○山本(勝)
委員 私は本
会議における国務
大臣の
経済演説について基本的な若干の問題について
質疑をいたしたいのでありますが、時間がないようでありますので、
答弁は今日なされなくても
あとでけつこうです。私は私の問題とする点だけをお尋ね申し上げますから、よくのみ込んでおいていただきたい。
第一点は、
政府は自由通商の大方針で行くのか、それとも自給自足のアウタルキーの態勢で行
くつもりであるか、これがすこぶる曖昧にな
つておると思う。岡崎外務
大臣の
説明によると、
貿易を盛んにして、自由
貿易によ
つて通商規模の拡大をはか
つて行く。これは
日本のみならず、世界にと
つて必要である。それにもかかわらず諸国がいろいろ
貿易制限をしていることは遺憾である。これを打破して行かなければならぬといつたような、自由
貿易による通商規模の拡大で
日本経済の困難を打開して行こうという意気込みが見えたわけです。ところが
岡野国務大臣の
演説を聞きますと、まず
日本の
輸出貿易を
振興する。
輸入についてはぜいたく品などは押えて行く。つまり
輸入はだんだん押えて行く。それから自給度の拡大と申しまして、繊維原料であるとか食糧であるとかいうようなものは、なるべく外国から買わぬようにして行く。こういうふうになるべく自給自足の線で、外国からものを買わずに、売るものだけをふやして行こうといつたような線で行くように見える。この自由通商による
貿易通商規模の拡大で行くのかどうかという根本的な点をお伺いいたします。
第二点は、物価水準を今後安定させて行こうという
考え方で進んでおられるのか、それとも物価水準を
引下げようという構想のもとに進んでおられるのか、この点が曖昧であります。大蔵
大臣また
岡野国務大臣は
演説の中で、大体物価水準は維持して行くのだと言い、大蔵
大臣などは、通貨価値を維持する、
インフレもいけない、デフレもいけない、大体横ばいで物価水準を維持して行くということを強調しておられる。ということは通貨価値を維持して行くということと同じことでありましようが、そうかと思うと、一方では
日本の物価水準は世界の物価水準に比べて高過ぎる。この高過ぎる物価水準を世界の物価水準までさや寄せをする、
引下げて行くということもまた強調しておる。ことに世界の物価水準は、これまででも
日本の物価水準より何割も低いのに、さらに世界の物価水準はだんだん下
つて行こうとする形勢にあるとすら述べておられる。すでに低いものがだんだん下
つて行くその世界の物価水準に、
日本の物価水準をさや寄せして行くことによ
つて、
日本の
輸出貿易を
振興しようという行き方は、現在の物価水準を二割も三割も下げるということを前提というか、主張していると解するよりほかない。デフレでもない、
インフレでもない、横ばいさすのだ、通貨価値を上げるのでも下げるのでもない、現在の価値を安定さすのだというその
考え方との間には、私は相いれないものがあると思う。これを解決する道はただ
一つ、完全ではありませんけれ
ども、為替レートに触れる道がありますけれ
ども、これは大蔵
大臣はたびたび絶対に為替レートには手をつけないと言
つておられる。そうすると為替レートに全然手をつけないで、しかも物価水準は下げないのだ、いや下げるのだ、こういう根本の点で、私は政策の努力に矛盾があ
つたのでは、その努力は結局プラス・マイナス・ゼロにな
つて混乱を来すだけだ、こういうふうに思うのであります。
第三には、
岡野国務大臣は
演説の中で食糧増産、電源開発等の構想を明らかにしておられます。その実施にあた
つては治山、治水、道路その他との調整をはか
つて行くというように、治山、治水、道路というふうなものを、電源開発や食糧増産のつけたりのように
説明しておられますが、私はこの点はむしろ逆に
考えるべきではないかと思うのであります。今回の九州のあの惨害を見ましても、治山治水を意
つておるがためにああいうふうに一挙に厖大な国の損失を来すのであります。電源の開発は必要である、食糧の増産も必要ではありまするけれ
ども、しかしそれよりも、ああいうことで非常な損害を来すことを
考えますと、まずも
つて治山、治水、あるいは道路とか、そういう基本的であり、しかもすべての産業といわず生活の基礎になる
方面にこそ国家は第一の重点を置くべきではないか。そこに重点を置いて、第二に、食糧をどうする、電源をどうする、あるいは化学繊維をどうするとかいつたようなことを
考えるべきではないか、これについての所見を承りたいのであります。
それから先ほど他の
委員から
質問されたためにほぼわかりました点は省略いたしますが、中小
企業の
振興策として、国務
大臣は百億円の財政支出をや
つて、中小
企業の金融公庫を設ける、そして中小
企業を育成強化して行くということを、
政府の中小企
業者に対する対策として非常に誇
つておられますけれ
ども、私は実際の中小企
業者の希望、実情というものを
考えますと、中小企
業者は、今日税金の重いこと、それから税金の取立てに対する精神的な不安におののいておるのである。その中小企
業者から割当のような形で——こまかいことば時間の
関係で申しませんが、その方法におきましても、また金額の上におきましても、まことに無理をして税金を取上げておいて、強権をも
つて取上げておいて、そうして今度は子の中小
企業に対して
金利をと
つて金を貸すというような行き方は、根本的に
考え直す必要がありはしないか。むしろ百億円の金を貸すよりも、百億円の減税をまずやるのが先決ではないか。しかも納めるときにはただでとられて、借りるときには
金利を払わなければならぬ。しかも借りられる人は、特に都
会議員とか、何らかの関連のある人が借りられる。多くの納税者は、その税の重さと取立ての場合における税務官吏とのトラブルで泣いておるのであります。ですから、私は中小
企業金融公庫そのものに反対というわけではありませんけれ
ども、その前に税を減らす、百億円金融公庫で貸すよりも、むしろ百億円の減税をまずやるべきではないか、これもひ
とつ御研究を願いたいのであります。
それからいろいろ長期
計画をお立てにな
つておるようて、社会党の方から
質問をされておりますが、これは
まつたく国務
大臣の
試案であつたということでありますが、私はむしろ長期
計画というものは、
見通しは必要であると思います。
見通しとしてのいろいろな
計画はけつこうでありますが、しかしこれを実際に行うというような
意味での長期
計画をもし立てられるということなら、これはなかなかむずかしいのでありまして、おそらく現在の
審議庁でなくても、どの政党の方が政権に当りましても、私は困難だと思う。ことに五年間なら五年間に化学繊維をこれだけに増すとか、食糧をこれだけに増すとかいううふうに、出産の目標をつけることは簡単であります。また補助金を出したり金融措置によ
つて土産を増すことも簡単であります。ただむずかしいのは、その
生産が増した場合に、
価格がどの点まで落ちるかということの見積りがなかなかむずかしい。これまでも
政府は、よく豚を飼え、あるいは蚕を飼え、蜜蜂を飼えと言
つて盛んに奨励いたしました。奨励して補助金を出せば蜜蜂も豚もふえますけれ
ども、ふえたころに値段が下
つてしま
つて、つ
くつた人が非常に困難に陥るということはこれまでの経験が示しておるのです。ですから長期
計画に上
つてわずかに二年や三年の間に何割という増産をいたした場合に、それに応じて
価格がどの壮麗におちつくかということの
見通しをつけなければならぬのでありますが、これはおそらく付人に心むずかしかろうと思う。ですから実際に行う政策というものは、確実にこうなるという
見通しがついたときに、その程度で立てられて進むごとがむしろ実際的である。ことに食糧のごときものは、一割、二割
生産要に多少の変化がありましても、
価格の上に非常に大きな変動を持
つて来る、そういう性質を持
つておる。大体
生産の
計画、需要の
計画は簡単に立ちますけれ
ども、経済は
価格方則に支配される、
価格方則を無視しては、資本主義経済はもちろんのことでありますが、社会主義の経済といえ
ども、
価格方則を無視して経済を遂行することはできないということを私は
考えるからであります。ですからこの点ではああいう
計画はむしろ出さなかつた方がよくはないかしすら
考えておりますが、もしあくまでも実行
計画として今後立てて行かれる場合には、
価格がどう動いて行くか、それぞれの物資の
生産、需要の変化に応じて、それと不可分に動いて行く
価格がどう変化して行くかということの
見通しを同時につけて
計画を立てて発表し、実行していただきたい。御
答弁をいただきました上でいずれ私の
質問を継続いたしたいと思いますが、今日は所定の時間が参りましたので、
質問の要旨だけを申し上げて終ることにいたします。
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