした場合に、業界の実態がそれに即応してすぐに変更できるかどうか、容易に変更ができないような事態がありはせぬかという御心配だと存じます。なるほどその点もわれわれは十分に考えねばならぬと思いますが、ここで主務大臣が認可を取消すとか、あるいは変更を命ずるというような場合には、十分その辺の実態を調査いたしまして、これならば大丈夫だ、当初にカルテルを認めた場合の目的はこれで大体達した、また将来も、今回認可を取消すことによつて非常に悪い影響は来ないという見通しをつけた上で処分をいたしますから、ただいまのような御心配は、実際上にはあまりないのではないか、かように考えます。
  166. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ここで横田先生にお伺いしたいのですが、ここに「取消すことができる。」、と書いてありますが、私は、第二項または第三項に規定する要件を欠きました場合には、必然的に取消さなければならないと、こう解釈しなければならぬものだと思うのですが、いかがでございましようか。
  167. 横田正俊

    横田政府委員 これは権能の面から書きましたので、実際問題といたしましては、取消さなければならないというふうに解釈されるのではないかと思います。
  168. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 次官、今のお答えをお聞きいただけたと思いますが、今の次官のお話ですと、取消すか取消さないかは大臣の自由である。取消すことによつて大きな損害が出て来るおそれのあるときには取消さないというふうに伺えたのです。そういう経済政策的な余地をはさむことのできない条文だと思うのですが、要するに第二項または第三項に規定してある事実が消滅をすれば、即座に取消さなければならない、これが事実だと思います。今のお答えと矛盾すると思いますが、この点についてのお考えはいかがでしよう。
  169. 古池信三

    古池政府委員 これはただいま公取委員長からお話がありましたように、この法文では、主務大臣の権限を規定たことになつておるのでありまして、主務大臣がこの権限を実行に移す場合におきましては、この法の精神を十分にのみ込んで、この法の精神に即して処分をするのでありますから、こう書いてあるが、実際は取消しをやらぬのじやないかというような御心配はいらないのではなかろうか。また一つの行政処分でありますから、その行政処分をすることによつて非常な悪影響を及ぼすような場合には、これは行政官庁として考慮もせねばなりませんけれども、しかしそれかといつて法律がきめておることをやらないということはできないと思います。
  170. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお話は、私のみ込めないのです。主務大臣が慎重な考慮をするのだから、法の規定に従わなくてもよい、こういうふうにしかとれないのですが、私はそんなばかな話はないと思うのです。はなはだ失礼ですが、この改正法律案の至るところにこういう抜け穴ができておつて、そういう抜け穴を通じて通産省カルテル化の助成政策を行つて行こうとする態度が、歴然と私たちには看取できます。しかしそれはとにかくとして、公取委員長お話では、原則としては公正にして自由なる競争を認めて行くべきものであつて、特殊な例外のある場合においてのみカルテルは認められるのだ、こういうのであります。その通りだろうと思いますが、もしそうだとすれば、例外の場合は厳格に解釈をしていただかなければならぬ、これはもう常識だと思います。ところが今のお話によりますと、例外の場合においても、通産省通産省の特殊な政治的考慮に基いて自由にやれる、こういうようにしかうかがえないのです。もつとはつきり法律に従うものであるかどうかを伺わしていただきたいと思います。
  171. 古池信三

    古池政府委員 ただいまの御説の通り、主務大臣の処分をいたしますときには、この法律の精神並びに条項に従つて行いますので、決してそこに不当な政治的考慮とかそういうことが入ることはないと存じます。
  172. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、品種制限などによつてその企業の資本構成なり経営なりの実態がどんなにかわつてつても、取消しによつて力づくでも必ず元ヘ引もとして見せる、こういうお説ですか。
  173. 古池信三

    古池政府委員 必ず元へ引もとして見せるということの意味がよくわかりませんけれども、一応カルテルというものの認可が取消されたとすれば、元の状態へもどつて自由競争をやるわけでありますから、従つてその場合には、今までは品種の制限をお互いにしておつたのが、自由にどの品種でもつくることができるようになる、それはお説の通りでありますが、その際に、たとえば各種の品種を生産した方が有利であるか、あるいは今まで通り同一の品種のものを引続いて専門的に生産した方が有利であるかというところによつて、その企業家が考えてやることだと思いますので、その辺の心配はしなくてもいいのではないかというふうに存じます。
  174. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 まあこれはカルテルというものが、企業の外側に着物のように着せられるものであるか、経営の実態にまで変更を加えて行くものであるか、こういう点についての見解の違いだと思います。しかしカルテルがその経営の質的内容まで変更して行くということは、世界中の学説の認めておるところで、この学説とかわる考え方を持つておられるのでありますから、その点についてはもうこれ以上申し上げません。  それでは戦前の統制会その他カルテルのような形のものすら、終戦後総司令部の強権によつて解散させ得たという事実を御存じでしようか、よけいなことですが。
  175. 古池信三

    古池政府委員 戦争中非常に強力なる統制会ができておつたのを、戦後になりましてただいまお話のような事情で解消したということは承知しております。
  176. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 総司令部と同じような強権を通産省が振えるとお考えですか。
  177. 古池信三

    古池政府委員 占領当事者と同じようなということは申しかねますが、ともかくこれによつて、独禁法の一部適用除外という意味合いにおいて、認可をいたしましたものを取消せば、もし従来通りその機構を存続するとすれば明らかに独禁法の違反になるわけでありますから、法律に違反してやる場合は取締りができると存じます。
  178. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 はなはだ失礼ですが、経済的なカルテルの集中とか資本の高度化、こういうようなものが一片の法令でそう自由自在、おもちやになるなどとは私たち考えられないのですが、この点についてはこの程度でけつこうです。  続いてそれでは横田先生に伺いますが、金融会社は一〇%以上の株式を持つてはならぬ、こういうことがたしか書いてあると思いますが、どういう意味でしようか。
  179. 横田正俊

    横田政府委員 十条に一応株式保有制限規定がございまして、これでよいわけでございますが、御承知のように金融会社が他の会社の株をもつて支配するということにはいろいろな意味の弊害がございますので、この十条だけでは不十分であるとして、十一条にこの特殊の規定を金融業を営む会社だけについて追加してあるわけでございます。この趣旨は、現行法はこれが五%になつておりまして、大体五%程度ならいいであろうというのが現行法の考え方でございますが、その後われわれがいろいろ考えました結果、すでに保険会社につきまして一〇%までの保有を保険業法の改正ということで認めております。従いまして、その他の金融会社につきましても、大体一〇%程度ならば弊害はないであろうということで、今回一〇%までに上げたわけでございます。
  180. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いろいろな弊害というのはどういうのでしようか。お話を承りますと、金融資本の企業支配というかうに伺えるのですが……。
  181. 横田正俊

    横田政府委員 まつたくさようでございます。
  182. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、この金融会社という言葉の中には、結局最終的には一つの資本なり、財閥なりにつながつている系列的な銀行ないし信託、こういうものを全部含んでおりますか。
  183. 横田正俊

    横田政府委員 特に財閥というようなことは、この条文の上自体からは出て参りませんが、実際の動きといたしましては、今仰せになりましたような各種の系列の関係が一番問題になつて来るだろうと思います。
  184. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私試みに兵器産業をやつております住友金属の株式を調べてみたのですが、四千二百万株のうち、住友銀行が二百十万株、住友信託が百万株、それから住友信託の東京支店ですか、これが七十九万株、住友生命が百万株、大阪住友海上が五十万株、こういうふうにおのおの持つておるのですが、これは一件々々を見ますと、一〇%を越えておらないと思います。しかしこの住友銀行、住友信託、住友生命、大阪住友海上これらのものが一つにつながつて行くことは、もう私が申し上げるまでもないと思いますが、こういうのは脱法行為でしようか。
  185. 横田正俊

    横田政府委員 これは結局十一条には抵触しないように株は持たれておると思いますが、結局問題は、現行法で申しましても、十条の問題になりまして、そういうふうに会社が他の会社の株をいろいろな形で組み合せて持つことの結果、ある一定の取引分野の競争が実質的に制限せられそうであるというようなときには、今度は第十条の方の関係で処理せられるというふうに解します。
  186. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今十一条について金融資本の企業支配を排除すべきだとおつしやつたのですが、今の例で行きますと、もう完全に住友財閥の金融資本が住友金属を支配しておると思うのですが、そういう意味で、もしこれが違法でないとするならば、十一条はほとんど無意味になつて参るのじやないでしようか。
  187. 横田正俊

    横田政府委員 十一条は実は金融資本の支配ということの起らないように、ある面からこれを規制しておるわけでございまして、これだけで金融資本の企業支配を防止するということはもちろんできないのでございますが、これはそのほかの金融自体の金融関係であるとか、いろいろな面において企業支配が行われるわけでございまして、この十一条は、今申しました一面を取上げておるだけでございます。問題がだんだん複雑になつて参りまして、株式の保有関係でございますと、結局第十一条、さらにその他のいろいろな関係において問題が発展して参りまするが、結局最後は独占、一定の取引分野における競争の実質的制限になつておるかなつておらぬか、その方法はあるいは株を持つ方法、あるいは金融関係、あるいは不公正な方法というようなものが重なり合いまして、独占という形態が出て参りますれば、今度はその基本的な条々でもつて、その独占の除去をしなければならない、こういうことになると思います。
  188. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私たちは最近日本の産業界に起つております企業的な再編成、そういう問題がこういう金融資本を通じてかなり露骨に行われており、この一つ一つの例を横田先生に申し上げる必要はないと思いますが、こういうものこそ自由にして公正なる競争を阻害する一番大きなものじやないか、こう考えております。その際にこの十一条が、今申し上げたような住友金属に対する住友財閥の支配こういうものが排除できないとすれば、非常に重要な点で一本抜けている、こういうふうに申し上げないわけに行かないと思いますが、そのことは一個の議論になりますから、一つだけお答えいただきたいと思いますが、こういう住友銀行とか、住友信託とか、住友東京とか住友海上とか、こういう形を通じて、企業を支配して行くものを阻止するということは重要なことじやないでしようか。
  189. 横田正俊

    横田政府委員 いわゆる旧財閥の復活ということに対しましては、私ども非常に重大な関心を払つておりまして、もつとも現段階におきまして、はたして明白に独占禁止法違反の状態が出ておるかどうかは、いろいろなお検討の余地がございますが、しかしこの状況がだんだんに進みまして、ある段階に達して参りますと、まさにそういう非常に警戒しなければならない事態に進んで参るのではないかと思います。この点につきましては、今後も十分に注意を払つて参りたいと思つております。
  190. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ほかに実はいゆるトラストについてまだたくさん伺いたいことがありますが、時間もありませんので留保させていただきます。
  191. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村時雄君。
  192. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連質問を最初に取引委員長にお伺いしたいのですが、この許可権の問題、すなわち通産大臣の許可権と公正取引委員会認定権の問題ですが、一々この内容を言つてつたら間に合いませんけれども、あなたはこれがいいという確信を持つていらつしやるのですか。
  193. 横田正俊

    横田政府委員 これでも公正取引委員会立場は十分に守れるという気持でございまして、この点は、前にこの法案のできますいきさつを申しました通り、公取の原案はあくまでわれわれの認可通産大臣意見を尊重して公取が認可をするという立場をとつておりました。これが公取の立場からの一番いい形だと思います。
  194. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間が制限されておるので、簡単にぴしやりと一言でけつこうですから……、なぜそれでは公取がそこまで正しいという意見を持ちながら進めておるにかかわらず、通産省のこの意見の取入れが行われたのですか。
  195. 横田正俊

    横田政府委員 これは結局対立のまま最後まで参りまして、政府の最高のところできまつたのでございまして、公取だけでその問題をがんばりましても、どうにもならないのでございます。
  196. 中村時雄

    ○中村(時)委員 政府の最高のところできまつたというのは、どういうところですか。
  197. 横田正俊

    横田政府委員 閣議でございます。
  198. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは通産省の政務次官にお聞きしたいのですが、今言つたように、通産省の政務次官として、閣議においてこれがきまつたというのですが、それはどういうところにあるのですか。
  199. 古池信三

    古池政府委員 成案ができ上りますまでには、それぞれ政府部内におきましてもいろいろ議論をするのでありますが、しかしわれわれとしましては、公取委員長のただいまお話になりましたこととは多少意見を異にするのでありましてやはりカルテルの問題になれば、どうしても産業を平素から見ており、また産業の正常な発展を考えておりまする主務官庁が認可をすることが妥当である。しかしながらその際には、あくまでも法律的な重要問題でありますから、その独占禁止法の法の精神を基本的に擁護される立場にある公取委員会認定を受けた上で認可をする、こういう立場をとつておるのでありまして、先ほどから申し上げますように、やはりこれは通産省ばかりじやありませんで、他の産業省も同様だと思いますが、主務省の調査といいますか、意見というものを認可によつて十分に主張したいということが考えられております。
  200. 中村時雄

    ○中村(時)委員 実は正常な立場の経済感覚から行けばその通りでありましよう。但し審議庁の長官あるいは通産大臣のおつしやられる言葉の中には、現在の経済の動きを見てくれということを主眼にしていらつしやるようですが、その経済の動きを見た場合に、通産省を主眼にして現在正しい行政行為が行われると確信を持つていらつしやいますか。
  201. 古池信三

    古池政府委員 われわれはあくまで公正に行政上の井置をやつておるという確信を持つております。
  202. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はこの間から、通産省の汚職事件が一体幾らあるかということを、調査して報告してくれということを言つているのですが、ちつともしていないけれども、一体どのくらいになつておりますか。
  203. 古池信三

    古池政府委員 中村先生が御発言なつた前のときに私はおりませんでしたが、今その当時出席しておりました政府委員に尋ねましたところが、別に資料要求としての御発言ではなかつた、かように申しております。
  204. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは変だ。それが官僚の独善だとぼくは言うのです。私はみんなの前でこれは言い切つておりますよ。うそだと思つたら速記録を見てごらんなさい。それほど不信用なんです。実際通産省というものは、一般の風評を聞いても、一部の出先機関だと言われておる。私はこれからその話を打出してみたい。これは前の継続です。たとえば操短の問題から質問を序々に進めてみたいと思いますが、この前の操短は、通産省の指示に基いてあの操短をさせたのか、あるいは業者通産省に申し込んでそういうことをさしたのか、どちらですか。
  205. 古池信三

    古池政府委員 紡績は、御承知のように、原料が輸入のものでございますから、その輸入原料の割当その他の関係、また内地の需給のバランスというような意味合いから申しまして、勧告するのが適当と考えて、行政官庁として勧告したような次第であります。
  206. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はこういうふうに推察をするのです。たとえば現在十大紡があるわけです。そうしてその十大紡が、実際にはこういうカルテルを結びたいと思つている。ところがここにそうでない新々紡がある、また新紡がある。そうすると、これをアウトサイダーにしてやつておかないと、片方だけがもうかるわけです。そこでこの十大紡が通産省と結託して、カルテルを結ぶかわりにこれらの新紡並びに新々紡を牽制しなければならない。そこでもしこのカルテルを結ばなかつたら、原料の割当を行わぬのであるという行動をしなかつたのですか。
  207. 古池信三

    古池政府委員 私はさようなことは存じておりません。
  208. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これは非常に重大なことなんです。存じてないというなら、これは御調査つて報告していただきたい。  それからその結果遂に今度は新々紡なり、新紡なり、あるいは中小企業の、たとえばかすりの織物業、こういうところが操短を余儀なくされたために、今度は割当が少くなつた。そのために非常に苦しい立場に追い込まれているということをお認めになりますか。
  209. 古池信三

    古池政府委員 大体ただいまのような点は私も認めます。
  210. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういたしますと、不況々々と言いながら、これは数量を言つてもいいですが、戦前に比べて紡錘はふえているのです。そういたしますと、実際は不況だと言いながら、片方で紡錘はふえているということで、事実利潤があることはお認めだろうと思う。たとえば綿糸なら綿糸を例にとりましても、八万円から十万円ぐらいに来ている。そうだといたしますれば、少くともそのカルテルをやつて、結局ある程度成功したというふうに、一応見た目には思われるかもしらぬが、実際はどうかといつたら、これは委員長も認められたわけですが、たとえば二万人からの首切りが起つて来たり、あるいは中小企業相当苦しい立場に追い込まれて来た。そういう弊害が事実の上に出て来たことをお認めになりますか。
  211. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお尋ねに対する答えはなかなかむずかしいと思いますが、綿糸の値段が上つているということは事実でありますけれども、しかしこれはいろいろ相場の関係もありますし、そう簡単に原因を追究することはできまいと思いますが、操短をして行けば、自然その影響は各方面に出て来るということは、現実の問題として認めざるを得ないと思います。
  212. 中村時雄

    ○中村(時)委員 相場の関係とおつしやるけれども、それでは昨年度の輸入原綿と本年度の輸入原綿の牧量をお調、へ願いたい。同時にそれに附帯いたしまして、実際の一人頭の大体の使用量について昭和九、十、十一年——これは今までいろいろな問題で目標になつているようですが、その当時の使用量とどれだけの差異があるか、その点を調査して報告願いたい。それから次に、先ほど言つたように、通産省において一つの為替のわくを持つておられて、そのわくをもつて今まで買付けをされていると思うのですが、そういたしますと、そのわくはどれくらいありますか。
  213. 古池信三

    古池政府委員 実はただいまのお尋ねに対して、正確に、また御満足の行くような数字的な答弁は、繊維局長が出席いたしましてから正確なところを申し上げるようにいたしたいと思います。
  214. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういたしますと、そのわくからいたしまして、今言つた新紡とか新々紡とかいうものと大きな十大メーカー等がここに相相剋する面が出て来るわけですが、それを認められますか。
  215. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのような面は若干出ていると考えております。
  216. 中村時雄

    ○中村(時)委員 最後に、今国内価格が大体九万円くらいになつておりますが、国際価格は七万円台になつている。そういたしますと、逆に今度はドルが必要であるというので輸出をした場合に、二重価格制度になつて来るわけです。そういうふうなことをお認めになりますか。
  217. 古池信三

    古池政府委員 これは綿糸の場合のみでなく、他にもやはりそういうことが起つて来るだろうと思いますが、これは今の日本の貿易事情から申しまして、根本的に何とかしなければならない重大問題であろうと存じます。しかしながら政策は政策としまして、現実の問題としましては、確かに国内価格が高くて輸出価格が安い、こういう現実は私も承知しております。
  218. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうも私の問いに対してはつきりした答えが出ないので、非常に困るのですけれども、私の言つているのは二重価格制をとるかとらないかという一点です。なぜ私がそれを言うかといいますと、カルテルによつて価格の維持をする、つり上げをする場合、それで今度はドル資金の獲得という問題がからんで来た場合、そこに非常に問題が起つて来る。たとえば肥料の問題がそれです。そこで二重価格制をとられるかとられないかということを聞いている。
  219. 古池信三

    古池政府委員 これは私は非常に重要なむずかしい問題だと思います。かりに二重価格制をとるとすれば、それでは内地の消費者に対して、輸出の一種の犠牲になつて高いコストのものをしんぼうさせるかどうか、あるいは輸出価格を安くすれば、それに対して補給金を出すような政策をとるかどうか、こういうような問題にも関係して来るわけでありまして、政策として二重価格制をとるかどうかということは、よほど慎重に検討した上でなければお答えができぬと思いますが、現実の問題としては、そういうことがすでにあるということは御承知の通りであります。
  220. 中村時雄

    ○中村(時)委員 一応質問を保留しますが、これだけのことを再確認してもらいたい。先ほど言つたように、十大紡がカルテルを結んで、そのためにサイド・ワークまで取上げられた中小企業は、割当が少くなつて非常に困難な状態になつて来た、一番早いのはかすり業者です、かすり業者の割当が減つて来た、そういうことは認められたわけですね。
  221. 古池信三

    古池政府委員 私はカルテルということは申さなかつたのですが、要するに政府の勧告によつて昨年操業を短縮したという事実は認めたのであります。
  222. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは一体カルテルというのは何ですか、それをカルテルと認めないというなら、何がカルテルなのか、その定義を私はもう一度聞きたくなつて来るのですが……。
  223. 古池信三

    古池政府委員 学問的な問題は別といたしまして、要するに業者が自発的に共同的に操業を短縮したというのではなくて、そのよつて来るところは国家の政策によるんだという点を明らかにしたわけであります。
  224. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは国家の権力と結びついて、もしこれが行われたとなつたら、何でもできるということになるのですか。
  225. 古池信三

    古池政府委員 ただいまの紡績の問題は、先ほど申したように、輸入原料の割当を政府がやつておりますので、その関係から、そういうことをやむを得ずやつたというように御了承願います。
  226. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の聞いているのは、権力と結びつき国家行政と結びついた場合には、これでは完全保護になつて行く、だからそういうことが行われるという事実が出て来るわけです。今度の話を聞いていると、非常に危険性を伴うように感じられるのですが……。
  227. 古池信三

    古池政府委員 一般的に申せば、私はそういうことはないと考えております。
  228. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは一応この分は保留しましてその実態をひとつ出して行きたいと思います。  この前に話をしました砂糖問題を続いて結末をつけておきたいと思います。そこで、ここ書いてあります二十四条の三の平均生産費ですが、砂糖の平均生産費は、この間の経済局長の話では、六十一円が妥当だというのですが、この平均生産費としての六十一円というのは、どういう意味なんですか。
  229. 東辻正夫

    ○東辻説明員 お答えいたします。この前の局長の御説明は、当時入りました原料の単価から見ましておよそごのくらいだという見当でございます。
  230. 中村時雄

    ○中村(時)委員 入つて来た原料の単価から見ましてそのくらいであろうというような、それをもつて平均生産費とあなたは考えているのですか。
  231. 東辻正夫

    ○東辻説明員 各製糖工場について厳格な原価計算を調査たこともありませんので、大体その程度になるのではないかというふうに考えたわけであります。
  232. 中村時雄

    ○中村(時)委員 原価計算をして生産費も出さずにおいて、平均生産費を出すというようなことが、はたしてできるのですか。これは委員長から承りたい。
  233. 横田正俊

    横田政府委員 昨日もお答えいたしましたように、生産費のとり方は非常にむずかしいと存じますが、結局その基礎となりまするデータをつかむことが非常に困難でございまして、先ほど農林省の方から申し上げましたような計算方法は、実はここではとらないのでございます。結局各メーカーにつきまして、その持つておりまする材料の値段を基準にいたしまして、かつそれを例の加重平均ということで数量を加味いたしましたものを出しまして、その平均生産費を出すということであります。
  234. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは非常に危険なんです。なぜかといいますと、たとえば見返りとしてよそから入つて来るような場合がある、そういうような政策が加味されたものと、ほんとうのマーケツト・プライスとして出て来るものと、いろいろあるわけです。それをもつて平均生産費として取上げたのでは、たいへんな間違いです。大きな問題になつて現われて来ますが、どうお考えですか。
  235. 横田正俊

    横田政府委員 大体私の私え方はそうでございますけれども、詳しくは説明員から説明いたさせます。
  236. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは一体現在砂糖の消費税は幾らかかつていますか、並びに輸入税もついでに聞きましよう。
  237. 東辻正夫

    ○東辻説明員 消費税は今斤当り十九円五十銭です。
  238. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは輸入税は一トンに対して幾らですか。
  239. 東辻正夫

    ○東辻説明員 従価でありまして、二〇%です。
  240. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、台湾糖を例にとりましよう。三月の分をとりますと、トン当り百四ドル五十セントになつております。これを百五ドルと概算いたしまして、輸入税が二〇%といたしますと、百二十六ドルですね。そういたしまして、一トンが一千六百六十何斤ですか、それに換算いたしますと、一斤当り二十七円五十銭になります。今の輸入税を入れてそうなるはずです。あとで計算しておいてください。そういたしますと、それに対してあなたは今消費税が十九円五十銭とおつしやいましたから、それをたしますと五十四円です。そうしますと六十一円という価格というもののどこに、今言つた平均生産費というものが考えられたか、具体的にはつきりとこれを打出してみてもらいたい、これは公取委員長にお伺いします。事実これだけの相違があるのです。ところが平均六十一円二十銭ということを認めていらつしやる、そうするとこの相違を一体どうしますか。
  241. 横田正俊

    横田政府委員 私はその六十幾らが平均生産費とは申し上げておらぬつもりです。
  242. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは委員長は一体幾らを見ていらつしやるのですか。
  243. 横田正俊

    横田政府委員 この生産費につきましては、どこまで現在調べておるか知りませんが、先日の砂糖問題以来、私のところの調査課で、ある程度調べておりますので、もし詳細のことを申し上げる必要がございましたら、ちようど本日担当の課長を連れて来ておりますから……。
  244. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それではあなたの方から砂糖業者に対して勧告を出したことがありますか。
  245. 横田正俊

    横田政府委員 出したことはございますが、その内容はむしろ今の値の問題ではなくて、いわゆる生産制限の脈について、注意をしてくれということを勧告いたしました。
  246. 中村時雄

    ○中村(時)委員 生産制限を云々とおつしやるならば、これがカルテルだという大体推察のもとに行われたと思うのです。そういたしますと、その価格構成というものは非常に重大なウエートを持つて来る。そうすると今言つたこの法案にあるような平均生産費というものも、はつきりわかつていたはずです。ですからこの調査をはつきり出してもらいたい。これをお願いしておきます。  それから続いて、金融の問題が先ほどから問題になつて来たわけですが、たとえば現在砂糖業者が税金を納める場合の猶予期間は、何箇月置いておりますか。
  247. 東辻正夫

    ○東辻説明員 あとで調査してお答えいたします。
  248. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これは、その場合に、金融機関にこれを積み立てているわけですが、この税金をたとえば十日払いなら十日払いとしておいて、それを金融機関に積み立てて行くわけなんです。それは御存じでしよう。
  249. 東辻正夫

    ○東辻説明員 詳細についてしつかりしたことは承知いたしておりません。
  250. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それではその点は抜きましよう。それで一箇月七万トンの消費というふうにみなして行くと、大体三箇月で二十一万トンになるが、その場合に消費税は積み立てることになつています。その消費税を三箇月これだけを積み立てたとして、六十五億円からあるわけです。その六十五億円を銀行が預かつて、その金を元にして逆に融資をして行くということが行われているということを公取委員長は御存じですか、どうですか。
  251. 横田正俊

    横田政府委員 私自身はよく存じておりません。
  252. 中村時雄

    ○中村(時)委員 砂糖の生産カルテルを結んでいるだろうという推察に基いて、これをとめようとなさつていらつしやるような方々が、こういうことを知らずして、なぜそういう業務の執行ができますか。
  253. 横田正俊

    横田政府委員 私自身は各業界についてあまりそういうこまかいところまで存じておりませんけれども、事務局の職員がどの程度調べておりまするか、今ここではつきり申し上げることはできません。
  254. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村時雄君に申し上げます。時間が十分間超過いたしましたので、いま一言に制限いたします。
  255. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは今の問題はお預けといたしましよう。  結局そうなりますと、先ほど金融機構等の問題を取上げたのですが、金融機構で、砂糖が値下りをして来ると、今度は、自分が預託されたもので、貸し付けておる金があるわけです。そこで値下りをすると、損失が出て、自己の責任を果せないという結果が出て来る。それががちようど八月です。そこで金融機構と結びついて来る。当然そういう手が打てるということの推察がつかないですか。その点は十分調査を願つておきたい。それではまだ大分あるのですけれども、そういうことになりましたから、一応これで保留をいたします。
  256. 石村英雄

    ○石村委員 さつき中村委員がしきりに政務次官にお尋ねして——あるいは私が聞き漏らしたのかもしれませんが、綿紡績の操短について中小業者、織物業者が非常に困つた、倒産者もたくさん出て来たという点をお聞きしたと思うのですが、これに対して、そういう事実をはつきり認めておいでになるかどうか、御答弁がなかつたように思うのですが、その点について中小業者に及ぶ影響をどのように考えておるか、はつきり御答弁願いたいと思います。
  257. 古池信三

    古池政府委員 先ほど私から御答弁申したつもりでおりますが、中小企業者がだんだん困つてつておるということは、よく承知しております。しかしその原因が、今の十大紡の操短なら操短だけから来ておるものとも申せないので、ただいまのお尋ねの御趣旨は、中小企業も非常に困つておるから、ひとつそういう点も大企業と同じようにみな見て行かなければいかぬじやないかということだと存じますので、これは十分考慮いたしたいと思います。
  258. 石村英雄

    ○石村委員 今の問題ですが、そういたしますると政務次官は、操短の結果綿糸が上つて、一方製品安で困つたという事実は認めておいでにならない、ほかの理由で中小業者は困つたのだ、このようにお考えになるのですか。
  259. 古池信三

    古池政府委員 そういう点もございまするし、いろいろな理由が集まつてつておるのだろうと存じます。
  260. 中村時雄

    ○中村(時)委員 実は先ほどの合同委員会の席上で私は政務次官に三点お開きしたのですが、その一点も明確なるお答えがなくて、そのまますわつて、あと質問させてくれないものですから、そのときの問題について伺います。今言つたのは、中小企業もそういう一つ関連的な問題として取上げられる。そこでございましよう。違うのですか。今言つたように綿紡の問題で中小企業も操短のための割当が少くなつてつておることも一つの原因であるということだけは御確認されるわけでしよう。また労働組合のそういつた議論があつたことも一部の面では御確認なさる。そういう姿が事実においては出て来ておるのです。そういたしますと、どちらがウェイトが強いかということが結局問題になつて来る。そういう犠牲の方が大きいのか、あるいはそのために価格を維持して一応ある程度の線に立ち直つた紡績業者の方が大きいのか。どちらが利益があつたのかということが、カルテルを結んだ結果の効用として出て来たのでしよう。そうでございましよう。違いますか。
  261. 古池信三

    古池政府委員 ただいまきわめて理論的に割切つてお話がありましたけれども、しかし中小企業が困つておるということは、非常に複雑な理由から来ておるのであつて単に一つや二つの原因ではない、かように考えます。
  262. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だから私の言つているのは、それが全部ではない。それは私も肯定していると言つている。肯定するしないは別として、一応論拠の上から肯定して来た。それも一部なんです一部消費者あるいは労働者が犠牲になつてこういうことが行われたことと、それからもう一つカルテルを結んだがゆえに綿紡業者が助かつたということは、価格が上つたことには間違いないのですから事実言えるのです。その助かつたものと犠牲なつたものとどつちが比例的に大きいかということによつてカルテルを結んで行つた効果がきまつて来ると私は思うのです。政務次官はどうもはつきり答えられないので困つているのです。何も割切つてしまつているのではない。カルテルをやつた結果における効用の問題を言つておるのです。それはどちらがウエイトが大きいかということによつてカルテルを結んだことがよかつたか悪かつたかということになつて来るのです。違いますか。
  263. 古池信三

    古池政府委員 なかなかむずかしいお尋ねでありますが、それは確かにカルテルといいますか、操短をして利益を得た面もあると思います。しかし価格の点ばかりでなく、原料と生産品とのバランスをとるということもやはり一つの有益なる効果であつたと思いますので、あまり中小企業者と紡績業者との利益がどつちが大きかつたとかいうことは、簡単には私には申せないのじやないかと思います。
  264. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村さんに御注意申しますが、もう一問に制限します。
  265. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうもいろいろ答えがはつきりしないのです。私は中小企業と紡績業者との対比ということを言つておるのではない。そういう総合的なものを全部集めて見て、その結果紡績業者カルテルを結んで価格が協定された結果において現われて来た犠牲と、それによつて助けられたものとどちらがウェイトが強いかということによつて、このカルテルというものがいいか悪いかということがきまつて来るということを言つておる。それが一点。それからもう一つは、その犠牲の上に立つて、部分的なものはあなたの方は認めていらつしやる。そういたしますと、ここに一つの例がある。たとえば、これは砂糖のことは言い過ぎて、これはまた次に言わなくてはならないのですが、砂糖の昭和九年、十年、十一年のこの消費量を考えますと、あれは年間約十キロですか……。
  266. 東辻正夫

    ○東辻説明員 昭和九年が平均一人当り十三キロになつております。
  267. 中村時雄

    ○中村(時)委員 十三キロなんです。ところが現在はどうかといいますと十キロ割れておるくらいなんです。そういたしますと、実際には消費量は足りないのです。その当時から比べると足りないのです。にもかかわらず業者が輸入を少くしてくれといつて農林省に申し出ている。そういう変態性が出ていることは、少くともその中心は価格の維持です。今おつしやつたように総体的なものではなくて、綿紡の操短におきましても問題は価格の問題だ。あなたは価格でないとおつしやるけれども現実価格なんです。それをお認めになるか。それを認められた結果今私の言つた質問が出て来るわけです。
  268. 古池信三

    古池政府委員 確かに価格の点もあると存じますけれども、そればかりではない。先ほど言つたように原綿が足らなくなつたのです。そういう結果やはり紡績の方もお互いに自粛するということになつたのでありますかう、価格ばかりではないのであります。
  269. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林進君。
  270. 小林進

    ○小林(進)委員 最近の新聞によりますと、浅草のどつかの飲み屋でビールを一本百円で売つたら、ヒール会社が販売を拒否したというようなことが載つてつたのであります。そのときの新聞の批判によりますと、ビール四合びん一本が小売価格百二十二円、うちビールのびんが十五円で、中味だけの小売値段は百七円だそうであります。それに対する卸売値段が百二円で、五円のもうけです。この百二円の卸値のものをその飲食店が百円で廉売した。客は押すなすなの盛況であつた。それはそうでございましよう。私も行きたいくらいでございます。そうしたら——もつとも大分他の小売業者も反対したそうでありますけれども、同業者の反対もあつたせいでございましようが、ビール会社ではその飲食店に対してビールの販売を拒否した。拒否する前に、何でも百円で売るのはやめてくれ、どうか小売値段で売つてくれといつたら、それに対しては百万円の権利金をよこせと小売業者が要求した、百万円は出せないといいながら交渉を続けましたが、ともかく結論は、ビール会社では売らないことにきめたそうであります。こういうことに対しましては、一体公取委員長はいかなる見解をお持ちになつておるか、承りたいと思うのであります。
  271. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまの問題は、問題になつたといたしますれば、結局独占禁止法の一種のダンピング、不当廉売という点になろうかと思いますが、今の実例でただちにそういうふうに言えるかどうかは相当疑問があると思います。
  272. 中村時雄

    ○中村(時)委員 大臣が見えられたようでありますから、今までの問題は問題として、大臣に対する質疑を行うものがたくさん残つておるのですから、それに切りかえていただきたいと思います。
  273. 佐伯宗義

    佐伯委員長 皆さんにお諮り申し上げます。ただいま中村時雄君の言われた通り通産大臣が参りましたので、大臣に対する質問にお切りかえ願いたいと思います。
  274. 小林進

    ○小林(進)委員 委員長の提議に対しましては、賛成でありまするが、せつかく私は今まで待つてつて、自分の時間が来て打切られたのでありますから、大臣に対する質問の優先権は、現在発言中のものに最優先権を与えるという意味において賛意を表したいと思います。
  275. 佐伯宗義

    佐伯委員長 よろしゆうございます。
  276. 小林進

    ○小林(進)委員 まず大臣の経済再建の基本方針につきまして、ひとつお伺いいたしたいと思います。  第一番に、これは大臣もお読みになつたと思いまするが、わが日本にルーズヴエルト夫人が参つておりました。相当長期にわたつて視察をいたしまして、そして帰るときにおわかれの言葉をわが国民に与えて行つた。その言葉の中に……。
  277. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林君に御注意申し上げますが、ただいま議題になつておりまするのは、独禁法でありまするから、その質問に御制限願いたい。ただいまは農林通産、経済連合委員会になつておりまするので、この議題の限界を越すことはできません。
  278. 小林進

    ○小林(進)委員 私どもはしばしば経済安定委員会を開いて参りましたが、そのときに大臣の出席を委員長を通じてうながしまして、独禁法の審議を続けながら、並列して大臣の基本方針を承る、大臣は七つ八つの委員会を持つて多忙ではあるけれども、極力出席を得て、並列して基本方針を承るということで了承して参つた。そして初めてここヘ大臣がお見えになつたのでありますから、私は委員長との約束通りに当然基本問題に対して質問できるものとものと思つたのでありますが、その点何か私の了解に間違いがございますか。
  279. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林君にお答え申し上げます。ただいまのお言葉には相違ございませんが、本日の議題なるものは、公報において御通知申し上げました通り、独禁法に関して農林、通商、経済三委員会の連合審査会になつておりまするから、この議題の限界を越すことはできないのであります。
  280. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは泣く泣く委員長のおつしやることに服したいと思います。
  281. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これは午前中に全体の連合委員会をやる。そして時間の割当をし、午前中は農林委員会通産委員会にまかしておいて、午後は独自の立場経済安定委員会をつくるということになつてつたのではないですか。
  282. 佐伯宗義

    佐伯委員長 それは違つております。
  283. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは独禁法に基いてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、そもそも公正取引委員会というのは公正なる自由主義競争を守るために設置せられたものであるといわれるのでありますが、公正なる自由競争というものは、これすなわち自由主義をお守りになることである。いわゆる資本主義をあくまでも守り抜くために、公正取引委員会というものが発生したものであるというふうに解釈ができるのであります。われわれは公正取引委員会は、願わくは独占資本の横暴より、中小企業者農民、あるいは消費者といつたものをできれば擁護してもらいたい、そういう観点で、公正取引委員会存在を認めたいと実は希望するのでありますが、これに対する大臣の御見解をひとつ承りたい。
  284. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。基本方針はその通りでございます。
  285. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは某本問題でありますから私は横田委員長にもお伺いいたします。公正取引委員会は、あくまでも資本主義、自由主義を擁護し、公正なる自由競争をあくまでも擁護するために存在するものであると確信をもつて答弁になるかどうか承りたいのであります。
  286. 横田正俊

    横田政府委員 その通りでございます。
  287. 小林進

    ○小林(進)委員 資本主義、自由主義ということは、かつてコロンブスが大陸を発見いたしまして、その発見の道程において、まさに世界というものは地域が無限大であり、世界の富が無尽蔵であるというそういう一つ前提のもとに、資本主義、自由主義ができ上つた。当時の自由主義、資本主義というものは、発生の段階においては、国家から保護し、干渉せられるということを非常にきらいまして、あくまでも自由経済、自由資本というものを構成いたしまして、国家の干渉を排除するのが本来の自由主義資本主義の本然のあり方でありました。ところがその後、世界の富も無尽蔵ではない、世界の領土もこれに制限があるということが初めてわかると同時に、この自由競争というものがやがて世界のすみぞれにおいて行き詰つて、あつちがぶつかり、こつちでぶつかりすると同時に、資本主義もいよいよ成熟期を過ぎまして、衰退の時期に至ると、資本同士において戦いが起りました結果、とうとう資本主義は、みずからも自衛態勢の形をつくると同時に、国家に対して保護を求めて来た。今のわが日本における資本主義のあり方は、この段階にあると思うのであります。不況カルテル合理化カルテルというものは、いわば資本主義、自由主義の全盛期を過ぎた自己防衛の姿である、だからこれは厳格にいえば、自由主義、資本主義ではないと思う。この点に対する通産大臣、公取委員長見解を承りたいと思います。
  288. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 アダム、イブの時代と違いまして、民族が結合いたしまして国家を形成いたしております。同時に今の国家は法治国であります。それから資本主義と申しましても、これも一つのいわゆる法に拘束されて国民が活動する十義の一つであります。そういたしますと、われわれといたしましては、自由競争することが、いわゆる資本主義の根本に一番いいということは、根本的の精神としてかわつておりません。しかしながら、この法治国であるところの自由主義を守つておる国家が国民全体の公益を考えますときに、もし何かそれが行き過ぎであるというときには、ある程度の法の改正もしくは法的措置によつてこれを制限するとか、緩和するとかいうことが出て来ることだろうと思います。
  289. 横田正俊

    横田政府委員 独占禁止法は、御承知の通りにもちろん自由主義経済体制を基礎にいたしまして、しかもそれから出て参りまするいろんな矛盾をでき得る限り除去して行くというところにその生命があるわけでございます。その意味において、やはり国家の権力によりまする、自由放任に対する一つの統制、という言葉を使うと悪いのでございますが、統制的な制度であると考えております。この自由主義のいろいろの矛盾はいろいろな形で出て参つておりまするが、少くとも独占禁止法はその競争がなくなるような、おもしろくないような矛盾に対してその原因を除去するという方面から、現在の経済体制の円満な発展を念願しておるわけでございまして、また別な方面から同じ経済の究極の目的を達成するということとの間にはいろいろないきさつや関係がございまするが、独占禁止法はそのうち一つの部門を受持つておるというふうに私は考えております。
  290. 小林進

    ○小林(進)委員 私は現実の問題は別にいたしまして、理論的に公正取引委員会というものが公正なる自由競争、いわゆる資本主義、自由主義というものを擁護するというのが建前であるとするならば、この不況カルテルといい、合理化カルテルといい、事のいかんを問わず、カルテルというのはもはや資本主義、自由競争の本然の姿ではない。これはゆがめられた姿でありますから、それを認めるということは、自由主義、公正なる自由競争を守り抜くという公正取引委員会の基本のあり方をみずから否定するものではないか、私はこれをお伺いいたしておるのでありまして、いま一応御答弁願いたい。
  291. 横田正俊

    横田政府委員 カルテルというものは、そういうよくないものであるということにつきましては、まつたく御同感でございまして、従いまして、それなら今度のカルテルを認める必要がないではないかということだと思いますが、しかしながらこの範囲のものを認めますることは、先般来この改正案の理由についていろいろ申し上げておりますように、基本的な公正取引委員会、あるいは独占禁止法の基本の線ははつきり守られつ、その他いろいろな利点ももるわけでございまして、この程度改正をしたために基本の線がくずれるものとは考えておらないわけであります。
  292. 小林進

    ○小林(進)委員 ただいまの御説明はわれわれの納得し得るところではない。この改正案に対しましてわれわれの疑問とするところは大体三点あるのであります。第一点は、今申しますように不況カルテル合理化カルテルというものを無制限に認容せんとしておる点、この危険性に対してわれわれは非常に危惧の念を持つている。第二点といたしましては、カルテル認可権を主務大臣が掌握せんとしている、ことに通産省に至つては、あるいは貿易あるいは今の綿の操業の問題等について、その動き方は常に大財閥あるいは資本家といつたものを擁護する立場にある省であることは、われわれの通念とするところであります。たとえば輸出業者の税金を負けてやり、特別の金融をする、あるいは何々というがごとき一連の政府の政策は、大臣が何と抗弁せられても、やはり特殊な業者に対する特別の保護政策である。資本家が政府の不干渉を非常に望んでおりました過去の古典的なる自由主義、資本主義から今はのがれまして、大きな財閥、輸出業者政府の保護を求め、通産省が主管官庁となつてそういう業者に保護を与えているとわれわれは解釈しているわけでありまして、その主務官庁がこうしたカルテル認可の権利を掌握されるということは、われわれに言わせれば泥棒に刃物と同じでありまして、非常に危険である。こういう疑点を持つているのであります。第三点といたしましては、先ほどもしばしば繰返されたように、今通産省を中心として一番汚職事件が多い。あるいは貿易の認可、あるいは何々の問題、そういうような疑獄におどつている汚職官庁が、こういう利権の対象となるような一つの権利を把握されることは、さらに危険である。こういう考え方は、私ども非常に疑問に思つているのであります。これは法律改正そのものに対する私どもの疑点でございますが、次は運営の問題であります。これは通産省公正取引委員会両方にまたがる問題でありまして、通産省認可権をお持ちになる危険性はただいま申し上げた通りでありますが、これは公正取引委員会に対しても申し上げられることであります。これはわが党で出しましたパンフレツトでありますが、これを読み上げまして大臣の御答弁の次に横田委員長の御答弁を願いたいと思うのであります。「独禁法の番人といわれている公正取引委員会のありかであるが、自由党は公正取引委員会を私有化している。わが党は民主的な行政委員会制度の一環として公正取引委員会存在意義を認め、かつその意見を尊重する立場に立つ。しかしながら公正取引委員会の現状には満足しない。大資本、大企業の独占横暴に目をおおい『中小企業いじめ』をしている傾向がある。たとえば最近の例としては理髪料金の引上げを阻止し、みそ、しようゆのくじ付販売を停止したが、もちろん消費者立場を守らんとする考えはわかるが、それよりも大資本、大企業の独占横暴は枚挙にいとまがないほどある。最近の肥料価格問題もその適例があるが、これに対しより積極的により公正に活動しなければならない。」こういうことを言つているのであります。これに対して所管大臣並びに委員長の御答弁をお願いいたします。
  293. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 第一点につきまして、今度緩和いたしました不況カルテル合理化カルテルを無制限にされるというような仰せでございますが、法の内容を見ますと、決して無制限ではなくて、むしろ慎重に慎重を重ねて、しかも最小必要限度において初めてこれを許すということになつております。私の考えはそういう考えでございます。  それから認可権の問題でございますが、大企業偏重で中小企業軽視、こういうようなことではその主管官庁に認可権を渡すのはおかしいじやないかというおぼしめしでありますが、しかしわれわれといたしましては、日本全体の経済のあり方について通産行政をやつておる次第でございまして、大企業に重いとか中小企業に軽いとかいうことはございませんで、むしろ形の上でごらんくだされば、仰ぜになれば何とでも仰せになれましようけれども、特にわれわれの方に中小企業庁という庁を設けて、そうして中小企業の保護助成に当つておるという形、またそれに対して、従事しておる職員が一生懸命になつておるということをごらんくださいましても、大企業偏重庁ではないと私は考えます。  それから認可権の問題でございますが、先ほども申しましたように、自由放任自由放任ということをよく世の中で言われておりますけれども、自由放任にするということは、これも一つの法的根拠によつてつておるわけであります。すなわち公正取引委員会がありまして、そうして自由にやるということを監視するりつぱな役所をつくつておる。これも法律でできたところの法治国の機関であります。でありますから、自由放任にさせること自体がすでに法的根拠においてできている。そういたしますと、今度はどう考えたらよいかというと、それは何のためにそういうことをしているかと申しますれば、日本の国家の経済の安定また国民全体の幸福ということを基礎においてやつておる次第でございます。そこでいろいろ考えてみますと、この現行法におきましては、おそらく日本の国情に合わないという考えを私は持つておるのであります。非常に底が浅い経済で、吹けば飛ぶような財界で、それに対してもし生産過剰であつて、どうすることもできない、非常に経済界の動乱が起きるということになりますれば、ひいてはそれが国家経済の存立にも非常な影響を与えるということが考えられないこともないのであります。そういう場合におきましては、国家全体の利益を守るために、さきに申しました法的根拠を与えて自由放任にしておつたものでも、やはり法的根拠を与えて国家経済を救う、とにかく国家経済の発展とそれから利益というものに向くようにしておるのがすなわちこの独禁法でございますから、そういたしますと、大きな根本的な状態から行けば、自由自在に働きなさい、自由自在に仕事をなさいといつて、これが国民経済に非常に役に立つ場合にはそういたします。しかし日本の経済の実情を見ますと、それにあまり徹底し過ぎてはいけないから、このくらいの程度の緩和をした方がいいじやないかというわけで緩和しているわけであります、これは各国の例をごらんになつてもおわかりになりますように、各国ともやはりその地方々々、国々の事情によりまして、緩厳の差があるのでございますから、私はその点においては、日本としてこの緩和はしていただく、それじや、その国家経済に対し、国民経済に対し、消費者利益、中小企業利益、そんなものを判断する材料を一体どこが持つているかと申しますれば、通産行政をやつている通産省が一番よく把握している次第でございまして、また同時にそのものがこれに対するりつばな判断をしなければ、国家の大計を誤る、こういうことでわれわれといたしましては認可権を持つ。しかしながらこの認可権を持ちましても、これはただ単純に、いわゆるあなたの仰せになりましたような大企業庁であるというようなお考えで非難される点もあるかもしれませんが、そういうことはないということを考えておりましても、やはり慎重には慎重を期する意味において、元の公正取引委員会が、法的に見て、また法の根本精神から見て、これを許すべきか、許すベからざるかということを認定するということを与え、その認定と、われわれが認可せんとする意思とが合致して、初めて認可ができるわけでございますから、われわれが専断で認可をするということには当らぬと思いますから、御了承願いたいと存じます。
  294. 横田正俊

    横田政府委員 公取の仕事の今までのやり方につきまして、いろいろ御批判をいただきまして、まことに恐縮に存じまするが、なるほど今まで取上げました事件の多くのものは、大企業を相手にしているものは少いのでございますが、中小企業ばかりをいじめておるわけではなく、消費者利益というような点からいたしまして、自然、その対象になりますものが中小企業であつたことが多く、また取上げる事件につきましては、割合に事実の把握が簡単でございますために、自然事件の数が多くなつたのでございますが、その他の大企業のいろいろな動きにつきましては、先般来申し上げておりますように、着々といろいろな調査もいたしておりまするし、今後それらの調査が結実いたしますれば、いろいろな面で表面化して来ると思うのでございます。もちろんこれにつきましては、今後鋭意私どもの職員を督励いたしまして、できるだけこの法律の精神を守り抜きたいと考えております。
  295. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林さんに申し上げますが、あなたの時間はもう七分超過いたしました。そこでお諮り申し上げますが、大臣は四十五分までという約束でありまするので、もう十三分しかございません。中村さんに飛鳥田さんに三分ずつ一問を許します。加藤さんには五分一問をお許しいたしたいと思います。
  296. 小林進

    ○小林(進)委員 そういうようなことは、委員長いけません。大臣が来られない前のわれわれの申合せで、十五分ということになつてつた。ところが大臣が来られて状況がかわつたのです。それを質問さしておいて、あなたの持ち時間は十五分だからなんといつたつて、質問にはやはり道中もありまするから、これ一問でやめろとか、二間でやめろということは……。
  297. 佐伯宗義

    佐伯委員長 いやいやい、それは小林さんに申し上げたが、大臣が来られない前のわれわれ合同委員会の内部の申合せが十五分ということであつたから、あなたの時間がなければ、大臣に対する質問が済んでからお許しいたします。中村時雄君。
  298. 小林進

    ○小林(進)委員 そういう委員長の横暴では質問にも何にもなりませんから、いま一問私にやらしてもらつて……。
  299. 佐伯宗義

    佐伯委員長 それではお許しいたしましよう。もう中村さんに許しましたから、中村さんが済んでから、あなたのは一間許します。中村時雄君。
  300. 中村時雄

    ○中村(時)委員 三分ぐらいのことでは聞いても聞かぬでも同じことだが、ただ今の問題から行きますと、今度はカルテルというような問題を考えた場合、このカルテルということそのものは、われわれは意味からいつても悪いものではないと思つている。ただ問題は、その対象の消費者に対して非常に問題が起つておる。これはたとえば今の操短の問題にしても、中小企業に問題が出て来る。あるいは労働者に問題が出て来る。これから話を続けて行くのですが、肥料の問題にしましても、砂糖の問題にいたしましても、大衆に対する非常な問題が現われて来るわけであります。そこでひとつ、こういうことが考えられるかどうかということをお尋ねしたい。その一つといたしまして、この公正取引委員会消費者代表として労働組合あるいは農村代表、そういうものを入れて行くかどうかということが第一点。それから第二点といたしまして、審議長官といたしまして、以前に日本の経済の問題を取上げられ、そうして発表された。これは審議長官が考えたものでなしに、おそらく官僚がでつち上げたものだろうと思うのですが、実に抽象的な問題で、その実体がちつともわからない。というのは、少くとも経済自立でやつて行こうとしておるのか、あるいは貿易によつて日本の経済の復興をはかろうとしているのか、どちらに重点を置いておるかということをお聞きしたい。もしかりに経済自立で行うという観点があるならば、これは先ほど委員長から申されましたように、カルテル、トラスト、遂にはコンツェルンまで行きまして、昔のあの資本主義形体の姿が出て来るであろうという突破口になつて行くわけです。その点に関してどうお考えになつておるかということが第二点。それからもしカルテル——合理化カルテル、並びに生産カルテル価格カルテルあるいはそれらの全部を含めてでありますが、これを認めた場合において、この独禁法の目標と相反する行動が出るか出ないかということが第三点。そうして最後に今の許可権の問題と認定権の問題であります。現在この許可権をめぐりまして、このような腐敗堕落しているところの——長官に言わせますれば、りつぱな官僚とおつしやいますが、それがりつぱ過ぎまして、ときどき脱線し、ついには首をくくつたような問題まで起しておるわけなんですが、そのようないろいろな複雑な状況下にあるわけです。そこでもしかりにこの許可権を通産大臣が握るといたしますれば、おそらく次に来る問題は、この国家権力と結びついたところの行政機構に対し、おそらく公正取引委員会は何らの発言もでき得ないというような状態になると思うのです。現在すでにそうなつておる。つまりそれに対して、この許可権というものを公正取引委員会の方に持つて行くという御意思がありやいなや、この点をお聞きいたしましよう。ちようど五分になつた。
  301. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 第一点にお答え申し上げます。農民とか中小企業の代表者を公正取引委員会に入れるか入れぬかということは、私はただいま考えておりませんです。まあそんなことも御意見として伺いまして、検討はして見なければならぬかと思いますけれども、しかしただいまはそういう考えを持つておりません。  それから二番目の、自立経済か貿易かというのは、ちよつと私御質問の趣旨がわからないのでございますが、われわれが考えております自立経済と申しますことは、少くとも日本のわれわれが、自分で働いて自分で食つて行くんだ、自分で働いて自分が幸福な社会をつくつて行くんだ、こういうことを一番の根底にしておるのでございます。その手段といたしまして、何をするかといいますれば、御承知の通りに、領土が少うございまして人が多いのであります。そうして資源がない。どうしてもやはりよそから資源を入れて、それを加工して外へ売るとか、ことに一番明瞭なことは食糧でございますが、御承知の通りにわれわれはこの土地の中に住みまして、八千四百万がこの土地だけでできる食糧では食つて行けないのでございます。そういたしますと、食糧はどうしてもよそから輸入しなければならぬ。これをだんだんと減して行きましても、五年や八年で昔のアウカルキーの思想によりますところの自給というものは出て来ない。そうしますと、それを外国から買わなければならなくなるから、買わざるを得ない。買いますと、結局外貨がいりますから、その外貨を何で捜得するかといえば、輸出をして行かなければならない。ここに大きな根本の経済の基礎といたしまして、貿易に重点を置かなければならない。しかも貿易のバランスはどうなつているかと申しますれば、輸入が非常に多くて、輸出が少いから、このバランスを合せるために輸出を第一にしなければならない。こういうことで輸出貿易第一主義というか、今ずつと申し上げましたことによつてわれわれの経済の自立をはかつて行きたい、こう考えるわけであります。  それから三番目の独禁法は、これはあの法律できめました通りに、目標といたしましては、根本の精神は、いわゆる自由競争をやらせるということにありますが、それを緩和いたしまして、あの程度カルテルを許す、しかしこれについては相当慎重にやりまして、ほかに大した悪影響がないようにする。  それから認可権の問題でありますが、認可権の問題は、小林さんにお答え申し上げましたと同じように、私自身は通産省が持つのが一番妥当であると考えておる次第でございます。ただ先ほどのお言葉の中に、国家権力がというようなお託もございましたが、これは元いわゆる天皇というものがありまして、国民がどうすることもできない不可侵権というか「何か神様の与えた国家権力というようなものがあつた場合には、国家権力というものが非常に悪用されまして、その停止するところがわからぬほど、国民全体に不幸をもたらしたかと存じますが、しかし、御承知の通りにわれわれ内閣といたしましても、皆様方にしましても、国民が主権者であつて、その国民を代表されて出て来られるところのその組織が政治をしておるのでございますから、非常に悪い政治があるとか、またどうしてもいかぬということになれば、当然国民、すなわち主権者の審判によつてその権力というものは崩壊してしまうのでございます。ですから、その点は、国家権力というものがいつまでも昔の君主専制時代のようなことで続いて行くとは私は考えませんので、その弊害はなかろうと存じます。
  302. 佐伯宗義

  303. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私は二、三伺います。この独禁法は非常に大きな問題ですので、大臣にゆつくり伺わしていただきたいと思いますが、そういう機会をこの委員会にお与えくださるかどうか、はつきりおつしやつていただきたいと思います。  そこでもう一つの問題として、とりあえず一つだけ伺いますが、六月四日でありますか、日銀総裁はこの独禁法に対とて、どうも紡績業者はまだまだ値下りにも耐え得られるのだし、値をつり上げるような操短はやめるべきだ、こういうふうに記者団会見で語つておられます。また本年の四月の初めに朝日新聞社の座談会で、川北興銀頭取は、日本の産業家は物価の下向傾向に対して、独禁法改正によるカルテル化を考えているが、これは非常に困つたことである。不況カルテルによつて現状をごまかそうとする傾向は、日本経済の危機を真に打開する道ではないと思う。こういうふうに述べておられるのですが、こういう私たちの党派の立場からする批判のほかに、日本の経済界の中においても相当尊重をせらるべき地位にあられる方がこのように明白に言つておられることについて、大臣はどういうふうにお考えでしようか。
  304. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 まず第一点でありますが、ただいままでいろいろこの委員会でお呼び出しがございましたことにつきまして、よう出ることができませんで、はなはだ恐縮いたしておりますが、御承知の通りに私通産と経審と兼ねております上に、今予算の審議がちようど白熱化しているときでありまして、予算委員会でひつぱられまして、どうも都合がつかない時間が多うございまして——いつも午前十時から三つか四つくらいございますから、かち合いまして……。
  305. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今度そういう機会を与えていただけるかどうかということだけ伺えばけつこうです。
  306. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 もちろん私は今後努めて出てくることにいたします。  それから第二点の、日銀総裁、川北興銀頭取のお話でございますが、これはなるほどそういうような必要は現実にはないでございましよう。ただ実業家の諸君は政治をしているものじやございません。そのときどきの情勢を自分で判断している次第でございます。それですから、われわれ政治的に見ましたものとは違うと思います。と申しますのは、われわれは長い目で、ことに経審あたりでいいますと、五箇年先まで見通しをつけてやつて行かなければならぬ、こういうような考えを持つて政治に当つておりますが、万全を期する意味におきまして、朝鮮休戦ができ、世界の貿易競争が激化して行き、そして当然日本の国内の経済情勢がどうなつて行くかということを非常に心痛しているわけでございまして、その意味におきまして、不況カルテルを適用することがないような事態があつてほしいということは念願いたしております。しかしそういうことが出て来ぬとも限らぬ。出て来たときに、漫然とごの公正取引委員会の持つている独禁法のこの厳格そのもののごときものがあつて動きがとれなかつたときには、われわれは自分自身のつくつた法律によつて自分自身が首をつて行かなければならぬ、こういうようなことがあるものですから、慎重に考えまして、万一そういう事態があつた場合には、これでもつてすぐ対処し得て、そして国利民福をこいねがうという意味で、私は二の不況カルテル合理化カルテルを今御審議願つておいた方がいいと考える次第であります。
  307. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今伺つていると、操短勧告は全然その必要がないとおつしやつているのですが、あまりにもお話が矛盾しております。
  308. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 操短勧告は全部解消しておりまして、ただいまございません。
  309. 佐伯宗義

    佐伯委員長 加藤清二君。
  310. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間がたいへん短かいそうで、すずめの涙くらいの時間を与えて、これで質問終りということで押し通して行かんとするのか、ないしは皆さんが聞きたいたいと言うておられるのだから、今後そういう機会を与えて、みなが満足をした後にこれを通そうとなさるのか、まずその点を聞きたい。
  311. 佐伯宗義

    佐伯委員長 お答え申し上げます。大臣に対する質問は一問にお許し願います。あとは引続き政府委員がおりますから、政府委員に御質問願いたいと思います。
  312. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではその点について大臣はどう考えておられるかということを聞くのが第一点……。
  313. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 それは先ほどの御答弁言葉が悪かつたかもしれませんけれども、私の時間の許す限り、国会のお許しになる限り出て来ることはむろん当然の義務でありますし、責任でありますから、出て来ます。
  314. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではお尋ねいたしますが、大臣すでに御承知の通り、今日は操短はやめたとただいまおつしやつているが、事実上は行われているのです。紡績に限らず、砂糖に限らず鉄、石炭に限らず、肥料に限らず、こういう禁止されている独禁法があるうちから、すでにカルテルの一部が行われている現状であることを、大臣よく御承知だと思う。にもかかわりませず、なぜ追討ちをかけるように、こういう法律をあえて前国会も今国会も出さなければならないのか、その理由を承りたい。
  315. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 この前、昨年の春でございましたか、綿糸、綿布の非常な混乱が起きまして、その当時通産省が勧告したことは私伺つております。ところが、これは今年の六月に終りまして、そして勧告の形式はなくなつてしまつております。先ほどは日銀総裁とか興銀の総裁が、操短なんかする時期じやないということをおつしやつております。今お伺いいたしますと、操短をやつているじやないかと仰せられますが、ただ問題は操短ということをみんなが共同一致して、いわゆるカルテルをつくつて操短しておるなら、これは独禁法違反でございましようけれども、どうも自分の会社の採算がとれて行かぬから、自分自身の会社だけは操短しなければいかぬということでやつていることは、これは独禁法に触れませんものですから、そういう意味での操短が、あるいはあるかもしれません。その点は私よく存じませんから、独禁法の立場から公取委員長の方で今の現状を御説明願いたいと思います。
  316. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それはあとで承ります。今の問題の言葉のやりとりをやるわけではないのでありますが、解けたとおつしやつても、大臣御承知の通り、現に十六万俵で押えられている。新紡、新々紡には外貨の割当が制限されているでしよう、業界ではそうなんですよ、それは別な人に聞きましよう、あとで徹底的にやります。  ところで今大臣は、国家経済の存立を危うくするようなことがあつてはいけないから、こういうことをやる、こうおつしやつておられるのですが、今日こういう法律がない折に、すでにそれに相似ておる操短が行われている。おかげで原料高の製品安、現に毛織物なんか見てごらんなさい、買つて来た糸に加工して製品にした値段が、原料の糸より安いという現状である。つまり国家経済の存立をすでに危うくしておる。中小企業はばつたつたと倒れて行く。そういうときに中小企業の方の手当はそのままにして、なぜ資本家だけをしなければならぬのか。今輸出貿易第一主義と仰せられた、これはけつこうだ、私も大賛成だ。ところが何がゆえに今日コスト高で輸出がきかないかというと、紡績が操短をして、糸値を三品市場でつり上げているから、こうなつた。それは業界の者ならみんな知つている。それにもかかわらず、それに追討ちを加えて、紡績だけがうまい汁の吸えるような、値段の相談のできるようなこういうものを、なぜ今日つくらなければならないのか、その必要性のぎりぎり一ぱいのところをはつきりおつしやつていただきたい。数字はあとで詳細に申し上げます。
  317. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいまの情勢につきまして、いわゆる操短ができておる、しかも大経営は操短しておつて、中小経営はその余波を受けて、そして原料高で製品安、こういうような非常なべんちくりんな情勢が起きている、その場合に、ことさらにまた大企業を保護するがごときこういうカルテルの緩和をすることはけしからぬじやないか、こういう御質問でございますね。
  318. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 けしからぬじやないかというのは、それは立場だから……。なぜそういうことをしなければならないか、そのよつて来るゆえんを聞きたい。
  319. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 問題といたしましては、私どもの見るところによりますと、特需というものが減るという情勢が当然見えている次第であります。なかなかなまやさしいことでは、この日本の経済を保つて行くわけにはいかぬと思います。そして生産過剰で物が売れなくなつて、ばたばた倒れて来る人がたくさんある。そのときに大きな企業が倒れるということは、すなわち中小企業がなお大きな波を受け、消費者はなお大きな影響を受けるということになるわけでございまして、もしもそういうようなことがあつては相ならぬから、そういうときには独禁法の根本精神を金科玉条として大事に保つておる精神のもとにおいても、少くとも一時の経済の破綻を救うためには、何か手を打つておかなければならぬ、これが今度緩和いたしたゆえんであります。
  320. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林君にお諮りいたしますが、あなたは一問で御質問になりますか——加俸君、もうあなたの時間は参りましたから……。小林進君。
  321. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは時間もありませんので、大臣にはんの一間だけお尋ねいたします。  硫安については御承知のように、安定帯価格というのが設けられました。春肥においては八百六十円でありますが、前後三十円ずつの幅があります。この建前は御承知のように硫安の値段が上るから、それを引下げるための安定帯価格であつたのでありますが、しかし先ほどから言われておりますように、硫安生産価格というものはだれも知らない。しかも現実肥料輸出価格は、御承知のように出血価格と言われる、これは出血価格かどうか知りませんが、資本家はそう言うのであります。六百円前後で硫安が売られておる、しかもそれに対してわが国の農民は、この安定帯価格に基いて少くとも八百六十円、九十円の春肥をどうしても買わなければならないように押しつけられている。それで農民は、それならば硫安の輸入を許せ、現にドイツの硫安あたりは七百円そこそこで買えるという見通しがわれわれにははつきりついておるのであります。だからその硫安が入れば、日本の農民は七百円そこそこの硫安を使用できるにかかわらず、その硫安の輸入を許さない、そうして出血価格と称する六百円の肥料を日本の農民は買えない。ただ資本家が無限に値上げを続けるという値段を政府が八百九十円まで下げて、それを農民は買つておるのでありますが、私はこの安定帯価格はいかに弁明があろうとも、これは一つカルテルではないか、かように解釈をするのでありますが、この点に対する通産大臣公正取引委員長の両者の御見解を承りたいと思うのであります。
  322. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。硫安の安定帯価格というものは、いろいろ研究した結果ああいうことにしておりますが、しかし出血輸出をしたから、その出血の穴を国内で埋めて行くということも、いろいろお言葉としては出て来ることと思いますが、しかしかりに私が経済上の観念から申しまして、輸出を全部とめてしまつて、ただ日本で必要なだけの硫安をつくつて、はたしてこの安定帯価格で売れて行けるかと申しますれば、現在の業界並びに財界では行けないのが事実あります。これはりくつではなくて、いわゆる採算上です、ところが今硫安は日本の内地では百五、六十万トンの需要しかないのであります。それに設備としましては二百万トン近くできるものですから、これはどうしてもやはり外国へ出して行かなければならぬ、すなわち外国ヘ出すだけの二百万トンつくればこそ、今の安定帯価格で治まつておるとも逆に言えるわけであります。そこで今外国からどんどん輸入したらどうかというお説がありましたが、ドイツの国内では大体五十ドルと私は伺つております。その五十ドルに対して運賃、保険料をつけますと約十三ドルかかりますから、日本へ来ますれば六十三ドルくらいになります。日本で安定帯価格の最高が六十三ドルでございまして、最低が六十一ドルでございますから、輸入をいたしましても、値段においては大差はない、こう私は考えております。
  323. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これをもつて大臣に対する質疑を打切ります。続いて質疑を続行いたします。
  324. 横田正俊

    横田政府委員 ただいま硫安の安定帯価格がすなわちカルテルではないかということでございますが、安定帯価格制度ははつきりした法律上の根拠がないのでありまして、従つてこの制度そのものはカルテルであるとは言えないのでございます。結局これをめぐりましてそこにいろいろな動きがある、それがあるいはカルテルになつて参る危険が非常にあるわけであります。
  325. 足鹿覺

    足鹿委員 私は午前中に具体的な問題で承る余裕がございませんでしたので、大臣に対する質問は他の同僚議員に譲りまして、具体的な問題について一点公正取引委員長に伺いたい。  最初にお伺いいたしたいのは、この改正法案の附則第九項に、蚕糸業法の一部を次のように改めるということになつております。すなわち第十五条ノ二には「農業協同組合又ハ農業協同組合連合会ヨリ繭ヲ買受ケントスル者が農業協同組合又ハ農業協同組合連合会ヨリ繭ノ売買二関スル農業協同組合法第十条第一項第十一号ノ団体協約又ハ繭ノ売買契約ヲ結ブ旨ノ申込ヲ受ヶタル場合ニ於テ当該申込二係ル団体協約」云々とありまして、その協定、契約または共同行為の内容として「左ノ各号ノ要件ヲ具備スルトキハ私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律規定ハ之ヲ適用セズ」と言つておる。その次に「不公正ナル取引方法ヲ用フルトキ又ハ不当二繭価ヲ引下グルコトトナル場合ハ此ノ限二在ラズ」ということで一応体系を立てておりますが、この点について私は伺いたいのであります。  蚕糸業法の第十五条ノ二の改正は、結論的にいつて行うべきでない、私はこういう見解を持つておる。その一つの考え方について、繭の売買契約を結ぶ者の申込みを受けた場合、繭の買受者すなわち需要者、製糸業者の行う繭価協定等の共同行為は独禁法から除外をしたといたしますと、これは需要者から養蚕農民が非常に買いたたかれる縣念が、従来の経緯から見ても明らかであるからであります。私は、大臣でなくてもよろしいが、実際の実務を担当している当局の人々が、この点について心配はないという御結論に達しておられるかどうか、そういう疑念が一点でもあるかどうか、この点は具体的にどう検討したかということについて最初に承りたい。
  326. 横田正俊

    横田政府委員 この蚕糸業法改正は、前回改正案にもこの通りの形で入れてあるわけでございますが、結局今仰せられます通り、繭の買入れ値段につきまして、製糸家側が共同行為をいたしまして、買いたたきをするということは非常によくないことでございまして、これはもちろん現行独禁法から申しますれば明らかに違反になるわけでございますが、ただ組合側から特にそれがぐあいがいいということで申出をいたしました場合は、むしろその組合を通じての取引というものを確立するという意味におきまして、この場合に限つて製糸家側が話合いを許される、それ以外の場合は絶対にしてはならない、こういう線でやりますれば、今おつしやつたような弊害もないのではないかというふうに私たちは考えたわけでございまして、実際の問題につきましては、主として農林省の方からいろいろ話がありまして、われわれの方もそれを了承しまして、独占禁止法改正の中にこれを一条入れたわけでございます。
  327. 足鹿覺

    足鹿委員 農林関係につきましては、私ども委員会で、農林省から要求があつたから入れた、こういうお話についてはさらに究明して行きたいと思いますが、この際独禁法の番人としての公取委員長にお伺いしたいのは、今おつしやることは対等の場合のことなんです。現状においてわれわれが考えてみたときた、どういう事情が現在あるかということを申し上げてみたいと思う。現在農業協同組合あるいは養蚕協同組合、これら一連のものが農民にかわつて消費者繭取引の協定を結ぶ、それについて需要者から農協に申入れがあつたときだけに適用するから、その心配はないと言われますが、従来の統制の惰性や、官公吏の行政指導等によりまして、繭価の問題につきましては、ほとんどその組合の経費すらも繭の実需者側からもらい、人件費もその実需者からもらつている。従つてこういういわゆる対等の条件でない場合における実需者から申入れのあつた場合には、いわゆる弱者の立場にある協同組合なり、農民を代表するものは、これを拒否することは事実上できないのである。従つていわゆる需要者が農協に申込みある場合に限つているといわれますが、これはすべて申込みになるのであります。現在の養蚕組合の性格、また一部農協の実情から考えてみまして、これはもう全部に実際に行き渡る問題であろうと私は考えるのであります。従つてそういう弱者と強者の立場に立つて行われる協定がどのようなものであるか、どのような結果をもたらすかということは、いまさら申し上げるまでもなく、常識で明らかであります。戦前において、いわゆる養蚕協[組合あるいは実行組合が、大製糸の特約組合的な存在になり、現在もまたその道をすでに歩んでおる。こういう実情から考えてみた場合におきまして、もし蚕糸業法改正を行い、この独禁法の緩和によつてこの行為が実需者側に許されるような結果になりました場合には、いわゆる不公正取引がもう公々然として行われる結果になると思います。また不当なる繭価の値下げを余儀なくせしめられると思います。従つて農協なり養蚕協同組合なるものは、農民にかわつて、あるいは製糸業者にはわつて集荷団体的な任務を負わせられるだけであつて、製糸業者と対等の交渉を行つたり、ひいては協定を結ぶなどということは、実情から推してとても考えられません。今度の独禁法の改正で一番大きな問題は、具体的に団結力の弱い、経済力に乏しい、そして組織も不十分であるこの農村に及ぼす影響が、私は一番深刻であろうと思う。そういうことがあつてはならないのでありますが、事実そういう結果になつて現われておる。午前中も申しましたように、肥料の場合におきましてもそうであります。それがさらに繭の場合にこの条文が適用になるということになりまするならば、これは製糸資本の独占を意味し、製糸資本の制覇のもとに農協は、あるいは養蚕協同組合は、ただ単なる集荷組織として手足のごとく働かされるにすぎない結果を招来すると思う。そして繭の価格は、結局においては安く値下げを食う結果になります。これは従来の経験から見ましても、最近の蚕糸業の実態から見ましても、おおうことのできない事実であります。私はりくつを言つておるのではなくして事実を申し上げておるのである。こういう事実を無視して、なおさらにこういう改正を行われる意図は、はたしてどこにあるのでありますか。これが農民のためになるとお考えになつておられるのであるか。その結果、結局製糸業者を利するのみであつて、何ら農民はプラスになりません。その点を一体どのように御研究になつて、こういう乱暴なことを——たとえ農林省がそういう申入れをしたとあつても、公正取引委員会としては実情をよく調査、御検討になつて、そしてこういう弊害を除去して行くことが任務であるにもかかわらず、これを助長し、発展せしめて行くような御処置をとられることは、われわれは非常に心外に思う。もう少しその点については真摯な態度をもつて御検討になり、御再考になる御意思はありませんか。この点を特に私は伺つておきたいと思う。
  328. 横田正俊

    横田政府委員 その点につきましては、この法律自体の中に、一応、法律上の手当がしてあるわけでございますが、この但夫、におきまして「不公正ナル取引方法ヲ用フルトキ」というのは、自己の取引上の地位を不当に利用して相手方に迫るというようなことがこれに当るわけでございまするし、なおその下にございまする「又ハ不当ニ繭価ヲ引下グルコトトナル場合」は独禁法の適用除外にはならないのでございまして、そういう事態に対しましては独占禁止法発動することになつておりますので、私は一応これだけの条件が備わつておりますれば、こういう道も開かれてよいのではないかと考えておるわけでございます。
  329. 佐伯宗義

    佐伯委員長 足鹿さんにお諮り申し上げます。あなたが今お呼びになりました繊維局長は本省に帰つたそうであります。本省に電話をかけだそうでありますが、ところであなたに対する時間はもう切れたのであります。そこでこの際加藤さんにお譲りして、そうして局長がおいでになりましたら五分だけお許ししたいと思います。
  330. 足鹿覺

    足鹿委員 それは農林委員会がありますから取引委員長なり、通産省にもう一点伺つて……。
  331. 佐伯宗義

    佐伯委員長 それではもう一言だけお讓りいたします。
  332. 足鹿覺

    足鹿委員 公正取引委員長は、午前中の私の質問の場合にも同様な御答弁をなされました。すなわちもちろん法律体系として但書を付し、不公正なる取引をやつた場合には適用しない、ただちに独禁法の発動を行うということは、これは一応はそうあらねばならぬ。ところが実際に法を運用し、適用して行く場合になりますと、午前中も申し上げましたように、こう不公正という抽象的な言葉の持つ内容を具体的に適用して行くという場合になりますと、いろいろ立場々々によつて意味が違い、私どもは結局弱者の立場にある者がばかを見ることになると思うのであります。これが実情なのであります。でありますから私は、そういうことではなくして、このような法律をつくること自体が間違いであると思うのでありますが、それはここで抽象論議をいくら繰返してもしかたがありませんが、なお団体協約あるいは売買契約を行つて行く場合、繭価協定を結んで行く場合に、需要者間においては運賃の協定もできます。また購繭に対するところの諸掛りを協定することもできます。生産加工あるいは販売費の協定もできるということになります。その他あらゆる繭価協定か行われても、それが不公正な取引方法、あるいは不当に繭価を引下げる行為となりますか。おそらく法律の適用において、そういう協定を結んだからといつて公正妥当を欠く不適当なる繭価引下げ行為として独禁法の発動はなされないでしよう。こういうふうに、いわゆる根本において業者利益し、具体的には各業者間の協定をも認める。しかも農民はこれに対抗する何らの組織もない。わずかにある組織は製糸業者から人件費や経費をもらつてようやく維持しておるような、こういう状態においてどこに公正なる取引ができるのでありますか。その条件はまうたく整備いたしておりません。こういう点を私は実際において知つておる。身をもつて体験しておる。今まで独禁法があつてもこれをやつておる。いわんや、独禁法を緩和して、大ぴらでやれるようになつた場合の製糸業者と養蚕農民との立場というものは、おのずから言わずして明らかでありますので、私はこれ以上は申しませんが。少くとも、口には農業協同組合を育成するとか、食糧増産をやれとか、繭増産は外貨獲得であるから増産をやれという、その結果は、農民犠牲において製糸業者を利するような内容であつて、どこに農民はほんとうの増産意欲に燃えて闘うことができるのでありましようか、私ども決して過大な表現はいたしません。現実を私は知つており、みずから農村でこの体験を生々しく感じておりますから、私は申し上げておるのであります。おそらく満足な御答弁はいただけないと思いますが、しかしこのことだけは農民の声として、私はこの委員会発言いたさざるを得ないのであります。あえて御答弁は要しません。これだけのことを私どもはここに声なき農民にかわつて、一応はあなたの耳に公式に入れておいて質問を打切りたいと思います。
  333. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私も実は具体的な実例を皆様の前に披瀝いしまして、これでもなおあえてこういう法律をつくり、これを強行しなければならないのかということをお尋ねしたいのでございます。ほかでもございませんが、先ほど来綿糸の話が出ておつたようでございます。綿糸の例をとりましてもけつこうでありますが、原綿の話も出たそうでございますので、現在の毛に例をとつてみましよう。  今日の原毛の価格は濠州価格にして百十一ペンスから百四十ペンスでありまして、せいそれ高値にしても百五十ペンスを出ておるものはございません。今日の新聞でもごらんの通りでございます。これを輸入いたしまして、工賃が高い高いと言われておるようでございますが、その高い工賃を払つて糸にしたとしても、日本金に直してみてポンド当りどうそろばんをはじき直してみても、これは七百円前後どまりというところがだれしも見る相場でございます。大体三十六の双糸にしても四十二の双糸にしても同じでありますが、大体七百円台、これにその他金利、諸掛、いろいろ加えてみても、九百円と見積れば決して損は行かないし、先ほど大臣の言われましたように、大企業経済には決して危機を感ずるようなことはありません。そろばんをはじいてみてください。にもかかわりませず、これが何ゆえに千四百円台を上まわらなければならないのか。これが千三百円、千二百円という声を聞きますと、もうたいへんな業界の騒ぎ方なんです。今日何がゆえに千四百円というふうに値をあふり上げられなければならないのか。この点をまずお尋ねしたいのであります。  ところがここに考えなければならないことは、これが外貨割当に端を発し、その割当てられまする相手方が限られておるという問題、それから紡績が操短するという問題、金融カルテルが今日行われちやいけないというときに、すでに行われておつて、この金が三品市場へ、三品市場へと流れておる。証券界の金までも、つなぎとして生れたところの、つなぎとして許可されたあの三品市場へ流れ込む。そういうわけで、機場のために、紡績のために設けられた三品市場なるものが、今日では金融投資家の独占企業の場となつておる。いえば紡績の横暴と金融資本家のこれに対する協力、利潤の分配とによつても糸値がどんどん上げられておる。糸値が上ることはけつこうなんです。高く売れて行くということならばこんなけつこうなことはありません。人がもうけようとだれがもうけようと、日本の方々のふところに入るのならばけつこうです。ところがこうやつてつり上げたおかげで、日本の糸は一筋も外国へ買われて行きません。毛についていうならば、一筋も外国に買われて行きません。行く場合にはどういうことが行われておるかというと、商社の出血輸出によつて行われておる。肥料はお百姓の出血によつて輸出が行われておるということに相なつておるようでございますが、商社が別なものを輸出した利益をここへ投入することによつて輸出が辛うじて保たれておるという現状なんです。この現状をよく御認識でございましようか。そのおかげでこの高値の糸を買わされた機場は、いわゆる原料高、ところができ上つたものは国際価格に押えられますので製品安、従つて先ほど私が申し上げましたように、日本の毛製品なるものは、日本でつくつたものでありながらメイド・イン・イングランドの名前をつけると売れて行くけれども、それでないと売れないという現状なんです。一切れも売れて行きません。マス見本をどれだけ見せても売れて行きません。なぜか。それはコストが高いからということ、糸値が高いからということなんです。そこで困つておるのは機屋であり、整理屋である。買つた糸とでき上つた製品の生地と比べてみて、加工して、技術と叡知と資本を投入してなお目方についてみて、同じくらいにしか売れて行かぬというのが現状なんです。こういうやさきにあつて輸出振興とおつしやいますが、片方で口に輸出振興を唱え、片方独禁法の解除をやつて、どうして輸出振興ができますか。私は具体的な輸出振興の方途をここにはつきりとさしていただきたいと思います。こういう現状下にあつてどう輸出振興をはかるかということを、この際その道の専門家でいらつしやる皆様から、はつきりとお教え願いたいと存じます。しかもこの上なおカルテルが行われれば、金融暴利は一層今日のこの状態に拍車をかける結果と相なつて来るでございましよう。ただいまでも機場はばつたつたと倒れて行つておる。今日の不渡り手形の数量をお調べなさつたことがございますか。三万枚に及ぶところの不渡り手形は、ほとんどこれ中小企業であり機場が多いのです。輸出の総額の四〇%から五〇%を占めておる繊維がこんな状態でどうしますか。こういう状態が繰返されたおかげで一六〇%であつたものがどんどん下つて来て、ことしは三六%に下つて来ておる。これで輸出振興ということが言えますか。この点はつきりしていただきたいと思います。お題目でなくてほんとうの具体策を……。片や独禁法を解きながら、片や輸出振興が糸へんの業界において行われるというところのりつぱを具体策があつて仕事でございましよう。もしなかつたとするならば、池田さんは、首をつて死んでもいいということを正直におつしやつたけれども、今度の方々は、口に先ほどのように国家経済の存立を危くするといかぬからやると言いながら、国家経済というものは中小企業をオミットして、紡績だけの国家経済であるというのか、あるいは国家経済という美名のもとに、あえて機場を一層痛めつけようとしていらつしやるのか、輸出業者を痛めつけようとしていらつしやるか、この点もはつきりしていただきたいと存じます。やれば切りのないことでございまするが、ただこの際は私は、消費者がどのような迷惑をこうむつておるかということを、実は時間をいただいて申し上げたいのです。これはもうあなた自身、委員長自身が困つておる。あなたの着ていらつしやるワイシャツに例をとつてもけつこうです、服にとつてもけつこうですが、ここにいらつしやる皆さんがお困りなんです。お困りになつていることに気がついていないだけです。そしてこれははつきり私は数字をあげて、いずれかのときに申し上げるが、消費者のことは別にして、今日は業界同士で因つておる。政府のいうところの輸出振興に矛盾を来しているじやないか。これを一体どうしてくれるかという点についてだけ、お答えが願いたいと存じます。
  334. 中野哲夫

    ○中野政府委員 ただいまは原毛の輸入価格、それの機場で加工されました売値あるいは糸価等につきまして、るる数字をあげての御質問でございます。また今日毛製品が国外に輸出されておらぬという事実も私どもよく存じておるのでございますが、今回の独禁法の改正と、国際物価に日本のコストをさや寄せする方向へ努力してやることとは、まつたく油と水のように矛盾した話ではないか、こういう御質問の要旨だと思うのでございますが、たびたび申し上げまする通り、今回の独禁法改正においては、合理化カルテル、それから不況切抜けのためのカルテル、しかもその前提法律案の二十四条等をごらんになりますと、すこぶる厳格な条件のもとにおいてこれを発動する。これは私もこの法案の立案時代から考えておるのでございますが、先ほどから皆様から御質問に相なりましたように、日本の産業の安定をはかり、かつ中小企業関連産業が、不当な不利益を、原価計算の結果受けないという、そういう線を見出しますためには、よほどの努力とよほどの両者間の話合いを必要とすると思うのであります。その両方の努力、話合いは結局一致し得るものと考えます。一致いたしませんときは、これはやむを得ません。この法律発動は起らぬということもあり得ると思うのでございます。さように考えますると、まつたく御指摘のように、この改正案の運用におきまして、あるいは大資本家のみの擁護に任ずる、あるいは法定の条件を甘く解釈いたしまして、中小企業者、その他関連産業者が不当な不利益を受けるような運営をいたしますれば、そういうような輸出振興のための原価の切下げもできぬというような事態に陥ると思うのでございまするが、毎回申し上げます通り公正取引委員会との話合いによりまして、そのときにそういう事態のないようにいたしますと同時に、中小企業対策等におきましても、金の面あるいは技術の面、能率の面、まだまだ私自身から考えましても不足だとは思いまするが、今国会に近く法案を御提案の趣で、中小企業者につきまして、広く価格協定も認め、また今日中小企業者のいろいろ困つておられる面については、たやすく設備の新設、拡張ができるというようなことで、いわゆる大企業よりも、機場の関係でもどんどん設備がふえて行く。こういう状況では、どうしてもお互い競争の結果、原価を割つても換金売りをしなければならぬというような事態もありますので、今回の法案については、設備の増設あるいは新規設備の抑制という面までもお考えのように伺つておりまするし、予算面、金融面につきましても、まだ不十分とは思いまするが、そういう方面において努力をいたしたい。両々相まつて行きまするならば、この法律案の最小限度ねらつておりまする当該産業の安定と申しますか、合理化の促進ができると確信して、その目標達成に努力するつもりでございます。
  335. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 中野さんは名古屋の通商局長を前任していらつしやつたかち、あの近畿、東海地方の機場の状況はよく御存じだと思います。それで、私は何も中野さんをどうこうというのじやございませんから——それで申し上げたいことは、よろしゆうございますか、こういうことなんです。今日独占禁止法がしかれていて、紡績にある程度のわくがかかつておるにもかかわりませず、なお九百円台であればけつこう採算のとれる糸を、操短という美名のもとに千四百円の高値で売りつけているというこの事実、この事実をどう見てくれますか。その上なおこういう法律で追い討ちをかけてわくを広げれば、一層その羽を伸ばし得る連中だけが利益の増大をはかることに相なることははつきりしておる、喜んでおるのだから。だからやつてくれやつてくれと言つて来ているのです。それをどうしますか。政府としては、なるほどこの法の運用の妙を得てさようなことのないようにすると仰せられますが、その次がたいへんだ。今日の紡連の力をあえて政府が押し切れますか。ことに綿紡は二〇にして七万円台でけつこう採算が合います。にもかかわりませず八万円台になつた折に、政府は紡連の要望に応じて操短ということを余儀なくさせられた。政府がさせられたんだ。はつきりしている。だれが何と言おうとそれははつきりした事実なんです。これがそうでないというなら、いつの会議においてたれがどういう発言をして、どこでどうきまつたかということをはつきり言います。押し切られて来た。しかも外貨という国家の金、優先外貨でございません。それを十大紡にのみ優先してだ、カード下やコーマ落ちば零にする、毛に対してノイルは零にしてやる。まことにけつこうなサービスが行われて来たんだ。過去のカルテルの歴史をよう御存じでございましよう。明治二十三年に紡連がこれをしいてから、今日に至るまで十一回やつて来た。通商行政史にはつきり出ている。あれを認めないと言われれば別でございますけれども、紡連が今日、半世紀になるやならずしてあれだけの大をなしたのは、これはカルテルのおかげであるということを紡績界みずからが認めているではありませんか。しかもそのかたには消費者が泣き、女工哀史があつたではないか。これを一体どうしようとするのか。私は何も一局長さんをどうとか、一公取委員長をどうとか言うんじやない。ほんとうに日本の産業が大事であり、先ほど大臣の言われた国家経済の存立ということが目的であるとするならば、国家経済の中核をなす中小企業がばつたつたと倒れて行つてどうしますか。コスト高になつたりいろいろするのが中小企業が倒れることの原因をなしておるということ、その倒れる原因は紡連が独占して利益をみんな持つてつてしまつているからだということは、これはほかの業界ならいざ知らず、現に紡績が認めているじやないか。交渉に見えたときはそんなこと言いませんよ。あぐらかいて話し合つてごらんなさい。そんなことは皆さんがよく御存じのはずなんです。ここで話さぬでここから里へ降りて話してごらんなさい。うそだと思うなら私名前あげて言います。みんな紡績の連中は知つておりますから。それをあえて助長するような策をこの際なぜとらなければならないのか。それは中野さんのおつしやるように、中小企業対策をやればけつこうでしよう。しかし私はあえて輸出カルテルが悪いというわけじやない。きようはこの一点です。カルテルも、私は必要性を認めているものです。おかしなことを言いますが、社会党だけれども、ある程度カルテルは認めている。それはまた別の時間にやります。この問題をどうしてくれますか。まずそれが先決問題です。それでなければあと何にも進みません。
  336. 中野哲夫

    ○中野政府委員 理づめの御質問でございますが、私の考えている範囲でお答え申し上げたいと思います。  九百円のコストでできる糸が千四百円で売られておる。通産省といたしましては、御承知の通り価格統制と申しますか、そういう統制経済でなしに自由、これももちろん手放しではないわけでございますが、そういう原則で経済の運営をはかつた方が日本経済の発展に役立つ、こういう建前でございますので、御承知の通り、先ほどお触れになりましたように三品市場も設けまして、需要と供給によつて価格の形成をはかる。それが一番経済の繁栄を映すのじやないかということでやつておる。その値段等が千四百円くらいになつておるかとも思います。あるいは現物はそれよりも多少高まつておるというようなことになつておるのでございまして、それらの事象を根本的に御批判になるなら別でございますが、それとこの法案の目途といたしておりまする、基礎産業もございましよう。あるいは他の産業もございましようが、それが内外の経済市況の変動によつて、非常に底が浅いというような状況で、昨年の当初等の綿糸の暴落という点は、私ども不正確でございまするが国際価格を割つておる。しかもそれがどんどん安くなるので、海外の商社等も、そう先行き安くなるようなら買控えようということになりましたので、あのような措置が講じられたのだと思いまするが、そういう事態を厳密に規定いたしまして、その際現在絶対に禁止しておる協定行為認定認可のもとに認めて、当該業界の一種の自主的混乱防止策を講ずるの道を開いてやろう、こういう法律の趣旨でございますので、さように御了解願いたいと思います。
  337. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう時間がないようですからこの一点にとどめて、あとは次の機会に譲ることといたしまして、中野さん、私はこの法律の趣旨を聞いているのではないのです。法律の趣旨も、皆さんが業界の指導育成に御熱心なのもよく知つております。一生懸命になつていただいてありがたいと思つておりますが、その親心がほんとうに末端に届いていないことを憂えるものであり、この法律をつくることによつて、その親心が一層薄れて行くことをより私は悲しむものなのです。なぜなれば、この統制価格じやいけない。それで自由にしてなおある程度のことはやる。そうして価格を保たせて安定をはかつて行こう。復興をはかつて行こうという御趣旨のようでございます。その趣旨についてもいろいろございますが、それも是認いたしましよう。是認したとして、なお今日糸値が高くなつている。その回答がされていない。それは回答になつていない。今日こういう法律がなくても、なお紡績はちやんとこの精神に合う以上のことをおやりあそばされていらつしやるし、なお政府もその勢いに押され、要望に応じていろいろな施策を講じていらつしやる。その上こういうものをかてて加えなされば、一層その勢いを助長してしまつて、ほんとうにあなたのおつしやつた国家経済、中小企業消費者、そういうものの幸福をはかろうとしていらつしやつても、なお押し切られてしまいます。押し切られますわ。紡連の勢いに刃向うことがはたしてできるか、できないか。従つて私の考え方は、逆に言えば紡連とか、綿紡にしてもそうですが、それはやはり独占禁止法のような形において、そういう方法のできないように、談合のできないようにしておいた方が安定すると考えておる。私はこれは事実だと思う。国家総動員の時代にはそういうことが行われておる。お前らはもうけ過ぎておるからいけぬという。それをはずすならはずすでよろしいが、それであつたら三品市場をあのままにしておいてよろしゆうございますか。しかも金融カルテルが行われるようになつたらどういうことになりますか。今法律に逃道があるからというので何とか経済会、何とか経済会というものまでが、人の金を集めて来てあそこに投入する。だから株が上る。そういうことをやつて一たびウォール街の株が下るとまたがたがたになる。だから私はこういうことを許すことは、決して紡連の横暴を抑制することにはならない、かように思いますが、この返事はしていただかぬでもけつこうです。返事をなさるとさしさわりがあるといけないからけつこうです。ただ公取の委員長さんに、この数字がどうのこうのということは抜きにして、こういう現状にあるときに、このようなことをやつたならば一層横暴をたくましゆうさせて、中小企業から輸出業者までが困り、ひいては国内消費者から、あなた自身の洋服生地までが高くなる。こう思つておる。私の考え方が間違いであるかどうか、一語でけつこうでございますから、お答えいただきたいと存じます。
  338. 横田正俊

    横田政府委員 今回の改正は、先ほど局長から申しましたように、きわめて非常な場合にカルテルを認めるということになつておりますので、その点では御心配のような——運用さえよるしければ決して御心配のような結果にはならないと思います。
  339. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これにて本連合審査李における質疑通告者全部の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十分散会