○大石
委員 政務
次官にお尋ねいたします。私は去る七月三十一日に
外務省の渡航課へ行きました。ところがそこにたくさんの学生さんが居すわりをや
つておられました。そこへ私もパスポートを下付のために参りましたのです。そうしたら大きな声を張り上げていらつしやいますので、私は何事であるかと思いまして、じつと聞いておりました。聞いておりましたところが、若げの至りで、どうも第三者として聞くにたえない言葉もずいぶんございました。それで実は私は中に入
つて、そういうふうに大きな声を発しなくても、お互いに人間と人間であるから話し合えばよいじやないか、あなた方は何をしにここに来ていらつしやるのであるかと言
つたら、われわれはルーマニアに行く旅券の下付を要求に来ておるのである、こういうふうにおつしやいました。それで私は、今は
外貨の割当その他いろいろな問題があ
つて、われわれ代議士もなかなか海外に旅行に行くことは容易ならざることであるからということをその
人たちに言うて聞かしたのです。そうしたらその学生さんは私にどう言うたか。何を言うか、代議士に何の特権があるのであるか、代議士が何であるか、何言
つている、われわれは人間として旅券要求するものである、こういうことをその人は言いました。ゆえに私は、要求なんという言葉を使わないで、もつと事穏当に、おだやかに話をつけたらどうであるかと言
つたら、今度またほかの学生が入
つて来て、私にうんうん、うんうん言いましから、私が、何を言
つておるか、もし私がさかさまにうんうん言うたら、あなた方はぼくたちの基本的人権を無視しておると言うであろう。なぜあなたは礼儀を持
つて私に対して話せぬか。私は非常に声を大にして、実は怒
つたのです。そうして、あなた方は民主主義というものをはき違えておる、民主主義というものはどんなものであるか、ロシヤに行
つてもスターリンがあり、首相があり、民主主義の本家であるとい
つておる
アメリカにもやはり大統領があるのである、どこへ行
つたつて、そういうふうに物に秩序があるのである、あなた方は真に学生であるならば、もつと礼儀を重んぜよ、私は声を大にして怒りました。そうしてもしあなた方のようなそういう礼儀のない人がわれわれ
日本国民の代表としてブカレストに行くなれば、私は
日本の国民として実にはずかしい。ほんとうに礼儀のある人が向うに行かなか
つたら、
日本は敗戦で人間までが、魂までがこんなにな
つておるかと言われてははずかしい。私は若い人の気持はよくわかる。けれどももつと穏当に話をしたらどうであるか。そこで私はそのリーダーなる学生を外へ連れて行
つて、静かにその人と対決しようとした。そうしたらその学生の一人は何と言
つたか。何をする、多数の面前で発表しろ、祕密に話をすることはないじやないか、そう言
つて私に罵詈雑言いたしました。私は若い人の気持はよくわかるわかるけれども、あまりの言い方で、その晩はくやしくて眠ることができなか
つた。そこで私は若い人の要求——せめて十人やそこいらの人に旅券を下付してや
つてほしいと思うのでございますが、しかしあまりにも礼儀を知らぬと思う。それで私はここへ来まして川上先生に話しました。代議士に特権があるかということをその学生さんがおつしやいましたが、どうですかと言うて川上先生に話したら、川上先生いわく、代議士は特権があると私は思うと言われました。あれだけ苦しんで代議士に当選して来て、そうしてここで法律をきめたり何かする特権はあるはずです。それに向
つてどうも多数の若い人が——私はうまく仲裁して、何とか話をまとめてあげたいと思
つて、そうして幾分かの金も、貧乏な私が心から寄付もしたのです。それにもかかわらず、私は多数のその若い人に、あの
外務省の渡航課で恥をかかされた。そこで私は言いました。皆さんは若げの至りで何も世の中を
御存じないけれども、民主主義をはき違えてはならぬ。もつとあなた方は礼儀を守
つて、そして秩序ある、すなわちすわり込みをしたらどうあるかということを言うて聞かせたところ、まるでごろつきのように、何を言
つてんだ、こういうふうに私に食
つてかかる。私はその晩もうどうにもくやしくて眠れなか
つたので、実はこの
委員長さんに話したのです。また川上先生も、その
通りである。よく言うて聞かそうと言われましたし、左派の帆足先生も、ソビエトでもああした青年学校があるけれども、その青年学校は秩序あるものがあ
つて、そして非常に礼儀が正しいということをはつきりとおつしや
つておられました。私は未来ある青年がそういうふうな態度で、まるで雲助か何かのようで、ま
つたく私はあのときは感慨無量で、何とも言えぬ気持であ
つた。もしブカレストに行く旅券を下付させるならば、どうぞその中のよい人に旅券を下付してあげていただきたい。そして
日本を代表して行く人は、もつとほんとうに純情な気持の青年であ
つて、再建
日本をになう、民主主義の国の
日本を表現する人を、私は五、六人でも送
つてあげてほしい。そして代議士には特権がないとおつしやいましたが、この中に聞いている人があるであろうが、私は特権があると思う。それはだれも入れない国会でも入り、そして皆さんが日常生活するための法律をつくるのもみなこれ代議士である。年齢にも上下があ
つて、上の者には敬意を表さなければならぬ。代議士に対しても敬意を表さなければならぬ。別に私は青野さんのように、天下の代議士と言うのではありませんけれども、私はああした態度に出る学生に対して、もう少しよく指導してあげたいと思いまして、ここに声を大にして実は
政府当局にもお願いする次第でございますが、
政府当局も、どうぞ二、三人でもよろしい。五、六人でもよろしいから、その中からりつぱな青年を、
日本の代表者としてルーマニアにお送りくださることを私は切望するのです。あの中にも悪い人ばかりでないと思う。私はあまりにも多数の人に恥をかかされたので、今でも実に残念でたまりません。そこで
政府当局は、あのルーマニアに対する旅券下付の件に対して、どういうふうにお考えにな
つておりますか、忌憚なき御意見を私は拝聴したいと思います。