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1953-07-30 第16回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十日(木曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君    理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    金光 庸夫君       佐々木盛雄君    中川源一郎君       野田 卯一君    藤枝 泉介君       三和 精一君    喜多壯一郎君       須磨彌吉郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    和田 博雄君       岡  良一君    中村 高一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     大野 勝巳君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         農林事務官         (農地局入植課         長)      和栗  博君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         経理課長)   高橋 泰彦君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 七月三十日  委員押谷富三君、加藤精三君、中村清君、持永  義夫君、吉田重延君及び石橋湛山君辞任につき、  その補欠として麻生太賀吉君、増田甲子七君、  中山マサ君、福井勇君、金光庸夫君及び松田竹  千代君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中山マサ君、福井勇君及び増田甲子七君辞  任につき、その補欠として三和精一君、中川源  一郎君及び藤枝泉介君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約の、批准について承認を求めるの件(条約  第九号)国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。昨夜の当委員会最後採決前後におきまして、いささかあと味の悪いといいますか、意に満たないものがあるわけでございます。たとえば池田委員動議に対しまして、委員長は、おそらく速記録に残つておると思いますが、理事会決定によつて、きようは討論採決をしないということを宣言なさいました。そのままになつて、議場は騒然としておりましたが、それに対しまして次にだれも重ねて動議を提案しないのに、委員長は言を翻されまして池田君の動議採決をされた。しかも提案者であります池田委員はそのとき席におりませんでした。そういう状態で実は採決なつたわけております。私どもはただいたずらにこの審議を遷延せしめるというような、つまらぬ意図を持つておるわけではありませんが、せんだつて来たびたび申し上げましたように、当条約は非常に重要なるものでありますので、時間一ぱい許されるだけ十分審議をしたいということを申しておいたわけであります。しかもその結果岡崎外務大臣の、条約修正権が議会にあるということに対しまする失言の問題もまだこれが明らかになつておりません。さらに、これもまた速記録を見れば明らかだと思いますが、昨日の合同審査におきまして、伊藤卯四郎委員等質問に対しまして、政府側から御答弁が留保されたままで、まだ御答弁が完了してないものも多々あるやに思つております。従つて、その問題をどういうふうに処理されるつもりであるか。ゆうべ宣言のごとく、けさ堅頭から多数をもつて無理押しに討論採決をされるということは、これは今まで円滑に運営して参りました当委員会最後に汚点を残すものだと私は遺憾に思いますので、まだ時間の余裕もありますから、この際あらためて、今申しました諸問題をどういうふうに処理されて議事進行されるか、さつそく一回理事会を開かれまして、そうしてゆうべのいろいろな行き違いや不満足な点を十分討議の上で、円滑に議事を進められんことを切望する次第であります。
  4. 今村忠助

    今村委員 理事会を開いて今後の運営に当るということについては賛成いたしますが、その前に、昨夜の討論打切り動議採決された点だけは確認いたしておかなければならぬと思うのであります。これは、池田君からの動議は一応否決になりましたけれども、そのあと佐々木盛雄君からの動議が取上げられまして、八対八、委員長がこれに決定を与えまして、質疑は昨夜で打切られておると私たちは信じておるのであります。今後どうして行くかということについては、すみやかに理事会を開いて御相談になるのはけつこうと思います。原則とてしは本日討論採決と行くべきである、かように考えておりますけれども、いずれにしてもこの点は、円滑に進めるという意味理事会を開いていただくということには賛成いたします。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 この速記録を見ますと、池田君から動議が提出せられましたが、それに対して委員長は、きようは理事会打合せ事項質問をこの程度にとどめて、「明日討論をなし、採決をするということに決定いたしております。これはすでに速記録においてもはつきりいたしておりますから、さようにいたします。」と言つてを採用しないで災害をしておるのです。その後池田君から重ねて動議を提出しておらぬのに、それをまた取上げて動議採決をしておりますが、その取扱いは委員長としては不当ではないかと思うのであります。この池田君のは、きようはやりませんと宣言したのです。そこでもう動議委員長宣言によつて池田君も別に再び動議も提出いたしておりませんから、動議は消えたような形になつております。頭数が足りないときにはそういうふうにして、頭数をどこからかかり出したときには、いよいよまた動議をこれから採決しますと言つてやり出す。消えちやつた動議を一体どうして採決したのか、委員長の明確なる御答弁を願います。
  6. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はそのときに当委員会出席をいたしておりました者といたしまして、そのときの真相を本日、昨夜御出席なさつた委員の方々にも申し上げて、了解を得たいと思います。なるほど先ほどおつしやいますように、池田正之輔君から質疑打切つて、ただちに討論を省略して採決に入るべしとの動議がなされたのであります。これに対しまして委員長は、数日来の理事会申合せによつて、本日は質疑打切つて、そうして明日討論行つて採決をすることになつておりますという事情の説明があつたわけであります。その後今日ここにおられます野党の諸君から、なぜ採決をしないのか、なぜ早く採決をせぬといつて委員長席に詰め寄つたことは、皆さん御記憶の通りであろうと思います。そのとき委員長が、これは民主主義原則従つて採決をしようということになつて採決をされた結果、池田君の動議は否決されたことは速記録に完全に載つております。その後に至つて私が新しく動議を提出いたしまして、本日は理事会申合せ通り質疑打切つて、しかし各党の立場もあることでありますから、明日討論行つて採決に入るべしという動議を出したわけであります。これが多数をもつて可決されたわけであります。従つてこれから理事会を開かれますことは、私は議事の円満なる進行上賛成をいたすものでありますが、一応今日までの経過はひとつ正しく把握し、委員会決定の方針に従つて議事を進められんことを切望いたします。
  7. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時休憩いたします。ただちに理事会を開会いたします。     午前十一時四分休憩      ————◇—————     午前十一時三十三分開議
  8. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件を議題とします。  本件につきましては昨日の委員会におきまして質疑を終了し、本日は討論採決を行うことと決定を見たのであります。しかしながら昨日の質疑に関して、岡崎外務大臣から国会条約修正権の問題について、補足して見解を申し述べたいとのことでありますから、この際これを許すことといたします。なお先刻の理事会申合せによりまして、この岡崎外務大臣説明に対し、質疑があるときは、各派十分ずつこれを許すこととなりましたから、さよう御了承を願います。岡崎外務大臣
  9. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 昨日暑さのためでありますか、頭が少しぼんやりしたと見えまして、はなはだ舌足らずの説明をいたしまして御迷惑をかけたように考えます。そこで重ねて補足して説明をいたしますが、昨日の話はもつぱら前提のところは御了解と思いまして、むしろその実質的のことを申しましたために間違いが起つたように思います。要するに条約というものは憲法の第七十三条にあります通り政府において締結をいたすものでありますから、修正もまた政府がいたすべきは当然であります。ただ国会においてはもちろんこの承認を求める際において、これを承認されるなり、あるいは否決されるなりの手段は御自由であることは申すまでもありませんが、同時にたとえばこの点を修正すべきであるというような国会意思が、決議等でもし出て来た場合には、政府としてでき得る限りその趣旨沿つて交渉をいたすべきであります。ただ私が申したのは、国会において条約内容についてここをこう修正する、あそこを修正するというふうに修正されるという意味で申したのではなかつたのでありますが、その説明はつきりいたしておらぬようでありますから、あらためて右の点を明確にいたします。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 昨日の大臣の御答弁速記録を拝見いたしますと、修正は可能であるかのごとく説明されてそしてその方法決議による意思表示をもつて行う。決議によるということは結局修正権の行使の方法を示すごとき発言をなさつておられます。昨日の速記録大臣は正確にお読みになつたでしようか。
  11. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 速記録はここに写しを持つております。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 そうでありますならば、その通り理解される御答弁になつていると思います。その点は修正権国会にあるというふうに発言をなすつておられると当然受取られる御答弁であつたと思うのです。そうでありますならば、当然ここで男らしくその発言をお取消しになつたらいかがですか。
  13. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそうしたつもりで発言したのではないのでありますが、速記録を見ましたり、またこれを聞かれた委員諸君の感触からいいまして、その点に国会修正権があるように誤解を招くような発言をいたしたと思いましたので、ただいまそれを取消してあらためて発言をいたしたのであります。
  14. 岡良一

    岡委員 国会の権限にかかわる問題について、大きな誤解を生ましめるような軽率な発言については、われわれは厳重に遺憾の意を表したいと思うのでありますが、この機会に重ねてお伺いをいたしたい。  それは政府がすでに調印を了せられたところの条約については、確定草案として国会修正権が認められない、こう仰せられますが、御存じのごとく憲法には、事前あるいは事後において条約については国会承認を求めなければならないということが明らかになつております。そこでこれまで政府はすでに調印後における確定草案について、国会が何ら修正権を持つことができない。承認かいなかの判定しか与えられない段階において国会に諮られている。しかし憲法においては明らかに事前においてやはりその承認手続国会に諮るべきことをと認めているのでありますが、従来の政府手続は、この間において重大な条約草案を、調印前において国会審議にゆだねられる手続がとられていなかつたということはきわめて遺憾でありますが、この点についての外務大臣の御所信を伺いたいと思います。
  15. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 条約においては事前国会承認を求めるのは、調印と同時に効力を発生するものにつきましては、原則として調印の前に国会承認を求めるのが憲法趣旨考えます。しかし調印と同時に効力を発生するものは、調印すべき案ができ上りますれば、それはやはり両国間の確定草案でありまして、国会承認を求めるときに右か左かわからないような案によつて、これはどつちになるかわかりませんが、承認を求めますということはできないのでありまして、両国間ではつきり話がつきまして、これならば行政府としては両方とも異存がないというときにそれを国会に出す。それは調印したときに両国行政府間では異存がないということになつて調印をして国会に出すのと、実質的には同じでありまして、いずれにいたしましても、調印するなり、あるいは調印と同時に効力を発生する場合には調印の前でありますが、イニシアルでもつけますし、両国行政府間で完全に合意ができて、これが間違いない、両国間の行政府間の意思の合致でありますというものでなければ、右になるか左になるかわかりませんというものは国会に出せないのでありますから、調印前に国会承認を求めろとおつしやる場合には、私は調印と同時に効力を発生する条約についておつしやるものと思います。そうすれば、その前にはやはりはつきりと両国間の合意ができなければならないものと考えております。
  16. 岡良一

    岡委員 憲法規定事前における国会承認というのは、そういう単なる行政府手続規定規定したものだとはわれわれは考えられない。重大なる国際間の条約については、特にその重大の度に応じて、常にやはり国権の最高の機関としての審議権を持つておる国会意思というものが、行政府決定に対して十分に働きかけるような措置を取扱うというのが、憲法規定であると思うが、この点についての所見を伺いたい。
  17. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはたびたび論議されておりますが、法律上の問題と実際上の問題と二つわけて考えなければならないと思います。法律上は、憲法において条約締結の前ということになつておる締結というのは、調印という意味ではないのでありまして、国家意思を拘束する、つまり効力の発生の前ということにならざるを得ない。またこれは憲法学者のひとしく認むるところと思います。ただ憲法上の問題を別にして実際上の問題とすれば、いろいろの条約協定は、結局国民に喜んでこれが守られなければならないわけでありますから、できる限り国民の意向も察知し、また国会にその報告をしたり、事実上できるだけ国会の理解を得てこういうものを進めるのが当然であります。法律上の問題でないというお考えならば、できるだけお話の御趣旨のようにするつもりでありますが、憲法上の解釈につきましては、私がただいま申したことが政府意見でもありますが、これはひとしく憲法学者の認めるところと考えております。
  18. 岡良一

    岡委員 重ねてお尋ねしますが、政府憲法に対する解釈は、事前において国会承認を求めなければならないとする規定は、単なる行政府としての技術的な措置についての前後を規定するものである、そういうお考えだとおつしやるのですか。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法において事前にというのは、条約締結事前ということでありますからして、条約が国を拘束する前に国会承認を得べきであるということでありまして、これはただいま申した通り条約の形式が調印と同時に効力を発生するものと、批准によつて効力を発生するものにおいては、手続においては異なります。ただいま申したのはその手続の問題でありまして、憲法趣旨は今中した通りであります。
  20. 上塚司

    上塚委員長 日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件につきましてこれより討論に入ります。討論の通告がありますので順次これを許します。穗積七郎君。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 私は日本社会党を代表しまして簡潔に私の意見を申し上げたいと思います。  結論を先に申し上げますが、われわれは強い信念を持つてこの条約に反対をするものであります。  その理由を申し上げますと、およそ条約であるとか、法律というものは、特にこういう経済的、技術的な条約につきましては、これを動かす経済的な勢力というものを見なければなりません。そこでアメリカ日本との経済関係でございますが、今までアメリカ資本日本に入ることが政府の期待に反して割合少かつたということによりまして、アメリカ資本が今後日本経済界支配して、日本経済自主性を喪失せしめ、いわゆる経済的植民地化を完了するということに対する危惧は少いという議論は成り立たないと思います。何となれば、世界の経済をながめますならば、戦前におきましては、アジア地区からアメリカヘ、アメリカ地区から西ヨーロツパヘ西ヨーロツパ地区からアジアヘと、輸出は非常に盛んに行われておりまして、それによつて経済的な国際バランスが、どうかこうか保てて来たのでありますが、終戦後におきましては、この均衡状態がまつたく破れて、その生産力におきましても、その国際資本独占の率におきましても、圧倒的にアメリカ経済力が強化されたのであります。従つてアメリカ資本主義経済を維持いたしますためには、戦後の自由主義諸国に対しまする経済的援助の名をかりておりますが、実はこれらの国々に対しまする軍事的または純経済的な目的のいかんを問わず、対外投資行つて、そうして経済的な市場の確保をしなければ、アメリカ資本主義経済自身がもう維持できない段階に来ていることは明瞭でございます。今まで終戦ソ連との対立がひどかつたので、あるいはまた一時におきましては戦争によつて被害を受けました自由主義諸国間におきます経済的の窮迫を救う必要上、そういう救済的な意味と、あるいは軍事的援助意味をもちまして対外投資が行われて参りました。特に現アイゼンハウアー政権が確立されます前後からは、この軍事的援助の強化の線がしごく明瞭になつて参つたと思います。そうして現在の情勢におきましては、幸いにして、朝鮮を中心といたします平和攻勢のために、いわゆる平和的な機運が出て参つております。そういたしますならば、もし幸いにして、このまま国際政治並びに経済情勢が前に進まれるといたしますならば、おそらくはアメリカ国内資本が、その資本市場を確保いたしますためには、従来軍備拡張経済に依存いたしておりましたものが、やがて平和経済産業に転換をし、そうして新たなる市場の開拓をしなければならない。そういうことになりますならば、必ず日本もその有力なる対外投資の目標の国家とならざるを得ないと思うのであります。いずれにいたしましても、一方におきましては、現在はMSAの軍事的援助を通じ、あるいは一方におきましては本条約によりまして民間資本あるいは平和産業に対しまする資本投下の道を開きまして、そうして全世界的な資本対外投資、その場合におきまして、アジアにおきましては最も有力なる投資国家として考えられることは当然であると思うのであります。  従つてそういう観点からいたしますならば、現在この条約交渉に当られました政府当局の今までの判断の主観のいかんを問わず、今後日米間の経済情勢はそうならざるを得ない。しかも岡崎外務大臣の御答弁によりますと、われわれがアメリカ資本を導入する場合においては、相手が強くこちらが弱いので、多少日本経済的支配を受ける危険性はあるけれども、これからたとえば東南アジア地域に対して、われわれが通商航海条約を結ぶ場合においては同様の条約を結ぶ、すなわち自由の原則によります条約を結ぶことによつて、その損失をとりもどすのだということを意識してか、無意識の間にか言われておりますが、まさにそのことは大きな意味を持つておるのでありまして、おそらくアジアにおきまする、唯一とは言いませんけれども、最も運んだこの工業国家——しかしながらこれは西ヨーロツパアメリカソ連地区工業に比べますならば、その資本規模において、その生産の技術において劣つていることは申すまでもありませんが、アジアにおきましては下請工場的な役割を果しめますために非常に適切なるところでございます。しかもその資本規模が小さいので、日本経済支配し、それを通じてアジア経済支配するということが非常に安いコストによつて完了できるということを、今後の情勢において考えなければならない。もしそうでありますならば、この条約というものは、まずアメリカ独占的な資本主義経済日本を踏台といたしまして、もう一ぺんアジア後進国経済を、資本主義的、さらにはつきり言いますならば帝国主義的な方式において支配いたしますそのレールになるということを、当然考えなければならない。そういう危険をわれわれはまず第一に指摘しなければならないのであります。  さらにもう一点政府に勧告をいたしておきたいと思いますことは、東南アジア地域に対しまして、われわれの経済的優位を利用してかの地の経済支配し、あるいは搾取するというような希望を持つて、その条約を結ぶためにはまずアメリカとの間においても自由な条約を先例として結んで、これをスタンダード・ケースとして、東南アジア地域との自由なる原則による資本投下の可能な通商航海条約を結ぼうという腹がおありのようでありますか、アジアの戦後におきます民族解放要求というものは、今の政府考え、おらるるような、この条約の中に盛られているような、そういう先進国の貸本がかつて後進国の弱い経済の中に無制限に入り込んで行つて、これを欠配するようなことを許すほど、東南アジア諸国におきます民族的な抵抗が弱くはないということを、われわれは看取しなければならない。すでにインドとの間における通商航海条約交渉等にあたりましても、インドはこの投資条件について強い抵抗を示している。すなわち長年英国の帝国主義支配されて参りましたインドは、その帝国主義的な支配というものがいかに苛烈であり、いかにみじめなものであるかということを、長い歴史を通じて身をもつて体験して参りましたので、強い抵抗を示しているのであります。従つて日本が今度アメリカに許しましたことを理由にして、同じ内容条約インドを初めとする東南アジア諸国要求して交渉をされましても、おそらくは政府考えておらるるような交渉は成立しないとわれわれは思うのであります。そこで御説明を伺いますならば、この条約はすでに国民政府あるいはイタリア、コロンビアその他の国々と結んだのであつて、それに比べるならば特に第七条の制限業種のごときは、広い制限を加えて日本民族資本の擁護の障壁が築いてあるということを得意になつて説明になりましたが、このような国々アメリカとの関係というものは、名目は一律でありますが、かつて日本と満洲国との間におけるごとく、あるいはかつて上海経済における関係のごとく、すべてが経済的植民地の実績を持つておるのであります。こういう国々と結びました友好条約をもつて、われわれの独立と繁栄を確保するための経済的提携などという説明はとうていできない。それが証拠に、アメリカのこの独占的なドル支配経済に対しまして、西ヨーロツパ諸国民族資本独立要求を持つております。そこでこれらの国々はなぜ一体最も近いアメリカと結ばないか。これは言うまでもなく、アメリカ資本主義以外のものの考え方を知らない国民であります。政治家またしかりであります。従つてほんとうの社会主義的な、協同主義的なそういう国際経済の新しい建設ということに対して、まつたく無知なるアメリカにその反省を促し手ためには、われわれはこの市場協定を初めといたします、ほんとうに民主的な、ほんとうに強いものと弱い者との間における公平平等な原則を打立てるための協定をまずやる、その上に正しい条約を結ぶということが当然のことであると思うのでありますが、今の吉田内閣は、口ではどう説明されましても、こういう条約を結ぶことによつて表現されておりますことは、まさに国際的なアメリカ独占資本主義の前に買弁資本的な、あるいは軍官的な性格を示しておるものであると私は言わなければならない。これはそういう意味におきまして、将来日本経済に対しまして重要なる意味を持つておる。この経済によつて支配されたる国が、外交あるいは国内政治におきまして独立を完了することは、とうてい困難であります。これは各国の例を見まして明瞭なことである。私はそういう観点に立つて、この条約について特に次の諸点について反対の理由を具体的にはつきりしなければならぬのであります。  まず第一は、条文に従つて申し上げますが、第六条の公用徴収に対しますアメリカ資本に対する不当なる優遇の条項でございます。これはわれわれの考えで行きますならば、真に平等であるとするならば、この場合におきましても内国民と同様に園内法によつて待遇を受けるということを言うのが当然であると思うのでありますが、しかしながらその賠償の額の算定において、あるいはまた賠償金支払いの時期におきまして、日本国民が今まで政府から公開用徴収されました場合に取扱われました事実よりは、はるかに手厚い待遇を与えておる、こういうことは形式的に見ましても決して平等なるものではございません。しかもこの条文は非常にずさんなものでございますから、アメリカ籍を持つております会社が、日本国内において自由企業として営業を行つてつて、たとえば非常の場合、あるいは社会主義的な政策が行われ、この会社に対して公用徴収を行われる場合に、この規定が適用されるだけではなく、カナダ籍あるいはフランス籍あるいは英国の籍を持つております名義の会社でありまして、実質的にその会社に対してアメリカ民間資本が多くのインタレストを持つておる場合には、この条文の手厚い適用を受けることになつております。さらにわれわれが見落すことができないのは、日本の買弁資本家たちは、おそらくはそういう情勢に立ち至りますならば、名義上アメリカ人に名義を書きかえる、実際は日本民間資本の会社でございましても、一時名義をアメリカ人に切りかえまして、他の正直な良心的な日本の会社が公用徴収の場合に受ける待遇より、さらに手厚い待遇を受ける、言いかえるならば、買弁資本的性格をはつきりして形だけアメリカ圏の資本の中に逃げ込む、そういうことすら可能なことが考えられるのであります。このようなことは、私が先ほど申しましたことが危惧ではなくて、まさに現実に現われて来ることであることを証明するものであります。  第二の点は次の第七条でございますか、ここにおいてもその性格は明瞭になつております。ここにおいてはアメリカ資本の自由なる投下を許さない制限業種があげられておりますが、これだけでもつて日本の基幹産業と言うことはできない。日本の産業の中枢を支配せんとするならば、この業種以外のものについて実は投資が自由であるとするならば、それが可能でございます。たとえば鉄鋼業あるいは金融業の一部を占め将来ますますその比重を増すと考えられます証券業について、あるいはまた日本民族資本の中枢でありました繊維産業において、これらすべてアメリカ資本の自由なる侵入と支配を肝しておるのであります。さらにこの条文についての問題は、この制限業種につきましても既得権が許されておる。この既得権の考え方というものの中で最も問題になりますのは、占領中のアメリカ会社の日本国内におきます既得権を認めておることであります。この占領中の状態というものは、国家の主権が発動しない時期であります。しかもアメリカ日本との間における対等な法律関係において、交わりもできない空白時代、そういう時代においてアメリカが事実上日本の中へ入つて来て金融業を開設し、その勢力を増して参りましたときに、それを既得権として認めるということは考えられない。占領中のような法律並びに主権の停止いたしました時代において、権利義務関係が発生すべき性質のものではございません。そういうものについてすら、アメリカの強い要求がありますならば、唯々諾々として帯を解いてその侵入を許しておる。かくのごときことは、まさに買弁資本的性格を示しておる最たるものであるとわれわれは考える。しかもその場合においても問題になりますのは、この第七条の条文によりますと、制限業種に対していかなるものを制限するということは規定してありません。すなわち国内の法律によつて、この制限業種に対してアメリカ資本が入つて来ることを、いかなる方法をもつて防ぐかということは、日本政府の自主的な判断によつて決定されることになつている。そのことについて当委員会においてわれわれがお尋ねいたしますと、そのことに対してはまだ何ら考えていない。のみならず必要と認めるならば、または日本の利益と認めるならば、これらの制限業種に対しても、何らの制限をすることなしに、アメリカ資本の侵入と支配を許すことができるということになつております。これは制限業種の取扱いをする可能性を規定しておるだけでありまして、現実の内容を示しておりません。そのことに対してはさらに御用意がない。しかもこの条項は批准書が交換されましてから、一箇月後に効力が発生することになります。そういたしますと、順調に参りますならば、間近にこの条約効力を発しますが、そのときにこの制限業種に対する今後の国内法というものが考えられていない。法律が用意されていないだけでなしに、すでに基本的な政策すら、構想すら用意されていないというのが、現政府状態でございます。かくのごときをもつていたしますならば、第七条における制限業種というものはあつてなきと同じでありまして、野放しのアメリカ資本の侵入と支配を許さざるを得ないのでございます。そういうことについて、われわれはどうしても承服することができないのであります。  さらに第九条の動産、不動産の取得権の問題でございますが、これにつきましては、従来の日本の外資法、現行の外資法によりますと、外国資本日本の旧株を取得する場合におきましては、大蔵省の許可を必要とすることになつておりますが、これに対しましては、ただ三箇年間の期間の制限があるだけでございます。しかも当時日本の買弁資本的性格を持つております財界代表者諸君ですら、三年間ではとうてい資産の評価はできない。従つてそうなりますと、現在、たとえば日鉄でありますとか、富土製鉄というような地位に立つております巨大なる工場にいたしましても、二十億ないしは三十億程度の資本金すら持つていない。こういうものはアメリカの巨大資本の前にはまつたく一握の砂にすぎないのであります。従つてそれの再評価を考えましたときに、日本の現在の特需経済に依存して、その特需の綱が切れて、MSAにたよろうとしておるが、そのMSAの最初の岡崎大臣答弁では、経済的援助を主張されておつたのが、最近になりますと、これは軍事的援助である、しかもその内容の主たるものは、完成武器をもつて補われるというようなことになつて参りますと、日本経済界こそ、二、三年の将来は、もし今のままの情勢が続くといたしますならば、大資本を中心といたしました諸会社の再評価は非常に困難な情勢すら予想される、そういうことになつて参りますので、これは決して保護規定にはならぬのであります。  次に十二条でありますが、これまた政府の御答弁によりますと、アメリカ資本が自由に入ることは入つたとしても、為替管理を通じてこれをコントロールすることができる、さらに議定書六項によりまして、入らんとして参ります外国資本に対して審査権を残しておるということを言つておる。さらに問題の起きたときには、二十四条を援用されまして、あらゆる場合において協議をすることができることになつておる協議事項を残したということは、この条約の中できめられた以外のもの、あるいは予想せざる事態が起きたときに、われわれの主張の通るという希望を与えるかのごときでありますが、実際はどうかというならば、この協議事項に移されるということは、法律をもつて規定いたしましたより、弱者にとつては、さらに食い込まれるということを意味するのであります。為替管理の問題にいたしましても、保健あるいは福祉を守るために必要なりという漠然とした規定になつておる。こういうことになつて参りますと、アメリカとの協議によつて日本国民生活、保健または福祉を維持する最低限度がどこだといつても、必ずしも限度がないということになつて参りまして、このコントロールの権限すら、実はだんだんと食い込まれて来ざるを得ないのでございます。そういうことになつて参りますと、これまた防衛規定だと言つて説明されたことが、実際は防衛規定になつていない。このことに関連いたしまして、さらに私が申し上げたいことは、本来から申しますならば、こういう通商航海条約を特殊国との間において結ぶ前にガットに加盟する、そして国際的な一つの基準と実績をつくつて、しかる後にするのが当然であるにかかわらずこの問題に対して政府はさらに弱腰のために、その実績を示しておりません。これまた吉田内閣の外交的失敗の最たるものであると私は思うのであります。こういうことがこの問題と関連して指摘されておる。そして長いものには巻かれろでもつてすべて抵抗の弱いところへ向い、強いものには何らの抵抗を示さない、こういうことでございます。これまたわれわれの断じて承服することのできない理由の一つでございます。  さらに次には第十四条、関税並びに輸出入の制限の問題についてでありますが、これまた実は、従来の慣例からながめますならば、事前公表の制度をとり、あるいは協議事項にかけられいたしまして、日本の関税並びに貿易に対する自主権を失う危険性を多分に含んでおる条項でございます。しかも政府は対米輸出については、将来非常に有望であるかのごとき錯覚を持つておられますが、戦前におきましてアメリカとの輸出関係は、御承知の通り生糸が中心でありました。ところが戦争が済んでみますと、かつてアメリカとの関係における輸出貿易の実績というものは、日本アメリカに対する貿易の将来を律する何らの基準にはなりません。情勢はまつたくかわつております。繊維産業に関しましては化学繊維が発達しておる。さらにその他機械、雑貨製品につきましては、品物がよくて安いのがアメリカ市場の製品であり、日本の製品は悪くて高いという関係にありますから、従つて対米貿易におきましては、非常に困難である。しかもかすかに許されておるところの電気関係、レンズあるいは農産物、水産物の加工業の製品につきましては、すでにアメリカ側は業者の強い要求によりまして、日本の輸出産業に対しましては、強い関税の障壁を設けておるのであります。このようなことは、これまた日本の不利益なる、不平等なる条件といわなければならぬのであります。  これに引きかえまして、岡崎外務大臣を通じて吉田内閣経済外交について、さらにわれわれはこの条約と関連して危惧を持ちますことは、東南アジア貿易に対するまつたくのサボタージュであり、さらに中共あるいはソ連地区との貿易に対しますまつたくの意識的なるサボタージュであります。われわれは従来の歴史をながめ、将来の国際経済の動向をながめましたときに、日本経済の自立と日本経済の繁栄を来しますものは、まさにアジア地域との経済的提携以外にない、かくのごとく思うのでありますが、この条約を通じまして政府はこの条約をジヤステイフアイするために、対米貿易の将来の有望性を主張しておるのでありますが、まつたく逆であります。そういう点をあわせ考えますならば、むしろこういう協定を結ぶことは、何ら対米輸出関係において有利な条件にならない、さらにこれは東南アジアあるいは中共地区との貿易に対しましては、かえつて障害になり、トラブルを起すような条約にならざるを得ないのであります。次に第十八条でございます。これはつまりMSA五百十六条とまつたく対応する条文でございます。すなわち今度の通商航海条約の非常な特徴の一つでございます。すなわち従来の日米間におきます通商航海条約は、資本の導入の問題を何ら規定いたしてない。ところが、今度の通商航海条約の中心点は、アメリカ資本日本に導入する自由を与えるところにあります。しかも今入りますことについては、先ほど申しましたような制限業種規定であるとか、あるいはまた為替管理、あるいは資本の審査権等をもつて対抗処置をすることは、対抗の武器にならないということを私は証明いたしました。さらに入つた資本が強く要求いたしますものは、MSAの五百十六条とこの十八条とはまつたく対応いたしまして、日本国内におけるアメリカ資本のまつたく自由無制限なる活動を要求するものとして、十九世紀的なアダム・スミス時代の経済原理に立ちました自由の原則、自由経済原則、自由企業の原則をここで要求して、これを日本で許しておるのであります。特にアメリカ独占禁止法の独占行為につきましては、日本考えるよりはるかにきびしい考え方を持つております。日本政府並びに財界の諸君は、おそらくは先ほど申しましたように、第九条の旧株取得権の場合に制限を加えて、かたがた日本資本の再評価をやり、さらに独占禁止法を今度緩和いたしまして、それによつて日本の輸出産業あるいはまた生産企業におきます資本独占化をはかつて、そしてそのことによつてアメリカ資本が入つて参りましたときに、それに対抗することを考えておるのでございましよう。ところがこの十八条の規定によりまして、そういうような日本政府やあるいはまた財界の人々が考えておるような、独占的な資本の集中によつて、そしてアメリカ資本と対抗しようという考え方は、まつたく絵に描いた作戦に終るのであろうということを言わざるを得ない。そのことがここに明瞭に書いてございます。まつたくの矛盾でございます。たとえば貿易の面につきましても、輸出入組合一つをとつて見ましても、日本の中小企業によりまする濫売、あるいは買いあさり、こういうような業者の同士打ちによつて、お互いが損をしようとしておるような状態、これによりましては、どうしても輸出入組合をつくつて価格維持、あるいはまた品質の統制をする、管理をするというようなことは、当然日本としてはやる必要がある。そこで業界の人も政府の諸公も、そのことはまさかこの十八条によつては禁止をされない。アメリカ側に文句を言われないとお考えになつているかもしれませんが、われわれの恐れますところは、もしアメリカとの貿易において、アメリカの業者に多少とも不利益を与えるという危険がありますならば、おそらく彼らは強い要求を出し、彼らの強い政治力をもつてこれもまた協議事項にかけて、そしてこれらの集中的あるいは統制の方法によりまして、巨大なアメリカ資本に対抗しようとするような日本の方策を、一挙にして粉砕するということは火を見るより明らかであります。政府の御答弁においてもそのことを肯定せざるを得ないような御答弁が、この十八条の解釈において今まで行われて参りました。このようなものについてわれわれは絶対に賛成するわけに行かぬのであります。  かくのごとくしてながめますならば、まさにこの法律は今申しました通り日本独立と繁栄のために道を開くものではなくて、それとはまつたく逆に、日本経済アメリカ資本主義経済を維持するための対外投資の奉仕者となつて、そしてその資本の前に経済的植民地化される、その道を許す条約であるといわざるを得ません。しかもそのことがこれからの長い経済関係でながめますならば、おそらくは多くの変遷があるであろうと思う。国際政治国際経済の変遷によつて変転きわまりない今日の国際関係において、十箇年間という長い条約期間を置いておるのであります。これからの将来の情勢考え、そして日本の将来の独立と繁栄の方策を考えますならば、この十箇年間というものはあまりに長いものである。この十箇年間こういうような条約によつて、くぎづけということになりましたならば、これはゆゆしき問題である。あとになつて気がつきましたときには、もう取返しのつかない関係にならざるを得ないと思うのであります。  しかもわれわれがここで付言いたしておきたいと思いますことは、今交渉進行中でありますMSAとの関係でございます。MSAは特殊条約であり、通商航海条約は一般規定である。すなわち民法と商法との関係のごときものであります。あるいは水と空気のごとき関係であるというふうに御説明になりました。しかしながら今まで日本経済は、御承知の通り国際収支におきましては特需にたよつております。すなわち軍需品の輸出あるいはまたか弱い婦女子の肉体を売りましたパンパン収入、これがいわゆる日本経済支柱の三分の一を占めておる。それにかわるものとして買弁資本家たちのパンパン政府は、今度はMSAの軍事援助にたよつて行こうとしておる。従つてMSAによります援助あるいは城外買付、こういうようなものは今申しました通り特需だとはいつても、その比重におきましておそらく今までの特需にかわる、すなわち日本の重工業生産の中心を占むる大黒柱であります。そういうような日本経済国際関係からいたしましても、中枢を占めますようなこのMSA援助というものがもし結ばれるということが想定されて考えますならば、それとの関係と無関係にこの条約考えることはできません。条文の上におきましては何ら関係がございませんでしよう。民法と商法のごとき関係であるかもしれない。しかしながら実際の経済的あるいは政治的関係からながめますならば、これら特需にかわりまして日本の重工業経済の中枢を占めますMSA経済との関係考えましたならば、その関係においてこの通商航海条約というものがまつたく五百十六条と対応いたしまして、自由の原則——無制限なる資本の導入と活動をアメリカ資本に許しておるということは、まさに軍事的にも経済的にも日本アメリカの植民地化するゆえんの何ものでもないと私は思うものございます。そういう観点からいたしまして、われわれはこの条約はまさに最初に申し上げましたごとく、アメリカ日本との間におきます友好通商航海条約ではなくして、アメリカの対日投資保護法という名前をつけるにふさわしいような内容のものであるとわれわれは断ぜざるを得ない。そういう関係からいたしまして、さらに先ほど申し上げましたように、こういう方式で日本経済の再建を考え、こういう物の考え方でもつてアジア経済への進出を考えるならばおそらくは戦争前の日本帝国主義的な進出の失敢を繰返す何ものでもないと思います。それが政治的な悪であるのみならず、戦争前の東南アジア並びに中国の民族意識と違いまして、これら解放に向つて強い要求と実力を示しつつあります国国の前に、まつたくこういうものの考え方で経済政策、外交をいたし、こういう条約をスタンダード・ケースとして中国なり東南アジア諸国に臨みますならば、日本はまさに武力によらずして、経済、外交の上においてアジアから孤立し、日本経済の自立と繁栄の道をみずから失うものである。かつて上海経済、従来のフィリピン経済の二の舞をする、その道を開く先達であるといわざるを得ないのであります。  そういう観点に立ちまして、われわれ社会党は強い自信と信念を持つて、本条約に反対を表明するものであります。(拍手)
  22. 上塚司

  23. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は自由党を代表いたしまして、日米友好通商航海条約批准につきまして承認を与えることに、賛成の意思表示を簡単に行わんとするものであります。  日米間の通商関係は、日米戦争発生の直前すなわち昭和十五年一月に廃棄されてから今日まで、実に十三年間の久しきにわたつて条約状態に置かれておつたの席あります。しかるところ、今回締結されました日米友好通商条約は、日米両国が完全なる平等互恵の立場に立ち、日米相互の国民が戦争前に比してはるかに安定した保障の下におきまして、文化的、経済的その他各般の活動を自由に行うことができるようにとりきめられたものでありまして、一年有半に及ぶ外交交渉が遂に結実いたしまして、ここに本条約締結を見るに至りましたことは、日米通商経済関係の緊密化と、両国の友好親善関係の増進に需与するところ、きわめて大なるものがあるのでありまして、まことに同慶にたえない次第であります。  そもそも日本の当面しております焦眉の問題は、内におきましては経済自立の基盤を強化するとともに、外に対しましては列国との通商経済関係を緊密化し、もつて国民生活の安定と向上をはかることにあることは申すまでもございません。しこうしてこれがためには、多量なる外資の導入によりまして、日本産業の近代化と設備の合理化を断行し、もつて海外輸出品の国際競争力を高め、貿易の進展をはかることが刻下の急務であるといわなければなりません。これがために、本条約におきましては、日本産業の発達に寄与する優良なる外資導入に対しましては、十分なる保護と保障を与えておるのであります。しかしながら一方また日本経済の健全なる発達に、いささかでも悪影響を及ぼすおそれのある不必要なる外資の導入に対しましては、極力その流入を制限することにいたしておるのであります。すなわち日本にとつて好ましき外資の導入につきましては、十分なる保護を与えますと同時に、他方好ましくない外資に対しましては、種々なる制限規定を設けておるのでありまして、決して一部の反対論者の宣伝するような、外資活動を一方的に放任することによつて日本経済を外国資本支配下に置くがごとき不安は、本条約のいずこにも発見することはできないのであります。  さらにまたその事業活動の分野におきましても、外国人の支配を受けることが好ましくない事業につきましては、われわれは外国人の参加を禁止し、または制限することができることになつておるのであります。また株式の取得につきましては、今日の弱体な日本経済力が十分回復するまでの間は、外国人による好ましからざる支配を受けることがないようにするために、本条約効力発生後向う三年間は、外国人による旧株の取得を制限することができるようになつておるのであります。  かくのごとく、対内的な面におきましては日本経済自立の基盤強化に必要な保障とその予防措置を十分に講じておりますとともに、対外的な面におきましては、本条約は米国内における日本人に対する待遇保障を数多く設定いたしております。  すなわちその第一においては、日本の商社の米国内における活動の前提となるべき日本人の入国並びに滞在に関しての保障であります。すなわち本条約の成立によりまして、日本人はアメリカ人同様の内国的待遇を保障せられておることは申すまでもないのでありまして、今日わが国の海外貿易や通商関係における最大の障害は、無条約のために日本商社や銀行等の海外駐在員の渡航、特に現地駐在員が居住者としての安定した資格を得られず、その事業運営に支障を来しておりますことや、あるいは本格的な支店や出張所の設置ができないために、業務上非常な困難を感じておるのでありますが、本条約締結によりまして、日本人のアメリカ進出の前面に横たわつておりました巨大なる障壁が解消するに至りましたことは、まことに喜ばしき限りといわなければなりません。  さらに第二に、特に強調すべき重要な待遇保障といたしましては、日本は目下関税及び貿易に関する一般協定いわゆるガツトヘの加入手続を促進しておりますことは、御承知の通りでありますが、本条約におきましては、日本がガツトヘの加入を承認される以前におきましても、米国政府日本の輸出入品に対してはガットの関税率を適用する用意がある旨を明らかにしておるのでありまして、これは日米両国の緊密なる友好関係の反映といたしまして、本条約のもたらす最も大きな利点の一つであると確信いたす次第であります。また関税率以外の通商貿易関係におきましても、為替問題につきましては国際通貨基金の加盟国として、同基金の規約の趣旨を尊重しつつ、わが国経済の実情に即した管理制限を行うことが認められておりますし、また輸出入品の制限取締りに関しましては、実質的にガツト加盟国で現に行われております規制に準じて、日本経済の事情に即した統制管理を行うことができるようになつております。  その他本条約は、海運その他通商上の基本的な事項に関する待遇を相互に保障することによりまして、日米国交の恒久的基礎を築くとともに、日本独立後において初めて締結を見ました日米間の本条約が動機となりまして、現に交渉進行中のイタリア、カナダ、スペインとの友好通商航海条約を初め、イギリス、インド、パキスタン、東南アジア諸国等との条約締結の促進に、画期的な拍車を加えるものと確信いたす次第であります。  ただこの際一言特に記録にとどめておきたいことは、アメリカ政府はこの条約批准するに際しまして、本条約第八条第二項に掲げました自由職業中に、米国の各州において米国人にのみ就業を許しておりますものについては、これを引続き米国人にのみ許すことを可能ならしめるための留保をなす意向を有するやの趣でありますが、もしアメリカ政府よりこのような留保の意向を正式に申し出て参りましたときにおいては、わが政府におきましても当然これに対応して、相互的の措置をとる権利をわが国のために留保する手続をとられますように、私は特にこの点を強く要求しておく次第であります。  以上申し述べましたように、本条約はあくまでも日米平等互恵の相互主義の鉄則の上に積み立てられたものでありまして、もしかりに本条約締結によつて日本アメリカ経済的隷属下に置かれるとの理由から、本条約に反対するという者がありますならば、私は、それらの人々こそ、日米対等の立場において日本経済の自立を達成せんとする民族的自主性を失つた、他力本願的劣等感の上に立つものと言わなければならないのでありますもちろん本条約は、現在進行中のMSAの協定とは、法律的にも、実際上におきましても何らの関連がないのでありまして、われわれはかくのごとき牽強附会の反対論が、意識的にあるいは無意識的に、一部のためにせんとするところの反米運動の根底に根ざすものであるということをここに強く指摘いたしまして、委員各位の良識に訴えて、本条約批准にすみやかに承認を与えられんことを希望し、詳細な討論は本会議に譲りまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)
  24. 上塚司

    上塚委員長 中村高一君。
  25. 中村高一

    中村(高)委員 日本社会党を代表いたしまして、きわめて簡潔に本条約承認することのできない旨を申し上げたいと思うのであります。  ただいま自由党の佐々木君からも平等互恵の条約なりと言われましたし、政府においてもおそらくさように解釈しておるのかもしれないのであります。なるほど条文の上に、おきましては、多少平等互恵の内容が盛られておりますことは認めるのでありますが、獅子とうさぎとの契約のようなものでありまして、両方食わないという契約をしたからというて、非常に喜ぶことができるかどうか。うさぎといたしましては、獅子が食わないという条約を必ずしも平等互恵なりとは言えないと思うのでありますが、自由党の諸君あるいは政府は、非常な感違いをいたしておるようであります。少くともわれわれは、両国の間におきます経済的な非常な遅い、さらに戦勝国と戦敗国との違い、こういうようなものを考えますならば、両者の間におきます名のごとき友好通商の条約でありますならば、少くとも日本に対しましては援助的な意味が盛られておらなければ意味がないのでありますが、平等互恵以下でありまして、少くともこの条約におきましては、負けてまた経済的に劣者の地位にある日本に、さらに重荷を負わせておるという不当な条約であります。(「ノーノー」)ノーノーと言われております方は、よく条文をごらんにならないからでありまして、少くとも占領中におけるアメリカの既得権を認めることなどが、一体どうして平等互恵と言えますか。戦争前の契約あるいは既得権をお互いに元に復そうというのであるならば、多少われわれも認めることができるのでありますが、占領中に日本に入つて来て、占領政策によつて得られた利権を、そのまま承認せなければならぬというようなことは、どう考えてみましても、屈辱的であると言わねばならぬのであります。現に銀行の代表の方が来られて、情ないような声をあげて、残念ではありますけれども、アメリカにおいては承認をせられないのに、日本においては権利を認められるという悲鳴をあげておられたことは、諸君もよくお聞き及びのことだと思うのであります。  さらに制限業種の問題でありますが、アメリカ日本に入つて参ります場合において、強い経済力を持つたアメリカに対しまして、日本制限業種をきめるということは確かに当然でありますが、しかしこの中に記載せられたもののほかに、たとえば問題になりました鉄鉱業のごとき、日本工業の基礎資源をつくりますところの鉄鉱業について、あるいは石油について、あるいは武器製造産業について、これは何らの制限も行われておらぬのでありますが、もしもMSAの軍事援助を受けまして、アメリカの軍需工場というようなものが日本にできることを想像いたしますならば、おそらく日本の労務者は、低賃金をもつて非常な苦痛を与えられる危険を、われわれは認めなければならぬのでありますが、そういうことに関しまして、きわめて安易な解釈をいたしております保守党の諸君には、そういうことがまるで無感覚であるようであります。  次は三年の株の取得の保留の問題でありますが、これまた日本資本家でさえ、三年の保留につきましては、危惧の念を持つておられますことを率直に表明をいたしておるのでありまして、経済的な力の微弱で、底の浅い日本に、三年の保留だけで、はたしてアメリカ経済支配を防ぎ得ることができるかどうか、これはわれわれはよく再検討をしなければならぬと思うのであります。特にMSAの援助を受ける。そのとりきめの、最中におきまして、しかもその内容が明確でない今日、この日米通商航海条約をわれわれが承認をしなければならぬとしますならば、将来MSAの軍事援助を受けるというようなことによつて、かりに為替の管理の自由があるといたしましても、大きな力に押し流される危険をわれわれは認めなければならぬと思うのでありまして、われわれがそういう点を指摘しようすれば随所に認められるのでありまして、明らかにこれは不平等な条約であり、しかも優位に立つアメリカが、日本の自由企業のアメリカにおきますところの活動に対して保留をするというようなことは、さらにさらにこの条約によりますところの不平等な重荷を負わせることは明らかでありまして、かくのごとき条約承認することは、まだ経済的な自立もできず、戦争の疲弊も回復しておらない日本にとりまして、強大なるアメリカ資本と取組むことの非常に無理であることを、われわれは愛国の至情をもちまして考え、反対をしなければならないと思うのであります。  こういう意味からいたしまして、私は本条約に対しまして反対の意思を表明するものであります。(拍手)
  26. 上塚司

  27. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 改進党を代表して、今採決さるべき日米友好通商航海条約批准承認する件について、賛成の意を表します。  しかしこの条約が、独立日本の今後の産業経済のみならず、深く国民の生活全部にわたつてまで一種の支配力を持つことは、条約全部を通じてわれわれは感得するのであります。いわば一種の経済憲法ともなるものであろうと思う。思うに昭和十五年に古い日米友好通商航海条約が捨てられ、効力を失つてから、われわれはその空白状態が一日も早く回復せられて、真実の友好通商の両国となることをこいねがつておつたのでありますから、一日も早いのはけつこうでございましたが、しかし吉田自由党内閣がその本資において選挙管理内閣であるにもかかわらず、特にその選挙まつ最中に、これを選挙対策の一手段としたということは、私どもとしては今日の民主政治の段階においてはなはだ非難せざるを得ないのであります。  またこの条約内容については、自由党の諸君はずいぶん大きく、むしろ誇大視しておる点もあるようですし、同時に社会主義政党の諸君は、これまたあまりに社会主義的立場に立つていることを、私は看取せざるを得ない。われわれのこの際において言いたいことは、今あげられた七条二項の、占領中の既得権を認めたことなどは、特にわが党の須磨委員が本会議及びこの委員会において岡崎外相に質疑をして、外相はるる釈明しておりますが、いまだその本安について私ども承服するほど満足の意を表することはできないのであります。しかし国運の将来ということを考えますと、一日も早くこういうものを持つて独立日本全体に大きな光を与えたいという意味で、われわれのここでやむを得ず賛意を表する理由はここに一つある。同時に自由党の諸君は、これを自由平等という大きな原則の典型だと言いましたが、これは吉田岡崎外交の線の努力から出たもの七はない。本条約案はアメリカとコロンビアとの間におけるモデル・ケースが幸いにあなたの場合に来たのであつて、これはあまり吉田自由党内閣の手柄だと言われては、世界中の笑いものになりますから、大にお慎みになることが大切だろうと私は思うのであります。  もう一つ申し上げたい。これは私どもの警告であると同時に、国民の警告であります。というのは、この条約を中心にして今後の運用いかんによつては悪ともなれば善ともなると私は思う。問題はむしろ吉田自由党内閣、特に吉田岡崎外交において、その運用についてかつてのようなことであつては、断じて実を結ばないと思うのであります。われわれはこの締結の時期及び本委員会における質疑の経過等については満足いたしておりません。しかしすでにアメリカはこれを批准しておる。万やむを得ざる意味合いにおいて、私どもは今後の運営を監視しながら、おおらかな気持で、自由党ほどにはこれをあまりに過大な調歌讃美をせず、社会主義政党ほどこれを非難せず、賛意を表する次第であります。(拍手)
  28. 上塚司

    上塚委員長 川上貫一君。
  29. 川上貫一

    ○川上委員 私は小会派の諸君の同意を得まして、この条約案に反対の意見を簡単に申します。  この条約は形式の上では、日本経済国際的に無防備の状態に置くことが明らかであります。実質の上では、日本の産業、金融、貿易その他一切をあげてアメリカに明け渡すものだとわれわれは考える。すなわち動産の取得及び事業活動の権利から見れば、鉄道、機械、化学、車両、土建、これらは何の制限もなく、株式取得にしても、事業活動にしても、その百パーセントをアメリカ人の手に握り得ることを許しております。またその他の産業にいたしましても、外資の導入に必要とか、あるいはアメリカの要請とか、その他によつて、無制限に株の取得、事業活動を許し得る規定になつておるのであります。金融におきましては現在日本の銀行の二十倍以上の資本力を持つておる、そしてわが国の貿易について決定的な支配力を持つておるところの四つのアメリカの銀行の既得権を認めております。鉱業権、租鉱権にいたしましても、これは相互主義になつておりまして、アメリカ人の権利を認めることを許しておるのであります。借地権、土地建物の使用占用権を許しておりますだけに、実質上は今日行われておる治外法権区域がこれによつて無限に拡大せられる危険が十分にあります。東南アジア、中南米のような諸国といえども、このような野放し条約をつくつておるところはほとんどありません。その上税金は、これは小さいことのようであるけれども、その精神においては小さくない、特定のアメリカ人に対しては所得の半分を控除してこれに税金をかけるのである。本条約はこの半分に対して日本並の税金をかけることになる。これではとうてい競争することはできません。為替管理や関税壁は原則としてこれを認めないことになつております。いわんやいかなる場合でも、資本の国外逃避を食いとめるようなことは全然できない条約になつております。かつてフランスで人民戦線政府ができたときに資本逃避が行われ、これで政府がつぶれかかつたときに、為替管理をしようとしたときにどういうことがあつたのか、イギリス帝国主義がこれを拒絶したために、フランスの人民戦線政府がつぶれた歴史がある。これは明らかな事実であつて、このような形で為替管理を押えられますならば、日本の民主化どころか独立の運動が根底から破壊されることは明らかであります。  さらに輸入制限の道を杜絶しておる。たとえばアメリカからの食糧や綿花や鉄鋼等の輸入制限をいたしますならば、これと同様の制限を他の国に対してもしなければならない。そうすると私の理解するところでは、アメリカからの食糧を制限しますならば、東南アジアからも米の制限をしなければならぬと思う。こういう条約は平等対等の条約でもなければ、今日の日本アメリカ国際的地位の上に考えましても、まつたく実質的に不平等であつて、事実上ますます日本の産業、貿易をアメリカに明け渡す条約と言うても過言ではないと思います。その上に占領中の既得権を全部認めるというに至つては、これがいかに奴隷条約であるかということを如実に証明して余りがないと思うのであります。こういう条約を結んでおいて、日本経済産業がはたしてどうなりますか。あげてアメリカにきれいさつぱりと明け渡す以外には結論はないと私は考えます。さらにアメリカ側に対してはまことに都合の悪い条約であるが、東南アジアに対してはいささか都合のよい条約であるから、差引利益になるというような御答弁があつたのでありますが、私は驚くべき考えだと思う。こういう考えアジアの人民が認めるでありましようか。今日本は全アジアから孤立しつつある、全アジアの人民の指弾を受けつつある、この日本政府当局アメリカとは不利益になるかもしれぬが、東南アジアをこれによつて押えられるというようなことを、公然と国会で言われるに至つては、全アジア人民から重大な指弾を受けること明らかだと私は思う。李承晩や蒋介石やバオダイと仲よくしさえすればよいと考えておられるか知りませんが、そのようなことでは、日本民族の将来が絶対自由と独立を得ることはできません。御承知の通り吉田内閣アメリカの永久占領を認めております。全国七百余箇所の軍事基地を提供し、領土、領空、領海権をアメリカに渡しておることは事実であります。ことにこれによりまして日本の産業の経営から労働条件に至るまで干渉を受けておる。何らの国際的、法的根拠なくして、中国、ソ同盟の貿易をとめられておる。旅券一つ出すのさえも、アメリカの鼻息をうかがわなければ出せないような政治をやつておる。その上にMSAを受けようとしておる。元来MSAの援助というものは、広汎な軍事義務を強制されるものであつて、莫大なる見返り資金に対しても軍事的ひもがつけられるのであります。具体的には三十五万の土民軍を予想しておるのである。遂には太平洋軍事同盟への参加さえ強制せられるであろうと考えられる援助である。またこのMSAは労働組合の国際自由労連への参加さえ強制されなければならぬようなものである。このような状態のもとに、このような通商航海条約批准するならばどうなるか、日本の政治、経済、貿易、労働その他をあげて全分野にわたつて、完全にアメリカ支配のもとに置かれるではありませんか。全体を通じて見ないで、この条約だけを切り離して見れば、このところは有利ではないかというようなことが言えるかもわからぬが、全体の今の状態考えてごらんなさい。全体から見るならば、私ははつきり言いたい。この全体こそ、かつて天皇制軍閥政府が中華共和国に対して二十一箇条の条件を突きつけたことがある、これとまつたくうり二つではありませんか。ただ違うところは、二十一箇条は全世界の指弾を受けて、天皇制軍閥といえどもこれをひつ込めなければならなかつた。今度は吉田内閣が、こういうアメリカ要求をまるのみにしたということが違うだけである。こういうような条約は絶対に批准してはならない、賛成してはならない。吉田内閣国会の不信任を受けて議会を解散した。その選挙管理内閣がこのような条約調印しておいて、今日今国会批准を求めておりますが、もし吉田内閣ほんとうに祖国の民族の将来を憂える一片の真情があるならば、こんなものにかつて調印ができたはずはないと思う。今日本国民はこんなものに賛成しません。全国津々浦々にわたつて自由と独立のために身をもつてつておるのは全国民であります。もしもこの条約の全内容を知つたらどうでありましようか。私はこれを憂える。国会というところは国民の利益と意思を代表して審議するところであります。国会だけで多数で無理押しに押し切り、あるいは一片のごまかしでこれを通そうというようなことは正義と道義に反する。いかなる詭弁をもつてするも、真理を抹殺することはできません。いかなる欺瞞をもつてするも、政治というものは国民要求を無視することはできません。国民が血をもつて描いた真理は、墨をもつて書いた偽りより強いのであります。われわれはこのことを考えなければならぬと思う。願くは各党各派の議員の方々がこの国民意思を代表され、このような条約に対しては、全員こぞつておそらく反対されるであろうことを私は期待して、この法案に対する反対の意見を述べます。  以上が日本共産党の本法案に対する反対の考え方であります。
  30. 上塚司

  31. 池田正之輔

    池田(正)委員 本条約に対しまして、私は自由党分党派を代表して残念ながら賛成をいたします。  まず第一点は、ただいまも指摘されたように、吉田内閣は本年の四月にこの条約締結した。しかし吉田内閣は三月十四日に大多数の不信任を受けた内閣なのです。国民の大多数によつて不信任された吉田内閣が、かような重大な条約調印するということは政治的な重大な責任であります。まず私はその政治的責任を糾弾したい。  さらにその他の条項についてもいろいろありますが、特にこの際言うておきたいことは、第六条、第七条はもちろんでありますが、特に二十一条の第三項の後半であります。これは、政府はあたかもガツト加盟がいつでもできるように答弁をし、ごまかしておりますけれども、ここで制約を受けておる。この問題と、さらに議定書の最後の十五項の点でありますが、これなども許すべからざるものである。  結論すれば、この条約日本産業の保護を目的とするかのごとく装つておるけれども、これは極論すれば、アメリカの産業のために日本の門戸を開くという憂いが十分にある。従つて私は本来ならばこの条約には反対したい。しかし国家間の条約は、その他のいろいろな面に影響するところきわめて甚大である。遺憾ながら無責任にも吉田内閣はこの条約調印してしまつた。従つて私は今日涙を振つてこれに一応賛成いたしますけれども、今後起つて来る幾多の経済上あるいは政治上の問題についての責任は、あげて政府が負うべきであります。しこうしてそれらの点の今後の措置について十分責任を負い、また実行に移してもらうことを、私はあえて警告して、残念ながらこの条約に賛成いたします。
  32. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  33. 上塚司

    上塚委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決しました。(拍手)  なお本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。     —————————————
  35. 上塚司

    上塚委員長 これより国際情勢について質疑を許します。通告順によつて発言を許します。福田篤泰君。
  36. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 私は外務大臣に具体的な御答弁日本国民にかわつてお伺いしたいと思うのであります。それは本日の新聞紙上にも伝えられております通り、韓国軍または中共軍の海軍によりまして、わが国の漁船がたびたび襲撃されておる、また拿捕されておる、この事実は、もしかつて日本独立時代でありますれば、重大なる国際問題となつて展開しておるに違いなかつたと思うのであります。また無事の平和的な漁業に従事しておる漁民が、理由なく公海において他国の海軍力によつて殺されたような場合には、でありますならば、おそらく国民大会を開いん重大な国民意思として取げられたに違いないと思うのでありますが、敗戦の結果、現在独立した上はいいながら、どうも日本国民の独立感情の基準が少し狂つておりまして、目の前で自分の同胞が殺されておりましても、割合に平気でおる。占領中敵政府によつて押しつけられた憲法によつて平和を維持されておるというばかばかしい観念論が今日起つておりまして、まことに残念でありますが、この際政府側はつきり態度をきめていただき具体的にも伺つておきたいと思うことは、現在までに韓国あるいは中共によりまして、わが国の襲撃された漁船の数、拿捕された数、現在まで返された漁船並びに漁夫の具体的な数字、それからまた拿捕されており、また漁民も大分大勢おるようでありますが、これに対していかなる具体的な有効な処置をとつて政府はその返還を迫つておるか、あるいは処置をとろうとするか、はつきりと具体的な御答弁をいただきたいと思うのであります。もちろん中共とは正式な国交が回復しておりませんが、具体的なこういう事件が起つた場合には、非公式にも独立用として当然係争の対象になり、また当然交渉すべきものであろうと思いますが、一体政府は今までどういう処置をとつておられたか、また今後どういう処置をとろうとするか、はつきりとお伺いいたしたいと思います。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま手元に資料を持つておりませんので、何隻つかまえられたとか、幾人帰つて来たということについては、正確なものを後ほどお届けいたします。しかし最近は大分帰つて来ましてその数は減つていると考えております。しかしながらまだもちろんあるのでありまして、これは一種の法律解釈の違いという点も存在するのであります。つまり日本はもうマッカーサー・ラインというものはなくなつておる。先方は日本とまだ平和関係に入つていないから、従来の状況が続いておる。従つてマツカーサーラインが存続しておる。このような法律的な見解の違いもあるのでありますが、その他何となく日本の漁船に対して敵視して、これをつかまえるというような気持も争うべからざるものであろうと思います。これに対しまして政府としてはいろいろの方法を講じております。直接にはこの手段はないわけでありますけれども、しかし間接にはいろいろ手段があるのでありまして、一々名前を述べることは差控えますけれども、いろいろのとき、またいろいろの人、あるいはいろいろの団体を通じて、返還その他の交渉をいたしております。北京には公使館なり大使館なりを持つている国もありますし、また赤十字等の団体で連絡を持つておるものもあります。また香港等には中共地区との連繋の深い人もあるので、こういういろいろの方法によつてつておりまして、その結果が現われたかどうかは別としまして、とにかくつかまえられた人なり船なりが時々帰つて来ることは事実であります。今後ともこの問題につきましてはいろいろ研究をいたしますが、日本としては、武力をもつて日本の漁船を保護して、まかり間違えば撃ち合つてもさしつかえないというところまでは、今のところ考えておりませんけれども、正当防衛ということはこれはあり得ることであります。日本の漁船があちらの方の海に参りましたときには、いずれ監視船があつて、あまりむちやなことはしないように監視すると同時に、これが不当に圧迫されないように保護をいたす職務を持つておりますから、これらが正当防衛的にとつさの場合に必要の措置をいたすということはあり得るのであります。しかし原則としてはこれは平和的に解決すべきものと思いまして、従来も努力を続けておりますが、今後とももちろん努力を続けまして、日本の非常に重要な蛋白資源の確保ということについては、漁民に対しても政府としてできるだけ保護を与えて、水産庁等とも協力をいたしたいと思います。
  38. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 大体の筋は拝聴しておりますが、私はよく委員会で取上げた中共貿易促進、これはきわめてけつこうで、私どもも賛成であります。それには中共側も国際法上ないしは国際観念上、不法なことは当然慎んでもらわなければならぬ。お互いの平和的貿易の発展から考えても、こういうような白昼公然とわが方の同胞を殺したり、あるいは漁船をとつかまえるということは、ゆゆしい問題でありまして、この問題についてわが方は当然独立国である以上は、もつとしつかりした態度で強硬に出るべきではないか。もちろん今の軍備関係から申しまして、日本は軍備はありませんし、中共は御承知の通りの厖大な共産主義体制を今アジアにおいて最大のものを持つております。現状やむを得ませんが、そうかといつて平気で中共の海軍がわが方の漁船を拿捕することを黙つておるわけには行かないと存じます。その意味で保安庁が、今おられませんが、どのくらいの具体的な警備計画をもつて日本の漁業権を保護しようとするか。これは必要だろうと思いますが、この点は海上保安庁として独立国の漁業の保護は当然の義務であろうと思うのであります。この点については具体的に、あなたでは無理かもしれませんが、当然抗議して、日本の権益を守つていただきたい。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御趣旨を体しまして、保安庁ともまた水産庁とも十分連絡をいたします。運輸省にも一種の監視船があるのであります。ちよつと数はわかりませんが、竹島などには運輸省の監視船が行つたのは御承知の通りであります。いろいろ各省の船がありますので、それらとも連繋いたしまして、十分御趣旨に沿うようにいたします。
  40. 上塚司

    上塚委員長 大臣はお急ぎの用件がありますので、きわめて簡単にお願いいたします。
  41. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの質疑応答を承つておりますと、まことに心配な点がありますので、実は先般の外務委員会でも申し上げましたが、この問題について私は上海で中国当局の意見を聞いております。多少参考な点もありました。彼を知りおのれを知れば百戦危うからずと申しますので、実情の認識というものが大事でございます。また今日世界の風潮から見まして、武力を云々いたしますよりも、まず話合いで解決する相互了解ということが、特に隣邦同士では私は大事であろうと思います。従いまして、簡単に申し上げますが、あの最初の事の起りは、占領軍の支配下にありまして、占領軍が多少は戦略に使つている面もあるかのごとく聞いております。また気象通報、航空機の状況の通報等を先方では非常に気に病んでいる。また領海の定義に対する両方の意見の食い違いがある。それらがまた誤解を生ずる。日本政府としては近い関係にある李承晩の政府とすら、漁業問題で不祥事がしばしば起つておりますので、なお一層外交の全然ないところの中国との間に、このような不祥事が起るということは考え得ることでもありますので、私は先ほど福田委員とも私的に話したのですが、またある程度意見の一致も見たのでありますが、何分にも話し合うことが大事でございまして、話合いによつて誤解を解くということが今日の外交の正道であり、常道でなくてはならないと私は思います。従つてこの問題につきましてはわれわれも多少の情報を持つておりますし、また漁業団体でも日中漁業懇談会というのができておりまして、これは超党派的に各派からも参加いたしまして、始終この問題の対策を相談いたし、また私どもかの国に知合いもありますので、拿捕された漁民の御家族の手紙なども向うへ送りまして、また先方からも返事も来まして、大分話が進んでいる一面もあると思います。ゆえにどうかこういう国家的な問題につきましては、政府当局も十分話合いで理性と論理によつて問題を解決するという見地に立たれまして、でき得べくんば業界人を中心とした超党派的な、また議員も加えました交渉団体のようなものをつくりまして、条約がなくても先方と話し合うような機会をつくつていただくことが、私は重要であろうと思いまして、個人的には中国側の諸君にも手紙を出したこともありますが、先方としても公正合理の見地から話し合うことは、希望するところであるということを、私的に意見を表明しておるような事情もありますので、どうか超党派的に業者並びに議員を中心として、こういう問題は条約がなく、また彼我両国の間に正式の外交関係がなくとも、打開の道を徐々に開いて行く、そういう方向に対して外務省当局は好意を持つてあつせんするというような心構えになつていただくことを切に要望いたしまして、外務大臣のお考えのほどを伺いたいと思います。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の大体の考えは今福田君にお答えした通りでありまして、帆足君のお話によりますと、先方がつかまえて抑留しておいてもそれが普通であつて、話合いをしておじぎをして来いというふうに何か聞えますが、先方がそうであるならば、まず漁船なり漁夫なりをすみやかに返還してから話合いをいたすべきものだと考えるのおりますが、いろいろの点につきましてはなお十分考慮いたしまして、適切な措置を講じたいと思います。
  43. 帆足計

    ○帆足委員 私は向うへ頭を下げて、現状をただ御無理ごもつともであるというふうに言えと言うたのではありません。そうではなくて、いたずらに事柄を複雑にしてもしようがないことであるから、やつぱり公正合理に話し合つて誤解があればそれを解いて、実際問題として解決せよということを申したわけであります。どうも私より外務大臣の方が少し先輩であるのに、あなたの方が子供つぽいことを言われ、私の方が長老のようなことを言うてどうも申訳ありませんけれども、時間がありませんからひとつとくと国家的見地に立つて、慎重御考慮のほどをお願いいたしまして終ります。
  44. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ちよつと大臣にお尋ねいたしますがブカレストで開かれる予定になつておる世界平和青年会議とかいうものに、日本からも大分参加したい希望者があるようでありますが、実は私も合化労連の組合の委員長である太田君から宇部窒素の若い青年労働者が行きたいと言うから、旅券のことをひとつ交付されるように頼んでくれということでありましたので——忙しいまま今日まで御相談に参らぬでおつたのでありますが、どうも聞くところによりますと、これは全般的に出さないというようなことにきまつたということでありますが、はたしてそういうふうにきまつたかどうか、またそういうことになりましたなら、それは一体どういう理由か、つまりいかなる法的根拠によつてなされた措置であるか、お伺いいたしたいと思います。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところはブカレスートのような地域に行くことは、国家の利益にならぬと考えております。しかしそれは一応の考えであつて今研究中であります。
  46. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 まだ研究中であるという御答弁で私どもちよつとほつとしたのでありますが、参加を希望する青年は思想的に別に一色でもないようでありますから、善良な日本の青年労働者で世界の平和を希望する、こういう純粋な気持で参加を希望するものの渡航については、極力便宜をはかつていただきますように希望を申し上げておきます。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、大臣が時間がないようですから、ごく簡単に先ほどの条約修正の問題でちよつと一、二点わからない点を確かめておきたいと思います。  先ほどの大臣の御答弁を聞いておりますと、国会には修正すべき権利はない、しかし国会のみんなが要望して、そこに決議で出て来たときは、政府はできる限り交渉をする、こういうようにお答えになつたと思います。そうすると、もしも相手の国にすでに批准をしてしまつた条約に対して、そういうふうな修正意見を述べましたときには、相手の国はあらためてその条約を全部批准し直さなければならないかどうか、それからまたもしも修正国民の希望であるにもかかわらず、その意見交渉してもいれられなかつた場合に、日本政府としてはどういう態度をとられるか、まずその二点を伺いたいと思います。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 つまり修正のようなことを交渉しようとすれば、新しく向うと交渉して批准はやり直すことになるのは当然であります。  それから今の品第二の点でありますが、もし国会がこの条約が気に入らなければ承認をしないわけでありますから、こちらの政府としては承認が求められないということになります。そのときにもしこういう条件でここがかわればというような国会の決意がわかれば、批准してもらおうと思えばそれを交渉せざるを得ない、こういうことになるわけです。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 そうするとその場合にはやはり修正してもらいたい部分だけを向うに交渉し直すので、こちら側としては交渉し直すのですけれども、向うとしては全然条約批准し直すということになるのですか。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 条約内容がかわるからこれは批准し直さざるを得ない、やり直さざるを得ないと思います。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 この前のMSAの問題の質疑のときに、私はMSAを調印前に国会に諮つた方が、国民の多くの人たちの要望がいれられていい、こういうふうに申し上げましたが、そのときの大臣の御答弁では調印後であつても、そしてまた批准後であつても、それを修正するような場合が出て来ても何らかわりがない、こういうふうにおつしやいましたが、そう考えて参りましたときに、私どもはむしろ国民意思を十分にいれてもらうためには、調印前に国会に諮つた方がいいし、またそうした方が憲法の七十三条の「事前に」というふうに解釈する意味からいつても正しいのではないか、こう思われるのですけれども、大臣はどう考えられますか。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは何べんも御説明しているところでありますが、調印の前にということは憲法には書いていないので、締結の前もしくはあと、締結とは何かというと、条約効力を発生して国家を拘束するときが、ちようど条約締結になるわけであります。従つて条約には二種あつて批准をして初めて効力の発生するものと、調印と同時に効力を発生するものと二つある、調印と同時に効力を発生するものは、調印の前に国会に諮つて承認を求めて調印するのが普通であり、批准をまつて効力を発生するものは、批准をする前に国会に諮つて承認を求めてから批准をするのが、これはあたりまえの話であります。そこでそれでも調印をする前に国会に諮るときには、いいかげんなもので国会に諮るのかというと、そうじやありません。はつきり両政府意思が確定して動かなくなつたものでなければ、国会には諮れない、たとえば今の条約にしましても、これは三年間制限の期間を置くか置かないかわかりませんが、承認してくださいという形ではできないのであります。従つて調印前といえども、両国政府合意はつきりきまつてから、国会承認を求めることは、調印して国会承認を求めるのと、その実質的内容は何らかわらないのであります。いずれにしても、両方の政府はつきりした合意がなければ国会承認を求められない、ただ形式が違うだけだ、こういうふうに私は了解しております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつとそのことに関連してお尋ねいたしますが、MSAの援助をもし受けるとする——受けられる意思交渉しておられるのですが、話合いがつけばどちらの形式で条約締結されるつもりでございましようか。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 普通はこういう協定批准条項を付するのが通例であります。今でも批准条項を付しようと考えております。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それではまだきまつておるわけではございませんね。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今交渉中ですから、むろんきまつたものではありません。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、日本の希望によりましては批准条項のつかない条約も可能でございますか。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは可能です。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣に朝鮮休戦調印に関して二つの点を質問しておきたいと思います。その一つは、アメリカでは朝鮮動乱に関して日本が貢献したことに対して感謝をしております。そして今度の政治会談には日本から代表またはオブザーヴアーというものを派遣できるのではないかと思います。この前大臣質問したときにはまだその点はきまつておらないとの答弁でありましたが、その後この点はどういうようになりましたか。今後ぜひ代表またはオブザーヴアーを送るようにしていただきたいと思いますので、大臣にその申入れをするお考えがあるかどうか、それが第一点、ぜひそうしてもらいたいと思う。  第二の方は、朝鮮動乱に関して日本が協力して参りました吉田・アチソン交換公文の効力はいつ切れるかということであります。今度の朝鮮休戦調印をもつて切れるのか、あるいは政治会談が成立したときをもつて日本の協力義務は終るのか、その点を確かめたいのでございますが、そのことは今話が出るだろうと思いますが、米韓防衛協定あるいは米韓相互安全保障条約、それによつてもしアメリカ軍が韓国にとどまる場合、あるいは日本にとどまりたい希望を申し出る場合があると思うのです。韓国にとどまらなくても、日本日米安全保障条約に基いて駐留する米軍をもつて当てようという申出をするかもしれないわけです。そのときに新たなる何かのとりきめをしなければならないと私は思いますので、お尋ねをしたわけであります。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政治会議の構成についてはまだきまつておりませんが、いろいろこれは韓国側の気持もありましようし、また相手側の気持もありましようし、この点はあまり日本側としてはつきりした態度をこの際示すことは、私は適当ではないのじやないかと思います。日本アメリカだけで話合いがきまるものではないのでありまして、これは十分に周囲の形勢を見て、そして必要な措置をとるのが適当であろう、要するにアメリカ日本の話合いできまるものならば簡単でありますが、韓国側の気持もありましようし、向う側つまり共産側の考え方もありましようし、いずれこういうものはお互いの妥協できまるものでありますから、今日本がそういうようなことについてはつきりしたことを言うことは、適当でないと私は考えておりますが、日本側でどういうことを考えておるかということは、適当に必要の範囲内の政府には知らせております。  なお国連軍の撤退問題は、これは国連の勧告によつて各国政府が出しておるのでありますから、その勧告との関連においてきめられるものであつて、休戦によつてきまるものでもなければ、政治会議によつてきまるものでも法律的にはないと思います。勧告が今後どういうふうに取扱われるかということによるものと思います。なお日本に新たにそういう軍隊が来るということは、われわれとしては予期しておりません。日本には安保条約に基く必要なる駐留軍は置きますけれども、それ以上のものは置く必要もないし、また朝鮮のような戦闘があつて非常に緊急の場合は、できるだけ国連に協力する意味でやりますけれども、それでなければ特に日本にそういうものを置く必要もないし、また置かない方がよろしいと私は考えております。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 今の答弁のうちで、国連の勧告にまつてきまるのだという点なのですが、そうすると国際連合というものは何らかの機会に、あらためて意思表示をするわけでありますか。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 意思表示をする場合もあろうと思います。しかし勧告でありますから、各国がそれによつてやらなければならぬという義務はないのでありますから、もう用が済んだと思えば引いてもこれはさしつかえないわけだと思います。実際上は一緒にああやつてやつたのですから、各国で相談して適当な措置を講ずると思いますけれども、何も国連の勧告が取消されなければ、あそこに兵隊を置かなければならぬという義務もないわけです。勧告によつて、自由付思によつてこれに参加して兵隊を送つたのが各国の建前でありますから、法律的に非常にむずかしいことはありませんけれども、もとは勧告なのだから、勧告がもう必要がないとかやめたとか、あるいはまだいるとか何とかということがあるのが、一番通例の考え方だと思います。
  64. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十八分散会      ————◇—————