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1953-07-27 第16回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十七日(月曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    金光 庸夫君       佐々木盛雄君    高橋圓三郎君       川崎 秀二君    喜多壯一郎君       須磨彌吉郎君    淡谷 悠藏君       福田 昌子君    帆足  計君       穗積 七郎君    和田 博雄君       辻  文雄君    小平  忠君       中村 高一岩  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    大石 孝章君         外務事務官         (欧米局渡航課         長)      松尾 隆男君         外務事務官   関 守三郎君         文部事務官         (調査局国際文         化課長)    柴田小三郎君         農林事務官         (農地局入植課         長)      和栗  博君         農 林 技 官         (水産庁経理課         長)      高橋 泰彦君         参  考  人         (福岡福岡市         長)      小西 春雄君         参  考  人         (福岡福岡市         九州大学教職員         組合連合会執行         委員長)    城  哲男君         参  考  人         (福岡会議         員)      河波虎之助君         参  考  人         (福岡福岡市         西堅粕 商業)  島崎 武夫君         参  考  人         (福岡福岡市         九州農民同盟書         記長)     齊藤 久雄君         参  考  人         (福岡福岡市         箱崎漁業協同組         合長)     藤野 文市君         参  考  人         (福岡福岡市         会議員)    御田  工君         参  考  人         (長崎佐世保         市相浦相浦漁         業協同組合長) 湯口 嘉七君         参  考  人         (長崎佐世保         市会議長)   辻  一三君         参  考  人         (福岡遠賀郡         芦屋大城伐採         被害者組合長) 安高 岩男君         参  考  人         (福岡遠賀郡         岡垣会議員) 辻  守莊君         参  考  人         (北海道日高国         門別町長)   松本 末吉君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月二十七日  委員田嶋好文君、野田卯一君、牧野寛索君、三  和精一君、岡田勢一君、穗積七郎君、和田博雄  君、岡良一君及び中村高一君辞任につき、その  補欠として福井勇君、高橋圓三郎君、金光庸夫  君、中山マサ君、川崎秀二君、淡谷悠藏君、福  田昌子君、辻文雄君及び小平忠君が議長指名  で委員に選任された。 同月同日  委員淡谷悠藏君、福田昌子君及び小平忠辞任  につき、その補欠として穗積七郎君、和田博雄  君及び中村高一君が議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 七月二十五日  鳥島を駐留軍爆撃演習場使用反対に関する  請願木原津與志君紹介)(第五四八五号)  駐留軍関根演習地拡大反対に関する請願(三浦  一雄君外一名紹介)(第五四八六号)  駐留軍水上機博多湾使用反対に関する請願(  戸叶里子紹介)(第五五三七号)  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外二十  四件(福田赳夫紹介)(第五七五三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約の批准について承認を求めるの件(条約第  九号)  日華平和条約附属議定書第二項の有効期間の延  長に関する議定書の締結について承認を求める  の件(条約第二三号)  日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び  区域に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより会議を開きます。  本日は、まず前三回に引続きまして、日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び区域に関する件を調査するため参考人より意見を聴取することといたします。  議事に入るにあたりまして、本日御出席参考人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、遠路わざわざ御出席をいただき、厚く御礼を申し上げます。当委員会におきましては、国政調査の一項目として、日米行政協定実施状況調査して参りましたが、今回現地方々の御意見を聴取するため、特に参考人各位の御出席をお願いいたした次第であります。  本日の議事の順序につきまして申し上げますると、まず参考人方々より、おのおのの関係区域に関する御意見を開陳していただき、そのあとにおいて、委員より簡単なる質問があるはずでございます。なお御意見の開陳は、一人十分ないし十五分程度にとどめていただきたいと存じます。念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところにより、発言委員長の許可を受けることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことになつております。なお参考人は、委員に対して質疑することはできませんから、さよう御了承お願いいたします。  それではこれより参考人から意見を聴取いたします。  なおこの際委員各位にお諮りいたします。板付飛行場の件につきまして、九州農民同盟書記長齊藤久雄君及び博多湾関係参考人として、御田工君を追加いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  今日出席せられました参考人は、板付飛行場関係において福岡市長小西春雄君、九州大学教職員組合連合会執行委員長城哲男君、福岡会議員河波虎之助君、商業島崎武夫君及び九州農民同盟書記長齊藤久雄君、この五人であります。  また博多湾関係におきましては、小西福岡市長箱崎漁業協同組合長藤野文市君、福岡会議員御田主君、この御三名であります。  また長崎県オジカセ島参考人として、相浦漁業協同組合長湯口嘉七君、佐世保会議長辻一三君が見えております。また福岡芦屋飛行場防風林関係において、伐採被害者組合長安高岩男君、岡垣会議員辻守莊君が見えております。また北海道日高門別関係参考人として門別町長松本末吉君が見えております。  これより順次参考人意見を聴取いたします。福岡市長小西春雄君。
  4. 小西春雄

    小西参考人 福岡の問題は、板付飛行場博多湾とあるわけですが、一緒にして行くのでありますか。あるいは別々におやりになるのですか。
  5. 上塚司

    上塚委員長 それは別々にやります。まず板付関係について御説明願います。
  6. 小西春雄

    小西参考人 それでは、まず板付飛行場の問題について、意見を開陳いたしたいと存じます。  結論的に申し上げますと、板付飛行場は、軍事基地としては、撤退をしてほしい、あの軍事基地はやめてほしい、と同時に、あの飛行場国際空航に指定していただきたい、そういう御尽力が願いたい、こういうわけであります。福岡市の議会におきましては、二十七年の十二月三日、全員一致で、ただいま申し上げました板付飛行場軍事基地撤退、と同時に、国際空航の指定ということを決議いたしたのでありますが、それに先だちまして、そういう軍事基地をなぜ撤退してもらうという要望をするのかということが第一番の題目であると思います。まず一番には、あそこをアメリカ軍事基地にいたしておりまするがために、非常に危険である。しかも市の中に軍事基地があるのでありまして、ここに地図がございますが、これだけの飛行場市内にあるわけであります。軍事基地でありまするがために、ジエツト機戦闘機が、あるいは編隊をなして、あるいは各個に、始終出入りをして、盛んに飛んでおるのでありまして、その危険の度は実にはなはだしい。昭和二十六年の五月十日には、二股瀬というところで、この飛行機が飛び立つときに煙突にぶつかりまして、それがために火事を起して、数軒の家を焼くと同時に、十一人の死者を出したのであります。これは大きな事件であつたのであります。それから二十六年の三月三十一日には、ガソリン・タンクが落下しましたために、学生が二名ほど頭部に負傷をしました。また二十七年の九月二十日には、市内城西橋というところで、アメリカ飛行機が墜落をいたしまして、火災を起し、一名が死亡いたしたのであります。それから二十六年の、これはちよつと月を私調べなかつたのですが、中学校の屋根に補助タンクが落ちたのであります。幸いに爆発をいたしませんで、火災にはならなかつたのであります。また二十六年中には、あの飛行場演習をやりまするそのたまがそれて、学校の校舎の壁を貫通したことが両三回あつたのであります。この非常にはなはだしい危険ということ、――戦争がどんなふうに進展するが、進展のいかんによつて敵国から侵入、攻撃を受ける場合には、市内飛行場がありまするので、市民が危険にさらされているわけであります。もし敵国から攻めて来るということになつた場合を想定しますと、はだえにあわを生ずるわけであります。従いまして二十六年、七年の間には、防空演習をやらぬかというような問題でいろいろと物議をかもしたこともあつたのであります。それがために、市民は恐怖にさらされておる。この件は、両三日来の休戦協定の成立によつてある程度緩和されるというか、戦争状態の終止ということにいつて解決したと言えるかもしれません。ところが今までは、爆音、ことにジエツト機音響は非常にひどいのでありまして、その音響ために、あらゆる方面に支障を来しておるわけであります。この爆音ために、教授が完全に行われない学校が、小学校が七つ、中学校が三つ、高田学校一つ大学一つ、合せて十二の学校教授上に非常な支障を来しておるのでありまして、これは現地を一ぺん御経験願えば、明瞭にわかる問題であります。今おまわししました図面に学校の所在を現わしておきましたから、ごらんを願いたいと思います。また市内のまん中にああいう飛行場ができましたために、従来あつた県道が二筋すつかり飛行場ためにとられて、そのために非常な不便が起きておるのでありまして、中学校の生徒の通学の上に、従来と比較すると、たいへんな遠距離をまわらなければならないというような問題もそこにあるのであります。その他、あるいは設備のために井戸の水がかれて、これをどうしてくれるというような問題もあります。これは、飛行場の方で掘割を大きくつくつたために、清水が枯渇したという問題であります。  それから今申し上げました危険と爆音の問題ですが、爆音関係におきましては、最もその大きな影響を受けておりますのは九奨学の教授でありまして、大学の方では、いろいろと詳しい被害調査書ができておるのでありまして、一分間に四十七回ないし四十八回もお互いが対話をしているのが聞き取れない、七十フオーン以上の爆音のするのが四十七回、四十八回以上に及ぶというような調査もできておるのでありまして、その点は、九州大学の方からお見えになつておりますから、詳しく述べていただきたいと思います。ただに談話のみならず、各種の実験等にも、いろいろと爆音ため支障が生じておるのであります。それで福岡市としては、先刻申しましたように、ぜひこの軍事基地撤退してもらつて国際空港にしていただきたい。二十七年に英国デニング大使が見えましたので、その際も、この空港問題をお願いしたのですが、その御返事には、これはアメリカ関係であつて英国から話を持ち出す筋合いのものでないのだからというようなことでありましたが、国際空港になることはむろん大賛成だ、こういうお話がありました。引続いてアメリカマーフイー大使が見えました。そのときも、私から力強くこの基地の撤廃を願うと同時に、国際空港にしてほしいということを開陳いたしました。それに対しまして、国際空港はまことにけつこうだが、軍事基地関係は軍の関係であるので、出先のことで何とも言えない、軍の方にも一応協議をするようにしようというようなお話があつたのであります。この国際空港に指定してもらうということは、単に福岡市だけの希望ではないのでありまして、全九州希望であると申し上げても、少しもさしつかえないと思います。内地人のみならず、あるいは華僑その他におきましても、商業上の取引から論じましても、内外人を論ぜず、福岡国際空港に指定することは、一人の反対者もないと私は断ずるのであります。  そこで、そんなに軍事基地撤退しろというのだが、どこに撤退したらいいのか、その代替地は、市長は一体どこに考えておるのかというような質問が、衆議院方々の御視察の際にも出たのでありますが、行先は、私どもはそれを調査する機関技術知識も持たない。どういう所ならば軍事基地に適当するかということを、研究する機関知識も費用も持たないので、われわれはそこを出てもらいさえすればいいのだ、博多をのいてもらえばいいのだということが私の議論でありまして、どうしても代替地を出さなければ問題にならぬのじやないかというような言い方をされるのでありますけれども、私は、それはアメリカ及び日本政府において検討し、きめるべき問題である、私どもとしては、そこまでの手は及ばないのであります。その点どうか御了承願いたい。ある代議士の方から、そんなに言つたんじや、君問題にならぬぞというようなお話があつて、しいて言えと言われますから、それでは君の選挙区へ持つて行こう、君の選挙区が一番いいというじようだん話を申し上げたのであります。  それから、この軍事基地としてアメリカ使用しておりますのはどういう根拠に基いてやつたかという点は、私まだ今はつきりいたしません。占領当時、日本軍使つてつた飛行場ですから、それをアメリカがずつと使つたというので、まつたく既成の事実というような感じで今まで見て参つているわけなのです。どういう根拠に基いてアメリカ使つたかという点、なお日本が独立した際にどういう手を打つたかという点は、まだ聞いておりません。外務省の方で、日本独立と同時に、この基地は一体どういうことにするのかという点について、いかなる交渉が行われたかということは、承知いたしておりません。どうか皆さん方の御尽力によりまして、朝鮮戦争休戦なつたのですから、ひとつこの際基地を撤廃してもらつて、平和な国際空港としての使用ができるように、御配慮をお願いしたいと思います。  なおもう一つ、これはわずかな問題でございますけれども板付という名前は、あそこのくだらない、ほとんど部落があるかないかわからぬようなところで、板付というような名は、世界的の名前じやないのです。だから、この空港としての名前は、福岡あるいは博多、何かもう少し大きな名前にかえなければうそだと思つております。板付という名前では、非常な不便がいろいろあると存じております。一応、また御質問によつてお答えいたします。
  7. 上塚司

  8. 城哲男

    城参考人 かねて、板付空軍基地によりますところの直接、間接の被害を最も痛切に感じております九州大学職員並びに学生を代表いたしまして、私がこの委員会におきまして意見を開陳する機会を与えられました本委員会の皆様に、厚く御礼申し上げるとともに、深く敬意を表する次第でございます。  さて御承知のごとく、すでに市長さんが申されましたように、わが九州大学は、福岡市の東北部箱崎と申すところにございまして、問題の板付空軍基地とは、わずかに一キロ内外を隔てるにすぎません。しかもその中でも、濃、文、経、あるいは教育学部、工学部理学部農学部、ほとんど大多数の学部箱崎の地にほぼ集合して存在しまして、医学部附属病院のみがわずかにそれより離れまして、吉塚にございます。しかしながら先ほど来市長さんが申されますように、飛行機爆音に対しましては、箱崎といい、吉塚と申しましても、まことに一指を隔てない、ほとんど同じような地域に存在いたします。大学の主要な業務と申しますか、むしろ機能と申しますか、それは皆さんも御承知のように、研究であり、講義であり、あるいは演習であり、あるいは実験であり、すべてにわたりまして、人と人との言葉の媒介による働きが非常に重要でございます。もちろん、そのほかにあらゆる人間万般のことは、言語媒介を要しましようが、ことに教育の場におきましては、言語媒介ということが重要なものでございますが、それが先ほど申されましたように、ジエツト機が、一機はもちろん、数機、十数機で参りますと、その騒音はあたかも万雷のごとく、あるいは遠雷のごとく耳を聾して、その瞬間は、まつたく講義演習も何もできません。その都度、われわれはしばらく談をやめます。あるいは講義も話すのもやめまして、学生もしばらく耳を伏せ、じつとがまんしております。大体十秒ないし二十秒を経ますと、その瞬間的な強い騒音は去りますからまた始める、始めておりますと、また轟音が来る、そういうようなことが、はなはだしいときには一時間に十数回以上というような回数なつております。今お手元に、わが大学二神教授が、この騒音音響物理学的に測定したデータをプリントにしておまわししておきました。これは、朝鮮戦争の最もはなはだしいときでない、ごく最近の――先ほど市長さんが申されましたように、休戦協定が成立しましたのですが、最近はずいぶんと穏やかになつて参りました。従つて、この実験をやりましたのは六月の上旬でございまして、朝鮮戦争の初期に比べますと、著しく静穏になつたと申すときでございますが、それでなおかつこの表にございますように、特にこの一番端の縦の行が時間でございますが、そのうちの八時から九時ないし午後の四時から五時、ちようどこの間が大学教授時間になつております。この期間における、この中の各小さなます目に入つておりますところの数字は七〇フオーン、これは専門的になりますが、あるいは昔の方は、デシベルという方がわかるかもしれませんが、七〇フオーンあるいは七〇デシベル以上の音が測定された回数が、五とか六とかという回数でございます。七〇フオーンと申しましても、何のことか一般の方はおわかりにくいと思いますので、少しく御参考までにつけ加えますと、東京の銀座の一番にぎやかな所で、七〇フオーンでございます。それから少し静かな町の中に行きまして、大体三〇フオーン、自動車、自転車のクラクシヨンを耳のそばでやりますと、鼓膜が瞬間的に震動しまして、痛みを覚え、目まいがいたしますが、それが一二〇フオーン、そういうような量的関係からもおわかりになりますように、七〇フオーンというような、ほとんど問題にならないようなはなはだ高い騒音が、この表にございますように頻繁にわれわれの頭上を襲つて参ります。そこで私どもは、とうていこれでは研究になりません。あるいは授業もできません。教授学生神経衰弱になりまして、非常に神経質な人になりますと、もうその瞬間、あるいはもう講義を始めるときに、すでに顔をしかめながら、いやいやながら講義をしているというようなことさえも見受けられます。まことに文教場所と申しますか、研究場所にあるまじき事柄でございます。そういうような言語媒介とする普通の講義演習ばかりではございません。最もわれわれの必要とする自然科学上の研究、たとえば理学部光学部では、これは少し専門的になりますけれども、顕微鏡をのぞいたり、あるいは放射能を測定するために、ガイガーカウンターというのがあります。これは一箇、二個とこつこつ音がするものでありますが、そういう音を数える機械があります。あるいはデザデンガルバノ・メーターと申しまして、ごく微弱の電流をはかるものがございます。これは、ごく細い水晶の糸に小さな鏡がとりつけてございまして、その鏡の動きで電流をはかるのでございますが、これがまた、ほんの空気の震動でも影響されます。そういうような精密な実験は、瞬間的にはやれましようけれども、全部これを連続してやることができない。あるいは、これはその表にはありますように、夜間でも若干ありますが、昼間の研究時間が一番はげしい。やむなく学者は、夜分非常に静かなときをねらつて、ある程度の実験をしておるというような事態でございます。医学部におきましては、皆さんも御承知のように、お医者さんが聴診したり打診したりする、これも往々にして障害されます。あるいは特に専門の耳鼻科になりますと、聴力検査をやります。これはささやき試験と申しまして、十メートルぐらい離れて、大阪とか東京とか、ささやき声で話をするわけでありますが、こういうものも、先ほど申し上げましたような騒音では、妨害されますことも当然お考えになられることと思います。お医学部には重症の患者がおりますが、その患者の絶対安静ということも、往々にして障害されます。あるいは農学部医学部生物学教室では、小さなはつかねずみやモルモツト、あるいはうさぎを飼う動物実験においても、その動物安静状態が得られない。動物が環境になれまして、実験に応ずるようになるには、あのような七十フオーンもあるような騒音を連日聞きまして、やがてはそれに鈍感になつて、何とか静穏になるためには、数箇月の予備準備期間を要するというような非常な研究上のむだをいたしております。研究ばかりではございません。事務職員事務をとります際にも、この騒音は当然妨害になる。事務職員でさえも、しばしばこの騒音ために顔をしかめて、そろばんを握つたまま立ち往生して、ああこの音が一日も早くなくなればいい、こういうふうに嘆いております。でございますから、わが九州大学といたしましては、絶対に板付からは撤退していただきたい。ごうまつもこういう研究場所があるところに軍事基地、あるいはそういう騒音を発するものがあつてはならない、そうでなければ、せつかく政府当局文教振興を唱えられ、あるいは科学立国を唱えられまして、科学技術振興を叫ばれましようとも、実際の研究ができませんければ、何にもなりません。有名無実なつてしまいます。しかもまた一言つけ加えておきたいのでございますが、われわれ自然科学者、私も実は医者でありますが、自然科学者は、一般にこのような政治問題には容威することを好みません。おのれの本分としておりますところの自然科学上の研究に没頭しておれば、それで足れりというような、まことに殊勝な者ばがりでございます。そういう自然科学者は、おのれの生命とする自然科学上の研究を妨害されましても、これをあえて公に訴えようとはいたしておりません。ただ先ほど申し上げましたよう、しんぼうしたり、あるいは夜分に実験をしたり、あるいは場合によつては、研究テーマをかえたりいたしまして、とにかく何とかしてやつている。しかしながら、心の底から、一日も早く、一刻も早く板付から基地がのいていただきたい。これが全九州大学職員研究者の痛切なる心からの要望でございます。委員の皆様、どうぞわれわれの痛切な要望をお聞きとりくださいまして、一日も早く、この学園に正常なる状態が持ち来らされますように、御配慮いただきたいことを厚く厚くお願いする次第であります。  なおもう一つ、事柄は、これに比べればわれわれ学者自身の立場からは小さいと思いますが、一般的には、決して小さいと思われない問題、あるいは被害がもう一つございます。それは、基地があるために、この問題はどこでも起つておると思いますけれども箱崎は、昔は非常に平穏な静かな学生の町であり、学徒の町であつた。ところが非常に騒がしくなり、ために物価も上り、部屋代も上れば、あるいは間貸しあり、貸間あり、但し御婦人に限るとか、あるいはそういうような類似のことが種々ありまして、学生諸君は容易に部屋も借りられない、下宿もできない、物価も安くならないということで、さなきだに苦しい戦後の学生生活は、さらに苦しさを増しておる。学生ばかりではありません。われわれ教職員といえども大学の周辺に居住します者は、当然基地によるところの間接の被害を受けまして、そのある面は給与ベースの問題にもなりましようし、その他いろいろなところに影響は及んでおると思います。とにかく、私ども学者の立場からは、あの騒音を一日も早くのけていただきたい。あの騒音さえなければ、われわれは研究ができる。研究さえできれば、何とかしてお国のためになれる。われわれは、俸給は乏しくとも、待遇は悪くとも、とにかく一生懸命研究さえできれば、われわれは祖国のために尽すことができる。その研究ができなくなつては、われわれは何らできない。学者が研究ができなくては、まさに死であります。重ねて申し上げましたけれども、そのわれわれの意図するところをくまれまして、どうぞ一日も早く板付から基地の徹退をされますように、九州大学の全研究者、学者、学生の声を代表いたしまして、心から皆様方にお願いする次第でございます。
  9. 上塚司

  10. 河波虎之助

    ○河波参考人 非常に暑い中に、私ども意見を聞いていただきますことを心から感謝いたしますとともに、与えられた時間内に、率直な意見を述べさしていただきたいと思います。  前二参考人発言されましたように、基本的に申し上げますと、私は前二者と同様に、軍事基地を即刻撤退するように御尽力をお願いしたいのであります。この板付基地というのは、敗戦直前、日本軍によつて急遽設けられたものであります。それがために、非常に無理なつくり方をしたわけで、人口四十二万の福岡の都心部からわずかに二キロ五百くらい離れたところに、この飛行場ができたのでありますが、そうなりますと、西日本で一番人口が稠密いたしておりますところから二キロ半くらいのところに設置されたというために、今日いろんな騒音の問題とか、その他の事故問題が発生するのもおわかりになると思う次第であります。そういつた地理的な問題を解決することが、私は本問題の解決の一つの着眼点でなければならないと考えるのであります。そこで、例を一、二あげてみたいと思うのでありますが、何といたしましても、一番問題になるのは、やかましさであります。昔のプロぺラ一つ飛行機ならばともかくも、私ども小さいときには、飛行機が来れば喜んで飛び出して行つたのですが、最近のようにやられますと、まつたくいやな思いがいたします。と申しますのは、プロペラが四ついてみたり、ジエツトがしりから吹き出して行つてみたり、こういうやかましい飛行機なつて参りまして、それが無数に飛びかう。こういうわけで、問題がたくさん起つて参りました。例をあげますと、せつかく卵をよく産んでおつた鶏が、卵を産まないようになつてみたり、あるいは妊婦が予定よりも早くお産をしてみたり、こういつたまつたく想像外のことが起つて来るのであります。  そこで、教育の問題につきましては、ただいま大学からお話がありましたが、まつたくそれと同じようなのが、高等学校にも中小学校にも、あるいは幼稚園にも全部のものに及んでいるわけであります。それから、教育の問題に関連しておりますので、ささいなようでありますけれども、特に申し上げてみたいと思うのですが、六三制実施に伴うところの中学校の設置によりまして、飛行場で遮断されたところの地域の者が、飛行場をまわつて学校に通学をいたしております。これがバスに乗りまして片道が二十五円、一日往復五十円を必要とするのであります。これを定期券を買いますと、一箇月六百円を必要といたします。この六百円の負担を、義務教育を受けさせるために、それぞれの父兄は負わなければならないのです。歩いて行けといつても、人が自転車で通つていると、自転車がほしくなるし、人がバスで行けば、親心としてバスの定期を買つてやらなければならぬ。このような問題までも教育に関連して起つておるわけであります。そこでこれは、飛行場がのけられれば、これに越したことはないのでありますが、もしのけられなければ、学校を移すか、あるいは学校に防音装置をするなりして、その解決を講じていただかなければならないと思います。  その次に、飛行場が当初三百町歩であつたのが、今日七百町歩に拡大されております。その四百町歩の拡大には、おのずから耕地をつぶしたり、あるいは住宅を移転したりしたために、付近の住民に著しい迷惑を及ぼしておるのであります。これらの建設、あるいはでき上つた飛行場への諸物資の搬入、こういうことのために、非常にものすごい大きなトラツクが、毎日無数に飛行場に向つて進んでおるのでありますが、それが道路を非常にこわしまして、国道二号線が博多から二日市を経て、久留米、甘木方面に向つておるのでありますが、この道路を、一年間に一ぺんずつアスフアルトの補修をしなければならない。これは国でやつていただきまして、福岡県では最もすぐれた道路でありますけれども、その道路ですら、以上申し上げるような状態であります。ましてそれから派生いたしておりますところの県道、あるいは町村道の被害はきわめて大きなものでありまして、まつたく百姓が馬車を引いて通ると、ぬかるみに馬車をつつ込んで、それを引揚げるのに骨を折つておるような問題までも起つております。この国道二号線の、飛行場と空軍の宿舎との間の約六キロあまりは、米軍が通勤したり、あるいはその他のことをやるのですが、その交通量が一日に――これは私の住まつております福岡の南郊でございますが、南郊において、一日に約五千台通つております。これを一時間に割りますと約二百台、もちろんこれは深夜までも含んでおりますから、これを大体十七、八時間で割つてみますれば三百台で、一分間に五台自動車が走つていることになります。私は、おそらく品川附近の京浜国道にも決して劣らない数字だろうと思います。ところが京浜国道の方になりますと、それに対するいろいろな施設、交通巡査の配置とか、その他のことが適当に行われておりますし、道路の幅員もかなり広うございますので、事故は起しませんが、これがために、私の方の小学校の生徒が今日まで九名死亡いたしております。最近福岡県のある県会議員の車は、二人を同時にはねまして、二人とも即死いたしましたが、私のおじも、今から一年ほど前に、この事故で死亡したのであります。そういうことが非常に起つておりまして、必然的に土木の問題もたいへんたくさん起つて参りますし、私の裏にあります県道の橋梁は、非常な重量物をトラツクに載せて運んだために、二回橋が折れたのであります。橋のまん中から、トラツクが川の中にしりから飛び込んで行くというような珍現象も生じておるのであります。  その次に、交通事故のことを今申し上げましたので、少し資料がありますから、これを申し上げてみたいと思うのですが、昭和二十七年の四月から本年の四月まで、一箇年間の事故件数であります。これは福岡県の統計でありますが、交通事故が二百九十一件、これの被害者数が三百三十一名、航空機事故は、先ほど市長が申しました二股瀬の事件とか、あるいは城西橋事件を含むのですが、十一件で、被害者数が三十五名、海上は二件で被害者が四名、その他百九十六件で、被害者数二百二十六名、合計して一年間に五百件、五百九十六名、こういう数字が出ております。このような交通事故の問題も、なるべく早期に処置しなければならない問題であると考えております。  次に、経済的な関係なつて来ると思いますが、先ほど申しましたような、鶏の卵を産まないというようなことも、農家のささいな経済には、かなりの影響を及ぼすものでありまして、ぜひとも考えてやらなければならない問題と思いますが、何と申しましても大きいのは、三百町歩の飛行場が七百町歩に増大されておる。これは、やはり朝鮮動乱その他で板付基地を空軍基地として使用するために大きくなされたものであつて、いたしかたもないというようなものの、これがために受けましたところの農民、あるいはその他の住民の経済的な打撃はきわめて大きなものであるといわなければならないのであります。  きわめて断片的に申し上げましたが、要は、これらの問題を解決をしていただかなければならないのでありまして、それがための解決の方法として、つまらぬ考えを持つておりますので、それを三つほど申し上げてみたいと思うのであります。  まず第一には、何としても騒音を取除くことを御考慮願いたい。これがためには、福岡市議会で決定されております国際空港というようにしていただきますと、非常時飛行機の発着度数も少くなるでしようし、騒音がぐつと減るのではないか。それから、そうしますと先ほど申しました三百町歩が七百町歩にかわつているその飛行場も、私はもつと小さくすることができるのではないか。都心に近いのでありますから、まつたく土一升金一升の近所にあるのでありますから、これらの土地を旧持主に返していただきますと、さらに福岡の発展上都合がいいのではないか。何としても基地撤退することが、私は第一の問題であると思うのであります。  それから二番目に土木関係でありますが、先ほど申し上げました国道二号線が、非常に飽和点に達した交通量を示しておりますので、これに併置いたしまして、飛行場と米空軍がおりますところの間に、現在県道がある、もし防衛費その他から捻出していただきまして、これを鋪装強化していただきますならば、先ほど申し上げますような事故関係も、あるいは消滅するのではないか、幾分減少するのではないか、このように考えます。  その次に、三番目には、今日日本でいろいろ問題が起りますが、要は補償問題でありまして、この補償を極力皆さんの御尽力によつてつていただきますならば、あるいはこういつたやかましい問題も少くなつて来るのではないか。  以上のような三点を申し上げまして、非常に暑気の盛んなときに慎重御審議されておることに対しまして、深く敬意を重ねて表しますと同時に、御善処をお願い申し上げます。
  11. 上塚司

    上塚委員長 次は、福岡島崎武夫君。
  12. 島崎武夫

    島崎参考人 私は、前の参考人の方方が、いろいろのデータに基にて詳しくお話になりましたから、その点は重複いたしますので、省略いたします。  私は、現在その飛行場から直線百五十メートルのところに生活をしております。その地理的環境をちよつと頭に持つていただきたいと思いますのは、そこの飛行場は、福岡市のちようど東南に当りまして、博多湾に向つて右側に五十メートルないし百メートルの山がずつとそびえております。その山のすそに沿うて二股瀬というところまでその飛行場が行つて、さいぜん河波証人も申しました通りに、七百町歩の耕地がつぶれております。海に向つて、右側には大した施設はありませんが、人家の稠密した左側にガソリンのタンクとか、いろいろなものが集約されております。しかもその山の中にたくさんのガソリンの地下タンクが鉄条網を張つてあります。そうして朝から晩まで実弾を込めた衛兵が立つて、一歩も近づけないという状態であります。その山を約百メートルほど参りますと、粕屋炭田の炭鉱地帯に参る。こういうような地理的環境にあります。そうして、その五十メートルないし二百メートルの周辺に、小学校並びに中学校が十五あります。そのうち、中学校は五つであります。しかも爆音の直下には、九州大学医学部、法学部、文学部農学部などがあります。私はこの町にすでに三十五年から住んでおりますが、かつてその郷里で教職にあつたことがあります。別のことは申し上げませんが、戦争の初めごろと、講和後に進駐軍がそこを接収した後と比較しまして、町の様相が今日一変いたしております。たとえば、三分間ないし五分間に、ジエツト機が二台並んで滑走路を飛んで行きます。ことに朝鮮戦争が激しい場合には、三分ないし五分の間隔を置いて、二百台からのジエツト機が飛んで参ります。しかも飛ぶときは低空であります。われわれの頭の上を飛んで行きます。この爆音は実際経験しないとわかりません。まさに話も何もできぬ。そうしますと、各家庭の状態をながめてみますと、母が子供に何かを言いつけるのに、おとなしく言わないで、大声で叫んで言わなければならない。また子供は、大声をあげて答えております。従つて、それがために母親の心もすさんで来れば、子供の心もすさんで来ております。しかも学校では、先生が小さい声で話をしても聞えないから、大きな声で子供に何か教えておる。子供も大きな声で答えておる。それがやさしい言葉でない。お前これがわからぬか、わからぬというように言わぬと、聞えない。ここで考えていただきたいのは、現在の小学校並びに中学校の生徒は、日本の将来を背負つて立つ者なんです。しかも日本の民主主義にあたりまして、その周辺の小学生並びに中学生に対して、いかに民主主義の教育を施し、情操の教育を施そうとしましても、こうした環境にある子供たちにどうしてそれができるか。私にも、現在尋常六年と四年の子供がおりますが、盛んにジエツト機が北の方の空を飛んでおるが、お父さん、あれはどこへ行くの。朝鮮。何しに行くの。戦争だよ。お父さん、戦争というけれどもアメリカの人が戦争をするのに、なぜ自分の所でやらないで、日本の土地を使うのか、なぜそうするのか、これに対して私は、明確なる説明ができない。こうした疑問を子供は持つて行きます。由来子供というものは、飛行機には興味を持ちます。よく絵なんかに描いていますが、このごろは飛行機の絵なんか描かなジエツト機を描いて、何を説明してあるかと見ると、やかましいと書いております。これくらいすさんで行つております。こういう点から考えてみましても、私は一日も早くここを撤退してもらいたい。しかもさいぜん申し上げました通りに、七百町歩の土地がつぶれております。最初の三百町歩から四百町歩ふえております。そのうちには雀居の部落とか、清水の上牟田部落というものが全然なくなつて、耕地は取上げられております。従つてそうした人たちと家族たちは、耕作地を離れて四散して、まさにその周辺の娘たちは娼婦化しつつあります。その中にいわゆる専業娼婦が入り込んで風紀はまさに乱れて、様相はまつたく一変してしまつております。かような状態をながめてみますときに、私はその土地に三十数年おり、多少教育のことにも関係しておりますが、これはたいへんだと思います。願わくは、私は軍事基地よりも、これを平和の基地に切りかえてもらいたいと思う。さいぜん小西市長が申された通りに、国際空港というような平和の基地にしていただけば、今の厖大な土地は、初めの三百町歩ぐらいで済みはせぬだろうか。あとの四百町歩は元の耕地にもどる。その四百町歩の耕地の中には、私の方の地元の農家の土地がおそらく三分の一入つています。席田、臼井というのが三分の二ございましよう。そこはどういうものをつくつておるかというと、米と蔬菜の生産地で、消費地の福岡を控えておりますので、それでみんな生活をしておりましたのに、そういうものが取上げられておる。しかも農地の改革に伴つて、それにも恵まれぬような耕作者たちがたくさんあつて、現在解決せぬ問題がたくさんあると思います。  こういう状態でありますので、私はここに最後に申し上げたいのは、もうすでに撤退しなければならぬということは、賢明なる皆さんにはおわかりだと思いますが、私たちは、これをいかにして撤退せしむべきかが、問題であろうと思います。かつて内灘の試射場では、たくさん騒ぎがありました。もしこの板付飛行場軍事基地としてこのまま続けて行く場合、地元民は、あるいは生命を機軸にしても大反対をやるだろうと思います。そうしたきざしはちよちよい今見えおります。幸いなことに、本日こうして、私たち地元民の意見をお聞きくださいました。願わくは、すみやかにこの軍事基地の撤収をして、そうして平和の基地に切りかえてくださるように切にお願いして、簡単ながら参考に供します。
  13. 上塚司

    上塚委員長 次は、九州農民同盟書記長齊藤久雄君にお願いします。
  14. 齊藤久雄

    齊藤参考人 基地の事情の一端を述べさしていただく機会を与えてくれましたことに対して、お礼を申し上げます。私は地元の農民の立場から、実情を申し上げたいと思います。  最初昭和十九年三月、旧日本軍基地としてつくりましたときに、約二百三十町歩ぐらい完全に美田がつぶされたのでございます。これに関係しておりました農民が四百戸あります。うち三百戸ぐらいは小作農民でございます。またそのうちの百五十戸ぐらいは、わずかな期間をもつて強制的に立ちのきを食らつたわけでありまして、従つてこの人たちが行く疎開先は、何ら指定されないで、追い出されたわけでございます。それも軍の命令だということで、一言の訴えもできないで、追い立てられました。そういうような実情のもとに、祖先代々から農地として使われておつたものを、日本軍飛行場として与えたというわけでございます。それからわずかばかりの土地を残されたり、また家屋敷だけ残された人たちは、疎開をすることもできず、そこにいろいろな危険を冒して、踏みとどまつて、生活にあえいでいたわけでございます。こういうふうにいたしまして、わずか一年ばかりして二十年八月に終戦になりまして、当時の日本軍の買収官でございました人たちから、ここの飛行場は、北九州の工業地、筑豊炭田、それから福岡県の大都市というものをわずか二十分間ぐらいで防衛できるという目的で飛行基地としてつくつたものであつて、これは恒久の軍の飛行場とは考えてはいなかつた。従つて終戦になつたから、もうこの飛行場使用する必要もないから、返してしまおうということで――八月の十五日に終戦になりまして、八月の十八日に買収官の金子金平というその当時の主計大尉さんが、直接この基地に参りまして、返還していただいたわけでございます。従つて、この返還は、地元の四百町歩を失つた農民の人たちに対する耕作権並びに所有権が返されたわけでございます。その飛行用地は、大部分まだ未完成でございましたので、農地そのままでございました。わずかに滑走路と兵舎だけで飛行基地として使われておりましたので、すぐさま整理をして、農地化するように考えておりましたが、わずか三箇月間ぐらいで、米軍が接収するようになつた次第でございます。そのとき農民は、また再び顔色を青くしてしまいました。米軍が接収するにあたりましては、今まで参考人方々から申されましたように、日本軍使つておつたときより以上、ずつと危険が増して来たわけでございますし、そうしてまた飛行場が、米軍により第二次、第三次と拡張されて行きまして、ほとんどの農地がなくなつてしまい、みんなは山を開墾して、山畑で何とかしようとしておりましたが、山は実弾射撃場というふうに使われて、山にも上ることができない、こういうふうな状態になりまして、ますます生活は苦しくなり、ますますそこの危険はまして来た。しかしながら、農民は非常に自分の郷土から離れがたいものでありまして、わずかな土地が残つておつたり、家屋敷があれば、そこにくつついておる。危険があつても、それを冒してそこにとどまつて生活を営んでおります。その生活の苦しさは、皆さんに想像していただければおわかりになつていただけると考えております。この間九年間ばかりは、何らの補償も受けなかつたわけでございます。わずかに固定資産税程度のものが、賃借料として渡されております。しかしながら、小作農民に対しては、一銭の補償も行われなかつた。それが二十七年の七月に、講和発効に基きまして、新しい補償制度が生れましたので、ここは農地であつたということから、農地補償を受けるようになりました。米、麦の一年間の所得が基礎となつての農地補償をいただくようになりました。ところが、これに対しましては、調達局の方におきましても、農林省の方におきましても、当然地主自体と、またこれを耕すところの農民との双方で配分するようにきめられておるそうでございます。しかしながら、これを地主さんだけで契約を結び、地主さんだけでこれを受取つて行くというような結果が起つて来ている。これには、調達局でいろいろの調査とか、これに対するところの取扱いの疎漏な点もあつたかと思いますが、そうしたあやまちを犯しまして、地元の農民は、現在なお一銭も補償は受けておりません。ただ所有者のみがその補償を受けるというような結果になつておりまして、現在では、地主、小作、調達局のこの三者の関係において非常な紛争を起しておりまして、私たちも、そのために再三上京もいたしておりますし、また地元の調達局当局に対しましても、要望いたしておる次第でございます。こうしたことによりまして、飛行場によつて幾多の犠牲が払われ、またこうした補償制度まで生れておる、この補償金までが不在地主、地元にいないこうした直接の犠牲を負つてない人たちに収得されているような状態でございますので、われわれは、こういうふうな基地であれば地元民を苦しめる、また地元の発展を阻害する、また日本軍が引揚げました当時は、単なる防空基地であつたという点から、防空の必要がないというようないろいろな点から、この飛行場軍事基地でなくして、早く撤退させていただくようにお願いするものでございます。それと同時に、こうした補償金の制度が、正しく末端の農民の人たちに、基地でいろいろ犠牲を払つた農民の人たちに、まともに配分されますように御努力をお願いいたしたいということを申しまして、私の意見を終りたいと思います。
  15. 上塚司

    上塚委員長 これにて板付飛行場に関する参考人の陳述は終了いたしました。  次は、博多湾水上機発着場関係参考人意見を伺います。福岡市長小西春雄君。
  16. 小西春雄

    小西参考人 博多湾の水上機発着場の問題でありますが、これは朝鮮戦争が苛烈になりましてから、アメリカ側の従来岩国にあつたこの水上の基地が、博多の方に移つて参りまして、母艦も、博多湾に参りまして、五機ないし十機、あそこを基地として使つたのであります。その当時日本政府との間には、何ら交渉がなかつたのではないかと思います。それがために、沿岸漁業民の受けます損害も大きいのでありまして、いろいろと運動も行われたのでありますが、今年、二十八年三月になりまして、アメリカ側から日米合同委員会の方へ、博多湾を水上機の発着場として使いたいという交渉が参つたということに承知いたしております。  そこで私どもは、それは困るのだということをいろいろ理由をあげて説明しまして、外務省の伊関局長は、これは不許可の方針でいるのだということを私には明言したのであります。なおまた水産庁の次長も、同じ明言をいたしたのであります。でありますから、日本政府としても、不許可の方針だということに承知いたしまして、早く解決するものと思つておつたのですが、いまだに解決点に達していないのでしよう、はつきりいたさないのであります。最近は、母艦も湾内から引揚げております。飛行機の発着も大分減つているように見受けております。これの及ぼします損害、影響等につきましては、漁業方面の代表者もお見えになつておりますので、その方面から詳しくお話をしていただくように願いたいと思つております。私といたしましては、板付と違いまして、この方は比較的解決が容易なのではないか、朝鮮もすでに休戦なつたんだし、あそこをぜひ使わなくてはならないということはないと思うのです。しかも各般の状況がきわめて簡単な状態にあると思います。比較的解決容易な問題だと思いますから、これもはつきりと撤廃といいますか、使用しないように御尽力をお願い申し上げたいと思います。  板付の問題の折に、一言申し忘れましたので、ちよつと追加させていただきます。それは、今河波君初めいろいろお話がありましたが、あそこは軍事基地でありまするがために、道路の問題、あるいは警察の問題、交通の問題、また長い間数年にわたつて博多湾の埠頭の全部を進駐軍が接収して使つておつた。つまり三千坪の上屋倉庫というものは、主として進駐軍に使われて、民間用としては使用することができなかつたという状態にあつたのですが、最近三月の終りに、これが接収を解除しましたから、大分状態がまた違いましたけれども、まだまだ港の一部分は米軍の専用でもつて、民間使用を許さない部分もあるのでありまして、今年の一月十六日の調査によりますと、これがために市が払つております犠牲が、年間一億三十何万円、約一億円の負担をやつておるわけであります。それから今埠頭が返されましたので、この計算は少し違つて参りまするけれども、とにかくアメリカ朝鮮戦争をして、あそこに基地を置いておるがために、福岡市がそれだけの負担をしておる、これは、福岡市がそれだけの負担をすべきものではあるまい、もしもアメリカ日本ためにという考えもあつて朝鮮戦争をやらておるとするならば、この福岡市がこうむつておる犠牲は、少くとも何ほどかは、日本国民全体が負担すべき性質の犠牲ではないかというので、二十六年、七年にかけまして、政府方面へもいろいろと私はこの論点で話をしたのでありますが、りくつはその通りだ、なるほどもつともだと言うのですが、現実の問題になつて来ると、なかなかその解決がついて行かないというのが今日までの現状であります。最近は、日米行政協定というものができましてからは、道路の問題とか、あるいは学校の問題というものに対しまして、幾らかずつはめんどうを見るというような気持になつて来られたようですけれども、根本は、そういうふうに考えておるわけでございます。どうぞ御承知置きを願つておきたい。
  17. 上塚司

  18. 藤野文市

    藤野参考人 本日の外務委員会におきまして、皆様にたまたま博多湾水上飛行機演習場における実情を申し上げる機会を得まして、漁民代表としまして、まことにありがたく、厚く感謝申し上げる次第であります。ただいま市長さんより話がありましたが、私は漁民として詳しいことを申し上げます。  このたび、米軍の極東空軍から水上機演習場として要望になりましたあの博多湾は、御承知のごとく、台風以外は常に漁業の操業ができるのであります。私たちは、おそらく湾内漁場としては、全国に類のないまことに好漁場と確信をいたしておるのであります。特に指定の場所は、水深がわずか三メートルより五メートルくらいの浅海でありまして、魚族の繁殖場であります。この湾内の漁業者千二百名の者が、ほとんどこの海面に生活を依存しておるものでございます。漁獲高から申しますと、関係組合九組合、年間の水揚げが二億数千万円でありまして、このうち約六割が、水上機演習場の要望がありました海面から水揚げされておるのであります。  また水上機発着当時の状況から申しますると、昨年の八月十日ごろから、一機はときどき来て発着をいたしておりました。その当時は、漁民としては、たいした関心は持つていませんでしたが、昨年の十月ごろより航空母艦が参りまして、三機なり四機、また多いときは五機なりの水上機が発着をするようになりました。これがため操業が困難となり、また危険も増して来たわけでございます。この水上機の発着は、その日その日の風の吹き方次第で、繋留場所は、湾内の西北方の沿岸に置かれております。実際に発着する場合は、相当広範囲に使用されておるのでございます。おそらくこの滑走距離は、二千メートル以上水煙を上げて水上を滑走するので、操業が危険であり、せつかく密集した魚は、一時に飛散する状態でございます。こうした演習が、何の予告もなく四六時中繰返されますので、漁業の操業も全然できない次第で、漁民の苦痛はまことに惨たるものでございます。  私ども漁民は、これが反対陳情を本年二月に一応申し上げたのでございますが、本年三月末に、正式に日米合同委員会より博多湾水上飛行演習場の要望が来たので、漁民は愕然といたしまして、漁民大会を開きまして、その結果漁業者、家族合せて七千名の生活擁護のために、水上機演習場絶対反対を福岡市長福岡県無事に陳情し、さらに四月末、漁民代表十六名が上京しまして、関係各省に陳情をいたした次第でございます。  さらに、これは参考までに申しておきますが、博多湾には、終戦直後より占領軍による海面使用禁止区域が四箇所もありますが、講和発効後引続き立入り禁止をされておるのであります。かように立入り禁止区域も以前にはあり、現在それ以上にまた水上機の発着場を持つて来られましては、漁民としては、とうてい立ち行かないことを総会において決議した次第でございます。どうかこの水上機の発着場の反対をして、あくまでこれが撤廃をひとえにお願いをいたす次第でございます。  目上、簡単に申し述べまして、賢明なる先生方の御賢察によつて、水上機演習場撤廃方を、よろしくお願い申し上げる次第であります。
  19. 上塚司

  20. 御田工

    御田参考人 福岡市議会を代表いたしまして、在日米軍博多湾海面使用反対の理由につきまして、意見を開陳したいのであります。その一は、関係漁業者の生活の安定という立場から、第二は、福岡市の港湾行政の立場からであります。  第一の漁業者の生活の安定の立場につきまして、若干説明を加えたいと存ずるのであります。最近湾内の漁獲高が非常に減少いたしましたので、福岡市は、水産行政の立場から、その魚族の減少の原因を科学的に調査研究を命じたのであります。その研究調査によりまして、増殖の科学的構想をここにきめまして、着々その効を現わしつつありまするときに、米軍の水上機の発着によりまして、その研究も、その措置も、画餅に期したるの感を強くするのであります。関係漁業者は、直接漁業をする者千二百二十名、家族の者五千七百七十七名、計約七千名の者が生活の安定の基礎をくつがえされんといたしておるのであります。その窮状も、これが続くならば、ほど遠いことではないと私は考えるのであります。  第二の港湾行政の立場からでありまするが、福岡市の発展は、港湾行政の遂行いかんにかかつておるのでありまして、福岡市といたしましては、重点施策のさらにまた重点施策として、大きく取上げておるものであります。三十年来この港湾行政を続けて参りましたのでありますが、この基地の問題が解決せざる限り、この港湾行政の上に一大支障を来す不安も持つておるのであります。  はなはだ簡単でありますけれども一つには漁業者の生活の安定の立場から、第二には福岡市港湾行政の立場から、ここに強く反対の意見を開陳する次第であります。何とぞ外務委員会におかれましても、この理由、この観点を御推察くださいまして、慎重に検討の上、地元民の要望を必ず達成できるように、善処方を切望してやまないのであります。失礼いたしました。
  21. 上塚司

    上塚委員長 これにて博多湾関係参考人の陳述を終了いたしました。  次は、長崎県オジカセ島爆発物処理関係参考人の陳述を承ります。佐世保市議会議長辻一三君。
  22. 辻一三

    ○辻(一)参考人 私はただいま御紹介をいただきました佐世保市議会議長辻一三であります。先般在日米軍の爆発物処理作業のため長崎佐世保市オジカセ島の接収に対する要求について、綱島正興、辻文雄、白浜仁吉、各衆議院議員の御紹介によりまして、国会に請願をいたしましたところ、御採択を賜わりまして、本日外務委員会において御審議を煩わす機会を得ましたことは、まことに感謝にたえぬところでございまして、ここに佐世保市民を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げますとともに、深甚なる敬意を表するものであります。  さてお許しを願いまして、オジカセ島に関連もございますので、過去の佐世保軍港から現在駐留軍基地佐世保までといつた意味において、その推移、現況について、簡単にお話を申し上げたいと存ずるのであります。  佐世保は、御承知の通り明治初年は、半農半漁の一寒村にすぎなかつたのでありますが、明治十九年、鎮守府が設置せられまして以来、わが帝国海軍の発展過程をそのままに、日清、日露、あるいは世界大戦を経まして、膨脹に膨脹を重ねまして、戦時中におきましては、人口約三十有余万を擁する九州屈指の都市を形成いたしたのであります。しかしながら、戦災に続く敗戦によりまして、軍の解体とともに、軍港としての使命に終止符を打たれまして、あたかも軍人が解職せられて、サーベルをはずしたまる腰で市井に職を求める焦慮にも似まして、わが佐世保市におきましても、よつて立つ基盤を失いましただけに、いずれに立市の計画を立つるやに、市当局初め市民一同苦心をいたしたのであります。幸い天与の良港に加えまして、多額の国帑を費されました軍の施設が、おおむね無傷でもつて存置されましたのを利用いたしまして、あるいは海外貿易に、あるいは付近の炭鉱の石炭に直結いたしまして産業育成に、あるいは付近五島列島は、御承知の通りわが国三大漁業地の一つでありまして、かかる地域にのぞむ佐世保港に漁業基地を設定する産業施設に、あるいは六十有余年にわたりまして、ヴエールによつて一般より遮断されておりました付近の景勝地域を内外に喧伝することによりまして、観光都市として立市の方策を打ち立てることに決定いたしたのであります。爾来この線に沿いまして、佐世保市といたしましてはいろいろ計画を樹立いたして参りましたが、何を申せ、御承知の通り、進駐軍が駐留して以来、いろいろな制約のもとに、しかも立地条件その他の悪条件も重なりまして、ローマは一日にしてならずのたとえがあります通り、思うにまかせない面が多々あつたのでございます。  時あたかも朝鮮動乱が勃発いたしまして、旱天に慈雨の思いをいたしました。なるほど不幸なる幸いと申しますか、佐世保市民は不況にあえいでおりまじたのが、この特需ブームによつていささかながら――内容には批判がごございますとも、原色けばけばしい復興状況を現に見せつあるのであります。しかしながら、特需に依存するということは、経済の底の浅い佐世保市にとりましては、まことに危険なことでございまして、佐世保市といたしましては、深みのある、底の確固たる経済基盤を築くために目下鋭意努力を傾注いたしておるのであります。かようなときにおきまして、このオジカセ問題が勃発いたしました。このオジカセ問題以外の事柄につきましても、まだ進駐軍とはいろいろ未整理の問題がございます。しかしながら、批判は別といたしましても、国策として駐留軍基地と決定いたしましたならば、忍び得られるものは一応忍ぶ、こういう建前をもちまして、駐留軍とは、目下円滑にその接触を保つて進んでおるような状態でございます。  次に、本論に入りまして、このオジカセ島の問題であります。オジカセ島は、これは佐世保港及び佐世保市と相浦港の中間にあります鹿子前海岸沖合い一・八海里の位置に存在する、満潮時二千三百五十坪の一見無価値にひとしい無人島であります。しかしこのオジカセ島が持つ意義は、ただいま申し上げました通り、観光都市として立つ佐世保にとつては、まことに重要な意義を持つものであります。しかもこのオジカセ島は、付近北松海区第十四号共同漁区の中心に当りまして、これを利用する漁民の生活苦を考えますときに、こぞつてわれわれといたしましては、反対せざるを得ないのであります。以下このオジカセ島の折衝経緯について、順次お話を申し上げてみたいと思うのであります。
  23. 上塚司

    上塚委員長 なるべく簡単に願います。
  24. 辻一三

    ○辻(一)参考人 昭和三十八年一月十三日付の公文をもちまして、佐世保地区司令官アルフオード大佐及び佐世保弾薬庫隊長パーカー少佐は、長崎県知事に対し、オジカセ島接収を要請いたしたのであります。同年一月中旬、佐世保市長は、地区司令官と会見しまして、口頭にて、オジカセ島は、西海国立公園候補地の特別風致地区内に存在しておるだけに、爆発物処理作業は、風致を害するのみならず、多数の遊覧者に危険なきを期しがたい理由をもちまして、同島が接収されないよう、司令官に口頭にて懇願いたしたいのであります。  同年一月二十二日付公文をもちまして、市長は、長崎佐世保出張所長に対し、第二項と同様の理由をもつて代替地の物色につき調達庁と連絡の上善処方を要望いたしました。昭和二十八年二月二十五日、日米合同委員会米国側主席代表ロートン少将は、オジカセ島の接収を合同委員会に要求いたしたのであります。外務省国際協力局長は、長崎県知事に対し、三月十三日付公文をもちまして、在日合衆国軍によるオジカセ島使用について意見を求めました。次に、長崎県知事は、外務省国際協力局長あて、三月二十五日付公文をもちまして、観光及び漁業上の理由をもつて、同島の接収を思いとどまるよう要請をいたしました。佐世保市長は、福岡調達局長に対しまして、四月四日付公文をもつて、オジカセ島が接収されないようとりはからい方を申し入れをいたしたのであります。オジカセ島の接収に関しまして、北九州財務局長崎財務部佐世保出張所より意見を徴して参りましたので、市長は、五月十一日付公文をもつて、観光及び漁業上の理由で接収されないよう善処方を要請いたしました。  昭和二十八年五月二十一日付に佐世保におきまして開催の日米連絡協議会、これはすでに各位も御承知のことかと存じますが、各基地には、それぞれ日米連絡協議会というものが設けてあります。このメンバーには、市長議長、あるいは商工会議所、駐留軍側におきましてはそれぞれ所轄長が出ております。この会議におきまして、佐世保市議会議長私は、爆発物処理は深海において行つてもらいたいことを要請いたしました。従つて、オジカセの接収はとりやめるようお願いをいたしたのに対して、地区司令官より、合同委の承認あるにあらざれば、接収問題を論ずることはさしとめられているという回答に接したのであります。  なお御参考までに申し上げますが、火薬隊長は、規則によれば、深海処理を行う場合、海岸より約十海里離れまして、かつ五百ひろ以上の海でなければこの深海処理はできない、かような意味を申しておるのであります。  以上大体交渉の経過でございます。ただいま申し上げております通り、観光上の立場から、あるいは漁業の立場から、オジカセ島における爆薬物の処理については、絶対反対を表明いたしておるのであります。どうかこの点、すでに各位のお手元に差出しております請願書通りでございますので、慎重御審議をたまわりまして、市民の要望をおかなえくださいますよう、切にお願いいたします。  なお御質問によりましては、いろいろ漁獲高、あるいはオジカセ島の観光地における意義について詳しく申し述べたいと存じますが、時間も経過いたしておりますようで、この程度でやめることにいたします。御清聴を感謝いたします。
  25. 上塚司

  26. 湯口嘉七

    ○湯口参考人 私は、相浦漁民の代表でございます。このたびオジカセ島接収につきまして、一言請願いたします。  由来古くから、私の覚えておる限り、ここで生計をたてている漁民はたくさんおります。オジカセ島というところは、裏は山に囲まれたところでございまして、ただ南と西があいております。魚族は、南から潮に乗つてオジカセ島付近に産卵に、あるいは時期的に上つて来るのでありまして、それを、われわれとしましては網をこしらえて待つておるのであります。その間に爆弾処理をやられるならば、自分たちの方の漁民は、組合員が四百四十人おりまして、家族を合せて二千有余という人間は、あしたから路頭に迷う状態であります。聞きますところによれば、爆弾処理は、島じやなくしても、どこかでされるようなことを聞いておりますので、この際、ぜひひとつ自分たちのハダコ島と言いますが、オジカセ島の接収はしていただかないように、賢明なる皆様方に重ねてお願いする次第であります。
  27. 上塚司

    上塚委員長 これにて長崎県オジカセ島参考人の陳述は終りました。  次は、福岡芦屋飛行場防風林関係の陳述を願います。岡垣会議員辻守莊君
  28. 辻守莊

    ○辻(守)参考人 私は福岡遠賀岡垣村で百姓をしておりますところの辻守莊というものでございます。現在村会議員をやつております。  芦屋飛行場と申しますと、これは福岡県の北部、遠賀川の河口の北岸に面しますところにあるのであります。土地の所有権は、これは国有林でありまして、この形態というものは、防風林ということになつておつたのであります。なおその面積は、飛行場が東西二キロ半、南北四キロにわたつてありまして、昭和二十三年におきまして、そのほかに射撃場といたしまして、それに隣接して、長さ約三キロ、幅二キロの射撃場がつくられたのであります。飛行場は、昭和十三年に日本軍が一応着工いたしまして、昭和十六年にその竣工を見、なお終戦後米軍によりまして、昭和二十一年から昭和二十三年までこの飛行場が拡大されると同時に、ただいま申し上げましたような射撃場が新設されたのであります。  被害の起る原因といたしましては、田をつくる際に、ため池をつくつて、そして稲の灌漑をしますより、あの付近の田畑一帯は、あの防風林によつて、初めてその田畑でいろいろな作物が育成されるような形になつておるのであります。従つて、防風林をつくつて、しかる後に田畑をりつぱにした。ですから、昔からこの防風林は、どうしても切つてはならないということから、昔の大名におきましても、これを絶対切つてはならない、百姓が切つた場合には厳罰に処する、あるいは侍が切ろうとする場合には、この書類を見せて、切るなと言えというような墨付が部落に残つておるのであります。そうすることによりまして、昔からそういうような形で、農民もあるいは施政者も、ともにこの防風林を非常に保護育成されて来たのでありますが、何を申しましても、戦争がたけなわになると同時に、ここに無条件で飛行場が設置されました。それを占領によりまして再び拡大され、その上射撃場が設置されたようになつておるのであります。  被害の程度を申し上げますと、稲作面積八百四十三町歩、これが一箇年約四千万円、蔬菜が百八十町歩、四千三百万円、果樹が二町歩五反、百十七万円、竹林が六町歩一反、三十七万円、家屋が四千六百十四坪、六百五十三万円、その他薪炭に難儀することや、あるいは道路が非常にそこなわれますのでその補修をすること、そういうその他が百四十九万円、合計九千百六十五万円という数字になつておるのであります。  今日までの経過を申しますと、われわれ農民は、どうしてもこの飛行場による損害を補償をしていただかなければならないということから、一応占領期間は黙つておりましたけれども昭和二十七年講和が成立すると同時に、私たちは芦屋飛行場地区防風林伐採被害者組合という組合を約一千戸をもつて結成いたしまして、その後地元の所管庁を通じて一政府にいろいろな補償の要望をしたのであります。その結果といたしまして、ことしの三月、政府より二十三年、二十四年、二十五年、二十六年、二十七年の五箇年分の見舞金として、被害額は約四億五千万円に達するのでありますが、千八百万円交付されたのであります。なお恒久対策といたしまして、一千万円を交付されておりまするが、これは現在まだ大蔵省にありまして、この問題は、今後皆さん方の力によつて何とかしていただかなければならないのであります。と申しますのは、その恒久対策といたしまして、それにかわる防風林を植えてもらいたい、そこで県の治山関係の方がいろいろ視察いたし、飛行場内に幅四十メートル、長さ約二キロの防風地帯をとりあえずつくろうじやないかというような植林計画をいたしまして、その費用が約一千万円ということになつておるのであります。ところが、この飛行場の中に植林するという問題は、アメリカ軍の考え方もまたいろいろあろうし、きよう現地の町長さんや、あるいは被害者代表が現地の司令官にまずそのことを当つております。これは一応そういうことをしてみるのもよかろうというような県の治山関係の方の話でありましたので、やつておりますが、この問題は、皆様方から厚生委員会で、あるいはいろいろな問題で取上げていただきまして、まずわれわれは、恒急的対策を何とかしていただきたいというのが要望であります。  なおそのほか、被害といたしましては、板付飛行場の方がここでいろいろ申されましたように、毎日射撃がありまして、そのジエツト機爆音ために、同様な被害をこうむつているのであります。また昭和二十一年ごろ、付近の青年が三名ばかり、何のために殺されたか知りませんが殺され、農民が一人、計四名が米軍から殺されているという事実もあるのであります。こういう問題は、調達庁で取扱つておりますが、そういうことがあります。現在あの飛行場が存続するということには、結論から申しますと、絶対われわれ農民といたしましては反対である。これが、いろいろな日本の現在の立場からできないということになれば、年々の補償をやつてもらいたいというのが、われわれ被害者組合の要望であります。ぜひこの問題は、根本的には撤退してもらうことが第一でありまして、われわれは、撤退してもらうことによつて、その飛行場にあるいは砂丘を築き、あるいは防風林を設定いたしまして、将来美田が完全に元にかえるようにする、これはわれわれが最も望むところでありますが、これができなければ、年々の約九千万円に対するところの補償をぜひしていただきたいということを要望するのであります。  時間が長くなりますので、簡単に意見を申し述べさしていただきまして、私の意見といたします。
  29. 上塚司

  30. 安高岩男

    安高参考人 私は、ただいま御紹介していただきました安高でございます。諸先生方には、福岡ためたいへん御奮闘していただきますことを、県民の一人として心からお礼を申し上げます。特に今回は、九州方面の水害に際しまして、非常に皆さん方に御心配をかけ、いろいろお世話をしていただきましたことを、罹災者の一人としてお礼を申し上げます。ありがとうございます。  ただいま辻氏が説明いたしました以外に、私は、精神的の被害と申しますか、そういうことにつきまして、皆さん方にお願い申したいのであります。芦屋は発展はしておりますが、これはいわゆるパンパン景気と申しますか、そういう意味における発展でありまして、物価は非常に高いし、青少年の教育ということにつきましても、最も悪い環境のもとに置かれておるわけであります。しかし私は、芦屋の町民といたしましては、やはりそういつた意味でも繁栄を来しておるということにつきましては、これはまことに申し上げかねると思いますけれども、――ただわれわれが被害を受けておりますことは、ただいま数字で申し上げましたように、一年におきましても九千万円以上にも上つておる。それをただ法の裏づけがないという理由によつて、見舞金として一千八百万円はいただいておりますけれども、これをあくまで実被害として、諸先生の骨折りによりまして、補償せられるようにお願いを申し上げるのであります。特に青少年教育、そういうつたものの社会環境といたしましては、常に皆心配をいたしております。これは、今のところではいたし方がないと考えておりますけれども、そういう点につきましても、いろいろ弁償していただきますようお願い申すものでございます。  長くなると思いますので、これ以上は申しませんが、金額はさつき数字を申し上げましたけれども、大体飛行場は、四十メートル以上の高所の松林が鬱蒼としておつたとところを平らにされて、畑以下に下つており、それから来る強風、潮風、そういつたもののため被害を受けておりますので、その点よく御考慮を願いたいと思うのであります。特に温度の低下によりまして、昔北九州の蔬菜の産地であつたのが今では全然出荷もできない状態もあるのでございまして、昔の伐採以前でありましたならば、私の部落なんかでも、一日にトラツク一台ぐらいを青果市場に出しておつたのが、今では三日にやつとオート三輪で一ぱい出すというようなことになつております。そういう点を御考慮くださいまして、今後ともこの被害の補償のできますように、先生方にお願いをいたすものであります。  はなはだかつてなことを申し上げたと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  31. 上塚司

    上塚委員長 これにて福岡芦屋飛行場防風林関係に関する参考人の陳述を終りました。  次は北海道日高門別上陸演習地に関する参考人の陳述を承ります。門別町長松本末吉君。
  32. 松本末吉

    松本参考人 私のところのこの問題は、結論を申しますと、昭和二十六年四月から現在まで、七十三町歩という海岸地帯を、米軍の高射砲陣地として接収されておるのでありますが、今回さらに三千五百町歩という厖大な面積、海岸の幅が約一里、ぐらい、奥行きが奥の方に二方ヤード、こういう厖大な海面の面積を、アメリカ軍が、海陸空の総合演習をやるから、ぜひこれを貸せ、こういうことを日本の政府に要求せられておるのに対しまして、地元の町はもちろんのこと、地元十箇町村の決議と、それから北海道議会の満場一致の決議によりまして、両院、その他米軍の各部に対しまして、絶対にこの拡大の線はやめてもらいたい、こういう陳情、請願をやつておる次第でございます。以下内容に入りまして、簡単に説明を申し上げたいと思います。  日高門別は、北海道へ行かれた方はおわかりでしようが、苫小牧という製紙社会がありますところから、日高線というのが、太平洋岸に沿うてあります。そこから一時間半ばかり汽車で参りますと、そこに門別町があるのでございます。海岸を持ち、そうして奥行き十三里くらいありまして、農村、漁村、それから有名な日高馬の産地で、木材等を多数産出し、木炭におきましては、北海道の東の大関といわれる産地でございます。この三千五百町歩というのは、わが門別町におけるところの目抜きの箇所でございます。海におきましては約一億円、陸におきまして、は、農畜産すべてを合せまして一億五千万から二億円、合計年産額二億円という生産力を持つておる部落でございまして、わが門別町の年産額の三〇%を占めておる地域でございます。今、それをひとつ貸せ。七十三町歩を二十六年度から接収されてさえも、高射砲をやつておりますから、一箇月に十五日、あるいは十八日というような期間は、絶対漁業ができません。そうして非常に苦しんでおるにもかかわらず、さらに今度は奥地の方を三千五百町歩という厖大な要請をしておる。それから軍艦が十数隻、上陸用舟艇も今度参ります。それから戦車が三百八十台、歩兵が約三千、その他の車両が数百、それから野砲、山砲、ジエツト機、この現代式のあらゆる武器をあげまして、海陸空の統合演習をやる、こういうわけでございまして、われわれ町民は、これらに対して非常な心配をしておるのであります。関係の部落民は、数回にわたつて大会を開いて、絶対反対をやつておる次第でございます。この間四月には、参謀大佐のバソール、それからギボン少佐の一行と、政府からは外務、大蔵、農林、それから調達庁、こういうような関係機関の高官連中が二十数名おいでになりまして、わざわざその予定地を視察してくださつたのでございまして、午後には、今度は日米会談というのが北海道の門別において行われたわけでございます。そのときに私は、バソール大佐に向つて、その反対の理由を申し上げておいたのであります。畑は使わないし、道路だけを使うのだからと、こういうようなことで、何とかしてくれろといつていろいろ説明しました。ところが、北海道の札幌の郊外の豊平という地区においての演習状況を、私のところの町民がよく知つております。そこは道路だけ貸せ、畑は使わない、こういうのでやらしてみたところが、全部蹂躙してしまつた。そういう例がちやんとありますから、そういう手には乗りません。それで絶対反対をしておるのであります。  それで、ちよつとその内容を申し上げると、水田が百五十町歩、畑が八百六十九町歩、牧野が八百八十町歩、混牧林が一千十五町歩、原野その他が五百六十一町歩、それから宅地が十八町歩、合計三千四百九十三町歩、ざつと三千五百町歩でありまして、これは八八%が民有地であります。     〔委員長退席、富田委員長代理着席〕 国有地というのは、魚を集めるための海岸の保安林が若干、それからなお開拓地百七十三町歩の中に、まだ売渡しが未済になつておるのが百四十一町歩、これだけありまして、八八%は全部民有地です。そして一坪でもむだに使つておらない、全部これを生産に使つておるようなわけでございます。そういう目抜きの箇所を三千五百町歩、それから海面は、今までは高射砲陣地ですから、扇を広げたようになつておりましたが、今度は上陸用舟艇ですから、幅を広く、一里ばかりにわたつて二方ヤード、そういう大面積を使つて、軍艦等が十数隻――私この間横須賀に行つてアレキサンダーに会つて、ちやんとこれは控えて来たのですが、新聞あたりに書いてよいかどうかわかりませんから、明細なことは申しません、軍艦何そう、輸送船何そうということは、手帳に書いてありますが、祕密にしておきますけれども、そういう厖大な隻数を持つて来て上陸作戦をやり、海陸空の大演習をやろうという。これをやられましたならば、門別町はすつかりめちやめちやになつてしまう。われわれは絶対、何としても――たとい戦車の下になつても動かないといつてがんばつております。そういうわけで、私のところは、別段むしろ旗を立てたわけでもありませんが、とにかく去年の四月からこれを要求しておりまして、現在までに日米合同委員会が二十八回か九回あつたと聞いておるのですが、一年四箇月かにわたつて日本の政府はこれを拒否するように働いてもらつております。私は、この点非常に感謝しております。ところがまだ勝負がつかないで、四つに組んだままになつておるような現状でございます。もしこれが接収されることになつたら、それはたいへんな話です。この地域には馬が八百十六頭、牛が百五十三頭、豚が二百九十頭、緬羊が三百十頭、やぎが三十頭、その他うさぎとか何とか小家畜を加えますと、三千三百九十九の数になるわけでございますが、そういうのがこの三千五百町歩の中におりまして、そして牛乳をしぼつたりしている。その付近には、半道も行かぬ、ほんの十町かそこらのところに雪じるしのチーズ、バター工場があつて、大きくやつておりますが、そこに全部これを輸送している。もしそういうことになりまして、三百数十台、約四百台の車両が通行しましたならば、絶対輸送も何もできません。牛乳も何も腐つてしまうのであります。それから高等学校一つ中学校、小学校、保育所、これが合計十一ございますが、これの授業なんかもちろんできません。先ほど福岡の方から説明がありましたが、ジエツト機ががんがんやつたら、十一の学校の授業なんかもちろんできません。それから一般農家が百九十五戸、入植者が二十七戸、漁業者が百三十六戸、その他三百三十三戸、合計六百九十一戸あります。これによつて生活しておる者が三千四百五十五人、これらは一体どうなるかという問題です、そこでバソールというのは、ロードだけを使うのだから、営農をやつてもさしつかえない。こう向うでは言いますが、すでに御承知のように、あの札幌の郊外の豊平の演習地におきましては、最初はロードだけ使うから、お前らは営農にはさしつかえないと言つた。その中には九十五戸包含されておりますが一それがとうとうここでは生活ができぬというので、道庁もこれを認め、国家もこれを認めまして、今では九十五戸全部を移動させるという方針にかえてしまつた。そして半数以上はすでに移転しました。あとに残つておるのは、これから移転する。こういう状態を町民はすつかり知つております。われわれは、バソールにはだまされない。ああいうようなことを言つておるが、豊平はどうだ。九十五戸というのは、初めは安全地帯である、営農はできると言つておつたが、全部営農ができないで、すでに半数以上は移転しおる。われわれもそういうような目にあうのだから、これは絶対にごめんこうむるといつておるのであります。これは非常な決意をもつておるのです。そこで、実はゆうべ私の方の助役と、それから漁業組合の方から電報が来たので、それを御紹介したいと思います。その前にちよつと申し上げておきますが、この間、六月の十六日には、許可を受けないで数十町歩に無断侵入しまして、野砲、山砲を持つて来て演習をしました。私はちようど札幌の道庁に出張中でありましたが、電話が来ましたので、断固反対せいと言いましたところが、助役は、すぐにこれを市長に話し、市長は無電で道庁に送り、道庁はただちに本部の真駒内分隊と折衝した。ところが分隊があわてて、翌朝すぐに来まして、現場を見た。ところがなるほど蹂躪されておる、しかも域外だ、これはいかぬ、これは現地部隊を厳重な処罰をするから、今回限りは許してくれ、損害は十分こつちで補償するからというので、それを今手続中であります。そういうことがあつたのが、ついこの間です。ところがゆうべの電報によりますと七月十九日、米軍の手違いにより、高射砲演習部隊無通告で来る、たこ箱、延繩の始末ができず、漁民一時混乱せるも、町の抗議により延期し、二十三日より三十一日まで実施中ということですから、きようもやつておるわけであります。これは無通告でやつて来た。一週間前に通告をして、今度は漁民がいろいろな施設をやめて待つておる。たこ箱とか延繩とか何とかは一日も二日もかかるのです。それを無通告でどんどんやつておるので、どつこい待てと言つて、やめさしておる。それでとうとう十九日に来たものが、二十三日から三十一日まで今実施中だと言つて来ておる。こういうわけで、黙つておると何をやるかわからない、こういうことであります。それから補償の問題は、時間がありませんから簡単に申しますが、去年五十三日間高射砲で射撃をやりました。ところがその補償金が、まだ政府から一厘も渡つておりません。そこでここに漁業組合から電報が参りましたのを読んでみますと、二十七年度補償書類東京に出されたるも、われらの要求する金額に達し得ず、札幌調達局に交渉せるも見込なし、至急支払われるよう、ぜひ懇請せられたし、漁組というのであります。こんなふうで、どうもそれでは食えぬから、町は貧弱な財政ではありますけれども、五十万円という金を去年の秋漁民に貸してやつております。この補償が来たら、町長返すから、それまで待つてくれというので、無利子で借しておるが、こつちも高等学校をつくつたり、いろいろやつておりますから、金がかかつておりますけれども、何しろ一文も補償がない漁民に、貸さぬわけには行きません。こんなわけで、漁民の人にまだびた一文もわたつていないというような現状では、実際どうかと思われる。こんな状態ですから、ひとつ外務委員の先生方は、適当なるおとりはからいができるように御尽力をお願いしたいと思う次第でございます。  なお風紀上の問題等もたくさんありますけれども、時間が制限されておりますから申し上げません。  実は非常に危険なことでありますが、去年の十一月にこういうことがあつた。飛行機が吹流しを引つぱつて来て、それをどんどんと高射砲で打つのですが、その吹流しが磯舟の横つ腹にあたりまして、大きな穴があいた。それで、町長たいへんなことが起きた、磯舟に吹流しがぶつかつて穴があいたというので、そんなばかなことがあるか、吹流しがなんぼ強く当つても、舟の横つ腹に穴があくというようなばかなことがあるかと言つたら、この通りだと写真を持つて来ました。これはわれわれの認識不足でありまして、アメリカの吹流しには鉄かぶとがついております。三貫五百から四貫くらいの鉄かぶとがどんと当つた。幸いに人間が乗つていなかつたから舟でありましたから、死傷者は一名も出しませんでしたが、あれが数名のものが乗つておつたのにぶつかつたら、即死です。そういう危険なことがあります。
  33. 富田健治

    ○富田委員長代理 ちよつと御注意申し上げますが、時間がありませんから、簡単に願います。
  34. 松本末吉

    松本参考人 まだたくさんあるのですが、時間がありませんから申し上げませんが、絶対に反対であります。これ以上やられたらたいへんでありますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  35. 富田健治

    ○富田委員長代理 参考人の陳述は終日了いたしました。  午後一時半に再開いたしまして、きわめて短時間、参考人に対する質疑を行うことといたします。参考人の各位には、午後一時半までに当委員会においでくださるようお願いいたします。  この際暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  36. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより各参考人に対する質疑を行いますが、本日は議案審議の都合上、質疑は各委員一人十五分程度におとどめを願います。それではこれより通告順によつて質疑を許します。小平忠君。
  37. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、主として北海道門別町におきます駐留軍演習地接収問題に関しまして、参考人松本門別町長にお伺いをいたしたいと思います。  第一点は、午前中の御意見、御説明によりますと、従来七十三町歩演習地として接収されておつたのが、今回さらにその面積を拡大して、三千五百町歩にわたります厖大なる地域を演習地として新たに接収しようという実情を承つたのでありますが、その説明の中に、特に最後時間の関係もありまして、十分な説明を願えなかつたのでありますが、地元におきまして、従来使つておりました七十三町歩に対する過去から現在に至る補償問題がございます。これにつきまして、海面あるいは海産物に対する補償、あるいは陸上に対しまする補償がどのようになされておりますか。  次に、将来かりに三千五百町をさらに使うということになりますと、日高は、御承知のように有名な畜産地であるということから、いわゆる搾乳、あるいは産卵その他に及ぼす影響は非常に大きいと思うのでありますが、そういつたような問題について、具体的に今日までの補償に対する実態と、今後かりにそういつたものができたならばどういつたような補償が望まれるか、そういつた点について、松本町長の御意見を承つておきたいのであります。
  38. 松本末吉

    松本参考人 ただいま小平委員から御質問がありました点について、お答えいたします。  第一に、七十三町歩を拡大して三千五百町歩という厖大なる要求があるが、地元の補償に対する内容を詳細に述べよ、こういうふうに承つたのでありますが、お答えいたします。陸地のこの七十三町歩に対しましては、それぞれ規定によりまして補償を受けております。それから海面の方に対しましては、昭和二十六年度の分は、まだ国家が補償制度を設けていませんときでありましたために、俗に言う涙金としまして、八十万円という金を交付されたのでありますが、これは漁民の戸数に割当てて、わずか二千円定らずというような少額のものであつたのであります。なお二十七年度の五十三日間使用に対する補償は、先ほど説明をいたしましたようにまだ一銭も支払いができておらないというような状態になつております。  第二の搾乳、産卵等の状況についてお答えいたします。すでに七十三町歩の接収されておりますところのこの付近には、牧場がございまして、毎日朝から晩まで雷が鳴るようなあの爆音、炸裂音響に対しまして、乳牛が非常に恐怖をしておるために搾乳の量が非常に減退しておるのでありまして、この点は一般の牧畜家が非常に悩んでおるところであります。なお鶏の産卵率でありますが、これも同様非常に減退をしております。しかしながら、こういうふうな間接の損害に対するところの補償は、まだ国家が制定をしておられぬようでありまして、これまた一厘もちようだいしておらないような状況にありまして、今回このアメリカの要求通り三千五百町歩というような厖大な地域が万一接収されるというようなことがあつたとするならば、これらの搾乳、あるいは産卵等に対してはどうなるだろうかといつて、非常に農民が恐怖しているような次第でございまして、この接収については絶対であるというようなことを、みんなが結束して、再三再四町民大会を開いているような状況にある次第であります。
  39. 小平忠

    小平(忠)委員 補償問題で伺いましたのは、これは御承知のように、行政協定の不備からいたしまして、実際の損害、あるいは非常に計算のしにくい海上における損害でありますとか、あるいはその間接損害と申しますか、実際に、そういう基地なり演習地としての接収によつて、畜産等に及ぼす影響が大である、そういう具体的の問題において明確になつていない点があり、目下外務省当局もいろいろ研究されている点があると思いますから、あえて私は承つたのであります。  次に、各地の基地なり演習地におきまして、相当の部隊が長期にわたつて駐屯しておりますと、風紀問題で非十にいろいろ地元に悪影響を及ぼして問題化されているわけでありますが、この日高地区として、高射砲陣地、あるいは飛行場といつたような点で、過去において、実際問題として風紀上どういう影響があつたか。それをあえてお伺いするのは、北海道にはずいぶん各地に基地があり、相当の農地も接収されておりますが、特に今度新たに接収しようというのは、現在の七十三町歩から一躍三千五百町歩の厖大な農耕地を接収いたしまして、そして陸海空の大演習をやろうということでありますから、これは相当のいろいろかわつた部隊が来ることになる。そういつたことから地元の風紀問題、あるいは先ほど町長がおつしやられたように、豊平地区における立ちのき問題等、そういう実例を話されたので、風紀問題と関連しまして立ちのき問題、こういつた実態について若干承つておきたいと考えます。
  40. 松本末吉

    松本参考人 ただいま小平委員から御質問になりました二つの項目に対しましてお話し申し上げます。第一項の駐留軍の駐屯している間の風紀の問題でございまするが、これは非常に困つたことがあるのでございます。率直に申します。ある海岸の一戸建の漁民の――漁と農を兼ねておりますが、一戸建の家がありまして、夕方、いなかのことでありますから、ほとんど露天ぶろといつたようなふろを立てて、十八、九の娘が入つておつたところが、そこに数名の米軍、中に三人ばかり黒人がまじつて来まして、そのふろをのぞきまして、自分も一緒に入れてくれ、こういうふうに申し入れがあつたので、娘はふるえ上つて、裸で走つて帰つた、こういうふうでありまして、そこの主人はたまりかねて、わずか二百か二百五十の高射砲陣地でさえもこのくらいであるから、もし今度数千の大部隊が来たならば、とてもこんなところで生活はできぬ、何とか移転せねばならぬといつて町議会に対しまして要求がありました。自分は、こういうために移転したいと思うから、どこか適当な町有地を貸してもらいたいと言うので、私は町議会に諮りましたところが、非常に気の毒に思つて、満場一致で、貸してやつてもよかろうということで、門別の市街のはずれの近くに二、三百坪ちようど都合がつきましたから、それを貸し与えましたところが、もう三日のうちにすぐバラツクをつくりまして、今そこに生活しておるような状態でございます。そういうふうなわけで、みな戦々きようきようとしておるような状態であります。  風紀問題の第二としてこういうことがあります。現在は高射砲部隊しかおりませんが、市のはずれの民家で、ある朝早く五時ごろ、十八、九の娘さんが起きてストーブの火を――北海道は夏でもストーブをたきます。私のところなんか、夏中ぶつ通したいております。ストーブの火をたきつけようと思つて玄関をあけてあつたそうであります。そこヘジープに乗つた一人の米兵が来まして、そこへとまつて、そして何か片言を一言しやべつたそうです。ところがその娘が片言で答えたというのです。朝のことですから、きつとなまかじりに覚えたグツド・モーニングくらいを言つたのでしよう。そこでこれはもうオーケー、こういうふうに向うはとつたと見えまして、入り込んで来た。ところが、そこのお父さんが何事だといつて、ぴしやつと玄関をしめて、錠をかけてしまつた。すると、今度はその米兵が非常に怒りまして、両者の間にオーケーをやつておるのに、そこのおやじが玄関をしめて拒絶するということは何事だというので、ジープに乗つてばんばん玄関をたたき、すつかり破壊してしまつた。そこで大騒ぎになりまして、すぐに私はこれを当局に訴えました。そこで多少の損害をあとで弁償しましたが、そんなふうなこともありましたものですから、今度かりに三千五百町歩貸したとしたときに、数千の部隊が入つて来ましたならば、こはは何事が始まるかと思つて、実に戦々きようきようとしておるような町民の状態でございます。なお聞くところによりますと、豊平地区あたりにおきましては、先ほど申しました九十五戸がどんどん立ちのきをやつておりますが、軍隊の演習が始まりますと、もう娘とかお母さんなんかは、全部札幌市に移転をする、こういうふうな状態になつているわけであります。残つているのは、男ばかりということをも耳にはさんでおります。  なお第二項の立ちのき問題は、これは先ほどの豊平地区のように、必ずそうなるだろう、あくまでも道路だけを使用するというようなことはないと思うと、バスター参謀大佐が来ましたときに私は言つたのです。あなたは、道路だけを使用して、畑は池とみなすと言うのだが、世界にそういうふうな戦法の実戦はもちろん、演習もあるまい、でんがく刺しになるような戦法はないではないか、八列も九列もになつてそこをずつと行つて、大砲一発どんと撃てば、何百人も一ぺんに死ぬというふうな戦争のまねはやらぬ方がいいじやないか、そういうことを言つても、われわれは信じられないと私は答えておりました。
  41. 上塚司

    上塚委員長 小平君に申し上げますが、もうすでに時間が数分超過いたしております。今日は、議案の審査の都合がありますから、厳格に守つていただきたい。  あとから見えました委員各位にも申し上げますが、質問通告者が多数ありますので、今日は時間を厳格に守つて、十五分以内にお願いいたします。
  42. 小平忠

    小平(忠)委員 きわめて重要な一点だけですから……。内灘問題等は、御承知のように国会、あるいは国内の大きな問題として取上げられているのでありますが、北海道の今の門別町の問題については、今日多くの人が知られないという点があるのであります。実際問題としまして、午前中の町長の御意見を聞きますと、これは相当重要な問題であるのでありますが、これに対しまする地元の輿論は、一体どのような状態になつているか、あるいは中央の外務省なり、農林省なりに対しましては、どのような働きかけをなされているのでありますか、その点と、もう一点は、私は先般予算委員会におきまして、この問題について岡崎外相と保利農相に承つたのでありますが、岡崎外相は、こういうことをおつしやいました。最悪の場合に、もしこの地域を演習地として接収する場合においても、三千五百町歩という面積は非常に広いと思う、従つてもう少し面積を縮小して善処したい、そういうきわめて重要な発言をされているのであります。そういたしますと、かりに日米合同委員会においてこれを審議した結果、三千五百町歩は多いから、これを一千町歩なり、あるいは五百町歩に縮小してやるという結論が出た、そういうふうな意向があつた場合に、一体門別町、あるいは地元といたしまして、縮小されるならば、現在七十三町歩を接収されているのであるからやむを得ないのか、面積が多いというのか、あるいは少いならさしつかえないというか、そういつた点について、これはきはめて重要な点でありますから、承つておきたいと思います。
  43. 松本末吉

    松本参考人 第一項の地元の輿論といたしましては、その大小にかかわらず、もう七十三町歩以上は絶対にお断りしたい、こういうかたい意思を持つておるのでありまして、数回にわたつて大会を開いております。  それから中央に対するところの運動の内容、これは外務大臣、農林大臣、それからおのおのの局長、それからアメリカ大使館、横浜の陸軍司令部、横須賀の海軍司令部、その他関係各方面に対しまして、るるこの門別町の現在のありさま、今後に対するところのかたい決意を持つておるその反対の意思、これを逐一申し上げておるような次第でございます。
  44. 上塚司

    上塚委員長 次は辻文雄君。
  45. 辻文雄

    ○辻(文)委員 辻参考人にお伺いします。時間がございませんので、私はおもに長崎県のことを質問いたします。北海道でも、通告がなくして演習が行われたというようなことがありますが、長崎の二箇所の問題でも、さようなことが今日までにあつたかないかを、ごく簡単にお答え願います。辻さんでなくてもいいですが……。
  46. 湯口嘉七

    ○湯口参考人 それは、昨年の六月五日の午前十一時ごろ、オジカセで無通告で爆薬の処理をなさつたことがあります。そのときは相当な音がして、女、子供は戸外に飛び出す状態であつたということを聞いております。なお上の学校のガラスにいくらかひびが入つたということを聞いております。そのために、その後魚をつても食わず、網に入らず、ほとんどその辺では、漁師は魚がとれておりません。
  47. 辻文雄

    ○辻(文)委員 次に、日米合同委員会というものについてですが、地元の辻参考人もその委員だと私聞き及んでおりまするが、日米合同委員会はどれくらいの権限とでも申しますか、そういうものがあるのか、地元としてのあなたの御見解を一応お聞きいたします。
  48. 辻一三

    ○辻(一)参考人 お答えいたします。地方にできております日米協議会なるものは、何と申しますか、地方のみの問題に局限された事柄が多いのでありまして、接収問題のごときは、すべて中央の合同委員会に諮るにあらざれば決定し得ない、こういうようなことに相なつておりますので、地方の日米協議会なるものは、たとえば風紀問題であるとか、あるいは道路の破損個所の改修要求であるとか、こういつた程度にとどまつておるようでございます。
  49. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そこで本省の方の問題でありますので、関次官にお尋ねしますが、次長としては、さような地方の日米合同委員会というものでいわゆる協議をしたものを、どの程度あなたの本省の方でお取上げになるのか、あるいはどの範囲までおまかせになつているか、その点を、本省の見解としてお伺いしたいと思います。
  50. 関守三郎

    ○関説明員 お答えいたします。別に、どこまでどうと紙に書いてはつきりしたことはありませんが、過去の例に徹しまして、米軍の方が現地であまりかつてなことをやると困るというので、これは原則として中央でまとめてやろうじやないか、こういうふうになつております。しかしながら、実際にお話なつて、ある程度こういうわけだということでもつて、これをわれわれの方へちやんとしたチャネルを通じて持つて来られれば、取上げて正式に話をつけるということはやりたい、こういうふうに存じております。
  51. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そこで私は、今両者の方からのお話を聞いて、日米合同委員会というものの範囲内のことが大体確実にわかりましたが、日米合同委員会というものをつくつている以上は、やはり重点はそこに置いて、地方の実情というものを十分にわかつた上で、本省においてやられるということがほんとうであり、かつ今の次長のお話を承ると、現在そのように取扱つておられるという推察がつくのであります。ですから、今後もそうしていただかなければならぬのでありまするが、悲しいかな、行政協定の弱さとか、あるいは岡崎外交の軟弱と私どもが常に品にするところのかような面から、従つて役所の方でも、なかなかあなた方自体が思つておられる通りにならぬものがあると私どもは推察する。けれども、あなた方自体は、今申し上げましたように――各地の危険な状態については、午前中に各参考人がつぶさに申し上げておるから、おわかりと思いまするけれども、そういう点は十分腹を締めて、今後はさようなことがないように、ことに今日は、思想的に非常に危険な状態に来ておることも御熟知の通りであります。ですから、この面からいつても、先ほどの情操教育の面からとか、いろいろ多角的な研究の基盤に立たれて万全の措置をおとりになるようにお願いしたい。同時に私は、ここでさらに地元参考人の辻氏に御質問申し上げたいが、たとえばオジカセのような場合に、爆発物を解体するようなことが、その現地で爆発をさせなければ解体ができないかということです。もし他に方法があるようなら――私もちよつと仄聞したことがありますので、お知りになるだけの知識で、簡単な御答弁を願いたい。
  52. 辻一三

    ○辻(一)参考人 オジカセ島は、ただいま写真をもつてお示しいたしました通り、非常に海上面に出ております陸地部分が少いのであります。かような場所で爆薬物を処理いたしますと、おそらく、このオジカセ島は、近いうちに地球上から抹殺されるのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、爆発による処理は困る、結局において機械的な処理が願わしい。機械的な処理と申しますのは、たとえば信管を抜きまして、その中から火薬を取出す作業であります。かつまたもう一つの方法は、深い海の中に捨てることであります。この二方法は、必ずなし得られるものと解釈いたします。
  53. 辻文雄

    ○辻(文)委員 関次長にお尋ねいたしますが、さようなことがなし得られる――私もちよつとさようなことを承つたことがありますが、その点はいかなる御見解か。その御見解をお伺いするのは、まずさような場合に支払いの面で――私は時間がありませんので、つつ走つて、順序を追わないで申し上げるようですが、外貨獲得の線になりやしないか、またあわせて、そういうことをやる場合は、わざわざワシントンまで報告をして、そうして許可をとらなければならぬものか、ごく簡単でけつこうでございますから、お答え願いたい。
  54. 関守三郎

    ○関説明員 ただいま辻参考人から御説明がありましたような方法を、米軍にとるように要請いたしております。これに対しまして米軍の申しますことは、やはりたまには、ある程度秘密の部分があるそうでありまして、その点に関して、ワシントンの許可をとらなければならないということで、ちよつと待つてくれ、こういうふうになつておる次第でございます。
  55. 辻文雄

    ○辻(文)委員 そこでわかりました。漁業問題については、もう地元の参考人からるる話されておりまするから、ここであらためて申し上げません。ただ各地と同様に、四千人からの家族をかかえて、その総数が食うか食われるかというような段階なので、このことは、当局としても十分頭の中にお置きくだすつて、そうして騒ぐ騒がないにかかわらず、でき得れば、地元の方で騒がないうちにやるということでおやりいただきたいと思います。もう一つお尋ねしたいのは、オジカセ島というのは、九十九島という島便の中の一島一島でありますが、今度観光の見地から、国立公園指定を厚生省に要請しておりましたということですが、国立公園にはなつておりませんけれども、風致地区ということで、準国立公園の取扱いをされております。その場合に、あそこで爆発処置をいたしますような場合に、厚生省の方にあなたの方から一応連絡をおとりくだすつて、そうして厚生省、厚生大臣がよかろうということにならなければ、取扱えないのではなかろうかと私は考えておりますが、この点、ひとつ御見解をお聞きいたしたいと思います。
  56. 関守三郎

    ○関説明員 原則として、関係省の同意並びに地元の同意がなければ、新規要求に対してはこれを提供いたさないことになつております。
  57. 辻文雄

    ○辻(文)委員 その場合、先ほど申し上げますように、そういう不文律のことを、独立国家であるという日本を忘れてやつたのかもしれませんが、向うが通達せずして、一回だけ六月のうちにやつたことがあるそうでございます。さようなことがありますので、今後重ねてそういうことがないように、観光の面からも十分御注意くださるようにお願い申し上げておきます。  他にいろいろ御質問申し上げたいのでございますが、残念ながら、十五分でありますので、他日に譲つて、今後さような内灘のような紛糾ないように、しかと御注意いただくことと、あわせて要望申し上げておきますが、もし賠償でやるという場合には、先ほどの北海道のように、ちやんと国家がやつたものが零細漁民、あるいは、当事者たちには渡らぬ、こういうことのないように御注意いただきたいことを最後に要望して、私の質問を打切ります。
  58. 上塚司

    上塚委員長 次は福田昌子君。
  59. 福田昌子

    福田(昌)委員 小西市長さんにお伺いいたしますが、板付飛行場の問題といい、博多湾の水上機発着の問題といい、これは市長さん初め、地元民全部の関心事となつている問題でございますが、これまで市当局が、いろいろとこれに対する対策をとつて来られましたが、公の折衝としてはどういうような折衝をとつて来られたが、一応御説明願いたいと思います。
  60. 小西春雄

    小西参考人 ただいまお尋ねの公の交渉といたしましては、板付の問題につきましては、市議会の名におきまして、関係の向き向きにそれぞれ陳情書が出ているわけであります。
  61. 福田昌子

    福田(昌)委員 そこでお尋ねいたしたいのは、こういう福岡基地に対するいろいろな苦情、陳情が参つているはずでございますが、これ対して、国際協力局としていどういう処置をとられたか、お伺いしたい。
  62. 関守三郎

    ○関説明員 陳情の御趣旨に従いまして、御希望に沿うようにできるだけのことをやつているのでございますが、なかんずく具体的なものを二、三申し上げたいと思います。補償の問題が大分あつたようでございますが、補償の問題につきましては、従来非常に大きな盲点がございましたので――これはいわゆる間接被害に対する補償でございますが、たとえばけさほどお話になりました防風林の問題、こういうものは、いわゆる間接補償として、今度、きようあたり多分参議院の方も通過さしていただくのではないかと思いますが、これによつてすつかり問題が、――すつかりとは言い得ませんが、補償ができるようになるわけであります。  それから騒音の問題もあつたのでございますが、これも学校関係騒音全部ということになりますと、これはたいへんむずかしい問題でございますが、とりあえず学校関係の方は何とかやらなければいけないということで、これも文部省から、目下科学的な調査をやつていただいておりますが、その結果に応じまして、ただいま申し上げた間接補償にひつかけまして、何とかある程度のことはできるようになるのじやないかと思つております。それから博多湾お話でございますが、これは、われわれの方としてもやめてくれということを申し入れました。最近は、たしかやめているのじやないかと存じております。なお博多湾の問題につきましては、朝鮮における状況とも大分関係があるようでございますので、そのうちにはつきり何とかとめることができるようになるのじやないかと考えております。
  63. 福田昌子

    福田(昌)委員 重ねてお伺いをいたしますが、博多湾の問題は、日米合同委員会に持ち出して、今合同委員会の問題になつている、こういうことでことでございますか。
  64. 関守三郎

    ○関説明員 さようでございます。
  65. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、これは、具体的にはどういう結論が出る状態にあるのですか。
  66. 関守三郎

    ○関説明員 今海上の演習の分科委員会、そこにおきましては、これは困る、提供できませんということを申し上げ、そうしましたら向うが、どうしてもいるんだ、だからわきの方をくれぬか。それもだめだということを言つて、向うに断つているわけです。
  67. 福田昌子

    福田(昌)委員 何回ぐらいの折衝をなさつておられるのか。
  68. 関守三郎

    ○関説明員 分科委員会のやつも入れますと、三回ぐらいになるのじやないか。断つたら、向うの奴がこつちへかえてくれ。それに対しまして、それは困る、それもだめだというようなことで、大体三回ぐらい分科委員会でもんでいるわけであります。大体先ほど申しました通りに、曙光は見えているような気がいたしますので、さらにこれを、はつきりと使わぬようにさせようというふうに考えているわけであります。
  69. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいまの御答弁では、望ましい曙光が結果するようで、私たちも非常に喜ばしく存じております。どうかこの点につきましては、岡崎軟弱外交という名前を返上するような御決心のもとに、十分強固な御折衝をお願いいたします。そうして博多湾の水上飛行基地としての使用を排除できるような強い立場で、今後の折衝をお願いする次第であります。  なお重ねてお伺いいたしますが、先ほどの関次長の御答弁によりますと、補償の問題について、目下だんだんと具体的にとりきめられつつあるというお話でございましたが、農地の補償に対しましては、どういうような形においてとりきめられているか、お伺いいたします。
  70. 関守三郎

    ○関説明員 これは、私より調達庁の方が来ておられますから、調達庁の方から答弁申し上げます。  それから先ほど申しました間接補償の問題につきまして、ちよつと補足いたしますが、法律がなかつたので補償ができなかつた、その法律を今つくつているわけでございます。多分この国会を通過させていただくものと思いますが、そうすると、先ほどの問題のようなものは大分解決する、こういうことを申し上げているわけであります。
  71. 福田昌子

    福田(昌)委員 それでは、特調の大石不動産部次長さんにお伺いいたしますが、農地の補償に関しまして、特調は今日までどういう処置をお取運びになつておられますか、伺いたいと思います。
  72. 大石孝章

    ○大石説明員 お答え申し上げます。施設区域に決定しました場所に営農しております農地があります場合、耕作が可能な場合と、それからまつたく耕作が不可能な場合と両方ございます。耕作可能な場合は、これを国において買収いたしまして、他に転換してもらうといつたような措置を講じております。その場合に離作補償、それからそこにいろいろはえております傷等の補償、いわゆる実物補償をいたしております。それから耕作がある程度可能だという場合につきましては、国が賃貸借契約をいたしまして、借料をお支払いする。しかしながら、やはり制限された部分についての損失がありました場合には、これを補償する。以上が施設区域に決定せられました農地関係で起きましたもので、これは昨年七月四日の閣議了解事項に基きますところの、駐留軍使用する土地等の損失補償等要綱というものに基きまして補償いたしております。  もう一つは、ただいま外務省の方から御答弁がありましたように、具体的な例は、芦屋なんかの場合のように、そこに防風、防砂の保安林があつたわけであります。これを飛行場等のために伐採する、そのために潮風、あるいは砂等が入りまして、農地がだめになつて、農業経営上損失があつたという事例でございます。これは、占領期間中の問題につきましては、政府は見舞金を差上げております。具体的には、芦屋の防風、防砂のための農業経営上の損失につきましては、一千八百万円ちよつと、それからそれの将来の対策費として一千万円、合せて二千八百万円程度のお見舞を差上げております。それから講和発効後についてはどうするか。これは衆議院の水産委員会で満場一致可決いただきまして、本会議も通過し、参議院の水産委員会がやはり満場一致で御通過願いまして、多分本会議も通つたはずでございますが、簡単に申し上げますと、駐留軍の行為による特別損失補償法という法律案が通過されたわけでございます。それに基きまして、そういうような間接的な在日軍の行為に基きますところの補償は、農業、林業、あるいは牧畜、それから水産業が大部分でございますが、そういつたような経営上に損失があつた場合に、これを補償するという制度ができたわけでございます。それによりまして補償できる次第でございます。
  73. 福田昌子

    福田(昌)委員 重ねてお伺いいたしますが、昨年の七月四日の閣議了解事項によつて、補償の概略の基準がきまつたというお話でございました。たとえば、耕作地に対しての補償もきまつたということでございますが、耕作地に対する補償は、耕作する本人に補償するのでございましようか。それともその地主に補償するのでございましようか。
  74. 大石孝章

    ○大石説明員 今度の特別損犬補償法におきましては、農業経営上の経営いかんでございますから、その場合は、地主というよりも、耕作権者と申しますか、耕作者でございます。
  75. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、ここにおかしな例があるのでございます。たとえば板付飛行場基地の問題でありますが、この飛行場設置のために農地を接収されました小作農民に対しては、何らの補償もなされていないように聞くのでございますが、これはどういうわけでなされていないのでございましようか。
  76. 上塚司

    上塚委員長 福田君に申し上げます。時間が到来いたしましたから……。
  77. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点でやめます。
  78. 大石孝章

    ○大石説明員 ごく簡単にお答え申し上げます。米軍が進駐以来接収いたしました農地の土の賃貸借契約は、従来都道府県、あるいは調達庁と所有権者との間に一貫しまして賃貸借契約を取結んでおつた次第でございますところが、ただいま福田委員からのお話のように、昨年講和発効以来の新しい方法によりましては、これは地主とそれからそういうような耕作権者とわけて考えねばいかぬといつたような建前になりまして、現在の方法としましては、買収の場合などは、これを地主と、それからそういう耕作権者の権利の消滅というぐあいにわけていたしておる次第であります。御指摘の板付飛行場の耕作権の問題でございますが、これは私ども調達庁が福岡県の契約をそのまま引継ぎまして、いろいろ吟味いたした次第でありますが、具体的に申し上げますれば、調査の段階がまだ全部終了していない、しかしながら、私どもこれは農林省とも相談しての上でございますが、大体におきましてはつきり現在の耕作君権というものが判明したあかつきにおいては、これを何らかはつきりした形に直さねばいかぬだろうというふうに考えておる次第であります。
  79. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点だけお伺いいたしたいと思います。耕作者、ことに小作農民に対しても補償するというお話でございますが、その補償の仕方につきまして、今少しく具体的に、ことに板付飛行場の小作農民に対する具体策としてどういうような処置をとるつもりであるか。金銭的なこまかな具体策をもつてお答えいただきたいと思います。
  80. 大石孝章

    ○大石説明員 申し上げましたように、目下いろいろ具体的な資料をとりまとめ中でございますし、農林省、それから福岡県の農地部、私どもの出先機関等におきましていろいろこれを研究中でございますので、はつきりと申し上げかねますが、とにもかくにも離作料といつたものを、一般論としましては支払うことになるわけであります。これをどんな形にするか、それから現在賃貸借契約をいたしております場合に、そういう小作権を消滅させるかさせないかといつたような点で、いろいろ種類があるわけでございますが、はつきりした線につきましては、申し上げましたように、研究が十分できたあとで詳しく御連絡申し上げます。
  81. 福田昌子

    福田(昌)委員 いつごろまでにですか。
  82. 大石孝章

    ○大石説明員 取急いでおります。
  83. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 関連して。今特調の説明員のお話によりますと、板付の補償の問題について、農林省とも相談をした上にというお話でありますが、私の聞いているところでは、農林省の方には問題はないのであつて、特調の本部とそれから現地との聞の交渉がまだ済んでいないというように聞いております。このことについて齊藤参考人にお尋ねしますが、どうでしようか。
  84. 齊藤久雄

    齊藤参考人 この問題につきましては、昨年の講和発散後、新しい補償制度に基いて契約を結ばれるようになつておりまして、それによりますと、耕作権のある小作地に対しては、小作人と契約を結ばれる所有者、地主が承諾するという形になつておるそうでございます。でございますので、私の方では、耕作の反別、または字、その他一切のものと、それに対する末端部落から最高県知事までの証明をいただきまして、間違いなく耕作しておつたということを出しております。にもかからず、この地元の福岡調達局におきましては、それを握りつぶしてしまいまして、そしてたつた一名の地主との電話交渉によりまして、耕作権がないものとして新しく地主と結んでしまつたわけでございます。そして、これの金の支払いに対しましても疑義があるということで、公文書をもちまして、私の方ではこれに対する支払いの中止方の申請をいたしましたところが、それに対しましても握りつぶしてしまつて、もう地主さんへ支払つてしまつたというような次第でございまして、耕作しておつたという事実が明確になつておるのでございますし、また農地であるということが決定された以上、耕作権者がおるということを認めた上でございますから、だれが作つておつたかということさえ明確になれば、何ら調査する必要もないし、また延引される必要もないかと思います。これがだれが耕作しておつたかということが明確になり次第に、ただちにその耕作者に支払うべきではないか、こう考えますのに、いたずらに福岡の調達局と本省との関係や書類のいろいろな関係だという名目のもとに、今日までそれは支払われていないのでございまして、その点に対しまして、私らは非常に遺憾に考えておる次第でございます。
  85. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうすると、耕作権の関係につきましては、福岡県の農地部、それから農林省、こういうところでは、あなたの今おつしやることを認めて、これを支持しておる、こう解釈してよろしゆうございますね。
  86. 齊藤久雄

    齊藤参考人 はあ、そうでございます。
  87. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 では大石さんにお尋ねしますが、今の齊藤参考人の話には間違いないでしようね。
  88. 大石孝章

    ○大石説明員 今齊藤参考人お話なつた点につきましては、私の方も書類、それから口頭によりまして、前に連絡を受けております。ただ、申し上げましたように、一般的な問題の取扱い方につきましては、私ども中央において農林省と十分打合せをやつておる次第でありまして、これは全国的な問題にも関連がありますので、こういう方面から研究いたしておる次第であります、具体的には、板付の問題につきましては、農林省におきましても、耕作権者に対して何らかの処置をせねばいかぬというような点につきましては、異論はない次第であります。ただ具体的な事実問題としましては、今齊藤参考人からもお話がありましたように、私どもの方、それから福岡県庁の方におきまして、はつきりと耕作権者のことも、それから具体的な該当人という問題につきましては、いろいろ資料をとりそろえて研究中の次第であります。
  89. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いろいろ私聞きますと、どうも福岡の調達局の方で、調査及び公文書の作成について、若干の過誤といいますか、疎漏があつたように考えられるのでありますが、調達庁の方としては、その点はお認めにならぬのですか。
  90. 大石孝章

    ○大石説明員 講和発行後に、齊藤参考人お話を前に私承つたのでありますが、いろいろこういう関係で、現在の賃貸借契約の相手方以上に耕作権利者があるのであるということを、私どもの出先の福岡調達局の方に、十分書類でもつて申入れしてあつたそうであります。ところが、その後講和発効後の新基準によりますところの契約をやります際に、そういう申入れがあつたにもかかわらず、従前の賃貸借の相手方と新しく契約を更改したいという事態がある、この問題につきましては、はつきり手落ちがあつたかどうかということは、私ども調査いたしている次第であります。
  91. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは、これ以上追究しますと他の方に迷惑でありますが、今お話を聞きましても、福岡調達局の方の悪意でなくても、確かに事務上疎漏がある、過誤があつたということは明らかである、至急これは御調査になりまして、そうして真の耕作権者がいるのであります。しかもそれは県の農地部長、農林省の関係局課においてみな認めているのです。農林省の方から厳重な話があつたと思いますから、ひとつ板付基地関係の耕作者がその権利と利益を保存できますように、調達庁としても責任を持つて善処していただきたい、それを要望しておきます。
  92. 上塚司

    上塚委員長 次は戸叶里子君。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 福岡市長さんにお尋ねしたいのですが、この飛行場として使われておりますのは、日本の軍が最初に使つていたのがずつと占領中も使われて、そうして今そのまま何の了解も、なしに現在まで使用されている、こうおつしやつたように存じますが、その通りでしようか。
  94. 小西春雄

    小西参考人 何の了解もなく使つたか、あるいは何らかの手を打つて政府と交渉した結果使つたか、その辺の消息は私承知いたさない、こういう趣意を申し上げたのであります。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、外務省の協力局の方にお伺いしたいのですが、占領中からの基地については、講和が発効いたしましてから九十日間に合同委員会できまらないときには、一応継続使用を認めることになつておりますけれども、これは、原則としては、その後においていつまでも黙つて使つていいというのではなく、できるだけ早く合同委員会にかけるべきものであるというように私は了承しております。そういうふうに考えて参りましたときに、福岡飛行場に対しましては、合同委員会におかけになつて、そうしてあらため飛行場使用をなされたか、それとも、そのままずつと何の通告もなしに継続使用をせられているか、どちらか承りたい。
  96. 関守三郎

    ○関説明員 去年の旧PD地区で、現在も岡崎・ラスク協定に基いて保留になつている分ではございません。それは去年の七月のたしか第一回のリストだと思いますが、講和条約ができましてからずつと作業をいたしまして、合同委員会でまとめて、非常にたくさんのものを一時に政府施設区域として提供したものでございますが、第一回の提供分の中に入つておるわけであります。はつきり合同委員会を通じて、閣議決定を経て、使用されたものでございます。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 市の責任の地位にある市長さんが、だれかに交渉があつたかどうかは知りませんけれども、御自分は知らないというような答弁をしておられますが、外務省の方では、そうではなくて、確かに閣議で決定した、こうおつしやるのですけれども、閣議の決定事項というものは、市の責任者である市長さんの方へは通告をなさらないのでしようか。
  98. 関守三郎

    ○関説明員 都道府県知事を通じまして、関係の市町村には通知していただくことになつておりますので、何かその辺に行き違いがあつたのではないかと思います。もう一度よく調べますが、まさか通知が行つておらないということはないように思うのでございます。これは私の方でも、こんな間違いがあると何ですから、もう一回よく調べますが、大体そういうことはないだろうと思うのであります。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 こういう重要な問題がこのようにあいまいにされているということは、私は看過できないことだと思うのです。もう一度市長さんに伺いますが、市長さんの方は何も御存じないのですね。
  100. 小西春雄

    小西参考人 非常に問題の核心に触れた御質問で、たいへんけつこうに思うのですが、私の今の記憶では、そういう公文書を受取つた覚えはまつたくありません。十二分にお調べを願いたいと思います。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は、それ以上追究してもしかたがございませんから、よくお調べになつていただきたいと思います。またこういうようなことがいろいろなところに起きているんじやないかと思いますから、協力局といたしましては、もう一度全国にわたつてお調べになることを強く要望しておきます。  それから次に、先ほどの板付の方からの御希望によりますと、この飛行場が一日も早く平和な飛行場なつてもらいたい、国際飛行場として使つてもらいたい、しかしそれまでの間、学校でどうしても授業をするのにさしつかえるから、何か防音装置をしてもらいたい、こういうような御希望を述べておられますが、調達庁か何かで、その辺をすでにお考えになつておられるかどうか、お考えになつていられるのなら、いつごろ実施されるかを承りたい。
  102. 大石孝章

    ○大石説明員 先ほどもお答え申しましたように、そういう学校関係におきましては、目下文部省においてこれを科学的に立証する目的をもちまして、全国を調査中でございます。その計数がまとまりますれば、具体的に防音装置をするとか、あるいは移転をするとかいう措置が講ぜられるはずであります。その根拠につきましては、申し上げましたように、衆参両院を通過いたしました特別損失補償法によつてできるわけであります。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 もう大分前から、学校の子供たちが迷惑をこうむつておりますのに、これから何とか考えようということはまことに心細い話でございますが、一日も早く、その点はお考えになつていただきたいと思います。  それから先ほどの福岡市長お話にあつたと思いますが、福岡板付飛行場にいたしましても、博多湾の上を飛ぶ飛行機にいたしましても、朝鮮戦争が始まつてから非常に多くなつて、そうしてまた、休戦になるようなきざしが見えてからは、非常に少くなつたというように伺つておりますが、それはその通りでございましようか。
  104. 小西春雄

    小西参考人 ただいまお述べになりました通り、事実水上飛行機の方は、非常にきわだつて少くなつているように思います。母艦もただいまはいないです、陸上の方は、従来のように編隊を組んで、十五機、二十機というふうな編隊というような事柄は、最近は非常に少くなつております。練習的に飛んでいるのは相かわらず飛んでおります。けれども、数が減つたことは間違いない事実であります。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 外務省の方に伺いたいのですが、この基地は、駐留軍ためと国連軍のためと、どちらの目的に使つていられるのでしよう。両方に使つていられるわけですか。
  106. 関守三郎

    ○関説明員 要するに、安全保障条約に基いて行政協定というものができておるわけでございますから、私たいへん不勉強で申訳ないのでございますが、安全保障条約の米軍の駐留に関する目的の中には、ただに日本の防衛ということだけではなくて、東アジアの安全の平和でございますか、たしかそういうふうに限定されておるわけでございます。そこから行政協定ができまして、そこからこの施設区域というものが提供されておるわけでございます。施設区域の提供された目的は、単にただ日本の本土と申しますか、現在の日本の国の防衛という点だけに限られておるものではないと私は信じております。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁には、いろいろな問題を含んでおりますが、今私は時間がないので、ここで取上げようといたしませんし、また国連軍との協定ができていないのにというようなとやかくしたことは申し上げません。これは他の機会に譲りますけれども、問題は、今の市長さんからの御答弁を伺いましたときに、朝鮮関係休戦に伴つて非常に減つたということによつて、私は希望的に、あるいはこれが国連軍関係基地として使われているのだから、今後においては、朝鮮休戦に伴つて、この基地基地として使われないようになるのではないか、こういうふうな希望的な観測からその点を質問したわけなのですが、そうではなくて、やはり国連軍関係も、それからまた駐留軍の人たちも使うという両方に使つているというふうに解釈していいわけなのでしようか。
  108. 関守三郎

    ○関説明員 全般的には、そういう御解釈をいただいた方が間運いないと思います。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、この問題はいろいろ問題を残したまま次へ移りたいと思います。  オジカセの参考人、辻さんにお伺いいたしたいのですが、先ほどのお話を聞いておりますと、オジカセ島を爆発物処理の場所にするために、何とか了解をしてほしいというようなことを、地区司令官が最初に言つて来たというふうに私は拝聴いたしましたが、その通りでしようか。
  110. 辻一三

    ○辻(一)参考人 その通りであります。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 協力局の方にお伺いしたいのですが、こういうふうな場合に、最初に話を持つて来るのは、合同委員会を通してではないのでしようか、地区司令官が、どういう権限かを持つてそういうふうに土地に申し込むことができるのでしようか、どうでしようか。
  112. 関守三郎

    ○関説明員 御説の通りでございまして、正式に地区司令官がそういうことをそういう限りで持ち出すとすれば、明らかに間違いだと思います。当然合同委員会を通じて正式なる話があるのでなければならぬと思います。ただ実際上の問題として、どんなぐあいであるかということをサウンドするために、多分地区司令官は話を持ち出したのではないか、軽い意味において、意見はいかがかというようなことを聞くために聞いたのであろうと思います。しかし正式にそういうことをやつたとすれば、明瞭に越権行為であります。
  113. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、先ほどの辻参考人から、県庁を通して正式に申し込まれたというように拝聴いたしておりますが、その点はいかがなものでしようか。
  114. 辻一三

    ○辻(一)参考人 県知事に対して、アルフオード大佐と当該係隊長であるバーカー少佐が申し出たのであります。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、そういう場合には越権ではないでしようか。
  116. 関守三郎

    ○関説明員 これははつきり正真に申しまして、正式に申し入れたのではなく、どんなものでしようかということを、インフオーマルに言つたのだと思います。そう解釈するより解釈のしようがないのであります。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 こういうような問題は、よほど気をつけませんと、また問題を残すと思いますので、一応私は確めてみたわけでございます。先ほどの参考人の御意見を聞いておりますと、オジカセ島は、観光都市として今までも、またこれからも発展して行く可能性が多い。日本はこれから文化外交で行かなければならぬということを盛んに政府も申しておりますが、そういう点から言いましても、爆薬処理場として、このオジカセ島をめちくちやにすることは、文化外交の趣旨にももとるようにも思いますが、そういう点からもお考えになりましても、協力局の方は、このオジカセは爆薬処理場にすべきでない、こうお考えになつていられるかどうかを伺いたいと思います。
  118. 関守三郎

    ○関説明員 先ほども申しました通り、爆薬の処理そのものは、必ずしもああいうおかの上でなかなかやらなければならぬかどうかということが、まず第一の根本の問題でございますが、そういうことをやらぬでも、ほかに方法があるんじやないか、そうすれば、すべて話がつくのではないかということを、今話をしておるわけであります。
  119. 上塚司

    上塚委員長 戸叶君時間が参りました。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ……。
  121. 上塚司

    上塚委員長 それでは戸叶里子君。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 今のは、他に方法があるんじやないかというお話かと思います。そうすると、これは結局協力局としても、文化外交の意味からいつても、そういうふうな爆薬処理に使うことは反対であるというふうに認められていると私は了承しておきたいと思います。  それからもう一つ、実は日高門別のことなんですが、先ほどのお話を伺つておりますと、無通告で侵入をされたというような電報もお受けになつていらつしやるようですが、そういうように無通告侵入がなされた場合には、日米合同委員会としては何ら発言する、あるいはそれに対して何ら警告を発する権限はないかどうかを承りたいと思います。
  123. 関守三郎

    ○関説明員 こういい場合におきましては、当然強い警告を発する権限――権限と申しますか、権限があろうがなかろうが、それは当然強い警告を発しまして、こういうことは、再発をやめてくれということをはつきり申込むつもりであります。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 六月十五日に無通告で侵入されたそうですから、その点をお含みの上、はつきり申込んでおいていただきたいと思います。
  125. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 本会議で討論をすることになつておりますので、退席する前に、ちよつと緊急にお尋ねをしておきたいと思います。  それは、この間から私本委員会で御質問申し上げたし、また労働委員会でもたびたび質問事項になつておりますが、例の極東海軍のモーター・プールに勤めておつた従業員四百何十人が、不当解雇をされて、その手当を、半年過ぎた今日なお払つてもらつていないという問題であります。この間関さんは、今月一ぱいには何とか片づけるからというお話でありました。また長引くようなら、何か立てかえの方法でも考えようというような、非常な誠意のあるお話があつたように記憶しておりますが、どうも今月一ぱいには片づきそうにないように聞いております。関係者が関さんのところへもお伺いして、いろいろ御相談をしておるようでありますが、これはいわば私的な会談でありまして、正式にこういう委員会で取上げられた問題でありますから、その後の事情をこの席で御説明願いたいと思います。
  126. 関守三郎

    ○関説明員 少しくどくなりますが、詳細に申し上げてみたいと思います。実は全般の問題にひつかけまして、この問題を解決するという予定でやつておつたのでございますが、労務基本契約に関係いたしまするところの債務全般の問題は、これははなはだ残念でございますが、彼我いろいろな理由がございまして解決が遅れまして、現在のところでは、あと一週間か十日はどうしてもかかるだろうというぐあいになつております。それで、この前御質問がございましたので、それにまかして一括して解決したいと存じたのでありますが、たつての御希望がございましたので、これはさらに別個に取上げて、話合いを進めたわけであります。これは一週間ばかり前に始めたと存じております。そこで立てかえ払いができるかどうかという問題でございます。これはいわゆる実費というものでございまして、これは米軍の調達がなければ、こつちは払わないということにはつきり約束ができておるところの費目でございます。しかも米軍は、その点に関しては日本側から払つてくれては困るということを言われております以上、われわれは契約に違反して払うことはできない、こういうことが非常にはつきりしているわけであります。そこでやむを得ず、しからばお前の方は不当解雇かどうかという点について、さらに向うに異議があるものでございますから、お前のところの異議は間違つておるということを、向うと話し合いをして説得中でございます。これは相手のあることでございますから、いつまでに話がつくということは、私の方から、解決の見通しはいつになるかはつきり目途はつかないわけでございます。こういうような状態でございます。
  127. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はさらに国際協力局の方のアメリカ側に対する交渉の態度が非常に弱いと思う。それから理由がないということを向うが申したということでありますが、こういうことに対しましては、これは強硬にひとつ対処してもらいたい。とにかく東京の労働基準局長が、明らかにこれは払うべしと認定を下しておりますし、先般労働大臣も、それは当然のことだとして、そのことはもう大体済んだのではありませんかというようなお話があつた。そういう問題につきましては、関さんなり外務省のお役人の方々は、日本人でありますから、日本側で権威ある認定を下した事項について、向うが反対のことを申しました場合に、もつと強く交渉していただきたい。そうして、事はほんとうに数百名の生活の問題であります。行政協定の実施に伴つていろいろこういう問題が起つておりますが、どうか外務省の役人の方は、アメリカさんのごきげんをいろいろ取結ぶことばかり考えないで、あなたも同胞の一人なのです。そういう人々が毎日生活に苦しんでおるときに、あなたはほんとうに地下たびをはき、菜つぱ服を着た気持でないと、そういうりつぱな服装をして、外人さん並のつき合いでもするようなつもりで、サロンで悠々と閑談するような態度でやられては私は困ると思う。今の言葉も、きわめて私は誠意が足りないと思う。相手のあることだから、いつになるかわからぬでは、私はちよつと引下れない。こういう苦しみをなめている駐留軍関係の労務者は、非常に多いと思う。こういうことについて、やはりあなたがしつかりした態度を、この件においてお示しにならぬならば、今後こういうことが続々として起ると思う。もう一ぺんしつかりした答弁をお願いしたいと思います。あなたの交渉に臨む腹、それからほんとうに困つておる諸君にどうするか、立てかえ払いでも、何とかしてやれないことは私はなかろうと思う。そこは、ひとつ何とかいい知恵をしぼつてもらいたい、もう一ぺん御答弁を願いたい。
  128. 関守三郎

    ○関説明員 私の答弁は、先ほど申し上げたことより一歩も出ることのできないのを、はなはだ遺憾に存じます。
  129. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そういう不誠意な答弁なら、何べん聞いても同じだろうと思いますが、国民は、私とあなたとの質疑応答を聞いてどういう判断を下すか、これは明らかであります。もう少ししつかりやつてもらいたい。これはまた別途に、私は個人的にも外務省にお伺いして御相談しますが、ひとつもつと誠意を持つていただきたい。
  130. 上塚司

    上塚委員長 並木君。
  131. 並木芳雄

    ○並木委員 関次長に伺いますが、板付飛行場は、約一箇月くらい前に私が質問したときに、この返還を交渉中であるという答弁を得ております。たしかに運輸省の航空の方でやつておられるかと思います。しかしこれは、当然国際協力局が知らないはずはないので、その後返還要求の交渉はどうなつておりますか。先ほど来参考人皆さんお話を聞いていると、一日も早く返還してもらつて国際空港にされたいという言葉でありますので、お尋ねをしておきます、
  132. 関守三郎

    ○関説明員 ただいまのお話は、運輸省の方が返還の交渉を外務省に申し入れていることでございますか、それとも、直接米軍にお申し入れになつたということでありますか、どちらでございますか。
  133. 並木芳雄

    ○並木委員 私はその点は知りません。ただ答弁のうちに、先方に対して返還を請求中であるということでしたから、これはいずれにしても政府がやつておることだし、この問題に関しては、国際協力局としては知らないはずはないと思いましたから、むしろ関さんの方がその筋であろうと思つて、今正式にお尋ねしているわけです。
  134. 関守三郎

    ○関説明員 返還を全面的に要求するというお話は、私は聞いておりませんが、ただ現在においては、共用は許されております。御承知の通り、日航もその他のところも、しばしば新聞社などもあそこをお使いになつておると思います。全面的に返還をしろという要求は、私は聞いておらないのでございます。
  135. 並木芳雄

    ○並木委員 しかしそういうことがあり得るのですか。国際協力局、つまり外務省がありながら、先方に他の省でもつて直接請求して、交渉中というのはありますか。
  136. 関守三郎

    ○関説明員 多分そういう全面的な返還を要求した交渉は、やつておらないのだろうと思うのですが、もう一度念のためお調べして御返答いたします。
  137. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは、その点は至急調べていただきたいと思います。  それからきようもいろいろ問題を聞いて、つくづくそれ感じたのですが、結局これは、行政協定全般の問題であろうと思います。ところで先般裁判管轄権の問題を中心として、行政協定改訂の時期が参つておるために、外務省としても早晩この交渉を開始するやに聞いておりましたけれども、この交渉はすでに開始されたのですか。それとも近く開始されるならば、いつごろから行政協定改訂の交渉をされますか。
  138. 関守三郎

    ○関説明員 私が聞いておりますところでは、目下裁判権の問題は、これは御承知の通り、大体において話が済んだと申しますか、大体において筋が通つているわけであります。その他の問題に関しましては、関係各省の意見、その他たとえば調達に関しましては経済局、そういう方面に今意見を問合せ中でございまして、はつきりどうしても改正しなければほかに方法がないということになつた場合には、当然交渉は開始されるものだろうと私は信じております。
  139. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま裁判管轄権について大体話がついたと聞きましたけれども、それはそれでいいのですか。
  140. 関守三郎

    ○関説明員 例の十七条のことでございますが、これは私がここの席でお答えするより、もう少し偉い人に答えていただきたいと思います。
  141. 並木芳雄

    ○並木委員 さつき日高門別町長松本さんのお話を聞いておりますと、なかなか大がかりな演習が計画されておるようでございますが、その町長が聞いて来た情報というものは、もしわかつたらお知らせ願いたいのですが、どこかのやはり仮想敵国から北海道に侵入するということを前提として、そういう大がかりな演習をしておるのか、ただ単なる訓練というものをやるために計画されておるのか、もしわかつたらお知らせ願いたい。この点は国際協力局の方でもわかつたらお知らせ願いたいと思います。
  142. 松本末吉

    松本参考人 並木委員のお尋ねに対して申し上げます。これはどこの国から攻めて来るか、南から来るか北から来るか、そういうことはさらに聞いておりません。ただ米軍は小樽から出発して、函館の付近に離島大島がありますが、そこへ行つて、艦砲射撃で島を砲撃して、それからぐつと函館をまわつて太平洋に出て来て、日高門別の海岸に敵前上陸を行つて、海陸空の演習をやる、こういうふうなことを聞いております。
  143. 関守三郎

    ○関説明員 門別のお話につきましては、年柄年中そういうことをやるということではないのでありまして、米軍の要求も一年六回以内、一回五日以内というふうに限られておるのでありまして、この点はけさほどの説明にも漏れておつたように思いますから、つけ加えさしていただきたいと思います。大体演習の仮想と申しますか、そういうものは、別に私も北とも南とも聞いておりません。ただ日本に敵が出た場合には、そこでどうしても演習をする必要があるのだ、こういうふうに聞いております。日その他は、けさほど門別の松本さんがおつしやつたのと大体同じであります。ただし期間は一年に六回以内、一回五日間以内というふうに限られておるわけであります。
  144. 並木芳雄

    ○並木委員 私がなぜ聞いたかというと、北海道地区というものは、治安の点からいうと特に不安定なところだ、そういうところから、米軍の駐留というものも北海道に重点をおく、あるいは保安隊の駐屯も、北海道に重点をおく、こういう情勢が先般来続けられておるのであります。従つて北海道の日高門別町長をされておる松本さんから聞けるのじやないかと思つた声は、こういうふうに演習をし、治安対策を強化してもらうことは、むしろ地元の者としては要望するところである、こういう声だつたのです。しかるに先ほどの御説明ですと、てんからアメリカ軍というものをきらつてしまつて、非常に排米思想が横溢しておるように聞えましたので、今の質問をしたわけです。実際問題として、北海道方面の人心というものは、町長の感じたところではどうなんです。すこぶる時局に対して楽観的であるか、それとも相当不安の念を持つておるのか、その辺のところをちよつと町長からお聞きしておきたい。
  145. 松本末吉

    松本参考人 お答えします。北海道全体の道民の意向というようなことは、私の立場として申し上げかねますが、少くともわが町民の意見といたしましては、もしかある国が日本と戦端を開いて、爆撃をするというようなときに、ひとり北海道ばかりが非常に困るとか、あるいは最も危険の率が多いというようなことはない、ジエツト機が今動いておる、北海道から帝都まで来るのにわずかに二、三十分で飛んで来ます。そこでもしある国がわが国と戦端を開いて、爆撃を加えるとしたならば、北海道のようないなかをつかないで、帝都のまん中にバーンと一発落すことになれば、それで勝負がきまつてしまう。だから北海道がある国と一番近いから、一番こわいところで演習をやつた方がいいと言う人があつたら、これはとんでもない、頭の悪い人じやないか。だから私どもの町民は、そういうふうな頭の者は一人もおらぬ。
  146. 小平忠

    小平(忠)委員 関連して……。私は関次長に一問だけお聞きしたいと思います。ただいま関次長は、このようなことを答弁されました。先ほどの日高門別の参考人松本町長の陳述に対しまして、抜けておる点があると特に強調されまして、その演習に使うのは年に六回以内、一回五日以内と限定しておるということを強調されたのであります。これは、あなた方が日米合同委員会で折衝する上において、きわめて重大な問題であるのであります。なぜかというと、一年に六回と限定し、一回の演習が五日以内と限定したならば、支障、損害がないという考え方を持つておるとするならば、これは大きな誤りであります。一体農作物なりあるいは、海面というものは、特に農作物のごときは、五日間の演習によつて一ぺん成長しつつある作物が倒れたならば、それでいいのでありますか。これが問題なのであります。一回というのは、一年全部使われるのも同じであるという考え方を、あなは念頭に置かれて折衝されなければならぬと思うのであります。この点を十分に今後の折衝において強調していただきたい。そこで私はお伺いいたしますが、関次長が先ほど強調されたのは、年に六回、一回の使用期間が五日以内だからさしつかえないという考え方のもとに、賛成されての御答弁であつたかどうか、この機会に承つておきたいと思います。  あわせて私は申し上げておきいことは、先般この問題につきまして、北海道議会の議長と道選出の衆参各党の議員が一緒に大臣室で、岡崎外相にこの問題をただしたところが、特に演習の規模なり、あるいは侵入の仮想敵国のことに触れて、岡崎外相はきわめて重要な発言をしておる。どういうことを言つたかというと、すなわち北海道における治安の状態、あるいは国際情勢の緊迫は、あなた方御承知の通りである、特に現在樺太には、かつて日本の旧軍人が相当な兵力となつて、戦後長い間ソ連の教育を受け、虎視たんたんとして本土に近い北海道をねらつておる、こういう状態にあつて、北海道の人々は喜んでその基地を提供することに協力しておるということをおつしやつておる。これはきわめて重要な発言であります。そういう考え方を岡崎外相以下あなた方外務省の方々が持つておるならば、きわめて重要な問題であります。私はこの機会にこれを申し上げて、皆さんの善処を促すと同時に、ただいまの問題についての見解のほどを承つておきます。
  147. 関守三郎

    ○関説明員 先ほど時間が限定されたということを申し上げたのは、単なる補足的な説明でございます。かるがゆえに、私は提供に賛成だというようなことは、決して申し上げておりません。
  148. 上塚司

    上塚委員長 次は淡谷悠藏君。
  149. 淡谷悠藏

    淡谷委員 松本門別町長にお伺いいたします。七十三町歩は以前から演習地であつたのか。これは占領されたあと、ずつと今まで継続して使つておられたのでございますか。
  150. 松本末吉

    松本参考人 お答えいたします。昭和二十六年に接収を承けてから、ずつと引続き使用されて来ております。
  151. 淡谷悠藏

    淡谷委員 二十六年に接収されてから今日まで、途中で条件の変更その他について、特別調達庁または日米合同委員会から、何らかの申入れがございましたかどうか、お伺いしたい。
  152. 松本末吉

    松本参考人 今ちよつと聞きとれませんでしたが……。
  153. 淡谷悠藏

    淡谷委員 七十三町歩というものは、占領中に接収されたらしいですが、これが講和発効後も同じ条件で使われておるのかどうか。あるいはまた条件がかわつた場合に、特別調達庁なり日米合同委員会から、何かの申入れがあつたかどうか。つまり占領中と講和発効後における取扱いに変更がありましたか。
  154. 松本末吉

    松本参考人 それは、その後引続き使用方の要請が、道庁の渉外課の方からありました。それに対しましてこちらの方は、七十三町歩に対しては、もういたし方がないと観念して、承諾をしておるわけです。それは判こをついております。その中には住宅地が若干と民有地があります。
  155. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それから今度の拡張に対して、初めて町長さんがお知りになつたのは、いつごろでございますか。またどういう動機でこの拡張されるのをお知りになつたのですか。この点を伺います。
  156. 松本末吉

    松本参考人 これは昨年の四月と思いますが、道の渉外課の方からこういう要求があつて、こういう通知を受けたのであります。それから米国の幹部が再三再四実地調査に参りました。そこでいよいよこれはただごとでないなというような考えを起しまして、こちらの方は、いろいろと当局に対して反対の運動を開始しておるわけでございます。そうして今日に、至つております。
  157. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その反対の意思表示につきましては、書面で出したことはございますか。陳情書、あるいは何か嘆願書みたいなものをお出しになつたことはございますか。また出したとするならば、どこあてに出したかをお尋ねしたい。
  158. 松本末吉

    松本参考人 これは私が数回上京いたしまして、農林省の当局の方々、あるいは水産庁の当局の方々に、これは町民として絶対に反対であるということをお願いしておるわけでございまして、町議会といたしましても、絶対反対の決議をしております。そんなふうにして、これがだんだんに日米合同委員会の問題に提供されまして、そしてきよう午前中に申し上げたように、この門別の拡大の線に関しまして、日米合同委員会、あるいは分科会が二十七、八回開催されておることを聞いております。
  159. 淡谷悠藏

    淡谷委員 実は私も青森県でありまして、この演習地問題につきましては非常に苦労をしておるのでございますが、何しろ外務省の感覚というものは、われわれ日本人と若干違つておるようでございまして、青森県の方でも、はつきり反対の陳情書を出しましたら、その中に条件が入つているから、これは賛成とも受取れるという扱いをされておるのでございます。ちよつと関次長にお伺いしたいのですが、日高門別のこの陳情書は反対とおとりになつておりますか、賛成とおとりになつておりますか、お伺いしたいと思います。
  160. 関守三郎

    ○関説明員 はつきりおわかりになるように御答弁いたしますが、これは反対ととつております。
  161. 淡谷悠藏

    淡谷委員 たいへんに安心いたしました。さきに戸叶委員及び田中委員からお話がございましたが、はつきり県なり、町長が断つた場合に、アメリカ現地の軍が直接交渉しておる例がたくさんございます。岩本訓練所、これは青森県でございますが、とても三千五、六百町歩どころじやなくて、新設、拡張を合せますと、一万町歩を越すのでございますが、これに対して青森県の知事が、はつきり反対の意を申し入れたのでございます。そういたしましたら、地元の軍から、合同調査をいたしたいという申入れがあり、これを断つてしまつた。その場合に何をしたかといいますと、ヘリコプターを使つて調査と称して威嚇飛行みたいなことをやつております。これは戸叶委員からも再々言われておりますし、私も協力局長の方に申し入れておきましたが、アメリカ自体が、こういう威嚇的な行動をしてまでも演習地、基地を無理やりに使おうとすることに、対して、一体協力局はどういう考えを持たれておりますか、ひとつ日米合同委員会としての御覚悟のほどを承りたいと思うのでございます。
  162. 関守三郎

    ○関説明員 ただいまのお話のヘリコプターで飛んで来たという点は、それをもつてただちに威嚇と見るかどうかは、見解の題題もあると思います。しかしながら、現地調査にいたしましても、断りなしにかつてに行くということは向うのやり過ぎであります。もしそういうことがございましたら、こちらからはつきりとめさせます。
  163. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ただいまのはつきりした御覚悟のほどは、まことに喜ばしい次第でございますが、これに関連いたしまして、もう一つお伺いいたしたいのですが、占領中も占領後も、拡張に関しても新設に関しても、いろいろ委員会で検討するに従つて、さまざまに手落ちも失態もあつたようでございます。特に今日閣議決定になりました内灘及び青森県の関根が、閣議決定と同時に非常な反対を示しております。このあとの問題がきまりませんうちは、一旦閣議決定したものでも、またこれを繰返すのじやないかという心配も多分にありますから、もうすでにはつきり決定したものも、これから決定するものも、新しい観点から十分に地元の意向を聞きただしまして、誤りのないような方向に、ただいまの勇気をもつて邁進する御覚悟がありますかどうか、もう一ぺんお伺いいたしたいと思います。
  164. 関守三郎

    ○関説明員 決定したものをくつがえすことは、われわれの権限ではできませんので、そういうことについてどうこうするということは申し上げかねます。しかしながら、できるだけ地元の関係者の御希望に沿うように米軍を説得する、これはあくまでも合同委員会の仕事でありますが、そのためにはできるだけの努力をするということは、はつきり言明いたし得ることであろうと思います。
  165. 淡谷悠藏

    淡谷委員 特別調達庁は、閣議決定後にこの関係の土地を引渡すまでは、完全にこれが引渡されたと見ていない、つまり演習地として使用すべきものではないという見解を持つて来たのです。これに関してしばしば外省とも折衝いたしました結果、やはり事務的には、閣議決定が最後決定じやない、そのあとさまそれな事務的な手続がいるのだということをはつきり確認をされたのでありますが、ただいまの関次長のお話では、決定したものはわれわれでは変更はできない、こう申しております。これは次長さんならば変更できないかもしれませんが。決定したものでも、さまざまな事務上の渋滞を来し、または事務的にこれの使用ができないというような形になつた場合には、その現実をはつきり閣議に具申して、誤りがあつたならば、その誤りを正すくらいの御覚悟があつてもよいと思いますが、その点はどうでしようか。
  166. 関守三郎

    ○関説明員 閣議決定以後におきましても、なるほど事務的な手続がたくさん残つております。その間においてできるだけ円満に、関係者の納得の行くように努力することは当然である、こういうふうに考えております。
  167. 淡谷悠藏

    淡谷委員 関次長さんにそういう責任ある御答弁を無理やりにお願いする意思はございませんが、この演習地、基地の問題は、今後相当の影響を来すと思います。従つてこういうような重大な席上には、大臣なり局長なりが出て来られまして、地元の話をはつきり聞かれまして、今後に対する新しい観点から演習地、基地の問題を十分に取扱われるように、ひとつ時期を見て大臣にも御出席を願つて、残された問題を十分に検討したいという希望を申し述べまして、私の質問を打切ります。
  168. 上塚司

    上塚委員長 これにて参考人に対する質疑は終了することといたします。参考人各位には、長時間にわたり種々参考意見を開陳せられまして、まことにありがとうございました。委員長より深く感謝いたします。     ―――――――――――――
  169. 上塚司

    上塚委員長 これより日華平和条約附属議定書第二項の有数期間の延長に関する議定書の締結について承認を求めるの件について質疑を行います。田中稔男君。
  170. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 黄田経済局長が見えておりますからちよつとお尋ねいたしたいと思います。昭和二十七年度なり、本年度、まだ半ばでありますが、本年度今までの実績でよろしゆうございますが、日本と中華民国つまり台湾との間の輸出入の状況について、できるだけ詳細な数字的根拠をもつて品目別に御説明願いたい。
  171. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 両国の間には貿易計画があるのでありまして、それはたしか四月から三月一年間ということになつておりますが、ことしの計画は輸出入ともおのおの七千四百五十万ドルということになつております。これは昨年が片道おのおの五千万ドルでありまして、ことしは二千四百五十万ドル計画としてはふやしてあるという状況になつております。しからば去年は一体どのくらいの商売があつたのかと申しますと、一九五二年、これは一月から十二月の暦年をとつておりますが、輸出が五千百七十二万九千ドル、輸入が五千百七十三万七千ドル、輸入の方が一万ドルほど多かつたという関係なつておりまして、ほとんどとんとんでございます。輸出の方の品目は、食糧及び飲料が約九百万ドル、内訳は小麦、小麦粉が四百八十万ドル、水産品が二百六十万ドル、それから織物、繊維製品が約四百万ドル、内訳は綿織物が百七十万ドル、綿糸が八十六万ドル、人造繊維の糸が八十三万ドル、それから木材及び木材製品が九十二万ドル、動物及び動物産品が約三二百万ドル、化学製品が一千万ドル、金属及び金属製品が九百三十万ドル、非鉄金属、鉱物製品が百万ドル、機械類が千三百万ドル、雑輸出、文房具その他でありますが、これが百三十二万ドルというのが大きな内訳でございます。輸入の方の品物といたしましては、穀類食糧及び類似原料、これは米が大部分でございますけれども、四千八百万ドル、これがほとんど全部であります。その内訳を申しますと、米が千百六十万ドル、砂糖が三千三百四十万ドル、その他が三百万ドルということになつておりまして、米、砂糖がほとんど全部であります。それから繊維及び織物原料が三十六万ドル、石油、油脂、ろう、そういうものが十万ドル、それから非金属鉱物及び石炭が百八十六万ドル、大ざつぱなものはそういうところであります。それからことしになりまして、ただいまのところ一日から五月末までの数字をここに持つてつておりますが、ことしは一月から五月までの累計が輸入が約二千万ドル、輸出が一千六百四十万ドル、こういうふうに相なつております。
  172. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 台湾から日本に対する買付つまり日本からの輸出でありますが、これはアメリカの台湾に対する援助、経済援助と軍事援助があるのですが、その金額及びその援助と日本からの買付との関係はどうでしようか。
  173. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 日本と台湾との間にはいわゆるオープン・アカウント、清算勘定協定というものに基いて貿易をいたしております。従いまして直接のドルあるいはその他の通貨の取引はありませんで、お互いに記帳によつて商売をやりまして、日本からの輸出業者は円を受取る、それから向うではそれを向うの通貨で輸入業者が政府に支払う、一定期間の後におきましてバランスが合つた場合に、その差を、スイングを差引いた残りをドルで支払うということになつているのでございます。これが清算協定であります。ところがアメリカの方から台湾の方に援助をやりまして、それで物を買うという場合には、これは真接ドルの取引になります。最近まではアメリカの援助に基いてドルで物を買うという場合にオークシヨンをやりまして、それで物を買う。そのオークシヨンには日本もむろん参加していたのでありますが、約二箇月から三箇月くらい前に、日本からの輸入品はオープン・アカウントで買えるのであるからして、ドルによるピツデイングには参加せしめないというようなことが四、五あるいはもつと多かつたかもしれませんけれども、そういう例が相当あつたのでございます。当時われわれもそういうやり方は非常に不満であつて、当然日本もそういうビツデイングに参加を許さるべきであるということを交渉いたしたことがあるのでございます。その交渉の結果かあるいはその他の理由からかよくわかりませんけれども、とにかく最近ではこれらではこれらのビツデイングにもすべて日本が参加することになつております。従つて日本が台湾に物を輸出するというのは二本建になつております。つまり台湾との間の真接のやつはオープン・アカウントを通ずる、その他のアメリカの援助によつてビツデイングが行われる場合には日本もそれに参加し得て、しかもそれはオープン・アカウントを通ずをことなしに、ドルの真接の支払いを受けるという二本建の貿易が行われるわけであります。
  174. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 オープン・アカウントでない方の、アメリカの援助による入札に参加しての輸出はどのくらいありますか。
  175. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 金額はドルにいたしましてどのくらいになつておりますか、ただいまはつきり覚えておりませんけれども、数百万ドルに上るであろうと思います。
  176. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 おもに機械、硫安ですか。
  177. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 台湾側が行いましたものは、機械、人造繊維その他ゴム、そういうものをやつております。
  178. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 硫安は。
  179. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 硫安もございます。
  180. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  181. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまの取引高ですけれども、昨年この条約が効力を発生して今日まで一箇年、その開議定書の第二項で通商航海が律せられて来たわけです。それとその前年一箇年と比較して、どのくらいの発展を見せたか、大まかなところでけつこうですが、それを知りたい。
  182. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年一箇年の輸出入は大体五千万ドルでとんとんになつております。それが条約の発効いたしましたのは、四月二十八日からでございますが、その前年度と比較いたしまして、どの程度のパーセンテージのふえ方をしておるかということは、今はつきり覚えておりませんけれども、大体八対十ぐらいの割合いで去年がふえていはしないかと思います。
  183. 並木芳雄

    ○並木委員 八対十では大したことはないですな。四対五というわけでしよう、二割ふえたことになりますか、大したことはないじやありませんか。
  184. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 両国間の貿易は、条約の発効前からも、特別にオープン・アカウント協定というものをやつておりまして、それも割合にスムーズに行つておりましたので、そのカーブの上昇の仕方が非常に少いということをおつしやるかもしれませんけれども、それまでもうまく行つていた、それがますますうまく行つた。それから今年はそれがさらに七千五百ドルということになるので、それだけでも約五割の増ということに相なります。
  185. 並木芳雄

    ○並木委員 この通商航海条約というのはそんなにむずかしいものではないと思つたのですけれども、どうしてこの一年間に結ぶことができなかつたのか。またこれから向う二年間延長するのですが、この二年間の延長は、今までの一年間に比べれば倍です。ずいぶん長いと思いますが、どういうわけで二年間の長い間を予定するか、その理由を知りたいのです。
  186. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 二年間延長するという、それだけのものではございませんで、通商航海条約が締結されるか、あるいは二年か、いずれか早い方ということにいたしております。従いまして、もうすでに通商航海条約も結ぼうではないということを申し入れてありますし、その方が早くできますれば、それだけこれを延長する、そういうことになるわけであります。  なお今までできませんでした理由を申し上げるのを忘れましたが、入国とかあるいは商社支店の設置とかいうことに関してなかなか向うの方針その他に関して、向うも相当考慮したいというふうなことを申し出ておりまして、従いましてわが方の熾烈な申出にもかかわらず、今までまだできておりません。但しこれは先ほども申し上げましたように、至急やろうじやないかということを申し入れてありまして、おそらく二年とどつちが早いかということになりますれば、通商航海条約の締結という方が先に来るであろうと見込んでおります。
  187. 上塚司

    上塚委員長 ほかに質問はありませんか。――他に御質疑がなければ本件についての質疑はこれにて終了いたしました。  これより討論を行います。田中稔男君。
  188. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私は日本社会党を代表して本件に関しまして反対の態度を表明するものであります。われわれが日本国と中華民国との間の平和条約そのものに反対して参つたことは周知事実であります。それは中華民国と申しましても、その実体は要するに台湾における蒋介石の残存政権にすぎないのであります。中国本土におきましては中華人民共和国が建国いたしましてすでに三年を過ぎております。しかもその治績は大いに上つて、中華人民共和国の主義、政策に反対するものといえども、その実績に対しましては驚嘆の眼を見張つているというような状態です。ただアメリカの極東政策のために、台湾がその本土から人為的に切り離されているにすぎないのであります、いずれ台湾は澎湖島とともに中国に帰属すべきものであり、帰属するに間違いはないと思うのであります。またこのことは日本がすでに受諾いたしましたポツダム宣言においても明らかに規定しているところであります。われわれはこういうふうに中国五億の国民に事実上の支配権を打立てており、その国民の信任を得ておりますところの中華人民共和国を相手として、すみやかに平和条約を結ぶべきであると思います。こういう不自然なアメリカの外交政策の作為の結果に基く畸型的な政権であります蒋介石の支配する台湾の政府、こういうものと平和条約を結ぶことは、かえつて将来にとつて禍根を残す。そういう立場から反対して参つたのでありますが、その附属議定書を二年延長するとかしないとかいう問題は、もう私どもにとつては問題ではないのでありまして、われわれといたしましては条約そのものに反対しておりました。従つてその附属の議定書を延長することについても、われわれは反対の態度をとるものであります。  さらにまた通商航海の問題でありますけれども日本と中国との貿易、これはもちろん中国本土を対象としてでありますけれども、この貿易の重要性ということは今やわが党だけでなく、改進党はもちろん自由党の党員の諸君の間にも、だんだん認識が高まつているのでありまして、近く衆議院におきましては有志議員以下超党派的な立場で、日本と中国との貿易促進のための決議案を提案することになつている次第であります。そしてそれはおそらく満場一致をもつて衆議院を通過するという予想を持つているのであります。そういう際に台湾との通商というようなことは、実はあまり重要性を持たないと私は思います。  今黄田局長の御説明によります数字を見ましても、台湾との貿易は日本の経済にとつて大して効果はない。極端に言いますならば、日本から機械や硫安を持つて行くが、向うからバナナを買つて来るというような始末です。そういうことは日本経済の自立のためには何もならない。しかも向うが機械を買うとか、硫安を買うとか申しましても、それは台湾の自力で買うというよりも、アメリカの援助によつて買うという量が私は多いと思う。オープン・アカウントとかなんとかいろいろなお話がありましたが、これとても決してアメリカの援助なき台湾の経済をもつてしては、私はそういう買付もできないと思うのでありまして、軍事的にはもちろん経済的にもまつたくアメリカに依存しておる台湾に、今後多くを期待できないことは明らかであります。さらにまた聞くところによりますと、蒋介石の方では、日本の商社が中国の新しい政府との間に貿易をやりますと、そういうことをやつた商社に対しましては、台湾は取引しないということでおどかしたりしておる状況でありまして、台湾との通商関係というものが、かえつて日本と中国本土との自然的な、非常にプロミツシングな将来を持つた貿易にとつては、支障を来すというような消極的な面さえあるのでありまして、私どもはこの案に対しましては反対するものであります。
  189. 上塚司

  190. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま議題になりました日華平和条約附属議定書第二項の有効期間の延長に関する議定書の締結について承認を求めるの件について、日本社会党を代表して反対の意を表したと思います。  その理由は、昨年の六月に日華条約がこの外務委員会で通過いたしまして、わが社会党では、この条約自身が中国本土の一部との条約であつて、中国全体との条約が締結される必要を説いて参りました。ことに中国と日本とはその関係も深く、隣接国として友好外交の推進されることが必要であります。貿易関係も一日も早く戦前のような取引がなされなくては、日本の経済に及ぼす影響は大きいのであります。そこで私どもは、早く日本と中国全体との平和条約が締結され、それに基いての通商航海状態が平常に服することを望んでやみません。  そこでこの議定書でありますが、この親条約である日華条約に反対したがゆえに、これに反対するという理由だけではなしに、さらにこの議定書におきましても、通商航海の期限を二年とか、あるいは通商航海条約の締結されるまでとか、そのどちらか早い方を待つてとしるされてありますが、このように漠然と二年という年限をきめてみたり、あるいはその間に通商航海条約が結ばれるのではなかろうかといつたような、まつたく無定見な態度を持つている政府の態度であります。政府はもつと積極的に、日本と中国全体との平和条約をこの際結ぶという努力を払わず、そして貿易関係を戦前のように、一日も早くもどすというその熱意が現われておりません。  そこで私は、以上述べました理由で、この議定書の締結に反対するものであります。
  191. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。これより採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  192. 上塚司

    上塚委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決しました。  なお本件についての委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさようとりはからいます。     ―――――――――――――
  194. 上塚司

    上塚委員長 次に日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。  なお外務大臣は、間もなく当委員会出席せられますが、外務大臣が来られるまで、この友好通商航海条約について、和田君、穗積君、帆足君、田中君、戸叶君、中村君の中で御質問はございませんか。
  195. 和田博雄

    和田委員 外務大臣に聞かなくてもいい問題を、一、二お聞きしたいと思います。一つは、宗教関係なり芸術関係なりで、やはり同様の待遇を締結国双方やることになつておりますが、何か既得権みたいなものとして、日本側でアメリカにおいて認められているような実例がもしあれば、ひとつその点お聞きしたいと思います。今まで何かそういうものがあつたか……。
  196. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 既得権で向うが認めることになるであろうと思われるものは、農業関係であります。アメリカにおきまして農業に従事している考が相当ございます。これが将来本条約が成立いたしますれば、それの既得権が認められるということがあると思います。
  197. 和田博雄

    和田委員 私、農業関係とかなんとかいうのはわかつておりますが、第八条の三項に「学術、教育、宗教及び慈善の活動を行うことに関して、内国民待遇及び最恵国待遇を与えられ、且つ、その活動を行うため」云々。この条項にちようど適用されるような実例が何かありますか。
  198. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 主として西海岸におきまして、一世、二世というふうな者が中心になりまして、いろいろな種類の慈善事業とか、あるいは学術研究会とかいうようなものは、相当盛んにやつておるようであります。それらが第八条第三項に該当するということは、これははつきり申し上げることができます。但しこれは既得権とかいうふうなものとは何も関係のないことでございます。
  199. 和田博雄

    和田委員 外務大臣来られましたから、外務大臣にお聞きしたいと思います。この日米間の友好通商航海条約は、私は日本にとりまして根本的な重要さを持つものだと思うのであります。この条約に流れる根本思想は、これは言うまでもなく自由競争と自由企業、これがアメリカの経済の底を流れている思想だろうと思うのでありますが、その思想を経済力の非常に違つたアメリカとそして日本との間の条約において具現化して行く、こういうことにあるのであります。しかし私考えますのに、自由競争と自由企業の根本的な思想は、たとえばアメリカがMSAを与える場合においても、やはりその中の一つの条件として……。
  200. 上塚司

    上塚委員長 和田君、通商航海条約に関する件ですか。
  201. 和田博雄

    和田委員 通商航海条約質問をしております。よくひとつ委員長もぼくの質問の要旨を聞いておいてもらいたいと思います。この条約は独立した条約ではなくて、あらゆる点で関係を持つておる条約なのです。MSAの場合においても、アメリカ側はこの自由競争と自由企業の思想はやはり貫いておると私は思うのであります。しかし世の中は、ことに国際経済がかわつておるだけではなしに、やはり各国の経済制度もともに非常に変化しておると私は思う。この条約を見ましたときに、われわれが社会主義の政策を将来実行して行こうとしたときに、かなり制約を受けるのではないだろうかということを心配しなければならない点が二、三あるのであります。  この条約を結びますときに、外務大臣としてはそういうような点についてどういう程度の考慮を一体払つたのであるか。一例を言えば、外国の商社を収用したり、公用徴収なんかをするときに――もちろん補償の規定はあります。しかしそれを迅速的にやらなければならないとか、いろいろな点でかなり社会主義政策を行う点からいつてみて、非常なさしつかえになるような条項がちよちよく見えるのであります。一国の経済制度がかわつて行くということは、これは国内の独自の問題であつて、そしてわれわれは憲法に従つてそれを実行して行く権利を持つておるし、また実行して行かなければならないのでありますが、条約がそういう点についてかなりさしさわりになるとするならば、これは将来における人類の進歩というものをあらかじめ縛つておくという結果にならないとも言えない。ことに日本アメリカのように今まで占領され、独立したとはいいながら、その間の関係は、形式的には岡崎君なんかは平等と言いましようけれども、実際的には非常に違つておる場合において、ことに国際的な政治が依然として権力政治であり、名前は友好というようなことをいつておりましても、底を流れる思想は、どこまでも権力政治であるというような場合において、こういう点については、われわれとしてはあらかじめ非常に心配せざるを得ないように考えるのであります。この条約の交渉において、こういつたような点についてアメリカ側と議論をしたり、あるいはこちらから問題を提起して、いろいろな形で討論なりなんかをやられたことがあるかどうか、またその点について外務大臣はどういうように考えておられるかをまずお聞きしたいと思います。
  202. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話の点はよく了解できるのですが、実はわれわれはやはりそういうような自由企業というか、自由競争といいますか、その方に賛成をいたしているのであります。従つてわれわれの方針なり政策なりにかわつたような条約をつくるということはわれわれの良心が許さない。ただその間において、できるだけお話のような場合もなきにしもあらずでありましようから、考慮は加えるのであります。しかし原則としてはもうできるだけ自由企業で行きたい、こういうつもりでいることは正直に申し上げまして私どもそうなのであります。ただこれは御承知で御説明もいりませんが、手放しでそういうことをするのは日本の経済の実情が許しませんから、たとえば制限業種であるとかあるいは為替の制限をやるとか、株式の取得の問題を三箇年制限するとか、こういうようなことはやつていますが、これは実はほんとうならば苦しくても野放しにして、立ち上る力をもとから養うのが、あるいはほんとうかもしれませんが、そうも今のところ行きませんので、こんな一つの制限を加えておりますけれども、しかしお言葉のように和田君が――と言つては失礼ですが、社会党の左派が政権をおとりになつた場合にはああであろう、こうであろうと言つて考えて、そのときでも都合悪くないようにというまでには、私は考慮を払つておりません。しかし普遍的に一般的な考えとして理由のあるところで押えたいので、必ずしも全面的に自由企業で全部して行くというのではないのであります。現実はその通りであります。
  203. 和田博雄

    和田委員 私はこの点は非常に重要だろうと思いますのは、たとえばイギリスのあの労働党のとつて来た政策についてすら、アメリカ側ではこれはソーシヤリズムといつて一時は共和党の最右翼の人々は――今でもそうだと思いますが、イギリスに援助を与えることを非常に躊躇したということははつきりした事実であります。この条約を私が通覧しまして考えますのに、政府側が一つの国民意識の立場に立たれて為替の管理ができるとか、あるいは輸出入の制限ができるとか、あるいは制限業種を設けるとかいつたものは、これは国民の意識に立たれたのでありますから、そのもつと根底にはアメリカのとつておるような自由主義、あるいは自由企業というこの考え方から日本の経済を万事処理して行こうとすれば、そこに非常な矛盾が起つて来る。むしろ根本はこれだけ経済力も違い、国際的地位も違いしている国柄であるだけに、やはり日本としては日本のほんとうの立場に立つて、むしろアメリカ側の自由競争、自由企業の考え方を日本の現実の力に合つて行くように、それが適合して行くように、むしろやわらかい言葉を使えば調整して行く、こういうことにおそらく最後は全努力が注がれたと思うのでありますが、これは言葉をかえて言えば、日本は自由競争、自由企業という自由主義の行き方では、経済の自立などもいろいろなことにしてもなかなかうまく行かないのであつて、そこにどれだけ社会主義的な考え方を取入れてやつて行かねばならぬかということに帰着するだろうと思う。その観点からこれをながめてみますと、ことに第六条などは憲法の場合の収用する場合等の規定とも関係を持つて来るのでありますが、どうも少し憲法以上にやつかいな手続などになつて来るのじやないかということを心配するのです。たとえば石炭を国管にする、こういうことをかりにやるとする、それに外国の資本が入つている、政府がこれを補償しなければならない、しかしその補償はもちろんするが、それをここに書いてあるような準則などで文字通り適用して行くということになると、かなりやつかいな問題がそこに起きて来るのであります。そのときの社会情勢によつてそれらの事柄が具体的にはきまつて来る事柄ではありますが、どうも少し私はそういつたような点で、将来に対する配慮というものが、あまりに形式的に平等ということに走り過ぎておるのではないか、もちろん岡崎さんは自由党でありますから、自由競争、自由企業の立場に立たれることはよくわかりますが、しかしわれわれはそこのところを条文を見てみると、非常に行ぎ過ぎておるという感じを持つのであります。これらの点はもちろん政府従来の立場からいつても、条約よりも憲法が優先するということでありますから、われわれはそういう点は憲法に従つてやれるとは思いますけれども、岡崎さんのお考えはどういうお考えでありますか。
  204. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今のお話でありますが、第一にはわれわれはこの条約をつくるにあたりましても、この条約と違うような趣旨の条約をよその国とつくる意思がないのでありまして、たとえば東南アジアに対しましても、あるいはアフリカに対しましても将来条約をつくる場合には、大体こういう趣旨でつくりたいと考えております。というのは要するに日本アメリカ関係は、力の相違においてはお話の通りであろうと思いますが、日本としてはまたほかの国に対しては、やはり貿易の統制とか国家管理とかいうことをさせるよりも、自由企業で行つた方がよろしいと考えておる点も多々あるのであります。アメリカだけにこういうものを認めるのではなくて、世界各国に対してこういう主張をして行きたいと考えておるのであります。  第二に今お話のようなことを和田君の場合におやりになると仮定いたしましても、この第七条の二項にありますように、土地その他の天然資源の開発を行う企業あるいは公益事業であるとか、水上運送、こういう制限業種があるのであります。実際にはその点はそうむずかしいことにならないのではないかとも考えております。
  205. 和田博雄

    和田委員 その点は、最後は意見の相違になりますから、それ以上は追究しませんが、やはりここに一つ大きな問題があるということだけははつきりしたと思います。  それからこれは具体的に事務当局の方にですが、天然資源を開発する企業というのは大体どの程度のものがこれに含まれるのでありますか。
  206. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これは鉱山などの発掘とか、そういうものが非常に多いわけでありますけれども、農業もこの中に含まれます。
  207. 和田博雄

    和田委員 電源開発ももちろん入るのでしようね。
  208. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 電源開発の方は公益事業の方に書いてございまして、公共の電気の製造もしくは供給に関する事業または企業というものは公益事業を行う企業ということになつておりまして、これも制限業種に入つております。
  209. 和田博雄

    和田委員 どつちに入るわけですか。
  210. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 従つて公益事業の方でカバーされております。
  211. 和田博雄

    和田委員 森林開発とか牧畜とかいうものはどうですか。
  212. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 森林の開発それから牧畜、これも入ります。
  213. 和田博雄

    和田委員 大きな治水のためのダムをつくるといつたようなものはどうですか。
  214. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 それはおそらく公益事業というのでカバーされます。
  215. 和田博雄

    和田委員 それから大きな灌漑の疏水をつくる、そういうものも全部入るのでございましようね。いやしくも目的はどうであれ、天然資源を開発して、それを人類の福祉の向上のために使うという企業であれば、それが企業として成り立つ限りは、国家がやろうが私企業がやろうが全部入る、こう解釈していいのでありますか。
  216. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 さようでございます。
  217. 和田博雄

    和田委員 それから第十二条の商取引の問題ですが、これは国際通貨基金との関係はどういうようになりますか。国際通貨基金よりもむしろアメリカ側としては、もつと二国間で日本側に要求している点が内容的には重要だということになるのですが、この点はどういうようになるのですか、多少問題になつたようですが、二国間の条約で多辺的な条約から発した義務を課そうとしているという形は、条約の方式からいつても、こういうことはやはりお互いが合意さえすればいいものなのでございましようか。この点は実はぼくもわからないんだ、わからないから聞いているのですが。
  218. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 この十二条の、ここに挿入してありますことは、あくまで為替制限というものはないのが理想である、これは第一条にそういうことが書いてあるわけであります。但しそういう状況はまだほんとうの現実の事態に即しない。そういうことをやつていない国はアメリカ、カナダ、スイス等三、四の国にとどまりまして、あとの国は大体為替制限をやつておるというのが現実の事態でございますので、従つて通貨準備の観点から為替制限をなし得るという大原則に対するところの例外をここに規定しているわけであります。従つてこの国際通貨基金の考え方というものともまつたく一致しているのであります。それで国際通貨基金のこともここに書きまして、国際通貨基金の方で一国の為替制限の状態が十分ではないというふうなことを言つた場合に、条約が予見しているよりももつとシヴイアーな制限を要求されることがあり得るということも予見いたしまして、従いまして、もしそういうことが国際通貨基金加盟国に国際通貨基金の方から要求があつた場合にはそれをもなし得る、そういう書き方であります。
  219. 和田博雄

    和田委員 通貨準備の水準が著しく低下するのを防ぐわけですが、これは具体的にはどういう標準ですか。通貨準備が著しく低下するのを防ぐということは、抽象的には非常によくわかる。たとえば日本の国においてはどういうような状態になつたときにこのことが言えるのか、これはそのときそれによつてお互いに話合いをしてきめるのですか、それとも何か一定の基準でもあつてこういうことをやられたのか、消極的な面と積極的な面と両方から書いてあるのですが、かなり解釈の幅が広いように思います。その点はいかがですか。
  220. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これはたとえば四億とか五億とかそういうことを予見はいたしておりません。従いましてこれは標準がどのくらいになるかということは、本条約に何も予見したものはないのであります。であるから、それをやる場合にこの両国が協議してやるということもないのであります。これを解釈するのは一方の国の自由であります。従いましてわが国が通貨準備のために必要だというので為替制限を行うということは、これは自由なのであります。ただ一般的に協議事項ということもございますので、もし日本がたとば二十億も外貨を持つて、しかもまだそういう理由のもとに為替制限を行つているというふうな場合には、これは両国協議の目的にはなり得るでありましようけれども、あくまでそれを決定するのは、そのことを行う国がそれを決定するわけであります。
  221. 和田博雄

    和田委員 そうすると、かなり為替制限をやる場合には自主性がある、通貨準備の水準をその国の必要によつて解釈をして、それで為替制限をやつて条約違反にはならない、こう解釈していいですね。
  222. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 さようでございます。
  223. 和田博雄

    和田委員 もう一つは輸出入の制限ですが、輸出入の制限の場合に、輸入先を変更したりあるいは輸出先を変更することは、われわれが日本の経済の自立をまじめに考えて行く場合、日本の場合には政策としてやらなければならぬと思うのですが、これは輸出入の制限というものに入つてやれるかやれないのか、これは当然やれると解釈していいのではないですか。
  224. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 輸入先の制限とおつしやいますのはおそらくドル地域から買うことをしばらくやめてポンド地域から買おう、あるいはその反対、つまり日本の外貨の手持ちの状況に応じて、ドル地域からは差控えてほかの地域から買うということであろうと解釈いたしますが、それならば仰せのごとくこれは日本がかつてにきめるということであります。
  225. 和田博雄

    和田委員 この条約がかりに成立した場合に、中国の貿易の今実際上禁止されておる点は、この条文との関係はどういうふうになりますか。
  226. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 直接の関係は本条約にはございません。
  227. 下田武三

    ○下田政府委員 この条約の第二十一条の(d)という項に、「国際の平和及び安全の維持若しくは回復に関する自国の義務を履行し、又は自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置」とあり、この条約に対します一般的除外例として、そういう措置をとり得ることに明白に規定されております。従いまして、侵略国側に援助を与えるということは、国際の平和及び安全の維持に反するわけでございますので、たといそういう趣旨から特定の国に対する輸出の制限をいたしましても、この条約には違反しないということになると思います。
  228. 和田博雄

    和田委員 そうしますと、かりに今度朝鮮休戦が成立しましても、政府の立場としては、昔のように、国連の決議が消えない限りは、中国を侵略国としての決議が存在しておる限りは、この二十一条の(d)をもつて中国との貿易というものは禁止して行く、こういう立場をとるわけでございますか、これは大臣からひとつ承りたい。
  229. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、法律上というのはおかしいのですが、表面的には私はそうだと思います。ただ実際上の措置としまして、とにかく休戦ができたということになりますと、徐々ではありましようが、大分空気がかわつて来るだろうと思います。というのは、今度は実際上の措置としては――主義はそうでありますが、実際上の措置としては、列国とできるだけ足並をそろえてやる、こういうことになりますから、列国の意向が大分かわつて来るということになれば、事実上はそれと足並がそろえられる場合が当然出て来るであろうと思います。しかしこれは実際上今後の状況を見てみなければわからないわけでありますが、おそらく多少ずつでもそういうことになるだろうと思います。
  230. 上塚司

    上塚委員長 和田君、あと三分で三十分になりますから、今日は三十分程度でやめて、また明日やつたらいかがでしようか。
  231. 和田博雄

    和田委員 かしこまりました。今の点はあしたまたもう少し詳しくお聞きいたすことにいたしまして、ただきようはざつと話だけを聞いておきたいと思うものですから……。  この前並木君が、たしか旧株の取得について、三年間はという規定があるわけですが、この三年が絶対的なものであるかどうかという質問をしたときに、これは絶対的なものだという御答弁があつたのです。そうなりますと私もちよつと疑いが出て来るのであつて、三年ということだつたら、三年間のうちにはおそらく再評価もやるだろうし、また三年たてば日本の経済というものが、たとえば旧株を所有されてもいいようなかなり実力のある状態になるのだというようなお考えから、おそらくそうされたと思いますが、そうなれば、将来三年という間に日本の経済そのものが自立し強化されて来るという何かやはり見通しというものが、そこになければならぬと思うのですが、何かそういう確実な基礎があつて三年というものを入れたのか。しかもその入れた三年間というものは、動かすことができない、ただ協議事項にはなり得るけれども、動かすことができないものだという御説明であつたのですが、その点はどういうふうなつていましようか。
  232. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは実は交渉のしまいの方になりまして、日本の財界なり金融界なりその他の方面の意向も聞きまして、こういうのを入れたのであります。その理由は日本の経済に保有円をすぐ使われてはいかぬということでありますが、同時に、三年と限りましたのは、もちろん見込みとしては、三年のうちには再評価等もできるであろう、自己資本もふえるであろうということと同時に、三年という制限にしまして再評価等を促進させる必要もある。いつまでもくずくずしておりますことは、日本の自立に対してもいろいろ妨げがあるということでありますので、私はこれに賛成したのでありますが、要するに三年ということで行くというつもりでおるのでありまして、さらにその間に再評価等が必要なときはその措置を行うのである、こういうつもりでもし行わないものあればあとで迷惑してもこれはやむを得ない、このくらいのつもりでおるわけであります。
  233. 上塚司

    上塚委員長 各位にこの際一言お諮りをいたします。日米友好通商航海条約に対する質問の通告は、なお和田君のほかに五名ほどあります。しかしてまた、国際情勢に関する件についての外務大臣への質問通告も五名ほどあります。しかし、この両質問の間には重複したものがありますので、議案整理の都合上どつちか一方の質問をがまんしていただきまして、この際一時、通商航海条約を国際情勢に関する件に切りかえまして、佐々木盛雄君及び川崎秀二君の両君に、岡崎外務大臣への質問を時間を限定して許したいと思いますが、いかがでしようか。     〔「時間など限定されては困る。政局の問題だ」「こつちは緊急質問なんだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  234. 上塚司

    上塚委員長 速記をやめてください。     〔速記中止〕
  235. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて。
  236. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 議事進行について。聞くところによると会期は延びそうでありますが、実は私どもは、会期は延びない、今月一ぱいにこの外務委員会は幕をとじるという委員長の見通しのもとに、理事会で、月末までの委員会会の大体の次第を御相談したわけであります。ところが、どうも会期の延長は必至だという情勢でありますから、この通商航海条約の審議にあたりましては、私は、もつと時間をかけてゆつくりやりたいと思うのです。というのは、日本の外務省がアメリカ側と交渉してこれをつくり上げるまでには一年数箇月かかつている。この一年数箇月外務省の知能を集めてつくり上げた条約を、われわれがわずか正味二日や三日の審議でこれを片づけるというのは、私ども会議員としても責任上どうもこれは納得できないと思うのです。しかも、われわれだつて常時こういうことについて専門的な研究をしているわけでもないし、データを十分用意しているわけでもない。また、外務省は、そういうデータをわれわれに提供する義務を怠つている。われわれが要求したデータさえ、しぶしぶとわずか一部分しかわれわれの手元にまだ届けてないという状況です。こういう悪条件のもとに審議を急ぐということは、委員長のお立場はお立場だろうと思いますし、与党の立場はしかたがないと思いますけれども、国会議員という職責にかんがみますならば、これはもう少し慎重にやるべきだと思います。しかも会期の延長は必至だということになると、この前の理事会で議事進行について相談したときの月末までという申合せは、一応ここで破棄することにしたいと思います。なおあらためてこれは理事会を開いて御相談したい、このことをひとつ申し上げまして、なお国際情勢に関する件につきましての質疑も非常に重要なものがあると思います。今後これはいろいろ起つて来ると思いますので、この通商航海条約の審議は続けながら、一方国際情勢に関する重要な事項についての審議のための時間は、十分これもやはり考えたい。そのために必要ならば、暑いときでありますけれども、連日委員会を続行してもいいと思います。これは私だけでなく、各委員において御同意を得られると思う。それだけの私は熱意を持つておりますから、審議のために十分な時間をおさきいただきますように委員長にお願いいたします。
  237. 上塚司

    上塚委員長 田中君に申します。この議会が延長されるかどうかということは、まだ決定しておりません。仮定の問題でありますが、われわれはどうしても少くとも二日以前に参議院に向つてこの案を送付しなければならぬのであります。そういたしますと、この間理事会において決定しました通り、二十九日の午前中にこれを上げて、午後の本会議の採決を願いたいと思うのです。そういうつもりもやつておりますので、場合によりましては、仰せのごとく夜間をも続行するようなことになるかもしれませんから、どうぞ御努力を願いたいと思います。  それでは、この国際情勢に関しましては先ほど申し上げました通りに時間を十五分程度に制限いたしまして、発言を許すことといたします。佐々木盛雄君。
  238. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこの外務委員会におきまして、国会を通じて非常に論議の焦点になつておりましたMSAをめぐる問題につきまして、かなり国民の間にも疑惑を投げかけておるようでありますし、会期も終りに近づいておりますので、この会期中に私は日本のおもむくところを明らかにいたしたい、こういう観点から大臣の所見を承つてみたいと思います。  まず第一に、結論を申し上げますと、私は憲法第九条の戦争放棄の規定に対する解決の問題でありますが、終戦直後のああいう混乱の中で新しい憲法がつくられ、そしてこれが国会を通過いたしたような次第でありまして、その後客観的にも主体的にも、非常な事情の変更が行われておるわけでありす。従つてこれらの事情変更を十分考慮した上で新しい憲法の解釈を確立する、すなわちこの憲法の文字が認めておる限りの新しい解釈をすることが、最も望ましいことではなかろうか、かように私は考えるわけであります。すなわち世界人類にかつてないほどの損害を与えた第二次戦争が終つた直後でありまして、その当時のわれわれ国民の考え方から申しますと、また近い将来に再びこのような惨劇が繰返されるというようとことは、われわれはあの当時としては考え得なかつたのであります。ところが今日におきましてはまた再び第三次世界大戦の危機が伝えられ、そして日本の周辺にもおそらくは歴史上かつてないほどの脅威がひしひしと追つておる、こういうふうな新しい事情変更ということをわれわれは無視してはならないと思います。またその当時といたしましては日本は占領下に置かれておりまして、完全の主権いうものがなかつた。今や主権を確立いたしまして、完全な独立国として国際社会に平等な地位を持つに至つたのであります。これらのような事情の変更の原則に立つて、憲法の文字の認める限り、許す限りの拡張的な解釈をするということが、最も望ましいことでありまして、先般来岡崎外相の発言をめぐつて、自由党が改進党の主張に近づいたというような説をなす人もありますが、これは私たちといたしましてはとんでもない話でありまして、現に改進党におきまして新しい憲法論をうたつております芦田さん自身も、帝国議会の最後の新憲法を本会議に諮りました際の発言を見ましても、この憲法というものは自衛ため戦争を一切放棄したものであると涙を流して宣言をなさつておるのであります。この芦田さんのお考えの中にも大きな変更を加えられた。また改進党の平和三原則なども当然かわつて来ておるのでありまして、わが自申党においても、当然事情変更の原則に立つて、新しい解釈をすることも不自然なことではない、また変説改論ではなかろうと私は存ずるのであります。そういう観点から私はあえて大臣のお考えを承りたいのでありますが、憲法第九条に書いてあります「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」という点を、私は非常に重要規したいと思います。すなわち国際紛争が起つた場合において、これを第三国の調停によるとか、国際裁判によるとか、あるいは外交交渉によつて解決するのが国際紛争の平和的解決である。これを武力に訴える、たとえば日米戦争のように武力に訴えるということは放棄したのであつて従つて私は自衛の目的のため戦争、自衛戦争というものは決して放棄したものではない。またこの後段に掲げておりますように、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と規定いたしておりますことも、こういつたような侵略的な戦争、そういつた目的を達成するための軍隊、すなわち戦力というものを持たないということを規定いたしたものと私は思います。そういう観点から考えますと、まず第一に、この第九条の規定というものは、決して無条件に日本の軍備というものを放棄したものでない、無条件に戦争というものを放棄したものではない、こういうふうに私は解釈をするわけでありますが、大臣のこれに対する所感を承りたいと思います。
  239. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府といたしましては、戦力に関する憲法の規定は条件はないと思います。目的は前項の「目的を達成するため」とありますけれども、陸海空軍その他の戦力を持たないということについては別の条件がないと思いますから、いかなる場合にも戦力を持つことは憲法が禁じておる、こう解釈いたします。
  240. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると先般来もこの委員会で論議されておりました、自衛を目的としたところの軍隊、通俗的に申しまして国内治安を確保するという警察的なものではなくて、重点を対外的な防衛に当てるところの自衛軍的な色彩を多分に持つた、そういう自衛軍というようなものを持つこともできない、こういうふうな解釈でありましようか。
  241. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 憲法は、名前をどうするかということをはつきり申しておるのではないのでありまして、要するに戦力を持たないということであります。国を守るために必要な力を持つことはとめておりませんけれども、それが戦力に至ることは憲法が禁じておることだ、こう解釈いたします。
  242. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 MSAを締結することによつて日本は当然積極的にも自衛体制の強化をするということが要請されて来ると私は思います。これは条約上の法理論の立場からも、あるいはまた国際政治の実際的な面から申しましても、当然これが要請されて来るのじやなかろうかと私は思います。そうするとMSAを受けることによつて日本の自衛体制というものは確立されて来る。その場合におきまして、自衛体制の確立ということは具体的に言つてどういうことになるかというと、今までの保安隊のような国内治安に対することよりも、対外的に国土防衛ということが、私は大きな性格としてクローズ・アツプされて来るのじやなかろうかと思います。このMSAの受諾に伴いまして、日本はそういつた道義的にもあるいは法理的にも、国際政治の実際の運営の上から申しましても、そういうことが当然私は客観的にも要請されて来るのじやなかろうかと考えておりますが、いかがでありますか。
  243. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 十五日に第一回のMSAの会議を開きましたときに、アリソン大使が申したところによりますと、アメリカ側では、日本が防衛の力を増強することは希望しており、また究極的には今のままでは足りないと思うが、これの増強の時期とか態様とかは、すべてアメリカ側でやることではなくて、日本側で決定すべきことだ、こういうことを申しております。従つてこのの受諾に基きましては、防衛の力を増強するためにやることは当然でありまして、また事実いろいろな援助が来れば、それだけ防衛力は増強するものと思います。しかしそれの目的を、どういうふうに使うかということにつきましては、日本側で決定すべき問題であろうと思います。
  244. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は、たとえば今日の保安隊の志気の高揚という上からも、国民的な要請の見地からも、あるいは日米間の国際信義や、国際関係といつた政治上の観点からも、多分に今日の保安隊を自衛軍的な色彩のものに切りかえることが望ましいことではなかろうかと、かように考えるわけでありますが、それは日本がきめるというお話であります。もとより日本がきめるわけでありますが、しからば日本の政府といたしましては、そういう客観的な要請にこたえる、つまり、より自衛軍的な、国土防衛的な色彩を持つたものにして行くというような御意思でございましようか。
  245. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府としての見解は、まだきまつておりません。別に閣議でそういうことをきめたこともありませんし、何もきまつてないということが、正確なところであります。但し保安庁におきましては、そういういろいろの点を考慮に入れて、研究中だと了解しております。
  246. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 大臣は先般の委員会におきまして、戦力に至らない防衛力というものを持つことは、決して憲法の違反でないというふうにおつしやつたことを私は記憶いたしておりますが、それに間違いがなかつたならば、政府といたしましては、戦力に至らないところの保安隊を、どんどん強化して行くという方針にはかわりはなかろうと思います。従つて、あらゆる防衛の体制というものを強化して行くという方針であると、私は考えるわけですが、そうでございましようか。
  247. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府としましては、安全保障条約締結以来、防衛力の漸増ということは考慮いたしております。しかしそれは一歩々々戦力に近づける目的をもつてつているのでなくて、戦力に至らざる範囲においての防衛力の増強――これは経済的にも政治的にも、いろいろの考慮がいりましようが、とにかくそういう方針では進んでおります。
  248. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そこで戦力というものについて、この間から大分論議になりましたが、戦力の認定をする基準はどういうものか、あるいはだれがこの認定をするのかという問題であります。戦力の認定をする一つの条件といたしまして、私は軍備と申しますか、装備の程度によつて、これが戦力であるか、戦力でないかということをきめる一つの基準があろうと思います。従つて二十個師団を持てばあるいは航空機を持てばというような装備の程度によつて、戦力であるとか、戦力でないということを断定するというような話もありますが、私は今日の近代戦争、特に今日の新しい時代の特徴というものは、御承知のような集団防衛の体制です。その場合におきましては、政府の一部の人々もおつしやるように必ずしも日本みずからが原子兵器を持たなくても、この集団防衛の体制の一員として、共同の軍事行動をすることによつて、防衛軍としての目的を果すこともできるわけだから、従つて装備の程度そのものが、戦力なりやいなやを決定する基準とはならないと私は考えます。しからば私見によると、戦力なりやいなやということは、その装備の目的の差異、たとえば国内の治安に当るものは警察であり、対外的な防衛に当るものは軍隊ではなかろうか。これが今日の国際社会の通念ではなかろうかと、われわれ一般社会人は考えるわけですが、戦力の認定ということを、一体どういうところに基準を置いてお考えになりますか。また、だれが戦力なりやいなやという問題を認定するのか。そういう点を承りたい。
  249. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 憲法にいわゆる戦力というものの認定は、政府なり国民なりがいたすのであります。それの認定は、憲法の規定が、元来侵略戦争を防遏しようという趣旨に出ておりますから、その趣旨で、今まで政府の考えておりますのは、近代戦を有効的確に遂行し得る装備と、編成を持つておる総合的な力ということに、われわれは考えております。
  250. 上塚司

    上塚委員長 佐々木君、時間が来ました。
  251. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 すぐ終ります。そこで戦力の判定の問題でありますが、今日ある保安隊を、ないしは将来拡充されることのあるのであろうそのときの保安隊を、すでにこれは戦力の範疇に達したものであるということを、国会が総意をもつて意思表示をいたしたとする。これに対して政府は、いやそうではない、これは戦力ではないのだというような考えをもちまして、つまり、行政府と立法府の戦力に対する見解が、食い違つた場合におきましては、一体どういうふうになさるのか。さらに申し上げますならば、そういう場合においては、当然戦力を持つことを憲法が禁止しておるから、憲法を改正する以外に道がないというような御所存でありましようか。
  252. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国会がそういうふうに認めるというような――これは少しいろいろの仮定が入つておりますので、私から今答弁をしても意味はないと思いますが、もちろん政府としては、国会の見解は尊重するのは当然であります。しかしただいまの保安隊が戦力であるというふうには、政府委員は考えておらないのであります。また戦力に至らないように、常に配意をいたしております。その場合どうするか。それはその場合に善処するよりいたし方がないと思います。
  253. 上塚司

  254. 川崎秀二

    川崎委員 私は先ほど委員長の言われました通商航海条約、あるいは国際情勢という問題でなしに、本日基地問題で論議のありました際に、特に並木理事を通じて、日本の自主性喪失に関連する緊急の質問として、提起をしたいという申出をしておつたのであります。その点を十分に御了承の上で、委員会を運営せられんことを希望いたし、質問に入りたいと思います。  まず岡崎外務大臣に伺いますが、インターナシヨナル・ホテル・コーポレーシヨンなるものが、最近ハレス・ハイツの場所に国際ホテルを建設するということの仕事を進めておるようでありますが、あなたは官房長官時代、すなわち一九五一年、この問題につきまして、閣議決定をされた覚えがありますか。その後この問題は、主としてあなたが担当されて推進をせられて来ておるように私は伺つておりますが、現在進捗しておるところの概要なるものを承りたいのであります。
  255. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もその一記憶を持つております。今正確にそういう資料を持つておりませんが、私が官房長官のときに、ホテルを建設するために、アメリカ日本と双方から資本を出して、合弁でやるという計画がありまして、それが具体的になりますれば、パレス・ハイツと称せられるあそこのところを土地等の取得について便宜をはかるというのではないが、何かそういうような意味の閣議の決定を得まして、それを私は官房長官として取扱つたことを記憶しております。
  256. 川崎秀二

    川崎委員 非常に正直にお答えになりまして、まことに感謝をいたします。  そこで逐次御質問をいたしますが、その国際ホテル興業株式会社なるものは、あなたが官房長官として特に認可をせられた当時、閣議決定の当時は、わずかに三十六万円の資本をもつて設立され、中西伸次なる者と、パン・アメリカンの本社の会計の副支配人のアモス・ヒヤツトという男がこの問題について推進をしておつたのを、その程度ではどうもものにならぬ、何とかものにしようというので、あなたが仲介者になつて、白洲次郎並びに松本重治者等を動員してそしてこの国際ホテル建設計画を進めて、しこうして日米合弁会社になつたというような径路ではないのですか。
  257. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は、正直なところ、実際的な実務は一切やつておりません。従つてだれをここに入れるとかいうようなことには全然関係しておりません。ホテルの仕事でありますから、当時は運輸大臣が主として関係しておつたと記憶しております。
  258. 川崎秀二

    川崎委員 そこで問題は、このパレス・ハイツなるものの場所でありますが、これは御承知の通り、皇居がまる見えというところであります。今日は時代がかわつて何も不敬罪などというものはない。どんな高い建物を建てようがけつこうなことであるし、国際観光の上に資するというならわれわれはどこに建てようともいい。しかし何を好んで国民感情から見ても好ましくない場所にきめたのか。しかもここれはあなた方のあつせんによつて、昨年の八月に時価坪一万六千円で関東財務局から払下げの内示をされた事実がある。この事実は御承知でありますか。
  259. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一に、その場所が不適当ということは、私は考えておりませんで、場所はむしろ適当であろうと思つておりました。しかし皇居がまる見えという点がありまして、これは今の考えから言うとおかしいという議論もありましようけれども、国民の感情もありますので、その当時、たしか何階か覚えておりませんが、皇居のまる見えにならない程度の階数の制限を条件といたしたことを記憶しております。なお払下げ等の問題については、私は全然聞いておりません。
  260. 川崎秀二

    川崎委員 いくらあなたが詭弁を弄しても、これについて相当奔走した事実がありますが、それを今とやかく申しません。いろいろ材料はだんだんに出て来ますから、一問一答によつて国民が判断してくれると私は思います。  そこで、このわずかに三十六万円をもつて創立されたところの会社が、次第々々に水ぶくれになつて、これだけの大事業をしようという計画を見てみると、資本金の計画は、今日では建設費が一千二百万ドルということになつておる。日本の金では、それを三百六十倍して四十三億二千万円、それぐらいの数字になる。現在の時価からすれば四十五億、新丸ビルが三十七億で、日活国際会館が十八億ですから、これはもう問違いなく日本において最も豪華にして壮麗なる建物が建てられるわけであります。この事実は動かせない。しかも驚いたことには、株式は二千四百万ドルで、その内訳は日本側が一千二百万ドル、パン・アメリカン航空会社が一千二百万ドル、双方が出すことになつておる。借入金の方は九百六十万ドルという数字に上つておるが、この九百六十万ドルの内訳は、アメリカの輸出入銀行から出そうとするものが四百八十万ドル、開発銀行が四百八十万ドルです。この内容については大蔵委員会もどこも知らぬのです。しかもこの四百八十万ドルというものは、日本の金に換算して十七億二千八百万円という数字になる。これらのものに十七億二千八百万円を今日本開発銀行から出すことになれば、これはきわめて重大なことです。この間の修正案の問題でも開発銀行のささいな問題で相当輿論が巻き起つたにもかかわらず、しかもきはめて買弁的な、あの皇居のうしろへ持つてつて――初めは皇居の前に建てるということで相当問題になつた。ところが今度はそのうしろへ持つてつて東京中で一番よい場所かは知らないが、またまる見えになつてもかまわないという説であれば別だが、日本国民の感情上きわめて不適当なところに持つてつて、こういう計画をしておるという事実があるのでありますが、あなたは開発銀行から四百八十万ドルを出すということについて、承知しておられるかどうか。
  261. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 開発銀行も輸出入銀行も両方とも出すことになつておると承知しておりますが、しかしその額は私記憶しておりません。初めのときは、まだそういう正確な額まではさまつていなかつたのじやないかと思います。最近、アメリカの輸出入銀行は業務をだんだん縮小して行くような傾向にありまして、そういう金が出るか出ないか、はなはだ疑問のような状況のように見ております。一方、それが理由であるかどうかはわかりませんが、計画は遅々として進んでおらず、これは私の関係ではありませんが、これをどうするかということについては、どうも非常にむずかしくなつて来ておるのじやないかというような懸念を持つております。
  262. 川崎秀二

    川崎委員 半分ほど正直で、あとの方はどうだかはつきりわかりませんが、とにかくこの問題があつて、開発銀行から金が出るということについて承知しておられることは事実のようであります。しかし私の聞くところによると、承知しておるどころじやない。事実この問題に関連して、現在は澁澤敬三氏が、この会社の日本側の中心になつておるのだが、最初は中西伸次、それからそれに関連をして鈴木商店あるいは白洲次郎君等が中心であつたのが、どうも白洲次郎君はあまり評判がよくないのじやないかというようなところから、岡崎君が御奔走になつて、そこで小林、河上両氏を口説いて開発銀行から金を出させるように工作をしたというようにわれわれは聞いておるのであります。ところがその後小林氏は開銀総裁になり、河上氏は輸出入銀行の総裁に就任されたので、役員を辞任されたということになつておるわけであります。開発銀行から金を出すことも重大であります。こういうものに外資を導入するということも非常に重大なことです。もとよりわれわれはなるべ外資を導入したい。しかし外資はなるべく基本産業の開発等を通じて、日本の生産拡充に資するような方面へ導きたいというふうに考えておるのであつて日本をまるでアメリカの奴隷のようにするような、しかも皇居の横にこういうような豪華な建物を建てるために、外資を導入することに奔走するような吉田内閣の政策は、われわれは納得行かないのであります。しかし幸いにしてこの計画は、その所期したところが不純であつた点もあつたり、あるいはアメリカの輸出入銀行の外資があまり順調に運ばないということで頓挫しておるようでありますが、もう一つの原因がありませんか。この問題はむしろ現在の官僚機構、つまり外資委員会を構成しておるメンバーから非常な反対があつて、こういうような吉田、岡崎の政策というものはけしからぬというので、下級官僚が結束して反対をしておるという事実がある、それがために頓挫しておるというようにわれわれには思えるのであります。審議会が何回開かれたか御存じないかしりませんけれども、外資審議会なるものがこれに対して大体反対的傾向にあるということを外務大臣はお知りであるかどうか、その点を承りたいのであります。
  263. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ホテルの問題につきましては、われわれも外資の導入はできるだけ国内の産業の開発に役に立つようなものを希望するのは当然であります。しかしホテルなどもなかなかばかにならないのでありまして、貿易外収入としてツーリストの落す金というものは相当大きなものであります。これにつきましては、やはり外資が入つてりつぱなホテルができるということは、日本に旅客を誘致する上に非常に必要なことでありますから、私は原則的には賛成しておるのであります。そこでこの問題について私が河上、小林両氏を話をして引入れたというようなお話でありますが、その事実は全然ありません。おそらく私はその問題について河上、小林両氏に何か話したことは一ぺんもないと思います。全然関係しておりません。またそういうおぜん立てその他はこれは運輸大臣の所管でありまして、私は当時官房長官として関連しておつただけでありますが、その後官房長官をやめましてからは直接に何も関連がありません。当時の私が署名しましたものがありますから、それによつてときどき関連があるように聞かれたり何かしますけれども、実はその後の実情も知らないのであります。ごく最近になつアメリカの輸出入銀行の金はむずかしいのじやないかという話を聞いたのであります。その程度であつて、いわんや外資委員会等が、吉田、岡崎のやり方に反対しているとかなんとかいうことは、あるかどうか私にはわかりません。
  264. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁にからんでいろいろとお聞きしたいと思います。そうするとこの計画を進めておつたものはむろん民間側にあるわけですが、この中心の、たとえばこの会社を推進するときにあなたに話をしに来たのはだれですか。
  265. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その当時の運輸大臣だつたと記憶しております。
  266. 川崎秀二

    川崎委員 運輸大臣以外に、実際にこの問題を推進するために、やはり対外折衝の関係からいろいろあなたを訪問した者もあると思うのですが、それはだれですか。
  267. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういうことはないように記憶しております。
  268. 川崎秀二

    川崎委員 そういうことがないというならば、単に運輸大臣の話によつてこの問題を推進されたといつて間違いありませんか。
  269. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 前のことで突然言われましたからはつきりしないのですが、私の今の記憶では間違いありません。
  270. 川崎秀二

    川崎委員 それならば、外資審議会なるものは本年の三月十六日に審議会を開いておる。そしてその構成メンバーは大蔵次官、経済審議庁副長官、外務次官、通産次官あるいは日銀の副総裁、その他学識経験者があげられておるけれども、外資審議会になぜそれでは運輸関係の者が出て話をしなかつたか。これはしておらない。運輸大臣が推進をしたという事実ではなくて、むしろ中心はそれをはずれてあなたにあつたのじやないか。
  271. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はその外資委員会なるものが会議を開いたということも聞いておりません。
  272. 川崎秀二

    川崎委員 外資委員会は三月十六日と三月十七日に委員会を開いたところが、この借入金を特にアメリカのエキシブというのですか、エクスポート・アンド・インポート・バンクから借入れをすることは困難である、あるいはこれだけの外資をホテルのために入れるということは適当でないという考え方や、あるいは是期尚早論が大勢を支配をしたために、この問題は今日やや頓坐をしたような形になつておるのでありますが、われわれの聞知をしておるところによれば、この問題について一番熱心なのは吉田総理大臣とあなたである。それがために一昨年の閣議決定はすらすらと事が運んだ。その後になつ日本の内部事情あるいは輸出入銀行との関係等から頓坐を始めたのだというふうに聞いておるが、それで間違いありませんか。
  273. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 吉田総理大臣がどのくらい熱心であるかということは私は聞いておりません。しかし閣議の決定の当時にこれはけつこうであるというようなことであつたと思います。いずれにしても反対はなかつたのであります。私もけつこうであると思つておりましたが、自分が積極的にこれをとりまとめるようなことはいたしておりません。
  274. 川崎秀二

    川崎委員 しかし閣議決定は従来そういう簡単な、ただけつこうだからといつてこういうものに対して結論を与えるのですか。
  275. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 閣議決定の前には、官房長官が副長官等と相談いたしましていろいろの内容等について聞きます。主管大臣の意見も聞きます。そうして副長官から閣議においてその内容等を説明されまして、その上で決定するのであります。
  276. 川崎秀二

    川崎委員 特に先ほどの答弁に関連をして承りたいのでありますが、ホテルなどにも外資が入ることはいい、あるいは末の末ならよかろう、われわれも同意見であります。初めからこういうものでなしに、むしろ電力開発とかあるいはその他の基礎産業に外資が導入をされて、そうして日本の足らない部分を彼らの力をも借りて再興するということであるならば、われわれとしても反対すべき筋合いではない。しかるにこういう末の末の方が先に走つて、しかもあなたの答弁では完全なる日米合弁だと言うけれども、完全に日米合弁であつて、自主性が喪失されないと考えておりますか。これは相当な自主性喪失の材料があると思うが、あなたはそういうふうに確信を持つて言えますか。
  277. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私が官房長官当時は閣議決定を経ましたときの説明は、自主性喪失なんということは全然考えられないようなものであります。
  278. 川崎秀二

    川崎委員 そこであなたは官房長官を去られて後、これは対外折衝の問題ですから、決して外務省がタツチされない問題ではないと思う。むしろ官房長官として推進をして、その後外務大臣になつたのであるから、対外折衝の面等においては、約四十億円に当るところの一大ホテルができるということになつては、相当その後の情報も聞かれ、推進もされていると私は想像するのであります。しかし今まで言われて来たところの答弁をかりに尊重するにしても、あなたは自主性を喪失しておらないと言うけれども、運営の協定はどうですか。今日彼らとの間にとりかわされているところの運営の協定によると、このホテルは建設をされてから四年間はパン・アメリカンが一切の運営を委任されると書いてある。しかもこのパン・アメリカンの委任料は基本手数料が百室に対して年間五千ドルずつパン・アメリカンに払わなければならない。現在このホテルの計画の室数は五百三十四でありますから、約二万五千ドルずつ払うわけであります。それを三年間だというと手数料だけで十万ドルです。十万ドルという金はたいへんであります。手数料だけで十万ドルであつて、その企業の運営あるいはその他のことについては、このことから推して相当自主性を阻害されると思う。要するにこの計画は、あの皇居の横へ持つて来て一大高層ホテルをつくる、ホテルをつくるのはよろしいが、皇居がまる見えだということで国民感情を非常に害するということが一つと、もう一つは、アメリカでは有力なる会社であるかもしれないが、パン・アメリカンというものと提携をして――このパン・アメリカンと提携したところにも、今までのいろいろないきさつからして臭いところがある。御承知のごとく日本航空がわが国におけるただ一つの航空会社として国内航空をやり、将来は国際航空にも出ようとしたときに、白洲次郎君はパン・アメリカン会社と結託をして日本航空の独占性を害そうとしたこともあるし、国内の航空についても関連をしたことがある。その方がうまく行きそうもないと思うと、こういうところへ頭を出して岡崎君を使つた。この根源はあるいはあなた自身じやないかもわからない。白洲次郎君かもわからないけれども、とにかくこれにおどつたのはあなたであることは間違いない。あなたが官房長官の時代にすらすらと、この協定を結んで、相手方がこれはできるものだというような感じがあつたのは、一九五一年に四百万ドルの建設計画によつて閣議決定があつたということに端を発しておるのであります。これらは要するに今日の吉田、岡崎外交の非科学的な外交方針が、一つのホテルの問題にでも出ておる。しかしこのホテルは小さなホテルではない。日本の金にして四十億円という一番豪華なホテルが建設をされて、しかもそれが今さたやみになりそうなのは、幸い向う側の事情と、国内における外資審議会において猛烈な反対が起つたからこそ、かかる買弁的な政策というものがつぶれそうになつたのは非常にけつこうだけれども、その政策を推進して来たのは――これを決定をした以上は、あなたが官房長官時代のことであり、外務大臣として、相当推進されておるものとわれわれは判断をせざるを得ないのであります。これらの問題に対して、ことに私が最後に提示した、たとえばこれらの手数料の問題に対して、こういう運営協定で今日進められて、これに基いて外資審議会の許可を得ようとしておる。外資審議会の許可を得ようとして少くともそういう決定をしたことについてあなたはどう思われますか。
  279. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一の皇居がまる見えであるということについては、先ほど申しました通り、私が官房長官時代にその問題を取扱うときに特に条件を付して、何階であつたか忘れましたけれども、警視庁、それからどこでしたか、それらを建てた高さに比べて高くないものというので、何階かにこちらの高さも考えて制限して、皇居がまる見えにならないような制限を付しております。しかしそれはできるかどうか別問題であつて、その後私は官房長官をやめましてからはこの問題にはタツチしておりません。外務大臣となりましてからもこの問題についてあつせんもしくは品をきいたことはありません。またその協定なるものも知りません。今初めて伺うのですから、私はこれを知りません。
  280. 上塚司

    上塚委員長 川崎君に申し上げますが、まだありますか。
  281. 川崎秀二

    川崎委員 もうこれで終ります。  われわれはこの問題についてはさらに発言する機会もあろうかと思いますが、最後の方は、官房長官時代にこれを承認したことは知つている。しかし運営協定がどうなつておるか、その後審議会でどうなつておるか知らぬ。私は知らぬわけはないと思う。これだけの大きなものはいかに民間のことであるといいながら、外資導入については、四百八十万ドルというのは相当な金です。その金は外国からも来る、一方それに対して開発銀行から十七億二千万円出すという。そんなことは大蔵委員会でも今日までだれも知らない。そういうことになればきわめて重大な問題であつて、われわれとしてはこの問題についてさらに検討いたしたいと思いますけれども、本日は委員会で通商航海条約の審議もありますので、私の質問はこれをもつて終りますが、私はやはり一ホテルの問題だからといつて看過することはできない。どうも占領中以来の阿諛追従外交、特にアメリカには巻かれておればいいのだというような感賞が、この問題についてもあかになつて押し寄せていると思う。岡崎外交は場末の銭湯の十二時ごろの状況です。あかがだぶだぶ重なつて臭気ふんぷんとしている。そういう意味でもわれわれはどうしても政局上重大で判定をしなければならないという機会に迫られつつあるけれども、こういう問題までも今日惹起されていることを申し上げて、今後こういう問題については当然当委員会においてもお取上げになると思いますので、私の質問はこれをもつて終ります。
  282. 並木芳雄

    ○並木委員 今の川崎委員発言は、われわれ現在審議中の日米友好通商航海条約にも非常に関係がございます。私どもは先般来政府当局に対して、外資の導入は好ましいけれども、そのやり方いかんによつては、日本が保護国のような隷属国になつてしまうというような見地から、今日まで質問を続けて来ているのであります。そこで私は今のお話を聞いて、具体的なことで、岡崎外務大臣だけで答弁のできないところは、他の関係者にこの委員会に出て来てもらつて、そしてこの問題を究明したいと思いますので、そういうことの動機を提出するものであります。  こういう形で日米友好通商航海条約が締結されて日本の経済界を支配されて来るとたいへんなことになりますので……。     〔「採決々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  283. 上塚司

    上塚委員長 採決は適当のときにいたします。     〔「動議をどう取扱うのだ」「理事会を尊重せよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  284. 上塚司

    上塚委員長 静粛に願います。  あらためて宣言いたします。この問題は緊急の問題と考えませんから、適当の時期に採決いたします。(発言する者多し)先ほどの問題については、理事会を開いてあらためて決定の上宣言することにいたします。――中村高一君。
  285. 中村高一

    中村(高)委員 一つ外務大臣にお尋ねをいたしたいのであります。やや川崎君の問題に似たような問題でありますが、もと宮城の前に、濠端にあつたのだと思いますが、満州国大使館というのがありまして、これは康徳会館とかいう通称であつたそうであります、これが昨年三井不動産に売却をせられたそうであります、今日まだ国交も回復いたしておらぬようでありますが、満州国大使館が一体どういう経路で三井不動産に売却をせられたのか、外務省では御存じと思いますが、これが非常に国際的な問題を起しておるようでありますけれども、大臣は御存じでありますか。
  286. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の記憶ではあれは満州国の大使館ではなくして、満州国が買つたビルデングだと思つております。あるいは違つているかもしれません。アジア局長がいませんからよくわかりませんが、いずれにしても満州国が持つておつた建物でありまして、それを終戦前に満州国関係の人に譲り渡したのでありまして、あのビルの権利を持つておるその譲り渡された人々が、今度三井不動産でありますか、どこかへ売り渡したというふうに了解しております。
  287. 中村高一

    中村(高)委員 これは中国政府からも講和の発効前に総司令部に向つて、どうも中国の財産が三井不動産に、知らないうちに売却せられておるからといつて、資料の提出と調査を依頼した結果、総司令部からは終戦後文書を偽造したものだと認めるという判定をされて通告が行つておるそうでありまして、名儀変更をするときに、東京都庁にも名儀変更について申請をしたそうでありますが、東京都庁ではこういう不明な財産に対していいとも悪いとも言えぬといつて許さなかつたものを、外務省でよろしいということで、三井不動産に名儀がかわつたというのであります。この点についても局長がおいでにならなければわかりませんですか。
  288. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 非常にこまかいことはわかりませんが、大体のことは私も知つております。外務省としてはむしろ三井不動産に対して、このビルデイングは多少係争問題にもなる可能性があるから、手続を待つてくれという話を申し入れたやに記憶しております。しかし三井不動産の方では、これはもう正式な商取引の結果であるというので、外務省の意向は承知はいたしておりますが、それを聞かずに手続を進めてしまつたのであります。
  289. 中村高一

    中村(高)委員 外務省としてはこういう国際的な関係のある建物などは、日本で売買されるということについて慎重にせられるということは、私は当然だと思うのでありますが、私のところに言つて来ておりものは、あべこべのようなことを言つておりますからして、この点については国際関係もありまして、ひとつ十分な御調査を願つて、この問題については別の機会でけつこうでありますから、御回答願いたいと思うのであります。  それから国際関係につきまして二、三簡単に質問をいたして、大臣の御所見を承りたいと思うのであります。幸いにいたしまして朝鮮休戦が行われるということになりまして、われわれも非常な喜びを持つておるのであります。しかし人によりますと、この朝鮮休戦に関しましては、いろいろ批判的な批評をする者もありますし、今後の政治会談というようなものの非常な困難性を伝えておる者もあるのであります。これに対しまして外務省としても一応の見通しはなければならぬと思うのでありますが、外務大臣の所見を承るとともに、日本と韓との間におきまして、日韓国の会談を今までやつておつたものが中絶をいたしておるようでありますが、休戦せられますならば、この日韓の会談は再開をせられますものか、それとも政治会談が進行してからでなければやらないものか、これをひとつお尋ねいたしたいのであります。
  290. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 朝鮮休戦問題につきましては、もちろん政治会議の議題がいろいろむずかしいのでありますから、休戦はできましたけれども、全体の朝鮮問題の解決がうまくできるかどうかは、これは将来のことになります。私としては、朝鮮の問題は朝鮮の人々自体によつて解決されるということが一番適当であろうと思つておるのでありまして、その線で関係国にもぜひ話をいたし、あまり外からの干渉なくして、朝鮮の問題として解決する、もしそれを監視する等の必要があれば、これは国連がやるのであつて、どの一国がやるということでなしにやるのが適当であろうと思つております。  なお休戦ができますと、とにかく戦闘がやむのでありますから、復興の速度が非常に早くのると思いますので、その復興に関する資材等につきましては、隣国のよしみをもつてこちらでももうけを度外視しまして、できるだけ協力をいたしたいと考えております。  それからその次の御質問の日韓の会談については、最近におきましてあまり東京が暑くなつたので、八月一ぱい休んで、九月からまた始めようじやないかという話があります。そこで私は夏休みということもさしつかえないと思うが、会談が中絶をしたような印象を与えるのはおもしろくないから、もし九月から始めるというならば、九月の何日から始めるというようにはつきりと日を限つて、再開の日をちやんときめてから夏休みに入るのがよいだろう、こういうことでやつております。
  291. 中村高一

    中村(高)委員 従来継続しておりました日韓の会談がしばらく休みになつていたというのは、何かそこに両者の間で協定ができないむずかしい問題でもあつたのですか、それとも何か急を要する問題がなかつたので、延期されておるのでありますか。
  292. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはできるだけ早く会談を終局に持つて行く必要があるのでありまして、決してこれは急を要しないというわけじやありません。しかしながら昨年の正月でありましたか、一昨年の暮れでありましたか、始めておりまして、例の請求権の問題とか、あるいは漁業に関連をする李承晩ラインの問題とか、これはなかなか複雑でむずかしいのであります。従つて双方の話合いが今度は理論を離れて実際的にいろいろの面を検討して来まして、一応各方面の検討は終つたのでありますから、この際じつくり夏休みを利用して考えて九月に再開するということも、これは一つのやり方であろうと思つておるのでありまして、急がないわけではありませんが、かえつて急がばまわれということもありますから、夏休みをやるのもあえて反対はしないという態度でおります。
  293. 中村高一

    中村(高)委員 次は行政協定の改訂の問題であります。NATOの協定も批准をせられたように聞いておるのでありますが、われわれは行政協定の改訂を、一日も早くなすべきものだという要請をいたしておるのであります。行政協定の改訂はいつ再開せられるのでありましようか。
  294. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 NATOの協定は批准ができたようであります。従いましてアメリカの政府から、こちらの大使館に訓令が来ることと思います。行政協定によりますと、NATOの協定がアメリカにおいて発効したときに、すみやかに改訂すると書いてありますが、このNATOの協定が発効するのは、批准書を四箇国が寄託してから三十日たつてのことでありますから、まだ約一月ちよつとあるわけであります。そこでその間に、アメリカの訓令の来次第予備交渉を開始いたしまして、できるだけ早く、もしできればNATOの協定が効力を発生するときに行政協定も改訂いたしたい、こういうつもりで今準備をいたしております。
  295. 中村高一

    中村(高)委員 近いうちに行政協定の改訂に入られるのでありますが、裁判権の問題などにつきましては、おそらくさした問題はないと思うのでありますが、一番問題になつております日本の軍事施設区域の問題であります。きようもこの委員会で午前中かかつて行われたのでありますけれども、今後日本の国内にあります軍事施設、特に一番議論をされておりますのは、アメリカ日本基地使用するといたしまして、現在行われておるような、ほとんど日本の全国各地に基地もしくは米軍の施設をかくのごとき狭い日本に、数百というような基地を持つことに対して、政府は一体これに対してどんな交渉をしておるのか。おそらく行政協定の改訂につきましては、そういうことについて日本発言権もあるはずであります。これほど日本の国内で問題を起して、外務大臣も相当困つておるはずでありますが、一体この問題についてはどのように対処するお考えでありますか。
  296. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ軍に提供します施設及び区域というものは、必要の最小限度にとどめることは当然であります。そこで、従来の日本の軍隊がありましたときのやり方と、アメリカ側のやり方とは違つているところもありますし、また従来と異なつて、飛行機の速力が非常に早くなつたとか、たまの距離が非常に遠くに飛ぶようになつたとか、いろいろなことで、今まで日本軍として必要としなかつたようなものを必要とする向きもあるのであります。その間において、われわれもいろいろ苦心しておりますが、日本の防衛をいたすために必要最小限度の施設及び区域は、提供すべきものであると政府は考えておりまして、ただその最小限度はどこで基準をきめるかということについては、これは国内にもいろいろ議論がありましよう。しかし行政協定につきましては、これは一般的にただ必要なるものを提供するということだけでありまして、この行政協定をいくらかえましても、必要なものは提供するということにかわりがなければ、これは実際上はかわりがないのでありまして、おもにこれは実際上の取扱いになるのであります。政府としましては、いらないものはどんどん返還を求めまして、必要の最小限度にする。またただいままだ決定をしておりません三、四の施設及び区域等がありますが、それを除きますれば、今後さらに大きなものを必要とするということはなくて、これで大体一段落と考えております。
  297. 上塚司

    上塚委員長 中村君、時間であります。
  298. 中村高一

    中村(高)委員 整理をして減少させるということを、むろんわれわれも期待しておるのでありますが、最近は新しいものがふえているのです。新しく要求をして来るというようなものに対しては、必要があるならば何ぼでも応じなければならぬというような、そういう外交折衝というものは、はなはだ弱い行き方でありまして、日本のようなこういう狭いところを、どこでも使うというような要求をされました場合には、これに応じなければならぬというようなことは、われわれにはとうてい考えられないのでありまして、叫んでいる声を聞くと、もう早くやめてもらいたいというような深刻な要求をいたしておるのでありますが、一体政府は、この行政協定の中に区域及び施設は提供しなければならぬと書いてありますけれども、これをもう少し、たとえば日本との間に同意を求めて、そして日本意見を聞いて、あるいはわれわれの方で改正案を出しておりますが、関係町村あるいは関係行政機関などの同意を得て行うというような、そういう順序をとるというようなことにすれば、よほど基地をつくる上などにおいても緩和されると思うのであります。今度は行政協定改正のまつたく絶好の機会でありますけれども、この問題については、もう少し強硬な政府の主張を出す御意思はないのでありますか。
  299. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはわれわれからいいますと、アメリカ軍に日本にいてもらつて、この国を守つてもらうという根本観念があるのであつてアメリカがここにがんばつているから、これを返すことができないから、できるだけ少い地域を使わしてここにいさせるのだ、こういう意味じやないのであります。従つて、ただここにアメリカ軍がいればいいということなら、これはほつておいてもいいかもしれませんけれども、いざというときに日本を親身になつて守つてもらうというためには、そのときにものの役に立たないような軍隊であつては、これは意味をなさないのであります。従つてわれわれは必要なものは提供しているのでありますが、しかしそれはこちら側としても、内閣の閣議において決定しなければ提供しないのであつてアメリカの言うものを全部提供しているという事実はありません。現に、ここにちよつと資料はありませんが、幾つもアメリカの要求を断つていることもあるのであります。要するに必要最小限度にとどめるという方針でやつております。
  300. 上塚司

    上塚委員長 中村君、まだありますか。
  301. 中村高一

    中村(高)委員 もう一つ先日行政協定に関係しまして、労務管理について質問をいたしておいたのですが、係の人がおらぬのでわからなかつたのでありますけれども、米軍の基地に働いております労働者の労務基本契約の改訂の折衝を、今いたしておるようでありますが、これに対してわれわれも資料をもらいまして見ますと、まつたく占領中の労務行政と同じような条文が協定の条文の中に入つておりまして、一万的に、好ましからざる人間は首を切れるとか、あるいは保安のために必要であるとすれば首を切れるとか、労働右が日本の法律で保障をされておりますところの基本の権利というようなものさえまつたく無視される、あるいは戦場によつてはストライキを禁止するとか、ほとんど占領中と同じような米軍の原案が出ておるようでありますが、これに対しては、行政協定の趣旨からいたしましても、あるいは講和条約の趣旨からいたしましても、日本の労働者が、日本の労働三法によつて保障されておりますところの権利を蹂躙するような基本契約を示して来るということさえ、われわれは、アメリカはきわめて不当だと思うのであります。ああいう労働組合法をつくることにいろいろの指示をしたアメリカが、日本の労働組合に対して非常に苛酷な条件をもつて臨んで来ているというのでありますが、これに対して外務大臣としては、どういうお考えで折衝をしようというのか、その決意を伺いたいのであります。
  302. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 労務契約等は、実は外務大臣の所管ではありませんで、特別調達庁が所管をいたしておりますが、私の見るところでは、労働三法等日本の法律を守るという規定と同時に、アメリカ軍の機密保持という規定とのぶつかるところが出て来るために、むずかしい問題が出て来ておると考えております。そこでこれも行政協定の改訂等、表面のことでは実は間に合いませんので、実際上の取扱いにおいて、人事条項その他を適当に改正することによつて行われるのであつて、われわれは特別調達庁の考え方に同感でありますので、できるだけ合同委員会等を通じまして、特別調達庁の意見でまとまるように努力いたしたいと考えております。
  303. 上塚司

    上塚委員長 朝鮮休戦問題について、岡崎外務大臣より発言がありますから、これを許します。
  304. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 朝鮮休戦協定がいよいよ調印をされましたので一これはわれわれとしても隣国のことでありますから、非常にけつこうなことだと考えております。そこで、それじやこれで全部ものは解決したかというと、先ほども申したように、そうでなくして、今後の重点は政治会議にかかわると思つております。政治会議につきましては、ただいまいかなる国かそのメンバーになるかということは、まだきまつておりませんが、大体において、朝鮮の戦闘に従事したおもなる国の代表者を入れるというような案に向つておるようであります。ただ日本としましては隣の国でもありますし、今後もいろいろの面で提携をし、協力をする建前にありますから、この間にあつて日本に関連するような事項がなきにしもあらず。また全然日本関係しなくとも、朝鮮の問題は日本に当然関連のあるものでありますから、できるだけ日本の意向に関係国に反映いたすように努力をするつもりでおります。そして政治会議においていろいろの議題が取上げられることと思いますが、朝鮮の問題に関係しましては、私どもは、これは朝鮮の人々にまかされるのが至当である、できるだけそういう方向でものが解決するようにいたしたいと考えておりますが、もし何かの援助なりあるいは仲介なりが必要だとすれば、これは国際連合がいたすのが適当であろう、こう思つておりまして、特定の一国なり二国なりが出て来て、それに仲介の労をとるというようなことは、なるべくしない方がよかろうと考えております。さらに国連にいたしましても、アメリカにいたしましても、主としてこれは南鮮の復興でありますが、朝鮮の復興に対して、相当の金額を出すようでありますが、この資材等は日本に求められる場合も多いと思いますので、これはできるだけ協力をいたして行きたい、こう思つております。  要すると、われわれとしては、休戦がなりました今日、隣国の経済開発、また戦災の復興ということについては、隣の国でありますから、特によその国よりもさらに奮発してこれに協力いたそう、こういうつもりでおります。
  305. 上塚司

    上塚委員長 通商航海条約質問があります。(発言する者あり)もうすでに数日前から懸案になつております。ただいまの外相の発言について関連質問を許しておれば、限りがないので、これは次の機会に譲るとして、本日は友好条約に入りたいと思います。     〔「今の言明に関連して……」と呼び、その他発言する者多し〕
  306. 上塚司

    上塚委員長 この友好条約という重要なる問題があるのですから、委員諸君の良識に訴えて、これに対する質問に移つてもらいたい。関連質問をやつたら数限りがない。     〔「二、三点だから……」と呼び、その他発言する者多し〕
  307. 上塚司

    上塚委員長 それでは、最も簡単に並木芳雄君。
  308. 並木芳雄

    ○並木委員 最も簡単にいたします。今の、日本意見関係各国に反映したいということは、まことにけつこうで、国際連合協力の線で、今度の朝鮮動乱には日本は大いに役割を果したのですから、この政治会議には日本から代表を送るべきだ、参加すべきだ、このくらいに私は考えておつたのですが、代表あるいはオブザーヴアーを送る道が開かれないかどうか、まずそれをお尋ねいたします。
  309. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この点はまだ開かれておりませんから、何とも申し上げられません。
  310. 並木芳雄

    ○並木委員 もし開かれたら、そう願いたい。もし日本が参加できなかつた場合に、こちらの意向を関係国に反映するという方法は、どういう方法をもつて反映されますか。
  311. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、日本政府なり外務大臣なりの意向を関係各国のしかるべき筋に伝える場合もありましようし、あるいはこういう国会なり新聞なりによつて日本の態度を表明する場合もありましよう。いろいろありましようと思いますが、できるだけそういういろいろな方法で日本の考え方を反映いたしたいと考えております。
  312. 並木芳雄

    ○並木委員 政治会議で問題になる大きなことは、中共の承認、あるいは中共の国連加盟の問題であろうと思います。この点については、日本としても独立したのですから、外務大臣は独自の見解をお持ちであろうと思うのです。今後中共の国連加盟あるいは中共承認という問題が出たときに、日本政府としてはどういう態度をもつてこれに臨まれるつもりであるか。先ほども日華平和条約に関する議定書に対する論議が行われた際に、その問題が出たのでございますが、大臣の所見を伺つておきたいと思います。
  313. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本はまだ国連に加盟しておりませんから、国連加盟の問題について意見を述べるのは、私はちよつとどうかと考えます。しかしこれだけのことは申し上げ得ると思います。それは、日本としては、実力の問題はいろいろありましようが一とにかく二つの政権が中国に対する主権を争つておるのが実情であります。その中にありまして、日本は台湾の国民政府と友好条約を結びまして、友好関係に入つておる、これも事実であります。従いまして、国際的な道義の上から申しましても、国民政府の立場をそこなうようなことはいたしたくないと考えております。他方しかしながら、中国四億の国民に対しましては、従来の伝統的な親善感情を持つておるのは当然でありますから、でき得る限り中国の国民との間の理解を深めるように将来はいたしたいと、これまた同様に考えております。
  314. 和田博雄

    和田委員 私はどうも委員長の処置が非常に不満です。日米通商航海条約質問をしているときに、あなたは三十分だとこう言つた。一時間の持時間があるのです。しかしあとの議事があると思つたから、私はおとなしくやめた。しかし国際情勢の買問の通告は、私は前から出している。それをダブるからといつてつてにあなたは省かれている。そして私に質問の時間を与えない。それで聞いておれば関連質問というので今並木君には発言を許している。こういうやり方は僕はまずいと思う。やはりちやんと質問の通告をしている者には許して、そして質問を進行して行つた方が私はいいと思うのです。ことに国際情勢についてもそう私はたくさんは聞こうとは思わない。ただ一・二点私が明らかにしておきたいと思うことを聞きたいと思つている。ことに通商航海条約の場合にはあなたは国際情勢に関することだからということで、私が少し発言をすれば、あなたは押えるようなことを発言せられている。私は日米通商航海条約プロパーの問題についてお聞きしているのですから、発言を許していただきたい。
  315. 上塚司

    上塚委員長 それでは和田博雄君。
  316. 和田博雄

    和田委員 私はただ一点だけ外務大臣にお尋ねしたいと思うのですが、それは例の五百十一条の義務に関する点であります。その点についてまだ交渉中であるからということで、明確なお答えはされておりませんが、とにかく五百十一条の軍事義務を日本が負うことは確かだ。そのときのあなたとアリソンとの間の交換文書では、とにかく日本の負うところの軍事義務というものは、日米安全保障条約にきめた義務以上のものではないということを言つておられる。しかしそれはただあなたとアリソンとの間の交換文書にすぎない。これはやはり今度結ぶ相互安全保障協定ですか、その中にはつきりと書くのでなければ、私はその点については何らの保証がないと言つていいと思うのであります。その点は書くのかどうかということ。  それからもう一つ問題になつているのは、あなたが戦力に至らないところの、いわゆる保安隊ですか、自衛軍ですか、名前はどうでもいいがと言われる問題であります。これはやはりあなたが限界を示すのでなければ、いつまでたつたつていたちごつこです。そして事実は、どんどん進んで行けば行くほど憲法は蹂躪されて行く。言葉の上でどんなにごまかしても、実質はそうなれば蹂躪されて来るわけです。そこで戦力に至らない保安隊というものがどんなものであるということをもつと積極的に――一昨日の有田委員との間の議論では、侵略のできるような戦力は持たない、こういうことを言われておりますが、これでは内容は何ら規定されておりません。今一番必要なのは、戦力に至らざる保安隊、あるいは自衛隊ですか、そういうものの限界は一体具体的にはどういうものであるかということを積極的に規定することが、私は憲法改正の問題についても事態を明白にすることだろうと思うのであります。そういう点について、もつとはつきりした外務大臣のお答えをお願いいたしたいと思います。
  317. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一の相互安全保障法五百十一条(a)項の(三)の軍事義務につきましては、私の方で質問しましたものには、アメリカ政府の正式の見解を示してもらいたい、こういう質問をいたしております。先方の返事は、アメリカ政府の訓令に基いて回答をする、こういうことになつておりまして、私とアリソン大使の私的の手紙のやりとりじやないのであります。これは公式のアメリカ政府の見解であり、従つてそのようにとつて一向さしつかえないものだと考えております。これをどういう形で入れるか、実はこれでもう私はアメリカ政府の考えがはつきりしている、これはアメリカ日本との間の協定でありますから、これに対するアメリカ政府の見解、日本政府の見解がはつきり合致しておれば、これでもう十分とは考えますが、この点については今念のためいろいろ検討いたしておりまして、いかなる形で、いかなる表現を用いて、入れるか入れないか、こういう点は今後十分に折衝いたしまして、心配のないようにいたしたい、こう考えております。  なお保安隊についての戦力の問題でありますが、これも実際なかなかむずかしい問題でありまして、御承知かと思いますが、法学協会で日本の憲法学者のオーソリテイを集めて、日本の憲法の註釈をいたしている。あの国内では一番権威のある憲法解釈といわれております本を見ましても、戦力の限界を示すことは非常に困難である、ただし現在の兵備、軍備等の実情から見て、それは相当高度のものであろう、こういうふうに書いておるのであります。戦力の限界をはつきり示せとおつしやいましても、これは憲法学者もすでにこの限界は示すのが非常にむずかしいのだということを一致して言つておるのでありまして、政府としても、これでもでき得る限り限界を正確に示そうと努力をしたつもりでおるのであります。
  318. 和田博雄

    和田委員 政府は戦力の問題になつて来ると、近代戦を有効適切に遂行し得る能力とか、いろいろなことを言い、しかもその内容は社会通念に基いてきめるのだと言つて、いつも逃げられるのです。言葉の上で法律の条文を解釈したりするときは、それで逃げてもその場は逃げられると私は思います。しかし今問題になつているのは、具体的に日本がMSAの援助を受けたときに、あの安全保障条約の上に一応期待されている自衛軍というか、自衛力を漸増して行かなければならぬ、これはやはり義務になるだろうと思うのです。そういうときに政府は戦力ではなしにこれをやつて行くのだ、憲法を改正せずにこれをやつて行くのだという主張をされる以上は、やはり大体この程度だ、今さしあたつては人員をふやさないとか、ただ装備の精鋭を期するのだと言われるだけでは、私はやはり国民は納得しないと思います。ですからあなたの発言をめぐつてやれ改進党に近づいたとか、どうだとかいう問題が起つて来ると思うのですが、その点をもつとはつきり具体化して――防衛計画を立てなければいけない事態になつて来れば、まずまずそういうことが必要になつて来るのであつて、その点については政府としてぼくらははつきりしたものを出されてしかるべきだと思う。  それから今のアリソンとあなたとの間の交換文書は、訓令に従つての公的なものだということは、それはそうだと思います。しかし私は条約というか、MSAの協定ですが、協定を結ばれる以上は、やはりそこにはつきりとその面を書いておかなければ、あとになつていろいろなトラブルが起つて来るのではないかと思う。議定書とかなんとかいう形でそういうものを協定と一緒にやられるのかどうか、その点はくどいようですが、もう一度聞いておきたいと思うのであります。
  319. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一の点につきましては、これは実際できない相談だと私は思うのです。和田君もその点は御承知だと思うのであります。たとえばか弱に議論して、百万の陸兵と、二十万トンの海軍と、二千機の飛行機をもつて戦力だとこうかりに政府がきめたとしても、納得するかどうかは別として、それじや九十九万九千九百九十九人だつたら戦力かということになつて来るのです。この限界は示せないのが当然だと思います。だんだん一人ずつ減らして行つたら、いつになつたら戦力でないところに行くのかという議論になつて来るのでありますから、これはやはり社会通念を見ざるを得ないと思うのであります。なぜ社会通念を見なければならないかというと、日本は侵略戦争を行うことを防ぐために、自衛の名前をつけても戦力を持つことを禁じておる、これが憲法の趣旨だと思います。従いまして、侵略戦争を行い得るような状況というのは、また日本だけの問題じや解決しない、相手方の軍備等も見なければならない、どれだけあれば侵略戦争を行えるのだということになつて来ますから、相対的のものになるわけでありまして、これを何万人なら戦力で、何万人以下は戦力でないというふうにきめることは、私は無理だと思います。  なお(a)項の(三)にある軍事義務につきましては、お話のような点は十分考慮しておりまして、これはどういう形になるか知りませんけれども、この点ははつきりするつもりでおります。
  320. 和田博雄

    和田委員 初めの点ですが、戦力をきめるのは無理だとおつしやいますが、それは学者や傍観者の態度なら、あなたの言つたように非常に分析的に考えていいと思います。しかし政府が社会通念といつて、実際上今問題になつているのはどの程度のものを置くのかということなのです。そうすればやはりあなた方として近代戦を何とかというような文句を使う以上は、やはり政府としてはこれだけのものだということがあつて初めてぼくは政治になるのだと思うのです。ですからその点で私たちとしては憲法の条章がある、だから憲法の条章というものに触れないように政府としては自衛力を漸増して行つているのだ、こういうことを言つておられる母上は、いつまでたつてもどこまで行つたらという限界は残つて来るのです。これをはつきりさせない限りは、政府としてはどうしてもごまかしだと言われてもしかたがないのです。りくつの上でも感情の上でも納得が行かない。だから自由党が再軍備反対だ、改進党のように再軍備をやるというわけじやない、憲法を改正しないのだという立場に立たれる以上は、なおさらこの程度は戦力でないということをはつきりさせて行くのが政治だと思うのです。その点は私は岡崎さんは頭がいいから十分承知の上で答弁をされているのだと思う。その点は表面はかわりますけれども、本質はかわらない、その点を私はやはりもう少しはつきり規定をされたらいいのではないかということなのであります。
  321. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話の点はよくわかりますが、そこで政府としては戦力になるかならないか、あぶなつかしいところまでは持つて行くつもりはないのであります。そうすれば議論になるのであります。今の十一万とか、将来ふえることもありましようけれども、しかしかりによくいわれますように、十何万になるとしましても、今の装備と今の輸送力その他から見まして、これで侵略戦争を遂行するに足る力とは考えられないのであります。従つて安全圏内でずつと行くつもりであります。危険なところに持つて行くという気持は政府としてはないのであります。
  322. 和田博雄

    和田委員 これは五分や十分ではきまりませんからこれ以上質問はよしますが、しかしやはり集団体制のもとにおける日本なのですから、MSAというものを受ける以上は、何といつても集団防衛体制の中の一つの輪になるわけです。そうなつて来れば、あなたの言われるように、それ自体は非常に小さなものであつても、やはり集団の義務を持つて外国へ出て行けば、それは自衛の名においてやられるかもしれぬが、侵略の戦争ということもあり得るのです。そういう点から逃げれば逃げるほど、はつきり言わなければ言わないほど、いろいろな疑問が出で来るわけです。しかも一方ではMSAとかいうようなはつきりした客観的な内容を持つた一つの援助体制があるわけなのですから、そういう点でぼくは政府がほんとうに責任を持つて、安全保障という問題を考えておる以上は、その点だけは何といつてもはつきりしておかなければいかぬということを申し上げておいて、時間がないから私はよします。
  323. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど岡崎外務大臣は朝鮮休戦の問題についての御所見を述べられましたが、一点お伺いいたしたいことは、朝鮮に行つておりました国連軍が、休戦につれて日本に多数入つて来るというようなことが考えられないかどうか、そうしてまたそれに対してもしも来られるとするならば、大体どのくらいという見通しをつけていられるか、そしてまたそれに対する受入れ態勢がおありになるかどうか、その点を承りたいと思います。
  324. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今国連側に提供しております施設というのは主として呉であります。それからアメリカ側には御承知のように方々施設区域があります。これがいずれも全部満員になつておるというわけではありません。かなりの余裕のあるところもあります。事実国連側の施設はあまり余裕があるほど大きくありませんが、アメリカ側の施設の中には余裕のあるものもありますから、これに収容できる範囲では私は来てもさしつかえないと思つております。またこれは国連なりアメリカ側に協力するという意味で、現状の施設を拡張しないでまかなえる程度には来てもさしつかえないと思つておりますが、朝鮮の軍隊がこちらへもどつて来るがゆえに、そのため施設を拡張するというようなことはやる必要がないと考えております。
  325. 戸叶里子

    戸叶委員 日本と国連軍との協定がまだ結ばれておりませんけれども、そういういろいろな問題が起きた場合については、どういうふうな協定によつて解決しようとされるのでしようか。
  326. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今まで意見が合いませんので、日本におきましては日本なりの解釈で、今まで何か問題が起ると処置をして来たわけであります。今後休戦会談の後の模様によりまして、国連軍が日本から全部撤退してしまうという事態が起りますれば、協定は必要なくして善後措置だけが必要になるわけであります。しかし多少でもしばらくの間残るということになりますれば、協定が必要になつて来ますが、これはNATOの協定が効力を発生するようになりますれば、問題は刑事裁判権が主でありますから、私は解決して協定が結べるものと思つております。ただいまそのつもりで準備をいたしております。
  327. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一度伺つておきます。先ほどの岡崎さんのお話の中に、朝鮮のことに関しては、日本としては朝鮮の人にまかしておくべきだ、援助なり仲介は国連がするだろうと思う、国連やアメリカも、主として南鮮側だが、その南鮮側の復興などにはいろいろ協力をする、日本もそういうような場合には、その復興に要する資材を求められたときにはそれに協力を惜しまない、こういうふうなことをおつしやいましたが、それではもしも北鮮の方からそういう協力を求められた場合には、日本としてはこれをやはりお受けになりますか。
  328. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはその事態によりまして、具体的に問題が起つたときでなければ判断できませんけれども、今までは国連等も北鮮に向つて援助の手が延びなかつたのは、戦争が行われておつたということが主として原因でありまして、たとえば東独のごとき暴動が起つておる場合も、倉糧の不足が原因であるとすれば、アメリカから倉糧の応援をするということもやつておるのでありますから、これは人道的立場でございますが、いろいろの必要からして北鮮にも必要となる場合には、これは休戦ができた上のことでありますけれども、具体的にいたし得ることと思つております。
  329. 並木芳雄

    ○並木委員 さつきの和田さんの質問なのですけれども、あれはわれわれも聞きたいところだつたのです。大臣は一昨日、外へ出て行くようなものになるとこれは戦力になるだろうということと、それからさらに最後のところで池田委員質問に答えて、大体東南アジア諸国の持つているくらいの兵力になると、これは日本の憲法にいう戦力になるのではながろうかというような答弁をされたと思います。御記憶だと思うのです。私はあれを聞いて、そこまで標準が出て来ればけつこうだと思う。あれは大臣のかなり権威ある、そして思慮の上なされた答弁と思いますけれども、大体それを標準としてよろしゆうございますか。もしよろしければ、これは一昨日条約局長に頼んでおいたのですが、東南アジア諸国の持つている兵力で最高と最低のものを示してもらいたい、こういうふうに頼んでおきましたから、あとで局長からその点答弁願いたい。
  330. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私の言つたことを十分に御理解がなかつたか、私の言い方が悪かつたかどつちかでありますが、私の趣旨は、東南アジアの諸国を脅威するような力があれば、つまり外へ出て行つて脅威するような力はこれは戦力と考えなければならぬ、こういう趣旨であります。ただそうすると今度はたくさんあるものもある、小さいものもある、どうするのだ、こう言いますが、これは現在ではこう考えておるのでありまして、朝鮮の事態でもおわかりになりますように、ある国がよその国を侵略するというような事態になりますれば、今の集団的に世界の平和を守ろうという国際観念からいいますと、これはよその国が黙つているはずはないのであります。朝鮮のようによその多くの国が来て、これを助けるようになつて参ります。従いまして相当高度のものがなければ、そういう侵略行為などというものはできないのであります。従つて先ほど和田君に申し上げたように、法学協会の編纂した書物に出ておる憲法学者の意見でも、戦力というものは相当高度のものであろう、しかし正確には言えない、こういうのが私は正当な考え方だと思います。
  331. 下田武三

    ○下田政府委員 まことに申訳ございませんが、本日資料が間に合いませんで明日御提出いたしたいと思います。
  332. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 和田委員の最後の質問に関連するのでありますが、これはたびたび触れた問題でありますけれども、岡崎外務大臣は日本保安隊は現在戦力ではないし、今後アメリカから援助を受けて増強されたにしても、なかなか戦力というところまで行かぬというお話であります。かりにその御意見をわれわれ了承するとしましても、自由世界全体の集団安全保障の体制というものを考えた場合に、そしてそのことは、安保条約においても日本承認していることでありますが、自由世界全体の安全保障、そうするとその安全保障のための実力である戦力ということが考えられるわけで、その場合は何といつてアメリカの戦力を中核として、自由世界に属する諸国が身分相応、国力相応の力を出して協力するわけであります。だから日本の保安隊がそれ自身戦力でなくとも、自由世界の総合された戦力を構成する要素になるということは、これは間違いない。このことはひとつはつきり外務大臣の御意見を伺いたいと思うのです。私はそう考えております。それで少しもおかしくないと思つておりますが、それでよろしゆうございますか。
  333. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 自由国全体の安全保障の措置というようなものはできておりません。従いましてこれを前提としての御議論ならば、具体的なものになりませんが、しかしそういういろいろな考え方は省きまして、憲法の解釈はそんな条件がついておるのじやないのであります。日本が戦力を持つべからずということになつておるのでありますから、その標準ではつきりと日本は戦力を持たない、こういうことで進むのが一番正しいと考えております。ほかにいろいろの条件をつけて考えておるのは、憲法の趣旨に違うと考えております。
  334. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はそういうな形式上の憲法論というものには興味を持たないが、具体的に申しますと、日本に対してソ連か中共か知らぬが侵略を加えて来たとする。その場合に保安隊の実力かまだ戦力に達していないとする。その場合には、安保条約の建前、MSAの援助を受けられる立場から見ましても、これはアメリカが駐留している軍隊の力によりあるいはまたさらに増援軍を送つて、そうして日本の安全を守つてくれる、こういうことになるわけですね。そういうことを期待されておるのが岡崎さんの考えだと思いますが、それは仮定の話で答えられぬとおつしやるかもしれぬけれども、やはりそういう危険に備えてのMSA援助であり、安保条約であると思いますが、そういう危険が起つた場合に、アメリカの軍隊と日本の保安隊とが一緒になつて行動する場合は、日本の保安隊はやはりソ連、中共の侵略に対して対抗する戦力の一部分となるということは、はつきりしておると思いますが、それはお認めいただけますか。
  335. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私ども申しておるのは、憲法に違反するかどうかというのが議論でありまして、(田中(稔)委員「ぼくが言つているのは憲法論じやない」と呼ぶ)憲法論ではない戦力の問題というのはないのであります。憲法か規定していなければ、戦力を持つたつて一向さしつかえないのであります。憲法が禁じておるから戦力は持てないのであります。従いまして憲法論以外には戦力論というものはなのいであります。
  336. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私が言つておるのはそうではなくて、ソ連の侵略があつた場合、それに対抗するアメリカの軍隊と一緒に保安隊が活動する、その場合、アメリカの軍隊は戦力である。日本の保安隊は戦力でなくとも、アメリカの軍隊と一緒になつて活動する場合は、明らかに日本の保安隊はアメリカの戦力の一部となつて活動しているということは、認めてよろしいと思うがどうですか。
  337. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その場合でも、保安隊の持つ力が戦力であるかどうかということは、保安隊自身の力を基準にして、今までのように近代戦争を行うに足る能力があるかどうかとこうことが基準で戦力が決定するのでありますから、アメリカ軍と一緒にやろうがやるまいが、それによつて保安隊の内容が変化するわけでもなければ、戦力でないものは、依然として戦力でないのであります。
  338. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その場合、アメリカの軍隊と日本の保安隊とは、水と油のように截然とわかれておつて、そうして別々に交渉するなんということはあり得るわけはない。これは一緒になつて行動するのだから、その場合にはまさに総合された戦力の一部分となつて行動することは事実の問題なのだ、憲法の問題ではないのだ。侵略があり、それに対する対抗が起るという場合を想像するならば、必ずそうなのだから、そういう場合のことを外務大臣は一体どう考えるかの問題なので、憲法論じやないのであります。それはあくまでも水と油だ、アメリカの軍隊、日本の保安隊がかつてにソ連の侵略に備えるのだ、対抗するのだとおつしやるなら、これはまつたくわれわれを欺くものであります。もう一ぺん誠意をもつて答えていただきたい。
  339. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 保安隊がアメリカの軍隊と一緒になつて働こうが働くまいが、それは日本政府の決定によるので、どちらでもさしつかえないのであります。しかしその場合といえども、保安隊は戦力を持たないというのが憲法の趣旨でありますから、戦力は持たない。それが一緒になつつて一向さしつかえない。保安隊が戦力さえ持たなければ憲法には違反していない、こういうことであります。
  340. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日本の保安隊が戦力ではないということを私どもがまず認めた上で――外務大臣が戦力ではない、今後MSAの援助を受けて装備を強化され、訓練を強化されても、それは戦力でないということをわれわれが認めた上でも、やはり日本に対する侵略があつて対抗する場合、アメリカの軍隊と共同動作をとることはわかつておるのだ。それを期待しておるのが平和条約なのだ、あなたが責任を持つて結んだ平和条約なのだ。それからMSA援助も、そういう心配に備えるために結ぼうというのであります。でありますから、それは必ずそういう侵略に対する共同行動が起り得るのです。その場合にもばらばらに行動するとか一緒にやるかどうかは日本の決定だとかいうことは、まつたくこれは顧みて他を言うものだと思いますが、その場合にそれ自体は戦力ではないが、総合された戦力の一部分を構成するということがどうしてはつきり言えないのですか。私どもは、このことをさして日本の保安隊はアメリカの傭兵だと言つておる。結局アメリカの雇い兵になつて働くのが、日本の保安隊に課せられた任務だと言つておる。しかしそういうことを私が言つておることに対して、外務大臣が、それをはつきり認めることを非常にきらう余り答弁を濁しておられる。もう一ぺんはつきり伺いたい。
  341. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は申すように、アメリカと共同してやるかどうか、これはまだ実際起つてみなければわからないことであります。かりに共同してみてもそれは一向さしつかえない。要するに憲法の問題としての日本の政府の考えておることは、保安隊が戦力を持たないということであります。保安隊が戦力を持たなければそれでさしつかえない。
  342. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は時間の関係もありますからほんの簡単にお伺いしたいと思います。ただいま、私まことに重大な発言を聞きましたので、あらためて確認をいたしたいと思います。  先ほど、和田委員質問に対して、岡崎外相は大体このように答えられたと思う。かりに今伝えられておるように保安隊が十数万くらいに増強されたといたしましても、それが立ちどころに侵略戦争に役立つとは思われないから、これは戦力の中には入らぬ、こういうふうな趣旨の御答弁があつたことを今まざまざと記憶いたしおります。それでここに、政府としての一つの戦力というものに対する基準と申しますか、通念が私は生れて来たと思うのです。つまり侵略戦争に役立つようなものはもとよりこれは戦力であり、そこまで至らないものは戦力でない、こういうふうなようであります。もとより私は、憲法の精神の建前から申しましても、侵略戦争を禁止したものであり、また侵略のための軍備を持つことをわれわれが放棄したものであると思うが、こういう憲法の建前から申したならば、私は外務大臣のただいまの御答弁はまつたくその通りであろう、妥当なことであろうと思うのであります。そこで、ここに戦力に対する通念をきめるというお話でありますが、国民的な通念はとにかくといたしまして、政府の見解と申しますか、政府の考えております通念というものが、侵略戦争をやるようなものはこれは戦力であるのだ、それに至らないものは戦力でないのだ。さらにこのことを言葉をかえて言いますと、少くとも海外に遠征することのできるようなもの、またそういう員的に役立つようなものは、これは戦力である、それは憲法によつて禁止されておるし、政府もまたそれを持とうという考えはない。しかしそれに至らない程度のものを今政府が持つことは一向に憲法違反でもないし、またそういつたものを漸次増強して行こうと考えておるのだ、こういうふうに政府は考えておるものと思われますが、それでよろしゆうございましようか。
  343. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは説明のためにいろいろな言葉を用いたのでありますが、それを一番的確に言うのは、いつも申しているように、近代戦争を有効的確に遂行する能力があるような装備編成を持つた総合的な力、これが戦力であります。ですから、これに至らざるものという意味であります。
  344. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一点だけ。侵略戦争に役立つようなものは戦力である、海外に遠征することができるようなものや、そういう目的に役立つようなものはこれは戦力である、こういうふうに政府はお考えになつておるというふうに考えてよろしうございますか。これは通念的に聞くので。むずかしい定義を聞くわけじやありません。一つのこれは政治論として、一般の通念として、皆様が国民に説明なさるときに、海外へ出かけて遠征するというものはこれは戦力なのだ、侵略戦争をやるというようなものはこれは戦力である、しかしそういうものでないものはこれは戦力でないのだ、従つて、こういうものは持つても憲法の禁示するところではないのだ、こういうようにすれば非常にわかりがいいと思うのですが、いかがですか。
  345. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 憲法の規定の動機は侵略戦争を防遏するにある、こう申しておりますが、これを一番的確に、どういうものを持つのはいけないということで、戦力の内容というものの定義を下す場合には、侵略戦争とかなんとかいうあいまいな言葉よりも、近代戦争云々の方が的確であると思います。
  346. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは、先ほど和田委員に答弁されたことはどうですか、取消すわけですか。先ほど言われたことは、別にその趣旨をくつがえしたことをおつしやつているのではないと思いますか、私の今考えるのは、私はあなたをいじめようとか無理難題を言おうというような気持でおるのではなくして、こういう問題ままことに重大な問題である、憲法というものは国の基本法でありますし、この問題に対する審議というものは、単に与党、野党の関係ではなくて、真剣に把握いたしておきたいという観点から私は聞くわけでありますが、海外へ遠征するようなものは戦力である、侵略戦争をやるようなものは戦力である、しかしそれ以外のものは戦力ではないから、保安隊はこれを保持しても憲法違反ではない、こういうふうなお考えと解釈したらら、私の解釈が間違つておるでありましようか、どうでありましようか。
  347. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 侵略戦争を行うような力があれば、それは結果として戦力となろうと思いますが、侵略戦争とは何んぞやということ、またその定義はむずかしくなつて来ます。従つて一番正確に戦力の定義を下すならば、先ほど申しました近代戦云々で御解釈くださつた方が一番正確であると思います。
  348. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、海外に遠征するようなものは戦力でありますか。
  349. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 海外に侵略戦争を行うような力が出てくれば、これは戦力だと思います。
  350. 上塚司

    上塚委員長 この際友好通商航海条約の方に切りかえまして、穗積七郎君に質問を許します。
  351. 穗積七郎

    穗積委員 通商航海条約に入ります前に、朝鮮休戦の問題について間連して「言だけお尋ねしたい。それからもう一つは、あとで議事進行について委員長にお尋ねいたすことにいたします。  大臣より、朝鮮休戦交渉が成立したことを喜ぶということと、もう一つ品は、今後政治会議において論ぜられるいろいろな問題が日本にも関係があると思われるので、正式に出席するしないにかかわらず、日本の意のあるところは、できるだけ伝えるようにしたいという御発言がありまして、そのことについて私は一言お尋ねしたいわけです。  政治会議において問題になることが予想されておりますこと、たとえば先ほどの中央承認と国連への参加の問題、あるいは台湾、インドシナ問題等につきましては、これはいろいろ政策上の意見の違いも日本国内においてもあろうかと想像されるわけですが、しかしながら、次の一点につきましては、これは国民のすべてが政党のいかんを問わず、認めなければならない国際的な原理だと私は思うのです。それは何かといえば、平和的な民族自決の方針をわれわれが守るということであります。そのためには、真に、朝鮮、アジアにおける平和を日本が念願するならば、朝鮮戦争の原因は二つの朝鮮があるということであります。そうして同時にもう一つは、外国の軍隊がこれに駐留しまたは干渉していることであります。幸いにいたしまして休戦交渉が成立いたしましたので、少くとも日本の国民のすべてが希望し、世界の人々が承認しなければならない民族自決の原理に従い、平和を念願する原理に従いまして、朝鮮国の民主的な統一に対しましては、日本としても、その意思を、その希望をぜひ表明すべきものであると私はかたく信じます。もう一つは、それを実現するためには、朝鮮に駐留いたしますところの、対立した外国軍隊が撤退することであります。この二つは、党のいかんを問わず、あるいはまた個人のいかんを問わず、すべての世界の人々が承認しなければならない原則であり、われわれ国民といたしましても、当然希望すべきことであると思いますので、最小限度その二つのことにつきましては、日本の国民を代表する意思として、国連側に、あるいは対立する両者側に、ぜひ伝えるべきであると私は信ずるのでありますが、それについての外相の御所見を伺つておきたいのであります。
  352. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お言葉は、お言葉だけとして聞きますと、これはごもつともな次第で、何ら反対すべき理由はありません。しかしながら、朝鮮事変が起りました事態を考えますと、これは両方の軍隊が撤退するというので、アメリカ側の軍隊も撤退したあとで起つたのでありますが、北鮮側の装備、訓練等を見ますと、外国の援助によつて非常に強化されたものが、突如として三十八度線を越えて来たという事実はいなまれない。従つてただ表面的にそういう言葉だけで、朝鮮の問題が解決されると思つたら大違いだと思う。十分にその点は南鮮側でも了承していると思いますか。
  353. 穗積七郎

    穗積委員 その問題をなおお尋ねいたしたいと思いますが、時間がなくなりますので、次の機会に譲りまして、きようはやめます。  次に議事進行について委員長希望を申し述べます。実は私はせんだつて来、MSA問題その他につきまして、一番重要な問題は憲法の解釈を統一していただく、これはこの前の委員会におきまして、岡崎外務大臣に、外務大臣の私見であるとか、あるいは大臣は法律の専門家ではないとかいうような非常に権威のない、しかも統一のない態度でお話をされたのでは困る。従つて総理大臣初め、各閣僚がおられなくとも、外務大臣一人で政府の統一した解釈、方針についてお尋ねがあり次第、お答えがいただけるようにしていただきたいということを希望しておきました。にもかかわらず、まだはなはだ不明確でございます。同時に一方においてはまた違つた解釈が他の閣僚から発言されておる。これではいつまでたつても私はまじめな討論というものは前に進めないと思いますので、実は政府機関の権威のある法律解釈として、きよう法制局長官の出席を要求いたしまして、その問題に対しての政府の決定版をひとつお尋ねしたいと思つていたところが、時間がないということと、通商航海条約を早く上げたいという御希望がある。そこでこれも話合いですが、どういたしましようか。きようやりますか、あしたやりましようか。両方とも重要な問題でございますから、これは議事進行についてお尋ねするわけです。
  354. 上塚司

    上塚委員長 今日憲法の問題については、高辻法制局第一部長が見えております。しかし私の考えでは、先ほど申しましたように、通商航海条約を先に上げて、もし余裕があつたならば、そのあとにおいて憲法その他を論議せられんことをお願いいたす次第であります。今日は通商航海条約にこれから入られんことを希望します。
  355. 穗積七郎

    穗積委員 次とはいつですか。高辻部長がお見えになつておりますから、ちよつときめておいてもらわぬと困ります。
  356. 上塚司

    上塚委員長 二十九日にこの通商航海条約が上りますから、そのあとにいたしたいと考えております。
  357. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、それまでは一般国際情勢に関する討議はいたしませんか。
  358. 上塚司

    上塚委員長 いたします。
  359. 穗積七郎

    穗積委員 それならどうでしよう。関連したことなのですが、MSA問題なり、自衛力の問題について討論をする前に、今議会における討論の段階というものは、やはり憲法に対する正確ら解釈を規定してかかつてもらうことが一番大事な焦点になつて来ている。従つて一般国際情勢に対する質疑もやられるなら、当然その前にやつていただくべきだと私は信ずるのです。それで通商航海条約の採決の前に、一般国際情勢の討議をやるのに、それが済んでからとは一体どういうわけなのか、納得が行かない。
  360. 上塚司

    上塚委員長 その点は理事会において相談をした上で決定し、御返事いたします。
  361. 帆足計

    ○帆足委員 議事進行について。今日はただいままで各委員非常に努められまして、大分生理的疲労の限界にも参つておりますので、お諮りしたいのですが、通商航海条約の問題につきましては、他の委員の方の御賛成があれば、明日続けることにしまして、旅券の問題は飛行機が待つておりますから、きようこれを終りにするくらいに政府から明確な答弁を願いたいと思います。  なお委員長にお願いしたいのですが、私個人に関して申し上げますれば、MSAに対しても、通商条約に対しても、まだ一回も御質問する機会が恵まれていないのでございます。従いまして事務当局におきましては、もう少し各委員発言をよく記録にとどめられて公平な機会を与えていただきたいと思いますが、通商条約についてはまだ一回も、MSAについても一回も述べる機会がない。ただ旅券法について若干述べただけであります。旅券法は、外交委員会としては基本的人権に関する問題で、同僚各位も大いにこの問題の重要性については、委員会の権威にかけて責任を痛感せられていることと存じましたので、何しろ飛行機が待つているものですから、本日でひとつはつきりした御答弁をいただいて打切るような状態にしていただきたいと思いますが、同僚議員諸君とも御相談いたしまして、そのようにおとりはからい願えますれば、その問題の御質問をいたしたいと思います。
  362. 上塚司

    上塚委員長 帆足君に対する旅券問題に関する発言は、もうすでに数回許しております。相当の時間をこれに質していると考えております。しかるにすでにこの通商航海条約の中に入つておりますし、順番は穗積君の次が帆足君でありますから、その順番が来たときにあなたの時間の範囲内において質問を続けられんことを希望いたします。
  363. 帆足計

    ○帆足委員 旅券法の問題は、通商航海条約ちよつと違いますし、私はただいま申し上げましたように、MSAに対しても一回も発言いたしておりませんし、通商条約についても一回も発言いたしておりませんから、従いましてただVま旅券につきまして一、二お許し願う方が円滑ではないかと存じますが……。
  364. 上塚司

    上塚委員長 お答えします。通商航海条約質問は今日限りではございません。明日もなお夜間に及んで続ける決意でございます。今日の時間の持分の範囲内において旅券の問題を御質問願いたい。穗積七郎君、通商条約に対する質問をしてください。ありませんか。
  365. 穗積七郎

    穗積委員 あります。順番を帆足君と入れかえていただきたい。
  366. 上塚司

    上塚委員長 それでは帆足計君。
  367. 帆足計

    ○帆足委員 それでは通商航海条約の時間を多少食われまして残念ですけれども、私かねてお尋ねしたいと思いました問題を二つだけお尋ねして、あと旅券法のことを簡単にお尋ねしたいと思います。  第一は、先般来日本は国際連合と協力している態勢をとつておりますが、李承晩政府がそれを裏切るような行為をいたしまして、これに対しまして今後もこういうことが多少新聞論調等で予想されておりますが、日本政府としてはこれに対してまことに遺憾なことであると思つておられるでしようか、それともけつこうなことであるとお考えでしようか。今後の政府の外交政策を理解する上におきまして、世界各国の外務大臣もそれぞれ意見を申しておりますから、御所見のほどを伺いたいと思います。
  368. 岡崎勝男

    ○岡崎外務大臣 朝鮮との間にはいろいろの問題がありますので、これは日本側の立場を十分説明して、円満に解決したいと考えております。但し日米通商航海条約とは、これは別に関係ないように思います。
  369. 帆足計

    ○帆足委員 日米通商航海条約をめぐる外務省の政策をわれわれが理解する上において必要だと思つてお尋ねしたのですが、もう一つだけお尋ねいたします。最近アメリカにはマツカーシーとやらいう上院議員がおりまして、非常に極右的インフルエンスを持つておると聞いておりますが、かくのごとき考え方に対して、英国の外務大臣その他西ヨーロツパの外務大臣は相当峻烈な批評をしておるようでありますが、わが国の外務大臣といたしまして、かくのごとき徒輩に対してたいへん共鳴しておられるのでしようか、それとも民主主義上行き過ぎであるとお考えでございましようか。参考ために御意見を伺わしていただきますれば、判断の都合上仕合せと存じます。
  370. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 マツカーシー上院議員の発言はいろいろあるようでありますが、日本に対して直接にいろいろの発言をいたしたものではないように了解しておりますから、日本関係しての発言について申し上げることはないのでありまして、よその国に対するマツカーシー上院議員の発言については、私から御答弁することは差控えた方がいいと思います。
  371. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの問題は、外務大臣が新聞などを十分にごらんにならないせいかと思いますが、たとえば中国に対して貿易をしたものに対しては、それだけの分量をMSAから差引くというようなことを主張して、これは幸いにして上院で否決されましたが、かくのごとき極端な右翼的考えに対して、外務大臣はいかなる感想をお持ちであるかということをお尋ねしたわけです。
  372. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本のいろいろの政策に直接関係があるような具体的事実が現われれば、日本政府としては意見を表明しますが、それ以外のことに対してアメリカの上院議員の言論を統制するような考えは持つておりません。
  373. 帆足計

    ○帆足委員 岡崎外務大臣は、その点自主性が乏しいというか、非常に控え目なお方であるようでありますから、これ以上お尋ねしません。先般旅券法のことにつきまして渡航課長から、鉄のカーテンを越えた者は、一律に海外旅行を禁止するという御発言がありました。ところがこれと相矛盾して欧米局長から、そのようなことは考慮に置かない、いずれそれとかかわりなく、一般的私用旅行については旅券を出すという御説明がありましたので、速記録を調べまして、いずれが正なりやとただしましたところが、外務次官から、渡航課長の言は誤りであつて、欧米局長の言が正しいということを正式に御回答になり、速記録にとどめられております。すでに名前が出ましたから申し上げますが、南君が旅券をもらうことにつきまして、渡航課長のところに行くと、これは大臣、次官に聞いてくれというのです。そこで私が大臣、次官にお尋ねいたしますと、法規通りやつて参りたいので、そういうこまからことは担当事務官にまかしてある。こういうことで、いつまでたつても落着いたしません。従いまして、この問題はもう今日くらいでひとつ結末をつけていただきたいと存じます。ただいま私が申し上げた外務次官の言明に対して、渡航課長は誤解されていたのであるならば、ただちに欧米局長並びに次官と御相談あつて、しかるべき処置をされることが至当であると思いますが、その後いかがお取扱いになつておりましようか、お尋ねしたいと思います。
  374. 松尾隆男

    ○松尾説明員 渡航課長の言明と欧米局長の言明が食い違つておるからというお話でありました。帰つてから私もこの門の帆足さんの言われた二月十日の議事録を拝見いたしましたが、欧米局長は、高良さんがインドへ行くときには、一般旅券はあるいは出すかもしれないということをその議事録で言つておるようであります。きようお話を承りますと、政務次官から、欧米局長の説明と渡航課長の説明とが食い違つていた場合においては、適当に政務次官において調整するということを言明されたそうでありますが、政務次官には、けさお会いするまでは、その言明をされたあと私はお会いしておりません。従つてそれは全部政務次官にお預けして、政務次官がどういうふうな調整をされるか。その結果によつて、渡航課長は処置したいと思います。
  375. 帆足計

    ○帆足委員 その問題につきまして、せつかく最高の責任者の大臣がおられることですから、外務大臣から即決的にひとつ御回答を伺いたいと思います。
  376. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 南博という人は公務員であり、しかも教職に携わつておる人です。この人が罪にはならないにしても旅券法の規定を犯したということは、はなはだおもしろからざることと私は考えておりましてもしさらに旅券を求めて来たならば、こういうことをやりました公務員で教員の資格のある人に旅券は出したくないと考えております。しかし法律でもつてどうしても出さなくてはいかぬと言われれば、これは法律の解釈がそうであればいたし方ない、こう考えておりますが、それ以上のことはこの法律の解釈ということになりますので、これは政務次官で十分やれると思いますから、政務次官にまかしておきます。
  377. 帆足計

    ○帆足委員 その問題につきまして欧米局長から、「違反云々の問題は、一般旅券を発給するときの考慮になりませんから、出すことは当然であります。」という明答をいたしまして次官はこれを承認されました。しかるに、そのようなことになつておるにもかかわらず、当人から手続をいたしましても容易に回答は得られません。旅行というものは時期がある問題でございます。また南君が旅券法に違反したと申しますけれども、私は政府官庁が旅券法に違反したというふうに解釈しておりまして、法学界おおむねの論旨も、政府側が無理であろうというように今日言われております。しかし最後的にいずれが正しいかということは、最高裁判所の判断にまたなければなりませんが、これは主観的な意見の相違でありますから省きまして、ともかく法に従つてすべてを処理いたさなければなりません。そこでお尋ねしたいのは、従来こういう問題でもめるということはまことに不見識なことでございまして、政府の解釈からしていけないというならば、大体旅券の申請を受けまして、一週間か二週間の間に最後の回答を当人あてに表明することが、私正し務であろうと思います。また少くとも飛行機の出ます三日なり一週間前に、是非いかんを問わず回答を与えることが正しいと思います。しかるに荏苒日をむなしゆうして、飛行機は出て行く、船も出て行く、そして実際上その旅行をして無意義ならしむるようなことが行われておるということは、まことに遺憾に思います。従いまして今後南君のために――外務大臣は南君に対しまして好ましくないとお考えになつておることは、これは外務大臣の主観的判断の問題でございますから尊重はいたしますが、法規に従いまして南君に対して何日の余裕をもつていかなる裁断を下されるか、すなわち、まず南君に対して渡航課長といたしましては、こういう書類が足らないというならば督促すべきでございましよう。昨日聞くところによりますと、文部省の方の届が来てないからというのでありますが、これは官庁事務の渋滞に属する問題でありまして、外務省渡航課長もまた同罪として非能率の責任を負わなければなりません。また南君から適切なる調査資料が十分出てないとするならば、それを出すように督促し指導するのが、渡航課長のサービス上の務めだと私は存じます、意見の相違はこれはやむを得ませんけれども、すべて合理的に民主的にやることが好ましきことであると私は存じますので、結論といたしましては、この鉄のカーテンをただ越えたという理由をもつて、旅券発給に対して差別待遇をすることは不当であり、そういうことはしないということを欧米局長が速記銀にとどめ、すでに皆様お聞き及びの通りに、次官が欧米局長の言は正当であると認定されました以上は、渡航課長としては、きようはまだ次官に会わないということでは済まないのであつて、あなたは欧米局長の速記録を読んだと言われる。読んだならば欧米局長のもとにかけつけるか、次官のもとに積極的にかけつけて、事務の渋滞を早く解決するのが至当であると思います。従いましてこの問題に対して、あと何日間で解決をなされるか、今後はどういう事務処理をなされるか。たとえば私がビルマにでも社会党会議で旅行をいたしますときに、差別待遇をして旅券を出さないなんという理由は、欧米局長のこの言によつて解消したわけです、南君の問題は、ただ学校の身分問題が残つておると申しますが、それならば文部省と御相談なされればいい。またそういう重大なことをおきめになりますのに、法務大臣との協議と、その許可が必要でありますが、問題はそこまで行つていないと私は思います。行つていないのに、軽卒に南君の旅券問題が渋滞しておるということは、これはやはり事務怠慢であろうと思います。外務大臣のお気持はさることながら、法は厳守せねばなりません。従いまして今後この問題が合理的に正しく処理されるために、外務大臣並びに渡航課長から正確なお答えをいただいておきたいと思います。
  378. 松尾隆男

    ○松尾説明員 渡航課長の職務怠慢を責められるようであります。けれども私は、帆足さんに民主主義の名前においてその言葉を返上したいのであります。渡航課長の事務怠慢とは何事であるかと私はお聞きしたい。もし文部大臣から外務大臣に対する回答が来ていないことに対して、今日までほおつて置くことが、いかにも渡航課長の職務怠慢であるというならば、私はその言葉をそのままお返ししたい。これこそ文部省当局の怠慢であるということを、十分お知りおき願いたい。南教授のごとく、一橋大学教授に身を奉じ、教壇から幾多の青年諸君を薫陶する任務、聖職にある教員諸氏が、今あ日なたのおつしやるように法に違反して、ソ連、中国に入つたというこの事実は、これはいかに旅券法に罰則がないからといえども、旅券法違反であるということは、また何人といえども否定し得ないところであります。そして私たちは、すでに南博氏が帰つて来たときに、文部省当局に対して十月九日付の公文書をもつて、文部大臣に対しその責任を追究し、どういうふうな処分をとつてくれるかということを言つてあります。もし一橋大学当局において良心があるならば、教育公務員特例法第九条とかいう規定に従つて、一定の処分をして、それを文部大臣に出すべきではないでしようか。文部大臣はそれを受取つて……。
  379. 帆足計

    ○帆足委員 それは文部省に言うべきだ。
  380. 松尾隆男

    ○松尾説明員 そうです。あなたの方もまた文部省に言つていただきたい。渡航課長職務怠慢の言は、そつくりお返しいたします。
  381. 帆足計

    ○帆足委員 今の、渡航課長の言は、私は官僚としては言い過ぎだと思います。と申しますのは、文部省当局が怠慢で遅れておるならば、やはり文部省当局を通じて文部大臣と相談して督促なさるのがしかるべきであつて、また遅れておつて南君に迷惑がかかつておるならば、南君の方からも学校当局に督促せよ、こう言うべきであろう。身教職にありながら云々と言われましたが、あなたは渡航課長の身にありながら旅券法違反をして、私によつて損害賠償で告訴されておるという点においては同じでありまして、これは最高裁判所の判決をまつて、どちらが思い違いだつたか。それはお互いに道徳的な問題でなくして、法の解釈についての――ただいまの再軍備論で今まで論議がありました。あの憲法の解釈ですらあれほど違うのでありますから、ましてやこのあいまいな法規をつくつた外務委員会にも、多少の責任はありましよう。そして裁判長や判事諸君の言われるのには、これは非常にむずかしい問題だ、ぼくが君の立場ならば、堂々とこういうふうに主張すると、こう裁判長も述懐されたくらいでありまして、その事情は渡航課長よく御承知のはずです。裁判の反対尋問において御承知のはずですが、その最後の決定は最高裁判所にまつということであつて、あまり軽々しく人を罪人扱いするような言い方はお慎みになつた方が、趣味の向上のためによかろうと存じます。  ところで今後の問題でございますが、文部省が怠慢しているからといつて、漫然と当人に迷惑がかかつておるという事態はいかがなものでしようか。それが政府部内における責任と言えないでしようか。渡航課長さんにお尋ねしても、ちよつとまた御迷惑だと思いますので、外務大臣においてこういう問題を迅速にお取扱いくださるようにお願いしたいのですが、外務大臣からお答えをいただきますれば幸せでございます。
  382. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 南君が非常に迷惑しているとおつしやるが、旅券法に違反されて迷惑しているのはこちらであります。こちらの方が非常に迷惑いたしております。なおおそくなる、おそくなるといわれますが、これはどこの国でも例があるのであつて、たとえば香港へ行きたい、どこえ行きたいというので査証がとれないで、三月まち、半年待ち、一年待つても来ないというような例があるのであります。私は渡航課長の処置が、そんなに特におそいとは考えておりません。
  383. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの外務大臣のお話は、外国の査証のことでございまして、国内の問題は事務を敏速にせねばならぬと私は思います。これは前にも閣議決定になつたことと思いますが、許可、認可の手続は敏速にいたさなければなりません。ましてやこの旅券の問題は、許可、認可でなくして、単なるこれは事務手続でございますから、従いまして一定の船に乗る人や、また外国で会合のありますときは、その会合の日取りなどがありますので、その三日なり一週間前に最後の結論を下されることが至当だと思いますが、外務大臣はそうお考えにならないのでございましようか。どんどん延びてもいい、二週間以上も延びますことは、事務の失態だと思いますが、いかがでしようか。
  384. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 二週間はおろか、一月かかる場合もあると思います。二月かかる場合もあると思います。しかしできるだけ早くするということは御回感であります。  なお渡航したいという本人が、自分のかつてに一週間後、二週間後に船を予約した、飛行機を予約したから、その期間に間に合せなければならぬという義務は、渡航課にはないのであります。できるだけ急ぐということはもちろんであります。
  385. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣のお言葉としては、これは驚くべきことである。本来ならば、査問委員会にかけてしかるべきほどのお答えだと思います。と申しますのは、もしそういうことが許されますれば、政治的配慮によつて、あるいは好ましくないと思えば、漫然と切符を渡すのを延ばすというようなことをしますれば、飛行機の期限は切れ、会合の期限は切れてしまうということにぶつかるのでありますから、まず社会の常識によつて、二週間が最高くらいのことで事務を処理するというのが、公序良俗に基くところの常識ではないでしようか。外務大臣いかがお考えですか。
  386. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 必要な調査はしなければなりませんから、二遇間で済むと確言はできません。
  387. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣は一月も二月もかかると申しましたけれども、二月もかかるなどということを言われることは、ちよつと言い過ぎではないでしようか。
  388. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 必要がある場合は、これはかからざるを得ないと思います。
  389. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣がこういうお考えを持たれておるならば、それはわれわれの方でまた相談の上、われわれの意見を申し述べて、そういう不親切なやり方をかえていただくより方法がないと思いますが、もしそういうことをなさるならば、今度私たちの社会党内閣ができたときに、岡崎はハリにやりたくないというようなことで、なかなか査証をしない。あるいは身元調べをしてというようなことで行きますれば、それは合法的な脱法的行為だと思うのです。従いまして真に調べる必要があるときに、長くて二週間かかつた、三週間かかつたという程度ならば、私はまだ了解し得ると思いますけれども、ただいま速記録に載つておりますように、外務大臣のように、ときとしては二月かかつてもやむを得ないということは、社会通念からいつて、非常識である、不親切である、それは法を濫用するものであると私は思いますが、大臣多少この問題を訂正したらいかがなものでしよう。
  390. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はできるだけ早くやるのが当然だ、こう言つておるのです。ただ必要がある場合には、これに時間がかかつてもやむを得ない、何も二月かかるのが常識だと言つておるのではないのであります。
  391. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの南君の問題につきまして、まず文部省との間にいきさつがありまして、それが二週間くらいかかるというのであるならば、私は外務省の方から期限を切つて南君の旅券の是非の判断を、よくても悪くても当人のためにしてやらなければならぬと思う。従つて文部省としてはいついつまでに返答をもらいたい。くれなければくれないで、そのままで外務省として判断して、しかるべく法的根拠によつて南君に通達することが当然であると思いますが、私の言うことと大臣の言うことと、いずれが常識ある言であるか、いかがお考えですか。
  392. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まことに帆足君のお話は常識のあることだと思います。しかし外務省には外務省の考えがありますから、外務省の考えによつてやるのでありますが、幸いに政務次官が調整すると言つたそうでありますから、政務次官にまかせておいたらよろしいだろうと思います。
  393. 帆足計

    ○帆足委員 しからば、今度の問題の最後的な解決は政務次官にしていただくということで、政務次官とお話合い、交渉をすれば、それで全部おまかせしたものと考えましてよろしゆうございますか。実は大臣に申しますと、法規のこまかいことは知らないから下にまかしてある、下の方に参りますと、大臣に聞いてくれということで、非常に難渋しておるのでございます。従いまして感情問題などというつまらぬことは抜きにいたしまして、この問題の処理をしやすいようにしていただきたいと思います。私は政府当局のお考えであるならば、結果はいずれでもいいと思うのです。それが正否を争うのは裁判所の問題でありますが、ただ正否までに至る過程は、やはり明朗親切にしていただきたいということを切に希望します。切に大臣の御答弁を願います。
  394. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど私が述べた通りであります。
  395. 帆足計

    ○帆足委員 私が申し上げたことは、ただいま委員長もお聞き及びの通りでございまして、私は外務省当局の御態度が懇切丁寧とは存じません。まことに遺憾であると存じますけれども、申し上ぐべきことは申し上げました。どうか外務省当局におかれましては、意見の相違、思想の相違はとにかくといたしまして、国民に対する外務当局の義務はやはり迅速に、親切に、一定の期限を切つてつていただくことを切にお願いいたします。外務省当局がそのようなことをなさらなくても、私どもが善良な市民として申し上げた言葉は速記録に残るでございましよう。どうか今後あらゆる人たちのために――あるいは渡航を禁止される方もあり、また許される方もありましようが、あらゆる人たちのために、物事を明朗に、迅速に、諾否を明らかにしていただくことをお願い申し上げます。たいへん失礼申し上げましたが、この程度で私の質問を打切ります。
  396. 上塚司

    上塚委員長 なお通商航海条約に対する質問通告者は穗積七郎君、田中稔男君、戸叶里子君、中村高一君がありますが、(「岡良一さんもあります」と呼ぶ者あり)外務大臣に対する質問がありましたならば、この際質問をしていただきたい。もしなかつたならば、外務大臣に対する通商航海条約に関する質問はないものと……。
  397. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣が明日なり、明後日なり、お忙しくておいでになれなくても、私どもは審議をいたします。けれどもこの通商航海条約が上るまでに、一度何とか、ひまを見て大臣においで願う、そしてそのときに質問をさせていただくことにして、私はあしたから質問を続けたいと思います。
  398. 上塚司

    上塚委員長 あればきようやつていただきたい。――ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  399. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めてください。  本日はこの程度をもつて散会いたします。     午後七時三十二分散会