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1953-09-17 第16回国会 衆議院 外務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十七日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 並木 芳雄君 理事 田中 稔男君    理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    荒舩清十郎君       金光 庸夫君    中山 マサ君       増田甲子七君    岡田 勢一君       喜多壯一郎君    須磨吉郎君       帆足  計君    穗積 七郎君       加藤 勘十君    池田正之輔君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         通商産業大臣  岡野 清豪君  委員外出席者         警  視  長         (国家地方警察         本部警備部長) 山口 喜雄君         保安政務次官  前田 正男君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         公安調査庁次長 高橋 一郎君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    安川  壯君         水産庁長官   清井  正君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君         海上保安庁長官 山口  博君         海上保安庁次長 島居辰次郎君         海上保安官         (警備救難部         長)      松野 清秀君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 九月五日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  大橋武夫君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員淡谷悠藏辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員中村梅吉辞任につき、その補欠として池  田正之輔君議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員須磨吉郎辞任につき、その補欠として  椎熊三郎君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員野田卯一君及び椎熊三郎辞任につき、そ  の補欠として荒舩清十郎君及び須磨吉郎君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件  行政協定実施に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。国際情勢等に関する件、及び行政協定実施に関する件について質疑を進めていただくことといたします。外務大臣は午前中だけしか時間の都合がつきませんので、午前中はもつぱら外務大臣に対する質疑を行うこととし、質疑の順序は政党順とし、各党の持時間を二十五分ずつといたしたいと思いますから、さよう御了承をお願いいたします。福田篤泰君。
  3. 福田篤泰

    福田(篤)委員 MSA交渉につきまして、先般外務大臣から詳細な中間報告をいただいたのであります。私どもはその労を大いに多とするのでありますが、その後の経過を見ておりますと、どうも停滞ぎみでありまして、あまり進捗を見ないような印象を受けるのでありますが、一体その停滞原因がどこにあるのか。巷間伝うるところによりますと、わが方の防衛計画提出が、まずこのMSA交渉の重大な前提条件であり、わが方の防衛計画がまだ樹立されてなく、従つて提出が遅れているために、このMSA交渉が停頓しているというような説もあるのでありますが、その点について、交渉停滞している理由並びに防衛計画との関連を、はつきりと御説明願いたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSA交渉は、この前本月の四日に御報告したわけであります。その後は九日に一度、十六日にもう一度というふうに大体定期的に開いております。いろいろ今おつしやつたように防衛計画ができないからというようなうわさも立つておりますが、私ども考え方としては、たとえばおかしいかもしれませんが、援助というものが来るその土管をつくらなければ、流れて来ないのであるから、今その土管をつくつているようなわけで、これがなかなか大事なものでありまして、(「土管とは何ぞや」と呼ぶ者あり)つまり憲法には違反しない範囲で流れる土管でなければならぬでしようし、また経済的な問題はどういうふうに考えるとか、いろいろわくがありますからして、それができたときにその中へ援助というものが流れて来る。そこでお考え方によつては技術的なものにすぎないとおつしやるかもしれませんが、たとえばいらなくなつたものを返すか返さぬかとか、あるいは差押えのものはどうだとかいうようないろいろ専門的な問題もありますし、それから日本側で形の上から、この前も申し上げましたけれども、たとえば五百十一条の六項目というものを、どういう形でそのうちに盛るか、あるいは経済的な考慮をどういう形でするかというような点で、大体のわくをつくつてからということでありますから、このために中身にまでは至つておらないのであります。従つて私は特に遅れておるとも考えておりません。できるだけ早くやるつもりで今までも話をしておりますが、これもそう長くかかるとは考えておりません。
  5. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいまの外相の御説明で、具体的なわが方の、たとえば五箇年防衛計画とかそういうようなものが提出されなくても、MSA交渉自体には直接関係ないと了解してよろしゆうございますか。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは何べんも申しております通りでして、これが必須の要件ではないことは明らかでありまして、あればあつた方が都合がいいということはありましようけれども、従いまして、これは今後実質的な話をする場合に、端的に申しますれば、かりに計画が何にもないとすれば、現在の保安隊に必要なものを援助として申し出るということになり得るようなことになるかと思います。
  7. 福田篤泰

    福田(篤)委員 いわゆる外相のたびだび御答弁になりましたMSA交渉による間接的なわが方に与える経済的な利益、この問題は、わが国産業界また国民経済の上から大きな関心を持つてながめられておるのでありますが、これについて経済的利益が一体どの程度まで具体化されたか、またはされる見込みがあるか。もしされる場合にはどういう具体的な内容を持つた経済的利益であるか。具体的な問題について御説明願いたいと思います。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも大体において御承知通りと思いますが、直接の完成兵器を受取る場合におきましても、その一部は国内工業に発注されることがあり得ますし、それから域外買付と称します例の第三国向けの品物を国内でもつてつくるということもあり得るわけであります。またこれらは主として外貨収入国内工業にある程度の仕事を与えるという点で経済的な利益がある。その他特許権の使用であるとか、あるいは技術情報を受入れるという点で、今度は技術面においての利益も相当あると思います。その他にも、ただいますぐにということじやないかもしれませんが、たとえば防衛支持援助というような形のもの、あるいは将来におけるいわゆるポイント・フオア、つまり五百十一条の(b)項にあるような技術経済援助日本との形がどういうふうになるかという点もあり得るかと思います。これもまだ決定はもちろんいたしておりませんが、本年度の相互安全保障法の五百五十条の(a)という項目がありまして、そのうちには、予算のうちから余剰農産物を買いとるということがあり、また適当に余剰農産物を売却する、その買いとるのはMSAの資金で買いとるという規定が新たにつけ加えられております。この五百五十条の(a)という余剰農産物という規定も、まだ具体的にはわれわれの方ではなつておりませんが、やはり経済的に寄与する面があり得ると考えております。これらはいずれ具体的な話合いが済みましたならばさらに御報告いたします。
  9. 福田篤泰

    福田(篤)委員 現在の交渉が始まる前に、わが方の重大な前提要件として、経済的安定が何としても必須であり、先決であると申し出たことでありますが、経済的安定の確保につきまして、どの程度確保されるかという見込みを伺いたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも前に御説明した通りでありますが、当然のことといえば当然のことでありますけれどもMSA援助を受けまして、完成兵器等非常にたくさんかりに来たといたします。今度はそれに必要な人員の増加ということが当然行われることになりますが、向うからの援助が非常にたくさん来たために、こちらの国内経済的の事情を考慮せずして、多くの人間を援助に見合うように入れるということになりますと、かえつて本来の目的を達しませんので、常に防衛力漸増というか、増強ということについては、日本の経済的の安定ということをまず考えて、その上で増強するのだという点をはつきりさせるために、われわれは交渉いたしております。それは十分はつきりなりました。それと援助を受けるならば、経済的な援助が、こつちに来て、今度は積極的に経済的の安定をはかるのだということとは多少趣きが違うのであります。その方面も今申した通り間接的にはありましようけれども、われわれの手紙等によつてはつきりさせ、その後も交渉いたしておりますのは、むやみに経済的の条件考えずに防衛力増強するものでない、こういう趣旨でありまして、この点は十分はつきりいたしております。
  11. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それによりますと、中共貿易制限に関しまして、協定または附属書の中にこれを明文でうたうという説がありますが、これについて御見解を承りたい。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは中共貿易と端的に言えばそうなるかもしれませんけれどもつまり平和を脅威する国との貿易制限する、こういう問題でありまして、これはわれわれの方からいうと当然のことではあるのであります。また国によりましては、そういう協定条項を入れておる国も相当多数あります。たとえば今お話中共貿易でありますが、これも何も日本だけがやるという意味のことではないのであつて、平和を脅威する国がありましたならば、関係国みな相談しまして、同じような歩調で貿易制限を行う、こういう趣旨なのであります。まだ最後的な話合いには至つておりませんけれども、われわれとしましては、先般の国会決議もありますから、実際上はその決議と何も反する問題ではありませんけれども言葉の上でも何か決議と矛盾するようなことのないように考えておりまして、ただいままだ決定に至つておりませんが、私は主義としてはさしつかえないものだと思つております。列国みな共同して行うことであつて、それも禁止とかいうのじやなくて、制限をいたすということであり、現にMSA交渉中ではありますが、中共に対する貿易制限は、御承知のように先般かなり大幅に緩和もいたしておりますし、実際上さしつかえないことと思いますが、特に国会決議との関係もありますから、形の上でも矛盾しないような形が必要じやないかと思つて、今研究いたしております。
  13. 福田篤泰

    福田(篤)委員 五百十一条のいわゆる六条件の問題でありますが、これはやはり全部列記されるべきものであるか、またされる見込みであるか、この点について御所見を伺いたい。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはMSA援助を受けております国につきましては、外国では例外なくこの規定をあげております。一、二あるいは三箇国くらいの例外を除きましては、この六条件をそのまま列記しております。また一九五一年前につくりました協定にはこれかありませんものですから、それらの国とは新しく協定の追加をいたしまして、全部これを列記しております。二、三の国ではそのまま列記しませんで、たとえば(a)(b)(c)というような字を取りまして一緒の言葉にして、内容はかわりませんが同じ言葉で、一条の中にこれをずつと盛つておるところもあります。どういうふうにいたしてよいかは別問題といたしまして、いずれにしましても、MSA援助を受けます場合には、MSAの法律に基く条項等を守るという約束はいたすのであります。また現に外国では例行なくこの六条件を盛つておりますので、これはMSA援助を受けると言うた以上は、さしつかえないものであろうと考えております。そうしますと、それをどういう形で盛るかということは、要するに案文の問題になつて参ります。このリダクシヨンにつきましては、今條文上のいろいろな研究をして、話合いをいたしております。
  15. 福田篤泰

    福田(篤)委員 いわゆる朝鮮事変が幸いにしまして休戦され、新しく政治会談の段階に入りつつあります。これに関連しまして、ちまたには今度のMSA交渉ができ上りましても、日本援助される兵器は、いわゆる米軍朝鮮戦線において使い古したお古を持つて来るのだというようなことを、大分デマとして流しておるのでありますが、現在の南北の朝鮮戦線並びに政治会談の成行きから見ましても、そう簡単に米軍引揚げ見込みはなし、その点に関してはアメリカ側の作戦もありましようが、交渉中に相当はつきりした線が出て来ると思いますが、これに関連してなるべくはつきりとお答え願いたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は実は、朝鮮戦線でいかなる武器が使われておるかは、詳細には知りません。中には日本に必要とするものもありましようし、そうでないものもありましよう。元来MSA交渉を先方が考えましたときには、まだ朝鮮休戦というようなことが具体的になつていないときでありますから、朝鮮における武器を供給する目的で、日本交渉するという考えではなかつたと思います。また実際上どういう武器が来るかということにつきましては、向うから一方的にきめて寺つて来るのではなくして、われわれの希望も申しまして、必要なものだけを受けるのでありますから、その中に新しいものばかりはないでありましよう。従つて朝鮮で使つたものもあり得るというりくつにはなりますけれども、具体的にはまだそういう問題は出ておりません。いずれにしましても、保安隊なり警備隊で必要とするものを受けるのでありまして、これには十分日本の意思を向うはつきりさして、その趣旨交渉をいたすつもりでおります。
  17. 福田篤泰

    福田(篤)委員 憲法との関係がやはりまだ重大な論議の的となつておりますが、これに関連しまして、その後日鼻がついたかどうか、また憲法に違反しないという旨を明文に明記するよう用意があるかどうか、これについてお答え願いたいと思います。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法に違反しないようにいたすことは、これは政府としては当然のことであります。従つて政府が当然なすべきことをアメリカとの協定の中に入れるというのは、形が非常におもしろくないことであつて、そんなものがなければ政府は違反することになるのかという、逆な論法も出て来るわけであります。従いまして私は、初めから形としてはそういうことはやりたくないと思つておりましたが、国会等ではいろいろその点に疑義を表明されておりまして、従いましてどういう形にするかはまだきめておりませんし、これも今話合いの継続中でありますけれども、念のために何らか、今申したように、その規定がなければ政府憲法に違反してもかまわぬと考えているのだというような質問のないような程度に、適当な形で盛り得るものならばひとつ盛つてみようかと考えて、ただいま交渉中でございます。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほどの御答弁の一節の中に、いわゆるMSAの方の五百五十条の——たとえば日本に小麦を入れる場合、この五百五十条の(a)項を生かそうという御意見でありましたが、これは具体的に交渉に入るお考えでありますかどうか。  もう一つ、今JPAの兵器特需が非常に遅れておる、いわゆるMSA交渉待ちで大分弱つておるようでありますが、この点について、もし交渉がまとまれば特需関係がすぐ順調にまとまるかどうか、この二つについて御意見を承りたい。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 五百五十条の同項というのは、ことし初めて成立しました規定でありますので、実際上の具体的な方法がまだわれわれにはつきりいたしておりません、あるいはアメリカでも、まだこれからやるのでありますから、はつきりしない点があるのじやないかと思つております。この点についてはさらに問い合せて、十分はつきりさせてからきめたいと考えておりますが、これも一つ経済的寄与になり得ると考えますので、その意味十分研究をいたしております。  それから兵器発注等につきましては、多少そういう点があるかもしれませんけれども朝鮮休戦に伴いまして、自然そういう点が少くなりつつあることは、私は事実だろうと思います。何しろ始終撃ち合つておるときと今とでは状態が違います。従いましてこれらにつきましては、MSA交渉が進みますと、いわゆる域外買付等の問題でカバーできる点があるかとも考えますので、この点はできるだけ早く域外買付等話合いも進めてみたいと思つております。
  21. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大体御答弁の中から、われわれはいわゆるMSA交渉がいろいろな意味で遅れてはおるが、必ず成立する見込み十分であるというような印象を受けるのでありますが、それに関連しまして国内の一部では、MSA交渉が必ず暗礁に乗り上げて、いわゆる今の吉田政府の対米交渉が行き詰まるだろう、これによるところのいろいろな臆測が行われておるのであります。これに対しまして責任者である外相として、MSA交渉成立見込みについて、もう一度はつきりした御答弁をいただきたいと思うのであります。  最後に、よくこの委員会におきましても外務大臣は、MSAを受けるかどうかをきめるのには三つ条件がある、すなわちまず第一には、経済的利益が伴うものでなければならない、第二には、自衛力漸増というわが国政府基本方針のラインに沿うべき性質のものでなければならない、第三には、憲法その他に違反しないものでなければならない、この三点を強調されまして、話合いをしておるうちに、また話し合つた上で、この三つ条件が満たされるなれば、MSAを受けてもよろしいというようなことをたびたび答弁されたのでありますが、現在までの交渉過程におきまして、はたしてこの三点が十分に満足されておるかどうか、またされる見込みがあるかどうか、以上二つにわたりましてお答え願いたいと存じます。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の三条件でございますが、それはおつしやる通りでございます。ただ第一の点は、私は経済的利益になると——これは言葉の上の差かもしれませんが、申してはいないのでありまして、経済的に寄与するものであればということは、たとえば域外買付のごときものは、直接に経済的利益を目標とするものではありませんで、ただそれが経済的に大いに役に立つ、こういう意味でありますから、寄与という字を主として使つておりますが、いずれにしても、それは間接的には経済的な潤いになるわけであります。それから自衛力の問題でも、これが増強の時期と態様は日本政府決定するところによるのだということは、アメリカ側はつきり認めておりますから、日本側漸増なり決定いたしますれば、それを伺うがそのまま承認することは間違いないと思います。憲法の問題は、先ほど申した通りであります。従いましてこういう三つの点につきましては、初め私ども考えましたのと大体同様で、われわれが思うようなところで理解が行われておる。従いましてこの点ではMSA援助を受けることに妨げとなるような理由は発見できないのであります。従いまして、ただいまのところ交渉はまだ話合い中でありますから、いつということは申し上げられませんけれども、あまり遠からざるうちに成立の運びに至るのじやないか、こう思つておりますし、ただいま交渉がうまく行かないだろうと考えるような材料は持ち合せておりません。
  23. 福田篤泰

    福田(篤)委員 けつこうです。
  24. 上塚司

  25. 並木芳雄

    並木委員 この前私は岡崎外務大臣にやや攻撃的な口調なつたために、大臣も少し恐れをなして腹を割つた答弁がなかつたのです。実はあのときもう少し時間がたつぷりあれば、どういうわけで一箇月そこそこで政府保安隊を増員しなければならないように変更をしたことや、あるいは保安庁法を改正して、保安隊を直接防衛にも当らせるようにするようになつたという、その急変したバツクグラウンドを腹を割つてお聞きしたがつたのでありますが、きようはあまりはげしい口調は使いませんから、まずその点を腹を割つて大臣説明してもらいたいと思います。どういうわけで、そういうことになりましたか。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は並木さんの御質問には常に腹を割つてお話しておるのであります。一箇月以内と申しますが、われわれては始終同様な考えを持つておりまして、ただあまりその点について御質問がありませんので、お答えしたかつた場合もあり得るわけであります。理論的に申しますれば、保安庁法の改正もさしつかえないものであるし、防衛力漸増ということは、すでに安保条約の前文にも言つているのでありますから、経済的その他の条件が許せばいたすべきものと考えておるのであります。急にあわててそういうふうに決定したというわけでもないと私ども考えておりますが、これは前の国会須磨君の御質問に私がお答えしたと大体同様であります。
  27. 並木芳雄

    並木委員 それは、一般的に、また理論的には確かにそういうことが言えると思うのです。しかし政治的にお考えになればわかると思うのです。国会が閉会してわずかに一箇月ぐらいのところで、こ間までは、現在のところそういう計画はありませんということを変更して来ることは、これは容易ならないことだと思う。ですから、それならば私いろいろ観点をわけてお聞きしますが、あるいは先般ダレス氏が来朝したときに、ダレスさんからそういうお話があつたのではないですか。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは常に政府がきめるものという態度をわれわれはとつておりますし、アメリカ側でもこの間の返事におきまして、国務省の訓令をもつて正式に回答しておりますのにも、日本政府がきめるべきものであるということにいたしておりますから、ダレスさんとの話等でそういうことがあるということは考えられないわけであります。
  29. 並木芳雄

    並木委員 それは全然この間はなかつたのですか。日本防衛保安隊の増員などに対するダレスさんからの要請というものは、全然なかつたのですか。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ダレス長官とのお話内容については、私は別にここで申し上げるわけに行かないのは、ダレスさんもそういう内容は言つておりませんが、要するにあのときのお話の具体的な問題は奄美大島だけのことであつて、その他はいろいろの問題につきまして、双方で話し合つて意見の交換をいたしたということで、具体的の話合いはなかつたわけであります。
  31. 並木芳雄

    並木委員 それではどうして急に——理論的にもまた一般的にも大臣説明通り説明はつくでしようけれども、しかし一箇月足らずの間にこの方針を変更したということをもう少し聞きたいのです。ダレスさんに言われたのでないとすればどういうことですか。MSA交渉過程にそういうことが取上げられるようになつたのですか。あるいは政局安定のために改進党との協力というようなことを考えて、政局安定のめどをつけるために、そういうことを考えておられるのですか。いろいろ原因があると思いますが、——大臣は腹を割ると言つておるけれども、腹は割るかもしれませんが、口はなかなか割りませんから、こちらから注文を出してお聞きいたします。いかがですか。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは防衛力の問題をお聞きになつておるのだと思いますが、木村保安庁長官も当時お話になつておりました通り、自分個人として研究しているのであつて、まだ成案ができていないのである、こういうお話でありますから、ずつと研究はされておつたのだと思います。しかし防衛力をどういうふうにするかということは、これは保安庁長官のお考えになることでありまして、私がとやかく言う問題ではないのであります。  なお改進党との協力ということは、これは非常に大切でありましようけれども防衛力をどうするかということは、国民全体の考えるべきことでありますから、ただ改進党との協力の必要上、そういうことを考えるというふうにはわれわれはいたしたくないと思つております。
  33. 並木芳雄

    並木委員 どうもまだ歯にきぬを着せた感じがいたします。どういうわけでその計画を変更して来たかということが、私たちにはよくわからないのですが、はしなくもさつき大臣土管をつくる必要かあるという答弁をされております。この土管というのは、やはり防衛計画になるのではないですか。日本政府が独自の立場で防衛計画はつくるにいたしましても、MSA交渉の途上において、一体日本がどれだけの計画を持つているのだ、それを示さなければ、向うではどれくらいの援助を与えていいかわからないと思う。従つて大臣が先ほど土管をつくるとおつしやつたそれがすなわち防衛計画になるのではないかと思いますが、あくまでも大臣MSA防衛計画とは無関係だと言い張られるのですか。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の表現が悪かつたかもしれませんけれども、私の申しましたのは、まわりの協定のことを申したのであります。協定とかあるいはアンネックスとかいろいろありましようけれども、それがあつて実際の援助が行われる、こういう意味であります。従つてその防衛計画というものは、私の言う土管には入つて来ないのであります。むしろそれはその水が流れるこちらの先の方に、どれだけの池があつて水がたまるかという問題になるだろうと思います。私の言うのはそこへ来るまわりの土管をつくろうというのが協定意味であります。なおこれは先ほどからも申しております通り、そういうものがありますれば、なおいろいろの話は都合がいいこともありましようけれども、なければ全然話はつかないのだという種類のものではないと今でも私はかたく信じております。
  35. 並木芳雄

    並木委員 そこのところかどうしても納得が行かないのです。政府は経済の安定が先決であるということを先方に強く主張しております。従つて大臣の言われた答弁がほんとうならば、経済の安定が先決であるという日本政府の要求はいれられるはずなのです。しかるに向うでは経済の安定はエッセンシャルである、こういうふうに逃げております。これがいれられないところに、アメリカとしては日本防衛力増強にあきたらない節があるのだろうと私どもは想像するわけであります。ですから大臣も率直に、先方から防衛計画提示の要請があるのだ、これをやらないことにはMSA協定というものは、せつかくつくつても絵に描いたもちです。これをはつきり答弁してもらいたい。いかがです。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや、非常に腹を割つてお話をしているのでありまして、これ以上割りようがないのであります。今も福田君の御質問にお答えしました通り、私の経済が大切だと言うことは、防衛力だけびつこに強くなつて意味がないという趣旨のものでありまして、この点は先方もよく了解いたしております。
  37. 並木芳雄

    並木委員 それじや、今、やれ池田さんが渡米するの、やれ吉田首相までアメリカへ出かけるようになるだろうという話は、一体あれは何ですか。これはMSA協定に関連しての防衛の問題でなくして何であるか、こう考えているのですけれども、池田渡米説、あるいは吉田首相渡米説、これは何のために行われるのか、説明していただきたいと思います。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろ新聞では私も読んでおりますか、まだそういう点について具体的なことは承知いたしておりません。池田君は渡米されるように聞いておりますが、元来日米間にはいろいろな問題がたくさんあります。日本ではまだあまりそういう人が行つておりませんけれども、ヨーロツパの諸国では首相も行けば蔵相も行く、その他の人もたくさん行つていろいろな話をいたしておりまして、ヨーロツパでもMSAはありますけれども、ヨーロツパの要人がアメリカへ行つてMSAの話ばかりしているわけでもないようであります。各般の問題があり、ことに日米間にはかりに具体的な話でなくしても、相互の理解を深めるためには、いろいろな人が行つていろいろな話をすることは必要であろうと思つております。現に国会の議員もたくさん行つておりますが、これも相互の理解に非常に役に立つ、こう思つております。
  39. 並木芳雄

    並木委員 国会議員と大臣とは違うのです。総理大臣は、外交問題、ことに条約や協定の締結の権限と義務は内閣にあるのですから、国会議員と一緒にされたのでは筋が違うと思うのです。第一先般来四者会談というもの、あるいは今五者会談ともいわれます。さらに最近は緒方さんが加わつて六者会談といわれるですけれども向うからそういう申入れさえあるのではないですか。防衛問題、MSAの問題にからんで四者会談、五者会談あるいは六者会談をして、急速に話をまとめ上げたいという申入れかあるのではないですか、その点はいかがですか。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も新聞ではたびたびそういうことを見ております。まだ詳細にそういう具体的なことは承知いたしておりません。
  41. 並木芳雄

    並木委員 全然向うから申入れはないのですか。そう言い切れますか。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は承知いたしておりません。
  43. 並木芳雄

    並木委員 どうもきようの大臣の御答弁は、やはり何かアメリカから圧力を受けているということを表現することにおびえているのではないかと思うのですけれども、そういうことがあつたらあつたではつきり言えば、われわれはまた国民の立場から大いに政府を鞭撻することもできるわけです。しかしきようのような答弁だと、やはり何ゆえに大臣はつきりものが言えないかということがわからないのです。私どもの改進党も今度の予算あるいは保安庁法改正などに対して、必ずしも賛成することにきまつておりません。ましてやMSA協定それ自体についても、政府がそういう態度を続けて行きますと、必ずしも賛成ということにならないかもしれないのです。それで大臣にお伺いしますが、もし防衛計画というものが、かりに今大臣がそういう答弁を続けておいて、どたん場へ来て防衛計画増強に伴つて保安隊などの予算、そういうものの増額あるいは保安庁法の改正、そういうものが出て来たときにこれを否決する、反対する、そういうような場合があつたとしたら、政府は非常に困るのではないかと思いますけれども、そういう点どういうふうにお考えになつていますか。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今第一並木君の御質問は六者会談とか、五者会談とか、四者会談とかいう話は、ほんとうであるかどうかという御質問であるから、私はそれは聞いておらないというのです。それを無理に並木君を喜ばせるために、うそをつくわけにも参らない、正直なところを申しているのです。それで今度は防衛計画とか保安庁法改正、これは木村保安庁長官も前の国会でさえ研究中であるということを申しておるわけでありまして、やらないとは何も言つておらないと私は了解しております。改進党が賛成されるか、賛成されないか、それはそういうふうにおどかされると非常にびつくりいたしますが、しかしこれは前から木村保安庁長官も研究中だということは申しておられるのであつて研究が終つて成案ができれば提出することもあるかと思います。まだしかしそれは私よりも木村保安庁長官にお聞きになれば、もつとはつきりするかもしれません。
  45. 並木芳雄

    並木委員 ただいま私は時間がないものですから表現を急いで、その切りかえがちよつと大臣になるほどお気の毒であつたかもしれませんけれども、きようの答弁によつてもやはり防衛計画MSA関係がないのだ、あればこれに越したことはないということを繰返しておりますから、そんなことでよいものならば、いよいよMSAが出て来たり、予算の増額や保安庁法の改正が出て来たときに、必ずしもわれわれは賛成できないかもしれない。それでもお困りになりませんかと聞いたわけなのです。その点をもう一度はつきり政府として答弁願いたいと思います。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうものか出ましたら、ぜひ御賛成を願いたい。
  47. 並木芳雄

    並木委員 それは抽象的にそういうことを言われても、われわれは困るのです。ですから、きようはひとつ腹を割つて答弁してくださいとお願いしておいたわけです。しかし私の時間がなくなつてしまつたものですから、残念ながら最後にもう一点だけお尋ねしておきたいと思います。  それは臨時国会の問題です。奄美大島の返還の問題がありまして、奄美大島の返還ももう間もなくではないかと思います。そうするとその返還はいつでしようか。その日取りの前に臨時国会を開いて、いろいろな法案を整備しなければならぬと思います。また私MSAの問題に関しましても、保安庁法の改正などはMSA協定する前に、できれば改正をすべきではないか、こういうふうにも考えております。従つてできるだけ早く臨時国会を開くべきであると思いますが、MSA調印の予想並びに臨時国会開催などについての大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 臨時国会の開催等につきましては、これは閣議等できまりますれば私どもも申し上げられますが、まだそこまで行つておりませんので、外務大臣がかつてなことを申し上げるわけには行かないのであります。ただ奄美大島の点につきましては、いろいろ研究しますと、たくさんの法律が必要のようであります。そこでその法律の制定をかりに臨時国会等に出しましても、時間のずれはずいぶんあるのではないかという場合も考えられますので、法律ができるまでは何らかの便法も講じ得るような研究を今いたしております。従いまして、まだ結論が出て来ませんから私ははつきりしませんが、あるいは法律ができなくても、一時的には便法が講じられるのではないかという希望を持つております。MSA交渉とか、保安庁法の改正とかいう問題は、これは保安庁の方の研究の結果をまたなければ、何とも申し上げられませんが、MSA交渉の前とかあととかいうことが特に必要であるとは私は考えておりません。
  49. 並木芳雄

    並木委員 それではMSAを調印する場合に、かりに防衛計画というものを政府が提示しなくても、協定案文その他について合意ができればやりますか。あるいはまた池田さんや吉田首相が渡米をしなくても、それとはおかまいなしにやりますか。それともう一つ四者会談、五者会談、あるいは六者会談なんか行わなくても、調印の方はそれとは別個にやる予定ですか。この前大臣は大体今月一ぱいにやりたいという御答弁でございましたが、それにかわりないがどうかお確かめをして質問を終ります。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今でもできるだけ早くやりたいと思いますので、実際やつてみて延びるかもしれませんが、目標を今月一ぱいということに置いて努力をいたしております。いろいろお話がありましたが、私は総理の渡米なんということはまだ承知いたしておりません。そういうことを頭に考えMSA交渉をいたしているわけではありませんからして、MSA交渉交渉でずつと進めます。五者会談とか何者会談ということも、これがなければできないとかいう性質のものではないと思います。(並木委員防衛計画」と呼ぶ」)防衛計画もたびたび申しました通り、なければないで話を進めますが、あればあるに越したことはない、こういう程度であります。
  51. 並木芳雄

    並木委員 そうすると防衛計画が全然出されない場合には、現状のままでMSA援助を受けることになりますが、その場合本年度は幾らですか。これはわかつていましよう。防衛計画がない現状のままで受けた場合に幾ら来るか、それくらいは今までの交渉でわかつていると思います。それをお示し願いたい。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだわかつておりません。これからいたします。
  53. 上塚司

    上塚委員長 岡田勢一君。
  54. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 李承晩ラインをめぐつて何らかの不祥事件が起りはしないかということを前提として、この間の九月四日の本委員会において私は質問いたしましたが、当時木村保安庁長官からも満足な答弁を得られなかつたのでありますが、あれから三日たつた九月七日に御承知の第一大福丸、第二億島丸が捕獲をされております。政府の方では厳重な抗議を提出せられたということでありますが、その後の韓国政府との交渉経過、あるいはまたこの両船の釈放期間の見通し等につきましてはどうなつておりますか、詳細に御答弁を願いたい。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これにつきましては強く韓国側の反省を促しまして、早く返還することと、その損害について韓国側でその責任を負うべきであるという趣旨を明らかにしております。まだ遺憾ながら先方から具体的にどうするという返事が参りませんので、さらに引続き督促するつもりでおります。
  56. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 新聞の報道によりますと、日本側の要求を韓国政府もだんだん了解がついて参つて、漁業問題だけでなく、一般の日韓両国の懸案の問題も会談を開始するというような報道でありますし、またその際には両国の漁業者代表もその会議に参加させて、円満解決に向うつもりであるというような報道がありますが、これは韓国側政府がそのような了解を与えておりますか、一方的な日本政府だけの希望的解釈でありますか、その点を伺いたいと思います。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今おつしやつたのはどの報道か私はちよつと見当がつきませんが、日本政府側としてはそういうことを申したことはありません。韓国側からもまだそういうことは残念ながら聞いておりません。しかしでき得ますならば、今おつしやつたようなラインで、話合いを円満に進めたいという希望は、われわれは強く持つておりますので、その趣旨で今後も努力するつもりでおります。
  58. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 報道は各大新聞に先般来載つておつたことであります。ただわれわれもこの交渉が早く進むこと、並びにそういう会議が行われるときには、漁業者代表も列席せしめて、あるいはオブザーヴアーでもいいというような希望を持つておりますから、そのように御努力を願いたいと思いますが、前の東支那海底びき網漁船が、中共朝鮮動乱の休戦以前から御承知のように数十隻拿捕されておりまして、まだ帰つておりませんのがたくさんあります。新聞報道には——これもまた外務大臣は知らぬとおつしやるかもしれぬが、最近に四隻かの漁船に分乗して百六十何名とか帰つたという報道でありますが、これはほんとでしようか、どうでしようか。  それからもう一つは、これらの拿捕されました多数の漁夫たちの家族と申しますか、それらの生活は非常に逼迫して困つてしまつておるのでありますが、これらに対する政府の補償ということは、法律的にはできないかもしれませんが、何らかの方法をとつてつて、それらの生活を救済してやるというようなお考えはありますか、どうですか、この三つ
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共からの漁夫の帰還ということについては、確認はいたしておりませんけれども、周囲の状況から見て、大体ほんとうであろうと信じております。もう数日たてばはつきりすると考えます。  なおこの漁夫の家族のいろいろの困難については、われわれも同情いたしておりまして、そのためにこそこういう問題を早く円満に解決したいと思つておるわけでありますが、その救済方法をどうするかというようなことは、これは私の管轄でもありませんし、水産庁等でいろいろ考えておることと思いますが、具体的の案等はまだ何も聞いておりません。
  60. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 もう一点だけ、先日も私が質問いたしたのでありますが、この大福丸、徳島丸の事件が起つてからの後の閣議におきましては、強硬論も相当出たということでありますし、また国民もこれに対しまして、今日におきましては政府の軟弱外交を非難する声も起りつつあるようでございます。あるいは閣議の席上で海上警備隊の実力を発動してでも、日本人の生命財産を守るべきであるというような話も出たやに聞いておりますが、これは木村保安庁長官でなければ答えられぬとおつしやるかもわかりませんけれども木村保安庁長官だけの問題ではなくて、かような場合は全閣僚の承認を経て政府が御決定になることと思いますが、海上警備隊をして直接の保護に当らせる行動をとるか、とらないかというようなこと、今後このような事件が起ることに対する予備的措置と申しましようか、それを事前に防止するような準備行為をお考えになつておられますか、これを具体的にお伺いしたい。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 閣議でもいろいろ心配をいたしまして、意見の交換をいたしましたが、ただいまのところ、平和的に解決することに一層努力をするのが適当であるという結論に達しております。  なお今後どういう措置をとるか、ただいまのところは運輸省、水産庁等の船が出ておりまして、大体において漁船の保護等にはまずまず十分な措置を講じておると考えておりますので、この状態で行きますれば、この程度のこと、何か問題が起りますればさらに船を増強する等は考えておるようであります。しかし事前にこういうことを予防するということについては、日韓間に十分な話合いをいたす以外に、ちよつと方法はないと思いますが、この点につきましては、われわれは今度の問題でも、厳重に先方に反省を促しておりますと同時に、常に日韓の間に話合いをするだけの用意がある旨は先方にも通じておりまして、いつでも話合いはいたすつもりでおります。
  62. 上塚司

    上塚委員長 次は帆足計君。
  63. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、国会決議というものはきわめて厳粛なものでありまして、これは国民の最高の意思を表明するものであることは申すまでもありません。しかしながら今日国際情勢はきわめて複雑困難でございまして、諸懸案の解決は、平和のために忍耐を必要とし、時を必要とし、漸進的にと申しますか、中庸の道を得て解決して参らねばならぬということは、国民ひとしく痛感するところでございます。特に平和と貿易の問題等につきましては、ある意味におきましては党派、階級の利害以上の国民的利害の問題でございますので、この一面については相互に理解し合い、和衷協力して当らねばならぬという点も、われわれ痛感いたしておるのでございます。このような観点から先般中国との貿易、平和物資の交流につきまして、せめて西ヨーロツパ並にしてもらいたいという趣旨の満場一致の決議案が通過いたしまして、幸いにして外務省当局も御了解くださつて、ただいま議員十二、三名並びに各界——各界と申しましても、産業貿易界の専門家十二、五名の人選を終えまして、二十五、六名をもちまして中国通商使節を派遣いたします準備がほぼ完成いたし、その刻々の事情につきましては、外務当局に公式または非公式に、幹事の方から御連絡もしておるような事情でございます。政府といたしましては、院議を尊重してくださいまして、先日さらに十一品目の平和物資についての輸出の許可がございました。そのお骨折りを多とするものでありますが、しかし私ども西ヨーロツパ諸国から今日どういう品目を、中国その他いわゆる鉄のカーテンのかなたに輸出が行われておるかという事情をつまびらかにいたしませんで、資料を十分持ちませんために、政府の今般の輸出の制限の緩和が、はたしてどの程度のものであるかということについての的確な判断を下す材料がありませんために、目下研究中でありますけれども、新聞雑誌等に伝えられるところによりますと、まだ多少の重要な品目が、西ヨーロツパ諸国から中国その他に、平和物資として入れることが自由世界として認められておるということを承つておりますので、どういうような品目がまだ残つておりますのか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は具体的のことははつきり知りませんが、この間の通産省の措置で大体歩調は一つなつたと思います。ここに経済局長がおりますが、こまかいことは私よくわかりませんので、経済局長からお答えいたさせます。
  65. 黄田多喜夫

    ○黄田説明員 今まで言われておりました物資といたしましては、たとえば硫安でありますとか、あるいは苛性ソーダ、ソーダ灰というようなもの、それからもう一つ重要なアイテムといたしましては、亜鉛鉄板というものが西欧と日本との間における差異の著しいものだということで例示されていたのでございます。それらのうち、硫安あるいは苛性ソーダ、ソーダ灰、あるいはマイクロスコープというようなものは、せんだつての解除品目の中に含まれましたので、亜鉛鉄板を除きましては、目ぼしいものはほとんど実体的に同等になつたと言えると思うのであります。亜鉛鉄板に関しましては、これは日本からの地理的近接その他で、またその需要も相当ございますので、何とかしてこれを出したいと考えていたのでございますけれども、これは西欧も全部禁止いたしておりまして、輸出いたしておりません。従いましてこれは実現することはできませんでしたけれども、しかもこれも消極的にいえば同等というわけでありまして、差異があるとは考えられないのであります。よくバスとかトラックとか、その他のものが例にあげられますけれども、これは西欧各国とも出しておりませんで、もしそれが中共に存在している、しかもよそから来ているとしますと、これはおそらく密輸、あるいは共同歩調をとらない国の方から来ているものと考えざるを得ないのでありまして、パリにありますところの委員会を構成いたしております国からは、こういうものは出ておりません。なおその他あまり重要ならざる品目、あるいは日本から出すことができない、つまり日本では製造していないというふうな品目がまだ多少あるかも存じませんけれども、これらに関しましても、徐々に院議のラインに沿つてやりたいというふうに考えております。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 アメリカ当局が出したバトル法の解説によりますと、やはりその国の特殊事情も尊重する、多少の除外例を設けるということも出ておりますので、直接の軍事戦略に関係のないものについては、国民の福利増進のためと、他国との平和競争に負けないために、いま一段の御調査と御努力をお願いしたいのでございますが、私はただいま黄田局長の御答弁は、多少調査不十分のところがあるのではないかという思いもいたしますので、われわれも御協力して調査いたしますから、一段と精密な御調査をお願いしたいと思います。  それから今次視察団が出るといたしますと、何分にも相当の人数になりますし、先日も外務省当局に御連絡いたしまして、二十三日の夕刻の飛行機の座席も予約いたしまして、飛行機会社から、座席のキャンセルが一挙になされては、お客様も多いことであるし困るから、ひとつしかと国会議員の信用にかけて、間違いのないようにしてもらいたいという督促もございました。なお北京の方から、お客様のホテルの部屋割やその他お出迎えて都合もあるので、しかとした電報をもらいたいというので、視察団幹事の打合せの結 果、委員長の名をもちまして、二十三日夜の飛行機で立つという電報を打ちました。こういうことでございまし て、また中には、議員の方または産業専門家の方は、九州または遠隔の地から親戚の者が一、二見送りにも参るから、その日を間違わぬようにしてもらいたいという御要望もありますし、諸般の準備が出迎え、見送りともにございますので、この辺のところが明確に準備を完了いたさねばならぬところに参つております。従いまして旅券の問題につきまして、院議を尊重して格別の御考慮を払われたいということか、党派を越えました皆様の一致の要望でありまして、本日の外務委員会理事会の皆様もまつたくその通りである。この外務委員会の同僚諸賢もみな一致したそのような御意向を持たれております。政府当局におきましてはその御準備のことと思いますが、本日幹事から一括書類を提出いたしましたので、それに間に合いますように事務のお運びを願いたいのでございます。何分に向う側もああいう文化の伝統の古い、礼節の国でありますし、こちらも国会議員が参るのでございますから、旅券の手続のために日が遅れたというようなことになりましては、また恥を多少さらすようなことにもなりますので、たいへん心配いたしている次第でございますから、どうか国益ということをお考えくださいまして、御了察のほどを願いたいのでございますが、これも外務大臣の御一存にあることでございますから、大臣から御腹蔵なき御了解のお言葉を頂戴しておきたいと思います。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実は私の個人的な意見を申しますと、どうもまだああいうところに行くのは早いような気もいたしますが国会決議がありますから、これは十分尊重いたさなければなりません。そこで善処はいたします。但 しわれわれの方にも多少の意見があるのでありまして、これは正式にお話がありましたときにこちらから申し述べなければならぬ点があります。そこで今二十何日とかいうお話がありましたが、それはそちらの方でおきめになりまして、これで何でもかでもやれとおつしやつても、それはこちらの方の都合もありますから、できない場合もあり得るのでありますが、できるだけ院議は尊重して善処するつもりでおります。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣の御懇篤な御答弁でまことに満足でございますが、ただいま多少心配でございますのは、そちらで二十何名といつてもというお言葉がございましたが、議員の方と、あと産業別部門の専門家は、一流会社、一流経済団体の方々でございまして、業務から離れた、たとえば政治とか思想とかいう関係の方は一人もないのでございます。もちろん総括的にこのように申し上げましても、一応のお目通しは願わなければなりませんけれど も、ただいま大臣のような御心配はございませんので、どうかよろしくお願いしたいと思いますが、何かそれ以外に特別の御支障でもありましたなら ば、人選いたしまして当人に迷惑をかけますと、また当人としてはたいへん苦しい立場に立ちますので、何か特別の御注文がありますれば、承つておきたいと存じますが、外務大臣の御答弁を願いたいと思います。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところは十分お申出の点を研究しまして、院議に沿うように善処するということし か——実は私は具体的にまだ承知しておりませんが、しかし、われわれの方にもいろいろ考えておることもありますので、私の申すのは人数というよりも、むしろ何日に出せと言われても、それはわれわれの方と御相談の上のことではないのでありますから、できるだけ御便宜のように努力するつもりですけれども、場合によつてはその通りにならないこともあり得る、こういうことを申し上げておるのであります。
  70. 帆足計

    ○帆足委員 私ども十二、三名の者は国会議員として院議の趣旨に従いまして、超党派的立場から準備をいたしておりまして、刻々外務省当局にはこれを連絡いたしておる次第でございま す。外務次官にも連絡いたしておりますし、ここにおられます池田委員からも大臣にはしばしば御連絡しておるつもりでありまして、ただいま外務大臣お話には多少奥歯に物のはさまつたような御答弁がございまして、たとえば専門委員の中に思想傾向の不可な問題の者でもおるならば、貿易の問題と別であるということであります。ならば、私どもはよくわかるのでありまして、これは純粋の貿易の名だたるエキスパートだけ連れて参るわけでありますから、他に何も問題はないと存じますが、外務大臣のおつしやる意味が、たとえば人数が多過ぎるとが、何かお気に召さぬ点があるということでもありますならば、この際おつしやつていただけば、われわれの選考委員が選考に多少の考慮を払いますから、でございませんと、御推薦いたしましたあとで、外務当局がそれは気に食わぬなどと申されますと、当人も非常に恥をかくわけで、精神的苦痛も与え人道に も反する結果になりますので、ひとつもう少し具体的に外務大臣の御希望を伺つて——何分にもこれは政府とも御協力していたさねばならぬことでありますから、もう少し具体的に、ひとつざつくばらんにおつしやつていただいて、二十三日に間に合いますよう に、間に合いませんければ、多額のキヤンセル料を払わなければなりませんので、国会議員たる者が何事ぞやと航空機会社から笑われるだけでなくて、先方の国にも出迎えを頼むという電報まで打つてあるわけでありますから、ひとつそこいらの点をとくと御考慮願いたいのであります。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 せつかくの御丁寧のお申出でありますから、まだほかにも多少ありますが、一つ申し上げます と、私はこう申すとしかられるかもしれませんが、私の意見では旅券法違反をなさつたような事例が前にある方には、旅券を出したくない、こういうつもりでおります。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 実はこの問題につきましては、すでに欧米局長から前回答弁をいただいておりますのと、現に啓明交易の社長の香川君あたりは、開演炭の問題で中国に参りまして、そして実は旅券をもらいまして、今西ヨーロツパに出かけておるような状況もございますし、南君も中国に入りましたけれ ども、今ウイーンに参つております。また高良さんも、この前中国に入りましたが、再び旅券を下付されました。政府当局としては、いろいろお考えのほどもございましようけれども、やはりそれらの点を普遍的と聞かしていただきたいと思いますが、ただいまのような具体的のことになりますと、どうやら私個人の問題らしゆうございますので、格別の御考慮をお願いしたいのでございます。また貿易増進という観点から大臣が広くお考えくだされば、われわれが中国に旅行をいたしまして、多少突破口をしかも静穏に開いたということも今日ではお認め願えると思いますが、そういうようなこともございますので、いずれわれわれの委員の方からお諮り申し上げますが、ひとつただいまの御答弁は御留保くださいまして、さらに再考のほど、切にお願い申し上げます。
  73. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 私はいろいろな問題について少し立ち入つたお尋ねをするつもりでありましたが、伺いますと、大臣の御都合で、私どもの時間は数分しか割当がありませんので、一点だけお尋ねいたして、次に譲りたいと思います。  それは前の国会におきまして、岡崎さん初め政府の諸公は、MSA援助を受けるのは、兵力増強の問題と関連がないということをはつきり言われまして、そういうことは自主的に政府がきめるのだ。そうしてその自主的な政府の意思はどうかというならば、当分——つまり当時のお言葉では、少くとも次年度においては、兵力の増強をしない。たとえば大臣のお言葉によりますと、百人、二百人の増員はときにはあるかもしれないが、大量の兵力増強をしないということを明言をされました。もう一点重要な点は、中国との貿易問題につきまして、これは向うから条件をつけて協定文の中へ書くのかということをお尋ねしますと、そういう要求があつても、そういうことを書かせる必要はないから、今までの取扱いで十分制限ができるのであるから、条文の中には書かせないつもりであるということを明言せられました。ところがその後今日に至るまでのお話によりますと、政府の御意思は、次年度において相当量の兵力増強をお考えのようでありますし、そしてまた文章のあやは別として、中共貿易に関しまする制限の条文を、条約文の中へ書かせることを許容しておられるようでありますが、これらのことに対しまする政府の政治的責任についての御所見を承りたいと存じます。
  75. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 防衛力の問題につきましては、これはこの前の国会のときの答弁は、速記録でごらんになればよくわかると思いますが、私は現状について申し上げておるのであつて、来年度のことについて何も申し上げておりません。現状におきましては、まだフリゲート艦その他を受領してないものがありますから、これを受領した場合にはある程度の人が必要になるであろう、こういうことを意味して申し上げたのであります。来年度増強しないというようなことは、私から申し上げる立場にもないし、またそういうことは何も私は承知しておりませんから、申しておりません。  それから中共貿易と申されましたが、それは平和を脅威する国との取引ということだと思います。これにつきましては、現にわれわれは中共貿易等については制限をいたしておるから、特にそういうことを書く必要はないと思つておりましたが、だんだん話してみますと、書いても一向さしつかえないようなことのようでありますから、書いてもよかろうとただいま考えております。これは交渉は、そういう意味で、だんだんやつておるうちにこつちの主張の方がいいこともあり、向うの主張が理由のあることもありますので、交渉の結果右に行つたり左へ行つたりすることもありますが、趣旨はやはり同じことで、今やつておることでもあるし、また平和を脅威する国に対しての貿易制限等は、自然行われざるを得ないのでありますから、書かなくてもやりますが、書いても一向さしつかえないじやないかというふうに考えております。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 ただいまはというのは、今まではという意味ではなかつたのでございます。つまりMSA交渉に関しまする兵力増強計画の問題に関しての質問に対しまして、兵力増強をする条件ではない、それではなぜ一体MSA援助を受けるのかとお尋ねいたしましたら、それは装備を改善するだけであつて、兵数、量をふやすのではないということを明言されました。すなわちMSA問題は当時からいわれますならば、今大臣の言われるのと違つて、将来のことであります。その瞬間、何月何日何時という現在のことではないのであつて、もとより質問趣旨答弁趣旨は将来交渉の進むことの予想されましたMSA援助に関連して、兵力増強計画ありやなしやということに対して、ないと答えられた。そうしてそれはただ装備を改善するだけだと明言されたわけでございます。その点は岡崎大臣こそ速記録をもう一ぺんお読みとりいただきたいと思うのでございます。  もう一点は、今の中共貿易の問題でございますが、これは文句の次第によつては書いてもいいということでありますが、およそ法律というものはそういうものではないと思うのです。書いてあるとないとによりまして、大きな違いが生ずる。政治的措置の場合と、条文に根拠を置きました制限の場合ですね。これは将来のきゆうくつさ、あるいはゆるさについて大きく違うわけでございまして、その点は、そういう意味で、われわれが条文に書くことの意義を重大視してお尋ねしている。そういう認識に立つて政府は掲げないつもりであるということを明言されたのでございます。もう一ぺんその点について、はつきりと責任を明らかにしていただきたいと思います。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 別にこれは責任問題でもないと思いますが、私は言葉じりをつかまえてとやこう言うのはあまり好みませんけれども、私の申しているのは、防衛計画MSA交渉の先決要件ではない。日本側が独自の立場から防衛力増強をやるということは、安全保障条約以来、できればやるということになつておるのでありますから、これは一向さしつかえない。またそういうことができ上りますれば、それに応じてMSA交渉もいたして別に矛盾はないように思います。  それからあなたの方ではどういうふうにお考えになつて中共貿易等を御質問なつたかは知りませんけれども、われわれは平和を脅威する国との取引の制限というものは、かりにそういう条文がなくてもやるつもりでおります。今でもやつております。実際上そういうものを書いても、書きようによつてはさしつかえない、こう考えております。ただその点において院議と矛盾するような形にいたすのはいけないと思いますので、注意をいたしております。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんので、またの機会に御質問いたしますが、ただ一点だけ締めくくりをつけるためにお尋ねいたしたいと思います。先ほど外務大臣福田委員のお尋ねに対しまして、向うからの援助武器の量が多い場合には、それに相応してこちらも人員をふやさなければならぬということを答弁なすつた。そのふやすわく日本の経済の安定ということが一応のわくになるのだということでございますから、これは言葉じりをとらえるわけではありませんが、重大なお言葉でございまして、兵力増強MSA援助との関連、すなわちアメリカ援助してくれます武器その他のわく、量は、日本の兵力増強と関連のあることは、事実関係として明瞭にそのことを認識されておると思うのです。それについて法律的な条件であるということを私は聞いております。政治的な関係をそれこそ大臣自身が認めておられるわけでありますが、そのことについてはどういうふうな意味であるのか、もう一ぺん先ほどの御答弁内容を明らかにしておいていただきたい。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いつも時間の短かいときに御答弁が同じことを繰り返しますが、福田君の御質問に対する答弁をもう一度よく聞いていただけば、もう一ぺん申し上げる必要はないのですが、福田君に対する御答弁はこういうことなのです。もし防衛力ということを経済安定を考えずにやつた場合には、かりに援助がたくさん来たからそれに応じて人をどんどんふやして行くということになれば、経済の安定を害することであるのだから、経済の安定ということをまず頭に置いてから、人をふやすとかいうようなことが考えられるわけであるので、そういう意味での経済の安定ということをわれわれは考えております。ただ援助物資がどんどん来るから、それに応じて経済の安定を無視しても、どんどんそれに応じた人をふやすというわけではないのだという、あなたの御質問と逆のことを申しておるのであります。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしているのは、経済安定と兵力数のことではございません。援助武器の量と兵力量との関係であります。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もう一ペン申しますと、経済の安定を考えた上での防衛力増強をやるのでありますから、かりに援助武器がたくさん来たとしても、それに応じて人をふやすときは、経済の安定を害する場合もありましよからして、そういう場合にはそれだけの援助は受け得ないということになるわけであります。要するに経済ということをまず考えた上での防衛力増強をやろう、こういう意味であります。
  82. 上塚司

    上塚委員長 時間が経過しました。それでは戸叶里子君。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 時間が限られておりますから、二、三点だけ伺いたいと思います。  岡崎外務大臣は先ほど福田委員質問に対しまして、MSA交渉は非常に進捗しているということを言われておりますが、私どもが見た目では少しも進捗しておらないようにしかとれません。ことに自衛力漸増と経済安定の問題、あるいは貿易の問題、五百十一条の(a)項の六項目問題等をいつでも討議されていられるようですけれども、少しもそれが進捗しておらないように思つておりますが、それでは進捗されておられるとおつしやるのでしたら、具体的にこういう点がこのころから進捗したのだということをお示し願いたいと思います。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が先ほど申したのは、福田君の御質問が非常に遅れているように見えるからどうかと言われるから、そう遅れてもいないのだ、別に大いに進捗しているとも申しておらないのであります。その問題は先ほど申しましたように、経済の安定ということをどういうふうな考え方でおるかとか、あるいは五百十一条の六項目憲法の改正問題とをどういうふうに考えるか、まあ、技術的の問題では差押えとか、いろいろなことがありますが、そういうような全般的の大きなわくについて十分話合いを行いつある、こういう程度であります。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 結局なかなかはかどらないというふうに私も了承いたしました。そこでそのはかどらない一番大きな原因が、どう考えてみましても、何かそれらの今あげました条項関係があることは、日本防衛力の問題であろうと思うのですけれども、先ほどからの質問応答を聞いておりましても、防衛力、あるいは自衛力漸増といつた問題に対しては、具体的に向うに提示しなくてもいいし、すれば、なおいいかもしれない。しなくてもかまわないのだ、こういうふうに御答弁なつたように思つております。そうすると、提示なさらないかもしれませんが、だんだん交渉過程において、こういうような形で防衛力漸増して行く気持があるというような説明をなさるかどうか承りたいのです。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもし政府の方でそういう点についてきめますればアメリカに話すこともありましようが、その前に国民に知らせることもありましよう。別に隠すことじやありません。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、もしも政府でそういうことをおきめになつたときに、MSA交渉と当然関係があると思うのですが、その場合にMSA援助を受けるという意思表示をする前に、国民に知らせるという方法をおとりになつてから、MSA援助をお受けになるというふうになさることが当然だと思いますが、それはいかがでしようか。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しますように、MSA援助については防衛計画は必須の要件ではないのでありますから、それのあるなしにかかわらず、いいと思えばMSA援助は受けます。それとこの防衛計画とは別問題であります。防衛計画決定いたしますれば——まだ私が自分がつてに言うことはできませんけれども、おそらく国民の理解を得るように努力をいたすことだと思います
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 くどいようですけれども、もし政府として防衛計画が、MSA援助を受ける前に決定したといたしましたならば、当然それを、国会に先にお示しになると思いますが、その点はいかがでしようか。つまりもう一度はつきり申しますと、アメリカ側にそれをお示しになる前に、日本国会に示されるのが当然だと思いますが、そうお考えになりますか。
  90. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本の国が自分できめる問題でありますから、おそらく国民に知らせる努力はいたすことと考えておりますが、まだ私はその点をどうするのだということをここで申し上げるところまで行つておりませんから申し上げるわけには行きません。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどもちよつと出ましたけれども、私どもの満足の行くような答弁が得られませんでした点で、MSA援助の中で、あるいはアメリカの余剰物資を援助の形で受けるかもしれないというようなことが出ておりましたか、そういうことは結局日本の経済に寄与するからという形で、これは経済援助の一部だとお考えになりますかどうかを承りたいと思います。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ具体的の問題でないのですから、はつきり申し上げられませんが、五百五十条にはそういう規定があるのであります。これをただいま研究中であります。これが経済的の援助であるかどうか、それは名前だけの問題でありまして、実際上経済に寄与すればそういうことになりましよう。これはまだはつきり申し上げられません。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 私が心配いたしますのは、もしもそういう形で援助を受けましたときに、日本国内でそれを消費して、国内で集めたお金というものが、結局見返り資金の形になつて日本の国で自由に使えないというふうなことも考えられると思うのですが、そうなつて来ると結局軍事援助と少しもかわらない。そしてまた日本にとつてはそのお金の使用まで束縛されるという非常にきゆうくつなものになつて来るのですが、その点は考えられないかどうかを承りたいと思います。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは具体的の問題はまだ早いのでありますから、あれやこれや想像して議論してもちよつとまだ実益がないと思いますが、要するに日本外国から小麦を買うときは外貨がいるのであります。その外貨がいらずに持つて来られると仮定いたしますれば、それだけ国内で売つたものを見返りで積み立てて、それを一定の援助に使つて——要するに、かりに費用がいらずに来るとすればそれだけ都合がいいのじやないかと思いますが、これはただりくつの上の問題であつて、具体的にならないとはつきりしたことは申し上げられません。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点伺いたいことは、私先ごろアジアのある国から来ている人から、こういう質問を受けたのです。日本保安隊はすつかりアメリカの装備をされて、そして軍事顧問団やあるいはそういつたいろいろな顧問団の人からの訓練を受けてできている。そうするとどんなに、いざというときに海外出兵しないとか、あるいはアメリカからいろいろなことを言われても協力をしないと言つてみたところで、現実の問題としてアメリカの装備を受けて、その訓練を受けているものが、一体どうやつて断ることができるのですかという質問を受けたときに、私自身非常に答弁に困つたわけです。こういう質問をまた受けるかもしれませんので、そのときにどう答えていいかを岡崎大臣に承りたい。
  96. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そんなことは御答弁に困られるわけはないので、戸叶さんの方が私よりよく知つておると思いますが、あなたは常に自主的に行動することを主張しておられる。これは自主的に行動されて大丈夫でございます。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 自主的に行動するといたしますと、私ますます説明に困るわけです。そういう可能性は非常にあるとしか言えないのですが、そう答えてもしかたがないわけですか。
  98. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 自主的にというのは、日本考え方で行動するということでありまして、よその国の考え方で行動するのではございません。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 問題は、今まで政府のとつて来た外交方針を見ましたときに、どうも欺瞞的なやり方が多かつたものですから、そういう点から信用をなくして、この質問を受けたのだと思います。今までのような態度から判断するならば、日本が自主的な態度をとりますといつて答えても、向うは決して満足してくれないと思います。これは岡崎さんと私と考え方が違うのですから、それ以上は進めて参りません。ただもう一点だけ簡単ですから承りたいのですが、軍事顧問団が来ましたときに、そこに使われる予算というものを日本で組まなければならないと思いますが、そういう点も御考慮の中に入れていらつしやるかどうか、そうしてまた大体どのくらいと考えていらつしやるかを承りたい。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAのの援助を受けているあらゆる国の協定の中にそういう問題が入つておりまして、当然日本の予算でこの費用を計上いたします。国会に出して御承認を得ることにいたします。額はまだきまつておりませんが、あまりよけいな負担でないようにいたしたいと考えております。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、先にそういうものを承認してしまつて、あとから予算の面に計上されることになつて、何かそこに矛盾するものがあるじやないでしようか。先に予算の承認を得た上で、軍事顧問団を認めるというのが、正当なあり方ではないかと思いますが、その点はどうですか。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その軍事顧問団を置くという協定国会の承認を得るわけでありまして、その点は御心配ないと思います。
  103. 上塚司

    上塚委員長 加藤勘十君。
  104. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 最近の大新聞のMSA援助に関する輿論調査を見てみますと、反対もしくは懐疑的な数字が半数近く現われておるわけであります。この数字は、MSA援助がいかに日本国民の関心を高めておるかという具体的な表明であると同時に、この問題について多くの人々が非常に懐疑的であるということを、はつきり示しておるものと思うのでありますが、交渉を開始されてから外務大臣は二回国会において中間報告をなさつております。またその交渉の都度外務省から、あるいは双方からコミユニケが発表されておる。もし大臣中間報告なりその都度発表されておるコミュニケによつて国民が納得に行かれておるならば、こういう反対もしくは懐疑的な数字が、このように高い数字を示さないのではないか。こういうことから考えますと、国会における大臣中間報告は、ひとりわれわれが納得し得られないばかりでなく、国民の多くもまた納得していない、こう見なければならないと思うのであります。今日の同僚委員諸君の質問に対しても、大臣は大体同じようなことばかり繰返されておつて、そこには少しもわれわれを納得せしむるに足る説明がなされていないのであります。われわれは、率直に申しますが、こういう援助協定は打切るべきである、こういう考えを持つております。しかしながら、十分に日本国民として納得することができるならば、われわれは何でもかでも、是が非でもがむしやらに反対するというのはありません。しかしどうしても納得が行かない。従つて今日の段階においてはわれわれは、はつきりこういうものは受けるべきでないという意見を持つておりますが、われわれのような反対もしくは多くの懐疑的な立場におる日本国民を納得せしむる責任が政府にあるのではないか、このように思います。そういう点から見まして、先ほどの同僚委員諸君の質問に対するお答えを聞いておりますと、実に矛盾だらけである。大臣は巧みに言葉をごまかしておられますけれども、冷静に聞いておりますと矛盾だらけである。たとえば防衛計画援助を受けるにあたつて必須の条件でない、こう言われます。もしこれが必須の条件でないとするならば、一体MSA援助協定——条約でも協定でもよいのですが、その協定というものは何を規定するのか。大臣は一体この点をどのようにお考えなのですか。もし計画が何にもないとするならば、その協定案というものは一個の文書にすぎない。金額の総額あるいは武器内容、そういうものを一体何を標準としてきめようとされるのですか。計画があつて初めて総額なりあるいは武器内容なりが定められるのではないか。この点大臣はどのようにお考えになりますか。まずその点からお伺いいたします。
  105. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も輿論調査は注意して見ておりますが、お話のはどのことかちよつとわかりませんが、私の最近見ましたのは、数箇月前の輿論調査に比べまして、MSA援助を受けるべしという数が相当ふえておる。国民のわからないという数字がまた非常に少くなつて来て、だんだん理解が深まつて来ておるとむしろ考えております。それから今の御質問ですが、MSA援助につきましては、もし計画がないとすれば、先方も一年々々の協定でありますから、今年から来年にかけて、現状においてでき得る限りの装備の改善等の援助を受けるわけになります。
  106. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 もちろんこの協定が一年々々になるのはわれわれもわかつておりますか、それならば現状の十二万という保安隊を中心として援助を受けるとするならば、現在保安隊に貸与されておる武器は一体どうなるのか。
  107. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ話合いをいたしておりませんが、それはいずれ形は何とか整えるでしようが、そのまま貸与を受けたいと思つておりますが、これだけでも十分でないと思うし、また海上警備隊の方にも、船等は十分でないようでありますので、こういう点も必要なものはたくさんあると思います。
  108. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 これではこんにやく問答みたいなもので話にならぬと思うのです。しかしなからわれわれはそういうような答弁で、今日国際的な輿論等に現われておる、ことにダレス氏が日本から帰つて後に発表したようなことは、新聞記事だから知らぬと言われればそれまでの話だけれども、何にも根拠なくして、いやしくも一国の国務長官たる人があんなことを言うはずがない。それを日本だけが知らないないで通すということは、実に私はけしからぬと思うのです。そんなことであるから日本国民は納得しないのですよ。もちろん岡崎外務大臣日本外務大臣であるから、アメリカの国務長官が何を言つたとて、そんなこと知らぬと言われればそれきりの話ですけれども、少くともそういう言葉が現在交渉の相手方の、しかも援助を与えようとする側の責任者意見である。そういうことを考えますと、私は少くとも岡崎さんがほんとうに誠意をもつて、国民に納得せしめようとされるならばダレス国務長官はああ言つておるが、それはこうこうこうであるというところまで説明なされて、初めて国民は納得するのではないでしようか。そういうことについては全然それは知らぬ、奄美大島のことだけは具体的な話があつたが、あとのことは半分雑談で、いろいろな話がかわされただけで、何も言うことはできぬ、こういうことではならぬと私は思うのです。もちろん雑談であつて一つのまとまつた協定とかなんとかいうのではないのだから、従つてそれを正式なものとして公然と発表するということは、むずかしいかもわかりませんか、雑談の中においてもこういうような点が話し合わされた。もちろんこれは双方において責任をになうものだ、こういうように説明されて、初めて私はその真実性というものが、国民に納得されるのではないかと思うのです。こういう点で私は非常にこの点は遺憾としております。これはいくら議論してもしかたがありませんし、見解の相違になるから別にしますが、これはまた他日の機会に、もう少し話が進んでから、私の方ももう一歩進んでいろいろ質問なり意見なりを出してみたいと思います。  それからただいまの福田委員に対するお答えの中で、憲法の問題に触れられておるのでありますが、大臣憲法に抵触するようなことは日本政府としてはもとよりやらない、これはもつともであります。しかしながら国会においては、若干そういう疑義があるから、そういう疑義を解消するためにも、何らかの形で表明するように研究しておる、こういうお話でありました。私はただ単に規定をしてもしなくとも、日本憲法日本政府が抵触するはずがないから同じだ、但し国会の方面に疑惑があるから、その疑惑を解くために、何らかの形で表明するように研究中だとおつしやいましたけれども、元来がこの援助は、言うまでもなくMSAアメリカ国内法によるものであつて、その法律によれば五百十一条(a)項の六項目というものは、どの条項を見ても、もしこれが率然として出されたならば、だれ一人といえども、これと日本憲法九条の規定とを比較対照してみて、私は非常に多くの疑義を持つと考える。ただちにこれが憲法違反であるときめつけることはどうかしれませんけれども、法律解釈上に非常に疑義を持つているということだけは明らかである。従つてこのMSA援助を受ける場合に、憲法に抵触しないということを条文の中に明記するということは、この援助を受けようとする日本政府としては、当然の義務であり、国民に対する責任である、こう思います。これをただ単に国会の方面の疑惑を解くために、何らかの形で表明したいというような軽い扱い方でいいかどうか。この点に対して大臣はどうお考えになるか、お答え願いたい。
  109. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法に違反するようなことは政府としてできませんし、国会もそれは承認しないことはもちろんであります。従つてこれは日本側できめることであつて、またどれが憲法に違反しているか、ということは、日本側で解釈するもので、アメリカ側が解釈するものではないのであります。従つて協定文に書いたつて、実際上憲法に違反しているかどうかは日本側で判定しなければならぬものである。従つてそれをその協定に書いてどういう実効があるか、私はアメリカに保証してもらつて意味がないと存じます。従つてわれわれは日本政府なり国会なりが、憲法に違反しないということがはつきりしていれば、それが何よりも大きな根拠であつてアメリカ協定の中で保証してもらうことはおかしい、こう思うのであります。従つて私は協定文の中に入れるということには反対をいたしております。国会で心配があるということは、国民の代表である国会議員がそういう心配を持たれるということであつてつまり国民がそういう点で心配を持つておる向きがある、こう判断いたしますから、その心配をなくする意味で、協定文でないところで何らかの表現を用いてはどうか、これを研究すれば私は十分だと思います。
  110. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 とんでもない話である。一体協定というものは、双方の国が平等に責任を負う条約である。この条文の上にそれがはつきり現われていなかつたならば、一体日本国民は何を標準として憲法に抵触するかしないかをきめるか。岡崎外務大臣考え方は、根本から違つておると思う。それならば日本政府でさしつかえないと思うものならば、アメリカ側に入れしめたならばいいじやないか。われわれはアメリカの保証を求めておるのじやない。そんなことは言うまでもないのです。日本側が責任を持つべき条約において明記ざれるということは、それこそ日本国民の憲法抵触に関する疑義を解明することになる。それを条文の中に入れなくともよいなんというばかなことが一体どこにありますか。私は大臣考え違いだと思う。その点についてはつきりもう一ぺん言つてもらいたいと思います。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ばかなこととおつしやるけれども、その方が私はばかなことであると思う。一体国際法におきましても、いかなる協定といえども憲法に違反するなんということはできない。そんなことを書くならば、あらゆる国際法は、漁業協定であろうが、賠償協定であろうが、すべてのものが憲法に違反しないということを書かなければならぬ。そういうことはとうてい常識上考えられないことであつて憲法に違反しないということは当然のことである。そんなことを協定の中に書くならば、協定の解釈というものが、日米両方で解釈する権利が出て来る。日本憲法に違反するかどうかということを、アメリカ政府が解釈するということはおかしなことである。
  112. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 外務大臣がばかなことだというなら、一体五百十一条の(a)項の(三)は何です。これには「自国が受諾した」という、そういう前書きは書いてあるけれども、「軍事的義務を履行する」ということを書いてあるじやないか。こういうものを含めたものが、ちやんと条約に載つて来るでしよう。これが日本憲法に抵触しないと言えるか。従つて普通の外国との国際条約とは違うのだ。一方の権力によつて、一方の力によつて、一方が援助を受けようということです。力をもつて援助を与える方が、自分の有利のために、しかもこの条文の前文には、この援助を受ける国はアメリカの安全を第一に考える、大統領の認めたときだけに初めて援助を与えるというように、非常に最初からハンディキヤツプがついておる。従つてこういう条約を結ぶときには、一切の点において防衛するように、日本政府がその義務を明らかにすることが当然ではないか。初めからだれが憲法に抵触するような国際条約を結ぶばかがあるか。そんなことはきまつておる。だけれども、この条約の前提となる法律そのものが、日本憲法に抵触するおそれが十分にある。従つてこれを防衛する義務が日本政府にあるのはあたりまえではないか。これをあなたはどう思うか。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あなたは軍事的義務ということを、今取上げて論じられたけれども、私はその点誤解があるといかぬと思つてアメリカ政府の正式の見解を六月二十四日に求めて、アメリカ政府は六月二十六日に、正式な国務省の見解を述べて来ている。その中に軍事的義務とあるのは、安全保障条約によつて日本がすでに負つている義務以上には出ないということをはつきりいつているのです。そう大きな声でおつしやる理由はちつともないのです。
  114. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 同時にまたアメリカの回答の公文書によれば、はつきり百平和条約の第五条というものが取上げられておる。この点はどういうふうに解釈しますか。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 平和条約の第五条は、国会の絶対多数によつて承認された条項であります。
  116. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 たとい国会によつて承認されておろうがどうあろうが、疑義は依然として疑義として残つておる。疑義は解明されてはいない。(「国会の議決を無視しては困る」と呼ぶ者あり)その点はどう考えておられるか。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あなたは疑義を持つておられるかしりませんが、国会の絶対多数はこれを可なりとして承認したのでありまして、この承認に対して政府はごうも疑義を持つておりません。
  118. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ちよつと関連質問を、外務大臣に一点お尋ねいたしますが、現在の憲法は、よく世間では、アメリカによつて与えられた憲法だという。私どもはそうとばかり思いませんが、この憲法の第九条に、平和に関する規定があるのでありますが、MSA援助はこの条文に抵触するのだ。つまりアメリカは、日本に平和憲法を与えながら、今度その平和憲法をほごにするような行動を、MSA援助において行つているということは、これはアメリカ自体にもそういう議論がある。そして日本の国民もそう考えている。また政府は、憲法違反はやらぬとおつしやるけれども、現在の保安隊にしましても、さらにまたMSA援助を受けて保安隊増強するという計画にしましても、これは明らかに、われわれからいえば憲法違反をやろうとしている。しかし政府は、これは憲法違反じやないとおつしやる。こういうふうに国民の間に非常な疑義があり、疑惑があるのでありますから、私は政府があたりまえのことだといつたつて、そのあたりまえのことを今日やる義務があるので、憲法の範囲内でという制限を、一つこの条文にうたうというのは、政府自身の責任じやないかと思う。私どもはかりにそういう文句が入つても、それで満足するものじやないけれども政府憲法に違反しないというならば、やはり政府の責任においてそれだけの努力をする役務があるのじやないか。もう一度これについて、政府の御意見をお聞きしたい。
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども申した通り、われわれの方としても、そういう点は何らかの形で明らかにした方がよろしいと思つて、ただいま研究はいたしております。但し田中君のおつしやることは、少し私は矛盾があると思うのは、憲法規定がありますので、政府憲法を忠実に実行しておる、こういつておるけれども、田中君などは、あれは憲法をごまかして、ごまかしの再軍備だというようなことで、規定があつて政府はその規定をないしよでごまかしておるというような議論をされておるのであつて、今度も憲法に違反しないということを書きましても、書けばそれで十分政府は違反しないのであるということを、田中君が信じてくだされば非常にけつこうであります。しかし規定があつても、それはなかなか信じられないということじや、これはまたはなはだおかしなことになりますが、しかし田中君だけを対象にしているわけではありませんから、国民全体に対して誤解のないように、何らかの措置を講ずべきであろうかと、こう考え研究をいたしております。
  120. 上塚司

  121. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 まず私は外務大臣に、先ほど同僚の帆足君からお尋ねした中共行きの旅券の問題について伺います。この問題はむしろ具体的に、この委員会の席上でなしに、話合いをした方がいいと私も考えておつたのでありますが、たまたま帆足君の質問に対して、旅券法違反を犯した者に対しては、外務当局としては考慮するというようなお答えがあつたので、この点についてひとつお尋ねしたいのですが、これは先ほど帆足君も指摘したように、高良参議院議員がかつて同じようなケースがあつたはずです。それが第二回目には公用旅券が交付されている。それから今の香川さん、南さんは、今いずれもヨーロツパに行つておられるのですが、こういう人たちもそういう形があつたはずです。その場合と今度の場合、それに該当する人があるかないかは別といたしまして、どういう関係になるのか、その点をちよつとお尋ねいたします。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 高良女史の場合は、私はここでも何べんも申しましたが、私はできるならば旅券は出したくない。できるだけこれは判こを押さぬつもりた。こう申したのでありますが、何分にも中共引揚げということでありまして、これにいささかも支障が来るということでは、留守家族等の考え方もありましようしいたしますので、いやしくも引揚げに支障を来さないようにということで、やむを得ず旅券を出したのであります。決して好んで出したのでもなければ、また防ぎ得たものを防がずに出したものでもないのです。これはやむを得ざる事情のもとに、前例とは決していたしませんということも何べんも言つて旅券を出したのであります。南とか香川、この人たちについても、私はまた中共に行くということだつたら、旅券は出さぬつもりでおります。しかし今度は中共に行くのではない。しかもこれはほかの用務である。またいろいろ保証する人もあつて、これは事情が、出してもしかたがないと思いましたから、私もかなり抵抗はいたしましたが、出したのであります。中共に行くということでありますれば、私は出すつもりはありません。
  123. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうすると、高良さんの場合等を考慮して考えてみますと、外務当局としては出したくはないが、事情によつてはやむを得ない場合もあり得る、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 事情といつても、普通の事情では私は出しません。やむを得ざる事情、つまり引揚げができなくなる。こういうことであれば、これは涙をのんで旅券を出すのであります。
  125. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 やむを得ざる事情というのは、これは具体的な事情についてでなければ、はつきりした答弁はおそらくできないだろうと思うのですが、やむを得ざる事情があるかないかということは、具体的事例について今後折衝の余地がある、こういうふうに解釈してよろしいでしようか。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 数万の人が引揚げることができなくなるようなやむを得ざる事情があれば、やむを得ず考慮いたしますが、それ以外には、私は考慮するつもりは今のところありません。
  127. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうするとそれは引揚げだけというふうに今の説明で聞えるのですが、その他国家についてあるいは国益上重大なる支障ということならば、これまた考慮の余地があるようにもわれわれは解釈できるのですが、その点はどうですか。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 利益があるとか国益があるとかいうことも、いろいろ理由はありましようと思いますが、同時に刑罰はありませんけれども、とにかく旅券法に正面から違反しているということは、私は間違いないと思います。旅券法違反ということも、これは国益に非常に影響のある問題でありますから、並たいていのことで旅券を出そうとは決して思つておりません。
  129. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 この問題は今裁判において係争中の問題でもありますから、外務省の見解が必ずしも正しい、違反であるという解釈で、われわれがここで判断を下すことはどうかと思いますので、これ以上触れません。ただ問題はいまなお具体的な問題として取上げられておることでもあるし、今後具体的に折衝したいと思いますから、これ以上はやめます。  そこで私は一点だけ伺つておきたいのですが、先ほど加藤勘十君が指摘されたMSA援助に関して、国民が、全体ではないにしても相当の国民が、非常な懐疑と不安を持つておることは事実であります。それはどこから生じたかといえば、つまり政府の今までとつて来た態度に、はなはだ不明快なものがある、これはいなみがたい事実なのであります。そこで問題になつて来る核心は何であるかといえば、要するに日本防衛問題、そこでその防衛問題については、防衛軍の問題は必ずしも今度の協定の必須条件ではないというふうに、さつき大臣は言われたのでありますが、これは条約そのものにまだ具体的なものが出ていない以上、われわれとしては今これを論疑することは早いかもしれませんが、しかし先ほどの話にも出たように、安保条約の精神からいつても、あるいはMSA援助の基本的な精神からいつても、いわゆる自由主義諸国の共同防衛というこの一貫した精神なり方策というものはその基底に流れているはずである。そこから出発して出ているのだ、こう解釈するのですが、その点はいかがですか。
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはおつしやる通りであります。ただそれは世界のどこの国も、非常な小さい国の例外を除きますれば軍隊を持つておる。つまり兵備を持つておる。それを対象にしておりますから、従つてお話のようなことが一般の方針として出て来ておる。日本のように軍隊を持たない、戦力を持たないというところになりますと、これは適用において追うことは当然あり得るのでありますが、安全保障条約でもおわかりの通り、普通ならばお互いに助け合うという条約であるべきものを、日本は安全保障を頼むけれどもアメリカの安全保障については日本は引受けないという片ちんばな形になつておるわけであります。こういうような日本の場合の特殊な事情はやはり考慮に入れる必要があると思います。
  131. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうなつて来ると、つまり日本はまだ軍事力じやない、戦力じやないのだという解釈に立てば私も議論は進められないのです。アメリカが明らかに要望しておるところのものは、日本自衛力漸増つまり増強だ、さらに言葉をかえて言えば、日本防衛力増強を希望しておると解釈して私はさしつかえないと思います。これは政府がどのように弁解しようと実体はその通りである。その場合にこれは仮定の上だと言つてあるいは大臣は逃げられるかもしれぬが、そういう論拠に立つて考えた場合に、二万人ふやすとが四万人ふやすとかいう問題が今巷間伝えられておる。これは政府がこの前の国会でそういうことはやらないと言いながら、今その交渉をやつておる。外務大臣はやつておらぬと言われるかもしれませんけれども、これは明確にやつておる。しかもこれは今ここでいきさつを申し上げませんが、吉田さんと向うとの前からの約束がある。それによつてつておる。そのことを私は今ここでかれこれ言うのじやないのです。ただその場合に——これは外務大臣だけではどうかと思いますが、そうした場合に、アメリカか三十二万だとか、二万は高級な兵器を持たすといつたような話まで出ておるということを、事の真相は別として私は聞いておる。とにかく日本がある一定の防衛力を持つ、そうなつた場合にはいわゆる共同防衛の一環として、日本防衛軍を持つということにならなければならぬと思うのです。そうした場合に日本が、ただ単に自分だけで、いわゆる国内の治安というようなことだけを純粋に考えるならば、それでいいのですが、そうでない共同防衛の一環として考える場合には、たとえば東亜なら東亜における全体の防衛計画というものは当然あるはずです。その全体計画というものはどういうものだ、だからその一環として日本はこれくらい持つてくれということにならなければ、これは理論上合わない。そうした問題に触れてないと言われるかもしれないが、これは触れているはずなんだ。そういう観点に立つと、その場合に日本アメリカからお前のところでは十五万にせい、二十万にせい、あるいは三十五万にせいということを一方的に言われてやるということは、これはまさに土民兵をつくることなんだ。そこでその場合に日本は、アメリカが東亜なら東亜地域だけの共同防衛の観点に立つて、一体どういう計画を持つておるのか、また日本はどの程度持てという案を、少くともアメリカ側からある程度の提示を受けなければ、そうしたことはできないはずなのですから、それらに対する心構えといいますか、具体的に何か話があるならばそれを承りたいし、そういつた点についての外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう話が必ずあるはずだという御説ですが、ほんとうにそういうことは何もありません。全然ありません。また私はアメリカ日本に話さないだけじやなくて、アメリカ自体がそういう計画つまり東亜全体の防衛計画というようなものは持つておらないと思います。持つておらないからこそ、NATOのようなものができずに、ニュージーランドとアメリカ、濠州とアメリカ、フイリツピンとアメリカというような、アメリカと直接のこういう協定ができ、日本ともでき、朝鮮ともできるというふうになつており、横の計画がないからああいうものかできておるのだ。従つてどもはそういうものがあるとは信じておりません。今まで全然そういう話はありません。
  133. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 どうも今の外務大臣の立場からいつて、それはあるとは言えないだろうし、あるいはまた伝えられておるごとく、今度の協定の折衝も暗礁に乗り上げて、そういう点までまだ行つていないというふうにも今のお言葉で解釈できるのですが、そうなつて来ると、外務大臣が近いうちにできる——これは国民を安心させるつもりかどうか知りませんが、そういうように言われたことに対して、われわれはさらに疑義を持つて来る。そこで結局は今あなたは縦にだけやつて横の連絡がないと言われますけれども、そんなはずはないと思う。当然アメリカの国防省というものには、全体としての計画があるはずなんだ。もしそういう全体計画なしにやるといつたようなアメリカなら、われわれは相手にならぬと思う。そんなたよりないアメリカでは、われわれは共同防衛の責任を分担することはできないということになつて来る。そういうことについては外務大臣はしろうとだから、そういうふうに簡単にお考えなつたかもしれませんけれども、私はそうは思わない。これは全体計画が必ずなければならぬし、また全体計画を聞いた上でなければ、かりに承認するにしてもわれわれは納得できない。ですからその点は、向うの言うことだけをそのままお仕着せを受けるのじやなしに、独自の立場に立つて日本防衛はどうしなければならぬか、自衛はどうしなければならぬかということと、われわれが安保条約によつて負うておるところの任務を、完全に遂行するという建前に立つ以上は、当然にその全体計画というものを、われわれは知らなければならないはずなのです。そういう点について、今後折衝の過程において十分、これは外務当局も注意してもらいたい。従つてこの問題については今これ以上論議を進めることはどうかと思いますので、一応外務当局に注意まで申し上げておきます。私はきようはこの程度でやめます。
  134. 上塚司

    上塚委員長 帆足計君。五分間ですから簡単に願います。
  135. 帆足計

    ○帆足委員 私ちよつとお尋ねいたしたいのですが、先ほど旅券法のことについて外務大臣からお話がありました。また旅券法違反について云々のお言葉がありましたが、実は旅券法の問題につきましては、私どもが違反していたのか、政府当局の方に解釈上の欠陥があつたのか。法務省関係の各種の法律雑誌、また法制意見関係の雑誌、法学界の雑誌等におきましても、賛否両論でございまして、いわばポーター・ラインのような問題でございまして、違反ということをあまり強調なさいますことも、私は多少妥当を欠くのではなかろうかと法律的に見て思います。それはともかくといたしまして、今般中国に対して、院議の趣旨を尊重いたしまして、経済使節のかの地に参りますことを国会はきめましたが、これに対して政府は公用旅券をもつてする。公用旅券をもちていたしますと、政府の御都合でいろいろな差別待遇をするということをお考えのようでありますが、もちろんふしだらに渡航が続いても困るというお考えもありましようけれども、先般議員連盟等で相談いたしましたときには、たとえば貿易業者で、非常に資力、信用、経験の貧弱な貿易業者が陸続としてかの地に参るようなことがあれば、相互に迷惑するようなこともあるではないかということを伺つております。そういう問題につきましては、幸いに貿易振興議員連盟とか中日貿易促進議員連盟とか、貿易協会などもございますから、そういう機関に委員会でもつくりまして、その委員会で中国向けの貿易商事をする人を御推薦でもしたらよかろう、また先方の中国の貿易公司ともそういう話合いでもして、多少の秩序をつけたらよかろうなどというような考え方も出ておりました。しかしながら国会議員が向うに参りますのは、何も政府の財政で参るわけでもありませんし、社会公益に属する仕事で参りますけれども、いわゆる引揚げ問題のときのような公用で参るわけではありませんので、当然私用旅券ということになると思います。私用旅券ということでしたら、政府の主観的な御解釈によつて、差別待遇するというような過度の権態は、今日の現行旅券法においては与えられていないのでありまして、旅券法においては刑法に触れて刑罰に処せられた者、またはギャングとか阿片の密売者というような悪質の者を取締るということになつております。従いまして、この問題につきましての先ほどの大臣の御答弁は、私は、多少法の精神から申しましても、再考慮をお願い申し上げることができる筋もあると存じますので、あえて御答弁を要求いたしませんが、ぜひとものそういう趣旨も御了解くださいまして、御了察のほどを願いたいと存じます。
  136. 上塚司

    上塚委員長 これにて外務大臣への今日の質疑は終了いたしました。  これより通産大臣に対する質疑を進めるのでありますが、通産大臣も非常にお急ぎのようでありますが、特に午後一時までおとどまりを願うことにいたしました。通告者は二人であります。福田篤泰君と喜多壯一郎君でありますから……。
  137. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 もう時間もありません。大体一時までといつても、もう十五分しかない。二人とすれば七分半ですから、質問にも何にもなりません。委員会の運営はどうあるか知りませんが、正直に言つて私は委員長としても委員会自体を冒濱するものだと思う。大臣都合がどうあろうと、この時計が間違いなかつたらもう十五分しかない。それを二人でやつたら七分半ずつで、しかも私らの質問よりは要点をはずして長い答弁をなさると私は見ておるんですが、これじや無理です。私は委員会の権威上質問を打切ります。
  138. 上塚司

  139. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間がないようでありますから、具体的に事実だけを質問いたしまして、御答弁も簡潔に要点だけを御答弁願います。  まず第一に、先ほど来問題になりました中共貿易に関しまして、十五日新たに十一品目が追加されたことは、まことに御同慶にたえません。特にいわゆる自由民主国家なるものがわが国に対しまして理不尽な経済圧迫を加えておる今日におきまして、私どもは相手方がどういう国柄であろうとも、現存する国際法なりないしはいろいろな協定わくの範囲で、どんな国とも一ドルでも多く外貨獲得のために貿易を進展さすべきものであると考えております。十一品目の追加によりまして、通産当局は貿易量の増大をどの程度見込んでおりますか。一部によりますと一千万ドルと言つておりますが、昨年は輸入が〇・七%、輸出が〇・〇七%、きわめて貧弱な、それぞれ七厘とか七毛とか、一分にも達しない貧弱な中共貿易でありましたが、これによつてどのくらいお見込みになつておりますか、お見込みを伺いたい。
  140. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 今回十一品目禁輸品を解除いたしました。この点につきましては今まで日本の業者が相当に希望をいたしておりましたところの品目でございますから、あるいは中共貿易すなわち輸出貿易が相当進展するのじやないかと考えておりますけれども、これにはいろいろ、まだ品目が解除になつたというだけのことでございまして、取引をいたします相手方もしくは商売人、またはそのルートとか、いろいろな条件が加わつて参りますから、今すぐどのくらいできるかという見通しはつきませんけれども、大体事務当局が推算いたしましたところでは、一千万ドルもしくは一千五百万ドル進展しやせぬか。しかしこれは何も根拠はございませんで、今までのいろいろな品目解除のときの情勢から推しまして、そう推定されるということでございます。
  141. 福田篤泰

    福田(篤)委員 現在わが国は、輸出貿易の促進によつてわれわれの生活を保障し、民生の向上をはかるということが必須条件であるということは、大臣承知通りであります。ところがそれが不振になりまして、いろいろな点で問題になつております。こういう見地から特に問題になつているのは、ポンド地域に対する輸出問題であります。御承知通り、昨年の七月のポンドのわが国の保有高は一億二千五百万ポンドで、いわゆるピークを示したのでありますが、その後の政府のやり方を見ておりますと、じやまもの扱いにして、いわゆる見越し輸入というか、どんどん輸入を促進いたしまして、これを絶好の機会として、英連邦は輸入制限を行つた。そのために現在御承知通り、手持ちは二千万ポンドしかない。この間スワップで三千ポンド借りましたが、それでも足りない状態であります。こういうような今までの見込み違いによつてわが国の輸出貿易は非常な迷惑を受けた。それについて、ポンド地域に対しましてどういう輸送促進の具体策をお持ちでありますか、お聞かせ願いたい。
  142. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ポンド地域に対する貿易のバランスが失われまして、だんだんとポンドがなくなりまして、スワップに非常に依存しなければならぬ、こういうことになつておりますことは、まことに遺憾でございます。この前の見越し輸入がよかつたか悪かつたかということは過去のことでございまして、ただいまこれを批判いたしてもいたし方ないことでございますが、今後いかにしてポンド貿易を進展さして行くかということにつきましては、実は部内におきましても研究もし、同時に一番大事なことは、結局英連邦諸国が輸入制限を非常に厳格にやつて、われわれの方でどうも輸出ができないということになつたのが原因であります。でございますからことしの二月に日英会談をやりまして、ほぼ二割程度の輸入制限緩和ということを約束をしたのでありますけれども、その後その結果がうまく行きません。ことに東アフリカのごときは、年内はどうしても物を買わぬ、一文も買わぬというようなことを言つておるところもありますし、また通達はしてくれておるのでございましようが、個々別々の各連邦の経済状態、すなわち国際収支の関係からも十分われわれの意に沿うようにもなつておりません。しかしその後引続き英国との間に外務省を通じまして、この輸入制限緩和というものに対して非常な努力をしておりまして、その結果といたしまして、この七月ごろから多少実績も伸びて来ておるように思つております。われわれといたしましては、もしこれがどうしてもバランスが合わないということになれば、いろいろ物の売り買いを地域転換という方向に持つて行かなければならぬかとも存じます。その辺のことも十分研究はいたしておりますが、ただいま力を入れておりますことは、輸入制限緩和を実質的に実行してもらうという外交交渉に移し、またその効果が多少とも上つておるように認めますから、今しばらくこの情勢でやつて行きたいと思います。なお詳しいことは局長がおりますから、局長から御答弁いたさせます。
  143. 牛場信彦

    牛場説明員 スターリング地域のただいまの不均衡の非常に大きな原因は、濠州それからパキスタンでございまして、この二箇国とのバランスをどうするかということが、非常に大きな問題になりますが、濠州は、これは御承知通り、恒久的にどうしても輸入超過にならざるを得ない国になつておりまして、こことの貿易を完全にバランスするということはむずかしいと思います。現在まだ輸入制限も残つておりますし、なおまた関税等において相当不利な取扱いも受けておりますので、これはさらに強力に交渉して参りたい。場合によつては先方から買う物もある程度制限しなければならないというような状況になるかもしれない。そういうことも考えに人れまして、交渉して行きたいと思つております。ただいままで漁業協定なんかの関係で、こちらの方の話が少しあとまわしになつておつた傾向があつたのでありますが、これは今後強力に推進して参りたいと存じます。  それから。パキスタンにつきましては、昨年年間で一千五百万ポンドばかりこちらが出超でありまして、そこへ持つて来まして、先方はことしは非常に穀物のできが悪くて、小麦を外国からたくさん輸入しなければならない。国際収支が非常に悪くなつたので、ことしは去年のように日本の物を買うわけに行かないということでございまして、ことしの五月、六月のころに交渉いたしまして貿易協定をつくつたのでございますが、現在までのところ、こちらから買いつけます綿花等は順調に買い進んでおりますのに対して、先方は日本の品物に対してまだ十分に買い進んでいないというような状況でありまして、ことしの一月以来今日までの間に、昨年輸出超過したと同じくらいの額を、こちらから払い超になつておるという状況でございまして、これは現在外務省から先方に係官が参りまして話をいたしておりまして、大体において満足すべき結果が上つておるものと思います。従いまして年末まであるいは来年の三月までということに協定はなつておりますが、それまでの間には目立つた改善が見られるものと考えております。
  144. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今濠州のお話が出ましたが、最近外電の伝えるところによりますと、日本からの輸入に対しまして約一〇%幅を広げるというようなニュースがありますが、公文が来ておりますか。
  145. 牛場信彦

    牛場説明員 それは公文で来ております。
  146. 福田篤泰

    福田(篤)委員 具体的に説明してください。
  147. 牛場信彦

    牛場説明員 濠州は大体日本をドル地域と同じ扱いにしておりまして、昨年来、これは対日だけではなくして、全体として濠州の国際収支が非常に悪くなりましたために、日本を含めてほとんどドル地域からの輸入は、ごく重要なものを除いてはストップするという措置をとつたわけであります。それがことしになりましてからだんだん国際収支がよくなりましたので、昨年に比べてすでに全体的に——ちよつと私はつきりしたことは忘れましたが、たしか六〇%くらいの緩和をいたしておると思います。最近の一〇%もそれにさらに加わつたものであります。日本に対してドル地域と大体同じ取扱いをいたしておるのであります。
  148. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほど話が出ましたが、われわれと手を握つて行く民主国家であるべき濠州が、今度アラフラ海で真珠の採取に対して非常に理不尽な宣言をいたした。私どもは非常に憤激いたしておるのでありますが、こういう点から中共貿易と違つた意味で、あらゆる国に手を差延べて貿易を伸張しなければならないのでありますが、ビルマは、御承知通り、来月の一日特恵関税が完全に廃止されるという。これは日本の対ビルマ経済提携並びに輸出増進につきまして絶好のチャンスと考えます。一部においては両国間の国際合弁会社をつくるような説があるやに聞いたのであります。通産当局において、この絶好な機会すなわち特恵関税が廃止される機会に、日本の輸出増進のためにどういう準備を整え、手を打たれておるか、具体的に御説明願いたい。
  149. 牛場信彦

    牛場説明員 ビルマとの間ではただいま米の買付が問題になつていることは御承知通りでありまして、昨年と大分様子がかわりまして、今年は先方の米がむしろ余つておるという状況で、さらに十万トンほど買つてもらいたいという話がありました。これは品質の問題がありますので、ただいままだきまつておらないのでありますが、いろいろ検査とかそのほかの点につきまして、十分了解が遂げられるならば、買つてさしつかえないのではなかろうかと考えております。今回の外貨予算におきましてもその程度わくは設けておりますので、さらに交渉いたして参りたいと思います。  合弁会社につきましては、現在までいろいろ話がございました。たとえば竹のパルビをつくる会社だとか、イラワジ川に船を運航する会社でありますとか、そういうものがありますが、まだ具体的になつて来ているのはないようでございまして、そのほか鉱山の開発などもあるかと思います。これは最近輸出入銀行法が改正になりまして、海外投資についても金融ができる、長い場合には十五年もできるということになりましたが、こういうような場合も商業ベースに乗つてだんだん具体的になつて行くのではないか。政府といたしましてもその投資の回収については、その安全性はある程度検討いたさなければならないと存じますが、商業ベースで話が出て来れば、十分歓迎いたしたいと考えます。また最近、御承知通り、稻垣平太郎氏などがビルマに行かれまして、いろいろ話があつたようであります。ビルマとの関係につきましては、今後とも一層親善の強化に努力して行きたいと思つております。
  150. 福田篤泰

    福田(篤)委員 いろいろソースが違いますので、確実な数字がつかめないのでありますが、最近の外資導入問題につきまして、火力発電とかその他の投資対象を含めまして、話が大分進んでいるようでありますが、今まできまつた分並びに近く内定する分、今月末あたり大分まとまるはずでありますが、さしつかえのない限り具体的に数字をお示し願いたい。
  151. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 外資導入の件につきましては、われわれはできるだけ外資導入をしたいと思いまして、今まで努力して来たのでございますが、私の所管する限りにおきましては、今まさに調印されんとしております四千二十万ドルの火力発電の機械を買いますところの外資、これは元御承知通りに輸出入銀行から借りることにしておつたのでございますけれども、その後世界銀行の方に、向うの機構の改正だと伺つておりますが、移りまして、その後あらためて世界銀行でこれを検討いたしまして、今回小笠原大蔵大臣が渡米いたしましたのを機会に、最近これに調印することになつております。その後の問題でございますが、これは前にガーナーが来られまして、日本の外資のいろいろな要求を聞かれたのでございます。われわれといたしましては、その当時伺つたところによれば、三億五千万か四億ぐらい借りたいと申しておつたのでございますが、しかしそれは向うで聞きつぱなしに帰りまして、あとから——これは情報でございますが、向うでいろいろ検討した点によれば、一億二千万ドルくらいは、貸してもいいのではないかという結論に達したということございましたが、われわれはその当時四千二十万ドルの輸出入銀行の分はこれは別として、そのほかに世界銀行から一億二千万ドルくい借りられるつもりでおりましたけれども、ただいまの情勢では、やはり世界銀行の一億二千万ドルの中から四千二十万ドル引きまして、そのあとをまたこちらの申出によつて考える。それについては具体的の計画を持つて、そしてその具体的の計画に対して、どういうような返済方法をするとか非常に詳しい計画を出さなければ軌道に乗らないということで、そこまではまだ行つていない情勢でございます。
  152. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間が参りましたからこれで終ります。
  153. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時休憩いたします。  午後二時半より再開することといたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時四十三分開議
  154. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  保安庁長官はきよう所用のため出席ができませんので、保安庁政務次官前田正男君が出席されております。質疑を進めます。福田篤泰君。
  155. 福田篤泰

    福田(篤)委員 保安庁の方にお伺いします。輿論をわかせました竹島の問題ですが、現状について御説明願いたいと思います。同時に今国内でいろいろなデマが出ていますが、特に日本の海上保安庁の防衛力がきわめて貧弱であつて、そのために李承晩政権の持つておる海軍力に圧倒されておる。中でひどいのは、発砲されて逃げまわつているというデマが出ているありさまであります。聞くところによると、李承晩政権はたしか四隻しかフリゲート艦を持つていないと思いますが、李承晩の政権の持つ海軍力の内容、それからわが方の海上保安庁の持つ現有勢力防衛力につきまして御説明願います。
  156. 前田正男

    ○前田説明員 今の御質問でございますが、竹島の現状につきましては、現在運輸省の海上保安庁の方で警備その他をいたしておりますので、海上保安庁の長官から、その点についての現状につきましては、いずれお答えを願うことといたしたいと思います。なお今の御質問の中に、朝鮮の持つております防衛力と、わが国の海上保安庁の防衛力というお話がありましたが、これは海上警備隊のことだと思います。私たちの保安庁に属するものは、海上警備隊とい名前になつております。その方面の関係のものを御説明さしていただきたいと思います。  ただいまお話通り朝鮮の方はフリゲート艦が約四隻と聞いておりますが、総合計約二万五千トンばかりだそうであります。しかしこれは確実な資料ではありませんので、そういうような話があるということを、聞いておるという程度でありまして、詳細にわたることは、われわれの、現在の日本の立場から見まして、わかりかねるのであります。  なおこれに対しまして、わが日本の持つておりますフリゲート艦の数は、十一隻でございます。しかしながらそのうちまだほんとうに運航を開始していない程度のものもございますので、現在有効的なものは、約十隻程度ではないかと思つております。しかしながらこの李ライン問題につきまして、過日来衆議院、参議院の水産委員会でいろいろお話がありまして、私はその都度御答弁申し上げさせていただいたのでありますが、現在の段階におきましては、海上保安庁及び水産庁に保護されておる段階でありまして、私たちの保安庁の警備隊というのは、法律に明記してあります通り、人命財産を保護しますために必要があるときに、特に行動を起す部隊になつておるのであります。現在の事態は非常に重大でありまして、まだその成行きにつきましては、われわれも強く注視をいたしております。従いまして私たちも特に必要ある事態が起り、そのことにつきましてわれわれの大臣及び総理大臣がその事態を認定されますならば、これは出動することもあり得ると思うのであります。しかしながら今までの段階においては、海上保安庁、水産庁の保護の段階において人命財産を保護しておるわけであります。なお御承知かと思いますけれども、私たちはこういう国際紛争に対しましては、武力を用いて解決するということは、わが国憲法において禁じられておりますので、われわれは国際紛争の解決のためには行動を起すことはできない。人命財産を保護するというためには、特に必要がある場合において総理大臣が認めます場合においては、出動することもあり得るというように考えております。  日本の問題につきましては、先ほど申しました通り、フリゲート艦が貸与されておりますのは現在のところ十一隻、そのうち出動可能と思われますのは十隻程度だと思つております。そのほかLSSLその他の問題がございますけれども、LSSLは現在のところ大体三十七隻ばかり貸与を受けております。しかしながら御承知通り船というものは、貸与を受けましてから訓練その他相当な修練が必要でありまして、現在のところはその船隊を編成し、まだ練習に入つておるというような段階でございます。総トン数は、日本の方は約二万七、八千トンであると思いますが、韓国の方は先ほど申し上げました通り約二万五千トンであろうというような情報が入つております。
  157. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外務省の条約局長並びに水産庁長官にお尋ねしたいと思います。  先般九日に濠州政府が、四箇月にわたつて熱心に日本と濠州との間できわめて紳士的に——これは日本側の態度でありますが、紳士的に漁業問題について談判をしておりますにもかかわらず、その間に一方的に濠州政府が宣言をして打切つてしまつた。この点につきまして日本の国民は非常な憤激をしていることは、御承知通りであります。平和条約が締結されて、わが国は幸い独立いたしましたが、今後自由民主国家の一翼として強力にこれからの国際的な道を歩もうとしているときに、われわれの盟邦である、また友好国でなければならぬ一国である濠州が、このような経済的な貧困に直面しているわが国に対しまして、きわめて理不尽に、一方的に交渉を打切る。御承知通り漁業権は、この狭い領土で八千数百万のわが人口を養うために、きわめて重大な権利であり、また必要であります。これに対して友好国みずから国際慣例を無視したような、このような無法な、きわめて非友誼的な態度につきまして、われわれ国民の一人として、黙視し得ないのであります。もちろん外務当局においても、キャンベラにおける四箇月の交渉について、十分われわれもその経過は調べておりますが、今度の濠州政府の一方的な宣言につきまして、どういう見解を持つておられるか、まず伺いたいと思います。
  158. 下田武三

    ○下田説明員 濠州政府の布告や法案につきましては、ただいましさいに検討中でございまして、最後的な詳細にわたりました政府意見というものは、ただいま申し上げない方がいいと思うのであります。しかし大ざつぱに申し上げまして、日本政府の見解によれば、やはりこれは従来確立されております国際法に違反するものであるということは申し上げられると思います。ただ濠州側もいろいろ研究いたしておりまして、御承知の国連の国際法委員会が最も最近につくりました法典案、これを相当参考にいたして法令その他の制定をいたしておる節が見えるのであります。その法典案と比較いたしましても、私どもの見るところでは、なおかつ濠州側の意図しております法令的措置は不当であると存じておりますが、詳細はいずれ研究いたしました上でお答えしたいと思います。ただここに注意いたしたいのは、韓国の李承晩ラインの問題とは非常に法律的に見まして違いがございます。と申しますのは、韓国は公海のまん中に線を引きまして、これ以上はもう入つて来てはいかぬ、入つて来たらつかまえるということを言つておる。濠州の方はテラフラ海に入つて来たらいかぬとか、入つて来たらつかまえるというようなことまで今言つておるわけではないのであります。ただ日本の漁業者にエキスクルードと申しますか、日本の漁業者の漁業を排除する意思もないようであります。結局幾らの船が幾らの真珠貝をとれるかということが、実質問題として大事なのでありますが、これが交渉で、何隻の船が何トンの真珠貝をどの地域でとれるかという点で交渉がまとまる段階に達しておらなかつた際に、日本側が、日本側の見解によれば自由に操業し得るのだから、公海上で操業を開始するという通告を行いましたところをとらえまして、交渉しながら日本側が一方的にそういう通告をするということは、これは日本政府は誠意をもつて交渉を継続する意思がないと目せざるを得ないという濠州は口実をもちまして、そこで一方的に交渉を継続する意思のないことを宣明するとともに、総督の布告及び法令の制定という手に出て参つたのであります。これが解決策につきましては、もちろん濠州側にもいろいろな立場なり見解があるものと思います。わが方もまたいろいろの立場、見解がございますので、十分話し合いまして、なるべく円満に話合いを実行して解決いたしたいと思つております。
  159. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいま日本側が濠州政府に出漁の通告をしたいということによつて向うが打切つたというお話でありますが、実はその通報自体は国際法的にきわめて意味がないことであります。御承知通り領海でもなければ何でもないのでありまして、いわゆる大陸だなと言われるものも、国際法的にも確立した解釈ができておりません。セイロンに関する昔のマナル湾の真珠貝漁業場に対しまする英国側の説明、または一九四九年以来の先ほどおつしやつた国際法委員会の解釈、さらに一九四五年のトルーマン宣言、このような慣例の法令を調べてみましても、通報という点はむしろ濠州側の難癖をつけた口実でありまして、われわれは通報する義務がない。戦前からの既得権として、日本の漁夫が営々として公海で真珠を取つて非常な実績を上げた。いわば公海の漁業は万民共有の権利であります。しかも日本の漁民が非常な苦労をしてこれを開拓したのでありまして、私は通報をしたから向うがけしからぬということは、まことに盗人たけだけしい議論であると思います。これについて外務省側が法律的に非常に慎重に研究せられて、排他的な白濠主義の濠州に対しては細心の注意を払つて円満に解決されようとする御苦心はわかるのでありますが、あまりにそういう国際法ないし国際慣例を無視したやり方に対しては、私どもは黙つておれないのであります。御承知通り、この大陸だな設置権宣言を一方的に行い、さらに濠州の国会において真珠貝採取業法改正案をすでに提出し、マックウエン農商相のメルボルンRP放送によりますと、すでに下院を通過して上院に十六日に回付するということも言つているようであります。彼らはきわめて一方的な独善的な解釈で、不法にもわが国の漁業権を圧迫侵害しているわけであります。先ほども申し上げました通り、民主自由国家として、友好国として、われわれは絶対に許すことのできないものであります。ソ連その他の平和攻勢がある場合に、日本の国民感情、民族感情がどうなるかということも、厳粛にわれわれは反省を求めざるを得ないのであります。こんな意味で一方的、通牒しかもわが方が公海に出漁することを通報すること自体がむしろ丁寧過ぎるはずである。御承知通り向うの申出がありまして、たしか談判の開始は四月十三日と記憶しますが、それ以来四箇月、こちらは非常に紳士的な態度で譲歩しながら話し合つておつたのであります。にもかかわらず、今のような御説明でありますと、非常に礼儀のある通報を逆に口実として一方的に打切りをする。しかも漁業の交渉をするというので、わが方は二箇月も出漁を延期したことはあなたも御存じの通りであります。いろいろ法理的にむずかしい問題もあろうと思いますが、私は広く国内の輿論にも訴え、また外国その他にも日本の正論を訴えて法律を研究すると同時に、外国に対する活発な日本の主張というものをもつと積極的に外務省がする必要があるだろうと思う。円満な解決、まことにけつこうであり、賛成でありますが、どうも少し慎重過ぎまして、法理的過ぎる。もう少し意欲的に日本の権利なり基本権というものは——特に友好円であり、言つていることとやることと大分違うのですから、私ども国民として強くもつと活発な輿論の喚起、あるいは対外的働きかけをしていただきたいのでありますが、それに対して外務省はどういうお考え、また準備を持つておられるか。さらに先ほど申し上げたトルーマン宣言またセイロンに関する英国側の発表、また国際法委員会、これらと今度の濠州側の一方的な宣言との関連について、法律的な御説明を願いたいと思います。
  160. 下田武三

    ○下田説明員 福田委員のおつしやること一々御同感でありますが、ただ一つお断りいたしたいのは、先ほど通告ということを申し上げましたが、これは何も向うに通報してそこに日本の漁船が出漁することについて承認を求めたわけでも何でもないのであります。ただ操業区域についていろいろ話し合つておるその問題の区域に出漁いたしますので、ただほんの礼儀の問題といたしまして、一方的に、了承を求めるような意味でなしに知らしてやつただけの話であります。もちろんこの真珠貝漁業のわが国にとつての重要性は、私から申し上げるまでもなく、非常にこれは重要な問題でありますし、かつまた御指摘の国際法がやはり動きつつありますその一番のデリケートな今の領海の範囲、あるいは接続水域、あるいは大陸だななどの問題に触れておる問題でありまして、これは軽率に一国の政府の見解を早くコミツトすることは私は避くべきであつて、いろいろな観点から、また遠い将来をおもんばかりまして、政府の見解というものは立てなくちやならないと思つております。また将来かりにこれが国際司法裁判所等に持ち出されました場合のわが方の立場にも影響をいたす問題でありますので、法律的の点は念には念を入れて手がたくやつて参りたいと思うのであります。それで大陸だな、トルーマン宣言その他との法律的関連の点を言えというお話でありますが、一品に申しますれば、トルーマン宣言あるいは海底の鉱物資源に対する管轄権の問題であります。ところが濠州側は、その海底の上の中にある鉱物資源の問題を、海底の上に乗つかつておるセダントリー・フィッシングと申しますか、つまり貝がら等と混同しておるのではないかと思います。それからトルーマン宣言は、公海に鉱物資源等の点で管轄権をある範囲で及ぼす場合には、これは関係国との協議で、納得の上で行使すべきであるという建前をとつておりますが、濠州の場合は、関係国の合意ということを考えませんで、かつてに一国の法令を公海の上に持つてつて適用し、その法令によつて、公海の上で違反した外国の船舶などに対して、濠州の裁判所が裁判するというような点で、多少私は現在確立されております国際法に比べましても、行き過ぎではないかと思つております。この点はしかし、いろいろな観点からただいま精密な法律論を立てて、法律論ができました上で、政治的考慮その他から上司の御検討を煩わしました上で、正確な御意見を申し上げたいと思つております。
  161. 福田篤泰

    福田(篤)委員 条約局長としての立場はよくわかりましたが、先ほどお話したように、これは国内的にもきわめて大きい問題で、また対外的にも非常に悪影響がある問題でありますので、その点は、法律的な緻密な御検討とともに、政治的にやはり積極的な処置をひとつお願いいたしたいと思います。  最後に、時間がありませんので、李ラインの問題について伺います。これは一情報でありまして、まだ確認されておりませんが、在日金公使が、壱岐、対馬はすでに韓国の国定教科書にも韓国領として入つておるということを言つておるそうであります。これは情報で私は本人に確めかておりませんが、外務省の情報文化局あたりでは、各国の教科書くらいは全部集めてお調べになつたと思いますが、この点はどうでありますか。
  162. 下田武三

    ○下田説明員 私はそういう情報は存じません。アジア局の方で韓国のものを調べておるかもしれませんが、少くとも竹島の所有権につきまして、金公使も韓国の政府も公式に主張しておりますが、壱岐、対馬の問題につきまして、先方が正式に所有権を主張したというようなことは聞いていないのであります。
  163. 上塚司

    上塚委員長 次は須磨吉郎君。
  164. 須磨彌吉郎

    須磨委員 保安庁次官に伺いたいと思います。この前九月四日の本委員会で、保安庁長官より日本防衛計画について研究中だというお言葉がありましたが、さようでございましようか。
  165. 前田正男

    ○前田説明員 今日は長官が出られないでまことに失礼でありますが、今の御質問通り、われわれは防衛計画につきましては、かねてから研究をいたしております。
  166. 須磨彌吉郎

    須磨委員 研究中だといたしますと、それではその研究の方向を承りたいのでございます。従来のやり方でございますと、いかにもこの日本が何と申しましようか、植民地式の防備と申しましようか、海軍、空軍のごときはアメリカにまかして、地上部隊だけは日本側がやるというような考え方があるようでありますが、さような方式で行きますのか、それとも独立自主の方式によります小さいながら三軍を整備いたしました防衛部隊をお持ちになるという方式でありますか、いずれでありますか。
  167. 前田正男

    ○前田説明員 防衛計画の問題につきましては、いろいろなことが言われておりますが、少くとも私たちは、これは自主的に決定すべきものであると考えておるのであります。従いまして今のお話通りいろいろの計画考え方があるのでございます。しかしながらこれは日本の財政経済のすべてと勘案をしなければならないのでありまして、財政経済の立場からいえば、あるいは陸上部隊のみ整備するようなことになるかもしれませんし、あるいはまた財政経済その他の観点におきまして、ある程度の三軍を整備するというようなことも考えられるような方向に持つて行くかもしれません。但し先ほどの御質問で三軍というようなお話がありましたが、われわれはまだ軍隊というふうに考えておらないのであります。しかしながら陸海空軍おのおのの防衛部隊を持ちたいというような考え方のものもあります。しかし先ほど来お話いたします通り、現在研究中でございまして、この問題につきましては、いずれの方向でやるかということについては、まだきまつておりません。しかしおのおのの場合についておのおのの検討をいたしておることは事実であります。
  168. 須磨彌吉郎

    須磨委員 今私の伺つておりますのは、どちらの方向に至ることが、わが国防衛として適当であるというお考えを持つておられるかということでありまてし、これを承りたいのでございます。
  169. 前田正男

    ○前田説明員 わが国は独立国でありますから、もちろん自由主義諸国との提携によつて、集団防衛等のこともございますけれども日本日本としてやはり一応整備された防衛力を持つのが、適当であると考えられるのであります。しかしながら現在われわれが立てております防衛計画は、おのおの陸海空が整備されたものになるか、あるいは陸上の方だけが整備されたものになるかということにつきましては、現在まだ財政関係その他と検討中でございまして、どちらの方向になるかということは、今はまだ防衛計画としてはわかりません。しかし将来としては、当然われわれ日本人として自主的におのおのの力を持つた——完全ものではありませんけれども、持つたものになるのが当然ではないか、私はそう考えております。
  170. 須磨彌吉郎

    須磨委員 この日本の海をめぐらしております地理的な形勢からいたしましても、また今現に問題となつております李承晩ラインの問題ですとか、竹島の問題ですとか、こういうものはあるいは避け得るかもしれません。というのは、もし日本に海軍力というものがありますれば、かような問題は未然に防げるものであります。さような現況からいたしまして、将来の御計画はまだはつきりきまつておらぬと言われますが、研究中であります間に私どもは国民の思つておることを申し上げることが必要と思います。どうしてもわが国には、海の力というものが一番先ではないか。しかもその海の力は一朝一夕ではできないのであります。御承知のごとく一つの駆逐艦の艦長ができますのに十六、七年を要すると申されるほどでありますから、早くかような計画をお立てにならないと、後日にまた悔いを残す。後日ではない。今すでは李承晩ラインの問題でありますとか、竹島の問題等の累を及ぼしつつあるのでございますから、さようなことをとくとひとつお考えを願いたいと思いますが、すでにそういうことは考慮に入れられておりましようか。
  171. 前田正男

    ○前田説明員 もちろんわれわれといたしましては、陸上部隊は、将来こちらにおります米軍引揚げました場合に交代をして行くというふうな考えから、ある程度の整備を考えておりますが、もちろん海上方面、空の方面におきましても、できるだけの防衛力を持つ必要はあるのではないか。ことに今後のわが国防衛部隊というものは、日本の国を守るという立場でございますので、当然陸だけでは不十分でございまして、海と空がなければならないと思います。また今のお話通り、海上部隊におきましても、その他の部隊におきましても、これは長年乗員及びその関係の人員の養成を必要とするものでございます。従いまして、私どもは、日本の財政計画の立場から、現在検討中でありますが、しかし、少くともある程度の海上及び空の部隊を持ちまして、乗員の養成と同時に、また、できましたならば、財政が許されるならば、幾らかの実力を持つた部隊をつくり上げたい、こう思つておるのであります。しかしこれはそういう考え方ということでありまして、あるいは日本の財政的には許されないかもしれません。しかし財政的に許されなくても、少くとも空と海の関係の人間の養成ということだけは、やる必要があるのではないか、私どもはこう考えておる次第であります。
  172. 須磨彌吉郎

    須磨委員 ただいま問題となつておりますMSA交渉に関連しまして、きよう午前のこの委員会における外務大臣の御答弁の中でもはつきりいたしませんでしたが、いかにも防衛計画については、先方から何ら注文も申入れもないかのごとく言われましたけれどもアメリカ側の情報によりますと、これはもうすでに公知の事実でありまして、あるいは三十五万、あるいは二十個師団等の数字が出されておるのであります。私のきよう伺いたいのは、さようなことがありますかどうかということを申し上げても、あるいは申されないかもしれませんが、ただ私どもの得ております印象では、アメリカ側MSAに関連して地上部隊について非常な力を入れており、それにこたえるような警備計画をお考えのような様子に私は感ずるのでありますが、これは一つの杞憂にすぎないかもしれません。そうしますと、われわれの本来の目的であります。防衛というものの本来の意味を失うことにもなるわけでありますが、この点についてお答え願いたいと思います。
  173. 前田正男

    ○前田説明員 ただいま御心配の、アメリカから何か出せと言われておるだろうかということにつきましては、私たちはいまだにそういうことは聞いておりません。しかしながら御承知通り日本から駐留軍を逐次引揚げて行きたいということは、アメリカはすでに公式に発表しておりまして、この間ダレス長官が来ましたときにも、そういうような談話をしておるのであります。従いまして、われわれはこれにとつてかわるということは必要であるのではないか、こう思つております。しかしながら、伝えられるダレスの二十個師団三十五万という、そういう厖大なものを、われわれの現在の憲法下におきまして持ち得るはずは全然ないのでございまして、われわれはそういう非常に厖大な、アメリカの伝えられるようなものを持つ意思は毛頭ございません。これは明瞭に申し上げてさしつかえないと思います。私たちは現在の憲法のもとにおいて、戦力に至らない範囲のもので、そしてアメリカの駐留軍が漸次引揚げるときに、とつてかわれるような力のものを持つて行くという考え方であります。しかしそれと同時に、先ほど申し上げました通り、われわれも財政的に許せるならば、空の部隊、海の部隊も、養成だけでなく、ある程度実力的にも持ちたい、こういう考えを持つておるのであります。海の部隊においては、御承知のように、現在貸与の船舶によりましてまだ養成中でございますけれども、ある程度の実力を持つておるわけであります。
  174. 須磨彌吉郎

    須磨委員 ただいまのお話の中にもございましたか、ダレス長官が八月八日にこちらにお見えになりました際に、防衛について重大な会談があつたことは、世の中が伝えておるところでありますが、それに関連いたしまして、ダレス長官がその日に仮調印いたしました米国と韓国の米韓安全保障協定によりまして、アメリカは韓国にも駐兵することになつたのであります。アメリカ側一つの消息の伝えるところによりますと、わが国におります米国駐留軍は一日も早く引揚げてこれを韓国に送る、かような考え方が、国防省方面にもあるということは有力な筋から伝えられておるのであります。そういたしますと、あるいは案外予期せざるときにさような事態が起るかもしれない。さような事態に対処いたしますたにめは、御計画中あるいは考慮中だと言われますその計画を、相当早くつくるような有効な方法をおとりになるという必要があると思いますが、さような御考慮はいかがでありますか。
  175. 前田正男

    ○前田説明員 日本から引揚げました駐留軍は、どつちが行くべきところが、本国へ帰るか韓国へ行くか、それは私らは存じておりません。私はその点のことについては内容はわかりませんけれども、今お話通り、将来逐次引いて行くであろうということは間違いないだろうと思います。しかし私たちといたしましては、自衛力漸増の従来の政府の線に沿いまして、これはやはり相当漸増することを考慮しなければならぬ段階に来ているのではないかと思うのであります。従いまして、二十九年度におきましても、もちろん国会の御承認を経なければなりませんが、幾らかの漸増をできればいたしたい、こういうふうな考えで今研究をいたしております。内容等はまだ決定いたしておりませんが、幾らか漸増さしていただきたい、こういうふうに思つているわけであります。
  176. 須磨彌吉郎

    須磨委員 条約局長にちよつと伺いたいのでございますが、李承晩ライン並びに竹島問題については、数回本委員会においても論議があり、私もお尋ねしたことがございますが、わが日本は、日米安全保障協定の上において、防衛に当る駐留軍というものを持つているのであります。また最近の米韓条約によりますと、アメリカは韓国に駐兵をいたしまして、もし韓国に侵略かある場合においては、これの防衛に米国が当るという規定がある様子でございますが、この二つのことからあわせ考えますと、さような不吉なることをわれわれは考える必要はないのでありますが、この李承晩ラインの問題もしくは竹島の問題等から、あるいは不祥なる事件が起るといたしますれば、この米国の関係しております二つの安全保障協定が衝突するわけでございます。そういうような意味におきましても、アメリカとしては重大関心を持つているに相違ないのでありますが、これらの点に関連いたしまして、竹島問題並びに李承晩ライン問題について、アメリカの重大なる考慮を促すということも、また日本としては必要かとも思うわけであります。そこで、さような措置をとつたことがございましようか、あるいはとろうといたしておりましようか、その辺のことをお伺いいたします。
  177. 下田武三

    ○下田説明員 ただいままでのところ、李承晩ラインあるいは竹島に関連いたします問題を、安全保障条約の問題とし、あるいは米韓間において米韓相互援助条約の問題として取上げるという考え方は、日本にはもちろん、韓国にもアメリカ側にもないと思います。先般の委員会で竹島問題について須磨さんのおしかりを受けました私は、二、三の漁夫が不法侵入した場合の点をとらえて、その不法入国の問題は警察取締りの対象の問題であるという点を申しましたが、もう一つの問題であるところの、国家機関たる韓国の海軍艦艇が入つて来た場合、これは警察取締りの対象たる不法入国の問題ではございませんで、仰せの通りこれは領域侵犯の問題でございます。そこで領域の侵犯と、いわゆるアグレシヨン、侵略との場合においては、これはやはり区別があるのではないかと思うのであります。現にあつたのでございますが、北海道上空等におきまして、外国の軍用機が領域の侵犯をいたして参りましたが、私は、これもただちにアグレシヨンにはならないのではないかと思う。アグレシヨンになるといたしますと、相当の地域、しかも竹島のような無人島ではなくして、そこには都市もあり、工場もあるというようなところに入りましたら、まさにこれはアグレシヨンでありまして、そのようなアグレシヨンに対しましては、安全保障条約なり、相互援助条約なりの適用の問題が発生しますが、ただいまの竹島等においてたとい不幸にして撃合いが起りましても、ただちにこれをもつてアグレシヨンであるとして、そういう条約の援用をいたすという段階にまでは、これはまだ相当の距離がある問題ではないかと存じております。
  178. 須磨彌吉郎

    須磨委員 犬養法務大臣に伺います。この前の委員会でも伺つたわけでございますが、日本を両陣営の冷戦場として、いろいろな心理戦術もしくは謀略戦術があり得るということは、犬養法務大臣においても秋の見解に御賛成願つたのでありますが、これにつきまして、私はいろいろなことを外国側のニュースによりましても耳にするところであります。ただしかし思想戦術として、あるいは思想宣伝物が来るというようなことばかりではなくて、あるいは人がたとえば潜水艦等によつて日本に上陸する者があるもとかいうようなことも、ときたま耳にするのでございますが、かようなことも今までの第二次戦争以来の思想戦争のいきさつから見ますと、あり得ることでもあると思いますが、かようなことについておさしつかえない限り、その他の事項についてもこういうような具体的事実かございましたならば、国民の関心実に重大なところでございますから、お伺いいたしたいと思います。
  179. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。この前の委員会でも御質問がございましたが、御質問の御趣旨に全然同感でございます。私ども当局で想像しているところによりましても、ことに先日新聞を騒がせました関三次郎という男がソ連の牒報機関として不法入国をしております。その者の携帯している暗号の乱数表その他から想像いたしまして、関の前にも関があつたのではないか、また今後も十分あり得るのではないかと想像し得るのであります。  なぜそういう想像をいたすかという根拠の詳細になりますと、あるいは秘密会でもお願いしないと申し上げにくい点もあるのでありますが、結論を申し上げますならば、関三次郎が初めての関三次郎とは思えない節があるのでございます。これに対しては、十分公安調査庁、警察その他でもつて今後とも、このケースにかんがみまして、調査警戒を新たにしているのでございます。御承知のようにこれはもう須磨さんの方がお詳しいのでありますが、かような地下運動的な破壊運動といいますか、これはもう明確に国際性を帯びております。一つどころから指令が出ている場合がきわめて多いのでございます。須磨さんが御指摘になつたと思いますが、この前の国会の予算委員会で私は破壊運動の国際性について答弁をいたしたのであります。一番著しい例は、昨年のメーデーにおける東京の騒擾、メーデーからわずか二十日遅れたパリにおけるリツジウエイ・アメリカ司令官帰れの運動とが、構成分子あるいは武器の使い方から同じなのであります。もう一度繰返させていただきますならば、メーデーにおきましては、構成分子は学生と朝鮮の人とそれから常勤的な共産党員、パリにおきましては学生とアルゼリア人と常勤的な共産党員、プラカードの上をはがしますと、くぎが出ましてただちに武器に使用できる方法まですつかり同じなのであります。ほんのわずかな現象ですが、氷山の一角でありまして、国際的な関連性が非常に周密な組織をもつて行われている、こ思ううのでございます。  こちらで感じられます点は、統一政府をつくれという一九二四年にモスクワで指令が出ました。その基本はいまだに続いているのでありまして、つまり革命に寄与するあらゆる社会層ならば毛ぎらいしないで動員しろ、これは日本でもこの手で行われておるのでありまして、現在現われておりますのは、反米、反吉田、反再軍備、こういうスローガンなのであります。これによりまして、それが地下運動的な武装闘争とうらはらになつております。たとえばこの間ひんぴんと起りました各地の水害、これに共産系の人が派遣医を出しまして——派遣医の出し方がこれは建軍、軍を建立するための闘争である。こういうような言い方である。従つて災害に悩んでいる人を助けながら、いかにアメリカの政策が悪いかいかにアメリカに追随している現政府の政策が悪いかというふうに、そこで説くわけであります。あらゆる現象、あらゆる機会を通じて、武装と国際的な規模を持つ革命への推進ということが相当緻密に行われていると私は思うのであります。また私ども当局で相当注意しておりますのは、この秋お米の凶作、あるいはスト攻勢などと関連しまして、この武装闘争というものがテスト・ケース的に起るのではないか。これはあまり神経質にはなれませんが、しかし十分周密に注意しているわけであります。御質問に対して当らない答弁かも存じませんが、一応申し上げておきます。
  180. 須磨彌吉郎

    須磨委員 ただいまの御説明によりまして、私はいよいよ憂いを深くするのであります。それは氷山の一角とおつしやいましたが、まさにそうでございましよう。これは外国の例を申してははなはだ相済みませんけれども、一九三七年には米国がまさに同じような状況になりましたために、御承知通り第一コミツテイというものができまして、その第一コミツテイがそういう取調べに当つた、そういうような例が最近も各国にございます。もちろん法務当局においては万遺漏なきことを期せられており、当局として非常な御努力であろうかと思うのでありますが、かような問題は何と申しますか、社会的な面もあり、教育的な面もあり、いろいろな面があるわけでありましようから、場合によりましては——私は今後のことを考えますと、一つ委員会でもおつくりになりまして、今何々審議会というものが非常に多いようでありますが、あれのまねになるような型のごとき人ばかりでなくて、もつと実質的にもののわかるような下の方の人も入つたりしたような委員会をおつくりになつて、今からそういうことに対して情報を集められるばかりでなくて、御警戒に当られることがあるいは至当でないかと思いますが、第一コミツテイ等はその出現によつてアメリカの反共、防共と申しますか、そればかりでなくて、アメリカの思想統一にも相当の効果を上げたことを考えますと、われわれはいよいよ必要だと思うのでありますが、そういう御計画はないものでございましようか。
  181. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまのところ、そういう計画はございませんが、今申し上げたような情勢は、表面は平穏でございますが、はなはだ周到なる対策を要するものと思います。各地の権威、各階層の権威、衆知に教えを請うことに決してやぶさかでございません。ただいまの御指示は十分私ども尊重しつ考慮してみたいと思います。
  182. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 議事進行について。今須磨委員質問に対して法務大臣から御答弁がありまして、その中に関事件について該細は秘密会でも開かれたら、そこでならもつと詳しく言つてよいというお話があましたが、今私どもの党なり社会党右派委員と御相談しましたら、この際これは非常に大きな国民的関心事になつておりますから、秘密会に切りかえまして事件の詳細をひとつお述べいただきたい、こう思いますが、この動議をひとつお諮り願いたいと思います。
  183. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  184. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて。並木芳雄君。
  185. 並木芳雄

    並木委員 犬養法務大臣にお尋ねをいたします。私がお聞きしようと思つたことを合須磨委員が一部お尋ねをいたしましたから、それと重複しないようにしたいと思います。それは今政府MSAを受諾しようとしておるのでございますが、たまたま朝鮮休戦会談が行われようとしておりますその関係上、表面はだんだん平和になつて来るのじやないか、物騒な世界からだんだん穏やかになつて行くのにかかわらず、日本が今防衛力増強する計画や、あるいはMSA援助を受けるというようなことは、これに逆行して行くのじやないかという説が行われ出しておるのであります。そこでどうしても私どもはこの機会に、いやそうでないのだ、表面上は一応そういう会談が行われるにしても、実態はさにあらず、今も大臣から一部御答弁かありましたが、そういうことをもう少し的確に把握をしてみたいのであります。そこで犬養さんに法務大臣としてのみならず有力なる閣僚として、あるいは犬養総理大臣として、内外の情勢判断をどう見るか、平和攻勢いかん、あるいは単に極左のみならず極右の方の動向はどうなつておるか、それからそれに対する破壊活動防止法の適用というようなものはどのような状況になつておるか、それからただいまスパイ活動のお話もありましたが、スパイ活動に対しての取締りの方法、対策などというものはどのようにお考えになつておられるか、要するに表面の穏やかなるのにかかわらず、実態はそうでないのだということをできるだけ知りたいのでありますが、この点御答弁をいただきたいと思います。
  186. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。御質問の御趣旨に十分沿う答弁になるかどうかわかりませんが、一通り承知していることを率直に申し上げたいと思います。  ただいま須磨さんに申し上げましたように、朝鮮休戦以来、一応国際的な外交手段としては平穏な手段がとられて来ておるようでございます。私は専門家でございませんが、ことにスターリンが死にまして、マレンコフが新しく政府の首座についた直後には、ことにそれが著しいように思います。水素爆弾があるとか、優秀な原子爆弾があるという発表にしても、やはり一部平和手段に訴える間接の表現のような部分も感ぜられるのでございますが、これと同様に間接侵略、地下活動というものは、決して穏やかになつていないのでございまして、並木君よく御承知のように、この国際的共産主義の表明しますテーゼとか、綱領とかいうものはやはり一種の憲法の本文のようなものでありまして、これからはずれることは、数年後跡をたどつてみると決してないのでありまして、私どもはその意味におきまして、日本共産党の発表します綱領などについても、周到の注意を払わなければならぬ、また払う努力をいたしているわけであります。そこで昨年十月総選挙のすぐあとでございましたが、日本共産党の第二十二回でありましたか、二十二回の中共委員会におきまして「武装闘争の思想と行動の統一のために」こういう論文が出ました。これは機関紙にも掲載されなかつたのでありますが、相当流布されたものでありますから、並木君もすでに一部をお読みになつておると思いますが、それにおつかけるように本年の四月に、今度は武装闘争を強化するための武器活動を組織せよという中央の通達か行われているのでございます。これを私どもは非常に注意をして見ているのであります。この前の国会委員会で私が申しましたような各地における軍事訓練なども、この根本の方針にのつとつた現われにすぎないのでございます。そこで今申し上げましたように、水害の救助一つでも建軍のための闘争だ、こういうようなスローガンを掲げて、彼らから言えば志気を鼓舞しておる、こういうふうにわれわれは感ぜられるのでありますが、武器の活動を活発にしろ、組織を強化しろというやり方は、結局その人たちの言葉で言えば、敵の武器をとる入手方法とする、敵と申しますのは警察であり、保安隊であり、米軍であるのでございます。この前の前の国会で申し上げましたように、各県における機密の地図を見てみますと、攻撃目標にそういう武器の倉庫などが書き入れてあるというようなことでございます。その武器のとり方が、ことしの春と春以後とかわつておるように思う、それはこの春以前はもう暴力でも何でもぶんどつてよろしいというのが、春以後はそつとなるべく盗んで来いというようなケースが多いように思われるのであります。また指令もそれらしく感ぜられるのであります。それは要するに穏やかの方法であるけれども、日一日と武装闘争の根本的の体形を整備することには一歩も後退していないと思うのであります。これに関しては私どもずいぶん至らないところもありますけれども、全力をあげて情報を入手て、また大きな方針をしさいに分析して、その裏に流れておる実際行動の次の段階というようなことを注目いたしておるのでありますが、さしあたり当局として十分責任を持つて注心なければならないのは、先ほど須磨さんに申し上げましたように、この秋におけるスト攻勢とそれから米の凶作に関連をして、何か武装的な行動が起るのではないか、起らなければまことにけつこうでありますが、起る場合を予想するということが、当局としての務めを国民に対して果すことになるのではないか、しかもそれはしばしば申し上げますように、一箇所である場合もあり、同時多数的である場合も予想してかからなければならないと思うのでございます。  それから今第二にお尋ねがありましたが、破防法の関係でございます。破防法違反の刑事事件というものは、御承知のように四件ございます。その一つを除いてはみな武装綱領の秘密文書を領布した、こういう事件でございます。一つは記憶が誤りでなければ、北京の自由日本放送の内容を配つたという事件であつたのであります。それに関する裁判はどうなつておるかと申しますと、内乱目的の立証ということが、なかなか一日や二日で行きませんので、いまなお第一審に係属中でございます。全部がそうでございます。破防法の適用される団体に対してどういう注意をしておるかと申しますと、今申し上げましたような大綱の動きを、その都度のテーゼやなどから読みとりまして、次に起るべき段階を幾つか分析して予想して、その予想のもとにあるいは情報と照し合せて注意をして行く、こういうふうにやつておるわけであります。  それからスパイの問題でありますか、これは先ほど須磨さんに申し上げましたように、関三次郎が初めてのそういう任務の人物とは思われない節がありまして、今後もまた第二、第三の関があり得るということで対策を練つているのでございます。
  187. 並木芳雄

    並木委員 破防法違反が四件あつたとのことでありますが、今まで何らかの形で発表されておれば、その必要はございませんが、私の知る範囲では、きよう初めて聞くようにも思いますので、具体的な内容をお知らせ願いたいと思います。
  188. 犬養健

    犬養国務大臣 これは少しく詳しくなりますから、ここに刑事局長がおりますので、岡原君から答弁いたさせます。
  189. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいまちようどほかの会議から急いでこちらに参りました関係上、手元に具体的な資料を持つておりませんけれども、記憶しているところでは、いずれも違法文書の頒布の事件でございます。事件として問題になりましたのは、全部でたしか九件か十件くらいあつたと思いますが、そのうち証拠の的確であり、事案の比較的重いものについて起訴したのがただいまの四件であつたと存じております。四件のうち一、二件は三、四名ずつ起訴されておりますが、いずれも人数としてもそう大した人数ではございません。場所といたしましてはたしか京都、岐阜、三重、旭川、かように記憶いたしております。まだ一審判決は下つておりません。
  190. 並木芳雄

    並木委員 それからスパイの対策についてどういうふうに大臣はお考えになつておりますか。あるいはスパイ取締法というようなものを立案されているのかもしれませんが、これは相当問題もあると思います。たとえば憲法で、どの条項で許されるかというようなことについても、私もまだ結論も出ておりませんが、大臣としてのお考えを聞きたい。
  191. 犬養健

    犬養国務大臣 これはしばしば新聞に出ましたので、並木さんにも御疑念があるのじやないかと思います。さらにもつと卒直に申し上げますと、当局でつくりながらつくつてないと言つているのじやないかというような質問を、よく新聞の人から受けるのであります。よい機会でございますから、私ども考えていることを申し上げたいと思います。  北海道にああいう関三次郎のような事件が起り、次いで関三次郎を出迎えに来たと思われるソ連船かつかまりまして、船長は起訴になり、三人の船員は証拠不十分な点がありまして起訴猶予になつた。その起訴になつ理由が、出入国管理令であるとか、お札を無断で持つて来たのがいけないとか、あるいは船舶法で不開港地に入つたのがいけないというような枝葉のところにひつかかるわけであります。何となく世間では、どうもそれでは物足りないと、一応常識的に思われるということは無理からぬことと思います。またひんぴんとこれらの事件が起るについて、当局が根本的にその対策を考え、あるいは取締るべき法律を考えるということも、これはなすべきことであると思うのであります。また現地に行つた人が、これでは何とかしなければいかぬと第一印象的に思つて、その意見を発表することも私は一応わかるのであります。ところが、さてこれをまつ正面から取扱つてみますと、法務当局としては数個の点において、すこぶる慎重な態度をとらなければならないと思うのであります。いろいろ研究してみた点を申し上げてみたいと思います。  今の日本に、外国に対して隠しておかなければならない国家秘密というものは、絶無とは言えません。しかしこれを今ただちに刑罰に処するということでもつて取締り対象にして考えてみる、これは相当慎重にしなければならない点を発見いたすのであります。外国に隠す事柄があるとしましても、現在はどうやつているかといいますと、御承知のように国家公務員法で取締りをして、この第百条、百九条第十二号、こういうところで国家公務員が、つまり国家秘密を保存しているところの直接の関係者が漏らした場合の罰則規定はあるわけであります。一歩進んで、それでは外部から探知した、しようとしたものに対してどうなるかといいますと、これはよほど気をつけませんと、言論の圧迫、統計調査をやつた者に対しても無事の罪とかぶせるような危険を持つ。これはなかなか問題であろうと思う。この点にわかに今結論が出せない。十分調査をいたしているわけであります。日本は今もちろん軍隊を持つておりませんから、軍機秘密はございません。従つて元の軍機保護法のような法律を今必要とは思わないのであります。ただ条約だの協定などによつてわが国の義務となつている事項については、取締り法規が必要であることはもちろんであります。これは現在は日米行政協定第二十三条に基く国内立法として刑事特別法第六条と第七条の規定が存在しているのであります。  もう一つ考えられますのは、今ここに保安庁政務次官もおられまして、MSAの問題等について御答弁があつたのですか、かりにこれらの帰趨はどうなるか、私のさしでがましく申すかどではありませんが、かりにMSAによつて相当、私はしろうとの言葉を使いますが、高級な武器といいますか、あるいはその部分品というようなものをわが国が受取るという場合に、この機密保持は必要であると思うのでありますが、これを法務省が主管庁となつて機密保持の法律をつくるかどうかということになりますと、これまたすこぶる慎重を要するのであります。法務省の設置法には第二条の第九号に、所管事項としては司法制度及び法務に関する法令案を扱う、こういうようになつておりまして、MSA関係した武器に付随する機密の取締りを、法務省が主体となつてやるということについては、なお研究の余地があるわけであります。しかしMSAをかりに受入れて、武器に伴う機密を保持しなければならないという場合に、何かの処置が必要であろう、これは明らかに想像しているのでございます。しかし世間の一部で、たしかこれは法務省でやるのだというようなお話が気軽に出るのでありますが、これに対しては今申し上げましたように、法務省はすこぶる慎重な態度をとつておる次第であります。
  192. 並木芳雄

    並木委員 これで終ります。
  193. 上塚司

    上塚委員長 田中稔男君。
  194. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 外務省の方にお尋ねいたします。竹島の問題につきましては、これが日本の領土であるという主張は、日本側の主張として私ども聞いている、われわれもそうだと思つているのでありますが、一方韓国側は、韓国の領土であると主張しているわけです。その主張が理不尽なものであろうと思いますが、やはり韓国側の主張は一応主張として私ども参考には聞いておきたいと思います。外務省の方ではよくわかつておると思いますから、その点につきまして私どもに御説明を願いたい。なおこの竹島問題は非常に大きな問題として国民の眼に映じておりますが、政府としてはこういう問題が起つたのをむしろ得たりかしこしとして、だから再軍備をしなければなら、ぬ。だから保安隊増強しなければならぬというような、何か宣伝の具に使われるという底意があるのではないか、新聞あたりも非常に大きくこれを取上げておりますが、私ども社会党左派としてはそういう心配をしておるのであります。私どもは、そういう問題の解決は実力によつて対抗するというより、やはりこれは国際的に公正にして合理的な解決を見るのでなければならぬ、従つてわれわれとしては国連に提訴するとか、国際裁判所に提訴するというようなことで、問題を解決しなければならぬと思います。そういう考えも持つておりますので、やはり日本側の主張はもちろん主張として、また向う側の主張はたといそれが理不尽なものでありましても、一応その説明を聞くということが必要だと思うのであります。条約局長でもけつこうですけれどもできるだけ詳細に御説明を願いたい。
  195. 下田武三

    ○下田説明員 この前の委員会でも申し上げましたが、実は竹島を韓国の領有なりと主張する根拠は、ちつともわからなかつたのであります。何度も抗議、逆抗議の文書の往復をしておりましたが、わが方は詳細なる歴史的、民族的いろいろな根拠をあげて、日本領である理由を申しておるのに対し、先方はそれを反駁する何らの裏づけがなかつたのであります。そこで先般の委員会でも、たとい竹島の問題が国際法廷に持ち上つても、完全に勝つ自信があるというようなことを申したのでありますが、その後最近になりまして、初めて韓国が竹島——韓国では独島といつておりますが、独島は韓国領なりと信ずるゆえんのものを非常に詳細に申して参りました。しかしこれは外国の文書でありますから、かつて日本側で発表することは差控えたいと思いますが、ポイントだけ申しますと、日本側が歴史的、民族的にあそこは日本領だというのと同じように韓国も、あそこは韓国領であるという文献等をあげております。その文献の中には日本の文献も入つております。そこで長い歴史の上には鬱陵島に住む韓国人が、漁業等のためにあそこへ行つたということは、あたかも日本国民があそこに行つたことがあるように、その点は事実かもしれません。しかしそれは必ずしもあそこか韓国領であるという根拠にはならないのではないかと思います。もう一つのポイントは、平和条約で何にも言つてないということは、あれが日本領になつたことではない、日本側は、鬱陵島その他の島は韓国に行くことを平和条約で明記されておるからそうなるのであつて、平和条約に明記されてないものは当然日本側にそのまま残るのだという主張であるが、そんなことはない、平和条約に明記をされておるのは、韓国に属する無数の島のうちのごく一部分であるというようなことを言つております。しかしながら日本側といたしましては、ポツダム宣言を受諾いたしましたときに、ポツダム宣言に引用してありますカイロ宣言を受諾いたしたことになるわけであります。つまり日本近辺の諸小島の帰属は連合国側がきめるぞというような連合国側の主張を、日本側は降伏によつてのんだわけであります。そこで帰属の問題については、平和条約によつて明らかになつたわけであります。平和条約の第二章というのはまさに領域の帰属をさしたものでありまして、これはそういう領域条項の当然の解釈といたしまして、領域条項に掲げられた島、つまり特に敗戦国側から剥奪する領域だけを書くのが当然でありまして、日本側といたしましては、平和条約の領域条項に特に書き出さたれ領域以外は、当然日本に残ると心得てしかるべきである、また連合国側の解釈もそうであろうと思います。なるほど韓国の近い所にはたくさんの島がありまして、それは一々平和条約では申さないでありましよう。しかし平和条約に記載されておる鬱陵島よりももつと日本に近い島を韓国のために取上げるなら、まさに連合国はそれを特記したはずであります。日本側に近い島を特記しなかつたゆえんのものは、連合国側の意思は当然日本に残す意思であると解すのが当然であろうと思います。また韓国側のもう一つのポイントは、米軍は竹島に対する射撃を中止する際に、韓国の国防部に通告して来たということを言つております。これも日本が申しておりますように、あれは日本領であるからこそ合同委員会におきましてわざわざ日本側から地域として提供してもらう措置を米軍がとつて、それで演習地として使用した。やめるときに再び合同委員会にかけまして、そうして日本側に、あれはもう区域として必要なくなつたということを申して来ておるわけであります。ただ昔から韓国人も漁業であの近辺に行つたという事実がありますから、念のために利害関係者として韓国にそういういうことを通和することもあつたでありましようが、それは便宜の問題でありまして、領土権が韓国側にあるからという理由で、米軍が韓国側にも通報したと解釈するのは誤りではないかと思います。このように韓国側があげております根拠は、私どもの目から見ますと、これはどうも、成り立ち得ないのではないかと思います。韓国側はあるいは向う理由を詳細に将来発表するような機会かあるかもしれませんが、日本側からその全貌を発表することは差控えたいと思います。しかし大体おもなるポイントはただいま申し上げたような点でございます。
  196. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは大分前のことですが、韓国の方では対馬も韓国の領土であるというような主張をしたことがあるようでありますが、その後そのことはちよつと音さたがないのであります。現在も何かそういうふうな考えを持つておるということはありませんか。わかつておりましたらお聞かせ願いたい。
  197. 下田武三

    ○下田説明員 壱岐、対馬につきまして、韓国の新聞あるいは政府の役人が何か言つたようなことは私ども聞いておりますが、先ほど申し上げましたように、いまだ韓国政府の正式の意向として、壱岐、対馬に韓国の領有権を主張いたしたようなことは全然ございません。またこれを気に病んで日本側が疑惑を持つておるような色を示しますことは、つけ上らせることになりますので、日本側はこれは問題にならぬという態度であつたわけであります。
  198. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  199. 穗積七郎

    穗積委員 下田条約局長にお尋ねしたい。その前に委員会として委員長にちよつとお尋ねいたしますが、承るところによりますと、せんだつて委員会で軍事基地に関します参考人の供述を得たことがありますが、その中で岡山県の日本原の参考人であります植月覚君の供述について、最近本人から、当日の供述は全部考え違いであるから取消したいという意向の文書を、委員長のお手元まで届けたということを伺いましたが、事実でございましようか。
  200. 上塚司

    上塚委員長 去る七月十五日の当外務委員会において、参考人として招致しました岡山県日本関係の参考人植月覚君から、当日の委員会において供述した事項は、全部を取消したい旨の申出がありました。これは参考人として呼んだ事態はもう過ぎ去つた後でありましたから、そのままにいたしておつたのであります。お尋ねの通り申出がありました。
  201. 穗積七郎

    穗積委員 もし事実とすれば、どういう趣旨でそういうことを言い出したのか、簡単でしたらその文書を事務当局の者に朗読させて、その内容をわれわれ委員に明らかにしていただきたいと思います。
  202. 上塚司

    上塚委員長 簡単でありますから朗読させます。     〔書記朗読〕    参考人供述取消申請   曩に昭和弐拾八年七月十五日、衆議院外務委員会に於て、参考人として日本原住民代表の名を以つて植月覚が供述致しました事柄は、農林省の日本原国有地を中心としての勝北地区綜合開発計画並に国有地周辺農業経営者の意図と対脈的であり、農耕地として開拓解放せられることこそ地方の発展、住民の福祉であつて保安隊等を誘置することは、現在本地方情勢と合致しない点のあることを、保安隊駐屯誘置運動署名者一同之を自覚致しました。依つて解散し、供述致しました事項全部を取消致したいと存じますので、可然御取計下さる様、に広戸村議会議長の連署を以つて右申請致します。
  203. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。それで、それは取扱い上はどういうふうになりましようか。前国会におきます参考人の意見は記録に残つておると思いますが、本人の意思だけはやはり民主的に尊重して、その供述を取消すように手続をいただくべきが当然と思いますが、委員長のお考えをお漏らしいただきたいと思います。
  204. 上塚司

    上塚委員長 この件は参考人として招致した人の意見でありますから、ただいまこれを取消すことは、あらためて手続するまでもなく、今の読み上げたことによつてその目的が大体達せられただろうと考えますから、このままにいたしておきます。
  205. 穗積七郎

    穗積委員 それでは下田条約局長にひとつお尋ねいたします。時間がありませんから簡単にいたします。新聞の報ずるところによりますと、九月八日にあなたは自由党の総務会に御出席になりまして、MSA援助を受けることと防衛力漸増の義務とは、不可分のものであるということをお話なつたようでございますが、事実その通りに受取つてよろしゆうございましようか。
  206. 下田武三

    ○下田説明員 仰せのように自由党の総務会に伺いまして、これは公開の席上ではございませんので詳しくいろいろお話を申し上げました。その席には新聞社の方はおられませんでしたが、伝え聞きでお聞きになつたのだろうと思いますが、非常に不正確に新聞に出ておつたように拝見いたしております。私はMSA協定防衛計画が不可分であるというようなことは申したことはございません。
  207. 穗積七郎

    穗積委員 援助を受けます以上は、兵力を増強する義務があることはお認めになるわけでございますね。計画書を出す出さぬは別として、MSA目的が被援助国の兵力を増強することになつておりまして、それを受ける以上は、兵力増強の義務は当然負うべきだと解釈すべきだと思いますが、そういう意味の解釈をされてお話なつたのではありませんか。
  208. 下田武三

    ○下田説明員 誤解を避けるために申し上げたいのでありますが、交渉を始めます前に日米間に往復文書をかわしましたので、問題の取上げ方がきまつており致す。つまりMSA法第五百十一条(a)の軍事的義務、米国が当事国となつておる外国との間の条約または協定に定める軍事的義務の問題として取扱つたのであります。その軍事的義務といたしましては、安保条約の定める義務しかないということははつきりいたしております。そこで、その軍事的義務と全然無関係日本という国が自衛力漸増するということを、今まではアメリカが漠然と期待しておりましたが、協定を結びますと、協定上の義務として、日本としては防衛力漸増しなければならないという義務が発生いたしますことは、これもまたきわめて明瞭であろうと思います。
  209. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、そういたしますと、MSA協定の場合には、いかなる武器をいかなる量、援助を受けるか、年々話合いをしてきめるということだと思います。そのほかに資材、または資金が場合によれば来るようになるかもしれませんが、そういうような物的援助は、すべて話し合つてきめるのであつて、こちらが受ける意思のないのに、話合いをしないで向うがかつてな見当をつけて、援助の物を多くよこすとか、少くよこすということはあり得ないと思うのです。つまり協定をいたしますときには、その内容と量が話合い条件になると思いますが、そう理解してよろしゆうございましようか。
  210. 下田武三

    ○下田説明員 MSA協定は、これは白紙なものでございます。つまり外務大臣土管と申されましたが、援助という水が出て来る水道の管をあけるだけの問題であります。でございますから、管をあけるという意味しかない。協定自体はまつたく白紙のものであります。ですから、この協定を締結することが憲法とどうだというような問題は起らないわけであります。問題になりますのは、それでは水道をあけるのが協定であるとするならば、その水道から物が出て来る出方によつて憲法との関係を生ずるということが初めて考えられるわけであります。そこで、どこの国との協定にもあります、また日本との協定にも当然入るのでありますが、どういうものが来るかということは、協定ができてからあとの話合いであります。アズ・メイ・ビー・アグリード・アポン・イン・イーチ・ケースということがありますから、保安庁の方で計画をお立てになりまして、そしてこの計画実施するためにはどういうものが必要だということを日本側が自主的にきめる。自主的計画を実現するためには日本ではこれだけのものが足らないという場合になつて、初めて向うに物をよこせということになつて向うはよろしい、それはちようどあるからあげようということになる。その都度都度話合いができて合意ができるのございます。ですから初めのそういうことをすべて可能ならしめる協定は、単に水道の管にしかすぎないわけであります。それでそれは協定の締結自体の問題ではなくして、協定実施の問題であります。実施過程におきまして、憲法関係その他の問題が生ずるだろうと思います。
  211. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしたのは、そのことで、協定実施する場合に、こちらのけ計画向う援助内容と量は、つまり話合いによつてきまるのである。いずれか一方の意思を曲げて、気まぐれに行われるということはないと理解してよろしいと思います。そういたしますとMSA援助を受けるということと、こちら側の兵力増強計画というものとは不可分の関係になると思います。つまりこちらが計画を持つておる、自弁できないものはこれこれだ、これだけあればこれだけの計画は実行できる、その計画以外の、こちらの要求以外のものが向うから押しつけられるということもないし、向うから来ますものは、こちらの計画書と不可分の関係になるものと理解してよろしゆうございますか。
  212. 下田武三

    ○下田説明員 穗積さんの不可分という意味はつきりしないのでありますが、大臣は必須の要件ではない、これはその通りであろうと思います。つまり日本防衛計画なるものを見せなければ、アメリカ援助をよこさぬというのでございましたら、これは不可欠なものだろうと思います。なぜかと申しますと、その計画を見せないことには、アメリカ援助をよこさぬということでありましたならば、それは不可欠であろうと思います。ところがアメリカはそうではないのであります。その反対であります。この防衛計画というものは、日本が自主的にお立てになるものである。自主的にどのような計画をお立てになろうとも、その計画に応じた援助は差上げますといつて、まるで白紙委任状であります。どういう計画を立てようと日本側のかつてである。しかし日本側でリーズナブルな計画ができましたならば、それに基いた援助を差上げる用意があるというのが、アメリカ側の言い分であります。でありますから不可欠ではない、大臣の言うようにユースフルな問題である、そういうことであろうと思います。
  213. 穗積七郎

    穗積委員 つまり援助をするという原則は協定できまるわけですから、何をどういうふうに援助するかということが、われわれにとつて大きな影響があるわけでございます。日本の外交にも関係がありますが、アジアの諸国にも関係がございます。同時に日本経済、つまりそれだけ後にわれわれが軍事費を負担しなければならぬ関係もあるし、そういう経済的な関係も非常に大きなインフルエンスを持ちますので、問題は援助内容と量だと思います。いかなる武器をいかなる量だけ援助するかということでありますが、これは今言います通りに、日本の兵力増強計画と不可分の関係ではございませんか。言いかえますならば、通常のわれわれの経済行為におきましても、銀行から融資を受けます場合に、事業計画がなくして融資がきまるということはない。問題は融資をしていいということだけでは、することがあるかもしれないという可能性や、意思表示は、何らわれわれにとつて意味ないので、現実にこれだけのどういう種類の武器をこれだけ援助するということが、実は問題なのでございます。金融の場合もどういう条件で幾らの金融をつけてくれるかということが問題なので、それはまさに会社の事業計画と不可分の問題であるというふうに理解するのがあたりまえであつて、あなたは言葉をかえて言つておられますが、私の言つていることと何ら違つていないと思うのです。その点もう一度はつきりしていただきたい。
  214. 下田武三

    ○下田説明員 不可分という言葉をお使いになるためには、もつと必然的な関係がなくちやならぬと思います。つまりアメリカ側からいつて計画の提示がなければ援助は上げられぬというような必然的な関係でなければならぬ。日本側の独自の立場で計画を提示して、これだけいるのだからといつたら、必ずぴつたりそれだけできるかどうか。これは技術的にこまかいことになりますが、日本側の希望通りにやるとは言つておりますが、アメリカになかつたらしようがないのでありますし、そういうような点で、こつちの計画に基く希望が、そのままぴつたり向うの側の与えられる援助とマツチするかどうか。それくらいの程度の必然性がなければ、私は不可分というお言葉はお使いにならない方がいいのじやないかと思うのです。私はユースフルという意味で関連があるということは認めますが、不可分というような程度の関連は認め得ないのでございます。
  215. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと申し上げますが、ただいま犬養法務大臣から、五時半から所用がありますので、できるだけ早く秘密会にしていただきたいという申出がありました。各位の質問も、できるだけ簡略にしていただきまして、早く秘密会に入りたいと思います。
  216. 穗積七郎

    穗積委員 聰明なる下田局長がそういうことを、言葉にとらわれて言つてはいけません。つまり与える可能性があり、その意思があるということだけが協定できるのであつて、われわれの問題にするのは、いかなる武器を、いかなる額だけ援助されるかということが問題なのであります。それはつまり兵力増強計画なくしてそんなことができるはずがない。兵力増強計画なくしていかなる武器をいかなる量だけ援助するということはきまらぬと思います。その事実関係を私は言つておる。その事実関係は、兵力増強計画アメリカ援助する兵器内容と種類と量はあくまで不可分でございます。
  217. 下田武三

    ○下田説明員 はつきりいたしますために問題をわけて考えてみます。ここに協定の締結という一つの問題と、協定実施というもう一つの問題がございます。
  218. 穗積七郎

    穗積委員 その前の御講釈はいりません。実施のことを聞いておるのです。
  219. 下田武三

    ○下田説明員 実施の問題として日本側計画を見せることは、不可欠ではないのでありますが、見せれば便宜である、アメリカは参考資料とする価値は認めるでありましよう。しかしそれはあくまでアメリカ援助をやろうという場合に決定する一つの参考資料でありまして、必然的な関係はないという点は、私はあくまで繰返して申し上げたいのであります。
  220. 穗積七郎

    穗積委員 それじや一体武器の種類と量はだれがどこできめるのですか。増強計画がいらないというならば、その協定実施である援助を具体的に向うから送りつけて来る内容と量は一体だれがきめるのですか。それを言つておるのです。
  221. 下田武三

    ○下田説明員 だれがきめるかというお話でございますが、これは、アズ・メー・ビー・アグリード・アポン・イン・イーチ・ケースで、日米双方できめるわけであります。その場合に参考となるものは、日本側防衛計画も参考になるでありましよう。また日本側の経済状態も参考になることと思います。そういう日米双方が決定するときの参考となる一つのフアクターであることは認めますが、それが全部が必然的な関連を持つて援助の額を決定づけるところのものではないという点を私は申し上げるのであります。
  222. 上塚司

    上塚委員長 時間がありませんから……。
  223. 穗積七郎

    穗積委員 これは大事なことですから伺いたい。このことを明らかにしなければ委員会をやる意味がないわけです。私の言うのは、具体的に量と内容がきまるのは、兵力増強のこちらの計画と不可分だと思う。今あなたが言われるように、経済関係その他憲法関係とかをあわせ考える云々、そんなことは兵力増強計画のフアクターであつて、それはもう事業計画の中へ織り込まれておる。そこででき上つたものを向うと話し合うはずです。だから向うの送りつけるものと、こちらの兵力増強計画はぴたりと符合するわけであります。そこで初めて話ができる。ですから向うから送りつけて来ます兵器その他の援助内容と量は、こちらの増強計画と符節が合うわけでございます。こちらの計画以上のものを送つてよこすということはない。それを私は事実上不可分だと言つておる。不可分という言葉におとらわれにならないで、内容と額がきまるのは一体何できまるかといえば、それがもしどれだけの兵器が来るかといえば使うに相当するだけの——遊ばしておるのではない、それだけの増強計画があるわけです。それを受ける。それはもうぴつたり合うわけです。これを不可分と言わずして何でございましようか。
  224. 下田武三

    ○下田説明員 不可分という言葉をそれでは全然使わないで御説明申し上げたいと思いますが、援助の具体的額及び数量、品目等がどうしてきまるかという過程を申しますと、日本側防衛計画にかんがみてどういうものがほしいということを申すでありましよう。しかし向う側にそれがない。あるいは優先的に六十三箇国のある国から、盛んに前年からの約束で先にまわさなければならぬということもあるでありましよう。それから日本側がこれだけしかいらぬといつても、これはアメリカは来年度生産する見通しがないから、在庫品のある本年度に受けておいた方が都合がいいではないかというので、日本側が請求したものに多少プラス・アルフアーをつけてよこすこともあるでしよう。かように日本側計画と、最終的に両国の合意できまります物品の数量というものとは、ぴつたりと合うものではないのです。
  225. 穗積七郎

    穗積委員 ぴつたりと合わぬと言つたつて一つ二つの鉄砲のたまは合わぬことはあるかもしれませんが、そういうことでなくて、その額を決定するにはむろん増強計画を基礎としてやる。そうでなくて漠然と送つて来るものではない。そんなことなら、こちらも迷惑しごくです。論理が合わない。漠然と援助をしてよこす、漠然とこつちももらつておる、そういうことはあり得ないので、送つてよこす内容と量は、兵力増強計画と不可分の関係にあるとむろん考える。押し問答いたしましても時間がありませんから、私はそういうふうに解釈して、あなたのおつしやるのもそういう意味だと理解いたします。  そこで保安庁の次官にお尋ねいたします。先般、実は前の国会で問題になつて増強計画はあるとかないとか言われて、最近はあると言つておるのですが、最近保安庁として——木村試案としてではなくて、保安庁として計画している意味だと思うのですが、保安庁として計画をお始めになつたのはいつからお始めになつたのですか。
  226. 前田正男

    ○前田説明員 保安庁といたしましては、この防衛計画につきましては前から大臣お話しております通り、前国会中におきましても研究はいたしておつたのであります。
  227. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、もう時間が経過しております。
  228. 穗積七郎

    穗積委員 それではもう一言だけお尋ねいたしますが、その計画はいつ完了いたしますか。九月四日の委員会では、ほぼ来週あたりの閣議で決定する予定のようなことを長官はおつしやつたのですが、それが今日まで延びておることは、言うまでもなくMSAに関します。つまり私が今下田局長にお尋ねしたごとく、あなた方のつくられる計画は、MSAによつて向う援助するものと無関係ではございません。従つてそれとの関係において延びておるとわれわれは考えるのがあたりまえであつて、すなわち延びておる事情は一体どういうことであるのか、いつしからば完了されるおつもりであるのか、その点をはつきりしていただきたいと思います。
  229. 前田正男

    ○前田説明員 穗積さんは盛んにMSA関係のあるようなことをおつしやつておられますが、われわれはこの計画につきましては、何らそういうことを考慮いたしません。自主的に決定いたす方針であります。しかしながら日本の財政経済のいろいろな関連があります。また二十九年度におきましても、できますならば幾らか増強いたしたいという考え方を持つておりますので、二十九年度の予算の編成という問題とも関連があります。御承知通り、災害の復旧費だとか、二十九年度予算にはいろいろな重大な問題がたくさんあるわけでございます。そういうようなことから、われわれの方はいろいろな点において慎重に考慮しておるわけであります。従いましてまだ、現在のところでは保安庁の案も確定いたしておりませんし、またよその官庁とか、あるいはまたよその関係先ともまだ連絡いたしておりません。ただ研究中でございます。いずれこの確定は相当の日子を要するものと私は考えております。大臣はいりできるというようなことをお話なつたかどうか存じませんけれども、私もこれの関係者といたしまして関連いたしまして現在やつておりますが、しかし私の見ましたところは、そんなに簡単にできるものではないと思つております。少くとも二十九年度予算の大綱というものがある程度目鼻がつかない限りは、この問題は確定するという方向一は、なかなか動かないのではないかと私は思つております。
  230. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  231. 戸叶里子

    戸叶委員 下田条約局長にお伺いいたしたいのですが、漁業権をめぐつての韓国との間の問題だけでなくして、アラフラ海の問題等、そういつた問題がたくさん起きておりますけれども、それはいずれも容易に解決を見られません。そこで国際司法裁判所に提訴したらいいのではないかというような意見も非常に強く出ておりますけれども、国際司法裁判所に提訴するについての何か条件というものがあるかないかを承りたいと思います。
  232. 下田武三

    ○下田説明員 国際司法裁判所に提訴いたしますのは、実は最後の手でございまして、それまでに相手国との直接交渉によりまして、できるだけ円満に解決いたしたいと考えております。さて提訴する場合に何か条件がないかというお尋ねでございますが、これは安全保障理事会で決議いたしたことがございます。それは国際司法裁判所規程で、非当事国——つまり日本は裁判所規程の当事国でございませんので、まさに該当するわけであります、非当事国が裁判所に提訴し得るためには、どういう条件を持たなければならないかということは、国際連合の安全保障理事会できめるということなつております。そこで安全保障理事会がどうきめたかと申しますと、きわめて簡単なことでございまして、一つは裁判所の管轄権を受諾するということが条件でございます。これは訴え出ようとするのでありますから、当然その裁判所の管轄権を受諾するということが含まれておるわけでありますので、きわめて簡単な条件であります。もう一つ条件は、その提訴に基いて裁判所が下す判決に服従するということであります。これも裁判所に訴えます以上は、裁判所がどういう判決を下すか知りませんが、判決が下つた上は服従することを覚悟で訴えるわけでありますから、そう考えてみますと、この二つ条件は当然のことをただ規定しただけでありまして、ちつともむずかしいことはないと思います。
  233. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、今度のような問題でも、国際司法裁判所に訴えることは何でもないけれども、なるべくなら最後的な手段にまで行かないで、話合いで解決して行きたい、こういう考えでいられるわけなのでしようか。
  234. 下田武三

    ○下田説明員 外交の手といたしまして、まず関係国との直接交渉をいたすのが常道であります。また国際的なレベルから見ましても、へーグの国際司法裁判所で取上げますのは、年せいぜい二、三の件しかないのでありますが、これは各国とも外交交渉をやつて、よくよくらちが明かぬというときに至つて初めて提訴いたすから、そのように二、三しか年に取扱わないということになつております。大体国際的な標準から申しましても、紛争が起つたからといつてそれ裁判所というふうには、国際裁判の場合には行つておりませんので、かたがた外交の常道といたしましても、また国際的な標準からいたしましても、今ただちに提訴ということは、まだ少し早いのじやないかと考えております。
  235. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは下田条約局長のお考えとしては、韓国との問題も濠州との問題も、この漁業権をめぐつての問題は、じきに何とか解決できるというお見通しで、ここへは当分提訴しないというお考えだと了承してよろしいわけですか。
  236. 下田武三

    ○下田説明員 見通しと言われましたが、実は正直なところ、すみやかに解決する見通しはございません。そういう希望はございます。希望はございますが、見通しは逆にこれはなかなか困難であり、かつなかなか忍耐を要する交渉ではないかと存じております。
  237. 戸叶里子

    戸叶委員 たいへんに悲観的な御返事を伺いまして残念なのですが、なるべく早くこの問題は解決していただきたいと思います。  そこで私、次にもう一点伺いたいのは、実は先ごろからの委員会で、ずつといろいろな方の自衛権の問題に関する論議を聞いておりますと、何だかだんだん考えれば考えるほどわからなくなつて来たのです。それはたとえば下田条約局長だつたと思いますが、いつかの委員会でおつしやつたのは、外国から侵略を受けた場合に、これはだれでも正当防衛という形でこれに対抗する権利がある、こうおつしやつたように思いますが、そう認めてもよいわけですか。
  238. 下田武三

    ○下田説明員 国際法上では正当防衛と自衛権と同じ意味で使つておりますが、国際法上ただちに自衛権を行使し得るのではなくて、いろいろ条件があります。つまり与えられた危害が急迫したものであること、またその急迫した危害を避けるために他に措置がないこと、またその危害を排除するために加える行為は危害行為と比例のとれたものでなければならない。つまり竹島のために韓国全土を占領するというようなつり合いがとれない措置はいかぬとか、いろいろ条件がございます。でございますから、ただちに外国から侵略なり危害があつたからといつて、ふつり合いな措置が何でもできるというわけではありませんで、自衛権を行使いたしますにつきましても、やはり国際法上の条件合つた場合でしかできないと思います。
  239. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで竹島が日本の領土である、ところがもしも韓国が竹島を不法占拠した場合に、日本としては、これは日本の国のものであるから、当然日本の領土としてこれをとり返すために、自衛権なり何なりを持つておると思うのですが、その場合に一体日本としては、どういう形で竹島から、不法占拠した韓国に出て行つてもらうような方法が国際法上許されておるわけでしようか。
  240. 下田武三

    ○下田説明員 まず外交交渉をして、不法に竹島に来ている軍艦にしりぞいてくれという申入れをするということが、第一であると思います。  それからそのときに日本の船がおりまして、そうしてちようど竹島の領水でかち合つたというときに、当然平和的にこれは日本の領土であるから出て行つてくれと言えます。そのときに何をと言つて向うが発砲したら、これは緊急事態と申しますか、自衛権の形で当然こちらも撃ち返してもよいものだろうと思います。
  241. 戸叶里子

    戸叶委員 それで私は条約局長が国際法に基いておつしやつたことがわかつたのです。そこで保安庁の方に伺いたいのですが、今、条約局長のおつしやつたのは、向うの軍艦なり何なりが発砲した場合に、そこに日本の船がいて、これに対抗してもよいのだというお話だつたと思いますが、その場合に保安庁の方では、保安庁の警備船がこれに発砲するということはお認めになられますか、なられませんか。現在のままでお認めになりますか。
  242. 前田正男

    ○前田説明員 現在のままの法律によりますと、保安隊が出動をいたしますについて、まず第一に問題があるわけでございます。保安隊の警備船が出動するについての問題があるわけであります。それを申し上げますならば、わが国の平和と秩序を維持するのが責任でございます。侵略によつてわが国の治安を乱されておるというふうに、われわれがはつきり感じた場合には、総理大臣の認可がありますと出動できるわけであります。またそこに日本の船がおりまして、人命、財産等が損傷を受けた、こういう場合に海上保安庁、あるいは水産庁等の保護だけでは不十分であるというふうになりました場合、重大な事態において特に必要がある、これは水産庁の船だけの保護では不十分である、こう認定いたします場合には出動いたすわけであります。  そこでその出動の仕方でありますが、これは二通りありまして、まず第一には海上における警備行動という場合に第六十五条によりまして「緊急の必要がある場合には」必要な行動をとれるというわけで出て行くのでありまして、おもに警備態勢、警戒態勢のもとに出て行くわけであります。しかしながらさらに非常事態になりまして、わが国の平和と秩序の維持上ぜひ必要だ、人命財産のために特に必要であるということになりますと、命令の出動になりまして、そういう場合におきましては明瞭に、また保安庁法の規則にもありますが、正当防衛に関しては発砲できるということを明瞭に書いてあるわけであります。正当防衛という言葉ではありませんが、第七十条で「職務上警護する人、施設又は物件が暴行又は侵害を受け、又は受けようとする明白な危険があり、武器を使用する外他にこれを排除する適当な手段がない場合」には、武器を用いることができると明瞭に書いてあります。
  243. 戸叶里子

    戸叶委員 それならば問題ないのですけれども、たしか九月九日の夕刊で木村保安庁官がおつしやつた談話の中で、韓国の出方が非常に不愉快だ、直接この水域に出漁する漁船保護のために、保安庁の警備船の出動も考えてい着けれども、そうした場合にあくまで警戒任務を行うことは当然であるけれども、先方の出方によつては正当防衛の態度に出なくてはならないにもかかわらず、そういうことが今の保安庁法ではできないというようなことを言つていられたと思いますが、その点が条約局長のお考えと違うように私は思つたのです。しかし今の次官の御答弁では、はつきりと今の保安庁法をかえないでも、そういう場合には対抗できるというふうに了承していいわけでございますか。
  244. 前田正男

    ○前田説明員 私この前のときの委員会に出ませんので、はつきりわかりませんが、あとで聞きますと、大臣憲法上疑義があるというふうなことを言われたとちよつと聞いておるのですが、これは先ほどちよつと申し上げました通り、国際紛争を解決するためには武力行使をすることはできないのであります。従いまして武力によつてわれわれがこれを解決するために保安隊の警備船を出すということは、憲法上できないわけであります。従つてわれわれの出動して行く場合は、先ほど申しました通り、平和と秩序が乱されておるとか、人命財産が非常に危険に瀕しておつて、しかもこれは海上保安庁とか水産庁の保護だけでは不十分である、重大事態であつて、しかもさらに特に必要である、緊急事態であるということを総理大臣が認定した場合に初めて出て行けるわけであります。国際紛争を解決するために出動することはできない。こういうふうに、憲法上に問題があるということをお話なつたのじやないか、こう思つております。
  245. 戸叶里子

    戸叶委員 条約局長に伺いたいのですが、国際紛争というふうなものは、一体どういうものですか。たとえば今度の日本と韓国との問題は国際紛争とは言えないのですか。私何もわからないので、ばかげた質問かもしれないのですが、何かそれも国際紛争のように考えられるわけですが、これは国際紛争ではないわけでしようか。
  246. 下田武三

    ○下田説明員 やはり国際紛争の一だろうと思います。そこで憲法の、国際紛争を解決するために、武力を行使してはいけないということは、その武力行使する場面と国際紛争の場面とは違うことであります。つまり竹島に領有権についての争いがあるという一つの部面がございます。だから日本の言うことを聞かないからといつて、釜山を攻撃するという別の行為、そういうことはしちやいかぬ。そこで竹島の領水で両方の軍艦が撃ち合つて、そうして緊急非難でわが方が撃ち返したという場合には、これは国際紛争を解決するために武力を行使するのではなくて、それ自体が一つの紛争であります。そこで撃ち合いして、わが方において不幸にして負傷者が発生して終つたというような事態になりますと、それを一つの紛争といたしまして、その負傷者に対する慰藉料なり損害賠償なりをよこせ、艦艇に対する賠償をよこせということを話をいたしまして、それでまだらちが明かないからというので、釜山を爆撃するということをしちやいかぬというのが、憲法の国際紛争を解決するために武力を行使しちやいかぬということだと思います。よく混乱が起りますのは、紛争の渦中においての武力行使と、紛争をながめて別の場で武力の行使で自己の意思を強制しようという問題と、混同します場合に、混乱が起るのだろうと思います。
  247. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、私は保安庁法を改正しないでも、外国からの侵入に対して、保安隊が抵抗することができるということになるのじやないかと思うのですが、その点はどうなのでしようか
  248. 下田武三

    ○下田説明員 国内法の解釈は、私は権威をもつて申し上げる地位にないのでありますが、私どもの扱つている国際法上の問題といたしましては、たとい保安庁法において自衛行為に出る場合の規定がございませんといたしましても、自衛行為に出て一向さしつかえない。国際法で認められた場合には、自衛行為でやることは一向さしつかえない。と申しますことは第三国なり関係国なりからお前は国際法違反の行為をしたと責められるようなことはないということであります。そこで国際法では許されたといたしまして、今度は国内法の問題でありますが、これが保安庁法に即した行為であるかどうかということは、これはやはり保安庁なり責任当局がお考えになる問題だろうと思います。私どもはもつぱら対外的の関係において責任を追究されることがないかどうかという見地から、不法なりやいなやという点を検討いたしておるのであります。
  249. 戸叶里子

    戸叶委員 私まだちよつとわからないのですけれども、今のお話だと国際法上からはそういうことが認められる。そうすると外部から責任を追究されたときには、あくまでも国際法上から見たならばこれは別に違反じやない。ところが今度は保安庁の立場から考えてみたならば、同じ日本で、外務省のあなたの方では違反じやないと言われるかもしれないが、保安庁の方では国内法から見ればこれは間違いなんだ、こういうことをおつしやられるかもしれないわけですね。その間の調整をどういうふうにしてとられるわけですか。
  250. 下田武三

    ○下田説明員 外国が抗議をいたして参ります場合に、保安庁法には自衛行動をする権利がないのだから、保安庁法という国内法違反であるからけしからぬと言つて決して抗議をいたしては来ないわけであります。つまり国際法に照して、自衛行為として許されないような行為に出たとするならば、これは抗議ができますが、国際法でちやんと認められた場合に、認められた程度の行為をすることはこれはちつともさしつかえない。相手国から責任を追究されることはないわけでありますから、そこで保安隊に限らず、消防隊でもそうでございますが、消防隊でもまた学校の先生でも、教員というものはそんな行為をするということはおよそ無関係のことでありますから、むしろこれは規定していないのが当然であります。しかしながら侵略が起つた場合には、これは基本的な権利の行使でございますから、国内法を超越してそういうことがとり得るのだろうと思います。
  251. 戸叶里子

    戸叶委員 これは保安庁長官がいらつしやいませんから何とも言えないのですが、保安庁長官から、保安庁法を改正しなければ、この外部からの侵略に対して、対抗できないとかなんとかいうようなことを、この間言つていらつしやられたことは、国際法上から見れば、そんなことは問題じやないということが言えると思うのですが、この点条約局長はそういうふうにおつしやつたように思いますけれども、もう一度念のために伺いたいと思います。そして今度保安庁長官にその点はつきり伺つてみたいと思います。  それからもう一つは、そうすると保安庁長官がそういうお考えであつても、これは改正しなくとも問題はない、条約局長としては、保安庁長官がそういうことを言うのは、国際法上から見ればおかしいなときつと考えていらつしやるのじやないかと思いますが、その点はいかがですか。
  252. 下田武三

    ○下田説明員 保安庁長官も国際法上困るから保安庁法を改正しなければいけないというふうにはおつしやつておらず、またそうお考えになつてもおられないと思います。これは保安庁長官とされまして、現実の事態また将来の見通し、あるいは保安隊の志気の高進というような、いろいろな御考慮から改正を考えておられるのであつて、国際法上困るからというような動機は、おありにならないのではないかと推察しております。
  253. 戸叶里子

    戸叶委員 保安庁長官がいらつしやらないから、私もこの先の質問を続けられないのですか、そうすると私非常にふしぎに思いますのは、保安庁長官がこの間中から言われていたいろいろのことですが、今条約局長とこれ以上続けても私の疑義は解けませんから、長官がお見えになつてからまたすることにいたします。
  254. 上塚司

    上塚委員長 加藤勘十君。
  255. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 ほんとうは協力局長にお尋ねしたいと思いましたけれども、局長が何か事情でおいでにならないようですから、第三課長からお答え願いたいと思います。  問題は東京都の魚市場の接収解除の問題であります。御承知のように、東京都の中央市場は八百万都民の台所を預かる鮮魚、青果の集散場所であり、その市場であります。ここが非常に不潔で非衛生である。私どもとしては市民生活の上からいつて放置することができないと痛感しまして、現場に行つてよく調査をしたのです。すると、ことに不潔、非衛生の実態である魚類は、戦前の最高時の倍以上の量が集荷されている。しかるに市場設備は、面積にしては三千五百坪ばかりだそうですが、連合軍に接収されて、しかもその水道栓の所在地が接収箇所にあるために、思うように清掃ができない、こういうことが不潔の原因になり、非衛生の原因となつている。東京都ではやむを得ず井戸を掘つて水道栓にかえようとしている状態ですが、この接収区画はランドリーに使用されておるということです。聞くところによると、大体今年中くらいまでには解除されるであろうという話ですが、その話は実際どの程度に進んでおりますか。
  256. 安川壯

    ○安川説明員 お答えいたします。ただいまの魚市場の一部の施設につきましては、私がこの仕事を始めましてから、直接東京都庁の方からも、私に関する限り何も話も聞いておりませんので、現場について私自身十分に認識を持つておらないのでありますが、ただいま御指摘の点もありますので、現場につきましてはさつそくよく調査いたしたいと思います。  それから接収解除の点につきましても、現在東京都内の民有の施設につきましては、郊外に日本側で代替設備をつくりまして、その完成次第移転させるという計画で、その計画は逐次実施に移されております。ただいまのランドリーが具体的にどういう移転計画になつておるのかということは、ただいま資料を持ち合せませんので、いつ解除になるかということは今ここでお答えできませんが、この点もあらためて調査いたしまして、御希望ならば書面でなるべく早く御返事いたしたいと思います。
  257. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 実は十四日にわれわれ中央市場に行きまして、市場長にも会い、また春君と岡安君と都の助役にも会いまして、この点十分にいろいろの点で話し合つたのですが、そのときに大体今年中には解除になるという話が進んでおる、こういうことを言うておるのですが、外務当局として、その点について具体的に御存じないというのは、一体どういうわけでしようか。
  258. 安川壯

    ○安川説明員 私個人が具体的に承知していないということでありまして、もし都庁の方へ、過去において外務省から正式の文書なりその他で、今年末に解除になるという正式の通知でも行つておりますれば、大体その通りだと思いますが、いずれにしましても返す場合には、代替設備をつくつてから返すということになつておりますので、その他の施設につきましても、計画の当初には、大体今年一ぱいだとかあるいは来年三月末という目標を立てたものにつきましても、その後の建設計画に、いろいろ手続上あるいは計画上の予定の遅延がございまして、そのために最初予定したよりも返還が実際遅れざるを得ないというケースもありますので、ただいまの魚市場の施設につきましても、今年中に返るという、かりに外務省がそういう正式の意思表示をしたとしましても、そういう外務省の意思表示をいたしましたのがいつでありますか、もし最近の機会にそういうことを外務省から表示しておるとすれば、大体そう考えて間違いないと思いますが、それが一年なりあるいは半年前にそういう外務省としての意思表示があつたとしますと、その後の建設計画そのものの進行状況によつて、多少返還の時期が遅れるということもあり得ると思います。いずれにしましても私個人が、本件特殊のケースについて具体的に承知しておりませんので、その点はさつそく調査いたしました上でお返事いたしたいと存じます。
  259. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 私は安川さん個人の御意見を聞いているのではないのです。外務省としてどうだということをお伺いしておるので、あなたはいつごろから課長になられてそれを担当しておいでになるのか知りませんけれども、われわれが中央市場に行つて市場長といろいろ話をしたところ、大体年末ごろに解除されるという予定で、駐留軍の方においても、そういう設備を他に設けつつあるということであるから、そういう現実の事態に応じて、外務省の関係当局においては、それが実際に年末ごろに解除になるのか、それともあるいは事情によつて延びることになるのか伺いたい。そういうことは実は東京都の財政計画の上にも影響して来るわけなんです。現に二十八年度には三億円の予算を組んで、回収の準備を進めつつあるわけであります。ところが解除されないために、すべてのことが手遅れになつて進んで行かない。もちろん財政の根拠を起債に求めているという点も一つ原因であるが、しかしながら起債以外にも予算をとつて、そういうものを含めて、今回収の準備についているわけです。だから年末ごろに解除になるというのが確実かどうかということをお伺いしているので、あなたが御存であるとかないとかいう個人の意見じやないのだから、その点はひとつ考え違いのないようにして、外務省としての方針なり見込みなりを聞かせていただきたい。もしそのことが今この場でおわかりにならなければ、今おつしやつたように文書でもいいから至急に返事をしていただいて、それによつて東京都は、回収の具体的な方針を進めて行かなければならぬわけでありますから、その点至急に御返事くださるよう重ねて希望しておきます。これで終ります。
  260. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 内灘問題が、最近村長その他が上京して、外務省当局との間に話がついたということでありますが、その事情を、ひとつできるだけ詳細に御説明願いたいと思います。
  261. 安川壯

    ○安川説明員 お答えいたします。内灘につきましては、先週の初めだつたと思いますが、伊関国際協力局長が関係官庁の代表とともに現地に参りまして、そして県庁におきまして、県知事並びに村の代表と会いまして、政府としてはあくまで既定の使用方針をかえるわけには行かぬ。この際村当局におい七も、政府方針に同調してほしいということを申し入れまして、その結果、現地から県知事以下関係村長並びに村会議員その他の村の代表が上京いたしまして、東京において、これは外務省ばかりでなく、政府側から官房副長官以下関係各代表並びに与党地元出身の代議士も加えまして、折衝したのでありますが、結局一番問題になりましたことは、地元は一定の使用期間を限定しろ、その期間が過ぎたならば、原状通りに返還をしてくれということが、最も交渉のキー・ポイントになつたのでありますが、この点につきましては、政府としましては、米軍の使用はおそらくある一定期間で必要がなくなるかもしれないが、その後については、あるいはこれを保安隊に切りかえるとかその他の問題があるので、たとい米軍の使用の必要性が消滅しても、その後ただちに返還するということはできないという立場をとりまして、一時交渉が停頓したのでありますが、終局的に村側もこの政府の立場を了承しまして、最終的の形式的な結末は、結局現在まで村側の反対のために政府に提供を拒否しておりました、権現森と称せられます民有地を、政府提出することに同意するというかつこうで結末かついたわけであります。具体的な政府側の契約当事者である調達庁当局と、土地の所有者との間に賃貸借契約が、たしかきのう結ばれたはずであります。これによりまして、内灘試射場の全地域、民有地も含めて、合法的に政府として米軍に提供できる段階になつたのであります。
  262. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 新聞によりますと、使用期間は大体三年くらいで、それが済んだら返還するというような話で、村の村長以下も納得したというようなことを読んだのでありますが、そういうことはないのでありましようか。
  263. 安川壯

    ○安川説明員 私は最初交渉に参加いたしましたが、その後ちようど地方に出張いたしまして昨晩帰りまして、三年に限つたかどうかということはまだ聞いておりませんが、要するに期限を切るということは、政府としてできないということをはつきり村の方でも了解して帰つたはずであります。
  264. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私の読んだ新聞は、このことを「うその効用」という題で、何か感想文を載せておりますが、結局これは村長以下村の当局をだまして、ごまかして納得させた。そうして村民は決してこの妥結に賛成していない、同意を与えていない。従つて問題は依然としてほんとうの解決を見ていないということでありますが、現地の模様は一体どうなんですか。
  265. 安川壯

    ○安川説明員 今申し上げましたように、政府側と地元の村長以下村の代表者との話合いがつきました結果、それに対して一般の村民がどういう態度をとつておるかということは、私は何も聞いておりません。ただ先ほども申し上げましたように、民有地の所有者が賃貸借契約に契約しました以上、試射場全部が、国有地、民有地を含めまして、法律的には合法的に政府が使用する権限を得たわけでありまして、その意味で試射の実施そのものについては、何ら今後問題は起らぬというふうに存じております。
  266. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 まだ質問したいことがありますが、あと秘密会が開かれるそうで、時間も迫つておりますから、この問題をもつと私は研究しましてから、また御質問申し上げたいと思います。
  267. 上塚司

    上塚委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  268. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めてください。  これより本委員会を秘密懇談会に切りかえたいと存じます。委員以外の方は退場をお願いいたします。      ————◇—————     〔午後五時十分秘密懇談会に入る〕     〔午後五時三十五分秘密懇談会を終る〕      ————◇—————
  269. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十六分散会