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1953-07-24 第16回国会 衆議院 経済安定委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十四日(金曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 佐伯 宗義君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 栗田 英男君 理事 阿部 五郎君    理事 菊川 忠雄君 理事 山本 勝市君       遠藤 三郎君    岸  信介君       迫水 久常君    西村 久之君       長谷川 峻君    牧野 寛索君       南  好雄君    山中 貞則君       渡邊 良夫君    神戸  眞君       楠美 省吾君    園田  直君       飛鳥田一雄君    石村 英雄君       稲富 稜人君    小林  進君       中村 時雄君    加藤常太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         通商産業事務官         (企業局長)  中野 哲夫君         通商産業事務官         (繊維局長)  徳永 久次君  委員外出席者         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 七月二十四日  委員秋山利恭君、加藤宗平君、内田信也君及び  杉村沖治郎君辞任につき、その補欠として渡邊  良夫君、牧野寛索君、山中貞則君及び稲富稜人  君が議長の指名で委員に選任された。 同日  阿部五郎君が理事補欠当選した。 同日  理事加藤常太郎君の補欠として山本勝市君が理  事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事互選  私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇四  号)     —————————————
  2. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選挙につきお諮りいたします。去る七月十三日理事阿部五郎君が委員を辞任せられ、同二十一日に補欠選任せられました。次いで同二十四日加藤常太郎君が理事を辞任せられましたので、この際    阿部 五郎君  山本 勝市君をそれぞれ理事補欠選任いたしたいと存じますが、御異議はありませんが。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐伯宗義

    佐伯委員長 それではそのように決定いたします。     —————————————
  4. 佐伯宗義

    佐伯委員長 次に私的独占禁止及び公正取引の確立に関する法律の一部を改正する法律案について審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。なお岡野国務大臣に対する質疑は他の委員会との関係もあり、なるべく簡潔にお願いいたしたいと存じます。飛鳥田一雄君。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 前回大臣にお伺いをいたしましたときに、大臣は昨年行われました通産省綿紡績に関する操短勧告についてお答えをなさらずに、この操短勧告をしたことの功罪というものは一応検討してみなければならぬと思いますから、これは後ほどにお許しを願いたいと思います。こういうふうにお答えなつておられます。この点について御検討の結果を御発表賜わりたい。
  6. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。昨年の綿紡操短につきましていろいろ調べましたところが、当時滞貨が九万梱であつたというようなお話でございましたけれども、よく調べてみますと二十七年の一月末には三十七万二千梱、それから二月には三十六万六千梱あつたはずであります。そこであの九万梱と申しますのはいわゆる綿紡会社在庫高でございまして、われわれが見ておりますところの在庫高と申しますのは織布工場にあるとか染色工場にあるとか加工工場にあるとか、卸問屋たまつてつたとか、いわゆる市場を圧迫するところの実勢力を持つておるところの在庫のことを考えておるわけであります。御承知でもございましようが、日本朝鮮ブームによりまして非常に繊維製品売れ行きが多くなりまして、その点におきましてアームが来たわけでございますけれども、二十六年の四月ごろから反動が参りまして、同時にまた各国とも輸入制限をするようになりまして、その売れ行きが非常にスロー・ダウンしたというようなことで、かたがた設備の拡張はたくさんされておりますにかかわらず、また生産もどんどんできておるにかかわりませず、需要が非常に悪くなりまして、がた落ちと申しますか、動きがなくなつたということで、恐慌状態なつたわけでございます。それからこの値段採算がとれるのではないかというおぼしめしでございましたが、よく調べてみますと、当時の原綿代を換算いたしますと、八万四千五百円という勘定になつて参ります。八万四千五百円の原綿に約一万五千円の加工費をかけますと、九万九千五百円というのがいわゆる生産原価ということになるわけでございますが、それが建値といたしまして八万四千円になつた。八万四千円になつたということは、原綿代をも償うことができぬというような傾向が来た、こういうことで、あちらこちらにいろいろ被害が起きるというような情勢なつたものでございますから、通産省として操短勧告することになつたわけでございます。操短勧告してそれがあまり長く続いたのではないか、こういうような御説が出ぬとも限りませんが、操短勧告をして、その直後とは申しませんが、だんだんと直りまして、業界情勢もおちつきましたけれども、やはりまた昨年の十一月ごろ再び同じようなことを繰返したというようなこともございまして、もう少し続けておつたらよいのではないかということになつて、本年五月まで続いたわけであります。本年に入りましてからは幾らか外需もございますし、もう勧告をやめてもよいのではないかという時期になりましたので、この春実は勧告を撤去したわけであります。そこで私どもとして、もしあれがあのまま何らの勧告もせずにやつてつたらどうなつたかということを考えてみますと、ただ単に綿製品だけの事態にとどまりませんで、それに関連しておるいろいろな中小企業も非常な波動を受けて、あるいは倒産がうんと出たのではないかというようなことも考えられましたし、それが事前に食いとめられたということもいいことだと思います。またそのために昨年の九月に綿業会談があつたのでございますが、綿業会談の席上でも、あの当時日本のとつた処置はよかつたのだ、ダンピングにもならないし、また日本としても採算がとれるようになつたのだからというようなことで好評を博したということを聞いております。いずれにいたしましても、もしあの勧告なかりせば、その当時の情勢がどういうことになつたであろうかということをわれわれ考えますと、あの操短勧告によつて大正九年のパニックのようなことが来ずに済んだのではないか。それは来てみなければ比較はできませんけれども事前に考えてそういうことになつたろうとも考えられる。そういうような恐慌が現われることを未然に防ぎ得たというようなことを私どもは考えておる次第でございます。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今いろいろ私のあげた数字に対しての御説がありましたが、在庫の問題についても問題を故意に広げられて、日本全体の中にある数量をあげておられましたが、普通綿紡績業界についてわれわれが考えます場合には、通常業態の測定としてはランニングストックを目標とするものだと思いますが、その場合に、ランニングストックだけでなくて、一般のものについて特に取上げて換算をしなければならないという理由がどこにあるのか。もう一つ原綿値段お話でありましたが、それでは原綿値段ポンド当り幾らとせられるのか、これをお話いただきたいと思います。さらに続いて、もしこれが操短勧告を行わなければ業界倒産が相次いだろう、こういうお話でありますが、先日申しましたように、この操短勧告を受けました十大紡等については、利益金が二年間で九百三億もあります。社内留保金が四百三十億もあるのです。にもかかわらず倒産をして行く理由がどこにあるのか。またもう一つの問題としては、現に操短勧告をせられた結果、むしろ倒産が続出した。すなわち一九五二年度中の繊維業者倒産は、二百十八件に上つております。またその負債総額は九十七億一千六百万円という統計が出ております。これは結局操短勧告をせられまして、そうして故意にこういう状態をつくられた結果、倒産相次いだのでございました。この点についても、十大紡の利益の減少は防ぎ得たかもしれませんが、一般中小繊維業者を二百十八件も倒してしまつた、これが現実ではないかと私は思うのです。この点についてのお話伺いたいと思います。
  8. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。御説の通りに、大体通念として紡績会社が持つておる梱数普通一般に発表せられておる基準でございます。これは御説の通りでございますが、しかし通産行政として、社会に恐慌が起るかどうかということを判断いたしますときには、やはり日本全体でどのくらい滞貨があるということを見なければ、判断がつかないわけでございます。なるほど紡績会社にはこれだけしかないかもしれませんが、それが市場に出て、市場を圧迫しておるということは一連の滞貨、すなわち在庫が多いということに判断がせられる。それが市場を圧迫しておるということも考えられるので、われわれとしては、その当時そういうことを研究してやつたという経過を御報告申し上げたわけでございます。  それから原綿値段でございますが、あの当時四十四セントが五十五セントまでいつておりますけれども、四十四セントぐらいを採算の基礎としてとつております。  それから御説の倒産者が出たということでございますが、なるほど朝鮮ブーム反動が来て、もうどうしてもいけないというところまで行つて倒産者がどんどん出て来ておる矢先に、またそういうものが出て来たわけでございますから、もし操短勧告でもいたしませんでしたら、ますますそういうものが多くなつて行くという判断のもとに、われわれはそういう措置をとつたわけでございまして、ただいまから見まして、われわれとしてはまあ妥当な措置ではなかつたかと考えておる次第であります。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 朝鮮ブームの後退による問題、それによつて倒産者が相次いだ、こう言われますが、一九五二年中の二百十八件の繊維業者倒産については、どの経済評論家に当つてみても原料高製品安だということに原因があるということは明白になつておると思います。この問題について、故意朝鮮の問題を引出されて責任を半分そつちに持つて行かれるというような御説については、私たちはとうてい承服が行かないところであります。しかしこれは見解の違いでありますから、あらためて申し上げませんが、もつと現実を厳格にながめていただきたいということをお願いいたします。  続いて改正案の二十四条の三、四項によりますと、これはこの独禁法の改正によつてできるカルテルは、原則として任意カルテルでなければならない、強制カルテルは認めないのだということをこの条文の中にはつきりうたつております。ところがそれにもかかわらず、かりに今後通産省におかれて、綿紡について行つたような操短勧告、すなわちこの操短勧告を聞かない場合には原綿の割当をしないぞ、こういう罰則付勧告を、もしせられるとするならば、それは任意カルテルではなくして強制カルテルにかわつて来ると思うのであります。その結果この改正法案任意カルテルしか認めないということについての完全な脱法行為が行われるだろう。こう私たちは考えざるを得ないのでありまして、この点についても先日公取委員長にお伺いをいたしましたところ、通産省がそのような勧告を今後も継続せられる限りは、この法律が体系を乱されて行くことはやむを得ない、強制カルテルができ上るだろうというような御趣旨の答弁があつたのであります。今後通産省はこの紡績について行つたような強制的な措置としての勧告を継続しておやりになる意思かどうか、もしおやりになるとするならばこんな法案はいらない、法律があつたところで一片の行政措置によつて完全にその趣旨をかえられて行くという結果になると思いますが、そういう勧告をなさる意思が今後あるかないか、やるかやらぬか、この点について簡単にお答えをいただきたいと思います。
  10. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。今回の立法の趣旨にかんがみまして、今後勧告はいたさぬつもりであります。
  11. 中村時雄

    中村(時)委員 それに関連して。今、朝鮮事変云々によつて中小企業倒産したというようなお話でございますけれども、少くともこの倒産理由の中には、中小業者加工賃切下げによつて受けた打撃の方がより大きい、すなわちあの十大紡に対する操短の結果が、現実にはこの方向に現われて来たといつてさしつかえないのではないかと思います。だからカルテルの悪というものがここに一つ現われて来たのではないかと思うのでありますが、これに対して通産大臣お答えを願いたい。  もう一点は、今申しました綿紡カルテルによりまして不況であるという定義をつけられながら、実は各工場においてはどんどん増錘をしておる。この理由はどこにあるかを伺いたい。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 たくさんの中でございますので、加工賃切下げをされたために倒産をしたというのもあるいはあるかとも存じますが、大体において朝鮮ブーム反動によつてそういうふうになつたと私は事実上了解しております。  それから第二段の御質問は、不況だといいながらどんどん増錘している理由はどこにあるかという御質問でございますが、これは綿業の長年の伝統でございます。それからまた、これはほかの業界にもあることでございまして、不況のときに設備を拡張しておけば好況なつたときにすぐ対応できる。これが商売人の根幹だそうです。と申しますことは、今海運界は御承知通りに運賃が安うございまして、そして採算がとれなくて利子も払えないというのに、海運業者に聞きますと、この際だ、船をつくつておきたいというので、すぐ船をつくつておる。それはどういうことかと申しますと、苦しいときには何もかも苦しいのだから、いつそのこと苦しさを加重されても何でも忍んで将来の発展に備えるというのが企業家の意地だそうであります。それは私ども金融業をやつておりましてどうしても判断がつかないことでありますけれども、事実は海運業の方にいたしましても紡績会社の方にいたしましても、そういう気分があるのであります。そして御承知通り日本は戦前千二百万錘ぐらい持つてつたのでございますが、これは長年の歴史を見てみましても、その当時持つていた生産設備をフル・パワーに働かしたことは絶対にないのでござがます。余剰をとつておいて好景気が来たときには必ずそれに乗せて行こうという企業家採算欲から、また将来の見通しからそういうことを言つておるのでありまして、不況であればほんとうの企業家はそのときの苦しさを自分自身で耐え忍んで、今度好況が来たときにはフル・パワーで働ける力をうんとつつておきたいというのでできたのでございます。私はこれは企業家の心理の現われだと考えております。
  13. 中村時雄

    中村(時)委員 通産大臣はそろばんをはじいていた銀行家であつたのが今度は政治家になつたのですから、少くともそういう事態が起るということに関しては、事前にそれだけの資料なり感覚を持つていらつしやつてこそ初めてでき得るものだろうと思うのであります。しかるにそういう見通しもなくして、今言つた中小企業の方々が倒産をして行つたことに責任を転嫁する、そういう意味でなくして、そういう事態が起るであろうという推察に基いてあなた自身事前増産をとめるとかなんとかして行くことこそが、よりよき政治を形づくるものではなかろうかと私は思うのです。事実通産大臣としての指揮下において、その権限は輸入綿花においてもでき得ることでもありますし、あらゆる点にそれだけの効果的手段がとられるという立場にあられるにもかかわらず、そういう見通しを立て得なかつた責任はあなた自身にあるだろうと私は思う。もう一つ言葉をかえて言いますと、そのような増錘をしておるということは、今まで紡績業においてもうけて来た金をその方向に投下して行つたわけであります。そこで銀行からどんどん貸し付けておるために、今度は綿糸が下つて来るとその回収ができなくなる、その危険性を感じて銀行家紡績業者とのなれ合いの結果、通産省のあの官僚的な一つ方向をたどつたのではないかとさえ推察ができるのでありますが、これに対してどのようなお考えを持つておられるかをお聞きしたい。
  14. 岡野清豪

    岡野国務大臣 御趣旨はよく尊重いたしまして、今後の通産行政に対してはできるだけそういう方向にやつて行きたいと存じます。それから一つ申し上げたいことは、これは、通産省として金融業者紡績業者が通謀していろいろやつていることをあと押ししているというようなお言葉かとも思いますけれども、そういうことはなかつたわけでございますので、この点は御了承願いたいと思います。ただ私が元金融業者をしておりました関係から申しまして、当時私通産大臣でなかつた次第でございますけれども、それほどのことはなかつたように聞いております。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の中村さんの質問に関連するのですが、ともかく苦しい中でもそうして増錘をし増産をして行くだけの可能性があるにもかかわらず、なおかつそのカルテルを許容することによつて助けてやる必要があるのか。その操短の結果は、三万六千名以上の男女工員の馘首をやり、そしてまた残つた人にははなはだしい労働強化が及んでおるのであります。これはこの前にもたしか、大臣の御説明であつた公取委員長の御説明であつたか忘れましが、カルテルというのは一種の毒薬だ、やむを得ないときにだけ使うのだ、こうこいうお話でありましたが、ともかく苦しいとは言いながら、増錘もでき増産もでき、今度好景気が来たら精一ぱいもうけてやろう、こういうような態勢をとれる者に、今言つたような毒薬を使う必要がなぜあるのか。これについてお答えをいただきたいと思います。
  16. 岡野清豪

    岡野国務大臣 金がもうかつておる、それで増錘をしておる、そしてそういう増錘をするほどの力があるにかかわらず、操短をしたということで御非難を受けているのだろうと思いますけれども、しかし私どもの見るところは、十大紡はなるほどバランスシートの上では利益が出ておるでしよう。しかしながら今の紡績会社といいますものは、昔のいわゆる紡績会社とは違いまして、自己資金というものがほんのわずかでございまして、みな借金でやつておるわけであります。私寡聞にしてはつきりした数字は覚えておりませんが、十大紡は銀行から五百億ぐらいの金を借りておると思います。そういうふうな借金をしてやつておるのでありまして、会社の内容は非常によくて、しかも操短して利益を得て、同時にその利益をもつて増鈍したということは、私は銀行から貸出しを受けておるという点から、そうじやなかつたのじやないか、こう考えます。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 くどいようでありますが、そうすると、十大紡の発表しておるバランスシートうそだ、九百三億の利益うそだということになる。実はバランスシートに載つていない五百億以上の借金があるのだ、こういう仰せでしよう。私はお話を伺つておりますと、ますますわからなくなつてしまうのであります。何とかこれらの十大紡が上げておる利益を隠して行こう、そうしてこの十大紡に何とか理由をつけて、利潤を確保してやろうという意図にしか見えないのであります。この点についてお答えをいただきたいと思います。  同時に、先日の委員会中野政府委員が、このカルテルの問題については、「通産省には御承知通り中小企業庁もございまするし、また綿業関連産業である綿スフ工業利益を代表する団体もございまするので御指摘のように多少の時期的なずれというものを考慮に入れれば、そういう点もございましようが、かれこれ各方面意見も聞き、総合勘案してあのような政策をとつた。」こういうふうに答えておられます。この「各方面意見も聞き」という点については、どの団体からどういうふうな意見をお聞きになつたのか、お答えをいただきたいと思います。
  18. 中野哲夫

    中野政府委員 御質問お答えいたします。先般、ただいまお読み上げになりましたように、お答えいたしましたのは、御質問が、綿紡操短は大紡績利益を擁護するだけでやつたのじやないかというような御質問でありましたので、通産行政といたしましては、主管ではございませんが、そういう大紡績の擁護というようなことだけを考えてやつたのではございません。通産省といたしましては、大企業も中企業も小企業も、公平な立場から行政をいたしておるわけでございます。それをやるための機構といたしましても、関係各局中小企業庁というような関連部局もございますし、当時私どもも参加をいたしたのでございますが、綿紡操短率をきめるような場合には、省内においてそれら関係方面が集まりまして、各種の角度から相当の議論もいたして、省としてきめたのであり、また繊維局においても関係方面意見も徴し、陳情も受け、事情も調べいたしまして、総合的な観点から原案をお立てになり、それを省議等において、今申し上げたようなことできめたということを、申し上げた次第でございます。
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 十大紡の利益を確保してやるために、通産省がそういうことをしたのではないかというようなお話でございますが、われわれといたしましては、むろん操短勧告に対しては、十大紡が一番大きな利害関係があるのでございますが、しかし財界全般といたしまして、こういう情勢では紡績会社はもちろん、また関連産業はみな非常な打撃を受ける。これは大局的見地から見まして、この財界混乱を防ぐには、こうした方がいいだろうというような総合観察の上から、あの勧告をいたしたわけでございまして、十大紡だけもしくは大きな紡績会社だけの利益を擁護するためにやつた次第ではございませんことを、よく御了承を願いたいと存じます。
  20. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今のお答えは、私の伺つたことに当らないのです。九百三億も利益があつたということはうそかどうか、こういうことを伺つたので、九百三億利益があり、なおかつ金利も払つており、社内留保金も四百三十億ある。こういう実情においてやらなければならなかつたという理由を、伺いたいということが主であります。そしてまた、それでもなおかつ財界混乱を防ぐためにやらなければならなかつたという仰せのようでありますが、一体やられた結果、どこが利益したか、どこがしわ寄せを食つて倒産をして来たか、こういう事情を考えていただけば、大臣のおつしやつておる財界を救うという言葉は、言葉がうるわしいだけであつて、実際においては十大紡の利益を擁護することにほかならない。現実においてそういうことに帰着するのです。こういう事実をお認めになるかどうか。
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 十大紡が九百幾億の利益を得ておるということを仰せになりますが、しかしもしあれをほうつておきましたならば、その利益は飛んでしまつて、それからまだほかにも非常な苦難を財界に与えた。私は日本財界全体というものを考えまして、もしあのときにやらずに、あの紡績混乱から、ほかの産業にも影響を及ぼしましたならば、大正九年の恐怖が出現したと思います。そういたしますと、ただ単に紡績のみならず、あらゆる財界が非常な混乱状態に陥ることになりはせぬか、こう考えるわけであります。通産省はどこにしわ寄せされるか、どこに利益を与えるかということは、考えないわけではなかつたでございましようが、しかしあの当時の状況を見ますれば、あれが口火となりまして、日本財界、ことに非常に底の浅い経済の基盤を持つておる日本が、どんなパニツクを来たさぬとも限らない、こういう観点が、この勧告をしたゆえんでございます。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局大正九年のパニツクの問題をこつちへ持つて来られるのでありますが、大正九年に置かれた日本状況と、現在の日本状況とは、経済的に違います。これはそう簡単に比較し、そう簡単に引用することのできない大きな違いがあります。これは時間もありませんので、詳しくは申し上げませんが、どなたもお認めになると思います。同時に今のお話でありますと、この綿紡績業界において不況を食いとめなければ、将来日本全体に波及するパニックになるだろう、こういうお話でありますが、ここでも私たちはこういうふうに考えております。綿紡績を含めて、鉄鋼業界についても、その他についても、むしろ政府が海外市場を積極的に開拓すること、あるいは安い原料を輸入すること、こういうような諸施設をサボタージュしておる結果が、このようなあるいはパニツクにでも発展するかもしれないという状況を巻き起したのであつて、こういうサボタージユをしながら、また一方においてあなた御自身も認めておられるような毒まんじゆうを使つて行かなければならない。こういうところに私は非常に政策の貧困が認められる。また政府としても責任をとらなければならない原因がある。そういう問題をたな上げしておいて、中小企業あるいは労働者にしわ寄せになるような、そういう操短勧告をとられることについて、どう考えておられるか、こういうことも伺つておきたいと思います。
  23. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は大正九年の経験者でございますが、そのときと、今の日本経済情勢とを比較しますと、これは違つておることは非常な違いでございます。同時に違つておるということは、悪く違つておるのでございます。大正九年のときには、少くとも日本は世界に冠たるとは申しませんが、経済上に関して相当な力強い力を持つてつたのでございます。同時に国力といたしましても、なかなかりつぱな国力でございました。ただいまは御承知通りに戦争に負けまして、まだ全面的にいろいろな条約もできておりませんし、また貿易協定とか通商航海条約とかいうものもできておりません。そういうような時期でございますから、財界の基礎がどちらが強くてどちらが弱いかと申しますれば、大正九年の当時の方が財界の基礎が非常に強くて、今日の財界の方が基礎が弱いということは私は判断がつぐと思います。それから次に対策すなわち輸出に対する政府の怠慢である、またその促進策が貧困である、政策が貧困である、こういうような御批評でございます。なるほど、独立後満二年にもなりませんが、一年半くらいになります。賠償問題も片づいておりませんし、また対外的のいろいろな外交交渉をやつておるにつきましても、実力が伴いませんために十分なることもできませんで、業者の方々に対して、昔のありし日の日本のごとく商売を海外にできるようにして差上げたいという熱意と信念に燃えて、できるだけ輸出伸展のために外交交渉もし、相手方のドアを開いてもらうことに努力はしておりますけれども、まだそれがほんとうに昔の通り状態に外国に対して交渉がうまく行つておらぬことは、独立後わずかしかたつておりません今日、遺憾でございますが、実情でございます。しかしわれわれといたしましてはできるだけの努力をいたしまして、海外市場の開拓に努め、同時に輸出のできるようにして行きたい、こう考えております。しかしこれは日本だけの問題ではございませんで、かりに対等な立場におりましても、向うが輸入制限をするというようなことになりますればいたし方がないことでございます。御承知通り日本が非常に苦しくなりましたことは、あのオタワ会議によりまして、英ブロックの諸国が輸入制限、すなわちブロック経済でやつて行くというような情勢があつたために、日本はだんだんと追い込められて窒息しかかつたという歴史がございます。しかし今日は日本の国力が非常に衰えておるにかかわらず、外国が輸入制限をしておる、こういうことでございますから、その点においてわれわれの立場といたしまして非常に苦しいことはお認め願えると存じます。しかしそのためにわれわれがサボタージユしておつて業者の方々に——日本でつくつた物がよそへ売れなくなつた、それを救つて差上げるという力がなかつたことも国際情勢の結果として事実でございます。そのようなことはよく内外の情勢と、また過去と現実とをお比べくださいまして御判断を願いたいと思います。
  24. 中村時雄

    中村(時)委員 今お話を聞いておりますと、十大紡のみでないというお話でありますが、事実は十大紡を中心にしまして新紡あるいは新々紡に対して、アウト・サイダーとしてこれをやはり強固に——もしもこのカルテルに入らない場合には原綿の割当をしないという強硬な立場からこのカルテルを結んで行つたと私たち承知しておるわけであります。さすれば、そのアウト・サイダーによつてこれらの新紡、新々紡が操短をした結果、次に来るところの原綿の割当が減つて来る、そのために十大紡との対立が非常に大きな問題として現われているわけなのであります。と同時に、それらの結果が、この新紡あるいは新々紡の人たちは背に腹はかえられぬといいますか、通産省に向つてもお役人様お役人様で原綿の割当を少しでももらわなくてはならないというような状態なつて来る。そのために、腹の中では官僚的なこういう支配をしたくないと思つていらつしやつても、事実は官僚的なそういう独善傾向の非常に権力を利用する強さが現われて来る。そういう結果が現実に現われているかいないかということを通産大臣はどういうふうにお考えになつているか。もう一つ今申しました操短の結果が中小企業あるいは消費者に対する綿布の値上りとして現われて来たのであつて、十大紡を助けて得々としていらしやいますけれども、その肩がわりは消費者が受持つたわけであります。何も国外的にプラスになつたわけでもなし、国内的にそういう操作によつて十大紡のみが助かつたといつた姿を考えたときに、少くとも今後における委員会などに——この前も一度申しましてくどいようですが、もう一度最後にお尋ねをしておきたいのですが、たとえば労働組合であるとか消費者代表であるとか、そういうものを入れて一つの機構を構成して行く御意思があるかないか。倒産の結果において、次に考えるといつたのでは間に合わぬ。実際に倒れているところは現実に目に見えてある。たとえば首切りが三万人以上行われた。こういう人たちを救うという観点がちつとも出ない。さすればこの独禁法の目的に反することになる。独禁法の目的にはちやんと書いてある。「雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」とちやんと出ておる。完全にあなたの言つていらつしやる行為というものは、これに相反する行為をあえてしながら、みずから得々としていらつしやる状態をどのようにお考えになつていらつしやるか、最後に聞いておきたい。
  25. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。昔からよく官僚統制という言葉が使われておりますが、この前の勧告のときなんかは官僚統制ではなくて、むしろ大きな立場から財界の将来を心配してやられたことで、官僚はやむを得ずその仕事をしたという形じやないか、こう考えております。それから今後消費者とか何とかいうようなものの代表を入れてそういうことを研究したらどうかということでございますが、これはいずれそういうことも考慮しなければならぬかとも思いますが、ただいまのところでは考えておりません。
  26. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 時間もありませんので最後にまとめて伺います。先ほどの綿紡に関する操短勧告でありますが、この勧告の内容は十大紡に対するものと新紡、新々紡に対するものでは非常に差異があつて、十大紡だけに有利な形を現わすように勧告せられておつた、こういう事実はどういうふうに御説明になるのでしようか。  第二点としましては、カルテル結成を許します結果は、国内に対する価格をつり上げ、海外に対する出血価格のダンピングが行われるであろうことは想像にかたくないと思います。こういうようなぐあいで、日本カルテルを許すことによつて、諸外国は日本のダンピングを非常におそれる結果になると思います。現在ですら日本の輸出に対して各国は警戒の目を放つているのでありまして、あなた方が一番信頼をかち得ているアメリカの国民ですら、現在日本の商品に対する反対の声が上つておる。たとえば木ネジの産業とか、光学産業とかいうもののアメリカの代表者は、日本の競争からの保護をすでに要請しておりますし、ミシンとかまぐろ、時計、スカーフというようなものの関税の引上げがアメリカで問題になつております。また東南アジアの諸国においてもそういうふうなことが考慮せられておる。こういうような情勢を、カルテルを許容することによつてより強くしてしまいはしないかと考えて参りますと、カルテルというものが日本の貿易振興に資さずして、かえつて害になつて行きはしないか、こういうふうに私たちは考える部分があるのであります。この点についての大臣の御所見を伺わしていただきたい。
  27. 岡野清豪

    岡野国務大臣 勧告の当時の差別につきましては繊維局長から御答弁さしていただきたいと存じます。第二点の、こういうことをしたならば、外国が日本に対して悪い感じと申しますか、そのために貿易がかえつて阻害されるのじやないか、こういうようなことでございますが、なるほどアメリカは強力なる独禁法がございます。しかし世界貿易に参加しているところの国国を見ますと、独禁法のない国もありますし、また西独あたりは今占領法規から脱して自主的の法案をつくりまして、この独禁法の改正案を出しているそうであります。こういうような点から考えてみますと、日本の今日の改正案というものは外国との商売上刺激するということにはならないと私は考えております。物事はとりようでございまして、いわゆる向うでこれによつて非常な損害を受けるというようなことが出て来る業者というものはあるいは非常に取上げましてやかましく言われるかと思いますけれども、しかし各国の例を見ますと、この独禁法の改正すなわち本案に出ておりますことによりまして、日本の輸出貿易が外国から非常にいじめられる主なる材料、また非常な害を及ぼすものであるというふうに私どもは考えておらぬ次第であります。
  28. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今のお話はあまりにも抽象的で私たちにはうべなえないお話であります。と申しますのは諸外国、たとえばドイツなどとお比べになりますが、かつて日本が世界貿易場裡にどういう形で出現しておつたか、こういうことを考えていただかなければ問題の解明にならない。少くとも世界の貿易場裡において、日本はかつて武力を背景にすることと、もう一つは低賃金による労働力のダンピングということで、世界各国に対抗しておつたのが事実であります。こういう実情の上に立つて、諸外国が今日本カルテルを許すという法律を見ますならば、そらまた低賃金による労働ダンピングが始まるのじやないかという印象を受けることは当然であります。そういうことのなかつた諸外国と比べて、外国ではやつておりますが大丈夫でございます、こういう御返事はあまりにも日本の特殊的な地位を無視したお答えであつて、この点について実情をもつとよく見ていただくことをお願いをいたします。同時に繊維局長お話も伺わせていただきたいと思います。
  29. 徳永久次

    ○徳永政府委員 先ほどお尋ねの中に、昨年の三月からやりました操短勧告の内容が十大紡あるいは新紡、新々紡に対する取扱いにおいて十大紡に有利なような勧告をしたのではないかというようなお尋ねがあつたのでございますが、私どもどういうデータからさようなお尋ねになつているのか了解に苦しむのでありまして、さような事実は全然ございません。また業界全体は政府のやりますことを全部が知つているわけでありまして、今お話のような点がありますならば当然業界内部の相互間においても問題になるので、さような点は操短勧告当初からないと思います。
  30. 石村英雄

    ○石村委員 先ほどの岡野大臣の御答弁を聞きますと、結局あのとき綿紡操短でもやらなかつたらもつとひどいことが起つたろう、そうしてあの独禁法のなかつた大正十年の恐慌を例にお引きになりましたが、これはわれわれとはまるで根本的に考え方、見方が違うのであります。それを追究しても結局並行線で役に立たないと思いますから、先ほどの中野政府委員の御答弁についてお聞きいたしますが、あれではこの前の御答弁そのままでありまして、われわれはあの綿紡操短の結果十大紡は助かつたであろうが、中小の織物業者は非常に損害をこうむつた、迷惑を見たということを聞いているわけであります。今後ともそうしたことがあり得ると思うのですが、それであのとき具体的に中小企業庁は賛成なら賛成の御返事をいつどなたがなさつたのか。また関係団体意見も聞いたということでありますが、どこのどういう団体のだれがいつ賛成したかということを具体的に返事をしてもらいたい。漠然と総合勘案してやつたのだということでは聞いた意味をなさないと思います。具体的にお答えを願いたい。
  31. 中野哲夫

    中野政府委員 いつどこでだれがやつたかという具体的のお話ということでございますが、関係業界においても今繊維局長からお答えしました通り、いろいろの折衝がございましたでしようし、また各団体から繊維局意見を述べ、あるいは陳情をすることもいろいろあると思われるので、そういうことがなしに役人だけが一部の話を聞いてやつたということは絶対ない、こういうことを申し上げた次第でございます。また中におきましても中小企業庁その他全体の関係部局の会合をしばしば繰返して開き、議論したあげくやつたということは前回申し上げました通りで、結論として通産省全体として日本産業全体を見てああいう結論に到達した、こういうことを申し上げた次第であります。
  32. 石村英雄

    ○石村委員 われわれはこの前の操短の結果についていろいろな業者からあんなことをされては困るということをしきりに聞いているわけです。この前の操短のときそんならお前たちに賛成したじやないか、こういうことをはつきりしたならした、しなかつたらしなかつたということをはつきりさしてもらいたい。ただ漠然と今のようにいろいろ考えて、いろいろ意見を相談してやつたのだということでなしに、これはこの間どういう質問をするかということでしたから、こういうことを具体的に返事をしてもらいたい。このように申しておいたのですが、今なければ、あとでもいいのですが、あとにでもはつきりした去年の実例を教えていただきたいと思います。
  33. 中野哲夫

    中野政府委員 お言葉を返すようでございますが、当時の通産省といたしましては内部的にも外部的にも各方面の意向を聴取し、これを総合勘案してああいうふうな案を当時としては必要やむを得ずきめたということをお答え申し上げます。
  34. 中村時雄

    中村(時)委員 ちよつとお尋ねしますが、あなた方通産省がやつた操短というものは完全にカルテル行為だ。そうすると当然公取委員会の認定がいるわけだ。あるいは許可になつておつたかもしれぬけれども、それに対して公取に相談して、公取がこれを認めてあなた方はやつたのかということをお聞きしたい。
  35. 中野哲夫

    中野政府委員 お答えいたします。綿紡操短は毎日御説明申し上げます通り通産大臣勧告に基いてやつているのでありまして、これを逆に申しますと業者間が相互に協定をいたして生産数量をきめるというようなことはなかつたのでございます。従いまして通産省としては当時現行独禁法に違反するというような判断は下さなかつたのでございます。
  36. 中村時雄

    中村(時)委員 こういう独禁法というものがありながら、通産大臣勧告によつて行われるということが決定すれば、行政機構の権力というものは少くともこういう法案よりも上に立つことができるという考え方をあなたは持つていらつしやるわけですか。
  37. 中野哲夫

    中野政府委員 当時の実質論、必要論から申し上げますれば、先ほど大臣から毎々るる申し上げた通りでございまするが、通産省といたしましては綿紡業界と申しますか、綿紡関連業界全体の安定をはかるという産業行政上の責任もあるのでございますので、そういう勧告を発した次第でございます。
  38. 中村時雄

    中村(時)委員 話がピントをはずれてしまつておるのだ。私の聞いているのは、行政機構の方がこの法案よりも上に立つという考え方をあなたは持つているのかどうかということを聞いているのです。
  39. 中野哲夫

    中野政府委員 この法案の上下ということとはなしに、通産省責任で当時操短勧告いたしたのであります。
  40. 中村時雄

    中村(時)委員 法的根拠があつてこそあらゆる社会の秩序というものが考えられているわけです。しかるにあなたのような考え方をもつて、ただ自分の責任においてということになれば、一体世の中はどうなつてしまうのですか。私はその点をあなたにお聞きしている。  もう一点はあらゆる角度からあらゆる人に聞いたというが、一体だれに聞たのですか。そういう点をもう少しはつきりと、自分の実際の責任が——あなたは行政機構としての責任のことを言つていらつしやるのだから、そういう責任がどこにあつて、だれに聞いたかはつきりしていただきたい。
  41. 中野哲夫

    中野政府委員 行政指導でやつたのでございます。現行法律の上に立つか下に立つかというようなぎりぎりの法律論としてこの問題を考えますと、私はあの勧告に、法律上の意味において従うというような、法律論の義務はなかつたのではないか、かように考えられますので、その点からいたしたのであります。
  42. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 原綿の割当をしないというおそろしい罰則がついているじやありませんか。それを法律上はなどという言い方はあんまりばかにしておる。それを強制された業者はあんまりかわいそうですよ。そういう言い方は改めていただきたい。
  43. 佐伯宗義

    佐伯委員長 時間がございませんので、一問ずつお許し申し上げます。
  44. 中村時雄

    中村(時)委員 もう一問だそうだから、よく聞いてくださいよ。通産省の役人、よく聞いておつてくれよ。この法案の中においてあるいはわく外において、そういう権限をあなた方はいかなる法律なりいかなる角度から与えられているかということをお聞きしたいのです。
  45. 中野哲夫

    中野政府委員 実質的に申しますれば、産業官庁としての行政指導でございます。ただ、ただいま申しました点は、たちまちそういうような御質問があるものと予想されるのですが、この法律を打破るような法律的な権限があるかという点につきまして、義務的な点から申し上げますれば、あの勧告につきましては、厳密な意味で、法律的にあの勧告自体に従う、こういう法律的な義務はなかつたのではないか。しかしもちろんお話通り経済的と申しますか、そういう点から申しますれば、外国為替割当の操作をやるということもお話通り事実でございますから、実質と形式をそのように……。
  46. 山本勝市

    山本(勝)委員 私は社会党と同じ立場ではありませんけれども、きわめて重大でありますから、もつとまじめに答えられる方がいいと思う。一体この独占禁止法を審議する場合に、通産省の方は自分たち産業責任者であるとその一点だけを考えておられるようでありますけれども、その一点からだけでは解決できない。先ほど自分たちが独断でやつたんでは決してない、各方面の意向を聞いたんだ。具体的にというが、具体的にということは私は聞いておりません。各方面に相談したという中に公取委員会も含んでおつたのかおらないのか。法律上相談すべき義務があるかないかという法律解釈を聞いておるのではありません。少くとも独占禁止法というものがあり、公取委員会というものがある以上は、法律上の解釈はどうあろうとも、各方面に相談する場合に、公取委員会に相談されるのが順当である。今後も法律責任がないから相談しないんだというふうな態度で行かれるならば、われわれも重大な決心をしなければならぬ。済んだことをかれこれ責めるのではありませんから、もしほんとうに相談されなかつたならば、今後はよく相談して行くとか何とかまじめな態度を示してもらいたい。どうも私らは質問するつもりではなかつたんですけれども、先ほど来の態度はまことにふまじめだと思う。
  47. 中野哲夫

    中野政府委員 私の答弁の中で、法律上の義務があるとかなかつたとかいう点の御説明は申し過ぎの点があつたように思いますので、その部分は取消さしていただきます。
  48. 山本勝市

    山本(勝)委員 法律上のことを聞いておるのではありません。ただ法律上その義務があろうがなかろうが、通産省としてはこれだけの決定をなさるときに、いろいろな方に相談されるという中には、公取委員会も含まれるのが穏当ではないか、私はこういうふうに考える。含まれておつたのであるかどうかということをお聞きしておるんです。
  49. 中野哲夫

    中野政府委員 御質問の御趣旨まことにごもつともに私も存じます。操短の決定事前に、公取委員会に相談はあるいはなかつたかと存ぜられます。先ほどのその点に関する各方面という点の矛盾も、私のお答えの点も取消さしていただきます。
  50. 阿部五郎

    阿部委員 大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど来の政府委員お答えを聞いていると、経済界の情勢法律通り行政措置をもつてしてはそれに対処することができないような情勢が見えた場合には、行政官庁として法律外の、少くとも、これを無視した行政措置を、事態を救うためにはしていいのだという観念に立つているかのごとくに聞えるのであります。すなわち紡績界の状態カルテル同様の効果を生ぜしめるような行政措置を必要としたのであるから、この独禁法が存在してカルテルを業者が行つてはならないのであるけれども行政措置として行政官庁がこれを行う場合にはかまわないんだ、こういうふうな考え方を持つておるようであります。すなわち行政官庁は法律に反して、法律よりも上の立場から行政行為をやつてもいいのだ、こういう観念を持つておるようであります。これはまことにゆゆしいことでありまして、完全に法律という秩序を無視する行政フアツシヨの考え方でありまして、これは決して黙視することはできないと思うのであります。私の解釈するところによれば、当時の事態はなるほど業界混乱を救う必要があつたかもしれません。しかしながら独占禁止法というものが存在する以上は、それに対応する場合においてはこの法律に基いてしなければなりません。行政官庁といえども通産大臣といえども、これに反してそういう行政措置をしてはならないはずのものであります。しかしながら、現実には行われております。今回こういうカルテルを許すような改正法律案を出して来たというのは、前の経験から考えてこのままでは適当な措置がとれない場合があるということを見て、やつたのではないかと私は思うのであります。しかるに政府委員の言うところによると、こんな独禁法緩和などは必要じやない、行政官庁が必要だと認めたならば、カルテルと同一の効果を生ぜしめることはいつでもできるのだというようなことを言うておる。まつたくフアッシヨ的な考え方であります。これらの問題について大臣は一体どう思つておられるのであるか。大臣の考えいかんによつては将来事ははなはだ重大であると思います。明確に岡野さんのお答えを願います。
  51. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは政府委員言葉が足りなかつたのか、言いまわし方がいけなかつたのか存じませんけれども、今までといたしましても、仰せのごとく法律より上に行政権があるというようなことは絶対にあり得ないことでございまして、もしそういうことがありますれば、これは言語道断でございます。やはりわれわれはその法律の範囲内において行政をする。行政権はどこまでも法律を侵すわけには参りません。ただ昨年のことについては、行政指導ということによつてやれると通産省で考えておつた。もしその結果が法律を無視したということになれば、これは悪いことでございますから、そういうことのないように今後も考えなければなりません。先ほども申し上げたように、今後は勧告はいたしません。法律によつて定められた通りのことにやつて行きたい。いわんや法律を無視して、行政指導といいながら、法律に違反して行政権を発動させるということは絶対にいたさせないつもりでありますから、この点はよく御了承を願いたいと存じます。
  52. 阿部五郎

    阿部委員 将来のことについての大臣のお考えは一応わかりましたが、当時の大臣ではありませんけれども、過去紡績に対してとつたあの措置について、大臣の御認識がまだ徹底を欠いておるのではないかと思う。あれが独禁法に実質上違反するものとお考えになりますか、あるいはあれで合法であるとお考えになりますか。この点をはつきりおつしやつていただきたい。
  53. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は独禁法違反であるということは考えておりません。あるいはその点に手続上の欠陥があつたのじやないかとは存じます。と申しますことは、御承知通り行政指導によつて産業行政を運行して行くためには、やはりああいうことをした方がよい、またそれも独禁法に触れておらぬような形式になつておりますが、先ほどからの御説のように、公正取引委員会という独禁法について十分監視をされておられる一つの官庁があるのでございますから、それと十分打合せもし、もしくは御了解を得てやるべきはずのものでございます。ただいまその当時のことを知つておる者がここにおりませんからわかりませんが、多分打合せをしたのだろうと思いますけれども、はつきり打合せをしたということも申し上げられません。その点において、あるいは過去において遺憾な点があつたかとも存じますが、われわれとしては、そういうことは重大時期であつたという点を御了承願いたい、過去のことでございますので、この辺のところはひとつ御了承願つて、将来においてわれわれのやることをごらんいただきたいと存じます。
  54. 阿部五郎

    阿部委員 おつしやる点よくわかりましたが、過去に対する認識が違つてつたならば、将来についても危惧の念を持たざるを得ないのであります。そこで大臣にさらにつつ込んで承りたいのですが、大臣は、あの節は手続上に欠陥があつたかもしれないけれども違法ではない、かようにおつしやつたのでありますが、それでは、はたしてあの当時施行せられておつた独禁法のもとにおいて、何らかよりよい手続をとつたならば、あれと同様の効果を生ずることができたものとお考えになりますか。私は独禁法が存在する以上、そういうことはできない、どういう手続をとろうとできないはずだと確信しておるのです。ことに、おつしやるように公取委員会に御相談になつたとしたところで、公取委員会としても、あの法律のもとにそれを同意するようなことはできるはずはないと思うのであります。この点、大臣並びに公取委員長の御見解を承りたい。
  55. 岡野清豪

    岡野国務大臣 当時としては、幾度も繰返し申し上げましたように、通産行政の上からいたしまして、この状態をそのままほつておくわけにはいかぬという経済上の大事な点から勧告をした。その勧告行政指導でやり得るのだという確信のもとにやつたのでございまして、あるいはそれが今になつて考えれば、そんなことをやらなくたつてあの不況がしのげたのではないかということも一つの見方でありましようし、また独禁法があるためにそういう勧告はけしからぬということもございますが、しかし行政措置としては、やはり勧告は独禁法に触れないという考え方を持つております。しかし疑いが起きますので、先ほどから申し上げますように、今後はそういう勧告はしないことにしております。
  56. 横田正俊

    ○横田政府委員 綿紡及び化繊の操短については、通産省から御相談がございませんでした。また正式に御相談を受けても、独占禁止法に触れる場合には、よいとか悪いとか申し上げる余地はないわけであります。
  57. 佐伯宗義

    佐伯委員長 この際、菊川忠雄君より発言を求められておりますのでこれを許します。
  58. 菊川忠雄

    ○菊川委員 この際、本委員会における独禁法改正案の審議の今までの経過にかんがみて、委員長にお尋ねをして、その後要望を申し上げたいと思います。と申しますのは、このことは私先般の理事会の席上でも発言をしたのでありますが、それを補足して、本委員会の記録におとどめおき願いたいという意味で、質問と要望を申し上げます。この独禁法の改正案は、言うまでもなく吉田内閣が本国会に提案された重要法案一つでありまして、世間ではスト規制法とそしてこの独禁法の改正案を二大法案であるとまで言うております。そういうような法案でありますので、われわれもこれに対しましては慎重審議をいたして参りました。しかしながらこの法案につきましては、われわれはあくまでも慎重審議の上に、やはり参議院の審議につきましても十分な期間を考慮に置くべきであるということを考えましたので、慎重審議をしてそしてなるべく早く衆議院はこれをあげたい、こういう方針で協力いたして参つたことは各委員ともにお認めくださることと思うのであります。でありますから、当初は今月の十二、三日ごろまでに衆議院の方はあげるというふうな方針に対しましても、快くわれわれは協力いたして参つたつもりであります。しかるに今日までの法案の審議の経過を振り返つてみますると、いろいろの事情はございましたが、七月の二日に本会議に上程されそして本委員会にまわつて参りまして、しかも今日まですでに二十日以上を経過いたしておりますから、その間において、あとの半分の十日余というものは実は本法律の審議のためにあらずして、自由党、改進党の諸君の間においての修正案の調整のために、ほとんど費されております。私ども、もちろん他党のそれぞれの事情は尊重しなければならないのでありますから、その期間をずつと注目しながら待つてつたのであります。本日ようやくその調整案がまとまつて、後刻提案をされるようであります。そこで私はその点について、この委員会において、明瞭に確認を願いたいと思う点は、今までの委員会の経過を見ますると、実を申しますると、はなはだ申し上げることは遺憾なことでございまするが、かえつて政府与党である自由党の委員諸君の出席がはなはだ良好ではございません。きようはどういう風の吹きまわしか、はなはだ出席良好であります。今までほとんどそれらの方々が、単に一、二の方を除いては顔を見せてはおりませんし、また中にはおそらくこの委員会を通じて、顔を見せないで済ます委員の方もおいでになりはしないかと心配しておるのであります。これが、はたして政府が重要法案としてこの国会に提案し、与党として審議を尽すための委員会における委員の責務であるのだろうかと、私は国民とともにはなはだ遺憾に思うのであります。しかもこの法案について、最後まで与党である自由党の諸君が、修正についての調整のために態度がきまらないとして時間を空費された。このために参議院に参りましても、おそらく参議院の諸君は審議の時間を非常に短縮されて、審議の上に不自由を来すという結果になると思います。そういう点において、委員長はこういうふうな経済安定委員会の今までの経過につきましては、どういうふうな御見解を持つておられるのか、この点を私はお尋ねをいたしたいのであります。私はこういう重要法案を審議いたす委員の一人といたしまして、今後こういう委員会委員として職責を果す上において大いに考慮をしなければならぬ点でございますので、この機会にこの点をまずお尋ねをいたしたいと思います。  それからいま一つは、こういう法案は、たいていの場合には、野党側はこの審議を引延ばす態度に出ております。しかしふしぎなことには、この委員会に関しては、結果におきましては野党側は審議を促進するための役割を果しまして、与党並びに半与党の諸君が審議を延ばす挙に出ておるのであります。こういうようなふしぎな委員会が一体ほかにあるかどうか、ひとつ委員長の御見解を伺いたいと思います。それで慎重審議をされることは非常にけつこうでありますけれども、一体十日間の時間の空費と申しまするか、あるいは慎重審議をされた御熱心なために費された時間、これは明確にそういう事情にあるとわれわれは考えておるのだが、この点は、委員長は確認をしておられるかどうか、この二点についてお尋ねを申し上げたいのであります。従いまして、これらの点についての委員長の御見解に基いて、本委員会がかくも遅延をし、しかも本日のある新聞によりましては、最も遅れたところの法案審議であるというおほめの言葉をいただいておりまするが、野党の名誉ではなくして与党の名誉のために、この点については、本会議に報告をされる場合においても審議の経過の中に、何らかの弁明があつてしかるべきだと考えますが、委員長はどういうふうにお考えになつておりますか。これだけのことをお伺いいたします。
  59. 佐伯宗義

    佐伯委員長 ただいま菊川委員から委員会の運営につきまして、委員長に対する御注意がございました。私はまことに適正な御注意であると存ずるのであります。ただいまお話通り委員会は、本国会において三大立法の一つと言わるる独占禁止法が、御承知通り今日まで延びて参つたのであります。しかるにもかかわらず、この委員会が今日まで与野党ともに民主的に運営をして参りましたことは、皆さんも御承知通りと存じます。ただいま、野党といえどもいまだかつて引延ばしのための態度は、私は見受けることはできません。さらばと申しまして、与党の方々がやはり力をもつて押さるるというがごとき態度も、少しも見受けられないのであります。こういう結果から、本国会におきましては、参議院に回付をせられまして審議に十二分の時間を与えねばならないということを皆様もよく御承知でありながら、今日まで自然に延びて参つたのではないかと存ずるのでありまして、この点は私たちはいまだ委員としてよくなれておりませんので、たいへんまずいところも多かつたこととは存じておりまするが、ただいま菊川さんの御注意は深く傾聴いたしまして、今後の委員会の運営には御趣旨に沿うように努めたいと存じております。  それでは本案に対する質疑は終局いたしました。  ただいま委員長の手元に栗田英男君外十七名提出の修正案が提出されておりますので、この際提出者より趣旨弁明を求めます。栗田君。     〔中村(時)委員「これは昼からにしてもらいたい、今まで私たちは言わなかつたが」と呼ぶ〕
  60. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村君に申し上げますが、理事会におきましては……。     〔中村(時)委員理事会においても今言つたように……」と呼ぶ〕
  61. 佐伯宗義

    佐伯委員長 いや、趣旨の内容だけを説明いたしまして、休憩することにいたしております。栗田英男君。
  62. 栗田英男

    ○栗田委員 私はこの修正案を説明する前に、一言——これはくどいようでありますが、通産大臣から明確なる答弁を求めておかなければならないのであります。それはしばしば他の委員に対しましても答弁をされたのでありますが、この改正案並びにこのたび提案される三派共同の修正案が通過いたしたといたしましても、今日までやりましたような通産省操短勧告及びこれに類似いたしましたる行為を行うということになりますると、この改正案並びに修正案はまつたく骨抜きになつてしまうのでありまして、今後操短のごとき、またこれらの類似行為は、断じて通産大臣勧告を行わないという答弁を、もう一回この際お答えを願いたいと思うのであります。このお答えを得まして、私は趣旨弁明に入りたいと思います。
  63. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私といたしましては、今後勧告はしないつもりでございます。
  64. 栗田英男

    ○栗田委員 ただいま提出いたしました独禁法の一部改正案に対する自由党、改進党、自由党の三派の共同修正案の提案理由説明申し上げます。  日本経済民主化の基本法たる独禁法は、その第二十七条において、独禁法の目的を達するために、公正取引委員会を置くことを規定し、独禁法の運用は公正取引委員会の専管であることを規定しておるのであります。しかるに今回の政府の提案した独禁法の一部改正案においては、トラスト禁止規定と相並んで、独禁法のかなめであるカルテル禁止規定の適用除外についての認可権を、同法の運用機関たる公正取引委員会に与えないで、産業の主管大臣という立場から通産大臣に与えることとなつておることは、独禁法の趣旨とまつたく相背するものであります。改正案は、カルテルの認可権を主務大臣に置く理由として、産業の主務大臣たる立場を主張し、輸出取引法や中小企業安定法などの特別法の前例を主張しておるが、独占禁止政策は、一元的、総合的に運営さるべきものであり、その責任の主体は、当然に独禁法の目的達成のために設置された公正取引委員会が、持つべきであり、全員的立場から認否に最終決定を与えることが、理の当然であります。政府案のごとく、公正取引委員会が認定を行い、主務大臣が認可を行うことになれば、実質的に終局的判定者たるべき公正取引委員会が認定した後においては、主務大臣がみずから機能すべき余地はまつたくなく、また認定を得ない主務大臣の認可は無効であることは、一点疑念の余地はないのであります。しかるにもかかわらず、主務大臣が認可権を主張し、強制報告徴収権を規定することは、独禁法の運営に疑念を抱かせ、いたずらに準司法的手続によらず、行政処置によることとなり、訴訟手続にも混乱を生ぜしめ、独禁法運用上の独自の体系を破壊する結果を招くに至るのであります。この意味において、認可権は独禁法の専管官庁たる公正取引委員会に一元化せしめるよう、ここに修正案を提出したゆえんであります。  次に本修正の要点を申し上げますと、第一点は、独禁法の趣旨を尊重し、カルテルの認可権を公正取引委員会に一元化し、主務大臣が認可権を通じて官僚統制その他の手段により、独禁法と相反した政策を行うおそれのないようにしたことであります。  第二点は、カルテルの認可を公正取引委員会に一元化することにより、現行法における同委員会の準司法的手続に従つて、認可申請の却下または認可の取消し、変更は、すべて審判手続を経て審決により行うことにいたしたのであります。  第三点は、カルテルの認可を取消しまたは変更すべき事態が生じた場合に、審判手続中、中小企業、消費者等に救済すべからざる損害を与えた場合には、裁判所の緊急処分の道を開いたことであります。  第四点は、認可申請に対して、公正取引委員会が認可もしくは却不、認可内容の変更、または認可の取消し処分をした場合は、当該処分の責任を明らかにする意味において、遅滞なく当該処分の理由を付して、その旨を公表することにしたことであります。  第五点は、公正取引委員会が認可事務を円滑にし、産業の実情を適切につかむために、第二十四条の三の第二項または第三項の不況カルテル、及び第二十四条の四の第二項の合理化カルテルを認可し、または申請を却下し、あるいは認可の変更、取消し処分をしようとするときは、あらかじめ関係ある主務大臣に協議しなければならないことにしたことであります。  第六点は、以上の諸点の修正に伴い、主務大臣の強制報告徴収に関する項目等、関係条項の整理を行つたことであります。  以上が三派共同の修正案の要点であります。  以下条を追つて、詳細に説明をいたします。  第二十四条の三第一項中「若しくは」を「又は」に改め、「、又は第七項の規定による公示があつた後一箇月を経過したとき(第六項の請求に応じ、当該事業に係る主務大臣(以下「主務大臣」という。)が、第五項の規定による処分をした場合を除く。)」を削ると修正いたしました。従つて本条は、「但し、不公正な取引方法を用いるとき、又は事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにするときは、この限りでない。」とかわりました。  同条第二項及び、第三項中「主務大臣」を「公正取引委員会規則の定めるところにより、あらかじめ、公正取引委員会」に改めました。  同条第四項中「主務大臣は、前二項の認可をしようとするときは、」を「公正取引委員会は、」に、「左の各号に該当している旨の公正取引委員会の認定を得なければならない。次項の規定による処分をしようとするときも、同様とする。」を「左の各号に該当する場合でなければ、前二項の認可をしてはならない。」に改めました。  同条第五項及び第六項を削除いたしました。  同条第七項を次のように改めました。  公正取引委員会は、第二項若しくは第三項の認可の申請があつた場合において、当該申請を認可し、若しくは却下し、又は第二項若しくは第三項に掲げる認可について、第六十六条第一項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、当該処分の理由を附してその旨を公表しなければならない。  同条第八項中「主務大臣」を「公正取引委員会」に改めました。  同条第九項を削除いたしました。  同条第十一項中「当該主務大臣及び」を削除し、「これを」に改めました。  同条第十二項を削除いたしました。  同条第十三項を次のように改めました。  公正取引委員会は、第二項又は第三項の認可をし、又はその申請を却下しようとするときは、あらかじめ、当該事業に係る主務大臣に協議しなければならない。第二項又は第三項に掲げる認可について、第六十六条第一項の規定による処分をしようとするときも、同様とする。  第二十四条の四第二項中「主務大臣」を「公正取引委員会規則の定めるところにより、あらかじめ、公正取引委員会」に改めたのであります。  同条第三項中「主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、」を「公正取引委員会は、」に、「左の各号に該当している旨の公正取引委員会の認定を得なければならない。次項において準用する前条第五項の規定による処分をしようとするときも、同様とする。」を「左の各号に該当する場合でなければ、前項の認可をしてはならない。」に改めたのであります。  同条第四項中「第十三項」を「第九項」に改めました。  第三十五条の四第三号の改正規定中「認定、」を削除したのであります。  第六十五条の改正規定中「又は第二項」を「若しくは第二項、第二十四条の三第二項若しくは第三項又は第二十四条の四第二項」に改ました。  第六十七条第一項の改正規定の次に次のように加えました。  同条中第二項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。   裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、公正取引委員会の申立により、第二十四条の三第二項若しくは第三項又は第二十四条の四第二項の規定により認可を受けたものに対し、第六十六条第一項の規定により第二十四条の三第二項若しくは第三項又は第二十四条の四第二項に掲げる認可を取り消し、又は変更すべき事由が生じている疑のある場合において、当該認可を受けた行為を一時停止すべきことを命じ、又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。  第七十五条の改正規定の次に次のように加えました。   第八十六条中「第六十七条第一項、」を「第六十七条第一項、同条第二項、」に改める。  第九十四条の二中第一号を削り、第二号を第一号とし、以下一号ずつ繰り上げたのであります。  これにて提案理由趣旨説明を終ります。何とぞ慎重御審議の上御賛同をお願いいたします。
  65. 佐伯宗義

    佐伯委員長 以上で修正案の趣旨弁明は終りました。  この際午後二時まで休憩いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  66. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これより会議を再開いたします。  修正案に対する質疑の通告がありますので、これを許します。中村時雄君。
  67. 中村時雄

    中村(時)委員 この改正案に対する三派共同の修正案に対し、第一ページの第三項の「若しくは」を「又は」と改めておりますけれども、「若しくは」を「又は」と改めたのはどういう理由によるのか、第一点としてお尋ねいたします。
  68. 栗田英男

    ○栗田委員 「若しくは」を「又は」にかえたのは、そのあとに「又は第七項の規定による公示があつた後」云々というのが削除されましたので、「若しくは」を削りまして、「又は事業者に」かように改正をいたしたのであります。
  69. 中村時雄

    中村(時)委員 次の二ページに入りまして、終りから三行目の「当該事業に係る主務大臣に協議しなければならない。」ということがあるのですが、かりに主務大臣に協議をした結果、主務大臣がこれを認めなかつた場合には、どのような方向なつて行くのか、まず第一点としてお尋ねいたします。
  70. 栗田英男

    ○栗田委員 当該事業にかかる主務大臣に協議をして、その協議があるいは公取と一致しなかつたというような場合におきましては、公取独自の観点からこれに認定を下し、認可を与えるものである、かように了承いたしております。
  71. 中村時雄

    中村(時)委員 そうすると主務大臣がこれに協議の結果いけないということになつたら、公取委員会の権限においてそれを施行することができるというお答えなんですね。
  72. 栗田英男

    ○栗田委員 この場合に私はこういうふうに考えておるのであります。公正取引委員会が主務大臣と協議するとありますが、この主務大臣というのは、どちらかというとカルテルの緩和でありまして、産業行政的な同じ認定基準を見る目におきましても、この主務大臣の方がやわらかく見ると思います。また公取の認定基準というものはやはり独占禁止という観点から見ますので、どうしてもこの見方はきつくなるということになりまして、この見解の相違は、公取はまだ許してはいないということと、主務大臣はもうこのくらいならば認可してやつてもいいじやないかというような観点の差はあると思いますけれども、この主務大臣の方が認可しなくちやいかぬ、公取は認可するなというような見方の相違は、現実の法の運営の上からは現われて来ないではないか、こういうふうに考えております。
  73. 中村時雄

    中村(時)委員 それはおそらく十中八、九まではあなたのおつしやることが現実の行動にはなつて来るでしよう。しかし問題としては、法がこういうふうに定められるということは、その残りの一、二の問題に対しても非常に重大な問題が起つて来る。だから実際に通産大臣がある一つの問題を企図した場合、そういうことが往々にして起り得る実例が今まであるわけなんです。従つて問題はそういう想像とかあるいは概念の問題でなくて、そういうことが起つた場合にどうするかというその考え方あるいは法的根拠というものをお聞きしているわけなんです。
  74. 栗田英男

    ○栗田委員 この場合に、公正取引委員会と主務大臣と協議がととのわなかつた場合においては、公取委員会は独自の立場において認定をし、認可の取消しあるいは変更、あるいは認可をしてさしつかえない。かように考えております。
  75. 中村時雄

    中村(時)委員 そうすると先に返りまして、あなたのおつしやるのは公取がきめれば何でも通るということになるのですか。
  76. 栗田英男

    ○栗田委員 さように了解をいたします。
  77. 中村時雄

    中村(時)委員 非常な重大な問題なんですが、公取委員長が法的根拠に基いてお考えになつた場合、やはり同様のことが考えられるかどうか、この点をちよつとお伺いしたい。
  78. 横田正俊

    ○横田政府委員 今栗田委員の言われたのと同じ見解でございます。
  79. 佐伯宗義

  80. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 六十七条の第一項の次に新たなる第二項をお加えになりまして、「緊急の必要があると認めるときは、」「疑のある場合において、」こういうことが書いてありますが、こういうことはどの程度までのことを言うのか。最終的には裁判所が決定をされることですが、ほぼそれについての概括的な標準を公取委員長からお聞かせいただきたいと思います。
  81. 栗田英男

    ○栗田委員 この疑いのある場合等においてという点に関しましては、特にこれは公正取引委員会の実際面について相当の影響もありまするので、この点は公正取引委員長の方からお答えを願いたいと思います。
  82. 横田正俊

    ○横田政府委員 これは現行法の六十七条の一項に同じような規定がございまして、この方は大体独占とかあるいは違法なカルテルがあります場合に、それを除去するのに審判手続で丁重にやつておりますと時期を失するということもありますので、これは公取の申立てによりまして、裁判所が一種の仮処分をいたすわけでございます。この場合に、違反する疑いのある場合という言葉が使つてございますが、これはやたらに、ただ疑いがあると公正取引委員会がかつてに認めてやるのではなくて、ほとんど間違いないということを公取が認めまして、しかもこれを緊急にさしとめる必要があるという場合に六十七条の一項の規定がございます。これと同じ趣旨におきましてカルテルの認めまする要件が欠けていることがほぼわかる、しかしそれを確定するのは審判手続でいたしますので多少手間どる、捨てておくと、たとえば関連業種等に非常な損害が及びそうであるというような場合に、裁判所に公正取引委員会から申し立てましてとめてもらう、こういうことでございます。
  83. 中村時雄

    中村(時)委員 栗田さんにちよつとお聞きしたいのです。先ほどのあなたの御答弁で、たとえば公取はよく締めるのだ、公取の方がカルテルに対してそれだけの権限を持つて締めて行くのだ、通産省の方は幅を広めるのだ、だからそういうことがないであろうとおつしやる、これが第一点。第二点は、そうすれば少くとも公取委員会が許可をした場合において、通産大臣が相談を受けてこれを却下してもそのまま通つて行くとおつしやるなれば、ここにある「当該事業に係る主務大臣に協議しなければならない。」という必要は現実的にはなくなつて来る、こういうことになるわけですが、そうしますとこれは削除してもいいということになりますか。
  84. 栗田英男

    ○栗田委員 おそらくこれが政府原案であるならば、答えを聞くと、公取委員会の認定基準とあるいは今の主務大臣の協議した場合においてはまつたく一致するのであろうという答弁を私はすると思いまするけれども、それは先ほども申し上げましたように、実際問題として公取の認定基準と、通産大臣がこの程度ならば許可をしてもよかろうという基準とは、必ずしも私は一致しないと思うのであります。しかしながら一致しない場合においても、十分この主務大臣の意向というものを公正取引委員会は聞いて、尊重いたしまして、これならばさしつかえないという範囲において認定を下すと思うのでありまして、この条項を削除する必要はありませんし、こういうことを加えておくことによつて公取委員会産業行政の実際面もよく承知することができますので、やはりこれを存置いたしまして、認定をするための参考にするためにも必要である、かように考えております。
  85. 中村時雄

    中村(時)委員 あなたのおつしやつたように、これを加えますと、かえつて今言つたように、片一方で許可をして、あるいは認定をして許可をして、そうして大臣がこれに反対をした場合において、今あなたのおつしやつたようなことになりますと、これはおそらく非常に問題になると思う。おそらく裁判権のいろいろな問題がここに出て来るのじやないかと思う。これを削除してしまつた方が、かえつてその点はつきりするように、私はあなたの答弁から受取れる。その点あなたはどうお考えになつているのでしようか。
  86. 栗田英男

    ○栗田委員 私はその点はあまりむずかしく考えませんで、やはり主務大臣意見というものは尊重する。尊重するけれども公正取引委員会というものは、独自の立場からこの認定基準において認可を与えて一向さしつかえない、かように考えております。
  87. 中村時雄

    中村(時)委員 だから独自の立場公取委員会が決定をするのですから、事実はそこに主体があるのであつて、何もこんな複雑なことをわざわざ云々する必要はないのじやないかと私は尋ねておるのです。これはお宅の話を聞けば聞くほど必要がないのです。あなたもうなずいている……。
  88. 栗田英男

    ○栗田委員 いやいやうなずいてはいない、あなたの言うことを聞いているだけです。
  89. 中村時雄

    中村(時)委員 だからこれは野党の立場からでなく、この文章の上から言つても、あなたの答弁の上から言つても、削除して、はつきりさせておいた方がいいのじやないかということを言つているのです。
  90. 栗田英男

    ○栗田委員 この主務大臣と協議するということは、これは前項の第十一項の規定にもあるのであります。これは主務大臣ではなくて、株式の処分をするときには、大蔵大臣公正取引委員会が協議するという項があります。どうして大蔵大臣と協議しなければならないというようなことを言つておるかと申しますると、この点は独占禁止的な立場からは、百分の十以上持つてつても一向にさしつかえない。そこで公正取引委員会はこれに認可を与える。与えるけれども、別な、たとえば銀行の経理の面、経営の面から、はたしてこれを許可してさしつかえないかどうかということで、大蔵大臣と協議をするということであつて、いわゆる認定をする上において、産業行政を主管するところの関係大臣意見を徴する、こういう意味において、主務大臣と協議しなければならない、かように加えたのであります。
  91. 中村時雄

    中村(時)委員 それは、片一方の方は現実的な持株の端数をはつきりと出している。片一方の方は、許可権という文字で全然本質が違つているのです。そこで、本質が違つているのを例にとつて来ることはおかしいのですが、これは何度も言つて堂々めぐりですが、そういう意味でなく、ほんとうに知性的に考えてもおかしいのです。たとえば「当該事業に係る主務大臣に協議しなければならない。」という必要はないのです。あなたのおつしやるように、良識があるならば、今言つたように行政機構の一方の調査権も持つているのですから、そういう調査もする、それでいいという決定もできる。決定もできた結果、たとえば通産大臣が反対しても、それを施行して行くだけの権利を持つとあなたはおつしやるのですから、さすれば、協議するのはかつてにできることで、法体系の上にこういう文章として表わす必要はないと考えるが、これは絶対必要なものかどうかということを言つているのです。     〔「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 佐伯宗義

    佐伯委員長 飛鳥田一雄君。     〔「待て待て、返事がないのか」「委員長、返事をさせなければいかぬ、最後の中村君に対する返答がないじやないか」と呼ぶ者あり〕
  93. 佐伯宗義

    佐伯委員長 中村君に伺いますが、回答はいりますか。
  94. 中村時雄

    中村(時)委員 だから、これはしようがなかろうな。
  95. 佐伯宗義

  96. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 さつきの続きですけれども、六十七条の二項で、裁判所が疑いのある場合において、認可を受けた行為を一時停止したり、あるいは命令を取消ししたり、もしくは変更をしたような場合に、その裁判所の決定の執行力というものはどういうぐあいにあるのでしようか。
  97. 横田正俊

    ○横田政府委員 これに対しましては、九十八条に一種の罰則がございまして、「第六十七条第一項」——ここへ今度第二項も入るわけでございますが、「の規定による裁判に違反した者は、これを三万円以下の過料に処する」この規定で執行をする、こういうことになるのであります。
  98. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、次の六十八条を読んでみますと、「事業者は、裁判所の定める保証金又は有価証券を供託して、前条第一項」ここに「第二項」が入るのだそうですが、「第二項の規定による裁判の執行を免れることができる。」こうなつております。そうすると、供託金を積んで今の執行をとめる、こういうことになりますと、供託金を裁判所に伺いを立てると、おそらく裁判所は何百万円、何千万円という供託金を要求すると思います。ところが供託金を積まずに、ずるく命令に従わないでどんどんやつて行けば、三万円の罰金で済む。こういうことははなはだ均衡を失しているのじやないかと私は思うんです。ずるいやつは三万円で済んじやう。まじめに供託金を積んで免れようと思う人は、五百万円も六百万円も保証金を積まなければならない。こういうようなことを法の規定の中に置いていいものかどうか。
  99. 横田正俊

    ○横田政府委員 この罰則の問題につきましては、実はまだ全額の点その他で、現行法の規定が少し古いものでございますから、現行のいろいろな他の罰則と比べまして、多少ふぞろいのところがございますが、大体の考え方は、裁判所が命令をしたような場合に、あえてこれを無視するということはよほどの場合というふうに考えられまずので、はなはだ金額は少いのでございますが、大体三万円というようなことで規定してございます。なるほどおつしやつたような多少の懸念がないではございませんけれども、一応現行法の規定でいいのじやないかと思います。
  100. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 どうでしよう栗田さん、今のように法律家であられる公正取引委員長も、その不均衡を認めておられる。こういう点についてあなたの御見解はどうでしようか。これは常識的なことだと思いますが……。
  101. 栗田英男

    ○栗田委員 これは公正取引委員長の考え方と同感であります。(笑声)
  102. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではどうでしようか。明白に不正直な方法をとる人は三万円で済む、まじめな方法をとる人は何百万円もの金がかかる、こういうやり方をひとつ改めていただくようにお願いをしたいと思います。と同時に、今公正取引委員会委員長お話ですが、裁判所の一応の命令があればそれに従うだろう、こういうことですが、これは個人としてならばそうかもしれません。しかし一つ業界の場合によつてはというよりは、通常何億という利益関係をする場合に裁判所の一片の命令だけでこの問題を解決して行く、こう考えることはむしろあまりにも人の善意を信じ過ぎると思うのですが、その場合にさらにさかのぼつて、たとえば——ほかの手続をとつた例を私は思いつきませんが、破産手続のような形、あるいは株式会社の役員の業務の執行を停止する仮処分、業務を停止するような方法ないしは新しい取締役を裁判所の命令でつくるような場合、こういうようなぐあいの何らかの方法を考えて取消しないしは変更を命じたような場合には、そこまでそのカルテルを突きくずすことについて——一時停止の場合ならば突きくずす方法を考えない限りはこの条文は空文に終つてしまうのではないか、こういうふうに考えるのですが、ひとつこの点についての御意見を伺わせていただきたい。ただ人の善意を信ずるだけでは意味がないと思います。
  103. 横田正俊

    ○横田政府委員 この法律を施行してみましてだんだんおつしやるような弊害が非常に出て来るということでございますれば、これは全面的にそういうような点を考え直さなければならぬことと思います。ことに罰則につきましてはわれわれ自身も非常に低きに過ぎる——前国会でございますか、確かに罰則が非常に低くはないかという御発言もあつたのでございますが、今回は大体実体規定だけを一応整備いたしましたので、今後それらの点につきましては十分研究いたしまして、適当な案がございますればまた改正案もお出しいたしたいと考えております。
  104. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今まではなるほどカルテルを全面的に禁止するという立場に立つてつておられたのですから、このような六十七条の一項、二項を適用して行くというような事例は少かつたのだろうと思います。しかし今度はカルテルを全面的にとつてもよろしいほど認めて行くのでありますから、当然それに即応してこの六十七条を適用しなければならぬ事態がしばしば現われて来るはずであります。もしまたこれを適用していただかなければ民衆の利益あるいは消費者の利益中小企業利益というものを速急に守つていただくことができないはずであります。むしろ六十七条はそういう意味で公取が今後真剣にカルテルを監視して行くということをお考えになる以上は最も重要な規定の一つになると思います。ところがその重要な規定の一つを今後時間があれば考えて行こう、あらためて機会を得て、こういうお話でございますが、それでは遅きに失しやしないか。むしろ公取の方の御決意のほどがここから底が割れて来るのではないか、こういうふうに私は思わざるを得ないのですが、この点についてもう少し——どうせ修正をせられたのでありますから、突き進んで公取がほんとうのカルテルの番人になり得るような手段をつくつておやりいただく方が修正案を出された側としても親切じやないか、こういうふうに思うのですが、これはひとつ栗田委員と横田公取委員長からお答えをいただきたいと思います。
  105. 栗田英男

    ○栗田委員 この六十七条の第二項の規定は公取が認可を変更あるいは取消しをするというときには審判手続を経てこれをやらなければならない。そこでその間に二月なり三月なり非常な期間がかかると中小企業者なりあるいは消費者に非常な悪影響を及ぼすというので、そういうことを防ぐためにこの第二項の規定というものを新たに設けられたのでありますから、これが実際の運用面においては審判手続というものを期間をきわめて早くやるように審決を得まして、こういう第二の、ただいま飛鳥田委員が言われたような弊害は実際運用の面において極力これをなくする、こういうような観点から運用をしていただきたい、こういうように考えます。
  106. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ちよつとお待ちください。議論になつて恐縮ですが、今までの公取の審決の期間というものを考えてみますと、そう速急にはできなかつた、これが事実です。今後もおそらく現在の公取のスタツフから考えてみると、そういう向きからふだんから出て来るわけには行かないと思います。それだけに今の栗田さんのお話の、その期間をどう押えて行くかということは重要な問題になりますし、その期間を押えて行く手段である第六十七条が絵に描いたもちのように罰金三万円払えばそれで済むものだというようなものでいいかどうかということを申し上げておるのであります。どうせおつくりになつたものですから絵に描いたもちでなく、もつと強固なものにして、その期間だけでもきつちり押えて行けるような形の修正を、もう少しこまかくなさる御意思があるかどうか、こういうふうに承つているわけであります。公取委員長も今申し上げましたように、その間に合うことでありませんので、この点についての御意見を伺わしていただきたいと思います。
  107. 横田正俊

    ○横田政府委員 この審判の手続は現在われわれのやつておりますことにつきましては、いろいろ御批判があるだろうと思いますが、このカルテルの取消し等の手続はできるだけ迅速にいたそうと思つております。ことにこのカルテルを認めましてから後ずつとそのカルテルの動きというものに絶えず心をいたして行くつもりでございますから、普通の事件よりはあるいは比較的早く処理ができるのではないかと考えております。しかしそれにいたしましてもやはり引延し作戦とかいろいろなことをも考えなければならぬので、その点は六十七条でそのギヤツプをできるだけふさいで行こう、こういうわけでございまして、これは運用面におきまして今仰せになりましたような御心配のないようにできるだけのことをしたいと考えております。
  108. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは横田委員長にお伺いをするのですが「六十七条第一項の規定による裁判に違反した者は、これを三万円以下の過料に処する。」となつていますが、その九十八条の三万円以下の過料に処すというのを三千万円と零をそこにお入れになれば簡単だと思いますが御修正の御意思はありませんが、ほかの条文に関係がないのですから……。公取委員長伺います、このいただいた修正案の中には修正がないのですが。
  109. 横田正俊

    ○横田政府委員 脱けているようです。
  110. 栗田英男

    ○栗田委員 あとで正誤の追加をいたしますからお許しを願います。
  111. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 三億ぐらいではいかがですか。
  112. 横田正俊

    ○横田政府委員 これはやはり先ほども申しましたように、罰則全体につきましていろいろつり合いの問題がございますので、どうもここだけを三億円というようなことは、ちよつとむずかしいのではないかと思います。やはり全体といたしまして、別の機会に十分検討したいと考えております。
  113. 佐伯宗義

  114. 山本勝市

    山本(勝)委員 ちよつと公取委員長にお伺いをしてみたいのですが、私は修正案の提案者の一人であるので、そういう立場で、もしこの修正案が通過いたしたと仮定いたしまして、その法の執行に当られる場合に、私はこういう点が問題になるというふうに考えておるのですが、それは公取カルテルの認可、不認可、あるいは変更の決定をする前に、主務大臣に協議をしなければならぬということになつておりますが、前ということになりますと、一日前でも前、二十日前でも前でありますから、法律的にいいますと、決定する直前に協議をして、まとまらぬからといつて独自の判断でつまり決定をするということができるわけでございますけれども、しかしながらこの修正案の原案となりましたものが修正されたいきさつは御承知通りでありまして、認可権は主務大臣にあつたのが、これが公取に移るように修正されるわけであります。しかしそういう政府の原案が、認可権は通産大臣が持たなければならぬという相当の強い要求でありましたが、それには主務官庁としては、また官庁の立場からのいろいろな理由があつたろうと思うのであります。そういうわけで、われわれとしてはやはり公取一本で行くべきだという結論で修正案を出したわけでありますけれども、しかしそれだからといつて、主務官庁の意見が、別に最終決定を動かすということはなくても、相当尊重せらるべきものであるということは、これは当然だろうと思います。従つてそういうカルテルの申請がありましたときに、ただちに主務官庁に連絡する必要はないと思います。ある程度お調べになつた上でいいと思いますけれども、しかし一応の目を通されて見当がつきましたら、できるだけ早く主務大臣に協議される。そうして主務大臣の方でもどんなカルテルの申請あるいはその他の申請が来ておるのかわからずにおつて、短い期間に結論を出すことがないように、そこを円満に十分協議の目的を達せられるよう、もちろん公取は、通産省に頭を押えられて盲判を押させられるようなことがあつてはならぬと私は思います。あくまでもこの法を施行する責任者として、権威を持つて臨んでもらいたいということは、これは動いては困るのでありますけれども、しかしそれだからといつて、その協議が法律上許されてあつたところということで、協議は名前だけで終ることのないようにやつていただきたい。この修正案が通つた場合に、責任者としての横田委員長の御所見なり御覚悟なりを承つて、記録にとどめておきたいと思います。
  115. 横田正俊

    ○横田政府委員 この修正案が成立いたしました場合、公正取引委員会が認可事務をどういうふうにとるかという点のお尋ねでありまして、私もまつたく御同感でございます。これはいきなり案を突きつけて、返事をすぐよこせというような態度はとらないつもりでございます。現にこれは中小企業の調整組合のいろいろな調整規定の問題、あるは輸出組合に関しまするいろいろな輸出に関する問題につきましてもそれは同意と認可という形にはなつておりますが、実際問題といたしまして相当前からいろいろ事務当局の骨折りで話をいたしまして、正式の書類が来ます際には大体話が済んでおるというような実際の動き方になつておるようでございます。大体そういうふうな事務は、行政官庁の間でございますから、事務がきわめて円滑に行くように、この法律の協議を求める趣旨に反しないようにいたしたいと考えております。
  116. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林進君。
  117. 小林進

    ○小林(進)委員 まず公取委員長にお先にお尋ねしたいのでありますが、それは前の質問の残りであります。この前に今公取でお取上げになつておりますインド、パキスタンの海運同盟に関する問題、最近の審判の内容を詳細に承り、経過もあわせてお尋ねしたいということを申し上げたのでありますが、それに対しては、近く資料をもつてというような御返答でしたが、今日に至るまで返答がないのであります。これは公取委員長以下はなはだどうも国会議員の質問を軽視せられているということは、大きな侮辱であると思うのであります。あわせて委員長も、委員長の席にいられる限りには、そうした問題は常時間断なく督促して、政府委員その他が答弁をごまかすことのないように、十分な監視を続けていただきたいと私は思うのであります。どうかそれに対する御答弁をお願いいたしたいと思います。
  118. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林君に申し上げますが、ただいまは修正案に対する質疑であります。しかしただいまのことはこれ一つだけは、横田政府委員から答弁をしていただくことにいたします。
  119. 横田正俊

    ○横田政府委員 先般お話がございました後に、一応あの同盟の内容なり、事件の審判開始決定等は、たしかこちらの委員会を通じまして、お手元へ差上げたつもりでございますが、もしお手元に行つておりませんでございましたら、さつそくお届けいたします。  それから審判の方は、実は相手が外国会社等がございますので、相当慎重にやつておりまして、今回数はちよつと覚えておりませんが、もう数回開きまして、いよいよ実質的な審理に入る段階にあると思います。
  120. 小林進

    ○小林(進)委員 これは重大な問題でありますからこれに対する質問はいけませんか。——よろしいならばまたあとまわしにいたしまして、それでは修正の問題をお尋ねしますが、いわゆる「当該事業に係る主務大臣に協議しなければならない。」これは先ほどから繰返されておる問題でありますけれども公取委員長が主務大臣に協議をしないで認可あるいは不認可をした場合に、その認可、不認可に対する法律上の効果は一体どうなるのか、これをひとつ提案者にお尋ねしたいと思います。
  121. 栗田英男

    ○栗田委員 このように、法に規定をいたしておるのでありますから、公正取引委員会といたしましては、主務大臣と協議をいたしまして——協議しないで認可をするということはないと考えております。
  122. 小林進

    ○小林(進)委員 これは実に提案者としては、うかつ千万な答弁だと思うのでありまして、現在でもやはりこういう独禁法という法律が厳然として存在するにもかかわらず、きようもここで数十回繰返されておるように、通産省はこの法律を無視し、あるいは公取委員会というものを軽視、無視して、操短勧告をやつたり、いろいろあるまじき行為をやつたり、あらゆる暴挙をふるまつて来たのでありまして、今日こういうような実に曖昧模糊なる法律を設けて、それを裏づけするような規則、政令ないしは、画然たる法律の規定がないならば、こんなものはほんとうに体裁である。宣言かあるいは綱領か、腐つた女のまくら言葉みたいなものである。しかもちつとも内容のない、くだらぬ、いらぬ、何も意味をなさない体裁だけの文章だと思う。それでありますから、もし協議しない場合には何条の何項によつてこれを行う。いわゆる公取委員長が協議しない場合は十万円とかなんとかの罰金に処するという罰則の規定がついてまわるような峻厳たる規定がなければ意味をなさぬ。こんな不体裁な価値のない法律はまずない。われわれ法律の番人である国会議員にとつては限りない恥ずべき条文であります。こういうような冗漫な言葉は省いて具体的なものを条文に入れて行くのがほんとうの法律なんでありまして、これはアメリカ法が入つて終戦後のわが日本法律に現われて来たはなはだしい悪法であると思つておる。ドイツ法ではこんな形はなかつた。終戦後出て来た。こういうようなことは大いにわれわれは慎まなければならない。もし相談をしなかつたらどういう形になりますか。どういう効果が現われて来るのか、具体的に承りたいと思います。
  123. 栗田英男

    ○栗田委員 私の考えでは、小林さんの御質問のような御懸念はないと思いますが、かりに公正取引委員会が協議をしなくて認可をいたしたということは、これはやや完全なる、いわゆる瑕疵ある認可ではございますが、これが法律的に無効であると断定することはできません。しかし今のように協議をしなければならないというのに、協議せずに認可したという場合、この認可は若干のきずがあるというだけで御了承を願いたいと思います。法律的には有効であると思います。
  124. 小林進

    ○小林(進)委員 今私ども何も政治論争をやつているのではないのであります。各法律の条文に基いて厳格なる法律の解釈の論争を続けているのであります。それを顔をしかめて若干の瑕疵あるというような、そういう言葉で、解釈が追いつくものではないのであります。いわば主管大臣と協議を経ずして公取委員長が認可した行為が、対外的に——それは対内的にはあるいは瑕疵があるかもしれません。あるいは対内的な道徳上非難の問題となつたり、政治上相反目するような問題になるかもしれませんが、そういうことで、対外的に効果があるか、あるいは無効であるか、取消しの原因になるか、取消しの原因が将来ずつと効果を継続するか、私はこの法律上の二者択一のお答えを求めているのでありまして、若干とか比率を求めているのではありません。明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  125. 横田正俊

    ○横田政府委員 ……
  126. 小林進

    ○小林(進)委員 公取委員長に私は質問をしているのではないのでありまして、公取委員長に対する質問はたくさん持つているのでありますが、委員長が私の質問を封鎖したのでありますから、私は公取委員長に対する質問はやめたのでありまして、提案者に私は御答弁をお願いいたすのであります。
  127. 栗田英男

    ○栗田委員 今小林委員から特に提案者にということであります。私の考えていることは、かような認可をいたしましても、これは有効であると考えております。
  128. 小林進

    ○小林(進)委員 有効であるという御答弁は対外的な善良なる第三者に対して有効であるのか、許可をした当時者に対して有効であるか、通産省の所管大臣そのものに対しても効力があるとおつしやるのか、その有効ということを特に厳格にお示しを願いたいと思います。
  129. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林委員に御相談申し上げますが、法的問題は担当者である横田政府委員の答弁でごしんぼう願います。
  130. 小林進

    ○小林(進)委員 委員長の申出をあくまで拒否するわけではございませんが、提案者は何も栗田君一人ではないのでありまして、そこには山本老博士もいるわけであります。何でしたら山本老博士の答弁でもけつこうであります。もしそれが不可能でありますれば、自由党の提案者諸君どなたでもよろしい、そうそうたる連中がおられるのでありますから、そこにすわつて御答弁願います。
  131. 山本勝市

    山本(勝)委員 小林君に申し上げますが、法律上の答弁ならば法律専門家に聞くのが一番いいのでありまして、ただ政治的な返事をしろ、こういうことならば、それはいたします。しかし今ちよつと相談いたしましたが、こういうことらしいのです。協議をしないということは実際上はあり得ない、こう信じておるのですけれども、かりに何かの間違いで協議がなかつた、それで認可なら認可になつた、あるいは不許可になつたという決定がされた場合に、たまたまそれがなかつたからといつて、その決定はただちに本来無効なものとは言えない、しかし取消し要求の理由にはなる。しかしそういう手続を経て、無効なら無効になる、あるいは有効にきまるのであつて、そのことがなかつた、協議がなかつたから、ただちにそれは本来無効とは言えないという意味で答弁されたと思います。
  132. 小林進

    ○小林(進)委員 これは重大な発言であると私は思います。一旦認可をされた問題が、いわば一つの認可が取消しの原因になるということは、経済界に及ぼす弊害は実に甚大である。それはもちろん今のお考えを持つた公取委員長がそこにおられて、通産省あたりと協議をしないで認可するようなことはあり得ない。今の公取委員長はそう考えられるかもしれない。しかし法律は一応無限であります。公取委員長の生命は短いのであります。無情の風が吹けば、あすたりともおだぶつとなつて、白骨化するかもしれない。今度はかわつた公取委員長が出まして、そうして何か業者からの圧迫を受けたり、そでの下に黄金の波がただようかもしれない、そうしたときには、遂には通産大臣と協議をしたがごとくせざるがごとく認可するというようなことを、十年先、二十年先だれが一体保証し得るか。そういうことを考える場合に、われわれは今日の公取委員長意見をもつて、所管の大臣と協議をしないで認可をするというような、法律上の根拠がない、口頭の言質としてこれを承認するわけには行かない。これはあくまでも追究しなければならない問題でありまして、協議をしないで認可をした場合において、一体その効果がどうであるか。無効の原因にはならないけれども、取消しの原因にはなるということになるならば、これは重大な問題であります。経済界に甚大なる影響を及ぼす問題であると思う。ほんとうに無効となるのか、取消しにも、無効にもならないのか、あくまでも対外的には効果があるのか、いま一回明快たる御答弁を願いたい。
  133. 栗田英男

    ○栗田委員 対外的に効果がある、かように考えております。
  134. 小林進

    ○小林(進)委員 その効力がありますというその効力は、先ほど言いましたことを繰返しますが、善良なる第三者に対してのみ効力があるのか、認可をした当事者にも効力があるのか、内部へ来て通産大臣通産省、所管官庁そのものに対しても効果があるのかどうか、これをお伺いしたい。
  135. 栗田英男

    ○栗田委員 そういうことは現実面としてあり得ないのでありまして、ただそういう仮定々々を無限に出されて、この場合は、この場合はということでは、答弁に非常に苦しむのでありまして、対外者に対して効果があるということで、賢明なる小林委員の御了承を得たい、かように考えます。
  136. 小林進

    ○小林(進)委員 これは重大な問題であります。賢明なる小林をもつてしようとも、これは賢愚の問題ではないのであります。まさに国会の威信に関する重大問題であります。もし対外的に効力があるとしても、これは通産省と協議のととのわざるものである、それが取消しの材料である、あるいは公取委員長通産省が内紛を生じて争う、あるいは善良なる第三者が損害を受ける、こういうような場合が予想されるのでありまして、どうしてもこれが答弁できないならば、公取委員長でけつこうでありますから、公取委員長からこのことについてひとつ御答弁をお願いしたい。
  137. 横田正俊

    ○横田政府委員 私の考えは、かりに通産大臣に協議いたしませんでも、その認可いたしましたものは有効であるというふうに解釈しますし、また通産大臣に相談をしないで、審決で却下をいたしました場合は、その却下に対しては、東京の高等裁判所に不服の申立てができますから、その過程におきまして裁判所で適当に参酌されるものと考えます。
  138. 小林進

    ○小林(進)委員 その有効であるという効力を発生するその効力が絶対的な効力を持つのか、相対的な効力なのかを私はお伺いしているのでありまして、たとえて言えば、通産大臣がその効力を認めざるを得ないのかどうかの問題であります。
  139. 横田正俊

    ○横田政府委員 認可の効力は相対的も何もないのでありまして、結局全体に対して有効であるということであります。
  140. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題はまだ幾多の疑義が私はありますが、次にいま一問私はお伺いしたい。  今はすなわち協議をしなかつた場合でありますが、今度は協議がととのわなかつた場合を提案者にお尋ねしたいのであります。公取委員長が通産所管大臣に協議を申し込んだが、協議がととのわなかつた場合に対しては一体どういうことになりますか。
  141. 栗田英男

    ○栗田委員 協議がととのわなかつた場合におきましても、公取委員長はこの認可申請が独禁法にはたして適応するかどうかという認定基準によつて認定を下して認可をすればさしつかえないと思います。
  142. 小林進

    ○小林(進)委員 私は栗田委員の答弁に対しまして意見を申し述べる前に、まず法律の体裁から行きまして、「当該事業に係る主務大臣に協議しなければならない。」という条文を挿入したからには、協議がととのわざる場合には云々という反対の条文が必ずなければならぬと私は思う。ここを訂正せられて、それを挿入するお考えがあるかないか。法文としては非常にまずいのでありますが、それをお伺いしたいと思います。
  143. 山本勝市

    山本(勝)委員 これまでそういう例は国会を通過した法律にたくさんあるのです。
  144. 小林進

    ○小林(進)委員 もしそういう前例があるなら、それを具体的にここでお示しを願いたいと思います。
  145. 山本勝市

    山本(勝)委員 賢明なる小林委員は十分承知しておられると思う。それ以上仮定の上、仮定の上とやられなくても、どうですか、この辺で御了解願えませんか。
  146. 小林進

    ○小林(進)委員 これは私は決して提案者をいじめるというのではございません。そしてまた先ほどからしばしば賢明なる小林委員、賢明なる小林委員という尊敬のお言葉をちようだいいたしますが、その言葉がほんとうのお気持なら、願わくは廊下においても、控室においても賢明なる小林君と呼んでもらいたい。こういう答弁をする場合にのみ賢明なる小林君というように、とつてつけたように言われることは私は非常に遺憾に考えるものであります。(笑声)そういう意味において、お言葉も十分慎んでお教え願いたいと思うのであります。それはそれにいたしましても、もしそういう前例があることを認めるといたしましても、そういう前例は非常に悪い前例であると私は思う。山本博士は法律条文は非常に熟知せられていると思うのでありますけれども、そういう従来の法律から言つて、体裁の整わない法律を、もうこの辺で妥協しようじやないかというようなことは、国会においてあまりとるべき態度ではないと思うのでありまして、やはり協議しなければならないという条文があるならば、正しい法文のあり方としては、協議がととのわなければ云々という反対条文というものが入つてこそ、完全な、はずかしくない法文ができ上ると思うのであります。これは私は討論の場合にも申し上げたいと思うのでありますが、この独禁法は単なる国内法ではございません。国際法であります。国際的に効力を発揮する法律でありまして、今日わが日本でこういう法律ができ上つたということは、デンマークの果てへ行つても、スイスの果てへ行つても、南米の果てへ行つても、日本にはこういう独禁法ができ上つたというので、世界各国の法律学者がみな手にして一応研究する法文であります。そういう重要な法律を、つまらない妥協に基いて、そういう重大なるミスを承認しながら、われわれがこの法律を通過させるということは、日本国会の恥を世界にさらすことにもなるのでありまして、こういう点は私は提案者も十分御考慮願いたいと思うのであります。そういう反対条項を挿入する必要はあるとお認めになるか、必要はないとお考えになつているか、いま一度明快な御答弁を願いたいと思います。
  147. 栗田英男

    ○栗田委員 この協議がととのわなかつた場合というのは、私は先ほども申し上げましたように、公正取引委員会は認可条件をどんどんしぼつて来るのであります。またこの主務大臣の方はどちらかと申しますと間口を広くしようという点から、私は協議がととのわないのではないか、かように考えておるのであります。従いまして協議がととのわなかつた場合において、公正取引委員会が一方的に認可をいたしましても、独禁法の目的であるところの一般消費者の利益を確保するという点におきましては、いささかもそこなわれないのでありまして、小林委員の御疑念は、私はこの点で御解明できるのではないか、かように考えるものであります。
  148. 稲富稜人

    稲富委員 関連して……。ただいま議論の対象になつておりますのは、当該事業にかかる主務大臣に対する協議の問題でありますが、協議というのは、まとまる場合とまとまらない場合とあるのであります。しかも法律において協議しなければならないということをうたつていることは、絶対的なものでなければいけないので、その絶対的な条件であるところの協議がもしもととのわなかつた場合、先刻から話を聞いておりますと、その点がはつきりしていないということは、立法上非常に不都会品があると思う。この協議しなければできないという絶対的な条件を、立法者はいかに考えておられるかということを承りたい。
  149. 横田正俊

    ○横田政府委員 便宜私から申し上げますが、大体ある官庁が主となりましてある行政行為をする場合に、他の官庁の同意を得るとか、あるいは協議をするとかいうことが、ほかの場合にはたくさんあるわけでございます。この言葉の使いわけは、同意の場合は、同意がなければ絶対にその行為ができないというふうに解しておるわけでございますが、協議の場合はそれほどの強さがないのでございまして、一応相談の打切りをするというだけの意味しかないというふうに、最近の法制局等では、大体そういう言葉の使いわけをしておるようでございます。
  150. 稲富稜人

    稲富委員 この協議の問題は、ただいまの御説明によりますと、非常に弱いようでございますが、申請を却下するという重大なる結果を生み出すわけであります。この却下するという重大なる結果を生み出す法文を、協議するというような、今の御説明のような弱いことでこれを定義づけるということは、そこに法の精神上非常に疑義があると思う。それで、これを協議することが非常に必要であるならば、主務大臣の認可を受けるとか、そういう強い意味にするか、さもなければ、弱いものであれば、疑義を生ずるような文句を削除すべきであるか、どちらかにやることが必要であると思うのでありますが、提案者にその精神を承りたい。
  151. 栗田英男

    ○栗田委員 同意になりますと二本建になるのでありまして、私は協議という現在でよろしいのではないか、かように考えております。
  152. 稲富稜人

    稲富委員 今の栗田さんの答弁は私の質問の的を離れておる、そういうように非常に弱いことでごまかされようとするところにこの法の立法の精神に非常に疑義があると思う。そこで私ただいま質問しましたのは主務大臣に協議をする、協議というものはまとまる場合もまとまらない場合もある。そういうような弱い条項でこれをここに表現しようとするならば、まとまらなかつた場合はどうするのだというさらに別な条項を設けることが必要であると思う。しかもこれを今言われるような弱い条項で行けば先刻から申し上げましたように、却下する場合にこの協議するというものが空文と同じことになつて来る、空文だとこういう条項は置かないでもいいのじやないか。しかるにこれを協議しなければならないということに立法者が強く考えられるならば、認可をする、こういう強い文句を持つて来ることが必要である。どちらにも寄らないような条項をここに設けておくということは、将来の運用上疑義を残すことになるので、これを明らかにすることが必要である、こういうことから私は質問をしておるのであります。
  153. 栗田英男

    ○栗田委員 私は、あなたはあまり出席をしないで突然こういう委員会に出て来たから、そういうふうな疑義を持つておるのだと思いますが、これは今までの速記録をごらんになれば十分わかるのであります。この協議ということは産業行政立場から主務大臣意見を尊重しようということで、公取委員会が認定にあたつて協議をするのであつて、協議がととのわなかつた場合には、当然公取委の立場から認定をいたしまして、認可してもいささかもさしつかえない、かように了承していただきたいと思うのであります。
  154. 稲富稜人

    稲富委員 しからばこの協議しなければならないというこの文句を削除したらどうでありますか。私は法律上の解釈を言うのであつて、何も私が初めて来たから事情を知らないとか、出席が少いからこれに対する論議が少いとか、そういうことを主張することは最も委員の権限を無視する暴言であると思う、かようなことはお取消しを願いたいと思います。
  155. 栗田英男

    ○栗田委員 この問題は当該委員会においてしばしば論議をされたのでありまして、決してあなたの御出席を軽視して私がそういうようなお答えをいたしたのではありませんので、その点御了解を願いたいと思います。     〔「質問なんかしてないよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  156. 佐伯宗義

    佐伯委員長 お静かに願います。
  157. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の協議の問題ですが、御説を聞いておりますと、協議ということではなくて、実体はその意見を聞く、こういうことだと思います。今までのいろいろな法律を見ましても、協議するという形で現われておる文句は少くて、あるいはその意見を聞くという形の方が多いと思います。従つてこの場合でも当該事業にかかる主務大臣意見を聞かなければならない。こうなさる方が議論の余地はないと思いますが、こういうふうにお改めになる御意思があるかないか。  もう一つは先ほど来の協議の問題についてはいろいろ山本先生のお説もありました。山本先生のお説を伺つておりますと、協議しない場合は瑕疵ある行政行為のように聞える。ところがあなたのお話を聞いてみると、何でもないように聞える。ひとつここで協議ということは認可という行政行為の有効要件であるのか、成立要件であるのか、そのいずれでもないのか、ひとつ最後に明確にお答えいただきたいと思います。
  158. 栗田英男

    ○栗田委員 先ほど同意、協議の問題が出まして、通常官庁では同意、協議ということで運営されておるというようなことで、私は協議ということにいたしたのでありますが、ただいまの飛鳥田委員の御意見をお聞きいたしますと、意見を聞かなければならないということになりますと、むしろ協議というよりも何か拘束を受けるのではないか、かように考えますので、やはり修正案通り「協議しなければならない。」ということが適当ではないか、さように考えます。
  159. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 意見を聞かなければならないというのは、意見がよくても悪くても、一通り聴取すればよろしいという意味です。他の法律はみなそういう形に書かれておりますが、拘束は決してされないというふうに解されておる。
  160. 横田正俊

    ○横田政府委員 協議をしなかつた場合の効力につきましては先ほど御説明申し上げましたように、私は効力に影響はない、その意味で有効要件ではないというふうに言つていいかと思います。
  161. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の栗田さんの御答弁に誤解があると思います。たとえば保釈をいたします場合、裁判所は「検察官の意見を聴かなければならない。」こういうふうに書かれておる。これは「協議をしなければならない」とは書いてない。その場合に検察官の意見が保釈しかるべきであろうと、保釈はいけないであろうと、意見は何であろうと、ともかく一ぺん意見を聞きさえすればよい、こういうことになつておる。その他の法律についても大部分そういうふうになつておりまして、そうすると他の法律と文句を合せる意味でも、また同時に今出ましたようないろいろな疑問を防止する意味でも、意見を聞かなければならない、こうすることの方が立法技術上すなおであり、しかも明白になる。こういうふうに思いますが、さようお改めになる御意思があるかどうか、それだけお伺いいたします。
  162. 横田正俊

    ○横田政府委員 協議というのは、特定中小企業の安定法の中にもありますすし、たしか輸出取引法の中にもあつたと思います。行政官庁間の問題につきましては割合に最近たくさんあるように思います。意見を聞くというのも、もちろんその意見に拘束されないという点では同じであります。そういう二つの書き方がございまして、協議という方をおとりになつたようであります。これも私はけつこうなのではないかと思います。
  163. 佐伯宗義

    佐伯委員長 以上で修正案に対する質疑は終了いたしました。  この際修正案につき栗田英男君より発言を求められておりますから、これを許します。栗田英男君。
  164. 栗田英男

    ○栗田委員 先ほどお手元に配付をいたしました修正案文につきまして正誤がありますので、これを追加いたします。  第九十八条の改正規定中第九十八条中の下に「「第六十七条第一項」を第六十七条第一項又は第二項」に、」を加えていただきたいと思います。  理由は緊急停止命令等違反に対する過料を定めた規定の中に、修正案に設けました第二項の規定を含めたものであります。  次には附則の第十七項を削り、附則第十八項を附則第十七項として、以下第一項ずつ繰上げていただきたいと思います。このように御訂正を願いたいと思います。  この理由は百工会議所法の一部改正案は衆議院を通過し、現在参議院で審議中で、近く通過の予定でありますので、この附則から削りたいと思うのであります。以上で提案理由の補足の説明を終ります。
  165. 佐伯宗義

    佐伯委員長 続いて原案及び修正案を一括して討論に付します。討論は通告の順に従つてこれを許します。
  166. 栗田英男

    ○栗田委員 ただいまの補足説明に対してさらに補足をいたします。第六十八条の前条第一項の下に、前条第一項及び第二項の規定によると、これを第二項を第六十八条中に加えます。第一項及び第二項——今法制局の力から御注意がありまして、第一項または第二項と訂正いたします。以上であります。
  167. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 法制局の方にお願いいたします。修正案をつくりますときには、議員はそう専門家ではありませんから、しかもこういう重大の問題が落ちていないように御協力をいただきたいと思いますが、職務怠慢だと思います。今後御注意をいただきたいと思います。
  168. 佐伯宗義

    佐伯委員長 飛鳥田君の注意は今後御注意願います。  では小笠公韶君
  169. 小笠公韶

    ○小笠委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題になつておりまする私曲独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、先ほど提案になりました修正部分を含めて賛成の意を表すであります。  御承知通りに、今日の日本経済状態を冷静に考えてみまするとき、われわれは特需経済からの脱却、新しき日本経済の再建に邁進しなければならぬときに相なつておると思うのであります。かくて今日の日本経済が新しいスタートをしなければならないの外ありまするが、翻つて考えてみまするときに、日本の国の経済力の弱さ、経済の底の浅さは私から申し上げるまでもないのでありまして、日本経済が世界経済につながり、世界の景気の変動はただちに日本経済に影響するの状況にあるのでありまして、経済の底が浅いがゆえに、その景気の波動は不必要に高いこと、われわれが数年来すでに経験して参つたところであります。私はかくのごとき事態に対処いたしまして、日本の国の景気の大きな波に対して、最も欠点的に出て参りますものは、景気の波動に応じて日本の各企業は不必要なまでの競争をあえてするの事実であると思うのであります。すなわち経営が合理採算の上に立つべきであるにもかかわりませず、これを無視して、血みどろの競争をするのおそれ少しとしないのであります。今日日本といたしましては、乏しき資源をできるだけ尊重し、尊き労力をできるだけ有効に活用することが最も大事なのでありまして、この意味からいたしまして、不必要なる競争、企業が自己崩壊をするまでの競争をできるだけ押え、できるだけ避けて行くということの必要を感ずるのであります。この意味におきまして、私は今回政府の提案せられました本改正法案は、これらの事態に対処して、経済の民主化の線との調和点の発見に努めておるものであると思うのであります。私的独占禁止に関する考え方につきましては、いろいろの考え方があるでありましようが、自由、公正なる競争を経済秩序の基本といたしておりまする今日におきましては、われわれは企業の不必要なる自己崩壊を守る意味におきまして、今回の改正案は必要であると考えるのであります。もとよりこれが運用にあたりまして、経済は生きものであり、時々刻々と変転をするがゆえに、この経済の変転の動向に対処してこれが運用に当る政府機関におきましては、十分なる決意と機敏なる行動とを特に希望いたす次第であります。特に法律の知識のみをもつてはこの改正の要点を十分に運用して行くということの困難なことは、私が申し上げるまでもないのでありまして、経済の実態をよく洞察せられまして、運用に誤りなきことを特にお願い申し上げまして、私は本改正法案に対して賛成の意を表するものであります。
  170. 佐伯宗義

  171. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、この法案に対して反対の意思を表明するものであります。この法案に対して私たちが反対をいたします理由は数点ございます。その一つ一つについて以下申し上げたいと存じます。  この法案は申し上げるまでもなく、今までの経済民主化を行おうとしておりました態度に対して、株式の保有とか、役員の兼任とか、そういうものを認めることによつてトラストを認め、あるいは一定の条件のもとに不況カルテル、合理化カルテルを認め、さらには再販売価格の維持契約を認めるというような形で、実はこの民主的な経済運行に対して独占的な、しかも時代に逆行するものを持ち込もうとしておるのであります。まずこのトラスト問題について考えてみましても、最近日本経済において最も顕著なものは兵器産業を中心とする一つの再編成であります。たとえば住友金属が兵器メーカーであります小松製作所を自己の傘下に収め、さらに迫撃砲メーカーであります大阪機工の株式の大半を保有するとか、これに重役を送るとか、さらにはまた飛行機生産の花形でありました中島飛行機の第二会社である富士精密工業の株式八割を保有する、あるいは富士工業には住友銀行の幹部が派遣されるとかいうような事実が顕著であります。また三菱財閥というものを見ましても、旧三菱重工の復活は目前に迫つております。三菱造船はかつて軍艦をつくつておりました。新三菱重工は航空機生産で有名であります。三菱日本重工、東京機器、川崎機械製作所ではすでに米軍の戦車とか重車両とがいうものをつくつております。さらにまた横浜造船でも、戦車を製造しようといたしつつあります。こういう一つの兵器産業を中心とする財界再編成が行われ、しかもその下にある下請企業をすべて資本的に拘束をして行こうとするのが一つの事実であります。こういうものを今この独禁法を改正することによつて公然化せしめようとする、こういうのがこの独禁法の使命だと考えております。こういうことがはたして日本の平和経済にとつて仕合せなものであるかどうか。またさらにさかのぼつて岡野さんの主張しておりまする平和的な経済自立計画というものに逆行しないものかどうか。はなはだ疑いなきを得ないのであります。しかもこのように縦に一つ産業が系列を持ちますことは下請企業に働いておりまする労働者の労働条件を非常に悪化せしめるものである、こういうような条件から考えて参りますると、このトラスト許容の方式というものは、日本経済をして非常に異質のものたらしめて行くであろう、こう想像せざるを得ないのであります。またさらに新聞に常日ごろたくさん現われておりまするが、金融資本がいろいろな形で、日本産業支配を行いつあります。この改正案は今までの金融機関が他会社の株式保有率を高めることによつて、金融資本制覇の道をさらに開かんとしておるのであります。こういう点から考えますると、この委員会における論争の焦点はカルテルに集中をいたして参りましたが、実は一番この法案の影響するところはトラスト化にあるのではないか、こういうふうに考えるのであります。日本経済が今軍事化して行こうとする動向にありまする現在、このようなトラスト化を認めますことは、気ちがいに刃物を持たせるようなものであります。そういう意味で私たちは、このトラスト化を許容しようとするところのこの法案に対して、断じて賛成をすることはできないのであります。これが私の考えておりまする第一点であります。  第二点の問題は、同様カルテルの問題になつて参りまするが、これは今まで委員会の論争の過程において、カルテルというものを認めることは、むしろ企業の隆盛をもたらすものであり、場合によつては自由競争を促進するものだ、今まで一人々々でけんかをしておつたものが、隊を組んでけんかをすることも一つの自由じやないか、こういうような御議論もあつたと思います。しかしここで私たちは考えてみなければなりませんことは、隊を組んで戦い得るものはだれであるか、こういうことであります。カルテルによつて利益を享受することのできるものはだれであるか、少くともこの点について、われわれが冷静に考えて参りまする場合に、それは少くとも大企業にしかカルテルによる利益を享受することはできないのであります。言つてみまするならば、この法案を十分に享受することのできるものは大企業である、こういうふうに申し上げてさしつかえがないと存じます。中小企業はこのような法案が現われますことによつて、かえつて企業利益の反対を受けてしわ寄せをこうむつて行く、こういうふうに申し上げないわけに行かないのであります。たとえば昨年通産省が行われました綿紡に関する操短勧告についても、一九五二年中の繊維業者倒産は二百十八件に及んでおります。これはすべて中小企業であります。さらにその負債総額は九十七億余に上つております。これが中小企業の本法によつてこうむつて行くべき未来図であります。さらにまた一般の労働者はどうであるかという点を見てみまするならば、同様操短勧告が行われました綿紡績界において、三万六千人に上る男女労働者が首切りをせられました。さらにまた残つた労働者、首を切られずに済んだ労働者の人々の労働強化は、会社の統計によつても明白になつております。こういう点から考えて参りますると、カルテルを享受することのできるものは大企業にしかすぎないのではないか。しかもそのしわ寄せを受けて行くものは中小企業者であり、そして労働者である。そして最終的には価格を維持し、つり上げられることによつて、高いものを買わせられる消費者である。このように考えざるを得ないのであります。こういう大企業にだけ利益を与えるところのこのような法案に対して、私たちは単に日本経済が底が浅い、このような言い訳によつては許し得ないものがある、こう考えざるを得ないのであります。たとえば日本経済の底が浅い、こういうお話でありまするが、先ほども私が岡野大臣にも質問いたしましたように、当然この日本経済を救つて行くべきものとしては、政府が先頭に立つて海外市場の開拓を行つて行かなければならない。同時に安い原料を引き入れて行くような方策を行つて行かなければならないのであります。このような諸施策をサボタージュしておいて、しかもサボつておいたあげくに、日本経済の底が浅いなどというようなことは、私たちとしては受取れないのであります。このような底が浅いというような言い訳によつて、今度はまた大企業にのみ利益を与えんとする、こういう形が現われて来ることに対して、私たちは断固として反対せざるを得ないと思うのであります。  このような原則的な問題について今申し上げましたが、さらにそれでは、この法案自体について考えてみましてもどうでありましようか。一歩私たちがしりぞいて、資本主義経済政策のわく内において考えてみましても、どのようでありましようか。ここでまず皆さん方に御注意をいただきたいと思いますことは、一萬田日銀総裁は、このカルテル政策について反対の意見を表明せられておるのであります。また川北興銀頭取におかれましても、このような形でカルテルを安易に許すことは、かえつて企業の合理化の努力を弱めて行くものだ、困つたものだ、こういうふうにすら言われておるのであります。一体日本経済界の相当なる権威者であらるるこのお二方が、かくもはつきりと断定せられておるものが、どうして一貫した経済政策と言い得るでありましようか、こういう点から考えてみますると、むしろカルテルは資本主義経済政策のわく内においてすら、企業の合理化の努力を弱めて行くものだ、こう考えざるを得ないのであります。いたずらにカルテルの上にあぐらをかいて、そしてその負担を大衆に押しつけることによつて、大企業利益して行く、こういうことが資本主義的な経済政策のわく内においても許し得ざることは明白でありましよう。またさらにこれを輸出との関連から見ましても、カルテルを容易に許容いたしますことは、すなわち国内価格を高くつり上げておいて、外国に対してダンピングを行う余地を多からしめるのであります。日本は終戦までの間ダンピングによつて世界市場を荒しまわつた札つきの国であります。今私たちがこのようなカルテルを許容する法律を認めまするならば、世界中は、日本の再び行われるであろうダンピング政策に対して、恐怖の念を持つことは間違いがないのであります。かくして私たち日本が、せつかく平和のうちに輸出振興を行つて行かんとする心持を持つておりながら、現実には逆の結果をもたらしてしまうであろうことは明白であります。先ほど岡野大臣に対する質問に申し上げましたが、すでにアメリカの国内においてすら、木ネジ産業の代表者とか、光学機械の代表者とか、こういう人々は、政府に日本品に対する保護を求めております。まぐろ、ミシン、絹スカーフ、こういうような業者もまた関税を引上げることを求めておるのであります。こういうものと日本の現在とを考えてみますならば、カルテルを許容することは、すなわち日本の輸出振興を妨げるものであることは、もうあらためて申し上げるまでもないことだと考えるのであります。こういうふうにいたしまして、私たちは資本主義経済政策のわく内においても、相当な矛盾撞着をこの法案が含んでおることを認めざるを得ない。同時にまた政府の怠慢を故意に隠しておるのだ、こういうことを考えざるを得ない。先ほど申し上げました海外市場の開拓とか、安価な原料資源の獲得とかいうことをサボタージユしておるその罪をこういう法案の形で補つて行こうとする態度に対して、一種の反情を覚えないわけに参りません。  さらに進んで、今度は法律自身の内部に至つてみましても相当な問題があります。たとえば公取委員長お話によりますと、この法案で認めますカルテル任意カルテルである。任意カルテル以上のものは認めないのだ、こういうふうにおつしやつておられますが、実は二十四条の三の一番最後の条件をてこにいたしまして、強制カルテルが密輸入せられておる、こういうことを私たちははつきり見ないわけには行かないのであります。さらに認可の取消しの問題につきましても、なるほど悪かつたら取消す、その条件がいらなくなつたら取消す、こういうふうに述べておられるのでありますが、しかし一ぺん進行してしまい、各企業の中に経営の質的変化をももたらしてしまうカルテルを一片の行政行為で取消し得るのかどうか、このようなものもうわべだけは体裁を整え、実は何らの産業界に対する実力も持ち得ざる形を表明しておるのでありまして、こういう形が法自身として相当な欺満であることは明白であります。こういう点から考えて参りますと、私たちは広く大衆の立場に立ち、広く中小企業立場に立ち、それのみではなくして、広く日本の平和経済立場に立つて、この法案に対しては徹底的なる反対をしないわけに行かないのであります。  またいろいろな修正が施されましたが、この修正案によつては、今申し上げましたようなこの法案の持つております根本的なる問題をとうてい救い得ないのではないか、こういうふうに私たちは信じておるのであります。  非常に簡単に申し上げましたが、日本社会党はかくのごとくこの法案に対して反対をいたすものであります。(拍手)
  172. 佐伯宗義

    佐伯委員長 栗田英男君。
  173. 栗田英男

    ○栗田委員 私は改進党を代表いたしまして、独禁法に対する三派共同の修正案並びに修正部分を除く政府原案に対し賛成の討論を行わんとするものであります。  わが国財界の一部において独禁法自体が日本経済にとつて有害なりとしてこれを大幅に緩和するか、しからずんば全廃すべしという論はしばしば耳にするのであります。しかしながら独占資本の弊害が消費者大衆の生活を脅かし、かつまた中小企業に致命的脅威を与えて来たことは私どもの記憶に新たなことであります。従つて日本経済民主化の基本法たる独禁法の改正いかんによつては、国民大衆の犠牲において大企業を擁護することとなり、これが改正はきわめて慎重を要することは論をまたないのであります。しかるに今回の改正案は、その内容はきわめてあいまいであり、しかも改正の意図するところは一部財界の鼻息をうかがい、わが国経済の健全なる発展を阻害する幾多の要素を包蔵しているのであります。わが党はこの点を深く憂いまして、さきに修正案三点を立案いたしたいのであります。  すなわちその一点は、改正案カルテル行為認可機関を主務大臣とし、公正取引委員会の認定を得なければならぬとしているが、主務官庁を認可機関とするときは、統制経済誘致の危険濃く、かつ一般消費者の利益を確保する独禁法の根本目的を阻害するおそれがあり、しかも認定、認可両対等機関を存置するがごときはかえつて事の迅速処理をいたずらに妨げるにすぎないのであつて、認可機関はあくまで独禁法の趣旨を尊重し、公正取引委員会一本を主張したのであります。  第二点は、価格協定を認めることは、不況克服のため真剣な努力を怠り、安易な価格維持政策に走り、需給均衡のため必要な操業短縮を避け、国内価格は価格協定によりつり上げ、それによつて得た独占利潤をもつて過剰商品を国外にダンピングする危険性がきわめて大なるものがあり、カルテルを一切認めていない現独禁法のもとにおいてすらかくのごとき事態はすでに生じているのであります。特に基礎原料の価格協定は、国際水準に比して常に高価格に悩み、わが国産業にもたらす悪影響はなはだ重大なるにかんがみ、本項の全面的削除を主張いたしたのであります。  第三点は、中小商工業者の育成強化と零細小売者の生活安定のため再販売価格維持契約の十一団体適用除外は、この契約の効果を著しくそこなわれるので、これを除外さるべきでないと主張したのであります。  以上三点の主張は、実に進歩的政党たるわが党の良心であつて、自由党は粛然として頭をたれ、両派社会党の諸君といえども拍手を惜しまざることを信じて疑わないのであります。しかるにこれが交渉の過程において、第一点の主張はこれを貫徹し得たのでありますが、第二、第三点の主張を貫き得なかつたことは、まことに遺憾とせざるを得ないのであります。しかしながら、わが党の強き主張たる公正取引委員会が認可権を専管することにより、第二点の安易に価格協定につく不安は解消し、第三点は、部外者に対する販売はかたく禁ずるという委員会の活発なる発言によつて、当該団体に反省を求めることにより、わが党の主張はおおむね達し得たのであります。  最後に、本改正案の通過によつて公正取引委員会の職責はけだし重大であり、国民大衆の同委員会に対する期待もまたきわめて大なるものがあるのであります。何とぞ公正取引委員会は独禁法本来の使命である一般消費者の利益の確保のために、いかなる迫害にも屈せず、いかなる誘惑にも陥ることなく、清廉剛直、その職責を遂行せられんことを希求し、私の討論を終ります。(拍手)
  174. 佐伯宗義

    佐伯委員長 小林進君。
  175. 小林進

    ○小林(進)委員 私は社会党を代表いたしまして、ただいまの独禁法改正案に反対意見を申し述べんとするものであります。  資本主義の最大の悪は、まず第一に資本による搾取と、それから第二は、企業の独占の二つに尽きると思うのであります。独占禁止法はこの二つの資本の悪の中の企業の独占を排除して、資本主義経済と自由主義の根幹をなす自由競争を守り抜こうとするところに立法の趣旨があると信ずるのであります。われわれ社会主義計画経済を基本方針とする社会主義政党が、自由競争の原理に立つて資本主義を守り抜こうとする独禁法をこの際支持いたしまして、これが改正について反対するという理由は、一見矛盾いたしているようでありますが、その理由を申し述べてわれわれの反対器の第一にせんとするものであります。  本来、資本主義は産業革命と相まつて世界の領土が無限であり、世界の富が無尽蔵であるという前提のもとにのみ成立するのであつて、事実この前提のもとに資本主義は異常の発達を遂げて来たのであります。しかしこの錯覚も、やがて世界の領土も世界の冨も有限であるということがわかつたとき、資本主義原理の自由競争が至るところに競合をし、衝突をするに至つたのであります。国際的に見てアジア諸国における先進資本主義国家の争いのごときそのよき前例でありまして、第一次世界大戦といい、第二次世界大戦といい、その勃発の原因が一体どこにあつたかといえば、これすなわち未開発アジアにおける資本主義の競争の結末でありました。この資本主義の行き詰まりが、すなわちカルテルとなり、あるいはトラストとなり、ダンピングとなつて、アジアに市場を求めた。しかもトラスト、ダンピングの力及ばざるその終局は、すなわち軍の力を背景にして市場獲得に行つた。資本主義の手先に遂に軍の力を用い、その結果戦争の勃発を見たのでありまして、カルテルを認めることは、これすなわち戦争への道を開く第一歩であるということを、われわれは深く認識しなければならぬと思うのであります。こうして自由競争が行き詰まつて来るときに、資本主義が必ず打つ手が二つあるのであります。  その第一は何かといえば、これすなわち国家に保護を要求するということである。軍閥に保護を要求するという、その手であります。第二は迎合いたしまして、自衛態勢をつくり上げて、みずからの防衛に任ずるということでありまして、現代の資本主義国家における政治の基本政策は、いかにして資本家を擁護するかということに重点が置かれております。資本家もまた政治に保護を求める段階を越えて、今わが日本の現状は、まさに資本家が政府をつくり、政治を動かして、資本主義の擁護と利潤の追求に猛進しているのが実情でありまして、真の意味の自由競争は、今はまつたく失われております。この上に彼らがさらに自衛手段を強化して、資本家同士の競争を自制し、休戦し、企業の独占と価格、製品の協定等によつて、永久にその利潤を獲得せんとするがごときは、まさに二重の悪をほしいままにすることになるのであります。従つてこの資本主義の悪を排除するということは、今日わが社会党に課せられたる重大な使命でありまして、民主主義的排除の手段として、今世界に行われている二つの方法を申し上げたいと思うのであります。  その一つの独占排除の方法は、これすなわち、英国労働党が一九四五年以降政権をとるに至りまするや、石炭を初め、銀行、鉄鋼、伊力、鉄道、ガス、航空、放送等の各産業部門が、ことごとく国有化されたのでありまするが、この国有化の理由として、特に鉄鋼業につき、私的独占が支配しているために、独占資本は国民全体の利益を無視して、もつぱら独占利潤を追求し、高能率の最新式一貫工場の設立と運営を妨害する等、またより安い価格で供給する競争者を排除し、産業の基礎資材である鉄鋼の高価格を需要者及び消費者に強制した、こういう理由を主張いたしまして、これらの主要な公益的産業に対しては、すなわち国有化または社会化の方策によつて私的独占を公的独占となし、私的独占と資本の搾取の二つの悪を一挙に解決いたしたのでありまして、わが社会党といたしましては、容易にカルテル化しやすい少数大企業の重要産業に対しては、現法規の持つ独占禁止程度ではいまだ満足しないのであります。願わくは公正なる取引、すなわち自由競争を守るという立場にあらずして、企業の社会化という、まつたく別個の立場から、われわれはあくまで公的独占を主張するのが、正当なる真の理由であるということを申し述べたいのであります。  第二の独占防止方策というのが、これすなわち現在アメリカにおいて行われているアメリカ的考え方でありまして、アメリカはシャーマン法一八九〇年、クレイトン法一九一四年等の制定をまつ前よりコモンローとして、すでに反トラスト法は存在していたのでありますが、その基本的な考え方はあくまで資本主義の立場に立つて、公正かつ自由な競争秩序の確立こそは、経済倫理の最高標準であると確信しておるかのごとくであります。その理念の上に立つて、すなわち今日共産主義の暴力革命に対抗し得るものは、労働者の団結と団体交渉を認める寛容な労働政策と、一方資本主義の独占化と硬直化を防ぎ、自由競争の経済原理に基く資本主義経済政策以外はないというアメリカ的な確信を持つて、古くは一九三三年ニュー・デイール政策の一環として、全国産業復興法を制定して、反トラスト法の適用を停止したことに対して、国会、いわゆるグロー委員会でございますが、この委員会で、政府によつて支持された独占であると攻撃され、そうして一九三五年には違憲の判決をやつて、そうしてこの反トラスト法を無効にいたしておるのであります。  なお近来としては、去る五〇年十二月にはクレイトン法の七条が修正強化され、また独占禁止の法制の違反者に対する制裁規定の強化、会社間の株式所有関係の規則等についての審議が行われており、輸出組合法、ウイッブポメリン法が再販売価格維持について非契約者拘束制度を認容するマツクギヤー法等の再検討を叫び、昨年八月二十四日、上院の小企業委員会が国際的な石油カルテルに関する連邦取引委員会の秘密報告を公表して世論の批判を求め、これに並行して相互安全保障局、すなわち本国会で論議せられているMSAでありますが、このMSAが、この石油カルテルによつて米国の海外援助資金が不当に利得されたとして、五大米石油会社を相手として、損害賠償の請求を起しているがごときは、わが資本家代表の国会議員も十分御考慮あつてしかるべしと思うのであります。以上のごとき動向によつて、われわれはアメリカ的禁止政策の考え方を知ることができるのでありますが、わが社会党といたしましては、このアメリカ的な立場ではなく、あくまでも英国的な立場に立つて、計画経済立場から独禁法それ自体にも反対する基本態度から、当面するこの法律の改正に断固反対するものであります。  次に私は、改正法案の内容それ自体について反対の理由を一、二申し述べたいと思うのであります。この改正法の内容とするところは、すなわち条件をつけて、ある特定の場合におけるカルテルを認容せんとするのでありますが、私はこのカルテルの認容は、いかなる条件があろうとも、カルテルを認めること自体、すでに独禁法の完全なる精神を失つて骨抜きにしたものであると論ぜざるを得ないのでありまして、まず第一にこの改正法案カルテルの中に正当、不当の区別をつけようとするがごときが、そもそも誤りであるということを申し上げたいのであります。不況、合理化、貿易、いずれのカルテルを問わず、カルテルの本質は独占価格と独占利潤の維持にほかならぬのでありまして、これを容認することは、独禁法をまつたく骨抜きにするものであるということを私は申し上げたいのであります。  なお第二として、カルテルが独占形態の一つである。そのカルテルの持つている絶対的経済力を濫用しないという保証は一体どこにありますか、どこにもないのでありまして、消費者は結局高い品物を押しつけられ、購買力を収奪される以外に、これに対抗をして自己防衛をする手段は一つもないのでありまして、もしこのカルテルに対して消費者が自己防衛する手段の一つもあつたならば、私はお聞かせ願いたいと思うのであります。断じてこれはない。濫用を防止する方法は一つもないのであります。  なお第三の問題として、カルテル成立の条件としては、取扱う商品の種類が単純で、数が少いこと、それから加盟企業がそろつて大きいということ、かつその企業家の数が比較的少いということが、カルテル成立の絶対条件でありまするから、カルテルはすなわち大企業の支配する産業部門にのみ結成される財閥特有のものであつて中小企業の支配する産業部門では、カルテルの結成は事実上まつたく不可能であります。すなわちカルテルは大企業のみの独占であります。  第四として私は申し上げたい。カルテルによる市場安定の操作、これは断じて最終の安定とはならない。特に自由党諸君に申し上げたい。今は資本家を擁護し、資本家におべつかを使う方法としてまさにカルテルをもつて市場を安定せんとしておるのでありまするが、カルテルをもつて市場の安定を操作せんとすることは、断じて不可能だということを私は申し上げたいのであります。終局においては自由競争による景気変動以上に恐慌を激化することは、ムースの著わすところのカルテルの景気運動という著書に明らかに解明せられている通りでありまして、最初中小企業者、農民、消費者の犠牲の院に財閥の安定を得るカルテルも、終局に至つては財閥自体がさらに不況のために大きな衝撃を受けるのがカルテルの本質でありまして、決して終局にはカルテルが財閥の擁護にならないということを、私は御承知願いたいと思うのであります。  なお第五として申し上げたいことは、このたびの独禁法の改正に対し、賛否の階層が整然とわかれているという事実であります。すなわち賛成者は生産部門に携わるほんの少数者の大企業家及びこれの関係者であります。反対者は労働者、農民、一般消費者、それに学者陣営にわかれておるのでありまして、一つ法律に対し、これほど賛否の階層が明確に区分せられた法律は、まつたく私は珍しいと思うのでありまして、これがいかに一部大企業家にのみ利益をもたらす改正法であるかは、これによつても十分御推察願えると思うのであります。  なお第六として、今日日本経済カルテルを必要とするまで追い込まれて来たということをかりに認めるとしても、その原因が一体どこにあつたかといえば、もつぱら政府の自由放任の経済政策と、これに便乗した財界人の特需と政府の保護政策のみに依存せんとした、いわば無計画なる経済の結果にほかならぬのでありまして、政府と経済界みずからの不手ぎわに基く跡始末を、われわれ一般勤労者、労働者、中小企業者、消費者にしわ寄せしてこれを打開せんとするがごときは、まさに盗人たけだけしい法律の改正であるといわなければならないのであります。これを打開する道は、おそまきながらも、わが党の主張する計画経済をおいてほかにないということを申し上げたいのであります。  なお私は、トラストに対する厳格な予防規定の緩和に対するこの法律の改正に対しても、反対をするものでありまして、元来反トラスト思想のもとにおいては、結合による経済力の集中は、企業の正常な発展とは認められないとする根本的な思想によつてでき上つておるのでありますが、改正案は、持株会社禁止を除いては、ほとんどトラスト予防規定としての実を失わしめておるのであります。すなわち株式保有の制限緩和により、実質的にはほかの会社の株式保有を手段として私的独占を可能にいたしております。  役員兼任の制限緩和に至つては、事実上役員兼任を野放しにするがごとくに改悪せられていることは、今村成和教授の指摘している通りでありまして、私は再びこれを繰返す冗言を省略いたしまするが、以上の点において、これはわれわれのとうてい認容しあたわざるどころであります。  なお申し上げたいことは、カルテル認可制に対する問題であります。運営の問題でありまするが、改正案においては、カルテルの認可権を主務大臣に与えるということになつておりましたが、あいまいふかしぎな改進党のぬえ的なる妥協案によつて、これを主務大臣に協議するとあり、実に法律的にふかしぎな言葉をもつて成立いたしたのでありますが、これは実質上主務大臣の認可と五十歩百歩であつて、何ら実質上の差異なきものと観じておるのであります。不況カルテル、合理化カルテルを通じ、主務大臣公正取引委員会の認可をするときに協議に参加するということ、これはまさにこの法律の改正においても、最も大きな私どもの反対しなければならない要点であることを申し上げたいのでありまして、ここに至るまでには、通産省公取委員会との間にはげしい意見の対立があつたことも、周知の事実であります。通産大臣経済主管大臣として認可権を持つのは当然であると、この委員会でも答弁をせられておるのでありまするが、経済認定と法律認定とはしばしばその見解を異にすることがあるのでありまして、これは過去においてもしかり、将来においても、しばしばそういう場合を予想しなければならぬのでありまして、こういう問題に対し、公取委員長の明確なる回答が今日に至るまでなかつたことは、私の最も遺憾とするところであります。  独禁法はこの際、あくまでそのときどきの経済的現象に左右されず、厳格なる法律の解釈によつて認定して行くということに至厳なる態度を持つところに、この独禁法の真の意義があるのでありまして、ここに通産大臣の介入を許して、時々経済界の変動に即応するがごとき法律の解釈が行われるというがごときは、これまた独禁法を有名無実にする以外の何ものでもないということを申し上げなければならぬのであります。  従来より通産省は財閥保護育成の官庁であります。日本における自由主義の経済政策推進の本部であることは、私が申し上げるまでもなく、ここにおられる通産省出身の先輩同僚各位が親しく御存じの通りであります。おのずからその罪悪を繰返して来たことは、同僚先輩諸君を前にしてあえてこれを確言してはばからないのでありまするが、この財閥擁護の通産省の所管大臣に、認可権に匹敵する協議権を与えるということは、まさに財閥の手代に認可権を与えたと同じ結果になることを、私は申し上げたいのであります。化学肥料、砂糖、綿糸等、通産省の介入による価格輸入割当、生産割当等は、いずれも独禁法違反の疑いの顕著なるものでありまするが、公正取引委員会は、その事実を知りつつも、断固たる審決を下し得ずして今日に至つていることは、私の最も悲しみとするところであります。操短に至つては完全なる独禁法違反である。この操短により、十社は不当なる利益を獲得した反面、中小企業者は全国的に倒産するとともに、紡績関係労働者は二万名近くも馘首せられている事実に対し、公正取引委員会は、遂にわれわれの期待する処置を施し得ずして今日に至つておるのであります。政府は、この財閥の要求により、過去の違反事実を実績として、今まさに法律的に制度化せんとするとともに、さらに一歩を進んで、公正取引委員会をもまつたく弱体化せんとしておるのであります。通産省は諸官庁を通じて最も汚職の多い役所であります。国民の信頼より見て、カルテルの認可、不許可というがごとき、最も利権のとりまとう業務を取扱わしむることは、さらに危険であるといわなければならぬのでありまして、認可権はあくまでも公正取引委員会一本にしておくべきであつて、いかなる形においても、通産省の介入は危険この上なしという断定のもとに、われわれはあくまでも反対をしなければならぬのであります。  なお再販売価格維持契約の点についても、二言触れたいと思うのであります。第二十四条において、再販売価格維持契約を認めておるのであります。医薬品公正取引協議会等よりこれが実現を要望されておりまするが、直接一般消費者の利害に関係する問題であり、今日この制度を導入しなければならぬ理由が明確でない点より見て、われわれはとうてい賛意を表するわけには行かぬのであります。特に社会主義的経済立場からは、その独占はあくまでも社会的、公的独占のみ許さるべきであつて、その他は一切これを認めることが、理論上にも矛盾しているということを、われわれは申し上げなければならぬのであります。米国においては、マックギヤー法において厳格な条件のものに、従来再販売価格維持が許されていたが、今日非契約者拘束制度について再検討が続けられ、禁止方向に進みつつあるということも私は申し上げておきたいのであります。  なお私は世界の情勢から見て、独禁法に反対をいたしたいと思うのでありまするが、今日の世界の情勢は、共産主義国家は別として、独禁法を制定することは、一つの常識となつておるのでありまして、独禁法的考え方の本家でありまするアメリカは別としても、イギリス、カナダ等の英連邦諸国や、スイス、スエーデン、オランダ等にもカルテル取締法があり、フランスとベルギーは今新たに法案を立案中であります。西独は現にカルテル禁止の占領法規があるのみならず、独自の競争制限防止法案が国会に上程されんといたしておるのでありまして、まさに世界の趨勢は、独禁法の存在するところは、さらにこれを強化せんとする趨勢であり、独禁法のない文明諸国においては、早急にこれをつくり上げんといたしておるのが世界の趨勢であるにもかかわらず、ひとり日本の国会は、この世界の趨勢に相反して、今までの独禁法を緩和し、あるいは無にせんとするがごとき逆コースヘと進みつつあるのでありまして、まさに世界の趨勢に反逆する反動的行為であるとわれわれは論じなければならないのであります。今日欧州各国の直面する問題は、カルテル取締法をもう持つか持たぬかという点ではないのでありまして、カルテル原則的に禁止する法律としてこれを持つか、あるいは濫用防止法としてこれを認めるかという点にわかれておるのであります。特にわが国においては、申し上げるまでもなく、独禁法は終戦後の革新的立法の一つであつて、平和条約によつて承認せられた法律であり、これを忠実に施行することは、わが国の国際的義務となつておるのであります。われわれはこの際、わずかの景気変動によつてこれを改正緩和することが、日本の国際的信用にも相当重大な影響を及ぼすことをあわせて考慮しなければならぬのであります。われわれは以上の諸情勢から見て、独禁法はあくまで成立当初の厳格なカルテル禁止法であるべきであるというところの原則論に立ちまして、わが国独自の経済政策を加味した経済立法として進むことが正しいことを確信するものでありまして、今後の日本経済は、日本業界が安くていいものをつくり出すという単純な結論以外に自立の方法がないことを私はここで極言いたしたいのでありまして、安易なカルテルなんかの方法で逃避し、政府の保護と独占によつて、消費大衆を搾取し、その犠牲の上に少数者の安定をはからんとするがごときは、断じてわが経済の進むべき道でないということを申し上げたいのでありまして、この意味においてもわれわれは反対をいたしたいのであります。  なお最後に一言申し述べておきたいことは、公取委員会の従来のあり方であります。わが党は公取委員会が至厳なる独禁法の番人として、その存在を認めるにやぶさかではないのでありますが、従来独禁法が成立して以来、公取委員会の歩み方を見ておると、ことごとくわれわれの期待に反しておるということを私は率直に申し上げなければならないのであります。あるいは独禁法を発動いたしまして、床屋組合に疑義があるとかあるいはふろ屋のふろ銭に独禁法違反の疑義があるとか、そういう方面にのみ至厳なる活動を発揮せられておりますが、もちろんわれわれはその発動を不可とするものではございません。否認するものではございません。大いに調査、審決をお願いいたしたいのでありますが、しかし、それに先んじて、ほんとうに独禁法の精神から見るならば、財閥の企業の独占にこそ秋霜烈日なるところの活動を行つてもらわなければならないにもかかわらず、そうしたねらうべき敵に対しましては実に動作は緩慢でありまして、あるいは知るがごとく知らざるがごとき態度を持続しておることは、われわれの最も悲しむところであります。どうかこの法律の改正に際しましては、公取委員会においても十分反省せられまして、改正せられたこの悪法に対し、至厳なる運用の妙を発揮して従来の改正前の法律にまさる至厳なる発動運営をいたされんことを切望いたしまして、私の反対意見にかえる次第であります。(拍手)
  176. 佐伯宗義

  177. 山本勝市

    山本(勝)委員 私は自由党を代表いたしまして、上程せられました独占禁止法の修正案に賛成、また修正部分を除く原案に賛成をいたします。  昭和二十二年につくられましたこの私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法は、ただいまの悪法や農地調整法や労働関係調整法とともに、占領治下に連合軍、実際には米国の初期の対日政策の一環として与えられたものであることは申すまでもありません。この独占禁止法の目的とするところが、いわゆる資本主義経済体制のもとで公正かつ自由な競争秩序を維持せしむることによつて、民主的経済基盤を助長発展せしむることにあつたことは、疑いを入れないところでありまするけれども、同時に日本経済の弱体化、日本経済の非軍事化を目指して財閥解体と経済力集中排除措置以後の新たに復活するやもしれないところの強力なる企業体の出現を防止することを目的としていたことも争いのない事実と考えられます。かかる政治的背景のもとに与えられた法律でありますがゆえに、自由競争秩序の確保を目的とする法律ではありましたけれども、米国の反トラスト法以上にはるかに厳格なものとなつたのであると私は解釈しておるのであります。その後昭和二十三年の初頭以来、米国の対日政策の転換につれて、賠償の大幅解除、集中排除法適用の大幅緩和が行われ、二十四年五月にはドツジ政策の実行に伴う経済の沈滞を経済的背景として、独占禁止法の五十箇条にわたる大幅をな改正が行われたことは御承知通りであります。この大幅改正によつて、独占禁止法は米国の反トラスト現行法にある程度まで近づくことになつたのでありますが、しかし、カルテル、トラストの禁止の原則には、何らの変更も許されなかつたのであります。その後経済的には朝鮮ブーム経済的沈滞と政治的には講和独立を背景といたしまして、不況切抜けのため、また輸出振興のために合理化の要請は、独占禁止法による経済的共同行為の自由の禁止が耐えがたいものと感ぜられるに至り、独占禁止法の改正緩和への要望は、財界の熾烈な要求となつて参りました。特定中小企業の安定に関する臨時措置法並びに輸出取引法が独禁法の適用除外の法規として成立し、綿糸布調整組合の設立についてさへも、公取委員会としても、黙認するのほかなき状況に立ち至つたのもこのためであると考えます。かかる経済を経て独占禁止法に対する再度の大幅改正が企てられ、本年二月三日正式発表され、第十五国会に提出されるに至り、解散によつて流れましたが、御承知通り今回第十六国会に再び提出された次第であります。かような次第でありまするから、われわれ経済安定委員会においては、一日も早く改正案を通過させたいと考えて審議を進めて参りましたが、審議をすればするほど原案の不備が現われて参りまして、審議が長引いて遂に今日に至つたことは委員諸君の御承知通りであります。私の考えによりますと、原案の不備の根本的な原因はどこにあるかと申しますと、第一にはカルテル行為の認定は公取に、認可は通産大臣にというふうに二本建になつておることが一つの欠点であります。第二にカルテル等共同行為が原則として相かわらず否定せられ、例外的にのみ厳格な条件のもとに認可されることになつておるにすぎないことであります。第三には独占と共同行為による競争の制限とは同じものではないにもかかわらず、これを同一物と観念いたしておることであります。第四にカルテル行為は破滅的な競争を防ぐために必然のものであり、これは独占ではなくて一種の競争形態にほかならぬ。従つてそれによつて独占禁止法の目的である自由競争の経済秩序が、侵害されるよりも、よりよく確保されるものであるということが原案の提案者によつてもよく理解されていない点であります。この点は先ほど来の両社会党の諸君の考えとは相当大きな開きを感ずるのであります。社会党の諸君は、カルテルは大企業のみを保護する。大企業においてのみカルテルが成立するということを申されました。私もこの事実は間違いがないと考えます。しかし何ゆえに大企業にのみカルテルが成立するのか。何ゆえに中小企業においてカルテルの成立が困難であるかということを考えますと、いわゆる大企業においては固定資本が比較的大きい。固定資本は一たび投じられてしまつたものでありますからこれを制限することができない。つまり固定資本の制限が技術的に不可能であるために、固定資本の大きな事業が競争をいたしますと、いずれの企業も固定資本の償却をすることができない程度に価格を引下げて競争するということが必然に起るから、大きな企業においてカルテルが成立するのであります。そのカルテルが成立しないとしたら、大きな固定資本を持つておる事業はとうてい立ち行かないという理由に基くものと私は考えます。  第五に再販売価格維持契約の規定で多くの除外例を認めたということは、これは原案におきましてもまた修正案においても私は一つの大きな欠点であると考えます。自由競争の経済秩序を確保するという独占禁止法の本来の目的を十分に達成するためには、個々の企業体の競争を原則的に是認するばかりではなく、共同して競争することをも原則的に自由とし、ただその濫用を防止するという英国式の独占禁止法に改めることが必要だと考えます。  第二に再販売価格維持契約の規定をほんとうに空文に化せしめないためには、除外例を認めないで、消費組合その他の組合員諸君も一般市民と同じ値段で買い取つて、そこに出て来る利益はこれを分配するなり、厚生施設に投ずるなりするということによつて再販売価格維持契約の規定も空文化しないし、また消費組合その他の除外例となつております団体の方々も不利益をこうむることはないのだと私は考えておるのであります。ただこのような点におきましては、今回の修正案においては私どもの党の考えますところは他の諸君の同意を得ることができなかつたのでありますけれども、しかしながら最初に申しました通り、今日の独占禁止法の改正は現行のものに比べれば少くともベターである。修正案はさらにベターである。独占禁止法は今後われわれのたゆまざる努力によつて、できるだけすみやかにこれをつくつて行くことを期待して、私はベターという意味で今回の修正案の程度で満足するのほかはないと考えた次第であります。大体そのような意味において修正案に賛成、原案に対しては修正部分を除く部分に対して賛成をいたします。
  178. 佐伯宗義

    佐伯委員長 以上で討論は終りました。  引続いて私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。まず修正案につき採決いたします。栗田英男君外十七名提出の修正案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  179. 佐伯宗義

    佐伯委員長 起立多数。よつて修正案は可決せられました。  次に修正部分を除く原案につき採決いたします。賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  180. 佐伯宗義

    佐伯委員長 起立多数。よつて本案は栗田英男君外十七名提出の修正案の通り修正議決すべきものとしました。  なお本案に対する委員会報告書作成の件につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 佐伯宗義

    佐伯委員長 それではそのように決定いたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  独占禁止法は本月初頭以来三週の長きにわたりまして、与野党とも何らの私情をはさまず、堂々たる論理の根拠をたずねて立法府の権威を発揮せられ、ここにその終結を見るに至りました。ことにこの間幾多の失態を演じましたふなれな委員長を御助成せられ、その職責を全うさせていただきましたことを特に重ねてつしんで感謝の辞を申し上げる次第であります。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十一分散会