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1953-08-01 第16回国会 衆議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月一日(土曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    喜多壯一郎君       須磨彌吉郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         外務事務官   関 守三郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件   請願  一 ソ連地区残留者引揚げ促進に関する請願(    田中彰治紹介)(第二七四四号)  二 未帰還者帰還促進等に関する請願(岸田    正記君外四名紹介)(第二九六二号)  三 未帰還者帰還促進等に関する請願(有田    八郎君紹介)(第四二三八号)  四 海外抑留胞引揚促進に関する請願(小川    平二君紹介)(第四三一五号)  五 同(矢尾喜三郎紹介)(第四三一六号)  六 ソ連地区抑留胞引揚促進に関する請願(    押谷富三紹介)(第四五三六号)  七 海外抑留胞引揚促進に関する請願(日野    吉夫君紹介)(第四六一五号)  八 同(山下春江紹介)(第四六一六号)  九 ソ連地区抑留胞引揚促進に関する請願(    大矢省三紹介)(第五〇〇三号) 一〇 同(原田憲紹介)(第四六五四号) 一一 同(杉山元治郎紹介)(第四六五五号) 一二 海外抑留胞引揚促進に関する請願(櫻内    義雄君紹介)(第五〇〇四号) 一三 同外三件(丹羽喬四郎紹介)(第五〇〇    五号) 一四 駐留軍水上機博多湾使用反対に関する請    願(熊谷憲一紹介)(第八九号) 一五 内灘射撃場永久接収反対に関する請願(    山口丈太郎紹介)(第二一二号) 一六 内灘射撃場永久接収反対に関する請願外    三十五件(岡良一紹介)(第三〇四号) 一七 内灘射撃場永久接収反対に関する請願(    淡谷悠藏紹介)(第四六一号) 一八 同(岡良一紹介)(第四六二号) 一九 内灘射撃場永久接収反対に関する請願(    喜多壯一郎紹介)(第五五八号) 二〇 内灘射撃場永久接収反対に関する請願(    喜多壯一郎紹介)(第八三七号) 二一 妙義浅間地区駐留軍演習地等設置反    対の請願中曽根康弘紹介)(第一〇八    八号) 二二 離島大島駐留軍艦砲射撃演習場使用    反対に関する請願館俊三紹介)(第一    三三二号) 二三 妙義浅間地区駐留軍演習地等設置反    対の請願武藤運十郎紹介)(第一四二    三号) 二四 浅間地区駐留軍浅間演習地設置反対の請    願(井出一太郎紹介)(第一四八一号) 二五 福岡地方簡易保険局大濠庁舎返還に関する    請願福田昌子紹介)(第一七六一号) 二六 内灘射撃場永久接収反対に関する請願外    一件(岡良一紹介)(第一九三七号) 二七 内灘射撃場返還に関する請願岡良一君紹    介)(第一九三八号) 二八 駐留軍のオジカセ島接収反対に関する請願    (辻文雄紹介)(第一九三九号) 二九 駐留軍弾薬部隊駐屯による加津良白浜地内    交通制限に関する請願大石ヨシエ君紹    介)(第一九四〇号) 三〇 浅間地区駐留軍浅間演習地設置反対の請    願(田中稔男紹介)(第二二八二号) 三一 合浦公園返還に関する請願夏堀源三郎君    紹介)(第二七四五号) 三二 饗庭野に駐留軍演習場設置反対請願(森    幸太郎君紹介)(第二八八九号) 三三 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願(    小峯柳多君外一名紹介)(第三五八七号) 三四 妙義浅間地区駐留軍演習地設置反対    の請願中澤茂一紹介)(第三六二五    号) 三五 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外    十件(小峯柳多君外一名紹介)(第三六二    六号) 三六 内灘射撃場永久接収反対に関する請願(    島上善五郎紹介)(第三九五八号) 三七 妙義浅間地区駐留軍演習地等設置反    対の請願川上貫一紹介)(第三九五九    号) 三八 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願(    武藤運十郎紹介)(第三九六〇号) 三九 同外十六件(武藤運十郎紹介)(第四〇    〇一号) 四〇 同(川上貫一君外一名紹介)(第四〇七四    号) 四一 同(中澤茂一紹介)(第四〇七五号) 四二 同外十二件(小峯柳多君紹介)(第四〇七    六号) 四三 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外    四件(小峯柳多君紹介)(第四三一七号) 四四 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外    八件(小峯柳多君紹介)(第四五三三号) 四五 同外二十八件(武藤運十郎紹介)(第四    五三四号) 四六 同外五件(小峯柳多君紹介)(第四五三五    号) 四七 同外三件(小峯柳多君紹介)(第四六五六    号) 四八 新牧山地区軍事施設設置反対請願(池    田清紹介)(第四五三七号) 四九 日高門別町の駐留軍演習使用区域拡大反対    に関する請願小平忠君外三名紹介)(第    四五三八号) 五〇 同(山中日露史君外四名紹介)(第四五三    九号) 五一 同(南條徳男君外四名紹介)(第四六五三    号) 五二 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外    五十五件(福田赳夫紹介)(第四八〇六    号) 五三 同(武藤運十郎紹介)(第四八〇七号) 五四 妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外    十二件(小峯柳多君紹介)(第五〇〇一    号) 五五 同外八件(武藤運十郎紹介)(第五〇〇    二号) 五六 同(福田赳夫紹介)(第五一一九号) 五七 同(小峯柳多君紹介)(第五一四九号)五八 同(福田赳夫紹介)(第五一五〇号) 五九 駐留軍関根演習地拡大反対に関する請願(    淡谷悠藏紹介)(第五一一八号) 六〇 九十九里海岸豊海地区駐留軍射撃場によ    る被害対策確立に関する請願千葉三郎君    紹介)(第五一四八号) 六一 沖繩抑留中の善進丸返還に関する請願(    片島港君紹介)(第三一九五号)     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権保護に関する日本国ドイツ連邦共和国との間の協定批准について承認を求めるの件、及びスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件、国際航空業務通過協定の受諾について承認を求めるの件、国際電気通信条約批准について承認を求めるの件を一括議題といたし、質疑を許します。御質疑はありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  3. 上塚司

    上塚委員長 次に、請願及び陳情書を審査いたします。  請願日程第一、ソ連地区残留者引揚げ促進に関する請願、第二七四四号より、日程第十三、海外抑留胞引揚促進に関する請願外三件、第五〇〇五号までを一括議題といたします。紹介議員説明を求めます。——紹介議員が出席しておられませんので、専門員よりかわつてその趣旨説明を求めます。村瀬専門員
  4. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について……。工業所有権保護につきます案件は、実は申し訳ありませんが、この会期末のどさくさでまだ勉強いたしておりませんので、きよう質問打切りにされないで、採決を急ぐ必要もなかろうと思いますから、次会質問があれば質問させていただくことを留保しておいていただきたいと思います。それまでに勉強して来ますから…。
  5. 上塚司

    上塚委員長 理事会の決定は、今日質問をやりまして、さらに来週火曜日に質疑をやり、討論採決を行うことになつております。
  6. 穗積七郎

    穗積委員 あるかないかわかりませんが、あればお尋ねいたしますからお願いいたします。
  7. 上塚司

    上塚委員長 承知いたしました。  それでは先ほどの趣旨説明を願います。村瀬専門員
  8. 村瀬忠夫

    村瀬専門員 同趣旨請願でありますので、代表的なものを朗読いたします。ソ連地区抑留されている者はいまだ引揚げ見通しすらつかず、まことに憂慮にたえない。ついては、ソ連地区残留者引揚げを促進するとともに、(一)残留者所在地、状況、帰国の可能性等に関する情報の入手及び留守家族への周知(二)死亡者の死因及び遺骨、遺品の送還(三)タス通信による戦犯者などの千百名の氏名、訴因、内地服役、減刑及び釈放等を実現されたいという請願であります。
  9. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの各請願について、政府側より御意見はございませんか。
  10. 小滝彬

    小滝政府委員 ソ連抑留されている人の引揚げにつきましては、昨日も申し上げました通り国際赤十字を通じ、また国連の一機関であるところの俘虜特別委員会を通じ、また来るべき国連総会には、この問題を特に取上げてもらつて世界の輿論を喚起して、一日も早くこれらの人が帰つて来られる、またでき得ればその所在地等調査を進めてもらうように、政府はこれまでも努力いたして参つておりますが、今後ともこの請願趣旨沿つた措置を強力に推進して行きたいと考えております。
  11. 上塚司

    上塚委員長 御質疑はございませんか。富田健治君。
  12. 富田健治

    富田委員 私小瀧政務次官にお尋ねいたしますが、これは私だけでなく、大勢の人の子弟が、ずいぶんまだソ連抑留されていると思うのであります。これらの人の父兄希望というのは、一日も早く帰還されることであろうと思うのであります。同じ共産主義圏でも、中共などでは、最近非常な朗報があり、現実にも帰還をされて来たようなわけであります。ソ連につきましては、非常に曖昧模糊としておりまして、外務当局では先般来いろいろ御尽力願つておると思いますが、ソ連のすべてのことが非常にあいまいなのでありまして、ことに深刻に考えておるこういう父兄、親族の間の帰還希望と、ソ連態度とはあまりにかけ離れておるように思います。いろいろ御努力願つておりますが、どういう見通しなのか。最近国際情勢というものが、ソ連態度もかわつて来たようなこともあるのでありますが、そういうこととも関連して、そういうことで少しでも帰還関係のことについて朗報が期待できるのかどうか。実は、先般も私はある地方の人に会つたが、その人は、子供がソ連抑留されてまだ帰つて来ない、はがきは、御承知のようにきわめて簡単なはがきが来ておりまして、前に内地から出した手紙に対する返事は何もなくて、また新しいものが来ておるというようなことで、非常にそういうことに心配しておるのですが、そういう人の話を聞きますと、一体日本政府の召集を受けて行つたのじやないか、ソ連がいいとか悪いとかいうことは問題にならぬ、これは政府の命令で応召して行つたのである、すべては政府の責任だというような、非常に過激なことをそのお父さん、他の一人は母親なのですが、来まして尖鋭な言葉で言うのです。これは何も思想的にどうという人ではないのであります。非常に痛切な、深刻な叫びを私は聞いたのであります。それに対して外務当局、やつておられて、自分からお骨折りになつておるから、これだけ努力しておるのだというお気持はよくわかるのでありますが、結果がちつとも現われませんと、待つておる方では、政府けしからぬとか、外務当局けしからぬ、何をしておるかという空気が非常に強い、これも私は無理からぬことだと思いますが、今日の、一番最近の情勢から考えまして、またいろいろお骨折りを願つておりながら、大体皆様勘がおありになると思うのでありますが、少しでもいい見当がついておるのかどうか、深刻に考えておるそういう人たちに伝えたいと思いますので、ちよつとこの機会にお尋ねしたいと思います。おさしつかえのない限り、なるべく詳しく御返事をいただければけつこうであります。
  13. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま仰せの通り関係者の方に対しましては、まことに申訳ないと存じまして、いろいろ情報を探り、また先ほど申しましたように、国際赤十字などを通じて、向うへこちらの申出を通じますように努力いたしておりますが、残念ながら、はつきりした見通しを今申し上げるという段階に至つておらない次第であります。先ほどのお話にもありましたように、だんだんはがきがこちらに来るようになつて、それを通計してみますと、大体一万枚ぐらいに上つております。そのはがきの中には、近く帰れるようになるらしいというような点も書かれておりまするので、今のソ連平和攻勢から考えてみましても、あるいはそういうことがあるのではなかろうか、こういうように考えておりますし、また新聞紙等で見ましても、いろいろソ連側で案が考えられておるというようなこともございますし、またどこまで信ずべき報道か知りませんが、とにかく大山氏が言つておられることに対して、向うがそういうことを漏らしておるというようないろいろな情報を総合してみますと、今までよりは、多少いい方向に向つているのではないかというように考えられるわけであります。ことに国際赤十字ソ連側へこちらの言い分を伝えるのに対して、ソ連関係の官憲も、これに協力する態度を示しておるように報告せられておりまするので、これらを総合して考えますと、私個人の見解でありまするが、前よりはかわつた措置がとられる時期に近づいておるのではないかというように感ぜられるのであります。
  14. 上塚司

  15. 川上貫一

    川上委員 この請願採択を今討議されておるので、政務次官ちよつとお聞きしたいのですが、頼む方は、国民としていろいろなことを頼む、要求する、それから扱う方は、まるで敵国扱いのような扱い方政府はしておる。こういうやり方で、実際こういう問題が平和のうちに解決すると思うかどうか。たとえば代表部の問題にしても、ビルマもそれに相当するものがあり、フイリピンもそれに相当するものがあり、これはどちらもまだ批准をしてはおらぬ。ソ同盟代表部に対しては、引揚げ、立ちのきを要求したりしたことがある。これは非常に差別待遇であります。韓国などは、交戦国でありませんけれども、これは看板でも代表部  と書いてある。ほかのビルマにしても、インドネシアにしても、フイリピンにしても、これは実質的に普通の平和条約がはつきり発効しておるのではないにもかかわらず、普通の国交の形であります。しかしソ同盟に対してはこういう形をとつておらぬ。これはどういうわけであるかということをまず第一に聞きたい、これが一つ、こういうことをしておいて、そうして国民の念願することは、まことにごもつともであるというような態度政府側がしておるのはどういう意味か。きのう私が大山参議院議員戦犯取扱いに対する問題について、モロトフ外相と話合いかなんかしておるが、こういうことを政府はどういうふうに思うかということで質問した言葉じりをとらえ、これは、国民代表であると言うておるならば好ましからぬというようなことを言つておる。精神の問題です。言葉じりの問題ではない。この精神はどこにあるかというと、こういう民間人が、あるいは一参議院議員がそういう話をしてくれることは、好ましくないという答十に違いない。こういうことをしておるのです。また一方、これはソ同盟関係じやありませんが、中国遺骨送還について、この問題が非常に大きい問題であつて、実際に一千万人以上の中国人をあの戦争では殺しておる。そうして非常にたくさんの人を集団的に持つて来た。その人はおそらく三万八千九百三十五人ということが、官庁の統計でもあるのだろうと思う。そのうちで六千八百三十人というものが明らかに死んでおる。この調査ができておる。この遺骨を送る問題についても、一つ政府誠意を示しておらぬ。あの黒潮丸の問題の事件でも、どれだけ政府がこれを妨害したかということは、国民の周知しておる通りです。予算一つもとつておらぬ。今度の残つた送還問題についても、お坊さん三人ぐらいでよろしいというようなことを大谷さんに対して政府は言うておる。不誠意きわまる。これを持つて行つた送還代表に、こういうことを言つたそうだ、この問題は、中国人が実際には永久に忘れることができぬ問題である、しかし日本から民間代表がこれを送つて来てくださつたことは、まことに感謝にたえない。日本政府は、このわれわれの同胞をかくのごとくした、かつて軍国主義と同じようなものを復活しようとしておる、こういうことを、向うの受取る人は演説をしたということを帰つて話をしておる。もつともの話だと思う。すべて誠意を持つて政府なら政府が当らぬ限りは、私は今の請願の問題のごときものについても、とても平和的に解決することはできるものでない。これをむしろ政府は妨害しておる、こう思うのですが、こういうことについて一つの例を言えば、南方からわが方の遺骨を持つて来るときには、あれほどの大騒ぎをして持つて来ておる。隣の中国に返すときには、ほとんど政府は知らぬ顔をしておるようなことで、一体平和的にこの問題が解決するものであるかどうか。どういうお考え政府は持つておられるのであるか、これをちよつと聞いておきたい。
  16. 小滝彬

    小滝政府委員 まず第一の点は、ソ同盟に対して頼むことだけを頼んで、こちらの方は何もなすべきことをしていない、これはどういうわけかということがポイントであつたと了解いたします。私どもの立場から言えば、向うこそなすべきことをなさないで、かつてなことをしておると申し上げたいのであります。日本人抑留されておる人を早く返してもらいたいというので、いろいろなチャンネルを通じて申入れをしたのにもかかわらず、何ら満足すべき回答も与えない、全然これを無視しておるというのは、ソ連側がいかに非人道的であり、いかに非協力的であるかということを現わすものであると考えます。また最近は、多少調子が違つたかもしれませんが、非常に日本に対して敵視をしておるようないろいろな宣伝が、あるいは北京なり、あるいはモスコーから行われておるという事実は、われわれ率直に認めなければならないところであります。かつまた中共ソ連との同盟条約を見ましても、日本仮想敵国としておるというような、これらの事実から見まして、日本の方からは全然手が出ないようにしておる。これがソ連態度であると私ども考えております。ソ連代表部に帰れと言つたのはけしからぬとおつしやいますけれども、あのソ連代表部は、私から申し上げるまでもなく、占領下において総司令部に属しておつたものでありますから、その任務が終了しておることは当然であります。しかもフィリピンとかビルマと御比較になりましたけれども、これらの国からは、日本とは友好関係に入りたいということを申し入れて、そうして、とりあえず平和条約はできていないけれども代表部を交換しようじやないかという申入れをしておる。しかるにソ連の方は、ただ滞在の延期を印し出たにすぎないのでありまして、ソ連に対して、ビルマ、あるいはフイリピンと同様の態度がとれないのは当然であります。これは、ソ連の出方にもよるものでありまして、それに対して日本側が何もなすべきことをなしておらないとおつしやる川上委員のお説には、どうしても私ども承服できないものがある次第であります。  次に第二点は、中共遺骨送還の問題であつたと思いまするが、私どもは、遺骨送還を故意に妨害しようというような考えは毛頭持つておらなかつたのであります。ただしかし、向うへ帰つて行く中国人の人の安全をできるだけ保障しなければならない。またせつかく開始せられた中共からの日本人引揚げが、円満に行われなければならない。それに対して中華民国政府から妨害せられるようなことがあつたならば、せつかくここまで進行した引揚げ業務というものが非常に支障を来しますので、同じ船で送るというようなことは、かえつてこの全体のアレンジメントが円満に遂行せられることに妨げになるのではないかという考えをもちまして、いろいろ関係の方とも要したのでありまして、決して、中国人遺骨であるからこれをどうしてもいいというような考えでやつたのではなくして、一に引揚げ日本人の生命、また中共へ帰つて行くところの諸君の安全ということを考えた次第でありまして、決して遺骨送還を妨害したわけではございません。この点は、南方からの日本人遺骨に対してのみ特別のとりはからいをし、中国の方を無理に刺激するような措置をとつたという次第では決してございませんので、御了解願いたいと思います。
  17. 上塚司

    上塚委員長 川上君、時間が非常に少いですから、質問の要旨を簡潔に言つてください。
  18. 川上貫一

    川上委員 どうも委員長からそう言われると、長く言わなければならぬような気持もするのであります。それでは、私は政務次官議論をしてもつまらないと思いますから、しませんが、私の憂うるところは、政府当局が言われるような形では、日本ほんとうの平和と自由と独立は、決して保てないのじやないかということを私は言うておるのであります。あなたは、ソ同盟はこちらの言うことを何も聞かない、向う様が悪いのだと言うけれども、これについては、あまり議論はしないけれども単独講和をしないうちから、吉田内閣は明らかにソ同盟を敵とする意見を発表しておられることは、国会記録に残つておる。また自由党議員方々が、敵であるという意味のことをはつきり言われておる記録もあります。これは向うさんが悪いのだと言われることは、政府としては、おそらくそうであろうと思う。それしか言うことはないから……。しかしそういうことを続けておつたのでは、ほんとう日本の平和と独立がうまく行かないのじやないかということを憂える。今の戦犯の問題につきましても、これはお互いが誠意をもつて平和の心持でやらなければ、これ一つにしてもうまく解決しない。つまり、中国の問題にしても、何も妨害したことはないと言われますけれども、われわれの聞くところによると、六千八百三十の人間が死んでおる。どこどこに何ぼ死んでおるということは、およそわかつておる。しかしこの調査も、政府としてはできておらなかつた。もしも誠意をもつて当るということになれば、こういう調査もして、どこにそういう遺骨があるからと、自分の方の南方遺骨を持つて帰らなければ、国民に相済まぬというならば、やはり中国人遺骨もこれをどうして送ろうかというようなことを一緒に考えてやるのでなければ、平和的は外交というものはできるものではないと思います。私はりくつを言うておるのではない。実際に、日本民族が今後平和な民族として立つて行くためには、今の政府のお考えではいけないのじやないかと思う。  最後に、もう一つ私は言いたいのです。日本は、今アジアのみなし子になつりつつある。これは正直に言つて李承晩と蒋介石とバオダイと仲よくして、これでアジアのみなし子にならぬとは言えません。五億五千万の人口を有する中国を敵とし、三億の人口を有するソ同盟を敵とするような考え方で、そうして太平洋を隔てた向うのアメリカにこびを売るだけで、これではとてもアジアの一角にある日本独立と平和が保てるものではないと思う。こういう点について私は議論はしませんが、政府考えは非常に間違つておると思います。ほんとうに祖国と日本民族の自立を考えるならば、この考えをかえなければならぬ。これが世界情勢ではないか。国会においても、中国との貿易は、自由党方々の提案によつて、この貿易をやらなければならぬという決議さえできておる。国民の声はここにある。政府だけがこれに反対するような態度をとつておることは、私ははなはだ遺憾だと思う。ちようどこういう機会がありましたから、議論を闘わせることを目的としませんけれども、真に国を思い、われわれの祖先の手柄を思い、われわれの子孫に対してりつぱな日本を残そうと思うならば、今のような政府考え方では、とてもわれわれの祖先に報い、子孫に報いることはできないと私は考える。(「共産党を脱党して言え」と呼ぶ者あり)笑いごとではない。何も共産党を脱党して言う必要はない。何を言うておる。並木君、くずくず言うな。
  19. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほどのお言葉にも、お互いに誠意を示さなければならないということでありましたが、これまでのソ連なり中共の行き方というものは、私どもとして決して誠意を示されたものではないと思うのであります。真に先方で平和を希求し、そうして先方が平和を求めるほんとう措置に出て参りましたならば、日本は決してこれをしりぞけるものではない。喜んでこれを迎えるものであります。御承知のように、中共はこれまでも自由諸国に対して戦いをいどむような態度にありましたので、これまでの政策というものは、何人も川上委員と違つてこれを承認してくれて、政府はその国民の支持のもとにこれまでの政策を実行したわけであります。
  20. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、ただいまの各請願は採択の上、内閣に送付いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
  22. 上塚司

    上塚委員長 次に、日程第一四、駐留軍水上機博多湾使用反対に関する請願、第八九号より、日程第六〇、九十九里海岸豊海地区駐留軍射撃場による被害対策確立に関する請願、第五一四八号までの各請願一括議題といたします。紹介議員説明を聴取すべきでありますが、前四回にわたり、すでに委員会において参考人を招致し、説明を聴取しておりますので、これを省略し、ただちに質疑を行います。福田篤泰君。
  23. 福田篤泰

    福田(篤)委員 私は昨日の委員会におきまして、外務当局に対して、今、日米間の大ききな係争問題になりつつある小笠原の島民の帰島問題について御質問いたし、また御答弁を得たのであります。これに関連して、もう一ぺん具体的な当局の御答弁を得たいと思います。  まず第一に、講和条約で小笠原島と同等の待遇を与えられておる沖縄、奄美大島、これについては、終戦後島民が帰つておる。これと特に区別して、小笠原島だけが帰れないことは、昨日もいろいろ論議の的になりました軍事的理由というきわめて簡単な理由でありますが、これについて外務当局は、一体どういう具体的内容を持つておるか、あるいはどことどこが必要であるとか、あるいはどことどこは帰つてもいいとか、そういう具体的なアメリカ側に対するつつ込んだ質問なり要望なり、それをもう一度確認したいと思います。
  24. 小滝彬

    小滝政府委員 昨日も福田委員からお話がありまして、かねがねわれわれの方でも考えておつた点でありますので、この際詳細なる諸点をこちらから指摘いたしまして、米国の大使館側と折衝しまして、でき得る限り島民の方で、こちらに帰還しておられる人たちの要望にこたえたいと考えております。
  25. 福田篤泰

    福田(篤)委員 あなたも御承知の通り、例外的に百三十五名の混血児だけが米軍当局によつて小笠原島に帰ることを許されておりますが、これは日本の国籍を持つているりつばな日本人である。この百三十五名だけが小笠原島におりますが、政府としては、これはりつぱな日本国籍を有する日本人であるにもかかわらず、これの教育でありますとか、生活問題について、おそらく何らの処置もとつていないと思うのでありますが、何らかの処置をとつておるとすれば内容を伺いたいし、また現在沖繩、奄美大島には、南方連絡事務所の出張所があるのが当然であります。当然日本として、日本人保護監督のためにこういう機関があることは、国際常識でありますが、小笠原島に関し、百二十五名に対してどういう処置をとつておるか伺いたい。
  26. 小滝彬

    小滝政府委員 今具体的にどういう措置をとつておるか、資料を持ち合せておりませんので、後ほど調べましてお答えいたします。
  27. 福田篤泰

    福田(篤)委員 さつそく御調査の上、はつきりした御答弁を願いたいと思います。  とりあえず日本側政府責任として、連絡事務所を置くべきである、これはアメリカ側に対しまして、独立国として当然要求すべきである、軍事的理由と並行して、お互いに共通の利益のためにも主張すべき点であると思いますので、特にお申入れを願いたいが、これに対して当局の意思を伺いたい。  最後にもう九年の間七千人の島民が非常に苦しい生活をし、三分の一の島民が不幸な死亡をしておるような状況にかんがみまして、九年簡単の要請によつて強制的に着の身着のままで引揚げて来た不幸な同胞七千人に対しまして、政府は具体的にどういう処置をとつたか、これをお伺いしたいと思います。
  28. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど申しましたように、強力に米国側へ申し入れるという点は、さつそくとりはからうつもりでありますが、事務所の点につきましては、十分研究いたしました上で決定いたしたいと思います。  なおこれまでの日本帰還しておつた小笠原島民に対する措置は、一般の引揚者に対すると同じような措置であつたように了解いたしますが、この点も先ほどの点とあわせてよく調査いたしまして、御報告することにいたします。
  29. 上塚司

  30. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は石川県河北郡内灘村の内灘射撃場永久接収反対に関する請願紹介者の一人でありますが、内容はすでに政府当局者はよく御承知でありますし、特に政務次官及び伊関局長とは、私再々論議を重ねたのでありますから、その詳細は省略いたしますが、大体政府が二十八年一月一日から四月三十日までの一時使用であるという公約を踏みにじつて、一時ごまかし的な中断をして、しかもあらためて再開する——再開するということは、中断したことを開くのだともとれますし、初めから続けてやるのだという意味で、継続使用というふうな言葉を使つていると思えるものですから、石川県県会あげて政府に対して、さような大きな公約は、ただちに文字通り、内容通りつてもらいたいということと同時に、漁場、農地開拓予定地及び隣接の七塚、宇ノ気、高松各町村に対する——これは説明は省略いたしますが、その方が音響上の被害が大きい。そういうことに対する補償等について、関係地元民が絶対反対の意思を示しておりますが、そのことに対して、関連したこともお尋ねしておきたいと思います。  この請願のことについては、もうすでに委員長も委員諸君も御承知ですから、ぜひひとつ御採択を願いたいと同時に、時間の都合上特に伊関局長に要望しておきたいのでありますが、私の手元に昨晩おそく衆議院の議案課かち、石川県河北郡内灘地区の「内灘演習場一時使用に関する件」について、私が約十日前に出しました質問主意書に対して答弁が来ております。まだこれは印刷になつておりませんので、取急いで先ほど書き取つて参りましたが、政府の答弁の第三項に、政府はこれらの補償を「最大限度の考慮を加える」という文字があります。この「最大限度」というのは何に比較しての最大限度という意味であるか、そして「最大限度の考慮を加える」というこの点についてお答えを願いたい。  それから第五項の(八)の条項に不利益、損失には「特別の補償の措置を講じた」とあります。そして「地元民の生活は将来むしろ改善せられるものと確信している」という文字がありますが、「特別の補償」というのは何に準拠して、しかもどの範囲で、先ほどの「最大限度の考慮を加える」ということと同じように、比較的な意味で、どれと比較して特別であるかというふうな点について、政府の腹構えをお尋ねしたいのであります。  もう一点は、第五項の中の(ホ)の条項に試射の音響は「相当の影響を与えているものもある」というが、相当の影響を与えているものはどこだと政府当局はお考えになるか。  最後に第六項の、しかも末項に「補償措置等において可能なる限り対策を考慮しており、且つ同地域にある民有地使用を含め問題全般の円満解決に到達するよう引き続き極力努力している。」とこう結んでいます。その補償措置は可能なる限り対策を考えるといいますが、その可能なるというのは、地元市民の人々の意思表示の範囲内における可能であるか、それともとかく食言しがちな国際協力局長の言葉の意味からの可能なる範囲であるやいなや、その点とくと伊関局長、及びできるならば岡崎外務大臣と御協議の上で、最後のお答えを持つて来ていただきたい、これが私のこの点に関する関連質疑一つである。  もう一つ、とかく外務大臣及び外務省の諸君は、諸君らの立場にとつて有利なる新聞の記事は認めますが、不利益なる場合は、新聞などはといつて、今日の大きな公のフアンクシヨンを持つ新聞の記事を否定しがちでありますが、しかし現実の事実として——私は昨日は外務大臣不信任案等のことで、この委員会に不幸にして出られませんでしたが、東京の新聞、石川県の新聞、大阪の新聞等に、米軍が射撃距離の延長を通告したので、万やむを得ず権現森という民有地を越えて撃つことはまだできないから、海面へ射つのだという記事があります。これは材料を差上げてもよろしゆうございます。石川県の北陸新聞の、目附は七月三十日ですが、石川県の総務部長からの、射程距離の変更はやめてくれという二十九日午前七時の東京に対する電話に対して、伊関局長から、同森の使用問題が解決していないので——というのは、権現の森という民有地であります。これは私の質問主意書に対する答弁にもありますが、まだ円満に解決していないので、海に向けて撃つわけだから、変更は困難だという返事があつたと新聞紙に載つております。私はこの記事を信じます。そうすると、民有地の使用の解決が円満に行かないうちは、海に撃つてもいいのだということになると、空に撃つてもいいのだ、どこに撃つてもいいのだということで、非常に乱暴きわまることで、今日のわれわれの合理生活の上で許すべからざる次第だ、私はこう考えるのです。海に向つて撃つというが、この海の面というものが、地元民の生活の上においては大きな根拠でありますから、海に向つて撃つなら、どのくらい撃つか。しかも政府から私に提供された先般の資料の一つの、一九五二年、すなわち昨年の十二月三日の合同会議の伊関及びアメリカ委員との間の覚書によると、Cの条項で、レーンジというのですから、射程距離でしようが、これは八百五十ヤードを越えないということだろうと思います。権現の森の中間が撃てなければ、まつすぐに撃てなければ、横に撃つ、海の中ならよかろうとアメリカ軍に言われれば、唯々諾々として答えるから、岡崎は不信任案などというものをぶちつけられるのです。この意味で私は、この請願の採択をこいねがうと同時に、次会の委員会で、そのようなことについて、ひとつあらためてあなた方の腹構えを伺いたいし、一体この文字の裏にある意味はどういうことかということを、ひとつお尋ねいたしますから、御用意願いたいと思います。
  31. 帆足計

    ○帆足委員  ちよつと関連して。私は、改進党が再軍備の立場に立ちながらも、なお喜多委員が、郷土愛にかられて、内灘問題の合理的解決のために堂々議論をされておる態度には、深く敬意を表するものであります。従つて、この問題につきましてのただいまの質問に対して正確な答弁をされ、さらに内灘問題の今後の解決策についての政府の遠いおもんばかりと、終局的解決についての努力の目標を次会に示していただきたい。と申しますのは、地元の人たち反対を押し切つてつくつた軍事基地などというものは、三文の値打もないのであります。結局そのために両方の感情が悪化し、米兵との対立を招来し激化するようなことになるのを優慮いたしますから、われわれはやはり外交の調整、平和政策を第一義として、再軍備、無軍備の論議は第二義の論議といたしまして、野党、与党委員の意見がわかれることがあつても、良識ある者は、再軍備論者であろうと、われわれ無軍備論者であろうと、とにかく平和外交または外交調整に全力をそそぐ。(「弁論大会じやないよ」と呼ぶ者あり)私は並木君のように、相撲の呼出し係でありませんから、質問だけでなくて、自分意見も交えて行きます。それが見識ある国会議員態度であると思いますから、お許しを願います。先ほどの川上貫一君の質問に対する次官のお話を聞いておりますと、次官は学識ゆたかな方であり、おうような方であられるのに、国民外交、中国外交ということになると、多少偏見を持たれておる。虚心坦懐に、ちようどあたかも英国のイーデン外交のように、たんたんたる態度で隣邦諸国との国交回復のために徐々に努力を進め、さらに政府でできなければ、国民外交の力を借りてやるというふうにすれば、それと相呼応して、国内の軍事基地の問題も多少ゆとりを持つて解決することができると私は思います。しかるに再軍備の問題、基地の問題等は非常に論議が多いのですが、とにかく与党、野党一致して国交調整のために大いに努力しよう、現在の政府は少し保守的——少しどころでなくて、大いに保守反動的である、そのために隣邦諸国からあまりすかれていない。ところが国の中でも与党、野党半々であつて日本にも公正で合理的な頭脳の政治家がおり、ヒユーマニストがおり、素性正しき外交能力を持つた政治家もおるわけでありますから、そういう者だけをもつと活用せられて、また新聞記者諸君とか、自由党の方の中にも筋のよい人もたくさんおられるので、そういう筋のよい人たちをそれぞれ適材個所に……。(「そういうことは国際情勢のところでやりなさい」と呼ぶ者あり)いや、国際情勢関係がある、今の内灘の問題と関係がある。そういう方面に大いに努力せられるならばよいのに、その努力が足りないからいかぬのです。先ほど川上さんは、こういう政府態度はけしからぬと言われたが、私は川上君のように、あえてけしからぬとは言いませんが、たとえば狸穴からソ連代表を別に追い出す必要はないじやないか、狸穴で二、三人の者が空気を吸つていたとてかまわないと思う。あまりにも政府は狭量で、やぼである。そういうものを置いておけば、また他日国交回復の手がかりになるし、国交回復の端緒をつかむこともできる。狭量ならばまだよいが、強硬外交のように見えて、実はアメリカというとらの威をかるきつねのような態度というものは、私はあまり高尚のものではないと思うのであります。  そこで結論としては、内灘の問題等について正確なお答えを次会にお願いしたいと同時に、もう少し弾力性のある、一種の超党派外交といいますか、合理主義的な態度から国の運命を憂え、与党、野党の立場に立ちながら、やはりともに国事を語り、おれは保守で君は共産だが、お互いにそれぞれよいところもあるのだから、国のためにひとつ君の方は民間外交をやつてくれ、おれの方ではやりにくいから、そこは補つてくれというような態度でやることが、私はこの時期に望ましいと思うのでありますが、先ほどの川上君に対する次官の答えは、やはり少しやぼ過ぎるのじやないか、それを世間がすなわち保守反動の外交と言わうけでありますから、徐々にゆつくりでけつこうですから、だんだん態度を改めていただきたい。このことを切に希望しまして、ひとつ次官のお答えを願いたいと思います。
  32. 小滝彬

    小滝政府委員 態度を改めろということでありますが、ソ連及び中共態度を改めてもらいましたならば、国交調整に関して、われわれは態度を改めるのに決してやぶさかではない。現にフイリピンとの沈船引揚げの件について御承認をお願いいたしましたのも、東亜諸国との国交調整をせんとする熱意に出たものであります。
  33. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑はありませんか——。なければ、ただいまの各請願はこれを採択の上内閣に送付いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  35. 上塚司

    上塚委員長 次に、日程第六一、沖繩抑留中の善進丸返還に関する請願、第三一九五号を議題といたします。その趣旨説明を求めます。村瀬専門員
  36. 村瀬忠夫

    村瀬専門員 この請願の概要を申し上げますと、去る昭和二十六年一月十五日に善進丸という一九・九七トンの船が鮮魚運搬のために鹿児島港を出港して甑島に向う途中、約十時間後に機関に故障を起し、漂流四日後の十九日低気圧が発生したので、奄美大島、龍郷港に緊急避難をしました。そうして龍郷地区官憲にその旨届け出たにもかかわらず、不法入国のかどで、船員は二箇月の重労働、船体は没収を命ぜられたが、はなはだ得心が行かないので、善進丸の返還を促進されたいという旨の請願であります。
  37. 上塚司

    上塚委員長 政府側に御意見はありませんか。——別に御質疑はございませんか。御質疑がなければ、本請願は採択の上内閣に送付いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。     —————————————
  39. 上塚司

    上塚委員長 これより国際情勢について質疑を行います。並木芳雄君。簡単に願います。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 MSAと朝鮮問題について簡単に質問をいたします。第一は、朝鮮におけるアメリカ軍の細菌戦の調査ということについて、日本国連に協力をすることを承諾しておるという外電が入つて来ております。これはどういうことであるのか。それで、この承諾を与えておれば、国会承認を求めるようなことではないのかと思われます。この点御説明を求めます。
  41. 下田武三

    ○下田政府委員 私の主管の仕事ではございませんが、聞いておりますところでは、何も日本だけではございませんので、御承知のように、共産側は米軍は細菌戦術に訴えたという。事実かどうか、私どもは言う地位にありませんが、とにかくそういうことを主張しております。そこでアメリカ側は、そういうことを言うなら、ひとつ調査をしてもらおうといつて調査のミツシヨンを出すにつきましては、日本のみならず、アジアの諸国に対しまして、その、ミツシヨンが行つた場合には便宜を与えてくれということを申して参りまして、日本側でも、どういう便宜が供与できるかわかりませんが、旅行とか、滞在とか、あるいは日本自体が調査するというようなこともあまりないと思いますけれども、できる便宜なら何でも御協力いたしましようということを回答したと聞いております。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 わかつていたら、いつ、だれにあてて、どういう形式でやつたか。それは新たな義務ではないのかどうか、国連協力で国会承認をあらかじめ求めるほどのことはないのかどうか。
  43. 小滝彬

    小滝政府委員 今資料を持つて来ておりませんけれども、確かにそういう申入れがございました。日本滞在の場合に、便宜供与を頼んで来ておる点が主たる点でありまして、別段国会承認を求めるというような性質のものでは全然ございません。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 昨日の防衛水域に対する解除の申入れでありますが、あれについて、先方から何か意思表示がございましたか。もう一つは、私はそれは、今度の休戦調印で自動的に解除さるべきものと思うのですけれども政府の見解を聞いておきたい。
  45. 小滝彬

    小滝政府委員 政府からの申入れは七月三十日でございますが、その後まだ回答には接しておりません。私どもの方も、防衛水域の必要はなかろうという見解に基いてこういう申入れをしたのでありまするが、これは国連軍当局の判断しなければならないことでありますので、近く先方から回答が来るものと期待いたしております。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 岡崎外務大臣は、昨日私との私的の会見のとき、捕虜の点について、この防衛水域がなお必要であるということを語つておられましたが、私は、必ずしも捕虜のことは作戦と関係ないと思う。捕虜の処理がきまらなければ解除できないものかどうか。私は絶対的のものではないと思いますが、その点の見解はいかがですか。
  47. 下田武三

    ○下田政府委員 捕虜の交換には、やはり数箇月を要する問題でございますから、返還される前に捕虜が逃げ出すとか、あるいは捕虜に暴動を起さすための策動が海を渡つて行われるというようなことが起りますと、これはせつかくできた休戦協定の前提である捕虜交換が妨げられることになるので、純作戦行動のためでないといたしましても、休戦協定の前提を円満に実現するという見地から、やはりある種の必要性は、国連軍司令官として感じているということは想像されるのでございます。ただいま政務次官が申されましたように、日本政府だけが必要を判断し得る問題ではなくて、やはり先方が判断すべき問題であろうと思います。休戦協定が成立したからすぐ防衛海域はいらぬということにはならないのではないかと思います。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 次々と聞いて参ります。李承晩ラインの方は、今度の休戦調印と関係があるかどうか。漁業の点から、これは直接関係がないようにも思われますけれども、あるいはやはり作戦上の含みもあつて李承晩大統領がああいうことをしておるのではないかと思われますが、それについて政府はどういうふうに考え、どういう処置をされるつもりですか。
  49. 下田武三

    ○下田政府委員 李承晩ラインにつきましては、国連司令部から、防衛海域と韓国側の李承晩ラインとは全然関係がない、その目的においても、根本精神においても、関係がないということを言つておりますように、私どもも両者の間は関係がないものと認めております。また李承晩宣言の文言から見ましても、これは作戦行動に根拠を置くものではなくして、例の大陸だなの主張——私どもから見ましてもうなずけない主張なのでありますが、海洋の漁業資源保護のための大陸だなの主張であると私どもは実体を見ております。従いまして、これは朝鮮の休戦協定成立とは無関係に先方は主張し続けるかもしれませんが、この問題は、日韓会談の一つの題目とされておりますので、日韓両国間で交渉が円満に解決しますまでは、やはり残つて行く問題であろうと思います。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 休戦調印はいい時機ですから、日韓会談を待たずに、これだけを別途に最近の機会に向うに撤廃を申し出たらどうですか。そういう意思はありませんか。
  51. 小滝彬

    小滝政府委員 日韓会談におきましては、漁業に関連してこの問題が取上げられておりますけれども、しかし同時に竹島の問題が起りまして、われわれは、正式に口上書をもつて相当長文のわが方の主張を向うに申し出ております。これまでも再三申し出ておりますが、特に竹島の問題に関連してわが方の見解及び歴史的事実等をあげて強く先方側へ申し出て、この問題を一日も早く解決したいと考えておりますので、決してこの日韓会談のみにとりかかつておる次第ではございません。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 もし朝鮮が二つの政府にわかれた場合に、日本平和条約で朝鮮の独立を認めておりますが、この平和条約で認めておる独立というものは一つの朝鮮であり、一つ政府で統一された場合のことを前提としておると思うのでありますが、この点についての関連性をお尋ねしておきたいと思います。
  53. 小滝彬

    小滝政府委員 平和条約によりますいわゆる朝鮮というのは、南北両鮮のどれをさすというのではなしに、地域的な名称であるというふうにわれわれは解釈しておるわけであります。この地域内に二つの対立関係のある政府があります場合には、一体そのいずれを承認するかというような問題は、これは各国の立場によつてきめられるであろうと考えます。しかし現在は、国連の支持を得て、民主主義陣営にあります大韓民国が、わが国の方へ代表部も派遣しておつて、目下これを相手にしていろいろの交渉も行つておるというような関係がある次第でありまして、日韓両国間の関係を調節するためには、とにかく自由主義陣営に属しておる大韓民国が相手であるのが現状であります。従いまして、北鮮とは何らの交渉を持つておりません。また現在としては持つ考えは持つておらないのであります。しかし将来は、南北両鮮ができ得れば単一の政府のもとに立つて、朝鮮というものがりつぱな独立国にならんことをわれわれとしては期待してやまない次第であります。
  54. 並木芳雄

    ○並木委員 もし不幸にして二つにわかれたときには、ちようど中共と同じような関係になつて来ると思うのです。そこで中共の場合についてお伺いいたしますが、もし日本中共承認するような場合が起つたといたしましたときに、満州国というものはどういう立場におかれるか。カイロ宣言でしたか、満州は中華民国に返還するとなつてつたと思います。そうして平和条約には、満州国のことについては触れておらないと記憶しております。そうすると、中共承認して、台湾における国民政府とは別に新たな政権が樹立されたという場合に、私は満州の帰属というものが浮いて来るのではないかと思うのです。その点について政府の見解をお尋ねしておきたいと思います。御承知の通り日華条約のときに、交換公文で、はつきり中華民国が将来支配することがあるべき云々という領土の問題があつて、私たち議論をしておりましたが、蒋介石政権の中華民国が中国本土に支配権を持つならば、これは問題ないのですけれども、もし中共というものが別途に新しい独立国として承認を見るような場合には、二つの政権ということもあり得るわけですから、その場合に満州はどうなるかということをお尋ねしておきたい。
  55. 小滝彬

    小滝政府委員 この問題は法律問題でありますから、条約局長が答えた方がいいかもしれませんが、将来満州の地域がこの中華民国の実力下に入ればこれは別でありますけれども、現在においては、中共の支配下にある。その場合、かりに中共承認せられるということになると、満州は当然その支配下にある地域でありますから、中共の領域に入るということになる次第であります。またカイロ宣言には満州と出ておりますけれども、これは「並びに満州、台湾及び澎湖島のような日本国が戸国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにある。」とありますが、しかし日本は、満州国の独立は認めたけれども日本の領土として盗取したという建前はとらなかつたわけでありまして、そういう関係から今度の平和条約では、法律的に見まして、この満州というものは掲げなかつたものと私は考えております。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 その点はなお研究しておきますけれども、承つておくだけにしておきます。  最近アメリカの方からの報道によると、朝鮮がむずかしくなつた場合には、中立性を持たせて処理しようということがなされております。報道にある朝鮮の立場を中立的なものにして処理しようというのは、政府はどういうふうに受取つておられるか、見解を尋ねておきたいと思います。
  57. 小滝彬

    小滝政府委員 中立性を認めるというような報道もありますし、またもつと広く伝えられているところは、米国と韓国とが相互防衛の条約を締結するということであります。私は、双方は互いに矛盾するところがあるので、もし相互防衛協定を米国との間にだけ結ぶということになれば、朝鮮の中立化というものは単なる形式にすぎないものではなかろうかというふうに実は考えておる次第であります。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 最後にMSAの問題についてお尋ねします。MSAについて、昨日の交渉の経過を知りたいわけです。発表によりますと、防衛計画を求められたというようなこともありますし、経済問題については、日本は経済問題を優先的に扱つておるのに対して、向うはそう扱つていないという点が、どういうふうに昨日調整され、話合いが行われたか。与えらるべき援助は、軍事援助に限られ、従つて完成兵器だけであるらしい、今回は域外買付は期待できないというようなこともあるやに聞いておりますが、要するに昨日の交渉の経過、それから今後の見通しについてこの際お尋ねしておきます。
  59. 土屋隼

    ○土屋政府委員 昨日第五回の会合をいたしたわけでありますが、まだ実は両方から出ております代表につきましても、最近変更等もございましたので、ただいま並木さんの御質問のような問題について、本格的に具体的な問題を話したわけではないのであります。今の段階では、それらにつきまして協定案を両者で練つているというのが現実の状態で、この協定案につきまして、もちろん字句あるいは考え方についての違いという点もないわけではございませんが、交渉の段階でありますので、この席でこの内容について御報告を申し上げることは、後刻の機会に譲らせていただきたいと考えているわけであります。ただ、ただいま防衛計画の要求があつたか、あるいは経済優先について議論があつたか、軍事援助であつて、完成兵器でしか来ないという新聞報道があるがという御質問だけは、誤解のないように御返答を申し上げたいと思います。  防衛計画につきましては、現在までの段階では要求を受けておりません。経済が優先するという日本側の主張は、初めからの主張でありまして、もちろんかわつていないのであります。ただアメリカ側とすれば、経済を優先するということをあまり強調して、その結果MSAの援助が経済だけの援助であるというふうに日本国民にとられることは、アメリカの本旨ではないようであります。軍事援助だけであるかどうかという問題は、昨日一般的な質問の中で、日本側から提起した問題であります。つまり今回のMSAの援助を日本が受けるという場合を仮定いたしまして、どういう性格のどういう項目による援助か、どういう額かということを聞いたわけであります。これに対してアメリカ側では、まだ額等は、議会の承認を得ておらないので答えることができない、それから項目につきましては、一九五三年から五四年度にわたる予算におきまして、軍事援助と普通呼ばれるところの項目によるので、従つてこの項目から支出されることが主になりますから、その結果日本がもし経済面における非常な援助を期待しておられるとすれば、それは当らないので、アメリカの援助は、会計の費目から見まして、軍事援助と呼ばれるところの費目から支出されているということを了解してほしいという先方の話がございました。さることながら、それが経済的な影響を持ち、経済的な面で日本にプラスになるということが大事だと思うがという当方の質問に対しまして、先方は、もちろん経済的な利益は間接的に生じて来るはずである、しかしあまりにも経済的な間接的な利益を強調することによつて、今年度のアメリカの援助が軍事的な援助という項目の費目であるということをはき違えては困るのだという説明がありまして、昨日は大体そういうところで簡単に会議は済んだわけであります。従つて本問題につきましては、いずれ成案に近いものができました段階におきまして、交渉の経過、双方の考え方について報告させていただく機会があるかと思います。
  60. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど並木君から御質問の細菌調査の点につきまして、今取調べたところを手に入れましたから御報告いたします。四月二十三日国連総会の決議があつて、二十八日付で日本側申入れがあつたのであります。内容は、大体細菌戦調査のため委員会をつくつて日本へも派遣するから、その際証人取調べ等の必要がある場合は、便宜を与えてもらいたい、こういう申入れであります。これに対しまして、政府から五月十八日付で、日本は可能の範囲内で調査に援助を与える旨を国連総会の議長に電報で回答した次第であります。
  61. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま細菌調査には、日本が専門家として協力するというのですか、または、日本が今度のアメリカの細菌戦術に協力したかどうかしりませんけれども、御承知のように、前に日本の軍部に細菌研究所の有力なものがあつて、細菌戦術を研究したというので、被疑者の立場に立つて取調べを受ける、こういう意味ですか、ちよつとその点をお伺いしたい。
  62. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど申しました点がすべてでありまして、私は詳細を存じませんが、少くとも朝鮮における米軍の細菌使用という問題を取調べるのが目的でありますからして、今帆足委員のおつしやつたような目的を持つておるとは考えられない次第であります。
  63. 帆足計

    ○帆足委員 私がお尋ねしたのは一日本が協力するのは、日本の専門家が調査する専門家として、その調査機構に入つて助けるという意味か、または提訴されている問題に日本が関連があるといわれておるために、ある意味の被告、取調べを受ける側に立つて取調べを受けることに協力するというのであるか、それをお尋ねしたかつたのであります。
  64. 下田武三

    ○下田政府委員 この細菌調査委員会というものが日本に来て取調べ権を行使して、協力というか、強制的に取調べを行うというような問題では全然ございません。これは、あるいは日本の科学者の意見をもし聞かしてもらえるなら聞かしてもらいたい、自発的に取調べに協力してくれる人があれば、そういう人の御意見も伺おうという、まつたく自由意思に基く便宜供与の問題であります。
  65. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまお尋ねしたのは、それはそうですけれども、その取調べのときに取調べる方の主体になるのか、客体になるのかということをお尋ねしたのです。
  66. 下田武三

    ○下田政府委員 その点ははつきりいたしません。おそらく日本で取調べようといつても、何ら役に立つものはないと思うのですが、先方が希望するなら来てもいい。来ても京都か日光見物に行くのが私は落ちだろうと思いますが、できる便宜がもしあるとするならば、便宜を与えるにやぶさかでないということでございます。
  67. 帆足計

    ○帆足委員 実はこの問題につきまして、日本軍国主義時代に、私は憲兵隊に一ラシヨナリストとしてひつぱられたことがあるのです。そのときに、細菌戦を研究しているということを憲兵から聞きまして、先日ある非常に著名な演劇が公演されまして、それが日本における過去の細菌戦術の研究所のいろいろな悩みを、それからその後その専門家たちが司令部に大いに活用された科学者としての苦しみを描いている演劇だということを聞いて、ぜひ見に行けと言われましたが、見に行く機会がなくて見ませんでしたが、これは非常に著名な演劇です。そこで私が心配しておりますのは、今日の政府並びに政府機関が、こういういやらしいことに関係があるなどとは重々思いませんが、過去の日本軍閥の残党が司令部に利用されて、それがある意味で被疑者となつて向うから調べに来るのか、それとも単に日本の科学者が任意的にこの問題について取調べる主体として力を貸すのか、どういう問題かということを知りたいのです。
  68. 下田武三

    ○下田政府委員 想像では、被疑者としての立場ということは考えられませんので、日本の科学者が参考意見を自発的に出してやるという程度の調査に対する便宜供与だということが考えられるのじやないかと思います。
  69. 帆足計

    ○帆足委員 日本の科学者がそれについて参考意見を述べるというのは、どういう意味でしようか。その問題については、日本の科学者は、何も取調べの側に立つて意見を述べて寄与するほどのものは持つてないのじやないか。やはり過去の軍国主義時代の細菌戦術のことが一つ調査の対象になるのじやないか。そうだとすれば、そのことをわれわれもよく理解していて、その後の経過を公正に発表して、現在疑いを受けることのないように明確にしなければならぬと思います。また外務委員として、こういう問題がちよいよい雑誌や新聞に出る、また小説にまでなつているような状況ですから、これを知つてつて日本の名誉のためにこれを明確にすることが私は必要であると思つているのです。従つてお尋ねしたのですけれども条約局長のお話では、どうも奥歯にものがはさまつているようで、何かこちらの方が非常に学識高邁で、調査専門委員会に入るというふうに聞えますが、これは日本にそういう疑いがかけられておつて調査されるというのではないのでしようか。
  70. 下田武三

    ○下田政府委員 私の想像ですが、アメリカの学者よりも、日本の学者の方が東洋の動植物については詳しいわけで、たとえば中共側がこういう昆虫の写真を出しているが、一体そういうものは東洋の気候、風土において、人為的に多量媒介し得るものであるかどうかとか、そういうような遠方から来る人にとつて、より近い日本に住む科学者の意見は、科学的にも尊重すべきものがあるというようなところから、日本の科学者の協力を求めることがあるかもしれません。これは全然推察でございます。私の一番強い推察は、朝鮮はあまり住みよいところではないから、結局日光かどこかを休養の場所として、日本を旅行する、そういう点が一番のあれじやないかと思います。
  71. 上塚司

    上塚委員長 時間が非常に少いですから、関連質問は簡単にお願いいたします。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 実は私がこのことを申し上げますのは、過日北京に参りましたときに、細菌戦術博物館というものを見たのです。厖大なアメリカの細菌戦に関する資料、実物、いろんなたまだとか、落したものとかいうものがありまして、実証的に証明してありました。しかし何分にもわれわれ専門家でありませんから——私はものを軽率に一方を信ずる、アメリカの言うことを信ずるということもきらいですし、ソ連の言うことを正しいと即断するのもきらいで、私は福沢学派ですから、独立自尊の観念を持つておりまして、なかなかだれにも屈服しないという九州生れの人間でございます。従いまして、深く考えますと、私は腕を組んでため息をついて考えました。結局今日に至るまでギリシャ語のエポケーといいますか、判断中止をしている問題であります。ただいまの問題は非常に重要な問題をはらんでおります。というのは、過去の日本の軍閥は、細菌戦については相当の水準に達していたのです。従いまして、そういうことから問題が起つた点もありましようから、外務省当局におきましては、日本の名誉のために、過去において悪いことがあれば明確にしまして、今後こういう忌まわしきものにあまり深入りなさらぬようにしていただきたいと思つておりますが、条約局長のお話はよくわかりましたから、また問題が具体化しましたときに伺いまして、国のために適切な処置をとりたいということを私は希望いたします。
  73. 上塚司

  74. 田中稔男

    田中(稔)委員 大分おそくなりましたが、欧米局長にお尋ねいたします。ブカレストの世界青年学生平和友好祭に出席するために、旅券の交付を請求している青年学生諸君が相当ありますが、これに対しましては、外務政務次官からのお話によりますと、外務大臣は目下研究中であると言われておる。しかしながら、情勢はどうも悲観的でありまして、大体出さぬ方針だというふうに私ども聞いておりますが、その後の経過をお伺いいたしたい。
  75. 土屋隼

    ○土屋政府委員 たしか昨日現在で二百何名かの学生からブカレスト行きの旅券の申請書が出ております。御存じの通り、旅券は一日平均四十通の旅券を出しておりまする関係上、こう急に来られましても、右から左とさばくわけには行きませんし、また一つを処理して他を処理しないわけにも行きません関係上、調査しておりますことは、きのう政務次官から御答弁になられたそうでありますが、その通りであります。私は実は、このブカレストの旅券の問題につきましては、昨年の三月、ここに委員としておられる帆足さんの問題などがありましたときに、日本政府といたしましては、こういう地区に対しての旅券は出しにくいということを、一応政府の方針として発表いたしましたが、この方針には、根本的な変化がございませんので、私の個人的な感情から申し上げますと、調査の結果、この旅券を発給するという段階になることは、会議の期日もございますので、間に合わないという心配を多分に持つております。従つて旅券の調査の段階におきまして、出す出さないということを申し上げられない段階にありますが、私は、その代表の学生の方にもお目にかかりまして、私の得ました印象を申し上げますと、その印象では、単にこういう地域に行くことを一般的に否定している。一般的に禁止したいという日本政府考えがあります上に、会いました学生の言動というものは、日本政府におそらく不利益をもたらす学生であろうという印象を受けているというのが現状であります。
  76. 田中稔男

    田中(稔)委員 それであなたは、今学生の代表に会つた際の印象で判断しておるようでありますが、私はそういうことでは困ると思うのであります。旅券法の条文の規定によつて発給しないということならわかるのでありますが、このことにつきましては、大体第十三条の第一項の第五号ですか、これに該当するから出さない方針であるというようなお話も政務次官あたりからあつたのでありますが、その点については、ひとつはつきり御答弁を願いたい。
  77. 土屋隼

    ○土屋政府委員 昨年三月に出しましたもので、旅券発給に関する政府の一応の見解を述べてあるわけでありますが、あれによりまして、今回のは十三条に関連があると認めます。従つて、私もこの五号について、だれが申し出ても今回旅行をしたいという問題につきましては、この十三条の解釈で、本件を解決するということになるだろうというふうに大体考えております。その上に、私が印象を申し上げましたのは、そういう事情で、二百何人かを個人的に審査をしなければならない義務を外務省は負つておるのでありますが、なかなかその義務の履行は困難でありますということを申し上げたのと、たまたま機会がありまして、二人の学生代表に会いました印象では、十三条にまさに該当する行為をすると疑われる相当の理由があるということを、個人的な印象として持ちましたということを申し上げたのであります。
  78. 田中稔男

    田中(稔)委員 局長が人相見か何かなら別ですけれども、ただ会つた印象だけで判断するというのは、これは合理的じやないと思うのであります。それからまた学生の身分であるが、その学生は、それぞれの大学に在学しておる。そういう事実から考えましても、この第十三条第一項第五号に規定してあるような「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」こういうふうな大それた危険を包蔵した人物が大学に現在在学しておるということは、ちよつと常識として考えられない。そうして、かりに欧米局長のそういう印象によつて旅券が発給されないということになりますと、学生が非常に重大な烙印を押されるということになる。私はその学生のために、これは重大な身分上の問題であると思う。もう一度申し上げますが、今のお話によりますと、申請の書類を事務的にちやんと調べた結果でなく、単に印象によつて御判断になつているようでありますが、この点は確かでありますか、
  79. 土屋隼

    ○土屋政府委員 私が申し上げましたのを、印象だけで——人相見でない、印象だけで何かというように御理解になつたようでありますが、私はそういうことを少しも申し上げておりません。私は、昨年三月、こういう地区に行く者に対しては、だれであろうと出さないという一般的な方針がありますが、それに対して二百何通の旅券の申請が出ました。一々審査をするのに時間がかかります。そこでたまたま機会があつて二人に会つてみましたが、この二人の言動から見て、それがこういう条項にまさにあてはまるというような印象を持ちましたということを申し上げただけです。
  80. 田中稔男

    田中(稔)委員 それは結局同じでありますが、局長は二つのことを言われておるわけで、一つは昨年三月外務省できめた一般的な方針に基いて、こういう地区ということですが、おそらく共産圏の地域だと思いますが、そういうところに行く人には出さない。もう一つは第五号、その場合にこれを書類によつて調べたり、その他の方法によつて調べたのでなく、代表の言動から受けた印象ということでごつちは判断した、この二つの根拠があるわけであります。私は五号についての局長の御判断が、代表の言動についての印象に基いておる点については、これは合理的な根拠を持たないということで、承服できないのであります。それからこういう地域に出さないというその一般的な方針でありますが、これはどうでありますか、やはりあの例の生命財産の安全について保障ができないという、こういう事情でございますか。
  81. 土屋隼

    ○土屋政府委員 この点につきましては、三月の十五日でございますか、私ども情報文化局から発表がございまして、当時国会におきましても、委員会では繰返してこの問題は御答弁を申し上げました問題であります。十三条並びに、当時におきましては十九条の趣旨も汲みまして、旅券を発給いたさないということを申しております。
  82. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうも非常に不親切な答弁だと思いますが、そういう印象に基いて、現在のところもう出さないという方針にきまつているのですか、それとも印象は印象として、一応事務的に書類をずつと調べてみる、そうしてはつきり第五号に該当するということになつた場合に、最終的な判断をするというお考えであるか、それからまあかりにそういうふうに事が運んだとしましても、これは時間の要素が非常に重要なんでありますが、八月二日と申しますと、もうあすでありますが、しかし一週間ぐらいの会期でありますから、少し遅れて行つてもいいのでありまして、少し遅れても、会期に間に合うように事務を進めるという誠意が局長にあるかどうか、この二点をお尋ねしたい。
  83. 土屋隼

    ○土屋政府委員 どうもお話をまたむし返して恐縮ですが、私は印象によつて決定するということは、先ほどから何回も申し上げたように、していませんが、一般的に政府の方針として、出さないという従来の方針にかわりないと認めております。従つて今度の具体的な問題についても、出さないという公算が多いのであります。そうして会つてみた私は、ますますそういう印象を受けたのでありますということを申し上げたのであります。根本方針についてはそれで申し上げましたし、それから会期の点につきましては、会期が何日に終るということも、申請がございまして承知しておりますので、会期の終る前にイエスかノーかということをはつきり申し上げたいと思いまして、目下調査を急いでおります。
  84. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで第五号に該当するという場合には、これは法務大臣に協議をしなければならぬと思いますが、そういう手続はおとりになる考えでありますか。  それからもう一つ、これは学生が多いのでありますが、学生の身分について重大な問題でありますので、文部当局とこのことについて協議をなさるお考えはないか。たとい法律上の根拠はなくても、文部省の意向、あるいはまたその学生が在学しておりますそれぞれの大学の総長、ないし学長などの意見を聴取なさるというようなお考えはないか、それを承りたい。
  85. 土屋隼

    ○土屋政府委員 十三条を援用いたします場合に、法務大臣と相談すべきことは法律の命ずるところでありまして、当然その手続をとる考えでございます。  学生の身分につきまして、大学なり文部省なりに御相談いたす必要は、今のところなかろうと考えております。
  86. 帆足計

    ○帆足委員 旅券法の問題につきましては、ただいま局長からお話がありましたが、実は簡単な法律でありますけれども、割によく一般に理解されておりませんで、結局昔の警視庁外事百課のように、何か政府の主観によつて取捨選択の余地があるかのごとき錯覚が一般にあると思うのです。ただいま印象だけでなく、言動によつて好ましくない学生と言われましたが、私もあそこで騒いでいるところを見まして、学生諸君に、どうもその点はあまり芳ばしくないから、やはり書物を読むなり、英語の勉強をしながらすわり込みをした方が学生らしくてよかろうと申しておきましたが、何分にも政府態度も頑迷なものですから、学生諸君は興奮している。興奮していると、応援団などのああいう様相になるのは心理的な結果でありまして、それを見て好ましくないと言われるならば、学生諸君が局長に会うときには、顔をそつて、湯上りの坊ちやんのような顔をしていなければならぬということになりますから、私もそういうような表現の仕方はまずいと思うのです。そうでなくて、これはやはり客観的に法に従つてつていただかなければならぬ。好ましくないところは、生命財産が危険であるというりくつをつけて、一律に鉄のカーテンの向うへの旅行を禁止しておりますけれども、先日は、また都合のいいときには島津さんたちをやつたところを見ますと、あまり命に別状もなさそうでありまして、政府の言われることは支離滅裂でありますから、他日外務委員会において、旅券法の公正、合理的な運用について一ぺん検討する必要があるとわれわれは存じております。今局長は、ちようど時勢の転換の中に立たれまして、この法規の運用について苦慮しております御心中のほどはお察しいたしますけれども、まず法学界においては、政府側が無理であるというのが大体一般の輿論でありますから、政府もこの問題に対してはもう少し謙虚に、多少お気の毒な点もあるが、ボーダー・ラインの問題であるから、学生諸君もひとつがまんしてくれというようなことでゆつくりお話をなされば、私はあれほど興奮されずに済む、やはり親切心と誠意が足らないと思うのでございます。その証拠としては、先日ここへ渡航課長が見えまして、たいへんな意気込みで、鉄のカーテンのかなたへ一度でも行つた人間は、もう絶対に一歩でも外へ出してはならぬというようなことを申されまして、さすがに次官にたしなめられ、そういう極端なことは取消せと言われまして、法に従つて公正、妥当な態度をとるという欧米局長のお話の速記録を持ち出して、やはり感情問題は感情問題として、公正に処理しようというお票あつたのは、われわれもこれを多としておるものでありますから、どうかこの問題については、外務省当局もあまり興奮なさらずに、もう少し新憲法と旅券法を御勉強になつて措置されることを私は要望いたします。
  87. 上塚司

    上塚委員長 須磨彌吉郎君。
  88. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 きようは、外務大臣にいささかお尋ねをいたしたいと思います。この間から当国会の最も大きな問題の一つでございました防衛に関する論議につきまして、いろいろ進展をいたした次第でございますが、ただいま私から繰返すまでもなく、当委員会におきまして、先月十八日に保安隊の問題が起り、保安隊の性格がかわる問題も起り、名称の問題も、保安庁法改正の問題も起つたわけでございます。また外務大臣からは、直接侵略に対しまする心構えの問題も起つたわけでございます。しかるに引続き三十日、わが党の芦田議員からの質問に対しまして、吉田総理大臣のお答えを見ますと、いかにもその表面に現われたところから見ますと、当委員会において今まで進展をいたしました論議がまるでひつくり返されるという、元に返つたがごとき印象も実はないではないのでありますが、世の中というものはきわめて公平なものでございまして、あれを聞きました者、あの報道を受けました内外の新聞もしくはラジオの、せんじ詰めたところは、あれは総理大臣も芦田さんも、同じ気持違つた言葉で現わしておつたと結論をいたしておるのでございます。  私は本日ただしたいと思いまする点につきまして、一例をあげたいのでございますが、吉田総理大臣は、芦田さんのこれから国防をやるのではないかという質問に対する答の中に、われわれは夢物語ではない、現在の保安隊で国防に当るのだという一節があつたのでございます。人の言葉というものは、期せずして心を語るものでございます。さらにいま一つのことを申しますれば、直接侵略についての質疑に対しまして、吉田総理大臣は、直接侵略があつた場合に、保安隊が横を向いているわけはない、こう申しておるのであります。答弁としては、実に妙を得たものではあるかもしれません。要しまするに、これらの点をあげますと、問題になつておりまする、保安隊の性格はかわらないとはつきり言つたともとれないわけであります。いま一つの点は、直接侵略に当らないとはつきり言つたともとれない点でございます。ここに私は、その質疑応答の中に妙味がある、これをもつて内外の全体の感じが、同じ気持違つた言葉で話合つたという印象を受けるのも無理からざることだと思うのでございます。  それで、つきましてはきようは保安庁長官がおられませんけれども、当委員会において主として質問にお答えになりました外務大臣から、私が今申しましたような、この感想が誤つておるか、あるいは当事者としてやはり御同感であられるか、これをお確かめいたしたいと思うのでございます。このことは、決してわれわれ一党の問題ではございません。また一つ政府の問題ではございません。われわれは八千幾百万の民生がともにひとしく重大なる問題として考えておるところでございますから、その真意はどこにあるか、当事者としてどう考えておられるかということを、末期も近づきました当国会のこの委員会におきまして、総締めくくりとして、外務大臣の衷心からのお言葉をちようだいしたいと思うものであります。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 実は私、改進党の御意見がどうであるかということについては、正確に把握しておるわけではないのであります。たとえば自衛軍というものは、内容はどういうもので、戦力に至るものであるかないか。それから戦力に至るものであつても、憲法九条にかかわらず持てるという御意見であるかどうか。そういうところは、改進党の中でも、人によりましては多少ずつ御意見が違うような点も見受けられておるのであります。御承知のように、そういう問題について具体的にお話し合いをいたしたことがないから、正確なことは言えないのであります。従つて吉田総理と芦田さんの考えておるところが同じであるかどうかということについては、実は正確には言えないのであります。ただ私の言えることはこういうことであります。吉田総理が答えられた点は、主として現状をもととして、現状においてはこうするのだということをお答えになつておる。芦田さんの御質問は、主として今後どうするかという点に重点を置かれておるようでありますから、従つてこのように答弁が多少ずつ食い違つたような点があるのではないかと思います。そこで現実においては、保安庁法はちやんときまつておりまするし、また保安隊等の定員もきまつております。ふやそうとしても、これは法律を直さなければ人もふやせないし、また任務もかえることはできないわけであります。そこで現状においてどうするかということのお答えとしては、この十一万をもつて、現在保安庁法に定めるところによつて防衛をやつて行くのだということしか、総理大臣にはお答えの方法がない。これを今後どういう気持で自衛力増強に関連して考えるのかということになりますと、これはまた別のお答えが出て来るかもしれませんが、ただいまのところは、保安庁長官の言われましたように、人もふえる場合があるかもしれません、あるいは目的がかわる場合もあるかもしれない。しかしただいまのところは、まだ研究中に属しておりまして、いずれそういうことに結論が出ますれば、法案を具して、国会の御審議を得て、その承認を経なければできないわけでありますから、政府の答弁として正確なものを求められますと、やはり現状をもととして言わなければならぬということに拘束されるわけであります。しかし保安庁長官が再三言われますように、こういういろいろの点につきましては、目下研究中であります。またMSAの援助が来ました場合に、その内容等によつても、これだけのものを援助として得るならば、これだけの仕事ができるというような面もあろうと思います。また逆に、これだけの仕事をするつもりだから、これだけの援助をよこせというので、初めに計画を立てなければ援助が来ないという点もございましようが、援助の内容によつては、また計画の立て方も違つて来るということがありまして、これは鶏と卵のような話でどちらが先ということにもならぬと思います。そういう点も考えまして、保安庁の方でこれはまじめにただいまいろいろの計画——計画と言つては語弊があると思いますが、研究を進めておる、これが現状だと思うのであります。いずれ保安庁の方で成案ができますれば、これは私の管轄ではございませんけれども、保安庁長官の言われますように、国会の審議を求める時期があることと考えるわけであります。
  90. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いま一つつけ加えたいと思いますことは、十五日にMSAに関する交渉を始められますときに、外務大臣の演説があつた。これに答えられてアリソン大使の演説があつたのでございますが、私はあれほどうまくできておる——うまくできておると言つては何でありますが、大演説だと思うのであります。いかにも表面を見ますれば、わが国には何らの義務を負担させるものではないということを申しておりますけれども、ビトウイン・ザ・ラインズと申しますか、書き現わされた間にありますことは、結局お互いが安全を保障するのであるから、外敵からの脅威に対する防衛というものは、今までの六十三箇国みな参加しておる、こういうことであります。これをわが国に移せば、将来においてそういうことがあるということは、あの演説の明らかに示したものであろうと思うのであります。私の狭い経験でございますが、アメリカの代表者の演説としてあれほど含蓄のある、言い方のうまい、いろいろなフレージオロジイのうまい演説はめつたにないと思うほどよくできておるのであります。これを読みますと、ただいまおつしやつたことから見ましても、将来——将来と申しますが、将来といえども現在からつながつたとき以外の何ものでもございません。そうしますと、今から予見し得るあるときには、結局保安庁長官が申されたようなこと、あるいは外務大臣が当委員会において申されたようなことも行わなければならぬとあなた方当事者が考えておられることは、私は事実だと思うのであります。決して白々しく、この委員会で申されたことは考えたこともないとおつしやるようなことではないと思うのであります。要するにプレゼントからヒユーチユアに移るその間のところをどこで切るかという問答の仕方によつて、今までの解釈の仕方がつくのだと思います。繰返して申しますが、このことはわれわれ国民ほんとうの休戚に関する問題であります。私といたしましては、この吉田、芦田両氏の問答においても、われわれが当委員会において繰返しました論議からも、決して種類、カテゴリーの違つたものではないと思うのであります。あるいは未来のテンスで現わしましたものを、これをプレゼント・テンスに解して来れば同じに相なるかもしれぬというふうに私は解釈されてならぬのでありますが、いま一度その点に対する私の考え方が誤りであるかどうかを、おただし願いたいと思うのであります。
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これにつきましては、私もそばにおりましてずつと聞いておりましたが、こういうふうにおつしやられると——これは速記録でもよく見きわめて十分研究してみないと、またお答えが間違うといけませんが、繰返して申し上げますが、政府は自衛力漸増ということを考えていないのではなくして、できるだけやりたいという気持でいるのであります。ただ総理も繰返して言われますように、経済上の問題もあり、国民感情の点もあり、あるいは東南アジアその他の諸国の気持もあり、従つていろいろな点で慎重なようなことになつて、一部の人からは歯がゆいと思われております。また他の人からはけしからぬ、再軍備をひそかにねらつていると言つて攻撃されているわけであります。しかし自衛力を漸増したいという気持は初めから持つていることは、何べんも申している、総理自身も言つておられるのであります。究極には、自分の国を自分で守るつもりである、こういうところまで考えているのでありますが、ただ今もおつしやるように、その移りかわりがいつになるか、その時期はいつであるか、またその度合いはぱつと一ぺんにかわるのか、徐々にやつて行くのかという点については、もちろん当事者としては当事者の考えがあり、また改進党には改進党のお考えがあると思いますけれども、この点は木村保安庁長官も言われますように、実際いろいろの点を研究中でありますから、いましばらく研究の結果をお待ち願いたいと思うのであります。芦田、吉田両氏の質疑応答につきましては、一般に新聞に出ている感じは、おつしやるように書いてありますから、私も一般の受けた感じはそうだと思いますけれども、さて私の意見はどうだとお聞きになると、これはもう少しよく調べてみないと、また吉田総理の気持もはつきり確かめなければ申し上げられないと思います。
  92. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 非常に用心深い御答弁でありますが、私からかわつて申し上げましよう。すなわち自衛力の漸増ということは、決して政府はやらないと思つてはおらない。おやりになる。これは常にお繰返しになることであります。できれば、自衛軍というものは経済の許すときには置きたいということ序しよつちゆうお繰返しになつております。私ども言つていることは、この漸増ができるその瞬間のある時代をつかまえれば、私どもの申すことと少しもかわらないのであります。しいて申し上げますれば、かわる点はただ一つあります。われわれは、名前は自衛軍と申しているのでありますが、自衛軍は憲法九条には違反しないということを、われわれの大体の見方といたしているのでありますが、私の解釈によりますと、新聞紙等の伝えるところによりますと、自由党並びに政府方面では、自衛軍というものは置けるものではないのだ、戦力というものにあらざる限り置けるものだ、こう言うので、戦力と自衛軍との相違という憲法解釈の問題だけがここに違つて参るわけであります。しかしながらわれわれ政治を扱うものは、これは憲法の法理解釈をいたしているものではありません。憲法はまさに生きものでありまして、その生きものをどう御解釈になりますかは、政府の方でおきめになる腹次第でありましよう。それでありますから、その点に関しますわれわれとの相違は、目をつぶらざるを得ないと思います。しかしこれは、その実質をつかまえれば、自衛力漸増のある段階におきましては、私ども考えているところと一つも違わないということを、これだけは外務大臣は御否定なさらないだろうと思いますので、いま一度おただし申し上げたい。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 非常にむずかしい御質問で、私は決して逃げているわけじやないのでありまして、自衛力漸増ということはもちろん考えております。そこで今おつしやるのは、政府でも自衛力を漸増して行く、そこであるところへ来ると改進党で考えておるような内容を持つたものになるのか、こういうお話でありますれば、改進党で一体その保安隊なり自衛力というものが何方であり、そうしてどういう装備を持つているという具体的なお話を私は聞かないのですが、そこのところは、りくつとしてはだんだんやつて行く、改進党の方もそういうふうに考えておられるのだから、あるところへ来れば、一緒のものになるかももちろんわかりませんが、どうもそういう答えは、私は大して有益なお答えのように思わないのでありまして、私から言わせれば、政府は必ず自衛力を漸増するつもりでおりまするし、MSAを受けるというのは、自衛力を漸増する気持がなければ受ける理由はないのだと思います。だから、これからひとつ自衛力漸増の一助としてやつてみようというわけでありますが、しかしその援助を受けただけでそれで事済むのか、それともそれ以外に、こちらでもつてその援助を受けたことによつて、いろいろな経費を増す必要があるかという点は考慮してみなければならぬわけであります。これは財政上の問題にもなりまして、現に改進党の主張によると、これはいろいろ保安隊の計画がないからというお話でありますが、保安庁費も減らされているようなわけですから、うつかり保安庁費をふやすような計画を無理に立てて、国会で通らなければ、これは何にもならぬわけであります。そこでいろいろ保安庁で研究しておるんだと思います。これは私の答弁の以外でありますが、そこで今申したように、漸増はやるつもりで今具体的に考えておるのである、そうしてMSAもその意味で受けようとして努力しておる、しかしこの話合いの結果も見てみないと、具体的にいろいろの考慮をめぐらすことはできない部面もあるので、いましばらくお待ちを願いたい、こう申し上げざるを得ないと思うのであります。
  94. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 漸増は考えておると言つておられます。それからまたMSAはお受けになると言う。それでは、漸増というのは具体的にはどういうことをおやりになるのでありますか。これをはつきりおつしやいますると、私どもの申すことときちんと合うだろうと思うのであります。
  95. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私の方から言いますと、安全保障条約等で漸増ということはすでに言つておるのであります。MSAを受ける点についても、漸増という気持がなければ受ける理由はほとんどないということになるのでありますが、それをただ具体的にどうするのだとおつしやいますと、これは私の管轄ではなくして、実は保安庁長官の主管するところであります。私の想像するところでは、いろいろの関係を見ながら今研究中だと思うのであります。そこで私は、むろんその内容等は知りませんし、まだ具体的に正式なものができておるとは考えないのであります。従つてそこを具体的に示せとおつしやつても、ちよつと私にはできないのであります。
  96. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 このままで繰返しても尽きるところはないと思いますが、大体外務大臣の言われることは、私の申しておることとお聞きになる方がみな御賛同くださると思いますが、結局同じことを言つていると私は感じます。このことを申し上げて、このことは打切ります。  北大西洋条約の行政協定が、近く日本の行政協定をも変改するようになるわけでございますが、この前も質疑を申し上げた次第であります。これはお聞き取りになりますと、多少とつぴなようにお考えになるかもしれませんが、今度かえますことは治外法権を廃止するようなもので、刑事訴訟法その他の法律を非常に御改正になる必要が出ると思う。従いまして、その法律の改正は当然国会にかけなければいかぬのでございますから、ひとつこの際大いに百尺竿頭一歩をお進めになりまして、あの私生児と称せられておる行政協定を認知する意味におきまして、今回改訂のなるときを機会としまして、国会にあの行政協定改正をおかけになるということをおきめになつていただきたいと私は熱望いたします。これによつて初めて幾多の誤解を解き、日米関係の悪化をも防ぎ得るかとも思う次第でありますが、そういうような政治的考慮を払われる用意がございませんでしようか。これも国会ちよつと休みになりますから、その間にせつかく政治的考慮を尽されて、結論に達せられんことを熱望してやまないものでございます。いかがでございましよう。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府としては、何も前言にこだわる理由はちつともないのでありますが、これはもうまつたくどうやつて考えても、そういうことをやつたやり方がまずかつたとか、それは正しくないのだという批評は甘受いたしますが、安全保障条約に両政府間のとりきめによるということが書いてあります。これでもつて政府間でもつてできるということは、政府としては、これはごまかしではなく考えておるのでありますから、この安全保障条約の国会承認を得るときに——議事録をごらんになればおわかりになるように、この条項に基いて両政府間に、行政協定とはつきり言つておりませんが、アドミニストラチヴ・アグリーメント、何と訳すか、そのとききまつておりませんでしたが、それをつくるのだということは再三申し述べておるのであります。従いまして、今度改正をやるとしまして、これを国会承認を求めた場合にでも、おそらく国会承認を得られるであろうと思います。だから今度の改訂につきましては、これ自体については心配もあまりないし、またそれによつていろいろの摩擦がとれるという点はわれわれも考えないではありませんが、この条約の解釈を曲げるということは、私はどうも正しくないと思います。そこでこれはもし国会がそのとき開かれておりますれば、いち早くその結果を報告いたします。またそうでなければ、ただちに新聞等を通じまして国民全般に発表をするように、また各党で必要とあらば、ただちに各党の方にも御連絡をして御報告をいたしまするが、この条約の解釈を曲げるということは、私はちよつとむずかしいことであろうと考えております。
  98. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いま一点この機会にお伺いしたいことがございますが、それは、この間外務大臣が非常な飛躍をお示しになりまして、中共貿易をこれから熱心におやりになるという御意見もございましたが、実は中共地区に捕われております船というものはおびただしき数に上つてつて、すでに未帰還のものが百十隻あるというようなことになつておる。ところが最近七月二十八日に青島沖におきまして、鳥取水産というのが持つておる船でございますが、第一伯洋丸、第二伯洋丸という二隻の船がまたつかまつておるようであります。これは中共の三千トンくらいの軍艦三隻によつてつかまつておるということの事実がわかつておるわけでございますが、こういうたくさんの船がつかまつておる。これは貿易をやるということと並行に、もしくは前提として、こういうものがだんだん返さなければならぬと思います。しかしながら、私もよく存じておるのでありますが“国交も何もない国とこういう交渉をするということは、非常にむずかしいことだろうと思います。けれども、その前提としてこういう利害関係者の委員会と申しますか、利害関係者一つの会合でもつくらして、それがだんだん向うの利害関係者と対抗して、こういうものを正常に返して行くというようなことをやらして行くというような御計画でもないものでありましようか。そうでありませんと、だんだん日本の被害も大きくなりまするばかりでなく、中日貿易というものの進展にも非常な阻害を来すと思いますが、何か御計画はないものでありますか。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはわれわれも苦慮しておりまして、解決の的確なる方法がないものですから、あるいは赤十字等を通じたり、あるいは中共友好関係にある国の代表者等を私的に頼んで話をしてもらつたり、あるいは香港等におつて中共側と関係のある商売をしている連中とか、その他の関係者に連絡をしてもらうとか、いろいろ足らない手段で何とか連絡をとりつつあるわけでありまして、少しずつ帰つて来てはおりますが、思うようになつていないというのが実情でありますから、ただいまお話のような点もひとつ研究の題目としてやつてみようと思います。
  100. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 これは、私も本会議における質問のときにも申し上げたことでありましたが、竹島の問題であります。これは当事者から、あるいはひまでもあれば、当委員会に出てもらつてお話を承りたいと思うくらいでございますが、七月の十三日かにこちらの警備隊の船が行きましたところが、向うの韓国の警備隊の方が、鉄砲のたまが大きかつたのでありましようか、それに負けると思つたのでありましようか、こちらはさつさと逃げて来てしまつたのであります。そうして三十数名の朝鮮人が今なおあの竹島を占拠している。これは関係者の実話であります。むろん当事者もこれを認めているそうでございますが、これは私は小さいように見えて、非常に大きな問題だと思うのです。竹島は御承知の通り鬱陵島と並んで——鬱陵島は今韓国領になつているか知りませんが、だんだん国防問題、防衛問題などというものがやかましくなりますと、重要な地点を占める島であります。それのみならず、韓国では隠岐、対馬も自分のものであるというような主張をときたまするようであります。この竹島をただ行つて逃げて来るようなことをしておつては、ここ数箇月くらいたちますと、次に同じようなことが対馬においても行われるようなことにもなろうかと思いますが、これは直接外務省の御関係でもありませんが、海上警備隊があつてなきがごとく、何らの働きもなしておらぬということに私どもは満腔の不満を感ずるものであります。またこの前の当委員会における御答弁の中には、これは国際問題でないなどというお話もございましたが、大きな国際問題でもあり、国内問題でもございますから、何らか的確なる御措置をおとり願いたいと思いますが、その後の経過等でもございましたら伺いたいと存じます。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まだその後の経過というほどのことはありませんが、最近もう一度船を出して見させようと思つております。これは二つの問題があるのでありまして、一つは、この竹島を日本の領土であるということはわれわれ信じて疑わないわけでありますから、この領土に侵入して来たものを自衛の力をもつておつ払うという問題がありますが、同時に、この韓国の主張は認めないけれども、これを韓国側は韓国の領土だと言つているように思うのであります。日本側でも、当然これは日本側であるということになると、これは一種の国際紛争というか、そういう一つの種類になるわけであります。こういう問題を解決するには、われわれ力をもつてすべきものではない。平和的に解決すべきものであり、憲法も国際紛争の手段としては武力を使わないことにしている。これは十分守らなければならない。そこで理を尽してただいま韓国側に話をいたしている。話といいましても、抗議をいたしているのでありますが、この竹島の領有ということについては、われわれはこれはどこにも何らの欠点のない日本の主張であると確信しておりますから、まあ終局的にどうしても話がつかないということになれば、これは国際間の問題に持ち出すべき場合もあろうと存じますが、今のところは、韓国を相手に十分事理を尽して話をいたしてみよう。しかし同時に実際上の措置としては、ここは人が住む所でないものですから、非常に不便なのでありますが、向うも始終そこにいるわけではなくて、船の中で生活しながら、そこにとどまつて貝や何かをとつている。そして一ぱいになると帰るという状況ですから、日本の船の行つたときも、全然人のいないときもあるわけであります。そこでとにかくもう一ぺん行かせまして、実情をよく調べてみたい。さらに日本の領土であるということをはつきりさせるような措置もとるべきであろうと思つて相談をいたしております。
  102. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 今の須磨委員の問題で、NATOシステムに近いという行政協定の改訂のことですが、これは成立はいつごろですか。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、ただいまアメリカ側が批准をいたしましたものですから、詳細な訓令を送りつつあるようであります。訓令が来ますと、交渉を開始することになります。先方としては、訓令が来なければちよつと見当がつかないもののようでありますから、これは多少、批准には関係がありませんけれども、上院としていろいろ留保みたいな意見もありましたので、それも関連しているのではないかと思います。日本についてはその問題はないと思いますけれども、そこでおそらく来週から交渉を始めると思います。われわれの希望もいたしましては、たしかこれは日ははつきりいたしませんが、今月の二十三日ごろにNATOの協定は効力を発すると思います。あれは批准してから一箇月後ということでありますから、そこでそれまでにできれば下交渉を済ませまして、そうして効力の発生したときに同時にか、あるいはごくそれに近いときにこちらの協定もつくり上げよう、こういうつもりでやつております。
  104. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 行政協定の不合理さというのは、よく調べてみると、結局私は岡崎・ラスクの文章といわれる日米交換公文の中にずいぶん欠点があると思うのです。特に今須磨委員がつかれた属人主義か属地主義になるかというふうなことよりも、残された労務契約の部面、それから改善されない直接調達の部面、これまでおやりになれる、おやりになれるというのはこつちの実力ですが、おつもりがあるかないか。それからもう一つは、当然これに関連するのですが、国連行政協定はこれと同町におやりになるかどうですか。この二点……。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一の点につきましては、労務とか調達の問題ですが、これは私もいろいろ研究してみましたが、今おつしやるように、行政協定の文面の改訂によつて得るところよりも、実際上の問題が多いと思うのであります。たとえば面接調達か間接調達かというときにも、われわれは初めは、直接調達の主張をしたのであります。それはりくつ上からいつて当然なこと、こう思いましたが、労務者の方からいいますと、第一に言葉等がわからぬから間接にしてくれということと、それから会社等の方でも、そういう希望がありましてそれをやるわけなのでありますが、ところが間接調達にはいろいろの経費がたくさんいるわけであります。その経費を政府で出せばできるのでありますが、アメリカ側に、間接調達でお前の方のかわりにやつてやるから、お前の方で行政費を出せという交渉をして、行政費が出ればよいが、間接調達だということにしておりますから、その行政費が思うように出ないと、アメリカ側にまかせねばならぬようになつて来る。これはおもに実際的の関係が多いと思います。しかし実際上の問題についても、ただいま労務契約についても交渉はいたしておりますが、できるだけ外務省としても、合同委員会を通じてそういう方面を、調達庁を助けて行きたいと思つてつております。  それから国連協定の方も、ただいま準備を進めております。まあ同時にということにはなりますまい。というのは、まず北大西洋条約のものがはつきりきまりますと、そのまま国連協定の方に移せると私は思います。ところが国連協定の方は、この問題はNATOの協定ができましたから解決すると思いますが、同じものをつくればいいのですから、何でもないと思います。ただ支払いの問題、税金とかいろいろなこまかい問題がたくさんあるのであります。この点はなかなかこまかいことであり、過去もう一年以上にわたつておりますから、なかなかむずかしいのであります。もつともこちらが負ければ何でもないのですが、向うから取立てようと思えばなかなかむずかしい。たとえばこちらで負けると、地方の平衡交付金に金を入れなければならぬとか、あるいは地方のガス会社とか水道会社に金を入れてやらなければならぬという問題があつて、予算措置もしなければならぬので、そういう面まで入れて全部というと、期間がかかりますけれども、裁判管轄権の方は、ほとんど行政協定と同時ぐらいにできるものと考えております。
  106. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 条約局長にお尋ねしますが、今の大臣の答弁の中身は、いわゆる税法の改正が当然伴いますね。それは用意なすつていますか。この点が一つ。それから日米行政協定の改訂から来る労務契約の部面の改訂については、私は日本国の中の労務法規というものの不完全さもあると思うが、この点については、どうしたつて国会にかけなければなるまい。そうすると、先ほど須磨委員の言われた日米行政協定の改訂、いわゆるNATOシステム化ということについては、どうしても日米行政協定の最初から、改訂の要求をされるまでのことについてのお話があつて、しかして特別刑事法といいますか、あの部面であろう、今のお話の通り地方平衡交付金、その関係で来る税法があり、労務契約に関する法規がある。そういうことを条約局ではもうすでに御用意ですか。
  107. 下田武三

    ○下田政府委員 国内法でございまするから、主管者は関係各省でございますが、外務省はそれぞれ連絡いたしまして、研究いたしておるのであります。そこで一番大事なのは、刑事特別法の改正の問題でありまして、法律ができないと、せつかく協定で刑事裁判権の点を改めたのに、国内法がないためにすぐ実施できないということはまことに残念であります。国会がそのときにございますれば、すぐ御承認を求めて実施できるわけであります。その点はわかりませんが、そこでこれは条約と国内法との一般関係の問題になつて参りますので、いろいろ先例その他学者の解釈をお聞きいたしまして、ただいまの一応の見解では、この協定が改訂されれば、国内法はそれによつて修正されるのだ、つまり前法後法の関係である。そういう見解で、暫定的に協定に従つて措置できるのではないかという関係省の見解でございます。これはまだ最後的のものではございません。最後的には閣議で御決定を願わなければならないと思います。でございますから、そういう見解になれば、協定が早くできれば、暫定的ではありますが、国内法改正を待たずにすぐ実施できるのではないかと、ただいまのところ事務当局としては考えております。
  108. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 今の答弁の中に、実際は刑事特別法という実体法を国会を通して持つていなければ、せつかくあなた方が苦心して、また国民も改訂を待つてつても、できても一時空白ができる。私は今からでも間に合わないことはない、条約局長は大臣と相談して、きようあたりから検討してつくるか、さもなければ、一月か、どうしたつてこの次の国会になるということになる。しかし今のは議論ですよ、暫定的ということは御意見だと思うのです。意見ですから、どうにでもなると思う。なかなかむずかしい思うが、お出しになる意思はありませんか。
  109. 下田武三

    ○下田政府委員 幸いなことには、これは日本の権限が狭められるのですと、どうしても法律ができなければいかぬ。ところが一番大きな点は、身柄の引渡しであります。刑事特別法によつて駐留軍の軍人、軍属、家族を逮捕したときには、身柄を引渡さなければいかぬということになる。ところが今度ある場合には、引渡さないでもいいことになる。そうしますと刑事特別法は、これは特別法でございまして、憲法なり刑事訴訟法が原則なんでありますから、原則法に対する特例を特別法で定めている。一方協定が改訂されれば、その協定と原則法と結びつければできるのでないか。なおあわててずさんなものをつくるよりも、各般の情勢をにらみ合せまして、これは今度は国連協定関係もございます。でございますから、米軍関係国連協定とも両方やはりできるなら一緒にカバーして動かして行きたい、そういう技術的の面もありますので、これはやはり次期国会に完全なものにいたしまして御承認を仰ぐ。しかし暫定的には、ただいまの解釈で、協定が改訂されればすぐ実施できる、そういう事務当局の見解になつております。
  110. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 ありがとうございました。
  111. 上塚司

    上塚委員長 戸叶君、簡単に願います。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 私、自分質問に入ります前に、一問わからない点をただしておきたいと思います。先ほど須磨委員の竹島の問題についての質問の中で、私どもといたしましては、もちろん竹島は日本の国の領土でありますから、韓国の人にここを占領されておるということに対しては反対でございますけれども、先ほどの大臣の御答弁の中で、この問題をもつと調査するために、船を出して調べさせる、その場合にいろいろな意見があつて、竹島が無人島であるにもかかわらず、自衛という建前からこれを追い払うこともできる、こういうふうなことを言われておりましたが、そうしますと、自衛ということは向うから攻めて来なくても、こちらの方から積極的にそういうふうな戦力ならざる武力といいますか、そういうものを使うことができるかどうかということを承りたい。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常に簡単なことで、竹島というふうにお考えになるからごたごたしますが、たとえば旅券も何もなしに東京湾に入つて来て、東京へ上陸する人間があつたとしたら、これは武力でとつかまえて牢屋に入れるなりおつ払うなりするわけです。日本の領土であれば、どこでも同じことであります。ただ私の言うのは、竹島のような無人島であるから、そういうことかやりにくいということであります。それから調査をするのじやなくて、われわれは自分の領土と確信しておるのですから、船を出して自分の領土であるということをもつと明確にするために、できればしじゆうそこに船を置きたいのであります。それからそういう標札も立てたい、それができないとしても、できるだけ頻繁に行つて日本の領土であるという実績をつくるというのはおかしいのですが、実績をちやんとつつておかなくては……。ほうり出しておいて、よその方がかつてに来たのを、日本の領土だ日本の領土だと言つて意味がない。できるだけ日本の船をへるべきであると考えております。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすれば、たとえば日本の領土の中に入つて来て、それが日本からの保安隊によつて追われて逃げて行つた場、には、その保安隊はどこまで追つて行く権利があるわけなんですか、日本の領土丙だけですか。
  115. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 別に私は保安隊に追つかけさせるというのではありません。日本には警察もあれば、その他いろいろな警備力があるのですから……。ただ竹島のような場合には、非常にそれがやりにくいということを申しておるのです。それから日本でやることはもちろん日本の領土、領水の中であります。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 私がこの際岡崎大臣に承りたいことは、朝鮮の休戦に伴つてアメリカの極東政策が何かかわつて来るのではないかということですが、その点に対して大臣の見通しのほどを承りたい。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常に広汎な御質問であつて、極東政策という大方針がかわるかという御質問も含まれておりましようし、あるいはタイに対する方針、仏印に対する方針、朝鮮に対する方針、そういうこまかいこともありましようが、それは私にはお答えできません。まだそういうふうな具体的な材料を持つておりませんが、一般的に申しますれば、あまりかわることはないであろうということを言えるように思います。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎大臣の今言われた、一般的にはかわらないだろうというその言葉をそのまま受取りまして、それでは一点伺いたいのですが、今まで岡崎さんが非常に消極的なようにしていられた中共貿易に対しまして、この朝鮮休戦に伴つて、非常に積極的にやられるような態度を示されて来たその根拠はどこにあるかを承りたい。
  119. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これも戦力問題のように、一時積極的になつたり、またひつ込んだり、妙なふうにお考えになるかもしれませんが、私の答弁をごらんになれば、そんなに積極的なわけではないのであります。諸外国と歩調を合せて、そして善処するということであります。その前にも、これは国連の決議によつて、戦略物資等の輸出統制をやつておるのであります。この国連の決議が解けない限りは、法律上は同じ状態なのであります。ただ休戦という事実が、諸外国においても事態の変化をもたらすかもしれないから、そういうときによその国だけが貿易をやつて日本だけが立ち遅れるというのは意味がないから、諸外国と同様の程度にやろうということは、これは前から私が申しておるところであります。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもは、国民のだれでもがそういう印象を受けたと思うのですが、この間の岡崎さんの発表によりましては、どうも今までよりはずつと積極的になられた、こういうふうに考えたわけですけれども、岡崎さんにしてみれば、まつたく同じだ、こういう御答弁でしたから、この次にもう少しほかの資料で伺つてみたいと思います。そこでなぜ私がこういうことを伺いたいかと申しますと、これは間違つているかどうかしりませんが、この間の新聞で、MSA援助を受ける場合に、その協定の中に、中共向けの貿易の統制について、日米両国は協議するということを挿入するかもしれないというように書いてありましたけれども、この点は挿入しなければならないのでしようか。それともしないでも済むものであるかどうか。
  121. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまの、前の御質問について私の態度がかわつたとすれば、今までは朝鮮に休戦ができなかつたのが、今度は休戦ができたという現実の事態がかわつたのであります。その事態に沿つてわれわれはやるのでありますから、その範囲においてかわつたと言われてもしようがないでしよう。  それから交渉の内容については、ただいまのところ両国間に発表しておりまする文書があります。毎回発表いたしております。それ以上に私は会議の内容を申し上げる自由を持たないのですが、これは中共についてかりにバトル法その他、いろいろ質問がありますように、適用を受けるとしましても、ヨーロツパの諸国も援助を受けておつて、同様の適用を受けるはずでありますから、この間に実質的な相違はないと私は思つております。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、今申し上げましたような、日米両国が中共向けの貿易統制について協議をするというようなことは、協定の中に書かれることがないというふうにおつしやるわけでしようか。
  123. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 協定の内容とか交渉の内容につきましては、発表したもの以外に申し上げる自由がない、こういうことを申し上げたのであります。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうなことが出て参りましたときには、一体どういうふうな態度をおとりになるわけですか。
  125. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それについては、私は交渉の内容になるから申し上げられないけれども、かりにそういうようなことがありましても、西欧諸国も同様の制限を受けているとすれば同じことじやないか、こういうことを申し上げたのであります。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 条約局長にお伺いしたいのですが、それでは、もしもそういうふうな適用を受けるような形になつたとした場合に、このMSA援助というものは、明らかに軍事援助だと思うのですけれども、その軍事援助を受けているから、結局そういつた経済的な面にまでも国内の干渉を受けなければならないということになると思いますが、その点どう解釈なさいますか。
  127. 下田武三

    ○下田政府委員 この前申し上げましたように、これはアメリカの国内法で、米国の援助を受けつつ、しかも他方侵略者を援助するということは困る。従つて受ける国は、米国の侵略者を援助しないという方針に協力してもらいたいということは、これはきわめてもつとものことだろうと思うので、これは大臣のおつしやいますように、日本のみならず、MSA援助を受けます六十三箇国が、すべて実施していることであります。これは干渉と言うよりも、その趣旨がけつこうであるなら、干渉として受けるのでなくて、日本国連協力の精神に従つて、侵略者の援助にくみしないという問題だろうと思います。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 その場合に、バトル法の線よりもきびしくなるということは、あり得ないでしようか。
  129. 下田武三

    ○下田政府委員 この点につきましては、まだそうつつ込んで話し合いもしておりませんし、また現に交渉中の問題でありますから、推測がましいことを申し上げることは、かえつて誤解を生じますので、お答えを控えさせていただきたいと思います。
  130. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十五分散会