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1953-07-14 第16回国会 衆議院 経済安定委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十四日(火曜日)     午前十一時五十六分開議  出席委員    委員長 佐伯 宗義君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 栗田 英男君 理事 菊川 忠雄君       秋山 利恭君    迫水 久常君       長谷川 峻君    神戸  眞君       楠美 省吾君    園田  直君       飛鳥田一雄君    石村 英雄君       小林  進君    杉村沖治郎君       中村 時雄君    山本 勝市君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         通商産業事務官         (企業局次長) 小室 恒夫君  委員外出席者         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇四  号)     —————————————
  2. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を継続いたします。菊川忠雄君より発言を求められておりますので、この際これを許します。菊川忠雄君。
  3. 菊川忠雄

    菊川委員 議題に入る前にちよつとお願いをしておきたいのですが、それは資料提出を督促申し上げるのであります。  先般経審庁から経済自立の五箇年計画についての見通しとして簡単な表をいただいております。ところがその当時から、これについての年次計画的なものを裏打ちとしての資料としていただきたいという要望を申し上げておりますし、また理事会を通じてこのことを重ねてお願いしておると思うのでありますが、まだ出ておりませんので、なるべく早く、しかも大体独禁法が終るころまでにはこれが提出をお願いしたいということを重ねてお願いするのであります。理由としましては、申し上げるまでもございませんが、たとえ新聞世論調査などをそれに発表した場合においてすら、きわめて簡単ではありまするが、この調査方法はどういう方法によつたかということを必ずつけて説明をされるのであります。そういう一つ計画を発表される以上は、それがどういう方法で、どういう資料に基いてなされたものかということがなければ、われわれはそれを判断することができない。しかも、御承知のように、最近あの資料が発表されて以来というものは、経済評論あるいはその他の専門的な雑誌においてすら、あれが一つ政府の権威あるところの資料であるかのごとく扱われて、それを基礎としていろいろと日本経済の将来の動向などを評論されておるのであります。しかも本委員会においては、まだあれにつきましてどの程度政府の権威ある資料であるかということをわれわれは検討していないので、委員としてもはなはだ責任の足りない点を痛感しておるのであります。そういう点からいたしまして、あの資料について、年次計画がどの程度まであつて集計されたところの結論であるかということが第一点であります。それからどういうふうな調査方法に基いて、どういう基礎的な資料を使つてなされたのかということが第二点であります。そういう面から、至急必要な資料を整えて出していただきたい。時期は、この独禁法の法案が上ると、次に日本経済自立計画についてのいろいろな審議が始まると思いまするので、それに間に合うようにいただきたい、こういうことでございますから重ねてお願いします。
  4. 佐伯宗義

    佐伯委員長 ただいまの菊川君の資料の要求に関しましては、経済審議庁長官に対しこれが提出を重ねて要望することといたします。  次に、質疑の通告がありますのでこれを許します。石村英雄君。
  5. 石村英雄

    石村委員 公取委員長にお尋ねいたしますが、二條の七項に、「不公正な取引方法」という規定があつて、それが「公正取引委員会指定するもの」となつているのですが、これは具体的にどういうようにおやりになるのでございましようか。この條文を読みますと、公正取引委員会指定しないうちは不公正な取引方法というものは結局問題にならない。公正取引委員会指定して初めて不公正な取引方法ということになるように思われるのでありますが、この二條の七項の具体的な処置はどういう御方針でされるか、お伺いしたいと思います。
  6. 横田正俊

    横田政府委員 この点は公正取引委員会指定しませんと不公正な取引方法取締りはできないわけでございまして、この指定につきましては、大体種類を大きくわけますと、各業種に通ずるものと、特殊の業種に特有なものと、この二種類考えられるのでありまして、大体私ども予定しておりますのは、現行法二條の六項をごらんになりますと、かなり具体的にこれらのことが書いてございますので、これに似た、各業種に通ずるいわば一般的指定というものをいたしますと同時に、現在たとえば、しようゆ業界あるいは海運業界等について特別な指定をしておりますようなものを指定いたしたいと考えております。この指定につきましては、七十一條、七十二條規定がございまして、一般的指定の場合は比較的簡単に告示をもつてすることになつておりますが、特殊の業界についての場合は、その業界のいろいろな意見を聞くだめに公聴会を開き、あるいは事業者意見を聞く等の手続を経てやることになつておりまして、これらの指定の案につきましては、一応の案を最近に確定いたす予定でございます。まだ確定的な案は持つておりません。この法律施行の日に同時にこれを指定する、こういうふうにとりはからいたいと考えております。
  7. 杉村沖治郎

    杉村委員 関連して。私もその点を伺いたいと思つてむつたのであります。この第七項に「公正取引委員会指定するもの」として、その次にずつと一、二、三、四、五、六とあげてあるのですが、この條文から行くと、まず第一に「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。」とあつて、「不当」という字が使つてあるのであります。以下いずれにも「不当」という字が使つてあるのだが、公取指定しなければ不当であつてもさしつかえないのかどうか、不当に他の事業者を差別的に取扱うようなことは、公取指定しなくてもそれ自体悪い行為じやないかと思うのだが、それでも公取指定しなければ許されるという形に、條文体裁からいつてなるわけですね。その点はいかがありましよう。どうも私にはこれがおかしく感じられるのです。指定しなかつたならばかまわない、こういうことになるのではないかと思いますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  8. 横田正俊

    横田政府委員 これはいろいろな手違いでこの法律施行指定が食い違うというようなことになりますと、今仰せになりましたようなおかしなことになりますが、この点は必ず法律施行と同時に指定をいたしまして、その間に不都合のないように万全を期する予定でございます。
  9. 杉村沖治郎

    杉村委員 その施行法が出ればどういうことになるかしれませんが、本法がこういうことであると、どう考えてみても非常におかしいんじやないかと私は思う。左の事項がいけないということであれば、左の事項すなわち不当に他の事業者を差別的に取扱う、あるいは不当な対価をもつて取引する、こういうことは別に公取指定しなくても不当なのだから、左の事項はいけない、不当だということを書いておいて、さらにこちらの方の本文の中にこうあれば、指定しなかつたならば、不当であつてもさしつかえないという論がどうしても本法解釈上出て来ると思うのですが、施行法でこれを補うということはいささかどうかと思われますが、いかがでありましようか。
  10. 横田正俊

    横田政府委員 施行法で補うという趣旨ではございませんので、この法律に書いてございますように、一応この一から六までのわくをお与えいただきましても、その中で公正取引委員会がこの法律施行と同時に指定をいたしまして、もう少しこの内容を具体化してできるだけはつきりさせる、こういうことをやるわけでございまして、なるほど仰せのように法律自体の中に相当に詳細に書いてしまうことも一つでございます。しかし今後いろいろな場合も考えられますので、一応このわくをきめまして、その後適宜指定をして行くというふうにいたしたいというので、多少現行法の主義を改めまして、こういうふうにいたした次第であります。
  11. 杉村沖治郎

    杉村委員 それはそうかしれませんが、しかしそれであつたならばこのわくをきめるにしても「不当に」という字をとつた方がいいのではないか、「不当に」ということがここに書いてある以上は、不当であつて指定がなかつたならばさしつかえないのだ、こういう論になるので、その点を私は言うておるのです。ただ法律の精神とか何とかいうのではなくて、條文体裁の上からいつてどうかと思うのですが、どうしてもそういうふうな解釈が出るか、ただそれだけなのです。
  12. 横田正俊

    横田政府委員 やはりここには「不当」という言葉を入れていただきませんと、あまりわくが広過ぎまして、もちろんこの各号の柱の方に、「公正な競争を阻害するおそれがあるもの」というふうにしぼつてはございますが、やはりこの各号のうちにも、一応「不当な」という言葉を入れていただきまして、多少ここでもしぼり、それから柱の方でもしぼる、こういうふうにいたした方がよくはないか考えて入れてあるわけであります。
  13. 杉村沖治郎

    杉村委員 そうすると第二條の七項に「この法律において不公正な取引方法とは」ということが書いてあるのですが、その「不公正」ということと一、二、三、四以下に書いてあるところの「不当」というのとはどういうふうに違うのでありましようか。私はこの「不公正な取引方法とは、左の各号」云々ということが書いてあるのだから、「不当」という字をとつても「他の事業者を差別的に取り扱うこと。」という中には不公正なという言葉が含まれておるのではないかと思う。別にこの上に「不当」という文字をかぶせなくてもいいのじやないか。それにもかかわらず、さらにこの「不当」という言葉をかぶせられたのはどういうわけですか。「不公正な取引方法」の「不公正」という字と、「不当」という字とどういうふうに解釈が違つて来るか、その点についてお伺いしたい。
  14. 横田正俊

    横田政府委員 この「不公正な取引方法」というのは、これは一つ定義言葉でございまして、一息に不公正な取引方法というふうに読んでいただくわけでございます。この各号にございます「不当に」というのは、単に事業者を差別的に取扱うことだけでただちに独禁法上問題にするということはいささか行き過ぎでございますので、やはりそこには差別的取扱いがかなりおもしろくない程度に進んでおるというような、あるいは正当な理由がないのに差別的に取扱うというような、そういう一つの制約を受けることが、不公正取引方法をあまり広げないためには必要ではないかというので、ほとんど各号に一応この言葉が入つておるのでございまして、結局こういうものをかぶつたものが全体で不公正な取引方法、こういうふうに観念いたしたいと考えておるのでございます。
  15. 小笠公韶

    小笠委員 ただいま問題になつております点でありますが、御説明を聞きますと、不正当な差別待遇を受けた場合と、不当に差別待遇を受けた場合と同じではないですか。それはさておきまして、新しい六項というか、これは不公正な取引というものの定義をしぼつたのか、広げたのかということをまず客観的にお聞きしたいと思う。  それから第二に、先般申し上げましたように、この法律案の中には、至るところに不当という言葉があるのでありますが、その場合の不当は明らかに不正当な、非合理的なという言葉で読まなければならない。しかるにここの場合は、不当と書きながら合理的だ、さしつかえないのだというふうに読める場合が起るのでありますが、他の條章における不当とこの場合の不当とは違うのでありますか。その点がはつきりしていないと條文が読めないと思うのであります。その点を御説明願いたい七
  16. 横田正俊

    横田政府委員 第一点の広げたのかどうかという点でございますが、多少広げた趣旨がございます。それは今回第五号と第六号とを、ことに第五号のごとく「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」これは必ずしも厳格な意味における不公正な競争方法とはあるいは言えないのではないかと思いますが、しかしやはりこういうことを通じていろいろ別の方の競争秩序が乱されて行くという面がございますので、これらを追加さしていただいておるわけでございます。そういうような観点から、競争方法というものを厳格に解しますと多少はみ出すようなものをも含める意味におきまして、不公正な取引方法という言葉を用いたのでございます。  それから不当という言葉は、不正当あるいは正当な理由なしにというふうに大体解していただいてもいいかと思います。場合によりまして、そこにいろいろな幅のある意味が入りましたり、これは各号によりまして多少の二ユアンスの違いはありますが、大体正当なる理由がないというようなものもここに含まれておるわけでございます。
  17. 石村英雄

    石村委員 結局これを読むと、不当に他の業者を差別的に取扱つても、事実は不公正でない取引方法があるということを予想してこういうような立て方をしておるように解されるのですがしろうとが考えると、むしろ旧法の方がわかりよくて、これ以外にも公共の利益に反するようなこともあると思うから、公取公聴会か何かを開いてきめるという旧法の制定の仕方の方がわかりよい。これでは今後何か不当のものでも不当でないものがあるということを予想しておいでになるように解されるのですが、いかが害しようか。
  18. 横田正俊

    横田政府委員 結局こう法に一応書いておきまして、それをもう少し具体化したいというのが私たちのほんとうの考え方でありまして、たとえば一号の、「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。」というのは、主としてボイコットを考えておるわけでありますが、現行法の一号のように「他の事業者から不当に物資資金その他の経済上の利益の供給を受けず、又は他の事業者に対し不当に物資資金その他の経済上の利益を供給しないこと」、こういうような指定の場合は少し具体的のものにする。あるいは同じような問題が海上運送法の二十八條、三十條等ごらんになりますと、いろいろ海上運送法らしいきめ方がしてございますが、そういうふうに一号の中にいろいろなものを具体化して指定をするというのが私ども考え方でございまして、現行法のような行き方も一つありますし、今回のような指定方法一つの行き方だと思います。この点につきましてはいろいろ研究いたしましたが、今回の方がよくはないかということで、そういう形でお出ししたのでございます。
  19. 石村英雄

    石村委員 「不当に」という言葉がやはり問題になりましたから、続いて「不当に」ということについてお尋ねいたしますが、二十四條の四の三項の五号にあります「特定品種生産を不当に特定事業者集中する」云々という場合の「不当」というのはどういう意味でありますか。
  20. 横田正俊

    横田政府委員 これはある品種をある特定事業者集中しますことによつて有効な競争が阻害せられるということを防止する目的でこの第五号を特に入れたわけでありまして、結局この場合の「不当に」というのは、今申しましたような有効な競争を阻害するような結果をもたらすような集中が「不当」というふうに解釈されると思います。
  21. 石村英雄

    石村委員 品種制限をするときには、当然競争はしないということになるのじやないかと思いますが、競争するような品種制限をやはりカルテルの場合にも考えられるのですか。
  22. 横田正俊

    横田政府委員 これはたしか前にベアリングの例を引いてお話いたしたと思いますが、数十社が何千にもわたる品種のものをいわばめちやくちやにつくつておるという場合に、ある種のものをある種の人にだけつくらせるということになると、これはいわゆる集中ということになりますが、その数千種の中の何十種というものを甲につくらせ、あとの何十種を乙につくらせ、しかもこれを完全にわけてしまわないでダブらせて、やはりある品種のものの間には競争が行われるというふうな配分をする、そうすると非常に競争も行われるし、それから自分の得意なものをつくることによつて品質の改善あるいはコストの切下げというようなことも行われるというようないわゆる合理化の線がこれで守られる、ここの兼ね合いを不当に集中するかしないかということによつて線を引きたいというのがこの第五号の趣旨であります。
  23. 石村英雄

    石村委員 再販売価格維持契約の問題でありますが、せんだつて問題になりましたように、たとえば大デパートなんかは契約しない、ほかの町の小売商の方はこの契約をすることによつて、再販売価格維持契約もあまり効果がなくなるというような意見が出まして、それに対して、そうしたことをデパートがやることはいけないことになるのだという御説明だつたと思いますが、そのいけないことになるというのは、この法律のたとえばただいまの不公正な取引方法というようなものにひつかかるのですか。再販売価格維持契約が一般的に行われた場合に、特定の大デパートなんかがそれをやらないで安く売るということが不公正な取引方法か何か、どの條文にひつかかることになるか、お話を願いたい。
  24. 横田正俊

    横田政府委員 結局デパートがいけないということに、実は直接にはならないのでありますが、再販売価格維持制度を設けます以上は、メーカーは甲の小売商には定価を維持することを強制し、乙の者にはかつてに売つてよろしいというふうにいたしますことは、ただいま出ました第一号の不当に他の事業者を差別的に取扱うことになりまして、これはメーカー側が不公正な取引方法を用いていることになります。従いまして、デパートにお前はかつてに売つてよろしいという、そういう條件で卸しますと、それが不公正な取引方法になりまして、これは許されない、こういうことになるわけであります。従いましてどうしてもデパートに卸したいということになれば、再販売価格維持契約をやめて、他の人にも自由に売らせるということにせざるを得ないのであります。その意味で第一号の不公正な取引方法というものに該当すると思います。
  25. 小笠公韶

    小笠委員 すると今の再販売価格維持契約というのは契約を基本に置いておるというのが建前であります。そうすると設例のデパートが買うとき、たとえば化粧品屋から買うとき、再販売価格維持契約をやつていない。その際に本舗は卸すか卸さぬかということは自由だ。もし必要があつて卸すという場合には利潤を吐き出して、あるいは利潤を狭めて売るという事態は想像されると思います。また経済界のいろいろな事情によりまして、本舗の品物が、換金投げをして流れるということは相当予想しなければならぬ。それを買い込んで売るという場合でも、この不公正取引に該当するというふうにお考えになりますか、私はそこは問題があるのではないかと思うのであります。デパート自体取締ることはできないので、本舗取締ることは明らかにできるでありましよう。できるでありましようが、経済界のいろいろな操作によつて出て来る——利潤を幾らとらならなければならぬという規定もないのでありますから、デパートが、普通の小売店定価販売するよりも安いという場合が当然考えられると思うのです。  それから第二点にお伺いいたしたいのは、これまでのお話の中で、いわゆるおとり販売、そういう言葉を使われておるようでありますが、おとり販売とはどの程度マージンであるか、あるいは原価を切つた場合をおとり販売と呼んでおるのであるか、ごくあらましの定義でけつこうでありますから、お伺いいたしたい。
  26. 横田正俊

    横田政府委員 第一点の、契約がなければ問題がないではないかというお話はまさにその通りでございまして、結局ほかの関係で物が流れて行つて、その先が別に契約に縛られないでかつてな値で売るということはある範囲においてはもちろんあるだろうと思います。しかし流れて行く経過において、たとえば卸商が他に売ります場合もやはりメーカとの間の契約がありますれば、それに拘束せられてかつて値段で売るというようなことはできないはずであります。これはやはり小売人と卸売とメーカーとの間契約というようなことがそういう問題をある程度拘束するのではないか考えております。  それからおとり販売定義でございますが、これは多くの場合仕入れ価格割つて売るような場合が多いと思いますが、それが必ずしもそうとも言えないのでありまして、原価すれすれに売りまして、ほかの小売商は、それを専業でやつているものはマージンを見なければとうてい売れないものでありますが、たとえば薬を専業にしておりますが、化粧品の方に手を出し、有名化粧品を原価すれすれに、買入れ値段すれすれで売る、それでも定価よりはよほど安いということになりますとお客はそちらに殺到するということになりますので、これは必ずしも仕入れ値段を割らないでもおとり販売ということはあり得ると思います。
  27. 小林進

    小林(進)委員 関連して……。ちようど私も疑問としている問題が提示されましたから関連してお伺いするのでありますが、この再販売価格維持についての非契約者をも拘束する、しないの問題であるのでありますが、何かアメリカマツクギヤ法というのですか、あの法律には従来非契約者をも拘束するというように何か規定ができ上つている、内容を知らないのでありますが、そういうことはなかなか法律技術もむずかしいが、そういうふうになつている。最近それが非常に再検討せられて非契約者をも拘束することは不当であるということで、この法律が今議題に載つて改正の道程にあるということを承つておりますので、それに関連いたしまして、いま少しアメリカあたり法律と比較対象して、もつと国際的に人に笑われないような法文の体裁をつくる意味においてもいま少し公取委員長の確信ある御答弁をお聞かせ願いたいと思います。
  28. 横田正俊

    横田政府委員 この再販売価格考え方につきましては、アメリカでも非常に問題がありまして、たとえばアメリカの司法省あるいは公正取引委員会と同じような役所でありますが、向うの連邦取引委員会等におきましてはこの制度に対して根本的に非常な疑問を持つているのであります。しかもアメリカマツクギヤ法によりますと、今仰せられましたように、契約するとしないとにかかわらず、その契約にそういう條項があるとなしとにかかわらず、メーカーのきめました定価割つては売れない、もしそれを割つて売れば日本で申しますと一種の不公正な取引方法に該当するというところまで実は行つているわけであります。こうなりますと非常に問題が大きくなるわけでありまして、われわれはこの再販売価格維持契約制度そのもの小売商の安定を得るために必要とは思いますが、そこまで問題を理論的に押し進めますとかなり行き過ぎの点があるのではないかというので、この点は相当考えたのでありますが、中途半端ということになるかもしれませんが、この程度のところで一応この制度日本でやつてみたらどうだ。小売商のために、生活の安定にかなりの寄与をしないかということでこの案をお出ししたわけであります。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 関連して……。再販売価格維持契約について先日東京高等裁判所新聞販売に関する事件判決を拝見したのですが、あれを拝見いたしますと、あらためてこういう條文をつくらなくてもいいのじやないか現行法律範囲内でそう不便を感じないのじやないかという感じがするのでありますが、特にこういう規定をお立てになりましたら何か理由がありましたらお示しをいただきたい。同時にまた委員長の、この高等裁判所の判例に対する御見解を伺わせていただきたいと思うのであります。
  30. 横田正俊

    横田政府委員 あの高等裁判所判決は、いわゆる第四條の共同行為あるいは不当な取引制限というのは、同種の業者間においてお互いに自分事業活動を拘束し合う必要がある。生産制限を同じ業種の人が相談をやるとか、あるいは価格を協定するとか、そういうふうに、いわば横の関係のみに適用があるのであつて、たとえば縦の関係、この例で申しますと、メーカーがその下位の段階にあるところの業者に対していろいろな注文をつけて、そして下の段階の者がしかたなしにそれに応じて、ここに一つの縦の契約ができて、その契約によつて拘束されるのは下の人だけでつて、上の段階のメーカーは別に拘束されない。こういうような関係は、いわゆる第四條の共同行為でもなければ、不当な取引制限でもない。こういう見解でありまして、この点は実は公正取引委員会の中でも、前から非常に議論をしておつた点でありまして、私の個人的な見解を申しますれば、現行法解釈としては、それが実はいいのだというふうに、その判例がはつきりさせてくれたと思つております。しかしこの考え方につきましては、なおわれわれ委員会の間にも、多少あきたらなく思つている人もあります。しかし結果でおわかりになりますように、この判例に対しては、最高裁判所に対する上告もいたしませんで、判例に服した形になつております。従いましていわゆる縦の関係を、第四條の適用除外あるいは不当な取引制限の適用除外に、特に第二十四條の二でやる必要は全然ないので、もしその点だけが問題なら、二十四條の二はいらないのであります。ただ問題は、ただいまも出ました不公正な取引方法の中に、今申しましたような縦の関係において、上位の者が下の者に対して品物を卸しますときに、卸してやるがここへ売れとか、この値段で売れとか、こういう條件売れとか、いろいろなそこに拘束をつけまして物を供給する。この関係は非常に危険なのでありまして、これは下の人の自由な事業活動を拘束し、かつその間にいろいろな競争制限ということが行われることになりますので、この不公正な競争方法の、いわゆる第四号の、「相手方の事業活動を不当に拘束する條件をもつて取引すること。」これに該当するのでございます。ただここでそういう定価売のような特殊のものについては、それはあるいは不当と必ずしも言えないのじやないかというようなことがはつきり確認されますれば、その四号を特にはずす必要もないとも言えるのでございますが、しかしその点は、先ほども申しましたように、やはり一般の場合につきましては、メーカーがそういう卸売なりあるいは小売の方に向いまして、いろいろそういう指し値をしたり取引先を制限したりすることはいけないことに一応なつておるのでありまして、そういう点は、この特殊のものについては、必ず最下位の段階の定価指定しても、それは不公正な取引方法にはならないのだということをはつきりする必要はあると思いますので、むしろ今の共同行為の点は判例によつて解消いたしましたが、今申しました不公正な競争方法にならないということをはつきりいたしますために、この二十四條の二を特に設けたわけでございます。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ちよつと御説明が私わからないところがありますので、この再販売価格は、いわゆる価格指定だけの規定だと思うのですが、何か今委員長お話ですと、それ以外に不公正な取引が行われるのを防ぐ意味だというふうに拝聴したのですが、そこのところをもう少し具体的に話していただけませんか。
  32. 横田正俊

    横田政府委員 その他の点は、それはそれから派生していろいろ問題が起るかもしれませんが、ここで当面の問題にしておりますのは、上位のいわゆるメーカーが、縦の拘束契約を結びまして、下位の販売業者取引の一條件でございますところの対価物を売ります値段を拘束することが、不公正な取引方法に該当する、こういうふうに申し上げたわけであります。
  33. 栗田英男

    ○栗田委員 関連して……。今の公取委員長の御説明によりますと、そういう論法で行くと、この第二章の第四條というものを削除するということは、適当ではないじやないか。いわゆる第四條というものは残しておいて、しかも第二十四條の三と四においてこれを認めるというような法体系の方が、今の説明によると、いいというようにも、感ぜられるのでありますが、この点いかがですか。
  34. 横田正俊

    横田政府委員 実は四條は、先ほどお引きになりました高等裁判所の判例によりますと、こういう縦の契約には適用がないのである、こういうふうになつておりまして、従つて四條が残つておりましても残つておりませんでも、この二十四條の二というものは、いわゆる不公正な取引方法をはずすという意味において必要なのであります。別な観点から四條を残した方がいいかどうかという点はまた別でございますが、再販売価格に関しましては、四條のあるなしが問題にならない。それは判例の考え方が、こういう縦の問題は四條の問題にあらずというふうにいつておるからであります。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この再販売価格維持契約というのは、縦の問題だけだと思うのですが、もしそうだとすれば、高等裁判所判決ですでに解決がついている問題で、どうもあらためて特にこの規定をお立てになる理由がわからないのですが、もう一回私不敏ですからお知らせをいただきたいと思います。
  36. 横田正俊

    横田政府委員 どうも私の説明が非常に拙劣で恐縮に存じますが、要するに横の問題でなく縦の問題でございますが、その縦の問題が、不公正競争取引方法の第四号に触れるので、何も適用除外をいたしませんと、第四号に触れますが、触れますと、こういう価格指定ということは違法ということになりますので、それを適法にするために、特に二十四條の二が必要だ、こういうことになるのでございます。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 判例では、触れないというのではないでしようか。
  38. 横田正俊

    横田政府委員 触れないというのは四條に触れない、こういうことでございます。不公正取引方法のことは何も判例はいつておらないのです。
  39. 小笠公韶

    小笠委員 二十四條の、さつき御質問があつた四の、例の生産分野の協定の場合の不当の解釈が、どうむ割切れないのでありますが、生産分野の協定をやる——五号でありますが、そのときには、当然ある程度企業経営の集中を来すものである。そうしなければなかなかできぬのであります。単純な規格のものを多量生産をして能率を上げて行こう、こういうふうなねらいだと思うのです。そうしました場合に、不当に特定事業者集中する、これがABCの商品を甲乙丙に集中してしまう、一社主義になる、こういうことはいかぬのだということはわかりますが、これがどの程度になれば不当でないか、それではABCの三商品について三社ずつ残つていたという場合は不当であるかないか。設例のようなベアリングのようなものを考えてみますと、見方によりますと、集中過程は相当強まつて行くものだと私は思うの召す。その方が真に生産分野の協定を認めた趣旨に合つておる。別の見地からの批判は別として、いわゆる能率あるいは合理化という見地から見ると、当然にその経過をたどるものだと思う。従いまして、写真機にいたしましても、あるいはミシンにいたしましても、部品生産関係におきましては相当集中化して来る傾向を持つのでありますが、またそれをねらつておる。そうすると不当というものは、どの程度でやりますか、運用上これは非常にむずかしいと思うのでありますが、不当は一定の品種の中に競争関係をまだ残しておくのだ、こういう御説明でありますが、二社でも競争関係は残る、これはどの程度にお考えになつておるのか、もう少しはつきり御説明を願いたい。
  40. 横田正俊

    横田政府委員 この不当の認定は、おつしやる通り非常にむずかしいと思いますが、それを抽象的な言葉説明しろとおつしやいますと、私が先ほどベアリングの例で申し上げたような、きわめて抽象的なことになるのでございます。これは結局その業界の実態と申しますか、同じような力のものが並んでおる場合と、非常に強いものと最下位のものとの間にいろいろな段階のあるもの、あるいは業者が非常に数が少い場合と非常に多い場合と、またいろいろその間に違いがあると思いますので、結局そういう個々の場合の特殊性に即しまして、この不当の内容を決定するよりしかたがないと思います。抽象的に申しますと、先ほど申しましたように、できる限り合理化をはかりながらやはり競争による創意の発揮というようなことを阻害しないようにというのが第五号のねらいと心得ております。
  41. 小笠公韶

    小笠委員 能率あるいは合理化の線を途中でやめようという考え方でありますが、真に合理化カルテルを認めてやつて行くならば、この規定というものはいらぬのじやないかと私は思う。認定に際しての行政運営で行けるのじやないか考えるのです。それで真に産業の自立をはかり、経済合理化、能率化をはかつて行くという見地において、途中まで行つて、それ以上行つたならば不公正になるのだ、独占化を来すのだといつて考えておる考え方というものは、私は納得できぬのであります。そこの点を経済政策的な考え方としてどの程度まで割り切つて考えておるのか、どうもこの條文があることによつて合理化カルテルを認めながらへつぴり腰で及んでおると認めざるを得ないのであります。
  42. 横田正俊

    横田政府委員 それはまさにその通りな面があるのでございまして、これは結局非常に集中いたしますれば、そこに独占が行われる、この独占そのものは、もし独占による弊害を他の方面で規制し得る道が開かれておりますれば、独占またけつこうであります。ところがここで考えておりますのは、そういうような別に裏づけのない、独占によりますところの弊害を除去する別の裏づけを考えておらない場合において、そこまで問題を持つて行くことに問題があるわけでございまして、それはおつしやる通り、多少徹底をしない面があると思いますけれども、しかしながらこれは独占禁止法の線と、それからこういう合理化の線と両方を調整するということになりますれば、結局この第五号のような線が出ざるを得ないというふうに私は考えております。
  43. 小笠公韶

    小笠委員 お考えはわかりますが、ただ実際運用上にこういうような文句がありますと、非常に認定がむずかしくなる、少くとも公正無私、明鏡止水の気持で判定がなかなかできない。そうするとねらつたところの合理化ができない、あるいはまたそういう考え方をとるということでないと、運用において横田さんの言われるような認定が諸情持から乱されはせぬかと私は思うのです。そこで今申し上げましたような運用上の点において十分公正な見地に立たれんごとをお願いいたします。
  44. 石村英雄

    石村委員 これは公取委員会にお聞きするのはちよつとどうかと思うのですが、山本委員の論法の隊伍を組んで競争するのはいいじやないか、そういうお話なのですが、これは四條を削除したら隊伍を組んで競争することは認められることになるのだと思いますが、いかがなものでございますか。
  45. 横田正俊

    横田政府委員 第四條を削除いたしますごとによつて、結局ある意味においてカルテルを認める範囲が広まつたことは事実でございます。第四條は御承知のように、一応カルテルはいかぬという非常にきつい線を出しますと同時に、競争に対する影響の軽微なものはさしつかえないという表現を用いまして、かなり厳格にカルテルを規制しておるわけでございます。今回の改正によりまして、第四條をとりますことによつて、結局カルテルは一定の取引分野における競争の自主的制限を来さない限りはよろしいということになりましたので、おつしやる通り、ある意味におきましてカルテルの認められる幅が広まつたということは事実だと思います。
  46. 石村英雄

    石村委員 それで山本委員の説になるのですが、だから結局山本さんの意見を徹底させると、強制カルテルはいかぬ、そういうようなことになつていかぬ、結局また私的独占になつていかぬという御意見だと思いますが、そういうことになると、結局二十四條の不況カルテルなんか今度適用除外をしておるのです。あれを除いた方がむしろ山本委員のお説に合致することになるように思うのですが、委員長はどういうように御判断になりますか。
  47. 横田正俊

    横田政府委員 どうも私は山本さんのお説が十分なかに入つておらないのでございますが、私どもの立場としますと、四條を削りましても、なおまだ二十四條の三の場合は非常な場合でございますので、あの規定が実際に働く場合はきわめてまれとは思いますが、やはり最後の一つの線として置いておいてもよいというふうに考えておるわけでございます。
  48. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 二十四條の三の四項の四ですが、そこに「共同行為に参加し、又はその共同行為から脱退することを不当に制限しないこと。」こういうふうに規定されておりますが、これは不当に制限する主体がカルテル協定に現われておる場合だけに限るのでしようか。それともその前の一、二、三というところに規定されておる事実を見ますと、これは主体とか意思とかいうこととは別個に、一定の事実的な状態を述べております。「不当に差別的でないこと。」こういうふうに述べてありますから、これは事実の状態を意味しておると思います。また消費者及び関係事業者利益を不当に害するおそれがないこと、これも一定の事実の状態を示しておつて、協定それ自身の中に含まれている協定当事者の意思とは無関係の事実であります。この四の場合に「その共同行為に参加し」云々、「不当に制限しない」云々ということが協定の内部に現われた意思であるか、あるいは現実の事態として不当に制限しないこと、こういう現実の事案状態を意味するものか、これを伺いたいと思うのです。
  49. 横田正俊

    横田政府委員 この第四号は大体こういうカルテルを認めるにしましても、それがいわゆる加入を強制しあるいは出ようと思つても出さないというような、きわめて拘束的なものであつてはいけないという考えに基くのでございまして、この点はたとえば協同組合その他独占禁止法上いわゆる共同行為あるいは結合が、他の場合ならば違法とするものを一応認めておりますすべての場合について、ついておる一つ條件でございまして、これは要するにアウトサイダーとして自分はやつて行く、自分はそんなつまらない相談などはやらぬ、りつぱにやつて行けるという者がある場合に、それを無理に引きずり込むというようなことをやる、あるいは入つてみたがどうも動きがおもしろくない、自分は外におつてわが道を行きたいという者を無理やりに拘束するというようなことでは困るというので、結局この共同行為をしておる具体的の団体に無理やりに入る、あるいはそれから出ることを制限するということについては、このカルテルを認めない、こういう趣旨でございまして、これは規則の上にはつきりとだれでも入れるとか、出るのは自由であるとか、そういうことが書いてありますだけではいけないのでありまして、現在の動きがこの第四号の條文のように不当に制限していないということが必要でございます。
  50. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その制限する主体は、カルテル共同行為者だけに限るのですか、それとも違う者がやつてもよろしいのでしようか。
  51. 横田正俊

    横田政府委員 これは結局一応カルテル行為者だけでございますが、しかしやはり今申しましたように、それは事実の状態でございまして、そういうふうに入らせないものあるいは背後にいろいろなものがおりまして、その結果入らざるを得ないとか、あるいはどうしても出られないとかいうようなものがございますれば、これはやはり四の條件を欠くことになります。
  52. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よくわかりました。その背後というものには政府も入りますか。
  53. 横田正俊

    横田政府委員 これは場合によつてはあるいは入るかと思います。
  54. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私の実はお聞きしたいことは、たとえば業者たちがカルテルを結んでも、それを政府がうしろから原綿の割当をしないとかあるいは輸入制限をするとかいうことで、そこに一見意思の共通がないようにうわべは見えながら、実質的には第四の状態を形づくつて行く、任意カルテルから強制カルテルにかえて行くというような事態が今後も私はしばしば出て来ると思うのです。そういう場合に当然外見的には政府業者のカルテルとは意思の共通がないというように見えながらも、実質的には脱退あるいはそれに参加することを強制する、こういう事態が今後もきつとたくさん出て来ると思いますが、そういう場合にはこの四号の條件を欠く、こういうことで認可の取消し、ないしは変更を命ぜられるのでありましようか、その点を伺いたいと思います。
  55. 横田正俊

    横田政府委員 これは政府が正当な権限に基いていろいろやる場合は別でございますが、そういうもののない場合はおつしやつたような制限を設けます。
  56. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、この四の状態が生じても、政府行為が正当な権限に基いている場合には別個だ、こういうことでしようか。
  57. 横田正俊

    横田政府委員 そういうふうに考えます。
  58. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますとこの四の規定は、政府の行政行為によつて完全に左右できる規定である、場合によれば、この四だけでなしに、独禁法が認めていない強制カルテルを現実には政府の自由な政策によつて実現して行くことができる、こういう法律解釈でしようか。私そんなことはあり得ないと思うのです。それならばこんな法律は、つくらない方がいいというふうに考えざるを得ないのですが、これは与党委員も大分御懸念のようですから明確にひとつお答えをいただきたいと思います。私自身の解釈を先に申し上げますれば、それですから私は先ほどこの四という事実をカルテル行為者の意思ないしは契約内容にかかわらしめない事案の問題であるかどうかを実は伺つたわけです。事実の問題だという御意見ですから……。事実の問題だとすれば、政府が行おうと何が行おうとそれは当然これに触れて来る、こういうことでなければ法律意味を失つてしまうと思うのです。
  59. 横田正俊

    横田政府委員 それは大体この組合に入らなければ外貨の割当をやらぬとか何とかいうことは、どうも多くの場合において政府の正当な権限に基く行為とは見られないのであります。
  60. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、公取の方へ勧告をお出しになつておられましたが、綿紡の操短の場合などは、原綿割当をしないという行為政府の不当なる行為である、こういうふうにお考えをいただけるでしようか。
  61. 横田正俊

    横田政府委員 その点はわれわれも実は根本的に疑問を持つておる問題でございまして、一体政府の勧告に応じなかつたがためにそれに割当をしないというようなことが、外貨割当の法律の精神に即したものかどうかという根本的の疑問を私どもは持つておつたのでございます。これは大きくいえば憲法問題にも連なるような問題と思いましたけれども、その際にはそこまでつ込んでわれわれは議論もしなかつたのでございます。問題は確かにあると思います。
  62. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 最後に横田先生に伺いたいのですが、こういうぐあいに法律がありながらも、それが政府経済政策なり何なりによつてその内容を自由にかえられて行く、こういうような法律の立て方が立法技術として妥当なものかどうか、こういう点の御意見を伺わしていただきたいと思います。私たちのこれからの態度をきめて参ります上にお聞かせをいただきたい。  もう一つは、そういう政府を治外法権に置かないようにこの四号を修正していただけないかどうか、この点もお聞かせいただきたいと思います。
  63. 横田正俊

    横田政府委員 結局この法律の運用の問題が主だろうと思いますが、私の今考えておりまする範囲内におきましては、この規定そのものからは必ずしも今仰せられましたような危険は出て来ないと思います。結局これを運用して行く面におきましていろいろな問題が考えられます。  なお、今お話の点は、行政庁の独占禁止法違反のような実体を持つた動きを何とか防止するといいますか、そのものを抑圧して行くような法制を考えたらどうかという御趣旨のようでございますが、問題は、そこへ参りますと、結局この独占禁止法の範囲をもう少し広めていただくというようなことになるわけでございまして、これはこの法律全体の一つの建前の非常な大変更になるわけでございますから、この点は、私としても、今まで仕事をやつている上におきまして非常にはがゆい思いをたびたびいたしておりますが、法律そのものをそこまで推し進めることが大所高所から見てはたしていいかどうかという点は、これは最高機関であらせられまするこの国会において十分に御検討いただきたいと考えております。
  64. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、あなたの御解釈によつても、この四の規定から、行政庁の行政行為によつて事実上の強制カルテルが出現するおそれはある、こういう御意見ですか。
  65. 横田正俊

    横田政府委員 そのおそれはあると思います。
  66. 栗田英男

    ○栗田委員 今の質問に関連いたしまして、これはあるいは公取委員長としては非常に答えにくい問題かもしれませんが、お伺いをいたしたい。先般通産大臣に聞いたときには、通産省がこれはカルテルを許可してもよろしいであろうというふうに考えてこれを公取の方にまわした場合には、おそらく公取も同意見であろう、そこは一致するであろうということを通産大臣は強調せられておつたようでありますが、私はこの点に関して非常に疑問を持つておるのであります。たとえば、一昨日の、綿紡のカルテルの結果は真に不況であつたか、あるいはその結果操短勧告というものが成功したかどうかというような質疑に対しましても、通産大臣の答弁というものはまつたく矛盾に満ちておりまして、この質疑過程からわれわれの感じたことは、きわめて安易な考え方で、あるいは業者の簡単な依頼によつて操短勧告をしたのではないかというようなことすらわれわれは疑いを持つのであります。そこで結局私は、いろいろの今日までの操短の勧告というようなことから判断をいたしますと、この法案が通つた場合においては、相当いいかげんの認可基準をもつて、これは許可してもよかろうということで公取に持つて来るということは必至であるが、これに対してはまさか疑いをいれないと私は思うのであります。そこで、こういう場合においては、この独禁法の番人であるという見地から、当然公取委員会としてはこの通産省の認可に対しましては慎重これを検討する必要がある。こういうふうに検討いたして参りますと、公取の認可基準と通産省の認可基準とは、そこに非常な相違というものが当然出て来なければならない、かように私は考えておる。通産大臣は、公取の基準と私の方の認可基準とは、私の方が公取にまわした場合においてはおそらく一致するだろうというような、きわめて楽観論をはいておるけれども公取の方の御見解はどうか。これは非常に公取委員長としては答えにくい問題であろうとは考えますが、あえてこの点に関しての委員長の明快なる御答弁をお願いいたします。
  67. 横田正俊

    横田政府委員 その問題はそうお答えしにくくないつもりでございます。要するに、認可基準は同じでございますが、見方が非常に違うのだろうと思います。私どもはあくまでも独占禁止法の線から見て参ります結果、通産大臣の見解と見解を異にする場合はもちろん出て来ると思います。なるたけそういうことがないような線で認可がなされることが最も望ましいのでございますが、しかしわれわれといたしましては、あくまでもこの法律規定に従いまして厳格な認定をいたしたいと考えます。
  68. 栗田英男

    ○栗田委員 そこで、私は通産省を疑うわけではありませんが、こういうことも十分に警戒をしなければならぬということは、なかなか公取の認定を受けるのはめんどうだというようなことから、たとえばある一つの問題を取上げて公取にまわしたところがなかなか通産省と公取の見解が一致しないというようなことから、かつてに監督等をやつて公取というものを浮き上らしてしまうような行政指導をあるいはやるのじやないかというような懸念を私は非常に持つているのでありますが、この点はどうですか。
  69. 横田正俊

    横田政府委員 この点はたしか前にも出たと思いますが、私どもとしましては、こういう道を開きました上に、さらに通産省が行政措置をもつてもつと程度の軽い場合に操短を命ずるというようなことは全然あり得ないというふうに考えております。この点は、私からいくらそう申し上げましても、実際の衝に当る通産あるいはその他の主務大臣がどういうふうに今後運営されまするかわかりませんけれども、そもそもこの制度を開きまして、こういう條件を設けて、この條件以内において操短をやるというようなことになりました以上は、通産大臣がこの趣旨を踏みにじるような行政措置というものは決して許すものではないというふうに私は考えております。
  70. 中村時雄

    ○中村(時)委員 通産省の次長に聞きたいのですけれども、あなた方の答弁の内容におきましては、景気の変動までこのカルテルによつて安定するというような安易感が多分に出て来るわけなんですが、一体あなたは、カルテルによつて今の経済機構がそこまで推し進められると思つていらつしやるのですか。
  71. 小室恒夫

    ○小室政府委員 景気の変動の波をカルテルで完全に抑制できるというように安易には考えておりません。
  72. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういたしますと、別な問題として、やはりそこに一つの根本的な間違いがあるということになるわけですね。カルテルによつてそういうところまで行けないという本質的な問題が出て来るわけですが、その本質的な問題としてはどのようなお考えを持つていらつしやるのですか。
  73. 小室恒夫

    ○小室政府委員 たいへんむずかしいお尋ねになつて参りましたが、何か、今の経済の態勢のことなどを理論的に申せという意味ですか。
  74. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それが、あなた方の考え方いかんによつて、結果において今のこの問題の認可権の問題とひつかかつて来る、そういうことでしよう。
  75. 小室恒夫

    ○小室政府委員 どうも、経済態勢全般のことについて私級の者が答弁するのは僭越でございますから……。     〔「名答弁だ」と呼ぶ者あり〕
  76. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それではそれは大臣に伺うことにいたしましよう。そうすると、あなた方が考えている経済施策の一環としてカルテルが出て来た、あなたの答弁からいえばそうでしよう。違うのですか。
  77. 小室恒夫

    ○小室政府委員 今まで、不況に際してあるいは合理化の目的を達成するための業界の自衛的措置あるいは自主的措置も実は禁止せられておつたのです。その禁止を解除する、それはもちろん経済政策的な考慮というものはこの改正の背後にございましよう。しかしそれはあくまでも行き過ぎたものを是正するということであります。
  78. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこまで深く考えられて——まあ、深くか深くじやないかわからないけれども、そこまで考えていらつしやつたにもかかわらず、あの操短の場合に実際問題としてあなた方は、この法案とあなた方の行為というものを考えてみられた上であの措置をとられたのかどうか。それをお聞きしたい。
  79. 小室恒夫

    ○小室政府委員 当時操短の勧告をいたしましたごろに、独禁法の改正の今日のような原案がはつきりした姿で描かれておつたとは思いませんが、しかし不況の際に自主的な措置が講ぜられるような方向へ独禁法が改正せられたら非常に幸いであるという方に、当時においてもわれわれは考えておりました。
  80. 中村時雄

    ○中村(時)委員 独禁法が改正されたら幸いであるということは、その当時は改正されてなかつた、そうでしよう。改正されてない、つまり現行法に照してあなた方の行為というものを考えられたかということを聞いておるのです。
  81. 小室恒夫

    ○小室政府委員 適当な表現かどうか存じませんが、多分に緊急避難的な気持があつたと思います。(笑声)
  82. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは公取委員長にお尋ねいたしますが、今言つたようにそういう非常に興味模糊とした態度をもつて行政措置をしておられたのですね。そうしますと、実際この法文の上から行きましたら、あの行政官庁のとつた行為というものは当然違反するものであると私は思つているわけです。それに対して、もしもそれが違反でないとおつしやるなれば、この條文というものは必要ない。何も書かなくたつて通産省なり各官庁がかつてにやれるごとなんです。一体それはどういうふうにお考えになつているか、その点をお答え願いたい。
  83. 横田正俊

    横田政府委員 この点は結局、われわれの対象になりますのは事業者共同行為、カルテルでございまして、あの便法の際は政府の勧告による行為ということに見ましたので、正式な措置をいたしませんでしたが、しかし業者の動きによりまして、単に通産大臣というものを通じて業者がカルテルをやつているという認定が証拠上その他の関係で法理論的にもできますれば、独禁法の対象となり得ると思います。
  84. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今のお話は、綿紡の人たちがカルテルをつくつて行く、そのカルテルが現実において違法である、しかしそれは通産省の行政行為によつて行われたものだから取調べの対象にならない、こういうお話なんですが、ぼくら非常に単純に考えておるのですがこれは一種の教唆行為ではないでしようか。ともかくこの場合に通産省の人たちは、こうすればこうなるという結果についての御認識は十分にあつたはずで、この点については争い得ない。しかもそれが行政行為の形式はとりながらも現実に生ずべき結果の認識があつたとすれば、その結果の認識がこの法令に違反しておるということは今の通産省の方の御答弁でも明白に現われております。その違反の事実を明白に認識しておるとすれば、これは一種の教唆行為だと私は思うのですが、どうでしようか。
  85. 横田正俊

    横田政府委員 教唆行為ということになります前に、一体独禁法のいわゆる共同行為がそこで成立したかどうかということになるわけでございます。成立したということになれば、それの成立にいろいろ協力したものは、もしそれが事業者であればもちろん独禁法上の問題になり得ますが、そこの根本が問題なのであります。
  86. 佐伯宗義

    佐伯委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は明十五日午前十時より開会いたします。     午後一時十六分散会