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1953-07-28 第16回国会 衆議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十八日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君    理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    佐々木盛雄君       野田 卯一君    須磨彌吉郎君       帆足  計君    穗積 七郎君       和田 博雄君    中村 高一君       石橋 湛山君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         文部事務官         (調査局長)  久保田藤麿君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局渡航課         長)      松尾 隆男君         外務事務官         (経済局次長) 小田部謙一君         文部事務官         (調査局国際文         化課長)    柴田小三郎君         参  考  人         (経済団体連合         会副会長)   植村甲午郎君         参  考  人         (日本鋼管株式         会社取締役)  伍堂 輝雄君         参  考  人         (東洋綿花株式         会社東京支店         長)      志村  勇君         参  考  人         (海外市場調査         会副理事長)  菱沼  勇君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会理事第一         銀行頭取)   酒井杏之助君         参  考  人         (日本商工会議         所参与)    依田信太郎君         参  考  人         (法政大学教         授)      安井  郁君         参  考  人         (著述業)   入江啓四郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月二十八日  委員高橋圓三郎君、辻文雄君及び有田八郎君辞  任につき、その補欠として野田卯一君、岡良一  君及び川上貫一君が議長の指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 七月二十七日  石川県内灘村海岸を試射場として強制使用する  ことに反対する決議案山田長司君外百三十六  名提出決議第六号)  社会保障最低基準に関する条約批准促進に  関する決議案岡良一君外六十一名提出決議  第一一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約批准について承認を求めるの件(条約第  九号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます本日はまず日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求とるの件に関しまして、参考人より意見を聴取することといたします。  議事に入るにあたりまして、本日御出席参考人各位にごあいさつを申し上げます。本日は皆さん非常に御多忙のところを特に御繰合せ御出席をいただき、厚く御礼を申し上げます。当委員会におきましては本条約につきまして目下審議中でありますが、本条約重大性にかんがみ、今回各界の代表者をお招きして意見を聴取することとなつた次第であります。  本日の議事の順序について申し上げますと、まず参考人の方々よりおのおのの本件に関する御意見開陳していただき、その後において委員より簡単なる質疑がある予定であります。なお御意見開陳は一人十分ないし十五分程度にとどめていただきたいと存じます。念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところにより、発言委員長の許可を受けることとなつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならないこととなつております。なお参考人委員に対して質疑することはできませんから、さよう御了承をお願いいたします。  それではこれより参考人から御意見を聴取いたします。本日ただいま御出席参考人は、経済団体連合会会長植村甲午郎君、経済同友会理事日本鋼管株式会社取締役伍堂輝雄君、日本貿易会理事東洋綿花株式会社取締役志村勇君、海外市場調査会理事長菱沼勇君、全国銀行協会連合会理事、第一銀行頭取酒井杏之助君及び学識経験者として入江啓四郎君がお見えになつております。  これより順次御説明をお願いいたします。経済連合会会長植村甲午郎君。
  3. 田中稔男

    田中(稔)委員 議事進行。本案についての連合審査の問題でありますが、通産委員長大蔵委員長あたりから外務委員長に対して連合審査をやりたいという申出があつておるやに聞いております。この案件はその連合審査に十分値する案件であり、またこの協定案ができるまでに、政府部内におきましても、つまり大蔵通産外務の間にいろいろ意見の対立があつたということは、周知の事実でありますから、この案件を慎重に審議するためには、どうしても私は連合審査の機会をつくつていただきたいと思いますが、委員長がこれを拒否される理由はどこにあるのか、お尋ねしたい。
  4. 上塚司

    上塚委員長 お答えいたします。大蔵委員長ないし通産委員長からまだ何ら通告を受けておりません。なお田中君御要求の件につきましては理事会に諮りまして決定し、お答えいたす考えであります。
  5. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいま御指名になりました植村でございます。日米通商航海条約につきましては、私ども経済団体連合会でも重要問題でありますので、委員会を開きまして検討をやつたのであります。そのときにいろいろな意見がございました。一般問題としまして、この時期において通商航海条約アメリカとの間に結ぶのがいいか悪いかというような問題につきましても、独立直後であるのでいくらか心理的不利ではないかという点であるとか、あるいはあるいは十年間という長期条約でありますから、まだ経済状態も不安定で、長期見通しは少し無理ではないか、従つて事項別単独協定のようなことで行つたらどうかという意見であるとか、あるいはもう少し模様を見た方がよくはないかという意見もあつたのであります。しかしながらこの平和条約が成立しましてから、われわれとして経済の再建をやつて行くという見地から申しますと、どうしても通商条約というような通商上の基本的な条約につきましては各国との間にすみやかにやつて行きたい。ことにアメリカとの関係は、戦争前の状況よりも非常な飛躍的な関係で緊密な経済状況が出ているのでありますから、早く通商条約というものを締結して、ほかの国に及ぼす一つ基準にもして行かなければならぬだろうという意見、また事項別単独協定というものもよしあしであつて、時にはかえつて不利になるのではないかというようなこと、それからアメリカとの関係におきましては、申し上げるまでもなく輸出も輸入もアメリカが第一の割合を占めているような状況でありますが、日本商社その他がアメリカにおいて活動をするという関係から申しましても、やはり通商条約がありませんといろいろな不便がある。入国滞在保障がありませんし、また長期滞在者には税金関係も不利になるという面もあるしいたしますので、大局的に見て通商条約というものは、この際せつかく両方の気持が持ち上つたところで締結するのがいいであろうというところに最後の結論は参つたのであります。  そこでこの条約内容になるのでありますが、このときに議論として出ましたところは、いわば経済力と申しますか、経済発達程度が違つているのでありますから、この条約のきめ方によりましては、あるいは不利になつて来やしないかというような点が懸念されたのであります。そこで問題になりましたことは、一つはいわゆる事業活動制限業種の問題がどの程度にきまるかということ、それからまたこれに関連をしまして外資法のような法律というものは、残しておく必要があるということが問題の一つとして出て参ります。その次には占領中の既得権の問題についてこれがどうさばかれるか、これも一つの問題である。それからもう一つ旧株取得の問題と称するのでございますが、要するに円をもつて日本株式旧株取得するということが自由になりますと、産業のコントロールをやりはしないかというような、これらの点が具体的な問題として私どもの心配したところであります。ところで具体的な問題といたしましては、先ほど申し上げました制限業種範囲というものについて、現在両国の間にきまりました条約案を見ますと、現行外資法は残すことになつております。それから造船であるとか、航空輸送水上輸送銀行業務――預金業務及び信託業務に限るのでありますが、それと公益事業、それから土地その他の天然資源の開発というようなものが制限をつけられております。それから沿岸漁業であるとか、内国漁業であるとか、あるいは内水航行公証人、水先案内、それからもう一つ軍需物資の生産というふうなものについても、その性質によりまして留保ができておるというようなことになりましたので、私どもとして主張しておりましたもののの中に鉄鋼業のようなものをどうするかということでありましたが、これは抜けておりますが、ほかの部分については大体満足されておる形になつておる。今の鉄鋼業議論にいたしましても、またほかのものにつきましてもそうでありますが、私どもとして考えますことは、対米関係においてはやられては困るというような問題がございますが、同時に東南アジア諸国その他経済発達程度から申しますと、日本の方がむしろ優位であるという場合に、そういう国との条約が将来締結されるということを考えますと、やはりその自由の程度というものもある程度米条約においても保つ方がいいのじやないかという意見もございます。従つてその辺の見合いで、まずこの程度できまりますれば、それでいいのじやないかというのが、われわれのただいま考えておるところでございます。それからいわゆる既得権の問題でありますが、この点につきましては米国側銀行預金及び信託業務、それからいわゆる制限業種に対するすでに所有しておる株式というものを既得権としてとる。それから日本側としては在米邦人米国における農地の所有及び農業従事等既得権としてとるというような形になつております。そこでこの銀行預金信託業務に対する既得権というものは、やはり私どもとしまして認めたくないということを考えております。しかしながら最後的にこれは国と国との折衝でありますから、これが認められる形になつてもやむ得ないという考えでございます。  それから旧株取得の問題は、これは最後まで問題が残つた問題でありまして、私どももあちら側の主張が、結局いわゆる蓄積円使つて日本株式取得するといところにあるように考えましたりするので、これは最後まで政府当局並びにアメリカ大使館の方面へもわれわれの意見を述べて、その取得を自由に認めることは困るという主張をしたのであります。最後には結局三年の猶予期間を置こうということにきまつたのであります。そのときの私ども考えといたしましては、さらに第三次の再評価が行われまして、日本株式の値段が、ある公正な形に持つて来られ、それから三年もたちますと、日本経済もやや安定した形になりはしないか、そういうような状況になれば、この点を自由にしましても弊害はまず起きないで済むのではないかというのが、私どもの三年間を了承した理由でございます。私どもが初め主張しておりましたのは、五年の猶予を認めてほしいということでありましたが、両国折衝の問題で、三年ではどうだということになつたのであります。この点につきましては、この前の国会が解散になりまして、従つて関係法令の発布が遅れたという形になりましたので、三年は少し無理ではないかという状況が出ております。しかしながらこれに応ずる、第二十四条の一項の協議規定でありますが、そういうようなことにつきましても申入れを私どもはもちろんいたしましたし、政府もそれはできるであろうというようなお話であつたように記憶いたしております。従つてもしそのときの状況において非常な弊害がありますようであれば、またひとつアメリカ側とお話合いをお願いしたいと考えておるのであります。  最後にこの条約締結がすみやかに行われることが必要であるかどうかということにつきましては、私の方としましては、現にアメリカにおいて商社が仕事をしておりますが、その出張員が、あちらの移民法が去る十二月から強化されましたので、滞在を延ばすことについて非常に困つているのであります。両国政府の間で話合いがありまして、できるだけ便宜措置をとるということで適当に延ばしてくれております地方もありますが、地方によりますと応じてくれない地方がある。地方地方によつて取扱いが違うそうでありまして、非常に困つているような事実もありますし、通商の進展という見地から申しますれば、できるだけ早くこの条約締結されることを希望するというのが私どもの見解でございます。
  6. 並木芳雄

    並木委員 ただいま植村さんのお話を承つておりましても、ぜひ政府委員出席してもらいたいと思います。政府が先般答弁した点と違う点もございますから、外務次官政務次官でも経済局長でもけつこうです、至急出ていただきたい。
  7. 上塚司

    上塚委員長 さようとりはからいます。  次は経済同友会理事日本鋼管株式会社取締役佳賞輝雄
  8. 伍堂輝雄

    伍堂参考人 私どもの会におきましても、この条約内容につきましていろいろ討議したのでございますが、大体におきましてはただいま植村さんから御意見開陳がありましたのと同じでございまして、あらためて特に申し上げる点はないのでございますが、私どもといたしましても現在の日本経済の自立を達成いたしますために、どうしても通商貿易振興によつてやらなければならない面が大きいのでございまして、ただいま御意見のありましたように、まだ復興途上にある日本現状におきまして、いわば経済力が非常に脆弱な、底の浅い基盤のもとにおいて長期通商条約を結びますことは、将来に対する見通しその他の点について不安がないわけではないのでありますが、当面通商航海条約がないために通商問題が非常に支障を来している。個々の問題については植村さんからもお話がございましたが、いろいろな面で通商問題について行き悩みを生じておる点が多々ございますので、この米国との条約のみならず、一日も早く各国との通商航海条約締結されまして、通商貿易振興されるようになりますことを念願いたしておる次第であります。この条約につきましては、原則としましてはいわゆる無条件内国民待遇並びに特恵国待遇一般の基礎としてやられておるのでありますが、先ほども申し上げましたように、われわれといたしましてはまだ日本経済力が脆弱な現在におきましては、その原則無条件に貫くことは、かえつて日本産業振興に害のある面もあると思いますので、個々の面については、いろいろの点についての保留を希望して参つたわけであります。たとえばその中で先ほど植村さんが述べられました制限業種の問題、あるいは株式取得制限というような問題についても、具体的な当面の問題としましては、株式取得等の問題がわれわれとしては最も切実な問題として懸念をした一つでございます。大体の点につきましてはできるだけ無条件相互主義による内国民待遇特恵国待遇が望ましいことはもちろんでありますが、当面の事情としては日本の実情に即応したある程度制限をすることが望ましい、その点については、大体においてはわれわれが懸念していた点が、この条約予備折衝を通じて相当程度盛り込まれておりますので、個々の問題については一部にまだ不満の点があるやに聞くのでありますが、大体においてはさしつかえないのではないかと考えております。ただ一、二の例を申し上げますと、あるいは条約そのもの内容というよりも、その運用もしくはそれの解釈という問題について懸念がある点を申し上げますと、たとえば十八条の中に、いわゆる競争制限独占的支配を助長する事業上の慣行で企業結合、カクテルもしくは協定というようなものをしないということをうたつてあり、その有害な行為であるという前提のもとに「その有害な影響を除去するため適当と認める措置を執ることに同意する。」というように書いてあるのでありますが、私どもとしましては、一面には戦争中に行われました独禁法の行き過ぎというような点を、是正してもらいたいという要望をいたしておる実でございまして、そういうような問題につきましても、解釈によりましてはいわゆる公企業的なもの、もしくはある程度輸出組合による取引の制限というようなことは、これから除外されるというように解釈されるように聞いておるのでありますが、そういうような個々の問題につきまして支障なくやれるような措置をとつていただくか、あるいは解釈上の問題をはつきりしておいていただくことが望ましいのではないかというように考えます。  旧株取得の問題につきましては、先ほどから申し上げておるように、現在の日本企業基盤というものの再評価等がまだ十分に行われておりませず、資本攻勢が望ましい姿になつておらない現状におきましては、株価というものが真に事業実態を反映しておらない面もありまして、そういう株の取得による企業支配というようなことが、日本産業の健全な発展を阻害する面があると思いますので、かねてその除外例を希望しておつたわけでありますが、その点がこの覚書の最後に三年間は現在行つております外資法を認めることになつておりますので、他面では私ども経済界におります者は、一日も早く日本の実力を涵養いいしまして、そういう脆弱な基盤から健全な姿に早く立ち直ることを努力いたすはもちろんでありますが、この三年を経過した後に、まだそういう事態があるような場合には、ぜひその点についての再考慮を、一般協定協議というようなことで考慮されるようなことがぜひ望ましいと考えております。大体におきましては、植村さんがお述べになりましたことと同様でございますので、繰返すことを避けまして、以上で私の意見を終らしていただきたいと思います。
  9. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。次は日本貿易会理事東洋綿花株式会社取締役志村勇君にお願いいたします。
  10. 志村勇

    志村参考人 私はただいま御紹介にあずかりました東洋綿花株式会社取締役志村勇でございます。ただいま植村さん、伍堂さんの述べられた御意見とかなり重複する面もあると思いますが、一応私として意見を述べさせていただきます。  まず結論的に申し上げますと、われわれ貿易業に従事する者にとりましては、入国あるいは居住の自由を与え、事業活動の自由を認め、そのほか各種の権利取得及び保護を定め、内国課税の平等、船舶入港国際通過の自由、それから関税については最恵国税率の適用を認めるというような点からいたしまして、本条約締結に際しては賛成の意見でございます。なお最近アメリカの上院で本条約批准に際し、一部自由職業に従事することを禁止する留保事項を付しているというような報道がございますが、この点につきましては、わが貿易業界といたしましては特に固執する必要はないと考えます。というのは、相互平等の原則従つて、同様の留保事項をこちらから打出すというような形で、処分できるのではないかと考えられるからであります。  次に、この条約実施にあたりまして、われわれ貿易業界から特に要望申し上げたい点は、第一に、この条約実施にあたつては、条約面にうたわれてあることはともかくとして、その実施に際しては、わが方として主張いたすべきことは堂々と主張していただいて、相互実施面平等互恵立場に立つてわが国が実質的には不利な立場に陥ることがないように十分に御留意願いたい点であります。  次は先ほどからも再々意見がありましたが、米国資本わが国への進出防止が、この条約によつて非常に困難となるわけであります。特に先ほどお話がありましたように、三箇年間の猶予期間後は、米国一般外人による蓄積された円によつてわが国企業支配が自由になる、これを防止する方法としては、ただいま期間を延ばすとか、いろいろ御意見もございましたけれども、一応条約にこううたわれた以上は、これを極力最小限に食いとめるためには、わが国企業資本蓄積を促進するような方法をとつていただきたい。たとえば法人税軽減金利の引下げ、あるいは金利に相当する額の配当に対する税金の免除、あるいは再評価課税の減免等いろいろな点がありますが、こういう点によつてわが国企業強化をはかつていただきたいこと。  次に、貿易商社強化案としましては、一応条約によつて米国貿易業者と平等な立場に立つて相互に自由に競争できるようにするためには、ただいまは禁ぜられております、たとえば商社による外貨の保有、あるいは低金利資金融通租税軽減等の手を打つていただきたいと考える点であります。またこの通商航海条約締結されますれば、それに引続いて日米間の租税協定締結されることと思いますが、この租税協定もなるべく早く締結していただいて、いわゆる二重課税を防止し、海外にわれわれが出張員を持ち、あるいは支店を開設する等の場合の事業活動を可能にしていただきたい点であります。またさらに、単に対米国のみならず、他の通商関係を持つ諸外国とも、早急に平等互恵の精神に基く通商航海条約及び租税協定を至急に締結するようにお願いする次第であります。  以上が本条約につきましての業界要望の点でありますが、条約内容について若干意見を申し上げますと、御承知のように、昨年末までは、いわゆる通商航海条約はありませんでしたけれども、一時的商業旅行者として大体一箇年間くらい、もちろんこれは延長をある程度認めておりましたが、そういうような形で対米入国が認められておつた。ところが昨年の十二月二十四日に、例のマツカラン法ができましてから、これが非常にきゆうくつなものになりまして、当初一箇年くらいであつたものすら三箇月程度に縮める――もちろん若干の延長は、場所によつて差はありますが認められておりましたが、縮められ、また家族はもちろん許されない。このためにわれわれ民間貿易商社としては、海外派遣員の交代あるいは海外出張所その他の人員の増強等が非常に困難になつて来たのでありまして、この通商航海条約批准されますと、われわれ貿易に関する者は、いわゆる条約商人として無制限入国滞在旅行調査、通信の自由等が認められる。いわゆるマツカラン法のあれを受けなくなるということで、その意味から申しましても、われわれはこれが早急に批准されることを希望する次第であります。  なおまた、先ほども二人の参考人の方からも言及されましたが、事業活動及び権利取得について、相互平等の内国民最恵国待遇が与えられるということは、非常にけつこうなことでありますし、また現地の雇入れの自由、それから船舶入港の自由、通過自由等がありますので、この点は非常にけつこうでありますが、ただわれわれ貿易業者として特に強調したい点は、制限業種について、形式的に相互平等の立場既得権の尊重を規定しておりますが、占領中の米国資本、いわゆる銀行資本の一方的進出を、この表面から見ますと追認した形になつておることは、実質的には平等ではないという考えを持つておる次第であります。  それから課税の点については、内国民待遇及び最恵国待遇が与えられたことはまことにけつこうでありますが、支店設置の最大障害となつておる二重課税の防止については、原則がこの条約に示されただけで、現実の効果は租税協定にまかせられておる。この点からも租税協定の早期締結を希望する次第であります。  それから関税につきましても、最恵国待遇を認めておられますが、これで初めてわが国権利としてガツドの税率の適用を保証された形がとられたことで、これはたいへんけつこうなことであると思います。  その次に、先ほども言及されました米国資本進出防止の問題でありますが、以上申し上げましたように、事業活動、為替貿易管理等について、内国民待遇あるいは最恵国待遇を与え、あるいは第三国と平等な取扱いを行うこととなつているほか、輸入品の国内取扱いについても差別待遇を禁じておる。こういうような点は、わが産業の保護助長の点ではけつこうでありますが、戦後特に弱体化したわが国民間資本が、圧倒的に強い大きい米国資本と、形式的に平等な条件のもとで競争することは、きわめて困難なことでありまして、実質的にむしろ不平等となる結果を生じます。さらに三年後には、米国資本が蓄積した円によつて、いわゆる発行済み株式旧株取得して、わが国企業を支配することも自由になるというわけでありますから、この点からも、先ほど申し上げたように、それに対抗するためには、わが国産業資本の蓄積を促進して、米国資本によるわが国企業の支配を極力防止する必要を、特に強調したいのであります。  以上をもつて、私の意見を終らせていただきます。
  11. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  次に海外市場調査会理事長菱沼勇君。
  12. 菱沼勇

    菱沼参考人 ただいま御紹介にあずかりました海外市場調査会菱沼でございます。私は主として、貿易上の見地から本条約についての意見を申し上げたいと思います。  まず最初に申し上げたいことは、アメリカという国が日本貿易上占むる地位についてでございます。アメリカに対する輸出はずつと第一位を占めております。また輸入も第一位でございます。昨年の輸出額は、総輸出額の一七、六%、輸入額は、三七、八%となつてつて、一番多い国でありますが、特に私どもとして考えますことは、現在世界の各国におきましては、ほとんどあらゆる国において、輸入について許可制を設けるとか、あるいは為替制限をするというような方法によつて、自由な輸入を認めてはおらないのであります。ただアメリカ合衆国とカナダぐらいが自由なる貨物の輸入を認めておるのでありまして、この点から申しますと、日本といたしましては、アメリカは非常によい市場である、将来性のある市場であるということが言えるのであります。  今申し上げましたように現在日米貿易は、日本が大きな入超になつておりまして、昨年は約五億ドルの入超額になつておりますけれども、昔にさかのぼつてみますと、日本は、アメリカに対しては、常に出超国であつたのであります。明治の初年から昭和の初めごろまでは、ほとんど毎年日本の方が出超でございました。今から約三十年ほど前の貿易統計を見てみますと、アメリカに対する輸出が約四億ドル、アメリカからの輸入が約三億ドル、すなわち出超が約一億ドルという数字になつております。昨年の日本からの輸出は、わずか二億ドルでございます。それが三十年ほど前には四億ドルも輸出があつたのであります。今日の物価に換算するならば、当時の四億ドルは八億ドルぐらいになつているはずでありまして、日本の現在の対米輸出は、まだ非常に微々たるものである。その一面においては、将来性が大いにあるということを思うのであります。こういうように貿易上きわめて重要なる米国につきましては、ぜひ通商条約が早く成立することが望ましいと考えるのであります。  さて、本条約につきまして、その内容を検討いたしてみますと、まず第一に感ぜられますことは、最恵国待遇に関する問題でございます。輸出入貨物に対する関税その他の取扱いについて、最恵国待遇を与えることになつておりますが、その与え方が無条件主義ということに規定されております。およそ通商条約で最も重要なる条項は、最恵国待遇に関する規定でございますが、旧日米通商条約におきましては、これが有条件主義の最恵国待遇でございます。すなわち、一方の国が第三国に有償で与えた利益を相手国に均霑せしむるには、相手国からも同等もしくは均等の利益を得ることを条件といたしたいのであります。しかるにこの有条件の最恵国条項というものは、実際問題といたしまして、適用がきわめて不明確であります。また一方において、日本のように、税率が低くてしかも単純、いわゆる複数税制度でない単純な関税制度を持つておる国におきましては、きわめて不利益であつたと思われるのであります。これが無条件主義の最恵国待遇となりましたことは、貿易上の見地から申しますれば、一段の進歩であると考えております。もつとも、アメリカといたしましても、戦前は他国と通商航海条約締結する際には、この有条件主義の最恵国待遇を、相当長い間固執しておつたのでありますが、一九二三年以後におきましては、すでに事実上この主義を放棄しておりますので、アメリカとしては、何も新しい政策の変更をしてわけではないと思われます。  第二に、注目すべき点は、ガツトの税率に関する取扱いでございます。第二十一条第三項後段の反対解釈によりまして、その意思によらずして、同協定の当事国となつていない国に対しては、同協定に基いてとりきめた利益を与えなければならないと解釈できますので、ガツトの税率が日本に適用されることは十分主張できると思うのであります。このガツトの税率が日本側に適用されることになりますと、さしあたり便益を受けるものといたしましては、写真機、双眼鏡、ネジ、自転車というものにつきましては、現在日本品が米国で受けております関税よりも、もつと安い税率が適用されますので、今後はこれら商品の輸出増進につきましては、相当効果があると考えております。  第三には、外資の導入並びに技術導入を容易ならしめるような規定が第五条その他に設けられておりますが、これは、近時日本輸出不振の一原因とされておるコスト高を解決する一助となるだろうと存じます。ことに、わが国の重工業製品、化学製品につきましては、輸出不振の最大の原因がコスト高にあることは明らかでございますので、これら製品のコストの低下をはかりますためには、米国その他からのすぐれた技術を導入するとか、あるいは電力等を豊富低廉にするためには、外国資本を導入することが有効でございましようから、この点につきましても本条約の成立は相当役に立つと思います。  以上申し上げましたところから見ますと、本条約の成立は、日米貿易の促進の上には好影響をもたらすものでありますので、私どもとしてはすみやかなる実施を希望するのでありますが、同時に多少危惧の念を抱かざるを得ないような条項もないことはないのであります。それは第十八条の規定であります。先ほど伍堂君がお触れになつたのでありますが、十八条の前段におきまして「両締約国は、競争を制限し、市場への参加を制限し、又は独占的支配を助長する事業上の慣行で商業を行う一若しくは二以上の公和の企業又はそれらの企業の間における結合、協定その他の取極により行われるものが、それぞれの領域の間における通商に有害な影響を与えることがあることについて、一致した意見を有する。」ということが規定されております。日本文としてきわめて読みにくい文章でありますが、要するに業者の間での結合、すなわち輸出組合組織によつたりあるいは業者間の協定などによりまして、対米輸出競争を制限したり、市場への参加を制限したりすることは、両国通商に有害なる影響を与えることがあることについて、両国は一致した意見を有するということと解釈されるのであります。しかるにわが国貿易取引上の最大の欠陥は何であるかと申しますと、当業者の間のはげしい競争の結果、輸出にありましては値段を売りくずすということ、輸入にありましては値段を不当につり上げるということでありまして、この欠陥はアメリカの市場において特に顕著であるように思われるのであります。この不当なる輸出競争の結果、どういう弊害が生ずるかと申しますと、第一に日本輸出商、メーカーが損失をこうむるにいうことはもちろんでありますが、これ以外にアメリカ側の取扱い業者すなわち輸入業者とか卸売業者あるいは小売業者が、日本の品物を取扱うことを不安がつて、ややもすると取引を忌避することになるということでございます。また第二には、このアメリカの生産業者を刺激いたしまして、ひいては関税引上げの問題を起す。そのために関税が上げられるというおそれが多分にあるのでありまして、戦前は日本としては苦い経験をなめております。また第三には、輸出の競争をして値段をくずすために、品質を自然に悪くして、メーカーとしてはやりきれないから物の品質を落して行くという欠陥があるのでありまして、こういうような弊害はぜひ是正されなければならないと思うのであります。  また不当輸入競争をいたします弊害といたしましては、日本の消費者に不利益を与えることになる。たとえばアメリカの小麦を競争してお互に値をつり上げて高く買うために、日本の消費者が損失をこうむる。またそれによつて貴重な外貨を濫費するというような弊害が生ずるのでございます。従いまして対米輸出の健全なる発達をはかるためには、輸出組合の組織をもつて不当な競争を制限しますとか、場合によつては進んで共同輸出会社をつくつて一本の輸出をするというようなことも、時には必要になろうかとも思います。また輸入につきましても、輸入組合をつくつて輪番輸入をする、あるいはまた輸入と制限する、あるいは共同輸入をやるというようなことも必要になつて来るのでありまして、この十八条の規定は、それらの点についてやや心配を抱かしめられるのであります。対米貿易に関しましては、競争を無制限にすることによつて両国通商に有害な影響を与える場合がきわめて多いことを感ずるのでありますが、逆に第十八条にいうがごとく、競争を制限することによつて両国通商に有害な影響を及ぼすということはほとんど考えられないのであります。むしろ米国側におきまして、その巨大資本による輸出産業についてそういうような弊害が起ることがあるかもしれないと思われるのであります。アメリカという国は、御承知の通り独占禁止の制度については非常な熱意を持つている国でございますから、将来具体的な問題が起つた場合に、日本アメリカとの間に見解の食い違いが生ずることがなければよいがと考えております。もつとも十八条の規定におきましても、アメリカ側がただちにその見解に基いて措置を講じ得るわけではなくて、まず両国政府の間で協議をして、その上で措置をとる場合には、日本側輸出入については、日本側がその措置をとるというように十八条は解釈をされるようでありますから、一応の安全瓣は設けてあると思いますが、本条約実施後におきましても、政府とされましては、たえず米国のこの問題に関する認識を深からしめるように努力を願いたいと思うのであります。  最後条約実施に関連しまして、国会並びに政府に対して、御要望を申し上げたいことを簡単に申し上げたいと思います。第一は、関税率引上げの問題であります。本条約におきましては、関税率をこれ以上げないという規定は全然ないのでございます。これは一般通商条約としては当然のことでございますが、今後そういうような心配が日本にはなきにしもあらずと考えるのであります。最近の例といたしましては、絹のスカーフの問題がございました。これは皆さんも御承知と存じますが、アメリカの関税委員会におきましては、絹スカーフの関税引上げを決定いたしまして、まさに上げようとしたところを大統領が拒否をしてくれたので一応納まつておりますが、こういうような問題は今後まだまだ起る可能性がございます。たとえばまぐろのカン詰、陶磁器、時計バンド等につきましても、アメリカの当業者の中においては、日本品に対する関税を引上げるという運動があるやに聞いておるのであります。これの対策として、先ほど申し上げました不当競争を防止することの必要なことはもちろんでございますが、具体的な問題が起りました際に、原則としてこのアメリカの関税委員会の議に付せられるのでありますが、関税委員会においては必ず公聴会が開かれます。その場合に、日本側を代表して日本側意見を適当な人に述べてもらう、あるいは関係方面に事実の認識を深めるためのパンフレツトをこしらえて配付するというようなことのためには相当の経費がいるのでありますが、日本の対米輸出品は、大体において中小企業によつて生産せられているものが多いのでありまして、そういう負担力はないのであります。それで非常に困つておりますので、そういう点につきまして、国家として特に御考慮を願いたいということでございます。  それから第二の点としましては、この条約実施と同時に、対米輸出増進のために、強力な国家の援助を願いたいということでございます。先ほど申し上げましたように、対米輸出の前途はきわめて有望であるように私どもは思うのでありますが、それにはやはりそれをかちとるだけの努力が日本側に必要でございまして、そのためには相当国として御援助を願わなければならぬと思うのであります。たとえて申しますと、米国市場に向くような商品、特に優良品を製造して輸出するということが必要なのでございますが、そういう方面についての調査が、日本側においてはあまり行われておりません。私ども関係しております調査会なども、そういうことを仕事にしておるのではありますけれどは、遺憾ながらわずかの経費をもつてつておりますので、十分なることができないのでありますが、ヨーロツパの各国、英、独、仏、イタリア、オランダ、ベルギー、スイスいずれもこういう問題のためには、非常な努力をして国家が援助をいたしております。こういう点についても御考慮を願いたいと思うのであります。  それからアメリカに対して輸出を増進するためには、特に宣伝が非常に有効なのであります。宣伝がうまく行けば必ず物は売れて行くのであります。日本におきましてはこの点においてきわめて不十分でございまして、たとえば生糸の問題にしましても、宣伝をよくすればまだまだ売れて行くと思うのでありますが、これについての宣伝のやり方がまだ足りないのでございます。また本年度におきましては、ニユーヨークに貿易あつ旋所を設置するについての補助の予算が計上されてございまして、その点はけつこうに考えておりますが、しかしわれわれから言いますと、きわめて不十分でありまして、半額補助ということが原則になつております。あとの半額、何千万円という、金を毎年民間から寄付を集めるということは事実上不可能でございます。こういう点につきまして、もつと国として全額補助でそういうようなアメリカに対する輸出のための施設について、援助をしていただきたいということを特にお願いを申し上げる次第でございます。  以上をもちまして私の申し上げることを終ります。
  13. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  次は全国銀行協会連合会理事、第一銀行頭取酒井杏之助君にお願いいたします。
  14. 酒井杏之助

    ○酒井参考人 私はただいま御紹介にあずかりました全国銀行協会理事酒井杏之助でございます。日米通商航海条約につきまして私の意見を申し上げるのでありますが、産業上のこと貿易上のこと、あるいは投資面その他のことにつきましては、前にお立ちになりました参考人の方から詳しくお話がございましたから、これを省きまして、私はただ金融の点だけについて私の意見を述べたいと思います。  金融につきましては制限業種の中に金融業というのが入つております。つまり金融業はまつたく無制限アメリカと競争させないといつたような、公共的立場にあるという意味で保護を受けておるわけでございます。それにつきまして、預金及び信託業務について制限がございますが、貸出業務については無制限になつております。これは今日の状態においては、むしろ米系銀行は保管的立場にあるくらいでありまして、貸出しの面において内地の銀行の脅威になるというようなことはございません。また戦争前においては、預金業務及び貸出業務とも内地の銀行の存立を非常に脅かすというようなことはございませんでした。そういう点で、今のところは貸出しの業務の制限がないということは、そう問題ではありませんが、将来日本企業が非常に安定して来て、貸出しを内地銀行と競争をして、ごく力の強い米系銀行が貸出業務に進出するということになりますと、銀行としては一つの大きな脅威になるわけであります。しかしまあなかなか簡単にそうはならないと思いますし、また産業立場からいいますれば、日本の金融機関の非常な脅威にならない限りは、外資が出て来て貸出しに従事するということも、必ずしも悪いことではないと思います。  次に米系銀行既得権の問題でございますが、これは、銀行協会としては既得権は認めてもらいたくないということを建議したのでございます。この既得権の中にも、時期をわけてみますと戦前からの既得権、それから占領期間中の既得権、それから講和条約発効後の権利、三つにわけられますが、占領中の既得権というものは、りくつからいいますと、特殊権益でありまして、これは認めるのはどうかと思われるのでありますが、これも事実上は、それが日本の金融界を非常に脅かすということにはなりませんで、これは条約締結される場合に、日米間で話し合つたことでありますので、やむを得ないかと思うのであります。ただ日本銀行アメリカにおいて、アメリカの今既得権を持つております銀行の有しておりますような権利が得られておりませんので、これは相互互恵の精福からいいますと、アメリカ銀行に対してこちらで許してあるだけの利益を、アメリカにおける日本銀行に同じ権益を与えてよいのではないかと思うのであります。御承知の通りアメリカは、各州において州法によつてきまつておりますので、その点が、日本日本全体でありますが、アメリカはある州では非常に厳格でありまして、ある州では割合に寛大でありますので、こういう点がいろいろ互恵といいましても、こつちは一かたまり、向うはちよつとばらばらみたいなことで、その州が許さなければしかたがないなどといわれてしまいますと、どうもそこのところがほんとうに平等ということになりにくい点がございます。これは銀行業務だけでなく、いろいろあると思います。  それからもう一つは、在日外人に対します国内法の適用でございますが、これは銀行法、税法、為替管理法というような銀行業務に関する法令の適用であります。これはもちろん平等でありますから、監督、検査等は日本銀行と同じに受けるわけでありまして、実際その点について手かげんはないかもしれませんが、どうも英語で話するのはめんどうくさいというようなことで、内地の銀行の検査とアメリカ銀行の検査がはたして同じように行われるかどうか。これはぜひ同じように行つていただきたいと思います。  それからこれは結論みたいなものでございますが、結局この通商航海条約の一番むずかしい点は、一方においては互恵、自由という考え方と、一方には保護、国家主義的な――これは日本立場でありますが、日本の国が弱いから、これを力の強いアメリカと同じように扱われては困る、できる限りこれを保護して行かないと、表面は平等であつても、実質的には平等ではないといつたような、保護の面――といつて日本だけがそれをあまり強く出しますと、それではアメリカでもつて日本がまたいろいろ受けられるべき利益が得られないのでありまして、結局日本としては国家主義的に考えて行き過ぎてはいけないのではないか。またアメリカとしては日本経済の実態をよく認識して、友好条約でありますから、その結果が日本経済を破壊するような結果にならないように、これはアメリカの方として十分用意をもつて、いわゆる友好的条約という名前にふさわしいようにしなければならぬのじやないか、そういう条約を結ぶときの根本的の考え方というものをしつかりきめませんといかにその条約の条文が――条文は大事でありますけれども、条文が非常にうまくできておりましても、ほんとうに友好通商条約ということになりませんと、これは日本のためにも、アメリカのためにもならないということを日本としても考えなければなりませんし、アメリカとしても考えなければならない、こう思うわけであります。これは幾分金融だけから脱線いたしました。  私はごく金融の立場からだけ簡単に私の意記を申し上げた次第一であります。
  15. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  次は学識経験者として、御紹介しました入江啓四郎君。
  16. 入江啓四郎

    ○入江参考人 条約一般理論の上から少しばかり意見を述べさせていただきたいと思います。  この条約は、横綱と幕下の相撲を同じ条件でとるというように、実力の非常に開きのあるものが平等の条件で立ち向うという見地からいたしますと、はたして日本経済アメリカ経済に太刀打ちができるという点で、ずいぶん懸念が抱かれておるようでありますけれども、しかし日本としましても、国際社会の一員としてこれから広く活動するためには一般に認められた基準従つて行動するほかないのでありまして、日本だけの特殊条件を主張するということもできないのではないか。この条約は人的、物的交流の自由保障というわけで、通商障害の除去とか制限的商慣行の排除とか、国際投資活動の促進、そういうような原則相互性、平等性によつて規定しておりますので、これが世界の普遍的な原則として採用される限りは、日本の当面置かれている経済的な実力が弱体であるからといつて、そこにあまり自己だけの保護を求めることも、国際社会に入つて行く関係上は妥当でない、現にこの日米通商航海条約に具体化されております諸規定は、ハヴアナ憲章にずいぶんこまかく規定されておることであります。ハヴアナ憲章はもちろんまだ実施はされておりませんけれども、そのうちの実施される限りはガツトヘも吸収されておりますし、またアメリカを中心とする二国間の条約でも、中には日本と同じように敗戦国であるイタリアとか、あるいは小さい国であるギリシヤ、もちろんイタリアにしましても、ギリシヤにしましても、アメリカの勢力が相当入つているということは認められますけれども、そういう実態を離れて、条約の形式論からする限りは、やはり同じような原則に立つて条約を結んでおりますし、その他数々あるように思われます。  日本といたしましては、これが一つの典型通商航海条約になるか、少くとも大きなよりどころとして、これから他の諸国とも結ばれて行くことと思われるのでありますが、そういう意味で、特にこの条約一つの足場として新しく条約関係を結ぶということで一番重要なものは、コモンウエルスの諸国ではないかと思うのであります。イギリスが日本との講和条約を結びますときに、議会で一番論点となりましたのは、戦前の不正競争を日本がまた始めはしないか、講和条約の前文とか、あるいはそれと同時に発せられた宣言の中の公正な国際慣行に従うとか、あるいは原産地虚偽の表示を行わないとか、そういつた点では満足せずに、何らかの保障を必要とするという声がほとんどそれに集中されているかのように議事録に出ていると私は読んだのでありますが、その意味からいたしますとと、この条約にはダンピングの防止あるいはただいまの原産地虚偽その他そういう不正競争の防止、もしくは対策について規定があるように思います。具体的に申しますと、第十四条の第四項と議定書の第七項でありますが、こういう方法でイギリスの不安なり非難なりを打消して、イギリスとも現在の片務的な条約関係、講和条約を唯一のたよりとする事態から、一般的な通商航海条約を結ぶようになるという、そういう一つの基礎としてこの条約は役に立つのではないかと思うのであります。若干は敗戦国日本としての傷あとをとどめているのでありますが、しかしそれは講和条約自体がそうであるからして、通商航海条約によつてそれをぬぐい去ることができないと認められるものがありますし、それから講和条約に言われずして、この条約自体によつて日本占領管理下にあつたそれをそのまま背負い込んで来たというのが、先ほどからここで非常に問題にされておりますところの制限業種の中の既得権、もちろんそれはこの条約実施されるまで、今日から大急ぎで既得権をこしらえるというのではなくして、おそらくは占領管理下でアメリカ業者が得た既得権条約の形式上から言いますならば、決してアメリカだけじやなく、日本についてもその既得権は尊重されるのでありますけれども、しかし日本の場合は業種もおそらくは違いましようし、農地利用などということが主要な対象と思いますが、これは別段占領管理下――日本アメリカ占領して、その管理下で得た既得権というわけでもありませんし、実際問題としてそういう既得権条項がないからといつて、それが脅かされるということは考えられないと思うのであります。なかんずく今まで一番問題が起りましたカリフオルニアにつきましても、カリフオルニアの外人土地法が違憲判決をされた今日では、日本既得権を保持するという意味において、アメリカ側に与えるような実際上の不利益はなく、もつぱらアメリカ側の業者に与える実益であると思います。私自身は条約の上からの形式論を申し上げているのであります。実際にそれがどれだけの影響があるのか、そういうものは無視してもさしつかえないのか、そういう点は一向存じないのでありますが、条約の形式論から言いますと、その点若干の問題があるのではなかろうかと思うのであります。講和条約でも既得権の尊重について規定しております。それは戦前の既得権の回復、保障、保護というもの、それから占領管理下の既得権というものにわかれるのでありますが、この通商航海条約で規定しました既得権に相当するのは、占領管理中で外国人が航空会社が日本に乗入れの特権を得た。それを引続き認める。それも条約実施から四箇年間、それまでに航空協定ができれば延び得るのでございますけれども、とにかく期間を限つたといたしましても、四年間にすぎない。こういう例外を規定しましたのは、航空関係だけでありますから、この通商条約でもつて新たに少くとも形式的には広い範囲占領管理下の既得権を認めるということは、講和条約の規定よりも広いように解釈されるわけであります。何ゆえにそのような特別の条約を必要としたか、実際上の理由は存じませんけれども、形式的に解釈いたしますと、そのように解釈されるのであります。これが私自身は講和条約について若干批判し得るものとして気がついたものでありますが、しかしそれ以外、全般を見ますと、特に日本にだけ限つて不当な制約に服するというようなことも見つかりませんし、この条約全体としては私はけつこうなものだと考えているのであります。
  17. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました  次は同じく学識経験者として招待しました安井郁君にお願いいたします。
  18. 安井郁

    ○安井参考人 私は二十年来大学において国際法及び国際政治の研究に従事して来た者であります。その立場からこの数年来現政府のもとに進められつつある日本の動きに対して、深刻な不安と憂慮の念を抱いておりますが、その念は今回の日米友好通商航海条約ともまた深いところにおいて連なるところのものなのであります。私はもちろん友好通商航海条約というものが、経済的な技術的な性質のものであることは十分承知しております。また旧条約が昭和十五年消滅して以来十数年にわたる無条約時代、またサンフランシスコ平和条約十二条によるところの暫定的な規定の時代、そのあとを受けまして、まとまつた条約がつくられるということの意味ももちろん肯定をいたします。しかしそのような技術的な協定であつても、それが現在の世界情勢のもとにおいて、日本立場と結びつくときに、それがどういう意味を持つかという実質的な点、言葉をかえれば形式的な意味においてこれを取上げるのみならず、実質的な関連においてこれを考えるとき、また形式的批判からは違つた一つの態度をとらなければならないかと考える次第であります。  その点に入る前に、戦後アメリカ関係諸国と締結した通商航海条約を一瞥するのも一つの意味を持つでありましよう。周知の通り一九四六年に中華民国との友好通商航海条約締結されましたのを初めとして、イタリア、ウルグアイ、アイルランド、コロンビア、ギリシヤ、イスラエル、デンマーク等の諸国との間に通商航海条約締結されているわけであります。今私が申し述べましたところによつても明らかなように、これらは比較的弱い立場を持つところの国々であると言えましよう。そういう点におきましては、これらの諸国との間の通商航海条約のみをもつては、現在の情勢における通商条約の典型がきめられたとは言い切れないものがあるのではないでしようか。ヨーロツパの諸国との間においても、新しい型の条約はまだつくられていないようであります。われわれが考えたいのは、アジアにおいてわれわれと深い関係を持つところのインド、そこの態度について伝えられるところには、外資導入の問題をキー・ポイントとしまして、この種の通商条約締結よれに対して反対の態度を堅持しているようであります。特に外国資本によるところの重要産業の支配に対する抵抗という意味においても、この種の通商条約について、ネール首相のもとにおけるインドが一つの反対の態度を持つことは、われわれにも考えられるところであると思います。この点において、国会が十分の資料に基く審議をなさるように希望したいと思うのであります。そういうふうに考えますと、今回のこの条約は、必ずしも戦後の全般の趨勢を表現するものとは言えないところがありましよう。しかし、戦後つくられた一つ条約の型に沿いまして、ここにわれわれの国についてもすでに調印がなされたという事実は厳としてあります。  この条約の特質は、いろいろな立場の方々から、いろいろな意味において取上げられ。批判されるでありましよう。私はここにおいてあまりこまかい技術的な問題について立ち入る必要はないと思います。また私の立場においてはそうしない方がよろしいと思うのであります。私としては、この種の条約――これはきわめて技術的なものでありますが、日本が今進めつつあるところの基本的な動向との関連において、これがいかなる意味において機能を果すかという点が、むしろこれに対する批判のキー・ポイントであるというふうに考えるのであります。と申しますのは、この条約の前文にも掲げられてありますように、過去の通商条約とは違いまして、「相互に有益な投資を促進」するという言葉がはつきりとうたわれておりますが、それは、条文の内容を見ましても、さらに多くの意味において明らかに浮び上つているところでありまして、これはその本質において、アメリカ経済力が世界において指導的な地位を持つ時代の一つ通商条約の型を示すものであると言うことができましよう。その点におきましては、かつて有条件主義をとつておりました最恵国待遇について、かなり前から無条件主義に転換したのであります。それを最大限に推し進めておるという点におきましても、アメリカの世界経済、さらには世界政治における指導的立場というものが、この条約の裏つけをなしておることは言うまでもなかろうと思うのであります。そういう一つの本質を持つたところの条約であるがゆえに、私の申したいところは、これがきわめて経済的、技術的性格を持つているものであるにかかわらず、一定の条件のもとにおいてはそれが特殊の役割を果すところの武器となる、その可能性をわれわれは十分に見てとらなければならないと考えるのであります。  一例を申しますと、平和条約というものは、あるいは日本の独立を回復させるものと言われておりますが、そのような平和条約も、過去において決してそういう無色なものではなくして、一定の現実的機能を果すものであるということは、日米安全保障条約との密接不可分の関係においても、また具体的には中国との関係のその後における展開から見ても、明らかでありましよう。いわば一国に独立をもたらすといわれておるところの、その意味においては無色なるがごとき平和条約も、また世界において政治的に不安定の段階においては、一つの現実的機能を果すことはむしろ当然ではないでしようか。われわれはサンフランシスコ平和条約も、そういう角度から検討することが必要であつたのであります。同じことが今回結ばれますところのこのきわめて経済的、技術的な条約にも言えるのではないか、私の考えはそこにあるわけなのであります。  卑近な例を申しますと、二人の対立するものに一つの武器を与える場合、その武器がいかなる役を果すかということについては、やはり両者の諸条件にかかつておるのではないでしようか。両者が同じような条件において対立しておる場合、あるいは友好関係にある場合、その刀はあるいは平和的な意味において用いられるでしよう。しかし両者が一方を従属関係、支配関係に置こうとするようなそういう立場におきましては、同じ武器が両者の手に渡されましても、それが一つの違つた機能を果すことは考えられるところであろうと思うのであります。そういう点について考えて参りますと、今度の新しい通商航海条約というものは、これを単に中立的、経済的、技術的なものとしてのみ考えてはならない、むしろこれは日本を取巻くところの全条約体系との関連において、理論的にも実践的にも取上げなければならないと思うのであります。その点から考えますと、今回の条約は、それがきわめて形式的、技術的なものであるにかかわらず、やはりサンフランシスコ平和条約日米安全保障条約、行政協定、さらに今度はMSAに関する協定、この線に連なるところの一貫した条約体系において、その実践的機能を果すものであると認識しなければならないと思うのであります。その点について私は、過去の条約体系との関連も重要でありますが、特に現在進行しつつあるところのMSAとの関係において、この通商航海条約をとくと検討してみる必要があると思います。私はこの点について、通商条約の観点からそのような理論を展開した文献を知りません。しかしながらたまたま、一橋大学経済研究所長の都留重人教授が、MSAの観点からこれに論及いたしました点に、非常に深い興味を覚えたのであります。都留重人教授がここで取上げましたのは、MSAが重点であります。MSAはいろいろな要請を持つておるが、特にそれはアメリカの世界政策の推進であることはもちろんであるが、その中において次のような特質を持つておる、それは、「アメリカ的な自由企業の奨励である。これは二重の意味をもつている。すなわち、一方においてはたとえば国有化を排するという意味において、なるべくアメリカ的な資本主義の体制を擁護しようということであり、他方においては、アメリカの資本そのものがその自由な活動の舞台を外国に拡げてゆくのを助長しようということにほかならない。」ということを言つておる。あの相互安全保障法の第五百十六条の自由企業の奨励に関する規定に触れておるのであります。今私は、MSAを直接に論じておるのではありません。都留教授はそのような理論の展開から、そういう問題はすでに日米通商航海条約において規定されておることなのだが、「抽象的には同じ規定でも、それが通商条約日本の国内法のなかにあるばあいと、MSA援助の条件としてもちだされるばあいとはちがう。むしろ、MSA法にこうした条項があるために、通商条約のなかの同種の条項が一そう日本などには不利に運用されることになるという心配さえある。というのは、一たんMSA援加を受けることになつてしまつた国では、その援助のもつテコ作用はかなり大きなものとならざるをえないからである。MSAは、必らずや日本国内に大きな既得権益を生みださせる。そして日本経済はMSAにともなう需給関係一つの所与の条件として編成されていつてしまう。そうなつてしまつてから、MSAをやめるぞと云われれば、日本経済はたとえ短期的にとはいえ一種の混乱を見こさざるをえないから、圧力に屈する可能性も大きくなる。MSA援助が大きければ大きいほど、このテコ作用は大となるだろう。つまりたとえ通商条約のなかに明文化されていても、それだけでは容易に実施できないようなことが、MSA法適用のおかげで実施されるということにもなりかねないのである。」このような指摘を、MSAに関する論文の中で都留重人教授はいたしておるのであります。都留教授は私の信頼する経済学者であります。私はこの点においてきわめて同感のところがあります。私がきようこの意見の陳述において申す論旨も根本はそこにあるのであります。繰返し申せば、われわれは通商条約の技術的色彩、それのみで問題の本質を見誤つてはならない。むしろそういう一つの技術的性格を持つところの条約が、今日本が進行しつつある歴史の過程において、またその持つところの条約体系の中において、いかなる現実的役割を果すか、それがむしろ根本であろうと思うのであります。この点について私は念のためにつけ加えておきます。私は今回の通商条約日本のある種の人々に利益をもたらすことも決して否定はいたしません。またアメリカに在住する日本人に利益をもたらしましよう。そういう事実を私といえどももちろん無視するものではありません。私の言いたいのは、それらの得られる個々の利益その他いろいろなもの、そうしてまたそれが持つところの将来の一つの現実的機能、私どもはこれを明らかに較量して、その点からこれに対する態度決定をしなければならないと思います。つけ加えれば、決して一部の利益をもつて全体の利益なるがごときそのような論法を、政治の世界において幾多とられるとはいえ、この場合においてもなされてはならないのでありまして、われわれはこれがいかなる利益をもたらすかについて、その点について立ち入つた検討が必要ではないか、それが私の考えなのであります。  きようはまだあとにも参考意見を述べられる方があると思うので、私はきわめてキイ・ポイントを申しまして、あえて希望をつけ加えさしていただけるならば、私の考えによれば、今回のきわめて技術的な性質を持つところのこの通商航海条約は、わが国が進みつつある歴史の中において、またその上につくられつつあるところの条約体系の中において、特殊の現実的機能を果すものであると思うがゆえに、特に今進行しつつあるMSA協定との問題については深い考慮を払つていただきたいということなのであります。具体的に申せば、MSA協定がその具体的な全貌を明らかにするまでは、もしできれば私は通商航海条約批准を延ばしていただくというような切なる希望を持つております。これは国会においてどのようになるかは私は存じません。ただ私は一個の科学者として、現在進行しつつある日本の進路を痛切に憂慮するものとして、通商条約について意見を申し述べよと言われるならば、以上の角度から意見を申し述べて、そうしてそれについては特にMSA協定との関係において、今のような具体的な希望を申し添えておきたいと思つたのであります。  簡単ではありますが、これで私の意見を終ります。
  19. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。  これにてただいま御出席参考人の陳述は終了いたしました。なお依田信太郎君、阿部藤造君、高野賢君はいまだ出席せられておりませんから、一応これにて参考人の陳述を打切り、これより参考人の各位に対し質疑を行うことといたします。質問通告者は六名でありますが、参考人各位はいずれも非常に忙しく、中には正午にお約束のある方もありますので、質問はなるべく簡単に、少くとも各委員十分以内にとどめられんことをお願いたします。通告順によつて質疑を許します。穗積七郎君。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 植村さんだけお急ぎのようですから御在席中に一点だけお尋ねしたい。黄田経済局長もお見えになりますので、念のため伺つておきたいと思いますが、この前委員会で黄田局長は、この旧株取得制限期間三箇年間は、二十四条の協議事項の中に入らない。すなわちこれは絶対的なものであつて、エラステイツクなものではないという御答弁だつたと思うのです。ところが経済界の代表者の一人であります植村参考人は、先ほどこの問題については実は財界としては五年を希望した。ところがアメリカ側の意向によつて三年になつた。しかもその後の情勢を見ておるというと、三年では短かいということがますます痛感されて来ておる。従つてこの三箇年間も、二十四条の協議事項によつて多少変更できるものであつて、ゆとりがあると理解をしておる。これは言葉は、ちよつと速記を見ませんとわかりませんが、私の理解におきましては、政府当局話合いの上でそういうふうに理解しておられるかのごとき私は印象を受けたのですが、これは重要な一点でありますので、お急ぎのようでありますが、明らかにしていただきたいと思います。
  21. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 旧株取得か三年間ということは、これは明文で書いてございます。この私が申し上げました二十四条との関係は、二十四条というのは三年間のことを規定しております議定書の第十五項、これだけにひつかかるものではございませんので、二十四条というものは全部にひつかかる条文でございます。従いまして二十四条に書いてございますのは、この条約実施その他に関して、何と書いてございましたか、とにかく問題がある場合には、両当事国は相寄つて相談しようということがございます。これは全部にひつかかる条文でございまして、それを必要とする事態は、この議定書の十五項のみならず、あらゆる問題に関して起つて来るかもしれません。従いましてこの十五項の規定も、もし絶対的にそういうことが必要になつた場合には引用して、もつて協議することができるかもしれませんけれども、しかしそれがあるがゆえにというので、三年間というのが動かし得るのだということになりますと、条約に書いてありますことは全部絶対的ではないのだというふうなことになつて、一体何をきめたものだというふうなことになりますので、三年間は三年間でございます。二十四条に書いてございますのは、全部にひつかかつて、不都合なことがあつた場合には相寄つて協議しよう、そういうことになつているわけであります。  それから三年間がはたして妥当であつたのかどうかということに関しては、これは何がゆえに三年でいいのか、五年でなければならぬのか、あるいは二年でもいいのかということは、だれも確信を持つて何年がちようどいいのだということは言い得ないだろうと思うのでありまして、その点を閣議の方でも相寄つて協議した結果、結局三年ということになつておるわけであります。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 三年間の適否につきましては、これはあとで委員会政府御当局とわれわれの間で論争をいたしたいと思いますが、今私が伺つておりますのは、二十四条の協議事項云々ということが全部にかかるのであるということであるならば、現在並びに将来にわたつて三年間でとうてい再評価が困難だ、従つてこのままでやられては日本経済の自主性を確保するのに困難だという実情が現われたときに、それを協議にかけて、そうして三年を一年なり一年半なり延ばす可能性があるかどうかということを伺つておるのです。法律解釈とか条文に現われたことを言つておるのではない。二十四条が全部にかかることは条文を読めばわかる。しかしながらそれ以外に、向うとの交渉の中で、この三年間の問題については固定的なものであるというような御趣旨の解釈をこの前御答弁なさつたし、そうして財界の代表たる植村さんはそうでないと理解されておるので、これは大きな食い違いでありますので、事重要であるからその事実を伺つておきたい。重ねて申しますが、二十四条が全体にかかるというその条文の解釈を私は伺つてあるのではなくて、再評価期間三年間では、とうてい困難だということで、三年間を一年ないし二年延ばしてもらいたいという要望提出したときに、アメリカとの間にその希望を遂げる可能性がありやなしやということを伺つているのです。
  23. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 三年間というのは、二年間とこれははつきり明文がありますが、ただ二十四条によつてカバーされるということは、ただいま申し上げた通りであります。従いまして三年に近づいた場合に、とてもこれではだめだということが起りました場合に、これを取上げて協議するということは、これはできるわけであります。
  24. 上塚司

    上塚委員長 和田博雄君。
  25. 和田博雄

    ○和田委員 伍堂さんは急いでいるよりでありますから、ただ一つだけ質問しておきたいのですが、制限業種の中から実は製鉄業が除かれている。そのほかには、製鉄美に関係がある、たとえば石炭とかいろいろなものが制限業種になることができるし、またなつているというような関係で、やはり基本的な産業の中で、平和経済考えて行く場合でも、それから日本の自立経済考えて行く場合でも、やはり製鉄業はわれわれとしては一つの大きな基礎産業だと思うのですが、それが除かれておつて、それで今日本政府がとつているいろいろな政策なりあるいは世界の経済の動きなりを見た上つて、一体これは制限業種になつておらなくても、業界の方とされては大丈夫やつて行けるのだ、日本は十分自由競争の上において太刀打ちできるし、また自由な状態に置いておいた方が、今後の日本にとつてもむしろ望ましいことだというように、真にお考えになつているのかどうか。業界としては、むしろ制限業種としてこれを指定された方が、将来にわたつて製鉄業自体を発展させて行く上においても、むしろプラスであるというふうにお考えになつているのか。製鉄業が抜けているということは、将来われわれがいろいろな政策を考え、問題を考えて行く上に、かなり大きな手がかりというか、足がかりになるのですが、どういうようにお考えになつているか、その点だけ簡単にお答え願いたい。
  26. 伍堂輝雄

    伍堂参考人 ただいまの点につきましては、われわれも製鉄業が基礎産業であり、国家的な性格が非常に強いという自覚を持つてつておりますので、そういう観点から制限業種の中に入れるべきだという、ことは、確かに部にはあるので、私たち業界の中にもあると思うのでありますが、実際の問題といたしまして、先ほども申し上げました旧株取得による企業の支配ということが、さしあたり外資法その他の点において制限が与えられており、その他の方法で、いわゆる製鉄業自体としてアメリカから日本に進出して参つて日本でその業種を新設してやつて行くというような事情は、現在の事情からいえば考えられないじやないか。新しい施設を日本に持つて来て、日本産業と積極的に競争してやつて行くというようなことは、まず考えられないじやないかというように今考えております。ただ遠い将来の問題につきましては、先ほども冒頭に申し上げましたように、まだ復興途上にある現状におきまして、見通しはいたしかねる点がございますので、将来のことについては不安がないとは申されないと思いますが、現状においてはさしつかえたいじやないかというように考えております。
  27. 和田博雄

    ○和田委員 植村さんにいろいろ聞きたいことがあるのですが、お急ぎのようですから、一点だけ聞いておきたいと思います。今度の通商航海条約は、これはアメリカの従来の持論である自由企業、自由競争というものを、やはりどこまでも推し進めて行こうという、アメリカの従来とつてつた通商上の根本態度とちつともかわつておらないと思います。だから実力の違つた日本と、形式上は平等ですが、実際上は日本にとつては非常な不利を生ずるのではないだろうかということは、みなが憂えている点であります。植村さんのお話もそのようであつたと思いますが、私は財界の長老として、一体外資導入ということが、今度の通商航海条約一つの大きな眼目になつて、外資の導入がやりやすいように、しかもそれにいわゆる自由主義という立場から、この条約ができているように思うのですが、しかし今の外資導入は、私どもの目から見ると、民間資本の、昔のような自由な資本の移動ということは、これはどこでも今ではほとんどないと言つてもいいので、何かそこに政治的な結びつきがあるのであります。日本の場合なかんことに私はそうじやないかと思うのであつて、今まであれだけ政府がやかましく外資導入と言われても、技術と結びついた外資が多少来ているだけであつて、ほんとうの外資導入というものはないので、やはり今来ているものをしさいに検討すれば、軍事関係のものが多いと思います。ことに未開発地域のあの開発においてすら、そういう傾向が出ているのは、これは周知の事実だと思います。ところが日本で外資導入ということを容易にするために、こういう条約をつくつて行こうとしているわけですが、日本の場合でもMSAが結ばれて来れば、そういう形での一種の外資導入はあるし、またこれは、日本がMSAの援助を受ければ、どんどん出て来るだろうと私は思う。しかし財界のほんとうに希望するような外資の導入というものが、これによつてより容易になり、また日本産業界としては、財界としては、これは非常に日本のプラスになるのだ、日本の自立経済の上からほんとうにプラスになるのだといつたように、おそらくお考えなつたかどうかしりませんが、そういう点を一体どれだけ植村さんの方の経団連なんかとして検討されたのか、そこらの見通しは、一体どういうような見通しを持たれているか、そういう点について伺つておきたいと思うのであります。ことにこれがアメリカとの間の通商航海条約だから、非常に問題になるのであります。この点は、志村さんの言われたことにも関連しますから、志村さんにもお聞きしたいのですが、日本アメリカ貿易が将来性が非常にあると、こう言われるが、それは私はどうもなかなか納得が行かない。もしも将来性が非常にあるのだということになつて来れば、そして外資が民間の資本という形で、純粋な政治的な色彩のないものがどんどん入つて来るのだということであれば、多少この制限業種というものを、ほんとうに日本的な立場から、しかも世界の理解を得るような日本的な立場から制限をして行き、国としても独自の政策をとつて行けばいいのですが、そうでもないのに、アメリカとの間の通商航海条約において、これだけ実力が違つているものを、平面的なただ平等の形で結んで、これは政府がやつたのだからやむを得ないのだということでは、私どもとしてはどうも経済界に対して非常に不満の心を抱かざるを得ない。やはり経済自立という問題は、政府の政策だけでできるのではなくて、財界なりあるいは産業界自体が自分の問題として取上げて行かなければ、これはできない問題だと私どもは思う。そういう点で一体どういうお見通しを持つているしか、その点を一点だけ伺つておきたいと思います。あといろいろ聞きたいことがあるのですが、お急ぎのようですからその点だけでけつこうです。
  28. 植村甲午郎

    植村参考人 今のお話の外資導入と通商航海条約関係というのは、私どもとしましては、結局外資導入というものが、日本自体の経済状況というものと非常に関係する。それから日米間の友好関係にも関係する。従つてこの通商航海条約ができましたからといつて、外資が大いに入つて来るというふうには思わないのであります。しかしながら通商航海条約もできていないというような状況というものは、やはり外資の導入には一つの障害的な存在になつて来はしないか。それから外資の導入というものを、私別に相談した意見でも何でもないのですが、私の端的な感じを申しますと、そうむやみに外資の導入々々と言つてもしようがないじやないか。結局日本産業自体の活動が、それによつて刺激されるような方法ならいいけれども、外資導入といつても向うからむやみに機械を持つて来て、こつちでつくれるものもそういうふうな形で入つて来るというようなことであれば、これはやはりあまり歓迎できないじやないか。従つて経済活動全体と見合せて好ましい外資というものは、これはぜひ入つてほしい、こういうことになるのじやないかと思います。
  29. 和田博雄

    ○和田委員 これ以上は議論になりますが、そういうお心持はよくわかりました。実はそれにしてはあまりに外資導入のために、いろいろ便益をはかつているようにわれわれは思うのです。はかり過ぎているように実は思う。今あなたのおつしやるような意味での、ほんとうに日本産業基盤を養うような意味での外資導入ということを、主として考えておるのであるというのであれば、この条約はその比例においてはぼくらから見ると湯まりに不満足な点があるのですが、なぜ私がこれをやかましく言うかというと、これはアメリカの外交政策に非常に関係があるから心配するのです。今まではアメリカが政治的な援助でいろいろやつて来たということ、MSA援助を中心にしてその他の制度は各国でいろいろトラブルが起るわけです。だからやはり問題の起りというもの、しかも平面的に見ればいかにもスムースに行つているような、プライヴエートなキヤピタル化しようとインヴエストメントの形なり何なりでやつて行こうという形に、最近大きく切りかえてやつているのではないかと思うのです。しかしそれに対して日本経済は非常に弱い、経済がほんとうに自立しなければほんとうの独立はない、それにはどうしてもやはり日本の資本というものを、その意味でアメリカの資本の支配を受けないようにするだけのことは、どこまでも注意して行かなければいかぬという立場から、いろいろ心配をしてお聞きしたいわけでありまして、今のようなお話であれば、そういう御意見だということで了承いたします。
  30. 上塚司

  31. 田中稔男

    田中(稔)委員 先ほど安井さんから通商航海条約とMSAとの関連性を指摘されましたが、そういうことからちよつと植村さんにお尋ねしたいと思いますのは、MSAの交渉に関する外務省のコミユニケの中に、免税の問題について、日本政府はこの協定に関連して自国に輸入される産品、財産、資材または装備に対して無関税の待遇を与える、それからまた内国課税を免除する、こういうようなことが書いてありますが、完成兵器であつてどうしても日本ではできないというようなものが入つて来る場合は別といたしまして、日本でもできるというようなものが、しかも別に装備に限らずいろいろなものがあるのですから、産品、財産、資材、こういうようなものがMSA援助に関連して自由に入つて来る、無関税、内国課税は免税、こういうことになります場合に、日本産業に対してどういうふうな影響があるか、御所見を承りたい。
  32. 植村甲午郎

    植村参考人 MSAとの関連というのは今ここで伺つただけでちよつとわかりませんが、今お話になりました点を考えてみますと、今の完成兵器でなくて、できるだけこつちでつくつてくれというような要求は、われわれとしてあるわけであります。そのほかに完成兵器の場合は問題はないと思います。それから資材等がかりに入つて来ましてもこれの使途はきまつているし、それからこちらで楽に調達できるようなものが入つて来ようと実は思わないのであります、あるいは特別なメタルであるとか、こちらでそう簡単に得られないようなものが入つて来るのじやないかと想像するわけであります。そうすればそのために関税を免除したからといつて、競争関係になるというふうなことはないのじやないか、かように考えるのでありますが、今伺つたばかりで、研究もしておりませんので詳しいことはわかりません。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 お忙しいところを恐縮でございますが、実は酒井さんにお尋ねしようと思つていたのですが、お帰りになつたので財界代表の意味で一点お尋ねしたいのです。  例の制限業種の中に信託業務を含みまして、銀行業務が入つております。日本経済界におきましては証券業というものも相当大きな比重を占めているのじやないかと思いますが、そうなりますとやはり同様に証券業務も制限業種の中へ入れるのが適当ではないかと思うわけですが、いかがなものでございましようか。
  34. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいま お尋ねを広げて行きますと、切りのない問題になつて来ると思います。銀行の方はいわば実績が相当あるわけですので、それで見当がついておる。証券業の方については実績がないわけでありますから、こちらと向うと両方とも支店を出して、そうして仕事ができるという形になるわけで、それが今の制限業種に入れるような大きな力を持つて来ますかどうですか、ちよつとまだわからないのじやないかと思います。こちらのマーケツトが非常に大きい場合であれば、あちらのつまり高級な職員も入れて店を持つて相当の商売ができるかもしれませんが、小さいマーケツトだとか、そこをどういうふうに実際考えておられますか、今のところあまり問題にしなかつたというのが実情であります。
  35. 上塚司

    上塚委員長 それでは植村さん、ありがとうございました。
  36. 田中稔男

    田中(稔)委員 これはどなたでしたか、たしか菱沼さんじやなかつたかと思いますが、今後アメリカの方の関税を引上げないようにひとつ保障をとつてくれというような御要望があつたのですが、その場合にまぐろとか陶磁器、時計バンド、こういうようなものについて特に御要望があつたように思いますが、アメリカの関税政策の最近の動向を、こういう品目についの最近のアメリカ側の関税上の取扱いの実情に即して若干御説明願いたいと思います。
  37. 菱沼勇

    菱沼参考人 アメリカの関税制度におきましては、当時家者方面において関税の引上げを要望するような場合におきましては関税委員会提出をいたしまして、そうして関税委員会において審議をしてその拒否を一応決することになつております。もつともガツトその他において規制されておるところはございますけれども、ガツトの中でも特別の場合には関税を引上げることができるような規定に除外規定があつたかと私は記憶しております。そういう場合には関税委員会に提訴いたしまして、関税委員会で審議をして、それで大統領がそれを承認すれば、そのまま引上げが決定するというように私は承知しております。関税委員会は大体六人で組織されておつて、それを今度一名ふやすかどうかということが問題になつておるようでございます。日本輸出品の中で、先ほど申し上げましたような種類の陶磁器であるとか、まぐろのカン詰であるとか、時計のバンドあるいは手製の手袋、そういうものについては前から問題がくすぶつておるのでありまして、まだ正式には取上げられておらぬようでありますが、もつともまぐろについてはすでに前にそういう問題がございました。今後もまたそういうものが出て来るおそれがあるのであります。そういう場合に日本としましては、関税委員会の公聴会に、日本側の利益を代表して述べてもらうのに、アメリカ側の適当な弁護士等をお願いしなければならぬのでございますが、そういう場合に相当の経費がいる、そういうものを負担する力がないのだ、日本の業者は先ほども申し上げたように、大体において中小メーカーの製品がアメリカには主として行つておるものですから、そういう方面で負担力がないのでありまして、そういう点において国会並びに政府において特に特別の御考慮をお願いしたいということを申し上げたいのであります。
  38. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう一点お尋ねいたしますが、菱沼さんは対米輸出の将来は、きわめてプロミツシングだというお話がございましたが、その場合に日本から出ます、今後輸出が増大すると考えられる品目はどういうものであるか、大体中小企業の製品というように聞いておりますが、ひとつそれをこまかく伺いたいと思います。
  39. 菱沼勇

    菱沼参考人 アメリカに対しましては、御承知の通り重工業品はあまり見込みはないと思います。ただ昨年におきましては鉄鋼類が相当出ました。これはストライキの影響で出たのでございますが、これは例外的だろうと思います。日本から出ますものは、むしろ繊維関係で申しますれば、やはり生糸、絹織物、絹製品、それからじゆうたんその他の毛織物、それから綿製品の一部、それから麻製品、苧麻の製品なんかもなかなか将来有望であろうと思います。それから機械関係では光学機械、これは皆さんのよく御承知のカメラとか望遠鏡それから顕微鏡、それからこれは光学機械ではございませんけれども、ミシン、それから金具類なんかも今後は有望のように思われます。今申し上げたものが相当出ておりますけれどもアメリカの市場は非常に大きゆうございますから、安定した価格でいい物を出せば、まだまだ伸びる余地はあると思います。それから雑貨類におきましてはカン詰類、まぐろのカン詰その他各種の食料カン詰はまだまだ有望であると思います。それから陶磁器、ガラス製品、クリスマス用品、造花、身辺装飾品、ことに手工芸品、これは最近非常にアメリカにおいてはそういう方面の嗜好が増加いたしておりまして、日本の手工芸品なんかも相当有望であろうと考えております。ざつと今思いつきましたところでそういうものがあると思います。
  40. 田中稔男

    田中(稔)委員 安井さんにお尋ねしますが、インドのネールが外資導入について反対しておるということを具体的にもう少し伺いたいと思います。
  41. 安井郁

    ○安井参考人 先ほどちよつと申し上げましたが、私の大学時代でしたか、インドに在勤しておりました人から、一つの最も印象に残つたものとして口頭をもつてその点を聞いたのであります。それで直接の資料については私も今後研究したいと思つておりますが、一つの非常に参考になるものであると思いますので、国会においても御研究願いたいと思います。私の聞くところによれば、要するに外資というものが、場合によつては具体的な、会社全部の株式取得し得るというようなことに対しては絶対に賛成し得ない。その制限の観点ははつきり立てておりまして、その一点だけでも実はインドとしては、今度の通商航海条約の場合にはそういうことが起り得るのではないかと思います。そういう可能性を含む通商航海条約には絶対に賛成し得ない。そんなことを言つておりました。
  42. 上塚司

    上塚委員長 ちよつとお諮りいたしますが、志村君、入江君その他おられますが、この方々に御質問がありますか。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 私酒井さんに銀行関係のことについてお伺いしたいと思つてつたのですが、もうお帰りになつたのですか。
  44. 上塚司

    上塚委員長 お帰りになりました。
  45. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは午後黄田局長の御意見を伺うことにいたします。
  46. 上塚司

    上塚委員長 なおこの際お諮りいたしますが、日本商工会議所の依田信太郎さんがただいまお着きになつたのであります。委員各位はもうすでに一応参考人の陳述を聞かれて、質問をして、帰られた後でありますが、せつかくお見えになりましたから、これから十分間ないし十五分間の範囲においてひとつ意見の陳述をお願いしたいと思います。
  47. 田中稔男

    田中(稔)委員 委員長、二人しかいませんから、午後にしたらどうですか。
  48. 上塚司

    上塚委員長 それではこれにて暫時休憩いたします。午後二時より再開することといたします。  参考人の各位には長らくの間まことにありがとうございました。これにてお引取り願います。     午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後三時十四分開議
  49. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。  この際委員各位に御報告申し上げます。今日参考人として招待状を出しました関西経済連合会会長関桂三君より写真電報をもつて次のごとく意見の申越しがありました。今その全文を朗読いたします。  参考人出頭御要請に関しては曩に阿部藤造氏を予定しましたが、期日変更の為、出頭致し兼ねますから、参考人の陳述に代へ左記の通り当会意見を申述べます。     記  一、条約内容に就ては二三修正を希望する点あれども批准遅延による無条約状態の弊害大なるに鑑み速かなる効力発生を切望する。    今日我国の対米貿易並に諸取引の最大障碍は、無条約のために商社銀行等の海外駐在員の渡航、特に現地駐在が居住者としての安定した資格を得られず、ために子会社の運営に支障を来し又本格的な支店、出張所の設置ができぬために業務上頗る困難を感じている。  二、更に二重課税防止を誤つた第十一条を実現するための日米租税協定の早期締結実施をも併せ要望する。    尚、当該条約が米各州法により改悪されるが如き取扱を見ぬ様、適切な措置を望むものである。            敬 具    昭和二十八年七月二十七日        関西経済連合会         会長 関 桂三  衆議院外務委員会   委員長上塚司殿  次に参考人日本商工会議所参与依田信太郎君より本件に関する意見を聴取することといたします。
  50. 依田信太郎

    ○依田参考人 ただいま御紹介をいただきました依田でございます。国民を代表されております国会の委員会におきまして、参考意見を述べる機会を得ましたことをまことに仕合せに存じます。  最初に結論を申し上げますと、この条約実施につきまして、多少の希望を述べて条約案に賛成したいと考えております。暑さの折からでありますので、なるべく簡明を期するため、通商条約の広汎にわたつた問題に触れませんで、二つの観点からこの通商条約をながめてみたいと存じます。  一つ日本の自立経済の基礎は、国内の足りない原料、食糧等を輸入いたします、そのかわりに海外諸国へ製品を出すのであります。そのためには海外諸国における関税なり、そのほかの通商障害がなるべく低いことが望ましいのであります。通商条約またこの目的に沿うものが希望されるというのが第一点であります。  第二点といたしまして、日本の自立経済を助けますために、外国の資本なり技術を導入いたす、さらに外国の企業活動によりまして、日本経済を補つて行くということは望ましいということでありますが、但しそれはなるべく日本の目立経済達成に役立つものでありたい。摩擦を起したり妨げるものであつては困る、それを助けるものでありたい。御承知のごとく日本の戦後の企業界ははなだしく弱体化いたしました。いわば病後の回復期であり、健康をとりもどしておりません。その際強固なる基礎と豊富な資本を持つた外国企業アメリカ企業等が日本へ参りまして、重大な圧迫を加えることになりますと、日本の自立経済達成に害をなすということも心配されるのでありますから、そういう点について、日本現状において相当の御考慮を願いたいというのが、第二点であります。  この二点から日米通商航海条約を検討いたしますと、第一の通商障害をなるべく少くするという問題につきましては、条約の第十四条に、広汎な最恵国待遇の規定がございます。いかなる第三国に対するよりも、不利益なる待遇を受けない、最も有利な待遇を受けるという、最恵国待遇の規定がございます。さらに第二十一条第三項でございますか、それには日本はまだガツトへ加入をしておりませんけれども、ガツトの利益を日本に対して適用するというような意味の規定がございます。この二点は日本にとりましては非常に有利な点でありまして、この二つが条約に書かれたことは、一つの成功だと思います。外務省の御努力に対しても、敬意を表する次第であります。但しこの二つとも、現在条約にはありませんけれどもアメリカでは実際に自発的に日本に対して適用してくれておりますので、現状はそれほどかわらない。ただ条約上の権利がそこにできたということは、非常な強みでありまして、またこれがなければ困るのでありますが、これだけで安心しておつてアメリカ通商障害が起らぬということにはならぬのであります。御承知のごとく、今日アメリカで頻繁に起ります通商障害は、関税の引上げの問題でありますが、これは通商条約の手の届かぬところで起りますので、条約に関連した交渉でこれを防ぎとめるわけに行かないのであります。これはアメリカの関税法に川内が内在しておるのでありまして、条約あるいはガツトの利益を振りまわしても、これを防止する手がないのであります。アメリカの関税法第三百三十六条によりますと、経済事情が変動いたしまして、最初きめた関税率で外国品と対抗し得なくなつた場合には、関税引上げを提訴する権利を業者に認めてあるのであります。経済事情はときどき変動いたしますから、最初外国とアメリカ国内の生産費と比較しまして、その差額だけを平均化するために関税率を設けたといたしましても、経済事情の変動によつてそれが効果を持たなくなる。持たなくなりますと、経済事情変動の地ならし運動としての関税引上げの提訴というものが、関税委員会に対して関係業者から提出されるのでございます。それからまた互恵協定によりまして、各国との相互協定によつて税率を引下げた結果、輸入品が増加いたしまして、国内産業に重大な圧迫を加えるという場合にも、やはり関係業者は関税委員会へ提訴して、元の税率へもどしてもらいたい、引下げたのを元の税率に返してもらいたいという、こういう提訴ができる権利を認めておりますので、最近も頻発しておりますように、やれ絹スカーフであるとか、やれ陶磁器であるとかの税率を、元へ返してもらいたいという運動が起つて参るのでございます。これは互恵協定法第七条に規定がございます。この互恵協定法第七条の規定なり、また関税法第三百三十六条の規定がかわらぬ限りは、今後この通商条約ができましても、かような関税引上げの運動がしばしば起ることを防ぎ得ないのであります。そこで私はこの条約実施について、外務省御当局なり並びに国会議員の各位におかれまして、御援助を願いたいと考えますのは、今後かような問題が起りまして、関税委員会で審議に上りますときには、われわれ従来から微力ながら運動いたしまして、日本立場なり日本の実情をよく調べて、適切なる決定をしてもらいたいというので、いろいろ運動をいたしておりますが、何分にもアメリカに真接手足を持ちませんし、一々人を派遣することも困難であります。そういう関係でありますので、国会議員の方々なりあるいは外務省の御当局の方々におかれましても、問題が起りました場合には、よく日本の実情を公聴会で聞いたり、あるいは関税率審議会で調べたりして、正しい結論をつけるように側面的の御援助を要望したいのであります。これは向うの話になりますが、しかし実際問題としては、アメリカの関税引上げ運動に最も支配されまして、これが日米貿易の一番の障害となつておりますから、この条約実施に関連いたしまして、希望を申し述べさしていただいた次第であります。  御承知のように、日米貿易日本側のはなはだしい輸入超過になつております。これは昔からでありますが、戦後、最近はそれがことにはげしく、日本へ持つて来ますものは食糧品であるとか、原料品であるとか、あるいは燃料、あるいは重要機械等でありまして、多くは無税であつたり、免税されたりして、関税をかけてもごく安い関税しかかからない。これに対しまして日本からアメリカへ出します品物は、絹製品であるとか、あるいは陶礎器であるとか、その他おおむね中小企業の生産にかかる雑品類でありまして、その企業立場が非常に弱い。それが少しアメリカヘよけい輸出するようになりますと、向うで必ず関税引上げ運動が起るのであります。これは原因が関税制度に内在しておりますので、条約がこれを防ぎとめることができませんが、実際問題としてこれが頻発するのでありますから、個々の問題が起つた場合に、先ほど申し上げましたように、よく日本立場、実情を調べた上で決定をしろ、そういう要求の通るように、側面的に御援助を願いたい次第であります。  次に第二点の、外国資本または技術の導入並びに外国企業活動につきましては、八箇条ばかりにわたりまして、これを直接間接に保護する規定がございます。その点から見ますと、アメリカの資本、アメリカ企業に対して、大きな門戸を開いたと見なければならぬのであります。大きな門戸をあけましたから、早速アメリカの資本なり企業が殺到するということは考えられません。いろいろ経済条件がありますから、急に殺到することはないと考えます。日本が植民地化してしまうというようなことも、心配はそうないと考えます。但し門戸をあける以上は、これに対して周到な用意、考慮を払つておいていただくことが必要と思います。そのため第七条の第二項でありますか、制限業種というものを設けまして、これは企業のある種類について内国民待遇を与えないぞという業種による制限であります。この制限を列挙してあるだけでは、産業界の一部においてはまだ足りない、もつと多く制限制限業種に加えてもらいたい、機械工業も加えてもらいたいというような声がないわけではありますけれども、大体制限業種に載るものは、およそ国際慣例がありまして、これを無制限に広げるわけには行かないと思います。またあまりこれを広げて、日本アメリカに対して企業活動を限定しまして、狭く制限しました場合、今後日本が伸びて行きたい、進出して行きたい国と通商条約を結ぶ場合に、お前の方はこういう制限をしておるから、おれの方もこういうふうな制限をしよう、こういうふうな問題も起るでありましようし、かたがたそれらの関係を考慮いたしますと、制限業種はこの程度でいいだろう、こう考えるのであります。しかしこの前申し上げましたように、日本企業はまだ病後の回復期でありますので、一挙に外国の激烈な競争に加わるということは、自立経済上考慮を要する面があるという点から考えますと、保養期間中多少競争を緩和していただく手があるのではないか、それはちようど発行済みの株式については三年間は適用しないのでありますから、病後のよちよち歩きをしておる弱体化した企業に対して、やはり三年間ぐらいはたつて、少し元気が出たところでこれを適用してもらうというような手があるのではないかとも考えるのでありますけれども、しかしどうせ一年か二年、三年たてば外国競争が来るのでありますから、この点は私は固執をしないのであります。ただこの条約実施につきまして、そういう点を考慮して、外国企業なり外国資本が入つて来る場合に、条約に触れない点で内面的な工作ができれば非常に幸いだと思います。御承知のごとく、この条約は十箇年にわたります有効期間をもつて日米通商経済関係、そのほか文化、社会、非常にいろいろな部門にわたる関係を固定的にきめておこう、こういうのでありますから、将来の見通しの立たぬ今日、これは非常にむずかしい問題でありまして、企業経営の立場から見ましても、利害の見通しが立ちがたいのであります。それだけ通商条約をおきめになる上の御苦心が大きいことと拝察するのであります。そこで私どもは多少この条約に弾力性といいますか、幅を持たしてはどうかということも考えたのであります。あまり幅が大きくなると、条約関係が不安定になるという点も考慮しなければならないので、それらの点は考究にとどめて、外務省の方にお願いすることをやめた次第であります。ただこの二十四条に、この経約の実施に関する事項について、一方の締結国から他方に対して申入れをなした場合には、この他の締約国はこれに対して同情好意的な考慮を払い、協議をなすために適当な機会を与えよ、こういうのが相互的にきまつております。今申し述べましたように、不測の事態が起つて日本が困難に直面するような場合には、この二十四条の規定を活用していただきまして、適当な解決をするように、条約全般にわたりまして企業運用実施が適切妥当なものになるように、これを活用していただきたいということをこの席でお願いをしておきたいと思います。  既得権の問題でありますとか、あるいは州によつていろいろ内国民待遇に差異があるという問題、あるいは国家企業と競争的関係に立つ民間私企業の問題とか、いろいろありますけれども、これは条約の根本の大きな問題には触れませんので、私は以上述べましたごとく二点について意見を述べまして、皆さんの御参考になれば仕合せだと考える次第であります。  簡単でありますが、以上述べたところに希望をつけまして、この条約には賛成をしたい。現在無条約関係でありますために、日本がいろいろ不利益をこうむつておりますことは、皆さん御存じの通り、アメリカ入国するのが非常に困難である、そのほかいろいろの面で支障を起しております。これらの点から見ましても、早くこの通商条約が成立いたしまして、実施に移るということを希望いたしますので、あわせてこのことをつけ加えまして、私の説明を終らせていただきたい。いろいろ御清聴ありがとうございました。
  51. 上塚司

    上塚委員長 ありがとうございました。依田信太郎君に対する質問はございませんか。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつと一点お尋ねしたいと思います。旧株取得の問題でございますが、三箇年はいろいろな条件を想定して一応きめられております。これからの日本経済界の見通しとして、はたして三箇年の間にその各会社におきます資産の再評価が順調に行き得る見込みがあるかどうか。これは法律とは別の問題で実際の見通しということが法律の効果を決定することになると思います。そういう意味で財界における一つのお見通しをお伺いしたい。
  53. 依田信太郎

    ○依田参考人 御質問の点につきまして明確には見通しが立ちにくいと思います。経済界では三年では短かいから五年にしてもらいたいという意見もございましたが、しかし十箇年の条約の中で半分適用しない規定を置くことは、非常にむずかしいのじやないか、まず三年ぐらいが妥当ではないかというような点で、われわれは三年で納得したわけでございます。長いほど調整がしやすいことは言うまでもございませんけれども、まず三年ぐらいでがまんをすることがいいのではないかと考えております。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行についてちよつとお尋ねいたします。午前中話のありました通産委員会または大蔵委員会からの連合審査の問題はどういうふうになりましたでしようか。
  55. 上塚司

    上塚委員長 その点についてはこの質疑を終了いたしましてから、理事会を開いて協議するつもりであります。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 申入れはございましたか。
  57. 上塚司

    上塚委員長 申入れはまだ私のところに来ておりませんけれども、すでに通産委員会大蔵委員会において連合審査会を開くという決議をしたということを聞き及んでおります。  依田信太郎君に対する御質問はないようであります。どうも御苦労さまでした。  次に日米通商航海条約に関する質疑を続けます。通告順によつて質疑を許します。福田君。
  58. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 私は第八条第二項の問題について若干の質疑を行いたいと思います。  まず第一は、アメリカの上院におきまして、第八条第二項に関して附帯決議がされた、いわゆるリザーヴエーシヨンの条項を設けたということを伺つております。この点について、はたしてアメリカ政府筋からわが方に対して何らか意思表示があつたかどうかということが第一点。  第二は、もしアメリカ政府からこの八条二項に関する留保条項について正式通告ないし連絡があつた場合、わが国としてどういう態度をとるか。調印した条約についていろいろ手をつけることは技術的にも非常に困難であると思いますが、対等の独立国としてわが方も当然何らかの措置に出ずべきであると思う。これに対する政府の所見を伺いたいと思います。
  59. 下田武三

    ○下田政府委員 御質問の第一点については、私どもが新聞で承知しておると同様の上院の附帯決議内容を通報して参りました。それだけのことなのであります。  御質問の第二段の点については、政府としてはまだ確定した見解を申し述べる段階に至つておりません。と申しますのは、米国の上院が条約について附帯決議をいたしました場合に、批准権者たる大統領が、その決議にのつとつた留保を必ずしも常になしておらないのでございます。現にNATO条約を先週の金曜日に大統領が批准いたしまして、ただちに米国国務省に批准書を寄託したのでございますが、上院の審議の過程においてこういう附帯決議をいたしておるのであります。つまりNATO条約批准すると、外国におります米国軍人が外国の裁判所で裁判される場合が発生いたしますが、その場合に外国の裁判所は、はたしてアメリカの裁判所において米国人の人権が保障されると同程度の人権の保障があるかどうかという点に疑念を持ちまして、そういう場合には、外国の裁判所にアメリカ代表者を立ち会わせる、もしその代表者が人権が保障されてないと認めた場合は、ただちに米国政府に報告して、米国政府は必要と認めた場合には、当該国政府に対し外交交渉を行つて、その裁判の被告の人権の保障ということを確保しなければいけないという趣旨の附帯決議をいたしました。ところが二十四日に大統領が批准したときには何ら留保しておらないのであります。従つて批准権者たる大統領が、必ずしも常に上院の附帯決議に沿つた措置をとるとは限らないのでございます。従つて御指摘の第八条の三項について、上院が付した附帯決議をそのまま大統領が取上げて批准に際し留保するかどうかという点は、未確定な問題でございます。しかしながらもし万一仰せのように、米国政府がその附帯決議に沿つた留保批准に際しなす意向がある、こういう申出が正式にありました際には、もちろんわが方としても御指摘のようにこれに対抗する措置、すなわち留保内容は、米国の州におきまして、公共の安全あるいは公衆の保健等の見地から、医者であるとか弁護士とか公証人であるとかいう職業を米国人のみになすことを許しておりまして、それと同様のことを、条約批准後も引続き米国において行い得るようにせよというのが留保の趣旨でございますが、もしそういうことを大統領が批准の際に正式の留保として申し出る意向がございましたならば、日本においてもこれに対応して、たとえば、日本人に対し弁護士になることを禁じている州の出身者に対しては、日本でも弁護士をなすことを禁止し、または制限するという留保措置をとりませんことには、両国間に不均衡が生じますので、ただいまは仮定の問題でありますが、内々そういう措置も研究しております。
  60. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 大体御趣旨はわかりました。御承知の通りに自由職業は、アメリカでは特に社会的にも高い目をもつて見られておる大事な職業分野でございます。私ども考えとするならば、おそらく留保条項は通る見通し力強いのではないかと思う。そうなりますと、こちらは批准してしまう、向うは留保批准をする、わが方は向うがはつきりしないうちに無条件批准をしてしまう、非常な片手落ちになると思うの、でありまして、一応見通しとして、まず留保批准というものがほぼ確実と考えられる今日におきましては、むしろ相手側の態度をはつきり確認して、それでわが方も当然条件付の批准をするというふうに合せておきませんと、片手落ちが起るのではないかということを考えますので、この点政府においても当然心得ておると思いますが、慎重にまた迅速に相手側の態度を確認されることが必要であると思います。これについて伺いたいと思います。
  61. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの次第まことにごもつともでございましても、もし早く米国の上院がああいう趣旨の留保決議して米国政府から正式の申出がある事態になりましたら、当然日本がなさんとする留保も正式に確定いたしまして、国会の御承認を得られたのでありますが、何分米国上院の会期末になつてそういう留保決議が出ました。またこの留保日本のみを対象にしておるのではありませんで、同時に付議されたドイツ、デンマークその他六箇国との通商航海条約についても、まつたく同様の附帯決議をしております。従つて米国政府、大統領がいよいよ留保するかしないかという問題をきめる前には、多数の関係国と打合せを要します。そしてお互いに、あらかじめ自国がなさんとする留保について納得した上でやることになると思いますので、米国政府の意向が確定するにも、多少時間を要するのではないかと思いますし、また米国の上院も附帯決議をして、あとの実際的の措置批准権者たる大統領にまかせて、とにかく条約条約として可決いたしておるのでありますから、日本側としては、この条約実施が一刻も早いことを有利といたしますことは、参考人の御意見の通りでございまして、わが国会におかれましても、米国の上院と同様、留保の問題はまだ確定しないのだが、もしアメリカ側がして来たらそれに対応する措置をとるということにして、条約条約としてすみやかに御承認あらんことを切望いたす次第でございます。なお会期後になつて米国から正式の意向の表明があり、これに対してわが方のなさんとする留保の形式、内容等がきまりましたならば、この留保がもし条約内容を実質的に変更する効果を持つものであつたならば、これは当然次の国会に提出して御承認を仰ぎたいと存じております。ただこの留保がきまるまでは条約自体の承認を握りつぶすということになりますと、これはまたせつかく早く実施いたしたいと思いました条約実施が遅れることになりますので、米国の上院と同様に、条約それ自体は一旦可決して、留保の問題は政府の善処に期待するということでただいまのところお考え願いたいのであります。
  62. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 そうなりますと、国会は近く会期が終了いたしまして、事前の国会の承認を得る余裕がないが、との留保の必要が生じた場合に、これは形式論になりますが、わが国留保の意思表示の形式、たとえば交換文書をつけるとかその他の形式の問題で承りますが、それはどういうふうにお考えになつておりますか。
  63. 下田武三

    ○下田政府委員 ただいま仮定の問題ではございますが、研究いたしておりますのは批准書に添付いたしまして、日本政府の宣言を付すことを考えております。これは日本国民に対して一定の職業に従事することを禁止しまたは制限する米国の州の出身者たる米国人には、それと同様な禁止または制限をする権利留保する、これは権利留保するということに考えたいのであります。と申しますのは、日本でも聖路加病院の医者でございますとか、あるいは学校の英語の先生とか、いてもらつた方が都合のいい人もおりまして、全面的に禁止するということはかえつてさしつかえがありますので、適当と認める場合には禁止しまたは制限する権利留保する、そういう建前の宣言を政府批准書に添付しておくという形式が、今一つ考えられておるのであります、なおこの問題は米国側留保の形式、内容とにらみ合せて考える必要がありますので、ただいまのところ何ら確定したことは申し上げられないのであります。
  64. 和田博雄

    ○和田委員 ちよつと関連質問をしたいのですが……。
  65. 上塚司

    上塚委員長 あなたの時間の中ではいけませんか。
  66. 和田博雄

    ○和田委員 私の時間の中へ計算してくださつてけつこうです。  今の点でちよつと関連してお聞きしたい点は、今度の留保というのは、どうもわれわれとしてはつけてもらいたくない留保だと思うのですが、何か特別にアメリカにそういう留保をつけなければならなかつたような事情でも発生したのか、どういうところから来ているのですか、その留保の出て来た理由は。
  67. 下田武三

    ○下田政府委員 実はわが方は交渉中におきまして、はつきりこの問題をよく認識いたしておりまして、必要な留保と申しますか、必要な手は条約交渉中に打つてつたのでございます。御承知の通り日本国憲法第二十二条に、公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有するということがありまして、しかも「何人も」という字が使つてあります。そこで、それは日本人だけの権利か、あるいは外国人にも権利があるのかという憲法論もあつた次第でありますが、新憲法下のわが法制は、御承知の通り非常に門戸開放でございます。そこで日本の法制で、もし外国人に禁じておるものがあれば、これは明白に条約自体に禁ずる必要がございますので、法制を検討いたしますと、水先案内人と公証人だけは日本人でなければならないというので、議定書の第五項に、あれだけは例外とするという留保をわが方ははつきり付しておるのであります。ところがアメリカの従来の憲法論によりますと、条約はフエデラル・ローには打勝てないまでも、ステートのローには打勝というのが多数説であつたのでございます。そこで米国政府も多数説に従いまして、本条約が成立すれば、これに反する州法はそれによつてオーヴアーライドされるというように感じておつたのであります。ところが、御承知のように米国上院の今議会に、大統領の条約締結権を制限してやろうということを目的としたブリツカー決議案なるものが出されました。これは各州の出身者たる上院議員が州の立場を非常に尊重する見地から、州法が逆に条約制限しまして、州法と両立し得ない条約は大統領は結んではいかぬという趣旨の決議案を出しました。これは結局否決されましたが、否決された半面に、ステートの利益を代表する上院の意思が反映されまして、米国政府当局考えていたところと反して、結局条約承認するが、同時に州法で外国人の就業を認めてないものについては、依然としてその禁止制限を継続してもらいたいという附帯決議が出たわけであります。アメリカの憲法問答と密接な関連がある一つの問題だと心得ております。
  68. 和田博雄

    ○和田委員 自由職業ですから、今福田君が触れられましたように、高級な職業だと見られておるわけであります。たとえば著述業とか医者とかあるいは弁護士とかそういつたもので、だからこういうものを留保して行くということは、通商航海条約の中で科学であるとか宗教であるとか、いろいろな点でお互いに相互主義によつてつて行こうというプリンシプルがあるわけです。だから非常に異様な感じがするのですが、私どものちよつと感じるところでは、今非常にアメリカではいわゆる反共的な考え方、いわばマツカーシー旋風でヒステリーみたいになつて、そういう点でこういうアンチ・コミユニズムの風潮と関係があるのではないかという感じもするのですが、そういう点はどうなのですか。
  69. 下田武三

    ○下田政府委員 今回留保の問題になりました第八条第二項の点につきまして、御指摘のマツカーシー主義のような考え方は全然ないようであります。これはむしろバー・アゾシエーシヨンなり、あるいは医師の協会なり、アメリカの州の弁護士会とか、そういう方の利益が非常に強調されまして、実は日本におるアメリカの弁護士、これは弁護士試験を通つて日本の弁護士になつておる者もあるのでございますが、この上院の附帯決議で実は大あわてしておるような状態でございまして、結局アメリカの国内におるそういう同業者の利益尊重という声が強調されたのではないかと存じます。
  70. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 私はこまかい点についてお尋ねしたいのですが、それは留保いたしまして、次の機会に譲ります。きようは総括的に三、四の点についてお尋ねいたしたいと思います。  今後アメリカの資本に入るかどうかということは、この条約の条件とは別個に、さらに大きなアジアにおける政治的な情勢でありますとか、アメリカ経済情勢というものに左右されると思います。従つて今度の条約が旧条約と大きな差異を示しております特色として資本の導入という点が目につくわけであります。その点から一点ながめますと、今は急速にそういうことはないかもしれませんが、将来アジアの政情やアメリカ経済情勢によつて、アジアの平和を確保できるということになつて、軍需産業から平和産業に転換するというようなことになりますと、相当外資が入る場合も想定しておかなければいけない。そういう前提に立つて実は大臣にお尋ねしたかつたのですが、お見えになりませんから政務次官にお尋ねいたします。こまかいことは与えられた時間中であるから説明いたしませんが、だれが読みましてもわれわれまず感ずるのは、いわゆる民法におきまする獅子とうさぎの契約であります。平等なものが実は不平等なんだ、そういう感じを実は受けたのであります。それらがどこにあるかということは指摘するまでもありません。そこで政府としては、こういう条約をお結びになつて、今のアメリカ日本経済の実力差を認められて、なおかつ日本経済の自主性を守る、あるいは立場は違いましても民族資本の独立を守るということについては、一体どういう御方策でこれを守られんとしておるか。その経済上または政策上の御方針を承りたいと思います。
  72. 小滝彬

    ○小滝政府委員 私から申し上げるまでもなく、資本は非常に臆病でありますから、よほど日本経済状態がよくならなければ、そう恐れるほど外国の資本は入つて来ないと存じます。大いに入つて来るようなら非常にけつこうなことでございます。しかしそれでは万が一にも非常に入つて来るようになつたら、こういう自由な条約をつくつてどうするかという点が重要なポイントでありましようが、しかしこの条約を結びましても、日本外資法というものは生きております。制限業種もあるし、また送金を伴うものである限りには、外資法によつて日本政府の許可を受けなければならないわけであります。現に日本で外国の資本がどれだけ入つておるかと申しますと、株式でもようやく百億にすぎない。五千数百億の株式の中で百億ぐらいしか入つていない。なぜかといえば、結局外国人は送金の保証のない日本で、いくら円をたくさん持つてつても、何ら彼らとしてはうまみがないわけでありますから、何としても日本で資本を投下するのには送金保証というものを要求するのでありますが、その送金に対する許可、不許可というものは大蔵省の方でこれをよく見守つておりますので、それが日本経済に非常におもしろからざる影響を与えるおそれがありますならば、大蔵省の方で外資に関する審議会も設けておりまして、十分慎重なる検討をいたしましてこれを押えることができますから、外資が入つて来て非常に日本経済が混乱するおそれがあるというふうなことは、私ども考えておらない次第であります。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと制限業種を確保してあることと、それから為替管理ということがつまり日本経済の自主性を守る防波堤だ、そう解してよろしゆうございますか、そのほかにございませんか。
  74. 小滝彬

    ○小滝政府委員 為替管理と申しますか、外資に関する許可制度、これは為替を守るためでありますが、それに制限業種並びに日本経済の実力であらうと思います。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 しかしこの十二条の為替制限の問題とか、外資法のあれは非常に弾力性のあるものであつて、しかも条約によりますと、こういうことに対する判断を二十四条の協議事項にかけられると思うのです。そうなりますと、アメリカ側経済的な圧力あるいは政治的な意見というものが、この日本産業を守るために今言いましたような為替制限をするということ、それは認められない原則になつておるのでありますか。
  76. 小滝彬

    ○小滝政府委員 この議定書の第六項をごらんになりますと、「いずれの一方の締約国も、外資の導入について、第十二条2で定める通貨準備の保護のため必要な制限をすることができる。」こういうふうになつておりますので、この点でも保障せられておるのでありまして、そうした心配はないものと考えております。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 その点について、黄田局長にちよつと伺います。
  78. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいま政務次官から申し上げました通りでありまして、一つは仰せのごとく制限業種、これが相当広くなつております。これはこの前も私が申し上げました通り、これだけ広い制限業種をつけるところはないのでありまして、これは一方から申しますと外資の入りにくくなるかもしれない業種が多いということになりまして、片方から見ますとかえつてその方からは都合の悪いことでありますけれども、国内産業の保護ということから申しますと、これが相当広くなつておる。その次に入つて来る外資の審査をなし得る、これは議定書の第六項に書いてある通りでございます。そのことと、それからもう一つは例の旧株取得制限、こういう三つでほとんどあらゆる場合がカバーされるというふうに考えております。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 その問題についてもう一つこちらからお尋ねしたいのは、十八条の裏返しでありますが、たとえばカルテル、トラストというような独占的性格を持つようなものについては禁止する、これは逆を言えば、日本側から申しますと、やはりおそらくは防波堤の一つになるのじやないか。役人の皆さんはそういうふうにお考えになるかどうか知りませんが、経済界はおそらく主要な防波堤というものをここに置いておるのじやないかということが想像されるのです。つまり資産の再評価によりまして堤防を高くする。さらにカルテル、トラストまでは行きませんでも、こういうような輸出組合を初めとします独占的な統制といいますか、そういう慣行によりまして防波堤を高くして、こちらの経済的な弱点をカバーして行こうということだと思いますが、それだけが一応この日本の資本の自主性を守るための防波堤だと思うのです。これは今おつしやつたように、今までアメリカが結んだ他の条約との間においては例を見ないものだということでございますが、しかし問題は、先ほど安井教授からも話がありましたが、この説明書にも示されておるごとく、今までアメリカが結びました通商条約というものは、欧州の民族資本の独立を守ろうとしている国々におきましては、ほとんどまだ協定ができていないように思います。問題は、こういうような国際経済の中で資本の独立を守ることに絶望しておる国々、そういう国々との間において結ばれましたような、いわゆるめかけ契約のような条約にすぎない。これをもつて国際的な水準とすることは、われわれは考えられない。しかも後に問題になると思いますが、欧州その他の国々におきましては、こういうような自由競争の原理とはいささか違つて、国際経済の場合におきましては、相当経済的なナシヨナリズムというものは相かわらず強い。ドイツにおいても英国においてもしかりであります。しかもその場合に、日本とかドイツ、英国あたり、国際経済の中で経済の自立を守れるか守れぬかというようなボーダー、ラインにあるような国におきましては、今言つたようにこの協定であるとか、あるいはMSAの協定に示されたような十九世紀的な自由主義の経済原則というものは、必ずしも今日の大勢では遺憾ながらないわけであります。従つて私はここでむしろ日本として考えるべき問題は、そこで古い経済的な保護政策をとれということを私は言うのではございません、そういう意味でなしに、こういうことをお考えなつたことがあるかどうかをお尋ねしたい。たとえば英国におきましても、ドイツにおきましても、すでに他の巨大な資本主義国との関係における資本の自主性を守るために、それからもう一つは、国際競争におきましてコストをいかにして引下げるかという問題と兼ねて、やはり経営における生産費の切下げ、コストの引下げの政策の一つといたしまして、日本のような低賃金、労働強化政策をもつて行くというような考え方でなしに、むしろ労働の生産性を確保するには、労働生活の安定と労働者の生産に対する期待性といいますか、経営参加を新しい制度として取入れつつある。これを日本経済の実情におきまして、対外的な関係におきましても、国内におけるコスト引下げのすべての方策の一つとして考える場合におきましても、ぜひ考慮すべきではないか。私は国家資本が今までの国家予算の中から、国家に援助資金として課せられる資金援助、資本援助、あるいはまたシンジケートができて、紡績なら紡績産業に対する援助資金が来る、それは元利の支払いをもつてわれわれが縛られるだけでございますが、そういう形でなしに、今度この条約で予定されておりますようなまつたくプライヴエートなキヤピタルが入つて来ることになります。個別資本の中に入つて来る、そうしますと、そこにおけるいろいろな国際的友好関係を深める、あるいは将来の――まさに友好関係でございますから、一方が一方を支配するような形はこれは友好ではない、弱い資本の国がこれを確保して、ほんとうに国際協力と生産の能率を上げて行くためには、あくまで国内の態勢として経営参加の問題はどうしても、党のいかんを問わず考えるべき情勢に来ておるというふうにわれわれは思うのでありますが、その問題についてお考えになつておられるかどうか。あるいはまた今までそういうこともあわせ考えられながら、この条約締結において日本の資本とアメリカの資本との関係をお考えなつたかどうか、お尋ねしたいのであります。
  80. 小滝彬

    ○小滝政府委員 ただいまいろいろ国内の労働関係なり、コストの引下げの問題をおつしやつたのでありますが、コストの引下げにも、今の資本の状態からいえば、合理化するためには外国と協力した方がより国際競争に有利な立場に立つ。またできました製品にいたしましても、どのみちどこの国もが封鎖的な経済をやつておりましたならば、その製品も送り出すことができないのでありまして、十九世紀的な自由経済原則に立つているとおつしやいますけれども、この条約というものは最も新とい型であつて、そしてこの条約実施せられるということによつて日本の状態も改善して行くことができるというふうに私どもは信じておるものでございます。ことに経済力日本の方が弱い場合、こうした開放的な条約日本にとつて不利だというようにお考えになつているようでありますが、これはたての反面でありまして、たとえばこの条約ができました場合、世界の通商金融の中心であるところのアメリカへ行つて日本の商人が活動することができる。しかるに現在においては三箇月で期間が切れて六箇月やつておいて今度はヴイザを更新するために千何百ドル払つて日本へ帰つて来るということを、われわれまのあたり見ているわけであります。そういたしますと、中南米の貿易考えましても、また日本貿易の世界的な発展ということを考えましても、この重要なるアメリカの市場において自由に活動し得る足場をつくるということは、日本の国内経済をよくして行く上にも非常に意義のあることを考えまして、私どもはこの条約は一日も早く承認せられんことを希望いたします。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 次官は問題を取違えておられますので局長にちよつとお尋ねいたします。私の問題にしているのは、労使関係を論じているのではない、あるいはまたコスト引下げの問題を論じているのではありません。そうではなくて、日本の経営または資本の自主性をいかにして守るかという問題を論じておる。その観点に立つて私は経営参加の問題も大きくここに取上げるべき問題だというように信ずるので、そういう意味でお尋ねしているわけです。御答弁をお願いいたします。
  82. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 外資の導入をはかるということは非常に必要である。但しその外資を導入するにあたつて、巨大なる資本が日本に入つて来て、日本の自主性を奪い去るというおそれはないかという問題と考えるのでありますけれども、これは、いろいろな点でそのおそれがないように手を打つてあるということを先ほどの御答弁で申し上げたのでございますが、外資を入れる方といたしましては、それに対する相当な保障を要求するということは当然でございます。それから今度は外資が入つて来られる方としては、それによつて相当の脅威を受けることなきやというので、それに対するいろいろな保護策をとろうとする、これも当然なことであります。その結果といたしまして、たとえばけさも安井参考人から御発言がございましたけれども、インドではすでに一年以上交渉しているけれどもまだできない。これも外資条項に関する問題が問題点となつているようであります。これも先ほど申し上げましたように、外資を出す方と受入れる方との妥協点が見つかり得ないというところでひつかかつているようであります。その点、日本アメリカとの本条約におきましては、外資もなるべく入つて来てほしい、但し守るべきものは守りたいという点で妥協ができた。それが先ほど申し上げた三つの点であります。それからイギリスなんかもポンドの交換性を回復するために輸入制限を相当強化しておりますけれども、外資が入つた場合においてそれの利潤の送金ということはまつたく自由にしておるのであつて、その点では日本の方がよほど臆病な審査権を持つておりますけれども、イギリスのようにその点では非常に神経質な国でも、送金の制限というものは少しも設けていない。従つて外資が相当入つて来ているというような実情でございますことを、御参考までに申し上げます。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 私が言いましたのは、今言つたように、得た利潤の送金だけが一つの防波堤ではないのでありまして、利潤そのものが獲得される過程を国民的に監視する、そして利潤を生む過程において強調して行くということなのです。今英国においてもドイツにおきましても、労働者の経営参加の問題はすでに認められておるわけであります。そういう意味で私はお尋ねした。そういうことをお考えになる用意があるかということを私はお尋ねしたのです。
  84. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 通商航海条約で問題になりましたのは、先ほど申し上げましたような外資が入つて来た場合と、入つて来る条件を備えること、それからそれとの関連において日本側の保護措置をどうするか、これがメイン、ポイントでございます。日本の工業において、労使の関係の経営参加とかいうことは主として国内的の問題でありまして、通商航海条約とは直接的な関係はないのであります。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 これは重要な問題でございます。法律そのものは直接関係はありませんが、政策的に見れば、こういう条約を結ばれる以上は、国内におきます資本の自主性を守るために、しかるべき対策を考えるのが当然の責任だと私は思う。皆さんが単にアメリカとの折衝条約の交渉をし文章を書く、そういう技術者として言うならば別ですが、私は皆さんをそういうふうに見下げておらないのであつて日本経済全体のことを常に考えながらこういう通商条約を結んでおる、そういう全体の配慮があるということで言つておる。もちろんこの条約の中に書くということではありません。またこれはむろん国内法を無視するわけではない。国内法をある程度前提にしておる。ですから国内法においては内国民と同様の待遇を得たいということを言つておる。国内法の存在を認めておる。従つてそういう制度として私はそういうことをお尋ねした。しかしこのことばかりにとらわれておりますと時間もなくなりますから先に進みます。われわれも提案したいと思つておりますが、このことは日本経済の自主性を守る一つの対外的な有効な政策として、同時にそれがコスト引下げの最も有力な一つの政策として経営参加の問題は、これから御研究願いたいことを希望しておきます。  次にお尋ねしたいのは、きのうでございましたか、外務大臣が、実はこちらはアメリカとの関係においては弱いのだ、だからこういうレツセ・フエール、レツセ・パツセの政策をやると心配だ、支配される、ところがこれをほかの国――東南アジアの諸国だろうと思いますが、これらの国と条約を結ぶときの一つのモデルになる、強い国には国家主義的な政策をやり、弱い国には自由主義的な政策を要求するのはいけないので、そちらではこうしてこちらでとりもどすというお考えをおつしやつた。そうであるならばお尋ねしますが、一体こういうモデルで東南アジア諸国通商条約を結べる見通しをお持ちでありますか。われわれの仄聞するところでも、すでにインドは資本投下の問題と条件について非常に強い反発を持つておる。これは長年英国の帝国主義に支配されて参りました民族の当然の本能的な要求なのです。その点については日本よりはるかに敏感だ。ビルマにおいてもしかり、パキスタンにおいてもしかり、アメリカとやつたら損をする心配があるが、弱い国とはこの条約でやつたらとれるというお考えのようですが、この点われわれにすれば問題だけれども、それは別として、東南アジア諸国とこれと同様な投資保護法的な条約が結べる見通しがございましようか、これを伺いたい。
  86. 小滝彬

    ○小滝政府委員 アメリカとの交渉におきましても一年以上かかつたのでありまして、東南アジア諸国との条約にも時間がかかることは当然であります。私はちようどこれと同じかつこうのものができるということを期待しているわけではありませんが、この程度条約であつたら、今後折衝によつて東南アジアとも十分締結し得る見込みがあるというように考えております。なお私はこの条約アメリカとの関係において、日本が特に不利な地位に置かれているというようには解釈いたしておりません。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことでお逃げになつたようですが、実は大臣はきのうそう言われたのです。われわれはその認識について非常に甘いと思つております。アメリカとの関係においてこういう条約ができると日本経済が従属関係になる、あるいは利潤を搾取されるかもしれぬ、しかしそのかわり一方において東南アジア諸国と、弱い国と結べば、今度はこつちが搾取する関係になる。翻訳して言えばです。だからアメリカとは損をするが、同様な条約が結べるから、こつちは得をするからこういうことをやつたのだ、ときのう言われた。私はその考えは甘い考えであつて東南アジア諸国とこれから交渉をやつても、こういうものでは受付けられないと思う。そういうことになると、とられる心配一方だ。そういう結果にならざるを得ないので、その点はとくと御勘考願いたい。御注意申し上げておきます。  それからきようは重要な点だけお尋ねしておきますが、第六条についてお尋ねしておきます。これはアメリカ籍の会社に限りませんね。公用徴収の場合です。アメリカ籍の会社でございますれば、むろんこういう特別の保護規定が適用されるわけでございますが、アメリカ籍でなくして、たとえば英国籍の会社でアメリカの資本が非常な利益を持つている会社、あるいは日本籍の会社でもつてアメリカ資本がその株の過半数を占めているというような場合、そういう経済的なインタレストのある会社に対して公用徴収する場合においても、この第六条の規定が適用されるということでございますね。
  88. 小田部謙一

    ○小田部説明員 御説明いたします。第六条の三項に規定してある「いずれの一方の締約の国民及び会社の財産」という場合は、アメリカの国籍だけを予想しております。しかし第四項にございます「いずれか一方の締約国の国民又は会社が実質的な利益を有する企業は、」云々と書いてあります場合は、御指摘の通り、カナダ国籍のものであつても英国国籍のものであつても、アメリカ資本、アメリカの利益がたくさん入つているというものをさしております。そのかわりこの条約の終りの方に二十一条か何かにございますが、たといアメリカ国籍のものでございましても、その実質上の利益を第三国人が支配しているというものに関しましてはこの条約から除外している。つまり必ずしも国籍によらずして、実質的に支配しているかどうかということに、重点を置いて規定しております。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことになりますと、実はアメリカ籍以外つまり日本籍の会社に対しましても、他の日本籍の同種の企業アメリカ資本の入つてない会社と入つている会社、たとえば例をとりますと、電気産業なら電気産業で公用徴収をする場合に、非常な差別が出て参りますね。国内法における憲法上の保護を受ける。そこで差別待遇が出て来ることと、もつ一つわれわれの恐れることは、そういう公用徴収のような情勢が考えられたときに、完全に日本資本の会社がアメリカ人の名前を借るわけです。つまり名義を借りて、株式の表面の名義人はアメリカ人に切りかえてしまう。そうしますと、他の日本籍の日本資本の会社よりは、公用徴収の場合に非常に有利な、不公平な待遇を受けることになるわけです。従つて私は結論を申せば、ここにおいてもなおかつ日本の会社と同様の差別されない平等の国内法の待遇を受けるというように規定されるのが当然だと思う。われわれはアメリカに行つてつてもそうなのです。それをここで言えば、おそらくは将来の公用徴収のような場合を考えたときには、日本において日本の国内法で日本の会社または企業に対して行われますよりは手厚い制度がここにしいてある。場合によれば今言つたようにもぐりで、株式の名義だけアメリカ人の名前を借りて日本の会社がやれるわけです。すると他の日本の正直な産業よりは、はるかに有利な条件でもつて公用徴収されるという結果になる。従つてぜひこれは国内の日本産業と同様な取扱いを受けるというように規定すべきが当然だと思う。どういうわけでこういうことになつたのか。これもさつき言つたように外資が早く入らぬと言つているが、早く入ることを考えて漸うもやつておりますが、これは不当な規定だと思うのです。友好通商条約でも何でもございません。アメリカ投資保護法です。
  90. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 この条約全体を通じまして、内国民よりもより以上の待遇を相手国民に与えるという条文は一箇条もございません。全文内国民待遇以上のものをやるということはどこにもございません。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 書いてありませんとおつしやいますが、これはそう書いてありますよ。日本の公用徴収の現実を御存じですか。内灘を公用徴収された場合に一体どんな手続をされたか。迅速にして正当なる価格で徴収しておりますか。じようだんおつしやつてはいけません。そんなことをどこでやつておりますか。ここに書いてあるような公用徴収が日本国内で現に行われておりますか。そんなことは行われておりませんよ。内灘はどうしておりますか。この間から要求しております大高根の徴収はどういうふうにして行われておりますか。こういうことは迅速にして公正にだれにでも納得できるような仕方で正当に評価して取上げてはおりませんよ。公用徴収。これは不当ではございませんか。
  92. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 第六条の第四項をお読みくださることを希望いたします。ここにはきちんと内国民待遇以上のものはやらない、同じことだ、あくまでそれ以上のものはやり得ないということがちやんと書いてあります。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 そんならそういうことを書けばいいじやないか。なぜこんなことを特別な例をお書きになるのですか。第六条、ここにちやんと書いてあります。「補償は、実際に換価することができるもので行わなければならず、」しかも迅速にやらなければならぬと書いてある。それがこの間の説明では一日二日ということはない、手続が済んだら迅速かつ親切にやつて早くということだ、一日を争うことでないという御説明であつたが、日本の徴収は、二年も三年も前にやつたやつがまだどうにもなつておらぬという状態です。
  94. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、速記をとつておりますからね。(笑声)
  95. 穗積七郎

    穗積委員 そんならなぜ国内法とお書きにならぬか。「内国民待遇」など削つたらいい。
  96. 下田武三

    ○下田政府委員 ただいま経済局長が申しましたように、財産の保護につきましては、四項におきまして「内国民待遇」というのが原則でございます。それに反しまして、もう一つ身体の保護というものについて、国際法水準の保護ということを特に規定しておりますが、身体の保護以外のものはすべて内国民待遇ということが、この条約を通じて一貫する思想でございます。しからばなぜ第六条の三項でこういうようにこまかく規定したかと申しますと、アメリカ側がよその条約にも入れておりますように、内国民待遇保障されただけではまだ保障が不十分だというので、こういうようなこまかい規定を設けたのでありますが、結局のところは、日本憲法で、何人といえども正当な補償を与えられずして財産権を奪われることなしという、この国内法の「正当な補償」という字と、第六条第三項にいう「正当な補償」という字とまつたく同じ意味なのであります。ただ「正当な補償」とだけ書きます、これは日本なら日本の一方的な解釈で定められてはかなわないというので、そこで、それをもう少し詳しく、あまり遅れて補償を支給されるのでは困る、あるいは償還期限の何十年という非常に長い公債で支給されては困るというようなこまかい規定を、アメリカ日本のみならず、どこの国とも書いてあるのでありますが、根本思想は、むしろアメリカ側の希望するところは日本国民よりも不利な待遇に置かれることが恐ろしいという考えでありまして、結局その内国民待遇をもう少しこまかく規定したというのが、第六条第三項の趣旨であります。もし穗積さんのおつしやいますように、アメリカ人に日本人以上の保護を与えるのだと解しますならば、これははね返りまして、アメリカにおいては日本人が米国人以上の補償をえられるということになるのでありまして、そんなことはあり得ないと同じように、それはもう締約国との間でおのずから常識的に了解のついているところでありまして、そういうように御心配になつて解釈になる必要はないと思います。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 それじやそれに関連して、この公用徴収をする場合の手続並びに法律はどういうことになりますか。
  98. 下田武三

    ○下田政府委員 これは日本国内法の定むるところによるわけであります。日本国内法というのは、憲法にいう何人といえども正当な補償なくして財産権を奪われることなしという根本思想であります。それにアメリカ人も均霑をしたいというのが先方の希望であつたのであります。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 その手続並びにそれの評価に対してアメリカ側が不服の場合は、どういうことになりますか。
  100. 下田武三

    ○下田政府委員 これは日本法の適用の問題でありますから、アメリカ人が不満がありましたならば、他の日本人と同様の手続で日本の裁判所に対して訴え出る、日本の裁判所は日本の法律を独自の見解に基いて解釈いたしまして、判決を下す、その判決が不服ならば、最高裁判所まで当該アメリカ人は訴え出て、裁判所の保護を求めることができるということになつております。
  101. 上塚司

  102. 野田卯一

    野田委員 アメリカ人が今、日本国内に所有しておる円資金、この金額は幾らぐらいになつておりますか。
  103. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 蓄積しております円資金は、映画関係がおそらく一番多いのだろうと思いますが、これが約十五億円くらいございます。そのほか自動車関係と石油関係が次いで大きいと思いますけれども、その的確な数字はまだはつきりはつかまえておりません。
  104. 野田卯一

    野田委員 リーダース・ダイジエストとか、ああいつたような関係のものはわかりませんか。
  105. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 リーダース・ダイジエストはほとんどございません。
  106. 野田卯一

    野田委員 ただいまの円資金は、大体外国銀行に預けてありますか。
  107. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 預金は、各銀行の業務上の機密になりますので、ちよつと申し上げにくいのでございますけれども預金の額は大したことじやないようであります。それから、おそらくこれらの金は、主として映画関係のものは外国銀行に預けているようであります。それから、これは一月に約一億円くらいずつたまるのですが、そのうち、ある一定部分をアメリカにドルで送らせてやるという協定がで、きましたので、今後もそんなにたまるものとは考えておりません。
  108. 野田卯一

    野田委員 そういう金は、送金を希望しておるのが大部分ですか、それとも内地に投資することになるのですか。
  109. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 送金希望が多うございます。
  110. 野田卯一

    野田委員 先ほどイギリスでは送金をちつとも制限しないと言いましたが、日本では送金を相当制限しておりますけれども、その金は、大体許されれば全部向うに持つて行きたい、こういう希望を持つている金でありますか。
  111. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 許されるならば送金したいというのが大部分でございます。
  112. 野田卯一

    野田委員 株式に対して投資をしたい、しかし政府側で許されない、というのが相当ありますか。
  113. 小滝彬

    ○小滝政府委員 これは野田委員の方がかえつてよく御存じかと思いますが、これまでありました外資委員会の一仕事を大蔵省の方でやつておりますが、々契約を審査いたしまして、これがプライオリテイのリストもあつて、それに適応するものであるかどうかということを見ますので、相当制限されております。たとえばチヨコレートの会社をつくるというのでは困るので、あのリストに応じて許可を出しますから、自然手続にも時間をとり、結果的には制限されたことになつております。今株式が百億ばかりで、貸付金、債券が百三十八億、石油の方が九十二億くらいになつているかと思います。石油の方は大部分アメリカ人であります。それから技術援助契約というものは、これはなかなか金で言えないのです。ロイヤリテイ等は年々払うので、はつきりした数字は出ないのですが、二百六十九件ばかり許されておりまして、そのうちで百九十四件がアメリカ人ということになつております。送金の方を見ますと、外資法ができましてから本年三月までに送つた送金は、千六百万ドル、それから技術援助の結果として、ロイヤリテイなどで送りましたものが、千三百万ドルであります。ただ本年はだんだん支払い時期が来まして、ふえますから、大体この四月から来年の三月末日までの予想をとりますと、二千百万ドル程度になるだろうというのが大蔵省の予想であります。
  114. 野田卯一

    野田委員 それから違つた問題ですが、日本アメリカに持つておりましたいろいろな不動産、動産、債権――これは賠償の関係ですが、それは現在ほとんど処分し尽されておるか、あるいはアメリカ政府が今持つておるのが相当あるか、その辺がちよつとわかつてつたらお伺いいたします。
  115. 小滝彬

    ○小滝政府委員 ただいま事務当局に聞きましたが、はつきりしたことがわからないそうであります。ただ御承知のように、日本人の持つておりました土地などは、向うにおる人間に返したものも相当あるそうであります。今向うへ電報を打つてこの条約に関連して調べさせておりますけれども、今までのところ報告が参つておりません。
  116. 上塚司

    上塚委員長 並木芳雄君。
  117. 並木芳雄

    並木委員 私はけさの安井郁氏の御意見の中で傾聴すべきものがあつたと思うのです。それはこの条約は表面対等であり、相互平等であつても、結局MSAというものによつてそれに色がつけられてしまうであろう、ですからできるならばMSAの協定ができ上るまでは、この条約批准を待つてほしい、こういう御意見つたと思うのです。そこでMSAの進行状態はどうなつていますか、これをお伺いしておきます。
  118. 下田武三

    ○下田政府委員 私は安井参考人の陳述を拝聴する機会がなかつたのでございますが、もしこの条約とMSAとが密接不可分になるものであるというふうにおつしやつたのだとしますと、これはちよつと私どものまつたく了解し得ないところであります。通商航海条約はたとえて申しますと、究気かあるいは水みたいなものでありまして、国際交通をするについての最も普通な一般条約でございます。これとMSAのような特殊条約というものは、これは関係があると言えばそれはあるに違いありません。なぜかと申しますれば、MSAの援助でただでもらう装備、武器等には、関税をかけないという措置各国でやつております。従いましてこの条約の関税の規定とは一致しないのでございます。また領事職務条約というものを見ますと、領事の特権について規定しております。これも実はアメリカ人の待遇と違うことは明らかであります。また領事の輸入する公用物品、これる関税をかけません。そういう面で関係があると言えないことはないと思いますが、どだい空気と水のような一般条約と、まつたく特別な目的を持つている特殊条約でございますから、全然関係がないというのが私は至当だろうと思うのであります。  なお後段の今交渉がどうなつておるかという点でございますが、これは毎回の交渉のあとで、できる限りのことはすでに発表いたしておりまして、それ以外に何らつけ加えるものはございませんが、要するにMSA条約というものは――すでに何十という条約ができておりまして、スタンダード・フオームが国際間にできておりますので、ほかの条約と違いまして、当初から根本的に両国意見が食い違うというような性質の交渉でないことは明らかでございます。
  119. 並木芳雄

    並木委員 昨日も第四回の交渉が行われたのですが、そのときに特に問題になつた点は何ですか。
  120. 下田武三

    ○下田政府委員 昨日の発表で十条文について原則的の意見の一致を見たがと書いてございますが、これは実は条文からいいましたら、十条に達するかどうかわからないのでありまして、むしろ各条文の中にいろいろな項がございますが、十項目と申し上げた方がいいと思うのであります。原則的には意見の一致は見ておりますが、その具体的表現につきましては、まだいろいろ話す余地を残していると存じます。
  121. 並木芳雄

    並木委員 この通商条約一般条約であり、今度のMSAの条約は特別条約であるというお話のようであります。そうするとMSAの方の条約一般条約たるこの条約に優先する、もし抵触する場合があつたときには、優先するということになりますが、そのことは両方とも同じ条約であるのですが、どういうところからわれわれは片方が優先し、片方が一般的であるというめどをつけていいのかどうか、伺いたい。
  122. 下田武三

    ○下田政府委員 これは国内法の一般法と特別法の関係とまつたく同じでありまして、一般条約課税に関して内国民待遇、最恵国待遇を規定していても、特別条約で領事には無税にするということになつておれば、特別条約が優先するわけであります。あたかも一般的には職業選択の自由がありますが、弁護士になるためには一定の試験を受けなければならないというように、弁護士法という特別法ではやはりそういう制限を付しているわけであります。その点は国内法と国際法と別に差別はないのであります。
  123. 並木芳雄

    並木委員 安井氏はおそらくそういう点を言つておるのだろうと思う。一般条約たる通商条約でいろいろ対等に見えるものを結んでも、特別条約たるMSAのとりきめで制限される、そうするとせつかくの今の空気と水ですか、それも濁つてしまうという意味にわれわれ聞いているわけです一そういう心配がなければけつこうでありますけれども、はたして全然ないかどうか。さつき州法とこの条約と抵触した場合に、どつちが優先するかということは、局長の答弁では条約の方が優先するように聞えたのでありますけれども、問題が残つていると思います。はつきり条約が優先するのだ、州法が条約に抵触するようなことがあつたならば、日本としてはどういうステツプでもつてこれに抗議が申し込めるのか、伺いたい。
  124. 下田武三

    ○下田政府委員 御質問の前段につきましては、MSA協定が特別条約であるから、その帰趨を見定めなければ、この条約の可否がわからないということを言われますと、日米間にはまだ領事職務条約も交渉中、二重課税防止協定も交渉中でありまして、航空協定実施の相談もいたしておりますが、ことごとく特別協定で、領事職務条約につきましては課税について特別の規定もいたします。二重課税防止協定についてはアメリカ側は一方で課税、一方で税をとらないというような税の規定のいたし方もしております。そうすると次々と出て来るあらゆる特別条約を全部見なければ、この水と空気の一般条約の可否がきめられないという議論になつてしまいますので、安井参考人の御意見はまつたく私ども了承いたしかねるのであります。  第二の州法と条約との関係でございますが、これは先ほど申しました留保をもし米国政府がなさらないといたしますと、これは明白に条約違反になります。何となれば八条の二項において国籍のゆえをもつて差別待遇をしてはならない、つまり日本人たるのゆえをもつて弁護士、医師になれないということを定めてはいけないということを規定している。もしアメリカ留保しなかつた場合には州法で弁護士、医師の資格を与えないということになると、これは明白に条約違反になるわけであります。そこでアメリカ政府としては条約違反の責めをのがれるためには、やはり大統領は批准の際に留保を付して来る公算が大ではないかと存じている次第であります。
  125. 並木芳雄

    並木委員 MSAによつて通商条約のよいとりきめも、スポイルされるであろうという心配があるときに、例の日本経済安定が先決であるという日本側主張というものは、その際アメリカの方にはどういうふうに反映しておりますか、新聞などではアメリカの本国の方の訓令を求めているやに聞いておりますけれども、この点なお問題が残つているが、はたして本国にそういう訓令を求めると言つているのかどうか伺いたい。
  126. 下田武三

    ○下田政府委員 その点も二回に及ぶ日米の間の文書の往復、メツセージの交換で米国側経済的、政治的安定がエツセンシヤルの問題であるということについては、完全に同意いたしておりますので、協定においてその趣旨をうたうことは何ら反対がないわけであります。今そういう趣旨を前文でうたうか、あるいは条文の中でうたうか、あるいはどの条文のところへくつつけようか、という技術的な問題が残つておるだけでございます。
  127. 並木芳雄

    並木委員 日本側でエツセンシヤルというふうに一歩譲つたのですか。日本としてはこれは先決問題である。ところが向うの回答、答弁はエツセンシヤルと書いてあると思う。こちらはエツセンシヤルというふうに了解を与えてしまつたのですか。
  128. 下田武三

    ○下田政府委員 これは必須な要件であるというか、あるいは先決要件であるかという言葉によつて、実際問題としては何ら差異がない。要するに経済的安定を尊重するのだという趣旨でございますから、実際問題としては差異がないと思います。
  129. 並木芳雄

    並木委員 差異がなくてまた問題がなければけつこうですが、その点が問題になつておるやに聞いておりますから、お伺いしたのです。そこで朝鮮の休戦によつて日本の特需というものは、減少して来る。それをカバーするためにMSAのアジア方面への割当も今度は相当割がよくなつていると思います。ですから日本へのいわゆる軍事援助の中に、またこれとともに域外買付、日本でつくつて外へ出すということが望まれておるのですけれども、その点については今までの交渉の過程で、どんなふうに話合いがなされておりますか。またこれらの期待についてどのような期待が持てるか、お尋ねしておきたい。
  130. 下田武三

    ○下田政府委員 日本以外に与える援助物資の域外買付の問題も交渉で取上げておりまして、いずれそういう一項目が入ることと思いますが、まだ内容について合意には達しておりません。
  131. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点これに関してお伺いしておきます。それは昨日外務大臣は中共承認の問題に関連して、中共承認ということは、今までの国府に対する道義上の関係もあつて、できるとは思わないけれども、中国の国民と友好関係を持つて行きたい、従つてまた貿易ども他の国々と同じように、そのレベルまでやつて行きたいというような答弁があつたのでございます。そこで日米通商条約締結することによつて、中共貿易というものに影響を与えないかどうか、つまり悪い影響を与えないかどうか、あるいはこれによつて大臣が昨日言われたように、中共貿易というものは促進される曙光が見えるのかどうか。政府としては中共貿易を今後どういうふうに展開して行くか。衆議院では近くこれを決議をすることになつております。  それとももう一つ、南鮮と北鮮との統一ができなかつた場合、南鮮と北鮮というものは二つ残ると思いますが、その場合に南鮮との間ばかりでなく、北鮮との間でも中共と同じような関係日本との間に出て来ると思います。北鮮との貿易については政府はどういうふうな方針で臨まれるつもりであるか、この二つをお聞きしておきたいと思います。
  132. 小滝彬

    ○小滝政府委員 これまでも大臣も申し上げたと存じますが、ただイデオロギーが違つておるから、そことは貿易しないというふうな偏狭な考えを持つておるのではなくして、現在においては国連の決議にもよりまして、日本は国連とこれまで戦つて来た中共なりあるいは北鮮との貿易制限せざるを得ない立場にあつたわけであります。今後政治会議がいかに動くかということは、今ただちに予断を許さないのでありますが、幸いに今後情勢が緩和され、そうした敵対関係がなくなり、中共がソ連と一緒になつて日本を仮想敵国とする同盟をつくるというような態度を示さないというふうになれば、今後ぜひとも日本貿易を、この近い隣国との間に、もつとよく打立てて行かなければならないと存じておる次第であります。日米通商条約との関係におきましては、この通商条約日本米国との間の通商航海関係を律するものでありますが、しかしこの相互通商航海関係が安定し、そしてそれに内国民待遇とか最恵国待遇というようなものが盛られており、かりに他の近接国との間にもそうした条約がつくられるということになれば、日米通商航海条約によつてアメリカ取得するところの利益なり便益というものが、これらの国にも均霑し得るわけでありますから、その意味におきましてはかえつて近接国との貿易関係にもよい影響をもたらすというふうに見ることができるだろうと存じます。
  133. 並木芳雄

    並木委員 北鮮の場合は……。
  134. 小滝彬

    ○小滝政府委員 北鮮の場合は先ほど申し上げましたように、これまでのところは国連軍と戦つておるので、自然日本からの輸出物資というようなものも制限しなければならなかつたけれども、北鮮についても中国に対すると同様の関係が生ずるというふうに考えております。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して、ただいま並木委員が午前中の安井氏の意見に対しまして質問をされましたときに、条約局長がお答えになりましたのを聞いておりますと、MSAと通商航海条約とは空気と水のようなものだとはつきりおつしやいました。外務省の方が一つ通商航海条約なら通商航海条約だけをごらんになつて、総合的にごらんにならないで、そういうふうに見られるのではないかと、私などはしろうとのせいか実はそんなふうに考えられるわけなのです。安井さんのおつしやいましたのは、MSAの援助がどういうふうになつて来るかということもはつきりわかつておらない間に、通商航海条約批准するならば、通商航海条約日本にとつて非常に不利に使われるような場合がある、こういうことを言われたのでございます。さつき並木委員日米間のMSAは特別協定だ、だから特別協定を先にしなければいけないのじやないかということをお聞きになりましたときに、条約局長は持別協定はMSAばかりではない、二重課税の防止協定とかいろいろなものをおあげになりましたけれども、そういうものとMSAと日米通商航海条約と混同して考えるのは、私は間違つておるのじやないか、こういうふうにしろうとですから考えるわけです。そこでMSAと日米通商航海条約考えられますことは、あるいはアメリカが今までポイント、フオアの形で東南アジア地域、未開発地域開発の形で援助をしておつた。そういうことがとうてい望まれない、違う形でしなければならない。そこで日本に援助を与え、そして日本に資材なり何なりを与えて、そこで何か製造して東南アジア地域に与えるような場合がある。そのときに必然的に外資なり何なりが入つて来ると思います。その場合の外資の入り方で、日本の平和産業で、ある程度コントロールするようなことが考えられます。そういうふうにして来てみますと、このMSAというのと、それから日米通商航海条約というものが、全然関係がないということは政府は言えないのじやないかと思うのですけれども、それは外務省の方と私の考え方との違いかもしれませんが、もう一度御説明願いたい。
  136. 下田武三

    ○下田政府委員 私安井さんの御議論を開いていなかつたのが遺憾なのでございますが、安井さんは国際法学者であられますから、おそらく通商航海条約とMSAとの関連の点を問題になさつたのだろうと思うのであります。もしそうでなくして政治的の意味において、つまり皆様からもお話がありましたように、経済的実力の差、あるいは日本アメリカからMSAのような援助を受けておる事実、そういうことの政治的な意味においてのこの条約との関連を考られるというならば、これは法律学者の言われることでなくて、これは全然政治問題でありますから除外いたしまして、国際法学者たる安井教授が、法律的連関の点を問題といたされたといたしますれば、これは先ほども申しましたように、連関して考えるのが実はおかしいくらいでありまして、それは国内法でいいますと、民法、商法のような普通法と、あるいは弁護士法でありますとか、公認会計士法でありますとか、まつたく特別なことだけを扱う法律との法律的連関を考えると同じことでありまして、実は、むしろこつけいだとすら私は思うのであります。それはしいて申しますれば、先ほど申しましたように、MSA協定で援助物資について関税はかけないとか、あるいは領事職務条約で、領事の公用品には関税をかけないとかいう関税とか課税とか、あるいは、領事は領事官の特権を認められるということで、国内法上の地位も違つて参ります。そういうふうに数え立てて申しますれば、それは、水と空気はあらゆる問題に関連があるから、すべてに関連を生ずるということは言えると思います。しかしながら法律的な意味においての関連とはそういうことを言うのではない。(穗積委員「それは政治論ですよ。」と呼ぶ)政治論でございますならば、私どもの何とも言うべきことでないのです。
  137. 並木芳雄

    並木委員 第二十一条の第一項の(d)のところに、「国際の平和及び安全の維持若しくは回復に関する自国の義務を履行し、又は自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置」こういう例外条項があります。さつきの次官の答弁で、この通商条約は中共貿易を緩和するという政府の方針と矛盾して来はしないかと思うのですが、いかがですか。
  138. 小滝彬

    ○小滝政府委員 私が申しましたのは、今後情勢が転換して、そうしてかりに日本と中共との間に、条約ができるような場合においては、米国がこの条約によつて日本で得た内国民待遇に、その新しくできた条約による最恵国待遇の規定を援用した場合は、その内国民待遇に、中共という日本の近接国が均霑し得るから、その意味においては、かえつてこの条約があることが、将来そういう国のために便益を与えることになるということを申し上げたのであります。この二十一条の第一項の(d)は、かりに日米間に国際紛争が起つて、そして日本が国際連合の一員であり、アメリカが懲罰を受けるというような場合に、日本の方は、あるいはある特定の品目について、国際協力のために、輸出禁止をするような場合があると思う。その場合は、「国際の平和及び安全の維持」云々のために、この条約には最恵国待遇とか、内国民待遇とか書いてあるけれども、お前さんの方には――アメリカに対しては、そういう待遇を与えませんぞというので、この二十条まで書いてあるところの、この原則的規定の例外として、そういう措置もとり得ることがある、とることを妨げるものではないという例外規定をここに設けたわけであります。でありますから、この条項は、日米関係が現在の状態である限りは、適用がない。が、しかし、万が一にも双方がわかれたキャンプに属するような場合には、この一項(d)を利用して、必要な措置をとつて、それがかりに最恵国待遇に反したもので、ドイツには日本の銅を送り、アメリカには送らぬという差別待遇をしても、それは条約違反にはならないということを書いてあるのがこの第二十一条であります。
  139. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、朝鮮の休戦に伴つて情勢がかわつて来る。政府は中共貿易を従来より一歩前進したいということは、バトル法その他の関係において、具体的にはどういうところから着手されますか、その説明がほしいわけです。
  140. 小滝彬

    ○小滝政府委員 今、日本と中共との貿易が自由に行われておらないという事実は、私ども率直に認めるものでありまして、これが緩和せられる方向に行かなければならない。イギリスも、現にそういう声をあげておるわけでありますが、しかし、現在の朝鮮の休戦というものは、非常に不安定なものであつて、警戒しなければならないということは、クラーク司令官も言つているわけでありますから、今後の国連の総会なり、政治会議の方でいかなるとりきめができるかということにかかるわけでありまして、現在それではどういう国へ折衝して、どういう方法をとるかということは、確定しておくわけには参らない次第であります。
  141. 上塚司

    上塚委員長 これで暫時休憩いたします。午後六時半より再開し、昨日理事会にて決定いたしました通り、午後十時まで、政府に対し質疑を継続いたします。     午後五時六分休憩      ――――◇―――――     午後八時七分開議
  142. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  各位にお諮りいたします。日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件につきまして、大蔵委員会及び通商産業委員会より連合審査会開会の要求がありました。この際この申入れを受諾いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさようとりはからいます。  なお理事会の申合せによりまして、ただいまの連合審査会は明二十九日午前十時より開会することといたしますから、さよう御了承願います。     ―――――――――――――
  144. 上塚司

    上塚委員長 この際文部省調査局長久保田藤麿君より発言を求められておりますので、これを許します。久保田藤麿君。
  145. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 南助教授の旅券問題につきまして、私どもの方がどういう手続をやつてつて、そのためにどういう関係になつておるかという意味の御質問がございましたので、それに対してお答えをさせていただきたいと思います。  この前海外出張をなさつたときの関係として、外務省からこの問題の始末をどんなふうにするか、また今後こういう問題が起らないようにするための始末をどんなふうにするかといつたようなお問合せがございまして、それに対する回答を私どもとしては文書ですることはいたしておりません。当時私ども考え方としましては、事柄が事柄でございますので、できるだけ穏やかに、また円満に解決いたしておきたいということのために、話合いを上司の方にお願いをいたしておりまして、文書での回答をいたしておりませんでしたが、その後三月の末ごろだつたかと思いますが、一応公務員の海外出張という立場から戒告の処分をいたしておりまして、そのことを外務省に御報告申し上げておる次第でございます。文書が届いていないということについては、確かに文書を差上げておりませんが、いつでも、文書で差上げることはたやすいことであります。しかしながらこういう問題は文書でそういうふうな扱いをすることよりは、口頭でできるだけの御協力をするようにいたしたいという始末を考えまして、そういう態度をいたしております。今度の御旅行につきましては、最近そういうことをこの委員会お話として私も伺つただけでありまして、直接それをどういうふうに扱うかとか、また私どもに対してどんなふうにすべきかといつた意味の問合せも受けておりませんし、そういうふうなお話を全然承つておりませんので、問題はまつたく別のものと存じます。
  146. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの文部省当局の御答弁を伺いまして、外務省当局では、文部省当局が事務怠慢のために非常に難渋しておる。事務渋滞を攻撃するならば、外務省でなくして、渡航課長でなくして、文部省を攻撃しろというたいへんはげしい御発言であります。ところがただいま文部省の御意見を聞くと、まつたく違うような状況でございまして、私どもそういう政府間の事務の連絡の不十分をまことに嘆くものでございます。今日通商条約の審議が追つておりまして、全員一致して審議の公正、合理的な進歩をはかりたいというときでございますから、私はこれ以上お尋ねいたしません。でき得ますならば、文部省当局から明日でもただちに渡航課長に御連絡くださいまして、困るのは国民各位でございますから、御連絡願いまして、この問題の迅速、公正、合理的な御処理を文部当局にもお願いいたします。文部省の御当局としては御迷惑なことでありましようが、現在外務省当局から被告のような立場に立たされて、御迷惑なことは重々お察ししますけれども、しかし文書がいるならあしたでもお出しくださいまして、こういう問題で委員会を長時間煩わすような不見識なことのないように、ひとつまげておとりはからいくださいますよう、法の公正公平な運用のためにお願いいたしまして、私の質問を打切らせていただきます。また文部省当局が夜分おそくわざわざ御出席くださいまして、御発言くださいました御好意に対しましては、私は委員として感謝いたします。     ―――――――――――――
  147. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 この通商航海条約委員会提出されましてから非常に審議を急いでおられますので、ほかの参考書類を見るしてもなかなかなくて、私も実は困つているわけですが、まず第一にお伺いしたいことは、この前日本アメリカとの間に締結された通商航海条約の今度のと比べてみまして、大体こういう点が非常に有利になつているとか、こういう点が不利だとかいう点を承りたいと思います。
  149. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 古い条約と新しい条約とのおもな相違点、それから新しい条約がどういうふうにまさつておるかという点でございますが、両条約を比較いたしますと、相違点といたしましては、第一に最恵国待遇の問題であります。古い条約におきましては、大体一方の締約国に最恵国の待遇を与えるという場合には、与えたことに対する条件というものが同様の場合には、原則として第三国にもそういう最恵国待遇を与えるというふうになつていたのでありますけれでも、新条約におきましては、たとえば前文にも書いてあるのでありますけれども、「無条件に与えられる最恵国待遇及び内国民待遇原則一般的に基礎とする衣好通商航海条約締結することに決定し」というふうに書いてございます。大体これは無条件に最恵国待遇を与えるというふうになつておる点であります。この点に関しましては、最恵国の待遇は有条件か無条件かという点が古くから問題になつておるのでございますけれども、この条約のねらいといたしますところは、なるべく自由にかつ貿易なんかの数量も増大するということを念願といたしておりますので、無条件最恵国待遇主義にのつとりまして、そういうことにいたしております。これが第一に違う点であります。  それから第二に新しい条約では、民間外資の導入の促進、それからその保護に重点が置かれております。これは随所に現われていること毎々本委員会で申し上げた通りでございます。これは外資の導入ということを促進しようという観点からでございますが、規定といたしましては、たとえば資本、技術の交流というのが五条にございますし、それから投下した財産が国有または国家管理に付される場合、そのことの補償というものが第六条に規定してございます。それから課税の場合の詳細な規定が十一条にしてございます。自国内にある外国の生産物は、自国産の同種生産物と課税その他の国内における取扱いにおいて、差別しないということが十六条の二項に規定してございますが、これらは全部それらのものを保護しようということから生じている規定であります。  それから第三に、現在の複雑な国際通商関係を円滑にやるために、古い条約にはございませんでしたような事項が相当盛られております。それらはたとえば商事仲裁、第四条の二項でございます。為替管理十二条、税関行政十五条、十七条の国家貿易、十八条の競争を制限するような商慣習の排除、さらに古い条約にはなくて新しい条約に入つているものといたしましては、財産の保護、事業活動、それから財産権の取得、内国関税、輸出入の貿易通過貿易、これは二十条に書いてございますけれども、こういうものがございます。  それからさらに優劣の問題でございますけれども、これは両条約締結されました客観的な情勢が異なつておりますので、どつちがどうかということに関しては、にわかにこれをこつちの方がいいのだということを判断するということは、相当困難かと思いますけれども、新条約の方が旧条約よりもすぐれていると思われる点は、こういう点がございます。第一番は両国間の貿易を営む目的を持つもの、及び相手国内における投資活動を行う目的を持つものの入国条約保障した。これは第七条でございますけれども、これは御承知のように、現在では日本人のアメリカに入る条約商人とかあるいは条約投資家というものの入国が、相当制限を受けておりますけれども、本条約が効力を発生いたしますれば、これらの者の入国滞在ということは、条約保障されるということになる、これが第一の点であります。  第二に、各般の経済活動を、相手国の国内において安定した保障のもとに行うことができるというふうになつております。これは先ほど申し上げました各条文からも御推察がおできになること意いますけれども、そういう点であります。  それから第三に、関税以外に輸出貿易の障害となり得る輸出入に対する量的制限、あるいは関税行政に関する詳細な規定を設けまして、実質的な平等待遇の確保ということ、それから貿易に対する障害的なものを除去するというふうなことを、古い条約に比べまして、より厚く保護して行くという点、こういう点が古い条約よりもすぐれていると思われる点でございます。
  150. 戸叶里子

    戸叶委員 今たいへんすぐれている点だけをお述べになりましたが、こういう点だけはまことに残念であつたと思われるような点は全然ございませんか。
  151. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 本委員会できようの午後も論議されたところでありますけれども、本条約の一番むずかしい点と申しますか、論議の対象となりました点は、アメリカの資本、これは巨大な資本でございますけれども、これが自由通商という建前から自由に日本に入つて来る、そして日本のいわば戦後疲れ果てたる経済に衝撃を与えることなきやいなやという点であります。この点に関しましては、一番われわれも苦労したのでありますけれども、片方においては投資の歓迎ということ、それから片方におきましては日本産業の保護という二つのいわば相反する要請、これをどういうふうに妥協せしめ得るかという点でございまして、この点に関しましては本日詳細に他委員の御発言に対しましてお答え申し上げましたように、制限業種の拡大、あるいは外資導入の際の審査権、さらに進んでは旧株取得というふうなことで、十分あるいは十分過ぎるほどかとも存ずるのでありますけれども、保護を加えております。従いましてこの点はどつちかといいますと、非常に自由なる交流ということから去つたというふうな感が相当強いくらい、それらの保護が十分にいたしてありますので、何も心配はないということに相なつておると私は信ずるのであります。従いまして本条約におきまして、どうもこの点がしまつたというふうな点は、ちつとも私はないと確信いたしております。
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 責任者におなりになつていれば、当然そういうふうにしかお答えになれないでしようが、私どもから見ますれば、今黄田さんがおつしやつたこと自体にも、非常に心配があり問題があると考えますが、これは観点の相違ですからそのままにいたしまして、次にお伺いいたしたいのは、戦前日本がどういう国と通商航海条約を結んでいたかということと、その通商航海条約を結んでおらなかつた国との間には、どういうふうに処理をしていられたか、その点承りたいと思います。
  153. 下田武三

    ○下田政府委員 大体、国交関係があります国は通商航海条約はあるのが原則でございまして、戦前におきましては、太平洋戦争が近づく前に、政治的原因から、アメリカ初め通商航海条約の廃棄を申し出た国がございますが、しかし大部分の国とは通商航海条約があるのが原則でございました。その例外といたしまして、トルコとの間には通商暫定とりきめしかございませんでした。またビルマとの間にもやはり暫定的なとりきめがあつたように存じます。いずれにいたしましても、国交が回復されてまず着手すべきことは、通商航海条約でありますので、御承知の、明治年間に不平等条約の改正を小林外相がやられましてからあとというものは、各国との間に平等の基礎における通商航海条約があつたのでございます。今は戦後各国との国交関係が断絶しておりますのを、まずアメリカを手初めとしてこの条約を結びまして、これからだんだん再び戦前と同樣に、各国との間に水と空気のような自由な交通をなし得るような道を開くという意味で、通商航海条約締結して行かなければならない、そういう関係にあると存じます。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 きよう本会議を通りました日華条約の議定書の議定書の中にもありましたが、あの議定書では、日本と中華民国との間に通商航海条約締結されるまでか、あるいは二年間この通商航海関係のことを延期するとございました。そのときにどなたかの、日本と中華民国との間の通商航海条約がどうして結ばれないかという質問に対しまして、それは入国とかあるいは商社支店の設置について、中国で相当考慮しておるというようなことをおつしやつたように思いますけれども、それではそういうふうな点に対しまして、日米の間にはそういうことは考えられないのかどうか、お伺いいたします。
  155. 下田武三

    ○下田政府委員 御承知のように、平和条約第十二条におきまして、ごく簡単な通商航海関係原則の規定がございます。ただこの規定が不平等であると申しますのは、先方が与える限度においてのみしか、日本側が最恵国民待遇あるいは内国民待遇に均霑し得ない、向う様次第ということが、日本側にとつて非常に不満足であつたのでありますが、とにかくごく簡単な規定ではありますが、通商航海の原則的規定は平和条約にあるわけであります。     〔委員長退席、今村委員長代理着席〕 桑港条約以外の国、中国及びインドとの間には別個の平和条約ができておりますが、これは桑港条約の十二条とまつたく同じ原則的規定がありまして、従いまして連合国、あるいは単独講和条約を結びました国の間には、実際問題としては十分とは言えませんが、とにかく通商航海の原則だけはあるわけであります。ただ御指摘の中国との平和条約の議定書には入国の点が欠けておるのでありますが、その点につきましては、中国の国内法で一年間はとにかく入国して滞在し得る、一年たつたら事実上これは延長してくれておりますので、議定書には規定しておりませんが、実際問題としては日本人が行つて入国しまた滞在するのに支障がないという現状になつております。
  156. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど条約局長お話では、平和条約が結ばれれば、当然どこの国とも通商航海条約が結ばれるのがあたりまえだということでありましたが、日本とインドとの平和条約が結ばれたときにも、通商航海条約がたしか問題になつたのではないかと思いますけれども、なぜ問題になつたかということと、そしてまたなぜ結ばれないかということを承りたいと思います。
  157. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 インドには通商航海条約をやりたいということを提議いたしております。但しインドはもう一年以上もアメリカ通商航海条約を審議いたしておるのでありますけれども、御承知のように、これがいまだうまく締結されるに至つておりません。従いましておそらくその方もどういう帰趨になるかということを見きわめた上で、日本ともやりたいということを考えておるのかもしれません。それからもう一つ理由は、今そういうものを急いで結ばなくとも、とにかく何とかうまく行つているのだから、もう少し情勢を待とうじやないか、アメリカの方とも交渉いたしておることであるし、それがどういうことになるかもつと見たいということも、向うの希望のうちに入つているのではないかと考えるのでありますけれども、とにかくそういう状況で、まだできておりません。私の方といたしましては、何とかもつと広般なる条項を規定いたしますところの通商航海条約の提議に関して、締結方を申し入れておる状況であります。
  158. 戸叶里子

    戸叶委員 きよう午前中の参考人の方の御意見を承つておりますと、アメリカとインドとの間の通商航海条約は、外資の問題で、なかなかうまく行かないというように伺つておりますが、その点はどうなんでしよう。
  159. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 おそらくそういうことであるだろうと存じます。これもよその国のことでありますので、的確なことは承知いたしておりませんけれども、外資を出す方の国といたしましては、それの十分なる保護を期待することは当然であります。それから受ける方といたしましては、そのために、自分の方の経済に大変動を起してほしくないということを考えるのは当然であります。従いまして、その点が、日本におきましてもそうでありましたがごとく、アメリカとインドとの間におきましても論点であつたろうということは、容易に想像し得るところでありまして、日本アメリカとの間の関係におきましては、先ほど御説明申し上げましたように、その点に何とかうまい妥協点が見出し得た。それが、インドとアメリカとの間におきましては、いまだにその点で妥協点を見出し得ないで、さらに論議を重ねているのであろうと想像いたしております。
  160. 戸叶里子

    戸叶委員 よその国のことでおわかりにならなければならないでけつこうなのでありますが、アメリカとインドとの場合には、日本アメリカとの間と同じようなものの場合には、インドは受けないように思われますけれども、どうでございましようか。
  161. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 私どもといたしましては、この御審議を願つております日本アメリカとの間の通商航海条約というものは、非常にうまく行つた条約であると考えているのであります。従いまして、もし将来インドの方で受諾いたしまして、日本との通商航海条約をやりたい、あるいは締結の話をいたしたいということに同意をいたして参りますならば、この条約にモデルをとりまして、そのラインでやつて行きたいということを希望いたしております。
  162. 戸叶里子

    戸叶委員 次にお伺いしたいのは、きよう午前中全国銀行協会の酒井さんの御意見の中で、在日外人に適用する国内法に、銀行法とか為替管理法、税金法がある。ところがこの外国の銀行日本銀行は、同じようにそういう法律の適用を受けるべきであるけれども、なかなかこういう点が、語学の関係があるのかどうか知らないけれども日本銀行とそういう銀行とが同じような検査が必ずしも行われておらない、そういうようなことの不便な点をおつしやつていられましたが、その具体的なことをお聞かせ願いたい。
  163. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 私もきよう酒井さんの陳述を承りまして、そんなことがあつてはならないということをただちに感じたのでありますけれども、酒井さんは、語学の不便さから来るのかもしれないけれども、どうも日本で営業をいたしておる外国銀行に対しては、日本における銀行と比べて何か寛大のような取扱いがあるようだということをおつしやいました。まことにそんなことがあつてはならないわけでありまして、どういうことがあるのか、それをつまびらかにいいたしませんけれども、たとえば税金の納め方とか、あるいは査定の仕方において、あるには意思に基かざるところの寛大さがあるのではないかということを私は想像いたしたのであります。かかる亡とは、むろんあつてはならないことだと私は考えております。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 これは外務省ではなくて大蔵省の管轄になるのですか。そうではないかと思うのですが……。
  165. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これは大蔵省の方であります。
  166. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、こういう意見があつたのですけれども外務省といたしましては、大蔵省に対して、何かそれに対する申入れなり何なりなさる御意思はありますか。
  167. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 むろんこの通商航海条約の建前からいたしましても、あるいは、そんな航海条約等がありませんでも、そういうことはあり得べからざることでありまして、大蔵省の方に申し上げるまでもなく、そういうことは実際上やる意思はないのだろうと考えております。ただそれが、実際上そういうふうになつておるかもしれません。私の方からも――これはまつたく念のためだと私は考えるのでありますけれども大蔵省の方にも伝えまして、注意を喚起したいと思います。
  168. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカにはいろいろの州法がありますけれども、その州法がいろいろ違つております。きようも質問の中に、日本人がアメリカに行つた場合、自由企業の全部につけないというような条項が、アメリカの上院で問題になつたといわれておりますけれども、そればかりではなくて、まだいろいろな面で州法によつて限定せられておるために、必ずしも日本との間に、平等でないような場合がたくさんあるのじやないかと思いますけれども、その点はいかがでしよう。
  169. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 アメリカ各州の州法によりまして、ある一定の事柄についても取扱を異にしてるということは、むろんあり得るのでありますし、現にあります。但し、州法がいかに規定をいたしておりましようとも、通商航海条約が結ばれましたならば、それらの州法は陰に隠れまして、条約が表に出て来るのであります。従いまして、この条約と相反するような州法がございましたならば、これはその限りにおいては効力を発生しないことになるのであります。従いましここの条約を結びます際に、何か州法で禁止しているとか、あるいは州法で特別の定めがある場合に、それを向うの方で留保しない限り、それらのものは陰に隠れまして、条約の関する限り、表に出て来るこにはないという関係に相なるのであります。
  170. 戸叶里子

    戸叶委員 しかし日本にありますアメリカ銀行の持つている権利と同じ権利を、アメリカにある日本銀行が持つていない場合があるやに聞いておりますけれども、その点はどうなんでしよう。
  171. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 銀行の問題は、各州法によりまして違つておるのであります。従いまして向うのある州で日本に禁止しておるようなもの、これは主として第七条二項の制限業種の問題に入つて来ると思うのであります。と申しますのは、七条二項におきまして、預金業務信託業務という二つの業務に関しましては、制限し得ることにいたしております。従つてこれらの点につきましては、これは向うで制限する場合には、日本の方も制限をなし得るという関係に相なつておるのであります。ただその例外は、七条二項の後段におきまして既得権として認めているようなものについては、そこで既得権として認めるということをいたしておりますので、この点に関しましてだけ、州法との関係が例外的な待遇を受けることに相なつております。
  172. 今村忠助

    ○今村委員長代理 この際戸叶委員に申し上げます。質問を始めて三十分たつたのでありますが、次の委員の方にお譲り願えませんでしようか。
  173. 戸叶里子

    戸叶委員 今の結末をつけさせてください。そうするとこの問題に限つて既得権を認めるというので、平等ではないということが言われるわけなのですね。  それから委員長にお願いしたいのですけれども、私ども一時間ずつ時間をいただいているわけですが、きようは三十分、あすは三十分というふうに切るわけですか、続けないで……。
  174. 今村忠助

    ○今村委員長代理 この前の申合せは三十分済んだら、次の方に譲るというふうになつておると聞いておつたものですから……。
  175. 戸叶里子

    戸叶委員 全体で一時間やるということは、あすやるわけですか。     〔今村委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 日本に今まで来ておりまして、これらの預金業務とかあるいは信託業務とかいうものを行つておりました銀行、それが約四つばかりございますけれども、これらに関しましては、既得権を認めてあるということになつております。これらの制限業種であつても、日本の方で向うにおいて持つております既得権というものは、日本も向うで認められるということになるわけであります。
  177. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると日本銀行も、向うでこちらでの銀行が持つていると同じ権利を持つているわけなのですね。
  178. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 今まで向うで認められております銀行アメリカにございますれば、むろんそれは認められるわけであります。ただの日本の方で、この既得権に該当するものといたしまして、一番大きいものは農業関係でありまして、これは第七条におきましても、制限業種ということになつておりますけれども、この制限業種に入つております天然資源の開発というふうなことを行う業務、これは日本人がアメリカにおいてやつておりますものは、農業が一番大きな業種であろうと思いますけれども、これらに関しましては、たといその州法あるいはあとにできます法律で、外国人にはそれらの権利はないのだというふうな法律ができましても、既得権は尊重される、こういうことに相なるわけであります。
  179. 戸叶里子

    戸叶委員 私は農業関係でなくて、銀行のことを承つていたのですよ。銀行から農業の方に飛んで行つてしまつたのですけれども日本の場合には、日本銀行は、日本に来ているアメリカの四つの銀行が持つているような既得権はない、こういうふうに了承しておりますけれども、どうでしよう。
  180. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 日本銀行で、向うへできておりますのが二つございます。これは加州東京銀行、加州住友銀行というものが最近できておるのであります。二十八年の二月と三月でありましたか、これができておりまして、これが現地の法人のかつこうをとつておりますけれども、これらは銀行業務を認可されまして、そこに制限されております預金業務もいたしております。
  181. 戸叶里子

    戸叶委員 さつきの質問はどうなつたのですか。三十分で打切るわけですか。
  182. 上塚司

    上塚委員長 もしきよう三十分で打切られれば、明日三十分お許しします。
  183. 戸叶里子

    戸叶委員 まだ私初めの方だけで、ちつとも条文に入つていないわけなのです。全体の質問だけなのです。岡崎大臣が見えられましたから、私黄田局長に対する質疑は保留いたします。
  184. 上塚司

    上塚委員長 では明日保留の分をいたします。帆足計君。
  185. 帆足計

    ○帆足委員 御質問申し上げたいことで、数字にわたることはあらかじめ質問書を差上げておきましたが、大蔵関係政府当局に差上げてあるそうでございますから、数字にわたることでお答えしにくいことは、明朝大蔵省当局からいただくことにいたしますので、おわかりになる範囲でお答え願いたいと思います。条文がたいへん私どもしろうとにむずかしいので、わかりきつたことを重ねてお尋ねする点もあつて恐縮でございますが、第一には今度の日米通商航海条約で、従来の外資法事業法等で制限されております諸事項に比べまして緩和されました点、または従来の外資法事業法等の一部を改廃せねばならぬような点を、もう一度お教え願いたいと思います。
  186. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 日米通商航海条約締結し、あるいは効力が発生いたしましたために、現在あります法律等で改廃をしなければならないというものは何もございません。ただ外資法関係で、ただいまのところは御承知のように、旧株取得制限しております。これが効力発生後三年間はこれをかえる必要はございませんけれども、効力発生後三年たちましたならば、この点はかわらなければならないということになつております。
  187. 帆足計

    ○帆足委員 外資の導入はむしろ計画的、合理的に入れて、日本に有利なものに対しては、良質のものに対しては、多少有利な条件を与えるということはよいことであると思いますけれども、私どもが心配いたしますのは、アナーキーに性質のよくない外資が入つて、そしてそれが国内でほしいままに経営の面で触手を延ばし得る可能性が、相当あるということを心配しておることは御承知の通りでありますが、これは制限業種以外の場合は、無条件に五一%以上の株を持ち、支配権を無条件、無制限に及ぼし得るというふうに解釈してよいのですか、ちよつとお尋ねいたします。
  188. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 議定書の第六項に規定がちやんとございますが、外資が入る場合には、日本の方において審査を行い得るということに相なつております。これは日本経済の発展に寄与し得るようなものを入れたいという目的からでございます。それは制限業種とかあるいは制限業種でないというものに関係なく、何でも審査し得るのであります。それから五一%あるいはそうでないパーセンテージの問題でありますけれども、これは制限業種に関しましては、法律によつていかなる制限もなし得ますけれども、その他のものに関しましては、パーセンテージを云々するという問題は、これは入つて来る外資が歓迎すべきものであるかどうかということによつて、こつちの方できめるべき問題である、こういうことになります。
  189. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの外資が中へ入つて活動は、相当自由に認められているように承つておりますが、入るときの審査と申しますのは、入りました外資に対して、たとえば外貨による利払いを保証し得る範囲がどうかというような観点からの審査ですか、それ以外にその入つた資金の性質とか、またその資金が使われる用途とかいうような観点からコントロールできるのでしようか。
  190. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 向の方からドルを送つて参りまして、それを円にかえて、それであとで向うに金をちつとも送りたくないのだ、ただこつちで活動するだけだというものであつたならば、これは何も審査の対象にする必要もございませんし、そういうことをしない。但しそういうことはまつたく例外でありまして、入つて来る以上は利益なり利子なりを向うに送りたいというのが一般で、これはほとんど例外なしの原則でございまして、そういう場合には全部審査がなし得る、こういうことでございます。
  191. 帆足計

    ○帆足委員 私どもはたちの悪い資本が入つて暴威を振うことを非常に恐れておるのであります。たびたび委員の方からお聞きになつたと思いますが、証券業務や不動産取引については、これはどうなつておりましようか。またその影響をどうお考えでありますか、重ねて伺いたいと思います。
  192. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 証券業務や不動産の取得というふうなことに関しては、何らの禁止規定もございません。ただそれらのものが株式の形でやるという場合には、認可の対象とされしております。
  193. 帆足計

    ○帆足委員 証券業者、また不動産取得じやなくて、不動産取引業というような商売、外人が自由にできることになつておるわけですね。
  194. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 証券業務に関しましては、御説の通り何もございません。それから不動産の取引業であります。これは八条の第二項で、せんだつてから申し上げております向うである種のレザーヴニーシヨンをするということをしておりますけれども、それに該当するかどうかということはまだはつきりしておりませんので、それがはつきりすればこつちもはつきりする、こういう形でございます。
  195. 帆足計

    ○帆足委員 株の取得制限業種以外に無制限にでき、企業にも関与できる、そして証券業務も営めるということになりますと、多少たちの悪い人間で金を持つている考が来ましたときに、日本の証券業務が擾乱されるおそれがある。これに対して何らかの、やはり多少の制約は必要でないかという論議はきわめて正当な心配のように思いますが、政府当局はどのようにお考えでしようか
  196. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 株の取得は、これは御説の通りの制限がございまして、必ずしも取得が自由というわけではございません。それから証券業務というものは、これは今でも日本人もアメリカにおいて相当なし得るということになつておりまして、その点の心配は大したものではないのじやないかと思います。
  197. 帆足計

    ○帆足委員 これはたびたび指摘されたことですけれども日本と向うとは資力において非常に違いがあることを心配するわけですが、現在外人が所有しております日本の有価証券の総額、国籍別を知りたいと存じます。あわせて外人が所有しております国別の円貨の所有推定額が、現状においてどの程度になつておるか。第三に、現在アメリカが相当支配を及ぼしておる企業に対する支配権、外国の株式所有が非常に深く入つているとか、技術特許の所有権で深く入つているというものの一覧表をいただきたいと存じますが、ただいまお手元にないと存じますので、実は先日その御要求を出しておきましたから、ひとつ政府当局の適当な方からいただきたいと思います。なお今後有価証券に対して外人がこれを所有します場合に、届出か何かさせまして、その実態をキヤツチするような方法をお考えになつておりまようかどうか、お尋ねしたいと思います。
  198. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 外国人が持つております株式は大体百億であります。そのうち経営参加的の取得、これが七十六億、それから市場で買つたものが約十三億、このくらいであります。それから外国人が持つております円、これは映画関係が一番多いようでありますけれども、映画関係が約十五億ぐらい、そのほかの事業を行うことによつてつている金というものはどのくらいか、ただいまはつきりわかりません。映画関係が一番大株でありまして、それよりも少いということはわかつております。
  199. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま数字の詳細なものが政府当局にありましたら、明日でも写しをいただきたいと思います。なおただいまお尋ねしましたが、外人の今後所有いたします実態調査、それは何か調査できるようになつておりますでしようか、その点をお尋ねいたします。
  200. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 株式取得に関しましては、新株の取得もこれは届出事項ということになつておりますので、その方でチエツクできるということになつております。
  201. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまのような外人の諸権利は、今後ほかの国々と通商条約を結びますときにも、大体において同じ権利を与えるような方針でしようか、それともそれぞれの国によつてまた慎重な審議をなされるおつもりでしようか。
  202. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これは本条約にも書いてございますように、無条件な最恵国待遇ということをモツトーといたしまして本条約ができておりますし、またこの条約は現客観情勢からすれば非常にいい条約だと考えております。従いまして本条約にありますような態度は、他国と結びます際にも同様にとりたいということを考えておりますので、本条約に盛られてありますようなことは、他国との条約を結ぶに際しましても、同様な態度をとりたいと考えております。
  203. 帆足計

    ○帆足委員 先ほど黄田局長は本条約の自主性に関して大いに御吹聴なさるところがありましたが、私は同僚各委員のただいまお聞き及びのような諸点については、これは党派の別を離れて、やはり多少心配すべき問題があると思つております。従いましてまたその点について、外務当局がなされました多少の御努力に対しまして了解するところもございますけれども、憂慮すべき点は確かにあると思つて心配するのでございます。従いまして今後、せめて運用の面におきましても弊害を是正すべく、正確な調査だけはとつておく必要があると思います。なお附帯条項といたしまして、今後の運用について協議事項というのがあつて、公正な運用ができるように、ある程度善意をもつて協議できるという項目がございますが、この協議事項の権能並びに範囲はどの程度のものでございましようか。大して大きなものでないことは了察できるのですけれども、大体どういう見当でございましようか、御所見を承りたいと思います。
  204. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 それぞれの条文におきまして、疑いの存する余地がほとんどないぐらい詳細に規定してございますので、二十四条に規定しておりますところの協議事項というものの発動の余地は、そのたびたびあるものとは考えておりません。ただいかに詳細に規定いたしましても、その実施に際しましていろいろな問題が起り得ることは免れ得ないところでございますので、そういう際には二十四条に基きまして協議をする、しかもその際には好意的な考慮を双方において払うという関係に相なると存じます。
  205. 帆足計

    ○帆足委員 次に、ちよつと奇妙なことをお尋ねしますが、独占禁止の条項に関連いたしまして、十八条でしたか「一致した意見を有する。」という表現がございます。ちよつと日本語では受取りかねるのでございますが、どういう意味でございましようか。
  206. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 制限的な商慣習あるいは取引を制限するような慣習というふうなものは、ともすれば商売の自由な発達を阻害することがあり得るということに関しては、両締約国ともまつたくそうだということを相互に認める、こういうことであります。
  207. 帆足計

    ○帆足委員 なおお尋ねしたいことがありますが、他の同僚委員もおりますので、約十八分お尋ねしましたが、あとの時間はまた明日お尋ねします。一応これで終ります。
  208. 上塚司

  209. 田中稔男

    田中(稔)委員 この間、川崎君が外務大臣にお尋ねした際に、ホテルに外資を導入することは非常に重要だ、日本としては望ましいことだというお話がありましたが、この点につきまして、もう一度外務大臣の御所見を伺いたいのであります。電源開発という日本の国土の開発、あるいは基礎産業を樹立するというようなための外資導入だけでなく、ホテルといいますと、全国に観光ホテルというものがいろいろ考えられますが、そういうものにもこれで外資を入れて、日本が観光国策といいますか、そういうような点で大いに外貨をかせぎたいというようなお考えをお持ちでありましようか。その辺について御所見を伺いたいと思います。
  210. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう方面も、ぜひ心がけたいと思つております。
  211. 田中稔男

    田中(稔)委員 それをさらに発展して行きますと、外人の観光客を誘致するために、いろいろな亨楽の施設を設ける、モナコあたりでやつているようなそういう賭博場や何かを設けて、大いに外貨を獲得するということも考えられる。それもやはり日本のためになることになるのでありますが、さらにホテルからそういう方面に発展して、外資の導入を促進したいお考えはありませんか、お聞きいたします。
  212. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その方面になりますと、今別に政府のきまつた政策がありませんから、私個人の意見になりますが、ただいまの日本の情勢から見て、そこまでやることは行き過ぎであろうと思つて、私は反対なのであります。
  213. 田中稔男

    田中(稔)委員 電源開発に外資を導入したいというお考えが、政府にあることをたびたび承つておりますが、その見通しであります。なかなかこれが入らないようでありますが、政府見通しをお尋ねしたいと思います。
  214. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 なかなか入らないのは事実でありますが、だめだというわけではないようであります。今までの例を見ましても、事情はずいぶん異なるかもしれませんが、イタリアなどもたしか二年ぐらいかかつたと思います。いろいろなやつかいな調査がたくさんあつたりしておるようでありますが、日本の方は、もちろんそれほどおそくならずに結論が出ると考えております。今までのところは、向うも非常に好意的に考えて、いろいろ研究しておるが、まだ資料の要求等があつて、結論が出ておらないというのが実情であります。
  215. 田中稔男

    田中(稔)委員 駐米大使の新木さんは、たしか東京電力の社長だつたかと思いますが、そういうような方が特に選ばれてアメリカに参つておられる。白洲次郎氏は、東北電力の会長という立場の人でありますが、そういう外資導入についての使命を帯びて、アメリカにたびたびおいでになつているようでありますが、そういう諸君の働きで、電源開発に外資の導入をするという見通しというものはないでしようか。さらに具体的にお答え願いたいと思います。
  216. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 新木大使ももちろん署の天でありますが、いろいろの人が今までいろいろ努力して来た結果が、だんだん目的に近づいて来たという実情になつておると思います。
  217. 田中稔男

    田中(稔)委員 次にお尋ねしたいのは、第六条の第三項に「公共のためにする場合を除く外、」云々とありますが、こういうように収用したり使用する場合に、アメリカとコロンビアとの通商航海条約には、このほかに、社会的に有益であるという理由による場合というのがあるようであります。コロンビアとの条約をモデルにしたというこの日米通商航海条約におきまして、特にこの文句を除いたことにつきまして、これは黄田経済局長でよろしいのでございますが、折衝の過程で問題になつておりましたら、その理由を伺いたい。
  218. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 コロンビアをモデルにしたわけではございませんで、コロンビアのものもその考慮に入れた一つにすぎないのであります。従いまして、コロンビアのものの中に、ここに書いてあります以上に、もう一つの条件があつたかどうかということは覚えておりません。ただ公共のためにする場合のほかはこういうことはしないのだ、する場合にはこういうことにしようということが、平面的にただ書いてあるだけでありまして、そこに今おつしやつたようなもう一つの条件があつたかどうかということは、問題になつたこともないと私は記憶しております。
  219. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣ならあるいはそういう御答弁もあつてしかるべきだと思いますが、黄田経済局長は特に専門の方ですから、伺うのですが、コロンビアの場合においては、公共の目的の場合と、社会的に有益であるという理由による場合と、この二つの場合についての収用、使用を認めておる。こういうことが交渉の過程で――なるほどコロンビアとの条約だけをモデルにしなかつたでしよう。そうおつしやるならそうでしようが、しかしコロンビアとの条約ももちろん御研究になつたのだろうと思います。私はやはり相当理由があるのではないかと思うのですが、ほんとうに御記憶はないのでしようか。
  220. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 問題になつたことはございません。
  221. 田中稔男

    田中(稔)委員 それからこの第六条に関連しますが、戦争が起つたような場合に、補償というような問題はどうなるのでありましようか。
  222. 下田武三

    ○下田政府委員 これは国際法の原則によりまして、戦争の場合には、敵国民の身体あるいは財産に対して、国際法が認める限度内で、一定の制限なり、あるいは禁止的措置をとることができることになつております。従いまして、平時を前提といたします通商航海条約で、特に戦時の非常事態のために規定を設ける必要はないわけであります。しいてそういう非常事態の考えを含んで解釈できるという規定は、二十一条の条約適用の一般除外例の(d)項に「自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置」というのがございます。この措置は平時にも適用し得るわけでありますが、戦争にも同時に適用し得る措置だろうと思います。
  223. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると、このごろはよく戦争と宣言しないで実際に戦争をやることが多いのでありますが、その戦争に至らない、何か戦争状態みたいなものが発生しました場合、この二十条の(d)で行くわけですね。  それからこれは電源開発に外資導入などあつた場合には、特に私ども懸念するところでありますが、現在でも内地でいろいろ電源開発の工事をやつております。そういう際に、聞くところによると、アメリカの土建業者が出て来て、そして日本の土建業者がその下請みたいなかつこうで使われておる、はつきりしませんけれども、こういう実情があるように私は方々で聞いたように思いますが、アメリカの巨大資本を持つた土建業者が出て来てそういう仕事をやる、しかもそれが特に導入された外資をバツクにして入つて来るということになりました場合には、日本の土建業者にとつて非常な脅威だと思うのでありますが、そういう点についてどうお考えであるか。またそういう危険が強く感ぜられる場合には、これを制限業種に持定することも必要と思いますが、御所見を伺いたい。
  224. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 電源開発などはこれは今でも制限業種に入つております。従いまして、これは議定書の三でありますが、電気の製造もしくは供給に関する事業というものはここに入つております。従いましてこれは制限しようと思えばできる。それから入つて参ります場合に、どういうふうな条件でやるかというふうなことは、これはまつたく自由でありまして、何も向うが入つて来るということを条件とするというふうなことは何も要求されておりませんし、そういうことは本条約範囲外のことであります。
  225. 田中稔男

    田中(稔)委員 アメリカ日本のまぐろのカン詰とか、陶磁器とか、時計のバンドとか、そういうものについて何か関税の率を上げようという動きがあるというようなことでありますが、このアメリカがどうも関税政策において高率高税の主義をとつているようでありますので、これは日本としてはやり引下げてもらうように、また今後日本の製品に対する関税の率も引上げないように、ひとつしなければならぬと思いますが、きようは参考人のどなたでしたか、そういう御要望もあつたわけでありますが、最近のアメリカの関税政策の動向というようなものを、特に日本製品品に対するアメリカの関税上の取扱いに即して御説明願えればけつこうであります。
  226. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 アメリカにおきましては御承知のように、大体民主党が低関税、それから共和党が高関税政策、保護政策というものをとつているとよくいわれて来たのであります。はたしてそれが今でも言い得られるかどうかということは、これはわかりません。ただこういうことは言えると思うのであります。ヨーロツパ諸国におきましても、援助より貿易ということが盛んに叫ばれております。つまりアメリカの低関税によつてほかの世界各国アメリカに物を輸出いたしまして、そうしてそれによつて自立経済を立てるということによつて援助を少くして行こう、自分の足の上に立つた経済を樹立して行こうということが、これは世界の趨勢であります。しかもこれがまたアメリカにも反映いたしまして、方々の商工会議所――デトロイトがまず第一であつたと私は記憶しておりますけれども、デトロイトの商工会議所がまず気勢を上げまして、援助をなるべく少くして、実力でもつてうまく行くようにさせなければいけない、トレード・ノツト・エイドということをまず言いまして、それにはアメリカの方が高関税政策をとつてはならないということを申しまして、それに引続きまして全米貿易協議会というのもそれに右へならえをいたしまして、同様なことを言つております。  それからさらに私がおもしろいと考えますのは、NAMというか、ナシヨナル・アソシエーシヨン・オア・マニユフアクチユアラーズ、これは製造工業家の団体であります。本来ならばこの製造工業家連盟というものは、どつちかといえば、保護政策すなわち高関税政策をとるのが自然の勢いでありますけれども、このNAM自身すらもトレード・ノツト・エイドということに主張をかえたと申しますか、ほかの商工会議所とかあるいは全米貿易協議会というふうなものと軌を一にいたしまして、そういうことを申しております。そのことは私は非常におもしろい現象だと思うのであります。  さてそれが日本の方にどういうふうに現実的に現われているかと申しますと、最近アメリカ日本から入つて参ります商品に関して、関税を上げろという問題が起りましたのはまず第一がまぐろでございます。そのマグロが向うへ入つて行く、これではかなわぬというので、まぐろに対して――これは冷凍まぐろとカン詰と両方ございますけれども、冷凍まぐろに関税をかけよう――これはただいまは無税でありますけれども、これに関税をかけようという問題が起りました。それからメキシコとアメリカとの通商航海条約が失効いたしまして、その余波を受けて、まぐろの油のカン詰でありますけれども、それに対する関税が上つた、そうすると日本から今度は油のカン詰でなしに塩づけのカン詰がどんどん行く、これではかなわぬからというので、塩づけのカン詰の税率を上げろという問題が起つたのであります。しかし、これは、これらのものを上げられてはかなわぬというので、これは日本のまことに熾烈なる、また当然な要求でございましたが、これがアメリカ業界の熾烈なる要望にもかかわらず、遂に実現を見ることなくして終つたというのが、第一の日本に関するテストであります。  その次に起りましたのが木ネジでありますけれども、これが日本及びヨーロツパから相当数量入つて参りました。日本も非常に大きなサプライアーの一つでありましたけれども、本件に関しましても同様な問題が起りまして、それも遂に実現することなく終つております。  それから第三に、きわめて最近起りましたのが絹スカーフの問題であります。これは日本戦争未亡人とかいうふうな人が、戦後非常な勢いでつくりましたものがどんどんアメリカに入つてつた。そこで絹スカーフに対する関税を引上げろという問題がまた起つたのでありますけれども、これは関税委員会、タリフ・コミツシヨンが、これは上げるべきだ、たしか三二・五%を六五%に上げるべきだというレコメンデーシヨンをしたのでありますけれども、これもとうもとう実現を見ずに終つた。  それからもう一つ、これは日本ではありませんけれども、主としてイタリアの問題でありますけれども、プライアー・パイプの関税を上げろという問題が起りましたときに、これまた日本のまぐろ、木ネジというふうなものと同様な運命をたどりまして、関税を上げることなくして終つております。  これらのことは、アメリカが高関税でアメリカのものを保護するということは、決して世界の貿易を助長するゆえんでもないし、またトレード・ノツト・エイドという方向に合致するゆえんでもないということを認めまして、そういう方向をおそらくたどらないということの証左ではないかと考えております。
  227. 田中稔男

    田中(稔)委員 その次に、第十八条の例の競争制限的商慣行の問題ですが、これは他の委員の質問にもあつたかと思いますが、この場合輸出入組合をつくるというようなことは、この条文とは抵触しないのですね。
  228. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 抵触しないものと考えております。
  229. 田中稔男

    田中(稔)委員 これは戸叶委員から御質問がありましたが、例の外銀の業務の監査といいますか、検査といいますか、こういうことが語学の問題その他もあつて、なかなか内地の銀行のような厳重なことができないだろうというようなことを懸念せられたのでありますが、私もそうだと思うのです。内地では、たとえば税務署だつて大きな会社や銀行に行く場合と、小さな中小企業者の家に行く場合とでは、第一その態度から違う。またその税務署の役人に対するいろいろな歓迎ぶりも違うわけで、結局は実力の問題ですが、外国の銀行支店なんかありまして業務の監査をするという場合には、単に語学の問題だけでなく、何かやつぱり実力の問題で、内地の銀行に対するのとは若干違う、手心を加えるというわけじやないでしようけれども、自然何か手が行き届かぬとか、寛大に流れるとかいうことになるのじやないか、こういうことにつきまして、黄田局長はそういうことがあつてはいかぬと考えるというふうなお話でありましたが、ただいかぬと考えるだけじやいかぬので、何かこれについて具体的にとにかく措置をするというようなお考えはないでしようか。なるべくそういうことのないようにするという、単に精神訓話みたいなことにとどまるのでしようか、ひとつお尋ねしたい。
  230. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これは事実そういうふうなことがあるのかないのか、私もつまびらかにいたしません。私はそういうことがあつてはならないことだと考えるということは、先ほど戸叶さんに申し上げた通りであります。またそういうことがもし実際あるとすれば、それはそういうことがあるべきではないのでありまして、公正なる取扱いをやるということは、これは当然だろうと思います。
  231. 田中稔男

    田中(稔)委員 それは銀行の問題だけじやなく、全般にわたる問題でして、やはり実力の優勢なアメリカ日本経済界に入つて来るという場合には随所に起る現象であります。これは単にこの通商航海条約の条文にどう規定するという問題ではないので、実際の運用にあたつて実施面において十分考えてもらわなければなりません。  次に、この間外務省のMSA交渉に関するコミユニケの中に、免税の問題について了解が成立したいというその中に、MSAの協定に関連して、自国に輸入される産品、財産、資材または装備に対しては関税はかけない、内国課税も免除する、こういうふうなことになつておるのでありますが、そうなりますと、通商航海条約との関係はどうなるか、その点ちよつとお尋ねしたいと思います。
  232. 下田武三

    ○下田政府委員 先ほども申し上げましたように、MSA協定のような特殊協定は、一般的な通商航海条約とは関係がないと申しますか、特別なものでありますから、特別な協定を結ぶのは当然のことでありまして、何もMSA協定に限らず、たとえば領事職務条約でありましたならば、領事の輸入するこういう品目には関税をかけないという特別な規定をする、MSA協定については、外国の例を見ましてもそうでありますが、これはMSA法にそうきまつておるのであります。MSA法によりますと、アメリカの予算が外国へ行つて有益な装備なり備品に使われないで、外国の税務署に納める税金として使われてはならぬという規定がございます。これはMSAの趣旨にかんがみまして当然のことであります。税金に使われるくらいなら、それだけもつと装備なり備品なりやればいいのでありまして、MSA協定締結いたします以上は、MSA法にあります規定に従わざるを得ないのであります。これは何も日本に限らず、各国協定で援助として受ける装備、備品には税をかけないという規定が共通してございます。しかし、特別な協定で特別な扱いを規定したからといつて通商航海条約一般規定に違反するというような関係に立つものではないと私どもは信じております。
  233. 田中稔男

    田中(稔)委員 これはアメリカのことですが、アメリカでは小麦が非常にたくさん政府の手に保管されている実情にあります。そこで東独あたりに食糧を送つてやろう、これは東独はいらぬと断つているのでありますが、一種の好意の押し売りみたいなことをやつております。パキスタンあたりも何かこのごろ小麦援助というようなことをやつて、相当の量の小麦を送つているというお話でありますが、アメリカでも農産物の価格支持法ですか、あれに基いて政府はどんどん買い上げている、そこで手持ちの小麦の処分として、おそらくこれを焼いて捨てるわけに行かないから、その場合に、援助の形でこういうものが方々の国にやはり送られるということが、現にあるし、今後もあると思います。これは日本では今差迫つてそういうことが起つているわけじやありませんが、これからMSAの援助がいろいろな形で現われた場合に、完成兵器で、どうしても日本でできないものとか、アメリカでなければできないものとか、あるいは特殊な資材で、日本では入手困難とかいうものが入つて来る場合は、これは日本一般経済に影響ないことでありますけれども、小麦というようなものが、かりに大量日本に援助物資として入つて来るとすると、日本の農民のつくります小麦と競争になるわけでありますが、そういうふうな心配は当分ないでしようか、ちよつとお尋ねいたします。
  234. 下田武三

    ○下田政府委員 いかなる国のMSA協定を見ましても、提供されるものについては、必ず合意されるところに従つて、ということになつております。でありますから、麦がいりもしないのにそれを押しつけるというような場合は、それは合意の段階で拒絶すればいいのでありまして、そういうことは絶対に起り得ないのであります。またもう一つは、米国の予算に載つております防衛資材並びに訓練という予算上の項目からいいますと、小麦などが日本に入つて来る可能性はまずないのではないかと考えられます。
  235. 上塚司

    上塚委員長 田中君、もう時間が過ぎました。
  236. 田中稔男

    田中(稔)委員 これは抽象的な問題になつて相済まない次第でありますけれども、すぐ問題になると思います。今あなたはMSA援助では相手国の合意を必要として、いらぬものを押しつけることはないとおつしやいますけれども、やはり国によつては――日本の国じやございませんけれども、国によつては、政府をとつている少数の人々それがほんとうに国民大衆の支持を受けている場合と、受けていない場合とがある、そして現実に支持を受けていないような場合、国民大衆の利害とは反した行動を政府がとることがあり得ると思う。だから政府アメリカなりの意を迎えるために合意をする、そして、かりに小麦なら小麦がどんどん入つて来て、その国の小麦の値段が押えられてしまう、そういうことになりまして、その国の農民大衆が迷惑をするというようなことだつて、一応抽象的、理論的に想像すれば起り得ることだと思います。そういう心配は現実の問題でないわけですけれども、抽象的にそういうことは考え得られないのでしようか。
  237. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今のような場合が考えられるかもしれません。それはMSAの欠陥とか、協定が欠陥があるからとか、あるいは通商航海条約がどうとかいう問題ではなくて、その受ける国の政府が欠陥があるからということになるのでありまして、それは今の問題とはちよつと関係がないだろうと思います。
  238. 田中稔男

    田中(稔)委員 私の質問はこれで打切ります。まだ少し残しておきますから。
  239. 上塚司

  240. 川上貫一

    川上委員 大臣が見えておりますから、大臣に聞きたいのですが、この友好通商航海条約は相当なものだと思う。これに一番よく似ているのは、アメリカとコロンビアが結びました通商条約ですが、これ以外に今の日米の結んだ条約に似た条約の結ばれておるのはどこの国でございますか。
  241. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 アメリカが結びました最近の条約ではイタリア、ギリシヤ、イスラエル、デンマーク、中国、こういうものがございます。
  242. 川上貫一

    川上委員 イタリアなんかは大分違うでしよう、コロンビアとアメリカの結んだ条約が、日本との条約にうり二つなんです、日本の方がもうちよつと悪いようです。これはあとで聞きます。イタリアなんか出されるのではなくて、コロンビアとアメリカの結んだ条約、これととうり二つの条約がほかにあるか、これを大臣に聞いている。
  243. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは経済局長から御答弁させます。
  244. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいま申し上げましたように、アメリカが結びました本条約に類似しておるというものは、ただいま申し上げましたような国がございます。
  245. 川上貫一

    川上委員 それはうそです、似ちやおりません。コロンビアと非常に似ているが、ほかの国とは違う。そうすれば、コロンビアという国は現在アメリカとどういう関係になつておるのか、これを簡単でよろしゆうございますから、お答え願いたい。
  246. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 コロンビアは南アメリカ州に位している独立国であります。
  247. 川上貫一

    川上委員 そんなばかな返事をしちやいかぬ、独立国ぐらいわかつておる。それは南朝鮮だつて独立国だ、そういうことを言うておるのではない。コロンビアはアメリカの完全な従属国で、まことに小さい、目の中に入るような国で、どうにもこうにもならぬような国ではないかということを聞いておる、こういう国と思いませんか。
  248. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 さようには考えません。
  249. 川上貫一

    川上委員 これは答弁ができぬのだろうと思う。コロンビアと結んだ条約、これがたいへんいい条約だということをアメリカは言うておるのです。ところがこのコロンビアと結んだ条約より、日本通商条約はもつと悪い。たとえば、コロンビアの条約には、すべての種類の商業、工業、金融その他の事業活動を内国民待遇に許しておりません。それから代理人もしくは何らかの形態の適法の団体を通じて、一切の事業活動を許すということになつておるが、これもコロンビアとの条約にはない。つまりコロンビアとの条約は、日本の今度結ぼうとする条約よりもうちよつといい。そうすると、日本は残念ながらコロンビアよりもう少しおかしなものになつてしまいやせぬか、これは重大な問題です。独立国独立国と言われますけれども、コロンビアと同じくらいの独立国では、あんまり独立国ということは言えぬと思う。こういうような条約を結んでおいて、対等だとか独立国との間の取引だから、相互的に行けるとか言われるが、アメリカ日本との関係はどういうことになつておるか、中国の貿易をするのでも国際的な契約は一つもない、旅券を出す場合にも――何も今南君の旅券をとめておるという法律的な根拠はない。聞くというと、アメリカに遠慮をし、アメリカの報復を受けたら困るというておるのです。中日貿易の禁止でも国際法の基礎もなければ国内法も何もない、これでとめてある。特需では事実上日本産業アメリカに押えられておる、監督官が労働条件まで監督しておる、基地は一ぱいあるし、行政協定を結んでおるし、治外法権は行われておるし、その上にMSAを受けて、軍事的な方法でなければ、MSAに規定する範囲でなければ見返り資金さえ使われぬことになるのは明らかです。そういう状態になつておる時分に、対等だとか相互独立しておるから互恵でいいのだとかいうようなことを言うと、これはまつた日本は食われてしまうのですが、これは食われぬと思いますか、ほんまにそんなことはないと思いますか。これはここを口先だけで言いのがれて、いいくらいなことで済むものじやない。ほんとうに日本の将来を思うなら、実際日本のために外交をしようと思うなら、日本人らしいほんとうの精神で応答すべきものだと私は思う。今のような状態になつておりながらなおかつ独立国々々々言うて、こういう条約を結んで対等にやれると思いますか。ほんまにこのことを聞きおる。自由党の方はこういうことを聞くとよつぽどいやらしいのだが、黙つて聞かれた方が国民の利益になりますから、これはお聞きになつた方がよろしい。
  250. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 共産党の諸君はよく基本的人権ということを非常に強調されますが、国においても独立国の基本的の権利はある、国が大きいから権利がよけいあつて、小さいからよけいないということは、国際連合の根本趣旨からも違つておるのであります。友好関係であるコロンビアに対して、あなたのおつしやるように、コロンビアはアメリカの従属国だ、こういうことはこの委員会としても、国際的にどこでも注意しておる外務委員会でありますから、御注意を願いたいと思います。国際連合においてもコロンビアの権利アメリカと同様に認めておる、ソ連と同様に認めておるのですから、その点は十分御注意願いたい。  それから中日貿易については何ら国際法やその他の規定がない、こう言われますが、国際連合において中共は侵略者ということに決定されおる。その結果、国際連合に――これはソ連も入つておる国際連合でありますが、これに協力する趣旨でわれわれは戦略物資等の輸出をとめておる、こういうことであります。なおMSAにつきましては、これは援助の形式によつては見返り資金というものができることもありましようけれども、援助の形によつては見返り資金というものがないものも多いのでありまして、まだこの点は何も決定しておらないけれども、見返り資金を積み立てるのがいやなら援助を受けないだけの話であつて、これは日本側で自由に決定し得ることであります。
  251. 川上貫一

    川上委員 何も遠慮する必要はない。国会議員が国会の中で自己の見解を述べることは当然の権利だ。政府が外交的に言うんなら、慎んだらよかろう。議員が委員会において自分の見解を述べて政府から警告を受ける必要は一つもない。なまいきなことは言わぬ方がよろしい。  第二に、大臣は国際的な信義によつて中国貿易をとめるのだというが、それならば国内法が必要なんだ。いくら政府が相談をしようが、国際的信義と言おうが、そういうものは国民が経済活動をすることを押える法的根拠になりません。中国との貿易というものは、政府がやつておるのと違う。民間がやろうとしておる。この民間のやろうとしておるものを、政府が国際信義によつてとめる。とめるならば国内法がいるのです。こういうむちやなことを外務大臣が言つてはどうもならぬ。どういう法律上のとめる根拠がありますか。国際法という道徳で国民と国民との経済行為を禁止することができますか。
  252. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 通産省におきましては、外国貿易についての管理をする権限を法律によつて認められております。国会議員がそういうをお間違いになつては困ります。
  253. 川上貫一

    川上委員 通産省が認めておるのは、あの法律は大臣が貿易について許可、不許可のことをするということはあるが、共産圏に対してはするとか、中国に対してはせぬとかいうことは一つも規定してない。中国だろうが、ソ連だろうが、アメリカだろうが、していいものはしていいし、して悪いものはして悪いとでも言うんならりくつが通ります。中共へは困るということがどこにある。通産省の関係にどういう規定がありますか。ありません。そういうことを言うから、でたらめなんだ。ありますか、外務大臣。
  254. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 あります。
  255. 川上貫一

    川上委員 ありますというような答弁ですが、通産委員会では、これはないということに答弁がなつてしもうておるのです。それはそれでけつこうです。  続いてお聞きしたいが、国と国とは、お互い独立国であるからりつぱにやれると言われるのでありますが、事実、実際の状態を見ると、なるほどアメリカには統制はありません。アメリカは自由の形をとつておる。しかしこれはたとえば日本占領のような形、あるいは軍事援助、経済援助という形、これで他国の産業を押え、他国の貿易を支配する。輸出補助をアメリカは出しておりません。これは出す必要がないのです。たとえばMSA援助を通じて向うの輸出の、あるいは競争相手の価格、生産その他にてこ入れができるのでありますから、国の中でそういうことをする必要がない。これがアメリカの自由なんだ。さらに一オンス三十五ドルというドルのくぎづけをしておる。これは実質的な為替管理なんだ。それだから、イギリスでもフランスでも、この一オンス三十五ドルの金価格を下げてくれろということを言うておるが、決してアメリカは下げない。こういうてこを持つておりますからアメリカではやれる。そのやれる結果、西欧も困る、東南アジアも困る。どういう対抗策をとつたか、すなわち輸入の統制と為替の管理、たつたこれだけだ。西欧の諸国、東南アジアの諸国が、このアメリカの方針に対抗しておる武器は、輸入統制と為替管理だけだ。だからイギリスはスターリング、フロツクをつくつている。南米は厳重な為替管理をしております。東南アジアは輸入の制限をはつきりしている。今度の条約は全部野放し、日本は何にもできないんです。これで対等だとか、あるいはこの条約は平等の形だから相互利益を得るとか、独立国だとかいうようなことが言えますか。絶対に言えつこないのです。私が今ここで述べましたが、それはそうではないという論拠を示してもらいたい。
  256. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 詳しいことは経済局長から申しますが、今為替の管理はほかの国がやつているが、この条約ではない、こうおつしやいますが、この条約にも十分その規定はあります。
  257. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 世界各国が為替の制限をやつておる、これは大多数の国はまことにその通りでありまして、ただいま為替の制限をやつていません国は、アメリカとカナダ、スイス、このくらいのものであります。但し各国とも為替の制限をやめようという非常に強い希望を持つておるということは、ITOにおきましても、あるいはガツトにおきましても、あるいはIMFにおきましても一致した意見であります。従いまして、イギリスの方におきましても、ポンドのコンヴアータービリテイをなるべく回復したいということに専念しておりますことは、御承知の通りであります。それから南米の方におきましても為替の制限をやつておりますが、これまたヨーロツパ各国と同様に、なるべく早く為替の制限を解いて自由なコンヴアータービリテイを回復し、もつて貿易上の増大に資したいという希望を持つておることも、これまた事実であります。それから日本で野放図にして非常にあぶないというお話でありましたけれども、十二条第二項におきまして、為替の制限をなし得るのだということは認めているのであります。従いまして、ただいまおつしやいましたのほうずであるということにはなつていないのであります。
  258. 川上貫一

    川上委員 答弁が違う。私はこういうことを聞いたのです。アリカの、ある言葉でいえば、攻勢といつてもいいし、経済政策といつてもよろしい、大体通商条約の今のような形は、大戦前にはなかつた。これは戦後にできた形です。この形は――アメリカが非常にたくさんの金を握つて、そうして資本主義諸国の中で優越的な独占的な資本主義国になつて、そこでいわゆる統制の撤廃と事業活動の自由、これをどんどんと押しつけて来たのです。戦争の前には、こういう通商条約があつたのは、ほとんど昔の支那――中国だけです。そこでこれに対抗するためには、ほかに手がないので、輸入の統制と為替管理をやつているのだ。これは四歌でも南米でもこの手をやり、東南アジアもやつているのだ。これが自国を防御する唯一の通なんだ。ところが今度の条約では、為替管理、輸入統制をほとんど野放しにしている。なるほど為替管理の中には一定の条件がついております。一定の条件がついておるが、これはある条件の時分にはということをつけておるだけであつて、この条件というものは、私ははつきり言えるが、アメリカの御都合によつてどんなにでもなる。旅券一本出すのさえアメリカのごきげんを伺わなければよう出しておらない政務が、自分自身でこんなことを操作することはできつこない。実際問題として私はこれを憂えなければならぬ。これができなくても対抗できますか、これを聞いておるのです。為替管理にわずかの制限がある。これは私も知つておる。ほかは全部野放しにしてある。これについては一々具体的な例によつて聞きたいと思いますけれども、きようは時間がありませんから、もう一問くらいで終りますが、その点について答弁をお願いしたい。
  259. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 先ほど十二条の二項というもので為替管理をなし得るということを申し上げましたけれども、これはたとえば十四条の七項をごらんくだされば明白に書いてございます。つまり「貨物の輸出及び輸入について、第十二条に従つて行われる為替制限と同等の効果を有し、又はその為替制限を効果的にするため必要とされる制限又は統制をすることができる。」ということがちやんと書いてあります。こういう統制によつて貨物の輸入あるいは輸出をなし得るのだ、それによつてこの為替制限と同等の効果を持つこともできるのだということがここに規定してあります。決しておつしやるように野放図であつて、まるで締りがないというようなことはございません。
  260. 川上貫一

    川上委員 野放図ではないという御答弁ですが、野放図であるということについては、この次の質問のときに具体的に話しましよう。同じことを聞くと今のようにぐるぐるまわりをやらなければならぬ。  もう時間が五分よりないので、五分間だけ質問いたしますが、事業活動の自由の問題については、コロンビアとの条約よりももつとルーズな事業活動を認めておるのでありますが、しかし一面においては、ある一部の企業産業には権利留保をしておることは事実であります。けれども権利留保について、どの程度のことをやるかということは、国内法によらなければ規定できない。ところが国内法は何もできておらぬのじやないか。そうするとあとでどんなことをやるんやらわけがわからないし、この問題の審議も進まない。国内法でどういうぐあいに権利留保を規定して行くのか、その草案でもできておりますか。
  261. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これは、制限業種に対しては制限をなし得るということになつております。但しこの制限業種に列挙してありますものの中にも、あるいは外資導入の必要上制限をする必要がないというものもむろんあるのであります。従いましてどういうものに関してどういう制限をすることが必要であるかということは、そのときそれに起る問題でありまして、そういう問題が起りましたならば必要な立法をなし得るという態勢をとつておるわけであります。
  262. 川上貫一

    川上委員 だんだんはつきりして来るのです。それだから制限するつもりはないのです。これだけやつておいて、外資を導入しなければならないからとか、アメリカさんがこうおつしやるとかなんとかいうことで、制限をせぬつもりでおることは明らかである。大体これをこしらえる時分に経団連は反対しており、全銀協も反対しておる、大蔵省の役人の人もある程度抵抗したそうだ、そのときに吉田総理大臣はお前ら何をしておるのだ、そんなことを言いおつて外資が来なかつたらえらいことになるじやないか、ばかを言うなと言うたということがある書物に書いてある、これは事実です。だからして、そういう形で留保してあるようなかつこうをとつておりますが、今も言われたように権利留保をとつてある存で、必要によつてはどんどんこれを許すのだと言うが、その必要がおつかないのです。これがくせものなんです。これの必要は、日本政府がきめる必要ではなくして、アメリカ政府がきめる必要なんだ、ここが非常にあぶないんです。(「あぶないのは共産党だ」と呼ぶ者あり)一番あぶないのは自由党だ。(笑声)しかしここで議員同士がやつてもしようがないからもうやめましよう。これは明日続けます。  もう一つ聞いておきましよう。不動産の取得権でありますが、日本人の土地所有とアメリカ人の土地所有は今後同じような形になりますか。
  263. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 不動産の取得各国内法にまかされております。
  264. 田中稔男

    田中(稔)委員 さつき私が土建業を制限業種に入れる考えはないかということを聞いたのに対して、黄田経済局長は取違えて答えられた。私の聞いたのはこうなんだ。全国の電源開発でやつておる工事の現場へ、アメリカの土建業者が入つて来て、日本の土建業者が下請みたいなかつこうになつておることを私も聞いておりますが、事実が違うならば教えてもらいたい。ところがいよいよ外資が入つて来るということになると、導入された外資の実力にバツクアツプされて、外国の土建業がもつと大規模に入つて来ると思う。そうすると日本の土建業がみなつぶされることになるわけだから、土建業というようなものは制限業種に入れた方がいいと思わないかということを聞いたわけで、電源開発のことが制限業種ということとはまた別のことです。ちよつと訂正してもらいたい。
  265. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 先ほどは電源開発の業種というふうに私は聞き取りましたので、それはすでに入つておると申し上げた次第であります。御指摘のような例が具体的にありますかどうか、私は存じませんが、たとえば今やつておりますような電源開発のローンでありますが、こういうものに関しては、そのローンをなす向うの銀行の方で信用し得るようなものをあるいはサジエストすることがあるかもしれませんが、そういう問題は現実に起つておりません。それからプライヴエートな外資が入つて参りますとそういう問題が起りますが、これはまつたく個人の契約の問題であろうと思います。土建業みたいなものを制限業種にするということになりますと、たとえば製鉄業とか自動車工業とかいうものと同様に、あるいはそういうことをしておかない方がかえつていいのではないかとも考えられますので、土建業というようなものは今入つておりませんし、その必要もないのではないかと考えております。
  266. 川上貫一

    川上委員 土地の問題は国内法であると言われましたが、日本にはどういう法律がありますか。
  267. 下田武三

    ○下田政府委員 土地取得に関する国内法に関しましては、外国人土地法がございます。これは相互主義原則に従いまして、相手国が日本人に対し土地の所有を認める場合には、その国人に対して日本国におきましても土地の取得を認める、そういう建前になつております。
  268. 川上貫一

    川上委員 それは大正十四年の法第四十二号のことであろうと思いますが、そのものは現在施行勅令が廃止されておる、今ございません。これはどうなつておるのですか。
  269. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の通り、戦前の法律でありまして、勅令は廃止されました。従いまして元の外国人土地法が生きておるわけであります。
  270. 川上貫一

    川上委員 そんなばかなことはありませんよ。現在施行勅令が廃止されておるのでありますから、現実には無法律状態です。これは使えません。日本には法律はない。どういうことなんですか。
  271. 下田武三

    ○下田政府委員 政令が廃止されておりまして、従つて新しい政令をつくれば外国人士他法が動き得る状態にあるわけであります。
  272. 川上貫一

    川上委員 そのくらいなことはわかつておりますけれども、法令はないのだが法律があるという。あれは私が言つた大正十四年法第四十二号のことであろうが、この法律は無と同様になつているだろうと言うたら、初めて政府は、いやそれはそうじやなかつた、こういう答弁だ。これはもう委員会でごまかしよる証拠だ。この問題については、私は時間を正確に守りたい。ちようど三十分ほどを消費しましたから、明日に留保して、この問題を兼ねてもつと具体的な問題で私のきよう言うたことを裏づけしたいと思います。あすに残しておきたいと思います。
  273. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後十時一分散会