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1953-08-05 第16回国会 衆議院 外務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月五日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 並木 芳雄君 理事 田中 稔男君    理事 戸叶 里子君       野田 卯一君    山崎 岩男君       三浦 一雄君    淡谷 悠藏君       穗積 七郎君    岡  良一君       川上 貫一君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁人事局長 加藤 陽三君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    大石 孝章君         外務事務官         (アジア局借入         金審査室長)  池田千嘉太君         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    安川  壯君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         経理課長)   高橋 泰彦君         日本国有鉄道調         査役         (外務部長)  兼松  學君         日本国有鉄道参         与         (公安本部長) 久留 義恭君         参  考  人         (和歌山紀南         労働組合協議会         書記長)    森  利一君         参  考  人         (和歌山会議         員)      西川  瀁君         参  考  人         (青森会議         員)      杉山 勝雄君         参  考  人         (青森下北郡         田名部町長)  中村喜代志君         参  考  人         (青森下北郡         東通助役)  川畑 義雄君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 八月四日  委員大石ヨシエ君辞任につき、その補欠として  中村高一君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員中山マサ君、岡田勢一君及び和田博雄君辞  任につき、その補欠として山崎岩男君、三浦一  雄君及び淡谷悠藏君が議長指名委員に選任  された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び  区域に関する件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  本日は前四回に引続きまして、日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び区域に関する件を調査するため、参考人より意見を聴取することといたします。  議事に入るにあたりまして、本日御出席参考人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、遠路わざわざ御出席いただき、厚く御礼を申し上げます。  なお当委員会におきましては、国政調査の一項目として、日米行政協定実施状況調査して参りましたが、今回現地方々意見を聴取するため、特に参考人各位の御出席をお願いいたした次第であります。  本日の議事の順序につきまして申し上げますると、まず参考人各位より、おのおのの関係区域に関する御意見を開陳していただき、その後において委員より質疑がある予定でございます。  なお御意見の開陳は、一人十分ないし十五分程度にとどめていただきたいと存じます。  念のために申し上げておきますが、衆議院規則の定むるところにより、発言委員長許可を受けることとなつております。また発言の内容は、意見を聞かんとする案件の範囲を越えてはならないこととなつております。なお参考人は、委員に対して質疑をすることはできませんから、さように御承知をお願いいたします。  それではこれより参考人意見を聴取いたします。参考人として今日出席いたされている方々は、青森関根演習地関係参考人として、青森町村会会長田名部町長中村喜代志君、青森東通助役川畑義雄君、青森県会議員杉山勝雄君、なお和歌山県大島電探基地参考人として、和歌山紀南労働組合協議会書記長森利一君、和歌山県会議員西川瀁君出席されております。  まず青森関根演習地関係より参考人の御陳述を願います。中村喜代志君。
  3. 中村喜代志

    中村参考人 関根演習地区に関しまして、本日わざわざ委員会でその資料を求むるためにお呼び出しを受けましたことを非常にありがたく、地元民を代表して厚くお礼を申し上げます。  関根演習地区は、この名前田名部町の一部落名前でありまして、関係する行政区域は、田名部町と隣の東通村の両地域にわたつております。田名部町は二百二十三町歩東通村は約千五百五十町歩にわたつておりまして、これが昭和二十四年の七月二十五日に強制収用されまして、今日に至つておるのであります。私は、これから現に接収されているところの地域と、第二は、さらに拡大されようとするところの地域の二つにわけて、当時に関連しているいろいろな問題についてお話を申し上げたいと思うのであります。  第一の現在接収されているところの地域でありますが、これは陸上の方は、今申し上げたように二百二十三町歩田名部町が関連をいたしておりますし、海上東通村も田名部町も約五キロにわたつて接収され、その地域は、両村の七つの漁業組合が半年以上の生活費を得るところの重要なこんぶ生産地帯であります。それでこの点につきまして、補償やその他のことで当局と折衝して参つたのでありますが、この海の方のこんぶに関しまして、こちらでいろいろな関係官庁資料に基きまして請求いたしましたのが、約七千八百万円であります。しかるにその査定の結果は、昨年末からかかりまして、今年の六月末にようやく千九百万円の金が支給されているという現状で、まことに実損害と比較にならない補償の額になつておるのであります。陸上の方の関係につきましては、ばれいしよ、大豆が主たる農産物でありますが、ばれいしよにつきましては、農林省統計事務所で、この土地からは反当六百貫がとれるというところの証明を出しておる。しかるに補償におきましては、反当三百七十貫に査定をしておる。大豆につきましては、農林省統計事務所は一石四斗の証明を出しておるのに、この査定は八斗になつております。それから牧草でありますが、牧草農林省統計によりますと、八十貫とれる見込みなのに、査定は六十貫しか見ていない。これは、大体調達庁ではこの資料を全国的に画一的に見るという点から、税務署の中止査定額を基準といたしておりますので、実損害の八割を補償しろという地方農民の要望と、この点が非常に食い違つた差が出ておりますので、こうした補償の点につきましては、もう少し実情に即した補償の方法にかえてもらいたい。それから今どこの土地にいたしましても、台帳面積と実際耕作している面積とは、開墾その他で相当食い違いができているわけでありますが、補償関係土地反別につきましては、実測反別で支給してもらいたいということを要望したいのであります。  それから借上料でありますが、これも、農地は現在坪一年八円三十四銭になつておりまして、同じ似たような北海道と比べて、まつたく話にならないほどの低額であります。これもいろいろな点から再検討する必要があるのではなかろうか。それから土地でありますが、土地は坪一箇月七銭であります。そしてこの借上料につきましては、土地の七銭だけを見まして、この上に生えておる、牛馬を養うに最も大事な牧草価格を見ない。この点で、地元民として考え得られないような算定の仕方になつておる。と申しますのは、これは向うでは、自然に生成しておるものを、牛馬も入れず人も入れないで管理をいたしまして、約半年分の冬季間の牛馬飼料をそこから得るのであります。もしそれが得られなければ、他から買い取つてもこの飼料だけは確保しなければならない。こういう枚草地帯でありますが、この採草地価格を、借上料の中に入れてもらえないということが非常に残念な点になつておるのであります。この点も再検討をしていただきたい。  それから事故が頻発するわけでありますが、これの事務的処理、あるいは補償の仕方が非常に遅れまして、いつも時はずれてから行われ、あるいはまだ未解決のままに残つておるものもあるのであります。その一例を申し上げますと、昭和二十七年七月十四日に、現在の関根演習地のキャンプのそばから火事が発生いたしまして、山林約三百町歩を焼いたのであります。しかもこれは民有林であります。当時風速十五メートルの非常な強風の日でありまして、だれがどうして火を出したものか、この出火の原因に対してはちよつと判断のつかない火事であつたのであります。しかるに、たまたまここへ関根部落精神薄弱者がちよいちよい出入りしておるということから、警察において推定犯人として調書をつくつて、お前がつけた、つけないというような何ら心証を置くに足らないような者を仮想犯人として調書をつくつて、そうして現在それぞれの官庁に来ておりますために、いまだにこの問題が解決できず、今焼地の木を切り取れば薪炭林になるというものもそのまま放置されて、腐るのを待つておる現況であります。こうした事件についても、すみやかにその処置をしてもらいたいと思います。  なお、いろいろ民有地接収されておるものがありますが、立木接収になつていないのがあるわけであります。この立木がたまたま演習の都合で伐採されておるのを民間人が見受けますが、何ほど切つて何ほど使つておるのであるかということの調査ができない。従つてこれの補償の申請もできないというのが現況でありまして、われわれとしては、年間の短かい期間ででも共同調査をして、この補填をするように進めて行きたいものである。こう考えておるわけであります。さらに接収地内で地雷の爆破演習を昨年五月二十九日にやりまして、相当面積土地二箇所に大きな穴を明けたわけでありますが、しかもそこは耕作地でありまして、そこの農民は耕作することができない現況にありましたので、さつそくこのことについてその真偽をただしましたところ、接収地内だと思つてつたと、こういうわび言一つで、これが片づけられそうなかつこうになつておりますので、これに対して厳重な抗議を申入れいたしまして、この土地を元のようにしてくれるか、できなかつたならば補慣を完全にしていただきたいということを願つておる次第であります。なお演習地に要するバラス採取その他で、近辺に高梨という部落がありますが、ここのところも大きなトラツクを入れまして、無計画に採取をいたしておりますために、川岸の決壊が非常に出て参りました。この点に対しても、当局にそれぞれ陳情、請願をいたしておるような事情であります。  これは現在できておりますところの事故の一部を申し上げたのでありますが、こうした問題が、まだ未解決のままで、接収地内に起きている。これは物的な損害の目に見えるものでありますが、目に見えない精神的な非常な痛手といたしましては、教育上における重大な問題であります。御承知のように、駐留軍とそのあとについて来る女の人々のために、いなかの家屋の不備なところで、いろいろなされるその姿を子供たちが見ている。親も先生も、いかにしてこの子を育てて行くかということについて、非常に頭を悩まし、何とかもつと徹底した軍との連絡の上で、これに対する措置を講じてもらいたいと考えておる次第であります。  これは大体現在の接収地における問題を申し上げまして御参考に供する次第でありますが、さらに第二番目に、今回拡大されるところの地域につきましては、陸上地域は、田名部町には今回ありませんでしたので、東通の役場の助役さんから、この陸上関係のことはるる申し上げていただきますが、海上沖合い約三里以上にわたる拡大につきましては、東通田名部大畑、風間浦の四箇町村関係するところの重大な漁場でありまして、この点について先般陳情に参りました際に、このことを水産庁係担当官お話申し上げましたところが、いかの漁は、午後から始まつて朝に船が帰るのであるから、この点については心配のないように演習時間を考慮してやる、こういう話でありました。しかしこの海域は、いかばかりではありません。ここはひらめ、あら、そい、はも、かれい、あぶらめ等の鮮魚の大事な漁場でありまして、いかばかりでなしに、こうした魚族の捕獲にも重大な支障を来しておる状況にあります。なお万一あの地域拡大されて、危険地域だとされますと、亘暴風雨が出ました際には、船は迂回して沖合いを通らなければならないので、転覆もしくは溺死する危険性は十分にあるわけであります。こうした点から、この海上拡大につきましては絶対反対をする、こういう態度でいるわけであります。  以上私の方から申し上げました点は、現在接収されているところの土地補償、借上げ、事故発生処置、この問題をもつと再検討すべきであるという点と、私の方の町に関係する海上拡大に対しては、絶対反対する、こういう態度を申し上げまして終ります。
  4. 上塚司

  5. 川畑義雄

    川畑参考人 私も第一次接収地と、これから拡大される第二次接収地の両面をお話申し上げます。  昭和二十四年七月二十五日、強制接収された現在使用関根演習地区は、総面積千七百七十二町歩であり、国有地百九十三町歩民有地千五百七十九町歩で、うち田名部町二百二十三町歩東通村は千三百五十六町歩で、海面においては沖出し五キロであります。これが関係部落は、大利石持鹿橋入口の四部落で、戸数二百五十戸、人口一千七百名で、大利鹿橋部落農業林業、牧畜を生業とし、石持入口部落は半農半漁でありますが、耕地が不足でありますので、生計の八割は漁業に依存しております。  昭和二十四年七月、これが関係部落山林原野の六割ないし八割を接収されまして以来、牛馬放牧地はほとんど失い、当初三百頭余の牛馬は百五十頭に減少し、毎年減少しつつあります。なおまた関係部落民製炭業は中止せられ、山林地不発弾の危険により、思うように手入れできず、部落周辺のみを濫伐し、ようやく自家に供しておるのみであります。  この地帯海岸線原野でありますが、放牧地採草地造成を考慮した赤松植林地は、全体的に原野を囲んでおり、昨年春には、約五十町歩、今春五十町歩余り赤松植林地を、いずれも五年生から三年生を駐留軍の失火により焼失し、その他部落周辺のみの杉、雑木等被害木も十四、五万円に及び、現在立入り危険である演習地内の被害も、相当量あることは推測せられるのでありますが、いまだ未解決のままであります。  海面においては、当初接収されました沖出し五キロ、幅五キロの海面被弾地区で、こんぶ密生地帯であり、関係漁民組合六千四百人の入会い漁場であつて、平年十三万貫、金額にして六千万円でありますが、昨年は演習のため採取ができず、これに依存しております零細漁民塗炭苦しみをし、本年七月初旬ようやく一千九百七万円の補償を受けましたが、ほとんど借金の返済に充てられたのであります。  このような漁民の苦悩は、本年こそ解消したいものと、こんぶ採取期間七月二十五日から八月二十五日までは演習中止し採取することに許可になりましたが、海中には砲弾不発弾が点在し、七月十七日から三日間は海上保安庁の調査となりましたが、三メートルから五、六メートルのこんぶ密生のため、捜査は困難で、不発弾一個、破片数個を発見いたしましたが、操業の可否は漁民の判定にまつのみであるとの見解でありますが、これが安全であるとは何人も確言し得ないのであります。同月二十七日から三日間における米軍調査においても、簡易な潜水捜査のみに終り、こんぶ地帯はほとんど調査は不可能でありました。このような状態で、絶好な採取期は憂色と焦燥のうちに経過しております。  このような漁民の苦境は、昨年十二月、海上使用制限A地区からB地区拡大され、この拡大海域は、ひとり付近漁民のみならず、大畑港を中心とするいか漁場として、八戸、北海道方面からも、津軽海峡一円の漁民三千戸に及ぶ漁場は、はなはだしく制肘せられ、その損害の甚大なること予想以上のものがありますので、関係漁民は、これが拡大とりやめ方を陳情して来たのであります。当演習地海岸のやや中間にある石持浜は、石持部落漁業根拠地であり、以前は定住十六世帯、兼業五十三世帯で、六月から十二月まで、もつぱら漁業に従事しておりましたが、接収当初危険地帯として強制立ちのきさせられ、その後住家六十戸の周辺を解除せられ、辛くも出漁に従事いたしておりますが、危険海域迂回等により、著しく操業に不自由を来しております。  以上は第一次接収地関係の概況でありますが、昭和二十六年九月、演習地拡張予定地調査の報に接し、当初津軽海峡に面し東方に延長の計画のようでありましたが、本村としては、石灰石、砂鉄林業畜産業に及ぼす影響が大きいので、拡張とりやめ方を極力陳情しましたが、昭和二十七年八月二十日、日米合同委員会により拡張予定地現地調査となつたのであります。拡張予定地は、本村中央部鹿橋、蒲野沢、桑原、砂子又、上田代、下田代、野牛、猿ヶ森等の八部落で囲まれ、関係戸数三百九十二戸、人口二千八百六人で、農業畜産林業を営み、耕地三百六十九町歩原野四百三十三町歩山間放牧地約一千町歩に六百頭余の牛馬を飼育いたしております。林業においては、薪炭林年間四万石、木炭八万俵、用材二万石であり、それに本拡張地区内国有林一千七十町歩は、密林地帯で、間伐、手入れの労務費等により生計を立てております。下北郡は青森県内においても最も冷害をこうむる地域で、農耕適地は主として田名部周辺であり、本村においても、中央部から東方一帯は、濃霧と谷間を利用するため反収平年一石であり、自給自足もできず、したがつて林業畜産は当地域の重要な生活要素であり、農業畜産不離一体の形態であつて、古来から馬産地として著名であります。かくのごとき現状にあります。本村は、昭和二十四年来の演習地と今回拡張地とを合せますと本村の四分の一であり、しかも従来の実例からしても、不発弾及び破片等による惨事は数回もあり、安んじて生業に従事することは困難であつて本村農林畜産漁業の中枢を犠牲にしなければならないと同時に、本拡張地内にある推定埋蔵量五十万トンの炭鉱と、四百九十三万坪に埋蔵されている砂鉄層は、二・五メートルから五メートルであり、これら資源の開発は下北郡民の待望であり、本村の熱願でありますが、いずれも水のあわとなり、いたずらに困窮をたどるのみであります。  以上の事情から、拡張に対しては再三拡張とりやめ方の陳情をいたして参りましたが、微力な私どもの努力はいれられず、かえつて誤認せられ、本年五月一日閣議決定の報に接し、村民一同、驚愕、不安、焦燥やるかたなく、県議会及び関係当局に窮状を披瀝し、これがとりやめ方を陳情いたしたのであります。閣議決定とはなりましたものの、第一次接収においてかくのごとき大きな犠牲苦難に過し、今また三千六百町歩拡大と、拡張地から発砲する石持浜納屋隣接被弾地域状況を聞くに及び、石持部落民の居住はとうてい不可能であり、数十年来の漁場と住居を失うことはまさに生活権を失うものであります。この石持部落は、昭和二十三年五月、四十三世帯七十棟を焼失し、復興途上において翌年強制接収され、塗炭苦難と闘い、住家学校の復旧に努力し、借金を背負いながらも今ようやく光明を見出しつつある折から、漁業根拠地を他に移転するがごときはあまりにも残酷であります。本村民としても、これ以上の苦しみには耐え得ないことであり、村民あげて拡張反対に結集し、村政運営においても暗澹たるものがあります。何とぞ事情御憐察くだされ、現地調査の上、拡張とりやめ方をお願い申し上げる次第であります。
  6. 上塚司

  7. 杉山勝雄

    杉山参考人 私はこの地域から出ております青森県の議会議員でございます。まず青森県の現在負わされておりますところの演習地地域が、全国的に見ましても非常に過重である。こういう点から、青森県民としまして、さらに現在これ以上の使用に対しては反対せざるを得ないのである。この点を明らかにいたしておきたいと存ずるのであります。きようは、衆議院外務委員会からわれわれ関係地域の者に参考意見を述べろということで、まこととに感激いたしておるのでございますが、主として私から、関根演習地域拡張が五月一日に閣議決定に至るまでの経過、県のとつた態度、並びに村のとりました態度について申し上げたいと存ずるのでございます。  五月一日に閣議決定されたという通知を受けまして、われわれは、そんなはずはないのだ、これは何かの間違いではないだろうかと思つたのであります。しかもその通知の中には、永久使用という言葉があるのでございます。これに対して県側では、ただちに永久使用という言葉は間違いではないだろうかという回答を求むる文書を出してあるのでございます。われわれ県議会におきましても、大月十五日の東通議会反対決議によりまして、さつそく七月八日に同様反対決議をいたしたのでございます。ただちに反対運動に上京いたしたのでございますが、その際、ただいまこちらに見えております外務省の伊関国際協力局長さん並びに農地局和栗入植課長さんとお会いいたしまして、今までの経過について、いろいろと齟齬のある点があるのではないかということをお話申し上げたのでございますが、先方のお話では、承諾を得られるものとして考えておつたということと、文書があるという二点でございました。この点は、七月十八日並びに七月二十日の会見におきまして、文書にはこだわるものではない、しからばこだわらないということにいたしましても、その文書はどういう文書であるかということを、われわれ和栗入植課長さんに見せていただきたいということをお願い申し上げましたところ、これは村当局並びに県から出されました陳情書であつた。このうち県から出されました八月十九日付の陳情書は、これは和栗課長さんから、農林省といたしましても、このような陳情文を書いていただいて、何とか交渉をゆるめるような方向に持つて行かなければならぬのだから、青森県でも、このような陳情書を書いたらどうかということを慫慂されたということを、県の開拓課では明らかにいたしております。さらに十一月二十八日に東通村長同意をしたという文書でございますが、これも七月二十日に見せていただいてはつきりいたしたのでございますが、これはアメリカ側から要求した各箇条について、日本側から、このように条件をゆるめてほしいということを、これは陸上演習場分科委員会構成員である和栗さんの考え方かもしれませんが、この了解を得せしめるために、青森県の開拓課長並びに秘書課長東通村長を十一月二十八日に呼びまして、これに対して同意をしないか、もし同意をしない場合におきましては特別措置法第三条の適用もあるのだということを話したのでございます。これに対して、特別措置法という法律をよく知らなかつたところの東通村長さんは、これは強制使用であつて、いわゆる土地收用法がそのまま適用になるのである。そのような方法で強制的に使用するとしたならば、これはやむを得ないものがあるだろうという程度で引返したのでありますが、十二月の二日に自分の村へ帰りましたところが、十二月三日に陸上演習場分科委員会では、予定通り区域使用調達をするという結論を見たという通知青森県に入つたそうでございます。これに対して青森県の農地山崎開拓課長が、被占領下において強制接収されましたその取扱いの頭の切りかえができなかつたままに、陸上演習場分科委員会で決定したことを最終的な決定であるという錯覚を起したのでございます。この錯覚のもとに、その後における陳情の文面の中に、いろいろな手違いで、現在いろいろめんどうな問題を惹起するような形になりまして、この点は、私定例、臨時県会におきましても、責任を追究する形をとつたのでございますが、明らかに十二月三日の委員会の決定を最終的な決定であると誤認をいたしたのでございます。さらに、これらの点のほかに、私は五月一日に閣議決定されるまでの間にとられましたところの手続の点において、重大な手違いがあるのではないかと考えるのでございます。これは、昭和二十七年の六月二十七日付次官会議了解事項といたしまして、施設及び区域使用に関する業務処理手続があるのでございますが、これによつては、所有権者と協議の上で施設状況調書が作成せられまして、これが日米合同委員会に送付になり、ただちに調書を検討いたしまして、その結果さらに使用決定するかどうかということを同意するということになるようにわきまえておるのでございますが、今回の関根の場合におきましては、五月一日の閣議決定であるにもかかわらず、五月二十一日に調達局青森出張所で、この現地現況調書を作成いたしておるのでございます。さらにその書類が仙台の調達局にまわされまして、仙台から本庁に出されたのが六月の三日でございます。手続の点において、こういう重大な欠陥があるばかりでなしに、当然所有権者その他の権利者の同意を求むるべきであるにもかかわらず、これに対しても同意を求めていない。予備調査の段階におきましては、さらに詳しく説明をして、同意を求むるために、今後数回にわたつて折衝を重ねようというようなことを現地において申されておるのでございますが、その申されておるのは似ても似つかず、全然その方法がとられていない、一方的に決定されたということをわれわれは認めざるを得ないのでございます。さらに、他の地域においてどのような方法で取扱われているかはよく存じませんが、関根演習地拡張地域に対するところのいわゆる演習地の必要理由というものが、青森県にも提示されておらないし、現地東通村にも提示されておらなかつた。先般二十日の場合に、外務省でお聞きいたしましたところが、三月一日付で青森県に提出して送付してあるというようなお話でございました。帰りましてこれを調べましたところが、全然送付になつていない。この事実を知つたのは、七月十八日にわが青森県から出ております山崎岩男代議士が、外務省から持つて参りましたところの演習内容並びに必要の理由、こういう文書によつてわれわれは初めて知つたのでございます。この内容を見ますと――われわれが五月一日以後、反対運動を続ける場合に、一回来るたびに新しい事実を発見して参るのでございます。いわば県民の耳にふたをして接収収用したのではないかという疑念をますます深めるのでございます。なぜならば、この拡張地域からは発砲しないと言つておきながら、農地局へ行つて見ますと、アメリカ軍から出されております地域に対しては、まるいしるしで、キャンプ、あるいは砲座の位置が明らかにされているのでございます。さらに伊関局長さんから直接に聞いたのでございますが、われわれは、この拡張地域から万一発砲された場合におきましても、海上に着弾するものと心得えておつたのでありますが、これは海上にあらずして、陸上であることを新たに発見いたしたのでございます。こういう事情等を考えてみます場合に、一つ一つがわれわれ県民が知らないうちに運ばれていることは、どうしても納得のできない形であると考えるのでございます。  さらに海上の問題でございますが、海上の点は、去年の十二月十二日の閣議の決定、並びに十二月十六日の内閣総理大臣の告示というような形で、アメリカ軍に海域使用せしむるための漁船の航行禁止ということが、これまた法律に基くのかもわかりませんが、一方的に官報に掲載されているのでございます。この点に関しては、第一次のA地区接収地域と第二次のB地区接収地域とは、海岸線においては同一地域にあるのであります。第一次のA地区に五キロ平方であり、第二次のB地区沖出し十三キロ、幅九キロの形であるのですが、根元の万がA地区B地区も重なり合うのでございます。この点をさらに重大視しましたところの漁民は、十二月十六日以降の同意に対しては捺印しておりません。  さらに陸上の問題でございますが、三月三十一日までの使用に対しては、補償等の問題もありますので、承諾を与えているのでございますが、四月一日以降に対しましては、これは承諾を与えていないのでございます。にもかかわらず、海上においても陸上においても、七月二十四日まで演習が続けられておつたという事実を、委員各位にはつきりとお伝え申し上げまして、この点に対する善処方をお願い申し上げたいと考えるのでございます。  次に、結論になりますが、拡張地域の強制使用が行われようとする形であるならば、第一次の使用に対しても承諾を与えないという東通村民のかたい決意のもとに反対運動が続けられておりまする点を御了承願いたいと思うのでございます。いたずらに刺激をすることは、非常にいろいろな事態を惹起する形になるのでございまして、もしこれ以上の刺激を与えることは、郡民、県民をいたずらにただ騒擾せしめる形になると考えるにもかかわらず、先般仙台の調達局長名で、提供準備のための土地等への立入りについてという文書が七月二十八日に出され、これが県を通して東通村に送付送達されているのでございますけれども、これに対しては、今外務委員会でいろいろとわれわれの現地状況をお聞き願うことになつているので、この点もよく経過を見てから調査をすべきであつて、いたずらにこのような刺激をするような形の通牒を出すのはわれわれは納得行かないという建前から、調査に対しても拒否の態度を堅持しているのでございます。  以上ごく簡単でございましたが、事務的な経過お話申し上げまして御参考に供し、そして今後の反対が実現をせられるよう、特に委員各位にお願い申し上げる次第でございます。
  8. 上塚司

    上塚委員長 これにて青森関根演習地関係参考人各位の陳述は終了いたしました。時間節約の都合上、引続き和歌山県大島電探基地に関する参考人の陳述を求め、それが終りましたならば、関根、大島の順序により質問を許したいと思います。  では和歌山県大島電探基地に関する参考陳述をお願いいたします。和歌山県会議員西川瀁君
  9. 西川瀁

    西川参考人 和歌山県の県民といたしまして、一言申し上げます。ただいま未曽有の大水害のために、県をあげてこの応急対策にかかつておりますため、本日の陳述者として申告いたしておきました下西県会議員も、そのために来られないというような状態で、私も県議会において質疑応答をした程度のことしか、それよりももつと深い反対理由等については資料を整えて来なかつたことをおわび申し上げます。ただ私のあとに続く森利一君が、その基地の近くの人として反対理由を申し上げることと存じます。  私は、この大島電探基地については、もとよりあの紀洋におけるアメリカ軍の演習地等の状態を見ますときに、これはまことに、この純真な漁村にこういうことがありとすれば、まことに不幸なことであるということを一般に考えているものであります。大島村は、御承知の通り潮岬の東に位する、本州に接する勘といたしましては最南端の地域にございまして、非常に純朴なる漁村でございます。ただこの漁村に米軍が入つて来て、今まで聞き及んだような幾多の不祥事がありとするならば、まことにこれを反対せざるを得ないのであります。ただ私の申し上げることは、要約いたしますれば、去る六月県議会におきまして、和歌山県知事小野眞次君が答弁されたことを私は支持するものであります。その答弁とは、反対することは、まことに心から反対するが、事閣議において決定したことであつて、もし絶対に本州防衛のためにわが和歌山県の大島基地がそれよりもほかにないということであるならば、国家的見地から考えてやむを得ないことである。しかし、そういうことに対して、もしこれを動かすべからざる方針として進まれるのであるならば、いろいろの最悪の事態を予想して、最善最高の補償によつてその大島村並びに附近の町村に対して慰藉しなければならない、そういうこの答弁を私も支持する一人であります。何となれば、この大島村は、かつて数十年前にトルコの軍艦が樫野崎で沈没したことがあります。そのときに、命を投げ出して飛び込んで行つて、全乗組員を一人残らず救い上げた人々の血の流れている大鳥村でございまして、あそこにはりつぱな碑も立つております。実にまた日本人として、大和魂のかたまりであるくらいの村であります。そうしてこの村に、いま言いふらされているがごとき風紀問題が起るとするならば、まことに遺憾なことでありますが、しかしまた私は、この大鳥基地が阪神地方の防衛基地であり、また本州中部地方等の防衛基地であるとするならば、これは和歌山市の防衛基地であり、またその南に位する東亜燃料、丸善石油等の大きな工場地帯の防衛にもなるといたしますならば、この大鳥村と付近の人にはまことにお気の毒ではありますが、大きな面から言つて、国家を守るという点においては、やむを得ないものでないかとも考えるのであります。ゆえに私は、ここに後ほど述べられるところの森君の反対理由を皆さんがお聞きくださいまして、そうしてこれに対して人為的に予防できることは予防するという、あるいは法律また県条例等によりましても、できるだけこの婦女子に関する問題等を予防するような方法をとられまして、そして最大の幸福を得、最大の地方の発展ができるような最大の補償を要求するものであります。  なおいろいろ詳しい点につきましては、御質問のときに県議会とし、また県民といたしまして答えるわけでございます。はなはだ簡単でございますが、これをもつて終ります。
  10. 上塚司

  11. 森利一

    ○森参考人 森でございます。大島村の件につきまして、当委員会の特別のおはからいをいただきましてありがたく思つております。実は大鳥村の村長さん、あるいは婦人会長さんも参考人になつてつたわけでありますが、水害のために交通が非常に不便になつておりまして、間に合わなかつたというような状態になつておりまして、私だけが三重県の側をまわりまして、けさはせ参じたようなわけでございます。  先ほど西川さんから御説明がありました通り、大島村というのは、皆さんすでに御承知の通り、ここは串本、向いは大島、中を取持つ巡航船のあの歌のある大島村であります。串本から約巡航船で十五分、周囲四里という小さい村でありまして、この村の人口は約三千三百人ほどおります。職業といたしましては、ほとんどが漁業であり、それから農業、半農半漁という島でありますが、もちろん山ばかりの島でありまして、耕地も非常に少い。そういうような関係上、非常に貧しい村であります。戦前は海外へ相当の人々が進出いたしまして、海外からの仕送りによつて生計を立てて行つてつた、こういわれておつたわけでありまして、現在でも、海外とは行きませんが、アラフラの遠洋漁業とか、遠くの海へ出かせぎに行つて生計を立てておるというのがこの村の実情でありますけれども、非常に平和な村でありまして、犯罪行為なんかも、軽犯罪が年間に十件そこそこである。大きな犯罪がほとんどない。それがために、昼といわず夜といわず、戸締りをしたことがないというような非常に静かな平和な村であるのであります。島民の気性といたしましては、非常に純朴であり、剛直である。知らない者がこの村へ入つて行くと、何か大きなけんかでもしておるのじやないか、こう思うわけでありますけれども、それが普通の会話であるというように、非常に素朴剛健と申しますか、気の荒い点はありますけれども、先ほど申し上げましたように、非常に純朴な村であります。この村に、御承知のようにアメリカ軍の電探基地が設置されるということに現在なりつつあるのでありますけれども、島民はあげてこれに反対いたしておるのであります。その経過については後ほど説明申し上げますが、その反対の理由の第一点は、この村には、戦時中にやはり海軍の同じような施設があつたわけであります。それがために、戦争に非常に悩まされておる、爆撃の対象になる、隣村の潮岬には海軍の飛行場がありまして、この辺が非常にねらわれた。それがために戦争は非常に恐ろしい。だからこういう危険なものをこの村へ持つて來てもらつたならば、いざという場合、島でありますから避難することもできない。そういう意味においてまず第一点として反対である。  第二点は、今西川さんも申し上げました通り、風紀教育上の問題でありまして、先ほど申しましたように、夏の盛漁期になりますと、男盛りの人はほとんど遠くへ出かせぎに行く。そして留守を守つておるのは女、子供ばかりである。特にこの島の特徴といたしましては、夜焚網といつて、夜出漁するのであります。だから夜は、留守居をしておるのは女子供というようなことになりまして、もしこの村にアメリカ人などが入つて来た場合には、そういつた面におきまして、家を留守にすることが危険である。それがために出漁は不能というようなことになれば、経済的にも非常に打撃をこうむる。またこの接収予定地に接しておるところでありますが、ここに中学校があるわけであります。中学校と申しますと、相当な年ごろの学生たちでありまして、この子供たちに与える教育上、風紀上の影響も村人は非常に心配いたしておるわけであります。特に串本高等学校へ通う生徒は、日暮れ方この基地の下を通らなければならないというようなことも手伝いまして、第二点といたしましては、風紀、教育上の問題からこれに強く島民は反対いたしておるわけでございます。  第三点は、この村は耕地が非常に少いのでありますけれども、その上に二十四町歩以上の耕地山林接収されることによる経済上与える影響、そういう理由をもちまして、島民は強く結束してこれに反対をいたしておるわけでございます。  なおこれについての経過を簡単に申し上げますと、占領中に接収予定の公文書が大鳥村に来たのであります。これは占領中でありまして、村当局といたしましては、困つたものだという程度になつてつたわけでございますけれども、講和発効によりまして、これが白紙還元されて新しく計画されたわけでございます。二十六年の十一月二十三日に大阪の調達局から派遣したことが事の起りとなりまして、村民大会を開きまして、ここでいかなる説得があろうが、いかなる条件があろうが、村民は絶対に反対であるという反対決議をいたしまして、反対対策委員会を設けたわけであります。十二月九日には、大阪の調達局の平井課長さん一行五名が見えましたけれども、村民は激昂いたしまして、役場を包囲いたしまして陳情決議をいたし、決議文を手交したわけでございます。その翌日もやはりこの方々が参つたのでありますが、役場に入ることができないで、役場の外で、立入り調査はとりやめる、村民反対は十分中央へ反映するからという言葉を残して立ち去つたようなわけでございます。そのころから、村民反対機運はますます高くなつて来たのでありますけれども、アメリカ軍より変更できないとの回答が外務省にあつたというような情報も入りまして、四月二十日に、外務省の国際協力局の次長さんと、関参事官、和田事務官の方々が政府の使いといたしまして了解を求めに参つたわけでございますが、大島の桟橋に集まつた村民が、ここで一歩も大島村に立ち入ることをさせないで、三時間立ち往生というような形で帰つてもらつた。五月一日には、閣議で大鳥村を使用する、接収するということに決定いたしておるのでありますけれども、村会、対策委員会は、数次にわたつて反対確認をいたし、さらに政府当局その他各当局へ、これのとりやめ方、あるいは変更方を陳情し、お願いいたしておるのでありますけれども、ただいまのところは、土地收用法による立入り調査は無期延期するということだけになつておりまして、この大島村の軍事基地を中止する、とりやめるということにはなつておらないわけでございます。ところが村民は、先ほど申し上げましたように、非常に強い決意を持つてこれの反対をいたしておりますし、ある村民は、最後の場合は、内灘以上の問題になるやもしれないというほどの強い反対を示しておるわけでございます。なお串本におきましても、これの反対村民大会を持ち、各市町村すべて反対大会を持ちまして、漸次全県的な反対運動に広がりつつあるわけでございます。特に先ほどから申し上げました通り、この大島は非常に素朴な村民であり、ほんとうに経済、風紀上の問題、あるいは外国人には入つて来てもらいたくない、それから戦争は恐ろしい、こういうところから燃え上つたところの強い反対、しかも紀州の南端であり、どちらかというと置き忘れられ、あるいは見捨てられがちの紀州の南端の孤島であります。どうか十分この点をお考えいただきまして、委員さん力方の御協力を得まして、この基地設置反対方を御協力願わんことをお願いする次第であります。
  12. 上塚司

    上塚委員長 これにて参考人意見の陳述は終了いたしました。  これより質疑を行うことといたします。まず青森県関根地区に関する件について質疑を許します。山崎岩男君。
  13. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 ただいま熱心なるところの参考人方々の御意見を拝聴いたしたわけでありますが、その意見を要約してみますならば、関根の地区は、占領政策の部面といたしまして、占領当時からこれを使用しておつた。その使用しておつたところの地域というものは、明確になつておるわけであります。そこでその明確になつておるところの地域に対する補償の問題、あるいは突発的に生じましたところの損害に対しまするいろいろな賠償の問題等が起きて来るわけでありますが、それに対する当局処置というものは非常に緩漫であつて、渋滞を重ねておる。その渋滞を重ねておるということが非常な誤解のもととなつて村民を激昂させている重大な原因になつているということを、私は今ここで承知をしたのであります。この点につきまして政府当局は、たとえば一つのこの問題につきましても、外務省、あるいは水産庁、あるいは特別調達庁という役所がたくさんありまして、そのおのおのの役所においての仕事というものが、非常に敏活、迅速を欠く、セクシヨナリズムの結果としてこの事務の渋滞があるのでなかろうかと考えるのでありますが、この点について外務省や水産庁並びに特別調達庁と非常に敏速、適切なる処置を講ずるという連絡機関を設けてやつているかどうか。私はこの事件が起きれば、その起きたことに対して彌縫的にやろうとして、その彌縫的な処置が敏速なる機宜の処置を欠いている、こういう結果になつておるのではなかろうかと考えるのでありますが、伊関局長さんはこの点についてどうお考えになつておりますか、まず承りたいと思います。
  14. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私も補償が遅れておるという実情は、十分承知いたしております。補償関係につきましては、必ずしも官庁間にセクシヨナリズムがあるとは考えません。これは主管は特別調達庁でありまして、予算を握つておるのは大蔵省であります。ですから、特別調達庁が主管省でありまして、大蔵省から予算をもらつて支払う、この二つの省の関係になつております。  それからもう一つは、現地におけるいろいろな連絡が不十分だという点は、私たちも認めております。これを改善いたしますために、現地における日米の連絡協議会というようなものを設置することを各地に慫慂いたしております。大分たくさんできて参つておりまして、結果は逐次よくなりつつあるように考えます。
  15. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 その主管業務を取扱つておるのは特別調達月というのでありますが、その特別調達庁青森県内に、この問題に対して適切なる処置を講ずるための出先機関がありますか。あるとするならば、その出先の機関はどこにありますか。
  16. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 補償問題に関しましては、調進庁の所管であります。その所管は仙台調達局でありますが、出先の機関といたしましては、青森市に仙台調達局青森出張所がございます。
  17. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 しからば青森におきまするところの出張所のこの問題に対するとつ組み方としては、非常に緩漫であるとしかわれわれには考えられない。こういう問題は、国家の存立にも大きな影響を及ぼして来ると思うのであります。行政協定の問題に対しても重大な影響をもたらし、これほど大きな問題は現下としてはないはずである。平和が回復いたしまして、その後七年も八年も占領されておつて、やつとわれわれが国権を回復した、条約も発効した、こういう段階になつている。私どもの国防上の重大なにない手となつているこのアメリカ軍に対するいろいろな反米思想というものは、何から来ているか。私は当局の緩漫ということに原因があるんだ、こう言わざるを得ないと思う。なぜならば、ただいま事実問題として、事務の渋滞ということがいろいろな点において地元民の反感を買つている原因だということを私どもは知つて、私はかように言わざるを得ないと思うのであります。ところがその特別調達庁青森にあつて青森から出かけて行つても仙台へ取次をする、仙台から本庁へ取次する、本庁と大蔵省と連絡する、こういうようなやり方であつては、いつまでたつてもこういうような問題はてきぱきと解決はできないと思う。よつて問題を解決するためには、政府は特別なるものをもう一つこしらえて、特調を廃止するなら廃止して、厳然たる力をもつててきぱきやらなければ、問題解決の道を早める処置はできないと思う。  そこでもう一つは、風紀の問題が取上げられている。青少年の教育という点からいたしましても、風紀の問題は、国情の違うアメリカの兵隊と日本の慣習との間に非常に大きなギヤツプがある。それが地方に与えている影響というものは非常に大きい。この大きな問題の解決をつけるのにおざなり的であつて、ただ行き当りばつたりの政策をやつてつたのでは、私はこの問題の解決はつかぬと思う。これに対して外務省はどういう処置を考えておられるか、この際承りたいと思う。
  18. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 風紀の問題につきましては、非常に大きな問題で、しかも解決は非常にむずかしい問題でありまして、昨年の秋くらいか関係各省、あるいは米軍もまじえましていろいろと対策を協議して参つておるのでありますが、必ずしも完全な解決を得るという見通しは、率直に申しましてございません。ただ事態を今よりも改善したい、こう考えまして、できるだけの処置をとろうということになつておりまして、先ほど申し上げましたような地方連絡協議会というものを各地につくらしておりますのも、主として風紀の問題を対象といたしておるからでありまして、この協議会でもつて地方的にいろいろと話をしまして、地方的に解決できる問題はやらす、それからまた地方的に、ことに学校等のあるような地区はこれを立入り禁止にする、あるいは地方でどうしても解決できない問題は、それぞれ中央官庁の方へ言つて来る。そうして中央官庁で法制的な、予算的な措置を講ずるというふうにいたすことにするわけであります。もう一つ取締りの強化という点も考えてみまして、これは自治警並びに国警に対しまして予算的な措置も講じて、取締りの面を強化するつもりでおります。各地においてこうした協議会が逐次発足いたしまして、多少の効果をあげて来ているところもございます。米軍側もこれに応じまして、非常に積極的な態度をとつております。たとえばどこか呉の方でございましたか、立入りを禁止いたしているところもございます。富士山麓につきましても、御殿場を除きまして、全体の地区を期限を切らず立入り禁止をいたしているというような実情でございます。この問題につきましては、米軍の方が自粛すべき点も多々ございますが、日本側の方にも大きな問題があるのでありまして、地元は非常に生活が苦しい、苦しいからつい家を貸すとか、部屋を貸すというふうなことになるのでありまして、部屋さえ貸さなければ、そうした子供の教育に悪いというような面も多少は減つて来るのであります。何分にも生活が苦しい。従つて家の構造が不完全であつても女に部屋を貸すというふうな問題もございます。また地方的にそういう業者の、いわゆるボスというふうな者がおりまして、それの勢力もなかなか強いというふうな面も見られております。ですから、これは日米ともに大いに努力しなければなかなか改善されない問題だろうと考えております。考え得るだけの措置は講じております。
  19. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 なかなかこれは、兵隊さんだつて生理現象を持つておりますから、抜本塞源的な措置も困難であるということはよくわかる。しかしながら、日本として向うさまに対して強い要望をした例があるでしようか。たとえば軍規、風紀の問題において、現在日本でこれだけの大きな問題となつているのは、行政協定という根本の問題でなくして、派生的な問題としてこうしたいざこざができている結果が、非常に大きなあわとなり、あるいは波となつて来ている、そういうことがただいまのこういう日本の風潮をかもしているのだと私は考える。よつて、一体風紀、軍規の面から、厳重なる取締りをしてもらわなければ、この問題の解決がつかぬという点については、外務省から、あるいは日本の政府から、強く要望しておられるのでございましようかどうか、その点を承りたいと思います。
  20. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この点につきましては、何回要求したか数え切れないくらいに、常時取上げております。日米合同委員会でも、風紀の問題は常に問題になつております。そしてそのために、日米間に合同風紀対策委員会というふうなものもできたわけでございます。
  21. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 こういう問題を解決するためには、昔の遊郭のようなものを設けるということは、現在の人権尊重の立場から非常に困難だ。そこで私のくふうなんですが、病院船のようなものを持つて来て、赤十字のマークでもつけておいて、何か生理現象の解決策を講ずるといつた根本の策まで考えなければ、この問題は彌縫的に終ると私は思う。まことに笑うに足るようなことであるけれども、一つの病気に対する処置として考えてみれば、これまたおのずから別の解決の策を立てることができると思うのでありますが、こういう点についても、新しい角度から研究をしてもらわなければならぬ。そうでなければ、この問題の解決はつかない。それは日本の婦女子にもいろいろな点において難詰しなければならぬ問題があるのでありますが、この問題の解決こそ、私はこういう大きな波を防ぐ一つの防波堤になると思う。彌縫的なやり方でもつてこれをやれば、やはりこの問題は、各地において好ましからざる問題として今後とも頻発するものであると、かように考えるのであります。そこでこれに対するところの処置は、政府としては断じてやらなければならない問題であると考えるのでございますから、外務省としては、この対策を十分立案されまして、当局としてなおさらに具体的な方法を講じられるように、私はお願い申し上げたい。これは半に私どもの県の関根地区の問題ばかりではないのであります。ただいまの和歌山県の問題にしても、憂うるところは実にこの点にある。こういう点を考えてみるならば、これは当委員会において論議する問題ではない。これは大きな国論でございますから、十分に考えられまして、これに対する処置を講ぜられるようにお願い申し上げたい。  次に私は、このたびの関根地区の拡張の問題について、先ほど杉山会議員からお話があつたのでありまして、これに対するところの政府当局と地方に対する文書の交流の関係等についても、いろいろな点において誤解がある、発送したところの文書が手に届いていない、あるいはまた納得せらるべき問題が納得せられずに、ただたちまちのうちにそういう問題が閣議決定となつて地方に押しつけられておるという、こういう問題が地方民の激昂を買つておるというふうにも考えられるのであります。この点について当局はどういうふうに考えているか。当局は地方民と十分な連絡がついて、円満なる了解のもとにやつたとまさか考えていまいと私は思うのでありますが、これに対する所見を承りたいと思います。
  22. 上塚司

    上塚委員長 山崎君に申し上げますが、なお質問者が多数ありますので、時間の整理をする都合がありますから、これからの質問を整理していただきまして、できるだけ簡単にしていただきます。
  23. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 関根地区の拡張問題の詳細な経緯につきましては、農林省和栗課長が詳しい御説明をいたすと思います。私は直接折衝に当つておりませんので、詳しい経緯は存じませんが、ただこの問題は、昨年の三、四月ごろから起きておる問題でありまして、閣議決定を見ましたのは本年の五月でございますから、その間に一年以上をかけて交渉をいたしておるわけでございます。なおいろいろ現地の十分な了解を得なかつたというお話がございます。そうした点もあろうと思いますが、これは全国的に見まして、新しい施設区域を提供します際には、どこでも反対なのであります。喜んで置いてほしいというふうな例も全国に二、三はあつたかと思いますが、そういうのはきわめて例外でありまして、いずれも風紀問題、その他経済上の理由でもつて反対いたすわけであります。しかし国家的な必要を説明してこれをがまんしてもらう、影響をできるだけ少くいたしまして、地元の要求をできるだけいれ、軍の要望と地元の要望を調整いたしまして、そうして提供しているというのが実情であります。ですから、どの県どの市町村に対しましても、われわれの方から照会いたしました際に、正式に、けつこうです、どうぞ提供さしてくださいということは言つて来ないのでありまして、反対である、しかしどうしてもやむを得なければ、こうした条件をいれてもらいたいというのが、各地からの回答の通例であります。大体関根の場合も、そうした経過をたどつて閣議決定に至つた、こう思つております。
  24. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 それでは他の方々の質問がありましようから、私は一応留保いたしまして、お進め願います。
  25. 上塚司

    上塚委員長 次は三浦君。はなはだ時間を制限するようですが、約十分程度でお願いいたします。
  26. 三浦一雄

    三浦(一)委員 今山崎君から御指摘になりましたが、政府は従来この問題につきまして、地元の納得の行くこと、同時にその協力を求むるということが根本の方針だと存じます。しかるにかかわらず、この関根基地の取扱いの問題につきましては、地元からも今詳細に話した通り、納得どころか、手続におきましても、非常に強圧がましいことになつておる。伊関局長も今御説明になつて反対であつてもしかたがないのだ、しかたがないときにはこういう条件にしてほしい、こう言うことは、その半面は、地元はこれに同意しておるというふうにお考えになつておるようですが、しかしながらこの問題は、たとい閣議決定に相なりましても、やがて展開される諸手続によりまして、土地所有権者等が同意しないにかかわらず、あえてこれが強圧的に強制せられるということが想像されるのでございますが、その意図でございますかどうか、この点をお伺いしたい。
  27. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 関根の拡張地域は、八戸におります部隊の演習場として必要なのであります。八戸に約一個連隊――一個連にいろいろな付属部隊の砲兵、高射砲などがついておりまして、それで独立の単位として交戦できる一つの部隊がいるわけです。これの演習場がどうしても青森県か岩手県に一個所いるわけであります。大体面積としましては、約六千町歩くらいのものが基準であります。東北におけるほかの部隊、仙台の部隊は王城寺を持つており、神町の部隊は大高根の演習場を持つております。これで十分であります。八戸の部隊だけが現在の演習場では狭い、これは現実に狭いわけであります。これの拡張はどうしてもしなければならぬと考えております。ですから、ただちに関根地区に対して地元の反対に押し切つて強制手続をとるかという点になりますと、必ずしも今ただちにそういう考えであるとは申し上げません。もう少し地元側と十分お話をしまして、話合いがつく点は話合いをつけたいと考えております。今後の成行きに応じて、どういう処置に出るかはまだきめておりません。今まで地元がいろいろと陳情されておりますが、その反対理由を承りましても、政府の手続に手落ちがあるというふうなことを盛んに言われておりますが、そういう点を一応離れまして、それでは現実にどういう点が困るのか、それらの問題について話合いをしたいということを私の方は申しておるわけであります。反対理由に至りますと、おつしやる方も意見が区々でありまして、必ずしも一致していないものもある、もう少し十分話合いをやつてみたいと思つております。
  28. 三浦一雄

    三浦(一)委員 今六千町歩予定しておるわけでございますが、それは、場合によつてはしかたがないということを示唆されておるのであります。同時に強制的なことはしない、成行きによつてなお善処いたしたいということでございますが、私は第一次の地区程度にとどめられ、拡張地区は中止せられることを強く希望いたします。さらにその際においては、地元の産業、経済、すなわち生活に関することが非常に問題になる、これが基礎になるものだ、そのほか諸般の問題もございましよう、けれどもこの地区に関する限り、おのずから二つの問題がある。海上における砲撃等の区域が広がるために、この地先の者たちの生業の最も中核をなす漁業がほとんど不能に帰する。第二は、この地区において最も重要なるあの拡張地区における畜産、あるいは林業等の操業ができない。そういう場合に、御当局はいろいろ研究しておられるでございましようが、あの地区の、たとえば国有林の地区だけに制限するとか、あるいは特に陸上の方は、特定の地区に制限して考える余地はないか。次に海岸地区においては、いかなる方法をもつて地元の生業との関係を調和するか。これらに対する了解がなければ、おそらく地元の協力を得て次の手を打ちたいとおつしやつても、なかなか容易に進まぬと思う。その点についての関係庁の総合された御意見があると思いますが、それを承りたい。
  29. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 海上につきましては、皆さんは地域拡大されたというお話でありますが、占領中に比べて水域は縮小されております。奥行きは延びておりますが、絶対面積においては縮小されております。それから撃つておる時間は、A地区B地区で違いますが、たとえばA地区は、午前十時から午後三時までというふうにいたしております。あそこの漁業が主としていかの夜づりであるというので、それを考慮してやつたことでありますが、そのほかの魚もとつておるというお話であります。それはもちろんおとりになつておることと思いますが、漁業が不能になるというふうな問題ではないのであります。漁獲高が制限されるという点はもちろんあると思いますが、その点については、十分考慮するという考えでおるわけであります。  それから先ほどあらしの場合等に、船が難破するかもしれぬというふうなお話もございました。これは、あらしがあると思えば演習をやめるというふうなことは、話合いでもつて十分実現できることと思います。そういう御希望がありましたならば、連絡を十分にしまして、あらしがあると思えば、たまを撃つことをやめるということはできます。たとえば片貝の場合でも、これは正午から午後五時まで撃つておりますが、午前中朝早くから漁に出ておりまして、非常に大漁の場合には連絡をして、射撃開始の正午を午後一時、二時まで延ばすということもいたしております。こうしたことは、現実の連絡で十分解決できると思います。  それから国有林のみというお話がございましたが、     〔委員長退席、富田委員長代理着席〕 現在拡張いたしましても、六千町歩という面積にはとうてい到達いたしません。国有林のみにいたしたいという考えはわれわれも持つたのでありますが、地形その他で、どうしてもそれだけでは演習の目的を達し得ないという軍側の説明でありまして、この説明もわれわれは了承いたしております。畜産に与える影響についても、私の方で現在現地の方にお話しておりますのは、拡張地区につきましては、演習を月に一回、三日間くらいに制限してもよい、そういうお話もこの間ある方には申し上げたのであります。五、六名の代表の方であります。そういう方法によりまして、もちろん多少の不便はありましよう、多少の経済的な影響もありますが、何とか地元の要求と国家的要求と両立させ得るのではないかと依然として考えております。
  30. 三浦一雄

    三浦(一)委員 理想的にいうと、六千町歩程度ほしいということでございますが、すでに第一次の接収が行われ、さらに第二次の拡張計画をされておる。そうすると、この第二次の問題か政府のいわば強制によつて片づけられますと、追つて第三次の六千町歩程度までの地区の拡張ということが予想されるのでございますが、やはりそこまで延ばされる御意図でございますか、その点をひとつ伺いたい。
  31. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 そういうことは考えておりません。
  32. 三浦一雄

    三浦(一)委員 私は、この拡張地区につきましては、折衝の過程から――と申しますのは、すでに昨年の春ごろからということでございますが、占領当時からの惰性によつて、いわば地元が十分に発言することができない、地元の意向を十分に反映し得なかつたという環境のもとに、政府の国家的要請なる名のもとに決定されたものと思う。すでに日米行政協定が成立しており、それを裏づけるがごとく閣議の決定も行われておるという事態でございますので、われわれ実は、この事態を見るときに非常に困難なことと思うのであります。伊関局長が、現在の困難なるこの国際情勢に処して、外交上親善をはかりつつ日本防衛についての最善の努力をせられることは、私敬意を表する。しかしながらこの経緯を見ますと、どうもこれが地元の納得と了解が行つておらぬところに立つておるのでありまして、従つてこれを解決するにあたつては、土地所有権者の了解のもとに調印が行われなければ、これはとうてい実行はできぬだろう。もとよりあの地方の人々は、ものを言うことも十分でない。しかしながら、もはや地方自治の運営ができなくて、東通村長が辞職しておるという段階に逃しておるのでございます。かるがゆえに、占領当時ですら狭いところでやつておられたのでありますから、その後一連隊の訓練が必要だと考えられたようでありますが、この問題はさらに御検討していただきたい、願わくは最小限度にとどめてほしい。そして現在第一次に接収されておるあの地区等に限定せられる用意があつてしかるべきだと思うのであります。  それから第二段の海上の問題でございますが、局長はおそらく水産庁等からの説明でもつて説明しておられるのだと思います。これは事務官相互の了解ならばよろしいのですが、おそらくそういうことは、地元で納得いたしません。ただ単にいかつりだけしているのだということでございますけれども、これはあの土地における漁業操業の実態には即しておりません。さらにまた石持納屋のごときは、あの海辺において唯一の避難港です。これが砲弾を射撃することによつて、ほとんどその機能を喪失するということでございます。でございますから、これらの諸点をもつと深く認識せられ、実情を明らかにしてもらいたい。しからずんば、この処刑はとうてい十全を期し得ないと思うのです。  最後に、先ほど山崎君が触れられた点でございますが、漁業上の補償の問題。あそこはこんぶの重要な生産地で、それによつて生業を立てている、こういうことです。そのこんぶのごときも、昨年の十二月に、だんだん話を進めて行つたならば、旧正までにはやつてやる、ある程度まではすぐ出してくれるというわけであつたのに、旧正はさておき、地元は、高利の金を借りて一時の難をしのいだ状態で、春になつても片づかない。先般国会が始まつて、やあやあやかましく言うので、初めて補償が行われた。しかもその金額たるや、あの角度、この角度から、非常に冷酷無残な査定をされている、こういう実情でございます。私はかくのごとき、ただ単に財政上の見地からということで不条理きわまる、同時にまた漁民そのものの実態と感情を無視したやり方では、この基地問題は片づかないと考えるのであります。これにつきましては、本日は次長がお見えになつておるのでありますが、深く思いをいたされ、同時にまた、現在の機構等の改革の問題については、すでにこの外務委員会において堂々と討議されているので、深く思いをいたして十全を期せられんことを希望して、私はこの質問を終りたいと、こう考えます。
  33. 富田健治

    ○富田委員長代理 それでは次に、通告順によりまして淡谷悠藏君。
  34. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さつき要請いたしました保安庁長官、並びに水産庁長官はお見えになつておりますか。
  35. 富田健治

    ○富田委員長代理 ちよつと申し上げますが、保安庁の官房長と保安庁の人事局長、この二人がもうすぐ見えるだろうと思います。それから、ここに水産庁経理課長が見えております。
  36. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは質問を始めておりますが、読売新聞の八月四日の記事でございますが、ただいま問題になつております関根の演習地におきまして、米軍演習地青森と秋川の保安隊の両部隊が入つて演習をいたしまして、秋田部隊のジープが草原につつ込んで、草原の下にあつた米軍不発弾に触れて爆発いたしまして、このためにジープは大破し、十三名が重軽傷を負い、さらに二十一になります保安隊の隊員が、その七時に死亡したという記事が載つておりますが、これは、伊関局長はごらんになつておるのでございましようか。もしごらんになつておりませんでしたら、これをお目にかけますが、ごらんになつておるのでしたら、保安隊とアメリカ演習地関係につきまして、保安庁並びに外務省との間に何らかのとりきめの事実がございますかどうか、これについてお何したいのでございます。
  37. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その新聞記事は、私も読んでおります。昨日保安庁の方に照会いたしましたが、昨日中には、まだ現地から詳しい報告が入つておらぬということでございました。それから演習地につきましては、大体日本の国土が狭い。従つて両方がおのおの演習地を持つということは、無理がございます。もちろん専属のものもございますが、しかし、演習地はできるだけ共用しようという原則が確立されております。この原則に基きまして、現地におきまして両方の部隊が打合せまして、片一方が使つていないときに、片一方が使うということになつております。
  38. 淡谷悠藏

    淡谷委員 保安隊が演習しているから、それを理由にして米軍演習地に提供しろという要求もあり、また米軍演習地として使つております演習地に保安隊が入つて演習する。あたかもねずみの穴の中にへびが入りこんで共棲生活をするというようなのが、今の演習地の実態のように思われますが、その場合に、こういう不慮の事故が起つて来る。特に地元の方は、アメリカの演習地に貸したはずなのが、いつかしら保安隊が入つて来て、演習をしない間は草を刈り、あるいは使うことができると思つてつたのが、今度は保安隊の演習地でまた使えない、こういう事実がございましたかどうか、東通村の助役さんに御説明願いたいと思うのでございます。特に今度の新しい保安隊の死傷事件につきまして、現地でお調べになつていることを、できるだけ詳しく伺いたいと思うのでございま
  39. 川畑義雄

    川畑参考人 ただいまのお話でございますが、今の保安隊の演習につきましては、七月の二十六日ですか、二十七日ですか、はつきりいたしませんか、将校の方が了解を求めに参りました。私の方では、これははつきり拒否することに決定いたしておりますので、その旨を申し伝えましたところが、今回の演習は、秋田部隊と青森部隊との合同演習であるために、今ただちにこれをとりやめにするということは、まことに困難であるから、何とか了解してくれというお話でありました。私の決議に基きまして、村の総意を伝えまして、極力拒否したのでございます。その後私は青森の方へ出張し、またこつちの方へ出張いたしましたので、今回の爆発事件は新聞紙上で承知したのみでございまして、はつきりその状況はわかつておりません。
  40. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大石次長さんにお伺いしますが、仙台の特別調達庁で五日から三十日まで、拡張演習地につきまして現地調査をなされているということでございますが、どういうところへ重点をおいて御調査になるか、御方針を伺いたいのであります。
  41. 大石孝章

    大石説明員 お話拡張部分の調査のため、村当局に対して立入りを承諾してほしいという文書を出し、かつ係の者も、多分口頭でいろいろ御了解を得に参つたはずでごごいますが、それは事実でございます。その目的とするところは、たとえば拡張部分概略三千五、六百町歩といつたような話があるわけでございますが、どこからどこまでというような、その土地の限定、それから正確な数量、これはいずれの場合でも必要でございます。私ども担当庁といたしまして、その境界線、それから視界線の中に含まれますところの民有地国有地、それからその中にありますところのいろいろな地形、あるいは農地山林原野といつたような詳細な資料が必要でございます。そういつたような目的のために、関係町村に対して立入りをお願いした次第でございます。
  42. 淡谷悠藏

    淡谷委員 先刻から自由党の山崎代議士、改進党の三浦代議士、こもごもこの拡張につきましての手続上、あるいは現地との交渉が不完全なために、かつこの演習地によつて地元がたいへんに大きな損害を受け、生活の不安を感じていると申し述べたはずでございますが、前回外務委員会、水産委員会における伊関局長の答弁によりましても、この内閣の閣議決定に重大な欠陥があるということがもしわかりまして、そのためにあるいは新しい閣議決定になるかもしれないといつたようなたいへんに理解のあることを言つておられますので、この際特調といたしましては、閣議決定をしたのだから、しやにむに使わなければならないといつたようなことでなく、はたして閣議決定の前提をなしたあの調査条項が今後の調査と一致するかどうか、この演習地使用地元民にどんなに大きな影響を与えるか、この辺を十分念入りに御調査になることがあるいは必要かもしれませんが、ただたくさん参りまして、閣議決定したのだから、しやにむに使うのだからぜひとも出せといつたような、従来しばしば見たような恫喝的な態度はおやめになつていただきたい。どこまでもこれは、閣議決定に基くなお一段詳細な調査であるということを懇切丁寧に地元の人たちに了解を求めて、やつていただきたいと思いますが、その点仙台の調達局にあなた方の御意思が十分伝わつておるかどうか、お伺いいたしたいのでございます。
  43. 大石孝章

    大石説明員 淡谷委員お話の趣旨は、仙台の調達局長に私ども十分伝えております。それからちようど三日ほど前でございますが、電話でもつて仙台の調達局長から、いろいろ係の者を現地に派遣して、そういつたような趣旨を申し述べるだけでは十分とは思えないから、局長みずから現地に行きたいので、中央のものの考え方、そういつたようなものをなお念のために確かめたいといつたような照会もございました。私どもといたしましては、御趣旨の点は十分尊重いたしまして、何とか話合いでもつて拡張部分が円満解決できるようにしたいと存じておる次第でございます。
  44. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大石次長になお私申し上げておきたいのは、円満解決ということは、必ずしもしやにむに使うという意味に解しないでもよろしゆうございましようか。円満解決は、使用するということを前提としてお考えでございましようか。
  45. 大石孝章

    大石説明員 調達庁は、原則的に、閣議決定せられまして、政府の意思が決定したものを実施する機関でございますので、むろん私どもは、使わしていただくということを前提としまして、所有者それから権利関係者、あるいはいろいろ地元のごあつせんいただく方々にお願いしている次第であります。
  46. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、私ちよつと言いたくなるのです。さつき伊関局長が、どうも関根の反対の理由は、閣議決定までに至る手続等による反対が多くて、本質に即していないというような御発言がございましたが、閣議決定があなた方にとつて絶対な力を持ちまして、この絶対な力を持つた閣議決定に基いて、あなた方が単にこれを使用するために事務的な最善を尽すというだけになつて来れば、私はやはりこの反対の方向は、閣議決定そのものに向わざるを得ないと思うのであります。従つて、内灘及び関根に今しぼられております二つの閣議決定を見た演習地が、二つとも大きな反対抗争がある。これを外務大臣初め伊関局長あたりも、外部からの扇動ということを非常に強調されておりまするが、この外部の扇動をいくらいたしましても、地元に用意がなければそんな反対は起つて参りません。従つて私は、青森県の関根地区の演習地拡張というものは、そうした閣議決定の前提をなす状態の中に、非常に不完全なものがあつたと思うのでございます。杉山会議員にお伺いいたしたいのでございますが、一体あなた方は県会議員として、岩木山の演習地設定の陳情書の中に――県会議長及び知事の名をもつて出された陳情書がございますが、この中に、関根地区の約三千八百町歩昭和二十七年座の拡張と認め、同時に岩木山麓を要求することは、忍びざるを忍んで関根地区を提供した本県としては了解に苦しむところでありますといつた、あたかも関根地区を提供することを了解されたかのごとき文句をさしはさんでおいて、今またあらためて拡張反対陳情なんということはどこに真意があるのか、私、はつきりしたところを伺いたいのであります。いろいろな影響がございましようけれども、問題がこうなりましたからには、閣議決定の本質につきまして、あくまでも私はこの一点をただしたい。どうか迷惑の波及することを恐れずに、せつかく高い高い旅費を使つて東京まで來られたのですから、忌憚なく御説明あらんことをお願いいたします。
  47. 杉山勝雄

    杉山参考人 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。先ほどの現地状況説明の場合にお話申し上げましたが、十二月三日の陸上演習場分科委員会の決定を最終的な日米合同委員会の合意であるというように、青森県の農地開拓課長がそのような錯覚を起したのが原因でございまして、錯覚を起した要因といたしましては、占領下において第一次の強制接収が行われておつた青森県におけるところの大三沢、高館、その他の地域において、ほとんど占領下における被占領国として強制的に使用されたので、これに対する新たな手続の規定が設けられた点に対して非常に認識がなかつたということと、事務的な切りかえが、頭の切りかえができておらなかつた、こういうことを指摘せざるを得ないのでございます。この意味におきまして、去る六月県会中に、われわれ下北郡の選出県議会議員が知事に会見を申し入れた場合に、この点ははつきりと、開拓課長陸上演習場分科委員会の決定の日付をもつて最終的な決定であつたように解釈しておつたということなのでございます。この点から、青森県知事名によつて関係当局陳情文が提出されたのでありまして、この点は知事といたしましても、はつきりと知事名で陳情文が出ておるのであるが、文章の解釈の点は多少違うということを、私の六月県会における緊急質問に対して答弁されておるのでございます。この点は、責任は決して避けるものではないということを明らかにいたしておるのでございます。さらに県議会議長の名において陳情文も提出されておるのでございますが、この点は、事後承認の形において委員会で決定し、その作文が委員会に提示されておつたかどうかということに疑問があるのでございますが、委員会には作文が提示されずに、議長一任という形において起算されたものと考えるのでございます。しかし陳情文の文面を見ます場合におきましては、県で提出いたしましたところの陳情文とほとんど異なるところがない。しかも淡谷委員の御指摘の、忍びがたきを忍んで関根演習地区三千六百町歩を提供したのだというような文章は、そのまま記載されておるのでございます。われわれは、県議会においてその責任のあるところを明らかにいたすべく、機会をとらえて発言を求めておるのでございますが、現在の段階といたしましては、全県民一丸となつて拡張地域の反対運動が展開されておりますので、さらにこれらの問題が解決いたしました場合においては、知事並びにその他の責任のあるところを明らかにすることをはつきりとさしておるのでございます。  なお、参考までにつけ加えてお話申し上げたいのでございますが、陳情文を県並びに東通村から数次にわたつて出されておるのでございますが、その都度々々に条件がいろいろと異なつて政府側から提出されるので、それに従つて逐次陳情文の作成もかわつてつているというようにわれわれは解釈をいたしておるのでございます。最も都合のいいような点を政府及び日本合同委員会分科会の方ではとらえているようにも考えております。この点は青森県民といたしまして、まことに残念に考える次第でございます。
  48. 富田健治

    ○富田委員長代理 淡谷君にちよつと御注意申し上げますが、まだ質問の通告貨者が数名ございますし、時間も大分申合せの時間を経過しております。それから保安庁は、出たのでございますが、まだ着かないので、もうしばらくしたら来るかと思いますが、もし何ならこの辺で一応打切つていただいて、保安庁が来ましてから御質疑を願うということにして、ほかの方に通告順に従つてお譲りを願いたいと思いますが……。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 御注意ごもつともでございますが、会期もすでに一週間延長されておりますのは、こういうふうな今日本の重大問題になつております演習地とか、むしろ領土問題と言つてもいいくらいの重大問題を慎重審議するために延長されたのでございます。せつかく呼び寄せておきながら、委員会で徹底しないような答弁だけで終るのは、いかにも会期延長の手前みつともないわけでございますから、委員長においては、時間をたつぷりとつていただきたいのでございます。私、保安庁の長官が見えられましてから質問いたしますが、五分間岡委員の方からくださるそうですから、杉山会議員に重ねてお伺いいたします  それは、知事があなた方県会議員に隠れて、個人的な交渉をとりきめ等によつて内諾を与えた事実はなかつたのでありましようか。この点、あなたは県会について十分糾明されたはずでございますから、はつきりお答えを願いたい。と同時に、東通村の村長も、あるいは承諾を与えたのじやないかといううわさが立ちまして、現に東通村の村長はやめておるようでございますが、こうした知事並びに村長が個人的な承諾を与えたか、与えないか、県会等の議論を通じましてあなたが受取られた感じをはつきり伺いたいと思います。
  50. 杉山勝雄

    杉山参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。青森県知事は、昨年の三月ころから、いわゆる占領下にこの地域使用等の話合いがあつた当時から、拡張に対しては反対態度をとつてつておるのでございます。しかも先ほどお話申し上げました、十二月三日の決定を誤認したところの山崎開拓課長の起案にかかるところの陳情文等に対しましては、知事としては、部下の報告をそのまま信用しておつたというように解釈せざるを得ないのでございまして、知事との会見の場合においては、青森県は現在でも非常に過重な負担を演習地地域においてはしているのに、関根の拡張の場合に県としては非常に弱腰だつた、最初から拒否すべきものであつたが、しかし当初の話を持ち出された場合は占領下であつた、その後において、七月二十八日以降に交渉を開始された場合においては、これは当然反対すべきであるという態度を明らかにし、今日も反対を続けておるのでございますが、ただ責任の点になりますと、十二月三日の決定以降における文書陳情文等においては、これは知事の職印を捺印し決裁をしておる以上は、当然知事の責任問題もまた出て参ると考えるのでございます。ただ知事個人は、はつきりとこれに対して了承していなかつたということだけをお話申し上げまして、答弁にかえます。  なお東通村長同意いかんという点につきましては、これは再三伊関協力局長並びに和栗入植課長の両氏に東通村長の方からお話申し上げたのですが、大体両者の話が非常に食い違つておる。この点は、八月十九日付の青森県で出した陳情文に対し、同意したのではないかという和栗課長さんの見解に対して、この日ははつきりと結論を見ずにわかれたという記録が東通の村にあるのでございます。さらに十一月二十八日の東京における入植課長と、県の開拓課長秘書課長東通村長との意見においては、アメリカ側から提示された条件の緩和方を和栗課長の手において作成し、これに関して東通村長同意を求めんとしたのであるが、これに対してははつきりとお断り申し上げた、ただこの場合において、行政協定第三条の適用でいわゆる特別措置法関係の規定があるということを示唆された場合、もしそのような形で強制使用されるとしたら、これは万やむを得ないだろうという捨てばち的な発言村長みずからはつきりとその会見の場所においていたしておるのでございます。今回東通村長が辞任したということは、決して確約したからその責任をとつたということではないのでありまして、このような事態に立ち至らしめた村の理事者としての責任をとつたのであります。これについて政府側と公約をした、あるいは同意をしたという事実は決してないのでございます。この点は私のみならず、田名部の町長並びに東通助役もきよう出席しておりますので、必要でございますならば、答弁を求められるようにおとりはからいを願いたいのでございます。なおこれらの文書は、八月の文書も、十一月二十八日の文書も、おのおの農地局関係から示されて、県並びに東通に対し、これで承諾をしたらどうかという形で進められておつたことに相違はないのでございます。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 伊関局長にお伺いいしたますが、あなたも、それから小瀧政務次官も、これははつきり確言されております。閣議決定は必ずしも地元の同意を得る必要はない、しかし努めて同意を得るようにはして参つておるということを再三確言されておりますが、青森県の関根演習地拡張につきましては、お聞きの通りさまざまな行き違いがあるようでございます。特に和栗入植課長がこの間私の質問に答えまして、昭和二十七年の八月十九日に青森県から出しております陳情書は、はつきり反対の旨を陳情してありますが、最後に条件緩和の数項が入つておるので、反対の意味ともとれ、あるいは賛成の意味ともとれるという御発言がございました。ただいま伺つていますと、これは農地局長のところで、こういうふうに出した方が緩和するにいいだろうといつたようなおさしずで出したという御発言がございましたが、そうしますと、あなた方は反対であるかのごとく、賛成であるかのごとく、曖昧模糊としたやり方で陳情をさせ、それを日米合同委員会が賛成の意思と解として閣議決定をされたとするならば、これは恫喝とは申しませんけれども、非常にごまかしの要素が多い閣議決定であると私は断定せざるを得ない。明らかにこうしたさまざまな錯誤の上に立ち、手続上きわめて不満の多いやり方でやつた閣議決定である。今後特調のなされる調査がもし行われるならば、全然白紙に返して、伊関局長が再々言われたごとく、この関根拡張地域というものは、はたして演習地として適当であるかどうか、あるいはまたこの地元の人たちが、農民漁民たちがこの演習地をつくるその損害に耐え得る状態かどうか、この点をはつきりもう一ぺん再調査されまして、この問題を白紙に返してやり直してみるだけの勇気と正義心がありますかどうか、はつきりお聞きしたいのでございます。
  52. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 閣議決定に至る経緯におきまして、ただいまおつしやるような大きな錯誤があつたかどうかという点は、もつと究明を要すると思います。私はそれほど大きな錯誤があつたとは思つてもおりませんが、多少の行き違いはあつたように感じておるのであります。  次に、閣議決定を取消すか取消さぬかという問題でありまするが、私は何も取消す必要はないと考えております。これはこのままにしておきまして、現地と十分話をしまして、話がつきました上で、一部変更をする点があればしてもよろしい、こう考える次第であります。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重大な点でございますから、あらためてまた御質問を申しますが、閣議決定に至る地元の同意ということは、これは法律上強制されずともやるという御発言がありましたのでお伺いするのであります。一体関根演習地拡張にあたりまして、どういう地元の同意を得られたか、あるいは何を基準として閣議決定に至るまで地元民の了解ということを納得されたか、その点をしばしば私伺つておりますが、この席上あらためてお伺いしたいのでございます。
  54. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私は農林省その他関係官の報告によつて、地元は了解しておる、こう了解しておつたわけであります。ですから、了解しておつたかおらないか等につきましては、むしろ農林省課長からお答えした万がいいと思います。私の方は、閣議決定に至ります前は、農林省の報告によりまして、地元は了解しておるもの、こう了解しておりました。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 農林省の報告に基いて閣議決定がなされたということでございますので、これは和栗入植課長にお伺いいたします。あなたが閣議決定に持つて行くまでに、現地の了解事項として、一体どういうことが報告されておりますか、お知らせ願いたいと思います。
  56. 和栗博

    和栗説明員 お答え申し上げます。地元の了解というものを、特定のある一つの文で承諾書をとつたとかどうとかいう話でなしに、全般的なことで御判断なりお認めを願いたいと思うのでございます。大体淡谷委責も、本件のいきさつについては深く関心を払つておられまして、御承知のことと思いますが、これは昨年の三月ごろから始まつた問題でございまして、その間現地農林省の職員も二回ばかり出かけておりますし、昨年の夏には、合同委員会といたしまして、日米両方の委員現地に参りまして、現地の皆様といろいろお話をいたしましたり、地元の方々の、この点はこういうふうにしてもらいたいとか、いろいろ御希望を承つてつております。その現地の御希望によりまして――県の方の知事の文書なり、あるいは県庁の秘書課長なり、あるいは関係の部課長がしばしば見えております。また東通村の村長さんも、しばしば御足労も願つているわけでございまして、私の方からも出かけましたり、また地元の県なり、あるいは東通村の方からもしばしばおいでを願いまして、米軍との折衝の経過に応じまして、いろいろ御懇談を申し上げつこの仕事を進めて参つたわけでございます。そういたしまして、先ほど申し上げましたように、米軍にも一緒に現地を見せまして、地元の方々意見米軍の方に聞かせまして、地元の生活上どうしても大切だという草刈り場の問題であるとかいうような地域は、米軍演習使用地域から除外するとか、話合いを相当長きにわたつてやりました結果、昨年の暮れに大体米軍側の納得の線、それから地元の方にも大体でき上りました原案をお見せいたしまして、こういうふうに話をとりきめたいということを、ただいまお話がございましたように、昨年の十二月ごろに県庁の万も東通村の村長さんもおいで願いまして、私のところでお話をいたしました。そのときの話では、ただいま参考人の方からお話がございましたけれども、はつきり断つたとか、あるいは強制的にどうしてもとるのだから承諾しなさいとか、そういう話ではございません。地元の要求も相当人つておりますし、そういうような強制するとかなんとかいうような雰囲気ではなしに、話合いは非常にスムースにその場は進みまして、大体御了承願つたということでございます。もちろん村長さんはおいでになりましたが、県の方は知事さんではございません。しかし、これは約一年近くにわたつての話でございますので、県の方もその仕事の成行き、その条件のかわり方というようなことも十分御承知でございます。最終的には、それは帰つて御報告になると思いますが、大体十二月に話がまとまりまして、分科会としましては、十二月末にサインをいたしまして、本会議の方へまわしたということになるわけでございます。
  57. 富田健治

    ○富田委員長代理 田中稔男君。
  58. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 本年の五月二十五日の夜の八時ごろに香椎線の海ノ中道駅で起つた事件でありますが、西戸崎機関区の乗務員である黒永四雄というのと池上巌というこの二人の乗務員が、米軍の兵士から何らの理由なくして暴行を受けた。すなわち停車中の機関車に上つて参りまして、そして投炭用のシヤベルで顔面や両手を強くなぐり、相当の負傷を生じた。このことにつきましては、実は犯人がまだはつきり確認されておりませんが、付近に米軍の基地があることですし、多分その基地のアメリカの兵士であろうというふうに推量されているのです。なおこういう事件を引起すような何か怨恨というようなものは、この二人の乗務員については少しも想像されないことで、何も悪いことをやつた覚えもない。このことは二人の主観的な陳述だけではなく、関係者がみなそういうふうに認めている。こういうことは非常に不幸な出来事でありまして、国鉄労働組合の門司の地方本部の執行の委員長から、門司鉄道管理局長に対しまして、六月五日付の文書で申入れも行われておりますが、今日までこれについてまだはつきりした結果が出ていないようであります。実はその小柳執行委員長からの申入れの内容といたしましては、当局側に対して、暴行米兵の責任の追求ということ、これが第一段で、第二に、被告職員の慰藉料の支払い、第三に、今後こういう不祥事の発生しないように公安上の措置を十分はつきりしてもらいたい。こういう内容を持つた申入れが行われているのでありますが、これがまだ解決されていないようでありまして、本省においてもすでに御承知のことだと思いますから、ひとつ政府委員の御説明をお願いしたいと思います。
  59. 兼松學

    ○兼松説明員 ただいま田中委員の質問について御説明申し上げます。本件は偶発的な事故でありまして、まことに遺憾のことでございますが、起りました事件の当時、米軍側では五人の被害者を連れて参つた。それに対しまして二人の人が首実験をいたしたのでありますが、当時事件の起りましたときには、犯人は軍人らしいズボンをはいて、上がはだかでありましたので、そのためにはつきり米軍であるということを被害者から確認することはできなかつたわけであります。しかしながら、五人の被疑者を連れて参りまして、首実験をいたしたのでありますが、その五人が犯人であるかないかということはいずれも被害者から確認することはできませんでした。米軍側としては、その辺にありますのは米軍のキャンプでありまして、ほかの者はあまりおりませんので、日本側から、そういうものを想定して米軍であると推定されることはしかたがないわけでありまして、いろいろその後も捜査をすると言つているわけでありまして、私どもの方も捜査を要求しておりますが、まだ犯人は逮捕されておりません。国鉄管理者に対しましての組合からの要求は、犯人の逮捕という一つのことがあるのですが、これは管理としてでき得る範囲を越えておりますので、捜査当局並びに軍側にも言つておりまして、軍側は捜査を続行するということを申しております。  それから第二の慰藉料の問題とか、医療費の問題でありますが、これは、私どもの職員が公務執行中に第三者から危害を受けたのでありますから、法規制度の範囲内におきまして、できるだけのことをいたしておりまして、管理者としては、本人に対し公務上の負傷というような扱いをいたしております。加害者がわかりませんので、加害者からの慰藉料の請求という問題は、実施が現在の段階ではまだ不可能でございますが、本人の医療及び一般的なその職務上の保護は、制度通りできるだけのことをいたしております。  それから米軍に対しての謝罪文の要求並びに将来の保障という組合からの要求であります。米側としては、向うから手紙をこちらからの通告に対してよこしまして、もし今後米兵にそういうことがあれば、まことに遺憾であるから、今後そういう事件があり得ないように努力するが、本件に関しては、まだ犯人が認確されていないので、米軍が正式に責任をとるというわけにはいかないと申しております。但し将来に対して、できるだけ日米間の紛議を少くするためというわけで、西戸崎付近の機関車及びその付近に対しましては、米兵に立入り禁止を正式に指令いたしまして、その立入り禁止を犯した米兵に対しては、その機関車に対し、あるいは実害が鉄道にあるとないとを問わず、軍として立入り禁止を犯したものとして処断する、こういう回答を得ております。
  60. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その場合に、鉄道の公安官というものの職務との関係はどういうふうになるか。
  61. 久留義恭

    ○久留説明員 その当時そこに居合せておりますればよろしいのでございますが、すでに逃亡しているのでありまして、鉄道公安職員の特別司法警察職員としての権限はございますが、これは鉄道用地内と列車、こういう限定を受けているのでございまして、現行犯をそこで認めるか、あるいはその用地内に隠れている場合に逮捕状を請求するというようなことでありまして、特別司法警察職員としては権限の地域的な拘束を受けている、こういう権限でございます。
  62. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 本件については、国際協力局長の方では御存じでありましようか。何か交渉の経過でもありましたら承りたい。
  63. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 本件につきましては、私の方も十分承知しております。報告を受けまして、これが鉄道の、ことに乗務員でありますから、普通の犯罪よりも重く見まして、米軍に対しまして――米軍かどうかわからぬわけでありますが、まあ米軍らしいというので、敏速に捜査をするようにということを申し入れております。
  64. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 この付近には米軍の宿舎がたくさんあります。ことに朝鮮戦争の継続しておりました間は、米軍の輸送に非常にこれは犠牲的に協力した乗務員の諸君であります。それが何の怨恨も買うことなくこういう暴行が行われて、しかもそれに対する正当な慰藉その他についても、まだ米軍の責任が果されていないというような状態でありますが、どうかひとつ今後も、犯人の捜査その他につきましては、アメリカ側に厳重に申入れをしていただくように国際協力局長に特にお願いいたしておきます。
  65. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは和栗さんに重ねてお伺いしたいと思うのでございますか、さつき文書等による了承はなかなか得られないということをおつしやつておりましたし、なおまた現地の方から伺いますと、了承もしないのに閣議決定をした、あなたは了解したと認める、この了承の仕方は、あとに紛擾を残したままに閣議決定が行われるというような重大なことなのであります。ところで地元の了解ということについて、県、町村会等の決議を一体どの程度まであなた方は重視されるか、村長の意向は非常に重要であるとか、あるいは県知事の意向は大事であるということをたびたび伊関局長から言われますけれども、一体地元の意思を正当に代表しておるはずの県、町村議会守の決議を、農林省は地元の意思としてどの程度重要視されるか、お伺いしたいと思います。
  66. 和栗博

    和栗説明員 従来仕事をいたしておりますときに、私どもといたしましては県庁、県知事、それから地元の利害関係者の代表の方ということで、町村長さん、その他の町村議会議長さんなんかとお話し合いをいたして参つております。もちろん県議会なり、あるいは町村議会の議決というものも十分尊重いたしております。
  67. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今の答弁はごまかされたのじやないかと思いますが、選挙をもつて選出された地元民の正当な代表者である県、市町村議会の議員の決議と、あなた方の主観による了承と、どつちを一体大事にされるか、つまり今後反対陳情が県、市町村議会の議決をもつてあなた方の手先に渡された場合、これは信用ならずというふうに今まで通り一蹴されるかどうかということなんです。農林大臣にはあとで聞きますが、入植課長としてのあなたの考えを伺いたいと思います。
  68. 和栗博

    和栗説明員 私は県の知事でも、あるいは町村長さんでも、あるいは県議会でも町村議会でも、あるいは議会でなくても、地元の方々で、こういう点で非常に困るのだというようなお話を伺いますときは、それぞれまじめに承つております。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたに対する追究はこれだけでやめますけれども、ただまじめに伺つておくくらいのおざなりな気持はやめてもらいたいと思います。やはり地元民の意思発表、成規に認められたこれらの協議機関の決定というものは、十分あなた方の方で重く取入れられていただきたいことを、あらためてお願いいたします。  保安庁の方にお伺いいたしますが、青森県の東通村で起りました米軍演習地内における保安隊の死傷事件等について、あなた方のお調べがついたと思われますが、その真相をお伺いしたいのであります。
  70. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは保安隊といたしましては、十四名の被害者を出しました未曽有の事件でございまして、まことに遺憾なことでございます。  事件は、一昨八月三日午後五時ごろ起りましたものでございまして、当時秋田に駐屯しておりました保安隊の部隊が、関根の演習場において訓練をしておつたのであります。その際に、同隊に所属するジープの四車両が編成行進をしておつたのでありますが、その一番初めの車両が湿地に入りまして動かなくなつたのであります。そこで後続のジープのうち第二車両のものが、すぐそのうしろにとまりましたが、第三車両の者が左側方にとまり、その湿地にはまりましたジープを押し出しに行つたわけであります。その第三車両に乗つておりましたジープの搭乗員が押し出しに行きました際、同ジープから十二メートルばかり離れましたところにさしかかりました際に、その一番最後に行つたものがそこにありました不発弾を踏みつけて爆発したために災害が起つた、こういう報告が来ております。この事件によります被害は、隊員一名死亡、四死が重傷を負い、九名が軽傷という報告でございます。これは、私どもとしまして未曽有の事件でございますし、木村長官も非常に心配をせられまして、即刻厳重なる調査を命ぜられました。ただいま第一幕僚監部の方から専門の者を二名現地に派遣をいたしております。その者の報告はまだ参りません。今わかつておることは以上の通りでございます。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 保安庁にお伺いいたしたいのですが、米軍演習地に保安隊が入るときに、あらかじめ何か地元と打合せがあり、あるいはまた米軍の方とも打合せをいたしまして、不発弾がころがつて爆発する危険があるようなところへどんどん入れるなんということを、一体あなた方が了承してやられておるのかどうか、実は今日は長官に出て来ていただきたかつたのでありますか、代理と考えましてお聞きしたいのですが、その点御答弁願いたい。御答弁願えなければ、あらためて長官に質問いたします。
  72. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 米軍演習場を使用いたします際におきましては、米軍の方と十分なる打合せはするに違いないのでありまして、本件の場合におきまして、どういう程度の了解をしておつたかということも、私自身といたしまして問題にしておるところでございまして、これらのところも、現在調査に参つておる者の調査の項目の一つであると思います。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 伊関局長に勢い伺わざるを得なくなりますが、一体こうした演習地内の不発弾の処理ですが、これは、この間から私たびたび局長に伺つておりますと、演習をしない間は、地元の人が利用してもよろしい。こんぶなども演習時期以外はとつてもよろしい。演習時期の問題で、演習以外の時間の使用をあなたは認められておるようでございますが、その場合に、不発弾の処理等に対する御配意がございますか、それとも日本人はいくら死んでもいいというお考えでございますか。その点はつきり伺いたい。
  74. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 演習場といいます場合に二種類あるわけであります。一つはたまを射たない地区であります。これは演習をしていないときは、いつでも立入りができるわけであります。ところが着弾地域になりますと、不発弾の処理をしなければ中に入れないわけであります。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 東通助役さんにお伺いいたしますが、一体今度不発弾が破裂いたしました地区は、着弾地でございましたか、着弾地以外の土地でございましたか、お伺いしたい
  76. 川畑義雄

    川畑参考人 着弾地域外と聞いております。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ただいまお聞きの通り、関根の演習地は、大体海上に向つてたまを撃つてつたのでございます。しかし撃つている間に、途中にたまがたくさん落ちまして、すでに一人学童が死んでおります。部落の家が焼かれております。山火事が出ております。こういうふうな、着弾区域以外のところにもたくさん不発弾が落ちておるというこういうはつきりした事実を、局長は一体知つているのですか、知つていないのですか。あなたは、関根部落を飛行機で視察したと言つておられますが、ほんとうに日本の外交官であれば、アメリカと交渉する際に、日本内地の事情を相当しつかり押えておくだけの親切心がございませんか。その点はどうなんですか。
  78. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 着弾地域であるかないかは、もう少し調査をしなければわからないと思いますが、着弾地域と着弾地域外との原則を申し上げたわけでありまして、誤つて着弾地域以外に落ちた場合にはただちに処理をする。処理が間に合わない場合には、危険の表示をして行くというふうなことが今までの例であります。今回の際にどうなつておるかは保安庁の報告を見なければわかりません  それから次に私が一々現地を見ろというお話でございますが、私は見られるだけは見ております。しかし時間に制限がございますから、国会開会中あたりは、出ようと思つてもなかなか出られないという状態であります。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は、実はまじめにこの問題を扱つていただきたいのでございます。すでに着弾地域外にたくさんの不発弾を撃ち込んでいる事例は幾らもあります。陳情申し上げておるはずであります。特に関根地区のこんぶ採取場の状態なんか見ましても、アメリカの軍隊が行つて処理しようとしても、密生したこんぶのために不発弾の処理ができないで引揚げたという報告を、ただいまあなたはお聞きになつたじやありませんか。笑いごとではありません。あなた方がこういう重大な問題を、笑いながら返事されるところにこの演習地の問題の非常に混乱する原因があるのです。もつと真剣になつていただきたい。かりに行政協定なり安保条約なりが、日本の安全を保障し、日本の安泰をはかるための条約であるならば、少くとも田に飢えたる者がないように、また女たちがパンパンにならずに済むようなその安全こそ、私は保障していただきたい。あなたの言うところを聞きますと、内灘は貧しいから、むしろこれは演習地にかえて、たくさんの補償をしてやつた方がいいのじやないかということを申されております。演習地の血の出るような反対の叫びを、金さえ与えればそれで済むんだといつたような軽い気持で考えておられるようであります。あたかも貧乏なるうちの娘は、飯が食えなかつたら淫売をやれ、かような気持で日本の領土問題に対して向つておられるならば、これは重大な問題だと考えます。さまざまな今日の演習地の実態というものは、不発弾一発の問題にいたしましても十分に残つております。特に拡張の問題になつております関根地区におきまして、あなたがこの委員会に出られた瞬間に、この問題が勃発したということに意を置きますれば、軽率になされた基地決定はすみやかに取消して、あなたが取消すことができないというならば、大幅にこれを改めまして、少くともあなたが身をもつてこうした不祥事の調査に当られると同時に、また関根地区の実態を見直しまして、この問題を初めからやり直されるように、私は本日の参考人意見を聞いて、痛切に感ずるものであります。  私の質問並びに意見をこれで打切ります。
  80. 富田健治

    ○富田委員長代理 次に、戸叶里子君。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 すでに多くの方から御質問がありましたので、私はごく短かく二点だけ伺いたいと思います。  まず先ほどの東通村の川畑助役さんのお話によりますと、演習で海の中へたまを落すと言つておりながら、陸地へ落した例があるように伺いました。そこで私が疑問に思いますのは、この演習内容の問題ですが、一体着弾地点というような地点を決定するにあたりまして、現地米軍だけがかつてにきめられるものか、あるいはまた当然日米合同委員会によつてきめられなければならないものであるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  82. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 着弾地域というものは、両方で協定しまして、はつきり線が引いてあるわけであります。それで関根の従来の接収地域内にも、陸上に着弾地域があるわけでございます。そうして海に向つてつておるというのではありませんで、その着弾地域に小高い丘がありまして、その上に標的を置いて撃つているわけであります。ところが標的に当つてうしろにそれて行くもの、あるいは標的をミスして行くものがございますから、危険区域として後方の海面をとつておるわけであります。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 では川畑助役さんに伺いますが、今伊関局長がおつしやいましたように、着弾地点としてきめられたところで演習をしていたのが、たまたま付近に害を及ぼした。こういうふうにお考えになりますかしら。
  84. 川畑義雄

    川畑参考人 私の見ている範囲、知つている範囲では、現在の接収地海面に並行して、幅がないのでございますが、それで後方の山林地から大砲など発砲いたしております。それははるか海上まで飛んでおります。それから機銃その他小銃の場合におきましては、海岸線に標的を立てまして、それに発射しておるようでございます。かるがために、たまたま砲弾なども、陸地の海岸線から陸地に面した千メートルないし五百メートル範囲内におきましては、相当不発弾あるいは砲弾が着弾しているものと予想されます。その証拠といたしましては、はつきり期日は忘れましたが、先々月かに米軍が後方から砲を撃ちまして、それが途中で炸裂いたしまして、これまた死傷四、五名を出しております。それで現在のこんぶの地区に対しましては、多数の砲弾が入つているような状況でございます。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 今おつしやつた通りなんですけれども、伊関局長これをどう御説明なさつていただけますか。
  86. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 説明が食い違つておるとは思いませんですが、陸上に着弾地域があるわけであります。そうしてそこへ撃ち込むときに、それたたまは後方に飛んで行く、あるいは的をはずれたたまは海に飛んで行く、たまには海に向けて撃つ場合もあるかもしれません。主として陸上の標的に向けて訓練しているわけであります。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 では、着弾地点をおきめになる場合に、当然付近の危険ということも予想されると思いますけれども、そういう点を考えて、付近の方々に何らかの方法を講ぜられた上で、着弾地点をきめられるというようなことはなさらないのですか。
  88. 和栗博

    和栗説明員 合同委員会に出ております私の方からちよつと申し上げます。大体今の関根の着弾地域の問題は、米軍が占領期間接収しておつた地域内に、向うで計画してつくつてつたものでございまして、一般的に申しますと、講和後合同委員会で冬演習場の審議をいたします場合には、日米間で向うの計画も聞き、また地元の意見なども聞きまして、着弾地域はきめて行くという方針でいるのであります。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、米軍が占領中からずつと接収していたものは、すべてどのような危険が伴つてもそのままほつておくというふうにしか、非常にあいまいなものにしか考えられませんが、その点はどうなるんでしようか。
  90. 和栗博

    和栗説明員 関根の第一次接収と申しますか、第一次接収地域内のインパクト・エーリアの問題につきましては、地元の方から何も御意見などもございませんで、おそらく地元の方といたしましては、占領期間中からそういうふうになつてつたわけでございますから、そういうインパクト・エーリアなり、それからそれたものが海上に飛ぶというようなことは、承知しておられたというふうに考えます。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 参考人の方に伺いますけれども、いろいろな危険が多くても、それは占領中からのことで、しかたがないとして黙つていられ、きよう初めて意思表示をしたのでございましようか。
  92. 中村喜代志

    中村参考人 お答えいたします。第一に接収地域内におきます砲弾の不発弾その他のことにつきましては、的へなかなか行かないで、行儀悪く前へ落ちたり、後へ行つたりしていることは事実であります。そこでこの問題につきましては、その都度当局の方、調達庁並びに県庁側に話をいたしまして、これの処理方について善処してもらい、なおかつ補償を要するものは、補償を請求して今日まで参つております。それからもう一つは、先ほどのに関連した問題でありますが、接収地内の問題は調達庁接収地外で、先ほど申し上げました爆破演習をやつたとか、このために損害の起きたものの処理は県庁というような二筋で、この問題を処理しているような状況であります。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 入植課長は、先ほどそういうふうな見地からのいろいろな陳情のことをお聞きにならなかつたとおつしやいますけれども、ただいまの参考人の方は、そういう陳情をはつきりその都度なさつていらつしやる、ここにもやはり意見の食い違いか、書類が途中でどこかに行つてしまつたか、そういうような問題が残されておると思います。ここで私は、どつちがどうだとかいうことを追究いたしませんが、これまでの幾度かの参考人方々の御意見を聞きましても、政府の答弁と参考人の方のおつしやることとが非常に食い違つている場合が多いものでありますから、何とかして、こういう問題は一日も早く解決されなければならないと思いますので、今の問題も、どうぞ現地の方とよくお話の上善処していただきたいと思います。  それから第二点として伺いたいのは、基地の問題にからんで私どもが一番頭を悩まします問題は、風紀上の問題だと思います。この委員会におきましても、幾度か風紀上の問題が出て参りまして、そうして姑息な手段でなく、何とか根本的な解決をしなければいけないというようないろいろな意見がかわされて参りました。先ほど山崎委員が非常に気のきいた珍案として、いわゆる病院船を置かれたらどうかというふうなことをおつしやいました。私どもといたしましたならば、日本の女性の人格を無視するものはなはだしいといわざるを得ないと思います。これに対しまして伊関局長は、わざわざおとぼけになつたのか、それともお忘れになつたのか、何の意思表示もなさいませんでしたが、伊関局長がその珍案に対して、どういうふうにお考えになるかを承つておきたいと思います。その理由は、伊関さんは、日米合同委員会でアメリカの方とも折衝になられますから、そうした考えがもしも頭のどこかにこびりついておりますと、そういうような意見が出るのではないかと私は非常に危惧いたしますので、御意見のほどを承つておきたいと思います。
  94. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 先ほど山崎委員からのお話がございましたときに、私は、日本人の女をその船に乗せるとは聞かなかつたのであります。私はアメリカ人の女を乗せた船を持つて来いという意味をおつしやつたと思つたわけであります。
  95. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 その通りだ。病人の取扱いをしなくてはならぬ……。
  96. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 そういうふうに聞いたのでありますが、それで問題は、いろいろと根本論としまして、性の問題はあるのだから、女はいるだろう、それを日本の女ではなく、アメリカから女を連れて来たらどうかという意見が各方面にあるのであります。但しこれは、向うでも売春が禁止になつておりますので、やはり制度としましてそういうものができるということには問題があるのでありまして、私が今年の一月アメリカに参りまして、国防省の国防次官補のナツシユという男がおりますが、これといろいろ話をしておりまして、どうも日本の防衛部隊だというのに女の兵隊が多過ぎはせぬか、軍服を着ない女にしても多過ぎる、東京あたりうろうろしている、このために宿舎もなかなか明かない、これを少し減らしたらどうかという話をしたのであります。その前に風紀問題の話もしておつた。ところがそうした話をあとでしましたら、今さき風紀問題を言つたじやないか、それで女がたくさんおるというのは、ある意味でこの解決にもなつておるのだ、そういうふうに申しておりました。そういうふうなことでありまして、全部向うの女を連れて来るというようなことは、向うの法律の建前からできないので、やはりこの問題は、逐次改善するということにしたいと思います。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 私が先ほどちよつと座をはずしたときに、その御意見が出たので、実は聞き漏らしたわけですが、アメリカの女性を連れて来るにいたしましても、そういう船が海の上へたくさん浮んでいるということは、漁獲に非常に影響すると思いますので、私はまはこうから反対したいと思いますから、局長さんもそれをお考えに入れておいていただきたいと思います。それからまた先ごろルーズヴエト夫人が来られましたときにも、いろいろな方が、この風紀上の問題を言われました。最後に帰られるときにスーズグエルト夫人の言われたことは、もちろんこれはアメリカにも責任があるかもしれないけれども、日本にそういう女性を置くということと、そしてまた日本の男性がそういう人たちを認めるということに欠陥があるのだから、あなた方の方も考えろと言われて、かえつてぎやふんとした意見を言われまして、私も非常にくやしく思いましたけれども、どうもそれが事実であるのでしかたがないと思いました。そのときにも、どうかアメリカの兵隊さんたちも、教養のある人たちを送つていただきたい、しかたがないので、そういうふうに結論づけておきましたけれども、そういう意見もルーズヴエルト夫人が言われていたということを、まず頭の中にお置きになつて解決の道に急いでいただきたいことを要望いたします。
  98. 富田健治

    ○富田委員長代理 次に、並木芳雄君。
  99. 並木芳雄

    ○並木委員 もう時間もありませんから、一つだけ局長にお尋ねしたいのです。それは関根と岩木山の演習地の問題、青森県の中にこんな大きな演習地を二つもとらなくてもよさそうなものですが、どうしてそんなに必要なのでしようか。
  100. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 米軍に関根を使つておりまして、先ほど占領中よりなぜ広げるか、占領中のでいいじやないかという御意見もございましたが、占領中の米軍と現在の防衛軍というものは、使命がかわつて参りまして、猛烈な訓練をするために、演習場が狭くなつたというのが一般的状況でございます。そこで関根の拡張を要求して参りまして、初め先方が持つて参りました案というものは、現在われわれが閣議決定いたしましたものどは非常に違つて、これをずいぶん折衝に折衝を重ねて削つて参りまして、狭めて行つた。そこで一応話がつきましたが、これではどうも使いにくいという感じを向うが持つておりました。岩木山の万は、保安隊も使つておるし、あちらが使えればあちらの方がずつと条件はいいということを向うは考えておるのでありまして、岩木山の方はどうだろうかという話を持つて来たわけでありますが、われわれは、一年間もかかつてやつと関根の話がついたと思つたところで、また新しい所へ持つて行くというのではたいへんだ、だから不便でも関根でがまんしてもらおう、そういうつもりでおりまして、岩木山は断るつもりでおつたのであります。ところが、関根の方が承諾した覚えはないという話になつて参りましたから、岩木山の方を断ることはやめまして、どちらかにしようか、こう考えておるわけであります。
  101. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は、参考人の皆様方どなたでもけつこうですが、どちらかにするということは御了承ですか。
  102. 杉山勝雄

    杉山参考人 青森県の基地拡張に対する反対は、これは先ほど私の説明の中にも再三にわたつて御説明申し上げましたように、すでに関根、高館、大三沢、この三地区が相当広い地域使用されておるのでございまして、青森県議会といたしましても、青森県民といたしましても、関根、岩木山麓両地域演習地使用には絶対反対なのでございまして、きようの外務委員会参考人としてお呼びを受けました結果を見まして、青森県においては、県民大会も持たれる情勢にあるのでございます。従いまして、この席から、県民、県議会といたしましても、両地区ともこれ以上の地域拡張には絶対反対であるという点を明らかにいたしておきます。
  103. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 ちよつと関連して川畑助役さんにお尋ねしますが、この七月十七日、十八日ごろに海上保安庁の船が参りまして、今の石持部落の海藻、わけてもこんぶをとる地区の不発弾を潜水夫を使つて調査したということを聞いておりますが、事実でございましようか。
  104. 川畑義雄

    川畑参考人 お答え申し上げます。十七日から三日間、現在の第一次接収地こんぶの場所を調査なさいました。その結果でございますが、こんぶは、先ほども私申し上げましたけれども、三メートルから五メートル、大メートルまで伸びておりますので、入りました潜水夫は、そのこんふの中に入りますと、こんぶがゆれるために、いわゆるよつぱらつて調査が困難であつたのでありますが、ようやくにして砲弾一個を見つけまして、なお数個の破片を拾つたのでございます。その搜査区域は、大体面積にいたしますと一反歩かそこらであつたということでありますが、こんぶの根というか、こんぶのはえておる場所というのはずつと関連してあるのでございませんで、方々にまとまつてたくさんはえておるわけであります。従つて、そうした関係からいたしまして、その限られたわずかの場所から不発弾を一個と破片を数個拾つたということは、非常な漁民に現する脅威を与えております。  それからちよつとそれに関連いたしまして申し上げますが、その後米軍の方で調査なさいましたが、これは、はつきりと申し上げますならば、日本の潜水夫よりも潜水技術において――私は現地において立ち会いましたけれども、いわゆるその捜査の状態は不完備であつたのでございます。日本の潜水夫は、完備した潜水着を着て海中に入るのでございますが、米軍の方は、ただ防毒面のようなものをかぶりまして海中に入るのでございまして、大体五分ないし七分ぐらいしか入つておれないのでございます。しこうして、そのこんぶのジヤングル地帯に入ることは困難でありますので、捜査はできないとの回答でございます。従つてこんぶのはえておらない砂地などを調査なさいまして、砲弾とか破片など何も見つからない状態でございます。
  105. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 よくわかりましたが、その捜査に当りましたのは、運輸省の海上保安庁だと思いますが、その海上保安庁ですか、それとも、保安庁の中に海上警備隊というのがありますが、その海上警備隊ですか、間違いのないようにしたいと思いますからお聞きしたい。
  106. 川畑義雄

    川畑参考人 残念ながらはつきり知つておりません。
  107. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 これは一体役場から頼んでやつたことですか、それともどういう筋からかこの派遣を件に頼むといつて、好意的にやつたものでしようか、どうでしようか。
  108. 川畑義雄

    川畑参考人 これに私の力で依頼してお願いしたのではありません。ただいま申し上げましたように、海上保安庁であるか海上警備隊であるかははつきりいたしませんが、県の方からのあつせんだと聞いております。
  109. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 そこで私は水産庁の高橋経理課長さんにお尋ね申し上げたいのでございますが、ただいまの、こんぶの密生している所であつて海上保安庁から行つて潜水夫を使つたという所は第一の接収地でございますが、これに対しては一千九百七万円の補償金ももらつている。ところが、この補償金というものは間接補償ですね。先ほど淡谷委員からの質問にもありました通り、これは何箇月かの間は立人りを禁止する、しかしながら、その期間を越えたならば、そこに人つてこんぶの採集も可能だ、こういう条件のもとに間接補償をやつているわけであります。ところが、今度海上保安庁が行つて調査したところでは、まことに危険である。こんぶをとるには一つの大きなからくりをして、根こそぎ引抜くわけであります外、そうすると、そこに不発弾があつた場合に、もしその雷管等に触れたならば爆発するおそれがあり、まことに危険である。この危険性に対して再調査をする必要があると私は思うのであります。先ほどわれわれの委員から質問がありましたのは、陸地における不発弾の場合で、これによつて人々がけがをした。ところが今度は、水中に没しているところの不発弾であり、種類が違うのである。水中に没しているものに対して、海上保安庁から行つて調査をしたということになる。ところでそういう結果になつて参りますと、今までのこんぶ採集に関する補償金では問題にならない。これは、不発弾というものの処置をしなければこんぶの採隻というものは全然不可能である。そうすると、一箇年間の採集量というものは大体十三万貫から十五万貫程度にわれわれは推定しているわけでありますが、それだけのものを全然放棄しなければならないという生活上の重大な問題がここに突発して来るわけであります。この点に対して、一体水産庁はどういうように思つているか、この点あなたから承りたい。
  110. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 お答えいたします。現在の関根の海上の地区におきましては、七月二十五日から八月二十五日までの間は、射撃または訓練を行わないという規定になつておりまするので、この期間は、こんぶ演習地内で採集することができることに相なつております。しかし、御指摘の通り、ここのこんぶの場所におきましては、不発弾というような障害物がありまして、せつかく開放したこの期間内であつても、こんぶが事実上採集できないという場合も実は聞いております。これに対してはどういうふうにするか。従来の法律では、解除せられている期間内にこんぶがとれなかつたということに対しては補償が出る道がありませんので、このたび政府より特別損失補償法という法律を提案いたしまして、今国会を通過いたしましたが、それによりますと、こういつたような事態につきましては、補償の道が開かれ得るのではないかと思いますので、このことを調達庁の方に連絡したいと思つております。  それから不発弾の処理でございまするが、これは運輸省の海上保安庁の方にお願いをいたしまして、至急調査をしていただきたいということを連絡してございます。
  111. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 それで了解いたしました。海上保安庁の船が行つて調査をしたのだと思うのですが、ただいまの御説のように、開放している一箇月間ではとうていこんぶの採集ができないという事実は、このことによつてわかるわけであります。よつて水産庁は、すみやかに調達庁と連絡をとられまして、この実害に対する補償をするというだけの決心をはつきり持つてもらわなければならぬ。これは第一次接収の分ですが、そういう点においてはつきりしてもらわなければならぬというのが一点と、それからもう一つ承りたいのですが、川畑助役さん、今の石持部落の付近で、砲弾の着弾距離の近所に民家がありませんか。
  112. 川畑義雄

    川畑参考人 ただいまの石持納屋にございます。それはちようど陸上着弾地点から隣接しておりまして、今後拡張されます方向から砲弾を発胞することになりますと、この石持納屋の住居は完全に立ちのきしなければ危険でございます。従つて漁業操業は絶対にできないということになるのでございます。戸数は大体六十月ございます。
  113. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 ただいまのように、石持部落演習地の着弾地点の近いところに納屋がある。納屋と申しまするのは、一定期間出漁のために、自分の住宅を捨ててその納屋へ行つて逗留するわけです。一箇月なり二箇月なり、短期間のことでございますけれども、居住するわけです。しかしながら、これはまつたく住宅とかわりのないものである。そういうものがそういう着弾地点のそばにあるということを御留意願わなければならぬ。そこに人が住んでおる。少くともその住んでおるところの上空か爆弾が飛び込む、あるいは弾が飛ぶということになれば、これは人権蹂躙もはなはだしいものといわなければなりませんから、政府はこの点を十分御注意されまして、この点に対しましても十分調査をされ、そうしてそういう危険のないようにしてもらわなければならぬ。これは第一次の接収地帯であると私は考えます。第二次の接収地帯においても、すでにこういつたような派生的の問題があるのでありますから、もう一度調査をし直すということは、政府として当然やつてもらわなければならぬ。もう一度やられる意思があるかどうか、この点承つておきたい。これは伊関局長からもう一回、第一次の地域からそういうような突発的なことがありますので、御調査くださる御用意があるかどうか、承りたい思います。
  114. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 現在の接収区域内に被弾地区がありまして、そのそばに納屋があるわけでありますが、これに対しまして従来どういう被害がありましたか、私の方は詳しい報告を持つておりませんから、早急に調べてみようと思つております。
  115. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 これは、私はきよう問題になりまする大島の関係にもなることであると思うのであります。長い間皆様方は青森県の問題について、時間をさいていだだいてまことに恐縮でございますが、ただいまの戸叶委員からの御発言の中にございました風紀の問題なのであります。この点につきましては、私は先ほど頓知的な考えをもつて赤十字の船ということを言つたわけでありますが、この点については、私は実は政府に対しましても強く要望しておる事実があるのです。というのは、この接収地の風紀問題を抜本塞源的に解決する道は、住宅を設ける以外にはない。そこで私は、一回伊関局長さんのところにお願いに上つたことがある。ただいまの横田の付近に民間の資金でもつて住宅を建てるというので、私の友人の青森県の人が十八戸の住宅を建てました。そこにただいま進駐軍の人が入つておるわけであります。こういうふうに、民間の資金をもつて住宅を建てて、そうして兵隊さんの家族の者を迎えるということにしてやることが大事なんだ。それをやつて行かなければならぬ。それには、これに対する金融的な措置をしてもらわなければならない。そこで局長さんのところに出かけて行つて、長期信用銀行等に対して、住宅に対しても金融するということについては、これは国際協力局長さんなんだから、何とかひとつお世話願いたいということを頼みに行つた。ところが局長さんは、それを快くお引受けになつて、なお長銀等において進駐軍に対する疑義があつて質問の条項があるならば、公文書でもつて私のところに出してもらいたい。そうすると国際協力局長の名において、そういうような住宅はぜひ設けなければならぬ、政府の方でも設けることに対しては十分の援助をするということの回答をする、こういう御意見があつた。そこで私は喜び勇んで長期信用銀行に交渉をいたしました。長期信用銀行に対しましては、千八百万円の融資の申込みをしたのですが、半分だけ融資を受けた、そういう実情があるのです。そこで協力局長こいねがわくは、長銀なり開発銀行なりから、こういう種類の住宅に対して融資するという方法を講じる、そうして住宅を建ててやると、本国から奥さんを迎えて来るとか愛人を迎えて来る。そうすると生理現象の解決がつく。そういうことまで積極的にやらなければならぬ。この抜本塞源的な措置を講じられる、こういう点について、ひとつ一段の御努力を願いたい。そうすれば、私は風紀の問題についても、解決するところの手段としては何ぼか進めることができるのではなかろうかと考えております。この点について御用意があるかどうか、ひとつ承りたい。
  116. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 今やや具体化しております話は、アメリカの銀行から一千五百万ドルの長期の融資を受けまして、そして半官半民のような団体でもつて約三千戸くらいのうちを建てよう。それには法律がいるわけでありまして、本国会には提出いたしませんでしたが、関係省において研究をいたしております。これが最も話が具体化したものであります。そのほかは、民間におきましていろいろと考えておりますが、家賃を補償するとかいうような面において、まだ技術的な問題が残つておりますが、家をなるべくたくさん建てるという点につきましては、意見が一致しております。その方面に向つております。
  117. 山崎岩男

    山崎(岩)委員 終りました。
  118. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ただいまの山崎委員並びに伊関局長さんの応答は、住宅問題にまで発展いたしましたが、長期にわたるアメリカの住宅を建てることになると、さまざまな問題が発生して来ることとなりますが、今議会には出ないということになりますので、これは席をあらためてやるほかはないと思いますが、それよりもさつき伊関局長さんが、海面は、占領中の海面指定よりも拡張したどころか狭くなつたような御発言があつたのですが、その通りでありますか。
  119. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私は狭くなつたと理解しております。
  120. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私手元に参つております陳情書などの図面を見ますと、あとの方の海上使用が多いようでございますが、これは東通村の助役さんなり田名部町長さんなり、おわかりの方は御説明を願いたい。
  121. 中村喜代志

    中村参考人 第一次の接収解除地区は、陸地のそばが二・七キロメートル、奥に行きまして四・七キロメートルで、沖出しの方が広くなつて六・五キロメートル、こういう扇形になつております。この面積拡張になりますのは、その根元から今度少し狭められまして、沖出しが長くなるわけであります。十三・三キロメートル沖に行きまして、この長さが九・五キロメートル、ずいふん広がつているわけであります。
  122. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ただいまの御説明だと、拡張された海面の方が多いですね。
  123. 中村喜代志

    中村参考人 多いです。
  124. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点は局長いかがでごさいましよう。
  125. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 手元に地図がありますので、ごらんいただきたいと思いますが、前の占領時代の区域が、この平たい方の区域であります。新しく設定された区域が、A区域とB区域にわかれておりまして、両方足した面積は、ほぼ同じか、あるいは前の占領時代の面積よりも少くなつているのではないかと思います。しかし、だからといつて漁業被害面積に比例してどうだという意味ではございません。
  126. 淡谷悠藏

    淡谷委員 局長さんにお話申し上げたいのですが、ただいまお聞きの通り、地元は、拡張した方がはるかに大きいという認識でございます。ただいまの水産庁のお考えでは大体同じだろう、局長さんのお考えでは、拡張の方が小さい。こういうことでありまして、拡張した面積自体までも、これほど不完全な調査しかされておりません。これは、私重ねてお願い申し上げますが、閣議決定をなさいました以上は、これをいかようになさろうとも、もつと根本的に立ち返つて調査をされた方がよろしいと思いますので、その希望を申し上げまして、質問を打切ります。
  127. 富田健治

    ○富田委員長代理 これにて、青森県の関根関係質疑を終了いたします。青森県の参考人の皆さんには厚くお礼を申し上げます。  これにて暫時休憩いたします。午後二時から再開をいたしまして、質疑を継続いたします。大島関係参考人の皆さんは、午後三時に当委員会においでくださるようにお願いいたします。     午後一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十八分開議
  128. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  まず和歌山県大島関係につきまして質疑を許します。  大島関係参考人として、和歌山県県議会議員西川瀁君和歌山紀南労働組合協議会書記長森利一君が出席いたされております。なお国際協力局長はただいま会見をしておりますので、安川国際協力局第三課長が参つております。田中稔男君。
  129. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 大島の電探基地は、まだ接収に決定してはいないと思うのでありますが、この電探基地は絶対に必要なものであるかどうか、また現地事情によりましては、場所を他にかえるなり、あるいはこれをとりやめろなり、そういう可能性は残つておりましようか。
  130. 安川壯

    ○安川説明員 お答えいたします。ただいま大島電探施設は、まだ提供に決定しておらないと御発言になりましたが、これは実は閣議決定はすでに終つておるのであります。日付は、はつきりしたことは記憶いたしておりませんが、たしか五月一日でございます。この決定に際しましては、現地の方でいろいろ反対があるということは重々承知しておつたわけであります。しかしながら、他方ただいま御質問のありました、絶対にこの電探基地は必要かどうかという御質問に対するお答えをいたしますと、現地でいろいろ反対もありますし、でき得ればほかの地域で、もつと一般の生活に影響の少い土地はないかということは十分に米軍とも協議をしまして、何とかほかに移せないかというところまで詰めたのでありますが、結論といたしまして、この防空のためのレーダー網の基地としては、どうしても大島以外に移すことは不可能だという結論に至りましたので、当時必ずしも現地の方では、大島に設置するということに納得は得てなかつたのでありますが、そのようなほかに絶対にかえ得る余地がないということで、やむを得ず一応閣議決定という段階に立ち至つたわけであります。しかしながら、現実に先方に土地を引渡しまして、現実の施設を設置するために今後の手続がいるわけでありますが、閣議決定をしましたからといつて、ただちにあらゆる反対を押し切つて一方的にこれを提供すると考えておるわけではないのでありまして、現地反対のいろいろな理由については、よくわれわれも事情を聴取しております。現在のところは、政府としましては、これらの反対理由のうちの理由があるものについては、何らかのこれに対する対策を考えて、そうしてあくまでも現地の方の納得の上で、現実の引渡しと申しますか、工事にかかるということにいたしたいという方針で進んでおるわけであります。
  131. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 この基地がいよいよ設定されたとして、大体米軍関係者は何人ぐらい来るのでありますか。
  132. 安川壯

    ○安川説明員 正確な人数は申し上げかねますが、多くとも大体百名以内ないし少ければ六十名ぐらいというふうに考えております。
  133. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それに要する土地面積はどのくらいの広さでありますか。
  134. 安川壯

    ○安川説明員 約四万五、六千坪でございます。
  135. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは大島の今の総面積の何パーセントでありますか。
  136. 安川壯

    ○安川説明員 正確な大島の面積をここで承知しておりませんが、大体常識的に、非常に小部分ということはいえると思います。
  137. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 先ほどレーダー網というお話がありましたが、現在日本で、米軍の電探基地としてすでに設定されているものは全国にどのくらいありますか、それの地域的な分布状態を少し御説明願います。
  138. 安川壯

    ○安川説明員 駐留軍のレーダー施設は、一応先方の軍事機密ということで、一般には公表できないことになつておりますし、私も正確な数は覚えておりませんが、そのお含みでお聞き願いたいと思います。現在設置されておるのは二十箇所内外ではないかと考えております。
  139. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そういう軍事上の機密というようなことになつて、国会においても発表をはばかるということになるのでありますが、そういうことから、われわれ今後いろいろ非常に憂慮するのであります。今の電探基地というようなものは、行政協定によつてちやんと提供して来た基地のうちで、どこが電探基地であるかということはわかるわけですね。別にそれは隠しおおせるものではないのです。二十幾つあるというお話でしたね。それが北海道に幾つ、九州に幾つ、それを地域的にずつとここへ明示していただくことはできませんですか。それから現在までは二十幾つだが、今後また設置する予定の箇所がありましたら、一応このくらいの基地を設定したら大体それで飽和点に達するという計画もあると思いますが、できるだけ詳細に承りたいと思います。
  140. 安川壯

    ○安川説明員 各電探基地のあります場所と名前を全部ここで申し上げるということは、ちよつと現在ここにおります私の立場ではできかねると思いますが、将来のことにつきましては、現在当面決定しながら、まだ正式に設置という点まで行つていないのを申しますと、現在大島、それから宮崎県に一つ設置することになつておりますが、これはまだ閣議決定に至つておりません。レーダーの中心になる施設は、大体それで終るのではないかと私どもは了解しております。但しその中間に、小規模の中継ぎ基地と申しますか、私は技術的なことはよくわかりませんが、中継ぎの小さな施設が現在もできておりますし、その中継ぎの施設は、将来も多少増設されるのではないかという見通しを持つております。但しその中継ぎ施設は、現在でも施設面積も小面積でありまして、小人数でありまして、また大部分が駐留軍の軍人を常駐せしめないで、駐留軍に雇われる日本人の従業員を常駐せしめておる状況でありまして、この中継ぎ基地につきましては、将来多少の増設はあると思いますが、いわゆる米軍基地としてのいろいろな風紀問題、その他の問題の派生するおそれはないものと予想しております。
  141. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私は軍事技術の点についてしろうとでありますが、何でも電探の装置と高射砲と連結したような高射砲があるそうでありますが、ここは純粋に電探の装置だけを設けるのであつて、そういう高射砲陣地というようなものは伴わないものでありますか、現在及び今後についてお伺いいたしたい。
  142. 安川壯

    ○安川説明員 そのようなことは承知しておりませんし、大島に関しては、電探基地と関連して高射砲陣地をつくるというようなことは聞いておりません。
  143. 上塚司

    上塚委員長 次は、淡谷悠藏君。
  144. 淡谷悠藏

    淡谷委員 安川課長にお伺いしたいのですが、レーダー基地ができたから、それでそれ以上の設備は大体しないといつたような御答弁でございましたが、けさからの伊関局長その他の答弁を聞いておりますと、初めは万事ごく内輪に小さくしようとするようでございますが、そのうちには、アメリカの演習基地に保安隊を入れて、これを不発弾で殺してみたり、あるいはレーダー基地ができた所に持つて来て、これを守る施設ができる、今のところでは必要がないが、そのあとにはまたずるずるに使うといつたようなぐあいに、われわれから見ると非常に不安な、あたかも最初は手をつかませる、その次はキツス、その次はからだといつて来ると、随時この形がかわつて来るように思えてしようがない。岩手県の下閉伊郡豊間根村に、やはりレーダー基地を設けるといつたような計画もあるようになつておりますが、こういう点はいかがでございますか。
  145. 安川壯

    ○安川説明員 ただいまの件につきまして私よく承知しておりませんが、おそらく先ほど申しました中継ぎ施設の一部ではないかと思いますが、なおよく調べましてお答えいたします。
  146. 淡谷悠藏

    淡谷委員 軍事上の秘密であるとか、あるいは秘密会でなければ言えないという答弁も、しばしば伊関局長からも聞いております。しかし日本合同委員会があつて、いろいろ閣議決定前の調査もお行われているようでございます。これは秘密という形で公表されずに、あなた方の手で処理されますと、たいへんこの影響が大きい。レーダー基地なんかも、おそらく反対の大きな理由は、この基地を設けたために、どの程度まで影響するか、この点がはつきりされていないことだろうと思うのであります。その点を森さんに、このレーダー基地ができることによつてどのような影響を受けそうであるか、現地の気持としてひとつお考えを伺いたい。どうも政府の分では、秘密だといつて申しませんので、あなたの方から具体的にその点を聞かしていただきたいと思います。
  147. 森利一

    ○森参考人 私の方も、電探基地の影響というか、詳しいことは存じておらないわけでありますけれども、結局われわれ常識で考えられることは、電探基地だけがそこにぽつんとできてそのままで終るというのではなしに、今後それに伴う、電探基地を守ろうとする施設といつたものが増設されるのではなかろうかという不安があるわけであります。
  148. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ただいまの不安でございますが、これに対して、それ以上の施設はしないんだということをはつきり御答弁願えますか。
  149. 安川壯

    ○安川説明員 これは、今の御質問に対するお答えになるかどうかわかりませんが、一つの具体的な例を申し上げたいと思います。これは大島の場合ではございませんが、ほかの地点に同じような施設をつくりますときに、やはり現地の方で、現在示されている範囲ならばやむを得ない。しかし将来その施設が次々に拡張されて行くようでは困る、その点に対するはつきりした軍の回答がほしい、保証がほしいと言われたことがあるのです。これに対しまして軍の方にその旨を伝えまして、軍の方からはつきり書きもので、これは現在の施設以上には拡張しないという確約と申しますか、そういう保証をとつた例もあるわけであります。これはまあ一例でありまして、全般的に施設がふえるかどうかというお答えにはならぬと思いますが、一般の情勢というものを御推察願う御参考までに申し上げておきます。
  150. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重ねてお尋ねいたしますが、さつきの岩手県のレーダーの基地も、今のところではわからないというお話であります。どうもレーダー基地の設置につきましては、たいへんに不安なままで接収されて行くという場合がございます。特にこの間佐渡ケ島の問題などは、レーダー基地に関しまして、全然交渉もしないでどんどん道をつくつてしまつた。このことが非常に今大きく取上げられております。全然交渉もなしに、外務省も知らない間に、米軍がかつて施設拡張しているというこの事実を一体外務省はどうなされますか。
  151. 安川壯

    ○安川説明員 この点は、政府側の手落ちと申しますか、十分に地元の関係の村とは了解がついておると思つて、実は軍の方の工業が始まつたところが、その予定地域の一部に隣の村の土地が入つてつた。これは確かに政府側の手落ちであると思いますが、何も他意あつてつたわけではないのでありまして、これにつきましては、直接担当しております調達庁の方で、軍の方の工事は、その話合いがつくまでは工事を一時中止するということで、一応現地にも納得していただいたというふうに聞いております。
  152. 淡谷悠藏

    淡谷委員 外務省の手落ちは、ただ佐渡ケ島一つだけではありませんで、午前中に問題になりました関根地区の閣議決定にしても、あるいはまた内灘の問題にしましても、従来の手落ちはさまざまたくさんあるのでございます。内灘の問題にしましても、海岸線を全部閉鎖して漁船の操業を禁止してしまつた。これはきのう告示をしております。さつき半ばじようだんのように笑いながら伊関局長は、国会開会中はなかなか現地に行けないと言つておりましたが、今会期延長もなくなろうとするときに、急に告示を出して、あの内灘の海岸線を閉鎖して漁船の操業を禁止してしまう。これはやはり手落ちでございましようか。それとも現地農民漁民たちをこうした強制使用によつて極度に経済的貧困の中に陥れておいて、その貧乏につけ込んで無理やりに承諾させようという陰謀でありますか、その点はつきり承つておきたい。
  153. 安川壯

    ○安川説明員 その点は私はこういうふうに考えております。従来のあの試射場を施設に指定いたしましたときに、隣接する海面は危険区域として、それに基いて漁業の制限に関する法律に基いて、演習時間外の漁船による操業、航行を禁止する告示が出ておるはずであります。その告示は出ておるのでありますが、その後現地で、その制限を破つて操業するというような動きが見えましたので、それを事前に防止するために、禁止区域というものをより明確にするために、警察側でそういう処置をとつたものと私ども思つております。従つて何ら新たな処置をとつたということではないので、ましてこれで住民を恐喝して、強制収用に持つて行くというような意図は毛頭持つておるものではない。全然誤解でありますから、どうぞさよう御了承を願います。
  154. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは大島のレーダー基地の場合も、ずるずるにこの影響が拡大して行くということをたいへん心配しておりますので、これに関連した一つの実例として私なお承りたいのですが、そうしますと、あの民有地は強制収用しないが、国有地は強制的に使う、こういう構想の中には、海岸線一帯にわたり、あの陸地にごく幅の狭い国有地があるはずでございますが、これは全部押えて、近いうちにその押えた線に沿うて全射程を延ばすという計画がすでにあなたの方でなされておりますかどうか、これを伺いたい。
  155. 安川壯

    ○安川説明員 私に関する限りは、権限森を越えるような射撃をやる予定があつたとは承知しておりません。     〔並木委員「内灘問題に脱線しちやだめだ」と呼ぶ〕
  156. 淡谷悠藏

    淡谷委員 海面に対してはどうでございますか。
  157. 安川壯

    ○安川説明員 海面を直接目標にして撃つというようなことも聞いておりません。これは一週間ほど前であつたと思いますが、そういう情報が現地から外務省に伝わりましたのでその点確かめたのでありますが、射程を延ばして、斜めに海面に向つて撃つということは誤報であるそうであります。
  158. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大島のレーダー基地なども、今のような形で、当初の計画以外のものに広がるということをたいへんに心配しておるようでございますから、外交上の秘密もございましようし、軍事上の秘密もございましようけれども、あらかじめそういう点は、はつきりした企画のもとに確約ができるように、強い要求をアメリカ側にやつていただきたいと私は思います。どうも秘密々々ということで押えておくと、非常に困る。先ほど来並木委員からたいへんに抗議を受けておりますから、この一点だけにとどめますけれども、強制収用をやりまして、もう六、七、八と三月にわたります。外務省に再々私は請求いたしておりますが、この基地使用に関する保証を、特調に何かお打合せになつておりますか。前には使う前に金を払つた例もあつたのですが、今度はあれほどの反対を押し切つて強制収用して、漁船の操業まで禁止しておきながら、目の前で飢えて行く漁民を救うために、何らか特調に対してお打合せになつておるかどうか。私はこの点を明らかに伺いたい。
  159. 安川壯

    ○安川説明員 外務省は、調達庁に命令するという立場にございませんので、こうしろ、ああしろということはないのであります。しかし施設提供の合同委員会の責任者としての外務省としては、決して補償に対して無関心でいるわけではないのであります。當時全般的な問題についても、またこの問題についても、調達庁並びに大蔵省と密接に連絡して、迅速に行くように努力しております。
  160. 淡谷悠藏

    淡谷委員 常時連絡、打合せと言われながら、なお三箇月の間打捨てておかれたということは、さつきおつしやつた外務省の手落ちでありますか。現実には三箇月の間何ら処置が講ぜられておりませんが、これも外務省の手落ちと考えてよいか、はつきりお答えを願いたい。
  161. 安川壯

    ○安川説明員 ただ全般的に遅れておるから手落ちかどうかと申されても、私はお答えができません。もし個々のダースについて、こうだ、しかも外務省のやり方は悪いのだということを御指摘になれば、答えられますけれども、全般的におそいから外務省の責任だと申されても、にわかに外務省の手落ちというふうには考えられないのであります。
  162. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あらためていつか機会を得て御質問いたしますが、そのような状態で、レーダー基地というものは非常に秘密に扱われるだけに、先ほどあなたがおつしやつたように、軍事上の秘密があるために、知らないうちにずるずるになる例が、秘密ならざる基地の使用についても言われるのでありまして、大島の問題についても、この点は十分考慮して、いらざる混乱を起さないように、特にこれは無理やりに決定してしまつたという形がありますので、閣議決定に至る予備調査の段階で、もう少し日本人の立場に立つて、懇切丁寧なお取扱いをしていただきたいと思います。
  163. 上塚司

    上塚委員長 これにて基地問題に関する質疑は終了することにいたします。参考人各位には、長時間にわたり種々参考意見を開陳せられ、委員長より厚く感謝申し上げます。     ―――――――――――――
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 議事進行について。基地の問題は、幾たびかこの委員会でもいろいろと問題になり、多くの参考人の方からもいろいろな御意見を承りまして、私はもも得るところが多かつたと思います。この参考人方々お話を聞き捨てにすることなしに、何らかの実を結んで行かなければならないと思います。そこでそういう方法を外務委員会として考えるべきだと思いますが、その一つといたしまして、できるならば今までいろいろ私どもが得ました問題点を、一つの決議案なり何なりにいたしまして、外務委員会が発議いたしまして、これを本会議に提出するなり何なりの方法をとつていただきたいと思います。もちろん各党によつていろいろなお立場があつて、全部が全部、賛成することができない面もありましようけれども、しかし補償を早くしなければならないとか、いろいろなそういう面で一致できる点だけでも、一緒にして、決議案なり何なり出していただきたいと思いますので、そのことを動議として提出したいと思います。
  165. 上塚司

    上塚委員長 ただいま戸叶君より御要求がありました件については、いずれ理事会を開いて御相談いたしたいと思つております。そして対策をきめたいと考えております。     ―――――――――――――
  166. 上塚司

    上塚委員長 これより国際情勢について、質疑を行います。通告順によりまして、質疑を許します。穗積七郎君。
  167. 穗積七郎

    穗積委員 最初に下田条約局長にちよつとお尋ねしたいのですが、時間を節約する意味で、一括してお尋ねいたします。  MSAの交渉の今までの経過、その中で問題になりました点、それから向うと食い違つて問題になつておる点を、ちよつとお聞きいたしたい。それから続いて、近い将来にわが方の交渉の御計画があるかどうか。その御計画とお見通しについて、一括して御説明願いたい。  それから第二点は、行政協定の改訂の問題が、具体的に日程に上る段階に来ておると思います。     〔委員長退席、富田委員長代理着席〕 これについても、大体の御予定とお見通し、並びにこちらから交渉せんとする諸点、それをあからさまに御報告をいただきたいと思います。  それから第三問は、ダレスが朝鮮に来たようでありますが、帰りに日本に寄るということがいわれております。そのときには、おそらく朝鮮休戦問題を中心とするアメリカ側態度であるとか、朝鮮に対する方針であるとか、あるいは政治会談に対する打合せなどがあると思いますが、続いてMSA問題なりを中心として、日本の防衛力問題について触れるだろうと思います。そのダレスの日本訪問におきまして、首相なり外相なりとの会談において、どういうことを討議せんとする意図を持つておるか。こちら側はどういうことを問題にしようとしているか、それがわかつたら、率直に御報告いただきたいと思います。  以上三点を一括してお尋ねいたします。
  168. 下田武三

    ○下田政府委員 お答え申し上げます。第一点のMSAにつきましては、今まで四回交渉をいたしましたが、先方の首席交渉委員でありますステーヴスという人が、転任になりまして、その後任としてパーソン参事官が着任いたしましたが、先方の都合で、ただいまちよつと交渉が休会になつております。しかし来週ぐらいからまた始め得るのではないかと存じております。  今までの交渉での食い違いの点は、どういうことかというお尋ねでございますが、前にも申し上げましたように、MSA協定は、何十箇国という国がアメリカと結んでおりまして、大体スタンダード・フオームができておりますので、他の条約交渉と違いまして、大きな意見の相違というものはあり得ないのであります。結局、双方の重点を置かんとするニユアンスの相違、従つて同じことをどういうように書き表わすかという問題でございます。具体的の問題を明示申し上げることは差控えたいと思いますが、大体新聞に出ているような点が、やはり問題の一部であると申し上げてさしつかえないと思います。  第二の行政協定改訂の問題につきましては、御承知のように、もうすでに四月十四日に、NATO協定が効力を発生いたしましたならば、日本はNATO協定通りに行政協定の刑事裁判権に関する規定を改訂する意思があるということを申し入れてあります。幸いにして米国の上院が今会期中に批准いたしました。その結果、わが方は米国側と一日も早く交渉を開くことを要望しておつたのでありますが、最近米国政府から米大使館に訓令が参つたようでございます。従いまして、これもきわめて近い将来に交渉を開始する運びになると思います。交渉の問題点は、これも前から申し上げてありますように、この際早く刑事裁判権の改訂を実現するという見地から、一応他の問題と切り離しまして、刑事裁判権の行政協定の十七条の規定の改訂にとどめたいと存じております。  第三の、ダレス国務長官が朝鮮訪問の帰途日本に立ち寄つた場合に、どういう問題が提起され、どういう話が行われるだろうかという点につきましては、私から御答弁申し上げるにはあまりに問題が大きいのであります。事実まだ私も伺つておりませんので、いずれ大臣なりから御聴取願いたいと思います。
  169. 穗積七郎

    穗積委員 私はダレス氏の訪日は非常に重要だと思いますので、大臣がお見えになつたらお尋ねすることにします。  続いてちよつと簡単にお尋ねいたしますが、MSA協定の交渉をなさつておる間に、軍事的義務の問題については、今まで大体御答弁をずつとやつて来ておるわけでありますが、それにしても、新しい義務を負うような御答弁に途中でかわつてつております。そこでこの問題も特に大臣にお尋ねすべきと思いますが、局長にこの際お尋ねいたしたいと思いますのは、特に経済的な利益についてでございます。政府は、MSA協定を受けることは、特需にかわるわが方に関する経済的利益だと盛んに宣伝しておる。それで私は経済局長に、MSA協定を受けた場合に、日本の方で面接または域外買付を通じて一体どういう経済的利害得失があるかという計算が立つておられるか、大体見通しがついたら当委員会に報告してもらいたいということをお願いしておきましたが、いまだにございませんけれども、交渉なすつておる間に当然問題が出て来なければならないのであります。一方はどういう義務を負うか、一方はどういう経済的利益を得るかということが二大中心の問題だと思いますので、その経済的利益について、つまり向うの援助の内容規模、これらに関して大体おわかりになつていたら、その点を明らかにしておいていただけませんか。  続いて、行政協定の刑事裁判権の改訂問題について考えておられるようですが、せんだつて以来、この委員会で軍事基地について参考人を盛んに呼んでやつておることはお聞きの通りでございます。われわれの常識から見ますと、朝鮮も休戦になつておりまして、これから軍事的な問題から政治的または経済的問題に移ろうとしておるアジアの情勢であります。軍事基地を減少するようなことについて――これは協定の文書の中には一般的な義務だけ負うように書いてあつて、何箇所、どこどこということが書いてないようでありますが、それにしても実施細目として基地を減少するように交渉をなさる御意思があるかどうか。  それからもう一つ問題になつておりますのは、やはり駐留米軍に対します物資または労務の調達の場合に、その間の契約や補償の問題が非常に不明確になつておりますが、これまた実施細目としてこの際明確に協定をしておかれる御意思があるかどうか、われわれはそのことはどうしても必要だと思いますが、どういうわけでこれをオミツトされるのか、その御所存を伺いたいと思います。
  170. 下田武三

    ○下田政府委員 第一のMSA協定から受ける日本の経済的利益の点でありますが、これもただいま話合い中でございまして、確かなことはまだ申し上げられる段階にございません。しかし大体推測できますことは、本年度におきましては、アメリカの予算上どういう援助を受けるかということがはつきりいたしております。これは相互防衛資材並びに訓練ということでございますから、大体利益は、消極的利益と申しますか、もしアメリカから援助が来ざりしとせば、日本が自分の国家予算でつくらなければならない武器がただでもらえるという、国費節約の経済上の利益にとどまるのではないかと思います。しかしながら、来年度以降の問題といたしましては、英仏等に与えておるような広い範囲の援助を受けるという話合いもなし得るのではないかと思います。それから本年度におきましても、先般の日米間の往復文書で明らかになつておりますように、日本に対する援助自体から受ける経済的利益よりも、日本があのプログラムに参加することによつて、アメリカが他の国に与えておる援助のために日本でなす調達、いわゆる域外買付でありますが、これから来る援助というものがやはり相当考えられるのではないか。これは第三国に対する軍事援助の域外買付もありましようし、経済援助、例のポイント・フオアの関係の援助で日本に注文するという問題もあると思います。これは本年度から均霑し得る経済的利益だろうと考えております。  第二の、刑事裁判権だけに限つて、ほかの基地の問題、あるいは駐留軍の労務、あるいは物資調達の問題について、この際交渉しないのは手落ちではないかというような御趣旨の御質問でありますが、これは先ほど申し上げましたように、刑事裁判権の問題は、われわれ日本国民の最も関心を抱いており、かつ不幸な事件によつて国民感情上非常に刺激を受けた問題でありますので、これはやはり早く解決したいという見地から、これだけを切り離してまず解決したいと思うわけであります。御指摘の基地の問題は、現行の行政協定でもただ第三条で施設を供与するということで、施設の数などというものは協定でちつともきまつておりません。これは合同委員会におきまして、必要があれば、日本側で可能かつもつともだと思うものを向うの需要に応じて与えるということになつておりますので、これは協定の改訂の問題ではなくて、合同委員会等で実施する問題ということになると思います。基地を減少するように交渉すべきではないかということは、まことにごもつともだと思いますが、しかしこの基地の減少ということは、実は全体の問題の一部分でございまして、御承知のようにアメリカは、安保条約の前文に掲げましたように、日本が自衛力を漸増することを期待し、かつ漸増したならばそれに応じて一日も早く本国に帰りたいということは、明らかに表明された米側の意思であります。そういたしますと、基地を減少するためにはその前提として日本側の自衛力の漸増ということが必要でございます。日本側の自衛力の漸増のためにはMSAの援助を受けるのでなければ、とても日本側の力だけではできません。従いまして基地の問題は、自衛力漸増の問題、MSAの問題と全部つながつておる一つの大きな問題の一部分でございまして、よく世間でMSAには賛成だが基地は減少しろ、これは両立し得ない要求だと私は思うのです。こういう問題は、やはり全体の問題の一環として把握されなければならないことだろうと存ずるのであります。  次の駐留軍の労務調達、物資調達、これもやはり行政協定自体には漠然たる規定があるのでございまして、改訂の問題として取上げる必要はない。現に労務契約につきましては、基本契約の交渉を今いたしております。物資の調達方法につきましても、種々交渉しておるのでございまして、これは協定の実施の問題として今後とも善処して参るべき問題でございまして、改訂の問題とする必要はないのではないかと存じております。
  171. 穗積七郎

    穗積委員 簡単に御質問いたします。経済的な利益について域外買付をどのくらい見込んでおりますか。それからもう一つそれに関連して伺いたいのは、中共地区を含みます共産地区との貿易につきまして、アメリカ側と打合せをしてやるというような条項なり、または了解事項がつくかつかないか、その二点をMSA問題に関連してお尋ねいたします。  次には、今おつしやいました裁判権の問題ですが、裁判権につきましては、申すまでもなくアメリカの議会で附帯決議をつけて、ほんとうに裁判権をアメリカ側に移譲することにしております、大統領はこれをどう処理されるか知りませんが、もしそれを議会決議通りに日本側に交渉して来た場合は、政府としては、その通りこれを受諾する方針であるかどうか、この点をお尋ねいたします。それから行政協定問題について基地のことですが、基地はこの自衛力漸増と相関関係にあるということを盛んに議論されておりますが、実はわれわれはそう解釈していないのであります。一体日本の武力によつて日本を守るために、どれだけの兵力をつくり上げたらそれで安心できるか、そんなことは限界がないと思います。のみならず、できたところが日本のいわゆる武力に対して何らの発言権もない、完全独立を許すということは考えられない。おそらくは太平洋防衛同盟をつくり上げて、それを通じてわれわれが集団自衛の義務を負う。同時にまたその集団機構に対して、アメリカの軍部の発言権を加味するという形が新たに出て来ることはわかり切つております。その政治的の見通しにつきましては私意見を異にいたしますけれども、そのことだけ一応明らかにしまして、これは質問でなしに、また政府の政策をお尋ねするときに、あらためてお尋ねすることにして、あなたに対しては、今申しました域外買付のお見込みと、それから中共地区を含みます共産地区との貿易に対して協議をするような義務規定、あるいは了解事項をつける可能性があるかどうか。それから第三点は、刑事裁判権につきまして、議会の附帯決議を大統領がこちらに要求して来たときには、日本としてはそれにどういう態度をもつて臨むつもりであるか、その三点をお尋ねいたします。
  172. 下田武三

    ○下田政府委員 第一の域外買付の額が一体どれくらいになるかということと、第二のMSA協定に関連して、中共貿易を制限することについて、何か条項が設けられはしないかという点でございますが、この二点とも今話中でございまして、今のところ見通しがつきません。  第三の刑事裁判権の米国上院による批准に際してつけられた附帯決議が、そのまま来るべき交渉においてアメリカの要望となつて、せつかくNATO協定通りに行政協定を改訂しようと思つたのに、変なふさがぶら下るような危険がありはしないかという御質問でありますが、その点は、私ども心配いたしておつたところでございます。そこでこれも交渉が始まらないとわかりませんが、内々当つてみましたところによりますと、NATO協定批准に際して上院の附帯決議のような留保を米大統領はいたしませんでした。結局これはよけいなふさをぶら下げて不法にくつつける必要は、おそらくないのではないかというただいまの見通しでございます。
  173. 穗積七郎

    穗積委員 下田条約局長に対するお尋ねはこの程度にして、また大臣が見えましたらそのときにお尋ねしたいと思います。  次に、法制局高辻部長に御足労願つて恐縮ですが、お尋ねいたします。最初に質問の趣旨を明らかにしておきます。安保条約、行政協定、続いてMSA協定、こういうようなものが陸続と出て参りまして、問題の焦点は、やはり政策については、おのおのの立場によつて違うと思いますが、国会として明らかにしておかなければならぬのは憲法との問題だと思います。この点だけは党派を超越し、冷静厳粛にやつておくべき問題であつて、もし政策上再軍備をすべきだというお考えの方が、いやしくも憲法をあいまいにしたり、あるいはまたこれを犯して詭弁を弄してやられるというようなことであれば、日本の最高法であります憲法をそういうふうに取扱うことに対しては、非合法的な活動に対しては、われわれは何らこれを責めることができなくなると私は思います。ある意味における多数の暴力をもつてつてに解釈をしてやるということは、国会の権威にかかわるのであります。従つて冷静厳粛な気持で私も質問いたしますから、部長もそのつもりでお答えをいただきたい。特にこの委員会においてもその他委員会あるいは本会議におきましても、政府の戦力あるいは戦争と憲法との関係につきましては、非常にばらばらでありまして、時によつて同じ人でも違い、同じ内閣の中でも人によつて違う、こういうようなことで、われわれとしては非常に心外の至りでございます。特に私個人としては、終戦後第一回の憲法改正の委員会に参加いたしましたが、当時の内閣はたまたま吉田内閣でございました。その内閣の方方が提案されて議会で何と説明されたか。それを今日前言を翻してかつてな解釈をされておる。私は個人的にまことに心外の至りでございます。そういう趣旨で今国会も大体終幕になり、やがてMSA問題も具体的になると思いますが、それに関連いたしまして、私は、この際特にこの委員会の責任のために、その点を事前に明らかにしておきたいと思います。こういう趣旨でございますから、どうぞひとつあなたの法律的な良心と責任において明らかに政府の御見解を統一していただきたいと思います。簡潔にいたします。今までの議論の中で多少重複する点があるかもしれませんが、問題を明確にするために一応簡単に触れて行つて、必要のないところはイエス・ノーをもつてお答えしていただきたいと思います。  第一にお尋ねいたしたいと思いますのは、憲法の解釈につきましては、特に戦争または戦力の問題については、ただに第九条だけではなしに前文から全条を含めます新憲法の体系全体の中において私はこの解釈をすべきだと考えますが、部長はどういうふうにお考えになりますか。
  174. 高辻正己

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。もちろん私は御趣旨に従つてお答弁するつもりでございます。常に私はそうであるつもりでありますが、とりわけきようは特別の御注文がありましたから、そのつもりで御答弁申し上げます。  日本国憲法の規定は、ただに個々の条文だけでなしに、前文等をも加味して判断すべきではないかという御質問でございますが、それはもちろんであると考えます。
  175. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、事理明瞭なことは、岡崎大臣にいたしましても、その他の方でも、第九条は侵略戦争を禁止することを目的として書かれた条文であるというふうに、だんだんとかつてな解釈をされたり、あるいはまた追究しますと法律的に専門外であるということに藉口しまして、答弁を逃げられておりますが、特に第九条によつて表現された憲法の法体系全体の精神が、侵略戦争を禁止する、そういう目的をもつて書かれたものではないのでありまして、戦争なり戦力というものを全面的に永久に否定するという精神に立つて、いわば絶対平和主義の思想に立つておる、こう解釈すべきであると思いますが、その点について法制局のお考えを伺いたい。
  176. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいまの御質問の中にございますお言葉が、きわめて抽象的でございますから、ただちにその通りと申し上げてよいかどうか疑うわけでございますが、精神としてはおつしやる通りだろうと思います。但しそれでは九条が侵略戦争に限られるのかどうかということについては、これからおいおい御質問があろうと思いますから、その点については後刻御質問に応じてお答えしたいと思います。
  177. 穗積七郎

    穗積委員 条文を字句に従つて解釈するわけではありませんが、一応順序としてお伺いいたしまして、後に至りまして、さらに進んでお聞きしたい。国権の発動たる戦争ということでありますが、戦争と警察行為の違いをひとつ明らかにしていただきたい。それだけではちよつとお困りかもしれませんが、私はトリツクを設けてあなたをわなに入れようというようなさもしい根性ではありませんから、どうぞひとつ率直にお答えしていただきたい。
  178. 高辻正己

    ○高辻政府委員 戦争と警察行為との違いについてはどうかということでございます。戦争については、いろいろと定義の仕方がございましようけれども、これは一般に言われておりますのは、戦時国際法の範囲内で、あらゆる手段をもつて、相手方の抵抗を破砕し得るような法的状態を言うというのが普通の定義のようでございます。警察はこれは治安維持の目的のためにする国家の行為ということが言えると思います。つまり目的においてまるで違うということが言えると思います。
  179. 穗積七郎

    穗積委員 その点が実は現在の日本の立場として重要なので、たとえば名目のいかんを問わず、相手が国権の発動として武力をもつて日本に入つて来た、これが宣戦布告によつてつて来る場合と、いわゆる第五列的な形で入つて来る場合といろいろあると思います。しかもこの場合は戦争にまぎらわしいわけです。ただ思想的な宣伝をする、デマを飛ばすというような、第五列的なものを、日本の治安あるいは民心安定のために取締ることはむろん警察行為になると思いますが、外国の部隊、実力組織が武器をとつてつて来る、その場合に法制局としてのお考えでは、どこを限界としてお定めになりますか、たとえば宣戦布告がなければ警察行為、宣戦布告があつてつて来たときこれに対抗する行為は戦争行為とお考えになりますか、宣戦の布告がなくて国内上のいろいろ政治的な対立がありましたときに、それに対して援助を与えるというような形で、宣戦布告でなしに事実上の戦闘行為が起きる場合もありましよう。そして日本人の生命、財産を維持するために、あるいは治安を維持する、民心を安定するために、これらに対して実力行為をもつて接する場合が考えられると思うのです。そこでそういう意味で私はお尋ねしておるのであります。そのときに今の抽象的なお答えをさらに具体化しますと、今の私の設問を大体具体的な基礎として、警察行為というものと、それから対外的な部隊に対して警察行為の場合と戦争になる場合と、一体どこに限界を置いておられるかということであります。
  180. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいまの御質問は非常にむずかしい問題だと思いますが、いずれにしましても当事国の間に戦争の意思がかりにない場合、そういう場合にまず武力による何らかの衝突が起るというのは問題にならないと思います。それからその次に相手国に戦争の意思があつたような場合、先ほど例をとられたような宣戦の布告があつたような場合、これについては国際法上の問題と国内法上の問題がまさに両面において動いて来ると思います。そして国際法上の関係と申しますれば、これは国際法上の諸種の学説にありますように、これが国際法上は戦争であるということは否定できないかと思います。しかしながら国内法上の観点では戦争ということはないのであつて、いやしくも国内において人命、財産に対する何らかの侵害があれば、それはやはり一種の治安撹乱の行為と見られないとは申せないと思います。
  181. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、それは御解釈は警察行為だということになりますね。
  182. 高辻正己

    ○高辻政府委員 でありますから今申しましたように、国際法の関連と国内法の関連とまさに二つ考えられる。国内法の関連で見た場合には、それはやはり国内法秩序の破壊であるから、それの破壊に対する国の治安活動は警察の活動として見られないことはない、こう申し上げるわけです。
  183. 穗積七郎

    穗積委員 宣戦の布告がありまして部隊が入つて来た場合、明らかに部隊であるが、宣戦布告なしに入つて来た場合、たとえば国内に二軍政権のようなものができて、それの一方を援助する、内部闘争を援助するというような形で入つて来る場合がありましよう。一例をあげれば国内に両方ともこちらが日本の代表政権と称するようなものがあつて、その一方を援助するような形で入つて来る場合は、国全体に対しては宣戦布告にならない。そういうものに対して一方の代表の主権を主張する方の警察部隊なり――部隊、軍隊、名前はどうでもよろしいが、それを出動せしめて戦わしめる場合には、これがはたして憲法にいう戦争と解釈されるか、警察行為と解釈されるか、これをお尋ねしております。その点具体的なお話をしていただきたいと思います。
  184. 高辻正己

    ○高辻政府委員 まず最初に御設例がありました国内の何らかの勢力に対して援助を与えることによる一つの紛争の場合はどうかということでありますが、これはもちろん戦争の主体に相手国がなつていないわけでありますが、それは国際法上も戦争と言えないのであります。従つて国内法上のみれはただ一つの治安撹乱行為として、国内の警察行為の対象になるだろうと思います。それからもう一つ、相手国が戦争の意思をもつてたとえば宣戦の布告をして入つて来た場合どうかと申しますと、これは国際法上は戦争となるというのが普通の考え方であろうと思います。但しそれは国際法上の関係でありまして、国内法上も同時に一種の法的関係が生ずるということがあろうと申しているわけであります。
  185. 富田健治

    ○富田委員長代理 できるだけ簡潔に願います
  186. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ残念でございますが、これは実は時間を争つて話すべき問題でなくて重要なことなのです。  それではちよつとお尋ねをしてあと足らざるところは他の委員等から御質問を続けていただくことにして、戦争と区別いたしまして武力による威嚇または武力の行使は、一体どういうふうに具体的な内容としてお考えになつておりますか。
  187. 高辻正己

    ○高辻政府委員 これはいろいろあるかと思いますけれども、九条の一項を見ればわかるように、戦争と相対して言つておるわけであります。従つてそれは国際法上の戦争とならないような国際関係において一定の実力を行使することを、国際紛争を解決する手段としてはやらないということであるわけでございます。御満足いただけませんければ、なお御質問を敷衍していただけばその限りにおいて御答弁をいたします。
  188. 穗積七郎

    穗積委員 納得が行きませんからちよつとお尋ねしますが、武力による威嚇、武力の行使というものを戦争と区別して書いておられるわけですが、それまで禁止しておるわけです。しかし私は戦争という概念をどういうふうに考えておられるか具体的にお尋ねしたのです。禁止をされているのは戦争行為だけではなくて、戦争をしなくても武力による威嚇そのものもすでに禁止しておるのみならず、また武力の行使すら警察行為とすれすれの場合が出て来ると思うのですが、武力の行使という中には、戦争ではなくて、国際法上によるいわゆる交戦状態によらなくて、武力行使をすること、これも永久に禁止しておるわけでございますが、だんだん範囲が拡大されておるわけです。一体武力による威嚇または武力の行使というものは、今われわれが当面しておる事態を前にして具体的な見解をどういうふうにお考えになつておられるか、少し進んで御説明ください。
  189. 高辻正己

    ○高辻政府委員 問題自体が非常に抽象的なものですから――私なるべく具体的にお答えしようと思うでありますけれども、問題が何と申しましても抽象的でございますので、勢い抽象的にならざるを得ないと思うのでございますが、戦争と武力による威嚇あるいは武力の行使というものに対してそれらを否認して、放棄しておることは憲法の明文から明らかでございます。但しそれは戦争についてもそうでございますが、項に関する限りは、「国際紛争を解決する手段としては、」ということになつております。そこで「国際紛争を解決する手段としては、」ということが問題になると思います。これについてはただいままでの見解としてはほとんど一本の見解が出ておりまして、しかも憲法制定当時から学者間の通説といたしまして、侵略のためというふうに読みかえられるような意味にとつております。そういうものについては、これは国際法上の戦争たる適格を持つ戦争はもちろんのこと、戦争と言われないようなものにおいても、武力の行使あるいはその威嚇というものについてはこれは放棄する、これはもう絶対に放棄しておるわけでございますが、ただそれには「国際紛争を解決する手段としては、」というのが頭が乗つかつておるわけでございます。
  190. 穗積七郎

    穗積委員 それに関連して一括してお尋ねいたしますが、具体的になつて来たと思います。たとえば第三国が日本に対して宣戦布告あるいは布告なしに事実上部隊をもつて侵入して来た。これに対して日本の現在の保安隊を国権の発動として使用して、自然発生的に漁民とか農民、警察の一部が出て行つて、これと戦争する。事実上の戦争行為をやるのではないが、国権の発動としてこれを防衛戦に使うということは、警察行為を乗り越えて憲法の禁止する武力の行使の中へ入るか入らぬか、それをお尋ねしたい。
  191. 高辻正己

    ○高辻政府委員 そこでそういう御質問があろうかと思つて実は「国際紛争を解決する手段としては、」ということをあえて申し上げたのでありますが、これは先ほども申し上げた通り、学界の定説といたしまして、あるいは憲法制定当時から――その当時からおいでになつたそうでございますが、その当時からの解釈といたしまして、侵略のために何か一定の力を加える。それは警察力でもけつこうですが、警察力でも使うということは、これは憲法第九条第一項で禁止している。こう解釈いたします。
  192. 穗積七郎

    穗積委員 実は第一項の解釈について、これから少し具体的にお伺いしたいと思うのですが、あとの委員がお急ぎのようでございますから、次を伺います。「陸海空軍その他の戦力」の「その他の戦力」をどう解釈するか。これはアメリカのお墨付によりますと、アザー・ウオー・ポテンシヤルと書いてあります。当時の解釈では明らかに「その他の戦力」というのは潜在的なものですから、はなはだしき人に至つては、軍需工場のあれすら禁止すると言うのであります。具体的に申し上げますと、たとえば終戦後電源開発のために資材、労力を使う計画をして向うヘオーケーをとりに行くと、君たちは再軍備の用意があるのじやないか、電源が必要だということはアルミ生産のあれを持つておるのだろうということすら、個人的には言われている事実があります。それを「その他の戦力」で拡大解釈というか、向うはウオー・ポテンシヤルの解釈でありますからそういうように言うのでありますが、日本側でも解釈が厳密に当時はなされていたと思います。そこで陸海空軍、近代的な戦争を有効適切に遂行する装備云々と言うが、戦力をどう解釈しているか。そういう意味で特に禁止しているものの最後の限界である「その他の戦力」の解釈について、良心的に明らかにしていただきたい。
  193. 高辻正己

    ○高辻政府委員 この戦力の解釈につきましては、実はこれは繰返し政府側からお話があつたと思いますので、すでに御承知の上での御質問だろうと思うのでありますが、戦力につきましてはこれをきわめて広く解しまして、今仰せの通り、およそ戦争に役立ち得る力一切を含めるという説が確かにあることは承知しております。しかしそういうことを申しましても、一定の限界があるということは言わざるを得ないのではないかと思うのでございます。日本の国には多くの人口がございますが、これもよく言われることでありますが、そういう人的資源といわれるようなものまでが戦力に入つて、それを否認されるということはとうてい常識上考えられない、従つてどこかにその限度を置かなければならないということは、おわかりいただけるだろうと思うのであります。その限度が問題になるわけでありますが、政府の解釈といたしましては、おそらくこれについては矛盾もなかつたのであろうと思いますが、戦争を適切に遂行し得る程度に達している力と申しておりますが、私もそれを踏襲いたしましてそういうふうにお答え申し上げます。
  194. 穗積七郎

    穗積委員 「その他」とは一体何ですか。陸海空軍のほかに「その他」と特に書いたのは、まぎらわしいので一切を含むというように当然当時は解釈されておつたわけです。それは常識から行けば、現在の国際的水準から見ましても、特にアジア地区における各国軍隊の技術あるいは装備水準から見まして、日本の保安隊並びに警備隊というものは、明らかに「その他の戦力」に少くとも入るというふうに、われわれは事実解釈として解釈するわけです。それに対して法制局は一体どういうふうに考えておるか、その点を明らかにしてほしい。
  195. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私は法制局の者でございますので、保安庁法という法律が憲法に違反するかというようなお尋ねがあれば、自信を持つてお答えするのでありますが、その事実はどうかということになりますと、自信はないのでありまして、決してごまかすのではありません、責任を持つてお答えはできない、こういうのであります。ただそのままでいるのは何でございますが、そういうふうな御議論を立てて参りますと、保安隊でない普通の警察、これも十数万あるわけでございます。これは御質問の方々からよく出る例でありますが、あるきわめて弱小な国の軍備に比べても、なおかつそういうものはやはり強力であるということも言えるのじやないかと思います。これは事実を知りませんので自信を持つて言えませんけれども、そういうようなものであるからやはり、何でもかんでも一定の強力な組織部隊があれば、これは戦力に当るということは少くも言えないのではないか、こういうふうに考えております。
  196. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの立場としてははなはだ苦しいわけですが、そこが私は非常に残念でございます。法律というものは実施されなければ法律の権威はないし、実施する場合には事実関係をどう解釈するかということが法律の議論だと思うのです。従つて一般の警察というものはやはり対外的なものを考えないで、そして特に人民の生命、財産あるいは一般の治安を維持することが目的であり、そういうふうに訓練されるものでありますが、事実上保安庁法という法律の目的がどういうふうに規定されておろうと、事実問題としてこの保安隊の訓練というものが何を目的としているのか。一体、一般の治安活動のために――それは、かつての軍隊でも、今度の出水のようなときには、出て来るのはあたりまえのことでありました。あたりまえのことでありますが、事実を判定されて、それが違法であるか、少くとも脱法行為であるかくらいは判定されなければ、法の権威というものは保てないと思います。そういう意味で私は、この「その他」というのは、これは補助的または潜在的意味と解釈すべきであるかということをさつきからお尋ねをいたしておるわけですが、その点を事実と合せて、「その他の戦力」というのは補助的または潜在的という意味だ。正式なはつきりした陸海空軍という名前を持ち、だれが見てもそう見られるというものでなくても、名前はどうあろうとも、あるいはまた第一級の世界的水準に達しない装備のものであつても、少くとも「その他の戦力」というものは、そういう潜在的または補助的な戦闘力を持つたものである。そういうふうに解釈してよろしいかということを、もう一ぺんはつきりしていただきたい。その立場に立つて現在の保安隊については少くともボーダー・ラインには達しておる、あるいはこれをつくろうとしておると思いますが、その点を重ねてお尋ねしたい。
  197. 高辻正己

    ○高辻政府委員 その「陸海空軍その他の戦力」という「その他」という意味いかんということでございます。それは大体おつしやつた通りであろうと思います。そこで「その他」というのは潜在ということをよく言われるのでございますが、私は潜在と言つていいと思います。陸海空軍というのはむしろ顕在である、こういう意味であろうと思うのです。それをさらに詳しく申せば、顕在というのは何をもつて顕在と言うかといえど、それはやはり対外戦争の遂行ということから見て、陸海空軍はきわめてその点が明らかである、従つて顕在である。しかし今まさに仰せになりましたように、陸海空軍という名前を使わなくても、そういうものに匹敵するようなものであれば、それはやはり「その他の戦力」すなわち潜在戦力として保持を否認したということは、その限りにおいて正しいのではないかと私も考えます。そこで、それを標凖にして今度は保安隊を見ろ、こう仰せになるわけでありますが、保安隊を見るのは、私どもの目としては、保安庁法を通じて見るよりほかしかたがないのであります。保安庁法を見れば、第四条において書いておる通りに、これは警察任務であると言えるし、それからその行動の限界というものも、陸海軍には行動の限界というものは、特別国内法できまつておりませんのが普通でございますが、保安隊につきましては第四章に行動及び権限というものがございまして、そこには厳として行動の限界があるわけであります。こういうようなところから、保安庁法を通じて見た保安隊というものは、これはその他の戦力に入るとは言えないであろう、国会で保安庁法を制定された御趣旨も、おそらくそういうことであろうと考えておるわけでございます。
  198. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつと大事なところで御回答がいただけないので、あとでまたその問題についてお伺いいたします。  ところで問題はMSA協定を受けて、日本が今までと違いまして、侵略戦争でも何でもよろしゆうございますが、とにかく外国の軍事行動に対して、こちらが防衛のために戦闘行為を行う権利または義務を負うという、どちらでもけつこうですが負つて、そしてその対外的な外国の軍隊または部隊と、戦闘行為を行うことができるように保安庁法を改正した場合は、現在の保安隊は明らかに憲法に抵触する、こう解釈してよろしゆうございますか。
  199. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいまお尋ねがありましたような事柄については、実はそういうことになるということを予想しておりませんが、正直なところそういう場合の法律関係というものを考えておるわけではございません。従つて政府の解釈とか、法制局の公的な解釈としてお答えするわけに行かないことを御了承願いたいと思います。そこで憲法の九条一項では自衛権を否認しておるわけではございませんし、第二項における戦力の問題も今申し上げた通りでございますから、その制約の範囲内ならば憲法に違反しないし、その制約に違反すれば憲法に違反するということを抽象的に申し上げざるを得ないのであります。
  200. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだどうも……。もつと時間をいただきたいのですが、やむを得ませんのでまたこの次の機会にいたしますが、最後に二点明らかにしておきたい。  その一点は交戦権の解釈でございます。交戦権の解釈について、これは国際法上の通念によるのだということでございますが、いつかこの委員会で私もお尋ねいたしましたが、岡崎さんの解釈が非常にまちまちであつた。ということは交戦権というのを国際法上、つまり合法的な交戦国としての保護を受ける、たとえば敵性物資を捕獲することができる、捕虜に対する権利を持つておる、そういうふうに解釈されれば、主権の属性であります戦争をする権利、このアメリカのお墨付の語源には交戦権というものを、ライト・オフ・ポテンシヤリテイと書いてありますが、向うの言葉をかりて言えば、ライト・ツー・メイク・ウオーといいますか、戦争をする権利はこの中に入つていないのだ、すなわち主権の当然の属性として戦争をする権利はこの中に含まれていないというふうな式の解釈をされる、これは私は確かに誤りだと思う。放棄をしておるのは侵略戦争だけであつて、自衛戦争、自衛行為は認められておるのだ、そしてその場合における自衛戦争をする権利、それは独立主権の当然の属性である、そういうふうに今まで解釈されておつたわけでございますが、その主権の属性としての戦争を放棄する、その戦争をする権利、それはこの中に入つていない、放棄していないのだという解釈、これは私は誤りだと思う。何となれば、先ほど私がお尋ねしたように、この憲法全体を貫くもの、その法源といいますか、精神的な法源というものは、アメリカを中心といたします日本における占領各国の占領方針にあるわけです。その中にも明らかに出ておる。マツカーサーの国会における証言あるいは手記等にもそのことが明瞭に書いてありますし、それから同時にもし戦争をする権利を放棄していないのだとするならば、この憲法の中のどこかに宣戦の布告または統帥権のことが規定されていなければならぬはずであります。それがございません。のみならず、ついでですから申し上げておきたいと思いますのは、これは申し上げるまでもありませんが、たとえば国内法であります刑法の八十二条は侵略援助の罪が規定してある。八十一条は外患誘致の罪が規定してあります。それから九十二条は外国国旗の損壊に対する罪が規定してあります。それから特に重要なものは九十三条と四条でございますが、私戦の予備陰謀の罪、あるいはまた局外中立命令に違背する罪というようなことが書いてあつて、これらを全体としてながめますと、明らかにさきにおつしやつた通り、自衛権そのものは基本的人権と同様に、独立国であります以上は放棄していない。しかし武力によつてそれを行使することは明らかに放棄してあるとわれわれは解釈しなければならぬと思います。その交戦権を外務大臣は戦争をする権利と、それから交戦国として正当な国際法におきます合法的な保護を受ける権利と二つにわけて、そしてこの交戦権を放棄することは、戦争をする権利を放棄していないのだという解釈をしておられる。これは当時の憲法の解釈としても政府の説明もそうでありましたが、これは解釈として明らかに誤りだと思う。今申し上げましたような数点をあげましてもそうだと思う。統帥権、宣戦の布告を規定していないこと、あるいは国内法の一例を申しましても、刑法にも中立命令に違背するようなことが規定してあるのであつて従つて交戦権というものの中には、むろん岡崎さんの言う放棄していないという戦争をする権利すら含まれておると当然解釈すべきだと思いますが、その点について伺いたい。
  201. 高辻正己

    ○高辻政府委員 交戦権の意味、内容につきましても、これはまさに仰せになりました通りに二つの説があると思うのでございます。一つはライト・ツー・メイクウオー、戦争をする権利であろうというふうに解しておりますし、他の説は戦争を行うことに基いて生ずる国際法上の権利を言うのだ、こういう説のようでございます。そこで私どもにおきましては、やはりただいま仰せになりました外務大臣が言われておりますように、戦争を行うことに基いて生ずる諸種の権利を言うというふうに考えております。これは先ほど憲法制定会議の際には、むしろ戦争を行う権利のように解されておつたと仰せになりましたけれども、私の知る限りではそうではなくて、戦争を行うことに基いて生ずる諸種の権利というふうに言われておつたように――あるいは誤解かもしれませんが、そういうふうに見ております。従つて今の解釈も実はそのときとかわりはないわけでございます。そこでしからばそれでは足りないではないかというふうな御疑義かと思うのでございますが、戦争における諸種の手段の行使が適法と認められないということは、実はきわめて重大なことでありまして、やはり戦争に基いて生ずる諸種の権利そのものを一切否定するわけでございますから、それはまだはなはだ足りないというふうにはならないであろうと考える次第であります。
  202. 穗積七郎

    穗積委員 最後に手続上のことをちよつとお尋ねしておきますが、憲法に違反した条約ができましたときに、これは学界の説は二つあります。憲法優先説と条約優先説とありますが、もし条約が優先するというように解釈して、憲法がもし違つてつた場合には、国内法である憲法その他の法律をかえなければならないというような義務を国際的に負うといたしますと、条約は言うまでもなく国会の単純過半数で通ります。憲法は九十六条でもつてああいうきびしい三分の二以上の賛成及び国民投票の規定を置いている。条約優先説を岡崎さんのようにかつてにとられると、やはり憲法九十六条の改正規定というものは死んでしまう。そうして、するしないは別であります。どうせしなければならなくなる。その点について、原理的に言えば、憲法に違反するような条約は結ぶことはあり得ないと常識的には考えられるが、そういうときが事実上はあり得るのです。あつた場合に、われわれはむろん憲法が優先すべきだというふうに解釈するので、もしそれがはつきりした場合には、政府はもう一ぺん条約を切りかえる義務を当然負う、こういうふうに解釈いたしますが、違憲の条約と憲法との関係、それが一点。  それから一括して伺いますが、その違憲であるかどうかを判定するのは、一体だれがやるか、その二点お尋ねします。
  203. 高辻正己

    ○高辻政府委員 憲法と条約との法律上の関係については、これまたそちらから御指摘のようにまさに二つございます。そこで外務大臣が条約優先説をおとりになつたということを仰せになつたわけですが、私案は承知いたしませんが、もしそういうことがあるとすれば、これは憲法の九十八条の第二項にございます「確立された国際法規」というようなものの内容をなすものが、たまたま条約の内容に入つてつたというような場合については、あるいは条約優先だということも言えないこともないかと思います。たとえばきめて抽象的でおわかりにくいかと思いますが、外交官が、「確立された国際法規」として、いわゆる不可侵権、治外法権というようなものを持つておる、国家はおよそ主権を持つておるとかいうようなことを条約のうちに書いたとする、それは憲法に抵触するということはあり得ないと思いますけれども、そういうものが国際社会の基本的なものとして条約に入れば、それはむしろ条約が憲法に優先するというよりも、実は憲法は「確立された国際法規」のそういうものはむしろ認めておるということになろうと思います。そういうものが条約に入つておる場合には多少問題は違うと思いますけれども、そうでなくて、普通の一国対一国の間で結んだ「確立された国際法規」と言われないようなことで二国間の権利義務を定めたものがありといたしまして、それが憲法に違反した場合はどうなるかということについてだけ申し上げたいと思いますが、それは明らかに憲法が優先すると言つていいと思います。その根拠は、御指摘のように憲法の改正というのは、非常に慎重なる手続を憲法は要求しておる。それに反して条約の締結は内閣がするものであつて、そに締結について国会が承認するかしないかということになつておる。その手続上の相違を考えてみましても、そういうような手続が足る条約をもつて憲法を改正するということはできないであろうというふうに考えます。  そこで、それじやだれが判定するかということでございますが、これは普通の法律なんかについても同様でございまして、やはり終局的には裁判所ということになろうと考えます。
  204. 富田健治

    ○富田委員長代理 並木芳雄君。
  205. 並木芳雄

    ○並木委員 私は第一に竹島の問題を質問したいと思います。昨日でしたか、一昨日でしたか大韓民国の方から竹島の問題で日本に逆抗議をして来たということを聞いて、実は私ども愕然としたわけであります。外務省としては、従来竹島は日本の領上であるということをはつきり言つておりますし、これに対して抗議を申し込んであると言つております。今度の大韓民国の逆抗議に対しては、当然すみやかに日本側から再抗議をすべきものであると思いますけれども、外務省の所見を伺いたいと思います。
  206. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り、韓国の逆抗議に対してはこれはほつておけませんので、再び抗議をする、あるいは折衝を続けて行く必要があることは、これは申すまでもないことだと思います。
  207. 並木芳雄

    ○並木委員 どのようにして再抗議をするか、あるいは折衝を続けますか。その方法をお伺いいたします。
  208. 下田武三

    ○下田政府委員 ただいま先方の文書を検討いたしておりまして、それに対応してわが方も文書の内容をきめようと思つております。今のところまだどういうことを言おうか決定いたしておりません。
  209. 並木芳雄

    ○並木委員 場合によつては、こちらとしても海上保安庁の船だけでなく、保安庁所属の海上警備隊の警備艦を派遣する必要もあると思うのでありますけれども、上村官房長どのようにこの点を考えておられますか。
  210. 上村健太郎

    ○上村政府委員 御承知の通り、保安庁の警備隊に属します船は、軍艦ではございませんし、また保安庁法で与えられております任務及び出動の規定等から見ましても、非常に困難な問題が多いのであります。もつとも海上における一般人命財産の保護なり警察的行為は、海上保安庁が第一次責任を持つておりまして、海上保安庁の力をもつて及ばないときに、警備隊に出動の命があるわけでございます。しかしながら保安庁法六十一条にも規定してございますが、警備隊、保安隊の任務は、治安維持のために出動を命ずるということになつておりまして、この点において一つ制約を受けますのと、また軍艦ではございませんので、国際法上のいろいろの制約を受けおります。  さらに保安庁法六十九条にも警察官等職務執行法の適用を受けるというふうになつておりまして、警備隊、保安隊出動の際においての行動は、警察官の職務執行に関する適用を受けるわけであります。従いまして不法入国というような場合、たとえば韓国の国民が竹島に上りまして、不法占拠をしておるというふうな事態に対しましては、できるわけでございますが、もつともこの程度でありますれば、海上保安庁でもできるわけであります。しかしながら、韓国の方で万一軍艦を持つて参りまして、竹島を占拠したというふうな場合には、私どもの方といたしましては、国際法上も直接これに対抗して退去を強制するというようなことはできないのでございます。また国内法上、保安庁法上もそういうことは現在のところできないような状態であります。
  211. 並木芳雄

    ○並木委員 現在竹島の住民はどういう関係になつておるのですか。私たちよくわからないのですが、先方で不法占拠しておるのじやないのですか。
  212. 下田武三

    ○下田政府委員 竹島は元来無人島でありまして、漁獲その他の必要があるときに行つて、短期間滞在するということはやつておりました。現在居住者はございません。しかし韓国側の漁民がやはり暫定的に陸に上つて作業をしておるということはあるかもしれません。
  213. 並木芳雄

    ○並木委員 これと好一対をなすものでありますけれども、例の大邦丸事件の点はどうなつておりますか。
  214. 下田武三

    ○下田政府委員 その点は私主管しておりませんので、最近の状態を聞いておりません。
  215. 並木芳雄

    ○並木委員 いろいろのことをお尋ねいたしますが、来年南米のブラジルでは四百年祭を催すやに聞いております。これはなかなか大きな記念祭だそうでございますが、四百年祭というものは、どういうような計画で進められておるか。また日本の政府あるいは日本の国民として、このブラジル四百年祭に参加をする計画もあると思いますけれども、政府の考えなどお聞きしておきたいと思います。
  216. 下田武三

    ○下田政府委員 これはブラジル国の四百年祭でございませんで、サンパウロ市の四百年祭でございます。従いましてサンパウロ市が主催者となつてやるものでございまして、ブラジル政府は後援をいたすかもしれませんが、建前は市の祭ということでございます。日本側も御承知のようにサンパウロ市並びにその近郊には非常に大きなコロニーを持つておりまして、日本側としても、このサンパウロ市の四百年祭にはぜひ積極的に参加いたしたいと考えおりまして、今関係部局でいろいろ準備いたしておると聞いております。
  217. 並木芳雄

    ○並木委員 どのような準備が行われておるか、御存じありませんか。
  218. 下田武三

    ○下田政府委員 タツチしておりませんので、よく知りませんが、ほかの国もたくさん参加することでありますので、まず祭典の場所の、何と申しますか、敷地の割当があるのでありますが、日本は早くに及んで相当広い敷地を確保するという手を今打つておるようでございます。
  219. 並木芳雄

    ○並木委員 記念祭は来年の何月ですか。
  220. 下田武三

    ○下田政府委員 私何月か失念いたしました。
  221. 並木芳雄

    ○並木委員 政府としてもそれに対しての予算を組んでおりますか。
  222. 下田武三

    ○下田政府委員 これはおそらく政府予算でなくて、いろいろブラジルの貿易の関係者とか移民の関係者等が醵出するものではないかと思いますが、その点は私よく存じておりません。
  223. 並木芳雄

    ○並木委員 次に朝鮮休戦の政治会議への日本の代表またはオブザーヴアーの件でございますが、これの交渉は、現在だれが、どこで行つておりますか。日本のアメリカ大使館を通じて行つているか、あるいはアメリカの現地で新木大使が先方に申入れをしておるのか、その辺のところを……。
  224. 下田武三

    ○下田政府委員 日本の参加の問題だろうと思いますが、この点につきましては東京でもワシントンでもすでに話し合つておると思います。
  225. 並木芳雄

    ○並木委員 大体の見通しはついたでしようか、いかがですか。
  226. 下田武三

    ○下田政府委員 これは政治会議にどこの国が参加するかということが、現在の国際情勢において非常に重要な問題であります。そこでまだ関係国の間に意見が一致しておりませんので、従いまして日本が参加し得るかどうかという点についても、全然見通しがつかめないわけでございます。しかしながら政治会議の性格といたしまして、これは朝鮮問題だけに限るという場合と、そうでなくて、極東問題全般に及ぶ場合とがあり得ると思うのであります。新聞報道によりますと、アメリカ側は、さしあたり朝鮮問題だけに限定したい意向のようでありますが、これに対してソ連側がどういう態度に出るか、まだよくわかりません。従いまして日本の参加問題も、そのいずれかの場合によつて、やはり多少異なり得るだろうと思います。
  227. 並木芳雄

    ○並木委員 もし代表またはオブザーヴアーを送る場合には、政府の中から選ばれるものと見てよろしゆうございますか。それとも場合によつては民間から選んで出すのか。ほかの国の例あるいは前例などもあると思いますが、その点いかがですか。
  228. 下田武三

    ○下田政府委員 それは各国とも政府の代表者が参加するでございましようし、日本もやはりかりに出るといたしますればそうなると思います。
  229. 並木芳雄

    ○並木委員 こういう場合の代表またはオブザーヴアーというものは、必ずしも一人だけに限られたものではないと思いますが、いかがでしよう。
  230. 下田武三

    ○下田政府委員 一人だけに必ずしも限らないと思います。
  231. 並木芳雄

    ○並木委員 岡崎外務大臣は、保安隊の増強計画というものとMSAとは、関係がないということをしばしば答弁しております。ところがいつか木村保安庁長官は、MSAの交渉の成行きによつては保安庁法を改正し、保安隊を増強する必要も起るかもしれないというふうに答弁をしております。二人の大臣の間の答弁には明らかに違いがあるのでありますが、問い詰めて行くと、岡崎大臣はMSAとは関係はないけれども、しかしながら保安庁法の改正やら、保安隊あるいは海上警備隊の増強は、保安庁の方でただいま立案中であるということを答弁しておるのです。そこでお伺いしたいのですけれども、保安隊の増強計画は、今どういうふうに進展しておりますか。
  232. 上村健太郎

    ○上村政府委員 保安隊の増強計画は、私どもといたしまして事務的に研究はいたしております。しかしながらその装備その他の増強につきましては予算を要しますので、財政上どのくらいの金額をわれわれの方の増強計画に、させていだだけるかということについてわからないと、増強の計画が成り立たないのであります。現在のところ、すでに二十九年度予算の大蔵省提出が定まつておりますので、来年度におきまして日本の予算からどういうものをお願いして増強したらよいかというような研究をいたしております。しかしながらまだ結論には至つておらないのであります。
  233. 並木芳雄

    ○並木委員 保安庁法の改正の点はいかがですか。
  234. 上村健太郎

    ○上村政府委員 保安庁法の改正につきましては、MSAを受けることによりまして、ただちに改正を要することとはならないと思うのでございまして、これは外務省からしばしば御答弁があつたと思うのでありますが、わが国において自主的に決定すべき問題であるというふうに考えておりますから、具体的に現在どう保安庁法を改正したらよいかということにつきましては、考えておらない次第であります。
  235. 並木芳雄

    ○並木委員 自主的に決定することであるということはよくわかりますが、現在まだそこまで自主的に考えておらないのですか。もうそろそろ保安庁法の改正ということを考え、保安隊の防衛隊への切りかえの計画を持つべきだと私は思うのですけれども、両方ともまだそういう意味における計画は持つておらないのですか。
  236. 上村健太郎

    ○上村政府委員 MSAを受けることによりまして、保安隊の装備の強化ということに援助をもらうわけでありますが、さしあたりといたしましては、間接侵略に対する防衛力の増強ということになつておるようであります。しかしながら究極におきまして米軍が日本から引揚げまして、それに対して保安隊、警備隊がかわるということになりますれば、これは当然直接侵略に対する担当をすることになるわけでありますので、そういう場合には保安庁法は改正を必要とすると思うのでありますが、当座のところは間接侵略に対する防衛力を増強する、それについてMSAの援助を受ける、こういうことに私どもは解釈しております。
  237. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど条約局長の答弁ですと、MSAの今年度の日本への割当は大して多くないと思います。一億ドルから一億五、六千万ドルくらいのところではないかと思いますが、そんなところでしようか。
  238. 下田武三

    ○下田政府委員 これも今交渉中で、今のところ額がどれくらいになるか、ちよつと見通しがつきません。
  239. 並木芳雄

    ○並木委員 見当はどうですか。
  240. 下田武三

    ○下田政府委員 見当もつきません。しかし大体先方の予算でほかの国に当てておるようなものを差引きますと、ただいまおつしやいました見当じやないかと存じます。
  241. 並木芳雄

    ○並木委員 どうも私もそう思うときに今度は心細いわけなのです。一億ドルから一億五、六千万ドルを円に換算いたしてみますと、六百億円くらいのものでしよう。このくらいの金でもつてやれひもつき、やれこじき根性と言われては心外だと思う。さつきの条約局長の答弁では、来年からだんだん別の意味の援助も加わつてふえて来るということですから、それはがまんできるとしても、このくらいの額だと、大体保安庁としては、どのくらいの安全兵器、完全武器が貸与されるという計算ですか。それについて現在アメリカから借りている装備は、金に換算してみると幾らくらいになりますか。結局するところ今度のMSA援助額と振りかえられるくらいのものじやございませんか、そういう点どうですか。
  242. 上村健太郎

    ○上村政府委員 現在米国から借りております武器の金額につきましては、いろいろ基準が判明いたしませんので、正確なところはわからないのでありますが、保安隊に対して約八千万ドル程度、警備隊に対しまして七千万ドルくらいじやないかと思います。
  243. 並木芳雄

    ○並木委員 ですからそれを合せると一億五千万ドル見当で、今度のMSAの割当はそれをただ裏づける額にすぎないような心配もあるわけです。  そこでお尋ねいたしますが、今までの武器は武器、今までの装備は装備でこれは新しい勘定には入つて来ないと了解していいでしようか。つまり今度のMSAで来るのは全然新しい兵器、装備となつて来るものと見てよろしいかどうかという点であります。
  244. 上村健太郎

    ○上村政府委員 援助の方の武器は条約によりまして来ておりますし、従来来ております陸の武器につきましては、新しくアメリカがMSAと別個の法律を米国の国会に出しているようでありまして、従いましてMSAで来ると予想されますのは全然別個のものと考えております。
  245. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると今まで借りている装備の方は、早晩アメリカとの問で協定ができ上るわけであります。フリゲート艦を借りたときにとりかわされたような協定ができるのですか。
  246. 上村健太郎

    ○上村政府委員 情報によりますとそういうように存じております。
  247. 並木芳雄

    ○並木委員 内容はもちろんフリゲート艦の場合と同じように見てよろしゆうございますか。むろん今まで無償で借りているものを、ただそれを協定あるいは条約の形に表現したと見ていいのですか、それともこれによつて新たな権利義務が設定されるものであるかどうか。
  248. 上村健太郎

    ○上村政府委員 新たな権利義務が設定されるかどうか、目下のところわからないのでありますが、新たなる義務を生ずるといたしますれば、昨年の船舶貸与協定と同じような形式になると思います。
  249. 並木芳雄

    ○並木委員 保安隊の増強計画というものを私いろいろの方から聞きたかつたのでありますが、もう時間も大分おそくなりましたからいずれ別の機会に譲りますが、だんだんこれがふえて行つて今の十一万ではとても少い、あるいは二十万、三十万になる、またしなければいけないと私は思つております。そのときに保安隊の予備役制度、昔の陸軍の予備役といいましたかあるいは在郷軍人制度、要するに一ぺん隊に入つて訓練を受けて出た人々がそれつきりということでなく、何らかの形でつながりが残るようなことが必要になつて来るのではないかと思うのです。そういう制度を設けることを保安庁として当然考えておらなければならないと思いますが、いかがですか。
  250. 上村健太郎

    ○上村政府委員 予備役制度と申しますと、非常事態の場合に召集ということを考えなければ、政府としてはあまり意味がないと思うのでありますが、この召集ということにつきましては、現在の憲法の範囲内で不可能ではないかというふうな解釈がありますし、現在のところ予定いたしておらないのであります。
  251. 並木芳雄

    ○並木委員 憲法上不可能ではないかという解釈とはどういうことですか。
  252. 上村健太郎

    ○上村政府委員 職業の自由といいますか、強制し得ないということの規定、あるいは私ははつきりはわからないのでありますが、苦役の強制というような規定に関連して、いろいろ疑問があるように聞いております。
  253. 並木芳雄

    ○並木委員 保安隊の問題が出ましたが、いずれまた保安隊の憲法問題ということが繰返されて来ると思います。先ほども穗積委員から質問があつたのですが、その点で従来明らかにされておらなかつたと私が考えている点を、この際二、三お尋ねいたしたいと思います。  それは憲法九条で自衛戦争はできるかという点なのです。この間うちから岡崎外務大臣はしばしば侵略戦争はいけないのだということが憲法九条の建前であるという答弁はしているのですけれども、さてしからば自衛戦争はできるのかということに対しては、言を左右にしてはつきりしておらなかつたわけです。当然これは自衛戦争はできるという解釈がつかなくてはおかしいわけでありますけれども、お尋ねしたいと思います。
  254. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいまのお尋ねの中の自衛戦争と言われる意味が問題になるわけでございますが、わが国に対して直接侵略がありました場合に、わが国が実力をもつてこれに抵抗することができるかという意味でお答えをいたしたいと思います。  憲法は先ほど来お話が出ておりましたように、自衛権というものの存在は否認しておりません。しこうして九条の二項で戦力と交戦権というものを否認しているわけでございますが、憲法の禁止する戦力に当らない実力であれば、そういう実力を保持することを憲法は否認しているわけではないわけであります。従つてこういうような実力をもつて、自衛に必要な範囲におきまして一定の行動をするということは、自衛戦争と言えるかどうかはわかりませんが、そういう内容において行動するということは、必ずしも憲法には違反しないであろう、こう考えます。
  255. 並木芳雄

    ○並木委員 その場合に自衛戦争と言つてもさしつかえないわけですね。
  256. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私がそこを自衛の行動と申し上げたゆえんのもの、実は法律的に申しまして戦争という意味をどうとるかということにかかると最初に申し上げたのは、そこでございます。と申しますのは、憲法の九条二項には交戦権を否認しております。従つて交戦権が否認されているものが戦争だともし言えるのなら、それは並木委員のおつしやる通りかと思いますが、憲法上交戦権が否認されているわけでありますから、戦争の定義いかんにかかることではありますが、普通の意味の戦争ではないのではないか、こういうふうに考えまして、内容からお話を申し上げたわけであります。
  257. 並木芳雄

    ○並木委員 その点条約局長として、戦時国際公法その他国際間の問題があると思いますが、何か補足することはありませんか、今の部長の答弁に対して……。
  258. 下田武三

    ○下田政府委員 別に補足することはございません。
  259. 並木芳雄

    ○並木委員 私がお聞きしたいのは、国際法上において、いわゆる侵略戦争とか、自衛戦争ということは一つの確立された用語ではないかと思いましたので尋ねたわけなのです。
  260. 下田武三

    ○下田政府委員 高辻部長のおつしやいますように、国家の自衛権を憲法は禁止しておりませんから、自衛行動はとれると思います。ところが自衛のための戦争となりますと、これは別のことでございまして、戦争であれば敵の領土まで行つて爆撃してもいいわけであります。ところがそれは自衛行動とは別であつて、交戦権が認められて初めて敵の領土奥深く入つて敵の首都を爆撃するという権利が発生するわけであります。そういう交戦権というものは認めていないのでありますから、国際法上の戦争と関連して初めて認められる権利は私は行使し得ない、戦争に至らざる自衛行動ならなし得る、そう考えております。
  261. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、私が聞きたいと思つておりました自衛戦争はできないということになりますね。自衛戦争はいけないのだ、自衛戦争に至らざる自衛行動ならよろしいということですか。
  262. 下田武三

    ○下田政府委員 自衛の名においてフルに交戦国としての権利を行使しようという意味でしたら、自衛戦争はできないということになると思います。
  263. 並木芳雄

    ○並木委員 フルに交戦権を行使したらということは、その程度がむずかしいのですけれども、それではちよつと角度をかえて質問します。実はこういうことを聞きたかつたのです。軍隊でない保安隊でも、自衛戦争ならできるのか。保安隊は軍隊ではない。従つて戦力ではない。しかし自衛戦争なら保安隊でもできるのだ。つまり政府の解釈で言うところの戦力に至らざる保安隊で自衛戦争はできるのだというように言えると思いましたので、聞いたわけなのですが、この場合はただいまの答弁では自衛戦争という言葉をかえて自衛行動としなければならないわけだと思いますが、そうなりますか。
  264. 下田武三

    ○下田政府委員 憲法第九条には「国権の発動たる戦争」をまず禁じております。その趣旨は、よく自衛の名において戦争が行われるが、たとい自衛戦争であつても、国権の発動たる戦争はこれをしないということだろうと思います。従いまして先ほど申し上げましたように、敵の直接侵略がありました場合に、これを日本の保有する戦力に至らざる武力をもつて阻止する実力行動に出ることは、これは自衛行動でありますから、憲法の禁ずるところではございません。従つて日本はこれはなし得ることだと思います。しかしながら国際法上の交戦権に基いて――交戦権というものは、普段でありましたならば不法行為となるような行為も正当化するものでありまして、公海において敵国の船舶を拿捕したり、あるいは敵国の首都を爆撃したりすることも正当化するものでありますが、そういう意味の交戦権を行使しての戦争ということは、たとい自衛の場合であつても憲法が禁ずるものではないかと私は存じております。
  265. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどの高辻部長の答弁と、私が前に佐藤法制局長官からもらつた答弁と違うところがあると思うのです。私がずつと前に戦力と武力との違いいかんということを聞いたときに、戦力と武力とは実質的には同じであります、ただ動的と静的との違いだというふうに答えております。しかし今日の部長の答弁ですと、戦力の一歩手前を武力というふうに私は聞いたのです。武力と戦力と明らかにわけた。私はこれは間違いではないかと思うのですけれども、その後政府の解釈はそういうふうにかわつて来たのですか、どうですか。
  266. 高辻正己

    ○高辻政府委員 戦力と武力との関係でございますが、これは私も佐藤法制局長官が前に言われたことを存じております。私もそういうことを言つたことがあつたかと思います。それは佐藤法制局長官の仰せになつた通りで、もし私の言うことが誤解の点がございますれば御訂正を願いたいと思います。
  267. 並木芳雄

    ○並木委員 そこでお伺いするのですけれども、私はむしろさつき部長の答弁のように戦力と武力は違うのだ、戦力に至らざるものを前には武力と思つていたわけです。しかし両方が同じだという答弁ですから、しからば武力にあらざるもの、たとえば保安隊、これは政府は武力でないといつております。すなわち戦力でないといつております。本質は武力と戦力が同じだという前提なのです。ですから保安隊ならば国際紛争を解決する手段としてもよろしいということになると思いますけれども、いかがですか。
  268. 高辻正己

    ○高辻政府委員 国際紛争を解決する手段としては武力であろうが戦力であろうがこれは放棄されておるわけでございますから、国際紛争を解決する手段としては、かりにお尋ねがございましたような保安隊を使用するということは憲法上不可能であるとお答えせざるを得ないと思います。
  269. 並木芳雄

    ○並木委員 私が聞こうと思つたのはそこのところだつたのです。私はこう思うのです。国際紛争を解決する手段として禁ぜられておるものは、第一項は国権の発動たる戦争と武力の行使または武力による威嚇、この三つだと思うのです。ところが政府の答弁では保安隊というものは交戦権もなければまた戦力でもございません。だから保安隊ならばいくら縦横無尽に国際紛争の解決をするために使用しても、これは憲法違反にはならないと思いますが、いかがですかという私の質問であります。
  270. 高辻正己

    ○高辻政府委員 九条はただいまのように戦力と武力についての問題からでありますれば、並木委員の御疑問が出るようなこともあるかもしれませんが、第一項の趣旨と申しますのは、必ずしも戦力に限定しているわけではないのでありまして、第一項の趣旨からいいましておよそ組織的な実力、そういうものに当れば、少くも国際紛争を解決する手段としては、そういうものを威嚇または行使したりすることはできないと解するのが正当であろうと考えます。
  271. 並木芳雄

    ○並木委員 ですからそこにはしなくも政府の戦力という解釈に無理があるということを今発見したわけなのです。つまり一項へもどつて来ると、今の部長のような答弁をしなければおかしいわけでしよう。今の私の質問に対して保安隊を縦横無尽にあるいは海上警備隊を縦横無尽に国際紛争の解決の手段として使えるのじやないかとお聞きすれば、使えるとは答えられないから、苦しくなつて戦力というものの解釈と武力による威嚇というものに区別をつけてしまうわけです。ところが先ほど申されたように武力と戦力は実質的に同じで、一方は動的、一方は静的なもの、こういう答弁ですから、陸海空軍その他の戦力、この点の解釈を陸軍だけでは戦力にならない場合もある、戦力というものは総合された云々という苦しい解釈をとつているから、この一項へもどつて来ると戦力と武力の間に差がついて来るのです。ですから今の答弁ですと今までの答弁とどうしても違いが出て来るのです。これをよくお考えになつてもけつこうですが、私の聞いていることはわかりますか。     〔富田委員長代理退席、委員長着席〕 つまり武力と戦力というものが同じであるならばこれはおかしいと思つたのです。だからかりに政府の言うことを信用して同じだというならば、ざつくばらんにいえば、武力の行使または威嚇というものは、戦力の行使または威嚇と読みかえていいものではないか、こういうことになります。しからば保安隊というものも政府は戦力でない、すなわち武力でないというのですから、これはいくら国際紛争の用に供しても一向憲法違反ではない、こうなるのではありませんか。
  272. 高辻正己

    ○高辻政府委員 きわめてそこを精密に分析されて御質問になつたということで、ただそこのところは先ほど穗積さんかの御質問にもございましたが、憲法の前文同様、九条の一項に書いてあります最初の前段等に照し合せて考えますれば、これは保安隊にせよその他のものにせよ、相当程度の実力組織になつているものを国際紛争を解決する手段として使うということは、九条の趣旨に反するであろう、こう申し上げるわけでございます。
  273. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は私は非常に問題があると思うのです。なおよくこれを政府部内で考えて統一していただきたいと思います。おそらく私の言う通り、そういうふうな解釈をされると違つて来るのではないか、たとえばさつきの竹島の問題、あれはこの前岡崎外務大臣は明らかに国際紛争だと言つていたのです。竹島の問題で国際紛争をこじらせたくないから云々ということで、海上警備隊の船を出すことを避けたい、すぐ実力に訴えることはやめたいという答弁をしております。そうするとあれが国際紛争であるならば、海上警備隊の船舶を出動させることはできないということになるわけです。これはやはり矛盾ではないでしようか。日本の領土であると日本が主張する竹島を向うが不法占拠をして来た。われわれから見ればこれは国内の治安維特で、治安対策である。だから海上保安庁の警備船で足りない場合には、海上警備隊に出動を命ずることができるわけです。しかるに今のような解釈をとつてしまうと、部長の言う海上警備隊あるいは保安隊のような武力、これは国際紛争を解決する手段としては用いることができないのだということになると、竹島へ出動することができないということになりますが、その関係を、どなたでもけつこうです、解明してほしいと思います。
  274. 下田武三

    ○下田政府委員 これは外務大臣の先般申し上げましたことを誤解なさつておられるのではないかと思いますが、竹島という日本の領土内に無断で他国民が侵入しまして、そこで漁撈を行うということは、これは不法入国の問題であります。でございますから不法入国取締りという警察上の措置がございます。従つて先ほど保安庁の官房長から答弁がありましたように、これは直接警備隊の問題ではないかもしれません。しかしもし日本漁民がそこで苦労しておるということがありましたら、海上警備隊の船が行けるかもしれません。しかしこれはほとんど不法入国の取締りの警察上の問題であります。憲法第九条第一項の問題になつて参りますればどういうことかというと、竹島の領土権の帰属について日韓間に紛争が生じたといたします。外交交渉でなかなか解決しない、どつちかが業を煮やして軍艦を派遣して、あるいは日本の場合でしたら警備隊のフリゲート艦を派遣して、釜山なりどこなりを攻撃する、そうして実力を行使して威嚇して、竹島を日本の領土であるということを認めさせる、そういうことは憲法第九条の国際紛争を解決するために武力を行使することとして禁じられておるのであります。ですから現地へ不法入国者が来てそれを取締るという問題と、竹島の帰属いかんという日韓間の紛争を解決するために釜山なりどこなりを攻撃して、武力に訴えて解決するという問題と全然別問題で、後者の問題はこういう紛争を解決するために武力を行使することは、その武力が戦力でありましようと、あるいは戦力に至らないような保安隊のフリゲート艦でありましようと、これは同様に禁止しておると解しております。
  275. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると戦力と武力はどうしても違いが出て来ます。戦力と武力とでは動的と静的の違いだ、それだけだという説明では間違つて来ると思いますが、どうですか。だめを押したいと思います。
  276. 高辻正己

    ○高辻政府委員 先ほどから申し上げておるわけでございますが、確かに並木さんがおつしやいますように、憲法第九条の武力というものに当らなければ九条の規定は働かないのだという前提に立ちますれば、それは仰せの通りになろうかと思います。しかしながら、佐藤長官が前におつしやいました戦力と武力との関係はさておきまして、九条の一項、特にその前段にあります規定に目を通しまして読んで参りますと、それはたとえ武力に当らなくても、国際紛争を解決する手段としてこれを使用する、ただいま条約局長が仰せになりましたような例に使うということは、憲法の九条並びに前文の趣旨からいつて許されないものであろう、こう申すわけでございます。
  277. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  278. 戸叶里子

    戸叶委員 私は駐留軍に勤務しておる労務者の労務契約のことで、伊関さんと調達庁の方にお願いしようと思いましたが、今日は合同委員会の方でお忙しくておいでになれないとのことでありますので、次の機会に譲りたいと思います。  そこで一点だけ上村官房長に伺いたいことは、あちらこちらで保安隊の演習地が設けられるのではないかというような懸念を持つているところがあるように私は聞いております。私の聞いただけでも二箇所ばかりございますが、今年中に演習地をつくられるような計画のある場所を承りたい。
  279. 上村健太郎

    ○上村政府委員 主務局長でありませんので、正確にお答えできかねるので申訳ないと思いますが、本年度予算において演習場を何箇所かつくる計画を持つております。その場所については、各方面に、可能性のある土地を地元の方々とも折衝いたしまして、今後きめて行くことであると思いますから、現在具体的にどこどこということは、正確なところは申し上げかねるのであります。大体現在米軍使用しておる演習場をなるべく共用さしてもらうという方針と同時に、各駐屯地においては今日までは各市町村の荒蕪地など承諾を得て利用してやつておりますが、きわめて不十分でありますので、大きな演習場としては北海道方面に一箇所、小さい演習場としては各管区ごとに数箇所ずつの予算を計上してあると思います。現在どういうところを予定しておるかとか、どういうところを目標としておるかということについては、私今ちよつと資料を持つておりませんので、申訳ないのでありますが、申し上げかねるのであります。
  280. 戸叶里子

    戸叶委員 おわかりのところがございましたら、あとから知らしていただきたいと思います。場所とか規模によつて違うでしようけれども、一箇所に大体どのくらいの予算を使われておるか。それから新しくもしも設けられたときに、そこにいる保安隊員というものはどういうふうにして連れて来るのか、それを承りたい。
  281. 上村健太郎

    ○上村政府委員 演習場の設置計画につきましては、後にお手元に資料をお届け申し上げたいと思います。あとの、どういうところへ連れて行くかということはちよつとわかりかねます。それから予算の点も今手元に資料を持つておりませんので、後ほど申し上げたいと思います。
  282. 戸叶里子

    戸叶委員 では次の機会にそれらの点について承りたいと思いますので、私はあとの質問を留保いたしておきます。
  283. 上塚司

    上塚委員長 田中稔男君。
  284. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 千葉県に本籍を持つて戦時中満州におりました関口康一という人から私は頼まれたことがございますが、この関口君というのが昭和二十年十一月三日に関東第九陸軍病院、通称満州第二六八五四部隊に約金十三万円を満銀券としてそれを提供したわけです。在外公館等に対して金を提供した人に対しましては、講和発効後何らかの措置が行われたのでありますけれども、これは相手が軍であつたために、これに対しましては何ら返済の措置が行われていないということであります。これはどうも不公平だというので、このことについて外務委員会の席上、関係当局からはつきり御方針を聞いてくれという要請を受けたのですが、御説明を承りたいと思います。
  285. 池田千嘉太

    ○池田説明員 満州の軍病院でございますね。大体借入金というのは、法律の第一条に、「「借入金」とは、太平洋戦争の終結に際して在外公館又は邦人自治団体若しくはこれに準ずる団体が引揚費、救済費その他これらに準ずる経費に充てるため国が後日返済する条件のもとに在留邦人から借り入れた資金をいう。」こういう規定になつております。もちろんその審査は、法律によつて審査会というものができて、その会で審査し、その決定に基いて外務大臣から確認するとかしないとかいうことになつておるわけでありますが、審査会においてこの法律に基いて審査しましたところ、軍病院というのはただいま申しました在外公館あるいは邦人自治団体に該当しないということに決定したわけであります。従つてこれに提供した資金は、この法律にいう在外公館等の借入金ではないということになつて、そういう通知が出たわけであります。
  286. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは相手が悪かつたので非常に不公平な取扱いになるわけでありまして、こういうケースはまだ非常に多いと思うのですが、何かこれを適当に解釈して、現行法のもとにおいて支払う方法をお考えになることはできないか、あるいは現行法を改正しまして、そういう軍の機関に提供した金につきましても、支払いを受けるというような方法を講じていただくわけには行かないか、そういう点についての当局のお考えを承りたいと思います。
  287. 池田千嘉太

    ○池田説明員 この借入金となりますと、ただいま申しましたように、終戦に際して主として東亜地域でありますけれども、非常に広い範囲で各地において行われておりまして、終戦後にいろいろ資金が動いておるのでありますが、これは大体引揚費あるいは救済費になるのでありますが、しかしただいま言いました法律の規定によりますと、どうもこれを包括するということが非常にむずかしいようでございます。大きな例としましては満州河北におきまして御承知の満鉄その他、それから河北交通などがありますが、こういう団体が引揚げ救済のために多額の資金を調達しておるのでありますが、これも法律からいえば、どうしても包括することは困難ではないかということに決定になりまして、一応不確認ということになつておるのでございます。こういう点は提供者の方からいうとまことに残念なことと思うのでありますが、一応法律ではこう限定されている以上、現在のところとしてこの法律ではどうすることもできないじやないかということになつております。
  288. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 法律を改正するのはむしろわれわれの仕事ですが、実際の仕事に当つておられるあなたとして、法律を改正したらどうかというようなお考えもないですね。現在のところ法規を改正して、そういう軍の機関に金を提供した人にも返済の道を開いてやるというようなことをお考えになつていないわけですね。
  289. 池田千嘉太

    ○池田説明員 事務担当者としましては、いろいろの具体的な事実にあたりますと、非常にすれすれのケースが非常に多いのでございまして、これをどこまで包括するかということは、法律を改正するにあたつても相当困難があるのじやないかと思いますから、あるいはこれは確認しないからといつても、在外のこの種債権、債務というものは、それで消滅したという意味ではなしに、別途に何か考えられるということも考えられるのでありまして、これはあるいは在外資産として一括処理されるということも私としては考えられるように思うのであります。そういう事情でありまして、ただちにこの法律を改正してやるということは、事務的に非常に困難な点があるのでありまして、ちよつと積極的にそういう意見を持ちかねております。
  290. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 実は竹島事件についてお聞きしようと思つたのですが、並木委員が大分聞かれたというし、私不在中でありましたので、重複するのもどうかと思いますが、こういう問題がいろいろ起つておりますが、現在行われている日韓会談で条約局長の御答弁を得ることができましたなら、日韓会談の今までの経過と、それから特に大きな問題、さらに今後の見通しなどについて、少し説明していただきたいと思います。
  291. 下田武三

    ○下田政府委員 日韓会談の取上げております問題は、大体五つございまして、第一は、日韓の基本関係を確立するという問題、第二は、戦争の請求権を処理するという問題、それから第三は、船舶の問題、第四が、漁業の問題、それから第五が、国籍処遇の問題でございます。この問題にわかちまして全体会議のほかに分科委員会を設けまして、この春以来ずつと分科委員会が交渉を継続しておりまして、私は全体会議の方には出ておりましたが、分科委員会の方には出ておりませんので、こまかいことを存じませんが、ただいまのところ五つの問題につきまして、何一つ両国間の意見の一致に到達しておりません。これは韓国側の主張態度は非常に柔軟性を欠いておりまして、非常に交渉しにくいのであります。それから韓国側から参つております交渉負も、この夏の暑さのためと、もう一つは長く家族と離れて生活しておるという関係もございまして、ひとつ夏休みをしたいということを申し出て参りまして、これももつともだと思いますので、最近休みにいたしまして、この秋からまた再開しようということになつておるのが現在の段階でございます。
  292. 上塚司

    上塚委員長 川上貫一君。
  293. 川上貫一

    ○川上委員 きようは大臣か政務次官にお聞きしたい点があるのですが、おさしつかえだそうでありますし、なお時間も相当たつて委員会もまことに蓼々たる光景を呈しておりますので、条約局長に二、三の点だけお聞きしたいと思います。  今日本とアメリカと日米労務基本契約という問題について、交渉が進んでおるという先日のお話でありました。あの中にはアメリカの方の案と日本の案と両方あるのでありますか。これを出し合つて交渉いたしておるのでありましようかどうでありましようか。
  294. 下田武三

    ○下田政府委員 私労務基本契約の交渉に参加いたしておりませんので、詳しいことは存じませんが、おそらく両方の案があるということはないと思います。どちらかの案に基きまして交渉しておるのだろうと思います。
  295. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると労務基本契約の問題については、条約局長のところでは、内容についてはあまりよくわからぬ、こういうことなのでありますか。
  296. 下田武三

    ○下田政府委員 これは条約でございませんで、条約の実施に基く細目のとりきめでございますので、国際協力局が主管いたしまして、もつとも国際協力局も主管ではなくして、直接の担当者は特別調達庁でございます。私は交渉に参加しておりませんのみならず、その内容につきましても、別に詳しいことを存じておりません。ただ何か具体的な法律関係の問題がありますと、その点だけを取上げて、相談にはあずかつておりますが、全貌は存じておりません。
  297. 川上貫一

    ○川上委員 私は実はその点を聞きたかつたのですが、これは特別調達庁関係の方に来てもらえばよかつたのですが、その点私は条約局長でわかると思つたものですから――それではこの問題はあとに残します。  もう一つ、MSA援助の交渉が行われつつあるのでありますが、この中で協定の中に、アメリカの方の要求として、中国との貿易禁止あるいは相当強い制限の条項を入れるということを主張して来ておるということですが、それはそういうことになつておりますか。
  298. 下田武三

    ○下田政府委員 この問題も今まで四回の会談の中で取上げられまして、今交渉中でありますので、どういうように結着するかは見通しがつきませんが、こういうことが問題になりましたのは事実でございます。
  299. 川上貫一

    ○川上委員 日本政府で意見を言うておるでしようが、もし協議がまとまらぬ、そうして中国との貿易禁止の条項というものを受入れなければ、とてもこの協定はできそうにないということになりますと、政府の方では、それは受入れることはやむを得ぬということにして、受入れる腹でありますか、その点をお聞きしたい。
  300. 下田武三

    ○下田政府委員 この問題は、実は主義の問題としてはもうきまつておる問題と申しますか、アメリカ側は、バトル法の建前から、侵略国側に援助を与える国には米国は援助を与えない。またその逆でありますが、米国から援助を受ける国は侵略国側を援助してはいかぬという建前になつております。また日本も、平和条約以来、国連の憲章の義務、特に第二条の義務、つまり国連側が侵略排除のためにとつておる行動に援助を与える、また国連側の措置の対象になつておる侵略国側を援助しないという憲章第二条の義務を引受けておりますので、主義の問題としてはこれはもう争う余地のない問題でございます。そこで問題となる点は、一体このわかり切つた問題を、このMSA協定にまで頭を出させてわざわざ書く必要があるかどうかという問題でございます。
  301. 川上貫一

    ○川上委員 日本は正式にまだ援助を受けておりませんから、バトル法の適用が直接あるはずはないのじやないか。それから国連側の方針も、国連としては今中国を侵略国と認め、その他ありますけれども、これは日本の国民の経済活動を拘束する法的根拠はない。ただ道義上の問題であり、信義の問題である。国連に協力するつもりであるからこれはこう取扱う。そうしてそのやり方は通産大臣の認可でやる。こういう答弁になつておるわけです。ところが、今度MSAの援助を受けることになつてその協約の上に載るというと、これは正式な関係になる。禁輸という協約ができるわけなんです。それですから、今でもそうなつておるけれども、入つても入らぬでもいいという問題では決してないと思う。今ではそうなつてはおらぬ。政府の方ではそうやつておるけれども、国際的な関係として正式にそうなつておるわけじやない。ところが、MSA援助、これに入るとそうなつてしまう。そこで私が聞きたいのは、MSA援助にこれがすつかり入つてしまつて、協約上ほんとうに動けぬようになれば、MSA援助を断る意思があるかないかということであります。
  302. 下田武三

    ○下田政府委員 MSAでこれを引受けると、初めて日本が法的にこの義務を引受けることになるとおつしやいますが、家は、単なる日本政府の政策としてではなしに、先ほど申し上げましたように、日本の独立の際引受けました平和条約の第五条の義務で、これは文言はきわめて抽象的でありまして、いかなる場合にも当てはまるようになつておりますし、また何も中共とかという特定の国を指定して引受けた義務じやございませんが、とにかく主義上の原則は日本は受諾しておるのであります。そこで、実際の適用となりますと、先ほどおつしやいましたように、結局通産大臣の方の輸出入の貿易管理の問題として行われておるわけでありますが、MSA協定にたとい取上げられるといたしましても、これを中共に対して、国の名をあげて挿入するというようなことにはならないと私は思います。これはやはり原則的な規定、平和条約と同じような規定を入れるかどうかという問題になると思います。そうなりますと、もう、一度この原則を承認しているのだから、今またあらためてくどく規定する必要があるかどうか。特に、朝鮮休戦という大きな国際情勢の変化もある際に、またやる必要があるかどうかという点、これは私どもといたしましても非常に疑問だと思つております。まあ、できればそういう屋上屋を重ねるようなことはもうやりたくないというのが本旨でございます。
  303. 川上貫一

    ○川上委員 そうできればそうですが、できなかつたらどうですか。
  304. 下田武三

    ○下田政府委員 その点につきましては、私事務当局といたしまして、政府の最後的態度を申し上げる地位にないのでありますから、もしその問題でありましたら、政府のハイヤー・レベルの御決定を願いたいと思うのであります。
  305. 川上貫一

    ○川上委員 およそ腹はそれでわかると思うのであります。そこで、朝鮮休戦に引続きまして開かれる政治会議ですが、この政治会議に――あるいは何と名がつくか知らないが、その会議に政府は出席を申し入れてあるのでありますか、これはどうなんですか。
  306. 下田武三

    ○下田政府委員 これは、東京及びワシントンにおいてすでに申し入れてございます。
  307. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと、出席するのですが、現在の朝鮮に対する態度が問題であります。この問題に、どういう形か、ともかく出席するということになれば態度がいると思うのですが、韓国とは国交は正式には開かれていない。便宜上、友好国というような形でいろいろやつているのだろうと思うのですが、この民主人民共和国の方とはそういうかつこうになつておらぬ。そこで、政治会議となるとしますれば、この政治会議出席するという時分の日本の政府の態度としては、俗に南北といわれておるところの金日成政権と李承晩政権のどちらを選ぶという態度をもつて臨まれるのですか。
  308. 下田武三

    ○下田政府委員 基本的態度は、朝鮮の内政問題にはあまり深入りしたくないと申しますか、朝鮮国民自身の意思によつて、朝鮮の統一が実現するというのが、日本政府の強い希望でありまして、従つて、自由に表明された朝鮮国民の意思によつて――韓国政府を選ぶか、あるいは北鮮人民共和国政府を選ぶかという点は、これを朝鮮人自身が自由にきめるべき問題であつて、そこまで立ち入つて日本側意見なり希望なりを表明すべき問題ではないと存じております。
  309. 川上貫一

    ○川上委員 しかし今回は、現実に会議が開かれる時分には、二つの政権がどちらも寄ることになる。それですから、その場合に日本は、第三者といえば語弊があるが、とにかく現在二つあるのですから、中立の立場でここへ臨むのか、あるいはそうでないのか、この態度はどういうのですか。
  310. 下田武三

    ○下田政府委員 これはまつたく推測の問題になりますが、二つの対立した政権のどちらを選択するかというような問題の提起の仕方は、政治会議ではなされないのではないかと思います。それよりも朝鮮の国民の自由意思に基いて統一を実現するための手続、たとえば選挙の方法であるとか、あるいはその選挙が公正に行われるために、場合によりましては国際的な自由選挙を保障するための中立国の措置、こういう朝鮮統一のための措置がまつ先に問題になりまして、この二つにわかれておる状態をあきらめて、そのいずれかを選ぶという問題は列国側も考えてないのではないかと私は推察するものであります。
  311. 川上貫一

    ○川上委員 しかし今まで日本はやはりあそこの戦争に協力して、南鮮を助けていいことは事実ではありませんか。日本は爆撃基地を認めたりして、金日成政権の方を爆撃しておる。そういう態度をもつて今までやつて来ておつたわけですから、政治会議に臨むとしましても、それをはつきりさせておかぬと、今まで南鮮にこういうことをやつて来た、この形で行くのか、あるいはそうではないというて行くのか、その態度がはつきりせぬというと、ここに行くことがアジア全体の平和に利益になるよりか、不利益になるのではないかと考えるが、これをひとつ伺いたい。  第二の問題は、なぜ日本はこの会議出席を申し込んだのか、そのわけを伺いたい。この二つを両方兼ねてけつこうですから、これは政治問題になるかもしれませんので、条約局長は私にはどうとかいうことを言われるかもしれませんが、あなたの考えを伺いたい。
  312. 下田武三

    ○下田政府委員 私の個人的意見でございますが、なるほど日本といたしましては、従来国連の決議の趣旨に即応して、朝鮮における国連軍側の行動に支授を与えて参りました。そこで幸いにして休戦が実現したのでありますが、今後の問題といたしましては、これは日本に限らず各国ともそうだろうと思いますが、南鮮側をサポートして、李承晩大統領の言うように、必要があれば実力をもつてでもいい、北進して朝鮮の統一を実現するというような武力的な措置による統一ということには、これはもう列国とも同情を表しておりません。従いましてこの休戦の実現までは、国連の決議に基く行動につきましてはサーポトを与えましたが、休戦後において、たとえば非常に軍事的な方法で統一を実現するというようなことに支援を与えるということになりますと、これは列国がやはり反対いたすと思うのであります。日本といえども、やはり列国と同じような意見を持たざるを得ないのではないかと思います。  第二の、日本がなぜ参加を希望したか、その理由を言えというお話でございますが、これは日本の最も近い隣国でありまして、当然日本としては重大なる関心を持たざるを得ない地位に置かれておりますので、申し込んだわけでございます。
  313. 川上貫一

    ○川上委員 大臣でありませんからこれ以上言うてもどうかと思うのですけれども、条約局長の個人的な意見だと言われるのですけれども、それは非常におかしいのです。隣国のよしみがあつて、切つても切れぬ間柄だというのならば、北鮮を爆撃するのに日本を基地に与えたりしてはどうにもならぬのです。そうすると、今までやつておるのは、これは政治論をするのではないのですが、実際に静かに考えてみてもわかる。基地を提供して、たくさんの武器をつくつてアメリカ軍に提供して、それで幾十万の北鮮の人を殺しておる。切つても切れぬ間柄ならばこんなことはできない。ところがそうではないのですから、そういう形で参加を申し込んだとは思われないのです。しかしこれは条約局長意見を闘わしてもどうかと思いますから、ただ私の意見だけにしておきます。  さらにアメリカは李承晩政権と、どういう形になるか知らぬが、軍事的な意味を持つた条約を結ぼうとしておる。これは明らかなことであります。それで日本は今まで北鮮爆撃に加わつておるので、これがこの政治会議へ行くということは、全世界の民主平和勢力から指揮されると私は思う。こういうことはアメリカの要請であるかどうか知らぬけれども、実に非常な不信であつて、あそこの交戦国は寄りますけれども、日本は正式にあれに参加しておるのではない。どつちかといえばあれは非合法で加わつてつた。そうしておいて日本政府がこれに申し込んで行くということは、実際に言えば相当ずうずうしいことだと思うのです。これは条約局長に申し上げてもしかたがないから、私の意見にとどめておきます。  もう一つ、MSAは軍事的援助であるということをはつきりさせなければいかぬというように、アメリカ側からは言われておると伝えておりますが、実際そうですが。伝えておる通りの要求があつたのですか。経済援助ではない、軍事援助であるとはつきりしなければいかぬかどうか。
  314. 下田武三

    ○下田政府委員 MSA協定の交渉に際しましてアメリカ側から、アメリカの与える援助は軍事援助であるということをはつきりしろというような注文は、全然受けたことがありません。
  315. 川上貫一

    ○川上委員 それは中日貿易の禁止問題と軍事援助の問題が出ておるということが新聞で伝わつておりますが、中日貿易の問題はそういうことがあるというお話でしたが、軍事援助であるというふうには要求されておらぬとすれば、今後ともこれが軍事援助であるとして規定された協定が結ばれるようなことはない、こう解釈してよろしゆうございますか。
  316. 下田武三

    ○下田政府委員 従来御説明しておりましたのは、日本国民の前に経済援助だ経済援助だと言つてつた観念を与えることは、これは政府としてはよろしくないので、ありのままにアメリカの予算に計上されてある実態を正直に申せば、いわゆる軍事援助であるということを、これは政府側のインフオーメーシヨンとして申し上げておるわけであります。アメリカ側から軍事援助なりということを明白にすることを要求されておるわけではありません。
  317. 川上貫一

    ○川上委員 時間をとりますが、しかし相互安全保障法には「友好国の国際連合の集団的安全保障体制への有効な参加を援けるための友好国に対する軍事、経済及技術の援助を承認することによつて」云々とある。そこで「軍事、経済及技術の援助」とあるのですから、これはちやんぽんにならぬものだ、軍事援助であるかあるいは経済的及び技術的援助であるかということはぐちやぐちやになるものではない。そこで今聞いておるのは、そうすれば軍事援助でもあるし経済的及び技術的援助でもある、こうなるのですか。
  318. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の条文は、包括的な目的を掲げた条文でございますから、MSA法のあとの方に来ますと軍事援助、経済援助、技術援助それぞれ該当規定がございます。そこで日本の場合にはその三つのうちのいわゆる軍事援助であるということは、アメリカが計上しておる予算からはつきりしておるわけであります。これは一九五三年、一九五四年のMSA改正法によりましてそういうことがはつきりいたしております。
  319. 川上貫一

    ○川上委員 わかりました。そうすると今度の交渉中に軍事援助だぞというようなことの具体的な交渉はないが、MSAの援助、今交渉している援助は、軍事援助であることは明らかである、こう理解していいのですか。
  320. 下田武三

    ○下田政府委員 本年度はアメリカの予算上からもそういうことになりますが、明年以降は、日本側としては、それに必ずしも満足しないのでありまして、ほかの援助も受ける余地を残したいと思うのであります。でありますから、協定自体は、軍事援助でなければ当てはまらないような協定にはいたしたくない。将来ほかの援助も受けられ得るような協定にいたしたいと思つております。
  321. 川上貫一

    ○川上委員 これで終ります。どうもありがとうございました。
  322. 上塚司

    上塚委員長 今日はこれをもつて散会いたします。     午後六時二十二分散会