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1953-07-13 第16回国会 衆議院 経済安定委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十三日(月曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 佐伯 宗義君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 栗田 英男君 理事 菊川 忠雄君       秋山 利恭君    岸  信介君       神戸  眞君    楠美 省吾君       飛鳥田一雄君    石村 英雄君       小林  進君    杉村沖治郎君       中村 時雄君    山本 勝市君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         通商産業事務官         (企業局長)  中野 哲夫君  委員外出席者         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ――――――――――――― 七月十日  委員小林進辞任につき、その補欠として平野  力三君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員遠藤三郎君及び平野力三辞任につき、そ  の補欠として前田正男君及び小林進君が議長の  指名委員に選任された。 同月十三日  委員阿部五郎辞任につき、その補欠として加  藤清二君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月九日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部改正に関する請願田渕光一君紹介)  (第三二二四号) 同月十一日  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部改正に関する請願大石ヨシエ君紹  介)(第三六一一号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  私的独占禁止法改正に関する陳情書  (第七九二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇四  号)     ―――――――――――――
  2. 佐伯宗義

    佐伯委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。なお通産大臣に対する質疑時間は前会の理事会においてお打合せいたしました通り、各党三十分に願います。質疑通告順に順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 それでは大臣にお伺いいたします。これは石油カルテルの問題でございますが、ちよつと今資料を失いましたので、正確な日時を申し上げられないのでありますけれども、ともかくアメリカ上院の小企業委員会において、何か石油カルテル秘密内容を発表いたしまして、国民輿論に訴えた、それに並行いたしまして、アメリカにおける五大石油会社カルテルによつていわゆるMSA援助資金相当損害を受けたということで、この五大石油会社相手損害賠償請求を起しておるということを承つておるのでありますが、こういうことについて御存じでありますれば、その後の経過を承ると同時に、大臣所見をお披瀝願いたいと思います。
  4. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私はまだその辺のことはよく詳細承知しておりませんで、ただいま御答弁申し上げかねますが、よく調べさせまして、御答弁することにいたします。——公取委の方で御存じだそうですから公取から御説明申し上げます。
  5. 横田正俊

    横田政府委員 詳細な調べはまだできておりませんが、そのような訴訟の起きておることははつきりしております。
  6. 小林進

    小林(進)委員 昨年の八月二十四日、上院の小企業委員会は、トルーマン大統領の承認を得て、国際的な石油カルテルに関する連邦取引委員会秘密報告書を公表して政府賠償を求めている。この報告書の公表と並行して、八月二十三日に相互安全保障局、すなわちMSAは、この石油カルテルによつて米国海外援助資金が不当に利得されたとして、五大石油会社相手とする損害賠償を提起したというのでありますが、これは大臣においても十分御研究賜わるとともにこういう国際的な石油カルテルに対して、アメリカ相互安全保防局が訴訟問題まで起して賠償請求をいたしておるということは、今われわれが独禁法審議する上において、重大なる参考資料にあるのではないかと思うのであります。  大臣はあまりこまかいことはどうもおわかりにならぬことは、この一例によつても明らかでございますから、もつばら政治的な質問に終始いたしたいと思うのでありますが、このたびの独禁法改正に対しまして、相当陳情請願が参つておりまするし、業界から意見具申が来ております。またこの席上においても、われわれは二日間にわたつて公述人を呼んで意見を聞いたのでありますが、これを大別いたしますと、この独禁法ぐらい、いわゆる大資本家中小企業者農民学者といつた陣列の画然と区別せられた法律は、他にないと私は思つているのでありまして、鉄鋼業者を中心とする経団連、日経連、こういう強力な経済団体が、明確に独禁法をこの改正よりさらに緩和すべきことを意見具申して要求しております。ところがこれに対しまして、他の農民中小企業者あるいは勤労者消費組合学者といつた一切の大衆は、このたびの政府改正にあげて反対をいたしておるのでありまして、私はこんなに明確に一線が引かれたことはないと思う。大臣は、この法律改正は、決して一部資本家財閥に味方をするものではないと言つておられますが、今までの審議経過によつて明らかとなつ輿論の二つの流れに対しまして、なおかつ一部の資本家のみを擁護する改正でないと確信せられるかどうか、ひとつ御所見を承りたいと思うのであります。
  7. 岡野清豪

    岡野国務大臣 財界方面でこの緩和をもつとしてくれという希望のあることを私聞いております。それから農民消費者方面からこれに対して異論のあることも聞いております。しかし私として考えますことは、日本経済基盤が非常に弱いということ、それからアメリカあたりのような経済力の非常に強いところと同じような方式で自由競争をさしたならば、共倒れになるのじやないかということ、これは産業界実情から見まして、そう思えるのでございます。私は消費者とか農民とか中小企業者に対しては、独禁法によつて不利益を受けないようにしてもらわなければなりませんけれども、しかしいざ不況なつたときに、財界混乱に陥るとか、競争のためにますます自分自身で首を締めるというところにまで行くことを許しておくということは、日本財界を救い、また保つて行くゆえんでないと考えます。大きな資本家緩和を希望しておりますけれども、この程度にいたしまして、同時に財界の動きがもし混乱に陥りますならば、消費者農民もみんな同じような苦難を受けるという結果も実際上出来るのでございまして、ただいまの日本財界経済界産業基盤というものの実情から推しまして、この程度緩和ということで御審議願つた方がいいだろうと考えておるわけであります。
  8. 小林進

    小林(進)委員 大臣のお立場もわかるのであります。終戦後日本の大資本は解体を命ぜられて、確かにその力が弱つているということはわかるのでありますが、しかし国民全般構造をながめてみます場合には、多数の学者が述べておりますごとく、やはり日本には、弱いとはいいながら、少数の大資本というものと、その下に、ほんとうに生活のどたんばに追い込まれている多数の零細企業者と、そしてさらに悲惨ともいうべき農民労働者が並立しておるのでありまして、弱小とはいいながら、財閥と、大勢零細企業者農民との懸隔というものは、世界の水準からながめて、日本ほどこの懸隔のはなはだしい国はないと思つております。こういうような特別な構造大勢の零細な中小企業者農民がうようよして折り重なつておるこの日本の中に、一時の不況カルテルという形で、一部の財閥資本家のみを保護するようなカルテルを許すということは、いよいよ大勢の浮び上れない中小企業者農民消費者に、さらに大きな経済のしわ寄せを与える結果になると私は思うのであります。この点に対する大臣の御所見を伺いたいと思います。
  9. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。小林さんのお説、しごくごもつともでございますが、今の日本で大資本——戦前の三井とか三菱に匹敵するような財閥はもちろんございませんし、それからただいまやつと立ち直りまして外国貿易をやつておる人とか生産をやつている人とかいうものも、戦前に比べますればまことに微々たるものでございまして、しかも国民大衆が、これだけ塗炭の苦しみ——と崩すのもいかがかと存じますけれどもちよつと水害があつてももうたいへんなことになる。この上また不況があつたらたいへんなことになるということは、当然見えすいたことでございます。その点におきまして、大資本々々々と仰せになりますけれども、しかし大体において日本事業家というものは非常に弱いものである。そういうものに、むやみやたらに、富裕国アメリカのごとき競争を自由自在にさしておくということは、私は日本の国情としてはぴつたり来ないのではないかと思います。それから中小企業者消費者のことを仰せになりましたが、しかし私の考えとしましては、中小企業が、すでに先行いたしまして、中小企業安定法などをしなければならないような現状であつたのでありまして今回不況カルテルなどができましたら、中小企業安定法も一応もう少し改正しなければなりませんけれども中小企業者消費者というものがどういうものであるかと申しますと、日本財界と一連のものでありまして、ことに一番多数を占めておるものでございます。それが——仰せのごとき大資本家とは私は考えませんけれども、主要なる生産業者というようなものが生産過剰に陥つて、無理な競争をどんどんやつて行くということになりまして、財界混乱する場合には、その余波は中小企業でこれを防ぐことはできないだろうと思います。そういう非常に弱いものであります。その意味におきまして、この不況カルテルというものは、中小企業者消費者を救うものだという考え方を持つておるのであります。
  10. 小林進

    小林(進)委員 それではお伺いしますが、カルテルが、不況カルテルでございますが、これはやはり独占形態一つでありまして、このカルテルが持つておる経済力を濫用しないということ、カルテル経済独占して、自分だけの利潤独占するというその濫用を防止する保障が一体どこにあるかということを私は承りたいのであります。一つの例を言うと、しばしばこの委員会で論ぜられた昨年度の操短の問題でございますが、操短不況カルテル打開策として、厳格にいえば私は独禁法違反であると存じます。通産省のおきも入りで、財閥擁護立場から操短を命ぜられて、不況を打開する方策をとられた。それがはたして不況打開方策だけにとどまつたかといえば、ここでもしばしば論ぜられたように、あの操短によつて、非常に資本家利潤獲得いたしました。不況を突破して、なおかつ大きく利潤獲得した。利潤獲得したがゆえに彼らはただちに機械を増設いたしまして、さらによけいに製造するような態勢をつくり上げたのであります。あの一つの例、通産省のてこ入れによる不況カルテル操短が、一体どれだけ業界混乱せしめ、どれだけ消費者に迷惑をかけ、どれだけ彼らに不当な利潤を与えたかということは、これはもう大臣の御答弁をまたずしても、世人周知の事実でございます。ここにすなわちカルテル不況を名といたしまして、権利を濫用いたしまして、自分たち独占価格をつり上げて、独占利潤を追求するという弊害が必ずついて参るのでありまして、これをいかように一体防止しようとせられるか、この点をひとつ大臣にお伺いいたしたいと思います。
  11. 岡野清豪

    岡野国務大臣 今回の不況カルテルにつきましては、やはり生産数量販売数量というものばかりに限りまして特に許すことになつておりますが、しかしその例外といたしまして、生産数量とか販売数量とかいうものを協定しましても、どうしてもやはり救えないというときになりまして、初めて販売価格というものをカルテル内容に入れるというようなことにしております。しかし私どもとしては、販売価格まで行くということは、よほどのことがなければいけないことに考えております。そこで主産量があまり大く出過ぎて、需給の均衡を失うというような場合には、やはり何か是正策がなければならぬと思います。先ほど御引例になりました綿糸、綿布の操短のことでありますが、私どもが見ましたところによりますれば、これは当時私は責任の地位におりませんでしたが、もしかりにあれを勧告せずにうつちやらかしておつたら、どんな結果が出て来るだろうかということをお考えになれば、私ども長らく財界におりました経験から申しますと、日本財界がとんでもない大混乱を起したと思います。その意味におきまして、その大混乱が起きなかつたから、それを対象に論ずるわけには参りませんけれども、もし財界経験者でごさいましたならば、通産者方策は実はよかつたと是認すると思います。えてして物事を未然に防ぎましたときには、すなわち昭和三角のあの金融恐慌みたいな、あんな結果が出ないで済んだときには、出た結果がいいか悪いかということがわかりませんものですから、通産省のやり方について、あるいは世間で御批判があるかと思いますが、私どもはそういうような結果が出なくて、未然に防いだという意味におきましては、非常に財界を救つたものであると考えております。
  12. 小林進

    小林(進)委員 だいぶ大臣の御説明には不満の声もあるようでありまするが、何しろ時間が限られておりますので、一項目ずつお尋ねいたします。このカルテルが単純な品種にのみやり得る、基本的な事業にのみやり得るということから、このカルテルは大企業独占であつて、多種にわたる小小企業その他の業者には、カルテルは事実上成立することができないとは言えませんけれども、ほとんど困難である。すなわちカルテルは大企業独占的なものであるという原則論大臣はお認めになるかどうか、お伺いいたします。
  13. 岡野清豪

    岡野国務大臣 日本産業の上におきまして、大きな生産量を持つのは、お説の通りに大きな企業だと思います。不況か起きて来ますのは、むろん中小企業といつた方面にもいろいろ困難はありましようと思いますけれども日本の物の生産量があまりでき過ぎて需給の調整がつかないという結果は、やはり大きな生産業者あたりが主になるものと思いますから、自然不況カルテルをつくるときには、そういう方向に向うと思いますが、大きな生産業者中小企業消費者に対して供給しておつて経済界は円満に運行しておる。従つて自身としては、なるほど不況カルテルのときには概して大きな生産業者対象になりますけれども、その結果として出て来る利益を受けるものはどこかというと、消費者中小企業者も含めて経済界全般利益確保される、こう考えております。
  14. 小林進

    小林(進)委員 大企業政府の力で保護、育成することによつて中小企業者農民勤労者利益を均霑せしめる、こういう大臣の自由主義的、資本主義的国家経済再建方策は、私どもとは根本的に考えが違つておりまして、決して大臣意見に承服するものではございませんが、ただ私は大企業にのみ成立可能であるカルテルでございますが、そのカルテルは大企業保護策であることは申すまでもありません。このカルテルを事実上実施することによりまして、はたしてしからば不況を克服することができるか。ムースはカルテル景気運動という著書で、こうしたカルテルによる市場操作は、決して不況対策にはならないで、終局するところは、より多くの恐慌市場にもたらす結果になるという結論を出しておる。私もそう思つておる。カルテルのような保護政策をして、最終消費者に高い価格のものを売りつけるというようなことで購買力を奪うといたしますと、最後になつて大きな経済の不安定を来して、景気変動恐慌を来たす根本になると思うのですが、これに対する大臣の御見解を承りたい。
  15. 岡野清豪

    岡野国務大臣 独禁法根本趣旨は、われわれとしましては尊重いたして参る。この犬原則がきまつておりまして、この不況カルテルに対してとります態度は、不況が深刻になりかかつて産業の危機が来た、また産業の根底がくつがえりはせぬかというようなことが見えたときに臨時的にやるものであつて、これは永久的なカルテルではございません。でございますから、その不況の状況がなくなりましたときには認可を取消して解消させる。そういう意味でわれわれは財界情勢とにらみ合せまして、不必要なときにはやめさせる、また公取委員会の方におきましても、もうやめていいじやないかということであればやめさすということであります。すなわちテンポラリー財界救済策であつて、永久にそういうようなカルテル生産業者認めて行くという制度ではないのでございます。
  16. 小林進

    小林(進)委員 大臣の、不況カルテルは一時的なものであるというお話は、確かに抽象的には納得できるのでありまするが、しからば一体現実はどうかといえば、これは運営の問題でありまするが、戦争前のいわば原則的禁止規定に基いているわが国独禁法においてしかり。もはやこの委員会でしばしば論ぜられたごとく、砂糖カルテルといい、ソーダのカルテルといい、肥料カルテルといい、そのほか今公正取引委員会審議、審判中のカルテルが幾十となく生れて、わが日本経済を今や独占化しているのでありまして、こういう事実が幾多現われている。カルテルは事実上、既成事実として法律違反をしながら日本にはでき上つておる。この点私は公取委のあり方についても申し上げたいのでありまして、公取委はこの法律が現存している現在においてもある程度事実無根になつている。大きな経済力とそれのあと押しをしている通産省のたくましい保護政策に基いて、公取の力は事実上休止せられておる形になつている。にもかかわらず、その現実認めて、さらにこれを法律の上で改正して緩和策を講ずるということになれば、その後のわが国独占の勢いというものはどこまで無限大に広まつて行くかわからぬ。これは過去の実績に照して言えると思うのでありまして、大臣がこの席上における一片の答弁として、一時の不況カルテル方策であつて、これが回復すればただちにこれを禁止するというようなことでは、絶対に防止できないと思うのであります。ここ数年来の過去の実績で、事実上独禁法違反の行為が幾つも日本にあるという私のこの主張を大臣はお認めになるかどうか。お認めになるならば、そんなでき上つたものまで取消すことは困難であるかもしれませんが、大臣の御答弁を伺いたいのであります。
  17. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。過去の実績というようなお話でございますが、ただいま化繊などにつきましてその疑いがあるのじやないかというようなことがあつて公取の方でお調べになつておるということを存じております。それから、あるいはあるかないかよく存じませんが、仰せのごとくあらゆる方面カルテルが事実上できているのじやないか、こういうようなことも一応拝聴いたしたのでございますが、しかし私ども認めますところによりますと日本財界が脆弱であつて、普通では立つて行けないのじやないかとも思うのです。それは少し言葉が過ぎるかもしれませんが……。そこでそういうような公取がなくてもいいのじやないかというようなことまで進んで来るのだろうと思いますけれども、しかし公取があればこそやはりある程度までそういうものが押えられておるのじやないか。これは伝家の宝刀と同じように、抜かなくても腰に差しておればやはりそれである程度まで威厳が保てて、秩序が保てて行けるという意味におきまして、公取はますます強化されて行くべきものだと思います。そこで公取の方といたしましても、財界に対する非常に重大事件でございますから、慎重に御研究になつているのだと思いますが、私どもといたしましては過去においてそういう独禁法を全面的にくぐつて、あるもないもわからぬような情勢になつて行くとは、私ども、すなわち通産省の方では見ておりません。
  18. 小林進

    小林(進)委員 確かに大臣の御説明のように公取はないよりいいのじやないか、あるからある程度資本独占を今日まで押えて来たのじやないかというその御答弁は私は納得できるのであります。ないよりはましだという点においては私はまつたく同感でございますが、しかし独禁法至厳なる番人としての正当なる義務を過去において遂行して来たかどうかという点については、私は大臣見解とまつた反対でありまして、公取はいやしくも今までに至る独禁法至厳なる番人としては、相当責任を感じてもらわなければならぬ点が多いと思うのでありまして、その点私どもは将来に対して運用の上からこの改正に非常に危惧を持つておるのでありますが、時間もございませんので、いま一、二にして終りたいと思うのでございます。  今度は例の国際カルテル貿易カルテルの問題でございますが、やはり肥料安定帯価格の問題あるいは飼料の問題においてもその通りでありますが、こうして国内価格をいかような言い分があろうとも、肥料に対しては生産費も何も政府自身がおわかりにならない。資本家か出しまして硫安が九百円だといえば九百円の原価まで通産省所管大臣がこれはほんとう原価だと御信用になつておるだけでありまして、内容がわからない。これだけ資本家というものは原価計算において政府行政官庁の干渉を受けない非常に有利な立場に置かれておるのでありますか、そういう資本家言い分を基にいたしまして、大体肥料価格というものをおきめになつておる。肥料カルテル、私は安定帯価格カルテルだと信じております。その反面出血輸出と称しまして、いわば六百円そこそこの肥料をお投げになつておる。これは解釈によりましようけれども、私は一つダンピングだと思うのでありまして、かつて戦争にわか日本財界がえてこういうことをやりまして海外において非常に信用を失つておる。それがまたひいては帝国主義的な侵略戦争まで進展して参りまして、市場獲得のためにあるいは満州に武力を持つて行く、あるいは東南アジアに武力を持つてつて侵略するというような形ができ上つたのでありまして、私はこのたびの戦争の発展なんかは市場獲得のために日本資本家カルテルをやつてダンピングをやつた。こういうことも私は戦争徴発の重大なる原因だと思つておるのでありますが、今われわれが独禁法をつくりまして、七年半なり八年を通じて自由主義経済原則にのつとつて世界信用を今回復しつつあるさ中において、今またここでカルテルを認容いたしますということは、肥料が今現実にやつておるようなダンピングを将来行うのじやないか、行わなくても行うという疑いの目を世界各国に持たしめ、何しろ過去の実績を持つておる日本でありますから、国際的にも信用を失墜する危険がないかどうか、この点大臣の御見解を承りたいと思います。
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。肥料の問題が大東亜戦争まで実は発展したのですが、この不況カルテルをこの程度に許しまして、世界的に影響があるかどうか、いわゆる世界貿易上その点につきましては私はイギリスのそういうような類似の法律は、日本独禁法に比べますと非常に寛大なものであります。それから西独でただいま出しております法案も大体日本のと似たようなものでございます。その意味におきまして外国からまたこの肥料カルテルをつくるためにダンピングをやるだろうというようなことは、私は疑いを受けないと思います。同時に一面におきましてはフランスとか、イタリアとか、ベルギーというものは、てんでこういうような独禁法を持つておりませんで、カルテル尊重主義でやつておる国もあつて、堂々と世界貿易に乗り出しておるのでありますから、私どもといたしましては世界貿易に関する限りはこれによつてダンピングをするという疑いは受けないものだ、こういう確信を持つております。
  20. 小林進

    小林(進)委員 今大臣のおつしやいましたように、英国はカルテルがわが日本より緩和されておる。あるいは西独で戦争中はカルテルがありましたが、それを改正いたしまして、現在新たにカルテル法を作成中である、そのドイツが至厳なる原則的な禁止法に基くカルテルを今立案中であるということは大臣のおつしやつたように私も同感でありますが、フランスにおいてはカルテルを尊重しておるというお言葉は少し大臣の言い過ぎではないかと思うのでありまして、フランスにおいても目下独禁法の作成を企図しておるというような情報を私はとつておりますので、この点は私はひとつ御訂正願いたいと思うのであります。なお英国の緩和でありますが、これは英国が現にビルマ・インド航海同盟で、航海に関するカルテルを結成いたしまして、わが日本の新大阪商船ですか十ちよつと忘れましたが、船会社の二つが、このインド・ビルマ航海同盟に加盟を申し込んだが、これを拒否したという事実があるのでありまして、これはたしかわが国国際カルテルの問題で、わが国公取ではこれを取上げてその違法性を今審判をしていられるはずであります。これは時間がありませんから、私はあとであらためて公取委員長からその結果を聞きたいと思つているのですが、英国のこういうカルテル緩和に基く国際航海カルテルに対し、わが日本公取がこれを取上げて、英国のこの不当なるカルテルにわれわれは故障を申し込んでおる。こういう現実に照しまして、こういう相手方のカルテルに対して故障を申し込んで、その不当性を追究しておりますわが日本が、それに右へならえをするというような国際カルテル緩和政策をとることは、さらに国際信用を失う原因になるのではないか、こういうふうに私は考えておりますが、大臣のこの点に対する御見解を承りたいと思います。
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私このインド、ビルマの問題はよく存じません。しかし概括いたしまして、日本で物資の需給の調整がとれないで不況になつて日本財界が危機に陷るような場合を救おうというこの不況カルテル制度が、そのままそういうような国際的なものに影響して来るということは私は考えておりませんが、しかし詳しいことは公取の方でお調べになつていると思いますから、公取委員長からその点はひとつ御説明を願いましよう
  22. 小林進

    小林(進)委員 時間がございませんから、公取の分はあとで伺います。  いま一問として最後に仏大臣にお伺いいたしたいと思うのは、今わが日本不況に陥つて、どうしても財界カルテルを必要といたしておる、だからこそ独禁法の実質上の違反を犯しながらも、ここ数年前からカルテルの態勢に陥つたのであるという大臣お話でございましたが、今度は私はカルテルの問題ではなくて、いわゆる審議庁長官として大臣にお伺いしたいのでありますが、一体どうして財界がこれほどのカルテルを必要とするまでに追い込まれて来たかといえば、決して貿易や国際関係ではなくて、わが国資本家みずからが朝鮮事変や特需に便乗いたしまして、いわばどろぼうかせぎのようなやり方をして、みずからこの経済界に対処して行く合理性を持たなかつたおのれみずからの罪である、こう私は考えております。特にいま一つは、よく大臣は今日の不況をコスト高とかあるいは企業の合理化にその原因をお持ちになつて行かれますが、われわれ計画経済をもつて任ずるものは、今日財界が行き詰まつている根本の理由は、限られたわが日本の資材を有意義に使わなかつた、重点的にその資材を使つて産業助長の方向へ政府が持つて行かなかつた。たとえて言えばビルデイングがそうです。自由党は四年間政治をやつて何をやつたか。あのビルディングも一部の財閥や銀行が入るようなものを五百もつくつている。三千万、五千万の高い金を投じて、セメント鉄材という基本産業に有用なる資材をみんなああいうところに使つた。こういうふしだらな経済の再建方式が、わが日本財界人をして、今日カルテルを必要とするまでに追い込んだのであつて財界人かもしカルテルが今日必要とするならば、その罪は財界人みずからのわがままと政府の無政策なる放任経済の結果といわなければならないのであります。今日こういうどん詰まりに来て、またさらに政府のそでにすがつて不況カルテル貿易カルテル、合理化カルテルというような形でその恩恵を求めて、そのカルテルの犠牲を中小企業者労働者農民消費者に押しつけんとするがごときは、まさに私は言語道断であるといわなければならぬと思うのでありまして、今こうしたカルテルをつくつて財閥を擁護する前に、おそまきながらほんとう企業の合理化や、自分たち自身の経営のやり方をいま少し反省せしめる方向に持つて行くのが先決問題ではなかろうかと私は思うのでありますが、これに対する大臣の御見解を承つて私の質問を終ります。
  23. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。  計画経済、すなわち国家がすべてのことを計画して、それを民間業者に押しつけるというようなことは、これは一つ考え方でございましよう。しかし私どもといたしましては、自由主義経済——自由主義経済と申しましても、放漫手放しの、いわゆる国家も何もなくて、ただ自由自在にやつて行くというようなプリミティブの、原始生活の自由経済じやなくて、相当の規制をいたしまして、しかも自由に創意とくふうをこらして、そして各業者か思う存分に、自由自在に仕事ができて行くというのが民主主義の経済であろうと私は思います。それであればこそ、独禁法によつて自由競争もやらせ、カルテルをしてはいけない、かつてにおやりなさい、しかしかつてにやつてつても、その中にはやはり国家という一つの総合体がございますし、国民全体の利益というものを見なければならぬという一つの要請がございますから、そこで何とか規制をして行かなければならぬというので、いろいろな法律とか政令とかいうものが出るのでございます。いろいろなビルデイングが建つたとかなんとかいうことでございますが、しかしこれも重点主義とかなんとか申しましても、これを禁止し、もしくは制限し、そして国民の自由なくふうと創意による活動を禁止してしまつたならば、これは自由主義経済じやなくて、そうなれば独禁法もいらぬと私は思うのです。独禁法というものは、国民に自由自在に、かつてな御活動をなさいというのがその趣旨であります。でございますから、私どもといたしましては、もし計画経済をしまして、あんな大きなビルはいらぬじやないか、とめてしまえとか、いやそういうような行動をするのはけしからぬ、やめてしまえとかいうことを政府自身一つの計画を立てて国民に押しつけるのは、これは主義の相違でございますから、いたし方ないと存じます。
  24. 小林進

    小林(進)委員 大臣の御説明に対しましては、まつた見解の相違でございまして、私は承認できないのでありますが、時間もございませんので、次の機会まで質問を留保しておきます。
  25. 栗田英男

    ○栗田委員 小林委員の質問に関連をしてお伺いいたします。先ほど小林委員から操短カルテルの問題で大臣に御質問がありましたときに大臣は、この操短は非常に成功したということも言つておりましたし、どうもあなた方は経済にあまり関係がないからこういうことはわからないのだというような趣旨の御答弁のように受取れたのでありますが、そういうお答えは、どうも通産大臣からの答弁ではなくて、財界代表の参考人の意見を聞いているようにしか考えられないのであります。当委員会といたしましては、今日まであるいは公聴会あるいは参考人等を呼んで独禁法改正に対する意見をいろいろ承つたのでありますが、いかにこの方々の参考意見というものが自分の業種にかつてなふうに独禁法改正してもらいたいという意見が強かつたかという点で、私は今日唖然といたしておるのであります。そこで私が大臣に特にお尋ねをいたしたいことは、少くも大臣はこの独禁法改正がいかに国民の生活に調和するかということを観点としてこの改正案を考えなければならぬ。そこで今の操短は非常に成功したと大臣から御答弁がありましたが、これを綿紡の場合の操短カルテルについて考えて見ますと、操短をして九箇月で休錘をいたしました。ところが、その結果八十万錘も増錘をして、設備制限をしようと思つておるのにかえつて八十万錘もふえてしまつて、このために非常な矛盾に悩んでいるという結果が出ておるじやないか、この問題について大臣の御見解を承りたい。
  26. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私の申し上げ方が足りなくて、あるいはそういうようにお考えかもしれませんが、経験がないからおわかりにならないと、私は申したことはございませんで、私たちの長年の経験によりますれば、あれはやはり非常な混乱に陥るべきものであつたが、ああいう操短勧告をしたためにならなかつたのだ。もしそういうようなことをせずに、あれをあのまま行くにまかせたならば、昭和九年のパニックとかなんとかいうことが出て来るということが過去の経験上見られることだからよかつたのだ、こう申し上げたのであります。  それからもう一つ設備がふえたというお話でございますが、これは日本といたしまして慶すべきことだと私は思います。御承知の通りに、われわれといたしましては、ただいまの経済情勢でそのままうずくまつてしまうとか停頓してしまつたのでは困るので、できるだけたくさんの生産設備ができ、同時にその生産できたものを外国へ出すというような努力をしなければならないのでありまして、もしわれわれがこうしたい、ああしたいと思いましても、業者の中でそれをしてくれなかつたら、やはり日本の将来の発展のためにはならないのです。それを業者が苦難を押し切つてどんどんと生産設備を拡張して増産に向つて行くということは、私は悪い結果じやない、こう考えております。
  27. 栗田英男

    ○栗田委員 操短しておつて八十万錘も増錘をしておることは悪い結果じやないということを通産大臣が言つておりますが、これははなはだ私は奇々怪怪だと思うのであります。操短をしておつて設備がふえることは悪い結果でないということはどうかというと、結局この操短ということがきわめていいかげんな時期にこれを許したということなのです。結局どういうことかというと、操短をしたことによつて金がもうかつた価格のつり上げによつて設備をするだけの金が浮び出たのである。従つて、いやしくも操短をしておつて八十万錘もふえたことが日本のために喜ぶべきことだという、こんな通産大臣のお答えは納得できない。
  28. 岡野清豪

    岡野国務大臣 その当時やはりこれも計画経済でございませんから、設備の制限ということはいたしておりません。それからもうかつたからこれが八十万錘もふえたということについては、私はそう考えませんで、やはり先行き日本の需要がふえて来るだろうということを見込んで、商売人がやつた、こう考えるのでありまして、決してあり余つた、もうかり過ぎた金によつて設備の増加をしたとは考えておりません。
  29. 栗田英男

    ○栗田委員 私は通産大臣に申しますが、そのように操短をしておつて増錘をしたということは、いかに通産省操短の勧告がいいかげんであるかが明らかでありませんか。私は特に通産大臣に念を押します。こういうことを通産大臣がやつておるから、われわれはカルテルの認可権を通産大臣に与えるということは最も危険であると申し上げておきます。
  30. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は開廷質問として次の点をお伺いしたい。問いだけを先に出します。  まず第一点に、株式の保有と役員の兼任に対して、この十条の一項、二項、三項、十三条、十四条において現行法でもりつばにこれは取締れるのでありますが、このような条件を総合した場合に、少くとも現在の他会社に対する乗つ取りが取締られるかどうかということをお聞きしたい。  第二点として認可、認定の問題であります。通産大臣が許可をする。そうして公取委の認定によつて云々とおつしやいますが、この問題に対して、おそらく私は公取委員会の理論の上における許可権の問題と、行政面における権利の執行を行わんとする通産省意見とが相いれないために、このようなくだらない妥協案ができたのだろうと思う。その点に関してこれが妥協案であつたかどうか。その点大臣から、公取委の理論の上の考え方と、あなた方が考えておる許可権の考え方をお聞きしたい。なぜかといいますと、在来は窓口においていろいろそういう書類を扱う通産省において、これを公取委に持つて行くのですけれども、もしあなた方が許可権を濫用しますと実際に書類を持つて来ても、それを窓口ではね飛ばすというおそれが出て来る。この法案ではそれに対する取締りというものはちつともないのであります。だから行政機構として完全に官庁のすきなように取扱いができ得るという危険性が多分にあるわけです。  続いて先ほどから銀行家としてのカルテルの見方を盛んにやつていらつしやいましたが、大体カルテルというものは、御存じのように、一八七三年ですか、ウイーンで初めて行われたものが、第一次の大戦後ドイツにおいてこれが行為の上に現われて来た。そのときの一つ考え方は、過剰生産に対する需給関係の調整としての機能を発揮さそうとしたためであつた。ところが実際のカルテル悪というものの方が実は社会的には非常に大きくなつて市場に対する独占支配というものの方がより大きな姿となつて現われて来た。しかも今度日本においてはこの独禁法を一部改正して、今言つた許可権と関連しますか、官庁によつてこれを行わんとするそういう姿が現実の上において現われて来ている。より以上悲惨な状態です。その例をとつてましよう。あなたは先ほど操短の問題に対して事実は非常によかつたであろうという考え方、なるほど銀行家としてはいいでしよう。この例をもう一つ砂糖と両方に関連してとつてましよう。砂糖に対しましては現在消費税を積み立てなくちやならぬという義務がある。そのために、今の輸入砂糖というものを一箇月大体七万トンといたしますと、三箇月において二十一万トン、それを銀行に積み立てるのが幾らかというと、大体六十五億から積み立てる。そうしますと、この六十五億を中心にしてそれだけ融資を与えているわけです。もし砂糖の値段が下り、あるいは綿糸か下るとしますと、銀行家はこれを中心にいろいろ金を貸しつけているのですから、少くともこの値段をつり上げなければならぬ。つり上げないと、自分の貸付の不安定が出る。そこでそういうカルテルを結んで、すなわち銀行家と資本家が当然提携しまして、そこに一つ価格の維持という美名に隠れて、たとえば操短において二万人からの人間が首切りになつている。こういう状態が現実に出て来る。こういう面をどう考えていらつしやるか。ほんとうにあなたは真剣に考えているのかどうか。ただ条文のためにおもしろがつてこんなものをつくつて出して、資本家が一部喜んでくれたら、自由党万歳といつているのか。一体どつちなのか。ほんとう国民のためを考えているのであつたら、こういう不見識な発表の仕方はないと思う。われわれはそういう意味においてお尋ねをしたわけです。まだお尋ねしたい点はたくさんありますけれども、一応関連質問だけの問題ですから、これだけにしておきます。
  31. 岡野清豪

    岡野国務大臣 株式につきまして乗つ取りがありはせぬかというお話でありますが、ただいまのところでは、不当な手段により不公正な取引によつてやることは厳に禁じております。そういう意味におきまして、われわれといたしましては、この改正案によりまして株式に対する乗つ取りができるというようなことはない。この辺はひとつ公正取引委員会の御意見にまちたいと思います。  それから認可、認定のことでありますが、どうも通産省はたいへん信任が薄うございまして、かつてなことばかりやるように考えられますけれども、今度の不況カルテルというものは、先ほどからいろいろ御議論を伺つておりますと、やらぬ方がいいんじやないか、すなわちこういう例外を設けない方がいいんじやないかという御趣旨がリードしているようでございます。そういたしますれば、仰せのごとく通産省がかつてにこれを受けつけないということは、むしろその御趣旨に沿うことになります。同時にこの不況カルテルを許可するにつきましては、非常に厳格な法律上の規定がございますから、御質問のような心配はないのではないか、私はこう考えております。  それから過剰生産がだんだんと砂糖の問題に触れて来たのでございますが、しかしこの点におきましては、過剰生産をやつて需給の調節がバランスを失う、こういうようなときに今回の不況カルテルをやるわけです。過去の実績におきましてどういうことがありましたか、砂糖の問題につきまして、砂糖のプライスを維持するということがどういう経過になつてつたかは、一応調べまして御答弁いたすことにいたします。
  32. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 関連して……。先ほどこの独禁法の性質につきまして、これは民主的に自由に取引せしむるためであるということを大臣仰せられたのです。そこで私は伺いたいのでありますが、私もその通りであつて、この独禁法は民主経済憲法とまで言われておるのであります。しかるにもかかわらず、このたび大臣が認可、不認可をやるという。ここにこの民主経済憲法の中に大臣が介入して来た、その介入しなければならない理由、その精神はどういうのでありますか。すなわち今までの公取委員会では、いわゆる民主経済憲法を守つて行くことができない、どうしても官僚がこれに入つて行かなければいけない、何か公取に対するところの不信任的なことでもあつてなのでありますか。何の必要があつて大臣がこれに認可、不認可というようなことで介入して獲ることになつたのでありますか、その点伺いたい。
  33. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは御承知の通りに、日本産業、通商に関しましては通産省が一番中心の省でありまして、日本産業を安定させ、同時に発展させて行き、また貿易も発展させて行くというようなことに全責任を負うところの省でございます。そこで独禁法をこれで緩和いたしますについて考えられますことは、もしも日本産業が危機に陥るというようなことがございましては、われわれとしてはその責任上どうしてもよそ見をしておるわけには参りません。同時にそういう情勢ほんとうにあるかないか、また実情というものについて、平生しよつちゆう取引について関心を持ち、同時に指導などもし、またその行先を見きわめておりますところの詳しい材料とか知識を持つております通産省というものが、これに対して相当の発言権を持つて、そして日本財界の安定をこいねがわなければならない。こういうような立場になつておりますので、立場が違いまして、われわれといたしましてはどうしても日本財界の危機もしくは苦痛というようなことにつきまして十分なる注意をし、そしてそのための判定を下して、認可すべきやすべからざるやを判断しなければならないと思いますので、通産省に認可権をいただいたわけでございます。しかし一面また公取委員会独禁法を強行し、同時に保護して行くというような立場にあられるので、その法律上適法にやられるかどうかということについてはどちらがどうとも言えない、両方とも同じような立場で、ただ観点が追つて判定をするということでございます。しかしすべての財界の危機を救う、また安定を来すという責任が私の方にありますので、認可は通産省でした方かいい、こういうような結論で行つたわけでございまして、両方とも立場を異にいたしました関係から、意見が一致して、認可ができる、こういうことになつたわけであります。
  34. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 関連の質問をいたしますが、私は御承知の通り与党ではありません。しかしながら他の野党の諸君の質問を聞いておると、この点に関する限りはかなり私の考えと違つておりますので、関連の質問を求めたのであります。私はこういうふうな考えで、岡野長官ないし通産大臣考えておられるのではないかと思うのです。それを野党の諸君が猛烈に質問しておりますけれども、そこに誤解というか、そういうものがあるのではないか、あるいは説明の不足があるのではないか、私はこういうふうに解釈しておるのですが、それでいいかどうかをお答え願いたい。独占禁止法の改正でありますが、独占禁止法そのものは自由競争の秩序を確保するにある。これが法益である。ところで今回の改正は、カルテル認めるといつたようなことから何か自由競争を制限するといいますか、本来の独占禁止法の目的から申しますと反対の方向に改正をするというふうに野党の諸君はとつておられるようであります。あるいは野党以外でもそう考えておられる方があるかもしれませんが、私はそのように考えていない。この改正独占を奨励する目的で改正しようとするのでない。これは明らかだ。また競争の秩序そのものを制限する目的でもない。ただ破滅的な競争を防いで、真の意味における競争の秩序を全うさせようとするところにねらいがある。こういうふうに私は解釈しておる。私はかねがね申しておりますけれども、個人々々が白兵戦をやる、一騎打ちをやる、チヤンバラをやるといつたような、そういう競争だけを競争考えれば、確かに集団をなして競争をするということは競争ということになりませんけれども、先ほど来野党の諸君も申しましたようにカルテルを結んだところで根本的に競争がなくなるものではないのです。ただある程度競争を制約する。制約をするから破滅的競争は防がれる。それには間違いありませんけれども競争そのものは否定できない。結局破滅的競争が秩序のある競争に形態をかえるだけであります。これは決して私の個人的な意見ではありません。こういう席で申し上げますと恐縮でありますけれども、やはり世界的に権威のあるカルテルないし競争に関する学者が、たとえばドイツのゲオルク・ハルムという人などは競争という題目で学位をとり、競争という題目で世界に名をなしたのでありますけれども、このハルムが競争の形態は変化する、カルテルによつて競争を防ぐということは破滅的なる競争を防ぐのであつて、決して競争を否定するものではない。むしろそれによつてこそ破滅が防げて、真の意味における競争の秩序は運転して行くのだ、こういう見解があつて、私はそれが正しいと思つておるのです。そういうふうに解すから私はこの改正を是認しようとするのでありますが、そのように解してさしつかえないかどうか。もし私の質問の意味が御了解願えなければ重ねて申しますが、破滅的競争を防ごう、これは岡野大臣答弁を聞いておりますと、たびたびこれをやらなければ破滅する、混乱に陥る、破滅的競争という言葉は使いませんけれども、ねらいはそこにある。破滅を防ごうとするのであつて独占を奨励しようとするのじやないのだと言われておることから、これを学問的に申しますと、そういうような表現になるのではないか、こう考えて助け舟をあえて出すわけではありませんけれども競争といえばただやたらにそれだけが破滅的競争競争だ、集団的な戦いは、戦いでなくて、チャンバラだけが戦いだといつたような考えをどんどん言われておると、私も立つて一言弁護ではありませんが、申し上げざるを得ない。まだ幾らもありますから、論争してもよろしい。
  35. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は実務家でございまして、私の言葉が十分学問的に御説明できなかつたことは遺憾と存じます。今山本さんがちようど私の考え方を学問的に説明してくださいまして、非常にありがとうございました。(笑声)私は学問があまりありませんから、そういうことはわかりませんけれども、ただ実際の経験の結果としまして、自由主義の経済においては自由競争をしてよろしい。またそうしなければ実際の仕事において創意くふうも出て来ないし、発展もしないだろうという意味独禁法というものができておるのであります。しかし事一たび日本産業全体から見ますと、それは行き過ぎになつておる。そしていつでもあることでございますが、貧すれば鈍すると申しまして、非常に不況に陥りましたときには、業者といたしましても自分自身で正確なる判断ができないで、ただ競争々々というふうに、競争に夢中になつて、しかを追う猟師山を見ずということになりかねないのでございますが、そういう場合にはやはり不況を救うという意味において、この独禁法の例外を規定しておいたらいいだろう、こういうことに考えております。まつたく御質問いただきましてありがとうございました。
  36. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 先ほど来肥料価格あるいは砂糖の問題等いろいろ出ましたけれども、あれはカルテルのためにああいうことになるのではなくて、輸入輸出に対して政府が統制しておるところにああいう二重の価格の問題が出て来ておるのであつて、決していわゆるカルテルのせいではないのだ。もし輸入が自由になつてつたといたしましたら、国際的に安い肥料が入つて来て、どうしたつて国内のああいう高い肥料価格は維持されるわけはありません。ですからそれはカルテルのせいじやなくて輸入を制限しておるところにある。輸入を制限しておるというのは理由はありましようけれども、自由主義の経済責任じやありません。むしろ自由主義に反したようなことをやつた結果そういうことが起つて来ておるのであつて、その罪を自由主義経済責任に負わせるというと、冤罪を自由主義経済が受けることになる。私はただ一つ大臣にお願いしておきたいことは、任意カルテルはよろしいけれども、この自由な意思で契約をするということは自由主義原則に沿うておるのでありますから、必要に応じてカルテルを結んで、いろいろ制限をしたりないしは価格の協定をしたりということは、私は経済界によい影響を与えると思いますけれども、ただカルテルというのか不況をある程度切り抜けましたときに独占欲を生じて来る。不況を切り抜けるときには背に腹はかえられませんから、どうにか守つておりますけれども、どうにか切り抜けたときに今度はその勢いで独占利潤を得ようという欲望が生じて来る。ところが多少景気が直つて参りますと、その中から抜けがけのものが出て参りまして、どうしてもカルテルが厳重に守れないことになる。そうすると業者自身政府に訴えて、どうかアウトサイダーを禁ずるという強制カルテルをつくつてもらいたいという要求をして来ることは、私は火を見るよりも明らかだと思う。そのときに危険が始まる。任意カルテルならば必要に応じて生れ、必要がなくなれば機能を失いますけれども政府がうしろにおつて権力でもつてアウト・サイダーを禁止する。こういうことになりますと、そこに自由競争の秩序はもはや機能を失うことになりますから、そういう要求が起つて来ましても、軽々しくこれに応じない。同じカルテルでも、自由の意思で結び、自由な忘恩で脱退する任意カルテルと、政府の権力を背景とする強制カルテルとでは自由競争の秩序という観点から見ますと、まつたく機能が違う、働きが違うというこの区別を十分にのみ込んでおいていただいて、強制カルテル認めないように用心を願いたい。これをお願いいたしまして私の関連質問を終ります。
  37. 岡野清豪

    岡野国務大臣 承つておきます。
  38. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 カルテルが、先ほど来仰せられておるような、大きな企業の間に結ばれやすいし、またそこだけ効力を発揮する、こういうものであることをお認めになりましようか。
  39. 岡野清豪

    岡野国務大臣 大きな資本だけにとどまるものでないと私は思つております。
  40. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 先ほど来の紡績のお話を承つておりますと、大きな企業がつぶれては国家的経済に非常に影響があるから、従つてこれを認めたのだというようなお話がありましたが、それがそういうふうに聞えざるを得なかつたのでありますが、ひとつ御説明を伺いたいと思います。
  41. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私の先ほど申し上げましたのは、これは大資本に限るというものではなくして、概して生産過剰ということになりますれば、大きなメーカーというものが大きな役割を持つ、こういうことになるのが実情じやないか、こういうことであるいは大資本というものがその中に大きなウエートを持つということになるかもしれぬ。こういう実情を申し上げたのでありまして、これは大資本とか、小資本とかいうことでなく、いわゆる生産過剰というものが出て来たときにそれをどうするかということで、その生産者が寄つてつくるこういうことでございます。
  42. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この間大臣に伺いましたときに、一万出総裁だの、川北さんのお話のときに、日本の現在の経済状況としてはカルテルを認むべき状況はない、こういうふうにおつしやられましたし、また公取委員長お話でも、現在の段階においてはカルテルを認むべき現実の事由はない。こういうふうに言つておられたのであります。このことに間違いないでしようか。
  43. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。大体そういうことで間違いないと思います。
  44. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと。これから先の事態に際して、そういう事態か起つて来たときのためにこの法律が必要なのだ、こういうお話でありますが、そういたしますと、認可基準というものが非常に重要なものになつて来ると思います。そこで認可を与えられる基準としていろいろ考えられて参りますが、その一つの実例として、やはり私たちは綿紡における操短の場合を検討してみないわけには行きません。この綿紡の操短を勧告せられた重要な原因として大臣は先般来、もしこれをほうつておくとつぶれてしまう、たいへんなことになる。こういうお話でありましたが、このたいへんなことになるということの意味をもう少し御説明いただきたいと思います。
  45. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは仮定のことでございますから必ずそうなるとも見通しがつかないのでございますが、しかしもしほうつておいたならば、大正九年の混乱のようなことも出ぬとも限らぬ、あるいはそういうようなことになり得るんじやなかつたか、こう私の過去の経験上申し上げた次第でございます。
  46. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 しかしこの操短勧告を出された当時、それでは十大紡の実態がどうであつたか、こういうことを私も実はいろいろな、バランスシートやその他で調べてみたのですが、そうしますと、少くとも二十五年から二十七年の十月に至るまでの十大紡の利益というものは九百三億になつております。これは計算してみたんですから、確かであります。また社内留保金などは四百三十億になつております。しかもこの十大助の公称資本を足してみますと、百二十一億にしかすぎない。これだけ大きな利潤を上げ、なおかつこれだけ大きな社内留保金を持つているにもかかわらず、一時的な暴落が生じたからといつてカルテルを、勧告などという形でしなければならなかつたか。
  47. 岡野清豪

    岡野国務大臣 操短勧告をいたしましたときは、私はただ大観的にこれを考えておつた次第でございまして、当時の勧告いたしましたときの詳しい事情を政府委員から説明させていただきます。
  48. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その前に、結局この操短勧告はこのような利益現実にありながら、まだここでやらなくとも済む、会社が倒産してしまうという実情にないにもかかわらず行われたんじやないか、結局これは十大紡のこれから生じて来るのであろう暴落による損失を食いとめてやつた、こういうだけの意味しかないんじやないか、こういうふうに私たちは観察をしておるのでありますし、またそれの一番大きな原因としては、この十大紡に金を貸しておる銀行家諸君が自分らの資金の回収の遅れて行くのをおそれる、こういう形でこれも通産省に圧力を加えて来たんじやないか、こういうふうに考えるのですが、こういう関係があるかないかをお答え願いたいと思います。
  49. 中野哲夫

    ○中野政府委員 紡績の操短勧告の当時の事情につきましては、私の記憶に残つている範囲におきましては、当時生産過剰のために各社の在庫も非常にふえた。これに関連して商社の在庫も非常にふえた。またこれに関連して位段もだんだん下げの一方であつたということで、たしか一俵八万数千円に落ちたのでございます。と同時にこの値下りが海外にも反映いたしまして、そう先安の傾向をたどるならば、どうしても海外のバイヤーの方も買い控えるというような傾向も看取せられまして、綿糸布の輸出も不振を加えるという傾向になつたのでございます。しかも当時の価格におきましては、原綿等の価格からコスト計算をしてみますと、海外市場価格より下まわつた時代もあつたというようなことで、御承知のような操短勧告を通産省としていたしたわけでございます。それでただいま御指摘のように、そういう勧告をしたときの事情というものが今回の改正案に出ておりまする不況カルテルの認可要件等を満たしておつたかどうか、こういう点のお話だと思いまするが、それは当時の事情としてはただいま御説明申し上げた通りでございまして、今回の改正法案がかりに成立、実施せられました際に、これがいかが運用されるかという点はこの法律の二十条等に書いてありまする厳格な条件によつて事態を検討し、これの認否を決する、こういうふうな考えでおる次第でございます。
  50. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 大臣に伺うのですから、あまりこまかいことは恐縮ですが、しかし今滞貨が非常にふえた、こういうお話ですが、これはあとから公表された数量によりますと、操短勧告をせられたときには十大紡の在庫数は九万梱しかなかつた。毎月は少くとも二十四、五万梱滞貨があるにもかかわらず勧告を出されたときには九万こりしかなかつたという事実があとからはつきりしている。それをなお滞貨数が多かつた、こういうふうにおつしやるのは非常に事実を歪曲していられるんじやないか、こういうふうに感ぜざるを得ないのです。それともう一つ価格が暴落した、これは困るというお話ですが、このときに暴落した価格はたしか一梱八万二千円台だつたと思うのです。ところがその当時現実に米綿の値段、それから歩どまり、一般の管理費、減価償却、こういうものを割出して計算をしてみますと、少くとも七万三千円くらいで十分損をしないでやつて行ける計算が立つはずです。これはしろうとの私が計算してみたのですから、正確とは言えないかもしれませんが、少くともこれは業界の常識だと思います。こういうふうに七万三千円で利潤が立つにもかかわらず、八万二千円だからといつて、いきなり操短勧告をする。在庫数がふえたから、従つて勧告をした、実はあけてみたら、九万梱しか打率がなかつた、こういう点から見れば、この勧告は明らかに通産省が十大紡の下りかかつている利潤を食いとめてやるために行つたものにすぎないと考えざるを得ないのです。今お答えがありましたが、私の申し上げた数字についても、たとえば社内留保金、過去二年間における利益、こういうものについてのお答えがなかつたと思います。こういう点から考えてみて、十大紡の利益を単純に下つて行くのを防止してやるということのために、しばしば勧告が行われるということになりますと、今後この法律によつて行われる認可というものがどういう方向に持つて行かれるかということは、想像にかたくないと思うのですが、そういう意味通産省はこの操短勧告について、もつと疑惑を解くべき明白な根拠を示さなければならない、こういうふうに考えるのです。在庫が九万梱であつた、あるいは七万二千円で採算がとれるにもかかわらず、八万二千円で操短勧告をした、こういうことについてのお答えをごく簡単にお願いしたいと思います。
  51. 中野哲夫

    ○中野政府委員 私も直接の担当者ではございませんが、当時紡績の操短問題を部内で会議をいたしましたときには、数箇月にわたつているのでございまして、開始されたときの在庫表というものは、あるいは御指摘のような数字であつたかと思うのでございますか、それは引続き毎月、あるいは二月、三月というふうにわけたような時代があるのでございまして、その月々の在庫表によりますと、ただいまお触れになりましたような二十数万俵といような在庫高もあつたのでございます。それを先ほど大臣お話になりましたように、これは仮定の場合でございますが、ほつておいた場合にどうなつたかということの逆に、操短勧告をいたしましても、なお在庫が一時異常な量に達したという時期があつたのでございます。
  52. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いかに御説明なすつても、あの当時操短勧告をなさらなくても、この十大紡がつぶれてしまうというような形勢でなかつたことは、これはもうだれもが認めていることだと思うのです。それにもかかわらずこの勧告によつて幾多の中小企業が倒産をし、しかも操短勧告によつて二万人以上の労働者が首を切られ、さらに残つた労働者が非常に労働過重になつたという事実を否定できない。こういう事実をよくお考えをいただきたいと思います。この点についてはあとでまた詳しく行わさしていただきます。  さらに引続いて、最近日本産業界で、銀行を頂点としてさらにその下に兵器産業の再編成が行われており、そうして非常に大きな系列ができかかつております。これの非常に重要な手段としては株式の保有、役員の兼任、こういうことが重大な手段に上つて来ております。今度の独禁法改正によつて、株式の保有それから役員の兼任、こういうことを許そうとするその一番重要な経済的な根拠はどこでしようか。今申し上げたような兵器産業の再編成、こういうものに資するためにこの規定を緩和されるのかどうか、大臣にお答え願います。
  53. 岡野清豪

    岡野国務大臣 今兵器産業がどんどん頭をもたげており、また銀行とタイアップしてそういうことになつておるということを仰せになりましたが、私はそういうことをまだよく存じておりません。兵器産業と申しましても日本の防衛計画とかなんとかいうものが何か決定でもされなければ、むしろ業者、すなわち実業家というものは機敏なものでございますから乗り出さない、こう考えております。  それから株式のことは、不当な集中ができないように今でもできておりますが、この点は今回の改正案でよく考えたい、こう思うのでありますか、この辺のことは公取委員長の方から御説明願いたいと思います。
  54. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 兵器産業の再編成が進んでいるということを御存じないというお話ですが、例をあげて行けば切りがないことで、あえて申し上げません。あまりばかばかしいお答えですから……。そこで続いて、この法律によりますと、二十四条の四に購入カルテル認めている、いわゆるくず鉄について特にこれを許す規定がありますが、くず鉄を特に許す必要がどこにあるか、これをひとつお話をいただきたいと思います。
  55. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これはひとつ政府委員から詳しく説明していただきたいと思います。
  56. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 失礼ですが、これは非常に重要な点で、主管大臣がこれを御存じない、そんなことでは意味ないと思うのです。はなはだ恐縮ですが、もし御存じのところがありましたらその部分だけでけつこうです。     〔「大臣はもつとよく勉強しろ」と呼ぶ者あり〕
  57. 岡野清豪

    岡野国務大臣 勉強はよくしたのでありますが、実際にぶつからないものですから……。日本で戦後非常にくず鉄か多かつた時代がございました。そうじてアメリカに輸出するということがあつた時代もあります。ところが最近になりますと、くず鉄がやはり足りなくなつたという事象も起きております。そこでそのくず鉄というものは、御承知の通り日本で申しましたら大きなビルディングがこわれてくず鉄か出て来た。あるいはまた軍需用の鉄というものがありましたから、もうただでそれをかき集めて運送費だけで済むようなことがあつたのであります。結局何が市価であるかわからない。ところが需給の関係がありまして、そのくず鉄の市価が非常にぐらつきまして、生産をしますのにくず鉄が必要でございます。とにかく製鉄には必ずくず鉄か必要でございまして、石炭とか電力と同じようなウエートを持つているにかかわらず、その市価がなくて、安定していない、こういうような場合に、生産費を合理化するためには、やはり一連のカルテルをつくつて、それによつて市価もしくは配給を安定さして合理化さして行くこういう意味においてくず鉄をこの中に入れておる、こう私は考えておるのであります。
  58. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 御存じないとおつしやればどうも仕方がありませんが、しかしくず鉄の市価が変動して、それか生産に非常に影響がある。こういうお話はあまり御存じなさ過ぎるので、はなはだ失礼ですが申し上げます。今のくず鉄の買入れというものについては、鉄鋼三社が建値をつけまして、そうして強制的に値段を上からきめて行くという現実が行われております。これを御存じないとはどなたも言えないと思います。ところがこの建値が現実においては今トン当り一万六十円くらいになつております。しかしこれは過去において二万五千円まで上つたことがあります。しかし今の一五六十円で鉄鋼三社が建値を発表して、これで悪ければ買わぬ、こういうことでくず鉄集荷業者を痛めつけておるというのが現実です。これをよく頭に入れておいていただきたいと思いますが、こういう現実の上になおかつくす鉄の購入カルテルがなぜ必要であるか、結局これは今一万六千円の建値を一万二千円にまで下げようとしておる鉄鋼業界立場を支持するものではないか、間接に支持して行くんだ、彼らの利潤をふやしてやる、こういう態度を歴然と法案の中に表明しておるものだ、こういうふうにとらざるを得ないのですが、この点について御存じなければ仕方ありませんが、御感想をお聞かせ願いたいと思います。
  59. 岡野清豪

    岡野国務大臣 鉄鋼業者三社がくず鉄の建値を立てておるということは私存じませんので判断がつきませんが、しかしくず鉄の値段というものはやはり生産費に非常に影響するものでございますから、その点におきましてはやはり適当な処置をとらなければいかぬ、こういうわけでくず鉄を入れたのであります。
  60. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 はなはだくどいようで恐縮ですが、この鉄鋼に関する産業行政というものは通産省の管轄の中に入つておりましようか。
  61. 岡野清豪

    岡野国務大臣 重工業局に入つております。
  62. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそうだとすれば、鉄鋼三社が建値をはつきり発表しておるなどということは、鉄鋼業界における重要な事実ですから、これを機会にひとつ覚えておいていただきたいと思います。ところが今のお説ですと、とにかく重要なものであるから価格を押えて行く必要がある、こういうお話ですが、それならばトン当り一万六千円で購入しておいて、実は輸入の鉄くずはトン当り三万円で輸入しておる。こういう事実はどうお考えになるか。私たちはこの鉄くずの購入のカルテル認めることによつてかえつてこの大企業利潤をふやして行く、そういう方向に援助しておる。こうとしか思えないのですが、しかし大企業利潤確保して行くということも重要でしよう。しかしそれはお話のようにその業界が破綻に瀕するときだけ、こういうお話でありました。今までに鉄鋼業界、特に鉄鋼三社が赤字を出したことがあるかないか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  63. 岡野清豪

    岡野国務大臣 輸入価格と内地の価格というものに相当開きがあるという点でございますが、この辺で実は私よく存じませんから、よく調べまして重工業局長からでも御説明申し上げた方がいいと思います。
  64. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは同じことを何べんも繰返すのは恐縮ですから、続いて違うことを聞いておきたいと思います。  最近銀行が、選別融資とか滞貨融資とかいうような形で、業界一つの再編成を金融の面から加えて行こう、こういう形をはつきり打出しておりますが、これはこの法律における不公正取引に該当するかどうか、伺わせていただきたいと思います。
  65. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。銀行がいろいろ融資を選別してやつているのは独禁法に触れるか、触れぬかという点につきましては、私はそうは考えておりません。しかし公正取引委員長の方で正確な御判断を持つていらつしやると思いますから、その方でひとつお願いいたします。
  66. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それはそれでけつこうですが、この法律と対照してMSAなどを見ますと、日本の国内にカルテルを形成するような政策をとらないでほしい。あるいは通商条約などを見ましても、やはり同様な意見が述べられておりますが、これとの関連はどうでしようか。
  67. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは国際貿易憲章とか、また日米通商航海条約とかいうようなものに、よく自由競争をやれというようなことが書いてございます。しかし私はMSAがいかなる形において入つて来るかよく存じませんけれども、ほかの国がいろいろ受けておる結果から見ますと、独禁法というものがなくても受けておりますから、影響はないものだ、こう考えております。
  68. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 時間もございませんので、最後に一つ伺わせていただきます。  今山本委員のお説に同感の意を表せられまして、隊を組んで闘う、こういうお話ですが、隊を組むことのできる企業というものは大企業だけじやないか。議論になりますから恐縮ですが、こういうふうに私たちは考えております。そこで総括的な御意見を伺いたいが、この独禁法緩和利益を享受することのできるものは大企業であつて中小企業はほとんどこの緩和利益にあずかり得ないのじやないか。むしろ大企業が享受するこの緩和利益のしわ寄せを中小企業に押しつけられて行くのじやないか、こういう印象を私たちはどうしてもぬぐい得ないのですが、この点について大臣からひとつ明確なる御答弁をいただきたい。
  69. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。このカルテル、主として不況カルテルのことと考えますが、不況カルテルと申しますものは、とにかく生産の平均値がすつかりくずされてしまつて、それ以下でどんどん売られるという情勢が出て来る。これと申しますのは、やはりたくさんのものをつくつて、そうして需給が一致しないというところから出て来るのでございますから、その意味におきまして、結局どうしてこれをしなければならぬかと申しますと、財界混乱が出て来る、いわゆる産業活動が停止されはせぬかという心配が出て来るときに起るものでございまして、中小企業消費者というものは、もしそういうことになつてくれば、むろん非常な影響を受けます。中小企業は、これを何とか防ごうと思いましても、むしろ防ぎようがないというような情勢になつて来ることと思います。従つてこれは結局先ほどから皆さん方仰せのように、たくさんの生産数量を出しておるところの大きなメーカーというものが、この不況カルテルの恩典に浴するということの自然の結果は出て来ましようけれども、その自然の結果として出て来ました生産数量の制限また調整というようなことは、結局、中小企業消費者に非常ないい影響を与えるということでございますから、中小企業消費者というものは、これによつて、すなわち不況カルテルを許さなければならぬような事態において許すことは、好影響こそ受けても、かえつて悪い影響はないものと私は考えております。
  70. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 好影響が行くというお話でありますが、綿紡の操短勧告によつて中小企業か幾つ倒産したか。そしてまたその間業者が非常に困難な目にあつて不渡り手形を濫発しておる。それだけでなしに、企業自身がつぶれてしまつた。この数をあげよとおつしやればあげます。また同時に二万名以上の労働者か首切りになつた。残つた人間は労働強化になつた。こういう面がいい面だとおつしやられるでしようか。それ以外にこの操短勧告によつて出たいい面は、十大紡がもうけたということ以外にないはずですが、十大紡がもうけたという事実以外にいい面が現われているとおつしやるのでしたら、その点を具体的にお教えをいたがきたい。私らはそうしか見えないので、教えていただきたいと思います。
  71. 岡野清豪

    岡野国務大臣 この前の操短の結果といたしまして、二万人首切りがあつた中小企業がどんどんと倒れたかということをお示しいただきました。しかし私どもといたしましては、あるいはそんなことがあつたかもしれませんが、これはよく調べました、この操短勧告をしたことの功罪というものは一応検討しなければならぬと思いますから、これは後ほどにお許しを願いたいと思います。  今回つくりました不況カルテルとか合理化カルテルと申しますものは、先ほどから申しますように、日本経済界というものがもし非常な生産過剰に陥つて混乱を来す場合には、これは全産業一体のものでございまして、大資本とか中小企業とかいうような問題ではない。その意味におきまして私は、好影響と申しますと少し言葉が足りませんけれども、ともそれに共倒れを救われる結果が出て来る、こういうことを申し上げた次第であります。
  72. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうするとお話は、十大紡の倒壊を防ぎ得たということが好影響だというふうに伺つてよろしいでしようか。
  73. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は十大紡とは申しませんけれどもあの当時、操短をしたために、国の経済全体が混乱に陥らずに済んだということが好影響だと思います。
  74. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もう議論しても切りがありませんので、まだほかの問題をたくさん伺わしていただきたいと思いますが、他の委員の方に御迷惑ですから留保いたします。
  75. 佐伯宗義

    佐伯委員長 石村英雄君。
  76. 石村英雄

    ○石村委員 今の岡野さんの御答弁を聞いていると、結局風が吹けばおけ屋が繁昌するというような論法のようにとれるのです。また十大紡の操短の功罪についてはあとでもう少し慎重に検討したい、こうおつしやいますが、せんだつて岡野さんの部下の方から、あの綿紡の操短は今度のこの法案が通過した場合でもやはり認められるというような御発言もあつたのですが、そこでちよつと考え方としてお伺いをいたします。  この今度の改正案を見ますと、関連産業に悪影響があつてはいけないということがあるわけです。従つてこの前、横田公取委員長は、あの綿紡の操短もやはりこうした画から、今後この改正案が通過しても認められないというようなお考えで御答弁になつて来たのではないかと思いますが、岡野長官の考え方は、その場合にとにかく十大紡、基幹産業が倒れるということは、関連産業にも悪い影響を将来及ぼすのだから、やはり操短認めなければならぬというお考えで、結局当面の基幹産業の利害をまず考えて処理して行る。この認可をせられる場合においても、まずそこに基幹産業の利害関係ということを強くお考えになつて処理せられるということになるものでありましようか。  それともう一つお聞きいたしたいのは、先ほど綿紡の問題で、企業局の局長さんですか、どなたかの御答弁で、あのとき日本の綿紡にまず恐慌が来た人だという御説明でありましたが、われわれの了解しておるところでは、すでにあれよりも前に、アメリカの紡績界には恐慌が来ておる。あの不況というものは、日本だけに先に単独に起つた不況ではなくて、国際的な不況であるというように理解しておるわけです。こうした国際的な不況を、日本国内で操短不況カルテルということで、ほんとうは関連産業にも悪影響を与えないで救済することができる、このようにお考えになつたのであろうかどうかということを確めたいと思います。
  77. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は基幹産業だけにこの不況カルてルというものは許されるとは考えておりません。これは法律にも書いてございますように、相当なものが生産過剰に陥つて、平均値を割つてだんだん需給の調節がアンバランスになつて来て、そうして経済界が麻痺の状態に陥るというような場合には、これはどの産業もこの不況カルテルになり得るだろうというようなことを私は考えております。なお他は政府委員から答えさせます。
  78. 中野哲夫

    ○中野政府委員 お答えいたします。先ほどの私の説明の中で、日本がまつ先に綿業の不況と申しますか、恐慌が来たような御印象を与えたといたしますれば、その点は訂正させていただきます。当時世界的綿業不況があつたということは事実でございまして、後日御承知の通りロンドンにおいて国際綿業大会等も聞かれたような事情で、さようであつたのであります。  そこでただいま御指摘の、あの際操短を勧告した、それが日本だけ関連産業に悪影響を与えずにやれるか、こういうお話でございまするが、その点は国際経済と国内経済のつながり合いの問題でありまして、当時といたしましては、通産省としては関連産業に与える影響のプラスの面とマイナスの面、あるいは当時の綿糸紡績工業に与えるプラスの面、マイナスの面を十分比較考量をいたしまして、あの際としてああいう政策をとつたのであります。
  79. 石村英雄

    ○石村委員 関連産業に悪影響があるかないか、プラス、マイナスを検討したというお話でありますが、あの場合においても関連産業にも非常な悪影響を与えた。国際的な不況の場合に、ただ綿紡だけの操短によつて紡績関係全般的な不況の打開はとうていできないと思うのです。私の聞きたいのは、長官の御答弁にも関係があるのですが、ただその場合に綿紡界から操短の希望が出たというときに、その操短によつて紡績業者そのものが価格の維持あるいは引上げかできるということだけははつきりわかりますが、関連産業にそれがどういう影響を与えるか、一応悪い影響を与えるが、将来はいいことになるだろうというような漠然としたお考えで、ただ当面の紡績界はいいんだということだけで御判断を結局なさることになるのか、その点をお聞きしたわけであります。
  80. 中野哲夫

    ○中野政府委員 お言葉を返すようでございますが、必ずしもそういうことではございませんで、通産省には御承知の通り中小企業庁もございまするし、また綿業の関連産業である綿スフ工業の利益を代表する団体もございまするので御指摘のように多少の時期的なずれというものを考慮に入れれば、そういう点もございましようが、かれこれ各方面意見も聞き、総合勘案してあのような政策をとつた。それによつて今日通産省としては、双方とも一種の安定を得られて今日に至つておる、かように考えておる次第でございます。
  81. 佐伯宗義

    佐伯委員長 御質問ありませんか。——それでは、本日をもつて独禁法に関する岡野国務大臣に対する質疑を終りました。  なお明日は午前十時より理事会を、十一時より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十六分散会